JP2004000135A - 修飾されたmek1及びmek2、修飾された前記mek1又はmek2を含むペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶、並びにそれらの使用方法 - Google Patents

修飾されたmek1及びmek2、修飾された前記mek1又はmek2を含むペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶、並びにそれらの使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】MEK1ペプチドの形態及びMEK2ペプチドの形態、MEK1若しくはMEK2ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶、前記結晶の製造方法、結晶学的データから導き出される3次元構造情報、並びに前記構造情報の使用方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列が修飾されたアミノ酸配列を有するMEK1ペプチド及び、MEK2ペプチドである。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、概略すると、MEK1ペプチドの形態及びMEK2ペプチドの形態、MEK1若しくはMEK2ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶、前記結晶の製造方法、結晶学的データから導き出される3次元構造情報、並びに前記構造情報の使用方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
マイトジェン−活性化タンパク質(MAP)キナーゼは、多様な種々の細胞外信号によって活性化するので、複数の生化学的信号に対する調整ポイントとして作用すると考えられている。MAPキナーゼ(MAPK)カスケードのパターンは、成長因子シグナリングに集中しておらず、そして今では、ホルボールエステル、イオノファ、熱ショック、及び7回膜貫通レセプターに対するリガンドによって開始されるシグナリング経路が、それらの間でほとんど又は全く交差反応性がない独特なMAPキナーゼカスケードを使用することが知られている。
【0003】
マルチプルMAPキナーゼは、酵母において、例えば、SMK1、HOG1、MPK1、FUSS、及びKSS1が報告されている。動物においては、前記MAPキナーゼは、細胞外被シグナル制御キナーゼ〔extracellularsignal−regulatedキナーゼ(ERK)〕、c−Junアミノ末端キナーゼ(JNK)、及びp38キナーゼ〔Davis,Trends Biochem.Sci.19:470(1994)〕として確認されている。これらの高度に保存されたMAPキナーゼアイソフォームは、トレオニン残基及びチロシン残基における2重リン酸化によって活性化する。
【0004】
MAPキナーゼ媒介シグナリング経路の上流には、MAPキナーゼの酵素活性を刺激する重要なタンパク質キナーゼが存在する。このタンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ/ERKキナーゼ:MEK1と称する)の構造は、相補的DNA配列から明らかにされており、大きさ及び配列においてSchizosaccharomyces pombe byr1遺伝子〔Crewsら,Science258:478−480(1992)〕によってコードされる生成物に比較的最も近似する393アミノ酸のタンパク質(43.5kD)であることが示されている。前記MEK遺伝子は、マウス脳内で高度に発現し、そして細菌中で発現したその生成物は、イン・ビトロでERK遺伝子生成物をリン酸化した。MEK1は、MAPキナーゼシグナル伝達経路の本質的な成分として、多くの細胞工程、例えば、増殖、分化、転写調節、及び生長に関与している。
【0005】
MEK1のヒトホモログをコードするcDNAが、ヒトT−細胞cDNAライブラリーからクローニングされた:GenBank Accession Number L11284〔Segerら,J.Biol.Chem.267:25628−25631(1992)〕。COS細胞内で過剰に発現する場合には、予期された43,439Daのタンパク質が、ホルボールエステルで刺激されたMAPキナーゼキナーゼ活性の増加をもたらした。ヒトMEK1は、マウスMEK1とのアミノ酸配列同一性が99%であり、そしてヒトMEK2とのアミノ酸配列同一性が80%である。ヒトMEK1及びMEK2は、それぞれ、アミノ酸残基393個及び400個をコードする。MEK1及びMEK2は、両方とも、E.coliにおいて発現し、そしてイン・ビトロでヒト組換えERK1を活性化することができることが示された。精製された前記MEK2ペプチドは、ERK1上のトレオニン及びチロシンのリン酸化を刺激し、そしてそれに付随して、ERK1キナーゼ活性を100倍を超えて活性化させた。組換えMEK2は、組織から精製したMEK2と比較して、ERKアクチベーターとして、より低い活性を示した。しかしながら、前記組換えMEK2は、イン・ビトロで、血清刺激された細胞抽出物により活性化されることができる。ERK類と同様に、MEK類も、シグナル伝達において重要な役割を果たす関連するタンパク質の群からなりそうである〔Zhengら,J.Biol.Chem.May25;268(15):11435−9(1993)〕。
【0006】
MEK1の構成的活性化(constitutive activation)は、結果として、細胞の形質転換を起こす。従って、このプロテインキナーゼは、増殖性疾病及び炎症性疾病における医薬的介入に対する有望な標的の代表である〔Leeら,Nature372,739−746(1994);Dudleyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92,7686−7689(1995)〕。この経路の小分子インヒビターを確認するために、Sebolt−Leopoldらは、組換え発現したMEK1及びERK1のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質を用いるイン・ビトロカスケードアッセイを開発した〔Sebolt−Leopoldら,Nature Med.5:810−816(1999)〕。また、Sebolt−Leopoldらは、非常に強力で選択的なMEK1インヒビターである2−(2−クロロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−N−シクロプロピルメトキシ−3,4−ジフルオロ−ベンズアミドの発見も報告した。この論文は、このインヒビターで治療した後に、マウス起源及びヒト起源の両方の結腸カルシノマを有するマウスにおいて、腫瘍生長が80%程度阻害されたことが報告されている。効果は、広い範囲の投与量で、毒性の徴候なしで達成され、そして削除された腫瘍におけるMAPKレベルの減少に相関していた。MEKインヒビターが結腸ガンの臨床的管理に対する将来有望な無細胞毒性的アプローチを代表することをこれらのデーターが示していると結論づけられていた。
【0007】
インフルエンザAウイルスは、重要な世界的な疾病及び死亡の原因である。毎年更新されるワクチンは、疾病を予防することができ、そして抗ウイルス剤は、症状がしばしば非特異的である場合に、疾病の早期において有効な治療である。ウイルスの複製は、細胞内シグナルイベントによって支持されている。Pleschkaらは、MEK1及びMEK2の無毒のインヒビター(従って、RAF1/MEK/ERK経路のインヒビター)を用いて、インフルエンザAの感染に対する細胞応答を試験した。前記インヒビターは、ウイルス感染後の初期及び後期両方のERK活性化フェーズを抑制した。前記シグナル経路の阻害は、ウイルスRNA若しくはタンパク質の合成、又はウイルスのリボ核タンパク質複合体(RNP)の核へのインポート(import)を緩和することなく発生し〔Pleschkaら,Nature cell Biol.3:301−305(2001)〕、その代わりに、RAF/MEK/ERKシグナリング及びウイルスRNPのエクスポート(export)を、細胞mRNAエクスポート経路に影響を与えることなく阻害した。ERKがウイルス核エクスポートタンパク質の機能に関連する細胞因子を調節することが、提案されている。MEK1及びMEK2の無毒インヒビターを用いたインフルエンザAの感染に対する細胞応答を試験するための実験は、MEKインヒビターの局所的な適用は、薬剤耐性ウイルスバリアントを発生させることなくウイルスの複製を阻害するが、一方、宿主上でわずかな毒性効果しか無いことを示唆した〔Pleschkaら,Nature cell Biol.3:301−305(2001)〕。
【0008】
Ryanらは、MEK1の阻害が、p53−誘発NF−カッパ−Bの活性化及びアポトーシスを遮断するが、細胞周期停止を遮断しないことを示した。彼らは、p53が、TNFAを用いることにより、TNFR1/TRAF2/IKK経路よりもむしろRAF/MEK1/p90(rsk)経路を経て、NF−カッパ−Bを活性化させることを示した〔Nature404:892−897(2000)〕。
【0009】
前記MEK1経路を経るシグナル伝達を媒介する前記手段の1つは、前記MEK1ペプチドのエンハンサー又はインヒビターを同定することである。前記同定は、これまで、偶然の発見(serendipity)及び/又は多数の天然及び合成化合物の体系的なスクリーニングに頼られていた。優位な薬剤開発の方法は、構造アシスト薬剤設計(design)による。この場合、或るペプチド−インヒビター複合体の3次元構造を決定し、そしてコンピューターモデリングの助けを得て有効なエンハンサー又は有効なインヒビターをスクリーニング及び/又は設計する[Buggら,Scientific American,Dec.:92−98(1993);Westら,TIPS,16:67−74(1995);Dunbrackら,Folding & Design,2:27−42(1997)]。しかしながら、X線結晶学的データを選るのに必要な十分な質を有するMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの結晶を生成することができなかったことを本質的な理由として、MEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの3次元構造は、これまで知られていなかった。従って、リガンド(例えば、インヒビター)と一緒に結晶化して、得ようと思う前記結晶学的データを選るのに十分な質を有する結晶を形成することができるMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの形態を得ることに対する需要がいまだにある。更に、前記結晶に対する需要も存在する。また、前記結晶の3次元構造の決定に対する需要も存在する。最後に、構造的に基づいた関連する医薬設計の方法、及び/又は前記結晶データに基づくスクリーニングの方法に対する需要も存在する。
【0010】
Segerらに対するUSP5,663,314には、MEK1ペプチドの2つのタイプ、すなわち、MKK1a及びMKK1b、並びにそれらをコードするヌクレオチドが開示されている。MKK1aは、アミノ酸残基399個を有し、そしてMKK1bは、147〜172番目のアミノ酸残基を欠くこと以外はMKK1aと同じであるアミノ酸残基368個を有する。NH−末端領域のトランケーションによるか、挿入ループ形成領域の除去又は置き換えによるか、それらの組み合わせにより前記MEK1ペプチドを修飾して、そのペプチドの生物理学的特徴(特に、結晶性に関する特徴)を増強させることは、これまで報告されていない。
本明細書に記載の参考文献の引用は、いずれも、前記参考文献が本出願に対する従来技術となりうることの承認(admission)であると解釈されるべきではない。
【0011】
【非特許文献1】
Davis,Trends Biochem.Sci.19:470(1994)
【非特許文献2】
Crewsら,Science 258:478−480(1992)
【非特許文献3】
Segerら,J.Biol.Chem.267:25628−25631(1992)
【非特許文献4】
Zhengら,J.Biol.Chem.May25;268(15):11435−9(1993)
【非特許文献5】
Leeら,Nature372,739−746(1994)
【非特許文献6】
Dudleyら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92,7686−7689(1995)
【非特許文献7】
Sebolt−Leopoldら,Nature Med.5:810−816(1999)
【非特許文献8】
Pleschkaら,Nature cell Biol.3:301−305(2001)
【非特許文献9】
Ryanら,Nature404:892−897(2000)
【非特許文献10】
Buggら,Scientific American,Dec.:92−98(1993)
【非特許文献11】
Westら,TIPS,16:67−74(1995)
【非特許文献12】
Dunbrackら,Folding & Design,2:27−42(1997)
【特許文献1】
USP5,663,314
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、修飾されたMEK1ペプチド及び修飾されたMEK2ペプチドアミノ酸配列、並びに前記の修飾されたMEK1及びMEK2ペプチド配列の製造方法を提供する。或る態様では、前記MEK1及びMEK2ペプチドは、MEK1及びMEK2ペプチドのNH末端領域の重要な一部が損なわれる修飾がなされ(本明細書において、以下、それぞれ「NH末端トランケートMEK1ペプチド」及び「NH末端トランケートMEK2ペプチド」と称するか、あるいは集合的に「NH末端トランケートMEK1及びMEK2ペプチド」と称する)、及び/又はMEK1挿入ループドメインの欠失によって修飾がなされ、及び/又は或るリンカーペプチドによるMEK1挿入ループドメインの置き換えによって修飾がなされていることができる(本明細書において、以下、これらの修飾の1つ乃至全てを有するMEK1又はMEK2を、「修飾MEK1」、「修飾MEK2」と称するか、あるいは集合的に「修飾MEK1及びMEK2」と称する)。
【0013】
前記NH末端トランケートMEK1ペプチドは、完全長ペプチドのNH−末端領域からアミノ酸残基少なくとも30個を欠く。好ましくは、前記NH末端トランケートMEK1ペプチドは、前記完全長ペプチド又は保存的に置換されたそのバリアントのNH−末端領域から、アミノ酸残基少なくとも30個〜最大70個、より好ましくはアミノ酸残基41個〜61個を欠く。
前記NH末端トランケートMEK2ペプチドは、配列番号4で表される完全長ペプチドのNH−末端領域からアミノ酸残基少なくとも34個を欠く。好ましくは、前記NH末端トランケートMEK2ペプチドは、完全長ペプチド又は保存的に置換されたそのバリアントのNH−末端領域から、アミノ酸残基少なくとも34個〜最大74個、より好ましくはアミノ酸残基45個〜65個を欠く。
【0014】
別の態様においては、前記修飾MEK1ペプチドは、挿入ループ形成アミノ酸残基、特には配列番号2の280番目のアミノ酸〜323番目のアミノ酸;又は配列番号2の264番目のアミノ酸残基と310番目のアミノ酸との間のアミノ酸少なくとも40個の欠失があることができる。前記態様は、(1)配列番号2の264番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(2)配列番号2の270番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(3)配列番号2の264番目のアミノ酸〜305番目のアミノ酸;(4)配列番号2の267番目のアミノ酸〜307番目のアミノ酸;あるいは(5)配列番号2の265番目のアミノ酸〜304番目のアミノ酸の欠失を含むことができる。
【0015】
あるいは、前記MEK1挿入ループドメインは、リンカーペプチド(ここで、前記リンカーペプチドは、アミノ酸残基最大10個を有することができる)で置き換えられていることができる。前記リンカーペプチドは、好ましくは、Lys−Asn−Cys−Lys−Thr−Aspのアミノ酸配列を有する。
本発明の修飾MEK1ペプチドは、前記NH末端トランケーション;挿入ループ形成アミノ酸残基の前記欠損;及び前記リンカーペプチドによる前記MEK1挿入ループドメインの置き換え;の任意の1つ又は任意の組み合わせによって修飾されていることができる。
【0016】
更に、本発明は、表1又は表2にそれぞれ記載されているMEK1ペプチド又はMEK2ペプチド、あるいは表1又は表2にそれぞれ記載されているMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドのコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するペプチドの3次元立体座標により規定されるペプチドも提供する。
更になお、本発明は、MEK1、MEK2、又はMEK様補因子(MEK−like 補因子)、あるいはリガンド結合ポケット(リガンドbinding pocket)を含むペプチドを提供する。
更に、本発明は、修飾されたMEK1及び/又はMEK2ペプチドの配列をコードする単離され精製されたポリヌクレオチドも提供する。前記ポリヌクレオチドは、天然体であるか又は組換体であることができる。
【0017】
更に、本発明は、宿主細胞内で修飾MEK1及びMEK2を発現させるための発現ベクターを提供する。更に、本発明は、修飾MEK1ペプチド又はMEK2ペプチドを発現することが可能な方法によって、前記修飾MEK1ペプチド若しくは修飾MEK2ペプチド、又はそのフラグメント、あるいはそのアナログをコードするポリヌクレオチドで安定に形質転換及びトランスフェクションされていることができる宿主細胞を提供する。更に、本発明は、本発明の発現ベクターをトランスフェクション又は形質転換された細胞も包含する。また、本発明は、修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチド配列の発現方法であって、前記修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドを発現する細胞を、前記細胞による前記ペプチドの発現を提供する条件下、適当な細胞培養基中で培養することを含む、前記方法も包含する。
【0018】
また、本発明の修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドそれぞれ及び前記修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドそれぞれ以外の混入タンパク質を含む発酵ブロスから、前記修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドを精製する方法も提供する。前記方法は、前記発酵ブロスを、固定化金属キレートクロマトグラフィー(好ましくは、ピロール−2−カルボキシレート及び/又は亜鉛を含む)で処理することを含む。
【0019】
また、本発明は、ペプチド:リガンド:補因子の3成分複合体の製造への、精製した前記修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドの使用方法、並びに前記修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドを含む前記ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶の製造方法も提供する。或る態様では、ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶の成長方法は、
修飾MEK1又はMEK2ペプチドの水溶液、リガンド、並びに酢酸アンモニウム及びN−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)の溶液中の補因子を用意し;
(a)前記ペプチドがMEK1ペプチドである場合、ポリエチレングリコール(PEG)、イオン強度源、緩衝剤、及び還元剤を含む沈殿剤溶液を;又は
(b)前記ペプチドがMEK2ペプチドである場合、イオン強度源、緩衝剤、及び還元剤を含む沈殿剤溶液を用意し;
前記ペプチド溶液の液滴を前記沈殿剤溶液の液滴と混合し;
前記混合液滴中で得られる溶液における蒸気圧よりも低くなりつつある前記ウェル中の溶液の蒸気圧において、前記沈殿剤溶液のウェル上で、得られた混合液滴を浮遊(suspend)させ;そして
浮遊した前記混合液滴を、ペプチド:リガンド:補因子の3成分複合体の結晶がX線回析に適した大きさに成長するまで、長期にわたって放置する
ことを含む。
【0020】
また、本発明は、リガンド及び補因子と一緒の3成分複合体中における前記修飾MEK1ペプチドの結晶構造(これから、MEK1構造情報を得ることができる)も提供する。好ましくは、前記リガンドが5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドであり、そして前記補因子がATPである。前記結晶は、5.0Åよりも好ましくは3.0Åの分解能に関して解析することが好ましい。修飾MEK1ペプチド:5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミド:ATP複合体の結晶構造は、前記MEK1ペプチド又は全ての関連するMAPKKファミリーの、最初に報告された結晶構造である。
【0021】
更に、本発明は、リガンド及び補因子と一緒の3成分複合体中の修飾MEK2ペプチドの結晶構造(これから、MEK2構造情報を得ることができる)を提供する。好ましくは、前記リガンドが{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミンであり、そして補因子がATPである。前記結晶は、5.0Åよりも好ましくは3.5Åの分解能に関して解析することが好ましい。修飾MEK2:{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミン:ATP複合体の結晶構造は、MEK2ペプチドファミリーの、最初に報告された結晶構造である。
【0022】
更に、本発明は、表1及び表2に記載のMEK1ペプチド:リガンド:補因子複合体及びMEK2ペプチド:リガンド:補因子複合体の3次元構造座標、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2の3次元構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットも包含する。前記構造座標は、前記MEK1複合体及びMEK2複合体の3次元構造を反映し、そして原子分解能(atomic resolution)に関して、MEK1及びMEK2リガンド結合部位及び補因子結合部位の周辺の化学的環境を示す。
【0023】
特には、MEK1が、リガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約4Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、及びM219の構造座標により規定されるペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント、並びにリガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約5Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、I126、V127、G128、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、及びF223の構造座標により規定されるペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアントを含むことが見いだされた。
【0024】
また、MEK1ペプチドが、補因子結合部位に位置する約4Åの補因子(例えば、ATP分子)内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、G149、S150、D152、Q153、K192、S194、N195、L197、D208、及びV224の構造座標により規定される補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;及び補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G79、80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、D147、G149、S150、D152、Q153、D190、K192、S194、N195、L197、C207、D208、V224、及びG225の構造座標により規定される補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアントを含むことも見いだされた。
【0025】
同様に、MEK2ペプチドが、リガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約4Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、V131、F133、I145、M147、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、及びM223の構造座標により規定されるリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;及びリガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約5Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、I130、V131、G132、F133、I145、M147、D194、N199、L210、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、F227の構造座標により規定されるリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアントを含むことも見いだされた。
【0026】
更に、MEK2補因子結合ポケットが、補因子結合部位に位置する補因子の約4Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、G153、S154、D156、Q157、K196、S198、N199、L201、D212、V228の構造座標により規定されていることが見いだされ、又は保存的に置換されたそのバリアントが見いだされ;そしてポケットが補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G83、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、D151、G153、S154、D156、Q157、D194、K196、S198、N199、L201、C211、D212、V228、G229の構造座標により規定されることも見いだされ、又は保存的に置換されたそのバリアントも見いだされた。
【0027】
また、MEKペプチド又はMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドに構造的に関連するペプチドのリガンド結合ポケット又は補因子結合ポケットであって、表1又は表2に記載のMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの構造座標、あるいはMEK1又はMEK2結合ポケットの結合ポケットコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標の関連するセットに記載の原子により規定される、前記リガンド結合ポケット又は補因子結合ポケットも提供する。
【0028】
また、本発明は、表1又は表2に記載の原子座標、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連する構造座標のセットを含むデータが格納されている、機械読み取り可能媒体も提供する。
【0029】
また、本発明は、表1又は表2に記載の原子座標、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である原子座標を有する関連するセットの原子座標を、コンピューターアルゴリズムに適用して、本発明のペプチド又はペプチドポケットの3次元表示物[representation](「画像[image]」とも称する)を得ることも提供する。この3次元表示物は、例えば、修飾方法、設計方法、スクリーニング方法、及び同定方法、並びにMEK1、MEK2、又は構造的に関連するペプチドに関して可能性(potential)があるがゆえにMEK1、MEK2、又は構造的に関連するペプチドのインヒビター又はエンハンサーとなる可能性がある化学物質の評価方法において用いることができる。
【0030】
更に、本発明は、本発明のペプチドに関する可能性を有する化学物質の修飾又は設計方法を提供する。前記方法は、前記ペプチド又は前記ペプチドの結合ポケットの3次元コンピューター表示物を生成し、そして前記ペプチド若しくは前記ペプチドの結合ポケットの前記3次元コンピューター表示物に空間的に一致する化学物質を生成することを含む。前記化学物質は、(i)前記化学物質中に分子フラグメントをアッセンブルする(assemble)か;(ii)前記化学物質又はそのフラグメントを新たに設計するか;(iii)小分子データベース(small molecule database)から前記化学物質を選択するか;又は(iv)MEK1、MEK2、又は構造的に関連するペプチドのいずれかに関する能力を有する公知のインヒビター又はその一部を修飾することを含む方法により生成することができる。
【0031】
また、本発明は、本発明のペプチドの活性の有効なインヒビター又はエンハンサーをスクリーニング又は同定する方法も提供する。前記方法は、前記ペプチド又は前記ペプチドの結合ポケットの3次元コンピューター表示物を生成し;或る化学物質を前記3次元表示物に当てはめて、その化学物質が前記ペプチド又はペプチド結合ポケットに関連するか否かを決定する、反復工程を実施し;そして前記化学物質のペプチド活性への効果を評価して、前記化学物質が活性インヒビター又は活性エンハンサーとして作用するか否かを決定することを含む。
また、本発明のペプチドに関する化学物質の可能性の評価方法も提供する。前記方法は、前記ペプチド又は前記ペプチドの結合ポケットの3次元表示物を生成し;或る化学物質の3次元表示物を前記3次元表示物に当てはめ;そして前記化学物質と前記結合ポケットとの間の関連を定量[quantify]することを含む。
【0032】
更に、本発明は、構造が不明な分子又は分子複合体に関する構造情報を得るための分子置き換えの利用方法であって、
前記分子又は分子複合体を結晶化し;結晶化した前記分子又は分子複合体からX線回析パターンを得;そして表1又は表2に記載の構造座標の少なくとも一部、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標のセットを有する構造座標の少なくとも一部を、前記X線回析パターンに適用して、構造が不明な分子又は分子複合体の少なくとも一部の3次元電子密度マップを得ることを含む、前記方法も提供する。
【0033】
《配列表の説明》
配列番号1(SEQ ID NO:1)は、MEK1ヌクレオチドの完全長。
配列番号2(SEQ ID NO:2)は、MEK1ペプチドの完全長。
配列番号3(SEQ ID NO:3)は、MEK2ヌクレオチドの完全長。
配列番号4(SEQ ID NO:4)は、MEK2ペプチドの完全長。
配列番号5(SEQ ID NO:5)は、MEK1に対するプローブ。
配列番号6(SEQ ID NO:6)は、MEK1に対するプローブ。
配列番号7(SEQ ID NO:7)は、MEK1−C1/MEK1−C1(d280−323)に対するPCRプライマー。
配列番号8(SEQ ID NO:8)は、MEK1−C1/MEK1−C1(d280−323);MEK1−C2/MEK1−C2(d280−323);及びMEK1−C3/MEK1−C3(d280−323)に対するPCRプライマーに対するPCRプライマー。
配列番号9(SEQ ID NO:9)は、MEK1−C2/MEK1−C2(d280−323)に対するPCRプライマー。
配列番号10(SEQ ID NO:10)は、MEK1−C3/MEK1−C3(d280−323)に対するPCRプライマー。
配列番号11(SEQ ID NO:11)は、MEK2に対するPCRプローブ。
配列番号12(SEQ ID NO:12)は、MEK2に対するPCRプローブ。
配列番号13(SEQ ID NO:13)は、MEK2−C1に対するPCRプライマー。
配列番号14(SEQ ID NO:14)は、MEK2−C2に対するPCRプライマー。
配列番号15(SEQ ID NO:15)は、MEK2−C3に対するPCRプライマー。
配列番号16(SEQ ID NO:16)は、MEK2−C4に対するPCRプライマー。
配列番号17(SEQ ID NO:17)は、MEK2−C5に対するPCRプライマー。
配列番号18(SEQ ID NO:18)は、MEK2−C6に対するPCRプライマー。
配列番号19(SEQ ID NO:19)は、MEK2−C1−C6に対するPCRリバースプライマー。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明は、修飾MEK1ペプチド及び修飾MEK2ペプチド、並びにペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶を提供する。前記結晶は、好ましくは、修飾MEK1ペプチド若しくは修飾MEK2ペプチド、又はMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドに構造的に関連するペプチドと、リガンドと、補因子との3成分の[ternary](すなわち、第3の[tertiary])複合体を含む。
本発明の或る態様によると、好ましくは原核宿主で発現していてそして精製した、円形状核酸配列から誘導される組換えヒトMEK1ペプチド又は組換えヒトMEK2ペプチドから、前記結晶を形成する。前記結晶は、5Åを越える分解能でX線を分解する。前記結晶からもたらされる情報は、MEK1ペプチド、MEK2ペプチド、又はMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドに構造的に関連するペプチドのリガンド結合部位及び補因子結合部位を含む前記MEK1複合体及び前記MEK2複合体に対する3次元の結晶学的構造情報を提供する。本発明は、修飾、設計、スクリーニング、及び同定、並びにMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチド又はそれらに構造学的に関連するペプチドに関する可能性が有るがゆえにMEK1活性又はMEK2活性を阻害又は増強することができる化学物質の評価における前記構造情報の使用も包含する。
【0035】
《定義》
本明細書において、用語「含む[comprising]」及び「包含する[including]」は、通常の、非限定的な意味で使用する。
本明細書において、「リガンド」は、或る酵素に特異的に結合するか又は関連[associate]する小分子を意味し、例えば、インヒビター又はアクチベーターを表すために使用することができる。
本明細書において、「補因子(co−factor)」は、酵素活性に要求される無機分子、有機分子、又は補酵素を意味する。例えば、ATP(アデノシン三リン酸)は、リン酸基の転移、すなわち基質のリン酸化をするために、キナーゼ酵素により使用される補因子である。
【0036】
