JP2003294132A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

自動変速機の制御装置

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JP2003294132A
JP2003294132A JP2002096324A JP2002096324A JP2003294132A JP 2003294132 A JP2003294132 A JP 2003294132A JP 2002096324 A JP2002096324 A JP 2002096324A JP 2002096324 A JP2002096324 A JP 2002096324A JP 2003294132 A JP2003294132 A JP 2003294132A
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frequency
characteristic
controller
gain
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JP2002096324A
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Yuki Ota
有希 太田
Hiroaki Kato
浩明 加藤
Eitaku Nobeyama
英沢 延山
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Aisin Corp
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Aisin Seiki Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 制御対象等に特性変化が生じても、制御対象
への操作量を安定且つ高速に目標値に一致させ、目標値
への追従性を均一にする制御装置を提供する。 【解決手段】 エンジン出力軸の回転速度および変速機
入力軸の回転速度との差によって定義されるスリップ速
度に関し、変速機等の制御対象から出力されるスリップ
速度を、車両の走行条件に応じて演算される目標スリッ
プ速度に一致させる制御装置であって、目標スリップ速
度に係る信号を入力する周波数特性変更手段を備えてお
り、周波数特性変更手段からの変更後出力、および、ス
リップ速度に係る信号の偏差を求める比較演算手段と、
追従性を確保するための重み関数W1および安定性を確
保するための重み関数W2によって設計した伝達関数に
より、偏差を制御対象に指示する操作量に変換するH∞
コントローラとを備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン出力軸の
回転速度および変速機入力軸の回転速度との差によって
定義されるスリップ速度に関し、変速機等の制御対象か
ら出力されるスリップ速度を、車両の走行条件に応じて
演算される目標スリップ速度に一致させる制御装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動変速機の一つとしてロックア
ップ機構を有するオートマチック・トランスミッション
がある。当該トランスミッションの変速動作を制御する
際において、例えば、停止状態にある車両を加速し始め
る場合などには、エンジン側の出力軸と変速機側の入力
軸とを所定の相対回転速度でスリップさせる。つまり、
停止状態から加速を開始した直後においては、エンジン
の回転数が低く、十分なトルクが得られない。よって、
このような場合に、仮に、トルクコンバーターの入力側
であるエンジン出力軸と、出力側である変速機入力軸と
を直結したのでは、エンジンの振動が変速機に伝達され
る等して乗り心地が悪いものとなる。そのため、前記エ
ンジン出力軸と変速機入力軸とをスリップさせ、エンジ
ン出力軸の速度をある程度高く保持しつつ、トルクコン
バーターの作用を利用して変速機入力軸に動力を伝達す
る。
【0003】一方、車速が十分に高まり、エンジン出力
軸と変速機入力軸とを直結したとしても、エンジンの回
転数をある程度高く維持できる状態において、なお、エ
ンジン出力軸と変速機入力軸とをスリップさせ続けるの
は、燃料消費量が増大するため好ましくない。
【0004】従来のスリップ速度を制御する装置は、例
えば、スロットル弁の開度、および、エンジン回転数、
変速機入力軸の回転数に基づき、エンジン出力軸と変速
機入力軸とのスリップ速度が、所定の目標スリップ速度
となるよう制御していた。例えば、図1の左側に示す波
