JP2003289298A - 長距離量子暗号システム - Google Patents

長距離量子暗号システム

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JP2003289298A JP2002091578A JP2002091578A JP2003289298A JP 2003289298 A JP2003289298 A JP 2003289298A JP 2002091578 A JP2002091578 A JP 2002091578A JP 2002091578 A JP2002091578 A JP 2002091578A JP 2003289298 A JP2003289298 A JP 2003289298A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 量子暗号システムにおいて、受信部の光子の
損失を少なくし、高効率低ダークカウント確率の単一光
子検出器を用いて、伝送距離を長くする。 【解決手段】 暗号鍵情報受信部で、波長1550nmのレー
ザー光パルスを、水平偏光の参照光パルスと垂直偏光の
信号光パルスに分割する。信号光パルスを遅延させて送
出する。暗号鍵情報送信部では、参照光パルスの偏光面
を90°回転させる。信号光パルスには、ランダムな位相
シフトを与えて、偏光面を90°回転させる。これらを減
衰させて単一光子パルスにして送り返す。暗号鍵情報受
信部では、帰還参照光パルスにランダムな位相シフトを
与えて遅延させ、帰還信号光パルスと重ね合わせて、偏
光分割器で偏光状態に応じて分離し、トラップキャリア
の緩和時間だけ休止させるAPDで検出することで、暗号
鍵情報を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、長距離量子暗号シ
ステムに関し、特に、光の減衰量を少なくして伝送効率
を高めた偏光分離型干渉計を用いるとともに、高効率で
しかもダークカウント確率の小さな単一光子検出器によ
り量子誤り率(QBER)を低減した長距離量子暗号システ
ムに関する。
【0002】
【従来の技術】今日、情報通信における安全性はますま
す重要になってきている。現在使われている公開鍵暗号
法は解読に膨大な時間を要することで安全性を確保して
いる。従来の暗号システムは、秘密鍵方式の暗号でも公
開鍵方式の暗号でも、解読のための計算量が莫大であ
り、実際上計算不可能であるから暗号解読できないとい
う点に、安全性の基礎をおいている。特に、公開鍵方式
のRSA暗号では、因数分解が計算困難であるから、公開
伝送路での鍵配送が安全であるとしている。
【0003】しかし、因数分解は、量子コンピュータに
より多項式時間で計算可能であることが、理論的にでは
あるが証明されたので、RSA公開鍵方式による鍵配送の
安全性の理論的根拠は無くなった。また、ElGamal暗号
では離散対数問題が計算困難であるから、公開伝送路で
の鍵配送が安全であるとしている。離散対数問題も、量
子コンピュータにより多項式時間で計算可能であること
が、理論的に証明されると、公開鍵方式による鍵配送の
安全性の理論的根拠は無くなる。近い将来、暗号解読に
必要となる素因数分解が高速に行えるアルゴリズムや量
子コンピュータが開発されると、この安全性は崩れてし
まう。
【0004】そこで、計算量的にではなく絶対的に安全
な鍵配送システムとして、原理的に盗聴不可能な量子暗
号鍵配送システムが提案され、注目を集めている。量子
暗号通信は、量子力学の不確定性原理を巧みに利用した
ものである。素粒子の量子状態をすべて知ることはでき
ないという、量子力学におけるハイゼンベルグの不確定
性原理に基づいて、盗聴を不可能にした暗号システムで
ある。量子暗号鍵配送システムとしては、種々のものが
提案されているが、特に、光子の位相に鍵情報を載せて
伝送する鍵配送システムが、効率が良くて長距離伝送可
能であるとして、光ファイバを用いた単一光子伝送によ
る方法がもっとも実用性の高いものであると考えられて
いる。
【0005】この種の鍵配送システムの従来例として、
米国特許第6,188,768号明細書に開示された「光の偏光
分割に基づく自動補償量子暗号鍵配送システム」があ
る。この量子暗号鍵配送(QKD)システムでは、経路は
全て光ファイバで構成する。伝送経路は10km程度であ
る。光学系は、ファラデーミラーを使用し往復伝送路を
構成することで、伝送路における偏光の揺らぎを相殺す
る。暗号鍵情報受信部で、レーザー光源からの光パルス
を、互いに直交する直線偏光の1組の光パルスに分割す
る。一方を参照光パルスとし、他方を信号光パルスとし
て遅延させて、光ファイバーの伝送路に送出する。暗号
鍵情報送信部では、受信した参照光パルスには位相シフ
トを与えずに、偏光面を90°回転させる。信号光パルス
には、ランダムな位相シフトを与えて、偏光面を90°回
転させる。これらを減衰させて単一光子パルスにして、
帰還参照光パルスと帰還信号光パルスとして光ファイバ
ーの伝送路に送り返す。これらを受信した暗号鍵情報受
信部では、帰還参照光パルスにランダムな位相シフトを
与えて遅延させ、帰還信号光パルスと重ね合わせて帰還
光パルスとする。帰還光パルスの偏光状態を検出するこ
とで、暗号鍵情報を得る。
【0006】暗号鍵情報の伝送には、位相変調によるBB
84プロトコルを使う。BB84プロトコルを簡単に説明す
る。詳しくは、文献1[岡本龍明、山本博資著「現代暗
号」(産業図書、1997)pp.293〜301.]などを参照され
たい。送信者と受信者は、それぞれ2進数のランダムビ
ットを生成する。送信者は、信号光にランダムビットに
対応した位相変調(0,π/2,π,3π/2)をかける。受
信者は、参照光にランダムビットに対応した位相変調
(0,π/2)をかける。受信者は、位相変調をかけられた
単一光子どうしを干渉させる。この光子が2つの検出器
のどちらに検出されるかは、送信者と受信者それぞれの
