JP2003321160A - 繊維トウパッケージと同パッケージを使った炭素繊維及びチョップドファイバーの製造方法 - Google Patents

繊維トウパッケージと同パッケージを使った炭素繊維及びチョップドファイバーの製造方法

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JP2003321160A
JP2003321160A JP2002133549A JP2002133549A JP2003321160A JP 2003321160 A JP2003321160 A JP 2003321160A JP 2002133549 A JP2002133549 A JP 2002133549A JP 2002133549 A JP2002133549 A JP 2002133549A JP 2003321160 A JP2003321160 A JP 2003321160A
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tow
fiber tow
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tows
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Hiroshi Inagaki
博司 稲垣
Atsushi Kawamura
篤志 川村
Takahiko Kunisawa
孝彦 國澤
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】所定長に満たないアクリル系繊維トウパッケー
ジを接続して連続的に熱処理することを可能なパッケー
ジを作成し、特に炭素繊維製造設備の熱処理条件が安定
するまでに消費されるアクリル系繊維トウのロス量を削
減し、炭素繊維製造工程の歩留まりと生産性向上を図
る。 【解決手段】所定長を有する繊維トウを一単位とする繊
維トウのパッケージであって、同パッケージ内の繊維ト
ウの一部に、エア絡合による2本以上の繊維トウ同士の
接続部を有している。接続しようとする一方の繊維トウ
終端部のトウの総繊度N(dtex)と前記トウ終端部に接
続される繊維トウ先端部のトウの総繊度M(dtex)と
が、M/N ≦ 1. 2の関係を満足する。この式を満
足するかぎり、所望の接合強度が得られ、同時に炭素繊
維製造工程における蓄温による接続部の暴走が防止でき
安定した炭素繊維の製造ができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所定糸長からなる
繊維トウのパッケージに関し、特に炭素繊維製造用の前
駆体である繊維トウのパッケージと同パッケージを使っ
て炭素繊維を製造する方法、製造された炭素繊維トウか
らチョップドファイバーを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリル系繊維トウは炭素繊維を製造す
るための前駆体として広く利用されており、アクリル系
繊維トウを200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱処
理する耐炎化工程によって耐炎化繊維にした後、引き続
いて1000℃以上の不活性雰囲気中で加熱処理する炭
素化工程によって炭素繊維を製造するのが一般的であ
る。こうして得られた炭素繊維は様々な優れた物性を具
備していることから各種の繊維強化複合材料等の強化用
繊維として広く利用されている。炭素繊維は、従来の航
空機、スポーツ用途に加え、建築、土木、エネルギー関
係の産業用途に拡がり始め、その需要が急速に伸びてい
る。この伸びをさらに加速するには、より低コストの炭
素繊維が望まれている。
【0003】一般に炭素繊維製造用のアクリル系繊維ト
ウは、ボビンなどに巻き上げられた形態あるいは箱の中
に折り畳み積層された形態で供給されている。従って、
低コスト化を狙い、焼成工程の操業性を上げるために
は、これらの前駆体を耐炎化工程と炭素化工程からなる
焼成工程に移して炭素繊維を製造するにあたり、連続的
に供給して炭素繊維にすべく、上記の形態にあるアクリ
ル系繊維トウの終端部を別のアクリル系繊維トウの始端
部と接続させる必要がある。
【0004】端部同士を接続することにより、トウを連
続的に炭素繊維の製造工程に供給して操業性を向上させ
る手段として、例えば特開昭54−50624号公報に
はアクリル系繊維トウ同士の接合部に耐炎性化合物を付
与する方法が、また特開昭56−37315号公報には
アクリル系繊維トウの端部同士をあらかじめ熱処理した
後に結んで接続部を形成する方法が、さらに特公平1−
12850号公報にはアクリル系繊維トウの端部同士を
絡合させて接続部を形成する方法が、さらにまた、特開
平4−214414号公報にはアクリル系繊維トウの端
部同士をエアーにより絡合させて接続部を形成するとと
もに、さらにこの接続部に酸化反応抑制剤を付着する方
法がそれぞれ開示されている。
【0005】しかるに、上記の方法による接合部を有す
るアクリル系繊維トウは優れた物性を備えた炭素繊維を
高速生産するための製造条件には適合し得ない。すなわ
ち、上記の方法による接続部を有するアクリル系繊維ト
ウでは、アクリル系繊維トウが加熱温度及び工程張力の
高い耐炎化工程で耐炎化繊維にする工程と、工程張力の
高い炭素化工程で炭素繊維にする工程とを安定して通過
し得ない。特に、前駆体繊維トウ同士を直接接続する場
合には、焼成工程において接続部の蓄熱が激しく焼損、
糸切れが発生する。
【0006】このため、上記の方法による接続部を有す
るアクリル系繊維トウが耐炎化工程と炭素化工程とを問
題なく通過するためには、加熱温度及び工程張力の高い
耐炎化工程と工程張力の高い炭素化工程のうちのいずれ
かの条件を緩和させなければならず、炭素繊維の高速生
産は困難である。特に、アクリル系繊維トウの端部同士
を単に結んで形成した接続部は、耐炎化工程での蓄熱が
激しく、このことが次工程である炭素化工程中での糸切
れなどのトラブルの原因となる。
【0007】さらに、特開平10−226918号公報
にあっては、前駆体繊維トウを、非発熱性の接続媒体に
より接続して炭素繊維を製造する方法と製造装置が開示
