JP2003309449A - 微小機械振動フィルタ - Google Patents

微小機械振動フィルタ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、高周波帯域に対応した小型高性能
の機械振動式フィルタを供することを目的とする。 【解決手段】 機械振動子を微小化した微小円柱梁5と
することで機械共振周波数を高周波化し、かつ微小円柱
梁5を複数個アレイ状に並べ、各微小円柱梁5の周囲に
所定の間隙をもって共通の検出電極6を配置することに
より、出力信号の低下を抑える。また、一部の機械振動
子の振動を拘束することで、入力信号から出力信号への
直接的な電磁結合に伴うノイズ成分の観測と除去を可能
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無線装置などに搭
載される電気回路や伝送線におけるフィルタに関し、特
に高密度に集積化され、MHz〜GHzの帯域の信号を
処理する回路内において、微小機械振動を利用すること
で小型で急峻な選択特性を有する微小機械振動フィルタ
に関する。
【0002】
【従来の技術】図11は従来の機械振動フィルタの構成
を簡略化して示したものである(例えば、非特許文献1
参照)。このフィルタは、シリコン基板上に薄膜形成を
行うことで形成され、入出力線路104および出力線路
105と、それぞれの線路に対して1ミクロン以下の空
隙をもって配置された両端固定梁型共振器101および
102と、その2つの梁を結合する結合梁103とで構
成されている。入力線路104から入力した信号は、共
振器101と容量的に結合し、共振器101に静電力を
発生させる。信号の周波数が、共振器101および10
2と結合梁103とからなる弾性構造体の共振周波数近
傍に一致したときのみ機械振動が励起されるので、この
機械振動をさらに出力線路105と共振器102との間
の静電容量の変化として検出することで、フィルタリン
グされた入力信号を出力信号として取り出すことができ
る。
【0003】矩形断面の両持ち梁の場合、弾性率E、密
度ρ、厚みt、長さLとすると、共振周波数fは、次式
のようになる。
【数1】 材料をポリシリコンとするとE=160GPa、ρ=
2.2×103kg/m3、また寸法をL=40μm、t
=1.5μmとするとf=8.2MHzとなり、約8M
Hz帯のフィルタを構成することが可能である。コンデ
ンサやコイルなどの受動回路で構成したフィルタに比べ
て、機械振動を用いることでQ値の高い急峻な周波数選
択特性を得ることができる。
【0004】さらに高周波帯のフィルタを構成するに
は、(数1)から明らかなことは、第1に材料を変更し
てE/ρを大きくすることである。ただし、Eを大きく
すると梁を撓ませる力が同じであっても梁の変位量は小
さくなってしまい、梁の変位量を検知することが難しく
なる。梁の曲がりやすさをあらわす指標を、両持ち梁の
梁表面に静荷重を加えたときの梁中心部のたわみ量dと
梁の長さLの比d/Lとすると、d/Lは、次の比例関
係で表される。
【数2】 従ってd/Lの値を保ちながら共振周波数を上げるに
は、少なくともEは大きくできず、密度ρの低い材料を
求める必要があるが、ポリシリコンと同等のヤング率で
密度が低い材料としてはCFRP(Carbon Fiber Reinf
orced Plastics)等の複合材料を用いる必要がある。こ
の場合、半導体プロセスで微小機械振動フィルタを構成
することは難しくなる。
【0005】このような複合材料を用いない第2の方法
は、(数1)において梁の寸法を変更してt・L-2を大
きくすることである。しかし、tを大きくすることとL
を小さくすることは撓みやすさの指標である(数2)の
d/Lを小さくしてしまい、梁のたわみを検出すること
が難しくなる。
【0006】(数1)および(数2)についてlogLとl
ogtの関係を図12に示すと、現寸法Aを起点に傾き2
の直線より上の範囲のLとtを選ぶとfは大きくなり、
傾き1の直線より下の範囲のLとtを選ぶとd/Lは大
きくなる。従って、図中のハッチング部分が、梁のたわ
み量も確保しつつ共振周波数を上げることができるLと
tの範囲である。また、図12より明らかなことは、機
械振動フィルタの高周波化には、Lおよびt双方の寸法
の微小化が必要条件であり、Lおよびtを同じスケーリ
