JP2003509442A - 選択された蛍光特性を有するグルコース感知分子 - Google Patents

選択された蛍光特性を有するグルコース感知分子

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ジョー エイチ. ジュニア サッチャー
ステファン エム. レイン
クリストファー ビー. ダロー
ダグラス アール. ケーリー
ジョー アン チャン
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ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティー・オブ・カリフォルニア
メドトロニック ミニメド インコーポレイテッド
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Abstract

(57)【要約】 分子内電子移動を用いる分析物感知蛍光分子が、糖類などの分析物存在下で選択された蛍光特性を示すように設計される。選択された蛍光特性には、励起波長、発光波長、蛍光寿命、量子収量、光安定性、溶解性、および温度またはpH感受性が含まれる。化合物は基質認識成分として作用するアリルまたは置換フェニルボロン酸、蛍光スイッチ成分、および蛍光体を含む。蛍光体およびスイッチ成分は電子移動のための自由エネルギーの値が約3.0cal mol-1未満であるように選択される。400nmより長波長で励起され、皮膚を通過する光透過のために好都合な450nmより長波長で放射する蛍光化合物が記載される。蛍光体は一般的には、遷移金属-リガンド錯体、ならびにアントラセン化合物と同様に、チアジン化合物、オキサジン化合物、オキサゾン化合物、またはオキサジン-オン化合物から選択される。皮下に移植可能な、グルコース透過性の生体適合性重合体基質に、蛍光化合物を固定化することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 米国政府は、ローレンス・リバモア(Lawrence Livermore)国立研究所の事業
に関して米国エネルギー省とカリフォルニア大学との間で結ばれた契約番号W-74
05-ENG-48に従った、本発明における権利を有する。
【0002】 本出願は、1999年9月15日に出願された米国仮特許出願第60/154,103号の恩典
を主張するものである。この仮特許出願の全内容は参照として本明細書に組み入
れられる。
【0003】 本出願は、下記の同時係属中および同一出願人による特許出願に関連する:
【0004】 1995年11月22日に出願された米国仮特許出願第60/007,515号の恩典を主張する
、米国特許出願第08/749,366号の継続出願であって、現在は米国特許第6,002,95
4号である、1999年12月14日に出願されたウィリアム・ヴァン・アントワープ(W
illiam Van Antwerp)らの米国特許出願第09/461,627号「ボロネートに基づく化
学的増幅および光センサーを用いた生体分子の検出(DETECTION OF BIOLOGICAL
MOLECULES USING BORONATE BASED CHEMICAL AMPLIFICATION AND OPTICAL SENSOR
S)」;および米国特許出願第60/007,515号の一部継続出願であり、現在は米国
特許第6,011,984号である米国特許出願第08/752,945号の継続出願であって、現
在放棄されている1995年3月27日出願の米国特許出願第08/410,775号の一部継続
出願であり、現在は米国特許第5,777,060号である1996年9月26日出願の米国特許
出願第08/721,262号に関係する、1999年11月21日に出願されたウィリアム・ヴァ
ン・アントワープ(William Van Antwerp)らの米国特許出願第09/078,392号「
化学的増幅および光センサーを用いた生体分子の検出(DETECTION OF BIOLOGICA
L MOLECULES USING CHEMICAL AMPLIFICATION AND OPTICAL SENSORS)」;これら
の各関連出願の全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0005】発明の背景 発明の分野 本発明は、長い蛍光寿命、長い吸収波長もしくは発光波長(emission wavelen
gth)、または高い量子収量などの選択された蛍光特性を有する、グルコースセ
ンサーとして用いられる蛍光化合物の設計に関する。さらに特に、本発明は糖尿
病治療のための組織グルコース濃度の継続的かつ経皮的な光変換(optical tran
sduction)に関する医用センサーに関連する。
【0006】関連技術の説明 蛍光消光と結びついた分子認識は、バイオアッセイにおける分析物濃度の光変
換のための有望な分析技術である。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用した
いくつかの機構が提唱されている。分子内電子移動機構は光誘起電子移動または
PETとも呼ばれ、化学的強度および単純性の見地から優れていると思われる。
【0007】 ジェームズ(James)らの米国特許第5,503,770号は、グルコースなどの糖類ま
たは糖の検出に用いられる蛍光化合物を開示している。これらの蛍光化合物の使
用は、糖尿病治療を目的としたグルコース濃度変換のための移植可能な光センサ
ーに、これらの化合物を組み入れることによって、ヴァン・アントワープ(Van
Antwerp)らの米国特許第6,002,954号に拡大された。糖尿病患者において、蛍光
トランスデューサーを皮膚表面の1mm〜3mm下に移植し、外部から光学的に応答指
令信号を送って、組織グルコースの量を定量する。浸潤性が最小限である継続的
なグルコースセンサーは、既存のインスリンポンプと組み合わせると、患者がよ
り厳格な血糖管理を行う際に非常に有益である。
【0008】 米国特許第6,002,954号に記載された系の一つは、約380nmで励起され約420nm
で放射する、アントラセンボロネートからなる。残念ながら、約360nm〜420nmの
領域の波長における励起および蛍光放射は、わずかしか皮膚を透過しない。分子
が臨床上適切な範囲の組織グルコース濃度センサーとして役立つためには、皮膚
を通過する光透過性を著しく増大させなければならない。さらに、感知分子の蛍
光部位に関連する系の他の特性を改変することも有益であると考えられる。その
ような特性には、量子収量、蛍光寿命、光安定性、化学的安定性、および生体適
合性が含まれうる。
【0009】 皮膚を通過するシグナルの透過性を改善するために、蛍光化合物は約450ナノ
メートルより長波長で作動しなければならない。数ミリメートルの皮膚を通過す
る透過性は、波長に伴い対数的に増大する(約400nmでの0.1%から850nmでのほ
ぼ100%まで)。したがって、波長が長くなるほど皮膚を通過する透過性は増大
する。約600nm〜650nmより長い励起波長および発光波長は、約400nm〜450nmに比
べて非常に大きな改善となる。より長波長では光の皮膚透過性が著しく増大する
ため、実際のグルコースセンサーはより効率的に、より正確に、およびより大き
なシグナル対ノイズ比(signal-to-noise ratio)で作動することができる。
【0010】 さらに、最大励起波長と既存の光源(LEDまたはダイオードレーザーなど)と
を組み合わせることは有益である。その上、より長波長で作動することにより、
組織の自己蛍光バックグラウンドが低下する。しかし、そのような化合物の作製
をさらに進展させるには、蛍光体とグルコース認識物質との様々な組み合わせを
、より長波長(450nm〜700nm)で作動する一方で同時に必要なグルコース変換特
性を保持しているような、所望の蛍光特性を有する統合分子へと合成的に組み立
てるという、膨大な作業が必要である。
【0011】 本発明は光透過の問題に取り組み、さらに必要とされる光化学的挙動を示し、
皮下蛍光グルコースセンサーを実用化する波長領域で作動することが明らかにさ
れている、例示的蛍光化合物を提供する。
【0012】発明の概要 本明細書において開示される発明は、特定の式によって定義される蛍光分析物
結合化合物であって、これらの化合物の置換基分子が単純化されたレム・ウェラ
ー(Rehm-Weller)の式によって決定することができる相補的な分子特性を持つ
よう選択される化合物を提供する。本発明の代表的分子は、これらの分子を糖な
どの分析物に対するセンサー中に組み入れるのに特有に適合させる多数の特別な
活性を有する。これらの活性には、より長い励起波長および発光波長などの非常
に望ましい蛍光特性であって、血糖濃度の継続的かつ経皮的なモニタリングのた
めの最小限の移植可能系における使用に非常に適合する特性が含まれる。
【0013】 本明細書において提供される開示によって示されるとおり、本発明の目的は糖
類または糖に対するセンサーに組み入れることができ、かつより長い吸収波長も
しくは発光波長、高い量子収量、または長い蛍光寿命などの所望の蛍光特性を有
する、蛍光化合物を提供することである。本発明の目的は、約450nmより長い発
光波長で作動するグルコース感知蛍光分子を提供することである。本発明のもう
一つの目的は、約400nmより長い励起波長で作動するグルコース感知蛍光分子を
提供することである。したがって、そのセンサーはヒト組織などの高い可視青お
よび紫外不透明性をもつ媒質におけるグルコース濃度の感知に用いることができ
る。
【0014】 本発明のもう一つの目的は、特異的かつ可逆的にグルコースに結合する共有結
合された蛍光分子を含む生体適合性重合体を含むセンサーを提供することである
。グルコースと結合することで、分子の蛍光量子収量が増大し、その結果グルコ
ース濃度が上昇すると蛍光発光量が増大することになる。グルコース変換は、セ
ンサーの皮下移植を可能にし、皮膚を通過する光透過性を改善させる波長で達成
される。
【0015】 本発明は基本的に、一つの分子に以下の三つの機能成分を有する蛍光化合物を
含む:基質認識成分(一般的に置換ボロン酸アリル)、基質認識事象によって媒
介される蛍光「スイッチ」(一般的にアミン)、および蛍光体。センサー分子は
、光励起された蛍光体とホウ素原子とが結合されていないアミンの電子に関して
競合するよう設計される。グルコースが結合していない場合は、電子移動は主に
蛍光体に対して起こり、蛍光消光が起きて発光が弱まる。グルコースがボロン酸
基に結合すると、ホウ素原子の平均電荷はより正になり、これにより結合してい
ない電子の引力が増大して電子移動が阻止され、したがって蛍光消光は起きずに
、強い発光が生じる。
【0016】 光化学的グルコース感受性をもたらす、これらの分子成分の相互作用を成功さ
せるためには、これらの電気化学的および光物理学的性質を正確に調和させる必
要がある。例えば、機能的グルコースセンサー分子を想定すると、元の蛍光体を
所望の波長の別の蛍光体に置換するだけでは、作動する波長(the wavelength o
f operation)を変えることはできない。むしろ、適合性のある還元電位および
酸化電位、ならびに光励起状態のエネルギーを持つ蛍光体およびスイッチが選択
されなければならない。同様に、生体適合性基質(外科的移植に適する)への分
子の固定化に適応するためなどの、分子の他の修飾により、「スイッチ」成分の
酸化電位が変化し、それにより作動に必要な電気化学平衡が崩れる可能性もある
。したがって、それらを新規の分子系に合成的に組み入れるという時間がかかる
ことの多い過程の前に適合性を証明できるように、これら三つの成分の修飾、変
形、または置換を、電気化学的および光化学的の両面から評価しなければならな
い。見込みのある成分をスクリーニングし、それらの成分から合成して得られた
化合物の光化学的グルコース感受性を評価するために、実験的測定を行った。
【0017】 これらの成分を最終的なセンサー分子へと組み立てる場合、組み立てた成分間
の相互作用によって、単独の成分の電気化学的電位および光物理学的特性の両方
が容易に改変されうる。驚くべきことに、本明細書に記載した特定の式を有する
ボロネートグルコース感知分子では、これらの相互作用が最小限であることが判
明した。したがって、特定の蛍光体などの個々の成分の測定により、最終的に組
み立てられた分子のPET挙動を正確に予測できる。その結果、単純化された型の
レム・ウェラー(Rehm-Weller)の式を用いて、所望の活性を有する糖類結合性
蛍光化合物を同定することができ、様々な適用のためにこれらを合成することが
できる。
【0018】 グルコース変換は、研究された以下の三つの典型的な種類の候補分子によって
うまく達成された:遷移金属-リガンドボロネート化合物、ならびに共役有機複
素環系化合物、すなわちオキサジンボロネート化合物、オキサジン-オンボロネ
ート化合物、オキサゾンボロネート化合物、およびチアジンボロネート化合物、
ならびにアントラセンボロンネート化合物。一般的には、これらの化合物は約40
0nmより長波長で励起される。さらに、これらの化合物は一般的に約450nmより長
波長で作動(放射)する。
【0019】 本発明はしたがって、可視青または紫外のスペクトル領域で不透明な媒質中に
おける糖類または糖の濃度の検出、位置特定、および定量において有用である。
本発明に係るグルコースセンサーを、糖尿病患者におけるグルコース量の持続的
かつ経皮的なモニタリングのための、浸潤性が最小限である移植可能な系に組み
入れることができる。さらに、グルコースセンサーを、より長い蛍光寿命、特定
の励起波長および発光波長、高い量子収量、光安定性、化学的安定性、高い水溶
性、低い温度感受性、または低いpH感受性などの、他の所望の分子特性を持つよ
う設計することができる。
【0020】 グルコースのような糖に対するセンサー分子は医用の適用に関して主要な関心
対象であるが、本発明のセンサー/トランスデューサー機構は任意のシス-ジオ
ールの測定に関してより一般的に有用である。例えば、本発明のセンサー分子は
、エチレングリコールの混入が熱交換チューブの劣化の指標となる、ボイラー水
中のエチレングリコールの混入の測定において有用である。これらのセンサー分
子は糖尿病患者のためのグルコースセンサー分子として使用させる他に、工業的
発酵工程(例えばビールおよびワイン)、または高フルクトースコーンシロップ
の製造における多数の加工段階(例えば酵素反応装置)において使用されること
も可能である。本発明のその他の目的、特徴、および利点は、下記の説明および
添付の図面から明らかになると考えられる。
【0021】発明の詳細な説明 本発明は、分子内電子移動が可能であり、次いでグルコース、ガラクトース、
または果糖などの分析物濃度の関数として蛍光を調節する、蛍光センサー分子を
含む組成物を提供する。本発明を用いて、選択された吸収波長および発光波長、
より高い量子収量、ならびにより長い蛍光寿命などの所望の蛍光特性を有する蛍
光化合物を設計することができる。例えば、発光波長が約450nmより長い化合物
を作製し、その後皮膚などの可視青光または紫外光における不透明度が高い媒質
中でグルコースを感知するために用いることができる。さらに、励起波長が約40
0nmより長い化合物を作製し、これは紫外より長波長で励起されるという利点を
有する。これらの組成物はグルコース透過性の生体適合性重合体基質に固定化さ
れ、皮膚表面下の数ミリメートル下に移植可能なセンサーを形成することができ
る。一般化された化合物は、基質認識成分(フェニルボロン酸)、電子供与体と
してはたらく蛍光スイッチ成分(一般的にはアミン)、および電子受容体として
働く蛍光体を含む。
【0022】 本明細書に記載された化合物を用いると、グルコース非存在下では、蛍光スイ
ッチ成分による励起状態の蛍光体の蛍光消光が、バックグラウンドの蛍光量の低
下を引き起こす。グルコースなどの分析物存在下では、グルコース認識成分がグ
ルコースボロネートエステルを可逆的に形成し、その結果、最終的に蛍光スイッ
チと相互作用または蛍光スイッチに配位する、より電子が欠乏したホウ素原子を
生じる。ボロネートによるグルコースの錯体形成(complexation)により、孤立
電子対(lone-pair electrons)の励起蛍光体への移動が阻害され、蛍光発光強
度の増大および蛍光寿命の延長が起こるが、どちらも周囲のグルコース濃度に正
確に相関しうる。
【0023】 蛍光化合物をグルコース透過性の生体適合性重合体基質に固定化して、移植可
能なセンサーを形成することができる。センサーの作動範囲が長波長であるため
、皮膚を通して励起光をあて、放射された蛍光の強度または寿命を外部からモニ
タリングすることにより、センサーに応答指令信号を送ることができる。したが
って、放射された光の測定によりグルコース濃度の定量が可能となる。
【0024】 一般化されたセンサー化合物を図1に示しており、この化合物は以下の三つの
成分を含む:蛍光体(F)、基質認識部位、および蛍光スイッチ。基質認識部位
はフェニルボロン酸-(C6H5)B(OR1)2によって提供され、式中、R1は水素または低
級脂肪族官能基および芳香族官能基である。好ましくはR1は水素である。フェニ
ルボロン酸は任意の連結L1を通じて蛍光スイッチZに結合しており、Zは一般的に
は窒素(アミン)であるが、硫黄、リン、または酸素などの他の電子供与体ヘテ
ロ原子でありうる。スイッチZは第二の任意の連結L2を通じて蛍光体Fに結合して
いる。連結L1およびL2は炭素、酸素、窒素、硫黄およびリンから選択される0個
〜4個の連続した原子である。任意の基R2、基R3、および基R4がフェニル基、ス
イッチZ、および蛍光体Fにそれぞれ結合している。基R2、基R3、および基R4は重
合体基質と共有結合を形成することができる官能基でありうる。または、R2、R3 、およびR4は水素または低級脂肪族官能基もしくは芳香族官能基でありうる。
【0025】 本発明は、所望の蛍光特性、例えばより好ましい波長で作動する特性を有する
新規のグルコースセンサー分子を初めて作製する取り組みにおいて、非常に大き
な利点を示す、蛍光センサー分子開発のための信頼できるモデルを提供する。こ
のモデルにより、実行可能であることもあれば、そうでないことが判明すること
もある単一の化合物を合成するために、紙上の分子設計から長期にわたる研究活
動に直接進むよりも、むしろ小規模かつ比較的単純な手段で新規の分子を体系的
に構築することが可能となる。満足のできるグルコースセンサー分子を最終的に
作製するために要する可能性が高い過程の反復作業には、膨大な時間がかかる。
【0026】 本明細書において提供される開示を用いて、新規の蛍光化合物を構築するため
のモジュール式アプローチが可能である。この新規のアプローチにより、以下の
三つの成分を含む機能的グルコースセンサー分子を作製する:グルコース認識部
位、グルコース認識事象によって仲介される蛍光オン/オフスイッチ、および蛍
光体。蛍光体の選択によって以下を含む多数の分子特性に影響を及ぼすことがで
きる:励起波長および吸収波長、量子収量、蛍光寿命、光安定性、化学的安定性
、溶解性、温度感受性、またはpH感受性。
【0027】 新規の分子トランスデューサーを設計するためには、シグナル伝達が起こる機
構を理解することが重要である。図1に示す化合物の場合、蛍光スイッチングは
、そのような化学的変換の一般的な機構である光誘起電子移動(PET)によって起
こる(例えば、セローニ(Serroni)ら、Chem-Eur J 1999、5、3523〜3527;グ
リッグ(Grigg)ら、J Chem S Ch 1994、185〜187;ガスト(Gust)ら、Account
Chem Res 1993、26、198〜205;カヴァルノ(Kavarnos) G.J.「光誘起電子移
動の原理(Fundamentals of photoinduced electron transfer)」;VCH Publis
hers:ニューヨーク州ニューヨーク、1993;第1章;ワシェルスキー(Wasiekews
ki), M.R. Chem Rev 1992、92、435〜461およびバルザーニ(Balzani)ら、「
超分子の光化学(Supramolecular photochemistry)」;Ellis Horwood:ニュー
ヨーク、1991;第5章を参照)。
【0028】 典型的なPETセンサーの概要図を図16に示す。図16に示すとおり、分析物非存
在下では、アミンなどの電子供与体(D)が電子受容体(A)の蛍光を消光する。
分析物が存在すると、Dの酸化電位が低下して電子移動が起こらず、蛍光が増加
する。メイヤー(Meyer)(メイヤー(Meyer) T.J. Account Chem Res 1989、2
2、163〜170)およびラコウィック(Lakowicz)(マルタザ(Murtaza)ら、Anal
