JP4086136B2 - 長距離量子暗号システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、長距離量子暗号システムに関し、特に、光の減衰量を少なくして伝送効率を高めた偏光分離型干渉計を用いるとともに、高効率でしかもダークカウント確率の小さな単一光子検出器により量子誤り率(QBER)を低減した長距離量子暗号システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、情報通信における安全性はますます重要になってきている。現在使われている公開鍵暗号法は解読に膨大な時間を要することで安全性を確保している。従来の暗号システムは、秘密鍵方式の暗号でも公開鍵方式の暗号でも、解読のための計算量が莫大であり、実際上計算不可能であるから暗号解読できないという点に、安全性の基礎をおいている。特に、公開鍵方式のRSA暗号では、因数分解が計算困難であるから、公開伝送路での鍵配送が安全であるとしている。
【0003】
しかし、因数分解は、量子コンピュータにより多項式時間で計算可能であることが、理論的にではあるが証明されたので、RSA公開鍵方式による鍵配送の安全性の理論的根拠は無くなった。また、ElGamal暗号では離散対数問題が計算困難であるから、公開伝送路での鍵配送が安全であるとしている。離散対数問題も、量子コンピュータにより多項式時間で計算可能であることが、理論的に証明されると、公開鍵方式による鍵配送の安全性の理論的根拠は無くなる。近い将来、暗号解読に必要となる素因数分解が高速に行えるアルゴリズムや量子コンピュータが開発されると、この安全性は崩れてしまう。
【0004】
そこで、計算量的にではなく絶対的に安全な鍵配送システムとして、原理的に盗聴不可能な量子暗号鍵配送システムが提案され、注目を集めている。量子暗号通信は、量子力学の不確定性原理を巧みに利用したものである。素粒子の量子状態をすべて知ることはできないという、量子力学におけるハイゼンベルグの不確定性原理に基づいて、盗聴を不可能にした暗号システムである。量子暗号鍵配送システムとしては、種々のものが提案されているが、特に、光子の位相に鍵情報を載せて伝送する鍵配送システムが、効率が良くて長距離伝送可能であるとして、光ファイバを用いた単一光子伝送による方法がもっとも実用性の高いものであると考えられている。
【0005】
この種の鍵配送システムの従来例として、米国特許第6,188,768号明細書に開示された「光の偏光分割に基づく自動補償量子暗号鍵配送システム」がある。この量子暗号鍵配送(QKD)システムでは、経路は全て光ファイバで構成する。伝送経路は10km程度である。光学系は、ファラデーミラーを使用し往復伝送路を構成することで、伝送路における偏光の揺らぎを相殺する。暗号鍵情報受信部で、レーザー光源からの光パルスを、互いに直交する直線偏光の1組の光パルスに分割する。一方を参照光パルスとし、他方を信号光パルスとして遅延させて、光ファイバーの伝送路に送出する。暗号鍵情報送信部では、受信した参照光パルスには位相シフトを与えずに、偏光面を90°回転させる。信号光パルスには、ランダムな位相シフトを与えて、偏光面を90°回転させる。これらを減衰させて単一光子パルスにして、帰還参照光パルスと帰還信号光パルスとして光ファイバーの伝送路に送り返す。これらを受信した暗号鍵情報受信部では、帰還参照光パルスにランダムな位相シフトを与えて遅延させ、帰還信号光パルスと重ね合わせて帰還光パルスとする。帰還光パルスの偏光状態を検出することで、暗号鍵情報を得る。
【0006】
暗号鍵情報の伝送には、位相変調によるBB84プロトコルを使う。BB84プロトコルを簡単に説明する。詳しくは、文献1[岡本龍明、山本博資著「現代暗号」(産業図書、1997)pp.293〜301.]などを参照されたい。送信者と受信者は、それぞれ2進数のランダムビットを生成する。送信者は、信号光にランダムビットに対応した位相変調(0,π/2,π,3π/2)をかける。受信者は、参照光にランダムビットに対応した位相変調(0,π/2)をかける。受信者は、位相変調をかけられた単一光子どうしを干渉させる。この光子が2つの検出器のどちらに検出されるかは、送信者と受信者それぞれの位相変調量の差に依存する。位相差が0かπのときは、対応した検出器に検出される。また、位相差がπ/2のときはどちらかの検出器にランダムに検出される。
【0007】
図10を参照しながら、従来の量子暗号鍵配送システムの動作を簡単に説明する。詳細は、米国特許第6,188,768号明細書、または、文献2[Donald S. Bethune and William P. Risk, "An Autocompensating Fiber-Optic Quantum Cryptography System Based on Polarization Splitting of Light," IEEE Journal of Quantum Electronics, Vol.36, No.3, March 2000] を参照されたい。暗号鍵情報受信部に設けたダイオードレーザーで、水平偏光パルスを発生する。この光パルスは、水平偏光を通す偏光分割器#1を通過し、ファラデー回転器で偏光面を+45°回転させられる。さらに、半波長板♯1で偏光面を-45°回転させられてもとの水平偏光に戻り、水平偏光を通す偏光分割器#2を通過する。その後、半波長板#2で偏光面を+45°回転させられて、偏光面が45°傾いた直線偏光パルスSとなる。
