JP2004003617A - 閉環状シール材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】帯状シール材を利用したシール材であっても、取り付け現場での作業負担を軽減する。
【解決手段】前記課題を解決できたシール材は、1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材である。このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0〜45°又は0°である。
【選択図】 図1
【解決手段】前記課題を解決できたシール材は、1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材である。このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0〜45°又は0°である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管や容器(タンクを含む)のフランジ部、マンホール蓋、その他産業用機器等の面接触部分のシールに特に有用な閉環状シール材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬、食品、化学等の分野において腐食性流体が流れる配管の継手部分には、耐食性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シール材が広く用いられている。
【0003】
例えば、焼結法により製造された未延伸のポリテトラフルオロエチレン(以下、「焼結PTFE」と称する場合がある)からなるシール材が使用されている。しかし、焼結PTFEは硬質であるため、配管の継手(フランジなど)の微細な凹凸に対する馴染性(追従性)が低く、締付けトルクを十分に上げないと十分なシール性能が得られない。そのため、継手とシール材との界面から流体が漏れる界面漏れと称する現象が生じる場合がある。特にグラスライニングされた継手は、比較的大きな凹凸を有しており、しかも強度が低いために締付けトルクを上げることが困難であるため、継手に対する密着性の優れたPTFE製シール材が強く求められている。
【0004】
比較的低い締付力で、継手との密着性を上げることができるPTFE製シール材として、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下「ePTFE」と略記する場合がある)製のシール材が注目されている。ePTFE製のシール材は、焼結PTFE製と比べると軟質で、シール材の厚さ方向に容易に変形できることから、継手に対する密着性が高くなっており、優れたシール性を有している。例えば、特許文献1には、ePTFEフィルムを所定厚さにまで積層一体化したePTFEフィルム積層体を、リング状等に打ち抜いたePTFE製シール材が開示されている。図33は、前記打ち抜きによるシール材の製造方法について説明するための概略斜視図である。打ち抜き法では、ePTFE製フィルムを複数枚積層してなるシート状の積層体10からリング状物20を打ち抜くことによってシール材を製造している。しかし、この打ち抜き法によればシートサイズ以上のシール材を打ち抜くことができないため、大口径のガスケットを作ることができない。また打ち抜き後の積層体10は、未利用のePTFEがまだ多く残っているにも拘わらず、他に用途がないために廃棄されており、経済的でない。
【0005】
図34は、ePTFE製リング状シール材の他の製造方法について説明するための概略斜視図である。この例では、ePTFEフィルムをマンドレル50に巻回積層することにより積層円筒体11を作製し、この積層円筒体をシール材の厚さpに相当する間隔で切断することによってリング状シール材を製造している。しかしながら、このような製造方法でも、継手の内径等に応じて各種の径を有するマンドレルを予め準備しておく必要があり、経済的でない。
【0006】
一方、リング状シール材とは別に、帯状シール材(ロッド状シール材、テープ状シール材など)が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。このシール材は、ロッド状又はテープ状にPTFEを押し出し成形した後、長手方向に一軸延伸することによって製造されている。また二軸延伸したPTFEフィルムを積層・焼成(密着)し、帯状にカットすることによっても製造されている。帯状シール材は、継手(フランジ等)の大きさに合わせて適当な長さにカットし、フランジのシール面に沿って貼り付けていきながら最終的に長手方向の両端部を重ね合わせてリング状にして使用するものであり、どのような形状の継手にも無駄なく利用することができ、経済的である。
【0007】
図35は、前記特許文献5に開示されているテープ状シール材30の概略斜視図である。このシール材30は、2軸延伸したePTFEフィルムを積層した積層シートを所定幅qでスリットしたものであり、積層面の一方に粘着剤層(図示せず)がさらに積層されており、この粘着剤層の表面は離型紙(図示せず)で保護されている。
【0008】
しかし帯状シール材は、取付現場での閉環作業を強いるだけでなく、両端部を重ね合わせる際には重ね合わせ部からの漏れを防ぐ必要があるため、作業者に高度なスキルを要求する。
【0009】
【特許文献1】
実開平3―89133号公報
【特許文献2】
特開昭54−145739号公報
【特許文献3】
実開昭60−75791号公報
【特許文献4】
特開昭62−108464号公報
【特許文献5】
米国特許第5964465号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、帯状シール材を利用したシール材であっても、取り付け現場での作業負担を軽減することができるシール材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の閉環状シール材とは、1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材であって、このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0〜45°である点に要旨を有するものである。また本発明の閉環状シール材は、前記仰角が0°である点に要旨を有するものである場合もある。本発明によれば、シール材の幅wと厚さt(w/t)が5以上であっても、またシール材の内周の直径xと幅wとの比(x/w)が15以下であっても(概略円環状シール材の場合)、仰角を0°とすることができる。仰角が0°の閉環状シール材は、矩形環状であってもよく、コーナー部内周の内接円の半径は10mm以下(好ましくは0mm)であるのが望ましい。
【0012】
前記環状部は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の積層構造を有している。前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層は、幅w方向に向けて積層されていてもよく、厚さt方向に向けて積層されていてもよい。幅w方向に向けて積層されている場合、積層された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の間に、非多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が介挿されているのが望ましい。
【0013】
前記帯状体の周方向の少なくとも片端部はテーパーカットされているのが望ましく、このテーパーカット面が帯状体の接合部の少なくとも一部をなすものであるのが望ましい。前記帯状体の両端部は、例えば、下記(1)〜(3)のいずれかによって接合できる。
【0014】
(1) 両面粘着テープ
(2) 接着剤
(3) テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体フィルム及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルムから選択された少なくとも1種を介した熱融着又は超音波溶着
前記閉環状シール材は、外周面と直交する環状平坦面のどちらか一方の面に接着層が形成されていてもよい。
【0015】
仰角が0〜45°の閉環状シール材は、以下のようにして製造できる。すなわち、得られる閉環状シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系を基準にして方向を説明したとき(以下、同じ)、厚さt方向の長さが得られる閉環所シール材の幅wより小さいものである(従って該厚さt方向の長さはシール材の厚さtに等しい)延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体(以下、薄肉帯状体と称する場合がある)を幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該薄肉帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。また前記薄肉帯状体の周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前のいずれの段階で行ってもよい。
【0016】
また仰角が0°の閉環状シール材は、以下のようにして製造できる。すなわち厚さt方向の長さが得られる閉環状シール材の幅w以上の長さである1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン体(帯状体、板状体など;以下、前記帯状体を厚肉帯状体と称し、前記板状体を厚肉板状体と称し、これら厚肉帯状体及び厚肉板状体を厚肉体と総称する場合がある)を幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該厚肉体を仮固定し、次いで熱セットし、得られた熱セット体を所定厚さ(シール材の厚さ)tにスライスすることによって製造できる。なお前記厚肉体(又はそのスライス体)の周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前のいずれの段階で行ってもよいが、好ましくはスライス後に接合する。
【0017】
なお上述したように、本明細書では、シール材の幅w方向、シール材の厚さt方向、及びシール材の周方向からなる座標系(以下、単にシール材座標系と称する場合がある)を基準にして方向を示す場合がある。
【0018】
また本明細書では、用語「環」は「ひとまわり」の意味で使用し、円形状に限定されない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
[閉環状シール材]
図1は、本発明の閉環状シール材21の一例を示す概略斜視図であり、図2は前記閉環状シール材21を接合部21dで分断したときの概略斜視図である。この図2から明らかなように、閉環状シール材21は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製帯状体31で形成されており、この帯状体31の周方向の両端部31a,31bが接合部21dに相当する。
【0021】
そして本発明の閉環状シール材21は、環状平坦面21aの幅w(シール材の内周部から外周部までの幅w)が、外周面21bの厚さt(以下、「シール材厚み」と称する場合もある)より大きくなっており、概略平板状である。このような帯状シール材を閉環した概略平板状のシール材は、一般には、内周部に比べて外周部が大きく引っ張られているため、収縮方向(図1の矢印で示す方向)に変形しやすい。すなわち図3に示すように、環状平坦面21aが起立して、外周面の厚さtが大きい概略縦筒体22に変形しやすい。ところが本発明の閉環状シール材21は、適度なくせがつけられており、概略縦筒体に変形することなく概略平板形状を維持できる程度に形がセットされている。すなわち、上述した帯状シール材をフランジに貼り付けて環化していく場合と異なり、本発明の環状シール材は支持されるものがなくても概略平板形状を維持できている点に特徴がある。そしてこの概略平板形状の維持を可能にするのは、帯状体を構成するePTFEの特性に由来するものと考えられる。後述するePTFEのノードとフィブリルから成る多孔質構造は、帯状体を環化するときに生ずる外周部の伸びや内周部の圧縮といった応力を吸収するだけの柔軟性と強度を備えている。なお前記シール材21は、ePTFEフィルムで形成される層21cが、環状平坦面21aの幅w方向に積層されている。
【0022】
このようなシール材は、帯状体を利用しているにも拘わらず概略平板状を維持しているために、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に取り扱うことができる。そのためフランジなどの被シール箇所への取り付け作業を軽減することができる。図4は、前記シール材21のフランジへの取り付け方を説明するための概略斜視図であり、図5は前記シール材21が取り付けられたフランジを示す概略断面図である。図4に示すように、閉環状シール材21を使用する場合、締め付け具(この例では、ボルト及びナット)の取り外し等によってフランジ61,62を少し割るだけで、フランジ61,62間の僅かな隙間にシール材21を挿入することができるため、フランジ61,62を大きく割って作業スペースを確保する必要がある帯状シール材に比べて作業を簡便化することができる。
【0023】
また帯状シール材とは異なり、閉環の失敗(接合の失敗)によるリークの虞がないため、作業者に高度なスキルを要求することもない。さらには、ePTFEを用いた閉環状シール材は、一般には、柔らかいために大口径とするためには金属製リングなどでサポートしておく必要があるものの、本発明の閉環状シール材は所定形状を維持可能であるため、必ずしも金属製リングなどを必要とはしない。なおこの例では、環状平坦面21aがシール面となっている。そして閉環状シール材21をフランジに適用する場合、図5に示すように、ePTFEは、流体の漏れ方向(図5の矢印で示す方向)と直交するように積層されている。
【0024】
環状平坦面の幅wがシール材厚みtよりも大きい程、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。幅wと厚みtとの比(w/t)は、例えば、1.0超、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。なお前記比(w/t)は、通常、50以下(例えば、10以下)である。
【0025】
前記幅wは、例えば、5mm以上(好ましくは10mm以上)、100mm以下(好ましくは75mm以下)の範囲から選択できる。厚みtは、例えば、0.5mm以上(好ましくは1.0mm以上)の範囲から選択できる。
【0026】
またシール材が円環状である場合、内径(内周の直径)xが環状平坦面の幅wよりも小さいほど、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板形状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。内径xと幅wとの比(x/w)は、例えば、100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。なお前記比(x/w)は、例えば、3以上程度(特に5以上程度)である。
【0027】
前記内径は、例えば、15mm以上、好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上(特に200mm以上)である。内径の上限は特に限定されないが、ニーズを考慮すると通常3000mm以下程度である。幅wが大きい程、厚みtが小さい程、また内径が小さい程、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。
【0028】
前記図1のシール材21においては、帯状体31(図2参照)の両端部31a,31bにテーパーカット面が形成されており、このテーパーカット面が重なり合って接合されている。テーパーカット面を形成することによって接合部21dからのリークをより確実に防止できる。また接合面の面積を増やすことができ、接合の信頼性を高めることもできる。なおテーパーカット面は、帯状体の接合部21dの少なくとも一部をなしていればよい。例えば、テーパーカット面は、必ずしもぴったりと重ね合わせる必要はなく、ずらして重ね合わせてもよい。テーパー角度θ1は特に限定されないが、例えば、5〜45°程度である。また前記図1の例では、帯状体31の周方向の両端部31a,31bにテーパーカット面が形成されていても、片端部のみにテーパーカット面が形成されていてもよい。
【0029】
なおテーパーカット以外の方法(例えば、片側の端部にV字カットを形成し、もう一方の端部に逆V字カットを形成して噛み合わせる方法など)で接合面積を増やしてもよい。
【0030】
さらには必ずしも接合面積を増やす必要はなく、概略直角断面同士を接合してもよい。本発明の閉環状シール材は、後述するように、芯材として使用し、その表面を焼結PTFEで被覆する場合があり、かかる場合には必ずしも強い接合強度は必要ではない。
【0031】
本発明の閉環状シール材は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製である限り特に限定されず、例えば、1軸延伸PTFE製であってもよく、2軸延伸PTFE製であってもよい。1軸延伸PTFEは、ミクロ的には、延伸方向と略直交する細い島状のノード(折り畳み結晶)が存在し、このノード間を繋ぐようなすだれ状のフィブリル(前記折り畳み結晶が延伸により解けて引出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している点にミクロ的な特徴がある。また2軸延伸PTFEは、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている点にミクロ的な特徴がある。
【0032】
ePTFEの平均孔径は、延伸倍率に応じて適宜設定でき、例えば、0.05〜5.0μm程度、好ましくは0.5〜1.0μm程度である。後述するように本発明ではePTFEフィルムを積層することによってシール材を形成することがあり、平均孔径が大きすぎると、フィルム同士の接触面積が小さくなってフィルム同士の密着性が低下する。また平均孔径が大きすぎると、流体がシール材内部を通過する漏れ(浸透漏れ)が発生しやすくなり、シール性が低下する。一方、平均孔径をより小さくするには、製造上の制約がある。
【0033】
なお平均口径は、コールターエレクトロニクス社のコールターポロメーターを用いれば測定できる。
【0034】
ePTFEの空孔率も、延伸倍率に応じて適宜設定でき、例えば、10〜95%程度、好ましくは30〜85%程度の範囲から選択できる。空孔率は、シール材の使用条件(締付け部材の表面粗さ、締付け力等)に応じて選択することが好ましい。空孔率の増加に従って軟質になり、粗い面に対しても小さな締付け力でシール性を発揮できる。また空孔率の減少に伴って、浸透漏れを起こしにくくなる。
