JP2003245345A - 中空糸膜及びその製造方法 - Google Patents

中空糸膜及びその製造方法

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JP2003245345A
JP2003245345A JP2002047286A JP2002047286A JP2003245345A JP 2003245345 A JP2003245345 A JP 2003245345A JP 2002047286 A JP2002047286 A JP 2002047286A JP 2002047286 A JP2002047286 A JP 2002047286A JP 2003245345 A JP2003245345 A JP 2003245345A
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fiber membrane
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urea
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Yoshio Enomoto
義雄 榎本
Hidetoshi Hidaka
秀敏 日高
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 血液処理装置用セルロース系中空糸膜の、湿
潤時における樹脂包埋部と非樹脂包埋部との内径寸法差
異を小さくして、中空糸膜内の血液の流動状態を改善す
ることにより、血液の活性化を抑制し、血液処理装置内
に残留する血液量を減少させ、すぐれた残血特性を有す
る、血液処理装置用の中空糸膜及びその製造方法を提供
する。 【解決手段】 セルロース系中空糸膜であって、中空糸
膜内に尿素を含有する血液処理装置用の中空糸膜。好ま
しくは、再生セルロースからなり、中空糸膜の乾燥時の
膜厚と湿潤時の膜厚の比が「1.0≦Ww/Wd≦1.
5」(Wwは湿潤状態での膜厚を、Wdは湿潤前の乾燥
状態での膜厚を示す。)であり、尿素の含有量が10〜
70重量%である中空糸膜。その製法は、製造途中にお
いて湿潤状態で中空糸膜に尿素を含浸させ、その後の乾
燥工程で熱をかけることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なセルロース
系中空糸膜及びその製造方法に関する。本発明の中空糸
膜は、血液処理装置用として用いるのに適している。さ
らに詳しくは、本発明の中空糸膜は、残血の少ない血液
浄化器用中空糸膜として、医療分野等において好適に用
いることができる。
【0002】
【従来の技術】中空糸膜型血液処理装置は、血液透析、
血液濾過ないし血漿分離等の血液中の特定成分の分離に
使用されている。中空糸膜型血液処理装置では、ヘッダ
ー部及び中空糸部での血液の流動がスムーズに行われ、
かつ、血液と部材の接触による血液成分の活性化が起こ
らないことが望ましい。そのような血液の流動性のよい
血液浄化器では、使用後の血液浄化器内に残留する血液
量、いわゆる残血量を減少させることができる。
【0003】例えば、血液の流動状態を改善する技術と
して、特開昭57−86362号公報では、中空糸膜型
血液処理装置の樹脂固定部切断面における中空糸膜の内
径を拡大し、血液導入部の開口度を大きくして血液の流
動抵抗を改善した、残血の少ない中空糸膜型血液処理装
置が開示されている。しかしながら、この装置は、多孔
性合成高分子からなる中空糸膜を対象とするものである
が、再生セルロースのように、血液、水等で膨潤する素
材では、膨潤による中空糸膜の膜厚寸法の増加が著しい
ため、開口度を大きくする効果が十分では無い。すなわ
ち、再生セルロースの場合、樹脂包埋処理時の中空糸膜
は乾燥状態で包埋されるため、包埋部の樹脂によって径
方向への膨潤が規制されている中空糸膜は、湿潤した際
