JP2004009179A - 液晶配向用高分子フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】配向欠陥が極めて低減された液晶フィルムを得るための液晶配向用高分子フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって高分子フィルムのフィルム表面を研磨することにより、液晶フィルムの配向欠陥を極めて低減することができる液晶配向用高分子フィルムを製造する。
【選択図】 図1
【解決手段】高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって高分子フィルムのフィルム表面を研磨することにより、液晶フィルムの配向欠陥を極めて低減することができる液晶配向用高分子フィルムを製造する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶の配向支持基板に適した液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶物質を用いた各種表示機器の発展には目覚しいものがあり、その発展とともに、前記表示機器を構成する各種部材に要求される品質も厳しさを増している。特に、目視できるような大きさの欠陥は皆無が望まれている。
そのような中で、液晶表示装置用色補償板、液晶表示装置用視野角補償板、光学的位相差板、1/2波長板、1/4波長板、旋光性光学素子などの光学素子に使用される液晶性高分子物質からなるフィルムに見られる欠陥は、種々の原因が考えられその改良が試みられている。液晶を配向させるために使用される配向支持基板に起因する欠陥を低減させる方法として、液晶を配向させる前に行うラビング工程において、可能な限りラビング密度を高めて配向支持基板表面の平坦性を高める手法がもっぱら用いられている。この方法によれば、0.1μm以下の表層を削ることができると言われているものの、局所的な平面性が改善されるまでの効果しかなく、配向支持基板そのものに存在する凹凸は減じることができない。
【0003】
フィルム状物体の研磨方法として、特開平10−337776号公報には金属製研磨ロールにフィルムをこすりつけて研磨する方法が、特開平10−15802号公報には半導体部品等の製造工程において使われる化学的機械研磨法などの方法が例示されている。また、特開平7−37242号公報には、研磨テープを表面潤滑材層を介して被研磨物である磁気テープにこすり付ける方法が例示されている。これらの方法では、被研磨物の表面を削ることは可能であるものの、高分子フィルムの表面に存在する凹凸を研磨することによる液晶の配向欠陥の増減についての効果は何の説明も記載されていない。
【0004】
一方、配向支持基板となる高分子フィルムの製造方法からも表面の平坦性を向上させる様々な改良が試みられている。高分子フィルムの製膜法には、溶融押出法と、高分子物質を溶媒に溶解した溶液を金属等のベルト上に液膜として製膜し、次いで溶媒を蒸発させる流延法とがある。これらの製法によって作られたフィルムには、一見して異物や環境ごみに起因するような大きな凹凸はないものの目視の難しい微小凹凸は数多く存在する。これらの原因としてはフィルム成形加工工程に混入する環境ゴミよりも小さな微小ごみや高分子物質自身がゲル状になったものなどの不溶物を挙げることができる。いずれの方法においても、不溶物の除去を目的として加工工程中に濾過の工程を組み入れている。しかしながら、溶融押出法では高分子物質の溶融粘性が高く精密濾過は困難であり、また、高温による高分子物質の劣化や副反応による架橋等により再度ゲルが発生したりして、これらが原因となってフィルム表面に凹凸が形成される。また、フィルムの製膜時に行われる延伸工程における延伸ムラも表面の凹凸の一因ともなっている。
【0005】
流延法では、溶融押出法と比較して粘度が低く精密濾過が可能なため、フィルムの平面性に優れるが、製膜時に溶媒を除去乾燥・回収する工程が必須であり高速成形ができず、また少なくとも溶媒が除去されるまでの工程をクリーンルームと同等の環境内で行わないと膜面にゴミ等が付着して突起の原因となるなど、製造コストの高い工程を経るため、流延法製膜の高分子フィルムは高価なものとなる。製造コストを下げるために高濃度溶液を用いたり、高速流延を行う試みも行われているが、この方法では逆に平面性が低下するとも言われている。また、流延法製膜のフィルムにおいても乾燥などの工程上のバラツキに起因する凹凸が存在する。
また別の方法として、特開2000−34356号公報には、高分子フィルムを高温処理した時の揮発性成分を減らすことによりフィルム表面の平面性を向上する方法が例示されている。
上記のいずれの方法でも十分な平面性を有する高分子フィルム、特に液晶の配向支持基板に使用できるような高度の平面性を有する高分子フィルムは得られていない現状にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液晶の配向欠陥に起因する欠陥を著しく低減しうる液晶配向用高分子フィルムの製造方法を提供するものであり、具体的には、液晶の配向支持基板として使用する高分子フィルムの表面に存在する凹凸を広い範囲で平坦化することにより、液晶配向用高分子フィルム表面の凹凸に起因する液晶配向の欠陥を低減させるものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、液晶の配向支持基板に使用される高分子フィルムに起因する液晶フィルムの欠陥を低減する方法を鋭意検討した結果、液晶フィルムの欠陥は主に液晶配向支持基板である高分子フィルムの表面性状に起因することを突き止め、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の第1は、液晶の配向支持基板となる高分子フィルムの製造方法であって、高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって高分子フィルムのフィルム表面を研磨することを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
本発明の第2は、本発明の第1において、該高分子フィルムが、連続した長尺の高分子フィルムを配向支持基板として用いたことを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
本発明の第3は、本発明の第1において、連続したフィルム状物質上に研磨材あるいは研磨砥粒が積層した構造を有する研磨フィルムを用いることを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、液晶配向支持基板となる高分子フィルムのフィルム表面を研磨フィルムで研磨処理を施すにあたり、高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって研磨し、当該研磨によって液晶の配向支持基板として使用する高分子フィルムの表面に存在する凹凸を広い範囲で平坦化し、高分子フィルム表面の凹凸に起因する液晶配向の欠陥を低減させうることが可能な液晶配向用高分子フィルムの製造方法である。
【0010】
本発明に供される液晶の配向支持基板となる高分子フィルムは、通常、市販の高分子フィルムを用いることができ、いずれの製膜法によるものであってもよい。好ましくは、液晶性物質を溶解しうる溶媒への耐溶剤性を有するものがよく、さらには液晶性物質の配向処理を行う温度領域において収縮等の変形が小さいか、または認められないものがより好ましい。具体的には、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、各種ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコールなどからなる高分子フィルムを例示することができる。これら高分子フィルムの膜厚に制限はないが、取扱い性の観点から通常20μm〜500μm程度が好ましい。これら高分子フィルムとしては、延伸処理が施されたものを用いることもできる。
【0011】
本発明において配向支持基板となる高分子フィルムは、長尺フィルム、あるいは適当な大きさの枚葉としたものを使用することができるが、本発明においては、長尺の高分子フィルムに対して表面研磨を行うことによって、配向欠陥の発現が極めて制限された液晶フィルムを連続製造することが可能となることから長尺フィルムを用いることが好ましい。
