JP2003518917A - 糖尿病の処置に有用なインシュリン様活性を有する新規タンパク質 - Google Patents

糖尿病の処置に有用なインシュリン様活性を有する新規タンパク質

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、新規インシュリン活性(IA)タンパク質および核酸に関する。さらに本発明は、I型糖尿病およびII型糖尿病のようなインシュリン関連の諸異常の処置におけるIAタンパク質の使用に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 この出願は、1999年5月19日付U.S.S.N.60/134,930の継
続出願である。
【0002】 (発明の分野) 本発明は、新規インシュリン活性(IA)タンパク質および核酸に関する。さら
に本発明は、I型糖尿病およびII型糖尿病のようなインシュリン関連の諸異常
の処置におけるIAタンパク質の使用に関する。
【0003】 (発明の背景) インシュリンは脊椎動物の成長及び代謝の調節において主要な役割を果たすホ
ルモンである。インシュリンの欠乏は糖尿病性の病状における最重要要因である
。インシュリンの欠如は、正常な速度での炭水化物、脂肪及びタンパク質の正常
な代謝が行われないことに起因する深刻な代謝異常につながる。これらの諸異常
は、例えば複合的な慢性代謝異常である真性糖尿病(DM)を含む。真性糖尿病は
、臨床上の症状に基づいて広く二群に特徴づけられる。すなわち、II型として
も知られるインシュリン非依存性糖尿病(NIDDM)または成人期発症型糖尿病
、および、I型としても知られるインシュリン依存性糖尿病(IDDM)または若
年発症型糖尿病である。総人口中、真性糖尿病は約1%の罹患率で生じ、これら
の4分の1がI型である。そのうち全症状を発症した臨床型では、真性糖尿病は
それ自体、ついには糖尿、ケトン尿、成長停止、および負の窒素バランスのよう
な、深刻で長期的かつ衰弱させる諸合併症を招く、一連のホルモン誘導型の代謝
異常として顕れる。これらの病状は最終的には死を招き得る。家族性高プロイン
シュリン血症は、血清中のプロインシュリン様分子の著しい増加に特徴づけられ
る遺伝的異常である。この病気の原因は、インシュリンを形成するプロテアーゼ
の1アミノ酸の置換であり、その結果として生じるプロインシュリンの不完全な
開裂である。
【0004】 I型糖尿病は、例えば患者が膵臓腺中でインシュリンを生産するベータ細胞を
欠くとき、または生産されたインシュリンが変異のために不活性であるとき、発
症する。II型の糖尿病は、ベータ細胞の機能が悪化した患者に起こる。I型の
患者は現在インシュリンで処置され、一方、II型糖尿病患者の大多数は、ベー
タ細胞の機能を刺激するスルホニル尿素、または患者の組織のインシュリンに対
する感応性を強める薬物(例えばメトフォルミン)、またはインシュリンで処置
される。
【0005】 今日、糖尿病患者へのインシュリン投与は、この疾病を制御するための主たる
治療手段である。真性糖尿病の治療においては、多種類のインシュリン製剤が示
唆され使われてきた。即効性の製剤もあるが、多少とも作用時間を延長させた製
剤もある。そのような長時間作用性は、亜鉛存在下でのインシュリンの結晶化(
例えばLENTE; Novo Terapeutisk Laboratorium)により、または亜鉛およびプロ
タミン存在下でのインシュリンの結晶化(例えばNPH-insulin)により得られるイ
ンシュリン結晶の懸濁液としてインシュリンを投与することにより、得られ得る
【0006】 6000ダルトンのタンパク質であるヒトインシュリン単量体は、2本の鎖、
すなわち21アミノ酸のA鎖と30アミノ酸のB鎖から構成されている。インシ
ュリンは、ランゲルハンス島内にある膵臓のベータ細胞中で前駆体として合成さ
れ、それは翻訳後に成熟した2本のポリペプチド鎖の活性型ホルモンに加工され
る。生物学的に活性なヒトインシュリンでは、A鎖およびB鎖が2つのシステイ
ン架橋を介して互いに連結し、A鎖の中でさらに1つのシステイン架橋が生じる
。以下のシステイン残基がヒトインシュリンでは互いに連結している:A6−A
11、A7−B7、およびA20−B19(AおよびBの文字はアミノ酸鎖を表
し、数字はそれぞれの鎖のアミノ末端からカルボキシル末端へ数えたシステイン
残基の位置を表す。図1参照)。
【0007】 様々な種のインシュリン、およびいくつかのインシュリン類似体または変異体
の機能解析に基づき、アミノ酸配列に関していくつかの関連特性が明らかになっ
てきた(図1参照)。すなわち、生物学的に活性なインシュリンには3つのジスル
フィド結合がある;B1−Pheは既知の哺乳類インシュリンのすべてに存在す
る;A1−Gly;末端のトリペプチド配列(A19−21)Tyr−Cys−A
sn(A21−Asnをカルボキシペプチダーゼで除くと、活性の>90%を喪
失する);B24−26の不変配列、Phe−Phe−Tyr;B12−Val
は高度に保存されている;A2−A3,Ile−Valは高度に保存されている
;効力の高いインシュリンではB5−HisおよびB22−Argは不変である
;表面の残基A1−Gly、A4−Glu、A5−Gln、A7−Cys、A1
9−Tyr、A21−Asn、およびB7−Cysは不変である(高度に保存さ
れている)。
【0008】 この目的のため、インシュリン配列の変異体、応用、生産法および力価検定が
知られている。例えば、米国特許第4,421,685号(インシュリンの生産法の報告)
;第4,992,417号(高活性のインシュリン類似体の報告);第5,008,241号(酸性pH
レベルでのインシュリン溶液の安定性の改善をもたらす、A鎖中のN21のアミ
ノ酸残基置換の特徴を有するインシュリン類似体の報告);第5,506,202号(様々
なアミノ酸置換を含むインシュリン類似体の製造および使用の報告);第5,514,6
46号(B鎖の29番目の位置で修飾され、変更された物理化学および薬物動態学的
性質を有し、高血糖の治療に有効である、ヒトインシュリンの類似体の報告);
第5,559,094号(B鎖の1番目にアスパラギン酸を有するヒトインシュリン類似体
の報告)および第5,618,913号(アミノ酸残基置換を有し、二量体、四量体、六量
体および多量体への自己会合の傾向が少ない、即効性ヒトインシュリン類似体の
報告);第5,621,073号(インシュリンまたはA9の位置でアセチル化されたイン
シュリンの精製法の報告);第5,663,291号(対応するプロインシュリンから、正
しく連結されたシステイン架橋を有するインシュリンを得る方法の報告);第5,7
00,662号(B鎖の29番目の位置の修飾を含むインシュリン類似体を調整する方
法の報告);第6,034,054号(凝集に対して安定化された単量体インシュリン類似
体製剤の報告);以上すべては出典明示により本明細書の一部とする。さらにMar
kiら、[Hoppe Seylers Z. Phsiol. Chem. 360 (11): 1619-32 (1979)]; Huら、[
Biochemistry 32 (10): 2631-5 (1993)]; Schwartzら、[Proc. Natl. Acad. Sci
. U. S. A. 84 (18): 6408-11 (1987)]; Kitagawaら、[Biochemistry 23 (7): 1
405-13 (1984)]; Kobayashiら、[Biochem. Biophys. Res. Commun. 107 (1): 32
9-36 (1982)]; Shoelsonら、[Biochemistry 31 (6): 1757-67 (1992)]、以上す
べて、およびそれらの中の参照文献は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0009】 溶液中のヒトインシュリンは、単量体、二量体、四量体および六量体のような
、多くの分子形で存在し[Blundell ら、in Advances in Protein Chemistry, Ac
ademic Press, New York and London, Vol. 26, pp279-330 (1972)]、高インシ
ュリン濃度下では多量体が有利であり、単量体はインシュリンの活性型であるこ
とが知られている。血流中のインシュリンは高度に希釈されており、10−11 から10−8Mであり、主に単量体型である。さらにより濃縮されたインシュリ
ンが膵臓のベータ細胞中に蓄えられており、通常の投与し得る溶液は、よく知ら
れている二亜鉛六量体としての、非活性の六量体型が主である(後述)。吸収遅延
現象[Binder, Diabetes Care 7 (2): 188-99 (1984)]は、インシュリンの六量体
、四量体および二量体から単量体への解離に要する時間に大方において起因し得
る。
【0010】 亜鉛(Zn)の存在下では、天然のヒトインシュリンは会合して、アロステリック
タンパク質として機能する二亜鉛六量体になる。フェノール性のリガンドまたは
ある種の塩は、Q−ヘリックスへの伸長構造から変換する構造変化を誘導しB鎖
のN末端の8アミノ酸を生じ得る。フェノール性のリガンドにより誘導されるこ
の構造状態はR状態と称され、アポインシュリン型はT状態と称される。R状態
はT状態に比べてよりコンパクトであり、柔軟性に乏しく、亜鉛交換が遅い[Der
ewendaら、Nature 338 (6216): 594-596 (1989)]。安定な中間状態であるT は、1つの三量体がT状態にあり、もう一方はR状態にあるものとして同定さ
れた[Chothiaら、Nature 302 (5908): 500-505 (1983)]。このT状態は、
塩(例えば塩化物)により、または限られた量のフェノール類により誘導される四
亜鉛インシュリン構造として公式に知られた[Krugerら、Biol. Chem. Hoppe-Sey
ler 371 (8): 669-673 (1990)]。
【0011】 インシュリン六量体の別のアロステリック状態は、エックス線結晶学によって
結晶状態でもっとも良く特徴付けられてきた[Bentleyら、Nature 261 (5556): 1
66-168 (1976); Smith & Dodson, Biopolymers 32 (4): 441-445 (1992)]。溶液
中でプロトン核磁気共鳴分析法、円偏光二色性によって [Renscheidtら、Eur. J
. Biochem. 142 (1): 7-14 (1984)]、およびCo2+置換型インシュリンの可視吸収
分光法によって[Braderら、Biochemistry 30 (27): 6636-6645 (1991)]。インシ
ュリンのアロステリック性の生物学的重要性は、完全には明らかになっていない
。循環血液中のインシュリンの希釈された濃度から、生物学的に活性型のインシ
ュリンは単量体と考えられる[Frankら、Diabetes 21 (2): Suppl. 2: 486-491 (
1972)]。インシュリンの立体構造におけるレセプター介在型構造変化は、結合に
必要であると考えられる[Huaら、Nature 354 (6350): 238-41 (1991); Bao ら、
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94 (7): 2975-80 (1997)参照]。インシュリ
ンの医薬的使用には、TからRへの構造変化は重要な意義がある。ほとんどのイ
ンシュリン製剤は、細菌汚染に対する防腐剤として機能するフェノール類を含有
する溶液または懸濁液である。インシュリン製剤中のフェノール類の濃度は、R
構造を誘導するのに必要な濃度の2−10倍である(Krugerら、前出)。インシュ
リン製剤中のフェノール類の存在は、貯蔵安定性について[Brangeら、Pharm. Re
s. 9 (6): 715-726 (1992); Brangeら、Pharm. Res. 9 (6): 727-734 (1992); B
range & Langkjaer, Acta Pharm. Nord., 4 (3): 149-158 (1992)]、またおそら
く時間的作用特性についても重要な意義をもつ。インシュリン製剤の分解を最小
限にすることは、インシュリン療法の望ましくない副作用を減らす上で非常に重
要である。
【0012】 様々な組換えインシュリン分子の結晶構造が解明されている。その構造はProt
ein Data Bank (PDB)への登録としてResearch Collaboratory for Structural B
ioinformaticsから入手し得る。インシュリン登録は、野生型インシュリン(例え
ば、PDB登録1ZEH, 1ZNJ, 1ZNI, 1XDA, 4INSおよび9INS参照)、インシュリン類似
体または変異体(例えば、PDB登録1IOH, 1IOG, 1B9E, 1BZY, 1ZEI, 1A7F, 1HUI,
1LPH,および1IZA)、R6(野生型または類似体)インシュリン六量体(例えば、PDB登
録5AIY, 4AIY, 3AIY, 2AIY, 1AIY, 1AI0, 1QIZ, 1QJ0および1QiY)、フェノール
と複合体化したインシュリン(例えば、PDB登録1ZEG)、4−ヒドロキシベンザミ
ドと複合体化したインシュリン(例えば、PDB登録1BEN)、亜鉛イオンと複合体化
したインシュリン(野生型または類似体)(例えば、PDB登録1TYM, 1TYL, 7INS, 1T
RZおよび1IZB)、および他の変異体(例えば、PDB登録1MPJ, 2TCI, 3MTH, 6INSお
よび 2INS) および様々なpHの溶液中のインシュリン(例えば、PDB登録1DPH, 1CP
H, 1BPHおよび1APH)を含み、これらのすべてを出典明示により本明細書の一部と
する。
【0013】 タンパク質の特性を変更するためにタンパク質加工を行うとき、通常、以下の
選択肢、すなわち、(i)部位特異的変異導入および(ii)該タンパク質をコードす
る核酸の無作為変異導入、または(iii)翻訳後の化学的修飾、を選ばねばならな
い。どのタンパク質加工法が用いられるかにかかわらず、重要な局面はどのアミ
ノ酸を変更するかの決定である。なぜならタンパク質の性質を改良する選択はご
く稀少であろうからだ。コンピューターによるタンパク質設計を使用し、および
さらに安定なタンパク質または活性が改変されたタンパク質変異体を生成させる
ことにより、インシュリンの入手可能な結晶構造はまったく別のアプローチを可
能にする。幾つかのグループが、一般的設計アルゴリズムの開発という目標でタ
ンパク質設計に体系的定量的方法を適用し、実験的に試験された(Hellingaら、J
. Mol. Biol. 222: 763-785 (1991); Hurleyら、J. Mol. Biol. 224: 1143-1154
(1992); Desjarlaislら、Protein Science 4: 2006-2018 (1995); Harburyら、
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 92: 8408-8412 (1995); Klembaら、Nat. Str
uc. Biol. 2: 368-373 (1995); Nautiyalら、Biochemistry 34: 11645-11651 (1
995); Betzoら、Biochemistry 35: 6955-6962 (1996); Dahiyatら、Protein Sci
ence 5: 895-903 (1996); Dahiyatら、Science 278: 82-87 (1997); Dahiyatら
、J. Mol. Biol. 273: 789-96; Dahiyatら、Protein Sci. 6: 1333-1337 (1997)
; Jones, Protein Science 3: 567-574 (1994); Konoiら、Proteins: Structure
, Function and Genetics 19: 244-255 (1994))。これらのアルゴリズムでは、
考慮中の配列の原子を明確にモデル化することにより側鎖の空間的配置および立
体相補性が考慮される。特に、WO98/47089およびU.S.S.N.09/
127926は、タンパク質設計用システムについて記載しており、両方とも出
典明示により本明細書の一部とする。
【0014】 顕著な安定性およびインシュリン活性の両方を呈するタンパク質に対する要望
が依然として存在する。従って、インシュリン関連異常の処置用のインシュリン
活性(IA)タンパク質、核酸および抗体を提供することが本発明の目的である。
【0015】 (発明の要約) 上記概説目的に従い、本発明は、ヒトインシュリンとの同一性が約98%以下
であるアミノ酸配列を含む非天然産生のインシュリン活性(IA)タンパク質(例
えば、これらのタンパク質は天然には見出されないものである)を提供する。こ
れらのIAタンパク質は、インシュリンタンパク質の少なくとも一つの改変され
た生物学的特性を有する。例えば、これらのIAタンパク質は、インシュリンよ
り安定であり、かつインシュリンレセプターを含む細胞に結合する。従って、本
発明は、図1Bに示したヒトインシュリン配列と比べて、アミノ酸配列に少なく
とも約1−20のアミノ酸置換があるIAタンパク質を提供する。
【0016】 さらなる態様では、本発明は、実質的にインシュリンの3次元バックボーン構
造に対応する3次元バックボーン構造を有する、非天然産生IAタンパク質配座
異性体(コンフォーマー)を提供する。このIAタンパク質配座異性体のアミノ酸
配列とインシュリンのアミノ酸配列との同一性は、約98%以下である。
【0017】 さらに別の態様では、A2, A3, A5, A6, A7, A11, A15, A16, A19, A20, B2, B
7, B11, B15, B18, B19, B22およびB24位から選択される各位置におけるアミノ
酸残基の変更が選択される。この実施態様の好ましい態様では、この変更は、A7
-S, A7-E, B2-E, B2-T, B4-Y, B7-Y, B4-F, B7-Eおよび B7-Dの群から選択され
る置換である。
【0018】 好ましい一態様では、B5およびB14位から選択された位置におけるアミノ酸残
基の変更が選択される。この実施態様の好ましい態様では、この変更は、B5-F,
B5-W, B14-F, B14-W, B14-Y,およびB14-Iの群から選択される置換である。
【0019】 さらに別の一態態では、A1, A10, A16, A17, A19, B1, B2, B4, B8, B11, B12
, B14, B25, B26, B27およびB28位から選択された位置におけるアミノ酸残基の
変更が選択される。この実施態様の好ましい態様では、この変更は、A1-N, A10-
Q, A16-Y, A17-Y, A19-F, B1-D, B2-K, B4-F, B8-L, B11-I, B12-R, B14-W, B25
-N, B26-F, B27-DおよびB28-Nの群から選択される置換である。
【0020】 さらなる一態様では、本発明は、非天然IAタンパク質をコードする組換え核
酸、組換え核酸を含む発現ベクター、および組換え核酸および発現ベクターを含
む宿主細胞を提供する。
【0021】 さらに別の態様では、本発明は、該核酸の発現に適した条件下で組換え核酸を
含む宿主細胞を培養することを含む、本発明のIAタンパク質の製造方法を提供
する。これらのタンパク質は、所望により回収され得る。さらなる一態様では、
本発明は、本発明のIAタンパク質および医薬用担体を含む医薬組成物を提供す
る。
【0022】 別の一態様では、本発明は、本発明のIAタンパク質を患者に投与することを
含む、インシュリン応答性症状の処置方法を提供する。このインシュリン応答性
症状は、炭水化物代謝異常、I型糖尿病およびII型糖尿病を含む。
【0023】 (図面の簡単な説明)
【0024】 図1Aは、インシュリン前駆体(GenBank受託番号#P01308、#AAA5
9173)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸残基1−24はシグナルペプチドを
表わし;アミノ酸残基25−54は成熟型B鎖を表わし;アミノ酸残基90−1
10は成熟型A鎖を表わす。
【0025】 図1Bは、本明細書中でPDA設計およびアミノ酸位置の参照に使用する、ヒ
トインシュリン[GenBank受託番号#229122;NicolおよびSmith, Nature
187: 483-485 (1960)]のアミノ酸配列を示す。それぞれ、A鎖はアミノ酸残基1
−21(時にはA1からA21までとも称する)からなり、B鎖は残基22−51
(時にはB1からB30までとも称する)からなる。
【0026】 図1Cは、二つの亜鉛イオンを含有するインシュリン複合体(T3R3)[PDB登
録1TRZ; CiszakおよびSmith, Biochemistry 33 (6): 1512-7 (1994)]の構造決定
に使ったヒトインシュリンA鎖(1TRZ:Aおよび1TRZ:C)およびヒトインシュリンB
鎖(1TRZ:Bおよび1TRZ:D)の各アミノ酸配列並びに2次構造成分を示す。2次構造
成分凡例:H、アルファらせん(4−らせん);B、単離ベータ架橋における残基
;T、水素結合ターン;E、伸長鎖、ベータラダーに関与;G、310らせん(
3−らせん);I、piらせん(5−らせん);T、水素結合ターン;S、ベンド。
【0027】 図2Aは野生型インシュリン単量体を示し、ジスルフィド結合の側鎖(A6-A11,
A7-B7およびA20-B19)とB-Ala14側鎖が示されている。
【0028】 図2Bは野生型インシュリン六量体を示す。
【0029】 図2Cはインシュリン六量体中のB14, B5設計領域を拡大して示す。
【0030】 図3はジスルフィド交換を含むPDA設計から、好ましいIAタンパク質の配
列を示す。野生型ヒトインシュリンと比較したときのアミノ酸変化が太字および
下線で示されている。
【0031】 図3Aは、PDA設計'cys1'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0032】 図3Bは、PDA設計'cys77a'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0033】 図3Cは、PDA設計'cys77b'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0034】 図3Dは、PDA設計'cys77d'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0035】 図3Eは、PDA設計'cys77d+'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0036】 図3Fは、PDA設計'helix 24'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す
【0037】 図3Gは、PDA設計'cys-4'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
この設計において、配列中の"‐"は欠損を示す。
【0038】 図4A−4Gはインシュリン六量体形成を促す変異を含むPDA設計からの好まし
いIAタンパク質の配列を示す。野生型ヒトインシュリンと比較したときのアミ
ノ酸変化が太字および下線で示されている。
【0039】 図5は安定性の改良のための全体的な再設計を含むPDA設計からの好ましいI
Aタンパク質の配列を示す。野生型ヒトインシュリンと比較したときのアミノ酸
変化が太字および下線で示されている。
【0040】 図5Aは、PDA設計'trz_06'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0041】 図5Bは、PDA設計'trz_7b'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0042】 図5Cは、PDA設計'trz_08'からの好ましいIAタンパク質の配列を示す。
【0043】 図6は、PCRによる完全長遺伝子および全ての可能な変異体の合成を示す。
完全長遺伝子(黒棒線、段階1)に対応し、かつ1つまたはそれ以上の所望の変
異を含むオーバーラップオリゴヌクレオチド群を合成し、加熱し、アニーリング
する。アニーリングしたオリゴヌクレオチド群にDNAポリメラーゼを付加する
ことにより、DNAの5'から3'方向への合成を行い(段階2)、長くなったD
NAフラグメント群を生成させる(段階3)。加熱、アニーリングおよびDNA
合成の反復サイクル(段階4)により、幾分かの完全長分子を含む長いDNAを
生成させる。これらは、完全長遺伝子の端部に対応するプライマー(矢印で示す
)を用いる第2ラウンドのPCRにより選択され得る(段階5)。
【0044】 図7は、本発明のIAライブラリーの好ましい合成計画を示す。野生型遺伝子
、または任意の出発遺伝子、例えば大局的極小(global minima)遺伝子に関す
る遺伝子を使用し得る。異なる変異位置(図ではボックス1、ボックス2および
ボックス3で示されている)にある異なるアミノ酸をコードする配列を含むオリ
ゴヌクレオチド群をPCR中に使用し得る。それらのプライマーは標準プライマ
ー群と組み合わせて使用し得る。これによると、全般的にオリゴヌクレオチドは
少なくてすみ、エラーも少なくなり得る。
【0045】 図8Aおよび図8Bは、オーバーラップ伸長方法を示す。図8Aの上部には、
変異が導入される領域の位置(黒色ボックス)および関連プライマー(矢印)の
結合部位を示す鋳型DNAが描かれている。プライマーR1およびR2はプライ
マー群のプールを表し、各々異なる変異を含む。ここに記載されている通り、こ
れは所望ならば異なる比率のプライマー群を用いて行い得る。変異位置では、ハ
イブリダイゼーションの達成に充分な相同性を有する領域が両端に隣接する。す
なわち、この例で示されている通り、オリゴR1およびオリゴF2は相同性領域
を含み、オリゴR2およびオリゴF3の場合も同様である。この例では、3つの
別々のPCR反応が段階1について行なわれる。第1反応は、鋳型+オリゴF1
およびオリゴR1を含む。第2反応は、鋳型+オリゴF2およびオリゴR2を含
み、そして第3反応は鋳型およびオリゴF3およびオリゴR3を含む。この反応
の生成を示してある。段階2では、段階1チューブ1および段階1チューブ2か
らの生成物を取得する。プライマーから精製後、これらをF1およびR4と一緒
に新しいPCR反応に加える。PCRの変性段階中、各オーバーラップ領域をア
ニーリングし、第2鎖を合成する。次いで、生成物を外側プライマーF1および
R4により増幅する。段階3では、段階2からの精製産物を、段階1、チューブ
3の生成物およびプライマーF1およびR3と一緒に第3PCR反応で使用する
。最終産物は、完全長遺伝子に対応し、要求された変異を含む。別法として、段
階2および段階3は、一回のPCR反応で遂行され得る。
【0046】 図9Aおよび9Bは、PCR反応産物の連結反応による本発明ライブラリーの
合成を示す。この技術では、プライマーはまたエンドヌクレアーゼ制限部位(R
E)を含み、平滑末端、5'オーバーハング末端または3'オーバーハング末端が
生成される。段階1に関して3つの別々のPCR反応を設定する。第1反応は鋳
型プラスオリゴF1およびR1を含む。第2反応は鋳型プラスオリゴF2および
R2を含み、第3は鋳型およびオリゴF3およびR3を含む。反応産物が示され
ている。段階2において、段階1の生成物を精製し、次いで適当な制限エンドヌ
クレアーゼにより消化する。段階2、チューブ1および段階2、チューブ2から
の消化産物を、DNAリガーゼと一緒に連結させる(段階3)。次いで、オリゴ
F1およびR4を用いて生成物を段階4で増幅する。次いで、増幅産物を消化し
、それらを段階2、チューブ3の消化産物に連結させ、次いでオリゴF1および
R3を用いて最終産物を増幅することにより、全プロセスを反復する。また、2
つの制限部位(RE1およびRE2)が異なった場合には、段階1からの3種の
全PCR産物を一反応で一緒に連結させることも可能である。
【0047】 図10は、PCR産物の平滑末端連結反応を示す。この技術では、例えばF2
およびR1またはR2およびF3といったオリゴは重複しないが、それらは隣接
している。再び3つの別々のPCR反応が遂行される。チューブ1およびチュー
ブ2からの生成物(図20A、段階1参照)を連結させ、次いで外側プライマー
F1およびR4により増幅する。次いで、この生成物を段階1、チューブ3から
の生成物と連結させる。次いで、最終産物をプライマーF1およびR3により増
幅する。
【0048】 (発明の詳細な記述) この発明は、インシュリン活性を有する新規タンパク質および核酸(ここでは
「IAタンパク質」および「IA核酸」ということがある)を目的とする。タン
パク質は、WO98/47089およびU.S.S.Nos.09/058,459
、09/127,926、60/104,612、60/158,700、09/
419,351、60/181,630、60/186,904、および米国特許
出願(表題:Protein Design Automation For Protein Libraries;出願日:20
00年4月14日;発明者:Bassil Dahiyat)、これらはすべて、特に全体的な
出典明示により本明細書の一部とする、に記載されたシステムを用いて生成させ
るが、これは、タンパク質自身の生物学的機能を必ずしも阻害することなく極め
て安定なタンパク質を生成させる、コンピュータ計算によるモデリングシステム
である。このようにして、野生型酵素に比べて複数の変異を有することができ、
しかも有意の活性を保持し得る新規IAタンパク質および核酸が生成される。
【0049】 一般的に、この発明のIAタンパク質を生成するために使用できる、種々のコ
ンピュータ計算方法がある。好ましい態様では、配列に基づく方法が用いられる
。これにかえて、以下に詳細に記述するPDAのような構造に基づく方法が用い
られる。
【0050】 同様に、分子動力学的計算を用いて、変異配列のスコアを個々に計算し、順位
リストを作成することにより、配列をコンピュータ計算的にスクリーニングする
ことができる。
【0051】 好ましい実施態様では、残基対のポテンシャルを用いて、コンピュータ計算的
なスクリーニングの間に配列のスコアを求めることができる(Miyazawa et al.,
Macromolecules 18(3): 534-552 (1985)、特に出典明示により本明細書の一部と
する)。
【0052】 好ましい実施態様では、配列プロフィールスコア(Bowie et al., Science 253
(5016): 164-70 (1991)、出典明示により本明細書の一部とする)および/もしく
は平均力のポテンシャル(Hendlich et al., J. Mol. Biol. 216(1): 167-180 (1
990)、これも出典明示により本明細書の一部とする。)を用いて配列のスコアを
計算することもできる。これらの方法は、配列およびタンパク質の3D構造の間
の一致を評価するので、タンパク質構造への忠実度をスクリーニングするように
働き得る。異なるスコアリング関数を用いて配列の順位をつけることにより、配
列空間の異なる領域をコンピュータ計算的スクリーニングでサンプリングするこ
とができる。
【0053】 さらに、スコアリング関数を用いてタンパク質の中の金属もしくはコファクタ
ー結合部位を生成する配列をスクリーニングすることができる(Hellinga, Fold
Des. 3(1): R1-8 (1998)、特に出典明示により本明細書の一部とする)。同様に
、スコアリング関数を用いてタンパク質の中にジスルフィド結合を生成するであ
ろう配列をスクリーニングすることができる。これらの可能性をタンパク質構造
を特異的に修飾ために試みて、新規構造モチーフを導入する。
【0054】 好ましい実施態様では、配列および/もしくは構造のアラインメントプログラ
ムを用いてこの発明のIAタンパク質を作成することができる。技術上周知の通
り、多数の配列に基づくアラインメントプログラムが存在する;例えば、Smi
th−Watermanサーチ、Needleman−Wunsh、Doubl
e Affaine Smith−Waterman、フレームサーチ、Gri
bskov/GCGプロフィールサーチ、Gribskov/GCGプロフィール
スキャン、プロフィールフレームサーチ、Bucherの一般化プロフィール、
Hidden Markovモデル、Hframe、Double Frame
、Blast、Psi−Blast、Clustal、およびGeneWise
を含む。
【0055】 技術上周知の通り、使用できる多数の配列アラインメント法が存在する。例え
ば、アラインメント法に基づく配列相同性を用いて標的構造に関連するタンパク
質の配列アラインメントを創成することができる(Altshul et al., J. Mol. Bio
l. 215(3): 403-410 (1990), Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25: 3389-
3402 (1997)、共に出典明示により本明細書の一部とする)。次いでこれらの配列
アラインメントを検討して、観察される配列変化を決定する。これらの配列変化
を表にし、IAタンパク質の組を規定する。
【0056】 配列に基づくアラインメントは種々の方法で使用することができる。例えば、
技術上周知の通り多数の関連タンパク質のアラインメントを行うことができ、「
可変」および「保存」残基が規定される;即ち、その群のメンバー同士で異なる
残基および同一に保たれている残基を規定することができる。これらの結果を用
いて以下に略述する確率表を作成することができる。同様に、これらの配列変化
を表にし、それらから以下に規定するように第二のライブラリーを規定すること
ができる。これに代えて、コンピュータ計算的スクリーニングにおいて、許容さ
れる配列変化を用いてそれぞれの部位について考えられるアミノ酸を規定するこ
とができる。もう一つの変法は、配列アラインメントで発生するアミノ酸のスコ
アにバイアスをかけ、それによってそれらのアミノ酸がコンピュータ計算的スク
リーニングにおいて見出される公算を増加させ、しかも他のアミノ酸についても
考慮が払われるようにすることである。このバイアスにより、アラインメントに
見出されないアミノ酸を考慮から除外することなく集束性のIAタンパク質ライ
ブラリーを得ることができる。これに加えて、多数の他のタイプのバイアスを導
入してもよい。例えば、強制的に多様性を生じさせてもよい;即ち、「保存」残
基を選択し、タンパク質上に強制的に多様性を生じさせることにより配列空間の
より大きな部分のサンプルを作ることができる。これに代えて、群のメンバー間
で変化の度合いが高い(即ち、保存性が低い)位置を、アミノ酸の全てもしくはサ
ブセットを用いて、ランダムに変えることができる。同様に、異常残基は部位の
異常であれ側鎖の異常であれ取り除いてもよい。
【0057】 同様に、構造的に関連したタンパク質の構造アラインメントを行うことによっ
て配列アラインメントを作成することができる(Orengo et al., Structure 5(8)
:1093-108 (1997); Holm et al., Nucleic Acids Res. 26(1): 316-9 (1998)、
共に出典明示により本明細書の一部とする)。次いで、これらの配列アラインメ
ントを調べて観察される配列変化を決定することができる。配列から二次構造を
予測し、次いで予想された二次構造と適合する配列を選択することによりライブ
ラリーを作成することができる。ヘリックス−コイル転移理論(Munoz and Serra
no, Biopolymers 41: 495, 1997)、ニューラルネットワーク、局所構造アライン
メントおよびその他(例えば、Selbig et al., BioIFNormatics 15: 1039-46,
1999参照)のような多数の二次構造の予測法が存在する。
【0058】 同様に、上に略述した通り、他のコンピュータ計算的方法が知られており、こ
れらは配列プロファイリング[Bowie and Eisenberg, Science 253(5016): 164-7
0 (1991)]、回転異性体ライブラリー選択[Dahiyat and Mayo, Protein Sci. 5(5
): 895-903 (1996); Dahiyat and Mayo, Science 278(5335): 82-7 (1997); Des
jarlais and Handel, Protein Science 4: 2006-2018 (1995); Harbury et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(18): 8408-8412 (1995); Kono et al., Pr
oteins: Structure, Function and Genetics 19: 244-255 (1994); Hellinga an
d Richards, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91: 5803-5807 (1994)];および
残基対ポテンシャル[Jones, Protein Science 3: 567-574 (1994)];PROSA
[Heindlich et al., J. Mol. Biol. 216: 167-180 (1990)];THREADER[
Jones et al., Nature 358: 86-89 (1992)]、およびSimons et al.[Proteins, 3
4: 535-543 (1999)], Levitt and Gerstein[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 9
5: 5913-5920 (1998)], Godzik and Skolnick[Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,
89: 12098-102 (1992)], Godzik et al.[J. Mol. Biol. 227: 227-38 (1992)]
に記載のようなその他のインバースフォルディング法、および2プロフィール法
[Gribskov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84: 4355-4358 (1987) and
Fischer and Eisenberg, Protein Sci. 5: 947-955 (1996), Rice and Eisenbe
rg, J. Mol. Biol. 267: 1026-1038 (1997)]、これら全てのの文献は特に出典明
示により本明細書の一部とする、を非限定的に含む。加えて、Koehl and Levitt
(J. Mol. Biol. 293: 1161-1181 (1999); J. Mol. Biol. 293: 1183-1193 (199
9)、特に出典明示により本明細書の一部とする)に記載のような他のコンピュー
タ計算的方法を用いることによってタンパク質配列ライブラリーを創成すること
ができ、次いでこれを任意に使用して、改善された性質および機能について実験
的にスクリーニングするためのより小さい二次ライブラリーを作成することがで
きる。加えて、SCMFにも使用することのできるSCMFのような力場計算に
基づくコンピュータ計算法が存在する:Delarue et al., Pac. Symp. Biocomput
. 109-21 (1997); Koehl et al., J. Mol. Biol. 239: 249-75 (1994); Koehl e
t al., Nat. Struct. Biol. 2: 163-70 (1995); Koehl et al., Curr. Opin. St
ruct. Biol. 6: 222-6 (1996); Koehl et al., J. Mol. Biol. 293: 1183-93 (1
999); Koehl et al., J. Mol. Biol. 293: 1161-81 (1999); Lee J., Mol. Biol
. 236: 918-39 (1994); and Vasquez Biopolymers 36: 53-70 (1995)、これらは
全て、特に出典明示により本明細書の一部とする)を参照のこと。コンピュータ
計算法の範囲内で配列のコンフォメーションの最適化、もしくはここに略述する
de novo最適配列生成に使用できる他の力場計算法は、OPLS−AA[J
orgensen et al., J. Am. Chem. Soc. 118: 11225-11236 (1996); Jorgensen, W
.L.; BOSS, Version 4.1; Yale University: New Haven, CT (1999)];OPLS
[Jorgensen et al., J. Am. Chem. Soc. 110: 1657ff (1988); Jorgensen et al
., J. Am. Chem. Soc. 112: 4768ff (1990)];UNRES(United Residue Forc
efield; Liwo et al., Protein Science 2: 1697-1714 (1993); Liwo et al., P
rotein Science 2: 1715-1731 (1993); Liwo et al., J. Comp. Chem. 18: 849-
873 (1997); Liwo et al., J. Comp. Chem. 18: 874-884 (1997); Liwo et al.,
J. Comp. Chem. 19: 259-276 (1998); Forcefield for Protein Structure Pre
diction (Liwo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 5482-5485 (1999)
];ECEPP/3[Liwo et al., J. Protein Chem. 13(4): 375-80 (1994)]、
AMBER1.1力場(Weiner et al., J. Am. Chem. Soc. 106: 765-784)、AM
BER3.0力場[U.C. Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82: 755
-759 (1985)];CHARMMおよびCHARMM22(Brooks et al., J. Comp.
