JP2003265194A - 新規変異原性試験法 - Google Patents

新規変異原性試験法

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JP2003265194A
JP2003265194A JP2002077385A JP2002077385A JP2003265194A JP 2003265194 A JP2003265194 A JP 2003265194A JP 2002077385 A JP2002077385 A JP 2002077385A JP 2002077385 A JP2002077385 A JP 2002077385A JP 2003265194 A JP2003265194 A JP 2003265194A
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Masahito Suiko
正仁 水光
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 安全性試験方法の一つとして化学物質、医
薬、食品、飼料などの分野で遍く利用されているエイム
ス試験のような微生物を用いたイン ビトロの変異原性
試験において、より確度の高い変異原性物質の変異原性
の検出及び/又は測定法を提供すること。 【解決手段】 エイムス試験のような微生物を用いた変
異原性試験において、試験物質を硫酸化反応処理するこ
とによって、試験物質を代謝活性化することにより、変
異原性物質に生体内で代謝活性化されると同様の条件を
付与し、確度の高い変異原性物質の変異原性の検出及び
/又は測定を可能とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試験物質の突然変
異原性を検出及び/又は測定する変異原性試験方法、特
に、安全性試験方法の一つとして化学物質、医薬、食
品、飼料などの分野で遍く利用されている、試験物質の
突然変異原性を検出及び/又は測定するインビトロ変異
原性試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】我々は日ごろの生活の中で、多くの変異
原性物質にさらされている。その中でも食品やタバコ等
において、特に問題が指摘されている。変異原性物質と
は自然突然変異よりも高い頻度で突然変異を誘発する化
学物質のことで、我々の日常に深いかかわりのある食
品、糞便、大気など自然の中から、続々と見いだされて
いる(菅沼雅美著「発がん Bioscience Series 生命現
象への化学的アプローチ」化学同人、(1985年1月
10日発行))。
【0003】日本人の3大死因に数えられる脳溢血、が
ん、心臓病の中で、最近特にがんによる死亡率が増加を
続け、日本人の死因の第一位を占めている。がんの原因
はわずかな遺伝的なものもあるが、70〜80%が外部
の環境要因によるものである。中でもタバコや食事に起
因するものが大半を占めており、米食や塩分を多く摂取
する日本人の食習慣や、日常普通に行われている魚や肉
類の調理の際の加熱生成物、保存・着色のための食品添
加物などによる遺伝子や染色体の突然変異の誘発が、が
んの発生に大きな影響をもっているといわれる。例え
ば、食品を加熱することによって生じる発がん物質は変
異原性物質を指標にすることにより多くのものが同定さ
れてきた。1977年にトリプトファンの加熱分解生成
物の中から強い変異原性を持つTrp-P-1、Trp-P-2が単離
同定された。つづいてグルタミン酸の加熱分解物からGl
u-P-1、Glu-P-2が単離同定された。他のアミノ酸やタン
パク質についてもその加熱分解物から変異原性物質が精
製されている。
【0004】そもそも化学物質の発がん性の研究の歴史
においては、1915年、わが国の山極と市川がウサギ
の耳に繰り返しコールタールを塗ることにより、世界に
先駆けてがんを人工的に発生させることに成功した。コ
ールタールに含まれるどういう物質が、どういうメカニ
ズムでがんを引き起こすのかの第一の疑問はKennawayを
リーダーとする英国王立がん病院のチームによるベンツ
ピレンの発見により解明された。このとき実験にこの難
問に取り組んだのはCookらの有機化学者であった。
彼らはマウスの皮膚に対する発がんテストおよび蛍光ス
ペクトルを手がかりにして発がん物質の精製を繰り返
し、2トンのピッチから最終的に7gの黄色い結晶を分
離した。そしてその主成分が当時の未知物質であったベ
ンゾ〔α〕ピレン(通称ベンツピレン)であることを化
学合成により確認した。
【0005】人類にとって発ガンのメカニズムを完全に
解明し、ガンの予防法あるいは治療を開発することは長
年の大きな課題であるが、ヒトのガンの約80%は環境
中に存在する発ガン化学物質によって体細胞遺伝子が損
傷を受けるために発生すると考えられている。発ガン化
学物質はそのほとんどが変異原性物質である。発ガン化
学物質による発ガン過程は複雑であるが、遺伝子の損傷
過程であるイニシエーション、異常増殖に伴う腫瘍の顕
在化過程であるプロモーション、そして腫瘍の転移、浸
潤を招く悪性化過程のプログレッションと大きく3段階
を経ると考えられている(篠原和毅著「食品機能研究
法」光琳社(2000年5月)。このうち、変異原物質
による発ガン過程はイニシエーションである(図1)。
【0006】このように、食品中等に見いだされた生理
活性物質の変異原性は、しばしば発ガン性等の関連で問
題になってきた。このような変異原性、発ガン性の可能
性のあるものを網羅的にスクリーニングする試験が変異
原性試験である。変異原性試験には、下等な細菌細胞を
用いたイン ビトロの試験から、高等な動物細胞を用い
た試験まで、種々の試験が開発されている。近年、高等
な動物細胞や下等な細菌細胞を用いた変異原性試験につ
いて、いくつかの方法が開示されている。例えば、高等
動物細胞を用いた変異原性試験に関して、遺伝子突然変
異検出用トランスジェニックマウスを用いた方法(特開
平7−274770号公報)、高感受性マウスを用いた
方法(特開平10−274649号公報)が開示されて
いる。
【0007】また、下等な細菌細胞を用いた変異原性試
験に関して、チミジンキナーゼの作用によって生育阻害
する核酸誘導体を加えた後、生育する細胞に取り込まれ
た色素を測定して変異原性を決定する方法(特開平8−
116990号公報)、核酸を色素又は蛍光色素で標識
したバクテリオファージを用いて細菌に核酸を注入し、
これを用いて光学的に変異を検出する方法(特開平11
−32761号公報)、ルシフェリン−ルシフェラーゼ
発光反応を用いたATP測定法により細胞数又は細胞増
殖率を測定し、変異原性を検出する方法(特開平200
0−125897号公報)、などの方法が開示されてい
る。
【0008】生体内で変異性を惹起する物質を検出する
ことが狙いである変異原性試験の目的からすれば、高等
動物細胞を用いるのが合理的であるが、簡便性や経済性
などの理由で、原核細胞である細菌を用いて、イン ビ
トロで第1次のスクリーニングを行うことが多い。細菌
を用いて、変異原性、発ガン性の可能性のある変異原性
物質を検出す試験法として、国際的によく用いられてい
るのが、エイムス試験(Ames test)である。また、同
じく細菌を用いて変異原性を検出する方法としてレック
・アッセイ(rec-assay)がある。該方法は、試験化学
物質によるDNAの損傷に対する修復能の一部が欠損し
ているために増殖阻害が起こるのを利用する方法の一つ
であり、枯草菌Bacillus subtilisの野生株と組換え修
復欠損株との増殖の差を寒天平板上で測定する方法であ
る。
【0009】エイムス試験(Ames test)は、1971
年、カリフォルニア大学のAmesらがSalmonella typ
himurium TAシリーズを用いて突然変異原物質を検出す
る方法を考案し、発ガン性を予測できる方法として開発
したものである(Mutation Research., 113, 173-215,
1983)。アミノ酸の一種であるヒスチジンの生合成系に
欠損のあるサルモネラ変異株を用いて、ヒスチジン要求
性から非要求性になる復帰突然変異を効率よく簡便にプ
レート上で検出する方法で、突然変異原性物質やがん原
性物質の可能性のある物質の第一次スクリーニング法と
して優れており、広く世界中で用いられ、既知発ガン物
質の大部分がこの方法で陽性の結果を示している。
【0010】この試験法の特徴は、1)突然変異誘発物
質に対してこの目的のために開発された感受性の高いテ
スト菌株を用いることによって、精度よくかつ再現性よ
く突然変異誘発物質を検出できること、2)がん原性物
質の多くが動物体内で代謝されて初めて生物活性を示す
ようになる代謝活性化を必要とする化合物であるから、
肝臓ホモジネートの9000×g、10分間遠沈上清
(S−9)に補酵素を添加したS−9mixを併用した
ことである。この結果、従来の方法で陰性を示していた
代謝活性化を必要とする多くの前駆発ガン物質(procarc
inogen)が変異原性を示した。Salmonella typhimurium
TAシリーズには、TA1535、TA100の塩基対置
換型の突然変異原物質を検出する変異株と、TA153
6、TA1537、TA1538、TA98のフレーム
シフト型の突然変異原物質を検出する変異株がある。
【0011】ただ、フレームシフト変異はグアニンとシ
トシンの塩基が反復している部位で起こるため、アデニ
ンとチミンが反復している部位のフレームシフト変異を
起こす化合物は検出されないと予想されている(矢作多
貴江、蛋白質・核酸・酵素、1178頁〜1188頁、
1975年)。これらのサルモネラ菌には、菌膜表面の
リポ多糖欠損(rfa mutation)、除去修復システム欠損(u
vrB mutation)などの突然変異の導入により、ある程度
大きな化学物質が菌膜を透過しやすく、またDNA損傷
が修復されにくいように工夫されている。TA100、
TA98は薬剤耐性因子プラスミドpKM101の導入
によりさらに検出感度を高めた。
【0012】前述したが、エイムス試験はあくまで環境
中の発ガン物質の第一次スクリーニング法であることを
考慮しておく必要がある。発ガン物質の90%以上がこ
の試験で陽性を示すといわれるが、変異原性の強さと発
ガン性の強さはかなりのばらつきがあることも事実であ
る(Mutation Research., 113, 173-215, 1983)。微生
物を用いるエイムス試験は哺乳動物培養細胞やラット、
マウスなどの哺乳類動物を用いる実験よりもはるかに容
易で、短時間にかつ安価に変異原性物質を検出できる方
法である。しかし、変異原性物質=発ガン物質は完全に
は成り立たない。例えば、プロフラビンや亜硫酸ナトリ
ウムなどは突然変異誘起物質だが発ガン物質だという証
明はなされてない。微生物を用いた発ガン物質の試験に
おいてはこのような、所謂擬陽性のものを拾う可能性も
ある(矢作多貴江、蛋白質・核酸・酵素、1178頁〜
1188頁、1975年)。しかし第一次スクリーニン
グ法として危険性のあるものを網羅的に試験できる点が
優れている。当然、最終的には発ガン性を動物実験で確
認する必要がある。以上のように、エイムス試験は、実
験の容易さ、費用、時間などの点で優れており、環境中
の発がん物質の第一次スクリーニング法として現在最も
広く用いられている(丹羽章著「細胞培養の技術[応用
編]」朝倉書店)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、試験
物質の突然変異原性を検出及び/又は測定する新規変異
原性試験法、特に安全性試験方法の一つとして化学物
質、医薬、食品、飼料などの分野で遍く利用されている
エイムス試験のような微生物を用いたイン ビトロの変
異原性試験において、変異原性物質が生体内で代謝活性
化されると同様の条件を付与することにより、確度の高
い変異原性物質の変異原性の検出及び/又は測定を可能
とした試験法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究の結果、エイムス試験のような微
生物を用いた変異原性試験において、従来の方法では、
生体内で硫酸化反応により活性化される変異原性物質が
検出できないことを確認した。そこで、該エイムス試験
のような微生物を用いた変異原性試験物質の突然変異原
性を検出及び/又は測定するに際して、試験物質を硫酸
化反応処理することによって、試験物質を代謝活性化す
ることにより、変異原性物質に生体内で代謝活性化され
ると同様の条件を付与することが出来、確度の高い変異
原性物質の変異原性の検出及び/又は測定が可能である
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】即ち、良く知られているようにエイムス
(Ames)法とは、「必須アミノ酸のヒスチジン要求
性変異株のサルモネラ菌を化学物質と一緒に培養する
と、化学物質に変異原性があれば、菌が分裂する過程で
復帰突然変異が起こりヒスチジン非要求性(His+)
になる。その結果、菌はヒスチジンを自己生産し増殖を
続けるためコロニーを形成するので、このコロニー数を
