JP2003512834A - アデノ随伴ウイルスの精製方法 - Google Patents

アデノ随伴ウイルスの精製方法

Info

Publication number
JP2003512834A
JP2003512834A JP2001533966A JP2001533966A JP2003512834A JP 2003512834 A JP2003512834 A JP 2003512834A JP 2001533966 A JP2001533966 A JP 2001533966A JP 2001533966 A JP2001533966 A JP 2001533966A JP 2003512834 A JP2003512834 A JP 2003512834A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
virus
adeno
matrix
associated virus
cells
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001533966A
Other languages
English (en)
Inventor
ジェイムズ アンダーソン ロバート
グラント プレンティス ヒュー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University College London
Original Assignee
University College London
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University College London filed Critical University College London
Publication of JP2003512834A publication Critical patent/JP2003512834A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N7/00Viruses; Bacteriophages; Compositions thereof; Preparation or purification thereof
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2750/00MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA ssDNA viruses
    • C12N2750/00011Details
    • C12N2750/14011Parvoviridae
    • C12N2750/14111Dependovirus, e.g. adenoassociated viruses
    • C12N2750/14151Methods of production or purification of viral material

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 アデノ随伴ウイルスを精製するための方法であって、(1)アデノ随伴ウイルスがマトリックスに結合する条件下で不純ウイルス試料をアフィニティマトリックスに適用する工程であって、当該アフィニティマトリックスが、ウイルスへの結合においてヘパラン硫酸と競合することができる吸着体を構成要素とするものである工程;(2)マトリックスから夾雑物を溶出させて、ウイルスを多量に含むマトリックスを産出する工程;(3)ウイルスを多量に含むマトリックスからウイルスを溶出する工程;(4)溶出したウイルスを、完全なウイルスは分解することができないプロテアーゼで処理して、タンパク質性夾雑物を分解する工程;および、(5)分解されたタンパク質性夾雑物から完全なウイルスを分離する工程とを含む方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は、アデノ随伴ウィルスの精製方法に関するものである。
【0002】 (背景技術) アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ウイルスを介した遺伝子治療プロトコール
において有望であることが明らかとされている。AAVは、20〜22nmと小
型であり、自己増殖能欠損型の非病原性パルボウイルスである。AAVは、4.
7kBの一本鎖DNAゲノムをもっており、当該ゲノムは、cap遺伝子を介し
て構造タンパク質をコードし、また、rep遺伝子を介して非構造タンパク質を
コードしている。このウイルスは、146bpの逆方向末端反復配列(ITRs
)を一組有しており、当該配列は、AAVが複製およびパッケージングされるの
に必要な唯一のシス作用因子である。
【0003】 伝統的に、組換えAAVは、2種類のプラスミドを混合したもので許容細胞株
を形質転換することによって調製される。これら2種類のプラスミドとは、AA
Vの機能をトランスに補う(すなわち、AAVのrep遺伝子およびcap遺伝
子のみを含む)第一のプラスミド、およびウイルスのITRsの間に目的遺伝子
を含む第二のプラスミドをいう(HermonatとMuzyczka,1984年)。組換えA
AVは、通常はアデノウイルスである適当なヘルパーウイルスを感染させた形質
転換細胞から調製され、上清および溶解細胞ペレットの両方から精製される。し
かし、全ての細胞は、組換えAAVを調製するために必須の両プラスミドを受容
する可能性が低いということがあるため、この系は効率的ではない。
【0004】 最近、改良されたAAV調製法についての報告がなされた(Clarkら、199
5年)。この方法について簡単に説明すれば、1種類のプラスミドを用いてAA
V産生細胞株を調製したものであるが、当該プラスミドは、repおよびcap
両遺伝子を一緒にもつウイルスITRsと選抜マーカーの間に目的とする遺伝子
を有するものを使用する(Clarkら、1995年)。そして適当な選抜を行なう
ことにより、すべての細胞が、組換えAAVを調製するのに必要な配列を有する
ようにする。これらの細胞にヘルパーウイルスを感染させ、得られた細胞ペレッ
トおよび細胞上清から組換えAAVを精製するものである。
【0005】 AAV精製プロトコールの不都合な点は、いったんウイルスが調製されると、
そのウイルスを濃縮したり精製したりすることが困難であったことである。従来
、塩化セシウム密度勾配調製遠心法が、最適な方法とされていた。しかしこの方
法には、精製に時間がかかるという短所があるため、比較的限定された量を処理
する場合にしか応用することができない。白血病性芽細胞などの細胞を形質転換
するためには、高い多重感染度(MOI)が必要であり、高力価ウイルスの調製
および多数の改変細胞を必要とする実験においては、多量のウイルスを必要とす
る。これは、従来の方法を用いていては困難である。
【0006】 アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーを用
いての組換えAAV精製が試みられてきた。Clarkらは、ヘパリンを結合させた
HPLCを使用して、AAV産生細胞の可溶化物からAAV粒子を精製したこと
を報告している(1999年)。Zolotukhinらも、通常のカラムまたはHPLC
カラムのいずれかによるヘパリンアフィニティークロマトグラフィーの使用を報
告している(1999年)。これらの著者らは、部分精製したウイルスをアフィ
ニティーカラムに適用する前に、粗製可溶化物からの不純な組換えAAVを、イ
