JP2003526668A - 心臓血管損傷の調節 - Google Patents

心臓血管損傷の調節

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JP2003526668A
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Abstract

(57)【要約】 虚血性および虚血後の再灌流障害または出血性損傷を改善、低減または予防するために、ヘムオキシゲナーゼ(HO)インヒビター(例えば、スズメソポルフィリン(SnMP))の有効量を被験体に投与することによって、虚血または出血発症後の虚血性損傷および/または再灌流障害を予防する方法。特定の例において、SnMPは、損傷の部位でのヘモグロビンからの遊離鉄の放出に起因する損傷から心臓組織を保護した。心律動異常を処置または予防する方法もまた、提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は、ヘムオキシゲナーゼ(HO)インヒビターであるスズメソポルフィ
リン(SnMP)、および心臓血管系に対するその有用な効果に関する。SnM
Pは、虚血および再灌流の間の哺乳動物の組織または器官中での遊離の鉄の蓄積
の有害な影響を、あるいはそれに付随する虚血または出血性の心臓組織中でのヘ
ムからの遊離の鉄の放出を阻害することによる出血を妨げる。SnMPはまた、
心臓の作用電位を延長することによって、不整脈治療薬としても作用する。
【0002】 (発明の背景) (組織の損傷における鉄の役割) 酸素由来のフリーラジカルは、心筋の再灌流損傷、および心筋梗塞の大きさの
拡大において、重要な役割を果たす;これらは、脂質の過酸化を通じて細胞膜を
損傷する。金属イオンの存在(最も重要なものは、鉄(Fe))は、酸素由来の
フリーラジカルの生成において必要とされる。遊離のヒドロキシルラジカル( OH)は、鉄によって触媒されるHaber−Weiss反応を通じて、O
から生成される。
【0003】 Fe+3+O →Fe+2+O Fe+2+H→Fe+3OH+OH 遊離のヒドロキシルラジカルは、脂質の過酸化を介して細胞膜を損傷するだけ
ではなく、これらはまた、DNA、タンパク質、およびマトリックス分子(例え
ば、ヒアルロン酸)をもまた分解する。
【0004】 虚血性の心筋は、損傷した小さい血管からの赤血球の漏出、続くそれらの溶血
、およびそれらの成分であるヘモグロビンの分解の結果として、鉄を特に豊富に
含む組織である。ヘムの分解は、酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO)によっ
て制御される。ヘムオキシゲナーゼは、虚血性の組織ならびに出血性の組織中に
存在し、そしてそこでまた誘導もされる。ミオグロビンおよび他のヘムタンパク
質(これらは、損傷した筋細胞から放出される)もまた、HOについての基質と
してヘムに寄与し得、そしてさらに、フリーラジカルの生成のために利用可能で
ある鉄のプールに対して添加され得る。
【0005】 HOは、炎症を阻害する、オキシダントのストレスから内皮および平滑筋を防
御すること、ヘムによって誘導される損傷から組織を防御すること(Platt
およびNath、Nature Medicine、1998、4:1364−
1365)、ならびに慢性的な拒絶から移植された組織を防御すること(Han
cockら、Nature、Medicine、1998、4:1392−13
96)のような、防御特性を有することが見出されている。一方、HO活性はま
た、毒性の影響をも有する。鉄を放出することに加えて、強力なオキシダントで
あるヘムの分解によってまた、ビリルビンが生じ、これは、肝疾患の中の黄疸お
よび腎不全における組織の損傷に関係している。ヘムの分解による別の産物は、
血管拡張を引き起こす一酸化炭素(CO)である。
【0006】 鉄キレート剤(例えば、デスフェリオキサミン)は、組織に由来する過剰な鉄
の結合および排泄を促進し、それによって組織中でのフリーラジカルの蓄積を減
少させる。デスフェリオキサミンは、梗塞の大きさを制限し、そして虚血後の再
灌流損傷を制限するために使用されている(Bolliら、Am J Phys
iol,1987、253:H1372−80)。再灌流損傷を減少させること
における潜在的な臨床的薬理学的薬剤としてのデスフェリオキサミンのような薬
剤の主要な欠点は、キレート剤が、鉄がヘムから放出され、そしてフリーラジカ
ルの生成のためにすでに利用可能である後にだけ有効であることである。さらに
、デスフェリオキサミンのようなキレート剤は、それらが鉄レベルを十分に低下
し得る前には、非常に高い濃度で存在しなければならないことが見出されている
。このような有効濃度は、薬理学的に達成することが困難であり得る。例えば、
デフェリオキサミンは、代表的には、結果を達成するためには、持続的に(すな
わち、注入ポンプを通じて)投与されなければならない。デフェリオキサミンは
また、患者においてアレルギー性の反応を生じることも公知である。再灌流損傷
を減少させるためのキレート剤の使用は、限定された臨床的な環境(例えば、外
科手術後)において適切であり得るが、しかしこれらの薬剤は急な梗塞または外
傷の状況においては実行可能ではない。
【0007】 (クラスIII抗不整脈薬物) 抗不整脈薬物は、それらが生じる電気生理学的な効果のパターンおよび/また
は推定されるそれらの作用機構に従って、互いにグループわけされている。クラ
スIIIの抗不整脈薬物(例えば、ドフェチリド(dofetilide)、ア
ジミリド(azimilide)、およびアミオダロン)は、心臓の作用電位(
AP)の延長によってそれらの効果を発揮する(Groh WJら、J.Car
diovasc.Electrophysiol.1997,8:529−53
6)。心臓における再出現型の律動は、再局在化および不応状態の空間的な分散
に起因すると考えられる(Restivo M,ら、Circ.Res.199
0,66:1310−1327;Moe GK,Rev.Physiol.Bi
ochem.Phamacol.1975,72:55−81)。クラスIII
の抗不整脈薬物がそれによって作動する作業仮説は、不応状態の延長がサイクル
の長さ(CL)を増大させ、従って潜在的な再出現性の小波の波長を増大させる
【0008】 ほとんどはそうではないが、多くのクラスIIIの薬物には2つの所望されな
い副作用が存在する。第1に、逆使用依存性であり、それによって心臓の作用電
位持続(APD)を延長させるクラスIIIの薬物の能力は、ゆっくりとした心
臓の速度では大きく、頻脈の間に生じるより速い心臓の速度では薬物の潜在的な
有効性を減少する(Groh WJ,ら、1997)。第2の副作用は、心臓の
APDの顕著な延長であり、これは最終的には、初期の脱分極後(EAD)とし
て公知の、APの再分極期における思考障害または振動を導き得る。初期の脱分
極後に誘導される誘発された活性(これは、心臓が延長されそして空間的に分散
されたAPDを伴うように導く)は、胎児の多形性の心室性不整脈を引き起し得
る(El Sherifら、Circulation 1997、96:439
2−4399)。薬物によって誘導される多形性の心室性不整脈の最も一般的な
変種は、torsades des pointesである。クラスIIIの薬
物であるアミオダロンは逆使用依存性を生じないが、これは、多くの副作用を有
し、そして全ての患者において十分に寛容化されない。臨床的に利用可能なクラ
スIIIの抗不整脈薬物(例えば、ソタロール、ドフェチリド、およびアジミリ
ド)による心室性不整脈の潜在的悪化に起因して、それらの使用は、一般的には
上室性不整脈の処置に限定されている。
【0009】 開発されたクラスIIIの化合物(2つの臨床的に利用可能なクラスIIIの