ングで小型化すること、すなわち傾き1の直線に乗りな
がらLとtを小さくすることは、図12のハッチング部
分の十分条件である。
【0007】
【非特許文献1】IEEE Journal of Solid-state Circui
ts, Vol.35, No.4, pp.512-526, April2000
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、機械振動
子の寸法を小型化した微小機械振動子を用いることで、
共振周波数は高周波化されるが、例えば図11の機械振
動フィルタの構成では、必然的に入出力線路同士がより
近接しあうことになり、出力線路には入力線路の電磁界
の直接結合により不要な帯域の信号が洩れてノイズとし
て重畳する問題が生じる。また、梁の振動振幅も小さく
なるので振動を検出する信号も微弱なものとなり、外乱
を受けやすくなる。
【0009】本発明は、このような従来の問題を解決す
るものであり、小型で高品質の微小機械振動フィルタを
提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、機械振動子を微小化して共振周波数の高
周波化を図り、かつ微小化された微小機械振動子をアレ
イ状に複数個並べることにより、微小機械振動の検出信
号の微弱化を防ぐこととした。また、フィルタリングさ
れずに検出回路に直接漏れる入力信号成分を推測し、そ
の成分をキャンセルすることで、微小機械振動子の振動
に伴う出力信号成分のみを抽出することとした。これら
により小型で高品質の微小機械振動フィルタの提供を可
能にした。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の微小機械振動フィルタ
は、電磁波導波路上またはその近傍の電磁界中にアレイ
状に配置された梁状またはコイル状の複数の微小機械振
動子と、前記複数の微小機械振動子が電磁界との相互作
用を受けて固有の共振周波数で振動する際の信号を検出
する検出回路とを備えたものであり、機械振動子を微小
化して共振周波数の高周波化を図り、かつ微小化された
微小機械振動子をアレイ状に複数個並べることにより、
微小機械振動の検出信号の微弱化を防ぐことができる。
【0012】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が導電体梁で、電磁波の電界との相
互作用により振動することを特徴とするものであり、微
小機械振動子として導体梁を使用することができる。
【0013】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が誘電体梁で、電磁波の電界との相
互作用により振動することを特徴とするものであり、微
小機械振動子として誘電体梁を使用することができる。
【0014】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が磁性体梁で、電磁波の磁界との相
互作用により振動することを特徴とするものであり、微
小機械振動子として磁性体梁を使用することができる。
【0015】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が導電体コイルで、前記導電体コイ
ルの発生する磁界同士の相互作用で振動することを特徴
とするものであり、振動子として導電体コイルを使用す
ることができる。
【0016】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記導電体コイルを直列に接続してその接続部で前記導
電体コイル内部の磁束が漏れるように配置することを特
徴とするものであり、電磁波により導電体コイルに電流
が流れたときに導電体コイルを振動させることができ
る。
【0017】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記導電体コイルの振動に伴うインピーダンス変化を検
出することを特徴とするものであり、導電体コイルの振
動をインピーダンス変化として検出することができる。
【0018】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が導電体で、前記検出回路が前記微
小機械振動子と対向する電極であり、前記微小機械振動
子の振動を、前記微小機械振動子と前記電極間の静電容
