JP2004009543A - テンター装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】配向軸の傾斜したシート状物の延伸倍率を変更可能とし、かつシート状物を安定に搬送することを可能にする。
【解決手段】テンター装置10は、右レール11と、左レール12と、無端チェーン13,14と、各フイルム幅調整部16,17と、各角度調整部20〜23と、出口位置調整部25,26とからなる。各フイルム幅調整部16,17及び各角度調節部20〜23が駆動されることにより、延伸倍率W2/W1及び配向角度αが変更されたとき、出口位置調整部25,26は出口32に位置するスプロケット36,33の位置が搬送方向に対して位置が変わらず、幅方向に沿って移動する。
【選択図】 図1
【解決手段】テンター装置10は、右レール11と、左レール12と、無端チェーン13,14と、各フイルム幅調整部16,17と、各角度調整部20〜23と、出口位置調整部25,26とからなる。各フイルム幅調整部16,17及び各角度調節部20〜23が駆動されることにより、延伸倍率W2/W1及び配向角度αが変更されたとき、出口位置調整部25,26は出口32に位置するスプロケット36,33の位置が搬送方向に対して位置が変わらず、幅方向に沿って移動する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はテンター装置に関し、特に、側辺に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を任意の延伸倍率で製造するテンター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
搬送方向に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を製造するテンター装置が、例えば特開2000−9912号や特開平3−182701号などで提案されている。これらの公報に記載されたているテンター装置では、左右を異なる速度で走行する把持具によってフイルムを把持し、搬送することによって、搬送方向に対して傾斜角度をつけた方向にフイルムを延伸している。このようなテンター装置では、前もって机上で計算されパターン化固定された延伸倍率でしか延伸することができないため、製品の裁断歩留まりの向上が図れない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、本出願人は、特願2002−8021にて、任意の延伸倍率で、任意の配向軸が得られるテンター装置を提案している。図6は、このようなテンター装置の一例を示している。このテンター装置100は、右レール101と、左レール102と、これらレール101,102に案内される無端チェーン(エンドレスチェーン)103,104と、各フイルム幅調整部105〜108と、各角度調整部109〜112とから構成されている。
【0004】
無端チェーン103,104には、把持具(フイルムクリップ)114が所定ピッチで多数取り付けられている。この把持具114はフイルム115の側縁部を把持しながら、各レール101,102に沿って移動することで、フイルム115を延伸する。無端チェーン103,104は原動スプロケット118,119及び従動スプロケット120,121との間に掛け渡されており、無端チェーン103は右レール101によって、無端チェーン104は左レール102によって案内される。右レール101は、入り口レール部101aと、中間レール部101bと,出口レール部101cとから構成されている。同様にして、左レール102も入り口レール部102aと、中間レール部102bと、出口レール部102cとから構成されている。中間レール部101b,102bには、上下流側に湾曲連結部101d,101e,102d,102eが設けられている。この湾曲連結部101d,101e,102d,102eは、各レール部101a,101b,101c,102a,102b,102cを湾曲するように連結する。各レール部101a,101c,102a,102cはレール取付部123によって、それぞれ各フイルム幅調整部105〜108に接続されている。各フイルム幅調整部105〜108は、各レール取付部123をフイルム幅方向で移動させて、左右のレール及びレール湾曲連結部の幅方向における距離を変更する。さらに湾曲連結部101d,101e,102d,102eには角度調整部109〜112が取り付けられており、中間レール部101b,102bと、入り口レール部101a,102a及び出口レール部101c、102cの連結角度を変更する。また、各レール101,102の下流には搬送ローラ124が配置されており、テンター装置100によって延伸されたフイルム115は、搬送ローラ124によって図示しない巻き取り部へ搬送され、ロール状に巻き取られる。
【0005】
コントローラ125には図示しないデータ入力部から、テンター入り口幅W1や出口幅W2、配向軸の角度αなどの設定値が入力が可能になっている。コントローラ125は、テンター入り口幅W1などの設定値が入力されると、この設定値に基づき各レール位置調整部105〜108及び各角度調整部109〜112を駆動して、各レール取付部123をフイルムの幅方向で変位させるとともに、各湾曲連結部101d,101e,102d,102eの湾曲度合を変更する。これによって、任意の延伸倍率W2/W1で延伸され、かつ任意の配向軸の角度αに傾斜したフイルムを得ることができる。
【0006】
しかしながら、上述した図6に示すテンター装置では、延伸倍率を変更したときに左右レール101,102の出口の位置が、変更前と変更後とで、搬送方向に対して位置がずれてしまうことになる。図中実線により延伸倍率の変更前の左右レール101,102の形態を示しており、2点鎖線部は変更後の形態を示している。なお、説明の都合上、変更前の形態では、出口の位置は搬送方向に沿って並んだ状態としている。そして入り口幅W1は同じ値のままとし、出口幅W2をW’2(W’2>W2)として延伸倍率を変更すると、右レール101の出口の位置は下流側へ距離t1、左レール102の出口の位置は上流側へ距離t2の分だけ搬送方向にずれてしまうため、左右レール101,102の出口の位置はT=t1+t2搬送方向にずれてしまう。このように出口の位置がずれると、下流に位置する搬送ローラへ受け渡しが円滑に行われなくなり、安定したフイルム搬送が困難になる。
【0007】
本発明は上記問題を解消するためのものであり、側辺に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を任意の延伸倍率及び任意の配向角度で製造することができ、しかも安定した搬送でフイルムを次の工程に送り出すことができるようにしたテンター装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のテンター装置では、第1及び第2レールによるシート状物の入り口の幅と出口の幅とを変更して延伸倍率を変更する延伸倍率変更手段と、この延伸倍率変更手段により延伸倍率を変更させたときに出口の位置をこの出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で変位させる出口位置調整手段とを備えている。なお、前記第1レール及び第2レールの入り口でのシート状物の進行方向と、出口での進行方向とが交差していることが好ましい。
【0009】
なお、前記複数の把持具はエンドレス部材に取り付けられており、前記第1及び第2レールは、前記エンドレス部材を案内するように、入り口側ホイール部材と出口側ホイール部材とレール長さ調整ホイール部材とこれらホイール部材間に配置される延伸側レール本体及び戻り側レール本体とを備えており、前記出口位置調整手段は、前記出口側ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段と、前記延伸側レール本体と前記戻り側レール本体とのレール長さを調整するレール長さ調整手段とを備えていることが好ましい。さらに、前記レール長さ調整手段は、前記レール長さ調整ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段を備えていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のテンター装置を示す概略の平面図である。このテンター装置10は、右レール11と、左レール12と、これらレール11,12に案内される無端チェーン(エンドレスチェーン)13,14と、各フイルム幅調整部16,17と、各角度調整部20〜23と、出口位置調整部25,26とから構成され、各部の状態はコントローラ28によって制御されている。このテンター装置10はフイルム30の入り口31側から出口32へ順に、予熱部10a、延伸部10b、熱処理部10cの各エリアに分けられている。
【0011】
無端チェーン13,14には、把持具としてのフイルムクリップ33が所定ピッチで多数取り付けられている。このフイルムクリップ33はフイルム30の側縁部を把持しながら、各レール11,12に沿って移動することで、フイルム30に張力を付加し、かつ張力を与える方向をフイルム30の搬送方向と直交する幅方向に対して次第に傾斜させることにより搬送方向に対してシート状物の配向軸の角度を傾斜させて延伸する。
【0012】
無端チェーン13はホイール部材としての原動スプロケット34及び従動スプロケット35,36の間に掛け渡されており、これらスプロケット34〜36の間では、無端チェーン13は右レール11によって案内される。同様に無端チェーン14は、原動スプロケット37及び従動スプロケット38,39の間に掛け渡されており、左レール12によって案内される。原動スプロケット34,37は、その中心位置がフイルム30の出口32に合わせて設けられており、従動スプロケット36,39は、その中心位置がフイルム30の入り口31に合わせて設けられている。
【0013】
これらスプロケット34,36,37,39に近接してフイルムクリップ33の開放部材(図示省略)が配置されている。この開放部材は、入り口31側の原動スプロケット36,39では、フイルム30の把持位置の前で、フイルムクリップ33の図示しない係合部に接触してこれを開放状態にし、フイルム30の側縁部をフイルムクリップ33内に案内する。そして、把持位置を通過するときに開放部材が前記係合部から離れ、フイルムクリップ33が開放位置から把持位置にセットされて、フイルム30の側縁部が把持される。同様にして、出口32側の従動スプロケット34,37では、フイルム30の把持解除位置で開放部材によりフイルムクリップ32が開放位置にされて、フイルム30の側縁部の把持が開放される。
【0014】
右レール11は、前記各スプロケット34〜36と、これら各スプロケット34〜36の間に配置される延伸側レール本体41と、戻し側レール本体42とから構成されている。同様に左レール12も、前記スプロケット37〜39と、これら各スプロケット37〜39の間に配置される延伸側レール本体43と、戻し側レール本体44とから構成されている。
【0015】
