JP2003209856A - ホワイトバランス補正方法 - Google Patents
ホワイトバランス補正方法Info
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Abstract
バランス補正を適正に行う、また、適正なプリント濃度
を得る。 【解決手段】入力されたカラー画像中に含まれるグレー
および/または肌色の色情報を用いて、前記カラー画像
を撮影した際の撮影光源の色温度を推定し、該推定され
た色温度により、前記カラー画像の画像信号を補正する
ことを特徴とするホワイトバランス補正方法および入力
されたカラー画像中の各画素の画像信号に対して、所定
の係数を乗算し、その結果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍
に入る画素を肌色候補画素として検出し、該検出された
肌色候補画素の所定の色信号についての平均を、該色信
号のプリント上における所定濃度に割り当てるようにし
たことを特徴とする濃度補正方法を提供することにより
前記課題を解決する。
Description
して、デジタル画像処理を施し、プリントを作成する際
のカラー画像のホワイトバランス補正及び濃度補正の技
術に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、銀塩写真技術における露光系で
は、一般にアナログ露光(面露光、直接露光)によって
プリントが行われていた。すなわち、現像済みのネガフ
ィルムを所定の焼き付け位置に位置決めして、白色光源
(ハロゲンランプ等)からの光を照射し、ネガフィルム
からの透過画像を印画紙に結像して露光していた。 【0003】これに対して、近年では、デジタル露光を
利用する焼き付け装置、すなわち、ネガフィルムやカラ
ーリバーサルフィルム等の写真フィルムに記録された画
像を光電的に読み取って、読み取った画像をデジタル信
号とした後、種々の画像処理を施して記録用の画像デー
タとし、この画像データに応じて変調した記録光によっ
て感光材料を走査露光して画像(潜像)を記録し、(仕
上がり)プリントとするデジタルフォトプリンタが実用
化されている。 【0004】このようなデジタルフォトプリンタにおい
ては、画像をデジタル画像データとして取り扱うので、
フィルムに撮影された画像のみならず、デジタルスチル
カメラ(DSC)等で撮影された画像や、CD−Rやフ
レキシブルディスク、リムーバブルハードディスク(Z
ip、Jaz等)等の磁気記録媒体、MOディスク(光
磁気記録媒体)等の各種の記録媒体にデジタルデータと
して記録された画像データについても、画像処理を施し
てプリントとして出力することができる。 【0005】従来、カラーネガフィルムは、多数の一般
ユーザによって広く利用されており、そのネガフィルム
への原稿画像の撮影状態は必ずしも一様ではなく、例え
ば昼光や蛍光灯等の様々な光源下で使用されている。従
って、現像済ネガフィルムからプリントを作成する場
合、プリント光源の光質を一定にして、焼き付けを行う
と、撮影光源の色味が直接プリントに反映されてしま
い、不適切なプリントになってしまうことがあった。 【0006】そのため、従来、プリント上でホワイトバ
ランスを調整するために様々な工夫がなされて来た。そ
の中の代表的なものとして、「世の中の色をすべて平均
すればグレーである。」というエバンスの原理(仮説)
に基づく、LATD方式がある。LATD(Large Area
Transmission Density 、大面積平均透過濃度) とは、
画面全体の平均透過濃度のことをいい、LATD方式と
は、カラーネガフィルムの各コマのLATDを測定し、
そのRGB濃度の大小によりプリント光源の光質を変化
させることによりプリント上の平均色をグレーに近づけ
るというものである。 【0007】一方、近年、デジタルスチルカメラ(DS
C)が急激に普及し始めている。DSCは、シーンを撮
像するという意味でカラーネガと同一視できるが、根本
的に異なる点がある。それは、カラーネガフィルムに撮
影された画像は、それ自体を観察することはないのに対
し、DSC画像は、直接鑑賞の対象になるということで
ある。そのため、DSC画像は、これをプリントとして
出力する以前に、DSC画像自体がホワイトバランスの
とれた美しい画像でなくてはならない。カラーネガフィ
ルムと同様にDSCも様々な光源下で撮影するため、ホ
ワイトバランスを補正する機能がないと、不満足な画像
