JP2004003573A - 転動装置用センサ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド等の転動装置の運転状態を検知する検出素子11,12を有する転動装置用センサ10であって、検出素子11,12からの出力信号を処理することにより、検出素子11,12の異常を検知する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転がり軸受装置や直動装置等の転動装置の運転状態を検知する転動装置用センサに係る。特に、信頼性が要求される鉄道車両、自動車の車軸軸受、機械設備等の軸受等の異常判定を行う転動装置用センサに関する。また本発明は、リニアガイド、ボールねじ等の直動部品の異常判定や、映像・情報機器などの軸受装置の異常判定を行う転動装置用センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図23は、転動装置用センサを備えた転動装置を示す。転動装置181は、軸方向に間隔をあけて配された一対の転がり軸受182,182と、転がり軸受182,182に外嵌されたハウジング184から構成されている。
【0003】
転がり軸受182,182は、それぞれ軸186に外嵌された内輪185,185と、内輪185,185に対向して配された外輪183,183と、内輪185,185と外輪183,183との間に回転可能に配された転動体189,189と、から構成されている。ハウジング184の表面にはハウジング184の内面と外面を貫通する取付孔184aが形成されている。
【0004】
転動装置用センサ180は、取付孔184aに挿通されて、図示しないボルト等の固定手段によってハウジング184に固定されている。転動装置用センサ180は、転がり軸受182の状態を検知するための検出素子としての温度センサ187を内蔵している。温度センサ187は、転がり軸受182の近傍に配置され、転がり軸受182の雰囲気温度を計測する。計測された検出温度は、増幅回路等により増幅・波形整形されて、ケーブル188を通じて外部の判定回路に転送される。
【0005】
判定回路は、検出温度を所定の閾値と比較し、検出温度が所定の閾値を超えた場合、センサ異常信号を出力する。このセンサ異常信号は、転がり軸受182の剥離や傷等の初期的な異常、および焼付き等の末期的な異常の発生を意味する。センサ異常信号がトリガーとなり、警報が発せられたり、警告灯が点灯されたりすることにより、作業者は異常を知らされる。
【0006】
転動装置用センサ180は、温度センサ187の代わりに、振動センサを内蔵したものもある。この場合、転動装置用センサ180は、振動センサから出力された出力信号が所定の閾値を超えた場合に、転がり軸受182の剥離等の異常を検知する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、転動装置用センサ180は、温度センサ187や振動センサの検出素子が異常動作した場合でも、それら検出素子からの出力が正常値の範囲内にあれば、それら検出素子の異常を確認できない。このため、転がり軸受182が異常状態に陥っても、検出素子が検出素子自身の不良により転がり軸受182の異常を検出できない場合、転がり軸受182の破損、ひいては装置全体の破損や事故をまねく可能性がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、検出素子の動作不良を適切に検知することにより、検出素子のセンシングにおける信頼性を向上することができる転動装置センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、下記構成により達成される。
(1)転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号を出力する第1の検出素子と、前記転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第2の出力信号を出力する第2の検出素子と、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較し、前記第1または第2の検出素子の異常を判定する異常判定回路と、を有する転動装置用センサ。
(2)転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号を出力する第1の検出素子と、前記転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第2の出力信号を出力する第2の検出素子と、を有するセンサユニットと、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較し、前記第1または第2の検出素子の異常を判定する異常判定回路を有する計測器と、から構成される転動装置用センサ。
(3)前記第1および第2の検出素子が、少なくとも温度センサまたは振動センサである(1)または(2)の転動装置用センサ。
(4)前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と第2の出力信号の差または比が所定範囲内にあるかどうかを判断することにより前記第1または第2の検出素子の異常を判定することを特徴とする(1)の転動装置用センサ。
(5)前記異常判定回路は、さらに前記差または比が前記所定範囲内にあるかどうかを判断する比較器を有し、
前記比較器は、前記差または比が前記所定範囲外であった場合、異常信号を出力することを特徴とする(4)の転動装置用センサ。
(6)前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と第2の出力信号の和が所定範囲内にあるかどうかを判断することにより前記第1または第2の検出素子の異常を判定することを特徴とする(1)の転動装置用センサ。
(7)前記異常判定回路は、さらに前記和が前記所定範囲内にあるかどうかを判断する比較器を有し、
前記比較器は、前記和が前記所定範囲外であった場合、異常信号を出力することを特徴とする(6)の転動装置用センサ。
(8)転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号および第2の出力信号を出力する検出素子と、前記第1の出力信号を変換し出力する第1の信号処理回路と、前記第2の出力信号を変換し出力する第2の信号処理回路と、前記第1の信号処理回路から出力された前記第1の出力信号と前記第2の信号処理回路から出力された前記第2の出力信号とを比較し、前記第1または第2の信号処理回路の異常を判定する異常判定回路と、を有する転動装置用センサ。
(9)前記検出素子が、少なくとも温度センサまたは振動センサである(8)の転動装置用センサ。
(10)前記第1の出力信号と前記第2の出力信号は、同特性である(1)〜(5)、(8)または(9)の転動装置用センサ。
(11)前記第1の出力信号と前記第2の出力信号は、逆特性である(5)または(6)の転動装置用センサ。
(12)前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の和が実質的に0でない場合、異常有りと判定し、センサ異常信号を出力する(11)の転動装置用センサ。
(13)前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の差が実質的に0でない場合、異常有りと判定し、センサ異常信号を出力する(10)の転動装置用センサ。
(14)前記転動装置が、転がり軸受である(1)〜(13)の転動装置用センサ。
(15)前記転動装置が、ボールねじである(1)〜(13)の転動装置用センサ。
(16)前記転動装置が、リニアガイドである(1)〜(13)の転動装置用センサ。
【0010】
上記の転動装置用センサは、第1および第2の検出素子が出力した第1および第2の出力信号を比較処理することにより、検出素子の異常を検知する。または、上記の転動装置用センサは、単一の検出素子から出力された出力信号を2個の信号処理回路に入力し、各信号処理回路の出力を比較することにより信号処理回路の異常を検知する。したがって、転動装置用センサは、適切に検出素子や信号処理回路の異常を知ることができるので、異常の見落としによる装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0011】
上記構成において、検出素子よりの出力信号が同特性であれば、両出力信号の差を演算することによって動作不良の判定を行う。この場合、検出素子を複数対設け、それら複数対の検出素子が発生した出力信号を複数対毎に減算処理する。したがって、両出力信号の差が0近傍になっていれば、検出素子は正常に動作しており、これに反して、両出力信号の減算結果が0近傍になっていない場合には動作不良が発生していると判定することができる。
【0012】
上記構成において、検出素子よりの出力信号が、逆特性であれば、両出力信号の和を演算することによって動作不良の判定を行う。この場合、検出素子を複数対設け、それら複数対の検出素子から出力された出力信号の値を複数対毎に加算処理する。
したがって、両出力信号の加算結果が0近傍になっていれば、検出素子は正常に動作しており、これに反して、両出力信号の加算結果が0近傍になっていない場合には動作不良が生じていると判定することができる。
【0013】
上記構成において、検出素子の出力信号を比較又は演算処理する異常判定回路をセンサユニット内部に設ければ、検出素子や検出素子の出力信号の処理をセンサユニット内で判定処理することが可能である。したがってこの場合には、外乱を受けることなく出力信号の処理を行うことができる。
【0014】
上記構成において、検出素子からの出力信号を比較又は演算処理する異常判定回路をセンサユニット外部に設ければ、検出素子や検出素子の出力を処理する信号処理回路から出力された出力信号をセンサユニット外で判定することが可能である。したがってこの場合には、センサユニットの外形・サイズをコンパクト化することができる。
【0015】
上記構成において、検出素子が温度センサであれば、転動装置の温度を測定することによって、転動装置における焼付き等の異常を検知する。一方、検出素子が振動センサであれば、転動装置の振動を測定することによって、転動装置における剥離や傷等の異常を検知する。
したがって、温度センサを用いた場合、転動装置における焼付き等の異常を見落とすことがなくなり、振動センサを用いた場合、転動装置における剥離や傷等の異常を見落とすことがなくなる。その結果、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0016】
上記構成において、転動装置としては、転がり軸受、ボールねじ、リニアガイド等が例として挙げられる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明の第1実施形態の転動装置用センサを示す。
第1実施形態の転動装置用センサ10は、一対の第1,第2の検出素子11,12と、一対の第1,第2の信号処理回路13,14と、異常判定回路15と、を内部に有するセンサユニット16から構成される。センサユニット16は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。
【0019】
転動装置用センサ10は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ10が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0020】
第1,第2の検出素子11,12は、いずれも温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置されることにより、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた第1,第2の出力信号をそれぞれ出力する。第1,第2の検出素子11,12から出力される出力信号は、同特性を有する電流または電圧である。第1の検出素子11は、第1の出力信号を第1の信号処理回路13に出力する。第2の検出素子12は、第2の出力信号を第2の信号処理回路14に出力する。第1,第2の検出素子11,12は、一対に設けられているが、複数対設けられても良い。ここで第1,第2の検出素子11,12は、正常時、同一温度にて同一出力を出力するように調整されている。
【0021】
また、2個の温度センサに代えて2個の振動センサを第1,第2の検出素子11,12として用いても良い。振動センサは、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の振動を検出して振動のレベルに応じた出力信号を出力する。振動センサとしては、圧電素子を使用したものや、歪ゲージを使用したものが用いられる。振動センサは、両持ち構造の素子であっても、片持ち構造の素子であっても良い。温度センサ同様に、2個の振動センサは、正常時、同一振動レベルにて同一出力を出力するように調整されている。
【0022】
第1,第2の信号処理回路13,14は、第1,第2の出力信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、第1,第2の出力信号を増幅するための増幅回路と、第1,第2の出力信号を電圧信号又は電流信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。
【0023】
第1の信号処理回路13は、第1の出力信号を判定が可能なレベルの電気信号に変換し、ケーブル18を介して計測器17に変換後の第1の出力信号を出力する。あわせて第1の信号処理回路13は、異常判定回路15に変換後の第1の出力信号を出力する。
【0024】
第2の信号処理回路14は、第2の出力信号を、判定が可能なレベルの電気信号に変換し、異常判定回路15に変換後の第2の出力信号を出力する。
【0025】
本実施形態では、第1,第2の信号処理回路13,14は、第1,第2の検出素子11,12の数と同数設けられているが、第1,第2の検出素子11,12それぞれに対し複数個設けられても良い。
【0026】
第1,第2の検出素子11,12が、正常時、同一温度にて同一出力を出力するように調整することが困難な場合には、第1,第2の信号処理回路13,14の出力が、同一温度にて同一出力となるように調整しておいても良い。検出素子として振動センサ、または他のセンサを用いた場合も同様である。
【0027】
異常判定回路15は、第1の信号処理回路13からの第1の出力信号と、第2の信号処理回路14からの第2の出力信号との差を計算する。
【0028】
図1(b)に示すように、第1,第2の検出素子11,12の出力は同特性をもつ。よって、第1,第2の検出素子11,12の両者が正常な場合、第1の信号処理回路13からの第1の出力信号の値、および第2の信号処理回路14からの第2の出力信号の値は、同一またはほぼ同一の値を示す。そのため、両者の差は、0レベルまたはほぼ0レベル(以下、0レベルと称する)となる。両者の差が0レベルであることは、第1,第2の検出素子11,12,および第1,第2の信号処理回路13,14が正常に動作していることを意味する。
【0029】