右レール11を構成する延伸側レール本体41及び戻し側レール本体42は、入り口レール部41a,42aと、中間レール部41b,42bと、出口レール部41c,42cとからそれぞれ構成されている。同様に、左レール12を構成する延伸側レール本体43及び戻し側レール本体44も、入り口レール部43a,44aと、中間レール部43b,44bと、出口レール部43c,44cとからそれぞれ構成されている。
【0016】
中間レール部41cには、その上下流側に湾曲連結レール部41d,41eが設けられている。この湾曲連結レール部41d,41eは、各レール部41a〜cの間を湾曲するようにそれぞれ連結する。なお、中間レール部42c,43c,44cにも同様に、上下流側に湾曲連結レール部42d,42e,43d,43e,44d,44eがそれぞれ設けられている。
【0017】
湾曲連結レール部43e,44eには、フイルム30の延伸倍率及び配向角度αを変更する延伸倍率変更手段としての角度調整部23が取り付けられている。この角度調整部23によって、湾曲連結レール部43e,44eの湾曲する角度が変更される。なお、湾曲連結レール部41d,42d,41e,42e,43d,44dにも同様に角度調整部20〜22がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
図2及び図3は、角度調整部23及び湾曲連結レール部43e,44eの構成を示している。なお、他の角度調整部20〜22も同様に構成されている。湾曲連結レール部43eは2つの屈曲レール部材46a,46bから構成されている。屈曲レール部材46a,46bは図3の拡大図に示すように、複数のバネ板を重ねて構成されており、中間レール部44b、出口レール部44cにスライド可能に取り付けられている。なお、湾曲連結レール部44eも同様に屈曲レール部材47a,47bから構成されている。角度調整部23により角度の変更が行われたとき、屈曲レール部材46a,46b,47a,47bが中間レール部44b,出口レール部44cに対して摺接しながらスライドし、湾曲連結レール部43e,44eは湾曲する角度をそれぞれ変更することができる。
【0019】
角度調整部23は、レールベース48,49、連結軸50、リードネジ棒51、角度調整モータ52などからなる。レールベース48,49は連結軸50を介して互いに回動自在に連結しており、レールベース48には、中間レール部43b,44bが、レールベース49には、出口レール部43c,44cがそれぞれ固定されている。
【0020】
連結軸50には押動ブロック54が回動自在に取り付けられている。この押動ブロック54には雌ねじ部が形成してあり、この雌ネジ部にリードネジ棒51が取り付けられている。リードネジ棒51は、角度調整モータ52により回転駆動され、角度調整モータ52はドライバ55を介してコントローラ28により制御される。したがって。角度調整モータ52が回転するとリードネジ棒51を介して連結軸50が移動し、これにより、角度調整部23の角度が変更される。
【0021】
図4は左レール12の出口位置調整部26の構成を示すものであり、この出口位置調整部26は、出口レール部43c,44c、幅方向レール部61、原動スプロケット37、従動スプロケット38、スライドフレーム64、フレーム駆動部65、スプロケットベース66、ベース移動部67からなる。出口レール部43cは、原動スプロケット37の位置まで直進するように配置されている。原動スプロケット37と従動スプロケット38との間の位置には、フイルム30の搬送方向Mと直交する幅方向Nに沿って幅方向レール部61が配置されている。そして、従動スプロケット38の位置から出口レール部43cの方へ向かって戻っていくように出口レール部44cが配置されている。
【0022】
出口レール部43cは、詳しくは図5に示すように、伸縮部上流側68aと伸縮部下流側68bとからなる。伸縮部下流側68bの凸部71と伸縮部上流側68aの凹部72とが無端チェーン14の送り方向に沿ってスライド自在に嵌合しているので、出口レール部43cは伸縮自在となっている。さらに無端チェーン14の両側端と面する位置では、凸部71の先端71aが、凹部72の下方部72aへ挿入されるように上下に重なっている。これによって、出口レール部43cの長さが変更されたときでも、無端チェーン14は常時両側方部から支持されており、送り方向に沿って直進することができる。なお、幅方向レール部61及び出口レール部44cも出口レール部43cと同様の構成であり、それぞれ伸縮部上流側69a,70a、伸縮部下流側69b,70bからなる。出口レール部43cの伸縮部上流側68aは、上述したレールベース49に固着されており、伸縮部下流側68bは、フレーム67に固着されている。
【0023】
スライドフレーム64は、原動スプロケット37、幅方向レール部61、スプロケットベース66、及びベース移動部67を支持しており、フレーム駆動部65の駆動によって移動する。フレーム駆動部65は、スライドフレーム67に設けられた雌ねじ部に螺合するリードネジ棒73と、このリードネジ棒73を回転させるモータ74、及び幅方向Nに沿って配置されたガイド軸75からなり、コントローラ28からの制御によってモータ74が回転し、ガイド軸75に沿ってスライドフレーム64を移動させる。
【0024】
スプロケットベース66には、従動スプロケット38、幅方向レール部61の伸縮部下流側69b、及び出口レール部44cの伸縮部上流側70aが取り付けられている。ベース移動部67は、フレーム駆動部65と同様の構成であり、リードネジ棒78、モータ79、及びガイド軸80からなる。このベース移動部67は、スプロケットベース66を、幅方向Nに沿って、且つスライドフレーム64に対して相対移動させる。このスプロケットベース66の移動によって、スプロケット37とスプロケット38との間隔が変更され、これに従動して伸縮部下流側69bがスライドし、幅方向レール部61を短縮又は伸長させる。
【0025】
また、出口レール部44cの伸縮部上流側70aは、スプロケットベース66に対して回動自在に取り付けられており、伸縮部下流側70bは、レールベース49に対して回動自在に取り付けられている。スプロケットベース66の移動によって、伸縮部上流側70aがスプロケットベース66に従動して幅方向Nに沿ってスライドするとともに、スプロケットベース66に対して回動し、出口レール部44cを短縮又は伸長させる。
【0026】
また、フレーム駆動部65は、出口位置調整部26を構成するとともに、フイルム幅調整手段を兼ねている。なお、入り口レール部43aにも同様に、フイルム幅調整手段としてのフイルム幅調整部17が設けられている。フイルム幅調整部17は、リードネジ棒81及びモータ82からなり、入り口幅W1を調整することができる。なお、右レール11も同様の構成で、出口位置調整部26及びフイルム幅調整部17とほぼ同様の構成をしている出口位置調整部25及びフイルム幅調整部16が備えられている。
【0027】
延伸倍率の変更が行われるとき、上述したフイルム幅調整部16、角度調整部20により、右入り口レール部41a,42aがフイルム搬送方向に直交する方向で平行移動する。またフイルム幅調整部17、角度調整部22により左入り口レール部43a,44aがフイルム搬送方向に直交する方向で平行移動する。これらフイルム幅調整部16,17、角度調整部20,22によって、供給するフイルム30の幅W1に合わせてフイルム入り口31の幅が決定される。
【0028】
コントローラ28にはキーボード等のデータ入力部84が設けられており、テンター入り口幅W1や延伸倍率N、配向角度αなどの設定値が入力が可能になっている。なお、延伸倍率Nに代えてフイルム出口幅W2を入力してもよい。また、コントローラ28内には延伸パターンの演算式が予めプログラミングされており、これがメモリ85内に格納されている。コントローラ28は、テンター入り口幅W1、延伸倍率N(又は出口幅W2)、配向角度αの設定値が入力されると、これらの設定値に基づき演算式から、左右チェーン13,14による実質的なフイルム把持長さLA,LB(LA=LB,但しLAはPA1からPA2までのフイルムクリップ33の移動軌跡長さであり、LBはPB1からPB2までのフイルムクリップ33の移動軌跡長さである。)とその位置を求め、求めた位置になるように、各角度調整部20〜23と、各フイルム幅調整部16,17とを駆動して各レール部41a〜c,42a〜c,43a〜c,44a〜cを幅方向で変位させる。
【0029】
すなわち、各角度調整部20〜23と、各フイルム幅調整部16,17とを駆動して、設定されたテンター入り口幅W1、延伸倍率Nとなるようにするとともに、レール11,12の開き角度を変化させることにより、任意の延伸倍率(W2/W1)で任意の配向角度α(10°≦α≦80°)の斜交フイルムが得られるようにする。
【0030】
また、各レール11,12の下流には搬送ローラ86が配置されており、延伸されたフイルム30は、搬送ローラ86によって図示しない巻き取り部へ搬送され、ロール状に巻き取られる。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、データ入力部81からテンター入り口幅W1と、出口幅W2、配向角度αとを入力する。これらのデータが入力されると、コントローラ28は演算式を用いて、各角度調整部20〜23、各フイルム幅調整部16,17を駆動する。そして、このとき同時に出口位置調整部25,26を駆動し、各角度調整部20〜23及び各フイルム幅調整部16,17の角度及び位置の変更に応じて、出口レール部41c,43cを搬送方向Mに対して伸縮させ、且つ幅方向Nに沿って34,37をスライドさせる。
【0032】
各モータ56,74,79の回転制御が終了し、右レール11及び左レールが停止した後に、製膜ライン等により製膜されたフイルム30がフイルム入り口31からテンター装置10内に送られる。入り口31では、フイルムクリップ33が開放状態になっており、送られてきたフイルムの両側縁部がフイルムクリップ33内に入ると、フイルムクリップ33が閉じられて、フイルム30が把持される。フイルムクリップ33は各チェーン13,14の回動により、レール11,12に沿って移動する。これにより、フイルム30は延伸されて、側縁に対して配向軸がαの角度で傾斜し、かつ延伸倍率W2/W1で延伸されたフイルム30が製造される。さらに上述したように、出口レール部41c,43cが伸縮し、かつ幅方向Nに沿ってスライドすることによって出口32に位置するスプロケット34,37が搬送方向に対して常に並ぶように調整されているので、出口32を通過するまで、常に安定した張力で、フイルム30を延伸することが可能であり、ツレやシワのないフイルム30を簡単に製造することができる。そして、出口32に位置するスプロケット34,37が、搬送方向に対して同じ位置にあることから、出口32から搬送ローラ84までの距離Lが常に一定である。これによって、延伸した直後のフイルム30を安定して下流側へ搬送することができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、延伸するときフイルムに面している延伸側レール部を伸縮させ、その延伸側レール部が伸長、又は短縮した分だけ戻り側レール部をそれぞれ短縮及び伸長させて、出口の位置が搬送方向に対してずれないようにしているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば搬送レール部が短縮して、その全周の長さが変更した分だけ調節を行うことができる伸縮自在の無端チェーンを使用してもよい。また、延伸倍率変更手段として、湾曲連結レール部の角度を調節する角度調節部を設けているが、これに限らず、例えば、各レールとしてフレキシブルな部材を用いて、このレールの各部の位置を調節するようにして延伸倍率を変更するような延伸倍率変更手段を設けるようにしてもよい。
