JP2003331827A - 負極およびそれを用いた電池 - Google Patents

負極およびそれを用いた電池

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JP2003331827A
JP2003331827A JP2002134163A JP2002134163A JP2003331827A JP 2003331827 A JP2003331827 A JP 2003331827A JP 2002134163 A JP2002134163 A JP 2002134163A JP 2002134163 A JP2002134163 A JP 2002134163A JP 2003331827 A JP2003331827 A JP 2003331827A
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battery
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Hiroyuki Akashi
寛之 明石
Kenichi Kawase
賢一 川瀬
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Sony Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 負極合剤層22aの接着性を改善することに
より、特性を向上させることができる負極およびそれを
用いた電池を提供する。 【解決手段】 負極22は負極集電体22aと負極合剤
層22bとを備える。負極22の容量はリチウムの吸蔵
・離脱による容量成分と、リチウム金属の析出・溶解に
よる容量成分との和により表される。負極合剤層22b
は、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料と2種以上の
結着剤とを含んでいる。結着剤としては、大きな機械的
強度を有するフッ素高分子材料と、柔軟性に富むゴム質
高分子材料とを含むことが好ましい。これによりリチウ
ムの吸蔵・離脱による体積変化と、リチウムの析出によ
る接着界面破壊とにそれぞれ対応して、負極合剤層22
bの接着性を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容量が軽金属の吸
蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶
解による容量成分との和により表される負極およびそれ
を用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯電話,PDA(personal dig
ital assistant;個人用携帯型情報端末機器)あるいは
ノート型コンピュータに代表される携帯型電子機器の小
型化および軽量化が精力的に進められ、その一環とし
て、それらの駆動電源である電池、特に二次電池のエネ
ルギー密度の向上が強く望まれている。
【0003】高エネルギー密度を得ることができる二次
電池としては、例えば、負極に炭素材料などのリチウム
(Li)を吸蔵および離脱することが可能な材料を用い
たリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次
電池では、負極材料中に吸蔵されたリチウムが必ずイオ
ン状態であるように設計されるため、エネルギー密度は
負極材料中に吸蔵することが可能なリチウムイオン数に
大きく依存する。よって、リチウムイオン二次電池で
は、リチウムイオンの吸蔵量を高めることによりエネル
ギー密度を更に向上させることができると考えられる。
しかし、現在リチウムイオンを最も効率的に吸蔵および
離脱することが可能な材料とされている黒鉛の吸蔵量
は、1g当たりの電気量換算で372mAhと理論的に
限界があり、最近では精力的な開発活動により、その限
界値まで高められつつある。
【0004】高エネルギー密度を得ることができる二次
電池としては、また、負極にリチウム金属を用い、負極
反応にリチウム金属の析出および溶解反応のみを利用し
たリチウム二次電池がある。リチウム二次電池は、リチ
ウム金属の理論電気化学当量が2054mAh/cm3
と大きく、リチウムイオン二次電池で用いられる黒鉛の
2.5倍にも相当するので、リチウムイオン二次電池を
上回る高いエネルギー密度を得られるものと期待されて
いる。これまでも、多くの研究者等によりリチウム二次
電池の実用化に関する研究開発がなされてきた(例え
ば、Lithium Batteries,Jean-Paul Gabano編, Academic
Press(1983)) 。
【0005】しかし、リチウム二次電池は、充放電を繰
り返した際の放電容量の劣化が大きく、実用化が難しい
という問題があった。この容量劣化は、リチウム二次電
池が負極においてリチウム金属の析出・溶解反応を利用
していることに基づいており、充放電に伴い、正負極間
で移動するリチウムイオンに対応して負極の体積が容量
分だけ大きく増減するので、負極の体積が大きく変化
し、リチウム金属結晶の溶解反応および再結晶化反応が
可逆的に進みづらくなってしまうことによるものであ
る。しかも、負極の体積変化は高エネルギー密度を実現
しようとするほど大きくなり、容量劣化もいっそう著し
くなる。
【0006】そこで本発明者等は、負極の容量がリチウ
ムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶
解による容量成分との和により表される二次電池を新た
に開発した(国際公開WO 01/22519 A1パンフレット参
照)。これは、負極にリチウムを吸蔵および離脱するこ
とが可能な炭素材料を用い、充電の途中において炭素材
料の表面にリチウム金属を析出させるようにしたもので
ある。この二次電池によれば、従来のリチウム二次電池
の問題点であった負極の大きな体積変化による容量劣化
を改善しつつ、従来のリチウムイオン二次電池よりも大
きな放電容量を実現することができるものとして期待さ
れている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この二
次電池は未だ開発途上の段階にあり、電極材料などを選
定することにより電池特性の更なる改善が期待できる。
特に、この二次電池では、リチウムの吸蔵・離脱による
負極合剤層の体積変化のみならず、リチウムの析出・溶
解により負極合剤層の内部で応力が発生し、これにより
充放電サイクル特性が劣化してしまうという問題があっ
た。
【0008】このうちリチウムの吸蔵・離脱による劣化
は、負極材料の体積変化により、負極材料間および負極
材料と負極集電体との接着が脆弱となり、電気抵抗が増
大することによるものと考えられる。一方、リチウムの
析出による劣化は、析出したリチウムが負極材料間およ
び負極材料と負極集電体との間において楔の役割を果た
し、これらの接着界面を破壊するような応力が発生する
ことによるものと考えられる。この後者の問題は、既に
実用化されているリチウムイオン二次電池では原理的に
発生しないことから、新規な技術が必要となる。
【0009】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その目的は、負極合剤層の接着性を改善すること
により、特性を向上させることができる負極およびそれ
を用いた電池を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による負極は、容
量が、軽金属の吸蔵および離脱による容量成分と、軽金
属の析出および溶解による容量成分との和により表され
るものであって、軽金属を吸蔵および離脱することが可
能な負極材料と、結着剤とを含む負極合剤層を備え、結
着剤は、2種類以上の高分子材料を含むものである。
【0011】本発明による電池は、正極および負極と共
に電解質を備えたものであって、負極は、軽金属を吸蔵
および離脱することが可能な負極材料と、結着剤とを含
む負極合剤層を備え、負極の容量は、軽金属の吸蔵およ
び離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解によ
る容量成分との和により表され、結着剤は、2種類以上
の高分子材料を含むものである。
【0012】本発明による負極では、結着剤が2種類以
上の高分子材料を含んでいるので、リチウムの吸蔵・離
脱による負極合剤層の接着性の低下と、リチウムの析出
・溶解による負極合剤層の接着性の低下とが、対応する
高分子材料によりそれぞれ防止される。
【0013】本発明による電池では、本発明の負極を用
いているので、電気抵抗の増加が防止され、充放電サイ
クル特性などの電池特性が向上する。
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施の形態につ
いて図面を参照して詳細に説明する。
【0014】図1は本発明の一実施の形態に係る二次電
池の断面構造を表すものである。この二次電池は、いわ
ゆるジェリーロール型といわれるものであり、ほぼ中空
円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と負極2
2とがセパレータ23を介して巻回された巻回電極体2
0を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっ
きがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され
他端部が開放されている。電池缶11の内部には、巻回
電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の
絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0015】電池缶11の開放端部には、電池蓋14
と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15
および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficie
nt;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してか
しめられることにより取り付けられており、電池缶11
