近年、携帯型無線端末(以下携帯端末と称す)は、需要が増加する傾向にあり高性能なものの商品化が盛んに行なわれている。
商品化の傾向としては、人が持ち運びやすいような小型化、消費電流を下げ通話時間を長くするような低消費電力化、妨害波に強い高線形化などである。
このような商品を市場に提供する上で、全ての問題が解決したわけではなく、現在、個々の問題の解決のためのさらなる研究が進められている。
以下、図35〜図43を参照して従来の無線機について説明する。
図35に従来のヘテロダイン方式の無線機の送受信の構成を示す。
なお、この無線機の説明を行うにあたり、受信系については、直交復調方式を用いて直交準同期検波の構成として盛んに使用されているものを一例として挙げる。また、この無線機は、例えばPHS等で用いられている線形変調方式(π/4シフトQPSK変調方式)を用いることを前提にしている。
この無線機の場合、アンテナ101で受信された高周波信号は、無線部のNFを改善する目的の高周波増幅器102にて所定の利得が与えられ、その後、イメージ抑圧用の高周波フィルタ103を通過し、ローカル発振器125から供給される基準搬送波信号と周波数変換器104にて乗算され、中間周波数に周波数変換される。この後、周波数変換器105、106、ローカル発振器107、π/2移相器108から構成される直交復調部によってベースバンド周波数へ周波数が変換される。すなわち、ローカル発振器107から送出される中間周波数とほぼ同じ周波数で互いにπ/2の位相差のある基準信号と二つの周波数変換器105、106によってΙQのベースバンド信号が得られる。このΙQベースバンド信号には、低周波フィルタ109、110によって後段のA/D変換器113、114のためのアンチエリアジング処理が施される(フィルタリング)。なお、この低周波フィルタ109、110によってチャネル選択を行う場合もある。
フィルタリングされたIQ信号は、低周波増幅器111、112によって所定の利得が与えられる。この後、A/D変換器113、114によってディジタル信号に変換され、検波器117によってデータ信号に復調される。図35において、周波数変換器105、106の後段のコンデンサ119〜124は、DC(直流)成分除去の目的で挿入されている。
次に、従来の無線機の送信系について説明する。
ベースバンド信号発生部からの直交したデジタル信号IchおよびQchは、それぞれのデジタルアナログ変換器D/A161、162によりアナログ信号に変換される。ここで変換されたそれぞれの信号は、各ルートロールオフフィルタ159、160に入力され、これによりD/A161、162で発生した不要波が取り除かれると共にシンボル間の干渉を取り除くための第1の操作が行われる。この第1の操作の後の第2の操作は受信系のロールオフフィルタで行われる。
乗算器157、158、ローカル発振器163(シンセサイザ)、π/2移相器163および加算器156からなる直交変調器により、ローカル発振器の出力は、ベースバンド信号により変調され、IF信号が生成される。
このIF信号は、送信周波数と同じ周波数へ周波数変換するため、ローパスフィルタ155を介してローカル発振器125および周波数変換器154に入力されてRF信号に周波数変換される。RF信号は、バンドパスフィルタ153、可変減衰器152、電力増幅器151、方向性結合器172、バンドパスフィルタ150、送受切り替えスイッチ170を介してアンテナ101から出力される。送信電力は、電力増幅器151とフィルタ150の間にある方向性結合器172により感知され、電力検出器173により検出された電力を基に、制御信号部171から送信電力制御信号が可変減衰器152に入力される。低域フィルタおよびバンドパスフィルタ155、153、150は、不要輻射を避けるために用いられるものである。
以下、このような従来の無線機の問題点を、受信系、シンセサイザ(上記に記したローカル発振器を意味する)、送信系、アンテナの順に説明する。
まず、従来の受信系の問題点について説明する。
従来の受信系の問題点は二つあり、第1の問題点は、消費電流が大きくなっしまうことであり、第2の問題点は受信時に直流オフセット(以下DCオフセットと称す)が発生し受信特性を劣化させることである。
まず、第1の問題点について説明する。無線機の受信特性は、そのシステムに要求される性能を常に満たす必要があるため、無線機がおかれる最悪の電波環境に対応できるように設計されている。ここで言う最悪の電波環境の一例としては、例えば相互変調特性または隣接チャネル選択度で定義した不要波が存在する場合である。つまり、所望信号以外の不要信号がシステム帯域内に存在する場合、不要信号のレベルがシステムで定義された所要のビット誤り率を満足すべき最大値である場合である。
一般に、この最悪の電波環境でもシステムで定義された規格値を満足するため、無線機は、この最悪条件で常に動作させることを行なっている。したがって、この最悪な電波環境以外でも、この最悪条件を満たす性能で無線機を動作させている。ここで言う最悪の電波環境におかれた場合でも規格を満たすには、無線機の受信系の線形性を保つ必要がある。言い換えれば、受信系の歪みを規格を満足するように小さくする必要がある。これは、結果的に受信系を構成する回路ブロック、主に低雑音増幅器および周波数変換器の動作電流に関係することになる。
一般に、回路の線形性を高めるためには回路の動作電流を大きくする必要がある。このため、最悪な電波環境を常に想定した無線機は、必要以上の消費電力を費すことになる。なぜならば、無線機は常に最悪の電波環境にいることはなく、無線機が動作しているほとんどの時間は最悪の電波環境以外であるためである。次に、受信時に直流オフセット(以下DCオフセットと称す)が生じ受信特性を劣化させるという受信系の第2の問題点について説明する。
一般に、上述した周波数変換器、低周波フィルタ、低周波増幅器等のアクティブ回路においては、その出力に所望信号と重畳してDC成分が発生する。また、このDC成分はセルフミキシングによっても発生する。
ここで、セルフミキシングの現象を図36で説明する。
図36(a)に示すように、ローカル発振器107の出力が漏洩して周波数変換器104で反射し、反射成分401が周波数変換器105でローカル発振器107と再度乗算される。反射成分401とローカル発振器107から発振される信号は同一周波数であるため、周波数変換器105の出力にDC成分が発生する。図37は、DC出力305が重畳した周波数変換器105の出力(所望信号)301を示している。なお、符号304で示されている線は熱雑音のレベルを示す。
このDCオフセット出力は、受信誤り率の著しい劣化を生じるため、従来の無線機の受信部では、このDC出力を削除する目的で、通常ACカップリング(交流結合)用のコンデンサ(図35では符号119〜124)をベースバンド段に挿入している。
図38(a)で、ACカップル周波数特性が302となる様にコンデンサを挿入することにより、DC出力305を除去することができる。しかし、所望信号301の内の所望信号成分の一部303が削除されてしまう。すなわち図38(b)に示すノッチ306を生じる。このノッチは、当然熱雑音304にも生じる(307)。そのため、DC付近に所望信号成分の少ない変調指数の高いFSK信号などに対しては、返ってC/N特性が改善される場合もあった。
このACカップルを有効に用いてDCオフセット除去を行う方式は、既に提案されており、この方式は、特に従来ページャ等で使用されていた変調指数の高い2値FSKにおいて有効に活用できる。これは、DC付近の信号成分が少ないので、ACカップルによる信号成分の減衰が少なくて済むためである。
しかし、近年の高速データ伝送に用いられる変調指数の低いFSKや4値FSKにおいては、DC付近の信号成分が多く、実用上は問題がある。
受信部で発生するDCオフセットは、上述したように上記ヘテロダイン方式において問題視されていたが、昨今、移動通信分野等で使用されているダイレクト変換方式の場合には特に問題になる。このダイレクト変換方式におけるDCオフセットの問題は、へテロダイン方式とは異なる要素を持つため、以下に詳細に説明する。
