JP2003275850A - 冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石 - Google Patents

冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石

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JP2003275850A JP2003003777A JP2003003777A JP2003275850A JP 2003275850 A JP2003275850 A JP 2003275850A JP 2003003777 A JP2003003777 A JP 2003003777A JP 2003003777 A JP2003003777 A JP 2003003777A JP 2003275850 A JP2003275850 A JP 2003275850A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】磁気特性が優れ、信頼性に優れた磁石を提供す
ることができる冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末
およびボンド磁石を提供すること。 【解決手段】急冷薄帯製造装置1は、筒体2と、加熱用
のコイル4と、冷却ロール5とを備えている。筒体2の
下端には、磁石材料の溶湯6を射出するノズル3が形成
されている。冷却ロール5の周面53には、ガス抜き手
段が設けられている。急冷薄帯8は、ヘリウムガスのよ
うな不活性ガス(雰囲気ガス)中で、溶湯6をノズル3
から射出し、冷却ロール5の周面53に衝突させ、冷却
固化することにより製造される。この場合、冷却ロール
5の周面53とパドル7との間にガスが侵入するが、ガ
ス抜き手段により、このガスは、周面53とパドル7と
の間から排出される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷却ロール、薄帯
状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】磁石材料として、希土類元素を含む合金
で構成される希土類磁石材料は、高い磁気特性を有する
ため、モータ等に用いられた場合に、高性能を発揮す
る。
【0003】このような磁石材料は、例えば急冷薄帯製
造装置を用いた急冷法により製造される。以下、この製
造方法を説明する。
【0004】図20は、従来の磁石材料を単ロール法に
より製造する装置(急冷薄帯製造装置)における溶湯の
冷却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図で
ある。
【0005】同図に示すように、所定の合金組成の磁石
材料(以下「合金」と言う)を溶融し、その溶湯60を
図示しないノズルから射出し、ノズルに対して図20中
矢印A方向に回転している冷却ロール500の周面53
0に衝突させ、この周面530と接触させることにより
合金を急冷、凝固し、薄帯状(リボン状)の合金を連続
的に形成する。この薄帯状の合金は、急冷薄帯と呼ば
れ、速い冷却速度で凝固された結果、そのミクロ組織
は、非晶質相や微細結晶相からなる組織となっており、
そのまま、または熱処理を施すことにより、優れた磁気
特性を発揮する。なお、図20中、溶湯60の凝固界面
710を点線で示す。
【0006】ここで、希土類元素は、酸化され易く、酸
化されると磁気特性が低下するため、前記急冷薄帯80
の製造は、主として不活性ガス中で行われていた。
【0007】そのため、周面530と溶湯60のパドル
(湯溜り)70との間にガスが侵入し、急冷薄帯80の
ロール面(冷却ロール500の周面530と接触する
面)810にディンプル(凹部)9を生じることがあっ
た。この傾向は、冷却ロール500の周速度が大きくな
るほど顕著となり、生じるディンプルの面積も大きくな
る。
【0008】このディンプル9(特に、巨大ディンプ
ル)が生じると、ディンプル部分においては、ガスの介
在により冷却ロール500の周面530との接触不良が
生じ、冷却速度が低下して、急速な凝固が妨げられる。
そのため、ディンプル9が生じた部位では、合金の結晶
粒径が粗大化し、磁気特性が低下する。
【0009】このような低磁気特性の部分を含む急冷薄
帯を粉砕して得られる磁石粉末は、磁気特性のバラツキ
が大きくなる。したがって、このような磁石粉末を用い
て製造されたボンド磁石は、低い磁気特性しか得られ
ず、また、耐食性も低下する。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、磁気
特性が優れ、信頼性に優れた磁石を提供することができ
る冷却ロール、薄帯状磁石材料、磁石粉末およびボンド
磁石を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(25)の本発明により達成される。
【0012】(1) 磁石材料の溶湯をその周面に衝突
させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための
冷却ロールであって、冷却ロールは、ロール基材と、該
ロール基材の外周に設けられた表面層とを有し、前記表
面層がセラミックスで構成されたものであり、かつ、前
記表面層の周面上に、前記周面と前記溶湯のパドルとの
間に侵入したガスを排出するガス抜き手段を有するもの
であることを特徴とする冷却ロール。
【0013】(2) 磁石材料の溶湯をその周面に衝突
させ、冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための
冷却ロールであって、冷却ロールは、ロール基材と、該
ロール基材の外周に設けられた表面層とを有し、前記表
面層は、室温付近における熱膨張率が3.5〜18[×
10-6-1]の材料で構成されたものであり、かつ、前
記表面層の周面上に、前記周面と前記溶湯のパドルとの
間に侵入したガスを排出するガス抜き手段を有するもの
であることを特徴とする冷却ロール。
【0014】(3) 前記表面層は、セラミックスで構
成されたものである上記(2)に記載の冷却ロール。
【0015】(4) 前記表面層は、前記ロール基材の
構成材料の室温付近における熱伝導率より低い熱伝導率
を有する材料で構成されたものである上記(1)ないし
(3)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0016】(5) 前記表面層は、室温付近における
熱伝導率が80W・m-1・K-1以下の材料で構成された
ものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の
冷却ロール。
【0017】(6) 前記表面層の平均厚さは、0.5
〜50μmである上記(1)ないし(5)のいずれかに
記載の冷却ロール。
【0018】(7) 前記表面層は、その表面に機械加
工を行わないで形成されたものである上記(1)ないし
(6)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0019】(8) 前記周面の前記ガス抜き手段を除
く部分の表面粗さRaは、0.05〜5μmである上記
(1)ないし(7)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0020】(9) 前記ガス抜き手段は、少なくとも
1本の溝である上記(1)ないし(8)のいずれかに記
載の冷却ロール。
【0021】(10) 前記溝の平均幅は、0.5〜9
0μmである上記(9)に記載の冷却ロール。
【0022】(11) 前記溝の平均深さは、0.5〜
20μmである上記(9)または(10)に記載の冷却
ロール。
【0023】(12) 前記溝の長手方向と、冷却ロー
ルの回転方向とのなす角は、30°以下である上記
(9)ないし(11)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0024】(13) 前記溝が並設されており、その
平均ピッチは、0.5〜100μmである上記(9)な
いし(12)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0025】(14) 前記溝は、前記周面の縁部に開
口しているものである上記(9)ないし(13)のいず
れかに記載の冷却ロール。
【0026】(15) 前記周面上における前記溝の占
める投影面積の割合が10〜99.5%である上記
(9)ないし(14)のいずれかに記載の冷却ロール。
【0027】(16) 上記(1)ないし(15)のい
ずれかに記載の冷却ロールを用いて製造されたことを特
徴とする薄帯状磁石材料。
【0028】(17) 平均厚さが8〜50μmである
上記(16)に記載の薄帯状磁石材料。
【0029】(18) 上記(16)または(17)に