本発明では上述の高分子フィルムに対してその表面に存在する凹凸を除去するための研磨を施す。本発明において研磨手段として用いられる研磨フィルムとしては、一般に研磨布として市販されている例えば研磨テープ、ラッピングフィルム等を適宜採用することができる。これら研磨フィルムには、連続したフィルム状の基布とその研磨面側に研磨材あるいは研磨砥粒が接着材と混合されたものが塗布、印刷あるいは含浸された積層構造を有したものもあるが、本発明においては特に当該構造によって制限をうけるものではなく、本発明の効果を得ることができる研磨フィルムであれば如何様な構造のものでも好適に使用することができる。
【0012】
研磨フィルムを構成する連続した基布としては、一般に市販されているフィルム状の形態のものであればいずれのものでも使用することができる。また当該基布は、研磨される高分子フィルムの種類、研磨フィルムの砥粒、あるいは接着材等の種類により適宜選択されるものであるが、通常、高分子系のフィルム、シート、織布、不織布、あるいは、紙等からなる基布を好適に使用することができる。本発明においては、これらの基布の中でも、基布からの発塵が多いものを使用した場合、発塵物を原因とする欠陥が増加する恐れがあることから、基布自身からの発塵の少ないものが好ましい。なかでも、ウレタン、ポリエステルなどの高分子系のフィルムやシートからなる基布が特に好ましい。連続した研磨フィルムの基布が、研磨処理工程に安定して供給され、また、巻き取られるためには、基布の伸びが小さく、また強度、弾性率が高いものが好ましい。さらに長尺の連続した研磨フィルムをリール状に巻いて実施する可能性があることから適度な柔軟性を有するものが好ましいといえる。
【0013】
基布の厚みは、研磨フィルムが安定して搬送することが可能であればいずれの厚みのものも使用することができ、通常、5μm以上1mm以下、好ましくは10μm以上800μm以下であることが望ましい。研磨される高分子フィルム(被研磨フィルム)の凹凸を平坦化するためには基布の平面性はより高いものが好ましく、基布の厚み斑として通常2μm以下、好ましくは1μm以下であることが望ましい。
【0014】
また、基布の上に付着されている砥粒は、研磨効果を有するものであれば本発明の効果を損なわない範囲において何れの材質のものも使うことができる。具体的には、被研磨フィルムの種類によって適宜選択する必要があるが、例えばダイヤモンド、アルミナ、酸化クロム、シリカ、酸化鉄、酸化セリウムなどを好適な例示として挙げることができる。また砥粒の平均粒径は、細かいものが望ましく、通常、数μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下であることが研磨後の被研磨フィルムの表面性状の点から望ましい。また当該砥粒の粒径分布は、特に制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、本発明においては当該分布は狭いものが望ましいと言える。さらに砥粒の形状も本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はされず、例えば球状、幾何学的な形状のもの等を適宜採用することができる。
【0015】
砥粒を包み込んで基布に対して接着する機能を有する接着材としては、一般に市販されている自然硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などのいずれの接着材も使用することができる。用いる接着材の種類は、研磨する高分子フィルムの種類、研磨フィルムの基布や砥粒の材質により、さらに接着材に求められる基布や砥粒との親和性のみならず研磨効率の観点で最適な硬度、強度、弾性率を有するものを適宜選択して使用することが望ましい。接着材の硬度は、砥粒の硬度以下のものが好ましく、接着強度および接着材の弾性率は研磨処理中に砥粒が当該接着材中から脱落しなければ特に制限されるものではないが、いずれも高い値の接着材を使用することが望ましいと言える。
【0016】
本発明に用いる研磨フィルムは、砥粒を含む接着材が基布上に均一に塗布されたものが望ましい。塗布する方法としては、基布の種類、砥粒の種類や接着材の種類さらに砥粒を含む接着材層の厚みにより適宜選択されるものであるが、例えば、静電塗装法、スラリーローラーコート法、グラビアオフセット法、カーテンコート法、バーコート法、ならびに、スロットコートやエクストルージョンコートなどのダイコート法などの一般に行われる塗工方法を採用することができる。砥粒を含む接着材層の厚みは、研磨の機能を害さない範囲であれば特に制限されるものではないが、研磨の均一性の観点から、通常1μm以上1mm以下、好ましくは2μm以上800μm以下であることが望ましい。さらに砥粒を含む接着材層の表面は、平坦性の高いものが望ましいが、本発明においては研磨される高分子フィルムの種類、あるいは、研磨速度の観点で、研磨の均一性を害さない範囲であれば特に制限されず、例えば一定のパターン加工したもの等も好適に使用することができる。
【0017】
本発明の研磨の方法について、図1を用いて説明する。本発明では、図1に示すように、長尺の研磨フィルムをロール状に巻いたスプールを繰り出す部分(1)、巻き取る部分(2)、さらに、研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する部分において圧力を加えるステージ(5)を備えた装置に被研磨フィルム(6)を順次送り出す方式で実施することができる。なお、図中の矢印はロールの回転方向または移動方向を示す。
ここで本発明においては、研磨フィルムと被研磨フィルムをそれぞれ非等速で送り出すとともに、ガイドロール(4)部分で両者が相対速度を持つようにして接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方フィルムの裏面側に設置したステージ(5)に挟み込んで加圧させることにより、被研磨フィルムの表面研磨を行うものである。
【0018】
本発明を実施する場合、研磨フィルムや被研磨フィルムがそれぞれ安定して搬送されることが必須要件である。そのためには、それぞれの繰り出し、巻き取りの部位において、両フィルムの接触抵抗以上の適する範囲の張力を与えながらフィルムを搬送する必要がある。具体的な張力の範囲として、研磨フィルム、被研磨フィルムそれぞれの幅1cmあたりに換算して、通常15gf以上1kgf以下、好ましくは20gf以上800gf以下である。フィルム幅1cmあたりの張力が15gf未満になるとフィルムの搬送が安定しないばかりでなく、研磨抵抗以下の張力で巻き取ることになってフィルムが搬送できなくなる恐れがある。逆に1kgfを超える張力を与えた場合、研磨部位で必要以上の力が加わって研磨されるために被研磨フィルム面に新たな欠陥起因となるキズ等が入る恐れがあり望ましくない。
【0019】
研磨フィルムおよび被研磨フィルムの搬送速度は、本発明の効果を得ることができる範囲内においては特に制限されるものではない。搬送速度として、通常、10cm/分以上300m/分以下、好ましくは20cm/分以上200m/分の搬送速度であることが望ましい。搬送速度が10cm/分未満の場合、研磨による効果は大きくなるものの生産効率が低下する恐れがあり望ましくない。また、300m/分を超えるの速度では研磨の効率が十分ではなくなる恐れがあり望ましくない。
【0020】
また本発明を実施する場合の好ましい態様としては、研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する側とは反対側となる被研磨フィルムの裏面側に、平坦性が高く、かつ剛性の高い材質のステージを設けておく。ここで本発明で言うステージとは、後に説明するガイドロールに接している研磨フィルムならびに被研磨フィルムを同時にガイドロールから加圧し、その圧力を受け止めることが可能な機能を有する部材を意味する。したがって当該機能を有する部材であればいずれの構造物でも用いることができ、一般的には、平面性が高く、かつ、剛性の高い平板、もしくは、ロール状のものを好適に用いることができる。ステージに用いられる構造物の材質は、一般的に剛性の高い金属製やセラミックス製のものが好ましい。また、ステージ表面に更に金属系材料をメッキ加工したもの、アルマイト処理したもの、あるいは、ステージが鋼材により構成されるものであれば焼入れ処理等を施して硬度を高めたもの等も好適に使用することができる。メッキ加工によりステージ表面に付与する金属系材料としては、メッキ加工可能な、硬質クロム、ニッケル、亜鉛、銅、金、銀、アルミニウム、窒化チタン、白溶合金、スズ、コバルト、スズ/コバルト合金、ニッケル/コバルト合金、亜鉛/アルミニウム/マグネシウム合金、真鍮などを例示として挙げることができる。
