JP2003293038A - 超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚肉高張力鋼板の製造方法 - Google Patents
超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚肉高張力鋼板の製造方法Info
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Abstract
部靭性に優れた厚肉高張力鋼板の製造方法を提案する。 【解決手段】 溶鋼に、Siおよび/またはMnを添加して
脱酸し、溶存酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整した
のち、REM を添加して、溶存酸素量を0.0010〜0.0050質
量%に調整するとともに、C、Si、Mn、Pを適正範囲に
調整し、さらに、S:0.0005〜0.0060%、REM :0.0030
〜0.0200%を含み、Al、Tiをそれぞれ0.004 %以下に制
限した組成の溶鋼とし、ついで鋳造して鋼素材としたの
ち、該鋼素材を1050〜1200℃に加熱したのち、Ar3〜
(Ar3+100 ℃)の温度域における累積圧下率を35%以
上とする熱間圧延を施し、ついで、平均冷却速度が2℃
/s以上の冷却を450 ℃以下の温度域まで施す。上記し
た組成に加えてさらにNb、V、Cu、Ni、Cr、Mo、Bのう
ちの1種または2種以上を含有してもよい。
Description
等の溶接構造物用として好適な厚肉高張力鋼板に係り、
特に超大入熱溶接を施される使途に好適な厚肉高張力鋼
板に関する。なお、本発明でいう「超大入熱溶接」と
は、溶接入熱量が300kJ/cmを超える溶接を意味するもの
とする。また、「厚肉」鋼板とは、板厚50mm以上の鋼板
をいうものとする。
の大型化に伴い、使用鋼材の高強度化・厚肉化が要望さ
れている。これに伴い、構造物の施工効率の向上と施工
コストの低減の観点から高能率溶接が指向され、例え
ば、サブマージアーク溶接、エレクトロガス溶接やエレ
クトロスラグ溶接などの大入熱溶接が適用されている。
下、HAZ ともいう)は、溶接時に高温に晒され、結晶粒
が粗大化しやすく、しかも、溶接入熱が増大するにした
がい冷却速度が遅くなり、脆弱な上部ベイナイト組織が
形成されやすくなり、さらに島状マルテンサイト等の脆
化組織が生成しやすく、HAZ 靱性が低下しやすいことが
知られている。
いう問題に対し、例えば、特開平2-250917 号公報、特
開平2-254118 号公報、特公平3-53367号公報には、Ti
N を鋼中に微細分散させ、MnS またはREM オキシサルフ
ァイドと複合してオーステナイト粒の粗大化を抑制し、
大入熱溶接HAZ の靭性を改善する技術が提案されてい
る。
物を微細分散させ、大入熱溶接HAZの高靭性化を図る技
術が提案されている。また、特開昭62-170459 号公報に
は、Ti窒化物の微細分散と、固溶B量を低減したうえで
フェライト核生成能を有するBNの析出を組み合わせて、
大入熱溶接HAZ の高靭性化を図る技術が提案されてい
る。また、特開昭61-253344 号公報には、溶接時の冷却
過程でTiN などのうえに析出するBNをフェライトの変態
核として利用し、大入熱溶接HAZ 靭性を改善する技術が
提案されている。また、特開2001-107177 号公報には、
固溶Nを徹底的に低減するため、Tiと十分なAl量(0.05
〜0.10%)を含有させ、さらに微細酸化物としてCa酸化
物を活用して、超大入熱溶接におけるHAZ 靭性を向上さ
せる高張力鋼板が提案されている。
添加することで硫化物の形態を制御することにより、大
入熱溶接HAZ の靭性を改善する技術が提案されている。
また、特公平4-14180 号公報には、REM を添加し硫化物
の形態を制御することにより、大入熱溶接HAZ の靱性を
改善する技術が提案されている。また、特公平4-54734
号公報には、B:0.0003〜0.0030%を含有し、S:0.01
5 %以下とし、さらにTi、REM 、Caの1種または2種以
