JP2004008908A - 流体中の所定成分の濃度変化予測方法及び反応速度解析法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高価な機器を用いることなく反応メカニズムの検証等を行なうことができる反応速度解析の手法を確立する。
【解決手段】排ガスの成分濃度が触媒1との接触によって変化する反応モデルを設定し、このモデルの各段階(拡散、化学反応)の速度式を作成し、この速度式に基づいて上記成分濃度の変化を表す特性式に求め、所定の条件でリグテストを行なって上記成分濃度の変化を求め、上記特性式中の各因子(活性化エネルギー、頻度因子、拡散係数)の値を変化させてリグテスト結果を再現することができる値を探索し、上記特性式によって上記リグテスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定する。
【選択図】 図1
【解決手段】排ガスの成分濃度が触媒1との接触によって変化する反応モデルを設定し、このモデルの各段階(拡散、化学反応)の速度式を作成し、この速度式に基づいて上記成分濃度の変化を表す特性式に求め、所定の条件でリグテストを行なって上記成分濃度の変化を求め、上記特性式中の各因子(活性化エネルギー、頻度因子、拡散係数)の値を変化させてリグテスト結果を再現することができる値を探索し、上記特性式によって上記リグテスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体中の所定成分の濃度変化予測方法及び反応速度解析法に関し、より具体的には、流体中の所定成分が、所定材料を担持した担体、例えば触媒に接触しながら流れていったときの該流体中の所定成分の濃度変化を予測する方法及び複合反応の反応速度解析法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に触媒材料の研究開発は、「触媒の設計」→「触媒の試作」→「触媒の性能評価」→「解析」→「改良案の画策」→「触媒の再設計」というサイクルで進められている。この場合、触媒に関わる現象(材料の劣化や触媒反応等)を解明し的確な改良案を生み出していくための解析が重要である。
【0003】
触媒に関わる解析技術としては材料分析がある。例えば、ICP発光分光分析、XRF(蛍光X線分析)等を用いて触媒の元素組成を調べたり(化学組成分析)、XRD(X線回折)、XPS(X線光電子分光法)、EPMA(X線マイクロアナラザー)等を用いて触媒の化合物組成や元素の化学的結合状態を調べること(状態分析)が行なわれている。
【0004】
また、触媒反応の解析も試みられている。例えば、IR(赤外分光分析)、EXAFS(X線吸収端微細構造)等を用いたその場解析が行なわれている。また、反応速度解析も行なわれている。例えば、触媒学会発行の「触媒」1999 Vol.41 No.1の43〜46頁には、排気ガス組成のモデルガスを用いて化学等量点における触媒の反応速度を測定し、HCの浄化は見掛け上一次反応であること、触媒に対する熱処理の前後においてHC反応の活性化エネルギーは殆ど変化せず、頻度因子の減少として観測されること、並びにこの頻度因子の減少から触媒の劣化は貴金属粒子の表面積の減少として理解できることを見いだした旨が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記材料分析は、触媒材料自体の変化をとらえるのに非常に有効であるが、化学反応自体を観察・解析することができず、従って、触媒反応の制御技術に結び付けることも難しい。
【0006】
上記反応解析のうちその場解析は、反応を直接観察することができるが、一般的には高価な分析機器が必要になる。一方、上記反応速度解析は、化学反応の原料系と生成系の変化を定量的に理論ベースで解析することにより、反応のメカニズムを明らかにするものであるが、マイクロリアクタのような簡素な反応系にしか適用されていない。
【0007】
また、これまでの反応メカニズムの検討は、表面的なリグテストの結果と材料分析結果とに基づいて行なわれているが、定性的な推定に止まっており、実質的な検証は困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、高価な機器を用いることなく、より複雑な反応系にも適用することができる反応速度解析の手法を確立することを課題とする。そして、その手法の確立により、反応メカニズムの検証、律速段階の特定、反応条件を変更したときの効果の見積り等を容易に行なうことができるようにするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定成分を含む流体が担体に接触しながら移動するときの該所定成分の濃度変化量をとらえ、該流体が担体に接触しながら流れていったときの該所定成分の濃度変化を予測することができるようにした。
【0010】
まず、請求項1に係る発明は、所定成分が含まれる流体が所定材料を担持した担体に接触しながら流れていったときの該流体中の所定成分の濃度変化を予測する方法であって、
上記流体と上記担体との接触によって上記所定成分の濃度が変化するモデルを設定するステップと、
上記モデルに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動するときの上記所定成分の濃度変化を表す速度式を作成するステップと、
上記速度式に基づいて、上記担体上での上記流体流れ方向における上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0011】
すなわち、所定成分の濃度変化のモデルの設定は、該所定成分の濃度変化を予測するための前提となる事項である。このモデルは、既に実証されている場合にはそれを用い、そうでない場合には、仮説を立て、それを後述する手法で検証して用いることになる。
【0012】
流体が担体に接触しながら流れていき、その過程で該流体中の所定成分の濃度が変化していく場合、その濃度には該流体が担体に接触しながら移動した距離が関係する。そこで、本発明では、流体が担体に接触しながら単位距離移動するときの所定成分の濃度変化を表す速度式を作成し、この速度式に基づいて、当該担体上での流体流れ方向における上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、これに基づいて所定条件での上記所定成分の濃度変化、或いは条件を変更したときの上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたものである。
【0013】
すなわち、上記位置・濃度特性に基づいて、流体が担体に接触しながら該担体を通過したときの上記所定成分の濃度変化率を求めることができ、例えば、担体の長さを変更したときの所定成分の濃度変化に与える影響を定量的に見積もることができる。
【0014】
また、上記濃度変化の速度定数が上記位置・濃度特性に反映されるから、各因子(例えば、所定成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記所定成分の濃度変化に与える影響を見積もることができる。よって、その見積りから、上記所定成分に所望の濃度変化をさせるためにはどの因子を変更すれば良いか、また、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0015】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中に、上記所定成分として、互いに化学反応する2種の成分A及びBが含まれ、
上記速度式には、上記成分Aと成分Bとの反応速度式が含まれていることを特徴とする。
【0016】
従って、上記担体上で化学反応を生ずるときの上記成分A又は成分Bの濃度変化を予測することができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体は気体であり、上記担体には上記所定材料としての触媒成分を含む多孔質層が形成されており、
上記速度式は、上記所定成分が上記多孔質層に拡散して捕捉されるときの拡散速度式と、この捕捉された所定成分が化学反応するときの反応速度式とを含むことを特徴とする。
【0018】
従って、触媒反応における反応物質の濃度変化を予測することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中には、上記所定成分として、上記担体との接触によって物理的性質がA状態からB状態に且つ該A状態とB状態との濃度差に応じて変化する変態成分を含み、
上記速度式は、上記変態成分の状態変化速度式を含むことを特徴とする。
【0020】
従って、上記担体上で所定成分の物理的な状態変化、例えば吸着を生ずるときの該所定成分の濃度変化を予測することができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
さらに、上記位置・濃度特性とアーレニウス式とに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動したときの上記所定成分の濃度変化率の温度による変化を表す温度・濃度変化率特性を求めるステップを備え、
上記温度・濃度変化率特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0022】
すなわち、アーレニウス式は、化学反応の速度定数の温度による変化を表すものであるから、これを用いて、温度が変化したときに上記所定成分の濃度変化の進み具合がどのように変わるかがわかり、反応条件を変更したときの濃度変化率を見積もる上で有利になる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、さらに、
所定の条件でテストを行なって上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、上記速度式の速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0024】
すなわち、上記所定成分の濃度変化の予測を行なうには、上記モデルの妥当性が前提になる。しかし、触媒反応については、その反応機構が解明されていないことが多い。そこで、本発明ではモデル検証ステップを設けたものである。
【0025】
具体的に説明すると、まず、上記位置・濃度特性は、上記速度式の速度定数により変化する。この定数に含まれる各因子を変化させて特定の値を与えたときに、その位置・濃度特性がテスト結果と一致すれば、その位置・濃度特性の元になった当該モデルは妥当であるということになる。
【0026】
請求項7に係る発明は、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)及びO2を含む排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなる三元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC、CO及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HC、CO、NOx及びO2各々が上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHC、CO、NOx及びO2が互いに化学反応する、というモデルに基づいて、上記HC、CO、NOx及びO2各々の拡散速度式、並びに各化学反応速度式を作成するステップと、
上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の、上記三元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0027】
従って、三元触媒によって排気ガスを浄化するときの、HC、CO及びNOxの浄化率を予測することができ、また、条件を変更したとき、つまり、拡散速度式及び反応速度式の各因子(例えば、排気成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記HC、CO及びNOxの浄化に与える影響を見積もることができ、その見積りから、浄化率を高めるにはどの因子を変更すれば良いか、そして、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、触媒条件、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0028】
