JP2003523524A5 - - Google Patents

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JP2003523524A5
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【発明の名称】卵巣癌の早期診断のための組成物および方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 個体における癌を診断する方法であって:
(a)個体から生物試料を採取する工程;および
(b)前記試料中のヘプシンを検出する工程;を含み、
前記試料中にヘプシンが存在すれば前記個体に癌が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンが存在しなければ前記個体に癌が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
【請求項2】 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記ヘプシンの検出が、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、PCR、ドットブロット、ELISAサンドイッチ法、ラジオイムノアッセイ、DNAアレイチップ、またはフローサイトメトリーより成る群から選択される手段によってなされることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】 前記癌が、卵巣癌、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】 生体試料中の悪性増殖を検出する方法であって:
(a)前記試料からmRNAを単離する工程;および
(b)前記試料中のヘプシンmRNAを検出する工程;を含み、
前記試料中にヘプシンmRNAが存在すれば悪性増殖が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンmRNAが存在しなければ悪性増殖が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
【請求項6】 ヘプシンmRNAを参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の診断が行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】 ヘプシンmRNAを参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の治療法が決定されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項8】 前記ヘプシンmRNAの検出が、PCR増殖によってなされることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】 前記PCR増殖が、配列番号8および9の配列より成る群から選択されるプライマーを使用することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項11】 生体試料中の悪性増殖を検出する方法であって:
(a)前記試料からタンパク質を単離する工程;および
(b)前記試料中のヘプシンタンパク質を検出する工程;を含み、
前記試料中にヘプシンタンパク質が存在すれば悪性増殖が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンタンパク質が存在しなければ悪性増殖が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
【請求項12】 ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の診断が行われることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】 ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の治療法が決定されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】 前記ヘプシンタンパク質の検出が、ヘプシンに特異的な抗体に対するイムノアフィニティーによってなされることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】 細胞における内因性ヘプシンの発現を阻害する方法であって、
発現に必要なエレメントに作動可能に結合した逆方向のヘプシン遺伝子を含むベクターを細胞に導入する工程を含み、前記細胞での前記ベクターの発現によってヘプシンアンチセンスmRNAが産生され、該ヘプシンアンチセンスmRNAが内因性ヘプシンmRNAにハイブリダイズして、前記細胞における内因性ヘプシンの発現が阻害されることを特徴とする方法。
【請求項17】 細胞においてヘプシンタンパク質を阻害する方法であって、
ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに対して特異的な抗体を細胞に導入する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質に対する抗体が該ヘプシンタンパク質を阻害することを特徴とする方法。
【請求項18】 個体の標的治療の方法であって、ヘプシンに対して特異的なターゲティング部分と薬効部分とを有する化合物を個体に投与する工程を含むことを特徴とする方法
【請求項19】 前記ターゲティング部分が、ヘプシンに対して特異的な抗体、ヘプシンに結合するリガンドまたはリガンド結合ドメインであることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】 前記薬効部分が、放射性同位体、毒素、化学療法薬、免疫増強薬、および細胞傷害性物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項21】 前記個体が、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌に罹患していることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項22】 個体にヘプシンに対するワクチン接種を行う方法であって、
ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントを個体に接種する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントの接種によって個体に免疫応答が誘導されて、個体にヘプシンに対するワクチン接種が行われることを特徴とする方法。
【請求項23】 前記個体が、癌を有し、癌を有する疑いがあり、または癌を発症するリスクがあることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項24】 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項22記載の方法。
【請求項25】 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
【請求項26】 ヘプシンに対する免疫活性化細胞を産生する方法であって、
ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに樹状細胞を曝露する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質またはその断片への曝露によって樹状細胞が活性化されて、ヘプシンに対する免疫活性化細胞が産生されることを特徴とする方法。
【請求項27】 前記免疫活性化細胞が、B−細胞、T−細胞、および樹状細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項28】 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項29】 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項28記載の方法。
【請求項30】 前記樹状細胞が、曝露に先立って個体から単離され、曝露後に前記個体に再導入されることを特徴とする請求項26記載の方法。
【請求項31】 前記個体が、癌を有し、癌を有する疑いがあり、または癌を発症するリスクがあることを特徴とする請求項30記載の方法。
【請求項32】 ヘプシンタンパク質の免疫原性フラグメントおよび適当なアジュバントを含む免疫原組成物。
【請求項33】 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項32記載の免疫組成物。
【請求項34】 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項33記載の免疫組成物。
【請求項35】 配列番号188の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド。
【請求項36】 請求項35記載のオリゴヌクレオチドおよび生理学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項37】 個体の腫瘍状態を治療する方法であって、
個体に請求項35記載のオリゴヌクレオチドの有効量を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項38】 前記個体が、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌より成る群から選択されることを特徴とする請求項37記載の方法。
【請求項39】 ヘプシン活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって:
(a)ヘプシンタンパク質を含む試料を特定の化合物と接触させる工程;および
(b)ヘプシンプロテアーゼ活性についてアッセイを行う工程;を含み、
前記化合物の存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性が、該化合物の非存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性と比較して低下している場合、該化合物がヘプシン活性を阻害する化合物であることが示唆されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、概して、細胞生物学および医薬の分野に関する。より詳細には、本発明は、癌、特に卵巣癌の診断の分野に属する。
【0002】
発明の背景
今日まで、卵巣癌は、婦人科悪性増殖を有する女性の第1位の致死的病気であり続けている。そのような癌を有すると診断された女性の約75%が、その最初の診断において、既に疾患の進行ステージ(IIIおよびIV)にある。過去20年間、それら患者の診断および5年生存率のいずれもほとんど改善されていない。それは、実質的に、高いステージでの最初の疾患の検出の割合が高いためである。従って、早期診断を改善させ、それによって高いステージでの最初の診断の割合(%)を減らすような、新規なマーカーを開発するという課題が残されている。
【0003】
悪性細胞は、in situで成長し得るのみならず、原発腫瘍から解離して、新しい表面に浸潤し得ることから、細胞外プロテアーゼが、多くの癌の増殖、広がり、および転移性の進行に関連していると考えられている。1つの組織から離脱して、別の組織の表面に再び結合し得ることは、その疾患に関連する罹患率および死亡率につながるものである。従って、細胞外プロテアーゼは、新生物発生のマーカーの優れた候補であろう。
【0004】
悪性細胞が増殖、拡散、および転移するためには、細胞がホストの局所組織に浸潤し、原発腫瘍から解離もしくは分離する能力が必要であり、更に転移が起こるには、悪性細胞が血流中に進入して生存し、標的組織の表面に浸潤、生着し、新たなコロニーの増殖に有利な環境(脈管形成および増殖因子の誘導など)を形成する必要がある。この進行過程において、基底膜や結合組織などの天然の組織障壁が分解されなければならない。こうした障壁として、コラーゲン、ラミニン、プロテオグリカンや、フィブロネクチンなどの細胞外マトリクス糖タンパク質がある。原発腫瘍の周辺および転移浸潤部位の双方におけるこうした天然障壁の分解は、一群の細胞外プロテアーゼの作用によるものと考えられている。
【0005】
プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびシステインプロテアーゼの4つのファミリーに分類される。多くのプロテアーゼはヒトの疾患プロセスにおける関与が示されており、これらの酵素の阻害剤は新たな治療剤としての開発目標となっている。また、ある種のプロテアーゼは多様な癌において誘導、過剰発現が見られることが示されおり、このため初期診断および潜在的な治療的介入のマーカーとして有力な候補であると云える。その例を表1に示す。
【0006】
【表1】
Figure 2003523524
個々のプロテアーゼの阻害のダウンレギュレーションまたは阻害、ならびに浸潤能および悪性度の低下を示す多くの証左が示されている。クラーク(Clark)等の研究によれば、一般的なセリンプロテアーゼ阻害剤の使用によるヒト小細胞肺癌のin vitroでの増殖阻害が示されている。より最近では、トレス−ロセド(Torres−Rosedo)等により、セリンプロテアーゼであるヘプシン遺伝子の特定のアンチセンス阻害剤を用いた肝癌腫瘍細胞の増殖阻害が示されている(Proc, Natl. Acad, Sci,USA, 90, 7181-7185 (1993))。メタロプロテアーゼの合成阻害剤(batimastat)を用いたマウスモデルにおいて、メラノーマ細胞の転移能が低下することも示されている。パウエル(Powell, et al., Cancer Research, 53, 417-422 (1993))等によれば、腫瘍形成性であるが非転移性の前立腺細胞系を用いて、比較的低浸潤性の腫瘍細胞における細胞外プロテアーゼの発現によって細胞の悪性化が亢進することを示す証左が示された。詳細には、PUMP−1メタロプロテアーゼ遺伝子の導入、発現後に転移能の亢進が確認された。また、比較的低転移性の細胞型における細胞表面プロテアーゼの発現によってこうした細胞の浸潤能が亢進することを示すデータも多く示されている。
