JP2003310070A - マツの子葉胚を発生させる方法 - Google Patents
マツの子葉胚を発生させる方法Info
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Abstract
提供する。高い頻度で発芽してマツを生成できるような
マツ子葉胚の効率的な形成を行う。 【解決手段】 本発明の方法はいずれも、二糖類とグル
コースとを含んだ培地中もしくは培地上にてマツの胚発
生組織を培養してマツの子葉胚を発生させる工程を含
み、ここで、二糖類とグルコースのそれぞれが培地中に
3%未満の濃度にて存在する。本発明はさらに、本発明の
方法によって作製されるマツの子葉胚を提供する。従来
技術の方法によって発生させるより多数の接合体様マツ
子葉胚を発生する。
Description
ロにて発生させる方法、および所望により植物胚から植
物を発生させる方法に関する。
物品を製造するためのマツの木の需要が増大し続けてい
る。こうした需要に対して提唱されている1つの方策
は、望ましい特性(例えば高い生長速度)を有していて、
高品質の木の、遺伝学的に同一の多くのクローンを発生
するような個々の木を体細胞クローニングによって識別
するというものである。これらのクローンを培養して、
望ましい特性を有するマツの木の植生すなわち完全な森
林を生成させることができる。
方法では、純粋培養された生きているマツ組織を、マツ
胚の形成を促進する条件下にてインビトロ処理し、次い
で処理された組織から得られる全植物を利用する。純粋
培養されたマツ組織を、1種以上のオーキシンおよび/ま
たはサイトカイニンの存在下で培養して胚発生組織(emb
ryogenic tissue)の形成と増殖を促進させることがで
き、次いでこの胚発生組織を、マツの子葉胚(cotyledon
ary pine embryos)の形成を促進するような条件下で培
養する。次いで胚を発芽させて、マツの木を生成させる
ことができる。マツの胚発生組織の1つの例は、マツの
種子を切開して得られるマツ胚から、インビトロの組織
培養によって形成することのできる胚柄塊(embryonal s
uspensormasses)(ESM)である。図1は、液体培地中にお
けるマツの胚柄塊を示している。図2は、ESMから形成さ
れたマツの子葉胚を示している(胚の頂部に子葉が視認
できる)。
は、高い頻度で発芽してマツを生成できるようなマツ子
葉胚の効率的な形成を刺激することである。インビトロ
にて形成されるマツの子葉胚は、マツの種子中において
インビボで形成される接合体のマツ胚(zygotic pine em
bryos)と、形態学的に、解剖学的に、そして生化学的に
類似しているか又は同一であるのが好ましい。特に、従
来技術の方法によって発生させるより多い数の接合体様
のマツ子葉胚をインビトロで発生させる方法が求められ
ている。新規の方法によって発生させたマツ子葉胚の発
芽頻度および発芽特性が、従来技術の方法によって発生
させたマツ子葉胚の発芽頻度および発芽特性より高くて
優れているのが好ましい。
を発生させる方法を提供する。本発明の方法は、従来技
術の方法によって発生させるより多数の接合体様マツ子
葉胚を発生する。さらに、本発明の方法によって発生さ
せたマツ子葉胚の発芽頻度および発芽特性は、従来技術
の方法によって発生させたマツ子葉胚の発芽頻度および
発芽特性より高くて優れている。
ースとを含んだ培地中もしくは培地上にてマツの胚発生
組織を培養してマツの子葉胚を発生させる工程を含み、
ここで、前記二糖類と前記グルコースのそれぞれが培地
中に3%未満の濃度にて存在する(すなわち、二糖類が培
地中に3%未満の濃度で存在し、グルコースが培地中に3%
未満の濃度で存在する)。幾つかの実施態様において
は、培地がグルコース(3%未満の濃度で存在する)と少な
くとも2種の二糖類とを含み、ここで、培地中における
全ての二糖類の合計濃度が3%未満である。培地はさら
に、1種以上の吸収性組成物を含んでもよい。本発明の
方法はさらに、本発明に従って作製したマツの子葉胚か
ら1つ以上のマツの木(例えば、マツの木の個体群)を発
生させる工程を含んでよい。
は、一連の少なくとも2種の培地(このうちの少なくとも
1種が二糖類とグルコースを含み、それぞれが培地中に3
%未満の濃度で存在する)上もしくは培地中にて胚発生組
織を順次培養する。二糖類とグルコースを含んだ培地