位相変調量の差に依存する。位相差が0かπのときは、
対応した検出器に検出される。また、位相差がπ/2の
ときはどちらかの検出器にランダムに検出される。
【0007】図10を参照しながら、従来の量子暗号鍵配
送システムの動作を簡単に説明する。詳細は、米国特許
第6,188,768号明細書、または、文献2[Donald S. Beth
uneand William P. Risk, "An Autocompensating Fiber
-Optic Quantum Cryptography System Based on Polari
zation Splitting of Light," IEEE Journal of Quantu
m Electronics, Vol.36, No.3, March 2000] を参照さ
れたい。暗号鍵情報受信部に設けたダイオードレーザー
で、水平偏光パルスを発生する。この光パルスは、水平
偏光を通す偏光分割器#1を通過し、ファラデー回転器
で偏光面を+45°回転させられる。さらに、半波長板♯
1で偏光面を-45°回転させられてもとの水平偏光に戻
り、水平偏光を通す偏光分割器#2を通過する。その
後、半波長板#2で偏光面を+45°回転させられて、偏
光面が45°傾いた直線偏光パルスSとなる。
【0008】この45°傾いた直線偏光パルスSは、水平
偏光を通す偏光分割器#3で、垂直偏光と水平偏光に分
割される。垂直偏光は、信号光パルスP2として遅延経
路に分岐され、一定の遅延時間後に、水平偏光を通す偏
光分割器#4で光ファイバー通信路に送出される。遅延
経路中にある位相変調器#1は、このタイミングでは動
作させないので、信号光パルスP2に位相シフトは施さ
れない。水平偏光は偏光分割器#3を通過して、参照光
パルスP1として光ファイバー通信路に送出される。
【0009】暗号鍵情報送信部では、受信した光パルス
を減衰器で減衰させ、位相変調器#2で、信号光パルス
P2にランダムな位相シフトを与える。位相シフトは、
暗号鍵情報送信部で発生した乱数に基づいて、0,π/
2,π,3π/2のいずれかが施される。参照光パルスP
1には位相シフトを与えない。これらの操作は、タイミ
ングで区別して制御する。ファラデーミラーで各光パル
スの偏光面を90°回転させて反射する。水平偏光の参照
光パルスP1は、垂直偏光の帰還参照光パルスRP1とな
り、垂直偏光の信号光パルスP2は、水平偏光の帰還信
号光パルスRP2となる。実際には、光ファイバー通信路
における複屈折などの影響で、各光パルスは楕円偏光な
どになるが、往復で相殺されるので、直線偏光であると
して説明してある。減衰量は、最終的に1〜0.1光子/
パルスとなるようにする。すなわち、帰還光パルスのエ
ネルギーをhν以下にする。
【0010】暗号鍵情報受信部では、反射して戻ってき
た帰還光パルスのうち、垂直偏光の帰還参照光パルスR
P1を、水平偏光を通す偏光分割器#4で遅延経路に分岐
し、位相変調器#1で位相シフトを与える。位相シフト
は、暗号鍵情報受信部で発生した乱数に基づいて、0,
π/2のいずれかが施される。水平偏光の帰還信号光パ
ルスRP2は、水平偏光を通す偏光分割器#4を通過す
る。帰還参照光パルスRP1と帰還信号光パルスRP2は、
水平偏光を通す偏光分割器#3に同時に到達するので、
そこで重ね合わされて1つの帰還光パルスRSとなる。
帰還光パルスRSの偏光状態は、両光パルスの位相シフ
トの相対関係で決まる。
【0011】両位相シフトの差が0の場合、すなわち、
位相シフトが(0,0)と(π/2,π/2)の場合は、
帰還光パルスRSは、光源側から見た偏光面が、-45°の
直線偏光となるので、半波長板#2で偏光面を-45°回
転されて垂直偏光となる。垂直偏光は、水平偏光を通す
偏光分割器#2で反射されて、検出器#2に入射して検
出される。
【0012】両位相シフトの差がπの場合、すなわち、
位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/2)の場合
は、帰還光パルスRSは、光源側から見た偏光面が、+45
°の直線偏光となるので、半波長板#2で偏光面を-45
°回転されて水平偏光となる。偏光分割器#2を通過し
て、半波長板#1で偏光面を+45°回転される。さら
に、ファラデー回転器で+45°回転されて、偏光面が合
せて+90°回転して垂直偏光パルスになる。水平偏光を
通す偏光分割器#1で反射されて、検出器#1に入射し
て検出される。
【0013】両位相シフトの差がπ/2の場合、すなわ
ち、位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/2)と
(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光パルス
RSは円偏光となるので、検出器#1と検出器#2に、
確率的に同じだけ入射して検出される。
【0014】暗号鍵情報受信部では、検出後に通常の通
信路を使って、暗号鍵情報送信部に位相シフトの基底情
報を通知し、暗号鍵情報送信部から一致不一致の情報を
得て、一致した場合の受信乱数情報に基づいて、暗号鍵
を共有することができる。
【0015】ところで、光ファイバ通信では、光損失が
最小である波長1550nmの光が一般的に使用されている。
波長1310nmの光では、光ファイバ中の光損失は0.35dB/
kmであり、波長1550nmにおける光ファイバ中の光損失は
0.2dB/kmである。光ファイバを用いた長距離通信にお
いて量子鍵配布を実現するためには、光ファイバ中の光
損失が最小となる波長1550nmの光を用いる必要がある。
しかし、波長1550nmにおいて高い量子効率ηを有し、ダ
ークカウント確率Pdの低い単一光子検出器は存在しな
かった。
【0016】そのため、窒素温度(77K)において比較
的高効率な光子検出が可能なGe-APD(Germanium-Avalan
che Photodiode)を用いて、波長1310nmの光で伝送する