従来のダイレクト変換方式の無線機(以下ダイレクトコンバージョン無線機と称す)は、外部からの無線入力信号(RF信号)とこれと同じ周波数のローカル信号とをミクサに与えることによって、無線周波数の信号を、直接、ベースバンド信号に変換する信号変換形態の無線機である。このダイレクトコンバージョン無線機の構成を図39に示す。
ダイレクトコンバージョン無線機において、ヘテロダイン方式と異なる部分は、図39に示すように、RF信号の中心周波数と同一の周波数を発振するローカル発振器130と、ミキサとしての周波数変換器2131、2132と、ローカル発振器からのローカル信号をπ/2だけ移相(位相をシフト)する移相器2133とを有していることであり、これによりRF信号を直接ベースバンド信号に変換することができる。
次に、このダイレクトコンバージョン無線機の動作を説明する。
図39に示すように、受信時に、アンテナ101で受信された高周波信号は、送受切り替えスイッチ170を介して高周波増幅器102に導かれる。ここで増幅された信号は、周波数変換器2131、2132にローカル発振器130および移相器2133よりのローカル信号と共に加えられる。周波数変換器2131、2132は基本的に3ポートのデバイスであって、RF、LO、そしてベースバンド信号の三つの端子を有している(端子名は図示せず)。高周波信号はRFに加えられ、また、ローカル信号はLOに加えられる。この結果、周波数変換された信号がベースバンド出力端子に発生することになる。
ところで、数学的に理想的なミキサは、それぞれの端子間のアイソレーションが無限大であり、ある特定の端子に加えられた信号は、それ以外の端子には現れない。
しかしながら、現実のミキサ、つまり周波数変換器2131、2132は、無限大のアイソレーションを取れるわけではないため、図36(b)のように、ローカル発振器130で発生したローカル信号は、破線402aの経路を辿ってアンテナ101に発生する。したがって、ダイレクトコンバージョン無線機は、受信時にアンテナ101からローカル信号を放射する。
このアンテナ101から放射されたローカル信号は、外部の反射体によって反射し、これがまたアンテナ101に受信され、図中、破線402bの経路を辿って、再び周波数変換器2131、2132に入力されることになる。各周波数変換器2131、2132に再び入力された信号とローカル信号とは全く等しい周波数の信号であるため、周波数変換器2131、2132のミキシング機能である乗算処理によって、各周波数変換器2131、2132のベースバンド出力端子には直流成分の出力が生じることになる。すなわち、所望の高周波信号が周波数変換されると同時に、自分自身のローカル信号の同士の乗算によって直流成分、すなわちDCオフセットが生じる。
また、増幅器102での反射およびフィルタ103での反射が起こった場合は、へテロダイン方式の場合と同様に、図36(b)の破線403、404の経路で直流オフセットが発生する。
図36(b)の破線402aの経路で発生したDCオフセットは、外部からのローカル信号の反射量、つまりアンテナ101の周りの反射物体によって変化してしまうので、破線403、破線404の経路で発生したDCオフセットまたは能動素子固有のDCオフセットよりも問題は大きい。
ダイレクトコンバージョン無線機の中でも、特に小型化の対象の携帯電話機などは、人が手で持って使用したり、かばんやポケット等に入れて持ち歩かれるためアンテナ101の外部の反射体の状況が時々刻々と変化する。したがって、ローカル信号の反射量も時変であり、DCオフセットも時々刻々と変化し、これが抑えきれずに受信感度の低下を招く。
このDCオフセットを補償するために、後段の回路上にキャパシタを設けているが、キャパシタの容量が固定であるため、時変であるDCオフセットの過渡応答によって受信誤り率が劣化してしまう。
このように従来の受信系では、低消費電流化と受信特性の改善というの二つの問題に全く対応できていないのが現状であり、特にダイレクト変換方式の場合はヘテロダイン方式に比べて問題が大きい。
次に、従来の無線機のシンセサイザについて説明する。
従来の無線機には、周波数シンセサイザが使用されるが、これは、外部から制御信号を与えることによって、安定かつ正確な周波数信号を容易に得ることができる信号発生器である。
従来の周波数シンセサイザの構成を図40に示す。
同図において、1101は温度補償型水晶発振器(以下TCXO)などの高安定な基準発振器、1103は基準分周器、1105は位相比較器、1107はループフィルタ、1109は電圧制御発振器(以下VCO)、1111は比較分周器である。
次に、この周波数シンセサイザの動作について説明する。
この周波数シンセサイザの場合、高安定な基準発振器1101の出力を基準分周器1103で分周し、この分周された信号を基準信号としている。この基準信号と、VCO1109の出力を比較分周器1111により分周した信号との位相は位相比較器1105によって位相比較され、二つの入力信号の位相差に応した電圧が出力される。ループフィルタ1107は、前記位相比較器1105の出力電圧を平滑化してVCO1109の制御電圧を発生する。このように位相同期ループ(以下PLL)を構成することでVCO1109から安定した周波数の出力信号が得られる。
さて、ここで、比較分周器1111の分周数をN1からN2にして周波数切替を行うと、位相比較器1105からは、二つの信号の位相差に応じた電圧が出力され、ループフィルタ1107を介して周波数同期及び位相同期がおこなわれる。この時の同期に至る時間は、ループフィルタ1107によって定められるループの自然角周波数ωnとダンピング係数ζによって決まる。一般に発振周波数が安定で雑音が少ない自然角周波数とダンピング係数を選択すると周波数切替時間が長くなる。
ところで、この種の周波数シンセサイザには、低位相雑音特性が要求されることから、周波数切替に時間がかかる。このため従来の周波数シンセサイザをTDMA方式の無線機に適用した場合、通話中に空きスロットの合間を利用して空きチャネルサーチを行うことができないという重大な欠点を有していた。
次に、従来の無線機の送信系について説明する。
図35において、周波数変換器154、可変減衰器152、電力増幅器151、送信電力制御回路171、送受切り替えスイッチ170等はそれぞれIC化が容易であり、IC化技術によりこれらの部品は小形化が行われてきた。
しかしながら、バンドパスフィルタ150、153、方向性結合器172および電力検出器173はIC化が困難であるため部品を単独でマザーボード上に実装する必要があった。このため、実装面積が増大した。例えば、方向性結合器は5mm×5mm程度のチップ部品である。また、電力検出器DETは、図41に示すようなダイオードスイッチによるものが用いられるが、ダイオードD1やキャパシタC1、C2、抵抗RESの実装面積を考えると、やはり5mm×5mm以上になってしまう。このため、小型化が必須である携帯型の無線機の体積が大きくなってしまうという問題があった。さらに、方向性結合器172による出力電力の損失を補償するように電力増幅器151の出力電力を大きくする必要があり、送信系の消費電力が大きくなってしまう欠点もあった。
次に、従来の無線機のアンテナについて説明する。
無線機を構成する部品の中では、携帯性を向上するという点から無線回路の小型化、中でもバッテリーとアンテナの小型化は急速に進んでいるものの、回路部自体の小型化のスピードは遠く及ばない。したがって、無線機全体として考えると、アンテナは、小形化および薄型化をよりいっそう進めていかなければならないものの一つである。
一方、携帯型の無線機では、アンテナに対する人体の影響が問題になっている。人体は、無線周波数の電波に対して、吸収または散乱を生じさせる。さらに人体は、近接するアンテナの動作インピーダンスを変動させる。これは、人体というものは、高周波的にみると、高誘電率を有する電波吸収体としてはたらいているからである。結果として人体によってアンテナの放射特性の劣化が生じてしまうことになる。
また近年の無線機の小型化、薄型化によってアンテナに耳がさらに近接する傾向にある。この近接は、人体によるアンテナ特性の劣化をさらに深刻なものにしている。
ここで、従来のPHS端末のアンテナ特性を測定した結果を図42、43に示す。なお、ここに示した実験データは、周波数2GHz程度の携帯無線機(PHS端末)のモデルを作って実験した結果である。