【0034】
ところで、テンター装置10において、出口32でフイルム30の左右に進行速度差があると、出口32におけるシワ、寄りが発生するため、左右のフイルムクリップ33の速度差は、実質的に同速度であることが求められる。速度差は好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%未満であり、最も好ましくは0.05%未満である。ここで述べる速度とは、毎分当たりに左右各々のフイルムクリップ33が進む軌跡の長さのことである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
【0035】
さらに、フイルム30のシワ、寄りの発生を解決するために、本発明のテンター装置10では、フイルム30の支持性を保ち、揮発分率が5vol%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させることが好ましい。フイルム30の支持性を保つとは、フイルム30の膜性を損なうことなく両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において常に5vol%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5vol%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入り口位置PAを起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12vol%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12vol%以上の状態を存在させておくことが好ましい。ここで、揮発分率(単位;vol%)とは、フイルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフイルム体積で除した値とする。
【0036】
本発明のテンター装置10による延伸工程の前に、揮発分を含有させる工程を少なくとも1工程以上設けることが好ましい。揮発分を含有させる方法としては、フイルム30をキャストし、水や溶剤などの揮発分を含有させたり、あるいは、水や溶剤などの揮発分に浸漬させるという方法がある。あるいはフイルム30に水・溶媒等を塗布・噴霧してもよい。ポリビニルアルコールなど親水性ポリマーのフイルムの場合は、高温高湿雰囲気下で水を含有するので、高湿雰囲気下で調湿後延伸、もしくは高湿条件下で延伸することにより揮発分を含有させることができる。これらの方法以外でも、上記のとおり揮発分率を5%以上にさせることができれば、いかなる手段を用いても良い。
【0037】
好ましい揮発分率は、フイルム30の種類によって異なる。揮発分率の最大は、フイルム30の支持性を保つ限界とすることができる。好ましい揮発分率は、ポリビニルアルコールでは10%〜100%、セルロースアシレートでは10%〜200%である。
【0038】
本発明のテンター装置10により延伸することによって、フイルム30は優れた偏光能を有する偏光膜として利用することができる。得られた偏光膜としてのフイルム30の両面又は片面に保護膜(保護フイルム)を接着剤層を介して設けることにより、偏光板が得られる。本発明によると、フイルム30の配光軸の角度αを、10°以上80°以下の範囲で任意に設定することができるので、他の光学部材と組み合わせて使用する際にも非常に有効である。得られた偏光板は、優れた単板透過率及び偏光度を有する。したがって、液晶表示装置として用いる場合に、画像のコントラストを高めることができ、有利である。
【0039】
偏光板を作製する際には、さらに、本発明のテンター装置による延伸工程の前に、延伸するフイルム、例えば偏光膜用として用いるポリビニルアルコール等を、ヨウ素−ヨウ化カリウム等の偏光子を含む水溶液で染色することが好ましい。その後、延伸工程に付し、延伸工程後あるいは延伸工程の最終段階付近で、保護膜と貼り合わせるとよい。
【0040】
本発明のテンター装置10を用いる延伸は、特に限定されたポリマーフイルムに対するものではなく、特に、偏光膜を形成するための延伸を対象とする熱可塑性の適宜なポリマーからなるフイルムに対して有効である。ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、セルロースアシレート、ポリスルホンなどを挙げることができる。好ましくはポリビニルアルコールを包含するポリビニルアルコール系ポリマーである。ポリビニルアルコールは通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を少量含有しているものでも構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性ポリビニルアルコールもポリビニルアルコール系ポリマーに含まれ好ましく用いることができる。なかでも、ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0041】
ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またポリビニルアルコールの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
【0042】
また、ポリビニルアルコール,ポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造をつくり、共役二重結合により偏光を得るいわゆるポリビニレン系偏光膜の製造にも、本発明のテンター装置は好ましく用いることができる。
【0043】
延伸前のフイルム30の好ましい弾性率は、ヤング率で表して、0.01Mpa以上5000Mpa以下、更に好ましくは0.1Mpa以上500Mpa以下である。弾性率が低すぎると延伸時・延伸後の収縮率が低くなり、シワが消えにくくなり、また高すぎると延伸時にかかる張力が大きくなり、フイルム30の両側縁部を保持する部分の強度を高くする必要が生じ、テンター装置10に対する負荷が大きくなる。
【0044】
延伸前のフイルムの厚味は特に限定されないが、フイルム把持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。
【0045】
偏光膜は、偏光膜用フイルム、例えばポリビニルアルコールフイルムを配向すると共に、上記のとおり偏光子で染色して得られる。本発明のテンター装置により延伸されたフイルム30を偏光膜として利用する場合、好ましく使用される偏光子は、ヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンおよび/または有機二色性色素である。二色性色素の具体例としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物を挙げることができる。水溶性のものが好ましいが、この限りではない。また、これらの二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入されていることが好ましい。二色性分子の具体例としては、例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ72、シー.アイ.ダイレクト.レッド39、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド83、シー.アイ.ダイレクト.レッド89、シー.アイ.ダイレクト.バイオレット48、シー.アイ.ダイレクト.ブルー 67、シー.アイ.ダイレクト.ブルー90、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、シー.アイ.アシッド.レッド37等が挙げられ、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号の各公報記載の色素等が挙げられる。これらの二色性分子は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。これらの二色性分子は2種以上を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光板として吸収軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)や黒色を呈するように各種の二色性分子を配合したものが単板透過率、偏光度とも優れており好ましい。本発明のテンター装置10により延伸されたフイルムに対しては、特にヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンが好ましく使用される。
【0046】
本発明のテンター装置10によりポリビニルアルコールフイルムを延伸した場合には、偏光子による染色を気相または液相吸着により行うことができるが、液相で行うことが好ましい。ヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンを偏光子として使用する場合、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にポリビニルアルコールフイルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.1〜20g/l、ヨウ化カリウムは1〜200g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜200が好ましい。染色時間は10〜5000秒が好ましく、液温度は5〜60℃が好ましい。染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。染色工程は、本発明の延伸工程の前後いずれに置いても良いが、貼り合わせ時の含水率を10%未満とするため、延伸工程前に液相で染色することが特に好ましい。
【0047】