薬物であるソタロールおよびドフェチリドを含む)の多くは、メタンスフフォン
イミド化合物である。これらは、外側へのカリウム電流IKrの迅速な活性化の
遮断によって作用すると考えられている。この電流の遮断の反応速度論は、逆使
用依存性に起因すると考えられている。APの形状および持続時間における局所
的な差異は、イオンチャンネルの密度およびイオンチャンネルのサブタイプの比
における差異に起因する。
【0010】 心臓におけるAPの特徴は多様であることが長い間公知であるが、心室筋は、
Antzelevitchおよびその共働研究者らが、異なる種々の電気生理学
的特性を有する心室の細胞のサブ集団が存在することを実証するまでは本質的に
は電気的に均質であると考えられていた(Antzelevitch Cら、C
irc.Res.1991、69:1427−1449)。心室壁を通過し、そ
して同じ層内に存在するの両方であるイオンチャンネルの発現の分子的な多様性
が存在する。電圧クランプの研究によってさらに、心筋層内の成分のイオンチャ
ンネルが異なっており、そしてAPの形状および応答における差異を説明するこ
とを確認した。Salamaらは、正常なモルモットの心外膜中でのAPDの不
均質性を示した(Salama G,ら、Am.J.Physiol.,198
7,252:H384−H394)。APD勾配は均一であり、そして先端から
基部に向っており、そして全分散は10ms未満であり、そしてペーシング部位
によっては影響を受けない(Rosenbaum DSら、Circulati
on,1991,84:1333−1345)。最少の分散および不均質な勾配
の欠如に起因して、機能的な伝導のブロックは正常な心臓の中では誘導され得な
い。しかし、APDを延長する他の薬物は、薬物の作用における局所的な差異に
起因して、APDの勾配を生じ得る。神経毒素であるアントプロイリン−Aは、
大きなAPD勾配を生じ、それによって伝導のブロックを生じ、そして長期のQ
T症候群の特徴である再入の刺激を生じる。
【0011】 (ヘムオキシゲナーゼインヒビター) 金属ポルフィリン(例えば、スズ(Sn)ポルフィリン、Sn−プロトポルフ
ィリン(SnMP)、およびSn−メソポルフィリン(SnMP))は、公知の
HOの強力なインヒビターである。これらは、HOに対するヘムの結合をブロッ
クし、従ってヘムの物質分解代謝を通じる鉄の放出を妨げる。デフェリオキサミ
ンのような鉄キレート剤とは対照的に、SnMPは、HOの活性を直接阻害し、
そしてヘムの分解を妨げ、そして従ってその鉄原子の放出を妨げる。SnMPは
、食品からの鉄の吸収を減少するように、腸内でのHO活性を阻害するために(
米国特許第5,223,494号);ヘムの分解の速度を低下させることによっ
て高ビリルビン血症を防ぐために(米国特許第4,657,902号);そして
ヒトの肝臓中でのトリプトファンの代謝速度を増大させるために(米国特許第4
,619,923号)使用されている。SnMPはまた、通常の食餌療法を行っ
ている個体における鉄の喪失を生じることも、示されている(Kappasら、
Pediatrics、1993,91:537−539)。
【0012】 HOインヒビター(例えば、SnMP)が、上記で議論されているような、H
Oのレベルが虚血後に増大し、そして酵素が周辺組織に対する損傷を減少させる
ことにおいて防御的な役割を果たすと考えられているので、虚血後の再灌流およ
び出血によって生じる型の損傷を処置するために反対に示されていることが、現
在の知見から推測され得る。しかし、現在の知見は、読み違っている可能性があ
る。なぜなら、これは、損傷部位で放出される遊離の鉄の毒性の影響を考慮して
いないからである。
【0013】 再灌流されそして出血性である組織中での過酸化によって生じる有害な組織の
損傷を防ぐかまたはそれを阻害するためには、虚血の発症の間またはその直後に
、すでに形成された過剰の遊離の鉄を除去するよりもむしろ、再灌流組織中での
遊離の鉄の放出および蓄積を妨げるかまたは阻害するための方法が、非常に望ま
れる。
【0014】 さらに、公知の抗不整脈薬剤の有害な副作用を生じない心臓を活性化する化合
物のクラス(例えば、クラスIIIの抗不整脈薬物)の同定もまた、所望される
【0015】 本発明は、完全には予想されない様式でそれらの必要性について言及する。
【0016】 (発明の要旨) 本発明は、組織中での遊離の鉄の形成に関係している虚血後の再灌流および出
血性の損傷を防ぐかまたはそれらを減少させるための方法を提供する。この方法
は、ヘムオキシゲナーゼ(HO)インヒビター(好ましくは、スズメソポルフィ
リン(SnMP))を、HO活性を阻害するために有効な量で投与する工程を包
含する。好ましくは、HOインヒビターは、虚血、再灌流、または出血性の損傷
の症状を防ぐ、減少させる、または緩和するために有効である。SnMPは、虚
血または出血の発症の前、その間、またはその後で投与され得る。好ましくは、
SnMPは、虚血または出血が検出されるとすぐに投与され、その結果HO活性
は減少され得るかまたは阻害され得、そして遊離の鉄の放出が最少にされるかま
たは妨げられる。SnMPは、非経口的に、静脈内で、筋肉内で、または罹患し
た組織中に直接投与される。SnMPは、再灌流または出血性の損傷に関係する
遊離の鉄の放出および蓄積を減少させるかまたは阻害するために、HO活性を阻
害するために有効な量で投与される。SnMPは、1から50mg/kg体重、
好ましくは、2から25mg/kg体重までの投薬量で投与され得る。
【0017】 本発明はさらに、心室性不整脈を阻害するかまたは減少させる方法を提供する
。この方法は、ヘムオキシゲナーゼ(HO)インヒビター(好ましくは、スズメ
ソポルフィリン(SnMP))を、心臓の作用電位持続(SPD)を延長させる
ために有効な量で投与し、そしてそれによって心臓の不整脈の出現を防ぐかまた
はそれを減少させる工程を包含する。この実施形態においては、SnMPは、心
臓の律動の効果的な調節のために投与される。SnMPは、不整脈が検出される
とすぐに投与され得るか、または例えば、心不全もしくはうっ血性の心不全のよ
うな急な冠状血管の事象において投与され得、そして/あるいは、心臓の律動を
調節するための時間経過にわたって予防的に投与され得る。SnMPはまた、急
性の虚血の処置のためにも使用され得、そして虚血の発症の間またはその後で投
与され得る。SnMPは、非経口的に、静脈内で、筋肉内で、または罹患した組
織中に直接投与される。SnMPは、APDを延長させるために有効な量で投与
される。SnMPは、1から50mg/kg体重、好ましくは、2から25mg
/kg体重までの投薬量で投与され得る。
【0018】 (発明の詳細な説明) 本発明は、虚血性の心臓の発症の前、その間、またはその後でのSnMPの動
物に対する投与が、虚血および再灌流の有害な影響を阻害するかまたは妨げると
いう発見に基づく。ウサギの心臓のモデルにおける実験によって、虚血の事象の
前またはその後でのSnMPの投与が、虚血後の再灌流によって生じる損傷した
心筋の機能からの回復を減少させる、妨げる、そして/または改善することが示
された。SnMPの投与はまた、再灌流の間の心臓に対する直接のヘモグロビン
の投与の後で、心筋の機能の衰退を阻害した。1つの例においては、制限された
心室の拍動を有している心臓をブロックすることが示されている心臓に対するS
nMPの投与は、心臓の機能を改善し、その結果、規則的な洞調律(RSR)が
達成され、そして虚血後の再灌流からの完全な回復が得られた。ヘモグロビンの
続く注入によっては、RSRは変化しなかった。従って、SnMPは、虚血後に
生じた再灌流損傷を緩和した。さらに、SnMPでの前処置は、ヘモグロビンの
直接の注入後の鉄の毒性を減少させたかまたは阻害した。
【0019】 いかなる理論によっても束縛されることは意図されないが、これらの結果は、
