JP2004006738A - 微細溝構造の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明における微細溝構造の形成方法はつぎの工程により構成される。気相エッチングが可能な基板上にマスクパターンを形成するのが第1工程である。つぎにマスクパターンを形成した基板を気相エッチング加工するのを第2工程とする。このエッチング加工後、エッチングされていない基板表面部分に気相エッチングに対するマスクとなる材料からなる薄膜を気相成膜するのが第3工程である。成膜を行った基板をさらに気相エッチング加工するのが第4工程で、第1工程から第4工程までを順次実施する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は気相エッチングを用いた微細構造の形成方法に関し、とくに形状制御性に優れた微細溝構造の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年情報通信分野の発展とともに、マイクロからナノメートルのスケールで形状制御された微細構造を有する光学素子の開発が進んでいる。また情報通信分野に限らずバイオ、医療の分野でも同様な微細構造からなる機能素子の開発が進んでいる。
【0003】
現在、代表的な微細加工技術にリソグラフィー技術がある。これは紫外光、電子線、エックス線のようなエネルギー波をそれに感光するレジスト材に照射することで所望のパターンを形成し、レジスト自体をマスクとするか、あるいは金属のような耐久性の高い材料にパターン転写したものをマスクとした後、エッチングにより基板材料に微細凹凸形状を形成する技術である。
【0004】
一方、エッチング技術については、基板に形成させる微細形状の複雑化、凹凸における高アスペクト比化、さらには被エッチング材料の多様化等の要求がある。このようなより精度の高いエッチングに対する要求に応える技術として、プラズマを用いた気相エッチングが用いられることが多くなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしこのようにマスクパターンが複雑化し、微細化すると、エッチング時のマスク材料の消耗が問題となってくる。とくに基板に深い溝を形成するような場合、マスク材料の消耗によって加工可能な溝深さが決まってしまうという問題が生じる。
【0006】
マスク材料と基板材料のエッチング速度の比を表す選択比の向上は、マスク材料やエッチングガス、プラズマ条件等の選定によりある程度は達成できるが、材料の物理的、化学的性質に頼るのは限界がある。
【0007】
マスク自体を厚くすることでマスクの耐久性を向上できるが、このマスクは予めフォトリソグラフィ等によりパターン加工する必要がある。有限な厚さのフォトレジストを用いて加工できるマスク厚には限界がある。また必要以上にマスクを厚膜化することは微細パターンの精度を損なうという問題を生じる。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決すべくなされたもので、マスクの耐久性に制限されずに気相エッチングによる微細溝形成を行える方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明における微細溝構造の形成方法はつぎの工程により構成される。気相エッチングが可能な基板上にマスクパターンを形成するのが第1工程である。つぎにマスクパターンを形成した基板を気相エッチング加工するのを第2工程とする。このエッチング加工後、エッチングされていない基板表面部分に気相エッチングに対するマスクとなる材料からなる薄膜を気相成膜するのが第3工程である。成膜を行った基板をさらに気相エッチング加工するのが第4工程で、第1工程から第4工程までを順次実施する。
【0010】
さらに第3工程と第4工程を順に1回以上繰り返すことが望ましい。この繰り返しによりさらにアスペクト比の大きい溝を形成することが可能となる。ここでアスペクト比とは溝の深さの溝幅に対する比である。
【0011】
気相エッチングをある程度行ったのち、マスクを再形成するため、何回でも繰り返して追加エッチング加工が行え、所望の微細溝構造をマスクの消耗に制約されずに形成できる。
【0012】
なお、最初の第3工程およびその後繰り返される第3工程において、基板に対して斜め方向から薄膜を構成する粒子を堆積させることが望ましい。
【0013】
これにより、マスクを再形成する際、マスク材料が加工中の微細溝底部に付着するのを防ぐことができ、追加エッチングに障害が生じることがない。
【0014】
第2工程および第4工程の気相エッチング方法としては誘導結合プラズマ反応性エッチングを用いるのが望ましい。
【0015】
さらに、第1工程において形成するマスクパターンを基板面内の1方向あるいは2方向に周期を有する直線状パターンとすると、周期的な微細凹凸構造が形成できる。
また、多層膜構造を有する基板に、上記微細溝の形成方法を適用することにより、2次元または3次元周期構造を形成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に図を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1に本発明の概念図を示した。
【0017】
まず加工する基板10表面にマスク材料からなる薄膜を所定の厚さ形成し、これにフォトリソグラフィーなどの方法で所望のマスク材12でマスクパターンを形成する(図1(a))。
初めに基板表面にフォトレジスト剤を塗布し、所望のパターンのフォトマスクを用いてフォトレジストを感光させる。これを現像することにより、フォトレジストによるマスクパターンが形成される。
【0018】