図42、43は、共に通話時の状態において水平面内の垂直偏波のパターンを示しているが、図43は図42に比べて小形したアンテナと筐体を用いた場合の図である。図43と図42の垂直偏波のパターンを比較すると、小形したアンテナと筐体を用いた場合(図43)、通常の大きさのアンテナと筐体とを用いた場合(図42)よりも利得がほぼ8dB程度劣化してしまうことが判る。
先に述べた通り、この劣化の原因のーつは、アンテナのインピーダンスが人体により変動することにある。ここで劣化する様子を詳しく説明する。なお説明にあたっては、アンテナを送信用として用いた場合を想定している。
アンテナから電波を放射させるためには、まずアンテナに電力が入力されなくてはならない。アンテナへの電力入力の最適条件は、給電線のインピーダンスとアンテナのインピーダンスが同じ値となっていることである。アンテナのインピーダンスが最適値から変動すると給電線を伝わってきた電力は、アンテナの入力端で反射してしまい送信アンプへ戻ってしまう。従ってアンプから出力された電力がアンテナへ入力されないことになる。また、この反射は場合によってはアンプを発振させるなど悪い影響を与えることになる。
以下、上記した問題を解決する手法として容易に類推可能なものと、その解決策に含まれる問題点を説明する。
アンテナの入力端における反射を抑圧する方法としてまず思い付くのは、アンテナを広帯域化することである。つまり人体の近接によって入力インピーダンスが変動しても、狭帯域なアンテナに比べて広帯域アンテナの方が変動が小さいことを利用する方法である。しかしながらアンテナの広帯域化はアンテナの体積を大きくさせることを要求する。従ってアンテナを広帯域化する方法は、最初に述べたアンテナの小型化、ひいては無線機全体の小型化と相反する結果を引き起こすことになる。
別の方法としては、人体に近接させたときに最適となるようにアンテナのインピーダンスを調整しておくことが考えられる。しかしながら、この手法は一概に良い方法とは言えない。なぜなら携帯無線機が使用されるのは、人体近接時ばかりとは限らないからである。人は携帯無線機を手で持ち歩いたりかばんの中に入れて持ち歩いたりするため、携帯無線機の使用状態が様々に変化する。この使用状態によって、アンテナのインピーダンスの変動量は変わる。これは使用状態によって近接する物質や距離が異なるからである。このように変動量がさまざまに変化する場合、すべての状態において最適な状態にアンテナのインピーダンスを調整することは非常に困難である。
さらに、アンテナに最も近接する人体部位として耳が上げられるが、耳の大きさは個人差が大きい。この耳の大きさの個人差によってもアンテナの性能が影響を受ける。耳の影響は、アンテナのインピーダンスを大きく変動させる。なぜなら耳の誘電率は80前後と非常に高く、これがアンテナに近接するとアンテナの電気的な長さが大きく変化してしまうからである。耳がアンテナに付いているか付いていないか、付いていなくても近いか離れているかによりアンテナのインピーダンスは大きく変化する。この耳のアンテナの相対位置は、耳の大きさによって左右される。このように、人体近接時にインピーダンスを最適化しようとしても、ある人に対して最適設計したアンテナが、別の人にとっては最適ではないというように、人により性能のばらつきが発生してしまう。
上記二つ以外の手法としては、アンテナの整合回路を使用状態に併せて最適制御することがいくつか考えられている。
その1つとして、通話ボタンの入り切りによりアンテナの整合回路を変更する方法である。これは、通話ボタンを入れている。つまり、通話しているのだからアンテナは耳に近接しているはずであるという推測によって成立する。
しかしながら、この場合、簡単な構成で実現できるという利点があるが、先に述べた耳の大きさの個人差に対して対応することができない。
2つ目としては、アンテナから反射してくる反射波のレベルを調べ、反射量によってアンテナの整合回路を変更する手法である。
しかしながら、この場合、反射量を調べるためにアンテナと無線回路の間にプローブを挿入することが必要となり、このプローブによって、反射損が生じたり、導体損失が発生し、送受信される高周波信号の損失を引き起こす。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る一つの実施形態の直接復調方式の無線機の受信系の構成を示す図である。なおここでは本発明の一実施形態として直接復調方式の無線機を例に挙げて説明するが、この他、ヘテロダイン方式等にも応用できる。
同図において、LNAは低雑音増幅器、BPFはバンドパスフィルタ、MIXは周波数変換器、BUFF1、2はそれぞれ緩衝増幅器、LPF1またはBPF1とLPF2は低域フィルタ(またはBPF2はバンドパスフィルタ)、RSSI1とRSSI2は電力検出器、10は減算器(または割算器)、11は判定装置(decision)、12は遅延器(deley)、13は電流制御手段(current-contol)である。LPF1またはBPF1は、信号帯域のみを通過させる特性を有するフィルタであり、RSSI1は信号帯域内の電力を検出するものである。LPF2またはBPF2は、システム全体の帯域を通過させる特性を有するフィルタであり、RSSI2はシステム帯域内の電力を検出するものである。LPF2およびBPF2の通過帯域は、システム帯域の全ての周波数を網羅する必要があるため、最低でもシステム帯域を通過するフィルタが必要となる。遅延装置12は、例えば電流制御を判定した時間から1フレーム分または1スロット分、入力信号を遅延させて出力する。受信系の回路ブロックの電流を減らすためには、無線機が現在、最悪な電波環境に存在しないことを検出する必要がある。これを行なうためにRSSI1とRSSI2とを設けている。RSSI1では所望波帯域内の電力を検出し、RSSI2ではシステム帯域内電力を検出する。判定装置11は、RSSI1で検出した電力とRSSI2で検出した電力の差分または比をとることによって無線機が存在する電波環境が最悪な状態か否かを判断する。実際上、電波環境が最悪でない場合に電流を例えば半分程度に減少しても回路が問題なく動作するという保証は全くないので、RSSI1とRSSI2との差または比をとった結果、得られた数値をいくつかの段階に割付け、その割付けた段階毎に電流を設定し低雑音増幅器LNAおよび周波数変換器MIXに流すようにする。上記RSSI1とRSSI2の差または比から設定される電流は、前もって回路ブロックの歪み特性を検査し、得られた結果を判定装置11内のメモリ上(図示せず)に作成したテーブルに書き込んでおくものとする。そして、そのテーブルの設定電流値を参照して低雑音増幅器LNAおよび周波数変換器MIXへ電流を流すものとする。なお割付ける電流の段階の数が少ない場合は、必ずしもテーブルを参照する必要はない。
続いて、図2のフローチャートを参照して、この受信系の動作を説明する。
なおこの受信系の動作を説明するにあたり、受信スロットは1フレームに一回のみの場合とし、その受信スロットのみを用いて制御を行なうものとする。また、説明を簡単にするため、割付ける電流の段階は、通常電流(最悪な電波環境用)と低電流モードの2段階のみとする。
この受信系の場合、図2に示すように、受信スロットの始まりから(slot start)、受信スロットの終了まで(slot end)、つまりslot endになってから(S201)、RSSI1により所望帯域内の電力を検出すると共に、RSSI2によりシステム帯域内の電力を検出し、互いの電力検出結果を減算(RSSI2−RSSI1)または除算(RSSI2/RSSI1)し、その減算結果(または除算結果)がある設定値A以上であるか否かを判定する(S202)。
ここで、例えば減算結果がある設定値A以上である場合(S202のYES)、判定装置が電波環境が悪いと判定し、通常電流を流す(normal mode)と判定する(S203)。その判定結果を次の受信スロットに適用する(S204)。
また、次の受信スロットで検出された減算値(RSSI2−RSSI1)または除算値(RSSI2/RSSI1)が設定値Αよりも小さい場合(S202のNO)、判定装置11は低電流モード(low current mode)と判定し(S205)、低雑音増幅器LNAおよび周波数変換器MIXの電流を減少させる(S206)。