【0021】
また研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する側とは反対側となる研磨フィルムの裏面側には適度の硬さを有するゴム系の材料を被覆したロール等を採用することが望ましい。当該ロールの被覆材料は、一般に工業機械に使用されている当該材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、天然ゴム、NBR、ウレタンゴム、シリコーンゴム、EPDMゴム、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、フッ素樹脂系ゴムなどを例示として挙げることができる。ロールの被覆材料としてゴム系の材料を使用する場合、当該ゴム系材料の硬度は、被研磨フィルムや研磨フィルムの種類、ステージの材質、ゴムの種類により適宜選択されるものではあるが、JIS規格K7215−1986(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)で定められたA硬さ基準で通常、20〜90、好ましくは、30〜80の範囲であることが本発明では望ましい。
【0022】
また本発明では、ガイドロール側からステージ側へ加圧し研磨を行う方式であるが、この時の押し付け力(以下、線圧ということがある;単位長さ当たりの荷重)は、使用されるステージやロール等の材質、研磨フィルムや被研磨フィルムの材質等により変化するため一概には決められないが、通常、0.01g/cm〜50kg/cm、好ましくは、0.1g/cm〜30kg/cmであることが本発明では望ましい。
【0023】
本発明の説明として図1を用いて説明したが、研磨フィルム、被研磨フィルムの搬送される配置は図1の例示に制限されるものではなく、用いる研磨フィルムの種類や被研磨フィルムの種類やその他の研磨条件により、図1とは逆に、研磨フィルムと被研磨フィルムとを逆の配置にして搬送することも可能である。
【0024】
ここで本発明においては、研磨フィルムと被研磨フィルムの搬送方向が平行(順方向)、反平行(逆方向)のいずれであってもよい。研磨フィルムと被研磨フィルムを平行搬送する場合、当該両フィルムの搬送速度を異なるように研磨条件を設定する必要がある。この場合の搬送速度比は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されるものではないが、被研磨フィルムの搬送速度を1とした場合の研磨フィルムの搬送速度を、通常、0.001以上100以下(1を除く)、好ましくは0.005以上80以下(1を除く)となるように設定することが本発明では望ましい。当該速度比が大きいほど研磨効率は高くなるが、速度比が100を超えると研磨に使う研磨フィルムの搬送量が膨大なものになってしまい工業生産の観点で望ましくない。また、速度比が0.001未満では、研磨フィルムの速度が遅すぎるため研磨効率の観点で望ましいとはいえない。
【0025】
また研磨フィルムと被研磨フィルムとを反平行で搬送する場合、フィルムは対抗する方向に送られることになるが、被研磨フィルムの搬送速度を1とした場合の両者の速度の絶対値の比として、通常、0.001以上100以下、好ましくは0.005以上80以下となるように搬送速度を設定することが本発明では望ましい。反平行搬送の場合も平行搬送と同様に速度比が大きいほど研磨効率は高くなるが、当該平行搬送時と同様に速度比が100を超えると研磨に使う研磨フィルムの搬送量が膨大なものになってしまう。また、速度比が0.001未満では、研磨フィルムの速度が遅すぎるため研磨効率の観点で望ましいとはいえない。
【0026】
また本発明を実施する際、研磨フィルムの搬送装置、被研磨フィルムとなる長尺または適当な大きさの枚葉とした高分子フィルムの搬送装置、ならびに、研磨装置本体全てが空気清浄装置を備えた仕切られた部屋で行うことが、当該高分子フィルムを研磨する環境として適している。具体的には、クリーンルームの標準規格“FED−Std−209E“に基づく清浄度クラスにおいて、通常100,000以上、好ましくはクラス10,000以上、より好ましくはクラス1,000以上である環境下において実施することが望ましい。一般環境下で研磨を行うと、研磨で発生する研磨紛のみならず空気中に浮遊している塵埃が研磨フィルムと被研磨フィルムの間に挟み込まれる可能性があり、研磨後の高分子フィルム表面に欠陥起因となる新たなキズを発生させる恐れがある。
【0027】
さらに本発明を実施する際、研磨フィルムと被研磨フィルムとの接触面で静電気が発生する場合があるため、研磨する過程で同時に除電することが望ましい。除電の方法は、研磨フィルムの種類、被研磨フィルム(高分子フィルム)の種類、ならびに、上述の研磨の条件により適する方法を適宜選択して行う。一般的な方法として、研磨フィルムならびに被研磨フィルムを接地する、帯電部位の電荷を中和するように交流または直流の電荷を印加する方法、コロナ放電などにより帯電部位と対極の電荷イオンを発生させ帯電を中和する方法、軟X線を照射する方法、研磨後の帯電したフィルムをそのフィルムのガラス転移点以上融点以下の温度に加熱する方法などを挙げることができ、これらの方法のなかから適宜採用して除電することができる。
【0028】
本発明では、液晶の配向支持基板となる長尺または適当な大きさの枚葉とした高分子フィルムの表面を以上説明した方法で研磨することにより、液晶の配向時に発生する当該フィルム表面の凹凸に起因する様々な欠陥を安定して減じることが可能な液晶配向用フィルムを得ることができる。ここで液晶の配向時における欠陥起因は、特に当該フィルムの凸部の部分が大きく影響している。光学的に異常をきたし欠陥として認識されうる領域を形成可能な凸部の高さは、当該フィルム上において配向させる液晶の厚みにより異なることから一概には言えない。しかしながら、配向した液晶層の光学的性能が変化するという観点から言えば、僅か数μmオーダーの凸部によっても欠陥の原因となる可能性が高い。本発明の方法では、高分子フィルム表面に存在する凸部の高さが研磨前に対して、通常2/3以下、好ましくは1/2にすることができることから、当該フィルムを配向支持基板として用いた場合には欠陥低減を達成することができる。なお凸部の高さは3次元計測可能な光学顕微鏡あるいはレーザー顕微鏡、さらには走査型電子顕微鏡等を利用することによって測定することができる。
【0029】
本発明の方法によって表面を研磨された高分子フィルムは、当該フィルム自身が所望とする配向能を有しているのであればそのまま液晶配向用フィルムとして使用することができる。また当該フィルム自身が配向能を有しない場合には、研磨後の高分子フィルムにラビング処理を施す、また当該フィルム上に配向膜を形成し、必要に応じて当該膜にラビング処理を施す、といった方法によって液晶配向用フィルムとして使用することができる。配向膜としては、特に制限されるものではなく、例えばポリビニルアルコール、加熱処理によりポリイミド化できるような各種のポリアミック酸、ポリイミド、レシチン、各種のカルボン酸クロム錯体、シラン系カップリング材からなる膜や酸化珪素の斜方蒸着膜などを例示として挙げることができる。またラビング処理も、特に制限されるものではなく、使用するラビング布や配向支持基板となる高分子フィルムの材質等に応じて適宜条件を選定する必要がある。
【0030】
斯くして表面研磨を施した高分子フィルムを液晶配向用フィルムとして使用することにより、配向欠陥を極めて低レベルで抑制することが可能となるため、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向、コレステリック配向、チルト配向、ネマチックハイブリッド配向、ねじれネマチックハイブリッド配向、ディスコティックネマチック配向、スメクチック配向といった配向構造を有した液晶フィルムを連続した長尺のフィルムとして製造することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、液晶配向用の支持基板となる高分子フィルム表面に存在する凹凸部分を研磨することにより除去し、極めて平面性の高い表面性を有する液晶配向用フィルムを製造することができる。また当該フィルムを配向支持基板として得られる液晶フィルムは、配向支持基板に起因する欠陥が低減されることから極めて効果的であり、また長尺の液晶フィルムを製造する上において当該フィルムの生産効率等の観点からも本発明の方法は工業的メリットは大きい。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお実施例で用いた各分折法は以下のとおりである。