SnMPがHOの活性を阻害することによって、動物の心臓組織の中の遊離の鉄
の生成を減少させるかまたはそれを妨げ、それによって損傷の部位での続く鉄の
毒性を阻止することを実証するように思われる。SnMPは非経口的な投与の後
の数分間に細胞性のHO(予め形成されたものおよび誘導されたものの両方)を
阻害し、そしてそれによって遊離の鉄の放出を妨げた。従って、SnMPは、虚
血の事象が検出されると直ちに投与され得、そして虚血および虚血後の再灌流損
傷が効率良く処置され得ることが、見出されている。ヘモグロビンの存在下で虚
血後に生じる再灌流損傷は、SnMPでの前処置を用いて最少にされるかまたは
妨げられ、このことはさらに、SnMPの予防効果を示唆している。
【0020】 別の実施形態においては、本発明は、単離された動物の心臓に対して基本的な
ペースの律動の間に投与されたSnMPが、現在のクラスIIIの不整脈治療薬
のものと同様の不整脈治療効果を実証したが、しかし逆使用依存性のようなこれ
らの薬剤の使用に付随している有害な副作用を伴わないという発見に基づく。出
願人らは、APDの全体の勾配がSnMPの投与を用いて心外膜を通じて維持さ
れ、そしてAPDの増大の程度が、心外膜の層中で比較的均一であったことを見
出した。SnMPが灌流させたモルモットの心臓に対して投与された場合には、
延長されたAPDが投与の5分以内に観察され、そして研究の間中維持された。
ウサギの心臓のモデルでの実験は、虚血の事象の間のSnMPの投与によってA
PDが延長され、そして虚血の領域中でのAPDの短縮の程度が緩和されたこと
を示した。
【0021】 従って、SnMPが不整脈薬剤として作用し、そして律動収縮を回復する、作
用電位持続を選択的に延長する、およびそれに付随して、心臓の伝達に対して有
意な影響を有することなく心臓の細胞の無反応の期間を増大させるための手段を
提供することが、見出されている。SnMPは、従って、不整脈の障害または疾
患に罹患している哺乳動物の処置のために適切である。
【0022】 (定義) 「作用電位」(AP)は、興奮性の細胞中での刺激によって誘発される応答で
ある。これは、膜の脱分極の開始(上昇)からベースラインの電位(再分極)に
戻るまでが測定される。「作用電位持続」(APD)は、作用電位の上昇とその
再分極の点の間の時間の間隔である。
【0023】 「不整脈」は、洞性不整脈、未成熟な心拍動、心臓のブロック(heartb
lock)、線維攣縮、動悸、頻脈、および未成熟な心室収縮を含むがこれらに
限定されない、心拍動の正常な律動からの任意のバリエーションである。不整脈
は、例えば、心筋中での酸素および他の血液成分の欠乏によって生じる。再灌流
の間に酸素由来のフリーラジカルの生成もまた、不整脈を引き起こす。特に危険
なものは、心室の線維攣縮であり、それによって心臓は、血液を適切にポンプで
送りこむために必要とされるように調整された様式において関係するその能力を
失う。
【0024】 「再灌流」は、例えば、虚血のような血液の流れの減少の発症の後での体の組
織へおよびそれら全体への血管系を通じる、血管(例えば、動脈)を通る血液の
流れの回復である。再灌流はまた、移植された器官の中でも生じる;急性の移植
拒絶(例えば、補体によって媒介されるカスケードを含む)は、再灌流後の中間
の反応によって生じる。再灌流はまた、大きい外傷または「圧坐損傷」(ここで
は、四肢または他の体の部分が挫傷され得るか、または乗用車による不慮の事故
および建設現場での不慮の事故において生じるように押しつぶされ得る)の症例
においても生じる。再灌流は、遊離のヒドロキシルラジカルの生成に一部起因し
て、組織の損傷を引き起こす。遊離のヒドロキシルラジカルは、脂質の過酸化、
ならびにDNAおよびタンパク質の分解を通じて、細胞膜を損傷させる。
【0025】 「虚血」は、血管の閉塞または狭窄に起因する、例えば、血餅または他の閉塞
に起因する、器官への血液の供給の局所的な減少である。血液の供給における減
少は、(器官が脳である場合には)発作、(器官が心臓である場合には)心臓麻
痺、または機械的な器官の不全を生じ得る。虚血は、器官、組織、またはそれら
の一部において生じ得る。これらの領域への血液の欠乏の結果として、細胞また
は組織の壊死(死滅)が生じ得る。さらに、壊死もまた、とりわけ、遊離のヒド
ロキシルラジカルの作用による再灌流の結果として生じ得る。
【0026】 「梗塞」は、例えば、心臓または血管中の血餅または他の閉塞に起因する、組
織への血液の供給の閉塞の結果として壊死を受ける組織の領域である。「心筋梗
塞」は、壊死性の心臓組織である。
【0027】 「出血」は、組織中への血管からの血液の放出または漏出であり、そして代表
的には、血液の過度の喪失によって証明される。出血は、外傷性の損傷(例えば
、自動車による不慮の事故)の結果として、または感染性の疾患(例えば、出血
熱)の結果として生じ得る。外傷または外科手術によるかどうかにはかかわらず
、傷を負うことは、局所的な出血(血腫)である。実際、傷に伴う変色(黄色く
なる)のいくつかは、HOによって媒介されるビリルビンの形成の直接の結果で
ある。従って、本発明は特に、傷を負うことによって生じる血液浸出の阻害に着
手する。
【0028】 特定の合成の金属ポルフィリンは、HOインヒビターである。このような化合
物として、金属プロトポルフィリンおよび金属メソポルフィリンが挙げられる。
ここでは、金属基は、スズ、クロム、白金、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、銀
、およびマグネシウム、または他の元素から選択され得る。環式のテトラピロー
ルは、十分に変更され得る−すなわち、プロトポルフィリン対メソポルフィリン
。金属ポルフィリンは、商業的に入手することが可能であり得るか、または記載
されている方法によって合成され得る。例えば、SnMPの合成については、米
国特許第4,692,440号を参照のこと。SnMP(これは、新生児の高ビ
リルビン血症を処置するためにFDAによってINDを認められた)が好ましい
【0029】 本発明はさらに、HOによるヘムの分解によって生じる症状の処置のために有
用な他のHOインヒビターを提供する。意図されるインヒビターとして、フラグ
メント、ペプチド、核酸、およびオリゴヌクレオチド、炭水化物、リン脂質、お
よび他の脂質誘導体、ステロイド、およびステロイド誘導体、アンチセンス核酸
(リボザイムを含む)(これは、HOの発現を阻害するために使用され得る)、
抗HO抗体、低分子インヒビター、ならびにビタミンB12およびその誘導体が
挙げられる。
【0030】 本発明に従ってHOインヒビターで処置され得る症状として、出血性の損傷(
これは、外科手術によって生じ得るか、または体の組織に対する他の外傷によっ
て生じ得る)、再灌流損傷(これは、化学的(例えば、組織プラスミノーゲン活
性化因子を使用して)または機械的に(血管形成術)のいずれかによる血餅をゆ
るくすることまたは血餅の除去後に続く血管内の血液の流れの再開を生じ得る)
、あるいはバイパス手術、もしくは発作、または他の急な心臓の発症後の血流の
再開;梗塞の領域の周辺組織に対する損傷を最少にするための梗塞の間の処置が
挙げられる。特定の実施形態においては、HOインヒビターは、例えば、顔の形
成外科手術の前に、傷を負うことに関連する血液浸出を防ぐために、随意に提供
される。
【0031】 さらに、HOインヒビター(特に、SnMP)が、それを必要としている患者
において不整脈を処置または調節するために使用され得ることが見出されている
。本発明は、好ましくは、HOインヒビターがSnMPのような安全に試験され
た化合物である場合には、虚血の症状、または心筋梗塞もしくは発作のような急
な冠状動脈の事象、心不全(特に、うっ血性の心不全)についての有効な最初の
救命処置として使用され得る。従って、緊急事態に関係するヒト(救急の医療技