しかなかった。Ge-APDは、波長1450nmを境に感度が急激
に低下するため、波長1550nmへの応用は困難であり、10
0km以上の長距離通信には不向きである。一方、波長155
0nmに感度を有するInGaAs/InP-APDを用いた単一光子検
出器があり、1550nm波長帯においては、Pd/η=1.0×
10-3であり、40kmの伝送実験ではQBER≒7%である。P
dはダークカウント確率、ηは量子効率である。QBER
は、量子鍵配布によって共有される鍵におけるエラーの
発生率である。Pd、η、QBERについて詳しくは後述す
る。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の量子暗
号システムでは、レーザー光に波長1310nmの光を用いて
いるために、光ファイバー中での減衰が多く、伝送距離
が短いという問題があった。波長1550nmのレーザー光を
用いても、従来のInGaAs/InP-APDを用いた単一光子検
出器では、100km以上の長距離通信は不可能であった。
既設光ファイバーによる長距離量子暗号通信を実現する
ためには、波長1550nmの効率のよい、しかも、ダークカ
ウント確率の小さい単一光子検出器が必要である。ま
た、従来の偏光分離型干渉計では、受信部における光損
失が多く、検出感度が低くて、伝送距離を伸ばせないと
いう問題があった。
【0018】本発明は、上記従来の問題を解決して、量
子暗号システムにおいて、受信部での光子の損失を少な
くして伝送距離を長くすることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明では、量子暗号システムを、レーザー光源
の出力光の水平偏光成分のみを送出光として出力する機
能と、第1偏光分割器からの帰還光を第1検出器に出力
する機能とを有するサーキュレーターと、送出光を通過
させる機能と、垂直偏光をもつ帰還光を第2検出器に出
力する機能と、帰還光を通過させる機能とを有する第1
偏光分割器と、+45度偏光をもつ送出光を入力して、水
平偏光成分を参照光として光通信路に送出するとともに
垂直偏光成分を信号光として遅延経路に送出する機能
と、光通信路からの帰還光を入力して、水平偏光成分で
ある帰還信号光を第1偏光分割器に送出するとともに垂
直偏光成分である帰還参照光を遅延経路に送出する機能
と、遅延経路からの信号光を光通信路に送出する機能
と、遅延経路からの帰還参照光を第1偏光分割器に送出
する機能とを有する第2偏光分割器と、帰還参照光に対
して位相変調をかける機能を有する第1位相変調器と、
信号光に対して位相変調をかける機能を有する第2位相
変調器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有する
第1検出器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有
する第2検出器と、入射した送出光の偏光面を+90°回
転して反射する機能を有するファラデーミラーとを備
え、レーザー光源とサーキュレーターと第1偏光分割器
と第2偏光分割器と第1位相変調器と遅延経路と第1検
出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末と、光ファ
イバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2位相変調器
とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端末とを具備
する構成とした。
【0020】このように構成したことにより、量子暗号
システムの受信部における光子の損失を少なくして、伝
送距離を長くすることができる。
【0021】また、レーザー光源の直後にある偏光分割
器を、レーザー光源の出力光の-44度偏光成分のみを送
出光として出力する機能と、その次の偏光分割器からの
帰還光の+46度偏光成分を第1検出器に出力する機能と
を有する構成とした。このように構成したことにより、
偏光分離型干渉計における受信光子の損失をほとんどな
くして、伝送距離を長くすることができる。
【0022】また、第1検出器と第2検出器に、入射す
る単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェフォ
トダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイアス電
圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレークダ
ウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作パッ
シブクエンチング回路を備えた構成とした。このように
構成したことにより、アバランシェフォトダイオードの
ダークカウント確率を小さくして、伝送距離をいっそう
長くすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【0024】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施
の形態は、1550nmのレーザー光を用い、光パルスの間隔
をアバランシェフォトダイオードのトラップキャリアの
緩和時間より長くして単一光子検出器の感度を上げ、サ
ーキュレーターと第1偏光分割器と第2偏光分割器との
間を偏波保存ファイバーで継ぎ、サーキュレーターと第
1偏光分割器との間では、偏波保存ファイバーのslow軸
を-45度回転させ、第1偏光分割器と第2偏光分割器の
間では、偏波保存ファイバーのslow軸を+45度回転させ
ることにより、偏光回転子を除くことで受信部の損失を
低減した長距離量子暗号システムである。
【0025】図1は、本発明の第1の実施の形態におけ
る長距離量子暗号システムの概念図である。図1におい
て、暗号鍵情報受信端末1は、暗号鍵の情報を受信する
端末である。光ファイバー伝送路2は、10.5kmの光ファ