(1)欠陥検査
欠陥検査(個数計測)はオリンパス光学(株)製BH2偏光顕微鏡を用いて行った。
(2)研磨環境の浮遊粒子の測定
リオン株式会社製パーティクルカウンター型番KC−18を用いて測定した。同じ条件の研磨を実施している間に3回測定しその平均値をその条件における粒子数とした。
【0033】
(実施例1)
高分子フィルム(被研磨フィルム)としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(幅;450mm、厚み;100μm、長さ;500m)を図1に示す方式にて研磨処理を行った。研磨フィルムは日本ミクロコーティング社製AWA15000(幅;450mm、総厚み;32μm、基布材質;ポリエステルフィルム、砥粒;Al2O3(酸化アルミニウム)、平均粒径;0.3μm)を用いた。
PEEKフィルムと研磨フィルムは、繰出し部、巻取り部を含めてクリーンブース中に設置された研磨装置を用い、図1に示す通りに順方向研磨の配置とした。研磨時のフィルム張力は、両フィルムとも同一の22.5kgf(幅1cm当たり500gf)、搬送速度は、PEEKフィルム1m/min、研磨フィルム0.1m/minに設定した。ガイドロール(バックアップロール、外径100mm、面長600mm)は、外層にシリコーンゴム(硬度70、厚み5mm)が被覆されているもの、ステージにはステンレス製の平板(材質;SUS304、長さ;250mm、幅;600mm、表面粗度;Ra0.10μm)を用いた。ガイドロールに対し、ステージの方向へ線圧が1.0kgf/cmになるようエアシリンダーを用いて加圧した。
研磨フィルムとPEEKフィルムがガイドロールを過ぎてお互いに離れる部位に向かうようにして、除電バー(ヒューグルエレクトロニクス社製、型式;410、長さ;600mm)のエアーを吹きつけて静電気対策を行った。
【0034】
用意したPEEKフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,360,000個/m3であった。
このように研磨処理したPEEKフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、下記式(I)の液晶性高分子物質18.1g及び式(II)の液晶性高分子物質1.9gの混合物を80gのN−メチルピロリドンに溶解させた液晶性高分子物質溶液をスピンコーターを用いて塗布し、60℃のホットプレート上で30分乾燥させ、高温槽を用いて200℃30分間の熱処理後、室温下に取り出し放冷し、配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
【0035】
【化1】
【0036】
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルムを得た。
得られた液晶配向フィルムを偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に3個確認された。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、1個、0個、2個、1個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【0037】
(実施例2)
被研磨フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅;450mm、厚み;75μm、長さ;600m)を用いた以外は、実施例1に記載の条件で研磨を行った。
用意したPETフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,240,000個/m3であった
このように研磨処理したPETフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、実施例1と同様にして配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルム(液晶性高分子物質層)を得た。
得られた液晶配向フィルムは偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に1個しか確認されなかった。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、2個、1個、0個、2個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【0038】
(実施例3)
被研磨フィルムとしてポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム(幅;500mm、厚み;80μm、長さ;400m)を用い、研磨フィルムは日本ミクロコーティング社製AWA15000(幅;500mm、総厚み;32μm、基布材質;ポリエステルフィルム、砥粒;Al2O3(酸化アルミニウム)、平均粒径;0.3μm)を用いた。
PPSフィルムと研磨フィルムは、繰出し部、巻取り部を含めてクリーンブース中に設置された研磨装置を用い、図1に示す通りに順方向研磨の配置とした。研磨時のフィルム張力は、両フィルムとも同一の25.0kgf(幅1cm当たり500gf)、搬送速度は、PPSフィルム1m/min、研磨フィルム0.1m/minに設定した。ガイドロール(バックアップロール、外径100mm、面長600mm)は、外層にEPDMゴム(硬度40、厚み5mm)が被覆されているもの、ステージには直径が150mm、面長600mmの鋼鉄製のロールで表面にはハードクロムメッキが20μmの厚みで施されているものを用いた。ガイドロールに対し、ステージの方向へ線圧が4.5kgf/cmになるようエアシリンダーを用いて加圧した。
研磨フィルムとPPSフィルムがガイドロールを過ぎてお互いに離れる部位に向かうようにして、除電バー(ヒューグルエレクトロニクス社製、型式;410、長さ;600mm)のエアーを吹きつけて静電気対策を行った。
用意したPPSフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,930,000個/m3であった。
研磨の効果を確認するため、高分子フィルムの突起部分をキーエンス社製カラーレーザー顕微鏡VK−8500を用いて観察したところ、研磨前には突起高さが2.5μmのものが研磨後には約0.3μmに削れていることが確認できた。研磨前のPPSフィルム表面の顕微鏡写真を図2に、研磨後のPPSフィルム表面の顕微鏡写真を図3に示す。
【0039】
このように研磨処理したPPSフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、実施例1と同様にして、配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルム(液晶性高分子物質層)を作製した。
得られた液晶配向フィルムを偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に2個しか確認されなかった。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、1個、0個、0個、1個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の概略を示す模式図である。
【図2】研磨前のPPSフィルム表面の顕微鏡写真である。
【図3】研磨後のPPSフィルム表面の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 研磨フィルムの繰り出しスプール
2 研磨フィルムの巻き取りスプール
3 研磨フィルム
4 ガイドロール(バックアップロール)
5 ステージ
6 被研磨フィルム
7 被研磨フィルムの繰り出しスプール
8 被研磨フィルムの巻き取りスプール
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶の配向支持基板に適した液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、液晶物質を用いた各種表示機器の発展には目覚しいものがあり、その発展とともに、前記表示機器を構成する各種部材に要求される品質も厳しさを増している。特に、目視できるような大きさの欠陥は皆無が望まれている。