を、胚発生組織からの子葉胚の発生と成熟を促進するよ
う適合させた。
発明はマツの子葉胚を発生させる方法を提供し、前記方
法はいずれも、(a)マツの胚発生組織(例えばマツの胚柄
塊)を維持培地上もしくは維持培地中にて培養する工程;
および(b)工程(a)に従って処理されたマツの胚発生組
織を、グルコースと二糖類とを含んだ発生培地上にて培
養してマツの子葉胚を形成させる工程、ここで、二糖類
とグルコースのそれぞれが発生培地中に3%未満の濃度に
て存在する; を含む。発生培地は、所望により吸収性組
成物を含んでもよい。本発明のこの態様の方法は、マツ
の組織を開始培地(initiation medium)上もしくは開始
培地中にて培養してマツの胚発生組織を発生させ、次い
でこの胚発生組織を工程(a)において述べた維持培地上
もしくは維持培地中にて培養する工程を所望により含ん
でもよい。
方法に従って作製されるマツの子葉胚を提供する。本発
明の方法は、例えば遺伝学的もしくは生化学的な手段に
よってさらに特徴付けることのできる、および/または
必要に応じて、発達したマツの木に生長させることので
きる小さなマツ植物(pine plant)を生成するよう発芽さ
せることのできるマツ子葉胚を作製するのに有用であ
る。従って、例えば本発明の方法を使用して、1つ以上
の望ましい特徴(例えば、高い生長速度や改良された木
材特性)を有する個々のマツの木のクローンを生成させ
ることができる。例えば、本発明のマツ子葉胚を使用し
て、1つ以上の望ましい特徴(例えば、高い生長速度や改
良された木材特性)を有するマツの木の植生すなわち森
林を生成させることができる。これらのマツの木を使用
して木材製品を製造することができる。
いる用語はいずれも、本発明の技術分野における当業者
にとって意味しているのと同じ意味を有する。本明細書
で使用している“子葉胚”とは、1つ以上の子葉を有す
る胚を意味している。
されている炭水化物を表わしている。二糖類の代表的な
例としては、マルトース、スクロース、ラクトース、セ
ロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、ラミ
ナリビオース、キトビオース、キシロビオース、イヌロ
ビオース、マンノビオース、ヒアロビウロン酸、コンド
ロシン、およびセロビオウロン酸などがある。
は、本発明の方法に従って処理したときに1つ以上のマ
ツの子葉胚を発生することができる、マツ科の植物から
得られるあらゆる組織を表わしている。従って“胚発生
組織”としては、例えばマツの胚柄塊がある。
示されている濃度値はいずれも容量当たりの重量%であ
る。1つの態様においては、本発明はマツの子葉胚を発
生させる方法を提供する。本発明の方法はいずれも、二
糖類とグルコースとを含んだ培地中もしくは培地上にて
マツの胚発生組織を培養してマツの子葉胚を発生させる
工程を含み、ここで、二糖類とグルコースのそれぞれが
培地中に3%未満の濃度にて存在する。
は、発生するマツ子葉胚の少なくとも50%(例えば少なく
とも60%、または例えば少なくとも70%、または例えば少
なくとも80%、または例えば少なくとも90%)が接合体様
である(すなわち、同じ発生段階における接合体のマツ
子葉胚と同じ形態学的特徴および生理学的特性を有す
る)。従って、本発明の方法の幾つかの実施態様におい
ては、発生するマツ子葉胚の50%〜100%(例えば60%〜90
%、または例えば70%〜80%)が接合体様である。
葉胚はいずれも、下記の特性の1つ以上を有する: すな
わち、本発明に従って作製した胚は、グルコースおよび
/または二糖類がいずれも培地中に3%未満の濃度で存在
しないという点以外は同じように処理した胚より長い;
本発明に従って作製した胚は、どの胚も8〜12個の子葉
を含む; 本発明に従って作製した胚は、グルコースおよ
び/または二糖類がいずれも培地中に3%未満の濃度で存
在しないという点以外は同じように処理した胚より速く
生長する(例えば、幾つかの実施態様においては、本発
明に従って作製した胚は9週間以内に生長する)。
物でも〔例えば、テーダマツ(Pinustaeda)等のパイナス
属の植物〕子葉胚を発生させることができる。本発明を
実施する上で有用な胚発生組織の1つの例は胚柄塊(ESM)
である。ESMは、マツの種子から取り出されるプレ子葉
胚(precotyledonary embryos)から用意することができ
る。一般には種子を表面殺菌してからプレ子葉胚を取り