オジキサノール密度勾配を用いて前処理しなければならないことを発見している
【0007】 従来技術である精製法に伴う問題点は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によ
れば高い純度のものが得られるが、完全でない(すなわち、無効な)粒子が存在
するため、得られるAAVは不純なままであることにある。さらに、密度勾配遠
心法の使用は、時間がかかる上にスケールアップを簡単に行なうことができない
ため望ましくない。
【0008】 本発明の目的は、密度勾配遠心法を使用しない精製技術を提供することによっ
て、これらの短所を克服し、精製したAAVの感染性に対する粒子の比率を低下
させることにある。
【0009】 (発明の開示) 即ち本発明は、アデノ随伴ウイルスを精製するための方法であって、以下の工
程を含むものを提供するものである。 (1)アデノ随伴ウイルスがマトリックスに結合する条件下で不純ウイルス試料
をアフィニティマトリックスに適用する工程であって、当該アフィニティマトリ
ックスが、ウイルスへの結合においてヘパラン硫酸と競合することができる吸着
体を構成要素とするものである工程; (2)マトリックスから夾雑物を溶出させて、ウイルスを多量に含むマトリック
スを調製する工程; (3)ウイルスを多量に含むマトリックスからウイルスを溶出する工程; (4)溶出したウイルスを、完全なウイルスは分解することができないプロテア
ーゼで処理して、タンパク質性夾雑物を分解する工程;および、 (5)分解されたタンパク質性夾雑物から完全なウイルスを分離する工程。
【0010】 溶出したウイルスのプロテアーゼ処理後、分解されたタンパク質性夾雑物から
完全なウイルスを分離する工程を行なうことによって、ウイルス調製物の純度が
上がることが明らかとなった。プロテアーゼ処理によって非ウイルス性タンパク
質夾雑物が分解されるとともに、完全でないウイルス粒子(すなわち、導入遺伝
子をパッケージングしないウイルス)をも分解すると考えられる。このことによ
って、より純度の高いウイルス調製物がもたらされる。このプロテアーゼは、完
全なウイルスは分解できないものでなければならない。例えば、プロテアーゼK
は、本発明に適したプロテアーゼではない。有用なプロテアーゼとしては、適当
なセリンプロテアーゼを挙げることができ、好ましくは、トリプシンである。
【0011】 本発明のアフィニティマトリックスは、ウイルスの表面上で細胞レセプターに
結合する機能を有するリガンドを介して、アデノ随伴ウイルスに結合すると考え
られる。SummerfordとSamulskiは、膜結合性ヘパラン硫酸プロテオグリカン(H
SPG)が、AAV2型に対するレセプターであることを報告している(199
8年)。したがって、ヘパラン硫酸と競合することができる吸着体は、いずれも
本発明に係るアフィニティマトリックスの吸着体の構成要素となることができる
。ヘパラン硫酸との競合は、適当な競合アッセイ法によって測定することができ
よう。この方法は、一般的に、ヘパラン硫酸に対する推定吸着体を滴定する工程
、および、例えばスキャッチャード(Scatchard)分析法によって、ウイルスに
対する結合について競合するか否かを決定する工程を含む。このタイプのアッセ
イ法では、通常、例えば放射性標識または蛍光タグによってAAVを標識する必
要があろう。一例としては、放射性標識されたAAVを、ハンクスの平衡塩類溶
液(HBSS)など適当なバッファーの中で、適当な比率で標的細胞と90分間
4℃でインキュベートするものがある。この例では、非結合標識を除去するため
に3回洗浄を行なった後、適当なカウンターを用いて細胞数を数える。結合アッ
セイは、推定吸着体を用いた場合または用いない場合のいずれかにて行ない、一
般的には、さまざまな濃度の吸着体を使用して、放射活性を測定する。推定吸着
体の親和性が高くなるほど、AAVの標的細胞への結合は弱くなる。
【0012】 同様のアッセイ法は、感染性に基づくものでもよい。標識されたウイルスを用
いる代わりに、推定吸着体の存在下および不在下での導入遺伝子発現を測定する
。吸着体の結合が起きれば、導入遺伝子の発現は少なくなるはずである。
【0013】 吸着体は、ヘパラン硫酸そのもの、またはその類似化合物を含むことができ、
好適にはグリコサミノグリカンを含む。ウイルスの感染性を阻害することができ
るグリコサミノグルカンの中で、ヘパリンまたはコンドロイチンBが好適である
。ヘパリンを含むアフィニティマトリックスは市販されているため、ヘパリンが
特に好適である。このように市販されているアフィニティマトリックスとしては
、POLOS HE/PとPOROS HE1/M(BOEHRINGER, MANNHEIM製)、
ヘパリン−アガロースI型、II型−SまたはIII型−S(SIGMA製)、およびAF
FI−GELヘパリンゲル(BIO RAD製)などがある。アフィニティマトリック
スは、従来からのカラムや、HPLCまたはFPLC用カラムのいずれかのカラ
ムの中に適宜充填される。
【0014】 一般的に、マトリックス材料は、カラムに結合させるウイルスを適用するのに
適した緩衝液媒質など、適当な媒質で平衡させる。このような媒質の一つは、p
H 7.4のダルベッコの改良PBSである。タンパク質夾雑物の溶出は、例えば
、さらにカラム用バッファーを用いてマトリックスを洗浄することによって行な
うことができる。必要ならば、適当な濃度の塩類を含むバッファーを適用して、
タンパク質夾雑物を洗い流すことができる。このような塩の濃度は、マトリック
スに結合したウイルスを溶出するほど高いものであってはならない。マトリック
スからのウイルス溶出は、例えば、バッファー中の塩濃度を、NaClでは1モ
ル程度まで上昇させることによって行なうことができる。このように、ウイルス
を溶出するのに十分なイオン強度をもつ溶液によって、ウイルスを多量に含むマ
トリックスを洗浄する。
【0015】 プロテアーゼ処理した後は、完全なウイルスと、タンパク性夾雑物を分解して
生じたペプチド断片との混合液が存在すると考えられる。したがって、分解され
たタンパク質性夾雑物から完全なウイルスを分離するために工程(5)が必要と
なり、様々な方法でこれを行なうことができる。例えば、水と非混和性の有機溶
媒によって、完全なウイルスを抽出することができる。これは、水相に多量に存
在する夾雑物からウイルスを取り出すことによる。この溶媒としては、一般的に
は、非極性溶媒であり、クロロホルム、または1,2−トリクロロトリフルオロ
エタンなどのフッ化炭素であるハロゲン化アルカン溶媒を挙げることができる。
あるいは、工程(1)、(2)および(3)を繰り返すだけで、夾雑物から完全
なウイルスを分離することができる。これは、不純なウイルスを生成するために
最初に用いたマトリックスと同一または異なった第2のアフィニティマトリック
スを用いるか、または、単に、最初のアフィニティマトリックスを再使用して行
なうことができる(但し、アフィニティマトリックスを洗浄することにより、イ
オン強度が高すぎてマトリックスへの効果的な結合が起こらないような環境にア
フィニティマトリックスを置かないようにする場合)。分解されたタンパク質性
夾雑物からウイルスを分離するのに適したその他の方法としては、ゲル排除クロ
マトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーなどがある。
【0016】 本発明に係る方法は、不純なウイルス試料からAAVを精製するのに適してい
るが、最小限の前処理を必要とすることが分かっている。試料は、通常の細胞溶
