JP2004009309A - 記録装置および方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異常が発生した記録要素に対応する記録領域を他の複数の記録ヘッドの記録要素により白すじが少なくなるように被覆する。
【解決手段】異常が発生した第1のヘッドの記録位置と、補完記録に使用する第2、第3のヘッドの記録位置とのずれがそれぞれ同一方向であり、かつ所定の範囲内にあるとき、第2、または第3のヘッドの記録に使用する記録要素列を1ノズル分シフトさせることにより、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように補完記録を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】異常が発生した第1のヘッドの記録位置と、補完記録に使用する第2、第3のヘッドの記録位置とのずれがそれぞれ同一方向であり、かつ所定の範囲内にあるとき、第2、または第3のヘッドの記録に使用する記録要素列を1ノズル分シフトさせることにより、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように補完記録を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の記録要素を配列された記録ヘッドを用いて、複数の記録ヘッドにより異なる色の記録を行うカラー記録装置、およびその記録方法に関し、特に、インクジェット記録装置で用いられる記録ヘッドの不具合に起因する記録不良の補完記録に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録法は、直接、記録媒体である記録紙等にインク滴を吐出してインクを付着させることにより画像を得るものである。このインクジェット記録法は、例えば電子写真法等とは異なって、記録媒体上に画像が形成されるまでに要する工程が少ないので、比較的低価格で安定した画像が得られるという特徴を有している。そのため、近年においては、インクジェット記録法を適用した記録装置が、プリンタ、FAX、複写機などの多くの出力装置に採用されてきている。
【0003】
また、インクジェット記録法は、複数の色のインクを用いてカラー画像を記録することが比較的容易であり、インクジェット記録法を適用したカラープリンタにおいて、高画質化のための改良が進められている。
【0004】
さらに、記録装置においては、高画質化とともに、高速化も重要な要素であり、インクジェット記録法においては、記録ヘッドの液滴吐出駆動周波数を増大させることや、記録ヘッドに配列されるノズル数を増加させることによる高速化が進められている。
【0005】
しかしながら、このインクジェット記録法には、記録ヘッドの微細なノズルから微小なインク滴を吐出させて記録を行うことに起因する画像記録の不安定さ(よれ;インクの着弾位置がずれる、不吐出;塵や増粘インクによる詰まり等により、インクが吐出されない)が生じ、欠陥のない画像を常に得ることが難しいという問題がある。このことは、記録用紙のほぼ全幅の長さを有する長尺ヘッドを用い、その長尺ヘッドによりライン単位で記録を行うフルマルチヘッドを使用した記録法では特に著しくなる。即ち、このような長尺ヘッドのノズル数は数千個にも及び、それに比例して欠陥ノズル(不吐出となったノズル)が発生する確率も増加してしまい、無欠陥の画像を得ることが難しかった。
【0006】
また、このような記録ヘッドを製造する観点からみると、全てのノズルが正常であることが求められていた。しかし、フルマルチヘッドのようにノズル数が数千個ともなると、記録ヘッド製造中に欠陥が発生する確率はノズル数に比例して増加し、製造の歩留りが極度に低下してしまい、記録ヘッドの製造コストを下げることが極めて困難であった。また、全てのノズルが正常である記録ヘッドを製造することができたとしても、その記録ヘッドの使用中に、ノズルに欠陥(よれ、不吐出)が発生してしまう虞がある。このような欠陥ノズルの発生は、数千個ものノズルを有する記録ヘッドを、記録する色に対応させて複数個の記録ヘッドを備えたカラーインクジェット記録装置において、無視できない問題となる。
このような欠陥ノズルが発生した問題に対し、特開平10−6488号公報には、欠陥ノズルに対応する記録データを他の記録ヘッドの正常なノズルの記録データに加えることで、補完記録を行うことが開示されている。さらに、特開2001−191510号公報には、ブラックの記録ヘッドに欠陥ノズルが発生した場合に、他の色の複数の記録ヘッドの正常なノズルを用いることで、補完記録を行うことが開示されている。
【0007】
また、インクジェット記録法において無視できない課題のひとつとして、記録位置の精度が挙げられる。すなわち、複数の記録ヘッドを備える記録装置を用いてカラー画像の記録を行う場合に、各記録ヘッドの同じ記録位置にあるノズルから吐出されるインクは、記録媒体上の同一の場所に着弾することで、カラーの画像を形成する。しかし、インクの着弾位置がずれてしまう場合には、各色ごとの記録位置が合わなくなり、画像品位が低下する。
【0008】
このような記録位置が合わない問題に対して様々な原因が考えられるが、代表的な原因として、記録ヘッドが正確に位置合わせされていないことが挙げられる。この場合に発生する記録位置のずれについて、図2を用いて説明する。図2(a)、(b)において、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクに対応した記録ヘッド31〜34を備える記録装置であり、マゼンタの記録ヘッド33が正確に位置合わせされていない場合を想定している。また、(a)は記録媒体の搬送方向に記録ヘッドがずれている場合であり、(b)はノズルの配列方向に記録ヘッドがずれている場合である。
【0009】
記録位置のずれを合わせる方法の一例としては、図2(a)に示すような搬送方向のずれは、記録ヘッドの駆動を制御することでインクの吐出タイミングを変化させる方法がある。また、図2(b)に示すようなノズルの配列方向のずれは、記録ヘッドへ展開する記録データをずれ量に対応するようにシフトすることで記録位置を合わせる方法がある。このような記録位置を合わせることをレジストレーションともいう。
【0010】
なお、記録位置を合わせる構成として、特開平10−329881号公報には、記録ヘッドの駆動タイミングを変化させたり、記録に使用するノズルを選択して記録したプリントパターンをセンサで読み取り、記録位置のずれ量を検出し、搬送方向のずれと配列方向のずれのそれぞれに対応した位置あわせを行うことが開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図2(b)に示すようなノズルの配列方向の記録ヘッドのずれに対し、記録装置内に記録ヘッドを正確な位置に取り付けるための機構を設けることも考えられるが、高密度にノズルが配列された複数の記録ヘッドを、それぞれの記録位置に合わせて精度良く取り付けることは困難であり、正確に取り付けるための機構が複雑なものになれば、記録装置全本体のコストアップを招くことになりかねない。
【0012】
そこで、記録ヘッドを正確に取り付けるための機構を設けることなく、ノズルの配列方向の記録位置合わせを行う方法として、記録に使用するノズル列をシフトして選択することで、それぞれの記録ヘッドの記録位置合わせを行う方法が挙げられる。
【0013】
しかしながら、このようなノズル(各ノズルはインクを吐出することで記録媒体に記録を行う要素であることから、以下、記録要素と称して説明する)の配列方向の記録位置合わせは、1記録要素単位で行われる。そのため、記録要素の配列方向のずれ量を検出して、メカニカルな調整をすることなく、記録ヘッドに展開する記録データをシフトすることで記録位置を合わせようとしても、最大で2分の1ノズル分ずれる可能性がある。この状態を図3に示す。
【0014】
図3(a)は、通常の記録に使用する5個の記録要素1〜5と、その両端に記録位置のずれを少なくするときに使用される通常の記録には使用しない記録要素4a〜4dからなる記録ヘッド41〜42を示している。また、図3(b)の記録ヘッド42は、記録に使用する記録要素列を1ノズル分図中下方向にシフトした状態を示している。図4(a)、(b)において、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42はともに、記録要素の配列方向に2分の1ノズル分ずれていることがわかる。(a)では、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42が図中上方向に2分の1ノズル分ずれており、(b)では、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42が図中下方向に2分の1ノズル分ずれている。
【0015】
図4は、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録要素により補完記録を行う構成を示している。
【0016】
図4(a)は、各記録ヘッドの記録位置のずれ量が最小になるように位置合わせを行った結果、ブラックの記録ヘッド31に対し、シアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34が2分の1ノズル分ほど図中下方向にずれている状態を示している。しかし、図4(a)の状態で補完記録を行うと、図4(b)に示すように、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を補完すべく、シアン、マゼンタ、イエローのインクが吐出されるが、ブラックの記録要素3に対応する記録位置にあるシアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録要素3が全て同じ方向に、ほぼ同じ量だけずれている。そのため、このように記録ヘッド32〜34に配列方向のずれが生じている状態で補完記録を行ったとしても、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を完全に被覆することができず、記録画像中に白いすじ状の未記録領域が発生するという欠陥が生じ、画像品位が低下してしまう。
【0017】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異常が発生した記録要素と補完記録に使用する記録要素の記録位置のずれを考慮することで、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、補完記録に使用する記録要素を決定し、良好な記録画像が得られる記録装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段を有し、前記補完記録手段は、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と前記記録位置が近接する記録要素を用いて前記補完記録を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録手段と、前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出手段と、前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段と、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録手段による補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定手段と、を有し、前記決定手段は、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と前記記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップからなり、前記補完記録ステップは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を用いて補完記録を行うことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録ステップと、前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出ステップと、前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップと、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録ステップによる補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定ステップと、からなり、前記決定ステップは、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げ説明する。