【0035】
なお前記空孔率は、多孔質PTFEの質量Wと、空孔部を含むみかけの体積Vとを測定することによって求まる嵩密度D(D=W/V:単位はg/cm3)と、全く空孔が形成されていないときの密度Dstandard(PTFE樹脂の場合は2.2g/cm3)を用い、下記式に基づいて算出することができる。
【0036】
空孔率(%)=[1−(D/Dstandard)]×100
本発明の閉環状シール材は、ePTFEフィルムを積層した積層構造であってもよく、比較的厚いePTFEフィルム(テープ)を単独で用いた非積層構造であってもよい。なお1軸延伸又は2軸延伸されたePTFEフィルムを積層することによって得られる積層帯状体を使用することによって、積層構造にすることができる。好ましい閉環状シール材は、積層構造タイプ(特に2軸延伸タイプのePTFEを用いた積層構造タイプ)である。
【0037】
ePTFEフィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、5μm以上(特に15μm以上)、500μm以下(特に150μm以下)である。
【0038】
ePTFEフィルムは、前記図1に示すように環状平坦面21aの幅w方向に積層されていてもよいが、シール材の厚さt方向に積層されていてもよい。図6は、このようなシール材25の概略斜視図であり、図7はこのシール材25の装着状体を示す概略断面図である。図6,7に示されるように、外周面25bの厚さt方向(シール材の厚み方向)にePTFEフィルムが積層されているシール材25を用いると、ePTFE層は流体の漏れ方向(図7の矢印で示す方向)と並行することとなる。このような場合であっても、締付荷重を高めに設定すれば、空孔を圧潰でき、浸透漏れを防止することができる。なお、ePTFEフィルムが厚さt方向に積層されている場合、2軸延伸PTFE製のシール材を使用するのが望ましい。2軸延伸PTFEを使用すると、環状平坦面25aの幅w方向の強度を高めることができ、締付け圧によるクリープ(コールドフロー)変形を抑えることができる。
【0039】
ePTFE製のシール材は、柔軟性に優れるため、フランジ等の被シール部材とePTFE製シール材の間からの漏れ(界面漏れ)を高度に防止できる一方、多孔質構造を有しているため、締付荷重が低いときは上述したように浸透漏れが発生する場合がある。そこで、本発明のシール材は、非多孔質構造のフィルムと併用することによって、浸透漏れを確実に防止できるようにしておくのが望ましい。例えば、本発明の閉環状シール材を芯材とし、この表面(例えば、内周面及び環状平坦面)を焼結PTFEで被覆することによって、浸透漏れを確実に防止できる。また前記図1に示すようなePTFEフィルムが幅w方向に積層されているようなシール材21において、ePTFEフィルムの一部に代えて非多孔質フィルムを挿入すると、図5に示すように流体の漏れ方向に対して非多孔質フィルムを直交させることができるため、浸透漏れを確実に防止できる。またこれら非多孔質構造のフィルムを併用したシール材は、水系溶媒よりも漏れ防止が困難な流体、例えば、有機溶媒、気体などのシールに特に有用である。
【0040】
前記非多孔質フィルムとしては、金属製フィルム(金属箔)の他、種々の合成樹脂フィルムが使用できるが、好ましくはフッ素樹脂系フィルム[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)製フィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製フィルムなど]、特に好ましくはPTFEフィルム[例えば、焼結PTFEフィルム、未延伸PTFEフィルム、ePTFEを圧縮等によって緻密化したもの(緻密PTFEフィルム)など)が使用できる。
【0041】
上記各図示例のシール材は、いずれも1本の帯状体が1カ所で接合されているものであるが、複数(例えば2本)の帯状体が複数箇所(例えば2カ所)で接合されているものであってもよい。
【0042】
本発明のシール材は、閉環されている限り環の形状は特に限定されず、被シール部材(フランジなど)の形状に応じて適宜選択でき、例えば、概略円環状(円環状、楕円環状、トラック形状など)、概略多角形環状(矩形環状など)の範囲から選択できる。
【0043】
前記図1のシール材21においては、環状部21aは完全に水平であるものの、前記環状部21aは傾斜していてもよい。図8はこのようなシール材24を示す概略斜視図であり、図9はこの図8のシール材24のA−A’線断面図である。環状部24aの仰角(水平面に対する傾斜角度)θ2が0°ではなくても(すなわち、環状部が傾斜していても)、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に使用することができる。ただし仰角θ2が大きすぎると、使い易さが損なわれるため、θ2は45°以下、好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下(特に0°)とするのが望ましい。
【0044】
なお本発明の閉環状シール材は、製造方法(詳細は後述)に応じて大きく2種類に分けることができる。すなわち前記仰角が0〜45°となる製造方法(0°とすることも可能であるが、0°超となる場合もある製造方法)、及び確実に0°とすることができる製造方法とがあるため、仰角が0〜45°となる閉環状シール材と、仰角が0°である閉環状シール材とに分類できる。以下、閉環状シール材のさらなる特徴を、この分類に応じて説明する。
【0045】
[仰角0〜45°の閉環状シール材]
仰角0〜45°の閉環状シール材は、後述するように、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体から製造される。この延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体のサイズを、シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系(シール材座標系)を基準にして説明すると、厚さt方向の長さはシール材の幅wより小さくなっており、この厚さt方向の長さが小さいという意味で薄肉帯状体と称している。そして仰角0〜45°の閉環状シール材は、前記薄肉帯状体を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げた後(すなわち、厚さt方向と直交する平面上で曲げた後)、この曲げ状態を維持するために帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。なお閉環のタイミングは特に限定されず、熱セットの前であってもよく、熱セットと同時又は熱セットの後であってもよい。
【0046】
仰角0〜45°の閉環状シール材は、一方の環状平坦面(例えば、前記図1のシールの場合、環状平坦面21a及び/又はその裏側の環状平坦面)に接着層が形成されているのが望ましい。特に環状平坦面(環状部)が傾斜しているとき、接着層を形成しておくと、被シール部材に装着する際に簡単にフラット化することができるため、作業性をさらに高めることができる。
【0047】
接着層は、一方の環状平坦面において全体的に亘って形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。部分的に形成されている場合、複数の接着部を略等間隔で形成するのが望ましい。例えば、図10に示すシール材26では、4つの接着部41を等間隔で形成している。
【0048】
接着層の種類は、本発明のシール材に接着可能である限り特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤などが使用できる。耐熱性等の観点から、アクリル系接着剤が好ましい。
【0049】
接着層の厚みは特に限定されないが、例えば、3〜200μm程度、好ましくは5〜25μm程度である。
【0050】
なお接着層の表面は、通常、離型紙で保護されている。離型紙としては、公知の種々の離型紙が使用でき、例えば、紙又は樹脂フィルム(ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなど)にシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等の離型剤をコーティング又は含浸したもの、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の離型性に優れた樹脂フィルムなどが好ましく用いられる。
【0051】
仰角0〜45°の閉環状シール材は、上述したように概略多角形環状(矩形環状など)であってもよいが、コーナー部の内周側は必要に応じて切断除去するのが望ましい。図11は、コーナー部の内周側を切断除去する前の概略多角形環状シール材27の一部切欠概略斜視図であり、この例では矩形環状のものを示している。そしてこの例では、矩形状のフランジ63に、矩形環状シール材27が配設されている。この図11より明らかなように、多角形状のシール材のコーナー部Aは、通常、完全な角にはならず、若干のふくらみをもっている。そのためフランジ63の流路64との関係によっては、コーナー部Aがフランジ63の締め付け面65と当接しなくなり、流路64にはみ出す形になるため、流体の流れを乱すこととなる。また、このシール材27を流路がこのフランジ63よりも小さいフランジに適用した場合、前記流体漏れ等を防止することはできるものの、流体溜まり部Bが大きくなり過ぎる場合がある。これに対して、図12に示すように、コーナー部Aの内周側を完全な角を形成するように切断除去すると、フランジ63の流路64の形状とシール材の内周形状とを近似させることができ、前記乱流、流体溜まりなどを低減することができる。
【0052】
なお仰角0〜45°の閉環状シール材で矩形環状シール材を形成し、かつコーナー部の内周側を切断除去しないとき、その内接円の半径(コーナー半径)Rは、通常、10mm超(例えば15mm以上、特に20mm以上)程度である。
【0053】
[仰角が0°の閉環状シール材]
仰角が0°の閉環状シール材は、後述するように、前記仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合に比べて比較的厚肉の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製厚肉帯状体(及び/又は厚肉板状体)を使用する。すなわちこれら厚肉帯状体及び/又は厚肉板状体(厚肉体と総称される)は、厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが、シール材の幅w以上になっている。そしてこの厚肉体を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げた後、この曲げ状態を維持するために厚肉体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造する。なお閉環のタイミングは特に限定されず、熱セットの前であってもよく、熱セットと同時又は熱セットの後であってもよい。そして熱セットの後に、厚肉体(その閉環体であってもよい)を所定の厚さtにスライスすることによって、仰角が0°である閉環状シール材は製造される。
【0054】
上記のようにして得られる閉環状シール材は、幅wと厚みtの比(w/t)や、内径xと幅wの比(x/w)の条件が上述した範囲よりも厳しくても確実に仰角を0°にできる。例えばw/tは、5以上(特に10以上)であってもよい。またx/wは15以下(特に10以下)であってもよい。
【0055】
また仰角が0°の閉環状シール材は、概略多角形環状シール材(矩形環状シール材など)としたときのコーナー部を鋭くできる点にも特徴がある。例えば矩形状シール材のコーナー部内周の内接円の半径(コーナー半径)Rを、例えば、10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは0mmにできる。このような閉環状シール材によれば、コーナー部の内周側を切断除去してコーナー部内周を鋭くしたシール材や、コーナー部の内周側に切り欠きを入れてコーナー部を鋭く曲げたシール材に比べ、コーナー部の実質的なシール幅wが大きいためシール性に優れており、またコーナー部が引っ張られた時でも応力集中しにくい構造になっており、コーナー部の強度にも優れている。加えてPTFEの歩留まりを高めることができると共に、切断除去作業、切り欠き作業なども省略できる。
【0056】
なお仰角が0°の閉環状シール材では、仰角0〜45°の閉環状シール材で述べた接着層、離型紙などは通常不要であるが、必要により接着層、離型紙を設けてもよい。例えば内径1000mm以上程度の大口径シール材では、接着層を設けておけば、シール材装着時の位置決めが容易となる。
【0057】
[製造方法]
まず仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法について説明し、次いで仰角が0°の閉環状シール材の製造方法について説明する。
【0058】
[仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法]
仰角0〜45°の閉環状シール材は、比較的薄肉の[換言すれば厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが閉環状シール材の幅wより小さい]ePTFE製帯状体から製造される。すなわちePTFE製の薄肉帯状体(1本又は複数本)を幅方向に曲げて[すなわち、厚さt方向(シール材座標系基準)に直交する平面上で曲げて]全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。なお前記薄肉帯状体の両端の接合は熱セットの後に行ってもよく、熱セットと同時又は熱セットの前に行ってもよい。
【0059】
シール材の仰角が約90°になることなく、0〜45°程度に抑制することができるのは、薄肉帯状体を全体として環を形成するように曲げるときに厚さt方向に直交する平面上で曲げた後(すなわち環が概略平板状となるようにした後)、概略平板状を維持するように仮固定しながら熱セットしているためである。熱セット後において仮固定を取り除いたときでも、概略平板状を維持できる(すなわち仰角が0〜45°になる)理由の詳細については不明であるが、環状化(概略平板化)に際して生じる残留応力を熱セットによって除去できるためではないかと推察される。
【0060】
以下、仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0061】
ePTFE製帯状体(薄肉帯状体)は、上述したように非積層構造であってもよいが、ePTFEフィルムの積層体を使用するのが望ましい。このような帯状積層体の製造方法は特に限定されず、また積層方向も特に限定されないが、例えば、図13〜図15のようにして製造できる。すなわち図13の例では、図13(a)に示すように、ePTFEフィルムを所定枚数積層し、積層幅rの平板状積層体を形成し、この平板状積層体を所定高さs1でカットすることによって、図13(b)に示すような帯状積層体32を得ている。この帯状積層体32は、ePTFEフィルムが幅w方向に積層されている。なお前記カット高さs1は、シール材の厚さtと同じ(s1=t)であり、従ってシール材の幅wよりも小さくなっている。
【0062】
図14の例では、前記図13と同様にして得られる帯状積層体ユニット32を複数個(この例では3個)積み重ね、接合層34(詳細は後述)を介して接合することよって、帯状積層体33を得ている。この積層帯状体33も、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されることとなる。なお接合層34は必ずしも必要ではなく、熱融着によって各ユニットを直接接合してもよい。
【0063】
図15(a)の例では、マンドレル50にePTFEフィルムを巻回積層してePTFEフィルム積層円筒体11を製造し、この積層円筒体11をマンドレル50の軸方向に沿って(図15(a)中、一点鎖線C参照)切り開くことによって平板状積層体を製造し、この平板状積層体を前記図13の例と同様にして所定幅でカットすることによって帯状積層体を得ている。図15(b)の例では、前記積層円筒体11の周面を螺旋状(図15(b)中、一点鎖線D参照)にカットすることによって、前記図13の例と同様の帯状積層体を製造している。
【0064】
薄肉のePTFE製帯状体を曲げて全体として環を形成するに際しては、平板形状(図1参照)となるように環化してもよく、縦筒状(図3参照)となるように環化してもよい。縦筒状に環化しても、閉環体の側壁を外方に横臥し、鍔状に拡げることによって平板化することができる。
【0065】
また前記環化に際しては、熱セットの前に帯状体の両端部を接合して完全に閉環してもよいものの、熱セットの前には帯状体の両端部を接合することなく、みかけ上において環化(仮環化)し、熱セット後に前記両端部を接合して完全に閉環してもよい。さらには、熱セット中に両端部を接合して完全に閉環してもよい。
【0066】
ePTFE製帯状体を曲げた後は、熱セットに先立って上述したように仮固定しておく必要がある。完全に閉環することなく見かけ上のみ環化(仮環化)した場合には、仮固定しないと形が定まらないためであり、完全に閉環した場合には、外周面に収縮方向の応力が作用して、縦筒状(図3参照)に変形しやすいためである。
【0067】
仮固定に際しては、環化した帯状体を支持体に固定するのが望ましい。前記支持体としては、金属板などの剛性板、この剛性板に複数の小さな穴が開けられているもの(パンチングメタルなどのパンチング板など)などの板状支持体、リング状金属板などのリング状支持体が使用できる。図16,図17は、前記仮固定をより具体的に説明するための概略図である。図16の例では、環化した帯状体71を略同形状のリング状金属板81に仮固定しており、図17の例では、パンチングメタル82に仮固定している。パンチングメタルなどのパンチング板を利用すれば、環の平面形状(円形、楕円形、矩形など)を任意に設定できるため、便利である。
【0068】
支持体への固定の仕方は特に限定されず、例えば、接着手段(接着剤、接着テープなど)、縛着手段(ヒモ、テープなど)、挟着手段(クリップなど)、ズレ防止手段(ピンなど)が挙げられる。なお接着手段を利用する場合、その接着性は、熱セット後に環化体と支持板とを分離可能な程度であることが望ましい。
【0069】
熱セット終了後は、必要に応じて室温程度まで冷却した後、支持体を取り除く。熱セット後は、環化帯状体はくせがつけられており、形態がセットされている。熱セット前又は熱セット時に帯状体の両端部を接合をする場合には、熱セット終了によって、本発明の閉環状シール材を得ることができる。一方、帯状体の両端部を接合していなかった場合には、熱セット後に接合することによって、本発明の閉環状シール材を得ることができる。熱セット後に接合(閉環)する場合、両端部の離れ具合によっては閉環後に環状部が傾斜することもあるが、そのようなものも本発明に含まれる。