本発明のテンター装置10により延伸するものが、偏光膜用途のフイルムの場合は、ポリマーを架橋させる添加物を用いることが好ましい。特に本発明のテンター装置を用いて、斜め方向の延伸を行う場合、延伸工程出口でフイルムが十分に硬膜されていないと、工程のテンションでフイルムの配向方向がずれてしまうことがあるため、延伸前工程あるいは延伸工程で架橋剤溶液に浸漬、または溶液を塗布して硬膜剤(架橋剤)を含ませるのが好ましい。硬膜剤(架橋剤)を偏光膜用ポリマーフイルムに付与する手段は、特に限定されるものではなく、フイルムの液への浸漬あるいは塗布や噴霧等任意の方法を用いることができるが、特に浸漬法と塗布法が好ましい。塗布手段としてはロールコータ、ダイコータ、バーコータ、スライドコータ、カーテンコータ等、通常知られている任意の手段をとることができる。また、溶液を含浸させた布、綿、多孔質素材等をフイルムに接触する方式も好ましい。硬膜剤(架橋剤)としては、米国再発行特許第232897号に記載のものが使用できるが、ホウ酸、ホウ砂が実用的に好ましく用いられる。また、亜鉛、コバルト、ジルコニウム、鉄、ニッケル、マンガン等の金属塩も併せて用いることができる。
【0048】
硬膜剤(架橋剤)の付与は、テンター装置10への導入前に行ってもよいし、テンター工程のによる噛み込後に行っても良く、延伸部10bの工程の終端までのいずれかの工程で行えばよい。また、硬膜剤(架橋剤)を添加した後に洗浄・水洗工程を設けてもよい。
【0049】
本発明のテンター装置10で製造された偏光膜の両面あるいは片面に保護フイルムを貼り付ける場合は、保護フイルムの種類は特に限定されず、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート等のセルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等を用いることができるが、保護フイルムのレターデーション値が一定値以上であると、偏光軸と保護フイルムの配向軸が斜めにずれているため、直線偏光が楕円偏光に変化し、好ましくない。このため保護フイルムのレターデーションは低いことが好ましい。この観点から特に好ましくはセルローストリアセテートである。
【0050】
長尺、特にロール形態の偏光板を得るまで、一貫工程で作製する場合には、染色のムラや抜けがないことが必要とされる。本発明のテンター装置10による延伸の前のフイルム中に揮発成分に分布のムラ(フイルム面内の場所による揮発成分量の差異)があると染色ムラ、抜けの原因となる。従って、延伸前のフイルム30の揮発分成分の含有分布は小さいほうが好ましく、少なくとも5%以下であることが好ましい。揮発分成分の分布とは、上記で定義された揮発分率の平均揮発分率に対する、最大値または最小値と該平均揮発分率との差の大きい方の比を表す。揮発分成分の含有分布を小さくする方法として、フイルム30の表裏表面を均一なエアーでブローする、ニップローラーにて均一に絞る、ワイパーなどで拭き取る(ブレード、スポンジ拭き取りなど)などの方法挙げられるが、分布が均一になればいかなる方法を用いても良い。
【0051】
延伸させたフイルム30の収縮は、延伸時、延伸後のいずれの工程でも行って良い。収縮は、斜め方向に配向する際の発生するポリマーフイルムのシワが解消すればよく、その手段としては、加熱することにより揮発分を除去する方法などが挙げられるが、フイルム30を収縮させればいかなる手段を用いても良い。好ましいフイルム30の収縮率は、配向軸の角度αを用いると、1/sinα以上とすることが好ましい。
【0052】
斜め方向に配向する際に発生するフイルム30のシワは、本発明のテンター装置10における熱処理部10cの終端までに消失していればよい。しかし、シワの発生から消失までに時間がかかると、延伸の方向性にばらつきが生じることがあるので、好ましくは、シワが発生した地点からできるだけ短い移行距離でシワが消失することが良い。このためには、揮発分量の揮発速度を高くするなどの方法がある。
【0053】
発生したシワが消失する条件であれば、乾燥条件はいかようでもかまわない。ただし、所望の配向角度が得られた後できるだけ短い移動距離で乾燥点が来るように調節するのが好ましい。乾燥点とは、フイルム30の表面膜温度が環境雰囲気温度と同じになる場所を意味する。このことから、乾燥速度もできるだけ速いほうが好ましい。乾燥温度については、本発明のテンター装置10でポリビニルアルコールを延伸する場合、20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは40℃以上90℃以下である。
【0054】
本発明のテンター装置10による延伸を行うフイルム30が、ポリビニルアルコール系ポリマーのとき、揮発分としては水が好ましい。そして、配向板を得ることが目的の場合は、保護膜の貼り合わせ時の含水率(揮発分率)が10%未満となるように乾燥することが好ましい。さらに好ましい含水率は8%未満である。
【0055】
本発明において、フイルム30がポリビニルアルコール系ポリマーフイルムで、硬膜剤を使用した場合、斜め方向に延伸した状態を緩和せずに保つために、延伸前後で水に対する膨潤率が異なることが好ましい。具体的には、延伸前の膨潤率が高く、延伸・乾燥後の膨潤率が低くなることが好ましい。更に好ましくは、延伸する前の水に対する膨潤率が3%以上で、乾燥後の膨潤率が3%以下であることである。
【0056】
本発明のテンター装置において、フイルムクリップ33の軌跡を規制するレール11,12には、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部ではフイルムクリップ33の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
【0057】
また、フイルム30を延伸する速度は、単位時間当りの延伸倍率で表すと、1.1倍/分以上、好ましくは2倍/分以上で、早いほうが好ましい。また、長手方向の進行速度は、0.1m/分以上、好ましくは1m/分以上で、早いほうが生産性の観点から見て好ましい。いずれの場合も、上限は、延伸するフイルム30及びテンター装置10により異なる。
【0058】
本発明のテンター装置において、延伸前のフイルム30に異物が付着していると、表面が粗くなるため、異物を取ることが好ましい。異物が存在していると、特に偏光板作製時には、色むら・光学むらの原因となる。また、偏光板を製造するときには、保護膜を張り合わせるまでの間に、異物が付着しないことも重要で、極力浮遊するゴミが少ない環境下で製造することが好ましい。本発明のテンター装置10での延伸に供するフイルム30の異物の量とは、フイルム表面に付着している異物の重量を表面積で割った値で、平方メートルあたりのグラム数を表す。異物は、1g/m2以下が好ましく、更に好ましくは0.5g/m2以下であり、少ないほど好ましい。
【0059】
異物の除去方法としては特に限定されず、延伸前のフイルム30に悪影響を与えることなく、異物を除去することができれば、いずれの方法でもよい。例えば、水流を吹き付けることにより異物を掻き落とす方法、気体噴射により異物を掻き落とす方法、布、ゴム等のブレードを用いて異物を掻き落とす方法等が挙げられる。
【0060】
本発明のテンター装置10において、フイルム30の両側縁をフイルムクリップ33により把持する際、把持しやすいようにフイルム30を張った状態にしておくことが好ましい。具体的には、フイルム30の長手方向に張力をかけてフイルムを張るなどの方法が挙げられる。張力としては、延伸前のフイルム状態により異なるが、弛まない程度にすることが好ましい。
【0061】
延伸時の環境温度は、少なくともフイルム30に含まれる揮発分の凝固点以上であればよい。フイルム30がポリビニルアルコール系のものである場合には、25℃以上が好ましい。また、偏光膜を作製するためのヨウ素・ホウ酸を浸漬したポリビニルアルコール系フイルムを延伸する場合には、25℃以上90℃以下が好ましく、さらに好ましい温度範囲は40℃以上90℃以下である。
【0062】
延伸時の湿度に関しては、揮発分が水であるフイルム、例えばポリビニルアルコール、セルロースアシレートなどの場合は、調湿雰囲気下で延伸することが好ましい。ポリビニルアルコールである場合は、50%以上100%以下が好ましく、さらに好ましい湿度範囲は80%以上100%以下である。
【0063】
本発明のテンター装置で得られた偏光膜には、各種機能膜を保護膜として直接片面または両面に貼合することができる。機能膜の例としては、λ/4板、λ/2板などの位相差膜、光拡散膜、偏光板と反対面に導電層を設けたプラスチックセル、異方性散乱や異方性光学干渉機能等をもつ輝度向上膜、反射板、半透過機能を持つ反射板等があげられる。
【0064】
保護膜としては、上に述べた好ましい保護膜を一枚、または複数枚積層して用いることができる。偏光膜の両面に同じ保護膜を貼合しても良いし、両面に異なる機能、物性をもつ保護膜をそれぞれ貼合しても良い。また、片面のみに上記保護膜を貼合し、反対面には直接液晶セルを貼合するために、粘着剤層を直接設けて保護膜を貼合しないことも可能である。この場合粘着剤の外側には、剥離可能なセパレータフイルムを設けることが好ましい。
【0065】
本発明のテンター装置10で延伸を行うフイルム30としては、その膜厚が薄いものが多いが、ハンドリング時のフイルム30の裂け等のトラブルを回避するため、フイルム30を延伸後、収縮させ揮発分率を低下させる乾燥工程において、乾燥中もしくは乾燥直後に少なくとも片面に保護膜を貼り合わせ、後加熱する工程を有することが好ましい。具体的な貼り付け方法として、乾燥工程中、両端を保持した状態で接着剤を用いてフイルム30に保護膜を貼り付け、その後両端を耳きりする、耳きりの方法としては、刃物などのカッターで切る方法、レーザーを用いる方法など、一般的な技術を用いることができる。貼り合わせ直後に、接着剤を乾燥させるため、および偏光性能を良化させるために、加熱することが好ましい。加熱の条件としては、接着剤により異なるが、水系の場合は、30℃以上が好ましく、さらに好ましくは40℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。これらの工程は一貫した製造ラインで行われることが、性能上及び生産性を高くする上で好ましい。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、延伸倍率変更手段により延伸倍率を変更させたときに出口の位置をこの出口におけるシート状物の搬送方向に直交する方向で変位させる出口位置調整手段を備えたので、延伸倍率を変更したときでも、ツレやシワなどが発生せず、高品質なシート状物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテンター装置の概略を示す機能ブロックを含む平面図である。
【図2】角度調整部の構成を示す斜視図である。
【図3】角度調整部及び湾曲連結レール部の構成を示す図である。
【図4】出口位置調整部の構成を示す平面図である。
【図5】レール伸縮部の構造を示す斜視図である。
【図6】従来のテンター装置の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
10 テンター装置
11,12 レール
13,14 無端チェーン
20,21,22,23 角度調整部
25,26 出口位置調整部
30 フイルム
31 入り口
32 出口
33 把持具
34〜39 スプロケット
【発明の属する技術分野】
本発明はテンター装置に関し、特に、側辺に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を任意の延伸倍率で製造するテンター装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