Chem. 4: 187-217);cvff3.0[Dauber-Osguthorpe et al., Proteins: St
ructure, Function and Genetics, 4: 31-47 (1988)];cff91(Maple et al
., J. Comp. Chem. 15: 162-182)を非限定的に含む;また、DISCOVER(
cvffおよびcff91)およびAMBER力場はINSIGHT分子モデリ
ングパッケージ(Biosym/MSI, San Diego California)で使用され、またCHAR
MMはQUANTA分子モデリングパッケージ(Biosym/MSI, San Diego Califor
nia)で使用されるが、これらの文献は全て出典明示により本明細書の一部とする
。実際には、以下に略述する通り、これらの力場法は二次ライブラリーを直接に
作成するのに用いることができる;即ち、一次ライブラリーを作成しない;むし
ろ、これらの方法を用いて確率表を作成し、これから直接に二次ライブラリーを
作成することができる。
【0059】 好ましい実施態様では、一次ライブラリー作成に使用するコンピュータ計算法
はタンパク質デザイン自動化(Protein Design Automation)(PDA)であり、こ
れは、U.S.S.N.s60/061,097、60/043,464、60/05
4,678、09/127,926、60/104,612、60/158,700
、09/419,351、60/181630、60/186,904、米国特許
出願(表題:Protein Design Automation For Protein Libraries;出願日:20
00年4月14日;発明者:Bassil Dahiyat)、およびPCT US98/07
254、これらは全て、特に出典明示により本明細書の一部とする、に記載され
ている。PDAは以下のように略述される。既知のタンパク質構造を出発点に使
用する。次いで最適化すべき残基を同定するが、これは全配列でももしくはその
サブセットでもよい。次いで変化させるべき全ての部位の側鎖を取り除く。タン
パク質のバックボーンと残余の側鎖よりなる構造をテンプレートと呼ぶ。次いで
それぞれの可変残基部位を好ましくはコア残基、表面残基、もしくは境界残基に
分類する;それぞれの分類はその位置に可能なアミノ酸残基のサブセットを規定
する(例えば、コア残基は一般的に疎水性残基の組から選択され、表面残基は一
般的に親水性残基から選択され、また境界残基はそのいずれから選択されもよい
)。それぞれのアミノ酸は、回転異性体と呼ばれるそれぞれの側鎖のコンフォメ
ーションの許容される全ての不連続な組で表すことができる。かくして、バック
ボーンについての最適配列に到達するために全ての可能な回転異性体の配列をス
クリーニングしなければならないが、ここでは、それぞれのバックボーンの位置
はそれぞれのアミノ酸の全ての可能な回転異性状態、もしくはアミノ酸のサブセ
ット、およびかくして回転異性体のサブセットのいずれかで占めることができる
。次いで、それぞれの位置においてそれぞれの回転異性体について2組の相互作
用を計算する;それらは、回転異性体の側鎖とバックボーンの全てもしくは一部
との相互作用(「シングル」エネルギー、回転異性体/テンプレートもしくは回
転異性体/バックボーンエネルギーとも言う)、および回転異性体の側鎖とそれ
ぞれの他の位置もしくは他の位置のサブセットにおける他の全ての可能な回転異
性体との相互作用(「ダブル」エネルギー、回転異性体/回転異性体エネルギー
とも言う)である。これらの相互作用のそれぞれのエネルギーを種々のスコアリ
ング関数をもちいて計算するが、それには、ファンデアワールス力のエネルギー
、水素結合エネルギー、二次構造傾向のエネルギー、表面区域溶媒和および静電
エネルギーが含まれる。かくして、バックボーンおよび他の回転異性体の両者と
のそれぞれの回転異性体相互作用の総エネルギーを計算し、マトリックス形式で
保存する。
【0060】 回転異性体の組が離散的性質を有するため、試験すべき数多くの回転異性体配
列数を簡単に計算することができる。長さn、可能な回転異性体数mのバックボ
ーンにはm個の可能な回転異性体の配列があり、この数は配列の長さが長くな
るにつれて指数関数的に増加するため、リアルタイムでの計算が困難もしくは不
可能になってくる。したがって、この組合わせ研究の問題を解決するために「デ
ッドエンドエリミネーション(Dead End Elimination)」(DEE)の計算を行う。
DEE計算は、もし最初の回転異性体の最悪の全相互作用が、それでも2番目の
回転異性体の最善の全相互作用よりは良い場合には、2番目の回転異性体は大域
的な最適解の一部にはなり得ない、という事実に基づく。全ての回転異性体のエ
ネルギーは計算済みであるから、DEEによるアプローチでは検討すべき全配列
長に亘って合計して回転異性体を除けばよく、これによりかなり計算がスピード
アップできる。DEEは回転異性体の対、もしくは回転異性体の組合わせを比較
しながら繰り返して行うことができ、最終的に大域的な最適エネルギーを表す単
一の配列を決定することができる。
【0061】 ひとたび大域的な解が見つかれば、Monte Carloによるサーチを行ってDEE
の解の近傍で配列の順位リストを作成させることができる。DEEの解から始め
て、ランダムな位置を他の回転異性体に変え、新しい配列のエネルギーを計算す
る。もし新しい配列が合格基準を満たすならば、これを次のジャンプの出発点に
使用する。予め定められた回数のジャンプを行った後、配列の順位リストを作成
する。Monte Carloサーチは大域的エネルギー最小値の周辺で配列空間を探索す
るための、もしくは配列空間中で隔たった場所に新しい局所的エネルギー極小を
見出すためのサンプリング技術である。以下にさらに略述する通り、Boltz
manサンプリング、遺伝子アルゴリズム手法、およびシミュレートしたアニー
リングのような他の使用し得るサンプリング技術がある。加えて、全てのサンプ
リング技術について、許容されるジャンプの種類を変化させることができる(例
えば、ランダム残基へのランダムジャンプ、バイアスをかけたジャンプ(例えば
野生型に向かう方向、もしくは離れる方向に)、バイアスのかかった残基へのジ
ャンプ(類似の残基に向かう方向、もしくは離れる方向に)、等)。同様に、全て
のサンプリング技術について、サンプリングジャンプが許容されるか否かの許容
基準を変えることもできる。
【0062】 U.S.S.N.09/127,926に略述した通り、タンパク質バックボーン
((天然に存在するタンパクにおいては)窒素、カルボニル炭素、α−炭素、およ
びカルボニル酸素を含み、またα−炭素からβ−炭素に向かうベクトルを有する
)は、コンピュータ計算的分析に先立って超二次構造パラメータと呼ばれるパラ
メータの組を変えることにより変えてもよい。
【0063】 いったんタンパク質構造バックボーンを作成させ(上述のように変化させて)、
コンピュータにインプットすると、明示的な水素が、もし構造の中に含めていな
かった場合には、付け加えられる(例えば、もし構造をX線解析で作成した場合
には、水素を付け加えなければならない)。水素附加の後、構造のエネルギー最
小化を行い、水素および他の原子、結合角および結合距離を緩和させる。好まし
い実施態様では、これは原子座標上の位置の共役勾配最小化[Mayo et al., J. P
hys. Chem. 94:8897 (1990)]を何段階も行うことによって実施して、静電力のな
いDreiding力場を最小にする。一般的に、10から約250段階が好ま
しく、約50段階が最も好ましい。
【0064】 タンパク質のバックボーン構造は少なくとも一個の可変残基部位を有している
。技術上公知であるように、タンパク質の残基、もしくはアミノ酸、は一般的に
タンパク質のN末端から始めて順に番号を付ける。かくして、N末端にメチオニ
ンを有するタンパク質はアミノ酸もしくは残基の1番目の位置にメチオニンを有
していると言われ、それに続く残基は2、3、4番目等と言われる。それぞれの
位置において、野生型(即ち、天然に存在する)タンパク質は少なくとも20種の
アミノ酸の一個を幾つかの回転異性体中に有している。ここで「可変残基の位置
」とは、デザインするタンパク質の中で、デザイン法において特定の残基もしく
は回転異性体、一般的には野生型残基もしくは回転異性体、として固定されない
アミノ酸の位置を意味する。
【0065】 好ましい実施態様では、タンパク質の残基の位置の全てが可変である。即ち、
それぞれのアミノ酸の側鎖をこの発明の方法で変えることができる。本法はより
大きなタンパク質のデザインも行うことができるが、これは小さなタンパク質に
ついては特に望ましい。この方法でデザイン可能なタンパク質の長さに理論的な
制限はないが、実際にはコンピュータ計算上の制限がある。
【0066】 代わりの好ましい実施態様では、タンパク質の残基位置の一部だけが可変で、
他は「固定される」、即ち、それらは三次元構造中で定められたコンフォメーシ
ョンで存在するものとして認識される。いくつかの実施態様では、固定位置は元
来のコンフォメーションのままにされている(使用する回転異性体ライブラリー
の特定の回転異性体と対応する場合もしない場合もある)。これに代えて、残基
を非野生型残基として固定してもよい;例えば、既知の部位指定変異技術により
特定の残基が望ましいことが示されているときには(例えば、タンパク質分解部
位を取り除くため、もしくは酵素の基質特異性を変えるため)、残基を特定のア
ミノ酸として固定してもよい。これに代えて、この発明の方法は以下に考察する
ようにde novo変異の評価に用いることもできる。代わりの好ましい実施
態様では、固定位置を「浮動」させてもよい;その位置のアミノ酸は固定される
が、そのアミノ酸の異なる回転異性体は試験される。この実施態様では、可変残
基は少なくとも一個、もしくは全残基数の0.1%から99.9%の間のいずれで
もよい。かくして、例えば僅か数個(もしくは一個)の残基でも、もしくは殆どの
残基でも変えることもでき、その間の全てが可能である。
【0067】 好ましい実施態様では、固定可能な残基は構造的にもしくは生物学的に機能を
有する残基を非限定的に含む;これに代えて、生物学機能を有する残基を特に固
定しないこともできる。例えば、結合相手(リガンド/レセプター、抗原/抗体
、等)に対する結合部位となる残基、生物活性に必須のリン酸化もしくはグリコ
シル化部位のような生物活性に重要であることが知られている残基、もしくはジ
スルフィドブリッジ、金属結合部位、必須水素結合残基、プロリンもしくはグリ
シンのようなバックボーンコンフォメーションに必須な残基、パッキング相互作
用に必須の残基等の構造上重要な残基は、全てそのアミノ酸の正体および単一の
回転異性体コンフォメーションに固定してもよく、もしくは「浮動」させてその
正体だけを固定するが回転異性体は固定しなくてもよい。
【0068】 同様に、可変残基として選択できる残基は、タンパク質分解の受けやすさ、二
量化もしくは凝集部位、免疫反応を引き起こす可能性のあるグリコシル化部位、
不要な結合活性、不要なアロステリズム、酵素活性は好ましくないが結合能は保
存したい部位、等、のような望ましくない生物学的性質を付与している残基であ
ってもよい。
【0069】 好ましい実施態様では、それぞれの可変位置はコア、表面もしくは境界残基位
置のどれかに分類されるが、ただし、以下に説明するように、場合によっては可
変位置はバックボーンの歪みを最小にするためにグリシンに設定してもよい。加
えて、ここで略述するように、残基は分類しなくてもよく、それらは可変残基と
して選択し、いかなる組のアミノ酸を用いてもよい。コア、表面および界面位置
のいかなる組合わせ;コア、表面、および境界残基;コアおよび表面残基;コア
および境界残基;および表面および境界残基、さらにコア残基のみ、表面残基の
み、もしくは境界残基のみ、を使用することができる。
【0070】 残基の位置のコア、表面もしくは境界としての分類は、当業者により認識され
るであろうように、幾つかの方法で行うことができる。好ましい実施態様では、
分類は元来のタンパク質のバックボーン構造を側鎖を含めて目視によりスキャン
し、タンパク質モデリングの当業者の主観的な評価に基づいて分類することによ
って行う。これに代えて、好ましい実施態様では、U.S.S.N.s60/061
,097、60/043,464、60/054,678、09/127,926、
60/104,612、60/158,700、09/419,351、60/1
81630、60/186,904、60/132,475、60/133,71
4、米国特許出願(表題:Protein Design Automation For Protein Libraries;
出願日:2000年4月14日;発明者:Bassil Dahiyat)、およびPCT U
S98/07254に略述されているように、テンプレートのCα原子のみを用
いて計算した、溶媒がアクセスできる表面に相対的なCα−Cβベクトルの方向
の評価を利用する。これに代えて、表面積計算を行うこともできる。 IAタンパク質における適当なコア、境界および表面部位を以下に略述する。
【0071】 いったんそれぞれの可変位置がコア、表面もしくは境界として分類されれば、
1組のアミノ酸側鎖、従って1組の回転異性体、をそれぞれの位置に割り当てる
。即ち、或る特定の位置についてプログラムが許容すると考えられる可能なアミ
ノ酸側鎖の組を選択する。引き続いて、一旦可能なアミノ酸側鎖が選択されたら
、特定の位置で評価されるであろう回転異性体の組を決定することができる。か
くして、コア残基は一般的に、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フ
ェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびメチオニン(幾つかの態様
では、以下に記述するファンデアワールススコアリング関数のα換算係数が小さ
いときにはメチオニンをこの組から除外する)からなる疎水性残基のグループか
ら選択され、そしてそれぞれのコア位置に対する回転異性体の組は、これら8種
類のアミノ酸の側鎖に対する回転異性体を潜在的に含む(もしバックボーン非依
存性ライブラリーを用いる場合には全ての回転異性体、そしてもし回転異性体依
存性バックボーンを用いる場合はサブセット)。同様に、表面位置は一般的にア
ラニン、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、グ
ルタミン酸、アルギニン、リシンおよびヒスチジンからなる親水性残基のグルー
プから選択される。それぞれの表面部位の回転異性体の組はしたがって、これら
10種類の残基の回転異性体を含む。最後に、境界位置は一般的に、アラニン、
セリン、スレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、グルタミン
酸、アルギニン、リシン、ヒスチジン、バリン、イソロイシン、ロイシン、フェ
ニルアラニン、チロシン、トリプトファン、およびメチオニンから選択される。
それぞれの境界位置の回転異性体の組はしたがって、これら17種類の残基の全
ての回転異性体を潜在的に含む(システイン、グリシンおよびプロリンを使用す
ることができるが、使用しないとの仮定で)。これに加えて、幾つかの好ましい
実施態様では、天然に存在する18種のアミノ酸の組(特に構造を破壊しやすい
ことが知られているシステインおよびプロリン以外の全て)を使用する。
【0072】 このように、当業者により認識されるであろうように、残基の位置を分類する
ことには計算の数を減らすというコンピュータ計算上の利点がある。また、コア
、境界および表面残基の組を上述のものから変える状況があってもよいことに留
意すべきである;例えば、ある状況下では、一つもしくはそれ以上のアミノ酸を
、許容されるアミノ酸の組に付け加えてもよく、もしくはこれから除いてもよい
。例えば、二量化もしくは多量化するかまたはリガンド結合部位を有する幾つか
のタンパク質は疎水性の表面残基等を含んでいてもよい。加えて、ヘリックスの
「キャッピング」もしくはα−ヘリックス双極子との好都合な相互作用を許容し
ない残基を許容された残基から取り除いてもよい。このようなアミノ酸基の修飾
は残基別に行う。
【0073】 好ましい実施態様では、プロリン、システインおよびグリシンは可能なアミノ
酸側鎖のリストには含まれず、したがってこれらの側鎖の回転異性体は使用され
ない。しかしながら、好ましい実施態様では、可変残基位置の角度φ(即ち、1)
その前のアミノ酸のカルボニル炭素;2)当残基の窒素原子;3)当残基のα−炭
素;および4)当残基のカルボニル炭素で規定される2面角)が0°より大な場合
には、その位置をグリシンに設定して、バックボーンの歪みを最小にする。
【0074】 一旦可能な回転異性体がそれぞれの可変残基位置に割り当てられたら、電算処
理はU.S.S.N.09/127,926およびPCT US98/07254に
略述した方法で進行する。この処理段階は回転異性体同士、およびタンパク質バ
ックボーンとの相互作用を解析して最適化されたタンパク質配列を作成する操作
を伴う。単純に言えば、処理は先ず多数のスコアリング関数を用いて回転異性体
のバックボーン自身とのもしくは他の回転異性体との相互作用のエネルギーを計
算する。好ましいPDAスコアリング関数は、ファンデアワールスポテンシャル
スコアリング関数、水素結合ポテンシャルスコアリング関数、原子溶媒和スコア
リング関数、二次構造傾向スコアリング関数および静電的スコアリング関数を非
限定的に含む。以下にさらに記述するように、少なくとも一個のスコアリング関
数を用いてそれぞれの部位を評価するが、ただし、スコアリング関数は位置の分
類もしくはα−ヘリックス双極子との好都合な相互作用のようなその他の考慮次
第で異なっていてもよい。以下に略述するように、計算に使用する総エネルギー
は特定の位置で使用するそれぞれのスコアリング関数のエネルギーの合計であり
、一般的に方程式1で表される。 方程式1 Etotal = nEvdw + nEas + nEh-bonding + nEss + nEelec 方程式1において、総エネルギーはファンデアワールスポテンシャルのエネルギ
ー(Evdw)、原子溶媒和のエネルギー(Eas)、水素結合のエネルギー(Eh-bondin g )、二次構造のエネルギー(Ess)および静電的相互作用のエネルギー(Eelec)の合
計である。項nは、それが特定の残基位置について考慮されているかどうか次第
で、0もしくは1のどちらかである。
【0075】 U.S.S.N.s60/061,097、60/043,464、60/054,
678、09/127,926、60/104,612、60/158,700、
09/419,351、60/181,630、60/186,904、米国特許
出願(表題:Protein Design Automation For Protein Libraries;出願日:2
000年4月14日;発明者:Bassil Dahiyat)およびPCT US98/07
254に略述されているように、これらのスコアリング関数を、単独もしくは組
合わせのどちらかで、どのような組合わせで使用してもよい。一旦使用すべきス
コアリング関数がそれぞれの可変部位について確認されれば、コンピュータ計算
的解析における好ましい第1段階は、それぞれの可能な回転異性体と残りのタン
パク質の全てもしくは一部との相互作用の決定より成る。即ち、それぞれの可変
残基位置のそれぞれの可能な回転異性体とバックボーンもしくは他の回転異性体
との相互作用エネルギーを一つもしくはそれ以上のスコアリング関数で測定して
計算する。好ましい実施態様では、それぞれの回転異性体とタンパク質の残り全
部、即ち全テンプレートおよび他の全ての回転異性体の両方、との相互作用を測
定する。しかしながら、上述のようにタンパク質の一部分のみ、例えばより大き
なタンパク質の1ドメイン、のモデリングが可能であり、したがって場合によっ
てはタンパク質全てを考慮する必要はない。ここでタンパク質に関して用いる「
部分」という用語、もしくはそれと類似の文法的同意語はそのタンパク質の断片
を意味する。この断片のサイズは5−10アミノ酸残基から全アミノ酸残基より
アミノ酸一個が少ないものまでの範囲に亘る。したがって、ここで核酸に関して
用いる「部分」という用語は核酸の断片を意味する。この断片のサイズは6−1
0ヌクレオチドから全核酸配列よりヌクレオチド一個が少ないものまでの範囲に
亘る。
【0076】 好ましい態様では、コンピュータ計算的処理の第1段階は、全ての位置のそれ
ぞれの回転異性体について2組の相互作用、即ち回転異性体の側鎖とテンプレー
トもしくはバックボーンとの相互作用(「シングル」エネルギー)、および回転異
性体の側鎖と、変動もしくは浮動に関係なく全ての他の位置における他の全ての
可能な回転異性体との相互作用(「ダブル」エネルギー)、を計算することにより
行う。この場合のバックボーンとは、タンパク質構造バックボーンの原子および
全ての固定された残基の原子を含むと理解すべきであり、固定された残基はアミ
ノ酸の特定のコンフォメーションとして規定される。
【0077】 かくして、「シングル」(回転異性体/テンプレート)エネルギーは全ての可変
残基位置にある全ての可能な回転異性体とバックボーンとの相互作用についてス
コアリング関数の一部もしくは全てを用いて計算される。かくして、水素結合ス
コアリング関数については、回転異性体の全ての水素結合分子とバックボーンの
全ての水素結合原子との相互作用を評価し、EHBは全ての可変部位におけるそ
れぞれの可能な回転異性体について計算される。同様に、ファンデアワールスス
コアリング関数については、回転異性体の全ての原子をテンプレートの全ての原
子と比較し(一般的にはそれ自身の残基のバックボーンは除く)、EvdWは全て
の可変位置におけるそれぞれの可能な回転異性体について計算される。加えて、
もし原子が三個以下の結合で連結している場合には、一般的にファンデアワール
スエネルギーは計算しない。原子溶媒和スコアリング関数については、回転異性
体の表面をテンプレートの表面と比較して測定し、Easを全ての可変位置にお
けるそれぞれの可能な回転異性体について計算する。二次構造傾向スコアリング
関数もシングルエネルギーについて考慮され、したがって総シングルエネルギー
はEas項を含んでもよい。当業者により認識されるであろうように、これらの
エネルギー項の多くは回転異性体とテンプレートの位置の物理的距離次第で0に
近い;即ち二つの部分が離れていればいるほどエネルギーは低い。
【0078】 「ダブル」エネルギー(回転異性体/回転異性体)の計算には、それぞれの可能
な回転異性体と全ての他の可変残基位置にある全ての可能な回転異性体を比較す
る。かくして、「ダブル」エネルギーは全ての可変残基位置にある全ての可能な
回転異性体と、全ての他の可変残基位置にある全ての可能な回転異性体との相互
作用についてスコアリング関数の一部もしくは全てを用いて計算する。かくして
、水素結合スコアリング関数については、第一番目の回転異性体の全ての水素結
合原子と、全ての可能な第二番目の回転異性体の全ての水素結合原子とを評価し
、全ての二個の可変位置についてそれぞれの可能な回転異性体の対についてE を計算する。同様に、ファンデアワールススコアリング関数については、第一
番目の回転異性体の全ての原子と、全ての可能な第二番目の回転異性体の原子と
比較し、全ての二個の可変残基位置についてそれぞれの可能な回転異性体の対に
ついてEvdWを計算する。原子溶媒和スコアリング関数については、第一番目
の回転異性体の表面を全ての可能な第二番目の回転異性体の表面に対して測定し
、全ての二個の可変残基位置についてそれぞれの可能な回転異性体の対について
asを計算する。二次構造傾向スコアリング関数については、「ダブル」エネ
ルギーは「シングル」エネルギーの成分として考慮されているので「ダブル」エ
ネルギーとしては行う必要はない。当業者により認識されるであろうように、こ
れらダブルエネルギー項の多くは第一番目の回転異性体と第二番目の回転異性体
との物理的距離次第で0に近い;即ち両者が離れていればいるほどエネルギーは
低い。
【0079】 加えて、当業者により認識されるであろうように、PDA計算に使用できる様
々な力場があり、これらはDreiding IおよびDreiding II
[Mayo et al., J. Phys. Chem. 94: 8897 (1990)]、AMBER[Weiner et al.,
J. Amer. Chem. Soc. 106: 765 (1984) and Weiner et al., J. Comp. Chem. 1
06: 230 (1986)]、MM2[Allinger, J. Chem. Soc. 99: 8127 (1977), Lijefor
s et al., J. Com. Chem. 8: 1051 (1987)];MMP2[Sprague et al., J. Com
p. Chem. 8: 581 (1987)];CHARMM[Brooks et al., J. Comp. Chem. 106:
187 (1983)];GROMOS;およびMM3[Allinger et al., J. Amer. Chem.