上を合計で0.003 〜0.04%含み、全Al:0.003 %以下に
低減した高靭性溶接用鋼が提案されている。この技術に
よれば、Al2O3 ,MnSの生成が排除され、Ti、REM 、Caの
酸化物、 硫化物、酸硫化物が形成され、粒内フェライト
の析出核となるBNが顕著に析出するようになり、 溶接HA
Z 靭性が向上するとしている。
0.0001〜0.030 %を含み、S:0.005 %以下に低減し、
Alを実質的に含有しない組成の鋼を1000〜1250℃の温度
領域で再加熱後、熱間加工を施す溶接熱影響部低温靭性
に優れた鋼の製造方法が提案されている。この技術によ
れば、微細に分散したCe酸化物を核として、放射状に微
細なアシキュラーフェライトが生成しHAZ 靭性が向上す
るとしている。
たTiN を主体に利用する従来技術で製造された鋼材に、
300kJ/cmを超える大入熱溶接法を適用した場合、HAZ
が、TiN が溶解する高温域に長時間晒されるため、TiN
が溶解し結晶粒微細化の作用がなくなり、さらに、固溶
Tiおよび固溶Nの増加に起因して、脆化組織が生成し、
著しくHAZ 靱性が低下する場合がある。この傾向は、と
くに入熱量が増大するほど顕著となり、300kJ/cmを超え
る大入熱領域から1200kJ/cm までの超大入熱領域まで安
定してこの技術を利用できないという問題があった。
た技術では、靭性に影響する固溶N量の低減と溶融点近
傍の高温域でも粒微細化効果を有する酸化物を活用する
ことにより、超大入熱溶接におけるHAZ 靭性を向上させ
ようとするものであり、過剰にAlを含有させることが特
徴である。しかし、多量のAl含有は、溶接時に溶接金属
中に混入して脱酸反応に影響し、溶接部靭性を低下させ
るという問題がある。
では、酸化物を均一かつ微細に分散させることがかなり
の困難を伴い、酸化物の複合化等によりその分散能を改
良すべく種々の検討がなされているが、入熱が300kJ/cm
を超える超大入熱溶接においてはオーステナイト粒の成
長を十分抑制することが現在までのところ難しく、超大
入熱溶接HAZ を安定して高靭性とすることが困難となっ
ていた。
技術によっても、入熱が300kJ/cmを超える超大入熱溶接
HAZ におけるオーステナイト粒の成長を十分には抑制す
ることができず、依然として超大入熱溶接HAZ を安定し
て高靭性とすることが困難であるという問題があった。
また、特開平5-78740号公報に記載された技術では、Ce
酸化物を安定して微細分散することが難しく、入熱が30
0kJ/cmを超える超大入熱溶接HAZ を安定して高靭性とす
ることが困難であるという問題があった。
素の多量添加や、焼入れ焼戻し等の調質処理によって可
能であるが、合金元素の多量添加は溶接部靭性の低下を
招き、また調質処理は製造コストの高騰を招く。このた
め、合金元素の多量添加を行うことなく、また調質処理
を行うことなく、非調質で、高強度の厚肉鋼板を製造す
ることも要望されている。
に解決し、非調質で、降伏強さが355N/mm2以上、-40 ℃
におけるシャルピー吸収エネルギーvE-40 が200J以上の
母材靭性を有し、かつ超大入熱溶接熱影響部靭性に優れ
た厚肉高張力鋼板の製造方法を提案することを目的とす
る。なお、本発明でいう「超大入熱溶接熱影響部靭性に
優れた」とは、300kJ/cmを超える超大入熱溶接の溶接熱
影響部の-40 ℃における吸収エネルギーvE-40 が41J 以
上である場合をいうものとする。
課題を達成するために、300 〜1200kJ/cm の超大入熱溶
接のHAZ 靭性に及ぼす各種要因について鋭意検討を重ね
た。その結果、従来のような、溶鋼中での酸化物、 硫化
物の組成を調整し酸化物、硫化物粒子(分散粒子)の分
散能を高めるだけでは、分散粒子を超大入熱溶接のHAZ
靭性向上に有効な粒子とすることに限界があることに思
い至った。そして、本発明者らは、溶鋼中での酸化物、
硫化物等の粒子組成の調整に加えて、さらに凝固過程で
形成されるデンドライトの形態制御を行うことにより、
分散粒子を、従来に比べて安定して、格段に均一かつ微
細に分散させることができることを見出した。このよう