本明細書において、用語「二乗平均平方根(RMS)偏差[root meansquare deviation]」は、タンパク質又はペプチドの空間2つ以上の間の構造的な相関を示す。二乗平均平方根(RMS)偏差は、特に断らない限りオングストローム(Å)単位の、C−アルファ(Cα)原子又はMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドのバックボーントレースからの或るペプチドの3次元構造の距離のRMSの差を意味する。RMS偏差は、一方の前記種類の3次元構造を、例えばX線結晶学によって解明することができるもう一方の上に重ねることによるか、あるいはNMR及びCα原子又はMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドのバックボーントレースから別のペプチドまでの距離のRMSにおける差(オングストローム(Å)単位)の測定によって決定することができる。3次元構造のもう一方への前記重ね合わせは、分子モデリングプログラム、例えばCNX(商標)(Accelrys)、XtalView(商標)(Duncan McRee,Scripps Research Institute)、又はO(商標)(Morten Kjeldgaard,Aarhus Univ.,Denmark)。前記3次元構造相互間の関係が密接になればなるほど、RMS偏差の値が小さくなる。例えば、リガンドタンパク質共複合体構造2つのC−アルファ原子の構造座標の間の3次元関連は、典型的には、RMS偏差が0.0〜0.5Åの間である。RMS偏差(具体的には、本発明のMEK1及びMEK2結晶構造の間のRMS偏差)の計算例を、本明細書の実施例16に提供する。
【0037】
従って、本発明の態様の1つは、表1及び表2に記載の、リガンド及び補因子といっしょの3成分複合体中の修飾MEK1及びMEK2ペプチドの3次元構造である。別の態様は、「構造的に関連する(structurally related)」ペプチド、構造的に関連するペプチドの結晶、及びその3次元構造である。
本明細書において、「構造的に関連する」タンパク質又はペプチドとは、表1又は表2に記載のMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドの構造座標、あるいは表1又は表2MEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチド構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.5Å以下から約0.50Å以下である構造座標を有する関連するセットにより規定されるタンパク質又はペプチドを意味する。前記RMS偏差は、好ましくは約0.50Å以下であり、より好ましくは約0.75Å以下であり、更により好ましくは約1.00Å以下であり、そして最も好ましくは約1.25Å以下である。前記の「構造的に関連するペプチド」としては、以下に限定されるものでないが、MEK5を挙げることができる。
同様に、本明細書において、「関連する構造座標のセット」とは、表1又は表2に記載のMEK1若しくはMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.5Å以下から約0.50Å以下である構造座標のセットを意味する。前記RMS偏差は、好ましくは約0.50Å以下であり、より好ましくは約0.75Å以下であり、更により好ましくは約1.00Å以下であり、そして最も好ましくは約1.25Å以下である。
【0038】
本明細書において「化学物質(chemical entity)」とは、化合物、化合物少なくとも2種の複合体、又は前記化合物若しくは複合体のフラグメントを意味する。前記実在物は、例えば、有効な薬剤の候補となることができ、そしてMEK1、MEK2、又は構造的に関連するペプチドの活性を阻害又は増強させる能力に関して評価することができる。
本明細書において、用語「インヒビター」又は「阻害」(あるいはそれらの変形)は、リガンド、例えば、MEK1若しくはMEK2の活性又はその作用を、低める、軽減する、減少する、予防する、小さくする、停止する、又はネガティブに干渉する化合物又は物質を意味する。しばしば、前記用語「インヒビター」と「アンタゴニスト」とは、交換可能に使用することができる。阻害は、典型的には、インヒビター不在下の酵素活性上のインヒビター存在下の酵素活性の割合(%)として表される。あるいは、用語IC50、すなわち、本来の酵素活性の50%の酵素活性が観察されるインヒビターの濃度で表される。
【0039】
本明細書において、用語「エンハンサー」又は「増強」(あるいはそれらの変形)は、リガンド、例えば、MEK1若しくはMEK2の活性又はその作用を、向上する、増やす、刺激する、上昇させる、又はポジティブに干渉する化合物又は物質を意味する。しばしば、前記用語「エンハンサー」と「アゴニスト」とは、交換可能に使用することができる。エンハンサーは、前記酵素の活性を増加させるであろう。
本明細書において、用語「モデル」及び「モデリング」は、立体的制約[steric constraint]及び表面/溶媒静電的効果に基づくMEK1、MEK2、MEK様結合ポケット、及び化学物質[chemical entity](候補化合物[candidate compound]とも称する)間の相互作用の親和性の評価手順(「アセッシング」とも称する)を意味する。
【0040】
《MEK1及びMEK2》
本明細書において、略号「MEK1」又は「Mek1」は、前記MAPキナーゼ/ERK1キナーゼをコードするポリヌクレオチド又は前記ペプチド自体を意味する。前記MEK1ペプチドは、前記文献及び本明細書において、時々、MAPKK、MPK1、MEK1、MAPキナーゼキナーゼ1、又はMAPキナーゼ/ERK1キナーゼと称することがある。MEK1の完全長タンパク質をコードするポリヌクレオチドの核酸配列は、Zheng及びGuanによって発表されており〔J.Biol.Chem.268,11435−11439(1993)〕、そして受付番号L11284でGenBankに提出されている。その中に記載されている核酸配列は、本明細書に記載されており、配列番号1に見ることができる。 The correspondingペプチド sequence of 前記完全長タンパク質の相当するペプチド配列も本明細書に記載されており、配列番号2に見ることができる。このペプチド配列は、Zhengら及びSegerらによってGenBankに提出され、受付番号NP_002746が付された。本明細書に記載の配列番号2のナンバリングが開始コドンATG(Met)から始まっていることに注意されたい。
【0041】
本明細書において、略号「MEK2」又は「Mek2」は、前記MAPキナーゼキナーゼ2又はMAPキナーゼ/ERK2キナーゼをコードするポリヌクレオチド、あるいは前記ペプチド自体を意味する。また、前記MEK2ペプチドは、時々、MAPKK2又はMPK2と称することもある。MEK2は、前記文献及び本明細書において、MEK1のパラログ[paralog]である。MEK2ペプチド、及び完全長MEK2ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、Zhengらによって報告されており〔J.Biol.Chem.268,11435−11439(1993)〕、そしてそれらの配列は、それぞれ、受付番号P36507及びNM_030662でGenBankから入手することができる。MEK2をコードする核酸配列及びMEK2ペプチドをコードするアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号3及び配列番号4として、本明細書に記載する。
【0042】
《MEK1及びMEK2ペプチド結合ポケット》
本明細書において「結合ポケット」は、例えば、「結合部位」、「結合ドメイン」、「基質結合部位」、「触媒ドメイン」、又は「リガンド結合ドメイン」、「リガンド結合部位」、「補因子結合部位」、又は「補因子結合ドメイン」とも称され、その表面特徴〔例えば、以下に限定されるものでないが、容量(孔腔内の内部容量又は合計容量の両方とも)、溶媒アクセシビリティー、並びに表面電荷及び疎水性〕の結果として、他の化学物質又は化合物と関連することができる分子又は分子複合体の領域を意味する。前記領域は、医薬品開発などの分野で有用である。
本明細書において、「MEK様(MEK−like)」ペプチド結合ポケットは、表1又は表2に記載のMEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドの構造座標に記載の原子により規定されるか、又は任意の前記MEK1結合ポケット又はMEK2結合ポケット(例えば、前記「課題を解決するための手段」欄に記載のMEK1若しくはMEK2の補因子若しくはリガンド結合ポケット)の結合ポケットCアルファ原子から約1.5Å以下から約0.50Å以下、好ましくは約1.25Å以下離れたRMS偏差を有する構造座標により規定されるペプチド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアントを意味する。
【0043】
本明細書において、用語「活性」は、全ての活性、すなわち、MEK1又はMEK2の基質であるERK1のリン酸化におけるMEK1又はMEK2の機能、並びに。前記酵素の有効性を意味する。用語「活性(activity)」及び「機能(function)」は、しばしば交換可能に用いることができる。
本明細書において、用語「関連する」は、少なくとも2つの分子が互いに可逆的に相互作用、例えば、互いに結合する過程を意味する。また、用語「関連する」は、タンパク質の配置が、リガンドの存在に応じて前記リガンドの立体的及び静電的効果を適応させるより良好にように変化する過程も意味する。MEK1、MEK2、又は構造的に関連するペプチドとリガンドとの間の関連は、MEK1結合ポケット、MEK2結合ポケット、又はMEK様結合ポケットの全部又は一部に生じることができる。前記関連は、非共有〔例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、又は静電的相互作用が並列位置に対してエネルギー的に有利である場合〕であることができるか、あるいは前記関連は、共有であることができる。
【0044】
《MEK1ペプチド及びMEK2ペプチド》
本発明は、配列番号1及び配列番号3に記載の核酸配列によりコードされるペプチドのアミノ酸配列からなるか、前記アミノ酸配列から本質的になるか、又は前記アミノ酸配列を含む、単離されたペプチド及びタンパク質分子、並びに製造及び使用の点で当該技術の範囲内にある前記ペプチドの明らかなバリアントを提供する。前記バリアントのいくつかを、以下に詳細に記載する。
【0045】
〈修飾MEK1ペプチド〉
或る態様では、本発明は、新規な修飾MEK1ペプチド、例えば、フレキシブルなNH末端尾部(tail)の重要な部分を欠くように構成された前記ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント(「NH末端トランケートMEK1ペプチド」)を含む実質的に純粋な単離されたポリペプチドを提供する。本発明のNH末端トランケートMEK1ペプチドは、MEK1ペプチドがその天然補因子であるATPに結合することができるように、相当する完全長MEK1ペプチドの球状コアを保持することが好ましい。前記NH末端トランケートMEK1ペプチドは、好ましくは、ERK1結合ドメインの一部を含むフレキシブルで部分的に乱れている(partially disordered)前記NH末端の全て又は重要な部分〔最小で30アミノ酸、好ましくは41アミノ酸、より好ましくは多くとも50アミノ酸、そして更により好ましくは多くとも61アミノ酸)を欠く。更に、前記NH末端トランケートMEK1ペプチドは、記載された配列より前に、最初のアミノ酸としてのメチオニンを有することができる。
【0046】
前記NH末端トランケートMEK1ペプチドは、更に、MEK1挿入ループ形成ドメイン、特に、配列番号2の280〜323番目のアミノ酸、又は配列番号2の264〜310の間のアミノ酸少なくとも40個を欠失していることができる。前記態様には、以下のアミノ酸の欠失が含まれる(1)配列番号2の264番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(2)配列番号2の270番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(3)配列番号2の264番目のアミノ酸〜305番目のアミノ酸;(4)配列番号2の267番目のアミノ酸〜307番目のアミノ酸;又は(5)配列番号2の265番目のアミノ酸〜304番目のアミノ酸。
また、前記MEK1挿入ループドメインは、リンカーペプチドで置き換えられていることができる。前記リンカーペプチドは、好ましくは、アミノ酸残基が多くとも10個である。より好ましくは、前記リンカーペプチドは、Lys−Asn−Cys−Lys−Thr−Aspのアミノ酸配列を有する。
【0047】
あるいは、前記MEK1ペプチドは、NH末端トランケーションなしで、前記MEK1挿入ループ形成ドメインの欠失及び/又は前記MEK1挿入ループドメインの置き換えによって修飾されていることができる。
また、これらの修飾MEK1ペプチドは、そのCOOH末端に、ヒスチジンオリゴマータグ、例えばヒスチジンヘキサマータグ(His−Tag)を有することもできる。
前記修飾MEK1ペプチドは、例えば、以下の任意の群から選択することができる:(1)配列番号2の62〜393番目のアミノ酸を含み、場合により、COOH末端His−Tagを含むNH末端トランケートMEK1ペプチド;(2)配列番号2の62〜393番目のアミノ酸を含み、更に前記挿入ループ形成アミノ酸残基が欠失しており、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK1ペプチド;(3)配列番号2に記載の配列の51〜393番目のアミノ酸を含み、場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK1ペプチド;(4)配列番号2の51〜393番目のアミノ酸を含み、更に前記挿入ループ形成アミノ酸残基が欠失しており、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK1ペプチド;(5)配列番号2に記載の配列の42〜393番目のアミノ酸を含み、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK1ペプチド;(6)配列番号2の42〜393番目のアミノ酸を含み、更に前記挿入ループ形成アミノ酸残基が欠失しており、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK1ペプチド;(7)前記挿入ループ形成アミノ酸残基が欠失するように修飾されたMEK1ペプチド;及び(8)前記NH末端トランケーションが存在するか又は存在せず、前記挿入ループ形成アミノ酸残基が、リンカーペプチド、好ましくはLys−Asn−Cys−Lys−Thr−Aspで置き換えられるように修飾されたMEKペプチド。
【0048】
前記修飾MEK1ペプチドは、好ましくは、後出の保存されたアミノ酸を保持し、そして約331〜351アミノ酸残基、又はそのNH末端トランケートMEK1ペプチドがペプチド内に欠失を有する場合には、約284〜311アミノ酸残基を、含む。前記修飾MEK1ペプチドは、リン酸化されているか又はリン酸化されていないことができる。同様に、前記修飾MEK1ペプチドは、相当する完全長MEK1ペプチドの天然由来のメチオニンを置換するセレノメチオニン1個以上を含むことができる。当然のことながら、全体的な修飾、例えば、X線結晶学研究で一般的な付加的重原子誘導体も、本発明の修飾MEK1ペプチドの実施であることができ、そして前記修飾も、本発明の一部に含まれる。
【0049】
或る好ましい態様では、前記修飾MEK1ペプチドは、ヒトMEK1から誘導され、そして相当する完全長MEK1のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜41番目のアミノ酸の残基を欠いている。より好ましい態様では、前記修飾MEK1ペプチドは、相当する完全長MEK1のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜50番目のアミノ酸の残基を欠いている。最も好ましい態様では、前記修飾MEK1ペプチドは、配列番号2に記載の相当する完全長MEK1のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜61番目のアミノ酸の残基を欠いている。
本発明の修飾MEK1ペプチドは、任意の真核生物由来であることができるが、好ましくは脊椎動物のMEK1、より好ましくは哺乳動物由来のMEK1、そして最も好ましくはヒトMEK1である。
【0050】
〈修飾MEK2ペプチド〉
別の態様では、本発明は、新規な修飾MEK2ペプチド、例えば、フレキシブルなNH末端尾部(tail)の重要な部分を欠くように構成された前記ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント(「NH末端トランケートMEK2ペプチド」)を含む実質的に純粋な単離されたポリペプチドを提供する。本発明のNH末端トランケートMEK2ペプチドは、MEK2ペプチドがその天然補因子であるATPに結合することができるように、相当する完全長MEK2ペプチドの球状コアを保持することが好ましい。前記NH末端トランケートMEK2ペプチドは、好ましくは、ERK2結合ドメインの一部を含むフレキシブルで部分的に乱れている(partially disordered)前記NH末端の全て又は重要な部分〔最小で34アミノ酸から多くとも74アミノ酸、好ましくは最小で45から多くとも65アミノ酸)を欠く。更に、前記NH末端トランケートMEK2ペプチドは、記載された配列より前に、最初のアミノ酸としてのメチオニンを有することができる。また、これらの修飾MEK2ペプチドは、そのCOOH末端に、ヒスチジンオリゴマータグ、例えばヒスチジンヘキサマータグ(His−Tag)を有することもできる。
【0051】
前記修飾MEK2ペプチドは、例えば、以下の任意の群から選択することができる:(1)配列番号4に記載の配列の46〜400番目のアミノ酸を含み、場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK2ペプチド;(2)配列番号4に記載の配列の55〜400番目のアミノ酸を含み、場合によりCOOH末端His−Tagを含むことがあるNH末端トランケートMEK2ペプチド;(3)配列番号4に記載の配列の66〜400番目のアミノ酸を含み、更に場合によりCOOH末端His−Tagを含むことができるNH末端トランケートMEK2ペプチド;(4)配列番号4に記載の配列の59〜400番目のアミノ酸を含み、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことができるNH末端トランケートMEK2ペプチド;(5)配列番号4に記載の配列の,62〜400番目のアミノ酸を含み、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことができるNH末端トランケートMEK2ペプチド;(6)配列番号4に記載の配列の64〜400番目のアミノ酸を含み、そして場合によりCOOH末端His−Tagを含むことができるNH末端トランケートMEK2ペプチド。
【0052】
前記修飾MEK2ペプチドは、好ましくは、後出の保存されたアミノ酸を保持し、そして約326〜366アミノ酸残基を含む。前記修飾MEK2ペプチドは、リン酸化されているか又はリン酸化されていないことができる。同様に、前記修飾MEK2ペプチドは、相当する完全長MEK2ペプチドの天然由来のメチオニンを置換するセレノメチオニン1個以上を含むことができる。当然のことながら、全体的な修飾、例えば、X線結晶学研究で一般的な付加的重原子誘導体も、本発明の修飾MEK2ペプチドの実施であることができ、そして前記修飾も、本発明の一部に含まれる。
或る好ましい態様では、前記修飾MEK2ペプチドは、ヒトMEK2から誘導され、そして配列番号4に記載の相当する完全長MEK2のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜45番目のアミノ酸の残基を欠いている。より好ましい態様では、前記修飾MEK2ペプチドは、配列番号4に記載の相当する完全長MEK2のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜54番目のアミノ酸の残基を欠いている。最も好ましい態様では、前記修飾MEK2ペプチドは、配列番号4に記載の相当する完全長MEK2のN末端アミノ酸の1番目のアミノ酸〜65番目のアミノ酸の残基を欠いている。
本発明の修飾MEK2ペプチドは、任意の真核生物由来であることができるが、好ましくは脊椎動物のMEK2、より好ましくは哺乳動物由来のMEK2、そして最も好ましくはヒトMEK2である。
【0053】
本明細書においては、タンパク質又はペプチドが、細胞性材料を実質的に含まないか、又は化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない場合に、前記タンパク質又はペプチドが「単離された」又は「精製された」と称する。本発明のタンパク質又はペプチドは、均質性又は他の純粋の程度に関して精製することができる。精製のレベルは、意図される使用に基づくであろう。重要なことは、他の成分が多量に存在する場合であっても、そのタンパク質又はペプチドの所望の機能が、その調製物から得られることである。
いくつかの使用において、用語「細胞性材料を実質的に含まない」には、他のタンパク質(すなわち、夾雑タンパク質)(乾燥重量で)約30%未満、好ましくは他のタンパク質約20%未満、より好ましくは他のタンパク質約10%未満、更に好ましくは他のタンパク質約5%未満を含有するタンパク質又はペプチド調製物が含まれる。前記タンパク質又はペプチドが、組換え技術により生成されたものである場合には、培養基を実質的に含まない、すなわち、培養基がそのタンパク質調製物の体積の約20%未満の量で存在することもできる。
【0054】
用語「化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない」には、そのタンパク質の合成に関連する化学的前駆体若しくは他の化学物質から、前記タンパク質が分離されている、前記タンパク質の調製物が含まれる。或る態様では、用語「化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない」には、化学的前駆体若しくは他の化学物質(乾燥重量で)約30%未満、好ましくは化学的前駆体若しくは他の化学物質約20%未満、より好ましくは化学的前駆体若しくは他の化学物質約10%未満、最も好ましくは化学的前駆体若しくは他の化学物質約5%未満を含有する、タンパク質調製物が含まれる。
本明細書に記載の単離されたタンパク質は、MEK1ペプチド若しくはMEK2ペプチドを自然に発現する細胞から精製するか、又はMEK1若しくはMEK2を発現するように変化させた(組換え発現)細胞から精製することができる。例えば、前記タンパク質をコードする核酸を、クローニングして発現ベクター中に入れ、前記発現ベクターを宿主細胞中に導入し、次いで宿主細胞中で前記タンパク質を発現させる。続いて、標準的なタンパク質精製技術を用いる適当な精製工程によって、前記細胞から前記タンパク質を単離することができる。これらの技術の多くを、後に詳細に説明する。
【0055】
「ポリペプチド」は、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合(すなわち、ペプチド配同体)により相互に結合しているアミノ酸2個以上を含む任意のペプチド又はタンパク質を表す。「ポリペプチド」は、ペプチド、オリゴペプチド、又はオリゴマーと通常称される短鎖、並びにタンパク質と一般に称される長鎖の両方を表す。本明細書では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」を交換可能に使用する。ポリペプチドは、天然に存在する20種のアミノ酸以外のアミノ酸を含むことができる。更に、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸が、自然の工程(例えば、プロセシング及び他の転写後の修飾)によるか、又は当業者に周知の化学的修飾技術によって、修飾されていることができる。ポリペプチドにおいて自然に発生する一般的な修飾は、基本書、専門書、及び調査文献に記載されており、また、それらは当業者に周知である。
【0056】
従って、置換されたアミノ酸残基がその遺伝子コードによりコードされたものでないか;置換基を含むか;その成熟ポリペプチドが他の化合物〔例えば、前記ポリペプチドの半減期を増やす化合物(例えば、ポリエチレングリコール)〕と融合しているか;あるいは、その成熟ポリペプチドに更なるアミノ酸(例えば、リーダーか、分泌[secretary]配列か、成熟ポリペプチドの精製のための配列か、又はプロ−タンパク質配列)が融合している誘導体又はアナログも、前記ポリペプチドは、包含する。
【0057】
更に、本発明は、MEK1ペプチド及びMEK2ペプチドのフラグメントも、前記フラグメントを含む及び前記フラグメントからなるタンパク質及びペプチドに加えて、提供する。本明細書において、フラグメントは、前記プロテインキナーゼからの8以上の連続するアミノ酸残基を含む。前記フラグメントは、前記キナーゼの生物学的活性1つ以上を保持する能力に基づいて選択することができ、あるいは或る機能を実施する(例えば、免疫源として作用する)能力に関して選択することができるであろう。特に重要なフラグメントは、生物学的に活性なフラグメント、すなわち、長さが例えばアミノ酸8個以上のペプチドである。前記フラグメントは、典型的に、前記キナーゼのドメイン又はモチーフ、例えば活性部位を含む。更に、可能なフラグメントには、以下に限定されるものでないが、ドメイン又はモチーフ含有フラグメント、可溶性ペプチドフラグメント、及び免疫原構造を含むフラグメントが含まれる。予測されたドメイン及び機能的部位は、当業者に周知であるか容易に入手することができるコンピュータープログラムによって(例えば、PROSITE analysisによって)容易に同定することができる。
【0058】
公知の修飾としては、以下に限定されるものでないが、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋化、環状化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、フェニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNAが媒介するタンパク質へのアミノ酸の添加、例えばアルギニル化、及びユビキチン化を挙げることができる。
【0059】
前記修飾は当業者に周知であり、化学文献中に非常に詳細に記載されている。特に一般的ないくつかの修飾、例えば、グリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADP−リボシル化は、殆どの基本書に記載されている。例えば、「Proteins−Structure and Molecular Properties,第2版,T.E.Creighton,W.H.Freeman and Company,ニューヨーク州(1993)」を参照されたい。この問題においては多くの詳細なレビューが入手可能であり、例えば、「Wold,F.,Posttranslational Covalent Modification of Proteins,B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,ニューヨーク州1−12(1983)」、「Seifterら,Meth.Enzymol.182:626−646(1990)」、及び「Rattanら,Ann.N.Y.Acad.Sci.663:48−62(1992)」を参照されたい。
【0060】
本発明のペプチドは、異種配列に結合して、キメラタンパク質又は融合タンパク質を形成することができる。前記キメラタンパク質又は融合タンパク質は、前記キナーゼペプチドに実質的に相同でないアミノ酸配列を有する異種タンパク質に、有効なように結合するペプチドを含む。「有効なように結合する(operatively linked)」とは、前記ペプチドと前記異種タンパク質とがイン−フレーム(in−frame)に融合することを表す。前記異種タンパク質は、前記キナーゼペプチドのNH末端又はCOOH末端に融合することができる。融合ペプチド中で結合しているペプチド2つは、典型的には、独立した2つの供給源から誘導され、従って、融合ペプチドは、自然において通常は結合した状態では見いだされない2つの結合ペプチドを含む。前記ペプチド2種は、同じゲノム由来であることもできるし、異なるゲノム由来であることもできる。
【0061】
いくつかの用途においては、前記融合タンパク質は、前記ペプチド自体の活性に影響しない。例えば、そのような融合タンパク質としては、以下に限定されるものでないが、酵素的(enzymatic)融合タンパク質、例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ融合、酵母ツーハイブリッドGAL融合、ポリ−His融合、MYC−タグ付加、HI−タグ付加、及びIg融合タンパク質を挙げることができる。前記融合タンパク質(特に、ポリ−His融合タンパク質)は、組換えキナーゼペプチドの精製を促進することができる。或る宿主細胞(例えば、哺乳動物宿主細胞)においては、タンパク質の発現及び/又は分泌を、異種シグナル配列を用いることによって増加することができる。
キメラタンパク質又は融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成することができる。例えば、異なるタンパク質配列をコードするDNAフラグメントを、通常の技術に従って、イン−フレーム一緒に連結する。別の態様では、通常の技術、例えば自動DNA合成装置によって前記融合遺伝子を合成することができる。あるいは、連続する2つの遺伝子フラグメント(これは、連続的にアニーリングされ、再増幅されて、キメラ遺伝子配列を生成することができる)の間で相補的なオーバーハングを起こすアンカープライマーを用いて遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うことができる(「Ausubelら,Current Protocols in Molecular Biology,1992」を参照されたい)。更に、融合部分(例えば、GSTタンパク質)を既にコードしている多くの発現ベクターが市販されている。修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を、前記融合部分が前記ペプチドにイン−フレームに結合するように前記のような発現ベクター中にクローニングして入れることができる。
【0062】
《修飾MEK1及びMEK2ペプチドをコードする核酸及びポリヌクレオチド》また、本発明は、本発明の機能的な活性キナーゼをコードする単離された核酸分子を提供する。前記核酸分子は、本発明のキナーゼペプチドの1つをコードするヌクレオチド配列、その対立遺伝子バリアント、又はそれらのオルソログ[ortholog]若しくはパラログ[paralog]からなるか、それらから実質的になるか、又はそれらを含むであろう。
〈修飾MEK1ペプチドをコードするポリヌクレオチド〉
特定の態様においては、本発明は、新規な修飾MEK1ペプチド、例えばNH末端トランケートMEK1ペプチド、挿入ループ形成ドメインが欠失しているMEK1ペプチド、及び/又はリンカーペプチドと置き換えられた前記挿入ループドメインを有するMEK1をコードする単離され精製されたポリヌクレオチドも提供する。
【0063】
前記ポリヌクレオチドは、天然であることもできるし、又は組換体であることもできる。或る態様では、その核酸配列は、配列番号2の42から62の間のアミノ酸〜393番目のアミノ酸の複数のアミノ酸のアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアントをコードする。特には、前記核酸配列は、配列番号2の42〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号2の42〜393番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチドをコードする。あるいは、前記核酸配列は、配列番号2の51〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号2の51〜393番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチドをコードする。あるいは、前記核酸配列は、配列番号2の62〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号2の51〜393番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチドをコードする。前記ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2の最初の41〜61のアミノ残基をコードする部分が欠失した配列番号1に記載の配列を有するポリヌクレオチドであることができる。
【0064】
更に、前記ポリヌクレオチドは、MEK1挿入ループ形成ドメイン、特に、配列番号2の280〜323番目のアミノ酸、又は配列番号2の264〜310の間のアミノ酸少なくとも40個を更に欠失している修飾MEK1ペプチドをコードすることができる。この態様には、以下のアミノ酸の欠失が含まれる:(1)配列番号2の264番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(2)配列番号2の270番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(3)配列番号2の264番目のアミノ酸〜305番目のアミノ酸;(4)配列番号2の267番目のアミノ酸〜307番目のアミノ酸;又は(5)配列番号2の265番目のアミノ酸〜304番目のアミノ酸。
【0065】
更に、前記ポリヌクレオチドは、MEK1挿入ループ形成アミノ酸残基をリンカーペプチド(好ましくは、Lys−Asn−Cys−Lys−Thr−Asp)で置き換えを、単独で又は前記のNH末端トランケーションと組み合わせて修飾されたMEK1ペプチドをコードすることができる。
また、本発明のポリヌクレオチドは、NH末端トランケーションがなく、挿入ループ形成アミノ酸残基の前記欠失を有するように修飾されたMEK1ペプチドをコードすることもできる。
また、これらのアミノ酸配列は、いずれも、メチオニンの換わりにセレノメチオニン1個以上を含有することができる。更に、これらの修飾MEK1ペプチド及びその種々のバリアントは、ヒスチジンオリゴマータグ、例えばヒスチジンヘキサマータグ(His−tag)を、それらのCOOH末端に有することができる。
【0066】
〈修飾MEK2ペプチドをコードするポリヌクレオチド〉
別の特定の態様においては、本発明は、新規な修飾MEK2ペプチド、例えばNH末端トランケートMEK2ペプチドをコードする単離され精製されたポリヌクレオチドも提供する。前記ポリヌクレオチドは、天然であることもできるし、又は組換体であることもできる。或る態様では、その核酸配列は、配列番号4の46から66の間のアミノ酸〜400番目のアミノ酸の複数のアミノ酸のアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアントをコードする。特には、前記核酸配列は、配列番号4の46〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の46〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。あるいは、前記核酸配列は、配列番号4の55〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の55〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。あるいは、前記核酸配列は、配列番号4の66〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の66〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。
