JP2003518072A - 抗生物質耐性微生物の感染の治療および/または予防のための方法および組成物 - Google Patents

抗生物質耐性微生物の感染の治療および/または予防のための方法および組成物

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JP2003518072A JP2001546671A JP2001546671A JP2003518072A JP 2003518072 A JP2003518072 A JP 2003518072A JP 2001546671 A JP2001546671 A JP 2001546671A JP 2001546671 A JP2001546671 A JP 2001546671A JP 2003518072 A JP2003518072 A JP 2003518072A
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ムーサ エス. ディアッラ
ピエール ラカス
デニス ペティクレーク
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サ マジェステ ラ レイン デュ シェフ デュ カナダ アグリカルチャー エト アグロアリメンテラー カナダ
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、抗生物質耐性微生物の病原体、特にβ-ラクタム耐性微生物によって引き起こされる感染の治療を改善する、新規の組成物、用途および方法に関する。ラクトフェリン(LF)またはラクトフェリシン(LFC)を単独で、または抗生物質と組み合わせて投与し、標的微生物の増殖、生理、および形態に影響を及ぼすことができる。ラクトフェリンにより、感受性を増強し微生物の抗生物質に対する耐性を逆転させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の背景 (a)発明の分野 本発明は、ウシのラクトフェリン、またはその代謝物であるラクトフェリシン
を、単体または抗生物質もしくはその他の抗菌性の産物と組み合わせて投与する
ことにより、抗生物質耐性微生物の感染を治療するための、組成物および方法に
関する。
【0002】(b)先行技術の説明 畜産における抗生物質の利用と耐性 抗生物質耐性の出現と蔓延に与える二つの重要な要因は、転移可能な耐性遺伝
子および抗生物質の利用による選択圧である。感染しやすい患者および対応する
抗生物質が集中する病院の他にも、畜産においても抗生物質が多用されており、
転移可能な抗生物質耐性に関する第二の大きな保有体となっている。畜産業にお
いては、多数の動物が比較的狭い場所に飼われているので、感染の発生は容易に
蔓延する。技術的な理由により、特定の群れの全動物個体に薬剤投与を行うこと
も多く、また動物は畜舎から肥育用の農場に輸送される際に、移動によるストレ
スを受ける。従って、抗生物質を利用した予防が広範に実施されているのである
【0003】 何十年にもわたって、特に、豚および家禽の飼育において、抗菌物質が成長促
進剤として使用されてきた。成長促進剤の利用によって、この薬剤投与を受けた
動物では、対照と比較して、その体重が4%〜5%増加する。このようにして、医
学的な利用に比べて、さらに多量の抗生物質が利用されているのである。1994年
に、デンマークでは、人間の治療に、糖ペプチドであるバンコマイシンが24kg使
用されたが、動物の飼育には、同様の糖ペプチドであるアボパルシン(avoparci
n)が24,000kg使用された。1992年から1996年までの間に、オーストラリアは医
用として年間582kgのバンコマイシンを輸入し、畜産業用には年間62,642kgのア
ボパルシンを輸入した。バンコマイシンとアボパルシンは同様の作用機序を有し
、一方に対する耐性は、他方に対する耐性をも付与することになる。成長促進効
果の生物学的基礎は、ほとんど明らかになっていない。スエーデンのデータによ
れば、主に、動物の活動状態が最適な状態よりも低い場合に、この効果が示され
る。
【0004】 農業における抗生物質の利用によって、抗生物質耐性微生物および転移可能な
耐性遺伝子が、結果としてヒトに転移することは、30年近く前に、特に成長促進
剤に関して議論されたことである。人間の化学療法にも利用するのであれば、お
よび/または人間に用いた抗生物質に対して交叉耐性(cross-resistance)を選
択するものであれば、抗生物質を成長促進剤として用いるべきではないという意
見が、今頃になって出されている。
【0005】 過去10年の間に、微生物病原体とその耐性遺伝子に関する分子フィンガープリ
ント法(fingerprinting)が、疫学的追跡の重要な手段となり、抗生物質耐性遺
伝子の畜産から人間への蔓延を示す、より決定的な証拠を提供している。科学界
と農業関係者の間で現在議論されている論点が二つあり、すなわち抗菌性の成長
促進剤、およびフルオロキノロンの獣医学的利用である。
【0006】 比較的低濃度の成長促進剤によって、抗生物質耐性に関する選択がおこること
は、疑問視されることが多い。しかしながら、確たる証拠が二つの研究によって
示されている。オキシテトラサイクリンを鶏に与えると、鶏において大腸菌(E.
coli)のプラスミド媒介性テトラサイクリン耐性が選択される。鶏から農場職
員へテトラサイクリン耐性大腸菌(E. coli)が転移することが証明されている
。飼料添加剤として、オキシテトラサイクリンの代わりに、ストレプトトリシン
系の抗生物質であるヌルセオトリシン(nourseothricine)を用いる国もある。
この抗生物質は、全国的に動物の飼育にのみ使用されていた。
【0007】 1985年には、豚の腸管および食肉産物の大腸菌(E. coli)において、耐性(
トランスポゾンがコードするストレプトトリシン・アセチル転移酵素遺伝子によ
って媒介される)が検出された。1990年までに、ヌルセオトリシン耐性は、豚を
扱う農場従事者、その家族、近隣地域の住民および尿道感染のある患者の腸管常
在菌である大腸菌(E. coli)へと広がった。1987年には、ヒトにしか存在しな
いシゲラ(shigella)を含む、他の腸内病原体にも同一の耐性決定因子が検出さ
れた。
【0008】 糖ペプチド耐性の出現と蔓延に伴って、腸球菌(Enterococcus)は大きな関心
対象となった。腸球菌(Enterococcus)はヒトやその他の動物の腸管に棲み、容
易に抗生物質耐性遺伝子を獲得してこれを伝達する。記録によれば、過去5年の
間において、腸球菌(Enterococcus)は院内微生物病原体の上位5位までに入る
ことが示されている。E. フェカーリス(E. faecalis)よりその病原性は低いが
、糖ペプチドに対して耐性を示すために、E. ヘシュウム(E. faecium)に注目
が集まりつつある。腸球菌には、最も広範に蔓延しているVanA 遺伝子クラスタ
ーを含め、転移可能な糖ペプチド耐性に関係した3種類の既知の遺伝子型が存在
する。糖ペプチド、アボパルシンを家畜の成長促進剤として用いた、E. ヘシュ
ウム(E. faecium)における転移可能なVanA 媒介型糖ペプチド耐性の選択を示
す研究により、再び成長促進剤としての抗菌物質の利用に注目が集まっている。
糖ペプチド耐性E. ヘシュウム(E. faecium) (GREF)は、食肉産物を経て人間
に容易に広がることができ、その結果、非病院加療者の糞便試料からGREFが単離
されている。VanA遺伝子クラスターの共通構造が、生態系の中の異なる起源に由
来する(ヒト、食物、および動物)複数のGREFに検出され、このことは、異なる
菌株間、および異なる接合性プラスミド間でも、VanAの蔓延が高頻度で起こって
いることを示すものである。
【0009】 ヨーロッパの国々は1995年から1997年の間、アボパルシンの非特異的な利用を
停止した。1997年の末までに行われたGREFの研究の際、研究に用いた家禽の全死
骸から融解液が、かなり汚染されていることが分かった。1997年の末までには、
GREFの菌体数が比較的少なかったのは、研究試料の高々25%に過ぎないことが分
かった。また同時に、その地域における人間の糞便中のGREFは減少していること
が分かった。すなわち、1994年の末までには12%、1997年の末までには3.3%に
なっていた。これらの所見は、人間への蔓延に関し、畜産が転移可能な糖ペプチ
ド耐性の保有体の役割を潜在的に果たしていることを強調する。ストレプトグラ
ミン(streptogramin)の組み合わせである、キヌプリスチン(quinupristin)/
ダルフォプリスチン(dalfopristin)の利用により、ストレプトグラミンはGREF
による感染(E. faecalisではない)治療の重要な代替物となった。
【0010】 昨年までは、ドイツ国内の病院においてストレプトグラミンが医療用途で使用
されたことはなかった。しかしながら、患者においても動物においても、ストレ
プトグラミン耐性のGREFが検出されるようになっている。この耐性は、ストレプ
トグラミン・アセチル転移酵素をコードするsatA遺伝子によって媒介される。20
年以上にもわたり、成長促進剤としてストレプトグラミン系抗生物質バージニア
マイシン(virginiamycin)が使用されていたことが、おそらくsatAを蔓延させ
た原因と考えられる。
【0011】 フルオロキノロンの獣医学的利用により、ネズミチフス菌(Salmonela typhim
urim)のフルオロキノロン感受性が低下していることが報告されている。これは
、獣医学におけるフルオロキノロンの使用の時期と一致している。このことは、
特に、英国においてネズミチフス菌(S. typhimurium)の菌株DT 104に関して観
察される。これら単離菌に対するシプロフロキサシン(ciprofloxacin)のMIC(
0.25 mg/L〜1.0 mg/L)は、シプロフロキサシンに関するフルオロキノロン臨床
限界値(4 mg/L)よりも低い値ではあるが、MICが上昇しておりネズミチフス菌
(S. typhimurium)感染のシプロフロキサシンによる治療の失敗により、腸管サ
ルモネラ(Salmonela)種への関心が高まっている。
【0012】 微生物におけるフルオロキノロン耐性は、主に標的酵素(DNAジャイレース、
トポイソメラーゼIV)の変異によるものであり、したがってこの耐性は変異を受
容した特定の微生物株のクローン集団によって蔓延する。標的酵素の活性中心に
おける特定の位置に、段階的に変異が起こることによって、腸内菌は耐性を発現
する。さらに、腸内サルモネラ(Salmonela)種におけるこのような変異の蓄積
によって、高度なキノロン耐性が出現する確率は極めて高い。
【0013】 動物を保有体とする別の腸内病原体としては、カンピロバクター(Campylobac
ter)種がある。フルオロキノロン耐性のカンピロバクター(Campylobacter)種
は、感染している人間から、鶏の糞便試料および肉から単離することができる。
下痢に関するヒトの臨床例において単離されるキノロン耐性カンピロバクター(
Campylobacter)種の頻度は、世界の複数の地域で相違があることが報告されて
いる。大腸菌(E. coli)と同様、明らかにカンピロバクター(Campylobacter)
種は多クローン性である(ヒトおよび動物の腸管内菌叢には、複数の株が存在す
る)。多クローン性であることが最大の理由で、現在利用可能な分子タイピング
の技術を、カンピロバクター(Campylobacter)種にも応用できるが、キノロン
耐性カンピロバクター(Campylobacter)種がどの動物集団に由来するのかに関
する追跡はなされていない。
【0014】 このような化合物に関する使用防止と規制、および許可に関する状況は、世界
的規模で変化している。世界の食肉生産の約25%を担う発展途上国では、抗生物
質の獣医学的利用に関する規制政策は、ほとんど進んでいないか、もしくは全く
ない。中国では、未処理の菌糸体が成長促進剤として使用されている。抗生物質
の不適切な使用によって生じる問題は、その国以外にも及ぶ。食肉生産物は世界
規模で取引されており、微生物集団は地理的な境界とは無関係に変化するもので
ある。成長促進剤としての抗菌物質の利用は、予想できない危険を含んでいる。
腸球菌におけるストレプトグラミン耐性の出現から明らかなように、成長促進剤
として現在利用されている、ある化合物もしくはある種の化合物群は、将来、ヒ
トの化学的な治療にとって重要となる可能性がある。
【0015】 口腔内微生物における抗生物質耐性の機構 鼻、口腔、鼻咽腔、および咽頭を含む上部気道は、多様なグラム陽性、グラム
陰性の無細胞壁の、好気性および嫌気性微生物を含む。
【0016】 口腔内の微生物叢集団は、静的ではない。これらは、個体の年齢、ホルモン状
態、食餌、および健康状態に応じて変化する。さらに、毎日、新たな異なる微生
物を摂取し吸入している。厳密な種の構成は個体毎に異なり、また同一個体にお
いても経時的に変化する。盲嚢から培養されるものだけでも、異なる種は300ま
たはそれ以上に及ぶと推定され、100に及ぶ種が単一部位から回収される。
【0017】 このような微生物の小宇宙の存在によって、抗生物質耐性遺伝子が伝達される
頻度が顕著に高くなる。人体の通常の微生物叢は、このような耐性形質の保有体
として働く。口腔内微生物種と泌尿器系微生物種の間で遺伝子の交換が起こるこ
とが証明されており、また、実験室条件下では、多種の口腔内微生物種間でも起
こることが証明されている。多くの歯科的処置における処置前の抗生物質の予防
的使用、および抗生物質治療を必要としないとされている歯周病ならびに膿瘍性
感染に対する予防的使用も、耐性の保有に寄与しているのである。β-ラクタム
系、テトラサイクリン系、およびメトロニダゾール系のものは、最も広く推奨さ
れ処方される抗生物質である。マクロライド系、クリンダマイシン系、およびフ
ルオロキノロン系のものは、ほとんど使用されず、アミノグリコシド系のものは
通常推奨されない。
【0018】 β-ラクタム抗生物質に対する耐性 β-ラクタム抗生物質に対する酵素耐性は、アミド、アミジン及びその他の炭
素及び窒素結合を加水分解して抗生物質を不活性化する酵素β-ラクタマーゼに
起因するものであることが最も多い。口腔管由来のグラム陽性及びグラム陰性微
生物中で190種を超える固有のβ-ラクタマーゼが同定された。
【0019】 一般的な口腔微生物内の最初のβ-ラクタマーゼについては、1970年代初頭に
ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenzae)中のプラスミド上で
記述された。それは、最初に大腸菌(E.coli)において説明されたTEM-1β-ラク
タマーゼを有していた。TEM-1酵素は、H. パラインフルエンゼ(H. parainfluen
zae)及びH. パラフロヘモリティクス(H. paraphrohaemolyticus)の中で発見
されてきており、共生ヘモフィルス種内でも発見され得る。TEM-1β-ラクタマー
ゼは通常、クロラムフェニコール、アミノグリコシド及びテトラサイクリンに対
する耐性向けのその他の遺伝子も持ちうる、ヘモフィルス属に特異的である大型
接合性プラスミドと会合されている。
【0020】 ほぼ同時期に、淋菌(ナイセリア・ゴノレエ(Neisseria gonorrhoeae))は
、菌株内の移入プラスミドによりその他の菌株まで動かされうる小型プラスミド
上でTEM-1β-ラクタマーゼを獲得した。これらは、H. デュクレイ(H. ducreyi
)及びH. パラインフルエンゼ由来の小型TEMβ-ラクタマーゼプラスミド及び感
受性あるH. パラインフルエンゼプラスミドに密に関係づけられる。中には、H.