【0070】
[仰角が0°の閉環状シール材の製造方法]
仰角が0°の閉環状シール材は、比較的厚肉の[換言すれば厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが閉環状シール材の幅wより大きい]ePTFE体(ePTFE製厚肉帯状体、ePTFE製厚肉板状体など)を使用する。そして前記厚肉体(1つ又は複数)を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げて[すなわち、厚さt方向(シール材座標系基準)に直交する平面上で曲げて]全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該厚肉体を仮固定し、次いで熱セットし、その後該厚肉体(その閉環体であってもよい)をシール材と同じ厚さt(すなわちシール材の幅w未満)にスライスすることによって製造できる。なお前記厚肉体又はそれをスライスしたものの両端の接合は熱セットの後に行ってもよく、熱セットと同時又は熱セットの前に行ってもよい。好ましくはスライス後に接合する。
【0071】
前記仰角0〜45°のシール材を製造する場合に比べたとき、仰角が0°の閉環状シール材を製造するときの特徴は、熱セットするePTFE体として厚肉のものを使用する点にある。厚肉体を曲げて熱セットした後、所定厚さtにスライスすると、シール材の仰角を確実に0°にすることができる。
【0072】
厚肉体の厚さt方向(シール材座標系基準)の長さは、閉環状シール材の幅w以上であればよく、好ましくはシール材幅wの1.2倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上程度、特に2倍以上程度である。前記厚さt方向の長さは、例えば、5mm以上、特に10mm以上(特に30mm以上)程度である。なお上限は特に限定されないが、通常、500mm以下(例えば300mm以下)程度である。
【0073】
なお仰角が0°のシール材を製造する場合には、厚肉体を使用しているため、熱セット後の適当な段階でシール材厚さtにスライスする必要がある。
【0074】
仰角が0°の閉環状シール材の製造方法は、厚肉体を使用していることに起因して、上述した部分以外にも、仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法と異なる部分が存する。以下、異なる点について詳細に説明する(仰角0〜45°の閉環状シール材の製法と共通する点については、説明を省略する)。
【0075】
仰角が0°の閉環状シール材でも、仰角0〜45°の閉環状シール材と同様、ePTFE製帯状体としてePTFEフィルムの積層体を使用するのが望ましいが、該帯状積層体は、仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合と異なり、厚肉である。具体的には、上記図13(b)に代えて、図18に示すような帯状積層体35を使用する。すなわちカット高さs2が、前記積層帯状体32のカット高さs1よりも大きくなっており、最終的にシール材の幅wよりも大きくなるようにしている。なおこの図18の帯状積層体35も、図13(b)の帯状積層体32と同様、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。また仰角が0°の閉環状シール材でも、仰角0〜45°の閉環状シール材と同様に、帯状積層体ユニット35を複数個積み重ねてもよく(図19参照)、マンドレルに巻回積層したePTFEフィルム積層円筒体11から、平板状積層体を製造した後で該平板状積層体から帯状積層体を製造してもよく、ePTFEフィルム積層円筒体11から直接に帯状積層体を製造してもよい。
【0076】
ePTFE製帯状体の仮固定は、上述の仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合と同様に行ってもよいが、下記のようにして仮固定することが推奨される。
【0077】
(1)一度に仮固定する方法
例えば図20に示す方法が推奨される。すなわちマンドレル(この例では、断面円形状のマンドレル)51に、厚肉のePTFE製帯状体36を巻き付ける方法が推奨される。なおこの例では、厚肉帯状体36の両端は、テーパーカットされており、しかもテーパーカット面で両端部が接合されている。両端部が接合されていない場合には(又は両端部が接合されている場合でも必要に応じて)、適当な部材でePTFE製帯状体を支持棒51に向けて押し付けるのが望ましい。なお図20の例では、厚肉帯状体36としてePTFEフィルムを積層したものが使用されており、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。
【0078】
マンドレルの断面形状は特に限定されず、概略円形状[円状、楕円状、トラック形状など]、概略多角形状(矩形状など)の範囲から選択できる。
【0079】
熱セット後は、シール材厚さtにスライスする(図20の一点鎖線参照)。
【0080】
(2)複数の厚肉体を各パーツごとに仮固定する方法
例えば図21に示す方法が推奨される。すなわち適当な押し付け部材54を用いて、適当な形状の支持体(図21(a)の例では、円弧状の支持板52;図21(b)の例では、角型の支持板53)に向けてePTFE製厚肉体(この図示例では板状体)37を押し付けることによって、該厚肉体37を仮固定する方法が推奨される。なお図21の例でも、厚肉体37としてePTFEフィルムを積層したものが使用されており、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。
【0081】
なお上記図示例では、ボルト手段55を用いて、押し付け部材54を支持体52,53に向けて押し付けているものの、ボルト手段の他、種々の押し付け力発生手段が採用できる。また押し付け部材54、支持体52,53なども板状のものに限定されず、種々の押し付け部材や支持体が使用できる。
【0082】
ところで複数の厚肉体を各パーツごとに仮固定する場合でも、全体として(複数のパーツが存する場合には、各パーツを寄せ集めたときに)環を形成できるようにする必要がある。例えば円環状シール材、矩形環状シール材、又はトラック形状シール材を製造する場合、図22に示すようになっていればよい。図22は、各パーツを寄せ集めたときに、厚肉体を高さs2方向から見た上面図である。図22(a)及び図22(b)では、円弧状の厚肉体37を寄せ集めて、全体として円環状となるようにしている。図22(c)では、角型(鉤型)の厚肉体37と、直線状の厚肉体37を寄せ集めて、全体として矩形環状となるようにしている。図22(d)では、円弧状の厚肉体37と、角型(鉤型)の厚肉体37を寄せ集めて、全体としてトラック形状となるようにしている。各パーツの組み合わせは、上記図示例に限定されず、種々の組み合わせが採用できる。
【0083】
熱セット後は、適当な段階でシール材厚さtにスライスする(図21(a)及び図21(b)の一点鎖線参照)。
【0084】
なお矩形環状シール材を製造する場合には、さらに以下の手段を採用することが推奨される。以下の手段を採用すれば、コーナー半径を小さくするのが容易となる。
【0085】
すなわち厚肉帯状体を矩形状の支持体(マンドレル、支持板53など)に仮固定するに際して、厚肉帯状体を予熱しておくのが望ましい。予熱しておくと、厚肉帯状体を適度に軟化でき、矩形状支持体のコーナー部に厚肉帯状体を密着させることができる。前記予熱温度は、例えば、50℃以上(好ましくは80℃以上)、150℃以下(特に120℃以下)程度である。予熱温度が高すぎると、帯状体が収縮してしまう。
【0086】
また図21(b)に図示する例のように支持板53を使用する場合には、直線部の概略全体を押し付けることができる押し付け部材54を使用するのが望ましい。コーナー部以外(直線部)を概略全体に亘って押し付けることによって、コーナー半径を小さくできる。
【0087】
[共通条件]
なお上述した製造方法のいずれを採用する場合でも、下記のようにすることが推奨される。
【0088】
使用するePTFEの取得方法は、以下の通りである。すなわちPTFEのファインパウダーを成形助剤と混合しながら成形し、成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸、さらに必要に応じて焼成することによりePTFEを得ることができる。その詳細は例えば特公昭51−18991号公報に記載されている。
【0089】
ePTFE製帯状体は、非積層構造であってもよいがePTFEフィルムを積層したものを使用するのが望ましい。
【0090】
ePTFEフィルム積層体をカットしてePTFE製帯状積層体を製造する場合、適当な段階、特にカット前に焼成によって各フィルムを密着させておくのが望ましい。焼成温度は、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上、具体的には、327℃、特に350℃以上とするのが好ましい。なお焼成温度が高すぎるとPTFE樹脂が熱劣化して穴があいてしまうため、焼成温度は400℃以下、特に380℃以下にするのが好ましい。
【0091】
ePTFE製帯状積層体におけるePTFEフィルムの積層方向は特に限定されない。上述した製造例では、いずれもシール材の幅w方向にePTFEフィルムを積層したが、シール材の厚さt方向にePTFEを積層してもよい。例えば図13(b)、図14に代えて図23(a)、図23(b)に示すような積層構造を採用してもよく、図18、図19に代えて図24(a)、図24(b)に示すような積層構造を採用してもよく、図20に代えて図25に示すような積層構造を採用してもよい。なお熱セット前の環化の際、環化のし易さとePTFEフィルムの積層方向とには相関が低い。すなわちePTFEフィルムの積層方向によらず、環化のし易さは同程度である。
【0092】
図14、図19、図23(b)、図24(b)などに示すように複数のePTFE製積層体ユニット32、35などを積層する場合、接合層34を介して各ユニットを接合してもよく、接合層34を介することなく各積層体ユニットを直接熱融着してもよい。前記接合層としては、例えば、両面粘着テープ、接着剤、プラスチックフィルムなどが挙げられる。特にプラスチックフィルムは、浸透漏れを防止するための上述した非多孔質構造のフィルムとしての機能を持たせることもできる。好ましいプラスチックフィルムには、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体フィルム(FEPフィルム)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム(PFAフィルム)などのフッ素樹脂系フィルムが含まれる。フッ素樹脂系フィルムは、耐熱性、耐薬品性に優れている。
【0093】
ePTFE製帯状体は、熱セット前に両端部を接合してもよいが、熱セット中又は熱セット後に両端部を接合して環化してもよい。熱セット中又は熱セット後に両端部を接合する場合、熱セット前には、みかけ上において環化(仮環化)しておき、熱セット後に前記両端部を接合して完全に閉環してもよい。
【0094】
ePTFE製帯状体を接合するに際しては、両端部をテーパーカットしてもよく、片端部のみをテーパーカットしてもよい。またテーパーカットしなくてもよい。さらにはePTFE製帯状体の接合前に、該帯状体の両端部を重ねるときには(特に熱セット前には)、片側の端部がもう一方の端部に乗り上げてもよい。例えば図26の概略側面図に示すように、テーパーが形成されている片端の端部38aに、テーパーが形成されていないもう一方の端部38bが乗り上げている。もう一方の端部38bが乗り上げていても、段差を取り除くためにラインLに沿ってカットすれば(特に熱セット後にカットすれば)シール材として使用することができる。ここで段差除去のためのカットラインは、段差に帰因するリークを除去できる程度であれば特に限定されず、例えば、カットラインと環状平坦面とが同一平面となってもよい。なお図26の例では、片側の端部にテーパーが形成されていたが、該テーパーは必ずしも必要ではない。
【0095】
ePTFE製帯状体の両端部の接合手段としては種々の手段が採用でき、例えば、両端部同士を熱融着させる方法、上述したような接合層を利用して(介して)両端部を接合する方法などが挙げられる。
【0096】
なおプラスチックフィルムを利用する場合、例えば、両端部をプラスチックフィルムを介して当接させ、熱融着又は超音波溶着することによって接合することができる。従って熱セットの温度よりも融点の低いプラスチックフィルムを使用すれば、熱セット中に両端部を接合することも可能である。
【0097】
熱セットの温度は、例えば、50℃以上(好ましくは80℃以上)である。温度が高いほど、形態維持性を高めることができる。一方、熱セットの温度は、400℃以下(好ましくは200℃以下)とするのが望ましい。
【0098】
熱セットする際の加熱手段は特に限定されず、例えば、加熱炉内での輻射加熱、加熱板による伝導加熱(特に加熱板でプレスしながらの接触加熱)、加熱流体(空気、蒸気など)による対流加熱などが採用できる。
【0099】
熱セット時間は、形態維持性を発現できる限り特に限定されず、加熱方法や帯状体の大きさなどによって異なるが、例えば0.5〜3時間程度である。
【0100】
上述のようにして得られる本発明の閉環状シール材は、環状平坦部をシール面として使用するのが望ましいが、外周面をシール面として使用してもよい。本発明の閉環状シール材は、流体のシールを必要とする種々の箇所、例えば、配管や容器(タンクを含む)の継手部(フランジ部など)、マンホール蓋などに利用できる。また産業用機器等の面接触部分のシール材としても使用できる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0102】
[仰角0〜45°の閉環状シール材(実験例1〜9)]
下記実験例1〜9では、以下のようにして得られる2軸延伸PTFE製薄肉帯状体を使用した。
【0103】
(2軸延伸PTFE製帯状体1)
2軸延伸PTFEフィルムが積層されているシート[厚さ4mm。ジャパンゴアテックス(株)より商品名「ゴアテックス ハイパーシート」として販売されているもの]をカットすることによって、幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1:4mm(ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)の帯状体(テープ)を得た(図23(a)参照)。
【0104】
(2軸延伸PTFE製帯状体2)
(1)ePTFEフィルムの製造
乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレンの粉末(ファインパウダー)100重量部に、ソルベントナフサ22重量部を混合してなるペースト樹脂をフィルム状にし、このフィルム状のペースト成形体をソルベントナフサの沸点以上の温度(この例では200℃)に加熱してソルベントナフサを蒸発除去し、その後ポリテトラフルオロエチレンの融点以下の温度(この例では300℃)で、引き取り方向に2倍、該引き取り方向と直交する方向に10倍の2軸延伸して、厚さ60μm、空孔率80%のePTFEフィルムを作製した。なお前記延伸は、1秒間に10%以上(この例では10%程度)の割合でフィルムが延びる速度で行った。
【0105】
(2)非多孔質フィルムの製造
上記ePTFEフィルムを3枚重ねあわせ、これをロールにて圧力(2.4kN/cm)と温度(70℃)をかけて空孔を圧潰して、厚さ50μmの緻密ePTFEフィルム(非多孔質フィルム)を作成した。
【0106】
(3)平板状積層体の製造
上記ePTFEフィルムを、直径1,000mm、長さ1,500mmのステンレス製中空マンドレルに、巻回積層した。110回巻回した後、フィルム終端をカッターでカットし、ePTFEフィルムのカット端が捲れないように、両面粘着テープでフィルム積層円筒体に固定した。さらに上記非多孔質フィルムを、このフィルム積層円筒体に1回巻き付け、カット端を両面粘着テープで固定した。その後、再度ePTFEフィルムを110回巻き付け、カット端を両面粘着テープで固定した。
【0107】
このようにして作製した非多孔質層が介挿されたePTFEフィルム積層円筒体をオーブンに入れて、365℃で60分間焼成した。焼成後、オーブンから、この積層円筒体を取出し、室温まで冷却した。なお内径をD1、外径をD2、軸方向の長さをL1としたときに、この積層円筒体の形状は、約1,000mm(D1)×1,020mm(D2)×1,500mm(L1)であった。
【0108】
冷却後、両面粘着テープで固定した部分を切り開き、約1,500mm(L1)×3,000mm(L2)×10mm(L3)の略平板状積層体を得た。
【0109】
(4)ePTFE製帯状体の製造
上記平板状積層体をL1方向の間隔を50mmとしてL2方向にカットすることにより、約50mm(L1)×3,000mm(L2)×10mm(L3)のカット体を得た。このカット体を3本使用し、ePTFEフィルムの積層(L3)方向に貼り合わせ、熱圧着することによって、約50mm(L1)×3,000mm(L2)×25mm(L3)の角柱体を得た(なおこの角柱体は、後でePTFE製帯状体4として使用する)。なお長さL3が30mm(=10mm×3本)ではなく25mmとなっているのは、圧着の圧力のためである。この角柱体をL1方向の間隔を4mmとしてL2方向に再度カットすることにより、高さs1=4mm(L1)、長さ=3,000mm(L2)、幅w=25mm(L3)の帯状体2(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図14参照)を得た。なお帯状体2は、殆どカールしていなかった。
【0110】
(2軸延伸PTFE製帯状体3)
巻回数、スリット幅などの条件を変更する以外は前記2軸延伸PTFE製帯状体2と同様にして、高さs1=6mm、長さ=3,000mm、幅w=20mmの帯状体(テープ)を得た(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図14参照)。
【0111】
実験例1
内径270mm×外径320mm×厚さ1mmの金属製リングの内周及び外周に沿うように仮固定して、2軸延伸PTFE製帯状体1(幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1:4mm;ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)を環化した。なお帯状体1は長すぎるため、環化に際して約50mm重なり合わせ、余った部分を切除した。また環状に仮固定するに際しては、前記2軸延伸PTFEの積層方向(高さs1方向)が環状体の外周面の厚さt方向と等しくなるようにし、幅10mm×厚さ0.1mmの1軸延伸PTFEテープを用いて金属製リングに縛り付けた。温度100℃のオーブンで1時間加熱した後、室温で自然冷却した。1軸延伸PTFEテープをほどき、2軸延伸PTFEの仮環状体を金属製リングから分離した。この仮環状体の内径は約290〜295mmであり、仮固定時よりも若干拡がっていた。一方、幅は25mmを維持していた。