解法によって得られたアデノ随伴ウイルス産生細胞可溶化物を含むだけであろう
。好ましくは、アデノ随伴ウイルス産生細胞は、可溶化物にするために、1回以
上の凍結/融解サイクルに付される。部分精製されたウイルスを調製するために
、例えば、密度勾配遠心法を用いた部分精製を行なう必要はない。
【0017】 (図面の簡単な説明) ここで、図面を参照して本発明を更に詳しく説明するが、これらは単なる例示
に過ぎない。
【0018】 図1は、HSアフィニティーカラムから溶出した画分のPCR解析の結果を示
している。
【0019】 図2は、HSアフィニティーカラムから溶出した画分のポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動の結果を示している。
【0020】 図3は、HSアフィニティーカラムから溶出し、トリプシン処理し、溶媒で抽
出した部分標本のポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示している。
【0021】 図4は、HSアフィニティーカラム溶出液を処理したものと未処理のもののウ
エスタンブロット解析結果を示している。
【0022】 図5は、HSアフィニティーカラム溶出液を処理したものと未処理のものをさ
らにウエスタンブロット解析した結果を示している。
【0023】 図6は、HSアフィニティーカラム精製したAAV−GFPで形質導入された
細胞の蛍光解析の結果を示している。
【0024】 (発明を実施するための最良の形態) (実施例) 材料および方法 クロニーングとプラスミド調製 常法(Sambrookら、1989年)を用いて、蛍光センサーである増強緑色蛍光
タンパク質(EGFP、Clonetech製)を発現プラスミドpBK−CMV(Strat
agene製)中へPCRクロニーングした。およそ2.0Kbpの非翻訳領域を含
むGFPカセット(GFPのDNA断片)を、AAV−2由来のpD−10(Wa
ngら、1997年)にクロニーングして、pAAV−GFPを得た。pAAV−
ヘルパーを得るために両方のITRsを除去して、pD−10からrep/ca
pトランスプラスミドを調製した。AAV−2が、これらの実験で使用された唯
一の血清型であった。
【0025】 細胞可溶化物を含むrAAVの調製 rAAVを調製するために、5%CO2存在下37℃で、10%ウシ胎児血清
を添加したダルベッコの改良イーグル培地[DMEM](Life Technologies製
)の中で293細胞を樹立した。5×105個の細胞を平板培養して、90mm
ペトリ皿の中で50〜60%コンフルエントな状態に至らせた。細胞を、無血清
Opti−MEM(Life Technologies製)の中で2回洗浄した。形質転換の1
時間前に細胞を野生型Ad5型に感染させ(m.o.i.=3−5)、製造業者の指示
に従って、Opti−MEM中のリポフェクチン(Life Technologies製)を用
いて、pAAV−GFPとpAAV−ヘルパーの1:3の混合物25μgによっ
て細胞を形質転換させた。37℃で5時間インキュベートした後、DNA/リポ
フェクチン/Opti−MEMの混合液を除去し、新しい添加済みDMEMと入
れ換えた。形質転換効率は測定しなかった。培養液は形質転換してから4日間放
置した後、上清と少量の残留細胞ペレットを回収した。次の処理に移るに先立っ
て、56℃で1時間インキュベートし、すべての細胞可溶化物から混入Adを除
去した。
【0026】 上清はそのままにして、細胞ペレットを2mlのダルベッコの改良PBS、p
H7.4(PBS)の中に再懸濁した。そして、これらのペレットの凍結および
融解処理を3回繰り返した後、MSEベンチトップソニケーター(MSE Benchtop
sonicator)を全出力で使用して、30秒間超音波破砕を行なった。2000g
で遠心分離して細胞残渣を沈殿させ、ここで得られた上清を最初の上清に加えた
【0027】 残った細胞残渣に対し、この処理を2回まで繰り返した。
【0028】 HSアフィニティーカラム調製およびrAAVの濃縮 POROS HE/Pの4.6×50mmヘパリンアフィニティーカラム(Boe
hringer Mannheim製)をFPLC用機器(Pharmacia製)に設置して、2ml/
分の流速でカラム容量に対して50倍量の3M NaClによって平衡した。r
AAV精製の前に、280nmでのバックグランドの吸光度(A280)が0.0
1よりも小さくなるように、カラム容量に対して50倍量のPBSを用いてHS
アフィニティーカラムを洗浄した。HSアフィニティーカラムに適用する前に、
rAAVを含有する上清を、流速6ml/分で0.20μmの使い捨て濾紙(Mi
llipore製)を使用して濾過した。PBSで十分に洗浄した後、rAAVを10
×1mlの一定分量に溶出した。当該溶出は、A280の読み取り値が適用前のレ
ベルに戻るまで継続して行ない、最終濃度1MのNaClを含むPBSの0〜1
00%の勾配を用いて、6ml/分の流速で行なった。各クロマトグラフィー操
作の後、HSアフィニティーカラムは、50カラム容量の8M尿素により2ml
/分の流速で洗浄してから、50カラム容量の3M NaClにより2ml/分
の流速で洗浄し、同じバッファーの中で保存した。
【0029】 バックグランドに対するA280での増加量による検出を行いながら、タンパク
質を含有する等分量液を37℃で1時間インキュベートするか、最終濃度0.0
2%のトリプシンとともに37℃で1時間インキュベートするか、または、前述
と同様にトリプシンとともにインキュベートしてから等量の1,1,2−トリクロ
ロトリフルオロエタン(アークロン)(BDH)で2回抽出した。プロテアーゼ
および溶媒で処理した後、いくつかの一定分量液をファルマシア製PD−10脱
塩カラムにより用いて脱塩し、次いで製造業者の指示に従い、前述と同様にHS
アフィニティーカラムに最適用した。
【0030】 ポリメラーゼ連鎖反応解析 全ての反応は、下記プライマーペアについて、記載した通りに行なった。CM
Vプライマーは、5' ATT ACG GGG TCA TTA GTT CA 3'、
および5' AAT GGG GCG GAG TTG TTA CG 3'であった。反
応は、60℃でのアニーリングを28サイクル行ない、その結果497bpの断
片が得られた。
【0031】 全てのPCR反応前に、各試料をDNaseで処理して、ウイルス試料から混
入DNAをすべて除去した。試料を、50mMトリス塩酸(pH8.0)、10
mM NaCl、6mM MgCl2を含むバッファーの中で、10UのDNas
e 1(Promega製)とともに37℃で30分間インキュベートした。DNase
を95℃で5分間加熱して不活性化した。そして、この試料をこのまま、上記の
PCR反応に用いた。
【0032】 ウイルスの滴定 2つの別々のアッセイ法を用いて行なった。 a)ウイルスのCMVプロモーター領域に対するPCRによって調製した497
bpの前述したプローブを用いて、(Andersonら、1997年)(Chioriniら、
1995年)に記載された通りにウイルスのドットブロットによる定量化を行な
った。ドットブロットの前に、すべての試料を10UのDNase 1(Promega
製)と37℃で2時間インキュベートして、キャプシド形成されなかったDNA
(unencapsidated DNA)をすべて分解した。力価は、未知のウイルス画分の濃度
測定シグナル強度と、希釈した既知の標準プラスミドから得られた濃度測定シグ
ナル強度と比較することによって決定した。 b)ウイルスの複製中心アッセイ法は、基本的に既述されたところにしたがって