Soc. 111: 8551 (1989)]、OPLS−AA[Jorgensen et al., J. Am. Chem. S
oc. 118: 11225-11236 (1996); Jorgensen, W.L.,; BOSS, Version 4.1; Yale U
niversity: New Haven, CT (1999)];OPLS[Jorgensen et al., J. Am. Chem
. Soc. 110: 1657ff (1988); Jorgensen et al., J. Am. Chem. Soc. 112: 4768
ff (1990)];UNRES(United Residue Forcefield; Liwo et al., Protein S
cience 2: 1697-1714 (1993); Liwo et al., Protein Science 2:1715-1731 (19
93); Liwo et al., J. Comp. Chem. 18: 849-873 (1997); Liwo et al., J. Com
p. Chem. 18: 874-884 (1997); Liwo et al., J. Comp. Chem. 19: 259-276 (19
98); Forcefield for Protein Structure Prediction (Liwo et al., Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A. 96: 5482-5485 (1999)];ECEPP/3[Liwo et al.,
J Protein Chem. 13(4): 375-80 (1994)];AMBER1.1力場(Weiner, et al
., J. Am. Chem. Soc. 106: 765-784);AMBER3.0力場(U.C. Singh et al
., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82: 755-759);CHARMMおよびCHA
RMM22(Brooks et al., J. Comp. Chem. 4: 187-217);cvff3.0[Daub
er-Osguthorpe, et al., Proteins: Structure, Function and Genetics, 4: 31
-47 (1988)];cff91(Maple, et al., J. Comp. Chem. 15: 162-182)を非限
定的に含み;またDISCOVER(cvffおよびcff91)ならびにAMB
ER力場はINSIGHT分子モデリングパッケージ(Biosym/MSI, San Diego C
alifornia)で使用され、またHARMMはQUANTA分子モデリングパッケー
ジ(Biosym/MSI, San Diego California)で使用されるが、これらは全て、特に出
典明示により本明細書の一部とする。
【0080】 一旦シングルおよびダブルエネルギーが計算され保存されれば、次のステップ
としてコンピュータ計算的処理を行い得る。U.S.S.N.09/127,926
およびPCT US98/07254に略述されているように、好ましい態様で
はデッドエンドエリミネーション(Dead End Elimination)(DEE)ステップを利
用し、好ましくはMonte Carloステップを利用する。
【0081】 大まかに見ると、PDAは、アウトプット(例えば一次ライブラリー)を変える
ために変化させ得る三個の成分、即ち処理で用いるスコアリング関数、フィルタ
リング技法、およびサンプリング技法、を有する。
【0082】 好ましい態様では、スコアリング関数を変え得る。好ましい態様では、上に略
述したスコアリング関数を様々な方法でバイアスをかけたり重みをつけたりし得
る。例えば、標準配列もしくは配列の一群の方向に、もしくは逆方向にバイアス
をかけることができる;例えば、野生型もしくは相同残基の方向にバイアスを使
用し得る。同様に、タンパク質全体もしくはその断片にバイアスをかけてもよい
;例えば、活性部位を野生型残基の方向にバイアスをかけてもよく、もしくはド
メイン残基を特に望ましい物理的性質の方向にバイアスをかけることができる。
さらに、エネルギー増大の方向もしくは逆方向へのバイアスを発生させてもよい
。その他のスコアリング関数のバイアスとしては、静電ポテンシャルグラジエン
トもしくは疎水グラジエントをかけること、基質もしくは結合相手を計算に加え
ること、もしくは望ましい電荷もしくは疎水性の方向にバイアスをかけること、
が非限定的に含まれる。
【0083】 加えて、代わりの実施態様では、使用可能な様々な付加的なスコアリング関数
がある。付加的なスコアリング関数としては、捩れポテンシャル、残基対ポテン
シャル、残基エントロピーポテンシャルが非限定的に含まれる。このような付加
的スコアリング関数は単独で、もしくは最初評価を行った後にライブラリーの処
理のための関数として、使用することもできる。例えば、ペプチドのMHC(主
要組織適合性複合体(Major Histocompatibility Complex))への結合についての
データから誘導された種々の関数を用いてライブラリーを再評価することにより
、MHCに結合する可能性のある配列、即ち潜在的に免疫原性を有する配列、を
含むタンパク質を除去することができる。
【0084】 好ましい実施態様では、多様なフィルタリング技法を行うことができ、これら
はDEEおよびその関連対応技法を非限定的に含む。付加的フィルタリング技法
としては、最適配列発見のためのブランチ・アンド・バウンド技法(Gordon and
Mayo, Structure Fold. Des. 7: 1089-98, 1999)および配列の網羅的枚挙法が非
限定的に含まれる。
【0085】 当業者により認識されるであろうように、一旦最適配列もしくは最適配列組が
作成されると、好ましいMonte Carlo法に加えて、もしくはMonte Carloサーチの
代わりのどれかで、多様な空間サンプリング法を行うことができる。即ち、一旦
最適配列もしくは最適配列の組が作成されると、好ましい方法ではサンプリング
技法を用いてさらに関連配列を作成させてテストする。
【0086】 これらのサンプリング法としては、アミノ酸の置換、挿入もしくは欠失、また
は一つもしくはそれ以上の配列の組合わせの使用を含む。ここに略述するように
、好ましい実施態様ではMonte Carloサーチを利用するが、これは一連のバイア
スをかけた系統的もしくはランダムなジャンプである。しかしながら、この他に
も使用可能なサンプリング技法があり、これらにはBoltzmanサンプリン
グ、遺伝アルゴリズム技法、およびシミュレートしたアニーリングが含まれる。
加えて、全てのサンプリング技法に関して、許容されるジャンプの種類を変える
ことができる(例えば、ランダムな残基へのランダムなジャンプ、バイアスをか
けたジャンプ(例えば、野生型に向かう方向もしくは離れる方向に)、バイアスの
かかった残基へのジャンプ(類似の残基に向かう方向もしくは離れる方向に、等)
。複数の残基の位置がカップルしたジャンプ(二個の残基が常に同時に変化、も
しくはいかなるときも同時には変化しない)、残基の全組が他の配列に変わるジ
ャンプ(例、組換え)。同様に、全てのサンプリング技術について、サンプリング
ジャンプが許容されるか否かの許容基準を変えることもできる。
【0087】 加えて、この発明の好ましい方法は配列の順位リストを至ることに留意すべき
である;即ち、配列は一定の客観的基準に基づいて順位付けされる。しかしなが
ら、ここに略述するように、例えば配列を順位づけることなしにリストする確率
表を直接に作成(例えば、SCMF解析もしくは配列アラインメント技法を用い
て)することにより、順位づけをしない配列の組を創成することも可能である。
ここに略述するサンプリング技法はどちらの状況にも使用することができる。
【0088】 好ましい実施態様では、Bolzmanサンプリングを行う。当業者により認
識されるであろうように、Bolzmanサンプリングの温度基準を変えること
により、高温で広いサーチを行うことも低温で局所的な最適値の近傍で狭いサー
チを行うこともできる(例えば、Metropolis et al., J. Chem. Phys. 21: 1087,
1953参照)。
【0089】 好ましい実施態様では、サンプリング技法は、例えば、Holland (Adaptation
in Natural and Artificial Systems, 1975, Ann Arbor, U. Michigan Press)に
より記載されたような遺伝アルゴリズムを利用する。一般的に、遺伝アルゴリズ
ムは、作成した配列を取り上げこれらを核酸の組換え事象と同様にして「遺伝子
シャフリング」と同様なやりかたでコンピュータ計算的に組換える。かくして、
遺伝アルゴリズム解析の「ジャンプ」は一般的に複数位置のジャンプである。加
えて、以下に略述するように、相関的多重ジャンプも行い得る。このようなジャ
ンプは、異なるクロスオーバー位置および一度に一回以上の組換えを行うことが
でき、そして二個もしくはそれ以上の配列の組換えを伴うことができる。さらに
、欠失もしくは挿入(ランダムもしくはバイアス入り)を行うことができる。加え
て、以下に略述するように、遺伝アルゴリズム解析は二次ライブラリー作成後に
使用してもよい。
【0090】 好ましい実施態様では、サンプリング技法は、例えば、Kirkpatrick et al.[S
cience, 220: 671-680 (1983)]に記述されているようなシミュレートしたアニー
リングを使用する。シミュレートしたアニーリングは温度を変えることにより良
いジャンプもしくは悪いジャンプのカットオフを変える。即ち、温度を変えるこ
とによってカットオフの厳しさの度合いを変化させる。これにより、新しい配列
空間領域への高温での広範なサーチを行って、低温での狭いサーチによる領域の
詳細な探索に切り替えたりすることが可能になる。
【0091】 加えて、以下に略述するように、これらのサンプリング技法は最初の組をさら
に処理して、IAタンパク質の追加的な組を作成させるのに使うことができる。 コンピュータ計算的処理によって最適化されたIAタンパク質配列の組が得ら
れる。これらの最適化IAタンパク質は、一般的に、バックボーンの由来となっ
た野生型インシュリンの配列とは有意に異なっている。即ち、それぞれの最適化
されたIAタンパク質は、出発もしくは野生の型の配列と比べて、好ましくは少
なくとも約2〜50%の変異アミノ酸を含み、少なくとも約25%を含むのが好
ましく、少なくとも約15〜20%を含むのがより好ましく、少なくとも約4〜
15%を含むのが特に好ましい。
【0092】 好ましい実施態様では、この発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配列
と比べて、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、1
4、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、2
6、27、28、29もしくは30個の異なる残基を有する。
【0093】 本実施態様のある態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも1つ有する。1つのアミノ酸残基の置換を含む好ま
しいIAタンパク質配列を、図4B、図4C、図4D、図4F、および図4Gに
示す。
【0094】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも2つ有する。2つのアミノ酸残基の置換を含む好ま
しいIAタンパク質配列を、図3C、3F、4A、および4Eに示す。
【0095】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも3つ有する。3つのアミノ酸残基の置換を含む好
ましいIAタンパク質配列を、図3Eに示す。
【0096】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも4つ有する。4つのアミノ酸残基の置換を含む好
ましいIAタンパク質配列を、図3C、3F、4Aおよび4Eに示す。
【0097】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも5つ有する。
【0098】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも6つ有する。6つのアミノ酸残基の置換を含む好ま
しいIAタンパク質配列を、図5Aに示す。2つのアミノ酸残基の置換と4つの
アミノ酸残基の欠失を含む好ましいIAタンパク質配列を、図3Gに示す。
【0099】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも7つ有する。
【0100】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも8つ有する。
【0101】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも9つ有する。.
【0102】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも10有する。
【0103】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも11有する。
【0104】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも12有する。
【0105】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも13有する。
【0106】 本実施態様の他の態様では、 本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン
配列と異なる残基を少なくとも14有する。14のアミノ酸残基の置換を含む好
ましいIAタンパク質配列を、図5Bに示す。
【0107】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも15有する。
【0108】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも16有する。16のアミノ酸残基の置換を含む好ま
しいIAタンパク質配列を、図5Cに示す。
【0109】 本実施態様の他の態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリン配
列と異なる残基を少なくとも20有する。20のアミノ酸残基の置換を含む好ま
しいIAタンパク質配列を、図3Aに示す。
【0110】 従って、最も広い意味では、本発明は、インシュリン活性を有するIAタンパ
ク質を対象とする。本明細書中の"インシュリン活性"または"IA"とは、IAタ
ンパク質が、下記のように、少なくとも1つ、好ましくはそれ以上の、インシュ
リンの生物学的機能を示すことを意味する。ある実施態様では、IAタンパク質
の生物学的機能を変化させ、好ましくは対応するインシュリンの生物活性を超え
て改善する。
【0111】 ここで「タンパク質」は、共有結合で結ばれた少なくとも二個のアミノ酸を意
味し、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチドおよびペプチドを含む。タン
パク質は、天然に存在するアミノ酸およびペプチド結合、もしくは、一般的に合
成法に依存して、合成ペプチドミメティック構造、即ちペプトイドのような「ア
ナログ」[Simon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89(20): 9367-71 (19
92)参照]でできていてもよい。かくして、ここで「アミノ酸」もしくは「ペプチ
ド残基」は天然および合成のアミノ酸の両方を意味する。例えば、ホモフェニル
アラニン、シトルリン、およびノルロイシンは、この発明の目的においてアミノ
酸と考えられる。「アミノ酸」はまた、プロリンおよびヒドロキシプロリンのよ
うなイミノ酸残基を含む。加えて、IAタンパク質の構成要素となっているいか
なるアミノ酸も逆のキラリティーを有する同じアミノ酸で置換することができる
。かくして、天然でL型の立体配置(化合物の構造によりRもしくはSとも呼称
される)で存在するいかなるアミノ酸も、同じ化学構造で逆のキラリティーを有
し、一般的にD−アミノ酸と呼称されが、その代わりに、その組成及び化学的立
体配置次第で、R−もしくはS−とも呼称されるアミノ酸で置換することができ
る。このような誘導体は著しく増大した安定性を有し、したがって、経口投与、
静脈投与、筋肉内投与、腹腔内投与、局所投与、直腸内投与、口腔内投与、もし
くは他の経路で投与する場合により長いインビボの半減期を有し得る化合物の処
方において有利である。好ましい実施態様では、アミノ酸は(S)もしくはL型立
体配置である。もし非天然型側鎖を使用する場合には、例えばインビボでの分解
を防ぎもしくは遅らせるために、非アミノ酸置換基を使用し得る。天然に存在し
ないアミノ酸を含有するタンパク質は合成してもよく、場合によっては組換えに
よって作ってもよい;van Hest et al., FEBS Lett 428: (1-2)68-70 May 22 19
88 and Tang et al., Abstr. Pap Am. Chem. S218: U138-U138 Part 2 August 2
2, 1999、共に特に、出典明示により本明細書の一部とする、を参照のこと。
【0112】 これに加えて、本発明により、修飾アミノ酸またはコンセンサスのアミノ酸も
しくはIAタンパク質の断片の化学的誘導体が提供され、そのポリペプチドは、
通常はタンパク質の一部ではない追加的な化学成分もしくは修飾アミノ酸を含む
。かくして、タンパク質の共有結合的もしくは非共有結合的修飾が本発明の範囲
内に含まれる。このような修飾は、ポリペプチドの標的アミノ酸残基を、選択さ
れた側鎖もしくは末端残基と反応できる有機誘導化試薬と反応させることによっ
てIAポリペプチド中に導入され得る。以下の化学誘導体の例は説明のみを目的
としており、限定を意図したものではない。
【0113】 芳香属アミノ酸は、D−もしくはL−ナフチルアラニン、D−もしくはL−フ
ェニルグリシン、D−もしくはL−2−チエニルアラニン、D−もしくはL−1
−,2−,3−もしくは4−ピレニルアラニン、D−もしくはL−3−チエニルア
ラニン、D−もしくはL−(2−ピリジニル)−アラニン、D−もしくはL−(3
−ピリジニル)−アラニン、D−もしくはL−(2−ピラジニル)−アラニン、D
−もしくはL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン、D−(トリフルオロメ
チル)−フェニルグリシン、D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン、D
−p−フルオロフェニルアラニン、D−もしくはL−p−ビフェニルフェニルア
ラニン、D−もしくはL−p−メトキシビフェニルフェニルアラニン、D−もし
くはL−2−インドール(アルキル)アラニン類、およびアルキル基がC1〜C2
0の置換、もしくは非置換のメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペ
ンチル、イソプロピル、イソブチル、sec−イソチル、イソペンチル、非酸性
アミノ酸類であるD−もしくはL−アルキルアミン類で置換することができる。
【0114】 アミノ酸は、非限定的な例としての(ホスホノ)アラニン、(ホスホノ)グリシン
、(ホスホノ)ロイシン、(ホスホノ)イソロイシン、(ホスホノ)スレオニン、もし
くは(ホスホノ)セリン;もしくは硫酸化(即ち、−SOH)スレオニン、セリン
、チロシンなどの、カルボン酸を有しないが陰性荷電を保持しているアミノ酸、
およびその誘導体もしくはアナログで置換することができる。
【0115】 他の置換としては、いかなる天然アミノ酸に「アルキル」を結合させることに
より作り得る非天然の水酸化アミノ酸を含み得る。ここで用いた「アルキル」と
いう用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ
ブチル、t−ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコ
シル、テトラシシルなどのような1〜24個の炭素原子を有する分岐もしくは非
分岐の飽和炭化水素群をいう。ここで好ましいアルキル基は1〜12個の炭素原
子を含有する。アルキル基の定義には、C5およびC6環のようなシクロアルキ
ル基、および窒素、酸素、硫黄もしくはリンを含む複素環もまた含まれる。アル
キルはまた、ヘテロアルキル基を含み、ヘテロ原子としては硫黄、酸素、および
窒素が好ましい。アルキルは置換アルキル基を含む。ここで「置換アルキル基」
とは、一つもしくはそれ以上の置換部分をさらに含むアルキル基を意味する。好
ましいヘテロアルキル基はアルキルアミンである。ここで「アルキルアミン」も
しくは文法的同意語は、いずれの位置においてアミの基で置換された上で定義し
たアルキル基を意味する。加えて、アルキルアミンは、アルキル基について上に
略述したような他の置換基を持つこともできる。アミンは一級(−NHR)、二
級(−NHR)、もしくは三級(−NR)でもよい。塩基性アミノ酸は、天然に
存在するアミノ酸であるリシン、アルギニン、オルニチン、シトルリン、もしく
は(グアニジノ)−酢酸、もしくは他の(グアニジノ)アルキル−酢酸のどの位置に
おいてアルキル基で置換してもよく、ここで「アルキル」は上に規定されたもの
である。ニトリル誘導体(例、COOHの代わりにCN−部分を有する)もアスパ
ラギンもしくはグルタミンの代わりに用いることができ、そしてメチオニンスル
フォキシドをメチオニンの代わりに用い得る。そのようなペプチド誘導体の調製
法は当業者に周知である。 加えて、いずれのIAポリペプチドの中のアミド結合もケトメチレン部分で置
換することができる。このような誘導体は酵素分解に対して安定性が増大した性
質を有していると期待され、それゆえ、経口、静脈、筋肉内、腹膜内、局所的、
直腸的、眼内、または他の経路による投与の場合に、インビボ半減期が増強され
得るという化合物の製剤化についての利点を有する。
【0116】 本発明のIAポリペプチドのアミノ酸の追加的な修飾は以下のものを含み得る
:システイニル残基は2−クロロ酢酸もしくはクロロアセタミドのようなα−ハ
ロ酢酸類(および対応するアミン類)と反応させてカルボメチルもしくはカルボキ
シアミドメチル誘導体にしてもよい。システイニル残基はまた、ブロモトリフル
オロアセトン、アルファ−ブロモ−ベータ−(5−イミダゾイル)プロピオン酸、
クロロアセチルリン酸塩(エステル)、N−アルキルマレインイミド類、3−ニト
ロ−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメル
クリ安息香酸塩(エステル)、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、もし
くはクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールのような化合
物と反応させて誘導体化してもよい。
【0117】 ヒスチジル基は、例えばpH5.5〜7.0でジエチルプロカルボネートのよう
な化合物との反応により誘導体化してもよいが、何故ならば、この試薬はヒスチ
ジル側鎖に相対的に特異的だからであり、そして臭化パラ−ブロモフェナシルも
用いることができる;例えば、その場合には反応は0.1Mカコジル酸ナトリウ
ム中pH6.0で行うのが好ましい。
【0118】 リシン残基およびアミノ末端の残基は無水コハク酸もしくはその他の酸無水物
のような化合物と反応させてもよい。これらの試薬による誘導体化はリシン残基
の荷電を逆転させる効果があると期待される。アルファ‐アミノ含有残基を誘導
化するために適切な試薬は、例えばメチルピコリンイミデートのようなイミドエ
ステル類;ピリドキサルリン酸、ピリドキサール;塩化水素化ホウ素;トリニト
ロベンゼンスルホン酸;O−メチルイソウレア;2,4ペンタンジオン;および
トランスアミナーゼで触媒されるグリオキサル酸との反応、のような化合物を含
む。
【0119】 アルギニン残基は一個もしくは数個の従来の試薬と既知の方法工程に従って反
応させて修飾することができ、その試薬の中にはフェニルグリオキサール、2,
3−ブタンジエン、1,2−シクロヘキサンジオン、およびニンヒドリンが含ま
れる。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジンの官能基の高いpKaのため、
アルカリ性の条件で反応を行う必要がある。さらに、これらの試薬は、リシンの
基ならびにアルギニンのイプシロンアミノ基とも反応し得る。
【0120】 チロシン残基自身の特異的修飾は、芳香性ジアゾニウム化合物もしくはテトラ
ニトロメタンとの反応によって、スペクトル標識をチロシン残基に導入する場合
のように周知である。N−アセチルイミダゾールおよびテトラニトロメタンを用
いてそれぞれO−アセチルチロシン種および3−ニトロ誘導体を形成し得る。
【0121】 カルボキシル側鎖(アスパルチルおよびグルタミル)は、1−シクロヘキシル‐
3−(2−モルフォリニル‐(4−エチル)カルボジイミドもしくは1−エチル‐
3−(4−アゾニア‐4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドのようなカルボ
ジイミド(R’−N−C−N−R’)との反応で選択的に修飾することができる。
さらに、アスパルチルおよびグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応で
アスパラギニルおよびグルタミニル残基に変換することができる。
【0122】 グルタミニルおよびアスパラギニル残基は、しばしば脱アミド化されて対応す
るグルタミルおよびアスパルチル残基になり得る。一方、これらの残基は緩和な
酸性条件下で脱アミド化することもできる。これらの残基のいずれの形も本発明
の範囲内である。
【0123】 インシュリンは、どの種類の生物由来であってよいが、哺乳動物由来のインシ
ュリンが特に好ましい。適切な哺乳動物には、限定するものではないが、齧歯動
物(ラット、マウス、ハムスター、モルモットなど)、霊長類、家畜(ヒツジ、ヤ
ギ、ブタ、ウシ、ウマなどを含む)が含まれ、そして最も好ましい実施態様では
、ヒト由来のものである(この配列を図1に描写する)。当業者には認識され得る
とおり、ヒト以外の哺乳動物由来のインシュリンに基づくインシュリンは、ヒト
の疾病の動物モデルで有用性があるであろう。様々な哺乳動物のインシュリン種
のジーンバンク受託番号は次のとおりである:ウシ、IPBO;イヌ、IPDG;ヒツジ
、INSH;ネコ、INCT;ブタ、IPPG;マウス、INMS1、INMS2;ラット、IPRT1、IPR
T2;ウマ、IPHO;ウサギ、INRB;モルモット、IPGP;ハムスター、INHY;ヤギ、
INGT、チンパンジー、A42179;サバンナモンキー、B42179;およびヒト、IPHU。
【0124】 本発明のIAタンパク質は、インシュリンの生物学的機能の少なくとも1つを
顕わす。本明細書中の"インシュリン"は、野生型インシュリン、その対立変異体
、またはある種のA鎖と他の種のB鎖との組合せから形成されたハイブリッドを
意味する。従って、インシュリンは、容認されたインシュリンアッセイで活性で
ある、全ての形態のインシュリンを指す。
【0125】 本発明のIAタンパク質は、インシュリンの生物学的機能の少なくとも1つを
顕わす。本明細書中の"生物学的機能"または"生物学的特性"は、インシュリンの
特性または機能のいずれかを意味し、限定するものではないが、下記を含む:天
然産生インシュリンレセプターと結合する能力;組換えインシュリンレセプター
と結合する能力;インシュリンレセプターを含む細胞と結合する能力;インシュ
リンレセプターの自己リン酸化を誘導する能力[Combettes-Souverain and Issad
, Diabetes Metab. 24 (6): 477-89 (1998)];Na+/K=-ATPアーゼを調節する能力
[Sweeney and Klip, Mol. Cell. Biochem. 182 (1-2): 121-33 (1998)];活性化
/不活性化サイクルを調節する能力[Ceresa and Pessin. Mol. Cell. Biochem. 1
82 (1-2): 23-9(1998)];1型糖尿病を処置する能力、2型糖尿病を処置する能
力;インシュリン依存性異常を処置する能力;高血糖を処置する能力;家族性高
プロインシュリン血症を処置する能力;炭水化物代謝を処置する能力;骨格筋タ
ンパク質代謝回転を調節する能力[Grizard et al., Reprod. Nutr. Dev. 39(1):
61-74(1999)];であるが、細胞代謝、細胞増殖、細胞分化を含むがそれらに限定
されない細胞内プロセスを調節する能力[Rizzo and Romero, j. Basic Clin. Ph
ysiol. pharmaol. 9(2-4): 167-95 (1998)];多量体を形成する能力;亜鉛と結
合する能力;およびフェノール系保存剤と結合する能力。
【0126】 これらのIAタンパク質は全て、野生型インシュリンの少なくとも20%のレセ
プター結合または生物活性を示す。さらに好ましいのは、野生型インシュリンと
比較して、レセプター結合または生物活性の発現において少なくとも50%を示す
IAタンパク質、さらに好ましいのは少なくとも90%を示すIAタンパク質、最
も好ましくは100%を超えるIAタンパク質である。生物学的アッセイ、レセプタ
ー結合アッセイ、およびインシュリンの活性、安定性、構造、有効性などを測定
する他のアッセイは、例えば、例として米国特許第4,421,685;4,992,417;5,00
8,241;5,506,202;5,514,646;5,559,094;5,618,913;5,621,073;5,663,291
;5,700,662;および6,034,054号、そしてさらにMarki et al. [Hoppe Seylers
Z. Phsiol. Chem. 360 (11): 1619-32 (1979)];Hu et al. [Biochemistry 32 (
10): 2631-5 (1993)];Schwartz et al. [Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 84
(18): 6408-11 (1987)];Kitagawa et al. [Biochemistry 23 (7): 1405-13 (1
984)];Kobayashi et al. [Biochem. Biophys. Res. Commun.107 (1): 329-36 (
1982)];Shoelson et al. [Biochemistry 31 (6): 1757-67 (1992)];Hua et al
. [Nature 354: 238-241 (1991)], Bao et al. [Proc. Natl. Acad. Sci. U. S.