【0008】
この45°傾いた直線偏光パルスSは、水平偏光を通す偏光分割器#3で、垂直偏光と水平偏光に分割される。垂直偏光は、信号光パルスP2として遅延経路に分岐され、一定の遅延時間後に、水平偏光を通す偏光分割器#4で光ファイバー通信路に送出される。遅延経路中にある位相変調器#1は、このタイミングでは動作させないので、信号光パルスP2に位相シフトは施されない。水平偏光は偏光分割器#3を通過して、参照光パルスP1として光ファイバー通信路に送出される。
【0009】
暗号鍵情報送信部では、受信した光パルスを減衰器で減衰させ、位相変調器#2で、信号光パルスP2にランダムな位相シフトを与える。位相シフトは、暗号鍵情報送信部で発生した乱数に基づいて、0,π/2,π,3π/2のいずれかが施される。参照光パルスP1には位相シフトを与えない。これらの操作は、タイミングで区別して制御する。ファラデーミラーで各光パルスの偏光面を90°回転させて反射する。水平偏光の参照光パルスP1は、垂直偏光の帰還参照光パルスRP1となり、垂直偏光の信号光パルスP2は、水平偏光の帰還信号光パルスRP2となる。実際には、光ファイバー通信路における複屈折などの影響で、各光パルスは楕円偏光などになるが、往復で相殺されるので、直線偏光であるとして説明してある。減衰量は、最終的に1〜0.1光子/パルスとなるようにする。すなわち、帰還光パルスのエネルギーをhν以下にする。
【0010】
暗号鍵情報受信部では、反射して戻ってきた帰還光パルスのうち、垂直偏光の帰還参照光パルスRP1を、水平偏光を通す偏光分割器#4で遅延経路に分岐し、位相変調器#1で位相シフトを与える。位相シフトは、暗号鍵情報受信部で発生した乱数に基づいて、0,π/2のいずれかが施される。水平偏光の帰還信号光パルスRP2は、水平偏光を通す偏光分割器#4を通過する。帰還参照光パルスRP1と帰還信号光パルスRP2は、水平偏光を通す偏光分割器#3に同時に到達するので、そこで重ね合わされて1つの帰還光パルスRSとなる。帰還光パルスRSの偏光状態は、両光パルスの位相シフトの相対関係で決まる。
【0011】
両位相シフトの差が0の場合、すなわち、位相シフトが(0,0)と(π/2,π/2)の場合は、帰還光パルスRSは、光源側から見た偏光面が、-45°の直線偏光となるので、半波長板#2で偏光面を-45°回転されて垂直偏光となる。垂直偏光は、水平偏光を通す偏光分割器#2で反射されて、検出器#2に入射して検出される。
【0012】
両位相シフトの差がπの場合、すなわち、位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/2)の場合は、帰還光パルスRSは、光源側から見た偏光面が、+45°の直線偏光となるので、半波長板#2で偏光面を-45°回転されて水平偏光となる。偏光分割器#2を通過して、半波長板#1で偏光面を+45°回転される。さらに、ファラデー回転器で+45°回転されて、偏光面が合せて+90°回転して垂直偏光パルスになる。水平偏光を通す偏光分割器#1で反射されて、検出器#1に入射して検出される。
【0013】
両位相シフトの差がπ/2の場合、すなわち、位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/2)と(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光パルスRSは円偏光となるので、検出器#1と検出器#2に、確率的に同じだけ入射して検出される。
【0014】
暗号鍵情報受信部では、検出後に通常の通信路を使って、暗号鍵情報送信部に位相シフトの基底情報を通知し、暗号鍵情報送信部から一致不一致の情報を得て、一致した場合の受信乱数情報に基づいて、暗号鍵を共有することができる。
【0015】
ところで、光ファイバ通信では、光損失が最小である波長1550nmの光が一般的に使用されている。波長1310nmの光では、光ファイバ中の光損失は0.35dB/kmであり、波長1550nmにおける光ファイバ中の光損失は0.2dB/kmである。光ファイバを用いた長距離通信において量子鍵配布を実現するためには、光ファイバ中の光損失が最小となる波長1550nmの光を用いる必要がある。しかし、波長1550nmにおいて高い量子効率ηを有し、ダークカウント確率Pdの低い単一光子検出器は存在しなかった。
【0016】
そのため、窒素温度(77K)において比較的高効率な光子検出が可能なGe-APD(Germanium-Avalanche Photodiode)を用いて、波長1310nmの光で伝送するしかなかった。Ge-APDは、波長1450nmを境に感度が急激に低下するため、波長1550nmへの応用は困難であり、100km以上の長距離通信には不向きである。一方、波長1550nmに感度を有するInGaAs/InP-APDを用いた単一光子検出器があり、1550nm波長帯においては、Pd/η=1.0×10-3であり、40kmの伝送実験ではQBER≒7%である。Pdはダークカウント確率、ηは量子効率である。QBERは、量子鍵配布によって共有される鍵におけるエラーの発生率である。Pd、η、QBERについて詳しくは後述する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の量子暗号システムでは、レーザー光に波長1310nmの光を用いているために、光ファイバー中での減衰が多く、伝送距離が短いという問題があった。波長1550nmのレーザー光を用いても、従来のInGaAs/InP-APDを用いた単一光子検出器では、100km以上の長距離通信は不可能であった。既設光ファイバーによる長距離量子暗号通信を実現するためには、波長1550nmの効率のよい、しかも、ダークカウント確率の小さい単一光子検出器が必要である。また、従来の偏光分離型干渉計では、受信部における光損失が多く、検出感度が低くて、伝送距離を伸ばせないという問題があった。