量の変化でとらえることを特徴とするものであり、微小
機械振動子の振動を静電容量の変化として検出すること
ができる。
【0019】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記電極の表面に穴が設けられ、前記微小機械振動子の
一部が、前記穴の中に配置され、かつ前記穴の中心位置
から偏心した位置に配置されていることを特徴とするも
のであり、偏心により最も近接した電極と微小機械振動
子間の静電力により、微小機械振動子を励振することが
できる。
【0020】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記検出回路が光学的に前記微小機械振動子の振動を検
出することを特徴とするものであり、微小機械振動子の
振動を受光量の変化として検出することができる。
【0021】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記検出回路を複数個有し、前記複数個の検出回路の出
力信号を加算することを特徴とするものであり、出力信
号の強度を上げることができる。
【0022】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記検出回路が、振動可能な微小機械振動子の信号を取
り出す第1の手段と、振動を拘束された微小機械振動子
の信号を取り出す第2の手段と、前記第1の手段の出力
信号と前記第2の手段の出力信号との差分を取る第3の
手段とを備えたことを特徴とする。この構成により、フ
ィルタリングされずに検出回路に直接漏れる入力信号成
分を推測し、その成分をキャンセルすることで、微小機
械振動子の振動に伴う出力信号成分のみを抽出すること
ができる。
【0023】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
共振周波数の異なる複数個の前記微小機械振動子を有
し、前記検出回路の出力信号を選択することを特徴とす
るものであり、検出回路の出力信号を選択することで電
磁波の周波数選択を行うことができる。
【0024】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子の寸法が異なることでその共振周波
数が異なることを特徴とするものであり、共振周波数の
異なる微小機械振動子を容易に得ることができる。
【0025】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子の弾性率が異なることでその共振周
波数が異なることを特徴とするものであり、共振周波数
の異なる微小機械振動子を容易に得ることができる。
【0026】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子の応力が異なることでその共振周波
数が異なることを特徴とするものであり、共振周波数の
異なる微小機械振動子を容易に得ることができる。
【0027】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記導波路を伝わる信号に直流バイアス電圧を加えるこ
とにより、微小機械振動子に一定の応力を発生させるこ
とを特徴とするものであり、応力の異なる微小機械振動
子を容易に得ることができる。
【0028】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が直径1ミクロン〜数十ミクロンの
カーボンコイルであり、既存技術を応用して微小機械振
動子を作製することができる。
【0029】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子が直径1nm〜数十nmの極細シリ
コンワイヤであり、既存技術を応用して微小機械振動子
を作製することができる。
【0030】また、本発明の微小機械振動フィルタは、
前記微小機械振動子の材料が直径1nm〜数十nmのカ
ーボンナノチューブであり、既存技術を応用して微小機
械振動子を作製することができる。
【0031】以下、本発明の実施の形態について、図1
から図10を用いて説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の実施の形態1に関わる
微小機械振動フィルタの概要図である。導波路はマイク