ここで、0レベルとは、正常時、第1の出力信号のレベルと第2の出力信号のレベルがほぼ同一となるように、第1,第2の検出素子11,12の出力レベルを調整した時に許容される調整誤差および検出素子の径年変化に依存する誤差を考慮しても差が0であると認められるものである。この調整誤差および径年変化に依存する誤差については、状況に応じ適切な値を選択すればよい。
【0030】
ここで、第1,第2の検出素子11,12、および第1,第2の信号処理回路13,14のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、第1の信号処理回路13からの第1の出力信号の値、および第2の信号処理回路14からの第2の出力信号の値は、互いに異なる値を示す。したがって、両者の差は、0レベルではない正または負のレベルとなる。
【0031】
差が、正または負のレベルであることは、第1,第2の検出素子11,12、および第1,第2の信号処理回路13,14のいずれかに動作不良が発生していることを意味する。異常判定回路15は、差が0レベルではない正または負のレベルとなった場合、ケーブル18を介してセンサ異常信号を計測器17に出力する。
【0032】
第1,第2の検出素子11,12と、第1,第2の信号処理回路13,14と、異常判定回路15とは、単一のセンサユニット16内に備えられており、外部ケーブル18に出力される以前に異常判定回路15は異常判定を行う。よって、第1,第2の出力信号は、ケーブル18を取り巻く外部環境に起因する外乱により、その信号レベルが乱されることがない。したがって、異常判定回路15の判定エラーが発生しにくくなる。
【0033】
計測器17は、第1の信号処理回路13から送られた変換後の第1の出力信号に基づき、転がり軸受の雰囲気温度を確認し、雰囲気温度に応じた表示を行う。また計測器17は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0034】
転がり軸受が正常に作動していてその雰囲気温度が上昇していなければ、第1,第2の出力信号は正常を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路15から計測器17に送られていなければ、計測器17は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0035】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、第1,第2の出力信号は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器17は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0036】
一方、第1,第2の検出素子11,12、および第1,第2の信号処理回路13,14のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、異常判定回路15はセンサ異常信号を計測器17に出力する。計測器17は、このセンサ異常信号に従い、第1,第2の検出素子11,12、第1,第2の信号処理回路13,14の何れかに異常が発生したと判定する。そして、計測器17は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0037】
第1実施形態の転動装置用センサ10は、温度センサである第1,第2の検出素子11,12からの出力信号を比較処理することにより、第1,第2の検出素子11,12のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因して、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0038】
また、第1,第2の検出素子11,12からの出力信号が同特性であるため、両出力信号の値を減算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の差が0レベル近傍になっていれば、異常判定回路15は、第1,第2の検出素子11,12が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の減算結果が0近傍になっていない場合には第1,第2の検出素子11,12に動作不良が生じていると判定することができる。
【0039】
異常判定回路15は、第1,第2の検出素子11,12から出力された出力信号、および第1,第2の信号処理回路13,14から出力された出力信号に基づきセンサユニット16内で異常判定を行う。したがって、異常判定回路15は、外乱の影響無しに出力信号の処理を行うことができる。
【0040】
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態の転動装置用センサを示す。
第2実施形態の転動装置用センサ20は、一対の第1,第2の検出素子21,22と、一対の第1,第2の信号処理回路23,24と、をセンサユニット26内に備え、ケーブル28を介してセンサユニット26に電気的に接続された計測器27内に異常判定回路25を備えて構成されている。一対の第1,第2の検出素子21,22は、いずれも同特性の出力を発生する温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の異常を検知する。
【0041】
第1,第2の検出素子21,22、第1,第2の信号処理回路23,24、および異常判定回路25の機能は、第1実施形態に記載の第1,第2の検出素子11,12、第1,第2の信号処理回路13,14、および異常判定回路15と同一である。
【0042】
第2実施形態の転動装置用センサ20は、異常判定回路25を計測器27内に備えており、異常判定はセンサユニット26外で行われる。これにより、センサユニット26をコンパクト化することができ、転がり軸受が固定されるハウジングに大きなスペースがなくても、センサユニット26を設置することが可能となる。
【0043】
第2実施形態の転動装置用センサ20は、転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ20が転がり軸受の温度の検出を行う。第1,第2の検出素子21,22から出力された第1および第2の出力信号は、第1,第2の信号処理回路23,24およびケーブル28を介して計測器27に取り込まれる。第1の出力信号は、計測器27内で演算処理されて転がり軸受に異常が有るか否かが判別される。
【0044】
転がり軸受が正常に作動していてその雰囲気温度が異常上昇していなければ、第1の検出素子21からの出力信号は、正常を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路25から出力されていなければ、計測器27は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0045】
運転中の転がり軸受に焼付き等が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、第1,第2の検出素子21,22からの第1,第2の出力信号が、異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器27は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じていると判定し、その旨を表示する。
【0046】
また、第1,第2の検出素子21,22及び、第1,第2の信号処理回路23,24のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、第1の信号処理回路23からの第1の出力信号と、第2の信号処理回路24からの第2の出力信号が、互いに異なる値を示し、差が0レベルでない正または負のレベルとなる。このとき、異常判定回路25はセンサ異常信号を出力し、計測器27は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0047】
第2実施形態の転動装置用センサ20によれば、温度センサである第1,第2の検出素子21,22から出力された出力信号を比較処理することにより、第1,第2の検出素子21,22のセンサ異常が検知される。
したがって、センサ異常に起因する転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0048】
また、第1,第2の検出素子21,22からの出力信号が同特性であるため、両出力信号の値を減算処理することによって動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の減算結果が0近傍になっていれば、第1,第2の検出素子21,22は正常に動作しており、一方、両出力信号の減算結果が0近傍になっていない場合に検出素子21,22または信号処理回路23,24のいずれかに動作不良が生じていると判定することができる。
【0049】
そして、第1,第2の検出素子21,22からの出力信号を比較処理する異常判定回路25がセンサユニット26外部の計測器27に設けられているので、第1,第2の検出素子21,22からの出力信号及び、第1,第2の信号処理回路23,24からの出力信号はセンサユニット26外で判定される。
したがって、センサユニット26の外形をコンパクトにすることができ、またケーブル28内の信号線のうち、一方が断線したとしても、他方により異常の検知を行うことができる。
【0050】
(第3実施形態)
図3(a)は、本発明の第3実施形態の転動装置用センサを示す。
第3実施形態の転動装置用センサ30は、一対の第1,第2の検出素子31,32と、一対の第1,第2の信号処理回路33,34と、異常判定回路35と、をセンサユニット36内に備えている。
【0051】
第1,第2の検出素子31,32は、いずれも温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた第1,第2の出力信号をそれぞれ出力する。第1,第2の検出素子31,32から出力される出力信号は、電流または電圧の信号である。第1の検出素子31は、第1の出力信号を第1の信号処理回路33に出力する。第2の検出素子32は、第2の出力信号を第2の信号処理回路34に出力する。第1,第2の検出素子31,32は、一対に設けられているが、複数対設けられても良い。ここで第1,第2の検出素子31,32は、正常時、同一温度にて絶対値が同一でかつ正負の符号が異なる出力を出力し、逆特性となるように調整されている。
【0052】
また、2個の温度センサに代えて2個の振動センサを第1,第2の検出素子31,32として用いても良い。振動センサは、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の振動を検出して振動のレベルに応じた出力信号を出力する。振動センサとしては、圧電素子を使用したものや、歪ゲージを使用したものが用いられる。そのとき、両持ち構造の素子であっても、片持ち構造の素子であっても良い。温度センサ同様、2個の振動センサは、正常時、同一振動レベルにて絶対値が同一でかつ正負の符号が異なる出力を出力するように調整されている。
【0053】
第1,第2の信号処理回路33,34は、第1,第2の出力信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、第1,第2の出力信号を増幅するための増幅回路と、第1,第2の出力信号を電圧信号又は電流信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。
【0054】
第1の信号処理回路33は、第1の出力信号を判定が可能なレベルの電気信号に変換し、ケーブル38を介して計測器37に変換後の第1の出力信号を出力する。あわせて第1の信号処理回路33は、異常判定回路35に変換後の第1の出力信号を出力する。
【0055】
第2の信号処理回路34は、第2の出力信号を、判定が可能なレベルの電気信号に変換し、異常判定回路35に変換後の第2の出力信号を出力する。
【0056】
本実施形態では、第1,第2の信号処理回路33,34は、第1,第2の検出素子31,32の数と同数設けられているが、第1,第2の検出素子31,32それぞれに対し複数個設けられても良い。
【0057】
第1,第2の検出素子31,32が、正常時、同一温度にて絶対値が同一でかつ正負の符号が異なる出力を出力するように調整することが困難な場合には、第1,第2の信号処理回路13,14が、絶対値が同一でかつ正負の符号が異なる出力を出力するように調整しておいても良い。検出素子として振動センサ、または他のセンサを用いた場合も同様である。
【0058】
異常判定回路35は、第1の信号処理回路33からの第1の出力信号と、第2の信号処理回路34からの第2の出力信号とを加算し、両出力信号の和を求める。
【0059】
図3(b)に示すように、第1,第2の検出素子31,32の出力は逆特性をもつ。第1,第2の検出素子31,32がいずれも正常な場合、第1の信号処理回路33からの第1の出力信号と、第2の信号処理回路34からの第2の出力信号は、出力特性の正負が逆である。そのため、両出力信号の和は、0レベル(0近傍)となる。加算結果が、0レベルであることは、第1,第2の検出素子31,32が正常に動作していることを意味する。
【0060】
ここで、第1,第2の検出素子31,32及び、第1,第2の信号処理回路33,34のうち、いずれかが動作不良を起こしていると、第1の信号処理回路33からの第1の出力信号及び、第2の信号処理回路34からの第2の出力信号の和は、0レベルではない正または負のレベルとなる。加算結果が、正または負のレベルであることは、第1,第2の検出素子31,32及び、第1,第2の信号処理回路33,34のいずれかに動作不良が発生していることを意味する。これにより、異常判定回路35は、第1,第2の検出素子31,32及び、第1,第2の信号処理回路33,34のいずれかに異常が発生したと判定し、センサ異常信号を計測器37に与える。計測器37は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0061】
さらに、第1の検出素子31及び第1の信号処理回路33または第2の検出素子32及び第2の信号処理回路34の何れか一方でグランドと短絡が生じた場合には、短絡が生じた信号処理回路からの出力が0となる。したがって、異常判定回路35の加算結果は、正または負のある値をとる。これにより、第1の検出素子31又は第1の信号処理回路33と第2の検出素子32又は第2の信号処理回路34の何れに短絡等の異常が生じたかを検知することができる。したがって、センシングの信頼性をさらに向上させることができる。
また、第1の検出素子31と第2の検出素子32が短絡した場合、両者の信号が同一となるため、その加算結果は0レベルとならず、異常を検知することが可能となる。なお、第1および第2の実施形態の場合は、上記異常が検出できないため、逆特性のほうがさらに好ましい。
【0062】
第1,第2の検出素子31,32と、第1,第2の信号処理回路33,34と、異常判定回路35とは、単一のセンサユニット36内に備えられており、外部ケーブル38に出力される以前に異常判定回路35にて異常判定が行われる。よって、第1,第2の出力信号は、ケーブル38を取り巻く外部環境に起因する外乱により、その信号レベルが乱されることがない。したがって、異常判定回路35の判定エラーが発生しにくくなる。