イバー通信路である。暗号鍵情報送信端末3は、暗号鍵
の情報を送信する端末である。レーザー光源4は、波長
1550nmのレーザー光を発生するDFB(Distributed Feedba
ck)レーザーである。サーキュレーター5は、水平偏光
成分を通過させ、+45度偏光の帰還光を反射させる手段
である。図1(b)に、サーキュレーター5の機能を示
す。第1偏光分割器6は、偏波保存ファイバーによって
入射される水平偏光を通過させる手段である。第2偏光
分割器7は、偏波保存ファイバーによって入射される+4
5度偏光の水平偏光成分を通過させ、垂直偏光成分を反
射させる手段である。図1(c)に、レーザー光源4か
ら第2偏光分割器7までの偏光の状態を示す。第1位相
変調器8は、帰還参照光パルスに対して位相変調をかけ
る手段である。遅延経路9は、送出信号光パルスと帰還
参照光パルスを一定時間だけ遅延させる手段である。第
1検出器10と第2検出器11は、波長1550nmの1光子を検
出するアバランシェフォトダイオードである。光減衰器
12は、送出光を減衰させて1パルスを1光子以下にする
手段である。第2位相変調器13は、信号光パルスに対し
て位相変調をかける手段である。ファラデーミラー14
は、入射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する
手段である。
【0026】図2は、本発明の第1の実施の形態におけ
る長距離量子暗号システムの各光パルスの偏光状態を示
す図である。図3は、光子検出器のGPQC(Gated Passive
Quenching Circuit)の回路図である。図4は、GPQCの
タイミング図である。図5は、ダークカウント確率Pd
と量子効率ηとの比Pd/ηと温度の関係を示すグラフ
である。図6は、量子効率とダークカウント確率の関係
を示すグラフである。図7は、信号光と参照光に0〜2
πの位相差を与えた時の第1検出器と第2検出器の出力
を表すグラフである。
【0027】上記のように構成された本発明の第1の実
施の形態における長距離量子暗号システムの動作を説明
する。最初に、図1を参照しながら、量子暗号システム
の概略を説明する。この量子暗号システムでは、レーザ
ー光源4でレーザー光を発生する。波長1550nm、パルス
幅50psecのパルスレーザーを使用する。暗号鍵情報受信
端末1で、レーザー光源4からの波長1550nmの光パルス
を、水平偏光パルスと垂直偏光パルスに分割する。水平
偏光パルスを参照光パルスとし、垂直偏光パルスを信号
光パルスとして遅延させて、光ファイバー伝送路2に送
出する。
【0028】暗号鍵情報送信端末3では、受信した参照
光パルスには位相シフトを与えずに、偏光面を90°回転
させる。信号光パルスには、ランダムな位相シフトを与
えて、偏光面を90°回転させる。これらを減衰させて単
一光子パルスにして、帰還参照光パルスと帰還信号光パ
ルスとして光ファイバー伝送路2に送り返す。
【0029】これらを受信した暗号鍵情報受信端末1で
は、帰還参照光パルスにランダムな位相シフトを与えて
遅延させ、帰還信号光パルスと重ね合わせて帰還光パル
スとする。帰還光パルスの偏光状態を検出することで、
暗号鍵情報を得る。光学系の精度を決める干渉計の干渉
度は98%以上である。波長1550nmの単一光子検出を高効
率、低ダークカウント確率で行うため、InGaAs/InP-AP
Dを冷却し、GPQCによりゲート動作させる。InGaAs/InP
-APD(商品名EPITAXX-APD、部品番号EPM-239-BAのAPD)
は、最適温度が比較的室温に近く、電子冷却可能な−55
℃であり、量子効率13.7%ではダークカウント確率2.4
×10-5である。この温度でゲート動作の繰返周波数は、
最大1MHzである。
【0030】図1と図2を参照しながら、量子暗号シス
テムの動作を説明する。暗号鍵情報受信端末1に設けた
DFBダイオードレーザーのレーザー光源4で、図2
(a)に示すように、波長1550nmの水平偏光パルスを発
生する。この光パルスは、水平偏光を通すサーキュレー
ター5を通過して、+45度偏光となる。サーキュレータ
ーと第1偏光分割器との間を継ぐ偏波保存ファイバー
で、偏光面を-45度回転させられて、水平偏波となり、
第1偏光分割器6を通過する。第1偏光分割器と第2偏
光分割器との間を継ぐ偏波保存ファイバーで、偏光面を
+45度回転させられて、+45度偏光となる。偏波保存ファ
イバーでは、偏光がslow軸に沿って進むので、このslow
軸を回転させて偏光分割器につなぐだけで、入射偏光方
向を変えることができる。
【0031】図2(b)に示す+45°の偏光面をもつ送
信パルスは、水平偏光を通過させる第2偏光分割器7
で、図2(c)に示すように、垂直偏光と水平偏光に分
割される。垂直偏光は、信号光パルスとして遅延経路9
に分岐され、一定の遅延時間後に、垂直偏光を反射する
第2偏光分割器7で光ファイバー伝送路2に送出され
る。遅延経路9中にある第1位相変調器8は、このタイ
ミングでは動作させないので、信号光パルスに位相シフ
トは施されない。水平偏光は第2偏光分割器7を通過し
て、参照光パルスとして光ファイバー伝送路2に送出さ
れる。
【0032】暗号鍵情報送信端末3では、受信した光パ
ルスを光減衰器12で減衰させ、第2位相変調器13で、信
号光パルスにランダムな位相シフトを与える。位相シフ
トは、暗号鍵情報送信端末で発生した乱数に基づいて、
0,π/2,π,3π/2のいずれかが施される。参照光
パルスには位相シフトを与えない。これらの操作は、タ
イミングで区別して制御する。タイミング制御は、図示
していない周知の方法で行うことができる。例えば、従
来例と同じ方法でタイミング制御してもよい。ファラデ
ーミラー14で各光パルスの偏光面を90°回転させて反射
する。水平偏光の参照光パルスは、垂直偏光の帰還参照
光パルスとなり、垂直偏光の信号光パルスは、水平偏光
の帰還信号光パルスとなる。減衰量は、最終的に1〜0.