請求項8に係る発明は、HC、NOx及びO2を含み且つO2がHC及びNOxに比べて過剰に含まれる排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなるNOx還元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HCが上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHCと上記排気ガス中のO2とが反応してHCの反応中間体HC’が生成し、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のNOxとが反応してNOxが還元され、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のO2とが反応して該反応中間体HC’が酸化される、というモデルに基づいて、上記排気ガスが上記NOx還元触媒に接触しながら移動するときの上記HCの拡散速度式、並びに上記反応中間体HC’の生成、上記NOxの還元、及び上記反応中間体HC’の酸化の各反応速度式を作成するステップと、上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC及びNOx各々の、上記NOx還元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0029】
従って、NOx還元触媒によって排気ガスを浄化するときのNOx浄化率を予測することができ、また、条件を変更したとき、つまり、拡散速度式及び反応速度式の各因子(例えば、排気成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記NOx浄化率に与える影響を見積もることができ、その見積りから、浄化率を高めるにはどの因子を変更すれば良いか、そして、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、触媒条件、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0030】
請求項9に係る発明は、所定成分が含まれる流体を触媒に接触させたとき、複数の反応が関与して最終生成物が得られる場合の反応速度解析方法であって、
上記各反応の速度式に基づいて上記所定成分の濃度変化特性を求めるステップと、
上記触媒中の所定材料の量を変化させた複数のテストを行なって、各材料量での上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、
上記各テスト結果について、上記各反応の速度定数に含まれている各因子の値を変化させて、上記濃度変化特性に基づく上記所定成分の濃度変化と当該テスト結果とが一致する値を探索するステップと、
上記テスト結果に一致させるための数値が各テストで異なる数値になった因子を上記所定材料の量が関与する因子であると特定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0031】
すなわち、触媒の改善にあたっては、例えば活性種の種類や量を変化させて所定成分の濃度変化にどのような影響が出るかが調べられている。しかし、従来は、複合反応のどの素反応に当該活性種が働いているかがわかっていないことが多く、そのため、触媒の改善は試行錯誤によって進められているのが実情である。
【0032】
そこで、本発明は、そのような触媒を構成する各材料が複合反応のどの素反応に働いているかを特定できるようにしたものである。
【0033】
具体的に説明すると、各反応の速度式を反映させた所定成分の濃度変化特性には、各素反応速度式の速度定数に含まれている各因子(頻度因子や活性化エネルギー)の項が含まれている。所定の反応条件でテストを行なった場合、上記反応モデルに妥当性があれば、上記濃度変化特性に含まれる各因子の値を操作することにより、当該テスト結果を再現することができる。
【0034】
一方、触媒中の所定材料の量を変化させた場合、その所定材料が当該触媒反応に関与しているならば、いずれかの素反応のいずれかの因子の値が変化することになる。
【0035】
従って、上記所定材料の量を変化させて複数のテストを行ない、上記濃度変化特性の各因子の値を適宜変更して各テスト結果を再現していったとき、上記所定材料の量が関与する因子の値のみの変更で(他の因子の値は一定で)全てのリグテスト結果を再現できる、という理屈が成り立つ。
【0036】
そこで、本発明では、各リグテスト結果に一致するように上記濃度変化特性の各因子を操作し、各因子のうち、各リグテスト結果に一致させるために数値が変動しているものを当該所定材料が影響を与える因子と特定するようにしたものである。
【0037】
このように、本発明によれば、触媒を構成する各材料が関与する素反応を特定することができ、例えば、ある素反応の活性化エネルギーを低下させるには触媒のどの材料の種類を変更すればよいか、あるいは当該素反応の頻度因子を大きくする(活性点を多くする)にはどの材料の量を多くすればよいかの方策を立てる上で有利になる。
【0038】
請求項10に係る発明は、複合反応の反応速度解析方法であって、
反応物質が複数の素反応によって最終生成物になる反応モデルを設定するステップと、
上記反応モデルに基づいて上記複数の素反応各々の速度定数を反映させた上記反応物質の濃度変化特性を求めるステップと、
所定の条件で上記複合反応のテストを行なって、上記反応物質の濃度変化を求めるステップと、
上記各速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ、上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0039】
すなわち、各素反応の速度式を反映させた反応物質の濃度変化特性には、各素反応速度式の速度定数に含まれている各因子(頻度因子や活性化エネルギー)の項が含まれている。所定の反応条件でテストを行なった場合、上記反応モデルに妥当性があれば、上記濃度変化特性に含まれる各因子の値を操作することにより、当該テスト結果を再現することができる。従って、各因子の値の操作によって当該再現をすることができたときに、当該反応モデルが妥当であると判定するようにしたものである。
【0040】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、流体と担体との接触によって該流体中の所定成分の濃度が変化するモデルを設定し、このモデルに基づいて、流体が担体に接触しながら移動するときの上記所定成分の濃度変化量を表す速度式を作成し、この速度式に基づいて、上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたから、担体長さ、所定成分の初期濃度など条件を変化させたときの上記所定成分の濃度変化に与える影響を見積もることができ、また、上記所定成分に所望の濃度変化をさせるためにはどの因子を変更すれば良いか、また、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、濃度変化条件の改善案の構築が容易になる。
【0041】
請求項2に係る発明によれば、請求項1において、上記流体中に互いに化学反応する2種の成分A及びBが含まれ、上記速度式には、上記成分Aと成分Bとの反応速度式が含まれているから、担体上で化学反応を生ずるときの上記成分A又は成分Bの濃度変化を予測することができる。
【0042】
請求項3に係る発明によれば、請求項1において、上記流体は気体であり、上記担体には触媒成分を含む多孔質層が形成されており、上記速度式は、上記所定成分が上記多孔質層に拡散して捕捉されるときの拡散速度式と、この捕捉された所定成分が化学反応するときの反応速度式とを含むから、触媒反応における反応物質の濃度変化を予測することができる。
【0043】
請求項4に係る発明によれば、請求項1において、上記流体中には、上記担体との接触によって物理的性質がA状態からB状態に且つ該A状態とB状態との濃度差に応じて変化する変態成分を含み、上記速度式は、上記変態成分の状態変化速度式を含むから、上記担体上で所定成分の物理的な状態変化、例えば吸着を生ずるときの該所定成分の濃度変化を予測することができる。
【0044】
請求項5に係る発明によれば、請求項2又は請求項3において、さらに上記位置・濃度特性とアーレニウス式とに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動したときの上記所定成分の濃度変化率の温度による変化を表す温度・濃度変化率特性を求めるステップを備え、上記温度・濃度変化率特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたから、温度が変化したときに上記所定成分の濃度変化の進み具合がどのように変わるかがわかり、反応条件を変更したときの濃度変化率を見積もる上で有利になる。
【0045】
請求項6に係る発明によれば、請求項1において、さらに、所定の条件でテストを行なって上記所定成分の濃度変化を求め、上記速度式の速度定数に含まれている各因子の値を操作することにより上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができるか否かを調べるようにしたから、モデルの妥当性を定量的に実証することができ、触媒等の開発研究、反応の制御手段の構築に有利になる。
【0046】
請求項7に係る発明によれば、三元触媒による排気ガスの浄化において、触媒反応モデルを作成し、そのモデルに基づいて、HC、CO、NOx及びO2各々の拡散速度式及び反応速度式を作成し、これら速度式に基づいてHC、CO及びNOx各々の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記HC、CO、NOx各々の濃度変化を予測するようにしたから、三元触媒によって排気ガスを浄化するときの、各成分の浄化率を予測することができ、また、速度式の各因子を変化させたときの各成分の浄化率に与える影響を見積もることができ、三元触媒、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0047】
請求項8に係る発明によれば、NOx還元触媒によるNOxの還元において、触媒反応モデルを作成し、そのモデルに基づいて、HCの拡散速度式及び各排気ガス成分の反応速度式を作成し、これら速度式に基づいてHC及びNOx各々の位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記HC及びNOx各々の濃度変化を予測するようにしたから、NOx還元触媒によってNOxを浄化するときの浄化率を予測することができ、また、速度式の各因子を変化させたときの各成分の浄化率に与える影響を見積もることができ、NOx還元触媒、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0048】
請求項9に係る発明によれば、所定成分が含まれる流体を触媒に接触させたとき、複数の反応が関与して最終生成物が得られる場合において、各反応の速度式に基づいて上記所定成分の濃度変化特性を求め、触媒中の所定材料の量を変化させた複数のテストを行なって、各材料量での上記所定成分の濃度変化を求め、各テスト結果について、上記各反応の速度定数に含まれている各因子の値を変化させて、上記濃度変化特性に基づく上記所定成分の濃度変化と当該テスト結果とが一致する値を探索し、上記テスト結果に一致させるための数値が各テストで異なる数値になった因子を上記所定材料の量が関与する因子であると特定するようにしたから、触媒を構成する各材料が関与する素反応を特定することができ、例えば、ある素反応の活性化エネルギーを低下させるには触媒のどの材料の種類を変更すればよいか、あるいは当該素反応の頻度因子を大きくするにはどの材料の量を多くすればよいかの方策を立てる上で有利になる。
【0049】
請求項10に係る発明によれば、反応物質が複数の素反応によって最終生成物になる反応モデルを設定し、このモデルに基づいて上記複数の素反応各々の速度定数を反映させた反応物質の濃度変化特性を求め、所定の条件で上記複合反応のテストを行なって上記反応物質の濃度変化を求め、上記各速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索し、上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定するようにしたから、反応モデルの妥当性を定量的に実証することができ、触媒等の研究開発、複合反応の制御手段の構築に有利になる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本実施形態は、触媒によるCOの単純酸化反応の解析に関する。図1に示すように、COを含むガスが触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程で一部が酸化されCO2 となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に無機多孔質層が形成され、この多孔質層に活性種(触媒金属Pt)が担持されたものである。なお、本明細書及び図面において、化合物の化学式に付した(g)はガス状態であることを意味し、(s)は吸着された状態であることを意味する。また、化学式を[]で囲んだものはその濃度を表す。
【0051】
−CO酸化反応のモデルの設定−
