JP2003513016A - レセプタータンパク質チロシンキナーゼのドメイン、およびそのリガンドの結晶構造 - Google Patents

レセプタータンパク質チロシンキナーゼのドメイン、およびそのリガンドの結晶構造

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JP2003513016A JP2001520740A JP2001520740A JP2003513016A JP 2003513016 A JP2003513016 A JP 2003513016A JP 2001520740 A JP2001520740 A JP 2001520740A JP 2001520740 A JP2001520740 A JP 2001520740A JP 2003513016 A JP2003513016 A JP 2003513016A
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Abstract

(57)【要約】 レセプタータンパク質チロシンキナーゼおよび/またはそのリガンドの3次元構造の決定と使用が報告される。この様な構造の特別なグループの1つはRPTKの細胞外ドメインの3次元構造が含まれる。RPTKの3次元構造は、RPTK機能の調節因子の設計と同定を促進することができる。他のこの様な構造には幹細胞因子またはその断片等のRPTKリガンドが含まれる。RPTK機能の調節因子は、不適切なRPTK活性で媒介される疾病の治療に使用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】背景 本発明の背景の以下の説明は、単に本発明の理解の助けとして提供されるもの
であり、本発明に先行技術を記載または取り入れるために受け入れたものではな
い。
【0002】 レセプタータンパク質であるチロシンキナーゼ(RPTK)には酵素の多くの
多様なファミリーが含まれる。RPTKファミリーは複数のサブファミリーを含
み、その一つは繊維芽細胞成長因子レセプター(FGFR)サブファミリーであ
る。他のサブファミリーはタイプIIIレセプターであるチロシンキナーゼ(RT
K)サブファミリーであり、そのメンバーには血小板由来成長因子レセプターα
およびβ(PDGFRαおよびPDGFRβ)、マクロファージコロニー刺激因
子レセプター(M−CSFR)、c−kit(SCFレセプター(SCFR)と
も呼ばれる)、およびflt3レセプターが含まれる。このRTKサブファミリ
ーのメンバーは、その細胞外リガンド結合ドメイン中に5個の免疫グロブリン様
(Ig)ドメイン含み、さらに1個の膜横断ドメインと、大きなキナーゼ挿入部
で遮られた細胞質チロシンキナーゼドメインを含む。RPTKのレビューとして
、シュレシンガー(Schlessinger)およびウルリッヒ(Ullri
ch)、1992、Neuron9:383−391;FGFRファミリーの結
合のレビューとしてギボル(Givol)およびヤーヨン(Yayon)、FA
SEB J.,6(15):3326−3369参照。
【0003】 全てのRPTKは高エネルギーホスフェートをアデノシントリホスフェートか
ら標的タンパク質中のチロシン残基に転移する。これらの燐酸化過程は信号伝達
プロセスにおいていくつかの細胞現象を制御する。細胞信号伝達プロセスには、
細胞外信号を細胞内信号に変換する複数の段階が含まれる。次いで細胞内信号が
細胞の反応に変換される。RPTKは多くの信号伝達プロセスにおける構成要素
である。例えば、RPTKは下流の分子を燐酸化することによプロセス内の特定
の段階で信号の流れを制御する。この燐酸化は、オンまたはオフすることにより
下流の分子の活性を変調し、下流分子による信号発生の過不足を生じる。過剰の
信号発生は細胞増殖の制御不能等の異常を生じるが、これは癌、様々な腫瘍で誘
発する血管形成、アテローム性動脈硬化症、および関節炎等の疾病に特徴的であ
る。また、治療目的で細胞増殖を誘発することも可能であるが、例えば副側血管
新生により冠状動脈疾患を緩和するために血管新生を用いることができる。
【0004】 RPTKのリガンド誘発二量体化はRPTK媒介信号伝達プロセスの重要な段
階である。RPTKの二量体化の重要性のレビューとして、レモン(Lemmo
n)およびシュレセンガー(Schlessenger)、1994、Tren
ds in Biochem. Sci.,19:459−463;ウルリッヒお
よびシュレセンガー、1990、Cell61:203−212参照。例えばい
くつかの血小板由来成長因子(PDGF)および幹細胞因子(SCF)等の成長
因子は、その特定のレセプターの二量体化をそれ自身で誘導する二量体分子であ
る。対照的に、繊維芽細胞成長因子(FGF)等の他の成長因子は、他の分子と
協調して機能してその特定のレセプターの二量体化を誘発する単量体である。シ
ュレシンガーら、1995、Cell83:357−360:スピバック−クロ
イツマン(Spival−Kroizman)ら、1994、Cell79;1
015−1024:オルニッツ(Ornitz)ら、1992、Mol.Cel
l.Biol.12;240−247参照。特に、FGFは例えば可溶性または
細胞表面結合ヘパリン硫酸塩含有プロテオグリカン(HSPG)と協調して機能
する。
【0005】 FGFRサブファミリーは少なくとも21個の構造的に関連する、FGFR1
からFGFR21で表されるポリペプチドで構成され、それらは胎児、幼児およ
び成体脊椎動物で発現する。FGFR1からFGFR4は、その適当な繊維芽細
胞成長因子と高い親和性で結合する能力のため、“高親和性FGFR”として知
られる。これらの高親和性FGFRは、3個の免疫グロブリン様ドメイン(D1
、D2およびD3として知られる)でなる細胞外リガンド結合ドメイン、1個の
膜横断ヘリックス、およびチロシンキナーゼ活性を含む細胞質ドメインが特徴で
ある。リー(Lee)ら、1989、Science245;57−60:ジャ
イ(Jaye)ら、1992、J.Mol.Biol.227:840−851
;ジョンソン&ウイリアム(Johnson & Williams)、1993
、Adv.Cancer Res.60;1−41参照。4個の高親和性FGF
RのそれぞれはFGFの特定のサブセットと結合する。オルニッツら、1996
、J.Biol.Chem.271;15292−15297。
【0006】 D1またはD2、および“アシッドボックス”として知られるリンカー領域が
欠失した高親和性FGFRの天然起源変異体が同定されている。これらの変異体
FGFRは適当なFGFと高い親和性で結合する能力を維持し、D2およびD3
領域がFGF結合能と特異性を与えるに十分な領域であることを示唆している。
クルムレー(Crumley)ら、1991、Oncogene6;2255−
2262:ディオン(Dionne)ら、1990、EMBO J.9:268
5−2692;ジョンソン&ウイリアム、1993、Adv.Cancer R
es.60:1−41参照。特に、D3はFGFRの結合特異性に重要な役割を
果たす。ボッタロ(Bottaro)ら、1990、J.Biol.Chem.
265:12767−12770;ミキ(Miki)ら、1992、Proc.
Natl.Acad.Sci.89:246−250;デル(Dell)ら、1
992、J.Biol.Chem.267:21225−21229;ヤノン(
Yanon)ら、1992、EMBO J.11:1885−1890参照。
【0007】 最近、様々なPTKの細胞間触媒ドメインの3次元構造が国際特許公報WO9
8/07835、1996年12月19日出願US特許出願番号60/034,
168、および1999年8月24日公開US特許番号5,942,428に報
告され、それらのクレーム、図表を含めてその内容が本明細書に含まれている。
【0008】 PTKとそのリガンドの信号伝達と機能の理解が最近進歩しているが、この様
な分子の原子レベルでの特徴付けと解析の必要性が、特に新規の改善された治療
用分子の設計と合成に関して残されている。
【0009】発明の概要 本発明はレセプタータンパク質チロシンキナーゼおよび/またはそのリガンド
の3次元構造に関する。これらの分子構造にはRPTKまたはそのリガンドが、
単独または少なくとも1個のリガンドを含む複合体として含まれる。特に、本発
明はレセプタータンパク質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含む、単独また
は少なくとも1個のリガンドで成るポリペプチドでなる分子構造に関する。他の
態様では、本出願は幹細胞因子等の成長因子のレセプター結合コアを含むポリペ
プチドでなる、単独またはレセプタータンパク質チロシンキナーゼ等の少なくと
も1個のリガンドとの複合体としての分子構造を記載する。
【0010】 本発明はレセプタータンパク質チロシンキナーゼの3次元構造の解析および使
用に関し、特にレセプタータンパク質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含む
、単独または少なくとも1個のリガンドでなる複合体中の構造に関する。例とし
て、FGF分子またはSCF分子等の、ある種のリガンドに結合したいくつかの
RPTK細胞外ドメインの、原子レベルの解像度の3次元構造を決定するための
X線結晶学技術が本明細書に用いられる。本出願はまた、幹細胞因子の3次元構
造を解析し使用することに関し、特に幹細胞因子のレセプター結合コアを含む、
単独または少なくとも1個のリガンドでなる複合体の構造に関する。
【0011】 本明細書に報告する3次元構造はレセプタータンパク質チロシンキナーゼおよ
び/またはそれに結合したリガンドとの間の特異的相互作用を説明する。レセプ
タータンパク質チロシンキナーゼの3次元構造を決める座標は、未知の構造を有
するレセプターRPTKの3次元構造を決定するために有用である。さらに、そ
の座標はレセプタータンパク質チロシンキナーゼの修飾物質を設計し同定するた
めに有用である。これらの修飾物質は癌、腫瘍発生性血管形成、アテローム硬化
症、および関節炎等の細胞増殖病を含む(しかしそれらに限定されない)疾病の
治療または予防用の治療薬として潜在的に有用である。また、治療目的で細胞を
増殖させることも可能であり、例えば副側血管形成を誘起して血管形成を環状動
脈疾患の緩和に使用し得る。従って、第1の態様では、本発明はRPTKの細胞
外ドメインの全てまたは一部のポリペプチドの結晶形を特徴とする。アルゴリズ
ム実施態様では、本発明はリガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK
の結晶形を特徴とする。具体的な実施態様では、RPTKはFGFR1またはF
GFR2等のFGFRであり、リガンドはFGF1またはFGF2等のFGFで
ある。特に適した実施態様では、ポリペプチドはFGFR1の残基150−36
0、またはFGFR2の残基150−360でなり、その配列は図4に示される
。リガンドは図17に示す様なアミノ酸配列を含むFGF1、または図17に示
す様なアミノ酸配列を含むFGF2等の繊維芽細胞成長因子であることもできる
【0012】 “結晶形”という用語は、生成されたポリペプチドでなる水溶液から生成した
結晶を言う。ある実施態様では、結晶はRPTKの細胞外ドメインの全部または
一部でなる水溶液から生成する。ポリペプチドの結晶形の特徴は、ブルンデル(
Blundel)ら、1976、Protein Crystallograp
hy、アカデミックプレス(Academi Press)、およびハーン(H
ahn)、The International Tables for Crys
tallography、刊A、第4版、クルーワーアカデミックプレス(Kl
uwer Academic Press)に示された結晶形の一つで定義される
パターンでX線を回折し得ることである。好ましい実施態様では、本明細書で定
義された様なリガンドまたはリガンドアナログの少なくとも1個との複合体中の
RPTKの細胞外ドメインの全部または一部に対応する、精製されたポリペプチ
ドから結晶形が生成する。
【0013】 RPTKの結晶形はまた、RPTKの細胞外ドメインの全部または一部に対応
する、複合体化したリガンドまたはリガンドアナログを有する、または有さない
、少なくとも1個の重金属を導入した精製ポリペプチドでなる水溶液から精製し
た結晶が含まれる。重金属の導入により最初の結晶構造の変化が最小になること
が好ましい。重金属をタンパク質結晶中に公知の技術で導入することができる。
重金属を導入するための好ましい試薬は四塩化プラチニウム、酢酸水銀、エチル
水銀チオサリチル酸、六塩化インジュウム、硫酸ガドリニウム、塩化金、酢酸ウ
ラニウム、塩化水銀およびエチル塩化水銀である。
【0014】 本明細書で用いる“レセプタータンパク質チロシンキナーゼ”、または“RP
TK”と言う用語は、アデノシン三燐酸の高エネルギー燐酸を、特定のリガンド
またはリガンドセットに対するレセプターとして働く細胞外ドメインであり、細
胞内および細胞外ドメインを連結する膜拡張ドメインであるタンパク質標的上に
あるチロシン残基に転送し得る細胞間触媒ドメインを有する酵素を言う。生体内
では、リガンドとそのレセプターとの結合により、レセプターの二量体化と細胞
間触媒ドメインの活性化が行われる。本発明の好ましいRPTKはPFGFR、
SCFR、EGFR、VEGFR、HGFR、ニューロトロピンR、HER2、
HER3、HER4、インスリンR、IGFR、CSFIR、FKL、KDR、
VEGFR2、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYL
K、DDR、ROS、RET、LTK、RORI、またはMUSKである。より
好ましくは、本発明のレセプターPTKは、FGFR1、FGFR2、FGFR
3、FGFR4等のFGFRファミリーのメンバーである。ある種のレセプター
PTKは既知のリガンドを持たず、“オーファン(希少)レセプターPTK”と
呼ばれる。
【0015】 “FGFR1”と言う用語は、相互に相同であり、FGFに結合する複数のレ
セプターPTKの1メンバーを言う。この文で、“相同”とはFGFRファミリ
ーの2つのメンバー間で約70%以上のアミノ酸が同じであることが好ましく、
少なくとも約80%のアミノ酸が同一であることがより好ましく、少なくとも約
90%のアミノ酸が同一であることが最も好ましい。“FGFR1”という用語
には、図4で示される様な、FGFR1の150−360残基のアミノ酸配列を
包含する、またはそのアミノ酸配列でなるヒトFGFR1が含まれる。この文章
、または他の文章でいう“相同”には、共通の起源または原型による関係を示す
に十分な類似性の分子も含む。
【0016】 本明細書で用いる“細胞外ドメイン”という用語は、細胞の原形質膜の外側に
存在するRPTKの全てまたは一部の領域を言う。細胞外ドメインは好ましくは
原形質膜と結合したポリペプチド領域により、最も好ましくは原形質膜に埋め込
まれた、または原形質膜と交差するポリペプチド領域により、原形質膜に碇止め
されている。細胞外ドメインは細胞の原形質膜に碇止めされていない可溶性ドメ
インでも有り得る。最も好ましくは、細胞外ドメインは少なくとも1個のリガン
ドに対する少なくとも1個の結合部位でなる。
【0017】 RPTK細胞外ドメインは少なくとも1個の既知の構造モチーフであることも
できる。これらの構造モチーフはシステインの多い領域、ヒブロネクチンIII様
ドメイン、Ig様ドメイン、EGF様ドメイン、第VIII因子様ドメイン、および
クリングル(Kringle)ドメインの少なくとも一つで有り得る。最も好ま
しいものは少なくとも1個のIG様ドメインでなるRPTKである。例えば、F
GFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4のそれぞれは3個のIG様
ドメイン、標識D1、D2およびD3を含む。IG様ドメインでなる他の好まし
いRPTKにはPDGFR、c−Kit、Flk1、Flk2、Flk4、KL
G、TrkA、TrkB、TrkC、Axl、Tie、c−Eyk、およびEl
kが含まれる。
【0018】 本明細書で用いる“リガンド”と言う用語は、レセプターに特異的に結合する
分子を言う。様々な実施態様中で、リガンドは成長因子、サイトカイン、リンホ
カイン、またはホルモンである。好ましいリガンドには表皮成長因子、インスリ
ン、血小板由来成長因子、幹細胞因子、血管内皮成長因子、肝細胞成長因子、お
よびニューロトロフィンが含まれるが、がそれに限定されない。特に好ましいリ
ガンドは繊維芽細胞成長因子である。
【0019】 本明細書で用いる“繊維芽細胞成長因子”という用語は、全体の配列の相同性
と共通の褶曲構造を共有するポリペプチド成長因子のファミリーを言う。本発明
の時点で、FGFファミリーはFGF1からFGF21と名づけられた約21個
の既知のメンバーを含む。当業者はFGFファミリーの他のメンバーも後に同定
され、本発明の実施態様に用いられることを理解し得ると考えられる。FGFは
FGFrおよびHSPGに結合する。好ましいFGFはFGF1、FGF2、F
GF3およびFGF4である。
【0020】 本明細書で用いる“リガンドアナログ”と言う用語は、構造的または機能的に
リガンドに類似で、ポリペプチド上のリガンド結合部位に結合する分子を言う。
リガンドアナログがリガンドの少なくとも1個の原子、官能基、またはアミノ酸
残基の置換、付加、または欠失に由来する場合、リガンドアナログはあるリガン
ドに構造的に類似であると言うことができる。リガンドアナログがリガンドレセ
プターのリガンド結合部位に結合する場合、またはリガンドアナログのリガンド
レセプターへの結合の結果、リガンド結合に由来するものと類似の生化学的効果
をもたらす場合、リガンドアナログはあるリガンドに機能的に類似である。
【0021】 リガンドアナログの結合は、リガンド結合に由来する少なくとも一つの生化学
効果を阻害するか、またはリガンド結合の競合者となる。この様なリガンドアナ
ログは“阻害剤”と呼ばれる。リガンドアナログはまた、オーファンレセプター
PTKの推定リガンド結合部位と結合する。
【0022】 リガンドアナログは対応するリガンドより低い、同等またはより高い親和性で
そのリガンドレセプターと結合することが好ましい。ある実施態様では、リガン
ドアナログは突然変異リガンドでもあり得る。“突然変異体”という用語は、本
明細書で定義される。
【0023】 本明細書で用いる“結合”と言う用語は、複数の分子の特異的相互作用を言う
。結合は1値結合であることが好ましい。この様な結合は例えば少なくとも1個
の水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族相互作用、静電相互作用、お
よび疎水性相互作用で媒介される。ある実施態様では、結合は複数の分子の共有
結合を言う。
【0024】 “触媒ドメイン”と言う用語は、タンパク質から離れた存在であるが、完全な
、または部分的な触媒機能を有するタンパク質領域を言う。あるタンパク質チロ
シンキナーゼの触媒ドメインのアミノ酸は、他のタンパク質チロシンキナーゼの
触媒ドメインのアミノ酸とほとんど同一であることが特徴である。タンパク質チ
ロシンキナーゼの触媒ドメインはまた、溶液に可溶なポリペプチドであることが
特徴である。
【0025】 “アミノ酸がほとんど同一”という用語は、少なくとも約30%、より好まし
くは少なくとも約35%、最も好ましくは少なくとも約40%が同一であること
を言う。これらのアミノ同一度は、異なったチロシンキナーゼファミリー間の同
一性を言う。あるチロシンキナーゼファミリーのメンバーに対するアミノ酸の同
一性は、約55%から約90%の間の範囲である。
【0026】 本明細書で言う“同一性”という用語は、その類似性または関係の目安となる
配列の性質を言う。同一性は2つの配列における同じ残基の数を残基の全数で割
り、その値に100を掛けて測定される。従って、まったく同じ2つコピーは1
00%の同一性を有するが、保存性がより少なく、欠失、付加または置換を有す
る配列はより低い同一度を有する。二つの配列が相互に相同であることもある。
“相同”という用語は、本明細書では共通の起源または原型による関係を示すに
充分である分子(例えばタンパク質)の類似性で定義され、それらを含むが、そ
れに限られるものではない。当業者が認める様に、配列の同一性および類似性を
決定するためにBLAST(アルツシュール(Altschul)ら、1990
、J.Mol.Biol.214:403−410)およびFASTA(ピアー
ソン(Pearsn)およびリップマン(Lipman)、1988、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448)を含むい
くつかのコンピュータープログラムを使用し得る。
【0027】 “機能性”という用語は、タンパク質の一部が無傷のタンパク質の機能の全て
または一部を維持する能力を言う。例えば、機能性PRTK触媒ドメインは基質
を燐酸化することにより基質を生成物に変換する能力を維持し、一方、機能性R
PTK細胞外ドメインはそのリガンドを結合する能力を維持し得る。
【0028】 ある実施態様では、ポリペプチドは機能性ではないが細胞外ドメインとして存
在することができる。例えば、細胞外ドメインに対応するポリペプチドはリガン
ドまたはリガンドアナログを結合するに必要な全ての構造を持たない。この実施
態様では、RPTK細胞外ドメインの目安は他のRPTK細胞外ドメインと相同
であるポリペプチドである。
【0029】 他の実施態様では、結晶はレセプタータンパク質チロシンキナーゼの細胞外ド
メインであるポリペプチドと、細胞外ドメインに結合したリガンドでなる。例え
ば、レセプタータンパク質チロシンキナーゼはFGFR1またはFGFR2等の
繊維芽細胞成長因子であり、リガンドはFGF1またはFGF2等の繊維芽細胞
成長因子である。結晶にはレセプタータンパク質キナーゼに結合した硫酸化オリ
ゴサッカライド、および/またはそれに結合したリガンドを含むこともできる。
硫酸化オリゴサッカライドの大きさ(分子量)は変化し得る。結晶に含み得る適
当な硫酸化オリゴサッカライドの例には硫酸化ジサッカライド、ヘキササッカラ
イド、オクタサッカライド、デカサッカライド、ドデカサッカライドが含まれる
。硫酸化オリゴサッカライドがヘパリン等の硫酸化ムコオリゴサッカライドであ
ることが好ましい。本実施態様の特定の態様では、結晶はFGR:FGFR:ヘ
パリン3成分複合体を含む。例えば、結晶はFGF1:FGFR1:ヘパリン3
成分複合体、FGF2:FGFR1:ヘパリン3成分複合体、FRF1:FGF
R2:ヘパリン3成分複合体、またはFGF2:FGFR2:ヘパリン3成分複
合体等のFGF:FGFR:ヘパリン複合体でを含むことができる。
【0030】 他の態様では、結晶は幹細胞因子のレセプター結合コアを含むポリペプチドを
包含し得る。レセプター結合コアは一般に4個のヘリックス帯と2個のβ鎖を含
む3次元構造を有する。幹細胞因子とレセプター結合コアを含むフラグメントは
、例えばポリペプチドのホモ二量体を含む形で結晶化する。ホモ二量体を構成す
るモノマーは共有結合、例えば少なくとも1つの分子間ジスルフィド結合で結合
しているが、本明細書に述べるSCFの結晶には非共有結合ホモ二量体が含まれ
る。SCFホモ二量体は単位格子がa=72.47Å、b=83.45Å、c=
89.15Åの大きさの斜方晶結晶を形成する。SCFホモ二量体はまた、例え
ば単斜晶結晶として結晶化する。非共有結合ホモ二量体の単斜晶結晶を表4に示
す原子構造座標を得るために用いた。これらの原子座標は、幹細胞因子のアミノ
酸残基1−141を含むホモ二量体から生成した結晶のためのものである。これ
らの結晶はC2対照を有する。このタイプの結晶は、幹細胞因子またはそのフラ
グメントに結合したc−kit(SCFR)等のPRTKを含むこともある。結
晶は幹細胞因子のレセプター結合コアに結合したc−kitを含むことが好まし
い。
【0031】 “ポリペプチド”と言う用語は、タンパク質を構成する一部または前配列を表
すアミノ酸鎖を言う。
【0032】 “会合”とは、化学的存在または化合物、または一部またはそのフラグメント
と、RPTK、またはその一部またはフラグメントとの間の近接した条件を言う
。会合はすなわち並列位置が例えば水素結合、ファンデルワールス、静電または
疎水的相互作用でエネルギー的に有利である非共有結合であるか、または共有結
合である。
【0033】 “重金属”と言う用語は、遷移元素、ランタナイド金属、またはアクチニド金
属である原子を言う。ランタナイド金属は原子番号57および71の間の元素の
全てを言う。アクチニド金属は原子番号89と103のあいだの元素の全てを言
う。好ましい実施態様では、本発明発明の結晶は少なくとも1個の金属原子を含
有し得る。この様な結晶を本明細書では“誘導体結晶”と言う。
【0034】 他の実施態様では、本発明はRPTK細胞外ドメインのD2−D3領域に対応
するポリペプチドの結晶形が特徴である。好ましい実施態様では、本発明はリガ
ンドまたはリガンドアナログに結合したレセプターPTK細胞外ドメインの結晶
形が特徴である。好ましい実施態様では、RTPKはFGFR1またはFGFR
2、等のRPTKはFGFRであり、リガンドはFGF、好ましくはFGF1ま
たはFGF2である。特に好ましい実施態様では、ポリペプチドはFGFR1の
残基150−360、またはFGFR2の残基150−360であり、その配列
は図4に示される。リガンドはその相手方タンパク質またはその類似物である。
例えば、RPTKがFGFR1またはFGFR2の細胞外結合ドメインを含む場
合、リガンドは図17で示される様なアミノ酸配列を含むFGF1、または図1
7で示される様なアミノ酸配列を含むFGF2等の繊維芽細胞因子であり得る。
【0035】 本明細書で用いる“D2−D3領域”と言う用語は、FGFRの第二および第
三Ig様ドメインを言う。“IG様ドメイン”と言う用語は当業者に公知である
。ある実施態様では、本発明のD2−D3領域は第二および第三Ig様ドメイン
を含まず、FGFRのリガンドに結合部位を提供するに十分な残基を含む。最も
好ましくは、“ D2−D3領域”と言う用語はヒトFGFR1の150−36
0残基を含むタンパク質を言う。
【0036】 “突然変異体”と言う用語は、天然RPTKまたはポリペプチドリガンド中の
少なくとも1個のアミノ酸残基を、異なったアミノ酸残基で置換して得られるポ
リペプチドを言う。突然変異はアミノ酸残基を、天然ポリペプチド内、またはポ
リペプチドのN−および/またはC−末端に付加または削除して行うことができ
る。突然変異ポリペプチドは天然ポリペプチドと実質的に同じ3次元構造を有す
ることが好ましい。
【0037】 本明細書で用いる“実質的に同じ3次元構造を有する”という用語は、突然変
異体が由来する天然型ポリペプチドの原子構造因子と重ね合わせ、少なくとも5
0%から100%の天然型チロシンキナーゼのCα原子が重ね合わせに含まれる
場合、Cα原子2A以下の根平均二乗偏差を有する原子構造座標のセットを言う
【0038】 他の態様では、本発明は表1および2に示された構造座標で定義された、リガ
ンドに結合したRPTK細胞外ドメインの結晶形に関する。
【0039】 本明細書で用いる“原子構造座標”という用語は、1個または複数の分子の3
次元構造を定義するデータセットを言う。構造座標を若干修飾しても、ほとんど
同等な3次元構造が得られる。構造座標の独自のセットの目安は、得られる構造
の根平均2乗偏差である。約1.5Åの根平均2乗偏差により相互に異なった3次
元構造を与える構造座標は、通常の技術を有する当業者により同一であると見な
される。従って、表1−4、および6に示される構造座標は、そこに定義される
値に限られない。
【0040】 X線結晶学を用いることにより、本発明の結晶形の3次元構造を説明すること
ができる。例えば、X線結晶学による結晶形の最初の特徴描写では、単位格子の
形と、その結晶中での配向を決定することができる。“単位格子”という用語は
、結晶のパターン単位を完全に代表する結晶の最小かつ最も簡単な容積単位を言
う。単位格子の寸法は、長さa、bおよびc、および角度α、βおよびγの6つ
の数で定義される。結晶は複数の単位格子の効率的に詰め込まれた配列として観
察される。結晶学用語の詳細な説明は、ハーン(Hahn)、1996、The
International Tables for Crystallogra
phy、Volume A、第4版、クルーワーアカデミックプレスパブリシャ
ーズ(Kluwer Academic Press Publishers);
およびシュムエリ(Shmueli)、The International T
ables for Crystallography、Volume B、第1
版、クルーワーアカデミックプレスに記載されている。
【0041】 他の態様で、本発明はリガンドまたはリガンドアナログに結合した、レセプタ
ー細胞外ドメインのD2−D3領域に対応するポリペプチドの結晶形が特徴であ
り、結晶は正方晶系単位格子と空間群対称P4112を有することで特徴付けら
れる。好ましい実施態様では、RPTKはFGFR、好ましくはFGFR1であ
り、リガンドはFGF、好ましくはFGF2である。特に好ましい実施態様では
、ポリペプチドはその配列が図4に示されるFGFR1の残基150−360ま
たはFGFR2の残基150−360を含む。最も好ましくは、本発明の特徴は
FGF2に結合したFGFR1 D2−D3の結晶形であり、結晶の正方晶系単
位格子の寸法は約a=98.5Å、b=98.5Å、c=197.0Å、β=9
0°である。
【0042】 また別な態様では、本発明の特徴はリガンドまたはリガンドアナログに結合し
たレセプターPTK細胞外ドメインのD2−D3領域に対応するポリペプチドの
結晶形であり、結晶は正方晶系単位格子と空間群対称P1を有することが特徴で
ある。好ましい実施態様では、RPTKはFGFR、好ましくはFGFR1であ
り、リガンドはFGF、好ましくはFGF1である。特に好ましい実施態様では
、ポリペプチドはその配列が図4に示されるFGFR1の残基150−360、
またはFGFR2の残基150−360でなる。最も好ましくは、本発明の特徴
はFGF1に結合したFGFR1 D2−D3の結晶形であり、結晶の正方晶系
単位格子の寸法は約a=62.55Å、b=64.06Å、c=64.14Å、
α=93.40°、β=111.17°、γ=97.18°である。
【0043】 また別な実施態様では、本発明の特徴はリガンドまたはリガンドアナログに結
合した、レセプターPTK細胞外ドメインのD2−D3領域に対応するポリペプ
チドの結晶形であり、結晶は三斜単位格子と空間群対称P1を有することが特徴
である。好ましい実施態様では、RPTKはFGFR2等のFGFRであり、リ
ガンドはFGF2等のFGFである。特に好ましい実施態様では、ポリペプチド
は図4に示されるFGFR2の残基150−360でなり、FGF2は図17で
示される配列を有する。例えば、FGF2に結合したFGFR2 D2−D3の
結晶形は三斜晶系単位格子を有し、その寸法は約あ=72.20Å、b=71.
68Å、c=90.92Å、α=90.53°、β=89.98°、γ=89.