【0024】
本明細書において、「記録」(以下、「プリント」ともいう)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合をも表すものとする。
【0025】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0026】
さらに、「インク」(以下、「液体」ともいう)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様に広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、または記録媒体の加工を行う液体を表すものとする。或いは、インクの処理(例えば、記録媒体上に付与されるインク中の色剤の凝固、または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0027】
図1は、本発明の実施形態としてのインクジェット記録装置1の概略構成を示す断面図である。図1に示す本実施形態で説明するインクジェット記録装置1において、3は記録ヘッドであり、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインクを吐出する4つの記録ヘッド31〜34を有している。この記録ヘッド3は、複数のノズルを有しており、個々のノズルの先端には、インクを吐出するための吐出口が形成されている。複数の吐出口は、記録ヘッドの吐出口形成面に配列されており、吐出口列を成している。この吐出口やノズルはインクを吐出することで記録媒体に記録を行う要素であることから、以下、記録要素と称して説明する。これらの記録ヘッド31〜34は後述する制御部により駆動され、それぞれ対応する色のインク滴を吐出して、カラー記録を行う。
【0028】
シート状の記録媒体(以下、単にシートという)STは、図示しない給送部から給送され、搬送ベルト2に静電吸着されて移動しつつ、記録ヘッド3の下を通過する際に記録が行われる。搬送装置である搬送ベルト2は円環状の帯部材であって、駆動ローラ5、支持ローラ6、7、8によって張架され、回転駆動することによりシートSTを搬送するものである。本実施形態では、搬送ベルト2にシートSTを静電吸着するための導電ブラシ10が設けられている。導電ブラシ10と摺動接触することにより搬送ベルト2は給電を受け、静電吸着力が発生する。この静電吸着力により、シートSTは搬送ベルト2に吸着された状態で搬送される。
【0029】
また、読み取り部9は、記録ヘッド3で記録されたチェックパタンを読み取ることができるよう、記録ヘッド3よりもシートSTの搬送方向の下流側に設けられており、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量や、異常が発生した記録要素が存在するかを検出することができる。
【0030】
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。図1に示した要素と同一のものには、同一の符号を付してある。すなわち、31はブラックの記録ヘッド、32はシアンの記録ヘッド、33はマゼンタの記録ヘッド、34はイエローの記録ヘッド、5は搬送ベルトの駆動ローラ、9は読み取り部である。
【0031】
20は制御部であり、CPU21、プログラムを格納するROM22、記録動作の制御に必要なワーク用データを格納するRAM23、ゲートアレー24を含んでいる。このゲートアレー24は、駆動ローラ5へ駆動制御信号や、記録ヘッド3へ画像信号および制御信号などや、読み取り部9へ制御信号を、CPU21の指示に基づいて出力する。また、ゲートアレー24は、読み取り部9で読み取ったデータをCPU21の指示に基づいてRAM23へ出力する。そしてCPU21は、上記読み取り部9でチェックパタンを読み取ることにより検出された各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量、または異常が発生した記録要素の存在に基づいて、ゲートアレー24を介して記録ヘッド3へ適宜制御信号を出力する。具体的には、記録動作時にインクを吐出するタイミングをずらしたり、記録に使用する記録要素列をシフトするために、記録データをシフトすることで、各記録ヘッド31〜34の記録位置の調整を行う。さらに、異常が発生した記録要素が存在するときには、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、他の複数の記録ヘッドの記録要素を用いて補完記録を行うように調整する。この記録に使用する記録要素列をシフトしたり、補完記録に使用する記録要素を調整する方法の一例として、記録の有無を示すデータを一時記憶するための、記録ヘッドに配列される全記録要素分に対応したシフトレジスタを用いる構成が挙げられる。この構成においては、記録に使用する記録要素列の各記録要素に対応したデータをシフトレジスタへ転送する際に、記録に使用しない記録要素に対応する部分に記録を行わないデータを付加して転送し、付加するデータの量によりシフトする量を変更することができる。25はイメージメモリーであり、記録装置1の外部からゲートアレー24に入力された記録データを一時記憶する。
【0032】
本実施例では、ブラックヘッドの不良ノズルをシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の該当位置のノズルで3色を混合したいわゆるプロセスブラック(「コンポジットブラック」ともいう)で補完記録を行うよう構成されている。
【0033】
図6は、異常が発生した記録要素の存在と、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量を検出するために記録されるチェックパタンの例を示す。
【0034】
図6(a)は記録要素に異常が発生したため、不吐出となった記録要素の位置を検出するために記録されるチェックパタンの例であり、所定数の記録要素おきに順次選択された記録要素により記録を行う所定の長さの横線と、全ての記録要素により記録を行う縦線からなる。例えば、10個の記録要素おきに選択した記録要素により記録を行う横線と、全ての記録要素により記録を行う縦線とを交互に記録する。図6(a)において、横線301はブラックの記録ヘッド31の1番目と11番目の記録要素と、横線302は2番目と12番目の記録要素とによりそれぞれ記録を行い、縦線303は全ての記録要素による記録を行ったものである。このようなチェックパタンにおいて、304のように横線の抜けがある場合は、その部分に対応する記録要素が不吐出となっていることを知ることができる。
【0035】
記録媒体上に記録されたチェックパタンは、読み取り部9で読み取られ、読み取った結果から、CPU21はチェックパタンの不正部分を認識し、異常が発生した記録要素の位置を特定する。また、CPU21は、その異常が発生した記録要素の位置、例えば記録要素の番号をRAM23に記憶する。
【0036】
図6(b)は記録ヘッドの位置ずれ量を検出するために記録されるチェックパタンの例である。ここでは、ブラックとシアンの記録ヘッド31〜32の記録要素方向の記録位置のずれ量を検出するためのチェックパタンを表している。図1の装置においては、搬送される記憶媒体に対して、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、所定数の記録要素おきに等間隔で選択された記録要素により記録を行う。次に、シアンの記録ヘッド32の複数の記録要素のうち、先に記録されたブラックの記録ヘッド31の記録要素と同じ記録要素位置の記録要素や、上下に1〜3ノズルずらした記録要素により記録を行う。図6(b)において、シアンの記録ヘッド32は、ブラックの記録ヘッド31に対する記録位置のずれ量は、+1ノズル分であることを知ることができる。なお、ここで述べる記録位置とは、記録ヘッドの記録要素の配列方向に沿った記録位置である。
【0037】
記録媒体上に記録されたチェックパタンは、読み取り部9で読み取られ、読み取った結果から、CPU21は最も記録位置のずれが少ないところを認識し、特定の記録ヘッドに対する他の記録ヘッドの記録位置のずれ量を検出する。また、CPU21は、検出された各々の記録ヘッドのずれ量をRAM23に記憶する。
【0038】
図7は調整の様子を表した例の模式図であり、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド31〜34の記録要素1〜5はそれぞれ重なって記録されるべき記録データに対応している。
【0039】
図7(a)は、記録要素列すなわち記録ヘッド31〜34が正確に位置合わせされていないため、機械的なずれが生じている状態を示している。ブラックの記録ヘッド31に対する記録位置の位置ずれ量は、ノズル長(ここで、隣合う記録要素の中心間距離を1ノズル長とする)で表すとシアンの記録ヘッド32は1.4ノズル長、マゼンタ、イエローの記録ヘッド33〜34は0.4ノズル長それぞれずれているとする。ここで、ブラックの記録ヘッド31の記録位置に対して他の記録ヘッド32〜34の記録位置が、図中下向きにずれる方向を+(正)方向とする。図7(a)の状態において、記録データに基づいて各記録ヘッド31〜34から記録を行ったとしても、記録媒体上には各記録データ(図中の記録要素1〜5)は正しく重ならない。そこで、各記録ヘッド31〜34の複数の記録要素のうち、通常は使用しない記録要素として設定されている両端にあるいくつかの記録要素を用いるように、記録データを上下にシフトすることで、記録に使用する記録要素列を上下にシフトして調整し、記録ヘッド31〜34の機械的な位置ずれを少なくする。図7(a)では、通常の記録に使用する記録要素列1〜5の両端に通常は使用しない記録要素として設定されている記録要素32a、32bを1ずつ設けた例を示している。図7(b)では、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量を少なくするために、シアンの記録ヘッド32の記録に使用する記録要素列を図中上方向に1ノズルづつシフトしたことを示している。つまり、図7(b)のように記録ヘッド31〜34が設置されているときに、ブラックの記録ヘッド31に対する他の記録ヘッド32〜34はそれぞれ0.4ノズル分ずれていることになるが、ブラックの記録要素3とシアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3の記録位置が近接するため、記録要素に異常が発生していない状態における記録動作では、ブラックの記録要素3とシアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3が、記録位置が対応するものとして同じ記録位置の記録に使用される。
【0040】