触媒1によるCOの酸化反応は図2に示すステップで進むと考えられる。すなわち、流入ガス中のCO(g)は拡散によって多孔質層に吸着される。この吸着されたCO(s)が酸素と反応してCO2 に変化する。このとき、CO(g)が減少する速度を支配する因子は、拡散係数kmと反応速度係数krの2つである。
【0052】
−CO酸化反応の速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0053】
・拡散速度式
V・d[CO(g)]/dx=−km・GSA・([CO(g)]−[CO(s)]) …(1−1)
V:ガス流速
x:触媒内のガス流れ方向の位置座標
GSA:ハニカム有効表面積
・反応速度式
km・GSA・([CO(g)]−[CO(s)])=WCL・r (定常状態) …(1−2)
WCL:活性種担持量
r:触媒単位重量当たりのCO酸化速度
r=kreact・NPt・[CO(s)]・[O2] …(1−3)
=(kreact・NPt・[O2])・[CO(s)]
kreact:CO酸化反応速度定数
NPt:多孔質層におけるPtの密度
kreact=k0・exp(−Ea/RT) (アーレニウス式) …(1−4)
k0:T=0(絶対温度零)のときの反応速度定数
Ea:活性化エネルギー
但し、以上においては、時間的な温度、濃度などの変化がない定常状態で近似できる、CO濃度に対してO2濃度は十分に高く定数と見なせる、CO酸化反応はCO濃度の一次反応である、と仮定している。
【0054】
−COの触媒による浄化率特性式算出−
上記(1−1)〜(1−3)式よりなる方程式を解いて、次の触媒位置に対するCO濃度の式(位置・濃度相関式)を得る。
【0055】
[CO(g)]=[CO(g)]0・exp(−ktotal・x) …(1−5)
但し、ktotal=1/(1/kd+kr)
kd=km・GSA/V
kr=kreact・NPt・[O2]
以後、kdを総合拡散係数、krを総合反応定数と呼ぶ。
【0056】
(1−5)式をグラフ化すると図3のようになる。触媒入口及び出口のCO濃度からCO浄化率を計算することができる。
【0057】
(1−5)式は一定温度Tでの位置・濃度相関式であるが、(1−4)式より各温度での反応速度定数が得られる。よって、これを用いて温度を変化させたときのCO浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。これを図4に示す。すなわち、温度・濃度相関特性は、同図に実線及び破線で示すように、CO浄化率は低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇しない形となる(飽和する。)。なお、実線と破線とは(1−5)式の係数に与えた値が互いに異なるものである。
【0058】
−モデルの検証及び係数の設定−
上述の計算によって得られる温度・濃度特性では、CO浄化率は、活性化エネルギーEa、総合反応速度頻度因子kr0(=k0・NPt・[O2])及び総合拡散係数kdによって変化していく。従って、リグテストを行ない、当該3つの係数kd、kr0及びEaを変化させてリグテスト結果に一致させることができれば、上記モデルは妥当ということになり、CO酸化反応における温度・濃度特性の係数を決定することができる。
【0059】
今回は、担体1L当たりのPt担持量を0.5gとし、且つ600℃でのエージングを行なった触媒を用い、この触媒を模擬排ガス流通装置に取り付け、表1に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。
【0060】
【表1】
【0061】
結果は図4に示す「実測」のプロットの通りである。そうして、上記温度・濃度特性の3つの係数Ea、kr0及びkdを変化させて当該リグテスト結果への合わせ込み(Curve Fitting)を行なった。同図の実線は当該合わせ込みによって得られた計算曲線である。この合わせ込みによって、リグテスト結果を略完全に再現できていることがわかる。従って、上述のモデルは妥当ということになる。実線で示す温度・濃度特性の係数は、
活性化エネルギーEa=80kJ、
総合反応速度頻度因子kr0=5×107、
総合拡散係数kd=0.15、
というものであった。
【0062】
−反応速度解析の活用−
計算により得られた上述のCO浄化率の温度特性は上記3つの係数Ea、kr0及びkdにより変化していく。そこで、各係数が触媒性能にどのような影響を及ぼしているかを定量的に見積もってみた。
▲1▼ 活性化エネルギーEaがライトオフ性能に与える影響
活性化エネルギーEaを変化させてライトオフ温度T50の動きを計算したところ、図5に示すように、Eaを10kJ下げることにより、T50が約50℃低下する、と見積もることができた。Eaは、化学反応系と活性種により規定される特性値であり、例えば活性の高い活性種を採用することによって低下させることができる。
▲2▼ 総合反応速度頻度因子kr0がライトオフ性能に与える影響
総合反応速度頻度因子kr0もライトオフ性能に影響を与える。kr0を変化させてT50の動きを計算したところ、図6に示すように、kr0を約10倍にすることにより、T50が約50℃低下する、と見積もることができた。頻度因子は、COとO2とが反応を始めるために接触する確率などを規定しており、例えば活性種を高分散化し、触媒反応が起こる表面積を拡大することによって、大きくすることができる。
▲3▼ 総合拡散係数kdがCO高温浄化性能に与える影響
総合拡散係数kdは触媒によるCOの高温浄化率に影響を与える。kdを変化させてC400(触媒温度400℃でのCO浄化率)の動きを計算したところ、図7に示すように、10%程度の拡散速度の向上によってC400が約2%改善する、と見積もることができた。触媒自体は高活性な状態にあっても、COの拡散が遅いときには浄化率が100%に届かない。kdは、このCOの拡散を支配しており、ハニカム担体のセル仕様や多孔質層の構成を変更することによって改善することができる。
(実施形態2)
本実施形態は、NOx還元触媒によるNOxの還元反応の解析に関する。NOx、HC及びO2を含むエンジンの排ガスが図1に示す触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程でNOxが還元されN2となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に多孔質層(ゼオライト)が形成され、この多孔質層に活性種(触媒金属Pt)が担持されたものである。
【0063】
−NOx浄化反応のモデルの設定−
酸素過剰雰囲気でのNOxの浄化反応機構には複数の説が存在しており、触媒活性種や排ガス条件によって浄化機構は異なると考えられている。そこで、モデルは有力なHC酸化中間体説によって設定した。すなわち、図8に示すように、流入ガス中のHC(g)が拡散によって多孔質層に吸着される。この吸着されたHC(s)が酸素と反応してHC酸化中間体HC’に変化する(反応1)。HC’は、流入ガス中のNOと反応してNOを還元する(反応2)一方、流入ガス中のO2によって酸化される(反応3)。図8において、kdは拡散速度定数、k1〜k3は反応1〜3の速度定数である。
【0064】
−NOx浄化反応速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0065】
・拡散速度式
d[HC(g)]/dx=kd・([HC(g)]−[HC(s)]) …(2−1)
kd=−kHC・GSA/V
kHC:HC(g)の拡散係数
r1:反応1の反応速度
r2:反応2の反応速度
r3:反応3の反応速度
また、拡散してきたHC(s)と反応1により失われるHC(s)とが等しいとすると次の式が成立する。
【0066】
−d[HC(g)]/dx=r1 …(2−5)
また、次の式が成立する。
【0067】
d[HC’]/dx=r1−r2−r3 …(2−6)
−d[NO]/dx=r2 …(2−7)
なお、以上では定常状態近似を行なっている。また、HC、NOの濃度に対してO2濃度は十分に高く定数とみなしている。
【0068】
さらに、上記反応1〜3各々にアーレニウスの式を設定することができる。
【0069】
k’1=k1・NPt・[O2]=k10・exp(−Ea1/RT) …(2−8)
k’2=k2・NPt =k20・exp(−Ea2/RT) …(2−9)
k’3=k3・NPt・[O2]=k30・exp(−Ea3/RT) …(2−10)
k10 :反応1の総合反応速度頻度因子
k20:反応2の総合反応速度頻度因子
k30:反応3の総合反応速度頻度因子
Ea1:反応1の活性化エネルギー
Ea2:反応2の活性化エネルギー
Ea3:反応3の活性化エネルギー
以上がこのモデルに必要な反応速度式になる。そうして、反応速度、ひいてはNOx浄化率を最終的に決定する係数は、kd、k10 、k20、k30、Ea1、Ea2、Ea3の7つである。
【0070】
−NOx浄化率特性式算出−
上記(2−1)〜(2−7)式よりなる方程式を解くことにより、触媒上の位置とHC(g)、HC’及びNOの各濃度との関係(位置・濃度特性式)が得られる。これは複雑な微分方程式の形になるため、数値計算を用いて当該関係を求めた。その結果を図9に示す。HCは触媒入口より反応して徐々に失われていき、それに伴ってHC’が生成してその濃度が増大していく。しかし、HC’は不安定であるから、反応2,3が始まり、HC’濃度は途中から減少に転ずる。NOはHC’の濃度が高まる領域(触媒上流端側の領域)で反応2により還元されていくが、排ガス流れ方向における触媒中央付近になるとHC’が殆どなくなり、そのため、触媒中央付近以降ではNOの実質的な還元が行なわれない。
【0071】
上記位置・濃度特性により、触媒入口及び出口のNO濃度、HC濃度からそれぞれ当該触媒によるNO浄化率及びHC浄化率を計算することができる。
【0072】
以上のように(2−1)〜(2−7)式を解くことにより、一定温度Tでの位置・濃度相関式が得られるが、(2−8)〜(2−10)式より各温度での反応速度定数が得られるから、これを用いて温度を変化させたときのNO及びHC各々の浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。これを図10〜図13に実線及び破線で示す。なお、図10〜図13の各々はPt担持量が相異なる例を示している。この点は後述する。また、図10〜図13の実線及び破線はいずれも後述する合わせ込みを行なった後のものである。
【0073】
NOの場合、同図に実線で示すように、低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇せず、低下する形となる。HCの場合、同図に破線で示すように、低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇しない形となる(飽和する。)。
【0074】
−モデルの検証及び係数の設定−
触媒のPt担持量が異なる4つの仕様についてリグテストを行なった。すなわち、担体1L当たりのPt担持量が0.42g、2.1g、2.8g及び5.6gの4仕様とし、各触媒を模擬排ガス流通装置に取り付け、表2に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。模擬排ガスは、ディーゼルエンジンにおいて圧縮行程上死点付近での主噴射の後、膨張行程において後噴射を行なったときの排ガスに模した。
【0075】
【表2】
【0076】
結果は図10〜図13に実測プロットで示されている。図10はPt担持量=0.42g/Lの例、図11はPt担持量=2.1g/Lの例、図12はPt担持量=2.8g/Lの例、図13はPt担持量=5.6g/Lの例である。
【0077】
4仕様のいずれにおいても、係数kd、k10 、k20、k30、Ea1、Ea2、Ea3の操作により、上記温度・濃度特性による計算値を各リグテスト結果に合わせ込むことができ(リグテスト結果を再現でき)、上述のモデルが妥当であることを確認することができた。
【0078】
上記合わせ込みの結果、温度・濃度特性の各係数のうち、反応1の総合反応速度因子k10 を除く他の係数は、いずれのリグテストに対しても同じ値、
総合拡散係数kd=2.0×10−2
反応2の総合反応速度頻度因子k20=3.0×102
反応3の総合反応速度頻度因子k30=5.4×10−5
反応1の活性化エネルギーEai=190kJ
反応2の活性化エネルギーEa2=35kJ
反応3の活性化エネルギーEa3=0.0kJ
となった。一方、反応1の総合反応速度因子k10 はPt担持量によって相異なる結果となった。
【0079】
−反応速度解析の活用−
▲1▼ 触媒成分が働く素反応の特定
上述の如くPt担持量が異なるとき反応1の総合反応速度因子k10が変動するということは、当該因子によってのみPt担持量による性能差が現れるということになる。換言すれば、PtがNOx浄化反応において寄与するのは反応1であり、Pt担持量を変更すると、反応1の総合反応速度頻度因子が変化する、つまり、HCがHC’に酸化する反応1の活性表面積の大きさを変えることができる、ということである。