の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池
缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構
15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的
に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱な
どにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク
板15aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電
気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子1
6は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限
し、大電流による異常な発熱を防止するものであり、例
えば、チタン酸バリウム系半導体セラミックスにより構
成されている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料に
より構成されており、表面にはアスファルトが塗布され
ている。
【0016】巻回電極体20は、例えば、センターピン
24を中心に巻回されている。巻回電極体20の正極2
1にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続
されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リ
ード26が接続されている。正極リード25は安全弁機
構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接
続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され
電気的に接続されている。
【0017】図2は図1に示した巻回電極体20の一部
を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向
する一対の面を有する正極集電体21aの両面に正極合
剤層21bが設けられた構造を有している。なお、図示
はしないが、正極集電体21aの片面のみに正極合剤層
21bを設けるようにしてもよい。正極集電体21a
は、例えば、厚みが5μm〜50μm程度であり、アル
ミニウム箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金
属箔により構成されている。正極合剤層21bは、例え
ば、厚みが80μm〜250μmであり、軽金属である
リチウムを吸蔵および離脱することが可能な正極材料を
含んで構成されている。なお、正極合剤層21bの厚み
は、正極合剤層21bが正極集電体21aの両面に設け
られている場合には、その合計の厚みである。
【0018】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウ
ム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチ
ウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合
して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするに
は、一般式Lix MO2 で表されるリチウム複合酸化物
あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。な
お、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的に
は、コバルト(Co),ニッケル(Ni),マンガン
(Mn),鉄(Fe),アルミニウム(Al),バナジ
ウム(V)およびチタン(Ti)のうちの少なくとも1
種が好ましい。xは、電池の充放電状態によって異な
り、通常、0.05≦x≦1.10の範囲内の値であ
る。また、他にも、スピネル型結晶構造を有するLiM
n2 O4 、あるいはオリビン型結晶構造を有するLiF
ePO4 なども高いエネルギー密度を得ることができる
ので好ましい。
【0019】なお、このような正極材料は、例えば、リ
チウムの炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と、
遷移金属の炭酸塩,硝酸塩,酸化物あるいは水酸化物と
を所望の組成になるように混合し、粉砕した後、酸素雰
囲気中において600℃〜1000℃の範囲内の温度で
焼成することにより調製される。
【0020】正極合剤層21bは、また、例えば導電剤
を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいても
よい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラッ
クあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料があげら
れ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられ
る。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であ
れば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるよ
うにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブ
タジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピ
レンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリビニリデン
フルオロライドなどの高分子材料が挙げられ、そのうち
の1種または2種以上を混合して用いられる。例えば、
図1に示したように正極21および負極22が巻回され
ている場合には、結着剤として塑性変形しやすいスチレ
ンブタジエン系ゴムあるいはフッ素系ゴムなどを用いる
ことが好ましい。
【0021】負極22は、例えば、対向する一対の面を
有する負極集電体22aの両面に負極合剤層22bが設
けられた構造を有している。なお、図示はしないが、負
極集電体22aの片面のみに負極合剤層22bを設ける
ようにしてもよい。負極集電体22aは、良好な電気化
学的安定性、電気伝導性および機械的強度を有する銅
箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔などの金属箔によ
り構成されている。特に、銅箔は高い電気伝導性を有す
るので最も好ましい。負極集電体22aの厚みは、例え
ば、6μm〜40μm程度であることが好ましい。6μ
mよりも薄いと機械的強度が低下し、製造工程において
負極集電体22aが断裂しやすく、生産効率が低下して
しまうからであり、40μmよりも厚いと電池内におけ
る負極集電体22aの体積比が必要以上に大きくなり、
エネルギー密度を高くすることが難しくなるからであ
る。
【0022】負極合剤層22bは、軽金属であるリチウ
ムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料のいずれ
か1種または2種以上を含んでいる。負極合剤層22b
の厚みは、例えば、80μm〜250μmである。この
厚みは、負極合剤層22bが負極集電体22aの両面に
設けられている場合には、その合計の厚みである。
【0023】なお、本明細書において軽金属の吸蔵・離
脱というのは、軽金属イオンがそのイオン性を失うこと
なく電気化学的に吸蔵・離脱されることを言う。これ
は、吸蔵された軽金属が完全なイオン状態で存在する場
合のみならず、完全なイオン状態とは言えない状態で存
在する場合も含む。これらに該当する場合としては、例
えば、黒鉛に対する軽金属イオンの電気化学的なインタ
カレーション反応による吸蔵が挙げられる。また、金属
間化合物あるいは合金の形成による軽金属の吸蔵も挙げ
ることができる。
【0024】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あ
るいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料が挙げられる。こ
れら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非
常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共
に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので
好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエ
ネルギー密度を得ることができ好ましい。
【0025】黒鉛としては、例えば、真密度が2.10
g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3
以上のものであればより好ましい。なお、このような真
密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが1
4.0nm以上であることが必要である。また、(00
2)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ま
しく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内
であればより好ましい。
【0026】黒鉛は、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。
人造黒鉛であれば、例えば、有機材料を炭化して高温熱
処理を行い、粉砕・分級することにより得られる。高温
熱処理は、例えば、必要に応じて窒素(N2 )などの不
活性ガス気流中において300℃〜700℃で炭化し、
毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1500℃まで