【0018】
本発明は、上記従来の問題を解決して、量子暗号システムにおいて、受信部での光子の損失を少なくして伝送距離を長くすることを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明では、量子暗号システムを、レーザー光源の出力光の水平偏光成分のみを送出光として出力する機能と、第1偏光分割器からの帰還光を第1検出器に出力する機能とを有するサーキュレーターと、送出光を通過させる機能と、垂直偏光をもつ帰還光を第2検出器に出力する機能と、帰還光を通過させる機能とを有する第1偏光分割器と、+45度偏光をもつ送出光を入力して、水平偏光成分を参照光として光通信路に送出するとともに垂直偏光成分を信号光として遅延経路に送出する機能と、光通信路からの帰還光を入力して、水平偏光成分である帰還信号光を第1偏光分割器に送出するとともに垂直偏光成分である帰還参照光を遅延経路に送出する機能と、遅延経路からの信号光を光通信路に送出する機能と、遅延経路からの帰還参照光を第1偏光分割器に送出する機能とを有する第2偏光分割器と、帰還参照光に対して位相変調をかける機能を有する第1位相変調器と、信号光に対して位相変調をかける機能を有する第2位相変調器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有する第1検出器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有する第2検出器と、入射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する機能を有するファラデーミラーとを備え、レーザー光源とサーキュレーターと第1偏光分割器と第2偏光分割器と第1位相変調器と遅延経路と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端末とを具備する構成とした。
【0020】
このように構成したことにより、量子暗号システムの受信部における光子の損失を少なくして、伝送距離を長くすることができる。
【0021】
また、レーザー光源の直後にある偏光分割器を、レーザー光源の出力光の-44度偏光成分のみを送出光として出力する機能と、その次の偏光分割器からの帰還光の+46度偏光成分を第1検出器に出力する機能とを有する構成とした。このように構成したことにより、偏光分離型干渉計における受信光子の損失をほとんどなくして、伝送距離を長くすることができる。
【0022】
また、第1検出器と第2検出器に、入射する単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイアス電圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレークダウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作パッシブクエンチング回路を備えた構成とした。このように構成したことにより、アバランシェフォトダイオードのダークカウント確率を小さくして、伝送距離をいっそう長くすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図9を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態は、1550nmのレーザー光を用い、光パルスの間隔をアバランシェフォトダイオードのトラップキャリアの緩和時間より長くして単一光子検出器の感度を上げ、サーキュレーターと第1偏光分割器と第2偏光分割器との間を偏波保存ファイバーで継ぎ、サーキュレーターと第1偏光分割器との間では、偏波保存ファイバーのslow軸を-45度回転させ、第1偏光分割器と第2偏光分割器の間では、偏波保存ファイバーのslow軸を+45度回転させることにより、偏光回転子を除くことで受信部の損失を低減した長距離量子暗号システムである。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムの概念図である。図1において、暗号鍵情報受信端末1は、暗号鍵の情報を受信する端末である。光ファイバー伝送路2は、10.5kmの光ファイバー通信路である。暗号鍵情報送信端末3は、暗号鍵の情報を送信する端末である。レーザー光源4は、波長1550nmのレーザー光を発生するDFB(Distributed Feedback)レーザーである。サーキュレーター5は、水平偏光成分を通過させ、+45度偏光の帰還光を反射させる手段である。図1(b)に、サーキュレーター5の機能を示す。第1偏光分割器6は、偏波保存ファイバーによって入射される水平偏光を通過させる手段である。第2偏光分割器7は、偏波保存ファイバーによって入射される+45度偏光の水平偏光成分を通過させ、垂直偏光成分を反射させる手段である。図1(c)に、レーザー光源4から第2偏光分割器7までの偏光の状態を示す。第1位相変調器8は、帰還参照光パルスに対して位相変調をかける手段である。