に膜厚部の膨潤により内径寸法が縮小する。一方、非樹
脂包埋部では膨潤が規制されないため、膜厚及び内径が
平衡状態まで拡大する。
【0004】上記従来の血液処理装置用中空糸膜の作用
を図に基づいて説明する。図1は、従来から用いられて
いる血液処理装置用のセルロース系中空糸膜とそれを包
埋固定する樹脂の乾燥状態における説明図(模式図)で
あり、図2は、同じ血液処理装置用中空糸膜とそれを包
埋固定する樹脂の湿潤状態における説明図(模式図)で
ある。図1及び図2において、1は中空糸膜を包埋固定
する樹脂、2は中空糸膜の樹脂包埋部、3はその非樹脂
包埋部、4は中空糸の樹脂包埋部の切断面、5は樹脂
の切断面である。図1と図2を対比すると、乾燥状態の
中空糸膜(図1)に比べて湿潤状態の中空糸膜(図2)
では、中空糸膜が膨潤してその膜厚が大きくなっている
が、樹脂包埋部2では、径方向への膨潤はこれを包埋固
定する樹脂1によって規制されるため、切断面4の内径
寸法が縮小しており、一方、非樹脂包埋部3では、膨潤
が規制されないため、その膜厚及び内径が大きく拡大し
ていることが理解できる。
【0005】したがって、このような形態の血液処理装
置用の中空糸膜では、樹脂包埋部と非樹脂包埋部での中
空糸膜の内径寸法の差異が発生して、血液導入部におけ
る樹脂包埋部から非樹脂包埋部へ血液が流れる際の血液
の流れの拡大、及び、血液導出部における非樹脂包埋部
から樹脂包埋部への流れの縮小により、血液の乱れが生
じやすくなり、血液成分の活性化を引き起こす。このこ
とが、セルロース系中空糸膜型血液処理装置の残血性を
悪くしている要因の一つであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の状況に鑑み、本
発明は、従来技術においては十分に達成されていなかっ
た血液処理装置用セルロース系中空糸膜の、湿潤時にお
ける樹脂包埋部と非樹脂包埋部との内径寸法の差異を小
さくして、中空糸膜内の血液の流動状態を改善すること
により、血液の活性化を抑制し、使用後の血液処理装置
内に残留する血液量、すなわち残血量を減少させた、す
ぐれた残血特性を有する血液処理装置用のセルロース系
中空糸膜及びその製造方法を提供することを課題とす
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めに、本発明者らは、湿潤状態で中空糸膜に尿素等を含
浸させて乾燥工程で熱をかけることにより、該中空糸膜
の膜厚の乾燥収縮が抑制され、乾燥した中空糸膜を湿潤
化しても中空糸膜寸法の変化が少なくなることを見いだ
し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明のうち請求項1に記載の
発明は、セルロース系中空糸膜であって、中空糸膜内に
尿素を含有することを特徴とする血液処理装置用の中空
糸膜である。
【0009】本発明のうち請求項2に記載の発明は、請
求項1に記載の中空糸膜であって、乾燥時の膜厚と水湿
潤時の膜厚の比が、以下の範囲である中空糸膜である。 1.0 ≦ Ww/Wd ≦ 1.5 ここで、Wwは中空糸膜の水湿潤状態での膜厚を、Wd
は水湿潤前の乾燥状態での膜厚を示す。
【0010】本発明のうち請求項3に記載の発明は、請
求項1又は2に記載の中空糸膜であって、中空糸膜の重
量に対する尿素の含有量が10〜70重量%である血液
処理装置用中空糸膜である。また、請求項4に記載の発
明は、請求項1から3のいずれかに記載の中空糸膜であ
って、素材が再生セルロースである中空糸膜である。
【0011】本発明のうち請求項5に記載の発明は、製
造途中において乾湿式紡糸法でセルロース系中空糸膜に
湿潤状態で尿素を含浸させ、その後の乾燥工程で熱をか
けることを特徴とする血液処理装置用の中空糸膜の製造
方法である。
【0012】本発明のうち請求項6に記載の発明は、請
求項5に記載の中空糸膜の製造方法であって、凝固・精
練後に孔径保持剤を付与し乾燥する工程において、孔径
保持剤の付与の前後又は孔径保持剤の付与と同時に尿素
