JP2003535119A - 粉末組成物 - Google Patents

粉末組成物

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ザオ,ルー
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パウダージェクト ワクチンズ,インコーポレーテッド
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Abstract

(57)【要約】 ワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末を、アルミニウム塩又はカルシウム塩アジュバントに吸着した抗原、糖類、アミノ酸又はその塩、及びコロイド性物質を含む水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズドライすることにより調製する。ワクチンの目的のための粉末はまた、抗原を吸着しているアジュバントの水性懸濁液をスプレーフリーズドライすることにより調製される。これらの粉末組成物を形成するための方法、並びにワクチン接種の操作に組成物を使用する方法もまた記載されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明はワクチン組成物に関する。より具体的には、本発明は針無しシリンジ
システムからの経皮粒子送達に好適なワクチン組成物に関する。
【0002】発明の背景 医薬物を皮膚表面に及び皮膚表面を通して送達(経皮送達)できるということ
は、経口又は非経口の送達法と対比して多くの利点を提供する。特に、経皮送達
は、伝統的な投与系に代わり得る、安全、簡便かつ非侵襲的な手段を提供する。
それは経口送達に関連する多くの問題(例えば吸着及び代謝の速度の変化、胃腸
刺激及び/又は苦い若しくは好ましくない薬物の味)又は非経口送達に関連する
多くの問題(例えば針の痛み、治療を受ける患者に感染を引き起こすリスク、針
が刺さる事故による医療従事者の汚染又は感染のリスク、及び、使用した針の廃
棄)をうまく回避する。
【0003】 しかしながら、明らかな利点にも関わらず、経皮送達にはそれ自身に固有の送
達における数多くの問題がある。傷の無い皮膚を通しての受動的送達は、薬物が
血液系又はリンパ系に入るようにするためには、数多くの構造的に異なる組織(
角質層、生存表皮、乳頭層真皮及び毛細血管壁)を通過する分子の輸送を必然的
に伴う。従って、経皮送達系は各種の組織が示す種々の抵抗を克服することがで
きなければならない。
【0004】 上記に照らし合わせて、受動的経皮送達に代わる多くの代替法が開発されてい
る。これら代替法には、皮膚浸透性を高めるための皮膚浸透促進剤又は「浸透促
進剤」の使用、並びに、イオン泳動法、電気穿孔法又は超音波法の使用のような
非化学的方法がある。しかしながらこれらの代替技術は多くの場合、皮膚の刺激
又は感作のようなそれらに特有の副作用をもたらす。このように、伝統的な経皮
送達法を用いて安全で効果的に投与できる薬物の範囲はずっと限られたままであ
る。
【0005】 つい最近、針無しシリンジを使用した、制御された用量の粉末(即ち固形の薬
物含有粒子)を無傷の皮膚の中に且つそこを通過して発射させるための新規な経
皮薬物送達系が記載された。特に、本出願人の所有に係るBellhouseらの米国特
許第5,630,796号には、超音速気流に同伴させた医薬粒子を送達する針無しシリ
ンジが記載されている。針無しシリンジは、粉末化された薬物化合物および組成
物の経皮送達、遺伝物質の生体細胞への送達(例えば遺伝し治療)、並びに、バ
イオ医薬の皮膚、筋肉、血液又はリンパへの送達のために使用される。針無しシ
リンジはまた、外科手術に関連して、薬物及び生物製剤を器官表面、固形癌及び
/又は外科手術により形成される腔(例えば腫瘍床又は腫瘍切除後の腔)に送達
するために使用することができる。理論上、実質的に固形の粒子形態で製造され
得る実際上全ての医薬物は、かかる器具を用いて安全且つ容易に送達され得る。
【0006】 この新しい系による送達について特に興味が持たれている医薬分野の一つがワ
クチン組成物の分野である。好適なワクチンには塩アジュバントに吸着された抗
原を含むものが挙げられる。かかる組成物は当該技術分野において既知であり(
例えば米国特許第5,902,565号を参照されたい)、該アジュバントがワクチンの
免疫原性を高めるので有利である。
【0007】 しかしながら、アジュバントワクチンの貯蔵及び運搬には問題がある。塩アジ
ュバントを含む市販のワクチン組成物はワクチンに損傷を与えること無く凍結す
ることはできない。さらに、現在ワクチンに用いられている一般的な保存技術の
一つであるフリーズドライもまた塩アジュバント含有組成物に用いることができ
ない。以前の研究では、フリーズドライすることにより、ワクチン組成物のゲル
構造の崩壊が起こり、その結果、水に再懸濁する際にアジュバント塩が凝集し沈
殿することが実証されている(Warrenら, 1986, Annu. Rev. Immunol. 4: ペー
ジ369-388; Alvingら, Ann. N. Y. Acad. Sci. 690: ページ265-275)。これは
、組成物に含まれている水の凍結時の大きな結晶への結晶化、およびその結果の
、凍結濃縮域として知られている特定領域への溶質の濃縮に起因すると考えられ
る。凍結濃縮域では、アジュバント塩粒子は非常に近接した状態に至らしめられ
反発力に打ち勝ち、その結果、凝集する。塩がひとたび凝集すると、元の懸濁液
を再生することができない。これの影響としてワクチンの免疫原性を顕著に低下
させることが見出されている。ある報告では、フリーズドライされたアラム吸着
B型肝炎表面抗原(HBsAg)の免疫原性は、4℃にて2年間保存後に完全に喪失す
ることが実証されている(Diminskyら, Vaccine, 18: ページ 3-17)。
【0008】 従って、フリーズドライに伴う凝集の問題を解決し、且つ、免疫原性を最大限
に保持する、アジュバントワクチン組成物を保存するための他の方法が必要であ
る。ワクチンの長期貯蔵は、上記の新規な経皮的薬物送達系で使用するために、
また、従来のワクチン技術で使用するためにも必須である。従って、フリーズド
ライの有効な代替法を提供することは商業的に非常に重要である。またワクチン
が、針無し注射に好適な形態に作られることが望まれている。針無し注射ではワ
クチン組成物が粉末形態であることが必要である。ここで、各粒子は経皮送達に
適切なサイズと強度とを有し、再懸濁するとゲルを形成することができなければ
ならない。
【0009】 既に報告されている、従来のフリーズドライ技術の代替法とした、添加物をワ
クチン組成物に組み込んでミョウバンアジュバントの安定性を向上させる方法が
挙げられる。米国特許第4,578,270号には、アルミニウムゲル構造を部分的に保
持することを達成する目的で、デキストランとタンパク質の両方を大量に添加す
ることが記載されている。しかしながら、このタンパク質の大量添加はワクチン
抗原をアルミニウムゲルから追い出す働きをし、加えて多くの場合には免疫原性
を有し、その結果、ワクチン抗原に対する免疫応答を破壊する傾向があると考え
られる。
【0010】 欧州特許第0130619号もまた、凍結乾燥したワクチン調合物に安定化剤を添加
することに関するものである。アルミニウムゲルに吸着された不活性化精製B型
肝炎ウイルス表面抗原、及び安定化剤を含むB型肝炎ワクチンの凍結乾燥調合物
が記載されている。安定化剤は少なくとも1種のアミノ酸又はその塩、少なくと
も1種の糖類及び少なくとも1種のコロイド性物質からなる。極低濃度のアルミ
ニウム塩アジュバントが使用される。典型的には0.1重量%未満である。しかし
ながら、この文献はB型肝炎ワクチンにのみ関するものであって、免疫原特異的
ではない一般的な方法を開示していない。
【0011】 アルミニウム塩に吸着された免疫原からなる、スプレードライされたワクチン
調製物が米国特許第5,902,565号に開示されている。アルミニウム塩に吸着され
た免疫原の水性懸濁液をスプレードライすることにより調製される即席放出調製
物が記載されている。かかる情報が記載されている唯一の実施例である実施例1
では、得られた微小球は直径約3μmのサイズである。米国特許第5,902,565号に
よれば、アルミニウムゲルのゲル形成性は、(最少量のワクチン抗原、典型的に
は1〜10μg/ml以外に)安定化効果を発揮し得る他の物質の不在下においてもな
お、スプレードライのあいだ完全に保持される。スプレードライした粉末に水を
添加すればその結果として、出発物質と同様の沈降性能を有する典型的なゲルが
即時に形成されると記載されている。
【0012】発明の概要 本発明者等は、アルミニウム塩のゲル形成性スプレードライした粉末が実際に
米国特許第5,902,565号に記載の通りに形成されるか否かを調査した。本発明者
等は、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムの水中懸濁液をスプレードラ
イすると、アルミニウム塩の1ミクロン未満の粒子が凝集して、得られたスプレ
ードライした粉末においてより大きな粒子になることを見出した。この粉末を水
中で再生したとき、これらの大きな粒子は小さな粒子へと崩壊しなかった。ゲル
懸濁液は生じなかった。むしろ、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムの
凝集粒子が懸濁液から沈降し堆積した。
【0013】 さらに実験を行った。本発明者等は、好適な粉末が、アルミニウム塩を他の物
質との特定の組み合わせで用いたときにスプレードライにより形成され得ること
を見出した。さらに、アルミニウム塩及び他の物質を特定の割合で使用する必要
があった。本発明者等はまた、用いる特定の乾燥方法がアジュバント塩の凝集の
程度に顕著な影響を及ぼすことを見出した。これらの調査から、針無し注射に好
適であって、水中で再生した際にそのゲル構造が実質的に保持される粉末が、ミ
ョウバンアジュバントワクチン組成物をスプレーフリーズドライすることにより
得ることができるということを見出した。
【0014】 スプレーフリーズドライ方法は懸濁化ワクチン組成物を液体窒素中に噴霧する
ことを含む。この工程は二つの重要な効果を有する:第一には、液体窒素が熱伝
達物質としてはたらいて懸濁液の迅速な凍結を可能にする;そして第二には、噴
霧することは凍結される各液滴の体積を減少させ、凍結速度を更に高める。この
組み合わされた効果は懸濁液の非常に小さな液滴のきわめて迅速な凍結を引き起
こし、固体中のより小さな氷結晶の形成につながる。従って、標準的なフリーズ
ドライ技術において形成される凍結濃縮域はサイズを顕著に減少させる。粒子の
急速な凍結及びそれらの小さなサイズによって、凝集したアジュバントを殆ど又
は全く有さない粉末になる。
【0015】 従って本発明は、長期の保存に好適な粉末状の塩アジュバント含有ワクチン組
成物を作り出す単純でありながら効果的な方法を提供する。本発明のワクチン組
成物は再生したときに実質的に凝集を示さず、それゆえに免疫原性が実質的に保
持される。該組成物はまた、全体として針無しシリンジからの経皮送達のための
粉末として好適なよいサイズの粒子サイズ、密度及び機械的特性を有している。
【0016】 本発明は、広範囲のワクチン組成物との使用に適しているという更なる重要な
長所を有しており、且つ、他の医薬組成物に、特に同様の凝集の問題がある場合
に、応用することもできる。現在のところ従来までは、スプレーフリーズドライ
技術は、アジュバントワクチン組成物の分野では、組成とは全く無関係であるこ
とを本発明者等は見出している。
【0017】 従って本発明は、 (a) 0.1〜0.95 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩
アジュバント; (b) 0.5〜6 重量%の糖類; (c) 0.1〜2 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (d) 0.02〜1 重量%のコロイド性物質、 を含む水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズドライすることにより
得られる、ワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末を提供する
【0018】 このようにワクチン用途に好適な自由流動性組成物を調製できる。該組成物は
、全体として針無しシリンジからの経皮送達のための粉末として好適なうまく決
められた粒子サイズ、密度及び機械的特性を有している。
【0019】 本発明は更に、 - (a) 0.1〜0.95 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム
塩アジュバント; (b) 0.5〜6 重量%の糖類; (c) 0.1〜2 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (d) 0.02〜1 重量%のコロイド性物質、 を含む水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズドライすることを含む
、ワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末の製造方法; - 本発明の粉末の有効量が入った、針無しシリンジのための用量容器; - 本発明の粉末が入った針無しシリンジ; - 薬学的に許容できる担体又は希釈剤及び本発明の粉末を含むワクチン組成物;
- 本発明の粉末を被験体に有効量投与することを含む、被験体にワクチン接種す
る方法; - (i) 5〜60 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩ア
ジュバント、 (ii) 25〜90 重量%の糖類、 (iii) 4.5〜40 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (iv) 0.5〜10 重量%のコロイド性物質、 を含む、ワクチンとしての使用に適したゲル形成性自由流動性粉末、 を提供する。
【0020】 加えて、本発明は、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジ
ュバントを含む水性懸濁液をスプレーフリーズドライすることにより得られる、
ワクチンとして使用するのに好適な粉末を提供する。
【0021】 本発明は更に、 - 抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジュバントを含む水性
懸濁液をスプレーフリーズドライすることを含む、ワクチンとして使用するのに
好適な粉末の製造方法; - このような本発明のスプレーフリーズドライした粉末の有効量が入った、針無
しシリンジのための用量容器; - この本発明のスプレーフリーズドライした粉末の入った針無しシリンジ; - 薬学的に許容できる担体又は希釈剤及び本発明のスプレーフリーズドライした
粉末を含むワクチン組成物;及び、 - 本発明のスプレーフリーズドライした粉末を被験体に有効量投与することを含
む、被験体にワクチン接種する方法, を提供する。
【0022】好ましい実施形態の詳細な説明 本発明を詳細に説明する前に、この発明が具体的に例示された組成物又は方法
についてのパラメーターに限定されるものではなく、それらは当然に変化し得る
ことを理解されたい。また、本明細書中で使用する専門用語は本発明の特定の実
施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図していないこ
ともまた理解されたい。
【0023】 本明細書において引用する(前述又は後述も含める)全ての刊行物、特許及び
特許出願は参照することによりその全体を本明細書中に組み入れる。
【0024】 この明細書中及び特許請求の範囲で使用する場合、特に断らない限り、単数形
には複数形についての言及も含まれる。従って例えば「粒子」と言及した場合に
は2種以上の粒子の混合物が含まれ、「賦形剤」と言及した場合には2種以上の
賦形剤の混合物が含まれる、などである。
【0025】A. 定義 特に定義しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語及び科学用語
は本発明の属する技術分野における当業者により一般的に理解されるのと同じ意
味を有する。ここで記載するものと同様の又は等価の、数多くの方法及び物質を
本発明の実施において使用することができるが、ここでは好ましい物質及び方法
を記載する。
【0026】 本発明の記載には、下記のように定義される以下の用語を使用する。「抗原」
は、宿主の免疫系を刺激して細胞性抗原特異的免疫応答又は体液性抗体応答を引
き起こす1以上のエピトープを有する分子を意味する。従って、抗原には、抗原
タンパク質断片などのポリペプチド、オリゴ糖類、多糖類などが含まれる。さら
にまた、抗原はあらゆる既知のウイルス、細菌、寄生虫、植物、原生動物又は真
菌から導くことができ、また、丸ごとの生物体であってよい。該用語は腫瘍抗原
も包含する。同様に、例えばDNA免疫化法の適用におけるように、抗原を発現す
るオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドもまた抗原の定義の中に含まれる。
合成抗原もまた含まれる。例えばポリエピトープ、隣接エピトープ(flanking e
pitope)及び他の組換え又は合成により導かれた抗原である(Bergmannら (1993
) Eur. J. Immunol. 23: 2777-2781; Bergmannら (1996) J. Immunol. 157:3242
-3249; Suhrbier, A. (1997) Immunol. And Cell Biol. 75:402-408; Gardnerら
, (1998) 第12回 World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, 1998年6月28
日〜7月3日)。
【0027】 本発明の抗原を吸着したアジュバントは典型的には、単独又は組合わせで、担
体、ビヒクル及び/又は賦形剤のような1種以上の付加される物質と組合わせる
。「担体」、「ビヒクル」及び「賦形剤」は一般的には、無毒で、組成物の他の
成分と有害な態様では相互作用しない実質的に不活性な材料を指す。これらの素
材を用いて粒子状の医薬組成物において固体の量を増やすことができる。好適な
担体の例には水、シリコン、ゼラチン、ワックス及び同様の物質が含まれる。通
常用いる「賦形剤」の例には、医薬用等級の、単糖類、二糖類、シクロデキスト
ラン及び多糖類(例えばデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロー
ス、ラフィノース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストラン
及びマルトデキストラン)を含む炭水化物;デンプン;セルロース;塩(例えば
リン酸ナトリウム又はリン酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム)
;クエン酸;酒石酸;グリシン;高分子量ポリエチレングリコール(PEG);プル
ロニック;界面活性剤;及びそれらの組合わせが含まれる。一般的に、担体及び
/又は賦形剤を使用する場合は、それらを医薬組成物のうち約0.1〜99重量%の
範囲の量で使用する。
【0028】 用語「粉末」は本明細書中で使用する場合、針無しシリンジ器具を用いて経皮
的に送達できる実質的に固形の粒子からなる組成物を指す。粉末を構成する粒子
は、限定するものではないが、平均粒子サイズ、平均粒子密度、粒子形態(例え
ば粒子の空気動力学的形状及び粒子表面特性)及び粒子貫入エネルギー(P.E.)
などの数多くのパラメーターに基づいて特性分析することができる。
【0029】 本発明の粉末の平均粒子サイズは広範に変化することができ、一般的には0.1
〜250μm、例えば10〜100μmであり、より典型的には20〜70μmである。粉末の
平均粒子サイズは、顕微鏡による方法(この場合粒子は統計的に分類するのでは
なく直接且つ個別にサイズで分類される)、ガスの吸着、透過性又は飛行時間の
ような従来からの方法を用いて質量平均空気動力学的直径(MMAD)として測定可
能である。所望であれば、自動粒径計測器を使用して(例えばAerosizer Counte
r, Coulter Counter, HIAC Counter, 又はGelman Automatic Particle Counter
)、平均粒子サイズを確認することができる。
【0030】 実際の粒子の密度又は「絶対密度」はヘリウム比重瓶法などの既知の定量技法
を用いて容易に確認することができる。あるいは、エンベロープ(「タップ」)
密度測定を用いて本発明の粉末の密度を測定することができる。本発明の粉末の
エンベロープ密度は一般的には0.1〜25g/cm3、好ましくは0.8〜1.5g/cm3である
【0031】 エンベロープ密度の情報は不規則なサイズと形状をした物体の密度を特性評価
するのに特に有用である。エンベロープ密度はある対象物の質量をその体積で割
ったものであり、この場合この体積はその細孔及び小さな空洞の体積は含むが間
隙空間体積は除かれる。例えばワックス浸漬法(wax immersion)、水銀置換法
、水吸収法及び見掛比重法を含む数多くのエンベロープ密度を測定する方法が当
該技術分野で既知である。また、数多くの適切な装置がエンベロープ密度の測定
に利用可能である。例えば、Micrometitics Instrument Corpから市販されてい
るGeoPyc(商標)Model1360がある。医薬組成物サンプルの絶対密度とエンベロ
ープ密度との差は、そのサンプルの全細孔%及び比細孔容積に関する情報を提供
する。
【0032】 粒子形態、特に粒子の空気動力学的形状は標準的な光学顕微鏡を用いて容易に
評価できる。本即席粉末を構成する粒子は実質的に球形を有するか又は少なくと
も実質的に楕円形の空気動力学的形状を有することが好ましい。粒子は3以下の
軸比を有していて棒又は針の形状をした粒子の存在が回避されていることもまた
好ましい。また、これらの同じ顕微鏡の技術を用いて、例えば表面空洞の量及び
範囲又は間隙の度合いなどの粒子表面特性を評価することもできる。
【0033】 粒子貫入エネルギーは、例えば金属蒸着フィルムP.E.試験などの数多くの通常
の技法を用いて確認することができる。金属蒸着フィルム材料(例えば片側に35
0Åのアルミニウム層が蒸着されている125μmポリエステルフィルム)を、針無
しシリンジ(例えばBellhouseらの米国特許第5,630,796号に記載の針無しシリン
ジ)から粉末が約100〜3000 m/秒の初速度で撃ち込まれる基材として使用する。
金属蒸着フィルムを金属で被覆した面を上に向けて適切な表面上に置く。
【0034】 粉末を装填した針無しシリンジをそのスペーサーをフィルムに接触させて軽く
当て、そして次に発射する。残存する粉末を好適な溶媒を用いて金属蒸着フィル
ム表面から除く。次に貫入エネルギーを、BioRad Model GS-700 イメージングデ
ンシトメーターを用いてこの金属蒸着フィルムをスキャンして測定し、またSCSI
インターフェースを有し、MultiAnalyst ソフトウェア(BioRad)及びMatlab ソ
フトウェア(Release 5.1, The MathWorks, Inc)を搭載したパーソナルコンピ
ューターを用いてデンシトメーターの読み取り値を評価する。デンシトメーター
の透過法又は反射法のどちらかを用いてなされるデンシトメータースのキャンデ
ータを処理するためにプログラムが使われる。前記スプレーコートされた粉末の
貫入エネルギーは、同じサイズの再処理されたマンニトール粒子(本出願人の所
有に係る国際公開第 97/48485号(参照により本明細書に組み入れる)の方法に
よりフリーズドライし、圧縮し、すりつぶし、そして篩い分けしたマンニトール
粒子)の貫入エネルギーと同等又は優っているべきである。
【0035】 用語「被験体」は脊索亜門の任意のメンバーを指し、例えば、限定するもので
