JP2003313625A - 高周波焼入用軸受鋼およびその製造方法 - Google Patents
高周波焼入用軸受鋼およびその製造方法Info
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Abstract
り効率的に製造することができる、被削性に優れた高周
波焼入用軸受鋼およびその製造方法。 【解決手段】 質量%で、C:0.5〜0.8%、M
n:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下を含有
し、好ましくはSi:0.35%以下、P:0.03%
以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、C
r:0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.0
40%から選択される1種又は2種以上をさらに含有す
る高周波焼入用軸受鋼が、ラメラーパーライトおよび球
状セメンタイトからなる混合組織を有することを特徴と
する。製造方法は該軸受鋼を725〜760℃まで加熱
し、50℃以下/hrの冷却速度で500〜650℃ま
で冷却し、その後放冷し冷間加工し、更に750〜80
0℃まで加熱し、10〜100℃/hrの冷却速度で5
00〜650℃まで冷却し、放冷することによる。
Description
周波焼入用軸受鋼およびその製造方法に関し、更に詳し
くは、冷間加工を施しその後に切削加工や矯正を施すこ
とにより、所望形状の製品をより効率的に製造すること
ができる高周波焼入用軸受鋼およびその製造方法に関す
るものである。
車軸、クランク軸、ピストン棒、連接棒、歯車、レー
ル、その他の機械部品用の鋼材として広く使用されてい
る。そうした高周波焼入用軸受鋼は、冷間加工性を向上
させるための熱処理と、冷間加工とを繰り返しながら所
定寸法に加工され、その後高周波焼入れをした後に切削
加工されて所望の形状に加工される。なお、所望の形状
に加工する過程においては、適宜矯正がなされている。
ールを製造する場合においては、質量%で、C:0.5
5%、Si:0.18%、Mn:1.47%、P:0.
019%、S:0.027%、Ni:0.06%、C
r:0.16%、O2 :0.0005%を含有する炭素
鋼の丸材を720℃の温度で約7時間程度熱処理した
後、冷間引き抜き加工を行い、さらに、同様の熱処理と
冷間引き抜き加工を繰り返し行って、所定寸法からなる
高周波焼入用軸受鋼を製造していた。なお、応力除去を
目的とした最後の熱処理においては、820〜850℃
の温度から630℃まで50℃/hrの冷却速度で冷却
し、その後放冷することにより、得られた高周波焼入用
軸受鋼に被削性を付与していた。
た成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼を冷間引き抜き
加工する場合および切削加工する場合においては、最終
熱処理した後の硬さが93〜96HRBと高く、切削加
工の際の加工抵抗が大きくなって被削性にやや劣ること
から、さらなる改善が要請されていた。
ものであって、その目的とするところは、被削性に優れ
た高周波焼入用軸受鋼を提供すること、および、冷間加
工を施しその後に切削加工や矯正を施すことにより、所
望の形状からなる製品をより効率的に製造することがで
きる高周波焼入用軸受鋼の製造方法を提供することにあ
る。
項1に記載の高周波焼入用軸受鋼は、質量%で、C:
0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :
0.002%以下を含有し、ラメラーパーライトおよび
球状セメンタイトからなる混合組織を有することに特徴
を有するものである。請求項2に記載の発明は、請求項
1に記載の高周波焼入用軸受鋼において、質量%で、S
i:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.0
3%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.5
%およびAl:0.005〜0.040%から選択され
る1種又は2種以上をさらに含有することに特徴を有す
るものである。
らなる高周波焼入用軸受鋼が、冷間加工性に優れた球状
セメンタイトと、切削加工の応力集中源となるラメラー
パーライトとが混在する金属組織を有するので、切削抵
抗が低下し、その結果、被削性が顕著に向上する。さら
に、これらの発明によれば、上記の成分組成を含有する
ので、レール部材等の機械材料部品に好ましく適用でき
る機械的特性を有している。
入用軸受鋼の製造方法は、質量%で、C:0.5〜0.