形を有する目標スリップ速度に係る信号を制御系に入力
し、図1の右側に示す波形を有するスリップ速度の応答
を得たい場合を考える。このような場合、先ず、設計者
は前述の入出力波形が実現可能な伝達関数M(s)(以
下、「設計ゲイン線図」と称する)を設計する。次に、
予め求めた制御対象の伝達関数を元に、図3に示すよう
な目標スリップ速度Nrの入力からスリップ速度Nの出
力までに至る制御系全体の伝達関数が、前記伝達関数M
(s)と一致するようにコントローラを設計する。当該
伝達関数M(s)が有するゲイン特性を、以下、「設計
ゲイン特性」と称する。
【0005】しかし、制御対象である変速機は、個体毎
に動作特性が微妙に異なる。また、同一の変速機であっ
ても、走行条件が異なったり、摩擦材や作動油が劣化す
る等が原因となって動作特性が次第に変化する。図2
は、制御対象の伝達関数に係るボード線図を示したもの
であり、上記動作特性に変化があった場合に、制御対象
の特性がどのようにばらつくかを表示したものである。
図2(イ)は、前記伝達関数のゲイン特性を示すゲイン
線図であり、図2(ロ)は、位相特性を示す位相線図で
ある。このように、制御対象の動作特性にばらつきが生
じると、前記手法で設計された制御系のステップ応答が
図1に示したような応答とならず、安定しないものとな
る。
【0006】そこで、このような不都合を解消すべく、
従来においても、図3に示すような制御装置(特開平7
−198035)が提案されていた。当該制御装置は、
いわゆるH∞制御を行うH∞コントローラを備えてい
る。H∞制御は、図2に示すように、ゲイン特性および
位相特性がばらついている場合でも、安定且つ追従性良
く制御対象の応答を目標値に到達させようとするもので
ある。
【0007】当該制御装置を用いる場合には、図3に示
すごとく、走行条件に応じて決定される目標スリップ速
度Nrと、制御対象から出力されるスリップ速度Nとの
偏差eを演算し、この偏差eをH∞コントローラの伝達
関数で変換した応答を再び制御対象に入力する。当該応
答は、例えば、制御対象である変速機のリニアソレノイ
ド弁に対する操作量である。このルーチンを繰り返し
て、変速機の実際のスリップ速度Nを目標スリップ速度
Nrに一致させる。
【0008】H∞コントローラは、追従性を確保するた
めの重み関数W1と、安定性を確保するための重み関数
W2とを用いて設計する。当該H∞コントローラの伝達
関数によれば、図2(イ)に示す制御対象のゲイン線図
を、図4の太線に示す制御系全体の設計ゲイン線図に近
づけることができる。このように、一つの理想的なゲイ
ン特性が得られれば、走行条件が何れの場合であっても
安定した応答が得られる。即ち、制御系に対して目標ス
リップ速度Nrを規定するステップ入力があった場合
に、求めるステップ応答を安定的に、且つ、応答性に優
れた状態で得ることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の制
御装置では、以下に示すような問題があった。即ち、上
記制御装置を用いた場合でも、図4に細線で示すごと
く、設計ゲイン線図の屈曲部分の近傍(図4では○で囲
んだ領域)においては、ゲイン線図にばらつきが生じ
る。その原因は不明であるが、H∞コントローラに係る
重み関数のうち、特に追従性を確保するためのW1を適
宜調節しても、夫々のゲイン線図を、低周波数域から高
周波数域の全体に亘って設計ゲイン線図に近づけるのは
極めて困難であった。
【0010】このため、各種の走行条件下で目標スリッ
プ速度Nrを得るべく、前記H∞コントローラの伝達関
数にステップ信号を入力すると、スリップ速度Nは、図
5に示すようなステップ応答が得られる。つまり、目標
スリップ速度Nrには、比較的速くかつ安定的に到達す
るのであるが、目標スリップ速度Nrに落ち着くまでの
挙動に差が生じる。
【0011】例えば、図4の折点付近でゲインが高くな
る特性を有する場合、図5にあっては、スリップ速度N
が目標スリップ速度Nrを超えてから落ち着くこととな
る。このような応答が生じる場合、例えば、大きなスリ
ップ速度Nが生じている状態から、小さな目標スリップ
速度Nrへ制御しようとすると、スリップ速度Nがオー
バーシュートし、スリップ速度Nが目標スリップ速度N
rより小さくなる時間帯が生じる。このとき、仮にトル
クコンバーターがロックアップし、かつ、エンジン回転
が低い状態であれば、エンジン振動が変速機に伝わって
得運転者が不快な振動を感じることとなる。
【0012】一方、図4の折点付近でゲインが低くなる
特性を有する場合には、図5において、目標スリップ速
度Nrに到達するまでの時間が長くなる。このような応