ロストリップ線路型であり、ストリップ導体1および接
地導体2が誘電体基板3を介して設けられ、ストリップ
導体1上の一部にフィルタ部4が構成され、ストリップ
導体1と接地導体2との間に信号源eが接続される。
【0032】図2はフィルタ部4の断面側面図である。
ストリップ導体1上に複数個の導体からなる微小な円柱
型片持ち状の微小円柱梁5がアレイ状に林立している。
また図3の部分拡大断面側面図および図4の部分拡大上
面図に示すように、微小円柱梁5の先端周囲には空隙g
1、g2を介して検出電極6が設けられている。本実施の
形態1では、検出電極6は、貫通穴8で微小円柱梁5を
囲っている平板であり、すべての微小円柱梁5の振動を
共通して電気信号に変換して、検出回路7の比較器7a
により検出信号を取り出すものである。
【0033】図3および図4に示したように、貫通穴8
の中心と微小円柱梁5の中心をずらす(g1<g2)こと
により、検出電極6と微小円柱梁5の間に電位差が生じ
ると、静電力により両者のギャップが小さい方、すなわ
ちギャップg1を縮める方向に微細円柱梁5が撓む。従
って、導波路の電位の周波数信号成分のうち、微細円柱
梁5固有の共振周波数近傍の成分が、微小円柱梁5と検
出電極6の距離変化に伴う両者間の静電容量の変化とし
て電流信号に変換され、図2の検出回路7を介して出力
される。個々の微小円柱梁5の振動に伴う検出信号は小
さいが、検出電極6により個々の信号の総和をとること
で、出力信号レベルの低下を抑えることができる。
【0034】微小円柱梁5をアレイ化して極微細な振動
梁を構成することは、酸化シリコン薄膜のRIE加工
や、X線ディープリソグラフィ技術とメッキ技術を複合
したLIGAプロセスなどの方法で可能である。図5は
図3の構造を構成する方法の一例を示している。図5
(a)において、金属微小円柱梁5は、LIGAプロセ
スを用いてストリップ導体1上に形成されたものであ
る。微小円柱梁5およびLIGAプロセスで用いたレジ
スト21の高さは、表面研磨により同一に揃えられてい
る。次にレジスト21のアッシングにより、同図(b)
のようにレジスト21の高さのみを低くする。次に同図
(c)に示すようにスパッタリングによりSiO2など
の犠牲層22となる膜を積層する。このとき照射を矢印
で示すように斜め上方から行うことで、微小円柱梁5の
円周に形成される犠牲層に膜厚分布を生じさせる。次に
同図(d)のようにLPCVD(減圧化学的気相成長)
プロセスにより多結晶シリコンなどの導電体膜23を堆
積し、同図(e)のように表面研磨を行って高さをそろ
える。最後にレジスト21をアッシングで除去し、犠牲
層22のSiO2をフッ酸により除去することで、同図
(f)のように微小円柱梁5の先端周囲に貫通穴8を介
して検出電極6が配置された図3の構造を形成すること
ができる。特に、図5(c)において犠牲層22に膜厚
分布を持たせることで、図3、図4のように、検出電極
6の貫通穴8に対して、微小円柱梁5は偏心した位置に
配置され、偏心により最も近接した検出電極6と微小円
柱梁5間の静電力により、微小円柱梁5を励振すること
ができる。
【0035】直径d、長さLの片持ち微小円柱梁の共振
周波数は(数3)であらわされる。E=70GPa、ρ
=2.2×103kg/m3の酸化シリコンを用いて、ア
スペクト比L/d=10の微小円柱梁を構成すると、直
径d=9.9nmでf=800MHz、直径d=5.3
nmでf=1.5GHzとなる。このようなナノメート
ルサイズの微小円柱梁を用いることで、携帯電話に用い
られる数GHz帯近辺の帯域に対応するフィルタを構成
することができる。ナノメートルサイズの振動梁とし
て、H.Kohno, S.TakedaらがJournal of Electron Micro
scopy 49(2000),pp.275-280で紹介しているような直径
1nm〜数十nmの極細シリコンワイヤを利用し、高周
波化することができる。
【数3】
【0036】また、振動梁を円柱梁ではなく円筒梁とす
ると、円筒の外径をD2、内径をD1としたときの共振周
波数は(数4)で表され、また、先端集中荷重による梁
のたわみdと梁の長さLの比は(数5)で表されるた
め、円筒の薄肉化、すなわちD 1をD2に近づけること
は、曲がりやすさの指標(数5)も保ちながら高周波化
が可能であることを示している。従って、カーボンファ