【0112】
前記仮環状体を内径270mmになるように寄せてから余った部分をカットし、両端の重なりが20〜30mmになるようにした。その後、図1に示すように重なり長さ分だけ斜めにカットした(テーパー角θ1=10°)。テーパー面に接着剤(フォーフロント社製 FRONT♯107)を塗布して両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。このとき環状部の仰角は約10°であった。
【0113】
実験例2
加熱条件を200℃、1時間とする以外は、前記実験例1と同様にすることによって、仮環状体を製造した。この仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。なお熱収縮により、幅wは25mmから約23mmに減少していた。
【0114】
実験例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。環状部の仰角は約0°であった。
【0115】
実験例3
加熱条件を300℃、1時間とする以外は、前記実験例1と同様にすることによって、仮環状体を製造した。この仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。なお熱収縮により、幅wは25mmから約21mmに減少していた。
【0116】
実験例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。環状部の仰角は約0°であった。
【0117】
実験例4
2軸延伸PTFE製帯状体2(幅:25mm×長さ:1,000mm×高さs1:4mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)を用いる以外は、実験例1と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例1と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体及び閉環状シール材の外観形状は、実験例1と同様であった。
【0118】
実験例5
2軸延伸PTFE製帯状体2を用いる以外は、実験例2と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例2と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。また幅wも25mmのままであった。閉環状シール材としたときの環状部の仰角は約0°であった。
【0119】
実験例6
2軸延伸PTFE製帯状体2を用いる以外は、実験例3と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例3と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体の内径は約270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。また幅wは熱収縮により、25mmから24mmに減少していた。閉環状シール材としたときの環状部の仰角は約0°であった。
【0120】
実験例1〜6から明らかなように、ePTFEシートの積層方向によらず、閉環状シール材を製造することができる。
【0121】
実験例7
5mm間隔で直径3mmの穴が開けられているパンチングメタル(厚さ2mm)によって、2軸延伸PTFE製帯状体3(幅:20mm×長さ:3,000mm×高さs1:6mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)を長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mmの楕円形に仮固定した。なお帯状体3は長すぎるため、環化に際して約50mm重なり合わせ、余った部分を切除した。また環状に仮固定するに際しては、前記2軸延伸PTFEの積層方向が環状体の環状平坦面の幅w方向と等しくなるようにし、幅10mm×厚さ0.1mmの1軸延伸PTFEテープを用いてパンチングメタルに縛り付けた。温度150℃のオーブンで1時間加熱した後、室温で自然冷却した。1軸延伸PTFEテープをほどき、2軸延伸PTFEの環状体をパンチングメタルから分離した。この仮環状体は、長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mmの楕円形状を維持していた。
【0122】
実施例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材[長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mm]を製造した。このとき環状部の仰角は約0°であった。
【0123】
実験例8
2軸延伸PTFE製帯状体2を長さ300mmに切断し、矩形環状シール材を製造する際のモデル実験を行った。すなわちこの長さ300mmの帯状体をL字型(直角)に曲げた状態でパンチングメタルに固定する以外は、実験例7と同様にした。加熱後の前記L字部(コーナー部)は、完全な角ではなく若干の丸みを帯びており、内周のコーナー半径が約20mmであり、外周のコーナー半径が約50mmであった。
【0124】
実験例9
オーブンに代えて、熱風発生装置(石崎電気(株)製、「SURE プラジェット」;仕様:吹き出し口温度=250℃)から熱風を吹き付けることによって約10分間加熱する以外は、実験例4と同様にして仮環状体を製造し、実験例4と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。
【0125】
仮環状体の内径は約330mmであり、仮固定時よりも拡がっていた。閉環状シール材の環状部の仰角は約30〜40°であった。
【0126】
[仰角が0°の閉環状シール材(実験例10〜11)]
下記実験例10〜11では、以下のようにして得られる2軸延伸PTFE製厚肉帯状体4を使用した。
【0127】
(2軸延伸PTFE製帯状体4)
上記2軸延伸PTFE製帯状体2を製造する途中で得られる角柱体を2軸延伸PTFE製帯状体4として使用した。この2軸延伸PTFE製帯状体4の形状は、高さs2=50mm(L1)、長さ=3,000mm(L2)、幅w=25mm(L3)である(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図19参照)。
【0128】
実験例10
2軸延伸PTFE製帯状体4を長さ=約300mmにカットし、温度100℃のオーブン内で約1時間かけて予熱した。図27に示す角型支持板(折り曲げ角度=65°)と、図28に示す押し付け部材を使用し、図21(b)に示すようにして仮固定(ボルト固定)した。次いで温度150℃のオーブン内で約1時間かけて熱セットした後、室温まで冷却し、支持板及び押し付け部材を取り外すことによって、角型の厚肉体(パーツ)を得た(高さ=50mm、長さ=300mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図21(b)参照)。なお折り曲げ角度は約80°に拡がっていた。
【0129】
前記厚肉体を高さ4mm間隔でスライスすることにより、角型の帯状体(パーツ)を得た(高さ=4mm、長さ=300mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお折り曲げ角度は約90°に拡がっていた。また折り曲げ部内周のコーナー内接円の半径は、実質的に0mmであった。
【0130】
角型の帯状体(パーツ)を合計で4枚製造し、いずれも両端部をテーパーカットした。テーパーカット面を両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社製 ♯9458)で接合することにより、図29に示すような矩形の閉環状シール材を得た。環状部の仰角は0°であり、コーナー部の内周のコーナー内接円の半径は実質的に0mmであった。
【0131】
実験例11
2軸延伸PTFE製帯状体4を長さ=約350mmにカットした。図30に示す円弧状支持板(半径:108mm)と、図31に示す押し付け部材を使用し、図21(a)に示すようにして仮固定(ボルト固定)した。次いで温度150℃のオーブン内で約1時間かけて熱セットした後、室温まで冷却し、支持板及び押し付け部材を取り外すことによって、円弧状の厚肉体(パーツ)を得た(高さ=50mm、長さ=350mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお円弧状の厚肉体の半径は約115mmになっていた。
【0132】
前記厚肉体を高さ6mm間隔でスライスすることにより、円弧状の帯状体(パーツ)を得た(高さ=6mm、長さ=350mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお円弧状の帯状体の半径は約135mmになっていた。
【0133】
円弧状の帯状体(パーツ)を合計で4枚製造し、いずれも両端部をテーパーカットした。テーパーカット面を両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社製 ♯9458)で接合することにより、図32に示すような円形の閉環状シール材を得た。環状部の仰角は0°であった。
【0134】
比較例1
(2軸延伸PTFE製帯状体5の製造)
2軸延伸PTFEフィルムが積層されているシート[厚さ6mm。ジャパンゴアテックス(株)より商品名「ゴアテックスハイパーシート」として販売されているもの]をカットすることによって、幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1=6mm(ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)の薄肉帯状体(テープ)5を得た。
【0135】
この帯状体5の片側面(長さ×幅平面)に、片側に離型紙のついた幅10mmの両面粘着テープ(住友スリーエム社製 ♯9458)を貼り付けた。
【0136】
試験例1
実験例11で得られた円形閉環状シール材と、比較例1で得られた帯状体5の作業性及びシール性を評価した。
【0137】
[作業性]
JIS 10K−250Aのフランジサイズを有するフランジ面を割って、実験例11の円形閉環状シール材を挿入した。円形閉環状シール材は、速やかに簡単に挿入できた。
【0138】
一方、上記と同様のフランジ面を大きく割って、比較例1の帯状体5を貼り付けた。貼り付けに際しては、帯状体5の始端を長さ20mmに亘ってテーパーカットし、この始端側から、離型紙を順次剥がしつつ、フランジ面のシール座面に沿わせて貼り付けていった。テープ始端のテーパーカット面にテープ終端を乗り上げ、始端と終端とを接続した後、図26と同様にしてほぼ水平にカットした。この帯状体5を使用した場合、作業領域を確保するためにフランジ面を大きく割る必要があり、加えてシール座面に沿って貼り付けていく必要があるため、作業に大きな時間を要した。
【0139】
[シール性]
上記のようにして実験例11の円形閉環状シール材を挿入したフランジ、及び比較例1の帯状体5を貼り付けたフランジのシール性を、圧縮空気のリーク量を測定することによって評価した。
【0140】
すなわちフランジを、ボルト締め付けトルク=120N−mで締め付けた後、該フランジに接続する配管に圧縮空気を送り込み、内圧を0.5MPaとした後、圧縮空気送り込みラインを閉として密閉系とした。密閉後の内圧の経時変化をゲージ測定し、下記式に基づいてリーク量を算出した。
【0141】
リーク量=ΔP×A/T
(式中、Tは密閉後の経過時間を示し、ΔPは時間Tのときの内圧の減少量を示し、Aは密閉系の体積を示す)
実験例11の円形閉環状シール材を使用したときのリーク量は、0.0001Pa・m3/秒未満であり、比較例1の帯状体5を使用したときのリーク量も、0.0001Pa・m3/秒未満であった。
【0142】
上記試験結果から明らかなように、本発明の閉環状シール材は、シール性が低下することなく、作業性を著しく高めることができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明のシール材は、帯状体を利用した閉環体であるにも拘わらず概略平板状を維持しているために、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に取り扱うことができる。そのためフランジなどの被シール箇所への取り付け作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の閉環状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は図1の閉環状シール材で使用されていた帯状体の概略斜視図である。
【図3】図3は図1の閉環状シール材が変形した状態を示す概略斜視図である。
【図4】図4は図1の閉環状シール材を装着状況を示す概略斜視図である。
【図5】図5は図1の閉環状シール材を取り付けたフランジの概略断面図である。
【図6】図6は本発明の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図7】図7は図6の閉環状シール材を取り付けたフランジの概略断面図である。
【図8】図8は本発明の閉環状シール材のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図9】図9は図8のA−A’線断面図である。
【図10】図10は本発明の閉環状シール材の別の例を示す概略斜視図である。
【図11】図11は本発明の閉環状シール材のさらに別の例を示す概略斜視図である。
【図12】図12は本発明の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図13】図13は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【図14】図14は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の製造方法の他の例を示す概略斜視図である。
【図15】図15は本発明で使用する平板状積層体の製造方法及びePTFE製帯状体の製造方法を説明するための概略斜視図である。
【図16】図16は本発明の閉環状シール材の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【図17】図17は本発明の閉環状シール材の製造方法の他の例を示す概略平面図である。
【図18】図18は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体の一例を示す概略斜視図である。
【図19】図19は本発明で使用するePTFE製帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図20】図20は本発明の閉環状シール材の製造方法の別の例を示す概略斜視図である。
【図21】図21は本発明の閉環状シール材の製造方法のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図22】図22は本発明の閉環状シール材の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図23】図23は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図24】図24は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図25】図25は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図26】図26は本発明におけるテーパーカットを説明するための概略拡大側面図である。
【図27】図27は本発明で使用する角型の支持板の概略斜視図である。
【図28】図28は図27の支持板とセットで使用する押し付け部材の概略斜視図である。
【図29】図29は実施例で得られたシール材の概略斜視図である。
【図30】図30は本発明で使用する円弧状の支持板の概略斜視図である。
【図31】図31は図30の支持板とセットで使用する押し付け部材の概略斜視図である。
【図32】図32は実施例で得られた他のシール材の概略斜視図である。
【図33】図33は従来の閉環状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【図34】図34は従来の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図35】図35は従来の帯状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
31: 帯状体
32,33: 薄肉帯状体
35,36,37: 厚肉帯状体
21,23,24,25,26,27: 閉環状シール材
21a,25a: 環状平坦面
21b,25b: 外周面
41: 接着層
【発明の属する技術分野】
本発明は、配管や容器(タンクを含む)のフランジ部、マンホール蓋、その他産業用機器等の面接触部分のシールに特に有用な閉環状シール材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
医薬、食品、化学等の分野において腐食性流体が流れる配管の継手部分には、耐食性に優れたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シール材が広く用いられている。
【0003】
例えば、焼結法により製造された未延伸のポリテトラフルオロエチレン(以下、「焼結PTFE」と称する場合がある)からなるシール材が使用されている。しかし、焼結PTFEは硬質であるため、配管の継手(フランジなど)の微細な凹凸に対する馴染性(追従性)が低く、締付けトルクを十分に上げないと十分なシール性能が得られない。そのため、継手とシール材との界面から流体が漏れる界面漏れと称する現象が生じる場合がある。特にグラスライニングされた継手は、比較的大きな凹凸を有しており、しかも強度が低いために締付けトルクを上げることが困難であるため、継手に対する密着性の優れたPTFE製シール材が強く求められている。
【0004】
