JP2003532859A - ＳｉＯ２膜を保護する方法と保護被膜を有する燃焼装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 燃焼室の境界面上に、該面の酸化を防止する目的で設けられたＳｉＯ₂被膜を保護する方法及びこの種の保護層を有する燃焼装置を提供する。本発明では、燃料（１０）を送り込む燃焼室（１０）に、燃焼プロセス（１４）中に生ずる煙道ガス（１５）のＳｉＯ含量を高める添加物（２６）を添加すべく燃焼器（１１）にノズル（１２、１３）を備える。この結果、既存のＳｉＯ₂被膜からの蒸発を著しく減少させ又は完全に阻止し、永続的な保護を図ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 本発明は、燃料を送り込む燃焼室の境界面上のＳｉＯ₂被膜を保護する方法、
並びに特にこの方法を実施するための装置、即ち燃焼プロセスが進行する燃焼室
内に燃料を送り込む燃焼器を備え、かつ前記燃焼室の境界面にＳｉＯ₂被膜を有
する燃焼室で燃料を燃焼する装置に関する。更に本発明は、このような方法又は
このような装置に使用する燃料に関する。

【０００２】 高温に曝される工業材料の場合、特に（ケイ素を含有する）非酸化物状又は酸
化物状の高温材料の場合、ＳｉＯ₂被膜が形成される。この被膜は、運転中にこ
れら材料を保護する。但し実際には燃焼室内にこれら材料を使用した場合、腐食
が起こる。その理由は、生ずる煙道ガスの成分がこのような保護被膜の形成を妨
げるか、又は既に存在する保護被膜を溶解するからである。特に水蒸気との相互
作用で、蒸気圧が高まって揮発性のＳｉＯが生じ、ＳｉＯ₂被膜の厚さを低下さ
せ、従って基材へと腐食を進行させる。酸化物材料の場合、表面の材料の結合が
ＳｉＯ₂保護被膜の蒸発により分解される。従ってこれらの材料は、通常は極め
て有利なその高温特性にも拘わらず、ごく限定された寿命を示すに過ぎない。

【０００３】 従って本発明の課題は、ＳｉＯ₂被膜を保護する方法及び保護されたＳｉＯ₂被
膜を有する装置を提供することにある。

【０００４】 この課題は、本発明の冒頭に記載した形式の方法において、燃焼プロセス中に
生ずる煙道ガスのＳｉＯ含量を高める添加物を燃焼室に加えることにより解決さ
れる。また本発明による装置には、燃焼プロセス中に生ずる煙道ガスのＳｉＯ含
量を高める添加物を付加する添加装置を備える。

【０００５】 添加物を加えることで煙道ガスのＳｉＯ含量が増加する。この含量の増加によ
り、既存のＳｉＯ₂被膜からの蒸発は著しく減少し又は完全に阻止される。

【０００６】 本発明の有利な実施形態及び更なる改善を従属請求項から明らかとする。

【０００７】 添加物として、有機ケイ素化合物、ケイ酸のエステル又はその混合物を添加す
ると有利である。これらの添加物は安価で、取り扱いが容易である。

【０００８】 好適な実施形態では、添加物を、燃焼プロセスに供給される燃料の１ｐｐｍ〜
１％、特に約１０ｐｐｍ〜１％の重量比で添加する。実際に添加する分量は、例
えば燃焼室内の温度と圧力、場合によっては更に存在するＳｉＯ、ＳｉＯ₂、有
機ケイ素化合物又はケイ酸エステルの燃料の自然含量等境界条件に依存する。加
える添加物が極めて微量なので、燃焼プロセス自体は実際上影響を受けない。

【０００９】 ほぼ定常状態で進む燃焼プロセスでは、必要な添加物量が一旦定まると引続き
同量を毎回添加できる。従って、費用を要する詳細な測定や計算は不要である。

【００１０】 それに対して、変動する燃焼プロセス及び／又は例えば時間的に分量の変動す
る燃料の場合、有利な更なる改善では、煙道ガスのＳｉＯ含量を測定し、添加す
る添加物量を測定値に応じて調整する。こうして変動する境界条件でも、常に煙
道ガスの所望のＳｉＯ含量を維持できる。