行なったが(Einerhandら、1995年)、用いたアデノウイルスは、5型Ad
(m.o.i.=15〜20)と野生型AAV(m.o.i.=5)であった。
【0033】 タンパク質アッセイ法とブロット法 全タンパク質濃度は、Bio−Rad Protein Assayを用いて測
定した。ポリアクリルアミドゲルおよびウエスタンブロットは、4〜12%のビ
ス−トリスゲル(Novex Technologies製)を使用した以外は、既述されていると
おりに行なった(Andersonら、1997年)。全タンパク質のゲルを、クーマシ
ーブリリアントブルーR−250を用いて染色し、クーマシー脱染溶液(Bio-Ra
d製)で脱染した。ウエスタンブロットは、既に公表されているプロトコールに
従って(Andersonら、1997年)、抗AAV Cap抗体(Progen Clone B1製
)(Wistubaら、1995年)を用いて探索した。ブロットは、50mMトリス
、pH6.7、2%SDS、および0.75%β−メルカプトエタノールを含む
溶液を用いて、50℃で30分間かけて剥離した。次いで、抗アクチン抗体(Si
gma Chemicals)を用いて再探索する前に、PBSTバッファー(0.05% Twe
en 20)(V/V)と5%ドライミルク(w/v)含有PBS)の中でブロット
をすすいだ。
【0034】 ウイルス感染およびフローサイトメトリー 標的細胞に感染を行なう前に、rAAVのすべての一定分量液を、ファルマシ
アPD−10脱塩カラムを用いて脱塩した。前述した様々な改変法によって調製
したrAAVの一定分量液を、MOIが10になるように細胞に加えた。rAA
Vとインキュベートする前に、接着標的細胞を、トリプシンまたは表記のような
非酵素的細胞解離用溶液によって、培養フラスコから分離した。分離した後、細
胞は、上記のようにrAAVとインキュベートする前に、HBSS中で洗浄した
。rAAVをDMEMで希釈して、細胞と一緒に37℃で1時間インキュベート
し、その後、培地を除去して、新しいDMEMと入れ換えた。感染させてから4
8時間後に、蛍光活性化細胞スキャナー機器(FACS)(FACScan-Becton Dic
kinson製)を用いて、GFPの発現を測定した。簡単に説明すると、細胞を回収
し、ハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)中で2回洗浄してから、フローサイト
メトリー解析を行なう前に、FACSFlow(Becton Dickinson製)に再懸濁
した。散乱光によって測定したところ、各試料から10,000個の生存細胞が
解析された。ネガティブコントロール用の試料は、模擬感染させた。
【0035】 結果 溶出された一定分量液のPCR解析 HSアフィニティーカラムのrAAV精製能力を測定するために、AAV−G
FPの一定分量液を、材料および方法の項に記載したようにして調製した。
【0036】 装填、洗浄、そしてHSアフィニティーカラムから溶出した後、A280におい
てバックグランドよりも高い値を示した各画分の一定分量液をPCRによって解
析し、ウイルスの存在を調べた。これらの画分は、0〜0.7M NaClという
溶出条件に対応するものである。
【0037】 CMVプライマーを用いた図1を参照すると、バックグランドを上回るA280
ピークをもつ画分が、rAAVの存在を示す497bpの特異的バンドを含んで
いることを明らかにすることができた。HSアフィニティーカラムから溶出した
25μlの一定分量液をDNase 1とともにインキュベートしてから、材料
および方法の項に記載したようにしてPCRを行なった。レーンの番号は左から
右になっている。 1)分子量マーカー、2)0〜0.1M NaCl、3)0.1〜0.2M NaC
l、4)0.2〜0.3M NaCl、5)0.3〜0.4M NaCl、6)0.4
〜0.5M NaCl、7)0.5〜0.6M NaCl、8)0.6〜0.7M Na
Cl、9)開始時培養液、10)組織培養培地、11)ポジティブコントロール
、12)ネガティブコントロール、および13)分子量マーカー。分子量は、1
500、1200、1000、900、800、700、600、500、40
0、300、200、および100bpである。
【0038】 最初の画分に存在していたのと同様、PCRの結果によれば、0.2〜0.7M
NaClの間で採取した画分に、rAAVが存在することが証明された。
【0039】 HSアフィニティーカラム溶出分画の純度測定 AAVを含む画分の精製度を測定するために、各画分の一定分量について、ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動を行なった。結果を図2に示す。HSアフィニテ
ィーカラムから溶出した25μlの一定分量液を、還元条件下、4〜12%ビス
−トリスゲルを用いたSDS−PAGEによって分離した。ゲルはクーマシーブ
リリアントブルーで染色し、脱染溶液(Bio-Rad製)で脱染した。
【0040】 レーンの番号は左から右になっている。 1)0〜0.1M NaCl、2)0.1〜0.2M NaCl、3)0.2〜0.3
M NaCl、4)0.3〜0.4M NaCl、5)0.4〜0.5M NaCl、
6)0.5〜0.6M NaCl、7)0.6〜0.7M NaCl、8)開始時培養
液、および9)組織培養培地。分子量はkDaで示してある。
【0041】 図2のレーン1と2は、最高0.2MのNaClを用いると、HSアフィニテ
ィーカラムから検出可能なタンパク質が溶出されなかったことを示している。P
CRを用いても、これらの画分からはrAAVの存在を検出することができなか
った。
【0042】 0.2〜0.7M NaClに対応する画分では、PCRによってrAAVの存
在が検出され、これらの画分にほとんどのタンパク質が含まれていた(レーン3
〜7)。主要なタンパク質ピークは、約0.35M NaClのところで溶出した
(データは示されていない)。
【0043】 溶出後各試料中に存在するタンパク質の総量は、開始時の試料中に存在した総
量よりも少ない。このことは、HSアフィニティーカラムが、タンパク質濃度に
関して、試料中のrAAVの純度を高めることができることを示している。これ
を表1に示す。しかしながら、純粋なAAVの一定分量液には、VP1、VP2
およびVP3に相当する90、72、および60kDaの3種類のタンパク質の
みが1:1:10の比率で回収されるはずである(Ruffingら、1992年)。
これは、明らかに、HSアフィニティーカラムの見かけの特異性にも拘わらず、
これら画分のそれぞれにさまざまな分子量のタンパク質夾雑物が存在しているこ
とを示している。
【0044】 HSアフィニティーカラム溶出物の純度の向上 物理的変化および化学薬品に対してAAVが高度に安定しているため(Bachma
nnら、1979年)、本発明者らは、rAAVの完全性を保持しつつ、上記画分
中に見られる余分な夾雑物を分解できるのではないかと判断した。
【0045】 図2で使用した各試料の一定分量液を、材料および方法の項に記載したように
して、トリプシンで分解しそしてアークロン(Arklone)により抽出し、ポリア
クリルアミドゲルで再泳動を行ない、全タンパク質についてクーマシーブリリア
ントブルーで染色した。これらの結果を図3に示す。HSアフィニティーカラム
から溶出した25μlの一定分量液を、トリプシンおよびアークロンで処理した
後、還元条件下で、4〜12%ビス−トリスゲルを用いてSDS−PAGEによ
って分離した。ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色し、脱染溶液(Bio-