8%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以
下を含有する高周波焼入用軸受鋼を750〜800℃ま
で加熱し、当該温度で所定時間保持した後、10〜10
0℃/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、
その後放冷することに特徴を有するものである。
高周波焼入用軸受鋼を上記温度パターンで熱処理したの
で、その高周波焼入用軸受鋼にラメラーパーライトおよ
び球状セメンタイトからなる混合組織を形成することが
できる。混合組織中のラメラーパーライトは、切削加工
の際の応力集中源となり、高周波焼入用軸受鋼に優れた
被削性を持たせることができる。さらに、この方法で処
理された高周波焼入用軸受鋼は、矯正し易いという効果
がある。
波焼入用軸受鋼の製造方法は、質量%で、C:0.5〜
0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002
%以下を含有する高周波焼入用軸受鋼を、725〜76
0℃まで加熱し、当該温度で所定時間保持した後、50
℃以下/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却
し、その後放冷することに特徴を有するものである。
高周波焼入用軸受鋼を上記温度パターンで熱処理するこ
とにより、その高周波焼入用軸受鋼に冷間加工性に優れ
た球状セメンタイトを形成できるので、高周波焼入用軸
受鋼の冷間加工性を向上させることができる。
入用軸受鋼の製造方法は、質量%で、C:0.5〜0.
8%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以
下を含有する高周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃
まで加熱し、当該温度で所定時間保持した後、50℃以
下/hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、そ
の後放冷する工程Aと、工程A後の高周波焼入用軸受鋼
を冷間加工する工程Bと、工程Aおよび工程Bを1回実
施しまたは2回以上繰り返して所定の形状に加工した高
周波焼入用軸受鋼を、750〜800℃まで加熱し、当
該温度で所定時間保持した後、10〜100℃/hrの
冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷す
る工程Cと、を有することに特徴を有するものである。
高周波焼入用軸受鋼を上記温度パターンで熱処理するこ
と(工程A)により、その高周波焼入用軸受鋼に冷間加
工性に優れた球状セメンタイトを形成できるので、高周
波焼入用軸受鋼の冷間加工性を向上させることができ
る。その結果、工程Aおよび工程Bを1回実施しまたは
2回以上繰り返して所定の形状の高周波焼入用軸受鋼へ
の冷間加工(工程B)を容易に行うことができる。さら
に、上記温度パターンで熱処理すること(工程C)によ
り、その高周波焼入用軸受鋼に、切削加工の際の応力集
中源となるラメラーパーライトを形成できるので、高周
波焼入用軸受鋼の被削性を向上させることができる。こ
うした本発明の製造方法によれば、リードタイムを短縮
させることができ、所望の形状からなる製品をより効率
的に製造することができる。
造方法は、請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の
高周波焼入用軸受鋼の製造方法において、前記高周波焼
入用軸受鋼が、質量%で、Si:0.35%以下、P:
0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%
以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005
〜0.040%から選択される1種又は2種以上をさら
に含有することに特徴を有するものである。
に含有するので、好ましい機械的特性を有するレール部
材等の製品を製造できる。
鋼およびその製造方法について図面を参照しつつ説明す
る。なお、以下において、「%」は質量%を表す。
入用軸受鋼は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜
1.7%、O2 :0.002%以下を少なくとも含有す
る高周波焼入用軸受鋼であればいかなるものであっても
よく特に限定されないが、Si:0.35%以下、P:
0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%
以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005
〜0.040%から選択される1種又は2種以上をさら
に含有する高周波焼入用軸受鋼は、硬度、転動疲労寿
命、靱性、焼入性等の機械的特性に優れるので、例え
ば、直動案内装置の直動レール用の高周波焼入用軸受鋼
として好ましく使用できる。
パーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織を
有している。この混合組織は、図1の温度パターンに示
すように、上記組成の高周波焼入用軸受鋼を750〜8
00℃まで加熱し、その温度で所定時間(処理量や処理
炉によって設定され、特に限定されないが、例えば2〜
7時間保持される。)保持した後、10〜100℃/h
rの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放
冷することにより形成される。なお、上記の温度パター
ンにおいて、オーステナイト化温度である750〜80
0℃までは一気に加熱される。なお、その加熱速度は特
に限定されない。また、500〜650℃からの放冷に
ついては、通常、空冷により行われ、その際の冷却速度
は特に限定されない。
(C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜1.7%、O
2 :0.002%以下を少なくとも含有する高周波焼入
用軸受鋼)を、上述の温度パターンで熱処理して形成さ
れたラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからな
る混合組織を示す代表的な図面代用写真である。具体的
には、C:0.55%、Mn:1.47%、O2 :0.