電流を減少させる上では、例えば低雑音増幅器LNAおよび周波数変換器MIXのバイアス電流を設定するバイアス回路(図示せず)内の抵抗値または規定電圧を変えるようにする。以下同様に電流を調節する。なおこの実施形態では、1フレーム前に検出する場合について説明したが、この他、1スロット前に検出するようにもできる。この場合、1フレーム前の検出した所望波の出力レベルと現在のシステム帯域内の出力の差分または比をとることで判定を行うようにする。また発明を実施するにあたり、初期値の電流設定は通常電流モードとすることが望ましいが、前に述べた空きチャネル検出によって、全てのチャネルが空いていた場合、明らかにシステム内の不要波がない推定できるので、初期値を低電流モードとしても良い。
次に、LPF2およびBPF2は帯域がシステム全体の帯域であるため、所望波の帯域に比べてその帯域比分、白色雑音(熱雑音)が多くなってしまう。この白色雑音(熱雑音)が多くなった場合、判定装置11が誤ってシステム内に規定値以上の電波が存在すると判断してしまう恐れがある。これを回避するためにRSSI2から得られた電力検出値から、帯域の広がった分の白色雑音の電力成分を引き、RSSI2の電力検出値を補正する必要がある。この補正の手法としては、RSSI2で検出された電力値から白色雑音の電力成分を単に引いても良く、またRSSI2で検出された電力値を、白色雑音の電力分を書き込んだテーブルを用いて補正しても良い。
図3は本発明の無線機の受信系に関する他の実施形態を示す図である。
図3に示すように、この受信系は、図35の従来の受信系の構成に、Iチャネルの乗算器115、Qチャネルの乗算器116および記憶手段としてのメモリ118などを付加したものである。
メモリ118には、周波数変換器105からA/D変換器113に至るまでのベースバンド部のACカップルの総合周波数特性の逆特性のデータと、周波数変換器106からA/D変換器114に至るまでのベースバンド部のACカップルの総合周波数特性の逆特性のデータとが格納されている。そして、各逆特性のデータが各乗算器115、116にて所望信号と乗算される。A/D変換器113、114)の出力である所望信号には、図38(b)に示したように、ノッチ306が生じているが乗算器115、116でメモリ118の内容を乗算することにより原信号が再生される。
次に、図4〜図6を参照してメモリ118に記憶されている周波数特性について説明する。
図4(a)において、符号801は周波数変換器105出力からA/D変換器113出力までのベースバンド部のACカップルの周波数特性である。このACカップルの周波数特性801は、直流(DC)で0となる。この周波数特性801の逆特性は、図4(b)に示す特性802となり、直流周波数で無限大となる。この周波数特性(逆特性)802は、このままではメモリ118にデータとして格納することはできない。
そこで、この逆特性802のうち、要求される補償精度に応じて、直流成分の所定レベル以上を取り除いて逆特性として用いる。
図4(b)の例では、ACカップルの逆特性802のDC成分の一部分803を取り除き、残りの部分を逆特性804としている。したがって、この逆特性804をA/D変換器113、114の出力信号に乗算した後の所望波には、逆特性804の直流成分を打ち切った分の補償誤差が生じる。つまり、逆特性804のDC成分の打ち切り分の補償誤差によって、図5に示すように、所望波301と熱雑音304にそれぞれノッチ701、702が生じる。
しかし、不要DC出力は、完全に除去されており、信号成分のノッチ701も補償前の図38(b)に示したノッチ306と比べれば改善されることは明らかである。なお、基本的にIチャネルとQチャネルとのDCオフセット出力は異なるため、この自己補償本操作はIQ両チャネルについて行う必要がある。このDC出力の自己補償機能の利点は、図3でローカル発振器107から供給される基準搬送波周波数が所望値からオフセットした場合でも全く効果を損なわない点である。
例えばローカル発振器107の周波数が所望値からオフセットした場合、周波数変換器105、106からのベースバンド所望信号出力は、中心周波数が直流からオフセットする。この様子を図6に示す。
図6に示すように、所望信号601は、中心周波数が直流成分から符号602で示す幅だけオフセットしている。これはローカル発振器107の所望周波数からの周波数オフセットに相当する。しかし、この図6から分かるように、ベースバンドに周波数変換された信号の中心周波数が直流からオフセットした場合でも、原理的にDC出力305の周波数は、直流からオフセットすることはない。従って、コンデンサ119〜124のACカップル周波数特性302によって、DC出力305は、完全に除去される。その後に、メモリ118に格納されている逆特性804を乗算すれば良い。したがって、ローカル発振器107に周波数オフセットがない場合と同様に、所望信号301にノッチを生じることなくDC出力305を除去することができる。なお、この逆特性804のデータは、予め測定したデータをメモリ118に格納しておけば良い。
次に、図7を用いて本発明に関する無線機の受信系の別の実施形態について説明する。この実施形態の受信系は、図3に示した受信系にさらにスイープ発振器901および切替スイッチ902、演算器907を付加したものである。スイープ発振器901は、切替スイッチ902を介してIチャネルおよびQチャネルのそれぞれの回路系に接続されている。スイープ発振器901は、周波数変換器105、106出力からA/D変換器113、114出力までのACカップルの周波数特性801がフラットとなる周波数範囲までをスイープする。このスイープ操作によって、IチャネルとQチャネルのACカップルの周波数特性801を求めることができ、各A/D変換器113、114の後段に回路を分岐させて設けた演算器907に送られる。演算器907では、測定されたACカップルの周波数特性801から、図4の逆特性804を計算してメモリ118に格納する。スイープ発振器901を用いて周波数特性を測定する操作は、受信動作が行われていない時間区間に行うことができる。
このようにこの実施形態によれば、温度特性等によってACカップルの周波数特性801が変化した場合でも、より柔軟に逆特性804を求めてDCオフセット補償を行うことができる。
なおこの受信系は、へテロダイン方式のもので説明したが、直接変調方式においても用いることができる。但し、反射体による時変のDCオフセットの過渡応答には対応できない。しかし、無線システムによってはこの対策で十分な特性が得られることもある。
次に、直接変換方式で問題とされる反射体に起因する時変DCオフセットを除去する方法について説明する。
図8は本発明の無線機の一つの実施形態である直接変換方式の無線機(以下ダイレクトコンバージョン無線機と称す)の構成を示す図である。
同図において、101はアンテナ、170は送受信切り替えスイッチ、102は高周波増幅器、105、106は周波数変換器である。周波数変換器105、106は直流オフセット制御端子132−1を備えている。130はローカル発信器、131はπ/2移相器、109はベースバンドフィルタ、111、112は低周波増幅器である。低周波増幅器111、112は直流オフセット制御端子132−2を備えている。135、136はベースバンド信号処理回路であり内部に直流オフセット制御端子132−3を備えている。各ベースバンド信号処理回路135、136にはそれぞれ内部にアナログ/ディジタル変換器113、114および加算・減算回路133、134が設けられている。
137はこのダイレクトコンバージョン無線機の送信系である。この送信系137は、バンドパスフィルタ150、方向性結合器172、電力増幅器151、可変減衰器152、電力検出器173、電力制御回路171、加算器156、周波数変換器157、158、低域フィルタ159、160、デジタル/アナログ変換器、送信信号発生器138等から構成されている。139は直流オフセット制御回路であり、上記方向性結合器172と各制御端子132−2、132−2、132−3に接続されている。
続いて、このダイレクトコンバージョン無線機の動作について説明する。まず、送信の基本的な動作について説明する。