また必要に応じて、クロム、ニッケル、チタンのような金属マスクあるいはシリカ、チタニアのような無機材料マスクを用いることもできる。これらの場合には、それらマスク材を基板上に成膜し、その上にフォトレジストなどを塗布し、上記同様にパターンを形成する。その後このフォトレジストなどをマスクにしてマスク材をエッチングし、開口部を形成させる。
【0019】
またリフトオフ法によることもできる。反転パターンを形成したフォトレジストのうえにマスク材を成膜し、フォトレジストを除去することによりマスクパターンを形成する方法で、エッチング加工がし難い貴金属などのマスク材に用いると効果的である。
なお、通常のフォトレジストの露光は紫外光の照射により行うが、より微細なパターンの形成には電子線描画やエックス線露光が適している。
いずれの方法、マスク材を用いても本発明の適用は可能である。
【0020】
このマスクを用いて1回目のエッチング加工を予め定めた時間だけ行う。この時間はマスク材12がエッチングによって消耗し(12a)、マスクパターンが劣化しないように定める。
【0021】
エッチングには気相エッチングを用いる。気相エッチングを用いる理由はその形状制御性にある。液相エッチングではその等方的性質からマスク材の裏側への液のまわりこみが生じる。加工形状がミクロンオーダーでかつアスペクト比を求めない場合にはこのような性質は無視できる場合があるが、加工スケールがミクロンからサブミクロン、ナノメータと縮小するにつれて大きな問題となってくる。また結晶のように材料自体に異方性を有する場合は方向性のあるエッチングが可能であるが、そのような基板材料に限定されることになる。
【0022】
一方気相エッチングは主にイオン等の電荷を持ったガスをエッチングガスとして用いるため電場等の外場を操作することで、プロセスに方向性をもたせることが可能である。気相エッチングにはイオンビームエッチングやレーザアブレーションなどの物理的な方法と反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching, RIE)などの化学反応を利用する方法とがある。
【0023】
特に反応性イオンエッチングは、加工する材料に対して反応性を有する気体を選定し、様々な混合ガスを用いてエッチングを行うことができ、多様化する加工材料に対して有効なプロセスである。なかでも誘導結合プラズマ反応性エッチング(Inductive Coupling Plasma Reactive Ion Etching, ICP−RIE)はプラズマを高密度かつ安定に生成することから、エッチングレートの上昇およびエッチング面積の大面積化の点から有望である。また通常の対向式のRIEに比べ基板をプラズマに曝さないため、基板に与える損傷を少なくすることが可能である。
【0024】
さらにはフルオロカーボンガスを導入することで、カーボン重合膜を非加工部に堆積させエッチングの方向性を制御することもできる。つまり溝形成時に側壁に重合膜を形成させつつ、エッチングを進めることで高アスペクト比の溝を形成させることができる。この手法によれば加工時間に比例してより溝を深くできる。しかしその加工時間はあくまでマスク材が存在する間であり、従来技術で述べたようにマスク材の耐久性が重要になってくることに変わりはない。いずれにしても加工基板材料に適した方法を選択することが重要である。これらの方法により側面が基板表面に対してほぼ垂直な溝20の形成が可能である(図1(b))。
【0025】
つぎにエッチングされていない基板表面の部分10aに2回目のマスク形成を行う。このときマスク材が加工されている溝20部分の内部に付着しないように工夫する必要がある(図1(c))。このためマスク材を基板に対して斜め方向より成膜するのが望ましい。
【0026】
金属マスクの成膜には真空蒸着装置やスパッタリング装置を用いることができる。スパッタリング装置には対向式スパッタ、イオンビームスパッタ、ヘリコンスパッタ等様々な種類がある。その装置の構成により成膜の傾向が異なる。
【0027】
本発明で重要な点は成膜成分の方向性である。大きく分けると直線的に成膜成分が基板に到達するもの(方向性を有する)と、全方向より基板に到達するもの(方向性を有さない)がある。この成膜の方向性と被エッチング材のパターンの関係を考慮し、エッチングしたい部分にマスク材料が付着することを防ぐことが必要である。
【0028】
成膜が方向性を有する場合、基板面に対して垂直に成膜を行えば、当然、最初に加工した溝内にマスク材が付着してしまう。この問題は最初のエッチングによりある程度溝形成を行った基板に対して斜め方向から成膜することで解決できる。具体的には図2に示すように基板10を成膜粒子ビーム30の方向に対してある角度θに傾けて成膜させることでパターン形成部分24にある溝内への付着を防ぐことが可能である。
【0029】
一方、方向性を有さない場合、斜め方向からの成膜効果はある程度得られるが、やはり垂直成分による被加工部のマスクの付着は避けられない。ただしその付着の度合いは最初のエッチングによって形成された溝構造に依存する。
【0030】
このような場合には図3に示すように、加工した溝部のあるパターン形成部分24の前面に邪魔板32を設置することで、基板10面に対して垂直な成膜成分を除去し斜め方向からの成膜のみを行うことができる。斜め方向からの成膜成分の入射角度は、基板10面と邪魔板32との距離および邪魔板32の大きさによって決定される。
【0031】
いずれにせよ被加工部に成膜成分が到達する最大角度α(図4)と成膜成分の最小入射角度θには概略α<θの関係が成り立てばよい。逆にいえば1回目のエッチングにより形成された溝20の深さを考慮して、基板傾斜角度あるいは、邪魔板の大きさおよび基板との距離を調整することでマスク形成範囲を最適に制御することができる。