0005%、Si:0.18%、P:0.019%、
S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:0.16
%を含有する高周波焼入用軸受鋼を、760℃で加熱保
持したもの(図2(A))、および、780℃で加熱保
持したもの(図2(B))であり、何れにおいても、ラ
メラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合
組織が現れている。
述の範囲に限定した理由を説明する。
高周波焼入用軸受鋼に所定の機械的特性(例えば、硬
度:87〜92HRB等。)を付与すると共に、ラメラ
ーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織
が上記の温度パターンで形成されるための必須の成分で
ある。C含有量が0.5%未満の場合は、上記の混合組
織が形成されないことがあったり、硬度が低くなること
がある。一方、C含有量が0.8%を超えると、上記の
混合組織が形成されないことがあったり、被削性や冷間
加工性が低下することがある。
本発明においては、0.8〜1.7%の範囲で含まれ、
焼入性および被削性を向上させるように作用する。Mn
含有量が0.8%未満では、焼入性が低下することがあ
る。一方、Mn含有量が1.7%を超えると、被削性お
よび冷間加工性が低下することがある。
疲労寿命の低下を防止する。O2 含有量が0.002%
を超えると、他の金属元素と酸化物を生じて疲れ寿命が
低下することがある。なお、O2 は、通常の製鋼法では
製鋼条件にもよるが、0.0004%程度は不可避的に
含まれる。
るものであり、0.35%以下含まれ、硬さと強度を高
めるように作用する。Si含有量が0.35%を超える
と、被削性や冷間加工性が低下することがある。なお、
Siも、上述のO2 の場合と同様に、0.05%程度は
不可避的に含まれる。
い方が望ましい。なお、Pは、0.01%程度は不可避
的に含まれるが、製造コスト等を考えた場合の許容され
る含有量は0.03%以下である。
ンガンと結合してMnSとなり、被削性を向上させるよ
うに作用する。S含有量が0.03%を超えると、軟ら
かくて脆いMnSが増して機械的特性を低下させること
がある。なお、Sも同様に、0.005%程度は不可避
的に含まれる。
れ、強度と靭性を高めるように作用する。Ni含有量が
0.3%を超えると、原料費がかさんだり、加工性を低
下させるという欠点がある。なお、Niも同様に、0.
05%程度は不可避的に含まれる。
れ、硬度、耐食性、焼入性および耐熱性を向上させるよ
うに作用する。Cr含有量が0.1%未満では、焼入性
が低下する。一方、Cr含有量が0.5%を超えると、
加工性が低下する。
0.040%含まれ、脱酸の安定化や、窒化物による結
晶粒微細化に寄与する。この効果は、0.005%以上
で得られるが、多すぎると被削性を劣化させるため、
0.040%を上限とする。
および不可避不純物である。
含有する高周波焼入用軸受鋼は、図1に示す温度パター
ンの熱処理により、冷間加工性に優れた球状セメンタイ
ト1と、切削加工の応力集中源となるラメラーパーライ
ト2とが混在する金属組織を有するので、切削抵抗が低
下し、その結果、被削性が顕著に向上する。
P、S、NiおよびCrを含有する高周波焼入用軸受鋼
は、図1に示す温度パターンの熱処理により、ラメラー
パーライトおよび球状セメンタイトからなる混合組織
(図2を参照。)となり、被削性に優れると共に、好ま
しい機械的特性(87〜92HRBの硬度を有し、さら
に矯正し易いという効果等。)を有するレール部材等の
機械部品用材料となる。
においては、被削性を向上させるための熱処理方法であ
る第1態様に係る製造方法(請求項3、6)と、冷間加
工性を向上させるための熱処理方法である第2態様に係
る製造方法(請求項4、6)と、冷間加工性を向上させ
ると共に被削性を向上させるための熱処理方法である第
3態様に係る製造方法(請求項5、6)とを提供する。
の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜
1.7%、O2 :0.002%以下を少なくとも含有す
る高周波焼入用軸受鋼、または、C:0.5〜0.8
%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下