このダイレクトコンバージョン無線機において、送信時には、送受切り替えスイッチ102が送信系137側に切り替えられる。そして、送信信号発生器138からの送信波は、電力増幅器151で増幅され、方向性結合器172、送受切り替えスイッチ170を介して、アンテナ101から送信される。
ここでは、送信と受信とで同じ周波数を使用するΤDD方式を例に挙げて説明する。送信時には方向性結合器172によってアンテナ101からの反射電力が計測される。また、この方向性結合器172によりアンテナ101への進行電力も測定される。これらの測定結果は、直流オフセット制御回路139へ出力される。そして、直流オフセット制御回路139において入力された反射電力と進行電力とから送信時のアンテナ101の反射係数が求められる。TDD方式では送信と受信とで同じ周波数を使用するので、送信時の反射電力が大きい場合には、受信時のアンテナ101よりのローカル信号の反射が大きいことが分かる。逆に反射電力が少ない場合には、受信時のローカル信号の反射の大きさも小さいことになる。このため、送信動作を行うことにより、アンテナ101からの送信時の反射電力が分かり、これにより、受信系へのローカル信号の反射量の大きさを求めることができる。
直流オフセット制御回路139は、反射波が大きい場合には、直流オフセットを低下させる方向の極性で、かつ反射電力に比例した大きさの制御信号を周波数変換器105、106の直流オフセット制御端子132−1に出力する。これにより受信系におけるDCオフセットを低減することができる。
このようにこの実施形態のダイレクトコンバージョン無線機によれば、TDD方式で送受信を行う上で、送信時に方向性結合器172でアンテナ101への進行電力とアンテナ101からの反射電力とを測定し、それらを基にアンテナ101の反射係数を求め、それを受信系に反映させるので、送信直後の受信時から、外部の反射体による直流オフセットが軽減された状態で受信動作を開始でき、このような処埋を行わない場合と比較すると、受信開始時点の受信感度を改善することができる。また直流オフセットが軽減された状態から受信できるので、ACカップリング用のキャパシタを回路上に多数設ける必要もなくなる。
以上の説明では、周波数変換器105、106に対する制御を説明したが、低周波増幅器111、112、アナログ/デジタル変換器113、114に設けた直流オフセット制御端子132−2、132−3のうち、いずれか一方へ制御信号を出力することにより、周波数変換器105、106に対して制御した場合と同様の効果を得ることができる。これはミキサ、つまり周波数変換器105、106の後段で必要に応じて直流オフセットの補償を行っても良いからである。
次に、図9を参照して上記図8の実施形態の無線機の変形例について説明する。 図9は上記図8の実施形態の変形例を示す図である。
この変形例は、直流オフセット制御回路139と方向性結合器172とに間にメモリ141を設けたものである。このメモリ141は、アンテナ101からの反射電力もしくは反射係数に応じて、予め定められた制御電圧を発生するものである。したがって、アンテナ101の反射電力に応じて、この直流オフセットを低減する制御電圧を予め記憶させておけば、直流オフセット制御回路139には制御電圧が入力されるだけになり、直流オフセット制御回路139は、反射係数の演算を行うことがなくなり、図8の実施形態よりも短時間で直流オフセットの低減を行うことができる。
次に、図10を参照して上記図8の実施形態の無線機の他の変形例について説明する。図10は上記図8の実施形態の変形例を示す図である。
この変形例は、直流オフセット制御回路139を設けずに、ベースバンド信号処理回路135にて一括してDCオフセット低減処理を行う場合の例である。なお、この図10では、ベースバンド信号処理回路135のみを例示しているが、ベースバンド信号処理回路136の部分も同様である。
この場合、方向性結合器172により計測された電力増幅器151の進行電力やアンテナ101の反射電力に応じた値と、アナログ/ディジタル変換器113、114から出力された値とを加算・減算回路133、134で減算または加算することにより直流オフセットの低減を行うものである。これはアナログ/ディジタル変換器113、114の出力値から減算あるいは加算を行うことは、直流的な値のオフセットを行うこと、つまりアナログ的に直流オフセットを行うことと等価であるからである。
このようにこの変形例によれば、特別な直流オフセット制御回路139を周波数変換器や低周波増幅器というアナログ回路に接続することなく、上記同等の効果を得ることができる。なお、ここでは通信方式としてTDD方式を例に挙げて説明したが、同一の周波数帯を送受信で使用する場合にも送信時の反射量の計測によって同様の効果を得ることができる。
次に、無線機のシンセサイザについて説明する。
図11はこの無線機のシンセサイザの第1の実施形態を示す構成図である。
同図において、1101は基準発振器、1103は基準分周器、1105は位相比較器、1151は通常モード用ループフィルタ、1152は高速モード用ループフィルタ、1153はスイッチ、1109はVCO、1111は比較分周器である。なお基本的なループ動作については従来のシンセサイザと同じなのでその説明は省略する。
図11に示すように、このシンセサイザは、通常モード用ループフィルタ1、高速モード用ループフィルタ2およびスイッチ1153を備えている。スイッチ1153を通常モード用ループフィルタ1に切替えると、ループは通常モードとなり、VCO1109の出力は、低位相雑音特性のものとなるが、周波数の切替え時間は長い。
一方、スイッチ1153を高速モード用ループフィルタ2に切替えると、ループは高速モード(空きチャネルサーチモード)となり、VCO1109の出力の位相雑音特性は劣化するが、周波数切替え時間は高速になる。
次に、本発明の一実施例の無線機に用いるシンセサイザの動作について説明する。図12はTDMA方式のスロット構成を示す概念図である。
図12において、1160はフレーム、1161はスロットである。ここでは受信スロットR1と送信スロットΤ1を用いて通話を行うものとする。また、通話を行っている周波数をF1とする。
このシンセサイザの場合、以下のように空きチャネルのサーチを行う。
まず、受信スロットR1の期間は、位相雑音特性の良好な通常モードで動作する。この受信スロットR1の期間が終了すると同時にスイッチ1153によりループは高速モードに切替えられる。
そして、シンセサイザを通話チャネルとは異なる周波数F2に設定することによって空きチャネルサーチを行う。このとき、ループは高速モードになっているので所望の周波数へは高速で切替わり、速やかに空きチャネルサーチが行われる。この周波数F2にて空きチャネルサーチを終えると、別の周波数F3へ切替えて再度空きチャネルサーチを行う。このような動作を繰り返し複数の周波数で空きチャネルのサーチを行った後、送信スロットΤ1が到達する前に元の通話チャネルの周波数F1に戻る。同時にモードを高速モードから通常モードに切替え、送信スロットΤ1の期間は、再び位相雑音特性の良好な通常モードで動作する。以上の動作を繰り返すことによって、通話中に空きチャネルサーチを行うことができる。なお、空きチャネルサーチの際には、ループが高速モードであるため、シンセサイザのS/N、つまり位相雑音特性が良くはなく、受信感度が低下するが、空きチャネルがあるかどうか程度を判定するために必要なシンセサイザの位相雑音特性は通話時に比べて緩和されるため、空きチャネルサーチを高速モードで行っても差支えがない。また、以上の説明ではループの特性の切替えに、ループフィルタの周波数特性を切替えることで実現していたが、この他、例えば位相比較器の感度を切替えることによってループ特性を切替えても良い。さらに、空きチャネルサーチを例えば1スロット内で全て行なっても良い。
また、高速な空きチャネルサーチによって全てのチャネルが空いている状態であれば、システムの帯域近傍での干渉波がないと判定できるので、電波環境の検知する動作としてこの空きチャネルサーチを用いても良い。つまり、空きチャネルサーチの結果、例えば全てのチャネルが空いていれば、受信系の消費電流を小さくする制御が行える。
