JP2003268189A - 難燃低誘電性樹脂組成物、ならびにこれを用いた成形品、プリプレグおよび回路基板 - Google Patents

難燃低誘電性樹脂組成物、ならびにこれを用いた成形品、プリプレグおよび回路基板

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JP2003268189A
JP2003268189A JP2002074091A JP2002074091A JP2003268189A JP 2003268189 A JP2003268189 A JP 2003268189A JP 2002074091 A JP2002074091 A JP 2002074091A JP 2002074091 A JP2002074091 A JP 2002074091A JP 2003268189 A JP2003268189 A JP 2003268189A
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retardant
resin composition
dielectric
low
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Toshihiro Ota
利博 大田
Tomio Yamada
富穂 山田
Tetsuya Ito
哲哉 伊藤
Shigeru Asami
茂 浅見
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高周波数帯域において誘電率および誘電損失
が低く難燃性に優れ、かつシート成形等の加工性に優れ
た難燃低誘電性樹脂組成物を提供する。 【解決手段】 非極性α−オレフィン系(共)重合体セ
グメントおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合
体セグメントとビニル芳香族系(共)重合体から構成さ
れる多相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体
(P−1)と、リン系難燃剤(FR−a)または無機系
難燃剤(FR−b)のうち少なくとも一種の難燃剤を含
む難燃低誘電性樹脂組成物であって、耐熱性低誘電性グ
ラフト共重合体100部(質量)に対して、各一種ずつ
を用いるときは0.1〜30部(質量)の割合でリン系
難燃剤を、また0.5〜80部(質量)の割合で無機系
難燃剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物とし、両者併用の
ときは合計量で0.1〜30部(質量)とする。そし
て、これを用いたフィルム等の成形品および基板とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高周波領域での使
用に好適な電気特性を有し、難燃性および成形性に優れ
た耐熱低誘電性樹脂組成物と、これを用いたフィルム、
シート等の成形品、プリプレグおよび回路基板に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年、高度情報化社会の進展に伴い、大
量の情報を高速で処理する必要があり、通信・電子機器
に使用される信号の周波数帯は、メガからギガヘルツ
(Hz)帯の高周波帯域に移行している。しかしなが
ら、電気信号は周波数が高くなる程、伝送損失が大きく
なる性質があり、このメガからギガHz帯のような高周
波帯域に対応した、優れた高周波伝送特性を有する電気
絶縁材料とそれを用いた回路基板の開発が強く求められ
ている。
【0003】プリント配線板での伝送損失は、配線(導
体)の形状、表皮抵抗、特性インピーダンス等で決まる
導体損と配線周りの絶縁層(誘電体)の誘電特性で決ま
る誘電体損からなり、特に高周波回路では誘電体損によ
る電力ロスの影響が大きい。このエネルギー損失は熱エ
ネルギーとして回路内に放出され、電子機器の誤作動の
原因となる。
【0004】誘電体損は、比誘電率(ε)と材料の誘電
正接(tanδ)の積に比例して大きくなる。そのため
誘電体損を少しでも小さくするためには、比誘電率
(ε)と誘電正接(tanδ)がいずれも小さい材料を
用いる必要がある。
【0005】コンピューター(CPU)等の電子情報機
器では、大量の情報を短時間で処理するためにクロック
周波数が1GHzを遙かに越える超高速CPUの開発が
進んでいる。このような高周波信号を使用する機器では
プリント配線板上での信号遅延が問題になっている。プ
リント配線板上での信号遅延時間は配線周りの絶縁層の
比誘電率の平方根に比例して長くなる。そのため信号遅
延時間を少しでも小さくするためには、比誘電率が小さ
い材料を用いる必要がある。このような電気特性を有す
る電気絶縁材料としては通常、高分子絶縁材料が用いら
れる。
【0006】このような高分子絶縁材料としては、ポリ
オレフィン、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑
性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エ
ポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BTレジ
ン)、硬化性ポリフェニレンオキサイド、硬化性ポリフ
ェニレンエーテル等の熱硬化性樹脂などが種々提案され
ている。
【0007】しかしながら、低誘電損失の材料として電
子部品(素子)材料に使用する場合、特公昭52−31
272号公報に開示されているような、ポリエチレン、
ポリプロピレン等のポリオレフィンはC−C結合等の共
有結合を有し、且つ大きな極性基を持たないため電気特
性(誘電損失、比誘電率など)は優れているが、耐熱性
が低いという欠点がある。このため高温下での使用で
は、熱変形や電気特性が悪化するため好適とはいえな
い。また、線膨張係数が大きいので特にプリント配線板
に使用する場合には、表面実装方式で部品を搭載したと
きの接続信頼性やスルーホールメッキの信頼性に欠け
る。さらにポリエチレンやポリプロピレンは一旦フィル
ムとして成形し、これを接着剤を用いて導電材料に接着
しているが、この方法は加工工程が複雑となるばかりで
なくフィルム形成層の厚みを薄くすることが非常に難し
いなど、形成上の問題がある。
【0008】塩化ビニル樹脂は、絶縁抵抗性が高く、耐
薬品性、難燃性に優れているがポリオレフィンと同様に
耐熱性に欠け、誘電損失が大きいという欠点がある。
【0009】フッ化ビニリデン樹脂、トリフルオロエチ
レン樹脂、およびパーフルオロエチレン樹脂のようなフ
ッ素原子を分子鎖中に含有している重合体は、電気特
性、耐熱性、化学安定性に優れているが、ポリオレフィ
ンと同様に線膨張係数が大きいという欠点がある。ま
た、熱可塑性樹脂のように熱処理加工することによって
成形物、あるいはフィルム等を得る際の成形加工性、薄
膜形成能に難があり、且つデバイス化を行う際、生産性
が低く、かなりのコスト高となる。さらに透明性が低い
ため応用分野が限られているという欠点がある。上記の
ような低誘電性高分子材料は、いずれも耐熱性が不十分