にして形成された微細分散粒子は、入熱300kJ/cm以上の
超大入熱溶接のHAZ においても、オーステナイト粒の微
細化に有効に寄与し、HAZ 靭性を顕著に向上させること
ができる。
溶鋼の溶存酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整したの
ち、REM を添加することによりデンドライトの形態制御
が、可能であることを見出した。溶鋼中の溶存酸素量を
所定の範囲に調整したのち、REM を添加することによ
り、固液界面にREM オキシサルファイドが晶出し、その
ため、デンドライトの一方向成長が抑制され、デンドラ
イトが等軸晶化し、それによりデンドライト二次アーム
が微細化することを見い出した。さらに、本発明者ら
は、二次脱酸生成物として、このような微細化したデン
ドライト二次アーム間に、SiあるいはMnの酸化物、硫化
物、酸硫化物の1種または2種以上が複合した、微細な
分散粒子が多量にかつ均一に形成され、この微細な分散
粒子が、入熱300kJ/cm以上の超大入熱溶接の溶接熱影響
部においても、オーステナイト粒の粗大化防止に有効に
寄与することを確認した。
におよぼす前組織の影響を検討した。その結果、母材の
フェライト平均粒径を5μm 以下とすることにより、溶
接時の昇温に際し、オーステナイトの核生成サイトが増
加し、したがってオーステナイト粒が微細化し、溶接HA
Z 靭性が向上することを知見した。そして、本発明者ら
は、母材のフェライト平均粒径を5μm 以下とするに
は、熱間圧延を、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)
の温度域における累積圧下率を35%以上とする熱間圧延
とすることが好ましいことを見出した。
に検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発
明の要旨は次の通りである。 (1)溶鋼に、Siおよび/またはMnを添加して脱酸し、
溶存酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整したのち、RE
M を添加し溶存酸素量を0.0010〜0.0050質量%に調整す
るとともに、組成を調整して、質量%で、C:0.05〜0.
15%、Si:0.05〜0.40%、Mn:1.0 〜 2.0%、P:0.03
%以下、S:0.0005〜0.0060%、REM :0.0030〜0.0200
%を含有し、AlおよびTiをそれぞれ0.004 %以下に制限
した組成の溶鋼とし、ついで該溶鋼を鋳造して鋼素材と
したのち、該鋼素材を1050〜1200℃に加熱したのち、A
r3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温度域における累
積圧下率を35%以上とする熱間圧延を施し、ついで、板
厚1/4 位置における平均冷却速度が2℃/s以上の冷却
を450 ℃以下の温度域まで施すことを特徴とする超大入
熱溶接熱影響部靭性に優れた厚肉高張力鋼板の製造方
法。 (2)(1)において、前記脱酸の前に、Alを添加する
予備脱酸を行い、前記脱酸前の溶存酸素量を0.0080〜0.
0170質量%に調整することを特徴とする厚肉高張力鋼板
の製造方法。 (3)(1)または(2)において、前記組成に加えて
さらに、質量%で、Nb:0.1 %以下、V:0.2 %以下、
Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以下、Cr:1.0 %以下、M
o:0.8 %以下、B:0.0003〜0.0040%のうちから選ば
れた1種または2種以上を含有する組成とすることを特
徴とする厚肉高張力鋼板の製造方法。 (4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記冷
却後、さらに450 〜650℃の温度範囲で焼戻し処理を施
すことを特徴とする厚肉高張力鋼板の製造方法。
炉、電気炉、真空溶解炉等通常公知の方法で溶製し、脱
酸処理や脱ガスプロセスにより、まず、溶存酸素量を0.