されているが、前駆体繊維トウ保持手段と接続媒体の保
持手段とが独立して存在すること、交絡ノズル毎にリラ
ックス保持部を有し、すなわち複数のリラックス保持手
段を有し、かつそれぞれのリラックス保持手段がそれぞ
れ独立して移動してトウに所定の弛み量を与える機構を
備えており、極めて複雑な機構となっている。また、所
定長にわたって接続処理するために、複数のノズルを所
定の場所に配置して、各場所で流体処理による結合を行
うとの記載はあるものの、ノズルの配設数やその配置す
る間隔を具体的に明示するものではなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これらの技術は、その
効果としてアクリル系繊維トウのパッケージ長が不揃い
のものでも炭素繊維製造工程に供給可能かつ連続した熱
処理を可能とし、熱処理工程の操業性を向上させるもの
ではあったが、様々な繊度のアクリル系繊維トウを熱処
理する炭素繊維製造設備においては、次の理由から適さ
なかった。すなわち、引張り強度が違う繊度の異なるア
クリル系繊維トウを、工程張力が高い炭素繊維製造工程
の途中で切断させることなく連続して熱処理することは
非常に難しかった。また、一般的に炭素繊維製造設備に
は毛羽、タール、油剤に由来するシリカ等の堆積があ
る。そのため、 前述のトウ接続システムを導入しても定
期的に設備の清掃が必要であり、 清掃後の設備昇温の
際、アクリル系繊維トウが蓄熱による耐炎化工程で糸切
れするのを防ぐため、 徐々に設備の内部温度を上げて所
定の条件に安定させている。昇温の間に消費されるアク
リル系繊維トウのロス量は大きく、 トウの繊度が大きく
なるほど前記ロスは増大するという問題があった。
【0009】本発明が解決しようとする課題は、所定長
に満たないアクリル系繊維トウパッケージを接続して連
続的に熱処理することを可能にすることであり、具体的
には廃棄されるアクリル系繊維トウの量を削減すること
によりアクリル系繊維製造工程の歩留まりと生産性向上
を図ると同時に、繊度の小さいアクリル系繊維トウを始
端部に接続して1つのパッケージとなし、 炭素繊維製造
設備の熱処理条件が安定するまでに消費されるアクリル
系繊維トウのロス量を削減し、炭素繊維製造工程の歩留
まりと生産性向上を図ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用効果】かかる課題
は、本発明の基本構成である、所定長を有する繊維トウ
を一単位とする繊維トウのパッケージであって、同パッ
ケージ内の繊維トウの一部に2本以上の繊維トウ同士の
接続部を有してなることを特徴とする繊維トウパッケー
ジにより解決される。本発明に係る繊維トウパッケージ
は、以降の多様な加工を計画どおり連続して行おうとす
るときに、常に所定の長さの繊維トウを有しているた
め、加工計画がたてやすく、且つ加工に要する繊維トウ
の管理も容易となる。本発明における繊維トウパッケー
ジとは、ボビンなどのトウ巻形態やケンスなどの容器へ
の収納形態をいう。
【0011】前記繊維トウ同士の接続は、単一の繊維ト
ウの終端部と少なくとも1本以上の繊維トウの始端部と
を接続することができる。例えば、複数のボビンに巻き
取られた繊維トウをまとめて1本の繊維トウとし、その
始端部を大型のボビンに巻き取られた繊維トウの終端部
とを接続する。勿論、接続する繊維トウがそれぞれ1本
であってもよい。
【0012】更に、前記繊維トウ終端部のトウの総繊度
N(dtex)と前記トウ終端部に接続される繊維トウ先端
部のトウの総繊度M(dtex)とが、次式(1)を満足し
ていることが、以降の工程通過性や接続強度の点から望
ましい。 M/N ≦ 1. 2 ……(1)
【0013】また、繊維トウ終端部のトウの総繊度N
(dtex)と前記トウ終端部に接続される繊維トウ先端部
のトウの総繊度M(dtex)とが、さらに次式(2)を満
足することが好ましい。 M/N ≧ 0. 2 ……(2)
【0014】上述のごとく接続された繊維トウが炭素繊
維製造用前駆体であることが好ましく、この繊維トウパ
ッケージから前駆体である前記炭素繊維製造用の繊維ト
ウを連続して焼成工程に導出して焼成し炭素繊維を製造
すると、繊維トウの接続部の蓄熱による影響がなく安定
した連続焼成が可能であり、生産効率も向上するため好
ましい。さらに、こうして得られる炭素繊維トウも高品
質であるため、例えば以降に切除される繊維トウ同士の
接続部の長さを、接続強度を勘案して予め設定すること
が可能となる。
【0015】また、上述のようにして製造される接続部
を含む連続長を有する炭素繊維トウを所定の長さに切断
してチョップドファイバーを製造する場合は、その接続
部による製品の品質への影響が低減されるため好まし
い。
【0016】
【発明の実施形態】以下に本発明の好ましい実施の形態
を詳しく述べる。本発明における炭素繊維製造用前駆体
繊維としては、通常、アクリル系の繊維トウが使われ
る。このアクリル系の繊維トウの構成繊維はアクリロニ
トリルを主成分として含有するアクリル繊維であれば、
特に限定されるものではないが、アクリロニトリル95
質量%以上とアクリロニトリルと共重合可能なビニル系
単量体5質量%からなるアクリル系繊維であることが好
ましい。さらに、このビニル系単量体が、耐炎化反応を
促進する作用を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタ
コン酸、またはこれらのアルカリ金属塩、もしくはアン
モニウム塩、及びアクリルアミド等の単量体群から選ば
れる1種類以上の単量体であることが、耐炎化反応を促
進する上で好ましい。
【0017】アクリル繊維トウは一般的にアクリル系重
合体の有機または無機溶媒溶液を凝固浴中に紡出し、水
洗後、延伸浴中で延伸するかあるいは延伸浴中で延伸後
水洗し、乾燥緻密化して製造される。
【0018】炭素繊維の製造工程は、このようなアクリ
ル繊維トウを200〜300℃の酸化性雰囲気中で加熱
処理する耐炎化工程によって耐炎化繊維とした後、引き
続いて1000℃以上の不活性雰囲気中で加熱処理する
炭素化工程によって炭素繊維とするのが一般的である。
【0019】本発明で用いられるアクリル繊維トウの接
続については、第1の繊維トウAに別の第2の繊維トウ
Bを接続する場合、 繊維トウBは少なくとも1本以上の