A. 94: 2975-2980 (1997)];Kitagawa et al.[Biochemistry 23: 1405-1413 (1
984)];Nakagawa and Tager [Biochemistry 31: 3204-3214 (1992)];Brader et
al. [Biochemistry 30: 6636-6645 (1991)];およびこれらの引用文献に記載さ
れており、出典明示により本明細書の一部とする。
【0127】 ある実施態様では、IAタンパク質の少なくとも一つの生物学的性質がインシ
ュリンの同じ性質と比較した場合に変更されている。上に略述したように、この
発明はIAポリヌクレオチドをコードするIA核酸を提供する。IAポリヌクレ
オチドは好ましくは、対応する天然に存在するインシュリンの同じ性質と実質的
に異なる少なくとも一つの性質を有している。IAポリペプチドの性質は本発明
のPDA分析の結果である。
【0128】 ここで用いる限りでは、ポリペプチドとの関係における「変化した性質」とい
う用語もしくはその文法的同意語は、選択されもしくは検出されそして天然に存
在するインシュリンタンパク質の対応する性質と比較され得るポリペプチドのい
かなる特性ないし属性を意味する。これらの性質としては、酸化に対する安定性
、長期保存性、熱安定性、アルカリ安定性、pH活性プロフィール、タンパク質
分解に対する抵抗性、反応動力学的会合(Kon)および解離(Koff)速度、タ
ンパク質の折りたたみ(免疫応答を誘発する)、インシュリンレセプターに結合す
る能力、被分泌能力、オリゴマー化能力、2量体を形成する能力、4量体を形成
する能力、6量体を形成する能力、亜鉛と複合体化する能力、フェノール系保存
剤と結合する能力、効力を調節する能力、R状態に対する選択性、T状態に対す
る選択性、シグナル能力、細胞増殖を調節する能力、リン酸化もしくはグリコシ
ル化による被修飾能力、高血糖を処置する能力、真性糖尿病を処置する能力、1
型糖尿病を処置する能力、2型糖尿病を処置する能力;インシュリン依存性異常
を処置する能力;インシュリン非依存性異常を処置する能力;患者のホルモン性
ホメオスタシスを実現する能力;糖尿病患者の血液を洗浄化する能力を非限定的
に含む。
【0129】 特に限定しない限り、IAポリペプチドの性質を天然に存在するインシュリン
タンパク質の性質と比較した場合における、上にリストした性質のいずれについ
てもその実質的な変化は、好ましくは少なくとも20%であり、さらに好ましく
は50%であり、より好ましくは少なくとも2倍の増加もしくは減少である。
【0130】 酸化安定性の変化は、IAタンパク質を種々の酸化条件に曝露した場合、イン
シュリンの活性と比較して少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%
増加することにより証明される。酸化安定性は既知の方法により測定される。
【0131】 アルカリ安定性の変化は、増加または減少するpH条件に曝露した場合に、イ
ンシュリンの場合と比較して、IAタンパク質の活性の半減期が、少なくとも約
50%またはそれ以上増加したまたは減少した(好ましくは増加した)ことによっ
て明示される。一般に、アルカリ安定性は既知の手法で測定される。
【0132】 熱安定性の変化は、比較的高い温度で中性pHに曝露した場合に、インシュリ
ンの場合と比較して、IAタンパク質の活性の半減期が少なくとも約50%また
はそれ以上増加したまたは減少した(好ましくは増加した)ことによって明示され
る。一般に、熱安定性は既知の手法で測定される。好ましい実施態様では、本発
明のIAタンパク質は、ヒトインシュリンと比較して熱安定性が増強されている
。IAタンパク質などは、ヒトインシュリンのアミノ酸配列と比較した場合、好
ましくは1またはそれ以上のアミノ酸残基の置換を含むアミノ酸配列を有する。
本実施態様のある態様では、IAタンパク質のアミノ酸配列は、ヒトインシュリ
ンのアミノ酸配列と比較した場合、2,3,4,5,6,7,8,9,10またはそれ以上の置換を
含む。
【0133】 同様に、IAタンパク質を、例えば、インビボおよびインビトロアッセイで実
験的に試験し、確認する。適切なアッセイとして、限定するものではないが、例
えば、天然産生または変異体レセプターおよび高親和性アゴニストおよび/また
はアンタゴニストに対する結合親和性の試験が含まれる。細胞を含まない生化学
的親和性試験に加えて、定量的比較を、天然産生インシュリンおよびIAタンパ
ク質に対する、天然のレセプターの運動および平衡結合定数の比較で行なう。運
動会合速度(Kオン)、および解離速度(Kオフ)、および平衡結合定数(Kd)を、BIA
コア計器で表面プラズモン共鳴を使用し、下記の文献中の標準手順に従って測定
することができる[Pearce et al., Biochemistry 38:81-89 (1999)]。天然レセ
プターとその対応する天然産生インシュリンとの結合定数を、天然産生レセプタ
ーの結合定数と比較し、そしてIAタンパク質の感度および特異性を評価するた
めにIAタンパク質を調製した。好ましくは、IAタンパク質の天然レセプター
およびアゴニストに対する結合親和性は、天然産生インシュリンに関連して増加
するが、一方、アンタゴニスト親和性は減少する。インシュリンに関連してアン
タゴニストに対して高親和性を有するIAタンパク質もまた、本発明の方法によ
って調製することができる
【0134】 ある好ましい実施態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリンと
比較した場合、調節された有効性を有する。本明細書中の"調節された有効性"と
は、IAタンパク質は、ヒトインシュリンと比較した場合に応じて、増加(有効
性が高い)または減少(有効性が小さい)を引き起こすことを意味する。この応答
は、上記のIAタンパク質の生物学的性質に起因する任意の応答を含む。本実施
態様のある態様では、調節された有効性は、早期作用性IAタンパク質、緩慢作
用性IAタンパク質、長時間作用性IAタンパク質、短時間作用性IAタンパク
質、または低濃度でのヒトインシュリンと同様の応答によってもたらされる。I
Aタンパク質などは、好ましくは、ヒトインシュリンのアミノ酸配列と比較した
場合、4またはそれ以上のアミノ酸残基の置換を含む、アミノ酸配列を有する。
本実施態様のある態様では、IAタンパク質のアミノ酸配列は、ヒトインシュリ
ンのアミノ酸配列と比較して5,6,7,8,9,10,またはそれ以上の置換を含む。 ある好ましい実施態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリンと
比較して、6量体形成の増強を示す。本明細書中の"6量体形成の増強"の用語は
、あるIAタンパク質がヒトインシュリンより低い濃度で6量体を形成すること
、またはあるIAタンパク質によって形成された6量体がヒトインシュリンによ
って形成されたものより安定であることを意味する。そのようなIAタンパク質
は、ヒトインシュリンのアミノ酸配列と比較した場合、好ましくは、1またはそ
れ以上のアミノ酸残基の置換を含むアミノ酸配列を有する。本実施態様のある態
様では、IAタンパク質のアミノ酸配列は、ヒトインシュリンのアミノ酸配列と
比較した場合、2,3,4,5,6,7,8,9,10,またはそれ以上の置換を含む。
【0135】 ある好ましい実施態様では、本発明のIAタンパク質は、ヒトインシュリンと
比較して、R状態に対して高められた選択性を有する。本明細書中の"R状態に
対して高められた選択性"の用語は、ヒトインシュリンと比較した場合、IAタ
ンパク質の中ではT状態である部分よりもR状態である部分の方が多いことを意
味する。IAタンパク質などは、ヒトインシュリンのアミノ酸配列と比較した場
合、好ましくは、3またはそれ以上のアミノ酸残基の置換を含むアミノ酸配列を
有する。本実施態様のある態様では、IAタンパク質のアミノ酸配列は、ヒトイ
ンシュリンのアミノ酸配列と比較した場合、4,5,6,7,8,9,10,またはそれ以上の
置換を含む。
【0136】 先行技術に記載されているように、亜鉛およびフェノール系保存剤の両方が、
安定でありかつ迅速な解離と作用開始が可能な複合体を実現するのに必須なもの
である。この6量体複合体は、6量体のインシュリンあたり2つの亜鉛イオンと
、少なくとも3分子のフェノール系保存剤とからなる。本明細書中で使用すると
き、"フェノール系保存剤"とは、クロロクレゾール、m-クレゾール、フェノール
、またはそれらの混合物を指す。好ましい実施態様では、IAタンパク質は、フ
ェノール系保存剤と結合しないか、またはインシュリンよりも結合が少ない。
【0137】 高インシュリン濃度は、オリゴマー形成、即ち、2量体、4量体および6量体
の形成をもたらす。好ましい実施態様では、IAタンパク質は、対応する野生型
インシュリンより低い濃度で、オリゴマー形成する。
【0138】 糖尿病の処置用のインシュリン製剤を、適切な治療量の活性化合物として投与
し、ホルモン性ホメオスタシスを実現する。好ましい実施態様では、IAタンパ
ク質は、インビトロで、天然のインシュリンより有効である。本実施態様のある
態様では、糖尿病患者または動物モデルにおける、ホメオスタシスに達する治療
量のIAタンパク質は、治療量の野生型インシュリンよりも少ないと考えられる
。様々な動物モデル、例えば、糖尿病が自律的に進展する、BBマウス[Nakbookda et al., Diabetologia 14 (3): 199-207 (1978)]およびNOD(非肥満性糖尿病の)
マウス[Prochazka et al., Science 237 (4812): 286-9 (1987)]などを使用する
ことができる。
【0139】 血液由来のインシュリンクリアランスは、細胞上のインシュリンレセプターに
よって媒介される。好ましい実施態様では、IAタンパク質は、野生型インシュ
リンよりも、インシュリンレセプターとより緊密に結合する。本実施態様のある
態様では、IAタンパク質野生型インシュリンより速い速度で、患者の血液から
除去されると考えられる。その結果として、さらに、糖尿病の処置では、循環す
るインシュリンの成長促進効果に関連する血管毒性が、IAタンパク質の使用に
よって減少すると考えられる。
【0140】 上記のように、IAタンパク質の生物学的機能の1つは、IAタンパク質がイ
ンシュリンレセプターを含む細胞に結合する能力である。インシュリンレセプタ
ー(IR)に対するジーンバンク受託番号が様々な種について入手可能である:例え
ば、ヒト、INHUR、P06213、NP_000199;マウス、A34157、 P15208;そしてラッ
ト、A36080、P15127。
【0141】 好ましい実施態様では、IA測定に使用するアッセイシステムは、内因性イン
シュリンレセプターのいずれかを発現する細胞を使用するか、またはヒトインシ
ュリンレセプターをコードする遺伝子またはヒトインシュリンを結合すると知ら
れている他種由来のインシュリンレセプター(例えばマウス)をコードする遺伝子
を安定にトランスフェクトした細胞を使用する、インビトロシステムである。こ
のシステムでは、細胞増殖を、増殖する細胞の核酸中に取込まれるBrdU取り込み
の関数として測定する。IAの指標は、バックグラウンドを超える減少が、少な
くとも約10%であり、少なくとも約20%が好ましく、少なくとも約30%がより好ま
しく、そして少なくとも約50%、75%および90%であることが特に好ましい。
【0142】 他の好ましい実施態様では、インシュリンレセプターの自己リン酸化(インシ
ュリン結合のあとに起こる)を、既知のリン酸化アッセイを使用して測定する。
【0143】 好ましい実施態様では、IAタンパク質の宿主動物における抗原性特徴が、宿
主インシュリンの抗原性特徴と類似し、好ましくは同一である;即ち、IAタン
パク質は宿主生物(例えば患者)を免疫応答に対して顕著に刺激するのではない;
即ち、何れの免疫応答も臨床的に関連があるわけではなく、そして抗体によるア
レルギー性応答またはタンパク質の中和もない。つまり、好ましい実施態様では
、IAタンパク質は、インシュリン由来の別のまたは異なるエピトープを含有す
るものではない。本明細書中の"エピトープ"または"決定因子"は、抗体を産生お
よび/または結合し得るタンパク質の部分を意味する。従って、多くの場合、有
意な量の抗体がIAタンパク質に対して産生されない。一般に、これを行なうに
は、表面残留物を有意に変化させて行なわれるものでもなく、下記のように新た
なグリコシル化は免疫応答を生じ得るものであるから、グリコシル化され得る表
面上に任意のアミノ酸残基を加えることによって行なわれるものでもない。
【0144】 この発明のIAタンパク質および核酸は、天然に存在するインシュリンから識
別可能である。ここにおいて「天然に存在する」もしくは「野生型」もしくはそ
の文法的同意語は、天然に見出されるアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列を
意味し、対立遺伝子変異体;即ち、意図的に修飾されていないアミノ酸配列もし
くはヌクレオチド配列を含む。したがって、ここにおいて「天然に存在しない」
もしくは「合成」もしくは「組換え」またはそれらの文法的同意語は、天然に見
出されないアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列;即ち、通常意図的に修飾さ
れたアミノ酸配列もしくはヌクレオチド配列を意味する。一旦組換え核酸が作成
され宿主細胞もしくは生物に再導入されれば、それは非組換え的に、即ちインビ
トロの操作ではなく宿主のインビボの細胞機構を用いて増幅すると理解される。
しかしながら、そのような核酸は、一旦組換え的に生産されれば、以後は非組換
え的に複製してもこの発明の目的には組換え体と考えられる。代表的な天然に存
在するヒトインシュリンのアミノ酸配列を図1に示す。特に断らない限り、IA
タンパク質およびIA核酸の部位の番号付けはこれらの配列に基づいている。即
ち、当業者により認識されるであろうように、インシュリンタンパク質およびI
Aタンパク質のアラインメントは、以下に略述するように標準的プログラムを用
いて、両タンパク質間の「同等」部位の同定により行うことができる。かくして
、この発明のIAタンパク質と核酸は天然には存在しない、即ち自然界には存在
しない。
【0145】 このように、好ましい実施態様では、IAタンパク質は残基が野生型インシュ
リンの配列から少なくとも2%異なっている。即ち、この発明のIAタンパク質
はインシュリンのアミノ酸配列と98%以下の同等性である。したがって、もし
図1Aもしくは図1Bに示されているタンパク質の配列のアミノ酸配列に対する
全体的相同性が、好ましくは約98%以下、より好ましくは約95%以下、さら
により好ましくは90%以下、そして最も好ましくは85%以下であるならば、
タンパク質は「IAタンパク質」である。或る実施態様では、この相同性は約7
5〜80%のように低いであろう。他の実施態様では相同性が50〜70%のう
ように低いであろう。換言すれば、51残基のヒトインシュリン配列(図1B参
照)に基けば、IAタンパク質はヒトインシュリンの配列と異なる残基を少なく
とも約1残基(2%)有し、ヒトインシュリンの配列と2残基から25残基まで異
なる。好ましいIAタンパク質は1〜20個の異なる残基を有し、2〜10個が
特に好ましい(即ち、タンパク質の約4〜20%がヒトインシュリンと同一でな
い)。
【0146】 この文脈における相同性は配列の類似性もしくは同一性を意味し、同一性が好
ましい。技術上周知のように、タンパク質(もしくは以下に考察するように核酸)
が既知配列と配列同一性もしくは類似性を有しているか否かを同定するために多
数の異なるプログラムを使用することができる。配列同一性および/もしくは類
似性は技術上周知の標準的技法を用いて測定することができ、それらは、Smith
& Waterman, Adv. Appl. Math., 2: 482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズム
、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol., 48: 443 (1970)の配列同一性アライン
メント、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85: 2444 (1988)
の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisco
nsin Genetics Software Package、Genetics C
omputer Group, 575 Science Drive, Madison, WI)、中のGAP、BESTFI
T、FASTAおよびTFASTA)、Devereux et al., Nucl. Acid Res., 12:
387-395 (1984)に記載のBest Fit配列プログラム、を非限定的に含み
、好ましくはデフォルトセッティングを用い、もしくは検定により使用する。好
ましくは、FstDBにより以下のパラメータに基づいてパーセント同一性を計
算する:ミスマッチペナルティー1;ギャップサイズペナルティー0.33;連
結ペナルティー1、「Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,
」Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applicati
ons, pp 127-149 (1988), Alan R. Liss, Inc.である。
【0147】 有用なアルゴリズムの一例はPILEUPである。PILEUPは、漸進的対
アラインメントを用いて関連配列からのグループから多重配列アラインメントを
創成する。それはまた、アラインメント創成に使用される、クラスタリングの関
係を示すツリーを描くことができる。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. M
ol. Evol. 35: 351-360 (1987)の漸進的アラインメント法の簡略化したものを用
いる;この方法はHiggins & Sharp CABIOS 5: 151-153 (1989)記載の方法と類似
している。有用なPILEUPアラインメントはデフォルトギャップウェイト3
.00、デフォルトギャップ長ウェイト0.10、および重みつきエンドギャップ
を含む。
【0148】 有用なアルゴリズムのもう一つの例は、Altschul et al., J. Mol. Biol. 215
, 403-410, (1990); Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402 (19
97); and Karlin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90: 5873-5787 (199
3)に記載のBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは
、Altschul et al., Methods in Enzymology, 266: 460-480 (1996); http://bl
ast.wustl/edu/blast/ README.html]から得られるWU−BLAST−2である
。WU−BLAST−2はいくつかの検索パラメータを使用するがその殆どはデ
フォルト値に設定されている。調整可能なパラメータは以下の値で設定する:オ
ーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード域
値(T)=11である。HSP SおよびHSP S2パラメータは動的数値であ
り、特定の配列の組成および興味の対象である配列を検索する特定のデータベー
スに依存してプログラム自身により決定されるが、値は感度を上げるように調整
することができる。
【0149】 これに加えて有用なアルゴリズムは、Altschul et al., Nucl. Acids Res., 2
5: 3389-3402に報告されているギャップドBLASTである。ギャップドBLA
STはBLOSUM−62代替スコアを使用する。ここで域値Tパラメータは9
に設定し;2−ヒット法によりギャップのない伸長を開始し;ギャップ長kにコ
スト10+kを課し;Xを16に設定し;Xをデータベース検索ステージで
は40そしてアルゴリズムのアウトプットステージでは67に設定する。ギャッ
プドアラインメントは約22ビットに相当するスコアで開始される。
【0150】 パーセントアミノ酸配列同一性は、マッチする同一残基の数を、アラインメン
トを行った領域における「より長い」配列の総残基数で割った値により決定され
る。「より長い」配列は、アラインメントを行った領域中実際の残基を最も多く
有する配列である(アラインメントスコアを最大化するためにWU−Blast
−2により導入されたギャップを無視する)。
【0151】 同様にして、ここで同定されたポリペプチドのコーディング配列に関する「パ
ーセント(%)核酸配列同一性」を、細胞周期タンパク質のコーディング配列中の
ヌクレオチド残基と同一な候補配列中のヌクレオチド残基のパーセントとして定
義する。好ましい方法は、WU−BLAST−2のBLASTNモジュールをデ
フォルトパラメータに設定し、オーバーラップスパンおよびオーバーラップフラ
クションをそれぞれ1および0.125に設定して利用するものである。
【0152】 アラインメントはアラインメントを行う配列中へのギャップ導入を含んでもよ
い。加えて、図1の配列でコード化されるタンパク質より多いもしくは少ないア
ミノ酸を含有する配列については、一つの実施態様では、配列同一性のパーセン
テージはアミノ酸総数に対する同一アミノ酸数に基づいて決定されると理解され
る。かくして、例えば、図1に示される配列より短い配列の配列同一性は、一つ
の実施態様ではより短い配列中のアミノ酸数を用いて決定される。パーセント同
一性の計算においては、相対的重みは挿入、欠失、置換その他のような配列変化
の種々の操作には割り当てない。
【0153】 一つの実施態様では、同一性のみがプラスのスコア(+1)を与えられ、ギャプ
を含む他の全ての配列の形には「0」値が割り当てられ、これにより配列類似性
計算について以下に記述するような重みをつけた目盛りもしくはパラメーターの
必要性がなくなる。パーセント配列同一性は、例えば、マッチする同一残基数を
アラインメントを行った領域中の「より短い」配列の総残基数で割り、100倍
することにより計算することができる。「より長い」配列はアラインメントを行
った領域中に実際の残基を最も多く有する配列である。
【0154】 かくして、この発明のIAタンパク質は図1に示されるアミノ酸配列より短く
ても長くてもよい。かくして、好ましい実施態様では、ここに示される配列の一
部分もしくは断片はIAタンパク質の定義に含まれる。IAタンパク質の断片は
、もしそれらがa)少なくとも一個の抗原エピトープを共有し、b)少なくとも規
定の相同性を有し、c)かつ好ましくはここで規定されるIAの生物活性を有す
るならば、IAタンパク質と考えられる。
【0155】 好ましい実施態様では、以下にさらに説明するように、本発明のIAタンパク
質は、野生型インシュリンと比較して、本明細書中に説明したものよりもさらな
るアミノ酸変型を含む。加えて、本明細書中に説明したように、本明細書中に記
載した任意の変型を任意に組合せて、別の新規なIAタンパク質を形成すること
ができる。
【0156】 加えて、図に描写したものよりも長いIAタンパク質を、例えば、エピトープ
または精製タグを加え、本明細書中に説明したように他の融合配列などを加えて
、調製することができる。例えば、本発明のIAタンパク質を、薬物動態学的目
的で、他の治療タンパク質(例えばIL-11)と、または他のタンパク質(例えばFcま
たは血清アルブミン)と、融合することができる。例えば米国特許第5,766,883お
よび5,876,969参照、両方とも出典明示により本明細書の一部とする。
【0157】 好ましい実施態様では、IAタンパク質は、改善された安定性について全体的
に機能を改められている。本実施態様のある態様では、IAタンパク質はコア残
基中に可変残基を含む。
【0158】 一実施態様においては、可変コア位置は他の19アミノ酸のいずれかに変えら
れる。好ましい実施態様においては、可変コア残基はAla, Val, Phe, Ile, Leu,
Tyr , TrpおよびMetから選ばれる。別の好ましい実施態様においては、可変コ
ア残基はAla, Val, Leu, Ile, Phe, TyrおよびTrpから選ばれる。別の好ましい
実施態様においては、可変コア残基はAla, Val, leu, IleおよびGlyから選ばれ
る。
【0159】 ヒトインシュリンのコア残基は以下のとおりである。すなわち、位置A2, A3,
A16, B11, B15およびB24、ここでは「A」はインシュリンA鎖中の残基を表し、
数字はA鎖中の位置を指し示す。それに応じて、「B」はインシュリンB鎖中の
残基を表し、数字はB鎖中の位置を指し示す。成熟型インシュリンの中では、A
鎖は1−21の、B鎖は22−51の、図1Bに示されるアミノ酸配列からなる
。いくつかの実施態様においては、明確にB鎖に言及するとき、残基22−51
はまた、それぞれB1‐B30と表される。従って、好ましい実施態様において、
IAタンパク質は、位置A2, A3, A16, B11, B15およびB24から選択される可変位
置をもつ。
【0160】 好ましい実施態様において、本発明のIAタンパク質は位置A2, A3, A16, B11
, B15またはB24から選択される少なくとも一つのアミノ酸位置において野生型ヒ
トインシュリンと異なる配列をもつ。
【0161】 それぞれの位置に好ましいアミノ酸置換は以下の通りである。位置A3: Ile;
位置A16: Tyr; 位置B11: Ile;および位置B24: Tyr。位置A2において好ましいア
ミノ酸はIle (野生型)、B15においてはLeu(野生型)である。上記に列挙されたア
ミノ酸置換のいかなる組み合わせも可能であり、インシュリンよりも安定なIA
タンパク質を作る結果となるはずである。
【0162】 好ましい実施態様において、IAタンパク質はヒトインシュリンのコア残基から
単独で選択される可変位置をもつ。または、少なくとも可変位置の大多数(51%)
がコア領域から選択され、好ましくは少なくとも可変位置の約75%がコア領域か
ら選択され、特に好ましくは少なくとも可変位置の約90%がコア領域から選択さ
れる。とりわけ好ましい実施態様では、可変コア領域のみがヒトインシュリンと
比べて変えられる。
【0163】 この好ましい実施態様の別の態様においては、全体的に再設計されたIAタン
パク質は境界残基の中に可変残基を含む。
【0164】 ヒトインシュリンの境界残基は以下の通りである。位置A5, A15, A17, A19, A
21, B2, B3, B4, B8, B12, B14, B18, B22, B26およびB28。従って、好ましい実
施態様では、IAタンパク質はこれらの位置から選択される可変位置をもつ。
【0165】 好ましい実施態様において、本発明のIAタンパク質は位置A5, A15, A17, A1
9, A21, B2, B3, B4, B8, B12, B14, B18, B22, B25またはB28から選択される少
なくとも一つのアミノ酸位置において野生型ヒトインシュリンと異なる配列をも
つ。
【0166】 それぞれの位置に好ましいアミノ酸置換は以下の通りである。位置A5: Gluおよ
び Arg; 位置A15: Glu, LeuおよびArg; 位置A17: Lys, Trp, GlnおよびTyr; 位
置A19: Phe; 位置A21: Asp, GlnおよびArg; 位置B2: Lys, 位置B4: PheおよびTy
r; 位置B8: Lys, Leu, Glu; 位置B12: ArgおよびLys; 位置B14: Glu and Trp;
位置B18: Lys; 位置B22: Gln; 位置B25: Asn; ならびに位置B28: PheおよびAsn
。位置B3において好ましいアミノ酸はAsn(野生型)である。上記に列挙されたア
ミノ酸置換のいかなる組み合わせも可能であり、インシュリンよりも安定なIAタ
ンパク質を作る結果となるはずである。
【0167】 この好ましい実施態様の別の態様においては、全体的に再設計されたIAタン
パク質は表面残基の中に可変残基を含む。
【0168】 ヒトインシュリンの境界残基は以下の通りである。位置A1, A4, A8, A9, A10,
A12, A13, A14, A18, B1, B5, B6, B9, B10, B13, B16, B17, B21, B25 B27, B
29およびB30。従って、好ましい実施態様では、IAタンパク質はこれらの位置
から選択される可変位置をもつ。
【0169】 好ましい実施態様において、本発明のIAタンパク質は位置A1, A4, A8, A9,
A10, A12, A13, A14, A18, B1, B5, B6, B9, B10, B13, B16, B17, B21, B25 B2
7, B29およびB30から選択される少なくとも一つのアミノ酸位置において野生型
ヒトインシュリンと異なる配列をもつ。
【0170】 それぞれの位置に好ましいアミノ酸置換は以下の通りである。位置A1: Asn;
位置A4: Gln; 位置A8: AspおよびGln; 位置A9: AsnおよびGln; 位置A10: Gln;
位置A12: Lys, GlnおよびThr; 位置A13: Glu; 位置A14: Arg and Lys; 位置A18:
Ser, Glu, LysおよびArg; 位置B1: Asp; 位置B5: Glu, LysおよびArg; 位置B6:
Glu, Gln, LysおよびArg; 位置B9: Arg, GluおよびGln; 位置B10: Arg, Gluお