比較的低い締付力で、継手との密着性を上げることができるPTFE製シール材として、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(以下「ePTFE」と略記する場合がある)製のシール材が注目されている。ePTFE製のシール材は、焼結PTFE製と比べると軟質で、シール材の厚さ方向に容易に変形できることから、継手に対する密着性が高くなっており、優れたシール性を有している。例えば、特許文献1には、ePTFEフィルムを所定厚さにまで積層一体化したePTFEフィルム積層体を、リング状等に打ち抜いたePTFE製シール材が開示されている。図33は、前記打ち抜きによるシール材の製造方法について説明するための概略斜視図である。打ち抜き法では、ePTFE製フィルムを複数枚積層してなるシート状の積層体10からリング状物20を打ち抜くことによってシール材を製造している。しかし、この打ち抜き法によればシートサイズ以上のシール材を打ち抜くことができないため、大口径のガスケットを作ることができない。また打ち抜き後の積層体10は、未利用のePTFEがまだ多く残っているにも拘わらず、他に用途がないために廃棄されており、経済的でない。
【0005】
図34は、ePTFE製リング状シール材の他の製造方法について説明するための概略斜視図である。この例では、ePTFEフィルムをマンドレル50に巻回積層することにより積層円筒体11を作製し、この積層円筒体をシール材の厚さpに相当する間隔で切断することによってリング状シール材を製造している。しかしながら、このような製造方法でも、継手の内径等に応じて各種の径を有するマンドレルを予め準備しておく必要があり、経済的でない。
【0006】
一方、リング状シール材とは別に、帯状シール材(ロッド状シール材、テープ状シール材など)が知られている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。このシール材は、ロッド状又はテープ状にPTFEを押し出し成形した後、長手方向に一軸延伸することによって製造されている。また二軸延伸したPTFEフィルムを積層・焼成(密着)し、帯状にカットすることによっても製造されている。帯状シール材は、継手(フランジ等)の大きさに合わせて適当な長さにカットし、フランジのシール面に沿って貼り付けていきながら最終的に長手方向の両端部を重ね合わせてリング状にして使用するものであり、どのような形状の継手にも無駄なく利用することができ、経済的である。
【0007】
図35は、前記特許文献5に開示されているテープ状シール材30の概略斜視図である。このシール材30は、2軸延伸したePTFEフィルムを積層した積層シートを所定幅qでスリットしたものであり、積層面の一方に粘着剤層(図示せず)がさらに積層されており、この粘着剤層の表面は離型紙(図示せず)で保護されている。
【0008】
しかし帯状シール材は、取付現場での閉環作業を強いるだけでなく、両端部を重ね合わせる際には重ね合わせ部からの漏れを防ぐ必要があるため、作業者に高度なスキルを要求する。
【0009】
【特許文献1】
実開平3―89133号公報
【特許文献2】
特開昭54−145739号公報
【特許文献3】
実開昭60−75791号公報
【特許文献4】
特開昭62−108464号公報
【特許文献5】
米国特許第5964465号明細書
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、帯状シール材を利用したシール材であっても、取り付け現場での作業負担を軽減することができるシール材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の閉環状シール材とは、1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材であって、このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0〜45°である点に要旨を有するものである。また本発明の閉環状シール材は、前記仰角が0°である点に要旨を有するものである場合もある。本発明によれば、シール材の幅wと厚さt(w/t)が5以上であっても、またシール材の内周の直径xと幅wとの比(x/w)が15以下であっても(概略円環状シール材の場合)、仰角を0°とすることができる。仰角が0°の閉環状シール材は、矩形環状であってもよく、コーナー部内周の内接円の半径は10mm以下(好ましくは0mm)であるのが望ましい。
【0012】
前記環状部は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の積層構造を有している。前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層は、幅w方向に向けて積層されていてもよく、厚さt方向に向けて積層されていてもよい。幅w方向に向けて積層されている場合、積層された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の間に、非多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が介挿されているのが望ましい。
【0013】
前記帯状体の周方向の少なくとも片端部はテーパーカットされているのが望ましく、このテーパーカット面が帯状体の接合部の少なくとも一部をなすものであるのが望ましい。前記帯状体の両端部は、例えば、下記(1)〜(3)のいずれかによって接合できる。
【0014】
(1) 両面粘着テープ
(2) 接着剤
(3) テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体フィルム及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルムから選択された少なくとも1種を介した熱融着又は超音波溶着
前記閉環状シール材は、外周面と直交する環状平坦面のどちらか一方の面に接着層が形成されていてもよい。
【0015】
仰角が0〜45°の閉環状シール材は、以下のようにして製造できる。すなわち、得られる閉環状シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系を基準にして方向を説明したとき(以下、同じ)、厚さt方向の長さが得られる閉環所シール材の幅wより小さいものである(従って該厚さt方向の長さはシール材の厚さtに等しい)延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体(以下、薄肉帯状体と称する場合がある)を幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該薄肉帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。また前記薄肉帯状体の周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前のいずれの段階で行ってもよい。
【0016】
また仰角が0°の閉環状シール材は、以下のようにして製造できる。すなわち厚さt方向の長さが得られる閉環状シール材の幅w以上の長さである1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン体(帯状体、板状体など;以下、前記帯状体を厚肉帯状体と称し、前記板状体を厚肉板状体と称し、これら厚肉帯状体及び厚肉板状体を厚肉体と総称する場合がある)を幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該厚肉体を仮固定し、次いで熱セットし、得られた熱セット体を所定厚さ(シール材の厚さ)tにスライスすることによって製造できる。なお前記厚肉体(又はそのスライス体)の周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前のいずれの段階で行ってもよいが、好ましくはスライス後に接合する。
【0017】
なお上述したように、本明細書では、シール材の幅w方向、シール材の厚さt方向、及びシール材の周方向からなる座標系(以下、単にシール材座標系と称する場合がある)を基準にして方向を示す場合がある。
【0018】
また本明細書では、用語「環」は「ひとまわり」の意味で使用し、円形状に限定されない。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、必要に応じて添付図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
[閉環状シール材]
図1は、本発明の閉環状シール材21の一例を示す概略斜視図であり、図2は前記閉環状シール材21を接合部21dで分断したときの概略斜視図である。この図2から明らかなように、閉環状シール材21は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製帯状体31で形成されており、この帯状体31の周方向の両端部31a,31bが接合部21dに相当する。
【0021】
そして本発明の閉環状シール材21は、環状平坦面21aの幅w(シール材の内周部から外周部までの幅w)が、外周面21bの厚さt(以下、「シール材厚み」と称する場合もある)より大きくなっており、概略平板状である。このような帯状シール材を閉環した概略平板状のシール材は、一般には、内周部に比べて外周部が大きく引っ張られているため、収縮方向(図1の矢印で示す方向)に変形しやすい。すなわち図3に示すように、環状平坦面21aが起立して、外周面の厚さtが大きい概略縦筒体22に変形しやすい。ところが本発明の閉環状シール材21は、適度なくせがつけられており、概略縦筒体に変形することなく概略平板形状を維持できる程度に形がセットされている。すなわち、上述した帯状シール材をフランジに貼り付けて環化していく場合と異なり、本発明の環状シール材は支持されるものがなくても概略平板形状を維持できている点に特徴がある。そしてこの概略平板形状の維持を可能にするのは、帯状体を構成するePTFEの特性に由来するものと考えられる。後述するePTFEのノードとフィブリルから成る多孔質構造は、帯状体を環化するときに生ずる外周部の伸びや内周部の圧縮といった応力を吸収するだけの柔軟性と強度を備えている。なお前記シール材21は、ePTFEフィルムで形成される層21cが、環状平坦面21aの幅w方向に積層されている。
【0022】
このようなシール材は、帯状体を利用しているにも拘わらず概略平板状を維持しているために、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に取り扱うことができる。そのためフランジなどの被シール箇所への取り付け作業を軽減することができる。図4は、前記シール材21のフランジへの取り付け方を説明するための概略斜視図であり、図5は前記シール材21が取り付けられたフランジを示す概略断面図である。図4に示すように、閉環状シール材21を使用する場合、締め付け具(この例では、ボルト及びナット)の取り外し等によってフランジ61,62を少し割るだけで、フランジ61,62間の僅かな隙間にシール材21を挿入することができるため、フランジ61,62を大きく割って作業スペースを確保する必要がある帯状シール材に比べて作業を簡便化することができる。
【0023】
また帯状シール材とは異なり、閉環の失敗(接合の失敗)によるリークの虞がないため、作業者に高度なスキルを要求することもない。さらには、ePTFEを用いた閉環状シール材は、一般には、柔らかいために大口径とするためには金属製リングなどでサポートしておく必要があるものの、本発明の閉環状シール材は所定形状を維持可能であるため、必ずしも金属製リングなどを必要とはしない。なおこの例では、環状平坦面21aがシール面となっている。そして閉環状シール材21をフランジに適用する場合、図5に示すように、ePTFEは、流体の漏れ方向(図5の矢印で示す方向)と直交するように積層されている。
【0024】
環状平坦面の幅wがシール材厚みtよりも大きい程、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。幅wと厚みtとの比(w/t)は、例えば、1.0超、好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上である。なお前記比(w/t)は、通常、50以下(例えば、10以下)である。
【0025】
前記幅wは、例えば、5mm以上(好ましくは10mm以上)、100mm以下(好ましくは75mm以下)の範囲から選択できる。厚みtは、例えば、0.5mm以上(好ましくは1.0mm以上)の範囲から選択できる。
【0026】
またシール材が円環状である場合、内径(内周の直径)xが環状平坦面の幅wよりも小さいほど、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板形状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。内径xと幅wとの比(x/w)は、例えば、100以下、好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下である。なお前記比(x/w)は、例えば、3以上程度(特に5以上程度)である。
【0027】
前記内径は、例えば、15mm以上、好ましくは50mm以上、さらに好ましくは100mm以上(特に200mm以上)である。内径の上限は特に限定されないが、ニーズを考慮すると通常3000mm以下程度である。幅wが大きい程、厚みtが小さい程、また内径が小さい程、一般的には概略平板形状を維持することが難しくなるため、概略平板状を維持可能とする本発明の重要性が高まる。
【0028】
前記図1のシール材21においては、帯状体31(図2参照)の両端部31a,31bにテーパーカット面が形成されており、このテーパーカット面が重なり合って接合されている。テーパーカット面を形成することによって接合部21dからのリークをより確実に防止できる。また接合面の面積を増やすことができ、接合の信頼性を高めることもできる。なおテーパーカット面は、帯状体の接合部21dの少なくとも一部をなしていればよい。例えば、テーパーカット面は、必ずしもぴったりと重ね合わせる必要はなく、ずらして重ね合わせてもよい。テーパー角度θ1は特に限定されないが、例えば、5〜45°程度である。また前記図1の例では、帯状体31の周方向の両端部31a,31bにテーパーカット面が形成されていても、片端部のみにテーパーカット面が形成されていてもよい。
【0029】
なおテーパーカット以外の方法(例えば、片側の端部にV字カットを形成し、もう一方の端部に逆V字カットを形成して噛み合わせる方法など)で接合面積を増やしてもよい。
【0030】
さらには必ずしも接合面積を増やす必要はなく、概略直角断面同士を接合してもよい。本発明の閉環状シール材は、後述するように、芯材として使用し、その表面を焼結PTFEで被覆する場合があり、かかる場合には必ずしも強い接合強度は必要ではない。
【0031】
本発明の閉環状シール材は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製である限り特に限定されず、例えば、1軸延伸PTFE製であってもよく、2軸延伸PTFE製であってもよい。1軸延伸PTFEは、ミクロ的には、延伸方向と略直交する細い島状のノード(折り畳み結晶)が存在し、このノード間を繋ぐようなすだれ状のフィブリル(前記折り畳み結晶が延伸により解けて引出された直鎖状の分子束)が延伸方向に配向している点にミクロ的な特徴がある。また2軸延伸PTFEは、フィブリルが放射状に広がり、フィブリルを繋ぐノードが島状に点在して、フィブリルとノードとで画された空間が多数存在するクモの巣状の繊維質構造となっている点にミクロ的な特徴がある。
【0032】
ePTFEの平均孔径は、延伸倍率に応じて適宜設定でき、例えば、0.05〜5.0μm程度、好ましくは0.5〜1.0μm程度である。後述するように本発明ではePTFEフィルムを積層することによってシール材を形成することがあり、平均孔径が大きすぎると、フィルム同士の接触面積が小さくなってフィルム同士の密着性が低下する。また平均孔径が大きすぎると、流体がシール材内部を通過する漏れ(浸透漏れ)が発生しやすくなり、シール性が低下する。一方、平均孔径をより小さくするには、製造上の制約がある。
【0033】
なお平均口径は、コールターエレクトロニクス社のコールターポロメーターを用いれば測定できる。
【0034】
ePTFEの空孔率も、延伸倍率に応じて適宜設定でき、例えば、10〜95%程度、好ましくは30〜85%程度の範囲から選択できる。空孔率は、シール材の使用条件(締付け部材の表面粗さ、締付け力等)に応じて選択することが好ましい。空孔率の増加に従って軟質になり、粗い面に対しても小さな締付け力でシール性を発揮できる。また空孔率の減少に伴って、浸透漏れを起こしにくくなる。
【0035】
なお前記空孔率は、多孔質PTFEの質量Wと、空孔部を含むみかけの体積Vとを測定することによって求まる嵩密度D(D=W/V:単位はg/cm3)と、全く空孔が形成されていないときの密度Dstandard(PTFE樹脂の場合は2.2g/cm3)を用い、下記式に基づいて算出することができる。
【0036】
空孔率(%)=[1−(D/Dstandard)]×100
本発明の閉環状シール材は、ePTFEフィルムを積層した積層構造であってもよく、比較的厚いePTFEフィルム(テープ)を単独で用いた非積層構造であってもよい。なお1軸延伸又は2軸延伸されたePTFEフィルムを積層することによって得られる積層帯状体を使用することによって、積層構造にすることができる。好ましい閉環状シール材は、積層構造タイプ(特に2軸延伸タイプのePTFEを用いた積層構造タイプ)である。
【0037】
ePTFEフィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、5μm以上(特に15μm以上)、500μm以下(特に150μm以下)である。
【0038】
ePTFEフィルムは、前記図1に示すように環状平坦面21aの幅w方向に積層されていてもよいが、シール材の厚さt方向に積層されていてもよい。図6は、このようなシール材25の概略斜視図であり、図7はこのシール材25の装着状体を示す概略断面図である。図6,7に示されるように、外周面25bの厚さt方向(シール材の厚み方向)にePTFEフィルムが積層されているシール材25を用いると、ePTFE層は流体の漏れ方向(図7の矢印で示す方向)と並行することとなる。このような場合であっても、締付荷重を高めに設定すれば、空孔を圧潰でき、浸透漏れを防止することができる。なお、ePTFEフィルムが厚さt方向に積層されている場合、2軸延伸PTFE製のシール材を使用するのが望ましい。2軸延伸PTFEを使用すると、環状平坦面25aの幅w方向の強度を高めることができ、締付け圧によるクリープ(コールドフロー)変形を抑えることができる。
【0039】