繊維トウから構成されており、 さらにこの繊維トウBに
1本あるいはそれ以上の繊維トウから構成される第3の
繊維トウCを接続することもできる。第2及び第3の繊
維トウB,Cを構成する繊維トウの太さは同じであって
も、異なる太さであってもよい。また第2及び第3の繊
維トウB,Cは後述する絡合装置の手前で、それぞれ複
数の繊維トウ同士をまとめても良いし、 予め複数のトウ
をまとめてあるパッケージから引き出した繊維トウであ
っても良い。
【0020】本発明は次回のパッケージにおける第1の
繊維トウAの始端部と第3の繊維トウCの終端部との間
に、第2の繊維トウBを始端部及び終端部をそれぞれ接
続しようとするときに、第2及び第3の繊維トウB,C
の長さには特に制限はないが、 後述するように炭素繊維
製造工程の条件が安定するまでの間に費やされる製品と
なる繊維トウの量を減じる目的の場合には、 費やされる
長さを予め測定しておき、 第3の繊維トウCを切除して
もよい繊度や材質を選び、その長さを炭素繊維製造工程
の工程条件が安定する期間に相当する長さに合わせるこ
とが好ましい。
【0021】繊維トウの繊度は炭素繊維製造条件、繊維
トウの性状等に応じて適正な範囲とすることが必要であ
る。繊維トウの終端部に別の繊維トウの始端部を接続す
る場合、トウ終端部の総繊度Nに対し、別のトウ始端部
の繊度Mを大きくとりすぎると、繊度Nに適した炭素繊
維製造条件よりも低温かつ低速の条件で処理することが
必要となり、 設備の昇温に伴う時間が増加し、 工程が安
定するまでに費やされる繊維トウの量が増えてしまう。
【0022】当然のことながら、工程が安定する前に処
理された繊維トウは通常の炭素繊維として扱うことはで
きない。そのため、繊維トウのロスが増えることにな
る。以上の理由により、M/N≦1.2にとどめること
が好ましい。より好ましくはM/N≦1とするのが良
い。一方、繊度Mを小さくする場合においては、その繊
度は特に制限されるものではないが、小さくしすぎる
と、絡合が不十分となり易く、 設備昇温時の処理温度及
び工程張力条件によっては工程の途中において、接続部
で切れる危険性が増える。そのため安定して全工程を通
過させるには、好ましくはM/N>0.2、より好まし
くはM/N≧0.5とするのが良い。
【0023】本発明では、トウ終端部に別のトウ始端部
を接続する前に、予め接続しようとする繊維トウの少な
くとも一方を耐炎化しておくこともできる。さらに、耐
炎化繊維を介して繊維トウの終端部と始端部とを接続し
てもよい。トウ端部の耐炎化処理については、格別な制
限は無く、例えば空気、オゾン、その他の酸化性雰囲気
で、200〜300℃の加熱処理を行うことにより行う
ことができる。加熱処理を行う装置としては、熱風循環
炉、ヒーターを用いたドライヤーなどが用いられる。ま
た、接続しようとする繊維トウの間に耐炎化繊維を介す
場合は、耐炎化工程通過後のトウを耐炎化繊維として用
いるのが簡易である。このときの耐炎化繊維の繊度は上
記範囲内のものを用いることが好ましい。
【0024】本発明におけるトウ同士の接続には流体絡
合が用いられる。流体による絡合装置とは、公知の絡合
ノズル(例えば、特公平1- 12850号公報や特開平
10- 226918号公報、特開2000- 14453
4号公報)や、図1及び図2に示すものがある。ここ
で、該交絡装置に加圧流体を供給する配管途中には、バ
ルブが設けられており、接続の際にのみ当該バルブが開
き加圧流体を供給するようにすること好ましい。流体絡
合による接続方法の他に、結び目を作って接続する手段
があるが、特に前駆体繊維トウ同士の場合や、あるいは
どちらか一方が耐炎化された繊維トウである場合の接続
では、焼成工程の耐炎化工程において蓄熱が生じやすく
なり、その結果糸切れが発生しやすい。また、耐炎化工
程通過後の炭素化工程においても、結び目部分の耐炎化
工程での酸素供給不足に起因する反応不足から糸切れが
起こりやすい。
【0025】したがって、本発明の繊維トウの接続は、
上述の流体絡合装置によって行われる。トウパッケージ
はボビンに巻かれた形態と収納容器に振り込まれた形態
があり、トウパッケージを作成するための製造装置は、
ボビンとボビン、 ボビンと収納容器、収納容器と収納容
器とでそれぞれ異なるが、絡合装置、駆動装置は共通で
ある。以下、パッケージの形態がボビンとボビンの場合
について、詳しく説明する。なお、収納容器より引き出
す場合は、ボビンスタンドの代わりに適当なガイドバー
群より構成される張力付与装置、収納容器に振り込む場
合は巻取り機の代わりに公知の収納機構を備えた装置に
より本発明の実施が可能となる。
【0026】本発明における繊維トウの引出しは、繊維
トウに撚りの入る、インサイドプル方式や立て取り方式
は適さず、ボビンから繊維トウをボビンを回転させなが
ら回転軸に対して直交する方向に引き出すことが必要で
ある。このような引き出しが可能であれば、何らその構
造を限定するものではない。後述するように、引き出さ
れた繊維トウを駆動装置によって解舒するにあたって、
安定な駆動が可能となるように、電磁ブレーキなどを設
けて、引き出される繊維トウに適当な張力を付与するこ
とが好ましい。さらに、本発明における繊維トウの駆動
装置とは、繊維トウにダメージ、撚りを発生させること
なく駆動できるものであれば何ら制約を受けるものでは
なく、通常に用いられる、例えばニップロール、ゴデッ
トロール、ネルソンロールなど適宜選択すればよい。
【0027】また、本発明における巻取り機とは、前駆
体繊維製造工程で使用され炭素繊維製造工程に供給され
る前駆体繊維トウのパッケージを形成させ得る通常のも
のを使用することができる。ただし、接続したトウを巻
き取る、すなわち巻き足す際に綾落ちなどを発生させず
安定に巻き取ることが必要であり、また巻取り後のパッ
ケージ形状が崩れないように、例えばスクエアエンド型
パッケージであればそのワインド比やトラバース幅など
巻取り機の仕様を前駆体繊維製造工程で用いられる巻き
取り機と同一仕様の巻取り機とすることが好ましい。な
お、本発明の駆動装置及び巻取り装置には、繊維トウを
接続した後の巻取りにあたり、所定長の巻取りが完了し
た時点で自動的に駆動と巻取りを停止する検知器を備え
るようにしてもよいことは勿論である。