1光子/パルスとなるようにする。すなわち、帰還光パ
ルスのエネルギーをhν以下にする。
【0033】暗号鍵情報受信端末1では、反射して戻っ
てきた帰還光パルスのうち、垂直偏光の帰還参照光パル
スを、垂直偏光を反射する第2偏光分割器7で遅延経路
9に分岐し、第1位相変調器8で位相シフトを与える。
位相シフトは、暗号鍵情報受信端末1で発生した乱数に
基づいて、0,π/2のいずれかが施される。水平偏光
の帰還信号光パルスは、水平偏光を通過させる第2偏光
分割器7を通過する。帰還参照光パルスと帰還信号光パ
ルスは、水平偏光を通過させ垂直偏光を反射する第2偏
光分割器7に同時に到達するので、そこで重ね合わされ
て1つの帰還光パルスとなる。帰還光パルスの偏光状態
は、両光パルスの位相シフトの相対関係で決まる。
【0034】両位相シフトの差が0の場合、すなわち、
参照光パルスと信号光パルスの位相シフトが(0,0)
と(π/2,π/2)の場合は、帰還光パルスは、光源
側からみた場合、図2(d)に示すように、-45°の直
線偏光となる。偏波保存ファイバー(PMF)によって偏
光面を-45°回転させられて垂直偏光となり、第1偏光
分割器6に逆方向から入射して反射され、第2検出器11
に検出される。
【0035】両位相シフトの差がπの場合、すなわち、
位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/2)の場合
は、帰還光パルスは、図2(e)に示すように、+45°
の直線偏光となるので、偏波保存ファイバー(PMF)に
よって偏光面を-45°回転させられて水平偏光となり、
第1偏光分割器6に逆方向から入射して通過し、さらに
次のPMFによって偏光方向を+45度回転させられ、45°偏
光となる。サーキュレーター5のファラデーローテータ
ーで偏光面を+45度回転させられて垂直偏光となり、サ
ーキュレーター5の偏光分割器で反射されて、第1検出
器10に入射して検出される。
【0036】両位相シフトの差がπ/2の場合、すなわ
ち、位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/2)と
(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光パルス
は円偏光となるので、第1検出器10と第2検出器11のど
ちらかにランダムに入射して検出される。
【0037】暗号鍵情報受信端末1は、検出後に通常の
通信路を使って、暗号鍵情報送信端末3に位相シフトの
基底を通知することで、暗号鍵を共有することができ
る。
【0038】図9に示した従来例においては、受信部の
光損失が約10dBであるのに対し、本実施の形態では、光
損失を約3dBに抑えることができた。従来例の方式と比
べて、半波長板を2枚減らすことができ、その分損失が
小さくなる。また、QBERは、1.37%を実現した。波長15
50nmのレーザー光を使うので、光ファイバー伝送路での
損失が少ない。さらに、検出器のAPDのトラップキャリ
アの緩和時間を空けて検出するので、検出器のダークカ
ウント確率が少なくなり、QBERが改善される。これらの
総合的な効果で、伝送距離を100kmまで延ばすことがで
きる。
【0039】単一光子検出器について説明する。InGaAs
/InP-APDをガイガーモードで動作させて、波長1550nm
の単一光子を検出する。すなわち、InGaAs/InP-APDに
ブレークダウン電圧VB以上の逆バイアスをかけて、入
射光によるアバランシェブレークダウンを検出する。AP
Dに光子が入射すると、励起されたキャリアは、逆バイ
アスによるAPD内の高電界により加速され、格子衝突に
よりキャリアホール対が連鎖的に発生する。これをアバ
ランシェブレークダウンといい、検出するのに十分な大
きさの電気信号を得ることができる。検出効率を下げる
主な原因には2つある。1つは、トラップキャリアによ
るAfter-pulsingであり、もう1つは、キャリアの熱運
動によるダークカウントである。低温においては、キャ
リアのトンネル効果によるダークカウントも生じる。
【0040】キャリアの熱運動によるダークカウント
は、APDを冷却することにより抑圧することができる。I
nGaAs/InP-APDを低温においてゲート動作させることに
より、ダークカウントを抑え、波長1550nmの単一光子検
出を行う。InGaAs/InP-APD(EPITAXX-APD)は、-55℃
でPd/ηが最小となるので、ペルチエ素子を用いた電
子冷却が可能である。このAPDは、-55℃において、量子
効率ηは13.7%であり、ダークカウント確率Pdは2.4×
10-5である。このAPDを用いた単一光子検出器では、Pd
/ηは3×10-4程度であり、40kmの伝送距離に対して
は、QBERは約3%である。伝送距離がさらに長くなる
と、光ファイバによる損失によりQBERは増大する。
【0041】After-pulsingについて説明する。After-p
ulsingとは、アバランシェブレークダウンによって電流
が流れた際に、APDの空乏層内の欠陥によってトラップ
されたキャリアが一定の時間(トラップキャリアの寿
命)の後放出され、高電界により再びアバランシェブレ
ークダウンを起こす現象である。トラップキャリアの寿
命は、温度やAPDの空乏層内の欠陥に依存する。InGaAs-
APDでは、〜1μsec(at-55℃)でトラップキャリアが消
滅する。APDをGated Passive Quenching Circuit(GPQ
C)によってゲートモードで動作させ、ゲートオフの時
間を、トラップキャリアの寿命より長く設定することに
より、After-pulsingによるダークカウントを抑圧し、
検出効率を向上させる。
【0042】Gated Passive Quenching Circuitによる
ダークカウントの抑圧方法を説明する。APDにはあらか
じめ、ブレークダウン電圧VBより僅かに小さい直流電
圧VAを印加しておき、それに矩形電圧パルス(ゲート
電圧)を重畳する。このとき、ブレークダウン電圧VB
を越えた電圧を余剰電圧VEとする。また、ゲート電圧
がかかっている時間をTonとし、ゲート電圧がかかって
いない時間をToffとする。Tonには、APDはガイガーモ
ードで動作するため、光子を入射するとブレークダウン
が起き、光子が検出される。一方、Toffにはブレーク
ダウンは起こらない。そのため、Toffをトラップキャ
リアの寿命より長く取ることにより、トラップキャリア
を一掃し、After-pulsingによるダークカウントを抑圧
することができる。
【0043】図3にGPQCの回路図を示す。この回路から
ゲート電圧の入力部を除いたものは、Passive Quenchin
g Circuit(PQC)と呼ばれ、Si-APDやGe-APDを用いた単