ePTFE製のシール材は、柔軟性に優れるため、フランジ等の被シール部材とePTFE製シール材の間からの漏れ(界面漏れ)を高度に防止できる一方、多孔質構造を有しているため、締付荷重が低いときは上述したように浸透漏れが発生する場合がある。そこで、本発明のシール材は、非多孔質構造のフィルムと併用することによって、浸透漏れを確実に防止できるようにしておくのが望ましい。例えば、本発明の閉環状シール材を芯材とし、この表面(例えば、内周面及び環状平坦面)を焼結PTFEで被覆することによって、浸透漏れを確実に防止できる。また前記図1に示すようなePTFEフィルムが幅w方向に積層されているようなシール材21において、ePTFEフィルムの一部に代えて非多孔質フィルムを挿入すると、図5に示すように流体の漏れ方向に対して非多孔質フィルムを直交させることができるため、浸透漏れを確実に防止できる。またこれら非多孔質構造のフィルムを併用したシール材は、水系溶媒よりも漏れ防止が困難な流体、例えば、有機溶媒、気体などのシールに特に有用である。
【0040】
前記非多孔質フィルムとしては、金属製フィルム(金属箔)の他、種々の合成樹脂フィルムが使用できるが、好ましくはフッ素樹脂系フィルム[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)製フィルム、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製フィルムなど]、特に好ましくはPTFEフィルム[例えば、焼結PTFEフィルム、未延伸PTFEフィルム、ePTFEを圧縮等によって緻密化したもの(緻密PTFEフィルム)など)が使用できる。
【0041】
上記各図示例のシール材は、いずれも1本の帯状体が1カ所で接合されているものであるが、複数(例えば2本)の帯状体が複数箇所(例えば2カ所)で接合されているものであってもよい。
【0042】
本発明のシール材は、閉環されている限り環の形状は特に限定されず、被シール部材(フランジなど)の形状に応じて適宜選択でき、例えば、概略円環状(円環状、楕円環状、トラック形状など)、概略多角形環状(矩形環状など)の範囲から選択できる。
【0043】
前記図1のシール材21においては、環状部21aは完全に水平であるものの、前記環状部21aは傾斜していてもよい。図8はこのようなシール材24を示す概略斜視図であり、図9はこの図8のシール材24のA−A’線断面図である。環状部24aの仰角(水平面に対する傾斜角度)θ2が0°ではなくても(すなわち、環状部が傾斜していても)、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に使用することができる。ただし仰角θ2が大きすぎると、使い易さが損なわれるため、θ2は45°以下、好ましくは20°以下、さらに好ましくは10°以下(特に0°)とするのが望ましい。
【0044】
なお本発明の閉環状シール材は、製造方法(詳細は後述)に応じて大きく2種類に分けることができる。すなわち前記仰角が0〜45°となる製造方法(0°とすることも可能であるが、0°超となる場合もある製造方法)、及び確実に0°とすることができる製造方法とがあるため、仰角が0〜45°となる閉環状シール材と、仰角が0°である閉環状シール材とに分類できる。以下、閉環状シール材のさらなる特徴を、この分類に応じて説明する。
【0045】
[仰角0〜45°の閉環状シール材]
仰角0〜45°の閉環状シール材は、後述するように、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体から製造される。この延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体のサイズを、シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系(シール材座標系)を基準にして説明すると、厚さt方向の長さはシール材の幅wより小さくなっており、この厚さt方向の長さが小さいという意味で薄肉帯状体と称している。そして仰角0〜45°の閉環状シール材は、前記薄肉帯状体を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げた後(すなわち、厚さt方向と直交する平面上で曲げた後)、この曲げ状態を維持するために帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。なお閉環のタイミングは特に限定されず、熱セットの前であってもよく、熱セットと同時又は熱セットの後であってもよい。
【0046】
仰角0〜45°の閉環状シール材は、一方の環状平坦面(例えば、前記図1のシールの場合、環状平坦面21a及び/又はその裏側の環状平坦面)に接着層が形成されているのが望ましい。特に環状平坦面(環状部)が傾斜しているとき、接着層を形成しておくと、被シール部材に装着する際に簡単にフラット化することができるため、作業性をさらに高めることができる。
【0047】
接着層は、一方の環状平坦面において全体的に亘って形成されていてもよく、部分的に形成されていてもよい。部分的に形成されている場合、複数の接着部を略等間隔で形成するのが望ましい。例えば、図10に示すシール材26では、4つの接着部41を等間隔で形成している。
【0048】
接着層の種類は、本発明のシール材に接着可能である限り特に限定されず、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤などが使用できる。耐熱性等の観点から、アクリル系接着剤が好ましい。
【0049】
接着層の厚みは特に限定されないが、例えば、3〜200μm程度、好ましくは5〜25μm程度である。
【0050】
なお接着層の表面は、通常、離型紙で保護されている。離型紙としては、公知の種々の離型紙が使用でき、例えば、紙又は樹脂フィルム(ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムなど)にシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂等の離型剤をコーティング又は含浸したもの、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の離型性に優れた樹脂フィルムなどが好ましく用いられる。
【0051】
仰角0〜45°の閉環状シール材は、上述したように概略多角形環状(矩形環状など)であってもよいが、コーナー部の内周側は必要に応じて切断除去するのが望ましい。図11は、コーナー部の内周側を切断除去する前の概略多角形環状シール材27の一部切欠概略斜視図であり、この例では矩形環状のものを示している。そしてこの例では、矩形状のフランジ63に、矩形環状シール材27が配設されている。この図11より明らかなように、多角形状のシール材のコーナー部Aは、通常、完全な角にはならず、若干のふくらみをもっている。そのためフランジ63の流路64との関係によっては、コーナー部Aがフランジ63の締め付け面65と当接しなくなり、流路64にはみ出す形になるため、流体の流れを乱すこととなる。また、このシール材27を流路がこのフランジ63よりも小さいフランジに適用した場合、前記流体漏れ等を防止することはできるものの、流体溜まり部Bが大きくなり過ぎる場合がある。これに対して、図12に示すように、コーナー部Aの内周側を完全な角を形成するように切断除去すると、フランジ63の流路64の形状とシール材の内周形状とを近似させることができ、前記乱流、流体溜まりなどを低減することができる。
【0052】
なお仰角0〜45°の閉環状シール材で矩形環状シール材を形成し、かつコーナー部の内周側を切断除去しないとき、その内接円の半径(コーナー半径)Rは、通常、10mm超(例えば15mm以上、特に20mm以上)程度である。
【0053】
[仰角が0°の閉環状シール材]
仰角が0°の閉環状シール材は、後述するように、前記仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合に比べて比較的厚肉の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製厚肉帯状体(及び/又は厚肉板状体)を使用する。すなわちこれら厚肉帯状体及び/又は厚肉板状体(厚肉体と総称される)は、厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが、シール材の幅w以上になっている。そしてこの厚肉体を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げた後、この曲げ状態を維持するために厚肉体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造する。なお閉環のタイミングは特に限定されず、熱セットの前であってもよく、熱セットと同時又は熱セットの後であってもよい。そして熱セットの後に、厚肉体(その閉環体であってもよい)を所定の厚さtにスライスすることによって、仰角が0°である閉環状シール材は製造される。
【0054】
上記のようにして得られる閉環状シール材は、幅wと厚みtの比(w/t)や、内径xと幅wの比(x/w)の条件が上述した範囲よりも厳しくても確実に仰角を0°にできる。例えばw/tは、5以上(特に10以上)であってもよい。またx/wは15以下(特に10以下)であってもよい。
【0055】
また仰角が0°の閉環状シール材は、概略多角形環状シール材(矩形環状シール材など)としたときのコーナー部を鋭くできる点にも特徴がある。例えば矩形状シール材のコーナー部内周の内接円の半径(コーナー半径)Rを、例えば、10mm以下、好ましくは5mm以下、さらに好ましくは0mmにできる。このような閉環状シール材によれば、コーナー部の内周側を切断除去してコーナー部内周を鋭くしたシール材や、コーナー部の内周側に切り欠きを入れてコーナー部を鋭く曲げたシール材に比べ、コーナー部の実質的なシール幅wが大きいためシール性に優れており、またコーナー部が引っ張られた時でも応力集中しにくい構造になっており、コーナー部の強度にも優れている。加えてPTFEの歩留まりを高めることができると共に、切断除去作業、切り欠き作業なども省略できる。
【0056】
なお仰角が0°の閉環状シール材では、仰角0〜45°の閉環状シール材で述べた接着層、離型紙などは通常不要であるが、必要により接着層、離型紙を設けてもよい。例えば内径1000mm以上程度の大口径シール材では、接着層を設けておけば、シール材装着時の位置決めが容易となる。
【0057】
[製造方法]
まず仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法について説明し、次いで仰角が0°の閉環状シール材の製造方法について説明する。
【0058】
[仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法]
仰角0〜45°の閉環状シール材は、比較的薄肉の[換言すれば厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが閉環状シール材の幅wより小さい]ePTFE製帯状体から製造される。すなわちePTFE製の薄肉帯状体(1本又は複数本)を幅方向に曲げて[すなわち、厚さt方向(シール材座標系基準)に直交する平面上で曲げて]全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることによって製造できる。なお前記薄肉帯状体の両端の接合は熱セットの後に行ってもよく、熱セットと同時又は熱セットの前に行ってもよい。
【0059】
シール材の仰角が約90°になることなく、0〜45°程度に抑制することができるのは、薄肉帯状体を全体として環を形成するように曲げるときに厚さt方向に直交する平面上で曲げた後(すなわち環が概略平板状となるようにした後)、概略平板状を維持するように仮固定しながら熱セットしているためである。熱セット後において仮固定を取り除いたときでも、概略平板状を維持できる(すなわち仰角が0〜45°になる)理由の詳細については不明であるが、環状化(概略平板化)に際して生じる残留応力を熱セットによって除去できるためではないかと推察される。
【0060】
以下、仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0061】
ePTFE製帯状体(薄肉帯状体)は、上述したように非積層構造であってもよいが、ePTFEフィルムの積層体を使用するのが望ましい。このような帯状積層体の製造方法は特に限定されず、また積層方向も特に限定されないが、例えば、図13〜図15のようにして製造できる。すなわち図13の例では、図13(a)に示すように、ePTFEフィルムを所定枚数積層し、積層幅rの平板状積層体を形成し、この平板状積層体を所定高さs1でカットすることによって、図13(b)に示すような帯状積層体32を得ている。この帯状積層体32は、ePTFEフィルムが幅w方向に積層されている。なお前記カット高さs1は、シール材の厚さtと同じ(s1=t)であり、従ってシール材の幅wよりも小さくなっている。
【0062】
図14の例では、前記図13と同様にして得られる帯状積層体ユニット32を複数個(この例では3個)積み重ね、接合層34(詳細は後述)を介して接合することよって、帯状積層体33を得ている。この積層帯状体33も、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されることとなる。なお接合層34は必ずしも必要ではなく、熱融着によって各ユニットを直接接合してもよい。
【0063】
図15(a)の例では、マンドレル50にePTFEフィルムを巻回積層してePTFEフィルム積層円筒体11を製造し、この積層円筒体11をマンドレル50の軸方向に沿って(図15(a)中、一点鎖線C参照)切り開くことによって平板状積層体を製造し、この平板状積層体を前記図13の例と同様にして所定幅でカットすることによって帯状積層体を得ている。図15(b)の例では、前記積層円筒体11の周面を螺旋状(図15(b)中、一点鎖線D参照)にカットすることによって、前記図13の例と同様の帯状積層体を製造している。
【0064】
薄肉のePTFE製帯状体を曲げて全体として環を形成するに際しては、平板形状(図1参照)となるように環化してもよく、縦筒状(図3参照)となるように環化してもよい。縦筒状に環化しても、閉環体の側壁を外方に横臥し、鍔状に拡げることによって平板化することができる。
【0065】
また前記環化に際しては、熱セットの前に帯状体の両端部を接合して完全に閉環してもよいものの、熱セットの前には帯状体の両端部を接合することなく、みかけ上において環化(仮環化)し、熱セット後に前記両端部を接合して完全に閉環してもよい。さらには、熱セット中に両端部を接合して完全に閉環してもよい。
【0066】
ePTFE製帯状体を曲げた後は、熱セットに先立って上述したように仮固定しておく必要がある。完全に閉環することなく見かけ上のみ環化(仮環化)した場合には、仮固定しないと形が定まらないためであり、完全に閉環した場合には、外周面に収縮方向の応力が作用して、縦筒状(図3参照)に変形しやすいためである。
【0067】
仮固定に際しては、環化した帯状体を支持体に固定するのが望ましい。前記支持体としては、金属板などの剛性板、この剛性板に複数の小さな穴が開けられているもの(パンチングメタルなどのパンチング板など)などの板状支持体、リング状金属板などのリング状支持体が使用できる。図16,図17は、前記仮固定をより具体的に説明するための概略図である。図16の例では、環化した帯状体71を略同形状のリング状金属板81に仮固定しており、図17の例では、パンチングメタル82に仮固定している。パンチングメタルなどのパンチング板を利用すれば、環の平面形状(円形、楕円形、矩形など)を任意に設定できるため、便利である。
【0068】
支持体への固定の仕方は特に限定されず、例えば、接着手段(接着剤、接着テープなど)、縛着手段(ヒモ、テープなど)、挟着手段(クリップなど)、ズレ防止手段(ピンなど)が挙げられる。なお接着手段を利用する場合、その接着性は、熱セット後に環化体と支持板とを分離可能な程度であることが望ましい。
【0069】
熱セット終了後は、必要に応じて室温程度まで冷却した後、支持体を取り除く。熱セット後は、環化帯状体はくせがつけられており、形態がセットされている。熱セット前又は熱セット時に帯状体の両端部を接合をする場合には、熱セット終了によって、本発明の閉環状シール材を得ることができる。一方、帯状体の両端部を接合していなかった場合には、熱セット後に接合することによって、本発明の閉環状シール材を得ることができる。熱セット後に接合(閉環)する場合、両端部の離れ具合によっては閉環後に環状部が傾斜することもあるが、そのようなものも本発明に含まれる。
【0070】
[仰角が0°の閉環状シール材の製造方法]
仰角が0°の閉環状シール材は、比較的厚肉の[換言すれば厚さt方向(シール材座標系基準)の長さが閉環状シール材の幅wより大きい]ePTFE体(ePTFE製厚肉帯状体、ePTFE製厚肉板状体など)を使用する。そして前記厚肉体(1つ又は複数)を幅w方向(シール材座標系基準)に曲げて[すなわち、厚さt方向(シール材座標系基準)に直交する平面上で曲げて]全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該厚肉体を仮固定し、次いで熱セットし、その後該厚肉体(その閉環体であってもよい)をシール材と同じ厚さt(すなわちシール材の幅w未満)にスライスすることによって製造できる。なお前記厚肉体又はそれをスライスしたものの両端の接合は熱セットの後に行ってもよく、熱セットと同時又は熱セットの前に行ってもよい。好ましくはスライス後に接合する。
【0071】
前記仰角0〜45°のシール材を製造する場合に比べたとき、仰角が0°の閉環状シール材を製造するときの特徴は、熱セットするePTFE体として厚肉のものを使用する点にある。厚肉体を曲げて熱セットした後、所定厚さtにスライスすると、シール材の仰角を確実に0°にすることができる。
【0072】
厚肉体の厚さt方向(シール材座標系基準)の長さは、閉環状シール材の幅w以上であればよく、好ましくはシール材幅wの1.2倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上程度、特に2倍以上程度である。前記厚さt方向の長さは、例えば、5mm以上、特に10mm以上(特に30mm以上)程度である。なお上限は特に限定されないが、通常、500mm以下(例えば300mm以下)程度である。
【0073】
なお仰角が0°のシール材を製造する場合には、厚肉体を使用しているため、熱セット後の適当な段階でシール材厚さtにスライスする必要がある。
【0074】
仰角が0°の閉環状シール材の製造方法は、厚肉体を使用していることに起因して、上述した部分以外にも、仰角0〜45°の閉環状シール材の製造方法と異なる部分が存する。以下、異なる点について詳細に説明する(仰角0〜45°の閉環状シール材の製法と共通する点については、説明を省略する)。
【0075】