を含浸させ、その後に乾燥することとした中空糸膜の製
造方法である。
【0013】本発明のうち請求項7に記載の発明は、請
求項5又は6に記載の中空糸膜の製造方法であって、乾
燥前の中空糸膜を尿素溶液に浸漬して尿素を含浸させる
中空糸膜の製造方法である。また、請求項8に記載の発
明は、請求項7に記載の中空糸膜の製造方法であって、
尿素溶液として尿素水溶液を用いる中空糸膜の製造方法
である。
【0014】本発明のうち請求項9に記載の発明は、請
求項5から8のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法で
あって、素材が再生セルロースである中空糸膜の製造方
法である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明において、「中空糸膜」とは、膜機能を
有する中空糸状の細管のことである。また、本発明にお
いて、「%」の表示は、特に断らない限り、重量割合を
示す。
【0016】セルロース系中空糸膜、特に再生セルロー
スからなる中空糸膜は、血液透析等の血液処理装置用の
中空糸膜として、約30年の使用実績があり、その素材
としての信頼性は高く、現在も広く使用されている。血
液透析用のセルロース系中空糸膜の乾燥時の寸法は、一
般的に、内径が約180μm、膜厚が数μmから数十μ
m程度であるが、セルロース系、特に再生セルロースか
らなる中空糸膜は、湿潤により膨潤する傾向があり、実
際に使用される湿潤状態では、内径及び膜厚ともに乾燥
状態よりも寸法が大きくなる傾向がある。
【0017】本発明の血液処理装置用セルロース系中空
糸膜は、中空糸膜内に尿素を含有する。尿素の含有量が
10%よりも小さくなると、乾燥状態から湿潤状態にし
た時の膜厚の寸法変化が大きく、樹脂包埋部と非樹脂包
埋部の中空糸膜の内径差が大きくなり、効果が得られに
くい。一方、尿素の含有量が70%よりも大きいと、乾
燥状態から湿潤状態にした場合の寸法変化は小さくな
り、形状的には好ましいが、乾燥後の中空糸膜の表面に
尿素の析出が認められる場合があるので、製造工程の安
定性上好ましくない。よって、適正な尿素含有量は、中
空糸膜の構造により異なるが、一般的に血液処理装置用
に使用される範囲の孔を有するセルロース系中空糸膜の
場合、中空糸膜の重量に対して10〜70%の範囲が好
ましい。なお、ここでいう乾燥状態とは、血液処理装置
に組み立てる際に、包埋樹脂、例えば、ポリウレタン樹
脂で包埋する場合に、中空糸膜が含有する水分と包埋用
ポリウレタンの反応による発泡が実質的に起こらない状
態の水分率以下に抑えられている状態をいう。その際の
中空糸膜の水分率としては、10%以下が好ましい。
【0018】このようにして作成される中空糸膜は、乾
燥工程での中空糸膜寸法の収縮を抑制できるため、血液
処理装置用として使用する際の湿潤化による寸法変化が
抑制されている。このようにして作成して血液処理装置
の残血改善への効果は、中空糸膜の湿潤時の膜厚(W
w)と乾燥時の膜厚(Wd)の比が「1.0≦Ww/W
d≦1.5」の範囲であれば効果がある。上記の比が、
1.5よりも大きいと改善効果が十分で無い。一方、
1.0よりも小さい状態の中空糸膜の製造条件は見いだ
されていない。この比は、中空糸膜内に含浸させる尿素
量で管理でき、尿素量が大きいと小さい値となり、尿素
量が小さいとその値は大きくなる。適正な尿素含有量
は、中空糸膜の構造等により異なるが、一般的に、血液
処理装置に使用される中空糸膜であれば、前記の尿素含
有量である10〜70%で達成できる。
【0019】また、一般的に血液処理装置用の中空糸膜
を製造する場合には、乾燥による膜内の孔径変化を抑制
するために、乾燥工程前でグリセリンやポリエチレング
リコール等の孔径保持剤を中空糸膜に付着させるが、本
発明の場合でも、上記各種の孔径保持剤を使用できる。
さらに、本発明によって得られる乾燥状態の中空糸膜
は、大気中の水分を吸収しても中空糸膜の形状変化が起