【0063】
第3実施形態の転動装置用センサ30は、転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ30が転がり軸受の温度の検出を行う。第1,第2の検出素子31,32から出力された出力信号は、第1,第2の信号処理回路33,34を介して計測器37に取り込まれ、計測器37内において演算処理されて転がり軸受に異常が有るか否かが判別される。
【0064】
転がり軸受が正常に作動していてその雰囲気温度が上昇していなければ、第1,第2の出力信号は正常な温度を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路35から計測器37に送られていなければ、計測器37は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0065】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、第1,第2の出力信号は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器37は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0066】
一方、第1,第2の検出素子31,32、および第1,第2の信号処理回路33,34のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、異常判定回路35は、センサ異常信号を計測器37に出力する。計測器37は、このセンサ異常信号に従い、第1,第2の検出素子31,32、第1,第2の信号処理回路33,34の何れかに異常が発生したと判定する。そして、計測器37は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0067】
第3実施形態の転動装置用センサ30は、温度センサである第1,第2の検出素子31,32から出力された出力信号を加算処理することにより、第1,第2の検出素子31,32のセンサ異常を検知する。
したがって、転がり軸受における焼付き、剥離、傷等の異常を見落とすことがなくなり、それによって、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0068】
また、第1,第2の検出素子31,32よりの出力信号が逆特性であるため、異常判定回路35は、両出力信号の値を加算処理することによって動作不良の判定を行う。
したがって、異常判定回路35は、両出力信号の加算結果が0近傍になっていれば、第1,第2の検出素子31,32は正常に動作しており、これに反して、両出力信号の加算結果が0近傍になっていない場合には動作不良であると判定することができる。
【0069】
そして、第1,第2の検出素子31,32よりの出力信号を加算する異常判定回路35がセンサユニット36内部に設けられているので、第1,第2の検出素子31,32からの出力信号及び、第1,第2の信号処理回路33,34からの出力信号がセンサユニット36内で判定される。したがって、異常判定回路35は、外乱の影響を受けることなく出力信号の異常判定処理を行うことができる。
【0070】
(第4の実施形態)
図4は、本発明の第4実施形態の転動装置用センサ40を示す。
第4実施形態の転動装置用センサ40は、一対の第1,第2の検出素子41,42と、一対の第1,第2の信号処理回路43,44と、をセンサユニット46内に備え、ケーブル48を介してセンサユニット46に電気的に接続された計測器47内に異常判定回路45を備えて構成されている。転動装置用センサ40は、一対の第1,第2の検出素子41,42が、いずれも逆特性の出力を発生する温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置されることにより、異常を検知するのに用いられる。
【0071】
第1,第2の検出素子41,42、第1,第2の信号処理回路43,44、および異常判定回路45の機能は、第3実施形態に記載の第1,第2の検出素子31,32、第1,第2の信号処理回路33,34、および異常判定回路35と同一である。
【0072】
第4実施形態の転動装置用センサ40は、異常判定回路45を計測器47内に備えているため、異常判定はセンサユニット46外で行われる。これにより、センサユニット46をコンパクト化することができ、転がり軸受が固定されるハウジングに大きなスペースがなくても、センサユニット46を設置することができる。
【0073】
第4実施形態の転動装置用センサ40は、転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ40が転がり軸受の温度の検出を行う。第1,第2の検出素子41,42から出力された第1,第2の出力信号は、第1,第2の信号処理回路43,44を介して計測器47に取り込まれる。第1および第2の出力信号は、計測器47内で演算処理されて転がり軸受に異常が有るか否かが判別される。
【0074】
転がり軸受が正常に作動していてその雰囲気温度が上昇していなければ、第1,第2の出力信号は、正常を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路45から出力されていなければ、計測器47は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0075】
運転中の転がり軸受に焼付き等が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、第1,第2の出力信号が、異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器47は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0076】
そして、第1,第2の検出素子41,42及び、第1,第2の信号処理回路43,44のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、第1の信号処理回路43からの第1の出力信号、および第2の信号処理回路44からの第2の出力信号の和が0レベルではない値を有するようになる。すると、異常判定回路45はセンサ異常信号を出力し、計測器45は、センサ異常信号に従い、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0077】
第4実施形態の転動装置用センサ40は、転動装置が転がり軸受であり、温度センサである第1,第2の検出素子41,42が出力した第1,第2の出力信号を加算処理することにより、第1,第2の検出素子41,42のセンサ異常を検知する。
したがって、転がり軸受における焼付き、剥離、傷等の異常を見落とすことがなくなり、それによって、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0078】
また、第1,第2の検出素子41,42よりの出力信号が逆特性であるため、両出力信号の値を加算処理することによって動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の加算結果が0近傍になっていれば、第1,第2の検出素子41,42は正常に動作していることとなる。一方、両出力信号の加算結果が0近傍になっていない場合は、検出素子41,42または信号処理回路43,44の何れかに動作不良が生じていると判定することができる。
【0079】
そして、第1,第2の検出素子41,42よりの出力信号を加算処理する異常判定回路45がセンサユニット46外部の計測器47に設けられており、第1,第2の検出素子41,42からの出力信号及び、第1,第2の信号処理回路43,44がからの出力信号はセンサユニット46外で判定される。したがって、センサユニット46のサイズをコンパクトにすることができる。また、ケーブル48内の信号線のうち、一方が断線したとしても、他方により異常の検知を行うことができる。
【0080】
(第5実施形態)
図5は、本発明第5実施形態の転動装置用センサを示す。
第5実施形態の転動装置用センサ50は、一対の第1,第2の検出素子51,52と、異常判定回路55と、をセンサユニット56内に備えてなる。計測器57はケーブル58を介してセンサユニット56に電気的に接続されている。転動装置用センサ50は、一対の第1,第2の検出素子51,52が、いずれも同特性の出力を発生する温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置されることにより、異常を検知するのに用いられる。
【0081】
第5実施形態の転動装置用センサ50では、第1,第2の検出素子51,52が正特性または負特性のサーミスタであり、出力される出力信号のレベルが比較的大きい。そのため、第1〜第4実施形態で用意した信号処理回路を必要としない。そして、第1,第2の検出素子51,52がともに正特性である場合は、異常判定回路55において両出力信号のレベルを減算処理し、これに反して、第1の検出素子51が正特性または負特性であって、第2の検出素子52が負特性または正特性である場合は、異常判定回路55において両出力信号のレベルを加算処理することにより、第1,第2の検出素子51,52に動作不良が生じているかどうかの判定が行われる。
【0082】
第5実施形態の転動装置用センサ50は、転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ50が転がり軸受の温度の検出を行う。第1の検出素子51から出力された第1の出力信号は、計測器57に取り込まれる。第1の出力信号は、計測器57内で演算処理されて転がり軸受に異常が有るか否かが判別される。
【0083】
転がり軸受が正常に作動していてその雰囲気温度が上昇していなければ、第1,第2の出力信号は正常な温度を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路55から計測器57に送られていなければ、計測器57は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0084】
運転中の転がり軸受に焼付き等が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、第1,第2の検出素子51,52から出力された出力信号は、異常な温度を示すものとなり、計測器57は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0085】
そして、第1,第2の検出素子51,52のうち、いずれかが動作不良を起こしていると、第1の検出素子51の出力信号、および第2の検出素子52の出力信号を用いた異常判定回路55の演算結果が0レベルでない正または負のレベルとなる。この場合、異常判定回路55はセンサ異常信号を出力し、計測器57は、センサ異常信号に基づき、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0086】
第5実施形態の転動装置用センサ50によれば、転動装置が転がり軸受であり、温度センサである第1,第2の検出素子51,52から出力された第1,第2の出力信号を比較処理することにより、第1,第2の検出素子51,52のセンサ異常が検知される。
したがって、転がり軸受における焼付き、剥離、傷等の異常を見落とすことがなくなり、それによって、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0087】
また、第1,第2の検出素子51,52から出力された第1,第2の出力信号が正特性または負特性で互いに逆の特性の場合には、両出力信号の値を加算処理することによって動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の演算結果が0近傍になっていれば、第1,第2の検出素子51,52は正常に動作していると判定することができる。一方、両出力信号の演算結果が0近傍になっていない場合、検出素子51,52の何れかに動作不良が生じていると判定することができる。
【0088】
そして、第1,第2の検出素子51,52からの出力信号を比較処理する異常判定回路55がセンサユニット56内部に設けられているので、第1,第2の検出素子51,52の出力信号はセンサユニット56外で判定される。したがって、外乱を受けずに出力信号の処理を行うことができる。
【0089】
(第6実施形態)
図6は、本発明の第6実施形態の転動装置用センサを示す。
第6実施形態の転動装置用センサ60は、単一の検出素子61と、一対の第1,第2の信号処理回路63,64と、異常判定回路65と、をセンサユニット66内に備える。そして、転動装置用センサ60は、ケーブル68を介してセンサユニット66に電気的に接続された計測器67を備えている。転動装置用センサ60は、検出素子61が温度センサであり、転がり軸受の近傍に配置されることにより、異常を検知する。
【0090】
第6実施形態の転動装置用センサ60では、単一の検出素子61が出力信号を第1,第2の信号処理回路63,64に出力し、両信号処理回路63、64がそれぞれの出力信号を変換処理して判定に用いている。また、検出素子61と、第1,第2の信号処理回路63,64と、異常判定回路65とは、単一のセンサユニット66内に備えられている。
【0091】
第6実施形態の転動装置用センサ60は、転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ60が転がり軸受の温度の検出を行う。検出素子61からの出力信号は、第1,第2の信号処理回路63,64を介して計測器67に取り込まれ、計測器67内において演算処理されて転がり軸受に異常が有るか否かが判別される。
【0092】
転がり軸受が正常に作動していて、その雰囲気温度が上昇していない場合、検出素子61からの出力信号は正常な温度を示すものとなる。この場合、センサ異常信号が異常判定回路65から計測器67に送られていなければ、計測器67は、転がり軸受が正常に動作していると判定し、転がり軸受が正常である旨を表示する。
【0093】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、検出素子61の出力信号は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器67は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0094】
一方、検出素子61、および第1,第2の信号処理回路63,64のうち、いずれかが動作不良を起こしている場合、異常判定回路65が計測器67に出力する。そして、計測器67は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0095】
第6実施形態の転動装置用センサ60によれば、転動装置が転がり軸受であり、温度センサである検出素子61が発生した出力信号を第1,第2の信号処理回路63,64により2重で比較処理することにより、検出素子61のセンサ異常が検知される。
したがって、転がり軸受における焼付き、剥離、傷等の異常を見落とすことがなくなり、それによって、装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0096】