99°である。
【0044】 “空間群”と言う用語は単位格子の対称を言う。単位格子の記載(例えばP4 112またはP1)では、大文字は格子型を示し、他の記号はその外観を変えず
に単位格子で行われる対称操作を示す。
【0045】 結晶構造に関する“格子”という用語は、詰め込まれた単位格子の頂点で定義
される点の配列を言う。
【0046】 “対称操作”と言う用語は、単位格子の等価な部分を交換する、または二つの
異なった単位格子間で等価な分子を交換する、幾何学的に定義された方法を言う
。対称照査の例はスクリュー軸、反転中心および鏡面である。
【0047】 ポリペプチドに関連する“単離された”とは、例えば相互に化学結合(例えば
ペプチド結合)で連結した6、12、18またはそれ以上のアミノ酸を意味し、
天然または組み替え起源から単離された、または化学的に合成されたポリペプチ
ドを含む。本発明の単離されたポリペプチドは、それらが純粋または分離された
状態で天然に見出されない点で独自のものである。“単離された”と言う用語を
使用することは、天然起源の配列、またはそのアナログがその正常な細胞環境か
ら移動されたことを示す。従って、配列は無細胞溶液中にあるか、または異なっ
た細胞環境中に置かれる。その用語は配列が存在するアミノ酸鎖のみであるので
はなく、他の物質が本質的にない(少なくとも約90−95%純度)であること
を意味する。
【0048】 ポリペプチドに関連して、本明細書で用いる“濃縮された”と言う用語は、関
連する細胞または溶液中に存在するポリペプチドの全量が、配列を取り出した細
胞または溶液中よりかなり高い割合である特定のアミノ酸配列を言う。ポリペプ
チドが約2倍、約3倍、約5倍、約10倍約20倍、約50倍、または約100
倍濃縮されていることが好ましい。濃縮は他のポリペプチドの量を優先的に減少
させる、または関連する特定のポリペプチドの量を優先的に増加させる、または
この二つの組み合わせで行われる。しかしながら、“濃縮された”と言うことは
他のポリペプチドが存在しないことを意味せず、関連するポリペプチドの相対量
が有意に増加しただけであることに注意しなければならない。“有意に”という
用語は、本明細書では増加のレベルがこの様な増加を行っている作業者に有用で
あることを示し、一般的に他のアミノ酸に対し約2倍、約3倍、約5倍、約10
倍約20倍、約50倍、または約100倍の増加を意味する。
【0049】 ある目的では、アミノ酸配列が精製された形であることが有利である。ポリペ
プチドに関し本明細書で用いる“精製された”と言う用語は、絶対的に純粋であ
る(均一な調製物等)ことを意味せず、天然環境中より相対的に純粋なポリペプ
チドを言う。ポリペプチドは約2倍、約3倍、約5倍、約10倍約20倍、約5
0倍、または約100倍精製されていることが好ましい。最も好ましくは、少な
くとも1桁、好ましくは2桁以上、より好ましくは4または5桁の精製倍率が明
らかに期待される。好ましい実施態様では、機能的に有意なレベルで汚染がない
【0050】 他の態様では、本発明の特徴は本明細書に報告される結晶形の生成法である。
その方法では、結晶を生成するために本明細書に報告のポリペプチドを利用する
。その方法は以下の工程でなる: (a)一定容積のポリペプチド溶液を保存溶液と混合する工程;および (b)工程(a)で得られた混合液を保存溶液上で、密封容器中、結晶化に適
した条件でインキュベートする工程。
【0051】 ポリペプチド溶液が約1mg/mlから約50mg/mlの結晶化ポリペプチ
ドでなることが好ましく、約1mg/ml、2mg/ml、5mg/ml、10
mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/m
l、35mg/ml、40mg/ml、45mg/mlおよび50mg/mlで
あることが最も好ましい。ポリペプチド溶液が約pH6.5から約9.5で緩衝
されていることが好ましく、約pH8.5で緩衝されていることが最も好ましい
。好ましい実施態様では、溶液は、約1mMから約500mM、最も好ましくは
約150mMの塩、好ましくはKClまたはNaClの形の塩を含む。ある実施
態様では、保存溶液は約0.5から約3Mの間、好ましくは約1.6Mの硫酸ア
ンモニウムと、約5%から約50%の間、最も好ましくは20%のグリセロール
を含む。他の実施態様では、保存溶液は好ましくは約5%から約50%の間、最
も好ましくは約20%のポリエチレングリコールと、0.05から0.5Mの間
、最も好ましくは約0.2MのLi2SO4を含む。保存溶液は好ましくは約pH
6.5から約pH9.5の間、最も好ましくは約pH8.5で緩衝されている。
これらのプロセスは、“発明の実施の形態”の節に詳細に説明されている。
【0052】 他の態様では、本発明の特徴は単独、またはリガンドまたはリガンドアナログ
と結合した複合体のRPTK細胞外ドメインの構造の3次元表示である。好まし
い実施態様では、本発明の特徴はリガンドまたはリガンドアナログと結合した、
レセプターPTK細胞外ドメインのD2−D3領域の構造の3次元表示である。
好ましい実施態様では、RPTKはFGFR1またはFGFR2等のFGFRで
あり、リガンドはFGF、好ましくはFGF1またはFGF2である。好ましい
実施態様のグループでは、ポリペプチドはFGFR1の配列150−360、ま
たはFGFR2の配列150−360でなり、その配列が表4に示される。リガ
ンドは図17に示されるアミノ酸配列を含むFGF1等の繊維芽細胞成長因子、
または図17に示されるアミノ酸配列を含むFGF2である。
【0053】 本明細書で用いる“3次元表示”という用語は、3次元座標空間を利用する少
なくとも1個の分子の任意の非天然表現を言う。当業者は、例えば表1−4およ
び6の原子構造座標が3次元座標空間を使用し、従って3次元表示であることを
理解し得ると考えられる。好ましい実施態様では、3次元表示は少なくとも1個
の分子の原子座標から作成されたモデルである。特に好ましい実施態様では、3
次元表示はコンピューターメモリ内に存在する、および/またはコンピューター
のスクリーンに表示された、少なくとも1個の分子の原子座標から作成されたモ
デルである。本明細書に開示された座標は、当業者に分子構造および相互作用を
研究するに必用な情報を提供する。本明細書に含まれる知見の観点から分子を結
晶化し、本明細書に含まれる知見に従ってX線解析を行うことにより、比較デー
タを得ることができる。さらに、本明細書に含まれるデータの変更も本発明の範
囲内である。
【0054】 他の態様では、本発明の特徴はRPTK細胞外ドメインをコードするDNAで
ある。例えば、組み替えDNAはFGFR1のアミノ酸残基150−360また
はFGFR2のアミノ酸残基150−360をコードする、図4に示されている
ヌクレオチド配列を含むコード鎖を含むことができる。
【0055】 また別な態様では、RPTK細胞外ドメインの既知の原子座標を利用する、本
発明は未知の構造のRPTK細胞外ドメインの3次元構造の決定法に関する。こ
れらの方法を相同性モデル化、分子置換、および各磁気共鳴法と関連させること
ができる。
【0056】 好ましい実施態様では、本発明は構造未知のRPTK細胞外ドメインの、相同
モデル化による3次元構造の決定法に関する。これらの方法は、RPTK細胞外
ドメインの既知の原子構造座標を、未知の3次元構造を有するレセプターPTK
のアミノ酸配列と組み合わせて使用する。その方法は、(a)構造未知のRPT
Kのアミノ酸配列を、既知の原子構造座標を有するRPTKのアミノ酸配列と並
べて整列する工程であって、整列はアミノ酸配列の相同領域を合わせることで行
われる工程;(b)相同アミノ酸のそれぞれの座標を、既知の原子構造座標から
構造未知のRPTK配列中の対応するアミノ酸の構造のコンピューター表示へ移
す工程;および(c)得られたRPTK構造の低エネルギーコンフォーメーショ
ンを決定する工程でなる。
【0057】 既知の原子構造座標は、リガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK
細胞外ドメインの原子構造座標であることが好ましい。より好ましくは、既知の
原子構造座標はFGFR、好ましくはFGF、好ましくはFGF1またはFGF
2に結合したFGFR1の原子構造座標である。既知の原子構造座標が表1また
は2に示す座標であることが最も好ましい。
【0058】 “アミノ酸配列”と言う用語は、RPTKの全てまたは一部に対応するポリペ
プチドでなるアミノ酸鎖中のアミノ酸の順番を記述するものである。好ましい実
施態様では、アミノ酸配列はRPTKの細胞外ドメインの全てまたは一部のアミ
ノ酸の順番を記述する。
【0059】 “並べて整列する”と言う用語は、複数のアミノ酸配列の先頭および末端を合
わせる意味である。相同アミノ酸配列が整列プロセス中に相互の先頭に置かれる
【0060】 タンパク質配列に関連して本明細書で用いる“相同”と言う用語は、同一の配
列、または類似の側鎖化学基(例えば脂肪族、芳香族、極性、負電荷または性電
荷)を有する配列中のアミノ酸を記述するものである。従って、共通の起源また
は原型による関係を示すに十分な類似のタンパク質配列は、例えば相同性を有す
ると考えられる。相同アミノ酸の例を以下に示す。
【0061】 “対応する”という用語は、上記の配列中で相互に並べられたアミノ酸を言う
【0062】 “低エネルギーコンホメーションの決定”とい言う用語は、RPTKの構造の
コンホメーションを構造の自由エネルギーが低い様に変えるプロセスを言う。R
PTK構造はそれに結合したリガンドまたはリガンドアナログ等の分子を有して
いても、有していなくてもよい。
【0063】 “低自由エネルギー”という用語は、分子がプロセスで測定して安定状態にあ
る常態を言う。安定状態は複合体内で有利な相互作用を形成した場合に達成され
る。
【0064】 “有利な相互作用”という用語は、とりわけ疎水性、芳香性、およびイオン力
、および水素結合を言う。
【0065】 “化合物”と言う用語は、有機分子を言う。“有機分子”という用語は、構造
内に少なくとも1個の炭素を有する分子を言う。その化合物は6kDa以下の分
子量を有する。化合物の幾何学構造と、化合物とポリペプチドの間に生成する相
互作用が、2つの分子間の高親和性結合を支配することが好ましい。高親和性結
合は、10-6モル以下のオーダーの解離平衡定数で支配されることが好ましい。
【0066】 “結合部位”と言う用語は、少なくとも1個の分子が結合し得る酵素またはポ
リペプチド上の位置を言う。好ましい実施態様では、結合部位はリガンド結合部
位、HSPG結合部位、またはリガンド結合により二量体を生成する2個のレセ
プター間の相互作用表面を言う。
【0067】 “相互作用”と言う用語は、疎水性、芳香性およびイオン力、および原子間に
形成される水素結合を言う。この様な相互作用は“分子間”であるか、同一分子
内であるか、“分子間”であるか、離れた分子間である。
【0068】 “共因子(コファクター)”という用語は、基質のに加えてタンパク質に結合
し、化学反応を行う化合物を言う。複数のコファクターがヌクレオチドまたはア
デノシンの燐酸化物およびニコチンアミド誘導体等のヌクレオチド誘導体である
【0069】 “基質”と言う用語は、酵素と反応する化合物を言う。酵素は特定に基質上で
特定の反応を触媒することができる。例えば、RPTKは特定のタンパク質およ
びペプチド基質上でチロシン残基を燐酸化することができる。さらに、ヌクレオ
チドがタンパク質キナーゼに対する基質として作用し得る。
【0070】 “基質アナログ”と言う用語は、基質と構造的に類似しているが同一でない化
合物を言う。基質アナログはヌクレオチドアナログである場合もある。ヌクレオ
チドアナログの例は以下に報告される。
【0071】 “アロステリックエフェクター”という用語は、タンパク質中でアロステリッ
ク相互作用を生じる化合物を言う。“アロステリック相互作用”とは、タンパク
質上で離れた部位間の相互作用を言う。アロステリックエフェクターは、活性部
位とは異なった部位に結合して触媒活性を増進または阻害することができる。
【0072】 “共結晶”と言う用語は、ポリペプチドが少なくとも1個の化合物と会合して
いる結晶を言う。
【0073】 “ATP”という用語は、化合物アデノシン三燐酸を言う。
【0074】 “非加水分解性”と言う用語は、水と容易には反応しない共有結合を有する化
合物を言う。ATPの非加水分解性アナログの例は、その構造が当業者に公知の
AMP−PNPおよびAMP−PCPである。
【0075】 “AMP−PNP”とは、ATPの非加水分解性アナログであるアデニリルイ
ミドジホスフェートのことである。
【0076】 “AMP−PCP”とは、ATPの非加水分解性アナログであるアデニリルジ
ホスフェートのことである。
【0077】 “アルキル”とは、直鎖、分枝または環状飽和脂肪族炭化水素のことである。
アルキル基が1から12個の炭素原子を有することが好ましい。より好ましくは
1〜7個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子である。アルキル基の
例にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、3級ブ
チル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。アルキル基は随意には水酸基、シアノ
基、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、N(CH32アミノ基、およ
びSH基でなる群から選ばれた少なくとも1個の置換基で置換されていることが
好ましい。
【0078】 “アルケニル”とは、少なくとも1個の二重結合を含む直鎖、分枝または環状
不飽和炭化水素基のことである。アルケニル基が2から12個の炭素原子を含む
ことが好ましい。より好ましくは2から7個、より好ましくは2から4個の炭素
原子の低級アルケニルである。アルケニル基は随意には水酸基、シアノ基、アル
コキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、N(CH32アミノ基、およびSH基
でなる群から選ばれた少なくとも1個の置換基で置換されていることが好ましい
【0079】 “アルキニル”とは、少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含む直鎖、分枝
または環状不飽和炭化水素基のことである。アルキニル基が2から12個の炭素
原子を含むことが好ましい。より好ましくは2から7個、より好ましくは2から
4個の炭素原子の低級アルキニルである。アルキニル基は随意には水酸基、シア
ノ基、アルコキシ、=O、=S、NO2、ハロゲン、N(CH32アミノ基、お
よびSH基でなる群から選ばれた少なくとも1個の置換基で置換されていること
が好ましい。
【0080】 “アルコキシ”とは“O−アルキル基”のことである。
【0081】 “アリール”とは、共役二重結合を有する少なくとも1個の環を有する芳香族
基であり、カルボキシアリール、ヘテロサイクリックアリールおよびビアリール
基を含む。アリール基は随意には随意にはハロゲン、トリハロメチル基、水酸基
、SH、OH、NO2、アミン、チオエーテル、シアノ、アルコキシ、アルキル
およびアミノ基から選ばれた少なくとも1個の置換基で置換されていることが好
ましい。
【0082】 “アルカリール”とは、アリール基に共有結合したアルキルのことである。ア
ルキルが低級アルキルであることが好ましい。
【0083】 “カルボキシアリール”とは、環原子が炭素であるアリール基のことである。
【0084】 “ヘテロサイクリックアリール”とは、環、原子として1〜3個のヘテロ原子
を有し、環の残りが炭素であるアリール基のことである。ヘテロ原子には酸素、
硫黄および窒素が含まれる。従って、ヘテロサイクリックアリール基にはフラニ
ル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N−低級アルキルピロロ、ピリミジル、ピ
ラジニル、イミダゾリル等が含まれる。
【0085】 “アミド”とはRがアルキル、アリール、アラルキル、または水素である−C
(O)−NH−Rである。
【0086】 “チオアミド”とは、 Rがアルキル、アリール、アラルキル、または水素で
ある−C(S)−NH−Rである。
【0087】 “アミン”とは、R'およびR"が独立にアルキル、アリールおよびアルキルア
リールでなる群より選ばれ−N(R')R"基である。
【0088】 “チオエーテル”とは、Rがアルキル、アリールまたはアルキルアリールであ
る−S−Rである。
【0089】 “スルホニル”とは、Rがアリール、C(CN)=C−アリール、CH2CN
、アルキルアリール、スルホンアミド、NH−アルキル、NH−アルキルアリー
ル、またはNH−アリールである−S(SO2)−Rである。
【0090】 “アシル”という用語は、Rが上記に定義されたアルキルである、ホルミル、
アセチル、プロピオニルまたはブチリル等の−C(O)Rを表す。
【0091】 他の好ましい実施態様では、RPTK細胞外ドメインの既知の原子構造座標を
、未知の3次元構造を有するRPTK細胞外ドメインに対する不完全X線結晶学
データセットに当てはめることによる、本発明は構造未知のRPTK細胞外ドメ
インの3次元構造の決定法に関する。その方法は(a)2つの結晶からの回折デ
ータを合わせて単位格子内の原子の位置を決定する工程であって、1つのデータ
セットは構造未知のRPTKでなる結晶由来であり、もう一方のデータセットは
既知の原子構造座標を有するRPTKでなる結晶由来である工程;および(b)
得られたRPTK構造の低エネルギーコンフォーメーションを決定する工程でな
る。
【0092】 完全な回折データは、リガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK細
胞外ドメインの結晶由来であることが好ましい。より好ましくは、完全な回折デ
ータはFGF、好ましくはFGF1またはFGF2に結合した、FGFR細胞外
ドメイン、好ましくはFGFR1の結晶由来である。
【0093】 構造未知のRPTKでなる結晶由来の回折データセットは、完全データセット
であっても、不完全データセット出会っても良い。本明細書で用いる“不完全デ
ータセット”という用語は、3次元構造を与えるに十分な情報を持たないX線結
晶学データセットに関する。
【0094】 他の好ましい実施態様では、本発明は構造未知のレセプターPTK細胞外ドメ
インの3次元構造の決定法であって、RPTK細胞外ドメインの既知の原子構造
座標を未知の3次元構造を有するRPTK細胞外ドメインの核磁気共鳴(NMR
)データに適用する方法に関する。その方法は、(a)構造未知のRPTK細胞
外ドメインの2次構造をNMRデータを用いて決定する工程;および(b)アミ
ノ酸の空間を通る相互作用の割り当てを、RPTKの既知の原子構造座標を用い
て簡略化する工程でなる。未知の3次元構造のRPTK細胞外ドメインは、化合
物、リガンドまたは調節因子と複合体を形成していても、していなくても良い。
【0095】 既知の原子構造座標はリガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK細
胞外ドメインの座標であることが好ましい。既知の原子構造座標がFGF、好ま
しくはFGFR1またはFGF2に結合した、FGFR細胞外ドメインであるこ
とがより好ましい。既知の原子構造座標が表1または2に示した座標であること
が最も好ましい。
【0096】 “2次構造”と言う用語は、α−ヘリックスまたはβ−シート要素等の3次元
構造中のアミノ酸の配列である。
【0097】 “空間を通じる相互作用”と言う用語は、2次構造要素の3次元構造中の配向
と、アミノ酸配列の異なった部分由来のアミノ酸間の距離を規定するものである
【0098】 “割り当て”と言う用語は、NMRを解析する方法と、どのアミノ酸がNMR
スペクトル中の信号を生じるかを同定する方法を規定するものである。
【0099】 他の態様で、本発明の特徴はPTK機能の潜在的調節因子を同定する方法であ
る。分子のより大きい群から少なくとも1個の潜在的調節因子を同定することに
より、費用と時間のがかる生物分析を用いて試験しなければならない分子の数を
減らすことが可能である。従って、本明細書に報告されたPTK機能の潜在的調
節因子の同定法により、PTK機能の実際の調節因子を同定する効率が向上する
【0100】 潜在的調節因子を化合物の構造の3次元表示と、RPTK細胞外ドメインの3
次元構造をドッキングして同定することが好ましい。RPTK細胞外ドメインの
コンピューター表示を、原子構造座標で定義することができる。ある実施態様で
は、少なくとも1個の調節因子がRPTK細胞外ドメインのリガンド結合部位お
よび/またはRPTK細胞外ドメインのヘパリン硫酸塩含有糖タンパク質に対す
る結合部位とドッキングされる。
【0101】 好ましい実施態様では、RPTK機能の潜在的調節因子を同定する方法は(a
)RPTKの原子構造座標の3次元表示を提供し、コンピューターデータベース
由来の化合物の3次元表示と、RPTKの3次元表示をドッキングする工程;(
b)有利な幾何学的フィットと有利な相補相互作用を有する得られた複合体のコ
ンフォーメーションを決定する工程;および(c)RPTK機能の潜在的調節因
子としてのRPTKと最も良くフィットする化合物を同定する工程でなる。最初
のRPTKの構造は少なくとも1個の化合物、リガンドまたはそれに結合した調
節因子を持っていても、いなくても良い。
【0102】 原子構造座標はリガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK細胞外ド
メインの座標であることが好ましい。原子構造座標はFGF、好ましくはFGF
1またはFGF2に結合した、FGFR細胞外ドメイン,好ましくはFGFR1
細胞外ドメインの原子構造座標であることがより好ましい。原子構造座標は表1
または2に示された座標であることが最も好ましい。
【0103】 本明細書で用いる“RPTK機能の調節因子”という用語は、RPTKの触媒
活性を変化させる化合物またはリガンドアナログを言う。RPTK基の調節因子
は、RPTK触媒活性を刺激するか阻害することができる。例えば、阻害的調節
因子は、RPTKの二量体化を妨害、RPTKの二量体化を阻害剤、またはRP
TKのそのリガンドまたはHSPGへの結合を阻害する、少なくとも1個の化合
物またはリガンドアナログである。または、刺激的調節因子は二量体生成を安定
化する、RPTKのリガンドの活性を模倣する、またはHSPGの活性を模倣す
る、少なくとも1個の化合物またはリガンドアナログである。
【0104】 “化学基”と言う用語は、水素結合、疎水性、芳香族性、またはイオン性相互
作用を形成する分子の部分を言う。
【0105】 “ドッキング”という用語は、化合物、リガンドまたはリガンドアナログをR
PTKの近傍に置くプロセスを言う。ある実施態様では、ドッキングは化合物、
リガンドまたはリガンドアナログを、RPTKの3次元表示3次元表示の近傍に
置くことを言う。その用語はまた、得られた化合物/RPTK、リガンド/RP
TKまたはリガンドアナログ/RPTKの低エネルギーコンフォーメーションを
見出すプロセスを言う。
【0106】 “有利な幾何学的フィット”という用語は、化合物/RPTK、リガンド/R
PTKまたはリガンドアナログ/RPTKのコンフォーメーションであって、化
合物、リガンドまたはリガンドアナログの表面積が不利な相互作用を生じずにR
PTK部位の表面の近傍にあることを言う。不利な相互作用とは結合した分子中
の原子とRPTK中の原子の間の立体障害である。
【0107】 “有利な相補的相互作用”と言う用語は、化合物、リガンドまたはリガンドア
ナログと、RPTKの間にに生成する疎水性、芳香族性、イオン性、および水素
結合授受力に関連する。
【0108】 “潜在的”と言う用語は“RPTK機能の調節因子”と言う用語を制限するが
、その理由はRPTK機能の潜在的調節因子が生体外または生体内で試験されて
いないからである。
【0109】 “最良のフィット”と言う用語は、ある実験でレセプターPTKとほとんどの
表面積と複合体を形成する、および/または最も有利な相補的相互作用を行う化
合物、リガンドまたはリガンドアナログの意味である。“最良のフィット”と言
う用語はまた、ほとんどの表面積で複合体を形成する、および/またはレセプタ
ーPTKと最も有利な相補的相互作用を行う化合物、リガンドまたはリガンドア
ナログのとりわけ大きい群由来の化合物、リガンドまたはリガンドアナログのサ
ブセットを言う。好ましい実施態様では、最良のフィットを示す分子は、ほとん
どの表面積での複合体形成に関して試験された分子の内の、70番目の百分位数
以上にあるか、および/または最も有利な相補的相互作用を行う分子であり、よ
り好ましくは最良のフィットを示す分子は試験された分子の内の第80番目の百
分位数以上にある分子であり、最も好ましくは最良のフィットを示す分子は試験
された分子の内の第90番目の百分位数以上にある分子である。
【0110】 本発明の他の好ましい実施態様は、レセプターPTK機能の潜在的調節因子を
同定する方法である。その方法にはレセプターPTKの3次元構造の利用が含ま
れる。その方法は(a)それに結合した少なくとも1個の化合物、リガンドまた
はリガンドアナログを有する レセプターPTKの3次元表示を修飾する工程で
あって、化合物、リガンドまたはリガンドアナログの3次元表示が原子構造座標
で定義される工程;(b)有利な幾何学的フィットと有利な相補的相互作用を有
する、得られた複合体のコンフォーメーションを決定する工程;および(c)レ
セプターPTK機能の潜在的調節因子としてレセプターPTK活性部位と最良の
フィットをする化合物、リガンドまたはリガンドアナログを同定する工程でなる
【0111】 原子構造座標がリガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK細胞外ド
メインの座標であることが好ましい。原子構造座標が、FGF、好ましくはFG
F1またはFGF2に結合したRPTK細胞外ドメイン、好ましくはFGFR1
細胞外ドメインの座標であることがより好ましい。原子構造座標が表1または2
に示された座標であることが最も好ましい。
【0112】 “修飾する”と言う用語は、少なくとも1個の化学基を置換、欠失または付加
することを言う。化学基のコンピューター表示をコンピューターデータベースか
ら選ぶことができる。
【0113】 本発明のまた別な実施態様は、調節因子構築または調節因子検索コンピュータ
ープログラムを、RPTKと複合体を形成した化合物、リガンドまたはリガンド
アナログ上で操作することにより、RPTK機能の潜在的調節因子を同定する方
法である。その方法は(a)RPTKと複合体を形成した少なくとも1個の化合
物、リガンドまたはリガンドアナログの3次元表示を提供する工程であって、化
合物、リガンドまたはリガンドアナログおよびレセプターPTKの3次元表示が
原子構造座標で定義される工程;および(b)化合物、リガンドまたはリガンド
アナログに類似した化合物、リガンドまたはリガンドアナログに対するデータベ
ースを、化合物検索コンピュータープログラムを用いて検索する工程、またはR
PTKと複合体を形成した化合物、リガンドまたはリガンドアナログを、化合物
構築コンピュータープログラムを用いてデータベース由来の類似の構造で置換す
る工程であって、化合物の表示が構造座標で定義される工程でなる。UNITY
(商標)(Tripos、Inc.)およびCATALYST(商標)(MSI
、Inc.)を含め、化合物検索および構築のために数多くの適当なコンピュー
タープログラムが使用できることを、当業者が理解し得ると思われる。
【0114】 原子構造座標がリガンドまたはリガンドアナログに結合したRPTK細胞外ド
メインの座標であることが好ましい。原子構造座標がFGF、好ましくはFGF
1またはFGF2に結合した、FGFR、好ましくはFGFR1細胞外ドメイン
の座標であることがより好ましい。既知の原子構造座標が表1または表2に示さ
れた座標であることが最も好ましい。
【0115】 本明細書で用いる“作動する”という用語は、様々なコンピュータープログラ
ムで本明細書に定義された分子の3次元コンフォーメーションを利用することを
言う。
【0116】 “類似の化合物”、“類似のリガンド”および“類似のリガンドアナログ”と
いう用語は、レセプターPTKに結合し得る化合物、リガンド、リガンドアナロ
グと類似の幾何学的構造を有する化合物、リガンド、リガンドアナログを言う。
類似の分子は、RPTKに結合した、または一度RPTKに結合した分子と類似
の化学基を有することができる。類似の化学基はRPTKと相補性相互作用を行
うことができる。
【0117】 “化合物検索コンピュータープログラム”と言う用語は、化合物、リガンドま
たはリガンドアナログのコンピューター表示を、関連する化合物と類似の3次元
構造と類似の化学基を有するコンピューターデータベースから検索するコンピュ
ータープログラムのことである。
【0118】 本明細書で用いる“類似の化学構造”と言う用語は、他の分子の少なくとも一
個所と類似の幾何学的構造を共有する、少なくとも1個の化学基を言う。好まし
い実施態様では、類似の化学構造はRPTKと複合体を形成する分子と類似の幾
何学的構造を共有するか、RPTK構造から取り除かれた分子と類似の化学構造
を共有する。類似の化学構造とは、RPTKと複合体を形成した分子との間で行
われる相互作用と類似の、少なくとも1個の相補的相互作用をRPTKと行う化
学基を言うこともある。
【0119】 “構造を置換する”という用語は、RPTKと複合体を形成する分子の少なく
とも一部を取り除く、またはRPTKから取り除かれた分子の一部を取り除き、
破壊された結合を繋いで類似の分子を生成することを言う。
【0120】 “化合物構築コンピュータープログラム”と言う用語は、化合物、リガンドま
たはリガンドアナログ中の化学基のコンピューター表示を、コンピューターデー
タベース由来の基に置換するコンピュータープログラムを言う。
【0121】 “類似の3次元構造”と言う用語は、ほぼ同等の形状と容積を有する2つの分
子を言う。
【0122】 本発明の結晶形と3次元構造を使用する方法は、広い範囲のタンパク質キナー
ゼに関連し得る。従って、好ましい実施態様では、本発明はRPTKに関する。
RPTKはPDGFR、EGFR、SCFR、VEGFR、HGFR、ニューロ
トロピンR、HER2、HER3、HER4、インスリンR、IGFR、SCF
IR、FLK、KDR、VEGFR2、CCK4、MET、TRKA、AXL、
TIE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、MUS
K、FGFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4等のFGFRファミ
リーのメンバー、またはオルファンレセプターPTKであることが好ましい。
【0123】 他の態様では、本発明の特徴は、本発明で開示された方法により同定されたR
PTK機能の潜在的調節因子である。
【0124】 本発明の他の態様は、EPTK機能の潜在的調節因子またはその薬学的に許容
し得る塩、同族体、代謝物、エステル、アミドまたは公知の標準合成法によるプ
ロドラッグである。合成手順は以下に議論される。
【0125】 他の実施態様で、本発明の特徴はRPTK機能の調節因子を同定する方法であ
る。その方法は(a)細胞にRPTK機能の潜在的調節因子、リガンド、リガン
ドアナログ、または化合物を投与する工程;(b)RPTKの燐酸化のレベルを
潜在的調節因子、リガンド、リガンドアナログまたは化合物を投与しない細胞と
、潜在的調節因子を投与した細胞の間で比較する工程;および(c)レセプター
PTK燐酸化のレベルの差に基づき、潜在的調節因子、リガンド、リガンドアナ
ログ、または化合物をRPTK機能の調節因子として同定する工程でなる。RP
TK機能の調節因子として同定される潜在的調節因子、リガンド、リガンドアナ
ログまたは化合物に必要なPTK燐酸化の差が、特定のRPTK、調節因子の特
異性、RPTK機能と関連する疾患の性質等に依存することを、当業者は理解し
得ると考えられる。
【0126】 “細胞”と言う用語は、1次または培養細胞の任意のタイプの細胞を言う。1
次細胞は生物から直接分離されるが、培養細胞は迅速に分裂し、何回も継続して
培養することができる。細胞はフラスコ、皿、ウエルプレートを含むがそれに限
定されない、様々な容器で生育することができる。
【0127】 細胞に関連して用いられる“投与する”と言う用語は、潜在的調節因子、リガ
ンド、リガンドアナログまたは化合物を細胞に配送する方法を言う。化合物をジ
メチルスルホキサイド(DMSO)等のキャリアを用いて水溶液中で調製するこ
とができる。化合物を含む水溶液−“水性調製液”とも言う−を細胞層を浸す培
地中に単に混合するか、または細胞自体の中にミクロインジェクトすることがで
きる。化合物を適当な緩衝溶液を用いて細胞に投与してもよい。
【0128】 “適当な緩衝溶液”と言う用語は、低濃度で溶液のpHを調節することのでき
る塩でなる、化合物の水性調製液を言う。塩が低濃度で存在するので、塩が細胞
の機能を変えないことが好ましい。
【0129】 “RPTKの燐酸化”と言う用語は、RPTK上に燐酸基が存在することを言
う。RPTK上の燐酸基は、高い親和性で結合する抗体で同定することができる
【0130】 他の態様では、本発明の特徴はRPTK機能の調節因子としてのRPTK機能
の潜在的調節因子を同定する方法である。その方法は(a)RPTKの潜在的調
節因子を細胞に投与する工程;(b)潜在的調節因子を投与していない細胞と、
潜在的調節因子を投与した細胞の間で細胞生育のレベルを比較する工程;および
(c)細胞生育の差に基づいてRPTK機能の調節因子としての潜在的調節因子
を同定する工程でなる。
【0131】 “細胞の生育”とは、一群の細胞が分裂する速度を言う。細胞分裂速度は当業
者が使用する方法で容易に測定することができる。
【0132】 本発明の他の態様はの特徴は、不適切な活性を有するRPTKを含有する細胞
を同定することによる、病気の診断法である。その方法は(a)RPTKの調節
因子を細胞に投与する工程;(b)調節因子を投与した細胞と、調節因子を投与
ない細胞との間で細胞生育速度を比較する工程;および(c)細胞生育速度の差
に対する調節因子の効果から、不適切な活性を有するRPTKを含む細胞を特定
して、病気を診断する工程でなる。調節因子を本発明の方法で同定することがで
きる。
【0133】 “不適切な活性”と言う用語は、正常細胞より高い、または低い速度で信号伝
達プロセス中のある段階を調節するRPTKを言う。信号伝達速度の混乱は、成
長因子によるRPTKの刺激の変化、RPTK特異性ホスファターゼ活性の変化
、細胞中のRPTKの過剰発現、またはRPTK自体の触媒領域の突然変異で生
じ得る。
【0134】 “信号伝達プロセス”と言う用語は、細胞外信号が細胞内信号に伝達される反
応カスケードの段階を言う。
【0135】 “RTPK特異性ホスファターゼ”という用語は、特定のRPTKを脱燐酸化
し、RPTKの活性を制御する酵素を言う。
【0136】 本発明の他の態様は、有機体細胞中に不適切な活性を有するRTPKと関連す
る病気を治療する方法である、その方法は(a)有機体にRTPK機能の調節因
子を投与する工程であって、調節因子は許容し得る医薬製剤である工程;および
(b)RPTKの機能を活性化または阻害して病気を治療する工程でなる。
【0137】 “有機体”と言う用語は、少なくとも1個の細胞でなる生物を言う。有機体は
真核細胞の様な単純なものから、哺乳動物の様な複雑なものまである。
【0138】 ある有機体に関連して“投与する”と言う用語は、化合物を有機体中に導入す
る方法を言う。有機体の細胞または組織が有機体の内部または外部に存在する場
合、その化合物を投与することができる。有機体の外部に存在する細胞を、細胞
培養皿中に維持、またはその中で生育することができる。有機体内部に含まれる
細胞に対しては、経口、皮膚、眼球、皮下および直腸投与を含め(それに限定さ
れないが)、化合物を投与する多くの公知の技術がある。患者の外側の細胞に対
しては、細胞ミクロインジェクション技術、形質転換技術およびキャリア技術を
含め(それに限定されないが)、化合物を投与する多くの公知の技術がある。
【0139】 “薬学的に許容し得る組成物”と言う用語は、RPTK活性の調節因子でなる
製剤を言う。化合物を投与した有機体が刺激をほとんど受けない場合、その化合
物は許容し得る。
【0140】 本発明の好ましい実施態様では、レセプターPTKはPDGFR、SCFR、
EGFR、VEGFR、HGFR、ニューロトロピンR、HER2、HER3、
HER4、インスリンR、IGFR、CSFIR、FLK、KDR、VEGFR
2、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、
ROS、RET、LTK、RORI、MUSK、FGFR1、FGFR2,FG
FR3およびFGFR4等のFGFRファミリーのメンバー、およびオルファン
レセプターPTKでなる群から選ばれる。
【0141】 上記の問題を解決する手段は非限定的であり、本発明のその他の特徴と利点は
以下の発明の実施の形態、およびクレームで明らかとなる。
【0142】図面の簡単な説明 図1はFGF2と複合体を形成したFGFR1 D2−D3二量体のリボンダ
イアグラムである。2つの図は垂直軸の回りの約90°回転で関係付けられる。
D2およびD3ドメインはそれぞれ緑と青で示され、D2とD3を結合する短い
リンカーは灰色で示され、FGF2はオレンジで示されている。
【0143】 図2はFGF1と複合体を形成したFGFR1 D2−D3二量体のリボンダ
イアグラムである。D2およびD3ドメインはそれぞれ緑と青で示され、D2と
D3を結合する短いリンカーは灰色で示され、FGF1はオレンジで示されてい
る。
【0144】 図3はテロキンのIGの褶曲と比較した、FGFR1 D2およびD3のIg
の褶曲のトポロジーダイアグラムである。
【0145】 図4はヒトFGF1、FGF2、FGF3およびFGF4のD2−D3領域の
配列である。
【0146】 図5はFGF1−FGF2複合体のリボンダイアグラムを示し、Ig様ドメイ
ン2(D2)および3(D3)はそれぞれ緑とシアンで示される。D2とD3を
結合する短いリンカーはグレーに色付けられている。FGF1とFGF2はオレ
ンジで示される。FGFR1およびFGFR2の2次構造配列は、プログラムP
ROCHECK(ラスコウスキ(Laskowski)ら、J.Appl.Cr
yst.、26、283−291、1993)で得られた。D2およびD3のβ
鎖は、カノニカルI−セットメンバーであるテロキンに対する分子鎖命名法に従
ってラベルされている。βAおよびβA'、gA間のヘリックスは310ヘリック
スである。FGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR2の構造の双方では
、D3中のβC−βC'ループは無秩序である。さらに、FGF1−FGFR1
のD3中のβC'とβE間のほとんどのセグメントも無秩序である。FGF2−
FGFR2構造中では、このセグメントの規則性は高く、紫で色付けられている
。アミノおよびカルボキシ末端はNTおよびCTで示される。D2およびD3中
のジスルフィド結合は、硫黄原子を黄色にして球と棒で示される。FGF1のβ
鎖は、公表された命名法に従って1から12のラベルが付けられている(ファハ
ム(Faham)ら、Curr.Opin,Struct.Biol.8、57
8−586、1998)。この図はMolscript(クラウリス(Krau
lis)、J.Appl.Crystallogr.24、946−950、1
991)およびRaster(メリト(Merrit)ら、Methods E
nzymol.277、505−524、1997)プログラムを用いて作成さ
れた。
【0147】 図6はFGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR2複合体の空間充填モ
デルである。D2、D3、リンカーおよびFGFの外観と色は図5と同じである
。FGFおよびFGFR上の結合インターフェースを良く見せるため、図の様に
分子を相互に引き離し、垂直軸の回りに90°回転させた(右と左のパネル)。
残基FGF1とFGF2は、それらが相互作用するFGFR領域に関して色が付
けられている。D2と相互作用するFGF1およびFGF2残基は緑、リンカー
領域と相互作用する残基は灰色、D3と相互作用する領域はシアン色である。β
C'−βEと相互作用するFGFR2のFGF2領域(紫で示される)は赤色で
ある。FGF1およびFGF2それぞれと相互作用する残基FGFR1およびF
GFR2はオレンジ色である。さらに、FGF2と接触するβC'−βEセグメ
ント中のレセプター残基であるFGF2−FGFR2構造は赤色である。少なく
とも1対の原子(側鎖または主鎖)が原子間距離3.8Åを有する場合、リガン
ドとレセプター残基はFGF−FGFRインターフェースにアルト考えられる。
この図はMolscriptおよびRaster3Dプログラムを用いて作成さ
れた。
【0148】 図7はFGF2とFGFR2の間の疎水性インターフェース中の詳細な相互作
用の立体図を示す。
【0149】 図8はFGF1とFGFR1の間の疎水性インターフェース中の詳細な相互作
用の立体図を示す。
【0150】 図9はD2−D3リンカー中のArg251の近傍のFGF2とFGFR2の
間の保存水素結合ネットワークの詳細な相互作用の立体図を示す。
【0151】 図10はD2−D3リンカー中のArg250の近傍のFGF1とFGFR1
の間の水素結合ネットワークの詳細な相互作用の立体図を示す。
【0152】 図11はFGF2−FGFR2構造中のFGF2とD3のβF−βGループ間
のインターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す。各立体図の対の右側に
、立体図中と同じ正確な方位での構造全体の図が示され、関連する領域が強調さ
れている。相互作用する残基の側鎖のみが示される。色付けは図7と同じである
。点線は水素結合を示す。
【0153】 図12はFGF2−FGFR2構造中の、FGF2のN−末端配列(β1の前
)とD3間のインターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す。図とコード
は図11と同じである。
【0154】 図13はFGF2−FGFR2構造中のFGF2と、βC'−βEセグメント
(紫で示される)の間のインターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す。
図とコードは図11と同じである。
【0155】 図14はFGF1−FGFR1構造中のFGF1とD3の間のインターフェー
ス中の詳細な相互作用の立体図を示す。
【0156】 図15はヒトFGFレセプターのD2およびD2−D3リンカーのリガンド結
合ドメインの構造に基づく配列を示す。
【0157】 図16はヒトFGFレセプターのD3のリガンド結合ドメインの構造に基づく
配列を示す。
【0158】 図17はCLUSRALWプログラム(トンプソン(Thompson)ら、
Nuclei Acid Res.22、4673−4680、1994)を用い
て行ったFGFの構造に基づく配列を示す。この配列に用いられたFGFの全て
は、ニワトリの配列のみが利用し得るFGF15を除いて、ヒト由来である。2
次構造の割り当ては公表された命名法に従い、β鎖は1〜12にラベルされてい
る(ファハムら、Curr.Opin.Struct.Biol.8、578−
586、1998)。β鎖の位置と長さは配列の一番上に示される。FGF残基
は、それらが相互作用するFGFR上の領域に関して色が付けられている。D2
と相互作用するFGF残基は緑色であり、隣家領域と相互作用する残基はグレー
であり、D3と相互作用する領域はシアン色である。D3中のβC'−βEと相
互作用するFGF残基は赤色である。ピリオドはFGF2と配列が同じであるこ
とを示す。ダッシュは配列を最適化するために導入されたギャップを示す。FG
FのC末端の“ティルディ”は、示された最後のアミノ酸の下流にさらに配列が
あることを示す。星印は番号付けが開始メチオニンから出発しないことを示す。
FGF2に対する残基の番号付けはスプリンガー(Springer)ら、J.