出し、次いで、発芽と分裂による増殖のプロセスにおけ
る初期胚を含んだESMの形成を可能にする培地上もしく
は培地中にてプレ子葉胚を培養する。培地は、必要であ
れば、初期胚の増殖を刺激するホルモンを含んでよい。
培地中に組み込むことのできるホルモンの例としては、
オーキシン(例えば2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-
D))およびサイトカイニン(例えば6-ベンジルアミノプリ
ン(BAP))がある。オーキシンは、例えば1mg/リットル〜
200mg/リットルの濃度で使用することができる。サイト
カイニンは、例えば0.1mg/リットル〜10mg/リットルの
濃度で使用することができる。マツのプレ子葉胚を培養
してESMの形成を促すのに有用な培地の1つの例は、本明
細書の実施例1に記載の培地BM1である。
織を、二糖類とグルコースとを含んだ培地中もしくは培
地上にて培養してマツの子葉胚を発生させる工程を含
み、ここで、二糖類とグルコースのそれぞれが3%未満の
濃度(例えば2.9%未満、または例えば2.8%未満、または
例えば2.7%未満、または例えば2.6%未満)で存在する。
本発明の幾つかの実施態様においては、二糖類とグルコ
ースのそれぞれが培地中に1%〜2.5%の濃度にて存在す
る。本発明の方法の幾つかの実施態様においては、二糖
類とグルコースのそれぞれが培地中に1%〜2.5%の濃度に
て存在する。本発明の方法の幾つかの実施態様において
は、二糖類とグルコースのそれぞれが培地中に2%〜2.5%
の濃度にて存在する。本発明の方法の幾つかの実施態様
においては、二糖類が培地中に2.5%の濃度にて存在し、
グルコースが培地中に1%の濃度にて存在する。本発明の
方法の幾つかの実施態様においては、培地がグルコース
と少なくとも2種の二糖類とを含み、ここで、培地中の
グルコースの濃度が3%未満であって、培地中の全二糖類
の合計濃度が1%〜2.5%である。本発明の方法の幾つかの
実施態様においては、培地がグルコースと少なくとも2
種の二糖類とを含み、ここで、グルコースが培地中に3%
未満の濃度で存在し、培地中の全二糖類の合計濃度が2%
〜2.5%である。
は、マツの胚発生組織を、二糖類とグルコースをそれぞ
れ3%未満の濃度で含んだ培地中もしくは培地上にて6週
間〜12週間(例えば8週間〜12週間、または例えば9週間
〜11週間)培養する。本発明の方法の幾つかの実施態様
においては、マツの胚発生組織を、二糖類とグルコース
をそれぞれ3%未満の濃度で含んだ培地中もしくは培地上
にて20℃〜24℃の温度(例えば21℃〜24℃の温度)で培養
する。
養された植物組織を維持する栄養分(例えば塩類)と、培
地のオスモル濃度(osmolality)を所望の範囲内に調節す
るための1種以上の薬剤をさらに含んでもよい。例え
ば、培地のオスモル濃度は250mM/Kg〜450mM/Kg(例えば2
50mM/Kg〜350mM/Kg)であってよい。さらに、培地のpHを
所望の値に調節することができる。例えば、培地のpHは
4.5〜6.5(例えば5.0〜6.0)であってよい。
培地であっても固体培地であってもよい。液体培地を使
用する場合は、一般には胚発生組織を吸収性支持体(例
えば濾紙)上に置き、この支持体を液体培地中に浸す。
固体培地を使用する場合は、胚発生組織を培地の表面上
に置き、胚発生組織が固体培地の表面からある程度入り
込んでもよい。従って固体培地は、ある程度固化してい
て、胚発生組織がその本体中に実質的に入り込めるよう
な培地、および胚発生組織がその本体中に入り込めない
ような完全に固化した培地を含む。液体培地は、適切な
量のゲル化剤(例えば、寒天やゲルライト)を加えること
によって完全に、又はある程度固化させることができ
る。
中に吸収性組成物を組み込むと、改良された発芽頻度と
発芽特性とを有するマツ子葉胚の発生を大幅に促進する
ことがわかった。吸収性組成物は、本発明の方法の実施
に際して使用される濃度において胚発生組織に対し毒性
がなく、培地中に存在している生長促進ホルモンと、胚
の発生時に植物細胞から生成される毒性化合物とを吸収
することのできる組成物であれば特に限定されない。従
って、吸収されたホルモンは、培地中もしくは培地上で
の胚発生組織の生長促進に対してはもはや利用されず、
吸収されたトキシンが植物細胞に悪影響を及ぼすことは
ない。これに関連して、“吸収性の(absorbing)”と