【0032】
この後、2回目のエッチングを行うことで、従来のマスク耐久性では達成できなかった高アスペクト比の溝22の加工が可能となる(図1(d))。このことはエッチングレートが非常に遅い、つまりマスクとの選択比が悪い基板材料においても溝加工が可能となることを意味する。例えばサブミクロンスケールでの周期的なラインパターンのように、マスク比表面積が大きいためその消耗が激しい構造においても深い溝の形成が可能となる。
【0033】
またマスクの再生およびその後のエッチングを交互に繰り返すことで原理的にはマスク耐久性の不足により所望の加工ができないという問題は解消される。マスク再生時にマスク厚を厚くするとパターン精度に支障がでる場合には、上記第4工程におけるエッチングを短時間に留め、繰り返し回数を増やすことでより高精度な加工を行うことができる。
【0034】
【実施例】
以下に誘電体多層膜に本発明の方法により微細溝を形成した例について説明する。
基板材料として石英基板上に真空蒸着させたシリカ(SiO2)とチタニア(TiO2)の交互多層膜(各膜厚310nm、20層)を用いた。
【0035】
まずレジストのパターニングを行った。電子線レジスト(ZEP520、日本ゼオン製)を多層膜基板上に厚さ約0.5μmでスピンコートした後、オーブンで180℃、20分間ベークし、その上に帯電防止剤(エスペイサー300Z、昭和電工製)を厚さ約50nmとなるようにスピンコートした。描画には電子線描画装置(ELS5700、エリオニクス製)を用い、 線幅0.5μmの直線パターンを形成させた。
【0036】
このパターニングをした試料にクロムをターゲットとし、スパッタリング装置(対向ターゲット式スパッタ装置, 大阪真空機器製作所製)によりクロムを厚さ約100nm成膜した後、リフトオフ法によりマスクパターンを転写形成させた。エッチングには誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング装置(RIE−200IP、サムコインターナショナル製)を用い、プラズマ中でC3F8およびアルゴンを反応性ガスとしてエッチングを15分間行った。このときの形成された溝の深さは約2.4μmで、アスペクト比は5程度であった。またこの時、クロムマスクは限界近くまで劣化していた。
【0037】
この試料を再度前記スパッタリング装置に取り付けた後、装置内に邪魔板を基板上面より5mmの位置に設けた。この邪魔板は5×20mm、厚さ0.5mmの長方形のステンレス板で、基板に形成させたラインパターンの長手方向と20mmの長辺が平行になるように配置した。クロムを25分間成膜することでマスクの再生を行った。この時パターン凸上部では約200nmのクロムが成膜された。前記エッチング装置にて再度エッチングを20分間行った。
【0038】
加工結果の写真(a)と模式図(b)を図5に示す。多層膜15に周期的な溝22の加工を施すことで2次元周期構造100を形成させることができた。この構造はいわゆるフォトニック結晶として作用する。またこのとき溝深さは4.5μmまで達し、アスペクト比は溝幅0.5μmで約9であった。
【0039】
【発明の効果】
本発明によると、従来マスク材の耐久性不足のため気相エッチングによって形成し得なかった高アスペクト比の溝構造を、工程中にマスクの再形成とエッチングを繰り返して行うことにより実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加工工程の説明図である
【図2】斜め成膜の説明図である
【図3】本発明の斜め成膜方法を示す模式図である
【図4】溝加工部の拡大模式図である
【図5】本発明の実施例として形成されたフォトニック結晶の外観を示す図である。
【符号の説明】
10 基板
12、14 マスク材
15 多層膜
20、22 溝
24 パターン形成部分
30 粒子ビーム
32 邪魔板
100 2次元周期構造
Claims (6)
- 気相エッチングが可能な基板上にマスクパターンを形成する第1工程と、前記マスクパターンを形成した基板を気相エッチング加工する第2工程と、前記エッチング加工後、エッチングされていない基板表面部分に前記気相エッチングに対するマスクとなる材料からなる薄膜を気相成膜する第3工程と、前記成膜を行った基板を気相エッチング加工する第4工程とを順次実施することを特徴とする微細溝構造の形成方法。
- 請求項1に記載の第1工程から第4工程までを実施したのち、第3工程と第4工程を順に1回以上繰り返すことを特徴とする微細溝構造の形成方法。
- 前記最初の第3工程およびその後繰り返される第3工程において、基板に対して斜め方向から前記薄膜を構成する粒子を堆積させることを特徴とする請求項1記載の微細溝構造の形成方法。
- 前記第1工程において形成するマスクパターンが基板面内の1方向あるいは2方向に周期を有する直線状パターンであることを特徴とする請求項1記載の微細溝構造の形成方法。
- 前記基板が多層膜構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の微細溝構造の形成方法。
- 前記第2工程および第4工程において、誘導結合プラズマ反応性エッチングを用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の微細溝構造の形成方法。
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- 2003-03-24 JP JP2003081340A patent/JP4124000B2/ja not_active Expired - Fee Related
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