パラインフルエンゼがこれらの関係づけされたTEMβ-ラクタマーゼプラスミドに
とっての最も確率の高い祖先供給源であるかもかれないという仮説を立てた者も
いた。この群からのプラスミドは、ナイセリア・メニンギチジス(Neisseria me
ningitidis)において定期的に報告されてきたが、独立したテストのために生き
のびた天然分離株は全く存在しなかった。しかしながら、小型淋菌(N. gonorrh
oeae)β-ラクタマーゼプラスミドは、実験室条件下で接合によりN. メニンギチ
ジス(N. meningitidis)内に移入し維持することができる。
【0021】 TEMβ-ラクタマーゼは同様に、淋菌性プラスミドではなくむしろE. coli RSF1
010プラスミドと遺伝的に関係する小型プラスミド上で通常発見されるさまざま
な共生ナイセリア種の中でも報告されてきた。類似のプラスミドはエイケネラ・
コローデンス(Eikenella corrodens)の中でも発見された。これらのRSF1010様
のプラスミドは、単独で又は組合さった形でスルホンアミド又はストレプトマイ
シン耐性を付与する遺伝子を持ちうる。テトラサイクリン、さまざまなアミノグ
リコシド及びTEMβ-ラクタマーゼに対する耐性をコードする、多重耐性N. シッ
カ(N. sicca)由来のより大型のプラスミドも同様に記述されてきている。最初
に確認のためCDCに報告された多重耐性モラセラ・カタラーリス(Moraxella(Bra
nhamella)catarrhalis)の分離株が、後に共生ナイセリア種として同定された
【0022】 第2のβ-ラクタマーゼ ROBについては、H. インフルエンゼ内で、アンチノバ
シラス(Antinobacillus)及びパスツレラ(Pasteurella)種を含む多数の厳密
に動物の微生物病原体の中で発見されたROB支持プラスミドと事実上同一である
小型プラスミド上で説明されてきた。
【0023】 より最近では、バクテロイデス・フォルシトゥス(Bacteroides forsythus)
、フゾバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プレボテラ
(Prevotella)種、ポルフィロモナス・アサッカロリチカ(Porphyromonas asac
charolytica)、及びベイヨネラ(Veillonella)種を含めた厳密な嫌気性グラム
陰性微生物が、β-ラクタマーゼのための遺伝子を持つことが示されてきた。酵
素のうち一部分のみが特徴づけされ、遺伝的配置(プラスミド対染色体)は一般
に見極められていない。
【0024】 天然に形質転換可能な微生物(Haemophilus、Neisseria、Streptococcus)内の
ペニシリンに対する非酵素耐性は、ペニシリンの標的であるペニシリン結合タン
パク質(PBP)をコードする遺伝子の一部分と、より耐性ある種からの対応領域
との置換に起因する可能性がある。この耐性メカニズムは、β-ラクタマーゼに
よりひき起こされる耐性ほど一般的なものではない。N. メニンギチジスについ
ては、PBP遺伝子のこれらのより耐性ある領域が、共生N. フラベッセンス(N. f
lavescens)及びN. シネレア(N. cinera)の遺伝子と密に関係している。PBP遺
伝子の1つであるpenAは、78種の異なる検査対象分離株の中で30種の異なるモザ
イク遺伝子が発見され、非常に多様であることが示されてきた。S. ニューモニ
ア(S. pneumoniae)内のモザイクPBPは、S. ミチス(S. mitis)並びに未知の
連鎖球菌株由来の領域を有する。
【0025】 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S. aureus)内で発見されたもう1つの非酵素
耐性メカニズムは、付加的な低親和性ペニシリン結合タンパク質PBP2aについて
コードし、β-ラクタムに対する内因性耐性を付与する30〜40kbのDNA要素上に存
在する1つの遺伝的決定因子である mecA遺伝子である。 mecA遺伝子についてス
クリーニングされたブドウ球菌(Staphylococcus)の15の異なる種のうち、150
のStaph. sciuri分離株がその遺伝子に対しハイブリッド形成した。全てのStaph
. sciuriがペニシリン耐性をもつわけではないことから、スタフィロコッカス・
シウリ(Staph. sciuri)mecA相同体は、β-ラクタム耐性とは関係のないその天
然の宿主の中で通常の生理学的機能を果たすことができる。
【0026】 テトラサイクリン耐性 リボソームの防御及び外向きフラックスという2つの耐性メカニズムを主とし
て特定する、テトラサイクリン耐性のための18個の区別可能な決定因子が記述さ
れてきた。異なるTet決定因子の分布は、一部にはさまざまな分離株と属の間の
特定のTet決定因子の移入の容易さに関係して、幅広く変動する。Tet B遺伝子は
、グラム陰性外向きフラックス遺伝子の中で最も幅広い宿主範囲をもち、数多く
の口腔種の中で同定されてきた。アクチノマイセス・アクチノマイセテムコミタ
ンス(Actinomyces actinomycetemcomitans)及びトレポネーマ・ディンコラ(T
reponema denticola)は、歯周病に結びつけられてきた。Tet B決定因子は、ア
クチノバシラス及びヘモフィルス種の中で接合性プラスミド上に発見される。A.
アクチノマイセテムコミタンス(A. actinomycetemcomitans)由来のtet(B)を
持つプラスミドは、H. インフルエンゼに移入可能であった。Tet B決定因子は、
検査対象となった少数のモラセラ及びトレポネーマ分離株において移動性ではな
かった。
【0027】 最近、わずかな口腔グラム陰性微生物の中のグラム陽性外向きフラックス媒介
遺伝子〔tet(K)及びtet(L)〕が発見された。1990年代に、歯周病患者から分離
されたヘモフィルス・アフロフィルス(Haemophilus aphrophilus)は、tet(K)
遺伝子を持っていた。tet(L)又はtet(Q)を有するV. パルブラ(V. parvula)
のいくつかの分離株が発見されてきた。しかしながら、検査対象の分離株の大部
分は、tet(M)遺伝子を有する。口腔連鎖球菌が多数の異なるtet 遺伝子を有す
る可能性があり、tet(M)、tet(Q)、tet(K)及びtet(L)は全て、連鎖球菌の中
で単独又は組合わせた形で発見されてきた。最近になって、腸球菌内に、その他
のリボソーム防御遺伝子〔tet(U),tet(S)及びtet(T)〕が発見されてきた。T
et(S)は、ストレプトコッカス・ミレリ(Streptococcus milleri)の中で発見
され、既知のtet 遺伝子のいずれも持たないテトラサイクリン耐性連鎖球菌が分
離された。リボソーム関連タンパク質を産生するTet(M)が、グラム陽性及びグ
ラム陰性属の両方において広く分布している。
【0028】 tet(Q)リボソーム防御遺伝子は、最初に結腸バクテロイドの中に発見され、
通常はプレボテラ(Prevotella)といったようなバクテロイドに関係するグラム
陰性嫌気性種の中で発見されてきた。V. パルブラのわずかな分離株が、tet(Q)
を有することがわかっている。しかしながら、特徴づけされた分離株の大部分は
、tet(M)を有する。口腔ミツオケラ(Mitsuokella)及びカプノサイトファガ(
Capnocytophage)もtet(Q)を有する。
【0029】 その他の耐性メカニズム メトロニダゾール耐性は、口腔微生物内で報告されたが、遺伝的根拠はわかっ
ていない。結腸バクテロイド内では、4つの遺伝子、nimA、nimB、nimC及びnimD
が記述され、配列決定されてきた。これらは、染色体又はさまざまなプラスミド
のいずれかの上にあり、一定の耐性範囲を付与している。nim遺伝子は、5-ニト
ロイミダゾールを酵素的に5-アミノ誘導体に還元する5-ニトロイミダゾール還元
酵素をコードする確率が高い。
【0030】 アミノグリコシドをアセチル化、リン酸化又はアデニル化する酵素が、S. ニ
ューモニエ、その他の連鎖球菌(Steptococci)、ブドウ球菌(Staphylococci)
及びより最近では共生ナイセリア及びヘモフィルス種の中で特徴づけされてきた
。アミノグリコシド、クロラムフェニコール及びテトラサイクリンに対する耐性
をもつカンピロバクター・オケラセウス(Campylobacter ochraceus)の分離株
が発見された。
【0031】 エリスロマイシン耐性S. ニューモニエの早期分離株は、マクロライド、リン
コサミド及びストレプトグラミンBに対する耐性を付与する235RNA内の単一アデ
ニン残基を修飾するErmBクラスのrRNAメチラーゼを有していた。rRNAメチラーゼ
は、A. アクチノマイセテムコミタンス及びカンピロバクター・レクタス(Campy
lobacter rectus)内で同定された。両方の種において、rRNAメチラーゼは、エ
ンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)に、及びA. アクチノ
マイセテムコミタンスからH. インフルエンゼに移入され得る接合性要素と会合
している。数多くのその他の口腔微生物が、エリスロマイシン又はクリンダマイ
シン耐性をもつことが報告されてきた。
【0032】 口腔微生物相を作り上げている微生物は、重要な微生物耐性形質の温床である
。その出現は、抗生物質の過剰使用及び誤用、並びにその他のより病原性の強い
種形質が移入する潜在能力に反映される。
【0033】 植物の病気の制御における抗生物質の使用 広範な食用作物及び観賞植物が、微生物によってひき起こされる病気に罹りや
すくなっている。1950年代に、人間の医学に抗生物質が導入されてまもなく、こ
れらの「奇跡の薬物」がもつ植物病制御の潜在的能力が認識された。残念なこと
に、抗生物質耐性の出現が臨床環境におけるこの奇跡を汚した途端に、耐性は作
物防御における抗生物質の価値をも制限した。最近になって、植物に対する抗生
物質の使用及び人間の健康に対するその潜在的影響、耐性の出現が複数の国で観
察されている。
【0034】 植物病原体に発生するストレプトマイシン耐性 植物の病原性微生物におけるオキシテトラサイクリン耐性は研究では明らかに
されていないが、非病原性果樹園微生物の中にテトラサイクリン耐性決定因子が
同定されている。2つの遺伝的に全く異なるタイプのストレプトマイシン耐性が
説明されてきた。すなわち、ストレプトマイシンがそのリボソーム標的に結合す
るのを防ぐ染色体遺伝子rpsL内の点突然変異(MIC>1000mg/ml);又はStrA及び
StrBによってコードされる酵素であるホスホトランスフェラーゼによるストレプ
トマイシンの不活性化(MIC 500〜750mg/ml)である。遺伝子 strA及びstrBは通
常、移動性遺伝子要素上にあり、さまざまなニッチに棲息する少なくとも17種の
環境的及び臨床的微生物の中で同定されてきた。
【0035】 抗生物質は、果物及び野菜栽培者が使用する最も高価な農薬であり、その生物
学的効力には制限があることから、多くの栽培者は、最も有効であると思われる
ときにのみ抗生物質を適用するための天候に基づいた疾病予測システムを使用し
ている。栽培者は同様に、疾病耐性品種を植え、一部のケースでは生物学的制御
を使用する(病原性微生物に対するアンタゴニストである腐生性微生物を利用す
る)ことによっても、抗生物質の使用を制限することができる。栽培者の抗生物
質依存を低減させるためのこれらの努力にもかかわらず、これらの化学物質は、
特に、リンゴ、ナシ、ネクタリン及びモモの生産にとって、疾病管理の一部であ
り続けている。
【0036】 植物に抗生物質を使用することの特別な局面 植物への抗生物質の使用は、抗生物質使用全体と較べると些細なものであるが
、抗生物質を農業生態系の中で使用すると、環境の中に耐性遺伝子を増加させた
り、持続させるという影響をもたらす特異な状況を生じさせることになる。
【0037】 リンゴ、ナシ、ネクタリン、またはモモなどを集中的に生産している地域では
、ほとんどひとつながりになった数百ヘクタールの果樹園に抗生物質を使用して
いる。この10年間で、壊滅的な微生物病である火傷病に感受性のリンゴ品種や
台木の植栽が飛躍的に増加してきた。これは、免疫不全の患者を、混雑した状況
下に置く、すなわち、抗生物質耐性遺伝子が拡散および蔓延しやすい場面に収容
しているという臨床場面と同じ状況を作り出している。
【0038】 次に、作物保護に使用する抗生物質の純度は知られていない。試薬および動物
医薬級の抗生物質には、酸性菌であるストレプトミセス種に由来する抗生物質耐
性遺伝子を含むことが分かっている。植物級の抗生物質は、動物の治療に用いら
れる抗生物質よりも純度が高い可能性はないことから、それ自体が、農業生態系
において抗生物質耐性遺伝子の供給源となる可能性がある。抗生物質から増幅さ
れる遺伝子otrAおよびaphEは、植物関連微生物において説明されてきた耐性遺伝
子であるstrAおよびstrBとは異なる。したがって、植物級の抗生物質は、環境に
おける耐性遺伝子の起源となる可能性はあるが、必ずしも、植物病原微生物の中
に存在したり、その中で活性をもっているものではない。
【0039】 抗生物質耐性微生物の進化は、新規の抗菌産物の発見を上回っている。
【0040】 抗菌剤耐性の進化に対する選択的抗生物質濃度の役割 広範に存在するTEM-1(またはTEM-2)β-ラクタマーゼはアンピシリンを加水
分解するが、これをコードする単一の遺伝子は、さまざまに変化した結果、今や
この酵素は、第3世代のセファロスポリンやモノバクタムを不活性化することも
できる。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)における、ペニシリン結合
タンパク質(PBP2)をコードする遺伝子の変化は、気道中にもっとも遍在する病
原菌にβ-ラクタム耐性が生じるという恐るべき脅威を引き起こした。耐性に関
与する「新規の」TEMまたはPBP遺伝子の配列を決定したところ、遺伝子にいくつ
かの変異が存在していることが分かり、隠れた進化が起きていることが示唆され
た。このことは、「以前に起きた」突然変異事象がそれぞれ実際に選択されるこ
と、そして、その結果、住みついた微生物クローンが増えると、新しく選択され
うる突然変異の出現に有利に働くことを意味している。ほとんどの場合、常法に
よる抗生物質感受性試験は、その生物の最小阻害濃度(MIC)を非常に低量でし
か増加される初期の突然変異を検出することができなかった。このようにして、
選択を行なう抗生物質の使用は途切れることがなく、突然変異を選択してきた。
【0041】 治療過程で高い抗生物質濃度を達成することができることから、低いMICを示
す突然変異体は選抜不可能であると思われていたために、臨床医だけでなく、微
生物学者も、しばしば、「低レベル耐性」の重要性には関心を抱かなかった。
【0042】 いかなる用量でも、組織分布の消失速度などの薬理動態学因子が原因となって
、抗生物質は濃度勾配を形成する。最も可能性があるのは、薬剤を投与するたび
に、微生物の集団が、広範囲の抗生物質濃度に直面することである。一方、微生
物集団の自然変異は、潜在的に選択可能な耐性変異株が広く生じる可能性を提供
することができる。これら耐性変異株の一つを選択することができる抗生物質濃
度はどれであろうか。
【0043】 その答えは簡単である。すなわち、どのような抗生物質濃度であっても、感受
性集団を阻害することができ、耐性機構をもつ変異体を阻害しなければ、耐性変
異体を選択する可能性がある。言い換えれば、選択的な抗生物質濃度(SAC)と
は、感受性集団の最小阻害濃度(MIC)を超えるが、変異集団の最小阻害濃度を
(たとえ、非常に近い値でも)超えない場合に、その濃度を意味する。感受性集
団および変異集団のMICを超える場合には、選択は起こらない。また、抗生物質
濃度が、両集団のMICを下回る場合も同じである。したがって、特定の変異体の
選択は、非常に狭い濃度範囲の中で起きることがある。
【0044】 抗生物質濃度を連続的に変化させることは、特定のラジオ周波数で特定の放出
電波を「選択」する同調装置に似ているかもしれない。そのような周波数よりも
低くても高くても、放出電波は失われる。感受性集団および変異集団のMICの間
にある「谷間」は、SACによって識別される「周波数信号」である。
【0045】 近接した生息場所をもつ微生物集団には自然競争があるため、この「信号」は
、直ちに増幅される。適応した変異体は、「定期的な選択」によって予想される
ように、より感受性が強い集団の犠牲のもと、強度で顕著な増殖率を示し、培養
微生物の量的変更に至る。
【0046】 上記で提起した、SACの効果に関する方法を、感受性および耐性の微生物集団
の混合培養物を用いて実験室で試験した。野生型TEM-1β-ラクタマーゼをもつ大
腸菌菌株の高密度培養液を、その同質派生株(部位特異的突然変異誘発法によっ
て得られた)で、β-ラクタマーゼTEM-12(TEM-1酵素を1アミノ酸置換したもの
)とTEM-10(TEM-12を1アミノ酸置換したもの)をもつ菌株と混合した。この3
つの菌株の相対的割合は、集団全体の90:9:1であった。この混合液を、さまざ
まな抗生物質濃度を用いて4時間インキュベートしてから、継代培養によって、
集団全体の組成を分析した。0.008 μg/mlという非常に低いセフォタキシム(ce