はないが、ヒト及び他の霊長類(例えば、チンパンジー及び他の類人猿並びにサ
ルの種のような非ヒト霊長類);家畜(例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウ
マ);家庭用哺乳動物(例えばイヌ及びネコ);実験用動物(例えば、マウス、
ラット及びモルモットのような齧歯類);トリ類(例えば、ニワトリ、シチメン
チョウ及び他のキジ類のトリ、アヒル、ガチョウなどのような飼い慣らされた、
野生の及び狩猟用のトリ)が挙げられる。この用語は特定の年齢を意味しない。
従って成体及び生まれたばかりの個体の両方を包含することが意図される。本明
細書に記載する方法は上記の脊椎動物のうち任意のものに使用することが意図さ
れている。なぜなら、これらの脊椎動物の全ての免疫系は同様に機能するからで
ある。
【0036】 用語「経皮送達」は、経皮的(transdermal)(「経皮的(percutaneous)」
)投与経路と経粘膜的投与経路の両方、即ち皮膚組織又は粘膜組織を通過する送
達を含む。例えば、Transdermal Drug Delivery: Developmental Issues and Re
search Initiatives, Hadgraft及びGuy(編), Marcel Dekker, Inc., (1989);
Controlled Drug Delivery: Fundamentals and Applications, Robinson及びLee
(編), Marcel Deckker Inc., (1987); 及び Transdermal Delivery of Drugs,
Vols. 1-3, Kydonieus 及び Berner(編), CRC Press,(1987)を参照された
い。
【0037】B. 一般的方法 本発明はワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末に関するも
のである。該粉末は針無しシリンジ送達系からの経皮投与に適する。従って、本
粉末状組成物を構成する粒子は、音速の数倍までの急激な加速並びに皮膚及び組
織との衝撃及びそれらの貫通に耐えるのに十分な物理的強度を有していなければ
ならない。該粒子は、 (a) 0.1〜0.95 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩
アジュバント; (b) 0.5〜6 重量%の糖類; (c) 0.1〜2 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (d) 0.02〜1 重量%のコロイド性物質、 を含む、又はいくつかの実施形態では本質的にこれらからなる水性懸濁液をスプ
レードライ又はスプレーフリーズドライすることにより形成される。
【0038】 該水性懸濁液は、成分 (a)として1重量%未満の、抗原を吸着しているアジュ
バントを含む。好ましくは、該懸濁液は、0.2又は0.3〜0.6又は0.75重量%、好
ましくは0.2〜0.4重量%の、抗原を吸着しているアジュバントを含む。アルミニ
ウム塩アジュバントは一般的には水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムで
ある。あるいは、アジュバントは硫酸アルミニウム又はリン酸カルシウムであり
得る。
【0039】 本明細書中で定義する任意の好適な抗原を使用し得る。抗原はウイルス抗原で
あり得る。従って抗原は、数ある中でもピコルナウイルス科(例えばポリオウイ
ルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば風疹ウイルス、デング
ウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオウイルス科;ビル
ナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば狂犬病ウイルスなど);フィロウイル
ス科;パラミクソウイルス科(例えばムンプスウイルス、麻疹ウイルス、RSウイ
ルスなど);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザウイルスA型、B型
及びC型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レトロウイルス科(例
えばHTLV-I;HTLV-II;HIV-1及びHIV-2);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)の
メンバーから導くことができる。
【0040】 あるいは、ウイルス抗原は、パピローマウイルス(例えばHPV);ヘルペスウ
イルス;肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV
)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV
)又はG型肝炎ウイルス(HGV);及びダニ媒介脳炎ウイルスから導くことができ
る。これらのウイルスの詳細は、例えば、Virology, 第3版 (W.K. Joklikら 199
8);Fundamental Virology, 第2版(B.N. Fields及びD.M. Knipe編 1991)を参
照されたい。
【0041】 本発明で使用するための細菌抗原は、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百
日咳、髄膜炎及び他の病的状態を引き起こす、例えば髄膜炎菌A、B及びC、ヘモ
フィルスインフルエンザB型(HIB)、ヘリコバクターピロリ、コレラ菌、大腸菌
、カンピロバクター属、赤痢菌属、サルモネラ属、連鎖球菌属の種及びブドウ球
菌属などの生物から導くことができる。細菌抗原の組み合わせ、例えばジフテリ
ア抗原、百日咳抗原及び破傷風抗原の組み合わせも考えられる。好適な百日咳抗
原は、百日咳毒素及び/又は糸状血球凝集素及び/又はパータクチン(P69とも
称される)である。抗-寄生虫抗原はマラリア及びライム病を引き起こす生物か
ら導くことができる。
【0042】 本発明に用いるための抗原は当業者にとって既知の種々の方法を用いて産生さ
せることができる。特に、標準的な精製技法を用いて天然の資源から直接に抗原
を単離することができる。あるいは、丸ごとの死んだ、弱毒化された又は不活性
化した、細菌、ウイルス、寄生虫又は他の微生物を使用することもできる。さら
には、既知の技法を用いて組換えにより抗原を産生させることができる。例えば
、Sambrook, Fritsch及びManiatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual,
Vols I 及び II (D.N. Gloverら 1985)を参照されたい。
【0043】 本明細書中で使用するための抗原はまた、記載されているアミノ酸配列を基に
、固相ペプチド合成のような化学的ポリマー合成により合成することもできる。
かかる方法は当業者にとって既知である。例えば、固相ペプチド合成技法につい
ては、J.M. Stewart及びJ.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版,
Pierce Chemical Co., Rockford, IL (1984) 並びに G. Barany 及び R.B. Merr
ifield, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, 編集者 E. Gross 及び
J. Meienhofer, Vol. 2, Academic Press, New York, (1980), pp. 3-254を;
そして、古典的な溶液合成については、M. Bodansky, Principles of Peptide S
ynthesis, Springer-Verlag Berlin (1984) 並びに E. Gross 及び J. Meienhof
er 編, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, 上述, Vol. 1を参照さ
れたい。
【0044】 1種以上の糖類が水性懸濁液中に成分 (b) として存在してもよい。糖類含有
量は典型的には 1.5〜5重量%、好ましくは 2〜4重量%である。糖類は、グルコ
ース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、D-マンノース又はソルボース
のような単糖類;ラクトース、マルトース、サッカロース、トレハロース又はス
クロースのような二糖類;マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グリセ
ロール、エリスリトール又はアラビトールのような糖アルコールであってよい。
【0045】 1種以上のアミノ酸又はアミノ酸塩が水性懸濁液中に成分 (c) として存在す
る。生理学的に許容される任意のアミノ酸塩が使用できる。塩は、ナトリウム塩
、カリウム塩又はマグネシウム塩のようなアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属
塩であってよい。アミノ酸は酸性アミノ酸、中性アミノ酸又は塩基性アミノ酸で
あってよい。好適なアミノ酸はグリシン、アラニン、グルタミン、アルギニン、
リシン及びヒスチジンである。グルタミン酸一ナトリウムが好適なアミノ酸塩で
ある。水性懸濁液は一般的に0.5〜1.5重量%、より好ましくは 0.75〜1.25重量
%のアミノ酸又はアミノ酸塩を含む。
【0046】 コロイド性物質 (d) は、半透膜を通過することができない、懸濁状態又は溶
液状態で沈降しない微細な粒子からなる分割された物質である。好適なコロイド
性物質は欧州特許第0130619号に記載されている。成分 (d) はデキストラン又は
マルトデキストリンのような多糖類;ゼラチン又はアガロースのようなヒドロゲ
ル;又は、ヒト血清アルブミンのようなタンパク質から選択することができる。
当該物質は500〜80,000又はそれ以上、例えば1000若しくは2000〜30,000又は5,0
00〜25,000の分子量を有していてよい。成分 (d) は一般的に水溶液中に0.05〜0
.5重量%、好ましくは 0.07〜0.3重量%の量で存在する。
【0047】 抗原を吸着したアジュバント並びに糖類、アミノ酸又はその塩及びコロイド性
物質を水中に懸濁する。その水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズ
ドライする。所望の粒子が生成するようにスプレードライ又はスプレーフリーズ
ドライの条件を選択する。従って、空気流入温度、空気流出温度、水性懸濁液の
供給速度、空気流量速度などを望むように変えることができる。任意の適切なス
プレードライヤーが使用できる。ノズルサイズは必要に応じて変えることができ
る。特定のスプレーフリーズドライ条件はより詳細に後述する。
【0048】 こうしてワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末を提供する
ことができる。粉末の各種成分の割合はスプレードライ又はスプレーフリーズド
ライする懸濁液の組成を調整することにより調整できる。しかしながら粉末は典
型的には、 (i) 5〜60 重量%、例えば 7〜50 重量%(例えば 10〜30 重量%)の、抗原を
吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジュバント、 (ii) 25〜90 重量%、例えば 30〜80 重量%(例えば 40〜70 重量%)の、糖類
、 (iii) 4.5〜40 重量%、例えば 7〜30 重量%(例えば 10〜20 重量%)の、ア
ミノ酸又はその塩;及び、 (iv) 0.5〜10 重量%、例えば 0.8〜6 重量%(例えば 1〜3 重量%)の、コロ
イド性物質、 を含む、又はいくつかの実施形態では本質的にこれらからなる。