Biol.Chem.269、26878−26884(1994)に従ってい
る。FGF1に対する番号付けはツー(Zhu)ら、Science251、9
0−93、1991に従っている。チェックマークは、突然変異誘発によりレセ
プター結合が重要であることが示されているFGF残基を示す。
【0159】 図18は骨格の乱れを引き起こすヒトFGFR2遺伝子における突然変異の位
置を示し、FGF2−FGFR2構造のリボン表示上にマッピングされている。
残基の側鎖は、置換の形に従って色付けされている。黄色はシスチンを他のアミ
ノ酸で置換、またはその逆であり、対にならないシステインを生じる。赤はD3
の3次構造を不安定にすると考えられる突然変異であり、ドメイン間ジスルフィ
ド架橋生成に不都合である。緑はリガンド結合親和性または特異性に影響すると
考えられる突然変異である。
【0160】 図19はSCFの全体構造を示し(クラウリス(Kraulis)、J.Ap
pl.Crystallogr.24、946−950、1991;メリトら、
Methods Enzymol.277、505−524、1991)、他の
サイトカイン殿関係がSCF構造のリボン表示で示され、二つの図は約90°の
回転で関係付けられている。末端と2次構造がラベルされ、分子鎖は矢印で、ヘ
リックスはリボンで、ループはチューブで示されている。二回回転軸はダイアモ
ンド印が付けられている。
【0161】 図20はSCF、M−CSFおよびIL−5の2次構造に基づく配列を示す。
M−SCFとIL−5に対する2次構造の割り当てはデータバンク由来である。
β鎖は黄色、ヘリックスは明るい緑で印されている。
【0162】 図21は、モルスクリプト(Molscript)およびラスター 3D(ク
ラウリス、J.Appl.Crystallogr.24、946−950、1
991;メリトら、Methods Enzymol.277、505−524
、1991)により作成されたSCFの二量体インターフェースの立体図である
。簡単のため、インターフェースのコアの残基の側鎖のみが示される。2次構造
のコード付けは図19に用いられたものと同じであり、分子鎖は矢印、ヘリック
スはリボン、ループはチューブで表されている。
【0163】 図22は、二量体インターフェースのTyr26およびAsp25'の水素結
合サークルに対し、1.2で等高線を描き、O(ジョーンズら、Acta Cr
ystallogr.A47,110―119、1991)で作成された2Fo
−Fc電子密度を示す。
【0164】 図23はモルスクリプトおよびラスター3D(クラウリス、J.Appl.C
rystallogr.24、946−950、1991;メリトら、Meth
ods Enzymol.277、505−524、1991)で作成した共有
結合SCF二量体のモデルを示す。非共有結合(天然)二量体が左側、共有結合
SCGに対するモデルが右側である。各プロモーターはオレンジまたは緑色であ
る。ジスルフィド結合は、硫黄原子を黄色にして球と棒で示される。
【0165】 図24はGRASP(ニコールス(Nicolls)ら、Protein11
、281−296、1991)で作成された、c−kitおよびSCF:SCF
R複合体に対するSCF上の潜在的結合部位を示す。2つの図で約90°の回転
で関係付けられたSCFの分子表面、および提案されたc−kit結合領域が示
される。双方の末尾の疎水性裂け目は黄色になっている。2つの塩基性パッチは
青色、酸性パッチは赤色である。
【0166】 図25はヒト、ラット、マウス、イヌおよびブタSCFの配列を示す。酸性パ
ッチの残基は赤色、2つの塩基性パッチの残基は青色である。星印はげっ歯類で
変化するアミノ酸残基を印すものである。2次構造は配列の下にヘリックスを示
す‘H’、およびβ鎖を示す‘E’で印が付けられている。
【0167】 図26はGRASP(ニコールスら、Protein 11、281−296
、1991)で作成した、c−kitの細胞外ドメインのIg様ドメインを有す
る複合体中の、SCFの提案されたモデルを示す(D2からD5で印される)。
SCF二量体はウォームモデルで表され、c−kitモデルは分子表面で表され
ている。
【0168】 図27はFGF2−FGFR1複合体の前もって生成した結晶中へ浸透したジ
サッカライドの電子密度マップを示し、二量体集合中のデカサッカライドの位置
を示す。D2s(シアン色)およびFGF(オレンジ色)のCαトレースのみが
示される。セカサッカライドは白い棒で示される。
【0169】 図28は原子モデルから除かれたデカサッカライドによる仮想アニーリング後
に計算された、図27に示されたFGF2−FGFR1複合体のFoFc電子密
度マップの立体図を示す。マップは3.0Åの解像度で計算され、1.8σで等
高線を引いた。糖リングはデカサッカライドの非還元末端〜出発して、AからH
で印されている。原子の色は以下の通りである:酸素−赤、硫黄−黄色、窒素−
青、炭素−グレー。この図はボブスクリプト(Bobscript:エスナウフ
(Esnouf)、J.Mol.Graph.Model.15、132−13
4、1997)を用いて作成された。
【0170】 図29は規則的なデカサッカライドリング(A−F)、FGFおよびFGFR
間の詳細な相互作用の立体図を示す。相互作用する残基の側鎖のみが示されてい
る。隣り合ったFGFRの2個のD2はそれぞれシアンと緑で色付けられている
。原子の色付けは図27と同じである。FGFR中の炭素原子はそれが属するD
2と同じ色である。点線は水素結合を表す。
【0171】 図30は3成分複合体中の、デカサッカライド(ヘパリン)と、FGFおよび
FGFRの間の相互作用を示す概略図である。関係する官能基と、相互作用する
アミノ酸の骨格のみが示されている。ダッシュ付き線は水素結合を表す。ヘパリ
ンの糖リングは、非還元末端から出発してAからFで印されている。ヘパリンの
骨格炭素原子はIUPAC命名法に従って番号が付けられている。相互作用する
残基のタイプと番号は、それが属する分子を基に色が付けられている。
【0172】 図31はセファデックス200カラム(ファルマシア)による、様々な比率で
均一に硫酸化されたヘキササッカライドと精製1:1FGF1−FGFR2複合
体の1組の混合物に対する、二量体生成の分離の結果を示す。以下の反応混合物
が用いられた:A、対照(ヘキササッカライドを加えず);B、モル比0.5:
1のヘキササッカライド:FGF1−FGFR2複合体;C、モル比1:1のヘ
キササッカライド:FGF1−FGFR2複合体;D、モル比2.85:1のヘ
キササッカライド:FGF1−FGFR2複合体。モノマーと二量体の位置はそ
れぞれ“M”および“D”で示されている。“T”はモノマー2成分複合体(ヘ
キササッカライド:CGF1:CGFR2=1:1:1)の位置を示す。“L”
は遊離FGF1の位置を示す。
【0173】 図32は二量体FGF2−FGFR1−ヘパリン3成分複合体の“2末端”モ
デルの分子表面の表現を示す。図は先端(図27と同じ図)からヘパリン結合峡
谷を見下ろしている。FGF2表面はオレンジ、D2は緑で示される。デカサッ
カライドの最初の6個の糖リングのみが球と棒で示され、非還元および還元末端
がラベルされている。
【0174】 図33はコンピューターに基づくシステムの概略図であり、RPTK、そのリ
ガンドおよび関連する複合体等の表示、研究、比較、扱い、分子構造の結晶学解
析由来のデータの解釈および/または外插に用いることができる。
【0175】座標の簡単な説明 結晶構造の座標が“実施例”の最後、クレームの前に置かれている。表1はX
線結晶学で決定した、本発明のFGF2と複合体を形成したFGFR1−D2−
D3の結晶の原子構造座標を提供する。表2はX線結晶学で決定した、本発明の
FGF1と複合体を形成したFGFR1−D2−D3の結晶の原子構造座標を提
供する。表4はSCF(1−141)非共有結合ホモ二量体の結晶の原子構造座
標を提供する。表6は二量体FGF2:FGFR1:ヘパリン=2:2:2の3
成分複合体の結晶の原子構造座標を提供する。 表中のカラム(左から右)は番号と数による原子、アミノ酸と原子を含む数、
x座標、y座標、z座標、結合性、および温度因子を記す。これらのパラメータ
ーは全て、当業界で十分に定義されている。
【0176】発明の詳細な説明 本発明の目的はレセプタータンパク質チロシンキナーゼの3次元構造の決定と
使用である。レセプターPTKの3次元構造はレセプターPTKの機能の設計と
調節を促進することができる。
【0177】 タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)は大きい様々なクラスの酵素を含む(
シュレシンガーおよびウルリッヒ、Neuron9:383−391)。PTK
ファミリーはレセプターであるメンバーと、レセプターでないメンバーに小分類
することができる。レセプターPTK(RPTK)ファミリーは複数のサブファ
ミリーを含み、その一つは、血管形成得の他、増殖と分化に関係する繊維芽細胞
成長因子レセプター(FGFR)PTKである。ギボル(Givol)およびヤ
ヨン(Yayon)、1992、FASEB J.6(15):3362−33
69。
【0178】 FGFR1からFGFR4は、高い親和性で繊維芽細胞成長因子と結合する能
力のため、“高親和性FGFR”として知らている。これらの高親和性FGFR
は、1個の膜横断ヘリックスと、チロシンキナーゼ活性を含む細胞質ドメインで
ある3個の免疫グロブリン(IG)様ドメイン(D1からD3)でなる細胞外リ
ガンド結合ドメインが特徴である。リー(Lee)ら、1989、Scienc
e、245:57−60;ジャイ(Jaye)ら、1992、J.Mol.Bi
ol.227:840−851;ジョンソンおよびウィリアム、1993、Ad
v.Cancer Res.60:1−41参照。FGFRはその少なくとも1
個の信号伝達プロセスにおける役割により、細胞機能を媒介することができる。
細胞信号伝達プロセスは、細胞外信号を細胞内信号に変換する複数の工程のカス
ケードでなる。
【0179】 RPTK媒介信号伝達は、特定の細胞外リガンドが細胞外ドメインに結合する
ことで開始され、次いでレセプターの二量体化、RPTKの自己燐酸化が行われ
る。好ましいリガンドは表皮成長因子、インスリン、血小板由来成長因子、血管
内皮成長因子、繊維芽成長因子、血液細胞成長因子、およびニューロトロピンで
ある。FGFサブファミリーはFGFRおよびHSPGに結合する約18のメン
バー、すなわちFGF1からFGF18を含む。当業者は現在未知のFGFサブ
ファミリーのメンバーを、既知のサブファミリーメンバーと相同の配列により、
および/または共通のタンパク質の褶曲部の存在により同定することができる。
4個の高親和性FGFRがFGFの特定のサブセットに結合する。オルニッツら
、1996、J.Biol.Chem.271:15292−15297。
【0180】 一度RPTKが自己燐酸化されると、燐酸基が細胞間信号伝達分子の結合部位
となり、それが細胞膜でのタンパク質複合体の生成を引き起こす。これらの複合
体は、反応の、カスケードを開始するリガンドに応答して適当な細胞効果(例え
ば細胞分裂、細胞外ミクロ環境への代謝効果)を促進する。
【0181】 RPTKはいくつかの細胞内タンパク質の結合部位として機能する。細胞内R
PTK結合タンパク質は(1)商売ドメインに含まれるタンパク質と(2)この
様なドメインはないが、アダプターとして働き、触媒的に活性名分子と会合する
タンパク質の2つの主なグループに分けられる。ソンヤング(Songyang
)ら、1993、Cell 72:767−778。SH2(src同族体)ド
メインは、RPTKに結合するタンパク質に見出される普通のアダプターである
。SH2ドメインは上記の二つのグループのRPTK結合タンパク質を含んでい
る。ファントル(Fantl)ら、1992、Cell69:413−423;
ソンヤングら、1994、Mol.Cell Biol.14:2777−27
85;ソンヤングら、1993、Cell 72:767−778;コッホら、
1991、Science 252:668−678。
【0182】 RPTKとその結合タンパク質のSH2ドメインの間の相互作用の特異性は、
燐酸化チロシン残基を直接取り囲むアミノ酸残基で決められる。SH2ドメイン
の結合親和性の差は、信号伝達プロセスにおける下流分子の基質燐酸化能におけ
る観測される差と関連付けられる。ソンヤングら、Cell 72:767−7
78。これらの観察は、各RPTKの機能がその発現と利用できるリガンドばか
りでなく、特定のレセプターで活性化される下流信号伝達経路の配列によっても
決定されることを示唆している。従って、RPTKは自己燐酸化の結果として信
号伝達プロセスで制御規制の法則を提供する。
【0183】 RPTK媒介信号伝達は細胞における細胞増殖、分化および代謝反応を制御す
る。従って、不適切なRPTK活性は広範囲の不調と疾病を生じる結果となる。
いかに説明するこれらの疾病は、本明細書に開示された方法により指定されるか
同定されるRPTK機能の調節因子で治療し得る。
【0184】 本発明はまた、レセプターチロシンキナーゼの細胞外ドメインに対応する結晶
性ポリペプチドに関する。この様なレセプターチロシンキナーゼは共有結合で架
橋されず、リガンド誘発二量体化を行うと理解されている。結晶性細胞外ドメイ
ンは約1.5Åから約3.0Å、最も好ましくは約2.8Åの3次元X線回折構
造が可能であるに十分な品質せあることが好ましい。本発明はまた、ポリペプチ
ドを調製し結晶化する方法を提供する。ポリペプチド自体、およびその結晶構造
から導かれる情報を、チロシンキナーゼ活性を解析し修飾すると同時に、細胞外
ドメインと相互作用する化合物を同定するために用いることができる。
【0185】 本発明のポリペプチドは、リガンド結合ドメインを含むRPTKの細胞外ドメ
イン中の領域の構造に基づいて設計されることが最も好ましい。図4は、ヒトF
GFR1、FGFR2、FGFR3およびFGFR4のリガンド結合D2−D3
ドメインのアミノ酸配列を示す。出願人らは、得られるポリペプチドの結晶化に
必用な細胞外ドメインの境界を発見し決定した。驚くべきことに、境界は全リガ
ンド結合能と特性をほぼ維持するFGFR1の天然起源突然変異体にきわめて類
似している。ジョンソンら、Mol.Cell.Biol.、1990、10:
4728−4736参照。
【0186】 得られた結晶構造は、2個のFGFR1 D2−D3ドメインでなり、それぞ
れがFGF分子に結合した単位格子で構成される。二量体構造は2個のドメイン
間の相互作用と、二量体の一方のメンバー中のFGF分子と、二量体の他のメン
バーのD2ドメイン間尾相互作用で安定化される。結晶中の二量体構造を安定化
するこれらの接触は、生体内でFGFR1の二量体化と活性化をもたらす接触と
類似しているか同一であると信じられている。従って、本発明の結晶構造は、リ
ガンドで誘起されるRPTKの二量体化と活性化に導く反応の詳細な観点を初め
て提供するものである。
【0187】 結晶構造はまた、二量体化と活性化における細胞外ドメインのアシッドボック
ス領域に対する可能な役割を開示する。アシッドボックスはD1とD2の間のリ
ンカー中の酸性残基が連続的に伸びている部分である。本発明の結晶構造から推
論されるモデルは、アシッドボックスが、結合のためにD2のヘパリン結合部位
領域と相互作用し得ることをほのめかしている。驚くべきことに、これらのモデ
ルは、アシッドボックス/D2相互作用により、FGFがなくてもヘパリン誘起
二量体化とFGFR1の活性化を可能にすることを暗示している。
【0188】 原子レベルで二量体化と活性化を理解することは、RPTK機能の調節因子、
例えばレセプター/リガンド結合または二量体間の接触を妨害に寄与する分子の
設計を可能にする。この様な調節因子は、様々なRPTK疾患に対する有用な治
療を提供すると考えられる。
【0189】 I.PTK関連疾病 PTK関連疾病には血管増殖疾患、繊維症、および糸球体間質細胞増殖疾患が
あるが、それに限られるものではない。血管増殖疾患とは、 一般的に血管の異
常増殖を伴う脈管形成および小脈管形成病を言う。血管の生成と広がりは、胚発
育、黄体生成、外傷回復、および器官再生等の様々な生理学的過程に重要な役割
を演じる。それらはまた、癌、例えばカポシ肉腫の発達に中心的な役割を果たす
。血管増殖疾患の他の例には新しい毛細血管が間接に侵入し、軟骨を破壊する関
節炎、網膜中の新しい毛細血管が水晶体に侵入し、出血し失明を引き起こす糖尿
性網膜症等の眼病、および中枢神経系の網膜血管腫、血管芽細胞腫になり易い形
質が特徴であるホンヒッペルリンダウ病(von Hippel−Lindau
Disease:VHL)、網膜細胞肉腫、褐色細胞腫、および膵臓の小島細胞
腫瘍が含まれる。反対に、血管の収縮、縮小または閉塞に関連する疾病は、最狭
窄等の疾病に関連している。
【0190】 繊維症とは、細胞外マトリックスの異常形成を言う。繊維症の例には肝硬変お
よび糸球体間質細胞増殖疾患が含まれる。肝硬変は肝臓に障害を残す細胞外マト
リックスの形成が特徴である。肝硬変は肝臓の硬化等の病気を引き起こす。肝臓
に障害を生じる結果となる細胞外マトリックスの増加は、肝炎等のウイルス感染
でも引き起こされる。
【0191】 糸球体間質細胞増殖疾患は糸球体間質細胞の異常増殖で生じる病気である。糸
球体間質増殖病には糸球体腎炎、糖尿病ネフロパシー、悪性腎硬、血栓性微少血
管障害症候群、移植拒絶、および糸球体症等の様々なヒトの腎臓病が含まれる。
PDGF−Rが糸球体間質細胞増殖の維持に関係してる。フロージ(Floeg
e)ら、1993、Kidney International43:47S−
54S。
【0192】 RPTKは上記の細胞増殖疾患と関連している。例えば、 EGFR(ツジ(
Tsuzi)ら、1991、Br.J.Cancer 63:227−233;
トープ(Torp)ら、1992、APMIS 100;713―719)、H
ER2/neu(スラモン(Slamon)ら、1989、Science 2
44:707−712)およびPDFGF(クマベ(Kumabe)ら、199
2、Oncogene 7:627−633)等のRPTKファミリーのあるメ
ンバーは多くのの腫瘍で過剰発現する、および/またはオートクラインループで
継続的に活性化される。事実、RPTK過剰発現(アクバサク(Akbasak
)およびスーナー−アクバサク(Suner−Akbasak)ら、J.Neu
rol.Sci.111:119−133;ディクソン(Dickson)ら、
1992、Cancer Treatment Res.61:249−273;
コーク(Korc)ら、1992、J.Clin.Invest.90:135
2−1360)およびオートクラインループの刺激(リー(Lee)およびドノ
グー(Donoghue)、1992、J.Cell.Biol.118:10
57−1070;コークら、上記;アクバサクおよびスーナーアクバサクら、上
記)は最も普通で重症の癌の原因である。例えば、EGDRは偏平細胞癌腫、星
状細胞腫、グリア芽細胞腫、頭部および頚部癌、肺癌および膀胱癌に関係してい
る。HER2は乳癌、卵巣癌、胃癌、肺癌、腎臓癌および膀胱癌に関係してる。
PDGFRはグリア芽細胞腫、肺癌、卵巣癌および前立腺癌に関係している。R
PTKc−metは一般に肝臓癌発生に関係し、従って肝細胞癌腫に関係してい
る。さらに、c−metは悪性腫瘍生成とリンクしている。特に、c−metは
とりわけ甲状腺癌、膵臓癌および胃癌、白血病およびリンパ腫と関係づけられて
いる。さらに、c−met遺伝子の過剰発現はホジキン病、バーキット病および
リンパ腫細胞株中で検出されている。
【0193】 IGF−I RPTKは、栄養補給とII型糖尿病に関連するに加えて、いく
つかのタイプの癌と関係している。例えば、IGF−Iはいくつかの腫瘍タイプ
、例えばヒト乳癌細胞(アルテアガ(Arteaga)ら、1989、J.Cl
in.Invets.84:1418−1423)および小肺腫瘍細胞(マッコ
ーレー(Macauley)ら、1990、Cancer Res.50:25
11−1517)に対するオートクライン成長刺激因子と考えられている。さら
に、神経系の正常な生育と分化に密接に関連するIGF−Iはヒト神経膠腫のオ
ートクライン刺激因子であると思われる。サンドベルグ−ノルトクビスト(Sa
ndberg−Nordqvist)ら、1993、Cancer Res.5
3:2475―2478。細胞増殖におけるIGF−IRとその調節因子の重要
性は、培養中の多くの細胞(繊維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、T−リンパ球
、骨髄球、軟骨細胞、骨芽細胞、骨髄の幹細胞)がIGF−Iで刺激されて生育
すると言う事実でさらに支持される。ゴールドリング(Goldring)およ
びゴールドリング、1991、Eukaryotic Gene Express
ion I:301―326。一連の最近の文献は、IGF−IRが形質転換の
機構に中心的な役割を果たし、このため、広い範囲のヒトの悪性疾患の治療介在
の好ましい標的となり得る。バーセルガ(Berserga)、1995、Ca
ncer Res.55:249―252;バーセルガ、1994、Cell 7
9:927−930;コッポラ(Coppola)ら、Mol.Cell.Bi
ol.14:4588―4559。
【0194】 しかしながら、RPTKの異常と病気の関わり合いは癌に限られない。例えば
、RPTKは乾せん、真性糖尿病、傷の治療、炎症および神経縮退疾患等の代謝
病と関係している。EGFRは角膜および傷の治療で示される。インスリンRお
よびIGFIRの欠陥は、II型真性糖尿病で示される。特定のRPTKとその治
療効果の間のより完全な相関は、プロウマン(Plauman)ら、1994、
DN&P 7:334−339に示されている。
【0195】 本発明の目的の一部は、栄養源を切り離すことにより腫瘍を直接殺すことので
きるRPTK機能の調節因子を設計することである。正常な血管形成および脈管
形成は、芽細胞発育、傷の治療、器官再生、および排卵および妊娠後の子宮発育
中の黄体中の卵胞発育等の女性の再生プロセス等の様々な生理プロセスに重要な
役割を果たす。フォルクマン(Folkman)およびシン(Shing)、1
992、J.Biological Chem.267:10931−34。し
かしながら、多くの疾病は持続的な規制されない、または不適切な管脈形成で促
進される。例えば、関節炎では、新しい毛細血管が間接に侵入し、軟骨を破壊す
る。糖尿病では、網膜中の新しい毛細血管が水晶体に侵入し、出血し失明させる
。フォルクマン、1987、Congress of Thrombosis a
nd Haemostasis (フェルストレーテ(Verstraete)ら
編集)、Leuven University Press、Leuven、58
3−596頁。眼球の管脈新生は失明の最も普通の原因であり、約20種の眼病
で見られる。
【0196】 さらに、血管形成および/または管脈形成は悪性固形癌および転移に関係し得
る。腫瘍自体が成長するためには、腫瘍は新しい毛細血管の成長を刺激し続けな
ければならない。その上、腫瘍に埋め込まれた新しい血管は腫瘍細胞が循環系に
入り、体の中の離れた部位に転移する通路となる。フォルクマン、1990、J
.Natl.Cancer Inst.82:4−6;クラグスブルン(Kla
gsbrun)およびソーカー(Soker)、1993、Current B
iology3:699−702;フォルクマン、1991、J.Natl.C
ancer Inst.82:4―6;ヴァイドナー(Weidner)ら、1
991、New.Engl.J.Med.324:1−5。
【0197】 生体外で上皮細胞成長促進活性を有するいくつかのポリペプチドが同定されて
いる。それらの例には酸性および塩基性繊維芽成長因子(αFGF、βFGF)
、血管上皮成長因子(VEGF)および子宮成長因子が含まれる。αFGFおよ
びβFGFと異なり、VEGFは最近、上皮細胞特異性細胞分裂誘起物質である
ことが報告されている。フェララ(Ferrara)およびヘンツェル(Hen
zel)、1989、Biochem.Biophys.Res.Commun
.161:851−858;ヴァイスマン(Vaisman)ら、1990、J
.Biol.Chem.265:19461−19566。
【0198】 従って、FGFまたはVEGFに結合する特異的レセプターの同定は、上皮細
胞増殖制御の理解に重要である。flt−1レセプター(シブヤ(Shibuy
a)ら、1990、Oncogene5:519−524;ドフリース(De
Fries)ら、1992、Science255:989−991)およびU
S特許番号08/1193、829で議論されたKDR/FLK−Iレセプター
VEGFR2の、高い親和性でVEGFを結合する2つの関連するレセプターP
TKが同定されている。さらに、FGFに結合するレセプターが同定されている
(ジャイら、1992、Biochem.Acta 1135:185−199
)。従って、これらのRPTKは上皮細胞増殖を制御する可能性が高い。
【0199】 FGFRは脈管形成、傷の治療、芽細胞発育および悪性形質転換に重要な役割
を果たす。バシリコ(Basilico)およびモスカテリ(Moscatel
li)、1992、Adv.Cancer Res.59:115−165。4
種の高親和性哺乳動物FGFR(FGFR1−4)が記述され、細胞外ドメイン
内の別なRNAスプライシングによりさらに多様性を生じる。ジャイら、199
2、Biochem.Biophys.Acta 1135:185−199。
他のPRTKと同様、FGFレセプターの二量体化がその活性かに必須である。
可溶性または細胞表面結合ヘパリン硫酸プロテオグリカンはFGFと協調して機
能し、細胞質ドメイン内の特異性チロシン残基の自己燐酸化をもたらす二量体化
を誘発する(シュレシンガーら、1995、Cell 83:357−360)
。モハマディ(Mohammadi)ら、Mol.Cell Biol.16:
977−989。
【0200】 3種のヒトFGFレセプター遺伝子FGFR1、FGFR2およびFGFR3
の突然変異が、様々なヒト遺伝骨格不全に関係している。FGFR1およびFG
FR2の突然変異は、頭蓋平坦骨の早期融合を招き、アペルト(Apert:F
GFR2)(ウィルキー(Wilkie)ら、1994、Nat.Gnenet
。8:269−274)、ファイファー(Pfeifer:FGFR1およびF
GFR2)(ミュエンケ(Muenke)ら、1994、Nat.Genet。
8:269−274)、ジャクソン−ワイス(Jackson−Weiss;F
GFR2)(ヤブス(Jabs)ら、Nat.Genet.8:275−279
)およびグローゾン(Grouzon:FGFR2)(ヤブスら、1994、N
at.Genet.8:275―279)症候群等の頭蓋骨融合症候群を引き起
こす。対照的に、FGFR3の突然変異は長骨不全と関係し、軟骨形成不全(シ
ャン(Shiang)ら、1994、Cell 78:335−342)、低軟
骨形成症(ベルス(Bellis)ら、1995、Nat.Genet.10:
357−359)および新生児致死恐怖異形成症(タボルミナ(Tavormi
na)ら、1995、Nat.Genet.9:321−328)を含む小人症
のいくつかの臨床的に関連する形態を生じる。これらの突然変異がFGFR3の
チロシンキナーゼ活性の構成活性化をもたらすことが示されている(ウエブスタ
ー(Webster)ら、1996、EMBO J.15:520−527)。
さらに、マウスにおける遺伝子を標的にした実験から、FGFR3の骨の発育生
成に対する基本的な役割が明らかにされた(デング(Deng)ら、1996、
Cell 84:911−921)。
【0201】 生体外でFGFに対し提案された他の主な役割は、脈管形成の誘導である(フ
ォルクマンおよびクラーグスブルン(Klagsbrun)、1987、Sci
ence 236:442)である。従って、FGFの不適切な発現、またはチ
ロシンキナーゼ活性の異常機能は、糖尿性網膜症、リューマチ性関節炎、アテロ
ーム性硬化症および管脈新生等のいくつかのヒト管脈形成病理に寄与すると考え
られる(クラーグスブルンおよびエーデルマン(Edelman)、1989、
Arteriosclrosis)9:269。さらに、FGFは悪性形質転換
に関与していると考えられている。実際、int−2、FGF5およびhst−
1/k−fgfの3種のFGF相同体をコードする遺伝子が最初に癌遺伝子とし
て単離された。さらに、FGFR1およびFGFR2をコードするcDNAがい
くつかの乳癌で増幅される(アドナン(Adnane)ら、1991、Onco
gene 6:659−663)。FGFレセプターの過剰発現もヒト膵臓癌、
星状細胞腫、唾液腺アデノ肉腫、カポシ肉腫、卵巣癌および前立腺癌で検出され
ている。
【0202】 米国同時係属出願番号08/193、829に示された開示等の事実は、VE
GFが上皮細胞増殖に関わるばかりでなく、正常および病的脈管形成の主要な調
節因子であることを強く示唆している。一般論としてクラグスブルンおよびソー
カー、1993、Current Biology 3:699−703;フック
(Houck)ら、1992、J.Biol.Chem.267:26031−
26037参照。さらに、KDR/FLK−1およびflt−1が成長しつつあ
る腫瘍の増殖中の上皮細胞で多量に発現するが、周囲の休止中の上皮細胞中では
発現しないことが示されている。プレート(Plate)ら、Nature 3
59:845−848;スベイキ(Sweiki)ら、1992、Nature
359:843−845。
【0203】 本発明の目的は、臨床疾患と関係するRPTKの不適切な活性を変化させ得る
RPTK機能の調節因子を設計し同定することである。 RPTK機能の調節因
子の合理的な設計と同定は、RPTK3次元構造を定義する構造座標を利用して
達成される。
【0204】 II.疾病の治療薬としてのPTK機能調節因子 上で議論した疾病の結果、生物医学界の科学者は不適切なRPTK活性に関連
する信号伝達経路を調節するRPTK機能の調節因子を探索している。
【0205】 細胞膜を横断し、酸性の環境内で加水分解しないRPTK機能の小分子調節因
子のいくつかが同定されている。例えば、ビス単環式、二環式およびアリール化
合物(PCT WO92/20642)、ビニレンアザインドール誘導体(PC
T WO94/14808)、1−シクロプロピル−4−ピリジルキノン(US特
許No.5、330、992)、スチリル化合物(US特許No.5、217、
999)、スチリル置換ピリジル化合物(US特許No.5、302、606)
、いくつかのキナゾリン結う動体(EP出願No.0566266A1)、セレ
オインドールおよびセレナイド(PCT WO94/03427)、トリサイク
リックポリヒドロキシ化合物(PCT WO92/21660)およびベンジル
ホスホン酸化合物(PCT WO91/15495)がRPTK阻害剤として記
載されている。
【0206】 いくつかのRPTK機能調節因子が知られているが、これらの多くはRPTK
サブファミリーに特異的でなく、従って治療薬として様々な副作用を引き起こす
。しかしながら、オキシインドリノン/チオインドリノンファミリーのいくつか
の化合物はFGFレセプターサブファミリーに特異的であると信じられている(
US特許出願番号08/702、232、1996年8月23日出願、発明者タ
ン(Tang)ら、“インドリノンコンビネーショナルライブラリーおよび関連
化合物、および疾病治療法”)。さらに、オキシインドリノン/チオインドリノ
ンファミリーの化合物は酸性条件で非加水分解性であり、生体適合性が高い。し
かしながらRPTK機能のこれらの調節因子はFGFRサブファミリーの触媒ド
メインを標的にしており、従って細胞外ドメイン中の相互作用によるレセプター
RPTK二量体化および活性化に直接影響することを目的としていない。
【0207】 III.結晶性チロシンキナーゼ 本発明の結晶性RPTKには天然型の結晶、誘導体結晶および共結晶が含まれ
る。本発明の天然型結晶は一般に実質的に純粋な、結晶形中のRPTKの細胞外
ドメインに対応するポリペプチドでなる。好ましい実施態様では、本発明の結晶
はリガンドとの複合体中のRPTKの細胞外ドメインに対応するポリペプチドで
なる。
【0208】 本発明の結晶性細胞外ドメインは天然起源または天然型の細胞外ドメインに限
定されないことを理解する必要がある。実際、本発明の結晶には天然型細胞外ド
メインの突然変異体も含まれる。天然型細胞外ドメインの突然変異体は、天然型