こりにくく、血液処理装置へ組み込む際の単糸の乱れが
少ない等の工程性もすぐれている。
【0020】公知の方法で乾燥され製造される従来のセ
ルロース系中空糸膜は、乾燥工程での水分の減少に伴
い、主に膜厚部分の収縮が起こり、その後湿潤化するこ
とにより膨潤するが、本発明の中空糸膜は、乾燥前の状
態で中空糸膜に尿素を含浸させてあるために、上記のよ
うな乾燥工程における中空糸膜の収縮が抑制され、その
ため、湿潤化した場合の膨潤が抑制される。本発明によ
って作成された中空糸膜は、その形態を電子顕微鏡で観
察すると、中空糸膜の内部及びその内外表面に結晶状尿
素の存在が認められる場合があるが、これらの付着結晶
状物は、水洗により容易に除去し得る。すなわち、中空
糸膜内に存在している遊離尿素は、液体を充填されてい
る、いわゆるウエットタイプの血液処理装置を製造する
際の洗浄工程で容易に除去されるので、最終製品への尿
素の残留の危惧は無い。
【0021】本発明で示すセルロース系中空糸膜は、公
知の製造方法、例えば、乾湿式紡糸法又は湿式紡糸法に
よって紡糸することができるが、その紡糸の際に、中空
糸膜に尿素を含浸させる工程を付与することで製造でき
る。例えば、銅アンモニウム溶液等の溶媒に溶解した再
生セルロース溶液を、ギアポンプによって中空糸膜作成
用の二重紡口の外周部へ送液し、同時に該紡口の芯部の
中空形成剤用導入管に中空形成剤を導入する。紡口から
吐出された再生セルロース溶液は、空中部を走行した
際、苛性ソーダ水溶液等の凝固浴へ導入され、中空糸膜
状が形成される。凝固後の中空糸膜は、溶媒の除去、洗
浄等の精練工程を経た後、孔径保持剤を付与される。そ
の後、乾燥工程を経て巻き取ることにより、乾燥状態の
中空糸膜が作成される。本発明で開示しているセルロー
ス系中空糸膜は、上記の工程において、乾燥前の孔径保
持剤付与工程前又は付与工程後に尿素を中空糸膜に含浸
させることにより達成される。孔径保持剤としては、グ
リセリンやポリエチレングリコール等の公知の化合物の
水溶液が使用できる。
【0022】また、尿素含浸工程後に熱風ないし高周波
加熱等により乾燥工程で乾燥させるが、本発明の方法と
しては、熱風処理が好ましい。この際に乾燥時間を長く
し過ぎると中空糸膜素材と尿素の反応ないし尿素の分解
等が起こるため、乾燥に必要な時間以上の長時間の処理
は好ましくない。一般的には、150〜200℃の範囲
で数秒から数十秒の乾燥時間が実際的である。
【0023】本発明で使用する尿素溶液の濃度は、水溶
液の場合は5〜50%の範囲が好ましい。5%未満では
中空糸膜内に含有される尿素の量が少なく、湿潤時にお
ける膨潤抑制効果が十分では無い。また、50%を超え
ると、中空糸膜内の尿素含有量が大きくなり、中空糸膜
の構造によっては、乾燥工程において中空糸膜表面に尿
素が析出し、中空糸の紡糸状態を悪化させることがあ
る。尿素溶液の溶媒としては、水又はメタノール、エタ
ノール等の有機溶剤が使用できるが、乾燥時の熱による
爆発等の危険性の面からは水を用いるのが好ましい。ま
た、前記の孔径保持剤であるグリセリンやポリエチレン
グリコール等の溶液に尿素を溶解して含浸させることも
できる。
【0024】中空糸膜に尿素を含浸させる方法として
は、尿素液の入った容器中に乾燥前の中空糸膜を浸漬し
て尿素を含浸させる方法、乾燥前の中空糸膜に尿素溶液
を噴霧する方法、乾燥前の中空糸膜が走行しているロー
ラー等の表面に尿素溶液を供給して中空糸膜と接触させ
る方法等がある。
【0025】また、中空糸膜に対する尿素含有量は、処
理溶液の濃度と溶液との接触時間及び中空糸膜の含液率
によって規定されるが、例えば、30%尿素溶液に中空
糸膜を浸漬し、尿素を含浸させる場合であれば、数秒な
いし数分間の浸漬で十分である。
【0026】また、本発明で作成された中空糸膜には、
遊離尿素が残留しているため、血液処理装置に組み立て
た後、水等による洗浄工程で洗浄して遊離の尿素を除去
した後、次工程である滅菌処理を行うことが望ましい。