【0049】 本発明は一般的に、抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジ
ュバントを含む水性懸濁液をスプレーフリーズドライすることにより生成される
、ワクチンとして使用するのに好適な粉末に関する。かかる粉末は針無しシリン
ジ送達系からの経皮投与に好適である。粉末は針無しシリンジ送達系からの経皮
投与に適する。従って、当該粉末状組成物を構成する粒子は、音速の数倍までの
急激な加速並びに皮膚及び組織との衝撃及びそれらの貫通に耐えるのに十分な物
理的強度を有していなければならない。
【0050】 好ましくは、スプレーフリーズドライする前に、水性懸濁液は、10重量%未満
、例えば5重量%未満、そして好ましくは3重量%未満の、抗原を吸着している塩
アジュバントを含む。水性懸濁液は典型的には、少なくとも0.05重量%、例えば
少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.6重量%の、抗原を吸着しているアジュ
バントを含む。より好ましくは懸濁液は、0.2 又は 0.3〜0.6、0.75 又は 1 重
量%、好ましくは 0.2〜0.4重量%の、抗原を吸着しているアジュバントを含む
。アジュバント塩が約10重量%を越える濃度のとき、水性懸濁液は非常に粘凋に
なる。このことは懸濁液の噴霧時性能を制限する。
【0051】 アジュバント濃度の好ましい上限は、スプレーフリーズドライの前の水性懸濁
液に適用されることを理解されたい。抗原を吸着しているアジュバント塩の含量
は、本発明のスプレーフリーズドライした粉末中で 50重量%程度又はそれ以上
であり得る。
【0052】 アジュバントは一般的にはアルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウム又はリ
ン酸アルミニウムである。あるいは、アジュバント塩は硫酸アルミニウム又はリ
ン酸カルシウムであり得る。
【0053】 この場合もまた、本明細書中で定義した任意の適切な抗原を使用し得る。抗原
はウイルス抗原であり得る。従って抗原は、数ある中でもピコルナウイルス科(
例えばポリオウイルスなど);カリシウイルス科;トガウイルス科(例えば風疹
ウイルス、デングウイルスなど);フラビウイルス科;コロナウイルス科;レオ
ウイルス科;ビルナウイルス科;ラブドウイルス科(例えば狂犬病ウイルスなど
);フィロウイルス科;パラミクソウイルス科(例えばムンプスウイルス、麻疹
ウイルス、RSウイルスなど);オルソミクソウイルス科(例えばインフルエンザ
ウイルスA型、B型及びC型など);ブンヤウイルス科;アレナウイルス科;レト
ロウイルス科(例えばHTLV-I;HTLV-II;HIV-1及びHIV-2);及びサル免疫不全
ウイルス(SIV)のメンバーから導くことができる。
【0054】 あるいは、ウイルス抗原は、パピローマウイルス(例えばHPV);ヘルペスウ
イルス;肝炎ウイルス、例えばA型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV
)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV
)又はG型肝炎ウイルス(HGV);及びダニ媒介脳炎ウイルスから導くことができ
る。これらのウイルスの詳細は、例えば、Virology, 第3版 (W.K. Joklikら 199
8);Fundamental Virology, 第2版(B.N. Fields及びD.M. Knipe編 1991)を参
照されたい。
【0055】 本発明に使用するための細菌抗原は、ジフテリア、コレラ、結核、破傷風、百
日咳、髄膜炎及び他の病的状態を引き起こす、例えば髄膜炎菌A、B及びC、ヘモ
フィルスインフルエンザB型(HIB)、ヘリコバクターピロリ、コレラ菌、大腸菌
、カンピロバクター属、赤痢菌属、サルモネラ属、連鎖球菌属の種及びブドウ球
菌属を含む生物から導くことができる。細菌抗原の組み合わせ、例えばジフテリ
ア抗原、百日咳抗原及び破傷風抗原の組み合わせも考えられる。好適な百日咳抗
原は、百日咳毒素及び/又は糸状血球凝集素及び/又はパータクチン(P69とも
称される)である。抗-寄生虫抗原はマラリア及びライム病を引き起こす生物か
ら導くことができる。
【0056】 本発明に用いるための抗原は当業者にとって既知の種々の方法を用いて産生さ
せることができる。特に、標準的な精製技法を用いて天然の資源から直接に抗原
を単離することができる。あるいは、丸ごとの死んだ、弱毒化された又は不活性
化した、細菌、ウイルス、寄生虫又は他の微生物の全体を使用することもできる
。さらには、既知の技法を用いて組換えにより抗原を産生させることができる。
例えば、Sambrook, Fritsch及びManiatis, Molecular Cloning: A Laboratory M
anual, Vols I 及び II (D.N. Gloverら 1985)を参照されたい。
【0057】 本明細書中で使用するための抗原はまた、記載されているアミノ酸配列を基に
、固相ペプチド合成のような化学的ポリマー合成により合成することもできる。
かかる方法は当業者にとって既知である。例えば、固相ペプチド合成技法につい
ては、J.M. Stewart及びJ.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, 第2版,
Pierce Chemical Co., Rockford, IL (1984) 並びに G. Barany 及び R.B. Merr
ifield, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, 編集者 E. Gross 及び
J. Meienhofer, Vol. 2, Academic Press, New York, (1980), pp. 3-254を;
そして、古典的な溶液合成については、M. Bodansky, Principles of Peptide S
ynthesis, Springer-Verlag Berlin (1984) 並びに E. Gross 及び J. Meienhof
er 編, The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, 上述, Vol. 1を参照さ
れたい。
【0058】 本水性懸濁液は基本的には水及び抗原を吸着しているアジュバントからなって
いてよく、或いは、更なる添加物が懸濁液中に含まれていてもよい。実質的に無
毒で薬理学的に不活性である限りあらゆる添加物が使用できる。スプレーフリー
ズドライ技術は、多種多様の添加物を含む懸濁液に適用した場合に有効であるこ
とを見出したが、加えて本発明の方法、従って本発明の粉末は組成とは全く無関
係であることを見出した。
【0059】 典型的には、本水性懸濁液は保護剤、溶媒、塩、界面活性剤、緩衝剤などとと
もに適切な賦形剤を含む。適切な賦形剤としては、水と接触したときに増粘又は
重合しない自由流動性粒子固体が挙げられるが、これらは被験個体に投与した場
合に無害であり、且つ、その医薬活性を改変する態様で医薬物と有意的に相互作
用しないものでなければならない。通常用いる賦形剤の例としては、単糖類(例
えばグルコース、キシロース、ガラクトース、フラクトース、D-マンノース又は
ソルボース)、二糖類(例えばラクトース、マルトース、サッカロース、トレハ
ロース又はスクロース)、糖アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール、
キシリトール、グリセロール、エリスリトール又はアラビトール)、ポリマー(
例えばデキストラン、デンプン、セルロース又は高分子量ポリエチレングリコー
ル(PEG))、アミノ酸又はその塩(例えばグリシン、アラニン、グルタミン、ア
ルギニン、リシン若しくはヒスチジン又はそれらのアルカリ金属若しくはアルカ
リ土類金属との塩(例えばナトリウム、カリウム又はマグネシウム塩))、或い
はリン酸ナトリウム若しくはリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウ
ム、クエン酸ナトリウム、クエン酸、酒石酸、並びにそれらの組合わせが挙げら
れるがこれらに限らない。好適な溶媒には塩化メチレン、アセトン、メタノール
、エタノール、イソプロパノール及び水が挙げられるがこれらに限らない。典型
的には水を溶媒として用いる。一般的には、約1mM〜2mMのモル濃度の範囲の薬学
的に許容される塩が使用できる。薬学的に許容される塩としては例えば塩酸塩、
臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸の塩;及び、酢酸塩、プロピオン
酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩が挙げられる。薬学的に許容さ
れる賦形剤、ビヒクル及び助剤物質の詳細な解説は、REMINGTON’S PHARMACEUTI
CAL SCIENCES (Mack Pub. Co., N.J. 1991) (参照により本明細書に組み入れる
)に書かれている。
【0060】 水性懸濁液中で使用するのに好ましい賦形剤としては、糖類、アミノ酸又はそ
の塩、及びポリマーが挙げられる。典型的には懸濁液はマンニトールとトレハロ
ースとの組合わせのような1種以上の糖類を含む。糖類は典型的には0.5〜30重
量%の量で存在する。典型的には 0〜30重量%の量でアミノ酸塩が、例えば 0.1
〜30重量%の量のグルタミン酸アルギニン又はアスパラギン酸アルギニンのよう
に、及び/又は、ポリマーが、例えば 0〜30重量%の量のデキストランのように
含まれていてもよい。典型的な賦形剤の組み合わせは、1種以上の糖類、及びポ
リマーを含み、アミノ酸は実質的に含まない。水性懸濁液中に存在する賦形剤の
総量は典型的には 0〜50%、より好ましくは 10〜30%である。
【0061】 本発明の粒子は、はじめに、抗原を吸着しているアジュバント、及び必要な添
加物を水中に懸濁することにより形成する。次に、この水性懸濁液をスプレーフ
リーズドライする。当該技術分野において既知の任意の方法(例えば、Mumentha
lerら, Int. J. Pharmaceutics (1991) 72, ページ 97-110、及び、Maaら, Phar
. Res. (1999) Vol. 16, ページ249に記載された方法)を用いてスプレーフリー
ズドライ工程を行うことができる。典型的なスプレーフリーズドライ技法は攪拌
下の液体窒素中に本水性懸濁液を噴霧することを含む。次に、凍結した粒子を含
む液体窒素を低温、例えば-60℃〜-20℃に保持し、その後好ましくは20〜500mT
(2.666〜66.65 Pa) の圧力下で、-50℃〜0℃のような低温下にて真空乾燥する。
乾燥工程は、典型的には一次乾燥と二次乾燥の二段階で行う。一次乾燥の時間は
典型的には4〜24時間の範囲であり、二次乾燥の時間は典型的には 6〜24時間の
範囲である。減圧しながら室温に達するまで温度を徐々に高めることができる。
【0062】 この技法は、水性懸濁液の液滴への急速凍結を伴う。その後、本乾燥工程は、
高い空気温度を必要とすることなく昇華により氷を除去する。粉末は任意の既知
の技法により集めることができる。正確なスプレーフリーズドライの条件は、調
製する粒子の所望の特性に基づいて決めることができる。従って、温度、圧力、
及び他の条件は望むように変えることができる。
【0063】 本発明の粉末は通常自由流動性である。本粉末は、凝集したアジュバント塩は
殆ど又は全く含まず、それゆえに水中で再懸濁したときにゲルを形成することが
できる。典型的には再懸濁したときに沈殿は実質的に生じない。粉末を蒸留水に
添加(重量比1:500)して3分間振とうした後に、典型的には沈殿物が全くない
ゲル様懸濁液が得られる。3時間後でも沈降する沈殿物は観察されない。一晩、
例えば12時間静置した後でも沈殿が生じないこともあり得る。
【0064】 沈殿物の存在、及び再生されたゲル調製物の凝集の程度は、典型的には、再生
された調製物が光線を回折する能力により評価される。凝集の程度はまた、標準