細胞外ドメインの少なくとも1個のアミノ酸残基を異なったアミノ酸残基で置換
する、または天然型ポリペプチド中のアミノ酸残基またはN−またはC−末端を
取り除くことで得られ、実質的に突然変異体が誘導された天然型細胞外ドメイン
と同じ3次元構造をを有する。
【0209】 同様に、細胞外ドメインがリガンドに結合しているある実施態様では、本発明
の結晶は天然型細胞外ドメインの突然変異体と突然変異リガンドを含む。上で議
論した様に、ポリペプチドリガンド中の少なくとも1個のアミノ酸残基を異なっ
たアミノ酸残基で置換するか、天然型ポリペプチド中または天然型ポリペプチド
のN−またはC−末端のアミノ酸残基を付加または取り除くことで、突然変異リ
ガンドを得られ、実質的に突然変異体が誘導された天然型細胞外ドメインと同じ
3次元構造をを有する。
【0210】 実質的に同じ3次元構造を有するということは、突然変異体が由来する天然型
細胞外ドメインおよび/またはリガンドの原子構造座標と重ね合わせ、少なくと
も約50%〜100%のポリペプチドのCα原子が重ね合わせに含まれる場合、
約2Å以下の根平均二乗偏差(rmsd)を有する1組の原子構造座標を有する
ことを意味する。例えば、図3はFGFR1およびカノニカルIG褶曲ポリペプ
チドであるテロキンのD2およびD3領域中の68個の共通Cα原子がrms偏
差0.8Åで重ね合わせられることを示している。
【0211】 ポリペプチドの3次元構造をそれほど乱さないアミノ酸の置換、欠失および付
加は、一部には置換、付加または欠失を生じるポリペプチドの領域に依存する。
分子の可変どの高い領域では、非保存性置換と共に保存性置換が分子の3次元構
造を有意に乱さずに許容される。保存どの高い領域、または重要な2次構造を含
む領域では、保存性アミノ酸置換が好ましいと考えられる。
【0212】 保存性アミノ酸置換は公知であり、アミノ酸残基の極性、荷電、溶解性、疎水
性、親水性および/または両電解質性に基づいて行われる置換が含まれる。例え
ば、負電荷アミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、正電荷ア
ミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ、電荷を持たない類似の疎水性値を
有する極性ヘッドグループを持つアミノ酸にはロイシン、イソロイシン、バリン
、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェ
ニルアラニン、チロシンが含まれる。その他の保存性アミノ酸置換は公知である
【0213】 残体または一部が化学合成で得られるRPTK細胞外ドメインでは、置換また
は付加に用いられるアミノ酸は遺伝的にコードされたアミノ酸に限定されない。
実際、本明細書に報告される突然変異体は遺伝的にコードされないアミノ酸も含
み得る。通常の既知の遺伝的にコードされない多くのアミノ酸に対する保存性ア
ミノ酸置換は公知である。他のアミノ酸に対する保存性置換を、遺伝的にコード
されたアミノ酸の性質と比較したその物理的性質に基づいて決定することができ
る。
【0214】 ある場合は、ポリペプチドの精製またはポリペプチドの結晶化を容易にする、
ポリペプチドをコードするcDNA等のDNA中に便利なクローニング部位を提
供するために、天然型細胞外ドメインのアミノ酸残基を置換する、および/また
は付加することが特に遊離または便利である場合がある。天然型チロシンキナー
ゼドメインの3次元構造を実質的に変化させないこの様な置換、欠失および/ま
たは付加は、通常の技能を有する当業者に明らかであると思われる。
【0215】 本明細書で検討する突然変異体はリガンド結合活性を示す必要がないことに注
意する必要がある。実際、RPTK細胞外ドメインのリガンド結合活性を妨害す
るが、ドメインの3次元構造をさほど変えないアミノ酸の置換、付加または欠失
を、本発明で特に検討する。この様な結晶性ポリペプチド、またはそれから得ら
れた原子構造座標を、天然型のドメインに結合する化合物または分子を同定する
ために用いることができる。これらの化合物または分子は、天然型ドメインの活
性に影響すると考えられる。
【0216】 本発明の結う動体結晶は一般に、少なくとも1個の重金属原子と共有結合した
結晶性RPTK細胞外ドメインポリペプチドでなる。ポリペプチドは天然型また
は突然変異チロシンキナーゼドメインに対応する。誘導体結晶を提供するに有用
な金属原子には金、水銀等がふくまれるが、これらは例であり、それに限られる
ものではない。
【0217】 本発明の共結晶は一般に、少なくとも1個の化合物または他の分子と会合した
結晶性細胞外ドメインポリペプチドでなる。会合は共有結合または非共有結合で
ある。この様な分子にはリガンド、リガンドアナログ、補助因子、基質、基質ア
ナログ、阻害剤、活性化剤、アロステリックエフェクター、ポリペプチド等が含
まれるが、それらに限られるものではない。
【0218】 IV.X線結晶学を用いる3次元構造決定 X線結晶学は分子の3次元構造を解く方法である。分子の構造は、結晶を回折
格子として用いてX線回折パターンから計算される。タンパク質分子の3次元構
造は、そのタンパク質の濃縮水溶液から成長した結晶で生じる。X線結晶学は(
a)ポリペプチドを合成し単離する工程;(b)化合物、調節因子、リガンドま
たはリガンドアナログを含む、または含まないポリペプチドでなる適当な溶液か
ら結晶を成長させる工程;および(c)結晶からX線回折パターンを収集し、単
位格子の寸法と対称を測定し、電子密度を測定し、ポリペプチドのアミノ酸配列
を電子密度に当てはめ、構造を修正する工程を含む。
【0219】 ポリペプチドの製造 本明細書に報告する天然型および突然変異チロシンキナーゼドメインポリペプ
チド全体または一部を、公知の技術を用いて化学的に合成し得る(例えばクレイ
トン(Creighton)1983年参照)。または、公知の方法を、天然型
または突然変異チロシンキナーゼドメインポリペプチドコード配列と、適当な転
写/翻訳制御信号を含む発現ベクターを構築するために使用することもできる。
その方法には生体外組み替えDNA技術、合成技術および生体内組み替え/遺伝
子組み替えが含まれる。例えばマニアチス(Maniatis)ら、1989年
、およびアウスベルら、1989年に報告された技術参照。
【0220】 様々なホスト発現ベクター系をRPTK細胞外ドメインコード配列を発現する
ために使用し得る。これらにはRPTK細胞外ドメインコード配列を含む組み替
えバクテリオファージDNAで形質転換した微生物;プラスミドDNAまたはコ
スミドDNA発現ベクター;RPTK細胞外ドメインコード並列を含む組み替え
酵母発現ベクターで形質転換した酵母;RTPK細胞外ドメインコード配列を含
む組み替えウイルス(例えばバキュロウイルス)発現ベクターで感染した昆虫細
胞;RPTK細胞外ドメインコード配列を含む組み替えウイルス(例えばカリフ
ラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)発現ベ
クターで感染した、または組み替えプラスミド(例えばTiプラスミド)発現ベ
クターで感染した植物細胞外ドメイン系;または動物細胞系が含まれるが、それ
に限定されるものではない。これらの系の発現要素はその強度と特異性が異なる
【0221】 利用したホスト/ベクターによっては、構成および誘導プロモーターを含む数
多くの適当な転写および翻訳の任意のものを発現ベクターに用い得る。例えば、
バクテリア系でクローニングする場合、バクテリオファージλのpL、plac
、ptrp、ptac(ptrp−lacハイブリッドプロモーター)等の誘導
プロモーターを使用し得る;昆虫細胞系でクローニングする場合、バキュロウイ
ルスポリヘドリンプロモーターを使用し得る;植物細胞系でクローニングする場
合、植物細胞のゲノム由来のプロモーター(例えば熱ショックプロモーター、R
UBISCOの小さいサブユニット用プロモーター、クロロフィルa/b結合タ
ンパク質用プロモーター)または植物ウイルス由来のプロモーター(例えばCa
MVの35S RNAプロモーター、TMVの被覆タンパク質プロモーター)を
使用し得る;哺乳動物細胞系でクローニングする場合、哺乳動物細胞のゲノム由
来のプロモーター(例えばメタロチオネンプロモーター)または哺乳動物由来の
プロモーター(例えばアデノウイルス後期発生プロモーター;ワクシニアウイル
ス7.5Kプロモーター)を使用し得る;レセプターPTK細胞外ドメインDN
Aの複数のコピーを含む再生細胞株を発生させる場合、SV40−、BPV−お
よびEBV−系ベクターを適当な選択マーカーと共に使用し得る。
【0222】 DNAの取り扱い法の記載方法、ベクター、様々なタイプの使用された細胞、
ベクターを細胞内に取り込ませる方法、発現技術、タンパク質の精製単離法、お
よびタンパク質の濃縮方法はタンパク質PYK−2に関してUS特許No.58
37524、5837815およびPCT公報WO96/18738に詳細に開
示され、クレーム、図面を含むそれぞれの全ての内容が本明細書に参考文献とし
て含まれている。当業者は、この様な報告が本発明に適用可能であり、本発明に
採用し得ることを理解し得ると思われる。
【0223】 結晶成長 結晶を精製され濃縮されたポリペプチド溶液から様々な技術で成長させる。こ
れらの技術にはバッチ、液体、ブリッジ、透析、蒸気拡散および液滴懸垂法が含
まれる。マックファーソン(McPherson)、1982、ジョンウィリー
(John Wiley)、ニューヨーク;マックファーソン、1990、Eu
r.J.Biochem。189:1−23;ウエバー(Webber)、19
91、Adv.Protein Chem。41:1−36、クレーム、表、図
面を含むそれぞれの全ての内容が本明細書に参考文献として含まれている。
【0224】 一般に、結合した化合物、調節因子、リガンドまたはリガンドアナログを有す
る、またはそれらを持たないRPTK細胞外ドメインに対応するポリペプチドの
濃縮溶液に沈殿剤を加えて本発明の結晶を成長させる。沈殿剤はタンパク質を沈
殿させるに必要な濃度のすぐ下の濃度で加えられる。蒸発を制御して水を除去し
て沈殿条件を作成し、その条件が結晶成長が停止するまで維持される。
【0225】 本発明の代表的な結晶の一つでは、約2.0μLの結合したリガンドを有する
RPTK細胞外ドメインポリペプチドを含む懸垂液滴が、高分解能X線構造決定
に適した結晶を提供することが見出された。等容積のタンパク質溶液(25mM
トリスHCl中10mg/mL、pH8.5、および150mM NaCl)と
保存緩衝液(1.6M(NH42SO4、20% v/vグリセロールおよび10
0mMトリスHCL、pH8.5)を混合し、得られた溶液の懸垂液滴を0.5
mLの保存緩衝液上に20℃でけん濁することで結晶は成長させることが好まし
い。好ましい実施態様では、タンパク質溶液は10mg/mLのFGF2分子に
結合したFGFR1 D2−D3ドメインでなる。
【0226】 本発明の他の代表的な結晶では、1容積のタンパク質溶液(25mMトリスH
Cl中1mg/mL、pH8.5、および150mM NaCl)を4容積の保
存緩衝液(20%PEG4000、0.2M Li2SO4、および0.1Mトリ
スHCl,pH8.5)と混合し、得られた溶液の懸垂液滴を20℃で0.5m
Lの保存緩衝液上にけん濁して結晶を成長させた。好ましい実施態様では、タン
パク質溶液は1mg/mLのFGF1分子に結合したFGFR1 D2−D3で
なる。
【0227】 当業者は、上記結晶化条件を変更し得ることを理解すると思われる。このよう
な変更は単独または組み合わせて使用することができ、それには約1mg/mL
から約50mg/mLのポリペプチド濃度、約10mMから約200mMのトリ
スHCl濃度、約0mMから約20mMのジチオトレイトール濃度、約5.5か
ら約9.5のpH範囲、および約10%から約50%(w/v)のポリエチレン
グリコール;および約1000から約20,000の間のポリエチレングリコー
ル分子量、約0.1Mから約2.5Mの間の(NH42SO4濃度、約0%から
約20%(v/v)の間のエチレングリコールまたはグリセロール濃度、約10
mMからやく200mMの間のビストリス濃度、約5.5から約9.5の間のp
H範囲、および約0℃から約25℃の間の温度範囲を含む保存溶液が含まれる。
所定のpH範囲が維持される限り、HEPES緩衝液等の他の緩衝液も使用し得
る。
【0228】 天然型結晶を重金属原子の塩を含む母液中に浸して本発明の誘導体結晶を得る
ことができる。天然型結晶を約0.1mMから約5mMのチメロサル、4−クロ
ロメルリ安息香酸またはKAu(CN)2を含む溶液に約2時間から約72時間
浸すと、RPTK細胞外ドメインポリペプチドのX線結晶構造の決定に適した同
形置換に使用するに適した誘導体結晶が得られる。
【0229】 天然型結晶をレセプターPTK細胞外ドメインに結合する少なくとも1種の化
合物、リガンドまたはリガンドアナログを含む母液に浸すか、RPTK細胞外ド
メインポリペプチドを少なくとも1種の結合化合物、リガンドまたはリガンドア
ナログの存在で共結晶化して、本発明の共結晶を得ることができる。
【0230】 化合物、リガンドまたはリガンドアナログと複合体を形成したRPTK細胞外
ドメインに対応するポリペプチドでなる結晶を、二つの方法のいずれかで成長さ
せることができる。第1の方法では、化合物、リガンドまたはリガンドアナログ
をRPTK細胞外ドメインに対応するポリペプチドを含む水溶液に、結晶成長の
前に添加する。第2の方法では、化合物、リガンドまたはリガンドアナログを、
RPTK細胞外ドメインに対応するポリペプチドの既存の結晶中に吸収させる。
【0231】 結晶性FGFR細胞外ドメイン/FGF複合体 FGF1−FGFR1およびFGF2/FGFR2複合体の全体構造は、先に
決定したFGF2−FGFR1の構造(図5:プロトニコフら、1999)と類
似している。FGFRリガンド結合ドメインは、短いリンカーで結合した2個の
Ig様ドメインで構成される。FGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR
2構造中のD2およびD3の3次元褶曲構造は、I−セットプロトタイプメンバ
ーであるテロキンの構造に類似し、その中ではβサンドイッチがβシートの2層
で形成されている(ホールデンら、1992)。高度に保存されたジスルフィド
結合がD2およびD3の疎水性コアに埋め込まれ、2つのβシートを架橋してい
る。双方の構造で、D3中のβC−βC'は無秩序になっている(図5)。
【0232】 FGF1−FGFR1とFGF2−FGFR2の構造間の主な差は、βC'と
βEを繋ぐセグメントのコンフォーメーションである(図5)。FGF2−FG
FR2構造では、このセグメントは規則性が高くFGF2と相互作用するが、F
GF1−FGFR1構造では個のセグメントは無秩序であり、原子モデルには含
まれていない。先に決定したFGF2−FGFR2の構造では、このセグメント
も規則性が高く、リガンドと相互作用している(プロトニコフら、1999)。
FGF2−FGFR1構造中のこのセグメントのC−末端では、短いαヘリック
ス(αD)がPROCHECKERにより同定されている(ラスコフスキら、1
993)。本発明のFGF2−FGFR2構造では、C−末端のポリペプチド鎖
は極めてよく似たコンフォーメーションをとるが、αヘリックスとは同定されて
いない。
【0233】 FGF1およびFGF2の双方は、4本鎖逆平行βシートの3個のコピーで構
成される三花弁褶曲構造を取ると以前に報告されている(図5)。レセプターに
結合したFGF1およびFGF2を遊離のFGF1およびFGF2と重ね合わせ
ると、レセプター結合によりFGF1およびFGF2に何らのコンフォーメーシ
ョン変化が生じていないことが示される。さらに、遊離のFGF1およびFGF
2の結晶構造と同様、FGF1およびFGF2双方のヘパリン結合部位に規則的
な硫酸イオンが見られる。FGF2−FGFR1の構造決定された結晶中と同じ
く、FGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR2構造中のリガンドはD2
、D3およびD2とD3を繋ぐリンカー中のレセプターの残基と相互作用する(
図6)。
【0234】 ある説明的な実施態様では、本発明はFGF2分子に結合したFGFR1 D
2−D3ドメインを提供する。本実施態様のD2−D3ドメインは残基142−
365で構成され、従ってD1ドメイン、アシッドボックスおよびD3と膜横断
ヘリックスがない。各D2−D3ドメインは1個のFGF2分子と結合している
。実施例に示す方法で結晶が得られた。天然型結晶、誘導体結晶または共結晶い
ずれかであるFGFR1 D2−D3/FGF2結晶は、正方晶単位格子(即ち
a=b≠c)と空間群P4112を有する。非対称ユニット中にほぼ2回転軸で
関係付けられる2個のFGFR1 D2−D3/FGF2複合体がある。単位格
子の大きさはa=b=98.5Å、c=197.0Å、β=90°である。
【0235】 FGF−D2インターフェース 二つの複合体中の中のFGFとD2間のインターフェースは主として疎水性で
ある(図7および8)。FGF中の溶剤に晒された疎水性表面は、FGFR中の
底にある保存性の高い疎水性表面に対して詰め込まれている。FGF2−FGF
R2構造では、FGF2中のTyr24、Leu140およびMet142がF
GFR2中のAla168と疎水性接触し、FGF2中のLeu140、Tyr
103およびAsn102側鎖の脂肪族部分がFGFR2中のPro170と疎
水性接触している。FGF2のPhe31はFGFR2のLeu166との疎水
性相互作用に組み込まれている。FGFR2のLeu166、Ala168およ
びPro170はD2の底のβA'中に位置する。D2中のβGのC−末端に位
置するVal149も、FGF2−D2インキュベート他0フェース中にあり、
FGF2中のLeu140およびMet142と相互作用している。数個の水素
結合が主として疎水性であるFGF2−D2インターフェースをさらに強化して
いる。すなわち、FGF2中のTyr24の水酸基がFGFR2中のLeu16
6とAla68の骨格原子と2本の水素結合を形成し、Tyr103がAla1
68の骨格と水分子を経由して水素結合を形成している。
【0236】 FGF2−D2インターフェース中のFGF2とFGFR2の間に観測される
相互作用は、FGF2に関する突然変異誘発と完全に符合している。すべてFG
F2−D2インターフェースに位置するTyr24、Tyr103、Leu14
0およびMet140をアラニンで個別に置換すると(図7)、FGFR1の結
合親和性が大幅に減少することが示されている(スプリンガーら、1994)。
【0237】 説明のための実施態様のD2−D3/FGF2複合体のそれぞれ内で、FGF
2はD2、D3および2つのドメイン間のリンカーと強く相互作用する。FGF
R2中のTyr24とFGFR1中のLeu165の間にはには1本の水素結合
が認められるが、D2とFGF2の間の相互作用の主体は疎水性である。例えば
、FGF2のTyr24およびMet142とD2のAka167、FGF2の
Asn102、Tyr103およびLeu140とD2のPro169,および
FGF2のLeu140とFGFR1のVal248の間に疎水性接触が見られ
る。Ala167、Pro169およびVal248はFGFR1−4の間で保
存され、従ってFGFRサブファミリーのメンバー中で治療上重要な部位である
ことは、注目すべきことである。
【0238】 FGF2−FGFR2とFGF1−FGFR1の構造中のFGF−D2インタ
ーフェースを比較すると良く似ている(図7および8)。FGF2とFGF1は
FGF−D2中の2個所でのみ異なる:すなわち、FGF2中のMet142が
FGF1中では相同疎水性残基Leu135で置換され、FGF2中のAsn1
102はFGF1中ではHis93で置換されている。しかしながら、個の残基
の脂肪族部分のみがFGFRと相互作用し、実際の官能基ではないので、この後
者の置換はFGF1のD2への結合に影響しないと考えられる。
【0239】 FGF−リンカーインターフェース D2−D3リンカーはFGFR中で保存性が高い(図15)。FGFとリンカ
ー領域の間の水素結合は、FGFのFGFR経の結合に重要な役割を果たす(図
9および10)。FGF2−FGFR2構造中で、D2−D3リンカーに位置す
る不変アルギニンArg251(FGFR2中)はAsn104の側鎖およびA
sn102の骨格カルボニル酸素と水素結合を形成する(図9)。実際、FGF
2中のAsn104をアラニンで置換すると、FGFR1に対するFGF2の結
合親和性が400倍減少し(チューら、1997)、Asn104とFGFR間
の相互作用の重要性を示している。
【0240】 19個の入手可能なFGFの配列は、FGFの大部分がFGF2のAsn10
4に対応する位置にアスパラギンを有することを示している(図17)。しかし
ながら、FGF8、FGF17およびFGF18はこの位置にその側鎖がアスパ
ラギンより短いトレオニンを有する。これらのFGFはキーとなるリンカーであ
るアルギニン残基と直接水素結合を形成しないと予想され、従ってFGFRに対
してより低い結合親和性を示すと思われる。興味あることに、FGF11、FG
F12、FGF13およびFGF14はFGF2のAsn104の代わりにバリ
ンを有する(図17)。この置換はFGFR結合の大きな減少を生じると考えら
れる。
【0241】 Arg251とFGF2の間の水素結合は、保存性の高いFGFR2中のVa
l249およびPro253、およびFGFR2中のLeu98とPro141
で構成される疎水性ポケット中で行われる(図9)。この疎水性環境の近傍は、
この水素結合を安定化する可能性が高い。その上、FGFR2中のArg251
とAsp283、およびFGF2中のAsn104とTyr106の間の分子間
水素結合は、Arg151のグアニジウム基とAsn104のアミド基の回転自
由度を制限する役割を果たす(図9)。これらの相互作用は、FGF−FGFR
複合体生成のエントロピーを低下させることにより、リガンド結合親和性を増加
させると思われる。実際、FGF2中のTyr106をフェニルアラニンで置換
すると、レセプター結合が5倍減少する結果となった(チューら、1995)。
【0242】 FGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR2構造中のFGF−リンカー
インターフェースの保存性は高い(図9および10)。その上、FGFR−不変
リンカーアルギニンとFGFの間の重要な水素結合を囲む疎水性環境は、双方の
構造でほぼ同一である(図9および/または図10)。FGFとFGFRファミ
リーの既知のメンバーの配列は、FGF−D2およびFGFリンカーインターフ
ェースを構成するFGFおよびFGFR中の残基が4種の哺乳動物FGFR(図
15)および19個の入手可能なFGF(図17)間で保存されていることを示
している。構造および/または配列決定に基づいて、我々は上記のFGF−D2
およびFGF−リンカーインターフェースが全てのFGF−FGFR複合体に対
する一般的な保存性結合インターフェースを表していると考えている。
【0243】 説明のための実施態様におけるFGF2とD2−D3間リンカーとの間の相互
作用はには、FGF2のAsn102とAsn104とFGFR1のArg25
0との水素結合、およびFGF2のLeu98とFGFR1のVal248の間
の疎水性相互作用が含まれる。Arg250はFGFRサブファミリー間では不
変であり、従って治療上重要な部位を表すと考えられる。
【0244】 FGF−D3インターフェース FGF−D2およびFGF―リンカーインターフェースがFGF−FGFR複
合体中で保存されるが、FGF−D3インターフェースの大部分は分散性が高く
、FGF結合特異性の決定因子になる。図11〜14はFGFとD3モジュール
の上部の間の相互作用を示す。これらの相互作用は主としてFGFRのβB'−
βC、βB'−βEおよびβF−βGループで媒介される。βB'−βC中の残基
の保存性は高いが、βB'−βEおよびβF−βGループのアミノ酸配列はFG
FR間でかなり分散している。特に、βC'とβC'−βEループ間の接合部で別
なスプライシングを生じる(図16)。従って、βB'−βEおよびβF−βG
ループはD3の後半部に位置し、別なスプライシングを受ける。D3とFGFの
相互作用には、β三花弁(β1の前)の外側のN−末端セグメントと、β4およ
びβ4−β5ループで構成される中心セグメントの最も分散性の高い領域を含む
FGFのいくつかの領域が含まれる。疎水性相互作用が優先するFGF−D2イ
ンターフェースとは対照的に、FGF−D3インターフェース中のほとんどの相
互作用は水素結合で媒介される。さらに、FGFとD3の間の水素結合の多くは
水分子を経由している。FGF−D3インターフェースの極性は、このインター
フェースがFGF−FGFR結合特異性に重要な役割を果たすという知見と一致
している。
【0245】 FGF2とD3中のβB'−βC間の保存性相互作用は、FGF不変グルタミ
ン酸残基であるFGF2中のGlu96とD3のβB'−βC中のFGFR不変
Gln285の間の4個の水素結合で媒介される(図9および11)。Asn1
04の側鎖とAsp283の骨格カルボニル酸素との間の水が媒介する水素結合
も、このインターフェース中で生成する。FGFR結合に対するFGF2中のG
lu96の重要性が、Glu96の代わりにアラニンを含むFGF2突然変異体
のレセプター結合親和性が1000倍減少していることで確認された(チューら
、1995)。
【0246】 FGFとβB'−βCループ間のインターフェースとは対照的に、FGFとβ
C'−βEループ間の相互作用は可変性が高い。FGF2−FGFR2とFGF
1−FGFR1の結晶構造間の主な差は、βC'−βEセグメントのコンフォー
メーションである(図5)。FGF2−FGFR2構造では、βC'−βEルー
プの規則性が高く、FGF2のβ4中のいくつかと特異的に接触している(図1
3)。一方、このループはFGF1−FGFR1の結晶構造中では無秩序である
(図5)。この差は、このループとFGF1の間の相互作用がないことに反映し
、結晶の詰め込みの結果ではない。すなわち、このセグメントは単位格子中の4
個の全てのFGF2−FGFR2複合体中で規則性であり、単位格子中の2つの
FGF1−FGFR1複合体中では無秩序である。この差の結果、 FGF2−
FGFR2複合体中の表面積2700Å2と比較するとFGF1−FGFR1複
合体中に埋め込まれた接近し得る全表面積は2200Å2である。
【0247】 全部で5個の水素結合がFGF2−FGFR2構造中のFGF2とβC'−β
Eセグメント間のインターフェースに形成される(図13)。2つの水素結合は
FGF2のGln56の側鎖とFGFR2のAsp321との間に形成され、2
個の水素結合がFGF2のGlu58の側鎖とFGFR2中のVal317とA
sn318の骨格原子間に形成される。5番目の水素結合が、FGF2中のAl
a57の骨格とAsp321の側鎖との間に規則的な水分子を経由して形成され
る。FGFR2中のVal317の側鎖と、FGF2中のTyr73、Val8
8およびPhe93の側鎖との間の疎水性接触がこのインターフェースを強化す
る(図13)。突然変異誘発実験は、レセプター結合へのVal88とPhe9
3の両者の関与を支持している。FGF2中でVal88とPhe93をアラニ
ンで置換すると、レセプター結合親和性がそれぞれ10倍および80倍減少する
結果となる(チューら、1998)。
【0248】 βC'−βEループが数種の異なったコンフォーメーションで存在し、異なっ
たFGFとの相互作用がその2次構造を調節することが可能である。FGF2−
FGFR2およびFGF2−FGFR1の結晶構造中では、この領域中の3つの
残基(Ala315、The319およびIle324)間およびD3中のβC
中に位置するIle288間の相互作用によりセグメントは小さな疎水性プラグ
を形成する。占有されていないレセプターでは、これらの残差の側鎖は安定なコ
アを形成するほど十分に疎水性ではない。一方、占有されたレセプターではFG
F2との相互作用がこれらの疎水性残基の位置決めを促進し、より安定な構造を
生成する結果となる。FGF1では、FGF2のGln56に相当する残基はセ
リンであり(図17)、その側鎖はFGFR1中のAsp320と水素結合を形
成するに十分な長さではない。この水素結合の欠如がβC'−βEセグメントの
柔軟性を増加させると考えられる。この領域はFGF1−FGFR1構造中では
無秩序である(図5および10)。
【0249】 上記の構造解析に基づき、FGF1はβC'−βEループとの特異的接触に何
ら関与していないことが提案され、FGF1が様々な違った方法でスプライスさ
れた形を含むほとんどのFGFRと無差別に結合し、全ての既知のFGFRに対
する汎用的なリガンドとして機能する理由の可能な説明となっている。
【0250】 FGF1−FGFR2複合体の結晶構造が最近報告された(スチュアートら、
2000)。本明細書で説明するFGF1−FGFR1の構造とは対照的に、F
GF1−FGFR2の構造ではβC'−βEループは規則的であり、FGF1と
数点で接触している。この構造に基づき、βC'−βEループの1次配列におけ
る変化(異なったスプライシングの結果として)が明らかにFGF1結合に影響
すると考えられる。しかしながら、この構造的な特徴は、FGF1の十分に報告
された汎用的な結合特性と一致しない。
【0251】 既知の全てのFGFRのβC'−βEループは、エクソンIIIbまたはIIIcと
は関わりなく、保存性の高い潜在的なN−グルコシル化部位を含む(FGFR2
中のAsn318)。本明細書に報告の結果は、昆虫細胞中で発現した場合、A
sn318がFGFR2の細胞外ドメイン中でグリコシル化されることを確認す
るものである。FGF1−FGFR2の結晶構造中(スタウバーら、2000)
では、Asn318の側鎖がFGF1と2個の水素結合を形成する。特異性と共
にこの特性の問題が、この構造中で観測されたβC'−βEとFGF1間の相互
作用が結晶の詰め込みのためであり、生体内での状況を反映していないのではな
いかということを考えさせる。
【0252】 全てのFGF−FGFR構造中のD2およびD3の相対的配置の解析は、D2
とD3間の結合が柔軟であり、2つのドメイン間の角度が2つのドメインとリガ
ンド間の接触のみでは説明されないことを明らかにしている。すなわち、結晶の
詰め込みも2つのドメインの相対的配置に影響する。FGF1−FGFR1(本
明細書に報告)およびFGF1−FGFR2(スタウバーら、2000)の構造
は共通のリガンドが特徴であるが、2つの構造間のD2のCα原子の重ね合わせ
から、D2とD3の相対的な方向が7.8°異なっていることを示している。そ
の結果、FGF1−FGFR2構造中のβC'−βEループはリガンドにより近
く、この構造中のβC'−βEループとFGF1の間の相互作用は結晶の詰め込
みの結果であることが理解される。FGF1−FGFR1構造中では、βC'−
βEループは非対称単位格子中の双方の複合体中で無秩序であり、βC'−βEが
FGF1と組み合わされない2つの独立な場合を生じる。
【0253】 FGF1−FGFR2構造の格子定数の解析から、結晶の詰め込みがβC'−
βEループとFGF1間の観察された相互作用に寄与していると考えられる信頼
し得る機構が得られる。この構造では、2つの対称組みのD2が1次二量体の2
つのD3間の空間に挿入され、D3をFGF1分子により近く押しやる様に思わ
れる。
【0254】 二量体化を安定するFGFRとFGF間の相互作用 説明のための実施態様の結晶構造中で観察されたD2−D3/FGF2二量体
は、二量体中の各FGFR間の相互作用と、FGFRに結合したFGFと二量体
中の他のレセプター間の相互作用によって安定化される。二量体化を安定化する
リガンド−レセプター間の接触は、FGF2の残基Asp99、Ser100、
Asn101、Peo132、Gly133およびLeu138、およびFGF
R1のPro199、Asp200、Ile203、Gly204、Glu20
5、Ser219およびVal221間の弱いファンデルワールス相互作用によ
ることが多い。また、FGF2のPro132とFGFR1のGly204,お
よびFGF2のLys26とFGFR1のAsp218間の水素結合も重要であ
る。
【0255】 対照的に、二量体化を安定にするレセプター−レセプター相互作用には各レセ
プターのAla171残基間の疎水性接触、各レセプターのLys172、Th
