JP2003501196A - 網膜組織移植機器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 本開示は、眼（５０）の下位網膜スペース（８０）に、網膜組織（１２０）を移植するための機器（１００）に関する。管状のノズル（１１０）は、網膜組織（１２０）の受容のために、開放末端（１１８）と、その側面に孔（１１２）を持ち、マンドレル（１０６）の上にはめ込まれる。マンドレル（１０６）に対するノズル（１１０）の引込によって、ノズル（１１０）の開放末端から網膜組織（１２０）を一方に片寄らせ、眼球（５０）の目標範囲の網膜組織（１２０）の沈着をもたらす。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 発明の背景 本発明はヒトの体における繊細な組織および／又は物質を移植するための機器
、特に眼球の後部における下部網膜スペースへの胎児の網膜組織の移植による外
科的に視力を回復するための機器に関する。 最もよく起こる眼球の問題、例えば、近視（nearsightedness）、遠視（farsi
ghtedness）、乱視（非対称の角膜）、および老眼（近距離の物体に焦点を合わ
せることができないこと）は、眼球の前部におけるレンズと角膜による光の屈折
における誤りによるものである。一般的に、これらの問題はめがね、コンタクト
レンズ、または、矯正手術によって矯正することができる。

【０００２】 しかしながら、失明は最も一般的には、眼球の後部における網膜の損傷による
ものであり、より具体的には、網膜の下の下部網膜スペースにおける異常に起因
する。 透明な、層をなす網膜は角膜およびレンズによって映し出された光の像を複写
する。網膜の後部における光受容器の層は光を電気の刺激に変える。他の網膜の
層はこれらの刺激を視神経を通して脳に伝え、脳は刺激を我々が視界として認め
るものに解釈する。

【０００３】 下位網膜スペースは網膜色素上皮（ＲＰＥ）および網膜の光受容器の間の領域
にある。通常、光受容器はＲＰＥと密に接触している。ＲＰＥは多くの機能をも
つ。ＲＰＥは光受容器に栄養を供給し、また光受容器から老廃物を取り除く。正
常の眼球においては、下位網膜スペースには血管がない。しかしながら、いくつ
かの網膜の病気においては、血管と結合組織がこの部位に生ずることができ、失
明の原因となる。ある病気の状態では、光受容器はＲＰＥから大変容易に分離す
ることができる。すると光受容器は退化し、視力の損失または失明となる、一方
、網膜の他の層は機能的なままであるかもしれない。羅病ＰＲＥおよび／又は網
膜の機能的部分につながることのできる光受容器を取り替えることにより、視力
は回復するかもしれない。

【０００４】 正式な失明の最も多い原因は黄斑変性症および色素性網膜炎である。黄斑は網
膜の中央部分における眼の後部に位置し、セントラルビジョンの原因である。黄
斑変性症の患者は、始め黄斑部におけるＲＰＥの機能障害があり、それは後に、
血管の内植および覆っている網膜における光感応光受容器の破壊をおこす。この
ことによりセントラルビジョンの障害がおこる。年齢に関係した黄斑変性症はこ
こにおいて開示された方法および機器を用いることによって遅らせることのでき
る眼球疾患の例である。

【０００５】 色素性網膜炎は遺伝的に起因する光受容器変性の用語である。これらの患者は
、光受容器は取り替えられるべきである。再び、本発明の方法と機器を用いるこ
とができる。 網膜とＰＲＥの間の下位網膜スペースにおける病気の外科的矯正は手術が場所
をとらなければならない環境にとっては行うことが著しく困難である。さらに、
胎児の網膜組織を眼球の下位網膜スペースに移植するためここにおいて開示され
た外科的方法は、胎児の網膜組織が透明なゲル状の塊の性質をもちそれゆえ非常
に壊れやすいという事実によって困難である。

【０００６】 発明の要約 本発明に合わせて、胎児の網膜組織を扱いこの組織をヒトの眼の網膜色素上皮
と網膜の間の下位網膜スペースに入れることのできる移植機器を開発し改良した
。 胎児の網膜組織の無傷のシートは、移植を障害なく残すため、分解し、すぐ後
に患者の眼に吸収されるゲルによって、シートを平らにし、保護することによっ
て下位網膜スペースに移植することができることを発見した。移植によって完全
に発達した光受容器をもち正常な網膜に似た組織された平行な層が発達する。移
植によって、羅病した光受容器および／またはＲＰＥを取り替えることができる
。その上、胎児の網膜組織は下位網膜スペースにおいて免疫学的に耐性があり、
そこにおいて生じる拒絶を受けないことは外科的外傷が少ないことである。