具体的には、図6の(b)のようなチェックパタンを用いることで、ブラックの記録ヘッド31に対する各色の記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量を検出することができる。次に、記録位置のずれ量が少なくなるように、ブラックの記録ヘッド31に対するそれぞれの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量が−0.5〜0.5の範囲に収まるように記録に使用する記録要素列を上下にシフトする。図7(a)においては、ブラックの記録ヘッド31に対して、シアンの記録ヘッド32は1.4ノズル長ずれているため、記録に使用する記録要素列を正のシフト方向へ1ノズル分シフトする。その結果、シアンの記録ヘッド32の記録に使用する記録要素列を正の方向へ1ノズル分ずらすことで、ブラックの記録ヘッド31に対するシアンの記録ヘッド32の記録位置のずれ量が0.4ノズル長と小さくなった。また、ブラックの記録ヘッド31に対するマゼンタ、イエローの記録ヘッド33〜34の記録位置のずれ量は0.4ノズル長なので記録に使用する記録要素列のシフトは行わない。従って、実際の記録を行う記録要素列の位置は図7(b)のようになる。
【0041】
本実施例におけるプロセスブラックによる補完に関しては、イエローは色濃度がシアン、マゼンタに比べて薄いので、補完を行うように異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆してもすじが目立つことがあるため、補完記録を行う際には、シアン、マゼンタによってブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、補完記録に使用する記録要素を決定して記録を行うようにする。図7(b)において、ブラックの異常が発生した記録要素に対応するシアンとマゼンタの記録要素の位置は同じ位置にあるため、この状態で記録を行うと、図4(b)のようになり、補完記録を行ったとしても、すじが残ることになる。そこで、図8に示すように、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を完全に被覆するように、マゼンタの記録ヘッド33に配列される記録要素のうち、記録に使用する記録要素列を1ノズル分ずらして記録を行う。このように補完記録を行う際に記録に使用する記録要素を1ノズル分ずらすことで、マゼンタの記録ヘッド33について、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3と記録位置が近接する記録要素は図8(a)では記録要素4となるが、補完記録を行う際には、シアン、イエローそれぞれの補完記録に使用する記録要素3と同じ記録要素番号である記録要素3が使用される。従って、図8(a)において、マゼンタの記録ヘッド33については、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3と記録位置が近接するマゼンタの記録ヘッド33の記録要素4に隣接する記録ヘッド33の記録要素3を用いて補完記録を行うこととなる。
【0042】
具体的には、図6(a)のようなチェックパタンを用いることで、異常が発生した記録要素が存在することを検出することができる。また、図7においてブラックの記録ヘッド31の記録要素3は異常が発生していることを示しており、ブラックの異常が発生した記録要素に対する記録領域の補完記録に使用するシアン、マゼンタの記録要素のずれ方向が同じ方向の場合で、かつ、それぞれのずれ量が±0.4〜±0.5の範囲内にあるときは、図8(a)に示すように記録に使用するマゼンタの記録要素列を、シアンの記録要素のずれ方向と反対方向に1ノズル分シフトする。マゼンタの記録に使用する記録要素列を1ノズル分シフトすることにより、ブラックの異常が発生した記録要素3の記録領域の補完記録を行う記録要素は、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3となる。なお、図8(a)におけるマゼンタの記録ヘッド33の記録要素3は、図7(b)における記録要素2の位置に対応する。
【0043】
また、ここではブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するようにマゼンタの記録要素列をずらしたが、マゼンタの代わりにシアンの記録要素列をずらしてもよい。
【0044】
本制御により記録される態様を図8(b)に示す。図8(b)において、記録ヘッド31の異常が発生した記録要素aに対応する記録位置にある他の記録ヘッド32〜34の記録要素は、それぞれb、c、dである。しかし、記録要素aに対する記録要素b、cのずれの方向が同方向であるため、記録要素b、c、dにより補完記録を行うと白すじが生じる。白すじが生じないように記録要素aに対応する記録領域を被覆するような補完記録を行うために、マゼンタの記録ヘッド33の記録に使用する記録要素列を1ノズル分図中上方向にシフトすることで、記録要素eが補完記録に使用する記録要素となる。結果として、記録要素b、e、dが記録要素aの補完記録に使用される。
【0045】
以上のようにして、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素により記録できない領域を、記録ヘッド32〜34の記録要素の記録により被覆でき、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素の補完性能が向上し、良好な記録が得られる。
【0046】
なお、図8において、記録要素aに対応する記録領域を補完する際に、マゼンタの記録がシアン、イエローの記録に対して1ノズル長ずれた位置に記録されることとなるが、記録媒体上に吐出されたシアン、マゼンタ、イエローのインクがにじみ、混色となることでブラックを形成することができる。これにより、異常が発生した記録要素aに対応する記録位置にある記録要素b、c、dを用いて補完記録を行って、白すじが生じるよりも良好な記録結果を得ることができる。
【0047】
また、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素により記録できない領域を、他の記録要素の記録により被覆するときの本発明以外の方法としては、図7(b)において、ブラックの異常が発生した記録要素3に対応する位置にあるシアン、イエローそれぞれの記録要素3と、ブラックの異常が発生した記録要素3に対応する位置にあるマゼンタの記録要素3の隣に位置する記録要素2とを用いて補完記録を行う方法が挙げられる。この方法では、記録に使用する記録要素列のうち、補完記録に使用する記録要素の番号がマゼンタのみ異なり、その結果、マゼンタの記録要素列のみ補完用のデータを展開する位置を異ならせる必要がある。これに対して本発明の方法では、記録に使用する記録要素列のうち、補完記録に使用する記録要素の番号を共通にでき、補完用のデータの展開が容易となることが明らかである。
【0048】
以下に、ブラックの記録ヘッド31に対する各記録ヘッド32〜34の記録位置のずれと、プロセスブラックを行う際の補完記録を行う記録要素を調整する手順のフローチャートを図9に示す。
【0049】
まず、ブラックの記録ヘッド31に対するシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量をそれぞれ検出し、記憶する(ステップs1)。
【0050】
次に、ステップs1で記憶したブラックの記録ヘッド31に対するシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量が所定の範囲内であるか、それぞれ判定する(ステップs2)。ステップs2において、各色の記録ヘッド32〜34のずれ量が所定の範囲内でなかった場合には、記録ヘッドの機械的な位置ずれが少なくなるように記録に使用する記録要素列のシフト量を仮決定する(ステップs3)。ステップs2において、各色の記録ヘッド32〜34のずれ量が所定の範囲内であった場合には、そのまま処理を続行する。
【0051】
次に、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在しているかを検出し、位置を記憶する(ステップs4)。
【0052】
次に、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在しているか判定する(ステップs5)。ステップs5において、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在していると判定された場合には、プロセスブラックの補完を行う際に、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆できるようにシアン、マゼンタの記録要素列のシフト量を調整する(ステップs6)。ステップs5において、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在していないと判定された場合には、そのまま処理を続行する。
【0053】
次に、ステップs3において仮決定された記録位置のずれを少なくするための記録要素列のシフト量と、ステップs6において調整された異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆できるような記録要素列のシフト量から各色の記録ヘッド32〜34のシフト量を決定し、シフトする(ステップs7)。
【0054】
次に、図9のステップs6の処理手順のフローチャートを図10に示す。
【0055】
まず、ブラックの異常が発生した記録要素に対するシアン、マゼンタの補完記録に使用する記録要素の記録位置のずれ量を確認する(ステップs61)。
【0056】
次に、ブラックに対するシアン、マゼンタのずれの方向が同じか判定する(ステップs62)。このとき、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録位置のずれ量の符号が同じかを判定することで、ずれの方向が同じか判定することもできる。ステップs62において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれの方向が違う場合には、処理を終了する。
【0057】
ステップs62において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれの方向が同じ場合には、それぞれの記録位置のずれ量が所定の範囲内であるか判定する(ステップs63)。ステップs63において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれ量がともに所定の範囲内である場合には、処理を終了する。
【0058】
ステップs63において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれ量のうち、いずれかが所定の範囲内にない場合には、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量とマゼンタの記録要素のずれ量でどちらが大きいか判定する(ステップs64)。
【0059】
ステップs64において、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量がブラックに対するマゼンタの記録要素のずれ量よりも大きいと判定されたときには、シアンの補完記録に使用する記録要素列を、マゼンタの記録要素のずれ方向と反対に1ノズルづつシフトするように調整する(ステップs65)。ステップs64において、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量がブラックに対するマゼンタの記録要素のずれ量以下であると判定されたときには、マゼンタの補完記録に使用する記録要素列を、シアンの記録要素のずれ方向と反対に1ノズル分シフトするように調整する(ステップs66)。
【0060】
以上のようにして、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、シアン、マゼンタの補完記録に使用する記録要素を決定する。
【0061】
[他の実施形態]
本実施例では、補完記録を行う際の所定の記録位置のずれ量を±0.4〜±0.5としたが、この値はこれに限定されるものではなく良好な記録画像が得られる範囲で変更可能である。
【0062】
本実施例では、記録位置のずれ量に応じて記録に使用する記録要素列をシフトすることを必須要件とするものではない。記録ヘッド31〜34を精度良く設置することが可能な場合、例えば、記録位置のずれ量が0.5ノズル長未満になるように高精度に記録ヘッドを設置することが可能な場合においては、記録に使用する記録要素列をシフトする必要がある1ノズル長以上の記録位置のずれは発生しないため、記録に使用する記録要素列をシフトする必要がなくなる。この場合は、図9のステップs2〜ステップs3を省略することができる。