一光子検出に広く用いられている。この従来のPQC回路
では、アバランシェブレークダウンが起き、これによる
アバランシェ電流が流れると、RLによりAPDに印加され
る電圧がブレークダウン電圧VB以下へ下がるため、ア
バランシェは終了する。アバランシェ電流の減少と共
に、APDに印加される逆バイアス電圧は回復する。VE
3Vのとき、およそ50nsecで回復する。APDに印加され
る電圧がブレークダウン電圧VB以下にある間が、光子
検出不可能な時間となる。この一連の動作で発生する電
流信号は、Rsにより電圧変換され出力される。しか
し、従来のPQCでは、APDに常時ブレークダウン電圧VB
以上の逆バイアス電圧がかかっているため、After-puls
eによるダークカウントの多いInGaAs/InP-APDへの応用
は不可能である。
【0044】そこで、図4に示すように、単一光子が入
射する短い時間のみ、ブレークダウン電圧VB以上の電
圧をかけることによりゲート動作させる。これを可能に
したのがGPQCである。Cgは、矩形電圧パルスのDC成分
をブロックするためのフィルターである。Cnは、逆バ
イアスのAC成分を減衰するためのフィルターとして働
く。ケーブルと接続する際に、反射を防ぐための整合抵
抗として、Rgを経由して接地する。GPQCへの入力ゲー
ト電圧は半値幅2nsec、振幅は4.5Vである。CgやAPD
内のキャパシタンスや回路中のストレーキャパシタンス
の影響により、APDのカソードへ印加されるゲート電圧
は、振幅4Vとなる。さらにゲート幅を狭くすると、ガ
イガーモードである時間が短くなるため、ダークカウン
トは減少する。しかし、光子吸収からアバランシェが起
きるまでの応答時間が数100psec程度であるため、ゲー
ト幅が狭すぎると、この応答時間後まで最大のゲート電
圧がAPDへ印加されないために、量子効率も減少してし
まう。光子検出における量子効率は、余剰電圧VEに比
例する。熱運動するキャリアなどの光子吸収以外の原因
で起きるブレークダウンの確率も、余剰電圧VEの増加
と共に増加する。
【0045】量子暗号通信において安全性を確保するに
は、エラー発生確率であるQuantumBit Error Rate(QBE
R)が15%以下でなければならない。量子暗号通信にお
けるQuantum Bit Error Rate(QBER)は、量子鍵配布に
よって共有される鍵におけるエラーの発生率である。量
子暗号通信においては、このエラーは全て盗聴者による
ものと考えなければならない。シャノンの情報理論を用
いることで、エラーの発生率から盗聴者の得るだろう最
大の情報量が計算でき、これはエラー発生率の増加と共
に増加する。一方、量子暗号通信をする二者の共有でき
る情報量は減少する。QBERが15%以上となると、前者が
後者を上回ってしまうために、暗号鍵共有の安全性はも
はや保証されない。QBER≒15%にまで達すると、暗号鍵
の共有は不可能となる。よって、QBER≦15%が重要な条
件となる。共有できるBit数は、伝送距離が長くなるほ
ど減少する。
【0046】QBERは、通信距離と量子効率とダークカウ
ント確率の関数である。QBERは、Pd/ηと通信距離の
関数であるため、Pd/ηが小さいほど通信距離を長く
できる。図5に示すように、QBERが最小となる温度は−
55℃付近である。図6に示すように、量子効率とダーク
カウント確率は、トレードオフの関係にある。EPITAXX-
APDの場合、量子効率が13.7%、20.7%のときのダーク
カウント確率は、それぞれ2.4×10-5、6.4×10-5であ
る。単一光子検出器の性能に関係するのは、Pd/ηで
あり、長い伝送距離を得るためには、Pd/ηをできる
だけ小さくしなければならない。
【0047】BB84などの量子暗号プロトコルによって共
有された鍵データにおけるQBERは、伝送距離が長くなる
と、光ファイバの損失のために増加する。伝送路の損失
しか考慮しない場合、最大で104kmの量子暗号通信が可
能である。量子暗号通信をする受信者側の損失を考慮に
入れると、QBER=15%における最大の伝送距搬は、受信
者側の損失の増加とともに減少してしまい、受信者側の
損失が3dBのときは、最大の伝送距離は90kmとなる。実
際の量子暗号通信系で100km以上の通信を実現するため
には、量子効率η=13.7%の場合、Pdは1.0×10-5程度
でなければならない。
【0048】図7に示すグラフを参照して、偏光分離型
干渉計の性能について説明する。図7は、信号光と参照
光に0〜2πの位相差を与えた時の第1検出器と第2検
出器の出力のグラフである。横軸は、位相変調器への印
加電圧である。縦軸は、光子のカウント数である。グラ
フのカウント数は、多数回の実験結果の合計数である。
信号光と参照光の位相差が0の場合、光子は第2検出器
で検出され、位相差がπの場合は、第1検出器で検出さ
れる。それ以外の場合は、いずれかでランダムに検出さ
れる。第1検出器の量子効率は、18.2%であり、ダーク
カウント確率は、4.8×10-5である。第2検出器の量子
効率は、17.6%であり、ダークカウント確率は、4.5×1
0-5である。この実験の結果では、第1検出器の干渉度
は99.8%であり、第2検出器の干渉度は98.0%である。
平均光子数を0.2として、ランダムに位相変調を行った
場合、QBERは、平均で1.37%である。
【0049】上記のように、本発明の第1の実施の形態
では、長距離量子暗号システムを、1550nmのレーザー光
を用い、光パルスの間隔をアバランシェフォトダイオー
ドのトラップキャリアの緩和時間より長くして単一光子
検出器の感度を上げ、偏光分離型干渉計の光損失を少な
くしたので、伝送距離を長くすることができる。
【0050】(第2の実施の形態)本発明の第2の実施
の形態は、2つの偏光分割器の偏光面をほぼ直交させる
ことで、検出部でのファラデーローテーターを不要にし
て減衰を少なくした長距離量子暗号システムである。
【0051】図8は、本発明の第2の実施の形態におけ
る長距離量子暗号システムの概念図である。図8におい
て、第1偏光分割器6は、+45°の偏光を通し、-45°の
偏光を反射する手段である。第2偏光分割器7は、水平
偏光を通過させ、垂直偏光を反射する手段である。第3
偏光分割器15は、-44°の偏光を通し、それに直交する
偏光を反射する偏光分割器である。量子暗号システムの
その他の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じであ
る。図9は、長距離量子暗号システムの各光パルスの偏
光状態を示す図である。
【0052】上記のように構成された本発明の第2の実
施の形態における長距離量子暗号システムの動作を説明
する。暗号鍵情報受信端末1に設けたDFBダイオードレ