である。
【0010】一方、比較的耐熱性が良好な樹脂としてエ
ポキシ樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE)、
不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性
樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂に関しては、特開平6
−192392号公報に開示されているように、絶縁抵
抗性、絶縁破壊強度と耐熱温度においては要求性能を満
たしている。しかし、誘電率が3以上と高く、満足され
る特性が得られていない。ポリフェニレンオキサイド樹
脂(PPO)と多官能シアン酸エステル樹脂類、さらに
これら樹脂に他の樹脂を配合し、ラジカル重合開始剤を
添加し、予備反応させてなる硬化可能な変性PPO樹脂
組成物が知られているが、比誘電率は3以上で充分満足
できるレベルまで至っていない。
【0011】さらに耐熱性の乏しいエポキシ樹脂の改良
目的で、例えばフェノールノボラック樹脂、ビニルトリ
アジン樹脂等の組み合わせも検討されているが、フィル
ムとして力学的特性が著しく低下するという欠点があ
る。
【0012】そこで、電気特性を維持したまま上記の問
題点、具体的には加工性の改良、銅などの金属導電体
(層)との密着性や接着性の改良を目的として、分岐シ
クロ環アモルファスフッ素ポリマー、パーフルオロエチ
レンモノマーと他のモノマーとの共重合体等が提案され
ているが、電気特性は満たすものの、高分子主鎖に存在
するメチレン鎖の影響のため耐熱性が低下している。さ
らにデバイス基板等に対する密着性も不十分である。
【0013】また電気特性に優れた電気絶縁材料に求め
られる性能としてはんだ耐熱性がある。これはデバイス
化の過程で必ずはんだ付け工程が入るためであり、近年
では、最低180℃で120秒の加熱に耐え得るだけの
耐熱性が要求される。さらに耐アルカリ性等の化学的安
定性、および耐湿性や機械的特性も優れていなければな
らない。これらの要求を満足する高分子素材は更に限ら
れ、例えばポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリフ
ェニレンスルフィド、ポリスルフォン、熱硬化性ポリフ
ェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレンテレフタレ
ート(PET)等が知られているにすぎない。これらの
高分子は薄膜形成能を有し、金属あるいはデバイス基板
等に対する密着性はあるが、取り扱い上やや難がある。
【0014】このような現状を鑑みて、本発明者等は国
際公開第WO99/10435号公報および国際公開第
WO99/54888号公報において、炭素原子と水素
原子の原子数の和が99%以上であり、かつ樹脂分子間
の一部または全てが相互に架橋、ブロック重合およびグ
ラフト重合から選ばれる1種以上の化学的結合を有する
耐熱性低誘電性樹脂を提案した。
【0015】上述の難燃低誘電性樹脂は、高周波領域で
の使用に好適な電気特性を有し、耐熱性が高く、回路基
板用材料として優れた特性を有しているが、一方で難燃
性と、フィルムまたはシート成形性にやや難があり、特
に厚さ0.2mm以下の薄肉のフィルムとして加工し
て、回路基板へ適用できるまでの加工性を有していない
状況にある。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】本発明の第1の目的
は、上述の耐熱性低誘電性樹脂に優れた熱安定性と加工
性を付与することを目的する難燃低誘電性樹脂組成物を
提供することにある。本発明の第2の目的は、上述の耐
熱性低誘電性樹脂に優れた熱安定性と加工性を付与した
難燃低誘電性樹脂組成物を用いたフィルム、シート等の
成形品を提供することにある。本発明の第3の目的は、
上述の難燃低誘電性樹脂組成物を用いた回路基板を提供
することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述の耐熱性低誘電性樹脂に優れた熱安定性と加工性を
付与することを目的として鋭意検討した結果、特定の難
燃剤を配合することで目的の特性を有する樹脂組成物が
得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(10)である。 (1) 非極性α−オレフィン系(共)重合体セグメン
トおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合体セグ
メントとビニル芳香族系(共)重合体から構成される多
相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体(P−
1)と、リン系難燃剤(FR−a)のうち少なくとも一
種の難燃剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物であって、耐
熱性低誘電性グラフト共重合体100部(質量)に対し
て0.1〜30部(質量)の割合でリン系難燃剤を含む
難燃低誘電性樹脂組成物。 (2) 非極性α−オレフィン系(共)重合体セグメン
トおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合体セグ
メントとビニル芳香族系(共)重合体から構成される多
相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体(P−
1)と、無機系難燃剤(FR−b)のうち少なくとも一
種の難燃剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物であって、耐
熱性低誘電性グラフト共重合体100部(質量)に対し
て0.5〜80部(質量)の割合で無機系難燃剤を含む
難燃低誘電性樹脂組成物。 (3) 非極性α−オレフィン系(共)重合体セグメン
トおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合体セグ
メントとビニル芳香族系(共)重合体から構成される多
相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体(P−
1)と、難燃剤として、リン系難燃剤(FR−a)およ
び無機系難燃剤(FR−b)をそれぞれ少なくとも一種
含む難燃低誘電性樹脂組成物であって、耐熱性低誘電性
グラフト共重合体100部(質量)に対して、リン系難
燃剤を0.1〜30部(質量)の範囲の割合で含むこ
と、および無機系難燃剤を0.5〜80部(質量)の範
囲の割合で含むことの少なくとも一方の条件を満足し、
かつリン系難燃剤および無機系難燃剤を合計量で0.1
〜30部(質量)の範囲の割合で含む難燃低誘電性樹脂
組成物。 (4) 耐熱性低誘電性グラフト共重合体の180℃に
おける貯蔵弾性率が10Pa以上で、かつ2GHzに
おける比誘電率が3.0以下で、かつ誘電正接が0.0
03以下である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の