【0063】
また、図10のステップs63において、シアン、マゼンタの記録位置のずれ量がともに所定の範囲に入っていたならば、シアン、マゼンタの記録位置のずれ量の大きさを比較することなく、シアン、マゼンタのどちらか一方の記録に使用する記録要素をずらすように決定することもできる。この場合は、図10のステップs64を省略することができる。その結果として、ステップs65、またはステップs66のいずれかも省略することができる。
【0064】
本実施例では、異常が発生した記録要素の検出と各記録ヘッドの記録位置のずれ量の検出を読み取り部9で行ったが、チェックパタンを印刷しておいて目視で異常が発生した記録要素の特定と、各記録ヘッドの記録位置のずれ量を求めて、手動で入力してもよい。
【0065】
また、図6(a)のチェックパタンにおいて、不吐出となった記録要素の検出を行ったが、インクの着弾位置がずれる記録のよれを検出することも可能である。このとき、記録のよれによって白すじが生じた領域を被覆するように他の記録ヘッドの記録要素を用いて補完記録を行ってもよい。
【0066】
本実施例では、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を各色の記録要素を用いて補完記録を行ったが、同系色のインクタンクを複数有する記録装置においては、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を同系色の記録要素を用いて補完記録を行ってもよい。
【0067】
本実施例では、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローの記録要素を用いて補完記録を行ったが、シアン、マゼンタの2色の記録要素のみを用いて補完を行ってもよい。
【0068】
さらに、不吐出検出は、インクの飛翔を直接観測する方式であってもよいし、異常が発生した記録素子の検出、各記録ヘッドの記録位置のずれ量の検出ともチェックパタンは本実施例に限らず、様々な方式が適用可能であるのは言うまでもない。
【0069】
また、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を他の記録ヘッドの記録要素を用いて補完する記録制御を行うことにより、異常が発生した記録要素が存在する記録ヘッドを用いて記録を行うことが可能となる。そのため、記録ヘッドの製造コストを下げるために、工場出荷時に記録ヘッド内のEEPROM等の記憶装置に異常が発生した記録要素の位置データを、予め記憶させて出荷することも考えられる。このような場合は、EEPROM等に記憶してある異常が発生した記録要素の位置データを読み出して、その記録要素の位置に対応する記録領域を被覆するように他の記録ヘッドの記録要素列をシフトすることで、補完記録を行うことができるため、異常が発生した記録要素を検出するための検出手段を備えなくてもよい。
【0070】
異常が発生した記録要素の検出と、記録位置のずれ量の検出および記録位置の調整は、適宜おこなわれるものであって、記録装置のシステム構成により行われるタイミングは様々な変形がなされるのは当然であり、本発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0071】
本実施例では記録位置のずれ量を調整するのために、記録ヘッドの複数の記録要素のうち、通常は使用しない記録要素として設定されている両端にあるいくつかの記録要素を用いるように、記録データを上下にシフトすることで記録に使用する記録要素列を上下にシフトして記録するが、他の方法、例えば記録データを送り出すアドレスを変更したり、ホストから受信したデータを格納するときにアドレスを変更する等の、別の調整方式であっても本発明の範囲内である。また、補完記録を行う際のデータ作成方法は、本発明を拘束するものではないのでどんな方法であっても本発明の範囲内である。
【0072】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0073】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急激な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。
【0074】
この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0075】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0076】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0077】
さらに、記録装置が媒体の幅に対応した長さを有するフルマルチタイプの記録ヘッドだけでなく、ヘッドがスキャンするいわゆるシリアルタイプの複数記録ヘッドの組み合わせであってもよい。またヘッド構成はノズル例が複数組み合わさった複合ヘッドでも、単独ヘッドの組み合わせであってもよいし、その両方の組み合わせであっても良い。
【0078】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0079】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0080】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0081】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。
【0082】
このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0083】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0084】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0085】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0086】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明した(図9あるいは図10に示す)フローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、異常が発生した記録要素と、異常が発生した記録要素と同じ記録位置にある他の記録ヘッドの記録要素との位置ずれを考慮して、記録に使用する記録要素列をシフトして補完記録を行うことにより、異常が発生した記録要素に対応する記録領域の補完記録を行う際に、白すじの領域が少なくなる良好な記録画像が得られる記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例におけるインクジェット記録装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】正確に取り付けられていない記録ヘッドによる記録位置のずれを示す図である。
【図3】記録要素の配列方向の位置合わせを行ったときの記録位置のずれを示す図である。
【図4】記録要素の配列方向の位置合わせを行った状態で補完記録を行ったため、白すじが発生したことを示す図である。
【図5】本実施例における制御部の構成例を示すブロック図である。
【図6】欠陥ノズルと記録位置のずれのチェックパタンの一例を示す図である。
【図7】記録要素の配列方向の位置合わせを示す図である。
【図8】本実施例における白すじが発生しないような補完記録を示す図である。
【図9】本実施例における位置合わせと補完記録を行うときの記録要素列のシフト量を決定する手順のフローチャートである。
【図10】本実施例における補完記録を行うときの記録要素列のシフト量を決定する詳細な手順のフローチャートである。
【符号の説明】
ST シート
1 画像記録装置
2 搬送ベルト
3 記録ヘッド
5 駆動ローラ
6、7、8 支持ローラ
9 読み取り部
10 給電ブラシ
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の記録要素を配列された記録ヘッドを用いて、複数の記録ヘッドにより異なる色の記録を行うカラー記録装置、およびその記録方法に関し、特に、インクジェット記録装置で用いられる記録ヘッドの不具合に起因する記録不良の補完記録に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録法は、直接、記録媒体である記録紙等にインク滴を吐出してインクを付着させることにより画像を得るものである。このインクジェット記録法は、例えば電子写真法等とは異なって、記録媒体上に画像が形成されるまでに要する工程が少ないので、比較的低価格で安定した画像が得られるという特徴を有している。そのため、近年においては、インクジェット記録法を適用した記録装置が、プリンタ、FAX、複写機などの多くの出力装置に採用されてきている。
【0003】
また、インクジェット記録法は、複数の色のインクを用いてカラー画像を記録することが比較的容易であり、インクジェット記録法を適用したカラープリンタにおいて、高画質化のための改良が進められている。
【0004】
さらに、記録装置においては、高画質化とともに、高速化も重要な要素であり、インクジェット記録法においては、記録ヘッドの液滴吐出駆動周波数を増大させることや、記録ヘッドに配列されるノズル数を増加させることによる高速化が進められている。
【0005】
しかしながら、このインクジェット記録法には、記録ヘッドの微細なノズルから微小なインク滴を吐出させて記録を行うことに起因する画像記録の不安定さ(よれ;インクの着弾位置がずれる、不吐出;塵や増粘インクによる詰まり等により、インクが吐出されない)が生じ、欠陥のない画像を常に得ることが難しいという問題がある。このことは、記録用紙のほぼ全幅の長さを有する長尺ヘッドを用い、その長尺ヘッドによりライン単位で記録を行うフルマルチヘッドを使用した記録法では特に著しくなる。即ち、このような長尺ヘッドのノズル数は数千個にも及び、それに比例して欠陥ノズル(不吐出となったノズル)が発生する確率も増加してしまい、無欠陥の画像を得ることが難しかった。
【0006】
また、このような記録ヘッドを製造する観点からみると、全てのノズルが正常であることが求められていた。しかし、フルマルチヘッドのようにノズル数が数千個ともなると、記録ヘッド製造中に欠陥が発生する確率はノズル数に比例して増加し、製造の歩留りが極度に低下してしまい、記録ヘッドの製造コストを下げることが極めて困難であった。また、全てのノズルが正常である記録ヘッドを製造することができたとしても、その記録ヘッドの使用中に、ノズルに欠陥(よれ、不吐出)が発生してしまう虞がある。このような欠陥ノズルの発生は、数千個ものノズルを有する記録ヘッドを、記録する色に対応させて複数個の記録ヘッドを備えたカラーインクジェット記録装置において、無視できない問題となる。
このような欠陥ノズルが発生した問題に対し、特開平10−6488号公報には、欠陥ノズルに対応する記録データを他の記録ヘッドの正常なノズルの記録データに加えることで、補完記録を行うことが開示されている。さらに、特開2001−191510号公報には、ブラックの記録ヘッドに欠陥ノズルが発生した場合に、他の色の複数の記録ヘッドの正常なノズルを用いることで、補完記録を行うことが開示されている。
【0007】
また、インクジェット記録法において無視できない課題のひとつとして、記録位置の精度が挙げられる。すなわち、複数の記録ヘッドを備える記録装置を用いてカラー画像の記録を行う場合に、各記録ヘッドの同じ記録位置にあるノズルから吐出されるインクは、記録媒体上の同一の場所に着弾することで、カラーの画像を形成する。しかし、インクの着弾位置がずれてしまう場合には、各色ごとの記録位置が合わなくなり、画像品位が低下する。