Rad製)で脱染した。
【0046】 レーン番号は左から右に、 1)0〜0.1M NaCl、2)0.1〜0.2M NaCl、3)0.2〜0.3
M NaCl、4)0.3〜0.4M NaCl、5)0.4〜0.5M NaCl、
6)0.5〜0.6M NaCl、7)0.6〜0.7M NaCl、8)開始時培養
液、および9)組織培養培地。分子量はkDaで示してある。
【0047】 これらの処理の結果、ほとんどのタンパク質分子種の相当量が除去できた。実
際、トリプシンおよびアークロンで処理した後、レーン3では、2種類のタンパ
ク質だけしか見えないようになる。レーン3における主要な分子種は約70kD
aであり、微量の分子種は約60kDaの分子量である。AAVは、90、72
、および60kDaの3種類のキャプシドタンパク質を持っているため、これら
はAAVのキャプシドタンパク質と思われる(Ruffingら、1992年)。
【0048】 複数のレーンに見られる約30kDaのバンドは、図2のブロットには見られ
なかった。トリプシンの分子量が約28kDaであることから、これらのバンド
は、トリプシンか、トリプシンの多量体であろう。
【0049】 AAVのキャプシドタンパク質とは思われないこれらの分子種は低分子量であ
るため、アークロンによる処理ではこれらを除去することできなかった。そのた
め、これらの画分を再びHSアフィニティーカラムに通して、試料の純度を高め
た。
【0050】 プロテアーゼ分解と溶媒抽出後の試料分析、および2回目のHSアフィニティ ーカラム溶出 トリプシン分解とアークロン抽出後も残留している高分子量タンパク質分子種
が、rAAVのキャプシドタンパク質であるか否かを測定するために、AAVの
3種類のキャプシドタンパク質、VP1、VP2およびVP3(Ruffingら、1
992年)を認識する抗−AAV cap抗体(クローンB1(Wistubaら、19
95年))を用いてウエスタンブロットを行なった。その結果を図4に示す。全
ての試料は、ドットブロット解析によって測定したDNA濃度について等量にな
るようにロードした。
【0051】 下記に示す試料を、還元条件下、4〜12%ビス−トリスゲルを用いて、SD
S−PAGEにより分離した。ポリペプチドをニトロセルロースに移動させ、V
−P1、VP−2およびV−P3を認識する抗cap抗体を用いて探索した。
【0052】 レーン番号は左から右に、 1)開始時培養液、2)HSアフィニティーカラム後の画分をまとめたもの、3
)HSアフィニティーカラムおよびトリプシンでインキュベーションした後の画
分をまとめたもの、4)HSアフィニティーカラム、トリプシンインキュベーシ
ョン、およびアークロン抽出後の画分をまとめたもの、5)2回目のHSアフィ
ニティーカラム流下後の画分をまとめたもの、6)CsCl遠心分離によって調
製したAAV。分子量はkDaで示してある。
【0053】 図4のレーン1は、3種類のキャプシドタンパク質、VP1、VP2およびV
P3が、予想された1:1:10の比率で開始時の材料に存在していることを示
している。これらのタンパク質は、レーン2のHSアフィニティーカラムからの
溶出液中にも依然存在している。この試料をトリプシン処理したものであるレー
ン3は、AAVのキャプシドタンパク質が依然試料中に残っていることを示して
いる。この観察結果は、アークロン処理後(レーン4)、および2回目のHSア
フィニティーカラム溶出後のレーン5でも同様であった。レーン6の試料は、C
sCl遠心分離によって精製されたrAAVである。
【0054】 HSアフィニティーカラムとそれに続く処理が、細胞残渣を除去したことを証
明するために、図4に示したブロットを剥離し、図5に示すように、抗アクチン
抗体を用いて探索した。過剰に曝露した後でも、アクチンは、開始時材料である
レーン1でしか検出されず、精製後試料であるレーン2〜5のいずれでも検出さ
れなかった。予想通り、CsCl精製した試料であるレーン6には、アクチンは
存在しなかった。
【0055】 rAAVを調製するためのHSアフィニティーカラムの効率 精製のさまざまな段階で一定分量液を採取して、ドットブロット解析によって
測定しながら、全タンパク質およびrAAVゲノムの存在を測定した。1回目に
試料をHSアフィニティーカラムに通すと、存在するタンパク質は処理開始時量
の98.7%が減少した一方で、rAAVゲノムの数は3.3%が減少したに過ぎ
なかった。トリプシン処理の効果、トリプシンそのものの存在と、AAVゲノム
の僅かな減少が原因となって、タンパク質濃度が上昇した。アークロン処理の効
果は、さらに、処理開始時タンパク質量の79%が減少することであるが、rA
AVゲノム量の9.7%の減少を伴っていた。2回目にHSアフィニティーカラ
ムに通すことの効果は、存在するタンパク質量の61.9%が減少し、rAAV
ゲノムの数は、処理開始時の数と較べると、34.7%まで減少したことである
。これらのデータを、表1および表2に示す。
【0056】 トリプシン処理およびアークロン抽出したウイルスの様々な一定分量液を、複
製中心アッセイ法を用いて測定した。これらのデータを、図3に示す。
【0057】 精製されたrAAVベクターの機能解析 最後に、HSアフィニティーカラム精製、トリプシンによる分解およびアーク
ロン抽出によって精製されたrAAVを用いて、本発明者らは、293細胞に感
染させて、前述したFACSを用いてGFPの存在を観察した。結果を図6に示
す。細胞は、模擬感染させるか、HSアフィニティーカラム精製、トリプシン消
化およびアークロン抽出を行なったAAVを10:1のMOIで感染させた。細
胞は、感染後48時間経過したところで解析した。結果は、log10間隔で示し
た蛍光強度によるヒストグラムで表した。
【0058】 実線のヒストグラムは、模擬感染した293細胞を示し、灰色の2つめのヒス
トグラムは、細胞のトリプシン処理は発現を消失させる効果があることを示し、
3つめのひし形を施したヒストグラムは、細胞を非酵素的に処理することによっ
てAAV−GFPを発現させることができることを示し、最後の白抜きのヒスト
グラムは、細胞を前処理することなくAAV−GFPを添加したときの効果を示
している。実線のヒストグラムは、模擬感染した細胞を示し、後ろの白抜きのヒ
ストグラムは、AAV−GFPを添加したときの効果を示しているが、ここでは
、48時間後に15.4%の細胞が陽性になった。これは、精製処理の後もウイ
ルスが完全な状態で調製され、細胞によって取り込まれ得るたことを示している
。ウイルス添加の直前にトリプシンによって前処理された293細胞がGFPの
発現を示さなかったことから、ウイルスの取り込みは、レセプターを介して行な
われていることが実証された(図6、灰色で斜線を施した2番目のヒストグラム
)。細胞をトリプシン処理すると、ウイルスの取り込みを阻止できることが以前
に示されていた(Mizukamiら、1996年)。非酵素的細胞解離液を用いて細胞
を前処理すると、未処理の細胞に較べてウイルスの発現が僅かに減少することが
明らかになったが、GFP陽性を示す細胞は、依然多数(14.1%)あった(
図6、灰色で、ひし形を施した3番目のヒストグラム)。
【0059】 考察 最近の刊行物のいくつかで、パッケージングを行なう細胞株により産生される
rAAV量を増加させる改良法が報告されている(Vincentら、1997年;Li
ら、1997年;InoueとRussell、1998年)。しかし、rAAVストックの
大部分はCsCl勾配遠心を用いて調製されるため、rAAVの精製に関する刊
行物は殆どなかった。