この洗浄工程は、水充填されている血液処理装置、いわ
ゆるウエットタイプの血液処理装置では、一般的に滅菌
処理前の工程として採用されている工程であり、その工
程で洗浄すればよい。
【0027】本発明の中空糸膜の作用を図に基づいて説
明する。図3は、本発明に係る血液処理装置用のセルロ
ース系中空糸膜とそれを包埋固定する樹脂の湿潤状態に
おける説明図(模式図)である。図3で用いる符号は、
図1及び図2と同じであり、1は中空糸膜を包埋固定す
る樹脂、2は中空糸膜の樹脂包埋部、3はその非樹脂包
埋部、4は中空糸膜の樹脂包埋部の切断面、5は樹脂の
切断面を示す。前記の図2とこの図3を対比すると、湿
潤状態において、中空糸膜の膜厚は同じように膨潤して
いるが、従来の中空糸膜(図2)に比べて、本発明の中
空糸膜(図3)は、樹脂包埋時の膜厚がすでに湿潤状態
の膜厚の寸法に近く、湿潤による膨潤が小さいため、樹
脂包埋部2での中空糸膜の内径縮小が起こりにくく、切
断面4における内径を大きく維持できる。かつ、切断面
4においても、非樹脂包埋部3の内径寸法との差が少な
くなっていることが理解できる。
【0028】次に、実施例及び比較例によって、本発明
をさらに説明する。なお、実施例と比較例に記載する諸
数値は、以下の手順にしたがって測定した。 <中空糸膜厚寸法の測定>乾燥した中空糸束数十本を、
不織布等で軽く巻き、小さな孔を開けた銅板にセット
し、カミソリで該中空糸束を切断し、外径及び内径を測
定した。その差から乾燥時の膜厚寸法を算出した。該測
定後の中空糸を37℃の水に1時間浸漬し、その後、上
記と同様にして、湿潤時の外径及び内径を測定し、湿潤
時の膜厚寸法を算出した。 <中空糸膜内の尿素含有量の測定>ケルダール法で中空
糸膜中の窒素を測定し、尿素に換算して表示した。 <残血性の評価>中空糸膜束を血液処理装置本体ケース
に収納した後、ウレタン樹脂でケースを固定し、ウレタ
ン面を刃物で切断して、切断面の中空糸膜の両端を開口
状態にした。該血液処理装置を水洗し、ガンマ線照射処
理により滅菌した。その後、以下の条件で、中空糸膜型
血液処理装置の残血性を比較評価した。各血液処理装置
を1.5Lの生理食塩水で洗浄した後、牛新鮮血(ヘマ
トクリット45%、総蛋白質濃度9.0g/dL、ヘバ
リン添加量3000IU/L)を膜間圧力差100mm
Hg、血液流量200mL/分の条件で3時間循環させ
た。各血液処理装置あたりに1.5Lの血液を各々使用
した。その後、200mLの生理食塩水で返血操作を行
った。返血操作後、外観から、残血中空糸本数及び中空
糸固定樹脂切断面の状態を肉眼観察した。
【0029】
【実施例1】中空糸膜紡糸工程において、精練終了後の
中空糸に処理液が十分に中空糸膜と接触できるように3
0%尿素水溶液を滴下した。該処理後の中空糸膜に孔径
保持剤としてグリセリンを付着させて乾燥工程へ導入し
た。その後、巻き取り、乾燥して再生セルロースの中空
糸膜束を作成した。該中空糸膜を公知の方法で血液処理
装置容器に収納し、有効膜面積1.5m2 の血液透析装
置を組み立て、水洗、滅菌処理した。該透析装置の残血
性を評価した。その評価結果、中空糸膜の乾燥時と湿潤
時の膜厚寸法及びその血液透析装置作成に使用した収納
前の中空糸膜内の尿素含有量を表1に示す。
【0030】
【実施例2】尿素濃度を20%とし、該尿素水溶液に精
練後の中空糸を約1分間浸漬した以外は、実施例1と同
じ方法で、セルロース中空糸膜型血液透析装置を作成
し、該透析装置の残血性を評価した。その評価結果、中
空糸膜の乾燥時と湿潤時の膜厚寸法及びその血液透析装
置作成に使用した収納前の中空糸膜内の尿素含有量を表
1に示す。
【0031】
【比較例1】尿素水溶液処理をしない状態で、実施例1
と同様にして再生セルロース中空糸膜束を使用した血液
透析装置を組み立て、実施例1と同じ条件で水洗、滅菌
処理を行って有効膜面積1.5m2 の比較用血液透析装