【0008】
このような記録位置が合わない問題に対して様々な原因が考えられるが、代表的な原因として、記録ヘッドが正確に位置合わせされていないことが挙げられる。この場合に発生する記録位置のずれについて、図2を用いて説明する。図2(a)、(b)において、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクに対応した記録ヘッド31〜34を備える記録装置であり、マゼンタの記録ヘッド33が正確に位置合わせされていない場合を想定している。また、(a)は記録媒体の搬送方向に記録ヘッドがずれている場合であり、(b)はノズルの配列方向に記録ヘッドがずれている場合である。
【0009】
記録位置のずれを合わせる方法の一例としては、図2(a)に示すような搬送方向のずれは、記録ヘッドの駆動を制御することでインクの吐出タイミングを変化させる方法がある。また、図2(b)に示すようなノズルの配列方向のずれは、記録ヘッドへ展開する記録データをずれ量に対応するようにシフトすることで記録位置を合わせる方法がある。このような記録位置を合わせることをレジストレーションともいう。
【0010】
なお、記録位置を合わせる構成として、特開平10−329881号公報には、記録ヘッドの駆動タイミングを変化させたり、記録に使用するノズルを選択して記録したプリントパターンをセンサで読み取り、記録位置のずれ量を検出し、搬送方向のずれと配列方向のずれのそれぞれに対応した位置あわせを行うことが開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図2(b)に示すようなノズルの配列方向の記録ヘッドのずれに対し、記録装置内に記録ヘッドを正確な位置に取り付けるための機構を設けることも考えられるが、高密度にノズルが配列された複数の記録ヘッドを、それぞれの記録位置に合わせて精度良く取り付けることは困難であり、正確に取り付けるための機構が複雑なものになれば、記録装置全本体のコストアップを招くことになりかねない。
【0012】
そこで、記録ヘッドを正確に取り付けるための機構を設けることなく、ノズルの配列方向の記録位置合わせを行う方法として、記録に使用するノズル列をシフトして選択することで、それぞれの記録ヘッドの記録位置合わせを行う方法が挙げられる。
【0013】
しかしながら、このようなノズル(各ノズルはインクを吐出することで記録媒体に記録を行う要素であることから、以下、記録要素と称して説明する)の配列方向の記録位置合わせは、1記録要素単位で行われる。そのため、記録要素の配列方向のずれ量を検出して、メカニカルな調整をすることなく、記録ヘッドに展開する記録データをシフトすることで記録位置を合わせようとしても、最大で2分の1ノズル分ずれる可能性がある。この状態を図3に示す。
【0014】
図3(a)は、通常の記録に使用する5個の記録要素1〜5と、その両端に記録位置のずれを少なくするときに使用される通常の記録には使用しない記録要素4a〜4dからなる記録ヘッド41〜42を示している。また、図3(b)の記録ヘッド42は、記録に使用する記録要素列を1ノズル分図中下方向にシフトした状態を示している。図4(a)、(b)において、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42はともに、記録要素の配列方向に2分の1ノズル分ずれていることがわかる。(a)では、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42が図中上方向に2分の1ノズル分ずれており、(b)では、記録ヘッド41に対して記録ヘッド42が図中下方向に2分の1ノズル分ずれている。
【0015】
図4は、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録要素により補完記録を行う構成を示している。
【0016】
図4(a)は、各記録ヘッドの記録位置のずれ量が最小になるように位置合わせを行った結果、ブラックの記録ヘッド31に対し、シアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34が2分の1ノズル分ほど図中下方向にずれている状態を示している。しかし、図4(a)の状態で補完記録を行うと、図4(b)に示すように、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を補完すべく、シアン、マゼンタ、イエローのインクが吐出されるが、ブラックの記録要素3に対応する記録位置にあるシアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録要素3が全て同じ方向に、ほぼ同じ量だけずれている。そのため、このように記録ヘッド32〜34に配列方向のずれが生じている状態で補完記録を行ったとしても、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を完全に被覆することができず、記録画像中に白いすじ状の未記録領域が発生するという欠陥が生じ、画像品位が低下してしまう。
【0017】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、異常が発生した記録要素と補完記録に使用する記録要素の記録位置のずれを考慮することで、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、補完記録に使用する記録要素を決定し、良好な記録画像が得られる記録装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段を有し、前記補完記録手段は、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と前記記録位置が近接する記録要素を用いて前記補完記録を行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録手段と、前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出手段と、前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段と、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録手段による補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定手段と、を有し、前記決定手段は、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と前記記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップからなり、前記補完記録ステップは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を用いて補完記録を行うことを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録ステップと、前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出ステップと、前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップと、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録ステップによる補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定ステップと、からなり、前記決定ステップは、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0023】
なお、以下に説明する実施形態では、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げ説明する。
【0024】
本明細書において、「記録」(以下、「プリント」ともいう)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または記録媒体の加工を行う場合をも表すものとする。
【0025】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0026】
さらに、「インク」(以下、「液体」ともいう)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様に広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、または記録媒体の加工を行う液体を表すものとする。或いは、インクの処理(例えば、記録媒体上に付与されるインク中の色剤の凝固、または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0027】
図1は、本発明の実施形態としてのインクジェット記録装置1の概略構成を示す断面図である。図1に示す本実施形態で説明するインクジェット記録装置1において、3は記録ヘッドであり、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のインクを吐出する4つの記録ヘッド31〜34を有している。この記録ヘッド3は、複数のノズルを有しており、個々のノズルの先端には、インクを吐出するための吐出口が形成されている。複数の吐出口は、記録ヘッドの吐出口形成面に配列されており、吐出口列を成している。この吐出口やノズルはインクを吐出することで記録媒体に記録を行う要素であることから、以下、記録要素と称して説明する。これらの記録ヘッド31〜34は後述する制御部により駆動され、それぞれ対応する色のインク滴を吐出して、カラー記録を行う。
【0028】
シート状の記録媒体(以下、単にシートという)STは、図示しない給送部から給送され、搬送ベルト2に静電吸着されて移動しつつ、記録ヘッド3の下を通過する際に記録が行われる。搬送装置である搬送ベルト2は円環状の帯部材であって、駆動ローラ5、支持ローラ6、7、8によって張架され、回転駆動することによりシートSTを搬送するものである。本実施形態では、搬送ベルト2にシートSTを静電吸着するための導電ブラシ10が設けられている。導電ブラシ10と摺動接触することにより搬送ベルト2は給電を受け、静電吸着力が発生する。この静電吸着力により、シートSTは搬送ベルト2に吸着された状態で搬送される。
【0029】
また、読み取り部9は、記録ヘッド3で記録されたチェックパタンを読み取ることができるよう、記録ヘッド3よりもシートSTの搬送方向の下流側に設けられており、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量や、異常が発生した記録要素が存在するかを検出することができる。
【0030】
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。図1に示した要素と同一のものには、同一の符号を付してある。すなわち、31はブラックの記録ヘッド、32はシアンの記録ヘッド、33はマゼンタの記録ヘッド、34はイエローの記録ヘッド、5は搬送ベルトの駆動ローラ、9は読み取り部である。
【0031】