イバのような軽い材料の微小化の究極として直径1nm
〜数十nmのカーボンナノチューブを用いることで、さ
らなる高周波化を図ることができる。
【数4】
【数5】
【0037】このように、本実施の形態1によれば、振
動子である複数の微小円柱梁5をアレイ状に配列して、
共振周波数の高周波化を図るとともに、各微小円柱梁5
の周囲に共通の検出電極6を配置して、検出電極6によ
り個々の信号の総和をとることで、検出信号の微弱化を
防ぐことができ、小型で高品質の微小機械振動フィルタ
を提供することができる。
【0038】(実施の形態2)図6は本発明の実施の形
態2に関わり、全体の構成は図1に示した実施の形態1
と同じであるが、本実施の形態2では、微小円柱梁5が
対向する一対の微小円柱5a、5bが並列にアレイ状に
配列されており、一方の微小円柱梁5aは、それぞれ共
通の検出電極6aとコンデンサを形成し、他方の微小円
柱梁5bの先端は、固定材9を介してそれぞれ共通の検
出電極6bに固定されている。図7はその上面図であ
り、微小円柱梁5a、5bは、それぞれ検出電極6a、
6bにギャップgをもって対向しており、各検出電極6
a、6bは、間隔Aをもって対向している。検出電極6
aは、検出回路7の第1比較器7bに接続され、検出電
極6bは、検出回路7の第2比較器7cに接続されてい
る。
【0039】ストリップ導体1に流れる信号源eからの
信号により微小円柱梁5aが振動し、振動に伴う電流i
aが検出電極6aから流れるが、これにはストリップ導
体1から微小円柱梁5aの振動を介さずに直接検出電極
6aに電磁的に結合して流れる不要成分が重畳されてい
る。固定材9の比誘電率を周囲の空気と同等のものとす
ることにより、検出電極6bにも同等の不要成分のみが
重畳するため、検出回路7において、検出電極6aから
の信号を第1比較器7bで取り出し、検出電極6bから
の信号を第2比較器7cで取り出し、比較器7bの出力
から比較器7cの出力を加算器7dで減算することで、
微細円柱梁5aの振動に伴う信号成分のみを検出信号と
して取り出すことができる。
【0040】このように、本実施の形態2によれば、ア
レイ状に配列された微小円柱梁5の対向する一方の微小
円柱梁5bの振動を拘束し、振動可能な他方の微小円柱
梁5aの検出信号から拘束された微小円柱梁5bの検出
信号を減算することで、電磁波が直接検出回路に結合し
て励起する不要な信号成分を抑制し、微小円柱梁5の振
動に起因する信号成分のみを検出信号として取り出すこ
とができるので、小型で高品質の機械振動フィルタを提
供することができる。なお、本実施の形態2における図
6の構造を実現する方法も、実施の形態1の図5に示し
た構成方法を利用することができる。本実施の形態2で
用いた固定材9は、図5(f)の状態の表面にシリコン
窒化膜などをパターニングして形成することができる。
【0041】(実施の形態3)図8および図9は本発明
の実施の形態3に関わる微小機械振動フィルタの上面図
および側面図である。マイクロストリップ線路型のスト
リップ導体1上の一部が、微小機械振動子となる複数の
コイルスプリング10のアレイ状の並列接続に置き換え
られている。ただし、図8に示すように、コイルスプリ
ング10の両端は、伝送路方向とは角度θをつけて取り
付けられており、コイルスプリング10は、その中心部
でわずかに折り曲げられて開口部11が形成されている
ため、コイルスプリング10に電流が流れると、内部の
磁束は開口部11から漏れた状態になる。ただしコイル
スプリング10内部の磁気エネルギを最大にするような
力がコイルスプリングに働くため、コイルスプリング1
0は、開口部11を閉じてまっすぐになろうとする。こ
の力の作用により、コイルスプリング10は固有の共振
周波数で振動する。この機械振動はコイルスプリングの
自己インダクタンスの変化として、コイルスプリング1
0両端のストリップ導体1に接続された検出回路7Aに
より検出され、検出信号はフィルタリングされた出力信
号となる。
【0042】なお、このコイルスプリング10は、S.Mo
tojimaらが“Three-dimensional vapor growth mechani
sm of carbon microcoils”,J.Mater.Res.,Vol4,No.11,
pp.4329-4336(1999)で報告している化学気相析出法によ
って精製された直径1ミクロン〜数十ミクロンの微細な