答が生じる場合、例えば上記と同様に、大きなスリップ
速度Nが生じている状態から小さな目標スリップ速度N
rへ制御しようとすると、スリップ速度Nがアンダーシ
ュートし、エンジン回転の高い状態が長時間続いて燃費
を悪化させる原因となる。
【0013】このように、従来の制御装置では、制御対
象等に特性変化が生じた場合、スリップ速度Nを、ある
程度安定かつ高速に目標スリップ速度Nrに一致させる
ことはできた。しかし、そこに至るスリップ速度Nの変
動態様が一定とならず、スリップ速度Nの追従性が不均
一になるという不都合があった。
【0014】本発明の目的は、上記従来の問題点を解消
し、制御対象等に特性変化が生じた場合でも、制御対象
に対する操作量を安定且つ高速に目標値に一致させ、さ
らに、目標値への追従性を均一にし得る制御装置を提供
することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】〔特徴構成1〕この目的
を達成するために、本発明に係る自動変速機の制御装置
は、請求項1に記載したごとく、エンジン出力軸の回転
速度および変速機入力軸の回転速度との差によって定義
されるスリップ速度に関し、変速機等の制御対象から出
力されるスリップ速度を、車両の走行条件に応じて演算
される目標スリップ速度に一致させる制御装置であっ
て、前記目標スリップ速度に係る信号を入力する周波数
特性変更手段を備えており、 当該周波数特性変更手段
からの変更後出力、および、前記スリップ速度に係る信
号の偏差を求める比較演算手段と、追従性を確保するた
めの重み関数W1および安定性を確保するための重み関
数W2によって設計した伝達関数により、前記偏差を前
記制御対象に指示する操作量に変換するH∞コントロー
ラとを備えた点に特徴を有する。
【0016】〔作用効果〕前述したごとく、主にH∞コ
ントローラのみによって変換された指示操作量を制御対
象に出力する従来の制御系では、制御対象の特性変動を
吸収し、応答性を均一にするにも限界があった。しか
し、本構成のごとく、H∞コントローラに周波数特性変
更手段を加えて制御系を構成することで、H∞コントロ
ーラの設計のみでは対処しきれない更なるゲイン特性の
改善を可能とし、制御系全体として求める設計ゲイン特
性により近いゲイン特性を得ることができる。その結
果、制御対象等に特性変化が生じたような場合でも、目
標スリップ速度に対し、制御対象のスリップ速度を安定
且つ高速に一致させ、さらに、その追従性をも均一にす
ることができるから、運転フィーリングが良く、燃費の
向上にも貢献し得る自動変速機の制御装置を得ることが
できる。
【0017】〔特徴構成2〕本発明に係る自動変速機の
制御装置においては、請求項2に記載したごとく、前記
目標スリップ速度の入力から前記スリップ速度の出力ま
でに至る制御系が備えるべき所期の設計ゲイン特性に対
して、当該制御系全体のゲイン特性を近似させるに際
し、前記ゲイン特性のうち、低周波数領域に係るゲイン
特性については、前記重み関数W1および重み関数W2
によってゲインのばらつきを抑えるように前記H∞コン
トローラを設計し、高周波数領域に係るゲイン特性につ
いては、前記周波数特性変更手段によって前記設計ゲイ
ン特性に一致させる調整を施すものとすることができ
る。
【0018】〔作用効果〕H∞コントローラを用いた制
御では、制御対象等に特性変化が生じたような場合で
も、その影響を受け難いいわゆるロバストな制御が可能
である。ただし、そのためには、重み関数W1および重
み関数W2によって、H∞コントローラの伝達関数を所
期の特性を有するように調整することが必要である。し
かしながら、そのような調整は容易ではない。
【0019】そこで、本構成では、自動変速機のスリッ
プ制御において特に重要な低周波数領域のゲイン特性に
注目し、この領域については前記重み関数W1および前
記重み関数W2によって調整することとしている。この
ように、周波数領域の一部だけを重点的に調整すること
は、全部の周波数領域に亘る調整に比べて容易である。
【0020】そして、もう一方の高周波数領域のゲイン
特性については、予め周波数特性変更手段によって処理
した目標スリップ速度に係る信号を用いて制御対象のス
リップ速度との偏差を求め、当該偏差をH∞コントロー
ラに入力することで、所期の設計ゲイン特性に近似させ
ることができる。
【0021】以上のごとく、制御対象に出力する信号の
周波数領域を分割し、夫々の領域に関係するゲイン特性
の調整を、H∞コントローラと周波数特性変更手段とで
分担することで、制御系全体としてのゲイン特性を所期
の設計ゲイン特性に正確にかつ効率良く近づけることが
できる。