【０００７】 本発明の機器は、マンドレルのサポートのためのハンドピース、マンドレルの
上にはめ込まれたスリーブサポート、スリーブサポートのうえに滑り込むように
支えられた管状のスリーブ、スリーブのうえに乗せられ、マンドレルの上に広が
った網膜組織の受容のための孔を有するノズル、およびマンドレルに対応してノ
ズルの位置を調整するトグル構造を備えている。ハンドピース、マンドレル、ス
リーブサポート、スリーブおよびトグル構造は、オートクレーブで消毒すること
を容易にするため、好ましくはステンレススチールから作らている。ノズルは弾
力のあるプラスチックから作られている。しかしながら、この機器は任意に、使
い捨てするために、本質的にプラスチックから製造することができる。

【０００８】 ハンドピースおよびマンドレルに対するスリーブおよびノズルの前進と引き込
みはハンドピースの上のトグル構造によって調整される、トグル構造の一つの要
素はスプリングである。トグル構造のスプリング要素がハンドピースに向かって
押しつけられると、その上のスリーブとノズルがマンドレルの上で、ある位置ま
で外に向かって動く、その位置で、ノズルの中の孔がマンドレルの先端に外に向
かって配置され、その中に網膜組織を受容るノズルの中のスペースを作る。

【０００９】 組織がノズルの中の場所にある時、ノズルは、ノズルの先端に隣接した位置ま
で網膜組織を片寄らせるために部分的に引き込まれる、その位置の上で、スプリ
ング要素をロックするため、トグルロックはスプリング要素の上のくぎを引きつ
け、その結果マンドレルに対するスリーブを引きつける。外科医は目標の上に機
器を挿入し、自分の手を完全に動かさずにいる。スプリング要素の上のわずかな
圧力で、ハンドピースを動かさずに、トグルロックははずされ、スリーブとノズ
ルはトグルスプリングのバイアスの下をマンドレルの上で引き込まれ、組織を所
望の場所に置く。

【００１０】 トグルロックの位置はマンドレルの先端とノズルの先端の間のスペースを決め
るため調節することができる、それによって機器を移植の大きさに適応させる。 マンドレルとノズルは異なった種類の繊細な組織；異なった栄養要素あるいは
薬を含むゲル；または、電子マイクロチップを下位網膜スペースの中への移植す
るため、異なった大きさと形に注文で特製する事ができる。マンドレルとノズル
は、一度の使用のため無菌の容器の中に製造されることができる。 本発明の機器の詳細により、より十分に以下の明細書および図面が説明される
。

【００１１】 好適態様の詳細な説明 本発明が特別な有用性をもつ環境は図面の図１および図２に図で示される。眼
５０の表面は透明な組織、角膜５２によって覆われ、白い結合組織５４によって
囲まれている。強膜５６は眼球の外部をおおう堅い線維状の組織である。瞳孔５
８は開口部であり、それを通して光りが眼の後部へと通過する。虹彩６０は光の
量に順応するために瞳孔５８のサイズを変化させる。透明な水晶体６２は虹彩６
０の後ろに位置し、線維の網６４によってつるされている。線維６４は毛様体６
６に付着し、網膜６８のはじまるところまで延びている。網膜６８に隣接した毛
様体６６の一部は毛様体扁平部７０と呼ばれる。水晶体６２は網膜６８の上に光
線の焦点を合わせる。水晶体６２の後ろの眼球５０のバルク（bulk）は、無色の
ゲル状物質で満たされた硝子体腔７２によって作られている。