また、検出素子61よりの出力信号を比較処理する異常判定回路65がセンサユニット66内部に設けられているので、検出素子61が出力した出力信号及び、第1,第2の信号処理回路63,64が出力した第1,第2の出力信号がセンサユニット66内で判定される。
したがって、検出素子61及び、第1,第2の信号処理回路63,64の出力信号をセンサユニット66内で判定処理することにより、外乱を受けずに出力信号の処理を行うことができる。
【0097】
(第7実施形態)
図7は、本発明の第7実施形態の転動装置用センサ70を示す図である。転動装置用センサ70は、第1,第2の検出素子としての温度センサ71,72を内部に有するセンサユニット76から構成される。センサユニット76は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット76は、ケーブル78a〜78dを介して計測器77に接続されている。ケーブル78aは、センサユニット76に正の定電圧Vsupを供給する電源ケーブルである。
【0098】
転動装置用センサ70は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ70が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0099】
温度センサ71,72は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ71,72のグランドは、ケーブル78dを介して計測器77と同一とされている。
【0100】
温度センサ71は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq1を計測器77に出力する。温度センサ72は、温度センサ71同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq2を計測器77に出力する。温度センサ71,72の出力の温度特性は、同一であり、出力信号Vq1,Vq2は、図1(b)に示すように同特性を有する電圧である。温度センサ71,72がともに正常に動作している場合、出力信号Vq1とVq2は同一レベルとなり、出力信号Vq1とVq2の差は0(V)となる。ここで、両センサが同特性であるとは、出力特性が共にリニアな出力特性を有していることを意味しない。両センサからの出力が、同一の特性、すなわち、同じ温度依存性を有していればよい。
【0101】
温度センサ71および72に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路と、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。増幅回路等は、計測器77から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。これにより、温度センサ71及び72は、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換し、得られた出力信号Vq1,Vq2を計測器77に出力する。
【0102】
計測器77は、センサユニット76から得られた信号Vq1を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。計測器77は、異常判定回路としての減算回路75を有している。減算回路75は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。減算回路75は、他の増幅回路同様に、正の定電圧Vsupにより動作している。減算回路75は、センサユニット76から送られてきた信号Vq1およびVq2の差Vfを求め、計測器77内の図示せぬ制御回路に出力する。
【0103】
制御回路は、減算回路75から出力された信号Vfを基に異常を判定する。温度センサ71,72が共に正常な場合、信号Vq1およびVq2は、同一であり、両者の差Vfは、0レベルとなる。Vfが0レベルであることは、温度センサ71,72が正常に動作していることを意味する。
【0104】
ここで、0レベルとは、正常時、第1の出力信号のレベルと第2の出力信号のレベルがほぼ同一であることを意味する。具体的に、0レベルとは、温度センサ71,72の出力レベルを調整した時に許容される誤差または温度センサ71,72の径年変化に依存する誤差を考慮しても差が0(V)であると認められるものである。実際のセンサは、個体毎に若干の特性の相異があるため、全測定温度領域において出力信号Vq1とVq2が同一レベルにはならない。従って、出力信号Vq1とVq2の差Vfが、ある狭い範囲―Δh(V)から+Δh(V)内に収まっている場合を0レベルとここでは定める。Δh(V)の大きさは、センサの種類,使用状況等に応じて任意に設定することが可能である。
【0105】
ここで、温度センサ71,72のいずれかが動作不良を起こしている場合、出力Vq1およびVq2は、互いに異なる値を示す。したがって、両者の差Vfは、0レベルではない正または負のレベルとなる。
【0106】
差Vfが、正または負のレベルであることは、温度センサ71,72のいずれかに動作不良が発生していることを意味する。制御回路は、差Vfが0レベルではない正または負のレベルとなった場合、センサ異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。計測器77は、内部の制御回路がセンサ異常信号を出力力した場合、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0107】
本実施形態では、温度センサ71,72から計測器77に信号Vq1,Vq2を送信するケーブル78bおよび78cは、それぞれ抵抗R10,R11を介してグランドにプルダウンされている。温度センサ71,72またはケーブル78b,78cが断線した場合、計測器77に入力される信号は、0(V)信号となる。本実施形態では、温度センサ71および72からの信号Vq1およびVq2が正常動作時に0(V)とはならないように設定されている。従って、計測器77は、Vq1およびVq2をモニターすることにより、断線検出を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル78b,78cをケーブル78aにプルアップした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0108】
第7実施形態によれば、計測器77は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器77は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0109】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vq1,Vq2は正常な温度を示すものとなる。この場合、制御回路がセンサ異常信号を出力していなければ、計測器77は、転がり軸受およびセンサ71,72が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ71,72が正常である旨を表示する。
【0110】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vq1およびVq2は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器77は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0111】
一方、温度センサ71,72のいずれかが動作不良を起こしている場合、減算回路75の出力Vfは、0レベルでない値となる。この場合、制御回路は、センサ異常信号を出力する。計測器77は、このセンサ異常信号に従い、温度センサ71,72の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器77は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0112】
第7実施形態の転動装置用センサ100は、温度センサである温度センサ71,72からの出力信号を比較処理することにより、温度センサ71,72のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因することによる、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0113】
また、温度センサ71,72からの出力信号が同特性であり、両出力信号の値を減算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の差が0レベル近傍になっていれば、減算回路75は、温度センサ71,72が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の減算結果が0近傍になっていない場合には温度センサ71,72に動作不良が生じていると判定することができる。
【0114】
本実施形態においては、減算回路75を用いて二つの温度センサ71,72からの出力の差を求め、差が0レベルかどうかを判断することにより異常判定を行っている。これに代えて、除算回路を用いて二つの温度センサ71,72からの出力の比を求め、正常動作時には比がほぼ1となることを利用して、異常判定を行ってもよい。この場合にも、比の範囲として、所定の狭い範囲―Δh1(V)から+Δh1(V)内に収まっている場合を許容範囲と定め、この許容範囲を逸脱した場合に、異常が発生したと判断すればよい。
【0115】
また、二つの温度センサ71,72からの出力が同一レベルであるかどうかを判断するために、他のパラメータや計算式を用いてもよい。
【0116】
また、減算回路や除算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ71,72からの出力をA/D変換し、減算回路や除算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。
【0117】
(第8実施形態)
図8は、本発明の第8実施形態の転動装置用センサ80を示す図である。転動装置用センサ80は、第1,第2の検出素子としての温度センサ81,82、および減算回路85を内部に有するセンサユニット86から構成される。センサユニット86は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット86は、ケーブル88a〜88eを介して計測器87に接続されている。ケーブル88a,88bは、センサユニット86に正の定電圧Vsup、負の定電圧―Vsupをそれぞれ供給する電源ケーブルである。
【0118】
転動装置用センサ80は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ80が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0119】
温度センサ81,82は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ81,82のグランドは、ケーブル88eを介して計測器87と同一とされている。
【0120】
温度センサ81は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq1を計測器87および減算回路85に出力する。温度センサ82は、温度センサ81同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq2を減算回路85に出力する。温度センサ81,82の出力の温度特性は、同一であり、出力信号Vq1,Vq2は、図1(b)に示すように同特性を有する電圧である。温度センサ81,82がともに正常に動作している場合、出力信号Vq1とVq2は同一レベルとなり、出力信号Vq1とVq2の差は0(V)となる。ここで、両センサが同特性であるとは、出力特性が共にリニアな出力特性を有していることを意味しない。両センサからの出力が、同一の特性、すなわち、同じ温度依存性を有していればよい。
【0121】
温度センサ81および82に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路と、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。本実施形態では、センサから得られた出力が正負の両方の値をとる可能性があることを考慮し、正電圧Vsupとともに負電圧−Vsupを計測器87から温度センサ81および82に供給している。これにより、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換し、得られた出力信号Vq1,Vq2を計測器87および減算回路85に出力する。なお、温度センサからの出力が全て正である場合、増幅回路等は正電圧のみを印加する単電源アンプで構成し、Vsupのみをセンサ81,82の増幅回路に供給すればよい。
【0122】
減算回路85は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。減算回路85は、他の増幅回路同様に、計測器87から供給される正の定電圧Vsupと負の定電圧−Vsupにより動作している。減算回路85は、センサユニット76から送られてきた信号Vq1およびVq2の差Vfを求める。得られた差Vfは、ケーブル88dを介して計測器87に出力される。
【0123】
計測器87は、センサユニット86から得られた信号Vq1を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。計測器87は、図示せぬ制御回路を内部に有している。制御回路は、センサユニット86の減算回路85から出力された信号Vfを基に異常を判定する。温度センサ81,82が共に正常な場合、信号Vq1およびVq2は、同一であり、両者の差Vfは、0レベルとなる。Vfが0レベルであることは、温度センサ81,82が正常に動作していることを意味する。
【0124】
ここで、0レベルとは、正常時、第1の出力信号のレベルと第2の出力信号のレベルがほぼ同一であることを意味する。具体的に、0レベルとは、温度センサ81,82の出力レベルを調整した時に許容される誤差または温度センサ81,82の径年変化に依存する誤差を考慮しても差が0(V)であると認められるものである。実際のセンサは、個体毎に若干の特性の相異があるため、全測定温度領域において出力信号Vq1とVq2が同一レベルにはならない。従って、出力信号Vq1とVq2の差Vfが、ある狭い範囲―Δh(V)から+Δh(V)内に収まっている場合を0レベルとここでは定める。Δh(V)の大きさは、センサの種類,使用状況等に応じて任意に設定することが可能である。
【0125】
ここで、温度センサ81,82のいずれかが動作不良を起こしている場合、出力Vq1およびVq2は、互いに異なる値を示す。したがって、両者の差Vfは、0レベルではない正または負のレベルとなる。
【0126】