0030〜0.0120質量%に調整したのち、REM を添加し溶存
酸素量を0.0010〜0.0050質量%に調整する。本発明で
は、脱酸処理はAlやTiによる脱酸ではなく、Siおよび/
またはMn添加の脱酸とする。なお、予備脱酸として、Si
および/またはMn添加による脱酸に先立ち、Alを添加す
る予備脱酸を行ってもよい。Alを添加する予備脱酸を行
う場合には、Siおよび/またはMn添加による脱酸前の溶
存酸素量を0.0080〜0.0170質量%に調整することが好ま
しい。また、Alを添加する予備脱酸を行う場合には、溶
鋼中に残留するAlは0.004 質量%以下とすることが必要
となる。Alが0.004 質量%超えて残留すると、所望のRE
M 系酸硫化物の形成が困難となる。
0030〜0.0120質量%に調整する。これにより、REM 硫化
物粒子、REM 酸化物、REM 酸硫化物粒子の1種または2
種以上が、凝固過程で固液界面に晶出し、デンドライト
の一方向成長を抑制し、デンドライトの等軸晶化が達成
でき、二次デンドライトアーム間隔が小さくなり、その
後の二次脱酸により生成するMn系介在物(分散粒子)が
微細化される。溶存酸素量が0.0030質量%未満では、所
望のREM 酸硫化物の形成が困難となり、上記した効果が
期待できなくなる。一方、REM 添加前の溶存酸素量が0.
0120質量%を超えると、REM が酸化物となり、所望のRE
M 硫化物あるいはREM 酸硫化物の形成が困難となる。こ
のため、デンドライトの一方向成長を抑制する能力が低
下し、二次デンドライトアーム間隔を微細化することが
できない。
硫化物が形成され、添加後の溶存酸素量が所望の0.0010
〜0.0050質量%となるように、同時にSを添加すること
が好ましい。これにより、凝固過程で、REM 硫化物粒
子、REM 酸化物粒子、REM 酸硫化物粒子のいずれかが容
易に固液界面に晶出することができ、デンドライトの一
方向成長を抑制する。
満では、デンドライトアーム間隔が大きくなり、二次脱
酸生成物としてオーステナイト粒の粗大化を防止できる
Mn系複合粒子の微細分散ができなくなり、オーステナイ
ト粒粗大化抑制能が低下する。一方、REM 添加後の溶存
酸素量が0.0050質量%を超えて多くなると、Mn酸化物が
粗大化するとともに、オーステナイト粒の粗大化防止に
有効なMn系複合粒子の微細形成が難しく、オーステナイ
ト粒粗大化抑制能が低下する。
0010〜0.0050質量%に調整するとともに、溶鋼組成を下
記に示す組成に調整する。次に、溶鋼の組成限定理由に
ついて説明する。なお、以下、質量%は単に%で表示す
る。 C:0.05〜0.15% Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、厚肉高張力鋼
板として必要な強度(母材降伏強さ:355 N/mm2 以上)
を得るためには、少なくとも0.05%は必要である。しか
し、過剰に含有すると、溶接部の靱性、耐溶接割れ性を
低下させる。このため、本発明では、Cは0.05〜0.15%
の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.06〜0.12%で
ある。
うために0.05%以上の含有が必要であるが、0.40%を超
えて含有すると、母材靱性が劣化するとともに、超大入
熱溶接HAZ において島状マルテンサイトが生成し、HAZ
靱性が顕著に低下する。このため、Siは0.05〜0.40%の
範囲に限定した。なお、好ましくは、0.05〜0.30%であ
る。
として微細な酸化物、硫化物、酸硫化物の1種または2
種以上が複合した粒子を形成し、HAZ のオーステナイト
粒の粗大化を抑制し、HAZ 靭性を向上させる作用を有す
る元素である。また、Mnは、固溶強化で鋼の強度を増加
させる作用も有する。このような効果を得るために、本
発明では、1.0 %以上の含有を必要とする。一方、2.0
%を超える過剰の含有は、溶接部の靱性を著しく劣化さ
せる。このため、本発明では、Mnは1.0 〜2.0 %の範囲
に限定した。
あり、鋼の靭性を劣化させるため、できるだけ低減する
ことが好ましい。とくに、0.03%を超える含有は、HAZ
の靱性劣化が著しくなる。このため、Pは0.03%以下に
限定した。なお、過度のP低減は精錬コストを高騰させ
経済的に不利となるため、0.005 %以上とすることが好
ましい。
の硫化物(サルファイド)、またはREM の酸硫化物(オ
キシサルファイド)として、凝固段階で固液界面に晶出
し、デンドライトの一方向成長を抑制してデンドライト
を等軸晶化し、それによりデンドライト二次アームを微
細化する作用を有する。また、Sは、二次脱酸生成物と
してMnと結合し、Mnの硫化物、酸硫化物として微細に晶
出し、HAZ のオーステナイト粒粗大化を防止するという
効果もある。
て溶鋼段階で晶出し、上記した効果を達成できない。一
方、0.0060%を超えると、粗大なMnS を形成し靭性が顕
著に低下する。このため、本発明では、Sは0.0005〜0.