術者、消防士、警察官)または他の役割を果たすヒト(客室乗務員、車掌、イベ
ントの案内人など)が、梗塞を疑うか、または胸部の痛み、呼吸の短さ、疲労、
および不安のような症状を観察した場合には、HOインヒビターのボーラスが投
与され得る。なぜなら、SnMPの場合には特に、このような緊急事態のために
選択されるHOインヒビターは、任意の有害な副作用を有さないので、緊急事態
にかかわるヒトが診断を行うかまたはそれを確認することは必ずしも必要ではな
い。
【0032】 本発明は、血餅の形成を妨げるかまたは阻害するためのアスピリン(アセチル
サリチル酸)の投与、組織プラスミノーゲン活性化因子またはストレプトキナー
ゼのような「血餅を破壊させる」薬剤の投与を含むがこれらに限定されない、梗
塞の治療のための有用なアジュバントを提供する。これはまた、理想的には、バ
ルーン血管形成術、および血流を一時的にブロックする他の技術と組合せて使用
される。
【0033】 さらに、HOインヒビター(SnMPなど)は、例えば、バイパス手術の間の
心臓−肺機関について、または移植の前に器官に注ぐための、灌流溶液の成分と
して高度に有用である。さらに、HOインヒビターは、心臓−肺機関の使用を必
要とする外科手術の完了後の心臓および肺の灌流の前およびその間に、ならびに
宿主へのその移植後の移植された器官への灌流の前に、被験体に投与され得る。
【0034】 本明細書中に記載されているHOインヒビターは、薬学的に受容可能なキャリ
ア中で治療有効用量として、処置を必要としている個体に対して投与され得る。
句「薬学的に受容可能」は、生理学的に寛容であり、そして代表的には、ヒトに
投与された場合に、アレルギー性の反応または同様の所望されない反応(例えば
、胃の不調、眩暈など)を生じない分子の実体および組成物をいう。好ましくは
、本明細書中で使用される場合には、用語「薬学的に受容可能」は、合衆国政府
もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国の薬局方もし
くは動物(およびより詳細には、ヒト)での使用についての他の一般的に認識さ
れている薬局方に列挙されていることを意味する。用語「キャリア」は、化合物
がそれとともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを
いう。このような薬学的なキャリアは、滅菌の液体(例えば、水および油)(白
色ワセリン、動物、植物、もしくは合成の起源のもの(例えば、ピーナッツ油、
大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む)であり得る。水または水性の溶液、生理食塩
溶液、および水性のデキストロース、およびグリセロール溶液が、好ましくは、
キャリア(特に、注射可能な溶液)として使用される。適切な薬学的なキャリア
は、E.W.Martin(第18版)による「Remington’s Ph
armaceutical Sciences」に記載されている。
【0035】 句「治療有効量」は、本明細書中では、宿主の活性、機能、および応答の臨床
的に有意な欠損を、少なくとも約15%、好ましくは、少なくとも50%、より
好ましくは、少なくとも90%減少させる、そして最も好ましくは、それを妨げ
るために十分な量を意味するように使用される。あるいは、治療有効量は、宿主
中の臨床的に有意な症状の改善を生じるために十分な量である。HOインヒビタ
ーの治療有効量の一例は、再灌流されたかまたは出血性の組織中でのHO活性を
阻害するために有効な量である。HOインヒビター(例えば、SnMP)の治療
有効量の別の例は、不整脈を罹患している患者において心臓の作用電位持続(A
PD)を延長するために有効な量である。
【0036】 HOインヒビターの実際の投与量レジメン(量および頻度)は、医師によって
、患者の症状、年齢、性別、体重、および健康状態、ならびに当業者のレベルの
十分に範囲内にある他の要素に基づいて、決定される。詳細には、再灌流された
血液または組織中の遊離の鉄の形成の速度を減少させるために使用されるSnM
Pについての投与量の範囲は、約1から50mg/kg体重、好ましくは、2か
ら25mg/kg体重である。SnMPの濃度は、2から25mg/kg体重の
投与量を提供するためには、2から25g/Lであり得る。従って、単回の投薬
量単位は、代表的には、2mg/mlから25mg/mlまでのSnMP溶液を
含有する。
【0037】 HOインヒビターを含む本発明に従う組成物は、種々の様式で(例えば、金属
ポルフィリンに関して記載されたように)投与され得る。米国特許第4,692
,440号および米国特許第4,657,902号(ヘムが排出される速度を増
加させるための非経口投与)、米国特許第4,619,923号(肝臓における
トリプトファン代謝の速度を増加させるための非経口投与)、米国特許第4,7
82,049号(乾癬の処置のための非経口投与)、WO94/28906およ
び米国特許第4,684,637号(高ビリルビン血症を予防するための非経口
投与、特に筋肉内および静脈内投与)、ならびに米国特許第5,063,223
号(ステロイドホルモンレベルを制御するための非経口投与、特に静脈内、皮下
、筋肉内投与)を参照のこと。
【0038】 (キット) 本発明に従う組成物は、医学的緊急キットのようなキットの一部として含まれ
得ることが意図される。このようなキットは、それ自身が、警察車、飛行機など
に装備するのに現在使用されているような、移動式除細動器(defribil
lator)に付随する緊急救急キットの構成部品であり得る。この実施形態に
おいて、治療的有効量のHOインヒビター(例えば、SnMP)は、溶液で、ま
たは溶液として再構成するための凍結乾燥粉末(その場合、このキットはまた、
好ましくは再構成緩衝液を含む)で提供される。この組成物は、容器内に、好ま
しくはシリンジまたは他の注射デバイスに、好ましくは予め測定した単位剤形で
梱包され得る。化合物SnMPは、溶液中室温で数年間安定であることが公知で
ある。
【0039】 (実施例) 本発明は、以下の非限定的な実施例によって実証される。
【0040】 本研究における手順は、ヘルシンキ宣言において述べられたガイドラインに従
う。全ての実験プロトコルは、Animal Studies Subcomm
ittee of the Research and Developmen
t Department of the Department of Ve
terans Affairs,New York Harbor Healt
hcare Systemによって承認され、そして動物使用に関する全ての手
順は、U.S.National Institutes of Health
によって出版された「Guiding Principles for Res
earch Involving Animals and Human Be
ings」に従う。
【0041】 (実施例1) (再灌流および虚血性損傷の調節) (材料および方法) 実施例1〜3における実験で使用したモデル系は、ランゲンドルフ灌流ウサギ
心臓調製法であった。外科的手順を、以前に記載されたように行った(Sala
ma Gら、Am.J.Physiol.1987、252:H384−H39
4)。
【0042】 手短に言うと、ウサギ(体重約2〜4kg、両性)を、フェノバルビタールナ
トリウムの腹腔内投与によって麻酔し、そしてヘパリン化した。中央開胸術を行
い、そして心臓を迅速に摘出して、そして100U/mlのヘパリンを含む冷却
酸素化タイロード液中に置いた。摘出した心臓の大動脈に迅速にカニューレを挿
入し(annulate)、そして改変ランゲンドルフ装置で逆向きに灌流した
。タイロード溶液は、以下を含んでいた(mM):NaCl 130、KCl
4.75、CaCl 1.0、MgSO 1.2、NaHCO 12.5