を含有し、Si:0.35%以下、P:0.03%以
下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:
0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.040
%から選択される1種又は2種以上をさらに含有する高
周波焼入用軸受鋼を、750〜800℃まで加熱し、そ
の温度で所定時間保持した後、10〜100℃/hrの
冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷し
てなる方法である(図1の温度パターンを参照。)。
図2に示すようなラメラーパーライトおよび球状セメン
タイトからなる混合組織が形成されるので、その混合組
織中のラメラーパーライトにより高周波焼入用軸受鋼の
被削性が向上する。さらに、熱処理の条件を上述の範囲
とすることにより、製造された後の軸受鋼の矯正性(矯
正しやすい性質のことであり、本願においては、曲がり
の矯正し易さや歪みの調整し易さのことである。)を改
善することができる。
囲内に限定した理由は上述の通りである。また、温度パ
ターンにおいても、上述と同様であり、オーステナイト
化温度である750〜800℃までは一気に加熱され、
また、500〜650℃からの放冷は、通常、空冷によ
り行われ、その際の冷却速度は特に限定されない。
したのは、オーステナイト化の際に炭化物の一部を固溶
させるためであり、加熱保持温度が750℃未満では、
炭化物の固溶不足を招くことがあり、加熱保持温度が8
00℃を超えると、炭化物の固溶が促進させることがあ
る。
処理量や処理炉の規模により任意に設定されるものであ
り、特に限定されるものではないが、後述の実施例のよ
うに例えば2〜7時間の範囲を例示できる。
は、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトの混合
組織を形成させるためであり、冷却速度が10℃/hr
未満では、セメンタイトの球状化が顕著に進行し、冷却
速度が100℃/hrを超えると、ラメラーパーライト
の生成が顕著に促進する。
650℃としたのは、ラメラーパーライトおよび球状セ
メンタイトの混合組織を形成させるためであり、その温
度が500℃未満では、生産効率が低下することとな
り、その温度が650℃を超えると、ラメラーパーライ
トおよび球状セメンタイトの混合組織の形成が不十分と
なることがある。
の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜
1.7%、O2 :0.002%以下を含有する高周波焼
入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱し、当該温度
で所定時間保持した後、50℃以下/hrの冷却速度で
500〜650℃まで冷却し、その後放冷してなる方法
である(図3の温度パターンを参照。)。
図4に示すような球状セメンタイトからなる混合組織が
形成される。その球状セメンタイトは冷間加工性に優れ
るので、処理後の高周波焼入用軸受鋼の冷間加工性が向
上する。さらに、冷間加工ダイスの寿命を長くするため
に、前記の範囲内で熱処理条件を変化させて軸受鋼の硬
さをコントロールすることができる。
囲内に限定した理由は上述の通りである。なお、図4
は、本発明の高周波焼入用軸受鋼(C:0.5〜0.8
%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下
を少なくとも含有する高周波焼入用軸受鋼)を、第2態
様の温度パターンで熱処理して形成された球状セメンタ
イトからなる混合組織を示す代表的な図面代用写真であ
る。具体的には、C:0.55%、Mn:1.47%、
O2 :0.0005%、Si:0.18%、P:0.0
19%、S:0.027%、Ni:0.06%、Cr:
0.16%を含有する高周波焼入用軸受鋼を、730℃
で加熱保持したもの(図4(A))、および、それを冷
間引き抜き加工したもの(図4(B))であり、何れに
おいても、球状セメンタイトからなる混合組織が現れて
いる。
持温度を725〜760℃の範囲としたのは、処理後の
高周波焼入用軸受鋼の硬さを低減させるためであり、加
熱保持温度が725℃未満では、炭化物の未分解により