Biochem 1997、247、216〜222)によって報告されたルテニウムおよびレニウム
ビピリジン錯体、ドュ・シルバ(de Silva)(ダフィ(Daffy)ら、Chem-Eur J
1998、4、1810〜1815;ドュ・シルバ(de Silva)ら、Chem Rev 1997、97、1515
〜1566)によって報告されたナフタルイミドおよびペリレン系、ならびにビア(
Beer)のグループ(ビア(Beer) P.D. Account Chem Res 1998、31、71〜80)
による様々な分子センサーなどの、PETによって作動する他の系も公知である。
これらの系において、最も一般的な認識成分は、ペンダントの(pendant)アミ
ン、カリックスアーレン、またはpHもしくはアルカリ金属濃度の測定に用いられ
るクラウンエーテルである。そのような系は比較的少数の種類の利用可能な認識
成分に限られる。実施例にはレニウムおよびルテニウムビピリジン錯体由来の新
規のボロン酸誘導体の合成および蛍光試験の説明を含む。以前にヤン(Yam)は
光吸収による糖類変換についてレニウムビピリジン錯体を報告しており(例えば
ヤン(Yam)ら、Chem Commun 1998、109〜110およびミズノ(Mizuno)ら、J Che
m Soc Perkin Trans 1 2000、407〜413参照)、またシンカイ(Shinkai)は以前
に他の種類の有機および無機ビピリジルボロン酸を合成している(例えば、ミズ
ノ(Mizuno)ら、J Chem Soc Perkin Trans 2 1998、2281〜2288参照)。
【0029】 光化学的グルコース感受性をもたらす、これらのセンサーの成分の相互作用
を成功させるためには、それらの電気化学的特性が正確に調和する必要がある。
機能的グルコースセンサー分子を想定すると、元の蛍光体を所望の波長(または
寿命)の別の蛍光体に置換するだけでは、作動する波長を変える(または蛍光寿
命を延長する)ことはできない。むしろ、適合性のある還元電位および酸化電位
、ならびに蛍光体光励起エネルギーを持つ蛍光体およびスイッチを選択しなけれ
ばならない。同様に、例えば生体適合性基質(外科的移植に適している)に分子
を固定化するための分子の修飾により、「スイッチ」成分の酸化電位が変わり、
それにより作動に必要な電気化学的平衡が崩れる可能性もある。
【0030】 光電子移動(PET)に基づく新規の蛍光グルコーストランスデューサーの探索
には、とりわけ、任意の電位供与体-受容体対についての電気化学的理解が必要
である。PETの自由エネルギー(ΔGel)は、下記のレム・ウェラー(Rehm-Welle
r)の式を用いて計算することができる:
【式4】 ΔGel(kcal mol-1)=23.06[E0(D/D)-E0(A/A-)]-wp-wr-ΔG00 式中、E0(D/D)は供与体の酸化電位であり、E0(A/A-)は受容体の還元電位であ
り、かつΔG00は平衡エネルギーE00に対応する自由エネルギーである(例えば、
カヴァルノ(Kavarnos) G.J. 「光誘起電子移動の原理(Fundamentals of phot
oinduced electron transfer)」;VCH Publishers:ニューヨーク州ニューヨー
ク、1993;第1章およびレム(Rehm)およびウェラー(Weller)、Isr. J. Chem.
1970、8、259参照)。量wpおよびwrは生成物および反応物のクーロン項であり
、極性溶媒中では小さいことが判明している。予測を単純化するために、本発明
者らはwpおよびwrをゼロと仮定し、各蛍光体について[λmax(ex)+λmax(em)]/2
に対応するエネルギーとしてE00を概算した。正確なE00値は、例えばアントラセ
ン、[Ru(bipy)3]2+、および多数の他の化合物に関する文献中にも見られるが、
本発明者らはこの計算法が、以前に報告されていない新規の化合物について平衡
エネルギーを概算するために有用であることを見いだした。
【0031】 したがって、本発明を用いて機能的センサー分子を作製するために満たさなけ
ればならない系の熱力学的必要条件は、下記の単純化された型のレム・ウェラー
(Rehm-Weller)の式に従うことである:
【式5】 ΔGPET=23.06[E0(Zoxidation)-E0(Freduction)]-ΔE00] 式中、ΔGPETは電子移動のための標準自由エネルギーの変化であり、E0(Zoxidat ion )はスイッチ(一般的にはアミン)の酸化電位であり、E0(Freduction)は蛍光
体の還元電位であり、かつΔE00は励起状態の蛍光体のエネルギーである。所望
の蛍光特性を持つ化合物を設計するために、所望の特性を有する蛍光体Fを選択
すると同時に、ΔGPETが約3.0kcal mol-1未満となる酸化電位を有するスイッチZ
を選択することが必要である。電気化学的電位は完全な分子を組み立てる前に個
々の分子群を用いて測定することができる。
【0032】 本発明では一般的に、電子移動の自由エネルギーであるΔGが負または少なく
ともわずかに正であるような、本明細書に開示するレム・ウェラー(Rehm-Welle
r)の式を満たすようにFおよびZを選択する必要がある。特に、下記の実施例に
示す代表的分子によって示されるとおり、例えばわずかな測定の変動や他の小さ
な影響が原因でΔG値がわずかに正であっても、PET機構は活性を持ちうる。した
がって、実際の問題として、本明細書に記載された蛍光化合物では、ΔGは約3.0
kcal mol-1未満であるべきである。その結果、本明細書に記載された蛍光化合物
の好ましい態様において、FおよびZはΔGが約3.0kcal mol-1未満であるような式
を満たすよう選択される。より好ましい態様において、FおよびZはΔGが約1.5kc
al mol-1未満であるような式を満たすよう選択される。非常に好ましい態様にお
いて、FおよびZはΔGが負の値であるような式を満たすよう選択される。
【0033】 本明細書に記載された単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエ
ネルギー必要条件を満たすようにFおよびZが選択される、図1に示す特定の一般
的な分子式を有する機能的センサー分子についての出願人らの教示により、当業
者は約400nmより長い励起波長および450nmより長い発光波長を含む、例外的な活
性を有する様々な新規分子を生成することが可能である。典型的分子が約400nm
より大幅に短い励起波長を有すると記載する、この分野の主な文献を考慮すると
、約400nmより長い励起波長を有するこの特定の式の機能的センサー分子は予想
外のものである(例えば、ジェームズ(James)らの米国特許第5,763,238号;ラ
ッセル(Russell)の米国特許第5,137,833号;ジェームズ(James)ら「ボロン
酸とアミンとの相互作用に基づく、糖類に対する新規の光誘起電子移動センサー
(Novel Photoinduced Electron-transfer sensor for Saccharides Based on t
he Interaction of Boronic Acid and Amine)」、J. Chem. Soc. Chem. Comm.
、477〜478(1994)およびサンダナエイク(Sandanayake)ら、「アミノクマリ
ンに基づく、糖類に対する分子蛍光センサー(Molecular Fluorescence Sensor
for Saccharides Based on Amino Coumarin)」、Chemistry Letters 139〜140
(1995)参照)。さらに、これらの分子の大多数は約450nmより大幅に短い発光
波長を有すると教示する、この分野の主な文献を考慮すると、約450nmより長い
発光波長を有するこの特定の式の機能的センサー分子は予想外である(例えば、
ジェームズ(James)らの米国特許第5,763,238号;ヴァン・アントワープ(Van
Antwerp)の米国特許第6,002,954号およびジェームズ(James)ら「ボロン酸と
アミンとの相互作用に基づく、糖類に対する新規の光誘起電子移動センサー(No
vel Photoinduced Electron-transfer sensor for Saccharides Based on the I
nteraction of Boronic Acid and Amine)」、J. Chem. Soc. Chem. Comm.、477
〜478(1994)参照)。
【0034】 本明細書に開示する代表的分子によって示されるとおり、二つの変数FおよびZ
が単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエネルギー必要条件を満
たすよう選択される、図1に示す限定した分子式を使用することにより、この式
に含まれる多くの化学種のうち、どの種が分析物センサーとして機能することを
可能にする熱力学的特性を有しているかを決定することができる。驚くべきこと
に、図1に示す式を有するボロネートグルコース感知分子の個々の成分について
測定することによって、最終的に組み立てられた分子のPET挙動について正確な
予測ができることが判明した。したがって、本明細書に開示するレム・ウェラー
(Rehm-Weller)の式は、より高い励起波長および発光波長などの目的に合わせ
た蛍光活性を有する糖類結合蛍光化合物を生成するために用いることができる。
【0035】 単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエネルギー必要条件を満
たすように二つの変数FおよびZが選択される、図1に示すように定義された分子
式により、そのような化合物を同定するために一般的に必要とされる実験量に頼
ることなく、機能的なボロネートに基づく糖類感知分子を同定することができる
。さらに、当技術分野において公知であるとおり、特定のパラメーターで式を実
行するコンピュータープログラムを用いて、特定の熱力学的特性を含む所望の特
徴を有する化合物の同定を容易にすることができる(例えば、マクマーチン(Mc
Martin)ら、J. Comput. Aided Mol. Des. 1997,、11(4):333〜344;レジン
グ(Lesying)ら、Pharmacol. Ther. 1993、60(2):149〜167、およびリッタ
ー(Ritter)J. Chem. Inf. Comput. Sci. 1991、31(3):400〜408参照)。こ
の文脈において、単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエネルギ
ー必要条件を満たすようFおよびZが選択される、図1に示す特定の式を有する化
合物を評価するために、そのような手段を利用することができる。さらに、本明
細書において同定され、合成された例示的な分子によって示されるとおり、本開
示により遷移金属錯体、共役有機複素環系およびナフタルイミド蛍光体を含む構
造的に異なるシグナル分子を含む、様々な実例を作製することができる。
【0036】 単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエネルギー必要条件を満
たすようにFおよびZが選択され、かつFの励起波長が約400nmより長い、図1に示
す特定の分子式を有するセンサー分子は、以前に報告された類似の分子に比べて
多数の利点を有する。例えば、そのような分子は紫外スペクトル外の波長で励起
されるという利点を有し、したがって、例えば皮下に移植された光グルコースモ
ニタリング系における使用に特に適する(例えば、米国特許第6,011,984参照)
。特に、400nmまで及ぶが、超えることはないスペクトルを有する紫外光は、ヒ
トの皮膚に累積的な損傷を引き起こしうることは公知である(例えば、ラブカー
(Lavker)ら、J. Invest. Dermatol.、108(1):17〜21(1997)およびガスパ
ロ(Gasparro)、Environ. Health Perspect、108 補遺 1:71〜78(2000)参照
)。したがって、この領域外の励起波長を有する蛍光体によって機能するよう設
計されたセンサーは、特定の状況でヒトの皮膚に累積的な損傷を引き起こしうる
ことが示されている領域内にある励起波長を有する蛍光体の使用に伴う、潜在的
な問題を回避することができる。さらに、最大励起波長を既存の光源(LEDまた
はダイオードレーザーなど)と調和させることで、経皮的に移植されたグルコー
スモニターにおける使用を含む、本発明の態様の作製および使用が容易になるた
め、約400nmより長いFの励起波長は、以前に報告された類似の分子に比べてこの
さらなる利点を有する。
【0037】 単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式のエネルギー必要条件を満
たすようにFおよびZが選択され、かつFの発光波長が約450nmより長い、図1に示
す特定の分子式を有するセンサー分子は、特にシグナルを皮膚などの組織を通し
て透過させる能力において、類似の以前に報告された分子に比べて多数の利点を
有する。具体的には、数ミリメートルの皮膚を通過する透過性は波長に伴い対数
的に増大する(400nmでの0.1%から850nmでのほぼ100%まで(例えば、「レーザ
ー照射された組織の光-熱反応(Optical-Thermal Response of Laser-Irradiate
d Tissue)」(A.J. ウェルチ(Welch)およびM.J.C. ヴァン・ゲメル(van Gem
ert)編、Plenum Press)(1995);フランシス(Francis) A. ダック(Duck)
、「組織の物理的性質(Physical Properties of Tissue)」(Academic Press
)(1990)およびアブラハム・カトジール(Abraham Katzir)、「医学における
レーザーおよび光ファイバー(Lasers and Optical fibers in medicine)」(A
cademic Press)(1993)参照)。したがって、波長が長いほど皮膚を通過する
透過性は増大する。長波長では光の皮膚透過性が著しく増大するため、本明細書
に記載された蛍光分子を用いた実際のグルコースセンサーはより効率的に、より
正確に、およびより大きなシグナル対ノイズ比で作動することができる。
【0038】 本発明の典型的態様において、蛍光体(F)は励起波長が400nmより長く、発光
波長が450nmより長い色素である。本明細書において提供する例示的分子は、遷
移金属-リガンド錯体、または共役有機複素環系化合物、すなわちアントラセン
錯体だけでなく、チアジン、オキサジン、オキサジン-オン、もしくはオキサゾ
ンを含む様々な一般的カテゴリーに分類される。
【0039】 遷移金属-リガンド蛍光体の具体例は実施例1および図2に示され、ルテニウム
ビストリフルオロメチルビピリジン、クロムビピリジン、およびレニウムトリカ
ルボニルビピリジンを含む。系の熱力学的必要条件(レム・ウェラー(Rehm-Wel
ler)の式)が前述のとおりに満たされている限り、他の金属も可能で、事実、
還元/酸化特性を適当に改変することができるいかなる遷移金属も可能である。
遷移金属は周期表のIIIA〜IB族由来の元素、例えばCo、Cr、Cu、Mo、Rh、Ru、W
、Re、Os、Ir、およびPtである。本発明に適した共役有機複素環系蛍光体の具体
例を実施例2および図3〜図5に示す。チアジン蛍光体の一例は図3に示すチオニン
錯体であるが、1,9-ジメチル-メチレンブルーのような置換系も含むと思われる
。オキサジン蛍光体には図4に示すオキサジン1、オキサジン170、またはナイル
ブルー錯体が含まれる。オキサジン-オンおよびオキサゾン蛍光体が図5に示す。
本発明に適したアントラセン蛍光体の具体例を実施例3および図25〜図29に示す
【0040】 本発明の一つの態様において、蛍光体はセンサー分子の蛍光寿命を延長するよ
うに選択された。具体的には、寿命が10ナノ秒またはそれ未満のCOB(またはア
ントラセン-ボロネート)と対比して、例えばルテニウム錯体、Ru(N-メチルベ
ンジルボロネート)は970ナノ秒の寿命を有する。したがって、励起波長/発光
波長の変化に加えて、この蛍光体に置換することでセンサー分子の蛍光寿命を実
質的に改変した。
【0041】 本発明の化合物は、グルコースなどの糖類または糖の濃度を検出するためのバ
イオアッセイ試験において溶液中で用いることができる。本発明のもう一つの態
様において、化合物は医用移植片のために用いられる生体適合性重合体基質に固
定化することもできる。化合物は、参照として本明細書に組み入れられている米
国特許第6,002,954号に記載された技術を用いて、重合体に共有結合される。基
本的には、これらの方法は、化合物を基質に共有結合させるために使用できるよ
うな、適当な連結鎖(tether)を分子に付加することを含む。結合はR2もしくは
R3を通じて(図1参照)、またはR4を介して蛍光体自体を通じて起こりうる。一
例として、R2はイソシアネート基と反応して、重合体基質上で末端キャッピング
された(end capped)ウレタン/化合物を形成することができる5-ヒドロキシペ
ンチル連結鎖またはリンカーアーム(linker arm)でありうる。連結鎖自体をさ
らに修飾して(例えば、塩化メタクロリルと反応させてメタクリル酸エステルを
生成することにより)、アクリル酸に基づくヒドロゲルなどのフリーラジカル重
合系に組み入れるのに適したリンカーを提示することもできる。
【0042】 グルコース感知分子を使用する多数のセンサーが当技術分野で公知であり、本
明細書に記載された化合物と共に用いるために適合させることができる。例えば
、参照として本明細書に組み入れられる、ラオ(Rao)らの米国特許第5,628,310
号には、試薬を消費せずに、浸潤性を最小限に抑えて経皮的に、移植要素の蛍光
寿命を測定することを可能にし、かつ痛みを伴う採血の必要がない、装置および
方法が記載されている。参照として本明細書に組み入れられる、アレン(Allen
)らの米国特許第5,476,094号は、インビボでの使用が意図されるバイオセンサ
ー、例えばグルコースセンサーの作製において有用な膜を開示した。参照として
本明細書に組み入れられる、クリック(Chick)らの米国特許第6,040,194号は、
個人におけるグルコースなどの分析物検出のためのインビボでの方法および装置
を開示した。参照として本明細書に組み入れられる、ヴァン・アントワープ(Va
n Antwerp)らの米国特許第6,011,984号は、ポリヒドロキシル化化合物、特にグ
ルコースの生体量濃度を定量するための方法を開示する。これらの方法は、重合
体基質に固定化された分析物トランスデューサーである増幅系を利用し、その系
は移植可能かつ生体適合性である。光学系によって応答指令信号を送ることによ
り、増幅系は患者の皮膚の外部で検出可能なシグナルを生じる。生じたシグナル
の測定により目的とする分析物の定量を行う。
【0043】 前述のとおり、本明細書に提供される発明は、より強固で小さな分子トランス
デューサーに基づく新規の分析物検出系を目的とする。これらの分子は、例えば
グルコース濃度の上昇に対して蛍光反応する皮下移植可能な膜を含む、多数の状
況において用いることができる。いったん移植されれば、膜は長期間同じ場所に
とどまって、光学的励起および検出によって皮膚を通してグルコースを測定する
ことができる。多数の類似の系が以前に公表されており、その大部分はシンカイ
(Shinkai)のグループによるもので、主に比色定量および円偏光二色性分光法
による検出を含む(例えば、ジェームズ(James)ら、Angew Chem Int Ed 1996
、35、1911〜1922;ワード(Ward)ら、Chem Commun 2000、229〜230およびルイ
ス(Lewis)ら、Org Lett 2000、2、589〜592参照)。蛍光検出を利用する化合
物の組はより少数であり、(例えば、クックラー(Kukrer)ら、Tetrahedron Le
tt 1999、40、9125〜9128;キジマ(Kijima)ら、Chem Commun 1999、2011〜201
2およびヨーン(Yoon)ら、J Amer Chem Soc 1992、114、5874〜5875参照)、そ
のうち最も有望なものはシンカイ(Shinkai)のアントラセン由来のボロン酸誘
導体である、図15に示す化合物1および2である(例えば、ジェームズ(James)
ら、J Amer Chem Soc 1995、117、8982〜8987参照)。
【0044】 ジェームズ(James)によって記載されたような当技術分野において公知の例
示的化合物(図15の化合物1)は、33%MeOH/リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.