【0080】
このような活用は、Ptに限定されるものではなく、同様の合わせ込み手法によって、触媒を構成する他の成分、例えば活性種担持母材(例えばゼオライト)、或いは複数の活性種を併用する場合の各活性種が当該触媒反応のいずれの素反応にどのように働くかを特定することが可能になる。上記Ptの場合は特定の1つの素反応に働いているが、場合によって、複数の素反応に働く成分もあると考えられるが、その場合はその成分が働く複数の素反応を特定することができる、とうことになる。
【0081】
また、触媒を構成する成分の種類を変更して同様の合わせ込みを行ない、それらが特定の素反応に働くことを確認することができた場合には、それらは当該触媒反応では同じ働きをするものとして取り扱うことができる。
▲2▼ 触媒サイズがNOx浄化率に与える影響
NOx浄化率向上手段の一つとして、触媒のサイズを大きくすることが考えられる。この検討は、上述のモデル中のx項を操作して(触媒サイズを長さ方向に変化させて)NOx浄化率の温度特性変化を計算することによって行なうことができる。図14は触媒サイズを基準長さの2倍、4倍、6倍に変化させた結果を示す。これによれば、触媒サイズを拡大することはNOx浄化率の向上に有効であるが、ある程度以上拡大すると効果が飽和してくることがわかる。
▲3▼ HC/NOx比がNOx浄化率に与える影響
エンジン排ガス中のNOx浄化においては、上述の後噴射を利用して排ガス中のHC量、従って、NOx濃度に対するHC濃度の比HC/NOxを制御することができる。このHC/NOx比を変化させたときのNOx浄化率の温度特性変化を計算すると、図15に示す結果が得られた。同図によれば、HC/NOx比の増大によるNOx浄化率の改善効果は顕著であり、触媒サイズの場合とは違って、HC/NOx比を大きくすれば、それだけNOx浄化率が向上することがわかる。
(実施形態3)
本実施形態は、三元触媒によるガソリンエンジンの排気ガス浄化反応の解析に関する。CO、HC、NOx及びO2を含む排ガスが図1に示す触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程でHC及びCOの酸化、並びにNOxの還元が行なわれ、H2O、CO2及びN2となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に多孔質層(アルミナ及びセリア)が形成され、この多孔質層に活性種(Pt及びRh)が担持されたものである。
【0082】
−三元浄化反応のモデルの設定−
当該モデルは図16に示すように設定した。すなわち、流入ガス中のCO(g)、HC(g)、NO(g)及びO2(g)が拡散によって多孔質層に吸着されてCO(s)、HC(s)、NO(s)及びO2(s)となる。CO(s)はO2(s)と反応し酸化されてCO2となる(反応1)。HC(s)はO2(s)と反応し酸化されてH2O及びCO2となる(反応2)。また、CO(s)はNO(s)と反応し酸化されてCO2となる一方、NO(s)は還元されてN2となる(反応3)。また、HC(s)はNO(s)と反応し酸化されてH2O及びCO2となる一方、NO(s)は還元されてN2となる(反応4)。
【0083】
図16において、dCOはCO(g)の拡散速度定数、dHCはHC(g)の拡散速度定数、dOはO2(g)の拡散速度定数、dNOはNO(g)の拡散速度定数、k1〜k4は反応1〜4の速度定数である。
【0084】
−三元浄化反応速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0085】
・拡散速度式
d[CO(g)]/dx=dCO・([CO(g)]−[CO(s)]) …(3−1)
d[HC(g)]/dx=dHC・([HC(g)]−[HC(s)]) …(3−2)
d[O2(g)]/dx =d0・([O2(g)]−[O2(s)]) …(3−3)
d[NO(g)]/dx=dNO・([NO(g)]−[NO(s)]) …(3−4)
kCO:CO(g)の拡散係数
kHC:HC(g)の拡散係数
kCO:CO(g)の拡散係数
kNO:NO(g)の拡散係数
・化学反応速度式
r1=k1・[CO(s)]・[O2(s)] …(3−5)
r2=k2・[HC(s)]・[O2(s)] …(3−6)
r3=k3・[CO(s)]・[NO(s)] …(3−7)
r4=k4・[HC(s)]・[NO(s)] …(3−8)
r1:反応1の反応速度
r2:反応2の反応速度
r3:反応3の反応速度
r4:反応4の反応速度
また、定常状態近似を行なって次の式が成立する。
【0086】
−d[CO(g)]/dx=r1+r2 …(3−9)
−d[HC(g)]/dx=r2+r4 …(3−10)
−d[NO(g)]/dx=r3+r4 …(3−11)
−d[O2(g)]/dx =r1+r2 …(3−12)
さらに、上記反応1〜4各々にアーレニウスの式を設定することができる。
【0087】
k1=k10・exp(−Ea1/RT) …(3−13)
k2=k20・exp(−Ea2/RT) …(3−14)
k3=k30・exp(−Ea3/RT) …(3−15)
k4=k40・exp(−Ea4/RT) …(3−16)
k10 :反応1の総合反応速度頻度因子
k20:反応2の総合反応速度頻度因子
k30:反応3の総合反応速度頻度因子
k40:反応4の総合反応速度頻度因子
Ea1:反応1の活性化エネルギー
Ea2:反応2の活性化エネルギー
Ea3:反応3の活性化エネルギー
Ea4:反応4の活性化エネルギー
以上がこのモデルに必要な反応速度式になる。そうして、当該三元触媒反応の各成分の浄化率を最終的に決定する係数は、dCO、dHC、dO 、dNO、kd、k10 、k20、k30、k40、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4である。
【0088】
−浄化率特性式算出−
上記(3−1)〜(3−12)式よりなる方程式を解くことにより、触媒上の位置とCO、HC、NOの各濃度との関係(位置・濃度特性式)が得られる。これは複雑な微分方程式の形になるため、数値計算を用いて当該関係を求めた。その結果を図17に示す。
【0089】
上記位置・濃度特性により、触媒入口及び出口のNO濃度、HC濃度からそれぞれ当該触媒によるCO浄化率、HC浄化率及びNO浄化率を計算することができる。
【0090】
以上のように(3−1)〜(3−12)式を解くことにより、一定温度Tでの位置・濃度相関式が得られるが、(3−13)〜(3−16)式より各温度での反応速度定数が得られるから、これを用いて温度を変化させたときのCO、HC及びNO各々の浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。図18の実線は計算による温度・濃度特性(後述する合わせ込みを行なった後のもの)を示す。
【0091】
−モデルの検証及び係数の設定−
担体1L当たりの活性種総担持量を1.6gとし、活性種の担持量比を「Pt:Rh=5:1」とした。触媒は、大気雰囲気において1000℃の温度に24時間保持するエージング処理を施した後に模擬排ガス流通装置に取り付け、表3に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。
【0092】
【表3】
【0093】
結果は図18に実測プロットで示されている。係数dCO、dHC、dO 、dNO、kd、k10 、k20、k30、k40、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4の操作により、上記温度・濃度特性による計算値を各リグテスト結果に合わせ込むことができ(リグテスト結果を再現でき)、上述のモデルが妥当であることを確認することができた。また、この合わせ込みの結果、反応4(HC+NO)の反応速度は略零になることがわかった。
【0094】
上記位置・濃度特性又は温度・濃度特性により、触媒条件、その他の条件を変更したときの三元浄化に及ぼす影響を見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】触媒における排気ガス流れ方向と位置座標xとの関係を示す説明図。
【図2】本発明の実施形態1(CO酸化反応)に係る反応モデルを示す図。
【図3】実施形態1の計算による触媒位置・CO濃度特性を示すグラフ図。
【図4】実施形態1の計算による温度・CO濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図5】実施形態1の活性化エネルギーとCO浄化に関するライトオフ温度との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図6】実施形態1の総合反応速度因子とCO浄化に関するライトオフ温度との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図7】実施形態1の総合拡散係数と触媒温度400℃でのCO浄化率との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図8】本発明の実施形態2(NOx還元反応)に係る反応モデルを示す図。
【図9】実施形態2の計算による触媒位置・ガス成分濃度特性を示すグラフ図。
【図10】実施形態2のPt担持量0.42g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図11】実施形態2のPt担持量2.1g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図12】実施形態2のPt担持量2.8g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図13】実施形態2のPt担持量5.6g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図14】実施形態2の触媒サイズの違いがNOx浄化率の温度特性に与える影響を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図15】実施形態2のHC/NOx比の違いがNOx浄化率の温度特性に与える影響を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図16】本発明の実施形態3(三元触媒反応)に係る反応モデルを示す図。
【図17】実施形態3の計算による触媒位置・ガス成分濃度特性を示すグラフ図。
【図18】実施形態3の計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【符号の説明】
1 触媒
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体中の所定成分の濃度変化予測方法及び反応速度解析法に関し、より具体的には、流体中の所定成分が、所定材料を担持した担体、例えば触媒に接触しながら流れていったときの該流体中の所定成分の濃度変化を予測する方法及び複合反応の反応速度解析法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に触媒材料の研究開発は、「触媒の設計」→「触媒の試作」→「触媒の性能評価」→「解析」→「改良案の画策」→「触媒の再設計」というサイクルで進められている。この場合、触媒に関わる現象(材料の劣化や触媒反応等)を解明し的確な改良案を生み出していくための解析が重要である。
【0003】
触媒に関わる解析技術としては材料分析がある。例えば、ICP発光分光分析、XRF(蛍光X線分析)等を用いて触媒の元素組成を調べたり(化学組成分析)、XRD(X線回折)、XPS(X線光電子分光法)、EPMA(X線マイクロアナラザー)等を用いて触媒の化合物組成や元素の化学的結合状態を調べること(状態分析)が行なわれている。
【0004】
また、触媒反応の解析も試みられている。例えば、IR(赤外分光分析)、EXAFS(X線吸収端微細構造)等を用いたその場解析が行なわれている。また、反応速度解析も行なわれている。例えば、触媒学会発行の「触媒」1999 Vol.41 No.1の43〜46頁には、排気ガス組成のモデルガスを用いて化学等量点における触媒の反応速度を測定し、HCの浄化は見掛け上一次反応であること、触媒に対する熱処理の前後においてHC反応の活性化エネルギーは殆ど変化せず、頻度因子の減少として観測されること、並びにこの頻度因子の減少から触媒の劣化は貴金属粒子の表面積の減少として理解できることを見いだした旨が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記材料分析は、触媒材料自体の変化をとらえるのに非常に有効であるが、化学反応自体を観察・解析することができず、従って、触媒反応の制御技術に結び付けることも難しい。
【0006】
上記反応解析のうちその場解析は、反応を直接観察することができるが、一般的には高価な分析機器が必要になる。一方、上記反応速度解析は、化学反応の原料系と生成系の変化を定量的に理論ベースで解析することにより、反応のメカニズムを明らかにするものであるが、マイクロリアクタのような簡素な反応系にしか適用されていない。