【0007】
すなわち従来の技術にあっては、初期の疾患、特に卵巣癌の指示薬として有用な腫瘍マーカーは存在しなかった。本発明は、当該分野におけるこうした永年の需要、要請に応えたものである。
【0008】
発明の概要
本発明は、ヘプシンプロテアーゼの指標である、組織中におけるヘプシンmRNA(卵巣癌および他の腫瘍の80%の表面に特異的に存在することがこの中で示されている)をスクリーニングすることによって、癌、特に卵巣癌の検出を可能とする。プロテアーゼは、腫瘍増殖および転移に必須のものであると考えられており、従って、プロテア−ゼの存在または不在を示唆するマーカーは、癌の診断に有用である。さらには、本発明は、治療(すなわち、ヘプシンまたはヘプシンの発現を阻害することによる)、ターゲティング療法、またはワクチン接種に有用である。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、個体における癌を診断する方法であって、生物試料を個体から採取する工程、およびその試料中のヘプシンを検出する工程を含んでなる方法を提供する。試料中にヘプシンが存在すれば、その個体に癌が存在することが示唆され、試料中にヘプシンが存在しなければ、その個体に癌が存在しないことが示唆される。
【0010】
本発明の別の一実施形態では、生体試料中の悪性増殖を検出するための方法であって、当該試料からmRNAを単離する工程、および試料中のヘプシンmRNAを検出する工程を含んでなる方法が提供される。試料中にヘプシンmRNAが存在する場合には、悪性増殖の存在を示し、試料中にヘプシンmRNAが存在しない場合には、悪性増殖が存在しないことを示すものである。
【0011】
本発明の更なる別の一実施形態では、生体試料中の悪性増殖を検出する方法であって、当該試料からヘプシンタンパク質を単離する工程、および試料中のヘプシンタンパク質を検出する工程を含んでなる方法が提供される。試料中にヘプシンタンパク質が存在する場合には、悪性増殖の存在を示し、試料中にヘプシンタンパク質が存在しない場合には、悪性増殖が存在しないことを示すものである。この方法は、ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含んでいてもよく、この比較によって悪性増殖の診断が行われ、または悪性増殖の治療法が決定される。
【0012】
本発明の更なる別の一実施形態では、細胞におけるヘプシンの発現を阻害する方法であって、発現に必要なエレメントに作動可能に結合した、逆方向のヘプシン遺伝子を含むベクターを細胞に導入する工程を含んでなる方法が提供される。細胞でのベクターの発現によってヘプシンのアンチセンスmRNAが産生される。このヘプシンのアンチセンスmRNAは内因性のヘプシンmRNAとハイブリダイズすることによって細胞におけるヘプシンの発現を阻害する。
【0013】
本発明の更なる別の一実施形態では、細胞においてヘプシンタンパク質を阻害する方法であって、ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに対して特異的な抗体を細胞に導入する工程を含んでなる方法が提供される。この抗体がヘプシンに結合することでヘプシンタンパク質が阻害される。
【0014】
本発明の更なる別の一実施形態では、個体の標的治療のための方法であって、ヘプシンに対して特異的なターゲティング部分と薬効部分とを有する化合物を個体に投与する工程を含んでなる方法が提供される。
【0015】
本発明の更なる別の一実施形態では、個体にヘプシンに対するワクチン接種を行う方法であって、ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントを個体に接種する工程を含んでなる方法が提供される。このヘプシンタンパク質またはそのフラグメントの接種によって個体に免疫応答が誘導されて、個体にヘプシンに対するワクチン接種が行われる。
【0016】
本発明の更なる別の一実施形態では、配列番号188に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドが提供される。更に具体化されるものとして、上記のオリゴヌクレオチドと生理学的に許容されるその担体を含む組成物がある。更に具体化されるものとして、個体の腫瘍状態を治療する方法であって、個体に上記のオリゴヌクレオチドの有効量を投与する工程を含んでなる方法がある。
【0017】
本発明の更なる別の一実施形態では、ヘプシン活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって、ヘプシンタンパク質を含む試料を特定の化合物と接触させる工程、およびヘプシンプロテアーゼ活性についてアッセイを行う工程を含んでなる方法が提供される。当該化合物の存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性が、当該化合物の非存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性と比較して低下している場合、当該化合物がヘプシン活性を阻害する化合物であることが示されるものである。
【0018】
本発明の更なる、または他の側面、特徴、ならびに利点は、下記に示す発明の現時点での好ましい実施形態の説明より明らかとなろう。これらの実施形態はあくまで開示を目的としたものである。
【0019】
図面の簡単な説明
本発明の前記の特徴、利点および目的が明確にされかつ詳細に理解されるように、添付図面が含まれている。それら図面は本明細書の一部を構成する。しかしながら、添付図面は本発明の好ましい実施形態を例示したものであり、本発明の範囲を限定することを意図していないことに注意すべきである。
【0020】
図1は、正常および癌のcDNA由来のPCR産物のアガロースゲルの比較を示す。
【0021】
図2は、ヘプシン、SCCE、PUMP−1、TADG−14、およびβ−チューブリンのプローブを用いた卵巣腫瘍のノーザンブロット分析を示す。
【0022】
図3は、セリンプロテアーゼ重複プライマー(redundant priminers)での増幅を示す:正常cDNA(レーン1)および腫瘍cDNA(レーン2)を用いて、ヒスチジンセンス(S1)およびアスパラギン酸アンチセンス(AS1)での増幅;ならびに正常cDNA(レーン3)および腫瘍cDNA(レーン4)を用いて、ヒスチジンセンス(S1)およびセリンアンチセンス(AS2)での増幅。
【0023】
図4は、システインプロテアーゼ重複プライマーでの増幅を示す。正常(レーン1)、低悪性潜在的腫瘍(レーン2)、漿液性癌(レーン3)、粘液性癌(レーン4)、および明細胞癌(レーン5)。
【0024】
図5は、メタロプロテアーゼ重複プライマーでの増幅を示す。正常(レーン1)、低悪性潜在的腫瘍(レーン2)、漿液性癌(レーン3)、粘液性癌(レーン4)、および明細胞癌(レーン5)。
【0025】
図6は、セリンプロテアーゼであるヘプシンに特異的なプライマーでの増幅を示す。正常(レーン1−3)、低悪性潜在的腫瘍(レーン4−8)、および卵巣癌(レーン9−12)における発現を示す。
【0026】
図7は、正常、低悪性潜在的腫瘍、および卵巣癌でのヘプシン発現レベルを示す。S=漿液性、M=粘液性、LMP=低悪性潜在的腫瘍。
【0027】
図8は、正常、低悪性潜在的腫瘍、および卵巣癌でのセリンプロテアーゼである角質層キモトリプシン酵素(SCCE)の発現レベルを示す。
【0028】
図9は、正常組織(レーン1−2)および卵巣癌組織(レーン3−10)での、メタロプロテアーゼPUMP−1(MMP−7)遺伝子の発現を示す
図10Aは、正常卵巣および卵巣癌でのヘプシン発現のノーザンブロット分析を示す。レーン1、正常卵巣(ケース10);レーン2、漿液性癌(ケース35);レーン3、粘液性癌(ケース48);レーン4、子宮内膜様癌(ケース51);ならびにレーン5、明細胞癌(ケース54)。ケース35、51、および54において、10倍を越えるヘプシン1.8kb転写物の量の増加が観察された。図10Bは、正常ヒト胎児におけるヘプシンのノーザンブロット分析を示す。図10Cは、成体組織におけるヘプシンのノーザンブロット分析を示す。胎児の肝臓および胎児の腎臓において、ヘプシン転写物の有意な過剰発現が認められた。特に、ヘプシンの過剰発現は正常成体組織では観察されなかった。バックグラウンドレベルを越えるわずかな発現が成体前立腺において観察された。
【0029】
図11Aは、正常(N)、粘液性(M)および漿液性(S)低悪性潜在的(LMP)腫瘍、ならびに癌(CA)におけるヘプシン発現を示す。
【0030】
図11Bは、正常卵巣、LMP腫瘍、および卵巣癌におけるヘプシン:β−チューブリン発現の比を示す。ヘプシンmRNA発現レベルは、正常卵巣におけるレベルと比較して、LMP腫瘍(p<0.005)および癌(p<0.0001)において有意に上昇していた。正常卵巣の10のケース全てが、相対的に低いレベルのヘプシンmRNA発現を示した。
【0031】
図12Aは、胎児組織におけるSCCE遺伝子のmRNA発現のノーザンブロット分析を示す。図12Bは、卵巣組織におけるSCCE遺伝子のmRNA発現のノーザンブロット分析を示す。
【0032】
図13Aは、正常卵巣および卵巣癌からのSCCE cDNAの定量的PCRの比較を示す。図13Bは、10の正常組織および44の卵巣癌組織における、β−チューブリンに対するSCCEの比を比較する棒グラフを示す。
【0033】
図14は、正常および卵巣癌におけるプロテアーゼMのmRNA発現の定量的PCRによる比較を示す。
【0034】
図15は、His 5’末端近くに挿入物を含むTADG−12触媒ドメインを示す。
【0035】
図16Aは、正常組織および卵巣癌組織におけるTADG−14発現を比較するノーザンブロット分析を示す。図16Bは、TADG−14特異的プライマーを用いた、正常および癌のcDNAの予備定量的PCRを示す。
【0036】
図17Aは、ヒト胎児組織におけるPUMP−1遺伝子のノーザンブロット分析を示す。図17Bは、正常卵巣および卵巣癌におけるPUMP−1遺伝子のノーザンブロット分析を示す。
【0037】
図18Aは、内部対照β−チューブリンを用いた定量的PCRによって、正常組織および癌組織におけるPUMP−1発現を比較したものを示す。図18Bは、10の正常および44の卵巣癌における、内部対照β−チューブリンに対するPUMP−1のmRNA発現の比を示す。
【0038】
図19は、ヘプシン、SCCE、プロテアーゼM、PUMP−1、およびカテプシンLの遺伝子のPCR増幅産物の比較を示す。
【0039】
発明の詳細な説明
本発明は、卵巣および他の癌細胞において、そのタイプの癌の特性となり、かつ他のプロテアーゼとの様々な組み合わせにおいて個々の腫瘍タイプの特性となる、ヘプシンプロテアーゼを発見した。そのような情報は、診断試験(アッセイまたは免疫組織化学分析)、予後評価(表示パターンに依存する)、ならびに、立証された阻害データから得られたおよび/または新規な薬剤の設計のための、プロテアーゼに対する抗体、ダウンレギュレーションのためのアンチセンス手段、またはプロテアーゼ阻害剤の何れかを利用する治療的介入のための基礎を提供できる。腫瘍増殖、浸潤、および転移の長期間の治療は、化学療法剤−多数サイクルの化学療法の後、ほとんどの腫瘍が薬剤耐性となる−の存在をもって成功していない。
【0040】
本発明の第1の目的は、組織試料における悪性増殖の存在を検出する方法である。卵巣組織における癌の検出を特定の目的とすることは、本発明の利点である。特定タイプの癌細胞の特定の指標であるプロテアーゼに対するマーカーの存在に関して、生物試料を分析することによって癌を検出する。試料からmRNAを単離することによって、あるいはポリクロナール抗体または好ましくはモノクロナール抗体で蛋白質を検出することによって、本目的を達成できる。mRNA検出が用いられる場合、標準的方法に基づいて単離mRNAを試薬と混合してcDNAに変化させ;表2のリストから選択された核酸プライマーの適切な混合物と共に、容器内で増幅反応試薬(例えばcDNA PCR反応試薬)でそのcDNAを処理し;容器内の内容物を反応させて増幅産物を作成し;さらに増幅産物を分析して、試料中における悪性増殖マーカーの存在を検出する;ことによって、その方法を実施する。mRNAに関して、ノーザンブロット分析を用いて増幅産物中における悪性増殖マーカーの存在を検出することによって、分析工程を実施することができる。ノーザンブロット分析は当業界で公知である。増幅産物中における悪性増殖マーカーの存在を定量的に分析し、さらに、検出されたマーカーの量を、類似のプライマーを用いた場合における正常組織および悪性組織中における存在または不在に関する予測値のパネルと比較することによって、分析工程をさらに実施する。
【0041】
本発明の別の一実施形態は、本明細書が開示する方法において有用な様々な核酸配列である。これらの核酸配列を表2に列記した。本発明の有用性を実現すべく、これらの核酸配列の混合物を使用することが予想される。こうした混合物としては、配列番号1と配列番号2;配列番号1と配列番号3;配列番号4と配列番号5;配列番号6と配列番号7;配列番号8と配列番号9;配列番号10と配列番号11などが挙げられる。当業者によれば、他の核酸配列およびその混合物を開発して本発明の効果を得ることも可能であるが、表2に列記した配列を使用することが煩瑣な実験をともなうこともなく有利である。
【0042】
本発明は個体における癌診断の一方法を与えるものである。この方法は、個体から生体試料を得る工程、および当該試料中のヘプシンを検出する工程を含んでなるものである。試料中にヘプシンが存在する場合には、個体の体内の癌の存在を示し、試料中にヘプシンが存在しない場合には、個体の体内に癌が存在しないことを示すものである。一般に、ヘプシンの検出は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、PCR、ドットブロット、ELISAサンドウィッチアッセイ、ラジオイムノアッセイ、DNAアレイチップ、およびフローサイトメトリーによって行われる。本方法によって診断される典型的な癌の一例として卵巣癌がある。