硬さが上昇してしまうことがあり、加熱保持温度が76
0℃を超えると、ラメラーパーライトの生成が起こるこ
とにより硬さが上昇してしまうことがある。なお、保持
時間は、上述の第1態様と同様、高周波焼入用軸受鋼の
処理量や処理炉の規模により任意に設定されるものであ
り、特に限定されるものではないが、後述の実施例のよ
うに例えば2〜5時間の範囲を例示できる。
処理後の高周波焼入用軸受鋼の硬さを低減させるためで
あり、冷却速度が50℃/hrを超えると、硬さが上昇
してしまうことがある。なお、冷却速度の下限は5℃/
hrであり、冷却速度が5℃/hr未満では、生産効率
の低下となることがある。
650℃としたのは、硬さを低減させるためであり、そ
の温度が500℃未満では、その効果が飽和し、生産効
率の低下を招くこととなり、その温度が650℃を超え
ると、硬さが上昇することがなる。なお、500〜65
0℃からの放冷は、通常、空冷により行われ、その際の
冷却速度は特に限定されない。
の製造方法は、C:0.5〜0.8%、Mn:0.8〜
1.7%、O2 :0.002%以下を少なくとも含有す
る高周波焼入用軸受鋼、または、C:0.5〜0.8
%、Mn:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下
を含有し、Si:0.35%以下、P:0.03%以
下、S:0.03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:
0.1〜0.5%およびAl:0.005〜0.040
%から選択される1種又は2種以上をさらに含有する高
周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱し、そ
の温度で所定時間保持した後、50℃以下/hrの冷却
速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷する工
程Aと、工程A後の高周波焼入用軸受鋼を冷間加工する
工程Bと、工程Aおよび工程Bを1回実施しまたは2回
以上繰り返して所定の形状に加工した高周波焼入用軸受
鋼を750〜800℃まで加熱し、当該温度で所定時間
保持した後、10〜100℃/hrの冷却速度で500
〜650℃まで冷却し、その後放冷する工程Cとを有す
る方法である(図1および図3の温度パターンを参
照。)。
成からなる高周波焼入用軸受鋼を、1回実施しまたは2
回以上繰り返し実施する。すなわち、工程A→工程B→
工程Cからなる製造方法に供したり、工程A→工程B→
工程A→工程B→工程Cからなる製造方法に供したり、
工程A→工程B→工程A→工程B→……→工程B→工程
Cからなる製造方法に供したりすることにより、その炭
素鋼素材を容易且つ効率的に冷間加工して、所望の形状
からなる製品を製造する。さらに、上述の第1態様およ
び第2態様と同様に、熱処理の条件を上述の範囲とする
ことにより、高周波焼入用軸受鋼を生産する際のリード
タイムを短縮できると共に、製造された後の軸受鋼の矯
正性を改善できる。
間加工性を付与する熱処理工程である。この工程Aによ
れば、熱処理後の高周波焼入用軸受鋼の金属組織を図4
に示すような球状セメンタイトとすることができ、且つ
その硬度が83〜88HRBとなるので、その冷間加工
性を向上させることができる。この工程Aにおける加熱
保持温度、保持時間、冷却速度および放冷に関しては、
上述した第2態様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法
の場合のそれと同じである。この工程Aの上述の各熱処
理条件は、後述する工程Bの冷間加工の回数に基づいて
変化させても、一定条件のままとしてもよく、例えば、
工程Bの冷間加工の回数が増すにしたがって、加熱保持
温度を上記温度範囲内でやや低く設定したり、冷却速度
を上記範囲内でやや大きくするように変化させることが
できる。これは、冷間加工の回数が増すに従って、高周
波焼入用軸受鋼が鈍されやすくなるためである。
焼入用軸受鋼を冷間加工する工程である。この工程Bで
の冷間加工としては、各種の冷間加工を適用でき、例え
ば、引き抜き加工、押し出し加工、曲げ加工、圧延加
工、鍛造加工等を挙げることができる。これらのうち、
引き抜き加工または押し出し加工においては、丸鋼材か
ら所定の減面率で冷間加工することができ、その加工ダ