仰角が0°の閉環状シール材でも、仰角0〜45°の閉環状シール材と同様、ePTFE製帯状体としてePTFEフィルムの積層体を使用するのが望ましいが、該帯状積層体は、仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合と異なり、厚肉である。具体的には、上記図13(b)に代えて、図18に示すような帯状積層体35を使用する。すなわちカット高さs2が、前記積層帯状体32のカット高さs1よりも大きくなっており、最終的にシール材の幅wよりも大きくなるようにしている。なおこの図18の帯状積層体35も、図13(b)の帯状積層体32と同様、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。また仰角が0°の閉環状シール材でも、仰角0〜45°の閉環状シール材と同様に、帯状積層体ユニット35を複数個積み重ねてもよく(図19参照)、マンドレルに巻回積層したePTFEフィルム積層円筒体11から、平板状積層体を製造した後で該平板状積層体から帯状積層体を製造してもよく、ePTFEフィルム積層円筒体11から直接に帯状積層体を製造してもよい。
【0076】
ePTFE製帯状体の仮固定は、上述の仰角0〜45°の閉環状シール材を製造する場合と同様に行ってもよいが、下記のようにして仮固定することが推奨される。
【0077】
(1)一度に仮固定する方法
例えば図20に示す方法が推奨される。すなわちマンドレル(この例では、断面円形状のマンドレル)51に、厚肉のePTFE製帯状体36を巻き付ける方法が推奨される。なおこの例では、厚肉帯状体36の両端は、テーパーカットされており、しかもテーパーカット面で両端部が接合されている。両端部が接合されていない場合には(又は両端部が接合されている場合でも必要に応じて)、適当な部材でePTFE製帯状体を支持棒51に向けて押し付けるのが望ましい。なお図20の例では、厚肉帯状体36としてePTFEフィルムを積層したものが使用されており、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。
【0078】
マンドレルの断面形状は特に限定されず、概略円形状[円状、楕円状、トラック形状など]、概略多角形状(矩形状など)の範囲から選択できる。
【0079】
熱セット後は、シール材厚さtにスライスする(図20の一点鎖線参照)。
【0080】
(2)複数の厚肉体を各パーツごとに仮固定する方法
例えば図21に示す方法が推奨される。すなわち適当な押し付け部材54を用いて、適当な形状の支持体(図21(a)の例では、円弧状の支持板52;図21(b)の例では、角型の支持板53)に向けてePTFE製厚肉体(この図示例では板状体)37を押し付けることによって、該厚肉体37を仮固定する方法が推奨される。なお図21の例でも、厚肉体37としてePTFEフィルムを積層したものが使用されており、ePTFEフィルムは幅w方向に積層されている。
【0081】
なお上記図示例では、ボルト手段55を用いて、押し付け部材54を支持体52,53に向けて押し付けているものの、ボルト手段の他、種々の押し付け力発生手段が採用できる。また押し付け部材54、支持体52,53なども板状のものに限定されず、種々の押し付け部材や支持体が使用できる。
【0082】
ところで複数の厚肉体を各パーツごとに仮固定する場合でも、全体として(複数のパーツが存する場合には、各パーツを寄せ集めたときに)環を形成できるようにする必要がある。例えば円環状シール材、矩形環状シール材、又はトラック形状シール材を製造する場合、図22に示すようになっていればよい。図22は、各パーツを寄せ集めたときに、厚肉体を高さs2方向から見た上面図である。図22(a)及び図22(b)では、円弧状の厚肉体37を寄せ集めて、全体として円環状となるようにしている。図22(c)では、角型(鉤型)の厚肉体37と、直線状の厚肉体37を寄せ集めて、全体として矩形環状となるようにしている。図22(d)では、円弧状の厚肉体37と、角型(鉤型)の厚肉体37を寄せ集めて、全体としてトラック形状となるようにしている。各パーツの組み合わせは、上記図示例に限定されず、種々の組み合わせが採用できる。
【0083】
熱セット後は、適当な段階でシール材厚さtにスライスする(図21(a)及び図21(b)の一点鎖線参照)。
【0084】
なお矩形環状シール材を製造する場合には、さらに以下の手段を採用することが推奨される。以下の手段を採用すれば、コーナー半径を小さくするのが容易となる。
【0085】
すなわち厚肉帯状体を矩形状の支持体(マンドレル、支持板53など)に仮固定するに際して、厚肉帯状体を予熱しておくのが望ましい。予熱しておくと、厚肉帯状体を適度に軟化でき、矩形状支持体のコーナー部に厚肉帯状体を密着させることができる。前記予熱温度は、例えば、50℃以上(好ましくは80℃以上)、150℃以下(特に120℃以下)程度である。予熱温度が高すぎると、帯状体が収縮してしまう。
【0086】
また図21(b)に図示する例のように支持板53を使用する場合には、直線部の概略全体を押し付けることができる押し付け部材54を使用するのが望ましい。コーナー部以外(直線部)を概略全体に亘って押し付けることによって、コーナー半径を小さくできる。
【0087】
[共通条件]
なお上述した製造方法のいずれを採用する場合でも、下記のようにすることが推奨される。
【0088】
使用するePTFEの取得方法は、以下の通りである。すなわちPTFEのファインパウダーを成形助剤と混合しながら成形し、成形助剤を除去した後、高温高速度で延伸、さらに必要に応じて焼成することによりePTFEを得ることができる。その詳細は例えば特公昭51−18991号公報に記載されている。
【0089】
ePTFE製帯状体は、非積層構造であってもよいがePTFEフィルムを積層したものを使用するのが望ましい。
【0090】
ePTFEフィルム積層体をカットしてePTFE製帯状積層体を製造する場合、適当な段階、特にカット前に焼成によって各フィルムを密着させておくのが望ましい。焼成温度は、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上、具体的には、327℃、特に350℃以上とするのが好ましい。なお焼成温度が高すぎるとPTFE樹脂が熱劣化して穴があいてしまうため、焼成温度は400℃以下、特に380℃以下にするのが好ましい。
【0091】
ePTFE製帯状積層体におけるePTFEフィルムの積層方向は特に限定されない。上述した製造例では、いずれもシール材の幅w方向にePTFEフィルムを積層したが、シール材の厚さt方向にePTFEを積層してもよい。例えば図13(b)、図14に代えて図23(a)、図23(b)に示すような積層構造を採用してもよく、図18、図19に代えて図24(a)、図24(b)に示すような積層構造を採用してもよく、図20に代えて図25に示すような積層構造を採用してもよい。なお熱セット前の環化の際、環化のし易さとePTFEフィルムの積層方向とには相関が低い。すなわちePTFEフィルムの積層方向によらず、環化のし易さは同程度である。
【0092】
図14、図19、図23(b)、図24(b)などに示すように複数のePTFE製積層体ユニット32、35などを積層する場合、接合層34を介して各ユニットを接合してもよく、接合層34を介することなく各積層体ユニットを直接熱融着してもよい。前記接合層としては、例えば、両面粘着テープ、接着剤、プラスチックフィルムなどが挙げられる。特にプラスチックフィルムは、浸透漏れを防止するための上述した非多孔質構造のフィルムとしての機能を持たせることもできる。好ましいプラスチックフィルムには、例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体フィルム(FEPフィルム)、及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルム(PFAフィルム)などのフッ素樹脂系フィルムが含まれる。フッ素樹脂系フィルムは、耐熱性、耐薬品性に優れている。
【0093】
ePTFE製帯状体は、熱セット前に両端部を接合してもよいが、熱セット中又は熱セット後に両端部を接合して環化してもよい。熱セット中又は熱セット後に両端部を接合する場合、熱セット前には、みかけ上において環化(仮環化)しておき、熱セット後に前記両端部を接合して完全に閉環してもよい。
【0094】
ePTFE製帯状体を接合するに際しては、両端部をテーパーカットしてもよく、片端部のみをテーパーカットしてもよい。またテーパーカットしなくてもよい。さらにはePTFE製帯状体の接合前に、該帯状体の両端部を重ねるときには(特に熱セット前には)、片側の端部がもう一方の端部に乗り上げてもよい。例えば図26の概略側面図に示すように、テーパーが形成されている片端の端部38aに、テーパーが形成されていないもう一方の端部38bが乗り上げている。もう一方の端部38bが乗り上げていても、段差を取り除くためにラインLに沿ってカットすれば(特に熱セット後にカットすれば)シール材として使用することができる。ここで段差除去のためのカットラインは、段差に帰因するリークを除去できる程度であれば特に限定されず、例えば、カットラインと環状平坦面とが同一平面となってもよい。なお図26の例では、片側の端部にテーパーが形成されていたが、該テーパーは必ずしも必要ではない。
【0095】
ePTFE製帯状体の両端部の接合手段としては種々の手段が採用でき、例えば、両端部同士を熱融着させる方法、上述したような接合層を利用して(介して)両端部を接合する方法などが挙げられる。
【0096】
なおプラスチックフィルムを利用する場合、例えば、両端部をプラスチックフィルムを介して当接させ、熱融着又は超音波溶着することによって接合することができる。従って熱セットの温度よりも融点の低いプラスチックフィルムを使用すれば、熱セット中に両端部を接合することも可能である。
【0097】
熱セットの温度は、例えば、50℃以上(好ましくは80℃以上)である。温度が高いほど、形態維持性を高めることができる。一方、熱セットの温度は、400℃以下(好ましくは200℃以下)とするのが望ましい。
【0098】
熱セットする際の加熱手段は特に限定されず、例えば、加熱炉内での輻射加熱、加熱板による伝導加熱(特に加熱板でプレスしながらの接触加熱)、加熱流体(空気、蒸気など)による対流加熱などが採用できる。
【0099】
熱セット時間は、形態維持性を発現できる限り特に限定されず、加熱方法や帯状体の大きさなどによって異なるが、例えば0.5〜3時間程度である。
【0100】
上述のようにして得られる本発明の閉環状シール材は、環状平坦部をシール面として使用するのが望ましいが、外周面をシール面として使用してもよい。本発明の閉環状シール材は、流体のシールを必要とする種々の箇所、例えば、配管や容器(タンクを含む)の継手部(フランジ部など)、マンホール蓋などに利用できる。また産業用機器等の面接触部分のシール材としても使用できる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0102】
[仰角0〜45°の閉環状シール材(実験例1〜9)]
下記実験例1〜9では、以下のようにして得られる2軸延伸PTFE製薄肉帯状体を使用した。
【0103】
(2軸延伸PTFE製帯状体1)
2軸延伸PTFEフィルムが積層されているシート[厚さ4mm。ジャパンゴアテックス(株)より商品名「ゴアテックス ハイパーシート」として販売されているもの]をカットすることによって、幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1:4mm(ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)の帯状体(テープ)を得た(図23(a)参照)。
【0104】
(2軸延伸PTFE製帯状体2)
(1)ePTFEフィルムの製造
乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレンの粉末(ファインパウダー)100重量部に、ソルベントナフサ22重量部を混合してなるペースト樹脂をフィルム状にし、このフィルム状のペースト成形体をソルベントナフサの沸点以上の温度(この例では200℃)に加熱してソルベントナフサを蒸発除去し、その後ポリテトラフルオロエチレンの融点以下の温度(この例では300℃)で、引き取り方向に2倍、該引き取り方向と直交する方向に10倍の2軸延伸して、厚さ60μm、空孔率80%のePTFEフィルムを作製した。なお前記延伸は、1秒間に10%以上(この例では10%程度)の割合でフィルムが延びる速度で行った。
【0105】
(2)非多孔質フィルムの製造
上記ePTFEフィルムを3枚重ねあわせ、これをロールにて圧力(2.4kN/cm)と温度(70℃)をかけて空孔を圧潰して、厚さ50μmの緻密ePTFEフィルム(非多孔質フィルム)を作成した。
【0106】
(3)平板状積層体の製造
上記ePTFEフィルムを、直径1,000mm、長さ1,500mmのステンレス製中空マンドレルに、巻回積層した。110回巻回した後、フィルム終端をカッターでカットし、ePTFEフィルムのカット端が捲れないように、両面粘着テープでフィルム積層円筒体に固定した。さらに上記非多孔質フィルムを、このフィルム積層円筒体に1回巻き付け、カット端を両面粘着テープで固定した。その後、再度ePTFEフィルムを110回巻き付け、カット端を両面粘着テープで固定した。
【0107】
このようにして作製した非多孔質層が介挿されたePTFEフィルム積層円筒体をオーブンに入れて、365℃で60分間焼成した。焼成後、オーブンから、この積層円筒体を取出し、室温まで冷却した。なお内径をD1、外径をD2、軸方向の長さをL1としたときに、この積層円筒体の形状は、約1,000mm(D1)×1,020mm(D2)×1,500mm(L1)であった。
【0108】
冷却後、両面粘着テープで固定した部分を切り開き、約1,500mm(L1)×3,000mm(L2)×10mm(L3)の略平板状積層体を得た。
【0109】
(4)ePTFE製帯状体の製造
上記平板状積層体をL1方向の間隔を50mmとしてL2方向にカットすることにより、約50mm(L1)×3,000mm(L2)×10mm(L3)のカット体を得た。このカット体を3本使用し、ePTFEフィルムの積層(L3)方向に貼り合わせ、熱圧着することによって、約50mm(L1)×3,000mm(L2)×25mm(L3)の角柱体を得た(なおこの角柱体は、後でePTFE製帯状体4として使用する)。なお長さL3が30mm(=10mm×3本)ではなく25mmとなっているのは、圧着の圧力のためである。この角柱体をL1方向の間隔を4mmとしてL2方向に再度カットすることにより、高さs1=4mm(L1)、長さ=3,000mm(L2)、幅w=25mm(L3)の帯状体2(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図14参照)を得た。なお帯状体2は、殆どカールしていなかった。
【0110】
(2軸延伸PTFE製帯状体3)
巻回数、スリット幅などの条件を変更する以外は前記2軸延伸PTFE製帯状体2と同様にして、高さs1=6mm、長さ=3,000mm、幅w=20mmの帯状体(テープ)を得た(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図14参照)。
【0111】
実験例1
内径270mm×外径320mm×厚さ1mmの金属製リングの内周及び外周に沿うように仮固定して、2軸延伸PTFE製帯状体1(幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1:4mm;ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)を環化した。なお帯状体1は長すぎるため、環化に際して約50mm重なり合わせ、余った部分を切除した。また環状に仮固定するに際しては、前記2軸延伸PTFEの積層方向(高さs1方向)が環状体の外周面の厚さt方向と等しくなるようにし、幅10mm×厚さ0.1mmの1軸延伸PTFEテープを用いて金属製リングに縛り付けた。温度100℃のオーブンで1時間加熱した後、室温で自然冷却した。1軸延伸PTFEテープをほどき、2軸延伸PTFEの仮環状体を金属製リングから分離した。この仮環状体の内径は約290〜295mmであり、仮固定時よりも若干拡がっていた。一方、幅は25mmを維持していた。
【0112】
前記仮環状体を内径270mmになるように寄せてから余った部分をカットし、両端の重なりが20〜30mmになるようにした。その後、図1に示すように重なり長さ分だけ斜めにカットした(テーパー角θ1=10°)。テーパー面に接着剤(フォーフロント社製 FRONT♯107)を塗布して両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。このとき環状部の仰角は約10°であった。
【0113】
実験例2
加熱条件を200℃、1時間とする以外は、前記実験例1と同様にすることによって、仮環状体を製造した。この仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。なお熱収縮により、幅wは25mmから約23mmに減少していた。
【0114】
実験例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。環状部の仰角は約0°であった。
【0115】
実験例3
加熱条件を300℃、1時間とする以外は、前記実験例1と同様にすることによって、仮環状体を製造した。この仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。なお熱収縮により、幅wは25mmから約21mmに減少していた。
【0116】
実験例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材(内径270mm)を製造した。環状部の仰角は約0°であった。
【0117】
実験例4
2軸延伸PTFE製帯状体2(幅:25mm×長さ:1,000mm×高さs1:4mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)を用いる以外は、実験例1と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例1と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体及び閉環状シール材の外観形状は、実験例1と同様であった。
【0118】
実験例5
2軸延伸PTFE製帯状体2を用いる以外は、実験例2と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例2と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体の内径は270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。また幅wも25mmのままであった。閉環状シール材としたときの環状部の仰角は約0°であった。