難燃低誘電性樹脂組成物。 (5) ビニル芳香族系(共)重合体セグメントがジビ
ニルベンゼンの単量体に基づく構成単位を含むビニル芳
香族系(共)重合体セグメントである上記(1)〜
(4)のいずれかに記載の難燃低誘電性樹脂組成物。 (6) 耐熱性低誘電性グラフト共重合体が、さらに4
−メチルペンテン−1の単量体に基づく構成単位を含む
非極性α−オレフィン系重合体を含有する上記(1)〜
(4)のいずれかに記載の難燃低誘電性樹脂組成物。 (7) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃低
誘電性樹脂組成物を用いた成形品。 (8) 厚さ20μm以上のフィルムまたはシートであ
る上記(7)に記載の成形品。 (9) 上記(1)〜(6)のいずれかに記載の難燃低
誘電性樹脂組成物を用いたプリプレグ。 (10) 上記(8)に記載のフィルムもしくはシー
ト、または上記(9)に記載のプリプレグの片面または
両面に金属層を配してなる回路基板。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の樹脂組成物は、非極性α
−オレフィン系(共)重合体セグメントおよび/または
非極性共役ジエン系(共)重合体セグメント(a1)と
ビニル芳香族系(共)重合体(a2)から構成される多
相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体(P−
1)と、リン系難燃剤(FR−a)および無機系難燃剤
(FR−b)のうち少なくとも一種の難燃剤を含む難燃
低誘電性樹脂組成物であって、耐熱性低誘電性グラフト
共重合体100部(質量)に対して、各一種ずつを用い
るときは、0.1〜30部(質量)の割合でリン系難燃
剤を、また0.5〜80部(質量)の割合で無機系難燃
剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物である。また、両者を
併用するときは合計量が0.1〜30部(質量)であ
る。
【0019】本発明に用いる耐熱性低誘電性グラフト共
重合体は、国際公開第WO99/10435号公報およ
び国際公開第WO99/54888号公報に記載の方法
を用いることで製造することができる。
【0020】以下、本発明の特定の多相構造を示す熱可
塑性樹脂であるグラフト共重合体の製造方法を具体的に
記述する。すなわち、 工程I;非極性α−オレフィン系(共)重合体の合計1
00部(質量)を水に懸濁させて、別にビニル芳香族系
単量体5〜400部(質量)に、下記式(1)または
(2)で表されるラジカル共重合性有機過酸化物の1種
または2種以上の混合物を上記ビニル芳香族系単量体1
00部(質量)に対して0.1〜10部(質量)と、1
0時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃で
あるラジカル重合開始剤をビニル芳香族系単量体および
ラジカル共重合性有機過酸化物との合計100部(質
量)に対して0.01〜5部(質量)とを溶解させた溶
液を加え、ラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こら
ない条件で加熱し、ビニル芳香族系単量体、ラジカル共
重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を非極性
α−オレフィン系(共)重合体に含浸させて、ついでこ
の水性懸濁液の温度を上昇させ、ビニル芳香族系単量体
およびラジカル共重合性有機過酸化物を非極性α−オレ
フィン系(共)重合体中で共重合させて、グラフト化前
駆体を得る。
【0021】工程II;ついでこのグラフト化前駆体を1
00〜300℃の溶融下、混練することにより、本発明
のグラフト共重合体を得ることができる。このときグラ
フト化前駆体に、別にオレフィン系(共)重合体および
/または非極性共役ジエン系(共)重合体あるいはビニ
ル系(共)重合体を混合し、100〜300℃の溶融下
に混練してもグラフト共重合体を得ることができる。こ
のうち最も好ましいのはグラフト化前駆体を100〜3
00℃の溶融下混練して得られたグラフト共重合体であ
る。
【0022】工程III;ついでこのグラフト化前駆体を
100〜300℃の溶融下、混練することにより、本発
明のグラフト共重合体を得ることができる。
【0023】このときグラフト化前駆体に、別にオレフ
ィン系(共)重合体および/または非極性共役ジエン系
(共)重合体あるいはビニル系(共)重合体を混合し、
100〜300℃の溶融下に混練してもグラフト共重合
体を得ることができる。
【0024】このうち最も好ましいのはグラフト化前駆
体を100〜300℃の溶融下混練して得られたグラフ
ト共重合体である。
【0025】前記式(1)で表されるラジカル共重合性
有機過酸化物とは、次式
【0026】
【化1】
【0027】(式中、R1は水素原子または炭素数1〜
2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3
よびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭
素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のフェニル
基もしくはアルキル置換フェニル基、または炭素数3〜
12のシクロアルキル基を示す。mは1または2であ
る。)で表される化合物である。
【0028】また、前記式(2)で表されるラジカル共
重合性有機過酸化物とは、次式
【0029】
【化2】
【0030】(式中、R6は水素原子または炭素数1〜
4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8
よびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10
炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜12のフェニ
ル基もしくはアルキル置換フェニル基または炭素数3〜
12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2で
ある。)で表される化合物である。
【0031】本発明において使用される耐熱性低誘電性
グラフト共重合体の電気的特性は、周波数2GHzにお
ける空洞共振器摂動法による測定値が、誘電率(ε)
3.0以下で、かつ誘電正接(tanδ)が、0.00
3以下である。誘電率(ε)が3.0を越える場合は、
または誘電正接(tanδ)が0.003を越える場合
は、優れた高周波伝送特性とは言い難く、電気部品等の
用途に不適である。誘電率(ε)、誘電正接(tanδ)
の下限に特に制限はないが、誘電率(ε)が1.5程
度、誘電正接(tanδ)が0.0001程度である。
【0032】また、動的粘弾性の測定によって得られ
る、180℃における貯蔵弾性率が106Pa以上であ
る。貯蔵弾性率の測定は、通常、JIS C−6481
(DMA)の方法によって求められる。ここで、180
℃における貯蔵弾性率が106Pa未満の場合、目的と
するはんだ耐熱性を得ることができないため不適であ