0060%の範囲に限定した。 REM :0.0030〜0.0200% REM は、溶鋼の凝固過程で、Sおよび/またはOと結合
し、REM の硫化物(サルファイド)、REM の酸化物(オ
キサイド)、REM の酸硫化物(オキシサルファイド)の
1種または2種以上として固液界面に晶出し、デンドラ
イトの一方向成長を抑制し、デンドライトを等軸晶化す
る作用を有する。そして、デンドライトの等軸晶化によ
り、二次デンドライトアーム間隔を微細化する。このよ
うな効果は、REM の0.0030%以上の含有で認められる
が、0.0200%を超えて含有すると、粗大なREM 系化合物
が増加し、母材靭性が劣化する。このため、REM は0.00
30〜0.0200%の範囲に限定した。なお、好ましくは、0.
0050〜0.0100%である。
ナ(Al2O3)を形成し、溶存酸素を低減するため、REM の
酸硫化物(オキシサルファイド)の生成、あるいは二次
脱酸生成物としてのMnの酸化物、酸硫化物(オキシサル
ファイド)の生成を阻害し、デンドライトの形態制御
や、二次脱酸生成物の微細分散に悪影響を及ぼす。この
ため、本発明では、Al脱酸を行わず、Si,Mn 脱酸とし、
Al含有量を0.004 %以下に制限した。
る元素であり、二次脱酸生成物の微細分散のために、で
きるだけ低減する必要がある。このため、本発明では、
Alと同様に、0.004 %以下に限定した。上記した基本組
成に加えてさらに、強度増加の目的で、Nb:0.1 %以
下、V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、Ni:2.0 %以
下、Cr:1.0 %以下、Mo:0.8 %以下、B:0.0003〜0.
0040%のうちから選ばれた1種または2種以上を含有す
ることが好ましい。
も、鋼の強度を増加させる元素であり、母材強度、溶接
継手部強度の確保のために、選択して含有することがで
きる。Nbは、母材の強度および靱性を向上させるととも
に、継手部強度を増加させる作用を有する。このような
効果は、0.01%以上の含有で顕著となるが、0.1 %を超
える含有は、HAZ 靱性の低下を招く。このため、Nbは0.
1%以下に限定することが好ましい。
る。このような効果は、0.02%以上の含有で顕著となる
が、0.2 %を超える含有は、かえって靱性の低下を招
く。このため、Vは0.2 %以下に限定することが好まし
い。Cuは、Niと同様、強度を増加する元素である。この
ような効果は0.2 %以上の含有で顕著となるが、1.0 %
を超える含有は熱間脆性を生じ、鋼板の表面性状が劣化
する。
させる元素である。このような効果は、0.2 %以上の含
有で有効となるが、高価であるため、2.0 %を上限とす
ることが好ましい。また、Cr,Moは、いずれも母材の高
強度化に有効に作用する元素である。このような効果
は、Cr:0.2 %以上、Mo:0.1 %以上の含有で顕著とな
る。一方、過剰に含有すると、いずれも靱性に悪影響を
与えるため、Cr:1.0 %以下、Mo:0.8 %以下にそれぞ
れ限定することが好ましい。
を増加させる作用を有する元素である。0.0003%以下で
はその効果が十分ではなく、一方、0.0040%を超えて含
有すると焼入れ性が著しく増加し母材靱性の劣化を招く
恐れがある。このため、Bは0.0003〜0.0040%の範囲に
限定することが好ましい。上記した成分以外の残部溶鋼
は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物と
しては、N:0.0040%以下が許容できる。
造して鋼素材(スラブ)とする。鋳造方法は、特に限定
されないが、分散粒子の大きさおよび形態を所望の範囲
に制御するために、凝固段階において、鋳込速度や冷却
速度を制御できる連続鋳造法とすることが好ましい。な
お、分散粒子の大きさを決めている要因は、溶存酸素量
とMn、S量が主であるが、鋳込時の冷却速度も影響する
ため、鋳造方法は造塊法よりも連鋳法とすることが好ま