【0007】
また、これまでの反応メカニズムの検討は、表面的なリグテストの結果と材料分析結果とに基づいて行なわれているが、定性的な推定に止まっており、実質的な検証は困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、高価な機器を用いることなく、より複雑な反応系にも適用することができる反応速度解析の手法を確立することを課題とする。そして、その手法の確立により、反応メカニズムの検証、律速段階の特定、反応条件を変更したときの効果の見積り等を容易に行なうことができるようにするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、所定成分を含む流体が担体に接触しながら移動するときの該所定成分の濃度変化量をとらえ、該流体が担体に接触しながら流れていったときの該所定成分の濃度変化を予測することができるようにした。
【0010】
まず、請求項1に係る発明は、所定成分が含まれる流体が所定材料を担持した担体に接触しながら流れていったときの該流体中の所定成分の濃度変化を予測する方法であって、
上記流体と上記担体との接触によって上記所定成分の濃度が変化するモデルを設定するステップと、
上記モデルに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動するときの上記所定成分の濃度変化を表す速度式を作成するステップと、
上記速度式に基づいて、上記担体上での上記流体流れ方向における上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0011】
すなわち、所定成分の濃度変化のモデルの設定は、該所定成分の濃度変化を予測するための前提となる事項である。このモデルは、既に実証されている場合にはそれを用い、そうでない場合には、仮説を立て、それを後述する手法で検証して用いることになる。
【0012】
流体が担体に接触しながら流れていき、その過程で該流体中の所定成分の濃度が変化していく場合、その濃度には該流体が担体に接触しながら移動した距離が関係する。そこで、本発明では、流体が担体に接触しながら単位距離移動するときの所定成分の濃度変化を表す速度式を作成し、この速度式に基づいて、当該担体上での流体流れ方向における上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、これに基づいて所定条件での上記所定成分の濃度変化、或いは条件を変更したときの上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたものである。
【0013】
すなわち、上記位置・濃度特性に基づいて、流体が担体に接触しながら該担体を通過したときの上記所定成分の濃度変化率を求めることができ、例えば、担体の長さを変更したときの所定成分の濃度変化に与える影響を定量的に見積もることができる。
【0014】
また、上記濃度変化の速度定数が上記位置・濃度特性に反映されるから、各因子(例えば、所定成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記所定成分の濃度変化に与える影響を見積もることができる。よって、その見積りから、上記所定成分に所望の濃度変化をさせるためにはどの因子を変更すれば良いか、また、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0015】
請求項2に係る発明は、上記請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中に、上記所定成分として、互いに化学反応する2種の成分A及びBが含まれ、
上記速度式には、上記成分Aと成分Bとの反応速度式が含まれていることを特徴とする。
【0016】
従って、上記担体上で化学反応を生ずるときの上記成分A又は成分Bの濃度変化を予測することができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体は気体であり、上記担体には上記所定材料としての触媒成分を含む多孔質層が形成されており、
上記速度式は、上記所定成分が上記多孔質層に拡散して捕捉されるときの拡散速度式と、この捕捉された所定成分が化学反応するときの反応速度式とを含むことを特徴とする。
【0018】
従って、触媒反応における反応物質の濃度変化を予測することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中には、上記所定成分として、上記担体との接触によって物理的性質がA状態からB状態に且つ該A状態とB状態との濃度差に応じて変化する変態成分を含み、
上記速度式は、上記変態成分の状態変化速度式を含むことを特徴とする。
【0020】
従って、上記担体上で所定成分の物理的な状態変化、例えば吸着を生ずるときの該所定成分の濃度変化を予測することができる。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項2又は請求項3に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
さらに、上記位置・濃度特性とアーレニウス式とに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動したときの上記所定成分の濃度変化率の温度による変化を表す温度・濃度変化率特性を求めるステップを備え、
上記温度・濃度変化率特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0022】
すなわち、アーレニウス式は、化学反応の速度定数の温度による変化を表すものであるから、これを用いて、温度が変化したときに上記所定成分の濃度変化の進み具合がどのように変わるかがわかり、反応条件を変更したときの濃度変化率を見積もる上で有利になる。
【0023】
請求項6に係る発明は、請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、さらに、
所定の条件でテストを行なって上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、上記速度式の速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0024】
すなわち、上記所定成分の濃度変化の予測を行なうには、上記モデルの妥当性が前提になる。しかし、触媒反応については、その反応機構が解明されていないことが多い。そこで、本発明ではモデル検証ステップを設けたものである。
【0025】
具体的に説明すると、まず、上記位置・濃度特性は、上記速度式の速度定数により変化する。この定数に含まれる各因子を変化させて特定の値を与えたときに、その位置・濃度特性がテスト結果と一致すれば、その位置・濃度特性の元になった当該モデルは妥当であるということになる。
【0026】
請求項7に係る発明は、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)及びO2を含む排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなる三元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC、CO及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HC、CO、NOx及びO2各々が上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHC、CO、NOx及びO2が互いに化学反応する、というモデルに基づいて、上記HC、CO、NOx及びO2各々の拡散速度式、並びに各化学反応速度式を作成するステップと、
上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の、上記三元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0027】
従って、三元触媒によって排気ガスを浄化するときの、HC、CO及びNOxの浄化率を予測することができ、また、条件を変更したとき、つまり、拡散速度式及び反応速度式の各因子(例えば、排気成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記HC、CO及びNOxの浄化に与える影響を見積もることができ、その見積りから、浄化率を高めるにはどの因子を変更すれば良いか、そして、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、触媒条件、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0028】
請求項8に係る発明は、HC、NOx及びO2を含み且つO2がHC及びNOxに比べて過剰に含まれる排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなるNOx還元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HCが上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHCと上記排気ガス中のO2とが反応してHCの反応中間体HC’が生成し、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のNOxとが反応してNOxが還元され、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のO2とが反応して該反応中間体HC’が酸化される、というモデルに基づいて、上記排気ガスが上記NOx還元触媒に接触しながら移動するときの上記HCの拡散速度式、並びに上記反応中間体HC’の生成、上記NOxの還元、及び上記反応中間体HC’の酸化の各反応速度式を作成するステップと、上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC及びNOx各々の、上記NOx還元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする。
【0029】
従って、NOx還元触媒によって排気ガスを浄化するときのNOx浄化率を予測することができ、また、条件を変更したとき、つまり、拡散速度式及び反応速度式の各因子(例えば、排気成分の初期濃度、活性化エネルギー、頻度因子等)を変化させたときの上記NOx浄化率に与える影響を見積もることができ、その見積りから、浄化率を高めるにはどの因子を変更すれば良いか、そして、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、触媒条件、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0030】
請求項9に係る発明は、所定成分が含まれる流体を触媒に接触させたとき、複数の反応が関与して最終生成物が得られる場合の反応速度解析方法であって、
上記各反応の速度式に基づいて上記所定成分の濃度変化特性を求めるステップと、
上記触媒中の所定材料の量を変化させた複数のテストを行なって、各材料量での上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、
上記各テスト結果について、上記各反応の速度定数に含まれている各因子の値を変化させて、上記濃度変化特性に基づく上記所定成分の濃度変化と当該テスト結果とが一致する値を探索するステップと、
上記テスト結果に一致させるための数値が各テストで異なる数値になった因子を上記所定材料の量が関与する因子であると特定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0031】
すなわち、触媒の改善にあたっては、例えば活性種の種類や量を変化させて所定成分の濃度変化にどのような影響が出るかが調べられている。しかし、従来は、複合反応のどの素反応に当該活性種が働いているかがわかっていないことが多く、そのため、触媒の改善は試行錯誤によって進められているのが実情である。
【0032】
そこで、本発明は、そのような触媒を構成する各材料が複合反応のどの素反応に働いているかを特定できるようにしたものである。
【0033】
具体的に説明すると、各反応の速度式を反映させた所定成分の濃度変化特性には、各素反応速度式の速度定数に含まれている各因子(頻度因子や活性化エネルギー)の項が含まれている。所定の反応条件でテストを行なった場合、上記反応モデルに妥当性があれば、上記濃度変化特性に含まれる各因子の値を操作することにより、当該テスト結果を再現することができる。
【0034】
一方、触媒中の所定材料の量を変化させた場合、その所定材料が当該触媒反応に関与しているならば、いずれかの素反応のいずれかの因子の値が変化することになる。