搬送方向に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を製造するテンター装置が、例えば特開2000−9912号や特開平3−182701号などで提案されている。これらの公報に記載されたているテンター装置では、左右を異なる速度で走行する把持具によってフイルムを把持し、搬送することによって、搬送方向に対して傾斜角度をつけた方向にフイルムを延伸している。このようなテンター装置では、前もって机上で計算されパターン化固定された延伸倍率でしか延伸することができないため、製品の裁断歩留まりの向上が図れない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これに対して、本出願人は、特願2002−8021にて、任意の延伸倍率で、任意の配向軸が得られるテンター装置を提案している。図6は、このようなテンター装置の一例を示している。このテンター装置100は、右レール101と、左レール102と、これらレール101,102に案内される無端チェーン(エンドレスチェーン)103,104と、各フイルム幅調整部105〜108と、各角度調整部109〜112とから構成されている。
【0004】
無端チェーン103,104には、把持具(フイルムクリップ)114が所定ピッチで多数取り付けられている。この把持具114はフイルム115の側縁部を把持しながら、各レール101,102に沿って移動することで、フイルム115を延伸する。無端チェーン103,104は原動スプロケット118,119及び従動スプロケット120,121との間に掛け渡されており、無端チェーン103は右レール101によって、無端チェーン104は左レール102によって案内される。右レール101は、入り口レール部101aと、中間レール部101bと,出口レール部101cとから構成されている。同様にして、左レール102も入り口レール部102aと、中間レール部102bと、出口レール部102cとから構成されている。中間レール部101b,102bには、上下流側に湾曲連結部101d,101e,102d,102eが設けられている。この湾曲連結部101d,101e,102d,102eは、各レール部101a,101b,101c,102a,102b,102cを湾曲するように連結する。各レール部101a,101c,102a,102cはレール取付部123によって、それぞれ各フイルム幅調整部105〜108に接続されている。各フイルム幅調整部105〜108は、各レール取付部123をフイルム幅方向で移動させて、左右のレール及びレール湾曲連結部の幅方向における距離を変更する。さらに湾曲連結部101d,101e,102d,102eには角度調整部109〜112が取り付けられており、中間レール部101b,102bと、入り口レール部101a,102a及び出口レール部101c、102cの連結角度を変更する。また、各レール101,102の下流には搬送ローラ124が配置されており、テンター装置100によって延伸されたフイルム115は、搬送ローラ124によって図示しない巻き取り部へ搬送され、ロール状に巻き取られる。
【0005】
コントローラ125には図示しないデータ入力部から、テンター入り口幅W1や出口幅W2、配向軸の角度αなどの設定値が入力が可能になっている。コントローラ125は、テンター入り口幅W1などの設定値が入力されると、この設定値に基づき各レール位置調整部105〜108及び各角度調整部109〜112を駆動して、各レール取付部123をフイルムの幅方向で変位させるとともに、各湾曲連結部101d,101e,102d,102eの湾曲度合を変更する。これによって、任意の延伸倍率W2/W1で延伸され、かつ任意の配向軸の角度αに傾斜したフイルムを得ることができる。
【0006】
しかしながら、上述した図6に示すテンター装置では、延伸倍率を変更したときに左右レール101,102の出口の位置が、変更前と変更後とで、搬送方向に対して位置がずれてしまうことになる。図中実線により延伸倍率の変更前の左右レール101,102の形態を示しており、2点鎖線部は変更後の形態を示している。なお、説明の都合上、変更前の形態では、出口の位置は搬送方向に沿って並んだ状態としている。そして入り口幅W1は同じ値のままとし、出口幅W2をW’2(W’2>W2)として延伸倍率を変更すると、右レール101の出口の位置は下流側へ距離t1、左レール102の出口の位置は上流側へ距離t2の分だけ搬送方向にずれてしまうため、左右レール101,102の出口の位置はT=t1+t2搬送方向にずれてしまう。このように出口の位置がずれると、下流に位置する搬送ローラへ受け渡しが円滑に行われなくなり、安定したフイルム搬送が困難になる。
【0007】
本発明は上記問題を解消するためのものであり、側辺に対して配向軸を傾斜させたフイルム等のシート状物を任意の延伸倍率及び任意の配向角度で製造することができ、しかも安定した搬送でフイルムを次の工程に送り出すことができるようにしたテンター装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のテンター装置では、第1及び第2レールによるシート状物の入り口の幅と出口の幅とを変更して延伸倍率を変更する延伸倍率変更手段と、この延伸倍率変更手段により延伸倍率を変更させたときに出口の位置をこの出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で変位させる出口位置調整手段とを備えている。なお、前記第1レール及び第2レールの入り口でのシート状物の進行方向と、出口での進行方向とが交差していることが好ましい。
【0009】
なお、前記複数の把持具はエンドレス部材に取り付けられており、前記第1及び第2レールは、前記エンドレス部材を案内するように、入り口側ホイール部材と出口側ホイール部材とレール長さ調整ホイール部材とこれらホイール部材間に配置される延伸側レール本体及び戻り側レール本体とを備えており、前記出口位置調整手段は、前記出口側ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段と、前記延伸側レール本体と前記戻り側レール本体とのレール長さを調整するレール長さ調整手段とを備えていることが好ましい。さらに、前記レール長さ調整手段は、前記レール長さ調整ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段を備えていることが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のテンター装置を示す概略の平面図である。このテンター装置10は、右レール11と、左レール12と、これらレール11,12に案内される無端チェーン(エンドレスチェーン)13,14と、各フイルム幅調整部16,17と、各角度調整部20〜23と、出口位置調整部25,26とから構成され、各部の状態はコントローラ28によって制御されている。このテンター装置10はフイルム30の入り口31側から出口32へ順に、予熱部10a、延伸部10b、熱処理部10cの各エリアに分けられている。
【0011】
無端チェーン13,14には、把持具としてのフイルムクリップ33が所定ピッチで多数取り付けられている。このフイルムクリップ33はフイルム30の側縁部を把持しながら、各レール11,12に沿って移動することで、フイルム30に張力を付加し、かつ張力を与える方向をフイルム30の搬送方向と直交する幅方向に対して次第に傾斜させることにより搬送方向に対してシート状物の配向軸の角度を傾斜させて延伸する。
【0012】
無端チェーン13はホイール部材としての原動スプロケット34及び従動スプロケット35,36の間に掛け渡されており、これらスプロケット34〜36の間では、無端チェーン13は右レール11によって案内される。同様に無端チェーン14は、原動スプロケット37及び従動スプロケット38,39の間に掛け渡されており、左レール12によって案内される。原動スプロケット34,37は、その中心位置がフイルム30の出口32に合わせて設けられており、従動スプロケット36,39は、その中心位置がフイルム30の入り口31に合わせて設けられている。
【0013】
これらスプロケット34,36,37,39に近接してフイルムクリップ33の開放部材(図示省略)が配置されている。この開放部材は、入り口31側の原動スプロケット36,39では、フイルム30の把持位置の前で、フイルムクリップ33の図示しない係合部に接触してこれを開放状態にし、フイルム30の側縁部をフイルムクリップ33内に案内する。そして、把持位置を通過するときに開放部材が前記係合部から離れ、フイルムクリップ33が開放位置から把持位置にセットされて、フイルム30の側縁部が把持される。同様にして、出口32側の従動スプロケット34,37では、フイルム30の把持解除位置で開放部材によりフイルムクリップ32が開放位置にされて、フイルム30の側縁部の把持が開放される。
【0014】
右レール11は、前記各スプロケット34〜36と、これら各スプロケット34〜36の間に配置される延伸側レール本体41と、戻し側レール本体42とから構成されている。同様に左レール12も、前記スプロケット37〜39と、これら各スプロケット37〜39の間に配置される延伸側レール本体43と、戻し側レール本体44とから構成されている。
【0015】
右レール11を構成する延伸側レール本体41及び戻し側レール本体42は、入り口レール部41a,42aと、中間レール部41b,42bと、出口レール部41c,42cとからそれぞれ構成されている。同様に、左レール12を構成する延伸側レール本体43及び戻し側レール本体44も、入り口レール部43a,44aと、中間レール部43b,44bと、出口レール部43c,44cとからそれぞれ構成されている。
【0016】
中間レール部41cには、その上下流側に湾曲連結レール部41d,41eが設けられている。この湾曲連結レール部41d,41eは、各レール部41a〜cの間を湾曲するようにそれぞれ連結する。なお、中間レール部42c,43c,44cにも同様に、上下流側に湾曲連結レール部42d,42e,43d,43e,44d,44eがそれぞれ設けられている。
【0017】
湾曲連結レール部43e,44eには、フイルム30の延伸倍率及び配向角度αを変更する延伸倍率変更手段としての角度調整部23が取り付けられている。この角度調整部23によって、湾曲連結レール部43e,44eの湾曲する角度が変更される。なお、湾曲連結レール部41d,42d,41e,42e,43d,44dにも同様に角度調整部20〜22がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