となってしまうため、最近のほとんどのDSCには、ホ
ワイトバランス補正を自動的に行うAWB(Auto Whit
e Balance ) 機能が搭載されている。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
たLATD方式は、一定の成果をあげてきたが、一方で
不都合なプリントをも生み出しているという問題があ
る。その一つにプリントの色などが偏ってしまうカラー
フェリアの発生がある。例えば、赤い服を着た女性のシ
ーンを撮影した画像に対してLATD方式でホワイトバ
ランス補正を行うと、画面全体をグレーにしようとする
ために、赤の補色であるシアン色が画面全体に入れられ
るが、このため赤い服は濁り、女性の顔色は悪くなって
しまう。また、画面全体として赤みのシーンの場合、そ
れが光源によるものか、被写体によるものかの区別がで
きないため、LATD方式では、原因が光源の場合には
うまくいくが、原因が被写体の場合には、上のようなカ
ラーフェリアを引き起こすという問題がある。 【0009】また、前記DSCのAWB機能は基本的に
ネガフィルム/プリント系と同様に前記エバンスの原理
に基づいており、ネガフィルム/プリント系のLATD
によるホワイトバランス補正と同様の問題を有してい
る。すなわち、AWB後のDSC画像は、エバンスの原
理の平均性能として約60〜70%は、カラーバランス
のとれた良好な画像となるが、残りの約30〜40%
は、AWBの作動不良による、何らかのカラーバランス
補正をさらに必要とする画像である。従って、DSC画
像からプリントを作成する際にホワイトバランス補正を
しなければ、これらのプリントの約30〜40%は、不
満足な、受け入れ難いプリントとなってしまう。 【0010】以上述べたように、従来技術のエバンスの
原理に基づくLATD方式では、画面全体の平均値がグ
レーという仮説によってホワイトバランス補正を行って
いるが、この方式では画像中の真のグレーを見い出すこ
とができないためホワイトバランス補正が充分ではな
く、却って逆補正してしまう場合も少なくなかった。ま
た、このようなLATD方式でプリントの画像全体の濃
度補正を行おうとすると、主要被写体の濃度がシーンの
構成によって影響を受け、適正濃度に仕上がらないとい
う問題があったため、主要被写体(多くの場合顔であ
る。)を検出して、その濃度に基づいてプリント濃度を
決める方法が提案されている。一方、プリント濃度が適
正かどうかの判断は、画面全体の濃度よりは、むしろ主
要被写体の濃度によりなされるため、主要被写体である
顔を検出して、顔の濃度が適正になるように画像全体を
濃度補正することが重要である。 【0011】しかし、主要被写体である顔の検出は、一
般に形状認識を用いて行われているが、顔の検出を精度
良く行うことは非常に難しいのが現状である。また、顔
の検出を色情報を用いて行う方法も試みられているが、
光源が未知な場合にはやはり難しいという問題がある。
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであ
り、入力された画像データに対してデジタル画像処理を
施してプリントを作成する際に、ホワイトバランス補正
を適正に、高い得率で実現する技術を提供することを第
1の課題とし、また光源が未知の場合に、画像中から肌
色の領域を検出し、その情報を基にして適正なプリント
濃度を得る技術を提供することを第2の課題とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】前記第1の課題を解決す
るために、本発明の第1の態様は、入力されたカラー画
像中に含まれるグレーおよび/または肌色の色情報を用
いて、前記カラー画像を撮影した際の撮影光源の色温度
を推定し、該推定された色温度により、前記カラー画像
の画像信号を補正することを特徴とするホワイトバラン
ス補正方法を提供する。 【0013】また、前記撮影光源の色温度を推定し、前
記カラー画像の画像信号を補正する際、グレーおよび肌
色の色情報のみを用いることが好ましい。 【0014】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画
素とし、および/または、グレーの黒体軌跡曲線の近傍
に入る画素をグレー候補画素として、該肌色候補画素お
よび/またはグレー候補画素の個数が最大となるよう
に、前記係数を最適化して得られる肌色候補画素群およ
び/またはグレー候補画素群のそれぞれの平均色温度か