は、培地中における吸収性組成物と1種以上の生長促進
ホルモンおよび/またはトキシンとのあらゆる化学的も
しくは物理的な相互作用(これによって、生長促進ホル
モンおよび/またはトキシンが吸収性組成物に捕捉され
る)を包含している。
においては、生長促進ホルモン(例えば、オーキシンお
よび/またはサイトカイニン)を含む培地中もしくは培地
上にて胚発生組織を培養して、胚発生組織の増殖を促進
する。充分な量の胚発生組織が得られたら、生長促進ホ
ルモンを含まないが、二糖類とグルコース、そして所望
により1種以上の吸収性組成物を含む培地に胚発生組織
を移す。吸収性組成物が培地中に存在する生長促進ホル
モンを捕捉し、これによって胚発生組織の増殖速度が低
下するか又は増殖が完全に止まり、二糖類とグルコース
が、胚発生組織からのマツ子葉胚の発生を誘発する。
炭、可溶性のポリ(ビニルピロリドン)、不溶性のポリ
(ビニルピロリドン)、活性アルミナ、およびシリカゲル
などがあるが、これらに限定されない。吸収性組成物
は、例えば0.01g/L〜5g/Lの量にて存在してよい。幾つ
かの実施態様においては、吸収性組成物は0.05g/L〜1g/
Lの量にて存在する。1種より多い吸収性組成物(例えば
少なくとも2種の吸収性組成物)が培地中に存在する本発
明の方法の実施態様では、上記の濃度範囲は、培地中の
全組成物の濃度を表わしている。
は、胚発生組織を、一連の少なくとも2種の培地(このう
ちの少なくとも1種の培地が二糖類とグルコースを含
み、二糖類とグルコースのそれぞれが培地中に3%未満の
濃度にて存在する)上もしくは培地中にて順次培養す
る。二糖類とグルコースを含んだ培地を、胚発生組織
(例えば、1種以上の生長ホルモンで処理した胚発生組
織)からの子葉胚の発生と生長を促進するよう適合させ
た。こうして得られたマツの子葉胚は、改良された発芽
頻度と発芽特性を有している。
は、例えば、マツの胚発生組織(例えばESM)を、胚発生
組織の細胞分裂と生長を促進するよう適合させた培地上
もしくは培地中にて培養する。維持培地は、固体培地で
あっても液体培地であってもよく、こうした培地をかき
混ぜて胚発生組織の生長と増殖を促進することができ
る。維持培地は、胚発生組織を維持する栄養分を含有し
てよく、また胚発生組織の細胞分裂と生長を促進するホ
ルモン〔例えば、1種以上のオーキシン(例えば2,4-D)お
よび/またはサイトカイニン(例えばキネチン、BAP)〕を
含んでよい。オーキシンを使用する場合、維持培地中の
オーキシンの濃度は、例えば0.1mg/L〜10mg/L(例えば0.
1mg/L〜5mg/L)であってよい。2種以上のオーキシンが培
地中に存在する場合、前記の濃度範囲は、培地中の全オ
ーキシンの濃度を表わしている。サイトカイニンを使用
する場合、維持培地中のサイトカイニンの濃度は、例え
ば0.1mg/L〜2mg/L(例えば0.1mg/L〜1mg/L)であってよ
い。培地中に2種以上のサイトカイニンが存在する場
合、前記の濃度範囲は、培地中の全サイトカイニンの濃
度を表わしている。
な糖源として維持培地中に含むのが望ましいが、必須要
件ではない。マルトースは、0.5mg/L〜6mg/L(例えば1mg
/L〜3mg/L)の濃度で存在してよい。
(例えば、100mM/Kg〜250mM/Kg、又は100mM/Kg〜200mM/K
g)に調節することができる。維持培地のpHも、所望の範
囲内(例えば、4.5〜6.5又は5.0〜6.0)の値に調節するこ
とができる。胚発生組織は一般に、20℃〜24℃(例えば2
1℃〜24℃)の範囲の温度で維持培地中もしくは維持培地
上にて培養される。適切な維持培地の1つの例は、本明
細書の実施例1に記載の培地BM2である。
(例えば、培養された胚発生組織の集合体によって決定
される)維持培地中もしくは維持培地上にて培養され
る。次いで胚発生組織を、高品質のマツ子葉胚の発生を
促進するよう適合された発生培地に移す。発生培地は、
一般には固体培地であるが、液体培地であってもよい。
れぞれが3%未満(例えば2.9%未満、2.8%未満、2.7%未
満、または2.6%未満)の濃度で存在する。幾つかの実施
態様では、二糖類とグルコースのそれぞれが発生培地中
に1%〜2.5%の濃度にて存在する。幾つかの実施態様で
は、二糖類とグルコースのそれぞれが発生培地中に2%〜
2.5%の濃度にて存在する。
(例えば塩類)を含有してよい。適切な発生培地は、一般