的な光学顕微鏡及び/又は沈殿沈降法により定量的に評価することもできる。粒
子の凝集についての他の適切な試験は、例えば、レーザーをベースとするあるい
は光の障害をベースとする、数多くある標準的な粒子サイズ測定技法のうちのい
ずれかを用いて、再生前及び後の粒子サイズを測定することでできる。
【0065】 本発明の粒子は、典型的には角質層を横切る又は粘膜を貫通する被験者への高
速度の経皮送達のための適切なサイズを有している。粒子の質量平均空気動力学
的直径(MMAD)は0.1〜250μmである。MMADは、5〜100μm又は10〜100μm、好ま
しくは10〜70μm又は20〜70μmであり得る。大体、粒子の10重量%未満が、MMAD
よりも少なくとも5μm大きい直径を有しているか、又は、MMADよりも少なくとも
5μm小さい直径を有している。好ましくは粒子の5重量%以下がMMADよりも5μm
以上大きな直径を有している。また、粒子の5重量%以下がMMADよりも5μm以上
小さな直径を有していることも好ましい。
【0066】 粒子は0.1〜25g/cm3、好ましくは0.8〜1.5g/cm3のエンベロープ密度を有して
いる。個々の粒子の形状は顕微鏡下で観察した場合異なっていることがあるが、
好ましくは粒子は実質的に球形である。長軸:短軸の平均的な比は、典型的には
3:1〜1:1、例えば 2:1〜1:1である。
【0067】 粉末の個々の粒子は、実質的に均一で非多孔質性の表面を有する、実質的に球
形の空気動力学的形状を有している。本粒子はまた、針無しシリンジ器具からの
経皮送達に適切な粒子貫入エネルギーを持つと思われる。
【0068】 この発明で使える針無しシリンジ器具の詳細な記載は、本明細書中で解説する
ように、先行技術において認められる。これらの器具は針無しシリンジ器具 (ne
edless syringe device) と称され、これらの器具の代表的なものは、皮膚用のP
owderJect(登録商標)針無しシリンジ器具、及び、口用のPowderJect(登録商
標)針無しシリンジ器具(PowderJect Technologies Limited, Oxford, UK)で
ある。これらの器具を用いて、本発明の粉末の有効量を被験者に送達する。有効
量とは、ワクチン接種するための所望の抗原の十分量の送達に必要とされる量で
ある。この量は抗原の性質により変わり、送達される抗原の既知の活性をベース
とした臨床試験により容易に決定することができる。「Physicians Desk Refere
nce」及び「Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeuti
cs」は、必要量を決定する場合に有用である。
【0069】 粒子を送達するための針無しシリンジ器具は、本出願人の所有に係るBellhous
eらの米国特許第5,630,796号(参照により本明細書に組み入れる)に最初に記載
された。今日では数多くの特有の器具構成をしたものがあるが、かかる器具は、
典型的には、ガスシリンダー、粒子カセット又はパッケージ、及び関連する消音
器手段を備えた超音速ノズルを、上から下にかけて一直線状に含むペン型装置と
して提供される。適当な粉末(この場合は、本発明に係るスプレードライ又はス
プレーフリーズドライされた粉末)を適切な容器(例えば、ワッシャ型のスペー
サーにヒートシールされて内臓型の密閉ユニットを形成している、2枚の引裂き
可能なポリマー膜により形成されているカセット)内に入れる。膜の素材は、超
音速流が開始される条件を決定する、解放及び破裂圧力の特定の様式が実現され
るように選択することができる。操作は、器具を起動させて、器具の内部で圧縮
ガスをシリンダーから膨張チャンバーへと開放する。開放されたガスは、粒子カ
セットに接触し、十分な圧力に達したときに、突然カセット膜を破り、粒子を超
音速ノズル中に吹き飛ばすが、その結果送達が行なわれる。ノズルは、予め決め
られた面積の標的表面にある量の粒子を送達するための特定のガス速度と流れの
パターンが実現されるように設計される。前記消音器は、膜の破裂により生じる
騒音を弱めるために使用される。
【0070】 粒子を送達するためのもう一つの針無しシリンジ器具が、同一出願人に係る国
際公開第 96/20022号に記載されている。この送達系もまた圧縮ガス源のエネル
ギーを利用して、粉末状組成物を加速し送達する。しかしながら、この系は、粒
子を加速するためにガス流の代わりに衝撃波を使用するという点で、米国特許第
5,630,796号の系とは区別される。より具体的には、柔軟性のあるドームの後側
で発生させられた衝撃波によりもたらされた瞬間的な圧力上昇がドームの背中を
たたき、標的表面の方向への柔軟性ドームの急激な外反転を引き起こす。この急
激な外反転が(ドームの外側にある)粉末状組成物を十分な速度で、すなわち標
的組織(例えば口腔粘膜組織)に貫入する運動量で射出する。この粉末状組成物
はドームが完全に外反転した時点で放出される。ドームはまた高圧のガス流を完
全に封じ込む働きもするので、従ってこの高圧ガス流は標的組織と接触しない。
この送達操作の間はガスは放出されないので、この系は本質的に静かである。こ
の設計は、例えば粒子を低侵襲手術部位に送達するなどの、他の閉鎖された又は
その他の敏感な用途において使用することができる。
【0071】 本発明のさらなる態様では、本発明の粉末を使用に先立ちパッケージングする
ことができる単回用量又は複数用量容器は、適切な用量を構成する適切量の粉末
を内包した密閉された容器を含み得る。粉末は無菌の調合物としてパッケージン
グすることができ、従って密閉された容器は調合物の無菌性を使用するまで保持
するように設計される。所望の場合は、この容器は上記の針無しシリンジ系に直
接使用できるようにすることもできる。
【0072】 このように、本発明の粉末を針無しシリンジによる送達のために個々の単位用
量でパッケージングすることができる。本明細書中で使用する場合、「単位用量
」とは、治療上有効な量の本発明の粉末を含んでいる用量容器を意味する。この
用量容器は典型的には針無しシリンジ器具内に収まり、該器具からの経皮送達を
可能にする。かかる容器は、カプセル、ホイルパウチ、サシェ、カセットなどで
あり得る。
【0073】 本粉末がパッケージングされた容器はさらに、その組成を表示するために、ま
た、関連する用量の情報を提供するためにラベルを付けることができる。加えて
、本容器は、例えば米国食品医薬品局などの政府当局が規定する書式の注意書き
が記載されたラベルを付けることができる。この場合その注意書きは、ヒトへの
投与用にその中に入っている粉末の製造、使用又は販売に関する米国連邦法下で
当局により認可されていることを表示する。
【0074】 発射された粒子が標的表面を貫入する実際の距離は、粒子サイズ(例えば凡そ
球形の粒子構造であると仮定した場合の見掛けの粒子直径)、粒子密度、粒子が
表面に衝突する初速度、並びに標的とされる皮膚組織の密度及び運動粘度に依存
する。これに関連して、針無し注射で使用するための最適な粒子密度は、一般的
には約0.1〜25 g/cm3(例えば約0.8〜1.7 g/cm3)、好ましくは約 0.9〜1.5 g/c
m3の範囲である。射出速度は一般的に約100〜3,000 m/秒の範囲である。適切な
ガス圧により、10〜70μmの平均直径を有する粒子は、推進するガス流の超音速
に近い速度でノズルを通して加速され得る。
【0075】 所望であれば、針無しシリンジ系を、適切な用量の本発明の粉末を含む、予め
充填した状態で提供することができる。充填したシリンジは密閉容器内にパッケ
ージングすることができ、該容器は更に上記のようにラベルを付けてもよい。
【0076】 針無しシリンジ器具の性能を特性評価することを目的として、数多くの新規な
試験方法が開発されており、或いは、確立された試験方法が改良されている。こ
れらの試験の範囲は、粉末状組成物の特性評価;ガスの流れ及び粒子の加速、擬
似又は生体標的への衝撃の評価;並びに、完全系の性能の測定に及ぶ。従って、
以下の試験のうちの1つ、幾つか或いは全てを用いて、本発明の粉末を針無しシ
リンジ系に使用する場合の物理的及び機能的適合性を評価することができる。
【0077】人工フィルム標的に対する影響の評価 粉末注射系の多くの側面を測定する機能試験は同時に、「金属蒸着フィルム」
試験又は「貫入エネルギー」(PE)試験ともいわれている。これは、プラスチッ
クフィルム基盤で支えた精密な薄い金属層に対して粒子が与える損傷の量的評価
に基づいている。損傷は、粒子の運動エネルギー及び特定の他の性質に相関する
。試験体からの応答が大きいほど(すなわち、フィルムの損傷/破壊が甚だしい
ほど)、器具は粒子により大きなエネルギーを与えたことになる。電気的抵抗の
変化の測定又は反射式もしくは透過式のイメージングデンシトメトリーは、制御
された再現性のある試験において器具又は調合物の性能を評価するための信頼で
きる方法を提供する。
【0078】 フィルムの試験ベッド(test-bed)は、圧力、用量、粒子サイズ分布及び素材
などを含む全ての主な装置パラメーターの粒子送達の変化に敏感であり、且つガ
スには敏感ではないことが示されている。現在は、125μmポリエステル支持体上
の厚さ約350オングストロームのアルミニウムが、60barまでで操作する試験器具
に用いられる。
【0079】エンジニアリング発泡体 (engineering foam) 標的に対する衝突の影響の評価 針無しシリンジ器具により送達されたときの粒子の性能を評価するためのもう
一つの方法は、硬いポリメチルイミド発泡体(Rohacell 5 IIG, 密度 52 kg/m3,
Rohm Tech Ind., Malden, MA)に対する衝突の影響を評価することである。こ
の試験のための実験の設定は、金属蒸着フィルム試験に使用するのと同様である
。貫入の深さは精密キャリパーを用いて測定する。実験の度ごとに、加工したマ
ンニトール標準品を対照として試験するとともに、器具の圧力、粒子サイズの範
囲などの他の全てのパラメーターを一定に保つ。データはまた、この方法が粒子
サイズと圧力の変化に敏感であることを示している。薬物に対する賦形剤として
の加工したマンニトール標準品は、前臨床実験において全身性の濃度を送達する
ことが示されており、発泡体貫入試験での相対性能の測定は、実用的なin vivo
での基盤を有する。見込みのある粉末は、前臨床的又は臨床的な研究において十
分な性能であることを予測するためのマンニトールと同等の又はより優れた貫入
を示すことが期待できる。この簡便で迅速な試験は、粉末を評価する比較方法と
して価値が有り、単独で考えることを意図するものではない。
【0080】粒子消耗試験 粒子の性能の更なる指標は、種々の候補組成物が、高速粒子注射技法に伴う力
に耐えられることを試験することである。その力とはすなわち、静止した粒子に
、急激に高速度のガスの流れが接触することによる力、粉末が針無しシリンジを
通過する際の粒子と粒子との衝突から生じる力、及び、粉末が器具を通過すると
きに粒子と器具との衝突からも生じる力である。従って、単純な粒子消耗試験は
、最初の組成物と、針無しシリンジ器具から送達された後の組成物との間の粒子
サイズ分布の変化を測定するよう工夫されている。
【0081】 この試験は、粒子組成物を上記の針無しシリンジに装填し、次に、その器具を
粒子組成物が溶解しない担体液体(例えば鉱物油、シリコンオイルなど)を含む
フラスコ中に向けて発射する。続いて担体溶液を集めて、最初の組成物と発射さ
れた組成物との両方における粒子サイズ分布を、好適な粒子サイズ計測機器(例
えばAccuSizer(登録商標)モデル780 Optical Particle Sizer)を用いて計算
する。約50%未満、より好ましくは約20%未満の、質量平均直径(AccuSizer装
置により測定)の器具作動後の減少を示す組成物は、本明細書に記載する針無し
シリンジ系に使用するために好適であると認められる。
【0082】ヒト皮膚へのin vitroでの送達及び経皮水分喪失量 最終的な実際の使用とよりよく似た粉体性能の試験として、候補となる粉末組
成物を、採皮した、完全な厚さのあるヒト腹部皮膚サンプルに注射する。注射後