計測することにより、「容易にテストした物質が突然変
異を起こすか否かを知ることが出来る」という原理を利
用した変異原性物質検出法である。ところで、変異原物
質の多くは生体内で代謝されることで変異原性が活性化
されることが知られている。
【0016】例えば、ベンツピレンの場合、その変異原
性によりDNAに傷をつける本体はベンツピレンそのも
のではなく、究極発がん物質(ultimate carcinogen)
と呼ばれる反応性に富む代謝産物、ベンツピレンジオー
ルエポキシドであることが判明している。究極発がん物
質はたいてい求電子体(electrophile)であり、またD
NAは求核体(nucleophile)とみなすことができる。
したがって細胞のがん化はelectrophile‐nucleophile
間の化学反応により引き金が引かれることになる。それ
は生物にとってまったくの予期しなかった出来事であ
る。もともとベンツピレンなどの多環芳香族化合物の生
体内の酵素的酸化反応は、疎水性の異物を水溶性なもの
へ変えて早く体外へ排出するための解毒機構の一部とし
ての反応なのである。皮肉にもこの解毒のために代謝過
程で究極発がん物質が生じてしまい、それがDNAのよ
うな生体にとって最も重要な物質に傷をつけてしまうの
である。近年、さまざまな発がん物質について生体内の
DNAと反応して生じた付加体(adduct)の構造が研究
され、多くの知見が得られている。そしてほとんど例外
なく発がん物質は直接に、また近接発がん物質、究極発
がん物質へと代謝活性化されたあとに、DNAと直接共
有結合することが分かっている。
【0017】このように、がん原性物質の多くが動物体
内で代謝されて初めて生物活性を示すようになる代謝活
性化を必要とする化合物であることから、従来のエイム
ス試験法では、哺乳類の異化代謝経路を補う目的で、肝
臓ホモジネートの9000×g、10分間遠沈上清(S
−9)に補酵素(NADPH−産生系)を添加したS9
mixを併用し、生体内におけるがん原性物質の代謝活
性化を想定した変異原性の試験を行っていた。しかし、
この方法では生体内における重要な解毒代謝反応の一つ
である硫酸化により活性化される変異原物質は検出され
ないので、変異原物質の検出方法としては不完全という
不都合があった。
【0018】そこで、本発明においては、この問題を解
決すべく、例えば、既存のエイムス試験法に硫酸転移酵
素と活性硫酸(PAPS)を応用し、硫酸化による変異
原代謝活性化を特異的に検出できる新規な変異原性試験
法を開発した。通常、人類を含めた哺乳動物には、環境
中から取り込まれた生体外異物を体外に効率よく排泄す
るための解毒代謝機能が備わっている。解毒作用とは、
分かり易く言えば肝臓内であまり水と馴染まない化学物
質が体内で脂肪組織などに蓄積してしまうのを防ぐため
に、水と馴染み易い物質に変換して尿中へ排泄を促すと
いう、進化の過程でつくりあげられた巧妙な防御機構で
ある。
【0019】このような解毒代謝機能として、2つの異
化代謝経路が知られている。 第一相反応:酵素シトクロームP450群が関与して
極性官能基を生ずる酸化反応、還元反応、及び加水分解
反応、 第二相反応:極性の高い物質との抱合反応(硫酸反
応、グルクロン酸抱合、アセチル化抱合、メチル化抱
合、グリシン抱合、グルタチオン抱合) 前記のように、従来のエイムス試験法ではこの第二相反
応の一つで硫酸化反応により活性化される変異原性物質
が検出されない。したがって、本発明は、具体的には試
験物質の代謝活性に用いるS9混合物のようなものとし
て、デヒドロエピアンドステロン硫酸転移酵素(DHE
A ST)と活性硫酸(PAPS)を用い、試験物質に
該DHEA STとPAPSを作用させることにより、
硫酸化反応により活性化される変異原性物質が検出する
ことを可能とした。
【0020】本発明の、変異原性物質を硫酸化反応によ
り活性化させ、変異原性を試験する方法は、検出試験物
質に該DHEA STとPAPSを作用させ、サルモネ
ラ菌を接種後、浸とう培養し、更にソフト寒天を混和
後、最少グルコース寒天培地に重層し、倒置培養し、復
帰突然変異コロニーを計測することにより、実施するこ
とができる。本発明の試験法により、例えば従来のエイ
ムス試験法では検出されない変異原性物質でも検出で
き、安全性試験方法としてより確実な方法として用いる
ことができる。
【0021】すなわち本発明は、試験物質の突然変異原
性を検出及び/又は測定する変異原性試験において、試
験物質を硫酸化反応処理することによって、試験物質を
代謝活性化することを特徴とする変異原性試験法(請求
項1)や、試験物質の硫酸化反応処理を、活性硫酸PA
PSを硫酸基供与体として、硫酸転移酵素の触媒作用に
よって行うことを特徴とする請求項1記載の変異原性試
験法(請求項2)や、硫酸転移酵素として、リコンビナ
ント硫酸転移酵素を用いることを特徴とする請求項1又
は2記載の変異原性試験法(請求項3)や、試験物質の代
謝活性化を、動物の肝臓ホモジネートS9画分に補酵素
類を加えたS9mixによる代謝活性化と併合して行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の変異原
性試験法(請求項4)よりなる。
【0022】また本発明は、試験物質の突然変異原性を
検出及び/又は測定する変異原性試験が、微生物変異株
を用いた試験であることを特徴とする請求項1〜4のい
ずれか記載の変異原性試験法(請求項5)や、微生物変異
株が、サルモネラ菌変異株であることを特徴とする請求
項5記載の変異原性試験法(請求項6)や、サルモネラ
菌変異株を用いた試験が、ヒスチジン要求性株を用いた
エイムス試験であることを特徴とする請求項6記載の変
異原性試験法(請求項7)や、活性硫酸PAPS及び硫酸
転移酵素を具備することを特徴とする請求項1〜7記載
の変異原性試験法に用いるためのキット(請求項8)よ
りなる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明は、特に、細菌のような微
生物を用いてイン ビトロで試験物質の突然変異原性を
検出及び/又は測定する変異原性試験において、試験物
質を硫酸化反応処理することによって、試験物質を代謝
活性化することにより、変異原性物質が生体内で代謝さ
れ活性化される条件で、試験物質の変異原性試験を行う
ことよりなる。
【0024】硫酸化反応は、そもそも多環芳香族化合物
の酵素的酸化反応により、疎水性の異物を水溶性なもの
に変えて、早く対外へ排出するための解毒機構の一部で
あり、この機構が前駆変異原性物質を代謝活性化するこ
とになるものである。解毒機構には、シトクロムP45
0酵素群の行う第1相反応(従来のエイムス試験では、
S9mixを添加することにより、この第1相反応は考
慮されている)と、グルクロン酸抱合やグリコシド抱
合、メチル抱合、アセチル抱合、アミノ酸抱合、グルタ
チオン抱合、脂肪酸抱合などとして知られている第2相
反応とがあり、硫酸化反応は、この第2相反応として知
られている解毒機構である。硫酸化反応の研究は、19
57年にLipmann等の補基質である硫酸基供与体PAP
Sの発見によって行われてきた(J.Biol.Chem., 229, 8
37-851, 1957)。硫酸化は下記のような反応で起こる。
この硫酸化反応は、1876年、Baumannらによって初
めて確認された反応であり、化合物の水酸基に対して活
性硫酸PAPSを硫酸供与体として硫酸転移酵素の触媒
作用によって行われるエステル化反応である(Ber. Dts
ch. Chem. Ges pp.54)。
【0025】
【化1】
【0026】本発明において、試験物質の硫酸化反応処
理を行うには、図2に示される硫酸化反応のように、活
性硫酸PAPSを硫酸基供与体として、硫酸転移酵素の
触媒作用によって行う。硫酸転移酵素としては、公知の
酵素を用いることができる。1980年代の後半以降、
遺伝子のクローニング技術により多くの硫酸転移酵素c
DNAの取得が報告されており、これらのcDNAを用
いて製造したリコンビナント硫酸転移酵素を利用するこ
とができる。例えば、1987年に初めて最初のcDN
A配列が報告されて依頼、多くのcDNA配列が報告さ
れている。硫酸転移酵素の遺伝子ファミリーはフェノー
ル硫酸転移酵素(PST)、ヒドロキシステロイド硫酸
転移酵素(HSST)、フラボノール硫酸転移酵素(F
ST)の3つのファミリーについて研究されている。P
STはさらにフェノール硫酸転移酵素(PST)とエス
トロゲン硫酸転移酵素(EST)、ヒドロキシアリルア
ミン硫酸転移酵素(HAST)、ドーパ/チロシン硫酸
転移酵素があり、今後さらに増えていくものと予想され
る。硫酸転移酵素のcDNA配列や、遺伝子の解明によ
り、リコンビナント硫酸転移酵素としての硫酸転移酵素
の調製が可能であり、該酵素を本発明の硫酸化反応処理
に用いることができる。
【0027】本発明の変異原性試験法において、硫酸基
供与体として用いられる活性硫酸PAPS(3′−ホス
ホ−5′−アデニリル硫酸)は、通常、硫酸転移酵素の
基質として各種硫酸エステルの生合成に使用されている
ものを用いることができる。本発明の、試験物質の硫酸
化反応処理による試験物質の代謝活性化は、微生物を用
いたイン ビトロの変異原性試験における変異原性物質
の代謝活性化に用いることができる。特に、変異原性試
験方法として、広く利用されているサルモネラ菌変異株
を用いたエイムス試験に有利に用いることができる。エ
イムス試験に用いるサルモネラ菌変異株としては、従来
より該試験に用いられているヒスチジン要求性の変異株
を用いることができる。即ち、従来、エイムス試験に用
いられる該サルモネラ菌変異株としてSalmonella typhi
murium TAシリーズが作成されている。
【0028】Salmonella typhimurium TAシリーズに
は、TA1535、TA100があり、該変異株は塩基
対置換型の変異株で、塩基置換型の突然変異原物質によ
って復帰されやすい。また、TA1536、TA153
7、TA1538、TA98があり、該変異株はフレー
ムシフト型の変異株で、事実フレームシフト型の突然変
異を起こす物質によって復帰しやすい。これらのサルモ
ネラ菌は、菌膜表面のリポ多糖欠損、除去修復システム
欠損などの突然変異の導入により化学物質が菌膜を透過
しやすく、またDNA損傷が修復されにくいように工夫
されている。エイムスらはさらにTA1535、TA1
538に薬剤耐性因子であるプラスミドpKM101の
導入によってそれぞれTA100とTA98という新し
い株を改良し、検出感度を高めている。
【0029】本発明においては試験物質の代謝活性化
を、上記のような硫酸化反応処理と、従来、エイムス試
験で用いられていた、動物の肝臓ホモジネートS9画分
に補酵素類を加えたS9mixによる代謝活性化と併合
して行うことができる。肝臓ホモジネートS9画分の調
製は、フェノバルビタール(PB)、3-メチルコラン
トレン(MC)、ポリ塩化ビフェニルなどの誘導物質
(inducer)をラットに投与することによって誘導し、
調製する。さらにNADPH−産生系と肝臓ホモジネー
トS9画分をあわせ、S9mixを調製する。このS9
mixは、生体内薬物代謝における第一相反応を触媒す
るシトクロムP450群(一酸化炭素と結合させると4
50nmに吸収極大を示すことに由来する)と呼ばれる
一群の酵素を多量に含む。シトクロムP450は小胞体
中の電子伝達系末端の酸化酵素であり、多くの薬物の酸
化反応にかかわる。この酵素は小胞体の膜中に埋まって
おり、分子量は約45,000〜55,000Daで多
数のアイソザイムが存在し、多くの研究がなされてい
る。
【0030】本発明の変異原性試験法に用いられる菌株
の培地や酵素、及び基質は、活性硫酸PAPS及び硫酸
転移酵素を具備するキットとして調製することができ
る。現在、安全衛生法、化審法、薬事法、動物用医薬、
飼料添加物、及び農薬取締法などでは、安全性規格基準
の一つとして変異原性試験(Ames法)をクリアーす
る事が必要とされている。本発明の変異原性試験法は、
より確度の高い変異原性試験法として、これらの試験法
に利用することが期待される。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定さ
れるものではない。本実施例では、リコンビナント硫酸
転移酵素を用いた本発明の変異原性試験法の検討及び本
発明の変異原性試験法を用いた緑茶カテキン類の抗変異
原作用の確認を行った。
【0032】実施例1 リコンビナント硫酸転移酵素を
用いた本発明の変異原性試験法の検討 [実験材料] (変異原性物質)多くの変異原物質は一般に脂溶性であ
るため有機溶媒であるDMSO(和光純薬工業株式会社)に
溶解させた。この実施例では、試験変異原性物質として
9-hydroxymetylanthracene(Fluka Chemika社製)を用
いた。9-hydroxymethylanthracene は環境中で見いださ
れており、特に汚泥や魚類などから発見されている。9-
hydroxymethylanthraceneは哺乳動物において次のよう
に代謝をうけると予想される。
【0033】
【化2】