遅延経路9は、送出信号光パルスと帰還参照光パルスを一定時間だけ遅延させる手段である。第1検出器10と第2検出器11は、波長1550nmの1光子を検出するアバランシェフォトダイオードである。光減衰器12は、送出光を減衰させて1パルスを1光子以下にする手段である。第2位相変調器13は、信号光パルスに対して位相変調をかける手段である。ファラデーミラー14は、入射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する手段である。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図である。図3は、光子検出器のGPQC(Gated Passive Quenching Circuit)の回路図である。図4は、GPQCのタイミング図である。図5は、ダークカウント確率Pdと量子効率ηとの比Pd/ηと温度の関係を示すグラフである。図6は、量子効率とダークカウント確率の関係を示すグラフである。図7は、信号光と参照光に0〜2πの位相差を与えた時の第1検出器と第2検出器の出力を表すグラフである。
【0027】
上記のように構成された本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムの動作を説明する。最初に、図1を参照しながら、量子暗号システムの概略を説明する。この量子暗号システムでは、レーザー光源4でレーザー光を発生する。波長1550nm、パルス幅50psecのパルスレーザーを使用する。暗号鍵情報受信端末1で、レーザー光源4からの波長1550nmの光パルスを、水平偏光パルスと垂直偏光パルスに分割する。水平偏光パルスを参照光パルスとし、垂直偏光パルスを信号光パルスとして遅延させて、光ファイバー伝送路2に送出する。
【0028】
暗号鍵情報送信端末3では、受信した参照光パルスには位相シフトを与えずに、偏光面を90°回転させる。信号光パルスには、ランダムな位相シフトを与えて、偏光面を90°回転させる。これらを減衰させて単一光子パルスにして、帰還参照光パルスと帰還信号光パルスとして光ファイバー伝送路2に送り返す。
【0029】
これらを受信した暗号鍵情報受信端末1では、帰還参照光パルスにランダムな位相シフトを与えて遅延させ、帰還信号光パルスと重ね合わせて帰還光パルスとする。帰還光パルスの偏光状態を検出することで、暗号鍵情報を得る。光学系の精度を決める干渉計の干渉度は98%以上である。波長1550nmの単一光子検出を高効率、低ダークカウント確率で行うため、InGaAs/InP-APDを冷却し、GPQCによりゲート動作させる。InGaAs/InP-APD(商品名EPITAXX-APD、部品番号EPM-239-BAのAPD)は、最適温度が比較的室温に近く、電子冷却可能な−55℃であり、量子効率13.7%ではダークカウント確率2.4×10-5である。この温度でゲート動作の繰返周波数は、最大1MHzである。
【0030】
図1と図2を参照しながら、量子暗号システムの動作を説明する。暗号鍵情報受信端末1に設けたDFBダイオードレーザーのレーザー光源4で、図2(a)に示すように、波長1550nmの水平偏光パルスを発生する。この光パルスは、水平偏光を通すサーキュレーター5を通過して、+45度偏光となる。サーキュレーターと第1偏光分割器との間を継ぐ偏波保存ファイバーで、偏光面を-45度回転させられて、水平偏波となり、第1偏光分割器6を通過する。第1偏光分割器と第2偏光分割器との間を継ぐ偏波保存ファイバーで、偏光面を+45度回転させられて、+45度偏光となる。偏波保存ファイバーでは、偏光がslow軸に沿って進むので、このslow軸を回転させて偏光分割器につなぐだけで、入射偏光方向を変えることができる。
【0031】
図2(b)に示す+45°の偏光面をもつ送信パルスは、水平偏光を通過させる第2偏光分割器7で、図2(c)に示すように、垂直偏光と水平偏光に分割される。垂直偏光は、信号光パルスとして遅延経路9に分岐され、一定の遅延時間後に、垂直偏光を反射する第2偏光分割器7で光ファイバー伝送路2に送出される。遅延経路9中にある第1位相変調器8は、このタイミングでは動作させないので、信号光パルスに位相シフトは施されない。水平偏光は第2偏光分割器7を通過して、参照光パルスとして光ファイバー伝送路2に送出される。
【0032】
暗号鍵情報送信端末3では、受信した光パルスを光減衰器12で減衰させ、第2位相変調器13で、信号光パルスにランダムな位相シフトを与える。位相シフトは、暗号鍵情報送信端末で発生した乱数に基づいて、0,π/2,π,3π/2のいずれかが施される。参照光パルスには位相シフトを与えない。これらの操作は、タイミングで区別して制御する。タイミング制御は、図示していない周知の方法で行うことができる。例えば、従来例と同じ方法でタイミング制御してもよい。ファラデーミラー14で各光パルスの偏光面を90°回転させて反射する。水平偏光の参照光パルスは、垂直偏光の帰還参照光パルスとなり、垂直偏光の信号光パルスは、水平偏光の帰還信号光パルスとなる。減衰量は、最終的に1〜0.1光子/パルスとなるようにする。すなわち、帰還光パルスのエネルギーをhν以下にする。
【0033】