記載の薄帯状磁石材料を粉砕して得られたことを特徴と
する磁石粉末。
【0030】(19) 磁石粉末は、その製造過程また
は製造後少なくとも1回熱処理が施されたものである上
記(18)に記載の磁石粉末。
【0031】(20) 平均粒径が1〜300μmであ
る上記(18)または(19)に記載の磁石粉末。
【0032】(21) 磁石粉末は、ソフト磁性相とハ
ード磁性相とを有する複合組織で構成されるものである
上記(18)ないし(20)のいずれかに記載の磁石粉
末。
【0033】(22) 前記ハード磁性相および前記ソ
フト磁性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nm
である上記(21)に記載の磁石粉末。
【0034】(23) 上記(18)ないし(22)の
いずれかに記載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるこ
とを特徴とするボンド磁石。
【0035】(24) 室温での固有保磁力HcJが32
0〜1200kA/mである上記(23)に記載のボン
ド磁石。
【0036】(25) 最大磁気エネルギー積(BH)
maxが40kJ/m3以上である上記(23)または(2
4)に記載のボンド磁石。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の冷却ロール、薄帯
状磁石材料、磁石粉末およびボンド磁石の実施の形態に
ついて、詳細に説明する。
【0038】[冷却ロールの構造]図1は、本発明の冷
却ロールの第1実施形態と、その冷却ロールを用い、単
ロール法により薄帯状磁石材料(急冷薄帯)を製造する
装置(急冷薄帯製造装置)の構成例とを示す斜視図、図
2は、図1に示す冷却ロールの正面図、図3は、図1に
示す冷却ロールの拡大断面図である。
【0039】冷却ロール5の周面53には、周面53と
溶湯6のパドル(湯溜り)7との間に侵入したガスを排
出するガス抜き手段が設けられている。
【0040】ガス抜き手段により、周面53とパドル7
との間からガスが排出されると、周面53とパドル7と
の密着性が向上する(巨大ディンプルの発生が防止され
る)。これにより、パドル7の各部位における冷却速度
の差は小さくなる。このため、得られる急冷薄帯(薄帯
状磁石材料)8における結晶粒径のバラツキが小さくな
り、結果として、磁気特性のバラツキが小さい急冷薄帯
8が得られる。
【0041】図示の構成では、ガス抜き手段として、溝
54が形成されている。溝54は、冷却ロールの回転方
向に対し、ほぼ平行に形成されている。ガス抜き手段が
このような溝であると、周面53とパドル7との間から
溝54に送り込まれたガスが溝54の長手方向に沿って
移動するため、周面53とパドル7との間に侵入したガ
スの排出効率は、特に高く、周面53に対するパドル7
の密着性が向上する。
【0042】図示の構成では、溝54は複数本形成され
ているが、少なくとも1本形成されていればよい。
【0043】溝54の幅(周面53へ開口している部分
での幅)L1の平均値は、0.5〜90μmであるのが
好ましく、1〜50μmであるのがより好ましく、3〜
25μmであるのがさらに好ましい。溝54の幅L1
平均値が下限値未満であると、周面53とパドル7との
間に侵入したガスを十分に排出できない場合がある。一
方、溝54の幅L1の平均値が上限値を超えると、溶湯
6が溝54に入り込み、溝54がガス抜き手段として機
能しない場合がある。
【0044】溝54の深さ(最大深さ)L2の平均値
は、0.5〜20μmであるのが好ましく、1〜10μ
mであるのがより好ましい。溝54の深さL2の平均値
が下限値未満であると、周面53とパドル7との間に侵
入したガスを十分に排出できない場合がある。一方、溝
54の深さL2の平均値が上限値を超えると、溝部分を
流れるガス流の流速が増大するとともに、渦を伴う乱流
となり易くなり、急冷薄帯8の表面に巨大ディンプルが
発生し易くなる。
【0045】並設されている溝54のピッチL3の平均
値は、0.5〜100μmであるのが好ましく、3〜5
0μmであるのがより好ましい。溝54の平均ピッチが
このような範囲の値であると、溝54がガス抜き手段と
して十分に機能し、かつパドル7との接触部分−非接触
部分の間隔が十分小さくなる。その結果、パドル7にお
いて、周面53と接触している部分と接触していない部
分との冷却速度の差は、十分小さくなり、得られる急冷
薄帯8の結晶粒径、磁気特性のバラツキは小さくなる。
【0046】周面53上における溝54の占める投影面
積(周面に投影したときの面積)の割合は、10〜9
9.5%であるのが好ましく、30〜95%であるのが
より好ましい。周面53上における溝54の占める投影
面積の割合が下限値未満であると、急冷薄帯8のロール
面81付近では、冷却速度が大きくなり非晶質化しやす
くなるのに対し、フリー面82付近ではロール面81付
近に比べて冷却速度が遅いため結晶粒径の粗大化を招
き、結果として磁気特性が低下する場合がある。一方、
周面53上における溝54の占める投影面積の割合が上
限値を超えると、冷却速度が小さくなり、結晶粒径の粗
大化を招き、結果として磁気特性が低下する場合があ
る。
【0047】溝54の形成方法は、特に限定されない
が、例えば、切削、転写(圧転)、研削、ブラスト処理
等の各種機械加工、レーザー加工、放電加工、化学エッ
チング等が挙げられる。その中でも、溝の幅、深さ、並
設された溝のピッチ等の精度を高くすることが比較的容
易である点で、機械加工、特に、切削であるのが好まし
い。
【0048】[表面粗さ]周面53の溝54を除く部分
の表面粗さRaは、特に限定されないが、0.05〜5
μmであるのが好ましく、0.07〜2μmであるのが
より好ましい。表面粗さRaが下限値未満であると、冷
却ロール5とパドル7との密着性が低下し、巨大ディン
プルの発生を十分に抑制できない可能性がある。一方、
表面粗さRaが上限値を超えると、急冷薄帯8の厚さの
バラツキが顕著となり、結晶粒径のバラツキ、磁気特性
のバラツキが大きくなる可能性がある。
【0049】[冷却ロールの材質]冷却ロール5は、ロ
ール基材51と、冷却ロール5の周面53を形成する表
面層52とで構成されている。
【0050】表面層52は、ロール基材51と同じ材質
で一体構成されていてもよいが、ロール基材51の構成
材料より熱伝導率の小さい材質で構成されているのが好
ましい。
【0051】ロール基材51の構成材料は、特に限定さ
れないが、表面層52の熱をより速く放散できるよう
に、例えば銅または銅系合金のような熱伝導率の大きい
金属材料で構成されているのが好ましい。
【0052】表面層52の構成材料の室温付近における
熱伝導率は、特に限定されないが、例えば、80W・m
-1・K-1以下であるのが好ましく、3〜60W・m-1
-1であるのがより好ましく、5〜40W・m-1・K-1
であるのがさらに好ましい。
【0053】冷却ロール5が、このような熱伝導率を有
する表面層52とロール基材51とで構成されることに
より、適度な冷却速度で溶湯6を急冷することが可能と
なる。また、ロール面81(冷却ロールの周面と接触す
る側の面)付近とフリー面82(ロール面と反対側の
面)付近とでの冷却速度の差が小さくなる。したがっ
て、得られる急冷薄帯8は、各部位における結晶粒径の
バラツキが小さく、磁気特性に優れたものとなる。
【0054】このような熱伝導率を有する材料として
は、例えば、Zr、Sb、Ti、Ta、Pd、Pt等、
またはこれらを含む合金等の金属材料やこれらの酸化
物、セラミックス等が挙げられる。セラミックスとして
は、例えば、Al23、SiO2、TiO2、Ti23
ZrO2、Y23、チタン酸バリウム、チタン酸ストロ
ンチウム等の酸化物系セラミックス、AlN、Si
34、TiN、BN、ZrN、HfN、VN、TaN、
NbN、CrN、Cr2N等の窒化物系セラミックス、
グラファイト、SiC、ZrC、Al43、CaC2
WC、TiC、HfC、VC、TaC、NbC等の炭化
物系のセラミックス、あるいは、これらのうちの2以上
を任意に組合せた複合セラミックスが挙げられる。この
中でも特に、窒化物系セラミックスを含むものであるの
が好ましい。
【0055】また、従来、冷却ロールの周面を構成する
材料として用いられてきたもの(Cu、Crなど)に比
べ、このようなセラミックスは、高い硬度を有し、耐久
性(耐摩耗性)に優れている。このため、冷却ロール5
を繰り返し使用しても、周面53の形状が維持され、後
述するガス抜き手段の効果も劣化しにくい。
【0056】ところで、前述したロール基材51の構成
材料は、通常、比較的高い熱膨張率を有している。その
ため、表面層52の構成材料の熱膨張率は、ロール基材
51の熱膨張率に近い値であるのが好ましい。表面層5
2の構成材料の室温付近での熱膨張率(線膨張率α)
は、例えば、3.5〜18[×10-6-1]程度である