【0043】
本発明はまた、生体試料中における悪性増殖を検出するための一方法を与えるものである。この方法は、当該試料からmRNAを単離する工程、および当該試料中のヘプシンmRNAを検出する工程を含んでなるものである。試料中にヘプシンmRNAが存在する場合には、悪性増殖の存在を示し、試料中にヘプシンmRNAが存在しない場合には、悪性増殖が存在しないことを示すものである。この方法は、ヘプシンmRNAを参照情報と比較する工程を更に含んでもよく、この比較によって悪性増殖の診断、および/または、治療法の決定が可能となる。ヘプシンmRNAの検出の一般的な手段としてはPCR増殖があり、配列番号8および配列番号9に示されるプライマーを使用することが好ましい。生体試料の主なものとしては、組織や体液があり、体液としては血液が好ましい。
【0044】
本発明は更に、生体試料中における悪性増殖を検出するための別の一方法を与えるものである。この方法は、当該試料からタンパク質を単離する工程、および当該試料中のヘプシンタンパク質を検出する工程を含んでなるものである。試料中にヘプシンタンパク質が存在する場合には悪性増殖の存在を示し、試料中にヘプシンタンパク質が存在しない場合には、悪性増殖が存在しないことを示すものである。この方法もまた、ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含むことが可能であり、この比較によって悪性増殖の診断、または治療法の決定が可能となる。好ましくはヘプシンタンパク質の検出はヘプシンに対して特異的な抗体に対する免疫親和性アッセイによって行われる。生体試料の主なものとしては、組織や体液があり、体液は血液であることが好ましい。
【0045】
本発明は更に、細胞におけるヘプシンの発現を阻害するための一方法を与えるものである。この方法は、ヘプシン遺伝子の発現に必要なエレメントに作動可能に結合した、逆方向のヘプシン遺伝子を含むベクターを細胞に導入する工程からなり、当該ベクターの発現によって細胞でヘプシンのアンチセンスmRNAが産生される。このヘプシンのアンチセンスmRNAは内因性のヘプシンmRNAとハイブリダイズすることによって細胞におけるヘプシンの発現を阻害する。
【0046】
本発明は更に、細胞においてヘプシンタンパク質を阻害するための一方法を与えるものである。この方法は、ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに対して特異的な抗体を細胞に導入する工程を含んでなる。この抗体がヘプシンに結合することでヘプシンタンパク質が阻害される。ヘプシンフラグメントは、9残基〜20残基からなるフラグメントであることが好ましく、9残基のフラグメントは、配列番号28,29,30,31,88,89,108,109,128,129,148,149,150,151,152,153および154で表されるものであることがより好ましい。
【0047】
本発明は更に、個体の標的治療のための一方法を与えるものである。この方法は、ヘプシンに対して特異的なターゲティング部分と薬効部分とを有する化合物を個体に投与する工程を含んでなる。このターゲティング部分は、ヘプシンに対して特異的な抗体か、ヘプシンに結合するリガンドまたはリガンド結合ドメインであることが好ましい。同様に、薬効部分は、放射性同位体、毒素、化学療法薬、免疫増強薬や細胞傷害性物質であることが好ましい。一般に対象個体は、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌やヘプシンを過剰発現している他の癌などの疾患を罹患した個体である。
【0048】
本発明は更に、個体にヘプシンに対するワクチン接種を行うための一方法を与えるものである。この方法は、ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントを個体に接種する工程を含んでなるものである。このヘプシンタンパク質またはそのフラグメントの接種によって個体に免疫応答が誘導されて、個体にヘプシンに対するワクチン接種が行われる。一般にこの方法は、個体が癌を有するか、癌を有することが疑われるか、あるいは癌を発症するリスクがある場合に適用することが可能である。ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントの配列としては、配列番号28,29,30,31,88,89,108,109,128,129,148,149,150,151,152,153および154に示されるものが好ましい。
【0049】
本発明は更に、ヘプシンに対する免疫活性化細胞(immune-activated cell)を産生するための一方法を与えるものである。この方法は、ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに樹状細胞を曝露する工程を含んでなるものである。一般に、ヘプシンタンパク質やその断片への曝露によって樹状細胞は活性化し、ヘプシンに対する免疫活性化細胞を産生する。一般に免疫活性化細胞としては、B−細胞、T−細胞、および/または樹状細胞が挙げられる。ヘプシンフラグメントは9残基〜20残基のフラグメントであることが好ましく、9残基のフラグメントは、配列番号28,29,30,31,88,89,108,109,128,129,148,149,150,151,152,153または154で表されるものであることがより好ましい。多くの場合、樹状細胞は曝露に先立って個体から単離され、曝露後に個体に再導入される。一般に対象個体は、癌を有するか、癌を有することが疑われるか、あるいは癌を発症するリスクがある個体である。
【0050】
本発明は更に、ヘプシンタンパク質の免疫原性フラグメントおよび適当なアジュバントを含む免疫原組成物を提供する。ヘプシンフラグメントは9残基〜20残基のフラグメントであることが好ましく、9残基のフラグメントは、配列番号28,29,30,31,88,89,108,109,128,129,148,149,150,151,152,153または154で表されるものであることがより好ましい。
【0051】
本発明は更に、配列番号188またはそのフラグメントに相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを与えるものである。本発明は更に、上記のオリゴヌクレオチドおよび生理学的に許容されるその担体からなる組成物、ならびに、個体の腫瘍状態を治療する方法であって、個体に上記のオリゴヌクレオチドの有効量を投与する工程を含んでなる方法を与えるものである。通常、対象となる腫瘍状態は、卵巣癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌やヘプシンを過剰発現している他の癌である。
【0052】
本発明は更に、ヘプシン活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法を与えるものである。この方法は、ヘプシンタンパク質を含む試料を特定の化合物と接触させる工程、およびヘプシンプロテアーゼ活性についてアッセイを行う工程を含んでなるものである。当該化合物の存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性が、当該化合物の非存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性と比較して低下している場合、当該化合物がヘプシン活性を阻害する化合物であることが示されるものである。
【0053】
本発明は更に、生体試料中における卵巣悪性増殖を検出するための一方法を与えるものである。この方法は、生体試料中に存在するプロテアーゼまたはプロテアーゼmRNAを単離する工程、および当該生体試料中に存在する特定のプロテアーゼまたはプロテアーゼmRNAを検出する工程を含んでなるものである。このプロテアーゼは、ヘプシン、プロテアーゼM、補体因子B、SCCE、カテプシンLおよびPUMP−1からなる群から選択される。この方法は更に、検出された特定のプロテアーゼまたはプロテアーゼmRNAを参照情報と比較する工程を更に含んでもよく、この比較によって悪性増殖の診断または治療法の決定が可能となる。通常、プロテアーゼmRNAは全mRNAの増幅によって検出され、プロテアーゼは抗体によって検出される。主な生体試料としては、血液、尿、唾液、涙液、組織間液、腹水、腫瘍組織生検、および循環腫瘍細胞が挙げられる。
【0054】
当業者によれば、発明の範囲ならびに精神から逸脱することなくここに開示される発明に多くの置換および改変を加えることが可能である点は了承されよう。
【0055】
本発明に従えば、当業者の通常の知識の範囲内である従来の分子生物学、微生物学、ならびに組換えDNA技術を使用することが可能である。こうした技術については文献に詳細に記載されている。(参照例、Maniatis, Fritsch & Sambrook, "Molecular Cloning: A Laboratory Manual" (1982); "DNA Cloning: A Practical Approach," Volumes I and II (D.N.Glover ed. 1985); "Oligonucleotide Synthesis" (M.J. Gait ed. 1984); "Nucleic Acid Hybridization" (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1985); "Transcription and Translation" (B.D. Hames & S.J. Higgins eds. 1984); "Animal Cell Culture" (R.I. Freshney. ed. 1986); "Immobilized Cells And Enzymes" (IRL Press, 1986); B. Perbal, "A Practical Guide To Molecular Cloning" (1984))従って、下記の用語は明細書中で用いられる場合には下記の定義を有するものとする。
【0056】
本明細書で用いる「cDNA」なる用語は、遺伝子のmRNA転写産物のコピーDNAのことを云う。
【0057】
本明細書で用いる「誘導アミノ酸配列」なる用語は、cDNAのヌクレオチド塩基のトリプレット配列を読むことによって決定されたアミノ酸配列を意味するものである。
【0058】
本明細書で用いる「ライブラリーのスクリーニング」なる用語は、適当な条件下で標識プローブを用いて、当該プローブに相補的な配列が特定のDNAライブラリー中に存在する否かを調べるプロセスのことを云う。更に、「ライブラリーのスクリーニング」はPCRによって行うことも可能である。
【0059】
本明細書で用いる「PCR」なる用語は、ミューリス(Mullis)に付与された米国特許第4,683,195号明細書ならびに同第4,683,202号明細書に開示されるポリメラーゼ連鎖反応、ならびに現在当該技術に関して知られている改良のことを云う。
【0060】
本明細書で用いるアミノ酸は「L」型の異性体であることが好ましいが、ポリペプチドが所望の機能的性質である免疫グロブリンへの結合能を維持するかぎりにおいて、「D」型の異性体残基を任意のL型アミノ酸残基に置換することが可能である。NH2はポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基のことを云う。COOHはポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシル基のことを云う。場合に応じ、J Biol. Chem.,243:3552−59に示される標準的なポリペプチド命名法に準拠したアミノ酸残基の略号を使用する。
【0061】
本明細書ではすべてのアミノ酸残基配列は、従来どおりアミノ末端からカルボキシ末端へと左から右に向かって示した式によって表した。更に、アミノ酸残基配列の始点または終点におけるダッシュ記号は、1個以上の更なるアミノ酸残基へのペプチド結合を示すものである。
【0062】
「レプリコン」とは、in vivoでのDNA複製の自律的単位として機能する、すなわち自己の制御下で複製可能な任意の遺伝子エレメントのことを云う(例、プラスミド、染色体、ウイルス)。
【0063】
「ベクター」とは、別のDNAセグメントを組み込んでこれを発現させることが可能なプラスミド、ファージ、コスミドといったレプリコンのことを云う。「ベクター」はまた、プラスミドやウイルス核酸などの複製能を有する核酸構築物として定義することもできる。
【0064】
「DNA分子」とは、1本鎖または2本鎖螺旋構造を有するデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、シトシン)の重合体のことを云う。この用語は、分子の1次および2次構造のみについて述べたものであり、特定の3次構造にその分子構造を限定するものではない。したがってこの用語には、特に直鎖状DNA分子(例、制限フラグメント)、ウイルス、プラスミド、および染色体などに見られる2本鎖DNAが含まれるものである。本明細書ではこの構造は、転写されない側のDNA鎖(mRNAと相同配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向に延びる配列のみを与える従来の習わしにしたがって考察する。
【0065】