る。貯蔵弾性率の上限に特に制限はないが、1.0×1
11Pa程度である。
【0033】本発明において使用される耐熱性低誘電性
グラフト共重合体(4−メチルペンテン−1の単量体に
基づく構成単位を含む非極性α−オレフィン系(共)重
合体を加えたものを含む)の軟化点は180〜260℃
であり、適宜選択して用いることにより、充分なはんだ
耐熱性を得ることができる。
【0034】なお、本発明の耐熱性低誘電性グラフト共
重合体の絶縁抵抗率は常態における体積抵抗率で2×1
14Ωcm以上である。その上限に特に制限はないが、
1.0×1018Ωcm程度である。また、絶縁破壊強度も
強く、15kV/mm以上、特に18〜30kV/mm
と優れた特性を示す。さらには耐熱性にも優れる。
【0035】これらの高分子材料は1種だけで用いても
よく、2種以上併用しても良い。また、これらの高分子
材料は、造粒物(ペレット)として用いられる。
【0036】本発明の樹脂組成物に使用される難燃剤
は、リン系難燃剤または無機系難燃剤の少なくともいず
れか1種を含む難燃剤である。
【0037】リン系難燃剤としては、ハロゲン含有有機
リン系化合物とハロゲン非含有有機リン系化合物、無機
リン化合物が挙げられる。
【0038】ハロゲン含有有機リン系化合物の例として
は、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、ト
リス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロ
ロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペ
ンチル)ホスフェート、トリクロロテトラブロモフェニ
ルトリホスフェート、メチルジブチルホスフェート等を
挙げることができる。
【0039】ハロゲン非含有有機リン系化合物として
は、例えば、トリメチルホフェート、トリエチルホスフ
ェート、トリフェニルホフェート、トリチオフェニルホ
スフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニ
ルホスフェート、トリキシレニルチオホスフェート、ト
リフェニルホスファイト、ネオペンチルホスファイト、
ペンタエリスリトールジエチルジホスフェート、メチル
ネオペンチルホスフォネート、フェニルネオペンチルホ
スフェート、ペンタエリエスリトールジフェニルジホス
フェート等が挙げられる。
【0040】無機リン化合物の例としては、例えば、赤
リン、ホスフィン、次亜リン酸、亜リン酸、メタリン
酸、ピロリン酸、無水リン酸、ポリリン酸アンモニウム
等を挙げることができる。
【0041】なおここでは、無機リン化合物はリン系化
合物として取り扱うこととする。
【0042】これらのリン系難燃剤のなかでは、トリス
(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロ
モネペンチル)ホスフェート、ポリリン酸アンモニウム
等がより好ましものとして挙げられる。
【0043】無機系難燃剤の具体例としては、例えば、
水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カル
シウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム、塩基性
炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸
カルシウム、炭酸バリウム、アルミニウムやマグネシウ
ムや酸化スズ等の無機金属化合物の水和物;ホウ酸亜
鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ドロマイ
ト、ハイドロタルサイト、アルミン酸カルシウム、酸化
アンチモン、酸化ヒ素、酸化ビスマス、酸化スズや酸化
鉄や酸化亜鉛等の金属酸化物;さらに、カーボンファイ
バー等が挙げられる。
【0044】これらの無機系難燃剤のなかでは、水酸化
アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウ
ム、酸化アンチモン等がより好ましものとして挙げられ
る。
【0045】本発明において特に好ましい難燃剤は、ハ
ロゲン含有リン酸エステル系化合物と金属酸化物を併用
した難燃剤である。このような好ましい難燃剤の具体例
としては、ハロゲン含有有機リン系化合物としてトリス
(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロ
モネオペンチル)ホスフェート、トリクロロテトラブロ
モフェニルトリホスフェート等が挙げられる。金属酸化
物として三酸化アンチモン、五酸化アンチモンが挙げら
れる。
【0046】難燃剤としてリン系難燃剤のみを使用する
場合、その含有量は、樹脂成分の100部(質量)に対
して0.1〜30部(質量)であることが必要である。
好ましくは0.5〜20部(質量)の範囲であり、特に
好ましい範囲としては2〜15部(質量)である。0.
1部(質量)未満では必要な難燃効果が発揮されない。
30部(質量)(質量部とも表す。)を越えると樹脂の
機械的強度を低下させる。また、難燃剤の含有量が多く
なると、比誘電率と誘電正接が高くなりやすくなる。さ
らにシート成形性が低下する傾向にある。
【0047】難燃剤として無機系化合物のみを用いた場
合は、その難燃剤の含有量は、樹脂成分の100部(質
量)に対して0.5〜80部(質量)の範囲であり、よ
り好ましい範囲としては30〜60部(質量)である。
【0048】特にハロゲン含有有機リン系化合物と無機
系化合物を併用した場合が好ましく、この場合の難燃剤
の含有量は、樹脂組成物の合計が100部(質量)に対
して0.1〜30部(質量)であることが必要である。
好ましくは0.7〜20部(質量)の範囲であり、特に
好ましい範囲としては3〜12部(質量)である。前述
のように低誘電性の樹脂とリン系難燃剤と無機系難燃剤
との組み合わせで難燃剤を使用することにより、難燃性
とシート成形性のバランスに優れ、かつ高周波領域での
使用に好適な電気特性を有する難燃低誘電性樹脂組成物
が得られる。
【0049】本発明において耐熱性低誘電性樹脂組成物
と難燃剤の混合方法は、特に制限はないが、加熱機能と
混練機能を備えたバンバリーミキサー、加圧ニーダー、
ロール、一軸もしくは二軸スクリュー押出機等を使用し
て、混合することができる。中でも、二軸スクリュー押
出機を用いて、メインホッパーより耐熱性低誘電性グラ
フト共重合体と難燃剤を供給し、溶融混練する方法が簡
便かつ安価であり好ましい。その際の温度は、用いた耐
熱性低誘電性グラフト共重合体が充分に軟化する温度で
行えばよく、通常160〜300℃の範囲である。
【0050】本発明の難燃低誘電性樹脂組成物から、使
用形態の難燃低誘電性樹脂組成物の成形品を得るにはプ
レス成形、射出成形、ブロー成形、ロール成形、押出成
形等熱プレス等が挙げられ、公知の方法に準じ、本発明
の樹脂組成物の使用目的に応じ安価に成形できる方法を
選択すればよい。
【0051】本発明において難燃低誘電性樹脂組成物の