しい。
00℃以下に再加熱する。再加熱温度が1050℃未満では、
熱間圧延での変形抵抗が高くなり、1パス当たりの圧下
量が大きくとれなくなることから、圧延パス数が増加
し、圧延能率の低下を招くとともに、鋼素材(スラブ)
中の鋳造欠陥を圧着することができない場合がある。こ
のため、再加熱温度は、1050℃以上とする。なお、再加
熱温度が1200℃を超えると、結晶粒の粗大化が著しく、
また、加熱によるスケールロスが多くなり、 歩留りが低
下するため、鋼素材の再加熱温度は1050〜1200℃の範囲
とすることが好ましい。なお、より好ましくは、1080〜
1150℃である。
点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温度域における累積圧下
率が35%以上となる熱間圧延を施され、所定の寸法形状
の厚鋼板とされる。Ar3変態点〜(Ar3変態点+100
℃)の温度域における累積圧下率が35%未満では、変態
後、平均粒径5μm 以下のフェライト組織が得られな
い。γ−α変態の核生成サイトは、オーステナイト
(γ)粒界、γ粒内の変形帯などであるが、これらはよ
り低温で加工するほど増加する。
度域における累積圧下率とフェライト平均粒径の関係を
図1に示す。図1には、Ar3変態点〜(Ar3変態点+10
0 ℃)の温度域における累積圧下率と1400℃加熱、800
〜500 ℃の冷却時間が500 sの超大入熱溶接HAZ (ボン
ド部近傍)のvE-40 との関係を併記している。図1か
ら、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温度域にお
ける累積圧下率を35%以上とすることにより、フェライ
ト平均結晶粒径が5μm 以下となる。このことから、熱
間圧延におけるAr3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の
温度域における累積圧下率を35%以上に限定した。ま
た、図1に示すように、熱間圧延におけるAr3変態点〜
(Ar3変態点+100 ℃)の温度域における累積圧下率を
35%以上とすることにより、フェライト平均結晶粒径が
5μm 以下となり、これによって、超大入熱溶接HAZ
(ボンド部近傍)のvE-40 が70J 以上となり、超大入熱
溶接HAZ 靭性も顕著に向上する。なお、Ar3変態点は、
含有する化学成分との関係で、概ね次式 Ar3=910-273C-74Mn-57Ni-16Cr-9Mo-5Cu (ここで、C、Mn、Ni、Cr、Mo、Cu、:各合金元素の含
有量(質量%))で推測できる。なお、含有しない合金
元素がある場合には、 該当する合金元素量を0として計
算するものとする。
置における平均冷却速度が2℃/s以上の冷却を450 ℃
以下の温度域まで施す。板厚1/4 位置における平均冷却
速度が2℃/s未満では、変態後のフェライト粒が粗大
化し、 母材強度が低下する。また、平均冷却速度が2℃
/s以上の冷却の冷却停止温度は、母材強度の観点か
ら、450 ℃以下とする。なお、好ましくは400 ℃以上で
ある。冷却停止温度が450 ℃を超えて高くなると、 引張
強さが低くなりすぎる。このため、板厚1/4 位置におけ
る平均冷却速度が2℃/s以上の冷却の冷却停止温度は
450 ℃以下に限定した。なお、この冷却後は、室温まで
空冷させる。
目的で、上記した冷却後、450 〜650 ℃の温度範囲で焼
戻し処理を施すことが好ましい。焼戻し温度が450 ℃未
満では、残留応力の除去効果が少なく、一方、650 ℃を
超えて高くなると、各種炭窒化物が析出し、析出強化に
より、靭性が劣化する。このため、焼戻し温度は450〜6
50 ℃の温度範囲に限定することが好ましい。
上記した溶鋼組成と同じ組成を有し、それ以外の不可避
的不純物として、O:0.0070%以下が許容される。0.00
70%を超える含有は、鋼中の酸化物量が増加し、鋼の清
浄度を劣化させる。なお、REM の酸化物、酸硫化物、Mn