fotaxime)濃度で、TEM-12(通常、MIC=0.06 μg/ml)はTEM-1(MIC=0.03 μg
/ml)に対して選択され始め、0.03 μg/mlで最大の選択(集団全体のほぼ80%)
に達し、0.06 μg/mlで、再びTEM-1に置き換わった。今度は、0.12 μg/mlで、T
EM-1はTEM-10(MIC=0.25 μg/ml)に置き換わった。予想されたとおり、TEM-12
は、狭い濃度範囲の中でのみ選択された。したがって、低レベル耐性変異株が低
抗生物質濃度で効率的に選択されることになる。この集団が増え続ける限り、二
次的な遺伝的変異株の新しい材料となることができ(例えば、TEM-10はTEM-12を
生じさせることができ)、続いて、新しい(より高い)濃度区間で、二次的な遺
伝的変異株が、優勢な集団よりも選択された。肺炎連鎖球菌の感受性と耐性の混
合集団にさまざまな低濃度のβ-ラクタマーゼを投与したところ、同様の結果が
得られた。非連続な低レベル濃度のときにだけ、中度耐性菌株が優位な感受性集
団に対して選択された。
【0047】 高レベル濃度での選択では、高レベルの耐性変異株を生じさせるだけである。
しかし、特に、いわゆる長時間作用性薬物では、治療過程において、時間(期間
)と場所(人体でのさまざまなコロニー形成場所)の両方で、高レベル濃度が起
きる頻度よりも低レベル濃度が生じる頻度の方が高いため、全体的な選択力はか
なり高いことになる。どの治療法でも、耐性微生物を低レベルで選択することが
できる抗生物質濃度が生じる。
【0048】 微生物学において、集団遺伝学や抗菌物質耐性の出現と拡散をもたらす進化過
程よりも、耐性のメカニズムに対して関心が寄せられてきた。抗生物質によって
生み出される環境衛生被害に対する科学的な補助手段として役立つ、進化的製品
(evolutioary products)を提供する時期に至ったのである。
【0049】 狭い範囲の選択的濃度、この場合は0.1〜0.2 μg/mlで、感受性集団(S)より
も耐性集団(R)が効率的に選択される。この範囲よりも低い濃度や高い濃度は
非選択的である。低濃度(0.01 μg/ml)では、SとRの両集団が「選択」され、
より高い濃度(2 μg/ml)では、SとRの両集団とも「逆選択」される。どちらの
場合も、R集団に対する選択力は非常に低い。特定の濃度(選択的な抗生物質濃
度、すなわちSAC)で選抜が起きる。
【0050】 乳腺炎の治療 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、表皮、皮膚の深部、柔組織の
感染症、心内膜炎、転移性膿瘍形成を伴う菌血症、また、胃腸炎、熱傷性皮膚症
候群、および毒素性ショック症候群など、さまざまな毒素介在型疾患の原因とな
る、ヒトおよび動物の重要な病原菌である。また、この微生物は、乳汁の生産の
深刻な減少をもたらす疾患であるところのウシ乳腺炎のもっとも一般的な原因で
ある。大腸菌群(大腸菌(Escherichia coli)、クレブシエラ種(Klebseilla s
pp.)、エンテロバクター種(Enterobacter spp.)、シトロバクター種(citrob
acter spp.)など)、連鎖球菌群(S.アガラクティエ(S. agalactiae)、S.デ
ィスガラクティエ(S. dysgalactiae)、S.ウベリス(S. uberis)など)、およ
びシュードモナス種(Pseudomonas spp.)もウシ乳腺炎から単離されている。こ
れらの病原菌が多くの病原性因子を産生可能であることは一般に認められている
。黄色ブドウ球菌(S. aureus)は、一連の毒素およびヘモリシンを産生するこ
とができる。乳腺に感染する過程で、黄色ブドウ球菌は、腺の上皮に付着して、
その後、糜爛、局部浸潤、および、全身症状を伴うびまん性滲出性炎症反応を起
こす。
【0051】 抗菌療法が進歩したにもかかわらず、連鎖球菌感染症の治療および予防は現在
でも臨床上の問題となっている。β-ラクタム系抗生物質は、連鎖球菌群に対す
るもっとも優れた兵器である。しかしながら、β-ラクタム系抗生物質の広範な
使用により、黄色ブドウ球菌のβ-ラクタマーゼ産生菌株の激増が引き起こされ
た。例えば、この細菌は、β-ラクタム系抗生物質に耐性である4つの型(A、B
、CおよびD)のβ-ラクタム加水分解酵素(β-ラクタマーゼ)を産生することが
できる。現在、病院で単離された黄色ブドウ球菌の80〜90%、また、ウシ乳腺炎
感染症から単離した黄色ブドウ球菌の約75%がβ-ラクタマーゼを産生する。こ
の酵素は、黄色ブドウ球菌感染症の病原性に寄与し、抗生物質による予防効果を
低下させる。ブドウ球菌性乳腺炎では、標準的な抗生物質に対して、ウシは鈍い
臨床的および細菌学的反応を示す。急性感染症が、抗生物質治療に反応するよう
に見える場合には、急性疾患の発症の間に長期間の静止状態があるという特徴を
もつ慢性の再発性疾患が起きている可能性がある。この現象が黄色ブドウ球菌感
染症の防御を困難なものにしている上に、感染過程において、この病原菌に対し
て可能な宿主防御については、限られた情報しかない。
【0052】 本発明に係る製品と方法には、合成法または組換え法を用いて大量に利用する
ことができる実質的に非毒性の化合物が含まれる。LFおよびLFCは、単独の抗菌
薬として投与または施用されると、殺菌作用または静菌作用をもつ。このような
化合物は、理想的には、他の抗菌薬との組合せ療法において、特に、相乗効果が
生じる場合には有益である。
【0053】 ラクトフェリン(LF)は80-kDaであり、ラクトフェリシン(lactoferricin)
(LFC)は、ラクトフェリンのペプシン加水分解物である。ラクトフェリンは、
ヒトやウシなど、さまざまな生物種の乳汁に存在する鉄結合糖タンパク質である
。胆汁や唾液、涙などの外分泌液にも存在する。乳房上皮細胞と多形核細胞が、
このタンパク質を放出することできる。感染過程で、乳汁の中への白血球の移動
は、乳汁中のLF濃度の顕著な増加を伴う。好中球の特定の顆粒の中にLFが存在し
、それが炎症反応の中で放出されるのは、免疫調整に関係する作用と考えられる
。また、LFは、DNAに結合していることが示されており、さまざまな分子の転写
活性化をもたらすことができる。多くの報告で、LFは、感染症に対する宿主防御
、および過度の炎症における重要な因子であることが確認されている。鉄制限型
(iron-limited form)のこのタンパク質は、多くの病原性微生物の増殖を阻害
することが示されている。LFが、鉄レベルとは無関係にビフィズス菌(Bifidoba
cterium spp.)の増殖を促進できることが明らかにされた。培地の中で鉄が結合
することが、LFによる微生物の増殖阻害が引き起こされる機構として最も有名な
ものである。また、LFによるグラム陰性菌の静菌作用は、リポポリサッカライド
(LPS)のリピドAとの相互作用、および、微生物の壁の完全性と透過性を変化さ
せる、外膜の孔形成タンパク質(ポーリン(porin))との相互作用を含む。表
皮ブドウ球菌(Stapylococcus epidermidis)のアニオン性リポタイコ酸にLFが
結合すると負電荷が減少し、それによって、リソソームがペプチドグリカンに非
常に接触しやすくなることが示唆されている。その他、グラム陽性のウシ乳腺炎
病原菌におけるLFまたはLFCの抗菌機構については説明されたことはない。
【0054】 微生物、宿主、および抗生物質の間における関係は非常に複雑になっている可
能性もある。抗生物質は、優れた抗菌活性と、宿主の防御系に関して作用する能
力とを併せ持っているべきである。それにもかかわらず、抗生物質に対する微生
物の感受性をインビトロで測定しても、宿主防御との相互作用や、微生物への抗
生物質投与後の効果(post antibiotic effect)などの薬力学的パラメータの説
明にはならない。本発明の目的は、ウシアポ-ラクトフェリン、またはそのペプ
シン水解物(ラクトフェリシン)を単独、または、伝統的な抗生物質と併用した
ときの、ウシの乳腺から分離したグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)およびグラム
陰性菌(大腸菌や肺炎桿菌(K. pneumoniae))に対する生理学的効果を調べる
ことであった。ラクトフェリンは、連鎖球菌細胞に感染することができ、通常の
抗生物質の阻害活性をさまざまな程度上昇させることができる。
【0055】 抗生物質耐性微生物によって引き起こされる感染症の治療および/または予防
において、これらの生物の抗生物質耐性を逆転させるための方法を備えることが
非常に望ましい。
【0056】発明の概要 本発明の一つの目的は、抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の治療
及び/又は予防における、これらの微生物の抗生物質に対する耐性の発達を相殺
し、逆転するための手段を提供することである。
【0057】 本発明の一つの目的は、ヒトを含む動物における病原性抗生物質耐性微生物に
より引き起こされる感染性疾患を治療及び予防するために有効な薬物製剤を提供
することである。もう一つの目的は、LF又はLFCを、単独で、又は抗生物質と組
み合わせて投与する段階により、対象において、微生物性疾患(それらと関連し
た、又はそれらに起因する状態を含む)を治療及び予防し、抗生物質の効力を強
化するための新規な方法を提供することである。本発明は、LF及びLFCが、いく
つかの抗生物質耐性微生物に対する直接的な殺微生物効果及び増殖阻害効果を有
すること、並びにLF及びLFCが、予想外に、抗生物質耐性微生物の抗生物質耐性
を逆転する能力を有することの発見に基づく。本発明は、抗生物質と組み合わさ
れたLF及びLFCが、同時に使用された場合、相加的及び相乗的な殺微生物/増殖阻
害効果を提供するという所見にも基づく。
【0058】 本発明の一つの局面によると、治療効果のために十分な量のLF又はLFCを、抗
生物質耐性微生物感染に罹患した対象に投与する段階を含む、抗生物質耐性微生
物感染を治療する方法が提供される。この方法は、任意のLF感受性又はLFC感受
性の抗生物質耐性微生物種が感染に関与している場合に、実施されうる。
【0059】 本発明の第二の局面は、LF又はLFCの直接的な殺微生物/増殖阻害効果に対する
感受性を有しない抗生物質耐性微生物において、組み合わせ治療効果のために十
分な量のLF又はLFCと、一つ又は複数の抗生物質とを、抗生物質耐性微生物感染
に罹患した対象に同時に投与する段階により、抗生物質耐性微生物感染を治療す
る方法を提供する。
【0060】 抗生物質との同時投与の場合には、感染に関与している抗生物質耐性微生物種
の抗生物質感受性を増加させるか、又は抗生物質の効果を強化する効果のある量
のLF又はLFCが、投与されうる。LF又はLFCは、感染に関与している抗生物質耐性
微生物種の抗生物質耐性を逆転する効果のある量、投与されてもよい。LF又はLF
C、及び抗生物質は、各々、単独投与時の治療効果のために充分であろう量、投
与されてもよいし、又は治療量未満で投与されてもよい。
【0061】 本発明のもう一つの局面は、相乗的な量のLF又はLFCと一つ又は複数の抗生物
質とにより、抗生物質耐性微生物感染を治療する方法を提供する。
【0062】 さらに、本発明は、単独の、又は他の抗微生物剤と組み合わされたLF又はLFC
と、微生物を接触させる段階を含む、抗生物質耐性微生物を死滅させるか、又は
それらの増殖を阻害する方法を提供する。この方法は、食品調製における使用、
液体及び表面を除染するための使用、又は外科用及びその他の医療用の器具、並
びに人工関節を含む移植可能装置を滅菌するための使用のような、インビボ又は
多様なインビトロの使用において実施されうる。これらの方法は、相応じて、感
染巣となる場合が多い静脈ライン及びカテーテルのような留置型侵襲性装置のイ
ンサイチューの滅菌、又はインビトロ組織培養培地の滅菌にも使用されうる。
【0063】 本発明により、単独の、又は抗生物質と組み合わされた、抗生物質耐性微生物
の耐性を実質的に逆転する効果のある有効量のLF又はLFCで、表面又は対象を処
理する段階を含む、表面もしくは対象の抗生物質耐性微生物により引き起こされ
る感染の予防及び/又は治療のための方法が提供される。
【0064】 本発明の一つの局面は、単独の、又は一つもしくは複数の抗生物質と組み合わ
されたLF又はLFCにより、エキソプロテイン(exoprotein)遺伝子の発現及び分
泌に直接影響を与えることにより、抗生物質耐性細菌を治療する方法を提供する
【0065】 本発明のもう一つの局面は、抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の
消毒及び/又は予防のための方法を提供することである。
【0066】 本発明により、単独の、又は抗生物質と組み合わされた、抗生物質耐性微生物
の耐性を実質的に逆転する効果のある有効量のLF又はLFCを含む、表面又は対象
の抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の予防及び/又は治療のための
組成物も提供される。
【0067】 本発明により、抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染を治療、消毒、
及び/もしくは予防するための、又は前記使用のための医薬品の製造のための、L
F又はLFC又は前記定義のような組成物の使用が提供される。
【0068】 抗生物質耐性微生物は、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、ミクロコ
ッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、エンテロコッカス、バチ
ルス、クロストリディウム、ラクトバチルス、リステリア、エリシペロトリック
ス、プロピオニバクテリウム、オイバクテリウム、コリノバクリテリウム、ミコ
プラズマ、ウレアプラズマ、ストレプトミセス、ヘモフィルス、ネセリア、エイ
ケネルス、モラキセルス、アクチノバチルス、パスツレラ、バクテロイデス、フ
ソミクロオルガニズム、プレボテラ、ポルフィロモナス、ベイロネラ、トレポネ
マ、ミツオケラ、カプノシトファガ、カンピロバクタ、クレブシエラ、シゲラ、
プロテウス、及びビブリエからなる群より選択されうる。
【0069】 抗生物質は、アミノグリコシド系、バンコマイシン、リファンピン、リンコマ
イシン、クロラムフェニコール、及びフルオロキノール、ペニシリン、β-ラク
タム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メズ
ロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカルシリン、セフタジ
ジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフレキシン、セフ
ァロチン、イミペネン、アズトレオナム、ゲンタマイシン、ネチルマイシン、ト
ブラマイシン、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、マクロライド系、エリ
スロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ポリミキシンB、セフ
チオフレ、セファゾリン、セファピリン、及びクリンダマイシンからなる群より
選択されうる。
【0070】 本発明により、単独の、又は抗生物質と組み合わされた、耐性遺伝子の誘導に
影響を与える有効量のLF又はLFCを含む、対象又は表面における抗生物質耐性細
菌株の発達を相殺するための組成物が提供される。
【0071】 本発明の目的のため、以下の用語を以下のように定義する。
【0072】 「表面」という用語は、これらに限定されないが、壁、床、天井、医療用装置
、医療用備品、外科用装置、プロテーゼ、矯正器、生物学的液体輸送容器(例え
ば、血液バッグ、点眼剤ボトル)、食品加工装置、食品収集装置、及びチューブ
を含む任意の表面を意味するものとする。
【0073】 「対象」という用語は、ヒト、動物、又は植物を意味するものとする。
【0074】 「有効量」という用語は、ラクトフェリン又はラクトフェリシンに関しては、
抗生物質耐性微生物に対して抗生物質及び/又は抗微生物剤と組み合わされて使
用された場合に、抗生物質及び/又は抗微生物剤に対する微生物の感受性を増加
させるために有効な量を意味し、かつ抗生物質又は抗微生物剤に関しては、少な
くとも、そのような量のラクトフェリン又はラクトフェリシンと共に投与された
場合に、殺微生物又は増殖阻害効果を生じる抗生物質又は抗微生物剤の量を意味
するものとする。ラクトフェリンもしくはラクトフェリシン、又は抗生物質もし
くはその他の抗微生物剤のいずれか、又は両方が、抗生物質耐性微生物に対する
単独治療効果に必要なレベルより低い量で投与されてもよい。
【0075】 「薬学的に許容される担体」という用語は、静脈内、乳房内、皮下、腹腔内、
局所、眼内、気管内、経肺、又は経皮の経路のような任意の投与経路による対象
への投与に適した任意の担体を意味するものとする。そのような担体には、これ
らに限定されないが、水性媒体、脂性媒体、エアロゾル化された溶液、噴霧され
た薬物、灌注液、洗浄溶液(例えば、創傷洗浄用)、生理学的溶液(例えば、0.