のが好ましく、6〜12[×10-6-1]程度であるの
がより好ましい。表面層52の構成材料の室温付近にお
ける熱膨張率(以下、単に「熱膨張率」とも言う)がこ
のような範囲の値であると、ロール基材51と表面層5
2との高い密着性を維持することができ、表面層52の
剥離をより効果的に防止することができる。
【0057】また、表面層52は、単層のみならず、例
えば組成の異なる複数の層の積層体であってもよい。例
えば、表面層52は、前述した金属材料、セラミックス
等で構成された層が2層以上積層されたものであっても
よい。このような表面層52としては、例えば、ロール
基材51側から金属層(下地層)/セラミックス層が積
層された2層積層体で構成されたものが挙げられる。こ
のような積層体の場合、隣接する層同士は、密着性の高
いものが好ましく、その例としては、隣接する層同士に
同一の元素が含まれているものが挙げられる。
【0058】また、表面層52が複数の層の積層体であ
る場合、少なくとも、その最外層が前述した範囲の熱伝
導率を有する材料で構成されたものであるのが好まし
い。
【0059】また、表面層52が単層で構成されている
場合でも、その組成は、厚さ方向に均一なものに限ら
ず、例えば、含有成分が厚さ方向に順次変化するもの
(傾斜材料)であってもよい。
【0060】表面層52の平均厚さ(前記積層体の場合
はその合計厚さ)は、特に限定されないが、0.5〜5
0μmであることが好ましく、1〜20μmであること
がより好ましい。
【0061】表面層52の平均厚さが下限値未満である
と、次のような問題を生じる場合がある。すなわち、表
面層52の材質によっては、冷却能が大きすぎて、厚さ
がかなり大きい急冷薄帯8でもロール面81付近では冷
却速度が大きく、非晶質になり易くなる。一方、フリー
面82付近では急冷薄帯8の熱伝導率が比較的小さいの
で急冷薄帯8の厚さが大きいほど冷却速度が小さくな
り、その結果、結晶粒径の粗大化が起こり易くなる。す
なわち、フリー面82付近では粗大粒、ロール面81付
近では非晶質といった急冷薄帯となり易くなり、満足な
磁気特性が得られない場合がある。また、フリー面82
付近での結晶粒径を小さくするために、例えば、冷却ロ
ール5の周速度を大きくして、急冷薄帯8の厚さを小さ
くしたとしても、ロール面81付近での非晶質がよりラ
ンダムなものとなり、急冷薄帯8の作成後に、熱処理を
施したとしても、十分な磁気特性が得られない場合があ
る。
【0062】また、表面層52の平均厚さが上限値を超
えると、急冷速度が遅く、結晶粒径の粗大化が起こり、
結果として磁気特性が低下する場合がある。
【0063】ロール基材51の外周面上に表面層52が
設けられる場合(表面層52がロール基材51と一体形
成されていない場合)、溝54は、表面層に直接、前述
した方法により形成されたものであっても、そうでなく
てもよい。すなわち、図4に示すように、表面層52を
設けた後、その表面層に前述した方法により溝54を形
成してもよいが、図5に示すように、ロール基材51の
外周面上に、前述した方法により溝を形成した後、表面
層52を形成してもよい。この場合、表面層52の厚さ
をロール基材51に形成された溝の深さに比べて小さく
することにより、結果として、表面層52の表面に機械
加工を施すことなく、周面53上にガス抜き手段である
溝54が形成される。この場合、表面層52の表面に機
械加工等が施されないため、その後、研磨等が施されな
くても周面53の表面粗さRaを比較的小さくすること
ができる。
【0064】なお、図3(後述する図10、図12、図
14、図16、図17も同様)は、冷却ロールの周面付
近の断面形状を説明するための図であり、ロール基材と
表面層との境界は、省略して示した。
【0065】表面層52の形成方法は、特に限定されな
いが、熱CVD、プラズマCVD、レーザーCVDなど
の化学蒸着法(CVD)または真空蒸着、スパッタリン
グ、イオンプレーティングなどの物理蒸着法(PVD)
が好ましい。これらの方法を用いた場合、比較的容易
に、表面層の厚さを均一にすることができるため、表面
層52の形成後、その表面に機械加工を行わなくてよ
い。なお、表面層52は、その他、電解メッキ、浸漬メ
ッキ、無電解メッキ、溶射等の方法で形成されてもよ
い。この中でも、溶射により表面層52を形成した場
合、ロール基材51と表面層52との密着性(接着強
度)は、特に優れたものとなる。
【0066】また、表面層52をロール基材51の外周
に形成するのに先立ち、ロール基材51の外表面に対し
て、アルカリ洗浄、酸洗浄、有機溶剤洗浄等の洗浄処理
や、ブラスト処理、エッチング、メッキ層の形成等の下
地処理を施してもよい。これにより、表面層52の形成
後におけるロール基材51と表面層52との密着性が向
上する。また、前述したような下地処理を施すことによ
り、均一かつ緻密な表面層52を形成することができる
ため、得られる冷却ロール5は、各部位における熱伝導
率のバラツキが特に小さいものとなる。
【0067】[磁石材料の合金組成]本発明における薄
帯状磁石材料や磁石粉末としては、優れた磁気特性を有
するものが好ましく、このようなものとしては、R(た
だし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1
種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TM
は、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)
とを含む合金が挙げられ、次の[1]〜[5]の組成の
ものが好ましい。
【0068】[1] Smを主とする希土類元素と、C
oを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、
Sm−Co系合金と言う)。
【0069】[2] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷
移金属(TM)と、Bとを基本成分とするもの(以下、
R−TM−B系合金と言う)。
【0070】[3] Smを主とする希土類元素と、F
eを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを
基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言
う)。
【0071】[4] R(ただし、Rは、Yを含む希土
類元素のうち少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを
基本成分とし、ソフト磁性相とハード磁性相とが相隣接
して(粒界相を介して隣接する場合も含む)存在する複
合組織(特に、ナノコンポジット組織と呼ばれるものが
ある)を有するもの。
【0072】[5] 前記[1]〜[4]の組成のもの
のうち、少なくとも2種を混合したもの。この場合、混
合する各磁石粉末の利点を併有することができ、より優
れた磁気特性を容易に得ることができる。
【0073】Sm−Co系合金の代表的なものとして
は、SmCo5、Sm2TM17(ただしTMは、遷移金
属)が挙げられる。
【0074】R−Fe−B系合金の代表的なものとして
は、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、N
d−Pr−Fe−B系合金、Nd−Dy−Fe−B系合
金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−
Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、N
i等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
【0075】Sm−Fe−N系合金の代表的なものとし
ては、Sm2Fe17合金を窒化して作製したSm2Fe17
3、TbCu7型相を主相とするSm−Zr−Fe−C
o−N系合金が挙げられる。ただし、これらSm−Fe
−N系合金の場合、Nは、急冷薄帯を作製した後、得ら
れた急冷薄帯に適切な熱処理を施し、窒化することによ
り格子間原子として導入されるのが一般的である。
【0076】前記希土類元素としては、Y、La、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、ミッシュメタルが
挙げられ、これらを1種または2種以上含むことができ
る。また、前記遷移金属としては、Fe、Co、Ni等
が挙げられ、これらを1種または2種以上含むことがで
きる。
【0077】また、保磁力、最大磁気エネルギー積等の
磁気特性を向上させるため、あるいは、耐熱性、耐食性
を向上させるために、磁石材料中には、必要に応じ、A
l、Cu、Ga、Si、Ti、V、Ta、Zr、Nb、
Mo、Hf、Ag、Zn、P、Ge、Cr、W等を含有
することもできる。