【0028】既述したとおり、本発明にあっては、前駆
体繊維トウ同士の接続に流体絡合が用いられる。接続に
用いられる流体は液体、気体など加圧して供給可能なも
のであれば特に限定されるものではないが、通常は空気
が用いられる。さらに、この流体絡合装置に、接続しよ
うとする二つのトウを重ねて把持するトウ把持装置を設
けてもよい。繊維トウを挟んで把持できるものであれ
ば、その種類は何ら制約を受けるものではなく、トウ把
持部の形状も、繊維トウの繊度に応じて適宜決定すれば
よい。さらには、トウ把持装置が流体絡合装置の前後に
対をなして配置されることが操作を簡便にする上では望
ましく、また、これら流体絡合装置の前後に配置された
トウ把持装置が繊維トウを把持した後、そのスパンを縮
めるように動作して所定量の弛みを繊維トウに付与でき
る機構とすることも、絡合接続の状態を制御するために
は好ましい。
【0029】絡合接続用のノズル形状は、上述した公知
の絡合ノズルの他に、図1に示す形状のものが採用で
き、また特に接続しようとする繊維トウの一方のみが耐
炎化された場合や、耐炎化糸を間に介して接続する場合
には、図2に示す形状のものが炭素繊維製造工程の工程
通過性を高めるためには望ましい。また、これらの絡合
ノズルは接続しようとする2本のトウの糸通し性を容易
にするために糸道に沿って2分割可能な構造とすること
が操作性の点から好ましい。
【0030】図1に示す絡合ノズル装置は、2個の絡合
ノズル2が、接続しようとする繊維トウA,Bの長手方
向に所要の間隔をおいて配され、その絡合ノズル2,2
の繊維トウ出入口にそれぞれ繊維トウ把持装置1,1が
配されている。前記絡合ノズル2は、図2に示すよう
に、断面円形の糸道3を2分割する上下2個のブロック
体4,5から構成され、その一方のブロック体5には判
割りとされた糸道3bに連通する単一の流体噴射孔6が
形成されている。接続しようとする2本の繊維トウA,
Bの接続端部を重ね合わせて、判割りとされた前記糸道
3bに通し、他の半割りとされた糸道3aを前記糸道2
bに重ねるようにして、他方のブロック体4を重ねたの
ちに両者を固定し、流体噴射孔6から圧縮空気を噴射
し、接続端部の構成繊維を絡合させて接続する。
【0031】図3及び図4に示す絡合ノズル装置は、多
数組の絡合ノズル対12が、接続しようとする繊維トウ
A,Bの長手方向に所定の間隔をあけて並設されてお
り、多数組の絡合ノズル対12の繊維トウA,Bの長手
方向両端に隣接してそれぞれ繊維トウ把持装置11,1
1が配設されている。個々の絡合ノズル対12は、図4
に示すように、糸道13を挟んで上下に配される一対の
ブロック体15a,15bから構成され、上部ブロック
体15aには繊維トウA,Bの長手方向に直交して流体
噴射孔16aが一端を開口した盲孔状に形成され、その
上部ブロック体15aの下面には前記流体噴射孔16a
に連通し、同流体噴射孔16aに沿って所定のピッチで
列設された多数の流体噴射小孔16a’,16a’,
…,16a’が開口している。一方の下部ブロック体1
5bも、前記上部ブロック体15aと略一致する構成を
備えているが、下部ブロック体15bの流体噴射小孔1
6b’,16b’,…,16b’が開口する上面には、
繊維トウA,Bを案内する前記流体噴射小孔16b’,
16b’,…,16b’を横断するようにして上記糸道
13が形成されている。
【0032】図4に示す絡合ノズル対12では、接続し
ようとする第1繊維トウAである前駆体繊維トウと第2
繊維トウBである耐炎化繊維トウを重ね合わせて収納す
る糸道13の断面形状を、偏平矩形形状とすることが好
ましい。接続を行う繊維トウA,Bのトータルの繊度に
よってその寸法は異なるが、繊維トウを重ねた方向、す
なわち糸道の偏平矩形断面形状の短辺である高さ方向の
寸法は、1〜5mm、好ましくは2〜4mmとすること
が好適である。この高さが小さいと、すなわちトウの厚
みが規制されると、接続部が固く締まる傾向にあり、焼
成工程での蓄熱の原因となる。これとは逆にこの寸法が
大きすぎると、長辺寸法との関係にも影響されるが、接
続しようとする繊維トウの厚みが厚くなるため、絡合が
不十分になりがちである。
【0033】長辺の寸法に関しては、接続を行う2本の
繊維トウA,Bのトータルデニールに基づく好適な値が
ある。その好適な値とは、接続を行おうとするアクリル
繊維トウのトータル繊度D(dTex)と、長辺寸法L
(mm)との間で、D/ Lの値が2000〜5000で
あることが好ましい。D/ Lが小さいと繊維トウが糸道
の幅方向全体に広がらず、すなわち2本の繊維トウがず
れて重なり、絡合時にねじれが発生したり、極端な場合
には2本の繊維トウが隣り合った状態となり絡合が行わ
れなかったりする。また逆に、この値が大きいと、すな
わち偏平矩形断面の長辺寸法が短いと、繊維トウの厚み
が大きいため十分な混繊、絡合が起こりにくくなる。
【0034】糸道の長手方向に対して複数列設けられた
上下の流体噴射孔16a,16bは、図4に示すとお
り、その偏平矩形断面形状の糸道13の長辺に沿って形
成される複数個の小孔16a’,16b’の列として構
成される。この際の流体噴射孔16a,16bの各小孔
16a’,16b’の口径は0. 3〜1. 2mm、より
好ましくは0. 5〜1mmであることが望ましい。さら
に、その列上の孔の間隔は、0. 8〜1. 6mmの等ピ
ッチとすることが均一な絡合部を得るには好ましい。
【0035】本発明における繊維トウの流体処理手段
は、繊維トウに沿った糸道の長手方向に対して複数列配
置される流体噴射孔列に対して、図4に示すように、そ
の列間に所要の間隔を有していることが好ましい。ま
た、複数列配置された流体噴射孔列のそれぞれに糸道を
分割して流体を供給して噴射させてもよいし、連続する
糸道として流体を一括して同時に供給して噴射させるこ
とも可能である。操作性や接続処理に要する時間の面か
らは後者が好適である。
【0036】一括して流体を供給する場合において、糸
道が各流体噴射孔列毎に間隔を有さず、連続した形状の
場合、繊維トウに沿って複数列配置された流体噴射孔列
から噴射した流体は糸道内で互いに干渉し合い、特に多
数列配置された流体噴射孔列のうちの流体処理手段の中
央付近で噴射される流体は、その圧力抵抗が高くなるた