r173およびAsp218間の水素結合、および書くレセプターのAla17
1とLys172間のファンデルワールス相互作用が含まれる。本発明は、FG
FRサブファミリー中で保存される残基を含め、今までに仮定されなかったレセ
プター−レセプターインターフェースを説明する。
【0256】 例えば少なくとも1個所の接触を阻止する分子による二量体化を安定にする接
触の乱れは、RPTK機能を阻害する手段を提供すると考えられる。また、二量
体生成をさらに安定にする分子は、RPTK機能を刺激する手段を提供すると考
えられる。
【0257】 βC'−βEセグメントのFGF結合特異性の役割における別なスプライシン
グの役割に対する構造的基礎 βC'−βEループとFGF間のインターフェースにおけるFGFおよびFG
FRのアミノ酸配列の比較は、かなりの多様性を示している(図16および17
)。さらに、βC'の末端で別なスプライシングを生じ、βC'−βEループの1
次配列と長さに差を生じる主な原因となっている。例えば、KGFR/FGFR
2(IIIb)中のβC'−βEのアミノ酸配列は7個所の置換位置を有し、FGF
R2(IIIc)の対応する領域よりアミノ酸が2個短くなっている(図16)。
特に、βC'−βE疎水性プラグの生成に関わるFGFR2(IIIc)中の3個の
残基(Ala315、Thr319およびIle324)が、疎水性プラグを生
成する可能性の少ないKGFR/FGFR2(IIIb)中の残基(Ser315
、Ser319およびAla322)で置換されている(図16)。これらの変
化の結果であるKGFR中のβC'−βEループは、FGF2の効果的な相互作
用が不可能であると思われる。この提案は、βC'−βEループがKFGR由来
の対応する領域で置換されているFGF2の突然変異体FGFR2への結合の実
験で支持される。この突然変異体に対するFGF2の親和性は、1桁の大きさで
減少する(グレーら、1995)。逆に、2つの残基の挿入、および/またはK
FGRのβC'−βE中のアミノ酸置換はFGF1結合に影響せず、KGF/F
GF7の結合を失った(ワン(Wang)ら、1995b)。さらに、FGFR
1(IIIc)中の対応する領域の置換は、突然変異レセプターにKGFに結合す
る能力を与え(ワンら、1999)、一方、野生型FGFR1(IIIc)はKF
G/FGF7に結合しない。これらのデータは、FDFR2(IIIc)中のKG
F/KGF7とβC'−βEセグメントの間に立体障害が存在し、KGF/FG
F7のFGFR2(IIIc)経の親和性が減少する結果となったことを示してい
る。反対に、KGFR/FGFR2(IIIb)のβC'−βEセグメントはKGF
/KGF7とより効率的に相互作用すると考えられる。後者の仮説は、βC'−
βEセグメントを含むKGFR/KGFR2(IIIb)由来の合成ペプチドがK
GF/KGFR7のKGFR/KGFR2(IIIb)経の結合と特異的に競合す
るという発見で支持される(ボッタロ(Bottaro)ら、1993)。しか
しながら、これらの提案の最終的な検証は、KGFR/FGFR2(IIIb)と
の複合体中のKGF/FGF7の結晶構造を待つものである。
【0258】 本明細書で説明した構造上の知見はまた、KGFRの特異的認識と活性化に必
要なKFG/FGF7の中心セグメント(残基91−110)の同定と一致して
いる(ライヒ−シロットスキ(Reich−Slotsky)、1995)。こ
の領域は主として、FGF2−FGFR2の結晶構造中でβC'−βEおよびβF
−βGループとそれぞれ特異的折衝をするFGF2中のβ4およびβ4−β5ル
ープに対応している(それぞれ図13および11)。それらを一緒にして、構造
データは別なスプライシングが如何にFGFR2/KFGR系における特異性を
切り替えるかの分子的な説明を提供する。
【0259】 別なスプライシングが特異性に主な役割を果たすが、同様にスプライスされた
FGFRの突然変異体も異なった結合特異性を示す(オルニッツら、1996)
。FGF2はFGFR1(IIIc)およびFGFR2(IIIc)に強く結合するが
、FGFR3(IIIc)およびFGFR4にはほとんど結合しないことが示され
た(チェライア(Chellaiah)ら、1999;ワイニッカ(Vaini
kka)ら、1992)。これらのレセプターのβC'−βEループのアミノ酸
配列の研究から、FGFR4のβC'−βEループはKFGR/FGFR2(III
b)と同様、FGFR1−3中の対応するループよりアミノ酸2個分短いことが
示された(図16)。本明細書に報告する結果に基づき、FGFR4中のこのル
ープはFGF2と効率的に相互作用できないことが予想される。このことはFG
FR1と比較してFGF2のFGFR4に対する結合親和性が減少する結果とな
る。FGFR3のβC'−βEループはFGFR1のものとアミノ酸残基2個分
だけ異なる(図16)。重要なことは、FGFR3中でFGFR2のVal31
7に対応する残基がバリンより小さい側鎖を有するアミノ酸であるアラニンであ
ることである(図16)。このことはFGF2との疎水性相互作用がより弱い結
果となり、FGFR3に対するFGF2の親和性に影響する。実際、FGFR3
中のこれらの残基がFGFR1中の対応する残基で置換された場合、得られたF
GFR3突然変異体はFGF2に対し同等の結合親和性を示した(チェライアら
、1999)。結晶構造中のFGFとβC'−βEループ間の相互作用(図13
)は、βC'−βEループの1次配列組成によりどの様に特異性が制御されるか
の分子的説明を提供する。
【0260】 βF−βGループの役割 D3中のβF−βGループもまた、FGF結合特異性の調節に重要な役割を果
たす。FGF2−FGFR2構造中で、βF−βGループ中に位置するFGFR
2のSer347はFGF2のGlu96およびLeu98と水を媒介する2個
の水素結合を形成する。FGFR2のGky345とFGF2のGly61の間
の水を媒介する水素結合、およびFGFR2中のAsn346の骨格とFGF2
中のArg60の側鎖との間の直接水素結合は、この領域でさらに別な接触を提
供する(図11)。残基Arg60とGly61はFGF2中のβ4−β5ルー
プ中に位置する(図17)。アミノ酸配列の比較から、FGFがFGF2のAr
g60の位置で配列をかなり変化することが示される。一方、 FGF中で残基
Gly61の保存性は高い(図17)。βF−βGループはFGFRのIIIbお
よびIIIc型中で不変である(図16)。しかしながら、FGFR1(IIIc)の
Gly345とSer347はKFGR/KFGR2(IIIb)中のSer34
2とTyr345で置換されている。FGFR2中のSer347のKGFR/
FGFR2(IIIb)による置換は、FGF2と立体障害を起し、KGFR/F
GFR2(IIIb)に対する結合親和性が減少する結果となる。この提案は、K
GFR中のTyr345とGln348がFGFR2中と同様にセリンで置換さ
れている2重突然変異体KGFRのリガンド結合性と一致している。この突然変
異体レセプターは、母体となる分子(グレイら、1955)と比較してFGF2
に対するかなりの結合親和性を獲得している。興味のあることに、βF−βG中
に位置する不変アスパラギン(KGFR中のAsp344)のアラニンへの突然
変異は、試験した全てのFGFに対するKGFR/KGFR2(IIIb)の結合
能を消失させた。これらの結果は我々のFGF−FGFRに基づいて期待された
ことである:FGF2−FGFR2の構造中では、対応するアスパラギン(As
n346)がFGFR2中のIle348およびGly349の骨格原子と2個
の原子間水素結合を形成する。これらの水素結合は、βF−βGループの局所褶
曲構造を維持する上で重要な役割を果たす。Asn346をAla残基で置換す
ると、このループの褶曲を妨害し、全てのFGFと立体障害を生じる可能性があ
る。総合して、D3中の別なスプライシングが異なったレセプターアイソフォー
ムに対するFGF結合特異性をどの様に制御するかの合理的な分子レベルの説明
を、構造データが提供する。
【0261】 FGFのN−末端セグメントの役割 遊離FGF1およびFGF2の結晶構造中で、β1の上流の残基が無秩序であ
ることが見出されている(エリクソン(Eriksson)ら、1991;ブレ
ーバー(Blaber)ら、1996;チューら、1991)。しかしながら、
レセプターに結合したFGF1およびFGF2の結晶構造中では、これらの残基
は規則性であり、FGFRのD3の近傍にある(図12および14)。FGF2
−FGFR2の構造中では、Phe17の側鎖はPro286、Ile288お
よびVal280で形成するD3の浅い疎水性ポケット中に位置している(図1
2)。さらに、Phe17は骨格原子を経由してD3中のSer282とGln
285と数個の水素結合を形成している。Lys18もD3中のLys279と
Glu325、およびFGF3中のVal280の骨格と数個の水素結合を形成
している(図12)。これらの構造の観察と一致して、FGF2(β1の前)の
残基13−18で構成される合成ペプチドがFGF2のFGFRへの結合と競合
する(ヤヨンら、1993)。FGF1中のn−末端セグメントとβ1の間の接
合部に位置するアミノ酸7NYKKPKL13は、細胞をFGF1に暴露し続ける
間に生じるFGF1の核凝集信号を発すると提案されている(イマムラ(Ima
mura)ら、1990)。FGF1−FGFR1構造では、このアミノ酸延伸
部に位置するTyr8がVal279、Pro285およびIle287の側鎖
で形成する浅い疎水性ポケット内に挿入される。本明細書に説明した構造データ
は、この領域にレセプター結合における直接の役割を提供する。欠失突然変異誘
発実験は我々の構造上の知見を支持する。アミノ酸延伸部を欠くFGF1分子は
FGFR結合能力が250倍減少している(イマムラら、1990)。FGFの
構造に基づく配列決定により、FGF中のβ1の上流のセグメント中の配列のか
なりの多様性が明らかとなり、この領域もFGF特異性決定に重要な役割を果た
すことを示唆している(図17)。
【0262】 FGFのβ1前の残基とFGFRのD3中の残基との間の相互作用の観点では
、現在解析されているFGF1またはFGF2中に含まれない別なN−末端残基
も特異性決定に役割を果たすことが可能である。この仮説を試験するため、FG
FR2と複合体を形成する全長FGF2の結晶構造が決定された(データを示さ
ず)。しかしながらこの結晶構造中では、N−末端からPhe17までの全ての
残基が無秩序であり、この領域がFGFR結合の主要な役割を果たさないことを
示唆している。FGF2のN−末端残基の意味は不明のままである。
【0263】 ヒト骨格病に関与するFGFR突然変異体 FGFR1とFGFR2の細胞外ドメインが、ファイファー、クラウゾン、ジ
ャクソン−ワイスおよびアペルト症候群等の頭蓋骨融合症(頭蓋骨縫合の早期融
着)を含む出産異常患者で同定された(ナスキ(Naski)およびオルニッツ
(Ornitz)、1988;ブルケ(Burke)ら、1998)。これらの
突然変異は3つの領域D2−D3リンカー、D3およびD3を膜横断ヘリックス
へ繋ぐリンカー中に集合している。これらの突然変異は2つの群に分類される:
(1)ほとんどの突然変異がシステインの他のアミノ酸への置換、またはその逆
であり、不対システインを生成する結果になる。これはリガンドに依存しない二
量体化と、レセプター分子間の分子間ジスルフィド結合の生成による活性化をも
たらす。(2)システイン置換を含まない突然変異がある。それにも拘わらず、
これらの突然変異も影響を受けたレセプターの構造的活性化(リガンドに依存し
ない)を伴わなければならないが、その理由は遊離システインを生成するこれら
の突然変異と同様な疾病表現型を引き起こすからである。これらの突然変異がレ
セプターの活性化を生じる正確な分子機構はあまり明瞭でない。
【0264】 これらの突然変異のFGFR機能に対する効果の分子的な基礎を理解するため
、我々はこれらの突然変異をFGF2−FGFR2の3次元構造上にマッピング
した(図18)。我々の構造データに基づき、システインと直接関係しないが、
我々はD3における多くの突然変異がD3の3次元構造を不安定化し、ドメイン
内ジスルフィド結合の生成を不利にし、従ってレセプター分子間のジスルフィド
間のジスルフィド架橋の可能性を増すと予想する(図18)。多分、この記述は
Trp290をグリシンまたはアラニンで置換することにより最も良く例示され
ると考えられる。残基Trp290はジスルフィド架橋に隣接したCD3のコア
に位置し、この残基を2つのアミノ酸のいずれかで置換することはD3の安定性
を減少させると思われる(図18)。
【0265】 FGFR2のD2−D3リンカー内の2個の保存性の高い残基Ser252お
よびPro253の突然変異は、アペルト症候群の全ての既知の症例の原因とな
る。FGFR1中の等価なプロリン(Pro252)の突然変異が、ファイファ
ー症候群のある症例で報告されている。我々の構造データに基づき、我々はこれ
らの突然変異がFGFRとFGFの間の特異的相互作用を導入すると予想する。
実際、アンダーソンら(1998)は、野生型FGFR2と比較して、アペルト
突然変異を有する突然変異FGFR2分子がFGF2に対する親和性の選択的増
加を示し、リガンドの供給が限られる場合、シグナル発生を増進する結果となる
(アンダーソンら、1998)。
【0266】 上記の様に、βC'とβE間のアミノ酸延伸部は特性を決定する上で重要な役
割を果たす。残基Asp321はFGF2と3個の水素結合を形成する(図13
)。従って、ファイファー症候群のある症例で検出されるAsp321のアラニ
ンによる置換は、FGF2のFGFR2に対する親和性を減少させると思われる
。このアミノ酸置換がFGFR2のFGFファミリーの他のメンバーに対する親
和性を増加させることが考えられる。βC'−βEループに位置するAla31
5のセリンによる置換も、ファイファー症候群と関連している。残基Ala31
5は疎水性βC'−βEプラグの生成に関与している。個の置換は疎水性プラグ
を不安定化し、リガンド結合特異性に影響し得る。
【0267】 ヘパリン結合峡谷 説明のための実施態様の結晶構造では、二つのリガンドの頂上側上に続く高い
正電荷を有する“峡谷”が二量体中の2個のD2領域の相互作用により形成する
。峡谷はその正電位をFGFR1のリジン160、163、1172、175お
よび177から受け取る。この峡谷はヘパリン結合部位を表すと考えられる。F
GF2もAsn27、Lys125、Gln134、およびArg120で構成
される高親和性ヘパリン結合部位を含み、ヘパリンはFGFR2のFGFR1に
対する見かけの親和性を増加させる。従って、これらの残基は、例えばそのリガ
ンドに対するレセプターPTKの親和性に影響する分子を用いる有用な治療の標
的であると考えられる。
【0268】 ヘパリンがこの渓谷を横断し、FGF:FGFRが1:1の2個の複合体を架
橋すると考えられている。最近報告された2個のFGF:FGFR複合体の他の
二量体集合の結晶構造が個のモデルをさらに支持する(スタウバーら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 97:49−54、2000)。
【0269】 二量体構造に基づき、活性が最も高いドデカサッカライドが渓谷を横断し、リ
ガンドの高および低親和性ヘパリン結合部位を組み合わせることが、手動ドッキ
ング実験から示された。対照的に、渓谷の中心に置かれたオクタサッカライドは
、リガンドの低親和性ヘパリン結合部位とのみ相互作用可能である。渓谷にドッ
キングしたヘキササッカライドはリガンドのヘパリン結合部位のいずれとも相互
作用できず、オクタサッカライドより小さいオリゴサッカライドは生物活性を持
たないことを暗示している。しかしながら、FGF信号発信に必要なヘパリンの
最小の長さの決定には議論の余地がある。最も短い生物活性ヘパリンオリゴサッ
カライドはオクタサッカライドであり、ヘパリンの長さの増加はドデカサッカラ
イドまでは生物活性の増加と平行する。しかしながら、ヘキササッカライドが生
物活性であり、ジサッカライドでも生物活性を有することが他の研究で報告され
ている。
【0270】 このモデルが今までの文献の全てを完全に折り合いを付けることができないた
め、我々はFGFの信号発信における役割をさらに特徴付けることにした。FG
F2−FGFR1−ヘパリン3成分複合体の結晶構造決定を本明細書に報告する
。ヘパリン、FGFおよびFGFR間の相互作用は、1:1のFGF:FGFR
親和性を増大し、2個のFGF−FGFR複合体の二量体化を促進する上でのヘ
パリンの2重の役割に対する分子的な基礎を与える。さらに、構造中で観察され
たFGF:FGFR:ヘパリンの2:2:2の予期しない化学量比のため、我々
は短いヘパリンアナログによるFGF依存性FGFR活性化を説明する新しいモ
デルを提案することにした。
【0271】 FGFRのD2中のヘパリン結合残基の保存性は高いが、FGFファミリーの
ヘパリン結合残基はかなりの多様性を示すことが知られている(ファハムら、C
urr.Opin.Struct.Biol.8:578−586、1998;
ベンカタラマン(Venkataraman)ら、Proc.Natl.Aca
d.Sci.USA、96:3656−3663、1999)。さらに、β1−
β2ヘパリン結合ループの長さは異なったFGFで変化する。この不均一性の結
果、異なったFGFがその最適生物活性を発揮するためには、それぞれ固有の硫
酸基および/または長さを必要とすることが考えられる。事実、FGF2はヘパ
リン結合のために2−O硫酸基を必要とするが、6−O硫酸基を必要としない。
対照的に、FGF1はヘパリンに結合するために双方の硫酸基を必要とする(イ
シハラ、1994)。異なった細胞由来の細胞周辺HSPGは硫酸化パターン、
炭水化物含有量および長さにかなりの不均一性を示す。これれの変化はFGF−
FGFR相互作用に重大な効果を有する。さらに、発育中の細胞外マトリックス
の改造が、FGFの生物活性を制御する手段であると考えられる。
【0272】 本発明の構造のヘパリン結合モードは、ヘパリンがFGF−FGFR二量体化
するに必要な最小の長さの他、FGF:FGFR:ヘパリン相互作用の化学量比
に関する従来の知見に議論を呼ぶものである。結晶構造中で観測されたFGF,
FGFRおよびヘパリン間の三者相互作用は、ヘキササッカライドがレセプター
の二量体化を促進するに充分であることを示唆している。従って、我々はヘキサ
サッカライドがFGF−FGFR複合体の二量体化を生体外で促進する能力を試
験することにした。均一に硫酸化されたヘキササッカライドを様々なモル比で生
成された1:1のFGF1:FGFR2複合体と混合し、反応混合物をサイズ排
除クロマトグラフィーで分析して二量体化を定量した(図31)。ヘキササッカ
ライドをヘキササッカライド:複合体のモル比0.5:1で添加すると、FGF
1−FGFR2複合体の半分を二量体化した(図31、パネルB)。ヘキササッ
カライド:複合体のモル比1:1のヘキササッカライドは、全てのFGF1−F
GFR2複合体を定量的に二量体化させた(図31、パネルC)。過剰のヘキサ
サッカライドは二量体化を減少させ、対照より若干早く溶出するピークが現れる
結果となった(図31、パネルD)。このピークはヘキササッカライド:FGF
1:FGFR2=1:1:1三成分複合体に相当する。ヘパリンがない場合は、
サイズ排除クロマトグラフィー条件下でFGF−FGFR複合体が解離する傾向
を示したことは注目に値し、ヘパリンがFGFのFGFRに対する親和性を増加
し、二量体生成を安定化することを示している。従って、図31似示した生物化
学実験は、結晶中のヘパリン結合モードを支持するものである。
【0273】 本明細書で説明した結晶構造とそれを支持する生物化学実験に基づき、ヘパリ
ンがFGF依存性FGFR二量体化を誘発する新しい“2末端モデル”を提案す
る(図32参照)。このモデルによれば、ヘパリンはその非還元末端を経由して
FGFとFGFRの両者と相互作用し、安定な1:1:1のFGR:FGFR:
ヘパリン複合体の生成を促進する。次いで第2の1:1:1のFGF:FGFR
:ヘパリン複合体がFGFR:FGFRの直接の接触、1つの3成分複合体中の
FGFと他の3成分複合体間の2次相互作用、および間接的ヘパリン媒介FGF
R−FGFR接触により第1の複合体に補充される。ヘパリンがない場合は、レ
セプター−レセプター直接接触および2次リガンド−レセプター相互作用は十分
に二量体化するに十分でない。明らかに、ヘパリンは直接FGFR−FGFR相
互作用とFGF−FGFR相互作用を増加させる。
【0274】 本報告で提示する“2末端”モデルは、還元末端(O1)でタンパク質コアH
SPGに結合するヘパリン硫酸鎖の化学的構造と一致している。さらに、ヘパリ
ン硫酸は低および高硫酸基領域に大別することができる(ガンバリニ(Gamb
arini)ら、Mol.Cell.Biochem.124:121―129
、1993)。低硫酸基領域はタンパク質コアに近い。高硫酸基領域は、我々の
構造で峡谷の中心にあるデカサッカライド結合の非還元末端に対応する非還元末
端(O4)の方向に位置している。さらに、硫酸化度の高い非還元末端の化学的
性質はヘパリンに似ており、HSPGの構築ブロックであると考えられる3硫酸
化ジサッカライドユニット(IdoA、2S−GlcNS、6S)で構成されて
いる(ガンバリニら、Mol.Cell Biochem.124:121―1
29、1993)。事実、これらのヘパリン硫酸の硫酸化度の高い領域は、FG
F1の細胞分裂誘起活性に対するヘパリン硫酸の相乗効果の主な決定因子である
ことが示されている(ガンバリニら、Mol.Cell Biochem.12
4:121―129、1993)。
【0275】 FGF,FGFRおよびヘパリン間の3成分相互作用の性質の研究から、これ
らの相互作用の約半分がカルボキシレート、リンカーおよびヘパリンの環酸素で
媒介されることが示されている。従って、本明細書に提示される結果は、ある種
の合成非硫酸化ヘパリン由来ジ−およびトリ−サッカライドが生体内でFGF依
存性FGFR活性化する、報告された能力に対する構造的基盤を与える(オルニ
ッツら、1995)。均一な硫酸化パターンを有するヘパリンの合成は困難であ
る。本明細書で提示する構造に基づき、硫酸基が類似の官能基で置換された小分
子ヘパリンアナログを設計することが可能である。従って、我々の構造研究は、
FGF活性を調節し得るヘパリン類似体の合理的な設計に対する骨格を確立する
ものである。FGFが脈管形成に果たす重要な役割、およびその生物学プロセス
が与えられると、合成ヘパリン作動剤および拮抗剤は潜在的な治療上の価値を有
すると思われる。
【0276】 結晶性FGFR細胞外ドメイン/FGF1複合体 第2の説明のための実施態様において、本発明はFGF1分子に結合したFG
FR1 D2−D3ドメインの結晶を提供する。本実施態様のD2−D3ドメイ
ンも、残基142−365で構成され、各D2−D3ドメインは1個のFGF1
分子に結合している。結晶は実施例に示す方法で得られた。天然型結晶、誘導体
結晶または共結晶のいずれでもよいFGFR1 D2−D3/FGF1結晶は、
三斜晶単位格子と空間群対称P1を有する。非対称単位中に2個のFGFR1
D2−D3/FGF1複合体が存在し、ほぼ2回転軸で関連付けられている。単
位格子の寸法はは約a=62.55Å、b=64.06Å、C=64.14Å、
α=93.40°、β=111.17°、γ=97.18°である。
【0277】 FGFRとFGF1間の結合相互作用 説明のための実施態様のD2−D3/FGF1複合体中で、FGF1はD2,
D3および2つのドメイン間のリンカーと強く相互作用する。1個の水素結合が
FGF1のTyr15とFGFR1のLeu165の間に見られるが、D2とF
GF1の間の相互作用の主体は疎水性である。例えば、疎水性接触がFGF1の
Tyr15、Leu133およびLeu135とD2のAla167の間、 F
GF1Tyr94、Leu133およびのHis93とD2のPro169の間
、およびFGF1のPhe22とFGFR1のVal248の間に見られる。こ
れらの接触は、D2−D3/FGF2結晶に対し本明細書に報告した接触と同様
である。
【0278】 説明のための実施態様におけるFGF1とD2およびD3間のリンカーの間の
相互作用には、FGF1のHis93およびAsn95とFGFR1のArg2
50間の水素結合が含まれる。これらの接触も、D2−D3/FGF2結晶で本
明細書に報告した接触と同様である。
【0279】 さらに、FGF1のいくつかの領域が、Val279、Pro285およびI
le287で形成されたD3中の疎水性ポケット中に挿入されたTyr8を含め
、D3と相互作用する。さらに、Tyr8はFGFR1のGln284との水素
結合に関与する。FGFファミリーのメンバー間で様々である領域内で、FGF
1の残基46、48−51および54はFGFR1のGln284、Pro28
5、His286、Gly344およびAsn345とファンデルワールス接触
を行う。FGF2のAla57、およびFGF1のGlu49はFGFR1のH
is286と水素結合を形成する。D2−D3/FGF2結晶について本明細書
に報告した様に、この後者の領域はFGFRの結合特異性を決定する上で重要で
あり、従って治療上重要な部位であると考えられる。
【0280】 ポリペプチドまたはポリペプチド複合体の単位格子寸法および3次元構造の決 結晶が成長するとガラスキャピラリーに入れ、X線発生装置およびX線検出装
置に接続した保持具上に搭載する。X線回折パターンの収集は文献に十分報告さ
れている。ジュクリュー(Ducruix)およびガイゲ(Geige)、19
92、IRL プレス、英国オックスフォード、およびその引用文献。X線ビー
ムが結晶に入り、そこから回折する。X線検出装置を結晶から発散する回折パタ
ーンを記録するために用いられる。これらの装置の古いモデル上のX線検出装置
はフィルムであるが、近代の装置はX線回折散乱をデジタルで記録する。
【0281】 ペプチド分子またはペプチド複合体の結晶形の3次元構造を得る方法は公知で
ある。ジュクリュー(Ducruix)およびガイゲ(Geige)、1992
、IRL プレス、英国オックスフォード、およびその引用文献。以下にX線解
説データから分子または複合体の3次元構造を決定するプロセスを記す。
【0282】 結晶からX線回折パターンを収集後、単位格子の寸法および結晶中の配向を決
定する。それらは回折放射光からの距離、およびこれらの放射光がつくるパター
ンから決定できる。単位格子の寸法は、オングストローム単位(1Å=10-10
メートル)と各頂点での角度で特徴付けられる。結晶中の単位格子の対称もこの
段階で特徴付けられる。結晶中の単位格子の対称は、繰り返しパターンを同定す
ることで収集したデータの複雑さを簡略にする。対称と単位格子の寸法の応用を
以下に記す。
【0283】 各回折放射はベクターとして特徴付けられ、この方法のこの段階で収集された
データが各ベクターの振幅を決定する。ベクターの位相は複数の方法で決定し得
る。一つの方法では、結晶中に重原子を吸収させるが、この方法は同形置換と呼
ばれる。ベクターの位相はこれらの重金属をX線解析の参照点として用いて決定
される。オトウィノウスキー(Otowinowski)、1991、ダレスブ
リー(Daresbury)、英国、80−86。同形置換法には通常、1個以
上の重原子誘導体が必要である。別な方法では、既に決定された構造を有する結
晶性ポリペプチドからのベクターの振幅と位相を、構造未知の結晶性ポリペプチ
ドからの振幅に適用し、その結果からこれらのベクターの位相を決定する。個の
2番目の方法は分子置換として知られ、参照として用いられるタンパク質の構造
は問題のタンパク質と近似した構造を持つ必要がある。ナザラ(Nazara)
、1994、Protein 11:281−296。従って、本明細書に報告
する様な既知の構造のレセプターPTKからのベクター情報は、構造未知の他の
レセプターPTKの分子置換解析に有用である。
【0284】 結晶の単位格子を記載するベクターの位相が決定されると、ベクター振幅およ
び位相、単位格子の寸法、および単位格子の対称をフーリエ変換関数の項として
使用できる。フーリエ変換関数がこれらの測定から単位格子内の電子密度を計算
する。単位格子内で分子または分子複合体の一つを記載する電子密度は、電子密
度マップと呼ばれる。配列のアミノ酸構造、または結晶性ポリペプチドと複合体
を形成した化合物の分子構造を、次に様々なコンピュータープログラムを用いて
電子密度に当てはめる。プロセスのこの工程は時にはモデル構築と呼ばれ、TO
M/FRODO等のコンピュータープログラムを用いて行われる。ジョーンズ(
Jones)、1985、Method in Enzymology 115:
157−171。
【0285】 次に理論的な電子密度マップを、実験的に決定した電子密度に合うアミノ酸構
造から計算する。理論的および実験的電子密度マップを相互に比較し、これらの
2つのマップ間の一致をR−因子と呼ばれるパラメーターで記載する。R−因子
が低い値であることは、理論的および実験的電子密度マップ間の電子密度の重な
り度が高いことを意味する。
【0286】 次にR−因子を、理論的電子密度マップを精密化するコンピュータープログラ
ムを用いて最小にする。X−PLOR等のコンピュータープログラムが当業者に
よりモデルの精密化に用いられる。ブリュンガー(Brunger)ら、199
2、Nature 355:472−475。精密化は反復法により行われる。
最初の工程では電子密度マップで定義された原子のコンフォーメーションを変化
させる。原子のコンフォーメーションを、結合の振動周期を増加させ、構造中の
原子の位置を変化させる温度上昇をシミュレートすることにより変化させる。電
子動揺プロセスにおける特定の点で、可能な結合角と結合長さ、ファンデルワー
ルス相互作用、水素結合、イオン性相互作用および疎水性相互作用に換算して原
子間の相互作用を定義する力の場を原子系に適用する。有利な相互作用を自由エ
ネルギーに換算して記載し、自由エネルギーの最小値が得られるまで原子を何回
も反復して移動させる。この精密化プロセスをR値が最小値に達するまで反復す
る。
【0287】 分子または分子複合体の3次元構造は、最小R値で特徴付けられる理論的電子
密度に当てはまる原子で記載される。各原子を3次元中の座標で定義する3次元
構造に対しファイルを作成する。この様な構造座標ファイルの例が表1−4およ
び6に定義される。
【0288】 V.幹細胞因子 幹細胞因子(SCF)は、造血細胞の生存、増殖および分化に関係する成長因
子である。SCFはまた、肥満細胞成長因子(MCGF)、スチール(Sl)細
胞因子(SLF)またはkitリガンド(KL)として知られている。SCFは
肥満細胞生産および機能に重要であり、メラノサイト、生殖細胞および腸ペース
メーカー細胞の発育に重要な役割を果たす。SCFは、c−kitと命名される
レセプタータンパク質チロシンキナーゼに結合し活性化することにより、その生
物的効果を媒介すると信じられている。他のRPTKリガンドと同様、SCFは
c−kitの二量体化と、その後の細胞質タンパク質チロシンキナーゼドメイン
のトランス自己燐酸化を誘発し、信号発信タンパク質、基質のチロシン燐酸化お
よび複数の信号発信経路の補強を導く。
【0289】 幹細胞因子(SCF)は肥満細胞、メラノサイトおよび生殖細胞の生存、増殖
および分化を刺激することにより、造血に重要な役割を果たし得ると信じられて
いる。その造血回復促進能のため、SCFは動物およびヒトの双方で十分に試験
されている。SCF処理により末梢血好中球および造血先祖細胞の数を増加させ
、血小板およびリンパ球の数を適度に増加させることが示されている。SCFは
単独、または他のサイトカインと組み合わせて、化学療法の血液損傷を減らすた
めに用いられる。別な臨床試験では、SCFはG−CSFの能力を増進し、末梢
血造血先祖細胞および幹細胞を運動させるのに有効であることも証明されている
。骨髄除去治療を受けた患者にこれらの細胞を移植して造血系を再構成すること
も可能と信じられている(ニコラ(Nicola)ら、Protein Che
m.52,1−65(1998))。
【0290】 SCFは天然では膜固定で存在し、可溶性同形は別なRNAスプライシングと
プロテアーゼ処理により得られる。SCFの可溶形は165個のアミノ酸を有す
るが、そのレセプター結合コアは最初の141残基にマッピングされている(ラ
ングレイ(Langlet)ら、Arch.Biochem.Biophys.