置を作成した。評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】 ──────────────────────────────────── 血液透析 中空糸膜の膜厚 使用中空糸膜内 残血中空 切断面観察結果 装置 寸法比 の尿素含有量 糸膜本数 (両切断面) (Ww/Wd) (%) (本) ──────────────────────────────────── 実施例1の装置 1.3 40 5 微小な血液凝集 塊数個あり ──────────────────────────────────── 実施例2の装置 1.4 28 5 同 上 ──────────────────────────────────── 比較例1の装置 2.7 0 約100 血液凝集塊多数 あり ────────────────────────────────────
【0033】
【実施例3】尿素水溶液の濃度を5、10、20及び4
0%とし、中空糸膜の接触時間を3秒間とした以外は、
実施例1に示した方法と同一の条件で再生セルロース中
空糸膜を作成し、血液透析装置を作成した。残血性の評
価結果、中空糸膜の乾燥時と湿潤時の膜厚寸法及びその
血液透析装置作成に使用した収納前の中空糸膜内の尿素
含有量を表2に示す。
【0034】
【表2】 ──────────────────────────────────── 尿素溶液 中空糸膜の膜厚 使用中空糸膜内 残血中空 切断面観察結果 濃度 寸法比 の尿素含有量 糸膜本数 (両切断面) (Ww/Wd) (%) (本) ──────────────────────────────────── 5% 1.5 14 10 微小な血液凝集 塊数個あり ──────────────────────────────────── 10% 1.4 17 15 同 上 ──────────────────────────────────── 20% 1.3 30 8 同 上 ──────────────────────────────────── 40% 1.1 42 6 同 上 ────────────────────────────────────
【0035】<上記各実施例の結果の所見>表1と表2
から、中空糸膜の水湿潤状態の膜厚と水湿潤前の乾燥状
態の膜厚の比が「1.0≦Ww/wd≦1.5」の範囲
である中空糸膜は、すぐれた残血特性を有することが理
解できる。また、表1から、尿素を含有していない中空
糸膜に比べて尿素を含有している中空糸膜は、残血特性
が大幅に向上することが理解できる。さらに、表2か
ら、尿素溶液の濃度を5〜40%の範囲にすると、残血
特性が大幅に向上することが理解できる。
【0036】
【実施例4】尿素水溶液の濃度を5、10、20%とし
た以外は、実施例1と同じ条件で9000本の中空糸膜
からなるセルロース系中空糸膜束、ポリエチレンシート
で包装した中空糸膜束を作成した。作成した中空糸膜束
の束端を包装したシートから5cm引き出し、室内に放
置した。30分後にシートから引き出した中空糸膜束束
端の最外周の広がり(中空糸のバラケ)を測定した。2
0%の尿素溶液で処理した束でわずかに中空糸数本の曲
がりによるバラケが認められたが、5%、10%で処理
した束では実質的にバラケが認められなかった。
【0037】
【比較例2】尿素処理をしなかった以外は、実施例4と
同一条件で中空糸膜束を作成し、実施例4と同じ条件で
中空糸膜束を室内に放置して、中空糸膜のバラケ状態を
観察した。多数の中空糸膜に曲がりが認められ、束の全
周にわたってバラケが認められた。
【0038】
【発明の効果】以上、詳細に説明するとおり、本発明
は、セルロース系中空糸膜において、該中空糸膜内に尿
素を含浸させ、該中空糸膜は尿素を含有しているので、
従来の中空糸膜に比べて、湿潤時と乾燥時における樹脂
包埋部と非樹脂包埋部との内径寸法の差を小さくするこ
とができる。したがって、本発明のセルロース系中空糸
膜は、これを血液処理装置用として使用しても、中空糸
膜内の血液の流動状態を大幅に改善できる。すなわち、