4)においてグルコース濃度を0mg/dLから300mg/dLに上昇させることにより、印
象的な120%の蛍光の増大を示す。市販のセンサーにおけるこの化合物の使用を
制限する主な要因は、その低い水溶性と、励起および発光の波長が短いことであ
る。水溶性はインビボで作動するためには明らかに必要である。皮膚を通過する
可視光の透過性はスペクトルの赤端に向かってより大きくなるため、長波長での
蛍光は重要である。同様に、アッカヤ(Akkaya)らの最近の研究により、グルコ
ース濃度の上昇に伴い適度な蛍光の増大を示す、ボロン酸が付加されたスクアラ
イン(squaraine)色素が作製された(クックラー(Kukrer)B.;アッカヤ(Akk
aya)E.U. Tetrahedron Lett 1999、40、9125〜9128)。本明細書に開示すると
おり、本発明者らは、約400nmより短い励起スペクトルおよび約450nmより短い発
光スペクトルなどの公知の分子に伴う問題を克服する新規の分子を提供する。
【0045】 本発明で用いるための典型的な移植可能グルコースセンサーの概略を図14に示
す。蛍光化合物12を基質14に組み入れて小型センサー10を形成し、これを皮膚表
面の1mm〜3mm下に移植する。蛍光を励起するための光源18および結果として生じ
る蛍光を測定するための検出器20を含む外部機器16により、小型センサー10に応
答指令信号を送る。次に、検出された光学シグナルをグルコース濃度に変換する
。較正法が必要であり、蛍光寿命測定技術または重合体内に含まれる第二のグル
コース非感受性蛍光体を用いるレシオメトリック(ratiometoric)法のいずれか
を用いる。
【0046】 下記に示すとおり、本発明の特定の具体的態様は、特定の化学的独自性(例え
ば図1に示す一般式)によって定義される蛍光性の糖類結合化合物を含み、これ
らの化合物の置換基分子は単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式に
よって決定することができる相補的な分子特性を持つよう選択され、さらに400n
mより長い励起波長および/または450nmより長い発光波長などの具体的な所望の
機能活性を有する(例えば、化合物がグルコースなどの分析物存在下で約450nm
より長波長で蛍光を発する)よう選択される。そのような態様は、特定の配列と
一定の構造的同一性(すなわち同一率)を有するよう選択され、定義された測定
可能な機能(例えば、AからBへの反応を触媒するなど)を有する、特定の式(す
なわち、タンパク質のアミノ酸配列)のポリペプチド化学製品に匹敵する。しか
しながら、その成分が特定の活性を有する分子を得るための熱力学的必要条件を
満たすよう選択される、特定の化学式によって定義される機能的化合物は、定義
された配列と一定の同一率を有すると特徴付けられた機能的ポリペプチドよりも
容易に作製することができる。なぜなら、単なる同一率とは異なり、単純化され
たレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式はそのような化合物を作製する前に、具
体的な所望の機能を示す可能性が高い化合物の同定に用いることができるからで
ある。
【0047】 グルコースのような糖に対するセンサー分子は医用の適用に関して主要な関心
対象であるが、本発明のセンサー/トランスデューサー機構は任意のシス-ジオ
ールの測定に関してより一般に有用である。例えば、本発明のセンサー分子は、
類似の状況における他の用途と同様に、エチレングリコールの混入が熱交換チュ
ーブの劣化の指標となる、ボイラー水中のエチレングリコール混入の測定におい
て有用である(例えば、米国特許第5,958,192号参照)。これらのセンサー分子
は、工業的発酵過程(例えばビールおよびワイン)、または酵素反応装置などの
高フルクトースコーンシロップの製造における多数の加工段階において用いるこ
ともできる(例えば、米国特許第5,593,868号;米国特許第4,025,389号;コー(
Ko)ら、Biotechnol. Bioeng. 57(4):430〜437(1998)およびムー(Mou)ら
、Biotechnol. Bioeng. 18(10):1371〜1392(1976)参照)。さらに、本明細
書に記載されたセンサー分子は、工業的発酵過程のモニタリングなどの用途に特
に適する特性を示す。特に、下記の実施例に記載された化合物は分析物濃度に対
して様々な程度の感受性を示し、これは例えば、分析物濃度がインビボで観察さ
れる濃度を超える工業的発酵過程の溶液のモニタリングにおいて用いる際に、有
益と考えられる性質である。さらに、下記の実施例に記載された化合物は広いpH
領域で、かつ高濃度のメタノールなどのアルコール存在下で機能し(例えば図29
参照)、これは発酵過程のモニタリングにおいて有益となりうる性質である。
【0048】 本明細書に記載されたとおり、図1に示す特定の式を有するような分子を作製
するための合成機構は、かなりの期間当技術分野において公知である(例えば、
ジェームズ(James)ら、J. Am. Chem. Soc. 1995、117、8982およびサンダナエ
イク(Sandanayake)ら、「アミノクマリンに基づく、糖類に対する分子蛍光セ
ンサー(Molecular Fluorescence Sensor for Saccharides Based on Amino Cou
marin)」、Chemistry Letters 139〜140(1995);クザミック(Czamik)、 Ac
c. Chem. Res. 27、302〜308(1994);モーラー(Mohler)ら、J. Am. Chem. S
oc. 115、7037〜7038(1993)ならびにディーツ(Deetz)およびスミス(Smith
)、Tetrahedron Letters 1998、39、6841〜44参照)。さらに、下記の実施例に
示すとおり、本出願人らは遷移金属-リガンド錯体、ならびに共役有機複素環系
化合物、すなわちチアジン、オキサジン、オキサジン-オン、またはオキサゾン
、およびアントラセン蛍光体を利用する化合物を含む、本発明の様々な特異的な
化合物(例えば特定の式によって定義され、単純化されたレム・ウェラー(Rehm
-Weller)の式によって決定することができる相補的な分子特性を持つように、
化合物の置換基分子が選択される)の合成に関する詳細な記載を提供する。さら
に、当業者は、そのようなモジュラー化合物の実際の合成を容易にするために本
明細書に記載された単純化されたレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式を利用で
きることを理解すると思われる。特に、特定の構成基(例えばメチル)を有する
化合物の合成に要する費用と労力が、類似の構成基(例えばエチル)を有する化
合物の合成に必要とされるよりも少ない場合、単純化されたレム・ウェラー(Re
hm-Weller)の式を用いて、より費用効果が高いかまたは容易に合成される化合
物が、分析物センサーとしての機能を可能にする熱力学的特性を保持しているこ
とを確認することができる。したがって、本明細書に記載された開示を用いるこ
とにより、そのような化合物の作製に通常費やされる労力を軽減することができ
る。
【0049】 本明細書に提供する開示は本発明の多数の態様を開示する。一般的には、本発
明は、分析物(糖類など)の濃度に相関しうるシグナルを放射する蛍光化合物で
あって、図1に示す特定の一般式を有する化合物からなる。式中、R1は一般的に
は水素ならびに低級脂肪族官能基および芳香族官能基からなる群より選択され;
R2およびR4は一般的には水素、任意の低級脂肪族官能基もしくは芳香族官能基、
または重合体基質と共有結合を形成することができる官能基であり;L1およびL2 は一般的には窒素、炭素、酸素、硫黄およびリンからなる群より選択される0個
から4個の原子を有する任意の連結基であり;Zは窒素、硫黄、酸素およびリンか
らなる群より選択されるヘテロ原子であり;R3は一般的には水素、低級脂肪族官
能基または芳香族官能基、および重合体基質と共有結合を形成する基からなる群
より選択される任意の基であり;かつFは選択された分子特性を有する蛍光体で
ある。一般的には、FおよびZは、電子移動のための自由エネルギーΔGが約3.0kc
al mol-1未満であるような下記の式を満たすように選択される:
【式6】 ΔG=23.06[E0(Zoxidation)-E0(Freduction)]-ΔE00] 式中、E0(Zoxidation)はZの酸化電位であり、E0(Freduction)はFの還元電位であ
り、ΔE00は励起状態におけるFのエネルギーである。本発明の好ましい態様にお
いて、蛍光化合物はグルコース濃度に相関するシグナルを放射する。
【0050】 前述の式における典型的な蛍光体(F)の例には、π電子系を含む様々な成分
または官能基が含まれる。好ましい蛍光体には遷移金属-リガンド錯体、オキサ
ジン、オキサジン-オン、オキサゾン、チアジン、ならびにナフチル化合物、ア
ンスリル化合物、ピレニル化合物およびフェナンスリル化合物が含まれる。蛍光
体を形成する原子団または官能基を、置換基が化合物の熱力学的特性を蛍光に有
害な影響を及ぼすように変化させない限り、置換することができる。例えば、特
に本明細書に含まれる糖類を検出するために化合物を液体に溶解させる場合は、
スルホン酸基が化合物に水溶性を与えるため、スルホン酸基による置換が起こり
うる。本発明の一つの態様において、R1、R2、またはR3などの(窒素原子と結合
した)置換基Rは、水素、イソシアネート基と反応して重合体基質上で末端キャ
ッピングされたウレタン/化合物を形成することができる、5-ヒドロキシペンチ
ル連結鎖もしくはリンカーアームなどの重合体基質と共有結合を形成する基、ま
たは低級脂肪族官能基もしくは芳香族官能基を示す。特定の態様において、Rは1
個から6個の炭素原子を有するアルキル基、すなわちメチル基、エチル基、プロ
ピル基もしくはブチル基、またはフェニル基である。さらに、そのような態様に
おいて、フェニルボロン酸を含むフェニル基は、本明細書に記載された置換基が
蛍光に有害な影響を及ぼさない限り、適当な一つまたは複数の置換基で置換され
うる。置換基の候補例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェ
ニル基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ピリジル基、フ
ラニル基、チオフェン基およびピリドン基が含まれる。
【0051】 本発明の好ましい態様において、Fは一般的に約450nmより長波長で放射する。
本発明の好ましい態様において、Fは約500nmより長い波長、約550nmより長波長
、または約600nmより長波長で放射する。非常に好ましい態様において、Fの励起
波長は約400nmより長いか、または約450nmより長い。この文脈において、当業者
はそのような分子の励起波長および発光波長は波長の集束スペクトルにおいて全
体的に見られ、単一の絶対的な一点で起こるものではないことを理解する。した
がって、例えば最大発光が450nm付近に集中する分子では、そのような分子を一
般的に約450nmより長波長で放射すると記載することは的確である。さらに、例
えば最大励起が450nm付近に集中する分子では、そのような分子を約400nmより長
い励起波長を有すると記載することはゆえに的確である。蛍光分子の特性および
蛍光技術の一般的説明については、「蛍光プローブおよび研究用化学製品の入門
書(Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals)」からの「蛍
光技術入門(Introduction to Fluorescence Techniques)」を参照されたく、
その一部はオンラインでhttp://www.probes.com(具体的にはhttp://www.probes
.com/handbook/sections/0069.html)において見出される。
【0052】 本発明の具体的な態様において、Zは一般的には窒素である。本発明のより具
体的な態様において、Fは遷移金属-リガンド錯体、オキサジン、オキサジン-オ
ン、オキサゾン、チアジンおよびアントラセンからなる群より選択される。本発
明のさらにより具体的な態様において、Fはオキサジン-オンボロネート、アント
ラセンボロネート、またはルテニウムおよびクロムからなる群より選択される金
属を含む遷移金属-リガンド錯体を含む。
【0053】 本発明の蛍光化合物による検出は、化合物を試料に加える段階、および化合物
と糖類との結合により増大した蛍光強度を調べるフォトスコープ(photoscopic
)法によって実施することができる。または、本発明の化合物が支持材料上に支
持されており、これを介して糖類含有試料を通過させ、化合物と糖類との錯体に
より増大した蛍光強度増大に基づく検出を行うクロマトグラフィー法によって、
本発明の蛍光化合物を用いた検出を行うことができる。この文脈において、本発
明のもう一つの典型的態様は、前述の蛍光化合物を含む重合体基質を含むセンサ
ーである。そのような態様において、蛍光化合物は一般的には重合体基質に共有
結合しており、基質は生体適合性でありかつ移植可能である。
【0054】 本発明の他の態様は、前述の蛍光化合物を用いて蛍光化合物を試料中に導入し
、分析物存在下で試料中の化合物の蛍光を測定し、次に蛍光測定から分析物の濃
度を定量することによる、試料中の分析物濃度の分析方法を含む。本発明のこの
方法の好ましい態様において、蛍光化合物は重合体基質に共有結合されており、
基質は生体適合性でありかつ移植可能で、分析物はグルコースを含む。本発明の
本方法の具体的な態様において、蛍光の測定は強度を測定する段階を含む。本発
明の本方法の他の態様において、蛍光の測定は寿命を測定する段階を含む。
【0055】 前述のとおり、本発明の典型的態様において、本明細書に開示する蛍光性の糖
類結合性化合物は特定の式によって定義され、その置換基分子は単純化されたレ
ム・ウェラー(Rehm-Weller)の式によって決定することができる相補的な分子
特性を持つ。特に、本発明はFおよびZが、電子移動のための自由エネルギーΔG
が約3.0kcal mol-1未満であるように本明細書に開示するレム・ウェラー(Rehm-
Weller)の式を満たすように選択される、図1に示す特定の式の化合物を提供す
る。この文脈において、蛍光体Fなどの成分は、この分子に組み入れることが可
能であることが当技術分野において公知の多様な蛍光体のいずれか一つの熱力学
的特性を評価することにより、この式を満たすよう選択することができ、かつこ
のようにして適切な特性を有するものを同定する。前述のとおり、この選択過程
の様々な並べ替えは、多様な候補分子を効率的に試験するためのコンピューター
プログラムの使用を含むことが予想される。または、電子移動のための自由エネ
ルギーΔGが約3.0kcal mol-1未満であるように本明細書に開示されるレム・ウェ
ラー(Rehm-Weller)の式を満たす分子がいったん同定されれば、熱力学的に類
似する特性を有することが合理的に予測される式を有する分子を選択および試験
するために、この情報を用いることができる。
【0056】 本発明の好ましい態様に関する前述の説明は、例示および説明のために提示す
るものであって、網羅的なもの、または本発明を開示された正確な様式に限定す
ることを意図するものではない。前述の教示を考慮して、多くの改変および変形
が可能である。態様は、それにより当業者が様々な態様において、意図される特
定の使用に適した様々な改変を伴って、本発明を最もうまく使用できるように、
本発明の原理および実際の適用を最もよく説明するよう選択して記載された。
【0057】 本発明は以下の実施例にさらに詳細に記載されるが、これらの実施例は例示の
ために提示され、いかなる様式でも本発明を限定することを意図するものではな
い。本明細書に引用されるすべての特許および文献は、その全体が参照として本
明細書に組み入れられる。
【0058】実施例 実施例1:遷移金属-リガンド蛍光体 遷移金属-リガンド錯体を研究するために、ルテニウムリガンド錯体蛍光体を
調べた。図6は緩衝液/メタノール中のRu(ビストリフロオロメチルビピリジン
)の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。化合物は経皮励起にとって好
ましい460nmで励起され、550nmより大きな波長で十分に放射する。この基本とな
る蛍光体由来の誘導体は実質的に同じ励起スペクトルおよび発光スペクトルを示
す。装置の観点から、460nmでの励起は低コストで市販されている超高輝度(ult