【0067】
あるいは、前記核酸配列は、配列番号4の59〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の59〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。あるいは、前記核酸配列は、配列番号4の62〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の62〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。更に、前記核酸配列は、配列番号4の64〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列、又は保存的な置換があることのみが配列番号4の64〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする。前記ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号4の配列の最初の45〜65のアミノ残基をコードする部分を欠失している配列番号3に記載の配列を有するポリヌクレオチドであることができる。
【0068】
また、これらのアミノ酸配列は、いずれも、メチオニンの換わりにセレノメチオニン1個以上を含有することができる。更に、これらの修飾MEK1ペプチド及びその種々のバリアントは、ヒスチジンオリゴマータグ、例えばヒスチジンヘキサマータグ(His−tag)を、それらのCOOH末端に有することができる。
本明細書において、「単離された」核酸分子は、核酸の天然供給源に存在する他の核酸から分離された核酸分子である。「単離された」核酸は、その核酸が誘導される生物のゲノムDNA又はcDNA中で本来前記核酸の側方に位置する(flanking)配列(すなわち、前記核酸の5’末端及び3’末端に位置する配列)が存在しないことが好ましい。しかしながら、或る種の側方ヌクレオチド配列、例えば、約5KB以下の、特に、連続しているペプチドコード配列、及びゲノム配列中でイントロンにより分割されている複数の遺伝子中のペプチドコード配列が存在していることができる。重要な点は、本明細書に記載の特定の操作、例えば、組換え発現、プローブ及びプライマーの調製、並びに前記核酸配列に特異的な他の使用をすることができるように、無関係で且つ重要でない側方配列から前記核酸が単離されることである。
【0069】
更に、「単離された」核酸分子、例えばcDNA分子は、組換え技術により生成する場合には他の細胞性材料又は培養基を実質的に含まないか、又は化学的に合成する場合には化学的前駆体若しくは他の化学薬品を実質的に含まないことができる。しかしながら、前記核酸分子は、別のコード配列又は調節配列に融合することができるので、従ってその場合も単離されていると考えることができる。例えば、或るベクター中に含まれる組換えDNA分子を単離するか考えることができる。単離されたDNA分子の別の例としては、異種宿主細胞中に保持された組換えDNA分子、又は溶液中の(部分的に若しくは実質的に)精製されたDNA分子を挙げることができる。単離されたRNA分子としては、単離された本発明のDNA分子イン・ビボ又はイン・ビトロRNA転写物を挙げることができる。更に、本発明による単離された核酸分子には、合成的に生成された前記分子が含まれる。
【0070】
配列番号1において提供される核酸分子の中には天然に存在する完全な遺伝子のフラグメントであるものも存在するので、本発明のヌクレオチド配列を含む核酸分子の好ましい群は、完全長cDNA分子及び遺伝子及びゲノムクローンである。非常に多様なタイプのこれらの核酸分子を容易に製造/単離することができることを、本明細書に簡潔に記載する。
完全長遺伝子は、当業者に公知の多数の方法のうちの任意の方法を用いて、公知の配列からクローニングすることができる。例えば、XL−PCR(Perkin−Elmer,Foster City,Calif.)を使用してDNAの長い断片を増幅する方法を用いることができる。完全長配列を得る複数の別の方法が、当業者に公知である。
【0071】
単離された前記核酸分子は、前記活性タンパク質に加えて、付加的なアミノ末端アミノ酸若しくはカルボキシル末端アミノ酸、又は(例えば、成熟形態が1を越えるペプチド鎖を有する場合に)その成熟ペプチドに対する内部アミノ酸をコードすることができる。前記配列は、他のものの内で、前駆体から活性形態へのタンパク質のプロセシング、タンパク質輸送の促進、タンパク質半減期の延長若しくは短縮、又はアッセイ若しくは製造に対するタンパク質の操作の容易化などにおいて有用である。一般的に、インシトゥの場合には、付加的な前記アミノ酸は、細胞酵素により成熟活性タンパク質からプロセシングにより除去(processed away)することができる。
【0072】
前記のとおり、単離した前記核酸分子としては、以下に限定されるものでないが、活性キナーゼを単独でコードするか、あるいはコード配列、例えばリーダー若しくは分泌配列(例えば、プレプロタンパク質配列又はプロタンパク質配列)との組合せデコードする配列;付加的なコード配列を含むかあるいは含まずに、更に付加的な非コード配列、例えばイントロン及び非コード5’及び3’配列、例えば、転写、mRNAプロセシング(スプライシング及びポリアデニル化シグナルを含む)、リボソーム結合、及びmRNAの安定性の役割を担う転写されるが翻訳されない配列を伴って前記活性キナーゼをコードする配列を挙げることができる。更に、核酸分子を、例えば、精製を容易にするペプチドをコードするマーカー配列に融合させることもできる。
単離された核酸分子は、クローニングによって得るか、あるいは化学的合成技術又はそれらの組み合わせによって生成するDNA、例えばcDNA及びゲノムDNAの形態であるか、RNA、例えばmRNAの形態であることができる。前記核酸、特にDNAは、2本鎖であるか又は1本鎖であることができる。1本鎖核酸は、コード鎖(センス鎖)であるか又は非コード鎖(アンチセンス鎖)であることができる。
【0073】
更に、本発明は、本発明のペプチドのフラグメントをコードする核酸分子、及び前記の本発明のキナーゼタンパク質の明らかなバリアントをコードする核酸分子も提供する。前記核酸分子は、天然に存在するもの、例えば、対立バリアント(同じ遺伝子座)、パラログ(異なる遺伝子座)、及びオルソログ(異なる生物)であることができるか、あるいは組換えDNA法又は化学的合成によって造られたものであることができる。このような天然に存在しないバリアントは、突然変異誘発法(例えば、核酸分子、細胞、又は生体に適用する突然変異誘発法)によって形成することができる。従って、前記のとおり、前記バリアントは、ヌクレオチド置換、欠失、逆位、及び挿入を含むことができる。変化は、コード領域及び非コード領域のいずれか一方又は両方で、発生することができる。前記変化は、保存的なアミノ酸置換及び非保存的なアミノ酸置換のどちらも引き起こすことができる。
【0074】
フラグメントは、12を越えるヌクレオチドの連続的な1つのヌクレオチド配列を含む。更に、フラグメントは、長さが、少なくとも30、40、50、100、250、又は500ヌクレオチドであることができる。本発明のフラグメントの長さは、意図するその用途に基づくことができる。例えば、本発明のフラグメントは、前記ペプチドの領域を有するエピトープをコードすることができるか、あるいはDNAプローブやプライマーとして有用であることができる。前記フラグメントを、公知のヌクレオチド配列を用いて単離して、オリゴヌクレオチドプローブを合成することができる。次いで、標識されたプローブを、cDNAライブラリー、ゲノムDNAライブラリー、又はmRNAのスクリーニングに使用して、前記コード領域に相当する核酸を単離することができる。また、プライマーをPCR反応に用いて、遺伝子の特定の領域をクローニングすることができる。
プローブ/プライマーは、典型的に、実質的に純粋なオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドペアを含む。前記オリゴヌクレオチドは、典型的に、少なくとも約12、20、25、40、50、又はそれ以上の連続的なヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。
【0075】
オルソログ、ホモログ、及び対立バリアントは、当業者に公知の方法で確認することができる。前記のとおり、これらのバリアントは、配列番号1又は配列番号3に記載のヌクレオチド配列又はこの配列のフラグメントに対して、典型的には60%以上、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、又は更により好ましくは75%以上相同的なペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。或る好ましい態様では、前記バリアントは、配列番号1又は配列番号3に記載のヌクレオチド配列又はこの配列のフラグメントに対して、少なくとも80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更により好ましくは95%以上相同的なペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。前記核酸分子は、配列番号1又は配列番号3に記載のヌクレオチド配列又は前記配列のフラグメントに、穏和な(moderate)条件下からストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるものとして容易に確認することができる。
【0076】
本明細書において、用語「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズ」は、その条件下では、相互に少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%相同的なペプチドをコードするヌクレオチド配列が、典型的に、相互にハイブリダイズした状態で残されるような、ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を描写することを意図する。前記条件は、相互に少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%相同的な配列が、典型的に、相互にハイブリダイズした状態で残されるような条件であることができる。穏和な条件から非常にストリンジェントな条件に至る標準的ハイブリダイゼーション条件は、当業者に公知である〔例えば、「Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,ニューヨーク州(1989),6.3.1−6.3.6」を参照されたい〕。穏和なハイブリダイゼーション条件は、2X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中における30℃でのハイブリダイゼーション及び続く50〜60℃での1XSSC、0.1%SDS中での1回又は複数回の洗浄と同等として規定される。非常にストリンジェントな条件は、are defined as equivalent to ハイブリダイゼーション in 6X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中における45℃でのハイブリダイゼーション及び続く50〜65℃での0.2XSSC、0.1%SDSでの1回又は複数回の洗浄と同等として規定される。
【0077】
本発明の核酸分子は、プローブ、プライマー、化学的中間体として、及び生物学的アッセイにおいて、有用である。本発明の核酸分子は、本明細書に記載のペプチドをコードする完全長cDNA及びゲノムクローン[genomic clone]を単離するためのcDNA及びゲノムDNA、並びに前記と同じペプチド又は本明細書に記載の関連するペプチドを生成するバリアント(対立遺伝子、オルソログなど)に相当するcDNA及びゲノムクローンを単離するためのcDNA及びゲノムDNAに対するハイブリダイゼーションプローブとして有用である。
前記プローブは、配列番号1又は配列番号3に記載の核酸分子の全体長さの間の任意の配列に相当することができる。従って、前記プローブは、5’非コード領域、コード領域、及び3’非コード領域から誘導することができる。しかしながら、フラグメントは、前記のとおり、本発明に先駆けて開示されたフラグメントを包含することができると解釈されるべきではない。
【0078】
また、本発明の核酸分子は、核酸分子の或る任意の領域を増幅するPCR用のプライマーとしても有用であり、また、所望の長さ及び配列のアンチセンス分子を合成するにも有用である。
また、本発明の核酸分子は、組換えベクターの作成にも有用である。前記ベクターには、前記ペプチド配列の一部又は全部を発現するベクターが含まれる。また、ベクターには、別の核酸分子配列中へ(例えば、細胞ゲノム中へ)組込んで、或る遺伝子及び/又は遺伝子生成物のイン・シトゥ発現を変化させるのに使用する挿入ベクターも含まれる。例えば、特異的に誘導された突然変異1つ以上を含むコード領域の全部又は一部で相同的に組み換えることにより、内因性コード配列が置き換えられていることができる。また、本発明の核酸分子は、前記タンパク質の抗原部分の発現に有用であり;イン・シトゥハイブリダイゼーション法による前記核酸分子の染色体部位の決定用のプローブとして有用であり;本明細書に記載の核酸分子から生成されるmRNAの全部又は一部に相当するリボザイムの設計に有用であり;並びに、前記核酸分子及びペプチドの一部又は全部を発現する宿主細胞の作成に有用である。また、本発明の核酸分子は、前記核酸分子及びペプチドの全部又は一部を発現するトランスジェニックアニマルの作成に有用であり;及び、前記ペプチドの一部又は全部を発現するベクターの作成に有用である。更に、本発明の核酸分子は、核酸発現の存在、レベル、形態、及び分布を決定するためのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。従って、前記プローブは、細胞、組織、及び生物中の特定の核酸分子の存在の検出又はレベルの決定に用いることができる。レベルを決定する前記核酸は、DNA又はRNAであることができる。従って、本明細書に記載のペプチドに相当するプローブは、或る細胞、組織、又は生物における発現及び/又は遺伝子複製数の評価に用いることができる。これらの使用は、通常の結果と比較してキナーゼタンパク質の発現が増加又は減少することと関連する障害の診断に関与する。
【0079】
mRNA検出用のイン・ビトロ検出法としては、ノーザンハイブリダイゼーション及びイン・シトゥハイブリダイゼーションを挙げることができる。DNA検出用のイン・ビトロ検出法としては、サザンハイブリダイゼーション及びイン・シトゥハイブリダイゼーションを挙げることができる。
プローブは、例えば、対象からの細胞サンプル中のレセプターコード核酸、例えばmRNA又はゲノムDNAのレベルを測定することによるか、又はレセプター遺伝子が突然変異されているか否かを決定することにより、或るキナーゼタンパク質を発現する細胞又は組織を確認するための診断的試験キットの一部として用いることができる。
【0080】
《修飾MEK1及びMEK2ペプチドを製造するためのベクター及び宿主細胞》また、本発明は、宿主細胞中で前記修飾MEK1及びMEK2ペプチドを生成するための発現ベクターも提供する。更に、本発明は、前記修飾MEK1及びMEK2ペプチドを発現することができる方法で、前記修飾MEK1及びMEK2ペプチドをコードするポリヌクレオチド又はそのフラグメント若しくはそれらのアナログにより安定に形質転換及びトランスフェクションされていることができる宿主細胞も提供する。また、本発明は、発現制御配列に生産に関して関連する本発明の核酸を含む発現ベクターも提供する。
【0081】
〈MEK1発現ベクター〉
この発現ベクターは、配列番号2の42から62の間のアミノ酸〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアントをコードする核酸を含むことができる。或る態様では、前記発現ベクターが、配列番号2の42〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号2の42〜393番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を含む。別の態様においては、前記発現ベクターが、配列番号2の51〜393の間のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号2の51〜393の間のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を含む。更に別の態様においては、前記発現ベクターが、配列番号2の62〜393番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号2の62〜393番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有するNH末端トランケートMEK1ペプチドをコードする核酸を含む。前記ポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2の配列の最初の41〜61アミノ残基をコードする部分が欠失している配列番号1に記載の配列を有するポリヌクレオチドである。
【0082】
更に、前記発現ベクターは、NH末端の先端欠失部(truncation)、並びに挿入ループ形成アミノ酸残基、特に配列番号2の280番目のアミノ酸〜323番目のアミノ酸;又は配列番号2の264番目のアミノ酸残基から310番目のアミノ酸の間のアミノ酸少なくとも40個の欠失部を有する修飾MEK1をコードする核酸を含むことができる。この態様は、(1)配列番号2の264番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(2)配列番号2の270番目のアミノ酸〜310番目のアミノ酸;(3)配列番号2の264番目のアミノ酸〜305番目のアミノ酸;(4)配列番号2の267番目のアミノ酸〜307番目のアミノ酸;あるいは(5)配列番号2の265番目のアミノ酸〜304番目のアミノ酸の欠失を含むことができる。更に、前記ポリヌクレオチドは、挿入ループ形成アミノ酸残基の前記欠失があり、NH末端トランケーションが無いように修飾されたMEK1ペプチドをコードすることができる。
【0083】
また、前記発現ベクターは、挿入ループ形成アミノ酸残基が、リンカーペプチド、好ましくはLys−Asn−Cys−Lys−Thr−Aspで置き換えられて織り、前記NH末端トランケーションを有するか又は有さない修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を、含むことができる。
また、任意の前記発現ベクターは、場合により、メチオニンの換わりにセレノメチオニンを有する修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を含んでいることがある。また、前記発現ベクターは、場合により、そのCOOH末端にヒスチジンオリゴマータグ、例えば、ヒスチジンヘキサマータグ(His−tag)を有する修飾MEK1ペプチドをコードする核酸を含むことがある。
【0084】
〈MEK2発現ベクター〉
また、本発明の発現ベクターは、配列番号4の46から66の間のアミノ酸〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアントをコードする核酸を含むこともできる。特には、前記発現ベクターは、配列番号4の46〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の46〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。あるいは、前記発現ベクターは、配列番号4の55〜400の間のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の55〜400の間のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。あるいは、前記発現ベクターは、配列番号4の66〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の66〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。あるいは、前記発現ベクターは、前記発現ベクターは、配列番号4の59〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の59〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。あるいは、前記発現ベクターは、配列番号4の59〜400の間のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の59〜400の間のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸を含むことができる。あるいは、前記発現ベクターは、配列番号4の62〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の66〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。更に、前記発現ベクターは、配列番号4の64〜400番目のアミノ酸のアミノ酸配列又は保存的な置換を有することのみが配列番号4の64〜400番目のアミノ酸と異なるアミノ酸配列を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸配列を含むことができる。前記発現ベクターは、例えば、配列番号4の配列の最初の45〜65アミノ残基をコードする部分が欠失している配列番号3に記載の配列をコードする核酸を含む発現ベクターであることができる。
【0085】
また、任意の前記発現ベクターは、場合により、メチオニンの換わりにセレノメチオニンを有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸を含んでいることがある。また、前記発現ベクターは、場合により、そのCOOH末端にヒスチジンオリゴマータグ、例えば、ヒスチジンヘキサマータグ(His−tag)を有する修飾MEK2ペプチドをコードする核酸を含むこともある。
【0086】
本発明は、更に、本発明の発現ベクターでトランスフェクト又は形質転換された細胞を含む。この方法には以下の任意の細胞を採用することができる。或る態様では、前記細胞は原核細胞である。前記原核細胞は大腸菌細胞であることが好ましい。別の態様では、前記細胞は、真核細胞、例えば昆虫細胞又は脊椎動物細胞であり、脊椎動物細胞は、例えば哺乳類細胞であることができる。
【0087】
また、本発明は、修飾MEK1ペプチド及び修飾MEK2ペプチドを発現させる方法も含む。前記方法は、細胞によるタンパク質の発現を可能にする条件下で、適切な細胞培地中に修飾MEK1ペプチド又は修飾MEK2ペプチドを発現させる細胞を培養することを含む。この方法には、前出のいずれの細胞を採用することができる。特定の態様では、前記細胞は、本発明の修飾MEK1ペプチド及び修飾MEK2ペプチドを発現させるように操作されている酵母である。好ましい態様では、前記原核細胞は、本発明の修飾MEK1ペプチド及び修飾MEK2ペプチドを発現させるように操作されている大腸菌細胞である。
【0088】
また、本発明は、本明細書中に記載した核酸分子を含有するベクターを提供する。用語「ベクター」は、ベヒクル、好ましくは前記核酸分子を運ぶことの可能な核酸分子を意味する。ベクターが核酸分子の場合、前記核酸分子は、ベクター核酸に共有結合している。前記ベクターには、好ましくは、プラスミド、一本鎖又は二本鎖のファージ、一本鎖又は二本鎖のRNA又はDNAウイルスベクター、又は人工染色体、例えばaBAC、PAC、YAC、又はMAC〔これらは、例えば、Qiagen(カリフォルニア州バレンシア)から市販されている〕が含まれる。MEK1ペプチド又はMEK2ペプチドをコード化するポリヌクレオチドを発現させるには、当業者に公知の種々の発現ベクターを使用することができる。
ベクターは、前記核酸分子の更なるコピーを複製して生成する宿主細胞内で、染色体外要素として維持することができる。あるいは、前記ベクターを、宿主細胞ゲノム中に統合して、宿主細胞が複製するときに、核酸分子の更なるコピーを生成することができる。
【0089】
本発明は、前記核酸分子の維持のためのベクター(クローニングベクター)、又は核酸分子の発現のためのベクター(発現ベクター)を提供する。前記ベクターは、原核細胞又は真核細胞内で、又はその両方において(シャトルベクター)機能することができる。
発現ベクターは、シス活性調節領域を含有する。これらのシス活性調節領域は、ベクター内で核酸分子に作動可能に結合するので、核酸分子の転写が宿主細胞中で可能になる。前記核酸分子は、転写に影響を与えることが可能な別個の核酸分子を有する宿主細胞内に導入することができる。こうして、前記の第2の核酸分子は、シス調節制御領域と相互作用してベクターからの核酸分子の転写を可能にするトランス作用因子を提供することができる。あるいは、宿主細胞によってトランス作用因子が供給されていることもできる。最後に、ベクター自体からトランス作用因子を生成することもできる。しかしながら、いくつかの態様では、無細胞系内で核酸分子の転写及び/又は翻訳が発生することができると考えられる。
【0090】
本明細書中に記載した核酸分子が作動可能に結合することができる調節配列には、mRNA転写を導くためのプロモーターが含まれる。前記プロモーターとしては、以下に限定されるものでないが、バクテリオファージλからのレフトプロモーター、大腸菌からのlac、TRP、及びTACプロモーター、SV40からの初期及び後期プロモーター、CMV前初期プロモーター、アデノウイルス初期及び後期プロモーター、並びにレトロウイルス長末端反復を挙げることができる。
転写を促進する制御領域に加えて、発現ベクターは、転写を調節する領域、例えばリプレッサ結合部位及びエンハンサをも含むことができる。その例としては、SV40エンハンサ、サイトメガロウイルス前初期エンハンサ、ポリオーマエンハンサ、アデノウイルスエンハンサ、及びレトロウイルスLTRエンハンサを挙げることができる。
【0091】
転写の開始及び制御のための部位を含有することに加えて、発現ベクターは、転写の終結に必要な配列を含有し、そして転写された領域内に、翻訳のためのリボソーム結合部位を含有することもできる。発現のための他の調節制御要素には、開始コドン及び終止コドン、並びにポリアデニル化シグナルが含まれる。発現ベクターに有用な多数の調節配列が、当業者に知られている。前記調節配列は、例えば「Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)」に記載されている。
【0092】
核酸分子を発現させるためには、種々の発現ベクターを使用することができる。このようなベクターとしては、染色体ベクター、エピソームベクター、及びウイルス由来のベクター、例えば細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体要素(例えば、酵母人工染色体)、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、例えばSV40、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、及びレトロウイルス)に由来するベクターを挙げることができる。ベクターは、それらの供給源の組み合わせに由来する、例えばプラスミド及びバクテリオファージの遺伝要素、例えばコスミドやファージミドに由来するベクターであることもできる。原核宿主及び真核宿主に適したクローニングベクター及び発現ベクターは、「Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版,Cold Spring Harbor LaboratoryPress,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)」に記載されている。
【0093】
前記調節配列は、1種又は複数種の宿主細胞内において構成性発現(すなわち組織特異的)を提供するか、あるいは例えば、温度、栄養添加物、又はホルモン若しくは他のリガンドなどの外因性要因により、1種又は複数種の細胞タイプにおいて誘導性発現を提供する。原核宿主及び真核宿主における構成性及び誘導性の発現を提供する種々のベクターが当業者に知られている。
前記核酸分子を、周知の方法論によって、前記ベクター核酸中に挿入することができる。一般的に、最終的に発現させられることになるDNA配列を、DNA配列及び発現ベクターを1種又は複数種の制限酵素で開裂し、次いでこれらのフラグメントを一緒に連結することにより、発現ベクターに結合させる。制限酵素による消化及び連結反応のための方法は、当業者に公知である。
適切な前記核酸分子を含有するベクターは、周知の技術を用いて、増殖又は発現に適した宿主細胞中に導入することができる。細菌細胞としては、以下に限定されるものでないが、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス(Streptomyses)、及びネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)を挙げることができる。真核細胞としては、以下に限定されるものでないが、酵母、昆虫細胞(例えば、Drosophila)、動物細胞(例えば、COS及びCHO細胞)、及び植物細胞を挙げることができる。
【0094】
本明細書中に記載したように、本発明のペプチドは、融合タンパク質として発現させることが望ましいことがある。従って、本発明は、前記ペプチドの生成を可能にする融合ベクターを提供する。融合ベクターは、組換えタンパク質の発現を増加し、組換えタンパク質の溶解度を増加し、そして例えば親和精製のためのリガンドとして、作用することにより、タンパク質の精製を補助することができる。融合分の結合部においてタンパク質分解開裂部位を導入することができ、これにより、融合分から所望のペプチドを最終的に分離することができる。タンパク質分解酵素としては、Xa因子、トロンビン、及びエンテロキナーゼを挙げることができる。典型的な融合発現ベクターには、pRS〔Sikorski他Sikorskiら,Genetics122(1):19−27(1989)〕、pGEX〔Smithら,Gene67:31−40(1988)〕、pMAL(New England Biolabs,Beverly,マサチューセッツ州)、及びpRIT5(Pharmacia,Piscataway,ニュージャージー州)を挙げることができる。これらのベクターは、それぞれ、グルタチオンS−転移酵素(GST)、マルトースE結合タンパク質、又はタンパク質Aを、目標の組換えタンパク質に融合する。適切な誘導可能非融合大腸菌発現ベクターとしては、pTrc〔Amannら,Gene69:301−315(1988)〕及びpET11d〔Studierら,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185:60−89(1990)〕を挙げることができる。
【0095】
組換えタンパク質発現は、組換えタンパク質を分解開裂する能力が弱まっているという遺伝的背景を提供することにより、宿主細菌内で最大化することができる〔Gottesman,S.,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185,Academic Press,San Diego,カリフォルニア州,119−128(1990)〕。あるいは、問題の核酸分子の配列を変えて、特定の宿主細胞、例えば大腸菌に対して、優先的なコドンの使用を可能にすることができる〔Wadaら,Nucleic Acids Res.20:2111−2118(1992)〕。
【0096】
また、前記核酸分子は、酵母内で作用可能な発現ベクターによって発現させることもできる。酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエ(S.cerevisiae)内での発現のためのベクターとしては、pYepSec1〔Baldariら,EMBO J.6:229−234(1987)〕、pMFa〔Kurjanら,Cell30:933−943(1982)〕、pJRY88〔Schultzら,Gene54:113−123(1987)〕、及びpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,カリフォルニア州)を挙げることができる。
【0097】
前記核酸分子は、例えばバキュロウイルス発現ベクターを使用して、昆虫細胞内で発現させることもできる。培養された昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)内のタンパク質を発現させるのに利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ〔Smithら,Mol.Cell Biol.3:2156−2165(1983)〕、及びpVLシリーズ〔Lucklowら,Virology170:31−39(1989)〕が含まれる。本発明の或る特定の態様では、本明細書中に記載した核酸分子は、哺乳動物発現ベクターを使用して、哺乳動物細胞内で発現させる。哺乳動物発現ベクターの例としては、pCDM8〔Seed,B.Nature329:840(1987)〕及びpMT2PC〔Kaufmanら,EMBO J.6:187−195(1987)〕を挙げることができる。
【0098】
本明細書中に挙げた発現ベクターは、核酸分子を発現させるのに有用となる、当業者に利用可能な周知のベクターの一例として提供したものにすぎない。好ましいベクターとしては、pET24b(Novage,Madison,ウィスコンシン州)、pAcSG2(Pharmingen,San Diego,カリフォルニア州)、及びpFastBac(Life Technologies,Gaithersburg,メリーランド州)を挙げることができる。本明細書に記載した核酸分子の維持、増殖又は発現に適した他のベクターは,当業者に知られている。このようなベクターは、例えば、「Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,及びManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)」に見出される。
【0099】
また本発明は、本明細書中に記載する核酸配列は逆の方向付けでベクター内にクローニングされるが、しかし、アンチセンスRNAの転写を許す調節配列に作動可能に結合する。従って、本明細書中に記載した核酸分子配列の全て又は一部に、コーディング領域及び非コーディング領域の双方を含むアンチセンス転写物を生成することができる。このアンチセンスRNAの発現は、センスRNAの発現に関連する前記パラメータ(調節配列、構成性発現、又は誘導発現、組織特異的発現)のそれぞれに従属する。
【0100】
また、本発明は、本明細書中に記載したベクターを含有する組換え宿主細胞にも関する。従って宿主細胞には、例えば、原核細胞、低度の真核細、例えば胞酵母、他の真核細胞、例えば昆虫細胞、及び哺乳動物細胞のような高度の真核細胞が含まれる。本発明の好ましい宿主細胞には、大腸菌及びSf9が含まれる。
組換え宿主細胞は、当業者にとって容易に利用可能な技術により、前記細胞内に本明細書中に記載したベクター構造を導入することによって調製される。これらのベクター構造としては、以下に限定されるものでないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストランを媒介させたトランスフェクション、カチオン性脂質を媒介させたトランスフェクション、電気穿孔、形質導入、感染、リポフェクション、及び他の技術、例えば「Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,ニューヨーク州(1989)」に見出される技術を挙げることができる。