そのような中で、液晶表示装置用色補償板、液晶表示装置用視野角補償板、光学的位相差板、1/2波長板、1/4波長板、旋光性光学素子などの光学素子に使用される液晶性高分子物質からなるフィルムに見られる欠陥は、種々の原因が考えられその改良が試みられている。液晶を配向させるために使用される配向支持基板に起因する欠陥を低減させる方法として、液晶を配向させる前に行うラビング工程において、可能な限りラビング密度を高めて配向支持基板表面の平坦性を高める手法がもっぱら用いられている。この方法によれば、0.1μm以下の表層を削ることができると言われているものの、局所的な平面性が改善されるまでの効果しかなく、配向支持基板そのものに存在する凹凸は減じることができない。
【0003】
フィルム状物体の研磨方法として、特開平10−337776号公報には金属製研磨ロールにフィルムをこすりつけて研磨する方法が、特開平10−15802号公報には半導体部品等の製造工程において使われる化学的機械研磨法などの方法が例示されている。また、特開平7−37242号公報には、研磨テープを表面潤滑材層を介して被研磨物である磁気テープにこすり付ける方法が例示されている。これらの方法では、被研磨物の表面を削ることは可能であるものの、高分子フィルムの表面に存在する凹凸を研磨することによる液晶の配向欠陥の増減についての効果は何の説明も記載されていない。
【0004】
一方、配向支持基板となる高分子フィルムの製造方法からも表面の平坦性を向上させる様々な改良が試みられている。高分子フィルムの製膜法には、溶融押出法と、高分子物質を溶媒に溶解した溶液を金属等のベルト上に液膜として製膜し、次いで溶媒を蒸発させる流延法とがある。これらの製法によって作られたフィルムには、一見して異物や環境ごみに起因するような大きな凹凸はないものの目視の難しい微小凹凸は数多く存在する。これらの原因としてはフィルム成形加工工程に混入する環境ゴミよりも小さな微小ごみや高分子物質自身がゲル状になったものなどの不溶物を挙げることができる。いずれの方法においても、不溶物の除去を目的として加工工程中に濾過の工程を組み入れている。しかしながら、溶融押出法では高分子物質の溶融粘性が高く精密濾過は困難であり、また、高温による高分子物質の劣化や副反応による架橋等により再度ゲルが発生したりして、これらが原因となってフィルム表面に凹凸が形成される。また、フィルムの製膜時に行われる延伸工程における延伸ムラも表面の凹凸の一因ともなっている。
【0005】
流延法では、溶融押出法と比較して粘度が低く精密濾過が可能なため、フィルムの平面性に優れるが、製膜時に溶媒を除去乾燥・回収する工程が必須であり高速成形ができず、また少なくとも溶媒が除去されるまでの工程をクリーンルームと同等の環境内で行わないと膜面にゴミ等が付着して突起の原因となるなど、製造コストの高い工程を経るため、流延法製膜の高分子フィルムは高価なものとなる。製造コストを下げるために高濃度溶液を用いたり、高速流延を行う試みも行われているが、この方法では逆に平面性が低下するとも言われている。また、流延法製膜のフィルムにおいても乾燥などの工程上のバラツキに起因する凹凸が存在する。
また別の方法として、特開2000−34356号公報には、高分子フィルムを高温処理した時の揮発性成分を減らすことによりフィルム表面の平面性を向上する方法が例示されている。
上記のいずれの方法でも十分な平面性を有する高分子フィルム、特に液晶の配向支持基板に使用できるような高度の平面性を有する高分子フィルムは得られていない現状にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、液晶の配向欠陥に起因する欠陥を著しく低減しうる液晶配向用高分子フィルムの製造方法を提供するものであり、具体的には、液晶の配向支持基板として使用する高分子フィルムの表面に存在する凹凸を広い範囲で平坦化することにより、液晶配向用高分子フィルム表面の凹凸に起因する液晶配向の欠陥を低減させるものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、液晶の配向支持基板に使用される高分子フィルムに起因する液晶フィルムの欠陥を低減する方法を鋭意検討した結果、液晶フィルムの欠陥は主に液晶配向支持基板である高分子フィルムの表面性状に起因することを突き止め、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の第1は、液晶の配向支持基板となる高分子フィルムの製造方法であって、高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって高分子フィルムのフィルム表面を研磨することを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
本発明の第2は、本発明の第1において、該高分子フィルムが、連続した長尺の高分子フィルムを配向支持基板として用いたことを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
本発明の第3は、本発明の第1において、連続したフィルム状物質上に研磨材あるいは研磨砥粒が積層した構造を有する研磨フィルムを用いることを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、液晶配向支持基板となる高分子フィルムのフィルム表面を研磨フィルムで研磨処理を施すにあたり、高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって研磨し、当該研磨によって液晶の配向支持基板として使用する高分子フィルムの表面に存在する凹凸を広い範囲で平坦化し、高分子フィルム表面の凹凸に起因する液晶配向の欠陥を低減させうることが可能な液晶配向用高分子フィルムの製造方法である。
【0010】
本発明に供される液晶の配向支持基板となる高分子フィルムは、通常、市販の高分子フィルムを用いることができ、いずれの製膜法によるものであってもよい。好ましくは、液晶性物質を溶解しうる溶媒への耐溶剤性を有するものがよく、さらには液晶性物質の配向処理を行う温度領域において収縮等の変形が小さいか、または認められないものがより好ましい。具体的には、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、各種ポリエステル、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリビニルアルコールなどからなる高分子フィルムを例示することができる。これら高分子フィルムの膜厚に制限はないが、取扱い性の観点から通常20μm〜500μm程度が好ましい。これら高分子フィルムとしては、延伸処理が施されたものを用いることもできる。
【0011】
本発明において配向支持基板となる高分子フィルムは、長尺フィルム、あるいは適当な大きさの枚葉としたものを使用することができるが、本発明においては、長尺の高分子フィルムに対して表面研磨を行うことによって、配向欠陥の発現が極めて制限された液晶フィルムを連続製造することが可能となることから長尺フィルムを用いることが好ましい。
本発明では上述の高分子フィルムに対してその表面に存在する凹凸を除去するための研磨を施す。本発明において研磨手段として用いられる研磨フィルムとしては、一般に研磨布として市販されている例えば研磨テープ、ラッピングフィルム等を適宜採用することができる。これら研磨フィルムには、連続したフィルム状の基布とその研磨面側に研磨材あるいは研磨砥粒が接着材と混合されたものが塗布、印刷あるいは含浸された積層構造を有したものもあるが、本発明においては特に当該構造によって制限をうけるものではなく、本発明の効果を得ることができる研磨フィルムであれば如何様な構造のものでも好適に使用することができる。
【0012】
研磨フィルムを構成する連続した基布としては、一般に市販されているフィルム状の形態のものであればいずれのものでも使用することができる。また当該基布は、研磨される高分子フィルムの種類、研磨フィルムの砥粒、あるいは接着材等の種類により適宜選択されるものであるが、通常、高分子系のフィルム、シート、織布、不織布、あるいは、紙等からなる基布を好適に使用することができる。本発明においては、これらの基布の中でも、基布からの発塵が多いものを使用した場合、発塵物を原因とする欠陥が増加する恐れがあることから、基布自身からの発塵の少ないものが好ましい。なかでも、ウレタン、ポリエステルなどの高分子系のフィルムやシートからなる基布が特に好ましい。連続した研磨フィルムの基布が、研磨処理工程に安定して供給され、また、巻き取られるためには、基布の伸びが小さく、また強度、弾性率が高いものが好ましい。さらに長尺の連続した研磨フィルムをリール状に巻いて実施する可能性があることから適度な柔軟性を有するものが好ましいといえる。