【0119】
実験例6
2軸延伸PTFE製帯状体2を用いる以外は、実験例3と同様にすることによって仮環状体を製造し、実験例3と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。仮環状体の内径は約270mmであって、仮固定時の寸法を維持していた。また幅wは熱収縮により、25mmから24mmに減少していた。閉環状シール材としたときの環状部の仰角は約0°であった。
【0120】
実験例1〜6から明らかなように、ePTFEシートの積層方向によらず、閉環状シール材を製造することができる。
【0121】
実験例7
5mm間隔で直径3mmの穴が開けられているパンチングメタル(厚さ2mm)によって、2軸延伸PTFE製帯状体3(幅:20mm×長さ:3,000mm×高さs1:6mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)を長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mmの楕円形に仮固定した。なお帯状体3は長すぎるため、環化に際して約50mm重なり合わせ、余った部分を切除した。また環状に仮固定するに際しては、前記2軸延伸PTFEの積層方向が環状体の環状平坦面の幅w方向と等しくなるようにし、幅10mm×厚さ0.1mmの1軸延伸PTFEテープを用いてパンチングメタルに縛り付けた。温度150℃のオーブンで1時間加熱した後、室温で自然冷却した。1軸延伸PTFEテープをほどき、2軸延伸PTFEの環状体をパンチングメタルから分離した。この仮環状体は、長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mmの楕円形状を維持していた。
【0122】
実施例1と同様にして両端部を接合し、閉環状シール材[長軸長さ(内径)400mm、短軸長さ(内径)300mm]を製造した。このとき環状部の仰角は約0°であった。
【0123】
実験例8
2軸延伸PTFE製帯状体2を長さ300mmに切断し、矩形環状シール材を製造する際のモデル実験を行った。すなわちこの長さ300mmの帯状体をL字型(直角)に曲げた状態でパンチングメタルに固定する以外は、実験例7と同様にした。加熱後の前記L字部(コーナー部)は、完全な角ではなく若干の丸みを帯びており、内周のコーナー半径が約20mmであり、外周のコーナー半径が約50mmであった。
【0124】
実験例9
オーブンに代えて、熱風発生装置(石崎電気(株)製、「SURE プラジェット」;仕様:吹き出し口温度=250℃)から熱風を吹き付けることによって約10分間加熱する以外は、実験例4と同様にして仮環状体を製造し、実験例4と同様にして両端部を接合することによって環状平坦面の幅w方向にePTFEフィルムが積層されている閉環状シール材(内径270mm)を得た。
【0125】
仮環状体の内径は約330mmであり、仮固定時よりも拡がっていた。閉環状シール材の環状部の仰角は約30〜40°であった。
【0126】
[仰角が0°の閉環状シール材(実験例10〜11)]
下記実験例10〜11では、以下のようにして得られる2軸延伸PTFE製厚肉帯状体4を使用した。
【0127】
(2軸延伸PTFE製帯状体4)
上記2軸延伸PTFE製帯状体2を製造する途中で得られる角柱体を2軸延伸PTFE製帯状体4として使用した。この2軸延伸PTFE製帯状体4の形状は、高さs2=50mm(L1)、長さ=3,000mm(L2)、幅w=25mm(L3)である(ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図19参照)。
【0128】
実験例10
2軸延伸PTFE製帯状体4を長さ=約300mmにカットし、温度100℃のオーブン内で約1時間かけて予熱した。図27に示す角型支持板(折り曲げ角度=65°)と、図28に示す押し付け部材を使用し、図21(b)に示すようにして仮固定(ボルト固定)した。次いで温度150℃のオーブン内で約1時間かけて熱セットした後、室温まで冷却し、支持板及び押し付け部材を取り外すことによって、角型の厚肉体(パーツ)を得た(高さ=50mm、長さ=300mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向;図21(b)参照)。なお折り曲げ角度は約80°に拡がっていた。
【0129】
前記厚肉体を高さ4mm間隔でスライスすることにより、角型の帯状体(パーツ)を得た(高さ=4mm、長さ=300mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお折り曲げ角度は約90°に拡がっていた。また折り曲げ部内周のコーナー内接円の半径は、実質的に0mmであった。
【0130】
角型の帯状体(パーツ)を合計で4枚製造し、いずれも両端部をテーパーカットした。テーパーカット面を両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社製 ♯9458)で接合することにより、図29に示すような矩形の閉環状シール材を得た。環状部の仰角は0°であり、コーナー部の内周のコーナー内接円の半径は実質的に0mmであった。
【0131】
実験例11
2軸延伸PTFE製帯状体4を長さ=約350mmにカットした。図30に示す円弧状支持板(半径:108mm)と、図31に示す押し付け部材を使用し、図21(a)に示すようにして仮固定(ボルト固定)した。次いで温度150℃のオーブン内で約1時間かけて熱セットした後、室温まで冷却し、支持板及び押し付け部材を取り外すことによって、円弧状の厚肉体(パーツ)を得た(高さ=50mm、長さ=350mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお円弧状の厚肉体の半径は約115mmになっていた。
【0132】
前記厚肉体を高さ6mm間隔でスライスすることにより、円弧状の帯状体(パーツ)を得た(高さ=6mm、長さ=350mm、幅=25mm;ePTFEフィルムの積層方向=幅w方向)。なお円弧状の帯状体の半径は約135mmになっていた。
【0133】
円弧状の帯状体(パーツ)を合計で4枚製造し、いずれも両端部をテーパーカットした。テーパーカット面を両面粘着テープ(住友スリーエム株式会社製 ♯9458)で接合することにより、図32に示すような円形の閉環状シール材を得た。環状部の仰角は0°であった。
【0134】
比較例1
(2軸延伸PTFE製帯状体5の製造)
2軸延伸PTFEフィルムが積層されているシート[厚さ6mm。ジャパンゴアテックス(株)より商品名「ゴアテックスハイパーシート」として販売されているもの]をカットすることによって、幅:25mm×長さ:3,000mm×高さs1=6mm(ePTFEフィルムの積層方向=高さs1方向=厚さt方向)の薄肉帯状体(テープ)5を得た。
【0135】
この帯状体5の片側面(長さ×幅平面)に、片側に離型紙のついた幅10mmの両面粘着テープ(住友スリーエム社製 ♯9458)を貼り付けた。
【0136】
試験例1
実験例11で得られた円形閉環状シール材と、比較例1で得られた帯状体5の作業性及びシール性を評価した。
【0137】
[作業性]
JIS 10K−250Aのフランジサイズを有するフランジ面を割って、実験例11の円形閉環状シール材を挿入した。円形閉環状シール材は、速やかに簡単に挿入できた。
【0138】
一方、上記と同様のフランジ面を大きく割って、比較例1の帯状体5を貼り付けた。貼り付けに際しては、帯状体5の始端を長さ20mmに亘ってテーパーカットし、この始端側から、離型紙を順次剥がしつつ、フランジ面のシール座面に沿わせて貼り付けていった。テープ始端のテーパーカット面にテープ終端を乗り上げ、始端と終端とを接続した後、図26と同様にしてほぼ水平にカットした。この帯状体5を使用した場合、作業領域を確保するためにフランジ面を大きく割る必要があり、加えてシール座面に沿って貼り付けていく必要があるため、作業に大きな時間を要した。
【0139】
[シール性]
上記のようにして実験例11の円形閉環状シール材を挿入したフランジ、及び比較例1の帯状体5を貼り付けたフランジのシール性を、圧縮空気のリーク量を測定することによって評価した。
【0140】
すなわちフランジを、ボルト締め付けトルク=120N−mで締め付けた後、該フランジに接続する配管に圧縮空気を送り込み、内圧を0.5MPaとした後、圧縮空気送り込みラインを閉として密閉系とした。密閉後の内圧の経時変化をゲージ測定し、下記式に基づいてリーク量を算出した。
【0141】
リーク量=ΔP×A/T
(式中、Tは密閉後の経過時間を示し、ΔPは時間Tのときの内圧の減少量を示し、Aは密閉系の体積を示す)
実験例11の円形閉環状シール材を使用したときのリーク量は、0.0001Pa・m3/秒未満であり、比較例1の帯状体5を使用したときのリーク量も、0.0001Pa・m3/秒未満であった。
【0142】
上記試験結果から明らかなように、本発明の閉環状シール材は、シール性が低下することなく、作業性を著しく高めることができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明のシール材は、帯状体を利用した閉環体であるにも拘わらず概略平板状を維持しているために、打ち抜きタイプなどの一般のシール材と同様に取り扱うことができる。そのためフランジなどの被シール箇所への取り付け作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の閉環状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は図1の閉環状シール材で使用されていた帯状体の概略斜視図である。
【図3】図3は図1の閉環状シール材が変形した状態を示す概略斜視図である。
【図4】図4は図1の閉環状シール材を装着状況を示す概略斜視図である。
【図5】図5は図1の閉環状シール材を取り付けたフランジの概略断面図である。
【図6】図6は本発明の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図7】図7は図6の閉環状シール材を取り付けたフランジの概略断面図である。
【図8】図8は本発明の閉環状シール材のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図9】図9は図8のA−A’線断面図である。
【図10】図10は本発明の閉環状シール材の別の例を示す概略斜視図である。
【図11】図11は本発明の閉環状シール材のさらに別の例を示す概略斜視図である。
【図12】図12は本発明の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図13】図13は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【図14】図14は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の製造方法の他の例を示す概略斜視図である。
【図15】図15は本発明で使用する平板状積層体の製造方法及びePTFE製帯状体の製造方法を説明するための概略斜視図である。
【図16】図16は本発明の閉環状シール材の製造方法の一例を示す概略斜視図である。
【図17】図17は本発明の閉環状シール材の製造方法の他の例を示す概略平面図である。
【図18】図18は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体の一例を示す概略斜視図である。
【図19】図19は本発明で使用するePTFE製帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図20】図20は本発明の閉環状シール材の製造方法の別の例を示す概略斜視図である。
【図21】図21は本発明の閉環状シール材の製造方法のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図22】図22は本発明の閉環状シール材の製造方法を説明するための概略平面図である。
【図23】図23は本発明で使用するePTFE製薄肉帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図24】図24は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体の他の例を示す概略斜視図である。
【図25】図25は本発明で使用するePTFE製厚肉帯状体のさらに他の例を示す概略斜視図である。
【図26】図26は本発明におけるテーパーカットを説明するための概略拡大側面図である。
【図27】図27は本発明で使用する角型の支持板の概略斜視図である。
【図28】図28は図27の支持板とセットで使用する押し付け部材の概略斜視図である。
【図29】図29は実施例で得られたシール材の概略斜視図である。
【図30】図30は本発明で使用する円弧状の支持板の概略斜視図である。
【図31】図31は図30の支持板とセットで使用する押し付け部材の概略斜視図である。
【図32】図32は実施例で得られた他のシール材の概略斜視図である。
【図33】図33は従来の閉環状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【図34】図34は従来の閉環状シール材の他の例を示す概略斜視図である。
【図35】図35は従来の帯状シール材の一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
31: 帯状体
32,33: 薄肉帯状体
35,36,37: 厚肉帯状体
21,23,24,25,26,27: 閉環状シール材
21a,25a: 環状平坦面
21b,25b: 外周面
41: 接着層
Claims (16)
- 1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材であって、このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0〜45°であることを特徴とする閉環状シール材。
- 1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体が周方向の両端部で接合されている閉環状シール材であって、このシール材の内周部から外周部までの幅wは外周面の厚さtよりも大きいものであり、このシール材の環状部の仰角は、内周面の片縁で形成される水平面に対して、0°であることを特徴とする閉環状シール材。
- 幅wと厚さtの比(w/t)が5以上である請求項2に記載の閉環状シール材。
- 前記閉環状シール材は概略円環状であって、内周の直径xと幅wとの比(x/w)が15以下である請求項2又は3に記載の閉環状シール材。
- 前記閉環状シール材は矩形環状であって、コーナー部内周の内接円の半径が10mm以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の閉環状シール材。
- 前記閉環状シール材は矩形環状であって、コーナー部内周の内接円の半径が0mmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の閉環状シール材。
- 前記環状部は、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の積層構造を有している請求項1〜6のいずれかに記載の閉環状シール材。
- 前記延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層は、幅w方向に向けて積層されている請求項7に記載の閉環状シール材。
- 前記環状部は、積層された延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層の間に、非多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が介挿されている請求項8に記載の閉環状シール材。
- 延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン層が、厚さt方向に向けて積層されている請求項7に記載の閉環状シール材。
- 前記帯状体の周方向の少なくとも片端部はテーパーカットされており、このテーパーカット面が帯状体の接合部の少なくとも一部をなすものである請求項1〜10のいずれかに記載の閉環状シール材。
- 下記(1)〜(3)から選択された少なくとも1つの手段によって、前記帯状体の両端部が接合されている請求項1〜11のいずれかに記載の閉環状シール材。
(1) 両面粘着テープ
(2) 接着剤
(3) テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体フィルム及びテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体フィルムから選択された少なくとも1種を介した熱融着又は超音波溶着 - 前記閉環状シール材は、外周面と直交する環状平坦面のどちらか一方の面に接着層が形成されている請求項1〜12のいずれかに記載の閉環状シール材。
- 得られる閉環状シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系を基準にして方向を示したとき、
厚さt方向の長さが得られる閉環状シール材の幅wよりも小さいものである1つ又は複数の延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製帯状体を幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該帯状体を仮固定し、次いで熱セットすることとし、
前記帯状体の周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前に行うこととする請求項1に記載の閉環状シール材の製造方法。 - 得られる閉環状シール材の幅w方向、厚さt方向、及び周方向からなる座標系を基準にして方向を示したとき、
延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン製の帯状体及び/又は板状体であって厚さt方向の長さが得られる閉環状シール材の幅w以上の長さであるものの1つ又は複数を、幅w方向に曲げて全体として環を形成するようにした後、この曲げ状態を維持するために該帯状体及び/又は板状体を仮固定し、次いで熱セットすることとし、
得られた熱セット体は所定厚さtにスライスすることとし、
前記厚肉帯状体、厚肉板状体、又はそれらをスライスしたものの周方向の両端の接合は熱セットの後或いは熱セットと同時又は熱セットの前に行うこととする請求項2に記載の閉環状シール材の製造方法。 - 前記接合はスライス後に行うものである請求項15に記載の閉環状シール材の製造方法。
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