発現ベクターとは、ポリペプチドをコードした核酸配列が、細胞でこのポリペプチドを発現させることが可能な適当な制御配列に作動可能に結合しているような複製能を有する構築物のことを云う。こうした制御配列に対する要求は、選択される細胞や選択される形質転換方法に応じて異なるものである。一般に制御配列は、転写プロモーターおよび/またはエンハンサー、適当なmRNAのリボソーム結合部位、転写および翻訳の終止を制御する配列を含む。当業者には周知の方法を用いて適当な転写および翻訳制御シグナルを有する発現ベクターを構築することも可能である。これについては、例えばサムブルック等により述べられる方法を参照されたい(Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Ed.), Cold Spring Harbor Press, N.Y.)。ある遺伝子とその転写制御配列は、転写制御配列によってその遺伝子の転写が効果的に制御される場合に「作動可能に結合している」ものとして定義される。これらに限ったものではないが、本発明のベクターとしてはプラスミドベクターやウイルスベクターが挙げられる。本発明のウイルスベクターとして好適なものとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、SV40ウイルスやヘルペスウイルスから得られるものがある。一般に発現ベクターは、挿入されたDNAフラグメントの効率的な転写を促し、特定のホストと関連して用いられるプロモーター配列を有している。発現ベクターは通常、複製の開始点、プロモーター、ターミネーター、および、形質転換細胞において表現型に基づいた選択を可能とする特定の遺伝子を有している。形質転換したホストは当該技術分野では周知の方法によって培養して最適な細胞増殖を得ることが可能である。
【0066】
「複製開始点」は、DNAの合成に関与するDNA配列である。
【0067】
DNAの「コード配列」とは、適当な調節配列の制御下に置かれた場合に、in vivoでポリペプチドに転写および翻訳される2本鎖DNA配列のことである。コード配列の境界は、通常、5’(アミノ)末端に位置する開始コドンと3’(カルボキシル)末端に位置する翻訳停止コドンとによって決められる。これらに限ったものではないが、コード配列には、原核細胞の配列、真核細胞のmRNAから得たcDNA、真核細胞(例、哺乳動物細胞)のDNAから得たゲノムDNA配列、さらには合成DNA配列までもが含まれる。ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列は通常、コード配列の3’末端側に位置している。
【0068】
転写および翻訳制御配列は、ホスト細胞でコード配列を発現させるプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーターなどのDNA調節配列である。
【0069】
「プロモーター配列」とは、細胞においてRNAポリメラーゼに結合して下流(3’方向)のコード配列の転写を開始するDNA調節領域のことを云う。本発明の定義において、プロモーター配列はその3’末端においては転写開始部位を境界とし、その上流方向(5’方向)ではバックグラウンドから検出可能なレベルの転写を開始するうえで必要な最少数の塩基やエレメントを含む配列である。プロモーター配列中には、RNAポリメラーゼの結合に与るタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)とともに、転写開始部位が見られる。真核生物のプロモーターには常にではないが、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスがしばしば含まれている。原核生物のプロモーターは通常、−10および−35のコンセンサス配列に加え、シャイン−ダルガルノリボソーム結合配列を含んでいる。
【0070】
「発現制御配列」とは、別のDNA配列の転写および翻訳を制御および調節するDNA配列のことである。RNAポリメラーゼがあるコード配列をmRNAに転写し、このmRNAがコード配列によってコードされるタンパク質に翻訳される際、このコード配列は細胞内の転写および翻訳制御配列の「制御下」にあるという。
【0071】
「シグナル配列」がコード配列の近くに存在する場合がある。この配列は、ポリペプチドのN末端側に位置するシグナルペプチドをコードする。シグナルペプチドはホスト細胞と情報伝達を行ってポリペプチドを細胞表面に移送したり、ポリペプチドを基質中に分泌させる。こうしたシグナルペプチドはタンパク質が細胞から分泌されるのに先立ってホスト細胞によって切断される。シグナル配列は原核生物および真核生物に存在する様々なタンパク質との関与が示されている。
【0072】
本明細書で用いる「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」なる用語は、2本鎖DNAを特定のヌクレオチド配列またはその付近で切断する酵素のことを云う。
【0073】
ある細胞は、外因性または異種DNAが細胞内部に導入された場合にこうしたDNAによって「形質転換された」という。形質転換DNAは細胞のゲノムに組み込まれる(共有結合を介して連結される)場合とそうでない場合がある。例えば、原核生物、酵母、および哺乳動物細胞では、形質転換DNAはプラスミドなどのエピソームエレメント上で維持することが可能である。真核細胞に関しては、形質転換DNAが染色体に組み込まれることによって染色体の複製を通じて娘細胞に受け継がれるような細胞を安定的に形質転換した細胞という。この安定性は、真核細胞において形質転換DNAを含む娘細胞の集団からなる細胞系またはクローンが樹立されることによって証明される。「クローン」とは、1個の細胞または祖先から体細胞分裂によって得られる細胞集団のことである。「細胞系」とは、in vitroで多くの世代にわたって安定的に増殖可能な初代細胞のクローンのことである。
【0074】
2個のDNA配列は、これらのDNA配列の所定の長さにわたって少なくとも約75%(好ましくは少なくとも約80%、最も好ましくは少なくとも約90%または95%)のヌクレオチドが一致する場合に「ほぼ相同である」という。配列データバンクより入手可能な標準的ソフトウェアを使用するか、あるいは、例えばその特定の系について定義されるストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験を行って配列同士を比較することによって互いにほぼ相同な配列を特定することが可能である。適当なハイブリダイゼーション条件を定義することは当業者の知識の範囲内である(参照例、Maniatis et al.,前出; DNA Cloning, Vols. I & II, 前出; Nucleic Acid Hybridization,前出)。
【0075】
DNA構築物の「ヘテロ」領域とは、より大きなDNA分子内の特定可能なDNAセグメントであって、この大形分子中に関連して天然には見られないDNAセグメントのことである。したがって、ヘテロ領域が哺乳動物の遺伝子をコードしている場合、その遺伝子は、それが由来する生物のゲノムで哺乳類ゲノムDNAを挟み込んでいるものとは異なるフランキングDNAによって挟み込まれる。別の例としては、コード配列自体が自然界に見られないような構築物がある(例、ゲノムコード配列がイントロンを含んでいるcDNAや、本来の遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)。ここで定義したDNAのヘテロ領域は、対立遺伝子変異や自然発生する突然変異によって生ずることはない。
【0076】
これらの研究で最も一般的に使用されている標識は、放射性元素、酵素、紫外線を照射すると蛍光を発する化学物質などである。多くの蛍光物質が知られており、標識として利用されている。こうした物質の例として、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、AMCAブルー、およびルシフェールイエローなどが挙げられる。特定の検出物質として、ヤギ体内で調製し、イソチオシアネートによってフルオロセインと結合させた抗ウサギ抗体がある。放射性元素や酵素でタンパク質を標識することも可能である。放射性標識は現在用いられている計数法のいずれによって検出することも可能である。好ましい同位体は、H、14C、32P、35S、36Cl、51Cr、57Co、 Co、59Fe、90Y、125I、131I、および186Reから選択されるものを用いることができる。酵素標識も同様に有用であり、今日用いられている比色定量法、分光測光法、蛍光分光測光法、電流測定法、またはガス定量法のいずれによって検出することも可能である。酵素は、カルボジイミド、ジイソシアネート、グルタルアルデヒドなどの架橋分子との反応によって選択した粒子に結合させる。これらの方法で使用可能な酵素は多くが知られており、それらを利用することが可能である。好ましい酵素としては、ペルオキシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−D−グルコシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼおよびペルオキシダーゼ、ならびにアルカリホスファターゼがある。米国特許第3,654,090号明細書、同第3,850,752号明細書、および同第4,016,043号明細書を別の標識物質ならびに方法の開示例として援用する。
【0077】
当該技術分野において開発利用されているアッセイシステムとして受容体アッセイとして特に知られるものがある。受容体アッセイでは、アッセイを行う物質を適当に標識し、特定の細胞試験コロニーを所定量の標識物質と培養した後、結合分析を行って標識物質の細胞受容体への結合度を調べる。このようにして物質間の親和度の差を求めることが可能である。
【0078】
当該技術分野において有用なアッセイとして「シス/トランス」アッセイとして知られるものがある。簡単に述べると、このアッセイは2種類の遺伝子構築物を用いたものである。2種類の遺伝子構築物の一方は通常、適当な細胞系にトランスフェクトした場合に特定の対象受容体を継続的に発現するプラスミドであり、他方は、受容体/リガンド複合体の制御下でルシフェラーゼなどの受容体を発現するプラスミドである。したがって、例えば特定の受容体に対するリガンドとしてある化合物の評価を行いたい場合、一方のプラスミドは、選択した細胞系でこの受容体を発現する構築物とし、他方のプラスミドは、この特定の受容体に対する応答エレメントを挿入したルシフェラーゼ遺伝子に連結したプロモーターを有するものとする。試験する化合物が受容体のアゴニストである場合、リガンドは受容体と複合体を形成し、この複合体が応答エレメントに結合してルシフェラーゼ遺伝子の転写を開始させる。発生した化学ルミネセンスを光度測定によって測定し、得られた用量応答曲線を公知のリガンドの用量応答曲線と比較する。以上のプロトコールは米国特許第4,981,784号明細書に詳細に述べられている。
【0079】
本明細書で用いる「ホスト」なる用語は、原核生物ばかりでなく、酵母、植物、および動物細胞などの真核生物をも含むものである。本発明のヒトヘプシンタンパク質をコードした組換えDNA分子または遺伝子を用い、当業者に一般的に知られる技術のいずれかによってホストを形質転換することが可能である。原核細胞の形質転換を行うために本発明のヒトヘプシンタンパク質をコードした遺伝子のコード配列を有するベクターを使用することが特に好ましい。原核生物のホストとしては、E.Coli、S.tymphimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisが挙げられる。真核生物のホストとしては、Pichia pastorisなどの酵母、哺乳動物細胞、および昆虫細胞が挙げられる。
【0080】
本明細書で用いる「ほぼ純粋なDNA」とは、そのDNAが自然に存在する環境の一部ではなく、その環境の分子の一部もしくは全体を分離(部分または全単離)したDNAか、本発明のDNAを挟んで位置する配列を改変したDNAのことである。したがってこの用語には、例えば、ベクターに組み込まれたDNA、自己複製能を有するプラスミドまたはウイルスに組み込まれたDNA、原核細胞または真核細胞のゲノムDNAに組み込まれたDNAや、他の配列とは独立した別の分子(例、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や制限エンドヌクレアーゼによる消化によって生成するcDNAまたはゲノムDNAまたはcDNAフラグメント)が含まれる。この用語には更に、融合タンパク質などの更なるポリペプチド配列をコードしたハイブリッド遺伝子の一部としての組換えDNAも含まれる。この用語には更に、配列番号188に示したヌクレオチドの一部を含むとともにヘプシンの別のスプライス産物をコードした組換えDNAも含まれる。
【0081】
「ほぼ純粋なタンパク質」とは、自然に併存する成分の少なくとも一部から分離されたタンパク質を意味する。通常、こうしたタンパク質は、in vivoで併存するタンパク質や他の自然に存在する有機分子から少なくとも60%(重量)分離されている場合にほぼ純粋であるという。こうした調製物の純度(重量)は少なくとも75%で有ることが好ましく、少なくとも90%であることがより好ましく、少なくとも99%であることが最も好ましい。ほぼ純粋なヘプシンタンパク質は、例えば、天然の供給源からの抽出、ヘプシンポリペプチドをコードした組換え核酸の発現、またはタンパク質の化学合成によって得ることが可能である。純度は、ヘプシンに対して特異的な抗体を用いた免疫親和性クロマトグラフィのようなカラムクロマトグラフィ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動やHPLC解析などの任意の適当な方法によって測定することが可能である。タンパク質は、自然状態で併存する夾雑物の少なくとも一部から分離される場合に自然に併存する成分をほぼ含まないものとみなす。すなわち、化学的に合成されるか、あるいは自然界でそれが存在する細胞とは異なる細胞系で産生されるタンパク質は、定義上、その天然併存成分から実質的に分離されているものとみなされる。したがって、ほぼ純粋なタンパク質には、E.Coliや他の原核生物、そのタンパク質が自然には存在しない他のすべての生物において合成される真核生物のタンパク質が含まれるものである。
【0082】
本明細書で用いる「オリゴヌクレオチド」なる用語は、2以上のリボヌクレオチド、好ましくは3よりも多いリボヌクレオチドからなる分子として定義される。その正確な大きさは、オリゴヌクレオチドの最終的な機能や用途に応じて異なる多くの因子に依存する。本明細書で用いる「プライマー」なる用語は、自然に存在する(単離した制限酵素消化物など)か、あるいは合成したオリゴヌクレオチドであって、適当な条件下、すなわちヌクレオチドおよびDNAポリメラーゼなどの誘導物質の存在下で適切な温度およびpH条件下に置かれた場合に、特定の核酸に対して相補的な鎖の合成を開始することが可能なオリゴヌクレオチドのことを云う。こうしたプライマーは1本鎖または2本鎖のいずれでもよく、また誘導物質の存在下で所望の延長産物の合成の起点となるうえで充分な長さを有するものでなければならない。プライマーの正確な長さは、温度、プライマーの配列および/または相同性、使用する方法などの多くの因子に依存する。例えば、診断における用途では、オリゴヌクレオチドプライマーは標的配列の複雑さに応じて15〜25個またはこれよりも多いヌクレオチドを通常有するが、これよりも少ないヌクレオチドを有する場合もある。