【0013】
基布の厚みは、研磨フィルムが安定して搬送することが可能であればいずれの厚みのものも使用することができ、通常、5μm以上1mm以下、好ましくは10μm以上800μm以下であることが望ましい。研磨される高分子フィルム(被研磨フィルム)の凹凸を平坦化するためには基布の平面性はより高いものが好ましく、基布の厚み斑として通常2μm以下、好ましくは1μm以下であることが望ましい。
【0014】
また、基布の上に付着されている砥粒は、研磨効果を有するものであれば本発明の効果を損なわない範囲において何れの材質のものも使うことができる。具体的には、被研磨フィルムの種類によって適宜選択する必要があるが、例えばダイヤモンド、アルミナ、酸化クロム、シリカ、酸化鉄、酸化セリウムなどを好適な例示として挙げることができる。また砥粒の平均粒径は、細かいものが望ましく、通常、数μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下であることが研磨後の被研磨フィルムの表面性状の点から望ましい。また当該砥粒の粒径分布は、特に制限されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限されるものではないが、本発明においては当該分布は狭いものが望ましいと言える。さらに砥粒の形状も本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はされず、例えば球状、幾何学的な形状のもの等を適宜採用することができる。
【0015】
砥粒を包み込んで基布に対して接着する機能を有する接着材としては、一般に市販されている自然硬化型、熱硬化型、紫外線硬化型などのいずれの接着材も使用することができる。用いる接着材の種類は、研磨する高分子フィルムの種類、研磨フィルムの基布や砥粒の材質により、さらに接着材に求められる基布や砥粒との親和性のみならず研磨効率の観点で最適な硬度、強度、弾性率を有するものを適宜選択して使用することが望ましい。接着材の硬度は、砥粒の硬度以下のものが好ましく、接着強度および接着材の弾性率は研磨処理中に砥粒が当該接着材中から脱落しなければ特に制限されるものではないが、いずれも高い値の接着材を使用することが望ましいと言える。
【0016】
本発明に用いる研磨フィルムは、砥粒を含む接着材が基布上に均一に塗布されたものが望ましい。塗布する方法としては、基布の種類、砥粒の種類や接着材の種類さらに砥粒を含む接着材層の厚みにより適宜選択されるものであるが、例えば、静電塗装法、スラリーローラーコート法、グラビアオフセット法、カーテンコート法、バーコート法、ならびに、スロットコートやエクストルージョンコートなどのダイコート法などの一般に行われる塗工方法を採用することができる。砥粒を含む接着材層の厚みは、研磨の機能を害さない範囲であれば特に制限されるものではないが、研磨の均一性の観点から、通常1μm以上1mm以下、好ましくは2μm以上800μm以下であることが望ましい。さらに砥粒を含む接着材層の表面は、平坦性の高いものが望ましいが、本発明においては研磨される高分子フィルムの種類、あるいは、研磨速度の観点で、研磨の均一性を害さない範囲であれば特に制限されず、例えば一定のパターン加工したもの等も好適に使用することができる。
【0017】
本発明の研磨の方法について、図1を用いて説明する。本発明では、図1に示すように、長尺の研磨フィルムをロール状に巻いたスプールを繰り出す部分(1)、巻き取る部分(2)、さらに、研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する部分において圧力を加えるステージ(5)を備えた装置に被研磨フィルム(6)を順次送り出す方式で実施することができる。なお、図中の矢印はロールの回転方向または移動方向を示す。
ここで本発明においては、研磨フィルムと被研磨フィルムをそれぞれ非等速で送り出すとともに、ガイドロール(4)部分で両者が相対速度を持つようにして接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方フィルムの裏面側に設置したステージ(5)に挟み込んで加圧させることにより、被研磨フィルムの表面研磨を行うものである。
【0018】
本発明を実施する場合、研磨フィルムや被研磨フィルムがそれぞれ安定して搬送されることが必須要件である。そのためには、それぞれの繰り出し、巻き取りの部位において、両フィルムの接触抵抗以上の適する範囲の張力を与えながらフィルムを搬送する必要がある。具体的な張力の範囲として、研磨フィルム、被研磨フィルムそれぞれの幅1cmあたりに換算して、通常15gf以上1kgf以下、好ましくは20gf以上800gf以下である。フィルム幅1cmあたりの張力が15gf未満になるとフィルムの搬送が安定しないばかりでなく、研磨抵抗以下の張力で巻き取ることになってフィルムが搬送できなくなる恐れがある。逆に1kgfを超える張力を与えた場合、研磨部位で必要以上の力が加わって研磨されるために被研磨フィルム面に新たな欠陥起因となるキズ等が入る恐れがあり望ましくない。
【0019】
研磨フィルムおよび被研磨フィルムの搬送速度は、本発明の効果を得ることができる範囲内においては特に制限されるものではない。搬送速度として、通常、10cm/分以上300m/分以下、好ましくは20cm/分以上200m/分の搬送速度であることが望ましい。搬送速度が10cm/分未満の場合、研磨による効果は大きくなるものの生産効率が低下する恐れがあり望ましくない。また、300m/分を超えるの速度では研磨の効率が十分ではなくなる恐れがあり望ましくない。
【0020】
また本発明を実施する場合の好ましい態様としては、研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する側とは反対側となる被研磨フィルムの裏面側に、平坦性が高く、かつ剛性の高い材質のステージを設けておく。ここで本発明で言うステージとは、後に説明するガイドロールに接している研磨フィルムならびに被研磨フィルムを同時にガイドロールから加圧し、その圧力を受け止めることが可能な機能を有する部材を意味する。したがって当該機能を有する部材であればいずれの構造物でも用いることができ、一般的には、平面性が高く、かつ、剛性の高い平板、もしくは、ロール状のものを好適に用いることができる。ステージに用いられる構造物の材質は、一般的に剛性の高い金属製やセラミックス製のものが好ましい。また、ステージ表面に更に金属系材料をメッキ加工したもの、アルマイト処理したもの、あるいは、ステージが鋼材により構成されるものであれば焼入れ処理等を施して硬度を高めたもの等も好適に使用することができる。メッキ加工によりステージ表面に付与する金属系材料としては、メッキ加工可能な、硬質クロム、ニッケル、亜鉛、銅、金、銀、アルミニウム、窒化チタン、白溶合金、スズ、コバルト、スズ/コバルト合金、ニッケル/コバルト合金、亜鉛/アルミニウム/マグネシウム合金、真鍮などを例示として挙げることができる。
【0021】
また研磨フィルムと被研磨フィルムが接触する側とは反対側となる研磨フィルムの裏面側には適度の硬さを有するゴム系の材料を被覆したロール等を採用することが望ましい。当該ロールの被覆材料は、一般に工業機械に使用されている当該材料であれば特に制限されるものではなく、例えば、天然ゴム、NBR、ウレタンゴム、シリコーンゴム、EPDMゴム、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、フッ素樹脂系ゴムなどを例示として挙げることができる。ロールの被覆材料としてゴム系の材料を使用する場合、当該ゴム系材料の硬度は、被研磨フィルムや研磨フィルムの種類、ステージの材質、ゴムの種類により適宜選択されるものではあるが、JIS規格K7215−1986(プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法)で定められたA硬さ基準で通常、20〜90、好ましくは、30〜80の範囲であることが本発明では望ましい。
【0022】
また本発明では、ガイドロール側からステージ側へ加圧し研磨を行う方式であるが、この時の押し付け力(以下、線圧ということがある;単位長さ当たりの荷重)は、使用されるステージやロール等の材質、研磨フィルムや被研磨フィルムの材質等により変化するため一概には決められないが、通常、0.01g/cm〜50kg/cm、好ましくは、0.1g/cm〜30kg/cmであることが本発明では望ましい。