20は制御部であり、CPU21、プログラムを格納するROM22、記録動作の制御に必要なワーク用データを格納するRAM23、ゲートアレー24を含んでいる。このゲートアレー24は、駆動ローラ5へ駆動制御信号や、記録ヘッド3へ画像信号および制御信号などや、読み取り部9へ制御信号を、CPU21の指示に基づいて出力する。また、ゲートアレー24は、読み取り部9で読み取ったデータをCPU21の指示に基づいてRAM23へ出力する。そしてCPU21は、上記読み取り部9でチェックパタンを読み取ることにより検出された各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量、または異常が発生した記録要素の存在に基づいて、ゲートアレー24を介して記録ヘッド3へ適宜制御信号を出力する。具体的には、記録動作時にインクを吐出するタイミングをずらしたり、記録に使用する記録要素列をシフトするために、記録データをシフトすることで、各記録ヘッド31〜34の記録位置の調整を行う。さらに、異常が発生した記録要素が存在するときには、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、他の複数の記録ヘッドの記録要素を用いて補完記録を行うように調整する。この記録に使用する記録要素列をシフトしたり、補完記録に使用する記録要素を調整する方法の一例として、記録の有無を示すデータを一時記憶するための、記録ヘッドに配列される全記録要素分に対応したシフトレジスタを用いる構成が挙げられる。この構成においては、記録に使用する記録要素列の各記録要素に対応したデータをシフトレジスタへ転送する際に、記録に使用しない記録要素に対応する部分に記録を行わないデータを付加して転送し、付加するデータの量によりシフトする量を変更することができる。25はイメージメモリーであり、記録装置1の外部からゲートアレー24に入力された記録データを一時記憶する。
【0032】
本実施例では、ブラックヘッドの不良ノズルをシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の該当位置のノズルで3色を混合したいわゆるプロセスブラック(「コンポジットブラック」ともいう)で補完記録を行うよう構成されている。
【0033】
図6は、異常が発生した記録要素の存在と、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量を検出するために記録されるチェックパタンの例を示す。
【0034】
図6(a)は記録要素に異常が発生したため、不吐出となった記録要素の位置を検出するために記録されるチェックパタンの例であり、所定数の記録要素おきに順次選択された記録要素により記録を行う所定の長さの横線と、全ての記録要素により記録を行う縦線からなる。例えば、10個の記録要素おきに選択した記録要素により記録を行う横線と、全ての記録要素により記録を行う縦線とを交互に記録する。図6(a)において、横線301はブラックの記録ヘッド31の1番目と11番目の記録要素と、横線302は2番目と12番目の記録要素とによりそれぞれ記録を行い、縦線303は全ての記録要素による記録を行ったものである。このようなチェックパタンにおいて、304のように横線の抜けがある場合は、その部分に対応する記録要素が不吐出となっていることを知ることができる。
【0035】
記録媒体上に記録されたチェックパタンは、読み取り部9で読み取られ、読み取った結果から、CPU21はチェックパタンの不正部分を認識し、異常が発生した記録要素の位置を特定する。また、CPU21は、その異常が発生した記録要素の位置、例えば記録要素の番号をRAM23に記憶する。
【0036】
図6(b)は記録ヘッドの位置ずれ量を検出するために記録されるチェックパタンの例である。ここでは、ブラックとシアンの記録ヘッド31〜32の記録要素方向の記録位置のずれ量を検出するためのチェックパタンを表している。図1の装置においては、搬送される記憶媒体に対して、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、所定数の記録要素おきに等間隔で選択された記録要素により記録を行う。次に、シアンの記録ヘッド32の複数の記録要素のうち、先に記録されたブラックの記録ヘッド31の記録要素と同じ記録要素位置の記録要素や、上下に1〜3ノズルずらした記録要素により記録を行う。図6(b)において、シアンの記録ヘッド32は、ブラックの記録ヘッド31に対する記録位置のずれ量は、+1ノズル分であることを知ることができる。なお、ここで述べる記録位置とは、記録ヘッドの記録要素の配列方向に沿った記録位置である。
【0037】
記録媒体上に記録されたチェックパタンは、読み取り部9で読み取られ、読み取った結果から、CPU21は最も記録位置のずれが少ないところを認識し、特定の記録ヘッドに対する他の記録ヘッドの記録位置のずれ量を検出する。また、CPU21は、検出された各々の記録ヘッドのずれ量をRAM23に記憶する。
【0038】
図7は調整の様子を表した例の模式図であり、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド31〜34の記録要素1〜5はそれぞれ重なって記録されるべき記録データに対応している。
【0039】
図7(a)は、記録要素列すなわち記録ヘッド31〜34が正確に位置合わせされていないため、機械的なずれが生じている状態を示している。ブラックの記録ヘッド31に対する記録位置の位置ずれ量は、ノズル長(ここで、隣合う記録要素の中心間距離を1ノズル長とする)で表すとシアンの記録ヘッド32は1.4ノズル長、マゼンタ、イエローの記録ヘッド33〜34は0.4ノズル長それぞれずれているとする。ここで、ブラックの記録ヘッド31の記録位置に対して他の記録ヘッド32〜34の記録位置が、図中下向きにずれる方向を+(正)方向とする。図7(a)の状態において、記録データに基づいて各記録ヘッド31〜34から記録を行ったとしても、記録媒体上には各記録データ(図中の記録要素1〜5)は正しく重ならない。そこで、各記録ヘッド31〜34の複数の記録要素のうち、通常は使用しない記録要素として設定されている両端にあるいくつかの記録要素を用いるように、記録データを上下にシフトすることで、記録に使用する記録要素列を上下にシフトして調整し、記録ヘッド31〜34の機械的な位置ずれを少なくする。図7(a)では、通常の記録に使用する記録要素列1〜5の両端に通常は使用しない記録要素として設定されている記録要素32a、32bを1ずつ設けた例を示している。図7(b)では、各記録ヘッド31〜34の記録位置のずれ量を少なくするために、シアンの記録ヘッド32の記録に使用する記録要素列を図中上方向に1ノズルづつシフトしたことを示している。つまり、図7(b)のように記録ヘッド31〜34が設置されているときに、ブラックの記録ヘッド31に対する他の記録ヘッド32〜34はそれぞれ0.4ノズル分ずれていることになるが、ブラックの記録要素3とシアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3の記録位置が近接するため、記録要素に異常が発生していない状態における記録動作では、ブラックの記録要素3とシアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3が、記録位置が対応するものとして同じ記録位置の記録に使用される。
【0040】
具体的には、図6の(b)のようなチェックパタンを用いることで、ブラックの記録ヘッド31に対する各色の記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量を検出することができる。次に、記録位置のずれ量が少なくなるように、ブラックの記録ヘッド31に対するそれぞれの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量が−0.5〜0.5の範囲に収まるように記録に使用する記録要素列を上下にシフトする。図7(a)においては、ブラックの記録ヘッド31に対して、シアンの記録ヘッド32は1.4ノズル長ずれているため、記録に使用する記録要素列を正のシフト方向へ1ノズル分シフトする。その結果、シアンの記録ヘッド32の記録に使用する記録要素列を正の方向へ1ノズル分ずらすことで、ブラックの記録ヘッド31に対するシアンの記録ヘッド32の記録位置のずれ量が0.4ノズル長と小さくなった。また、ブラックの記録ヘッド31に対するマゼンタ、イエローの記録ヘッド33〜34の記録位置のずれ量は0.4ノズル長なので記録に使用する記録要素列のシフトは行わない。従って、実際の記録を行う記録要素列の位置は図7(b)のようになる。
【0041】
本実施例におけるプロセスブラックによる補完に関しては、イエローは色濃度がシアン、マゼンタに比べて薄いので、補完を行うように異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆してもすじが目立つことがあるため、補完記録を行う際には、シアン、マゼンタによってブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、補完記録に使用する記録要素を決定して記録を行うようにする。図7(b)において、ブラックの異常が発生した記録要素に対応するシアンとマゼンタの記録要素の位置は同じ位置にあるため、この状態で記録を行うと、図4(b)のようになり、補完記録を行ったとしても、すじが残ることになる。そこで、図8に示すように、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を完全に被覆するように、マゼンタの記録ヘッド33に配列される記録要素のうち、記録に使用する記録要素列を1ノズル分ずらして記録を行う。このように補完記録を行う際に記録に使用する記録要素を1ノズル分ずらすことで、マゼンタの記録ヘッド33について、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3と記録位置が近接する記録要素は図8(a)では記録要素4となるが、補完記録を行う際には、シアン、イエローそれぞれの補完記録に使用する記録要素3と同じ記録要素番号である記録要素3が使用される。従って、図8(a)において、マゼンタの記録ヘッド33については、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素3と記録位置が近接するマゼンタの記録ヘッド33の記録要素4に隣接する記録ヘッド33の記録要素3を用いて補完記録を行うこととなる。
【0042】
具体的には、図6(a)のようなチェックパタンを用いることで、異常が発生した記録要素が存在することを検出することができる。また、図7においてブラックの記録ヘッド31の記録要素3は異常が発生していることを示しており、ブラックの異常が発生した記録要素に対する記録領域の補完記録に使用するシアン、マゼンタの記録要素のずれ方向が同じ方向の場合で、かつ、それぞれのずれ量が±0.4〜±0.5の範囲内にあるときは、図8(a)に示すように記録に使用するマゼンタの記録要素列を、シアンの記録要素のずれ方向と反対方向に1ノズル分シフトする。マゼンタの記録に使用する記録要素列を1ノズル分シフトすることにより、ブラックの異常が発生した記録要素3の記録領域の補完記録を行う記録要素は、シアン、マゼンタ、イエローそれぞれの記録要素3となる。なお、図8(a)におけるマゼンタの記録ヘッド33の記録要素3は、図7(b)における記録要素2の位置に対応する。
【0043】
また、ここではブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するようにマゼンタの記録要素列をずらしたが、マゼンタの代わりにシアンの記録要素列をずらしてもよい。
【0044】
本制御により記録される態様を図8(b)に示す。図8(b)において、記録ヘッド31の異常が発生した記録要素aに対応する記録位置にある他の記録ヘッド32〜34の記録要素は、それぞれb、c、dである。しかし、記録要素aに対する記録要素b、cのずれの方向が同方向であるため、記録要素b、c、dにより補完記録を行うと白すじが生じる。白すじが生じないように記録要素aに対応する記録領域を被覆するような補完記録を行うために、マゼンタの記録ヘッド33の記録に使用する記録要素列を1ノズル分図中上方向にシフトすることで、記録要素eが補完記録に使用する記録要素となる。結果として、記録要素b、e、dが記録要素aの補完記録に使用される。
【0045】
以上のようにして、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素により記録できない領域を、記録ヘッド32〜34の記録要素の記録により被覆でき、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素の補完性能が向上し、良好な記録が得られる。
【0046】