成形品の具体例であるシートあるいはフィルムを得る方
法に特に制限はないが、Tダイ押出成形、カレンダーロ
ール成形等、従来公知の成形方法により、厚さ20μm
程度のフィルムまで得ることができるが、特に得られる
フィルムの厚み精度と外観の観点から、カレンダーロー
ル成形法が好ましい。その際の温度は、用いた難燃低誘
電性樹脂組成物が充分に軟化する温度で行えば良く、通
常160〜300℃の範囲で、ロールの線圧は、通常5
0〜200Kg/cm(490〜1960N/cm)の範囲
である。このようにフィルムは厚さ20μm 程度まで薄
くすることができるが、通常、シートあるいはフィルム
の厚さは130μm 程度であり、その上限はTダイ押出
成形で厚さ10mm程度のものまでが可能である。
【0052】本発明において難燃低誘電性樹脂組成物の
成形品の具体例であるプリプレグを得る方法にも特に制
限はないが、具体的方法として下記(1)〜(3)の方
法が挙げられる。
【0053】(1)射出成形、カレンダー成形、押出成
形等によって得た難燃剤低誘電性樹脂組成物のシートで
基材を挟んだ積層物を熱プレスにより加圧下に加熱して
プリプレグを得る方法。 (2)基材に難燃剤低誘電性樹脂組成物の粉末を所定量
均一に散布したものを熱プレスにより加圧下に加熱して
プリプレグを得る方法。 (3)難燃低誘電性樹脂組成物のシートと基材の積層物
を一対の金属ロールあるいはベルト間に導き、加圧しな
がら連続的に加熱してプリプレグを得る方法。
【0054】その際の温度は、用いた難燃低誘電性樹脂
組成物が充分に軟化し互いに熱融着する温度で行えば良
く、通常160〜300℃の範囲である。また、圧力は
通常2〜10MPaの範囲である。使用する基材として
は、特に制限はなく、ガラスクロス、アラミドクロス、
ポリエステルクロス、ナイロンクロス等のクロス基材、
これらと同じ材質のマット状基材、不織布、クラフト
紙、リンター紙等一般的な印刷回路基板用プリプレグに
使用される基材を用いればよい。
【0055】本発明の難燃剤低誘電性樹脂組成物から、
使用形態のプリント配線板用金属張り基板を得る方法
は、特に制限はないが、具体的方法として例えば下記の
方法があげられる。
【0056】前記、難燃剤低誘電性樹脂組成物の成形品
の具体例であるプリプレグを得る方法(1)〜(3)で
得られたプリプレグあるいはシート状成形物を1枚もし
くは複数枚積層する。次に積層体の最外層の片面あるい
は両面に金属層を配置しプレス、金属ロール、金属ベル
ト等により加熱下に加圧する方法。
【0057】その際の温度は、用いた難燃剤低誘電性樹
脂組成物が充分に軟化し互いに熱融着する温度で行えば
良く、通常160〜300℃の範囲である。また、圧力
は通常2〜10MPaの範囲である。使用する基材とし
ては、特に制限はなく、ガラスクロス、アラミドクロ
ス、ポリエステルクロス、ナイロンクロス等のクロス基
材;これらと同じ材質のマット状基材;不織布、クラフ
ト紙、リンター紙等一般的な印刷回路基板用プリプレグ
に使用される基材を用いればよい。
【0058】本発明で用いる金属層は、銅、アルミニウ
ム、鉄、ニッケル、亜鉛等の単体又は合金の板あるいは
箔であり、必要に応じて防錆のためにクロム、モリブデ
ン等の金属で表面処理が施されたものでもよい。これら
の金属層については電解法、圧延法等従来公知の技術に
よって製造されたものを用いることができ、それらの厚
さは通常0.003〜1.5mm程度である。また、金
属層は真空蒸着法によって難燃剤低誘電性樹脂組成物の
最外層に形成してもよい。
【0059】本発明の難燃剤低誘電性樹脂組成物には、
本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、
熱安定剤、滑剤、可塑剤、結晶核剤、紫外線防止剤、着
色剤などの通常の添加剤を添加することができる。ま
た、繊維状あるいは非繊維状の充填材を添加することが
できる。そのような充填材の具体例としては、ガラス繊
維、アルミナ繊維、硼酸アルミニウム繊維、セラミック
繊維、炭化珪素繊維、石膏繊維、ホウ酸マグネシウムウ
ィスカまたはその繊維;チタン酸カリウムウィスカまた
はその繊維;酸化亜鉛ウイスカ、ボロンウイスカ繊維等
の無機繊維;および炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維な
どの繊維状充填材;などが挙げられる。
【0060】また、非繊維状としては、ワラステナイ
ト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナ
イト、タルク、アルミナシリケート、パイロフイライ
ト、モンモリロナイト等の珪酸塩、二硫化モリブデン、
アルミナ、塩化珪素、ドロマイトなどの炭酸塩;硫酸カ
ルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;ポリリン酸カル
シウム、グラファイト、ガラスビーズ、ガラスマイクロ
バルーン、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化珪素およ
びシリカなどの粉状、板状、あるいは粒状の充填剤など
が挙げられ、これらは中空であってもよい。さらに四フ
ッ化ポリエチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、
ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポ
リエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エポ
キシ樹脂、フェノール樹脂、ABS樹脂、ポリエステ
ル、ジビニルベンジル樹脂、ポリアミドエラストマー、
ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー
等の樹脂を含んでもよい。
【0061】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明する。比較例を併記する。まず、実施例および比較
例に用いた高分子材料の製造方法を合成例として示す。
【0062】合成例1;グラフト共重合体Aの製造 内容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純
水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルア
ルコール2.5gを溶解させた。この中にオレフィン系
重合体としてポリ4−メチルペンテン(三井化学(株)
製、商品名、「TPX RT−18」)700gを入
れ、攪拌・分散した。別にラジカル重合開始剤としての
ベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製、商品名、
「ナイパーBW」、純度75%含水品)2.0g、ラジ
カル共重合性有機過酸化物としてt−ブチルペルオキシ
メタクリロイロキシエチルカーボネート9.0gを、ビ
ニル芳香族単量体としてスチレン300g中に溶解さ
せ、この溶液を前記オートクレーブ中に投入・攪拌し
た。次いでオートクレーブの温度を60〜65℃に昇温