311:55−61、1994)。SCFは非共有結合ホモ二量体として機能す
るが、瀬入り条件下ではSCFの大部分は単量体として存在すると報告されてい
る。SCFの二量体化は動的なプロセスであり、SCFR結合親和性と炉瀬ぷた
ー活性化の制御に調節的役割を果たすと考えられる。
【0291】 SCFと他の成長因子との比較 SCFは短鎖ラセン状サイトカインファミリーに属する(バザン(Bazan
)、1991;ロツバルスキ(Rozwarski)ら、1994)が、他のサ
イトカインとの類似性はその全体としての褶曲構造に限られている。1次構造は
極めて弱い類似性を示し、配列は2次構造の比較でのみ決定される(図20)。
SCFの構造はM−CFSの構造に最も似ている(パンディット(Pandit
)ら、Science 258:1358−1362、1992)。2つのタン
パク質のコアである4本のヘリックス束は比較的良く重なり合い、αC原子でr
ms偏差は1.98Åである。しかしながら、ヘリックスを重ね合わせると、2
本のβ鎖はかなり外れる。残基29から41および残基90から98のSCFの
2本のループはM−SCFのものより突き出している。二量体のインターフェー
スで、残基61から72由来のSCFループもコアから遠くに突き出し、第2の
プロトマー由来の同じループと詰め合っている。本明細書に報告するX線結晶学
の研究では、2個のM−CSFプロモーター間の接触に比べてSCFの2個のプ
ロモーター間がより接触している。さらに、M−CSFは分子間ジスルフィド結
合で繋がれた共有結合ホモ二量体であるが、SCFは非共有結合ホモ二量体であ
る。Rlt3リガンドも非共有結合ホモ二量体であるが、M−CSFと同様に余
分な分子間ジスルフィド結合を有する。それにも拘わらず、flt3リガンドの
構造(ハナム(Hannum)ら、Nature 368:643−648、1
994)は、以前に報告されたM−CSFの結晶構造(パンディットら、Sci
ence 258:1358−1362、1992)と共に、本明細書に報告す
る結晶構造に基づき妥当な確信をもって予見し得る。
【0292】 ジスルフィドで結合した、レセプターチロシンキナーゼの他の2つレセプター
チロシンキナーゼであるのPDFGおよびM−CSFホモ二量体とは対照的に、
SCFは非共有結合ホモ二量体として機能する(パンディットら、Scienc
e 258:1358−1362、1992)。SCFの2価結合性がc−ki
tの細胞外リガンド結合ドメインの二量体化に寄与する原動力である。従って、
SCF二量体生成を制御する分子相互作用の解析が、c−kitの活性化機構を
理解する上で重要である。
【0293】 SCFの二量体化はpHおよび塩濃度の変化に敏感であることが知られている
。この性質は、インターフェースが部分的には周辺での塩架橋を経由する極性相
互作用と、インターフェースのコアに埋め込まれた極性残基間の水分子を媒介と
する水素結合で生成するという事実によると考えられる。SCFの二量体化に関
与する残基を同定する試みで、Phe63Cys突然変異体が発生し、レセプタ
ー結合活性が検討された(フュー(Hsu)ら、J.Biol.Chem.27
1:6406−6415、1997)。この突然変異により共有結合SCF二量
体が生成することが示された。しかしながら、突然変異SCF二量体は生物学的
には不活性であった。本明細書で報告するSCFインターフェースの構造は、こ
の突然変異体の活性の欠如がうまく説明されている(図21参照)。この構造で
は、2個の対称的に関係したPhe63の側鎖間の最短距離は8Åであり、十分
に配位した水分子がその間を占める。SCF二量体の2次および3次構造を乱さ
ずにこれらの2個の残基間にジスルフィド結合を生成することは不可能である。
【0294】 SCFのドメインの交換および共有結合二量体 組み替えSCFは、E.coli中に変性形で抱合体として発現し、再褶曲お
よび酸化を含むプロセスで活性SCFが生成する。再褶曲−酸化タンパク質のご
く一部がSCFの共有結合ジスルフィド結合型であることが以前に報告されてい
る。興味のあることに、共有結合SCF二量体は若干親和性が低下してc−ki
tと結合するが、造血細胞の刺激にはより強力である。分光学的方法により2次
および3次構造を比較すると、共有結合二量体は非共有結合二量体と区別できな
いことが示された(ルー(Lu)ら、J.Biol.Chem.271:113
09−11316、1996)。驚くべきことに、共有結合二量体のジスルフィ
ド結合は、突然変異タンパク質中のジスルフィド結合が分子間であること以外は
非共有結合二量体のジスルフィド結合と同じであることが見出された。すなわち
、1つのプロモーター由来のCys4およびCys43は、第2のプロモーター
のCys89およびCys138それぞれとジスルフィド結合を形成している。
従って、共有結合二量体は、2つのモノマー間のヘリックスαAおよびαDの3
次元ドメインの交換で生成し得ることが提案された(ルーら、J.Biol.C
hem.271:11309−11316、1996)。本明細書に報告される
SCFの3次元構造を詳細に調べると、二量体のC2対称によりこれらのヘリッ
クスがプロモータ間で交換されるが、全体の構造と各プロモーターの尾部での表
面は同じに保たれることが示される。図23はヘリックスαAとαDを2つのプ
ロモーター間で交換することにより作成したモデルを示す。興味のあることに、
最初の二量体由来のヘリックス間のコア似おける相互作用は、交換されたモデル
中でも保存されるが、C2軸周りのループと分子鎖の配向は調節される必要があ
る。ジスルフィドペアは、それらが非共有結合二量体では分子間であり、共有結
合二量体では分子内であること以外は両者の形で同一である。IL−5、IL−
10およびIFN等の他のヘリックス束サイトカインは類似の共有結合で組み合
わされた二量体を自然に形成すると報告されていることは注目に値する。一方の
のプロモーター由来のIL−5、ヘリックスαDおよび鎖2では、他方のプロモ
ーター由来のヘリックスαA、αB,αCおよび鎖1と共に2ドメイン二量体の
1角ドメインを形成する。実際、構造の対称性のために、単量体IL5突然変異
体を生成することが可能であった(ディカソン(Dickason)ら、Nat
ure 379:652−655、1996;ディカソンら、J.Mol.Me
d.74:535−546、1996;エドガートン(Edgerton)ら、
J.Biol.Chem.272:20611−20618)。同じ証拠により
、新しいタイプの組み込まれた共有結合SCF二量体を、ヘリックスαAと鎖1
、および鎖2とヘリックスαDの間に共有結合二量体構造に有利である突然変異
を導入することにより形成することも可能であった。ヘリックス状サイトカイン
間の尾と畳構造と二量体対称の類似性は、それらの共通の起源を反映していると
考えられる。
【0295】 3次元ドメイン交換はオリゴマー集合の一般的規制機構であると考えられてい
る。即ち、オリゴマーは、進化の間、または制御された実験室条件下でドメイン
を交換することにより安定な単量体から生成する(ベネット(Benett)ら
、1995)。正常な生理条件下では、可溶性SCFの大部分は単量体として存
在することが示唆されている。SCFの単量体と二量体間のバランスは、生体内
の標的細胞上でc−kitを活性化する生理的要請と結びついていると思われる
。しかしながら、治療上の目的では、造血の回復を刺激する一方で肥満細胞の有
意な活性化を避けるため低用量で投与し得るため、より強力なジスルフィド結合
が一般に好ましい(ノッカ(Nocka)ら、Blood 90:3874−3
883、1997)。
【0296】 SCFのレセプター結合領域 SCF二量体は可溶性または膜結合型のc−kitと高い親和性と特異性で結
合することが知られている。SCFのc−kitへの結合を、部位指向突然変異
誘発と、部位特異性抗c−kit抗体によるエピトープマッピングによる生化学
的方法で解析した。N−末端からの残基1から3の欠失が、SCFのc−kit
への結合を約50%減少させることが報告された。Cys4の欠失はSCFを不
活性化するが、Cys138の欠失とC−末端からの追加残基はSCF活性を変
えただけであった。その上、1対のジスルフィド結合を除去するSCFのCys
43AlaおよびCys138ALaの二重突然変異も、部分的に活性なSCF
を与える結果となった。これらの実験は、SCFのN−末端、およびCys4−
Cys89ジスルフィド結合の完全さが完全なCSF活性に重要であることを示
した。
【0297】 様々なSCF/M−CSFキメラタンパク質の活性を解析することにより、A
rg121、Asp124、Lys127およびAsp128がSCF活性に必
須であることが示された(マトウス(Matous)ら、Blood 88:4
37−444、1996)。その上、SCF上の異なったエピトープを中和する
抗体を使用することにより、アミノ酸61から65、および91から95の両側
に位置する領域もSCF活性に必須であることが示された(メンジアズ(Men
diaz)ら、Eur.J.Biochem.239:842−849、199
6)。一般に生化学的方法でマップされた領域は、各SCFの尾の領域のごく近
傍に位置する。この領域はαCの末端に疎水性残基Phe102、Leu98、
Pro34、Tyr32、およびCys43−Cys138ジスルフィド架橋で
つくられた深い割れ目を含む(図24参照)。割れ目に続いて、3個の荷電パッ
チ、すなわち正荷電パッチ(Arg5、Arg7およびLys127)と、その
後の負荷電パッチ(Asp84、Asp85、Glu88およびGlu92)、
さらに正荷電パッチ(Lys91、Lys99、Lys100およびKys10
3)がある。図24は正荷電パッチと負荷電パッチと共に、疎水性割れ目を示す
。この表面はリガンド/レセプター相互作用に対すしアンカーおよび特異性を提
供する荷電した相互作用、および複合体形成のためのエンタルピーを提供する疎
水性相互作用を有するレセプター結合部位として機能する。
【0298】 ヒトおよびげっ歯類のSCFの保存性は高いが、レセプター結合領域の一部と
して機能する荷電パッチは極めて多様である(図25参照)。げっ歯類ではヒト
SCFの第1の正荷電パッチ中の残基Arg5とArg7がグリシンおよびプロ
リン残基それぞれで置換される。第2の正荷電パッチでは、マウスとラットで残
基Lys100とLys91がグルタメート残基で置換される。これらの荷電は
、報告されたヒトc−kitに対するヒトおよびマウスSCFの結合親和性にお
ける差の理由である。
【0299】 天然およびCHO細胞由来の組み替えSCFを複数のアスパラギン、セリンお
よびトレオニン残基でグリコシル化する。グリコシル化SCFのレセプター結合
性は、図24で示したSCFR結合領域の割り当てと一致している。SCFの機
能性コア中に4つの推定アスパラギングリコシル化部位−Asn65、Asn7
2、Asn93およびAsn120−がある。Asn72はグリコシル化されて
いないが、その理由はおそらく、その側鎖が二量体インターフェース中に埋め込
まれているためと思われる。しかしながら、Asn120、Asn65およびA
sn93の側鎖は構造中で溶媒に接近可能なままであり、実際、異なった程度で
グリコシル化されている。Asn120は常にグリコシル化されるが、これはS
CFのc−kitに対する結合に影響しない。対照的に、Asn65とAsn9
3はすべてではなく、いくつかのSCF分子でグリコシル化されている。重要な
ことは、これらのアスパラギン残基のグリコシル化がSCFのSCFRに対する
結合に悪影響を及ぼすことである。本明細書で報告した構造は、これらの残基の
グリコシル化のSCF活性に対する悪影響の説明を提供する。Asn93のグリ
コシル化は、この残基が酸性パッチと疎水性割れ目のごく近くに位置しているの
で、SCFのc−kitへの結合を妨げると思われる。一方、Asn65は二量
体インターフェースの近くに位置し、この残基のグリコシル化はSCFの二量体
化を妨害すると考えられる。
【0300】 SCF:SCFR複合体のモデル いくつかのレセプターチロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインは複数
のIg様ドメインを含む。例えば、FGFレセプターの細胞外ドメイン外ドメイ
ンは3個のIg様ドメインを含むが、c−kitが属するPDGFレセプターフ
ァミリーの細胞外ドメイン外ドメインは5個のIg様ドメインで構成される。同
様に、VEGFレセプターの細胞外ドメイン外ドメインは7個のIg様ドメイン
を含むと報告されている。これらのレセプターのリガンドは極めて多様であるが
、レセプターの3種のファミリー中のリガンド結合領域がIg様ドメイン2およ
び3にマッピングされている(例えばプロトニコフら、Cell 98:641
−650、1999参照)。FGFおよびVEGFレセプターのリガンド結合ド
メインの構造決定は、FGFおよびVEGFがそれぞれのレセプターに異なった
方法で結合することを示した。FGF:FGFR複合体では、2つのレセプター
は1つの面を向き合わせて詰め込まれ、リガンドが第2の面を占有している。一
方、2つのVEGFRはVEGF二量体の離れた末端に結合し、リガンドが大文
字Aの横棒を表す反転“A”形の複合体を生成する。SCFは二量体として機能
するので、c−kitに対するSCF結合はVEDFGF:VEGFR複合体に
対して報告された構造に類似すると期待される。
【0301】 SCF二量体のX線結晶構造が、SCF:c−kit複合体形成および二量体
化のモデルを構築するために用いられた。FGFRの構造を鋳型として用いて、
Ig様ドメイン2−3に対するモデルの他、c−kitの4−5に対するモデル
が開発された。次いでIg様ドメイン2−3を、FGF2に対するFGFR結合
様式をとる提案されたSCF結合表面とドッキングした(プロトニコフら、Ce
ll 98:641−650、1999)。さらに、Ig様ドメイン4および5
の配向を調節して、先の生化学研究で示唆された様なドメイン4間の相互作用を
可能にした(ブレヒマン(Blechman)ら、Cell 80:103−1
13、1995;図26参照)。
【0302】 c−kitはM−SCFR、PDGFRα、PDGFRαおよびflt3も含
むRTKのあるファミリーに属する。それらの1次構造を比較すると、これらの
RTKはそのリガンドよりはるかに保存されていることが示される。実際、PF
GF−AおよびPDGF−Bの構造は、M−CSFおよびSCF、多分fltリ
ガンドの構造とも劇的に異なっている。RTKの類似性はまた、そのヒトおよび
マウス遺伝子の染色体の局在化に反映している(コンドー(Kondo)ら、G
ene 208:297−305、1998)。このRTKのファミリーは、い
くつかの遺伝子複製を行った共通の祖先遺伝子から進化したと考えられる。4束
ヘリックス構造を有するリガンド(すなわちM−CSF、SCF)に結合し活性
化されるRTKは、まず造血に関与するが、RTKの個のファミリーの他のメン
バーはより広い発現パターンを示し、成長の制御といくつかの組織および器官の
発育に関与している。
【0303】 SCFの3次元構造の決定は、c−kitの細胞外ドメインを有する複合体中
のSCFの構造決定を促進し、治療用SCFアナログのより強力な形の設計と生
産を可能にする。本明細書に報告した詳細な構造で、治療の可能性の高い新規S
CF突然変異体の設計が今や可能である。
【0304】 VI.結晶および原子構造座標の使用 本発明の結晶、特にそれから得られた原子構造座標は、多様な用途を有する。
例えば、本明細書に報告された結晶を公知の任意の方法でRPTKに対する出発
原料として使用し得る。この様な使用法には、例えばRPTKの天然または突然
変異細胞外ドメインに結合する分子の同定が含まれる。結晶と構造座標は、新し
い治療薬の開発に向けたアプローチとして、RPTK機能の調節因子である化合
物を同定するのに特に有用である(例えばレビッツキ(Levitzki)およ
びガーツィット(Gazit)m1955、Science 267:1782−
8)。
【0305】 本明細書に報告した構造座標を、別な天然型または突然変異レセプターPTK
細胞外ドメインの結晶の他、リガンド、リガンドアナログ、阻害剤、活性化剤、
拮抗剤、作動剤、ポリペプチド、および他の分子と複合体を形成したドメインの
共結晶の構造決定の位相決定モデルとして使用し得る。構造座標と、それから得
られた3次元構造のモデルを、NMRで得られる構造等の天然型または突然変異
レセプターPTKの溶液系構造の解明の一助として使用できる。従って、本発明
の結晶および構造座標は、レセプターチロシンキナーゼの構造と機能を解明する
ための便利な手段を提供する。
【0306】 簡便化と議論の目的で、本発明の結晶を特定のFGFR1 D2−D3/FG
F2およびFGFR1 D2−D3/FGF1の結晶例を参照して説明する。当
業者は、本明細書に記載された原理は、PFGFR、EGFR、VEGFR、H
GFR、ニューロトロピンR、HER2、HER3、HER4、インスリンR、
IGFR、CSFIR、FLK、KDR、VEGGFR2、CCK4、MET、
TRKA、AXL、TIE、EPH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK
、RORI、MUSK、FGFR1、FGFR1、FGFR3およびFGFR4
等のFGFRファミリーのメンバー、およびオルファンレセプターPTKを含む
がそれに限定されない、任意のレセプターチロシンキナーゼの細胞外ドメインの
結晶に一般的に適用し得ることを理解すると考えられる。
【0307】 VII.構造座標を用いる構造未知のPTKの構造決定 表1−4および6に示した構造座標を、構造未知のRPTKの3次元構造決定
に使用することができる。以下に記す方法は、構造既知のポリペプチドの構造座
標を、アミノ酸配列、X線結晶学回折データ、または各磁気共鳴(NMR)デー
タ等の他のデータセットに適用することができる。本発明の好ましい実施態様は
、レセプターPTKと関連するポリペプチドの3次元構造決定に関する。これら
にはPFGFR、EGFR、VEGFR、HGFR、ニューロトロピンR、HE
R2、HER3、HER4、インスリンR、IGFR、CSFIR、FLK、K
DR、VEGGFR2、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、EPH
、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、RORI、MUSK、FGFR1
、FGFR1、FGFR3およびFGFR4、およびオルファンレセプターPT
K等のレセプターPTKが含まれる。
【0308】 アミノ酸の相同を用いる構造 相同モデル化は、構造既知のポリペプチドの構造座標を構造未知のポリペプチ
ドのアミノ酸配列に適用する方法である。この方法は、ポリペプチドまたはポリ
ペプチド複合体の3次元構造のコンピューター表示、構造既知および未知のポリ
ペプチドのコンピューター表示、およびアミノ酸の構造の標準コンピューター表
示を用いて行われる。相同モデル化は(a)構造既知および未知のポリペプチド
のアミノ酸配列を決定する工程;(b)既知の構造中の保存性アミノ酸の座標を
、構造未知のポリペプチドの対応するアミノ酸に移す工程;(c)ポリペプチド
の残りの構造を構築する工程;および(d)サブセット3次元構造を精密化する
工程でなる。当業者は、2つのタンパク質間の保存性アミノ酸を配列決定工程(
a)で決定し得ることを理解すると考えられる。
【0309】 上記の方法は当業者に公知である。グリール(Greer)、1985、Sc
ience 228:1055;ブルンデルら、1988、Eur.J.Bio
chem.1172:513。当業者により相同モデル化に現在利用されている
コンピュータープログラムは、モレキュラーシミュレーション社(Molecu
lar Simulation Inc)によるInsightIIモデル化パッケ
ージ中の相同モジュールである。
【0310】 アミノ酸配列決定は、まず構造既知のポリペプチドのアミノ酸配列のコンピュ
ーター表示を構造未知のポリペプチドのアミノ酸配列上に置くことで行われる。
次に配列中のアミノ酸を比較し、相同であるアミノ酸のグループ(例えば脂肪族
、芳香族、極性または荷電等の化学的性質で類似のアミノ酸側鎖)を一緒にグル
ープ分けする。この方法により、ポリペプチドの保存性領域を検出し、アミノ酸
の挿入または欠失を明らかにする。
【0311】 構造既知および未知のポリペプチドのアミノ酸配列が決定されると、既知の構
造のポリペプチドのコンピューター表示中の保存性アミノ酸の構造がその構造が
未知のポリペプチドの対応するアミノ酸に移される。例えば、構造既知のアミノ
酸配列中のチロシンが、構造未知のアミノ酸配列中の対応する相同アミノ酸であ
るフェニルアラニンで置換される。
【0312】 非保存性領域に位置するアミノ酸の構造は、標準のペプチド立体配置または分
子動力学等の分子シミュレーション法を用いて指定される。この方法の最終工程
は、分子動力学および/またはエネルギー最少化を用いて全構造を精密化して行
われる。
【0313】 相同モデル化法は公知であり、異なったタンパク質分子を用いて実行されてき
た。例えば、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼ、ミオシン軽鎖タンパク質
キナーゼの触媒ドメインに対応するポリペプチドの3次元構造がcAMP依存性
タンパク質キナーゼ触媒サブユニットから相同モデル化された。キングトン(K
inghton)ら、1992、Science 258:130−135。
【0314】 分子置換を用いる構造 分子置換は、構造既知のポリペプチドのX線回折データを構造未知のポリペプ
チドのX線回折データに適用する方法である。この方法は、振幅のみが知られて
いる構造未知のポリペプチドのX線回折データを記述する位相を決定するために
用いられる。X−PLORが、一般的に利用される分子置換に用いられるコンピ
ューターソフトウエアパッケージである。ブルンガー(Brunger)、19
92、Nature 355:472−475。AMOREは分子置換に用いら
れる他のプログラムである。ナバザ(Navaza)、1994、Acta C
rystallogr.A50:157−163。得られた構造が3Å以上の根
平均二乗偏差を示さないことが好ましい。
【0315】 分子置換のゴールは、2つの結晶からの電子回折データを一致させることによ
り、単位格子内で原子の位置を決定することである。X−PLOR等のプログラ
ムは4つの工程を含む。最初の工程は単位格子内の分子の数を決定し、分子間の
角度を決めることである。第2の工程は回折データを回転して、単位格子内で分
子の配向を決めることである。題3の工程は、分子の位置を単位格子内で正しく
置くため、電子密度を3次元に翻訳することである。X線回折データの振幅と位
相が決まると、参照データセットから実験的に計算された電子回折マップと、新
しいデータセットから計算された電子回折マップを比較してR因子が計算される
。30−50%のR因子は、単位格子内の原子の配向がこの方法で合理的に決定
されたことを示す。プロセスの第4の工程は、本明細書似記載され公知である繰
り返し精密化法を用いて、新しい電子密度マップを精密化してR因子をほぼ20
%に減らすことである。
【0316】 NMRデータを用いる構造 X線結晶学技術由来のポリペプチドまたはポリペプチド複合体の構造座標を、
核磁気共鳴(NMR)データ由来のポリペプチドの3次元構造の解釈に利用でき
る。この方法は当業者に使用されている。ウスリッヒ(Wuthrich)、1
986、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley and Sons
)、ニューヨーク:176−199;フルグラス(Pflugrath)ら、1
986、J.Molecular Biology 189:383−386;ク
ライン(Kline)ら、1986、J.Molecular Biology
189:377−382。ポリペプチドの2次構造は2次元NMRデータを利用
して容易に決められることが多いが、2次構造の個々の断片間の空間関係決定は
容易ではない。X線結晶学技術由来のポリペプチドの3次元構造を定義する座標
は、NMRスペクトル学者を関連する構造のポリペプチド中の2次構造要素間の
空間的相互作用の理解に導くことができる。
【0317】 2次構造要素間の空か相互作用の知識は、2次元NMR実験からの核オーバハ
ウザー効果(NOE)データを大いに簡略化することがでいる。さらに、NMR
技術による2次構造決定後に結晶学座標を適用することは、ポリペプチド配列中
の特定のアミノ酸に関連するNOEの割り当てを簡略化するのみであって、ポリ
ペプチド構造のNMR解析に大きな偏見を抱かせるものではない。逆に言えば、
ポリペプチドの2次構造を決定する一方でNOEデータを簡略化するために結晶
学座標を使用することは、タンパク質構造のNMR解析に偏見を持たせる。
【0318】 NMR法によるポリペプチドの構造の解析は比較的新しい技術であり、RPT
Kの構造を定義する構造座標の使用は近い将来より頻繁に用いられる可能性が高
い。方法が進歩すると、RPTK細胞外ドメインと同じ大きさのポリペプチドの
3次元構造解析がより頻繁になると考えられる。
【0319】 VIII.構造座標を利用するPTK機能調節因子の構造に基づく設計 構造に基づく調節因子の設計および同定法は、多様な潜在的調節因子と化学官
能基基を含むコンピューターデータベースの検索を含む強力な技術である。調節
因子のコンピューター化設計および同定は、化学ライブラリーより多くの、しば
しば2桁台の大きさで、化合物を含むコンピューターデータベースとして有用で
ある。構造に基づく薬剤設計および同定のレビューとしては、クンツ(Kunt
z)ら、1994、Acc.Chem.Res.27:117;グイダ(Gui
da)、1994、Current Opinion in Struc.Bio
l.4:777;コールマン(Colman)、1994、Current O
pinion in Struc.Biol.4:868参照。
【0320】 構造座標で定義されるポリペプチドの3次元構造をこの様な設計法で利用する
ことができる。表1または表2の構造座標を個の方法で利用できることが好まし
い。さらに、本明細書似報告した相同性、分子置換およびNMR技術で決定され
たRPTKの3次元構造を、調節因子設計および同定法に応用することもできる
。従って、PDFGR、EGFR、VEGFR、HGFR、ニューロトロピンR
、HER2、HER3、HER4、インスリンR、IGFR、CSFIR、FL
K、KDR、VEGFR2、CCK4、MET、TRKA、AXL、TIE、E
PH、RYK、DDR、ROS、RET、LTK、ROR1、MUSK、FGF
R1、FGFR2、FGFR3、およびFGFR3等のFGFRファミリーのメ
ンバー、およびオルファンレセプターPTK等のレセプターPTKの構造を、本
明細書に記載の方法で利用することができる。
【0321】 分子データベース検索による設計 合理的な調節因子設計検索の1つの方法は、分子のデータベースから化合物の
コンピューター表示との突き合わせにより調節因子を検索することである。一般
に利用できるデータベースは: a)モレキュラーデザイン社(Molecular Desin Limite
d)のACD b)国立癌研究所(National Cancer Institute)の
NCI c)ケンブリッジ結晶学データセンター(Cambridge Crysta
llographic Data Center)のCCDC d)ケミカルアブストラクトサービス(Chemical Abstract
Service)のCAST e)デルベントインフォメーション社(Derwent Informati
on Limited)のDerwent f)メイブリッジケミカル社(Maybridge Chemical Com
pany LTD)のMaybridge g)アルドリッチケミカル社(Aldrich Chgemical Comp
any)のAldrich h)チャップマン&ホール(Chapman & Hall)の天然物ディレク
トリー
【0322】 この様なデータベースの1つ(モレキュラーデザイン社インフォーメーション
システムが配布するACD)は例えば、合成由来または天然物である200,0
00種の化合物を含んでいる。当業者が利用できる方法は、2次元で表されるデ
ータを3次元で表されるデータに変換することができる。これらの方法は、トリ
ポスアソシエート(Tripos Associate)のCONCORD、ま
たはモレキュラーシミュレーション社のDB−コンバーターで可能である。
【0323】 構造に基づく調節因子設計のいくつかの方法が当業者に公知である。クンツら
、11982、J.Mol.Biol.162:269;クンツら、1994、
Acc.Chem.Res.27:117;メング(Meng)ら、1992、
J.Compt.Chem.13:505;ボーム(Bohm)、1994、J
.Comp.Aided Molec Design 8:623。
【0324】 合理的な調節剤設計の当業者に広く利用されるコンピュータープログラムは、
カリフォルニア大学サンフランシスコのDOCKである。このコンピュータープ
ログラムおよび同様なプログラムを利用する一般的な方法は、以下の3つの出願
に記載されている。これらの技術のいくつかのより詳細な情報は、分子シミュレ
ーションユーザーガイド、1995、に見出される。
【0325】 この目的に使用される典型的なコンピュータープログラムは、以下の工程でな
る: (a)タンパク質から既存の化合物、リガンドまたはリガンドアナログを除去
する工程; (b)他の化合物、リガンドまたはリガンドアナログを、コンピュータープロ
グラム(DOCK等)を用い、または化合物を活性部位中に繰り返し動かすこと
による、化合物結合部位中にドッキングさせる工程; (c)化合物と結合部位原子の間の空間を特徴付ける工程; (d)(i)化合物と活性部位の間の空の空間に当てはめ得る、および(ii
)化合物とリンクし得る分子フラグメントについてライブラリーを検索する工程
;および (e)上記で見出したフラグメントを化合物にリンクさせ、新しい修飾化合物
を評価する工程。
【0326】 パート(c)は、RPTKの原子と化合物、リガンドまたはリガンドアナログ
間の立体関係と相補的相互作用を特徴付ける工程である。不利な立体的相互作用
がなく化合物とRPTK原子の間に十分な表面積を共有している場合、有利な幾
何学的フィットが達成される。
【0327】 当業者は、パート(d)および(e)を飛ばし、多くの化合物のデータベース
をスクリーニングすることによりこの方法を実行できることに注意しなければな
らない。
【0328】 RPTK機能の調節因子の構造に基づく設計および同定を、アッセイスクリー
ニングと組み合わせて使用することができる。化合物の大きいデータベース(約
10、000種の化合物)を時間単位で検索することができるので、コンピュー
ターに基づく方法は細胞分析において潜在的なRPTK機能の潜在的調節因子と
して試験される化合物の範囲を狭くし得る。
【0329】 構造に基づく調節因子設計の上記説明は全てを包括するものではなく、文献に
は他の方法も報告されている: (1)CAVET:バートレット(Bartlet)ら、1989、Chem
ical and Biological Problem in Molecul
ar Recognition、ロバーツ(Roberts、 S.M.)、レイ
(Ley、S.V.)、カンベル(Campbell、M.M.)編集、Roy
al Society of Chgemistry、ケンブリッジ、182−1
96頁 (2)FLOG:ミラー(Miller)ら、1994、J.Comp.Ai
ded Molec. Design 8:153 (3)PRO調節因子:クラークら、1995、 J.Comp.Aided
Molec. Design 9:13 (4)MCSS:ミランカー(Miranker)およびカープラス(Kar
plus)、1991、Protein:Structure、Functio
n and Genetics 11:29 (5)AUTODOCK:グッドセール(Goodsell)およびオルソン
(Olson)、1990、 Protein:Structure、Func
tion and Genetics 8:195 (6)GRID:グッドフォード(Goodford)、1985、J.Me
d.Chem.28:849
【0330】 RPTKとの複合体中の化合物の修飾による設計 潜在的調節因子としての化合物、リガンドおよびリガンドアナログを同定する
別な方法は、ポリペプチド活性部位に存在する調節因子を修飾することである。
例えば、調節因子のコンピューター表示をRPTKリガンド結合部位のコンピュ
ーター表示内で修飾することができる。この技術の詳細な指針は、LUDIのモ
レキュラーシミュレーションユーザーマニュアル、1995に見出される。調節
因子のコンピューター表示を少なくとも1個の化学基を変化、除去または追加し
て修飾する。
【0331】 化合物、リガンドまたはリガンドアナログに対する個々の修飾で、修飾された
化合物、リガンドまたはリガンドアナログ、およびRPTKはコンフォーメーシ
ョンが変化し、化合物、リガンドまたはリガンドアナログ、およびRPTK原子
が2つの分子間に形成した任意の相補的相互作用と共に成績が評価される。有利
な幾何学的フィットと有利な相補的相互作用を達成すると、成績評価が完了する
。有利な成績を有する化合物はRPTK機能の潜在的な調節因子である。
【0332】 レセプターPTKを結合する化合物の構造修飾による設計 構造に基づく調節因子設計の第3の方法は、調節因子構築または調節因子検索
コンピュータープログラムにより設計された化合物をスクリーニングすることで
ある。この様なタイプのプログラムの例は、モレキュラーシミュレーションパッ
ケージ、カタリストに見られる。このプログラムの使用法の説明は、モレキュラ
ーシミュレーションユーザーガイド(1995)に記載されている。この出願に
用いられた他のコンピュータープログラムはモレキュラーデザイン社のISIS
/HOST、ISIS/BASE,ISIS/DRAW、およびトリポスアソシ
エーツのUNITYである。
【0333】 これらのプログラムは、化合物、リガンドおよびリガンドアナログと複合体を
形成したRPTK複合体の3次元構造の活性部位から除去された化合物、リガン
ドおよびリガンドアナログの構造上で作動させることができる。この様な化合物
、リガンドおよびリガンドアナログは生物活性コンフォーメーションであるので
それらの構造上でプログラムを作動させることが好ましい。
【0334】 調節因子構築コンピュータープログラムは、RPTKと複合体を形成した化合
物、リガンドおよびリガンドアナログ中の化学基のコンピューター表示をコンピ
ューターデータベースで置換するために使用し得るコンピュータープログラムで
ある。調節因子検索コンピュータープログラムは、レセプターPTKに結合した
化合物と類似の3次元構造および類似の化学基を有する、コンピューターデータ
ベース由来の化合物のコンピューター表示を検索するために使用し得るコンピュ
ータープログラムである。
【0335】 典型的なプログラムは以下の一般的な工程を用いて作動する: (a)水素結合のドナーまたはアクセプター、疎水性/親水性部位、性荷電部
位、または負荷電部位等の化学的特徴により化合物、リガンドまたはリガンドア
ナログをマッピングする工程; (b)マッピングされた図形に立体的束縛を加える工程;および (c)(b)で作成したモデルでデータベースを検索する工程。
【0336】 当業者は、重要な化学的特性には水素結合ドナー、水素結合アクセプター、お
よび/または2つの疎水性接触点が含まれるが、それに限定されないことを理解
し得ると思われる。当業者はまた、可能な化合物の全てが必ずしも(b)のモデ
ルに存在する必要がないことを理解し得ると思われる。データベース検索のため
の異なったモデルを作成するために、モデルの任意のサブセットを使用できる。
【0337】 XI.有機合成技術 コンピューターに基づく調節因子設計および同定の多様性は、コンピューター
プログラムでスクリーニングされる構造の多様性にある。コンピュータープログ
ラムは、多様な化学官能基を用いて200,000種の分子を含むデーターベー
スを検索し、ポリペプチドと既に複合体を形成した調節因子を修飾することがで
きる。この化学的な多様性の結果、RPTK機能の潜在的調節因子が予見し得な
い化学形をとることがある。この様なRPTK機能の潜在的調節因子を構築する
試みに合致する技術には、広い範囲の有機合成技術がある。これらの有機合成技
術は、当業者が利用する標準の参照文献源に詳細に記述されている。この様な参
考文献の1例はAdvanced Organic Chemistry;Rea
ction、Mechanism and Structure、1994年3月
、ニューヨーク、マグローヒル(Mcgrow Hill)である。従って、コ
ンピューターに基づく方法で同定されたRPTK機能の潜在的調節因子を合成す
るに必要な技術は、有機合成技術の当業者が既に入手可能なものである。
【0338】 X.信号伝達経路におけるレセプターPTK調節因子の効果を測定する細胞分
RPTK機能の潜在的調節因子の活性を試験すると共に、不適切なRPTK活
性と関連する病気を診断するために、細胞分析を使用することができる。RPT
K機能の潜在的調節因子を、細胞株中で過剰発現した特定のRPTKの自己燐酸
化に対する潜在的調節因子の効果を測定する、潜在的調節因子の生体外分析で試
験することが可能である。従って、RPTKに対応する細胞外ドメインに対する
リガンド結合の強力な阻害剤として働く調節因子は、RPTKで触媒される自己
燐酸化の量を減少させると考えられる。潜在的調節因子の活性を生体外細胞生育
分析ばかりでなく、生体内動物モデル分析でも試験し得る。
【0339】 生体内分析は、本発明の方法で設計した潜在的調節因子の生物活性の試験にも
有用である。
【0340】 これらの分析の材料、方法および実験データは、“疾病治療用インドリン化合
物”と言う表題のUS特許番号5,792,783および1996年12月19
日公開WO96/40116に完全に述べられており、そのそれぞれが図面およ
び表を含めてその内容が本明細書に取り入れられている。
【0341】 XI.レセプターRTK機能の調節因子の疾病治療薬としての投与 疾病治療薬として生物に化合物を投与する方法は、“疾病治療用インドリン化
合物”と言う表題のUS特許番号5,792,783および1996年12月1
9日公開WO96/40116に完全に述べられており、そのそれぞれが図面お
よび表を含めてその内容が本明細書に取り入れられている。
【0342】 XII.分子構造を決定、設計、モデル化および/または修飾するためのコンピ
ューターに基づく方法 分子構造の結晶学的解析由来のデータの表示、研究、比較、取扱、解釈および
/または外插のためのコンピューターに基づくシステム10の概要が図33に示
され、それには図1、2、5、19、26および27に示されるRPTK、その
リガンドおよび関連する複合体等の分子、分子の部分および/または分子相互作
用が含まれる。分子の例はタンパク質および/またはタンパク質とリガンドの複
合体である。分子部分の例はタンパク質の触媒ドメイン、タンパク質のリガンド
/レセプター結合部位、タンパク質の信号発生領域およびタンパク質の輸送部分
である。分子相互作用の例には酵素とその基質間の結合、因子/共因子の関係、
抗体/抗原結合、および信号伝達で生じるタンパク質/レセプター認識および結
合が含まれる。上記の研究の少なくとも1つは、天然の生化学プロセスを説明・
理解し、擬似薬、作用剤、阻害剤および拮抗剤を設計しスクリーニングするため
に有用である。従って、本発明のこの態様はとりわけ、当業者が分子モデル化プ
ロセスを実行することを可能にし、分子の多次元構造、分子部分または分子相互
作用を提示する画像を作成し表示するために必要なハードウエアおよびソフトウ
エアを、所望により当業者に提供する。従って、これらの実施はコンピューター
技術を採用して大いに促進される。
【0343】 システム10には分子、分子部分および/または分子相互作用を表す情報を検
索可能に記憶するメモリ(例えばアーカイバルメモリおよび/またはビデオメモ
リおよびコンピューター読み取り可能媒体)等のデータ記憶実態20が含まれる
。メモリは例えば第1タイプの記憶領域または記憶容量22を有し、本発明で開
示されるか本明細書の知見に従って得られる3次元空間中の位置を特定する1組
の空間座標等の構造データがその上に記録されるか、その中に含まれる。メモリ
はまた、情報を含む第2のタイプの記憶領域または記憶容量24を有する。この
情報は例えば複数のアミノ酸の1つの性質、特性または属性、または他の化学部
分を表す。第2のタイプの記憶領域または記憶容量は、記憶実態20中の第1タ
イプの記憶領域と組み合わされて、好ましくは3次元空間の一つを表す分子、分
子部分または分子相互作用の特性、性質または属性の少なくとも1つの立体的ま
たは空間的配置を表す。メモリはRAMおよびROM、および磁気媒体、光学媒
体、磁気光学媒体、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、サーバ
ー、ウエブ系システム、CD、DVD、テープ等のコンピューターで読み取り可
能な媒体等の当業者が認識し得る任意の形を取り得る。メモリ22(記憶領域ま
たは記憶容量の1タイプ)には例えば、表1、2、3、4または6似示される座
標データ、または本発明の知見により得られた他の座標データを含むか内蔵し、
メモリ24(記憶領域または記憶容量の1タイプ)は例えば会合する関連する電
荷または電子密度データを含むか内蔵し得る。最も普通には、システムは複数の
第1および第2タイプの記憶領域を含む。記憶実態20、すなわち第1タイプの
記憶領域または記憶容量22、および第2タイプの記憶領域または記憶容量24
、または記憶装置または記憶容量34は例えば、共有セミコンダクターメモリ、
キャッシュ、RAM、ROM、共有光学ディスク領域、共有磁気メモリ領域、お
よび/またはWWW(World Wide Web)を含むイントラネットおよ
びインターネットでアクセス可能なサーバー系である。従って、本発明のシステ
ムにはユニタリーシステム、ネットワーク系システム、サテライト通信、および
インターネット系システムが含まれ、地理的条件に拘わらず対話形式で接続し得
る。
【0344】 システム10にはプロセッサが含まれる、および/またはプロセッサと対話形
式で接続され、対話形式でデータ記憶装置と組み合わされ、第1タイプ記憶領域
22、随意には第2タイプ記憶領域24にアクセスし、記憶実態20からのデー
タに基づいて分子、分子部分または分子相互作用の少なくとも1つの目にみえる
3次元画像を表すための画像信号を3次元空間に作成する。プロセッサはCPU
、レジスター、メモリ等を有する一般用または特殊用プロセッサである。ソフト
ウエアおよび論理アーキテクチャーおよび回路は所望のものを用いることができ
る。ひとつの実施態様によれば、とりわけプロセッサ26と記憶実態20はシリ
コングラフィックス(Silicon Graphics)、サンマイクロシス
テムズ(Sun Microsystems)およびIBM等のUNIX(登録
商標)またはVAXコンピューターの形式である。しかしながら、本発明はこれ
らのタイプのハードウエアおよびソフトウエアシステムの使用に限られない。
【0345】 ディスプレイ28は通常、ラインまたはワイヤレス結合でプロセッサ26と対
話形式で結ばれ、データに基づく3次元空間内の分子、分子部分または分子相互
作用の少なくとも1つの目にみえる3次元画像を表すため、画像信号を受け取る
。システムに使用するに適したディスプレイにはコンピュータースクリーン32
(例えばCRT、LCDおよび受動マトリックス等)、プリンター、プロッター
またはフィルムが含まれる。
【0346】 本発明の1つの実施態様では、画像データには図1、2、5、19、26およ
び27似示される様な3次元空間の分子、分子部分または分子相互作用の構造の
目に見える3次元画像が含まれる。他の実施態様では、画像データには3次元空
間の分子、分子部分または分子相互作用の立体モデル表現の目にみえる3次元画
像を表すためのデータが含まれる。また別な実施態様では、画像データには3次
元空間の分子、分子部分または分子相互作用の静電表面電位の目にみえる3次元
画像を現すためのデータが含まれる。また別な実施態様では、画像データには3
次元空間の分子、分子部分または分子相互作用の3次元ステレオ画像を表すため
のデータが含まれる。
【0347】 本発明のシステム10はさらに、図9、10、22および24に示される組成
物の特性の他、分子、分子部分または分子相互作用の立体および/または空間配
置を表すデータを保存する記憶装置、記憶構造、記憶領域または記憶容量34で
なる。記憶装置または記憶容量34は例えば、比較の目的の他のタンパク質を含
む他の化学的内容に対する3次元X線座標データを含むか内蔵する。記憶装置お
よび記憶容量34は、RAMおよびROM、および磁気媒体、光学媒体、磁気光
学媒体、フロッピーディスク、ハードディスク、ミニディスク、サーバー、CD
、DVD等の他のコンピューターで読み取り可能な媒体等、当業者が認識し得る
任意の形を取ることができる。プロセッサ26は記憶装置または記憶容量34、
およびディスプレイ28と対話形式で組み合わされ、分子、分子部分または分子
相互作用の少なくとも1つの特性を、指示に基づいてスクリーン上に、目にみえ
る上記3次元画像の組成物の特性の立体配置を表すための別な画像データを作成
する。図33の実施態様では、記憶措置または記憶容量34が記憶実態20の一
部として示されているが、他の配置も当業者に可能である。
【0348】 コンピューターシステムはソフトウエアまたはハードウエア系の命令を含むか
、命令を採用する。論理回路およびソフトウエアプログラム中の命令等はとりわ
け、コンピューターシステムがデータを入力、操作、解析および出力することを
可能にする。プログラムの例が本明細書に示されるが、当業者は本発明の実施に
この様なプログラムに限定されるものではない。
【0349】 特に、システム10はマウス、トラッカーボール、タッチパッド、プロジェク
ター(多次元プロジェクターシステムを含む)、タッチスクリーン、ジョイステ
ィック、ポインター、キーボード、モデム、カードおよび/または音声認識シス
テム、またはオペレーターからの命令を受け取るためのドッキングシステム等の
オペレーターインターフェースも含み、ディスプレイ28、プロセッサ26およ
び記憶実体20と対話形式で結ばれている。コンピューターおよびコンピュータ
ー部品の他の態様は公知であり、容易に入手できる。
【0350】 記憶実体20(22、24、34および他のもの)を含む本発明によるコンピ
ューターシステムをプログラムし、NMR等の他の解析技術と組み合わせるX線
結晶学データの使用を含む、第VI−IX節で議論した解析を行うためのデータを含
むことができる
【0351】 本発明はまた、本明細書で開示した様々なデータ構造および情報を含む、コン
ピューターで読み取り可能な媒体を含む。例えば、付属の表および図面似示した
座標データを含む磁気媒体、光学媒体、磁気光学媒体、フロッピーディスク、ハ
ードディスク、ミニディスク、サーバー、CD、DVD、テープ等は、ハードウ
エアおよび/またはソフトウエアが提供するコンピューターが命令と規則のセッ
トに従って解析する場合、分子、分子部分および分子相互作用の3次元構造を確
認する上で有用である。
【0352】 (実施例) 以下の実施例は非限定的であり、本発明の様々な態様および特徴を単に代表す
るものである。実施例はタンパク質キナーゼポリペプチドの結晶形を得る説明の
ための方法、これらのタンパク質キナーゼポリペプチドの3次元構造、およびタ
ンパク質キナーゼの3次元構造を用いるタンパク質キナーゼの調節因子を同定す
る方法を提供する。
【0353】 原子構造座標 表1−3はいくつかのリガンド/FCFR複合体二量体の原子構造座標を提供
する。表5はSCF二量体の原子構造座標を提供する。表6はFGF2−FGF
R1−ヘパリン3成分複合体の原子構造座標を提供する。表中で以下の略号が使
用されている。
【0354】 “原子タイプ”は、その座標が提供される元素を言う。カラム内の最初の文字
は元素を定義する。 “A.A.”はアミノ酸を言う。 “X、YおよびZ”は元素のカーテシアン座標である。 “B”は原子中心の周りの原子の運動の目安である熱因子である。 “OCC”は占有率を言い、原子が特定の座標を占有する時間割合を表す。O
CC値は0から1の範囲であり、1は100%である。 “PRT1”または“PRT2”はあ占有率に関係し、PRT1は第1座標中
にある場合の原子の座標を表し、PRT2は第2または別な座標中にある場合の
原子の座標を表す。
【0355】 二量体の構造座標は数学的取扱で変化させ得る。この様な取扱には生構造座標
の結晶学的置換、新しい生構造座標の1次微分、生構造座標への整数の加算また
は減算、生構造座標の反転および上記の任意の組み合わせが含まれるが、それに
限定されるものではない。
【0356】 さらに、構造座標を若干変更し、なおほとんど同じ3次元構造を与えることが
できる。従って、構造座標の独自のセットの目安は、得られた構造の根平均平方
偏差である。1.5Å以下の根平均平方偏差で相互に隔たる3次元構造を与える
構造座標は同一と見なすことができる。
【0357】 実施例1−FGFR1 D2−D3/FGF2複合体のX線結晶学構造決定 ポリペプチドの合成と単離 ヒトFGFR1(D2−D3)のDNA断片をコードする残基142−365
をNcoIおよびHindIII制限部位を用い、当業者に公知の技術を用いて
バクテリア発現ベクターぺT−23a中にサブクローニングした。バクテリア株
BL21(DE3)をD3−D3の発現に使用し、IPTGで5時間誘導した。
発現誘導体後、細胞を遠心で集め、フレンチプレスを用いて25mM燐酸カリウ
ム、150mM NaCl、2mM EDTAおよび10%グリセリンを含む緩衝
液中で溶菌した。
【0358】 D2−D3を含むペレットを遠心で集め、6M塩酸グアニジウム、100mM
トリスHCl、pH8.0中で溶解した。50mM トリスHCl、pH8.0
、150mM NaCl、10%グリセロール、および1mM L−システインを
含む緩衝液に対して透析してD2−D3を再褶曲した。再褶曲D2−D3を、F
GF2があらかじめ固定化されたヘパリンセファローズカラムでクロマトグラフ
ィーを行った。得られたD2−D3/FGF2複合体をヘパリンセファロースカ
ラムから、25mM トリスHCl、pH7.5および1.5M NaClで溶出
した。
【0359】 D2−D3/FGF2複合体をセントリコン(Centricon(商標))
遠心濃縮装置を用いるを限外濾過で濃縮し、25mMトリスHCl、pH5.8
、および1.5M NaClを含む緩衝液を用い、スーパーデックス(Supe
rdex(商標))200カラム(ファルマシア)上のサイズ排除クロマトグラ
フィーでさらに精製した。結晶化前に、D2−D3/FGF2複合体を25mM
トリス、pH7.5、および150mM NaClを含む緩衝液中で濃縮した。
【0360】 結晶成長 精製D2−D3/FGF2複合体の結晶を、懸垂液滴中で等容積のタンパク質
溶液(10mg/mL D2−D3/FGF2複合体、25mM トリスHCl、
pH8.5、および150mM NaCl)と保存溶液(1.6M(NH42
4、20% v/vグリセロールおよび100mMトリスHCl、pH8.5)
を混合し、2.0μlの得られた溶液の懸濁液滴を0.5mLの保存緩衝液上に
20℃で懸濁させて、20℃で蒸気拡散で成長させた。
【0361】 データ収集および構造決定 回折データを、乾燥窒素気流中で瞬間冷凍した結晶試料から、ブルックヘブン
国立研究所(Brookhaven National Laboratory)
のナショナルシンクロトロン光源のビームラインX4Aで収集した。シンクロト
ロンデータをCCD検出器で収集した。全てのデータはDENZOおよびCSA
LEPACKを用いて処理した。オトヴィノウスキ(Otwinowski)、
1993、“振動データ換算プログラム”、Proceeding of the
CCP4 Study Weekend、サウヤー(Sawyer)ら編集(ダ
レスブーリ(Daresbury)、英国:SERCダレスブーリ研究所)、5
6−62。
【0362】 D2−D3/FGF2複合体の構造を、プログラムAmoReを用い(ナバザ
、1994、Acta Cryst.A50:157−163)、FGF2(2
FGF、ツァン(Zang)ら、1991、Proc.Natl.Acad.S
ci.88:3446−3450)およびテロキン(ITLK、ホールデン(H
olden)ら、1992、J.Mol.Biol.227:840−851)
の構造を検索モデルとして用いてて分子置換法で決定した。相同モデルをテロキ
ンの構造からFGF2 D2およびD3ドメインの両者に対して構築した。分子
置換の解答を2つのFGF2分子と、二量体中のD2およびD3の1つのコピー
似対して決定し、D2およびD3の第2のコピーを、D2およびD3の第1のコ
ピーの第2FGF2分子上への剛体回転および移動で決定した。D2およびD3
の第2コピーの位置をCNS(ブリュンガー(Brunger)ら、1998、
Acta Cryst.D54:905−921)を用いる剛体精密化法で確認
した。
【0363】 シミュレーションアニーリングおよび位置のB因子精密化をCNSを用いて行
い、バルク溶媒と異方性B因子補正を加えた。さらに、固定した非結晶学対称束
縛をFGF2,D2およびD3の骨格原子の精密化中に行った。二量体中のFG
F2、D2およびD3の2つのコピー間のCα原子に対するRMS偏差は0.0
4Åであった。
【0364】 電子密度マップ中へのモデル構築をプログラムO(ジョーンズら、1991、
Acta Cryst.A47:110−119)を用いて行った。D2−D3
/FGF2複合体の原子モデルにはFGF2残基16−144とFGF1残基1
49−359が含まれるが、二量体中のFGFR1レセプターの1つでは残基2
93−307は無秩序である。全ての原子に対する平均B因子は38.7Å、F
GF2に対し37.6/38.9Å、FGFR1に対し38.3/39.1Å
である。
【0365】 原子構造座標 表1はFGFR1(D2−D3)/FGF2複合体二量体の原子構造座標を提
供する。 FGFR1(D2−D3)/FGF2複合体の構造はプロトニコフら
、Cell 98:641−650(1999)に報告され、 FGFR1(D2
−D3)/FGF2複合体に対する座標はインターネット上でプロテインデータ
バンク(プロテインデータバンクIDコード1CVSで指定)から入手でき、そ
の開示は本明細書に参考文献として含まれる。
【0366】 実施例2−FGFR1 D2−D3/FGF1複合体のX線結晶学構造決定 ポリペプチド合成および単離 ヒトFGFR1(D2−D3)の残基142−365をコードするDNA断片
を、NcoIおよびHindIII制限部位を用い、当業者に公知の技術を用い
てバクテリア発現ベクターpET−23a中にサブクローニングした。バクテリ
ア株BL21(DE3)をD2−D3の発現に用い、IPTGで5時間誘導した
。発現誘導体後、細胞を遠心で集め、25mM燐酸カリウム、150mMNaC
l、2mMEDTAおよび10%グリセロールを含む緩衝液中でフレンチプレス
を用いて溶菌した。
【0367】 D2−D3を含むペレットを遠心で集め、6M塩酸グアニジウム、100mM
トリスHCl、pH8.0中に溶解した。50mMトリスHCl、pH8.0、
150mMNaCl、10%グリセロールおよび1mM L−システインを含む
緩衝液に対し透析してD2−D3を再褶曲させた。FGF1をあらかじめ固定化
したヘパリンセファロースカラム上で再褶曲D2D3のクロマトグラフィーを行
った。得られたD2−D3/FGF1複合体を25mMトリスHCl、pH7.