【0101】
宿主細胞は、1を越える(2つ以上の)ベクターを含有することができる。従って、同じ細胞の異なるベクターに、異なるヌクレオチド配列を導入することができる。同様に、核酸分子を単独で、又は発現ベクターにトランス作用因子を提供する核酸分子と関連しない他の核酸分子と一緒に、導入することができる。2つ以上のベクターを細胞内に導入する場合には、これらのベクターを、別個に導入するか、共に導入するか、又は核酸分子ベクターに結合させる。
バクテリオファージベクター及びウイルスベクターの場合、感染及び形質導入のための標準的な手順によって、パッケージング又はカプセル化されたウイルスとしてこれらを導入することができる。ウイルスベクターは、複製能を有することも、複製能を欠損していていることもできる。複製能が欠損している場合には、複製は、欠損を補完する機能を提供する宿主細胞内で発生することになる。
【0102】
ベクターは一般に、組換えベクター構造物を含む細胞の小集団の選択を可能にする選択可能なマーカーを含む。前記マーカーは、本明細書中に記載の核酸分子を含有する同じベクター内に含有されていることができるか、あるいは、別個のベクター上にあることもできる。マーカーは、原核宿主細胞に関してはテトラサイクリン又はアンピシリンに対して耐性を有する遺伝子を含み、真核宿主細胞に関してはジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシンに対して耐性を有する遺伝子を含む。しかしながら、表現型特性の選択を可能にする任意のマーカーが有効であろう。
適切な調節配列の制御下で、細菌、酵母、哺乳動物細胞、及び他の細胞内で活性タンパク質キナーゼを生成することができる一方、無細胞転写及び翻訳系を用いても、本明細書中に記載したDNA構造に由来するRNAを使用してこれらのタンパク質を生成することができる。
【0103】
ペプチドの分泌が望まれる場合には、適切な分泌シグナルをベクター内に組み込む。そのシグナル配列は、前記タンパク質に対して内因性であるか、又は前記タンパク質に対して異種であることができる。
また、本明細書中に記載したペプチドの組換え生成における宿主細胞によっては、前記ペプチドが、前記細胞に応じて種々のグリコシル化パターンを有することができ、あるいは細菌内で生成される場合のように、非グリコシル化されていることもできる。更に、前記ペプチドは、宿主媒介プロセスの結果として、或る種の場合には初期修飾メチオニンを含んでいることができる。
【0104】
本明細書中に記載したペプチドを発現させる組換え宿主細胞は、種々の用途を有する。第一に、これらの細胞はMEK1及びMEK2ペプチド、又は所望量のペプチド又はフラグメントを生成するために更に精製可能なペプチドを生成するのに有用である。このように、発現ベクターを含有する宿主細胞はペプチド生成に有用である。
宿主細胞は、タンパク質又はタンパク質フラグメントに関与する、細胞に基づく検定を行うのにも有用である。従って、天然タンパク質を発現させる組換え宿主細胞は、タンパク質機能を刺激又は阻害する化合物をアッセイするのに有用である。
また、宿主細胞は、それらの機能が影響を受けるタンパク質突然変異体を同定するのにも有用である。突然変異体が自然発生して病状を引き起こす場合、突然変異体を含有する宿主細胞は、天然タンパク質においては表れることのない突然変異タンパク質における所望の効果(例えば機能の刺激又は阻害)を有する化合物をアッセイするのに有用である。
【0105】
遺伝学的に改変された宿主細胞は、更に、ヒト以外の形質転換動物を造り出すのに使用することができる。形質転換動物は、好ましくは哺乳動物、例えばラットやマウスのような齧歯類の動物である。前記動物においては、前記動物の細胞のうちの1つ又は複数が、導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、細胞のゲノム内(このゲノムから形質導入動物は発生し、そして前記ゲノムは、形質導入動物の組織又は細胞型1つ又は複数において、成熟動物のゲノム内に残る)に組み込まれる外因性DNAである。これらの動物は、MEK1及びMEK2ペプチドの機能を研究し、タンパク質活性のモジュレータを同定し評価するのに有用である。形質導入動物の他の例としては、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ヤギ、ニワトリ、及び両生類を挙げることができる。
【0106】
【修飾MEK1及び修飾MEK2ペプチドの精製】
本明細書中に挙げた精製の条件及び方法は、MEK1及びMEK2ペプチドの精製に用いられるアプローチを説明するために、また、例えばMEK1:リガンド:補因子の複合体、及びMEK2:リガンド:補因子の複合体の形成のためのアプローチを説明するために提供される。当然のことながら、当業者には、本明細書中に記載した修飾MEK1及び修飾MEK2タンパク質の精製に適した他の精製条件及び技術が明らかである。例えば、「Methods in Enzymology,第182巻」、「Guide to Protein Purification,M.P.Deutscher編;Academic Press(1990)」を参照されたい。
【0107】
〈修飾MEK1の精製〉
本発明は、本明細書中に記載した修飾MEK1ペプチドをほぼ均質状態に精製するための、複数のステップからなる方法を提供する。修飾MEK1ペプチド、好ましくはCOOH−末端にポリ−ヒスチジンタグを有するMEK1ペプチドが、固定化金属アフィニティクロマトグラフィー(IMAC)を用いて有利に精製することができる。固定化金属はニッケル、亜鉛、コバルト又は銅であることができる。固定化金属は、Clon Techから市販されているTALON(商標)金属親和性樹脂に見出されるようなコバルトが好ましい。前記IMACステップは、発現したMEK1ペプチド(このMEK1ペプチドは、宿主細胞溶菌後に得られる)を含有する発酵培養液の可溶性画分上で実施することができる。前記宿主細胞溶菌プロセスは、当業者に知られており、当業者は困難なく選択することができる。例えば、MEK1ペプチドを発現させるための宿主細胞として大腸菌が使用される場合、大腸菌細胞溶菌は酵素的に、例えばリゾチームの使用により、実施することができる。あるいは、フレンチプレス、ソニケータ、又はビード・ミルを使用した機械的プロセスを用いることもできる。ビード・ミル(DynoMill KDL)を使用した機械的溶菌を用いて、大腸菌細胞溶菌を実施することが好ましい。
【0108】
修飾MEK1ペプチド、好ましくはCOOH末端にHisタグを含有するMEK1ペプチドは、固定化金属キレート(IMAC)クロマトグラフィーによって精製することができる。前記IMACステップは、以下の樹脂、例えばQiagenから入手可能なNi−NTA(商標)樹脂、Pharmaciaから入手可能なHisTrap(商標)樹脂、Applied Biosystemsから入手可能なPOROS(商標)MC樹脂、Clontechから入手可能なTALON樹脂を用いて達成することができる。TALON樹脂を用いることが好ましい。より好ましくは、前記IMACステップを、細胞溶菌に先立って、約1gの細胞全体の湿潤重量に対して約2mLの樹脂の比率で樹脂を使用することにより達成する。
【0109】
本発明の更なる観点は、IMAC精製中の、夾雑タンパク質除去への、遷移状態アナログ及び金属カチオンの使用を含む。前記MEK1ペプチドを発現させるために宿主細胞として大腸菌を用いる場合には、夾雑タンパク質(例えば、大腸菌プロリル異性化酵素)が発酵培養液中に含有されており、好ましくは、この夾雑タンパク質を結晶化の前に除去する。本発明の場合、遷移状態アナログ及び金属カチオンを用いて、IMAC精製のMEK1結合ステップ及び夾雑物除去ステップの実施中に夾雑タンパク質を置き換える。遷移状態アナログは、例えば、ピロール−2−カルボキシレート、Δ−1−ピロリン−2−カルボキシレート、又はテトラヒドロフラン−2−カルボキシレートであることができる。前記遷移状態アナログは、ピロール−2−カルボキシレートであることが好ましい。前記遷移状態アナログは、もし存在するならば、約0.1mM〜約20.0mMの濃度を有し、より好ましくは、約1.0mMの濃度を有する。金属カチオンの源としては、亜鉛カチオンの形を採用することができる。亜鉛カチオンは、任意の塩の形態、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛の形で使用することができる。好ましくは、亜鉛は約0.05mMの濃度で塩化亜鉛の形で使用する。
【0110】
IMAC精製の前記MEK1結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。例えば、前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、Tris[トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン]、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、リン酸カリウム、シトレート−ホスフェート、リン酸ナトリウム、第一リン酸アンモニウム、又はMOPS(3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸)であることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、pH約8.0で約50.0mMの第一リン酸アンモニウム又は第一リン酸カリウムである。
【0111】
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な夾雑タンパク質除去剤[displacing agent]の存在下において実施することができる。前記夾雑タンパク質除去剤としては、以下に限定されるものでないが、イミダゾール又はヒスチジンであることができる。好ましくは、前記夾雑タンパク質除去剤は、約5.0mMイミダゾールである。
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、又はTCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン]ヒドロクロリド)であることができる。好ましくは、前記還元剤は約2.0mM−TCEPである。
【0112】
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、界面活性剤(detergent)の存在下において実施することができる。前記界面活性剤は、以下に限定されるものでないが、CHAPS〔3−([3−コルアミドプロピル]−ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスフホネート〕、Triton X−100、Nonidet P−40、Tween20又はTween80であることができる。好ましくは、前記界面活性剤は、約10.0mM−CHAPSである。
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、イオン源の存在下において実施することができる。前記イオン源は、以下に限定されるものでないが、KCl、NaCl又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、前記イオン源は、約0.3M−NaClである。
【0113】
IMAC樹脂からのMEK1の溶離は、当業者に知られたいくつかの様式により達成することができる。例えば、IMACカラムからのMEK1の溶離は、例えばEDTA、ヒスチジン、若しくはイミダゾールを使用することにより、又はpHを減少させることにより達成することができる。好ましくは、MEK1の溶離は、約100mM−EDTAを用いて達成することができる。
IMAC精製の溶離ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、Tris、第一リン酸アンモニウム、HEPES、又はMOPSであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mM−HEPES(又は約8.0のpH)であることができる。MEK1の溶離は、適切な任意の有機剤の存在下において実施されていることもできる。前記有機剤は、以下に限定されるものでないが、グリセロール又はエチレングリコールであることができる。好ましくは、前記有機剤は、約10%のグリセロールである。
【0114】
また、本発明は、カチオン及びアニオン交換クロマトグラフィーを用いて、次いでゲルろ過クロマトグラフィー(size exclusion chromatography:SEC)によって、タンパク質を更に精製するための方法を提供する。カチオン交換クロマトグラフィーをアニオン交換クロマトグラフィーの前に実施するか、あるいはアニオン交換クロマトグラフィーを陽イオンカチオン交換クロマトグラフィーの前に実施することができる。更に、イオン交換ステップは、全て一緒に削除することもできる。好ましい方法は、アニオン交換ステップの前にカチオン交換ステップ(これには、タンパク質濃縮とゲルろ過クロマトグラフィーが続く)を実施することである。
【0115】
前記カチオン交換ステップは、いくつかのタイプのクロマトグラフィー樹脂を使用して実施することができる。例えば、カチオン交換樹脂は、以下に限定されるものでないが、S−Sepharose(商標)、MonoS(商標)、POROS(商標)HS、又はPOROS(商標)Sであることができる。好ましくは、前記カチオン交換樹脂は、POROS(商標)HSである。前記カチオン交換ステップは、適切な任意の緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤としては、以下に限定されるものでないが、リン酸塩、マロン酸、ブタンジオ酸、酢酸、MES(2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸)、又はHEPESを挙げることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mMのMES(pH約6.4)である。
前記カチオン交換ステップは、適切な任意の還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はジチオスレイトール(DTT)であることができる。好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。
【0116】
前記カチオン交換ステップは、適切な有機剤の存在下において実施することができる。前記有機剤は、以下に限定されるものでないが、グリセロール又はエチレングリコールであることができる。好ましくは、前記有機剤は約20.0%のエチレングリコールである。
カチオン交換樹脂からの前記MEK1の溶離は、当業者に知られた種々異なる様式により達成することができる。例えば、MEK1は、pHを増加させることにより溶離することができる。あるいは、MEK1は、例えばNaCl、KCl、酢酸アンモニウム、又は硫酸ナトリウムを使用することにより塩濃度を増加させることによって溶離することもできる。好ましくは、酢酸アンモニウムを用いて塩濃度を増加させることにより、溶離を引き起こすことができる。
前記陰イオン交換ステップは、いくつかのタイプのクロマトグラフィー樹脂を使用して実施することができる。前記陰イオン交換樹脂は、以下に限定されるものでないが、Q−Sepharose(登録商標)、DEAE−Sepharose(登録商標)、MonoQ(登録商標)、POROS(登録商標)HQ、又はPOROS(登録商標)PIであることができる。好ましくは、前記交換樹脂は、POROS(登録商標)HQである。
【0117】
陰イオン交換ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、HEPES、Tris、ビス−Tris、ビス−Trisプロパン、N−メチルジエタノールアミン、1,3−ジアミノプロパン、エタノールアミン、ピペラジン、又は第一リン酸アンモニウムであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mMのTris(約8.0のpH)である。
陰イオン前記アニオン交換ステップは、適切な還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、前記還元剤は約2.0mMのTCEPである。
陰イオン前記アニオン交換ステップは、適切な塩の存在下において実施することができる。前記塩は、NaCl、KCl、酢酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、前記塩は、約10.0mMの酢酸アンモニウムである。
【0118】
前記SECステップは、種々のタイプのクロマトグラフィー樹脂を使用して実施することができる。例えば、適切なSEC樹脂としては、以下に限定されるものでないが、Sephadex(商標)G−100、Sephadex(商標)G−200、Sephacryl(商標)S−100、Sephacryl(商標)S−200、Superdex(商標)75、又はSuperdex(商標)200を挙げることができる。好ましくは、前記SEC樹脂は、Superdex(商標)200である。
前記SECステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸塩、HEPES、MES、Tris、ビス−Tris、又はビス−Trisプロパンである。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mMのHEPES(pH約7.5)である。
【0119】
前記SECステップは、適切な任意の還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。
前記SECステップは、適切な任意の塩の存在下において実施することができる。前記塩は、以下に限定されるものでないが、NaCl、KCl、酢酸アンモニウム、又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、前記塩は、約150.0mMの酢酸アンモニウムである。
前記SECステップは、適切な任意のキレート剤の存在下において実施することができる。前記キレート剤は、以下に限定されるものでないが、クエン酸ナトリウム又はEDTAであることができる。好ましくは、前記塩は約0.5mMのEDTAである。
【0120】
また、本発明は、MEK1:リガンドの複合体の形成方法も提供する。前記MEK1:リガンドの複合体の形成は、MEK1精製のいかなる点で実施されていることもできる。好ましくは前記MEK1:リガンド複合体形成ステップは、前記SECステップに先立って実施することができる。あるいは、MEK1:リガンドの複合体形成ステップは、タンパク質が完全に精製された後で実施することもできる。MEK1:リガンドの複合体形成ステップは、MEK1の種々の濃度で実施することができる。例えば、MEK1の濃度は、約0.02mg/mL〜約2mg/mLの範囲であることができる。好ましくは、MEK1の濃度は、約0.2mg/mL〜約0.3mg/mLの範囲である。更に、MEK1:リガンドの複合体形成ステップは、リガンドに対するMEK1の種々のモル比で実施することができる。例えば、MEK1:リガンドのモル比は、約1:1〜約1:1000であることができる。好ましくは、MEK1:リガンドのモル比は、約1:1〜約1:10である。
【0121】
〈修飾MEK2の精製〉
また、本発明は、本明細書中に記載した修飾MEK2ペプチドをほぼ均質状態に精製するための、複数のステップからなる方法も提供する。前記修飾MEK2ペプチド、好ましくはCOOH−末端にポリ−ヒスチジン・タグを有するMEK2ペプチドを、固定化金属アフィニティ・クロマトグラフィー(IMAC)を用いて、有利に精製することができる。前記固定化金属は、例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト又は銅であることができる。前記固定化金属は、Clon Techから市販されているTALON(商標)金属親和性樹脂に見出されるようなコバルトであることが好ましい。前記IMACステップは、発現したMEK2ペプチド(このMEK2ペプチドは、宿主細胞溶菌後に得られる)を含有する発酵培養液の可溶性画分上で実施することができる。宿主細胞溶菌プロセスは、当業者に知られており、当業者は困難なく選択することができる。例えば、MEK2ペプチドを発現させるための宿主細胞として大腸菌が使用される場合、大腸菌細胞溶菌は酵素的に、例えばリゾチームの使用により実施することができる。あるいは、フレンチプレス、ソニケータ、又はビード・ミルを使用した機械的プロセスを用いることもできる。ビード・ミル(DynoMill KDL)を使用した機械的溶菌を用いて、大腸菌細胞溶菌を実施することが好ましい。
【0122】
修飾MEK2ペプチド、好ましくはCOOH末端にHisタグを含有するMEK2ペプチドは、固定化金属キレート(IMAC)クロマトグラフィーによって精製することができる。前記IMACステップは、例えば以下の樹脂、例えばQiagenから入手可能なNi−NTA(商標)樹脂、Pharmaciaから入手可能なHisTrap(商標)樹脂、Applied Biosystemsから入手可能なPOROS(商標)MC樹脂、Clontechから入手可能なTALON樹脂を用いて達成することができる。TALON樹脂を使用することが好ましい。より好ましくは、前記IMACステップを、細胞溶菌に先立って、約5gの細胞全体の湿潤重量に対して約1mLの樹脂の比率で樹脂を使用することにより達成する。
【0123】
本発明の更なる観点は、IMAC精製中の、夾雑タンパク質の除去への、遷移状態アナログ及び金属の使用を含む。前記MEK2ペプチドを発現させるために、宿主細胞として大腸菌を用いる場合には、夾雑タンパク質〈例えば、大腸菌プロリル異性化酵素〉が、その発酵培養液中に含まれており、そして好ましくは、この夾雑タンパク質を、結晶化の前に除去する。本発明の場合、遷移状態アナログ及び二価金属カチオンを用いて、IMAC精製のMEK2結合ステップ及び夾雑物除去ステップの実施中に夾雑タンパク質を置き換える。前記遷移状態アナログは、例えば、ピロール−2−カルボキシレート、Δ−1−ピロリン−2−カルボキシレート、又はテトラヒドロフラン−2−カルボキシレートであることができる。前記遷移状態アナログは、ピロール−2−カルボキシレートであることが好ましい。前記遷移状態アナログは、もし存在するならば、約0.1mM〜約20.0mMの濃度を有し、より好ましくは、約1.0mMの濃度を有する。二価金属カチオンとしては、亜鉛を用いることができる。亜鉛カチオンは、任意の塩の形態、例えば酢酸亜鉛、塩化亜鉛又は硫酸亜鉛の形態で使用することができる。好ましくは、亜鉛は約0.05mMの濃度で塩化亜鉛の形で使用する。
【0124】
IMAC精製の前記MEK2結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。例えば、前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、Tris[トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン]、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、リン酸カリウム、シトレート−ホスフェート、リン酸ナトリウム、又はMOPS〔3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸〕であることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、pH約8.0の約50.0mMリン酸カリウムである。
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な夾雑タンパク質除去剤の存在下において実施することができる。夾雑タンパク質除去剤は、以下に限定されるものでないが、イミダゾール又はヒスチジンであることができる。好ましくは、夾雑タンパク質除去剤は約5.0mMのイミダゾールである。
【0125】
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、適切な還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、又はTCEP(トリス[2−カルボキシエチルホスフィン]ヒドロクロリド)であることができる。好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、界面活性剤の存在下において実施することができる。界面活性剤は、以下に限定されるものでないが、CHAPS〔3−([3−コルアミドプロピル]−ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスフホネート〕、Triton X−100、Nonidet P−40、Tween20、又はTween80であることができる。好ましくは、前記界面活性剤は、約10.0mMのCHAPSである。
IMAC精製の前記結合ステップ及び夾雑物除去ステップは、イオン源の存在下において実施することができる。前記イオン源は、以下に限定されるものでないが、KCl、NaCl又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、イオン源は、約0.3MのNaClである。
【0126】
IMAC樹脂からのMEK2の溶離は、当業者に知られたいくつかの様式により達成することができる。例えば、IMACカラムからのMEK2の溶離は、例えばEDTA、ヒスチジン、若しくはイミダゾールを使用することにより、又はpHを減少させることにより達成することができる。好ましくは、MEK2の溶離を、約0.1MのEDTAで達成することができる。
IMAC精製の溶離ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、Tris、リン酸塩、HEPES、又はMOPSであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mMのHEPES(約8.0のpH)であることができる。MEK2の溶離は、適切な任意の有機剤の存在下において実施することもできる。前記有機剤は、以下に限定されるものでないが、グリセロール又はエチレングリコールであることができる。好ましくは、前記有機剤は、約10%グリセロールである。
【0127】
また、本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーを用い、次いでタンパク質の濃縮とゲルろ過クロマトグラフィー(SEC)とによって、タンパク質を更に精製する方法も提供する。
前記カチオン交換ステップは、いくつかのタイプのクロマトグラフィー樹脂を使用して実施することができる。例えば、前記カチオン交換樹脂は、以下に限定されるものでないが、S−Sepharose(商標)、MonoS(商標)、POROS(商標)HS、又はPOROS(商標)Sであることができる。好ましくは、カチオン交換樹脂はPOROS(商標)HSである。カチオン交換ステップは、適切な緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤としては、以下に限定されるものでないが、リン酸塩、マロン酸、ブタンジオ酸、酢酸、MES〔2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸〕、又はHEPESを挙げることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、約20.0mMのMES(pH約6.4)である。
【0128】
前記カチオン交換ステップは、適切な任意の還元剤の存在下において実施することができる。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はジチオスレイトール(DTT)であることができる。好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。
前記カチオン交換ステップは、適切な有機剤の存在下において実施することができる。前記有機剤は、以下に限定されるものでないが、グリセロール又はエチレングリコールであることができる。好ましくは、前記有機剤は約20.0%のエチレングリコールである。
カチオン交換樹脂からの前記MEK2の溶離は、当業者に知られた種々異なる様式により達成することができる。例えばMEK2は、pHを増加させることにより溶離することができる。あるいはMEK2は、例えばNaCl、KCl、酢酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムを使用することにより塩濃度を増加させることにより溶離されていることもできる。好ましくは、酢酸アンモニウムを用いて塩濃度を増加させることにより、溶離を引き起こすことができる。
【0129】
前記SECステップは、種々のタイプのクロマトグラフィー樹脂を使用して実施することができる。例えば適切なSEC樹脂としては、以下に限定されるものでないが、Sephadex(商標)G−100、Sephadex(商標)G−200、Sephacryl(商標)S−100、Sephacryl(商標)S−200、Superdex(商標)75又はSuperdex(商標)200を挙げることができる。好ましくは、SEC樹脂はSuperdex(商標)200である。
前記SECステップは、適切な任意の緩衝剤の存在下において実施することができる。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸塩、HEPES、MES、Tris、ビス−Tris、又はビス−Trisプロパンである。好ましくは、緩衝剤は約20.0mMのHEPES(約7.5のpH)である。
【0130】
前記SECステップは、適切な還元剤の存在下において実施することができる。還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。
前記SECステップは、適切な塩の存在下において実施することができる。塩は、以下に限定されるものでないが、NaCl、KCl、酢酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、塩は、約150.0mMの酢酸アンモニウムである。
前記SECステップは、適切なキレート剤の存在下において実施することができる。キレート剤は、以下に限定されるものでないが、クエン酸ナトリウム又はEDTAであることができる。好ましくは、塩は約0.1mMのEDTAである。
【0131】
また、本発明は、MEK2:リガンドの複合体の形成方法も提供する。前記MEK2:リガンドの複合体の形成は、MEK2精製のいかなる点で実施されていることもできる。好ましくはMEK2:リガンドの複合体形成ステップは、SECステップに続いて実施することができる。あるいは、MEK2:リガンドの複合体形成ステップは、SECステップに先立って実施することもできる。MEK2:リガンドの複合体形成ステップは、種々の濃度のMEK2を使用して実施することができる。例えば、MEK2の濃度は、約0.02mg/mL〜約2mg/mLの範囲であることができる。好ましくは、MEK2の濃度は、約0.2mg/mL〜約0.3mg/mLの範囲である。更に、MEK2:リガンドの複合体形成ステップは、リガンドに対するMEK2の種々のモル比で実施することができる。例えば、MEK2:リガンドのモル比は、約1:1〜約1:1000であることができる。好ましくは、MEK2:リガンドのモル比は、約1:1〜約1:10である。
【0132】
《修飾MEK1ペプチド複合体及び修飾MEK2ペプチド複合体の結晶化》
本発明は、更に、MEK1又はMEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を成長させるための、修飾MEK1及び修飾MEK2ペプチド(例えば、NHトランケートしたMEK1及びMEK2ペプチドの使用方法を包含する。本明細書中に挙げた結晶化の条件及び方法は、MEK1又はMEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶化に用いられるアプローチの1つを説明するために提供するものである。当然のことながら、当業者には、本明細書中に記載した修飾MEK1タンパク質の結晶化に適した他の結晶化及び技術が明らかである。例えば、「McPherson,A.,Crystallization of Biological Macromolecules,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1999)を参照されたい。
【0133】
《修飾MEK1ペプチド複合体の結晶化》
一般に、修飾MEK1ペプチド複合体の結晶化は、NHトランケートしたMEK1ペプチドをリガンド及び補因子と接触させてMEK1ペプチド:リガンド:補因子からなる安定的な3成分複合体を形成することと、次いでこの3成分複合体の溶液を、沈殿剤溶液に添加することにより、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を成長させることとからなる。例えば、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を生成するために、前記MEK1ペプチドとリガンドと補因子とを含む溶液(MEK1溶液)及び沈殿剤溶液を含有する溶液を用意する。MEK1溶液中のMEK1の濃度は、約2mg/mL〜約40mg/mL、好ましくは約10mg/mL〜約20mg/mL、より好ましくは約15mg/mLである。リガンドの濃度はMEK1の濃度の約2倍〜約20倍過剰であり、好ましくは、MEK1の濃度の約5倍〜約15倍過剰であり、より好ましくは約10倍過剰である。MEK1溶液中の補因子の濃度は約1mM〜約100mMであり、好ましくは約2.5mM〜約25mMであり、より好ましくは約5mMである。
補因子としては、以下に限定されるものでないが、ATPカチオン、非加水分解性[non−hydrolyzable]ATPアナログ、例えばAMP−PNP(アデニリル−イミドジホスフェート)又はATP−ガンマ−S(アデノシン5’−O−3−チオトリホスフェート)を挙げることができる。ATPカチオンとしては、以下に限定されるものでないが、ATPのリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、又はカリウム塩を挙げることができる。好ましくは、前記ATPカチオンは、ATPのナトリウム塩又はマグネシウム塩である。より好ましくは、前記ATPカチオンは、ATPのマグネシウム塩(Mg−ATP)である。
【0134】
前記MEK1溶液は、以下に限定されるものでないが、MEK1、リガンド、補因子、緩衝剤、還元剤、及びイオン強度源を含むことができる。タンパク質、リガンド、及び補因子の濃度は前記の通りである。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸、MES、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、Tris、ビス−Tris、又はビス−Trisプロパンであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、濃度約10mM〜約100mMで、pH値約6.8〜約8.8のHEPESである。より好ましくは、前記緩衝剤は、約20mMのHEPES(pH7.8)である。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、前記還元剤は、約0.1mM〜約10mMの濃度のTCEPである。より好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。前記MEK1溶液は、イオン強度源として塩を含有することができる。前記塩は、以下に限定されるものでないが、NaCl、KCl、酢酸アンモニウム、又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、前記塩は、濃度約5mM〜約500mMの酢酸アンモニウムである。より好ましくは、前記塩は、約150mMの酢酸アンモニウムである。