【0034】また陽性対照試験(ポジティブ・コントロ
ール)として4-nitroquinoline 1-oxide(4NQO)を
用いて試験を行った。
【0035】
【化3】
【0036】(菌株)ヒスチジン要求性突然変異株Salm
onella typhimurium TA98株を用いた。TA98株はFra
meshift型突然変異を起こす突然変異誘起物質を検出す
ることができる。TA98株はTA1538株にR因子
をもつ薬剤耐性遺伝子であるプラスミドpLM101を
導入し、検出の感度を高めた改良株である。これらの株
はヒスチジン合成酵素遺伝子の変異のほかに別の二つの
突然変異が加えられて感度がよくなっているため、突然
変異の誘起が高まっている。第一に除去修復のシステム
(uvrB)を欠損しているため、突然変異の誘起が高まっ
ている。第二に細菌の表面構成分子であるリポ多糖類が
欠損している(rfa(deep rough)mutation)ため、比
較的大きな分子も細胞内に透過する(Mutation Researc
h., 113, 173-215, 1983)。
【0037】 (培地) (1)Vogel−Bonnerの最少培地E(10倍濃度) 特級MgSO4・7H2O(和光純薬工業株式会社製) 2g 特級Citric acid(和光純薬工業株式会社製) 20g 特級K2HPO4(和光純薬工業株式会社製) 100g 特級NaNH4HPO4・4H2O(和光純薬工業株式会社製) 35g D.W total 1000ml D.W.で1000mlまでフィルアップし、溶解させ
オートクレーブで高圧滅菌後、冷蔵庫に保存した。
【0038】 (2)20%特級D(+)−Glucose溶液 特級D(+)−Glucose(和光純薬工業株式会社製) 200g D.W. total 1000ml D.W.で1000mlまでフィルアップし、溶解させ
オートクレーブで高圧滅菌後、冷蔵庫に保存した。
【0039】(3)最少グルコース寒天培地(minimal-
glucose-agar-medium) Bacto agar(Difco社製)15gを800m
lのD.W.に溶解させ、オートクレーブで高圧滅菌
後、Vogel−Bonnerの最少培地E(10倍濃
度)を100ml、20%特級D(+)−Glucos
e溶液を100ml加え、total 1000mlと
した。滅菌シャーレ(90×15mm)に約10mlず
つ分注し、冷蔵庫に保存した。糖や寒天は無機塩と混合
して高圧滅菌するとアミノカルボニル反応がおこり、変
異原物質が生成する(矢作多貴江、蛋白質・核酸・酵
素、1178頁〜1188頁、1975年)。
【0040】(4)L−histidine−biot
ine溶液 0.5mM L−histidine(和光純薬工業株
式会社製) 0.5mM −biotine(和光純薬工業株式会社
製) 上記のモル濃度の溶液を調整した。
【0041】 (5)トップアガー Bacto agar(和光純薬工業株式会社製) 0.8g 特級NaCl(和光純薬工業株式会社製) 0.6g D.W. 100ml 上記にL−histidine−biotine溶液を
1/10量(10ml)加え、オートクレーブで高圧滅
菌後、45℃で保温して実験に用いた。L−histi
dine−biotine溶液はろ過滅菌でもオートク
レーブによる高圧滅菌でも変質の心配はない(Mutation
Res., 103, 133-140, 1982)。
【0042】 (6)S9mix S−9(ICN Pharmaceuticals, Inc) 100μl 特級MgCl2・6H2O(和光純薬工業株式会社製)0.4M 20μl 特級KCl(和光純薬工業株式会社製) 1.65M 20μl グルコース−6−リン酸(ナカライテクス株式会社製)0.5M 10μl NADH(KOHJIN.,Co.Ltd.社製) 0.1M 40μl NADPH(KOHJIN.,Co.Ltd.社製) 0.1M 40μl ATP(オリエンタル酵母工業株式会社製) 0.1M 50μl リン酸バッファー(pH 7.4) 0.2M 500μl D.W. 220μl total 1ml S−9は100μlずつエッペンドルフチューブに分注
し、超冷凍(−80℃)保存した。特級MgCl2・6
2O、特級KClは調製後高圧滅菌して常温に保存
し、グルコース−6−リン酸、NADH、NADPHは
調製後ミリポアフィルターでろ過滅菌して冷蔵保存し
た。またS−9mixは操作直前に調製した。
【0043】 (菌株の保存、前培養) (1)前培養用ブロス培地 Nutrient broth(Difco社製) 8.0g 特級NaCl(和光純薬工業株式会社製) 5.0g D.W. 1000ml 溶解させオートクレーブで高圧滅菌後、50ml用ファ
ルコンチューブに20mlずつ分注した。これを前培養
ブロス培地とした。
【0044】(2)菌株の培養 前培養ブロス培地20mlを50ml用三角フラスコに
無菌的に加え、それに超冷凍(−80℃)保存したヒス
チジン要求生株(His-)TA98を白金耳で掻きと
り接種した。菌株は紫外線に対して感受性が高いためフ
ラスコをアルミホイルで覆い、37℃で振とう培養(6
0〜70/分)を約14〜16時間行った。 (3)菌株の保存 前培養した菌懸濁液20mlに対し1.75mlのDM
SOを加え攪拌し、凍結チューブに0.7mlずつ分注
し、超冷凍(‐80℃)保存した。
【0045】(菌株のチェック)Salmonella typhhimur
iumの菌株の性能を調べるために以下の3つのテストを行
った。 (1)R因子(Resistant factor) TA培地 前培養ブロス培地 30ml Bacto agar(Difco製) 0.45g オートクレーブで高圧滅菌後、プレートに10mlずつ
分注し、TA培地とした。TA培地にアンピシリン(8
mg/ml)を10μlスプレッドし、そこに一白金地
の菌懸濁液をストリークした。37℃で48±2時間培
養後のプレートを示した(図2)。アンピシリンを塗っ
たプレート上でもサルモネラ菌が生えてきたことから、
R因子をもっていることが分かった。
【0046】(2)rfa特性 トップアガー30mlに30mM histidine-1mM biot
ineを1.5ml加え、さらに菌懸濁液を1.5ml加
えてよく攪拌した。これを最少グルコース寒天培地に2
mlまいた。寒天が固まった後、ペーパーディスクにク
リスタルバイオレット溶液(200μg/ml)を50
μl染み込ませプレートの中央において24時間倒置培
養した(図3)。ペーパーディスクの周りに約1cmの
生育阻止帯が観察された。 (3)His-試験 試験管に菌懸濁液100μ加える。それに45℃に保温
したトップアガー2mlを加え、よく混合して素早く最
少グルコース寒天培地にまいた(図4)。プレートには
5個の自然復帰コロニーが観察された。
【0047】 (バッファー) (1)BufferB 特級KCl(和光純薬工業株式会社製) 150mM Na2SO4(和光純薬工業株式会社製) 15mM 特級MgCl2・6H2O(和光純薬工業株式会社製) 15mM PAPS(Sigma社製) 90μM リン酸バッファー(pH 7.4) 10mM 最終濃度が上記となるように溶液を調整し濾過滅菌後、
1mlずつエッペンドルフチューブに分注し、冷凍保存
(−20℃)した。
【0048】 (2)BufferC KCl(和光純薬工業株式会社製) 150mM リン酸バッファー(pH 7.4) 10mM Albumin,Bovine(Sigma社製) 0.5mg/ml 最終濃度が上記となるように溶液を調整し、濾過滅菌
後、冷蔵保存した(EuropeanJournal of Pharmacolog
y., 293, 173-181, 1995)。
【0049】(リコンビナント酵素(DHEA ST)
の調製) (1)DHEA ST粗酵素 DHEA ST−pGEX-2TKが導入された大腸菌BL21
(Epicurian coli BL21 competent cell)をプレートか
ら爪楊枝で掻き取り、LB培地(アンピシリン最終濃度
50μg/ml入り)1mlで3〜5時間、37℃で培
養した。その後薗培養液を100ml LB培地(アン
ピシリン最終濃度50μg/ml)に加え、37℃で
1.5〜2時間培養した。その後、誘導物質IPTGを
100μl加え、9〜10時間、25℃で誘導した。菌
懸濁液をファルコンチューブに移し、超遠心機(スウィ
ングローター)で3,000rpm、10分遠心した。
その後上清を捨て、沈殿した菌体にBufferCを約
15ml加え、よくvortexし、菌体を完全に溶解
させた。BufferCに溶解させた菌液15mlをフ
レンチプレスで1200kg/cm2の圧力をかけ、細
胞破砕した。フレンチプレスは2回行った。その後、細
胞破砕液を超遠心機(アングルローター)で4℃、1
0,000rpm、20分遠心を2回行い、未破砕細
胞、細胞膜などを沈殿させ、その上清をDHEA ST
粗酵素とした。
【0050】(2)DHEA ST精製酵素 上記の手順で調製したDHEA ST粗酵素をLysi
s Buffer(50mM Tris−HCl pH
8.0、150mM NaCl 、1mM EDTA)
約10mlで平衡化したGlutathion SepharoseTM48(Am
ersham Pharmacia Biotech社製)500μlに加え、約
30分ローテートし、超遠心機で3,000rpm、1
0分遠心した。沈殿した樹脂にLysis Buffe
r 8mlを加え5分間洗浄し、超遠心機で3,000
rpm、10分遠心を3回繰り返した。次に沈殿した樹
脂をThrombin Buffer(50mM Tr
is−HCl pH8.0、150mM NaCl、
2.5mM CaCl2)8mlを加え5分間洗浄し、
超遠心機で3,000rpm、10分遠心を3回繰り返
した。沈殿した樹脂500μlにThrombin B
uffer 1mlを加え、エッペンドルフチューブに
移した。そのうち20μlを別のエッペンドルフチュー
ブに取り、サンプル化した(融合タンパク質)。樹脂の
入ったエッペンドルフチューブにThrombin(Si
gma社製)3μlを加え、40〜50分ローテートし
た。その後遠心機で7000rpm、5分遠心し、上清
を別のエッペンドルフチューブに取り、Aprotin
in(和光純薬工業株式会社製)5μlを加えてThr
ombinの反応を止めた。また、そのうち20μlを
別のエッペンドルフチューブに取り、サンプル化した
(精製酵素)。また沈殿した樹脂20μlを別のエッペ
ンドルフチューブに取りサンプル化した(GST)。
【0051】(3)タンパク質濃度の測定 DCプロテインスタンダードアッセイ(Bio-Rad社製)
を用いた。反応はLowly法(J.Biol.Chem., 193, 2
65, 1951)に基づいている。標準液としてアルブミンを
希釈し(粗酵素の時はBufferC、精製酵素の時は
Thronbin Bufferで希釈した)、1.
0、0.75、0.5、0.25、0.1、0mg/m
lの溶液をつくった。reagent A 1mlにr
eagent sを20μl加え、reagent A
sとした。標準液、またブランクとして試料を希釈した
Buffer、試料を20μlとり、それにreage
nt As 100μlを加え、よくvortexし、
その後素早くreagent B 800μlを加え、
再びよくvortexした後、15分〜1時間静置し
て、比色計で波長750nmにおける吸光度を測定し
た。アルブミン標準溶液のタンパク濃度をもとに検量線
を作成し、試料のタンパク濃度を求めた。
【0052】[実験方法] (リコンビナント硫酸転移酵素を用いた変異原性試験法
の概略)本発明の、リコンビナント硫酸転移酵素と硫酸
供与体PAPSを用いて前駆変異原物質を硫酸化により代謝
活性化させる変異原試験を、図式的に表示すると、図5
のようになる。この実施例では、変異原物質に、硫酸化
されることで変異原性を示すと報告されている9-Hydrox
ymethylantracene(9HMA)を用いた(Biochemical
and Biophysical research communications.,251,239-2
43,1998)。菌株には、既存のエイムス試験で用いられ
ているヒスチジン要求株の特徴を持つSalmonella typhi
murium TA98を用いた。酵素には、human Dehydroepiand
rosterone sulfotranceferase(h DHEAST)を
用いた。この酵素は大腸菌に組み込んであるものを発現
させ精製したものを用いた。これらを用いて前記図5の
ように実験を行った。菌が復帰するまでの機構を図6に
示す。変異原物質は有機溶媒であるDMSOに溶かし
た。陽性対照実験として直接変異原物質である4-nitroq
uinoline 1-oxide(4NQO)を用いた。
【0053】(変異原性試験手順の概略) 1.S.typhimuriumTA98をBroth培地20mlで3
7℃、14時間培養する 2.試験管を用意しBuffer B(PAPS 1
6.7μM)を加える 3.60μg/mlになるように調製した酵素液(Bu
ffer C希釈)を加える 4.培養した菌液を100μl加える(OD660=1.