5および1.5MNaClを含む緩衝液でヘパリンセファロースカラムから溶出
した。
【0368】 D2−D3/FGF1複合体をセントリコン10(商標)(アミコン(Ami
con))遠心濃縮装置を用いて濃縮し、スーパーデックス(商標)200カラ
ム(ファルマシア)上で25mMトリスHCl、pH7.5、および1.5M
NaClを含む緩衝液を用い、サイズ排除クロマトグラフィーでさらに精製した
。結晶化前に、D2−D3/FGF1複合体を25mMトリスHCl、pH7.
5、および150mM NaClを含む緩衝液中で1mg/mLに濃縮した。
【0369】 結晶成長 精製D2−D3/FGF1複合体の結晶を、懸垂液滴中で1容積のタンパク質
溶液(25mM トリスHCl、pH8.5、および150mM NaCl中1m
g/mL)と4容積の保存溶液(20%PEG4000、0.2M Li2SO4
および0.1MトリスHCl、pH8.5)を混合し、2.0μlの得られた溶
液の懸濁液滴を0.5mLの保存緩衝液上に20℃で懸濁させて、20℃で蒸気
拡散で成長させた。
【0370】 データ収集および構造決定 10%グリセロールを含む母液中で乾燥窒素気流を用いて瞬間冷凍した結晶試
料から、ブルックヘブン国立研究所のナショナルシンクロトロン光源のビームラ
イン4Aで回折データを収集した。シンクロトロンデータをCCD検出器で収集
した。全てのデータはDENZOおよびCSALEPACKを用いて処理した。
オトヴィノウスキ、1993、“振動データ換算プログラム”、Proceed
ing of the CCP4 Study Weekend、サウヤーら編集(
ダレスブーリ、英国:SERCダレスブーリ研究所)、56−62。
【0371】 D2−D3/FGF2複合体の構造を、プログラムAmoReを用い(ナバザ
、1994、Acta Cryst.A50:157−163)、FGF1(2
AGF、ブラバー(Blaber)ら、1996、Biochemistry
35:2086−2094)およびテロキン(ITLK、ホールデン(Hold
en)ら、1992、J.Mol.Biol.227:840−851)の構造
を検索モデルとして用いてて分子置換法で決定した。相同モデルをテロキンの構
造からFGF1 D2およびD3ドメインに対して構築した。分子置換の解答を
FGF1、D2およびD3の2つのコピーのそれぞれに対して決定した。
【0372】 シミュレーションアニーリングおよび位置のB因子精密化をCNSを用いて行
い、バルク溶媒と異方性B因子補正を加えた。さらに、固定した非結晶学対称束
縛をFGF1、D2およびD3の骨格原子の精密化中に行った。二量体中のFG
F1、D2およびD3の2つのコピー間のCα原子に対するRMS偏差は0.0
1Åであった。
【0373】 電子密度マップ中へのモデル構築をプログラムO(ジョーンズら、1991、
Acta Cryst.A47:110−119)を用いて行った。 D2−D3
/FGF1複合体の原子モデルにはFGF1残基8−138とFGFR1残基1
49−359が含まれるが、残基294−305および315−323は無秩序
である。全ての原子に対する平均B因子は30.4Å、FGF1に対し31.2
/33.0Å、FGFR1に対し29.1/28.7Å である。
【0374】 原子構造座標 表2はFGFR1(D2−D3)/FGF1複合体二量体の原子構造座標を提
供する。二量体の第1のFGFR1分子では、残基番号の前には1が付けられて
いる。即ち、二量体の第1FGFR1分子の残基番号464は“1464”で示
される。 FGFR1(D2−D3)/FGF1複合体の構造はプロトニコフら
、Cell 101:413−424(2000)に報告され、 FGFR1(D
2−D3)/FGF1複合体に対する座標はインターネット上でプロテインデー
タバンク(プロテインデータバンクIDコード1EVTで指定)から入手でき、
その開示は本明細書に参考文献として含まれる。
【0375】 実施例3−FGF2−FGFR2の構造 結晶化とデータ収集 FGFR2の残基147から366をコードするDNA断片をポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)で増幅し、NcoIおよびHindIIIを用いてバクテリア
発現ベクターpET−28a中にサブクローニングし、バクテリア株BL21(
DE3)中へ形質移入した。細胞をIPTGで5時間誘導し、遠心しバクテリア
細胞ペレットを150mM NaCl、2mM EDTAおよび10%グリセロー
ルを含む25mM K−Na燐酸緩衝液pH7.5中でフレンチプレスを用いて
溶菌した。遠心後、1次FGFR2を含むペレットを100mMトリスHCl緩
衝液(pH8.0)中の6M塩酸グアニジウムと10mM DTT中に溶解した
。150mM NaCl、10%グリセロールおよび1mM L−システインを含
む25mM HEPES緩衝液(pH7.5)に対して透析して可溶化FGFR
2タンパク質を再褶曲した。再褶曲FGFR2タンパク質を、FGF2(塩基性
FGF)をあらかじめ固定化したヘパリンセファロースカラムに負荷した。次い
でFGF2−FGFR2複合体をヘパリンセファロースカラムから、25mmト
リスHCl(pH7.5)および1.5M NaClを含む緩衝液で溶出した。
FGF2−FGFR2複合体をセントリコン10(アミコン)フィルターで濃縮
し、サイズ排除クロマトグラフィー(ファルマシア、スーパーデックス200)
で、25mMトリスHCl(pH7.5)と1.5M NaClを含む緩衝液を
用いてさらに精製した。複合体は1:1のFGF:FGFR複合体形成に対応す
る位置に溶出した。
【0376】 結晶を懸垂液滴法を用いて20℃の蒸気拡散で成長させた。FGF2−FGF
R2複合体の結晶成長では、2マイクロリッターのタンパク質溶液(10mg/
mL)、25mMトリスHCl(pH7.5)、150mMNaClを、10−
15%PEG4000、10%イソプロパノールおよび0.1M HEPES−
NaOHを含む2マイクロリッターの結晶化緩衝液と混合した。FGF2−FG
FR2の結晶は三斜空間群P1に属し、単位格子寸法はa=72.20Å、b=
71.68Å、C=90.92Å、α=90.53°、β=89.98°、γ=
89.99°であった。単位格子内に4分子のFGF2と4分子のFGFR2が
あり、溶媒含有量は約58%である。回折データを瞬間冷凍(10%グリセロー
ルを低温保護剤として用いる乾燥窒素気流中)結晶から、CCD検出器(FGF
2−FGFR2)で、ブルックヘブン国立研究所のナショナルシンクロトロン光
源のX4Aビームラインで収集した。全てのデータをDENZOおよびSCAL
EPACK(オトウィノウスキら、Method Enzymol.276:3
07−326、1997)を用いて処理した。
【0377】 構造決定およびFGF2−FGFR2構造の精密化 FGF2−FGFR2複合体の構造をプログラムAmoRe(ナバザ、Act
a Cryst.A50:157−163、1994)と検索モデルとしてFG
FR2−FGFR1の構造(ICVS;プロトニコフら、Cell 98:64
1−650、1999)を用いる分子置換法で決定した。分子置換の解答をFG
F2−FGFR2複合体の4個のコピーに対して見出した。モデル構築と精密化
を、プログラムO(ジョーンズら、Acta Crystallogr.A47
、110−119、1991)およびCNS(ブリュンガーら、Acta Cr
uustallogr.D54:905−921、1998)それぞれを用いて
行った。精密化の間、固定非結晶学束縛をFGF2、D2およびD3の骨格原子
に対して加えた。FGF2−FGFR2および関連するFGF1−FGFR1の
構造は、対応するX線座標と共にプロトニコフら、Cell 101:413−
24(2000)に報告され、その開示は本明細書に参考文献として含まれてい
る。
【0378】 FGF2−FGFR2の原子モデルは4個のFGF2分子、4個のFGFR2
分子、4個の硫酸イオン、および263個の水分子で構成される。FGF2−F
GFR2の構造を2.2Å、R値24.8%(遊離R値27.3%)で精密化し
た。データ収集と精密化統計は表7に示される。原子モデルはFGF2残基16
−145とFGFR2残基148−365、4個の硫酸イオン、および263個
の水分子を含む。全てのFGFR2分子で残基295−306(D3中のbC−
bC')は無秩序である。平均B因子はFGF2分子に対し40.5Å2、FGF
R2分子に対し73Å2、硫酸イオンに対し73Å2、および水分子に対し32.
6Å2である。
【0379】 原子構造座標 表3はFGF2/FGFR2複合体の原子構造座標を提供する。 FGF2/
FGFR2複合体の構造はプロトニコフら、Cell 101:413−424
(2000)に報告され、インターネット上でプロテインデータバンクにより入
手可能である(プロテインデータバンクコード1EV2が割り当てられている)
。その開示は本明細書に参考資料として含まれる。
【0380】
【化1】
【0381】 実施例4−SCFの製造および構造決定 タンパク質の発現、再褶曲および精製 ヒト幹細胞因子(SCF)の残基1−141を、先に報告された様に(ラング
レイら、Arch.Biochem.Biophys.295:21−28、1
992)E.coli中で抱合体として発現した、1リッターの微生物培養由来
の抱合体を25から30mlの6Mグアニジン塩酸塩溶液に溶解した。溶液が透
明になった後、DDTを最終濃度40mMで加え、37℃で30分間インキュベ
ートした。得られた溶液を4リッターの緩衝液(10mMトリス、pH8.5)
中に希釈し、終夜放置した。再褶曲タンパク質をイオン交換クロマトグラフィー
で精製した。タンパク質純度、電気泳動移動度および生物活性を、確立した方法
(ラングレイら、Arch.Biochem.Biophys.295:21−
28、1992)で調製したSCF、および市販のSCFと比較した。非還元ゲル
電気泳動で調べたが、ジスルフィド結合SCF二量体はこの調製物中に検出され
なかった(ラングレイら、 Arch.Biochem.Biophys.29
5:21−28、1992)。
【0382】 結晶化およびデータ収集 SCFの結晶を懸垂液滴法を用い、蒸気拡散法で20℃で成長させた。2つの
結晶形が生成した。単位格子寸法a=72.47Å、b=83.45Å、c=8
9.15Å の斜方結晶は、2マイクロリッターのタンパク質試料(15−20
mg/ml)を15−30%PEG、0.25M CaCl2および0.1M H
EPES(pH7.0)でなる2マイクロリッターの保存液と混合することによ
り成長した。1mMのSmCl3をタンパク質溶液に添加すると、構造決定に使
用した単斜結晶が生成した(表4参照)。単斜結晶はセットアップから数時間で
現れた。
【0383】 データ収集用結晶を、液体プロパン中で結晶化液滴から直接瞬間凍結した。C
SF結晶の最初の特徴付けを、ブルックヘブン国立研究所のナショナルシンクロ
トロン光源のシンクロトロンビームラインX26Cで行い、最終データ収集をア
ルゴン研究所構造生物学センターアドバンスドフォトン光源のビームライン19
―IDで行った。全てのデータをDENZOで処理し、強度をSCALEPAC
K(オトウィノウスキら、Method Enzymol.276:307−3
26、1997)を用いて減衰しスケール合わせを行った。
【0384】 構造決定 ヒトコロニー刺激因子のαC原子の位置から構築したモデルを用いる、斜方結
晶から集めたデータによる分子置換の試みは成功しなかった。構造決定に用いた
データは、Smの吸収端でない1.01Åおよび1.5Å の波長で三斜結晶か
ら収集した。異常な信号はパターソン(Patterson)差マップから明瞭
であった。重金属の位置の精密化と位相決定はPHASE(フーレイ(Fure
y)ら、Methods Enzymol.277:590−620、1997
)で行った。位相決定のために全部で3個のSmの位置を使用したが、4個のS
m原子は最終モデル中に置かれた。最初の溶媒平坦化電子密度マップからは、短
いヘリックス片のみが見え、それらをプログラムO(ジョーンズら、Acta
Crystallogr.A47:110−119、1991)で密度中に組み
込んだ。部分構造と組み合わせてモデル構築と溶媒平坦化のサイクルの繰り返し
を、非対称単位中に4個の分子のほとんどが構築されるまで行った。その後、精
密化を結晶学およびNMRシステム(CNS;ブルグナー(Brugner)ら
、Acta Crystallogr.D54:905−921、1998)で
低エネルギー(波長1.01Å )回折データに対して行った。10%の無差別
に選んだ試験データセットと2Fo−Fc電子密度マップで調節した残基の位置
を用い、精密化の進行をRfree値を用いてモニターした。
【0385】 結晶中のサマリウムイオンの2つの波長の異常散乱の差を用いて構造を決定し
、2.3Å に精密化した(表4)。各非対称単位中に4個の分子があり、最初
の実験的電子密度は分子中の4個のヘリックス束と、2つのβ鎖を明瞭に示した
。結合ループと共にN−末端およびC−末端領域が2Fo−Fcマップから作成
された。表4は最終モデルの統計を示し、120個の溶媒分子、4個のサマリウ
ムイオン、2個のカルシウムイオンおよび1個のトリス分子が含まれる。ヒト幹
細胞因子ホモ二量体の構造は、ツァンら、Proc.Nat.Acad.Sci
.97(14):7732−7737、2000に報告され、ヒトSCF二量体
の座標はインターネット上でプロテインデータバンクから入手できる(プロテイ
ンデータバンクIDコード1EXZ;http://www.rcsb.org
/pdb/cgi/explore.cgi?pid=17825596723
1743&pdbld=1EXZ)。その開示は本明細書に参考資料として含ま
れる。
【0386】 構造の一般的な特徴 結晶学的非対称単位中に4個のSCFプロモーターが存在するが、生物学的二
量体は明らかに区別できる。 4個のプロモーターはN−末端およびC−末端ル
ープ領域を除いて重ね合わせ可能である。これらのループは柔軟で、非対称単位
中の4この分子中で複数のコンフォーメーションをとる。生物二量体中のプロモ
ーターは先頭と先頭を突き合わせて、ほぼ完全なC2対称で詰め込まれている(
図19参照)。二量体はβ鎖の側方へ約30°曲がっており、約87Å×32Å
×25Åの寸法で伸長した形になっている。
【0387】 SCFは2個の若干楔形の非共有ホモ二量体である。SCFの全体的なトポロ
ジーは、他の短鎖ヘリックスサイトカインと類似の逆平行4ヘリックス束褶曲で
ある(図19参照;ロスワルスキ(Roswarski)ら、Structur
e 2:159−173、994)。ヘリックスは上−上−下−下に走り、一方
の端が2枚の交差するβ鎖で包まれている。二量体インターフェースの構造は、
二量体インターフェースの構造は、二量体が大きい埋め込み表面積を有する2個
のプロトマー間の広範囲の極性および無極性相互作用で媒介されることを示して
いる。その構造には疎水性割れ目と、潜在的レセプター結合部位として作用する
各プロトマーの尾部の荷電領域が含まれる。SCFのX線構造は、二量体化で埋
め込まれる約1700Å2の表面積(半径1.4Åの探針で計算)を有する2個
のSCFプロトマー間に、遠距離相互作用が存在することを示してる。この埋め
込まれた表面積は、個々のプロモーターの全表面の約20%に達し、ジスルフィ
ド結合M−SCF二量体の埋め込み表面積850Å2の2倍である。
【0388】 4個のヘリックスの疎水性残基の側鎖が各単量体のコアを埋めている。Cys
4とCys84も他、Cys43とCys138も2つの分子間ジスルフィド対
を形成している。2つのジスルフィド結合は、二量体インターフェースから離れ
た各プロトマーの1端(尾部)に位置している。Cys4−Cys89ジスルフ
ィド結合は、 Val39、Leu98、Pro40およびHis42の側鎖で
包み込まれたジスルフィド結合であるCys43−Cys138より露出してい
る。このことが、Cys4−Cys89結合がCys43−Cys138ジスル
フィド結合より化学的還元に鋭敏である理由を説明すると考えられる(ル(Lu
)ら、J.Biol.Chem.271:11309−1131、1996)。
【0389】 SCF二量体インターフェースはαAおよびβ1、αBおよびαC間のループ
で構成され、3枚の層に分けられる(図21参照)。β鎖側の底の層は疎水性相
互作用で構成される。1つのプロモーター由来のTyr26、Pro23、Ph
e63およびLeu22の側鎖は他のプロモーター由来の対応する側鎖と詰め合
わされ、Tyr26−Asp25'およびTyr26'−Asp25がカーペット
状に水素結合環を形成している(図2B参照)。これらの分子間水素結合対は、
2個のプロモーター間の分子間ジスルフィド結合を置き換えている(バザンら、
Cell 65:9−10、1991;ブロウディ(Broudy)、Bloo
d 90:1345−1364、1997)。配列決定から、このTyr−As
p対が、非共有結合相互作用により二量体を生成するサイトカインの第3のメン
バーであるftl3リガンドで保存されていることを示している(ハヌム(Ha
nnum)ら、Nature368:643−648、1994)。インターフ
ェースのコアで、4個のアスパラギン残基(双方のプロモーター由来のAsn7
2およびAsn21)の側鎖がそれ自身の間、および水分子と水素結合を形成し
ている(図21参照)。個の十分に配位した水分子は、2つの対称関係にあるA
sn21残基の2個のカルボニル酸素原子と平均結合長2.7Åで水素結合を形
成している。上層は1個のプロモーターのループαB−αCと他のプロモーター
のループαB−αCとの間の相互作用を含んでいる。2つのプロモーター間で形
成した多くの水素結合に加えて、Lys17−Glu68'、Lys24−As
p61'、およびその対称関係にある同じ残基間に4つの塩架橋が存在する可能
性がある。
【0390】 実施例5−FGF2−FGFR1−ヘパリン3成分複合体の構造決定 FGF2−FGFR1複合体の発現、生成および結晶化は先の報告通りに行わ
れた(プロトニコフら、Cell 98:641−650、1999)。天然型
FGF2−FGFR1複合体の結晶を1mMのデカサッカライドを含む10μl
の安定化溶液(40%PEG8000、0.25M硫酸アンモニウム、0.1M
トリスHCl、pH8.5)中、20℃で1週間インキュベートした。データを
瞬間冷凍結晶(10%グリセロールを低温保護剤として用いる乾燥窒素気流中)
でCCD検出器により、ブルックヘブン国立研究所のナショナルシンクロトロン
光源のビームラインX4Aで収集した。データをDENZOおよびSCALEP
ACK(オトウィノウスキら、振動データ換算プログラム、Proceedin
gs of the CCP4 Weekend、サウヤーら編集、SERCダレス
ブリー研究所、ダレスブリー、英国、11993)を用いて処理した。差フーリ
エ電子密度マップをFGF2−FGFR1構造(プロトニコフら、1999)を
用いて計算した。オリゴサッカライドに対する最初のモデルをヘキササッカライ
ド(1BFC)と複合体を形成したFGF2の結晶構造から取った(ファーマン
ら、Science 271:1116−1120、1996)。オリゴサッカ
ライド似対するパラメーターをHIC−Upサーバーを用いて作成した(クレイ
ヴェグト(Kleywegt)ら、Acta Crystallogr.D54
:1119−1131、1998)。シミュレーションアニーリングと位置B因
子の精密化をCNSを用いて行った(ブルエンガー(Bruenger)ら、A
cta Crystallogr.D54:905−921、1998)。2F
o−Fc電子密度マップ中へのモデル構築をプログラムOで行った(ジョーンズ
ら、Acta Crystallogr.A47:110−119、1991)
。平均B因子は全原子に対し36.9Å2、FGF2に対し35.0Å2、FGF
R1に対し35.3Å2およびデカサッカライド分子に対し72.4Å2である。
【0391】 構造決定 ヘパリン結合峡谷がFGF2−FGFR1結晶に存在するので、これらの結晶
をデカサッカライドとインキュベートするとFGF2−FGFR1−ヘパリン3
成分複合体の生成が促進される。 FGF2−FGFR1−ヘパリン3成分複合
体の結晶構造をFGF2−FGFR1構造から得られた位相を用いて解析した。
データ収集および精密化統計は表5に与えられる。峡谷を横断し、リガンドを架
橋するデカサッカライド(ヘパリン)が発見されることが予想された。しかしな
がら、差フーリエ電子密度マップは峡谷内の2個のデカサッカライド分子を明ら
かに示している(図27および28参照)。最初の6個の糖リング(A−F)の
みがタンパク質と相互作用していることが観察される。従って、電子密度はこれ
らのリングについては良く分かる。さらに、格子定数が都合が良いため、2個の
別な糖(リングGおよびH)が1個のデカサッカライドでモデル化される。
【0392】 原子構造座標 表6はFGF2−FGFR1−ヘパリン3成分複合体の原子構造座標を提供す
る。
【0393】 ヘパリンの構造 ヘパリンは、α1−4結合で接続したD−グルコサミン(GlnN)とL−ユ
ーロニック酸(IdoA)の繰り返しジサッカライド単位によるヘリックスで近
似することができる。各ジサッカライド単位は、IdoAの1個の2−ヒドロキ
シル基と、2個のGlcNの2−アミノおよび6−ヒドロキシル基の3個所で硫
酸化されている。硫酸基とカルボキシル基がヘパリンヘリックスの負荷電エッジ
を形成し、平均17−19Å毎にヘリックスの一定の側鎖上に現れる。これらの
ヘリックスパラメーターは8.7Å と180°のX線繊維回折値と一致している
(ニードスチンスキ(Nieduszynski)ら、Am.Chem.Soc
.Symp.Ser.48:73、1977)。ヘパリンポリサッカライドは非
還元末端(O4)および還元末端(O1)を有する極性化合物である。結晶構造
中では、デカサッカライドは峡谷の中心でその非還元末端と結合し、リガンドの
高親和性ヘパリン結合部位上へ伸びている。従って、二量体集合の対称が保たれ
る。1個の極性ヘパリン分子が峡谷を横切ることは、系の2回対称を乱す。
【0394】 数個の分子間水素結合がデカサッカライドのヘリックスコンフォーメーション
を安定化する(データは示さず)。GlnNリングは全てそのコンフォーメーシ
ョンである。IdoAループは、デカサッカライドの溶液構造で以前に観察され
た様に、イス型または歪んだボートコンフォーメーションであり(ムーロイ(M
ulloy)ら、Biochem.J.293:849−858、1993)、
IdoAがFGFまたはFGFRとの接触によって複数のコンフォーメーション
を取ることを示唆している。IdoAのコンフォーメーションの柔軟性が様々な
FGFまたはFGFRの認識に役割を果たしていることが考えられる。
【0395】 ヘパリン−FGFおよびヘパリン−FGFR相互作用 各デカサッカライドはFGFおよび2つのFGFRと全体で30個の水素結合
を形成する(図29および30参照)。1個のFGF:FGFR=1:1複合体
内で、ヘパリンと25個の水素結合を形成している。残りの5個のヘパリンとの
水素結合は隣り合った1;1のFGR:FGFR複合体由来である。D2のヘパ
リン結合表面に位置するリジン160、163、172、175および177は
、1:1のFGF:FGFR複合体中のFGFRとヘパリン間に7個の水素結合
を形成する。ヘパリンのリング酸素(リングA)で媒介されるLys175とヘ
パリン間の水素結合を除いて、これらの水素結合の残りは硫酸基で媒介されてい
る。3つのタイプのヘパリン硫酸基の全て(N−硫酸基、2−O−硫酸基および
6−O−硫酸基)がこれらの相互作用に用いられる(図29および30)。
【0396】 FGF−ヘパリンインターフェースで全部で18個の水素結合を形成し、その
半分が硫酸基で媒介される(図29および30)。残りの半分はカルボキシル基
、リンカーまたはヘパリンのリング酸素で媒介される。表面残基Asn27(β
1−β2ループ中に所在)、Arg120、およびThr212(β9−β10
ループ中に所在)、Lys125、Lys129、Gln134、Lys135
およびAla136(β11−β12ループに所在)はFGF上のヘパリン結合
部位を形成する。これらの残基はFGF2−ヘキササッカライド構造中でヘパリ
ンと相互作用するものと同じである(ファーマンら、Science271:1
116−1120)。しかしながら、FGFに対するヘパリンヘリックスの配向
はこれらの2つの構造間で若干異なっているので、水素結合対は同じでない。
【0397】 FGF2のLys135とヘパリンの6−O−硫酸基(リングB)間の1本の
水素結合を別として、硫酸基媒介相互作用の残りはN−硫酸基および2−O−硫
酸基を含む。これにより、FGF2が6−O−脱硫酸ヘパリンとの結合能を維持
すると報告されている理由の説明が可能である。それにもかかわらず、6−O−
脱硫酸ヘパリンオリゴサッカライドはFGF2−FGFR相互作用の促進に有効
ではない。本発明の結晶構造では、リングBの6−O−硫酸基(図29および3
0)はFGFおよびFGFR双方のヘパリン結合残基と水素結合を形成する。F
GFとFGFRの双方がヘパリンの同じ硫酸基と同時に結合することは、明らか
にFGFのFGFRに対する見かけの親和性を増加させる。従って、本発明の構
造も十分に報告されたヘパリン依存性1:1FGF−0FGFR相互作用に対す
る分子的な基盤を与えるものである。
【0398】 FGF−FGFRの1:1複合体内でFGF−FGFR相互作用を増進する他
に、ヘパリンはまた2回対称二量体を横切って隣り合うレセプターと相互作用す
る。合計5個の水素結合が、FGFR残基Lys207およびArg209、お
よびヘパリンの糖リングA−D間のこのインターフェースに形成する(図29お
よび30)。Ile216とヘパリンの非還元性リングA間の疎水性接触がこの
インターフェースをさらに強化する。Lys207とヘパリン間の水素結合はカ
ルボキシル基、リンカーおよびヘパリンのリング酸素で媒介される。対照的に、
Arg209はリングDの6−O−硫酸基と水素結合を形成し、FGF2−FG
FRの1:1相互作用を促進しFGF−FGFRの2:2二量体形成を誘発する
6−O−硫酸基の重要な役割を強調する。結晶構造は、しばしば報告されている
様に、レセプター二量体化を誘発できず、6−O−脱硫酸ヘパリンオリゴサッカ
ライドが細胞分裂誘発活性を促進することができないことに対する合理的な説明
を提供するものである。
【0399】
【化2】
【0400】 説明のため本明細書に記載された本発明は、本明細書に特に記載されない要素
および制約がなくても実行し得る。使用された用語および表現は、用語として用
いられたものであり、制約的ではなく、この様な用語と表現の使用は図示し記載
され特徴の等価物、またはその一部を排除するものではなく、様々な変更がクレ
ームされた本発明の範囲内で可能である。従って、本発明は好ましい実施態様お
よび任意の特徴で特に開示されているが、本明細書に開示された内容の変更また
は変法は当業者に依存するものであり、この様な変更または変法は付随するクレ
ームに定義された様に本発明の範囲内である。
【0401】 本明細書で言及または引用した文献、特許および特許出願の内容、および他の
文書および電子的に入手し得る情報は、個々の文書が特別かつ個別に参考のため
取り入れることを指示されたと同程度にその実体が参考資料として取り入れられ
ている。出願人は本明細書出願に、この様な文献、特許、特許出願または他の文
書を物理的に取り入れる権利を保有する。
【0402】 本明細書で使用された用語と表現は、記述の用語として使用されたものであり
、限定的ではなく、この様な用語および表現の使用に、図示され記載された特徴
の等価物またはその一部を除外する意図はなく、様々な変更はクレームされた本
発明の範囲内である。従って、本発明は好ましい実施態様およびその任意の特徴
で開示されているが、本明細書に具象化され開示された本発明の変更および変法
は当業者に依存するものであり、この様な変更および変法は本発明の範囲内であ
ることを理解しなければならない。
【0403】 FGFR1(D2−D3)/FGF2複合体の構造はプロトニコフら、Cel
l 98:641−650(1999)に報告されている。FGFR1(D2−
D3)/FGF1複合体、およびFGFR2/FGF2複合体の構造はプロトニ
コフら、Cell 101:413−424(2000)に報告されている。ヒ
ト幹細胞因子はツァンら、Proc.Nat.Acad.Sci.97(14)
:7732−7737に報告されている。これら3つの参考文献の開示は本明細
書に参考文献として取り入れられている。
【0404】 以下の文献は本明細書で報告したRPTKおよび特にFGF−FGFRヘパリ
ン3成分複合体に関する一般的参考文献を含む。 Basilico, C., and Moscatelli, D. (1992). The FGF family of growth factor
s and oncogenes. Adv. Cancer Res. 59,115-165. Bruenger, A. T., Adams, P. D., Clore, G. M., DeLano, W. L., Gros, P., Gr
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【0405】関連出願のクロスリファレンス 本出願は199年8月30日受理U.S.仮出願番号60/151、810の
35U.S.C.§119(e)に基づき優先権を主張する。その開示は本明細
書にその実体が参考資料として取り入れられている。
【0406】
【表1】
【0407】
【表2】
【0408】
【表3】
【0409】
【表4】
【0410】
【表5】
【0411】
【表6】
【0412】
【表7】
【0413】
【表8】
【0414】
【表9】
【0415】
【表10】
【0416】
【表11】
【0417】
【表12】
【0418】
【表13】
【0419】
【表14】
【0420】
【表15】
【0421】
【表16】
【0422】
【表17】
【0423】
【表18】
【0424】
【表19】
【0425】
【表20】
【0426】
【表21】
【0427】
【表22】
【0428】
【表23】
【0429】
【表24】
【0430】
【表25】
【0431】
【表26】
【0432】
【表27】
【0433】
【表28】
【0434】
【表29】
【0435】
【表30】
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【表111】
【0517】
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【表224】
【0630】
【表225】
【0631】
【表226】
【0632】
【表227】
【0633】
【表228】
【0634】
【表229】
【0635】
【表230】
【0636】
【表231】
【0637】
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【0638】
【表233】
【0639】
【表234】
【0640】
【表235】
【0641】
【表236】
【0642】
【表237】
【0643】
【表238】
【0644】
【表239】
【0645】
【表240】
【0646】
【表241】
【0647】
【表242】
【0648】
【表243】
【0649】
【表244】
【0650】
【表245】
【0651】
【表246】
【0652】
【表247】
【0653】
【表248】
【0654】
【表249】
【0655】
【表250】
【0656】
【表251】
【0657】
【表252】
【0658】
【表253】
【0659】
【表254】
【0660】
【表255】
【0661】
【表256】
【0662】
【表257】
【0663】
【表258】
【0664】
【表259】
【0665】
【表260】
【0666】
【表261】
【0667】
【表262】
【0668】
【表263】
【0669】
【表264】
【0670】
【表265】
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【表266】
【0672】
【表267】
【0673】
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【0674】
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【0675】
【表270】
【0676】
【表271】
【0677】
【表272】
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【表273】
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【0680】
【表275】
【0681】
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【表277】
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【0684】
【表279】
【0685】
【表280】
【0686】
【表281】
【0687】
【表282】
【0688】
【表283】
【0689】
【表284】
【0690】
【表285】
【0691】
【表286】
【0692】
【表287】
【0693】
【表288】
【0694】
【表289】
【0695】
【表290】
【0696】
【表291】
【0697】
【表292】
【0698】
【表293】
【0699】
【表294】
【0700】
【表295】
【0701】
【表296】
【0702】
【表297】
【0703】
【表298】
【0704】
【表299】
【0705】
【表300】
【0706】
【表301】
【0707】
【表302】
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【表303】
【0709】
【表304】
【0710】
【表305】
【0711】
【表306】
【0712】
【表307】
【0713】
【表308】
【0714】
【表309】
【0715】
【表310】
【0716】
【表311】
【0717】
【表312】
【0718】
【表313】
【0719】
【表314】
【0720】
【表315】
【0721】
【表316】
【0722】
【表317】
【0723】
【表318】
【0724】
【表319】
【0725】
【表320】
【0726】
【表321】
【0727】
【表322】
【0728】
【表323】
【0729】
【表324】
【0730】
【表325】
【0731】
【表326】
【0732】
【表327】
【0733】
【表328】
【0734】
【表329】
【0735】
【表330】
【0736】
【表331】
【0737】
【表332】
【0738】
【表333】
【0739】
【表334】
【0740】
【表335】
【0741】
【表336】
【0742】
【表337】
【0743】
【表338】
【0744】
【表339】
【0745】
【表340】
【0746】
【表341】
【0747】
【表342】
【0748】
【表343】
【0749】
【表344】
【0750】
【表345】
【0751】
【表346】
【0752】
【表347】
【0753】
【表348】
【0754】
【表349】
【0755】
【表350】
【0756】
【表351】
【0757】
【表352】
【0758】
【表353】
【0759】
【表354】
【0760】
【表355】
【0761】
【表356】
【0762】
【表357】
【0763】
【表358】
【0764】
【表359】
【0765】
【表360】
【0766】
【表361】
【0767】
【表362】
【0768】
【表363】
【0769】
【表364】
【0770】
【表365】
【0771】
【表366】
【0772】
【表367】
【0773】
【表368】
【0774】
【表369】
【0775】
【表370】
【0776】
【表371】
【0777】
【表372】
【0778】
【表373】
【0779】
【表374】
【0780】
【表375】
【0781】
【表376】
【0782】
【表377】
【0783】
【表378】
【0784】
【表379】
【0785】
【表380】
【0786】
【表381】
【0787】
【表382】
【0788】
【表383】
【0789】
【表384】
【0790】
【表385】
【0791】
【表386】
【0792】
【表387】
【0793】
【表388】
【0794】
【表389】
【0795】
【表390】
【0796】
【表391】
【0797】
【表392】
【0798】
【表393】
【0799】
【表394】
【0800】
【表395】
【0801】
【表396】
【0802】
【表397】
【0803】
【表398】
【0804】
【表399】
【0805】
【表400】
【0806】
【表401】
【0807】
【表402】
【0808】
【表403】
【0809】
【表404】
【0810】
【表405】
【0811】
【表406】
【0812】
【表407】
【0813】
【表408】
【0814】
【表409】
【0815】
【表410】
【0816】
【表411】
【0817】
【表412】
【0818】
【表413】
【0819】
【表414】
【0820】
【表415】
【0821】
【表416】
【0822】
【表417】
【0823】
【表418】
【0824】
【表419】
【0825】
【表420】
【0826】
【表421】
【0827】
【表422】
【0828】
【表423】
【0829】
【表424】
【0830】
【表425】
【0831】
【表426】
【0832】
【表427】
【0833】
【表428】
【0834】
【表429】
【0835】
【表430】
【0836】
【表431】
【0837】
【表432】
【0838】
【表433】
【0839】
【表434】
【0840】
【表435】
【0841】
【表436】
【0842】
【表437】
【0843】
【表438】
【0844】
【表439】
【0845】
【表440】
【0846】
【表441】
【0847】
【表442】
【0848】
【表443】
【0849】
【表444】
【0850】
【表445】
【0851】
【表446】
【0852】
【表447】
【0853】
【表448】
【0854】
【表449】
【0855】
【表450】
【0856】
【表451】
【0857】
【表452】
【0858】
【表453】
【0859】
【表454】
【0860】
【表455】
【0861】
【表456】
【0862】
【表457】
【0863】
【表458】
【0864】
【表459】
【0865】
【表460】
【0866】
【表461】
【0867】
【表462】
【0868】
【表463】
【0869】
【表464】
【0870】
【表465】
【0871】
【表466】
【0872】
【表467】
【0873】
【表468】
【0874】