ra-bright)LED光源で容易に達成される。以下の実施例において、さらに長波長
(赤色)でも明らかに作動することが可能であったが、用いた励起波長および発
光波長はそれぞれ460nmおよび560nmであった。
【0059】 ルテニウム蛍光体を用いたグルコース感知化合物を合成した:Ru(N-メチルベ
ンジルボロネート)。Ru(N-メチルベンジルボロネート)系のレム・ウェラー(
Rehm-Weller)の式に関連する値は次のとおりである:ΔGPET=-7.4kcal/mole、
E0(Zox)=0.95V、E0(Fred)=-0.85V、およびΔE00=48.9kcal/mole。化合物を図
7に示す。Ru(N-メチルベンジルボロネート)の試料を蒸留水中に10μMの濃度で
調製した。図8は酸および塩基を加えた場合の、試料の経過を示す。酸および塩
基条件下でのこの化合物の挙動は、最終化合物がPET機能性を維持しているかど
うかの適切な指標である。
【0060】 基線蛍光が確立される最初の期間に続いて、酸および塩基を交互に加えてpHを
2から11の間の値とする。これに応じて、蛍光強度は低いpHでは増大し、高いpH
では低下する。これは、少なくともこの一連のスクリーニング試験で必要とされ
る精度の範囲内では、名目上再現性のある傾向である。データにおける傾向、す
なわち蛍光強度の一定であるが緩やかな低下は、光退色のサインである場合もあ
り、またはその化合物が極端なpHでは不安定であることを示すこともある。
【0061】 溶液中のグルコースセンサー分子Ru(N-メチルベンジルボロネート)に対し、
周囲pHがグルコース非存在下における蛍光の初期量を決定すると思われる。この
初期量が低いほど、大きな相対蛍光の変化が達成される。ルテニウム化合物はpH
7での蛍光量がpH11での値に非常に近いため、本質的に大きな変化が可能である
と考えられる。
【0062】 Ru(N-メチルベンジルボロネート)化合物のグルコース感受性について試験し
た。試料を蒸留水中に10μMの濃度で調製した。図9に示すとおり、グルコースを
複数回にわたって加えた。この場合、強度低下の傾向がデータにみられる。グル
コース濃度の上昇に対応した蛍光の増大は明らかに認められる。最終グルコース
濃度は約3000mg/dLで、臨床範囲の50mg/dL〜500mg/dLを明らかに超えている。そ
れでも、この上昇は蛍光を約50%増大させた。この化合物に対して、臨床範囲を
超えるグルコース濃度では比較的わずかな蛍光の増大しか期待されないが、これ
らの結果は長波長グルコースセンサー分子を作製する最初の試みが成功したこと
を意味する。分子を化学的に修飾することにより、グルコース濃度の変化に対す
るその反応を最大にすることが可能である。
【0063】一般的プロトコル 反応はすべてN2雰囲気下で行った後、空気中で後処理した。保護ボロン酸エス
テルは長期間にわたって加水分解を防止するため真空状態で保存した。トルエン
およびTHFはN2雰囲気下で、ナトリウム/ベンゾフェノンから蒸留した。ジクロ
ロメタンおよびアセトニトリルはN2雰囲気下で、水素化カルシウムから蒸留した
。4,4'-ジメチル-2,2'-ビピリジン(bpyMe)はAldrichまたはGFS Chemicalsから
購入した。化合物4-(ブロモメチル)-4'-メチル-2,2'-ビピリジン(bpyCH2Br)
、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニル]ボロネート
(3)、4-(ジエチルアミノメチル)4'-メチル-2,2'-ビピリジン(bpyCH2NEt2
、[(bpyCH2NEt2)Re(CO)3(py)](OTh)(py=ピリジン、OTf=トリフルオロスル
ホニル)、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-2,2'-ビピリジン(bpyF)、およ
びRu(bipyF)2Cl2は文献の方法によって調製した(ハマチ(Hamachi)ら、Inor
g Chem 1998、37、4380〜4388;ストルース(Strouse)ら、Chem 1995、34、473
〜487;インペリアリ(Imperiali)ら、J Org Chem 1993、58、1613〜1616;シ
ェン(Shen), Y.Ph.D.、ワイオミング大学(University of Wyoming)、Larami
e、ワイオミング州、1996およびフルエ(Furue)ら、Inorg Chem 1992、31、379
2〜3795参照)。
【0064】 FT-IR分光法のための試料はCHCl3溶液として調製し、C=O伸縮のみが報告され
ている。別に記載のない限り、NMRスペクトルはすべて、20℃〜25℃で溶媒にCDC
l3を用い、1Hについては500MHz、13Cについては125MHzで記録した。別に記載の
ない限り、質量スペクトルは1%酢酸を加えたメタノール/水(50/50)混合溶
媒における、エレクトロスプレーイオン化(50V)を用いて記録した。サイクリ
ックボルタンメトリーは、ガラス質の炭素作用電極、白金対電極、およびAg/Ag
Cl基準電極を用いて行い、0.1MのNBu4ClO4のアセトニトリル溶液中で実施した。
【0065】蛍光測定 蛍光試料はMeOH中に1.00mMの保存溶液として調製した。次に、溶液30.0μLア
リコートを適当な混合溶媒(メタノールおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の
組み合わせ)3.000mLに加えて、各錯体の最終濃度を10.0μMとした。少量の1.0M
塩酸、1.0M水酸化ナトリウム、または氷酢酸の添加によりpHを変化させた。グル
コースの添加は、キュベット中で撹拌している蛍光体溶液に、PBS中のグルコー
ス濃縮溶液を加えることによって行った。蛍光体をその最大励起波長で励起し、
最大発光波長で蛍光強度を測定することにより、pHおよびグルコース濃縮の関数
として蛍光を測定した([(bpyX)Re(CO)3(py)](OTf)についてはλexem=361
nm/552nm、[(bpyX)Ru(bpyF)2]Cl2についてはλexem=450nm/635nm)。本発明
の分光学的調査のための保護ボロン酸エステル([(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)
および[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2は、合成が容易であるため、脱保護化合物を分離
するよりもむしろ。メタノール溶液中に少量でも水が存在すると、ネオペンチル
グリコール保護基がただちに定量的に除去されることを示すために、NMRおよび
蛍光分光法による対照実験を行った。これは、他のボロネート系について糖類に
比べて単純なジオールでは結合定数が非常に弱いことを示すシンカイ(Shinkai
)の結果(例えば、ジェームズ(James)ら、J Amer Chem Soc 1995、117、8982
〜8987参照)、および微量の水が糖類およびボロネートの結合様式に影響を及ぼ
すとするノリルド(Norrild)のNMR研究(ビーレッキ(Bielecki)ら、J Chem S
oc Perkin Trans 2 1999、449〜455)に一致する。
【0066】 4-(メチルアミノメチル)-4'-メチルビピリジン(bpyCH2NMeH) MeNH2気流を75mLのTHF中のbpyCH2Br(1.52g、5.76mmol)溶液に0℃で15分間通
気(bubbling)させて、不透明な無色の溶液を得た。この溶液を室温に戻し、16
時間撹拌を続けた。溶媒を除去して油状の白色固体を得た。白色粉末からジエチ
ルエーテルで淡黄色溶液を抽出し、溶媒を減圧除去してbpyCH2NMeH(1.20g、98
%)を淡黄色液体として得た。
【0067】 4-(N-ベンジルメチルアミノメチル)-4'-メチルビピリジン(bpyN)。5mLのC
H2Cl2中のHNMe(CH2Ph)(0.680mL、5.27mmol)溶液を、CH2Cl2中の30mLのbpyCH2B
r(0.693g、2.63mmol)溶液に数分かけて滴下して添加し、徐々に金色の溶液を
得た。撹拌を2時間続けて、溶媒を減圧除去した。粗精製物を40mLのCHCl3に溶解
し、30mLのH2Oを加えた。炭酸ナトリウム飽和溶液を加えてpHを8に調節した。層
を分離した後、有機層を30mLのH2Oで2回洗浄した。溶媒を除去して油状の白色固
体を得た。白色粉末からジエチルエーテルで淡黄色溶液を抽出し、溶媒を減圧除
去してbpyN(1.20g、98%)を淡黄色液体として得た。
【0068】 2,-ジメチルプロパン-1,3-ジイル[o-(メチルアミノメチル)フェニル]-ボロ
ネート(4)。MeNH2気流を150mLのCH3CN中の溶液3(7.02g、24.8mmol)に0℃で2
0分間通気させて、黄色の溶液を得た。撹拌を3時間続け、反応を室温まで戻した
。溶媒を減圧除去して黄色粉末を得た。白色粉末からクロロホルムで黄色溶液を
抽出し、溶媒を減圧除去して4(5.48g、95%)を淡黄色粉末として得た。
【0069】 4-{N-[o-(5,5-ジメチルボリナン-2-イル)ベンジル]-N-メチルアミノ]メチル
}-4'-メチルビピリジン(bpyNB) 方法A 60mLのTHF中の溶液3(1.60g、5.64mmol)を、60mLのTHF中のbpyCH2NMeH(1.20
4g、5.65mmol)およびNEt3(0.787mL、5.65mmol)溶液に1時間かけて滴下して添
加し、添加終了までに不透明な白色混合物を得た。撹拌を1時間続け、次に溶媒
を減圧除去した。粗精製固体をジエチルエーテルで抽出し、溶媒を除去して純粋
なbpyNB(1.91g、82%)をクリーム色から白色の粉末として得た。
【0070】 方法B bpyCH2Br(0.525g、2.00mmol)および4(0.927g、3.99mmol)の混合物を40mL
のTHFに溶解し、ただちに不透明な白色混合物を得た。反応物を1時間撹拌し、次
に溶媒を減圧除去した。粗精製固体をジエチルエーテルで抽出し、溶媒を減圧除
去して純粋なbpyNB(0.424g、51%)を淡黄色固体として得た。
【0071】 (bpyMe)Re(CO)3Cl (bpyMe)Re(CO)3Cl、(bpyN)Re(CO)3Cl、および(bpyNB)Re(CO)3Clの調製は(bpyC
H2NEt2)Re(CO)3Clの調製と同様である。40mLのCH2Cl2および120mLのトルエン中
で、Re(CO)5Cl(774mg、2.14mmol)およびbpyMe(394mg、2.14mmol)の混合物を
2時間還流加熱し、明るい黄色-橙色溶液を得た。溶媒を減圧除去し、粗精製物質
をCH2Cl2/ヘキサンから再結晶させて(bpyMe)Re(CO)3Clを純粋な黄色粉末として
得た(1.00g、95%)。
【0072】 (bpyN)Re(CO)3Cl Re(CO)5Cl(299mg、0.827mmol)およびbpyN(251mg、0.827mmol)の反応によ
り、(bpyN)Re(CO)3Clを黄色粉末として得た(486mg、96%)。
【0073】 (bpyNB)Re(CO)3Cl Re(CO)5Cl(310mg、0.857mmol)および6(357mg、0.860mmol)の反応により、
7を黄色粉末として得た(560mg、定量的収量)。
【0074】 (bpyMe)Re(CO)3(py)](OTf) [(bpyMe)Re(CO)3(py)](OTf)、[(bpyN)Re(CO)3(py)](OTf)、および[(bpyNB
)Re(CO)3(py)](OTf)の調製は[(bpyCH2NEt2)Re(CO)3(py)](OTf)の調製と同様
である。5mLのTHF中のAgOTf(263mg、1.02mmol)溶液を50mLのCH2Cl2中の(bpyMe
)Re(CO)3Cl(499mg、1.02mmol)溶液に加え、ただちに不透明な黄色混合物を得
た。2時間撹拌した後、沈殿物をろ過によって除去し、その黄色溶液に100mLのエ
タノールおよび10.0mLのピリジンを加えた。これを50℃で17時間加温したが、目
に見える変化はなかった。溶媒を減圧除去して明るい黄色粉末を得た。アセトニ
トリルを用いたシリカ上でのクロマトグラフィーにより、純粋な[(bpyMe)Re(CO) 3 (py)](OTf)を黄色粉末として得た(555mg、80%)。
【0075】 [(bpyN)Re(CO)3(py)](OTf) AgOTf(154mg、0.599mmol)および(bpyN)Re(CO)3Cl(363mg、0.596mmol)の反
応と、その後のトルエン:アセトニトリル(1:2)を用いたシリカ上でのクロマ
トグラフィーにより、純粋な[(bpyN)Re(CO)3(py)](OTf)を黄色粉末として得た
(260mg、54%)。
【0076】 [(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf) AgOTf(115mg、0.448mmol)および(bpyNB)Re(CO)3Cl(292mg、0.447mmol)の
反応と、その後のアセトニトリル:メタノール(9:1)を用いた塩基性アルミナ
上でのクロマトグラフィーにより、純粋な[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)を黄色
粉末として得た(182mg、45%)。
【0077】 [(bpyMe)Ru(bpyF)2]Cl2 化合物[(bpyMe)Ru(bpyF)2]Cl2、[(bpyN)Ru(bpyF)2]Cl2、および[(bpyNB)Ru(
bpyF)2]Cl2はすべて[(bpy)Ru(bpyF)2]Cl2(bpy=2,2'-ビピリジン)と同様の方
法で調製した。50mLのMeOH中で、Ru(bpyF)2Cl2(232mg、293mmol)およびbpyMe
(112mg、608mmol)の混合物を16時間還流加熱して、暗紫色混合物を得た。溶媒
を減圧除去し、粗精製の褐色物質を塩基性アルミナ上でのクロマトグラフィーに
より精製した。アセトニトリルにより不純物が青色および桃色のバンドとして最
初に溶出された。最後の橙色のバンドをメタノールで溶出し、溶媒を除去して、
純粋な[(bpyMe)Ru(bpyF)2]Cl2(144mg、52%)を橙色粉末として得た。
【0078】 [(bpyN)Ru(bpyF)2]Cl2 Ru(bpyF)2Cl2(171mg、216mmol)およびbpyN(133mg、438mmol)の反応後、溶
媒を除去して、純粋な[(bpyN)Ru(bpyF)2]Cl2(180mg、79%)を橙色粉末として
得た。
【0079】 [(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2 Ru(bpyF)2Cl2(216mg、273mmol)およびbpyNB(226mg、544mmol)の反応後、1
0%メタノール/アセトニトリルを用いた塩基性アルミナ上でクロマトグラフィ
ーを行い、溶媒を除去して、純粋な[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2(283mg、89%)を橙
色粉末として得た。
【0080】合成の考察 ビピリジンリガンド合成 本発明の典型的化合物には図17に示す経路によって合成することができる新規
のボロネートおよびベンジルビピリジンリガンドが含まれる。この作業で調製さ
れる両方の遷移金属錯体群に共通の中間体はビピリジルボロネートリガンドbpyN
Bである。メイヤー(Meyer)による以前の研究(例えば、メイヤー(Meyer)T.J
. Account Chem Res 1989、22、163〜170参照)などから、化合物bpyCH2Brは様
々な官能基を持つビピリジン化合物への最も単純な出発物質となることが明らか
にされている。bpyCH2Brの調製は中等度の収率でしか行えないが、最終の二つの
アルキル化段階は一般に70%〜80%の収率が行われ、数グラム単位のbpyNまたは
bpyNBを都合よく調製することができる。o-トリルボロン酸基をArCH2NMeH(Ar=
フェニル、ナフチル、アンスリル)などの蛍光体に付加するための有用な試薬と
して、3の使用がシンカイ(Shinkai)によって導入された。本発明者らはbpyNB
の合成にも使用することができる、アミノボロネート試薬4を調製した。他の系
では、本発明者らは必要とされる変換によって3または4がより好都合であること
を見いだしたが、この場合、直線的または収束的経路のいずれかによって容認可
能な結果が得られる。
【0081】 レニウム錯体合成 レニウム錯体[(bpyX)Re(CO)3Cl]および[(bpyX)Re(CO)3(py)](OTf)(bpyX=b
pyMe、bpyN、およびbpyNB)を図18に示すとおり、ビピリジルリガンドbpyMe、bp