前記MEK1溶液は、場合により、適切なキレート剤を含有することができる。前記キレート剤は、クエン酸ナトリウムであることができる。前記MEK1溶液がキレート剤を含有する場合、キレート剤として、約0.5mMのEDTAを使用することが好ましい。
【0135】
更に、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶化には、任意の沈殿剤溶液(「MEK1沈殿剤溶液」)も使用することができる。前記のMEK1溶液と混合される場合には、その沈殿剤溶液により、その3成分複合体が良好に回折する結晶を形成するようになることが好ましい。前記MEK1沈殿剤溶液は、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の形成を安定化するように構成された種々の成分からなる。例えば、前記沈殿剤溶液は、以下に限定されるものでないが、イオン強度源、ポリエチレングリコール(PEG)源、緩衝剤、及び還元剤を含むことができる。
【0136】
MEK1沈殿剤溶液の前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、イミダゾール、MES、Tris、又はビス−Trisプロパン、あるいはこれらの組み合わせであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、イミダゾール/リンゴ酸塩/リン酸塩緩衝液の混合緩衝系である。前記緩衝液の濃度は、イミダゾールに関しては約1mM〜約100mMの範囲であることができ、リンゴ酸塩に関しては約10mM〜約1000mMの範囲であることができ、リン酸塩に関しては約40mM〜約1400mMであることができる。前記混合緩衝系は、pH約3.0〜pH約7.0のpH値を有することができる。リン酸塩緩衝液の場合、第一リン酸アンモニウムを使用することが好ましい。最も好ましくは、前記混合緩衝系は、約10mMのイミダゾールと、約100mMのリンゴ酸塩と、約400mMのリン酸アンモニウムとを含み、約4.5〜約5.5のpH値を有する。
【0137】
MEK1沈殿剤溶液のイオン強度源は、以下に限定されるものでないが、NaCl、KCl、硫酸アンモニウム、硫酸リチウム、リン酸アンモニウム、又はリン酸カリウムナトリウムであることができる。MEK1沈殿剤溶液の混合緩衝系は、イオン強度源として役立つことができる。好ましくは、第一リン酸アンモニウムを、pH調節せずに、100〜1000mMの濃度又はより好ましくは200〜600mMの濃度まで、KOH50%(v/v)溶液でpH値をpH7.0に調節した10mMイミダゾール/100mMリンゴ酸塩の酸性緩衝液に添加する。その結果として生じる溶液は、適切なイオン強度と、約4.5〜約5.5のpHの範囲の最終pH値とを有することが好ましい。
【0138】
また、前記MEK1沈殿剤溶液は、適切な任意の還元剤も含有することができる。前記還元剤としては、以下に限定されるものでないが、約0.1mM〜約100mMの濃度の2−メルカプトエタノール、TCEP又はDTTを挙げることができる。好ましくは、DTTを使用することができる。最も好ましくは、約20mMのDTTを、使用することができる。
【0139】
MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を成長させるには多くの方法を用いることができ、例えば、以下に限定されるものでないが、ハンギング・ドロップ蒸気拡散、シッティング・ドロップ蒸気拡散、マイクロバッチ、バッチ、又はゲル若しくは油における相互拡散を挙げることができる。好ましくは、前記結晶化を、ハンギング・ドロップ蒸気拡散法で実施することができる。MEK1ペプチド:リガンド:補因子の結晶の成長にハンギング・ドロップ蒸気拡散法を用いる場合には、前記MEK1溶液をMEK1沈殿剤溶液の液滴と混合する。次いで、混合された液滴溶液を、密封容器内の1ウェルの沈殿剤溶液の上で浮遊させる。例えば、MEK1溶液約1μLを、約1:4〜約4:1の比率、好ましくは約1:2〜約2:1の比率で、前記MEK1沈殿剤溶液と混合する。より好ましくは、前記MEK1溶液の前記MEK1沈殿剤溶液に対する比率は、約1:1である。或る態様では、混合された前記液滴は、沈殿剤溶液0.6mL〜1.2mL、より好ましくは約1.0mLを含有するウェル溶液の上で浮遊させすることができる。その結晶化温度は、約4℃〜約20℃、好ましくは約13℃であり、より好ましくは、前記結晶を13℃で3〜5日間成長させ、次いで室温に移す。
【0140】
前記MEK1ペプチド:リガンド:補因子の結晶が、結晶学的データ収集に適した大きさ、好ましくは約0.05x約0.05x約0.1mm〜約0.3x約0.3x約0.5mmに達するまで、前記混合液滴溶液は、前記の温度で約5日〜約5週間、MEK1沈殿剤溶液を含有するウェル溶液の上で浮遊状態で放置する。
X線回折品質を有する結晶、すなわち、5.0Åを上回る分解能まで回折するようになる結晶を得るために、標準的なミクロ及び/又はマクロシーディング[seeding]を用いることもできる。好ましい態様では、回折品質結晶を成長させるのに、シーディングを用いない。
【0141】
所望の成長が達成された後、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体からなる結晶を収集し、そして凍結保護溶液[cryoprotective solution]中で浴処理することができる。前記凍結保護溶液は、約110ケルビンの温度で結晶性固体としてMEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体を含有するガラス質固体の構成を安定化するように設計された種々の成分を含有することができる。前記凍結保護溶液は、以下に限定されるものでないが、エチレングリコール又はポリエチレングリコール(PEG)の低分子量溶液の適切な供給源、稀釈剤、及び約70%のパラトン(Paratone)−N油と30%の鉱油とから形成された低温油[Cryo oil]溶液を含むことができる。エチレングリコール又はポリエチレングリコールの前記低分子量溶液は、約100〜約1000、より好ましくは約200〜600の分子量を有することができ、最も好ましくは、エチレングリコールの100%溶液を使用する。前記エチレングリコール又はPEGは、100%(w/v)溶液として使用し、次いで結晶化ウェル溶液で5〜25%の最終濃度に稀釈することができる。最も好ましくは、前記PEG溶液は、ウェル溶液で10%の最終濃度にする。前記低温調製プロセスの間、前記結晶を、先ず母液から取り出し、次いで10%PEG溶液中で1〜20分間浴処理する。最も好ましくは、前記結晶を、PEG/ウェル溶液中に約2分間置くことであろう。次いで、前記結晶を、パラトン−Nと鉱油との混合物に移し、そして油中で操作して水溶液を取り除いた後に、その凍結保護された結晶を素早く液体窒素浴中に入れることができる。
【0142】
NHトランケートしたMEK1ペプチドには、任意のリガンドを使用することができるが、好ましくは、前記リガンドは、MEK1又はMEK2インヒビターを含む。好ましくは、前記リガンドは、式:
【化1】
Figure 2004000135
で表される化学構造を有する5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドである。
【0143】
本発明の結晶は種々の結晶形態をとることができる。これらの結晶形態の全てが本発明に含まれる。或る態様の場合、前記結晶は、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶系、立方晶系、三方晶系、又は六方晶系であることができる。好ましい態様では、前記結晶は、六方晶系である。より好ましい態様では、前記結晶は、六方晶系の対称性を有し、そして空間群P6を有する。最も好ましい態様の場合、結晶は空間群P6を有し、おおよそa=b=81.4±0.3Å;c=129.0±0.3Å;α=β=90.0°;γ=120.0°からなる単位格子[unit cell]を有する。
【0144】
《修飾MEK2ペプチド複合体の結晶化》
一般に、修飾MEK2ペプチド複合体の結晶化は、NHトランケートしたMEK2ペプチドをリガンド及び補因子と接触させて、MEK2ペプチド:リガンド:補因子からなる安定的な3成分複合体を形成することと、次いでこの3成分複合体の溶液を沈殿剤溶液に添加することにより、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を成長させることとからなる。例えば、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を生成するために、前記MEK2ペプチドとリガンドと補因子とを含有する溶液(MEK2溶液)及び沈殿剤溶液を用意する。MEK2溶液中のMEK2の濃度は、約2mg/mL〜約40mg/mL、好ましくは約10mg/mL〜約20mg/mL、より好ましくは約15mg/mLである。リガンドの濃度はMEK2の濃度の約2倍〜約20倍過剰であり、好ましくは、MEK2の濃度の約5倍〜約15倍過剰であり、より好ましくは約10倍過剰である。MEK2溶液中の補因子の濃度は約1mM〜約100mMであり、好ましくは約2.5mM〜約25mMであり、より好ましくは約5mMである。
【0145】
補因子としては、以下に限定されるものでないが、ATPカチオン、非加水分解性ATPアナログ、例えばAMP−PNP(アデニリル−イミドジホスフェート)又はATP−ガンマ−S(アデノシン5’−O−3−チオトリホスフェート)を挙げることができる。ATPカチオンとしては、以下に限定されるものでないが、ATPのリチウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、又はカリウム塩を挙げることができる。好ましくは、ATPカチオンは、ATPのナトリウム塩又はマグネシウム塩である。より好ましくは、ATPカチオンは、ATPのマグネシウム塩(「Mg−ATP」)である。
【0146】
前記MEK2溶液は、以下に限定されるものでないが、MEK2、リガンド、補因子、緩衝剤、還元剤、及びイオン強度源を含むことができる。タンパク質、リガンド、及び補因子の濃度は前記の通りである。前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸、MES、HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)、Tris、ビス−Tris、又はビス−Trisプロパンであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、濃度約10mM〜約100mMで、pH値約6.8〜約8.8のHEPESである。より好ましくは、前記緩衝剤は、約20mMのHEPES(pH7.5)である。前記還元剤は、以下に限定されるものでないが、2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、前記還元剤は、約0.1mM〜約10mMの濃度のTCEPである。より好ましくは、前記還元剤は、約2.0mMのTCEPである。前記MEK2溶液は、イオン強度源として塩を含有することができる。前記塩は、以下に限定されるものでないが、NaCl、KCl、酢酸アンモニウム又は硫酸ナトリウムであることができる。好ましくは、前記塩は、濃度約5mM〜約500mMの酢酸アンモニウムである。より好ましくは、前記塩は、約150mMの酢酸アンモニウムである。
前記MEK2溶液は、場合により、適切なキレート剤を含有することができる。前記キレート剤は、クエン酸ナトリウムであることができる。前記MEK2溶液がキレート剤を含有する場合、キレート剤として、約0.1mMのEDTAを使用することが好ましい。
更に、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶化には、任意の沈殿剤溶液(「MEK2沈殿剤溶液」)も使用することができる。前記のMEK2溶液と混合される場合には、その沈殿剤溶液により、その3成分複合体が良好に回折する結晶を形成するようになることが好ましい。前記MEK2沈殿剤溶液は、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の形成を安定化するように構成された種々の成分からなる。例えば、前記沈殿剤溶液は、以下に限定されるものでないが、イオン強度源、緩衝剤、及び還元剤を含むことができる。
【0147】
MEK2沈殿剤溶液の前記緩衝剤は、以下に限定されるものでないが、リン酸ナトリウム/カリウム、リン酸アンモニウム、酢酸塩、イミダゾール、MES、HEPES、Tris、又はビス−Trisプロパン、あるいはこれらの組み合わせであることができる。好ましくは、前記緩衝剤は、第一リン酸ナトリウムと第二リン酸カリウムとのpH約6〜約8に緩衝化された混合溶液を用いたイオン強度源でもある。前記リン酸カリウムナトリウム緩衝液の濃度は、好ましくは、約1.4〜約1.9Mの範囲の第一リン酸ナトリウム及び第二リン酸カリウムであることができる。最も好ましくは、前記混合リン酸塩緩衝系は、pH約6.7〜約7.1に緩衝化された、約1.4〜約1.9Mの範囲の第一リン酸ナトリウム及び第二リン酸カリウムであることができる。
【0148】
また、前記MEK2沈殿剤溶液は、適切な任意の還元剤も含有することができる。前記還元剤としては、以下に限定されるものでないが、約0.1mM〜約100mMの濃度の2−メルカプトエタノール、TCEP、又はDTTであることができる。好ましくは、DTTを使用することができる。最も好ましくは、約20mMのDTTを使用することができる。
MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶を成長させるには多くの方法を用いることができる。この方法としては、以下に限定されるものでないが、ハンギング・ドロップ蒸気拡散、シッティング・ドロップ蒸気拡散、マイクロバッチ、バッチ、又はゲル若しくは油における相互拡散を挙げることができる。好ましくは、前記結晶化を、ハンギング・ドロップ蒸気拡散法で実施することができる。MEK2ペプチド:リガンド:補因子の結晶を成長させるためにハンギング・ドロップ蒸気拡散法を用いる場合には、前記MEK2溶液をMEK2沈殿剤溶液の液滴と混合する。次いで、混合された液滴溶液を、密封容器内の1ウェルの沈殿剤溶液の上で浮遊させる。例えば、MEK2溶液約1μLを、約1:4〜約4:1の比率、好ましくは約1:2〜約2:1の比率で、前記MEK2沈殿剤溶液と混合する。より好ましくは、前記MEK2溶液の前記MEK2沈殿剤溶液に対する比率は、約1:1である。或る態様では、混合された液滴は、0.6mL〜1.2mL、より好ましくは1.0mLの沈殿剤溶液を含有する、1ウェル溶液の上で浮遊させることができる。その結晶化温度は、約4℃〜約20℃、好ましくは約13℃であることができる。MEK2ペプチド:リガンド:補因子の結晶が、結晶学的データ収集に適した大きさ、好ましくは約0.05x約0.05x約0.1mm〜約0.3x約0.3x約0.5mmに達するまで、前記混合液滴溶液は、前記の温度で約5日〜約5週間、MEK2沈殿剤溶液を含有するウェル溶液の上で浮遊状態で放置する。
【0149】
X線回折品質を有する結晶、すなわち、5.0Åを上回る分解能まで回折するようになる結晶を得るために、標準的なミクロ及び/又はマクロのシーディングを用いることもできる。好ましい態様では、回折品質結晶を成長させるのに、シーディングを用いない。
所望の成長が達成された後、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体からなる結晶を収集し、そして凍結保護溶液中で浴処理することができる。前記凍結保護溶液は、約110ケルビンの温度で結晶性固体としてMEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体を含有するガラス質固体の構成を安定化するように設計された種々の成分を含むことができる。前記低温溶液は、以下に限定されるものでないが、低分子ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール又はエチレングリコール、及び/又は約70%パラトン−N油と30%鉱油とから形成された低温油の溶液を含むことができる。MEK1で行ったように、エチレングリコールをパラトン−Nと鉱油との混合物と組み合わせることにより、あるいはパラトン−N/鉱油混合物又はエチレングリコールを別々に使用することにより、前記低温溶液を使用することができる。好ましい形態では、前記エチレングリコールは、エチレングリコールの100%溶液を前記結晶化条件からの前記ウェル溶液と混合することにより形成されたものを、約5〜30%の濃度で使用した。最も好ましい形態では、取り付けられたループを用いて、前記母液結晶成長溶液からパラトン−Nと鉱油との前記混合物に結晶を直接移し、そして油中で操作して水溶液を取り除いた後に、凍結保護された結晶を素早く液体窒素浴中に入れることができる。
【0150】
NHトランケートしたMEK2ペプチドには、任意のリガンドを使用することができるが、好ましくは、前記リガンドは、MEK1又はMEK2インヒビターを含む。好ましくは、前記リガンドは、式:
【化2】
Figure 2004000135
で表される化学構造を有する{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミンである。
【0151】
本発明の結晶は種々の結晶形態をとることができる。これらの結晶形態の全てが本発明に含まれる。或る態様の場合、前記結晶は、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系、正方晶系、立方晶系、三方晶系、又は六方晶系であることができる。好ましい態様では、前記結晶は、六方晶系である。より好ましい態様では、結晶は、六方晶系の対称性を有し、空間群P622を有する。最も好ましい態様の場合、前記結晶は、空間群P622を有し、ほぼa=b=161.89±0.3Å;c=122.99±0.3Å;α=β=90.0°;γ=120.0°からなる単位格子を有する。
【0152】
《X線データ収集及び構造決定》
本発明は、更に、前記MEK1及びMEK2ペプチド:リガンド:補因子の結晶に関するX線回折データを収集する方法を含む。本明細書中に挙げたデータ収集の条件及び方法は、MEK1及びMEK2ペプチドの構造決定に用いられるアプローチを説明するために提供するものである。当然のことながら、本明細書に記載した修飾MEK1又は修飾MEK2タンパク質結晶のX線データ収集及び構造決定に適した他の条件や技術が、当業者には明らかである。例えば、「Glusker,J.,Crystal Structure Analysis for Chemists and Biologists,Wiley−VCHPress(1994)」、又は「International Tables for X−Ray Crystallography,第F巻,M.G.Rosssman及びE.Arnold編,Kluwer Academic Publishers(2001)」を参照されたい。
【0153】
一般に、MEK1又はMEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の結晶に関するX線回折データを収集することは、低温ループに結晶を載置し、凍結保護溶液中で前記結晶を浴処理し、前記結晶を約100Kに急速に冷却し、及び振動方式で回折データを収集することを含む。X線の供給源は、以下に限定されるものでないが、回転陽極ホームソース、例えばRikagu RU−H3Rジェネレータ、又は高エネルギーシンクロトロン供給源、例えばアルゴンヌ国立研究所新型フォトン源(Argonne National Laboratory Advanced Photon Source)のビームライン17(17−ID又は17BM、IMCA−CAT)に見出される高エネルギーシンクロトロン源であることができる。データ収集の好ましい方法は、ホームソースを用いて初期データセットを収集することにより、結晶品質を評価し、次いでIMCA−CATで完全なデータセットを収集することである。回折データを検出して定量する方法は、画像プレート、例えばMSC/Rigakuから入手可能なR−Axis IV++、電荷結合素子、例えばMAR−CCDの、又はADSC Quantum 210 X線検出器を使用することにより実施することができる。好ましくは、結果として生じたMEK1結晶は、MEK1ペプチド:リガンド:補因子の複合体の原子座標の決定に関して、5.0Åよりも良い分解能、より好ましくは3.0Åよりも良い分解能、更に好ましくは2.5Åよりも良い分解能でX線を分解する。好ましくは、結果として生じたMEK2結晶は、MEK2ペプチド:リガンド:補因子の複合体の原子座標の決定に関して、5.0Åよりも良い分解能、より好ましくは3.5Åよりも良い分解能でX線を分解する。
【0154】
データが収集されると、このデータは一般に、ローレンツ効果及び偏光効果に応じて補正され、データ処理ソフトウェア、例えばDENZO又はHKL2000〔Otwinowski,Z.Minor,W.,Processing of X−ray diffraction data collected in oscillation mode,Methods Enzymol.276:307−326(1997)〕、d*Trek(Rigaku MSC)、又はMosfilm〔Leslie,A.G.W.,Joint CCP4+ESF−EAMCB Newsletter on Protein Crystallography,No.26(1992)〕を使用して、指数化構造因子振幅に換算される。好ましい処理ソフトウェアは、HKL2000であることができる。前記結晶から得られた、測定され縮小された回折データは、以下の1つ又は複数の方法、又はこのリストには含まれていない他の同様の方法を用いて、三次元結晶構造を決定するのに用いることができる:フーリエ差分法、分子置き換え(MR)、多波長異常分散(multiwavelength anomalous dispersion:MAD)、単波長異常分散(single−wavelength anomalous dispersion:SAD)、異常散乱を伴う単一同型置換(single isomorphous replacement with anomalous scattering:SIRAS),又は多重同型置換(multiple isomorphous replacement:MIR)。
【0155】
《MEK1及びMEK2の結晶学的構造分析》
本発明は更に、X線回折データを使用して、MEK1及びMEK2ペプチド:リガンド:補因子の結晶複合体の三次元構造座標を解明する方法を含む。構造決定に用いられるこれらの方法は、結晶性MEK1及びMEK2ペプチド:リガンド:補因子の結晶複合体の構造決定のために用いられるアプローチを説明するために提供するものである。本明細書に記載した修飾MEK1タンパク質複合体又は修飾MEK2タンパク質複合体のX線構造決定に適した他の条件や技術が、当業者には明らかであろう。例えば、「Glusker,J.,Crystal Structure Analysis for Chemists and Biologists,Wiley−VCH Press(1994)」、又は「International Tables for X−Ray Crystallography,第F巻,M.G.Rosssman及びE.Arnold編,Kluwer Academic Publishers(2001)」を参照されたい。
【0156】
第1のMAPKキナーゼの構造決定の場合、相の前記問題を解決するために、分子置き換え以外の方法を用いる必要がある。この場合、SAD相評価に、結合したリガンド/インヒビター内に含有されるヨウ素原子を使用した。あるいは、MIR、MAD、又はSADのような他の方法を用いることもできる。好ましい態様では、HKL2000〔Otwinowskiら,Methods Enzymol.276:307−326(1997)〕のSCALEPACKモジュールを用いて、データを同型的に測定することができる。あるいは、d*Trek(Rigaku MSC)、又はSCALA(共同計算プロジェクト(COLLABORATIVE COMPUTATIONAL PROJECT)No.4「The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography」〔Acta Cryst.D50,760−763(1994)〕を使用して測定することもできる。引き続き行われる全ての計算には、CNXパッケージ(カリフォルニア州San Diego在、Accelrys)を使用することができる。あるいは、CCP4プログラム・パッケージソフト又は当業者に周知のソフトウェア・パッケージの組み合わせを用いて、構造座標を同定することもできる。
【0157】
MEK1及びMEK2の構造が解明された後、構造に基づく薬剤の設計に使用するために、三次元構造を調製する。MEK1及びMEK2のテンプレートの調製及び分析は、例えばSYBYL(商標)、GRIN/GRID(商標)、MolCad(商標)、GOLD(商標)、FlexX(商標)を使用することにより実施することができる。更に、場合により、適切なコンピュータ・モデリング・ソフトウェアを用いて、構造決定を行うことができる。前記ソフトウェアとしては、以下に限定されるものでないが、QUANTA(商標)(San Diego,Accelrys,カリフォルニア州)、CHARMm(商標)(Accelrys)、INSIGHT(商標)(Accelrys)、SYBYL(商標)(Tripos,Inc.,St.Louis)、MacroModel(商標)(Schroedinger,Inc)、及びICM(MolSoft,LLC)を挙げることができ、SYBYL(商標)が最も好ましいプログラムである。前記コンピュータ・プログラムは、単独で、又はドッキング・コンピュータ・プログラム、例えばGRAMM(Ilya A.Vakser(ロックフェラー大学))、FlexX(商標)(Tripos,Inc.)、Flexidock(商標)(Tripos,Inc.)、GOLD(英国ケンブリッジ、ケンブリッジ結晶学データセンターを介して市販されている)、DOCK(Irwin Kuntz,カリフォルニア大学薬化学科,サンフランシスコ)、又はAutoDock(商標)(Molecular Graphics Laboratory)との組み合わせで使用することができる。これらのドッキング・コンピュータ・プログラムは、小分子の既知データベースをスキャニングすることにより、結合部位に概ね適合するコア化合物を見出す。GOLD(商標)が使用されることが最も好ましい。
【0158】
必要な場合には、インヒビター及び補因子の原子タイプ、及び存在するあらゆる水分子を改変することにより、PDB(タンパク質データベース)中の結晶学データを「クリーンアップ」することができるので、水分子はそれらの最低エネルギー回転異性体を見出す。この「クリーンアップ」を実施するのに適したソフトウェアとしては、以下に限定されるものでないが、SYBYL(商標)、WATCHECK〔CCP4セットの一部、COLLABORATIVE COMPUTATIONAL PROJECT,No.4,「The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography.」Acta Cryst.D50,760−763(1994)〕の一部、及びREDUCE〔Wordら,Asparagine and glutamine:using hydrogen atom contacts in the choice of side chain amide orientation,J.Mol.Bio.285:1733−45(1999)〕を挙げることができ、REDUCE又はREDUCEと同等の機能を発揮するソフトウェアが最も好ましいソフトウェアである。適切な任意のドッキング・コンピュータ・プログラムを使用して、最も好都合なプロトン化状態で全ての水素を付加し、また、全ての水分子を回転させてタンパク質との最適な相互作用をもたらすように配向することにより、精製タンパク質構造を更に実証することができる。
【0159】
更に、例えばGRIN/GRID(商標)(Molecular Discovery Limited)、MOLCAD(商標)(Tripos,Inc.)コントゥアリング[contouring]、CAVEAT〔P.A.Bartlettら,CAVEAT:A program to facilitate the structure−derived design of biologically active molecules,in molecular recognition in chemical and biological problems,special Publication,Royal Chem.Soc.,78,182−196(1989),カリフォルニア大学から入手可能,Berkely,カリフォルニア州)、GRASP(A.Nicholls,コロンビア大学)、SiteID(商標)(Tripos,Inc.)、INSIGHT(商標)、又はSYBYL(商標)を使用して、結合部位を特徴付けすることができる。これらのソフトウェアは、単独で又は組み合わせて使用することができる。例えば、GRIN/GRID(商標)と、MolCad(商標)(Tripos,Inc.)と、SYBYL(商標)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0160】
本発明の或る態様によれば、前記MEK1ペプチドが、リガンド結合ポケット(これは、リガンド結合部位に位置する4ÅのMEK1インヒビター内の以下のアミノ酸残基、すなわち配列番号2のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219の構造座標により規定されるか、又はリガンド結合部位に位置する5ÅのMEK1インヒビター内の以下のアミノ酸残基、すなわち配列番号2のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、I126、V127、G128、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、F223の構造座標により規定される)を含むことが見いだされた。
【0161】
更に、前記MEK1ペプチドが、補因子結合ポケット(これは、補因子結合部位に位置する4ÅのATP分子内の以下の残基、すなわち配列番号2のL74、G75、A76、G77、N78、G80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、G149、S150、D152、Q153、K192、S194、N195、L197、D208、V224の構造座標により規定されるか、又は補因子結合部位に位置する5ÅのATP分子内の以下の残基、すなわち配列番号2のL74、G75、A76、G77、N78、G79、80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、D147、G149、S150、D152、Q153、D190、K192、S194、N195、L197、C207、D208、V224、G225の構造座標により規定される)を含むことが見いだされた。
【0162】
また、前記MEK2ペプチドが、リガンド結合ポケット(これは、リガンド結合部位に位置する4ÅのMEK2インヒビター内の以下のアミノ酸残基、すなわち配列番号4のG81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、V131、F133、I145、M147、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、又はこれらの同類置換変異型の構造座標により規定されるか、あるいはリガンド結合部位に位置する5ÅのMEK2インヒビター内の以下のアミノ酸残基、すなわち配列番号4のG81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、I130、V131、G132、F133、I145、M147、D194、N199、L210、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、F227、又はこれらの同類置換変異型の構造座標により規定される)を含むことも見いだされた。
【0163】
更に、前記MEK2ペプチドが、補因子結合ポケット(これは、補因子結合部位に位置する4ÅのATP分子内の以下の残基、すなわち配列番号4のL78、G79、A80、G81、N82、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、G153、S154、D156、Q157、K196、S198、N199、L201、D212、V228、又はこれらの同類置換変異型の構造座標により規定されるか、あるいは補因子結合部位に位置する5ÅのATP分子内の以下の残基、すなわち配列番号4のL78、G79、A80、G81、N82、G83、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、D151、G153、S154、D156、Q157、D194、K196、S198、N199、L201、C211、D212、V228、G229、又はこれらの同類置換変異型の構造座標により規定される)を含むことも見いだされた。
【0164】
ペプチド、又はペプチド:リガンド:補因子の複合体、又はその下位集合に対応する構造座標集合が、複合的な三次元的な表面を画定する空間内の相対的な点集合であることは、当業者には明らかである。従って、全体的に異なる座標集合を使用して、同じ表面を表すことが可能である。また、全ての結晶学的データの測定誤差が小さいため、個々の座標が僅かに変動しても、この変動が表面全体に影響を及ぼすことは、ほとんどないか又は全くない。従って、同様の表面構成要件、例えば、以下に限定されるものでないが、体積(キャビティ内の内部体積又は合計体積)、溶媒接近可能性、及び表面電荷、並びに疎水性をなおも維持しつつ構造座標を変動させることに基づいて、表1又は表2に示す構造座標から結合ポケットを生成させることが可能である。更に、前記構造座標を、結晶学的交換(permutation)、例えば、以下に限定されるものでないが、分数化(fractionalization)、正数加算若しくはサブストラクション(substraction)、逆転(inversion)、又はそれらの任意の組み合わせによって、修飾することができる。
【0165】
更に、若干異なる三次元座標を得るために、前記の結合ポケットを改変可能であることは、当業者に明らかである。
また、ペプチド:リガンド:補因子の複合体の成分のいずれか又は全てを僅かに改変する結果、三次元構造の基本的な構成要件をなおも維持する構造座標を発生させることも、本発明の部分と考えるべきである。
【0166】
《コンピュータ、コンピュータソフトウェア、コンピュータモデリング》
原子座標がわかれば、MEK1ペプチド、MEK2ペプチド、又は構造的に関連したペプチドの3次元表現を作成するのにコンピュータを用いることができる。同様に、原子座標、又は構造的座標の関連したセットを用いて、MEK1ペプチド結合ポケット、MEK−2ペプチド結合ポケット又はMEK様ペプチド結合ポケットの3次元表現を作成することができる。このように、本発明の別の観点は、第1表又は第2表に示したMEK1及びMEK2複合体から作成される構造的座標、又は構造的座標の関連したセットを用いて、MEK1ペプチド、MEK2ペプチド、又は構造的に関連したペプチド、又はMEK1、MEK2又はMEK様ペプチド結合ポケットを作成することを含んでいる。このことは、原子座標のセットから分子又はその部分の3次元のグラフ表示を作成することができる市販され入手可能なソフトウェアを使用することにより達成する。
【0167】
適切なコンピュータは、当業者に公知であり、そして典型的には中央処理装置(CPU)、及びランダムアクセスメモリ、コアメモリ、大容量記憶メモリ又はそれらの組み合わせであることができる、作業メモリを含んでいる。CPUは、1つ又はそれ以上のプログラムをエンコードすることができる。コンピュータは、典型的には、ディスプレー、入力装置及び出力装置、例えば、1つ又はそれ以上のブラウン管ディスプレー末端、キーボード、モデム、入力線及び出力線も含んでいる。更に、コンピュータは、コンピュータサーバ(大量の計算をバッチで実施することができるマシン)及びファイルサーバ(すべての集中化されたデータベース用のメインマシン)にネットワーク接続することができる。