差Vfが、正または負のレベルであることは、温度センサ81,82のいずれかに動作不良が発生していることを意味する。制御回路は、差Vfが0レベルではない正または負のレベルとなった場合、センサ異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。計測器87は、内部の制御回路がセンサ異常信号を出力した場合、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0127】
本実施形態では、温度センサ81から計測器87に信号Vq1を送信するケーブル88c、および減算回路85から計測器87へ差Vfを送信するケーブル88dは、それぞれ抵抗R12,R13を介してVsupにプルアップされている。従って、温度センサ81,ケーブル88cまたは88dが断線した場合、計測器77に入力される信号は、Vsupとなる。本実施形態では、温度センサ81および82からの信号Vq1およびVfが正常動作時にVsupとはならないように設定されている。従って、計測器87は、Vq1およびVfをモニターすることにより、断線検出を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル88cおよび88dをケーブル88eにプルダウンした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0128】
第8実施形態によれば、計測器87は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器87は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0129】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vq1,Vq2は正常な温度を示すものとなる。この場合、制御回路がセンサ異常信号を出力していなければ、計測器87は、転がり軸受およびセンサ81,82が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ81,82が正常である旨を表示する。
【0130】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vq1およびVq2は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器87は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0131】
一方、温度センサ81,82のいずれかが動作不良を起こしている場合、減算回路85の出力Vfは、0レベルでない値となる。この場合、制御回路は、センサ異常信号を出力する。計測器87は、このセンサ異常信号に従い、温度センサ81,82の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器87は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0132】
第8実施形態の転動装置用センサ80は、温度センサである温度センサ81,82からの出力信号を比較処理することにより、温度センサ81,82のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因することによる、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0133】
また、温度センサ81,82からの出力信号が同特性であり、両出力信号の値を減算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の差が0レベル近傍になっていれば、減算回路85は、温度センサ81,82が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の減算結果が0(V)近傍になっていない場合には温度センサ81,82に動作不良が生じていると判定することができる。
【0134】
本実施形態では、減算回路85は、温度センサ81,82から出力された出力信号Vq1,Vq2に従い、センサユニット86内で減算処理を行い、差信号を得る。したがって、異常判定回路85は、外乱の影響無しに出力信号の比較処理を行うことができる。
【0135】
本実施形態においては、減算回路85を用いて二つの温度センサ81,82からの出力の差を求め、差が0レベルかどうかを判断することにより異常判定を行っている。これに代えて、除算回路を用いて二つの温度センサ81,82からの出力の比を求め、正常動作時には比がほぼ1となることを利用して、異常判定を行ってもよい。この場合にも、比の範囲として、所定の狭い範囲―Δh1(V)から+Δh1(V)内に収まっている場合を許容範囲と定め、この許容範囲を逸脱した場合に、異常が発生したと判断すればよい。
【0136】
また、二つの温度センサ81,82からの出力が同一レベルであるかどうかを判断するために、他のパラメータや計算式を用いてもよい。
【0137】
また、本実施形態においては、センサユニット86に負電圧−Vsupを供給し、減算回路を2電源オペアンプとして構成した。しかし、減算回路85の出力が負とならないように調整した場合には、負電圧を供給する必要はない。例として、温度センサ81の出力Vq1に所定のオフセット電圧Vconstを供給しVq1’とし、温度センサ82の出力は、そのままとする。具体的には、以下のようにVconstを加え、比較を行う。
【0138】
[式1]
Vq1’=Vq1+Vconst ...(1)
Vq1’―Vq2=Vconst±Δh(V)(正常時)...(2)
【0139】
よって、式(2)の条件を満たした場合、制御回路は、温度センサが正常であると判断する。一方、満たさない場合には、制御回路は、温度センサに異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。この構成により、減算回路の出力を正のみとして、負電圧−Vsupを供給することなく、減算回路85を構成することが可能である。
【0140】
また、除算回路の場合にも、入力が正の場合には、負電源電圧を供給する必要はない。
【0141】
また、減算回路や除算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ81,82からの出力をA/D変換し、減算回路や除算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。この場合にも、減算回路や除算回路に負電源電圧を供給する必要はない。このように、負電源電圧を供給しないでよい場合には、回路が簡素化され、ユニットの省スペース化に寄与する。
【0142】
(第9実施形態)
図9は、本発明の第9実施形態の転動装置用センサ90を示す図である。転動装置用センサ90は、第1,第2の検出素子としての温度センサ91,92、減算回路95、バッファアンプ93、ウィンドウコンパレータ99、およびスイッチ94を内部に有するセンサユニット96から構成される。センサユニット96は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット96は、ケーブル98a〜98dを介して計測器97に接続されている。ケーブル98a,98bは、センサユニット96に正の定電圧、負の定電圧をそれぞれ供給する電源ケーブルである。
【0143】
転動装置用センサ90は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ90が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0144】
温度センサ91,92は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ91,92のグランドは、ケーブル98dを介して計測器97と同一とされている。
【0145】
温度センサ91は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq1を出力する。温度センサ91は、出力信号Vq1をバッファアンプ93および抵抗R14を介してケーブル98cに出力信号Vq3として出力する。そして、出力信号Vq3は、ケーブル98cを介して計測器97に送られる。また同時に、温度センサ91は、出力信号Vq1を減算回路95に出力する。ここで、温度センサ91は、出力信号Vq1が使用条件温度下で0(V)以下にならないように設計されている。
【0146】
温度センサ92は、温度センサ91同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vq2を減算回路95に出力する。温度センサ91,92の出力の温度特性は、同一であり、出力信号Vq1,Vq2は、図1(b)に示すように同特性を有する電圧である。温度センサ91,92がともに正常に動作している場合、出力信号Vq1とVq2は同一レベルとなり、出力信号Vq1とVq2の差は0(V)となる。ここで、両センサが同特性であるとは、出力特性が共にリニアな出力特性を有していることを意味しない。両センサからの出力が、同一の特性、すなわち、同じ温度依存性を有していればよい。
【0147】
温度センサ91および92に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路と、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。本実施形態では、正電圧Vsupを温度センサ91および92に供給している。これにより、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換し、得られた出力信号Vq1,Vq2を計測器97および減算回路95に出力する。
【0148】
減算回路95は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。減算回路95は、他の増幅回路同様に、計測器97から供給される正の定電圧Vsupと負の定電圧−Vsupにより動作している。減算回路95は、センサユニット76から送られてきた信号Vq1およびVq2の差Vfを求める。得られた差Vfは、ウィンドウコンパレータ99に出力される。
【0149】
ウィンドウコンパレータ99は、Vfが0レベルで無い場合にハイレベル信号を出力する。0レベルとは、正常時、第1の出力信号のレベルと第2の出力信号のレベルがほぼ同一であることを意味する。具体的に、0レベルとは、温度センサ91,92の出力レベルを調整した時に許容される誤差または温度センサ91,92の径年変化に依存する誤差を考慮しても差が0(V)であると認められるものである。実際のセンサは、個体毎に若干の特性の相異があるため、全測定温度領域において出力信号Vq1とVq2が同一レベルにはならない。従って、出力信号Vq1とVq2の差Vfが、ある狭い範囲―Δh(V)から+Δh(V)内に収まっている場合を0レベルとここでは定める。Δh(V)の大きさは、センサの種類,使用状況等に応じて任意に設定することが可能である。ウィンドウコンパレータ99から出力された信号は、スイッチ94に送られる。
【0150】
スイッチ94は、トランジスタ等から構成されるスイッチング素子である。本実施例では、コレクタ側は抵抗R14とケーブル98c間に接続され、エミッタ側はケーブル98dを介してグランドに接続されている。ウィンドウコンパレータ99からハイレベル信号を受信していない場合には、スイッチ94は、OFF状態であり、コレクタ電流は遮断されている。従って、出力Vq3は、温度センサ91からの出力Vq1に従って、計測器97に出力される。
【0151】
一方、スイッチ124はハイレベル信号を受け取ると、コレクタ・エミッタ間に電流が流れ、スイッチはON状態となる。このため、ケーブル98cは、グラウンドに接続され、Vq3は0(V)となる。
【0152】
計測器97は、センサユニット96から得られた信号Vq3を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。また、計測器87は、信号Vq3を基に、センサユニット96の異常を判定する。温度センサ91,92が共に正常な場合、信号Vq1およびVq2は、同一であり、両者の差Vfは、0レベルとなる。Vfが0レベルである場合、計測器97は、0(V)でない信号Vq3を受け取る。この場合、計測器97は、センサユニット96は正常に動作していると判断する。
【0153】
一方、温度センサ91,92のいずれかが動作不良を起こしている場合、出力Vq1およびVq2は、互いに異なる値を示す。したがって、両者の差Vfは、0レベルではない正または負のレベルとなる。差Vfが、正または負のレベルである場合、スイッチ94はONになり、Vq3が0(V)になる。計測器97は、Vq3が0(V)であるとき、センサ91または92に異常が発生したと判定し、計測器97は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0154】
また、本実施形態では、センサユニット96から計測器97に信号Vq3を送信するケーブル98cは、抵抗R15を介してVsupにプルアップされている。従って、温度センサ91,ケーブル98cまたは98dが断線した場合、計測器77に入力される信号は、Vsupとなる。本実施形態では、温度センサ91および92からの信号Vq1およびVq2が正常動作時にVsupとはならないように設定されている。従って、計測器97は、Vq3がVsupと同一になっている場合、断線が起こっていると判定を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル98cをケーブル98eにプルダウンした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0155】
第9実施形態によれば、計測器97は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器97は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0156】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vq3は正常な温度を示すものとなる。この場合、計測器97は、転がり軸受およびセンサ91,92が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ91,92が正常である旨を表示する。
【0157】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vq3は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器97は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0158】
一方、温度センサ91,92のいずれかが動作不良を起こしている場合、Vq3は0(V)となる。この場合、計測器97は、温度センサ91,92の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器97は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0159】