し、2時間攪拌することによりラジカル共重合開始剤お
よびラジカル重合性有機過酸化物を含むビニル芳香族単
量体をポリ4−メチルペンテン中に含浸させた。次い
で、温度を80〜85℃に上げ、その温度で7時間維持
して重合を完結させ、濾過後、水洗および乾燥してグラ
フト化前駆体(a)を得た。
【0063】次いで、このグラフト化前駆体(a)をラ
ボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)
で260℃にて押出し、グラフト化反応させ、その後ペ
レタイザーにより造粒することによりグラフト共重合体
(A)を得た。
【0064】このグラフト共重合体(A)を熱分解ガス
クロマトグラフィーによって分析したところ、ポリ4−
メチルペンテン(PMP):スチレン(St)の質量に
よる割合は70:30であった。
【0065】なおこのときの、スチレン重合体セグメン
トのグラフト効率は50.1%(質量百分率)であっ
た。グラフト効率は、ソックスレー抽出機で酢酸エチル
により、グラフト化していないスチレン重合体を抽出
し、この割合を求めることによって算出した。
【0066】この樹脂の炭素と水素の含有量は元素分析
法で定量した。各評価の結果を表1に示す。
【0067】得られた樹脂ペレットを真空プレス成形機
((株)名機製作所製)により260℃で10分間、真
空化で熱プレス成形し20×20×0.1cmの板を作
製した。この板を155℃で12時間真空乾燥した後、
板の両面に厚さ18μmの圧延銅箔を配し、再度260
℃で10分間、真空化で熱プレス成形し銅張り基板を得
た。
【0068】合成例2;グラフト共重合体Bの製造 内容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純
水2500gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルア
ルコール2.5gを溶解させた。この中にオレフィン系
重合体としてポリプロピレン(モンテル・エスディーケ
イ・サンライズ(株)製、商品名、「サンアロマーPM
600A」)700gを入れ 、攪拌・分散した。別に
ラジカル重合開始剤としてのベンゾイルペルオキシド
(日本油脂(株)製、商品名、「ナイパーBW」、純度
75%含水品)2g、ラジカル共重合性有機過酸化物と
してのt−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチル
カーボネート6gを、ビニル芳香族単量体としてジビニ
ルベンゼン100g、スチレン200gの混合液に溶解
させ、この溶液を前記オートクレーブ中に投入・攪拌し
た。次いでオートクレーブの温度を60〜65℃に昇温
し、2時間攪拌することによりラジカル重合開始剤およ
びラジカル共重合性有機過酸化物を含むビニル芳香族単
量体をポリプロピレン中に含浸させた。次いで、温度を
80〜85℃に昇温し、その温度で7時間維持して重合
を完結させ、水洗および乾燥してグラフト化前駆体
(b)を得た。
【0069】次いでこのグラフト化前駆体(b)をラボ
プラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で
200℃にて押し出し、グラフト化反応させることによ
りグラフト共重合体(B)を得た。
【0070】このグラフト共重合体(B)を熱分解ガス
クロマトグラフィーによって分析したところ、ポリプロ
ピレン(PP):ジビニルベンゼン(DVB):スチレ
ン(St)の質量による割合は70:10:20であっ
た。
【0071】なおこのとき、ジビニルベンゼン−スチレ
ン共重合体のグラフト効率は53.2%(質量百分率)
であった。
【0072】またこの樹脂の炭素と水素の含有量は元素
分析法で定量した。各評価の結果を表1に示す。
【0073】得られた樹脂ペレットを真空プレス成形機
((株)名機製作所製)により260℃で10分間、真
空下で熱プレス成形し20×20×0.1cmの板を作
製した。この板を155℃で12時間真空乾燥した後、
板の両面に厚さ18μmの圧延銅箔を配し、再度260
℃で10分間、真空化で熱プレス成形し銅張り基板を得
た。
【0074】
【表1】
【0075】なお、表中の略号は次のものを示す。
【0076】PMP:ポリ4−メチルペンテン(三井化
学(株)製、商品名、「TPX RT−18」)、 PP:ポリプロピレン(モンテル・エスディーケイ・サ
ンライズ(株)製、商品名、「ジェイアロマーPM60
0A」)、 PE:低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製、商
品名「スミカセンG401」)、 St:スチレン、 DVB:ジビニルベンゼン
【0077】実施例1〜35、比較例1〜18 合成例1で得られたグラフト共重合体(A)または合成
例2で得られたグラフト共重合体(B)を難燃剤(FR
−1〜5)を表2に示す割合でドライブレンドした後、
グラフト共重合体(A)を用いた場合はシリンダー温度
260℃、グラフト共重合体(B)を用いた場合は21
0℃に設定されたスクリュー径30mmの同軸方向二軸
押出機に供給し、押出後造粒した。得られたペレットを
合成例1また合成例2と同様の方法で成形し、さらに、
樹脂ペレットをシリンダー温度260℃に設定したラボ
プラストミルTダイ押出機((株)東洋精機製作所製)
に供給してから、ロール温度200℃に設定した3本ロ
ール圧延シート成形装置((株)日本製鋼所製)で圧延
し、シート成形性を評価した。各試験方法を以下に示
す。
【0078】1.誘電率測定試験方法:空洞共振器摂動
法、試験片サイズ10×0.1×0.1cm 比誘電率は、「誘電体としての試験片の静電容量/真空
の場合の静電容量」を表す。 2.誘電正接試験方法:空洞共振器摂動法、試験片サイ
ズ10×0.1×0.1cm、 3.燃焼試験:UL−94規格に準拠した垂直試験法、
試験片サイズ127×12.7×1.6mm、 4.貯蔵弾性率:JIS C 6481に準拠(DMA
法)、 5.シート成形性:シート成形機にて厚さ100μmの
シートを作製したときの外観を目視で評価した。シート
成形性の外観は「◎が表面がなめらかで光沢有り」、
「○が表面がなめらかだが光沢無し」「△が表面にざら
つきが有り」、「×がシート成形性無し」を表す。
【0079】各試験の結果を表2〜11に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】
【表6】
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
【表10】
【0089】
【表11】
【0090】なお、表中の略号は次の難燃剤を示す。
【0091】FR−1(リン系):トリス(トリブロモ
ネオペンチル)ホスフェート(大八化学工業(株)製、
商品名、「CR900」)、 FR−2(無機系):水酸化マグネシウム(協和化学工
業(株)製、商品名、「キスマ5A」)、 FR−3(リン系): ポリリン酸アンモニウム(住友
化学工業(株)製、商品名、「スミセーフP」) FR−4(無機系):三酸化アンチモン(三国精錬
(株)製、商品名、「MSA」)、 FR−5(その他):テトラブロモビスフェノールAビ