【００１２】 網膜６８は硝子体腔７２のほとんどの壁を覆い、角膜５２および水晶体６２か
ら映し出された光の像を処理する毛様体扁平部７０まで前方に広がる透明な層を
含む。 網膜６８の後部は光受容器７４を含み、それは光を電気刺激へと変える。電気
刺激は網膜６８における神経によって視神経７６伝えられ、その結果脳に至る。
網膜色素上皮（ＲＰＥ）７７と称される細胞の単層は網膜６８の後ろに存在する
。脈絡膜７８はＲＰＥ７７のうしろの血管の層であり、眼５０の作用に必須の酸
素と栄養を供給する。ＰＲＥ７７はこれらの栄養を網膜６８へ運び脈絡膜７８お
よび網膜６８の間のバリアを保持する。

【００１３】 網膜６８とＰＲＥ７７の間の領域は下位網膜スペース８０と呼ばれる（図４−
図６）。普通は、“スペース”はない。しかし、網膜６８はＰＲＥ７７から大変
容易に分離し、損傷を受けた光受容器７４および／またはＲＰＥ７７へ、外科医
が網膜組織の新しい破片を移植するのはこの“スペース”である。

【００１４】 中心窩８２は網膜６８の中央のくぼみであり、カラービジョンと同様にシャー
プ（焦点のあった）ビジョンのために必須である。中心窩８２を囲んだ小さな場
所は黄斑として知られセントラルビジョンに責任がある。視神経７６が脳への途
中で網膜６８を離れる点を視神経円板８６と呼ぶ。 本発明に合わせて、網膜６８とＰＲＥ７７の間の下位網膜“スペース”８０に
おける網膜疾患の外科的矯正は新移植機器１００によって容易になる。

【００１５】 図７から図１１にみられるように、機器１００はハンドピース１０２、冠状ス
リーブサポート１０４、スリーブサポート１０４の内部に配置されたマンドレル
１０６、スリーブサポート１０４の上に滑り込むように支えられたスリーブ１０
８、スリーブ１０８の上に乗せられた、網膜組織１２０の受容のため孔１１２を
持つ、ノズル１１０を備える。トグル構造は固定リンク１１４およびスプリング
リンク１１５を備えマンドレル１０６に対応してスリーブ１０８およびノズル１
１０の前進と引き込みをコントロールする。ハンドピース１０２、スリーブサポ
ート１０４、マンドレル１０６、スリーブ１０８およびトグルリンク１１４およ
び１１５はオートクレーブで消毒することを容易にするためステンレススチール
から作ることができる。この機器はいくらかの金属部位を備えたプラスチックを
用いることにより使い捨てにすることもできる。

【００１６】 マンドレル１０６はハンドピースの中に固定されているが、それに対応して縦
方向に調節できる、細長く平らな狭い細片を備えている。ハウジング１０２に対
するマンドレル１０６の伸長又は引込みは引き込まれた位置におけるプラスチッ
クノズル１１０の長さに対応してその縦方向の位置を調整する。 プラスチックノズル１１０およびマンドレル１０６の間の調整はその間の対す
る動きを可能にしなければならない、そしてそれによって、ノズル１１０におけ
る孔１１２は網膜組織１２０の受容およびすぐ後の組織１２０の放出のための位
置を定められることができる。

【００１７】 ノズル１１０は、網膜６８の下を下位網膜“スペース”８０へと滑り込むため
に、その先端１１８において湾曲するように、弾力のあるプラスチック、例えば
フッ素化エチレンプロピレンから作られている。その弾力性のために、湾曲した
ノズルの先端１１８は、引込まれると、網膜６８の後ろの目標領域に移植組織を
置くため、マンドレル１０６の上でまっすぐになるだろう。

【００１８】 スリーブ１０８およびノズル１１０の前進と引き込みはハンドピース１０２の
上の固定トグルリンク１１４およびスプリング要素１１５によって調整される。
トグル構造のスプリング要素１１５をハンドピース１０２に向かって押すと、ス
リーブ１０８およびノズル１１０は、固定トグルリンク１１４によって、マンド
レル１０６に対応して、前方に動く。トグル構造のスプリング要素１１５の上の
圧力を取り除くと、その上のスリーブ１０８およびノズル１１０がマンドレル１
０６の上に引き込まれ、網膜組織１２０を望まれた位置に片寄らせる。