図2及び図3は、角度調整部23及び湾曲連結レール部43e,44eの構成を示している。なお、他の角度調整部20〜22も同様に構成されている。湾曲連結レール部43eは2つの屈曲レール部材46a,46bから構成されている。屈曲レール部材46a,46bは図3の拡大図に示すように、複数のバネ板を重ねて構成されており、中間レール部44b、出口レール部44cにスライド可能に取り付けられている。なお、湾曲連結レール部44eも同様に屈曲レール部材47a,47bから構成されている。角度調整部23により角度の変更が行われたとき、屈曲レール部材46a,46b,47a,47bが中間レール部44b,出口レール部44cに対して摺接しながらスライドし、湾曲連結レール部43e,44eは湾曲する角度をそれぞれ変更することができる。
【0019】
角度調整部23は、レールベース48,49、連結軸50、リードネジ棒51、角度調整モータ52などからなる。レールベース48,49は連結軸50を介して互いに回動自在に連結しており、レールベース48には、中間レール部43b,44bが、レールベース49には、出口レール部43c,44cがそれぞれ固定されている。
【0020】
連結軸50には押動ブロック54が回動自在に取り付けられている。この押動ブロック54には雌ねじ部が形成してあり、この雌ネジ部にリードネジ棒51が取り付けられている。リードネジ棒51は、角度調整モータ52により回転駆動され、角度調整モータ52はドライバ55を介してコントローラ28により制御される。したがって。角度調整モータ52が回転するとリードネジ棒51を介して連結軸50が移動し、これにより、角度調整部23の角度が変更される。
【0021】
図4は左レール12の出口位置調整部26の構成を示すものであり、この出口位置調整部26は、出口レール部43c,44c、幅方向レール部61、原動スプロケット37、従動スプロケット38、スライドフレーム64、フレーム駆動部65、スプロケットベース66、ベース移動部67からなる。出口レール部43cは、原動スプロケット37の位置まで直進するように配置されている。原動スプロケット37と従動スプロケット38との間の位置には、フイルム30の搬送方向Mと直交する幅方向Nに沿って幅方向レール部61が配置されている。そして、従動スプロケット38の位置から出口レール部43cの方へ向かって戻っていくように出口レール部44cが配置されている。
【0022】
出口レール部43cは、詳しくは図5に示すように、伸縮部上流側68aと伸縮部下流側68bとからなる。伸縮部下流側68bの凸部71と伸縮部上流側68aの凹部72とが無端チェーン14の送り方向に沿ってスライド自在に嵌合しているので、出口レール部43cは伸縮自在となっている。さらに無端チェーン14の両側端と面する位置では、凸部71の先端71aが、凹部72の下方部72aへ挿入されるように上下に重なっている。これによって、出口レール部43cの長さが変更されたときでも、無端チェーン14は常時両側方部から支持されており、送り方向に沿って直進することができる。なお、幅方向レール部61及び出口レール部44cも出口レール部43cと同様の構成であり、それぞれ伸縮部上流側69a,70a、伸縮部下流側69b,70bからなる。出口レール部43cの伸縮部上流側68aは、上述したレールベース49に固着されており、伸縮部下流側68bは、フレーム67に固着されている。
【0023】
スライドフレーム64は、原動スプロケット37、幅方向レール部61、スプロケットベース66、及びベース移動部67を支持しており、フレーム駆動部65の駆動によって移動する。フレーム駆動部65は、スライドフレーム67に設けられた雌ねじ部に螺合するリードネジ棒73と、このリードネジ棒73を回転させるモータ74、及び幅方向Nに沿って配置されたガイド軸75からなり、コントローラ28からの制御によってモータ74が回転し、ガイド軸75に沿ってスライドフレーム64を移動させる。
【0024】
スプロケットベース66には、従動スプロケット38、幅方向レール部61の伸縮部下流側69b、及び出口レール部44cの伸縮部上流側70aが取り付けられている。ベース移動部67は、フレーム駆動部65と同様の構成であり、リードネジ棒78、モータ79、及びガイド軸80からなる。このベース移動部67は、スプロケットベース66を、幅方向Nに沿って、且つスライドフレーム64に対して相対移動させる。このスプロケットベース66の移動によって、スプロケット37とスプロケット38との間隔が変更され、これに従動して伸縮部下流側69bがスライドし、幅方向レール部61を短縮又は伸長させる。
【0025】
また、出口レール部44cの伸縮部上流側70aは、スプロケットベース66に対して回動自在に取り付けられており、伸縮部下流側70bは、レールベース49に対して回動自在に取り付けられている。スプロケットベース66の移動によって、伸縮部上流側70aがスプロケットベース66に従動して幅方向Nに沿ってスライドするとともに、スプロケットベース66に対して回動し、出口レール部44cを短縮又は伸長させる。
【0026】
また、フレーム駆動部65は、出口位置調整部26を構成するとともに、フイルム幅調整手段を兼ねている。なお、入り口レール部43aにも同様に、フイルム幅調整手段としてのフイルム幅調整部17が設けられている。フイルム幅調整部17は、リードネジ棒81及びモータ82からなり、入り口幅W1を調整することができる。なお、右レール11も同様の構成で、出口位置調整部26及びフイルム幅調整部17とほぼ同様の構成をしている出口位置調整部25及びフイルム幅調整部16が備えられている。
【0027】
延伸倍率の変更が行われるとき、上述したフイルム幅調整部16、角度調整部20により、右入り口レール部41a,42aがフイルム搬送方向に直交する方向で平行移動する。またフイルム幅調整部17、角度調整部22により左入り口レール部43a,44aがフイルム搬送方向に直交する方向で平行移動する。これらフイルム幅調整部16,17、角度調整部20,22によって、供給するフイルム30の幅W1に合わせてフイルム入り口31の幅が決定される。
【0028】
コントローラ28にはキーボード等のデータ入力部84が設けられており、テンター入り口幅W1や延伸倍率N、配向角度αなどの設定値が入力が可能になっている。なお、延伸倍率Nに代えてフイルム出口幅W2を入力してもよい。また、コントローラ28内には延伸パターンの演算式が予めプログラミングされており、これがメモリ85内に格納されている。コントローラ28は、テンター入り口幅W1、延伸倍率N(又は出口幅W2)、配向角度αの設定値が入力されると、これらの設定値に基づき演算式から、左右チェーン13,14による実質的なフイルム把持長さLA,LB(LA=LB,但しLAはPA1からPA2までのフイルムクリップ33の移動軌跡長さであり、LBはPB1からPB2までのフイルムクリップ33の移動軌跡長さである。)とその位置を求め、求めた位置になるように、各角度調整部20〜23と、各フイルム幅調整部16,17とを駆動して各レール部41a〜c,42a〜c,43a〜c,44a〜cを幅方向で変位させる。
【0029】
すなわち、各角度調整部20〜23と、各フイルム幅調整部16,17とを駆動して、設定されたテンター入り口幅W1、延伸倍率Nとなるようにするとともに、レール11,12の開き角度を変化させることにより、任意の延伸倍率(W2/W1)で任意の配向角度α(10°≦α≦80°)の斜交フイルムが得られるようにする。
【0030】
また、各レール11,12の下流には搬送ローラ86が配置されており、延伸されたフイルム30は、搬送ローラ86によって図示しない巻き取り部へ搬送され、ロール状に巻き取られる。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。まず、データ入力部81からテンター入り口幅W1と、出口幅W2、配向角度αとを入力する。これらのデータが入力されると、コントローラ28は演算式を用いて、各角度調整部20〜23、各フイルム幅調整部16,17を駆動する。そして、このとき同時に出口位置調整部25,26を駆動し、各角度調整部20〜23及び各フイルム幅調整部16,17の角度及び位置の変更に応じて、出口レール部41c,43cを搬送方向Mに対して伸縮させ、且つ幅方向Nに沿って34,37をスライドさせる。
【0032】
各モータ56,74,79の回転制御が終了し、右レール11及び左レールが停止した後に、製膜ライン等により製膜されたフイルム30がフイルム入り口31からテンター装置10内に送られる。入り口31では、フイルムクリップ33が開放状態になっており、送られてきたフイルムの両側縁部がフイルムクリップ33内に入ると、フイルムクリップ33が閉じられて、フイルム30が把持される。フイルムクリップ33は各チェーン13,14の回動により、レール11,12に沿って移動する。これにより、フイルム30は延伸されて、側縁に対して配向軸がαの角度で傾斜し、かつ延伸倍率W2/W1で延伸されたフイルム30が製造される。さらに上述したように、出口レール部41c,43cが伸縮し、かつ幅方向Nに沿ってスライドすることによって出口32に位置するスプロケット34,37が搬送方向に対して常に並ぶように調整されているので、出口32を通過するまで、常に安定した張力で、フイルム30を延伸することが可能であり、ツレやシワのないフイルム30を簡単に製造することができる。そして、出口32に位置するスプロケット34,37が、搬送方向に対して同じ位置にあることから、出口32から搬送ローラ84までの距離Lが常に一定である。これによって、延伸した直後のフイルム30を安定して下流側へ搬送することができる。
【0033】
なお、上記実施形態においては、延伸するときフイルムに面している延伸側レール部を伸縮させ、その延伸側レール部が伸長、又は短縮した分だけ戻り側レール部をそれぞれ短縮及び伸長させて、出口の位置が搬送方向に対してずれないようにしているが、本発明はこれに限るものではなく、例えば搬送レール部が短縮して、その全周の長さが変更した分だけ調節を行うことができる伸縮自在の無端チェーンを使用してもよい。また、延伸倍率変更手段として、湾曲連結レール部の角度を調節する角度調節部を設けているが、これに限らず、例えば、各レールとしてフレキシブルな部材を用いて、このレールの各部の位置を調節するようにして延伸倍率を変更するような延伸倍率変更手段を設けるようにしてもよい。
【0034】
ところで、テンター装置10において、出口32でフイルム30の左右に進行速度差があると、出口32におけるシワ、寄りが発生するため、左右のフイルムクリップ33の速度差は、実質的に同速度であることが求められる。速度差は好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%未満であり、最も好ましくは0.05%未満である。ここで述べる速度とは、毎分当たりに左右各々のフイルムクリップ33が進む軌跡の長さのことである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
【0035】