第9実施形態の転動装置用センサ90は、温度センサである温度センサ91,92からの出力信号を比較処理することにより、温度センサ91,92のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因することによる、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0160】
また、温度センサ91,92からの出力信号が同特性であり、両出力信号の値を減算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の差が0レベル近傍になっていれば、減算回路95は、温度センサ91,92が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の減算結果が0(V)近傍になっていない場合には温度センサ91,92に動作不良が生じていると判定することができる。
【0161】
本実施形態では、減算回路95は、温度センサ91,92から出力された出力信号Vq1,Vq2に従い、センサユニット86内で減算処理を行い、差信号を得る。そして、差信号に従い異常が発生している場合には、出力Vq3にセンサ異常の発生を意味するように構成している。したがって、センサユニット96内部でセンサ異常の有無を判断するため、外乱の影響無しに出力信号の比較処理を行うことができる。さらに、センサユニット96から計測器97への信号の送信は、一つのケーブルのみを用いて行われるため、装置が簡素化され、装置全体の軽量化とコストダウンを図ることが可能となる。
【0162】
本実施形態においては、減算回路95を用いて二つの温度センサ91,92からの出力の差を求め、ウィンドウコンパレータ99を用いて差が0レベルかどうかを判断することにより異常判定を行っている。これに代えて、除算回路を用いて二つの温度センサ91,92からの出力の比を求め、正常動作時には比がほぼ1となることを利用して、異常判定を行ってもよい。この場合にも、比の範囲として、所定の狭い範囲―Δh1(V)から+Δh1(V)内に収まっている場合を許容範囲と定め、この許容範囲を逸脱した場合に、異常が発生したと判断すればよい。
【0163】
また、二つの温度センサ91,92からの出力が同一レベルであるかどうかを判断するために、他のパラメータや計算式を用いてもよい。
【0164】
また、本実施形態においては、センサユニット96に負電圧−Vsupを供給し、減算回路を2電源オペアンプとして構成した。しかし、減算回路95の出力が負とならないように調整した場合には、負電圧を供給する必要はない。具体的な構成は、第8実施形態に示したものと同一である。
【0165】
また、減算回路や除算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ91,92からの出力をA/D変換し、減算回路や除算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。この場合にも、減算回路や除算回路に負電源電圧を供給する必要はない。このように、負電源電圧を供給しないでよい場合には、回路が簡素化され、ユニットの省スペース化に寄与する。
【0166】
(第10実施形態)
図10は、本発明の第10実施形態の転動装置用センサ100を示す図である。転動装置用センサ100は、第1,第2の検出素子としての温度センサ101,102を内部に有するセンサユニット106から構成される。センサユニット106は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット106は、ケーブル108a〜108dを介して計測器107に接続されている。ケーブル108aは、センサユニット106に正の定電圧Vsupを供給する電源ケーブルである。
【0167】
転動装置用センサ100は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ100が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0168】
温度センサ101,102は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ101,102のグランドは、ケーブル108dを介して計測器107と同一とされている。
【0169】
温度センサ101は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs1を計測器107に出力する。図11は、温度センサ101の出力特性を示すグラフである。温度センサ101の出力は、以下の(3)ような正の温度係数F(V/℃)を持つ一次関数で表されるものである。
【0170】
Vs1=F(t―t0)+Vc ...(3)
Vs1:温度センサ101の出力
F: 温度センサ101の温度係数
Vc: 温度t0での出力
【0171】
温度センサ102は、温度センサ101同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs2を計測器107に出力する。図12は、温度センサ102の出力特性を示すグラフである。温度センサ102の出力は、温度センサ101と逆の特性を有しており、以下の(4)ような負の温度係数―F(V/℃)を持つ一次関数で表されるものである。
【0172】
Vs2=―F(t―t0)+Vc ...(4)
Vs2:温度センサ102の出力
F: 温度センサ102の温度係数
Vc: 温度t0での出力
【0173】
温度センサ101,102は、互いに逆特性である。従って、温度センサ101と102がともに正常に動作している場合、出力信号Vs1とVs2の和は、図13に示すように2Vcで常に一定となる。ここで、両センサが逆特性であるとは、出力特性が共にリニアな出力特性を有していることを意味しない。両センサからの出力の和が一定値となるような関係であればよい。図14,15は、非線型の逆特性を有する二つの出力を示している。温度センサ101と102は、図14および図15に示す関係を満たすものであっても良い。
【0174】
温度センサ101および102に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路、温度センサ101および102の特性を逆特性とするための回路、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。増幅回路等は、計測器107から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。これにより、温度センサ101及び102は、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換し、得られた出力信号Vs1,Vs2を計測器107に出力する。
【0175】
計測器107は、センサユニット106から得られた信号Vs1を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。計測器107は、異常判定回路としての加算回路105を有している。加算回路105は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。加算回路105は、他の増幅回路同様に、正の定電圧Vsupにより動作している。加算回路105は、センサユニット106から送られてきた信号Vs1およびVs2の和Vgを求め、計測器107内の図示せぬ制御回路に出力する。
【0176】
制御回路は、加算回路105から出力された信号Vgを基に異常を判定する。温度センサ101,102が共に正常な場合、信号Vs1およびVs2の和は2Vcとなる。和が2Vcであることは、温度センサ101,102が正常に動作していることを意味する。
【0177】
しかし、実際のセンサは、個体毎に若干の特性の相異があるため、全測定温度領域において出力信号Vs1とVs2の和が厳密には2Vcにはならない。従って、出力信号Vs1とVs2の和Vcが、ある狭い範囲―Δh(V)から+Δh(V)内に収まっている場合を正常動作範囲とここでは定める。Δh(V)の大きさは、センサの種類,使用状況等に応じて任意に設定することが可能である。
【0178】
ここで、温度センサ101,102のいずれかが動作不良を起こしている場合、出力Vs1およびVs2の和は、2Vc±Δh(V)以外の値を示す。この時、制御回路は、センサ異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。計測器77は、内部の制御回路がセンサ異常信号を出力した場合、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0179】
本実施形態では、温度センサ101,102から計測器107に信号Vs1,Vs2を送信するケーブル108bおよび108cは、それぞれ抵抗R16,R17を介してグランドにプルダウンされている。温度センサ101,102またはケーブル108bおよび108cが断線した場合、計測器107に入力される信号は、0(V)となる。本実施形態では、温度センサ101および102からの信号Vs1およびVs2が正常動作時に0(V)とはならないように設定されている。従って、計測器107は、Vs1およびVs2をモニターすることにより、断線検出を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル108bおよび108cをケーブル108aにプルアップした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0180】
温度センサ101と温度センサ102の出力信号Vs1およびVs2が異なる温度を示す原因の一つに、センサ素子以外の回路部分に起因するものが考えられる。例として、温度センサ101の増幅器などのドリフトΔd1、温度センサ102の増幅器などのドリフトΔd2やグランド線に流れる電流、グランド線の抵抗、コネクタ間の接触抵抗等により発生する温度センサ101と102のグランドと計測器107のグランド間の共通インピーダンスによる電位差Δe等が考えられる。
【0181】
図16および17は、それぞれ上記のドリフトおよび電位差を考慮した場合の温度センサ101および102の出力特性を示す図である。出力Vs1およびVs2は、ドリフトΔd1,Δd2および電位差Δeにより出力電圧が底上げされていることが分かる。整理すると、図16,17の場合の出力電圧Vs1,Vs2、およびVgは、以下のようになる。
【0182】
[式3]
Vs1=Vc+F(t―t0)+Δd1+Δe ...(5)
Vs2=Vc―F(t―t0)+Δd2+Δe ...(6)
Vg=2Vc+Δd1+Δd2+2Δe ...(7)
【0183】
図18は、これらの諸原因により、温度センサ101および102の出力値Vs1およびVs2が変化した場合の出力Vs1とVs2の和を示す図である。ドリフトΔd1,Δd2および電位差Δeが±Δh(V)の範囲を超えている場合には、計測器107は、センサ異常が発生したと判断する。これにより、センサ素子自体の異常に加え、センサ101,102の増幅器のドリフトまたは共通インピーダンスによる電位差に起因する検出値の異常を検出することが可能となる。
【0184】
特に、本実施例の場合には、二つの出力Vs1とVs2の和を求めるため、Vgは、共通インピーダンスによる電位差の項を含んでいる。第6実施形態のように差を求める場合には、この電位差の項は、互いに打ち消しあうため、共通インピーダンスが大きくなり、検出値が実際の温度に対応する値以上を示していても、異常が検知されない。本実施形態の場合には、この電位差の項が保存されているため、より精度が高く確実な検出を行うことが可能となる。
【0185】
また、第7〜9実施形態において0レベルを検出する場合には、出力Vq1とVq2の差Vfを求める。従って、二つの温度センサ出力同士が短絡した場合でも、出力の差は0(V)となり、センサ異常を検出することができない。一方、本実施形態においては、出力Vs1とVs2の和を求めるものである。従って、二つの温度センサ出力同士が短絡した場合、出力の和Vgは、異常な値となる。よって、差を求め0レベルを基準として検出する場合よりも、多くのセンサ異常を検出することが可能となり好ましい。
【0186】
第10実施形態によれば、計測器107は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器107は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0187】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vs1,Vs2は正常な温度を示すものとなる。この場合、制御回路がセンサ異常信号を出力していなければ、計測器107は、転がり軸受およびセンサ101,102が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ101,102が正常である旨を表示する。
【0188】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vs1およびVs2は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器107は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0189】
一方、温度センサ101,102のいずれかが動作不良を起こしている場合、加算回路105の出力Vgは、2Vc±Δh(V)の範囲を超えた値となる。この場合、制御回路は、センサ異常信号を出力する。計測器107は、このセンサ異常信号に従い、温度センサ101,102の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器107は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0190】
第10実施形態の転動装置用センサ100は、温度センサである温度センサ101,102からの出力信号を処理することにより、温度センサ101,102のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因することによる、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0191】
また、温度センサ101,102からの出力信号が逆特性であり、両出力信号の値を加算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の和が所定範囲であれば、加算回路105は、温度センサ101,102が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の加算結果が所定範囲にない場合には温度センサ101,102に動作不良が生じていると判定することができる。
【0192】
また、加算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ101,102からの出力をA/D変換し、加算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。
【0193】