カーボンコイルを利用して共振周波数を上げることが可
能である。
【0043】(実施の形態4)図10は本発明の実施の
形態4に関わる微小機械振動フィルタの断面側面図であ
る。コプレーナ線路型のストリップ導体1および接地導
体2が誘電体基板3上に並行に設けられ、ストリップ導
体1と接地導体2を覆うように誘電体被膜12が誘電体
基板3上に設けられている。さらに誘電体被膜12上に
は、誘電体材料からなり、長さ方向に分極された微小円
柱梁5がアレイ状に林立している。検出回路は、レーザ
光源13と受光素子14により構成されている。
【0044】ストリップ導体1に信号が流れると、電界
Eの分布は図に示す方向をとり、電界Eの多くは微小円
柱梁5と斜交する。このとき分極されている微小円柱梁
5は、その方向を電界Eの方向に揃えるような力が働く
ため、微小円柱梁5には自己の共振周波数で振動する。
最も微小円柱梁5の触れ角の大きなスポットにレーザ光
源13によりレーザ光を照射し、一次回折光を受光素子
14で検出すると、微小円柱梁5の触れにより回折光の
結びつく場所が変化するため、微小円柱梁5の振動を受
光量の変化で検出することができる。
【0045】このように、本実施の形態4によれば、微
小円柱梁5の検出に光を用いることで、検出回路が入力
電磁波からの電磁的な干渉を直接受けないような構成を
とることができ、小型で高性能な微小機械振動を提供す
ることができる。
【0046】なお、微小梁として長さ方向に磁化された
磁性体を用い、磁界との相互作用により微小梁を振動さ
せる構成によっても同様な効果を得ることができる。
【0047】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、機械振
動子を微小化することでMHz〜GHzの帯域に対応す
る、小型で急峻な特性を有するフィルタを構成すること
ができるとともに、機械振動子をアレイ状に並べること
で、フィルタ出力信号強度の低下を抑えることができ
る。また、一部の微小機械振動子の振動を拘束すること
で入力信号が電磁的に直接出力信号に干渉することで発
生するノイズ成分を観測することが可能であり、その成
分を除去することができるため、小型で高品質の機械振
動フィルタを提供することができる。また、微小機械振
動子を導電体コイルで構成し、導電体コイルの発生する
磁界同士の相互作用で振動させることにより、導電体コ
イルの振動をインピーダンス変化として検出することが
できる。また、微小機械振動子の検出に光を用いること
で、検出回路が入力電磁波からの電磁的な干渉を直接受
けないような構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1における微小機械振動フ
ィルタの概略斜視図
【図2】本発明の実施の形態1におけるフィルタ部の断
面側面図
【図3】本発明の実施の形態1におけるフィルタ部の拡
大部分断面図
【図4】本発明の実施の形態1におけるフィルタ部の拡
大部分上面図
【図5】本発明の実施の形態1におけるフィルタ部の構
成方法を示す図
【図6】本発明の実施の形態2における微小機械振動フ
ィルタのフィルタ部の断面部分側面図
【図7】本発明の実施の形態2におけるフィルタ部の部
分上面図
【図8】本発明の実施の形態3における微小機械振動フ
ィルタのフィルタ部の部分上面図
【図9】本発明の実施の形態3におけるフィルタ部の部
分側面図
【図10】本発明の実施の形態4における微小機械振動
フィルタのフィルタ部の部分断面側面図
【図11】従来の機械振動フィルタの概略斜視図
【図12】機械振動フィルタの寸法と高周波化の関係を
示す特性図
【符号の説明】
1 ストリップ導体 2 接地導体 3 誘電体基板 4 フィルタ部 5 微小円柱梁 6 検出電極 7 検出回路 8 貫通穴 9 固定 10 コイルスプリング 11 開口部 12 誘電体被膜 13 レーザ光源 14 受光素子 21 レジスト 22 犠牲層 23 導電体膜 101、102 共振器 103 結合梁 104 入力線路 105 出力線路

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電磁波導波路上またはその近傍の電磁界
    中にアレイ状に配置された梁状またはコイル状の複数の
    微小機械振動子と、前記複数の微小機械振動子が電磁界
    との相互作用を受けて固有の共振周波数で振動する際の