よびGln; 位置B13: Asn; 位置B16: GluおよびArg; 位置B17: Lys; 位置B21: Arg
, Glnおよび Lys; 位置B25: Asn; 位置B27: Asp; 位置B29: Thr, Ser, Asnおよ
びGlu; ならびに位置B30: SerおよびAla。上記に列挙されたアミノ酸置換のいか
なる組み合わせも可能であり、インシュリンよりも安定なIAタンパク質を作る
結果となるはずである。
【0171】 好ましい実施態様において、IAタンパク質はコア残基、および/または境界
残基、および/または表面残基からのアミノ酸置換を含む。
【0172】 この実施態様の好ましい態様においては、IAタンパク質は図5Aに示される
アミノ酸配列からなる。この配列は6アミノ酸置換を示しており(野生型インシ
ュリンと11−12%の相違)、A1-N, A10-Q, A16-Y, B1-D, B25-NおよびB27-D
からなる。
【0173】 この実施態様の別の態様においては、IAタンパク質は図5Bに示されるアミ
ノ酸配列からなる。この配列は14の突然変異を示しており(野生型インシュリ
ンと27−28%の相違)、A1-N, A10-Q, A16-Y, A17-Y, A19-F, B1-D, B2-K, B
4-F, B11-I, B12-R, B14-W, B25-N, B26-FおよびB27-Dからなる。
【0174】 この実施態様の好ましい一態様においては、IAタンパク質は図5Cに示され
るアミノ酸配列からなる。この配列は16の突然変異を示しており(野生型イン
シュリンと31−34%の相違)、A1-N, A10-Q, A16-Y, A17-Y, A19-F, B1-D, B
2-K, B4-F, B8-L, B11-I, B12-R, B14-W, B25-N, B26-F, B27-DおよびB28-Nから
なる。
【0175】 以下のシステイン残基A6-A11, A7-B7およびA20-B19は、ヒトインシュリン中で
ジスルフィド結合を介して互いに結合する。好ましい実施態様においては、ジス
ルフィド結合交換を有するIAタンパク質がもたらされる。この実施態様の一態
様においては、PDA計算中に以下の残基が考慮される。A2, A3, A5, A6, A7,
A11, A15, A16, A19, A20, B2, B7, B11, B15, B18, B19, B22およびB24。従っ
て、好ましい実施態様では、IAタンパク質はこれらの位置から選択される可変
位置をもつ。
【0176】 好ましい実施態様において、本発明のIAタンパク質は位置A2, A3, A5, A6,
A7, A11, A15, A16, A19, A20, B2, B7, B11, B15, B18, B19, B22およびB24か
ら選択される少なくとも一つのアミノ酸位置において野生型ヒトインシュリンと
異なる配列をもつ。
【0177】 各位置に対する好ましいアミノ酸の置換は以下の通りである:位置 A2:Leu;
位置 A3:Ile;位置 A5:Arg、Valおよび Glu;位置 A6:Ala;位置 A7:Alaお
よびSer;位置 A11:Ala;位置 A15:Leu、GluおよびArg;位置 A16:Ile;位置
A19:Phe;位置 A20:Asp、AlaおよびSer;位置 B2:Asp、Asn、Glu、Gln、Lys
およびArg;位置 B7:TyrおよびHsp;位置 B15:Leu;位置 B19:Ala;および位
置 B22:Gln。上記記載のアミノ酸の置換の任意の組合せが可能であり、そして
インシュリンより安定したIAタンパク質を得ることができる。位置 B11、B18
、B24で好ましいアミノ酸は、それぞれLeu、ValおよびPheである(全野生型)。
【0178】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は図3Aに示すアミノ酸配列を含
む。この配列は20の変異を示し(野生型インシュリン配列と39-40%相違)、A1-N、
A2-I、A6-A、A7-S、A10-Q、A11-A、A16-I、A17-Y、A19-F、A20-D、B1-D、B4-F、
B7-Y、B11-I、B12-R、B14-W、B19-A、B25-N、B26-FおよびB27-Dを含む。
【0179】 本実施態様のある態様では、次の残基:A3、A7、B2、B4、B7およびB11は、ジ
スルフィド結合置き換え用として考えられる。従って、好ましい実施態様では、
、IAタンパク質は、これらの位置から選択される可変位置を有する。
【0180】 好ましい実施態様では、本発明のIAタンパク質は、位置 A3、A7、B2、B4、B
7およびB11から選択されるアミノ酸位置の少なくとも1つで、野生型ヒトインシ
ュリンタンパク質と異なる配列を有する。
【0181】 各位置における好ましいアミノ酸の置換は、次のとおりである:位置 A3:Ile
およびAla;位置 A7:AlaおよびSer;位置 B2:Thr、Asp、Asn、Glu、Gln、Lys
およびArg;位置 B4:Phe、Tyr、Glu、LysおよびArg;位置 B7:Ala、Ser、Asp
、Asn、TyrおよびHsp;および位置 B11 :Ile。
【0182】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図3Bに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は4つの変異を示し(野生型インシュリン配列と8%相違)、A7-S、
B2-E、B4-YおよびB7-Yを含む。
【0183】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図3Cに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は2つの変異を示し(野生型インシュリン配列と8%相違)、A7-Sお
よびB7-Dを含む。
【0184】 本実施態様の好ましい態様では、IAタンパク質は、図3Dに示すアミノ酸配
列を含む。この配列は4つの変異を示し(野生型インシュリン配列と8%相違)、A7
-S、B2-T、B4-YおよびB7-Yを含む。
【0185】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図3Eに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は3つの変異を示し(野生型インシュリン配列と6%相違)、A7-S、
B4-YおよびB7-Yを含む。
【0186】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図3Fに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は2つの変異を示し(野生型インシュリン配列と4%相違)、A7-S、
B7-Eを含む。
【0187】 本実施態様の他の好ましい態様では、IAタンパク質は、図3Gに示すアミノ
酸配列を含む。この配列は、位置 B1からB4で2つの変異および4つの欠失を示
し(野生型インシュリン配列と12%相違)、A7-EおよびB7-Eを含む。
【0188】 インシュリンは、2量体、4量体および6量体にオリゴマー形成する。6量体
は生物学的に不活性であるが、しかし、単量体化合物、特に医薬組成物を安定化
する:ここでインシュリンは、亜鉛イオンと複合化し、フェノール系保存剤と結
合して、6量体を形成する。血流中への投与において、この(活性)単量体は6量
体複合体から分離すると考えられる。幾つかの投与では、フェノール系保存剤を
6量体複合体から妨げるが、しかし、6量体を形成する能力をなお保持している
のが望ましい。これらのIAタンパク質複合体は、単量体状態を示す製剤と対照
的に、遅効性インシュリンとしての用途がある。
【0189】 従って、ある好ましい実施態様では、PDAデザインを使用して、6量体構造を
促進するがフェノール結合を妨げるIAタンパク質を調製する。本実施態様のあ
る態様では、フェノール系保存剤がない場合に安定で6量体を形成するIAタン
パク質を調製した。これらのIAタンパク質の幾つかは、フェノール系化合物と
結合したヒトインシュリンより安定した6量体を形成することができる。本実施
態様では、PDBエントリー1方法を選択した。PDA計算で、6A鎖(6量体中、鎖 1,
3,5,7,9および11)および6B鎖(6量体中、鎖 2,4,6,8,10および12)からなる完全
なインシュリン6量体複合体を使用した。
【0190】 ある実施態様では、次の残基がPDA計算用と考えられる:Leu-B17 (鎖 6)、Val
-B2 (鎖 8)、His-B5 (鎖 5)、Leu-B6 (鎖 8)、Leu-A16 (鎖 11)、Leu-B11 (鎖 1
2)およびAla B14 (鎖 12)。従って、好ましい実施態様では、IAタンパク質は
、これらの位置から選択される可変位置を有する。
【0191】 好ましい実施態様では、本発明のIAタンパク質は、位置 B17、B2、B5、B6、
A16、B11およびB14から選択されるアミノ酸の位置で野生型ヒトインシュリンタ
ンパク質と少なくとも1つ異なる配列を有する。
【0192】 各位置に対する、好ましいアミノ酸の置換は下記のとおりである:位置 Leu-B
17 (鎖 6):ValおよびGlu;位置 Val-B2 (鎖 8):PheおよびGlu;位置 His-B5 (
鎖 5):Phe、TrpおよびLeu;位置 Leu-A16 (鎖 11):PheおよびTyr;位置 Leu-B
11 (鎖 12):Ile;および位置 Ala-B14 (鎖 12):Trp、PheおよびLeu。位置 Leu
-B6 (鎖 8)で好ましいアミノ酸はLeu(野生型)である。従って、好ましい置換は
位置 B14およびB5で起こる。
【0193】 さらなる実施態様では、6量体構造を促進する置換の可能性について、B14お
よびB5の位置を分析する。
【0194】 好ましい実施態様では、IAタンパク質は、アミノ酸残基 B14での置換を含む
【0195】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は図4Cに示すアミノ酸配列を含
む。この配列は1つの変異のみ示し(野生型インシュリン配列と2%相違)、B14-Fを
含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しないが、しかし
、なお6量体を形成する。
【0196】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は図4Dに示すアミノ酸配列を含
む。この配列は1つの変異のみ示し(野生型インシュリン配列と2%相違)、B14-Wを
含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しないが、しかし
、なお6量体を形成する。
【0197】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は図4Fに示すアミノ酸配列を含
む。この配列は1つの変異のみ示し(野生型インシュリン配列と2%相違)、B14-Yを
含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しないが、しかし
、なお6量体を形成する。
【0198】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は図4Gに示すアミノ酸配列を含
む。この配列は1つの変異のみ示し(野生型インシュリン配列と2%相違)、B14-Iを
含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しないが、しかし
、なお6量体を形成する。
【0199】 他の好ましい実施態様では、IAタンパク質は、アミノ酸残基 B5の置換を含
む。
【0200】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図4Bに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は1つの変異のみ示し(野生型インシュリン配列と2%相違)、B5-F
を含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しないが、しか
し、なお6量体を形成する。
【0201】 他の好ましい実施態様では、IAタンパク質は、アミノ酸残基 B5およびB14の
置換を含む。
【0202】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図4Aに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は2つの変異を示し(野生型インシュリン配列と42%相違)、B5-Fお
よびB14-Fを含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しな
いが、しかし、なお6量体を形成する。
【0203】 本実施態様のある態様では、IAタンパク質は、図4Eに示すアミノ酸配列を
含む。この配列は2つの変異を示し(野生型インシュリン配列と42%相違)、B5-Fお
よびB14-Wを含む。このIAタンパク質はフェノール保存剤と効率よく結合しな
いが、しかし、なお6量体を形成する。
【0204】 好ましい実施態様では、この発明のIAタンパク質はヒトインシュリンのコン
フォーマーである。ここでは、「コンフォーマー」は事実上同じバックボーン3
D構造を有するがアミノ酸側鎖が有意に異なるタンパク質を意味する。即ち、こ
の発明のIAタンパク質は、組の全てのタンパク質がバックボーン構造を共有し
、しかも配列が少なくとも3〜5%異なるコンフォーマーの組を規定する。かく
して、IAタンパク質の三次元バックボーン構造はヒトインシュリンの三次元バ
ックボーン構造に実質的に対応する。この文脈において「バックボーン」は側鎖
でない原子、即ち、窒素、カルボニル炭素および酸素、およびα‐炭素、ならび
に窒素およびα‐炭素に結合した水素を意味する。コンフォーマーであると考え
られるためには、タンパク質はヒトインシュリンの構造より2Åより大きく離れ
ていず、好ましくは1.5Åより大きく離れていず、特に好ましくは1Åより大
きく離れていないバックボーンを有していなければならない。一般的に、これら
の距離は二つの方法で測定し得る。一つの実施態様では、それぞれの潜在的コン
フォーマーを結晶化し、その三次元構造を決定する。これに代えて、前者は極め
て煩雑であるので、それぞれの潜在的コンフォーマーの配列をPDAプログラム
にかけてそれがコンフォーマーであるか否かを、配列のエネルギーを検査するこ
とにより決定する。
【0205】 IAタンパク質はまたIA核酸によってコード化されるものとして同定するこ
とができる。核酸の場合には、核酸配列の全体的相同性はアミノ酸の相同性に対
応するが、遺伝子コードの縮重および異なる生物におけるコドンの歪みを考慮に
入れる。したがって、核酸の相同性はタンパク質の相同性より低いことも高いこ
ともあってもよく、低い相同性が好ましい。
【0206】 好ましい実施態様では、IA核酸はIAタンパク質をコード化する。当業者に
より認識されるであろうように、遺伝子コードの縮重により極めて多数の核酸が
作られ、その全てがこの発明のIAタンパク質をコード化する。かくして、特定
のアミノ酸配列を同定すれば、当業者はIAタンパク質のアミノ酸配列を変えな
い方法で一つもしくはそれ以上のコドンの配列を単に修飾するだけで異なる核酸
を何個でも作ることができよう。
【0207】 一つの実施態様では、核酸の相同性はハイブリダイゼーションの研究で測定す
る。かくして、例えば、インシュリンをコード化する核酸配列(例えばジーンバ
ンク受託番号J00265 M10039参照)に高緊縮条件下でハイブリダイズし、IAタン
パク質をコード化する核酸は、IA遺伝子と考える。
【0208】 高緊縮条件は技術上公知である;例えば、Maniatis et al., Molecular Cloni
ng: A Laboratory Manual, 2d Edition, 1989, and Short Protocols in Molecu
lar Biology, ed. Ausubel, et al.を参照のこと、両者とも特に出典明示により
本明細書の一部とする。緊縮条件は配列依存的であり、異なる状況において異な
ってくる。より長い配列がより高い温度で特異的にハイブイリダイズする。核酸
のハイブリダイゼーションに関する詳細な手引きは、Tijssen, Techniques in B
iochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes
, "Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic a
cid assays" (1993)に見られる。一般的に、緊縮条件は、規定のイオン強度およ
びpHにおける特定の配列の熱融解温度(T)よりも約5〜10℃低く選択され
る。Tは、標的に相補的なプローブの50%が(規定のイオン強度、pHおよ
び核酸濃度において)平衡下で標的配列とハイブリダイズする温度である(標的配
列は過剰に存在するため、Tでは、プローブの50%が平衡下でその状態にあ
る)。緊縮条件は、pH7.0〜8.3で塩濃度が1.0Mナトリウムイオン以下、
典型的には0.01〜1.0Mナトリウムイオン濃度(もしくは他の塩)であり、そ
して温度は短いプローブ(例えば10〜50ヌクレオチド)については少なくとも
約30℃、長いプローブ(例えば50ヌクレオチド超)については少なくとも約6
0℃である。緊縮条件はまたフォルムアミドのような不安定化剤の添加によって
も達成することができる。
【0209】 もう一つの実施態様では、より緊縮度の低いハイブリダイゼーション条件が用
いられる;例えば、技術上公知のように中等度のもしくは低い緊縮条件を使用し
てもよい;Sambrook et al., supra; Ausubel et al., supra, and Tijssen, su
praを参照のこと。
【0210】 本発明のIAタンパク質および核酸は組換え体である。ここで用いられる「核
酸」はDNAもしくはRNAのいずれを意味してもよく、もしくはデオキシおよ
びリボヌクレオチドの両者を含む分子を意味してもよい。核酸は、ゲノムのDN
A、cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含み、センスおよびアンチセンス核酸
を含む。このような核酸はまた、生理的環境におけるそのような分子の安全性お
よび半減期を増加させるためにリボース‐リン酸バックボーンに修飾を含んでい
てもよい。
【0211】 核酸は二本鎖、単鎖であってもよく、または二本鎖もしくは単鎖の配列の両方
の部分を含んでいてもよい。当業者により認識されるであろうように、単鎖(「
ワトソン」)を描けばもう一つの鎖(「クリック」)の配列が規定される。ここで
「組換え核酸」という用語は、元々一般的に核酸のエンドヌクレアーゼによる操
作によりインビトロで自然界には存在しない形に生成した核酸を意味する。かく
して、単離されたIA核酸は線状のものも、もしくは通常は結合していないDN
A分子を連結することによりインビトロで生成した発現ベクターも、共にこの発
明の目的には組換え体と考える。一旦組換え核酸が作成され宿主細胞もしくは生
物に再導入されれば、それは非組換え的に、即ちインビトロの操作ではなく宿主
のインビボの細胞機構を用いて増幅すると理解される;しかしながら、そのよう
な核酸は一旦組換え的に生産されれば、以後は非組換え的に複製しても本発明の
目的にはなお組換え体と考えられる。
【0212】 同様に、「組換えタンパク質」は組換え技術を用いて、即ち上述のように組換
え核酸の発現を通して作成されたタンパク質である。組換えタンパク質は、少な
くとも一つもしくはそれ以上の特性に関して天然に存在するタンパク質から識別
される。例えば、このタンパク質は、野生型宿主中で通常会合しているタンパク
質の一部もしくは全てから単離もしくは精製し得る。例えば、単離されたタンパ
ク質は、自然状態では通常会合している物質の少なくとも一部を伴わないで、所
定の試料中の総タンパク質重量の好ましくは少なくとも約0.5%、より好まし
くは少なくとも5%を構成している。実質的に純粋なタンパク質は、総タンパク
質重量の少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、そして特に好ま
しくは少なくとも約90%を含む。この定義には、一つの生物由来のIAタンパ
ク質を異なる生物もしくは宿主で生産することが含まれる。これに代えて、タン
パク質がより増加した濃度レベルで作られるように誘導性プロモーターもしくは
高発現ベクターを使用することにより、タンパク質を通常見られるよりも有意に
高濃度で作ることができる。さらに、以下に考察するように、ここに略述する全
てのIAタンパク質は、アミノ酸の置換、挿入および欠失(置換が好ましい)を含
むので、自然界に通常見いだされない形である。
【0213】 ここに略述され図に示されたIAタンパク質のアミノ酸配列変異体もまた、本
発明のIAタンパク質の定義の中に含まれる。即ち、IAタンパク質はヒトイン
シュリンと比較して付加的な可変位置を含んでいてもよい。これらの変異体は置
換、挿入もしくは欠失した変異体の3つのクラスの一つもしくはそれ以上に相当
する。これらの変異体は通常、カセットもしくはPCR変異誘発もしくは技術上
周知の他の技術を用いて、IAタンパク質をコード化するDNA中のヌクレオチ
ドの部位特異的変異によって変異体をコード化するDNAを生産し、そして次い
でDNAを上に略述した組換え培養細胞中で発現させることにより調製する。し
かしながら、約100〜150残基までを有する変異IAタンパク質断片は、確
立された技術を用いてインビトロ合成により調製することができる。特に、A鎖
のアミノ酸配列のみを含むIAタンパク質をインビトロ合成で調製することがで
きる。同様に、B鎖のアミノ酸配列のみを含むIAタンパク質をインビトロ合成
で調製することができる。個々に調製したIAタンパク質A鎖およびIAタンパ
ク質B鎖を合成後に結合し、完全なIAタンパク質を形成することができる。イ
ンシュリンA鎖およびB鎖の合成のための、およびその後の完全なインシュリン
の形成、即ち本明細書に記載したジスルフィド結合を介して適切に結合したA鎖
およびB鎖を含むインシュリンの作成のための技法は当業者に知られている。同
じ技法を、個々のIA A鎖およびIA B鎖から出発した完全なIAタンパク
質の形成に適用することができる。アミノ酸配列変異体は変化が予め決定されて
いるという特徴を有し、この特徴はこれらの変異体をIAタンパク質のアミノ酸
配列に対する天然の対立遺伝子変異体もしくは種間変異体から区別する。変異体
は典型的に、天然アナログと定性的に同じ生物活性を発揮するが、ただし、以下
にさらに十分に略述するように、修飾された特性を有する変異体を選択すること
もできる。
【0214】 アミノ酸配列変異を導入する部位もしくは領域は予め決定されるが、変異自身
は予め決定しておく必要はない。例えば、所定の部位における変異能を最適化す
るために、標的コドンもしくは領域にランダム変異を起こし、発現したIA変異
体をスクリーニングして所望の活性の最適な組み合わせを有するものを探しても
よい。既知の配列を有するDNA中の予め定められた部位に置換変異を作成する
技術は周知であり、例えば、M13プライマーによる変異誘発およびPCRによ
る変異誘発がある。変異体のスクリーニングはIAタンパク質の活性のアッセイ
を用いて行われる。
【0215】 アミノ酸置換は典型的には単一の残基置換である;かなり大きな挿入も耐えら
れるが、挿入は通常、約1〜20アミノ酸の単位で行われよう。欠失は、より大
きな場合もあるが、約1から約20残基の範囲である。
【0216】 最終誘導体に到達するために、置換、欠失、挿入またはそれらのいずれの組み
合わせを用いてもよい。一般的に、これらの変化は、分子の変化を最小限にする
ために少数のアミノ酸について行われる。しかしながら、より大きな変化も一定
の状況では耐えられる。IAタンパク質の特徴について小さな変化が望まれる場
合は、置換は一般的に次のチャートに従ってなされる。
【表1】 チャートI
【表2】
【0217】 機能もしくは免疫学的同一性における実質的な変化は、チャートIに示された
ものよりより保存性の低い置換を選択することによって行われる。例えば、より
大きく影響する置換を行うことができる:それらは、変化する区域のポリペプチ
ドバックボーンの構造、例えばアルファ-ヘリックス構造もしくはベータ‐シー
ト構造;標的部位の分子の電荷もしくは疎水性;または側鎖の大きさである。一
般的にポリペプチドの性質に最も大きな変化を生じると期待される置換は(a)親
水性残基、例えばセリルもしくはスレオニルを、疎水性残基、例えばロイシル、
イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニルに変える(もしく
は、それにより)、(b)システインもしくはプロリンを他のいずれかの残基に変
える(もしくは、それにより)、(c)正電荷を持つ側鎖、例えばリシル、アルギニ
ル、もしくはヒスチジルを負電荷を持つ側鎖、例えばグルタミル、アスパルチル
に変える(もしくは、それにより)、(d)嵩高い側鎖を持つ残基、例えばフェニル
アラニンを側鎖を持たない残基、例えばグリシンに変える(もしくは、それによ
り)置換である。
【0218】 変異体は典型的には元来のIAタンパク質と定性的に同じ生物活性を発揮し、
同じ免疫応答を誘起するが、ただし、必要に応じてIAタンパク質の特性を修飾
するような変異体もまた選択される。これに代えて、変異体をIAタンパク質の
生物活性が変わるようにデザインすることができる。例えば、グリコシル化部位
を変えたりもしくは除去したりすることができる。同様に、生物学的機能も変え
ることができる;例えば、ある場合にはより強力なもしくはより弱いインシュリ
ン活性を持つことが望ましいであろう。
【0219】 発明のIAタンパク質および核酸は多数の方法で作ることができる。個々の核
酸およびタンパク質を技術上公知の、また以下に略述する方法で作ることができ
る。これに代えて、IAタンパク質のライブラリーを試験用に作ることができる
【0220】 好ましい実施態様では、IAタンパク質の組もしくはライブラリーは確率分布
表から作成される。ここに略述するように、確率分布表を作成させる種々の方法
があり、それらはPDA、配列アラインメント、SCMF計算のような力場計算
などを使用する方法を含む。加えて、確率分布は、それぞれの位置について、ラ
イブラリー中に観察される変異頻度の尺度としてのエントロピースコアを作成さ
せるのにも使用できる。
【0221】 この実施態様において、リスト中のそれぞれの可変位置におけるそれぞれのア
ミノ酸残基の頻度が確認される。頻度は、そのカットオフより低いいかなる変異
頻度も0に設定する域値となり得る。このカットオフは、好ましくは1%、2%
、5%、10%、もしくは20%であり、10%が特に好ましい。これらの頻度
を次いでIAタンパク質ライブラリーに組み込む。即ち、上述のように、これら
の可変位置を集めて全ての可能な組み合わせを形成させるが、ライブラリーを「
満たす」アミノ酸残基を頻度に基づいて利用する。かくして、頻度に基づかない
ライブラリーでは、5個の可能な残基を有する可変位置は、その可変位置を含む
タンパク質の20%が第一の可能な残基を持ち、20%が第二の可能な残基を持
ち、等々という具合になる。しかしながら、頻度に基づくライブラリーでは、各
々10%、15%、25%、30%、および20%の頻度で5個の可能な残基を
持つ可変位置は、その可変位置を含むタンパク質の10%が第一の可能な残基を
持ち、15%が第二の可能な残基を持ち、25%が第三の、等々となる。当業者
により認識されるであろうように、実際の頻度はタンパク質を実際に生成させる
ために使用する方法に依存し得る;例えば、正確な頻度はタンパク質を合成した
ときに可能になり得る。しかしながら、頻度に基づくプライマーシステムを使用
すれば、それぞれの位置における実際の頻度は以下に略述するように変化する。
【0222】 当業者により認識されるであろうように、そしてここに略述するように、確率
分布表は種々の方法で形成することができる。ここに略述した方法に加えて、自
己無撞着性平均力場(SCMF)法を用いて確率表を直接形成させることができる
。SCMFは、回転異性体の相互作用の平均力場による記述を用いてエネルギー
を計算する決定論的コンピュータ計算法である。この方法で形成された確率表は
ここに記述するようなライブラリーを創成するのに使用することができる。SC
MFは三通りに用いることができる:アミノ酸およびそれぞれのアミノ酸の回転
異性体の頻度をそれぞれの位置についてリストする;確率をSCMFから直接決
定する(Delarue et la. Pac. Symp. Biocomput. 109-21 (1997)、特に出典明示
により本明細書の一部とする、を参照のこと。)。加えて、高度可変位置および
非可変位置を確認することができる。これに代えて、配列空間探索中においてど
の配列にジャンプするかを決定するためにもう一つの方法が用いられる;SCM
Fはその配列について正確なエネルギーを得るために用いられる;このエネルギ
ーは次いでそれを順位づけし、(Monte Carlo配列リストに類似の)配列の順位リ
ストを創成するのに用いられる。次いでそれぞれの位置におけるアミノ酸の頻度
を示す確率表がこのリストから計算される(Koehl et al., J. Mol. Biol. 239:
249 (1994); Koehl et al., Nat. Struc. Biol. 2: 163 (1995); Koehl et al.,
Curr. Opin. Struct. Biol. 6: 222 (1996); Koehl et al., J. Mol. Bio. 293
: 1183 (1999); Koehl et al., J. Mol. Biol. 293: 1161 (1999); Lee J. Mol.