なお、図8において、記録要素aに対応する記録領域を補完する際に、マゼンタの記録がシアン、イエローの記録に対して1ノズル長ずれた位置に記録されることとなるが、記録媒体上に吐出されたシアン、マゼンタ、イエローのインクがにじみ、混色となることでブラックを形成することができる。これにより、異常が発生した記録要素aに対応する記録位置にある記録要素b、c、dを用いて補完記録を行って、白すじが生じるよりも良好な記録結果を得ることができる。
【0047】
また、ブラックの記録ヘッド31の複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素により記録できない領域を、他の記録要素の記録により被覆するときの本発明以外の方法としては、図7(b)において、ブラックの異常が発生した記録要素3に対応する位置にあるシアン、イエローそれぞれの記録要素3と、ブラックの異常が発生した記録要素3に対応する位置にあるマゼンタの記録要素3の隣に位置する記録要素2とを用いて補完記録を行う方法が挙げられる。この方法では、記録に使用する記録要素列のうち、補完記録に使用する記録要素の番号がマゼンタのみ異なり、その結果、マゼンタの記録要素列のみ補完用のデータを展開する位置を異ならせる必要がある。これに対して本発明の方法では、記録に使用する記録要素列のうち、補完記録に使用する記録要素の番号を共通にでき、補完用のデータの展開が容易となることが明らかである。
【0048】
以下に、ブラックの記録ヘッド31に対する各記録ヘッド32〜34の記録位置のずれと、プロセスブラックを行う際の補完記録を行う記録要素を調整する手順のフローチャートを図9に示す。
【0049】
まず、ブラックの記録ヘッド31に対するシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量をそれぞれ検出し、記憶する(ステップs1)。
【0050】
次に、ステップs1で記憶したブラックの記録ヘッド31に対するシアン、マゼンタ、イエローの記録ヘッド32〜34の記録位置のずれ量が所定の範囲内であるか、それぞれ判定する(ステップs2)。ステップs2において、各色の記録ヘッド32〜34のずれ量が所定の範囲内でなかった場合には、記録ヘッドの機械的な位置ずれが少なくなるように記録に使用する記録要素列のシフト量を仮決定する(ステップs3)。ステップs2において、各色の記録ヘッド32〜34のずれ量が所定の範囲内であった場合には、そのまま処理を続行する。
【0051】
次に、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在しているかを検出し、位置を記憶する(ステップs4)。
【0052】
次に、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在しているか判定する(ステップs5)。ステップs5において、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在していると判定された場合には、プロセスブラックの補完を行う際に、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆できるようにシアン、マゼンタの記録要素列のシフト量を調整する(ステップs6)。ステップs5において、ブラックの記録ヘッド31に異常が発生した記録要素が存在していないと判定された場合には、そのまま処理を続行する。
【0053】
次に、ステップs3において仮決定された記録位置のずれを少なくするための記録要素列のシフト量と、ステップs6において調整された異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆できるような記録要素列のシフト量から各色の記録ヘッド32〜34のシフト量を決定し、シフトする(ステップs7)。
【0054】
次に、図9のステップs6の処理手順のフローチャートを図10に示す。
【0055】
まず、ブラックの異常が発生した記録要素に対するシアン、マゼンタの補完記録に使用する記録要素の記録位置のずれ量を確認する(ステップs61)。
【0056】
次に、ブラックに対するシアン、マゼンタのずれの方向が同じか判定する(ステップs62)。このとき、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録位置のずれ量の符号が同じかを判定することで、ずれの方向が同じか判定することもできる。ステップs62において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれの方向が違う場合には、処理を終了する。
【0057】
ステップs62において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれの方向が同じ場合には、それぞれの記録位置のずれ量が所定の範囲内であるか判定する(ステップs63)。ステップs63において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれ量がともに所定の範囲内である場合には、処理を終了する。
【0058】
ステップs63において、ブラックに対するシアン、マゼンタの記録要素のずれ量のうち、いずれかが所定の範囲内にない場合には、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量とマゼンタの記録要素のずれ量でどちらが大きいか判定する(ステップs64)。
【0059】
ステップs64において、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量がブラックに対するマゼンタの記録要素のずれ量よりも大きいと判定されたときには、シアンの補完記録に使用する記録要素列を、マゼンタの記録要素のずれ方向と反対に1ノズルづつシフトするように調整する(ステップs65)。ステップs64において、ブラックに対するシアンの記録要素のずれ量がブラックに対するマゼンタの記録要素のずれ量以下であると判定されたときには、マゼンタの補完記録に使用する記録要素列を、シアンの記録要素のずれ方向と反対に1ノズル分シフトするように調整する(ステップs66)。
【0060】
以上のようにして、ブラックの記録ヘッド31の異常が発生した記録要素に対応する記録領域を被覆するように、シアン、マゼンタの補完記録に使用する記録要素を決定する。
【0061】
[他の実施形態]
本実施例では、補完記録を行う際の所定の記録位置のずれ量を±0.4〜±0.5としたが、この値はこれに限定されるものではなく良好な記録画像が得られる範囲で変更可能である。
【0062】
本実施例では、記録位置のずれ量に応じて記録に使用する記録要素列をシフトすることを必須要件とするものではない。記録ヘッド31〜34を精度良く設置することが可能な場合、例えば、記録位置のずれ量が0.5ノズル長未満になるように高精度に記録ヘッドを設置することが可能な場合においては、記録に使用する記録要素列をシフトする必要がある1ノズル長以上の記録位置のずれは発生しないため、記録に使用する記録要素列をシフトする必要がなくなる。この場合は、図9のステップs2〜ステップs3を省略することができる。
【0063】
また、図10のステップs63において、シアン、マゼンタの記録位置のずれ量がともに所定の範囲に入っていたならば、シアン、マゼンタの記録位置のずれ量の大きさを比較することなく、シアン、マゼンタのどちらか一方の記録に使用する記録要素をずらすように決定することもできる。この場合は、図10のステップs64を省略することができる。その結果として、ステップs65、またはステップs66のいずれかも省略することができる。
【0064】
本実施例では、異常が発生した記録要素の検出と各記録ヘッドの記録位置のずれ量の検出を読み取り部9で行ったが、チェックパタンを印刷しておいて目視で異常が発生した記録要素の特定と、各記録ヘッドの記録位置のずれ量を求めて、手動で入力してもよい。
【0065】
また、図6(a)のチェックパタンにおいて、不吐出となった記録要素の検出を行ったが、インクの着弾位置がずれる記録のよれを検出することも可能である。このとき、記録のよれによって白すじが生じた領域を被覆するように他の記録ヘッドの記録要素を用いて補完記録を行ってもよい。
【0066】
本実施例では、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を各色の記録要素を用いて補完記録を行ったが、同系色のインクタンクを複数有する記録装置においては、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を同系色の記録要素を用いて補完記録を行ってもよい。
【0067】
本実施例では、ブラックの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローの記録要素を用いて補完記録を行ったが、シアン、マゼンタの2色の記録要素のみを用いて補完を行ってもよい。
【0068】
さらに、不吐出検出は、インクの飛翔を直接観測する方式であってもよいし、異常が発生した記録素子の検出、各記録ヘッドの記録位置のずれ量の検出ともチェックパタンは本実施例に限らず、様々な方式が適用可能であるのは言うまでもない。
【0069】
また、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を他の記録ヘッドの記録要素を用いて補完する記録制御を行うことにより、異常が発生した記録要素が存在する記録ヘッドを用いて記録を行うことが可能となる。そのため、記録ヘッドの製造コストを下げるために、工場出荷時に記録ヘッド内のEEPROM等の記憶装置に異常が発生した記録要素の位置データを、予め記憶させて出荷することも考えられる。このような場合は、EEPROM等に記憶してある異常が発生した記録要素の位置データを読み出して、その記録要素の位置に対応する記録領域を被覆するように他の記録ヘッドの記録要素列をシフトすることで、補完記録を行うことができるため、異常が発生した記録要素を検出するための検出手段を備えなくてもよい。
【0070】
異常が発生した記録要素の検出と、記録位置のずれ量の検出および記録位置の調整は、適宜おこなわれるものであって、記録装置のシステム構成により行われるタイミングは様々な変形がなされるのは当然であり、本発明の趣旨を逸脱するものではない。
【0071】
本実施例では記録位置のずれ量を調整するのために、記録ヘッドの複数の記録要素のうち、通常は使用しない記録要素として設定されている両端にあるいくつかの記録要素を用いるように、記録データを上下にシフトすることで記録に使用する記録要素列を上下にシフトして記録するが、他の方法、例えば記録データを送り出すアドレスを変更したり、ホストから受信したデータを格納するときにアドレスを変更する等の、別の調整方式であっても本発明の範囲内である。また、補完記録を行う際のデータ作成方法は、本発明を拘束するものではないのでどんな方法であっても本発明の範囲内である。
【0072】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0073】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急激な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。
【0074】
この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0075】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0076】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0077】
さらに、記録装置が媒体の幅に対応した長さを有するフルマルチタイプの記録ヘッドだけでなく、ヘッドがスキャンするいわゆるシリアルタイプの複数記録ヘッドの組み合わせであってもよい。またヘッド構成はノズル例が複数組み合わさった複合ヘッドでも、単独ヘッドの組み合わせであってもよいし、その両方の組み合わせであっても良い。