9%生理食塩水、点耳剤、点眼剤、クエン酸緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食
塩水)、長期持続性輸送系(例えば、リポソーム)、生物学的液体(例えば、血
液、血清、血漿)、食品混合物、食品液体(例えば、牛乳、水、泉水、ガゼイフ
ァイド(gazeified)水)、薬学的に許容される希釈剤、又は補助剤が含まれる
【0076】 「抗微生物剤」という用語は、これらに限定されないが、抗生物質、バクテリ
オシン、ランチバイオティック(lantibiotic)、消毒剤、非抗生物質性増殖阻
害性の許容される物質を含む任意の薬剤を意味するものとする。
【0077】発明の詳細な説明 本発明は、ラクトフェリン(LF)またはラクトフェリチン(LFC)を抗菌薬と
して単独で、または抗生物質と組み合わせて、抗生物質耐性微生物によって起き
る感染症を治療するために使用することに関する。本発明に記載された方法およ
び材料は新規のものであり、当業者には知られていなかったものである。この方
法および材料を用いて、抗生物質耐性菌感染症を患う患者を治療することができ
る。もっとも具体的には、本発明は、抗生物質耐性病原菌によって起きる感染症
を治療および予防するための製品で、抗生物質の臨床効果を高めるための製品に
関係する。本発明に係る製品はラクトフェリンとその代謝された形であるラクト
フェリチンを含み、抗生物質の効能に対する顕著な増強効果を示す。
【0078】 現時点で好適な発明の局面を説明する以下の発明の詳細な説明を参照すれば、
本発明のさらなる多数の局面と利点が当業者に明らかになろう。
【0079】 また、本発明は、ヒトなどの哺乳動物、および植物における微生物疾患を予防
および治療する方法、手術用器具、人工器官、または食品加工装置を消毒する方
法にも関する。本明細書において抗生物質耐性菌による感染症とは、抗生物質耐
性菌感染症に関連した症状およびそれによりもたらされる症状を含む。これらの
症状には、抗生物質耐性敗血症、およびそれに付随する一つ以上の症状であって
、菌血症、発熱、高血圧、ショック、代謝性アシドーシス、播種性血管内凝固症
候群およびそれに関連した凝固疾患、貧血、血小板減少症、白血球減少症、成人
性呼吸困難症およびそれに関連する肺疾患、腎臓不全およびそれに関連する腎疾
患、肝胆疾患および中枢神経系疾患、ならびに乳腺炎などの症状が含まれる。ま
た、これらの症状は、消化管からの抗生物質耐性菌の転位、および、それに伴う
エンドトキシンの放出を含む。以下の生物種に由来する抗生物質耐性微生物:ス
タフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)
、ミクロコッカス(Micrococcus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトス
トレプトコッカス(Peptostreptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)
、バシラス(Bacillus)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバシラス
(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、エリジペロスリックス(Erysipe
lothrix)、プロピオン酸(Propionibacterium)、ユーバクテリウム(Eubacter
ium)、コリノバクテリウム(Corynobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma
)、ウレアプラズマ(Ureaplasma)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ヘモ
フィラス(Haemophilus)、ナイセリア(Neisseria)、エイケネラス(Eikenell
us)、モラクセラ(Moraxellus)、アクチノバシラス(Actinobacillus)、パス
ツレラ(Pasteurella)、バクテロイデス(Bacteroides)、フソミクロオーガニ
ズム(Fusomicroorganism)、プレボテラ(Prevotella)、プロフィロモナス(P
orphyromonas)、ベイヨネラ(Veillonella)、トレポネーマ(Treponema)、ミ
ツオケラ(Mitsuokella)、カプノシトファガ(Capnocytophaga)、カンピロバ
クター(Campylobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、シゲラ(Shigella)
、プロテウス(Proteus)、ビブリアエ(Vibriae)など。
【0080】 抗生物質耐性微生物の中で敗血症に関係する最も重要な微生物種は、スタフィ
ロコッカス(Staphylococci)、ストレプトコッカス(Streptococci)およびエ
ンテロコッカス(Enterococci)であるが、どんな抗生物質耐性微生物でもよい
【0081】 本発明の一つの局面によれば、LPまたはLFCを単独で、治療効果を生じるのに
十分な量にして、LF-またはLFC-感受性微生物を含む感染症を患う患者に投与し
たり、手術器具や食品加工装置の消毒薬として使用することができる。LPまたは
LFCの単独投与について記載するのに使用する場合、「治療効果を示すのに十分
な量」という語は、治療投薬量として投与したとき、殺菌効果または増殖阻害効
果を提供するLFまたはLFCの量を意味する。本発明は、好中球、または乳汁、組
み換えLFもしくはLFC、LFもしくはLFCの断片、LFもしくはLFCの変異体、およびL
FもしくはLFCに由来するペプチドなど、当技術分野において既知のLFまたはLFC
のいずれかの形状を利用した。本発明のこの局面は、LFまたはLFCが、抗生物質
耐性の菌に対して殺菌効果または増殖阻害効果をもつという発見に基づいている
。また、LFまたはLFCは、本明細書において、さまざまな抗生物質耐性菌のさま
ざまな増殖期に対して直接的な殺菌効果または増殖阻害効果をもつことが示され
ている。増殖期とは、L期(潜在増殖期)およびS期(指数増殖期)のことである
。また、LFまたはLFCは、臨床的には、呼吸器および尿生殖器の感染症の原因と
なる、細胞膜のないマイコプラズマ(Mycoplasma)、ウレアプラズマ(Ureaplas
ma)に対して直接的な殺菌/増殖阻害効果を発揮することが期待できる。さらに
、マイコプラズマの100以上の亜種が、インビトロでの組織培養の主要な混入菌
を形成している。
【0082】 本発明の別の局面は、LFまたはLFCが、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の細
胞膜のような、さまざまな機構によって菌に作用することである。LFまたはLFC
は、哺乳動物細胞上への結合を阻害するのではなく、細胞膜上で表面受容体(例
えば、ヘパリン結合様受容体、フィブロネクチン結合様受容体、プロテインA結
合様受容体、または抗体結合様受容体、リポサッカライド結合様受容体など)に
結合することができる。LFまたはLFCが細胞膜の内側に到達することができれば
、LFまたはLFCの両親媒性によって、細胞膜を貫通して殺菌作用を発揮すること
ができる。したがって、抗生物質、界面活性剤、抗ペプチドグリカン抗体、抗リ
ポタイコ酸抗体、およびリソソームなど、細胞膜に作用するか、これを破壊する
薬剤は、細胞内膜に接触させることによって、LFまたはLFCの活性を強化するこ
とができる。LFまたはLFCがさらに細胞の内部に入り込めば、LFまたはLFCの作用
機作は、抗生物質耐性菌が保持する耐性に関与するプラスミドまたは遺伝子の転
写を抑制することによってもよい。
【0083】 また、LFまたはLFCを用いて、結合療法による(combinative therpeutic)効
果を生じるのに十分な量のLFまたはLFCを、結合療法による(combinative therp
eutic)効果を生じるのに十分な量の1種類以上の抗生物質と同時投与すること
によって、抗生物質耐性菌が原因となった菌感染症を治療または予防することが
できる。本発明のこの局面は、LFまたはLFCを、ベータ-ラクタマーゼ含有または
非含有ベータ-ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド、テトラサイクリン、ス
ルフォアミド、およびトリメトプリム、バンコマイシン、マクロライド、フルオ
ロキノロン、およびキノロン、ポリミキシンなどの抗生物質のうち、いずれかの
抗生物質、またはこれらの抗生物質を組み合わせたものと同時に投与することを
想定したものである。
【0084】 本発明のこの特徴は、例えば、抗生物質治療にかかる費用の削減、および/ま
たは抗生物質に対する毒性反応の危険性の低下などの利点を提供することによっ
て、LFまたはLFCの投与が、抗生物質の有効性を向上させるとの発見に基づくも
のである。LFまたはLFCは、本明細書において、0時間から24時間の培養において
、抗生物質耐性菌のインビトロでの増殖を阻害するのに必要な抗生物質最低濃度
を低下させることが示されている。LFまたはLFCの殺菌効果または増殖阻害効果
は直接的でもよいし間接的でもよい。本発明のこの局面は、LFまたはLFCの投与
によって、抗生物質耐性菌の抗生物質耐性を逆転させることができるとの、さら
なる発見と直接関連するものである。本明細書には、LFまたはLFCが、抗生物質
の最低阻害濃度を、臨床学的に耐性の範囲から臨床学的には感受性の範囲まで低
下させることが示されている。そして、LFまたはLFCが、通常は抗生物質耐性の
菌を、抗生物質感受性の菌に変換することが証明された。
【0085】 LFまたはLFCは、ヒトのほとんどの食物に存在し、経口吸収された後も免疫反
応を開始させることがないため、本発明に係る製品は、食品保存剤として使用す
ることもできる。LFまたはLFCは、例えば、ミルク、ヨーグルト、スキムミルク
粉末、乳酸菌発酵食品、チョコレート、キャンディー、粉末飲料、およびLFまた
はLFCを保存剤として添加できる他の食物などに添加するなどして食物に混ぜれ
ば利用することができる。また、LFまたはLFCは、他の食品保存剤、着色剤、お
よび賦形剤と組み合わせて使用することもできる。本発明は、それぞれが、さま
ざまな濃度の塩またはグルシディック製品(glucidic products)およびそれら
を組み合わせたものを含む水または他の水溶液、天然または合成の脂質性培地に
希釈したLFまたはLFCを含む。LFまたはLFC単独、または他の保存剤をこのように
組み合わせたものは、有効量の活性化合物とともに適量の担体を含み、宿主に正
しく投与するための形状を備えている。
【0086】 本発明の最も好適な態様の一つにおいて、最低阻害濃度は、LFについては1 mg
/ml、LFCについては12.5μg/mlである。
【0087】 LFまたはLFCを投与するための経路の一つは経口経路である。LFまたはLFCの投
与は、好ましくは、LFもしくはLFC、および薬学的に許容される希釈剤、アジュ
バント、もしくは担体を含む薬学的組成物を用いて行なう。LFまたはLFCは、既
知の界面活性剤、他の化学療法剤、もしくは既知の別の抗菌剤を入れずに投与す
ることも、これらと一緒に投与することもできる。
【0088】 本発明の効果的な相乗効果という局面によれば、LFまたはLFCを1種類以上の
抗生物質と同時投与したときの強化効果は、さまざまな方法で得ることができる
。LFまたはLFCは、抗生物質耐性菌を抗生物質感受性菌に変換したり、そのよう
な菌の抗生物質感受性を向上させたりすることができる。逆に、LFまたはLFCは
、菌の細胞壁や細胞膜に対して作用する抗生物質のような抗生物質を強化して、
LFまたはLFCに耐性の菌をLFまたはLFCに感受性の菌に変換することができる。あ
るいは、LFもしくはLFC、および抗生物質は、いずれも互いに他方の薬剤を同時
に強化することができる。LFもしくはLFC、および抗生物質は、両者を治療上効
果を生じるのに十分な量よりも少ない量投与したときに治療効果をもつ。
【0089】 LFもしくはLFC、または抗生物質のどちらかを全身または局所に投与すること
ができる。全身への投与経路は、経口投与、静脈内投与、筋肉内もしくは皮下へ
の注射、眼内もしくは球後への投与、くも膜下投与、腹腔内投与、エアロゾル薬
または噴霧薬を用いる肺内投与、またはトランスファーマル(transfermal)投
与などがある。局所経路には、軟膏、点眼薬、点耳薬、または洗浄液の形状にし
て投与することが含まれる。LFまたはLFCは単独で、または抗生物質と組み合わ
せて、長時間持続するか速やかに分解させるなど、さまざまな送達系で送達する
ことができる。
【0090】 本発明によって提供される利点は、抗生物質耐性菌に対する抗生物質の治療上
の有効性を向上させることによって、これらの菌を効果的に処理できることにあ
る。抗生物質の中には全身毒性や非常に高価なせいで使用が制限されるため、治
療効果のために必要とされる抗生物質濃度を下げて全身毒性および/または治療
費用を減らし、それによって、それらの抗生物質のより広い使用が可能になって
いる。
【0091】 単独で、または、他の抗生物質および/またはLFもしくはLFCとさまざまに組み
合わせて使用できる抗生物質には、バンコマイシン、リファンピシン、リンコマ
イシン、クロラムフェニコール、およびフルオロキノール、ペニシリン、ベータ
-ラクタム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン(azlocillin)、
カルベニシリン、メズロシリン(mezlocillin)、ナフシリン(nafcillin)、オ
キサシリン(oxacillin)、ピペラシリン、チカルシリン、セフタジジム、セフ
チゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロチン
、イミペネム、アズトレオナム、アミノグリコシド系、ゲンタマイシン、ネチル
マイシン、トブラマイシン、ネオマイシン、テトラサイクリン、スルホンアミド
、マクロライド、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、
ポリミキシンB、およびクリンダマイシンなどがある。
【0092】 LFまたはLFCの生物活性断片には、天然のヒトまたはウシのLFまたはLFCと同一
または類似したアミノ酸配列をもつ生物活性分子などがある。また、LFまたはLF
C生物活性変異体には、LFまたはLFCの類似体またはその生物活性断片と1種類以
上の他のポリペプチドを少なくとも一部を含む組換えハイブリッド融合タンパク
質、およびLFまたはLFCの変異体のポリマー型などがあるが、それらに限定され
ない。融合タンパク質型は、生成工程を容易にするように設計することができる
。LFまたはLFCの生物活性型類似体には、1個以上のアミノ酸残基が別のアミノ
酸残基に置き換わっているLFまたはLFCがあるが、それらに限定されない。
【0093】 また、本発明は、LFまたはLFCのみと、または1種類以上の抗菌製品(例えば
、抗生物質、洗剤など)と併用して菌に接触させることによって、抗生物質耐性
菌が混入した器具、実験台、部屋、および液体をインビトロで処理するための改
良法を提供する。使用するLFまたはLFC、および抗菌製品の量は、それぞれ殺菌/
増殖阻害効果を生じるのに十分な量であるか、または、相加的もしくは相乗的な
殺菌/増殖阻害効果を生じるのに十分な量である。これらの方法は、手術用およ
びその他の医療用器具、および、人工関節などの移植可能な装置を消毒するなど
、さまざまなインビトロでの応用場面に使用することができる。また、これらの
方法は、静脈内ラインおよびカテーテルなどの留置観血装置の生体内での消毒に
使用することもできる。本発明は、特に、ヒトおよび動物の抗生物質耐性菌によ
る菌感染症を治療および予防することに関する。
【0094】 治療上の有効性は、成功した臨床結果に基づいており、抗菌剤が感染症に関与
する菌の100%を殺す必要はない。成功は、感染部位において、宿主に有利に働
くようなやり方で、菌を阻害するのに十分な抗菌活性レベルに到達することにか
かっている。宿主の防御が最大限に有効であれば、必要な抗菌効果は最小限とな
ろう。生物負荷を1対数分(係数10)減少させれば、宿主自前の防御によって感
染症を防御することができるかもしれない。さらに、初期の抗菌/静菌効果を強
化することの方が、長期間にわたる抗菌/静菌効果よりも重要なこともある。こ
れらの初期事象は、宿主の防御システムを活性化するための時間を置くことがで
きるため、治療を成功させる上で有意義かつ重要な部分である。髄膜炎、骨もし
くは関節への感染などの感染症にとっては、菌の割合(microbial rate)を増加
させることが特に重要である可能性がある。
【0095】 本発明は、以下の実施例を参照することによってより理解しやすくなる。ただ
し、実施例は、発明を具体的に説明するためのものであって、その範囲を制限す
るものではない。
【0096】実施例I 抗生物質の最小発育阻止濃度(MIC)の決定 抗菌剤 ウシアポラクトフェリン、ノボビオシン(キノロン様抗生物質)およびマクロ
ライドエリスロマイシンをシグマケミカルズ(Sigma Chemicals)(St-Lous、Mo.