、およびグルコース 15.0。この溶液を、備え付けたガラス管を通して95
%O/5%COで持続的に泡立たせた。温度は、密閉チャンバ内の流出液(
efusate)の温度をモニターすることによって、36±0.3℃に維持し
た。排液のために、肺動脈に小さな切開を行った。2.0ml/分/g心臓重量
の灌流流速を用いて80〜90cm HOの再灌流圧を維持するために、可変
速度ローラーポンプを使用した。
【0043】 単離したウサギの心臓を研究するために、カスタムデザインした灌流チャンバ
を使用した(Salama Gら、1987)。このチャンバ内の心臓を、灌流
液に浸した。双極表面心電図を、Teflon(登録商標)コートした銀線を用
いて記録した。記録および刺激電極を、心外膜表面または灌流チャンバサイドパ
ッドに位置付けた。
【0044】 心臓を、左心室の自由壁(free wall)および右心室前方中隔付近に
置いた双極Ag−AgCl電極で、200から1200msの範囲の固定周期長
S1でペーシングした。1.5倍の拡張期閾値で、2.5msの持続時間の定常
電流パルスを用いて、心室刺激を行った。定常状態APD測定値を、最低30拍
後に決定した。
【0045】 単離された灌流ウサギ心臓に対するヘモグロビンの毒性。タイロード液による
心臓の灌流の間、左冠動脈を3分間クランプし、その後クランプをはずした(再
灌流)。再灌流時に有意なECGの変化は認められなかった。
【0046】 15〜20分後、調製物を、タイロード液中0.5gm%のヘモグロビン溶液
で灌流した。1〜2分以内に、ECGは、小さな振幅のQRSサイクルのみを示
した。心臓は、ヘモグロビン灌流後5分以内に機能不全であった。
【0047】 この実験は、単離された再灌流心臓に対するヘモグロビンの強力な毒性(生理
的濃度より低い濃度で)を示した。毒性の影響は、インサイチュでヘムから放出
される鉄の酸化促進効果に起因した。
【0048】 再灌流傷害および関連するヘモグロビン毒性に対するSnMPの保護効果。ウ
サギ心臓を、最初にタイロード液で還流した。左冠動脈を3分間クランプし、そ
の後結紮をゆるめた(再灌流)。ECGを再灌流の間およびその後10分間記録
した。ECGの変化は記録されなかった。ECGの追跡を図1に示す。
【0049】 再灌流の20分後に開始して、0.5g%ヘモグロビン/タイロード液を心臓
に灌流した。ECGは、ほとんどすぐに(2分以内に)増加するAVブロック、
その後心室の不全収縮を示した。ECGの追跡を図2に示す。続いて心臓をタイ
ロード液単独で再灌流した。2〜5分後、心室リズムは正常な洞調律に戻った。
次いで心臓を、20μmol/LのSnMPを含むタイロード液で5〜10分間
灌流し、心臓組織をSnMPに完全に曝露した。次いで冠動脈を3分間結紮し、
その後結紮をゆるめた(再灌流)。ECGを、再灌流の間およびその後10分間
記録した。リズムの変化は観察されなかった。ECGの追跡を図3に示す。
【0050】 さらに15〜20分後に、心臓を再び0.5%ヘモグロビン/タイロード液で
灌流した。ECGにおいて有害な効果は記録されなかった。心臓は正常な洞調律
(NSR)を示した。ECGの追跡を図4に示す。
【0051】 この実験において、冠動脈結紮および後の解放(再灌流)の有害な結果、なら
びにこの再灌流環境におけるヘモグロビンの毒性効果に対するSnMPの保護効
果が示された。
【0052】 再灌流傷害およびヘモグロビン毒性に対する、心臓に直接注射されたSnMP
の保護効果。タイロード液による最初の心臓の灌流の間に、左前方下行冠動脈(
LAD)を、対角枝の起点のすぐ遠位でクランプした。虚血時間は3分間続き、
その後クランプをはずした(再灌流)。再灌流から2分後、段々増加する心ブロ
ックが発現し、5〜6分で時々起こる心室性拍動のみを引き起こした。
【0053】 再灌流から7〜8分後、1.5ml(30mg)のSnMP溶液を、心臓摂取
口にいたるチャンバ(大動脈)に直接注射した。注射後1〜2分以内に、増加す
る心室性反応が再び現れ、続いて4〜5分後に規則的な洞調律(RSR)が復活
した。
【0054】 灌流の20分後、タイロード液中0.5gm%ヘモグロビン濾過溶液を、15
分間心臓に灌流した。ECGの変化は記録されず、そしてRSRは維持された。
ヘモグロビン溶液灌流の15分後、LADを再び3分間クランプした。3分の虚
血時間の後、クランプをはずした(再灌流)。再灌流の直後、心室性頻脈が発現
した。再灌流の2〜3分以内に、1分あたり約40〜50拍の心室固有調律が起
こり、そして5〜6分でRSRが復活した。
【0055】 その結果は、主要な灌流血管(大動脈および冠動脈)に直接注射したSnMP
が、LADの最初のクランプ後に起こる再灌流傷害を改善したことを示す。それ
に加えて、ヘモグロビンの注入後に見られる毒性が、SnMPの前処置によって
消えた。また、ヘモグロビン存在下でのLADのクランプ後に起こる再灌流傷害
は最低限であり、SnMPの継続的保護効果と一致した。
【0056】 (実施例2) (抗不整脈薬としてのSnMP) (材料および方法) 器具 光学的および記録装置の詳細は、他に記載されている(Salama
Gら 1987;Kanai AおよびSalama G 1995;Efim
ov IRら 1994;Choi BRおよびSalama G、2000;
Efimov IRら、J.Cardiovasc.Electrophysi
ol.1996、7:512−530)。図5は、以下に記載される実験で使用
される試験系を説明する。手短に言うと、ランゲンドルフ灌流心臓を含む灌流チ
ャンバを、極微操作装置に据え付け、そしてフォトダイオードアレイ走査装置の
光学軸に沿って配置した。心臓の心外膜表面を、2つの45Wタングステンハロ
ゲンランプ(LS)からの光で照明した。光をコリメートし、そして520±2
0nmの干渉フィルターを通した。35mmカメラレンズ(50mm、F1:1
.4、Nikon)を用いて目的の領域のグリッドパターンに焦点を合わせるた
めに、光学装置内の45°の鏡を用いた。染色した心臓からの蛍光上の(epi
−fluorescent)光を、レンズ(L)を通して集め、645nmのカ
ットオフフィルターを通して投射し、そして焦点を合わせて12×12エレメン
トのフォトダイオードアレイに心臓の画像を形成した。フォトダイオードアレイ
は、144の四角いダイオードエレメントからなり、各ダイオードは0.1mm
離れた1.0×1.0mmの寸法を有していた。124のダイオードを電流から
電圧へ変換し、そしてサンプリングした。光学機械の被写界深度は、約150μ
mであった。
【0057】 ランゲンドルフ調製法および灌流チャンバ ペーシングプロトコル 左心室自
由壁および右心室前方中隔付近に置いた双極Ag−AgCl電極を用いて、20
0〜800msの範囲の固定周期長(S1)で心臓をペーシングした。1.5倍
拡張期閾値で、2.5msの持続時間の定常電流パルスを用いて、心室刺激を与
えた。定常状態APD測定値を、最低30拍後に決定した。
【0058】 蛍光色素染色 電圧感受性スチリル(styryl)色素、di−4−ANE
PPS(Molecular Probes;Eugene、OR)を、電位差
計の蛍光プローブとして用いた。色素の蛍光を、520±20nm干渉フィルタ
ーを用いて励起した場合に、645nmカットオフフィルターより上の波長で測
定した。色素は脱分極に反応してわずかな(fractional)蛍光の減少
を示すので(100mVごとに6%〜9%)、シグナルを逆にして光学的APを
示した。この色素は、検出可能な薬理学的効果を生じず、そして高いシグナル対
ノイズ比で証明されるように、光学的に安定なままであり、2〜4時間持続する
(Choi BRおよびSalama G、J.Physiol.、2000、
529Pt1:171−188)。
【0059】 大動脈カニューレの直接上に位置する5mlのバブルトラップへ、色素の2.