暗号鍵情報受信端末1では、反射して戻ってきた帰還光パルスのうち、垂直偏光の帰還参照光パルスを、垂直偏光を反射する第2偏光分割器7で遅延経路9に分岐し、第1位相変調器8で位相シフトを与える。位相シフトは、暗号鍵情報受信端末1で発生した乱数に基づいて、0,π/2のいずれかが施される。水平偏光の帰還信号光パルスは、水平偏光を通過させる第2偏光分割器7を通過する。帰還参照光パルスと帰還信号光パルスは、水平偏光を通過させ垂直偏光を反射する第2偏光分割器7に同時に到達するので、そこで重ね合わされて1つの帰還光パルスとなる。帰還光パルスの偏光状態は、両光パルスの位相シフトの相対関係で決まる。
【0034】
両位相シフトの差が0の場合、すなわち、参照光パルスと信号光パルスの位相シフトが(0,0)と(π/2,π/2)の場合は、帰還光パルスは、光源側からみた場合、図2(d)に示すように、-45°の直線偏光となる。偏波保存ファイバー(PMF)によって偏光面を-45°回転させられて垂直偏光となり、第1偏光分割器6に逆方向から入射して反射され、第2検出器11に検出される。
【0035】
両位相シフトの差がπの場合、すなわち、位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/2)の場合は、帰還光パルスは、図2(e)に示すように、+45°の直線偏光となるので、偏波保存ファイバー(PMF)によって偏光面を-45°回転させられて水平偏光となり、第1偏光分割器6に逆方向から入射して通過し、さらに次のPMFによって偏光方向を+45度回転させられ、45°偏光となる。サーキュレーター5のファラデーローテーターで偏光面を+45度回転させられて垂直偏光となり、サーキュレーター5の偏光分割器で反射されて、第1検出器10に入射して検出される。
【0036】
両位相シフトの差がπ/2の場合、すなわち、位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/2)と(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光パルスは円偏光となるので、第1検出器10と第2検出器11のどちらかにランダムに入射して検出される。
【0037】
暗号鍵情報受信端末1は、検出後に通常の通信路を使って、暗号鍵情報送信端末3に位相シフトの基底を通知することで、暗号鍵を共有することができる。
【0038】
図9に示した従来例においては、受信部の光損失が約10dBであるのに対し、本実施の形態では、光損失を約3dBに抑えることができた。従来例の方式と比べて、半波長板を2枚減らすことができ、その分損失が小さくなる。また、QBERは、1.37%を実現した。波長1550nmのレーザー光を使うので、光ファイバー伝送路での損失が少ない。さらに、検出器のAPDのトラップキャリアの緩和時間を空けて検出するので、検出器のダークカウント確率が少なくなり、QBERが改善される。これらの総合的な効果で、伝送距離を100kmまで延ばすことができる。
【0039】
単一光子検出器について説明する。InGaAs/InP-APDをガイガーモードで動作させて、波長1550nmの単一光子を検出する。すなわち、InGaAs/InP-APDにブレークダウン電圧VB以上の逆バイアスをかけて、入射光によるアバランシェブレークダウンを検出する。APDに光子が入射すると、励起されたキャリアは、逆バイアスによるAPD内の高電界により加速され、格子衝突によりキャリアホール対が連鎖的に発生する。これをアバランシェブレークダウンといい、検出するのに十分な大きさの電気信号を得ることができる。検出効率を下げる主な原因には2つある。1つは、トラップキャリアによるAfter-pulsingであり、もう1つは、キャリアの熱運動によるダークカウントである。低温においては、キャリアのトンネル効果によるダークカウントも生じる。
【0040】
キャリアの熱運動によるダークカウントは、APDを冷却することにより抑圧することができる。InGaAs/InP-APDを低温においてゲート動作させることにより、ダークカウントを抑え、波長1550nmの単一光子検出を行う。InGaAs/InP-APD(EPITAXX-APD)は、-55℃でPd/ηが最小となるので、ペルチエ素子を用いた電子冷却が可能である。このAPDは、-55℃において、量子効率ηは13.7%であり、ダークカウント確率Pdは2.4×10-5である。このAPDを用いた単一光子検出器では、Pd/ηは3×10-4程度であり、40kmの伝送距離に対しては、QBERは約3%である。伝送距離がさらに長くなると、光ファイバによる損失によりQBERは増大する。
【0041】
After-pulsingについて説明する。After-pulsingとは、アバランシェブレークダウンによって電流が流れた際に、APDの空乏層内の欠陥によってトラップされたキャリアが一定の時間(トラップキャリアの寿命)の後放出され、高電界により再びアバランシェブレークダウンを起こす現象である。トラップキャリアの寿命は、温度やAPDの空乏層内の欠陥に依存する。InGaAs-APDでは、〜1μsec(at-55℃)でトラップキャリアが消滅する。APDをGated Passive Quenching Circuit(GPQC)によってゲートモードで動作させ、ゲートオフの時間を、トラップキャリアの寿命より長く設定することにより、After-pulsingによるダークカウントを抑圧し、検出効率を向上させる。
【0042】