ス(2,3―ジブロモプロピルエーテル)(帝人化成
(株)製、商品名、「FG−3100」)。
【0092】実施例36〜38 合成例1で得られたグラフト共重合体(A)あるいは合
成例2で得られたグラフト共重合体(B)とポリ4−メ
チルペンテン(PMP)および難燃剤(FR−1または
4)を表12に示す割合でドライブレンドした後、シリ
ンダー温度260℃に設定されたスクリュー径30mm
の同軸方向二軸押出機に供給し、押出後造粒した。得ら
れたペレットを合成例1と同様の方法で成形し、各評価
を行った。結果を表12に示す。
【0093】実施例39〜42 実施例3、8、11、14で得られたペレットを合成例
1と同様の方法で厚さ100μmのシートに成形し、得
られたシート8枚と厚さ60μmのガラスクロス(旭シ
ュエーベル(株)製)7枚を交互に積層し、その両表面
に厚み18μmの銅箔(福田金属箔粉工業(株)製)を
配置して、真空プレス機((株)名機製作所製)によ
り、温度260℃、圧力5MPaで10分間加熱加圧
し、厚み1.0mmの銅張り基板を得た。ここで得られ
た基板について各評価を行った。各試験の結果を表13
に示す。
【0094】実施例43〜46 実施例17、20、22、25で得られたペレットを合
成例2と同様の方法で厚さ100μmのシートに成形
し、得られたシート8枚と厚さ60μmのガラスクロス
(旭シュエーベル(株)製)7枚を交互に積層し、その
両表面に厚み18μmの銅箔(福田金属箔粉工業(株)
製)を配置して、真空プレス機((株)名機製作所製)
により、温度200℃、圧力5MPaで10分間加熱加
圧し、厚み1.0mmの銅張り基板を得た。ここで得ら
れた基板について各評価を行った。各試験の結果を表1
4に示す。
【0095】比較例19 合成例1で得られたグラフト共重合体(A)あるいはポ
リ4−メチルペンテン(PMP)に対して難燃剤(FR
−1および4)を表15に示す割合でドライブレンドし
た後、シリンダー温度260℃に設定されたスクリュー
径30mmの同軸方向二軸押出機に供給し、押出後造粒
した。得られたペレットを合成例1と同様の方法で成形
し、各評価を行った。結果を表15に示す。
【0096】比較例20 合成例2で得られたグラフト共重合体(B)あるいはポ
リプロピレン(PP)に対して難燃剤(FR−1および
4)を表15に示す割合でドライブレンドした後、シリ
ンダー温度200℃に設定されたスクリュー径30mm
の同軸方向二軸押出機に供給し、押出後造粒した。得ら
れたペレットを合成例2と同様の方法で成形し、各評価
を行った。結果を表15に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】
【0099】
【表14】
【0100】
【表15】
【0101】なお、表中の略号は次のものを示す。
【0102】PP:ポリプロピレン(モンテル・エスデ
ィーケイ・サンライズ(株)製、商品名、「ジェイアロ
マーPM600A」)。
【0103】表1〜15の結果から次のことが明らかで
ある。
【0104】1)グラフト共重合体(A)と、リン系難
燃剤、無機難燃剤の両方を本発明の範囲内で配合した系
である実施例1〜5は、いずれの性能もバランスがよ
い。一方、難燃剤の量が範囲の下限より少ない系の比較
例1は難燃性が改善されず、難燃剤の量が範囲の上限よ
り多すぎる系である比較例2は、難燃性は改善されるも
のの貯蔵弾性率が小さくシート成形性が悪い。
【0105】2)グラフト重合体(A)と、リン系難燃
剤を単独で本発明の範囲内で配合した系である実施例6
〜10は、いずれの性能もバランスがよい。
【0106】また、グラフト重合体(A)と、無機系難
燃剤を単独で本発明の範囲内で配合した系である実施例
11は、いずれの性能もバランスがよい。一方、無機系
難燃剤の量が範囲の下限より少ない系の比較例3は難燃
性が改善されず、無機系難燃剤の量が範囲の上限より多
すぎる系である比較例4は、難燃性は改善されるものの
貯蔵弾性率が小さくシート成形性が悪い。
【0107】3)グラフト重合体(A)と、リン系難燃
剤のリン酸アンモニウムを単独で本発明の範囲内で配合
した系である実施例12〜16は、いずれの性能もバラ
ンスがよい。
【0108】一方、前記のリン系難燃剤の量が範囲の下
限より少ない系の比較例5は難燃性が改善されず、リン
系難燃剤の量が範囲の上限より多すぎる系である比較例
6は、難燃性は改善されるものの貯蔵弾性率が小さくシ
ート成形性が悪い。また、グラフト重合体(A)と、本
発明の範囲外のブロム系難燃剤を単独で配合した系であ
る比較例7〜9は、難燃性が改善されない。
【0109】4)グラフト重合体(B)と、リン系難燃
剤と無機系難燃剤の両方を本発明の範囲内で配合した系
である実施例17〜21は、いずれの性能もバランスが
よい。
【0110】一方、無機系難燃剤のアンチモン系の難燃
剤の量が範囲の下限より少ない系の比較例10は難燃性
が改善されず、前記の無機系難燃剤の量が範囲の上限よ
り多すぎる系である比較例11は、難燃性は改善される
ものの貯蔵弾性率が小さくシート成形性が悪い。
【0111】5)グラフト重合体(B)と、リン系難燃
剤のみを本発明の範囲内で配合した系である実施例22
〜26は、いずれの性能もバランスがよい。
【0112】一方、グラフト重合体(B)と無機系難燃
剤を単独で本発明の範囲の下限より少ない系の比較例1
2は難燃性が改善されず、前記の無機系難燃剤の量が範
囲の上限より多すぎる系である比較例13は、難燃性は
改善されるものの貯蔵弾性率が小さくシート成形性が悪
い。
【0113】6)グラフト重合体(B)と、リン系難燃
剤のFR−3を本発明の範囲内で配合した系である実施
例28〜35は、いずれの性能もバランスがよい。
【0114】一方、グラフト重合体(B)とリン系難燃
剤のFR−3を単独で本発明の範囲の下限より少ない系
の比較14は難燃性が改善されず、前記の無機系難燃剤
の量が範囲の上限より多すぎる系である比較例15は、
難燃性は改善されるものの貯蔵弾性率が小さくシート成
形性が悪い。また、グラフト重合体(B)とその他のブ
ロム系難燃剤のFR−6を単独で配合した系の比較例1
6、17、18はシート加工性はよいが難燃性が改善さ
れない。
【0115】7)グラフト重合体(A)、あるいは
(B)と、4−メチルペンテン(PMP)の樹脂と前記
のリン系難燃剤、無機系難燃剤の量が範囲内である実施
例36、37、38は、難燃性も改善され、シート加工
性などバランスよい性能を示す。
【0116】8)グラフト重合体(A)、あるいは
(B)と、前記のリン系難燃剤、無機系難燃剤の量が範
囲内である実施例39〜46の基板は、誘電特性のよく
難燃性も改善され、バランスよい性能を示す。一方、グ
ラフト重合体(A)または(B)を使用しないで、PP
樹脂、前記のPMPの樹脂とリン系難燃剤のFR−1と
無機系難燃剤を配合いた系の比較例19、20は難燃性
が改善されない。
【0117】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の難燃剤低
誘電性樹脂組成物は、誘電率(ε)、誘電正接(tan
δ)が低く、成形性等の加工性が高く、難燃性に優れて