5) 5.9HMA(250μM)を2μl加える 6.37℃で20分incubationし、その間、プレートを
温めておき、あらかじめ作っておいたトップアガーを4
5℃に保温する 7.反応後、反応液にトップアガーを2ml加えよく混
和しプレート(最少グルコース寒天培地)にまく 9.37℃で48±2時間倒置培養し、復帰してきたコ
ロニーをカウントする
【0054】(変異原性試験法の操作方法) (1)DHEA ST粗酵素を組み込んだエイムス法 試験管にDHEA ST粗酵素(Buffer Cで希
釈)液を60μl、Buffer B(PAPS入り)
を42μl、菌縣濁液を100μlの順に加えた。最後
に9-hydroxymethylanthraceneを2μl加え(最終濃度
240μM)、37℃、20分間水浴中で振とう培養
(60〜70/分)した。試験管に45℃に保温したト
ップアガー2mlを試験管に加え、反応液と混和後、素
早く最少グルコース寒天培地に重層した。トップアガー
が固まった後、37℃、48±2時間倒置培養し、復帰
突然変異コロニー数を数えた。実験はコントロール(B
〜F)も含め、下(表1)のA〜Fの系で行った。また
全ての実験は5連で行った。
【0055】
【表1】
【0056】DHEA ST粗酵素(10mg/ml)
はBuffer Cで希釈を行い、10、5、2、1、
0.6、0.3、0mg/mlBuffer Cになる
ように調整した。最終的に、DHEA ST粗酵素の反
応液中(total volume 204μl)の最終濃度がそれ
ぞれ2.9、1.5、0.6、0.3、0.2、0.1
mg/mlとなった。
【0057】(2)DHEA ST精製酵素を組み込ん
だエイムス法 試験管にDHEA ST精製酵素(Buffer Cで
希釈)液を60μl、Buffer B(PAPS入
り)を42μl、菌縣濁液を100μlの順に加えた。
最後に9-hydroxymethylanthraceneを2μl加え(最終
濃度240μM)、37℃、20分間水浴中で振とう培
養(60〜70/分)した。試験管に45℃に保温した
トップアガー2mlを試験管に加え、反応液と混和後、
素早く最少グルコース寒天培地に重層した。トップアガ
ーが固まった後、37℃、48±2時間倒置培養し、復
帰突然変異コロニー数を数えた。実験はコントロール
(B〜E)も含め、下(表2)のA〜Eの系で行った。
また全ての実験は5連で行った。
【0058】
【表2】
【0059】DHEA ST精製酵素(0.1986m
g/ml)はBuffer Cで希釈を行い、40、2
0、10、5、0μg/ml Buffer Cになる
ように調整した。最終的にDHEA ST粗酵素の反応
液中(total volume 204μl)の最終濃度がそれぞ
れ11.8、5.9、2.9、1.5、0μg/mlと
なった。
【0060】(3)自然復帰突然変異 自然復帰コロニーを調べるために、菌懸濁液100μlのみ
にトップアガーを加え、最少グルコース寒天培地に重層
した。この系は、毎回コントロールとして実験を行っ
た。
【0061】(4)陽性対照試験 陽性対照(ポジティブ・コントロール)試験として4N
QOを用いた。陽性対照試験とはある物質について行わ
れた変異原性試験の結果が適正な菌かどうか、また、適
切に実施されたかどうかを評価するために立てるコント
ロールのことである。4NQOは10mg/mlとなる
ようにDMSOで調整し、これを菌懸濁液100μlに
対し20μl加え、0.2μg/plateとなるよう
にした。
【0062】[実験結果] (DHEA ST粗酵素を組み込んだエイムス法の結
果)DHEA ST粗酵素濃度依存的に復帰突然変異コ
ロニー数の増加が見られた(実験系A)。これに対し実
験系Bの硫酸供与体PAPSなしにおいては復帰突然変
異のコロニー数の増加は見られなかった(図7、表
3)。また、粗酵素を加えなかった系(実験系C)、菌
に9-hydroxymethylanthraceneのみを作用させた系(実
験系D)では、復帰突然変異コロニー数とほぼかわらな
かった(表4,5,6)。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】(DHEA STの精製)精製したDHE
A STをSDS−PAGEで確認した(図8)。サン
プルとして、融合タンパク質(Lane 2)、DHEA S
T(Lane 3)、GST(Lane 4)を泳動した。またprot
ein marker(Lane 1)を同時に泳動した。結果約33K
Da付近にDHEA STのバンドがでた。また同時に
精製酵素のタンパク濃度を測定した結果、約0.2mg
/mlであった。
【0068】(DHEA ST精製酵素を組み込んだエ
イムス法の結果)DHEA ST精製酵素濃度依存的に
復帰突然変異コロニー数の増加が見られた(実験系
A)。これに対し実験系Bの硫酸供与体PAPSなしに
おいては復帰突然変異のコロニー数の増加は見られなか
った(図9、表7)。また、精製酵素を加えなかった系
(実験系C)、菌に9-hydroxymethylanthraceneのみを
作用させた系(実験系D)では、復帰突然変異コロニー
数とほぼかわらなかった(表8、9、10)。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】[評価]本実施例の実験結果より、硫酸供
与体PAPSを加えない系においては復帰突然変異のコ
ロニー数の増加は見られなかったのに対し、DHEA
ST粗酵素または精製酵素濃度依存的に復帰突然変異コ
ロニー数が増加した。また9-hydroxymethylanthracene
のみを菌に作用させた系では、自然復帰突然変異コロニ
ー数とほぼ同じであったことより、9-hydroxymethylant
hracene自体の変異原性は認められないといえる。これ
らのことより言えることはDHEA ST濃度依存的に
9-hydroxymethylanthraceneの硫酸体が生成し、その硫
酸体が変異原性を持つと考えられる。このことは9-hydr
oxymethylanthraceneが硫酸化により代謝活性化される
ということが確認できた。この実験により、硫酸化を組
み込んだエイムス法を樹立することができた。
【0074】実施例2 本発明変異原性試験法を用いた
緑茶カテキン類の抗変異原作用の確認発ガン過程は一般
的に、遺伝子の損傷過程であるイニシエーション、異常
増殖に伴う腫瘍の顕在化過程であるプロモーション、そ
して腫瘍の転移、浸潤を招く悪性化過程のプログレッシ
ョンと大きく3段階を経ると考えられている。Ames
試験では、イニシエーション段階に限り試験できる。変
異原物質によって受ける変異はイニシエーション段階で
あり、食品機能性成分である緑茶カテキン類などの抗変
異原物質による抗変異原作用は変異原不活化因子として
働いていると考えられる。現在、植物性成分であるフラ
ボノイド(flavonoids)の研究が多く行われている。植物
性成分は大きく10群に分けられ(表11)、酸素複素
環化合物(oxygen heterocyclic compounds)にフラボノ
イドは分類される。本実験ではフラボノイドにも多く種
類がある中で、食品機能性成分である緑茶カテキン類を
用いて新規変異原試験法において抗変異原性が確認され
るか、またその作用機構を解明する目的で行った。今回
使用した全8種類のカテキン構造を下記化学式4に示
す。
【0075】
【表11】
【0076】
【化4】
【0077】[実験]実験1 緑茶成分であるカテキン
類を用いた新規変異原試験法による抗変異原性の確認 (方法)実施例1の変異原試験法において、試験物質と
して、それぞれのカテキン類(終濃度500μM)を加
え、以下同様に行った。尚、ECGが非常に水に溶けに
くいため若干の有機溶媒GMSOと滅菌水で他のカテキ
ン類も同様に溶かした。GMSO含量は予備実験として
行った結果、反応液中の2%を越えるとデータがばらつ
くため2%になるように調製した。硫酸転移酵素、PA
PS、変異原物質濃度はそれぞれ「変異原試験法」に記
載したとおりである。コントロールとして、抗変異原物
質を加えない系を行った。実験は5連で行った。
【0078】(結果)結果を、図10に示す。実験か
ら、硫酸化という第2相反応を考慮した変異原試験法で
新規となる抗変異原性が確認された。結果から、gal
licacid(没食子酸)を持つGCG、ECG、E
GCGが最も強い抗変異原活性を示した。実験は、3連
で4回、5連で2回行っており、いずれも同じような傾
向が確認された。図11は、新規変異原試験における緑
茶カテキン類の新規抗変異原作用を示す写真である。図
11−Aの写真は、controlとして抗変異原物質
を加えなかった時のもので、図11−Bの写真は、緑茶
カテキンであるEGCG(500μM)を加えた時のも
のである。明らかに復帰コロニーの数が違い、強く抗変
異原性を示しているのが分かる。
【0079】実験2 カテキン類の抗変異原作用機構の
解明 この実験では、カテキン類の抗変異原作用機構の解明を
行う。まずいくつかその作用機構が考えられる中で、前
駆物質の硫酸化阻害の可能性を探る。(方法)この実験
では変異原試験法は用いず、PAPSの硫酸基を35Sに
放射ラベルしたPAP35Sを用いてRadio isotope cent
erで硫酸化を行った。組成は次の通りである。 Tris-HCl Buffer(pH7.5) 50mM DHEA ST 8.32μg/ml DHEA 1.0μM PAP35S 0.2μM カテキン類 200μM 基質にDHEAを用いた。変異原試験のように9HMA
を用いたかったがその硫酸体が不安定なためかスポット
が検出されなかったため、DHEAを用いた。これらの
反応液を37℃、40分反応させ、セルロースプレート
に1.5μlずつスポットした。展開溶媒(ブタノー
ル:プロパノール:ギ酸:水=3:1:1:1)で展開
後、イメージングプレートに6時間以上はり、FLA3
000で解析を行った。結果は比活性(pmol/mi
n/mg)で表してある。
【0080】(結果)結果を図12に示す。結果から分
かるようにgallic acid(没食子酸)を持
つ、CG、GCG、ECG、EGCGが非常に強く硫酸
化を阻害しているのが確認される。実験3による緑茶カ
テキン類による抗変異原性と本実験の硫酸化阻害傾向が
似ているため、新規抗変異原性作用は前駆変異原性物質
の硫酸化による活性化の段階を阻害している可能性が示
唆された。
【0081】実験3 新規抗変異原性作用機構の確認 新規抗変異原性作用機構で前駆変異原物質を硫酸化して
活性化する段階を阻害している可能性をさらに裏付ける
ために次の実験を行った。 (方法)変異原試験法にプレインキュベーション法とい
われる方法がある。この実験の場合、前駆変異原物質の
硫酸化反応を行った後で菌液を加えるという方法を行っ
た。この方法を用いて、表12の様に実験を行った。
尚、硫酸転移酵素、PAPS、変異原物質濃度は「変異
原試験法」で記載したとおり一定濃度で行った。
【0082】
【表12】
【0083】(結果)プレインキュベーション法による
緑茶カテキン類の抗変異原作用の結果を、図13に示
す。AとCを比べると、EGCGが抗変異原性を示した
ことが分かる。Cは自然復帰と考える。AとBを比べる
と、先に述べたように9HMAの硫酸体が不安定なせい
かどうかはわからないが、菌を後から加えると非常に効
率が悪く、復帰コロニーが減少する。DとEを比べる
と、DはEGCGを加えて反応を行い、EはEGCGを
後から加えている。その結果、EはEGCGを加えてい
るにもかかわらず、加えていないBの復帰コロニーの数
と変わらなかった。つまりこれらの結果からまとめると
EGCGを一緒に加えて反応させると自然復帰程度で、
後から加えると、加えてなくても同じ結果になるという
ことから、緑茶カテキン類の新規抗変異原作用が前駆変
異原物質の硫酸化による活性化の段階で作用している可
能性が強く示唆された。
【0084】実験4 第1相反応による代謝活性化の確
認 9HMAが報告通りに硫酸化によって代謝活性化してい
ることは確認したが、第1相反応によっては代謝活性化
されないことを確認する。それは既存のAmes試験で
は認められなかった化合物が、新規変異原試験法によっ
て陽性反応を示したということになる。 (方法)第1相反応を行うシトクロムP450酵素群を
多く含むラット肝臓遠沈上清画分であるS9を酵素に用
いる。基質に9HMAを終濃度2.5mM〜0.025
mMを用いた。試験法は「変異原試験法」の酵素がS9
に代わりそれを100μl添加した。PAPSは加える
ものと、加えないものとを行った。
【0085】(結果)S9を用いたPAPS有無による
代謝活性化の状況を図14に示す。9HMA濃度が0.
5〜0.25mM付近で自然復帰よりもやや多い復帰コ
ロニーが見られた。0.5〜0.25mM付近でやや多
い復帰コロニーが確認できた。without PAPSにおい
てもやや自然復帰よりもやや多い復帰コロニーが見られ
るのはS−9中に含まれるPAPSの影響だと考えられ
る。PAPSを加えるとさらに多くなることから、S−
9中に含まれる何らかの硫酸転移酵素の影響でやや多い
復帰コロニーが確認されたと推測する。
【0086】実験5 S9中の硫酸転移酵素の基質の確
認 S9を用いて変異原性が確認されたことから、S9中の
硫酸転移酵素が何を基質にするかを確認する。 (方法)実験2で行ったRadio isotope centerで実験を
行う。表13に従い、酵素にS9を用いて基質にDHE
Aとp-nitrophenol(PNP)を使用して実施した。ま
た、その反応液にEGCGを加え、硫酸化を阻害しているか
を確認した。
【0087】
【表13】
【0088】(結果)結果を、図15に示す。DHEA
ならびにPNP、EGCGの硫酸体が確認された。EG
CGを加えたときでも、硫酸化阻害とEGCGの硫酸体
が確認された。 考察:DHEAとPNPの硫酸体が見られたことから何
らかの硫酸転移酵素が含まれていることが分かる。DH
EA STを用いると確認できなかったEGCGの硫酸
体も確認できたが、それがある硫酸転移酵素によって直
接硫酸化されたとは一概にはいえない。というのは、S
9中には知っての通り様々な酵素が含まれているため、
直接硫酸転移酵素の作用を受けず、他の酵素によって反
応が起きた後に、硫酸化反応が起きている可能性も考え
られるからである。しかし次のこともいえる。ラット肝
臓遠沈上清画分S9という状態ではあるが、少なくとも
他の何らかの酵素の作用を受けたにせよ、結果的には緑
茶成分EGCGによってそれらの硫酸化を若干なりとも
阻害する。しかしこのことが必ず、動物体内において成
り立っているかは分からない。前述したように、S9は
Phenobarbitalと5,6-Benzoflavoneによって誘導がかけ
てあり、それによって発現してきた薬物代謝系の酵素が
働いているからである。
【0089】[考察]硫酸化という新規変異原試験法を
用いて食品機能性成分である、かつてビタミンPと呼ば
れていたフラボノイドを始めとする物質から、緑茶成分
であるカテキン類を用いてその新規抗変異原性を確認す
ることもできた。その中で最も強い効果を示したのがE
GCGであった。EGCGについては様々な報告があ
り、血管内皮細胞の増殖抑制、血管新生の阻害、癌細胞
のテロメラーゼ阻害など広く使用されているフラボノイ
ドである。またカテキン類は動物の血中で存在する比率
において遊離型が多く、生理活性が強い原因の一つでも
ある。このDHEA STを用いた実験では、前駆変異
原物質が硫酸化によって代謝活性化される段階を阻害し
ている可能性が強く示唆された。また、S9を用いた実