の折り曲げた皮膚サンプルを、32℃の水、生理的食塩水又は緩衝液を含む改良し
たフランツ拡散セルに入れることができる。界面活性剤などの添加物を用いて拡
散セルの部品への結合を回避してもよい。皮膚における調合物の性能を評価する
ために、2種類の測定を行うことができる。
【0083】 身体への影響(例えば皮膚の障壁機能に対する粒子の注射の影響)を測定する
ために、経皮水分喪失量 (TEWL)を測定することができる。測定は、拡散セルキ
ャップの上部に置いた、〜12 mmの煙突のように働くTewameter TM 210 (登録商
標)(Courage & Khazaka, ケルン、ドイツ)を用いて平衡化(約1時間)させ
て行う。より大きな粒子及びより高い注射圧力は比例的に、in vitroでのより高
いTEWL値をもたらす。そしてこれはin vivoでの結果と相関することが示されて
いる。in vitro で粒子注射すると、TEWL値は、粒子サイズ及びへリウムガス圧
に依存して、約7から約27(g/m2h)に上昇した。粉末無しでのヘリウム注射は影
響が無い。大部分の粒子サイズについてTEWLが約1時間で処理前の値に回復する
ことから示されるように、in vivoでは、皮膚の障壁性能はすぐに通常に戻る。
最大の粒子(53〜75μm)では、皮膚サンプルは1時間で50%回復し、24時間まで
には完全に回復する。
【0084】ヒト皮膚へのin vitroでの送達及び薬物拡散速度 in vitroで調合物の性能を測定するために、候補粉末の抗原成分を、HPLC又は
他の好適な分析技法を用いた化学的アッセイのために所定の時間間隔で、フラン
ツセルのリザーバー溶液を完全に又は一部を入れ換えることにより集めることが
できる。濃度データを用いて送達のプロフィールを作成し、定常状態での透過速
度を計算することができる。この技法を用いて、皮膚への抗原の結合、抗原の拡
散、角質層の粒子貫入効率等の早期の徴候について、in vivoでの試験を行う前
に、調合物をスクリーニングすることができる。
【0085】 これら及びその他の定性的又は定量的な試験を用いて、高速度粒子注射器具に
用いるための本発明の粉末の物理的又は機能的な適性を評価することができる。
次の特性:実質的な球状形態(例えば可能な限り1に近い縦横比);平滑な表面
;好適な活性充填成分;粒子消耗試験を用いた粒子サイズの20%未満の減少;構
成物の本当の密度に可能な限り近いエンベロープ密度(例えば約0.8 g/ml);及
び、粒子サイズ分布が狭い、約20〜70μmのMMAD、を有する粉末の粒子が、必要
ではないが、好ましい。組成物は典型的には自由流動性である(例えば、相対湿
度50%にて8時間貯蔵後、及び相対湿度40%にて24時間貯蔵後に自由流動性であ
る)。これらの基準の全ては、上記の方法を用いて評価することができ、そして
それらは更に、参照により本明細書に組み入れる次の刊行物に詳述されている。
Etzlerら (1995) Part. Part. Syst. Charact. 12:217; Ghadiriら, (1992) IFP
RI Final Report, FRR 16-03 University of Surrey, UK; Bellhouseら (1997)
“Needleless delivery of drugs in dry powder form, using shock waves and
supersonic gas flow”, Plenary Lecture 6, 第21回 International Symposiu
m on Shock Waves, Australia; 及び Kwonら, (1998) Pharm. Sci. 補遺 1 (1),
103。
【0086】 あるいは本発明の粉末を、他の経路を介して被験体にワクチン接種するために
使用することもできる。この目的のために、粉末を好適な担体又は注射用水もし
くは生理的食塩水のような希釈液と組合わせてもよい。得られたワクチン組成物
は、典型的には、例えば皮下又は筋肉内に注射することにより投与される。
【0087】 どの投与経路を選択したとしても、抗原の有効量を、ワクチン接種する被験体
に送達する。一般的には50ng〜1mg、より好ましくは1μg〜50μgの抗原が免疫応
答を起こすのに有用である。正確な必要量は、治療する被験体の年齢及び諸条件
、選択した特定の抗原、投与する部位およびその他の因子に応じて変化するであ
ろう。適切な有功量は当業者により容易に決定され得る。
【0088】 投薬治療は単回の投薬計画であっても複数回の投薬計画であってもよい。複数
回の投薬計画は、ワクチン接種の第一の過程は1〜10の個別の用量で行い、続い
て、第2の用量については、免疫応答を維持及び/又は強化するために選択した
、例えば1〜4ヶ月の時間間隔で投薬を行い、そして必要であれば数ヶ月後にその
後の投薬を行うというものである。投薬計画はまた、少なくともある程度は、被
験体の必要により決まるであろうから、担当医の判断に委ねられることになろう
。ワクチン接種は当然ながら一般的には、それに対する防護が望まれる病原体に
初感染する前になされることになるだろう。
【0089】C. 実験 以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の例である。実施例は説明
ためにのみ提示するものであり、本発明の範囲を限定することをいかなる意味で
も意図するものではない。
【0090】 用いる数量(例えば量、温度など)のついては正確を期すべく努力を重ねたが
、実験的な誤り及び変動は当然ながら許容されるべきである。
【0091】比較例1 スプレードライした迅速放出ワクチン調製物を米国特許第5,902,565号に記載
の手順に従って得た。5重量%のマンニトール及び5重量%のリン酸アルミニウム
(Adju-Phos)を含む調合物を、卓上型スプレードライヤー(Buchi 190)を用い
てスプレードライした。スプレードライ条件は:吸い込み温度 = 130℃;排出温
度 = 70℃、液体供給速度 = 3 ml/分;噴霧空気流速度 = 500 l/時;及び、フル
スケールの乾燥用空気、であった。得られた自由流動性粉末は約10μmの粒子サ
イズを有していた。粉末を蒸留水中で再生した(1:500重量比)。懸濁した粒子
を15分間静置したところ、溶液はゲルを形成することができなかった。光学顕微
鏡により、再生した後の粒子はその形状と大きさを維持しており、ミョウバンが
凝集したままであって崩壊していないことが示唆された。
【0092】実施例1 下記の調合物を、下表に列記した成分を15mlの蒸留水中で混合することにより
調製した:
【表1】
【0093】 これらの調合物を、次の条件:吸い込み温度 = 130℃;排出温度 = 70℃、Q液
体供給:設定5;及び、Q噴霧空気:500 l/時、のもと操作するBuchi 190 Mini-S
pin Drier を用いてスプレードライした。乾燥用空気はフルスケールに設定した
。自由流動性粉末を得た。収量(収率)は次の通りであった:
【表2】
【0094】 スプレードライに供した懸濁液の固体含量に対する、得られた粉末の組成は次
の通りであった:
【表3】
【0095】 スプレードライした粉末を蒸留水中に再懸濁した。具体的には各粉末を蒸留水
に添加し(重量で1:500)、3分間振とうした。得られた懸濁液を凝集につい
て調べた。本発明に係る調合物2だけが沈殿の無いゲル状懸濁液を形成した。結
果は次の通りであった: - 調合物 1:32.59 mgのスプレードライした粉末を1mlの蒸留水に添加した。得
られた懸濁液を終夜静置した後に白色の沈殿が生じた。
【0096】 - 調合物 2:37.1 mgのスプレードライした粉末を1mlの蒸留水に添加した。白
色ではない、グレーのゲル状懸濁液が形成された。得られた懸濁液を終夜静置し
た後に沈殿は観察されなかった。
【0097】 - 調合物 3:44.34 mgのスプレードライした粉末を1mlの蒸留水に添加した。得
られた懸濁液を終夜静置した後に白色の沈殿が生じた。
【0098】 - 調合物 4:29.4 mgのスプレードライした粉末を1mlの蒸留水に添加した。得
られた懸濁液を終夜静置した後に白色の沈殿が生じた。
【0099】実施例2 二つのワクチン製剤を次のように調製した。
【0100】調合物 A : 高濃度のアラム-HBsAg懸濁液を、先ず、500μgのアラム(約1500μgの水酸化
アルミニウム)に吸着された20μgのHBsAg(凡そ1回のヒトの用量)を含む、Rhe
in Americana S.A. から購入したアラム吸着HBsAgワクチンを、蒸留した脱イオ
ン化した水で洗浄してバッファー塩を除くことにより調製した。アラムゲルを25
0mlのNalgene 小口立方型ポリカーボネートボトル中で2〜8℃にて終夜静置した
。上清(150ml)を除き、沈殿物に同じ量の水を添加して混合した。この手順を
数回繰り返した。
【0101】 100gの洗浄済みのアラム-HBsAg調合物をNalgene立方型ボトル中で秤量し、2〜
8℃にて終夜静置した。90mlの上清を除いた後、残りの懸濁液を50mlのポリプロ
ピレン遠沈管に移し、卓上型遠心機(Allegra 6R, Beckman)を用いて200rpmに
て4分間遠心分離した。上清をさらに除いて、3.369gの高濃度アラム-HBsAg懸濁
液を得た。続いてこの懸濁液を、315.24mgのマンニトール、81.73mgのグリシン
、101.91mgのデキストラン及びプラセボアラムゲル(Al2O3、2%)と混合して、
3%のアラム濃度を有する液体アラム-HBsAg調合物を得た。
【0102】調合物 B : アラム-HBsAg懸濁液を、調合物Aについて記載した方法により洗浄した。20.79
gの懸濁液を50mlの遠沈管中に秤量して2〜8℃にて終夜静置した。17mlの上清を
除いた後、残りの高濃度懸濁液(3.572g)を、113.06mgのマンニトール、47.31m
gのグリシン及び23.22mgのデキストランと混合して、0.6%のアラム濃度を有す
る液体調合物を調製した。
【0103】 2つの調合物を下記の表4に示した技法を用いて乾燥させた:
【表4】
【0104】フリーズドライ Dura-Stopフリーズドライヤー(FTS System, Stone Ridge, NY)を用いて、表
5のフリーズドライサイクルに基づいて、アラムに吸着されたHBsAg調合物をフリ
ーズドライした。
【0105】
【表5】
【0106】 100mT(13.3Pa)の真空を一次乾燥及び二次乾燥の間維持した。
【0107】スプレーフリーズドライ: 各懸濁溶液を、超音速噴霧機(Sono Tek Corporation, Milton, NY)を用いて
60kHzのノズル周波数により、ステンレス鋼パン中で攪拌した液体窒素中にスプ
レーした。噴霧のための音響エネルギーを5.0ワットに設定した。液体の供給はM
asterFlex C/L 蠕動ポンプにより1.5ml/分で行った。液体窒素中の凍結した粒
子を含むパンを -50 ℃に事前冷却したDura-凍結乾燥器に入れ、表6の条件に基
づいてフリーズドライした。
【0108】
【表6】
【0109】 200mT(16.6Pa)の真空を一次乾燥及び二次乾燥の間維持した。
【0110】圧縮/磨り潰し/篩い分け: 凍結乾燥した材料を、圧縮、磨り潰し及び篩い分け(「C/G/S」)の技法を用
いて粒子形態にした。より具体的には、凍結乾燥した材料を直径が13mmのステン
レス鋼ダイ(Carver Press, Wabash, IN)において12,000psiの圧で5〜10分間圧
縮した。圧縮した円盤を乳鉢と乳棒を用いて手動により磨り潰した。磨り潰した
粉末を重ねた篩(直径3インチ)を通して、3つの大きさの画分(53〜75μm、38
〜53μm及び20〜38μm)に手動により篩い分けした。
【0111】実験1:凝集の程度に対する乾燥工程の影響 粉末1〜3を水中で1:500 w/wの比で再生し、標準的な技術によって光学顕微
鏡を用いて検査した。粒子の視覚による分析は、10x-接眼レンズ及び5x-対物レ
ンズを備えた光学顕微鏡(Model DMR, Leica, ドイツ)を用いて行った。当該シ
ステムに、画像の出力のためにPolaroidカメラシステムを装備した。光学顕微鏡