【0035】
従って、上記所定材料の量を変化させて複数のテストを行ない、上記濃度変化特性の各因子の値を適宜変更して各テスト結果を再現していったとき、上記所定材料の量が関与する因子の値のみの変更で(他の因子の値は一定で)全てのリグテスト結果を再現できる、という理屈が成り立つ。
【0036】
そこで、本発明では、各リグテスト結果に一致するように上記濃度変化特性の各因子を操作し、各因子のうち、各リグテスト結果に一致させるために数値が変動しているものを当該所定材料が影響を与える因子と特定するようにしたものである。
【0037】
このように、本発明によれば、触媒を構成する各材料が関与する素反応を特定することができ、例えば、ある素反応の活性化エネルギーを低下させるには触媒のどの材料の種類を変更すればよいか、あるいは当該素反応の頻度因子を大きくする(活性点を多くする)にはどの材料の量を多くすればよいかの方策を立てる上で有利になる。
【0038】
請求項10に係る発明は、複合反応の反応速度解析方法であって、
反応物質が複数の素反応によって最終生成物になる反応モデルを設定するステップと、
上記反応モデルに基づいて上記複数の素反応各々の速度定数を反映させた上記反応物質の濃度変化特性を求めるステップと、
所定の条件で上記複合反応のテストを行なって、上記反応物質の濃度変化を求めるステップと、
上記各速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ、上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする。
【0039】
すなわち、各素反応の速度式を反映させた反応物質の濃度変化特性には、各素反応速度式の速度定数に含まれている各因子(頻度因子や活性化エネルギー)の項が含まれている。所定の反応条件でテストを行なった場合、上記反応モデルに妥当性があれば、上記濃度変化特性に含まれる各因子の値を操作することにより、当該テスト結果を再現することができる。従って、各因子の値の操作によって当該再現をすることができたときに、当該反応モデルが妥当であると判定するようにしたものである。
【0040】
【発明の効果】
請求項1に係る発明によれば、流体と担体との接触によって該流体中の所定成分の濃度が変化するモデルを設定し、このモデルに基づいて、流体が担体に接触しながら移動するときの上記所定成分の濃度変化量を表す速度式を作成し、この速度式に基づいて、上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたから、担体長さ、所定成分の初期濃度など条件を変化させたときの上記所定成分の濃度変化に与える影響を見積もることができ、また、上記所定成分に所望の濃度変化をさせるためにはどの因子を変更すれば良いか、また、その因子に関与するどの反応条件を変更すれば良いかを検討することができ、濃度変化条件の改善案の構築が容易になる。
【0041】
請求項2に係る発明によれば、請求項1において、上記流体中に互いに化学反応する2種の成分A及びBが含まれ、上記速度式には、上記成分Aと成分Bとの反応速度式が含まれているから、担体上で化学反応を生ずるときの上記成分A又は成分Bの濃度変化を予測することができる。
【0042】
請求項3に係る発明によれば、請求項1において、上記流体は気体であり、上記担体には触媒成分を含む多孔質層が形成されており、上記速度式は、上記所定成分が上記多孔質層に拡散して捕捉されるときの拡散速度式と、この捕捉された所定成分が化学反応するときの反応速度式とを含むから、触媒反応における反応物質の濃度変化を予測することができる。
【0043】
請求項4に係る発明によれば、請求項1において、上記流体中には、上記担体との接触によって物理的性質がA状態からB状態に且つ該A状態とB状態との濃度差に応じて変化する変態成分を含み、上記速度式は、上記変態成分の状態変化速度式を含むから、上記担体上で所定成分の物理的な状態変化、例えば吸着を生ずるときの該所定成分の濃度変化を予測することができる。
【0044】
請求項5に係る発明によれば、請求項2又は請求項3において、さらに上記位置・濃度特性とアーレニウス式とに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動したときの上記所定成分の濃度変化率の温度による変化を表す温度・濃度変化率特性を求めるステップを備え、上記温度・濃度変化率特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測するようにしたから、温度が変化したときに上記所定成分の濃度変化の進み具合がどのように変わるかがわかり、反応条件を変更したときの濃度変化率を見積もる上で有利になる。
【0045】
請求項6に係る発明によれば、請求項1において、さらに、所定の条件でテストを行なって上記所定成分の濃度変化を求め、上記速度式の速度定数に含まれている各因子の値を操作することにより上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができるか否かを調べるようにしたから、モデルの妥当性を定量的に実証することができ、触媒等の開発研究、反応の制御手段の構築に有利になる。
【0046】
請求項7に係る発明によれば、三元触媒による排気ガスの浄化において、触媒反応モデルを作成し、そのモデルに基づいて、HC、CO、NOx及びO2各々の拡散速度式及び反応速度式を作成し、これら速度式に基づいてHC、CO及びNOx各々の濃度変化を表す位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記HC、CO、NOx各々の濃度変化を予測するようにしたから、三元触媒によって排気ガスを浄化するときの、各成分の浄化率を予測することができ、また、速度式の各因子を変化させたときの各成分の浄化率に与える影響を見積もることができ、三元触媒、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0047】
請求項8に係る発明によれば、NOx還元触媒によるNOxの還元において、触媒反応モデルを作成し、そのモデルに基づいて、HCの拡散速度式及び各排気ガス成分の反応速度式を作成し、これら速度式に基づいてHC及びNOx各々の位置・濃度特性を求め、この位置・濃度特性に基づいて上記HC及びNOx各々の濃度変化を予測するようにしたから、NOx還元触媒によってNOxを浄化するときの浄化率を予測することができ、また、速度式の各因子を変化させたときの各成分の浄化率に与える影響を見積もることができ、NOx還元触媒、その他の反応条件の改善案の構築が容易になる。
【0048】
請求項9に係る発明によれば、所定成分が含まれる流体を触媒に接触させたとき、複数の反応が関与して最終生成物が得られる場合において、各反応の速度式に基づいて上記所定成分の濃度変化特性を求め、触媒中の所定材料の量を変化させた複数のテストを行なって、各材料量での上記所定成分の濃度変化を求め、各テスト結果について、上記各反応の速度定数に含まれている各因子の値を変化させて、上記濃度変化特性に基づく上記所定成分の濃度変化と当該テスト結果とが一致する値を探索し、上記テスト結果に一致させるための数値が各テストで異なる数値になった因子を上記所定材料の量が関与する因子であると特定するようにしたから、触媒を構成する各材料が関与する素反応を特定することができ、例えば、ある素反応の活性化エネルギーを低下させるには触媒のどの材料の種類を変更すればよいか、あるいは当該素反応の頻度因子を大きくするにはどの材料の量を多くすればよいかの方策を立てる上で有利になる。
【0049】
請求項10に係る発明によれば、反応物質が複数の素反応によって最終生成物になる反応モデルを設定し、このモデルに基づいて上記複数の素反応各々の速度定数を反映させた反応物質の濃度変化特性を求め、所定の条件で上記複合反応のテストを行なって上記反応物質の濃度変化を求め、上記各速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索し、上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定するようにしたから、反応モデルの妥当性を定量的に実証することができ、触媒等の研究開発、複合反応の制御手段の構築に有利になる。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
本実施形態は、触媒によるCOの単純酸化反応の解析に関する。図1に示すように、COを含むガスが触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程で一部が酸化されCO2 となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に無機多孔質層が形成され、この多孔質層に活性種(触媒金属Pt)が担持されたものである。なお、本明細書及び図面において、化合物の化学式に付した(g)はガス状態であることを意味し、(s)は吸着された状態であることを意味する。また、化学式を[]で囲んだものはその濃度を表す。
【0051】
−CO酸化反応のモデルの設定−
触媒1によるCOの酸化反応は図2に示すステップで進むと考えられる。すなわち、流入ガス中のCO(g)は拡散によって多孔質層に吸着される。この吸着されたCO(s)が酸素と反応してCO2 に変化する。このとき、CO(g)が減少する速度を支配する因子は、拡散係数kmと反応速度係数krの2つである。
【0052】
−CO酸化反応の速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0053】
・拡散速度式
V・d[CO(g)]/dx=−km・GSA・([CO(g)]−[CO(s)]) …(1−1)
V:ガス流速
x:触媒内のガス流れ方向の位置座標
GSA:ハニカム有効表面積
・反応速度式
km・GSA・([CO(g)]−[CO(s)])=WCL・r (定常状態) …(1−2)
WCL:活性種担持量
r:触媒単位重量当たりのCO酸化速度
r=kreact・NPt・[CO(s)]・[O2] …(1−3)
=(kreact・NPt・[O2])・[CO(s)]
kreact:CO酸化反応速度定数
NPt:多孔質層におけるPtの密度
kreact=k0・exp(−Ea/RT) (アーレニウス式) …(1−4)
k0:T=0(絶対温度零)のときの反応速度定数
Ea:活性化エネルギー
但し、以上においては、時間的な温度、濃度などの変化がない定常状態で近似できる、CO濃度に対してO2濃度は十分に高く定数と見なせる、CO酸化反応はCO濃度の一次反応である、と仮定している。
【0054】
−COの触媒による浄化率特性式算出−
上記(1−1)〜(1−3)式よりなる方程式を解いて、次の触媒位置に対するCO濃度の式(位置・濃度相関式)を得る。
【0055】
[CO(g)]=[CO(g)]0・exp(−ktotal・x) …(1−5)
但し、ktotal=1/(1/kd+kr)
kd=km・GSA/V
kr=kreact・NPt・[O2]
以後、kdを総合拡散係数、krを総合反応定数と呼ぶ。
【0056】
(1−5)式をグラフ化すると図3のようになる。触媒入口及び出口のCO濃度からCO浄化率を計算することができる。
【0057】
(1−5)式は一定温度Tでの位置・濃度相関式であるが、(1−4)式より各温度での反応速度定数が得られる。よって、これを用いて温度を変化させたときのCO浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。これを図4に示す。すなわち、温度・濃度相関特性は、同図に実線及び破線で示すように、CO浄化率は低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇しない形となる(飽和する。)。なお、実線と破線とは(1−5)式の係数に与えた値が互いに異なるものである。
【0058】
−モデルの検証及び係数の設定−
上述の計算によって得られる温度・濃度特性では、CO浄化率は、活性化エネルギーEa、総合反応速度頻度因子kr0(=k0・NPt・[O2])及び総合拡散係数kdによって変化していく。従って、リグテストを行ない、当該3つの係数kd、kr0及びEaを変化させてリグテスト結果に一致させることができれば、上記モデルは妥当ということになり、CO酸化反応における温度・濃度特性の係数を決定することができる。
【0059】
今回は、担体1L当たりのPt担持量を0.5gとし、且つ600℃でのエージングを行なった触媒を用い、この触媒を模擬排ガス流通装置に取り付け、表1に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。
【0060】
【表1】
【0061】
結果は図4に示す「実測」のプロットの通りである。そうして、上記温度・濃度特性の3つの係数Ea、kr0及びkdを変化させて当該リグテスト結果への合わせ込み(Curve Fitting)を行なった。同図の実線は当該合わせ込みによって得られた計算曲線である。この合わせ込みによって、リグテスト結果を略完全に再現できていることがわかる。従って、上述のモデルは妥当ということになる。実線で示す温度・濃度特性の係数は、