【0023】
本発明の説明として図1を用いて説明したが、研磨フィルム、被研磨フィルムの搬送される配置は図1の例示に制限されるものではなく、用いる研磨フィルムの種類や被研磨フィルムの種類やその他の研磨条件により、図1とは逆に、研磨フィルムと被研磨フィルムとを逆の配置にして搬送することも可能である。
【0024】
ここで本発明においては、研磨フィルムと被研磨フィルムの搬送方向が平行(順方向)、反平行(逆方向)のいずれであってもよい。研磨フィルムと被研磨フィルムを平行搬送する場合、当該両フィルムの搬送速度を異なるように研磨条件を設定する必要がある。この場合の搬送速度比は、本発明の効果を損なわない範囲において特に制限されるものではないが、被研磨フィルムの搬送速度を1とした場合の研磨フィルムの搬送速度を、通常、0.001以上100以下(1を除く)、好ましくは0.005以上80以下(1を除く)となるように設定することが本発明では望ましい。当該速度比が大きいほど研磨効率は高くなるが、速度比が100を超えると研磨に使う研磨フィルムの搬送量が膨大なものになってしまい工業生産の観点で望ましくない。また、速度比が0.001未満では、研磨フィルムの速度が遅すぎるため研磨効率の観点で望ましいとはいえない。
【0025】
また研磨フィルムと被研磨フィルムとを反平行で搬送する場合、フィルムは対抗する方向に送られることになるが、被研磨フィルムの搬送速度を1とした場合の両者の速度の絶対値の比として、通常、0.001以上100以下、好ましくは0.005以上80以下となるように搬送速度を設定することが本発明では望ましい。反平行搬送の場合も平行搬送と同様に速度比が大きいほど研磨効率は高くなるが、当該平行搬送時と同様に速度比が100を超えると研磨に使う研磨フィルムの搬送量が膨大なものになってしまう。また、速度比が0.001未満では、研磨フィルムの速度が遅すぎるため研磨効率の観点で望ましいとはいえない。
【0026】
また本発明を実施する際、研磨フィルムの搬送装置、被研磨フィルムとなる長尺または適当な大きさの枚葉とした高分子フィルムの搬送装置、ならびに、研磨装置本体全てが空気清浄装置を備えた仕切られた部屋で行うことが、当該高分子フィルムを研磨する環境として適している。具体的には、クリーンルームの標準規格“FED−Std−209E“に基づく清浄度クラスにおいて、通常100,000以上、好ましくはクラス10,000以上、より好ましくはクラス1,000以上である環境下において実施することが望ましい。一般環境下で研磨を行うと、研磨で発生する研磨紛のみならず空気中に浮遊している塵埃が研磨フィルムと被研磨フィルムの間に挟み込まれる可能性があり、研磨後の高分子フィルム表面に欠陥起因となる新たなキズを発生させる恐れがある。
【0027】
さらに本発明を実施する際、研磨フィルムと被研磨フィルムとの接触面で静電気が発生する場合があるため、研磨する過程で同時に除電することが望ましい。除電の方法は、研磨フィルムの種類、被研磨フィルム(高分子フィルム)の種類、ならびに、上述の研磨の条件により適する方法を適宜選択して行う。一般的な方法として、研磨フィルムならびに被研磨フィルムを接地する、帯電部位の電荷を中和するように交流または直流の電荷を印加する方法、コロナ放電などにより帯電部位と対極の電荷イオンを発生させ帯電を中和する方法、軟X線を照射する方法、研磨後の帯電したフィルムをそのフィルムのガラス転移点以上融点以下の温度に加熱する方法などを挙げることができ、これらの方法のなかから適宜採用して除電することができる。
【0028】
本発明では、液晶の配向支持基板となる長尺または適当な大きさの枚葉とした高分子フィルムの表面を以上説明した方法で研磨することにより、液晶の配向時に発生する当該フィルム表面の凹凸に起因する様々な欠陥を安定して減じることが可能な液晶配向用フィルムを得ることができる。ここで液晶の配向時における欠陥起因は、特に当該フィルムの凸部の部分が大きく影響している。光学的に異常をきたし欠陥として認識されうる領域を形成可能な凸部の高さは、当該フィルム上において配向させる液晶の厚みにより異なることから一概には言えない。しかしながら、配向した液晶層の光学的性能が変化するという観点から言えば、僅か数μmオーダーの凸部によっても欠陥の原因となる可能性が高い。本発明の方法では、高分子フィルム表面に存在する凸部の高さが研磨前に対して、通常2/3以下、好ましくは1/2にすることができることから、当該フィルムを配向支持基板として用いた場合には欠陥低減を達成することができる。なお凸部の高さは3次元計測可能な光学顕微鏡あるいはレーザー顕微鏡、さらには走査型電子顕微鏡等を利用することによって測定することができる。
【0029】
本発明の方法によって表面を研磨された高分子フィルムは、当該フィルム自身が所望とする配向能を有しているのであればそのまま液晶配向用フィルムとして使用することができる。また当該フィルム自身が配向能を有しない場合には、研磨後の高分子フィルムにラビング処理を施す、また当該フィルム上に配向膜を形成し、必要に応じて当該膜にラビング処理を施す、といった方法によって液晶配向用フィルムとして使用することができる。配向膜としては、特に制限されるものではなく、例えばポリビニルアルコール、加熱処理によりポリイミド化できるような各種のポリアミック酸、ポリイミド、レシチン、各種のカルボン酸クロム錯体、シラン系カップリング材からなる膜や酸化珪素の斜方蒸着膜などを例示として挙げることができる。またラビング処理も、特に制限されるものではなく、使用するラビング布や配向支持基板となる高分子フィルムの材質等に応じて適宜条件を選定する必要がある。
【0030】
斯くして表面研磨を施した高分子フィルムを液晶配向用フィルムとして使用することにより、配向欠陥を極めて低レベルで抑制することが可能となるため、例えばネマチック配向、ねじれネマチック配向、コレステリック配向、チルト配向、ネマチックハイブリッド配向、ねじれネマチックハイブリッド配向、ディスコティックネマチック配向、スメクチック配向といった配向構造を有した液晶フィルムを連続した長尺のフィルムとして製造することが可能となる。
【0031】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、液晶配向用の支持基板となる高分子フィルム表面に存在する凹凸部分を研磨することにより除去し、極めて平面性の高い表面性を有する液晶配向用フィルムを製造することができる。また当該フィルムを配向支持基板として得られる液晶フィルムは、配向支持基板に起因する欠陥が低減されることから極めて効果的であり、また長尺の液晶フィルムを製造する上において当該フィルムの生産効率等の観点からも本発明の方法は工業的メリットは大きい。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお実施例で用いた各分折法は以下のとおりである。
(1)欠陥検査
欠陥検査(個数計測)はオリンパス光学(株)製BH2偏光顕微鏡を用いて行った。
(2)研磨環境の浮遊粒子の測定
リオン株式会社製パーティクルカウンター型番KC−18を用いて測定した。同じ条件の研磨を実施している間に3回測定しその平均値をその条件における粒子数とした。
【0033】
(実施例1)
高分子フィルム(被研磨フィルム)としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)フィルム(幅;450mm、厚み;100μm、長さ;500m)を図1に示す方式にて研磨処理を行った。研磨フィルムは日本ミクロコーティング社製AWA15000(幅;450mm、総厚み;32μm、基布材質;ポリエステルフィルム、砥粒;Al2O3(酸化アルミニウム)、平均粒径;0.3μm)を用いた。
PEEKフィルムと研磨フィルムは、繰出し部、巻取り部を含めてクリーンブース中に設置された研磨装置を用い、図1に示す通りに順方向研磨の配置とした。研磨時のフィルム張力は、両フィルムとも同一の22.5kgf(幅1cm当たり500gf)、搬送速度は、PEEKフィルム1m/min、研磨フィルム0.1m/minに設定した。ガイドロール(バックアップロール、外径100mm、面長600mm)は、外層にシリコーンゴム(硬度70、厚み5mm)が被覆されているもの、ステージにはステンレス製の平板(材質;SUS304、長さ;250mm、幅;600mm、表面粗度;Ra0.10μm)を用いた。ガイドロールに対し、ステージの方向へ線圧が1.0kgf/cmになるようエアシリンダーを用いて加圧した。