【００１１】 それとは別に又は付加的に、ＳｉＯ₂被膜の蒸気圧を算出できる煙道ガスのパ
ラメータを測定してもよい。添加する添加物量は、再度測定値に応じて調整され
る。煙道ガスのＳｉＯ含量の測定は、比較的複雑である。それに対してＳｉＯ₂
被膜の蒸気圧は、燃焼室内の温度及び圧力に基づき算出可能である。温度も圧力
も容易に測定可能である。更にこの燃焼プロセスの温度は、通常の場合、所定の
作動状態を保持するために、また有害物質の放出を低減するために既に測定され
ている。従って追加の費用は僅少である。

【００１２】 第１の有利な実施形態では、添加物を燃焼室に燃料と別個に添加する。この形
態の場合、液状、気体状又は粉末化した形の任意の添加物を使用できる。即ち、
添加物の特性を燃料に適合させることを必要としない。

【００１３】 第２の有利な実施形態では、添加物を燃料に混和して一緒に燃焼室に供給する
。この場合添加物を含む燃料に唯一の添加装置が必要になる。

【００１４】 有利な更なる改善によれば、添加物は燃料中に可溶である。それにより添加物
の添加が容易になる。燃料の添加を短期間中断した場合も、添加物が沈殿するこ
とはない。従って添加物を燃料に既に精製装置内で添加でき、従って燃焼室内の
変更を必要としない。

【００１５】 添加物が可燃性であると有利である。これは不燃性物質を燃焼室内に入れるこ
とによる効率の低下を防止する。

【００１６】 本発明による装置の有利な更なる改善では、燃焼室内の煙道ガスのＳｉＯ含量
及び／又は温度を測定するため少なくとも１つのセンサを備える。このセンサに
より、ＳｉＯ含量を測定でき、或いはまたＳｉＯ₂被膜の蒸気圧を算出できる。
付加的な添加物量は、この測定値に応じて調整される。

【００１７】 この装置の燃焼器は、添加物を燃料と別個に加えるためのノズル又は添加物と
燃料の混合物を供給するためのノズルを有する。第１の実施形態では、添加物を
燃料とは無関係に添加でき、従って必ずしも燃料に適合する必要はない。第２の
実施形態では、燃料中に可溶な添加物を使用する。その際この装置の燃焼器を例
えばガスタービンの燃焼器として、従ってまた燃焼室をガスタービンの燃焼室と
して形成してもよい。

【００１８】 添加する添加物の量を計量して供給するポンプを設けるとよい。該ポンプは、
特にその都度所望の分量を目標通りに精確に計量し供給することを可能にする。

【００１９】 本発明による燃料に、燃焼プロセス中に生ずる煙道ガスのＳｉＯ含量を高める
添加物を混和する。この添加物を既に精製装置内で又は場合によっては後の時点
に混和することもできる。この方法は、大量の燃料を受け入れる場合、また添加
物を何等問題なく比較的長時間にわたり燃料中に入れておくことができる場合に
奨められる。従って費用のかかる燃焼器自体の構造の変更を必要としない。

【００２０】 本発明を、概略的に図示した実施例に基づき以下に詳述する。同じ又は同一に
機能する構造部材には同じ符号を付けてある。

【００２１】 両実施形態では、燃焼器１１を配置した燃焼室１０を設けている。燃焼室１０
は、ＳｉＯ₂被膜２４を有する境界面２２によりその範囲を限定される 。燃料２
５を、遮断弁１８を有する導管１７を経てノズル１２に供給する。これを１手段
（図示せず）により点火し、こうして火炎１４の形の燃焼プロセスが生ずる。