めに繊維トウの絡合に必要な噴射量が得られず、そのた
めにこの中央付近では十分な絡合が得られない。糸道が
連続している場合は、流体噴射孔の各列に個別に流体を
供給しても、糸道に沿って流体が吹き出す長さが異なる
ため、後述するように糸道長さに起因すると考えられる
噴射流体の流れの乱れによる繊維トウの乱れが発生し、
それぞれの絡合が均一にならない場合がある。
【0037】図4に示すように、糸道13を流体噴射孔
列毎に間隔をおくことにより、繊維トウの長手方向に対
して均一な絡合状態を得ることができる。流体噴射孔1
6a,16bの各列ごとに区切られる各ノズルの糸道長
さは、10〜40mmであることが好ましい。特にこの
長さが大きいと、その理由は定かでないが、それぞれの
糸道の両端部において噴射流体の流れの乱れに起因する
と考えられる繊維トウの乱れが発生し、それぞれの繊維
トウが小束状となった結節を生じやすくなる。さらに各
ノズルの間隔は、5mmから10mmが好ましい。
【0038】この寸法で間隔をあけることにより、各ノ
ズルで流体噴射孔から噴射した流体が糸道を経由して各
ノズルの両端より排出されるが、隣接したノズルから排
出される流体とぶつかり合って、流体処理手段本体から
その側方へ排出される。特に図2に示すとおり、共通ベ
ースプレートや上蓋側の共通プレートによりトウの重合
せ方向への排出を規制すると、側方への流体の排出が主
となり、その結果、前接続される繊維トウの構成繊維が
扁平矩形断面形状をもつ糸道の幅方向に広げられ、均一
な絡合が可能になる。
【0039】本発明の流体処理手段は、上述のように糸
道に沿って2分割できる構造であることが、接続される
繊維トウの各接続を配置するためには、その操作の面か
ら望ましい。2分割した状態で接続される繊維トウの端
部を重ね合わせて糸道上に配置し、その後に流体処理手
段本体を閉じる。閉じた際の固定方法は特に限定される
ものではなく、ねじによる締結、クランプなど適宜その
方法を選択すれば良い。さらに、糸道に沿って2分割さ
れた流体処理手段は、2分割されたそれぞれが一体であ
るかまたは共通のベースプレートなどに取り付けられて
いることが、その開閉操作の簡便性の点から好ましい。
【0040】本発明において接続され一つのパッケージ
とされた前駆体繊維トウは、通常の炭素繊維製造工程に
て熱処理され炭素繊維となる。接続部分は、その性質
上、用途によっては通常の炭素繊維長繊維として用いる
ことはできないが、その場合は、製品となる炭素繊維パ
ッケージに含まれぬようにすれば良い。この場合、炭素
繊維製造工程の前駆体繊維トウ供給工程に、カラーチェ
ッカーなどの接続部が工程に供給されることを検知でき
る設備を配置するなどして接続部の到来を検知し、製品
に混入しないようにすることが可能である。
【0041】また、炭素繊維チョップドファイバー用途
では、炭素繊維の長繊維トウを切断して製品とするた
め、接続部がチョップ工程に供給されても、接続部もカ
ットされ通常のチョップドファイバー製品として製造で
きる。また、接続部のボリュームアップに起因するミス
カットが発生しても、チョップドファイバー製造工程中
に篩別工程を設けることにより製品にならないよう除外
することも可能である。
【0042】以下、炭素繊維製造用前駆体繊維束として
炭素繊維製造用のアクリル系繊維トウを用いて、本発明
による前駆体繊維トウパッケージの作製と炭素繊維製造
工程に供給した際の工程通過性について、実施例に基づ
いて図面を参照しながら具体的に説明する。
【0043】なお、以下の実施例及び比較例中にて述べ
る工程通過率は、接合部を有するアクリル系繊維トウを
耐炎化工程及び炭素化工程に通して、炭素繊維としたと
きに、それぞれの工程で切断すること無しに通過した接
合部の数を、試験したトウの全接合部に対する百分率
(%)により表したものである。また、工程張力(mN
/Tex)は、接合部を有するアクリル系繊維トウによ
る炭素繊維の製造を行った時の耐炎化工程及び炭素化工
程でのアクリル系繊維トウの張力を単位繊度当たりに換
算した数値である。
【0044】また、以下に実施例と比較例とを記載する
が、図5に示す繊維トウの端部接続装置により、前駆体
繊維トウに別の前駆体繊維トウを接続して巻き取った。
図5に示す繊維トウの端部接続装置は、繊維トウの接続
方向に順次設置された、水平軸回りに駆動回転するスピ
ンドル22と共に回転する1以上の小型ボビン21a〜
21eを支持するボビンスタンド23と、各ボビン21
a〜21eの繊維トウを引き出して送り出すゴデッドロ
ールの駆動装置24と、上記絡合ノズル装置を備えた流
体絡合装置25と、繊維トウを大型ボビン21A〜21
Eに巻き取る巻取り機26とを備えている。
【0045】(実施例1)単糸繊度1.2dtex、フ
ィラメント数12000のアクリル系繊維トウの巻き終
わりの端部が、240℃の熱風が循環している耐炎化炉
中で5mN/texの張力下に70分間の耐炎化処理を
施すことにより密度1.36g/cm3 の耐炎化端部と
された前駆体繊維トウBの大型ボビン21Aと、同様の
単糸繊度とフィラメント数6000からなり、同様に端
部を耐炎化処理した前駆体繊維トウAの2個の小型ボビ
ン21aを用意した。このとき密度1.36g/cm3
に耐炎化された端部の長さは1mであった。
【0046】始めに2個の小型ボビン21aを、図5に
示すボビンスタンド23に装着し、一方の大型ボビン2
1Aを巻取り機26に装着した。次いで小型ボビン21
aの繊維トウAは、駆動装置24を停止した状態でゴデ
ットロールに糸掛けしながら引出し、また大型ボビン2
1Aの耐炎化された繊維トウBの末端を引き出して、流
体絡合装置25の、図1及び図2に示すトウ把持装置
1,1により両繊維トウA,Bの端部を重ね合わせて把
持し、さらに重ね合わせた状態のまま糸道3に沿って2
分割可能な流体絡合ノズル2の糸道3に配置した後、同
ノズル2を閉じた。
【0047】図5に示す装置において、流体絡合装置2
5のトウ把持装置1,1のスパンは300mm、絡合ノ
ズル2は図2に示すもので、全長60mm、糸道3の形
状寸法は5mmφの円形断面からなり、流体噴射孔6は
2.5mmφとして糸道3の中央部に1箇所垂直に形成
している。一対の繊維トウ把持装置1,1は、絡合接続
する2本の繊維トウA,Bを互い違いに重ね合わせた両