験においては、カテキン類が結果的に自ら硫酸化される
ことにより基質の硫酸化を阻害している可能性が示唆さ
れた。
【0090】
【発明の効果】本発明は、安全性試験方法の一つとして
化学物質、医薬、食品、飼料などの分野で遍く利用され
ているエイムス試験のような微生物等を用いた変異原性
試験において、生体内におけるような試験物質の代謝活
性化を付与することにより、簡便で、なおかつ、より確
実な試験方法として利用することを可能とする。したが
って、本発明の変異原性試験法は、安全衛生法、化審
法、薬事法、動物用医薬、飼料添加物、及び農薬取締法
などの安全性規格基準の一つとしての変異原性試験法と
しての利用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、変異原性物質による発ガン過
程を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のR因子の存在を確認したテストの結果の写真を
示す図である。
【図3】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のrfa特性の有無を確認したテストの結果の写
真を示す図である。
【図4】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のHis-試験の結果の写真を示す図である。
【図5】本発明の変異原試験法を、概略的に示す図であ
る。
【図6】本発明の変異原試験法の機作を、概略的に示す
図である。
【図7】本発明の実施例において、DHEA ST粗酵
素を組み込んだエイムス試験における復帰突然変異コロ
ニーの測定結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例において、精製DHEA ST
の電気泳動の結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例において、DHEA ST精製
酵素を組み込んだエイムス試験における復帰突然変異コ
ロニーの測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例において、緑茶カテキン類を
用いた新規変異原性試験による抗変異原性の確認結果を
示す図である。
【図11】本発明の実施例において、緑茶カテキン類の
抗変異原作用の試験結果を示す写真である。
【図12】本発明の実施例において、緑茶カテキン類の
硫酸化阻害活性の試験結果を示す図である。
【図13】本発明の実施例において、プレインキュベー
ション法による緑茶カテキン類の抗変異原作用の試験結
果を示す図である。
【図14】本発明の実施例において、S9を用いたPA
PS有無による代謝活性化の測定結果を示す図である。
【図15】本発明の実施例において、S9中の硫酸転移
酵素が利用する基質についての試験における硫酸化の状
況を示す薄層クロマトグラムの結果を示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年4月2日(2002.4.2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 新規変異原性試験法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、試験物質の突然変
異原性を検出及び/又は測定する変異原性試験方法、特
に、安全性試験方法の一つとして化学物質、医薬、食
品、飼料などの分野で遍く利用されている、試験物質の
突然変異原性を検出及び/又は測定するインビトロ変異
原性試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】我々は日ごろの生活の中で、多くの変異
原性物質にさらされている。その中でも食品やタバコ等
において、特に問題が指摘されている。変異原性物質と
は自然突然変異よりも高い頻度で突然変異を誘発する化
学物質のことで、我々の日常に深いかかわりのある食
品、糞便、大気など自然の中から、続々と見いだされて
いる(菅沼雅美著「発がん Bioscience Series 生命現
象への化学的アプローチ」化学同人、(1985年1月
10日発行))。
【0003】日本人の3大死因に数えられる脳溢血、が
ん、心臓病の中で、最近特にがんによる死亡率が増加を
続け、日本人の死因の第一位を占めている。がんの原因
はわずかな遺伝的なものもあるが、70〜80%が外部
の環境要因によるものである。中でもタバコや食事に起
因するものが大半を占めており、米食や塩分を多く摂取
する日本人の食習慣や、日常普通に行われている魚や肉
類の調理の際の加熱生成物、保存・着色のための食品添
加物などによる遺伝子や染色体の突然変異の誘発が、が
んの発生に大きな影響をもっているといわれる。例え
ば、食品を加熱することによって生じる発がん物質は変
異原性物質を指標にすることにより多くのものが同定さ
れてきた。1977年にトリプトファンの加熱分解生成
物の中から強い変異原性を持つTrp-P-1、Trp-P-2が単離
同定された。つづいてグルタミン酸の加熱分解物からGl
u-P-1、Glu-P-2が単離同定された。他のアミノ酸やタン
パク質についてもその加熱分解物から変異原性物質が精
製されている。
【0004】そもそも化学物質の発がん性の研究の歴史
においては、1915年、わが国の山極と市川がウサギ
の耳に繰り返しコールタールを塗ることにより、世界に
先駆けてがんを人工的に発生させることに成功した。コ
ールタールに含まれるどういう物質が、どういうメカニ
ズムでがんを引き起こすのかの第一の疑問はKennawayを
リーダーとする英国王立がん病院のチームによるベンツ
ピレンの発見により解明された。このとき実験にこの難
問に取り組んだのはCookらの有機化学者であった。
彼らはマウスの皮膚に対する発がんテストおよび蛍光ス
ペクトルを手がかりにして発がん物質の精製を繰り返
し、2トンのピッチから最終的に7gの黄色い結晶を分
離した。そしてその主成分が当時の未知物質であったベ
ンゾ〔α〕ピレン(通称ベンツピレン)であることを化
学合成により確認した。
【0005】人類にとって発ガンのメカニズムを完全に
解明し、ガンの予防法あるいは治療を開発することは長
年の大きな課題であるが、ヒトのガンの約80%は環境
中に存在する発ガン化学物質によって体細胞遺伝子が損
傷を受けるために発生すると考えられている。発ガン化
学物質はそのほとんどが変異原性物質である。発ガン化
学物質による発ガン過程は複雑であるが、遺伝子の損傷
過程であるイニシエーション、異常増殖に伴う腫瘍の顕
在化過程であるプロモーション、そして腫瘍の転移、浸
潤を招く悪性化過程のプログレッションと大きく3段階
を経ると考えられている(篠原和毅著「食品機能研究
法」光琳社(2000年5月)。このうち、変異原物質
による発ガン過程はイニシエーションである(図1)。
【0006】このように、食品中等に見いだされた生理
活性物質の変異原性は、しばしば発ガン性等の関連で問
題になってきた。このような変異原性、発ガン性の可能
性のあるものを網羅的にスクリーニングする試験が変異
原性試験である。変異原性試験には、下等な細菌細胞を
用いたイン ビトロの試験から、高等な動物細胞を用い
た試験まで、種々の試験が開発されている。近年、高等
な動物細胞や下等な細菌細胞を用いた変異原性試験につ
いて、いくつかの方法が開示されている。例えば、高等
動物細胞を用いた変異原性試験に関して、遺伝子突然変
異検出用トランスジェニックマウスを用いた方法(特開
平7−274770号公報)、高感受性マウスを用いた
方法(特開平10−274649号公報)が開示されて
いる。
【0007】また、下等な細菌細胞を用いた変異原性試
験に関して、チミジンキナーゼの作用によって生育阻害
する核酸誘導体を加えた後、生育する細胞に取り込まれ
た色素を測定して変異原性を決定する方法(特開平8−
116990号公報)、核酸を色素又は蛍光色素で標識
したバクテリオファージを用いて細菌に核酸を注入し、
これを用いて光学的に変異を検出する方法(特開平11
−32761号公報)、ルシフェリン−ルシフェラーゼ
発光反応を用いたATP測定法により細胞数又は細胞増
殖率を測定し、変異原性を検出する方法(特開平200
0−125897号公報)、などの方法が開示されてい
る。
【0008】生体内で変異性を惹起する物質を検出する
ことが狙いである変異原性試験の目的からすれば、高等
動物細胞を用いるのが合理的であるが、簡便性や経済性
などの理由で、原核細胞である細菌を用いて、イン ビ
トロで第1次のスクリーニングを行うことが多い。細菌
を用いて、変異原性、発ガン性の可能性のある変異原性
物質を検出す試験法として、国際的によく用いられてい
るのが、エイムス試験(Ames test)である。また、同
じく細菌を用いて変異原性を検出する方法としてレック
・アッセイ(rec-assay)がある。該方法は、試験化学
物質によるDNAの損傷に対する修復能の一部が欠損し
ているために増殖阻害が起こるのを利用する方法の一つ
であり、枯草菌Bacillus subtilisの野生株と組換え修
復欠損株との増殖の差を寒天平板上で測定する方法であ
る。
【0009】エイムス試験(Ames test)は、1971
年、カリフォルニア大学のAmesらがSalmonella typ
himurium TAシリーズを用いて突然変異原物質を検出す
る方法を考案し、発ガン性を予測できる方法として開発
したものである(Mutation Research., 113, 173-215,
1983)。アミノ酸の一種であるヒスチジンの生合成系に
欠損のあるサルモネラ変異株を用いて、ヒスチジン要求
性から非要求性になる復帰突然変異を効率よく簡便にプ
レート上で検出する方法で、突然変異原性物質やがん原
性物質の可能性のある物質の第一次スクリーニング法と
して優れており、広く世界中で用いられ、既知発ガン物
質の大部分がこの方法で陽性の結果を示している。
【0010】この試験法の特徴は、1)突然変異誘発物
質に対してこの目的のために開発された感受性の高いテ
スト菌株を用いることによって、精度よくかつ再現性よ
く突然変異誘発物質を検出できること、2)がん原性物
質の多くが動物体内で代謝されて初めて生物活性を示す
ようになる代謝活性化を必要とする化合物であるから、
肝臓ホモジネートの9000×g、10分間遠沈上清
(S−9)に補酵素を添加したS−9mixを併用した
ことである。この結果、従来の方法で陰性を示していた
代謝活性化を必要とする多くの前駆発ガン物質(procarc
inogen)が変異原性を示した。Salmonella typhimurium
TAシリーズには、TA1535、TA100の塩基対置
換型の突然変異原物質を検出する変異株と、TA153
6、TA1537、TA1538、TA98のフレーム
シフト型の突然変異原物質を検出する変異株がある。
【0011】ただ、フレームシフト変異はグアニンとシ
トシンの塩基が反復している部位で起こるため、アデニ
ンとチミンが反復している部位のフレームシフト変異を
起こす化合物は検出されないと予想されている(矢作多
貴江、蛋白質・核酸・酵素、1178頁〜1188頁、
1975年)。これらのサルモネラ菌には、菌膜表面の
リポ多糖欠損(rfa mutation)、除去修復システム欠損(u
vrB mutation)などの突然変異の導入により、ある程度
大きな化学物質が菌膜を透過しやすく、またDNA損傷
が修復されにくいように工夫されている。TA100、
TA98は薬剤耐性因子プラスミドpKM101の導入
によりさらに検出感度を高めた。
【0012】前述したが、エイムス試験はあくまで環境
中の発ガン物質の第一次スクリーニング法であることを
考慮しておく必要がある。発ガン物質の90%以上がこ
の試験で陽性を示すといわれるが、変異原性の強さと発
ガン性の強さはかなりのばらつきがあることも事実であ
る(Mutation Research., 113, 173-215, 1983)。微生
物を用いるエイムス試験は哺乳動物培養細胞やラット、
マウスなどの哺乳類動物を用いる実験よりもはるかに容
易で、短時間にかつ安価に変異原性物質を検出できる方
法である。しかし、変異原性物質=発ガン物質は完全に
は成り立たない。例えば、プロフラビンや亜硫酸ナトリ
ウムなどは突然変異誘起物質だが発ガン物質だという証
明はなされてない。微生物を用いた発ガン物質の試験に
おいてはこのような、所謂擬陽性のものを拾う可能性も
ある(矢作多貴江、蛋白質・核酸・酵素、1178頁〜
1188頁、1975年)。しかし第一次スクリーニン
グ法として危険性のあるものを網羅的に試験できる点が
優れている。当然、最終的には発ガン性を動物実験で確
認する必要がある。以上のように、エイムス試験は、実
験の容易さ、費用、時間などの点で優れており、環境中
の発がん物質の第一次スクリーニング法として現在最も
広く用いられている(丹羽章著「細胞培養の技術[応用
編]」朝倉書店)。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、試験
物質の突然変異原性を検出及び/又は測定する新規変異
原性試験法、特に安全性試験方法の一つとして化学物
質、医薬、食品、飼料などの分野で遍く利用されている
エイムス試験のような微生物を用いたイン ビトロの変
異原性試験において、変異原性物質が生体内で代謝活性
化されると同様の条件を付与することにより、確度の高
い変異原性物質の変異原性の検出及び/又は測定を可能
とした試験法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究の結果、エイムス試験のような微
生物を用いた変異原性試験において、従来の方法では、
生体内で硫酸化反応により活性化される変異原性物質が
検出できないことを確認した。そこで、該エイムス試験
のような微生物を用いた変異原性試験物質の突然変異原
性を検出及び/又は測定するに際して、試験物質を硫酸
化反応処理することによって、試験物質を代謝活性化す
ることにより、変異原性物質に生体内で代謝活性化され
ると同様の条件を付与することが出来、確度の高い変異
原性物質の変異原性の検出及び/又は測定が可能である
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】即ち、良く知られているようにエイムス
(Ames)法とは、「必須アミノ酸のヒスチジン要求
性変異株のサルモネラ菌を化学物質と一緒に培養する
と、化学物質に変異原性があれば、菌が分裂する過程で
復帰突然変異が起こりヒスチジン非要求性(His+)
になる。その結果、菌はヒスチジンを自己生産し増殖を
続けるためコロニーを形成するので、このコロニー数を
計測することにより、「容易にテストした物質が突然変
異を起こすか否かを知ることが出来る」という原理を利
用した変異原性物質検出法である。ところで、変異原物
質の多くは生体内で代謝されることで変異原性が活性化
されることが知られている。
【0016】例えば、ベンツピレンの場合、その変異原
性によりDNAに傷をつける本体はベンツピレンそのも
のではなく、究極発がん物質(ultimate carcinogen)
と呼ばれる反応性に富む代謝産物、ベンツピレンジオー
ルエポキシドであることが判明している。究極発がん物
質はたいてい求電子体(electrophile)であり、またD
NAは求核体(nucleophile)とみなすことができる。
したがって細胞のがん化はelectrophile‐nucleophile
間の化学反応により引き金が引かれることになる。それ
は生物にとってまったくの予期しなかった出来事であ