イスは、円形ダイスであっても異形ダイスであってもよ
く特に限定されない。例えば、引き抜き加工において
は、円形ダイスまたは異形ダイスを使用して、5〜30
%の減面率で加工できる。なお、図4(B)は、工程A
で熱処理された高周波焼入用軸受鋼(図4(A)を参
照。)を、減面率15%で冷間引抜加工した際の球状セ
メンタイト組織を示している。
削性を付与する熱処理工程である。この工程Cによれ
ば、熱処理と冷間加工とを繰り返して所定の形状に加工
した後の高周波焼入用軸受鋼の金属組織を、球状セメン
タイトおよびラメラーパーライトからなる混合組織とす
ることができ、且つその硬度を87〜92HRBとする
ことができるので、その冷間加工性を向上させることが
できると共に、機械的特性においても優れたものとする
ことができる。この工程Cにおける加熱保持温度、保持
時間、冷却速度および放冷に関しては、上述した第1態
様に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法の場合のそれと
同じである。
実施しまたは2回以上繰り返して所定の形状に加工した
後の高周波焼入用軸受鋼の熱処理工程に関するものであ
るので、工程Cに供される高周波焼入用軸受鋼は、切削
加工前の所定の形状に冷間加工されたものであり、工程
Cに供された後の高周波焼入用軸受鋼は、被削性に優れ
た金属組織を有し、その後、切削加工されるものであ
る。
に係る高周波焼入用軸受鋼の製造方法を適用して製造さ
れた高周波焼入用軸受鋼は、冷間加工性および被削性の
何れにおいても優れているので、所望の形状からなる製
品を効率的に製造することができる。さらに、その硬度
を87〜92HRBとすることができるので、機械的特
性においても優れ、直動案内装置に使用される直動レー
ル等のように、直進性、加工性等の特性が要求される部
材の製造に好ましく適用できる。
法ないし形状に加工された後、高周波焼入れされ、例え
ば直動案内装置に使用される直動レール等のような精密
な軸受部材となる。
て、本発明をさらに具体的に説明する。
7%、O2 :0.0005%、Si:0.18%、P:
0.019%、S:0.027%、Ni:0.06%、
Cr:0.16%を含有し、残部が鉄および不可避不純
物からなる直径63mmの炭素鋼丸材を供試材とした。
示す温度条件で熱処理し、得られた鋼材の切削性を評価
した。表1には、得られた鋼材の硬度(HRB)の測定
結果を併せて示した。
で熱処理し、得られた鋼材の硬度(HRB)を測定し
た。
−1の温度条件で熱処理を行い、次いで、熱処理後の高
周波焼入用軸受鋼を減面率15%でダイス引き抜き加工
を行い(工程B−1)、次いで、表3に示す工程A−2
の温度条件で熱処理を行い、次いで、熱処理後の高周波
焼入用軸受鋼を減面率15%でダイス引き抜き加工を行
い(工程B−2)、次いで、表3に示す工程Cの温度条
件で熱処理を行い、最後に、熱処理後の高周波焼入用軸
受鋼をドリルで切削加工して切削性を評価した。各工程
後の高周波焼入用軸受鋼の硬度(HRB)を表3に併せ
て示した。
は同じでも、加熱温度(TA )が異なると、硬さおよび
被削性が顕著に異なっていた。これは、本発明の高周波
焼入用軸受鋼に被削性を容易にさせるラメラーパーライ
トの生成が、750〜800℃の加熱温度(TA )に大
きく依存するためである。
mのストレートドリル(SKH51)を使用し、切削速
度29.7mm/分、送り0.2mm/rev、穿孔深
さ20mmの条件で切削加工し、穿孔不能となるまでの
穴数で評価した。また、硬度測定は、ロックウエル硬度
計Bスケールで測定した。
入用軸受鋼によれば、ラメラーパーライトおよび球状セ
メンタイトからなる混合組織を有するので、その混合組
織中のラメラーパーライトが切削加工の際の応力集中源
になり、上記成分組成からなる高周波焼入用軸受鋼に優
れた被削性を持たせることができる。
方法によれば、特定の成分組成範囲からなる高周波焼入
用軸受鋼を所定の温度パターンで熱処理することによ
り、その高周波焼入用軸受鋼に冷間加工性に優れた球状
セメンタイト組織を形成できるので、高周波焼入用軸受
鋼の冷間加工性を向上させることができ、その結果、熱
処理と冷間加工を繰り返して所定の寸法の高周波焼入用
軸受鋼を容易に得ることができる。さらに、特定の温度
パターンで熱処理することにより、その高周波焼入用軸
受鋼に、切削加工の際の応力集中源となるラメラーパー