【0083】
本明細書で云うところのプライマーは、特定の標的DNA配列に対して「ほぼ」相補的なものが選択される。これは、プライマーは、各鎖にハイブリダイズするうえで充分な相補性を有さなければならないということである。したがってプライマー配列は鋳型の正確な配列を反映したものである必要はない。例えば、プライマーの5’末端に非相補的なヌクレオチドフラグメント(制限部位を含んだもの)を連結し、プライマー配列の残りの部分はDNA鎖に対して相補的であるようなものとすることが可能である。また、プライマー配列がこれとハイブリダイズする配列と充分な相補性を有し、延長産物の合成の鋳型となる限りにおいて、プライマー中に非相補的な塩基やより長い配列を散在させることも可能である。
【0084】
本発明のDNAがハイブリダイズするプローブは、配列番号188に示されるヌクレオチドのコード配列またはその相補配列の少なくとも20個の連続したヌクレオチド、より好ましくは40個のヌクレオチド、更により好ましくは50個のヌクレオチド、最も好ましくは100個以上のヌクレオチドの配列からなることが好ましい。こうしたプローブは、(a)細胞から得られたmRNAを標識されたヘプシンハイブリダイゼーションプローブに接触させる工程、および(b)mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションを検出する工程を含んでなる方法によって細胞でのヘプシンの発現を検出するうえで有用である。
【0085】
「高いストリンジェンシー」とは、高い温度と低い塩濃度によって特徴付けられるDNAのハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を意味するものであり、例えば、約0.1×SSCの塩濃度下、65℃での洗浄条件またはこれに機能的に相当する条件である。高ストリンジェンシー条件の例として、約50%のホルムアミドの存在下約42℃でハイブリダイゼーションを行い、約65℃で1%SDSを含む約2×SSCで初回の洗浄を行った後、約65℃で約0.1×SSCで2回目の洗浄を行う場合が挙げられる。
【0086】
こうしたDNAは、配列番号188に示したヌクレオチドのコード配列と少なくとも約70%、好ましくは少なくとも75%(例、少なくとも80%)、最も好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有しうる。2個の配列間の同一性は一致すなわち同一位置の数の直接的な関数である。2個の配列の特定の位置に同じ単量体サブユニットが存在する場合、例えば、2個のDNA分子においてある位置にアデニンが存在する場合、これらの配列はその位置において同一であるという。例えば、ヌクレオチド10個分の長さの配列中で7箇所の位置が、やはり10個のヌクレオチドからなる第2の配列の対応する位置と同一である場合、これら2個の配列は70%の配列同一性を有することになる。比較配列の長さは、一般に少なくとも50ヌクレオチド、好ましくは少なくとも60ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75ヌクレオチド、最も好ましくは100ヌクレオチドである。通常、配列同一性は配列解析ソフトウェアを用いて測定される(例、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue, Madison, WI 53705所在)、ジェネティクス・コンピューターグループ(GCG)の配列解析ソフトウェアパッケージ)。
【0087】
本発明は、ヘプシンタンパク質をコードした、ホスト体内で複製可能なベクターであり、それぞれ作動可能に結合した、a)複製開始点、b)プロモーター、およびc)前記ヘプシンタンパク質をコードしたDNA配列を有するものである。好ましくは本発明のベクターは配列番号188に示されるDNA配列の一部を有する。ベクターはヘプシンタンパク質またはそのフラグメントをコードした核酸を増幅および/または発現させるために使用することが可能である。
【0088】
本発明にはほぼ完全長のタンパク質の他、ヘプシンタンパク質のフラグメント(例、抗原性フラグメント)も含まれる。本明細書でポリペプチドに対して用いる「フラグメント」とは、通常は少なくとも10個の残基、より一般的には少なくとも20個の残基、好ましくは少なくとも30個の残基(例、50個)分の長さを有するものをいうが、完全な配列である必要はない。ヘプシンタンパク質のフラグメントは、天然または組換えヘプシンタンパク質の酵素的消化、ヘプシンの所定のフラグメントをコードした発現ベクターを用いた組換えDNA技術や化学的合成など、当業者に周知の方法によって調製することが可能である。候補フラグメントがヘプシンの性質(例、ヘプシンに対して特異的な抗体への結合)を示す能力を本明細書で述べる方法によって評価することが可能である。精製したヘプシンまたはヘプシンの抗原性フラグメントを用い、当業者に周知の標準的なプロトコールによって、新規な抗体を作出したり、既存の抗体の試験(例、診断アッセイのポジティブコントロールとして)を行うことが可能である。例えばウサギにおいてヘプシンまたはヘプシンのフラグメントを免疫原として使用することによって調製されるポリクローナル抗血清も本発明に含まれるものである。その際、当業者に周知のモノクローナルおよびポリクローナル抗体を調製するための標準的なプロトコールを用いる。この方法によって調製されるモノクローナル抗体を、組換えヘプシンcDNAクローンを特定する能力およびヘプシンcDNAクローンを他のcDNAクローンから判別する能力についてスクリーニングすることが可能である。
【0089】
オルタナティブなmRNAスプライシングやオルタナティブなタンパク質プロセシングの結果得られる産物のような、少なくともその一部が配列番号188の部分によってコードされたヘプシンタンパク質や、ヘプシン配列の一部が欠失したヘプシンタンパク質も本発明に含まれるものである。ヘプシンのフラグメントまたは完全なポリペプチドを、標識、リガンドや抗原性を高める機能を有する別のポリペプチドと共有結合によって連結することも可能である。
【0090】
本発明は更に、ヘプシンに特異的に結合するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を含むものである。本発明は、完全なモノクローナル抗体だけではなく、Fabや(Fab)2フラグメントなどの免疫学的な活性を有する抗体フラグメント、遺伝子操作した1本鎖Fv分子やキメラ分子も含むものである。キメラ分子は例えば、ある抗体(例、マウス由来)の結合特異性部分と別の抗体(例、ヒト由来)の残りの部分を有するものである。
【0091】
一実施形態では、抗体またはそのフラグメントを、放射性標識、非放射性同位体標識、蛍光標識、化学ルミネセンス標識、常磁性体標識、酵素標識や比色定量標識などの検出可能な標識や毒素に連結することが可能である。
【0092】
適当な毒素の例としては、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A、リシン、およびコレラ毒素が挙げられる。適当な酵素標識の例としては、リンゴ酸ヒドロゲナーゼ、ブドウ状球菌ヌクレアーゼ、Δ5−ステロイドイソメラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、α−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、アセチルコリンエステラーゼなどが挙げられる。適当な放射性同位体標識としては、H、125I、131I、32P、35S、14Cなどが挙げられる。
【0093】
本発明の方法に従えば、in vivo診断の目的で常磁性同位元素を使用することも可能である。磁気共鳴イメージングにおいて有用な元素には多くの例がある。in vivoでの核磁気共鳴イメージングの例については下記を参照されたい。Schaefer et al., (1989) JACC 14, 472-480; Shreve et al., (1986) Magn. Reson. Med. 3, 336-340; Wolf, G. L., (1984) Physiol. Chem. Phys. Med. NMR 16, 93-95; Wesbey at al., (1984) Physiol. Chem. Phys. Med. NMR 16, 145-155; Runge et al., (1984) Invest. Radiol. 19, 408-415.適当な蛍光標識の例としては、フルオロセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、オフサルデヒド標識、フルオレスカミン標識などが挙げられる。化学ルミネセンス標識の例としては、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、蓚酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、エクオリン標識などが挙げられる。
【0094】
当業者であれば本発明に従って使用が可能な他の適当な標識も想到されよう。これらの標識のその抗体やフラグメントへの結合は当業者に周知で一般的に使用されている標準的な方法を用いて行うことが可能である。典型的な技術としては、ケネディー(Kennedy)等およびシュルス(Schurs)等によって述べられるものがある(Kennedy et al., (1976) Clin. Chim. Acta 70, 1-31; and Schurs et al., (1977) Clin. Chim. Acta 81, 1-40)。これらの文献に述べられる結合方法として、グルタルアルデヒド法、ペリオデート法、ジマレイミド法、m−マレイミドベンジル−N−ヒドロキシ−スクシンイミドエステル法がある。これらの方法のすべてを本明細書中に援用するものである。
【0095】
本発明は更に、生体試料中のヘプシンタンパク質を検出するための方法を含むものである。この方法は、当該試料を標識抗体(例、ヘプシンに対して特異的な放射性標識抗体)と接触させる工程、および該抗体が試料中の特定成分と結合するか否かを判定する工程を含んでなるものである。ヘプシンタンパク質に対する抗体をイムノアッセイに用いて悪性形質転換が疑われる組織におけるヘプシンタンパク質の発現レベルの上昇を検出することが可能である。同様の使用はノーザンブロットアッセイおよび分析においても可能である。
【0096】
本明細書で述べるように本発明によって診断における多くの利点および用途が与えられる。例えば本発明のヘプシンタンパク質は腫瘍細胞において過剰発現されることから、異なる組織における癌の診断に有用である。ヘプシンに対して特異的なエピトープに結合する抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、癌性または腫瘍性悪性形質転換の診断のために生体試料中のヘプシンタンパク質を検出する方法において有用である。この方法は、癌が疑われる患者から生体試料(例、細胞、血液、血漿、組織など)を採取する工程と、ヘプシンに対して特異的な標識抗体(例、放射性標識抗体)と試料を接触させる工程、およびELISAなどの標準的なイムノアッセイ技術を用いてヘプシンタンパク質を検出する工程を含んでなるものである。生体試料への抗体の結合は、その試料にヘプシン分子内のエピトープに特異的に結合する成分が含まれていることも示すものである。
【0097】
同様に、当業者には周知の従来のノーザンハイブリダイゼーション技術に基づいて標準的なノーザンブロットアッセイを行って、癌が疑われる患者から採取した細胞や組織中のヘプシンmRNAの相対量を求めることが可能である。このノーザンアッセイでは、配列番号188に相補的な配列を有する完全長の1本鎖DNA、または少なくとも連続したヌクレオチド20個分の長さ(好ましくは少なくとも30個、より好ましくは少なくとも50個、最も好ましくは少なくとも100個)を有するこのDNA配列のフラグメントを含む、放射性標識したヘプシンcDNAなどのハイブリダイゼーションプローブを使用する。このDNAハイブリダイゼーションプローブは当業者に周知の多くの異なる方法のいずれによって標識することも可能である。
【0098】
以下の実施例は発明の異なる実施形態を説明するためのものであって、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【0099】
実施例1
重複特異的プライマーを用いたセリンプロテアーゼの増幅
遺伝子発現分析のために、ゲノムDNAを含まないと思われるcDNA調製物のみを用いた。セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびシステインプロテアーゼ用に重複プライマーを調製した。セリンプロテアーゼの触媒三つ組残基の周りのアミノ酸のコンセンサス配列、すなわち、ヒスチジン...アスパラギン酸...およびセリンに対するプライマーを合成した。センス(ヒスチジンおよびアスパラギン酸)およびアンチセンス(アスパラギンおよびセリン)重複プライマーの両方の配列を表2に示した。
【0100】
【表2】
Figure 2003523524
実施例2
癌組織
漿液性嚢胞腺癌より得たcDNAのPCR増幅物から複数のプロテアーゼ様分子が特定、サブクローニングされた。したがってここで述べるプロテアーゼとは卵巣癌の最も一般的な形態であるこのタイプの癌の表面活性を反映したものである。出願人は更に、同様の塩基対サイズの粘液性腫瘍型および明細胞型に特徴的なPCR増幅バンドを検出した。卵巣癌の約20〜25%が粘液性、明細胞型、または子宮内膜性として分類される。
【0101】
実施例3
ライゲーション、形質転換、および配列決定