【0168】
データ、例えば、第1表又は第2表に示した原子座標、又は原子座標の関連したセットを含む、機械可読の媒体は、モデム、CD−ROMドライブ、ディスクドライブ、又はキーボードを含む種々のハードウェアを用いてインプットすることができる。
【0169】
機械可読のデータ媒体は、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、又はメモリのみを読取り可能であるか又は書換え可能である、光学的可読データ記憶媒体、例えば、光磁気ディスクであることができる。
【0170】
出力ハードウェア、例えば、CRTディスプレー末端は、本明細書に記載した、構造的に関連したペプチド、又はMEK1、MEK2、又はMEK様結合ポケットの、第1表又は第2表それぞれに示したMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドプチドの3次元の構造的座標のグラフ表現を表示するために用いることができる。出力ハードウェアは、プリンタ及びディスクドライブも含んでいることができる。
【0171】
前記CPUは、種々の入力及び出力装置の使用をコーディネートし、作業メモリへの及び作業メモリからのアクセス及び記憶(storage)からのデータアクセスをコーディネートし、そしてデータ処理工程の順序を決定する。多数のプログラムを用いて機械可読のデータを処理することができる。前記プログラムは、薬剤発見のコンピュータ的な方法に関して本明細書に記載されている。
【0172】
本発明の好ましい態様において、MEK1、MEK2、又はMEK様ペプチド結合ポケットを含む分子又は分子複合体の3次元表現に処理することができる原子座標を、機械可読の記憶媒体に記憶させる。以下に記載のように、MEK1、MEK2、又はMEK様ペプチド結合ポケットを含む分子又は分子複合体の3次元構造は、種々の目的に対して、例えば、薬剤の発見及び薬剤の設計において有用である。例えば、原子座標データから得られる3次元構造は、化学物質と結合するその能力をコンピュータ的に評価することができる。
【0173】
《MEK1又はMEK2活性インヒビター及び/又はエンハンサ》
天然のリガンドの、レセプタ又は酵素上のその対応する結合ポケットとの結合は、作用の多くの生物学的機構の基礎である。同様に、多くの薬剤は、レセプタ又は酵素の結合ポケットとの相互作用を介してその生物学的効果を発揮する。前記結合の理解は、薬剤の標的たるレセプタ又は酵素とのより好ましくかつ特異的な相互作用を有し、そしてこのように改善された生物学的な効果を有する薬剤の設計に導くことができる。従って、MEK1、MEK2、又はMEK様ペプチド結合ポケットとのリガンド結合に関する情報は、MEK1、MEK2、又はそれに構造的に関連したペプチドの潜在的なインヒビター又はエンハンサを設計し及び/又は同定するのに有用である。更に、潜在的な薬剤の設計がより特異的であればあるほど、その薬剤が同様なタンパク質とは相互作用せず、このように、望ましくない不都合な相互作用による潜在的な副作用を最少にすることがより期待できる。
【0174】
コンピュータプログラムを用いて、MEK1、MEK2、又はMEK様結合ポケットに対するリガンドの誘引、反発及び立体障害を評価することができる。例えば、MEK1、MEK2、又はMEK様結合ポケットに対して、全体で又は部分で結合することができる化学物質又は化合物に対して低分子データベースをコンピュータ的にスクリーニングすることができる。このスクリーニングにおいて、前記実体又は化合物の結合部位への適合(fit)の質は、形状相補性により又は見積もられた相互作用エネルギーにより判断することができる〔Mengら,J.Comp.Chem.,13:505−524(1992)〕。一般に、適合が緊密であればあるほど、例えば、立体障害がより低下すればするほど及び/又は誘引力がより大きくなればなるほど、これらの性質がより緊密な結合の定数と一致するので、より有効である薬剤が計画される。
【0175】
本発明は、限定されることなく、アポプトシス、分化、脈管形成及び炎症を含む種々の細胞プロセスを包含する疾病の状態を限定されることなく含むMEK1及びMEK2に関連した種々の疾病の治療のための潜在的な治療剤として候補的な化合物をスクリーニングする方法を提供する。前記疾病の状態の例として、癌、乾癬、関節炎、敗血症性ショック、ウイルス性感染及び心臓血管疾患を挙げることができる。
【0176】
更に詳しくは、本発明は、X線結晶学的データ、又は構造的座標の関連したセットから作成される、MEK1、MEK2及び構造的に関連したペプチド又はそれらの結合ポケットの3次元表現を用いて、候補的化合物の結合をモデル化する方法を提供する。この方法には、MEK1、MEK2、又は構造的ペプチドの潜在的なインヒビター又はエンハンサをスクリーニング及び同定する方法;及びMEK1、MEK2、構造的に関連したペプチド、又はそれらの結合ポケットに結合する可能性を有している化学物質の設計又は修飾のための方法が含まれる。
【0177】
化合物設計又は修飾の工程は、標的、例えば、MEK1又はMEK2ペプチドの構造を5.0Åより大きい、好ましくは、3.5Åより大きい構造まで分解(resolve)した後で開始する。上記のように、分解された結晶構造から作成されるデータをコンピュータアルゴリズムに適用して、MEK1、MEK2及び構造的に関連したペプチド及びMEK1、MEK2、MEK様ペプチド結合ポケットの3次元表現を、そして最終的には、モデルを作成する。上記のように、X線結晶学的座標を用いてMEK1及びMEK2の3次元構造を分解することは、化合物が、第4図及び第5図に示される、リガンド又は補助因子結合部位、又はMEK様結合ポケットを占有することができるかを決定することを可能にする。
【0178】
MEK1又はMEK2ペプチド分子、構造的に関連したペプチド分子、又はMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケットの3次元表現を作成した後、ペプチド又は結合ポケットと結合する可能性を有するリガンドを、例えば、(i)分子フラグメントを化学物質にアッセンブルすること;(ii)化学物質の新たな設計;(iii)低分子データベースから化学物質を選択すること;又は(iv)MEK1又はMEK2活性の公知のインヒビター又はその部分を修飾することにより作成する。
【0179】
化学物質を設計する場合、下記因子を考慮することができる。第1に、その実体は、一部の又は全部のMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケットと物理的にかつ構造的に結合することができなければならない。第2に、その実体は、MEK1、MEK2又はMEK様結合ポケットと直接に結合することを可能とするコンホメーションを帯びていなければならない。その実体のある部分はこれらの結合において直接に関与しないであろうが、前記実在物のこれらの部分は分子の全コンホメーションに依然として影響を与えることができる。次に、これは、可能性に有意な影響を与えることができる。前記コンホメーション要件は、結合ポケットの全体又は部分に関する化学物質の全体の3次元構造及び配向(orientation)、及びMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケットと直接に相互作用するいくつかの化学物質を含む実体の官能基間の間隔(spacing)を含んでいる。
【0180】
新規化合物の設計又は公知化合物の修飾は、基質アナログ構造に関係なく、立体的及び静電的な相補性に基づいて標的の結合部位(複数を含む)中にフラグメント又は原子を築き及び連結するコンピュータプログラムを介して、化合物又はそのフラグメントを合成し又は修飾することを含んでいることができる。コンピュータプログラムは分子構造及び相互作用を分析する。コンピュータ分析は、例えば、以下のコンピュータプログラム:QUANTA(商標)、CHARMM(商標)、INSIGHT(商標)、SYBYL(商標)、MACROMODEL(商標)又はICM[Dunbrackら,1997,前掲]の一つ又はそれ以上を用いて実施することができる。選択された化合物、又はそのフラグメントは、原子座標により定義されたMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケット(複数を含む)内で種々の配向に位置させ、又はドッキングさせることができる。化合物の選択を終えたら、次にそれらの化合物を単一の複合体内にアッセンブルすることができる。フラグメントの選択を終えたら、次にそれらのフラグメントを単一の化合物内にアッセンブルすることができる。集合(assembly)は、原子座標に関してコンピュータスクリーン上に表示された3次元のMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケット表現において化合物又はフラグメントの互いに他との関係の視覚的検査(inspection)により先行させることができる。この視覚的イメージ工程の後に、適切なソフトウェアプログラムを用いて手動によるモデル構築を行うことができる。これに代えて、化合物は、空の結合ポケット(複数を含む)又は天然のリガンドを含有する結合ポケットのいずれかを用いて全体として設計することができる。
【0181】
潜在的なリガンドの設計又は修飾において用いることができるコンピュータプログラムは、限定的でなく、単独で又は組み合わせて、QUANTA(Accelrys Inc.)及び/又はSYBYL(商標)(Tripos,Inc.)及び/又はドッキングコンピュータプログラム、例えば、GOLD〔Cambridge Crystallographic Data Centre、ケンブリッジ、英国を介して市販され入手可能;Jones,G.,J.Mol.Biol.245:43−53(1995)〕、FlexX(Tripos,Inc.)、GRAMM(Ilya A.Vakser,RockefellerUniv.)、Flexidock(Tripos,Inc.)、Dock〔Ewing,T.J.A.ら,J.Comput.−Aided Mol.Des.15:411−428(2001)〕、又はAutoDock〔Molecular Graphics Laboratory(Scripps Research Inst.);Goodsell,D.S.,J.Mol.Recognit.9:1−5(1996)〕を含んでいる。更に、他の関連したコンピュータプログラムを用いることができる。
【0182】
化学物質の、MEK1、MEK2又はMEK様ペプチド結合ポケットへの潜在的な阻害又は結合効果は、コンピュータモデリング技術の使用により、その実際の合成及び試験の前に分析することができる。「モデリング」は、個々の又は複数の潜在的なリガンド又はそのフラグメントに反復の又は合理的なプロセスを適用して、それらとMEK1、MEK2又はMEK様結合ポケットとの結合を評価しそしてそれらのMEK1又はMEK2活性の阻害及び/又は増加を評価することを含んでいる。この方法は、例えば、潜在的なリガンドをMEK1、MEK2又はMEK様ペプチド結合部位(複数を含む)中にコンピュータ適合(fit)させて、潜在的なリガンドの形状及び化学的構造がどれだけ十分にペプチドを補足するか又は妨害するかを確認することを含んでいることができる。コンピュータプログラム、例えば、プログラムGOLD(商標)を用いて、リガンドのMEK1、MEK2又はMEK様結合部位への誘引、反発及び立体障害を見積もることもできる。一般に、適合が緊密であればあるほど、例えば、立体障害が少なければ少ないほど及び/又は誘引力が強ければ強いほど、これらの特性がより緊密な結合定数と一致するので、潜在的なリガンドはより拮抗性(antagonistic)又は作用性(agonistic)となろう。理論的構造、すなわち、コンピュータ的構造が不十分な誘引及び結合を示す場合、一層の試験は不要とすることができる。しかしながら、コンピュータモデリングが強い誘引を示す場合は、次いでリガンドを合成しそしてそのMEK1、MEK2又はMEK様結合部位への結合能力を試験することができる。このように、潜在的なインヒビター又はエンハンサを、結合部位のいずれか一つ又は全部の中に見出されるアミノ酸残基と潜在的に結合するそのコンピュータ上の能力に基づいて、同定し及び選択することができる。
【0183】
コンピュータモデリングに使用されるのに適切なコンピュータプログラムの例として、限定的でなく、QUANTA(商標)、CharmM(商標)、INSIGHT(商標)、SYBYL(商標)、MacroModel(商標)及びICM(Dunbrackら,1997,前掲)を挙げることができる。SYBYL(商標)が好ましく用いることができる。コンピュータプログラムは、ドッキングコンピュータプログラム、例えば、GRAM(商標)、FlexX(商標)、Flexidock(商標)、GOLD(商標)又はAUTO DOCK[Dunbrackら,1997,前掲]と組み合わせて又は単独で用いることができる。
【0184】
潜在的なリガンドのスクリーニング方法及び引き続きの同定は、インビボ、インビトロ又はエクスビボ(エクス・ビボ)で達成することができる。最初のリガンドコンピュータ的分析は必要に応じたものである。その代わりとして、又は付加的に、化合物ライブラリの大量のコレクションをスクリーニングすることができるようにロボットワークステーション(robotic workstations)で全自動を可能とすることができるハイスループット(high−throughput)スクリーニングを用いることができる。
【0185】
スクリーニング法及び同定法の一つの態様において、最初のコンピュータモデリングプログラムは、以下のドッキングコンピュータモデリングプログラム:Dock〔Ewing,T.J.A.ら,J.Comput.−Aided Mol.Des.15:411−428(2001)〕、AutoDock〔Molecular Graphics Laboratory;Goodsell,D.S.,J.Mol.Recognit.9:1−5(1996)〕、GOLD〔Cambridge Crystallographic Data Centre,ケンブリッジ,英国を介して市販され入手可能;Jones,G.,J.Mol.Biol.245:43−53(1995)〕、又はFlexX(Tripos,Inc.)の一つ又はそれ以上を用いて実施する。ドッキングプログラム(複数を含む)によって最初に同定された潜在的なリガンドは、例えば、SYBYL(商標)(Tripos,Inc.)、QUANTA(Accelrys Inc.)、INSIGHT(商標)−II(Accelrys Inc.)、GRIN/GRID(Molecular Discovery Ltd.)、UNITY(商標)(Tripos,Inc.)、LigBuilder〔Want,R.,J.Mol.Model 6:498−516(2000)〕、又はSPROUT〔University of Leeds(英国)のICAMS(Institute for Computer Applications in Molecular Sciences)により開発されそして配給されている(Gillet,V.ら,J.Comput.Aided Mol.Design 7:127−153(1993))〕に見出される標準的なモデリング方法を用いて作り上げることができる。
【0186】
潜在的な活性のインヒビター及び/又はエンハンサを同定した後、化合物の市販のライブラリからそのインヒビター及び/又はエンハンサを選択することができるか又はそれに代えてその潜在的なインヒビター及び/又はエンハンサを合成してMEK1、MEK2又は構造的に関連したペプチドの活性へのその効果(複数を含む)をアッセイすることができる。必要により、アッセイは放射性であることができる。しかしながら、好ましい態様においては、アッセイは非放射性ELISAである。
【0187】
コンピュータモデリングを介して潜在的なリガンドをスクリーニングし同定する一つの態様において、方法は、(a)MEK−1ペプチド、MEK−2ペプチド、構造的に関連したペプチド又はMEK1、MEK2又はMEK様ペプチド結合ポケットの3次元表現を作成すること;(b)潜在的なリガンドを新たに(例えば、コンピュータ的に)設計する及び/又は構築すること;及び(b)MEK1、MEK2又はMEK様結合部位(複数を含む)と結合するリガンドを同定すること、を含んでいる。前記リガンドは、例えば、そのリガンドをMEK1又はMEK2を表現する細胞と接触させることによって、同定することができる。MEK1又はMEK2インヒビターは、例えば、細胞内でERK1のMEK1又はMEK2触媒されるリン酸化を阻害する化合物として、同定することができる。細胞は、限定的でなく、酵母細胞又は脊椎動物を含む、真核細胞であることができる。好ましくは、細胞は哺乳動物の細胞である。さらに好ましくは、細胞はヒトの細胞である。タンパク質アッセイは、インビボ、インサイチュ又はインビボであることができるが、好ましくはインビトロアッセイである。一つの前記態様において、ERK1のMEK1又はMEK2触媒されるリン酸化は、細胞内でMEK活性の直接的リードアウトとしてERKホスホ特異的抗体を用いたERKジリン酸化のウェスタンブロット分析により測定することができる。MEK1又はMEK2リガンドの阻害活性もインビトロ、エクスビボ又はインビボアッセイによりスクリーニングすることができる。別の態様において、アッセイは、基質としてキナーゼ不活性ERK1(GSTERK1K71R)のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質を用いて実施する。
【0188】
コンピュータモデリングを介して潜在的なリガンドをスクリーニングし及び同定する別の態様において、その方法は、(a)MEK1、MEK2、構造的に関連したペプチド又はMEK−1、MEK−2又はMEK様ペプチド結合ポケットの3次元表現を作成すること;(b)公知の潜在的なリガンドを(例えば、コンピュータ的に)構築し、必要により修飾すること;及び(c)MEK−1、MEK−2又はMEK様結合ポケット結合部位(複数を含む)と結合するリガンドを同定すること、を含んでいる。
【0189】
別の態様において、化合物スクリーニング及び同定方法は、例えば、(a)MEK1、MEK2又はMEK様仮想的結合空洞であって、結合部位によって規定される結合空洞を作成すること;(b)結合空洞に空間的に一致する化合物構造を(例えば、コンピュータ的に)設計すること;(c)化合物及び必要によりそのアナログを合成すること、及び(d)その化合物が結合部位の少なくとも一つと結合するかどうかを決定するために試験すること、によってMEK1又はMEK2活性インヒビター及び/又はエンハンサとして機能する新たな化合物の能力を評価することを含んでいる。
【0190】
別の態様において、化合物スクリーニング及び同定方法は、例えば、(a)結合部位により規定されるMEK1、MEK2又はMEK様仮想的結合空洞を作成すること;(b)公知の化合物構造を(例えば、コンピュータ的に)作成し、及び、必要により修飾すること;(c)その化合物が結合空洞と空間的に一致するかどうかを決定すること;(d)化合物及び必要によりそのアナログを合成すること;及び(e)その化合物が少なくとも一つの結合部位に結合するかどうかを試験して決定することにより、MEK1又はMEK2活性インヒビター及び/又はエンハンサとして機能する公知化合物の能力を評価することを含んでいる。
【0191】
別の態様において、潜在的なリガンドが選択されている場合、同定方法は、(a)潜在的なリガンドを結合させたMEK1、MEK2、又は構造的に関連したペプチドの3次元表現を作成すること;(b)その3次元表現に基づいて潜在的なリガンドを修飾すること;及び(c)修飾した潜在的なリガンドを結合させた第二の3次元表現を作成することを含んでいる。次いで、所望ならば、当業者に公知の生化学的アッセイにおいて潜在的なリガンドを試験することができる。
【0192】
更に、潜在的なリガンドを同定する場合、補足的結晶は、MEK1、MEK2、又は構造的に関連したペプチド、及び必要により補助因子と複合のリガンドを含んで増殖(grow)させることができる。例えば、分子置き換え分析を用いて補足的結晶の3次元構造を決定することができる。分子置き換え分析は、最初の結晶構造決定にも用いることができる。
【0193】
本発明において提供される、構造を基礎とする薬剤設計ストラテジーのすべてにおいて、任意の又はすべての工程の多数の反復サイクルを実施して選択を最適化することができる。
【0194】
このように、別の態様に従って、本発明は、上記の方法の任意の一つ又は組み合わせによって生成される又は同定される、MEK1、MEK2及びMEK様ペプチド結合ポケット(複数を含む)と結合する化合物を提供する。
【0195】
《MEK1及びMEK2バリアント》
上記のように、本発明は、本発明によるタンパク質のアミノ酸配列の明白なバリアント、例えば、天然に存在する成熟型のタンパク質、対立遺伝子(allelic)/配列のバリアントのタンパク質、天然には存在しない組換え的に誘導されたバリアントのタンパク質、及びオルソログ及びパラログのタンパク質も提供し及び可能とする。前記バリアントは、組換え核酸技術及びタンパク質生化学の分野における当業者により公知の技術を用いて作成することができる。しかしながら、バリアントは本発明の前に開示されたタンパク質又はペプチドを除外していることは理解されよう。
【0196】
前記バリアントは、本明細書に開示の分子技術及び配列情報を用いて容易に同定/製造することができる。更に、前記バリアントは、本発明のタンパク質に相同な配列及び/又は構造に基づいて他のタンパク質から容易に識別することができる。存在する相同/同一の程度は、主としてペプチドが機能的なバリアント又は非機能的なバリアントであるかどうかということ、パラログファミリーに存在する分岐(divergence)の量、及びオルソログ間の進化的な距離に基づいているであろう。2つのタンパク質又はペプチド間の構造的関係を述べるために一次配列を用いるための別の方法は、2つの関連したタンパク質の3次元構造を使用することである。この方法において、2つの構造は、X線結晶学により又はNMRにより解明され、そして次いで類似性は、2つの種の主鎖CαトレースのRMS(RMS)偏差を比較することにより決定される。
【0197】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の一致(identity)率を決定するために、配列を最適の比較の目的に対してアラインさせる(例えば、ギャップを、最適なアラインメントのために第一及び第二のアミノ酸又は核酸の一方又は両方の中に導入することができ、そして非相同配列を比較の目的に対して無視することができる)。本発明の一つの観点において、比較目的のためにアラインされる参照(reference)配列の長さは、少なくとも30%、好ましくは40%、更に好ましくは50%、一層更に好ましくは60%である。一つの好ましい態様において、その長さは、参照配列の長さの、好ましくは少なくとも70%、更に好ましくは80%、又は最も好ましくは90%又はそれ以上である。次いで、対応するアミノ酸位置又は核酸位置におけるアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列における位置が、第二の配列における対応する位置として同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占有される場合には、その分子はその位置で同一である(本明細書に用いる場合、アミノ酸又は核酸「一致(identity)」はアミノ酸又は核酸「相同(homology)」と同等である)。2つの配列間の一致率は、2つの配列の最適なアラインメントに対して導入されることが必要である、各ギャップの長さ、及びギャップの数を考慮に入れて、配列により分けられる同一の位置の数の関数である。
【0198】
配列の比較並びに2つの配列間の一致率及び類似率の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成することができる。(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.編,Oxford University Press,ニューヨーク州,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.編,Academic Press,ニューヨーク州,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.編,Humana Press,ニュージャージー州,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.編,M Stockton Press,ニューヨーク州,1991)。好ましい態様において、2つのアミノ酸配列間の一致率は、市販され入手可能なコンピュータプログラム(例えば、GCGソフトウェアパッケージ中のGAP)内に組み込まれている、Needleman and Wunsch[J.Mol.Biol.(48):444−453(1970)]アルゴリズムを用いて、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックス、及び16、14、12、10、8、6又は4のギャップ重量及び1、2、3、4、5又は6の長さ重量を用いて、決定する。更に別の好ましい態様において、2つのヌクレオチド配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージ[Devereux,J.ら,Nucleic Acids Res.12(1):387(1984)]内にGAPプログラムを含んでいる市販され入手可能なコンピュータプログラム、NWSギャップDNA CMPマトリックス及び40、50、60、70又は80のギャップ重量及び及び1、2、3、4、5又は6の長さ重量を用いて決定することができる。別の態様において、2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間の一致率は、市販され入手可能なコンピュータプログラム[例えば、ALIGN(ヴァージョン2.0)]内に組み込まれているE.Meyers and W.Miller[CABIOS、4:11−17(1989)]のアルゴリズムを用い、PAM120重量残基テーブル、12のギャップ長さペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いて決定する。
【0199】
本発明の核酸及びタンパク質配列は、更に、配列データベースに対する調査を実施するための「クエリー配列」として用いて、例えば、他のファミリーメンバー又は関連した配列を同定することができる。前記調査は、市販され入手可能なサーチエンジン、例えば、Altschul等[J.Mol.Biol.215:403−10(1990)]のBLASTN and BLASTXプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTヌクレオチド調査は、BLASTNプログラム、スコア=100、ワード長さ=12を用いて実施して、本発明の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質調査は、BLASTXプログラム、スコア=50、ワード長さ=3を用いて実施して、本発明のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップドアラインメントを得るために、Gapped BLASTを、Altschul等[Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402(1997)]に記載のように利用することができる。BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、BLASTX及びBLASTN)のデフォルトパラメータを用いることができる。
【0200】
本発明のタンパク質の一つを含む完全長のクローンは、本発明のキナーゼの一つに対して完全な配列一致を有しており、並びに本発明において提供されるMEK1又はMEK2ペプチドとして同じ遺伝子座によりコードされるものとして容易に同定することができる。
【0201】
ペプチドの対立遺伝子のバリアントは、タンパク質の少なくとも一部に対して高度の(有意な)配列相同/一致を有しており、並びに本発明において提供されるMEK1又はMEK2ペプチドと同じ遺伝子座によりコードされるものとして容易に同定することができる。本明細書で用いる場合、2つのタンパク質(又はタンパク質の領域)は、アミノ酸配列が典型的には少なくとも70%、好ましくは75%、更に好ましくは80%、又は一層更に好ましくは85%又はそれ以上相同である場合に有意な相同を有している。一つの好ましい態様において、それは少なくとも90%、又は好ましくは95%又はそれ以上相同である。本発明によれば、有意に相同なアミノ酸配列は、以下で更に十分に記載されるストリンジェントな条件下でタンパク質コード核酸分子にハイブリダイズする核酸配列によってコードされる。
【0202】
タンパク質のパラログは、MEK1又はMEK2ペプチドの少なくとも一部に対してある程度の有意な配列相同/一致を有しており、同じ種由来の遺伝子によりコードされ、及び同様な活性又は機能を有しているものとして容易に同定することができる。2つのタンパク質は典型的には、アミノ酸配列が典型的には、所定の領域又はドメインを介して少なくとも70%、好ましくは75%、更に好ましくは80%、一層更に好ましくは85%又はそれ以上相同である場合にパラログと考えられる。好ましい態様において、2つのタンパク質は典型的には、所定の領域又はドメインを介してアミノ酸配列が典型的には90%又はそれ以上、好ましくは95%又はそれ以上相同である場合にパラログと考えられる。前記パラログは、以下で更に十分に記載されるストリンジェントな条件下でキナーゼペプチドコード核酸分子にハイブリダイズする核酸配列によってコードされる。パラログの一例は、MEK2とMEK1との間の関係である。これらのタンパク質は全体で80%相同であり、キナーゼドメインにおいて85%相同であり、そしてATP−及びリガンド−結合ドメインにおいて100%相同である。更に、MEK2がMEK1インヒビターにより阻害される場合、及び活性部位が同一であることが見出された場合、MEK1ペプチドの3次元構造又はX線結晶学的座標を用いてMEK2インヒビターを同定することができる。逆に、MEK2ペプチドの3次元構造又はX線結晶学的座標を用いてMEK1インヒビターを同定することができる。
【0203】
タンパク質のオルソログは、タンパク質の少なくとも一部に対してある程度有意な配列相同/一致を有しており、並びに他の生物由来の遺伝子によりコードされるものとして容易に同定することができる。好ましいオルソログは、ヒトの治療標的及び治療剤の開発のために、哺乳動物、好ましくはヒトから単離され、又は殺虫剤及び殺虫標的の開発のために、他の無脊椎動物、とりわけ、経済的/農業的に重要な昆虫、例えば、鱗翅類(Lepidopteran)目及び甲虫類(Coleopteran)目のメンバーから単離される。前記オルソログは、タンパク質を生成する2つの生物の関連性の程度に応じて、以下に更に記載するように、穏和(moderate)からストリンジェントまでの条件下で、MEK1又はMEK2をコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸配列によりコードされる。
【0204】
本発明のMEK1又はMEK2ペプチドの天然に存在しないバリアントは、組換え技術を用いて容易に作成することができる。前記バリアントの例として、限定的でなく、タンパク質のアミノ酸配列における欠失、付加及び置換を挙げることができる。例えば、置換の一つの種類は、保存されたアミノ酸置換である。前記置換は、同様な特徴の他のアミノ酸によりタンパク質中の所定のアミノ酸を置換するものである。典型的には、保存的な置換として、脂肪族のアミノ酸であるAla、Val、Leu及びIleの中での、相互の置換;ヒドロキシ残基Ser及びThrの交換;酸性残基Asp及びGluの交換;アミド残基Asn及びGln間の置換;塩基性残基Lys及びArgの交換;及び芳香族残基Phe、Thrの中の置換が見られる。アミノ酸変化が表現型的に活動しない(silent)ようにすることに関するガイダンスは、Bowieら,Science247:1306−1310(1990)に見出せる。
【0205】
バリアントは、一つ又はそれ以上の活性において充分に機能的であることができるか又は機能を欠いていることができる。充分に機能的であるバリアントは、典型的には、保存的変更(variation)又は重要でない(non−critical)残基における若しくは重要でない領域における変更のみを含んでいる。機能的なバリアントは、機能において何も変化を生じないか又は有意でない変化を生じる、同様なアミノ酸の置換も含んでいることができる。これに代えて、前記置換は、機能にある程度まで正に又は負に影響を与えることがある。
【0206】
機能について本質的であるアミノ酸は、当業者に公知の方法、例えば、部位突然変異又はアラニンスキャンニング変異誘発(mutagenesis)[Cunninghamら,Science244:1081−1085(1989)]により同定することができる。後者の方法は、分子内のすべての残基に単一のアラニン変異を導入する。次いで、得られたバリアント分子を生物学的活性、例えば、レセプター結合又はインビトロ増殖活性について試験する。結合に対して重要な部位も、構造的分析、例えば、X線結晶学、核磁気共鳴又は光親和性標識によって決定することができる[Smithら,J.Mol.Biol.224:899−904(1992);de Vosら,Science255:306−312(1992)]。
以下の実施例により本発明の好ましい態様及び観点を説明するが、これらにより限定されないことを意図する。
【0207】
【実施例】
【実施例1】
《修飾MEK1のクローニング》
ヒトMEK1cDNA(GenBank受付番号L11284、配列番号1)をPCRにより修飾し、5’Ndel/3’HindIII部位でpET24b(Novagen)中にサブクローニングした。以下のオリゴヌクレオチドを有する5’Ndel及び3’HindIII制限部位の付加により、pET21b及びpET24b発現ベクター中へのクローニングのために、PCRにより野生型MEK1を修飾した:
5’CATATGCCGAAAAAGAAGCCGACCCCGATCCAG3’(配列番号5)
5’AAGCTTGACGCCAGCAGCATGGGTT3’(配列番号6)
【0208】
PCRの条件は以下のとおりとした:100μLの反応容積中に20ngのMEK DNA、20pmolの5’及び3’プライマー、200μMのdNTPミックス、1xPCR10xVent緩衝液、1単位VentDNAポリメラーゼ。反応は、95℃で5分間(1サイクル)、その後95℃で1分間、56℃で1分間、72℃で1分30秒間を25サイクル実行した。大腸菌中のtRNAバイアスに関するbp73からbp99に及ぶ領域で野生型MEK1(「MEK1(wt)」)配列を変更し、太字及び下線で強調した以下の塩基変化を生じた:
【化3】
Figure 2004000135
(配列番号2の73〜99番目のアミノ酸残基)。MEK1のNH末端トランケート[配列番号2番目のアミノ酸51〜393をコードし、C1(「MEK1−C1」)と称する]も、PCRにより生成した。5’Ndel/3’Xhol部位でpET21b(Novagen,Madison,ウィスコンシン州)中に、MEK1−C1クローンをサブクローニングした。更に、残基280〜323からなる富プロリン挿入ループの欠失によりMEK1(wt)及びMEK1−C1クローンの両方を修飾し、それぞれMEK1(wt)(d280−323)及びMEK1−C1(d280−323)を得た。この欠失は、以下の配列:AAG(K280)CTT(L323)を有する残基324及び325をコードする内部HindIII部位を導入することにより作製した。アミノ酸279(V)の下流3‘末端にHindIII部位を含有するよう、PCRにより、前記欠失に対するN末端のコード配列を含有する断片A[(MEK1(wt)に関してはアミノ酸1〜279、MEK1−C1に関しては51〜279)]を修飾した。次にこの断片を、HindIII部位になるようアミノ酸324及び325に関するコドン変化を含めた残基324〜393に関する配列を含有する0.2kb断片である断片Bに連結した。MEK1(wt)(d280−323)及びMEK1−C1(d280−323)クローンの両方を、5’Ndel/3’Xhol部位でpET21b(Novagen,Madison,ウィスコンシン州)中にサブクローニングした。自動シーケンシング装置(ABI technologies)中でMEK1特異的シーケンシングプライマーを用いて、全修飾MEKcDNA配列を立証した。一旦ヌクレオチド配列が得られたら、それをMEK1に関する寄託配列と比較して、配列完全性を確証した。