端部を把持して流体絡合ノズル2の道糸3内に配置した
のち、そのニップスパンを20mm短縮して繊維トウに
弛みを付与し、次いで加圧エアを供給して絡合接続を行
った。この際、供給エアの圧力は2kg/cm2 、エア
の噴射時間は5秒とした。エアの噴射による絡合が終了
した後、ノズルを分割し、端糸を挟みで切断して除去し
た後ニップ装置のニップを開放し、接続操作を終了し
た。
【0048】この後、ゴデットロールにより小型ボビン
21aの前駆体繊維トウAの駆動を行うとともに巻取り
機で巻取りを行い、大型ボビン21Aの上に小型ボビン
21aの前駆体繊維トウAを200m巻き足して、炭素
繊維製造用前駆体トウパッケージP1を作製した。同様
にして作製した計10本のパッケージP1のアクリル繊
維トウを単糸繊度1.2dtex、フィラメント数12
000の未接続アクリル系繊維トウ(ダミー糸)と共
に、230〜270℃の熱風が循環している耐炎化炉中
にて、工程張力14mN/Texにてアクリル繊維トウ
の収縮を制限しながら、供給速度77m/hrで30分
間の耐炎化処理に付し、続いて300〜1300℃の温
度分布を有する窒素雰囲気中からなる炭素化炉中にて、
同じく工程張力7mN/Texにして該アクリル繊維ト
ウの収縮を制限しながら2分間の炭素化処理に付すこと
により、炭素繊維を製造した。
【0049】上述のような炭素繊維製造時の耐炎化工程
及び炭素化工程における接続部の工程通過率は表1に示
すとおりである。なお、耐炎化工程が安定するまでに費
やした時間は約3時間で、この間に供給されたトウ量は
3.4kg(ダミー糸を除く)であった。
【0050】(実施例2)単糸繊度1.2dtex、フ
ィラメント数3000のアクリル系繊維トウの巻終り端
部が、240℃の熱風が循環している炉中で5mN/t
exの張力下に80分間の耐炎化処理を施すことによっ
て密度1.36g/cm3 の耐炎化端部とされた前駆体
繊維トウの3個の小型ボビン21bと、単糸繊度1.2
dtex、フィラメント数12000のアクリル系繊維
トウの巻終りの端部が、240℃の熱風が循環している
炉中で5mN/texの張力下に70分間の耐炎化処理
に付された密度1.36g/cm3 の耐炎化端部とした
前駆体繊維トウの1個の大型ボビン21Bを用意した。
このときの耐炎化された端部の長さは1mであった。
【0051】始めにボビン21bを、図5に示す回転可
能なスピンドル22を備えてなるボビンスタンド23に
装着し、一方の大型ボビン21Bを巻取り機26に装着
した。次いで、小型ボビン21bは駆動装置24を停止
した状態でゴデットロールに糸掛けしながら引出し、ま
た大型ボビン21Bの耐炎化されたトウ端部を引き出し
て重ね合わせ、その接続端部の両端を流体絡合装置25
のトウ把持装置1,1により把持し、さらに重ね合わせ
た状態のまま、図2に示す糸道3に沿って2分割可能な
流体絡合ノズル2の糸道3に配置したのち、同ノズル2
を閉じた。
【0052】図5に示す装置において、流体絡合装置2
5のトウ把持装置1,1のスパンは300mm、絡合ノ
ズル2は図1に示す形状のものを使い、全長60mm、
糸道3の形状寸法は5mmφの円形断面、流体噴射孔は
糸道3の中央部に糸道3に対し垂直に1箇所2.5mm
φとしたものを用いた。トウの把持装置1,1は、絡合
接続する2本の繊維トウを把持して流体絡合ノズル内に
配置して後、ニップスパンを20mm短縮して繊維トウ
の接続部に弛みを付与し、次いで加圧エアを供給して絡
合接続を行った。この際、供給エアの圧力は2kg/c
2 、エアの噴射時間は5秒とした。エアの噴射による
絡合が終了した後、ノズル2を分割し、端糸を挟みで切
断して除去した後、把持装置1,1の把持を開放し、接
続操作を終了した。
【0053】そのあと、ゴデットロールにより3個の小
型ボビン21bの前駆体繊維トウの駆動を行うとともに
巻取り機26で巻取りを行い、1個の大型ボビン21B
の上に小型ボビン21bの前駆体繊維トウを230m巻
き足して、炭素繊維製造用前駆体の繊維トウパッケージ
P2を作製した。同様にして作製した計10本のパッケ
ージP2のアクリル繊維トウを単糸繊度1.2dte
x、フィラメント数12000の未接続アクリル系繊維
トウ(ダミー糸)と共に、230〜270℃の熱風が循
環している耐炎化炉中にて、工程張力14mN/Tex
にてアクリル繊維トウの収縮を制限しながら、供給速度
77m/hrで30分間の耐炎化処理に付し、続いて3
00〜1300℃の温度分布を有する窒素雰囲気中から
なる炭素化炉中にて、同じく工程張力7mN/Texに
して該アクリル繊維トウの収縮を制限しながら2分間の
炭素化処理に付すことにより、炭素繊維を製造した。
【0054】こうした炭素繊維製造時の耐炎化工程及び
及び炭素化工程におけるトウ接続部の工程通過率は表1
に示す通りである。なお、耐炎化工程が安定するまでに
費やした時間は約3時間で、この間に供給されたトウ量
は2.5kg(ダミー糸を除く)である。
【0055】(実施例3)単糸繊度1.2dtex、フ
ィラメント数12000のアクリル系繊維トウの巻終り
端部を240℃の熱風が循環している耐炎化炉中で5m
N/texの張力下で70分間の耐炎化処理を施すこと
によって密度1.36g/cm3 の耐炎化端部にした前
駆体繊維トウの3個の小型ボビン21cと、単糸繊度
1.2dtex、フィラメント数50000のアクリル
系繊維トウの大型ボビン21Cと、単糸繊度1.2dt
ex、フィラメント数24000のアクリル系繊維トウ
の巻終り端部を240℃の熱風が循環している耐炎化炉
中で5mN/texの張力下で70分間の耐炎化処理を
施すことによって密度1.36g/cm3 の耐炎化端部
にした前駆体繊維トウの1個の小型ボビン21dを用意
した。このときの、小型ボビン21cと21dの耐炎化
された端部長さは1mであった。
【0056】始めに3個の小型ボビン21cを、図3に
示す駆動回転可能なスピンドル22を備えてなるボビン
スタンド23に装着し、一方の大型ボビン21Cは巻取
り機26に装着した。次いで、小型ボビン21cは耐炎
化された端部を駆動装置24を停止した状態でゴデット
ロールに糸掛けしながら引出し、また大型ボビン21C
の端部を巻取り機側から引き出して、流体絡合装置25
の図4に示すトウ把持装置11,11により重ね合わせ