はアラム凝集の程度の定性分析を可能にする。この実験において、粉末1は再生
したときに非常に大きな凝集が生じたのに対して、粉末2は僅かしか凝集しなか
った。粉末3はほぼ全く凝集しなかった。
【0112】 再生した粉末の粒子サイズも定量的に測定した。再生した粉末サンプルを渦流
攪拌/超音波分解して均質な懸濁液にした。次に懸濁液を、粒子サイズ分布測定
のために粒子サイズ分析器(AccuSizer 780, Particle Sizing System, Santa B
arbara, CA)のガラス容器に添加した。スプレーフリーズドライの前と後とで粉
末2と3について行った測定の結果を図1に示す。フリーズドライの前と後との
粒子サイズを示す粉末1についての同様の比較結果を図2に示す。これらの結果は
、乾燥の前後の粉末2及び3の粒子サイズ分布が同じであることは、フリーズドラ
イの間にアラム凝集が殆ど又は全く起こっていないことを示している。対照的に
、粉末1の粒子サイズはフリーズドライの後で有意に増加し、このことは著しい
アラム凝集が起こったことを示している。
【0113】実験2:B型肝炎ワクチン含有アラムの安定性に対する凝集の影響 アラム吸着B型肝炎ウイルスワクチンの免疫原性に対する、アラム凝集の影響
を評価した。上記の通り、B型肝炎ワクチン(を含有するアラム)をフリーズド
ライ工程により乾燥させたときに深刻な凝集が起きたのに対して、B型肝炎ワク
チンのスプレーフリーズドライは凝集を引き起こさなかった。このマウスの実験
では、フリーズドライ及びスプレーフリーズドライをしたB型肝炎ワクチンの免
疫原性を比較した。さらに、篩い分けしていないフリーズドライワクチンと種々
の画分(直径が、<20μm、38〜45μm、53〜75μm)の免疫原性を比較して、どの
サイズの画分がより免疫原性があるかを測定した。実験の設計を表7に示す。
【0114】
【表7】
【0115】 粉末を蒸留水で再生してBalb/Cマウス(メス、1グループあたり8匹、試験の
開始時において5〜7週齢)を免疫するために使用した。再生したワクチンを 2
3 1/5 の針を用いて腹腔内注射することにより投与した。1回の注射で、アラム
に吸着された2μgのB型肝炎表面抗体を含む200μlの溶液を投与した。対照マウ
スは無処理の液体B型肝炎ワクチンにより免疫した。初回免疫(0日)及び追加免
疫(28日)の後に、B型肝炎ワクチンに対する免疫応答を、42日目に採取した血
清を用いてELISAにより測定した。血清を対照と比較することにより抗体力価を
測定した。
【0116】 図3に示すように、これらの試験の結果は、フリーズドライにより起こるアラ
ム凝集の結果、B型肝炎ワクチンの免疫原性が減少し、そして喪失さえもするこ
とを明瞭に示した。無処理の液体ワクチンに比べて、フリーズドライしたB型肝
炎ワクチン(グループ1)は低下した免疫原性を有していた。フリーズドライ粒
子の免疫原性は粒子のサイズと逆の相関を有していた(グループ2、3及び4)。
より大きな粒子画分ほど小さな粒子サイズの画分よりも免疫原性が低かった。こ
のことは、凝集に伴って生じる大きなサイズの粒子はそのワクチンとしての効力
を損なっていることを明確に示した。スプレーフリーズドライしたB型肝炎ワク
チンは、無処理のワクチンと比べた場合、その免疫原性を維持していた(グルー
プ5及び6)。総乾燥重量中のアラムの量(50%又は12%)は乾燥粉末の効力に影
響が無かった。スプレーフリーズドライした粉末はいずれも凝集の問題がなかっ
た。このことは、スプレーフリーズドライする調合物が、アラム塩アジュバント
の効力を非常に高い濃度(3重量%)で保持するという点で重要である。
【0117】 これらの全データをまとめて考慮すれば、フリーズドライした場合には、アラ
ム凝集がアラムワクチンの効力の損失を伴うと結論付けることができる。in viv
oにおいて溶解できないと考えられる凝集した粒子の大きなサイズは、免疫系の
細胞により処理されることができず、それゆえに効力がないと考えられる。より
重要なことには、本発明の方法は、凝集を引き起こさないワクチンを含むアラム
を有する好適な乾燥粉末を調製することができる。スプレーフリーズドライの工
程に使用する液体窒素中での迅速凍結は、凝集を防止し、それによってワクチン
の効力を維持するために重要であると考えられる。
【0118】実験3:スプレーフリーズドライしたB型肝炎ワクチンの安定性に対する賦形剤
及び乾燥工程の影響 この試験では、アラムワクチンの安定性に対する賦形剤と種々のスプレーフリ
ーズドライ工程の影響を評価した。水酸化アラム(alum hydroxide)に吸着され
たB型肝炎表面抗原(HBsAg)をモデル抗原として使用した。加えて、スプレーフ
リーズドライした粉末の免疫原性を、二つの異なる免疫経路(針を用いる筋肉内
注射、及び、針無し粉末送達器具を用いる表皮粉末免疫)の後でマウスにおいて
評価した。スプレーフリーズドライした調合物の賦形剤を表8に示す。この場合
、スプレーフリーズドライした調合物は2つの糖と1つのポリマーの組み合わせ
を使用した。アミノ酸/塩は含まれていない。スプレーフリーズドライの条件は
表6に示したものと同じである。しかしながら、圧縮/磨り潰し/篩い分けの工
程は用いなかった。スプレーフリーズドライした粉末の粒子サイズ分布もまた表
8に示す。
【0119】
【表8】
【0120】 スプレーフリーズドライした調合物の免疫原性はマウスの試験で評価した。Ba
lb/Cマウス(メス、1グループあたり8匹、試験の開始時において5〜7週齢)
を使用した。試験の計画を表9に示す。筋肉内(IM)注射については、粉末を蒸
留水で再生し、アラムに吸着された2μgのB型肝炎表面抗体を含む200μlの溶液
を、23 1/5 の針を用いて大腿四頭筋内に注射により投与した。表皮粉末免疫(E
PI)については、粉末を、再充填可能な粉末送達器具を用いてマウスの毛を剃っ
た腹部の皮膚に投与した。対照マウスは無処理の液体B型肝炎ワクチンを筋肉内
注射により免疫した。初回免疫(0日)及び追加免疫(28日)の後に、B型肝炎ワ
クチンに対する免疫応答を、42日目に採取した血清を用いてELISAにより測定し
た。血清を対照と比較することにより抗体力価を測定した。
【0121】
【表9】
【0122】 この試験の結果、図4に示すように、スプレーフリーズドライしたB型肝炎ワク
チンの3つの全てが、再生した後に筋肉内経路で投与したか、粉末として皮膚経
路で投与したかに関わらず、マウスにおいて免疫原性であるということが明確に
示された。異なる賦形剤をこれらの調合物中に使用したところ、これらの3つの
調合物の間の免疫原性に有意な差は無かった。3つの調合物の全てが、水で再生
したときの凝集の問題が無かった(データは示していない)。このことは、スプ
レーフリーズドライ工程における迅速凍結工程がアラムを安定化するための重要
なステップであるという更なる証拠となる。賦形剤はそれほど重要な役割を果た
さない。この試験はまた、スプレーフリーズドライしたアラムに吸着されたワク
チンが異なる経路(例えば、再生したときの筋肉内注射、又は、粉末形態での皮
膚粉末免疫)による免疫のために有用でありうるということをも示している。
【0123】実験4:スプレーフリーズドライしたジフテリア-破傷風トキソイドワクチンの
免疫原性 スプレーフリーズドライ工程が、他のアラム含有ワクチンを有する安定した粉
末を調製するために使用できることを確認するために、CSL Limited (オースト
ラリア)から入手したジフテリア-トキソイドワクチンを用いるスプレーフリーズ
ドライした粉末を調製した。このバルクは、ジフテリアトキソイドと破傷風トキ
ソイドの両方をそれぞれ563 Lf/mLの濃度で吸着した 5% w/vのリン酸アルミニ
ウムを含んでいた。このスプレーフリーズドライしたジフテリア-破傷風-トキソ
イドワクチンを表6に記載の条件下で調製し、続いて、圧縮/磨り潰し/篩い分
けを行って、直径20〜38μmと38〜53μmの平均サイズを有する粒子を作成した。
調合物の情報を表10にまとめる。これらの粒子は水中で再生したときに凝集の問
題が無いことが、光学顕微鏡により確認されている(データは示していない)。
【0124】
【表10】
【0125】 スプレーフリーズドライしたジフテリア-破傷風-トキソイドワクチンの免疫原
性をモルモット(Charles River)で測定した。モルモット(4匹/グループ)
は、粉末送達器具を用いて腹部の皮膚に粉末を投与することにより0日目及び28
日目にワクチン接種した。各動物は、250μgのリン酸アルミニウムに吸着された
1.5 Lfのジフテリアトキソイドと1.5 Lfの破傷風トキソイドとを含む0.5mgの粉
末を受容した。対照動物は、23 1/2 の針を用いた筋肉内注射により無処理のワ
クチンによりワクチン接種した。ジフテリアトキソイド及び破傷風トキソイドに
対する抗体応答を、42日目に採取した血清を用いてELISAにより測定した。
【0126】 免疫原性試験の結果を図5に示す。スプレーフリーズドライしたアラムに吸着
されたジフテリアトキソイドによる表皮粉末免疫は、各ワクチン成分に対する抗
体応答を誘導した。そしてその力価は、無処理ワクチンの筋肉内注射により誘導
される力価と同等であった。スプレーフリーズドライした粉末のサイズは免疫原
性に有意に影響することが無いようであった。なぜならこれらの粉末はin vivo
で凝集の問題が無かったからである。スプレーフリーズドライした調合物の小さ
い方の画分は、大きい方の画分よりも、ジフテリアトキソイドに対して僅かに低
い抗体力価を誘導したようである。このことは、小さい方のサイズの画分は相対
的に送達効率が低いことを反映しているのかもしれない。この試験はまた、スプ
レーフリーズドライする工程は、乾燥した固形の投薬形態おけるアラム含有ワク
チンの効力を保持することをも示した。
【0127】 このように新規なフリーズスプレードライした粉末組成物及び当該組成物の調
製方法を記載した。対象とする発明の好ましい実施形態をある程度詳細に記載し
たが、特許請求の範囲に規定する発明の思想と範囲から逸脱することなく、自明
な改変が可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、水中で再生する前に行なわれるスプレーフリーズドライ技術を用いて
(i) 乾燥する前及び(ii) 乾燥した後の、HBsAgを吸着したアラムゲルの粒子サイ
ズ分布を示す。
【図2】 図2は、従来のフリーズドライ法により乾燥する前及び乾燥した後の、第二の
HBsAgを吸着したアラムゲルの粒子サイズ分布を示す。
【図3】 図3は、本発明に係るスプレーフリーズドライ(SFD)により乾燥した、又は
、フリーズドライ(FD)を用いて乾燥した、HBsAgを吸着したミョウバンワクチ
ンを注射したマウスを用いた免疫原性試験の結果を示す。FD粉末は篩い分けして
異なるサイズ画分にして免疫原性を試験した。アラム含量を変えた2つのSFD生
成物を試験した。
【図4】 図4は、針を用いた筋肉内注射により、又は粉末送達器具を用いる表皮粉末免
疫接種により免疫化したマウスにおける、3つの異なるスプレーフリーズドライ
した粉末の免疫原性を示す。
【図5】 図5は、スプレーフリーズドライしたジフテリア-破傷風トキソイドワクチン
のモルモットにおける免疫原性を示す。直径が20〜38μmと38〜53μmのスプレー
フリーズドライした粉末を、粉末送達器具を用いて腹部の皮膚に粉末として投与