)より購入した。ペニシリンG、アンピシリン、セファゾリンおよびネオマイシン
をノボファーム リミテッド(Novopharm Limited)(Toronto、ON、Canada)より
購入した。ウシLF(Besnier、California USA)を100mg/mlの濃度で水に溶解し
、-20℃で保存した。ディオニシャス(Dionysious)およびマイルン(Milne)に
よって記載された方法(1997、J. Dairy Sci. 80:667-674)によりラクトフェ
リシンをウシLF(Besner、California USA)より単離し、これを使用時まで-20
℃で保存した。単離したペプチドをアミノ酸配列決定のためにバイオテクノロジ
ー研究所(Biotechnology Research Insitute)(Montreal、QC、Canada)に送
付し、この研究所によってそれがLFCであることが確認された。抗生物質保存物
を常に、新しく調製し、ミューラー・ヒントン寒天プレート(MHA)またはブロ
ス(MHB)で所望の濃度に希釈した。アンピシリン(10μg)、ペニシリン(10u
)、セファロチン(30μg)、ネオマイシン(30μg)、テトラサイクリン(30μ
g)、オキサシリン(1μg)、エリスロマイシン(15μg)、サルファメトキサゾ
ール(23.7μg)/トリメトプリム(1.25μg)、ノボビオシン(30μg)、ペニシ
リン(10u)/ノボビオシン(30μg)、ピアリマイシン(pirlimycin)(2μg)
、ゲンタマイシン(10μg)、スペクチノマイシン(100μg)を含む抗生物質の
ディスクパネル(Becton Dickinson Microbiology Systems、Cockeysville MD)
を精度管理アッセイ法に用いた。
【0097】 細菌株および増殖条件 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)株ATCC 25923および6538、ならび
に大腸菌(Escherichia coli)ATCC 25922を米国微生物系統保存機関から入手し
た。8株の黄色ブドウ球菌(S. aureus)のウシ乳腺炎臨床分離株(SHY97-3906、
SHY97-3923、SHY97-4085、SHY97-4242、SHY97-4320およびSHY97-4343、RFT-1お
よびRFT-5)ならびに1株の大腸菌分離株SHY97-3923-2ならびに1株の肺炎桿菌(K
lebsiella pneumoniae)分離株SHY99-723-1は、各々セントヒアシンセ(St-Hyac
inthe)およびロックフォレスト(Rock-Forest)(Quebec、Canada)の病理動物
地方研究所(Laboratoire Provincial de Pathologie Animale)によって快く提
供された。9株のβラクタム抗生物質耐性黄色ブドウ球菌株(PC-1、NCTC 9789、
2076、22260、ST79/741、3804、RN9、FAR8、およびFAR10)は、ヴァンダービル
ト大学医学学校(Vanderbilt University School of Medicine) (Nashville、T
ennessee、USA)より入手した。すべての培地はディフコ ラボラトリーズ(Difc
o Laboratories)(Detroit、MI)のものであった。-80℃での凍結保存物からの
細菌を5%脱繊維ヒツジ血液(Quelab、Montreal、QC、Canada)またはブレイン
・ハート・インフュージョン寒天プレートを添加したトリプティックソイ寒天プ
レートに画線した。その後、プレートを37℃で16〜24時間インキュベートした。
ほとんどの実験では、株をさらに16-20時間ミューラー・ヒントン寒天プレート
(MHA)またはブロス(MHB)へ継代培養した。試験生成物の水溶液が滅菌フィル
ターアセンブリー(細孔サイズ0.2μm、Fisher、Ottawa、Ontario)によるろ過
によって添加された。
【0098】 臨床検査室基準国際委員会(National Committee for Clinical Laboratory S
tandard)(1992および1999)に従い3回の別の実験における滅菌96穴マイクロタ
イタープレート(International Nunc、Napierville、Il)法におけるマクロ希
釈(macrodilution)(1ml/管)および微量希釈(100μl/穴)の両方によって、M
ICを決定した。LF、LFC、抗生物質、または抗生物質とLFもしくはLFCの組み合わ
せのMHBで連続して2倍希釈し、これをMHBにおける最終接種物106cfu/mlで一晩培
養した物を播種した。抗生物質と組み合わせたLFのMICに対する作用を、各抗生
物質希釈物に0.5mgまたは1mg/mlのLFを添加することによって測定した。MICは、
18時間インキュベーション後の細菌増殖を完全に阻止させる薬剤の最小濃度(最
も高い希釈率)として定義された。抗生物質と組み合わせたLFまたはLFCのMICに
対する作用は、96穴マイクロタイタープレートを用いたチェッカーボード法によ
っても測定した。各抗生物質希釈物(50μl)を上(より低い希釈率)から始ま
り下までの縦の列の穴に連続的に添加した。ラクトフェリンまたはLFC(50μl)
を50μlの各抗生物質希釈物に添加し、左(より低い希釈率)から始まり右まで
を連続的に希釈した。播種後、上から下までの抗生物質の最終濃度は、ペニシリ
ン、セファゾリンおよびネオマイシンについて、各々32〜8μg/ml、2〜0.5μg/m
l、0.5〜0.125μg/mlであった。左から右まで、LFまたはLFCの濃度は、最終体積
が100μl/穴で各々25〜0.0244mg/mlまたは256〜0.5μg/mlであった。これらのマ
イクロプレートを37℃で24時間インキュベートした。細菌増殖を分子生物学用の
装置のスペクトルマックス250マイクロプレート分光光度計システム(Spectra M
ax 250 Microplate Spectrometer System)(Fisher Scientific、Ottawa、Cana
da)を用いて540nmで光学測定した。管を37℃で18時間インキュベートし、視覚
的検査によって分光光度計(Philips PU 8800;Pye Unican Ltd、Cambridge、UK
)を用いて540nmで光学測定した。分画阻止濃度(FIC)をエリオポーラス(Elio
poulos)およびモーラリング(Moellering)によって記載されたように計算した
(1991)。
【式1】 FIC抗生物質A=MIC抗生物質A(抗生物質B存在下)/MIC抗生物質A単独
【式2】 FIC 指数=FIC抗生物質A+FIC抗生物質B
【0099】 FIC指数が各々<1または>1である場合には、抗生物質の作用は相乗効果的ま
たは無関係であると考えられた。
【0100】 精度管理について、臨床検査室基準国際委員会推奨のディスク拡散感受性試験
を、様々な抗生物質の標準的ディスクを用いて全ての株について行なった。37℃
で18時間インキュベーションした後、各ディスクの周りの細菌増殖の完全な阻止
区域の直径を測定した。分離株をメーカー推奨の説明ガイドラインを用いて所定
の抗生物質についての感受性または耐性について分類した。
【0101】 ペニシリンGのみまたはいくつかの黄色ブドウ球菌株について得られた0.5mg/m
lまたは1mg/mlLFと組み合わせたペニシリンGのMICを表1に示す。株ATCC 25923お
よび領域分離株SHY97-3923を除いて、2つの臨床乳腺炎株(SHY97-3906およびSHY
97-4320)を含むすべての他の株は、0.5μg/mlから>128μg/mlまでのMICであり
、ペニシリンGに耐性であった。標準的ディスク拡散およびセフィナーゼ試験に
よりこれらの株におけるペニシリンおよびアンピシリン耐性ならびにβラクタマ
ーゼ産生が確認された。ラクトフェリンのみが25mg/mlを超えるMICを有するこれ
らの株に対する弱い阻止活性を示した。LFCのMICは、ATCC 25923については128
μg/mlおよび他の株については256μg/mlであった。ペニシリンにLF 0.5mg/mlを
組み合わせたものが、ATCC 25923および1mg/mlのLF濃度が必要なSHY97-3906を除
いたすべての検査株においてペニシリン阻止活性を2倍増加した(表1)。
【0102】 FIC指数検査は、LFおよびペニシリン間、ノボビオシンおよびエリスロマイシ
ン間の相乗的作用を示す。ペニシリンへのLFの組み合わせは、ATCC 25923株およ
びPC-1株において、各々2倍および2倍以上ペニシリン阻止活性が増加した。この
増加は、SHY97-4320株およびSHY97-3906株においては4倍であった(表2)。LFの
阻止活性は、ペニシリンGによって16倍から64倍増加した(表2)。ノボビオシン
へのLFの組み合わせは、試験された黄色ブドウ球菌株の7/10(70%)において2
倍から4倍ペニシリン阻止活性が増加したが、その一方でエリスロマイシンの活
性は、黄色ブドウ球菌の同じ割合においてLF存在下で2倍から16倍増加した。
【0103】 ラクトフェリンは、重要な鉄キレタータンパク質である。この実験において、
本発明者らはLFが黄色ブドウ球菌に対する低い抗菌活性を有することを示してい
る。この細菌は、極端に低い鉄濃度(0.04μM)存在下で増殖可能である。本発
明者らは、鉄が16.2%まで飽和したウシLFが増殖阻止活性もまた示すことを観察
した。従って、5μMのFeCl3の添加は、LF増殖阻止活性に影響を与えなかった。
これにより、黄色ブドウ球菌に対するLFの抗菌活性は、その鉄をキレートする性
質のみによるのではないことが明らかである。
【0104】 抗生物質の組み合わせは、感染症の治療に用いられ、有効範囲の幅広いスペク
トルを提供し、耐性株の出現および薬物毒性を低下させ、ついには抗生物質間の
相乗作用または相加作用を生じる。本発明者らは、比較的低い濃度のウシLFとペ
ニシリンG、ノボビオシンまたはエリスロマイシンとの組み合わせがほとんどの
検査株に対するこれらの抗生物質の抗菌活性を増加させることを見出した。培地
中比較的低い濃度のウシLF存在下で、ウシ臨床乳腺炎から分離されたブドウ球菌
(Staphylococci)株の増殖はより大きい程度までペニシリンGによって阻止され
る。この知見により、ペニシリンとLFの組み合わせがこれらの株に対して相乗的
に作用することを示した。一般的には、LF存在下ではペニシリンとエリスロマイ
シンのFIC指数は、βラクタマーゼ非産生株よりβラクタマーゼ産生株の方が低
かった。このことからLFは抗生物質耐性を低下し得ることが示唆される。
【0105】実施例II ウシのラクトフェリン/ラクトフェリシンおよび抗生物質が細菌生育に及ぼす影
響 MIC以下の濃度のLFまたはLFCが単独で、またはMIC以下の濃度の抗生物質との
組合せにより、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、大腸菌(E. coli)、およびK.