ーザーのレーザー光源4で、図9(a)に示すように、
波長1550nmの光パルスを発生し、-44°の偏光成分を出
力する。この光パルスは、-44°の偏光を通す第3偏光
分割器15を通過し、+45°の偏光を通す第1偏光分割器
6に入力する。-44°の偏光パルスの成分のうち、偏光
面が45°の直線偏光成分が通過し、それと直交する偏光
面をもつ成分は除去される。送出光パルスの光子数は少
なくなるが、光減衰器での減衰量を、それに応じて少な
くすればよい。図9(b)に示す+45°の偏光面をもつ
送信パルスは、水平偏光を通す第2偏光分割器7で、図
9(c)に示すように、垂直偏光と水平偏光に分割され
る。これ以降、帰還光パルスが第2偏光分割器を出るま
では、第1の実施の形態と同じである。
【0053】参照光パルスと信号光パルスの位相シフト
が(0,0)と(π/2,π/2)の場合は、帰還光パル
スは、光源側からみた場合、図9(d)に示すように、
-45°の直線偏光となるので、+45°の偏光を通す第1偏
光分割器6に逆方向から入射して反射され、第2検出器
11に検出される。
【0054】位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/
2)の場合は、帰還光パルスは、図9(e)に示すよう
に、+45°の直線偏光となるので、+45°の偏光を通す第
1偏光分割器6に逆方向から入射して通過し、-44°の
偏光を通す第3偏光分割器15で、+46°の偏光成分が反
射されて、第1検出器10に入射して検出される。第3偏
光分割器でほんのわずかな損失があるだけである。
【0055】位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/
2)と(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光
パルスは円偏光となるので、第1検出器10と第2検出器
11のどちらかにランダムに入射して検出される。
【0056】上記のように、本発明の第2の実施の形態
では、長距離量子暗号システムを、2つの偏光分割器の
偏光面をほぼ直交させることで検出部でのファラデーロ
ーテーターを不要にして光損失を少なくした偏光分離型
干渉計を用いた構成としたので、偏光分離型干渉計にお
ける受信光子の損失をほとんどなくして、伝送距離を長
くできる。
【0057】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
では、量子暗号システムを、レーザー光源の出力光の水
平偏光成分のみを送出光として出力する機能と、第1偏
光分割器からの帰還光を第1検出器に出力する機能とを
有するサーキュレーターと、送出光の+45度偏光成分を
通過させる機能と、帰還光の-45度偏光成分を第2検出
器に出力する機能と、帰還光の+45度偏光成分を通過さ
せる機能とを有する第1偏光分割器と、送出光の+45度
偏光成分を入力して、水平偏光成分を参照光として光通
信路に送出するとともに垂直偏光成分を信号光として遅
延経路に送出する機能と、光通信路からの帰還光を入力
して、水平偏光成分である帰還信号光を第1偏光分割器
に送出するとともに垂直偏光成分である帰還参照光を遅
延経路に送出する機能と、遅延経路からの信号光を光通
信路に送出する機能と、遅延経路からの帰還参照光を第
1偏光分割器に送出する機能とを有する第2偏光分割器
と、帰還参照光に対して位相変調をかける機能を有する
第1位相変調器と、信号光に対して位相変調をかける機
能を有する第2位相変調器と、波長1550nmの1光子を検
出する機能を有する第1検出器と、波長1550nmの1光子
を検出する機能を有する第2検出器と、入射した送出光
の偏光面を+90°回転して反射する機能を有するファラ
デーミラーとを備え、レーザー光源と第1偏光分割器と
第2偏光分割器と第3偏光分割器と第1位相変調器と遅
延経路と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信
端末と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と
第2位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送
信端末とを具備する構成としたので、量子暗号システム
における光子の損失を少なくして、伝送距離を長くする
ことができるという効果が得られる。
【0058】また、サーキュレーターの代わりに第3の
偏光分割器を設けて、レーザー光源の出力光の-44度偏
光成分のみを送出光として出力する機能と、第1偏光分
割器からの帰還光の+46度偏光成分を第1検出器に出力
する機能とを有する構成としたので、偏光分離型干渉計
における受信光子の損失をほとんどなくして、伝送距離
を長くすることができるという効果が得られる。
【0059】また、第1検出器と第2検出器に、入射す
る単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェフォ
トダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイアス電
圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレークダ
ウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作パッ
シブクエンチング回路を備えた構成としたので、アバラ
ンシェフォトダイオードのダークカウント確率を小さく
して、伝送距離をいっそう長くすることができるという
効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムの概念図、
【図2】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図、
【図3】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムで用いるGPQCの回路図、
【図4】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムで用いるGPQCのタイミング図、
【図5】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムで用いる光子検出器のPd/ηと温度の関
係を示すグラフ、
【図6】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムで用いる光子検出器のダークカウント確率
Pdと量子効率ηの関係を示すグラフ、
【図7】本発明の第1の実施の形態における長距離量子
暗号システムで、信号光と参照光に0〜2πの位相差を