yN、およびbpyNBを用いて調製した。これらの反応は以前の報告と類似しており
、高い収率で行うことができる(例えば、リー(Li)ら、Chem Phys Lipids 199
9、99、1〜9参照)。下記の蛍光および電気化学的データの説明を助けるために
、三つのリガンド誘導体はレニウムおよびルテニウムの両方について調製した。 1 Hおよび13C{1H}NMRスペクトルおよびMSデータにより化合物が明確に確認され
ている。三つのクロロ錯体[(bpyX)Re(CO)3Cl](bpyX=bpyMe、bpyN、およびbpyN
B)のIRスペクトルはそれぞれ、2022cm-1、1917cm-1、1895cm-1でカルボニルの
伸縮を示す。ピリジウム錯体[(bpyX)Re(CO)3(py)](OTf)それぞれについて、CO
共鳴が2034cm-1および1931cm-1に観察される。これらのデータは[(bpyCH2NEt2)R
e(CO)3Cl](OTf)(2021cm-1、1917cm-1、1895cm-1)および[(bpyCH2NEt2)Re(CO
)3(py)](OTf)(2034cm-1および1931cm-1)について報告された値に正確に一致
している。カルボニル伸縮の振動数がクロロ化合物群の間、またはピリジニウム
錯体群の間では変動しないことは注目に値する。これは、ビピリジルリガンドの
末端における置換基の変化は、金属中心の電子密度を実質的に変えないことを示
唆する(下記の電気化学を参照)。
【0082】 ルテニウム錯体合成 ルテニウムビピリジン誘導体[(bpyX)Ru(bpyF)2]Cl2(bpyX=bpyMe、bpyN、お
よびbpyNB)の合成を、図18に示す反応にしたがって実施した。この方法はフル
エ(Furue)らの方法に類似しており、還流メタノール中でRuCl2(bpyF)2と過剰
のビピリジンリガンドとを直接化合させる段階を含む。NMRおよび質量スペクト
ルは所望の生成物の合成を明確に示す。銀トリフラートによる、より一般的な塩
化物抽出反応に続いて、ビピリジン誘導体の付加による反応の実施を試みたが、
所望の生成物を得ることはできなかった(グールド(Gould)ら、Inorg Chem 19
91、30、2942〜2949)。これはおそらく、RuCl2(bpyF)2のトリフルオロメチル化
ビピリジルリガンドからのAgによるフッ化物の抽出を含む、望ましくない副反
応による。
【0083】 電気化学 PETに基づく新規の蛍光グルコーストランスデューサーの探索には、とりわけ
、任意の電位供与体-受容体対についての電気化学的理解が必要である。PETの自
由エネルギー(ΔGel)は式1に示すレム・ウェラー(Rehm-Weller)の式を用い
て計算することができる:
【式7】 ΔGel(kcal mol-1)=23.06[E0(D/D)-E0(A/A-)]-wp-wr-ΔG00 (1) 式中、E0(D/D)は供与体の酸化電位であり、E0(A/A-)は受容体の還元電位であ
り、かつΔG00は平衡エネルギーE00に対応する自由エネルギーである。量wpおよ
びwrは生成物および反応物のクーロン項であり、極性溶媒中では小さいことが明
らかにされている。本発明者らの場合には、反応物が中性であるため、wr=0で
ある。予測を単純化するために、本発明者らはwpをゼロと仮定し、各蛍光体につ
いて[λmax(ex)+λmax(em)]/2に対応するエネルギーとしてE00を概算した。よ
り正確なE00値は、アントラセン、[Ru(bipy)3]2+、および多数の他の化合物に
関する文献中に見いだすことができるが、本発明者らはこの大まかな計算法が、
以前に報告されていない新規の化合物の平衡エネルギーを概算するために有用で
あることを見いだした。
【0084】 したがって、本発明の系において、遷移金属錯体[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf
)(Ag/AgClに対して-1.25V)および[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2(Ag/AgClに対して-0
.85V)の最初の還元電位ならびに、金属錯体のN-メチルアミン官能基(Ag/AgClに
対して1.26V)の最初の酸化電位の測定により、ΔGel値をそれぞれ-5.0kcal mol -1 および-3.8kcal mol-1と概算した。これらの値を考察するにあたり、これらを
図15に示す1のΔGelと比較する価値はある。1については、最初の酸化電位およ
び還元電位はそれぞれ、Ag/AgClに対して1.10Vおよび-2.11Vである。1の最大励
起波長369nmおよび最大発光波長420nmでは、ΔGel概算値は1.5kcal mol-1である
。この値が0より大きいという事実から、PETは実際に起きている実験的知見と表
面上矛盾し、好ましくないことが示唆される。したがって、本発明者らは本発明
者らのΔGel概算値を絶対的な意味で正確であると考えるべきではなく、PETの相
対的推進力の尺度と見なすべきであることを強調する。したがって、本発明者ら
は化合物[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)および[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2におけるPE
Tは1より約5kcal mol-1〜6kcal mol-1好ましいと示唆する。親化合物(parent c
ompounds)[(bpy)Ru(bpyF)2]Cl2および[Re(bpy)(CO)(py)](OTf)の電気化学
および蛍光に関する文献データを用いて、化合物合成前にこれらの予測をたてる
ことができることに注目することは有用である。このことが、より一般的な親錯
体(parent complex)[Ru(bpy)3]Cl2ではなく、よりまれなビス(トリフルオロ
メチル)ビピリジン錯体[(bpy)Ru(bipyF)2]Cl2(それぞれSCEに対して-1.31Vお
よびSCEに対して-0.77V)の誘導体を調製した理由である。これらの還元電位に
よりそれぞれ推定ΔGel値として-3.8kcal mol-1および12.5kcal mol-1が得られ
ると考えられる。
【0085】蛍光分光法 pHスイッチング これらの計算の妥当性を確認する最も直接的試験は、これらの化合物のpH変化
への反応を調べることである。高いpHでは、ペンダントのアミノ基は蛍光を消光
させると予想される。低いpHではアミンのプロトン化によって消光は起こらず、
最大蛍光を発すると考えられる。これが、ルテニウムおよびレニウムのビピリジ
ン錯体を含む、以前の多数のpH検出用分子トランスデューサーの基本である。本
発明者らの場合、結合したグルコース-ボロネート錯体によるアミン消光の調節
は、プロトンまたはアルカリ金属によるこの効果の調節に比べてより予測が複雑
かつ困難である。この方法によってよりよいグルコーストランスデューサーを開
発するにあたり、ホウ素-窒素相互作用の性質を理解することは必要不可欠であ
る。
【0086】 pH変化による蛍光スイッチングの最初の試験は、これらの系に対する最適反応
を決定するために行った。水溶液中の[(bpyX)Re(CO)3(py)](OTf)および[(bpyX
)Ru(bpyF)2]Cl2(bpyX=bpyMe、bpyN、bpyNB)の発光スペクトルおよび励起スペ
クトルは、それぞれの系列ではほとんど変動を示さなかった([(bpyX)Re(CO)3(p
y)](OTf)ではλexem=361nm/552nm、[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2ではλexem =450nm/635nm)。ペンダントのアミン官能性のない化合物で予想されたとおり
、[(bpyMe)Re(CO)3(py)](OTf)および[(bpyMe)Ru(bpyF)2]Cl2の相対蛍光は2か
ら11のpH範囲で一定のままであった。次に、これらの条件下で化合物[(bpyN)Re(
CO)3(py)](OTf)および[(bpyN)Ru(bpyF)2]Cl2を調べ、相対蛍光強度測定値は10
.3:8.5:1および2.15:1.1:1であった。したがって、pH7からpH2へ低下すると
、レニウムおよびルテニウム錯体のシグナルは21%および95%増大した。これら
の数値は対応するボロネート錯体[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)および[(bpyNB)R
u(bpyF)2]Cl2におけるグルコーススイッチングから予想される最大シグナルの指
標である。pH7での蛍光量はグルコース非存在下(生理的pH7.4)で予想されるシ
グナルに対応する。pH2での蛍光量は高いグルコース濃度で予想されるシグナル
に対応する。一方、pHが11から2に変化する場合、蛍光のより大きな変化(レニ
ウムでは930%、ルテニウムでは115%)が観察される。グルコースに対する分子
トランスデューサーを最終的に使用するには、生理的pHで作動する必要があると
思われるが、これらのデータはこれらの蛍光体に基づくPETセンサーから予想し
うるシグナルにおける最大の部分増大を制限する。シンカイ(Shinkai)は、適
当なボロネートおよび構成モチーフを選択することにより、アミンのpKaを変え
て所与の蛍光体から発することが可能な全ての光を利用することができるとして
いる。さらに、[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2に対し、錯体[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf
)で観察されるより大きな部分スイッチングは、前述のレム・ウェラー(Rehm-W
eller)の式に基づく本発明者らの予想と一致する。
【0087】 アミンpKaの効果を調べる一つの方法は、[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)を公知
の化合物(bpyCH2NEt2)Re(CO)3(py)](OTf)と比較することによる。bpyCH2NEt2
誘導体はpHを11から2に変化させることにより61%の蛍光の増大を示す(シグナル
はpH2とpH7では基本的に同じ)。これは[(bpyN)Re(CO)3(py)](OTf)の測定値(93
0%増大)に比べて著しく小さい。二つの化合物がほぼ同じ酸化電位(Ag/AgClに
対して1.35Vおよび1.34V)および全く同じ還元電位(Ag/AgClに対して-1.20V)
を有することを考慮すると、この挙動の相違は電子的な原因によるのではなく、
むしろ二つのアミノ基の立体上の差異によると思われる。
【0088】グルコース試験 第一の重要な対照試験は、化合物[(bpyX)Re(CO)3(py)](OTf)および[(bpyX)R
u(bpyF)2]Cl2(bpyX=bpyMeおよびbpyN)がグルコースの0mg/dLから約3600mg/dLま
での増加に反応しないことを確認することであった(生理学的関心が最も大きな
領域は約25mg/dL〜350mg/dLである。)。これらの対照化合物に加えて、レニウ
ムボロネート錯体[(bpyNB)Re(CO)3(py)](OTf)はグルコース量に蛍光反応を示
さなかったが、ルテニウムボロネート錯体[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2は反応を示し
た。グルコース濃度に対する相対蛍光の図を図19に示す。本発明者らはグルコー
ス濃度の増加に伴う所望のシグナル増大を認めているが、反応は非常に穏やかで
ある(0mg/dLから3000mg/dLのグルコースで7%の増大)。この反応の程度はシン
カイ(Shinkai)が同じ濃度範囲で1について観察したほぼ200%の相対蛍光増大
に比べてかなり小さいが、アッカヤ(Akkaya)のスクアライン系で見られた程度
(8%の増大)(クックラー(Kukrer)B.;アッカヤ(Akkaya)E.U. Tetrahedro
n Lett 1999、40、9125〜9128)とほぼ同等で、チャルニック(Czarnik)のアン
トラセンボロネートの程度(8%の低下)(例えば、ヨーン(Yoon), J.;チャ
ルニック(Czarnik), A.W. J Amer Chem Soc 1992、114、5874〜5875参照)と
類似している。この部分スイッチングにおける損失は、[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2
およびアッカヤ(Akkaya)の化合物(クックラー(Kukrer)B.;アッカヤ(Akka
ya)E.U. Tetrahedron Lett 1999、40、9125〜9128)ではこれらの水溶性の増大
だけでなく、より長波長で皮膚を通過する可視光の透過性の増大によって、部分
的に補われる。明らかに、より長波長でのグルコース変換のために、よりよい系
を見つけなければならない。本発明者らの目的のために、本発明者らが電気化学
および蛍光特性の初期研究に基づく合理的方法により、グルコースに対する新規
の小さな分子トランスデューサーを設計することができ、したがって新規の糖類
トランスデューサーの合成を試みるために費やす時間を節約できたことを示す価
値はあった。本明細書に提供される開示を用いて、この研究から得られた結果を
改善されたグルコースセンサーの開発に応用することができる。
【0089】Ru(N-メチルベンジルボロネート)の合成の概要 1.リガンド合成 (a)4-カルバルデヒド-4'-メチル-2,2'-ビピリジン: 4,4'-ジメチルビピリジンを1,4-ジオキサン中、1当量のSeO2と共に一晩還流し
た。溶液を熱いうちにろ過し、1時間かけて室温まで冷却した。クリーム色の沈
殿をろ過によって除去し、溶媒をポンプにより乾燥させた(pumped dry)。粗精
製固体を酢酸エチルで抽出し、炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、次に亜硫酸水素ナ
トリウムで抽出した。炭酸ナトリウムでこの溶液のpHを9に調節し、溶液をジク
ロロメタンで抽出した。有機抽出物を合わせて硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶
液をポンプにより乾燥させ、純粋な白色粉末を得た。収率30%。1H NMRスペク
トルは構造と一致している。
【0090】 (b)4-ヒドロキシメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジン: 4-カルバルデヒド-4'-メチル-2,2'-ビピリジンのTHF溶液に-40℃で、THF中の
水素化リチウムアルミニウムのスラリー(slurry)を滴下してわずかに過剰に加え
た。温度が約-20℃に上昇するまで約1時間撹拌を続けた。次に溶液を約-40℃に
再度冷却し、10%水性THFで反応を停止させた。反応物を室温まで加温し、ろ過
し、ポンプにより乾燥させて黄色粉末を得た。収率75%。1H NMRスペクトルは
構造と一致している。
【0091】 (c)4-ブロモメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジン: 粗精製4-ヒドロキシメチル-4'-メチル2,2'-ビピリジンの塩化メチレン溶液に0
℃で、PPh3およびN-ブロモスクシンイミドの両者をわずかに過剰に加え、ただち
に褐色-橙色の溶液を得た。混合物を1時間撹拌し、室温まで加温し、濃縮して濃
い褐色オイルを得た。溶離剤としてヘキサン:ジエチルエーテル(1:1)を用い
たシリカのクロマトグラフィーにより、生成物を白色粉末として得た。収率50%
1H NMRスペクトルは構造と一致している。
【0092】 (d)4-メチルアミノメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジン: 4-ブロモメチル-4'-メチル2,2'-ビピリジンのTHF溶液に0℃でメチルアミンを
ゆっくり10分間通気させ、白色沈殿と無色溶液を得た。通気後、溶液を室温でさ
らに1時間撹拌した。反応物をポンプにより乾燥させて淡灰白色のろう状物質を
得た。ろう状物質をジエチルエーテルで抽出し、ポンプにより乾燥させて淡黄色
オイルを得た。収率80%。1H NMRスペクトルは構造と一致している。
【0093】 (e)ネオペンチルグリコール保護o-ブロモメチルフェニルボロン酸 文献に記載された方法により調製した:ホーキンズ(Hawkins)ら、J. Am Che
m. Soc. 82:3863(1960)およびジェームズ(James)ら、J. Am Chem. Soc. 11
7:8982(1995)。