この場合、図1に示した判定装置11に空きチャネルサーチの結果を入力し、判定装置11において電流モードを判定し、LNAやMIXの電流を制御するようにする。
次に、図13〜図23を参照して送信系について説明する。
図13は電力増幅器または送受切り替えスイッチをIC化した場合の基本概念図、図14は図13の実施形態を拡張した他のIC化の例を示す図である。
図13において、1200はICを示す。このIC1200が例えば電力増幅器IC(以下PΑ−ICと称す)である場合、このIC1200の入力端子INには周波数変換器105、106からのRF信号が入力される。出力端子OUTにはPA−IC1200で増幅したRF信号が出力される。このIC1200内には、出力する電力を感知する感知手段(sensing means)1201が設けられており、感知手段(sensing means)1201からは感知した電力に比例した信号が出力端子OUTとは異なる端子から信号処理手段である電力検出器DET等に出力される。
また同図において、IC1200が例えば送受切り替えスイッチ(以下T/Rスイッチ)である場合、このIC1200の入力端子INには電力増幅器PΑから出力されたRF信号が入力される。OUT端子には、T/Rスイッチを介したRF信号が出力される。感知手段(sensing means)1201では、PA−ICと同様に、RF出力電力に比例した信号が感知され、その感知出力は、出力端子OUTとは別な端子から出力される。
図14を参照して図13の形態を拡張したもう一つの形態について説明する。この図14において、感知手段(sensing means)1201は、図13と同じものであるが、この場合、感知した信号を同じIC内に形成した信号処理手段である出力電力検出器DETに入力する。この出力電力検出器DET1202では、感知信号の入力によって出力電力を低周波に変換し、出力電力に比例した信号を電力制御回路(CONT)171に出力するものである。なお、ここで、出力電力検出器DET1202を信号処理手段であると述べているのは、出力電力検出器DETが周波数変換等の信号処理も行うことによる。
また、図13および図14の説明において、PA−ICまたはT/RスイッチICはそれぞれ単独のICを仮定しているものではなく、どちらか一方が少なくとも備えられているICであれば良い。
図15は図13に示した本提案に関する基本概念図をより具体化した回路を示す図であり、PA−ICを用いた例を示すものである。
周波数変換器105、106からのRF信号出力は、入力端子INに入力され、電力増幅器PΑ151に入力される。電力増幅器PA151の出力は出力端子OUTを介して次段のバンドパスフィルタBPFに出力される。
IC1200内の電源端子VDD1は電力増幅器PA151へ電源を供給する端子、グランド端子GND1は電力増幅器PA151のグランド端子である。外部電源端子VDDと外部グランド端子GNDを端子VDD1および端子GND1というように分離したのは、実際にこのような構成のICを実装するにあたり、回路間に寄生のインダクタ、抵抗、キャパシタ成分が生じることを示すためである。つまり、端子VDDと端子VDD1間には寄生によりインピーダンスZvdd1203が接続された状態と同様になり、端子GNDと端子GND1間には寄生によりインピーダンスZgnd1204が接続された状態と同様になる。
図中、端子s1は電力増幅器PA151のRF出力電力に比例した信号を取り出す端子であり、図13で説明した感知手段(sensing means)1201を介して電源端子VDD1に接続される。つまり、この例では、寄生インピーダンスZvdd1203と電力増幅器PΑの瞬時電流の乗算に比例した信号を電源端子VDD1で観測することを行っている。一般に電力増幅器PA151の瞬時電流の変化分は、電力増幅器PA151の出力電力に比例するので、端子VDD1で観測される交流成分は、電力増幅器PA151の出力電力に比例する。
上記感知手段(sensing means)1201を具体的に説明すると、端子VDD1で観測される交流成分を得ることで電力増幅器PA151の出力電力に比例した信号が取り出せることを考慮すると、最も単純なものでは、例えば図16(a)に示すように、端子VDD1と端子s1間にキャパシタC1等を設ければ良い。
この場合、端子s1の次段には、例えば従来例で示した電力検出回路DETを接続する。キャパシタC1は、方向性を有していないが電力検出を目的とした場合、必ずしも方向性をもった結合器が必要とは限らないので問題なく利用できる。この図16(a)の回路構成では、キャパシタC1を設けるだけの簡単な素子構成で感知手段(sensing means)1201を構成することにより、出力電力に比例した信号が取り出せる。なお、感知手段(sensing means)1201としては、この他、ダイオード、抵抗等の素子を利用しても良い。
ところで、PA−ICの実装の仕方によっては寄生インピーダンスZvdd1203や寄生インピーダンスZgnd1204の値が変わるため、比例係数が実装に依存することになる。このため、電力検出回路DETから出力される電力検出値は実装により変わってしまうこともある。また、端子VDD1から検出される信号は、RF信号出力電力の−50dB程度であり、信号レベルが比較的小さいため、電力検出回路DETから出力される低周波の検出信号を電力制御回路(CONT)171で受け取るには小さすぎる。
そこで、図16(b)に示すように、キャパシタC1に利得可変な高周波増幅器(AMP)1205を従属接続して端子s1に接続することにより感知手段(sensing means)1201を構成しても良い。
この場合、キャパシタC1の次段に可変利得高周波増幅器(AMP)1205を接続するのは、電力検出回路DETの出力信号を電力制御回路(CONT)171のダイナミックレンジに合わせるためである。可変利得高周波増幅器(AMP)1205には、利得制御用端子(gain adjustment)1206が設けられており、この利得制御用端子(gain adjustment)端子1206に電力制御回路(CONT)171から制御信号を入力することにより、制御信号に応じた出力信号が得られ、実装による出力電力検出信号の振幅の変動を抑えることができる。これにより、電力制御回路(CONT)171には信号レベルの高い安定した電力検出信号が入力され、電力制御回路(CONT)171において電力検出信号を十分検出できるようになる。
このようにこの図16(b)の回路構成では、キャパシタC1に可変利得高周波増幅器(AMP)1205を従属接続して用いることにより、電力制御回路(CONT)171では電力検出信号を十分検出でき、実用に耐え得るIC化を行うことができる。
なおIC内に形成した可変利得高周波増幅器(AMP)1205によって新たな消費電力が生まれ、全体の消費電力が幾分か増加するものの、この消費電力は、電力増幅器(PA)151で消費される電力に比べれば十分小さいので、送信系の消費電力としては問題にならないものである。
ここで、図17を参照して上記可変利得高周波増幅器(AMP)1205の具体的な内部構成について説明する。
図17に示すように、VDD2は電圧源である。この電圧源VDD2には、陽極側がトランジスタQ1のベース端子に、陰極側がIC内のグランド端子GND1にそれぞれ接続されている。トランジスタQ1のエミッタ端子は、入力端子inに接続されると共に、可変電流源I1を介してグランド端子GND1に接続されている。可変電流源I1には、上記利得制御用端子(gain adjustment)1206からの利得制御信号が入力される。トランジスタQ1のコレクタは、負荷インピーダンスZ1を介してIC内の電源端子VDD1に接続されている。また、このトランジスタQ1のコレクタは、バッファ用のトランジスタQ2のベース端子に接続されている。トランジスタQ2のコレクタ端子は、電源端子VDD1接続されている。トランジスタQ2のエミッタ端子は、定電流源I2を介してグランド端子GND1に接続されると共に、DCブロック用のキャパシタC3を介して出力端子outに接続されている。この回路構成において、利得Gは以下の式で近似して求めることができる。
G=gm(Q1)×Z1
=i1、dc×Z1/Vt (式1)
この式1において、i1、dcは可変電流源I1に流れる電流であり、Vtは熱電圧である。