【0060】 高度に精製されたベクターのストックは、in vivo実験にとっては重要である
が、さらに別の利益となる可能性がある。精製度が低いrAAVは、偽形質導入
(pseudotransduction)と名付けられた現象の原因となる(Alexanderら、19
97年)が、この現象は、rAAVベクターのストック中に存在する生物活性ペ
プチドが、ウイルス粒子とは無関係な形で標的細胞の中に転移したときに起こる
。この偽形質導入については、β−ガラクトシダーゼやアルカリホスファターゼ
などのレポーター遺伝子を使用するときには、特に留意すべきである。
【0061】 従来からのCsCl精製法の主な制約となるのは、精製過程の長さと、各操作
において、少量のrAAVしか精製できないことである。二重CsCl染色法を
用いたrAAV精製法は、48時間もかかる。一回の操作で精製できるベクター
の容量が限定されている結果、ほとんどのrAAV調製用プロトコールでは、形
質転換3日後に産生細胞を回収することとなるが、その時点では、rAAVのほ
とんどが依然細胞に結合している。最近の論文によれば、形質転換後4日目の方
がより高い力価のrAAVを得られることが明らかにされた(ChiricoとTrempe
、1999年)。しかしこの時点では、ウイルスは溶解した細胞から遊離して細
胞上清に移って行くため、実質的なウイルス力価は細胞と関連していないもので
あった。このことは、CsCl勾配を用いてrAAVを精製するときに不利にな
る点である。
【0062】 最近のデータでは、負に荷電したセルロース親和性媒質であるセルファイン硫
酸を使用することによって、CsClに見られる問題点の多くは克服できること
が示された(Tamayoseら、1996年)。他のタンパク質および残渣は洗い流さ
れる一方で、ウイルスはマトリックスに結合するので、濃縮され精製されたウイ
ルス画分を溶出することが可能になる。この技術は、CsCl勾配よりもより迅
速により大量の試料を処理することができるが、rAAVを含む溶出液には別の
タンパク質が混入している。その他の文献によれば、Tamayoseらは、彼らの最初
の報告において、セルファイン硫酸のみを使用したアフィニティークロマトグラ
フィーだけでは、rAAVを高度に精製することはできないと記載している(Ta
mayoseら、1996年)。しかしながら、アフィニティーカラム精製の原理は確
立された。
【0063】 HSPGによるAAVの細胞侵入が発見されたことによって(SummerfordとSa
mulski、1998年)、rAAVを精製するために特定のHSアフィニティーカ
ラムを使用することが可能になった。CsClに基づく精製法とは異なり、カラ
ム精製技術を使用するときには、産生細胞が完全に破壊されることは好都合であ
る。この完全な細胞溶解によって、産生されたrAAVのすべての回収が確実に
なる。
【0064】 しかし残念なことに、HSアフィニティーカラムから得られる純度が最初は低
いため、高品質のウイルスを調製するためにHSアフィニティーカラムクロマト
グラフィーのみが使用されることはない。そこで本発明者らは、rAAVと共精
製され得るポリペプチドや他の夾雑物を除去するために、トリプシン分解した後
、有機溶媒による抽出を行ない得るかを調べた。rAAVのキャプシドは、完全
に形成されてしまった場合にはトリプシン耐性であるが、個々のcapポリペプ
チドはトリプシン感受性である(Anderson−未発表の観察結果)。有機溶媒の1
,1,2−トリクロロトリフルオロエタン(アークロン)が、従来、Adの精製に
用いられていた(PreciousとRussell、1985年)。これらの付加的工程をHS
アフィニティーカラムプロトコールに導入することによって、本発明者らは、ウ
イルスストックの完全性を保持したままで、ウイルス調製物からほとんどのタン
パク質夾雑物を取り除くことができた。
【0065】 rAAVは、相当数の空の粒子を含んでいることが知られているため(Laughl
inら、1979年)、トリプシン工程を加えることによって、これらの粒子を除
去し、最終調製物に存在するタンパク質の量を減少させることになるかもしれな
い。複製中心アッセイ法によって測定した感染性粒子と、ドットブロット法で測
定したゲノムとの割合は、常に50よりも低く、AAVのアフィニティー精製に
関する文献中でこれまでに報告されている割合よりも優れている。
【0066】 この精製技術は、すべてのrAAV調製物に応用可能であり、精製速度が速く
大量処理が可能であるなど、CsCl勾配法に対するHSアフィニティーカラム
精製技術の有利性を保持しつつ、最終産物が不純であるという、HSアフィニテ
ィーカラムの主要な欠点を克服した。本発明者らは、HSアフィニティーカラム
クロマトグラフィーは、これらの改変法とともに、大量のrAAVベクターを精
製および濃縮する際に、CsCl勾配法に取って代わるようになると確信してい
る。
【0067】 (参考文献) Alexander, I.E., Russell D.W. and Miller, A.D. (1997年) 夾雑物をアデノ随伴ウイルスのストック中へ導入すると、形質転換と類似の現象
が生じ、人為的な産物が生成し得る。 「Human Gene Therapy」,第8(16)号,第1191〜1920頁。
【0068】 Anderson, R.J., Macdonald, I. D., Corbett, T. J., Hacking, G., Lowdell
, M.W. and Prentice, H.G.(1997年) IL12融合タンパク質(Flexi-12)の構築と生物学的同定:アデノ随伴ウイル
スを使用した急性骨髄性白血病芽へのデリバリー 「Human Gene Therapy」,第8(9)号,第1125〜1135頁。
【0069】 Bachmann, P.A., Hoggan, M.D., Kurstak, E., Melnick, J.L., Pereira, H.G
., Tattersall, P and Vago, C.(1979年) Parvoviridae: second report.「Intervirology」,第11号,第248〜25
4号。
【0070】 Chiorini, J.A., Wendtner, C.M., Urcelay, E., Safer, B., Hallek, M. and
Kotin, R.M.(1995年) 高力価の組み換えアデノ随伴ウイルスベクターを用いたT細胞共刺激分子である
B7−2の白血病細胞への効率的なデリバリー 「Human Gene Therapy」,第6号,第1531〜1541頁。
【0071】 Chirico, J. and Trempe, J.P.(1999年) プラスミドのトランスフェクションを使用した、アデノ随伴ウイルス遺伝子治療
用ベクターのパッケージングの最適化 「Journal of Virological Methods」,第76(1-2)号,第31〜41頁。
【0072】 Clark, K.R., Liu, X., McGrath, J.P.& Johnson, P.R.(1999年) 高度に精製された組み換えアデノ随伴ウイルスベクターは、生物学的に活性であ
り、ディフェクタブルヘルパーと野生型ウイルスの影響を受けない。 「Hum. Gene Therapy」,第10号,第1031〜1039頁。
【0073】 Einerhand, M.P.W., Antoniou, M., Zolotukhin, S., Muzyczka, N., Berns,
K.I., Grosveld, F. and Valerio, D.(1995年) 組み換えアデノ随伴ウイルス介在遺伝子の転移に続く、赤血球細胞における制御