Biol. 236: 918 (1994); and Vasquez Biopolymers 36: 53-70 (1995);いずれ
も、特に出典明示により本明細書の一部とする)。類似の方法としては、OPL
S−AA (Jorgensen, et al., J. Am. Chem. Soc. (1996), v 118, pp 11225-1
1236; Jorgensen, W.L.; BOSS, Version 4.1; Yale University: New Haven, CT (1999)); OPLS (Jorgensen, et al., J. Am. Chem. Soc. (1988), v 110,
pp 1657ff; Jorgensen, et al., J Am. Chem. Soc. (1990), v 112, pp 4768ff)
;UNRES (United Residue Forcefield; Liwo, et al., Protein Science (
1993), v 2, pp 1697-1714; Liwo, et al., Protein Science (1993), v 2, pp1
715-1731; Liwo, et al., J. Comp. Chem. (1997), v 18, pp 849-873; Liwo, e
t al., J. Comp. Chem. (1997), v 18, pp 874-884; Liwo, et al., J. Comp. C
hem. (1998), v 19, pp 259-276; Forcefield for Protein Structure Predicti
on (Liwo, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1999), v 96, pp 5482-5485)
;ECEPP/3(Liwo et al., J Protein Chem 1994 May;13(4): 375-80); AM
BER 1.1 force field (Weiner, et al., J. Am. Chem. Soc. v 106, pp 765-784
);AMBER 3.0 力場 (U.C. Singh et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA. 82: 755-759);CHARMMおよびCHARMM22 (Brooks, et al., J. Comp. Chem. v4, pp 187-217);cvff3.0(Dauber-Osguthorpe, et al.,(
1988) Proteins: Structure, Function and Genetics, v 4,pp 31-47); CFF
91(Maple, et al., J. Comp. Chem. v 15, 162-182)が非限定的に含まれる;
また、DISCOVER(cvffおよびcff91)およびAMBER 力場は
INSIGHT分子モデリングパッケージ(Biosym/MSI, San Diego California)
で使用され、そしてHARMはQUANTA分子モデリングパッケージ(Biosym/
MSI, San Diego California)で使用される。
【0223】 加えて、ここに略述するように、確率分布表形成の好ましい方法は配列アライ
ンメントプログラムの使用によるものである。加えて、確率表は配列アラインメ
ントおよびコンピュータによるアプローチの組み合わせで得られる。例えば、相
同配列のアラインメントで見出されたアミノ酸をコンピュータ計算の結果に附加
することができる。好ましくは、野生型アミノ酸を、もしそれがコンピュータ計
算で見出されない場合に確率表に附加することができる。
【0224】 認識されるであろうように、可変位置および/もしくは可変位置の残基を組み
合わせて創成したIAタンパク質ライブラリーは順位付けリストになくてもよい
。いくつかの実施態様では、リスト全体をただ作成して試験してもよい。これに
代えて、好ましい実施態様ではIAタンパク質ライブラリーも順位付けリストの
形にしてある。これは、実験を行うにはライブラリーのサイズが大きすぎる場合
、もしくは予想を行うため、を含むいくつかの理由で行う。これはいくつかの方
法で行うことができる。一つの実施態様では、ライブラリーをPDAのスコアリ
ング関数を用いて順位付けを行うことによりライブラリーのメンバーを順位付け
する。これに代えて、統計的方法を用いることができよう。例えば、ライブラリ
ーは頻度スコアで順位付けをすることができる;即ち、高頻度の残基の殆どを含
むタンパク質は高い順位に順位付けされるだろう、等ということである。これは
、それぞれの可変位置の頻度を加算するか掛け合わせるかにより数量スコアを形
成させることによって行い得る。同様に、ライブラリーの異なる位置に重みをつ
け、次いでタンパク質のスコアをつけることができよう;例えば、特定の残基を
含むタンパク質に任意の順位をつけることができよう。
【0225】 好ましい実施態様では、IAタンパク質ライブラリーの異なるタンパク質メン
バーを化学的に合成し得る。これは、デザインされたタンパク質が短い場合、好
ましくはアミノ酸が150個以下の長さ、好ましくはアミノ酸が100個以下の
長さ、特に好ましくはアミノ酸が50個以下の長さの場合に特に有用であるが、
ただし、技術上公知のように、より長いタンパク質を化学的にもしくは酵素的に
作ることは可能である。例えば、Wilken et al, Curr. Opin. Biotechnol. 9: 4
12-26 (1998)、ここに、特に出典明示により本明細書の一部とする、を参照のこ
と。
【0226】 好ましい実施態様では、特に、長いタンパク質もしくは大きなサンプルが望ま
しいタンパク質の場合、ライブラリーの配列を用いてメンバー配列をコード化す
る核酸を創成し、所望すれば宿主細胞でクローニングし、発現させ、アッセイす
ることができる。かくして、それぞれのメンバータンパク質配列をコード化する
核酸、特にDNAを作ることができる。これは周知の方法を用いて行う。コドン
、適当な発現ベクター、および適当な宿主細胞の選択は多数の要因に依存して異
なり、必要に応じて容易に最適化することができる。
【0227】 好ましい実施態様では、図6に一般的に示したように、プールしたオリゴヌク
レオチドを用いて多重PCR反応を行う。この実施態様では、全長遺伝子に相当
するオーバーラッピングオリゴヌクレオチドを合成する。ここでもこれらのオリ
ゴヌクレオチドは、それぞれの変異体位置の異なるアミノ酸の全てを表すもので
あっても、またサブセットであってもよい。
【0228】 好ましい実施態様では、これらのオリゴヌクレオチドを等量ずつプールして多
重PCR反応を実行し、ライブラリーで規定された変異の組合わせを含む全長配
列を創成する。加えて、これは、誤りがちなPCR法を用いて行い得る。
【0229】 好ましい実施態様では、異なるオリゴヌクレオチドを確率分布表に相当する相
対量で添加する。かくして多重PCR反応は、結果として所望の性質をもち所望
の変異の組合わせを有する全長配列を生じる。
【0230】 必要とされるオリゴヌクレオチドの総数は、変異させる位置の数およびそれら
の位置で考えられている変異の数の関数である: (定常位置のオリゴの数)+M1+M2+M3+...Mn=(必要とされるオリ
ゴの総数) ここで、Mnは配列中の位置nにおいて考えられている変異の数である。
【0231】 好ましい実施態様では、それぞれのオーバーラッピングオリゴヌクレオチドは
変異させる位置を一箇所だけ含む;別の実施態様では、変異位置が近すぎてこれ
ができないので、オリゴヌクレオチド当たり多重変異を持つものを用いて全ての
可能性の完全な組合わせができるようにする。即ち、それぞれのオリゴは単一の
位置を変異させるコドンを含むことも、もしくは一個より多い位置で変異させる
コドンを含むこともできる。変異を受ける複数の位置は配列上近接していて、オ
リゴの長さのために実行不可能になることを防がなければならない。オリゴヌク
レオチド上の複数の変異位置については、変異の特別の組合わせをコード化する
オリゴヌクレオチドを含めたり取り除いたりすることによって、その組合わせを
含めたり除外したりすることができる。例えば、ここに考察するように、可変位
置間に相関関係がある場合があり得る;即ち、位置Xがある特定の残基の場合に
は、位置Yはある特定の残基でなければならない(もしくは、あってはならない)
。可変位置のこれらの組は、ここにおいては時々「クラスター」と呼称される。
クラスターが互いに近接した残基より成り、したがって一個のヌクレオチドプラ
イマー上に存在し得るときには、クラスターは「良い」相関に設定し、ライブラ
リーの有効性を減少させるかもしれない悪い組合わせを除去することができる。
しかしながら、クラスターの残基が配列中で離れていて、合成される別のオリゴ
ヌクレオチド上に存在するであろう場合には、残基を「良い」相関に設定するか
、もしくは可変残基として完全に除去するのが望ましいであろう。別の実施態様
では、ライブラリーはクラスター変異のみが一緒に現れるように、いくつかの段
階で創成される。この方法、即ち、変異クラスターを同定し、それを同じオリゴ
ヌクレオチド上に置くか、もしくはライブラリーから除去するか、もしくはクラ
スターを保存しながらいくつかの段階でライブラリーを作成することにより、適
正に折りたたまれたタンパク質を有する実験的ライブラリーを大幅に濃縮するこ
とができる。クラスターの同定は、例えば、既知のパターン認識法、変異発生頻
度の比較、もしくは実験的に作成する配列のエネルギー解析(例えば、もし相互
作用エネルギーが高ければ、位置は相関している)などの多数の方法で実施する
ことができる。これらの相関は位置相関(例えば、位置1および2が常に一緒に
変化するか、もしくは一緒に変化することが全くない)の場合も配列相関(例えば
、位置1に残基Aがあれば、いつも位置2に残基Bがある)の場合もある。Patte
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eries title: Series in machine perception and artificial intelligence; v
ol. 32、これらは全て、特に出典明示により本明細書の一部とする、を参照のこ
と。加えて、コンセンサスモチーフの探索に使用するプログラムも同様に良く使
用することができる。
【0232】 加えて、相関およびシャフリングはまたオリゴヌクレオチドのデザインを変え
ることにより、即ち、オリゴヌクレオチド(プライマー)をどこで開始しまた停止
するか(例えばどこで配列を「切断」するか)を定めることにより、固定するかも
しくは最適化することもできる。オリゴの開始および停止部位は、単一のオリゴ
ヌクレオチド中に現れるクラスターの数を最大にするように設定することができ
て、それにより、ライブラリーをより高度なスコアリング配列で富化させる。異
なるオリゴヌクレオチドの開始および停止部位をコンピュータでモデル計算し、
単一のオリゴ上に表されるクラスターの数に従って、もしくは予想された配列の
ライブラリーに合致する、ここで得られた配列のパーセンテージに従って順位付
けを行うことができる。
【0233】 必要とされるオリゴヌクレオチドの総数は、複数の変異可能位置が単一のオリ
ゴヌクレオチドによってコード化されていると増加する。アニールする領域は一
定に保たれている領域、即ち標準配列の配列を有している領域である。
【0234】 コドンの挿入もしくは欠失を有するオリゴヌクレオチドを用いて、異なる長さ
のタンパク質を発現するライブラリーを創成することができる。特に、挿入もし
くは欠失のコンピュータ計算的な配列スクリーニングにより、異なる長さのタン
パク質を規定する二次ライブラリーが得られ、これらのタンパク質は異なる長さ
のオリゴヌクレオチドをプールしたライブラリーにより発現させることができる
【0235】 好ましい実施態様では、IAタンパク質ライブラリーはファミリー(例えば変
異体の組)をシャッフルすることにより作られる;即ち、上位の配列のある組(順
位付けリストを使用する場合)を、誤りがちなPCRを用いて、もしくは用いな
いでシャッフルすることができる。この文脈において「シャフリング」は、一般
的にランダムな方法による関連配列の組換えを意味する。それは米国特許第5,
830,721;5,811,238;5,605,793;5,837,458号お
よび PCT US/19256、これらは全て、特に出典明示により本明細書の一部
とする、に規定され例示されているような「シャフリング」をも含み得る。この
配列の組はまた人工的な組であってもよい;例えば、確率表(例えば、SCMF
を用いて創成されたもの)から得られた組、もしくはMonte Carloによる組であっ
てもよい。同様に、「ファミリー」は上位10個および下位10個、上位100
個、等々でもよい。これも誤りやすいPCRを用いて行ってもよい。
【0236】 かくして、好ましい実施態様では、in silicoシャフリングはここに
記述されるコンピュータ計算方法で行われる。即ち、二個のライブラリーもしく
は二個の配列で開始して、配列のランダムな組換えを作成し評価する。
【0237】 好ましい実施態様では、誤りやすいPCRを行ってIAタンパク質のライブラ
リーを作成する。米国特許第5,605,793、5,811,238、および5,
830,721号、これらは全て、特に出典明示により本明細書の一部とする、
を参照のこと。これは、ライブラリーの最適配列もしくは上位のメンバーについ
て行うこともでき、または他の人工的な組もしくはファミリーについて行うこと
もできる。この実施態様においては、一次ライブラリーのコンピュータ計算的探
索で見出された最適配列に対する遺伝子を合成することができる。次いで、ライ
ブラリーの変異位置の変異をコードするオリゴヌクレオチド(バイアスオリゴヌ
クレオチド)存在下に、最適配列遺伝子について誤りやすいPCRを行う。この
オリゴヌクレオチドを添加することによりバイアスが創生され、ライブラリーに
変異が導入されやすくなるであろう。これに代えて、特定の変異に対するオリゴ
ヌクレオチドのみを用いてライブラリーにバイアスをかけることもできる。
【0238】 好ましい実施態様では、誤りやすいPCRによる遺伝子シャフリングは、最適
配列に対する遺伝子についてバイアスオリゴヌクレオチド存在下実施することに
より、IAタンパク質ライブラリーに見出される変異の割合を反映するDNA配
列ライブラリーを創成することができる。バイアスオリゴヌクレオチドの選択は
種々の方法で行うことができる;それらはその頻度に基づいて選ぶことができる
;即ち、高い変異頻度を有する位置をコード化するオリゴヌクレオチドを用いる
ことができる;これに代えて、最も可変性の高い位置を含むオリゴヌクレオチド
を用いて多様性を増大させることができる;もし二次ライブラリーを順位付けす
る場合には、上位のスコアの位置のいくつかを用いてバイアスオリゴヌクレオチ
ドを創成することができる;ランダムな位置を選択することもできる;上位スコ
アの数個および下位スコアの数個を選択することもできる;等々である。重要な
ことは、好ましい可変位置および配列に基づいて新しい配列を創成することであ
る。
【0239】 好ましい実施態様では、図7に模式的に示すように野生型遺伝子もしくはその
他の遺伝子を用いるPCRを使用することができる。この実施態様においては、
開始遺伝子が使用される;一般的に、これは必要条件ではないが、遺伝子は通常
野生型である。ある場合には、それは全体的最適配列、もしくはリスト中の他の
どの配列、もしくは、例えば異なる生物由来の相同配列をアラインメントするこ
とによって得られたコンセンサス配列、をコードする遺伝子であってもよい。こ
の実施態様では、変異体の位置に相当し、ライブラリーの異なるアミノ酸を含む
オリゴヌクレオチドが用いられる。PCRは技術上公知のように両末端のPCR
プライマーを用いて行われる。これは二つの利便をもたらす;第一は、これによ
り一般的にオリゴヌクレオチドの数が少なくてすみ、結果としてエラーが少なく
なることである。加えて、野生型遺伝子を用いるならば、合成する必要がないと
いう実験的利点を有している。
【0240】 加えて、例えば図8−10の図に例示するように、他のいくつかの技法を使う
ことができる。好ましい実施態様ではPCR生成物の連結を行う。
【0241】 好ましい実施態様では、IAタンパク質ライブラリーに対して種々の付加的な
段階を行うことができる。例えば、さらなるコンピュータ計算処理を行うことが
でき、異なるIAタンパク質ライブラリーを組換えることができ、もしくは異な
るライブラリーからのカットオフを組み合わせることができる。好ましい実施態
様では、IAタンパク質ライブラリーをコンピュータ計算で操作することにより
、付加的なIAタンパク質ライブラリー(ここでは時々「三次ライブラリー」と
呼称する)を形成することができる。例えば、IAタンパク質ライブラリーの配
列のいずれかを選択して一次ライブラリーで変化した位置の一部もしくは全部を
凍結即ち固定して二回目のPDAを行うことができる。これに代えて、最後の確
率分布表に見られる変化のみが許容される。これに代えて、カットオフもしくは
包含の基準を増加もしくは減少させることにより確率表の緊縮度を変化させても
よい。同様に、IAタンパク質ライブラリーは第一回の後で実験的に組換えを行
うことができる。例えば、第一回の探索で得られた最良の遺伝子/遺伝子類をと
り、遺伝子アセンブリを(以下に略述する多重PCR、誤りやすいPCR、シャ
フリング他の技法を用いて)再実行する。これに代えて、一個もしくはそれ以上
の遺伝子(類)より得られる断片のある位置の確率を変えることもできる。これに
より、第一回のコンピュータ計算的および実験的検索で見出された配列空間の範
囲の探索にバイアスがかけられる。
【0242】 好ましい実施態様では、異なるIAタンパク質ライブラリーを組み合わせるこ
とから三次ライブラリーを作成することができる。例えば、一次IAタンパク質
ライブラリーから確率分布表を作成し、ここに略述するようにコンピュータ計算
的もしくは実験的に組換えを行うことができる。PDAによるIAタンパク質ラ
イブラリーは配列アラインメントによるIAタンパク質ライブラリーと組み合わ
せて、組換えを行うか(ここでもコンピュータ計算的もしくは実験的に)もしくは
それぞれの合わせたライブラリーのカットオフを行うだけで、新しい三次ライブ
ラリーを作ることができる。いくつかのライブラリーの上位配列を組換えること
ができる。ライブラリー上位の配列をライブラリー下位の配列と組み合わせるこ
とにより広範に配列空間をサンプリングすることもでき、もしくはライブラリー
上位の配列から離れた配列のみを組み合わせることもできる。タンパク質の異な
る部分を解析したIAタンパク質ライブラリーを、タンパク質の組合わせ部分を
取り扱う三次ライブラリーへと組み合わせることができる。
【0243】 好ましい実施態様では、IAタンパク質ライブラリー中の相関関係を用いて三
次ライブラリーを作成することができる。即ち、第一の可変位置の残基を第二の
可変位置の残基と(もしくは、追加的な位置の残基と同様に良く)相関させること
ができる。例えば、第一の残基がXならば第二の残基はYでなければならないと
いうように、二個の可変位置が立体的もしくは静電的に相互作用してもよい。こ
れは正の相関でも負の相関でもよい。
【0244】 IAタンパク質をコード化する本発明の核酸を用いて、種々の発現ベクターが
作られる。発現ベクターは、自己複製的な染色体外ベクターでも宿主ゲノムに組
み込まれるベクターでもよい。一般的に、これらの発現ベクターは、IAタンパ
ク質をコード化する核酸に機能し得るように結合された転写および翻訳の調節核
酸を含む。「調節配列」という用語は、特定の宿主生物内で機能し得るようにに
結合されたコーディング配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に
適した調節配列は、例えば、プロモーター、任意にオペレーター配列、およびリ
ボゾーム結合部位を含む。真核生物はプロトマー、ポリアデニル化シグナル、お
よびエンハンサーを使用することが知られている。
【0245】 核酸は、それが他の核酸配列と機能的な関係に置かれている場合に「機能し得
るようにに結合されて」いる。例えば、前配列もしくは分泌リーダー配列に対す
るDNAは、もしそれがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発
現されるならば、ポリペプチドに対するDNAに機能し得るようにに結合されて
いる;プロモーターもしくはエンハンサーは、もしそれが配列の転写に影響を与
えるならば、コーディング配列に機能し得るようにに結合されている;もしくは
、リボゾーム結合部位は、もしそれが翻訳を促進するように位置しているならば
、コーディング配列に機能し得るようにに結合されている。
【0246】 好ましい実施態様では、内在性の分泌配列が天然に存在するタンパク質もしく
はIAタンパク質の低レベルの分泌をもたらすならば、天然に存在する分泌リー
ダー配列を取り替えるのが望ましい。この実施態様において、無関係の分泌リー
ダー配列がIAタンパク質をコード化する核酸に機能し得るように結合されるこ
とにより、増大したタンパク質分泌がもたらされる。かくして、インシュリンお
よびその分泌配列の分泌と比較してIAタンパク質の分泌増大をもたらすどのよ
うな、如何なる分泌リーダー配列も望ましい。タンパク質の分泌をもたらす適当
な分泌リーダー配列は技術上公知である。
【0247】 もう一つの好ましい実施態様では、天然に存在するタンパク質の分泌リーダー
配列もしくはタンパク質は技術上公知の技法により除去され、引き続く発現の結
果、組換えタンパク質の細胞内蓄積が起こる。
【0248】 一般的に、「機能し得るようにに結合された」とは、結合しているDNAは隣
接しており、そして、分泌リーダー配列の場合においては、隣接しかつ読みとり
段階にある。しかしながら、エンハンサーは隣接している必要はない。結合は都
合のよい制限部位における結合で達成される。もしそのような部位が存在しない
ならば、合成オリゴヌクレオチドアダプターもしくはリンカーを従来の実施法に
従って使用する。転写および翻訳調節核酸は、融合タンパク質の発現に使用する
宿主にとって一般的に適当であるであろう;例えば、Bacillus由来の転写および
翻訳の調節核酸配列はBacillusにおいて融合タンパク質を発現するために好まし
く使用される。夥しい数の適当な発現ベクターおよび適切な調節配列が様々な宿
主細胞に関して技術樹公知である。
【0249】 一般的に、転写および翻訳の調節核酸はプロモーター配列、リボゾーム結合部
位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、およびエンハンサーも
しくはアクチベーター配列を非限定的に含む。好ましい実施態様では、調節配列
はプロモーターおよび転写の開始および終結配列を含む。
【0250】 プロモーター配列は構成的もしくは誘導的プロモーターをコード化する。プロ
モーターは天然に存在するプロモーターでもハイブリッドプロモーターでもよい
。一個より多くのプロモーターの要素を組み合わせたハイブリッドプロモーター
も技術上公知であり、本発明において有用である。好ましい実施態様では、プロ
モーターは、特にTet調節エレメントと組み合わせたCMVプロモーターのよ
うな細胞、特に哺乳動物細胞内で、高発現を可能にする強力なプロモーターであ
る。
【0251】 加えて、発現ベクターは付加的要素を含み得る。例えば、発現ベクターは二つ
の複製システムを有し、これにより二種の生物、例えば発現のために哺乳動物も
しくは昆虫の細胞で、およびクローニングおよび増幅のために前核宿主で維持す
ることができる。さらに、発現ベクターを組み込むために、発現ベクターは宿主
ゲノムと相同な配列を少なくとも一個、また好ましくは発現構築物に隣接する二
個の相同配列を含む。組込まれるベクターは、ベクターに取り入れる適当な相同
配列を選択することにより宿主細胞の特定の座位を目指して組み込ませ得る。組
み込み用ベクターの構築は技術上周知である。
【0252】 加えて、好ましい実施態様では、発現ベクターは形質転換した宿主細胞の選択
を可能にする選択マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は技術上周知であり、用い
る宿主により異なる。
【0253】 好ましい発現ベクターは一般的にPCT/US97/01019および PC
T/US97/01048、両者とも特に出典明示により本明細書の一部とする
、に記述されているレトロウイルスベクター系である。
【0254】 好ましい実施態様では、発現ベクターは上記記載の成分とIAタンパク質をコ
ード化する遺伝子を含む。この態様では、ただ1種のIAタンパク質が発現ベク
ターを含む細胞中で発現され得る。本実施態様のある態様では、二つの異なるI
Aタンパク質(変異体Aおよび変異体B)が、同じ細胞内で発現することが望まし
く、ゆえに、2つの発現ベクター、1つはIAタンパク質変異体Aをコードする
遺伝子を含み、他方はIAタンパク質変異体Bをコードする遺伝子を含む、を、
同じ宿主細胞中へ導入する。これは好ましいIAタンパク質二量体を形成する。
【0255】 本発明の実施態様の一態様では、2つの異なるIAタンパク質(変異体Aおよ
び変異体B)をコード化する2つのIA遺伝子を含む発現ベクターを作成する。
本実施態様のある態様では、多シストロン性の遺伝子を、宿主細胞中での同時発
現について当技術分野で知られているようにして作成することができる。
【0256】 当業者には認識され得るとおり、全ての組合せが可能であり、従って、本明細
書で使用するように、成分の組合せ(1またはそれ以上のベクター(レトロウイル
スであってもなくてもよい)を含む)を、本明細書中で"ベクター組成物"という。
【0257】 IA核酸は、単独もしくは発現ベクターと組み合わせて、細胞中に導入される
。ここで「中に導入される」もしくは文法的同意語は、核酸が引き続いて起こる
核酸の発現に適した方法で細胞に入ることを意味する。導入法は以下に考察する
ように主として標的細胞により規定される。例示的方法としては(CaPO) 沈殿、リポゾーム融合、リポフェクチン[登録商標]、エレクトロポレーション
、ウイルス感染等を含む。IA核酸は宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれても
よく(例えば、以下に略述するようにレトロウイルスによる導入により)、もしく
は細胞質中に一時的にもしくは安定に存在してもよい(即ち、標準の調節配列、
選択マーカー等を利用した伝統的なプラスミドの使用により)。
【0258】 本発明のIAタンパク質は、IAタンパク質をコード化する核酸を含む発現ベ
クターで形質転換した宿主細胞を、IAタンパク質の発現を誘導もしくは誘起す
る適当な条件下で培養することによって生産される。IAタンパク質の発現に適
当な条件は発現ベクターおよび宿主細胞の選択によって異なるが、当業者はルー
チンの実験により容易に確かめることができる。例えば、発現ベクター中に構成
的プロモーターを使用している場合には、宿主細胞の生育および増殖を最適化す
ることが要求されるだろうし、一方、誘導性プロモーターを使用している場合に
は、誘導に適した生育条件が要求される。加えて、いくつかの実施態様では、収
穫のタイミングが重要である。例えば、昆虫細胞での発現に用いられるバキュロ
ウイルスシステムは溶原性ウイルスであるので、収穫時期の選択は生産物の収量
にとって極めて重要である。
【0259】 適当な宿主細胞としては、酵母、細菌、古細菌、真菌、および昆虫並びに哺乳
動物細胞を含む動物細胞が含まれる。特に興味の持たれるのはDrosophila melan
ogaster細胞、Saccharomyces cerevisiaeおよび他の酵母、E. colIAcillus su
btilis、SF9 cells、C129 cells、293 cells、Neurospora、BHK、CHO、COS、Pic
hia Pastoris等である。
【0260】 好ましい実施態様では、IAタンパク質は哺乳動物細胞で発現される。哺乳動
物の発現系はまた技術上公知であり、レトロウイルスシステムが含まれる。哺乳
動物のプロモーターは、哺乳動物のRNAポリメラーゼを結合し、融合タンパク
質をコード化する配列を下流(3’側)に転写を開始できる、如何なるDNAでも
よい。プロモーターは、通常コーディング配列の5’末端に近接して配置されて
いる転写開始領域、および転写開始部位の25〜30塩基対上流を用いるTAT
Aボックスを有しているであろう。TATAボックスは、RNA合成を正しい部
位から開始するようにRNAポリメラーゼIIを誘導すると考えられている。哺
乳動物のプロモーターはまた、典型的にTATAボックスの100〜200塩基
対以内の上流に位置している上流のプロモーターエレメント(エンハンサーエレ
メント)を含有しているであろう。上流のプロモーターエレメントは転写開始速
度を決定し、そしてどちら向きにも作用する。哺乳動物プロモーターで特に有用
なのは哺乳動物ウイルスの遺伝子由来のプロモーターであるが、これはウイルス
の遺伝子はしばしば高度に発現され、また宿主範囲が広いためである。例として
は、SV40の初期プロモーター、マウス乳癌ウイルスのLTRプロモーター、
アデノウイルスの主要後期プロモーター、単純ヘルペスウイルスのプロモーター
、およびCMVのプロモーターが挙げられる。
【0261】 典型的には、哺乳動物細胞によって転写終結配列およびポリアデニレーション
配列は転写終結コドンの3’側に位置する調節領域であり、したがって、プロモ
ーターエレメントと共にコーディング配列に隣接している。成熟mRNAの3’
末端は、部位特異的な翻訳後切断およびおよびポリアデニル化により形成される
。転写ターミネーターおよびポリアデニレーションシグナルの例としてはSV4
0由来のものが含まれる。
【0262】 外来性核酸を哺乳動物宿主およびその他の宿主中に導入する方法は技術上周知
であり、用いる宿主により異なるであろう。この手技としては、デキストラン仲
介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン仲介性トランス
フェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ウイルス感染、
ポリヌクレオチド(類)のリポソームへの封入、およびDNAの核内への直接マイ
クロインジェクションが挙げられる。ここに略述するように、特に好ましい方法
としてはPCT US97/01019、これは出典明示により本明細書の一部
とする、に略述されているレトロウイルス感染を使用する。
【0263】 当業者により認識されるであろうように、本発明において用いられる哺乳動物
細胞のタイプは非常に広く変わることができる。基本的には、どの哺乳細胞を使
用してもよく、マウス、ラット、霊長類、およびヒトの細胞が特に好ましく、当
業者には理解されるであろうが、シュードタイプ化によるこのシステムの変更で
、全ての真核細胞、好ましくは高等動物の真核細胞、を使用することができるよ
うになる。以下に詳記するように、細胞がバイオ活性ペプチドの存在下で選択的
表現型を示すようにスクリーンを始動する。以下に詳記するように、細胞内にペ
プチドが存在する結果として変更された表現型を示す細胞の選択が可能となるよ
うに適切なスクリーンを設計できる限りでは、各種の疾病状態に関係する細胞型
が特に有用である。
【0264】 したがって、適当な細胞のタイプとしては、全てのタイプの腫瘍細胞(特に黒
色腫、骨髄性白血病、肺癌、乳癌、卵巣癌、直腸癌、腎癌、前立腺癌、膵臓癌お
よび睾丸癌)、心筋細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)
、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、肝細胞、単核白血球を含む白血球、造血、
神経、皮膚、肺、腎臓、肝臓および心筋の幹細胞を含む幹細胞(分化および脱分
化因子スクリーニングでの使用に)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細
胞、角化細胞、メラニン形成細胞、肝細胞、腎細胞、および脂肪細胞が挙げられ
るが、これらに限定されるものではない。特に好ましい細胞は膵臓のベータ細胞
またはその変異体である。適当な細胞はまた既知の研究用細胞を含み、これらに
はJurkat T細胞、NIH3T3細胞、CHO、Cos等が非限定的に含
まれる。ATCC細胞株カタログ、これは特に出典明示により本明細書の一部と
する、を参照のこと。
【0265】 一つの実施態様では、細胞はこれに加えて、遺伝子工学的操作を行ってもよく
、即ち、IA核酸以外の外来性核酸を含んでもよい。 好ましい実施態様では、IAタンパク質は細菌のシステムで発現される。細菌
の発現システムは技術上周知である。
【0266】 適当な細菌のプロモーターとしては、細菌のRNAポリメラーゼを結合し、I
Aタンパク質のコーディング配列を下流(3’側)に転写開始できる如何なる核酸
配列でもよい。細菌のプロモーターは転写開始領域を有し、これは通常コーディ
ング配列の5’末端に隣接している。この転写開始領域は典型的に、RNA結合
部位および転写開始部位とを含んでいいる。代謝経路上の酵素群をコード化する
配列は、特に有用なプロモーター配列を提供する。例としては、ガラクトース、
乳糖および麦芽糖のような糖を代謝する酵素群由来のプロモーター配列、および
トリプトファンのような物質の生合成にかかわる酵素群由来の配列が挙げられる
。バクテリオファージ由来のプロモーターも使用し得て、技術上公知である。加
えて、合成プロモーターおよびハイブリッドプロモーターも有用である;例えば
、tacプロモーターはtrpおよびlacプロモーター配列のハイブリッドで
ある。さらに、細菌のプロモーターとしては、細菌起源でないが細菌のRNAポ
リメラーゼを結合し転写を開始する能力のある天然に存在するプロモーターを含
むことができる。
【0267】 機能的プロモーター配列に加えて、効率の良いリボゾーム結合部位が望ましい
。E. coliでは、リボゾーム結合部位はシャイン・ダルガルノ(SD)配列と呼ば
れ、開始コドン、および開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流にある3〜9ヌ
クレオチド長の配列を含む。
【0268】 発現ベクターも細菌中のIAタンパク質の分泌を起こさせるシグナルペプチド
配列を含有していてもよい。技術上周知のように、シグナル配列は典型的に、細
胞からのタンパク質の分泌を指令する疎水性アミノ酸よりなるシグナルペプチド
をコード化する。タンパク質は、増殖培地中(グラム陽性細菌)、もしくは細胞の
内膜と外膜の間に位置する周辺腔内(グラム陰性細菌)に分泌される。細菌内での
発現には、通常IAタンパク質をコード化する核酸と機能し得るようにに結合さ
れた細菌の分泌リーダー配列が好ましい。
【0269】 細菌の発現ベクターはまた、形質転換した細菌株の選択を可能にするために、
選択マーカー遺伝子を含んでよい。適当な選択遺伝子は、アンピシリン、クロラ
ムフェニコール、エリスロマイシン、カナマイシン、ネオマイシンおよびテトラ
サイクリンのような薬剤に対して細菌を耐性にする遺伝子を含む。選択マーカー
はまた、ヒスチジン、トリプトファンおよびロイシンの生合成経路上の遺伝子の
ような生合成遺伝子を含む。
【0270】 これらの成分は組み立てて発現ベクターに入れる。細菌用の発現ベクターは技術
上周知であり、なかんずくBacillus subtilis、E. coli、Streptococcus cremor
is、およびStreptococcus lividans用のベクターが含まれる。 細菌の発現ベクターは、塩化カルシウム処理、エレクトロポレーション、その
他のような技術上周知の手技を用いて細菌宿主細胞に形質転換される。
【0271】 一つの実施態様では、IAタンパク質は昆虫細胞中に生産される。昆虫細胞の
形質転換用発現ベクター、特にバキュロウイルスに基づく発現ベクターは技術上
周知である。
【0272】 好ましい実施態様では、IAタンパク質は酵母細胞中に生産される。酵母の発
現システムは技術上周知であり、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans
およびC. maltosa、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilisおよびK. l
actis、Pichia guillerimondiiおよびP. pastoris、Schizosaccharomyces pombe
、 ならびにYarrowia lipolytica用の発現ベクターを含む。酵母での発現用に好
ましいプロモーター配列としては、誘導性GAL1、10プロモーターおよびア
ルコール脱水素酵素、エノラーゼ、グルコキナーゼ、グルコース‐6リン酸イソ
メラーゼ、グリセルアルデヒド‐3リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ホスホ
フラクトキナーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、お
よび酸ホスファターゼ遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。酵母の選択マー
カーとしては、ツニカマイシン耐性を付与するADE2、HIS4、LEU2、
TRP1、およびALG7、G418に対する耐性を付与するネオマイシンホス
ホトランスフェラーゼ遺伝子、および銅イオン存在下における酵母の生育を可能
にするCUP1遺伝子が挙げられる。 加えて、この発明のIAポリペプチドは、所望すれば、例えば発現を増加させ
たりタンパク質を安定化させるために他のタンパク質とさらに融合してもよい。
【0273】 ある実施態様では、本発明のIA核酸、タンパク質および抗体は、骨格以外の
標識で標識化されている。本明細書中の"標識化"とは、ある化合物がその化合物
に付着した、その少なくとも1つの成分、同位体または化合物を有し、検出を可
能としていることを意味する。一般に、標識は3分類に分けられる:a)同位体標
識(放射性または安定同位体であり得る);b)免疫標識(抗体または抗原であり得
る);およびc)有色または蛍光染料。これらの標識を任意の位置で化合物中に組
み込むことができる。
【0274】 一旦作成されると、IAタンパク質は共有結合で修飾してもよい。共有結合に
よる修飾の一つのタイプは、IAポリペプチドの標的アミノ酸残基を、IAポリ
ペプチドの選択された側鎖またはN−もしくはC−末端と反応できる有機誘導体
化試薬と反応させることを含む。二官能性試薬による誘導体化は、以下に詳述す
るように、例えば、抗IAタンパク質抗体の精製法もしくはスクリーニングにお
いて使用する水不溶性の支持マトリックスもしくは表面に、IAタンパク質を架
橋するために有用である。一般的に用いられる架橋試薬としては、例えば、1,
1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、例えば
4−アジドサリチル酸とのエステルのようなN−ヒドロサクシンイミドエステル
類、3,3’−ジチオビス(サクシニミジルプロピオン酸エステル)のようなジサ
クシニミジルエステルを含むホモ二官能イミドエステル類、ビス‐N−マレイン
イミド‐1,8−オクタンのような二官能マレインイミド類およびメチル‐3−
[(p−アジドフェニル)ジチオ]プロピオイミデートのような試薬が挙げられる。
【0275】 他の修飾としては、グルタミニルおよびアスパラギニル残基からそれぞれ対応
するグルタミルおよびアスパルチル残基への脱アミド化、プロリンおよびリシン
の水酸化、セリルもしくはスレオニル残基の水酸基のリン酸化、リシン、アルギ
ニン、およびヒスチジン側鎖の "−アミノ基のメチル化[T.E. Creighton, Prote
ins: Structure and Molecular Properties, W.H. Freeman & Co., San Franci
sco, pp. 79-86 (1983)]、N末端アミンのアセチル化、およびC末端カルボキシ
ル基のアミド化が挙げられる。
【0276】 この発明の範囲内に含まれるIAポリペプチドのもう一つのタイプの共有結合
的修飾は、ポリペプチドの天然に存在するグリコシル化パターンを変えることよ
り成る。「グリコシル化パターンを変える」とは、天然に存在する配列のIAポ
リペプチド中に見出される一個もしくはそれ以上の炭水化物部分を単に取り除く
こと、および/もしくは天然に存在する配列のIAポリペプチド中に存在しない
一個もしくはそれ以上の炭水化物部位を附加することをここでの目的には意味す
る。
【0277】 IAポリペプチドへのグリコシル化部位の附加はその配列のアミノ酸を変化さ
せることにより達成される。変化は例えば、一個もしくはそれ以上のセリンもし
くはスレオニン残基を天然配列のIAポリペプチドに添加もしくは置換すること
によって行うことができる(O−グリコシル部位)。IAタンパク質アミノ酸配列
は、DNAレベルでの変化を通して任意に変え得るが、特に、所望のアミノ酸中
に翻訳されるであろうコドンを作成するように予め選択した塩基において、IA
ポリペプチドをコード化するDNAを変異させることによって変え得る。
【0278】 IAポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させるもう一つの方法は、ポリ
ペプチドにグリコシドを化学的もしくは酵素的にカップルさせることによる。こ
のような方法は、技術上で、例えば、1987年9月11日に公告されたWO 8
7/05330におよびAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., pp. 25
9-306 (1981)に記述されている。
【0279】 IAポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的にもしくは酵素
的にまたはグリコシル化の標的となっているアミノ酸残基をコード化するコドン
の変異による置換により達成される。化学的脱グリコシル化の手法は技術上周知
であり、例えば、Hakimuddin, et al., Arch. Biochem. Biophys., 259: 52 (19
87)およびEdge et al., Anal. Biochem., 118: 131 (1981)に記述されている。
ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakura et al., Meth. Enzy
mol., 138: 350 (1987)に記述されているように種々のエンド−およびエキソ−
グリコシダーゼ類の使用により達成することができる。
【0280】 このような誘導体化された部分は、溶解性、吸収性、透過性、血液脳関門通過
性、生物学的半減期などを改善することができる。IAポリペプチドのこのよう
な部分または変更は、起こり得る望ましくないタンパク質の副作用などを択一的
に取り除くかまたは弱めることができる。このような作用に関与し得る部分は、
例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th ed., Mack Publishing C
o., Easton, Pa. (1980)に記載されている。
【0281】 もう一つのタイプのIAタンパク質の共有結合的修飾は、米国特許第4,64
0,835、4,496,689、4,301,144、4,670,417、4,79
1,192もしくは4,179,337号に示されている方法で、IAポリペプチ
ドを種々の非タンパク質ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピ
レングリコール、もしくはポリオキシアルキレン類に結合することである。
【0282】 本発明のIAポリペプチドはまた、もう一つの、異種のポリペプチドもしくは
アミノ酸配列に融合したIAポリペプチドを含むキメラ分子を形成するように修
飾し得る。一つの実施態様においては、そのようなキメラ分子は、IAポリペプ
チドと、抗タグ抗体が選択的に結合できるエピトープを提供するタグポリペプチ
ドとの融合より成る。エピトープタグは一般的に、IAポリペプチドのアミノ−
もしくはカルボキシ−末端に置かれる。IAポリペプチドにそのようなエピトー
プタグが付いた形のものの存在はタグポリペプチドに対する抗体によって検出す
ることができる。また、エピトープタグをつけることにより、IAポリペプチド
が抗タグ抗体、もしくはエピトープタグに結合するもう一つのタイプのアフィニ
ティーマトリックスによる精製を容易ならしめる。別の実施態様では、キメラ分
子は、IAポリペプチドと免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの特定の領域と
の融合を含むことができる。2価形態のキメラ分子について、このような融合は
IgG分子のFc領域に対してなし得る。
【0283】 種々のタグポリペプチドおよびその各々の抗体は技術上周知である。例として
は、ポリ−ヒスチジン(poly-his)もしくはポリ−ヒスチジン−グリシン(poly-hi
s-gly)タグ、flu HAタグポリペプチドおよびその抗体12CA5[Field e
t al., Mol. Cell. Biol. 8: 2159-2165 (1988)];c−mycタグおよびそれに
対する8F9、3C7、6E10、G4、B7および9E10抗体[Evan et al.