【0094】 (f)4-[N-o-メチルフェニルボロン酸ネオペンチルグリコールエステル]メチル
アミノメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジン: 4-メチルアミノメチル-4'-メチル2,2'-ビピリジンのアセトニトリル溶液を等
モルのネオペンチルグリコール保護o-ブロモメチルフェニルボロン酸およびトリ
エチルアミンのアセトニトリル溶液に、10分かけて滴下により添加し、淡黄色溶
液を得て、これを室温で1時間撹拌した。溶液をポンプにより乾燥させて灰白色
のろう状固体を得た。クリーム色の粉末からジエチルエーテルで無色溶液を抽出
し、ポンプ乾燥してクリーム色のろう状固体を得た。収率75%。1H NMRスペク
トルは構造と一致している。
【0095】 2.ルテニウム錯体合成 (a)5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジン 5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジン(bipyF)を、文献の方法を用
いてルテニウム錯体調製のために合成した。PETが実行可能となるように、置換
したビピリジンリガンドを用いて金属錯体酸化還元電位を変化させた。
【0096】 (b)Ru(5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジン)2Cl2 親化合物、Ru(5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジン)2Cl2を、RuC
l3を5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジンと共にDMF中で還流すること
により調製した。これを用いてビス(bipyF)ルテニウム錯体を調製した。
【0097】 (c)(4-[N-o-メチルフェニルボロン酸ネオペンチルグリコールエステル]メチ
ルアミノメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジン)Ru(5,5'-ビストリフルオロメチ
ル-2,2'-ビピリジン)2Cl2: メタノール中における、Ru(5,5'-ビストリフルオロメチル-2,2'-ビピリジン
2Cl2および4-[N-o-メチルフェニルボロン酸ネオペンチルグリコールエステル]
メチルアミノメチル-4'-メチル-2,2'-ビピリジンの混合物(モル比1:2)を2日
間還流して暗橙色-褐色溶液を得た。これをポンプにより乾燥させて暗褐色固体
を得た。アセトニトリル:メタノールを用いた勾配溶離によりクロマトグラフィ
ーを実施した。青色および桃色-紫色のバンドを廃棄し、第三の橙色のバンドを
回収した。これをポンプにより乾燥させて暗橙色-褐色粉末を得た。収率90%。
生成物の同一性は1Hおよび13C NMRスペクトルならびにGC-MSで確認した。
【0098】実施例2:共役有機複素環系蛍光体 蛍光体としての共役有機複素環系化合物を調べるために、オキサジン-オン系
を調査した。オキサジン-オンは荷電オキサジン色素の中性(非荷電)前駆体で
あると記載されている。クロロ-オキサジン-オンボロネート(COB)という最終
化合物(蛍光体+スイッチ+認識部位)を図10に示す。レム・ウェラー(Rehm-W
eller)の式におけるCOB系に関連する値は以下である:ΔGPET=-12.1kcal/mole
、E0(Zox)=0.88V、E0(Fred)=-1.10V、およびΔE00=57.8kcal/mole。いくつか
の溶媒系における化合物のグルコースに対する反応を特徴付けた。化合物5.7mg
をメタノール5mLに溶解することにより、化合物の保存溶液を調製した。この保
存溶液30μLを溶媒3mLに加えることにより、試料を調製した。次の三つの混合溶
媒を用いた:(1)純粋なメタノール(MeOH)、(2)pH7.4の緩衝液中における6
6%容積のMeOH、および(3)pH7.4の緩衝液中における25%容積のMeOH。図11は6
6%MeOH/緩衝液中のオキサジン-オン化合物試料について得られた励起スペクト
ルおよび発光スペクトルを示す。これらのスペクトルに基づき、それぞれ450nm
および560nmの励起および発光波長をその後の定常状態蛍光試験のために選んだ
。しかし、600nmを超える発光波長も蛍光強度をモニタリングするために十分で
あると考えられる。450nmの励起帯は市販の超高輝度LEDエミッターによく適合す
る。
【0099】 グルコース感受性試験を、オキサジン-オン化合物に対して行った。試料は前
述のとおりに調製し、濃縮グルコース溶液(300mg/mL)の30μLアリコートで滴
定した。各アリコートは試料のグルコース濃度を約300mg/dLずつ上昇させた。図
12は66%MeOH/緩衝液溶媒を用いて実施した実験の結果を示す。基線蛍光量を測
定する最初の段階の後、グルコースの30μLアリコートの4回試料に加え、最終グ
ルコース濃度を約1200mg/dLとした。この溶媒系では、グルコース濃度が0mg/dL
から600mg/dLまで上昇する場合、グルコース変換は45%の蛍光強度の増大を示す
。これは、アントラセンボロネートによって示されるスイッチング部分とほぼ同
等であるが、この変換は十分に緑色(発光について)の範囲内で達成され、この
範囲ではヒト皮膚の光透過効率を数倍に改善することが可能である。
【0100】 グルコース変換の可逆性を実験的に調べた。3.5mLキュベット(撹拌バー容積
を含む)中で、1.5mL容積の試料を前述のとおりに調製した。濃縮したグルコー
スを約1500mg/dLのグルコース濃度になるまで加える。次に、1.5mLの溶媒を加え
てグルコース濃度を2分の1にする。次に、前述のようにグルコース濃度を上昇さ
せる。図13は一つのグルコースサイクルの実験結果を示す。試験した全範囲で、
グルコース反応の完全な可逆性が見られた。これらの結果より、オキサジンを合
成する必要はなく、そのオキサジン-オン前駆体を使用可能であることが示され
る。
【0101】A.ベンゾフェノキサジノンボロネートの合成 グルコース認識に用いるための典型的化合物の例示的分子集合として、6-クロ
ロ-5H-ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン-5-オンボロネート11の合成(図20に示
す)を以下に示す。詳細に前述したとおり、この戦略は次の三つの主な成分の相
乗的な統合を含む:蛍光体、選択的グルコース結合単位、およびトランスデュー
サー。ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン-5-オン環系は、高い量子収量、単純な
光源を利用できる最大励起波長(excitation maxima)、化学的および光化学的
安定性を含む多くの所望の特性を有するため、これを蛍光体として組み入れた。
グルコース結合単位については、芳香族ボロン酸基が糖類を選択的に認識するこ
とが明らかにされているため、これを用いた。これら二つの主な成分を、メチレ
ンアミン連結鎖を介して結合する。この場合、アミンはリンカーとして働くのみ
ならず、グルコース感知設計の必須な部分でもある。標的センサー分子、6-クロ
ロ-5H-ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン-5-オンボロネート11は、光誘起電子移
動を介しての蛍光シグナル伝達に基づく。この固有の系のPET過程はボロン酸と
アミンとの相互作用によって調節される。
【0102】 合成 グルコース認識のための標的分子はCOB(クロロオキサジンボロネート)と略
記し、ベンゾフェノキサジノン11として下記に示す。COBを、ベンゾフェノキサ
ジノン6aをフェニルボロネート10とメチレンアミン結合基を介して結合させるこ
とにより構築した(図20に示す)。
【0103】 3-アミノ-4-ヒドロキシベンジルアルコール3の2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノ
ン4との縮合によって、ベンゾフェノキサジノン6aを合成した(図21)。アミノ
アルコール3の調製には市販の4-ヒドロキシ-3-ニトロ安息香酸1からの連続的な
還元が必要であった。テトラヒドロフラン中におけるボラン-THF錯体を用いた安
息香酸1の還元により、4-ヒドロキシ-3-ニトロベンジルアルコール2を90%の収
率で得た。続いて、水中における水素化ホウ素ナトリウムおよび10%Pd/C触媒
を用いたニトロアルコール2の還元により、3-アミノ-4-ヒドロキシベンジルアル
コール3を97%の収率で得た。還元の後、3-アミノ-4-ヒドロキシベンジルアルコ
ール3と2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン4の環形成縮合を行った。反応はメタノ
ール/ベンゼン混合溶媒中、室温で酢酸カリウムを用いて実施した。縮合にはベ
ンゼン中のキノン4のスラリーに、メタノール中のアミノアルコール3および酢酸
カリウムの懸濁液を滴下して添加する必要があり、その結果6-クロロ-10-(ヒド
ロキシメチル)-5H-ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン-5-オン5を30%の収率で得
た。最初は、縮合をメタノールおよび水素化カリウムを用いて調べた。これらの
条件では複雑な生成混合物が生じ、そのうちのいくつかは水素化カリウムとナフ
トキノン4との反応から生じた可能性がある。
【0104】 環縮合の後、室温でエーテル/トルエン混合溶媒中の三臭化リンを用いてベン
ゾフェノキサジノン5を臭化ベンゾフェノキサジノン6に変換した(図22)。これ
らの条件で6-クロロ-10-(ブロモメチル)-5H-ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン
-5-オン6aを67%の収率で得た。または、トリエチルアミンおよび塩化トシルを
用いてベンゾフェノキサジノン5からトシル化物の形成を行ったが、所望のトシ
ル化物6bは生成しなかった。
【0105】 それでも、臭化ベンゾフェノキサジノン6aを調製し、次にグルコース結合ボロ
ネート単位と結合する必要があった。ベンゾフェノキサジノンとの結合相手であ
るアミノフェニルボロネート10の調製には、o-トリルボロン酸7のネオペンチル
グリコールによる保護が必要であり、対応するo-トリルボロン酸エステル8を99
%の収率で得た。ボロン酸エステル8を、四塩化炭素中のN-ブロモスクシンイミ
ドおよびAIBNを開始剤として用い、フリーラジカルの臭素化によって官能性を持
たせた。反応条件には光源による照射だけでなく加熱が必要であり、ブロモメチ
ルフェニルボロネート9を97%の収率で得た。続いて、フェニルボロネート9のエ
ーテル溶液にメチルアミンを通気させてアミノボロネート誘導体10を合成した。
メチルアミノフェニルボロネート10を99%の収率できれいに単離した(図23)。
【0106】 COB合成を完了するために、アミノフェニルボロネート10とベンゾフェノキサ
ジン6aとの結合は、4日間炭酸カリウムを用いて還流させたテトラヒドロフラン
中で実施した(図24)。標的のベンゾフェノキサジン11をクロマトグラフィーに
より精製し、61%の収率で固体として単離した。
【0107】 蛍光測定/グルコース変換 COBの反応をいくつかの溶媒系で評価した。本発明者らの研究では、COB5.7mg
をメタノール5mlに溶解することによりCOBの保存溶液を調製した。 この保存溶液30μLを溶媒3mLに加えることにより、試料を調製した。次の三つの
混合溶媒を用いた:(1)純粋なメタノール(MeOH)、(2)pH7.4の緩衝液中の6
6%容積のMeOH、および(3)pH7.4の緩衝液中の25%容積のMeOH。図11は66%MeO
H/緩衝液中のCOB化合物試料に対して得られた励起スペクトルおよび発光スペク
トルを示す。
【0108】 これらのスペクトルに基づき、それぞれ450nmの励起波長および560nmの発光波
長をその後の定常状態蛍光試験のために選んだ。しかし、600nmを超える発光波
長も蛍光強度をモニタリングするために十分であり、450nmの励起帯は一般に入
手可能な超高輝度LEDエミッターによく適合することに言及するべきである。試
料は前述のとおりに調製し、濃縮したグルコース溶液(300mg/mL)の30μLアリ
コートで滴定した。おおよそ、各アリコートは試料のグルコース濃度を約300mg/
dLずつ上昇させた。図12は66%MeOH/緩衝液溶媒を用いて実施した実験の結果を
示す。基線蛍光量を測定する最初の段階の後、グルコースの30μLアリコートを4
回試料に加え、最終グルコース濃度を約1200mg/dLとした。この溶媒系では、グ
ルコース濃度が0mg/dLから600mg/dLまで上昇する場合、グルコース変換は45%の
蛍光強度の増大を示した。これらの結果は、本発明者らが蛍光シグナル伝達に基
づくグルコース認識系の設計に成功したことを示した。
【0109】 前述のとおり、6-クロロ-5H-ベンゾ(ベンザ)フェノキサジン-5-オンボロネ
ート11の合成によって、本明細書に開示される典型的な種類のグルコース認識化
合物の設計が完了した。この系は、グルコースセンサーとしての適用を成功させ
ることが可能な、独特な特徴を含む。本発明者らのセンサーの前提は、ボロン酸
とアミンとの相互作用によって調節される、光誘起電子移動を介した蛍光シグナ
ル伝達誘起に基づく。最初に、研究によってグルコース濃度の変動が蛍光強度に
対して重大な影響を及ぼすことが明らかにされた。これらの結果は、COB系を蛍
光グルコースセンサーとして用いることが非常に有望であるという証拠を提供し
た。同様に、本明細書に開示される教示を用いて、シグナル変換を最適化するた
めにCOBの改変を研究することもできる。
【0110】実施例3:ナフタルイミド蛍光体 この提示は、図25〜図29に記載する例示的ナフタルイミドボロネート化合物に
基づくような系の開発における結果を示す。これらの化合物は、以前に報告され
たトランスデューサーに比べて、高い量子収量、長波長での作動、および比較的
高い水溶性を有するという利点を提供する。本発明者らは重合体に組み入れるた
めの結合基を有する化合物を合成し、改善されたセンサー分子の予測に関するこ
れらの系の電気化学について考察する。
【0111】合成 本計画で調査したナフタルイミド誘導体を図25および図26に示す方法で調製し
た。これらの方法は、以前にナフタルイミド色素分子について報告されたものと
、いくつかの相違はあるが類似している(例えば、アレキシ(Alexiou)ら、J.
Chem. Soc.、Perkin Trans. 1990、837;ドュ・シルバ(de Silva)ら、Angew.
Chem. Int. Ed. Engl. 1995、34、1728;カヴァルノ(Kavarnos)G.J. 「光誘起
電子移動の基礎(Funfamentals of Photoinduced Electron Transfer)」;VCH
:ニューヨーク、1993;pp37〜40、およびダフィ(Daffy)ら、Chem. Eur. J. 1
998、4、1810参照)。ナフタルイミド骨格は、イミド窒素および4位に結合して
いるアルキル基に応じて、広範なスペクトル特性を示すことが明らかにされてい
る。これまでの研究はほとんど、イミド窒素から離れたn-ブチル基を用いており
(例えば1ax)、一般により短い側鎖または不飽和の側鎖よりも高い量子収量が
得られている。これらの分子を重合体基質に共有結合させるために、本発明者ら
は1bxの調製から出発して、5-ペンタノールリンカーに基づく誘導体も調製した
。これらの色素分子にさらに官能性を持たせるために、ペンダントのアルコール
をテトラヒドロピラニル(THP)エーテルとして保護する必要があった。
【0112】 4-クロロ基をN-メチルエチレンジアミンまたはN,N'-ジメチルエチレンジアミ
ンいずれかで置換することにより、所望の2ay、2cy、2az、および2czを高収率で
得た。非対称のN-メチルエチレンジアミンを含む反応により、エチレンジアミン
種の一級アミン端にのみ置換が生じた。二級ナフチルアミンに基づく色素の量子
収量は、三級アミンで見られる量子収量よりも実質的に高いことが明らかにされ
ている。しかし、さらなる官能基の導入は三級化合物では単純化されると考えら
れた。したがって、蛍光分光法による試験のために、両方の化合物群を調製した
【0113】 ドュ・シルバ(de Silva)の研究は、pHに対する蛍光トランスデューサーとし
ての、類似化合物の有用性を示している。本発明者らの以前の研究、およびシン
カイ(Shinkai)の研究(例えば、ジェームズ(James)ら、J. Am. Chem. Soc.