ニューモニエ(K. Pneumoniae)の生育速度に及ぼす影響を、MHBで培養した細菌
培地のO.D.600nmをモニタリングして、もしくは、1 mlあたりのコロニー形成数
(cfu/ml)をカウントして決定した。MHBで一晩培養し、生理食塩水で標準マッ
クファーランド(McFarland)0.5〜1に調製した培地2.5 mlを用いて、試験化合
物を所定の濃度で含む新鮮MHBを最終的に25 mlに調製し接種した。次に、すべて
のフラスコを撹拌(200rpm)しながら37℃で9時間インキュベートした。1時間ご
とにアリコットを取り、分光光度計フィリップス(Philips)PU 8800(Pye Unic
an Ltd、Cambridge、UK)を用いて培地の混濁度を決定した。また、異なる濃度
の抗生物質の存在下でLFの濃度を変化させて、抗生物質を組み合わせた場合の細
菌生育に対する影響も調べた。簡潔には、所定の濃度の薬剤を含む新鮮MHB 3 ml
を、一晩培養後、540 nmでの光学濃度を0.4に調製した。次にこの培地を撹拌(2
00 rpm)しながら37℃でインキュベートした。インキュベート後、アリコットを
取り、培地の混濁度(OD540nm)またはcfu/mlを決定した。試験化合物による生
育阻止に対する鉄レベルの影響を決定するため、FeCl3 5μMを培地に添加した。
【0106】 ペニシリンGとLFとの、またはLFCとの組合せが、黄色ブドウ球菌のATCC 25923
株および構成酵素β-ラクタマーゼ産生株PC-1の生育速度に及ぼす影響を図1およ
び2に示す。MIC以下のペニシリンGのみでは、PC-1株の生育速度に有意な影響は
みとめられなかった。ATCC 25923株はLF単独の場合、PC-1株はLFおよびLFC単独
の場合、生育が遅くなった。LF 1 mg/mlをMIC以下のペニシリンG(1/4〜1/16 MI
C)と組み合わせて用いた場合は、生育速度の顕著な低下が観察された(P < 0.0
1)。ペニシリンGをLFC 32μg/ml(ATCC 25923株に対して1/8 MIC)または64μg
/ml(PC-1株に対して1/8 MIC)と組み合わせると細菌生育が完全に阻止された。
β-ラクタマーゼ非産生性の臨床黄色ブドウ球菌株であるSHY97-4242株およびRFT
-5株でも、ペニシリンGにより生育が遅くなった(P < 0.001)。LFの存在下では
ペニシリンの生育阻止活性が増強された(P < 0.01)。培地に鉄を添加してもペ
ニシリンとLFとの組合せによる生育阻止には影響しなかった。
【0107】 エリスロマイシン、ノボビオシン、LF単独およびその組合せが、黄色ブドウ球
菌のATCC 25923株、SHY97-3906株、SHY97-4242株、およびRFT-5株の生育に及ぼ
す影響を、インキュベート後4時間、8時間、および18時間の各時点で評価した。
MIC以下(9.1μg/ml、36.6μg/ml、250μg/ml、または500μg/ml)のLF単独では
、SHY97-3906株(P > 0.5)を除いてこれらの株に影響を及ぼさなかった。SHY97
-3906株は、インキュベートから18時間後、エリスロマイシンとLFとの組合せに
より影響を受けた(図3)。
【0108】 LFまたはLFCとネオマイシンとの組合せが大腸菌(E. coli)の臨床単離株SHY9
7-3923およびK. ニューモニエの臨床単離株SHY99-723の生育に及ぼす影響も評価
した。大腸菌(E. coli)の該株では、LF 1 mg/ml(図4)またはLFC 16μg/ml(
1/16 MIC、図5)を培地に添加すると細菌生育に対するネオマイシンの影響が顕
著に増強された。K. ニューモニエの株についても同様の結果が得られた。ネオ
マイシンによる同株の生育速度の低下は、LF 0.5 mg/ml(図6)またはLFC 16μg
/ml(1/16 MIC、図7)を培地に添加すると2倍になった。ネオマイシンとの相乗
作用はLFよりLFCのほうが強かった。
【0109】 βラクタム系抗生物質セファゾリン(0.5μg)は、単独では大腸菌(E. coli
)SHY97-3923の生育を低下することができなかった(図5)が、LFCとの相乗作用
により細菌生育を完全に阻止した。
【0110】実施例III ウシのラクトフェリン/ラクトフェリシンおよび抗生物質が細菌の細胞形態に及
ぼす影響 濃度MIC以下のペニシリンGを含みLFまたはLFCを添加または無添加としたMHAま
たはMHBで、細菌細胞を一晩培養した。微生物をグルタルアルデヒドで固定した
後フェリチンで標識して透過電子顕微鏡観察用に調製した。この方法により莢膜
物質を良好に保存できる。簡潔には、抗生物質の存在下または非存在下で生育し
た細菌細胞を、グルタルアルデヒド5%(v/v)含有カコジル酸塩緩衝液(0.1 M,
pH 7.0)中で、20℃で2時間固定した。固定した微生物をカコジル酸塩緩衝液に
懸濁し、20℃で30分間、ポリカチオンフェリチン(Sigma Chemicals、St-Louis
、MO; 最終濃度1.0 mg/ml)と反応させた。緩衝液を10倍に希釈して反応速度を
下げ、微生物を遠心分離してカコジル酸塩緩衝液で3回洗浄した。次に、細菌細
胞を4%(w/v)寒天中に固定化し、カコジル酸塩緩衝液で5回洗浄し、2%(w/v)
四酸化オスミウムで2時間、後固定した。前述のとおり洗浄を繰り返し、アセト
ン洗浄により試料を段階的に脱水した。次に、試料をプロピレンオキシドで2回
洗浄し、スパー(Spurr)低粘土樹脂に包埋した。薄切片を酢酸ウラニルおよび
クエン酸鉛で後染色し、電子顕微鏡(Philips 201)を用いて加速電圧60kVで観
察した。
【0111】 濃度MIC以下のペニシリンGおよびLF単独、ならびにその組合せが細胞形態に及
ぼす影響を比較するため、インキュベーション4時間後および18時間後に、黄色
ブドウ球菌 SHY97-4320株およびATCC 25923株をそれぞれ回収した(図8および9
)。ATCC 25923株では、MIC以下のペニシリンG(0.0078μg/ml)により、2つの
分割面と複数の横断壁(cross wall)とを持ち、大きく対称性に配置された偽多
細胞性ブドウ球菌(pseudpomulticellular staphylococci)が形成された(図8B
)。MIC以下のペニシリンGへの曝露後は、不規則な面を持つ厚い隔壁も観察され
た。濃度9.1μg/mlのLFは黄色ブドウ球菌の細胞壁に著明な影響を及ぼさなかっ
た(図8C)。LFとMIC以下のペニシリンGとの組合せが黄色ブドウ球菌の形態に及
ぼす影響はペニシリンG単独の場合と似ていたが、全く同じではなかった。実際
に、非対称な配置の偽多細胞性ブドウ球菌が形成され、横断壁はより厚く、不規
則で、欠損している場合もあった(図8D)。この処理では、溶解し不規則な細菌
細胞と併せて、細胞壁の断片、細胞壁が損傷した細胞、および細片も観察された
。耐性株SHY97-4320では、ペニシリンG(8μg/ml)単独では影響がみられなかっ
たが(図9B)、LF(1 mg/ml)と組み合わせた場合は、感受性の株の場合と同様
の形態的変化が観察された(図9A〜9D)。このことは、LFが耐性株のペニシリン
感受性を回復させることを示唆している。
【0112】 PC-1株(構成性β-ラクタマーゼ大量産生株)の細菌細胞は、ペニシリンG 8μ
g/mlもしくはLFC 16μg/ml、またはその組合せを含むMHBで、150 rpmで撹拌しな
がら37℃で4時間、一晩培養した。前述の方法で固定およびフェリチン固定した
後透過電子顕微鏡で細菌の細胞形態を評価した。ペニシリン単独の場合は形態に
影響しなかった。LFまたはLFCに曝露した場合は黄色ブドウ球菌の形状および大
きさが変化した。LFCを使用した場合は細菌の多くが溶解しているのが観察され
、これはペニシリンGの存在によりさらに増強された。(図10Cおよび10D、矢印
部)。さらに、LFCにより、黄色ブドウ球菌の隔壁および細胞壁に由来するメソ
ゾーム構造の形成が誘導された(図11)。このことからも、LFが耐性株のペニシ
リン感受性を回復させることが示唆される。
【0113】 細胞分裂に対するLFとペニシリンGとの組合せの作用機序を調べるため、β-ラ
クタマーゼ産生黄色ブドウ球菌、SHY97-4320株の薄切片を透過電子顕微鏡で観察
した。細菌細胞を、ペニシリンG 8μg/mlもしくはLF 1 mg/ml、またはその組合
せを含むMHBで、150 rpmで撹拌しながら37℃で4時間培養した。細菌を回収し、
一部は、0.15M NaCl 0.5 mg/mlおよび小麦胚細胞凝集素(WGA)ゴールド(Sigma
Chemicals、St-Louis、MO)50μlを含む0.02M トリス(pH 7.4)で2時間インキ
ュベートした。前述のように透過電子顕微鏡で細菌細胞の形態を評価した。各処
理による影響を評価し、t検定で比較した。LF単独またはペニシリンとの組合せ
で処理した後は、複数の非分裂細胞の群が観察された(図12A)。これらの結果
は、LFがブドウ球菌の細胞分裂に影響しうることを示唆している。WGAは、N-ア
セチル-β-D-グルコサミル残基およびN-アセチル-β-D-グルコサミンオリゴマー
に親和性を持つ。LF処理後の黄色ブドウ球菌細胞は、WGAゴールドで覆われてい
る部分が少なかった(P < 0.005)(図12および表3)。これらの結果は、細胞壁
ペプチドグリカンの重要部分であるN-アセチル-β-D-グルコサミンの形成または
到達性(accessibility)にLFが影響を及ぼすことも示唆している。
【0114】実施例IV ウシのラクトフェリン/ラクトフェリシンおよび抗生物質がβ-ラクタマーゼ産
生に及ぼす影響 MIC以下のLF(1 mg/ml)単独、LFC(32および64μg/ml)単独、またはアンピ
シリン(4μg/ml)もしくはペニシリンG(8μg/ml)との組合せが、黄色ブドウ
球菌のSHY97 -4320株およびPC-1株のβ-ラクタマーゼ活性に及ぼす影響を評価し
た。色素産生性セファロスポリンであるニトロセフィン(Becton Dickinson Mic
robiology、Cockeysville、MD)を用いて定量的分光光度アッセイ法を行った。
細菌細胞をまず4時間および22時間、ブロス中で薬剤に曝露した。測定時ごとに
細菌数(cfu/ml)を決定し、細胞アリコットを遠心分離した。沈殿物を10 mM HE
PES緩衝液(pH 7.4)に懸濁し、OD415nmをPC-1試料は1に、SHY97-4320試料は2に
調製した。ニトロセフィン(100μM)を細胞100μlに添加し、最終体積を1 mlに
調製した。分光光度計を用いて486 nmで加水分解を測定した。β-ラクタマーゼ
活性をΔO.D.486nm/minとして表現し、細菌ODを補正した。
【0115】 SHY97-4320株では、対照およびLF含有培地でβ-ラクタマーゼ活性はみとめら
れなかった(図13)。ペニシリンG 8μg/mlを含む培地では、β-ラクタマーゼ活
性の大幅な上昇がみられた。LFとペニシリンGを組み合わせた場合はβ-ラクタマ
ーゼ活性が顕著に低下した(P < 0.001)。PC-1株ではLFによりβ-ラクタマーゼ
活性がやや低下した(P < 0.05)。しかし同株では、LFCが強い(P < 0.001)β
-ラクタマーゼ活性阻害を示した(図14)。アンピシリンでも同様の結果が得ら
れた。これらの結果は、LFおよびLFCが、β-ラクタマーゼ活性を阻害することに
よりβラクタム系抗生物質への耐性を抑制することを示している。
【0116】実施例V ヒトラクトフェリンがβ-ラクタマーゼ産生に及ぼす影響 ペニシリンGをノボファームリミテッド(Novopharm Limited)(Toronto、Ont
ario、Canada)から購入した。ヒトLF(Sigma)を濃度100 mg/mlの水溶液で-20
℃で保管した。抗生物質の保管溶液は常に用時調製し、ミュラーヒントン(Muel
ler Hinton)ブロス(MHB)培地(Difco Laboratories、Detroit、MI)で所望の
濃度に希釈した。色素産生性セファロスポリンであるニトロセフィンを用いた定
量的分光光度アッセイ法によりβ-ラクタマーゼ活性を測定した。細菌細胞をま
ず4時間および22時間、ブロス中でペニシリンおよび/またはLFに曝露した。測
定時ごとに細菌数cfu/mlを決定し、細胞アリコットを遠心分離した。
【0117】 沈殿物を10 mM HEPES緩衝液(pH 7.4)に懸濁し、OD415nmをPC-1試料は0.4に
、SHY97-4320試料は4に調製した。ニトロセフィン(100μM)を細胞20μlに添
加し、最終体積を200μlに調製した。スペクトラマックス(Spectra Max)250電
子素子マイクロプレート分光光度計システム(Fisher Scientific、Ottawa、Can
ada)を用いて486 nmで加水分解を測定した。β-ラクタマーゼ活性をΔO.D.486n
m/minとして表現し、細菌ODを補正した。
【0118】 黄色ブドウ球菌のSHY97-4320株およびPC-1株で、ヒトLFおよび/またはペニシ
リンGがβ-ラクタマーゼ活性に及ぼす影響を評価した(図15)。SHY97-4320株で
は、対照およびLF(1 mg/ml)含有培地にβ-ラクタマーゼ活性はみとめられなか
った。ペニシリンG 8 ug/mlを含む培地ではβ-ラクタマーゼ活性がみられた。ペ
ニシリンGと同時にLF 1 mg/mlを添加した場合はβ-ラクタマーゼ活性が顕著に低
下した(P < 0.001)。構成性β-ラクタマーゼ産生株であるPC-1においても、ヒ
トLFは4時間および22時間のインキュベートでβ-ラクタマーゼ活性それぞれ50%
および20%低下した。
【0119】実施例VI ウシラクトフェリンおよび抗生物質がタンパク質プロフィールおよびシグナル伝
達に及ぼす影響 試験化合物を入れたMHB中で培養した黄色ブドウ球菌のSHY97-4320株を、2%硫
酸ドデシルナトリウム(SDS)および5% 2-メルカプトエタノールを含む電気泳動
用緩衝液に懸濁し、最終濃度を0.1 g/mlに調製した。この試料を100℃に5分間加
熱した後、6%ポリアクリルアミドのスタッキングゲルと10%または12%ポリアクリ
ルアミドのランニングゲルとによる不連続0.1% SDSポリアクリルアミドゲル(SD
S PAGE)で電気泳動にかけた。泳動にはMini-Protean(登録商標)II装置(Bio
Rad laboratories、Richmond、CA)を用いた。クーマシーブリリアントブルー染
色または銀染色によりタンパク質プロフィールを可視化した。
【0120】 電気泳動によりSDS-PAGE上に得られた、黄色ブドウ球菌のβ-ラクタマーゼ産
生株SHY97-4320の細菌細胞全体のタンパク質プロフィールを調べた。複数のタン
パク質が発現しており、これらのタンパク質には培養条件により顕著な違いがみ
とめられた。対照およびペニシリンG含有培地には約59、42、および27 kDAのタ
ンパク質がはっきりみとめられたが、LFを単独でまたはペニシリンGと組み合わ
せて添加した培地にはこれらのタンパク質がなかった(図17)。27 kDaおよび59
kDAのタンパク質バンドの欠失は、LFがおそらくこれらタンパク質の合成および
/または分泌を阻害することを示唆している。また、LFとペニシリンとの相乗作
用、および耐性株における感受性の回復もこれらタンパク質の欠失により説明さ
れうる。黄色ブドウ球菌のPC-1、NCTC 9789、およびATCC 25923の各株でも同様
の変化が観察された。
【0121】実施例VII ラクトフェリンがシグナル伝達に及ぼす影響 β-ラクタマーゼ系は黄色ブドウ球菌に関して最もよく知られているシグナル
伝達系であることから、黄色ブドウ球菌の誘導性β-ラクタマーゼ産生株であるS
HY97-4320を用いて、LFのシグナル伝達阻害能力を調べた。細菌細胞を、まず30
分間または60分間ブロス中でLFに曝露し、さらに4時間ペニシリンG 8μg/mlで処
理した。前述のように、cfu/mlを決定し、細胞アリコットを遠心分離し、沈殿物
を10 mM HEPES緩衝液(pH 7.4)に懸濁した。ニトロセフィン(100μM)を細胞2
0μlに添加し、最終体積を200μlに調製した。スペクトラマックス250電子素子
マイクロプレート分光光度計システム(Fisher Scientific、Ottawa、Canada)
を用いて486 nmで加水分解を測定した。β-ラクタマーゼ活性をΔO.D.486nm/min
として表現し、細菌ODを補正した。
【0122】 黄色ブドウ球菌において、β-ラクタマーゼ合成は、β-ラクタマーゼ遺伝子(
blaZ)を調節する2つの遺伝子、抑制遺伝子(blaI)と抗抑制遺伝子(blaRI)と
からなるオペロンで調製されている。blaRIによるblaIのタンパク質分解がβ-ラ
クタマーゼの合成を可能にしていることが示された。ペニシリンG添加の30分ま
たは60分前にラクトフェリンを添加するとβ-ラクタマーゼの誘導が完全に阻害
された(図16)。これらの結果は、LFまたはLFCが、blaRI自体またはblaオペロ
ンの機能全体に干渉することによりβ-ラクタマーゼの誘導および/または合成
に影響を及ぼし、したがって、シグナル伝達を介してペニシリンにより誘導され
るβ-ラクタマーゼの合成と分泌とを阻害することを示している。
【0123】実施例VIII ラクトフェリンが細菌の遺伝子発現に及ぼす影響 ブドウ球菌の菌株と培地 βラクタム耐性を持つ臨床単離株(黄色ブドウ球菌 SHY97-4320)を用いて、L
Fおよび/またはペニシリンGが遺伝子発現に及ぼす影響を調べた。同株は、使用
時まで7% DMSO含有MHB中、-80℃で冷凍保存した。培地はすべてディフコ(Difco
)(Detroit、MI、USA)から購入した。冷凍保存した細菌をミュラーヒントン培
地で16〜18時間培養し、ミュラーヒントンブロス(MHB)で継代培養した。試験
産物の水溶液を無菌フィルターアセンブリ(孔径0.2μm、Fisher、オンタリオ州
オタワ)で濾過して添加した。
【0124】 抗生物質および試薬 ペニシリンGはノボファームリミテッド(Toronto、Ontario、Canada)から購
入した。ウシLF(Besnier、San Jan Capitrano、CA、USA)を濃度100mg/mlの水
溶液中、-20℃で保存した。抗生物質の保管溶液は常に用時調製しMHB培地(Difc
o Laboratories、Detroit、MI)で所望の濃度に希釈した。β-ラクタマーゼ活性
評価のためニトロセフィンの標準パウダーを使用した。制限エンドヌクレアーゼ
はアマシャムファルマシアバイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)から購入
した。
【0125】 細菌生育条件 ペニシリンG 8μg/mlおよび/またはウシLF 1 mg/mlを含む、または含まない
新鮮MHBを用意し(2x2要因分析)、黄色ブドウ球菌の一晩培養で540nmの光学濃
度を0.04に調製し、次に撹拌しながら(150 rpm)37℃でインキュベートした。4
時間および22時間のインキュベート後にアリコットを取り、生菌数(1mlあたり
のコロニー形成数、cfu/ml)/分光光度計フィリップスPUによる培地の混濁度測
定(OD540nm)による細菌生育度決定と、細菌細胞中のβ-ラクタマーゼ活性測定
とを行った。同じ条件で培養した後、細菌細胞を回収してRNA抽出に供した。
【0126】 β-ラクタマーゼ活性の定量 沈殿物を10 mM HEPES緩衝液(pH 7.4)に懸濁し、OD415nmを4に調製した。ニ
トロセフィン(100μM)を細胞100μlに添加し、最終体積を1 mlに調製した。