る。もともとベンツピレンなどの多環芳香族化合物の生
体内の酵素的酸化反応は、疎水性の異物を水溶性なもの
へ変えて早く体外へ排出するための解毒機構の一部とし
ての反応なのである。皮肉にもこの解毒のために代謝過
程で究極発がん物質が生じてしまい、それがDNAのよ
うな生体にとって最も重要な物質に傷をつけてしまうの
である。近年、さまざまな発がん物質について生体内の
DNAと反応して生じた付加体(adduct)の構造が研究
され、多くの知見が得られている。そしてほとんど例外
なく発がん物質は直接に、また近接発がん物質、究極発
がん物質へと代謝活性化されたあとに、DNAと直接共
有結合することが分かっている。
【0017】このように、がん原性物質の多くが動物体
内で代謝されて初めて生物活性を示すようになる代謝活
性化を必要とする化合物であることから、従来のエイム
ス試験法では、哺乳類の異化代謝経路を補う目的で、肝
臓ホモジネートの9000×g、10分間遠沈上清(S
−9)に補酵素(NADPH−産生系)を添加したS9
mixを併用し、生体内におけるがん原性物質の代謝活
性化を想定した変異原性の試験を行っていた。しかし、
この方法では生体内における重要な解毒代謝反応の一つ
である硫酸化により活性化される変異原物質は検出され
ないので、変異原物質の検出方法としては不完全という
不都合があった。
【0018】そこで、本発明においては、この問題を解
決すべく、例えば、既存のエイムス試験法に硫酸転移酵
素と活性硫酸(PAPS)を応用し、硫酸化による変異
原代謝活性化を特異的に検出できる新規な変異原性試験
法を開発した。通常、人類を含めた哺乳動物には、環境
中から取り込まれた生体外異物を体外に効率よく排泄す
るための解毒代謝機能が備わっている。解毒作用とは、
分かり易く言えば肝臓内であまり水と馴染まない化学物
質が体内で脂肪組織などに蓄積してしまうのを防ぐため
に、水と馴染み易い物質に変換して尿中へ排泄を促すと
いう、進化の過程でつくりあげられた巧妙な防御機構で
ある。
【0019】このような解毒代謝機能として、2つの異
化代謝経路が知られている。 第一相反応:酵素シトクロームP450群が関与して
極性官能基を生ずる酸化反応、還元反応、及び加水分解
反応、 第二相反応:極性の高い物質との抱合反応(硫酸反
応、グルクロン酸抱合、アセチル化抱合、メチル化抱
合、グリシン抱合、グルタチオン抱合) 前記のように、従来のエイムス試験法ではこの第二相反
応の一つで硫酸化反応により活性化される変異原性物質
が検出されない。したがって、本発明は、具体的には試
験物質の代謝活性に用いるS9混合物のようなものとし
て、デヒドロエピアンドステロン硫酸転移酵素(DHE
A ST)と活性硫酸(PAPS)を用い、試験物質に
該DHEA STとPAPSを作用させることにより、
硫酸化反応により活性化される変異原性物質が検出する
ことを可能とした。
【0020】本発明の、変異原性物質を硫酸化反応によ
り活性化させ、変異原性を試験する方法は、検出試験物
質に該DHEA STとPAPSを作用させ、サルモネ
ラ菌を接種後、浸とう培養し、更にソフト寒天を混和
後、最少グルコース寒天培地に重層し、倒置培養し、復
帰突然変異コロニーを計測することにより、実施するこ
とができる。本発明の試験法により、例えば従来のエイ
ムス試験法では検出されない変異原性物質でも検出で
き、安全性試験方法としてより確実な方法として用いる
ことができる。
【0021】すなわち本発明は、試験物質の突然変異原
性を検出及び/又は測定する変異原性試験において、試
験物質を硫酸化反応処理することによって、試験物質を
代謝活性化することを特徴とする変異原性試験法(請求
項1)や、試験物質の硫酸化反応処理を、活性硫酸PA
PSを硫酸基供与体として、硫酸転移酵素の触媒作用に
よって行うことを特徴とする請求項1記載の変異原性試
験法(請求項2)や、硫酸転移酵素として、リコンビナ
ント硫酸転移酵素を用いることを特徴とする請求項1又
は2記載の変異原性試験法(請求項3)や、試験物質の代
謝活性化を、動物の肝臓ホモジネートS9画分に補酵素
類を加えたS9mixによる代謝活性化と併合して行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の変異原
性試験法(請求項4)よりなる。
【0022】また本発明は、試験物質の突然変異原性を
検出及び/又は測定する変異原性試験が、微生物変異株
を用いた試験であることを特徴とする請求項1〜4のい
ずれか記載の変異原性試験法(請求項5)や、微生物変異
株が、サルモネラ菌変異株であることを特徴とする請求
項5記載の変異原性試験法(請求項6)や、サルモネラ
菌変異株を用いた試験が、ヒスチジン要求性株を用いた
エイムス試験であることを特徴とする請求項6記載の変
異原性試験法(請求項7)や、活性硫酸PAPS及び硫酸
転移酵素を具備することを特徴とする請求項1〜7記載
の変異原性試験法に用いるためのキット(請求項8)よ
りなる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明は、特に、細菌のような微
生物を用いてイン ビトロで試験物質の突然変異原性を
検出及び/又は測定する変異原性試験において、試験物
質を硫酸化反応処理することによって、試験物質を代謝
活性化することにより、変異原性物質が生体内で代謝さ
れ活性化される条件で、試験物質の変異原性試験を行う
ことよりなる。
【0024】硫酸化反応は、そもそも多環芳香族化合物
の酵素的酸化反応により、疎水性の異物を水溶性なもの
に変えて、早く対外へ排出するための解毒機構の一部で
あり、この機構が前駆変異原性物質を代謝活性化するこ
とになるものである。解毒機構には、シトクロムP45
0酵素群の行う第1相反応(従来のエイムス試験では、
S9mixを添加することにより、この第1相反応は考
慮されている)と、グルクロン酸抱合やグリコシド抱
合、メチル抱合、アセチル抱合、アミノ酸抱合、グルタ
チオン抱合、脂肪酸抱合などとして知られている第2相
反応とがあり、硫酸化反応は、この第2相反応として知
られている解毒機構である。硫酸化反応の研究は、19
57年にLipmann等の補基質である硫酸基供与体PAP
Sの発見によって行われてきた(J.Biol.Chem., 229, 8
37-851, 1957)。硫酸化は下記のような反応で起こる。
この硫酸化反応は、1876年、Baumannらによって初
めて確認された反応であり、化合物の水酸基に対して活
性硫酸PAPSを硫酸供与体として硫酸転移酵素の触媒
作用によって行われるエステル化反応である(Ber. Dts
ch. Chem. Ges pp.54)。
【0025】
【化1】
【0026】本発明において、試験物質の硫酸化反応処
理を行うには、図2に示される硫酸化反応のように、活
性硫酸PAPSを硫酸基供与体として、硫酸転移酵素の
触媒作用によって行う。硫酸転移酵素としては、公知の
酵素を用いることができる。1980年代の後半以降、
遺伝子のクローニング技術により多くの硫酸転移酵素c
DNAの取得が報告されており、これらのcDNAを用
いて製造したリコンビナント硫酸転移酵素を利用するこ
とができる。例えば、1987年に初めて最初のcDN
A配列が報告されて依頼、多くのcDNA配列が報告さ
れている。硫酸転移酵素の遺伝子ファミリーはフェノー
ル硫酸転移酵素(PST)、ヒドロキシステロイド硫酸
転移酵素(HSST)、フラボノール硫酸転移酵素(F
ST)の3つのファミリーについて研究されている。P
STはさらにフェノール硫酸転移酵素(PST)とエス
トロゲン硫酸転移酵素(EST)、ヒドロキシアリルア
ミン硫酸転移酵素(HAST)、ドーパ/チロシン硫酸
転移酵素があり、今後さらに増えていくものと予想され
る。硫酸転移酵素のcDNA配列や、遺伝子の解明によ
り、リコンビナント硫酸転移酵素としての硫酸転移酵素
の調製が可能であり、該酵素を本発明の硫酸化反応処理
に用いることができる。
【0027】本発明の変異原性試験法において、硫酸基
供与体として用いられる活性硫酸PAPS(3′−ホス
ホ−5′−アデニリル硫酸)は、通常、硫酸転移酵素の
基質として各種硫酸エステルの生合成に使用されている
ものを用いることができる。本発明の、試験物質の硫酸
化反応処理による試験物質の代謝活性化は、微生物を用
いたイン ビトロの変異原性試験における変異原性物質
の代謝活性化に用いることができる。特に、変異原性試
験方法として、広く利用されているサルモネラ菌変異株
を用いたエイムス試験に有利に用いることができる。エ
イムス試験に用いるサルモネラ菌変異株としては、従来
より該試験に用いられているヒスチジン要求性の変異株
を用いることができる。即ち、従来、エイムス試験に用
いられる該サルモネラ菌変異株としてSalmonella typhi
murium TAシリーズが作成されている。
【0028】Salmonella typhimurium TAシリーズに
は、TA1535、TA100があり、該変異株は塩基
対置換型の変異株で、塩基置換型の突然変異原物質によ
って復帰されやすい。また、TA1536、TA153
7、TA1538、TA98があり、該変異株はフレー
ムシフト型の変異株で、事実フレームシフト型の突然変
異を起こす物質によって復帰しやすい。これらのサルモ
ネラ菌は、菌膜表面のリポ多糖欠損、除去修復システム
欠損などの突然変異の導入により化学物質が菌膜を透過
しやすく、またDNA損傷が修復されにくいように工夫
されている。エイムスらはさらにTA1535、TA1
538に薬剤耐性因子であるプラスミドpKM101の
導入によってそれぞれTA100とTA98という新し
い株を改良し、検出感度を高めている。
【0029】本発明においては試験物質の代謝活性化
を、上記のような硫酸化反応処理と、従来、エイムス試
験で用いられていた、動物の肝臓ホモジネートS9画分
に補酵素類を加えたS9mixによる代謝活性化と併合
して行うことができる。肝臓ホモジネートS9画分の調
製は、フェノバルビタール(PB)、3-メチルコラン
トレン(MC)、ポリ塩化ビフェニルなどの誘導物質
(inducer)をラットに投与することによって誘導し、
調製する。さらにNADPH−産生系と肝臓ホモジネー
トS9画分をあわせ、S9mixを調製する。このS9
mixは、生体内薬物代謝における第一相反応を触媒す
るシトクロムP450群(一酸化炭素と結合させると4
50nmに吸収極大を示すことに由来する)と呼ばれる
一群の酵素を多量に含む。シトクロムP450は小胞体
中の電子伝達系末端の酸化酵素であり、多くの薬物の酸
化反応にかかわる。この酵素は小胞体の膜中に埋まって
おり、分子量は約45,000〜55,000Daで多
数のアイソザイムが存在し、多くの研究がなされてい
る。
【0030】本発明の変異原性試験法に用いられる菌株
の培地や酵素、及び基質は、活性硫酸PAPS及び硫酸
転移酵素を具備するキットとして調製することができ
る。現在、安全衛生法、化審法、薬事法、動物用医薬、
飼料添加物、及び農薬取締法などでは、安全性規格基準
の一つとして変異原性試験(Ames法)をクリアーす
る事が必要とされている。本発明の変異原性試験法は、
より確度の高い変異原性試験法として、これらの試験法
に利用することが期待される。
【0031】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定さ
れるものではない。本実施例では、リコンビナント硫酸
転移酵素を用いた本発明の変異原性試験法の検討及び本
発明の変異原性試験法を用いた緑茶カテキン類の抗変異
原作用の確認を行った。
【0032】実施例1 リコンビナント硫酸転移酵素を
用いた本発明の変異原性試験法の検討 [実験材料] (変異原性物質)多くの変異原物質は一般に脂溶性であ
るため有機溶媒であるDMSO(和光純薬工業株式会
社)に溶解させた。この実施例では、試験変異原性物質
として9-hydroxymetylanthracene(Fluka Chemika社
製)を用いた。9-hydroxymethylanthracene は環境中で
見いだされており、特に汚泥や魚類などから発見されて
いる。9-hydroxymethylanthraceneは哺乳動物において
次のように代謝をうけると予想される。
【0033】
【化2】
【0034】また陽性対照試験(ポジティブ・コントロ
ール)として4-nitroquinoline 1-oxide(4NQO)を
用いて試験を行った。
【0035】
【化3】
【0036】(菌株)ヒスチジン要求性突然変異株Salm
onella typhimurium TA98株を用いた。TA98株はFra
meshift型突然変異を起こす突然変異誘起物質を検出す
ることができる。TA98株はTA1538株にR因子
をもつ薬剤耐性遺伝子であるプラスミドpLM101を
導入し、検出の感度を高めた改良株である。これらの株
はヒスチジン合成酵素遺伝子の変異のほかに別の二つの
突然変異が加えられて感度がよくなっているため、突然
変異の誘起が高まっている。第一に除去修復のシステム
(uvrB)を欠損しているため、突然変異の誘起が高まっ
ている。第二に細菌の表面構成分子であるリポ多糖類が
欠損している(rfa(deep rough)mutation)ため、比
較的大きな分子も細胞内に透過する(Mutation Researc
h., 113,173-215,1983)。
【0037】 (培地) (1)Vogel−Bonnerの最少培地E(10倍濃度) 特級MgSO4・7H2O(和光純薬工業株式会社製) 2g 特級Citric acid(和光純薬工業株式会社製) 20g 特級K2HPO4(和光純薬工業株式会社製) 100g 特級NaNH4HPO4・4H2O(和光純薬工業株式会社製) 35g D.W ___________________________________ total 1000ml D.W.で1000mlまでフィルアップし、溶解させオートクレーブで高圧 滅菌後、冷蔵庫に保存した。
【0038】 (2)20%特級D(+)−Glucose溶液 特級D(+)−Glucose(和光純薬工業株式会社製) 200g D.W. ___________________________________ total 1000ml D.W.で1000mlまでフィルアップし、溶解させ
オートクレーブで高圧滅菌後、冷蔵庫に保存した。
【0039】(3)最少グルコース寒天培地(minimal-
glucose-agar-medium) Bacto agar(Difco社製)15gを800m
lのD.W.に溶解させ、オートクレーブで高圧滅菌
後、Vogel−Bonnerの最少培地E(10倍濃
度)を100ml、20%特級D(+)−Glucos
e溶液を100ml加え、total 1000mlと
した。滅菌シャーレ(90×15mm)に約10mlず
つ分注し、冷蔵庫に保存した。糖や寒天は無機塩と混合
して高圧滅菌するとアミノカルボニル反応がおこり、変
異原物質が生成する(矢作多貴江、蛋白質・核酸・酵
素、1178頁〜1188頁、1975年)。
【0040】(4)L−histidine−biot
ine溶液 0.5mM L−histidine(和光純薬工業株
式会社製) 0.5mM −biotine(和光純薬工業株式会社
製) 上記のモル濃度の溶液を調整した。
【0041】 (5)トップアガー Bacto agar(和光純薬工業株式会社製) 0.8g 特級NaCl(和光純薬工業株式会社製) 0.6g D.W. 100ml 上記にL−histidine−biotine溶液を
1/10量(10ml)加え、オートクレーブで高圧滅