, Molecular and Cellular Biology, 5: 3610-3616 (1985)];ならびに単純ヘル
ペスウイルスの糖タンパク質D(gD)タグおよびその抗体[Paborsky et al., Pr
otein Engineering, 3(6): 547-553 (1990)]が挙げられる。その他のタグポリペ
プチドとしては、Flag−ペプチド[Hopp et al., BioTechnology 6: 1204-12
10 (1988)];KT3エピトープペプチド[Martin et al., Science 255: 192-194
(1992)];チューブリンエピトープペプチド[Skinner et al., J. Biol. Chem.
266: 15163-15166 (1991)];およびT7遺伝子10タンパク質ペプチドタグ[Lut
z-Freyermuth et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87: 6393-6397 (1990)]
が挙げられる。
【0284】 好ましい実施態様では、IAタンパク質は発現後精製もしくは単離される。I
Aタンパク質は、どのような他の成分が試料中に存在するかに依存して、当業者
周知の種々の方法で単離もしくは精製し得る。標準的な精製法としては、電気泳
動的、分子的、免疫学的技法ならびにイオン交換、疎水、アフィニティー、およ
び逆相HPLCクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィー技法、ならびにク
ロマトフォーカシングが挙げられる。例えば、IAタンパク質は、標準的な抗ラ
イブラリー抗体カラムを用いて精製することができる。限外ろ過およびダイアろ
過技法とタンパク質濃縮との組合わせも有用である。適当な精製技法の一般的手
引書としては、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, NY (198
2)を参照のこと。必要な精製の程度はIAタンパク質の用途に依存して変わるで
あろう。場合によっては精製は不要であろう。
【0285】 一旦作成されると、この発明のIAタンパク質には多数の応用を見出せる。好
ましい実施態様では、IAタンパク質はインシュリン関連異常の処置として患者
に投与される。
【0286】 「インシュリン関連異常」または「インシュリン依存性異常」または「インシ
ュリン応答性異常」または「異常」もしくはこれらに似た文法上の同義語とは、
本明細書中では、インシュリンまたはIAタンパク質を含む医薬組成物の投与に
より改善する異常を意味し、I型糖尿病、II型糖尿病;高糖尿;真性糖尿病;
家族性高プロインシュリン尿症;炭水化物代謝の異常;骨格筋タンパク質代謝回
転の異常;および上記に列挙された異常のいずれかに関連する諸異常などを含む
がそれらに限定されない諸異常を意味する。
【0287】 好ましい実施態様では、治療的有効用量のIAタンパク質を、処置を必要とし
ている患者に投与する。「治療的有効用量」とは、本明細書中では、投与する目
的の効果をもたらす用量を意味する。正確な用量は処置の目的に応じて変るが、
当業者には既知技術を使って探知し得る。当技術分野で知られているように、I
Aタンパク質の品質低下、全身的対局所的送達、および新規プロテアーゼ合成速
度、並びに、年齢、体重、全般的健康状態、性別、ダイエット、投与時間、薬物
相互作用、および症状の重篤度、などに応じた調整が必要になるであろうが、そ
れらは当業者には日常的実験により探知し得るであろう。
【0288】 本発明の目的に関し、「患者」とは、ヒト、およびその他の動物のいずれをも
含み、殊に哺乳動物、および諸生物を含む。従って、この方法は、ヒトの医療お
よび家畜用のいずれにも適用可能である。好ましい実施態様では、患者は哺乳動
物であり、最も好ましい態様では患者はヒトである。
【0289】 「処置」とは、本発明では、疾患または異常に対する治療的処置、並びに予防
的、または抑制的処置を含むことを意味する。従って、例えば、I型糖尿病の場
合、該疾患の発症に先立ってIAタンパク質を投与し好結果を収めることは、該
疾患の「処置」になる。他の例として、疾患の臨床的示顕後にIAタンパク質を
投与し、該疾患の症候群と闘って好結果を収めることも、該疾患の「処置」に含
まれる。「処置」はまた、疾患の発現後に該疾患を根絶するためにIAタンパク
質を投与することをも包含する。発症後および臨床的症候群の進展後に薬物を投
与し、起こり得る臨床的症候群の減少および恐らくは疾患の改善を伴って好結果
を収めことも、該疾患の「処置」に含まれる。
【0290】 「処置を必要としている」もの、には哺乳動物、殊に、既に疾患または異常を
発症しているヒトが含まれ、同様に、疾患または異常を発症しようとしているも
の、該疾患または異常を予防しようとしているものも含まれる。特に、I型糖尿
病または真性糖尿病の「リスクを有する個体」は、本明細書中では(i)I型糖尿
病または真性糖尿病の血縁者を有する個体(ii)明白なI型糖尿病ではなく、自己
抗体陽性の諸個体(これらの自己抗体は、膵ランゲルハンス島細胞抗体、インシ
ュリン抗体、グルタミン酸デカルボキシラーゼ自己抗体を含む)(iii)DR3型
またはDR4DQRW8型の組織適応(HLA)を有する諸個体(iv)糖負荷試験で
第一期インシュリン分泌が欠失しているような、ブドウ糖の諸異常を有する諸個
体、を意味する。
【0291】 他の実施態様では、IAタンパク質、IA遺伝子、またはIA抗体の治療的有
効用量を、インシュリンの不適切発現を含む疾患に罹患している患者に投与する
。本発明の範囲内における「インシュリンの不適切発現を含む疾患」とは、イン
シュリンの過剰が特徴である諸疾患または諸異常を含むことを意味する。この過
剰は、分子レベルでの過剰発現、作用部位における延長したまたは累積した発現
、または正常より増加したインシュリン活性、などを含むがそれらに限定されな
い各種の原因によるものであろう。この定義に含まれるものには、インシュリン
の減少が特徴である諸疾患または諸異常などもある。この減少は、分子レベルで
の減少した発現、作用部位における短縮または減少した発現、または正常より減
少したインシュリン活性、などを含むがそれらに限定されない各種の原因による
ものであろう。それらのインシュリン活性の増加または減少は、それらに限定さ
れないが、本明細書中に記載および参照したアッセイ法に従って、正常な発現、
発症、またはインシュリン活性と関連して測定できる。
【0292】 本発明のIAタンパク質の投与は、好ましくは滅菌水溶液の形態での、経口、
皮下、静脈内、経鼻、経皮、腹腔内、筋肉内、肺内、膣内、肛門内、眼内投与、
などを含むがそれらに限定されない各種の方法で実施できる。ある場合、例えば
、創傷、炎症、または多発性硬化症の処置では、IAタンパク質を溶液剤または
噴霧剤として直接適用できる。医薬組成物は、導入の方式に応じて各種のやり方
で製剤化できる。製剤中の治療的に活性なIAタンパク質の濃度は、約0.1か
ら100重量%の範囲で変化し得る。他の好ましい実施態様では、IAタンパク
質の濃度は1−100U/mlの範囲にあり、好ましくは体重1キログラム当た
り0.03、0.05、0.1、0.2、および0.3Uである。
【0293】 本発明の医薬組成物は、患者に投与するのに適した形態でIAタンパク質を含
むものである。好ましい実施態様では、この医薬組成物は水に可溶性の形態にあ
り、例えば、医薬的に許容され得る塩、それは酸および塩基付加塩の両方を含む
ことを意味しているが、として存在している。「医薬的に許容され得る酸付加塩
」とは、遊離塩基の生物学的有効性を保持している塩であって、かつ無機酸例え
ば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸および類似物、および、有機酸例え
ば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、
マロン酸、コハク酸、フマール酸、酒石酸、くえん酸、安息香酸、桂皮酸、マン
デル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリ
チル酸および類似物とにより形成される、生物学的にあるいは他の点で望ましく
ないものでない、塩を指す。「医薬的に許容され得る塩基付加塩」には、無機塩
基から誘導されるもの、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウ
ム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩およ
び類似物が含まれる。特に好ましいのは、アンモニウム、カリウム、ナトリウム
、カルシウムおよびマグネシウム塩である。医薬的に許容され得る有機非毒性塩
基から誘導される塩には、第1級、第2級および第3級アミン、天然産置換アミ
ンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂、例えば、イソプ
ロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプ
ロピルアミン、およびエタノールアミン、などの塩が含まれる。
【0294】 本発明の医薬組成物は、下記のもの;即ち、担体タンパク質例えば血清アルブ
ミン;緩衝剤例えばNaOAc;充填剤例えば微結晶セルロース、ラクトース、
コーンその他のデンプン;結合剤;甘味料および他の付香料;着色剤;およびポ
リエチレングリコール、の1またはそれ以上をも含むことができる。添加剤は当
技術分野で良く知られており、各種の処方で使用される。
【0295】 さらに、ある実施態様では、本発明のIAタンパク質の製剤化に、米国特許第
5,843,886号, 第6,034,054号, 第4,992,417号, 第5,506,202号, 第5,559,094号,
第5,700,662号, 第5,618,913号, 第5,514,646号および第5,514,646号(その全
てを明示的に本明細書中に取り込みその一部としてある)に記載されているよう
な、組換え体インシュリンの医薬組成物調製法を使用する。 さらなる実施態様では、本発明のIAタンパク質をミセル性製剤中に加える;
米国特許第5833948号(その全てを明示的に本明細書中に取り込みその一
部としてある)。 医薬組成物は、組合わせで投与することもできる。さらに本発明の組成物を他
の治療剤と組合わせて投与することもできる。
【0296】 本明細書中で提供するある実施態様では、当技術分野で既知の方法を使用して
、モノクローナルおよびポリクローナル抗体を含むがそれらに限定されない抗体
を、IAタンパク質に対して生起させる。好ましい実施態様では、これらの抗−
IA抗体を免疫療法に使用する。従って、免疫療法の方法が提供される。「免疫
療法」とは、IAタンパク質に対して生起させた抗体により、インシュリン関連
疾患を処置することを意味する。本明細書中で用いるとき、免疫療法は受動態ま
たは能動態であり得る。受動態免疫療法とは、本明細書中で定義するとき、受容
者(患者)への抗体の受動的トランスファーである。能動態免疫化とは、受容者
(患者)内での抗体および/またはT−細胞応答の誘起である。免疫応答の誘起
は、それに対して抗体を生起させるIAタンパク質抗原を、受容者に提供するこ
との結果であり得る。当業者には理解されるはずであるが、IAタンパク質抗原
は、それに対する抗体生起が望まれているIAポリペプチドを受容者内に注射す
るか、または、IAタンパク質抗原の発現条件下にIAタンパク質抗原を発現し
得る、IAタンパク質をコードしている核酸を受容者に接触させることにより、
提供され得る。
【0297】 他の好ましい実施態様では、ある治療化合物を抗体、好ましくは抗−IAタン
パク質抗体とコンジュゲートさせる。この治療化合物は細胞毒性物質であり得る
。この方法では、細胞毒性物質を例えば膵臓の腫瘍組織または腫瘍細胞に対して
標的化することにより、多数の関連細胞を減少させ、そのようにして癌に伴う関
連症候群を減少させ、IAタンパク質関連諸疾患を減少させる。細胞毒性物質は
極めて多種多様あり、そして細胞毒性薬物または毒素あるいはそれらの毒素の活
性断片を含むが、それらに限定されない。好適な毒素およびそれらの対応する断
片には、ジフテリアA鎖、エクソトキシンA鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、ク
ルシン、クロチン、フェノマイシン、エノマイシンおよび類似物などが含まれる
。細胞毒性物質には、さらに、細胞サイクルタンパク質に対して生起させた抗体
に放射性同位元素をコンジュゲートさせることにより、または抗体に共有結合し
ているキレート化剤を放射性核種と結合させることにより、得られる放射性化学
薬品類も含まれる。
【0298】 好ましい実施態様では、IAタンパク質を治療物質として投与し、上に概説し
たようにして製剤化することができる。同様に、当技術分野で知られているよう
に、IA遺伝子(IAタンパク質コード化各領域の完全長配列、各部分配列、ま
たは各調節配列のいずれをも含む)を遺伝子療法適用で投与することができる。
当業者には理解されるはずであるが、これらのIA遺伝子は、遺伝子療法(即ち
、ゲノム内へ取込ませるための)として、またはアンチセンス組成物としても、
アンチセンス適用を含むことができる。
【0299】 好ましい実施態様では、IAタンパク質をコードしている核酸を遺伝子療法で
使用することもできる。遺伝子療法適用では、例えば欠陥遺伝子の置き換えのた
めに、遺伝子を細胞中に導入して治療的に有効な遺伝子産物のインビボ合成を達
成させる。「遺伝子療法」には、単回処置により持続的効果が達成される在来式
の遺伝子療法と、治療的に有効なDNAまたはmRNAの単回または繰返し投与
が関与する遺伝子療法剤の投与、の両方が含まれる。アンチセンスRNAおよび
DNAを治療物質として使用して、インビボでのある種の遺伝子の発現を阻止す
ることができる。短いアンチセンスオリゴヌクレオチド類が、それらの細胞膜に
よる取込みが限られていることに起因して細胞内濃度が低いにもかかわらず、細
胞中に移入され、そこで阻害物質として作用し得ることが既に示されている。[Z
amecnik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:4143-4146 (1986)] これ
らのオリゴヌクレオチド類は、例えばそれらの陰性荷電ホスフォジエステル基を
非荷電基と置換する修飾により、その取込みを増強させることができる。
【0300】 生育細胞中に核酸を導入するためには、各種の手法を利用し得る。それらの手
法は、核酸が、培養細胞中にインビトロでトランスファー(転移)されるのであ
るか、または意図する宿主の細胞中にインビボでトランスファーされるのである
かによって変る。哺乳動物の細胞中に核酸を、インビトロでトランスファーする
のに適した手法には、リポソーム類、電気穿孔、マイクロ注入、細胞融合、DE
AE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、などの使用が含まれる。近時、
好適とされるインビボでの遺伝子トランスファー手法には、ウイルス(典型的に
はレトロウイルス)ベクターによるトランスフェクション、およびウイルス被覆
タンパク質−リポソーム媒介トランスフェクション[Dzau et al., Trends in Bi
otechnology 11:205-210 (1993)]が含まれる。ある場合には、核酸供給原を、標
的細胞を標的化する試薬、例えば細胞表面膜タンパク質または標的細胞に特異的
な抗体、標的細胞上のレセプターに対するリガンド、などとともに提供すること
が望ましい。リポソーム類を採用する場合は、エンドサイトーシスに伴って細胞
表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば、特定細胞型に親和性のカプシ
ドタンパク質またはそれらの断片、サイクリング中に内在化を受けるタンパク質
に対する抗体、細胞内局在化を標的化し細胞内ハーフライフを増大するタンパク
質を、標的化および/または取込み促進のために使用することができる。レセプ
ター媒介エンドサイトーシスの手法は、例えば、Wu et al.,によるJ. Biol. Che
m. 262:4429-4432 (1987)、および、Wagner et al., Proc. Natl. Sci. U.S.A.