て把持し、さらに重ね合わせた状態のまま糸道13に沿
って図3及び図4に示した2分割可能な流体絡合ノズル
12の糸道13に配置して後、ノズル12を閉じた。
【0057】図5に示す装置において、流体絡合装置2
5のトウ把持装置11,11のスパンは300mm、絡
合ノズル12は図4に示す形状のもので、各流体噴射孔
毎のノズル糸道13の道方向の長さ20mmのものを、
隣接する各ノズル12の間隔5mmで10列並べた形状
のものである。糸道13の断面寸法は32×2. 5mm
の矩形断面形状を持ち、流体噴射孔16の小孔16a,
16bは糸道13の上下寄りに糸道13に対し垂直に上
下各40ヵ所0. 5mmφとしたものを用いた。ブロッ
ク体15a,15bは糸道13を二分割できる構造とし
てあり、10列並べたノズル12は共通プレート17に
固定されている。
【0058】繊維トウの把持装置11は絡合接続する2
本の繊維トウを把持して流体絡合ノズル内に配置した
後、ニップスパンを7.5mm短縮して繊維トウに弛み
を付与し、次いで加圧エアを供給して絡合接続を行っ
た。この際、供給エアの圧力は2. 5kg/cm2 、エ
アの噴射時間は3秒とした。エアの噴射による絡合が終
了した後、ノズル12をブロック15a,15bを分割
し、端糸を挟みで切断して除去した後、保持装置11,
11のニップを開放し、接続操作を終了した。このあ
と、ゴデットロールにより小型ボビン21cを駆動して
前駆体繊維トウを巻取り機26で巻取りを行い、大型ボ
ビン21C上に小型ボビン21cの前駆体繊維トウを3
0m巻き足した。続いて、小型ボビン21cの繊維トウ
をはさみで切断し、同小型ボビン21cを外した後、別
に用意した小型ボビン21dをボビンスタンド23に装
着した。同様にして、3個の小型ボビン21cに巻かれ
ていた繊維トウの終端部を合わせて、小型ボビン21d
の繊維トウの始端部を引き出し、両者の端部を重ねて流
体絡合ノズル25の糸道13に配置して後、ノズル25
を閉じた。
【0059】糸道13は断面寸法24×2. 5mmの矩
形断面形状を持ち、エア噴射小孔16a’,16b’を
糸道13の上下寄りに糸道13に対して垂直に上下各3
0ヵ所φ0. 5としたものを用いた以外は、上記小型ボ
ビン21cと大型ボビン21Cとの繊維トウ端部同士の
接続条件で接続操作を行った。この後、ゴデットロール
により小型ボビン21dを駆動するとともに前駆体繊維
トウを巻取り機26により巻き取り、大型ボビン21C
上にボビン21dの前駆体トウを235m巻き足して、
炭素繊維製造用前駆体トウボビンパッケージP3を作製
した。
【0060】同様にして作製した計5本のパッケージP
3のアクリル繊維トウを単糸繊度1.2dtex、フィ
ラメント数50000の未接続アクリル系繊維トウ(ダ
ミー糸)と共に、220〜260℃の熱風が循環してい
る耐炎化炉中にて、工程張力14mN/Texにてアク
リル繊維トウの収縮を制限しながら、供給速度38m/
hrで60分間の耐炎化処理に付し、続いて300〜1
300℃の温度分布を有する窒素雰囲気中からなる炭素
化炉中にて、同じく工程張力7mN/Texにして該ア
クリル繊維トウの収縮を制限しながら2分間の炭素化処
理に付すことにより、炭素繊維を製造した。
【0061】炭素繊維製造の耐炎化工程及び及び炭素化
工程における接続部の工程通過率は表1に示す通りであ
る。なお、耐炎化工程が安定するまでに費やした時間は
約7時間で、この間に供給されたトウ量は4.1kg
(ダミー糸を除く)である。
【0062】(比較例)単糸繊度1.2dtex、フィ
ラメント数50000のアクリル系繊維トウの小型ボビ
ン21eと、単糸繊度1.2dtex、フィラメント数
24000のアクリル系繊維トウの各巻終り端部を24
0℃の熱風が循環している炉中で5mN/texの張力
下で70分間の耐炎化処理を施すことにより密度1.3
6g/cm3 の耐炎化端部とした繊維トウの大型ボビン
21Eとを、それぞれ1個用意した。このときの大型ボ
ビン21Eの耐炎化された端部長さは1mであった。
【0063】始めに小型ボビン21eを、図5に示す駆
動回転可能なスピンドル22を備えたボビンスタンド2
3に装着し、一方の大型ボビン21Eは巻取り機26に
装着した。次いで、小型ボビン21の駆動装置24を停
止した状態でゴデットロールに糸掛けしながら引出し、
一方の大型ボビン21Eの耐炎化された端部を巻取り機
側から引き出して、流体絡合装置25のトウ把持装置1
1,11により重ね合わせて接続部を把持し、さらに重
ね合わせた状態のまま糸道13(図4)に沿って2分割
可能な流体絡合ノズル12の糸道13に配置して後、ノ
ズル12を閉じた。
【0064】図5に示す装置において、流体絡合装置2
5のトウ把持装置11,11のスパンは300mm、絡
合ノズル12は図4に示す形状のもので、各流体噴射孔
16a,16b毎のノズル糸道長さが20mmのブロッ
ク体15a,15bを、隣接する各ノズル12の間隔5
mmで10列並べた形状のものである。糸道13は断面
寸法が32×2. 5mmの矩形断面形状を持ち、エア噴
射小孔16a’,16b’は糸道13の上下寄りに糸道
13に対して垂直に上下各40箇所0. 5mmφとした
ものを用いた。ノズル12のブロック体15a,15b
は糸道を二分割できる構造とされ、10列並べたノズル
12は共通プレート17に固定されている。
【0065】繊維トウの把持装置11,11は絡合接続
する2本の繊維トウを把持して流体絡合ノズル12内に
配置した後、そのニップスパンを7.5mm短縮して繊
維トウに弛みを付与し、次いで加圧エアを供給して絡合
接続を行った。この際、供給エアの圧力は2. 5kg/
cm2 、エアの噴射時間は3秒とした。エアの噴射によ
る絡合が終了した後、ノズル12を分割し、端糸を挟み
で切断除去した後、把持装置11,11の把持を開放
し、接続操作を終了した。この後、ゴデットロールによ
り小型ボビン21eの駆動を行うとともに前駆体繊維ト
ウを巻取り機26により巻き取り、大型ボビン21Eの
上に小型ボビン21eの前駆体繊維トウを200m巻き
足して、炭素繊維製造用前駆体トウのボビンパッケージ
P4を作製した。
【0066】同様にして作製した計5本のパッケージP
4のアクリル繊維トウを単糸繊度1.2dtex、フィ
ラメント数24000の未接続アクリル系繊維トウ(ダ