【0022】〔特徴構成3〕本発明に係る自動変速機の
制御装置においては、請求項3に記載したごとく、前記
設計ゲイン特性を、周波数によって変化しない第1直線
領域と、周波数の増大に伴って直線的に下降する第2直
線領域とを有するものとし、前記低周波数領域を、前記
第1直線領域の延長線と前記第2直線領域の延長線とが
交差する位置での周波数以下の領域とすることができ
る。
【0023】〔作用効果〕本発明の制御装置に求める設
計ゲイン特性は、周波数によって変化しない第1直線領
域と、周波数の増大に伴って直線的に下降する第2直線
領域とを有するものである。そして、制御対象の制御に
対しては、主に、ゲインが低下しない前記第1直線領域
の信号をより多く用いる。そこで、本構成のごとく、前
記第1直線領域の延長線と前記第2直線領域の延長線と
が交差する位置での周波数以下の領域を低周波数領域と
規定し、H∞コントローラにおいてこの領域のゲイン特
性を重点的に調整することで、上記構成1あるいは構成
2に係る作用効果をより顕著に発揮する制御装置を得る
ことができる。
【0024】〔特徴構成4〕本発明に係る自動変速機の
制御装置においては、請求項4に記載したごとく、前記
周波数特性変更手段としてローパスフィルタを用いるこ
とができる。
【0025】〔作用効果〕特に、請求項3に示したごと
く、制御系全体としての設計ゲイン特性が、前記第1直
線領域と前記第2直線領域とを備えており、ゲイン特性
の調整に際して、その低周波数側のゲインはそのままに
しておき、高周波数側の領域についてはゲインを下げた
いような場合に、周波数特性変更手段としてローパスフ
ィルタを使用することは非常に有効である。例えば、当
該ローパスフィルタとして一次遅れ系のものを採用すれ
ば、定数の調整が容易であり、制御系全体として所期の
ゲイン特性を備えた自動変速機の制御装置を効率よく得
ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】〔概要〕本発明に係る自動変速機
の制御装置を図6乃至図9に基づいて説明する。当該制
御装置は、例えば、乗用車のロックアップ機構付きオー
トマチック・トランスミッションの変速動作を制御する
ために用いる。オートマチック・トランスミッションの
トルクコンバーターにあっては、例えば、車両を停止状
態から加速する駆動時、或いは、走行状態から減速する
逆駆動時に、エンジン出力軸の回転速度と変速機入力軸
の回転速度とに差を持たせる必要があり、そのため、両
軸を適宜スリップさせる制御を行う。
【0027】今、エンジン出力軸の回転速度と変速機入
力軸の回転速度との差をスリップ速度とする。本実施形
態では、特に二つのスリップ速度を定義する。一つは、
制御装置が予め保持しており、その時々の走行条件に応
じて制御系に指示する目標スリップ速度Nrである。当
該目標スリップ速度Nrは、例えば、エンジンスロット
ル弁の開度と変速機入力軸の回転速度とに基づいて決定
される。もう一つは、実際のスリップ速度Nである。
尚、当該スリップ速度Nは、制御対象である現実の変速
機で生じているスリップ速度Nをいうが、制御対象とし
てモデル化した変速機について考えるものであってもよ
い。
【0028】〔構成〕本発明に係る制御装置は、図6に
示す構成の制御系を備える。主な構成要素として、実質
的に制御系の伝達関数を決定するH∞コントローラと、
当該H∞コントローラに入力する信号を予め調整する周
波数特性変更手段とを備える。さらに、前記H∞コント
ローラにおいて伝達関数により変換された応答を出力す
る制御対象を含めて本制御装置の制御系を形成してあ
る。
【0029】当該制御系において、前記周波数特性変更
手段には、目標スリップ速度Nrに係る信号が入力され
る。一方、制御対象からは現実のスリップ速度Nに係る
信号が出力される。このスリップ速度Nに係る信号は、
H∞コントローラの前に設置した比較演算手段にフィー
ドバックされる。当該比較演算手段では、前記周波数特
性変更手段からの変換後出力と、前記スリップ速度Nに
係る信号との偏差eを求める。この偏差eをH∞コント
ローラに入力し、現実のスリップ速度Nを目標スリップ
速度Nrに一致させるための操作量uを演算して前記制
御対象に出力する。このルーチンを繰り返すことで、現
実のスリップ速度Nを目標スリップ速度Nrに到達させ
る。以下、夫々の構成要素につき説明する。
【0030】〔H∞コントローラ〕H∞制御において
は、追従性を確保するための重み関数W1と、安定性を
確保するための重み関数W2等を用いてH∞コントロー
ラの伝達関数を決定する。具体的にH∞コントローラを
構築するには、詳細は省略するが、例えば、Doyle,Glo