(第11実施形態)
図19は、本発明の第11実施形態の転動装置用センサ110を示す図である。転動装置用センサ110は、第1,第2の検出素子としての温度センサ111,112および加算回路115を内部に有するセンサユニット116から構成される。センサユニット116は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット116は、ケーブル118a〜118dを介して計測器117に接続されている。ケーブル118aは、センサユニット116に正の定電圧Vsupを供給する電源ケーブルである。
【0194】
転動装置用センサ110は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ110が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0195】
温度センサ111,112は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ111,112のグランドは、ケーブル118dを介して計測器117と同一とされている。
【0196】
温度センサ111は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs1を計測器117および加算回路115に出力する。温度センサ111の出力特性は、第10実施形態の温度センサ101と同一である。
【0197】
温度センサ112は、温度センサ111同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs2を加算回路115に出力する。温度センサ112の出力特性は、第10実施形態の温度センサ102と同一である。
【0198】
温度センサ111および112に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路、温度センサ111または温度センサ112の特性を逆特性とするための回路、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。増幅回路等は、計測器117から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。これにより、温度センサ111及び112は、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換し、得られた出力信号Vs1,Vs2を計測器117に出力する。
【0199】
加算回路115は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。加算回路115は、他の増幅回路と同様に、計測器117から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。加算回路115は、温度センサ111および112から送られてきた信号Vs1およびVs2の和Vgを求める。得られた和Vgは、ケーブル118cを介して、計測器117に出力される。
【0200】
計測器117は、センサユニット116から得られた信号Vs1を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。計測器117は、図示せぬ制御回路を内部に有している。制御回路は、センサユニット116の加算回路115から出力された信号Vgを基に異常を判定する。温度センサ111,112が共に正常な場合、信号Vs1およびVs2の和は2Vcとなる。和が2Vcであることは、温度センサ111,112が正常に動作していることを意味する。
【0201】
しかし、実際のセンサは、個体毎に若干の特性の相異があるため、全測定温度領域において出力信号Vs1とVs2の和が厳密には2Vcにはならない。従って、出力信号Vs1とVs2の和Vcが、ある狭い範囲―Δh(V)から+Δh(V)内に収まっている場合を正常動作範囲とここでは定める。Δh(V)の大きさは、センサの種類,使用状況等に応じて任意に設定することが可能である。
【0202】
ここで、温度センサ111,112のいずれかが動作不良を起こしている場合、出力Vs1およびVs2の和は、2Vc±Δh(V)以外の値を示す。この時、制御回路は、センサ異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。計測器117は、内部の制御回路がセンサ異常信号を出力した場合、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0203】
本実施形態では、温度センサ111から計測器117に信号Vs1を送信するケーブル118bおよび、加算回路115から計測器117に信号Vgを送信するケーブル118cは、それぞれ抵抗R18,R19を介してグランドにプルダウンされている。温度センサ111,112、またはケーブル118c,118dが断線した場合、計測器117に入力される信号は、0(V)となる。本実施形態では、温度センサ111および112からの信号Vs1およびVs2が正常動作時に0(V)とはならないように設定されている。従って、計測器117は、Vs1およびVs2をモニターすることにより、断線検出を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル118bおよび118cをケーブル118aにプルアップした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0204】
本実施形態において、温度センサ111の増幅器などのドリフトΔd1、温度センサ112の増幅器などのドリフトΔd2、グランド線に流れる電流、グランド線の抵抗、コネクタ間の接触抵抗等により発生する温度センサ111と112のグランドと計測器117のグランド間の共通インピーダンスによる電位差Δe等を考慮したVgは、以下の式に示される。
【0205】
[式4]
Vg=2Vc+Δd1+Δd2+2Δe ...(8)
従って、第10実施形態同様に、本実施形態においても、センサ素子自体の異常に加え、センサ111,112の増幅器のドリフトまたは共通インピーダンスによる電位差に起因する検出値の異常を検出することが可能となる。電位差の項が保存されていることにより、差を求める測定に比べ、より精度が高く確実な検出を行うことが可能となる。
【0206】
また本実施形態においても、第10実施形態同様に、二つの温度センサ出力同士が短絡した場合にもセンサ異常を検出することが可能であり好ましい。
【0207】
第11実施形態によれば、計測器117は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器117は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0208】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vs1,Vs2は正常を示すものとなる。この場合、制御回路がセンサ異常信号を出力していなければ、計測器117は、転がり軸受およびセンサ111,112が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ111,112が正常である旨を表示する。
【0209】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vs1およびVs2は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器117は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0210】
一方、温度センサ111,112のいずれかが動作不良を起こしている場合、加算回路115の出力Vgは、2Vc±Δh(V)の範囲を超えた値となる。この場合、制御回路は、センサ異常信号を出力する。計測器117は、このセンサ異常信号に従い、温度センサ111,112の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器117は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0211】
第11実施形態の転動装置用センサ110は、温度センサである温度センサ111,112からの出力信号を処理することにより、温度センサ111,112のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因することによる、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0212】
また、温度センサ111,112からの出力信号が逆特性であり、両出力信号の値を加算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の和が所定範囲であれば、加算回路115は、温度センサ111,112が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の加算結果が所定範囲にない場合には温度センサ111,112に動作不良が生じていると判定することができる。
【0213】
また、減算回路や除算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ111,112からの出力をA/D変換し、加算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。
【0214】
(第12実施形態)
図20は、本発明の第12実施形態の転動装置用センサ120を示す図である。転動装置用センサ120は、第1,第2の検出素子としての温度センサ121,122、加算回路125、バッファアンプ123、ウィンドウコンパレータ129、およびスイッチ124を内部に有するセンサユニット126から構成される。センサユニット126は、外部からの電磁波等の外乱を遮蔽する構造を備えていても良い。センサユニット126は、ケーブル128a〜128cを介して計測器127に接続されている。ケーブル128aは、センサユニット126に正の定電圧Vsupを供給する電源ケーブルである。
【0215】
転動装置用センサ120は、例えば転がり軸受(図23参照)の外輪に外嵌されたハウジングに取付けられる。転がり軸受の内輪には、軸が内嵌されている。軸の回転によって転がり軸受の内輪が回転し、転動装置用センサ120が転がり軸受の運転状態の検出を行う。
【0216】
温度センサ121,122は、IC温度センサ、熱電対、サーミスタ、白金測温体およびこれらに信号処理回路を付加したもの等から構成される。温度センサ121,122のグランドは、ケーブル128cを介して計測器127と同一とされている。
【0217】
温度センサ121は、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs1を出力する。温度センサ121は、出力信号Vs1をバッファアンプ123および抵抗R20を介してケーブル128bに出力信号Vs3として出力する。そして、出力信号Vs3は、ケーブル128bを介して計測器127に送られる。また同時に、温度センサ121は、出力信号Vs1を加算回路125に出力する。温度センサ121の出力特性は、第10実施形態の温度センサ101と同一である。ここで、温度センサ121は、出力信号Vs1が使用条件下で0(V)以下にならないように設計されている。
【0218】
温度センサ122は、温度センサ121同様に、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の雰囲気温度を検出して雰囲気温度に応じた出力信号Vs2を加算回路125に出力する。温度センサ122の出力特性は、第10実施形態の温度センサ102と同一である。
【0219】
温度センサ121および122に信号処理回路が付加されている場合、信号処理回路は、得られた信号の高周波成分を減衰・除去するためのローパスフィルタと、信号を増幅するための増幅回路、温度センサ121または122の特性を逆特性とするための回路、信号を電圧信号に変換して出力するための出力回路等によって構成されている。増幅回路等は、計測器127から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。これにより、温度センサ121及び122は、得られた信号を判定可能なレベルの電気信号に変換する。
【0220】
加算回路125は、オペアンプ等から構成されるアナログ回路である。加算回路125は、他の増幅回路と同様に、計測器127から供給される正の定電圧Vsupにより動作している。加算回路125は、温度センサ121および122から送られてきた信号Vs1およびVs2の和Vgを求める。得られた和Vgは、ウィンドウコンパレータ129に出力される。
【0221】
ウィンドウコンパレータ129は、Vgが2Vc±Δh(V)の範囲内に収まっていない場合にハイレベル信号をスイッチ124に出力する。
【0222】
スイッチ124は、トランジスタ等から構成されるスイッチング素子である。本実施例では、コレクタ側は抵抗R20とケーブル128b間に接続され、エミッタ側はケーブル128cを介してグランドに接続されている。ウィンドウコンパレータ129からハイレベル信号を受信していない場合には、スイッチ124は、OFF状態であり、コレクタ電流は遮断されている。従って、出力Vq3は、温度センサ121からの出力Vs1に従って、計測器127に出力される。
【0223】
一方、スイッチ124はハイレベル信号を受け取ると、コレクタ・エミッタ間に電流が流れ、スイッチはON状態となる。このため、ケーブル128bは、グランドに接続され、Vs3は0(V)となる。
【0224】
計測器127は、センサユニット126から得られた信号Vs3を基に転がり軸受内部の温度を図示せぬ表示器に表示する。また、計測器127は、信号Vs3を基にセンサユニット126の異常を判定する。温度センサ121,122が共に正常な場合、信号Vs1およびVs2の和は、2Vc±Δh(V)の範囲内に収まる。この場合、計測器97は、0(V)でない信号Vq3を受け取る。この場合、計測器127は、センサユニット126が正常に動作していると判断する。図21は、温度センサが正常な場合の信号Vs3の出力を示す図である。このように、Vs3は、正常時0(V)とならないように設定されている。
【0225】
一方、温度センサ121,122の何れかが動作不良をおこしている場合、出力Vq1とVq2の和は、2Vc±Δh(V)の範囲外となる。この場合、ウィンドウコンパレータ129はハイレベル信号を出力し、スイッチ124はONになり、計測器127に送られる信号Vq3は、0(V)となる。そして、計測器127は、センサ異常が発生したと判断し、センサ異常信号を出力する。計測器127は、センサ異常信号を出力した場合、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0226】