Gated Passive Quenching Circuitによるダークカウントの抑圧方法を説明する。APDにはあらかじめ、ブレークダウン電圧VBより僅かに小さい直流電圧VAを印加しておき、それに矩形電圧パルス(ゲート電圧)を重畳する。このとき、ブレークダウン電圧VBを越えた電圧を余剰電圧VEとする。また、ゲート電圧がかかっている時間をTonとし、ゲート電圧がかかっていない時間をToffとする。Tonには、APDはガイガーモードで動作するため、光子を入射するとブレークダウンが起き、光子が検出される。一方、Toffにはブレークダウンは起こらない。そのため、Toffをトラップキャリアの寿命より長く取ることにより、トラップキャリアを一掃し、After-pulsingによるダークカウントを抑圧することができる。
【0043】
図3にGPQCの回路図を示す。この回路からゲート電圧の入力部を除いたものは、Passive Quenching Circuit(PQC)と呼ばれ、Si-APDやGe-APDを用いた単一光子検出に広く用いられている。この従来のPQC回路では、アバランシェブレークダウンが起き、これによるアバランシェ電流が流れると、RLによりAPDに印加される電圧がブレークダウン電圧VB以下へ下がるため、アバランシェは終了する。アバランシェ電流の減少と共に、APDに印加される逆バイアス電圧は回復する。VE=3Vのとき、およそ50nsecで回復する。APDに印加される電圧がブレークダウン電圧VB以下にある間が、光子検出不可能な時間となる。この一連の動作で発生する電流信号は、Rsにより電圧変換され出力される。しかし、従来のPQCでは、APDに常時ブレークダウン電圧VB以上の逆バイアス電圧がかかっているため、After-pulseによるダークカウントの多いInGaAs/InP-APDへの応用は不可能である。
【0044】
そこで、図4に示すように、単一光子が入射する短い時間のみ、ブレークダウン電圧VB以上の電圧をかけることによりゲート動作させる。これを可能にしたのがGPQCである。Cgは、矩形電圧パルスのDC成分をブロックするためのフィルターである。Cnは、逆バイアスのAC成分を減衰するためのフィルターとして働く。ケーブルと接続する際に、反射を防ぐための整合抵抗として、Rgを経由して接地する。GPQCへの入力ゲート電圧は半値幅2nsec、振幅は4.5Vである。CgやAPD内のキャパシタンスや回路中のストレーキャパシタンスの影響により、APDのカソードへ印加されるゲート電圧は、振幅4Vとなる。さらにゲート幅を狭くすると、ガイガーモードである時間が短くなるため、ダークカウントは減少する。しかし、光子吸収からアバランシェが起きるまでの応答時間が数100psec程度であるため、ゲート幅が狭すぎると、この応答時間後まで最大のゲート電圧がAPDへ印加されないために、量子効率も減少してしまう。光子検出における量子効率は、余剰電圧VEに比例する。熱運動するキャリアなどの光子吸収以外の原因で起きるブレークダウンの確率も、余剰電圧VEの増加と共に増加する。
【0045】
量子暗号通信において安全性を確保するには、エラー発生確率であるQuantum Bit Error Rate(QBER)が15%以下でなければならない。量子暗号通信におけるQuantum Bit Error Rate(QBER)は、量子鍵配布によって共有される鍵におけるエラーの発生率である。量子暗号通信においては、このエラーは全て盗聴者によるものと考えなければならない。シャノンの情報理論を用いることで、エラーの発生率から盗聴者の得るだろう最大の情報量が計算でき、これはエラー発生率の増加と共に増加する。一方、量子暗号通信をする二者の共有できる情報量は減少する。QBERが15%以上となると、前者が後者を上回ってしまうために、暗号鍵共有の安全性はもはや保証されない。QBER≒15%にまで達すると、暗号鍵の共有は不可能となる。よって、QBER≦15%が重要な条件となる。共有できるBit数は、伝送距離が長くなるほど減少する。
【0046】
QBERは、通信距離と量子効率とダークカウント確率の関数である。QBERは、Pd/ηと通信距離の関数であるため、Pd/ηが小さいほど通信距離を長くできる。図5に示すように、QBERが最小となる温度は−55℃付近である。図6に示すように、量子効率とダークカウント確率は、トレードオフの関係にある。EPITAXX-APDの場合、量子効率が13.7%、20.7%のときのダークカウント確率は、それぞれ2.4×10-5、6.4×10-5である。単一光子検出器の性能に関係するのは、Pd/ηであり、長い伝送距離を得るためには、Pd/ηをできるだけ小さくしなければならない。
【0047】
BB84などの量子暗号プロトコルによって共有された鍵データにおけるQBERは、伝送距離が長くなると、光ファイバの損失のために増加する。伝送路の損失しか考慮しない場合、最大で104kmの量子暗号通信が可能である。量子暗号通信をする受信者側の損失を考慮に入れると、QBER=15%における最大の伝送距搬は、受信者側の損失の増加とともに減少してしまい、受信者側の損失が3dBのときは、最大の伝送距離は90kmとなる。実際の量子暗号通信系で100km以上の通信を実現するためには、量子効率η=13.7%の場合、Pdは1.0×10-5程度でなければならない。
【0048】