ミー糸)と共に、225〜265℃の熱風が循環してい
る耐炎化炉中にて、工程張力14mN/texにてアク
リル繊維トウの収縮を制限しながら、供給速度50m/
hr、45分間の耐炎化条件で処理を行ったが、昇温す
る途中で蓄熱による暴走反応が発生し、実験を中断せざ
るを得なかった。
【0067】
【表1】
【0068】表1からも明らかなごとく、本発明によれ
ば特に高温、高張力下の過酷な条件下で処理がなされる
炭素繊維の製造工程にあっても、その工程通過性が安定
しており、また、耐炎化工程が安定するまでに削減され
る接続部を有する場合のパッケージにおける繊維トウの
量が著しく軽減されてる。すなわち、長さの不揃いな前
駆体トウパッケージを接続して所定長となし、焼成工程
そのものには何ら変更を要さずに、前駆体繊維トウ製造
工程において発生する所定長に達しない前駆体繊維トウ
を焼成可能とし、前駆体繊維トウ製造工程の歩留まりと
生産性向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用される流体絡合ノズル例による繊
維トウ端部同士の接続時の状態を示す断面図である。
【図2】前記ノズルの構造を示す説明図である。
【図3】本発明に使用される他の流体絡合ノズル例によ
る繊維トウ端部同士の接続時の状態を示す断面図であ
る。
【図4】前記ノズルの構造を示す説明図である。
【図5】本発明に使用される繊維トウ同士の接続装置の
一例を概略で示す説明図である。
【符号の説明】
1 繊維トウ把持装置 2 絡合ノズル 3,3a,3b 糸道 4,5 ブロック体 6 流体噴射孔 11 繊維トウ把持装置 12 流体絡合ノズル(対) 13 糸道 15a,15b ブロック体 16a,16b 流体噴射孔 16a’,16b’ 流体噴射小孔 17 共通プレート 21a〜21e 小型ボビン 21A〜21E 大型ボビン 22 スピンドル 23 ボビンスタンド 24 駆動装置 25 流体絡合装置 26 巻取り機 P1〜P4 繊維トウパッケージ A〜C 繊維トウ
フロントページの続き (72)発明者 國澤 孝彦 広島県大竹市御幸町20番1号 三菱レイヨ ン株式会社中央技術研究所内 Fターム(参考) 3F115 AA05 BA03 BA18 BA27 4L037 CS02 CS03 CT21 FA01 PA53 PS02 PS12

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定長を有する繊維トウを一単位とする
    繊維トウのパッケージであって、 同パッケージ内の繊維トウの一部に2本以上の繊維トウ
    同士の接続部を有してなることを特徴とする繊維トウパ
    ッケージ。
  2. 【請求項2】 少なくとも1本以上の繊維トウの終端部
    と少なくとも1本以上の繊維トウの始端部とが接続され
    てなることを特徴とする請求項1記載の繊維トウパッケ
    ージ。
  3. 【請求項3】 繊維トウ終端部のトウの総繊度N(dte
    x)と前記トウ終端部に接続される繊維トウ先端部のト
    ウの総繊度M(dtex)とが、次式(1)を満足してなる
    ことを特徴とする請求項1記載の繊維トウパッケージ。 M/N ≦ 1. 2 ……(1)
  4. 【請求項4】 繊維トウ終端部のトウの総繊度N(dte
    x)と前記トウ終端部に接続される繊維トウ先端部のト
    ウの総繊度M(dtex)とが、さらに次式(2)を満足し
    てなることを特徴とする請求項3記載の繊維トウパッケ
    ージ。 M/N ≧ 0. 2 ……(2)
  5. 【請求項5】 2本の繊維トウを重ねて接続されるとき
    の総繊度D(dtex)と、その繊維トウの幅寸法L
    (mm)との比の値が2000〜5000である請求項
    1〜4のいずれかに記載の繊維トウパッケージ。
  6. 【請求項6】 前記繊維トウが炭素繊維製造用前駆体で
    あることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の
    繊維トウパッケージ。
  7. 【請求項7】 接続される繊維トウの間に、さらに他の
    繊維トウが接続されてなり、前記他の繊維トウの長さが
    接続終了後における焼成工程の昇温期間に相当する長さ
    であることを特徴とする請求項6記載の繊維トウパッケ
    ージ。
  8. 【請求項8】 請求項6又は7に記載の繊維トウパッケ
    ージから前駆体である前記炭素繊維製造用の繊維トウを
    連続して焼成工程に導出し焼成して炭素繊維を製造する
    ことを特徴とする炭素繊維の製造方法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の製造方法により製造され
    てなることを特徴とする炭素繊維トウ。
  10. 【請求項10】請求項8記載の製造方法により製造され
    た連続長を有する炭素繊維トウを所定の長さに切断する
    ことを特徴とするチョップドファイバーの製造方法。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010133074A (ja) * 2008-11-10 2010-06-17 Toray Ind Inc 糸繋ぎ接合部および糸繋ぎ接合部を有する炭素繊維の製造方法。
KR101564801B1 (ko) 2008-11-10 2015-10-30 도레이 카부시키가이샤 실 연결 접합부를 갖는 섬유 다발, 및 그의 제조 방법, 및 탄소 섬유의 제조 방법

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010133074A (ja) * 2008-11-10 2010-06-17 Toray Ind Inc 糸繋ぎ接合部および糸繋ぎ接合部を有する炭素繊維の製造方法。
KR101564801B1 (ko) 2008-11-10 2015-10-30 도레이 카부시키가이샤 실 연결 접합부를 갖는 섬유 다발, 및 그의 제조 방법, 및 탄소 섬유의 제조 방법

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