昇温してこの温度を0時間〜30時間程度保持し仮焼す
ると共に、2000℃以上、好ましくは2500℃以上
に加熱し、この温度を適宜の時間保持することにより行
う。
【0027】出発原料となる有機材料としては、石炭あ
るいはピッチを用いることができる。ピッチには、例え
ば、コールタール,エチレンボトム油あるいは原油など
を高温で熱分解することにより得られるタール類、アス
ファルトなどを蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチ
ーム蒸留),熱重縮合,抽出,化学重縮合することによ
り得られるもの、木材還流時に生成されるもの、ポリ塩
化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチ
ラートまたは3,5−ジメチルフェノール樹脂がある。
これらの石炭あるいはピッチは、炭化の途中最高400
℃程度において液体として存在し、その温度で保持され
ることで芳香環同士が縮合・多環化し、積層配向した状
態となり、そののち約500℃以上で固体の炭素前駆
体、すなわちセミコークスとなる(液相炭素化過程)。
【0028】有機材料としては、また、ナフタレン,フ
ェナントレン,アントラセン,トリフェニレン,ピレ
ン,ペリレン,ペンタフェン,ペンタセンなどの縮合多
環炭化水素化合物あるいはその誘導体(例えば、上述し
た化合物のカルボン酸,カルボン酸無水物,カルボン酸
イミド)、またはそれらの混合物を用いることができ
る。更に、アセナフチレン,インドール,イソインドー
ル,キノリン,イソキノリン,キノキサリン,フタラジ
ン,カルバゾール,アクリジン,フェナジン,フェナン
トリジンなどの縮合複素環化合物あるいはその誘導体、
またはそれらの混合物を用いることもできる。
【0029】なお、粉砕は、炭化,仮焼の前後、あるい
は黒鉛化前の昇温過程の間のいずれで行ってもよい。こ
れらの場合には、最終的に粉末状態で黒鉛化のための熱
処理が行われる。但し、嵩密度および破壊強度の高い黒
鉛粉末を得るには、原料を成型したのち熱処理を行い、
得られた黒鉛化成型体を粉砕・分級することが好まし
い。
【0030】例えば、黒鉛化成型体を作製する場合に
は、フィラーとなるコークスと、成型剤あるいは焼結剤
となるバインダーピッチとを混合して成型したのち、こ
の成型体を1000℃以下の低温で熱処理する焼成工程
と、焼成体に溶融させたバインダーピッチを含浸させる
ピッチ含浸工程とを数回繰り返してから、高温で熱処理
する。含浸させたバインダーピッチは、以上の熱処理過
程で炭化し、黒鉛化される。ちなみに、この場合には、
フィラー(コークス)とバインダーピッチとを原料にし
ているので多結晶体として黒鉛化し、また原料に含まれ
る硫黄や窒素が熱処理時にガスとなって発生することか
ら、その通り路に微小な空孔が形成される。よって、こ
の空孔により、リチウムの吸蔵・離脱反応が進行し易し
くなると共に、工業的に処理効率が高いという利点もあ
る。なお、成型体の原料としては、それ自身に成型性、
焼結性を有するフィラーを用いても良い。この場合に
は、バインダーピッチの使用は不要である。
【0031】難黒鉛化性炭素としては、(002)面の
面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm
3 未満であると共に、空気中での示差熱分析(differen
tialthermal analysis ;DTA)において700℃以
上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
【0032】このような難黒鉛化性炭素は、例えば、有
機材料を1200℃程度で熱処理し、粉砕・分級するこ
とにより得られる。熱処理は、例えば、必要に応じて3
00℃〜700℃で炭化した(固相炭素化過程)のち、
毎分1℃〜100℃の速度で900℃〜1300℃まで
昇温し、この温度を0〜30時間程度保持することによ
り行う。粉砕は、炭化の前後、あるいは昇温過程の間で
行ってもよい。
【0033】出発原料となる有機材料としては、例え
ば、フルフリルアルコールあるいはフルフラールの重合
体,共重合体、またはこれらの高分子と他の樹脂との共
重合体であるフラン樹脂を用いることができる。また、
フェノール樹脂,アクリル樹脂,ハロゲン化ビニル樹
脂,ポリイミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリアミ
ド樹脂,ポリアセチレンあるいはポリパラフェニレンな
どの共役系樹脂、セルロースあるいはその誘導体、コー
ヒー豆類、竹類、キトサンを含む甲殻類、バクテリアを
利用したバイオセルロース類を用いることもできる。更
に、水素原子(H)と炭素原子(C)との原子数比H/
Cが例えば0.6〜0.8である石油ピッチに酸素
(O)を含む官能基を導入(いわゆる酸素架橋)させた
化合物を用いることもできる。
【0034】この化合物における酸素の含有率は3%以
上であることが好ましく、5%以上であればより好まし
い(特開平3−252053号公報参照)。酸素の含有
率は炭素材料の結晶構造に影響を与え、これ以上の含有
率において難黒鉛化性炭素の物性を高めることができ、
負極22の容量を向上させることができるからである。
ちなみに、石油ピッチは、例えば、コールタール,エチ
レンボトム油あるいは原油などを高温で熱分解すること
により得られるタール類、またはアスファルトなどを、
蒸留(真空蒸留,常圧蒸留あるいはスチーム蒸留),熱
重縮合,抽出あるいは化学重縮合することにより得られ
る。また、酸化架橋形成方法としては、例えば、硝酸,
硫酸,次亜塩素酸あるいはこれらの混酸などの水溶液と
石油ピッチとを反応させる湿式法、空気あるいは酸素な
どの酸化性ガスと石油ピッチとを反応させる乾式法、ま
たは硫黄,硝酸アンモニウム,過硫酸アンモニア,塩化
第二鉄などの固体試薬と石油ピッチとを反応させる方法
を用いることができる。
【0035】なお、出発原料となる有機材料はこれらに
限定されず、酸素架橋処理などにより固相炭化過程を経
て難黒鉛化性炭素となり得る有機材料であれば、他の有
機材料でもよい。
【0036】難黒鉛化性炭素としては、上述した有機材
料を出発原料として製造されるものの他、特開平3−1
37010号公報に記載されているリン(P)と酸素と
炭素とを主成分とする化合物も、上述した物性パラメー
タを示すので好ましい。
【0037】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能
な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合
物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得るこ
とができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いる
ようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると
共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより
好ましい。なお、本明細書において、合金には2種以上
の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素
と1種以上の半金属元素とからなるものも含める。その
組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あ
るいはそれらのうち2種以上が共存するものがある。
【0038】このような金属元素あるいは半金属元素と
しては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,イ
ンジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),ア
ンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(C
d),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム
(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀
(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)
またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金
あるいは化合物としては、例えば、化学式MasMbt
Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表される
ものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチ
ウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のう
ちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa
以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1
種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、
MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少
なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよび
rの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q
>0、r≧0である。
【0039】中でも、4B族の金属元素あるいは半金属
元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好まし
いのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるい
は化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファ
スのものでもよい。
【0040】このような合金あるいは化合物について具