には生長促進ホルモン(例えば、オーキシンやサイトカ
イニン)を含まないが、ホルモンであるアブシジン酸を
含んでよい。発生培地中にアブシジン酸を使用する場
合、一般には1mg/L〜200mg/L(例えば1mg/L〜100mg/L)の
範囲の濃度にて使用する。発生培地のオスモル濃度は、
所望の範囲内の値(例えば250mM/Kg〜450mM/Kg、または2
50mM/Kg〜350mM/Kg)に調節することができる。発生培地
のpHも、所望の範囲内の値(例えば4.5〜6.5、または5.0
〜6.0)に調節することができる。胚発生組織は一般に、
20℃〜24℃(例えば21℃〜24℃)の範囲の温度で発生培地
中もしくは発生培地上にて培養する。適切な発生培地の
1つの例は、本明細書の実施例1に記載の培地BM3であ
る。
は、胚発生組織を発生培地中もしくは発生培地上にて6
週間〜12週間(例えば、6週間〜9週間)にわたって培養す
る。従って、幾つかの実施態様においては、本発明はマ
ツの子葉胚を発生させる方法を提供し、前記方法はいず
れも、(a)マツの胚発生組織(例えば、マツの胚柄塊)を
維持培地上もしくは維持培地中にて培養する工程; およ
び(b)工程(a)に従って処理されたマツの胚発生組織を、
二糖類とグルコースとを含んだ発生培地上もしくは発生
培地中にて培養してマツの子葉胚を形成させる工程、こ
こで、二糖類とグルコースのそれぞれが、発生培地中に
3%未満の濃度にて存在する; を含む。発生培地は、所望
により吸収性組成物を含んでもよい。本発明のこの態様
の方法は、マツの組織を開始培地中もしくは開始培地上
にて培養してマツの胚発生組織を生成させ、次いでこの
胚発生組織を、工程(a)に記載のように維持培地中もし
くは維持培地上にて培養する工程を所望により含んでも
よい。
子葉胚を発生させる方法を提供し、前記方法はいずれ
も、(a)マツの胚発生組織(例えば、マツの胚柄塊)を固
体維持培地上にて培養する工程; (b)工程(a)に従って処
理されたマツの胚発生組織を液体維持培地中にて培養す
る工程; および(c)工程(b)に従って処理されたマツの胚
発生組織を、二糖類とグルコースを含んだ固体発生培地
上にて培養してマツの子葉胚を形成させる工程、ここ
で、二糖類とグルコースのそれぞれが、発生培地中に3%
未満の濃度にて存在する; を含む。発生培地は、所望に
より吸収性組成物を含んでもよい。本発明のこの態様の
方法は、マツの組織を開始培地中にて培養してマツの胚
発生組織を生成させ、次いでこの胚発生組織を、工程
(a)に記載のように維持培地上にて培養する工程を所望
により含んでもよい。
葉胚は、所望により、小さなマツ植物(必要に応じてマ
ツの木に生長させることができる)を形成するよう発芽
させることができる。本発明のマツ子葉胚は、固体発芽
培地(例えば、本明細書の実施例1に記載の培地BM5)上に
て発芽させることができる。発芽した植物は、さらなる
生長のために土壌に移すことができる。例えば、発芽し
た植物を温室の土壌中に植え、生長させてから野外の場
所に移植することができる。一般には、マツの子葉胚に
光を当てて発芽を刺激する。本発明の方法では通常、発
芽工程以外の全ての工程を暗所にて行う。
上の望ましい特性(例えば高い生長速度)を有する個々の
マツの木のクローンを生成させることができる。従って
1つの態様においては、本発明は、遺伝学的に同一のマ
ツ子葉胚を発生させる方法を提供する。本発明のこの態
様の方法はいずれも、遺伝学的に同一のマツの胚発生組
織を、二糖類とグルコースを含んだ培地中もしくは培地
上にて培養して遺伝学的に同一のマツの子葉胚を発生さ
せる工程を含み、ここで、二糖類とグルコースのそれぞ
れが培地中に3%未満の濃度にて存在する。
のマツ子葉胚の個体群を提供する。幾つかの実施態様に
おいては、マツ子葉胚の個体群中の少なくとも50%(例え
ば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、ま
たは少なくとも90%)のマツ子葉胚が接合体様である。従
って、本発明のこの態様の幾つかの実施態様において
は、マツ子葉胚の個体群中の50%〜100%(例えば60%〜80
%、または70%〜80%)のマツ子葉胚が接合体様である。本
発明の方法を使用して、本発明の接合体様マツ子葉胚の
個体群を生成させることができる。従って1つの態様に
おいては、本発明は、本発明の方法によって作製される
マツ子葉胚の個体群を提供する。