された高レベルヒトβグロブリン遺伝子発現 「Gene Therapy」,第2号,第336〜343頁。
【0074】 Inoue, N. and Russell, D.W.(1998年) アデノ随伴ウイルスベクターの調製のための、誘導可能な遺伝子の増幅に基づく
パッケージング細胞 「Journal of Virology」,第72号,第7024〜7031頁。
【0075】 Li, J., Samulski, R.J. and Xiao, X.(1997年) アデノ随伴ウイルスベクターの調製における、高度に制御されたrep遺伝子発
現の役割 「Journal of Virology」,第71号,第5236〜5243頁。
【0076】 Mizukami, H., Young, N.S. and Brown, K.E.(1996年) アデノ随伴ウイルス2型は、150キロダルトンの細胞表面グロブリンに結合す
る。 「Virology」,第217号,第124〜130頁。
【0077】 Precious, B. and Russell, W.C.(1985年) アデノウイルスの成育と精製と力価 In: Mahy, B.W.J.,(Ed.) 「Virology, A Practical Approach.」 Oxford: IRL P
ress, 第193〜206頁。
【0078】 Ruffing, M., Zentgraf, H. and Kleinschmidt, J.A.(1992年) 昆虫細胞におけるアデノ随伴ウイルスの組み換え構造タンパク質によるウイルス
様粒子の集合 「Journal or Virology」,第66号,第6922〜6030頁。
【0079】 Sambrook, J., Fritsch, E.F. and Maniatis, T.(1989年) 「Molecular Cloning A Laboratory Manual Second Edition」, Cold Spring Ha
rbor Laboratory Press。
【0080】 Summerford, C. and Samulski, R.J.(1998年) 膜結合性ヘパラン硫酸プロテオグリカンは、アデノ随伴ウイルス2型のウイルス
粒子のレセプターである。 「Journal of Virology」,第72号,第1438〜1445頁。
【0081】 Tamayose, K., Hirai, Y. and Shimada, T.(1996年) パッケージ細胞株と硫酸化セルソースカラムクロマトグラフィーを使用する、高
力価の組み換えアデノ随伴ウイルスベクターの大容量調整に関する新しい戦略。
「Human Gene Therapy」,第7号,第507〜513頁。
【0082】 Vincent, K.A., Piraino, S.T. and Wadsworth, S.C.(1997年) 組み換えアデノ随伴ウイルスパッケージの分析とrepおよびcap産物の必要
性。 「Journal of Virology」,第71号,第1897〜1905頁。
【0083】 Wang, X.S., Qing, K., Ponnazhagan, S. and Srivastava, A.(1997年)
in vivoにおけるアデノ随伴ウイルス2型DNAの複製:ウイルスの変換された
末端繰り返しにおけるD配列の変異分析。 「Journal of Virology」,第71号,第3077〜3082頁。
【0084】 Wistuba, A., Weger, S., Kern, A. and Kleinschmidt, J.A.(1995年)
アデノ随伴ウイルス2型集合体の中間体:repおよびcapタンパク質を含む
可溶化物の同定。 「Journal of Virology」,第69号,第5311〜5319頁。
【0085】 Zolotukhin, S., Bryne, B.J., Mason, E., Zolotukhin, M., Potter, M., Ch
esnut, K and Summerford, S.(1999年) 新規な方法を用いた組み換えアデノ随伴ウイルス精製は、感染の力価と収率を改
良する。 「Gene Therapy」,第6号,第973〜985頁。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B065 AA95X BD09 BD14 BD45 CA14

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アデノ随伴ウイルスを精製する方法であって、 (1)アデノ随伴ウイルスがマトリックスに結合する条件下で不純ウイルス試料
    をアフィニティマトリックスに適用する工程であって、当該アフィニティマトリ
    ックスが、ウイルスへの結合においてヘパラン硫酸と競合することができる吸着
    体を構成要素とするものである工程; (2)マトリックスから夾雑物を溶出させて、ウイルスを多量に含むマトリック
    スを調製する工程; (3)ウイルスを多量に含むマトリックスからウイルスを溶出する工程; (4)溶出したウイルスを、完全なウイルスは分解することができないプロテア
    ーゼで処理して、タンパク質性夾雑物を分解する工程;および、 (5)分解されたタンパク質性夾雑物から完全なウイルスを分離する工程とを含
    む方法。
  2. 【請求項2】上記アデノ随伴ウイルスが、血清型2のアデノ随伴ウイルスで
    ある請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】上記吸着体が、ヘパラン硫酸またはその類似化合物を含む請求
    項1または2に記載の方法。
  4. 【請求項4】上記吸着体が、グリコサミノグリカンを含む請求項3に記載の
    方法。
  5. 【請求項5】上記グリコサミノグリカンが、ヘパリンを含む請求項4に記載
    の方法。
  6. 【請求項6】上記工程(3)が、ウイルスを溶出するのに十分なイオン強度
    を有する溶液により、該ウイルスを多量に含むマトリックスを洗浄する工程を含
    む請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】上記プロテアーゼが、トリプシンを含む請求項1〜6のいずれ
    かに記載の方法。
  8. 【請求項8】上記工程(5)が、水と非混和性の有機溶媒によって完全なウ
    イルスを抽出する工程を含む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 【請求項9】上記水と非混和性の有機溶媒が、ハロゲン化アルカン溶媒であ
    る請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】上記工程(5)が、工程(1)〜(3)を繰り返すことを含
    む請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  11. 【請求項11】上記不純ウイルス試料が、アデノ随伴ウイルス産生細胞可溶
    化物を含む請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 【請求項12】上記アデノ随伴ウイルス産生細胞を、少なくとも1回の凍結
    /融解サイクルに付する請求項11に記載の方法。
JP2001533966A 1999-10-27 2000-10-26 アデノ随伴ウイルスの精製方法 Withdrawn JP2003512834A (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