【００２２】 燃焼により煙道ガス１５が生じ、それらは燃焼室１０内に蓄積され、煙道１６
を経て蒸気ボイラ（図示せず）へと導出される。

【００２３】 境界面上のＳｉＯ₂被膜２４を保護するため、更に添加物２６を添加する。こ
の添加物２６は、容器２１に入れられており、ポンプ２０及び導管１９を経て添
加される。その際ポンプ２０は添加物２６の量を計量して添加する役目をする。

【００２４】 図１の実施形態では、添加物２６を、専用のノズル１３を経て燃料２５と別個
に添加する。従って燃料２５と配合不能の添加物２６も選択できる。それに対し
図２の実施形態では、添加物２６を燃料２５に混和して、一緒に共通のノズル１
２を経て燃焼室１０に添加する。この方法は、特に添加物２６が燃料２５中に可
溶である場合、例えば添加物が有機ケイ素化合物として存在する場合に奨められ
る。両方法の場合に可燃性の混合物２６を使用するとよい。添加する分量は燃料
の約１ｐｐｍ〜１重量％、特に約１０ｐｐｍ〜１重量％が好適である。

【００２５】 定常状態の火炎１４を有する燃焼の場合、添加物２６の所望の分量は確定して
おり、従って定常運転中にこの分量は変更されることなく保持される。それとは
異なり変動する火炎１４の場合は、燃焼室１０を監視するのためのセンサ２３を
備える。このセンサ２３を経て煙道ガス１５のＳｉＯ含量を測定し、添加する添
加物２６の分量をその測定値に応じて調整する。これはセンサ２３からポンプ２
０へと延びる矢印により、また矢印の側方の％記号により示されている。

【００２６】 それとは別に又は付加的に、煙道ガス１５の圧力及び／又は温度を検知しても
よい。ＳｉＯ₂被膜２４の蒸気圧は、煙道ガス１５の圧力と温度の関数である。
従って支配的な蒸気圧はその都度の温度と圧力の検知により算出できる。簡素化
のため、この圧力を周囲の圧力と考えてもよい。算出したＳｉＯ₂被膜２４の蒸
気圧に基づき、必要量の添加物２６を加えるためポンプ２０を作動させる。こう
して煙道ガス１５の飽和が達成され、その結果ＳｉＯ₂被膜２４からのＳｉＯの
蒸発は阻止或いは少なくとも十分に抑制される。

【００２７】 煙道１６を経て煙道ガス１５が流出した後、煙道ガス１５中に存在するＳｉＯ
はＳｉＯ₂に変換され、従って環境を損なうことはない。

【００２８】 図３は、燃料２５に添加物２６を混和する容器２７の概略図を示す。略示的に
点で示す添加物２６は、波線で示す燃料２５により比較的長期間を経て溶解され
る。この種燃料２５を使用した場合、燃焼器１１の構造を変更する必要がない。

【００２９】 しかし添加物２６を、全ての燃焼条件で必要となる一定の基本分量だけを添加
してもよい。個々の場合に付加的に必要となる分量を、図１又は２に図解したよ
うにして、所望の分量の添加物２６を燃焼室１０内に保持すべく加える。

【００３０】 全体として、煙道ガス１５のＳｉＯ含量は、添加物の添加により増加し、こう
して燃焼室１０内のＳｉＯ₂被膜２４は保護される。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明方法及び装置に使用する燃焼室の第１の実施形態の概略描写図。

【図２】 本発明方法及び装置に使用する燃焼室の第２の実施形態の概略描写図。

【図３】 容器中の燃料と添加物の模式図。

【符号の説明】

１０ 燃焼室 １１ 燃焼器 １２ 共通のノズル（添加装置） １３ 添加物用ノズル（添加装置） １４ 火炎（燃焼プロセス） １５ 煙道ガス １６ 煙道 １７、１９ 導管 １８ 遮断弁 ２０ ポンプ ２２ 境界面 ２４ ＳｉＯ₂被膜 ２５ 燃料 ２６ 添加物 ２１、２７ 容器（添加物用容器、燃料と添加物用容器）