体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgS
b,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,N
2Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,Ni
Si2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeS
2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VS
2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,S
2 2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<
w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSn
Oなどがある。
【0041】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高
分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、酸化
鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化
物や、あるいはLiN3 などが挙げられ、高分子材料と
してはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロ
ールなどが挙げられる。
【0042】なお、この二次電池では、充電の過程にお
いて、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よ
りも低い時点で負極22にリチウム金属が析出し始める
ようになっている。つまり、開回路電圧が過充電電圧よ
りも低い状態において負極22にリチウム金属が析出し
ており、負極22の容量は、リチウムの吸蔵・離脱によ
る容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成
分との和で表される。従って、この二次電池では、リチ
ウムを吸蔵・離脱可能な負極材料とリチウム金属との両
方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵・離脱可
能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっ
ている。
【0043】過充電電圧というのは、電池が過充電状態
になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄電池工
業会(電池工業会)の定めた指針の一つである「リチウ
ム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(SBA G
1101)に記載され定義される「完全充電」された電
池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換言すれ
ば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方法、標
準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電した後
の開回路電圧よりも高い電圧を指す。具体的には、この
二次電池では、例えば開回路電圧が4.2Vの時に完全
充電となり、開回路電圧が0V以上4.2V以下の範囲
内の一部においてリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料
の表面にリチウム金属が析出している。
【0044】これにより、この二次電池では、高いエネ
ルギー密度を得ることができると共に、サイクル特性お
よび急速充電特性を向上させることができるようになっ
ている。これは、負極22にリチウム金属を析出させる
という点では負極にリチウム金属あるいはリチウム合金
を用いた従来のリチウム二次電池と同様であるが、リチ
ウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウム金属を析出
させるようにしたことにより、次のような利点が生じる
ためであると考えられる。
【0045】第1に、従来のリチウム二次電池ではリチ
ウム金属を均一に析出させることが難しく、それがサイ
クル特性を劣化させる原因となっていたが、リチウムを
吸蔵・離脱可能な負極材料は一般的に表面積が大きいの
で、この二次電池ではリチウム金属を均一に析出させる
ことができることである。第2に、従来のリチウム二次
電池ではリチウム金属の析出・溶出に伴う体積変化が大
きく、それもサイクル特性を劣化させる原因となってい
たが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負
極材料の粒子間の隙間にもリチウム金属が析出するので
体積変化が少ないことである。第3に、従来のリチウム
二次電池ではリチウム金属の析出・溶解量が多ければ多
いほど上記の問題も大きくなるが、この二次電池ではリ
チウムを吸蔵・離脱可能な負極材料によるリチウムの吸
蔵・離脱も充放電容量に寄与するので、電池容量が大き
いわりにはリチウム金属の析出・溶解量が小さいことで
ある。第4に、従来のリチウム二次電池では急速充電を
行うとリチウム金属がより不均一に析出してしまうので
サイクル特性が更に劣化してしまうが、この二次電池で
は充電初期においてはリチウムを吸蔵・離脱可能な負極
材料にリチウムが吸蔵されるので急速充電が可能となる
ことである。
【0046】これらの利点をより効果的に得るために
は、例えば、開回路電圧が過充電電圧になる前の最大電
圧時において負極22に析出するリチウム金属の最大析
出容量は、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電
容量能力の0.05倍以上3.0倍以下であることが好
ましい。リチウム金属の析出量が多過ぎると従来のリチ
ウム二次電池と同様の問題が生じてしまい、少な過ぎる
と充放電容量を十分に大きくすることができないからで
ある。また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極
材料の放電容量能力は、150mAh/g以上であるこ
とが好ましい。リチウムの吸蔵・離脱能力が大きいほど
リチウム金属の析出量は相対的に少なくなるからであ
る。なお、負極材料の充電容量能力は、例えば、リチウ
ム金属を対極として、この負極材料を負極活物質とした
負極について0Vになるまで定電流・定電圧法で充電し
た時の電気量から求められる。負極材料の放電容量能力
は、例えば、これに引き続き、定電流法で10時間以上
かけて2.5Vとなるまで放電した時の電気量から求め
られる。
【0047】負極合剤層22bは、また、リチウムを吸
蔵・離脱可能な負極材料に加えて、負極材料同士あるい
は負極材料と負極集電体22aとを接着する結着剤を含
んでいる。この結着剤には、2種類以上の高分子材料、
例えば大きな破断強度を有し機械的強度に富む高分子材
料と、塑性変形しやすい柔軟性に富む高分子材料とが少
なくとも含まれている。機械的性質の異なる2種以上の
高分子材料を併用することにより、リチウムの吸蔵・離
脱による接着性の低下と、リチウムの析出・溶解による
接着性の低下とを、対応する高分子材料によりそれぞれ
防止することができるからである。特に、大きな破断強
度を有する高分子材料は、リチウムの吸蔵・離脱による
体積変化によって接着性が低下してしまうことを防止す
るのに有効であり、塑性変形しやすい高分子材料は、リ
チウムの析出による接着界面の破壊を防止するのに有効
である。
【0048】結着剤としては、3種以上を併用してもよ
いが、むやみに併用数を増やしても接着力の改善に大き
な効果は見られず、かえって電池容量の低下を引き起こ
す虞もあるので、上述した2種類の高分子材料を用いる
ことが好ましい。
【0049】大きな破断強度を有する高分子材料として
は、例えばフッ素高分子材料が挙げられる。代表的なフ
ッ素高分子材料としては、フッ素基を導入したエチレン
性飽和炭化水素の重合体などが挙げられ、特に、ポリフ
ッ化ビリニデンおよびその誘導体は電気化学的安定性に
優れており、非水電解液中でも優れた破断強度を発現す
るので好適な材料である。このポリフッ化ビニリデンを
含む高分子材料は、ポリフッ化ビニリデンに由来する繰
り返し単位が40質量%以上、より好ましく60質量%
以上であることが必要である。これは、繰り返し単位が
少な過ぎると、十分な破断強度が得られにくくなるから
である。
【0050】ポリフッ化ビニリデンと共重合可能なモノ
マーとしては、例えばエチレン性不飽和単量体が挙げら
れる。具体的には、α−メチルスチレン、スチレン、p
−t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレ
ンなどの芳香族ビニル系単量体や、(メタ)アクリル酸
メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル
酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アク
リル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキ
シルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メ
タ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリル
アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドな
どの(メタ)アクリルアミド系単量体、(メタ)アクリ
ル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルなどのグリ
シジル基を含む単量体、(メタ)アクリロニトリルなど
の(メタ)アクリロニトリル系単量体、アクリル酸、メ
タクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水
マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基を含む単
量体、スチレンスルホン酸ソード、アクリルアミドメチ
ルプロパンスルホン酸などのスルホン酸基を含む単量
体、メタクリルジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジ
エチルアミノエチルなどのアミノ基を含む単量体などが
挙げられる。これらモノマーよりなる高分子材料は、そ
のうちの1つあるいは2つ以上混合して用いられる。
【0051】一方、塑性変形しやすい高分子材料として
は、例えば、ゴム質高分子材料が挙げられ、特に分子構
造として極性を有するゴムを主成分として含むものが好
適である。このようなゴム質高分子材料として、極性を
有するモノマーに由来する繰り返し構造単位を10質量
%以上含んでいるものが好ましく、特に20質量%以上
100質量%以下含んでいるものがより好ましい。これ
は、極性を有するモノマーに由来する繰り返し構造単位
が少ないと極性が小さく、有機溶媒に分散しにくくなる
からである。このようなモノマーとしては、例えば(メ
タ)アクリロニトリル、クロトンニトリル、アリルニト
リルなどのエチレン性ニトリル化合物、メチル(メタ)
アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル
(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルニトリル、ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性
不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル
酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのエチレン
性不飽和カルボン酸、無水マレイン酸などのエチレン性
不飽和カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0052】また、極性を有するゴム質高分子材料とし
ては、芳香族ビニル・共役ジエン系の材料も好ましい。
これら高分子材料には、スチレン、α−メチルスチレ
ン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレンなどの芳
香族ビニル系モノマー、1,3−ブタジエン、イソプレ
ン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−
ペンタジエンなどの共役ジエン系モノマーが含まれてい
ることが好ましい。
【0053】このようなゴム質高分子材料の製造方法
は、特に限定されるものではなく、例えば極性を有する
ゴム質高分子材料である芳香族ビニル系重合体や共役ジ
エン系重合体は、溶液重合でも乳化重合によって形成し
てもよい。また、前述したモノマーよりなる高分子材料
は、そのうちの1種あるいは2種以上混合して用いられ
る。
【0054】これら大きな破断強度を有する高分子材料
と、塑性変形しやすい高分子材料との負極合剤層22b
における質量含有率比は、それら高分子材料の物性、あ
るいは負極合剤層22bを構成する負極材料などにより
異なるため、一概に規定することは困難であるが、例え
ば数1に示した範囲内であることが好ましい。この範囲
よりも小さいと十分な柔軟性が得られにくなり、この範
囲よりも大きいと機械的強度が低下してしまうからであ
る。数1に示した質量含有率比A/Bのより好ましい範
囲は、0.1以上30以下である。
【0055】
【数1】0.1≦A/B≦50 なお、Aは負極合剤層22bにおける大きな破断強度を
有する高分子材料の質量含有率であり、Bは負極合剤層
22bにおける塑性変形しやすい高分子材料の質量含有
率である。
【0056】これら結着剤の負極合剤層22bにおける
含有量は、例えば0.1質量%以上15質量%以下の範
囲内であることが好ましく、1質量%以上10質量%以
下の範囲内であればより好ましい。結着剤の含有量が少
ないと整形性が低下し、含有量が多くなりすぎると導電
性が低下してしまうからである。
【0057】セパレータ23は、例えば、ポリテトラフ
ルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレン
などの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多
孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質
膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオ
レフィン製の多孔質膜はショート防止効果に優れ、かつ
シャットダウン効果による電池の安全性向上を図ること
ができるので好ましい。特に、ポリエチレンは、100
℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効
果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れて
いるので、セパレータ23を構成する材料として好まし
い。また、ポリプロピレンも好ましく、他にも化学的安
定性を備えた樹脂であればポリエチレンあるいはポリプ
ロピレンと共重合させたり、またはブレンド化すること
で用いることができる。
【0058】このポリオレフィン製の多孔質膜は、例え
ば、溶融状態のポリオレフィン組成物に溶融状態で液状
の低揮発性溶媒を混練し、均一なポリオレフィン組成物
の高濃度溶液としたのち、これをダイスにより成型し、
冷却してゲル状シートとし、延伸することにより得られ
る。
【0059】低揮発性溶媒としては、例えば、ノナン,
デカン,デカリン,p−キシレン,ウンデカンあるいは
流動パラフィンなどの低揮発性脂肪族または環式の炭化
水素を用いることができる。ポリオレフィン組成物と低
揮発性溶媒との配合割合は、両者の合計を100質量%
として、ポリオレフィン組成物が10質量%以上80質
量%以下、更には15質量%以上70質量%以下である
ことが好ましい。ポリオレフィン組成物が少なすぎる
と、成型時にダイス出口で膨潤あるいはネックインが大
きくなり、シート成形が困難となるからである。一方、
ポリオレフィン組成物が多すぎると、均一な溶液を調製
することが難しいからである。
【0060】ポリオレフィン組成物の高濃度溶液をダイ
スにより成型する際には、シートダイスの場合、ギャッ
プは例えば0.1mm以上5mm以下とすることが好ま
しい。また、押し出し温度は140℃以上250℃以
下、押し出し速度は2cm/分以上30cm/分以下と
することが好ましい。
【0061】冷却は、少なくともゲル化温度以下まで行
う。冷却方法としては、冷風,冷却水,その他の冷却媒
体に直接接触させる方法、または冷媒で冷却したロール
に接触させる方法などを用いることができる。なお、ダ
イスから押し出したポリオレフィン組成物の高濃度溶液
は、冷却前あるいは冷却中に1以上10以下、好ましく
は1以上5以下の引取比で引き取っても良い。引取比が
大きすぎると、ネックインが大きくなり、また延伸する
際に破断も起こしやすくなり、好ましくないからであ
る。
【0062】ゲル状シートの延伸は、例えば、このゲル
状シートを加熱し、テンター法、ロール法、圧延法ある
いはこれらを組み合わせた方法により、二軸延伸で行う
ことが好ましい。その際、縦横同時延伸でも、逐次延伸
のいずれでもよいが、特に、同時二次延伸が好ましい。
延伸温度は、ポリオレフィン組成物の融点に10℃を加
えた温度以下、更には結晶分散温度以上融点未満とする
ことが好ましい。延伸温度が高すぎると、樹脂の溶融に
より延伸による効果的な分子鎖配向ができず好ましくな
いからであり、延伸温度が低すぎると、樹脂の軟化が不
十分となり、延伸の際に破膜しやすく、高倍率の延伸が
できないからである。
【0063】なお、ゲル状シートを延伸したのち、延伸
した膜を揮発溶剤で洗浄し、残留する低揮発性溶媒を除
去することが好ましい。洗浄したのちは、延伸した膜を
加熱あるいは送風により乾燥させ、洗浄溶媒を揮発させ
る。洗浄溶剤としては、例えば、ペンタン,ヘキサン,
ヘブタンなどの炭化水素、塩化メチレン,四塩化炭素な
どの塩素系炭化水素、三フッ化エタンなどのフッ化炭
素、またはジエチルエーテル,ジオキサンなどのエーテ
ル類のように易揮発性のものを用いる。洗浄溶剤は用い
た低揮発性溶媒に応じて選択され、単独あるいは混合し
て用いられる。洗浄は、揮発性溶剤に浸漬して抽出する
方法、揮発性溶剤を振り掛ける方法、あるいはこれらを
組み合わせた方法により行うことができる。この洗浄
は、延伸した膜中の残留低揮発性溶媒がポリオレフィン
組成物100質量部に対して1質量部未満となるまで行
う。
【0064】セパレータ23には、液状の電解質である
電解液が含浸されている。この電解液は、液状の溶媒、
例えば有機溶剤などの非水溶媒と、この非水溶媒に溶解
された電解質塩であるリチウム塩とを含んでいる。液状
の非水溶媒というのは、例えば、1種以上の非水化合物
よりなり、25℃における固有粘度が10.0mPa・
s以下のものを言う。なお、電解質塩を溶解した状態で
の固有粘度が10.0mPa・S以下のものでもよく、
複数種の非水化合物を混合して溶媒を構成する場合に
は、混合した状態での固有粘度が10.0mPa以下で
あればよい。このような非水溶媒としては、例えば、環
状炭酸エステルあるいは鎖状炭酸エステルにより代表さ
れる物質の1種または2種以上を混合したものが好まし
い。
【0065】具体的には、エチレンカーボネート、プロ
ピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレン
カーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクト
ン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、
2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラ
ン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、
プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ジメチルカ
ーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカー
ボネート、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポ
ニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロ
ピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−
メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、
N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、
ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシド、
燐酸トリメチルおよびこれらの化合物の水酸基の一部ま
たは全部をフッ素基に置換したものなどが挙げられる。
特に、優れた充放電容量特性および充放電サイクル特性
を実現するためには、エチレンカーボネート、プロピレ
ンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジメチルカー
ボネート、エチルメチルカーボネートの少なくとも1種
を用いることが好ましい。
【0066】リチウム塩としては、例えば、LiAsF
6 、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 、LiB
(C6 5 4 、LiCH3 SO3 、LiCF3
3 、LiN(SO2 CF3 2 、LiC(SO2 CF
3 3 、LiAlCl4 、LiSiF6 、LiClおよ
びLiBrなどが挙げられ、これらのうちのいずれか1
種または2種以上が混合して用いられる。リチウム塩の
含有量(濃度)は溶媒に対して3.0mol/kg以下
であることが好ましく、0.5mol/kg以上であれ
ばより好ましい。この範囲内において電解液のイオン伝
導度を高くすることができるからである。
【0067】なお、電解液に代えて、ホスト高分子化合
物に電解液を保持させたゲル状の電解質を用いてもよ
い。ゲル状の電解質は、イオン伝導度が室温で1mS/
cm以上であるものであればよく、組成およびホスト高
分子化合物の構造に特に限定はない。電解液(すなわち
液状の溶媒および電解質塩)については上述のとおりで
ある。ホスト高分子化合物としては、例えば、ポリアク
リロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニ
リデンとポリヘキサフルオロプロピレンの共重合体、ポ
リテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピ
レン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサ
イド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸
ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチ
ル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブ
タジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレ
ンあるいはポリカーボネートが挙げられる。特に、電気
化学的安定性の点からは、ポリアクリロニトリル、ポリ
フッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンある
いはポリエチレンオキサイドの構造を持つ高分子化合物
を用いることが望ましい。電解液に対するホスト高分子
化合物の添加量は、両者の相溶性によっても異なるが、
通常、電解液の5質量%〜50質量%に相当するホスト
高分子化合物を添加することが好ましい。
【0068】また、リチウム塩の含有量は、電解液と同
様に、溶媒に対して3.0mol/kg以下であること
が好ましく、0.5mol/kg以上であればより好ま
しい。但し、ここで溶媒というのは、液状の溶媒のみを
意味するのではなく、電解質塩を解離させることがで
き、イオン伝導性を有するものを広く含む概念である。
よって、ホスト高分子化合物にイオン伝導性を有するも
のを用いる場合には、そのホスト高分子化合物も溶媒に
含まれる。
【0069】この二次電池は、例えば、次のようにして
製造することができる。
【0070】まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能
な正極材料と、必要に応じて導電剤および結着剤とを混
合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−
2−ピロリドンなどの溶剤に分散してペースト状の正極
合剤スラリーとする。この正極合剤スラリーを正極集電
体21aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス
機などにより圧縮成型して正極合剤層21bを形成し、
正極21を作製する。
【0071】次いで、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可
能な負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製
し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの
溶剤に分散してペースト状の負極合剤スラリーとする。
その際、結着剤として2種類以上の高分子材料、例えば
大きな破断強度を有する高分子材料と、塑性変形しやす
い高分子材料とを用いる。結着剤の含有量、および2種
類の高分子材料の質量含有率比は上述した範囲内となる
ように調整する。続いて、この負極合剤スラリーを負極
集電体22aに塗布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプ
レス機などにより圧縮成型して負極合剤層22bを形成
し、負極22を作製する。
【0072】正極21および負極22を形成したのち、
正極集電体21aに正極リード25を溶接などにより取
り付けると共に、負極集電体22aに負極リード26を
溶接などにより取り付ける。そののち、正極21と負極
22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード2
5の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リ
ード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正
極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み
電池缶11の内部に収納する。正極21および負極22
を電池缶11の内部に収納したのち、電解質を電池缶1
1の内部に注入し、セパレータ23に含浸させる。その
のち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構
15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介して
かしめることにより固定する。これにより、図1に示し
た二次電池が形成される。
【0073】この二次電池は次のように作用する。
【0074】この二次電池では、充電を行うと、正極合
剤層21bからリチウムイオンが離脱し、セパレータ2
3に含浸された電解液を介して、まず、負極合剤層22
bに含まれるリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸
蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電
圧よりも低い状態において、充電容量がリチウムを吸蔵
・離脱可能な負極材料の充電容量能力を超え、リチウム
を吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析
出し始める。そののち、充電を終了するまで負極22に
はリチウム金属が析出し続ける。これにより、負極合剤
層22bの外観は、例えばリチウムを吸蔵・離脱可能な
負極材料として炭素材料を用いる場合、黒色から黄金
色、更には白銀色へと変化する。
【0075】次いで、放電を行うと、まず、負極22に
析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、セパレ
ータ23に含浸された電解液を介して、正極合剤層21
bに吸蔵される。更に放電を続けると、負極合剤層22
b中のリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵され
たリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極合剤層
21bに吸蔵される。よって、この二次電池では、従来
のいわゆるリチウム二次電池およびリチウムイオン二次
電池の両方の特性、すなわち高いエネルギー密度および
良好な充放電サイクル特性が得られる。
【0076】特に本実施の形態では、負極合剤層22b
が、結着剤として2種類以上の高分子材料、例えば大き
な破断強度を有する高分子材料と、塑性変形しやすい高
分子材料とを含んでいるので、リチウムの吸蔵・離脱に
より負極材料の体積が変化しても、また、リチウムが負
極材料の表面などに析出しても、十分な接着性が保持さ
れる。よって、充放電の繰り返しによる容量の劣化が防
止される。
【0077】このように本実施の形態によれば、負極合
剤層22bが、結着剤として2種類以上の高分子材料を
含むようにしたので、リチウムの吸蔵・離脱による体積
変化と、リチウムの析出による接着界面破壊とにそれぞ
れ対応して、負極合剤層22bの接着性を向上させるこ
とができる。よって、充放電サイクル特性などの電池特
性を向上させることができる。
【0078】特に、結着剤として、大きな破断強度を有
する高分子材料と、塑性変形しやすい高分子材料とを用
いるようにすれば、具体的には、フッ素高分子材料と、
ゴム質高分子材料とを用いるようにすれば、より高い効