図7に示すグラフを参照して、偏光分離型干渉計の性能について説明する。図7は、信号光と参照光に0〜2πの位相差を与えた時の第1検出器と第2検出器の出力のグラフである。横軸は、位相変調器への印加電圧である。縦軸は、光子のカウント数である。グラフのカウント数は、多数回の実験結果の合計数である。信号光と参照光の位相差が0の場合、光子は第2検出器で検出され、位相差がπの場合は、第1検出器で検出される。それ以外の場合は、いずれかでランダムに検出される。第1検出器の量子効率は、18.2%であり、ダークカウント確率は、4.8×10-5である。第2検出器の量子効率は、17.6%であり、ダークカウント確率は、4.5×10-5である。この実験の結果では、第1検出器の干渉度は99.8%であり、第2検出器の干渉度は98.0%である。平均光子数を0.2として、ランダムに位相変調を行った場合、QBERは、平均で1.37%である。
【0049】
上記のように、本発明の第1の実施の形態では、長距離量子暗号システムを、1550nmのレーザー光を用い、光パルスの間隔をアバランシェフォトダイオードのトラップキャリアの緩和時間より長くして単一光子検出器の感度を上げ、偏光分離型干渉計の光損失を少なくしたので、伝送距離を長くすることができる。
【0050】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態は、2つの偏光分割器の偏光面をほぼ直交させることで、検出部でのファラデーローテーターを不要にして減衰を少なくした長距離量子暗号システムである。
【0051】
図8は、本発明の第2の実施の形態における長距離量子暗号システムの概念図である。図8において、第1偏光分割器6は、+45°の偏光を通し、-45°の偏光を反射する手段である。第2偏光分割器7は、水平偏光を通過させ、垂直偏光を反射する手段である。第3偏光分割器15は、-44°の偏光を通し、それに直交する偏光を反射する偏光分割器である。量子暗号システムのその他の基本的な構成は、第1の実施の形態と同じである。図9は、長距離量子暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図である。
【0052】
上記のように構成された本発明の第2の実施の形態における長距離量子暗号システムの動作を説明する。暗号鍵情報受信端末1に設けたDFBダイオードレーザーのレーザー光源4で、図9(a)に示すように、波長1550nmの光パルスを発生し、-44°の偏光成分を出力する。この光パルスは、-44°の偏光を通す第3偏光分割器15を通過し、+45°の偏光を通す第1偏光分割器6に入力する。-44°の偏光パルスの成分のうち、偏光面が45°の直線偏光成分が通過し、それと直交する偏光面をもつ成分は除去される。送出光パルスの光子数は少なくなるが、光減衰器での減衰量を、それに応じて少なくすればよい。図9(b)に示す+45°の偏光面をもつ送信パルスは、水平偏光を通す第2偏光分割器7で、図9(c)に示すように、垂直偏光と水平偏光に分割される。これ以降、帰還光パルスが第2偏光分割器を出るまでは、第1の実施の形態と同じである。
【0053】
参照光パルスと信号光パルスの位相シフトが(0,0)と(π/2,π/2)の場合は、帰還光パルスは、光源側からみた場合、図9(d)に示すように、-45°の直線偏光となるので、+45°の偏光を通す第1偏光分割器6に逆方向から入射して反射され、第2検出器11に検出される。
【0054】
位相シフトが(0,π)と(π/2,3π/2)の場合は、帰還光パルスは、図9(e)に示すように、+45°の直線偏光となるので、+45°の偏光を通す第1偏光分割器6に逆方向から入射して通過し、-44°の偏光を通す第3偏光分割器15で、+46°の偏光成分が反射されて、第1検出器10に入射して検出される。第3偏光分割器でほんのわずかな損失があるだけである。
【0055】
位相シフトが(0,π/2)と(0,3π/2)と(π/2,0)と(π/2,π)の場合は、帰還光パルスは円偏光となるので、第1検出器10と第2検出器11のどちらかにランダムに入射して検出される。
【0056】
上記のように、本発明の第2の実施の形態では、長距離量子暗号システムを、2つの偏光分割器の偏光面をほぼ直交させることで検出部でのファラデーローテーターを不要にして光損失を少なくした偏光分離型干渉計を用いた構成としたので、偏光分離型干渉計における受信光子の損失をほとんどなくして、伝送距離を長くできる。
【0057】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明では、量子暗号システムを、レーザー光源の出力光の水平偏光成分のみを送出光として出力する機能と、第1偏光分割器からの帰還光を第1検出器に出力する機能とを有するサーキュレーターと、送出光の+45度偏光成分を通過させる機能と、帰還光の-45度偏光成分を第2検出器に出力する機能と、帰還光の+45度偏光成分を通過させる機能とを有する第1偏光分割器と、送出光の+45度偏光成分を入力して、水平偏光成分を参照光として光通信路に送出するとともに垂直偏光成分を信号光として遅延経路に送出する機能と、光通信路からの帰還光を入力して、水平偏光成分である帰還信号光を第1偏光分割器に送出するとともに垂直偏光成分である帰還参照光を遅延経路に送出する機能と、遅延経路からの信号光を光通信路に送出する機能と、遅延経路からの帰還参照光を第1偏光分割器に送出する機能とを有する第2偏光分割器と、帰還参照光に対して位相変調をかける機能を有する第1位相変調器と、信号光に対して位相変調をかける機能を有する第2位相変調器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有する第1検出器と、波長1550nmの1光子を検出する機能を有する第2検出器と、入射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する機能を有するファラデーミラーとを備え、レーザー光源と第1偏光分割器と第2偏光分割器と第3偏光分割器と第1位相変調器と遅延経路と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端末とを具備する構成としたので、量子暗号システムにおける光子の損失を少なくして、伝送距離を長くすることができるという効果が得られる。