5mMストック溶液から40〜60μlを徐々に注入することによって心臓を染
色した。最終的な色素の濃度は約1.8μMであった。染色が終了するのに10
〜15分かかった。この手順は、色素が冠血管を通して効率的に送達されたので
、心臓の全体にわたって均一な染色を生じた。光退色(色素の光へ長期の曝露は
、その有用性を低下させる)および/または色素を洗い流すことが光学的シグナ
ルの振幅を減少させ得るより長いプロトコルに関しては、心臓をより少ない量の
色素(5〜10ml)で再染色して本来のシグナル対ノイズ比を回復させた。
【0060】 シグナル取得およびデータ分析 各データ取得エポック(epoch)は、1
28の同時に記録したトレースのスキャンからなっていた(124のフォトダイ
オードおよび4つの器具チャネル)。多重器具チャネルは、刺激パルスおよび心
室からの表面電気記録シグナルをモニターした。各保存された取得エポックの持
続時間は1〜15秒の範囲であった。124の部位それぞれからのフォトダイオ
ード電流を、電流から電圧への変換機へ送り、増幅し、そしてハイパスフィルタ
ーをかけてバックグラウンドの蛍光を除去した。フィルターを通したシグナルを
選択ゲイン(selectable gain)増幅器段階を用いてさらに増幅
し、次いでIBM互換性PCコンピューターのMicrostar A/D変換
機ボードを用いて、0.64ms/チャネル(1.6kHz)のサンプリング速
度で、12ビットの解像度で数値化した。
【0061】 アレイの各部位での活性化および再分極時間の検出のために、カスタムデザイ
ンした分析システム(IDL4.0、Research Systems,In
c;Boulder、CO)を使用した。活性化時間は、AP上昇運動のピーク
の時間的導関数(derivative)として規定し、そして回復は再分極の
間の最大の秒の導関数の点として規定した。後者の値と正常モルモット心筋の不
応期との間に、良好な一致が以前に示された(Efimovら、1994)。
【0062】 動物 9つのモルモット心臓および13のウサギ心臓で研究を行った。正常心
筋でのSnMPの電気生理学的効果の研究のために、各動物をそれ自身のコント
ロールとした。それらの実験において定常状態速度分析を行い、そこでコントロ
ールおよびSnMP後において、そして全ての周期長で1:1の活性化パターン
で、高忠実度のシグナルが得られた。
【0063】 モルモットモデル:外科的調製 外科的手順は以前に記載された(Salam
a Gら、1987;Kanai AおよびSalama G、Circ.Re
s.1995、77:784−802)。手短に言うと、体重300と400g
との間の、両性のDunkin−Hartleyモルモットをペントバルビター
ルナトリウム(30mg/kg)の腹腔内注射によって麻酔し、そしてヘパリン
化した(1000U/kg)。各動物において中央開胸術を行い、そして心臓を
迅速に摘出し、そして1000U/lのヘパリンを含む冷却酸素化タイロード液
(NaCl 130mM、KCl 4.75mM、CaCl 1.0mM、M
gSO 1.2mM、NaHCO 12.5mMおよびグルコース15.0
mM)に置いた。迅速に摘出心臓の大動脈にカニューレ挿管し、そして改変ラン
ゲンドルフ装置で逆向きに灌流した。溶液を、フリットのガラス管を通して95
%O/5%COで連続的に泡立たせた。密閉チャンバ内の流出液の温度をモ
ニターして、そして36±0.3℃に維持した。以前の研究で、心外膜の温度は
照明の間でも1℃以下しか変化しないことが示された。排液のために肺動脈に小
さな切開を行った。
【0064】 ウサギモデル:外科的調製 ウサギモデルは広範囲に記載された(Gilli
s AMら、Am.J.Physiol.1996、271:H784−H78
9)。ウサギAPを構成するイオン電流の電気生理学的性質は十分に特徴付けら
れ、そして小さい動物よりもよくヒト心臓を代表し得る。ウサギ心臓の寸法は、
光学的システムの空間的分解能によく適しており、そして心臓の大きい平面表面
および特定の心臓構造の画像化を可能にする。システムの光学的分解能は、目的
領域の寸法に依存して、400〜1800mM/ピクセルまで調節され得る。電
気生理学的観察は、高い分解能で心臓の解剖学的特徴と関連し得る。
【0065】 本明細書中で記載される研究のために、両性、体重1.5〜2kgのNew
Zealand種の若いウサギを、クエン酸フェンタニル(100mg/kg+
15mg/kg/hr)の静脈内注射によって麻酔し、そしてヘパリン化した(
1000U/kg)。各動物において気管切開を行い、そして動物に気管内チュ
ーブを挿管した。ウサギは、加圧人工呼吸器(MD Industries、M
obile、AL)によって室内の空気で肺換気を行った。中線開胸術を行い、
そして心臓を心膜の離被架(cradle)で曝露した。心臓を迅速に摘出し、
そして1000U/lのヘパリンを含む冷却酸素化タイロード液中に置いた。次
いで心臓にカニューレを挿管し、そして改変ランゲンドルフ装置および光学的灌
流チャンバで逆向きに灌流した。
【0066】 心臓を、NaCl 130mM、NaHCO 25mM、MgSO 1.
20mM、KCl 4.75mM、デキストロース 10mM、グルコース 1
5mM、およびCaCl 1mMを含む、酸素化(95% O、5% CO )改変タイロード液(pH7.4、37℃)で灌流した。15分間の安定化時
間の後データを得た。
【0067】 急性虚血の実験のために、非切断(non−cutting)針を有する5−
0縫合糸を用いて、左前方下行動脈のまわりに結紮を配置した。ポリエチレンチ
ューブの小さな部分および小さな止血鉗子を含む係蹄を使用して、冠動脈を可逆
的に結紮した。
【0068】 (結果) これらの実験の知見は、SnMPが、ウサギおよびモルモットの心臓の両方に
おいてAPDを延長させることを示す。活性化および再分極の2−D画像のみし
か得られなかったが、その技術は、細胞の同じ集団と考えられるものの中で心拍
数に反応するAP特性の空間的変化の定量的記述を可能にする。
【0069】 正常モルモットおよびウサギの心臓 SnMPの光学密度のために、薬剤の継
続的注入は光学的シグナルを深刻に低下させた。SnMPは長い組織半減期を有
し、そして通常新生児において重症の黄疸を制御するためにボーラス用量しか必
要としないので、薬剤を灌流心臓に単回ボーラス用量として投与した。50μl
のSnMP溶液(20mg/ml)の単回ボーラス用量を、大動脈カニューレに
隣接するバブルトラップに加えた。正常モルモット心臓におけるSnMPのAP
延長効果を、図6に示す。平均の増加は32.4±4.1msであった。図6の
パネル(A)で見られるように、SnMPは全ての周期長(CL)でAPDを延
長した。図6のパネル(B)で見られるように、APDの増加は全てのCLで同
等であり、モルモットにおいて逆転使用依存(reverse use dep
endence)がほとんどないか、またはないことを示した。
【0070】 SnMPはウサギ心臓において同様の効果を有していた。ウサギAPの形はモ
ルモットのものと違い、そして密度および遅延整流器再分極電流(delaye
d rectifier repolarizing current)の比、
IKおよびIK(それぞれ遅いおよび速い活性化性分)の違いに関連し得る
。この実験において、100μlのSnMPの1用量を投与した。この研究の結
果を図7に示す。モルモットにおいてと同様に、SnMPは全てのCLでAPD
を延長し、そして延長の大きさはモルモットよりわずかに大きかった。平均の増
加は41.4±1.5msであった。このプロトコルで使用したCLの範囲では
、SnMPに関連する逆転使用依存はないようであった。
【0071】 SnMPの効果は、実験の過程中低下しなかった。図8は、SnMPの単回ボ
ーラスの効果は長く続くことを示す。50μlの単回ボーラス投与として伝達さ
れたSnMPは、モルモット心臓において5分以内にAPDを延長した(図8、
真中のトレース)。その効果は実験の間維持された。図8の下のトレースは、3
0分後のAPDは、SnMPの投与から5分後に観察されたものと同様であった
ことを示す。
【0072】 これらの結果は、モルモットおよびウサギ心臓のいずれにおいても、SnMP
作用に関連する逆転使用依存が、あるとしても少ししか存在しないことを明らか
に示す。本研究で使用した周期の範囲では、APD増加は全ての周期長で同様で
あった。この副作用の欠如は、アミオダロンを除いて、ほとんどの臨床的に使用
されている現在入手可能なクラスIII薬剤と対照的である。しかし、アミオダ
ロンは多くの他の副作用を有し、そして全ての患者で許容されるわけではない。
ソタロール、ドフェチリドおよびアジミライドのような、臨床的に入手可能なク
ラスIII抗不整脈薬による潜在的な心室性不整脈の悪化のため、それらの使用
は一般的に上室性不整脈の治療に限られていた。
【0073】 活性化マッピング 心臓におけるSnMPによるAPD延長の空間的構成を評
価するために、APDの等時性マップを構築した(Salama Gら、Am.