本発明の中空糸膜は、血液処理装置用として使用して、
血液の活性化を抑制することができ、使用後の血液処理
装置内に残留する血液量を減少させることができる、す
ぐれた残血特性を有する。したがって、本発明により、
残血が少ないので血液処理装置用として好適に使用でき
る中空糸膜及びその製造方法を提供できる。よって、本
発明の血液処理装置用の中空糸膜は、血液透析、血液濾
過、血液透析濾過等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の血液処理装置用中空糸膜とそれを包埋固
定する樹脂の乾燥状態における切断面の説明図
【図2】従来の血液処理装置用中空糸膜とそれを包埋固
定する樹脂の湿潤状態における切断面の説明図
【図3】本発明の血液処理装置用中空糸膜とそれを包埋
固定する樹脂の湿潤状態における切断面の説明図
【符号の説明】
1:中空糸膜を包埋固定する樹脂 2:中空糸膜の樹脂包埋部 3:中空糸膜の非樹脂包埋部 4:中空糸膜の樹脂包埋部の切断面 5:樹脂の切断面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B01D 71/10 B01D 71/10 D06M 11/64 D06M 13/148 13/148 101:06 // D06M 101:06 1/22 Fターム(参考) 4C077 AA05 BB01 CC01 KK30 PP03 4D006 GA13 HA01 HA18 MA01 MA21 MA31 MA33 MB16 MB20 MC11 MC11X MC12 MC12X NA54 NA63 NA64 PA01 PB09 4L031 AA02 AB01 BA34 DA00 4L033 AA02 AB01 AC15 BA12

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セルロース系中空糸膜であって、中空糸
    膜内に尿素を含有することを特徴とする血液処理装置用
    中空糸膜。
  2. 【請求項2】 乾燥時の膜厚と水湿潤時の膜厚の比が、
    以下の範囲である請求項1に記載の血液処理装置用の中
    空糸膜。 1.0 ≦ Ww/Wd ≦ 1.5 ここで、Wwは中空糸膜の水湿潤状態での膜厚を、Wd
    は水湿潤前の乾燥状態での膜厚を示す。
  3. 【請求項3】 中空糸膜の重量に対する尿素の含有量が
    10〜70重量%である請求項1又は2に記載の中空糸
    膜。
  4. 【請求項4】 素材が再生セルロースである請求項1か
    ら3のいずれかに記載の中空糸膜。
  5. 【請求項5】 製造途中においてセルロース系中空糸膜
    に湿潤状態で尿素を含浸させ、その後の乾燥工程で熱を
    かけることを特徴とする血液処理装置用の中空糸膜の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 凝固・精練後に孔径保持剤を付与し乾燥
    する工程において、孔径保持剤の付与の前後又は孔径保
    持剤の付与と同時に尿素を含浸させ、その後に乾燥する
    こととした請求項5に記載の血液処理装置用中空糸膜の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 乾燥前の中空糸膜を尿素溶液に浸漬して
    尿素を含浸させる請求項5又は6に記載の中空糸膜の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 尿素溶液として尿素水溶液を用いる請求
    項7に記載の中空糸膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 素材が再生セルロースである請求項5か
    ら8のいずれかに記載の中空糸膜の製造方法。
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