菌後、45℃で保温して実験に用いた。L−histi
dine−biotine溶液はろ過滅菌でもオートク
レーブによる高圧滅菌でも変質の心配はない(Mutation
Res., 103, 133-140, 1982)。
【0042】 (6)S9mix S−9(ICN Pharmaceuticals, Inc) 100μl 特級MgCl2・6H2O(和光純薬工業株式会社製)0.4M 20μl 特級KCl(和光純薬工業株式会社製) 1.65M 20μl グルコース−6−リン酸(ナカライテクス株式会社製)0.5M 10μl NADH(KOHJIN.,Co.Ltd.社製) 0.1M 40μl NADPH(KOHJIN.,Co.Ltd.社製) 0.1M 40μl ATP(オリエンタル酵母工業株式会社製) 0.1M 50μl リン酸バッファー(pH 7.4) 0.2M 500μl D.W. 220μl ___________________________________ total 1ml S−9は100μlずつエッペンドルフチューブに分注
し、超冷凍(−80℃)保存した。特級MgCl2・6
2O、特級KClは調製後高圧滅菌して常温に保存
し、グルコース−6−リン酸、NADH、NADPHは
調製後ミリポアフィルターでろ過滅菌して冷蔵保存し
た。またS−9mixは操作直前に調製した。
【0043】 (菌株の保存、前培養) (1)前培養用ブロス培地 Nutrient broth(Difco社製) 8.0g 特級NaCl(和光純薬工業株式会社製) 5.0g D.W. 1000ml 溶解させオートクレーブで高圧滅菌後、50ml用ファ
ルコンチューブに20mlずつ分注した。これを前培養
ブロス培地とした。
【0044】(2)菌株の培養 前培養ブロス培地20mlを50ml用三角フラスコに
無菌的に加え、それに超冷凍(−80℃)保存したヒス
チジン要求生株(His-)TA98を白金耳で掻きと
り接種した。菌株は紫外線に対して感受性が高いためフ
ラスコをアルミホイルで覆い、37℃で振とう培養(6
0〜70/分)を約14〜16時間行った。 (3)菌株の保存 前培養した菌懸濁液20mlに対し1.75mlのDM
SOを加え攪拌し、凍結チューブに0.7mlずつ分注
し、超冷凍(−80℃)保存した。
【0045】(菌株のチェック)Salmonella typhhimur
iumの菌株の性能を調べるために以下の3つのテストを
行った。 (1)R因子(Resistant factor) TA培地 前培養ブロス培地 30ml Bacto agar(Difco製) 0.45g オートクレーブで高圧滅菌後、プレートに10mlずつ
分注し、TA培地とした。TA培地にアンピシリン(8
mg/ml)を10μlスプレッドし、そこに一白金地
の菌懸濁液をストリークした。37℃で48±2時間培
養後のプレートを示した(図2)。アンピシリンを塗っ
たプレート上でもサルモネラ菌が生えてきたことから、
R因子をもっていることが分かった。
【0046】(2)rfa特性 トップアガー30mlに30mM histidine-1mM biot
ineを1.5ml加え、さらに菌懸濁液を1.5ml加
えてよく攪拌した。これを最少グルコース寒天培地に2
mlまいた。寒天が固まった後、ペーパーディスクにク
リスタルバイオレット溶液(200μg/ml)を50
μl染み込ませプレートの中央において24時間倒置培
養した(図3)。ペーパーディスクの周りに約1cmの
生育阻止帯が観察された。 (3)His-試験 試験管に菌懸濁液100μ加える。それに45℃に保温
したトップアガー2mlを加え、よく混合して素早く最
少グルコース寒天培地にまいた(図4)。プレートには
5個の自然復帰コロニーが観察された。
【0047】 (バッファー) (1)Buffer B 特級KCl(和光純薬工業株式会社製) 150mM Na2SO4(和光純薬工業株式会社製) 15mM 特級MgCl2・6H2O(和光純薬工業株式会社製) 15mM PAPS(Sigma社製) 90μM リン酸バッファー(pH 7.4) 10mM 最終濃度が上記となるように溶液を調整し濾過滅菌後、
1mlずつエッペンドルフチューブに分注し、冷凍保存
(−20℃)した。
【0048】 (2)Buffer C KCl(和光純薬工業株式会社製) 150mM リン酸バッファー(pH 7.4) 10mM Albumin,Bovine(Sigma社製) 0.5mg/ml 最終濃度が上記となるように溶液を調整し、濾過滅菌
後、冷蔵保存した(EuropeanJournal of Pharmacolog
y., 293, 173-181, 1995)。
【0049】 (リコンビナント酵素(DHEA ST)の調製) (1)DHEA ST粗酵素 DHEA ST−pGEX-2TKが導入された大腸菌BL21
(Epicurian coli BL21 competent cell)をプレートか
ら爪楊枝で掻き取り、LB培地(アンピシリン最終濃度
50μg/ml入り)1mlで3〜5時間、37℃で培
養した。その後薗培養液を100ml LB培地(アン
ピシリン最終濃度50μg/ml)に加え、37℃で
1.5〜2時間培養した。その後、誘導物質IPTGを
100μl加え、9〜10時間、25℃で誘導した。菌
懸濁液をファルコンチューブに移し、超遠心機(スウィ
ングローター)で3,000rpm、10分遠心した。
その後上清を捨て、沈殿した菌体にBuffer Cを
約15ml加え、よくvortexし、菌体を完全に溶
解させた。Buffer Cに溶解させた菌液15ml
をフレンチプレスで1200kg/cm2の圧力をか
け、細胞破砕した。フレンチプレスは2回行った。その
後、細胞破砕液を超遠心機(アングルローター)で4
℃、10,000rpm、20分遠心を2回行い、未破
砕細胞、細胞膜などを沈殿させ、その上清をDHEAS
T粗酵素とした。
【0050】(2)DHEA ST精製酵素 上記の手順で調製したDHEA ST粗酵素をLysi
s Buffer(50mM Tris−HCl pH
8.0、150mM NaCl 、1mM EDTA)
約10mlで平衡化したGlutathion SepharoseTM48(Am
ersham Pharmacia Biotech社製)500μlに加え、約
30分ローテートし、超遠心機で3,000rpm、1
0分遠心した。沈殿した樹脂にLysis Buffe
r 8mlを加え5分間洗浄し、超遠心機で3,000
rpm、10分遠心を3回繰り返した。次に沈殿した樹
脂をThrombin Buffer(50mM Tr
is−HCl pH8.0、150mM NaCl、
2.5mM CaCl2)8mlを加え5分間洗浄し、
超遠心機で3,000rpm、10分遠心を3回繰り返
した。沈殿した樹脂500μlにThrombin B
uffer 1mlを加え、エッペンドルフチューブに
移した。そのうち20μlを別のエッペンドルフチュー
ブに取り、サンプル化した(融合タンパク質)。樹脂の
入ったエッペンドルフチューブにThrombin(Si
gma社製)3μlを加え、40〜50分ローテートし
た。その後遠心機で7000rpm、5分遠心し、上清
を別のエッペンドルフチューブに取り、Aprotin
in(和光純薬工業株式会社製)5μlを加えてThr
ombinの反応を止めた。また、そのうち20μlを
別のエッペンドルフチューブに取り、サンプル化した
(精製酵素)。また沈殿した樹脂20μlを別のエッペ
ンドルフチューブに取りサンプル化した(GST)。
【0051】(3)タンパク質濃度の測定 DCプロテインスタンダードアッセイ(Bio-Rad社製)
を用いた。反応はLowly法(J.Biol.Chem., 193, 2
65, 1951)に基づいている。標準液としてアルブミンを
希釈し(粗酵素の時はBufferC、精製酵素の時は
Thronbin Bufferで希釈した)、1.
0、0.75、0.5、0.25、0.1、0mg/m
lの溶液をつくった。reagent A 1mlにr
eagent sを20μl加え、reagent A
sとした。標準液、またブランクとして試料を希釈した
Buffer、試料を20μlとり、それにreage
nt As 100μlを加え、よくvortexし、
その後素早くreagent B 800μlを加え、
再びよくvortexした後、15分〜1時間静置し
て、比色計で波長750nmにおける吸光度を測定し
た。アルブミン標準溶液のタンパク濃度をもとに検量線
を作成し、試料のタンパク濃度を求めた。
【0052】[実験方法] (リコンビナント硫酸転移酵素を用いた変異原性試験法
の概略)本発明の、リコンビナント硫酸転移酵素と硫酸
供与体PAPSを用いて前駆変異原物質を硫酸化により代謝
活性化させる変異原試験を、図式的に表示すると、図5
のようになる。この実施例では、変異原物質に、硫酸化
されることで変異原性を示すと報告されている9-Hydrox
ymethylantracene(9HMA)を用いた(Biochemical
and Biophysical research communications.,251,239-2
43,1998)。菌株には、既存のエイムス試験で用いられ
ているヒスチジン要求株の特徴を持つSalmonella typhi
murium TA98を用いた。酵素には、human Dehydroepiand
rosterone sulfotranceferase(h DHEAST)を
用いた。この酵素は大腸菌に組み込んであるものを発現
させ精製したものを用いた。これらを用いて前記図5の
ように実験を行った。菌が復帰するまでの機構を図6に
示す。変異原物質は有機溶媒であるDMSOに溶かし
た。陽性対照実験として直接変異原物質である4-nitroq
uinoline 1-oxide(4NQO)を用いた。
【0053】(変異原性試験手順の概略) 1.S.typhimuriumTA98をBroth培地20mlで3
7℃、14時間培養する 2.試験管を用意しBuffer B(PAPS 1
6.7μM)を加える 3.60μg/mlになるように調製した酵素液(Bu
ffer C希釈)を加える 4.培養した菌液を100μl加える(OD660=1.
5) 5.9HMA(250μM)を2μl加える 6.37℃で20分incubationし、その間、プレートを
温めておき、あらかじめ作っておいたトップアガーを4
5℃に保温する 7.反応後、反応液にトップアガーを2ml加えよく混
和しプレート(最少グルコース寒天培地)にまく 9.37℃で48±2時間倒置培養し、復帰してきたコ
ロニーをカウントする
【0054】(変異原性試験法の操作方法) (1)DHEA ST粗酵素を組み込んだエイムス法 試験管にDHEA ST粗酵素(Buffer Cで希
釈)液を60μl、Buffer B(PAPS入り)
を42μl、菌縣濁液を100μlの順に加えた。最後
に9-hydroxymethylanthraceneを2μl加え(最終濃度
240μM)、37℃、20分間水浴中で振とう培養
(60〜70/分)した。試験管に45℃に保温したト
ップアガー2mlを試験管に加え、反応液と混和後、素
早く最少グルコース寒天培地に重層した。トップアガー
が固まった後、37℃、48±2時間倒置培養し、復帰
突然変異コロニー数を数えた。実験はコントロール(B
〜F)も含め、下(表1)のA〜Fの系で行った。また
全ての実験は5連で行った。
【0055】
【表1】
【0056】DHEA ST粗酵素(10mg/ml)
はBuffer Cで希釈を行い、10、5、2、1、
0.6、0.3、0mg/mlBuffer Cになる
ように調整した。最終的に、DHEA ST粗酵素の反
応液中(total volume 204μl)の最終濃度がそれ
ぞれ2.9、1.5、0.6、0.3、0.2、0.1
mg/mlとなった。
【0057】(2)DHEA ST精製酵素を組み込ん
だエイムス法 試験管にDHEA ST精製酵素(Buffer Cで
希釈)液を60μl、Buffer B(PAPS入
り)を42μl、菌縣濁液を100μlの順に加えた。
最後に9-hydroxymethylanthraceneを2μl加え(最終
濃度240μM)、37℃、20分間水浴中で振とう培
養(60〜70/分)した。試験管に45℃に保温した
トップアガー2mlを試験管に加え、反応液と混和後、
素早く最少グルコース寒天培地に重層した。トップアガ
ーが固まった後、37℃、48±2時間倒置培養し、復
帰突然変異コロニー数を数えた。実験はコントロール
(B〜E)も含め、下(表2)のA〜Eの系で行った。
また全ての実験は5連で行った。
【0058】
【表2】
【0059】DHEA ST精製酵素(0.1986m
g/ml)はBuffer Cで希釈を行い、40、2
0、10、5、0μg/ml Buffer Cになる
ように調整した。最終的にDHEA ST粗酵素の反応
液中(total volume 204μl)の最終濃度がそれぞ
れ11.8、5.9、2.9、1.5、0μg/mlと
なった。
【0060】(3)自然復帰突然変異 自然復帰コロニーを調べるために、菌懸濁液100μl
のみにトップアガーを加え、最少グルコース寒天培地に
重層した。この系は、毎回コントロールとして実験を行
った。
【0061】(4)陽性対照試験 陽性対照(ポジティブ・コントロール)試験として4N
QOを用いた。陽性対照試験とはある物質について行わ
れた変異原性試験の結果が適正な菌かどうか、また、適
切に実施されたかどうかを評価するために立てるコント
ロールのことである。4NQOは10mg/mlとなる
ようにDMSOで調整し、これを菌懸濁液100μlに
対し20μl加え、0.2μg/plateとなるよう
にした。
【0062】[実験結果] (DHEA ST粗酵素を組み込んだエイムス法の結
果)DHEA ST粗酵素濃度依存的に復帰突然変異コ
ロニー数の増加が見られた(実験系A)。これに対し実
験系Bの硫酸供与体PAPSなしにおいては復帰突然変
異のコロニー数の増加は見られなかった(図7、表
3)。また、粗酵素を加えなかった系(実験系C)、菌
に9-hydroxymethylanthraceneのみを作用させた系(実
験系D)では、復帰突然変異コロニー数とほぼかわらな
かった(表4,5,6)。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】(DHEA STの精製)精製したDHE
A STをSDS−PAGEで確認した(図8)。サン
プルとして、融合タンパク質(Lane 2)、DHEA S
T(Lane 3)、GST(Lane 4)を泳動した。またprot
ein marker(Lane 1)を同時に泳動した。結果約33K
Da付近にDHEA STのバンドがでた。また同時に
精製酵素のタンパク濃度を測定した結果、約0.2mg
/mlであった。
【0068】(DHEA ST精製酵素を組み込んだエ
イムス法の結果)DHEA ST精製酵素濃度依存的に
復帰突然変異コロニー数の増加が見られた(実験系
A)。これに対し実験系Bの硫酸供与体PAPSなしに
おいては復帰突然変異のコロニー数の増加は見られなか
った(図9、表7)。また、精製酵素を加えなかった系
(実験系C)、菌に9-hydroxymethylanthraceneのみを
作用させた系(実験系D)では、復帰突然変異コロニー
数とほぼかわらなかった(表8、9、10)。
【0069】
【表7】
【0070】
【表8】
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】[評価]本実施例の実験結果より、硫酸供
与体PAPSを加えない系においては復帰突然変異のコ
ロニー数の増加は見られなかったのに対し、DHEA