スペクトラマックス250電子素子マイクロプレート分光光度計システム(Fisher
Scientific、Ottawa、Canada)を用いて486 nmで加水分解を測定した。β-ラク
タマーゼ活性をΔO.D.486nm/minとして表現し、細菌ODを補正した。
【0127】 プライマー PEアプライドバイオシステム(Applied Biosystem)(Foster City、CA、USA
)に依頼し、リアルタイムRT-PCR用にオリゴヌクレオチドプライマーを合成した
。リアルタイムRT-PCRの増幅標的DNAは公表されているblaZ遺伝子とした。
【0128】 全RNAの抽出 RNeasyミニキット(minikit)(Qiagen、カナダオンタリオ州ミシソーガ)を
用いて細菌の全RNAを調製した。洗浄した細菌をまず37℃で10分間リソスタフィ
ン(Ambion社製GramCracker、Austin、TX)50μg/mlで処理し、製造者の指示に
従ってRNAを精製した。全DNAに混入したDNAは、全RNA約50 ng/μl、20 mMトリ
ス-HCl(pH 8.4)、2 mM MgCl2、および50 mM KClを含む反応混合液 10μl中
で、Rnase不含Dnase I(Gibco Life Technologies、Grand Island、NY)1 Uを用
いて除去した。この反応混合液を室温で15分間インキュベートし、25 mM EDTA 1
μlを添加してDnase Iを失活させ、65℃で10分間インキュベートした後に量お
よび純度を測定した。次に、OD260nmおよびOD280nmを測定して細胞RNAの量を決
定した。
【0129】 黄色ブドウ球菌のblaZ遺伝子mRNAのインビトロ転写 黄色ブドウ球菌 PC-1株のblaZ遺伝子の600bpのPCR断片を、QIAQUICK PCR精製
キットを用いて精製し、RT-PCRで増幅した後、高速DNAライゲーションキット(R
oche、Laval、QC、Canada)を用いてpGEM-T easyベクター(Promega、ウィスコ
ンシン州マディソン)内でクローニングした。簡潔には、1μlのリバースプライ
マー および全RNA 2μl(25 ng/μl)と共にRnase不含の水(Quiagen)45μlに再懸濁
した既製既成(Ready-To-Go)RT-PCRビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を
用いてRT-PCRを実施した。逆転写は42℃で30分間行った。その後、1μlのフォワ
ードプライマー および1μl(10μM)のリバースプライマーを添加した。94℃、2分間でPCRを開
始し、続いて94℃30秒間、60℃30秒間、72℃45秒間を30サイクル実施した。分光
光度分析および1.5%アガロースゲルで増幅産物を定量した。
【0130】 ライゲーション pGEM-T easyベクターシステムを用いたblaZ増幅産物のライゲーションは次の
ように行った。緩衝液2(5x)2μlを pGem-T easyベクター(8 ng/μl)1.5μl
およびblaZ増幅産物(10 ng/μl)2.5μlと混合した。Rnase不含の水(Qiagen)
で反応体積を10μlに調製した後、緩衝液1(2x)10μlおよびT4リガーゼ(5 U/m
l)1μlを添加した。この混合液を室温で20分間インキュベートした。次に、ア
リコット2μlで大腸菌(E. coli)HB101コンピテント細胞(Gibco Life Technol
ogies)を形質転換した。PCRでスクリーニングした後、陽性コロニーからプラス
ミドDNAを抽出し、分光光度分析および0.8%アガロースゲルで定量してインビト
ロ転写に使用した。blaZ挿入確認のため新しいクローンのblaZ増幅領域もシーケ
ンシングした。
【0131】 インビトロ転写 クローンpGemT easy blaZを、まずT7プロモーターのSalI上流で直線化してか
ら、mRNAをインビトロ転写した。簡潔には、600 ngの直線DNAを、反応溶液20μl
中で各dNTP(10 mM)1μlおよびRNA T7ポリメラーゼ(15 U/μl)2μlと混合し
た。この混合液を37℃で1時間インキュベートしてからDnase Iで処理した。mRNA
をRNAeasyカラム(Quiagen)で精製し、分光光度分析で定量した。次に、blaZの
mRNAを用いてリアルタイムRT-PCR分析で標準曲線を作成した。
【0132】 リアルタイム定量RT-PCRによる黄色ブドウ球菌 blaZ遺伝子の検出 遺伝子発現レベルの測定法として広く受け入れられた方法であるリアルタイム
の蛍光5' ヌクレアーゼPCR法を用いて、ABI Prism(商標)7700(TaqMan(登録商
標))配列検出器(PE Applied Biosystem、Foster City、CA)でRT-PCRを行って
β-ラクタマーゼblaZ RNAを定量した。黄色ブドウ球菌 blaZ遺伝子を特異的に増
幅するため、プライマーエクスプレス(PrimerExpress)ソフトウェア(PE Appl
ied Biosystem)を用いてリアルタイムRT-PCR増幅用のフォワードプライマー、
リバースプライマー、およびTaqManプローブを設計した。簡潔には、2x RT-PCR
ワンステップユニバーサルマスターミックス(One-Step Universal Master Mix
)25μl、 40xマルチスクライブアンドRnase阻害剤ミックス(MultiScribe and
Rnase Inhibitor Mix)1.25μl、4.5μlのフォワードプライマー 4.5μlのリバースプライマー 、および1.25μlのTaqManプローブ を含む反応用混合液50μlにRNA(50 ng)を添加した。組換えモロニーネズミ白
血病ウイルス(M-MuLV)逆転写酵素(0.25 U/μl)を用いて、48℃で30分間逆転
写を行った。AmpliTaqゴールドDNAポリメラーゼ(1.25 U/μl)を最初に95℃で1
0分間活性化した後、95℃15秒間、60℃1分間のPCRサイクルを40回行った。蛍光
があらかじめ定めた閾値を超えた時点の標的遺伝子の量を示すサイクル閾値(CT )を決定し、インビトロ転写で得られた、黄色ブドウ球菌のblaZ遺伝子を既知量
(1.1 x 102 〜 1.1 x 109)含む標準曲線のCTと比較した。コピー数のLOG 10に
ついて統計解析を行った。
【0133】 ラクトフェリンがβ-ラクタマーゼ活性に及ぼす影響 ウシLFおよびペニシリンGがβ-ラクタマーゼ活性に及ぼす影響は、先に観察さ
れたものと同じであった(実施例4を参照)。
【0134】 ラクトフェリンがblaZ転写に及ぼす影響 ラクトフェリンは、細菌中のmRNAレベルを35%減少させた(P < 0.001)(表4
)。増殖培地へのペニシリンG添加は、培地1 mlあたりのblaZ mRNAのコピー数を
28倍増加させた(P < 0.01)。この増加は、同時にLF 1 mg/mlを添加することに
より完全に阻害された(表4)。これらの結果は、LFがblaZ遺伝子の発現を阻害
することによってβ-ラクタマーゼ活性を低下させることを示している。細菌の
タンパク質プロフィールに関して本発明者らが得たデータは(実施例6を参照)
、複数のタンパク質(特に分泌タンパク質)のレベルがLFによって低下したこと
を示している。LFは、blaZ mRNAを大幅に減少させるだけでなくRNAレベルを全体
的に減少させ、このことは、LFが遺伝子発現を全般的に阻害することを示してい
る。したがって、LFは、遺伝子発現を伴うすべての抗生物質耐性機序に拮抗しう
る。
【0135】
【表1】 13種類の黄色ブドウ球菌株に対する、マクロ希釈(macrodilution)
法により決定された、単独、または0.5 mg/mlもしくは1 mg/mlのウシラクトフェ
リン(LF)と組み合わせたペニシリンGの最小生育阻害濃度(MIC)
【0136】
【表2】 複数の黄色ブドウ球菌株に対する、チェッカー盤マクロ希釈法により
決定されたMICのウシラクトフェリン(LF)と組み合わせたペニシリンのMICおよ
びFIC指数 FIC指数は本文中に記載の方法で算出され、括弧内のSは相乗作用(< 1)と解釈
される。
【0137】
【表3】 細菌細胞壁1μmあたりのWGA-ゴールド粒子数 黄色ブドウ球菌 SHY97-4320を、ペニシリンG(PG)8μg/ml単独、ラクトフェ
リン(LF)1 mg/ml単独、または両方の組合せで処理した。 SMEは平均値の標準偏差。
【0138】
【表4】 黄色ブドウ球菌 SHY97-4320株においてラクトフェリン(1 mg/ml)お
よび/またはペニシリンGがβ-ラクタマーゼ(BlaZ)遺伝子の発現に及ぼす影響
1 OD540nm 1.0に調製。2 blaZ遺伝子mRNAのコピー数/mRNA 50 ng。3 blaZ遺伝子mRNAの総コピー数/培地1 ml。
【0139】 本発明をその具体的な態様との関連において説明したが、本発明にはさらなる
改変が可能であることが理解されるものと思われる。本明細書は、本発明の原理
に概ね基づくあらゆる変法、用途、または適用を含むことを意図するものである
。本明細書は、本発明が属する技術分野における既知のまたは慣習的な方法の範
囲内で生じる、ならびに、本明細書前記に記載の本質的な特徴、および添付の特
許請求の範囲に適用されうる、本開示からのそのような逸脱を含むことも意図す
るものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウシラクトフェリン(LF)またはラクトフェリシン(LFC)が単
独で、またはペニシリンGと組み合わせて存在する場合における、黄色ブドウ球
菌(S. aureus)ATCC 25923のMHB中での増殖を示す。
【図2】 ウシラクトフェリン(LF)またはラクトフェリシン(LFC)が単
独で、またはペニシリンGと組み合わせて存在する場合における、黄色ブドウ球
菌(S. aureus)PC-1のMHB中での増殖を示す。
【図3】 ラクトフェリン(LF)単独の、またはエリスロマイシンと組み合
わせた場合の、18時間インキュベートした後の黄色ブドウ球菌(S. aureus)SHY
97-3906の増殖に対する効果を示す。
【図4】 ラクトフェリン(LF)単独と、またはネオマイシンと組み合わせ
た場合の、18時間インキュベートした後の大腸菌(Escherichia coli)SHY97-39
23の増殖に対する効果を示す。
【図5】 ラクトフェリシン(LFC)単独の、またはセファゾリンもしくは
ネオマイシンと組み合わせた場合の、大腸菌(Escherichia coli)SHY97-3923の
増殖に対する効果を示す。
【図6】 ラクトフェリンのみ、またはさまざまな濃度のネオマイシンと組
み合わせた場合の、肺炎桿菌(Klebsiella. pneumoniae)SHY99-723の増殖に対
する効果を示す。
【図7】 ラクトフェリシン(LFC)のみ、またはセファゾリンもしくはネ
オマイシンと組み合わせた場合の、肺炎桿菌(Klebsiella. pneumoniae)SHY99-
723の増殖に対する効果を示す。
【図8】 MHA培地で増殖させ、ポリカチオン性フェリチンで標識した、黄
色ブドウ球菌(S. aureus)ATCC 25923の薄片の透過型電子顕微鏡写真を示す。
対照用の非処理細胞は、薬剤を含まない培地(A)で培養したものである。細胞
を、0.0078 μg/mlのペニシリンG(B)、または9.1 μg/mlのウシラクトフェリ
ン(C)のみ、もしくはそれぞれの濃度で両化合物を組み合わせたもの(D)に曝
露させた。
【図9】 MHA培地で増殖させ、ポリカチオン性フェリチンで標識した、黄
色ブドウ球菌(S. aureus)SHY97-4320の薄片の透過型電子顕微鏡写真を示す。
対照用の非処理細胞は、薬剤を含まない培地(A)で培養したものである。細胞
を、8 μg/mlのペニシリンG(B)、または1 mg/mlのウシラクトフェリン(C)の
み、もしくはそれぞれで濃度の両化合物を組み合わせたもの(D)に曝露させた
【図10】 MHB上で4時間増殖させ、ポリカチオン性フェリチンで標識した
黄色ブドウ球菌(S. aureus)PC-1の薄片の透過型電子顕微鏡写真を示す。対照
用の非処理細胞は、薬剤を含まない培地(A)で培養したものである。細胞を、8
μg/mlのペニシリンG(B)、または16 μg/mlのウシラクトフェリン(C)のみ
、もしくはそれぞれの濃度で両化合物を組み合わせたもの(D)に曝露させた。
(棒線、1 μm)
【図11】 MHB上で4時間増殖させ、ポリカチオン性フェリチンで標識した
黄色ブドウ球菌(S. aureus)PC-1の薄片の透過型電子顕微鏡写真を示す。対照
用の非処理細胞は、薬剤を含まない培地(A)で培養したものである。細胞を、8 μg/mlのペニシリンG(B)、または16 μg/mlのウシラクトフェリン(C)のみ
、もしくはそれぞれの濃度で両化合物を組み合わせたもの(D)に曝露させた。
(棒線、0.5 μm)
【図12】 MHB中で4時間増殖させ、ポリカチオン性フェリチンおよびコム
ギ胚芽アグルチニン-金で標識した、黄色ブドウ球菌(S. aureus)SHY97-4320の
薄片の透過型電子顕微鏡写真を示す。細胞は、1 mg/mlのウシラクトフェリンと
共にペニシリンG(8 μg/ml)を組み合わせて培養した(A、棒線=1 μm;B、棒
線=0.25 μm)。対照をCに示す(棒線=0.25 μm)。
【図13】 8 μg/mlのペニシリンG(PG)および1 mg/mlのウシラクトフェ
リンをそれぞれ単独、または組み合わせて、37℃で4時間培養した後に、黄色ブ
ドウ球菌(S. aureus)SHY97-4320およびPC-1においてΔOD486 nm/分として測定
した、β-ラクタマーゼ活性を示す。数値は、3回の別々の実験結果の平均値であ
る。
【図14】 ペニシリンG(PG、8 μg/ml)およびウシラクトフェリチン(L
FC、32 μg/mlまたは64 μg/ml)を単独で、または組み合わせて、4時間および2
2時間培養した後の、黄色ブドウ球菌(S. aureus)PC-1のβ-ラクタマーゼ活性
を示す。数値は、3回の別々の実験結果の平均値である。
【図15】 8 μg/mlのペニシリンG(PG)および1 mg/mlのヒトラクトフェ
リンを単独で、または組み合わせて(PG+LF)、37℃で4時間および22時間培養
した後に、ΔOD486 nm/分として測定した黄色ブドウ球菌(S. aureus)SHY97-43
20(A)およびPC-1(B)におけるβ-ラクタマーゼ活性を示す。数値は、3回の別
々の実験結果の平均値である。
【図16】 1 mg/mlのウシラクトフェリンと30分間、および60分間予備イ
ンキュベーションを行なった後、37℃で4時間、8 μg/mlのペニシリンG(PG)に
曝露させた後、ΔOD486 nm/分として測定した黄色ブドウ球菌(S. aureus)SHY9
7-4320のβ-ラクタマーゼ活性を示す。数値は、3回の別々の実験結果の平均値で
ある。
【図17】 MHB(線1)、MHB+8 μg/mlのペニシリンG(線2)、MHB+1 mg
/mlのラクトフェリン(線3)、およびMHB+同じ濃度の両化合物を組み合わせた
もの(線4)の上で4時間増殖させた後の、黄色ブドウ球菌(S. aureus)SHY97-4
320の全細胞タンパク質のSDS-PAGEを示す。分子量マーカーは左に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 31/7048 A61L 2/16 Z A61L 2/16 A61P 31/00 A61P 31/00 171 171 43/00 121 43/00 121 A61K 37/14 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ラカス ピエール カナダ国 ケベック州 レノックスビル ウィンダー 4 (72)発明者 ペティクレーク デニス カナダ国 ケベック州 レノックスビル ボレイ 21 Fターム(参考) 4C058 AA12 AA14 AA16 AA21 AA23 AA28 BB07 CC01 JJ06 JJ08 4C084 AA02 AA03 BA44 CA20 CA38 DC50 MA02 NA05 NA14 ZB311 ZB351 ZC611 ZC751 ZC752 4C086 AA01 AA02 CC04 CC15 EA09 EA13 MA01 MA02 MA04 NA05 NA14 ZB31 ZB35 ZC61 ZC75 4H011 AA02 BA06 BB10 BB19 BB20 DH11

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有効量のラクトフェリン又はラクトフェリシンが抗生物質耐
    性微生物の耐性を実質的に相殺及び/又は逆転する効果をもつ、有効量のラクト
    フェリン又はラクトフェリシンを対象に投与する段階を含む、抗生物質耐性微生
    物による対象の感染の予防及び/又は治療のための方法。
  2. 【請求項2】 投与段階が、少なくとも一つの抗生物質を投与する段階をさ
    らに含む、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス(Staphylococc
    us)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)
    、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptoc
    occus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バチルス(Bacillus)、クロス
    トリディウム(Clostridium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア
    (Listeria)、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)、プロピオニバクテリ
    ウム(Propionibacterium)、オイバクテリウム(Eubacterium)、コリノバクリ
    テリウム(Corynobacterium)、ミコプラズマ(Mycoplasma)、ウレアプラズマ
    (Ureaplasma)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ヘモフィルス(Haemophi
    lus)、ネセリア(Nesseria)、エイケネルス(Eikenellus)、モラキセルス(M
    oraxellus)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、パスツレラ(Pasteurella
    )、バクテロイデス(Bacteroides)、フソミクロオルガニズム(Fusomicroorga
    nism)、プレボテラ(Prevotella)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、ベ
    イロネラ(Veillonella)、トレポネマ(Treponema)、ミツオケラ(Mitsuokell
    a)、カプノシトファガ(Capnocytophaga)、カンピロバクタ(Campylobacter)
    、クレブシエラ(Klebsiella)、シゲラ(Shigella)、プロテウス(Proteus)