上記のPCR産物を同定するため、適当なバンドをすべてプロメガ(Promega)社のTベクタープラスミドにライゲートし、このライゲーション産物を用いて選択培地上で培養したJM109細胞(プロメガ社)の形質転換を行った。個々のコロニーの選択、培養を行った後、プラスミドDNAをWIZARD MINIPREP(商標名)DNA精製システムによって単離した。Prism Ready Reaction ダイデオキシ・ターミネーターサイクル配列決定キット(アプライド・バイオシステムズ社)を用いてインサートの配列を求めた。残留した色素ターミネーターは、CENTRISTEP SPIN(商標)カラム(プリンストン・セパレーション社)を用いて得られた配列反応溶液から除去し、試料をアプライド・バイオシステムズ社のモデル373A DNA配列決定システムにかけた。セリンプロテアーゼプライマーのサブクローニングおよび配列決定の結果を表3にまとめた。
【0102】
【表3】
Figure 2003523524
実施例4
クローニングおよびキャラクタリゼーション
新規遺伝子候補のクローニングおよびキャラクタリゼーションを行って卵巣癌サブタイプに対して特異的な細胞外プロテアーゼのパネルを拡大した。腫瘍cDNAから得られたPCR産物の配列決定によってこれらの遺伝子が潜在的な候補物質であることが示された。3つの新規遺伝子はいずれも、セリンプロテアーゼファミリーの一員であることと符合して触媒トライアッド配列中に保存された残基を有する。
【0103】
出願人は、センス−ヒスチジンとアンチセンス−アスパラギン酸、およびセンス−ヒスチジンとアンチセンス−セリンを用いて正常cDNAおよび癌cDNAから増幅したPCR産物の比較を行った。これらのプライマーの組に対して、約200bpおよび500bpの予想されたPCR産物が観察された(アスパラギン酸はヒスチジンからアミノ酸約50〜70個下流の位置にあり、セリンはヒスチジンからアミノ酸約100〜150個だけカルボキシ末端に向かった位置にある。)。
【0104】
図1は、正常cDNAおよび癌cDNAから得られたPCR産物の比較をアガロースゲル上での染色によって示したものである。レーン2では2本の異なるバンドがセンス−His/アンチセンス−ASP(AS1)のプライマーの組において見られ、レーン4ではセンス−His/アンチセンス−Ser(AS2)のプライマーの組に対し約500bpの位置に複数のバンドが癌のレーンにおいて確認された。
【0105】
実施例5
定量的PCR
定量的PCRによってヘプシンのmRNA過剰発現を検出、その値を求めた。定量的PCRはNoonan等の方法にほぼ準じて行った(Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 87: 7160-7164 (1990))。以下のオリゴヌクレオチドプライマーを使用した。
【0106】
ヘプシン:
順方向 5'-TGTCCCGATGGCGAGTGTTT-3' (配列番号8)、および
逆方向 5'-CCTGTTGGCCATAGTACTGC-3' (配列番号9)
β−チューブリン:
順方向 5'-TGCATTGACAACGAGGC-3' (配列番号18)、および
逆方向 5'-CTGTCTTGA CATTGTTG-3' (配列番号19)
β−チューブリンは、内部コントロールとして用いた。増幅した遺伝子の予測されたサイズはヘプシンでは282bp、β−チューブリンでは454bpであった。この実験で使用したプライマー配列はLeytus等により述べられたcDNA配列に基づいて設計したものである(ヘプシンについては、[Biochemistry, 27, 1067-1074], β−チューブリンについては、[Mol. Cell. Biol., 3. 854-862 (1983)])。PCR混合物は、従来法によって転換した50ngのmRNAから得られたcDNA、ヘプシン遺伝子およびβ−チューブリン遺伝子の両者に対し5pmolのセンスおよびアンチセンスプライマー、200μmolのdNTP、5μCiのα−32PdCTP、および0.25単位のTaqDNAポリメラーゼに、反応緩衝溶液(Promega)を加えて最終容量を25μlとしたものである。標的配列とβ−チューブリン遺伝子と並行して増幅した。サーマルサイクラー(Perkin−Elmer Cetus)中で30サイクルのPCRを行った。PCRの各サイクルでは、95℃で30秒間の変性、63℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長を行う。PCR産物は2%アガロースゲル上で分離し、各PCR産物の放射性をPhosphorImager(商標)(モレキュラー・ダイナミクス社)を用いて調べた。平均値の比較にはステューデントのt検定を用いた。
【0107】
正常な卵巣および卵巣癌におけるPCR増幅を比較した実験により、腫瘍組織においてmRNA転写産物が過剰発現および/または変異されていることが示された。TADG−14のノーザンブロット分析により1.4kbの転写産物のサイズが確認され、またデータから卵巣癌における過剰発現が示された(図2)。ポジティブなプラークをスクリーニングするためPCRおよび250bpの特定のPCR産物を用いた単離および精製によって、TADG−14の1.2kbのクローンが得られた。表2の適当なプライマーを用いた同様の方法によって他のプロテアーゼも増幅された。
【0108】
実施例6
組織バンク
表4に示されるような卵巣癌の新鮮な凍結組織の腫瘍組織バンクを用いて評価を行った。悪性腫瘍以外の医療上の理由によって除去された約100個の正常卵巣を外科手術により入手し、コントロールとして用いた。
【0109】
【表4】
Figure 2003523524
この腫瘍バンクより、境界悪性または低悪性度の腫瘍または顕性癌を含む、卵巣癌の最も組織学的なサブタイプを含む約100検体の癌について評価を行った。この方法では、新鮮な凍結組織(正常組織および腫瘍の両方)から調製したmRNAを用いて正常組織、低悪性度腫瘍、および顕性癌における遺伝子の発現を比較した。ポリAmRNAから調製したcDNAは、β−チューブリンおよびp53プライマーを用いて既知のイントロン−エキソン・スプライス部位を有するプライマーによってすべての調製物を調べた結果、ゲノムDNAを含まないものと考えられた。
【0110】
実施例7
ノーザンブロット
ノーザンブロットによって上記の候補遺伝子の発現を調べることによって多くの情報を得ることができる。正常な成人の多組織ブロット分析によって、プロテアーゼを発現する可能性を有する正常組織を同定することが可能である。したがって、治療的介在のためにプロテアーゼを阻害する手法が開発されるとするならば、正常組織においてこれらの遺伝子が発現された場合にこれを認識できることが不可欠である。
【0111】
胎児組織のノーザンブロット分析から多くの情報が得られることが期待される。癌において過剰発現される遺伝子はしばしば器官発生期に高レベルの発現が見られる。示したように、肝癌細胞からクローニングされ、卵巣癌で過剰発現されるヘプシン遺伝子は胎児肝臓で著明な発現が見られる。ヘプシン遺伝子の発現は胎児腎臓においても検出されていることから、ヘプシン遺伝子は腎癌における発現の候補ともなりうる。
【0112】
胎児組織ならびに多組織の正常な成人における遺伝子の発現を調べるためのノーザンパネルが市販されている(クロンテック社)。こうした評価ツールは、腫瘍および正常組織における個々の転写産物の過剰発現を確認するうえで重要であるばかりでなく、転写産物のサイズを確認し、卵巣癌においてオルタナティブスプライシングや他の転写の変化が起きているかを判定することを可能とするものである。
【0113】
実施例8
ノーザンブロット分析
ノーザンブロット分析を下記のように行った。10μgのmRNAを1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルにロードし、電気泳動してHyBond−N(商標)ナイロン膜(アマシャム社)上にブロットした。Prime−a−Gene標識システム(商標)(プロメガ社)を使用して32P−標識したcDNAプローブを作成した。特定のプライマーによって増幅したPCR産物をプローブとして用いた。ブロットは、ExpressHyb(商標)ハイブリダイゼーション溶液(クロンテック社)中、32P−標識cDNAプローブにより、30分間プレハイブリダイズした後、68℃で60分間ハイブリダイズした。β−チューブリンプローブを用いて相対的なゲルロードを求めるためのコントロールハイブリダイゼーションとした。
【0114】
脾臓、胸腺、前立腺、睾丸、卵巣、小腸、大腸、末梢血白血球、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓、膵臓、および、脳、肺、肝臓および腎臓などの正常なヒトの胎児組織を含む正常なヒト組織をすべて同様のハイブリダイゼーション法を用いて調べた(ヒト多組織ノーザンブロット、クロンテック社)。
【0115】
実施例9
セリン、システイン、およびメタロプロテアーゼに対応するPCR産物
低悪性度腫瘍または癌におけるそれらの特徴的な発現に基づいて、PCR−増幅したcDNA産物をクローニング、配列決定し、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列に基づいて特定した適切な遺伝子をGCGおよびESTデータベースに保存した。図3、4および5に、セリンプロテアーゼ(図3)、システインプロテアーゼ(図4)、およびメタロプロテアーゼ(図5)について重複プライマーを用いて正常組織と癌性組織を比較したPCR産物のディスプレイを示した。癌性組織と正常組織における発現の相違に注意されたい。プロテアーゼは、内在的な酵素活性(セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼに対する)に関連した保存配列に対する重複cDNAプライマー(表2を参照)を用い、サカナリ等(Sakanari et al., Biochemistry 86, 4863-4867 (1989))による方法にしたがって、正常組織、低悪性度組織、顕性卵巣癌組織におけるmRNA発現を比較することによって同定した。
【0116】
実施例10
セリンプロテアーゼ
セリンプロテアーゼ群に関しては、ヒスチジンドメインを有するセンスプライマーS1をアンチセンスプライマーAS2とともに用い、以下のプロテアーゼを同定した。
【0117】
(a)ヘプシン。肝癌細胞からクローニングされたトリプシン様セリンプロテアーゼ。培養中での肝癌細胞の増殖に不可欠な細胞表面プロテアーゼであり、肝腫瘍細胞において高レベルで発現することが示されている(図3、レーン4)。
【0118】
(b)補体因子Bプロテアーゼ(ヒト第IX因子)。凝固カスケードに関与しているプロテアーゼであり、腫瘍細胞に関連したフィブリン分解産物(図3、レーン4)の生成および蓄積に関連している。補体因子Bは凝固因子X(クリスマス因子)のファミリーに属している。内因性経路の一部として、補体因子BはCa2+、リン脂質、および第VIIIa因子e5の存在下で凝固因子Xの蛋白分解による活性化を触媒する。
【0119】
(c)角質層キモトリプシン酵素(SCCE)。ヒト角質層からの皮膚細胞の剥離に関与しているセリンプロテアーゼ(図3、レーン4)。SCCEは表皮のケラチノサイトで発現され、角質化層の接着構造を分解して皮膚表面の連続的な剥脱を可能にする。
【0120】
実施例11
システインプロテアーゼ
システインプロテアーゼ群では、システインに対する重複センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを用いることにより、特徴的なPCR産物が正常な卵巣組織と比較して卵巣癌において過剰発現されていることにより特定された(図4、レーン3〜5)。このPCR産物のクローニングおよび配列決定により、カテプシンL配列が特定された。カテプシンLは、悪性形質転換、増殖因子、および腫瘍プロモーターによって発現および分泌が誘導されるリソソームのシステインプロテアーゼである。多くのヒト腫瘍(卵巣腫瘍を含む)は高レベルのカテプシンLを発現する。カテプシンLシステインプロテアーゼは、ストロメリシンファミリーに属し、強いエラスターゼおよびコラゲナーゼ活性を有する。文献によれば卵巣の粘液性嚢胞腺癌を有する患者の血清中に高レベルで存在することが報告されている。カテプシンLの他の卵巣腫瘍での発現はこれまでに示されていない。
【0121】
実施例12
メタロプロテアーゼ
メタロプロテアーゼ群に対する重複センスプライマーおよびアンチセンスプライマーの使用により、正常な卵巣組織には存在しない特徴的なPCR産物が腫瘍組織中に検出された(図5、レーン2〜5)。この産物をサブクローニングおよび配列決定したところいわゆるPUMP−1(MMP−7)遺伝子と適当な領域において完全な相同性を有することが示された。こうした亜鉛結合性メタロプロテアーゼは、シグナル配列を有するプロ酵素として発現し、ゼラチンおよびコラゲナーゼ分解活性を有する。PUMP−1は正常な大腸組織と比較して10例の結腸直腸癌のうち9例において誘導、過剰発現が示され、こうした疾患の進行におけるこの基質の一定の役割を示すものである。
【0122】
実施例13
ヘプシンの発現
8検体の正常組織、11検体の低悪性度腫瘍、14検体の癌(粘液性および漿液性の両方)におけるセリンプロテアーゼヘプシン遺伝子の発現をヘプシン特異的プライマー(表2参照)を用いた定量的PCRによって求めた(β−チューブリンメッセージに対するプライマーを内部スタンダードとして用いた)(表5)。これらのデータは、低悪性度腫瘍および顕性癌の双方を含む卵巣癌におけるヘプシン表面プロテアーゼ遺伝子の過剰発現を示すものである。ヘプシンの発現は低悪性度腫瘍における正常レベルを上回り、この群の高ステージ腫瘍(ステージIII)では、低ステージ腫瘍(ステージI)と比較してヘプシンの高い発現が見られる(表6)。顕性癌では、漿液性腫瘍においてヘプシンの発現レベルが最も高かったのに対し、粘液性腫瘍のヘプシン発現レベルは高ステージの低悪性度群と同等である(図6および7)。
【0123】
【表5-1】
Figure 2003523524
【0124】
【表5-2】
Figure 2003523524
【表6】
Figure 2003523524
実施例14
SCCEおよびPUMP−1の発現