の酸化物、酸硫化物の所要量以上の分散のために0.0015
%以上とすることがより好ましい。
板は、上記した組成に加えて、平均粒径10μm以下のRE
M 硫化物粒子、REM 酸化物粒子、REM 酸硫化物粒子の1
種または2種以上と、平均粒径1μm以下の、Mn酸化
物、Mn硫化物、Mn酸硫化物のうちの1種または2種以上
が複合した粒子と、が分散した組織を有する。平均粒径
10μm以下のREM 硫化物粒子、REM 酸化物粒子、REM 酸
硫化物粒子は、凝固過程で固液界面に晶出し、デンドラ
イトの一方向成長を抑制する作用を有する。なお、デン
ドライトの一方向成長を抑制するためには、REM 硫化物
粒子、REM 酸化物粒子、REM 酸硫化物粒子の平均粒径は
1μm以上とすることが好ましい。REM の添加前の溶存
酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整することにより、
10μm以下好ましくは1μm以上のREM 硫化物粒子、RE
M 酸化物粒子、REM 酸硫化物粒子の1種または2種以上
が固液界面に晶出するようになる。
るために、このようなREM 硫化物粒子、REM 酸化物粒
子、REM 酸硫化物粒子のうちの1種または2種以上は、
粒数密度で70個/mm2 以上分散させることが好ましい。
70個/mm2 未満では、上記した効果が期待できなくな
り、凝固組織を等軸晶化できない。平均粒径で1μm以
下と微細分散した、Mn酸化物、Mn硫化物、Mn酸硫化物の
うちの1種または2種以上が複合した粒子は、超大入熱
溶接HAZ のオーステナイト粒の成長を抑制する作用を有
する。これら微細分散するMn系複合粒子は、二次脱酸生
成物であり、凝固段階での二次デンドライトアーム間隔
を微細とし、REM 添加後の溶存酸素量を0.0010〜0.0050
質量%に調整することにより生成することができる。こ
のようなMn系複合粒子は、粒数密度で1×106 個/mm2
以上分散させることが好ましい。1×106 個/mm2 未満
では、HAZ の高温滞留域でのオーステナイト粒のピン止
め効果が小さくなり、HAZ が粗粒化しHAZ 靱性が低下す
る。なお、分散粒子の平均粒径および単位面積当たりの
粒数密度は、鋼板から採取した試験片の圧延方向と直角
なC断面を研磨し、さらに研磨面を電解腐食して分散粒
子を現出したのち、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、
倍率:5000倍で各10視野撮像して、得られた画像を、画
像解析装置を用いて処理し算出するものとする。
H脱ガス処理を施したのち、連続鋳造法で鋼素材(215
〜310mm 厚スラブ)とした。なお、溶製中に、脱酸処理
により、REM 添加直前の溶存酸素量を調整した。また、
一部では、Al添加による予備脱酸を行った。また、REM
、Sの添加量を変更して、REM 添加後の溶存酸素量を
調整した。その後、その他の成分含有量を調整して、表
1に示す組成の溶鋼にした。
で再加熱し、表2に示す条件の熱間圧延を施し、表2に
示す条件で冷却し、表2に示す板厚の厚肉鋼板とした。
一部の鋼板には、 冷却後、表2に示す焼戻し処理を施し
た。得られた厚肉鋼板について、母材組織、母材引張特
性、母材靭性を調査した。 (1)母材組織 得られた厚肉鋼板から、試験片を採取し、分散粒子の種
類、平均粒径、および粒数密度を調べた。分散粒子の種
類、平均粒径および単位面積当たりの粒数密度は、試験
片のC断面を研磨し、さらに研磨面を電解腐食して分散
粒子を現出したのち、走査型電子顕微鏡を用いて観察
し、倍率:5000倍で各10視野撮像して、得られた画像
を、画像解析装置を用いて算出し、各視野ごとの平均値
を求め、さらに各視野の平均値を求め、各鋼板の値とし
た。分散粒子の種類は、走査型電子顕微鏡に装備された
EDX装置を用いて、決定した。 (2)母材引張特性 得られた厚肉鋼板の板厚の1/4 部C方向から、JIS 4号