さらに、フイルム30のシワ、寄りの発生を解決するために、本発明のテンター装置10では、フイルム30の支持性を保ち、揮発分率が5vol%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させることが好ましい。フイルム30の支持性を保つとは、フイルム30の膜性を損なうことなく両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において常に5vol%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5vol%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入り口位置PAを起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12vol%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12vol%以上の状態を存在させておくことが好ましい。ここで、揮発分率(単位;vol%)とは、フイルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフイルム体積で除した値とする。
【0036】
本発明のテンター装置10による延伸工程の前に、揮発分を含有させる工程を少なくとも1工程以上設けることが好ましい。揮発分を含有させる方法としては、フイルム30をキャストし、水や溶剤などの揮発分を含有させたり、あるいは、水や溶剤などの揮発分に浸漬させるという方法がある。あるいはフイルム30に水・溶媒等を塗布・噴霧してもよい。ポリビニルアルコールなど親水性ポリマーのフイルムの場合は、高温高湿雰囲気下で水を含有するので、高湿雰囲気下で調湿後延伸、もしくは高湿条件下で延伸することにより揮発分を含有させることができる。これらの方法以外でも、上記のとおり揮発分率を5%以上にさせることができれば、いかなる手段を用いても良い。
【0037】
好ましい揮発分率は、フイルム30の種類によって異なる。揮発分率の最大は、フイルム30の支持性を保つ限界とすることができる。好ましい揮発分率は、ポリビニルアルコールでは10%〜100%、セルロースアシレートでは10%〜200%である。
【0038】
本発明のテンター装置10により延伸することによって、フイルム30は優れた偏光能を有する偏光膜として利用することができる。得られた偏光膜としてのフイルム30の両面又は片面に保護膜(保護フイルム)を接着剤層を介して設けることにより、偏光板が得られる。本発明によると、フイルム30の配光軸の角度αを、10°以上80°以下の範囲で任意に設定することができるので、他の光学部材と組み合わせて使用する際にも非常に有効である。得られた偏光板は、優れた単板透過率及び偏光度を有する。したがって、液晶表示装置として用いる場合に、画像のコントラストを高めることができ、有利である。
【0039】
偏光板を作製する際には、さらに、本発明のテンター装置による延伸工程の前に、延伸するフイルム、例えば偏光膜用として用いるポリビニルアルコール等を、ヨウ素−ヨウ化カリウム等の偏光子を含む水溶液で染色することが好ましい。その後、延伸工程に付し、延伸工程後あるいは延伸工程の最終段階付近で、保護膜と貼り合わせるとよい。
【0040】
本発明のテンター装置10を用いる延伸は、特に限定されたポリマーフイルムに対するものではなく、特に、偏光膜を形成するための延伸を対象とする熱可塑性の適宜なポリマーからなるフイルムに対して有効である。ポリマーの例としては、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、セルロースアシレート、ポリスルホンなどを挙げることができる。好ましくはポリビニルアルコールを包含するポリビニルアルコール系ポリマーである。ポリビニルアルコールは通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、例えば不飽和カルボン酸、不飽和スルホン酸、オレフィン類、ビニルエーテル類のように酢酸ビニルと共重合可能な成分を少量含有しているものでも構わない。また、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等を含有する変性ポリビニルアルコールもポリビニルアルコール系ポリマーに含まれ好ましく用いることができる。なかでも、ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0041】
ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されないが、溶解性等の観点から80〜100mol%が好ましく、90〜100mol%が特に好ましい。またポリビニルアルコールの重合度は特に限定されないが、1000〜10000が好ましく、1500〜5000が特に好ましい。
【0042】
また、ポリビニルアルコール,ポリ塩化ビニルを脱水、脱塩素することによりポリエン構造をつくり、共役二重結合により偏光を得るいわゆるポリビニレン系偏光膜の製造にも、本発明のテンター装置は好ましく用いることができる。
【0043】
延伸前のフイルム30の好ましい弾性率は、ヤング率で表して、0.01Mpa以上5000Mpa以下、更に好ましくは0.1Mpa以上500Mpa以下である。弾性率が低すぎると延伸時・延伸後の収縮率が低くなり、シワが消えにくくなり、また高すぎると延伸時にかかる張力が大きくなり、フイルム30の両側縁部を保持する部分の強度を高くする必要が生じ、テンター装置10に対する負荷が大きくなる。
【0044】
延伸前のフイルムの厚味は特に限定されないが、フイルム把持の安定性、延伸の均質性の観点から、1μm〜1mmが好ましく、20〜200μmが特に好ましい。
【0045】
偏光膜は、偏光膜用フイルム、例えばポリビニルアルコールフイルムを配向すると共に、上記のとおり偏光子で染色して得られる。本発明のテンター装置により延伸されたフイルム30を偏光膜として利用する場合、好ましく使用される偏光子は、ヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンおよび/または有機二色性色素である。二色性色素の具体例としては、例えばアゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素、アントラキノン系色素等の色素系化合物を挙げることができる。水溶性のものが好ましいが、この限りではない。また、これらの二色性分子にスルホン酸基、アミノ基、水酸基などの親水性置換基が導入されていることが好ましい。二色性分子の具体例としては、例えばシー.アイ.ダイレクト.イエロー12、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ39、シー.アイ.ダイレクト.オレンジ72、シー.アイ.ダイレクト.レッド39、シー.アイ.ダイレクト.レッド79、シー.アイ.ダイレクト.レッド81、シー.アイ.ダイレクト.レッド83、シー.アイ.ダイレクト.レッド89、シー.アイ.ダイレクト.バイオレット48、シー.アイ.ダイレクト.ブルー 67、シー.アイ.ダイレクト.ブルー90、シー.アイ.ダイレクト.グリーン59、シー.アイ.アシッド.レッド37等が挙げられ、さらに特開昭62−70802号、特開平1−161202号、特開平1−172906号、特開平1−172907号、特開平1−183602号、特開平1−248105号、特開平1−265205号、特開平7−261024号の各公報記載の色素等が挙げられる。これらの二色性分子は遊離酸、あるいはアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン類の塩として用いられる。これらの二色性分子は2種以上を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光板として吸収軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)や黒色を呈するように各種の二色性分子を配合したものが単板透過率、偏光度とも優れており好ましい。本発明のテンター装置10により延伸されたフイルムに対しては、特にヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンが好ましく使用される。
【0046】
本発明のテンター装置10によりポリビニルアルコールフイルムを延伸した場合には、偏光子による染色を気相または液相吸着により行うことができるが、液相で行うことが好ましい。ヨウ素−ヨウ化カリウムで生成したI3−、I5−等の多ヨウ素イオンを偏光子として使用する場合、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にポリビニルアルコールフイルムを浸漬させて行われる。ヨウ素は0.1〜20g/l、ヨウ化カリウムは1〜200g/l、ヨウ素とヨウ化カリウムの質量比は1〜200が好ましい。染色時間は10〜5000秒が好ましく、液温度は5〜60℃が好ましい。染色方法としては浸漬だけでなく、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧等、任意の手段が可能である。染色工程は、本発明の延伸工程の前後いずれに置いても良いが、貼り合わせ時の含水率を10%未満とするため、延伸工程前に液相で染色することが特に好ましい。
【0047】
本発明のテンター装置10により延伸するものが、偏光膜用途のフイルムの場合は、ポリマーを架橋させる添加物を用いることが好ましい。特に本発明のテンター装置を用いて、斜め方向の延伸を行う場合、延伸工程出口でフイルムが十分に硬膜されていないと、工程のテンションでフイルムの配向方向がずれてしまうことがあるため、延伸前工程あるいは延伸工程で架橋剤溶液に浸漬、または溶液を塗布して硬膜剤(架橋剤)を含ませるのが好ましい。硬膜剤(架橋剤)を偏光膜用ポリマーフイルムに付与する手段は、特に限定されるものではなく、フイルムの液への浸漬あるいは塗布や噴霧等任意の方法を用いることができるが、特に浸漬法と塗布法が好ましい。塗布手段としてはロールコータ、ダイコータ、バーコータ、スライドコータ、カーテンコータ等、通常知られている任意の手段をとることができる。また、溶液を含浸させた布、綿、多孔質素材等をフイルムに接触する方式も好ましい。硬膜剤(架橋剤)としては、米国再発行特許第232897号に記載のものが使用できるが、ホウ酸、ホウ砂が実用的に好ましく用いられる。また、亜鉛、コバルト、ジルコニウム、鉄、ニッケル、マンガン等の金属塩も併せて用いることができる。
【0048】
硬膜剤(架橋剤)の付与は、テンター装置10への導入前に行ってもよいし、テンター工程のによる噛み込後に行っても良く、延伸部10bの工程の終端までのいずれかの工程で行えばよい。また、硬膜剤(架橋剤)を添加した後に洗浄・水洗工程を設けてもよい。
【0049】
本発明のテンター装置10で製造された偏光膜の両面あるいは片面に保護フイルムを貼り付ける場合は、保護フイルムの種類は特に限定されず、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート等のセルロースエステル類、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル等を用いることができるが、保護フイルムのレターデーション値が一定値以上であると、偏光軸と保護フイルムの配向軸が斜めにずれているため、直線偏光が楕円偏光に変化し、好ましくない。このため保護フイルムのレターデーションは低いことが好ましい。この観点から特に好ましくはセルローストリアセテートである。