Claims (15)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 燃料（２５）を送り込む燃焼室（１０）の境界面（２２）上
   のＳｉＯ₂被膜（２４）を保護する方法において、燃焼プロセス（１４）中に生
   ずる煙道ガス（１５）中のＳｉＯ含量を高める添加物（２６）を燃焼室（１０）
   に添加することを特徴とするＳｉＯ₂被膜の保護方法。
2. 【請求項２】 添加物（２６）として有機ケイ素化合物、ケイ酸のエステル
   又はその混合物を添加することを特徴とする請求項１記載の方法。
3. 【請求項３】 前記添加物（２６）を、燃焼プロセス（１４）に供給される
   燃料（２５）の１ｐｐｍ〜１％、特に約１０ｐｐｍ〜１％の重量比で添加するこ
   とを特徴とする請求項１又は２記載の方法。
4. 【請求項４】 煙道ガス（１５）中のＳｉＯ含量を測定し、添加する添加物
   （２６）の分量を測定値に応じて調整することを特徴とする請求項１乃至３の
   １つに記載の方法。
5. 【請求項５】 ＳｉＯ₂被膜（２４）の蒸気圧の算出に使用可能な煙道ガス
   （１５）のパラメータを測定し、添加する添加物（２６）の分量を測定値に応じ
   て調整することを特徴とする請求項１乃至４の１つに記載の方法。
6. 【請求項６】 添加物（２６）を燃料（２５）と別個に燃焼室（１０）に送
   り込むことを特徴とする請求項１乃至５の１つに記載の方法。
7. 【請求項７】 添加物（２６）を燃料（２５）に混和して、一緒に燃焼室
   （１０）に送り込むことを特徴とする請求項１乃至５の１つに記載の方法。
8. 【請求項８】 添加物（２６）が燃料（２５）中に可溶であることを特徴と
   する請求項１乃至７の１つに記載の方法。
9. 【請求項９】 添加物（２６）が可燃性であることを特徴とする請求項１乃
   至８の１つに記載の方法。
10. 【請求項１０】 燃料（２５）が送り込まれる燃焼室（１０）と、燃焼プロ
    セス（１４）を実施する燃焼器（１１）とを備えており、該燃焼室（１０）の境
    界面（２２）がＳｉＯ₂被膜（２４）を有している、特に請求項１乃至９の１つ
    に記載の方法を実施するため、燃焼室（１０）内で燃料（２５）を燃焼するため
    の装置において、燃焼プロセス（１４）中に生ずる煙道ガス（１５）のＳｉＯ含
    量を高める添加物（２６）を供給する添加装置（１２、１３）を備えることを特
    徴とする燃料を燃焼するための装置。
11. 【請求項１１】 燃焼室（１０）内に、煙道ガス（１５）のＳｉＯ含量及び
    ／又は温度を測るため、少なくとも１つのセンサ（２３）を備えることを特徴と
    する請求項１０記載の装置。
12. 【請求項１２】 燃焼器（１）が、燃料（２５）と別個に添加物（２６）を
    送り込むためのノズル（１２）を有することを特徴とする請求項１０又は１１記
    載の装置。
13. 【請求項１３】 燃焼器（１１）が、添加物（２６）と燃料（２５）との混
    合物を送り込むためのノズル（１３）を有することを特徴とする請求項１０又は
    １１記載の装置。
14. 【請求項１４】 添加する添加物（２６）の分量を計量して供給するポンプ
    （２０）を備えることを特徴とする請求項１０乃至１３の１つに記載の装置。
15. 【請求項１５】 前記燃料（２５）に、燃焼プロセス（１４）中に生ずる煙
    道ガス（１５）のＳｉＯ含量を高める添加物（２６）を添加したことを特徴とす
    る請求項１乃至９の１つに記載の方法又は請求項１０乃至１４の１つに記載の装
    置で使用する燃料。