果を得ることができる。
【0079】
【実施例】更に、本発明の具体的な実施例について、図
1および図2を参照して詳細に説明する。
【0080】(実施例1)まず、リチウム・コバルト複
合酸化物(LiCoO2 )粉末96.9質量%と、導電
剤である平均粒径が6μmの粒状黒鉛0.1質量%と、
結着剤としてポリフッ化ビニリデン粉末3.0質量%と
を混合して正極合剤を調製した。正極合剤を調製したの
ち、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロリ
ドンに分散して正極合剤スラリーとし、厚み20μmの
帯状アルミニウム箔よりなる正極集電体21aの両面に
均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成型し
て正極合剤層21bを形成し、厚み180μmの正極2
1を作製した。そののち、正極集電体21aの一端にア
ルミニウム製の正極リード25を取り付けた。
【0081】また、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材
料として粒状人造黒鉛粉末を用意し、この粒状人造黒鉛
粉末と結着剤とを混合して負極合剤を調整した。結着剤
としては、フッ素高分子材料であるポリフッ化ビニリデ
ン(PVdF)粉末と、ゴム質高分子材料であるスチレ
ンブタジエンゴム(SBR)粉末とを用いた。負極合剤
における人造黒鉛の含有量は94質量%、結着剤の含有
量は6質量%とし、ポリフッ化ビニリデンの含有量率A
は1質量%、スチレンブタジエンゴムの含有率Bは5質
量%、数1に示した質量含有率比A/Bは0.20とし
た。表1にこれらの条件を示す。
【0082】
【表1】
【0083】次いで、この負極合剤を溶媒であるN−メ
チル−2−ピロリドンに分散させてスラリー状としたの
ち、厚み15μmの帯状銅箔よりなる負極集電体22a
の両面に均一に塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧
縮成型して負極合剤層22bを形成し、厚み130μm
の負極22を作製した。その後、負極集電体22aの一
端にニッケル製の負極リード26を取り付けた。
【0084】正極21および負極22をそれぞれ作製し
たのち、厚み25μmの微多孔性ポリエチレン延伸フィ
ルムよりなるセパレータ23を用意し、負極22,セパ
レータ23,正極21,セパレータ23の順に積層して
この積層体を渦巻状に多数回巻回し、外径12.5mm
の巻回電極体20を作製した。
【0085】巻回電極体20を作製したのち、巻回電極
体20を一対の絶縁板12,13で挟み、負極リード2
6を電池缶11に溶接すると共に、正極リード25を安
全弁機構15に溶接して、巻回電極体20をニッケルめ
っきした鉄製の電池缶11の内部に収納した。そのの
ち、電池缶11の内部に電解液を減圧方式により注入し
た。電解液には、ビニレンカーボネート5質量%と、エ
チレンカーボネート35質量%と、ジメチルカーボネー
ト50質量%と、エチルメチルカーボネート10質量%
とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 および
LITFSIを溶媒に対してそれぞれ1.3mol/k
gおよび0.2mol/kgの含有量で溶解させたもの
を用いた。
【0086】電池缶11の内部に電解液を注入したの
ち、表面にアスファルトを塗布したガスケット17を介
して電池蓋14を電池缶11にかしめることにより、直
径14mm、高さ65mmのジェリーロール型二次電池
を得た。
【0087】得られた実施例1の二次電池について、充
放電試験を行い、電池の定格容量および容量保持率を求
めた。その際、充電は、400mAの定電流で電池電圧
が4.2Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧
で充電時間の総計が4時間に達するまで行った。充電終
了直前の正極21と負極22との間の電圧は4.2V、
電流値は5mA以下であった。一方、放電は、400m
Aの定電流で電池電圧が2.75Vに達するまで行っ
た。ちなみに、ここに示した条件で充放電を行えば、完
全充電状態および完全放電状態となる。なお、定格容量
は、2サイクル目の放電容量および平均電圧と電池の体
積とから求めた。容量保持率は、定格容量に対する40
0サイクル目の放電容量の比率、すなわち、(400サ
イクル目の放電容量/定格容量)×100として算出し
た。得られた結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】また、実施例1の二次電池について、上述
した条件で1サイクル充放電を行ったのち再度完全充電
させたものを解体し、目視および7 Li核磁気共鳴分光
法により、負極合剤層22bにリチウム金属が析出して
いるか否かを調べた。更に、上述した条件で2サイクル
充放電を行い、完全放電させたものを解体し、同様にし
て、負極合剤層22bにリチウム金属が析出しているか
否かを調べた。その結果、完全充電状態において負極合
剤層22bにリチウム金属およびリチウムイオンの存在
が認められ、完全放電状態においてはリチウム金属の存
在が認められなかった。すなわち、負極22の容量は、
リチウム金属の析出・溶解による容量成分とリチウムの
吸蔵・離脱による容量成分との和により表されることが
確認された。表2にはその結果としてリチウム金属の析
出有りとして記載した。
【0090】本実施例に対する比較例1として、負極合
剤層の結着剤にポリフッ化ビニリデン粉末を用い、表1
に示したように負極合剤の配合を変えたことを除き、他
は実施例1と同様にして二次電池を作製した。また、比
較例2として、負極合剤層の結着剤にスチレンブタジエ
ンゴム粉末を用い、表1に示したように負極合剤の配合
を変えたことを除き、他は実施例1と同様にして二次電
池を作製した。更に、比較例3,4として、充電の途中
に負極にリチウム金属が析出しないように負極の厚みを
170μmとし、表1に示したように負極合剤の配合を
変えたことを除き、他は実施例1と同様にして二次電池
を作製した。比較例3は負極合剤層の結着剤にポリフッ
化ビニリデン粉末を用い、比較例4は負極合剤層の結着
剤にポリフッ化ビニリデン粉末とスチレンブタジエンゴ
ム粉末とを用いたものである。
【0091】比較例1〜4の二次電池についても、実施
例1と同様にして、充放電試験を行い、定格容量、容量
保持率および完全充電状態と完全放電状態とにおけるリ
チウム金属の析出の有無を調べた。得られた結果を表2
に示す。また、同様にして、完全充電状態と完全放電状
態とにおける負極合剤層の状態も調べた。その結果、比
較例1,2の二次電池では、実施例1と同様にリチウム
金属の析出が認められた。これに対して、比較例3,4
の二次電池では、完全放電状態においても完全放電状態
においてもリチウム金属の存在は認められず、リチウム
イオンの存在が認められたのみであった。また、完全放
電状態において認められたリチウムイオンに帰属するピ
ークはごく小さいものであった。すなわち、負極の容量
は、リチウムの吸蔵・離脱による容量成分により表され
ることが確認された。表2にはその結果としてリチウム
金属の析出無しと記載した。
【0092】表1,2から分かるように、結着剤として
ポリフッ化ビニリデン粉末とスチレンブタジエンゴム粉
末とを用いた実施例1によれば、そのいずれか一方のみ
を用いた比較例1,2に比べて、高い容量保持率が得ら
れた。これに対して、リチウムイオン二次電池である比
較例3,4では、結着剤としてポリフッ化ビニリデン粉
末のみを用いた比較例3よりも、ポリフッ化ビニリデン
粉末とスチレンブタジエンゴム粉末とを用いた比較例4
の方が、定格容量も容量保持率も共に低かった。
【0093】すなわち、負極22の容量が、軽金属の吸
蔵および離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶
解による容量成分との和により表される二次電池におい
て、負極合剤層22bの結着剤としてフッ素高分子材料
とゴム質高分子材料とを用いるようにすれば、充放電サ
イクル特性を向上させることができることが分かった。
【0094】(実施例2〜7)負極合剤の配合を表3に
示したように変えたことを除き、他は実施例1と同様に
して二次電池を作製した。実施例2〜5についても、実
施例1と同様にして、充放電試験を行い、定格容量、容
量保持率および完全充電状態と完全放電状態とにおける
リチウム金属の析出の有無を調べた。得られた結果を表
4に示す。なお、表3,4には、実施例1も併せて示し
てある。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】表3,4から分かるように、負極合剤層2
2bにおけるフッ素高分子材料とゴム質高分子材料との
質量含有率比A/Bを大きくすると、容量保持率は大き
くなり、極大値を示したのち小さくなる傾向が見られ
た。すなわち、質量含有率比A/Bを0.1以上30以
下の範囲内となるようにすれば、より高い効果を得られ
ることが分かった。
【0098】(実施例8〜11)負極合剤層の結着剤の
種類および配合を表5に示したように変えたことを除
き、他は実施例1と同様にして二次電池を作製した。な
お、実施例8では、フッ素高分子材料としてポリフッ化
ビニリデンおよびポリヘキサフルオロプロピレン(PH
FP)の共重合体(P(VdF―co−HFP))粉末
を用い、ゴム質高分子材料としてスチレンブタジエンゴ
ム粉末を用いた。実施例9では、フッ素高分子材料とし
てポリフッ化ビニリデン粉末とポリテトラフルオロエチ
レン(PTFE)粉末とを1:1の質量比で混合した混
合粉末を用い、ゴム質高分子材料としてスチレンブタジ
エンゴム粉末を用いた。実施例10では、フッ素高分子
材料としてポリフッ化ビニリデン粉末とポリテトラフル
オロエチレン粉末とを1:1の質量比で混合した混合粉
末を用い、ゴム質高分子材料としてスチレンブタジエン
ゴム粉末と二トリルブタジエンゴム(NBR)粉末とを
1:1の質量比で混合した混合粉末を用いた。実施例1
1では、フッ素高分子材料としてポリフッ化ビニリデン
粉末とポリテトラフルオロエチレン粉末とを1:1の質
量比で混合した混合粉末を用い、ゴム質高分子材料とし
てスチレンブタジエンゴム粉末とエチレンプロピレンジ
エンゴム(EPDM)粉末とを1:1の質量比で混合し