SCCE−特異的プライマー(図8)とPUMP−特異的プライマー(図9)の両者を用いた実験によって卵巣癌においてこれらのプロテアーゼが過剰発現されていることが示された。
【0125】
実施例15
本明細書中で検出される既知のプロテアーゼの概要
本明細書中で述べるプロテアーゼの多くは、センス−His/アンチセンス−Serのプライマーの組から特定され、500bpのPCR産物として得られる(図1、レーン4)。これらの酵素の一部はよく知られたものであり、その簡単な概要を下記に述べる。
【0126】
ヘプシン
ヘプシンは肝癌からクローニングされたトリプシン様セリンプロテアーゼである。ヘプシンは細胞外プロテアーゼ(分泌シグナル配列を有する酵素)であり、そのアミノ末端ドメインによって細胞膜に固定されていることによって、触媒ドメインが細胞外マトリクスに曝されている。ヘプシンはまた、乳癌細胞系および末梢神経細胞において発現されることが示されている。これまでヘプシンと卵巣癌の関連は示されていなかった。ヘプシン遺伝子に対する特定のプライマーが合成され、胎児組織および卵巣組織(正常組織および卵巣癌)のノーザンブロットを用いてヘプシンの発現が調べられた。
【0127】
図10Aは、ヘプシンは異なる組織型の卵巣癌において発現されるが、正常な卵巣では発現されないことを示したものである。図10Bは、ヘプシンは予想に違わず胎児肝臓および胎児腎臓で発現されたが、胎児脳および肺では発現が低レベルかまったく見られないことを示したものである。図10Cは、正常な成人組織ではヘプシンの過剰発現は見られないことを示したものである。成人前立腺では、バックグラウンドよりも若干高い発現が見られる。両ノーザンブロットで特定されたmRNAはヘプシンの転写産物として妥当なサイズであった。定量的PCRアッセイにおいてβ−チューブリンおよびヘプシンに対する特異的プライマーを用いて、ヘプシンの発現を10検体の卵巣と44検体の卵巣腫瘍について調べたところ、35サイクルにわたって線形であった。発現量は、内部コントロールとしての32P−β−チューブリンのバンドに対する32P−ヘプシンのバンドの比として示される。
【0128】
正常組織(N)、粘液性(M)、および漿液性(S)の低悪性度(LMP)腫瘍および癌(CA)におけるヘプシンの発現を調べた。図11Aはヘプシンおよび内部コントロールとしてのβ−チューブリンの定量的PCRを示したものである。図11Bは、正常卵巣、LMP腫瘍、および卵巣癌におけるヘプシン:β−チューブリンの発現比を示したものである。ヘプシンmRNAの発現レベルは、正常卵巣における発現レベルと比較して、LMP腫瘍(p<0.005)および癌組織(p<0.0001)において著明に上昇していた。正常卵巣の10例のすべてにおいて、ヘプシンmRNAの発現は比較的低レベルであることが示された。
【0129】
特定の低悪性度腫瘍を含む卵巣癌のほとんどの病理組織学的タイプにおいてヘプシンの顕著な過剰発現が見られた(図11Aおよび11B参照)。最も著明な点として、ヘプシンは試験を行った漿液性、子宮内膜性、および明細胞腫瘍において高レベルの発現が見られた。ヘプシンは一部の粘液性腫瘍で高レベルの発現が見られたが、こうした腫瘍の大半で過剰発現は見られなかった。
【0130】
角質層キモトリプシン酵素(SCCE)
特定されたPCR産物は角質層キモトリプシン酵素のセンス−His/アンチセンス−Serの触媒ドメインであった。この細胞外プロテアーゼをクローニング、配列決定し、更に表皮のケラチノサイト表面で発現していることを示した。角質層キモトリプシン酵素は、皮膚の角質層中の細胞間接着構造の触媒的消化における関与が示唆されているキモトリプシン様セリンプロテアーゼである。この消化によって、皮膚表面からの細胞の連続的な剥脱(落屑)が可能となる。角質層キモトリプシン酵素は、細胞下レベルでは、正常な非掌蹠性皮膚の角質層の上部顆粒層、および、肥厚性蹠角質層の接着部分に局在している。角質層キモトリプシン酵素は、角質層との関連のみが知られており、癌性組織における発現はこれまで示されていなかった。
【0131】
ノーザンブロットをPCR産物でプローブして胎児組織および卵巣癌における角質層キモトリプシン酵素の発現(図12Aおよび12B)を調べた。注目すべき点として、胎児組織のノーザンブロット上では、角質層キモトリプシン酵素のメッセンジャーRNAはほとんど検出されなかった(適宜コントロールを行って、プローブやブロットによる問題の可能性を排除した。)。胎児腎臓では弱いバンドが現れた。これに対し、卵巣癌mRNA中には角質層キモトリプシン酵素のmRNAが大量に存在する(図12B)。角質層キモトリプシン酵素に対しては、適当なサイズの転写産物が2種類見られた。ヘプシンの分析に用いたものと同じcDNAのパネルを角質層キモトリプシン酵素の発現について用いた。
【0132】
ノーザンブロットの正常卵巣のレーンでは、角質層キモトリプシン酵素の発現は検出されなかった。ロードマーカー(β−チューブリン)を含むすべての候補遺伝子の比較により、この観察結果がローディングの偏りによるものではないことが確認された。角質層キモトリプシン酵素のプライマーをβ−チューブリン内部コントロールのプライマーとともに用いた定量的PCRにより、卵巣の癌において角質層キモトリプシン酵素のmRNAが過剰発現され、正常な卵巣組織では発現が見られないことが確認された(図13)。
【0133】
図13Aは、正常卵巣および卵巣癌から得た角質層キモトリプシン酵素のcDNAの定量的PCRを用いた比較を示したものである。図13Bは10検体の正常組織と44検体の卵巣癌組織における、β−チューブリン内部スタンダードに対する角質層キモトリプシン酵素の比を示したものである。ここでもやはり、卵巣癌細胞において角質層キモトリプシン酵素が過剰発現されていることが確認された。また、一部の粘液性腫瘍において角質層キモトリプシン酵素の過剰発現が見られるものの、大半の粘液性腫瘍では発現が見られないことも示された。
【0134】
プロテアーゼM
プロテアーゼMはHis−serのプライマーの組のサブクローンから特定された。このプロテアーゼはAnisowicz等により最初にクローニングされ(Molecular Medicine, 2, 624-636 (1996))、癌組織で過剰発現されていることが示された(図14)。予備評価はこの酵素が卵巣癌において過剰発現されていることを示している(図14)。
【0135】
補因子Iおよび補体因子B
凝固経路に関与している幾つかのセリンプロテアーゼもサブクローニングされている。これらの酵素の発現について正常組織および卵巣癌を定量的PCRによって調べたところ、このmRNAは正常な卵巣組織と比較して卵巣癌における過剰発現が明らかではなかった。各候補プロテアーゼの評価には同じ腫瘍パネルを用いた。
【0136】
実施例16
以前には知られておらず、本発明において検出されたプロテアーゼTADG−12の概要
TADG−12は、プライマーの組としてセンス−His/アンチセンス−Asp(図1、レーン1および2参照)を用いて特定された。レーン2の両方のPCR産物をサブクローニングしたところ、この200bpの産物はGenBankには登録されていない特徴的なプロテアーゼ様配列を有していた。この200bpの産物は、セリンタンパク質ファミリーのHis−Aspドメインに共通して保存されたアミノ酸を多く有する。第2番目の、より大きなPCR産物(300bp)はTADG−12(His−Asp配列)と高い相同性を有するが、約100個程度の固有配列も有する。特定のプライマーを合成し、3つの異なる腫瘍からのPCR産物を配列決定することによって、より大きなPCR産物(卵巣癌の約50%に存在)は配列の5’末端(かつヒスチジンの付近)近くに約100bpのインサートを有することが示された。このインサートは、スプライシング部位が妥当な位置にあること、およびインサートがオープンリーディングフレームを含まないことから、維持されたゲノムイントロンである可能性がある(図15)。このことは、イントロンの維持、またはTADG−12遺伝子内への特定配列の転座をすべての卵巣癌の半数においてもたらすスプライシング部位変異の可能性を示唆するものである。
【0137】
TADG−13およびTADG−14
正常組織および卵巣癌組織における遺伝子の発現を評価するためにTADG−13およびTADG−14について特異的なプライマーを合成した。卵巣組織のノーザンブロット分析により、TADG−14遺伝子の転写産物は約1.4kbの大きさであり、卵巣癌組織で発現され(図16A)、正常組織では転写産物は検出されないことが示された。特定のプライマーを用いた定量的PCR分析により、正常な卵巣と比較して、卵巣癌組織中でTADG−14の発現が増大していることが示された(図16B)。更に、HeLaライブラリーおよび卵巣癌ライブラリーの両方においてTADG−14に対して特異的なPCR産物が存在することも確認された。HeLaライブラリーからTADG−14に対する複数の候補配列がスクリーニング、単離された。
【0138】
配列の相同性から明らかであるが、これらの遺伝子はセリンプロテアーゼファミリーに分類されるものである。しかしながら、TADG−13および−14は、本発明の特定のプライマーによって正常および腫瘍細胞中での評価が可能な、これらの遺伝子の発現の有無が特定の腫瘍タイプに対する診断または治療法の選択において有用であるような遺伝子としては、これまでに記載がないものである。
【0139】
PUMP−1
金属結合ドメインおよび保存されたヒスチジンドメインに対する重複プライマーを用いた同様の方法において、マトリクスメタロプロテアーゼ7(MMP−7)に類似した発現レベルの異なるPCR産物が特定された。これをPUMP−1と称する。PUMP−1に対して特異的なプライマーを用いたPCRにより得られた250bpのPCR産物にノーザンブロット分析を行った。
【0140】
PUMP−1は胎児胚と腎臓組織において発現レベルが異なる。図17Aはヒト胎児組織におけるPUMP−1の発現を示したものであるが、胎児脳および胎児肝臓のいずれにおいても転写産物は検出されなかった。図17Bはノーザンブロット分析を用いて正常卵巣および卵巣癌のサブタイプにおけるPUMP−1の発現を比較したものである。PUMP−1は卵巣癌組織においては発現が見られるが、正常組織では転写産物の存在はやはり確認されなかった。正常卵巣および卵巣癌におけるPUMP−1のmRNAの発現を比較した定量的PCRにより、この遺伝子は、多くの低悪性度漿液性腫瘍を含む漿液性癌において高レベルで発現され、ここでも粘液性腫瘍では比較的に発現レベルが低いことが示された(図18Aおよび18B)。しかしながらPUMP−1はこれまでのところ粘液性腫瘍において過剰発現が最も頻繁に見られるプロテアーゼである(表7)。
【0141】
カテプシン−L
個々のシステインおよびヒスチジン残基の周囲の保存ドメインに対する重複システインプロテアーゼプライマーを用い、カテプシン−Lプロテアーゼを複数の漿液性癌において特定した。正常卵巣組織および卵巣腫瘍組織におけるカテプシンLの発現の最初の分析によって、正常組織および腫瘍組織の両方にカテプシン−Lプロテアーゼが存在することが示された(図19)。しかしながら、カテプシンLの有無を本発明の他のプロテアーゼと組み合わせることにより、特定の腫瘍タイプの同定や治療法の選択を行うことが可能である。
【0142】
考察
セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびシステインプロテアーゼの保存ドメインに対する重複プライマーによって、卵巣癌でmRNAが過剰発現される遺伝子のセットが得られた。著明な過剰発現が見られた遺伝子としては、セリンプロテアーゼヘプシン、角質層キモトリプシン酵素、プロテアーゼM TADG12、14およびメタロプロテアーゼPUMP−1がある(図19および表7参照)。図14にまとめた正常卵巣組織および卵巣癌組織のノーザンブロット分析により、ヘプシン、角質層キモトリプシン酵素、PUMP−1、およびTADG−14の過剰発現が示された。ローディングレベルのコントロールとしてのβ−チューブリンプローブも示してある。
【0143】
【表7】
Figure 2003523524
これらのタンパク質は卵巣癌細胞の細胞外マトリクスとの関連が以前には示されていなかったものが大部分である。転移性癌の増殖、剥脱、浸潤、およびコロニー形成に寄与すると考えられるプロテアーゼのパネルとしては、本明細書に開示される3つの新規な候補セリンプロテアーゼを含め、これまでに記述されたものはない。悪性増殖または悪性度に関連した細胞外プロテアーゼのパネルを構築することにより、診断または予備徴候マーカーの特定、およびこれらのプロテアーゼの阻害またはダウンレギュレーションによる治療的介在の可能性が拓けるものである。
【0144】
腫瘍に特異的なプロテアーゼの適当な領域をコードした遺伝子特異的プライマーが利用可能であることにより、ノーザンおよびサザン分析法を用いた特異的cDNAプローブの増幅が可能となり、これをマーカーとして用いて組織における癌の存在を検出することが可能となる。こうしたプローブにより更に、正常卵巣および低悪性度腫瘍ならびに高ステージおよび低ステージの癌における遺伝子の発現のより詳細な評価が可能となる。癌のすべてのサブタイプ(表4)から得た新鮮な凍結組織のパネルを評価することによって、あるプロテアーゼが疾患の初期ステージで主に発現するのか、または特定の癌のサブタイプにおいて発現するのかを判定することが可能となった。更に、各遺伝子の発現が腫瘍の進行の特定のステージに限定されているのか、および/または転移性病変に伴って起きるのかを判定することが可能となった。プロテアーゼの特定の組合わせの検出は、特定の腫瘍タイプの識別特性となるものであり、診断および治療法の選択のための重要な情報を与えるものである。特定の腫瘍に特徴的な発現パターンによって特定の腫瘍タイプをより正確に診断することが可能となる。
【0145】
実施例17
ペプチドランキング
ワクチンまたは免疫刺激の目的で、ヘプシンタンパク質の9量体〜11量体を調べ、人口集団で上位8位までのハプロタイプ(Parker et al., (1994))に対する個々のペプチドの結合性をランク付けした。この分析に用いたコンピュータープログラムは<http://www-bimas.dcrt.nig.gov/molbio/hla_bind/>で見ることができる。表8は、特定のHLAアレルに対する各ペプチドの結合の予測される半減期に基づいたペプチドのランキングを示したものである。長い半減期は、そのペプチドと特定のHLA分子との強い結合を示す。HLAアレルに強く結合するヘプシンペプチドは潜在的な免疫原であり、ヘプシンに対する患者への接種に使用される。