ST粗酵素または精製酵素濃度依存的に復帰突然変異コ
ロニー数が増加した。また9-hydroxymethylanthracene
のみを菌に作用させた系では、自然復帰突然変異コロニ
ー数とほぼ同じであったことより、9-hydroxymethylant
hracene自体の変異原性は認められないといえる。これ
らのことより言えることはDHEA ST濃度依存的に
9-hydroxymethylanthraceneの硫酸体が生成し、その硫
酸体が変異原性を持つと考えられる。このことは9-hydr
oxymethylanthraceneが硫酸化により代謝活性化される
ということが確認できた。この実験により、硫酸化を組
み込んだエイムス法を樹立することができた。
【0074】実施例2 本発明変異原性試験法を用いた
緑茶カテキン類の抗変異原作用の確認発ガン過程は一般
的に、遺伝子の損傷過程であるイニシエーション、異常
増殖に伴う腫瘍の顕在化過程であるプロモーション、そ
して腫瘍の転移、浸潤を招く悪性化過程のプログレッシ
ョンと大きく3段階を経ると考えられている。Ames
試験では、イニシエーション段階に限り試験できる。変
異原物質によって受ける変異はイニシエーション段階で
あり、食品機能性成分である緑茶カテキン類などの抗変
異原物質による抗変異原作用は変異原不活化因子として
働いていると考えられる。現在、植物性成分であるフラ
ボノイド(flavonoids)の研究が多く行われている。植物
性成分は大きく10群に分けられ(表11)、酸素複素
環化合物(oxygen heterocyclic compounds)にフラボノ
イドは分類される。本実験ではフラボノイドにも多く種
類がある中で、食品機能性成分である緑茶カテキン類を
用いて新規変異原試験法において抗変異原性が確認され
るか、またその作用機構を解明する目的で行った。今回
使用した全8種類のカテキン構造を下記化学式4に示
す。
【0075】
【表11】
【0076】
【化4】
【0077】[実験] 実験1 緑茶成分であるカテキン類を用いた新規変異原
試験法による抗変異原性の確認 (方法)実施例1の変異原試験法において、試験物質と
して、それぞれのカテキン類(終濃度500μM)を加
え、以下同様に行った。尚、ECGが非常に水に溶けに
くいため若干の有機溶媒GMSOと滅菌水で他のカテキ
ン類も同様に溶かした。GMSO含量は予備実験として
行った結果、反応液中の2%を越えるとデータがばらつ
くため2%になるように調製した。硫酸転移酵素、PA
PS、変異原物質濃度はそれぞれ「変異原試験法」に記
載したとおりである。コントロールとして、抗変異原物
質を加えない系を行った。実験は5連で行った。
【0078】(結果)結果を、図10に示す。実験か
ら、硫酸化という第2相反応を考慮した変異原試験法で
新規となる抗変異原性が確認された。結果から、gal
licacid(没食子酸)を持つGCG、ECG、E
GCGが最も強い抗変異原活性を示した。実験は、3連
で4回、5連で2回行っており、いずれも同じような傾
向が確認された。図11は、新規変異原試験における緑
茶カテキン類の新規抗変異原作用を示す写真である。図
11−Aの写真は、controlとして抗変異原物質
を加えなかった時のもので、図11−Bの写真は、緑茶
カテキンであるEGCG(500μM)を加えた時のも
のである。明らかに復帰コロニーの数が違い、強く抗変
異原性を示しているのが分かる。
【0079】実験2 カテキン類の抗変異原作用機構の
解明 この実験では、カテキン類の抗変異原作用機構の解明を
行う。まずいくつかその作用機構が考えられる中で、前
駆物質の硫酸化阻害の可能性を探る。(方法)この実験
では変異原試験法は用いず、PAPSの硫酸基を35Sに
放射ラベルしたPAP35Sを用いてRadio isotope cent
erで硫酸化を行った。組成は次の通りである。 Tris-HCl Buffer(pH7.5) 50mM DHEA ST 8.32μg/ml DHEA 1.0μM PAP35S 0.2μM カテキン類 200μM 基質にDHEAを用いた。変異原試験のように9HMA
を用いたかったがその硫酸体が不安定なためかスポット
が検出されなかったため、DHEAを用いた。これらの
反応液を37℃、40分反応させ、セルロースプレート
に1.5μlずつスポットした。展開溶媒(ブタノー
ル:プロパノール:ギ酸:水=3:1:1:1)で展開
後、イメージングプレートに6時間以上はり、FLA3
000で解析を行った。結果は比活性(pmol/mi
n/mg)で表してある。
【0080】(結果)結果を図12に示す。結果から分
かるようにgallic acid(没食子酸)を持
つ、CG、GCG、ECG、EGCGが非常に強く硫酸
化を阻害しているのが確認される。実験3による緑茶カ
テキン類による抗変異原性と本実験の硫酸化阻害傾向が
似ているため、新規抗変異原性作用は前駆変異原性物質
の硫酸化による活性化の段階を阻害している可能性が示
唆された。
【0081】実験3 新規抗変異原性作用機構の確認 新規抗変異原性作用機構で前駆変異原物質を硫酸化して
活性化する段階を阻害している可能性をさらに裏付ける
ために次の実験を行った。(方法)変異原試験法にプレ
インキュベーション法といわれる方法がある。この実験
の場合、前駆変異原物質の硫酸化反応を行った後で菌液
を加えるという方法を行った。この方法を用いて、表1
2の様に実験を行った。尚、硫酸転移酵素、PAPS、
変異原物質濃度は「変異原試験法」で記載したとおり一
定濃度で行った。
【0082】
【表12】
【0083】(結果)プレインキュベーション法による
緑茶カテキン類の抗変異原作用の結果を、図13に示
す。AとCを比べると、EGCGが抗変異原性を示した
ことが分かる。Cは自然復帰と考える。AとBを比べる
と、先に述べたように9HMAの硫酸体が不安定なせい
かどうかはわからないが、菌を後から加えると非常に効
率が悪く、復帰コロニーが減少する。DとEを比べる
と、DはEGCGを加えて反応を行い、EはEGCGを
後から加えている。その結果、EはEGCGを加えてい
るにもかかわらず、加えていないBの復帰コロニーの数
と変わらなかった。つまりこれらの結果からまとめると
EGCGを一緒に加えて反応させると自然復帰程度で、
後から加えると、加えてなくても同じ結果になるという
ことから、緑茶カテキン類の新規抗変異原作用が前駆変
異原物質の硫酸化による活性化の段階で作用している可
能性が強く示唆された。
【0084】実験4 第1相反応による代謝活性化の確
認 9HMAが報告通りに硫酸化によって代謝活性化してい
ることは確認したが、第1相反応によっては代謝活性化
されないことを確認する。それは既存のAmes試験で
は認められなかった化合物が、新規変異原試験法によっ
て陽性反応を示したということになる。 (方法)第1相反応を行うシトクロムP450酵素群を
多く含むラット肝臓遠沈上清画分であるS9を酵素に用
いる。基質に9HMAを終濃度2.5mM〜0.025
mMを用いた。試験法は「変異原試験法」の酵素がS9
に代わりそれを100μl添加した。PAPSは加える
ものと、加えないものとを行った。
【0085】(結果)S9を用いたPAPS有無による
代謝活性化の状況を図14に示す。9HMA濃度が0.
5〜0.25mM付近で自然復帰よりもやや多い復帰コ
ロニーが見られた。0.5〜0.25mM付近でやや多
い復帰コロニーが確認できた。without PAPSにおい
てもやや自然復帰よりもやや多い復帰コロニーが見られ
るのはS−9中に含まれるPAPSの影響だと考えられ
る。PAPSを加えるとさらに多くなることから、S−
9中に含まれる何らかの硫酸転移酵素の影響でやや多い
復帰コロニーが確認されたと推測する。
【0086】実験5 S9中の硫酸転移酵素の基質の確
認 S9を用いて変異原性が確認されたことから、S9中の
硫酸転移酵素が何を基質にするかを確認する。 (方法)実験2で行ったRadio isotope centerで実験を
行う。表13に従い、酵素にS9を用いて基質にDHE
Aとp-nitrophenol(PNP)を使用して実施した。ま
た、その反応液にEGCGを加え、硫酸化を阻害しているか
を確認した。
【0087】
【表13】
【0088】(結果)結果を、図15に示す。DHEA
ならびにPNP、EGCGの硫酸体が確認された。EG
CGを加えたときでも、硫酸化阻害とEGCGの硫酸体
が確認された。 考察:DHEAとPNPの硫酸体が見られたことから何
らかの硫酸転移酵素が含まれていることが分かる。DH
EA STを用いると確認できなかったEGCGの硫酸
体も確認できたが、それがある硫酸転移酵素によって直
接硫酸化されたとは一概にはいえない。というのは、S
9中には知っての通り様々な酵素が含まれているため、
直接硫酸転移酵素の作用を受けず、他の酵素によって反
応が起きた後に、硫酸化反応が起きている可能性も考え
られるからである。しかし次のこともいえる。ラット肝
臓遠沈上清画分S9という状態ではあるが、少なくとも
他の何らかの酵素の作用を受けたにせよ、結果的には緑
茶成分EGCGによってそれらの硫酸化を若干なりとも
阻害する。しかしこのことが必ず、動物体内において成
り立っているかは分からない。前述したように、S9は
Phenobarbitalと5,6-Benzoflavoneによって誘導がかけ
てあり、それによって発現してきた薬物代謝系の酵素が
働いているからである。
【0089】[考察]硫酸化という新規変異原試験法を
用いて食品機能性成分である、かつてビタミンPと呼ば
れていたフラボノイドを始めとする物質から、緑茶成分
であるカテキン類を用いてその新規抗変異原性を確認す
ることもできた。その中で最も強い効果を示したのがE
GCGであった。EGCGについては様々な報告があ
り、血管内皮細胞の増殖抑制、血管新生の阻害、癌細胞
のテロメラーゼ阻害など広く使用されているフラボノイ
ドである。またカテキン類は動物の血中で存在する比率
において遊離型が多く、生理活性が強い原因の一つでも
ある。このDHEA STを用いた実験では、前駆変異
原物質が硫酸化によって代謝活性化される段階を阻害し
ている可能性が強く示唆された。また、S9を用いた実
験においては、カテキン類が結果的に自ら硫酸化される
ことにより基質の硫酸化を阻害している可能性が示唆さ
れた。
【0090】
【発明の効果】本発明は、安全性試験方法の一つとして
化学物質、医薬、食品、飼料などの分野で遍く利用され
ているエイムス試験のような微生物等を用いた変異原性
試験において、生体内におけるような試験物質の代謝活
性化を付与することにより、簡便で、なおかつ、より確
実な試験方法として利用することを可能とする。したが
って、本発明の変異原性試験法は、安全衛生法、化審
法、薬事法、動物用医薬、飼料添加物、及び農薬取締法
などの安全性規格基準の一つとしての変異原性試験法と
しての利用が期待されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において、変異原性物質による発ガン過
程を模式的に示した図である。
【図2】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のR因子の存在を確認したテストの結果の写真を
示す図である。
【図3】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のrfa特性の有無を確認したテストの結果の写
真を示す図である。
【図4】本発明の実施例において、使用するサルモネラ
変異株のHis-試験の結果の写真を示す図である。
【図5】本発明の変異原試験法を、概略的に示す図であ
る。
【図6】本発明の変異原試験法の機作を、概略的に示す
図である。
【図7】本発明の実施例において、DHEA ST粗酵
素を組み込んだエイムス試験における復帰突然変異コロ
ニーの測定結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例において、精製DHEA ST
の電気泳動の結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例において、DHEA ST精製
酵素を組み込んだエイムス試験における復帰突然変異コ
ロニーの測定結果を示す図である。
【図10】本発明の実施例において、緑茶カテキン類を
用いた新規変異原性試験による抗変異原性の確認結果を
示す図である。
【図11】本発明の実施例において、緑茶カテキン類の
抗変異原作用の試験結果を示す写真である。
【図12】本発明の実施例において、緑茶カテキン類の
硫酸化阻害活性の試験結果を示す図である。
【図13】本発明の実施例において、プレインキュベー
ション法による緑茶カテキン類の抗変異原作用の試験結
果を示す図である。
【図14】本発明の実施例において、S9を用いたPA
PS有無による代謝活性化の測定結果を示す図である。
【図15】本発明の実施例において、S9中の硫酸転移
酵素が利用する基質についての試験における硫酸化の状
況を示す薄層クロマトグラムの結果を示す図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試験物質の突然変異原性を検出及び/又
    は測定する変異原性試験において、試験物質を硫酸化反
    応処理することによって、試験物質を代謝活性化するこ
    とを特徴とする変異原性試験法。
  2. 【請求項2】 試験物質の硫酸化反応処理を、活性硫酸
    PAPSを硫酸基供与体として、硫酸転移酵素の触媒作
    用によって行うことを特徴とする請求項1記載の変異原
    性試験法。
  3. 【請求項3】 硫酸転移酵素として、リコンビナント硫
    酸転移酵素を用いることを特徴とする請求項1又は2記
    載の変異原性試験法。
  4. 【請求項4】 試験物質の代謝活性化を、動物の肝臓ホ
    モジネートS9画分に補酵素類を加えたS9mixによ
    る代謝活性化と併合して行うことを特徴とする請求項1
    〜3のいずれか記載の変異原性試験法。
  5. 【請求項5】 試験物質の突然変異原性を検出及び/又
    は測定する変異原性試験が、微生物変異株を用いた試験
    であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の
    変異原性試験法。
  6. 【請求項6】 微生物変異株が、サルモネラ菌変異株で
    あることを特徴とする請求項5記載の変異原性試験法。
  7. 【請求項7】 サルモネラ菌変異株を用いた試験が、ヒ
    スチジン要求性株を用いたエイムス試験であることを特
    徴とする請求項6記載の変異原性試験法。
  8. 【請求項8】 活性硫酸PAPS及び硫酸転移酵素を具
    備することを特徴とする請求項1〜7記載の変異原性試
    験法に用いるためのキット。
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Cited By (2)

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2012132335A1 (ja) * 2011-03-25 2014-07-24 カルピス株式会社 培地の製造方法及び該方法により製造された培地
JP2021529511A (ja) * 2018-07-11 2021-11-04 味の素株式会社 腸内細菌科の細菌を用いてアルコール類およびアミン類を酵素によりスルフリル化する方法

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