【0050】
長尺、特にロール形態の偏光板を得るまで、一貫工程で作製する場合には、染色のムラや抜けがないことが必要とされる。本発明のテンター装置10による延伸の前のフイルム中に揮発成分に分布のムラ(フイルム面内の場所による揮発成分量の差異)があると染色ムラ、抜けの原因となる。従って、延伸前のフイルム30の揮発分成分の含有分布は小さいほうが好ましく、少なくとも5%以下であることが好ましい。揮発分成分の分布とは、上記で定義された揮発分率の平均揮発分率に対する、最大値または最小値と該平均揮発分率との差の大きい方の比を表す。揮発分成分の含有分布を小さくする方法として、フイルム30の表裏表面を均一なエアーでブローする、ニップローラーにて均一に絞る、ワイパーなどで拭き取る(ブレード、スポンジ拭き取りなど)などの方法挙げられるが、分布が均一になればいかなる方法を用いても良い。
【0051】
延伸させたフイルム30の収縮は、延伸時、延伸後のいずれの工程でも行って良い。収縮は、斜め方向に配向する際の発生するポリマーフイルムのシワが解消すればよく、その手段としては、加熱することにより揮発分を除去する方法などが挙げられるが、フイルム30を収縮させればいかなる手段を用いても良い。好ましいフイルム30の収縮率は、配向軸の角度αを用いると、1/sinα以上とすることが好ましい。
【0052】
斜め方向に配向する際に発生するフイルム30のシワは、本発明のテンター装置10における熱処理部10cの終端までに消失していればよい。しかし、シワの発生から消失までに時間がかかると、延伸の方向性にばらつきが生じることがあるので、好ましくは、シワが発生した地点からできるだけ短い移行距離でシワが消失することが良い。このためには、揮発分量の揮発速度を高くするなどの方法がある。
【0053】
発生したシワが消失する条件であれば、乾燥条件はいかようでもかまわない。ただし、所望の配向角度が得られた後できるだけ短い移動距離で乾燥点が来るように調節するのが好ましい。乾燥点とは、フイルム30の表面膜温度が環境雰囲気温度と同じになる場所を意味する。このことから、乾燥速度もできるだけ速いほうが好ましい。乾燥温度については、本発明のテンター装置10でポリビニルアルコールを延伸する場合、20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは40℃以上90℃以下である。
【0054】
本発明のテンター装置10による延伸を行うフイルム30が、ポリビニルアルコール系ポリマーのとき、揮発分としては水が好ましい。そして、配向板を得ることが目的の場合は、保護膜の貼り合わせ時の含水率(揮発分率)が10%未満となるように乾燥することが好ましい。さらに好ましい含水率は8%未満である。
【0055】
本発明において、フイルム30がポリビニルアルコール系ポリマーフイルムで、硬膜剤を使用した場合、斜め方向に延伸した状態を緩和せずに保つために、延伸前後で水に対する膨潤率が異なることが好ましい。具体的には、延伸前の膨潤率が高く、延伸・乾燥後の膨潤率が低くなることが好ましい。更に好ましくは、延伸する前の水に対する膨潤率が3%以上で、乾燥後の膨潤率が3%以下であることである。
【0056】
本発明のテンター装置において、フイルムクリップ33の軌跡を規制するレール11,12には、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部ではフイルムクリップ33の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
【0057】
また、フイルム30を延伸する速度は、単位時間当りの延伸倍率で表すと、1.1倍/分以上、好ましくは2倍/分以上で、早いほうが好ましい。また、長手方向の進行速度は、0.1m/分以上、好ましくは1m/分以上で、早いほうが生産性の観点から見て好ましい。いずれの場合も、上限は、延伸するフイルム30及びテンター装置10により異なる。
【0058】
本発明のテンター装置において、延伸前のフイルム30に異物が付着していると、表面が粗くなるため、異物を取ることが好ましい。異物が存在していると、特に偏光板作製時には、色むら・光学むらの原因となる。また、偏光板を製造するときには、保護膜を張り合わせるまでの間に、異物が付着しないことも重要で、極力浮遊するゴミが少ない環境下で製造することが好ましい。本発明のテンター装置10での延伸に供するフイルム30の異物の量とは、フイルム表面に付着している異物の重量を表面積で割った値で、平方メートルあたりのグラム数を表す。異物は、1g/m2以下が好ましく、更に好ましくは0.5g/m2以下であり、少ないほど好ましい。
【0059】
異物の除去方法としては特に限定されず、延伸前のフイルム30に悪影響を与えることなく、異物を除去することができれば、いずれの方法でもよい。例えば、水流を吹き付けることにより異物を掻き落とす方法、気体噴射により異物を掻き落とす方法、布、ゴム等のブレードを用いて異物を掻き落とす方法等が挙げられる。
【0060】
本発明のテンター装置10において、フイルム30の両側縁をフイルムクリップ33により把持する際、把持しやすいようにフイルム30を張った状態にしておくことが好ましい。具体的には、フイルム30の長手方向に張力をかけてフイルムを張るなどの方法が挙げられる。張力としては、延伸前のフイルム状態により異なるが、弛まない程度にすることが好ましい。
【0061】
延伸時の環境温度は、少なくともフイルム30に含まれる揮発分の凝固点以上であればよい。フイルム30がポリビニルアルコール系のものである場合には、25℃以上が好ましい。また、偏光膜を作製するためのヨウ素・ホウ酸を浸漬したポリビニルアルコール系フイルムを延伸する場合には、25℃以上90℃以下が好ましく、さらに好ましい温度範囲は40℃以上90℃以下である。
【0062】
延伸時の湿度に関しては、揮発分が水であるフイルム、例えばポリビニルアルコール、セルロースアシレートなどの場合は、調湿雰囲気下で延伸することが好ましい。ポリビニルアルコールである場合は、50%以上100%以下が好ましく、さらに好ましい湿度範囲は80%以上100%以下である。
【0063】
本発明のテンター装置で得られた偏光膜には、各種機能膜を保護膜として直接片面または両面に貼合することができる。機能膜の例としては、λ/4板、λ/2板などの位相差膜、光拡散膜、偏光板と反対面に導電層を設けたプラスチックセル、異方性散乱や異方性光学干渉機能等をもつ輝度向上膜、反射板、半透過機能を持つ反射板等があげられる。
【0064】
保護膜としては、上に述べた好ましい保護膜を一枚、または複数枚積層して用いることができる。偏光膜の両面に同じ保護膜を貼合しても良いし、両面に異なる機能、物性をもつ保護膜をそれぞれ貼合しても良い。また、片面のみに上記保護膜を貼合し、反対面には直接液晶セルを貼合するために、粘着剤層を直接設けて保護膜を貼合しないことも可能である。この場合粘着剤の外側には、剥離可能なセパレータフイルムを設けることが好ましい。
【0065】
本発明のテンター装置10で延伸を行うフイルム30としては、その膜厚が薄いものが多いが、ハンドリング時のフイルム30の裂け等のトラブルを回避するため、フイルム30を延伸後、収縮させ揮発分率を低下させる乾燥工程において、乾燥中もしくは乾燥直後に少なくとも片面に保護膜を貼り合わせ、後加熱する工程を有することが好ましい。具体的な貼り付け方法として、乾燥工程中、両端を保持した状態で接着剤を用いてフイルム30に保護膜を貼り付け、その後両端を耳きりする、耳きりの方法としては、刃物などのカッターで切る方法、レーザーを用いる方法など、一般的な技術を用いることができる。貼り合わせ直後に、接着剤を乾燥させるため、および偏光性能を良化させるために、加熱することが好ましい。加熱の条件としては、接着剤により異なるが、水系の場合は、30℃以上が好ましく、さらに好ましくは40℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上80℃以下である。これらの工程は一貫した製造ラインで行われることが、性能上及び生産性を高くする上で好ましい。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、延伸倍率変更手段により延伸倍率を変更させたときに出口の位置をこの出口におけるシート状物の搬送方向に直交する方向で変位させる出口位置調整手段を備えたので、延伸倍率を変更したときでも、ツレやシワなどが発生せず、高品質なシート状物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のテンター装置の概略を示す機能ブロックを含む平面図である。
【図2】角度調整部の構成を示す斜視図である。
【図3】角度調整部及び湾曲連結レール部の構成を示す図である。
【図4】出口位置調整部の構成を示す平面図である。
【図5】レール伸縮部の構造を示す斜視図である。
【図6】従来のテンター装置の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
10 テンター装置
11,12 レール
13,14 無端チェーン
20,21,22,23 角度調整部
25,26 出口位置調整部
30 フイルム
31 入り口
32 出口
33 把持具
34〜39 スプロケット
Claims (3)
- 第1レール及び第2レールに沿って走行する把持具によりシート状物を把持して搬送して延伸するテンター装置において、
前記第1及び第2レールによるシート状物の入り口の幅と出口の幅とを変更して延伸倍率を変更する延伸倍率変更手段と、この延伸倍率変更手段により延伸倍率を変更させたときに前記出口の位置をこの出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で変位させる出口位置調整手段とを備えたことを特徴とするテンター装置。 - 前記複数の把持具はエンドレス部材に取り付けられており、前記第1及び第2レールは、前記エンドレス部材を案内するように、入り口側ホイール部材と出口側ホイール部材とレール長さ調整ホイール部材とこれらホイール部材間に配置される延伸側レール本体及び戻り側レール本体とを備えており、前記出口位置調整手段は、前記出口側ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段と、前記延伸側レール本体と前記戻り側レール本体とのレール長さを調整するレール長さ調整手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載のテンター装置
- 前記レール長さ調整手段は、前記レール長さ調整ホイール部材を前記出口における前記シート状物の搬送方向に直交する方向で移動させる移動手段を備えていることを特徴とする請求項2記載のテンター装置。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2002
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