87:3410-3414 (1990)に記載されている。遺伝子マーキングおよび遺伝子療法プ
ロトコールの総説については、Anderson et al., Science 256:808-813 (1992)
を参照。
【0301】 好ましい実施態様では、IA遺伝子は、単一遺伝子またはIA遺伝子群の組合
わせのいずれかで、DNAワクチンとして投与する。裸のDNAワクチン類は、
一般的に当技術分野で既知である。Brower, Nature Biotechnology, 16:1304-13
05 (1998)。DNAワクチンとしての遺伝子の使用方法は当業者に良く知られて
おり、IA遺伝子またはIA遺伝子の一部を、処置を必要としている患者内での
発現プロモーターの制御下に置くことを含む。DNAワクチンに使用するIA遺
伝子は、完全長IAタンパク質をコードするものであり得るが、より好ましくは
IAタンパク質由来のペプチドを含むIAタンパク質の一部をコードするもので
あり得る。好ましい実施態様では、あるIA遺伝子に由来する複数のヌクレオチ
ド配列を含むDNAワクチンで、患者を免疫化する。同様に、複数のIA遺伝子
、または本明細書に定義したようなそれらの一部で、患者を免疫化することも可
能である。理論にとらわれずに言えば、DNAワクチンによりコードされている
ポリペプチドの発現、細胞毒性T−細胞、ヘルパーT−細胞および抗体が、イン
シュリンタンパク質を発現中の細胞を認識し、破壊するかまたは排除するように
誘導するのであろう。
【0302】 好ましい実施態様では、DNAワクチンにはDNAワクチンとともに、アジュ
バント分子をコードする遺伝子が含まれる。そのようなアジュバント分子には、
DNAワクチンによりコードされているIAポリペプチドに対する免疫原性応答
を増加させるサイトカインが含まれる。付加的または代替的アジュバントは当業
者に既知であり、本発明でも使用し得る。
【0303】 以下の実施例は上述の発明を使用する方法をより詳細に記述し、またこの発明
の種々の実施態様を実行するために考案された最良の方法を示すために役立つ。
これらの実施例は、この発明の真の範囲を限定することを意図したものでは全く
なく、説明のみを目的として呈示されている。ここに引用した全ての参考資料は
全体的な出典明示により本明細書の一部とする。
【0304】 実施例1PDAによる新規なIAタンパク質の設計および特性化 概要:新規なインシュリン活性タンパク質(IAタンパク質)の配列を、このタン
パク質の同時に至適化した埋没コア中の残基、タンパク質表面の残基およびタン
パク質境界の残基から、タンパク質設計オートメーション(PDA)を使用し、WO
98/47089、米国仮特許出願(U.S.S.)第09/058,459, 09/127,926, 60/104,612, 60
/158,700, 09/419,351, 60/181,630, 60/186,904号、および米国特許出願の、表
題"Protein Design Automation For Protein Libraries(フィールド: April 14,
2000;発明者: Bassil Dahiyat)これらは出典明示により全体で本明細書の一部
とする、に記載のように、設計した。2043配列可能性に対応すると考えられた4
3の残基で、数種のコアデザイン(6位置)、境界デザイン(15位置)、表面デザ
イン(22位置)を完成した。分子表面の変化が最小になるように、そして設計し
た新規なタンパク質アナログの抗原性ポテンシャルを制限するために、溶媒に曝
露されていない残基を設計した。
【0305】 計算は、16 シリコングラフィックスR10000 CPU上で12-19時間を必要とした。
各配列のグローバルな至適配列を特徴づけるために選択した。設計したタンパク
質において、全51残基のうち、1−20残基をヒトインシュリンから変化させ
た。
【0306】 コンピュータープロトコル 鋳型構造の調製: 本研究用に、PDBデータバンクに寄託したヒトインシュリンの結晶構造を使
用した[PDB記録 1TRZ; Ciszak and Smith, Biochemistry 33(6):1512-
7(1994)]。CiszakおよびSmithは1.6オングストローム分解能のX線結晶学で
構造を解いた。T3R3ヒトインシュリン6量体の構造は二つの亜鉛イオンと錯
体形成している。TR2量体とインシュリン6量体から成る非対称ユニットは、
結晶学的3倍軸の作用により発生する。一つのインシュリン三量体の立体配置は
T6 6量体のものと殆ど同一であるが、他のトリマーはアルファ螺旋立体配置
よりもむしろ延びている3個のN末端B鎖残基以外、R6 6量体のものに接近
している。2個の亜鉛イオンの各々は、結晶学的3倍軸に位置し、二つの異なる
別個の無秩序な配位ジオメトリーであるが、3個の対称関連B10−His残基
のイミダゾール基により配位結合している。T3トリマーにおける亜鉛の配位空
間は、塩化物イオンにより満たされた4つの部分を有する四面体か、または3つ
の水分子により完成した八面体である。R3トリマー12Åの狭い溝における亜
鉛の配位は、2番目の塩化物イオンまたは水分子が配位空間を完成させる、四面
体である[Ciszak and Smith, 前出]。
【0307】 PDA計算をA鎖およびB鎖について同時に行なった。PDBファイル1TR
Zまたは1wavに存在する亜鉛イオンおよび全ての水分子ならびに水素原子を
、PDA計算をする前に構造から取り除いた。
【0308】 設計ストラテジー: これらの位置の至適化が安定性を改善するのでコア残基を設計用に選択したが
、しかしながら安定化は同様に他の部位の変更から得られた。コア設計は分子表
面の変化を最小化し、そうして設計されたタンパク質の抗原性に対する可能性を
制限した。他のPDA計算はコア、境界および表面残基を含んだ。
【0309】 PDA計算 PDA計算は全て、溶媒和モデル2により遂行された。溶媒和モデル2は、St
reetおよびMayo[Fold.Design 3:253-258(1998)]により報告された溶媒和モデ
ルである。可能な場合、デッド・エンド・エリミネーション(DEE)を完了す
るまで行なって、PDA基底状態を見出した。6量体計算を溶媒和モデル1およ
び2で行い、同様な結果となった。
【0310】 これを(i)ジスルフィド置換、(ii)6量体形成を促進する変異体、および
(iii)安定性改善のための全体的再設計のための設計におけるA鎖およびB鎖
のPDA計算のために行った。‘trz 08’計算(下記参照)のために、D
EEを、回転異性体配列空間が1025配列以下に減少するまで中断した。DE
E計算は全ての与えられたコア計算であり、続いてモンテカルロ(MC)最小化
および1,000のまたは10,000までの最低エネルギー配列のリストを産生
した。
【0311】 PDA計算を開始する前、この構造の初回製造を遂行した。A鎖およびB鎖の
場合、クーロンポテンシャルを伴わない共役勾配最小化の50ステップを行い、
最小化した。この後、バイオグラフを用いてA鎖の完全構造を目的とするクーロ
ンポテンシャルを伴わない共役勾配最小化をさらに50ステップ行った。この最
小化方法を選択することにより、構造における初めの不適当な接触を除去した。
【0312】 a2h1p0回転異性体ライブラリーを用いて全デザインに関するPDA計算
を行った。このライブラリーは、DunbrackおよびKarplus(DunbrackおよびKarpl
us、J.Mol.Biol.230(2):543-74(1993)、出典明示により本明細書の一部とする)
のバックボーン依存的回転異性体ライブラリーに基くが、芳香族および疎水性ア
ミノ酸に関するさらに多くの回転異性体を含む。全芳香族アミノ酸に関する回転
異性体のXおよびX角数値並びに他の全疎水性アミノ酸に関するX角数値
は、DunbrackおよびKarplusライブラリーで報告された平均値について±1標準
偏差で拡張された。典型的PDAパラメーターを使用した。ファンデルワールス
縮尺率(scale factor)を0.9に設定し、H−結合ポテンシャルの谷の深さ(w
ell-depth)を8.0kcal/モルに設定し、0.048kcal/モルの無極性埋没(b
urial)エネルギーおよび1.6の無極性エクスポージャー増倍率による2型溶媒
和を用いて溶媒和ポテンシャルを計算し、2次構造縮尺率を0.0に設定した(
2次構造に性質については考慮されなかった)。計算には、16シリコン・グラ
フィックスR10000CPUにおいて12−24時間を要した。
【0313】 モンテカルロ解析 PDAにより作成された配列のモンテカルロ解析は、各可変位置およびそれら
の発生頻度について許容された基底状態(最適)アミノ酸(複数の場合も含む)
を示す(表1〜4参照)。
【0314】 実施例2 ジスルフィド置換(設計cys1) このPDA計算は可能性のあるシステインノックアウトおよびこれらのシステ
インに密接(5Å)な全ての位置を考慮し、構造における柔軟性を考慮し、更な
る変異に適応させる。
【0315】 視覚的検査により、以下の残基がタンパク質の境界に属すると同定された:A
5−Gln、A15−Gln、A19−Tyr、B2−Val、B18−Val
およびB22−Arg。以下の残基はタンパク質のコアに属すると同定された:
A2−Ile、A3−Val、A16−Leu、B11−Leu、B15−Le
uおよびB24−Phe。本設計に以下のシステイン残基が含まれた:A6、A
7、A11、A20、B7およびB19。
【0316】 したがって、以下の位置をPDA設計に包含させた: A2 A3 A5 A6 A7 A11 A15 A16 A19 A20 B2 B7 B11 B15 B18 B19 B22 B24 Ile Val Gln Cys Cys Cys Gln Leu Tyr Cys Val Cys Leu Leu Val Cys Arg Phe
【0317】 境界およびシステイン残基は、Cys、ProおよびGly以外の任意のアミ
ノ酸を変えることを可能にした。コア残基は任意のPHOBICアミノ酸(Al
a、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Met)を変えること
を可能にし、PDAコア溶媒和ポテンシャルを使用し、表面領域計算を包含した
【0318】 モンテカルロ法を使用して、低エネルギー配列のリストを生成した。変異パタ
ーンを導くモンテカルロにより生成された最低1000タンパク質配列の分析を
、表1に示す。公算が示されていない場合、1の値とした(×1000=100
0)。
【表3】
【0319】 したがって、表1に従った位置で変異を示す任意のタンパク質配列は、恐らく
より安定で活性なIAタンパク質を産生する。特に最低101MC生成配列のリ
ストに見られるタンパク質配列(データは示していない)のものは、より安定で
活性なIAタンパク質をもたらす高い可能性を有する。PDA設計‘cys1’
から由来する好ましいIA配列を図3に示す。この配列は、野生型インシュリン
と比較したとき、20個の変異を示す:G−A1−N、I−A2−L、C−A6
−A、C−A7−S、I−A10−Q、C−A11−A、L−A16−I、E−
A17−Y、Y−A19−F、C−A20−D、F−B1−D、Q−B4−F、
C−B7−Y、L−B11−I、V−B12−R、A−B14−W、C−B19
−A、F−B25−N、Y−B26−FおよびT−B27−D。A6、A11お
よびB19の位置のシステインは全てAlaになり、これらの位置での空間の欠
失を示す。
【0320】 表1に示すアミノ酸置換の任意の組合わせが可能であり、インシュリンよりも
ジスルフィド結合が少ないIAタンパク質をもたらす高い可能性を有する。
【0321】 ジスルフィド置換(設計cyc77a、cys77b、cys77d、cys7
7d+、helix24およびcys−4) PDA設計‘cys77’、A7−Cysのみ、B7−Cysおよびそれらの
硫黄原子(A3、7、B2、4、7、11)から6Å以内の全ての残基を計算に
おいて考慮した。
【0322】 視覚的検査により、以下の残基がタンパク質の境界に属すると同定された:A
7−Cys、B2−Val、B4−GlnおよびB7−Cys。以下の残基はタ
ンパク質のコアに属すると同定された:A3−ValおよびB11−Leu。
【0323】 したがって、以下の位置をPDA設計に包含させた: A3 A7 B2 B4 B7 B11 Val Cys Val Gln Cys Leu
【0324】 デッド・エンド・エリミネーションおよびモンテカルロ法を使用して、低エネ
ルギー配列を生成した。変異パターンを導くモンテカルロにより生成された最低
1000タンパク質配列の分析を表2に示す。
【表4】
【0325】 したがって、表2に従った位置で変異を示す任意のタンパク質配列は、恐らく
より安定で活性なIAタンパク質を産生する。特に最低101MC生成配列のリ
ストに見られるタンパク質配列(データは示していない)のものは、より安定で
活性なIAタンパク質をもたらす高い可能性を有する。PDA設計‘cys77
a’から由来する好ましいIA配列を図3Bに示す。この配列は、野生型インシ
ュリンと比較したとき、4個の変異を示す:C−A7−S、V−B2−E、Q−
B4−YおよびC−B7−Y。
【0326】 PDA設計‘cys77b’はPDA設計‘cys77a’と類似しているが
、この計算において、A7およびB7のみの位置で他の残基への変化が可能であ
った。他の位置は固定されたそれらのアミノ酸同一性を有するが、立体配置の変
化は可能であった。‘Cys77b’はA7−B7のみの設計であり、減少した
立体配置的自由がB7からのTyr変異を遮断する。この設計からの好ましい配
列を図3Cに示す。この配列は2個の変異、C−A7−SおよびC−B7−Dを
示した。
【0327】 PDA設計‘cys77d’および‘cys77d+’は、A7 Ser、B
7 Tyrペアが起こるのを可能にする変異の最小セットである。これらの二つ
の設計からの好ましい配列を図3Dおよび3Eに示す。
【0328】 図3Dに示す配列は4つの変異、C−A7−S、V−B2−T、Q−B4−Y
およびC−B7−Yを示す。 図3Eに示す配列は、3つの変異、C−A7−S、Q−B4−YおよびC−B
7−Yを示す。
【0329】 PDA設計‘helix 24’は、B鎖の残基1−5が、各々−57°およ
び50°の螺旋φ、ψに設定されている以外、PDA設計‘cys77a’と同
じである。これはよりルームを有する理想的R状態である。
【0330】 この設計から得られる好ましい配列を図3Fに示す。この配列は二つの変異、
C−A7−SおよびC−B7−Eを示す。 PDA設計‘cys−4’は残基B1−B4の欠失およびA3、A7、B3お
よびB7の位置の計算を含む。
【0331】 この設計から得られる好ましい配列を図3Gに示す。この配列は2つの置換、
C−A7−EおよびC−B7−EおよびB1からB4の位置の残基の欠失を含む
。このIAタンパク質はA7−B7によりルームを作る。
【0332】 A鎖の他の好ましい変異は下記の通りである:1Ala、2Leu、6Ala
、7Ser、7Glu、7Asn、10Gln、11Ala、16Ile、17
Tyr、19Phe、20Asp、20Serおよび20Ala。
【0333】 B鎖の他の好ましい変異は下記の通りである:1Asp、2Glu、2Thr
、4Tyr、4Phe、7Tyr、7His、7Asp、7Ala、7Ser、
7Glu、11Ile、12Arg、14Trp、19Ala、25Asn、2
6Pheおよび27Asp。
【0334】 表2に示すアミノ酸置換の任意の組合わせが可能であり、より安定なIAタン
パク質をもたらすであろう。
【0335】 一般に、インシュリン2量体における立体的制約は、主鎖を著しく混乱させる
ことなく側鎖置換する設計のためのジスルフィド位置を困難にする。A6−A1
1はA20−B19のように、非常に厳密に立体的に制約されていた。ジスルフ
ィドA7−B7は例外であり、種々の計算に関して上に示すように、Ser−T
yrまたはSer−Glu/Aspに置換された。
【0336】 実施例3 6量体形成を促進するインシュリン変異体:B14置換 先の計算において、B鎖の14位は、タンパク質表面に近いその位置にも関わ
らず、大きな疎水性残基となるように至適化された。R6 6量体において、こ
の位置は殆ど埋もれており、6量体のR形を安定化するフェノール分子と接触す
る。ヒトインシュリンの6量体R6立体配置におけるフェノール結合部位を塞ぐ
(PDB 1 wav; Ding et al. Sci. China C.
Life Sci. 39(2): 144−53 (1996) 出典明示
により本明細書の一部とする)、またはフェノール結合のアロステリック効果を
模倣する努力において、フェノール結合部位の一つ(フェノールの非存在下で)
を囲む残基(異なる置換基からの)の再設計が成された。これらの変異体の予期
される構造は、6量体におけるフェノールで占領された空間を満たし、フェノー
ルの構造的位置およびその化学的同一性を模倣する。フェノール結合部位を塞ぐ
ことにより、フェノール結合が防止させ、フェノール結合とR状態形成の間の連
結が壊れるであろう。
【0337】 PDA‘wav14’設計配列および6量体配列の全て、6セットのインシュ
リンヘテロ2量体(鎖1から12)を含む完全インシュリン6量体複合体(PD
Bファイル 1wav; Ding et al., 前出)で行われた計算に由
来した。鎖12の中心を成す一つのフェノール結合部位、Ala−B14(複合
体における6番目のインシュリンヘテロ2量体、B鎖)を設計した。以下の位置
が関与した: 最初の数字は残基のPDA再番号付であり、2番目の数字は6量体における鎖の
番号である;コアおよび境界配列は最後に明記した:
【表5】
【0338】 これらの位置は、B14側鎖から4.6Å以内にあるため、選択した。
【0339】 DEEおよびモンテカルロ法を使用して、低エネルギー配列のリストを生成し
た。変異パターンを導くモンテカルロにより生成された最低1000タンパク質
配列の分析を表3に示す:
【表6】
【0340】 このPDA計算から得られ、B14置換のみを含む好ましいIA配列を図4C
、4D、4Fおよび4Gに示す。
【0341】 更に、置換B14TrpまたはB14Pheは溶液中で単量体により形成され
るT状態の形成、更にR状態への平衡への進行を防止する。これは、R状態が単
量体として安定ではないため、インシュリンの自己会合を促進するであろう。
【0342】 同様な効果のB14における他の置換は、B14Tyr(図4F9およびB1
4Ile(図4G9である。これらの変異は、下記でB5置換について更に記載
するような更なる変異を必要とする可能性がある。
【0343】 6量体形成を促進するインシュリン変異体:B5置換 このPDA設計において、B鎖のB5位を、インシュリン6量体形成を促進す
る置換の可能性に関して分析した。
【0344】 HisB5のTrpまたはPheへの置換は、B14のTrpまたはPheへ
の変異のような6量体インシュリンにおけるフェノール結合部位の同じ閉塞を有
すると予期される。これらのB5置換は、フェノールにより通常成される相互作
用と同様に、フェノール結合部位を囲む他の置換基由来の他の非極性側鎖と閉鎖
相互作用を形成しているため、インシュリンの単量体形(広がった単量体に関し
て)を脱安定化させるであろう。
【0345】 B14変異と異なり、B5におけるTrpおよびPheはT状態と立体的に両
立できる。B5置換のみを含む好ましいIAタンパク質配列を図4Bに示す。
【0346】 6量体形成を促進するインシュリン変異体:B14/B5 2重置換 このPDA設計において、B鎖のB5およびB14位を、インシュリン6量体
形成を促進する置換の可能性に関して評価した。以下の置換が判明した: B鎖、14位:Phe、Trp、TyrまたはIle;および B鎖、5位:PheまたはTrp。
【0347】 B14−Phe/B5−Phe、B14−Phe/B5−Trp、B14−T
rp/B5−Phe、B14−Trp/B5−Trp、B14−Tyr/B5−
Phe、B14−Tyr/B5−Trp、B14−Ile/B5−Pheおよび
B14−Ile/B5−Trpのような上記置換の任意の組合わせが可能である
。B5およB14置換を含む好ましいIAを図4Aおよび図4Eに示す。
【0348】 6量体形成を促進するインシュリン変異体:要約 結果は、His−B5−Pheおよび/またはAla−B14−Pheがフェ
ノール結合部位を閉塞し、6量体におけるこれらの部位のフェノール様分子の結
合を妨げることを示す。B14−Pheは単純に立体的な理由のため、フェノー
ル結合の防止により有効であろう。いずれの変異も一つだけ成し得、またはそれ
らはフェノール結合部位の閉塞により更に有効である2重変異体として作り得る
【0349】 B5−Pheは単量体のT形と完全に両立するが、B14−Phe(およびB
14Pheを含む2重変異体)は、単量体または6量体のいずれでも、B鎖の最
初の数個の残基、特にB6−Leuとの原子の立体的衝突のために、標準T状態
の形成が立体的に不可能である。
【0350】 したがって、フェノール結合の防止に加えて、これらの変異体は、二つの異な
る理由からタンパク質のR6形の形成を促進する(それによりフェノール結合を
模倣する)であろう。第1に、B5Phe変異は、B5の側鎖が単量体で溶媒に
曝露されるためタンパク質の単量体形を(広がった単量体に関して)脱安定化さ
せ、6量体のR6形を(フェノール非存在下のR66量体の野生型に関して)、
フェノールにより通常成されるのと同じ相互作用ど同様に、フェノール結合部位
を囲む他の置換基からの他の非極性速さと密接な相互作用を形成するため、安定
化させるであろう。第2に、B14−Phe変異は正常T状態単量体の形成が立
体的に不可能であり、それによりR66量体の形成に大きな駆動力を提供する。
【0351】 したがって、上記B14置換、B5置換およびB14/B5 2重置換の下に
記載の全ての変異は、単量体の安定性および単量体:6量体平衡ならびに6量体
におけるT6⇔T3R3⇔R6平衡に影響するであろう(T状態は野生型単量体
の構造的試験で見られるような標準T状態ではないが)。
【0352】 実施例4 改善された安定性のための全体的再設計 これらのPDA設計(‘trz 06’、‘trz 07b’および‘trz 08’)において、インシュリン単量体は安定性に関して改善された。変異体
の可能性のある機能的役割に関して、考察はされなかった。例えば、Gly−A
1は常にA1−Asnとして設計されているが、この残基は機能に関してより保
存されているであろう。
【0353】 一般に、PDA設計‘trz 06’は、PDA設計‘trz 07b’およ
び‘trz 08’よりも、より保存的である。これら全ての3つのPDA計算
以下の位置の残基は‘コア’残基と見なされた:A2、A3、A16、B11、
B15およびB24;以下の位置の残基は‘境界’残基と見なされた:A5、A
15、A17、A19、A21、B2、B3、B4、B8、B12、B14、B
18、B22、B26およびB28;以下の位置の残基は‘表面’残基と見なさ
れた:A1、A4、A8、A9、A10、A12、A13、A14、A18、B
1、B5、B6、B9、B10、B13、B16、B17、B21、B25、B
27、B29およびB30。
【0354】 PDA計算‘trz 06’からの好ましいIAタンパク質を図5Aに示す。
この配列は、野生型インシュリン配列と比較したとき、6個の変異、G−A1−
N、I−A10−Q、L−A16−Y、F−B1−D、F−B25−NおよびT
−B27−Dを示す。
【0355】 PDA計算‘trz 07b’からの好ましいIAタンパク質を図5Bに示す
。この配列は、野生型インシュリン配列と比較したとき、14個の変異、G−A
1−N、I−A10−Q、L−A16−Y、E−A17−Y、Y−A19−F、
F−B1−D、V−B2−K、Q−B4−F、L−B11−I、V−B12−R
、A−B14−W、F−B25−N、Y−B26−FおよびT−B27−Dを示
す。
【0356】 PDA計算‘trz 08’からの好ましいIAタンパク質を図5Cに示す。
この配列は、野生型インシュリン配列と比較したとき、16個の変異、G−A1
−N、I−A10−Q、L−A16−Y、E−A17−Y、Y−A19−F、F
−B1−D、V−B2−K、Q−B4−F、G−B8−L、L−B11−I、V
−B12−R、A−B14−W、F−B25−N、Y−B26−F、T−B27
−DおよびP−B28−Nを示す。
【0357】 6量体結合を促進するためのPDA設計で示したように(実施例3参照)、B
14位のTrpをPDA設計‘trz 07b’および‘trz 08’ではA
laに置換する。B鎖螺旋とA鎖の間に、Trp結合を適応させる小さい割目が
あるようである。これは実施例3で6量体設計に使用したのと同じ割目である。
【0358】 A鎖の他の好ましい変異は下記の通りである:1Asn、10Gln、16T
yr、17Tyr、17Lys、17Trpおよび19Phe。 B鎖の他の好ましい変異は下記の通りである:1Asp、2Lys、4Tyr
、4Phe、8Leu、8Lys、12Arg、14Trp、14Glu、18
Lys、25Asn、26Phe、27Asp、28Asnおよび28Phe。
【0359】 モンテカルロ法を使用して、低エネルギー配列のリストを生成した。変異パタ
ーンを導くモンテカルロにより生成した最低1000タンパク質配列の分析を、
表4に示す:
【表7】
【0360】 位置A6、A7、A11、A20、B7およびB19は野生型配列ではシステ
インであり、PDA設計の‘trz’シリーズに含まれない。位置B20および
B23はグリセリンであり、またこれらの計算に含まれなかった。機能に関して
重要な位置は野生型に拘束し、この表からの変異と組合わせてより安定なIAタ
ンパク質とすることができる。
【0361】 実施例5 IAタンパク質における変異の効果を反映するであろう測定可能な特性: B14および/またはB5置換の効果は、1個以上の以下の方法で測定できる
。 1.金属結合。 6量体におけるZnおよびCo結合幾何学をCo種のUV分光測光法により測
定する。R状態の安定化は、6量体内のインシュリンの立体配置がRまたはT状
態であるかに依存した十分特徴付けされたスペクトルシフトをもたらす[Nakaga
wa and Tager, Biochemistry 31(12):3204-3214(1992); Brader et al., Bioche
mistry 30(27):6636-45(1991)]。
【0362】 2.会合。 一定のインシュリン濃度で6量体を形成する傾向の増加を、分析的超遠心、サ
イズ排除クロマトグラフィー、ペプチド円偏光二色性およびNMR分光測定法の
ような当分野で既知の方法により測定する。
【0363】 3.立体配置。 増加したR状態立体配置を、円偏光二色性、B鎖の増加した螺旋含量の遠紫外
測定、およびTrp蛍光測定のような当分野で既知の方法を使用して検出する。
R状態への構造的変化は、構造のX線結晶学またはNMER溶液により検出でき
る。
【0364】 4.安定性。 安定性は、等温滴定型熱測定(例えば、Zn結合)、温度融解、化学不活性化
に対する耐性、およびグアニジニウム変性のような当分野で既知の方法を使用し
て測定する。
【0365】 これらの変異インシュリンの6量体の増加した安定性は、長い貯蔵寿命および
熱、光のような環境的ストレス、または化学変性による不活性化に耐性であろう
。これらの効果は、例えば、クロマトグラフィーにより評価する加速された貯蔵
寿命試験および、例えば、円偏光二色性または蛍光により評価する化学変性によ
り測定可能である。
【0366】 フェノール無しの安定なインシュリン6量体はまた、皮下投与、または循環へ
の投与後の作用の発生の遅延のような有用な薬理学的特性を有する。 上記変異体は血流における6量体の解離が遅いはずである。更に、レセプター
親和性が減少し得る。
【0367】 薬物動力学は、IAタンパク質の動物またはヒトへの注射、続くその後の種々
の時間でのグルコース負荷により測定できる。グルコース血中レベルコントロー
ルの遅い発生が観察されるでろう。レセプター親和性は含脂肪細胞脂質生成アッ
セイで、またはBioCoreを使用したインビトロで測定できる。
【0368】 標準有効性アッセイ (1)インシュリン放射セレプターアッセイを行い、その中でインシュリンの相
対的有効性を、細胞膜、例えば、ラット肝臓原形質膜フラクション上に存在する
インシュリンレセプターへの125I−インシュリン特異的結合の50%の置換
に必要なインシュリン対IAタンパク質の比率として定義する。
【0369】 (2)例えば、ラット含脂肪細胞で脂質生成アッセイを行い、素の中で、相対的
インシュリン有効性を[H]グルコースの有機抽出可能物質(即ち脂質)への
最大変換の50%を達成するのに必要なインシュリン対IAタンパク質の比率と
して定義する。
【0370】 (3)グルコース酸化アッセイを単離細胞細胞で行い、素の中でIA短波K水角
相対的有効性を、グルコース−1−[14C]の14COへの最大変換の50
%を達成するインシュリン対IAタンパク質の比率として定義する。
【0371】 (4)インシュリンまたはIAタンパク質が、特異的抗インシュリン抗体への結
合に関して125Iインシュリンと競合することによる、有効性の測定による、
IAタンパク質の免疫原性を決定できるインシュリン放射免疫アッセイを行う。
【0372】 (5)インシュリンまたはIAタンパク質の特異的インシュリンレセプターを有
することが既知の細胞への結合を測定する、他のアッセイを行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】 A:インシュリン前駆体(GenBank受託番号#P01308、#A
AA59173)のアミノ酸配列、B:本明細書中でPDA設計およびアミノ酸
位置の参照に使用する、ヒトインシュリン[GenBank受託番号#229122;N
icolおよびSmith, Nature 187: 483-485 (1960)]のアミノ酸配列、C:二つの亜
鉛イオンを含有するインシュリン複合体(T3R3)[PDB登録1TRZ; Ciszakおよび
Smith, Biochemistry 33 (6): 1512-7 (1994)]の構造決定に使ったヒトインシュ
リンA鎖(1TRZ:Aおよび1TRZ:C)およびヒトインシュリンB鎖(1TRZ:Bおよび1TRZ:
D)の各アミノ酸配列並びに2次構造成分、を示す。
【図2A】 野生型インシュリン単量体を示す。
【図2B】 野生型インシュリン六量体を示す。
【図2C】 インシュリン六量体中のB14, B5設計領域を拡大して示す。
【図3】 ジスルフィド交換を含むPDA設計から、好ましいIAタンパク
質の配列を示す。
【図4】 インシュリン六量体形成を促す変異を含むPDA設計からの好まし
いIAタンパク質の配列を示す。
【図5】 安定性の改良のための全体的な再設計を含むPDA設計からの好ま
しいIAタンパク質の配列を示す。
【図6】 PCRによる完全長遺伝子および全ての可能な変異体の合成を示
す。
【図7】 本発明のIAライブラリーの好ましい合成計画を示す。
【図8】 オーバーラップ伸長方法を示す。
【図9】 PCR反応産物の連結反応による本発明ライブラリーの合成を示
す。
【図10】 PCR産物の平滑末端連結反応を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/15 C12P 21/02 C 1/19 C12N 15/00 ZNAA 1/21 5/00 A 5/10 A61K 37/02 C12P 21/02 37/26 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,C H,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM, HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,K G,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT ,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW, MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR ,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU,ZA, ZW Fターム(参考) 4B024 AA01 BA02 CA04 CA06 DA02 EA04 GA11 HA01 4B064 AG16 CA10 CA19 CC24 DA07 4B065 AA90X AA99Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA44 4C084 AA02 AA03 AA06 AA07 BA01 BA02 DB34 NA14 ZC352 4H045 AA10 AA20 AA30 BA10 DA37 EA27 FA74

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然産生ヒトインシュリンのアミノ酸配列と対比して少なく
    とも1つのアミノ酸残基の置換を含むアミノ酸配列を含む非天然産生IAタンパ
    ク質であって、該IAタンパク質は特性がヒトインシュリンの同じ特性と対比し
    て改変されており、かつインシュリンレセプターを含む細胞と結合するものであ
    る、タンパク質。
  2. 【請求項2】 該IAタンパク質が、A3、A5、A6、A7、A11、A
    15、A16、A19、A20、B2、B7、B15、B19およびB22位か
    らなる群から選択される位置での置換を含むものである、請求項1に記載の非天
    然産生IAタンパク質。
  3. 【請求項3】 置換が、A7−S、A7−E、B2−E、B2−T、B4−
    Y、B7−Y、B4−F、B7−Y、B7−EおよびB7−Dの群から選択され
    る、請求項2に記載の非天然産生IAタンパク質。
  4. 【請求項4】 該IAタンパク質が、少なくとも4アミノ酸残基の置換を含
    むものである、請求項1に記載の非天然産生IAタンパク質。
  5. 【請求項5】 ヒトインシュリンの3次元バックボーン構造と実質的に対応
    する3次元バックボーン構造を有する、非天然産生IAタンパク質コンフォーマ
    ーであって、該コンフォーマーのアミノ酸配列と該ヒトインシュリンの該アミノ
    酸配列との同一性が約98%以下である、コンフォーマー。
  6. 【請求項6】 ヒトインシュリンと対比して少なくとも1つのアミノ酸置換
    を含む非天然産生IAタンパク質であって、該置換の少なくとも1つがB5およ
    びB14位から選択される位置におけるアミノ酸残基から選択され、かつ該IA
    タンパク質がフェノール系保存剤の不存在下に六量体を形成するものである、タ
    ンパク質。
  7. 【請求項7】 該IAタンパク質が、B5−F、B5−W、B14−F、B
    14−W、B14−YおよびB14−Iの群から選択される置換を含むものであ
    る、請求項6に記載の非天然産生IAタンパク質。
  8. 【請求項8】 該IAタンパク質が、A1、A10、A16、A17、A1
    9、B1、B2、B4、B8、B11、B12、B14、B25、B26、B2
    7およびB28位からなる群から選択される位置における少なくとも5置換を含
    むものである、請求項1に記載の非天然産生IAタンパク質。
  9. 【請求項9】 該置換が、A1−N、A10−Q、A16−Y、A17−Y
    、A19−F、B1−D、B2−K、B4−F、B8−L、B11−I、B12
    −R、B14−W、B25−N、B26−F、B27−DおよびB28−Nから
    なる置換の群から選択されるものである、請求項8に記載の非天然産生IAタン
    パク質。
  10. 【請求項10】 該IAタンパク質が、図3A、図3B、図3C、図3D、
    図3E、図3F、図3G、図4A、図4B、図4C、図4D、図4E、図4F、
    図4G、図5A、図5Bおよび図5Cに示すアミノ酸配列の群から選択されるア
    ミノ酸配列を含むものである、請求項1に記載の非天然産生IAタンパク質。
  11. 【請求項11】 請求項1または請求項10に記載の非天然産生IAタンパ
    ク質をコードする組換え核酸。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の組換え核酸を含む発現ベクター。
  13. 【請求項13】 請求項11に記載の組換え核酸を含む宿主細胞。
  14. 【請求項14】 請求項12に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  15. 【請求項15】 請求項13に記載の宿主細胞を、該核酸の発現に適した条
    件下に培養することを含む、非天然産生IAタンパク質の製法
  16. 【請求項16】 さらに該IAタンパク質を回収することを含む、請求項1
    5に記載の方法。
  17. 【請求項17】 請求項1または請求項10に記載の非天然産生IAタンパ
    ク質、および医薬的担体を含む、医薬組成物。
  18. 【請求項18】 請求項1または請求項10に記載の非天然産生IAタンパ
    ク質を、それを必要としている患者に投与することを含む、インシュリン応答性
    症状の処置法。
  19. 【請求項19】 該症状が炭水化物代謝異常である、請求項18に記載の方
    法。
  20. 【請求項20】 該症状がI型糖尿病である、請求項18に記載の方法。
  21. 【請求項21】 該症状がII型糖尿病である、請求項22に記載の方法。
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