【0078】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0079】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0080】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0081】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。
【0082】
このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0083】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0084】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体(または記録媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0085】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0086】
本発明を上記記憶媒体に適用する場合、その記憶媒体には、先に説明した(図9あるいは図10に示す)フローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、異常が発生した記録要素と、異常が発生した記録要素と同じ記録位置にある他の記録ヘッドの記録要素との位置ずれを考慮して、記録に使用する記録要素列をシフトして補完記録を行うことにより、異常が発生した記録要素に対応する記録領域の補完記録を行う際に、白すじの領域が少なくなる良好な記録画像が得られる記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例におけるインクジェット記録装置の構成を示す概略断面図である。
【図2】正確に取り付けられていない記録ヘッドによる記録位置のずれを示す図である。
【図3】記録要素の配列方向の位置合わせを行ったときの記録位置のずれを示す図である。
【図4】記録要素の配列方向の位置合わせを行った状態で補完記録を行ったため、白すじが発生したことを示す図である。
【図5】本実施例における制御部の構成例を示すブロック図である。
【図6】欠陥ノズルと記録位置のずれのチェックパタンの一例を示す図である。
【図7】記録要素の配列方向の位置合わせを示す図である。
【図8】本実施例における白すじが発生しないような補完記録を示す図である。
【図9】本実施例における位置合わせと補完記録を行うときの記録要素列のシフト量を決定する手順のフローチャートである。
【図10】本実施例における補完記録を行うときの記録要素列のシフト量を決定する詳細な手順のフローチャートである。
【符号の説明】
ST シート
1 画像記録装置
2 搬送ベルト
3 記録ヘッド
5 駆動ローラ
6、7、8 支持ローラ
9 読み取り部
10 給電ブラシ
Claims (13)
- それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、
前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段を有し、
前記補完記録手段は、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と前記記録位置が近接する記録要素を用いて前記補完記録を行うことを特徴とする記録装置。 - 前記複数の記録ヘッドは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録色に対応し、前記補完記録手段は、ブラックの記録を行う記録ヘッドの前記異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録を行う記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、
前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録手段と、
前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出手段と、
前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録手段と、
前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録手段による補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定手段と、
を有し、
前記決定手段は、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする記録装置。 - 前記決定手段は、前記異常が発生した記録要素に対する補完記録に用いる前記複数の記録要素の配列の方向におけるずれ方向が同じであり、かつ、前記ずれ量が所定の範囲内にある場合には、前記少なくとも一つの記録ヘッドに配列される前記複数の記録要素のうち、記録に使用する前記記録要素列を前記ずれ方向と異なる方向に1記録要素分ずらすことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
- 前記決定手段は、前記異常が発生した記録要素に対する補完記録に用いる複数の記録要素の配列の方向におけるずれ方向が同じであり、かつ、前記ずれ量が所定の範囲内にある場合には、前記ずれ量の大きい方の記録要素を含む記録ヘッドの記録に使用する前記記録要素列を前記ずれ方向と異なる方向に1記録要素分ずらすことを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
- 前記複数の記録ヘッドは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録色に対応し、前記補完記録手段は、ブラックの記録を行う記録ヘッドの前記異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、シアン、マゼンタ、イエローのそれぞれの記録を行う記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行うことを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の記録装置。
- 前記複数の記録ヘッドは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録色に対応し、前記決定手段は、ブラックの記録を行う記録ヘッドの前記異常が発生した記録要素に対応する記録領域の補完記録を行うために、シアン、マゼンタの補完記録に用いるそれぞれの記録要素のうち、前記少なくとも一つの記録ヘッドの記録に使用する前記記録要素列を前記ずれ方向と異なる方向に1記録要素分ずらすことを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
- 前記複数の記録ヘッドは、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローの記録色に対応し、前記決定手段は、ブラックの記録を行う記録ヘッドの前記異常が発生した記録要素に対応する記録領域の補完記録を行うために、シアン、マゼンタの補完記録に用いるそれぞれの記録要素のうち、前記ずれ量が大きい方の記録要素を含む記録ヘッドの記録に使用する前記記録要素列を前記ずれ方向と異なる方向に1記録要素分ずらすことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
- 前記検出手段は、前記複数の記録ヘッドによって記録媒体上に記録されたパターンに基づいて、前記ずれ量を検出することを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の記録装置。
- 前記検出手段によって検出された前記ずれ量に基づいて、記録に使用する記録要素列を、前記記録ヘッドに配列される複数の記録要素の中でシフトさせるシフト手段をさらに有する請求項3乃至9のいずれか記載の記録装置。
- 前記記録ヘッドは、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする1乃至10のいずれかに記載の記録装置。
- それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記記録要素の配列方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して前記複数の記録ヘッドにより記録を行う記録装置において、
前記複数の記録ヘッドそれぞれに配列される複数の記録要素のうち、異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記異常が発生した記録要素を含む記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップからなり、
前記補完記録ステップは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記複数の記録要素の配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を用いて補完記録を行い、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を用いて補完記録を行うことを特徴とする記録方法。 - それぞれ複数の記録要素を配列した複数の記録ヘッドを用い、前記複数の記録ヘッドを前記記録要素の配列方向と直交する方向に沿って配置し、前記複数の記録ヘッドによりそれぞれ異なる色の記録を行うカラー記録装置において、
前記記録要素の配列の方向と異なる方向に相対搬送される記録媒体に対して記録を行う記録ステップと、
前記複数の記録ヘッド間の記録位置のずれ量を検出する検出ステップと、
前記複数の記録ヘッドのうち所定の記録ヘッドの異常が発生した記録要素に対応する記録領域を、前記所定の記録ヘッドを除く他の複数の記録ヘッドそれぞれに配列される記録要素を用いて補完記録を行う補完記録ステップと、
前記他の複数の記録ヘッドそれぞれの、前記補完記録ステップによる補完記録に用いる前記記録要素を、前記ずれ量に基づいて決定する決定ステップと、
からなり、
前記決定ステップは、前記他の複数の記録ヘッドそれぞれについて、配列される前記複数の記録要素のうち配列の方向における記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素を前記補完記録に用いる記録要素として決定するか、あるいは、前記他の複数の記録ヘッドのうち、少なくとも一つの記録ヘッドについては、配列される前記複数の記録要素のうち記録に使用する記録要素列を1記録要素分ずらして記録を行うことにより、前記記録位置が前記異常が発生した記録要素と近接する記録要素に隣接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とし、前記少なくとも一つの記録ヘッドを除く記録ヘッドについては、前記異常が発生した記録要素と記録位置が近接する記録要素を補完記録に用いる記録要素とするよう決定することを特徴とする記録方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002161503A JP2004009309A (ja) | 2002-06-03 | 2002-06-03 | 記録装置および方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2017029334A (ja) * | 2015-07-31 | 2017-02-09 | 株式会社Screenホールディングス | 錠剤印刷装置および錠剤印刷方法 |
-
2002
- 2002-06-03 JP JP2002161503A patent/JP2004009309A/ja not_active Withdrawn
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