引張試験片を採取し、JIS Z 2204の規定に準拠して引張
試験を実施し、降伏点YP、引張強さTSを求めた。 (3)母材靭性 得られた厚肉鋼板の板厚の1/4 部C方向から、JIS 4号
衝撃試験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャ
ルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs、-40 ℃に
おける吸収エネルギーvE-40(J)求めた。
熱溶接HAZ 靭性を調査した。 (4)超大入熱溶接HAZ 靭性 得られた厚肉鋼板について、エレクトロスラグ溶接、エ
レクトロガス溶接により、表2に示す入熱量の溶接継手
を作製した。溶接継手の溶接ボンド部から、JIS 4号試
験片を採取し、JIS Z 2242の規定に準拠してシャルピー
衝撃試験を実施し、-40 ℃における吸収エネルギーvE
-40(J)求め、超大入熱溶接HAZ 靭性を評価した。
高強度で、vE-40 が200J以上の高靭性を有する良好な母
材特性と、300kJ/cmを超える超大入熱溶接のボンド部に
おけるvE-40 が84J 以上と、極めて良好な超大入熱溶接
HAZ 靭性を有する厚肉高張力鋼板である。これに対し、
本発明の範囲を外れる比較例は、母材特性、超大入熱溶
接HAZ 靭性のうちのいずれかまたは両方が低下した厚肉
高張力鋼板となっている。
熱溶接熱影響部靭性に優れた溶接構造用厚肉高張力鋼板
が安価にしかも安定して製造でき、産業上格段の効果を
奏する。また、本発明は、構造物の大型化や、施工能率
の向上に寄与するという効果もある。
における累積圧下率とフェライト平均粒径、超大入熱溶
接HAZ のvE-40 との関係を示すグラフである。
Claims (4)
- 【請求項1】 溶鋼に、Siおよび/またはMnを添加して
脱酸し、溶存酸素量を0.0030〜0.0120質量%に調整した
のち、REM を添加し溶存酸素量を0.0010〜0.0050質量%
に調整するとともに、組成を調整して、質量%で、 C:0.05〜0.15%、 Si:0.05〜0.40%、 Mn:1.0 〜 2.0%、 P:0.03%以下、 S:0.0005〜0.0060%、 REM :0.0030〜0.02
00%、を含有し、AlおよびTiをそれぞれ0.004 %以下に
制限した組成の溶鋼とし、ついで該溶鋼を鋳造して鋼素
材としたのち、該鋼素材を1050〜1200℃に加熱したの
ち、Ar3変態点〜(Ar3変態点+100 ℃)の温度域にお
ける累積圧下率を35%以上とする熱間圧延を施し、つい
で、板厚1/4 位置における平均冷却速度が2℃/s以上
の冷却を450 ℃以下の温度域まで施すことを特徴とする
超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた厚肉高張力鋼板の製
造方法。 - 【請求項2】 前記脱酸の前に、Alを添加する予備脱酸
を行い、前記脱酸前の溶存酸素量を0.0080〜0.0170質量
%に調整することを特徴とする請求項1に記載の厚肉高
張力鋼板の製造方法。 - 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、質量%で、N
b:0.1 %以下、V:0.2 %以下、Cu:1.0 %以下、N
i:2.0 %以下、Cr:1.0 %以下、Mo:0.8 %以下、
B:0.0003〜0.0040%のうちから選ばれた1種または2
種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項1
または2に記載の厚肉高張力鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 前記冷却後、さらに450 〜650 ℃の温度
範囲で焼戻し処理を施すことを特徴とする請求項1ない
し3のいずれかに記載の厚肉高張力鋼板の製造方法。
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