GB9925432.8 1999-10-27
GBGB9925432.8A GB9925432D0 (en) 1999-10-27 1999-10-27 Virus preparation
PCT/GB2000/004125 WO2001030983A1 (en) 1999-10-27 2000-10-26 Method for purifying aav

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003512834A true JP2003512834A (ja) 2003-04-08

Family

ID=10863485

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001533966A Withdrawn JP2003512834A (ja) 1999-10-27 2000-10-26 アデノ随伴ウイルスの精製方法

Country Status (4)

Country Link
EP (1) EP1228196A1 (ja)
JP (1) JP2003512834A (ja)
GB (1) GB9925432D0 (ja)
WO (1) WO2001030983A1 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010526546A (ja) * 2007-05-14 2010-08-05 バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ ワクシニアウイルス系及び組換えワクシニアウイルス系ワクチンの精製
JP2021508484A (ja) * 2017-12-29 2021-03-11 バクスアルタ インコーポレイテッド アデノ随伴ウイルス精製方法

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8003364B2 (en) 2007-05-14 2011-08-23 Bavarian Nordic A/S Purification of vaccinia viruses using hydrophobic interaction chromatography
US10626376B2 (en) * 2016-11-14 2020-04-21 St. Jude Children's Research Hospital Method for isolating and purifying adeno-associated virus particles using salt

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010526546A (ja) * 2007-05-14 2010-08-05 バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ ワクシニアウイルス系及び組換えワクシニアウイルス系ワクチンの精製
JP2015091248A (ja) * 2007-05-14 2015-05-14 バヴァリアン・ノルディック・アクティーゼルスカブ ワクシニアウイルス系及び組換えワクシニアウイルス系ワクチンの精製
JP2021508484A (ja) * 2017-12-29 2021-03-11 バクスアルタ インコーポレイテッド アデノ随伴ウイルス精製方法
JP7299896B2 (ja) 2017-12-29 2023-06-28 武田薬品工業株式会社 アデノ随伴ウイルス精製方法
US11981934B2 (en) 2017-12-29 2024-05-14 Takeda Pharmaceutical Company Limited Adeno-associated virus purification methods
JP7531654B2 (ja) 2017-12-29 2024-08-09 武田薬品工業株式会社 アデノ随伴ウイルス精製方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2001030983A1 (en) 2001-05-03
EP1228196A1 (en) 2002-08-07
GB9925432D0 (en) 1999-12-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4559429B2 (ja) 空キャプシドを実質的に含まない組換えaavビリオン調製物を生成するための方法
US7419817B2 (en) Scalable purification of AAV2, AAV4 or AAV5 using ion-exchange chromatography
CA2302992C (en) Methods for generating high titer helper-free preparations of recombinant aav vectors
Collaco et al. A helper virus-free packaging system for recombinant adeno-associated virus vectors
US20040087026A1 (en) Host cells for packing a recombinant adeno-associated virus (raav), method for the production and use thereof
Anderson et al. A method for the preparation of highly purified adeno-associated virus using affinity column chromatography, protease digestion and solvent extraction
US20210010028A1 (en) Insect cell manufactured partial self-complementary aav genomes
US20210395777A1 (en) EXPRESSION VECTORS FOR LARGE-SCALE PRODUCTION OF rAAV IN THE BACULOVIRUS/Sf9 SYSTEM
TW202246516A (zh) 病毒蛋白之控制表現
JP2023525119A (ja) アデノ随伴ウイルス粒子またはアデノウイルスを精製するための方法および組成物
AU2019354793A1 (en) Engineered nucleic acid constructs encoding AAV production proteins
JP2003512834A (ja) アデノ随伴ウイルスの精製方法
WO2022045055A1 (ja) pHの違いによる非エンベロープウイルスベクター粒子の調製方法
Collaco Phosphorylation of the adeno-associated virus replication proteins and a helper free packaging system for recombinant adeno-associated virus (rAAV) vectors
Merten Ibis, rue de l’Internationale, BP 60 91002 Evry, France.

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20080108