時点で考えられる最良の態様を示しており、本発明がこ
れらの実施例によって限定されることはない。実施例1 本実施例は、テーダマツ(Pinus taeda)の子葉胚を生成
させるための、および前記子葉胚の発芽を起こさせるた
めの本発明の代表的な方法を示す。
後の4〜5週間にわたって種子から取り出す。種皮は取り
除くが、胚は、胚珠心端(nucellar end)を切り取る以外
は、周りの配偶体からさらに切り裂くことはしない。円
錐体を、使用するまで4℃で保存する。未成熟の胚を取
り除く直前に、先ず洗浄・洗剤処理を施し、次いで15%H
2O2中にて10分間殺菌処理することによって種子を殺菌
する。各処理の後に、これらの外植体を無菌の蒸留水で
充分に洗浄する。
な代表的培地の組成を示している。
の配偶体を固体BM1培地上に置き、24時間の暗光周期(da
rk photoperiod)にて3〜5週間にわたって22℃〜25℃の
環境に保持する。時間の長さは、培養される遺伝子型の
種類に依存する。この時間の終わりに、白色で粘液質の
塊体が、最初の外植体と結びついた状態で生じる。顕微
鏡による検査は一般に、この塊体と結びついた多くの初
期段階の胚を明らかにする。これらは一般に、緻密な細
胞質と大きな細胞核とを含む小さな頭部(a small head)
と結びついた、長くて薄い壁で囲まれた胚柄を有するこ
とを特徴とする。
は170mM/kgという高い値であってもよい。通常は、約16
0mM/kg以下(例えば150mM/kg)である。段階II‐維持と増殖 : 誘導段階において発生した塊体
から取り出した初期段階の胚を、先ず最初に、ゲル化さ
せた維持・増殖培地BM2上に置く。これは、生長ホルモ
ン(オーキシンとサイトカイニン)を少なくとも相当程度
に(at least afull order of magnitude)減少させてい
るという点で誘導培地とは異なる。一般には、ミオイノ
シトールの濃度を0.5%w/vに増大させることによって、
この培地のオスモル濃度を誘導培地のオスモル濃度から
約180mM/kgにまで増大させる。この場合も、温度と光周
期は22〜25℃にて暗中24時間である。胚をBM2固体培地
上にて12〜14日培養してから、さらなる継代培養のため
に液体培地に移す。この液体培地は、類似の組成を有し
ているが、ゲル化剤を含んでいない。固体維持段階の終
わりにおける胚は、一般には外観が段階Iからの胚と類
似している。液体維持培地上での5〜6週間の継代培養
後、より進んだ初期段階の胚(advanced earlystage emb
ryos)が形成される。これらの胚は、多数の胚柄を含ん
だ平滑な胚頭部(embryonal heads)(一般には100個より
多い細胞を有すると推定されている)を有することを特
徴とする。
ーダマツの場合は約180〜400mM/kgの範囲である。最も
一般的には、維持培地の浸透ポテンシャルは、誘導培地
または増殖培地の浸透ポテンシャルより約1.5倍大き
い。
より進んだ初期段階の胚を、液体発生培地をたっぷり含
ませたパッド上に配置した濾紙支持体に移す。この培地
は、生長ホルモンが全く存在しないか又は極めて低いレ
ベルでのみ存在しており、段階Iおよび段階IIと同じレ
ベルの浸透物質(osmoticants)を含んでいる。マルトー
スとグルコースが存在している。さらなる発生を容易に
するようアブシジン酸を含んでもよい。さらに、吸収性
組成物〔例えば、活性炭、可溶性形態のポリ(ビニルピ
ロリドン)、不溶性形態のポリ(ビニルピロリドン)、活
性アルミナ、およびシリカゲル〕を、例えば、約0.1〜5
g/Lまたは約0.25〜2.5g/Lの濃度で含んでもよい。
の浸透ポテンシャルより相当程度増大させることができ
る。例えば、オスモル濃度は、350mM/kg以上という高い
値であってもよい。発生は、真っ暗闇の中で、22〜25℃
の温度にて細長い子葉胚が発生するまで行うのが好まし
い。発生時間は、一般には数週間(例えば6〜9週間)であ
る。
えば培地BM7)中にて、4℃〜10℃で3〜4週間培養する。段階IV‐乾燥 : 濾紙支持体上の胚をパッドから取り上
げ、K2SO4の飽和溶液もしくは水の上の密閉容器中に97%
の相対湿度で約3週間置く。
を、濾紙支持体上にまだ存在している、液体発芽培地を
たっぷり含んだパッド上に約24時間置くことによって再
水和する。次いで、発芽するように胚を固体BM5培地上
に個別的に配置する。この培地は、スクロース、ミオイ