したがって、利得制御用端子(gain adjustment)1206から入力される利得制御信号によって可変電流源I1の電流値i1、dcを変えることで、可変利得高周波増幅器(AMP)1205から出力する信号の利得を調整することができる。
次に、図13の基本概念に基づきT/Rスイッチと感知手段(sensing means)1201とをIC化して製造した例をいくつか説明する。
T/RスイッチをIC化する最も一般的な回路の一つに、Single-Ploe-Dual-Throw(SPDT)スイッチがある。このSPDTswichICの基本回路を図18に示す。
図18において、Tinは送信系入力端子、Rinは受信系出力端子である。端子ANTは、送信系の出力端子であると共に受信系の入力端子であり、アンテナ101に接続される。GND1はこのICのグランド端子である。端子cont11と端子cont2には相補の制御信号が入力され、制御信号により送受切り替えが行われる。端子cont1がハイ“Η”、端子cont2がロー“L”である場合、スイッチ素子Q11、Q12か導通、スイッチ素子Q10、Q13が開放となり、端子ANTから入力された信号は、受信系出力端子Rinに出力される。
一方、端子cont1がロー“L”、端子cont2がハイ“Η”である場合、スイッチ素子Q11、Q12が開放、スイッチ素子Q10、Q13が導通となり、送信系入力端子Tinに入力された信号が端子ANTに出力される。
このSPDTswichIC内に、送信出力電力に比例した信号を感知する感知手段としての感知回路を付加したものがT/RswichICであり、図19に示す。
図19に示すように、このT/RswichIC1200は、上記図18のスイッチ素子Q12のソース端子とIC内グランド端子GND1間に感知回路1201を接続したものである。感知回路1201の具体的な構成は図20および図21に示す。
感知回路1201の一例としては、例えば図20に示すように、スイッチ素子Q12のソース端子とグランド端子GND1間にインピーダンス回路Zを介挿して構成する。このインピーダンス回路Zは、抵抗、キャパシタ、インダクタ、それらの直列回路、並列回路などを含む。なお、outは出力端子である。
以下、このIC1200の動作を説明する。
送信時には、cont1はロー“L”、cont2はハイ“Η”であり、スイッチ素子Q12は開放状態となる。しかし、送信系入力端子TinにはRF信号が入力されるため、スイッチ素子Q12のソース、ドレイン間のキャパシタ、またはソース、ゲート間キャパシタとゲート、ドレイン間キャパシタの直列接続により、RF信号が端子outに漏れてくる。漏れ電流は、インピーダンスZを流れるので、漏れ電流に比例した電圧が発生する。この漏れ電流は、RF信号の電力に比例するので、この方法でRF電力に比例した信号を端子outから取り出すことができる。
また、上記感知回路1201の他の一例としては、図21に示すように、上記インピーダンス回路Zと出力端子out間に可変利得高周波増幅器(AMP)1205を介挿した接続しものである。可変利得高周波増幅器(AMP)1205は、インピーダンス回路Zに発生した信号を増幅するものであり、利得調整は、利得制御端子(gain adjustment)1206から利得制御信号、例えば印加電圧等を入力して行う。
次に、図22を参照して電力増幅器(PA)151の部分をIC化した場合、つまりPA−ICについて説明する。図22は電力増幅器(PA)151と感知手段(sensing means)1201と図14で示した出力電力検出器DET1202などの検出手段(detect means)とを1チップのICに形成したPA−ICを示す図である。このPA−IC1200において、検出すべき電力に比例する信号は、端子d1から出力され、電力制御回路(CONT)171に入力される。このように感知手段(sensing means)1201と出力電力検出器DET1202とを含む1チップのPA−IC1200を用いることにより、IC内部で電力を感知し検出する動作を行えるので、送信系を小型化することができる。
次に、図23を参照してT/RスイッチをIC化した場合、つまりT/RswichICについて説明する。図23はT/Rスイッチ回路と感知手段(sensing means)1201と出力電力検出器DET1202とを1チップのICに形成したT/RswichICを示す図である。
この場合も上記同様に端子d1から出力電力に比例した信号が出力される。なお感知手段(sensing means)1201の具体的な構成は、例えば図16、17、20、21で示したものと同様である。また、ここでは図示していないが、このようなICは、電力増幅器PΑやT/Rスイッチなどを単独にIC化することだけに限らず、どちらか一方が含まれるICであれば良い。
このように感知手段(sensing means)1201と出力電力検出器DET1202とを内部に形成した1チップのT/RswichICを用いることにより、IC内部で電力を感知し検出する動作を行えるので、送信系を小型化することができる。
さらに、図15、19、22、23等で示した電力の感知手段および検出手段は、RF信号のラインに直接接続することなく、例えば電源またはグランドに漏洩する電力を検出するので、方向性結合器等にとられる電力損失が無くなり、その分、送信系を低消費電力化することができる。
図24は図16で示した電力感知および検出用の素子をICチップ上に形成した場合の一つの実施形態を示す図であり、図24(a)は平面図、図24(b)は図24(a)のA−A断面図である。
図24において、1401は電力増幅器(PA)151に供給する第2層メタルの金属層を用いた電源配線でありIC表層に形成されている。1402は第1層メタルの金属配線でありIC内層に形成されている。電源配線1401とこの金属配線1402とで電力感知素子1402(sensing means)を構成する。1202は出力電力検出器DET(detect means)、1404は絶縁層である。
このようにIC内に電力感知および検出手段等を設ける場合、通常のICでは、低損失性の面から表層の電源配線の上に絶縁層を介して金属層を形成し、容量成分を形成することが多い。
しかし、この実施形態の場合、表層の電源配線1401の下、つまり内層に形成した第1層メタルの金属配線1402を加減して容量結合させる。
一般に、電源配線1401は、電源のインピーダンスを小さくするため、広い面積で形成する。したがって、第1、2層で構成する電力検出用のキャパシタの面積は大きくでき漏洩電力を拾いやすくなる。この特性は、電力検出に好都合となる。なお、従来のように金属層の割り当てが逆の場合にも効果を損なうことなく適用できる。なお、結合させる容量の調整は、例えば図25に示すように、内層に形成する第1層メタルの金属配線1402の線幅を電源配線1401よりも狭くして調整する。また図26に示すように、第1層メタルの金属配線1402の線幅を電源配線1401よりも広くして調整しても良い。さらに、図27に示すように、第1層メタルの金属配線1402の線長を調整しても良い。また、図28に示すように、第1層メタルの金属配線1402の形成方向を変えて調整しても良い。
最後に、図29〜図35を参照してこの発明の無線機の他の実施形態、例えば携帯型無線機のアンテナ部分について説明する。図29は本発明の一実施例に係わる携帯型無線機の構成を示す図である。
図29において、1500は筐体、1501は無線回路であり、例えば図8に示した周波数変換器157、158や可変減衰器152等が含まれるものである。1509は送信アンプ、101はアンテナ、1504は電流計、1503は制御回路、1502は整合回路、1505は電源回路、1506は電流測定用のプローブである。