【0078】前記複合組織(ナノコンポジット組織)
は、ソフト磁性相10とハード磁性相11とが、例え
ば、図6、図7または図8に示すようなパターン(モデ
ル)で存在しており、各相の厚さや粒径がナノメーター
レベルで存在している。そして、ソフト磁性相10とハ
ード磁性相11とが相隣接し(粒界相を介して隣接する
場合も含む)、磁気的な交換相互作用を生じる。
【0079】ソフト磁性相の磁化は、外部磁界の作用に
より容易にその向きを変えるので、ハード磁性相に混在
すると、系全体の磁化曲線はB−H図(J−H図)の第
二象現で段のある「へび型曲線」となる。しかし、ソフ
ト磁性相のサイズが数10nm以下と十分小さい場合に
は、ソフト磁性体の磁化が周囲のハード磁性体の磁化と
の結合によって十分強く拘束され、系全体がハード磁性
体として振舞うようになる。
【0080】このような複合組織(ナノコンポジット組
織)を持つ磁石は、主に、以下に挙げる特徴1)〜5)
を有している。
【0081】1)B−H図(J−H図)の第二象現で、
磁化が可逆的にスプリングバックする(この意味で「ス
プリング磁石」とも言う)。 2)着磁性が良く、比較的低い磁場で着磁できる。 3)磁気特性の温度依存性がハード磁性相単独の場合に
比べて小さい。 4)磁気特性の経時変化が小さい。 5)微粉砕しても磁気特性が劣化しない。
【0082】このように、複合組織で構成される磁石
は、優れた磁気特性を有する。したがって、磁石粉末
は、このような複合組織を有するものであるのが特に好
ましい。
【0083】なお、図6〜図8に示すパターンは、一例
であって、これらに限られるものではない。
【0084】[薄帯状磁石材料の製造]次に、前述した
冷却ロール5を用いた薄帯状磁石材料(急冷薄帯)の製
造について説明する。
【0085】薄帯状磁石材料は、磁石材料の溶湯を冷却
ロールの周面に衝突させ、冷却固化することにより製造
される。以下、その一例について説明する。
【0086】図1に示すように、急冷薄帯製造装置1
は、磁石材料を収納し得る筒体2と、該筒体2に対し図
中矢印A方向に回転する冷却ロール5とを備えている。
筒体2の下端には、磁石材料(合金)の溶湯6を射出す
るノズル(オリフィス)3が形成されている。
【0087】筒体2のノズル3近傍の外周には、筒体2
内の磁石材料を加熱(誘導加熱)するための加熱用のコ
イル4が配置されている。
【0088】このような急冷薄帯製造装置1は、チャン
バー(図示せず)内に設置され、該チャンバー内に不活
性ガスやその他の雰囲気ガスが充填された状態で作動す
る。特に、急冷薄帯8の酸化を防止するために、雰囲気
ガスは、不活性ガスであるのが好ましい。不活性ガスと
しては、例えばアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス
等が挙げられる。
【0089】雰囲気ガスの圧力は、特に限定されない
が、1〜760Torrであるのが好ましい。
【0090】筒体2内の溶湯6の液面には、チャンバー
の内圧より高い所定の圧力がかけられている。溶湯6
は、この筒体2内の溶湯6の液面に作用する圧力と筒体
2内における液面の高さに比例してかかる圧力の和と、
チャンバー内の雰囲気ガスの圧力との差圧により、ノズ
ル3から射出する。
【0091】溶湯噴射圧(筒体2内の溶湯6の液面に作
用する圧力と筒体2内における液面の高さに比例してか
かる圧力の和と、チャンバー内の雰囲気ガスの圧力との
差圧)は、特に限定されないが、10〜100kPaで
あるのが好ましい。
【0092】急冷薄帯製造装置1では、筒体2内に磁石
材料を入れ、コイル4により加熱して溶融し、その溶湯
6をノズル3から射出すると、図1に示すように、溶湯
6は、冷却ロール5の周面53に衝突し、パドル(湯溜
り)7を形成した後、回転する冷却ロール5の周面53
に引きずられつつ急速に冷却されて凝固し、急冷薄帯8
が連続的または断続的に形成される。このとき、パドル
7と周面53との間に侵入したガスは、溝54(ガス抜
き手段)を介して外部に排出される。このようにして形
成された急冷薄帯8は、やがて、そのロール面81が周
面53から離れ、図1中の矢印B方向に進行する。
【0093】このように、周面53上にガス抜き手段が
設けられることにより、周面53とパドル7との密着性
が向上し(巨大ディンプルの発生が防止され)、パドル
7の不均一な冷却が防止される。その結果、結晶粒径の
バラツキの小さい、高い磁気特性を有する急冷薄帯8が
得られる。
【0094】また、急冷薄帯8を実際に製造するに際し
ては、必ずしもノズル3を冷却ロール5の回転軸50の
真上に設置しなくてもよい。
【0095】冷却ロール5の周速度は、合金溶湯の組
成、表面層52の構成材料(組成)、周面53の表面性
状(特に、周面53の溶湯6に対する濡れ性)等により
その好適な範囲が異なるが、磁気特性向上のために、通
常、5〜60m/秒であるのが好ましく、10〜40m
/秒であるのがより好ましい。冷却ロール5の周速度が
下限値未満であると、溶湯6の冷却速度が低下し、結晶
粒径が増大する傾向を示し、磁気特性が低下する場合が
ある。一方、冷却ロール5の周速度が上限値を超える
と、逆に冷却速度が大きくなり、非晶質組織が占める割
合が大きくなり、その後に、後述する熱処理を施したと
しても、磁気特性が十分に向上しない場合がある。
【0096】以上のようにして得られた急冷薄帯8は、
その幅wおよび厚さができるだけ均一であるものが好ま
しい。この場合、急冷薄帯8の平均厚さtは、8〜50
μm程度であるのが好ましく、10〜40μm程度であ
るのがより好ましい。平均厚さtが下限値未満である
と、非晶質組織が占める割合が大きくなり、その後に、
後述する熱処理を施したとしても磁気特性が十分に向上
しない場合がある。単位時間当たりの生産性も低下す
る。一方、平均厚さtが上限値を超えると、フリー面8
2側の結晶粒径が粗大化する傾向を示すため、磁気特性
が低下する場合がある。
【0097】なお、得られた急冷薄帯8に対しては、例
えば、非晶質組織(アモルファス組織)の再結晶化の促
進、組織の均質化等を目的として、熱処理を施すことも
できる。この熱処理の条件としては、例えば、400〜
900℃で、0.5〜300分程度とすることができ
る。
【0098】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で
行うのが好ましい。
【0099】以上のようにして得られた急冷薄帯(薄帯
状磁石材料)8は、微細結晶組織、もしくは微細結晶が
非晶質組織中に含まれるような組織となり、優れた磁気
特性が得られる。
【0100】なお、以上では、急冷法として、単ロール
法を例に説明したが、双ロール法を採用してもよい。こ
のような急冷法は、金属組織(結晶粒)を微細化するこ
とができるので、ボンド磁石の磁石特性、特に保磁力等
を向上させるのに有効である。
【0101】[磁石粉末の製造]以上のようにして製造
された急冷薄帯8を粉砕することにより、本発明の磁石
粉末が得られる。
【0102】粉砕の方法は、特に限定されず、例えばボ
ールミル、振動ミル、ジェットミル、ピンミル等の各種
粉砕装置、破砕装置を用いて行うことができる。この場
合、粉砕は、酸化を防止するために、真空または減圧状
態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは
窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス
中のような、非酸化性雰囲気中で行うこともできる。
【0103】磁石粉末の平均粒径は、特に限定されない
が、後述するボンド磁石(希土類ボンド磁石)を製造す
るためのものの場合、磁石粉末の酸化防止と、粉砕によ
る磁気特性劣化の防止とを考慮して、1〜300μmで
あるのが好ましく、5〜150μmであるのがより好ま
しい。
【0104】また、ボンド磁石の成形時のより良好な成
形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分
散されている(バラツキがある)のが好ましい。これに
より、得られたボンド磁石の空孔率を低減することがで
き、その結果、ボンド磁石中の磁石粉末の含有量を同じ
としたときに、ボンド磁石の密度や機械的強度をより高
めることができ、磁気特性をさらに向上することができ
る。
【0105】なお、得られた磁石粉末に対しては、例え
ば、粉砕により導入されたひずみの影響の除去、結晶粒
径の制御を目的として、熱処理を施すこともできる。こ
の熱処理の条件としては、例えば、350〜850℃
で、0.5〜300分程度とすることができる。
【0106】また、この熱処理は、酸化を防止するため
に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×1
-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウ
ムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で
行うのが好ましい。
【0107】このような磁石粉末を用いてボンド磁石を
製造した場合、該磁石粉末は、結合樹脂との結合性(結
合樹脂の濡れ性)が良く、そのため、このボンド磁石
は、機械的強度が高く、熱安定性(耐熱性)、耐食性が
優れたものとなる。従って、当該磁石粉末は、ボンド磁
石の製造に適しており、製造されたボンド磁石は、信頼
性の高いものとなる。
【0108】以上のような磁石粉末は、平均結晶粒径が
500nm以下であるのが好ましく、200nm以下で
あるのがより好ましく、10〜120nm程度がさらに
好ましい。平均結晶粒径が500nmを超えると、磁気
特性、特に保磁力および角型性の向上が十分に図れない
場合がある。
【0109】特に、磁石材料が前記[4]のような複合
組織を有するものである場合、平均結晶粒径は、1〜1
00nmであるのが好ましく、5〜50nmであるのが
より好ましい。平均結晶粒径がこのような範囲の大きさ
であると、ソフト磁性相10とハード磁性相11との間
で、より効果的に磁気的な交換相互作用を生じることと
なり、顕著な磁気特性の向上が認められる。
【0110】[ボンド磁石およびその製造]次に、本発
明のボンド磁石について説明する。
【0111】本発明のボンド磁石は、好ましくは、前述
の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるものである。
【0112】結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑
性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
【0113】熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミ
ド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナ
イロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロ
ン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可
塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマ
ー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファ
イド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸
ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィ
ン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポ
リエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレー
ト等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエー
テルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、
またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマ
ーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種
以上を混合して用いることができる。
【0114】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高いことから、ポリアミド、耐熱性向
上の点から、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイ
ドを主とするものが好ましい。また、これらの熱可塑性
樹脂は、磁石粉末との混練性にも優れている。
【0115】このような熱可塑性樹脂は、その種類、共
重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱
性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の
選択が可能となるという利点がある。
【0116】一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、ビ
スフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン
樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリ
イミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙
げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して
用いることができる。
【0117】これらのうちでも、成形性が特に優れてお
り、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、
エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリ
コーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、
混練の均一性にも優れている。
【0118】なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)
は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでも
よい。
【0119】このような本発明のボンド磁石は、例えば
次のようにして製造される。磁石粉末と、結合樹脂と、
必要に応じ添加剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを混合、
混練(例えば、温間混練)してボンド磁石用組成物(コ
ンパウンド)を製造し、このボンド磁石用組成物を用い
て、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、射出成形等の
成形方法により、無磁場中で所望の磁石形状に成形す
る。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形後、加熱
等によりそれを硬化する。
【0120】ここで、前記3種の成形方法のうち、押出
成形および射出成形(特に、射出成形)は、形状選択の
自由度が広く、生産性が高い等の利点があるが、これら
の成形方法では、良好な成形性を得るために、成形機内
におけるコンパウンドの十分な流動性を確保しなければ
ならないため、圧縮成形に比べて、磁石粉末の含有量を
多くすること、すなわちボンド磁石を高密度化すること
ができない。しかしながら、本発明では、後述するよう
に、高い磁束密度が得られ、そのため、ボンド磁石を高
密度化しなくても優れた磁気特性が得られるので、押出
成形、射出成形により製造されるボンド磁石にもその利
点を享受することができる。
【0121】ボンド磁石中の磁石粉末の含有量(含有
率)は、特に限定されず、通常は、成形方法や、成形性
と高磁気特性との両立を考慮して決定される。具体的に
は、75〜99.5wt%程度であるのが好ましく、8
5〜97.5wt%程度であるのがより好ましい。
【0122】特に、ボンド磁石が圧縮成形により製造さ
れたものの場合には、磁石粉末の含有量は、90〜9
9.5wt%程度であるのが好ましく、93〜98.5
wt%程度であるのがより好ましい。
【0123】また、ボンド磁石が押出成形または射出成
形により製造されたものの場合には、磁石粉末の含有量
は、75〜98wt%程度であるのが好ましく、85〜
97wt%程度であるのがより好ましい。
【0124】ボンド磁石の密度ρは、それに含まれる磁
石粉末の比重、磁石粉末の含有量、空孔率等の要因によ
り決定される。本発明のボンド磁石において、その密度
ρは特に限定されないが、4.5〜6.6Mg/m3
度であるのが好ましく、5.5〜6.4Mg/m3程度
であるのがより好ましい。
【0125】本発明では、磁石粉末の残留磁束密度、保
磁力が大きいので、ボンド磁石に成形した場合に、磁石
粉末の含有量が多い場合はもちろんのこと、含有量が比
較的少ない場合でも、優れた磁気特性(特に、高い最大
磁気エネルギー積(BH)ma x)が得られる。
【0126】本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に
限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱
状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾
曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大き
さも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさ
のものが可能である。特に、小型化、超小型化された磁
石に有利であることは、本明細書中で度々述べている通
りである。
【0127】本発明のボンド磁石は、保磁力(室温での
固有保磁力)HcJが320〜1200kA/mであるの
が好ましく、400〜800kA/mがより好ましい。
保磁力が前記下限値未満では、逆磁場がかかったときの
減磁が顕著になり、また、高温における耐熱性が劣る。
また、保磁力が前記上限値を超えると、着磁性が低下す
る。従って、保磁力HcJを上記範囲とすることにより、
ボンド磁石(特に、円筒状磁石)に多極着磁等をするよ
うな場合に、十分な着磁磁場が得られないときでも、良
好な着磁が可能となり、十分な磁束密度が得られ、高性
能なボンド磁石を提供することができる。
【0128】本発明のボンド磁石は、最大磁気エネルギ
ー積(BH)maxが40kJ/m3以上であるのが好まし
く、50kJ/m3以上であるのがより好ましく、70
〜120kJ/m3であるのがさらに好ましい。最大磁
気エネルギー積(BH)maxが40kJ/m3未満である
と、モータ用に用いた場合、その種類、構造によって
は、十分なトルクが得られない。
【0129】以上説明したように、本実施形態の冷却ロ
ール5によれば、ガス抜き手段として溝54が設けられ
ているため、周面53とパドル7との間に侵入したガス
を排出することができる。これにより、パドル7の浮き
上がりが防止され、周面53とパドル7との密着性が向
上する。その結果、冷却速度のバラツキが小さくなり、
得られる急冷薄帯8においては、高い磁気特性が安定し
て得られる。
【0130】したがって、前記急冷薄帯8から得られる
ボンド磁石は、優れた磁気特性を有している。また、ボ
ンド磁石の製造に際し、高密度化を追求しなくても高い
磁気特性を得ることができるため、成形性、寸法精度、
機械的強度、耐食性、耐熱性等の向上を図ることができ
る。
【0131】次に、本発明の冷却ロール5の第2実施形
態について、説明する。図9は、本発明の冷却ロールの
第2実施形態を示す正面図、図10は、図9に示す冷却
ロールの拡大断面図である。以下、第2実施形態の冷却
ロールについて、前記第1実施形態との相違点を中心に
説明し、同様の事項の説明は省略する。
【0132】図9に示すように、溝54は、冷却ロール
5の回転軸50を中心とする螺旋状に形成されている。
溝54がこのような形状であると、比較的容易に、周面
53全体にわたり溝54を形成することができる。例え
ば、冷却ロール5を一定速度で回転させておき、旋盤等
の切削工具を回転軸50に対して平行に、一定速度で移
動させながら、冷却ロール5の外周部を切削することに
よりこのような溝54を形成することができる。
【0133】なお、螺旋状の溝54は、1条(1本)で
あっても、2条(2本)以上であってもよい。
【0134】溝54の長手方向と、冷却ロール5の回転
方向とのなす角θ(絶対値)は、30°以下であるのが
好ましく、20°以下であるのがより好ましい。θが3
0°以下であると、冷却ロール5のあらゆる周速度にお
いて、周面53とパドル7との間に侵入したガスを効率
よく排出することができる。
【0135】周面53上の各部位において、θの値は、
一定であっても、一定でなくてもよい。また、溝54を
2条以上有する場合、それぞれの溝54について、θ
は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0136】溝54は、周面53の縁部55において、
開口部56で開口している。これにより、周面53とパ
ドル7との間から溝54に排出されたガスがこの開口部
56から冷却ロール5の側方へ排出されるため、排出さ
れたガスが再び周面53とパドル7との間に侵入するの
を効果的に防止することができる。図示の構成では、溝
54は、両縁部に開口しているが、一方の縁部にのみ開
口していてもよい。
【0137】次に、本発明の冷却ロール5の第3実施形
態について、説明する。図11は、本発明の冷却ロール
の第3実施形態を示す正面図、図12は、図11に示す
冷却ロールの拡大断面図である。以下、第3実施形態の
冷却ロールについて、前記第1実施形態、第2実施形態
との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略す
る。
【0138】図11に示すように、周面53上には、螺
旋の回転方向が互いに逆向きである少なくとも2本の溝
54が形成されている。これらの溝54は、多点で交差
している。
【0139】このように、螺旋の回転方向が逆向きであ
る溝54が形成されることにより、製造された急冷薄帯
8が右巻きの溝から受ける横方向の力と左巻きの溝から
受ける横方向の力とが相殺され、急冷薄帯8の図11中
の横方向の移動が抑制され、進行方向が安定する。
【0140】また、図11中、θ1、θ2で示すそれぞれ
の回転方向の溝54の長手方向と冷却ロール5の回転方
向とのなす角(絶対値)は、前述したθと同様な範囲の
値であるのが好ましい。
【0141】次に、本発明の冷却ロール5の第4実施形
態について、説明する。図13は、本発明の冷却ロール
の第4実施形態を示す正面図、図14は、図13に示す
冷却ロールの拡大断面図である。以下、第4実施形態の
冷却ロールについて、前記第1実施形態〜第3実施形態
との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明は省略す
る。
【0142】図13に示すように、複数の溝54が、冷
却ロール5の周面の幅方向のほぼ中央から両縁部55方
向に、ハの字状に形成されている。
【0143】このような溝54が形成された冷却ロール
5を用いた場合、その回転方向との組み合わせにより、
周面53とパドル7との間に侵入したガスをより一層高
い効率で排出することができる。
【0144】また、このようなパターンの溝が形成され
た場合、冷却ロール5の回転に伴って生じる、図13
中、左右の両溝54からの力がつりあうことにより、冷
却ロール5の幅方向のほぼ中央に急冷薄帯8がよせられ
るため、急冷薄帯8の進行方向が安定する。
【0145】なお、本発明では、ガス抜き手段の形状等
の諸条件は、前述した第1実施形態〜第4実施形態に限
定されるものではない。
【0146】例えば、溝54は、図15に示すように間
欠的に形成されたものであってもよい。また、溝54の
断面形状は、特に限定されず、例えば、図16、図17
に示すようなものであってもよい。
【0147】また、ガス抜き手段は、前述したような溝
に限らず、周面とパドルとの間に侵入したガスを排出す
る機能を有するものであればいかなるものでもよい。ガ
ス抜き手段としては、この他、例えば、図18、図19
に示すような空孔等であってもよい。ガス抜き手段が空
孔である場合、これらは、それぞれが独立しているもの
(独立孔)であっても、連続しているもの(連続孔)で
あってもよいが、ガスの排出効率の点から、連続孔であ
るのが好ましい。
【0148】これらの図に示す冷却ロール5でも、前述
した第1実施形態〜第4実施形態の冷却ロール5と同様
の効果が得られる。
【0149】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について説明す
る。
【0150】(実施例1)図1〜図3に示す周面にガス
抜き手段を有する冷却ロールを製造し、この冷却ロール
を備えた図1に示す構成の急冷薄帯製造装置を用意し
た。
【0151】冷却ロールは、以下のようにして製造し
た。まず、銅(20℃における熱伝導率:395W・m
-1・K-1、20℃における熱膨張率:16.5×10-6
-1)製のロール基材(直径200mm、幅30mm)
を用意し、その周面に切削加工を施し、ほぼ鏡面(表面
粗さRa0.07μm)とした。
【0152】その後、さらに、切削加工を施し、ロール
基材の回転方向に対し、ほぼ平行な溝を形成した。
【0153】このロール基材の外周面に、セラミックス
であるZrC(20℃における熱伝導率:20.6W・
-1・K-1、20℃における熱膨張率:7.0×10-6
-1)の表面層をイオンプレーティングにより形成し、
図1〜図3に示す冷却ロールを得た。
【0154】このようにして得られた冷却ロール5を備
えた急冷薄帯製造装置1を用いて、以下に述べるような
方法で合金組成が(Nd0.75Pr0.20Dy0.059.1
balCo8.55.5で表される急冷薄帯を製造した。
【0155】まず、Nd、Pr、Dy、Fe、Co、B
の各原料を秤量して母合金インゴットを鋳造した。
【0156】急冷薄帯製造装置1において、底部にノズ