1995、117、8982参照)に基づき、本発明者らは末端のアミン基由来のベンジル
ボロネート基を付加し、3ay、3cy、3az、および3czを高収率で得た。これらの化
合物の分光学について下記に記載する。この系の重合体への結合を可能にするた
めに、ペンダントのTHPエーテルを脱保護して、多数の他の官能基への変換に適
した遊離アルコールを得た。アミン誘導体の調製は現在進行中である。
【0114】 蛍光測定および分析蛍光スペクトルおよび相対量子収量 3ayおよび3cyについて、表1の最大蛍光波長(fluorescence maxima)に加えて
、試料の励起スペクトルおよび発光スペクトルを図27に示す。参照文献により、
二級アミンのナフタルイミド誘導体の方が、その他の点では類似した化合物の三
級アミンに比べて量子収量が高いことが示されている。この値の増大の実用的価
値は、測定可能な相対量子収量に対して合成上の困難度を比較考察して調査した
【0115】 結果を図28および下記の表1に示す。
【0116】
【表1】PBS緩衝液(pH7.4)中における3の分光学的パラメーター
【0117】 二級アミン基を有する二つの化合物は三級化合物の40倍〜50倍の量子収量を持
ち、明らかに感知のために優れている。化合物3czからTHP保護基を除去しても、
量子収量または最大波長に著しい変化は見られない。
【0118】 量子収量の変化に加えて、これらの化合物には小さいが有意な蛍光波長の変化
が見られる。二級アミンを有する化合物の励起波長(435nm)は、対応する三級
化合物(415nmおよび420nm)に比べて幾分長波長である。さらに、THPエーテル
により官能性を持たせた化合物の発光波長は、ブチルイミド誘導体の赤色の方へ
10nm移動する(535nm対525nm)。
【0119】グルコース試験 化合物3の蛍光スペクトルをグルコース濃度上昇の関数として得た。化合物3ay
のこのデータを図29に示し、化合物3の部分蛍光強度増大を表1に示す。四つの化
合物でのこれらの値は9%から16%に及び、低い方の二つの値は二級アミノ基を
有する二つの化合物に由来する。部分スイッチングのこれらの低い値は、化合物
3azおよび3czの高い量子収量によって相殺される以上のものである。それぞれの
系についての全シグナル増大の尺度として、量子収量と部分蛍光増大との積を表
1に記載しており、予想通り、3czが化合物群のうち最も有望なセンサー候補であ
ることが示されている。
【0120】 これらの化合物の蛍光反応は、メタノール/PBS混合物における溶媒組成に強
く依存することを示し、メタノール濃度の上昇に対応して蛍光発光が増大する。
この傾向は本発明者らの研究室において他の系で観察された傾向と類似しており
、化合物3ayについて図29に示す。
【0121】電気化学 還元および酸化電位をサイクリックボルタンメトリーを用いて化合物3ay、3cy
、3az、および3czについて測定した(表2)。レム・ウェラー(Rehm-Weller)の
式(式1)を用いることにより、
【式8】 ΔGel=23.06[E0(D/D)-E0(A/A-)]-ΔG00 (1) これらの系における光誘起電子移動(PET)の自由エネルギーを概算することが
可能である(例えば、カヴァルノ(Kavarnos)G.J. 「光誘起電子移動の基礎(F
unfamentals of Photoinduced Electron Transfer)」;VCH:ニューヨーク、19
93;pp37〜40参照)。E0(D/D)およびE0(A/A-)は、それぞれ電子供与体(すな
わちアミン)および電子受容体(すなわち蛍光体)の還元電位および酸化電位に
対応する。量ΔG00は、平衡波長λ00に対応するエネルギーとして本発明者らが
概算する平衡エネルギーである。λ00の概算値として、本発明者らは各蛍光体の
最大励起波長および最大発光波長の平均を用いる。反応物と生成物との間のクー
ロン相互作用に対する、より小さな溶媒依存性の作用項は、単純化のために省略
する。これらの系では蛍光スイッチングの機構はPETに依存するため、これはど
の蛍光体がグルコースに対する最良の反応を示すかについてのおおよその概算を
提供する。
【0122】
【表2】電気化学データおよびPETに関する自由エネルギーの概算値
【0123】 これらの計算は非常に単純であるが、二級アミノ基を有する3azおよび3czで見
られるより正に近いΔGPET値は、蛍光の部分増大がより低い化合物に対応する。
表2における最も著しい差はアミンの酸化電位に見られ、二級アミンでは三級ア
ミンよりも著しく高い。前述のとおり、化合物3azおよび3czについて、このより
弱い部分反応は、はるかに大きなシグナル出力(量子収量)によって相殺される
。同じく重要なことは、この種の単純な計算を利用して、グルコースに対する新
規の分子トランスデューサーを改良し、探索することができることである。
【0124】 合成 合成の概要 合成は一連の類似化合物として記載し、一般的方法を下記に示す。サイクリッ
クボルタンメトリーは、ガラス質の炭素作用電極、白金対電極、およびAg/AgCl
基準電極を用い、0.1MのNBu4ClO4のアセトニトリル溶液中で実施した。蛍光試料
はMeOH中の1.00mM保存溶液として調製した。次に、溶液の30.0μLアリコートを
適当な混合溶媒(メタノールおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)の組み合わせ
)3.000mLに加えた。3ayを基準として用い、二つの化合物の等モル溶液の相対出
力によって相対量子収量を定量した。PBS中の濃縮グルコース溶液をメタノール
/PBS中の蛍光分子の撹拌溶液に加えることにより、グルコースの添加を行った
【0125】 1ax、1bx 4-クロロ-1,8-ナフタル酸無水物および、n-ブチルアミンまたは5-アミノペン
タノールいずれかの、メタノール中における等モル混合物を20時間還流加熱した
。暗褐色溶液をろ過し、-10℃に冷却した。純粋な黄褐色粉末をろ過により回収
したした(収率90%)。純粋な生成物の同一性は、ESI/MS(エレクトロスプレ
ーイオン化質量分析法)だけでなく、1Hおよび13C{1H}NMR分光法によっても確
認した。
【0126】 1cx 1bxおよび触媒量の(10モル%)ポリ(4-ビニルピリジニウム塩酸塩)の混合
物をニートの(neat)3,4-ジヒドロ-2H-ピラン中で16時間還流加熱した。反応物
を冷却し、重合体をろ過により除去した。溶媒を減圧除去して生成物を橙色オイ
ルとして得、これをクロロホルムを溶離剤として用いたシリカゲル上でのクロマ
トグラフィーによって精製した。生成物を純粋な橙色オイルとして定量的収率で
回収した。純粋な生成物の同一性は、ESI/MSだけでなく1Hおよび13C{1H}NMR
分光法によっても確認した。
【0127】 2ay、2cy、2az、2cz 1axまたは1cxいずれかの溶液に、過剰のN,N'-ジメチルエチレンジアミンまた
はN'-メチルエチレンジアミンを加えた後、1当量のトリエチルアミンを加えた。
この溶液を2-メトキシエタノール中で4時間還流加熱し、暗褐色-橙色の溶液を得
た。反応物を冷却し、水を加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。硫酸マグ
ネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を除去し、粗精製物を橙色オイルとして得た
。2azの精製は熱メタノールからの再結晶によって行った。他の化合物をメタノ
ール/クロロホルム勾配を用いた、シリカ上でのクロマトグラフィーにより精製
した。生成物を黄色粉末または橙色オイルとして、60%〜70%の収率で得た。純
粋な生成物の同一性は、ESI/MSだけでなく1Hおよび13C{1H}NMR分光法によっ
ても確認した。
【0128】 2ay、2cy、2az、2cz 1axまたは1cxいずれかの溶液に、過剰のN,N'-ジメチルエチレンジアミンまた
はN'-メチルエチレンジアミンを加えた後、1当量のトリエチルアミンを加えた。
この溶液を2-メトキシエタノール中で4時間還流加熱し、暗褐色-橙色の溶液を得
た。反応物を冷却し、水を加え、生成物をジクロロメタンで抽出した。硫酸マグ
ネシウムを用いて乾燥した後、溶媒を除去し、粗精製物を橙色オイルとして得た
。2azの精製は熱メタノールからの再結晶によって行った。他の化合物をメタノ
ール/クロロホルム勾配を用いた、シリカ上でのクロマトグラフィーにより精製
した。生成物を黄色粉末または橙色オイルとして、60%〜70%の収率で得た。純
粋な生成物の同一性は、ESI/MSだけでなく1Hおよび13C{1H}NMR分光法によっ
ても確認した。
【0129】 3ay、3cy、3az、3cz THF中の1当量の2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニ
ル]ボロネートを等モルの2ay、2cy、2az、または2czおよびトリエチルアミンのT
HF溶液に滴下して添加した。2時間撹拌後、溶媒を除去し、粗精製オイルをメタ
ノール/水酸化アンモニウム勾配を用いた、シリカ上でのクロマトグラフィーに
より精製した。生成物を黄色粉末として60%〜80%の収率で回収した。純粋な生
成物の同一性は、ESI/MSだけでなく1Hおよび13C{1H}NMR分光法によっても確
認した。
【0130】合成の詳細 一般 反応はすべてN2雰囲気下で行った後、空気中で後処理した。保護ボロネートエ
ステルは、大気中の水分による穏やかな加水分解を防止するために真空下で保存
した。別に記載のない限り、化学物質はすべて商業上の供給業者から購入した。
Aldrichからの無水溶媒をすべての反応に使用した。N-n-ブチル-4-クロロナフタ
レン-1,8-ジカルボキシイミド(1ax)、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル[o-(
ブロモメチル)フェニル]ボロネートなどの当技術分野において公知の出発化合
物を、文献の方法によって調製した(例えば、ダフィ(Daffy)ら、Chem-Eur J
1998、4、1810〜1815;ドュ・シルバ(de Silva)ら、Chem Rev 1997、97、1515
〜1566参照)。FT IR分光法のための試料をCHCl3溶液として調製し、本明細書で
はC=O伸縮だけを報告する。すべての質量分析スペクトルは、イオン化電位50V
およびメタノール/水(50/50)中に1%酢酸を含む溶媒系を用いた、エレクトロ
スプレーイオン化質量分析法(ESI/MS)を使用して得た。サイクリックボルタ
ンメトリーは、ガラス質の炭素作用電極、白金対電極、およびAg/AgCl基準電極
を用いて行い、0.1MのNBu4ClO4のアセトニトリル溶液中で実施した。蛍光測定用
の試料はMeOH中における1.00mMの保存溶液として調製した。次いで、溶液のアリ
コート30.0μLを適当な混合溶媒(メタノールおよびリン酸緩衝生理食塩水(PBS
)の組み合わせ)3.000mLに加えて、各錯体について最終濃度を10.0μMとした。
pHは少量の濃塩酸、酢酸、または水酸化ナトリウムを加えることにより変化させ
た。グルコースの添加は、キュベット中で撹拌している蛍光体溶液にPBS中のグ
ルコース濃縮溶液を加えることによって行った。相対量子収量の測定は、二つの
蛍光体の等モル溶液(10.0μM)の相対強度を測定することにより実施した。化
合物3ayを基準として用いた。
【0131】 N-n-ブチル-4-クロロナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(1ax): この化合物は以前に報告されている。この調製は以前の報告と類似している(
例えば、ダフィ(Daffy)ら、Chem-Eur J 1998、4、1810〜1815;ドュ・シルバ
(de Silva)ら、Chem Rev 1997、97、1515〜1566参照)。一部のn-ブチルアミ
ン(5.00mL、50.6mmol)をトルエン160mL中の4-クロロナフタレン-1,8-ジカルボ
キシイミド(11.7g、50.5mmol)の懸濁液に加えた。この混合物を17時間還流し
、暗黒色-褐色溶液を得た。ヘキサン/トルエンから-10℃で結晶化して1axを純
粋な黄褐色粉末として得た(11.1g、76%)。
【0132】 N-(5'-ヒドロキシペンチル)-4-クロロナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(1
bx): 方法は1axと類似している。還流エタノール中において、5-アミノペンタノー
ル(5.15g、49.9mmol)と4-クロロナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(11.6g
、49.9mmol)とを反応させた後、還流THFから再結晶させて、1bxを黄褐色粉末と
して得た(7.67g、48%)。
【0133】 N-(5'-ヒドロキシペンチル)-4-ブロモナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(1
bx'): 方法は1axと類似している。還流エタノール中において、5-アミノペンタノー
ル(3.90g、37.8mmol)と4-ブロモナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(10.4g
、37.6mmol)とを反応させた後、ろ過し、-10℃に冷却することにより、1bx'を
淡黄色粉末として得た(12.5g、92%)。
【0134】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-クロロナフタレン-1,8-ジカルボ
キシイミド(1cx): 方法は文献の方法と類似している。1bx(297mg、0.935mmol)、ポリ(4-ビニ
ルピリジニウム塩酸塩)(20mg、0.13mmol)、および10mLの3,4-ジヒドロ-2H-ピ
ラン(DHP)の混合物を21時間還流加熱し、橙色溶液を得た。溶媒を減圧除去し
て橙色オイルを得た。精製は、溶離剤としてクロロホルムを用いたシリカゲルク
ロマトグラフィーによって行った。溶媒を除去して1cxを純粋な黄色オイルとし
て得た(322mg、86%)。
【0135】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-ブロモナフタレン-1,8-ジカルボ
キシイミド(1cx'): 方法は文献の方法と類似している。1bx'(4.681g、12.9mmol)、ポリ(4-ビニ
ルピリジニウム塩酸塩)(202mg、1.31m当量)、および30mLの3,4-ジヒドロ-2H-
ピラン(DHP)の混合物を23時間還流加熱し、橙色溶液を得た。溶媒を減圧除去
して橙色オイルを得た。精製は、溶離剤としてクロロホルムを用いたシリカゲル
クロマトグラフィーによって行った。溶媒を除去して1cx'をベージュ色のろう状
固体として得た(5.231g、91%)。
【0136】 N-n-ブチル-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-メチルアミノ)ナフタレン-1,8-
ジカルボキシイミド(2ay): 一部のN,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン(2.00mL、18.8mmol)を2-メトキシ
エタノール20mL中の1ax(1.02g、3.55mmol)の懸濁液に加えた後、トリエチルア
ミン(0.495mL、3.55mmol)を加え、ただちに暗褐色混合物を得た。この混合物
を4時間還流して暗褐色溶液を得た。室温まで冷却後、水20mLを加え、溶液を30m
Lのジクロロメタンで3回抽出し、有機層をMgSO4で乾燥して溶媒を減圧除去した
。粗精製物質は、アセトニトリル/メタノール勾配を用いた塩基性アルミナ上で
のクロマトグラフィーによって精製した。溶媒を除去して2ayを純粋な黄色粉末
として得た(0.846g、70%)。
【0137】 N-n-ブチル-4-(N'-メチルアミノエチルアミノ)ナフタレン-1,8-ジカルボキシ
イミド(2az): これは2ayと同様に調製した。2-メトキシエタノール中において、1ax(1.67g
、5.82mmol)、N-メチル-1,2-ジアミノエタン(2.56mL、29.1mmol)、およびト
リエチルアミン(0.811mL、5.82mmol)を反応させた後、熱メタノールから結晶
させて、2azを純粋な黄色粉末として得た(1.44g、76%)。
【0138】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-
メチルアミノ)ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(2cy): これは2ayと同様に調製した。2-メトキシエタノール中において、1cx(0.271g
、0.674mmol)、N,N'-ジメチル-1,2-ジアミノエタン(0.359mL、3.37mmol)、お
よびトリエチルアミン(94.0μL、0.674mmol)を反応させた後、アセトニトリル
/メタノール勾配を用いた塩基性アルミナ上でのクロマトグラフィーにより、2c
yを純粋な黄色粉末として得た(0.209g、68%)。
【0139】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-(N'-メチルアミノエチルアミノ
)ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(2cz): これは2ayと同様に調製した。2-メトキシエタノール中において、1cx(0.613g
、1.53mmol)、N-メチル-1,2-ジアミノエタン(0.672mL、7.62mmol)、およびト
リエチルアミン(213μL、1.53mmol)を反応させた後、クロロホルム/メタノー
ル勾配を用いたシリカ上でのクロマトグラフィーにより、2czを純粋な黄色粉末
として得た(0.380g、57%)。
【0140】 N-n-ブチル-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-ベンジルメチルアミノ)ナフタ
レン-1,8-ジカルボキシイミド(Bu)(NI)(Me2en)(Bn): THF40mL中の臭化ベンジル(75.3μL、0.633mmol)溶液をTHF40mL中の2ay(0.2
15g、0.633mmol)およびトリエチルアミン(88.3μL、0.634mmol)溶液に30分か
けて滴下して添加した後、室温で23時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、シリカゲ
ル上でのクロマトグラフィーによってトルエン/アセトン勾配を用いた精製を行
い、(Bu)(NI)(Me2en)(Bn)を純粋な黄色オイルとして得た(0.124g、46%)。
【0141】 N-(5'-ヒドロキシペンチル)-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-ベンジルメチ
ルアミノ)ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(AP)(NI)(Meen)(Bn): 2-メトキシエタノール20mL中の1bx(0.292g、0.919mmol)、N-ベンジル-N-メ
チル-1,2-ジアミノエタン(0.413g、2.51mmol)、トリエチルアミン(0.175mL、
1.26mmol)溶液を41時間還流加熱した。室温まで冷却後、水30mLを加え、溶液を
30mLのジエチルエーテルで3回抽出し、有機層をMgSO4で乾燥して溶媒を減圧除去
した。粗精製物質を酢酸エチルを用いたシリカ上でのクロマトグラフィーにより
精製し、(AP)(NI)(Meen)(Bn)を純粋な黄色粉末として得た(0.162g、40%)。
【0142】 N-n-ブチル-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-ArBメチルアミノ)ナフタレン-1
,8-ジカルボキシイミド(3ay): THF30mL中の2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニル]
ボロネート(0.173g、0.611mmol)溶液をTHF30mL中の2ay(0.207g、0.610mmol)