    、及びビブリエ(Vibriae)からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  4. 【請求項4】 抗生物質が、アミノグリコシド系(aminoglycosides)、バ
    ンコマイシン(vancomycin)、リファンピン(rifampin)、リンコマイシン(li
    ncomycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、及びフルオロキノー
    ル(fluoroquinol)、ペニシリン(penicillin)、β-ラクタム系(beta-lactam
    s)、アモキシシリン(amoxicillin)、アンピシリン(ampicillin)、アズロシ
    リン(azlocillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、メズロシリン(mezlo
    cillin)、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン(oxacillin)、ピペラシリ
    ン(piperacillin)、チカルシリン(ticarcillin)、セフタジジム(seftazidi
    me)、セフチゾキシム(ceftizoxime)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、セ
    フロキシム(cefuroxime)、セファレキシン(cephalexin)、セファロチン(ce
    phalothin)、イミペネン(imipenen)、アズトレオナム(aztreonam)、ゲンタ
    マイシン(gentamicin)、ネチルマイシン(netilmicin)、トブラマイシン(to
    bramycin)、テトラサイクリン系(tetracyclines)、スルホンアミド系(suLFo
    namides)、マクロライド系(macrolides)、エリスロマイシン(ereythromicin
    )、クラリスロマイシン(clarithromcin)、アジスロマイシン(azithromycin
    )、ポリミキシン(polymyxin)B、セフチオファー(ceftiofure)、セファゾリ
    ン(cefazoline)、セファピリン(cephapirin)、ならびにクリンダマイシン(
    clindamycin)からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
  5. 【請求項5】 対象が、植物、動物、及びヒトからなる群より選択される、
    請求項1記載の方法。
  6. 【請求項6】 有効量のラクトフェリン又はラクトフェリシンが抗生物質耐
    性微生物の耐性を実質的に相殺及び/又は逆転する効果をもつ、有効量のラクト
    フェリン又はラクトフェリシンで該表面を処理する段階を含む、抗生物質耐性微
    生物による表面の感染を消毒及び/又は予防するための方法。
  7. 【請求項7】 処理段階が、少なくとも一つの抗生物質で処理する段階をさ
    らに含む、請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス(Staphylococc
    us)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)
    、ペプトコッカス(Peptococcus)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptoc
    occus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、バチルス(Bacillus)、クロス
    トリディウム(Clostridium)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、リステリア
    (Listeria)、エリシペロトリックス(Erysipelothrix)、プロピオニバクテリ
    ウム(Propionibacterium)、オイバクテリウム(Eubacterium)、コリノバクリ
    テリウム(Corynobacterium)、ミコプラズマ(Mycoplasma)、ウレアプラズマ
    (Ureaplasma)、ストレプトミセス(Streptomyces)、ヘモフィルス(Haemophi
    lus)、ネセリア(Nesseria)、エイケネルス(Eikenellus)、モラキセルス(M
    oraxellus)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、パスツレラ(Pasteurella
    )、バクテロイデス(Bacteroides)、フソミクロオルガニズム(Fusomicroorga
    nism)、プレボテラ(Prevotella)、ポルフィロモナス(Porphyromonas)、ベ
    イロネラ(Veillonella)、トレポネマ(Treponema)、ミツオケラ(Mitsuokell
    a)、カプノシトファガ(Capnocytophaga)、カンピロバクタ(Campylobacter)
    、クレブシエラ(Klebsiella)、シゲラ(Shigella)、プロテウス(Proteus)
    、及びビブリエ(Vibriae)からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
  9. 【請求項9】 抗生物質が、アミノグリコシド系(aminoglycosides)、バ
    ンコマイシン(vancomycin)、リファンピン(rifampin)、リンコマイシン(li
    ncomycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)、及びフルオロキノー
    ル(fluoroquinol)、ペニシリン(penicillin)、β-ラクタム系(beta-lactam
    s)、アモキシシリン(amoxicillin)、アンピシリン(ampicillin)、アズロシ
    リン(azlocillin)、カルベニシリン(carbenicillin)、メズロシリン(mezlo
    cillin)、ナフシリン(nafcillin)、オキサシリン(oxacillin)、ピペラシリ
    ン(piperacillin)、チカルシリン(ticarcillin)、セフタジジム(seftazidi
    me)、セフチゾキシム(ceftizoxime)、セフトリアキソン(ceftriaxone)、セ
    フロキシム(cefuroxime)、セファレキシン(cephalexin)、セファロチン(ce
    phalothin)、イミペネン(imipenen)、アズトレオナム(aztreonam)、ゲンタ
    マイシン(gentamicin)、ネチルマイシン(netilmicin)、トブラマイシン(to
    bramycin)、テトラサイクリン系(tetracyclines)、スルホンアミド系(suLFo
    namides)、マクロライド系(macrolides)、エリスロマイシン(ereythromicin
    )、クラリスロマイシン(clarithromcin)、アジスロマイシン(azithromycin
    )、ポリミキシン(polymyxin)B、セフチオファー(ceftiofure)、セファゾリ
    ン(cefazoline)、セファピリン(cephapirin)、ならびにクリンダマイシン(
    clindamycin)からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
  10. 【請求項10】 表面が、壁、床、天井、医療用装置、医療用備品、外科用
    装置、プロテーゼ(prosthesis)、矯正器、生物学的液体輸送容器(例えば、血
    液バッグ、点眼剤ボトル)、食品加工装置、食品収集装置、及びチューブからな
    る群より選択される、請求項6記載の方法。
  11. 【請求項11】 有効量のラクトフェリン又はラクトフェリシンが抗生物質
    耐性微生物の耐性を実質的に相殺及び/又は逆転する効果をもつ、有効量のラク
    トフェリン又はラクトフェリシンを、許容される担体と共に含む、抗生物質耐性
    微生物による対象の感染の予防及び/又は治療のための組成物。
  12. 【請求項12】 少なくとも一つの抗生物質をさらに含む、請求項11記載の
    組成物。
  13. 【請求項13】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス、ストレプト
    コッカス、ミクロコッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、エン
    テロコッカス、バチルス、クロストリディウム、ラクトバチルス、リステリア、
    エリシペロトリックス、プロピオニバクテリウム、オイバクテリウム、コリノバ
    クリテリウム、ミコプラズマ、ウレアプラズマ、ストレプトミセス、ヘモフィル
    ス、ネセリア、エイケネルス、モラキセルス、アクチノバチルス、パスツレラ、
    バクテロイデス、フソミクロオルガニズム、プレボテラ、ポルフィロモナス、ベ
    イロネラ、トレポネマ、ミツオケラ、カプノシトファガ、カンピロバクタ、クレ
    ブシエラ、シゲラ、プロテウス、及びビブリエからなる群より選択される、請求
    項11記載の組成物。
  14. 【請求項14】 抗生物質が、アミノグリコシド系、バンコマイシン、リフ
    ァンピン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、及びフルオロキノール、ペ
    ニシリン、β-ラクタム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カ
    ルベニシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカ
    ルシリン、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、
    セフレキシン、セファロチン、イミペネン、アズトレオナム、ゲンタマイシン、
    ネチルマイシン、トブラマイシン、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、マ
    クロライド系、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ポ
    リミキシンB、セフチオフレ、セファゾリン、セファピリン、及びクリンダマイ
    シンからなる群より選択される、請求項12記載の組成物。
  15. 【請求項15】 対象が、植物、動物、及びヒトからなる群より選択される
    、請求項11記載の組成物。
  16. 【請求項16】 有効量のラクトフェリン又はラクトフェリシンが抗生物質
    耐性微生物の耐性を実質的に相殺及び/又は逆転する効果をもつ、有効量のラク
    トフェリン又はラクトフェリシンを含む、抗生物質耐性微生物に対する防腐性組
    成物。
  17. 【請求項17】 少なくとも一つの抗生物質をさらに含む、請求項16記載の
    組成物。
  18. 【請求項18】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス、ストレプト
    コッカス、ミクロコッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、エン
    テロコッカス、バチルス、クロストリディウム、ラクトバチルス、リステリア、
    エリシペロトリックス、プロピオニバクテリウム、オイバクテリウム、コリノバ
    クリテリウム、ミコプラズマ、ウレアプラズマ、ストレプトミセス、ヘモフィル
    ス、ネセリア、エイケネルス、モラキセルス、アクチノバチルス、パスツレラ、
    バクテロイデス、フソミクロオルガニズム、プレボテラ、ポルフィロモナス、ベ
    イロネラ、トレポネマ、ミツオケラ、カプノシトファガ、カンピロバクタ、クレ
    ブシエラ、シゲラ、プロテウス、及びビブリエからなる群より選択される、請求
    項16記載の組成物。
  19. 【請求項19】 抗生物質が、アミノグリコシド系、バンコマイシン、リフ
    ァンピン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、及びフルオロキノール、ペ
    ニシリン、β-ラクタム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カ
    ルベニシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカ
    ルシリン、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、
    セフレキシン、セファロチン、イミペネン、アズトレオナム、ゲンタマイシン、
    ネチルマイシン、トブラマイシン、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、マ
    クロライド系、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ポ
    リミキシンB、セフチオフレ、セファゾリン、セファピリン、及びクリンダマイ
    シンからなる群より選択される、請求項17記載の組成物。
  20. 【請求項20】 抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の予防及び
    /又は治療における、ラクトフェリン及び/又はラクトフェリシンの使用。
  21. 【請求項21】 ラクトフェリン又はラクトフェリシンが、少なくとも一つ
    の抗生物質と組み合わせてさらに使用される、請求項20記載の使用。
  22. 【請求項22】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス、ストレプト
    コッカス、ミクロコッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、エン
    テロコッカス、バチルス、クロストリディウム、ラクトバチルス、リステリア、
    エリシペロトリックス、プロピオニバクテリウム、オイバクテリウム、コリノバ
    クリテリウム、ミコプラズマ、ウレアプラズマ、ストレプトミセス、ヘモフィル
    ス、ネセリア、エイケネルス、モラキセルス、アクチノバチルス、パスツレラ、
    バクテロイデス、フソミクロオルガニズム、プレボテラ、ポルフィロモナス、ベ
    イロネラ、トレポネマ、ミツオケラ、カプノシトファガ、カンピロバクタ、クレ
    ブシエラ、シゲラ、プロテウス、及びビブリエからなる群より選択される、請求
    項20記載の使用。
  23. 【請求項23】 抗生物質が、アミノグリコシド系、バンコマイシン、リフ
    ァンピン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、及びフルオロキノール、ペ
    ニシリン、β-ラクタム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カ
    ルベニシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカ
    ルシリン、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、
    セフレキシン、セファロチン、イミペネン、アズトレオナム、ゲンタマイシン、
    ネチルマイシン、トブラマイシン、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、マ
    クロライド系、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ポ
    リミキシンB、セフチオフレ、セファゾリン、セファピリン、及びクリンダマイ
    シンからなる群より選択される、請求項21記載の使用。
  24. 【請求項24】 壁、床、天井、医療用装置、医療用備品、外科用装置、プ
    ロテーゼ、矯正器、生物学的液体輸送容器(例えば、血液バッグ、点眼剤ボトル
    )、食品加工装置、食品収集装置、及びチューブからなる群より選択される表面
    を消毒するための、請求項20記載の使用。
  25. 【請求項25】 抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の予防及び
    /又は治療における、請求項11〜19いずれか一項記載の組成物の使用。
  26. 【請求項26】 抗生物質耐性微生物により引き起こされる感染の予防及び
    /又は治療のための医薬品の製造における、ラクトフェリン及び/又はラクトフェ
    リシンの使用。
  27. 【請求項27】 ラクトフェリン又はラクトフェリシンが、少なくとも一つ
    の抗生物質と組み合わせてさらに使用される、請求項26記載の使用。
  28. 【請求項28】 抗生物質耐性微生物が、スタフィロコッカス、ストレプト
    コッカス、ミクロコッカス、ペプトコッカス、ペプトストレプトコッカス、エン
    テロコッカス、バチルス、クロストリディウム、ラクトバチルス、リステリア、
    エリシペロトリックス、プロピオニバクテリウム、オイバクテリウム、コリノバ
    クリテリウム、ミコプラズマ、ウレアプラズマ、ストレプトミセス、ヘモフィル
    ス、ネセリア、エイケネルス、モラキセルス、アクチノバチルス、パスツレラ、
    バクテロイデス、フソミクロオルガニズム、プレボテラ、ポルフィロモナス、ベ
    イロネラ、トレポネマ、ミツオケラ、カプノシトファガ、カンピロバクタ、クレ
    ブシエラ、シゲラ、プロテウス、及びビブリエからなる群より選択される、請求
    項26記載の使用。
  29. 【請求項29】 抗生物質が、アミノグリコシド系、バンコマイシン、リフ
    ァンピン、リンコマイシン、クロラムフェニコール、及びフルオロキノール、ペ
    ニシリン、β-ラクタム系、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カ
    ルベニシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ピペラシリン、チカ
    ルシリン、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、
    セフレキシン、セファロチン、イミペネン、アズトレオナム、ゲンタマイシン、
    ネチルマイシン、トブラマイシン、テトラサイクリン系、スルホンアミド系、マ
    クロライド系、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ポ
    リミキシンB、セフチオフレ、セファゾリン、セファピリン、及びクリンダマイ
    シンからなる群より選択される、請求項27記載の使用。
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