ノシトール、および有機窒素を減らすことによって変性
させた、生長ホルモンを含んでいない基礎培地である。
生成する苗木が、よく生長した幼根と胚軸および未熟な
子葉構造と上胚軸を有するようになるまで、23℃〜25℃
の温度および16時間の明るみと8時間の暗闇という光周
期の環境条件下にて、胚を約6〜8週間培養する。必要で
あれば、これらの子葉胚を人工種子に造り上げることが
できる。炭水化物の濃度が減少しているので、発芽培地
の浸透ポテンシャルは、発生培地の浸透ポテンシャルよ
りさらに下に減少する。発芽培地の浸透ポテンシャル
は、通常は約150mM/kg(例えば約100mM/kg)未満である。
地から取り出し、等量のピートと微細なパーライトを含
んだ土壌中に植える。実施例2 本実施例は、2.5%のマルトースと1%のグルコースとの組
み合わせ物を含んだ発生培地上でテーダマツの不定胚を
培養する際の、胚の発生と発芽頻度に及ぼす影響を示
す。
遺伝子型B、および遺伝子型C)を試験した。1リットルの
培地BM2を含有するフラスコ中で各遺伝子型の胚柄塊(ES
M)を生長させた。それぞれのフラスコのESMを15分間沈
降させ、培地を吸引し、沈降した細胞を新たな容器に移
した。細胞に等しい体積の培地BM6を加え、10分間沈降
させた。BM6培地の半分を取り除き、1.5mlアリコートの
沈降細胞(細胞対BM6の比が1:0.5)を、発生培地BM3(グル
コースとマルトースを含む)とBM4(マルトースを含む
が、グルコースは含まない)に、そしてさらに培地BM2、
BM5、BM6、およびBM7に直接移した。
培地BM4より速い発生を促進したことが観察された。他
の培地では、対照標準培地との差は認められなかった。
発生培地上での12週間の培養後、BM3培地上で培養され
た胚は、BM4培地上で培養された胚よりはるかに大き
く、はるかに長く、そして接合体様の胚によく類似して
いた。BM3培地上で培養された胚は、8週間後に子葉を発
生し始めた。BM3培地上で培養された胚は、BM4培地上で
培養された胚における4〜6の子葉と比較して、8〜10の
子葉(遺伝子型Aは、14〜16の子葉を有する幾つかの胚を
生成した)を有していた。したがって、マルトースとグ
ルコースとを含んだ発生培地(培地BM3)上で胚を培養す
ることにより、他の培地上で培養した場合と比較して、
より多くの子葉と視認可能なドーム(visible domes)を
有する、より大きくてより良好な品質の胚が得られた。
表2は、培地BM4とBM3上で発生させた接合体様のテーダ
マツ胚の数を示している。
胚を選択し、BM7培地をたっぷり含ませたパッド上に濾
紙を有するペトリプレートにこれらの胚を移した。ペト
リプレートをパラフィルムでシールし、低温の場所にて
保存した。4週間後、胚を有する濾紙を、約100mlの水を
含んだマジェンタボックスのメッシュブリッジ(meshbri
dges)に移した。ボックス中で3週間乾燥した後、胚を有
する濾紙を、BM5液体培地をたっぷり含ませたパッドを
含むペトリプレートに移した。24時間後、胚を、発芽ボ
ックス中の固体BM5培地に移した。発芽ボックスを暗所
にて1週間放置してから、明るい部屋に移した。
胚の発芽頻度のほぼ2倍の発芽頻度を示した。さらに、B
M3培地から発生させた発芽体(germinants)の品質は、BM
4培地から発生させた発芽体の品質より良好であった。
例えば、遺伝子型AとBの場合、BM3培地からの双極性発
芽体(bipolar germinants)はまっすぐで厚い胚軸を有
し、上胚軸の活発な生長が認められた。これとは対照的
に、BM4培地から発生させた双極性発芽体は、曲がって
いて比較的細い胚軸を有した。
が、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変
更を行ってよいのはもちろんである。
ている。
的なマツの子葉胚を示している(胚の頂部に子葉が認め
られる)。
Claims (33)
- 【請求項1】 二糖類とグルコースとを含んだ培地中も
しくは培地上にてマツの胚発生組織を培養してマツの子
葉胚を発生させる工程を含み、ここで、前記二糖類と前
記グルコースのそれぞれが培地中に3%未満の濃度にて存
在する、マツの子葉胚を発生させる方法。 - 【請求項2】 マツの胚発生組織が胚柄塊を含む、請求
項1記載の方法。 - 【請求項3】 マツの子葉胚の少なくとも60%が6〜12の