電源回路1505は、無線回路1501と送信アンプ1509並びに制御回路1503に電源供給を行う。無線回路1501は、供給された電源をもとに、変調ならびに送信周波数に混成された情報信号を生成し、送信アンプ1509に送る。送信アンプ1509では送られてきた信号を増幅しアンテナ101へと送出する。アンテナ101は、増幅された信号を空中へ送り出すが、その一部は、反射波となって送信アンプ1509へ送り返され、送信アンプ1509の利得ならびに効率が変動する。この変動は、消費電流の変動を引き起こす。この変動が、電流計1504によって計測され、電流のレベルが制御回路1503に送られる。送信アンプ1509の変動の仕方には、電流が増える場合と減る場合とがあるが、ここでは、どちらか単調に変化するものを用いることにする。制御回路1501は、電流計1504から送られてくる信号の値を読み込んで整合回路1502上の可変部分を電気的に調整する。なお、整合回路1502上の可変部分としては、例えば半導体スイッチ、半導体によるバリキャップ等の可変容量を用いれば良い。
以下、実験により、携帯型無線機の使用状態によるアンテナ101の特性劣化を防ぐことができることを確かめたので、それを順に説明する。
図30は図29の携帯型無線機の回路構成に基づいて作成した無線機モデルを示す図、図31〜図33は図30の無線機モデルを用いて測定を行った結果のグラフである。
図30に示すように、無線機モデルは、筐体1500表面にスピーカ1511、マイク1512、アンテナカバー1514等を備えると共に、筐体1500内に送信アンプ1509を含んだ無線回路1501を備えている。アンテナカバー1514内には、コイル状のアンテナ(へリカルアンテナ)101が設けられている。
この無線機モデルの無線回路1501への給電は、外部に設置した定電圧源1510から給電線を筐体1500に接続して行った。この無線機モデルで消費される電流は、定電圧源1510が備える電流計1513の振れを読んで測定した。また整合回路1502は、アンテナ101のパラメータを直接変えることで簡易的に模擬した。無線機モデルの動作周波数は、2GHz近傍で筐体1500の大きさは、長さが一波長程度、幅が四分の一波長程度、厚さが二十分の一波長程度である。またアンテナ101は、十分の一波長程度の高さとした。
図31は、無線機モデルの使用状態と消費電流の関係を示している。図32は使用状態毎のアンテナ101の入力端における反射係数を示している。図33は使用状態と無線機モデルから放射される水平面内平均電力の関係を示す図である。図31と図32とをみると、アンテナ101の反射係数が使用状態によって変化し、使用状態に依存して送信アンプ1509の消費電流が増加していることが判る。また、図33からは、単体から手持ち、さらに通話状態となるにしたがって、アンテナ101からの放射電力は低下していることが判る。これらの現象は、アンテナ101を送信アンプ1509の負荷と考えると説明できる。つまり、負荷が変動したことにより、電力増幅器PΑ等の動作状態が変化し、この結果、消費電流が増加したと考えられる。またこのときの負荷の変動は、明らかに人体によって引き起こされたものである。
続いて、電流の値を読みながら、アンテナパラメータの最適化を行うことにした。消費電流は、単体から手持ちへ、さらに通話状態になるにつれて増加している。したがって、元の単体の状態に近づけるには、消費電流が低下するようにパラメータを設定し直せば良いと考え実行した。調整に用いたアンテナパラメータは、アンテナ長とした。これは、アンテナ長を変えることによってアンテナ101の共振周波数を変えることができるためである。アンテナ長を伸ばしたり縮めたりしたところ、アンテナ長を縮めることによって消費電流が減ることが判った。この状態で、アンテナ放射電力を測定したところ、アンテナ長を調整する前に比べて、放射電力も2dΒほど上昇することが判った。したがって、実験的に本提案方法によりアンテナ101の特性劣化が小さくなることが確かめられた。
この実験では、アンテナ長の調整を行ったが、それと等価な方法としては、整合回路1502の特性を可変制御することが考えられる。その具体的な構成を図34に示す。
図34において、1521は四分の一波長より短いアンテナ素子、1522は整合回路の一部である可変容量、1523は制御用の電源1526が直接高周波源1527に流れ込まないようにするためのパス用のコンデンサ、1524は高周波が制御回路1503に流れ込まないようにするためのインダクタンス、1525は可変容量1521へ与える電圧を制御する可変抵抗、1528は抵抗を示す。
可変抵抗1525の値を変えることによって可変容量の値が変化する。可変容量の値が増えれば、アンテナ101は、等価的に伸びたように見え、これにより共振周波数が下がる。可変容量の値が下がれば、アンテナ101は縮んだようにみえ共振周波数は上がる。このようにして、アンテナ101の共振周波数を変化させることによって、整合条件を変えることが可能になる。
このようにこの実施形態の携帯型無線機によれば、人体近接時におけるアンテナの特性を向上することができる。
以上の各実施形態により、携帯型無線機の低消費電流化、高効率化を図ることができる。また、受信部の誤り率を増加させる時不変および時変の直流オフセットを除去することができる。さらに、携帯型無線機の小型化を図ることができる。また、空きチャネルサーチの高速化を図ることができる。
101…アンテナ、102…高周波増幅器、103…高周波フィルタ、104、105、106、157、158…周波数変換器、108、131、2133…π/2移相器、109、110、159、160…低周波フィルタ、111、112…低周波増幅器、113、114…A/D変換器、115、116、2131、2132…乗算器、117…検波器、118、141…記憶装置、119、120、121、122、123、124…コンデンサ、107、125、130…ローカル発振器、126…周波数変換部、132−1、132−2、132−3…直流オフセット制御信号入力端子、133、134…加算器または減算器、137…送信ブロック、138…送信信号発生器、139…直流オフセット制御回路、151…電力増幅器、152…可変減衰器、156…変調器用加算器、161、162…デジタル/アナログ変換器、170…送受切り替えスイッチ、171…送信電力制御回路(CONT)、172…方向性結合器、301…所望信号、302…ACカップル周波数特性、303…信号削除部分、304…熱雑音、305…DC出力、306、307…ノッチ、401、402、403、404…反射成分、601…所望信号、701、702…ノッチ、801…ACカップルの周波数特性、802…ACカップルの逆特性、803…逆特性のDC成分の一部分、804…逆特性、901…スイープ発振器、902…切替スイッチ、903…Iチャネル試験信号入力、904…Qチャネル試験信号入力、905…Iチャネル周波数特性、906…Qチャネル周波数特性、907…演算装置、1101…基準発振器、1103…基準分周器、1105…位相比較器、1109…電圧制御発振器、1111…比較分周器、1107、1151…通常用ループフィルタ、1152…高速用ループフィルタ、1153…切り替えスイッチ、1160…TDMA方式に用いられる1フレーム、1161…TDMA方式に用いられる1スロット、1200…PA−IC(または送受切り替えスイッチIC)、1201…感知手段(sensing means)、1202…電力検出器DET(detect means)、1203…電源線に寄生するインピーダンスZvdd、1204…グランド線に寄生するインピーダンスZgnd、1205…可変利得高周波増幅器(AMP)、1401…第2層(表層)の電源線、1402…第1層(内層)の金属層、1404…絶縁層、1500…筐体、1501…無線回路、1504…電流計、1503…制御回路、1502…整合回路、1505…電源回路、1506…電流測定用のプローブ、1509…送信アンプ、1520…アンテナ素子、1521…可変容量素子、1523…容量素子、1524…インダクタンス素子、1525…可変抵抗素子、1526…直流電源、1527…高周波波源、1510…定電圧源、1511…スピーカ、1512…マイク、1513…電流計、1514…アンテナカバー、PA…電力増幅器、T/R…送受切り替えスイッチ、AMP…可変利得高周波増幅器、Z…インピーダンス回路、MIX…周波数変換器、LO…ローカル信号発生器、BPF…バンドパスフィルタ、CPL…カプラ、…送信電力検出回路(DET)、ANT…アンテナ、D1…ダイオード、RES…抵抗、Cn(n=整数)…キャパシタ、Qn(n=整数)…トランジスタ、Zn(n=整数)…インピーダンス回路、In(n=整数)…電流源。