【表469】
【0875】
【表470】
【0876】
【表471】
【0877】
【表472】
【0878】
【表473】
【0879】
【表474】
【0880】
【表475】
【0881】
【表476】
【0882】
【表477】
【0883】
【表478】
【0884】
【表479】
【0885】
【表480】
【0886】
【表481】
【0887】
【表482】
【0888】
【表483】
【0889】
【表484】
【0890】
【表485】
【0891】
【表486】
【0892】
【表487】
【0893】
【表488】
【0894】
【表489】
【0895】
【表490】
【0896】
【表491】
【0897】
【表492】
【0898】
【表493】
【0899】
【表494】
【0900】
【表495】
【0901】
【表496】
【0902】
【表497】
【0903】
【表498】
【0904】
【表499】
【0905】
【表500】
【0906】
【表501】
【0907】
【表502】
【0908】
【表503】
【0909】
【表504】
【0910】
【表505】
【0911】
【表506】
【0912】
【表507】
【0913】
【表508】
【0914】
【表509】
【0915】
【表510】
【0916】
【表511】
【0917】
【表512】
【0918】
【表513】
【0919】
【表514】
【0920】
【表515】
【0921】
【表516】
【0922】
【表517】
【0923】
【表518】
【0924】
【表519】
【0925】
【表520】
【0926】
【表521】
【0927】
【表522】
【0928】
【表523】
【0929】
【表524】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はFGF2と複合体を形成したFGFR1 D2−D3二量体
のリボンダイアグラムである。
【図2】 図2はFGF1と複合体を形成したFGFR1 D2−D3二量体
のリボンダイアグラムである。
【図3】 図3はテロキンのIGの褶曲と比較した、FGFR1 D2および
D3のIgの褶曲のトポロジーダイアグラムである。
【図4】 図4はヒトFGF1、FGF2、FGF3およびFGF4のD2−
D3領域の配列である。
【図5】 図5はFGF1−FGF2複合体のリボンダイアグラムを示し、I
g様ドメイン2(D2)および3(D3)はそれぞれ緑とシアンで示される。
【図6】 図6はFGF1−FGFR1およびFGF2−FGFR2複合体の
空間充填モデルである。
【図7】 図7はFGF2とFGFR2の間の疎水性インターフェース中の詳
細な相互作用の立体図を示す。
【図8】 図8はFGF1とFGFR1の間の疎水性インターフェース中の詳
細な相互作用の立体図を示す。
【図9】 図9はD2−D3リンカー中のArg251の近傍のFGF2とF
GFR2の間の保存水素結合ネットワークの詳細な相互作用の立体図を示す。
【図10】 図10はD2−D3リンカー中のArg250の近傍のFGF1
とFGFR1の間の水素結合ネットワークの詳細な相互作用の立体図を示す。
【図11】 図11はFGF2−FGFR2構造中のFGF2とD3のβF−
βGループ間のインターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す。
【図12】 図12はFGF2−FGFR2構造中の、FGF2のN−末端配
列(β1の前)とD3間のインターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す
。図とコードは図11と同じである。
【図13】 図13はFGF2−FGFR2構造中のFGF2と、βC'−β
Eセグメント(紫で示される)の間のインターフェース中の詳細な相互作用の立
体図を示す。図とコードは図11と同じである。
【図14】 図14はFGF1−FGFR1構造中のFGF1とD3の間のイ
ンターフェース中の詳細な相互作用の立体図を示す。
【図15】 図15はヒトFGFレセプターのD2およびD2−D3リンカー
のリガンド結合ドメインの構造に基づく配列を示す。
【図16】 図16はヒトFGFレセプターのD3のリガンド結合ドメインの
構造に基づく配列を示す。
【図17】 図17はCLUSRALWプログラムを用いて行ったFGFの構
造に基づく配列を示す。
【図18】 図18は骨格の乱れを引き起こすヒトFGFR2遺伝子における
突然変異の位置を示す。
【図19】 図19はSCFの全体構造を示す。
【図20】 図20はSCF、M−CSFおよびIL−5の2次構造に基づく
配列を示す。
【図21】 図21は、モルスクリプトおよびラスター 3Dにより作成され
たSCFの二量体インターフェースの立体図である。
【図22】 図22は、二量体インターフェースのTyr26およびAsp2
5'の水素結合サークルに対し、1.2で等高線を描き、Oで作成された2Fo
−Fc電子密度を示す。
【図23】 図23はモルスクリプトおよびラスター3Dで作成した共有結合
SCF二量体のモデルを示す。
【図24】 図24はGRASPで作成された、c−kitおよびSCF:S
CFR複合体に対するSCF上の潜在的結合部位を示す。
【図25】 図25はヒト、ラット、マウス、イヌおよびブタSCFの配列を
示す。
【図26】 図26はGRASPで作成した、c−kitの細胞外ドメインの
Ig様ドメインを有する複合体中の、SCFの提案されたモデルを示す。
【図27】 図27はFGF2−FGFR1複合体の前もって生成した結晶中
へ浸透したジサッカライドの電子密度マップを示し、二量体集合中のデカサッカ
ライドの位置を示す。
【図28】 図28は原子モデルから除かれたデカサッカライドによる仮想ア
ニーリング後に計算された、図27に示されたFGF2−FGFR1複合体のF
oFc電子密度マップの立体図を示す。
【図29】 図29は規則的なデカサッカライドリング(A−F)、FGFお
よびFGFR間の詳細な相互作用の立体図を示す。
【図30】 図30は3成分複合体中の、デカサッカライド(ヘパリン)と、
FGFおよびFGFRの間の相互作用を示す概略図である。
【図31】 図31はセファデックス200カラム(ファルマシア)による、
様々な比率で均一に硫酸化されたヘキササッカライドと精製1:1FGF1−F
GFR2複合体の1組の混合物に対する、二量体生成の分離の結果を示す。
【図32】 図32は二量体FGF2−FGFR1−ヘパリン3成分複合体の
“2末端”モデルの分子表面の表現を示す。
【図33】 図33はコンピューターに基づくシステムの概略図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW (72)発明者 モハンマディ,ムーサ アメリカ合衆国ニューヨーク州10016 ニ ューヨーク,ファースト アベニュー 564,アパートメント 12エフ Fターム(参考) 2G045 AA34 DA36 FB01 JA01 4B063 QA08 QQ05 QQ79 QR33 QR77 QR80 QS05 QS36 QX01 4H045 AA30 BA10 CA40 DA01 DA51 EA50 FA72 FA74

Claims (89)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含む
    ポリペプチドを含む結晶。
  2. 【請求項2】 細胞外ドメインが1またはそれ以上のIg様ドメインを含む
    ,請求項1記載の結晶。
  3. 【請求項3】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子レ
    セプターである,請求項2記載の結晶。
  4. 【請求項4】 細胞外ドメインが,Ig様ドメイン2およびIg様ドメイン
    3を含み,Ig様ドメイン1を含まない,請求項3記載の結晶。
  5. 【請求項5】 繊維芽細胞成長因子レセプターが繊維芽細胞成長因子レセプ
    ター1である,請求項1記載の結晶。
  6. 【請求項6】 ポリペプチドが繊維芽細胞成長因子レセプター1のアミノ酸
    残基142−365を含む,請求項1記載の結晶。
  7. 【請求項7】 ポリペプチドが,図4に示される配列を有するFGFR1の
    アミノ酸残基150−360を含む,請求項1記載の結晶。
  8. 【請求項8】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼに結合したリガンドをさ
    らに含む,請求項1記載の結晶。
  9. 【請求項9】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子レ
    セプター1であり,リガンドがFGF1である,請求項8記載の結晶。
  10. 【請求項10】 FGF1が,図17に示されるアミノ酸配列を有する,請
    求項9記載の結晶。
  11. 【請求項11】 表2の原子構造座標により定義される,請求項9記載の結
    晶。
  12. 【請求項12】 正方晶系空間群P1に属し,かつa=b=98.5Å,c
    =197.0Åの単位格子寸法を有する,請求項11記載の結晶。
  13. 【請求項13】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子
    レセプター1であり,リガンドがFGF2である,請求項8記載の結晶。
  14. 【請求項14】 FGF2が図17に示されるアミノ酸配列を有する,請求
    項13記載の結晶。
  15. 【請求項15】 表1の原子構造座標により定義される,請求項13記載の
    結晶。
  16. 【請求項16】 正方晶系空間群P41212に属し,かつa=62.55
    Å,b=64.06Å,c=64.14Å,α=93.40°,β=111.1
    7°,およびγ=97.18°の単位格子寸法を有する,請求項13記載の結晶
  17. 【請求項17】 少なくとも1つの重原子をさらに含む,請求項1記載の結
    晶。
  18. 【請求項18】 請求項1または8に記載の細胞外ドメインの構造の三次元
    表示。
  19. 【請求項19】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが変異体レセプター蛋
    白質チロシンキナーゼである,請求項1または8に記載の結晶。
  20. 【請求項20】 リガンドが変異体リガンドである,請求項8記載の結晶。
  21. 【請求項21】 繊維芽細胞成長因子レセプターが繊維芽細胞成長因子レセ
    プター2である,請求項1記載の結晶。
  22. 【請求項22】 ポリペプチドが,繊維芽細胞成長因子レセプター2のアミ
    ノ酸残基147−366を含む,請求項21記載の結晶。
  23. 【請求項23】 ポリペプチドが,図4に示される繊維芽細胞成長因子レセ
    プター2の残基150−360のアミノ酸配列を含む,請求項22記載の結晶。
  24. 【請求項24】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子
    レセプター2であり,リガンドがFGF2である,請求項8記載の結晶。
  25. 【請求項25】 FGF2が,図17に示されるアミノ酸配列を有する,請
    求項24記載の結晶。
  26. 【請求項26】 表3の原子構造座標により定義される,請求項24記載の
    結晶。
  27. 【請求項27】 三斜晶系空間群P1に属し,かつa=72.20Å,b=
    71.68Å,c=90.92Å,α=90.53°,β=89.98°,およ
    びγ=89.99°の単位格子寸法を有する,請求項24記載の結晶。
  28. 【請求項28】 幹細胞因子のレセプター結合コアを含むポリペプチドを含
    む結晶。
  29. 【請求項29】 ポリペプチドのレセプター結合コアが4ヘリックス束を含
    む,請求項28記載の結晶。
  30. 【請求項30】 ポリペプチドのレセプター結合コアが2つのβ鎖をさらに
    含む,請求項29記載の結晶。
  31. 【請求項31】 ポリペプチドのホモ二量体を含む,請求項30記載の結晶
  32. 【請求項32】 ポリペプチドの非共有結合性ホモ二量体を含む,請求項3
    1記載の結晶。
  33. 【請求項33】 前記結晶が斜方晶系であり,a=72.47A,b=83
    .45Aおよびc=89.15Aの単位格子寸法を有する,請求項32記載の結
    晶。
  34. 【請求項34】 前記結晶が単斜晶系である,請求項33記載の結晶。
  35. 【請求項35】 表4の原子構造座標により定義される,請求項34記載の
    結晶。
  36. 【請求項36】 幹細胞因子のアミノ酸残基1−141を含むポリペプチド
    の非共有結合性ホモ二量体を含む,請求項32記載の結晶。
  37. 【請求項37】 非共有結合ホモ二量体がC2対称を有する,請求項32記
    載の結晶。
  38. 【請求項38】 レセプター結合コアに結合したリガンドをさらに含む,請
    求項29記載の結晶。
  39. 【請求項39】 リガンドがレセプター蛋白質チロシンキナーゼである,請
    求項38記載の結晶。
  40. 【請求項40】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼがc−kitポリペプ
    チドである,請求項39記載の結晶。
  41. 【請求項41】 幹細胞因子のレセプター結合コアを含むポリペプチドの構
    造の三次元表示。
  42. 【請求項42】 コンピュータ読み出し可能な形態である,請求項41記載
    の三次元表示。
  43. 【請求項43】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含
    むポリペプチドを含む分子構造を描写し分析するためのコンピュータに基づくシ
    ステムであって, (a)分子構造からの構造データを記憶するデータ記憶装置; (b)前記メモリと接続されたコンピュータプロセッサであって,1組のプログ
    ラムされた指令を用いて,処理された前記データの出力を発生するプロセッサ;
    および (c)前記プロセッサと接続されたディスプレイ装置であって,前記処理された
    出力にしたがって分子構造を多次元画像とするディスプレイ を含むことを特徴とするシステム。
  44. 【請求項44】 前記データ記憶装置が, (i)多次元空間における分子構造の1組の空間座標を含む少なくとも1つの第
    1のタイプの記憶領域;および (ii)分子構造の複数のアミノ酸の特徴の表示を含む少なくとも1つの第2の
    タイプの記憶領域 を含み,ここで,前記第2のタイプの記憶領域は前記第1のタイプの記憶領域と
    論理的に連結して前記プロセッサにおけるデータ処理を行わせることを特徴とす
    る,請求項43記載のシステム。
  45. 【請求項45】 前記プロセッサが, (i)前記メモリ中の構造データにアクセスし,そして (ii)前記データ記憶装置における1組の構造データポイントに対応する,多
    次元空間における分子構造の可視画像を描写するための画像信号を発生し,ここ
    で,前記画像信号は処理された出力である,請求項43記載のシステム。
  46. 【請求項46】 前記ディスプレイが, (i)前記処理された出力を受け取り,そして (ii)前記処理された出力にしたがって,コンピュータスクリーン上で前記分
    子構造を可視画像とする,請求項43記載のシステム。
  47. 【請求項47】 (i)分子構造以外の組成物の特徴の幾何学的配置のデー
    タを記憶するための記憶装置であって,前記プロセッサに接続された記憶装置;
    および (ii)オペレータからの指令を受け取るためのオペレータインターフェースで
    あって,前記プロセッサに接続されたインターフェース をさらに含み,ここで,前記プロセッサは,オペレータインターフェースからの
    前記指令にしたがって,前記組成物の可視表示を描写するための,前記ポリペプ
    チドの可視画像と相対的な追加の画像信号を発生し,前記追加の画像信号は追加
    の処理された出力であることを特徴とする,請求項43記載のシステム。
  48. 【請求項48】 構造データが表1,2,3または6に記載されるものであ
    る,請求項43記載のシステム。
  49. 【請求項49】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含
    むポリペプチドを含む分子構造の可視ディスプレイを発生するための情報を記憶
    するメモリであって, (i)多次元空間における分子構造の1組の空間座標を含む少なくとも1つの第
    1のタイプの記憶領域;および (ii)分子構造の複数のアミノ酸の特徴の表示を含む少なくとも1つの第2の
    タイプの記憶領域; を含み,ここで,前記第2のタイプの記憶領域は多次元空間における分子構造の
    幾何学的配置を表示するよう前記第1のタイプの記憶領域と接続されていること
    を特徴とするメモリ。
  50. 【請求項50】 前記第2のタイプの記憶領域は,前記第1のタイプの記憶
    領域と論理的に連結して,多次元空間における分子構造の細胞外ドメインの少な
    くとも1つの特徴の幾何学的配置を表示する,請求項49記載のメモリ。
  51. 【請求項51】 空間座標が表1,2,3または6に記載されるものである
    ,請求項50記載のメモリ。
  52. 【請求項52】 幹細胞因子またはその一部を含む分子構造を描写し分析す
    るためのコンピュータに基づくシステムであって, (a)分子構造からの構造データを記憶するデータ記憶装置; (b)前記メモリと接続されたコンピュータプロセッサであって,1組のプログ
    ラムされた指令を用いて処理された前記データの出力を発生するプロセッサ;お
    よび (c)前記プロセッサと接続されたディスプレイ装置であって,前記処理された
    出力にしたがって分子構造を多次元画像とするディスプレイ を含むことを特徴とするシステム。
  53. 【請求項53】 分子構造が,幹細胞因子レセプター結合コアを含むポリペ
    プチドを含む,請求項52記載のシステム。
  54. 【請求項54】 構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメ
    インの三次元構造を決定する方法であって, (a)構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメインのアミノ酸
    配列を既知の原子構造座標を有するレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ド
    メインのアミノ酸配列とアラインメントさせ,ここで,アラインメントは,アミ
    ノ酸配列の相同領域をマッチングさせることにより行われ; (b)既知の原子構造座標からの相同のアミノ酸のそれぞれのコンピュータ表示
    を,構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメイン中の対応する
    アミノ酸の構造のコンピュータ表示に移して,レセプター蛋白質チロシンキナー
    ゼ細胞外ドメイン構造を提供し;そして (c)得られるレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメイン構造の低エネ
    ルギーコンフォメーションを決定することにより,構造未知のレセプター蛋白質
    チロシンキナーゼ細胞外ドメインの三次元構造を決定する ことを含む方法。
  55. 【請求項55】 構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメ
    インの三次元構造を決定する方法であって, (a)結晶から得られる回折データセットと既知の原子構造座標を有するレセプ
    ター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメインを含む結晶から得られる回折データ
    セットとをマッチングさせることにより,構造未知のレセプター蛋白質チロシン
    キナーゼ細胞外ドメインを含む結晶の単位格子中の原子の位置を決定して,レセ
    プター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメイン構造を提供し;そして (b)得られたレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメイン構造の低エネ
    ルギーコンフォメーションを決定することにより,構造未知のレセプター蛋白質
    チロシンキナーゼ細胞外ドメインの三次元構造を決定する ことを含む方法。
  56. 【請求項56】 構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメ
    インの三次元構造を決定する方法であって, (a)NMRデータを用いて構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞
    外ドメインの二次構造を決定し;そして (b)既知の原子構造座標を有するレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ド
    メインの原子構造座標を用いて,アミノ酸の空間相互作用によるアラインメント
    を単純化することにより,構造未知のレセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外
    ドメインの三次元構造を決定する ことを含む方法。
  57. 【請求項57】 請求項54−56のいずれかに記載の方法を用いて決定さ
    れた,レセプター蛋白質チロシンキナーゼ細胞外ドメインの三次元構造。
  58. 【請求項58】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼの原子構造座標の三次元表示を提供し
    ,コンピュータデータベースからの化合物,リガンド,またはリガンド類似体の
    コンピュータ表示をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ上の結合部位とドッキン
    グさせて複合体を提供し; (b)望ましい幾何学的フィットおよび1またはそれ以上の望ましい相補的相互
    作用を有する複合体のコンフォメーションを決定し; (c)レセプター蛋白質チロシンキナーゼ結合部位と最もよくフィットする化合
    物,リガンド,またはリガンド類似体をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能
    の潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    のレセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルを比較し;そして (f)レセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルの相違に基づいて,
    潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤として同定する
    ことを含む方法。
  59. 【請求項59】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)化合物,リガンド,またはリガンド類似体が結合したレセプター蛋白質チ
    ロシンキナーゼの三次元表示を改変して複合体を提供し,ここで,化合物,リガ
    ンド,またはリガンド類似体およびレセプター蛋白質チロシンキナーゼの三次元
    表示は原子構造座標により定義され; (b)望ましい幾何学的フィットおよび1またはそれ以上の望ましい相補的相互
    作用を有する複合体のコンフォメーションを決定し; (c)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと最もよくフィットする改変された化
    合物,リガンド,またはリガンド類似体をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機
    能の潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    のレセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルを比較し;そして (f)レセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルに基づいて,潜在的
    調節剤をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤として同定する ことを含む方法。
  60. 【請求項60】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと複合体化した化合物,リガンド,ま
    たはリガンド類似体の三次元表示を提供し,ここで,化合物,リガンド,または
    リガンド類似体およびレセプターPTKの三次元表示は原子構造座標により定義
    され; (b)化合物検索コンピュータプログラムを用いて,複合体化した化合物,リガ
    ンド,またはリガンド類似体と類似する化合物,リガンド,またはリガンド類似
    体についてデータベースを検索し; (c)複合体化した化合物,リガンド,またはリガンド類似体と類似する化合物
    ,リガンド,またはリガンド類似体をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の
    潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    のレセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルを比較し;そして (f)レセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルの相違に基づいて,
    潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤として同定する
    ことを含む方法。
  61. 【請求項61】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと複合体化した化合物,リガンド,ま
    たはリガンド類似体の三次元表示を提供し,ここで,化合物,リガンド,または
    リガンド類似体およびレセプター蛋白質チロシンキナーゼの三次元表示は原子構
    造座標により定義され; (b)化合物構築コンピュータプログラムを用いて,レセプター蛋白質チロシン
    キナーゼと複合体化した化合物,リガンド,またはリガンド類似体の一部をデー
    タベースからの類似する化学構造で置き換えることにより,化合物,リガンド,
    またはリガンド類似体を潜在的調節剤として同定し,ここで,化合物の表示は構
    造座標により定義され; (c)潜在的調節剤を細胞に投与し; (d)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    のレセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルを比較し;そして (e)レセプター蛋白質チロシンキナーゼリン酸化のレベルの相違に基づいて,
    潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤として同定する
    ことを含む方法。
  62. 【請求項62】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼの原子構造座標の三次元表示を提供し
    ,コンピュータデータベースからの化合物,リガンド,またはリガンド類似体の
    コンピュータ表示を,レセプター蛋白質チロシンキナーゼ上の結合部位とドッキ
    ングさせて複合体を提供し; (b)望ましい幾何学的フィットおよび1またはそれ以上の望ましい相補的相互
    作用を有する複合体のコンフォメーションを決定し; (c)レセプター蛋白質チロシンキナーゼ結合部位と最もよくフィットする化合
    物,リガンド,またはリガンド類似体をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能
    の潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    の細胞成長のレベルを比較し;そして (f)細胞成長の相違に基づいて,潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキ
    ナーゼ機能の調節剤として同定する ことを含む方法。
  63. 【請求項63】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)化合物,リガンド,またはリガンド類似体が結合しているレセプター蛋白
    質チロシンキナーゼの三次元表示を改変して複合体を提供し,ここで,化合物,
    リガンド,またはリガンド類似体およびレセプター蛋白質チロシンキナーゼの三
    次元表示は原子構造座標により定義され; (b)望ましい幾何学的フィットおよび1またはそれ以上の望ましい相補的相互
    作用を有する複合体のコンフォメーションを決定し; (c)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと最もよくフィットする改変された化
    合物,リガンド,またはリガンド類似体をレセプター蛋白質チロシンキナーゼ機
    能の潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    の細胞成長のレベルを比較し;そして (f)細胞成長の相違に基づいて,潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキ
    ナーゼ機能の調節剤として同定する ことを含む方法。
  64. 【請求項64】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと複合体化した化合物,リガンド,ま
    たはリガンド類似体の三次元表示を提供し,ここで,化合物,リガンド,または
    リガンド類似体およびレセプターPTKの三次元表示は原子構造座標により定義
    され; (b)化合物検索コンピュータプログラムを用いて,複合体化した化合物,リガ
    ンド,またはリガンド類似体と類似する化合物,リガンド,またはリガンド類似
    体についてデータベースを検索し; (c)複合体化した化合物,リガンド,またはリガンド類似体と類似する化合物
    ,リガンド,またはリガンド類似体を,レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能
    の潜在的調節剤として同定し; (d)潜在的調節剤を細胞に投与し; (e)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    の細胞成長のレベルを比較し;そして (f)細胞成長の相違に基づいて,潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキ
    ナーゼ機能の調節剤として同定する ことを含む方法。
  65. 【請求項65】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を同定す
    る方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼと複合体化した化合物,リガンド,ま
    たはリガンド類似体の三次元表示を提供し,ここで,化合物,リガンド,または
    リガンド類似体およびレセプター蛋白質チロシンキナーゼの三次元表示は原子構
    造座標により定義され; (b)化合物構築コンピュータプログラムを用いて,レセプター蛋白質チロシン
    キナーゼと複合体化した化合物,リガンド,またはリガンド類似体の一部をデー
    タベースからの類似する化学構造で置き換えることにより,化合物,リガンド,
    またはリガンド類似体を潜在的調節剤として同定し,ここで,化合物の表示は構
    造座標により定義され; (c)潜在的調節剤を細胞に投与し; (d)潜在的調節剤を投与していない細胞と潜在的調節剤を投与した細胞との間
    の細胞成長のレベルを比較し;そして (e)細胞成長の相違に基づいて,潜在的調節剤をレセプター蛋白質チロシンキ
    ナーゼ機能の調節剤として同定する ことを含む方法。
  66. 【請求項66】 請求項58−65のいずれかに記載の方法により同定され
    る,レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤。
  67. 【請求項67】 不適切な活性を有するレセプター蛋白質チロシンキナーゼ
    を有する細胞を同定することにより疾病を診断する方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を細胞に投与し; (b)調節剤を投与しない細胞の細胞成長速度と調節剤を投与した細胞の細胞成
    長速度とを比較し;そして (c)調節剤を投与していない細胞の細胞成長の速度とは異なる細胞成長速度を
    示す,調節剤を投与した細胞を同定することによって,不適切な活性を有するレ
    セプター蛋白質チロシンキナーゼを有する細胞を特徴づけることにより疾病を診
    断する ことを含む方法。
  68. 【請求項68】 細胞性生物において不適切な活性を有するレセプター蛋白
    質チロシンキナーゼに関連する疾病を治療する方法であって, (a)レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能の調節剤を生物に投与し,ここで
    ,調節剤は,許容しうる医薬製剤中にあり;そして (b)レセプター蛋白質チロシンキナーゼ機能を活性化または阻害して疾病を治
    療する ことを含む方法。
  69. 【請求項69】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼの細胞外ドメインおよ
    び細胞外ドメインに結合したリガンドを含むポリペプチドを含む結晶。
  70. 【請求項70】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼに結合したリガンドの
    少なくとも1つに結合した硫酸化オリゴサッカライドをさらに含む,請求項69
    記載の結晶。
  71. 【請求項71】 硫酸化オリゴサッカライドが,硫酸化ジサッカライド,ヘ
    キササッカライド,オクタサッカライド,デカサッカライド,またはドデカサッ
    カライドである,請求項70記載の結晶。
  72. 【請求項72】 硫酸化オリゴサッカライドが硫酸化ムコオリゴサッカライ
    ドである,請求項70記載の結晶。
  73. 【請求項73】 硫酸化ムコオリゴサッカライドがヘパリンである,請求項
    72記載の結晶。
  74. 【請求項74】 FGF:FGFR:ヘパリン三成分複合体を含む,請求項
    70記載の結晶。
  75. 【請求項75】 FGF:FGFR:ヘパリン三成分複合体が,FGF2:
    FGFR1:ヘパリン三成分複合体である,請求項74記載の結晶。
  76. 【請求項76】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子
    レセプターであり,リガンドが繊維芽細胞成長因子である,請求項69記載の結
    晶。
  77. 【請求項77】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子
    レセプター1であり,リガンドがFGF2である,請求項76記載の結晶。
  78. 【請求項78】 請求項1,8,69,70または73に記載のポリペプチ
    ドの構造の三次元表示。
  79. 【請求項79】 コンピュータ読み出し可能な形態である,請求項78記載
    の三次元表示。
  80. 【請求項80】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼの細胞外ドメインを含
    むポリペプチドを含む結晶のX線座標データが記録されている,コンピュータ読
    み出し可能な媒体。
  81. 【請求項81】 X線座標データが表1,2,3または6に記載されている
    ものである,請求項80記載のコンピュータ−読み出し可能な媒体。
  82. 【請求項82】 媒体が,RAM,ROM,磁気媒体,光学媒体,磁気光学
    媒体,フロッピーディスク,ハードディスク,ミニディスク,サーバ,CD,お
    よびDVDからなる群より選択される,請求項80記載のコンピュータ−読み出
    し可能な媒体。
  83. 【請求項83】 前記媒体が,データを使用するための指令がプログラムさ
    れている機械により読まれるときに,機械が分子相互作用を分析するための信号
    を発生することができる,請求項80記載のコンピュータ−読み出し可能な媒体
  84. 【請求項84】 信号が,ポリペプチドまたはその一部の三次元表示を描写
    しうる画像信号である,請求項83記載のコンピュータ−読み出し可能な媒体。
  85. 【請求項85】 レセプター蛋白質チロシンキナーゼが繊維芽細胞成長因子
    レセプターであり;結晶が繊維芽細胞成長因子レセプターの細胞外ドメインに結
    合した繊維芽細胞成長因子またはその一部をさらに含み,かつ,画像信号が,繊
    維芽細胞成長因子レセプターと繊維芽細胞成長因子との間の界面を含む構造の三
    次元表示を描写することができる,請求項83記載のコンピュータ−読み出し可
    能な媒体。
  86. 【請求項86】 繊維芽細胞成長因子および繊維芽細胞成長因子レセプター
    の少なくとも1つに結合した硫酸化ムコサッカライドをさらに含む,請求項87
    記載のコンピュータ−読み出し可能な媒体。
  87. 【請求項87】 幹細胞因子のレセプター結合コアを含むポリペプチドを含
    む結晶のX線座標データが記録されている,コンピュータ−読み出し可能な媒体
  88. 【請求項88】 X線座標データが表4に記載されているものである,請求
    項87記載のコンピュータ−読み出し可能な媒体。
  89. 【請求項89】 結晶が,幹細胞因子のレセプター結合コアに結合したc−
    kitまたはその一部をさらに含む,請求項87記載のコンピュータ−読み出し
    可能な媒体。
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