J.Physiol.1987、252:H384−H394)。基礎ペースリ
ズム(basic paced rhythm)中の活性化マップを得た。図9
に示すマップで、影をつけた部分はそれぞれ、連続する1ms間隔で活性化され
た等時性領域を表す。基礎ペースリズムSの活性化マップを、コントロールお
よびウサギ心臓に200μlのSnMPを投与した後に関して示す。心臓を右心
室からペーシングした。等時線の形および全活性化時間は、SnMPの前および
後で同様であり、そして心臓における伝導に対する効果の欠如を示した。
【0074】 図10に示すAPDマップは、10msの等時性間隔で描いた。行われた12
4の記録から代表的な光学的APを、ECGとともに下記の各マップに示す。正
常心臓では(A)、心臓の頂部(グリッドの下部)における短いAPDを有する
、頂点から基底へのAPDの勾配が存在する。コントロールでは、APDは10
0〜150msの範囲であった。SnMPの投与後、画像化領域の全APD(B
)は、有意に増加したが(130〜180ms)、APDの分散はコントロール
と同様のままであった。従って、全APD勾配の方向は保存され、そしてAPD
増加の程度は心外膜で比較的均一であったので、APD勾配の大きさはコントロ
ールと同様であった。薬剤はAPDを増加させたが、潜在的に不整脈惹起性であ
るAPD分散の勾配を引き起こさなかった。
【0075】 抗虚血効果 この研究の焦点は、冠閉塞の急性虚血期であった。虚血部分のA
P短縮が、急性虚血の電気生理学的特徴であり、そしてこの期間中の不整脈形成
の基質であると考えられる。SnMPで前処置した心臓では、図7に示す結果で
示されるように、APDが延長するだけでなく、虚血部分でのAPD短縮の程度
が、未処置の心臓と比較して著しく鈍くなった。これらの結果は、冠閉塞の急性
期におけるSnMPの有意な心臓保護効果を規定する。
【0076】 図11の左のマップは、冠動脈閉塞によって誘導される典型的なAPDの短縮
を示す。図1の中央のマップは、APDは心筋層全体で均一に増加したことを示
す。心臓に左前方下行冠動脈の閉塞を行った場合、APDは短縮したが、コント
ロールと比較してより少ない程度であった(右のマップ)。
【0077】 実施例3〜10は、SnMPのようなHOインヒビターの1用量をすぐに投与
することが、ヘム−鉄組織傷害の損傷後遺症を改善するのに有用であり得る、多
くの医学的状況を提供する。そのインヒビターは他の目的のためにヒト新生児患
者において無害であることが示されたので、これら全ての状況において、インヒ
ビターの単回投与、または複数回投与(約24時間あけて)を、わずかな必要性
の徴候で投与し得る。
【0078】 (実施例3) 脳血管出血または梗塞が疑われる患者を、適当な用量のSnMP(1〜50m
g/kg体重)をすぐに、筋肉内、皮下、または静脈内投与することによって処
置すること。
【0079】 (実施例4) 心筋梗塞または切迫した冠閉塞を経験していることが疑われる被験体を、上記
のように処置すること。
【0080】 (実施例5) 多血症が必然的に再灌流傷害を引き起こすショックの被験体、または再灌流お
よび血液の管外遊出が起こる「クラッシュ損傷」または大きな(massive
)身体的外傷を有する被験体を処置すること、その場合SnMPは、救急隊員に
よる現場での処置として、または病院の救急部門で上記のように投与される。
【0081】 (実施例6) 冠血流の復旧が再灌流傷害を引き起こす血管形成術を受けている患者;上記の
ような手順を行う直前に処置する。
【0082】 (実施例7) 冠血栓症のために血栓溶解治療、すなわちTPA、ストレプトキナーゼ等で処
置されている患者、この場合もまた再灌流が起こり、上記のような手順を行う前
にSnMPを受ける。
【0083】 (実施例8) 心肺装置から外れて正常の循環が復活した時に再灌流傷害を経験し得る、緊急
または予定された冠バイパス手術を受けている患者。上記のように手術の前に処
置する。
【0084】 (実施例9) 移植のために使用される臓器(心臓、腎臓等)は、レシピエントに移植された
時に再灌流傷害を受ける。この場合、臓器が保存されている溶液は1〜20μm
ol/lの範囲の濃度でSnMPを含む。
【0085】 (実施例10) 美容または他の形式の形成および再建手術を受けている患者は、広範囲の挫傷
を伴う組織の血液管外遊出を有する;上記のように先制治療(手術前に)。
【0086】 本発明は、本明細書中で記載された特定の実施形態によって範囲を制限されな
い。実際、本明細書中で記載されたものに加えて、本発明の様々な改変が、上記
の記載および添付の図から当業者に明らかとなる。そのような改変は、添付の特
許請求の範囲内であると意図される。
【0087】 本明細書中で提供される全ての値は、説明および比較のためだけであり、そし
て制限することを意図しない。
【0088】 様々な特許、特許出願、および刊行物が本明細書中で引用され、その開示は、
その全体において参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ウサギの心臓のECGトレーシングを示す。心臓は、酸素化したTy
rode溶液で灌流された;左の冠状動脈が3分間クランプされた;結紮糸が緩
められ、そして心臓が再灌流された。ECGの記録が、再灌流の間および再灌流
後10分間行われた。
【図2】 図2は、図1に記載されているように処置され、その後、Tyrode溶液中
の0.5%のヘモグロビンを心臓の中に灌流されたウサギの心臓のECGトレー
シングを示す。
【図3】 図3は、図2に記載されているように処置され、次いで20μmol/LのS
nMPを含有しているTyrode溶液で灌流されたウサギの心臓のECGトレ
ーシングを示す。次いで、冠状動脈が3分間閉じられた。結紮糸が緩められ、そ
して心臓が再灌流された。記録が、再灌流の間および再灌流後10分間行われた
【図4】 図4は、図3に記載されているように処置され、灌流後15〜20分間ヘモグ
ロビン/Tyrode溶液で処理されたウサギの心臓のECGトレーシングを示
す。
【図5】 図5は、実施例に記載されている実験に利用された灌流チャンバーおよび計量
器システムの模式図を示す。Langendoffの還流された心臓は、電圧感
受性の色素であるdi−4−ANEPPSで染色される。心外膜は、520±2
0nmの干渉フィルターを通過する2ハロゲン光源(LS)からの光で照らされ
る。心外膜の表面からの蛍光は、645nmのフィルターをかけられたレンズを
通して集められ、そして124−素子の光ダイオードアレイ上に焦点を合わせら
れる(1×1mm/光ダイオード)。
【図6】 図6は、正常なモルモットの心臓の中でのSnMPのAP延長効果を示す。左
側のパネル(A)は、250〜450msまでの範囲のペースサイクル長(CL
)での50μlのSnMPの投与の前および後の、光学的なAPを示す。右側の
パネル(B)は、SnMPの投与の前および後の、CLの関数としてのAPDの
プロットを示す。光学的なAPは、コントロール試験(実線)で、そして50μ
lのSnMP(点線)の存在で示される。
【図7】 図7は、正常なウサギの心臓中のSnMPのAP延長効果を示す。左側のパネ
ル(A)は、300〜500msまでの範囲のペースサイクル長(CL)での1
00μlのSnMPの投与の前および後の、光学的なAPを示す。右側のパネル
(B)は、SnMPの投与の前および後の、CLの関数としてのAPDのプロッ
トを示す。光学的なAPは、コントロール試験(実線)で、そして50μlのS
nMP(点線)の存在で示される。
【図8】 図8は、灌流されたウサギの心臓中に投与された50μlのSnMPの単回の
ボーラスの長期間続く効果を示す。上段のトレースはコントロールである。中段
のトレースは、SnMPの投与後5分でのAPDである。下段のトレースは、S
nMPの投与後30分でのAPDである。
【図9】 図9は、SnMPが正常な心臓の律動の活性化のパターンに対しては影響を与
えないことを示す。活性化のマップが、基本的なペースの律動の間に、ウサギの
心臓から示される。それぞれの形状の領域は、良好な1msの間隔で活性化され
た同一時間の領域を示す。S活性化のマップが、コントロールについて示され
、そして200μlのSnMPがウサギの心臓中に投与された後に示される。