ル(円孔オリフィス)3を設けた石英管内に前記母合金
インゴットを入れた。急冷薄帯製造装置1が収納されて
いるチャンバー内を脱気した後、不活性ガス(ヘリウム
ガス)を導入し、所望の温度および圧力の雰囲気とし
た。
【0157】その後、石英管内の母合金インゴットを高
周波誘導加熱により溶解し、さらに、冷却ロール5の周
速度を27m/秒とし、溶湯6の噴射圧(石英管の内圧
と筒体2内における液面の高さに比例してかかる圧力の
和と、雰囲気圧との差圧)を40kPa、雰囲気ガスの
圧力を60kPaとしたうえで、溶湯6を冷却ロール5
の回転軸50のほぼ真上から冷却ロール5の頂部の周面
53に向けて噴射し、急冷薄帯8を連続的に作製した。
【0158】(実施例2〜7)溝の形状を図9、図10
に示すようなものとした以外は実施例1と同様にして冷
却ロールを製造した。このとき、溝の平均幅、平均深
さ、並設された溝の平均ピッチ、溝の長手方向と冷却ロ
ールの回転方向とのなす角θを種々変化させて、6種の
冷却ロールを製造した。なお、いずれも、3本の切削工
具を等間隔に設置した旋盤を用いて、併設された溝のピ
ッチが周面上の各部位において、ほぼ一定となるように
3条の溝を形成した。実施例1で用いた急冷薄帯製造装
置の冷却ロールをこれらの冷却ロールに順次交換し、実
施例1と同様にして急冷薄帯を製造した。
【0159】(実施例8)溝の形状を図11、図12に
示すようなものとした以外は実施例2と同様にして冷却
ロールを製造し、急冷薄帯製造装置の冷却ロールをこの
冷却ロールに交換して、実施例1と同様にして急冷薄帯
を製造した。
【0160】(実施例9)溝の形状を図13、図14に
示すようなものとした以外は実施例1と同様にして冷却
ロールを製造し、急冷薄帯製造装置の冷却ロールをこの
冷却ロールに交換して、実施例1と同様にして急冷薄帯
を製造した。
【0161】(比較例)ロール基材の外周を切削加工に
よりほぼ鏡面とした後、溝を設けずに、そのまま表面層
を形成したものを製造した以外は、実施例1と同様にし
て冷却ロールを製造し、急冷薄帯製造装置の冷却ロール
をこの冷却ロールに交換して、実施例1と同様にして急
冷薄帯を製造した。
【0162】前記実施例1〜9および比較例の各冷却ロ
ールの表面層の厚さは、いずれも、7μmであった。な
お、表面層の形成後、該表面層に対し、機械加工は施さ
なかった。各冷却ロールについて、溝の幅L1(平均
値)、深さL2(平均値)、並設された溝のピッチL
3(平均値)、溝の長手方向と冷却ロールの回転方向と
のなす角θ、冷却ロールの周面上における溝の占める投
影面積の割合、周面の溝を除く部分の表面粗さRaの測
定値を表1に示す。
【0163】
【表1】
【0164】前記実施例1〜9および比較例の急冷薄帯
に対し、それぞれ、下記およびの評価を行った。
【0165】急冷薄帯の磁気特性 それぞれの急冷薄帯について、長さ約5cmの急冷薄帯
を取り出し、さらにそこから長さ約7mmのサンプルを
5サンプル連続して作製し、それぞれのサンプルについ
て平均厚さtおよび磁気特性を測定した。
【0166】平均厚さtは、マイクロメーターにより1
サンプルにつき20箇所の測定点で測定し、これを平均
した値とした。磁気特性は、振動試料型磁力計(VS
M)を用いて保磁力HcJ(kA/m)および最大磁気エ
ネルギー積(BH)max(kJ/m3)を測定した。測定
に際しては、急冷薄帯の長軸方向を印加磁界方向とし
た。なお、反磁界補正は行わなかった。
【0167】ボンド磁石の磁気特性 それぞれの急冷薄帯に対し、アルゴンガス雰囲気中で、
675℃×300秒の熱処理を施した。
【0168】これら熱処理を施した急冷薄帯を粉砕し、
平均粒径70μmの磁石粉末を得た。
【0169】このようにして得られた磁石粉末につい
て、その相構成を分析するため、Cu−Kαを用い回折
角(2θ)が20°〜60°の範囲にてX線回折を行っ
た。回折パターンからハード磁性相であるR2(Fe・
Co)14B型相と、ソフト磁性相であるα−(Fe,C
o)型相の回折ピークが確認でき、透過型電子顕微鏡
(TEM)による観察結果から、いずれも、複合組織
(ナノコンポジット組織)を形成していることが確認さ
れた。また、各磁石粉末について、各相の平均結晶粒径
を測定した。
【0170】次に、各磁石粉末とエポキシ樹脂とを混合
し、ボンド磁石用組成物(コンパウンド)を作製した。
このとき、磁石粉末とエポキシ樹脂との配合比率(重量
比)は、各サンプルについてほぼ等しい値とした。すな
わち、各サンプル中の磁石粉末の含有量(含有率)は、
約97.5wt%であった。
【0171】次いで、このコンパウンドを粉砕して粒状
とし、この粒状物を秤量してプレス装置の金型内に充填
し、室温において、圧力700MPaで圧縮成形(無磁
場中)して、成形体を得た。離型後、175℃で加熱硬
化させて、直径10mm×高さ8mmの円柱状のボンド
磁石を得た。
【0172】これらのボンド磁石について、磁場強度
3.2MA/mのパルス着磁を施した後、直流自記磁束
計(東英工業(株)製、TRF−5BH)にて最大印加
磁場2.0MA/mで磁気特性(残留磁束密度Br、保
磁力HcJおよび最大磁気エネルギー積(BH)max)を
測定した。測定時の温度は、23℃(室温)であった。
これらの結果を表2〜表4に示す。
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】表2および表3から明らかなように、実施
例1〜9の急冷薄帯では、磁気特性のバラツキが小さ
く、全体として磁気特性が高い。これは、以下のような
理由によるものであると推定される。
【0177】実施例1〜9の冷却ロールは、その周面上
に、ガス抜き手段を有している。そのため、周面とパド
ルとの間に侵入したガスが効率よく排出され、周面とパ
ドルとの密着性が向上し、急冷薄帯のロール面への巨大
ディンプルの発生が防止または抑制される。これによ
り、急冷薄帯の各部位における冷却速度の差が小さくな
り、得られる急冷薄帯における結晶粒径のバラツキが小
さくなり、その結果、磁気特性のバラツキも小さくなる
ものであると考えられる。
【0178】これに対し、比較例の急冷薄帯では、連続
した急冷薄帯から切り出したサンプルであるにもかかわ
らず、磁気特性のバラツキが大きい。これは、以下のよ
うな理由によるものであると推定される。
【0179】周面とパドルとの間に侵入したガスは、そ
のまま残留し、急冷薄帯のロール面に巨大なディンプル
が形成される。このため、周面に密着した部位における
冷却速度は大きいのに対し、ディンプルが形成された部
位における冷却速度は低下し、結晶粒径の粗大化が起こ
る。その結果、得られる急冷薄帯の磁気特性のバラツキ
は大きくなると考えられる。
【0180】また、表4から明らかなように、実施例1
〜9のボンド磁石では、優れた磁気特性が得られている
のに対し、比較例のボンド磁石は、低い磁気特性しか有
していない。
【0181】これは、実施例1〜9では、磁気特性が高
く、かつ磁気特性のバラツキの小さい急冷薄帯から得ら
れる磁石粉末を用いているのに対し、比較例では、磁気
特性のバラツキの大きい急冷薄帯から得られる磁石粉末
を用いているため、全体としての磁気特性が低下してい
るものであると考えられる。
【0182】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
のような効果が得られる。
【0183】・冷却ロールの周面にガス抜き手段が設け
られているため、周面と溶湯のパドルとの密着性が向上
し、高い磁気特性が安定して得られる。
【0184】・特に、表面層の形成材料、厚さ、ガス抜
き手段の形状等を好適な範囲に設定することにより、さ
らに優れた磁気特性が得られる。
【0185】・磁石粉末がソフト磁性相とハード磁性相
とを有する複合組織で構成されることにより、磁化が高
く、優れた磁気特性を発揮し、特に固有保磁力と角型性
が改善される。
【0186】・高い磁束密度が得られるので、等方性で
あっても、高磁気特性を持つボンド磁石が得られる。特
に、従来の等方性ボンド磁石に比べ、より小さい体積の
ボンド磁石で同等以上の磁気性能を発揮することができ
るので、より小型で高性能のモータを得ることが可能と
なる。
【0187】・また、高い磁束密度が得られることか
ら、ボンド磁石の製造に際し、高密度化を追求しなくて
も十分に高い磁気特性を得ることができ、その結果、成
形性の向上と共に、寸法精度、機械的強度、耐食性、耐
熱性(熱的安定性)等のさらなる向上が図れ、信頼性の
高いボンド磁石を容易に製造することが可能となる。
【0188】・着磁性が良好なので、より低い着磁磁場
で着磁することができ、特に多極着磁等を容易かつ確実
に行うことができ、かつ高い磁束密度を得ることができ
る。
【0189】・高密度化を要求されないことから、圧縮
成形法に比べて高密度の成形がしにくい押出成形法や射
出成形法によるボンド磁石の製造にも適し、このような
成形方法で成形されたボンド磁石でも、前述したような