ライトを形成し、その被削性を向上させることができ
る。こうした本発明の製造方法によれば、所望の形状か
らなる高周波焼入用軸受鋼をより効率的に製造すること
ができると共に、好ましい機械的特性を有するレール部
材をも製造できる。
び球状セメンタイトからなる混合組織を形成するための
本発明に係る温度パターンである。
メラーパーライトおよび球状セメンタイトからなる混合
組織を示す図面代用写真である。
形成するための本発明に係る温度パターンである。
状セメンタイト組織を示す図面代用写真である。
Claims (6)
- 【請求項1】 質量%で、C:0.5〜0.8%、M
n:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下を含有
し、ラメラーパーライトおよび球状セメンタイトからな
る混合組織を有することを特徴とする高周波焼入用軸受
鋼。 - 【請求項2】 質量%で、Si:0.35%以下、P:
0.03%以下、S:0.03%以下、Ni:0.3%
以下、Cr:0.1〜0.5%およびAl:0.005
〜0.040%から選択される1種又は2種以上を、さ
らに含有することを特徴とする請求項1に記載の高周波
焼入用軸受鋼。 - 【請求項3】 質量%で、C:0.5〜0.8%、M
n:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下を含有
する高周波焼入用軸受鋼を、750〜800℃まで加熱
し、当該温度で所定時間保持した後、10〜100℃/
hrの冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後
放冷することを特徴とする被削性に優れた高周波焼入用
軸受鋼の製造方法。 - 【請求項4】 質量%で、C:0.5〜0.8%、M
n:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下を含有
する高周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱
し、当該温度で所定時間保持した後、50℃以下/hr
の冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷
することを特徴とする冷間加工性に優れた高周波焼入用
軸受鋼の製造方法。 - 【請求項5】 質量%で、C:0.5〜0.8%、M
n:0.8〜1.7%、O2 :0.002%以下を含有
する高周波焼入用軸受鋼を、725〜760℃まで加熱
し、当該温度で所定時間保持した後、50℃以下/hr
の冷却速度で500〜650℃まで冷却し、その後放冷
する工程Aと、 工程A後の高周波焼入用軸受鋼を冷間加工する工程B
と、 工程Aおよび工程Bを1回実施しまたは2回以上繰り返
して所定の形状に加工した高周波焼入用軸受鋼を、75
0〜800℃まで加熱し、当該温度で所定時間保持した
後、10〜100℃/hrの冷却速度で500〜650
℃まで冷却し、その後放冷する工程Cと、を有すること
を特徴とする被削性に優れた高周波焼入用軸受鋼の製造
方法。 - 【請求項6】 前記高周波焼入用軸受鋼が、質量%で、
Si:0.35%以下、P:0.03%以下、S:0.
03%以下、Ni:0.3%以下、Cr:0.1〜0.
5%およびAl:0.005〜0.040%から選択さ
れる1種又は2種以上をさらに含有することを特徴とす
る請求項3乃至請求項5の何れか1項に記載の高周波焼
入用軸受鋼の製造方法。
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JP2002118712A JP4227355B2 (ja) | 2002-04-22 | 2002-04-22 | 高周波焼入用軸受鋼の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013227676A (ja) * | 2013-04-12 | 2013-11-07 | Nsk Ltd | 車輪支持用軸受装置 |
-
2002
- 2002-04-22 JP JP2002118712A patent/JP4227355B2/ja not_active Expired - Lifetime
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