【0209】
同様の手法に従って、以下のNH末端トランケートMEK1ペプチドを調製した:
MEK1−C2:配列番号2の配列のアミノ酸残基62〜393のペプチドを有するNH末端トランケートMEK1。
MEK1−C2(d280−323):配列番号2の配列のアミノ酸残基280〜323の欠失を有するMEK1−C2。
MEK1−C3:配列番号2の配列のアミノ酸残基42〜393のペプチドを有するNH末端トランケートMEK1。
MEK1−C3(d280−323):配列番号2の配列のアミノ酸残基280〜323の欠失を有するMEK1−C3。
MEK1(d280−323):配列番号2番目のアミノ酸残基280〜323の欠失を有するMEK1。
MEK1(d264−310):配列番号2番目のアミノ酸残基264〜310の欠失を有するMEK1。
MEK1(d270−310):配列番号2番目のアミノ酸残基270〜310の欠失を有するMEK1。
MEK1(d264−305):配列番号2番目のアミノ酸残基264〜305の欠失を有するMEK1。
MEK1(d267−307):配列番号2番目のアミノ酸残基267〜307の欠失を有するMEK1。
MEK1(d265−304):配列番号2番目のアミノ酸残基265〜304の欠失を有するME(ソフトウェアは、標準化ジオメトリーでのPDB分子構造ファイルに水素を付加するために用いられて、OH、SH、NH 、Metメチル、Asn及びGln側鎖アミド及びHis環の配向を最適化し得る)K1。
【0210】
修飾MEK1のPCRのために、以下のプライマーを用いた。
Figure 2004000135
【0211】
【実施例2】
《修飾MEK2のクローニング》
ヒトMEK2cDNA(GenBank受付番号NM_030662、配列番号3)をPCRにより修飾し、5’Ndel/3’HindIII部位でpET24b(Novagen)中にサブクローニングした。以下のオリゴヌクレオチドを有する5’Ndel及び3’HindIII制限部位の付加により、pET24b発現ベクター中へのクローニングのために、PCRにより野生型MEK2を修飾した:
Figure 2004000135
PCRの条件は以下のとおりとした:100μLの反応容積中に20ngのMEK DNA、20pmolの5’及び3’プライマー、200μMのdNTPミックス、1xPCR10xVent緩衝液、1単位VentDNAポリメラーゼ。反応は、95℃で5分間(1サイクル)、その後95℃で1分間、56℃で1分間、72℃で1分30秒間を25サイクル実行した。
野生型ヒトMEK2cDNAの6つのN末端トランケートをPCR増幅により生成し、pET201 TA−TOPOベクター(Invitrogen)中にクローン化した。各々をC末端His6タグと融合する。
【0212】
テンプレートDNApET24bMEK2野生型のシーケンシングは、アミノ酸残基V64上のサイレント突然変異(GTCからGTT)を明示した。
PCRの条件は、以下のとおりとした:100μLの反応容積中にpET24bMEK2野生型DNA1ng/μL、5’及び3’プライマー1μΜ、1xPfx増幅緩衝液、0.3mM−dNTP混合物、5単位プラチナPfxDNAポリメラーゼ。反応は、94℃で3分間(1サイクル)、その後94℃で1分間、55℃で30秒間、68℃で1分30秒間を35サイクル実行し、更に68℃で10分間(1サイクル)実行した。0.1mMdATP及び2.5単位のTaqDNAポリメラーゼを加えた前記PCR混合物中での68℃で10分間(1サイクル)により、PCR産物の3’Aオーバーハングを付加した。
【0213】
6つの変更NH末端トランケートを修飾MEK2ペプチドの作製に用いた。6つの構築物は各々、COOH末端に融合されたヘキサヒスチジンタグを保有した:
MEK2−C1:配列番号3の配列のアミノ酸残基46〜400;
MEK2−C2:配列番号3の配列のアミノ酸残基55〜400;
MEK2−C3:配列番号3の配列のアミノ酸残基66〜400;
MEK2−C4:配列番号3の配列のアミノ酸残基59〜400;
MEK2−C5:配列番号3の配列のアミノ酸残基62〜400;
MEK2−C6:配列番号3の配列のアミノ酸残基64〜400;
【0214】
MEK2N末端トランケートのPCR生成のために、以下のプライマーを用いた:
MEK2−C1:フォワードプライマー:5’ATGCTTGACGAGCAGCAGAAGAAG3’(配列番号13)
MEK2−C2:フォワードプライマー:5’ATGGAAGCCTTTCTCACCCAGAAAGCC3’(配列番号14)
MEK2−C3:フォワードプライマー:5’ATGGCCTTTCTCACCCAGAAAGCC3’(配列番号15)
MEK2−C4:フォワードプライマー:5’ATGACCCAGAAAGCCAAGGTTGG3’(配列番号16)
MEK2−C5:フォワードプライマー:5’ATGGCCAAGGTCGGCGAACTCAAAGAC3’(配列番号17)
MEK2−C6:フォワードプライマー:5’ATGGTCGGCGAACTCAAAGACGATGAC3’(配列番号18)
【0215】
前記の6つのMEK2トランケートすべてに関する共通リバースプライマー:5’TCAATGATGATGATGATGATGTTCAAGCACAGCGGTGCGCGTGGGTG3’(配列番号19)。
自動シーケンシング装置(ABI technologies)中でpET201ベクターシーケンシングプライマー(T7プロモーター及びT7ターミネータープライマー)を用いて、前記6つのMEK2トランケートに関する配列を立証した。一旦ヌクレオチド配列が得られたら、それをMEK2に関する寄託配列と比較して、配列完全性を確証した。
【0216】
【実施例3】
《大腸菌における修飾MEK1の大規模発現》
実施例1から得られた組換えMEK1構築物を、富栄養(rich)培地を含有する10リットル発酵機中の大腸菌BL21(DE3)中で37℃で増殖させた。100μLのグリセロールストックをLB培地の1L振盪フラスコに接種することにより、カナマイシン耐性MEK1の出発培養を増殖させた。250rpmに設定した振盪インキュベーター中で30℃で一夜、培養を増殖させた。翌朝、培養の全量を、スーパーブロス(KD Medical,Columbia,MD)、あるいは、レシピを用いて調製した富栄養培地を含有する10リットル発酵機に添加した。なお、前記レシピでは、酵母抽出物(Difco 0127)260.0g、BBLアシジカーゼペプトン260.0g、カシトン(Difco 0259)260.0g)を蒸留水中に溶解して4.0Lとする。ドライゲラトン(Difco 0657)260.0g、次に無水KHPO26.0g、無水KHPO26.0g、NaHPO・7HO26.0g(蒸留水で溶解して、2.0Lとしたもの)を添加し、0.5%(v/v)グリセロールを添加する。600nmでの光学濃度10で、温度を22〜25℃に1時間低減し、1.0mMの濃度へのIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)の付加により、組換えタンパク質発現を誘導した。グリセロール補充を伴わない富栄養培地調製に関しては、誘導後18時間目に発酵機をハーベストした。グリセロール補充を伴う富栄養培地調製又はスーパーブロス調製に関しては、誘導後36時間目に発酵機をハーベストした。典型的収量は、約700g全細胞/10L発酵であった。
【0217】
細胞ペレットを、50mM−KHPO、2mM−TCEP[トリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン]、300mM−NaCl、5mM−MgCl、10mM−CHAPS[3−([3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホネート]、pH8.0中に1:5(w/v)で再懸濁した。Dyno−Mill KDLを用いて、細胞破砕を実行した。50μLのベンゾナーゼ(EM Industries,Hawthorne,ニューヨーク州)を溶解中に含入した。4℃で13,600xgで45分間の遠心分離により、溶解物を清澄化した。
【0218】
【実施例4】
《大腸菌における修飾MEK2の大規模発現》
実施例2から得られた組換えMEK2構築物を、富栄養培地を含有する10リットル発酵機中の大腸菌BL21(DE3)中で37℃で増殖させた。100μLのグリセロールストックをLB培地の1L振盪フラスコに接種することにより、カナマイシン耐性MEK1の出発培養を増殖させた。250rpmに設定した振盪インキュベーター中で30℃で一夜、培養を増殖させた。翌朝、培養の全量を、スーパーブロス(KD Medical,Columbia,MD)、あるいは、レシピを用いて調製した富栄養培地を含有する10リットル発酵機に添加した。なお、前記レシピでは、酵母抽出物(Difco 0127)260.0g、BBLアシジカーゼペプトン260.0g、カシトン(Difco 0259)260.0g)を蒸留水中に溶解して4.0Lとする。ドライゲラトン(Difco 0657)260.0g、次に無水KHPO26.0g、無水KHPO26.0g、NaHPO・7HO26.0g(蒸留水で溶解して、2.0Lとしたもの)を添加し、0.5%(v/v)グリセロールを添加する。600nmでの光学濃度10で、温度を22〜25℃に1時間低減し、1.0mMの濃度へのIPTG(イソプロピルチオ−β−D−ガラクトシド)の付加により、組換えタンパク質発現を誘導した。グリセロール補充を伴わない富栄養培地調製に関しては、誘導後18時間目に発酵機をハーベストした。グリセロール補充を伴う富栄養培地調製又はスーパーブロス調製に関しては、誘導後36時間目に発酵機をハーベストした。典型的収量は、約700g全細胞/10L発酵であった。
【0219】
細胞ペレットを、50mM−KHPO、2mM−TCEP[トリ(2−カルボキシエチル)ホスフィン]、5mMイミダゾール、300mM−NaCl、5mM−MgCl、2mMピロール−2−カルボキシレート及び100μM−ZnCl、10mM−CHAPS[3−([3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)−1−プロパンスルホネート]、pH8.0中に1:3(w/v)で再懸濁した。Dyno−Mill KDLを用いて、細胞破砕を実行した。50μLのベンゾナーゼ(EM Industries,Hawthorne,ニューヨーク州)を溶解中に含入した。4℃で13,600xgで45分間の遠心分離により、溶解物を清澄化した。
【0220】
【実施例5】
《修飾MEK1の精製》
細胞溶解物を1:1で2x結合緩衝液(50mM−KHPO、10mMイミダゾール、4mM−TCEP、300mM−NaCl、10mM−CHAPS、2mMピロール−2−カルボキシレート及び100μM−ZnCl、pH=8.0)と混合し、洗浄タロン[TALON(商標)]金属親和性樹脂(Clontech、カタログ番号8908−2)と樹脂2mL/細胞1gの比率で一緒にした。混合物を4℃で1時間攪拌し、次に5−Lアミコン(Vantage−S)カラム中にバッチ投入した。ベースライン読取値に達するまで、洗浄緩衝液(50mM−KHPO、5mMイミダゾール、2mM−TCEP、pH8.0、300mM−NaCl、1mMピロール−2−カルボキシレート、50μM−ZnCl)であらゆる付加的非結合タンパク質/不純物を溶離した。タンパク質を、4〜5カラム容積の溶離緩衝液(20mM−HEPES、100mM−EDTA二ナトリウム塩、2mM−TCEP、pH8.0及び10%v/vグリセロール)で溶離し、ミリポア(S1Y10)らせんカートリッジを用いて10倍に濃縮した。次にタンパク質濃縮物をHS緩衝液A[20mM−MES(2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸)、2mM−TCEP、pH6.4及び20%エチレングリコール]中で10倍に希釈し、予備平衡HSカラム(POROSHS/20 25x100、Applied Biosystems)に投入した。0〜100%HS緩衝液B(緩衝液A及び1M酢酸アンモニウム)の線状勾配でタンパク質を溶離した。タンパク質含有分画を一緒にプールし、ミリポア限外濾過攪拌セル(YM10膜)を用いて濃縮した。次にタンパク質濃縮物をHQ緩衝液A[20mM−TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2mM−TCEP、pH8.0及び10mM酢酸アンモニウム]中で50倍希釈し、予備平衡HQカラム(POROS HS/20 16x100、Applied Biosystems)に投入した。タンパク質を非結合分画中で溶離し、そして直ちにミリポア限外濾過攪拌セル(YM10膜)を用いて濃縮した。10倍モル過剰量の阻害剤を付加し、4℃で一夜攪拌することにより、タンパク質:阻害剤複合体を精製した。次に0.22μmポリエーテルスルホンフィルターを用いて試料を濾過し、YM10膜適合攪拌セルを用いて更に濃縮し、8000rpmで4℃で30分間遠心分離し、予備平衡サイズ排除カラム(HiLoad26/60スーパーデックス200調製グレード、Pharmacia,#17−1071−01)に投入した。サイズ排除クロマトグラフィー緩衝液(20mM−HEPES、0.5mM−EDTA二ナトリウム塩、2mM−TCEP、pH7.5及び150酢酸アンモニウム及び50nM阻害剤)を用いて、約5時間でタンパク質を溶離した。3成分複合体を生成するために用いられた阻害剤は、5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドであった。タンパク質含有分画を一緒にプールし、ミリポア限外濾過攪拌セル(YM10膜)を用いて濃縮し、14,000rpmで4℃で10分間遠心分離し、微小遠心管中にアリコートし、液体窒素中に急速冷凍した。結晶化のために必要となるまで、−80℃でタンパク質アリコートを貯蔵した。アポタンパク質の精製のために同一手法に従ったが、但し、濃縮HQフロースルーを予備平衡サイズ排除カラムに直接投入した。
【0221】
【実施例6】
《修飾MEK2の精製》
細胞溶解物を、洗浄タロン[TALON(商標)]金属親和性樹脂(Clontech、カタログ番号8908−2)と細胞5gあたり樹脂1mLの比率で一緒にした。混合物を4℃で1時間攪拌し、次にBiorad Econoカラム中にバッチ投入した。ベースライン読取値に達するまで、洗浄緩衝液(50mM−KHPO、5mMイミダゾール、2mM−TCEP、pH8.0及び300mM−NaCl、1mMピロール−2−カルボキシレート、50μM−ZnCl)であらゆる付加的非結合タンパク質/不純物を溶離した。タンパク質を、4〜5カラム容積の溶離緩衝液(20mM−HEPES、100mM−EDTA二ナトリウム塩、2mM−TCEP、pH7.5及び10%v/vグリセロール)で溶離した。次に、溶離タンパク質をHS緩衝液A[20mM−MES(2−(N−モルホリノ)−エタンスルホン酸)、2mM−TCEP、pH6.4及び20%エチレングリコール]中で10倍に希釈し、予備平衡HSカラム(POROS HS/20 25x100、Applied Biosystems)に投入した。0〜100%HS緩衝液B(緩衝液A及び1M酢酸アンモニウム)の線状勾配でタンパク質を溶離した。タンパク質含有分画を一緒にプールし、ミリポア限外濾過攪拌セル(YM10膜)を用いて濃縮した。次にタンパク質濃縮物を予備平衡サイズ排除カラム(HiLoad26/60スーパーデックス200調製グレート、Pharmacia,#17−1071−01)に投入した。SEC緩衝液(20mM−HEPES、0.1mM−EDTA二ナトリウム塩、2mM−TCEP、pH7.5及び150酢酸アンモニウム)を用いて、約5時間でタンパク質を溶離した。タンパク質含有分画をプールし、絶えず攪拌しながら、タンパク質溶液中に10倍モル過剰量のリガンド{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミン(DMSO中に溶解)を滴下することにより、タンパク質:リガンド複合体を生成した。4℃で一夜攪拌後、YM10膜適合攪拌セルを用いて複合体を濃縮し、8,000rpmで4℃で30分間遠心分離し、微小遠心管中にアリコートし、液体窒素中に急速冷凍した。結晶化のために必要となるまで、−80℃でタンパク質アリコートを貯蔵した。
【0222】
【実施例7】
《イン・ビボ及びイン・ビトロMEK1及びMEK2活性検定》
基質としてキナーゼ不活性ERK1のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質(GSTERK1K71R)を用いて、修飾MEK1ペプチドのキナーゼ活性を検定した。20mM−HEPES(N−2−ヒドロキシエチル−ピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸)pH7.5、10mM−MgCl、1mM−EGTA(エチレングリコールビス(2−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−テトラ酢酸)、10μM−ATP(5μCi[γ−32P]ATPを含む)中で、修飾MEKペプチド(50ng)を検定した。適切な試料は、付加された0.5単位のRaf−1(UBI)を有し、1μg−GSTERK1(K71R)の付加により反応は開始した。反応物を室温で20分間インキュベートし、次に5μLの6xLaemmli試料緩衝液で急冷した。次にSDS−PAGEにより試料を分離し、オートラジオグラフィーによりホスホプロテインを可視化した。ゲルからのタンパク質バンドの切取りによりERK中に取り込まれた放射能標識を定量し、標準シンチレーション計数器で計数した。修飾MEK1を用いた初期実験は、Raf活性化後に、pmolPO4/分/mgの単位で以下の特異的活性を生じた:WT:8380.6、
【外1】
Figure 2004000135
:40.1、C1FL:773.3、
【外2】
Figure 2004000135
:35.9、C2FL:537.5、
【外3】
Figure 2004000135
:24.1、C3FL:441.7、
【外4】
Figure 2004000135
:26.9。
【0223】
MEK1:リガンド:補因子複合体の三次元構造情報を用いて設計されたリガンドの評価に際して、5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロピル)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミドを、フィルター底ウエルを有する96ウエルフォーマットプレートに添加した。次にHEPES緩衝液中のキナーゼ不活性ERK1(K71R突然変異体)を、各ウエルに添加する。プレートに添加する前にトリス緩衝液で希釈されたMEK1(2D突然変異体)のその後の添加後に、0.05%Tween20で希釈された放射性ATPの添加により反応を開始する。室温で1時間インキュベーション後、氷冷20%TCAを各ウエルに添加して、反応を停止し、そして溶液中のタンパク質を沈澱させる。翌日、濾過を実行し、その後、Perkin Elmer Wallac microBeta 1450計数機を用いて、取込まれた放射能のシンチレーション計数を実行する。抑制は、ベヒクル対照のパーセンテージとして表される。
【0224】
(1)pMAPKレベルに関するエクス・ビボ組織試料の評価
50mMリン酸グリセロール、10mM−HEPES、pH7.4、1%トリトンx−100、70mM−NaCl、1mM−NaVO、100μM−PMSF、10μMロイペプチン及び10μMペプスタチン(使用の用意ができたときに抑制剤を付加するだけである)の溶解緩衝液を調製した。−70℃で腫瘍を除去し、直ちにドライアイス上に載せる。40〜50mgの各腫瘍を計量し、小刀を用いてスライスする。混合物をポリトロンでホモジェナイズし、2500rpmで4℃で15分間遠心分離した。上清を15mLファルコン管に移した。次にタンパク質検定を実行して、タンパク質を規準化して、約15μgとした。溶解物の量によって、5μL〜10μLの6X laemmliを各管に添加した。混合物を3分間沸騰させ、回転し、10%トリス−グリシン(tris−gly)ゲル上を140Vで泳動させた(Bio−Rad)。125Vで1.5〜2時間、転写を行った。膜を水中ですすぎ、次にTBST(トリス緩衝化食塩水−Tween20)、1%BSA及び1%卵白アルブミンのブロッキング溶液中に入れた。膜をTBST中で5分間3回すすぎ、次に第一抗体(Promega)中に3〜4時間入れた。次に膜をTBST中で5分間洗浄し、第二抗体(Bio−Radヤギ抗ウサギHRP)中に1.5時間入れた。ECL(Pierce)によりブロットを可視化した。リン酸化MAPKとして同定されるタンパク質バンドを、BioradFlur−Sマルチイメージャーマックスを用いた濃度測定により測定した。
【0225】
(2)イン・ビボColon26細胞MAPキナーゼウエスタン検定:
1日目:Colon26(ネズミ)細胞を、およそ2x10細胞/ウエル(1.5 mL/ウエル)で12ウエルプレート中に植付けた。DMEM/F12#11330−032(Gibco)、10%FBS及び1%抗生物質/抗真菌剤からなる培地中で細胞を増殖させて、37℃、5%COで一夜インキュベートした。
2日目:96ウエルプレート中で(1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、及び0.001μM)の濃度で、DMSO中で化合物を調製した。細胞調製におけるDMSO濃度は、0.2%より高くてはならず、従って、総計3μLの各DMSO溶液を、細胞を含有する1.5mLウエルに添加した。次に、5%COインキュベーター中で37℃で1時間、細胞をインキュベートした。
【0226】
プレート及びエッペンドルフ管を氷上に保持した。細胞をPBS(1mM−NaVO含有)1mL中で洗浄し、その後、PBSを除去した。70mM−NaCl、50mMリン酸グリセロール、10mM−HEPES、pH7.4、1%トリトンX−100、1mM−NaVO、100μM−PMSF、10μMロイペプチン及び10μMペプスタチンを含有する溶液100μL中で細胞を溶解することによる処理後、細胞MAPKのトレオニン及びチロシンリン酸化の状態を測定した。細胞をウエルから掻き取り、エッペンドルフ管に移した。エッペンドルフ管を13,000rpmで4℃で5分間回転させた。次に上清を冷却エッペンドルフ管に移し、ペレットを捨てた。次にPierceBCAタンパク質検定を実行して、タンパク質を20μgに規準化した。10%トリス−グリシン10ウエル又は15ウエルゲルにロードし、130Vで1.5時間、ゲルを泳動させた。125Vで2時間又は25Vで一夜、転写を行った。膜を水中ですすぎ、次にブロッキング溶液中に1〜18時間置いた。膜をTBST中で5分間3回すすぎ、次に第一抗体(pMAPK)中に3〜18時間置いた。次に膜をTBST中で5分間洗浄し、第二抗体(Bio−Radヤギ抗ウサギHRP)中に1時間置いた。最後に膜をTBST中で15分間3回洗浄した。ECL(Pierce)によりブロットを可視化した。リン酸化MAPKとして同定されるタンパク質バンドを、BioradFlur−Sマルチイメージャーマックスを用いた濃度測定により測定した。総MAPKレベルを評価するために、次にブロットを「ストリップ化」し、非リン酸化ERK1及びERK2を認識するポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,カリフォルニア州)の1:1混合物を用いて再プローブした。
【0227】
(3)材料一覧:
TBST緩衝液0.9%NaCl、10mMトリス、0.1%Tween−20、pH7.5
pMAPK  Promega pMAPK:(0.5%BSA中に1:5,000)#V8031−ポリクローナル
第二  BioRadヤギ抗ウサギHRP(0.5%BSA中に1:10,000)カタログ番号170−6515
ブロッキング溶液:TBST中1%BSA、1%卵白アルブミン、フィルター滅菌(0.01%アジ化ナトリウム)。
【0228】
【実施例8】
《MEK1:リガンド:補因子複合体の結晶化》
実施例4に記載した精製タンパク質:リガンド複合体[MEK1−C2、MEK1−C1、MEK1−C1(d280−323)]を急速解凍し、前記のようにサイズ排除クロマトグラフィー緩衝液中に溶解された5mM−Mg−ATPからなる補因子溶液と共に4℃で一夜インキュベートした。インキュベーション後、タンパク質:リガンド:補因子複合体を14,000xgで4℃で30分間遠心分離した。3成分複合体の1μL滴を用いて、13℃でハンギング・ドロップ蒸気拡散により、MEK1C2ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶を成長させた。タンパク質対沈澱剤の比は、1mLウエル溶液全体で1:1であった。用いた沈澱剤は、6〜16%(w/v)PEG8K、150〜450mM−NHPO、20mM−DTT及び100mMイミダゾール/マレート緩衝液、pH7.0であった。結晶は、約8日で約0.2x0.1x0.1mmに成長した。
【0229】
あるいは、実施例4に記載した精製アポタンパク質溶液60μLを、約0.2mgの阻害剤と2〜8時間の期間、一緒にした。次にMEK1ペプチド:リガンド複合体の溶液を、サイズ排除クロマトグラフィー緩衝液中に溶解した5mM−Mg−ATPからなる補因子溶液と共に4℃で一夜インキュベートし、前記と同様に結晶化した。
ウエル溶液で希釈した10%エチレングリコールからなる凍結防止剤溶液中に結晶を浸すことにより、低温データ収集のために結晶を調製した。本手法は、1μL滴の100%エチレングリコール溶液を、結晶を含有する倒立カバーガラスに添加することを含む。低温溶液を9μLのウエル溶液と充分に混合して、10%エチレングリコール低温溶液を作製した。次に混合低温溶液を1:1(v/v)の比で、結晶を含有する滴に添加して、拡散により徐々に混合させた。母液と呼ばれる、結晶を含有する滴は、ここでは、5%エチレングリコールからなる。約2分後、低温/母液溶液から結晶を取り出し、70%パラトン−N(Hampton Research,Laguna Niguel,CAから取得)と30%軽質白色鉱油混合物との混合物に移した(据付低温ループを使用;同様にHampton Research,Laguna Niguel,CAから取得)。次に結晶を油混合物中で操作して、水性溶液を完全に除去し、液体窒素中への直接的浸漬により急速に冷却した。あるいは結晶は、約100Kで冷却窒素ガス流中に浸漬することができる。
【0230】
【実施例9】
《MEK2:リガンド:補因子複合体の結晶化》
実施例6に記載した精製タンパク質:リガンド複合体MEK2−C2を急速解凍し、前記のようにサイズ排除クロマトグラフィー緩衝液中に溶解された5mM−Mg−ATPからなる補因子溶液とともに4℃で一夜インキュベートした。インキュベーション後、タンパク質:リガンド:補因子複合体を14,000xgで4℃で30分間遠心分離した。3成分複合体の1μL滴を用いて、13℃でハンギング・ドロップ蒸気拡散により、MEK2ペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶を成長させた。タンパク質対沈澱剤の比は、1mLウエル溶液全体で1:1であった。用いた沈澱剤は、1.4〜1.85M−NaHPO/KHPO、0〜20mM−DTT、pH6.7〜7.1であった。結晶は、約8日で約0.2x0.1x0.1mmに成長した。
70%パラトン−N(Hampton Research,Laguna Niguel,CA)と30%軽質白色鉱油混合物との混合物(据付低温ループを使用;同様にHampton Research,Laguna Niguel,CAから取得)からなる凍結防止剤溶液中に結晶を浸すことにより、低温データ収集のために結晶を調製した。次に結晶を油混合物中で操作して、水性溶液を完全に除去し、液体窒素中への直接的浸漬により急速に冷却した。あるいは結晶は、約100Kで冷却窒素ガス流中に浸漬することができる。
【0231】
【実施例10】
《MEK1及びMEK2:リガンド:補因子複合体結晶の結晶学的データ収集》(1)回析データの企業内分析及び収集:
オスミック共焦点鏡を装備した50kV及び100mAで操作するRigaku RU−H3R回転アノードX線源に据付けられたR−AXIS IV++で、100ケルビンにて、相決定のために用いられる初期データセットを収集した。結晶と検出器との距離を225mmとし、0度の2θ値で検出器を配置した。0.5度/フレームの回転角度を用い、曝露時間は10分/フレームであった。逆ビーム法を用い、180°離れて2つの80°区域を収集した。
【0232】
(2)シンクロトロンデータ収集:
Advanced Photon Source Argonne,ILで17−IDビームライン(IMCA)で100Kにてそれぞれ2.4Å及び3.2Å解像度で、MEK1及びMEK2のシンクロトロンデータセットを収集した。MEK1データ収集に関しては、1.0Åの波長を用い、検出器までの結晶の距離は170mmであり、MAR CCDを用いて回転角度は0.5度/フレーム、そして曝露時間は10秒/フレームであった。1.0Åの波長を用い、検出器までの結晶の距離は200mmであり、ADSC QUANTUM210CCD検出器を用いた0.5度/フレームの回転角及び10秒/フレームの曝露時間をMEK2データ収集のために用いた。
【0233】
【実施例11】
《初期MEK1:リガンド:補因子複合体の構造決定》
3成分複合体の典型的結晶は、ヘキサゴナル空間群P6に属し、単位セル寸法は約a=b=81.4、c=129.2Å、1分子/非対称単位である。
リガンド中のヨウ素原子により作製される変則シグナルからの企業内データを用いたSAD法を用いて、MEK1の初期結晶構造を解明した。データ収集統計は、測定された25336からの6699変則対の総計であり、反射は36〜3.4Åの分解能範囲で見出された。約83%の反射が冗長度4で測定され、11%の反射が冗長度3で測定され、全体的Rsymm=0.051であった。
【0234】
データはすべて、HKL2000で処理し、SCALEPACKで評価した[Otwinowski et al.,”Processing of x−ray diffraction data collected in oscillation mode,”Methods Enzymol.276:307−326(1997)]。その後の計算はすべて、CNXパッケージ(Molecular Simulations Incorporated)を用いて実行した。ヨウ素原子の単一位置は、3.5Å変則差Pattersonマップから見出され、その後、自動Patterson検索プログラムを用いて確証した。10サイクルの重原子パラメーター(位置的及び熱的)及び相算定を実施した。全体的FOM(figure−of−merit)は、36〜3.5Åの反射に関して0.258であった。密度修正を用いて、相情報における任意の多義性を最小化した。Mattews分析[Matthews,B.W.J.Mol.Biol.491−497(1968)]に従って、64%の溶媒含量を仮定した。密度修正手法後、新規の相はFOM=0.858を有した。的確な鏡像体を見出すために、ヨウ素原子の反転位置座標を有するP6空間群で同様の算定を実行した。両空間群で算定された電子密度の分析は、P6を的確なものであると確証した。より高い分解能データが利用可能になった後、相を2.38Åに拡張した。これらの新規相を用いて算定した2.38Å電子密度マップを、QUNATA−2000グラフアプリケーション(Molecular Simulations Incorporated)を用いてタンパク質モデルトレーシング及び阻害剤及びATPの適合のために使用した。CNX改良プログラム(最小化及び個々の)を用いて、完全性の異なる段階での原子モデルを改良した。2.38Å分解能に関して、ネイティブデータセットは、APSの17IDラインでの1.0Åの波長で収集し、データの720度の完全区域を収集した。放射線誘導性結晶崩壊を最小限にするために、720フレームからの最初の240のみをHKL2000で処理し、SCALEPACKで評価した。この結晶の単位セル寸法は、a=b=81.6、c=129.2Åと概算された。データは、Rsymm=0.044で36〜2.38Å解像度範囲(約95%カバレッジ)で測定された35816からの18590のユニークな反射を含んでいた。
【0235】
【実施例12】
《MEK1:リガンド:補因子構造複合体の改良》
25〜2.4Åからのデータに対してプログラムX−PLORバージョン98.1(Accelrys,San Diego,CA)で実行される多段階最大見込み最小化手法(multi−stage maximum likelihood minimization procedure)を用いて、初期構造座標に対する位置的及び模擬的アニーリング改良を実行した。緩徐寒冷(slow−cool)手法(25Kの過程において3000K〜300K)を用いた1ラウンドの模擬的アニーリングとその後の数サイクルの標準位置的改良は、Rworkを0.372(Rfree=0.428)に低減した。(2Fo−Fc)及び(Fo−Fc)の異なる電子密度マップは明らかに、モデルの側鎖及び阻害剤化合物[5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)ベンズアミド]、ATP及びMg2+のための結合部位のほとんどを明示した。初回のモデル再構築及び位置的改良と、その後の個別拘束B因子改良は、Rworkを0.302(Rfree=0.347)に低減した。大量溶媒補正の適用は更に、Rworkを0.277(Rfree=0.319)に低減した。連続回のモデル再構築、溶媒分子の付加並びに阻害剤及びMgATPにおけるモデリングと、その後の位置的及び拘束個別B改良は、0.223(Rfree=0.276)のRworkを有する最新モデルを生じた。最新モデルは、1つのATP分子、1つのMg2+イオン、1つの阻害剤分子及び80の水分子を有する3成分複合体中において、NH−末端トランケートMEK1の276個の残基に対応する2159個の非水素タンパク質原子を含有する。
MEK1ペプチド(MEK1−C1):Mg−ATP:5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)ベンズアミドの結晶座標を、表1に示す。
【0236】
【実施例13】
《MEK2:リガンド:補因子構造複合体の構造決定及び改良》
3成分MEK2複合体の典型的結晶は、ヘキサゴナル空間群P622に属し、単位セル寸法は約a=b=161.89、c=122.99Å、2分子/非対称単位である。データはすべて、HKL2000で処理し、SCALEPACKで評価した[Otwinowski et al.,”Processing of x−ray diffraction data collected in oscillation mode,”Methods Enzymol.276:307−326(1997)]。MEK2−C2、MgATP及び{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミド)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミンの3成分共複合体に関しては、総計152,386の測定反射を同定し、16,131が36〜3.2Åの範囲の分解能範囲で独特の反射を示し、全体的Rsymm=0.088であった。
【0237】