効果が得られる。よって、ボンド磁石の成形方法の選択
の幅、さらには、それによる形状選択の自由度が広が
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却ロールの第1実施形態と、その冷
却ロールを用いて薄帯状磁石材料を製造する装置(急冷
薄帯製造装置)の構成例とを模式的に示す斜視図であ
る。
【図2】図1に示す冷却ロールの正面図である。
【図3】図1に示す冷却ロールの周面付近の断面形状を
模式的に示す図である。
【図4】ガス抜き手段の形成方法を説明するための図で
ある。
【図5】ガス抜き手段の形成方法を説明するための図で
ある。
【図6】本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコン
ポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図7】本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコン
ポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図8】本発明の磁石粉末における複合組織(ナノコン
ポジット組織)の一例を模式的に示す図である。
【図9】本発明の冷却ロールの第2実施形態を模式的に
示す正面図である。
【図10】図9に示す冷却ロールの周面付近の断面形状
を模式的に示す図である。
【図11】本発明の冷却ロールの第3実施形態を模式的
に示す正面図である。
【図12】図11に示す冷却ロールの周面付近の断面形
状を模式的に示す図である。
【図13】本発明の冷却ロールの第4実施形態を模式的
に示す正面図である。
【図14】図13に示す冷却ロールの周面付近の断面形
状を模式的に示す図である。
【図15】本発明の冷却ロールの他の実施形態を模式的
に示す正面図である。
【図16】本発明の冷却ロールの他の実施形態の周面付
近の断面形状を模式的に示す図である。
【図17】本発明の冷却ロールの他の実施形態の周面付
近の断面形状を模式的に示す図である。
【図18】本発明の冷却ロールの他の実施形態を模式的
に示す正面図である。
【図19】図18に示す冷却ロールの周面付近の断面形
状を模式的に示す図である。
【図20】従来の薄帯状磁石材料を単ロール法により製
造する装置(急冷薄帯製造装置)における溶湯の冷却ロ
ールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
【符号の説明】
1 急冷薄帯製造装置 2 筒体 3 ノズル 4 コイル 5、500 冷却ロール 50 回転軸 51 ロール基材 52 表面層 53、530 周面 54 溝 55 縁部 56 開口部 57 空孔 6、60 溶湯 7、70 パドル 710 凝固界面 8、80 急冷薄帯 81、810 ロール面 82 フリー面 9 ディンプル 10 ソフト磁性相 11 ハード磁性相
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B22F 9/04 B22F 9/04 E H01F 1/06 H01F 1/08 A 1/08 1/06 A Fターム(参考) 4E004 DB02 DB15 DB20 QA01 QA03 SA01 TA03 TB04 TB05 4K017 AA04 BA03 BA06 BB06 BB12 CA03 DA04 EA03 ED01 4K018 BA05 BA18 BB04 BB06 BD01 5E040 CA01 HB11 HB17 NN06 NN12 NN14

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁石材料の溶湯をその周面に衝突させ、
    冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための冷却ロ
    ールであって、 冷却ロールは、ロール基材と、該ロール基材の外周に設
    けられた表面層とを有し、 前記表面層がセラミックスで構成されたものであり、か
    つ、 前記表面層の周面上に、前記周面と前記溶湯のパドルと
    の間に侵入したガスを排出するガス抜き手段を有するも
    のであることを特徴とする冷却ロール。
  2. 【請求項2】 磁石材料の溶湯をその周面に衝突させ、
    冷却固化して、薄帯状磁石材料を製造するための冷却ロ
    ールであって、 冷却ロールは、ロール基材と、該ロール基材の外周に設
    けられた表面層とを有し、 前記表面層は、室温付近における熱膨張率が3.5〜1
    8[×10-6-1]の材料で構成されたものであり、か
    つ、 前記表面層の周面上に、前記周面と前記溶湯のパドルと
    の間に侵入したガスを排出するガス抜き手段を有するも
    のであることを特徴とする冷却ロール。
  3. 【請求項3】 前記表面層は、セラミックスで構成され
    たものである請求項2に記載の冷却ロール。
  4. 【請求項4】 前記表面層は、前記ロール基材の構成材
    料の室温付近における熱伝導率より低い熱伝導率を有す
    る材料で構成されたものである請求項1ないし3のいず
    れかに記載の冷却ロール。
  5. 【請求項5】 前記表面層は、室温付近における熱伝導
    率が80W・m-1・K-1以下の材料で構成されたもので
    ある請求項1ないし4のいずれかに記載の冷却ロール。
  6. 【請求項6】 前記表面層の平均厚さは、0.5〜50
    μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の冷却ロ
    ール。
  7. 【請求項7】 前記表面層は、その表面に機械加工を行
    わないで形成されたものである請求項1ないし6のいず
    れかに記載の冷却ロール。
  8. 【請求項8】 前記周面の前記ガス抜き手段を除く部分
    の表面粗さRaは、0.05〜5μmである請求項1な
    いし7のいずれかに記載の冷却ロール。
  9. 【請求項9】 前記ガス抜き手段は、少なくとも1本の
    溝である請求項1ないし8のいずれかに記載の冷却ロー
    ル。
  10. 【請求項10】 前記溝の平均幅は、0.5〜90μm
    である請求項9に記載の冷却ロール。
  11. 【請求項11】 前記溝の平均深さは、0.5〜20μ
    mである請求項9または10に記載の冷却ロール。
  12. 【請求項12】 前記溝の長手方向と、冷却ロールの回
    転方向とのなす角は、30°以下である請求項9ないし
    11のいずれかに記載の冷却ロール。
  13. 【請求項13】 前記溝が並設されており、その平均ピ
    ッチは、0.5〜100μmである請求項9ないし12
    のいずれかに記載の冷却ロール。
  14. 【請求項14】 前記溝は、前記周面の縁部に開口して
    いるものである請求項9ないし13のいずれかに記載の
    冷却ロール。
  15. 【請求項15】 前記周面上における前記溝の占める投
    影面積の割合が10〜99.5%である請求項9ないし
    14のいずれかに記載の冷却ロール。
  16. 【請求項16】 請求項1ないし15のいずれかに記載
    の冷却ロールを用いて製造されたことを特徴とする薄帯
    状磁石材料。
  17. 【請求項17】 平均厚さが8〜50μmである請求項
    16に記載の薄帯状磁石材料。
  18. 【請求項18】 請求項16または17に記載の薄帯状
    磁石材料を粉砕して得られたことを特徴とする磁石粉
    末。
  19. 【請求項19】 磁石粉末は、その製造過程または製造
    後少なくとも1回熱処理が施されたものである請求項1
    8に記載の磁石粉末。
  20. 【請求項20】 平均粒径が1〜300μmである請求
    項18または19に記載の磁石粉末。
  21. 【請求項21】 磁石粉末は、ソフト磁性相とハード磁
    性相とを有する複合組織で構成されるものである請求項
    18ないし20のいずれかに記載の磁石粉末。
  22. 【請求項22】 前記ハード磁性相および前記ソフト磁
    性相の平均結晶粒径は、いずれも1〜100nmである
    請求項21に記載の磁石粉末。
  23. 【請求項23】 請求項18ないし22のいずれかに記
    載の磁石粉末を結合樹脂で結合してなることを特徴とす
    るボンド磁石。
  24. 【請求項24】 室温での固有保磁力HcJが320〜1
    200kA/mである請求項23に記載のボンド磁石。
  25. 【請求項25】 最大磁気エネルギー積(BH)max
    40kJ/m3以上である請求項23または24に記載
    のボンド磁石。
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