した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 47/18 A61K 47/18 47/26 47/26 47/36 47/36 47/42 47/42 A61P 31/12 A61P 31/12 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C N,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB ,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL, IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,L C,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG ,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT, RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,T J,TM,TR,TT,UA,UG,UZ,VN,YU ,ZW (72)発明者 ザオ,ルー アメリカ合衆国 94555 カリフォルニア 州,フリーモント,ダンバートン サーク ル 6511 (72)発明者 プレストレルスキー,スティーブン,ジョ セフ アメリカ合衆国 94555 カリフォルニア 州,フリーモント,ダンバートン サーク ル 6511 Fターム(参考) 4C076 AA22 AA29 BB15 BB16 CC35 DD24 DD26 DD30 DD51 DD67 EE30 EE41 FF36 FF43 4C085 AA03 AA38 BA87 BA89 CC08 DD86 EE01 FF01 FF02 GG03 GG05

Claims (49)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a) 0.1〜0.95 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム
    塩又はカルシウム塩アジュバント; (b) 0.5〜6 重量%の糖類; (c) 0.1〜2 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (d) 0.02〜1 重量%のコロイド性物質、 を含む水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズドライすることにより
    得られる、ワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末。
  2. 【請求項2】 上記アジュバントが水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニ
    ウムである、請求項1に記載の粉末。
  3. 【請求項3】 上記アジュバントが硫酸アルミニウム又はリン酸カルシウム
    である、請求項1に記載の粉末。
  4. 【請求項4】 上記抗原が細菌又はウイルス抗原である、請求項1〜3の何
    れか1項に記載の粉末。
  5. 【請求項5】 上記糖類が単糖類、二糖類又は糖アルコールである、請求項
    1〜4の何れか1項に記載の粉末。
  6. 【請求項6】 上記糖類が、グルコース、キシロース、ガラクトース、フラ
    クトース、D-マンノース、ソルボース、ラクトース、マルトース、サッカロース
    、トレハロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グ
    リセリン、グリセロール、エリスリトール及びアラビトールからなる群から選択
    される、請求項1〜4の何れか1項に記載の粉末。
  7. 【請求項7】 上記アミノ酸が酸性アミノ酸、中性アミノ酸又は塩基性アミ
    ノ酸である、請求項1〜6の何れか1項に記載の粉末。
  8. 【請求項8】 上記アミノ酸又はその塩が、グリシン、アラニン、グルタミ
    ン、アルギニン、リシン、ヒスチジン及びグルタミン酸一ナトリウムからなる群
    から選択される、請求項1〜7の何れか1項に記載の粉末。
  9. 【請求項9】 上記コロイド性物質が、多糖類、ヒドロゲル及びタンパク質
    からなる群から選択される、請求項1〜8の何れか1項に記載の粉末。
  10. 【請求項10】 上記物質が、デキストラン、マルトデキストラン、ゼラチ
    ン、アガロース及びヒト血清アルブミンからなる群から選択される、請求項9に
    記載の粉末。
  11. 【請求項11】 上記水性懸濁液が、0.2〜0.4 重量%の、抗原を吸着して
    いるアジュバント、2〜4 重量%の糖類、0.75〜1.25 重量%のアミノ酸又はその
    塩、及び、0.07〜0.3 重量%のコロイド性物質を含む、請求項1〜10の何れか
    1項に記載の粉末。
  12. 【請求項12】 (i) 7〜50 重量%の、抗原を吸着しているアジュバント、
    (ii) 30〜80 重量%の糖類、 (iii) 7〜30 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (iv) 0.8〜6重量%のコロイド性物質、 を含む、請求項1〜11の何れか1項に記載の粉末。
  13. 【請求項13】 重量平均空気動力学的直径が10〜100μmであり、且つ、エ
    ンベロープ密度が0.8〜1.5 g/cm3である、請求項1〜12の何れか1項に記載の
    粉末。
  14. 【請求項14】 蒸留水(重量比1:500)に添加して3分間振とうした後に
    沈殿が生じないゲル様懸濁液を形成する、請求項1〜13の何れか1項に記載の
    粉末。
  15. 【請求項15】 (a) 0.1〜0.95 重量%の、抗原を吸着しているアルミニ
    ウム塩又はカルシウム塩アジュバント; (b) 0.5〜6 重量%の糖類; (c) 0.1〜2 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (d) 0.02〜1 重量%のコロイド性物質、 を含む水性懸濁液をスプレードライ又はスプレーフリーズドライすることを含む
    、ワクチンとしての使用に好適なゲル形成性自由流動性粉末の製造方法。
  16. 【請求項16】 上記水性懸濁液が、0.2〜0.4 重量%の、抗原を吸着して
    いるアジュバント、2〜4 重量%の糖類、0.75〜1.25 重量%のアミノ酸又はその
    塩、及び、0.07〜0.3 重量%のコロイド性物質を含む、請求項15に記載の方法
  17. 【請求項17】 得られる粉末が蒸留水に添加(重量比1:500)して3分間
    振とうした後に沈殿が生じないゲル様懸濁液を形成する、請求項15又は16に
    記載の方法。
  18. 【請求項18】 請求項1〜14の何れか1項に記載のゲル形成性自由流動
    性粉末を有効量含む、針無しシリンジのための用量容器。
  19. 【請求項19】 カプセル、ホイルパウチ、サシェ及びカセットからなる群
    から選択される、請求項18に記載の容器。
  20. 【請求項20】 請求項1〜14の何れか1項に記載のゲル形成性自由流動
    性粉末を装填した針無しシリンジ。
  21. 【請求項21】 薬学的に許容できる担体又は希釈剤及び請求項1〜14の
    何れか1項に記載のゲル形成性自由流動性粉末を含むワクチン組成物。
  22. 【請求項22】 請求項1〜14の何れか1項に記載のゲル形成性自由流動
    性粉末を被験体に有効量投与することを含む、被験体にワクチン接種する方法。
  23. 【請求項23】 上記粉末を針無しシリンジにより投与する、請求項22に
    記載の方法。
  24. 【請求項24】 上記粉末を薬学的に許容できる担体又は希釈剤と共に調合
    する、請求項22に記載の方法。
  25. 【請求項25】 調合物を皮内投与又は筋肉内投与する、請求項24に記載
    の方法。
  26. 【請求項26】 (i) 5〜60 重量%の、抗原を吸着しているアルミニウム塩
    又はカルシウム塩アジュバント、 (ii) 25〜90 重量%の糖類、 (iii) 4.5〜40 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (iv) 0.5〜10 重量%のコロイド性物質、 を含む、ワクチンとしての使用に適したゲル形成性自由流動性粉末。
  27. 【請求項27】 (i) 7〜50 重量%の、抗原を吸着しているアジュバント、
    (ii) 30〜80 重量%の糖類、 (iii) 7〜30 重量%のアミノ酸又はその塩;及び、 (iv) 0.8〜6 重量%のコロイド性物質、 を含む、請求項26に記載の粉末。
  28. 【請求項28】 蒸留水に添加(重量比1:500)して3分間振とうした後に
    沈殿が生じないゲル様懸濁液を形成する、請求項26又は27に記載の粉末。
  29. 【請求項29】 抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジ
    ュバントを含む水性懸濁液をスプレーフリーズドライすることにより得られる、
    ワクチンとして使用するのに好適な粉末。
  30. 【請求項30】 上記アジュバントが水酸化アルミニウム、リン酸アルミニ
    ウム、硫酸アルミニウム又はリン酸カルシウムである、請求項29に記載の粉末
  31. 【請求項31】 上記抗原が細菌又はウイルス抗原である、請求項29又は
    30に記載の粉末。
  32. 【請求項32】 上記水性懸濁液が、抗原を吸着しているアジュバントを 1
    0 重量%未満含む、請求項29〜31の何れか1項に記載の粉末。
  33. 【請求項33】 質量平均空気動力学的直径が1〜100μmであり、且つ、エ
    ンベロープ密度が0.8〜1.5 g/cm3である、請求項29〜32の何れか1項に記載
    の粉末。
  34. 【請求項34】 上記懸濁液が更に、非晶性の糖、結晶性の糖並びに場合に
    よりポリマー及び/又はアミノ酸若しくはその塩を含む、請求項29〜33の何
    れか1項に記載の粉末。
  35. 【請求項35】 蒸留水に添加(重量比1:500)して3分間振とうした後に
    沈殿が生じないゲル様懸濁液を形成する、請求項29〜34の何れか1項に記載
    の粉末。
  36. 【請求項36】 抗原を吸着しているアルミニウム塩又はカルシウム塩アジ
    ュバントを含む水性懸濁液をスプレーフリーズドライすることを含む、ワクチン
    として使用するのに好適な粉末の製造方法。
  37. 【請求項37】 上記アジュバントが水酸化アルミニウム、リン酸アルミニ
    ウム、硫酸アルミニウム又はリン酸カルシウムである、請求項36に記載の方法
  38. 【請求項38】 上記抗原が細菌又はウイルス抗原である、請求項36又は
    37に記載の方法。
  39. 【請求項39】 上記水性懸濁液が、抗原を吸着しているアジュバントを 1
    0 重量%未満含む、請求項36〜38の何れか1項に記載の方法。
  40. 【請求項40】 上記懸濁液が更に、非晶性の糖、結晶性の糖並びに場合に
    よりポリマー及び/又はアミノ酸若しくはその塩を含む、請求項36〜39の何
    れか1項に記載の方法。
  41. 【請求項41】 得られるスプレーフリーズドライされた粉末が、蒸留水に
    添加(重量比1:500)して3分間振とうした後に沈殿が生じないゲル様懸濁液を
    形成する、請求項36〜40の何れか1項に記載の方法。
  42. 【請求項42】 請求項29〜35の何れか1項に記載の粉末を有効量含む
    、針無しシリンジのための用量容器。
  43. 【請求項43】 カプセル、ホイルパウチ、サシェ及びカセットからなる群
    から選択される、請求項42に記載の容器。
  44. 【請求項44】 請求項29〜35の何れか1項に記載の粉末を装填した針
    無しシリンジ。
  45. 【請求項45】 薬学的に許容できる担体又は希釈剤及び請求項29〜35
    の何れか1項に記載の粉末を含むワクチン組成物。
  46. 【請求項46】 請求項29〜35の何れか1項に記載の粉末を被験体に有
    効量投与することを含む、被験体にワクチン接種する方法。
  47. 【請求項47】 上記粉末を針無しシリンジにより投与する、請求項46に
    記載の方法。
  48. 【請求項48】 上記粉末を薬学的に許容できる担体又は希釈剤と共に調合
    する、請求項46に記載の方法。
  49. 【請求項49】 調合物を皮内投与又は筋肉内投与する、請求項48に記載
    の方法。
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