研磨フィルムとPEEKフィルムがガイドロールを過ぎてお互いに離れる部位に向かうようにして、除電バー(ヒューグルエレクトロニクス社製、型式;410、長さ;600mm)のエアーを吹きつけて静電気対策を行った。
【0034】
用意したPEEKフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,360,000個/m3であった。
このように研磨処理したPEEKフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、下記式(I)の液晶性高分子物質18.1g及び式(II)の液晶性高分子物質1.9gの混合物を80gのN−メチルピロリドンに溶解させた液晶性高分子物質溶液をスピンコーターを用いて塗布し、60℃のホットプレート上で30分乾燥させ、高温槽を用いて200℃30分間の熱処理後、室温下に取り出し放冷し、配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
【0035】
【化1】
【0036】
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルムを得た。
得られた液晶配向フィルムを偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に3個確認された。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、1個、0個、2個、1個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【0037】
(実施例2)
被研磨フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(幅;450mm、厚み;75μm、長さ;600m)を用いた以外は、実施例1に記載の条件で研磨を行った。
用意したPETフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,240,000個/m3であった
このように研磨処理したPETフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、実施例1と同様にして配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルム(液晶性高分子物質層)を得た。
得られた液晶配向フィルムは偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に1個しか確認されなかった。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、2個、1個、0個、2個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【0038】
(実施例3)
被研磨フィルムとしてポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム(幅;500mm、厚み;80μm、長さ;400m)を用い、研磨フィルムは日本ミクロコーティング社製AWA15000(幅;500mm、総厚み;32μm、基布材質;ポリエステルフィルム、砥粒;Al2O3(酸化アルミニウム)、平均粒径;0.3μm)を用いた。
PPSフィルムと研磨フィルムは、繰出し部、巻取り部を含めてクリーンブース中に設置された研磨装置を用い、図1に示す通りに順方向研磨の配置とした。研磨時のフィルム張力は、両フィルムとも同一の25.0kgf(幅1cm当たり500gf)、搬送速度は、PPSフィルム1m/min、研磨フィルム0.1m/minに設定した。ガイドロール(バックアップロール、外径100mm、面長600mm)は、外層にEPDMゴム(硬度40、厚み5mm)が被覆されているもの、ステージには直径が150mm、面長600mmの鋼鉄製のロールで表面にはハードクロムメッキが20μmの厚みで施されているものを用いた。ガイドロールに対し、ステージの方向へ線圧が4.5kgf/cmになるようエアシリンダーを用いて加圧した。
研磨フィルムとPPSフィルムがガイドロールを過ぎてお互いに離れる部位に向かうようにして、除電バー(ヒューグルエレクトロニクス社製、型式;410、長さ;600mm)のエアーを吹きつけて静電気対策を行った。
用意したPPSフィルム全長にわたり同一条件で研磨を実施した。途中、フィルムの“たるみ”や“よれ”のない安定した研磨が行えた。このときガイドロール横に設置したパーティクルカウンターの測定値は、0.5μm以上粒子数で1,930,000個/m3であった。
研磨の効果を確認するため、高分子フィルムの突起部分をキーエンス社製カラーレーザー顕微鏡VK−8500を用いて観察したところ、研磨前には突起高さが2.5μmのものが研磨後には約0.3μmに削れていることが確認できた。研磨前のPPSフィルム表面の顕微鏡写真を図2に、研磨後のPPSフィルム表面の顕微鏡写真を図3に示す。
【0039】
このように研磨処理したPPSフィルムを、長さ10cm、幅10cmに切り出して、実施例1と同様にして、配向した液晶性高分子物質層を有するフィルムを得た。
このフィルムから液晶性高分子物質層のみを、紫外線硬化型接着剤UV−3400(東亞合成(株)製)を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルムへ転写し液晶配向フィルム(液晶性高分子物質層)を作製した。
得られた液晶配向フィルムを偏光顕微鏡により観察したところ配向が完全であることが確認された。更に、50μm以上の輝点として確認される液晶配向欠陥の数を数えたところ、10cm角のフィルム中に2個しか確認されなかった。
同様の実験を4回繰り返し、欠陥部を数えたところ、各々、1個、0個、0個、1個しか欠陥は発生していないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の概略を示す模式図である。
【図2】研磨前のPPSフィルム表面の顕微鏡写真である。
【図3】研磨後のPPSフィルム表面の顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 研磨フィルムの繰り出しスプール
2 研磨フィルムの巻き取りスプール
3 研磨フィルム
4 ガイドロール(バックアップロール)
5 ステージ
6 被研磨フィルム
7 被研磨フィルムの繰り出しスプール
8 被研磨フィルムの巻き取りスプール
Claims (3)
- 液晶の配向支持基板となる高分子フィルムの製造方法であって、高分子フィルムおよび研磨フィルムを非等速で送り出し、ガイドロール上で両フィルムが相対速度を持つように接触させると共に、接触に際し、少なくとも一方のフィルム裏面側に設置されたステージに加圧されることによって高分子フィルムのフィルム表面を研磨することを特徴とする液晶配向用高分子フィルムの製造方法。
- 高分子フィルムが、連続した長尺の高分子フィルムであることを特徴とする請求項1記載の液晶配向用高分子フィルムの製造方法。
- 連続したフィルム状物質上に研磨材あるいは研磨砥粒が積層した構造を有する研磨フィルムを用いることを特徴とする請求項1記載の液晶配向用高分子フィルムの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002164107A JP2004009179A (ja) | 2002-06-05 | 2002-06-05 | 液晶配向用高分子フィルムの製造方法 |
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Family Applications (1)
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JP2002164107A Pending JP2004009179A (ja) | 2002-06-05 | 2002-06-05 | 液晶配向用高分子フィルムの製造方法 |
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- 2002-06-05 JP JP2002164107A patent/JP2004009179A/ja active Pending
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