【0146】
【表8-1】
Figure 2003523524
【0147】
【表8-2】
Figure 2003523524
【0148】
【表8-3】
Figure 2003523524
【0149】
【表8-4】
Figure 2003523524
【0150】
【表8-5】
Figure 2003523524
【0151】
【表8-6】
Figure 2003523524
【0152】
【表8-7】
Figure 2003523524
本明細書中で触れた特許または刊行物は本発明が係る技術分野における当業者の水準を示すものである。更にこれらの特許および刊行物は、恰も個々の刊行物が詳細かつ個別に援用されたのと同様にここに援用されるものである。
【0153】
本発明は、明細書に記載された目的、結果、および利点はもとより、発明に内在する目的、結果および利点の実現に優れて適合している点は当業者によれば直ちに了承されよう。明細書中に述べられる実施例、方法、手技、処置、分子、および特定の化合物は、好ましい実施形態を現時点で代表するものであり、あくまで例示的なものであって、発明の範囲を何ら限定するものではない。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される発明の精神の範囲内において発明の変更や他の用途が想到されることであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、正常および癌のcDNA由来のPCR産物のアガロースゲルの比較を示す
【図2】
図2は、ヘプシン、SCCE、PUMP-1、TADG-14、およびβ−チューブリンプローブを用いた卵巣腫瘍のノーザンブロット分析を示す
【図3】
図3は、セリンプロテアーゼ重複プライマーでの増幅を示す
【図4】
図4は、システインプロテアーゼ重複プライマーでの増幅を示す
【図5】
図5は、メタロプロテアーゼ重複プライマーでの増幅を示す
【図6】
図6は、セリンプロテアーゼであるヘプシンに特異的なプライマーでの増幅を示す
【図7】
図7は、正常、低悪性潜在的腫瘍、および卵巣癌でのヘプシン発現レベルを示す
【図8】
図8は、正常、低悪性潜在的腫瘍、および卵巣癌でのセリンプロテアーゼ角質層キモトリプシン酵素(SCCE)発現レベルを示す
【図9】
図9は、正常組織および卵巣癌組織でのメタロプロテアーゼPUMP−1(MMP−7)遺伝子の発現を示す
【図10】
図10は、ヘプシン発現のノーザンブロット分析を示す
【図11A】
図11Aは、正常(N)、粘液性(M)および漿液性(S)低悪性潜在的(LMP)腫瘍、ならびに癌(CA)におけるヘプシン発現を示す
【図11B】
図11Bは、正常卵巣、LMP腫瘍、および卵巣癌におけるヘプシン:β−チューブリン発現の比を示す
【図12A】
図12Aは、胎児組織におけるSCCE遺伝子のmRNA発現のノーザンブロット分析を示す
【図12B】
図12Bは、卵巣組織におけるSCCE遺伝子のmRNA発現のノーザンブロット分析を示す
【図13A】
図13Aは、正常卵巣および卵巣癌からのSCCE cDNAの定量的PCRの比較を示す
【図13B】
図13Bは、10の正常組織および44の卵巣癌組織における、β−チューブリンに対するSCCEの比を比較する棒グラフを示す
【図14】
図14は、正常および卵巣癌におけるプロテアーゼMのmRNA発現の定量的PCRによる比較を示す
【図15】
図15は、His 5’末端近くに挿入物を含むTADG−12触媒ドメインを示す
【図16A】
図16Aは、正常組織および卵巣癌組織におけるTADG−14発現を比較するノーザンブロット分析を示す
【図16B】
図16Bは、TADG−14特異的プライマーを用いた、正常および癌のcDNAの予備定量的PCRを示す
【図17A】
図17Aは、ヒト胎児組織におけるPUMP−1遺伝子のノーザンブロット分析を示す
【図17B】
図17Bは、正常卵巣および卵巣癌におけるPUMP−1遺伝子のノーザンブロット分析を示す
【図18A】
図18Aは、内部対照β−チューブリンを用いた定量的PCRによって、正常組織および癌組織におけるPUMP−1発現を比較したものを示す
【図18B】
図18Bは、10の正常および44の卵巣癌における、内部対照β−チューブリンに対するPUMP−1のmRNA発現の比を示す
【図19】
図19は、ヘプシン、SCCE、プロテアーゼM、PUMP−1、およびカテプシンLの遺伝子のPCR増幅産物の比較を示す

Claims (39)

  1. 癌を検査する方法であって:
    個体から採取した生物試料中のヘプシンを検出する工程を含み、前記試料中にヘプシンが存在すれば前記個体に癌が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンが存在しなければ前記個体に癌が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
  2. 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 前記ヘプシンの検出が、ノーザンブロット、ウェスタンブロット、PCR、ドットブロット、ELISAサンドイッチ法、ラジオイムノアッセイ、DNAアレイチップ、またはフローサイトメトリーより成る群から選択される手段によってなされることを特徴とする請求項1記載の方法。
  4. 前記癌が、卵巣癌、乳癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌より成る群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  5. 生体試料中の悪性増殖を検出する方法であって:
    (a)前記試料からmRNAを単離する工程;および
    (b)前記試料中のヘプシンmRNAを検出する工程;を含み、
    前記試料中にヘプシンmRNAが存在すれば悪性増殖が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンmRNAが存在しなければ悪性増殖が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
  6. ヘプシンmRNAを参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の診断が行われることを特徴とする請求項5記載の方法。
  7. ヘプシンmRNAを参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の治療法が決定されることを特徴とする請求項5記載の方法。
  8. 前記ヘプシンmRNAの検出が、PCR増殖によってなされることを特徴とする請求項5記載の方法。
  9. 前記PCR増殖が、配列番号8および9の配列より成る群から選択されるプライマーを使用することを特徴とする請求項8記載の方法。
  10. 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項5記載の方法。
  11. 生体試料中の悪性増殖を検出する方法であって:
    (a)前記試料からタンパク質を単離する工程;および
    (b)前記試料中のヘプシンタンパク質を検出する工程;を含み、
    前記試料中にヘプシンタンパク質が存在すれば悪性増殖が存在することが示唆され、前記試料中にヘプシンタンパク質が存在しなければ悪性増殖が存在しないことが示唆されることを特徴とする方法。
  12. ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の診断が行われることを特徴とする請求項11記載の方法。
  13. ヘプシンタンパク質を参照情報と比較する工程を更に含み、該比較によって悪性増殖の治療法が決定されることを特徴とする請求項11記載の方法。
  14. 前記ヘプシンタンパク質の検出が、ヘプシンに特異的な抗体に対するイムノアフィニティーによってなされることを特徴とする請求項11記載の方法。
  15. 前記生物試料が、血液、尿、唾液、涙液、間質液、腹水、腫瘍生検組織、および循環腫瘍細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
  16. 細胞における内因性ヘプシンの発現を阻害する方法であって、
    発現に必要なエレメントに作動可能に結合した逆方向のヘプシン遺伝子を含むベクターを細胞に導入する工程を含み、前記細胞での前記ベクターの発現によってヘプシンアンチセンスmRNAが産生され、該ヘプシンアンチセンスmRNAが内因性ヘプシンmRNAにハイブリダイズして、前記細胞における内因性ヘプシンの発現が阻害されることを特徴とする方法。
  17. 細胞においてヘプシンタンパク質を阻害する方法であって、
    ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに対して特異的な抗体を細胞に導入する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質に対する抗体が該ヘプシンタンパク質を阻害することを特徴とする方法。
  18. 個体(ヒトを除く)の標的治療の方法であって、ヘプシンに対して特異的なターゲティング部分と薬効部分とを有する化合物を前記個体に投与する工程を含むことを特徴とする方法
  19. 前記ターゲティング部分が、ヘプシンに対して特異的な抗体、ヘプシンに結合するリガンドまたはリガンド結合ドメインであることを特徴とする請求項18記載の方法。
  20. 前記薬効部分が、放射性同位体、毒素、化学療法薬、免疫増強薬、および細胞傷害性物質より成る群から選択されることを特徴とする請求項18記載の方法。
  21. 前記個体が、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌に罹患していることを特徴とする請求項18記載の方法。
  22. 個体(ヒトを除く)にヘプシンに対するワクチン接種を行う方法であって、
    ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントを前記個体に接種する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質またはそのフラグメントの接種によって個体に免疫応答が誘導されて、個体にヘプシンに対するワクチン接種が行われることを特徴とする方法。
  23. 前記個体が、癌を有し、癌を有する疑いがあり、または癌を発症するリスクがあることを特徴とする請求項22記載の方法。
  24. 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項22記載の方法。
  25. 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項24記載の方法。
  26. ヘプシンに対する免疫活性化細胞を作成する方法であって、
    ヘプシンプロテアーゼ活性を欠くヘプシンタンパク質またはそのフラグメントに樹状細胞を曝露する工程を含み、前記ヘプシンタンパク質またはその断片への曝露によって樹状細胞が活性化されて、ヘプシンに対する免疫活性化細胞が産生されることを特徴とする方法。
  27. 前記免疫活性化細胞が、B−細胞、T−細胞、および樹状細胞より成る群から選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
  28. 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項26記載の方法。
  29. 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項28記載の方法。
  30. 前記樹状細胞が、曝露に先立って個体から単離され、曝露後に前記個体に再導入されるものであることを特徴とする請求項26記載の方法。
  31. 前記個体が、癌を有し、癌を有する疑いがあり、または癌を発症するリスクがあることを特徴とする請求項30記載の方法。
  32. ヘプシンタンパク質の免疫原性フラグメントおよび適当なアジュバントを含む免疫原組成物。
  33. 前記ヘプシンフラグメントが、9残基から20残基までのフラグメントより成る群から選択されることを特徴とする請求項32記載の免疫組成物。
  34. 前記9残基のフラグメントが、配列番号28、29、30、31、88、89、108、109、128、129、148、149、150、151、152、153および154で表される配列より成る群から選択されることを特徴とする請求項33記載の免疫組成物。
  35. 配列番号188の配列に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド。
  36. 請求項35記載のオリゴヌクレオチドおよび生理学的に許容される担体を含む組成物。
  37. 個体(ヒトを除く)の腫瘍状態を治療する方法であって、
    前記個体に請求項35記載のオリゴヌクレオチドの有効量を投与する工程を含むことを特徴とする方法。
  38. 前記個体が、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、大腸癌、およびヘプシンを過剰発現している他の癌より成る群から選択されることを特徴とする請求項37記載の方法。
  39. ヘプシン活性を阻害する化合物をスクリーニングする方法であって:
    (a)ヘプシンタンパク質を含む試料を特定の化合物と接触させる工程;および
    (b)ヘプシンプロテアーゼ活性についてアッセイを行う工程;を含み、
    前記化合物の存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性が、該化合物の非存在下におけるヘプシンプロテアーゼ活性と比較して低下している場合、該化合物がヘプシン活性を阻害する化合物であることが示唆されることを特徴とする方法。
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