本実施形態では、温度センサ121から計測器127に信号Vs1を送信するケーブル128bは、抵抗R21を介してケーブル128aにプルアップされている。従って、温度センサ121,122、またはケーブル128bが断線した場合、計測器127に入力される信号は、Vsup(V)となる。本実施形態では、温度センサ121および122からの信号Vs1およびVs2が正常動作時にVsup(V)とはならないように設定されている。従って、計測器127は、Vs3をモニターすることにより、断線検出を行うことが可能である。なお、抵抗を介して、ケーブル128bおよび128cをケーブル128cにプルダウンした場合にも、同様の断線検出を行うことが可能である。
【0227】
また本実施形態においても、第10実施形態同様に、二つの温度センサ出力同士が短絡した場合にもセンサ異常を検出することが可能であり好ましい。
【0228】
第12実施形態によれば、計測器127は、二つの温度センサを用いて、転がり軸受の雰囲気温度を測定し、雰囲気温度を表示する。また、計測器127は、センサ異常信号に従い警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0229】
転がり軸受が正常に作動しており、かつその雰囲気温度が上昇していなければ、出力信号Vs3は正常な温度を示すものとなる。この場合、計測器127は、転がり軸受およびセンサ121,122が正常に動作していると判定し、転がり軸受およびセンサ121,122が正常である旨を表示する。
【0230】
運転中の転がり軸受に焼付き等の異常が発生すると、転がり軸受及び装置全体の温度が上昇する。すると、出力信号Vs3は異常な温度を示すものとなる。この場合、計測器127は、転がり軸受に異常な温度上昇が生じている旨を表示する。
【0231】
一方、温度センサ121,122のいずれかが動作不良を起こしている場合、加算回路125の出力Vgは、2Vc±Δh(V)の範囲を超えた値となり、ウィンドウコンパレータ129の出力がハイレベル信号を出力し、スイッチ124がONとなり、Vs3=0(V)となる。計測器127は、Vs3=0(V)となったことにより、温度センサ121,122の何れかに異常が発生したと判断する。そして、計測器127は、警報を発したり、警告灯を点灯したりすることによって、作業者にセンサ異常を知らせる。
【0232】
第12実施形態の転動装置用センサ120は、温度センサである温度センサ121,122からの出力信号を比較処理することにより、温度センサ121,122のセンサ異常を検知する。
したがって、検出素子の異常に起因して、転がり軸受の焼付き、剥離、傷等の異常の見落としがなくなる。よって、装置全体の破損や事故を減らすことが可能となり、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【0233】
また、温度センサ121,122からの出力信号が逆特性であり、両出力信号の値を加算処理することによってセンサの動作不良の判定が行われる。
したがって、両出力信号の和が所定範囲であれば、加算回路125は、温度センサ121,122が正常に動作していると判定し、一方、両出力信号の加算結果が所定範囲にない場合には温度センサ121,122に動作不良が生じていると判定することができる。
【0234】
本実施形態では、加算回路125は、温度センサ121,122から出力された出力信号Vs1,Vs2に従い、センサユニット126内で加算処理を行い、和信号を得る。そして、和信号に従い異常が発生している場合には、出力Vs3が0(V)となり、センサ異常の発生を意味するように構成している。したがって、センサユニット126内部でセンサ異常の有無を判断するため、外乱の影響無しに出力信号の比較処理を行うことができる。さらに、センサユニット126から計測器127への信号の送信は、一つのケーブルのみを用いて行われるため、装置が簡素化され、装置全体の軽量化とコストダウンを図ることが可能となる。
【0235】
また、減算回路や除算回路は、アナログ回路に限定されない。状況に応じ、温度センサ121,122からの出力をA/D変換し、加算回路をデジタル回路やマイクロコンピュータ等を用いて構成しても良い。
【0236】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
例えば、検出素子からの出力信号のうち、いずれか一方を検出出力としてセンサユニット外部に出力しても良いし、出力信号の平均値または和を計測器に出力しても良い。
また、第1〜第6実施形態では、減算または加算後の値が0レベルになる場合について説明したが、第1,第2の信号をオフセットし、減算または加算後の値が、0レベル以外になるように設定しても良い。
【0237】
例えば、実施形態1〜4について、実施形態5のように信号処理回路を省略しても良い。
また、異常判定回路は、アナログ回路に限らず、デジタル回路やマイクロコンピュータを使用した回路としても良い。その際、検出素子または信号処理回路の出力をA/D変換し、デジタル回路やマイクロコンピュータに入力すれば良い。
【0238】
そして、検出素子として、速度センサを用いても同様の効果を得ることができる。その場合、出力信号がパルス状であるため、パルスの立ち上がり及び、立ち下がり時近傍の信号は、ジッタ等の影響で多少変化する。したがって、パルスの中央付近の値または、立ち上がり及び立ち下がり部近傍を除いた値を用いて比較処理を行えばよい。
【0239】
そしてまた、センサユニットからの伝送方法は、ケーブルを用いた有線で出力信号を取り出すのに代えて、無線等を用いてワイヤレスで信号を伝送しても良い。
【0240】
そして、一対の検出素子と、一対の信号処理回路とを2重系統にすることにより、検出素子及び信号処理回路の異常を検知できるが、さらに信頼性を向上させるために2重系統以上としても良い。
【0241】
また、2個の温度センサに代えて2個の振動センサを用いても良い。振動センサは、転がり軸受の近傍に配置され、転がり軸受の振動を検出して振動のレベルに応じた出力信号を出力する。振動センサとしては、圧電素子を使用したものや、歪ゲージを使用したものが用いられる。振動センサは、両持ち構造の素子であっても、片持ち構造の素子であっても良い。温度センサ同様に、2個の振動センサは、正常時、同一振動レベルにて同一出力を出力するように調整されている。
【0242】
なお、第1〜12実施形態の温度センサユニットに振動センサを一体化し、温度と振動の測定値により、軸受の異常診断を判定するようにしても良い。このように構成することにより、さらに精度良く判定を行うことが可能となる。また、速度センサを一体化し、速度信号を加えて軸受の異常診断を判定するようにしても、さらに精度良く異常を判定することが可能となる。また、新たに振動センサも二つ設け、振動センサの誤作動を本発明の実施形態に従って、検出するように構成することにより、さらにセンサの信頼性を向上することが可能となる。
【0243】
そしてさらに、転動装置としての転がり軸受は玉軸受に限らず、円筒ころ軸受、円すいころ軸受や、各種の複列軸受でも良い。
【0244】
そして、転動装置に限らず、図7に示すようにボールねじ170に本発明を適用することもできる。ボールねじ170では、ナット171にセンサ10(20,30,40,50,60)を取付けることにより、ねじ軸172との係合部における剥離や傷等の初期的な異常及び、急激な温度上昇等の末期的な異常を検知することができる。なお、センサ10の取付け相手は、ナット171に限らず、ねじ軸172をサポートしている固定側のサポートユニット173や単純支持側のサポートユニット174に取付けても良い。ねじ軸172はロックナット175により固定側のサポートユニット173に軸方向に固定されており、カップリング176を介して結合された駆動ユニット177によって回転する。
【0245】
また更に、ボールねじに限らず、リニアガイドやその他の直動部品における可動部やレールにセンサ10を取付けることによって、剥離や傷等の初期的な異常及び、急激な温度上昇等の末期的な異常を検知することもできる。
【0246】
【発明の効果】
上記構成の転動装置用センサによれば、第1および第2の検出素子から出力された第1および第2の出力信号を処理することにより、検出素子の異常を検知する。または、単一の検出素子から出力された出力信号を2個の信号処理回路に入力し、各信号処理回路の出力を処理することにより検出素子の異常を検知する。したがって、適切に検出素子の異常を知ることができるので、異常の見落とし、ひいては装置全体の破損や事故をまねくことなく、センシングにおける信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明第1実施形態のブロック構成図、(b)は第1実施形態における比較処理の説明図である。
【図2】本発明第2実施形態のブロック構成図である。
【図3】(a)は本発明第3実施形態のブロック構成図、(b)は第3実施形態における比較処理の説明図である。
【図4】本発明第4実施形態のブロック構成図である。
【図5】本発明第5実施形態のブロック構成図である。
【図6】本発明第6実施形態のブロック構成図である。
【図7】本発明の第7実施形態の転動装置用センサ70を示す図である。
【図8】本発明の第8実施形態の転動装置用センサ80を示す図である。
【図9】本発明の第9実施形態の転動装置用センサ90を示す図である。
【図10】本発明の第10実施形態の転動装置用センサ100を示す図である。
【図11】温度センサ101の出力特性を示すグラフである。
【図12】温度センサ102の出力特性を示すグラフである。
【図13】出力信号Vs1とVs2の和を示すグラフである。
【図14】非線型の出力を持つ場合の出力信号Vs1を示すグラフである。
【図15】非線型の出力を持つ場合の出力信号Vs2を示すグラフである。
【図16】ドリフトおよび電位差を考慮した場合の温度センサ101の出力特性を示す図である。
【図17】ドリフトおよび電位差を考慮した場合の温度センサ102の出力特性を示す図である。
【図18】諸原因により、温度センサ101および102の出力値Vs1およびVs2が変化した場合の和Vgを示す図である。
【図19】本発明の第11実施形態の転動装置用センサ110を示す図である。
【図20】本発明の第12実施形態の転動装置用センサ120を示す図である。
【図21】温度センサが正常な場合の信号Vs3の出力を示す図である。
【図22】本発明が適用されるボールねじの説明図である。
【図23】従来の構造を説明する断面図である。
【符号の説明】
10,20,30,40,50,60,70,80,90,100,110,120 転動装置用センサ
11,21,31,41,51,61,71,81,91,101,111,121 第1の検出素子(検出素子)(温度センサ、振動センサ)
12,22,32,42,52,62,72,82,92,102,112,122 第2の検出素子(検出素子)(温度センサ、振動センサ)
15,25,35,45,55,65 異常判定回路
75,85,95 減算回路
105,115,125 加算回路
16,26,36,46,56,66,76,86,96,106,116,126 センサユニット
170 ボールねじ
Claims (16)
- 転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号を出力する第1の検出素子と、
前記転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第2の出力信号を出力する第2の検出素子と、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較又は演算し、前記第1または第2の検出素子の異常を判定する異常判定回路と、を有する転動装置用センサ。 - 転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号を出力する第1の検出素子と、前記転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第2の出力信号を出力する第2の検出素子と、を有するセンサユニットと、
前記第1の出力信号と前記第2の出力信号とを比較又は演算し、前記第1または第2の検出素子の異常を判定する異常判定回路を有する計測器と、から構成される転動装置用センサ。 - 前記第1および第2の検出素子が、少なくとも温度センサまたは振動センサであることを特徴とする請求項1または2記載の転動装置用センサ。
- 前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と第2の出力信号の差または比が所定範囲内にあるかどうかを判断することにより前記第1または第2の検出素子の異常を判定することを特徴とする請求項1記載の転動装置用センサ。
- 前記異常判定回路は、さらに前記差または比が前記所定範囲内にあるかどうかを判断する比較器を有し、
前記比較器は、前記差または比が前記所定範囲外であった場合、異常信号を出力することを特徴とする請求項4記載の転動装置用センサ。 - 前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と第2の出力信号の和が所定範囲内にあるかどうかを判断することにより前記第1または第2の検出素子の異常を判定することを特徴とする請求項1記載の転動装置用センサ。
- 前記異常判定回路は、さらに前記和が前記所定範囲内にあるかどうかを判断する比較器を有し、
前記比較器は、前記和が前記所定範囲外であった場合、異常信号を出力することを特徴とする請求項6記載の転動装置用センサ。 - 転動装置の運転状態を検知し、検知結果に従い第1の出力信号および第2の出力信号を出力する検出素子と、
前記第1の出力信号を変換し出力する第1の信号処理回路と、
前記第2の出力信号を変換し出力する第2の信号処理回路と、
前記第1の信号処理回路から出力された前記第1の出力信号と前記第2の信号処理回路から出力された前記第2の出力信号とを比較又は演算し、前記第1または第2の信号処理回路の異常を判定する異常判定回路と、を有する転動装置用センサ。 - 前記検出素子が、少なくとも温度センサまたは振動センサであることを特徴とする請求項8記載の転動装置用センサ。
- 前記第1の出力信号と前記第2の出力信号は、同特性であることを特徴とする請求項1〜5,8または9記載の転動装置用センサ。
- 前記第1の出力信号と前記第2の出力信号は、逆特性であることを特徴とする請求項1〜3または6〜9記載の転動装置用センサ。
- 前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の差又は比が実質的に所定値でない場合、異常有りと判定し、センサ異常信号を出力することを特徴とする請求項11記載の転動装置用センサ。
- 前記異常判定回路は、前記第1の出力信号と前記第2の出力信号の和が実質的に所定値でない場合、異常有りと判定し、センサ異常信号を出力することを特徴とする請求項10記載の転動装置用センサ。
- 前記転動装置が、転がり軸受であることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の転動装置用センサ。
- 前記転動装置が、ボールねじであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の転動装置用センサ。
- 前記転動装置が、リニアガイドであることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の転動装置用センサ。
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