た混合粉末を用いた。
【0099】
【表5】
【0100】実施例8〜11についても、実施例1と同
様にして、充放電試験を行い、定格容量、容量保持率お
よび完全充電状態と完全放電状態とにおけるリチウム金
属の析出の有無を調べた。得られた結果を表6に示す。
【0101】
【表6】
【0102】表5,6から分かるように、実施例8〜1
1によれば、いずれも実施例1と同様に良好な結果が得
られた。すなわち、負極合剤層22bの結着剤として他
のフッ素高分子材料および他のゴム質高分子材料を用い
ても、同様に充放電サイクル特性を改善できることが分
かった。
【0103】(実施例12)リチウムを吸蔵・離脱可能
な負極材料として、粒状人造黒鉛とMg2 Si粉末とを
45:40の質量比で混合した混合物を用い、負極合剤
の配合を表7に示したように変えたことを除き、他は実
施例1と同様にして二次電池を作製した。本実施例に対
する比較例5として、負極合剤層の結着剤としてポリフ
ッ化ビニリデン粉末を用い、配合を表7に示したように
変えたことを除き、他は実施例12と同様にして二次電
池を作製した。
【0104】
【表7】
【0105】実施例12および比較例5についても、実
施例1と同様にして、充放電試験を行い、定格容量、容
量保持率および完全充電状態と完全放電状態とにおける
リチウム金属の析出の有無を調べた。得られた結果を表
8に示す。
【0106】
【表8】
【0107】表7,8から分かるように、結着剤として
ポリフッ化ビニリデン粉末とスチレンブタジエンゴム粉
末とを用いた実施例12によれば、その一方のみを用い
た比較例5に比べて、高い容量保持率が得られた。すな
わち、他の負極材料を用いても、結着剤としてフッ素高
分子材料とゴム質高分子材料とを用いれば、同様に充放
電サイクル特性を改善できることが分かった。
【0108】以上、実施の形態および実施例を挙げて本
発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施
例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例
えば、上記実施の形態および実施例においては、軽金属
としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナト
リウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアル
カリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(C
a)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなど
の他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を
用いる場合についても、本発明を適用することができ、
同様の効果を得ることができる。その際、軽金属を吸蔵
および離脱することが可能な負極材料、正極材料、非水
溶媒、あるいは電解質塩などは、その軽金属に応じて選
択される。但し、軽金属としてリチウムまたはリチウム
を含む合金を用いるようにすれば、現在実用化されてい
るリチウムイオン二次電池との電圧互換性が高いので好
ましい。なお、軽金属としてリチウムを含む合金を用い
る場合には、電解質中にリチウムと合金を形成可能な物
質が存在し、析出の際に合金を形成してもよく、また、
負極にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出
の際に合金を形成してもよい。
【0109】また、上記実施の形態および実施例におい
ては、電解液または固体状の電解質の1種であるゲル状
の電解質を用いる場合について説明したが、他の電解質
を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例え
ば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分
散させた有機固体電解質、イオン伝導性セラミックス,
イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる
無機固体電解質、またはこれらの無機固体電解質と電解
液とを混合したもの、またはこれらの無機固体電解質と
ゲル状の電解質あるいは有機固体電解質とを混合したも
のが挙げられる。
【0110】更に、上記実施の形態および実施例におい
ては、巻回構造を有する円筒型の二次電池について説明
したが、本発明は、巻回構造を有する楕円型あるいは多
角形型の二次電池、または正極および負極を折り畳んだ
りあるいは積み重ねた構造を有する二次電池についても
同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン
型,ボタン型あるいはカード型など二次電池についても
適用することができる。また、二次電池に限らず、一次
電池についても適用することができる。
【0111】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1ないし請
求項8のいずれか1に記載の負極、または請求9ないし
請求項16のいずれか1に記載の電池によれば、負極合
剤層が、結着剤として2種類以上の高分子材料を含むよ
うにしたので、リチウムの吸蔵・離脱による体積変化
と、リチウムの析出による接着界面破壊とにそれぞれ対
応して、負極合剤層の接着性を向上させることができ
る。よって、充放電サイクル特性などの電池特性を向上
させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を
表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一
部を拡大して表す断面図である。
【符号の説明】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、1
5…安全弁機構、15a…ディスク板、16…熱感抵抗
素子、17…ガスケット、20…巻回電極体、21…正
極、21a…正極集電体、21b…正極合剤層、22…
負極、22a…負極集電体、22b…負極合剤層、23
…セパレータ、24…センターピン、25…正極リー
ド、26…負極リード
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5H029 AJ02 AJ05 AK03 AL06 AL07 AM03 AM04 AM05 AM07 DJ08 EJ12 HJ01 5H050 AA07 BA17 CA07 CB07 CB08 DA11 EA23 HA02

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 容量が、軽金属の吸蔵および離脱による
    容量成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分と
    の和により表される負極であって、 軽金属を吸蔵および離脱することが可能な負極材料と、
    結着剤とを含む負極合剤層を備え、 前記結着剤は、2種類以上の高分子材料を含むことを特
    徴とする負極。
  2. 【請求項2】 前記結着剤は、フッ素高分子材料と、ゴ
    ム質高分子材料とを含むことを特徴とする請求項1記載
    の負極。
  3. 【請求項3】 前記負極合剤層におけるゴム質高分子材
    料に対するフッ素高分子材料の質量含有率比は、0.1
    以上30以下の範囲内であることを特徴とする請求項2
    記載の負極。
  4. 【請求項4】 前記負極合剤層における前記結着剤の含
    有量は、0.1質量%以上15質量%以下の範囲内であ
    ることを特徴とする請求項1記載の負極。
  5. 【請求項5】 前記負極材料は、炭素材料を含むことを
    特徴とする請求項1記載の負極。
  6. 【請求項6】 前記負極材料は、黒鉛を含むことを特徴
    とする請求項5記載の負極。
  7. 【請求項7】 前記負極材料は、前記軽金属と合金を形
    成可能な金属元素または半金属元素の単体,合金および
    化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを
    特徴とする請求項1記載の負極。
  8. 【請求項8】 前記軽金属はリチウムを含むことを特徴
    とする請求項1記載の負極。
  9. 【請求項9】 正極および負極と共に電解質を備えた電
    池であって、 前記負極は、軽金属を吸蔵および離脱することが可能な
    負極材料と、結着剤とを含む負極合剤層を備え、 前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および離脱による容量
    成分と、軽金属の析出および溶解による容量成分との和
    により表され、 前記結着剤は、2種類以上の高分子材料を含むことを特
    徴とする電池。
  10. 【請求項10】 前記結着剤は、ゴム質高分子材料と、
    フッ素高分子材料とを含むことを特徴とする請求項9記
    載の電池。
  11. 【請求項11】 前記負極合剤層におけるゴム質高分子
    材料の質量含有率に対するフッ素高分子材料の質量含有
    率の比は、0.1以上30以下の範囲内であることを特
    徴とする請求項10記載の電池。
  12. 【請求項12】 前記負極合剤層における前記結着剤の
    含有量は、0.1質量%以上15質量%以下の範囲内で
    あることを特徴とする請求項9記載の電池。
  13. 【請求項13】 前記負極材料は、炭素材料を含むこと
    を特徴とする請求項9記載の電池。
  14. 【請求項14】 前記負極材料は、黒鉛を含むことを特
    徴とする請求項13記載の電池。
  15. 【請求項15】 前記負極材料は、前記軽金属と合金を
    形成可能な金属元素または半金属元素の単体,合金およ
    び化合物からなる群のうちの少なくとも1種を含むこと
    を特徴とする請求項9記載の電池。
  16. 【請求項16】 前記軽金属はリチウムを含むことを特
    徴とする請求項9記載の電池。
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