およびトリエチルアミン(85.0μL、0.610mmol)溶液に15分かけて滴下して添加
した後、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、アセトニトリル/メタノー
ル勾配を用いた塩基性アルミナ上でのクロマトグラフィーにより精製を行って、
(3ay)を純粋な黄色粉末として得た(0.160g、55%)。
【0143】 N-n-ブチル-4-(N'-アミノエチレン-N''-ArBメチルアミノ)ナフタレン-1,8-ジ
カルボキシイミド(3az): 方法は3ayの合成法と類似している。THF中において、2,2-ジメチルプロパン-1
,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニル]ボロネート(0.280g、0.990mmol)、2a
z(0.324g、0.996mmol)、およびトリエチルアミン(0.138mL、0.990mmol)を反
応させた後、アセトニトリル/メタノール勾配を用いた塩基性アルミナ上でのク
ロマトグラフィーにより、(3az)を純粋な橙色-黄色粉末として得た(0.385g、
74%)。これらの条件により3azおよびネオペンチルグリコール保護ボロネート
エステルを得た。
【0144】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-(N'-メチルアミノエチレン-N''-
ArBメチルアミノ)ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(3cy): 方法は3ayの合成法と類似している。THF中において、2,2-ジメチルプロパン-1
,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニル]ボロネート(0.150g、0.530mmol)、2c
y(0.241g、0.531mmol)、およびトリエチルアミン(74.1μL、0.532mmol)を反
応させた後、アセトニトリル/メタノール勾配を用いた中性アルミナ上でのクロ
マトグラフィーにより、(3cy)を純粋な黄色粉末として得た(0.218g、70%)
【0145】 N-(5'-テトラヒドロピラノキシペンチル)-4-(N'-アミノエチレン-N''-ArBメ
チルアミノ)ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(3cz): 方法は3ayの合成法と類似している。THF中において、2,2-ジメチルプロパン-1
,3-ジイル[o-(ブロモメチル)フェニル]ボロネート(2.30g、8.15mmol)、2cz
(3.58g、8.15mmol)、およびトリエチルアミン(1.14mL、8.15mmol)を反応さ
せ、溶媒を減圧除去した後、橙色オイルを得た。100%メタノールから10%水酸
化アンモニウム/メタノールまでの勾配を用いたシリカ上でのクロマトグラフィ
ーにより、二番目のバンド中の3czを純粋な黄色粉末として得た(2.66g、57%)
【0146】 N-(5'-ヒドロキシペンチル)-4-(N'-アミノエチレン-N''-ArBメチルアミノ)
ナフタレン-1,8-ジカルボキシイミド(3bz): 標準的なTHP脱保護条件を用いた。CH2Cl210mL中のPh3PBr2(4.03g、9.55mmol
)溶液をCH2Cl2100mL中の3cz(2.61g、4.55mmol)溶液に0℃で30分かけて滴下し
て添加し、不透明な黄色混合物を得た。0℃で2時間撹拌後、H2O30mLを加えて橙
色オイルを沈殿させた。反応混合物を室温で2時間撹拌した後、溶媒を減圧除去
した。100%メタノールから10%水酸化アンモニウム/メタノールまでの勾配溶
出を用いたシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより3bzを得て、溶媒を減圧
除去後に橙色オイルを生成した。100%メタノールから10%水酸化アンモニウム
/メタノールまでの勾配を用いたシリカ上でのクロマトグラフィーにより、二番
目のバンド中の3czを純粋な黄色粉末として得た(1.89g、85%)。
【0147】 前述の記載は、当業者に本発明を実施することを可能にするために十分である
と考えられる。本発明は本明細書に記載された実施例によって範囲を限定される
ものではない。事実、本明細書に示し記載したものに加えて、本発明の様々な改
変が当業者には前述の記載から明らかになると思われ、これらの改変は添付の特
許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
この開示に組み入れられてその一部を成す添付の図面は、本発明の態様を例示
し、記載と合わせて本発明の原理を説明するのに役立つ。
【図1】 本発明の蛍光化合物の一般式を示す。
【図2】 本発明に係る遷移金属-リガンド蛍光体の例を示す。
【図3】 チアジン蛍光体の例を示す。
【図4】 オキサジン蛍光体の例を示す。
【図5】 オキサジン-オンおよびオキサゾン蛍光体の例を示す。
【図6】 メタノール/緩衝液中におけるRu(ビストリフルオロメチルビピ
リジン)の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。
【図7】 Ru(N-メチルベンジルボロネート)を示す。
【図8】 酸および塩基添加によるRu(N-メチルベンジルボロネート)の経
時変化を示す。
【図9】 グルコース添加によるRu(N-メチルベンジルボロネート)の経時
変化を示す。
【図10】 クロロ-オキサジン-5-オンボロネートを示す。
【図11】 メタノール/緩衝液中における、クロロ-オキサジン-5-オンボ
ロネートの試料について得られた励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す。
【図12】 クロロ-オキサジン-5-オンボロネートにグルコースを加えた結
果を示す。
【図13】 グルコース可逆性実験の結果を示す。
【図14】 移植可能なグルコースセンサー系を示す。
【図15】 アントラセン由来の典型的な糖類感知ボロン酸誘導体を示す。
【図16】 PETセンサーの概要図を示す:a)分析物非存在下では、電子供
与体(D)は電子受容体/蛍光体(A)の蛍光を消光する;b)分析物存在下では
、電子移動が起こらず、Aは蛍光を発する。
【図17】 本発明の典型的なボロネートおよびベンジルビピリジンリガン
ドの合成機構を示す。
【図18】 本発明の一般的な遷移金属錯体の調製機構を示す図である。
【図19】 λexem=450nm/635nmにおけるグルコース濃度に対する、Me
OH:PBS(50:50)中における10.0μMの[(bpyNB)Ru(bpyF)2]Cl2の相対蛍光強度
を示す。
【図20】 COB(クロロオキサジンボロネート)の合成に関する機構を示
し、下にベンゾフェノキサジノン11と示される。メチレンアミン結合基を介して
ベンゾフェノキサジノン6aをフェニルボロネート10と結合させることにより、CO
Bを構築した。
【図21】 COB(クロロオキサジンボロネート)の合成に関する機構を示
し、下にベンゾフェノキサジノン11と示される。3-アミノ-4-ヒドロキシベンジ
ルアルコール3を2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン4と共に縮合することにより、
ベンゾフェノキサジノン6aを合成した。
【図22】 COB(クロロオキサジンボロネート)の合成に関する機構を示
す。環の縮合後、エーテル/トルエン混合溶媒中、室温で三臭化リンを用いて、
ベンゾフェノキサジノン5を臭化ベンゾフェノキサジノン6に変換した。
【図23】 COB(クロロオキサジンボロネート)の合成に関する機構を示
す。フェニルボロネート9のエーテル溶液にメチルアミンを通気させることによ
り、アミノボロネート誘導体10を合成した。メチルアミノフェニルボロネート10
を99%の収率できれいに単離した。
【図24】 COB(クロロオキサジンボロネート)の合成に関する機構を示
す。COB合成を完了するために、4日間炭酸カリウムを用いて還流させたテトラヒ
ドロフラン中で、アミノフェニルボロネート10とベンゾフェノキサジノン6aとを
結合させた。標的のベンゾフェノキサジン11をクロマトグラフィー精製し、固体
として61%の収率で単離した。
【図25】 実施例3に教示されているナフタルアミドボロネートトランス
デューサー誘導体の合成に関する機構を示す。
【図26】 実施例3に教示されているナフタルアミドボロネートトランス
デューサー誘導体の合成に関する機構を示す。
【図27】 実施例3に教示されている典型的なナフタルアミドボロネート
トランスデューサー誘導体の励起スペクトルおよび発光スペクトルの例を示す(
3ayおよび3cy)。
【図28】 実施例3に教示されている典型的なナフタルアミドボロネート
トランスデューサー誘導体の相対量子収量を示す。
【図29】 実施例3に教示されている典型的なナフタルアミドボロネート
トランスデューサー誘導体、特に3ayの一連の混合溶媒中(PBS:MeOH=10:90、
50:50、90:10および100:0)における蛍光スペクトル(グルコース濃度に対す
る相対蛍光)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,UZ,VN,YU, ZA,ZW (72)発明者 サッチャー ジョー エイチ. ジュニア アメリカ合衆国 カリフォルニア州 モデ スト ドレイクシャイア ドライブ 3909 (72)発明者 レイン ステファン エム. アメリカ合衆国 カリフォルニア州 オー クランド ストラトフォード ロード 738 (72)発明者 ダロー クリストファー ビー. アメリカ合衆国 カリフォルニア州 プレ ザントン モッキングバード レイン 744 (72)発明者 ケーリー ダグラス アール. アメリカ合衆国 カリフォルニア州 オー クランド アパートメント ビー 56ス ストリート 583 (72)発明者 チャン ジョー アン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 リバ ーモア セント アンドリューズ ウェイ 6125 Fターム(参考) 4C038 KK10 KL05 KL07 KX04 4C062 AA06 4H048 AA03 AB81 VA75 VB90

Claims (41)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分析物濃度に相関しうるシグナルを放射する蛍光化合物であ
    って、以下の一般式を有する化合物: 【化1】 式中、R1は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基からなる群より選択され
    ; R2およびR4は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質
    (matrix)と共有結合を形成する基からなる群より選択される任意の官能基であ
    り; L1およびL2は窒素、炭素、酸素、硫黄、およびリンからなる群より選択される0
    個から4個の原子を有する任意の連結基であり; Zは窒素、硫黄、酸素およびリンからなる群より選択されるヘテロ原子であり;
    R3は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質と共有結
    合を形成する基からなる群より選択される任意の基であり; Fは選択された分子特性を有する蛍光体(fluorophore)であり; FおよびZは、電子移動のための自由エネルギーΔGが約3.0kcal mol-1未満である
    ような下記の式を満たすように選択され: 【式1】 ΔG=23.06[E0(Zoxidation)-E0(Freduction)]-ΔE00] 式中、E0(Zoxidation)はZの酸化電位、E0(Freduction)はFの還元電位、およびΔ
    E00は励起状態におけるFのエネルギーであり;かつ Fは約450nmより長波長で放射する。
  2. 【請求項2】 Fが約500nmより長波長で放射する、請求項1記載の蛍光化合
    物。
  3. 【請求項3】 Fが約550nmより長波長で放射する、請求項1記載の蛍光化合
    物。
  4. 【請求項4】 Fが約600nmより長波長で放射する、請求項1記載の蛍光化合
    物。
  5. 【請求項5】 Fの励起波長が約400nmより大きい、請求項1記載の蛍光化合
    物。
  6. 【請求項6】 Fの励起波長が約450nmより大きい、請求項1記載の蛍光化合
    物。
  7. 【請求項7】 Fが遷移金属-リガンド錯体、オキサジン、オキサジン-オン
    、オキサゾン、チアジンおよびアントラセンからなる群より選択される、請求項
    1記載の蛍光化合物。
  8. 【請求項8】 Fがオキサジン-オンボロネートを含む、請求項7記載の蛍光
    化合物。
  9. 【請求項9】 Fがアントラセンボロネートを含む、請求項7記載の蛍光化合
    物。
  10. 【請求項10】 Fがルテニウムおよびクロムからなる群より選択される金
    属を含む遷移金属-リガンド錯体を含む、請求項1記載の蛍光化合物。
  11. 【請求項11】 Zが窒素である、請求項1記載の蛍光化合物。
  12. 【請求項12】 蛍光化合物がグルコース濃度に相関するシグナルを放射す
    る、請求項1記載の蛍光化合物。
  13. 【請求項13】 分析物濃度に相関しうるシグナルを放射する蛍光化合物を
    含む重合体基質を含むセンサーであって、その化合物が以下の一般式を有するセ
    ンサー: 【化2】 式中、R1は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基からなる群より選択され
    ; R2およびR4は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質
    と共有結合を形成する基からなる群より選択される任意の官能基であり; L1およびL2は窒素、炭素、酸素、硫黄、およびリンからなる群より選択される0
    個から4個の原子を有する任意の連結基であり; Zは窒素、硫黄、酸素およびリンからなる群より選択されるヘテロ原子であり;
    R3は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質と共有結
    合を形成する基からなる群より選択される任意の基であり; Fは選択された分子特性を有する蛍光体であり; FおよびZは、電子移動のための自由エネルギーΔGが約3.0kcal mol-1未満である
    ような下記の式を満たすように選択され: 【式2】 ΔG=23.06[E0(Zoxidation)-E0(Freduction)]-ΔE00] 式中、E0(Zoxidation)はZの酸化電位、E0(Freduction)はFの還元電位、およびΔ
    E00は励起状態におけるFのエネルギーであり;かつ Fは約450nmより長波長で放射する。
  14. 【請求項14】 Fが約500nmより長波長で放射する、請求項13記載のセンサ
    ー。
  15. 【請求項15】 Fが約550nmより長波長で放射する、請求項13記載のセンサ
    ー。
  16. 【請求項16】 Fが約600nmより長波長で放射する、請求項13記載のセンサ
    ー。
  17. 【請求項17】 Fの励起波長が約400nmより大きい、請求項13記載のセンサ
    ー。
  18. 【請求項18】 Fの励起波長が約450nmより大きい、請求項13記載のセンサ
    ー。
  19. 【請求項19】 Fが遷移金属-リガンド錯体、オキサジン、オキサジン-オ
    ン、オキサゾン、チアジンおよびアントラセンからなる群より選択される、請求
    項13記載のセンサー。
  20. 【請求項20】 Fがオキサジン-オンボロネートを含む、請求項19記載のセ
    ンサー。
  21. 【請求項21】 Fがアントラセンボロネートを含む、請求項19記載のセン
    サー。
  22. 【請求項22】 Fがルテニウムおよびクロムからなる群より選択される金
    属を含む遷移金属-リガンド錯体を含む、請求項13記載のセンサー。
  23. 【請求項23】 Zが窒素である、請求項13記載のセンサー。
  24. 【請求項24】 蛍光化合物がグルコース濃度に相関するシグナルを放射す
    る、請求項13記載のセンサー。
  25. 【請求項25】 基質が生体適合性でありかつ移植可能である、蛍光化合物
    が重合体基質に共有結合している、請求項13記載のセンサー。
  26. 【請求項26】 蛍光化合物が以下の一般式を有する、試料中の分析物濃度
    を分析する方法であって、 所望の蛍光特性を有する蛍光化合物を選択する段階; 蛍光化合物を試料に導入する段階; 分析物存在下で試料中の化合物の蛍光を測定する段階;および 蛍光測定値から分析物濃度を決定する段階を含む方法: 【化3】 式中、R1は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基からなる群より選択され
    ; R2およびR4は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質
    と共有結合を形成する基からなる群より選択される任意の官能基であり; L1およびL2は窒素、炭素、酸素、硫黄、およびリンからなる群より選択される0
    個から4個の原子を有する任意の連結基であり; Zは窒素、硫黄、酸素およびリンからなる群より選択されるヘテロ原子であり;
    R3は水素、低級脂肪族官能基および芳香族官能基、ならびに重合体基質と共有結
    合を形成する基からなる群より選択される任意の基であり; Fは所望の分子特性を有する蛍光体であり;かつ FおよびZは、電子移動のための自由エネルギーΔGが約3.0kcal mol-1未満である
    ような下記の式を満たすようにさらに選択され: 【式3】 ΔG=23.06[E0(Zoxidation)-E0(Freduction)]-ΔE00] 式中、E0(Zoxidation)はZの酸化電位、E0(Freduction)はFの還元電位、およびΔ
    E00は励起状態におけるFのエネルギーであり;かつ Fは約450nmより長波長で放射する。
  27. 【請求項27】 Fが約500nmより長波長で放射する、請求項26記載の方法。
  28. 【請求項28】 Fが約550nmより長波長で放射する、請求項26記載の方法。
  29. 【請求項29】 Fが約600nmより長波長で放射する、請求項26記載の方法。
  30. 【請求項30】 Fの励起波長が約400nmより大きい、請求項26記載の方法。
  31. 【請求項31】 Fの励起波長が約450nmより大きい、請求項26記載の方法。
  32. 【請求項32】 Fが遷移金属-リガンド錯体、オキサジン、オキサジン-オ
    ン、オキサゾン、チアジンおよびアントラセンからなる群より選択される、請求
    項26記載の方法。
  33. 【請求項33】 Fがオキサジン-オンボロネートを含む、請求項32記載の方
    法。
  34. 【請求項34】 Fがアントラセン-ボロネートを含む、請求項32記載の方法
  35. 【請求項35】 Fがルテニウムおよびクロムからなる群より選択される金
    属を含む遷移金属-リガンド錯体を含む、請求項26記載の方法。
  36. 【請求項36】 Zが窒素である、請求項26記載の方法。
  37. 【請求項37】 蛍光化合物がグルコース濃度に相関するシグナルを放射す
    る、請求項26記載の方法。
  38. 【請求項38】 基質が生体適合性でありかつ移植可能である、蛍光化合物
    が重合体基質に共有結合している、請求項26記載の方法。
  39. 【請求項39】 分析物がグルコースを含む、請求項26記載の方法。
  40. 【請求項40】 蛍光の測定が強度を測定する段階を含む、請求項26記載の
    方法。
  41. 【請求項41】 蛍光の測定が寿命を測定する段階を含む、請求項26記載の
    方法。
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