与えた時の第1検出器と第2検出器の出力を表すグラ
フ、
【図8】本発明の第2の実施の形態における長距離量子
暗号システムの概念図、
【図9】本発明の第2の実施の形態における長距離量子
暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図、
【図10】従来の量子暗号システムの概念図である。
【符号の説明】
1 暗号鍵情報受信端末 2 光ファイバー伝送路 3 暗号鍵情報送信端末 4 レーザー光源 5 サーキュレーター 6 第1偏光分割器 7 第2偏光分割器 8 第1位相変調器 9 遅延経路 10 第1検出器 11 第2検出器 12 光減衰器 13 第2位相変調器 14 ファラデーミラー 15 第3偏光分割器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H099 AA00 BA17 CA02 CA05 5F049 MA07 MB07 NA04 NA05 NB10 SS04 TA20 UA05 UA11 WA01 5J104 AA05 EA15 NA02 5K102 AB11 MC06 MD01 MD03 PH22 PH33 PH41

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レーザー光源とサーキュレーターと第1
    偏光分割器と第2偏光分割器と第1位相変調器と遅延経
    路と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末
    と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2
    位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端
    末とを具備する量子暗号システムにおいて、前記サーキ
    ュレーターは、前記レーザー光源の出力光の水平偏光成
    分のみを+45度回転させて送出光として出力する機能
    と、前記第1偏光分割器からの帰還光の偏光を+45度回
    転させて前記第1検出器に出力する機能とを有し、前記
    第1偏光分割器は、前記送出光を通過させる機能と、帰
    還光が垂直偏光の場合には帰還光を前記第2検出器に出
    力する機能と、帰還光が水平偏光の場合には帰還光を通
    過させる機能とを有し、前記第2偏光分割器は、前記送
    出光を入力して、水平偏光成分を参照光として前記光通
    信路に送出するとともに垂直偏光成分を信号光として前
    記遅延経路に送出する機能と、前記光通信路からの帰還
    光を入力して、水平偏光成分である帰還信号光を前記第
    1偏光分割器に送出するとともに垂直偏光成分である帰
    還参照光を前記遅延経路に送出する機能と、前記遅延経
    路からの信号光を前記光通信路に送出する機能と、前記
    遅延経路からの帰還参照光を前記第1偏光分割器に送出
    する機能とを有し、前記第1位相変調器は、前記帰還参
    照光に対して位相変調をかける機能を有し、前記第2位
    相変調器は、前記信号光に対して位相変調をかける機能
    を有し、前記第1検出器は、波長1550nmの1光子を検出
    する機能を有し、前記第2検出器は、波長1550nmの1光
    子を検出する機能を有し、前記ファラデーミラーは、入
    射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する機能を
    有することを特徴とする量子暗号システム。
  2. 【請求項2】 レーザー光源と第1偏光分割器と第2偏
    光分割器と第3偏光分割器と第1位相変調器と遅延経路
    と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末
    と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2
    位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端
    末とを具備する量子暗号システムにおいて、前記第3偏
    光分割器は、前記レーザー光源の出力光の-44度偏光成
    分のみを送出光として出力する機能と、前記第1偏光分
    割器からの帰還光の+46度偏光成分を前記第1検出器に
    出力する機能とを有し、前記第1偏光分割器は、前記送
    出光の+45度偏光成分を通過させる機能と、帰還光の-45
    度偏光成分を前記第2検出手段に出力する機能と、帰還
    光の+45度偏光成分を通過させる機能とを有し、前記第
    2偏光分割器は、前記送出光の+45度偏光成分を入力し
    て、水平偏光成分を参照光として前記光通信路に送出す
    るとともに垂直偏光成分を信号光として前記遅延経路に
    送出する機能と、前記光通信路からの帰還光を入力し
    て、水平偏光成分である帰還信号光を前記第1偏光分割
    器に送出するとともに垂直偏光成分である帰還参照光を
    前記遅延経路に送出する機能と、前記遅延経路からの信
    号光を前記光通信路に送出する機能と、前記遅延経路か
    らの帰還参照光を前記第1偏光分割器に送出する機能と
    を有し、前記第1位相変調器は、前記帰還参照光に対し
    て位相変調をかける機能を有し、前記第2位相変調器
    は、前記信号光に対して位相変調をかける機能を有し、
    前記第1検出器は、波長1550nmの1光子を検出する機能
    を有し、前記第2検出器は、波長1550nmの1光子を検出
    する機能を有し、前記ファラデーミラーは、入射した送
    出光の偏光面を+90°回転して反射する機能を有するこ
    とを特徴とする量子暗号システム。
  3. 【請求項3】 前記第1検出器と前記第2検出器に、入
    射する単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェ
    フォトダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイア
    ス電圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレー
    クダウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作
    パッシブクエンチング回路を備えたことを特徴とする請
    求項1または2記載の量子暗号システム。
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