【0058】
また、サーキュレーターの代わりに第3の偏光分割器を設けて、レーザー光源の出力光の-44度偏光成分のみを送出光として出力する機能と、第1偏光分割器からの帰還光の+46度偏光成分を第1検出器に出力する機能とを有する構成としたので、偏光分離型干渉計における受信光子の損失をほとんどなくして、伝送距離を長くすることができるという効果が得られる。
【0059】
また、第1検出器と第2検出器に、入射する単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイアス電圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレークダウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作パッシブクエンチング回路を備えた構成としたので、アバランシェフォトダイオードのダークカウント確率を小さくして、伝送距離をいっそう長くすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムの概念図、
【図2】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図、
【図3】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムで用いるGPQCの回路図、
【図4】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムで用いるGPQCのタイミング図、
【図5】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムで用いる光子検出器のPd/ηと温度の関係を示すグラフ、
【図6】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムで用いる光子検出器のダークカウント確率Pdと量子効率ηの関係を示すグラフ、
【図7】本発明の第1の実施の形態における長距離量子暗号システムで、信号光と参照光に0〜2πの位相差を与えた時の第1検出器と第2検出器の出力を表すグラフ、
【図8】本発明の第2の実施の形態における長距離量子暗号システムの概念図、
【図9】本発明の第2の実施の形態における長距離量子暗号システムの各光パルスの偏光状態を示す図、
【図10】従来の量子暗号システムの概念図である。
【符号の説明】
1 暗号鍵情報受信端末
2 光ファイバー伝送路
3 暗号鍵情報送信端末
4 レーザー光源
5 サーキュレーター
6 第1偏光分割器
7 第2偏光分割器
8 第1位相変調器
9 遅延経路
10 第1検出器
11 第2検出器
12 光減衰器
13 第2位相変調器
14 ファラデーミラー
15 第3偏光分割器
Claims (2)
- レーザー光源と第1偏光分割器と第2偏光分割器と第3偏光分割器と第1位相変調器と遅延経路と第1検出器と第2検出器とを備えた鍵情報受信端末と、光ファイバーを備えた光通信路と、光減衰器と第2位相変調器とファラデーミラーとを備えた鍵情報送信端末とを具備する量子暗号システムにおいて、前記第3偏光分割器は、前記レーザー光源の出力光の -44 度偏光成分のみを送出光として出力する機能と、前記第1偏光分割器からの帰還光の +46 度偏光成分を前記第1検出器に出力する機能とを有し、前記第1偏光分割器は、前記送出光の +45 度偏光成分を通過させる機能と、帰還光の -45 度偏光成分を前記第2検出手段に出力する機能と、帰還光の +45 度偏光成分を通過させる機能とを有し、前記第2偏光分割器は、前記送出光の +45 度偏光成分を入力して、水平偏光成分を参照光として前記光通信路に送出するとともに垂直偏光成分を信号光として前記遅延経路に送出する機能と、前記光通信路からの帰還光を入力して、水平偏光成分である帰還信号光を前記第1偏光分割器に送出するとともに垂直偏光成分である帰還参照光を前記遅延経路に送出する機能と、前記遅延経路からの信号光を前記光通信路に送出する機能と、前記遅延経路からの帰還参照光を前記第1偏光分割器に送出する機能とを有し、前記第1位相変調器は、前記帰還参照光に対して位相変調をかける機能を有し、前記第2位相変調器は、前記信号光に対して位相変調をかける機能を有し、前記第1検出器は、波長1550nmの1光子を検出する機能を有し、前記第2検出器は、波長1550nmの1光子を検出する機能を有し、前記ファラデーミラーは、入射した送出光の偏光面を+90°回転して反射する機能を有することを特徴とする量子暗号システム。
- 前記第1検出器と前記第2検出器に、入射する単一光子を検出できる短い時間だけアバランシェフォトダイオードにブレークダウン電圧以上の逆バイアス電圧をかけ、トラップキャリアの緩和時間だけブレークダウン電圧以下の逆バイアス電圧をかけるゲート動作パッシブクエンチング回路を備えたことを特徴とする請求項1記載の量子暗号システム。
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