verらによって提案されたDGKF法等を用いる。
【0031】H∞コントローラの伝達関数を決定する際
の、前記重み関数W1およびW2のうち重み関数W2
は、制御対象の特性のばらつきによりほぼ一意的に決ま
る性質のものである。通常は高次の関数で表されること
が多い。一方、重み関数W1は、比較的簡単な関数で表
現することができ、設計の自由度も広い。当該重み関数
W1は、制御装置を決定する段階で何度か修正を加えて
微調整する。
【0032】本実施形態においては、H∞コントローラ
に求めるゲイン特性のうち、特に低周波数域におけるゲ
イン特性が、制御系全体としての前記設計ゲイン特性に
良く近似するように設計する。これは、通常、あまり高
い周波数を有する信号は、ロックアップ機構付きの自動
変速機の制御には用いないからである。
【0033】図4には、前記目標スリップ速度の入力か
ら前記スリップ速度の出力までの制御系に求める設計ゲ
イン特性を太線で示す。図4から明らかなように、この
特性曲線は、周波数によってゲインが変化しない第1直
線領域と、周波数の増大に伴ってゲインが直線的に下降
する第2直線領域とを有する。上記二つの直線の延長線
どうしが交わる位置を折点位置と称し、当該折点位置に
おける周波数を折点周波数と称することにする。本制御
装置では、前述のごとく、特に低周波数側の領域が重要
である。そして、当該低周波数側の領域とは、前記折点
周波数を含んでこれよりも低周波数側の領域をいう。
【0034】ゲイン特性の調整に際しては、低周波数領
域の中でも、特に、前記折点周波数位置でのばらつきが
少なくなるように、主に追従性を確保するための重み関
数W1を調整する。H∞制御を行うに際して重要なもう
一つの重み関数W2は、変速機の特性、例えば、負荷・
タービン回転速度等による特性変化に鑑みて高次の式で
近似した。当該重み関数W2は前記特性等に応じてほぼ
決定されるものであり、重み関数W1に比べて重み関数
W2を調整する余地は少ない。
【0035】通常、低周波数側でのゲイン特性の調整を
重視すると、高周波数側におけるゲイン特性は、望むゲ
イン特性(図7の太線)とは一致しなくなる場合が多
い。本実施形態の場合においても、図7に示すごとく、
得たい設計ゲイン線図よりも上方に偏位したものとなっ
た。しかしながら、図7においては、前記折点周波数近
傍(図7中の○で囲んだ部分)におけるゲイン線図のば
らつき程度を、図4に示した従来のH∞コントローラの
みを用いたもののばらつき程度よりも縮小させることが
できた。
【0036】〔周波数特性変更手段〕従来のH∞コント
ローラを用いた制御装置では、前記重み関数W1および
W2を調整し、当該H∞コントローラの伝達関数のみを
決定することで、制御系全体が求める設計ゲイン特性を
得ようとするものであった。しかも、重み関数W1およ
びW2を用いる調整は、低周波数領域から高周波数領域
に亘る全ての領域を対象にしていた。しかし、本発明で
は、H∞コントローラに対しては、上記のごとく、H∞
コントローラ自身のゲイン線図のうち、折点周波数を含
めて低周波数側のみについて良好なゲイン特性が得られ
るように、H∞コントローラ自身の伝達関数を決定す
る。
【0037】そして、もう一方の高周波数側の領域につ
いては、H∞コントローラとは別の周波数特性変更手段
を用いて、制御系全体のゲイン特性が設計ゲイン特性に
近似するように調整するものとしている。図7に示した
ごとく、H∞コントローラによって得られるゲイン特性
は、制御系全体の設計ゲイン特性に対して、前記折点周
波数から高周波数側の領域において大きな値を示してい
る。そこで、本実施形態では、前記周波数特性変更手段
としてローパスフィルタ(以下、「LPF」と称する)
を用いることとする。
【0038】図6に示すごとく、本実施形態に係る制御
系は、目標スリップ速度Nrに係る信号にLPFをかけ
てLPF出力Nlpfとしたものを、比較演算手段を用
いて実際のスリップ速度Nと比較する構成としてある。
これにより、目標スリップ速度Nrに係る信号中の高周
波数成分を有するものの一部を除去することができる。
【0039】前記LPFの設置に際しては、カットオフ
周波数あるいは制動係数等の定数を適宜変更する。この
ような調整を行うことで、前記折点周波数の位置よりも
高周波数側のゲイン線図の角度を変更することができ
る。例えば、当該LPFとして一次遅れ系のものを採用
すれば、前記定数の調整が容易となる。図8には、調整
を終了したLPFを含めた制御系全体の伝達関数が有す
るゲイン特性を示した。図8によれば、制御対象の特性
が変化しても、低周波数域から高周波数域のほぼ全域に
亘って、設計ゲイン特性によく一致したゲイン特性が得