【００１９】 本発明の道具の使用を準備して、外科医はまず、眼５０の毛様体扁平部７０に
切り目を入れる。それから、小さな切れ目を、例えば、網膜６８の黄斑領域８４
に入れる。もし必要なら、異常な組織を網膜６８とＰＲＥ７７の間の下位網膜“
スペース”８０から取り除く。湾曲したノズルの先端１１８に入った網膜組織１
２０を備えた、機器１００のノズル１１０を毛様体扁平部７０の切れ目から挿入
し、網膜６８の切れ目からノズル１１８の先端まで、下位網膜“スペース”８０
における目標領域の近くに合わせる。

【００２０】 すると、機器１００のスプリング要素１１５の上のわずかな圧力がトグルロッ
ク１３０をピン１３２からはずし、トグル構造のスプリング要素１１５および固
定リンク１１４がノズル１１０の引込みおよび網膜組織１２０の配置をもたらす
。機器１００のハンドピース１０２およびマンドレル１０６が網膜組織１２０の
配置に伴って動き、外科医が組織の位置を正確に定めさせることは求められない
。

【００２１】 以上より、本発明の機器が網膜組織を効果的な方法で受容し、その後組織を眼
の中に正確に移植することが明らかである。医師は手を静止させ、機器１００そ
のものがノズル１１０の引込みおよび目標における移植組織片の配置をもたらす
ことを調整しながら、トグルロック１３０をはずすために、機器１００のスプリ
ング要素１１５の上にわずかな圧力をかけさえすればよい。 本発明の好適態様を開示したが、本発明がクレームの範囲から逸脱することな
く変更が許容されることが見込まれる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 ヒトの眼の正面図である。

【図２】 ヒトの眼の断面図であり、移植機器を毛様体扁平部を通して、下
位網膜スペースに挿入することを示している。

【図３】 図２の円“３”の中に入った拡大図である。

【図４】 機器ノズルの、下位スペースへの挿入のまえの、円“４”の中の
領域の拡大図である。

【図５】 図４と同様に、下位網膜スペースにおける機器ノズルを示した図
である。

【図６】 図５と同様に、ひきこまれた機器ノズルと、下位網膜スペースの
目標領域における網膜組織を示した図である。

【図７】 詰め込んだ状態での、発明の機器の正面図である。

【図８】 網膜組織の移植の後の、図７の機器の横断面図である。

【図９】 機器ノズルの中の、受け取る孔を通して移す前の組織の図である
。

【図１０】 機器ノズルの先端への、はじめの動きの増大の後の網膜組織の
図である。

【図１１】 移植のための機器ノズルの位置の網膜組織の図である。

【図１２】 機器のノズルから放出したあとの網膜組織の図である。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 細長いマンドレル； 前記マンドレルの上にはめ込まれた管状のノズルであって、網膜組織の放出の
   ための開放末端および網膜組織の受容のための前記開放末端から離れて位置する
   孔をその側壁に有すること、および 前記ノズルおよび前記マンドレルに接続したノズルコントロールであって、前
   記マンドレルに対する前記コントロールの動きは前記マンドレルに対する前記ノ
   ズルの動きに影響を与え、前記マンドレルは前記ノズルの開放末端を通して網膜
   組織を移動させること、を含む、ヒトの眼に網膜組織を移植するための機器。
2. 【請求項２】 マンドレルがハンドピースにより支えられ、ノズルコント
   ロールはトグル構造を含み、一つの末端はノズルにつながり、反対の末端はハン
   ドピースに接続していることを特徴とする、請求項１に記載の機器。
3. 【請求項３】 細長いマンドレル； 前記マンドレルの上にはめ込まれた管状のノズルであって、網膜組織の放出の
   ため開放末端および網膜組織の受容のための前記開放末端から離れて位置する孔
   をその側壁に有すること、および 前記ノズルおよび前記マンドレルに接続したノズルコントロール連結であって
   、前記マンドレルに対する１つの方向における前記コントロール連結の動きは前
   記マンドレルに対する前記ノズルの動きに、網膜組織の受容のため前記マンドレ
   ルの末端部分から前記ノズルにおける孔を配置した位置まで影響を与え、反対の
   方向における前記コントロール連結の動きは前記マンドレルの上の前記ノズルの
   引込に影響を与え、前記マンドレルの末端部分は前記ノズルの開放末端を通して
   前記網膜組織を移動させることを含む、ヒトの眼に網膜組織を移植するための機
   器。