いるという効果を奏する。 したがって、本発明の樹脂
組成物は、プリント配線基板やコンピューター部品等の
特に、電気絶縁性、難燃性が要求される用途に有効であ
り、優れた性能のフィルム、板状物、基板や電子部品等
が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 5/18 CER C08J 5/18 CER C08K 3/00 C08K 3/00 3/32 3/32 5/49 5/49 H05K 1/03 610 H05K 1/03 610J (72)発明者 伊藤 哲哉 愛知県知多郡武豊町六貫山2−34 (72)発明者 浅見 茂 東京都中央区日本橋1−13−1 ティーデ ィーケイ株式会社内 Fターム(参考) 4F071 AA14X AA20X AA21X AA22X AA77 AB03 AB05 AB18 AB21 AB25 AB27 AC15 AE07 AF40 AF47 AH12 AH13 BA01 BB03 BB04 BB05 BB06 BC01 BC02 BC03 4F072 AB05 AB06 AB09 AB28 AB29 AB31 AD04 AD05 AD52 AE07 AF03 AF04 AG03 AG19 AH42 AH46 AH49 AJ03 4F100 AB01B AB01C AK03A AK08A AK11A AK12A AL01A BA03 BA10B BA10C CA08A DH01A GB43 JG05 JJ07 4J002 BN031 BN141 DA026 DA056 DE076 DE086 DE096 DE106 DE116 DE126 DE146 DE236 DE246 DE266 DH026 DH036 DH056 DK006 EW046 EW056 EW066 EW126 FD136 GQ00 GQ01

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非極性α−オレフィン系(共)重合体セ
    グメントおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合
    体セグメントとビニル芳香族系(共)重合体から構成さ
    れる多相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体
    (P−1)と、リン系難燃剤(FR−a)のうち少なく
    とも一種の難燃剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物であっ
    て、耐熱性低誘電性グラフト共重合体100部(質量)
    に対して0.1〜30部(質量)の割合でリン系難燃剤
    を含む難燃低誘電性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 非極性α−オレフィン系(共)重合体セ
    グメントおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合
    体セグメントとビニル芳香族系(共)重合体から構成さ
    れる多相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体
    (P−1)と、無機系難燃剤(FR−b)のうち少なく
    とも一種の難燃剤を含む難燃低誘電性樹脂組成物であっ
    て、耐熱性低誘電性グラフト共重合体100部(質量)
    に対して0.5〜80部(質量)の割合で無機系難燃剤
    を含む難燃低誘電性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 非極性α−オレフィン系(共)重合体セ
    グメントおよび/または非極性共役ジエン系(共)重合
    体セグメントとビニル芳香族系(共)重合体から構成さ
    れる多相構造を有する耐熱性低誘電性グラフト共重合体
    (P−1)と、難燃剤として、リン系難燃剤(FR−
    a)および無機系難燃剤(FR−b)をそれぞれ少なく
    とも一種含む難燃低誘電性樹脂組成物であって、耐熱性
    低誘電性グラフト共重合体100部(質量)に対して、
    リン系難燃剤を0.1〜30部(質量)の範囲の割合で
    含むこと、および無機系難燃剤を0.5〜80部(質
    量)の範囲の割合で含むことの少なくとも一方の条件を
    満足し、かつリン系難燃剤および無機系難燃剤を合計量
    で0.1〜30部(質量)の範囲の割合で含む難燃低誘
    電性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 耐熱性低誘電性グラフト共重合体の18
    0℃における貯蔵弾性率が10Pa以上で、かつ2G
    Hzにおける比誘電率が3.0以下で、かつ誘電正接が
    0.003以下である請求項1〜3のいずれかに記載の
    難燃低誘電性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 ビニル芳香族系(共)重合体セグメント
    がジビニルベンゼンの単量体に基づく構成単位を含むビ
    ニル芳香族系(共)重合体セグメントである請求項1〜
    4のいずれかに記載の難燃低誘電性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 耐熱性低誘電性グラフト共重合体が、さ
    らに4−メチルペンテン−1の単量体に基づく構成単位
    を含む非極性α−オレフィン系重合体を含有する請求項
    1〜4のいずれかに記載の難燃低誘電性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載の難燃低
    誘電性樹脂組成物を用いた成形品。
  8. 【請求項8】 厚さ20μm以上のフィルムまたはシー
    トである請求項7に記載の成形品。
  9. 【請求項9】 請求項1〜6のいずれかに記載の難燃低
    誘電性樹脂組成物を用いたプリプレグ。
  10. 【請求項10】 請求項8に記載のフィルムもしくはシ
    ート、または請求項9に記載のプリプレグの片面または
    両面に金属層を配してなる回路基板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010283111A (ja) * 2009-06-04 2010-12-16 Brother Ind Ltd 電子機器
JP2012074606A (ja) * 2010-09-29 2012-04-12 Sekisui Chem Co Ltd プリント配線板用熱硬化性フィルム
US11996239B2 (en) 2020-09-21 2024-05-28 Tdk Electronics Ag Capacitor
CN118599136A (zh) * 2024-08-07 2024-09-06 宁波聚泰新材料科技有限公司 一种以太网用阻燃低介电聚烯烃弹性体

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