られることがわかる。
【0040】そして、上記のごとく得られたLPFおよ
びH∞コントローラによる制御系に対し、各種の走行条
件下で目標スリップ速度Nrのステップ入力を与えてみ
た。その結果得られた、時間と実際のスリップ量との関
係を図9に示す。この図から明らかなごとく、得られる
スリップ速度Nは、時間と目標スリップ速度Nrとの関
係に非常に良く一致していた。
【0041】尚、本実施形態では、周波数特性変更手段
としてLPFを用いる例を示したが、この他にも、例え
ばハイパスフィルタ等、各種の周波数特性変更手段を用
いることができる。即ち、H∞コントローラが備えるゲ
イン特性と、制御系全体として求める設計ゲイン特性と
を比較し、最も効率的且つ効果的に設計ゲイン特性を得
られるものであれば、何れの周波数特性変更手段を用い
てもよい。
【0042】(効果)以上のごとく、H∞コントローラ
に周波数特性変更手段を加えて制御系を構成した本発明
の自動変速機の制御装置は、H∞コントローラの設計の
みでは対処しきれない更なるゲイン特性の改善を可能と
し、制御系全体として求める設計ゲイン特性により近い
ゲイン特性を得ることができた。その結果、制御対象等
に特性変化が生じたような場合でも、目標スリップ速度
に対し、制御対象のスリップ速度を安定且つ高速に一致
させ、さらに、その追従性をも均一にすることができる
から、運転フィーリングが良く、燃費の向上にも貢献し
得る自動変速機の制御装置を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステップ応答の概念を示す説明図
【図2】制御対象の特性を示すボード線図
【図3】従来の制御系を示す図
【図4】従来の制御系によるゲイン特性を示す図
【図5】従来の制御系による応答特性を示す図
【図6】本発明の制御系を示す図
【図7】H∞コントローラにつき低周波数領域のゲイン
特性を調整した結果を示す図
【図8】本発明の制御系によるゲイン特性を示す図
【図9】本発明の制御系による応答特性を示す説明図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 延山 英沢 福岡県福岡市早良区高取2−5−41−607 Fターム(参考) 3J053 CA03 CB14 CB15 DA06 DA08 EA02 FA01 FA02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン出力軸の回転速度および変速機
    入力軸の回転速度との差によって定義されるスリップ速
    度に関し、変速機等の制御対象から出力されるスリップ
    速度を、車両の走行条件に応じて演算される目標スリッ
    プ速度に一致させる制御装置であって、 前記目標スリップ速度に係る信号を入力する周波数特性
    変更手段を備えており、 当該周波数特性変更手段から
    の変更後出力、および、前記スリップ速度に係る信号の
    偏差を求める比較演算手段と、 追従性を確保するための重み関数W1および安定性を確
    保するための重み関数W2によって設計した伝達関数に
    より、前記偏差を前記制御対象に指示する操作量に変換
    するH∞コントローラとを備えた自動変速機の制御装
    置。
  2. 【請求項2】 前記目標スリップ速度の入力から前記ス
    リップ速度の出力までに至る制御系が備えるべき所期の
    設計ゲイン特性に対して、当該制御系全体のゲイン特性
    を近似させるに際し、 前記ゲイン特性のうち、低周波数領域に係るゲイン特性
    については、前記重み関数W1および重み関数W2によ
    ってゲインのばらつきを抑えるように前記H∞コントロ
    ーラを設計し、 高周波数領域に係るゲイン特性については、前記周波数
    特性変更手段によって前記設計ゲイン特性に一致させる
    調整を施してある請求項1に記載の自動変速機の制御装
    置。
  3. 【請求項3】 前記設計ゲイン特性が、周波数によって
    変化しない第1直線領域と、周波数の増大に伴って直線
    的に下降する第2直線領域とを有するものであり、前記
    低周波数領域は、前記第1直線領域の延長線と前記第2
    直線領域の延長線とが交差する位置での周波数以下の領
    域をいう請求項2に記載の自動変速機の制御装置。
  4. 【請求項4】 前記周波数特性変更手段がローパスフィ
    ルタである請求項1から3の何れか一項に記載の自動変
    速機の制御装置。
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