【図10】 図10は、SnMPの投与の前および後での、APDの分布の同一時間のマッ
プを示す。それぞれの形状の領域は、ウサギの心臓の左心室(LV)のペーシン
グ(400msのCL)の間での、良好な10msの同一時間の間隔で活性化さ
れた同一時間の領域を示す。パネルAは、コントロールのマップ、LV、AP、
およびECGを示す;パネルBは、100μlのSnMPの投与後のそれらを示
す。
【図11A】 図11Aは、SnMPが、虚血性の領域中での虚血によって誘導されるAPD
の短縮を妨げることを示す。基底部位は、結紮部位の近くである;先端部位は結
紮部位から離れている。左側のパネルは、コントロール、結紮なしを示す;中央
のパネルは、冠状動脈閉塞症が虚血の5分後に虚血の領域(先端)おいてAPD
を短くすることを示す;右側のパネルは、SnMPが、正常な領域(基部)にお
いてAPDを延長し、そして心筋の虚血の5分間で、かなりのAPDの短縮は生
じないことを示す。
【図11B】 図11Bは、SnMPが、虚血性の領域中での虚血によって誘導されるAPD
の短縮を妨げることを示す。基底部位は、結紮部位の近くである;先端部位は結
紮部位から離れている。左側のパネルは、コントロール、結紮なしを示す;中央
のパネルは、冠状動脈閉塞症が虚血の5分後に虚血の領域(先端)おいてAPD
を短くすることを示す;右側のパネルは、SnMPが、正常な領域(基部)にお
いてAPDを延長し、そして心筋の虚血の5分間で、かなりのAPDの短縮は生
じないことを示す。
【図11C】 図11Cは、SnMPが、虚血性の領域中での虚血によって誘導されるAPD
の短縮を妨げることを示す。基底部位は、結紮部位の近くである;先端部位は結
紮部位から離れている。左側のパネルは、コントロール、結紮なしを示す;中央
のパネルは、冠状動脈閉塞症が虚血の5分後に虚血の領域(先端)おいてAPD
を短くすることを示す;右側のパネルは、SnMPが、正常な領域(基部)にお
いてAPDを延長し、そして心筋の虚血の5分間で、かなりのAPDの短縮は生
じないことを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 9/10 A61P 9/10 103 103 43/00 111 43/00 111 C07D 487/22 C07D 487/22 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE ,DK,DM,EE,ES,FI,GB,GD,GE, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN,YU, ZA,ZW (72)発明者 レスティボ, マーク アメリカ合衆国 ニュージャージー 08512−2801, クランベリー, クラン ベリー ネック ロード 19 Fターム(参考) 4C050 PA01 4C076 AA11 BB11 CC11 CC13 DD45 4C086 AA01 AA02 DA38 MA01 MA05 MA17 MA66 NA14 ZA36 ZA38 ZA40

Claims (33)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 虚血性組織、再灌流された組織、または出血性組織における
    ヘムオキシゲナーゼ活性を阻害するための方法であって、該方法は、虚血性状態
    または出血に罹患し得る被験体に、ヘムオキシゲナーゼの作用によって遊離鉄の
    放出を減少するために有効な量でスズメソポルフィリン(SnMP)を投与する
    工程を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記SnMPが静脈内投与される、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記SnMPが皮下投与される、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記SnMPが筋肉内投与される、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記SnMPが虚血の間に投与される、請求項1に記載の方
    法。
  6. 【請求項6】 前記SnMPが、明らかな発作または心筋梗塞に応答して投
    与される、請求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記組織が心筋組織である、請求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記SnMPが、大きな外傷のために投与される、請求項1
    に記載の方法。
  9. 【請求項9】 心律動異常を処置する方法であって、該方法は、このような
    処置が必要な被験体に、有効量のSnMPを投与する工程を包含する、方法。
  10. 【請求項10】 前記SnMPが静脈投与される、請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記SnMPが皮下投与される、請求項9に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記SnMPが筋肉内投与される、請求項9に記載の方法
  13. 【請求項13】 心律動異常を調節または予防する方法であって、該方法は
    、このような処置が必要な被験体に、有効量のSnMPを投与する工程を包含す
    る、方法。
  14. 【請求項14】 心不全を処置する方法であって、該方法は、このような処
    置が必要な被験体に、有効量のSnMPを投与する工程を包含する、方法。
  15. 【請求項15】 前記SnMPが静脈投与される、請求項14に記載の方法
  16. 【請求項16】 前記SnMPが皮下投与される、請求項14に記載の方法
  17. 【請求項17】 前記SnMPが筋肉内投与される、請求項14に記載の方
    法。
  18. 【請求項18】 前記被験体が、うっ血性心不全に罹患している、請求項1
    4に記載の方法。
  19. 【請求項19】 組織における遊離鉄の放出に関連する再灌流障害または出
    血性損傷の程度を軽減するための方法であって、該方法は、その必要がある被験
    体に、虚血後再灌流障害または出血性損傷を改善、低減または予防するために有
    効な量のSnMPを投与する工程を包含する、方法。
  20. 【請求項20】 前記SnMPが静脈内投与される、請求項19に記載の方
    法。
  21. 【請求項21】 前記SnMPが皮下投与される、請求項19に記載の方法
  22. 【請求項22】 前記SnMPが筋肉内投与される、請求項19に記載の方
    法。
  23. 【請求項23】 前記SnMPが、虚血の間に投与される、請求項19に記
    載の方法。
  24. 【請求項24】 前記SnMPが、明らかな発作または心筋梗塞に応答して
    投与される、請求項19に記載の方法。
  25. 【請求項25】 前記組織が心筋組織である、請求項19に記載の方法。
  26. 【請求項26】 前記SnMPが、大きな外傷のために投与される、請求項
    19に記載の方法。
  27. 【請求項27】 不整脈、梗塞または出血を処置するためのキットであって
    、該キットは、容器中にヘムオキシゲナーゼインヒビターを含む、キット。
  28. 【請求項28】 請求項27に記載のキットであって、該キットは、明らか
    な心臓発作または発作の処置における使用のために標識されている、キット。
  29. 【請求項29】 凝塊崩壊剤をさらに含む、請求項28に記載のキット。
  30. 【請求項30】 前記凝塊崩壊剤が、アセチルサリチル酸(アスピリン)で
    ある、請求項29に記載のキット。
  31. 【請求項31】 前記ヘムオキシゲナーゼインヒビターが、単位剤形で提供
    される、請求項27に記載のキット。
  32. 【請求項32】 前記容器がシリンジである、請求項31に記載のキット。
  33. 【請求項33】 前記ヘムオキシゲナーゼインヒビターがSnMPである、
    請求項31に記載のキット。
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