    信号を検出する検出回路とを備えた微小機械振動フィル
    タ。
  2. 【請求項2】 前記微小機械振動子が導電体梁で、電磁
    波の電界との相互作用により振動することを特徴とする
    請求項1記載の微小機械振動フィルタ。
  3. 【請求項3】 前記微小機械振動子が誘電体梁で、電磁
    波の電界との相互作用により振動することを特徴とする
    請求項1記載の微小機械振動フィルタ。
  4. 【請求項4】 前記微小機械振動子が磁性体梁で、電磁
    波の磁界との相互作用により振動することを特徴とする
    請求項1記載の微小機械振動フィルタ。
  5. 【請求項5】 前記微小機械振動子が導電体コイルで、
    前記導電体コイルの発生する磁界同士の相互作用で振動
    することを特徴とする請求項1記載の微小機械振動フィ
    ルタ。
  6. 【請求項6】 前記導電体コイルを直列に接続してその
    接続部で前記導電体コイル内部の磁束が漏れるように配
    置することを特徴とする請求項5記載の微小機械振動フ
    ィルタ。
  7. 【請求項7】 前記導電体コイルの振動に伴うインピー
    ダンス変化を検出することを特徴とする請求項6記載の
    微小機械振動フィルタ。
  8. 【請求項8】 前記微小機械振動子が導電体で、前記検
    出回路が前記微小機械振動子と対向する電極であり、前
    記微小機械振動子の振動を、前記微小機械振動子と前記
    電極間の静電容量の変化でとらえることを特徴とする請
    求項1記載の微小機械振動フィルタ。
  9. 【請求項9】 前記電極の表面に穴が設けられ、前記微
    小機械振動子の一部が、前記穴の中に配置され、かつ前
    記穴の中心位置から偏心した位置に配置されていること
    を特徴とする請求項8記載の微小機械振動フィルタ。
  10. 【請求項10】 前記検出回路が光学的に前記微小機械
    振動子の振動を検出することを特徴とする請求項1記載
    の微小機械振動フィルタ。
  11. 【請求項11】 前記検出回路を複数個有し、前記複数
    個の検出回路の出力信号を加算することを特徴とする請
    求項1記載の微小機械振動フィルタ。
  12. 【請求項12】 前記検出回路が、振動可能な微小機械
    振動子の信号を取り出す第1の手段と、振動を拘束され
    た微小機械振動子の信号を取り出す第2の手段と、前記
    第1の手段の出力信号と前記第2の手段の出力信号との
    差分を取る第3の手段とを備えたことを特徴とする請求
    項1記載の微小機械振動フィルタ。
  13. 【請求項13】 共振周波数の異なる複数個の前記微小
    機械振動子を有し、前記検出回路の出力信号を選択する
    ことで電磁波の周波数選択を行うことを特徴とする請求
    項1記載の微小機械振動フィルタ。
  14. 【請求項14】 前記微小機械振動子の寸法が異なるこ
    とでその共振周波数が異なることを特徴とする請求項1
    3記載の微小機械振動フィルタ。
  15. 【請求項15】 前記微小機械振動子の弾性率が異なる
    ことでその共振周波数が異なることを特徴とする請求項
    13記載の微小機械振動フィルタ。
  16. 【請求項16】 前記微小機械振動子の応力が異なるこ
    とでその共振周波数が異なることを特徴とする請求項1
    3記載の微小機械振動フィルタ。
  17. 【請求項17】 前記導波路を伝わる信号に直流バイア
    ス電圧を加えることにより、微小機械振動子に一定の応
    力を発生させることを特徴とする請求項16記載の微小
    機械振動フィルタ。
  18. 【請求項18】 前記微小機械振動子が直径1ミクロン
    〜数十ミクロンのカーボンコイルである請求項1記載の
    微小機械振動フィルタ。
  19. 【請求項19】 前記微小機械振動子が直径1nm〜数
    十nmの極細シリコンワイヤである請求項1記載の微小
    機械振動フィルタ。
  20. 【請求項20】 前記微小機械振動子の材料が直径1n
    m〜数十nmのカーボンナノチューブである請求項1記
    載の微小機械振動フィルタ。
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