活性化エネルギーEa=80kJ、
総合反応速度頻度因子kr0=5×107、
総合拡散係数kd=0.15、
というものであった。
【0062】
−反応速度解析の活用−
計算により得られた上述のCO浄化率の温度特性は上記3つの係数Ea、kr0及びkdにより変化していく。そこで、各係数が触媒性能にどのような影響を及ぼしているかを定量的に見積もってみた。
▲1▼ 活性化エネルギーEaがライトオフ性能に与える影響
活性化エネルギーEaを変化させてライトオフ温度T50の動きを計算したところ、図5に示すように、Eaを10kJ下げることにより、T50が約50℃低下する、と見積もることができた。Eaは、化学反応系と活性種により規定される特性値であり、例えば活性の高い活性種を採用することによって低下させることができる。
▲2▼ 総合反応速度頻度因子kr0がライトオフ性能に与える影響
総合反応速度頻度因子kr0もライトオフ性能に影響を与える。kr0を変化させてT50の動きを計算したところ、図6に示すように、kr0を約10倍にすることにより、T50が約50℃低下する、と見積もることができた。頻度因子は、COとO2とが反応を始めるために接触する確率などを規定しており、例えば活性種を高分散化し、触媒反応が起こる表面積を拡大することによって、大きくすることができる。
▲3▼ 総合拡散係数kdがCO高温浄化性能に与える影響
総合拡散係数kdは触媒によるCOの高温浄化率に影響を与える。kdを変化させてC400(触媒温度400℃でのCO浄化率)の動きを計算したところ、図7に示すように、10%程度の拡散速度の向上によってC400が約2%改善する、と見積もることができた。触媒自体は高活性な状態にあっても、COの拡散が遅いときには浄化率が100%に届かない。kdは、このCOの拡散を支配しており、ハニカム担体のセル仕様や多孔質層の構成を変更することによって改善することができる。
(実施形態2)
本実施形態は、NOx還元触媒によるNOxの還元反応の解析に関する。NOx、HC及びO2を含むエンジンの排ガスが図1に示す触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程でNOxが還元されN2となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に多孔質層(ゼオライト)が形成され、この多孔質層に活性種(触媒金属Pt)が担持されたものである。
【0063】
−NOx浄化反応のモデルの設定−
酸素過剰雰囲気でのNOxの浄化反応機構には複数の説が存在しており、触媒活性種や排ガス条件によって浄化機構は異なると考えられている。そこで、モデルは有力なHC酸化中間体説によって設定した。すなわち、図8に示すように、流入ガス中のHC(g)が拡散によって多孔質層に吸着される。この吸着されたHC(s)が酸素と反応してHC酸化中間体HC’に変化する(反応1)。HC’は、流入ガス中のNOと反応してNOを還元する(反応2)一方、流入ガス中のO2によって酸化される(反応3)。図8において、kdは拡散速度定数、k1〜k3は反応1〜3の速度定数である。
【0064】
−NOx浄化反応速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0065】
・拡散速度式
d[HC(g)]/dx=kd・([HC(g)]−[HC(s)]) …(2−1)
kd=−kHC・GSA/V
kHC:HC(g)の拡散係数
r1:反応1の反応速度
r2:反応2の反応速度
r3:反応3の反応速度
また、拡散してきたHC(s)と反応1により失われるHC(s)とが等しいとすると次の式が成立する。
【0066】
−d[HC(g)]/dx=r1 …(2−5)
また、次の式が成立する。
【0067】
d[HC’]/dx=r1−r2−r3 …(2−6)
−d[NO]/dx=r2 …(2−7)
なお、以上では定常状態近似を行なっている。また、HC、NOの濃度に対してO2濃度は十分に高く定数とみなしている。
【0068】
さらに、上記反応1〜3各々にアーレニウスの式を設定することができる。
【0069】
k’1=k1・NPt・[O2]=k10・exp(−Ea1/RT) …(2−8)
k’2=k2・NPt =k20・exp(−Ea2/RT) …(2−9)
k’3=k3・NPt・[O2]=k30・exp(−Ea3/RT) …(2−10)
k10 :反応1の総合反応速度頻度因子
k20:反応2の総合反応速度頻度因子
k30:反応3の総合反応速度頻度因子
Ea1:反応1の活性化エネルギー
Ea2:反応2の活性化エネルギー
Ea3:反応3の活性化エネルギー
以上がこのモデルに必要な反応速度式になる。そうして、反応速度、ひいてはNOx浄化率を最終的に決定する係数は、kd、k10 、k20、k30、Ea1、Ea2、Ea3の7つである。
【0070】
−NOx浄化率特性式算出−
上記(2−1)〜(2−7)式よりなる方程式を解くことにより、触媒上の位置とHC(g)、HC’及びNOの各濃度との関係(位置・濃度特性式)が得られる。これは複雑な微分方程式の形になるため、数値計算を用いて当該関係を求めた。その結果を図9に示す。HCは触媒入口より反応して徐々に失われていき、それに伴ってHC’が生成してその濃度が増大していく。しかし、HC’は不安定であるから、反応2,3が始まり、HC’濃度は途中から減少に転ずる。NOはHC’の濃度が高まる領域(触媒上流端側の領域)で反応2により還元されていくが、排ガス流れ方向における触媒中央付近になるとHC’が殆どなくなり、そのため、触媒中央付近以降ではNOの実質的な還元が行なわれない。
【0071】
上記位置・濃度特性により、触媒入口及び出口のNO濃度、HC濃度からそれぞれ当該触媒によるNO浄化率及びHC浄化率を計算することができる。
【0072】
以上のように(2−1)〜(2−7)式を解くことにより、一定温度Tでの位置・濃度相関式が得られるが、(2−8)〜(2−10)式より各温度での反応速度定数が得られるから、これを用いて温度を変化させたときのNO及びHC各々の浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。これを図10〜図13に実線及び破線で示す。なお、図10〜図13の各々はPt担持量が相異なる例を示している。この点は後述する。また、図10〜図13の実線及び破線はいずれも後述する合わせ込みを行なった後のものである。
【0073】
NOの場合、同図に実線で示すように、低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇せず、低下する形となる。HCの場合、同図に破線で示すように、低温域では略零であるが、所定の温度域より立上り、昇温につれてある程度高い浄化率までくると、それ以上は上昇しない形となる(飽和する。)。
【0074】
−モデルの検証及び係数の設定−
触媒のPt担持量が異なる4つの仕様についてリグテストを行なった。すなわち、担体1L当たりのPt担持量が0.42g、2.1g、2.8g及び5.6gの4仕様とし、各触媒を模擬排ガス流通装置に取り付け、表2に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。模擬排ガスは、ディーゼルエンジンにおいて圧縮行程上死点付近での主噴射の後、膨張行程において後噴射を行なったときの排ガスに模した。
【0075】
【表2】
【0076】
結果は図10〜図13に実測プロットで示されている。図10はPt担持量=0.42g/Lの例、図11はPt担持量=2.1g/Lの例、図12はPt担持量=2.8g/Lの例、図13はPt担持量=5.6g/Lの例である。
【0077】
4仕様のいずれにおいても、係数kd、k10 、k20、k30、Ea1、Ea2、Ea3の操作により、上記温度・濃度特性による計算値を各リグテスト結果に合わせ込むことができ(リグテスト結果を再現でき)、上述のモデルが妥当であることを確認することができた。
【0078】
上記合わせ込みの結果、温度・濃度特性の各係数のうち、反応1の総合反応速度因子k10 を除く他の係数は、いずれのリグテストに対しても同じ値、
総合拡散係数kd=2.0×10−2
反応2の総合反応速度頻度因子k20=3.0×102
反応3の総合反応速度頻度因子k30=5.4×10−5
反応1の活性化エネルギーEai=190kJ
反応2の活性化エネルギーEa2=35kJ
反応3の活性化エネルギーEa3=0.0kJ
となった。一方、反応1の総合反応速度因子k10 はPt担持量によって相異なる結果となった。
【0079】
−反応速度解析の活用−
▲1▼ 触媒成分が働く素反応の特定
上述の如くPt担持量が異なるとき反応1の総合反応速度因子k10が変動するということは、当該因子によってのみPt担持量による性能差が現れるということになる。換言すれば、PtがNOx浄化反応において寄与するのは反応1であり、Pt担持量を変更すると、反応1の総合反応速度頻度因子が変化する、つまり、HCがHC’に酸化する反応1の活性表面積の大きさを変えることができる、ということである。
【0080】
このような活用は、Ptに限定されるものではなく、同様の合わせ込み手法によって、触媒を構成する他の成分、例えば活性種担持母材(例えばゼオライト)、或いは複数の活性種を併用する場合の各活性種が当該触媒反応のいずれの素反応にどのように働くかを特定することが可能になる。上記Ptの場合は特定の1つの素反応に働いているが、場合によって、複数の素反応に働く成分もあると考えられるが、その場合はその成分が働く複数の素反応を特定することができる、とうことになる。
【0081】
また、触媒を構成する成分の種類を変更して同様の合わせ込みを行ない、それらが特定の素反応に働くことを確認することができた場合には、それらは当該触媒反応では同じ働きをするものとして取り扱うことができる。
▲2▼ 触媒サイズがNOx浄化率に与える影響
NOx浄化率向上手段の一つとして、触媒のサイズを大きくすることが考えられる。この検討は、上述のモデル中のx項を操作して(触媒サイズを長さ方向に変化させて)NOx浄化率の温度特性変化を計算することによって行なうことができる。図14は触媒サイズを基準長さの2倍、4倍、6倍に変化させた結果を示す。これによれば、触媒サイズを拡大することはNOx浄化率の向上に有効であるが、ある程度以上拡大すると効果が飽和してくることがわかる。
▲3▼ HC/NOx比がNOx浄化率に与える影響
エンジン排ガス中のNOx浄化においては、上述の後噴射を利用して排ガス中のHC量、従って、NOx濃度に対するHC濃度の比HC/NOxを制御することができる。このHC/NOx比を変化させたときのNOx浄化率の温度特性変化を計算すると、図15に示す結果が得られた。同図によれば、HC/NOx比の増大によるNOx浄化率の改善効果は顕著であり、触媒サイズの場合とは違って、HC/NOx比を大きくすれば、それだけNOx浄化率が向上することがわかる。
(実施形態3)
本実施形態は、三元触媒によるガソリンエンジンの排気ガス浄化反応の解析に関する。CO、HC、NOx及びO2を含む排ガスが図1に示す触媒1に流入し、該触媒1を通過する過程でHC及びCOの酸化、並びにNOxの還元が行なわれ、H2O、CO2及びN2となって排出される。触媒1は、ハニカム担体の細孔面に多孔質層(アルミナ及びセリア)が形成され、この多孔質層に活性種(Pt及びRh)が担持されたものである。
【0082】
−三元浄化反応のモデルの設定−
当該モデルは図16に示すように設定した。すなわち、流入ガス中のCO(g)、HC(g)、NO(g)及びO2(g)が拡散によって多孔質層に吸着されてCO(s)、HC(s)、NO(s)及びO2(s)となる。CO(s)はO2(s)と反応し酸化されてCO2となる(反応1)。HC(s)はO2(s)と反応し酸化されてH2O及びCO2となる(反応2)。また、CO(s)はNO(s)と反応し酸化されてCO2となる一方、NO(s)は還元されてN2となる(反応3)。また、HC(s)はNO(s)と反応し酸化されてH2O及びCO2となる一方、NO(s)は還元されてN2となる(反応4)。
【0083】
図16において、dCOはCO(g)の拡散速度定数、dHCはHC(g)の拡散速度定数、dOはO2(g)の拡散速度定数、dNOはNO(g)の拡散速度定数、k1〜k4は反応1〜4の速度定数である。
【0084】
−三元浄化反応速度式の作成−
上記モデルに基づき次の拡散速度式及び反応速度式を作成する。
【0085】
・拡散速度式
d[CO(g)]/dx=dCO・([CO(g)]−[CO(s)]) …(3−1)
d[HC(g)]/dx=dHC・([HC(g)]−[HC(s)]) …(3−2)
d[O2(g)]/dx =d0・([O2(g)]−[O2(s)]) …(3−3)
d[NO(g)]/dx=dNO・([NO(g)]−[NO(s)]) …(3−4)
kCO:CO(g)の拡散係数