子葉を含む、請求項1記載の方法。 - 【請求項4】 マツの子葉胚の少なくとも70%が6〜12の
子葉を含む、請求項1記載の方法。 - 【請求項5】 マツの子葉胚の少なくとも80%が6〜12の
子葉を含む、請求項1記載の方法。 - 【請求項6】 マツの子葉胚の少なくとも90%が6〜12の
子葉を含む、請求項1記載の方法。 - 【請求項7】 二糖類とグルコースのそれぞれが培地中
に1%〜2.5%の濃度にて存在する、請求項1記載の方法。 - 【請求項8】 二糖類とグルコースのそれぞれが培地中
に2%〜2.5%の濃度にて存在する、請求項1記載の方法。 - 【請求項9】 培地が少なくとも2種の二糖類を含み、
ここで、培地中の二糖類の合計濃度が1%〜2.5%である、
請求項1記載の方法。 - 【請求項10】 培地が少なくとも2種の二糖類を含
み、ここで、培地中の二糖類の合計濃度が2%〜2.5%であ
る、請求項1記載の方法。 - 【請求項11】 マツの胚発生組織を、二糖類とグルコ
ースとを含んだ培地中もしくは培地上にて6週間〜12週
間にわたって培養する、請求項1記載の方法。 - 【請求項12】 マツの胚発生組織を、二糖類とグルコ
ースとを含んだ培地中もしくは培地上にて8週間〜12週
間にわたって培養する、請求項1記載の方法。 - 【請求項13】 マツの胚発生組織を、二糖類とグルコ
ースとを含んだ培地中もしくは培地上にて9週間〜11週
間にわたって培養する、請求項1記載の方法。 - 【請求項14】 二糖類とグルコースとを含んだ培地の
オスモル濃度が250mM/Kg〜450mM/Kgである、請求項1記
載の方法。 - 【請求項15】 二糖類とグルコースとを含んだ培地の
pHが4.5〜6.5である、請求項1記載の方法。 - 【請求項16】 培地が吸収性組成物をさらに含む、請
求項1記載の方法。 - 【請求項17】 吸収性組成物が、活性炭、可溶性のポ
リ(ビニルピロリドン)、不溶性のポリ(ビニルピロリド
ン)、活性アルミナ、およびシリカゲルからなる群から
選択される、請求項16記載の方法。 - 【請求項18】 吸収性組成物が活性炭である、請求項
17記載の方法。 - 【請求項19】 吸収性組成物の濃度が0.01g/L〜5g/L
である、請求項16記載の方法。 - 【請求項20】 吸収性組成物の濃度が0.05g/L〜1g/L
である、請求項16記載の方法。 - 【請求項21】 培地が少なくとも2種の吸収性組成物
を含み、ここで、培地中の吸収性組成物の合計濃度が0.
01g/L〜5g/Lである、請求項16記載の方法。 - 【請求項22】 培地が少なくとも2種の吸収性組成物
を含み、ここで、培地中の吸収性組成物の合計濃度が0.
05g/L〜1g/Lである、請求項16記載の方法。 - 【請求項23】 テーダマツの胚発生組織からテーダマ
ツの子葉胚を発生させる、請求項1記載の方法。 - 【請求項24】 培地が液体培地である、請求項1記載
の方法。 - 【請求項25】 培地が固体培地である、請求項1記載
の方法。 - 【請求項26】 (a) マツの胚発生組織を維持培地中
もしくは維持培地上にて培養する工程; および (b) 工程(a)に従って処理されたマツの胚発生組織を、
グルコースと二糖類とを含んだ発生培地中もしくは発生
培地上にて培養してマツの子葉胚を形成させる工程、こ
こで、二糖類とグルコースのそれぞれが発生培地中に3%
未満の濃度にて存在する;を含む、マツの子葉胚を発生
させる方法。 - 【請求項27】 二糖類とグルコースのそれぞれが発生
培地中に1%〜2.5%の濃度にて存在する、請求項26記載の
方法。 - 【請求項28】 二糖類とグルコースのそれぞれが発生
培地中に2%〜2.5%の濃度にて存在する、請求項26記載の
方法。 - 【請求項29】 請求項1記載の方法によって発生され
るマツの子葉胚であって、前記子葉胚の少なくとも50%
が接合体様であるマツの子葉胚の個体群。 - 【請求項30】 前記子葉胚の少なくとも60%が接合体
様である、請求項29記載のマツの子葉胚の個体群。 - 【請求項31】 前記子葉胚の少なくとも70%が接合体
様である、請求項29記載のマツの子葉胚の個体群。 - 【請求項32】 前記子葉胚の少なくとも80%が接合体
様である、請求項29記載のマツの子葉胚の個体群。 - 【請求項33】 前記子葉胚の少なくとも90%が接合体
様である、請求項29記載のマツの子葉胚の個体群。
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