CCP4(Collaborative Computational Project,Number 4.1994.”The CCP4 Suite:Programs for Protein Crystallography”.Acta Cryst.D50,760−763)におけるプログラムMolrepを用いて、検索モデルとして表1からのMEK1:MgATP:阻害剤複合体座標を用いた分子置換により、構造を解明した。CCP4におけるRefmacを用いて剛体改良を実施し、その後1サイクルの位置的改良を実施した。3.2Å電子密度マップを算定し、プログラムQUNATA−2000グラフアプリケーション(Accelrys,San Diego,CA)を用いてタンパク質のマニュアル適合のために用いた。CNX改良プログラム(最小化及び個々の)を用いて、完全性の異なる段階での原子モデルを改良した。
【0238】
25〜3.2Åからのデータに対してプログラムCNXバージョン2002(Accelrys,San Diego,CA)で実行される多段階最大見込み最小化手法を用いて、初期構造座標に対する位置的及び模擬的アニーリング改良を実行した。緩徐寒冷手法(25Kの過程において2500K〜300K)を用いた1ラウンドの模擬的アニーリングとその後の数サイクルの標準位置的改良は、Rworkを0.338(Rfree=0.439)に低減した。(2Fo−Fc)及び(Fo−Fc)の異なる電子密度マップは明らかに、モデルの側鎖及び阻害剤化合物{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミン、ATP及びMg2+のための結合部位のほとんどを明示した。初回のモデル再構築及び位置的改良後に、阻害剤及びMgATPにおけるモデリングを実施した。次に位置及び群拘束B因子改良は、Rworkを0.29(Rfree=0.37)に低減した。MEK2ペプチド(MEK2−C2):Mg−ATP:{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミンの結晶座標を、表2に示す。
【0239】
【実施例14】
《MEK1:リガンド:補因子複合体の結晶構造の分析》
3成分複合体の結晶構造をPDBファイルフォーマットで取得し、SYBYL(商標)及びREDUCE(商標)ソフトウェアにより実施されるファンクションを実施するソフトウェアを用いて分析した。最初に、リガンド及び補因子の原子型並びに存在した任意の水を修正することにより、構造データを処理した。次にソフトウェアを用いて、最も好ましい陽子化状態における水素のすべてを付加することにより、並びにタンパク質との最適相互作用を生じる配向で全水分子を回転することにより、タンパク質を滴定した。この修正後、タンパク質複合体は、結合部位特性化及びドッキングシミュレーションのための準備ができた。GRIN/GRID(商標)及びMOLCAD(商標)輪郭付け(contouring)を用いて、リガンド及び補因子結合部位を特性化した。この手法では、リガンド及び補因子の各原子の周囲で半径4及び5Åをトレースし、その半径内のすべてのアミノ酸残基を同定した。
【0240】
X線結晶学的構造データを用いた結合部位特性化及びドッキング試験の分析後、MEK1ペプチドが、リガンド結合部位に位置するMEK1阻害剤の4Å内の以下のアミノ酸残基の構造座標により規定されるリガンド結合ポケットを含む、ということを見いだした:配列番号2のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219。更に、MEK1ペプチドが、リガンド結合部位に位置するMEK1阻害剤の5Å内の以下のアミノ酸残基の構造座標により規定されるリガンド結合ポケットを有する、ということを見いだした:配列番号2のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、F223。
【0241】
MEK1ペプチドが、補因子結合部位におけるATP分子の4Å内の以下の残基の構造座標により規定される補因子結合ポケットを包含する、ということも見いだした:配列番号2のL74、G75、A76、G77、N78、G80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、G149、S150、D152、Q153、K192、S194、N195、L197、D208、V224。更に、MEK1ペプチドが、補因子結合部位におけるATP分子の5Å内の以下の残基の構造座標により規定される補因子結合ポケットを包含する、ということを見いだした:配列番号2のL74、G75、A76、G77、N78、G79、80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、D147、G149、S150、D152、Q153、D190、K192、S194、N195、L197、C207、D208、V224、G225。
【0242】
【実施例15】
《MEK2:リガンド:補因子複合体の結晶構造の分析》
3成分複合体の結晶構造をPDBファイルフォーマットで取得し、SYBYL(商標)及びREDUCE(商標)ソフトウェアにより実施されるファンクションを実施するソフトウェアを用いて分析した。最初に、リガンド及び補因子の原子型並びに存在した任意の水を修正することにより、構造データを処理した。次にソフトウェアを用いて、最も好ましい陽子化状態における水素のすべてを付加することにより、並びにタンパク質との最適相互作用を生じる配向で全水分子を回転することにより、タンパク質を滴定した。この修正後、タンパク質複合体は、結合部位特性化及びドッキングシミュレーションのための準備ができた。GRIN/GRID(商標)及びMOLCAD(商標)輪郭付けを用いて、リガンド及び補因子結合部位を特性化した。この手法では、リガンド及び補因子の各原子の周囲で半径4及び5Åをトレースし、その半径内のすべてのアミノ酸残基を同定した。
【0243】
X線結晶学的構造データを用いた結合部位特性化及びドッキング試験の分析後、MEK2ペプチドが、リガンド結合部位に位置するMEK2阻害剤の4Å内の以下のアミノ酸残基の構造座標により規定されるリガンド結合ポケットを含む、ということを見いだした:配列番号4のG81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、V131、F133、I145、M147、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223。更に、MEK2ペプチドが、リガンド結合部位に位置するMEK2阻害剤の5Å内の以下のアミノ酸残基の構造座標により規定されるリガンド結合ポケットを有する、ということを見いだした:配列番号4のG81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、I130、V131、G132、F133、I145、M147、D194、N199、L210、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、F227。
【0244】
MEK2ペプチドが、補因子結合部位におけるATP分子の4Å内の以下の残基の構造座標により規定される補因子結合ポケットを包含する、ということも見いだした:配列番号4のL78、G79、A80、G81、N82、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、G153、S154、D156、Q157、K196、S198、N199、L201、D212、V228。更に、MEK2ペプチドが、補因子結合部位におけるATP分子の5Å内の以下の残基の構造座標により規定される補因子結合ポケットを包含する、ということを見いだした:配列番号4のL78、G79、A80、G81、N82、G83、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、D151、G153、S154、D156、Q157、D194、K196、S198、N199、L201、C211、D212、V228、G229。
【0245】
X線結晶学的構造データを用いた結合部位特性化及びドッキング試験の分析後、MEK1及びMEK2のある種の特徴がMEK1又はMEK2リガンド結合部位とのリガンドの高親和性結合に関与する、ということを見いだした。前記の阻害剤を用いて、活性化ループのいくつかの残基との水素結合供与体及び受容体相互作用を有する疎水性プライムポケットへのリガンドの配向を包含する結合様式を観察した。しかしながら、他の種類の化合物の連続結晶化は、現在のところ観察されていない新規の結合様式を明示することができる、と予測される。例えば、モデリング及びドッキングシミュレーションは、その他のより新規の種類の化合物に関する代替的結合様式を明示している。この情報は、例えば、MEK1又はMEK2と結合することができ、従ってMEK1又はMEK2活性を抑制することができる化学物質の評価、スクリーニング及び/又は設計及び修飾に用いることができる。
本発明の結合部位は、当業界で公知の種々のスクリーニング技法、例えば、UNITY(商標)(Tripos,Inc.)及び任意のその他の3Dデータベーススクリーニングソフトウェアを用いたバーチャルライブラリーをスクリーニングするための基礎として使用することができる。例えば、表1に見出されるX線結晶学的データは、MEK1の三次元構造の詳細な同定をはじめて可能にした。同様に、表2に見出されるX線結晶学的データは、MEK2の三次元構造の詳細な同定をはじめて可能にした。
【0246】
【実施例16】
《MEK1及びMEK2構造間のRMSDの算定》
本明細書中では、InsightII(Accelrys)のスーパーインポーズコマンドを用いて、MEK1及びMEK2構造のCα及び/又は主鎖(N、C、O及びCα)原子間のRMS偏差(RMSD)を算定した。RMSDは、その他のモデリングプログラム又はスクリプトを用いても算定することができる。スーパーインポーズコマンドが行うのは、各分子からの選定セットの原子上で2つの分子の最小RMSアラインメントを実施し、スーパーインポーズした分子の選定原子間のRMSD値を出力することである。
MEK1及びMEK2構造の数組の選定Cα及び/又は主鎖原子間のRMSD値が算定されており、それを表8に列挙した。全体的MEK1及びMEK2構造のCα及び/又は主鎖原子に関するRMSDを、以下の残基を用いて算定した:MEK1のE62〜N221、V224〜P266及びP307〜L381;並びにMEK2のE66〜N225、V228〜P270及びP315〜L389。MEK1及びMEK2のキナーゼドメインのCα及び/又は主鎖原子に関するRMSDを、以下の残基を用いて算定した:MEK1のF68〜N221、V224〜P266及びP307〜I361;並びにMEK2のF72〜N225、V228〜P270及びP315〜I369。
【0247】
配列番号2(MEK1)のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216及びM219、並びにMEK2におけるそれらの対応する残基を用いて、MEK1及びMEK2の4Å阻害剤結合部位残基のCα及び/又は主鎖原子に関するRMSDを算定した(表2)。配列番号2(MEK1)のG77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、I126、V127、G128、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、並びにMEK2におけるそれらの対応する残基を用いて、MEK1及びMEK2の5Å阻害剤結合部位残基のCα及び/又は主鎖原子に関するRMSDを算定した(表2)。
【0248】
本明細書中に引用された参考文献はすべて、それらの記載内容が参照により本明細書中に含まれる。
本発明をその実施例と関連させて説明してきたが、前記の説明は実際に例示的及び説明的なものであって、本発明及びその好ましい態様を例証するよう意図される、と理解されるべきである。ルーチン実験により、本発明の精神を逸脱しない限りにおいて成され得る明白な修正及び変更を当業者は認識する。従って、本発明は、前記の説明によっては限定されないが、しかし以下の特許請求の範囲及びそれらの等価物により限定されるよう意図される。
以下の表は、本明細書に含まれる。
【0249】
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【0250】
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【0251】
〔表3:4A又は5AのMEK1インヒビター結合部位内のMEK1及びMEK2のインヒビター結合部位残基の複数配列アラインメント〕
【表1】
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【0252】
〔表4:4A又は5AのMEK1補因子結合部位内のMEK1及びMEK2のインヒビター結合部位残基の複数配列アラインメント〕
【表2】
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【0253】
〔表5:MEKファミリーの他のメンバーに対するヒトMEK1のキナーゼドメインとインヒビター結合部位との間の配列同一性〕
【表3】
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【0254】
〔表6:MEKファミリーの他のメンバーに対するヒトMEK1のキナーゼドメインとATP−結合部位との間の配列同一性〕
【表4】
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【0255】
〔表7:X線結晶学的構造解析によって決定したMEK1の二次構造の詳細な説明〕
【表5】
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【0256】
〔表8:X線結晶学的構造解析によって決定したMEK1の二次構造の詳細な説明〕
【表6】
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【0257】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、5−ブロモ−N−(2,3−ジヒドロキシ−プロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−ベンズアミド及びMgATPと一緒の3成分複合体中のNH末端トランケートMEK1ペプチド構造の3次元構造のリボン状表示物である。前記ペプチドのアルファらせん領域はブルーで着色されており、ベータシート領域はグリーンで着色されており、ATP補因子はパープルであり、マグネシウム原子はシアンで着色されており、そしてインヒビターはレッドで着色されている。Mg−ATP分子は、他のキナーゼ構造において見られるように、NH末端ローブ[lobe]とCOOH末端ローブとの間で分裂した[cleft]活性部位において結合し、一方、インヒビターは、活性ループにより部分的に形成される裂け目[cleft]の後部に存在するポケット中に結合する。
【図2】図2は、{5−[3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−フェニル]−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル}−(2−モルホリン−4−イル−エチル)−アミン及びMgATPと一緒の3成分複合体中のNH末端トランケートMEK2ペプチド構造の3次元構造のリボン状表示物である。前記ペプチドのアルファらせん領域はブルーで着色されており、ベータシート領域はグリーンで着色されており、ATP補因子はパープルであり、マグネシウム原子はシアンで着色されており、そしてインヒビターはレッドで着色されている。MgATP分子は、他のキナーゼ構造において見られるように、NH末端ローブ[lobe]とCOOH末端ローブとの間で分裂した[cleft]活性部位において結合し、一方、インヒビターは、活性ループにより部分的に形成される裂け目[cleft]の後部に存在するポケット中に結合する。
【図3】図3は、共通して観察される残基のCアルファ原子を利用したMEK1ペプチド(ブルー)及びMEK2ペプチド(レッド)の3次元構造の重ね合わせである。
【図4】図4は、MEK1活性部位内の特定の(図4中で「pd0318088」と表される)リガンドの配向に関連する相互作用を示す。図4の右後側には、Ser212の主鎖窒素原子とインヒビターの4−フルオロ基との間に形成されるH−ドナー及びアクセプター結合が見られる。また、図4の頂上部には、Val127の主鎖カルボニルと静電的な相互作用を形成するインヒビターのヨウ素原子が見られる。最後に、Leu115、Leu118、及びPhe209は、主要な疎水性ポケットの形成に関連する。
【図5】図5は、MEK2活性部位内の特定の(図5中で「PD0334581」と表される)リガンドの配向に関連する相互作用を示す。図4の右後側には、Ser216の主鎖窒素原子とインヒビターの4−フルオロ基との間に形成されるH−ドナー及びアクセプター結合が見られる。また、図4の頂上部には、Val131の主鎖カルボニルと静電的な相互作用を形成するインヒビターのヨウ素原子が見られる。最後に、Leu119、Leu122、及びPhe213は、主要な疎水性ポケットの形成に関連する。

Claims (15)

  1. 配列番号2に記載の完全長マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1/ERKキナーゼ1(MEK1)ペプチドのNH末端領域からアミノ酸残基少なくとも30個〜最大70個を欠失したNH末端の先端欠失部を有するMEK1ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    配列番号2の280番目のアミノ酸〜323番目のアミノ酸から選択される挿入ループ形成アミノ酸残基の欠失部、又は配列番号2の264番目のアミノ酸残基〜310番目のアミノ酸の間のアミノ酸少なくとも40個の欠失部を有するMEK1ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (1)配列番号2に記載の完全長MEK1ペプチドのNH末端領域からアミノ酸残基少なくとも30個〜最大70個を欠失したNH末端の先端欠失部を有し;及び(2)配列番号2の280番目のアミノ酸〜323番目のアミノ酸から選択される挿入ループ形成アミノ酸残基の欠失部、又は配列番号2の264番目のアミノ酸残基〜310番目のアミノ酸の間のアミノ酸少なくとも40個の欠失部を有するペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    配列番号4に記載の完全長マイトジェン活性化プロテインキナーゼ2/ERKキナーゼ2(MEK2)ペプチドのNH末端領域からアミノ酸残基少なくとも34個〜最大74個を欠失したNH末端の先端欠失部を有するMEK2ペプチド、又は保存的に置換されたそのバリアント;及び
    表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2ペプチドの構造座標により規定されるペプチド、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2の構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセット
    からなる群から選択される単離されたペプチド。
  2. (a)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1/ERKキナーゼ1(MEK1)ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約4Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、及びM219の構造座標により規定されるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ1/ERKキナーゼ1(MEK1)ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (b)MEK1ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約5Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、I126、V127、G128、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、及びF223の構造座標により規定されるMEK1ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (c)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ2/ERKキナーゼ2(MEK2)ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約4Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、V131、F133、I145,M147、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、及びM223の構造座標により規定されるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ2/ERKキナーゼ2(MEK2)MEK2ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (d)MEK2ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約5Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、I130、V131、G132、F133、I145、M147、D194、N199、L210、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、及びF227の構造座標により規定されるMEK2ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (e)MEK1ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約4Åの内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、G149、S150、D152、Q153、K192、S194、N195、L197、D208、及びV224の構造座標により規定されるMEK1ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (f)MEK1ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G79、80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、D147、G149、S150、D152、Q153、D190、K192、S194、N195、L197、C207、D208、V224、及びG225の構造座標により規定されるMEK1ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (g)MEK2ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約4Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、G153、S154、D156、Q157、K196、S198、N199、L201、D212、及びV228の構造座標により規定されるMEK2ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (h)MEK2ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G83、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、D151、G153、S154、D156、Q157、D194、K196、S198、N199、L201、C211、D212、V228、及びG229の構造座標により規定されるMEK2ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;及び
    (i)表1又は表2に記載のMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの構造座標か、あるいは前記(a)〜(h)に記載のMEK1又はMEK2結合ポケットの結合ポケットコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットのいずれかに含まれる各原子により規定される結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント
    からなる群から選択される結合ポケットを含むペプチド。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のペプチドを含むペプチド:リガンド:補因子複合体の結晶構造。
  4. ペプチド;補因子;及びリガンドを含み、表1若しくは表2に記載の原子座標、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットを有する、ペプチド:リガンド:補因子複合体の3次元構造座標。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のペプチドを宿主細胞内で生成するための発現ベクターであって、前記修飾ペプチドをコードするポリヌクレオチド並びに前記修飾ペプチドに作動可能に結合していて前記宿主細胞中で機能することができる転写及び翻訳調節配列を含む、前記発現ベクター。
  6. 請求項1若しくは請求項2に記載のペプチド又は保存的に置換されたそのバリアントをコードするポリヌクレオチドからなる群から選択されるポリヌクレオチドで安定に形質転換又はトランスフェクションされた宿主細胞。
  7. 構造が不明な分子又は分子複合体に関する構造情報を得るための分子置き換えの利用方法であって、
    前記分子又は分子複合体を結晶化し;
    結晶化した前記分子又は分子複合体からX線回析パターンを生成し;そして
    表1又は表2に記載の構造座標の少なくとも一部、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標の関連するセットの少なくとも一部を、前記X線回析パターンに適用して、構造が不明な分子又は分子複合体の少なくとも一部の3次元電子密度マップを生成することを含む、前記方法。
  8. 表1又は表2に記載の原子座標セット、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットを、コンピューターアルゴリズムに適用して、請求項1若しくは請求項2に記載のペプチド又はその結合ポケットの3次元コンピューター表示物を生成することを含む、前記ペプチド又はペプチド結合ポケットの3次元コンピューター表示物の製造方法。
  9. 表1又は表2に記載の原子座標、あるいは表1又は表2に記載のMEK1又はMEK2構造座標のコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットを含むデータが格納されている、機械読み取り可能媒体。
  10. (a)請求項1又は請求項2に記載のペプチド若しくは前記ペプチドの結合ポケットの3次元コンピューター表示物を生成し;そして
    (b)前記ペプチド若しくは前記ペプチドの結合ポケットの前記3次元コンピューター表示物に空間的に一致する化学物質を生成することを含む、請求項1又は請求項2に記載のペプチドに関連する可能性のある化学物質の修飾又は設計方法であって、前記化学物質の生成を、(i)分子フラグメントを前記化学物質中にアッセンブルするか;(ii)前記化学物質又はそのフラグメントを新たに設計するか;(iii)小分子データベースから前記化学物質を選択するか;又は(iv)公知のMEK活性インヒビター又はその一部を修飾することを含む方法により実施する、前記の方法。
  11. (a)請求項1又は請求項2に記載のペプチド又は前記ペプチドの結合ポケットの3次元コンピューター表示物を生成し;
    (b)或る化学物質を前記3次元表示物に当てはめて、その化学物質が前記ペプチド又はペプチド結合ポケットに関連するか否かを決定する反復工程を実施し;そして
    (c)前記化学物質のペプチド活性への効果を評価して、前記化学物質が活性インヒビター又は活性エンハンサーとして作用するか否かを決定することを含む、請求項1又は請求項2に記載のペプチドの活性の有効なインヒビター又はエンハンサーのスクリーニング及び同定方法。
  12. (a)請求項1又は請求項2に記載のペプチド又は前記ペプチドの結合ポケットの3次元表示物を生成し;
    (b)或る化学物質の3次元表示物を前記3次元表示物に当てはめ;そして(c)前記化学物質と前記結合ポケットとの間の関係を定量することを含む、請求項1又は請求項2に記載のペプチドと関連する化学物質の可能性の評価方法。
  13. 前記ペプチド結合ポケットが、(a)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ1/ERKキナーゼ1(MEK1)ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約4Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、V127、F129、I141、M143、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、及びM219の構造座標により規定されるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ1/ERKキナーゼ1(MEK1)ペプチドリガンド−結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (b)MEK1ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK1インヒビターの約5Åの内の配列番号2の以下のアミノ酸残基:G77、N78、G79、G80、K97、I99、L115、L118、I126、V127、G128、F129、I141、M143、D190、N195、L206、C207、D208、F209、G210、V211、S212、L215、I216、M219、及びF223の構造座標により規定されるMEK1ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (c)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ2/ERKキナーゼ2(MEK2)ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約4Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、V131、F133、I145,M147、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、及びM223の構造座標により規定されるマイトジェン活性化プロテインキナーゼ2/ERKキナーゼ2(MEK2)MEK2ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (d)MEK2ペプチドリガンド結合部位に位置するMEK2インヒビターの約5Åの内の配列番号4の以下のアミノ酸残基:G81、N82、G83、G84、K101、I103、L119、L122、I130、V131、G132、F133、I145、M147、D194、N199、L210、C211、D212、F213、G214、V215、S216、L219、I220、M223、及びF227の構造座標により規定されるMEK2ペプチドリガンド結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (e)MEK1ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約4Åの内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、G149、S150、D152、Q153、K192、S194、N195、L197、D208、及びV224の構造座標により規定されるMEK1ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (f)MEK1ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号2の以下の残基:L74、G75、A76、G77、N78、G79、80、V81、V82、A95、K97、V127、M143、E144、H145、M146、D147、G149、S150、D152、Q153、D190、K192、S194、N195、L197、C207、D208、V224、及びG225の構造座標により規定されるMEK1ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (g)MEK2ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約4Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、G153、S154、D156、Q157、K196、S198、N199、L201、D212、及びV228の構造座標により規定されるMEK2ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;
    (h)MEK2ペプチド補因子結合部位に位置する補因子の約5Åの内の配列番号4の以下の残基:L78、G79、A80、G81、N82、G83、G84、V85、V86、A99、K101、V131、M147、E148、H149、M150、D151、G153、S154、D156、Q157、D194、K196、S198、N199、L201、C211、D212、V228、及びG229の構造座標により規定されるMEK2ペプチド補因子結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント;及び
    (i)表1又は表2に記載のMEK1ペプチド又はMEK2ペプチドの構造座標か、あるいは前記(a)〜(h)に記載のMEK1又はMEK2結合ポケットの結合ポケットコアCアルファ原子からのRMS偏差が約1.25Å以下である構造座標を有する関連するセットのいずれかに含まれる各原子により規定される結合ポケット、又は保存的に置換されたそのバリアント
    からなる群から選択される、請求項8、10、11、又は12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 請求項1又は請求項2に記載のペプチドと前記ペプチド以外の混入タンパク質とを含む発酵ブロスを、ピロール−2−カルボキシレートと、塩化亜鉛と、ニッケル、亜鉛、銅、及びコバルトからなる群から選択される固定化金属とを含む固定化金属キレートクロマトグラフィー処理することを含む、前記発酵ブロスからの請求項1又は請求項2に記載のペプチドの精製方法。
  15. 前記ペプチド、リガンド、補因子、緩衝剤、還元剤、及びイオン強度源を含むペプチド溶液を用意し;
    (a)前記ペプチドがMEK1ペプチドである場合には、ポリエチレングリコール(PEG)、イオン強度源、緩衝剤、及び還元剤を含む沈殿剤溶液を;又は
    (b)前記ペプチドがMEK2ペプチドである場合には、イオン強度源、緩衝剤、及び還元剤を含む沈殿剤溶液を用意し;
    前記ペプチド溶液の液滴を前記沈殿剤溶液の液滴と混合し;
    前記沈殿剤溶液のウェル(このウェル中の溶液の蒸気圧は、前記混合液滴中で得られる溶液における蒸気圧より低いものとする)上で、得られた混合液滴を浮遊させ;そして
    浮遊した前記混合液滴を、ペプチド:リガンド:補因子の3成分複合体の結晶がX線回析に適した大きさに成長するまで、長期にわたって放置する
    ことを含む、請求項3に記載の結晶の成長方法。
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