kHC:HC(g)の拡散係数
kCO:CO(g)の拡散係数
kNO:NO(g)の拡散係数
・化学反応速度式
r1=k1・[CO(s)]・[O2(s)] …(3−5)
r2=k2・[HC(s)]・[O2(s)] …(3−6)
r3=k3・[CO(s)]・[NO(s)] …(3−7)
r4=k4・[HC(s)]・[NO(s)] …(3−8)
r1:反応1の反応速度
r2:反応2の反応速度
r3:反応3の反応速度
r4:反応4の反応速度
また、定常状態近似を行なって次の式が成立する。
【0086】
−d[CO(g)]/dx=r1+r2 …(3−9)
−d[HC(g)]/dx=r2+r4 …(3−10)
−d[NO(g)]/dx=r3+r4 …(3−11)
−d[O2(g)]/dx =r1+r2 …(3−12)
さらに、上記反応1〜4各々にアーレニウスの式を設定することができる。
【0087】
k1=k10・exp(−Ea1/RT) …(3−13)
k2=k20・exp(−Ea2/RT) …(3−14)
k3=k30・exp(−Ea3/RT) …(3−15)
k4=k40・exp(−Ea4/RT) …(3−16)
k10 :反応1の総合反応速度頻度因子
k20:反応2の総合反応速度頻度因子
k30:反応3の総合反応速度頻度因子
k40:反応4の総合反応速度頻度因子
Ea1:反応1の活性化エネルギー
Ea2:反応2の活性化エネルギー
Ea3:反応3の活性化エネルギー
Ea4:反応4の活性化エネルギー
以上がこのモデルに必要な反応速度式になる。そうして、当該三元触媒反応の各成分の浄化率を最終的に決定する係数は、dCO、dHC、dO 、dNO、kd、k10 、k20、k30、k40、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4である。
【0088】
−浄化率特性式算出−
上記(3−1)〜(3−12)式よりなる方程式を解くことにより、触媒上の位置とCO、HC、NOの各濃度との関係(位置・濃度特性式)が得られる。これは複雑な微分方程式の形になるため、数値計算を用いて当該関係を求めた。その結果を図17に示す。
【0089】
上記位置・濃度特性により、触媒入口及び出口のNO濃度、HC濃度からそれぞれ当該触媒によるCO浄化率、HC浄化率及びNO浄化率を計算することができる。
【0090】
以上のように(3−1)〜(3−12)式を解くことにより、一定温度Tでの位置・濃度相関式が得られるが、(3−13)〜(3−16)式より各温度での反応速度定数が得られるから、これを用いて温度を変化させたときのCO、HC及びNO各々の浄化率特性(温度・濃度特性)も得られる。図18の実線は計算による温度・濃度特性(後述する合わせ込みを行なった後のもの)を示す。
【0091】
−モデルの検証及び係数の設定−
担体1L当たりの活性種総担持量を1.6gとし、活性種の担持量比を「Pt:Rh=5:1」とした。触媒は、大気雰囲気において1000℃の温度に24時間保持するエージング処理を施した後に模擬排ガス流通装置に取り付け、表3に示す模擬排ガス条件で、温度を種々に変えてリグテストを行なった。
【0092】
【表3】
【0093】
結果は図18に実測プロットで示されている。係数dCO、dHC、dO 、dNO、kd、k10 、k20、k30、k40、Ea1、Ea2、Ea3、及びEa4の操作により、上記温度・濃度特性による計算値を各リグテスト結果に合わせ込むことができ(リグテスト結果を再現でき)、上述のモデルが妥当であることを確認することができた。また、この合わせ込みの結果、反応4(HC+NO)の反応速度は略零になることがわかった。
【0094】
上記位置・濃度特性又は温度・濃度特性により、触媒条件、その他の条件を変更したときの三元浄化に及ぼす影響を見積もることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】触媒における排気ガス流れ方向と位置座標xとの関係を示す説明図。
【図2】本発明の実施形態1(CO酸化反応)に係る反応モデルを示す図。
【図3】実施形態1の計算による触媒位置・CO濃度特性を示すグラフ図。
【図4】実施形態1の計算による温度・CO濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図5】実施形態1の活性化エネルギーとCO浄化に関するライトオフ温度との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図6】実施形態1の総合反応速度因子とCO浄化に関するライトオフ温度との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図7】実施形態1の総合拡散係数と触媒温度400℃でのCO浄化率との関係を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図8】本発明の実施形態2(NOx還元反応)に係る反応モデルを示す図。
【図9】実施形態2の計算による触媒位置・ガス成分濃度特性を示すグラフ図。
【図10】実施形態2のPt担持量0.42g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図11】実施形態2のPt担持量2.1g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図12】実施形態2のPt担持量2.8g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図13】実施形態2のPt担持量5.6g/Lでの計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【図14】実施形態2の触媒サイズの違いがNOx浄化率の温度特性に与える影響を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図15】実施形態2のHC/NOx比の違いがNOx浄化率の温度特性に与える影響を計算によって求めた結果を示すグラフ図。
【図16】本発明の実施形態3(三元触媒反応)に係る反応モデルを示す図。
【図17】実施形態3の計算による触媒位置・ガス成分濃度特性を示すグラフ図。
【図18】実施形態3の計算による温度・ガス成分濃度特性と実測による同特性とを示すグラフ図。
【符号の説明】
1 触媒
Claims (10)
- 所定成分が含まれる流体が所定材料を担持した担体に接触しながら流れていったときの該流体中の所定成分の濃度変化を予測する方法であって、
上記流体と上記担体との接触によって上記所定成分の濃度が変化するモデルを設定するステップと、
上記モデルに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動するときの上記所定成分の濃度変化を表す速度式を作成するステップと、
上記速度式に基づいて、上記担体上での上記流体流れ方向における上記所定成分の濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中に、上記所定成分として、互いに化学反応する2種の成分A及びBが含まれ、
上記速度式には、上記成分Aと成分Bとの反応速度式が含まれていることを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体は気体であり、上記担体には上記所定材料としての触媒成分を含む多孔質層が形成されており、
上記速度式は、上記所定成分が上記多孔質層に拡散して捕捉されるときの拡散速度式と、この捕捉された所定成分が化学反応するときの反応速度式とを含むことを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、
上記流体中には、上記所定成分として、上記担体との接触によって物理的性質がA状態からB状態に且つ該A状態とB状態との濃度差に応じて変化する変態成分を含み、
上記速度式は、上記変態成分の状態変化速度式を含むことを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 請求項2又は請求項3に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、さらに、
上記位置・濃度特性とアーレニウス式とに基づいて、上記流体が上記担体に接触しながら移動したときの上記所定成分の濃度変化率の温度による変化を表す温度・濃度変化率特性を求めるステップを備え、
上記温度・濃度変化率特性に基づいて上記所定成分の濃度変化を予測することを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 請求項1に記載されている流体中の所定成分の濃度変化予測方法において、さらに、
所定の条件でテストを行なって上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、上記速度式の速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - HC、CO、NOx及びO2を含む排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなる三元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC、CO及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HC、CO、NOx及びO2各々が上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHC、CO、NOx及びO2が互いに化学反応する、というモデルに基づいて、上記HC、CO、NOx及びO2各々の拡散速度式、並びに各化学反応速度式を作成するステップと、
上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の、上記三元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC、CO及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - HC、NOx及びO2を含み且つO2がHC及びNOxに比べて過剰に含まれる排気ガスが、触媒成分を含む多孔質層が担体に形成されてなるNOx還元触媒に接触しながら流れていったときの上記HC及びNOxの濃度変化を予測する方法であって、
上記HCが上記多孔質層に拡散して捕捉され、捕捉されたHCと上記排気ガス中のO2とが反応してHCの反応中間体HC’が生成し、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のNOxとが反応してNOxが還元され、該反応中間体HC’と上記排気ガス中のO2とが反応して該反応中間体HC’が酸化される、というモデルに基づいて、上記排気ガスが上記NOx還元触媒に接触しながら移動するときの上記HCの拡散速度式、並びに上記反応中間体HC’の生成、上記NOxの還元、及び上記反応中間体HC’の酸化の各反応速度式を作成するステップと、上記拡散速度式及び反応速度式に基づいて上記HC及びNOx各々の、上記NOx還元触媒上での上記排気ガス流れ方向における濃度変化を表す位置・濃度特性を求めるステップとを備え、
上記位置・濃度特性に基づいて上記HC及びNOx各々の濃度変化を予測することを特徴とする流体中の所定成分の濃度変化予測方法。 - 所定成分が含まれる流体を触媒に接触させたとき、複数の反応が関与して最終生成物が得られる場合の反応速度解析方法であって、
上記各反応の速度式に基づいて上記所定成分の濃度変化特性を求めるステップと、
上記触媒中の所定材料の量を変化させた複数のテストを行なって、各材料量での上記所定成分の濃度変化を求めるステップと、
上記各テスト結果について、上記各反応の速度定数に含まれている各因子の値を変化させて、上記濃度変化特性に基づく上記所定成分の濃度変化と当該テスト結果とが一致する値を探索するステップと、
上記テスト結果に一致させるための数値が各テストで異なる数値になった因子を上記所定材料の量が関与する因子であると特定するステップとを備えていることを特徴とする反応速度解析法。 - 複合反応の反応速度解析方法であって、
反応物質が複数の素反応によって最終生成物になる反応モデルを設定するステップと、
上記反応モデルに基づいて上記複数の素反応各々の速度定数を反映させた上記反応物質の濃度変化特性を求めるステップと、
所定の条件で上記複合反応のテストを行なって、上記反応物質の濃度変化を求めるステップと、
上記各速度定数に含まれている各因子について、それらの値を変化させ、上記濃度変化特性による濃度変化が上記テスト結果と一致するようになる値を探索するステップと、
上記濃度変化特性によって上記テスト結果を再現することができたときに上記反応モデルが妥当であると判定するステップとを備えていることを特徴とする反応速度解析法。
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