ら前記撮影光源の色温度を推定し、前記最適化された係
数が乗算された前記カラー画像信号を、前記推定された
色温度と基準白色の色温度との差分だけ補正するように
したことが好ましい。 【0015】また、前記肌色候補画素およびグレー候補
画素の個数が最大となるように係数を最適化して得られ
る肌色候補画素群およびグレー候補画素群のそれぞれの
平均色温度から撮影光源の色温度を推定することが好ま
しい。 【0016】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画
素とし、また、グレーの黒体軌跡曲線の近傍に入る画素
をグレー候補画素として、該肌色候補画素群の平均色温
度とグレー候補画素群の平均色温度との差が最小となる
ように、前記係数を最適化して得られる肌色候補画素群
及びグレー候補画素群のそれぞれの平均色温度から前記
撮影光源の色温度を推定し、前記最適化された係数が乗
算された前記カラー画像信号を、前記推定された色温度
と基準白色の色温度との差分だけ補正するようにしたこ
とが好ましい。 【0017】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画
素とし、また、グレーの黒体軌跡曲線の近傍に入る画素
をグレー候補画素として、該肌色候補画素および/また
はグレー候補画素の個数が最大となり、かつ、該肌色候
補画素群の平均色温度とグレー候補画素群の平均色温度
との差が最小となるように、前記係数を最適化して得ら
れる肌色候補画素群及びグレー候補画素群のそれぞれの
平均色温度から前記撮影光源の色温度を推定し、前記最
適化された係数が乗算された前記カラー画像信号を、前
記推定された色温度と基準白色の色温度との差分だけ補
正するようにしたことが好ましい。 【0018】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画
素とし、また、グレーの黒体軌跡曲線の近傍に入る画素
をグレー候補画素として、該肌色候補画素及びグレー候
補画素の個数が最大となり、かつ、該肌色候補画素群の
平均色温度とグレー候補画素群の平均色温度との差が最
小となるように、前記係数を最適化して得られる肌色候
補画素群及びグレー候補画素群のそれぞれの平均色温度
から前記撮影光源の色温度を推定し、前記最適化された
係数が乗算された前記カラー画像信号を、前記推定され
た色温度と基準白色の色温度との差分だけ補正するよう
にした第1のホワイトバランス補正信号、及び前記入力
されたカラー画像中の各画素の画像信号に対して、所定
の係数を乗算し、その結果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍
に入る画素を肌色候補画素とし、また、グレーの黒体軌
跡曲線の近傍に入る画素をグレー候補画素として、該グ
レー候補画素の個数が最大となり、かつ、該肌色候補画
素群の平均色温度とグレー候補画素群の平均色温度との
差が最小となるように、前記係数を最適化して得られる
肌色候補画素群及びグレー候補画素群のそれぞれの平均
色温度から前記撮影光源の色温度を推定し、前記最適化
された係数が乗算された前記カラー画像信号を、前記推
定された色温度と基準白色の色温度との差分だけ補正す
るようにした第2のホワイトバランス補正信号、の二つ
のホワイトバランス補正信号を用いて補正するようにし
たことが好ましい。 【0019】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画
素とし、また、グレーの黒体軌跡曲線の近傍に入る画素
をグレー候補画素として、該グレー候補画素の個数が最
大となり、かつ、該肌色候補画素群の平均色温度とグレ
ー候補画素群の平均色温度との差が最小となるように、
前記係数を最適化して得られる肌色候補画素群及びグレ
ー候補画素群のそれぞれの平均色温度から前記撮影光源
の色温度を推定し、前記最適化された係数が乗算された
前記カラー画像信号を、前記推定された色温度と基準白
色の色温度との差分だけ補正するようにした第1のホワ
イトバランス補正信号、及び前記入力されたカラー画像
中の各画素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、
その結果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色
候補画素とし、また、グレーの黒体軌跡曲線の近傍に入
る画素をグレー候補画素として、該肌色候補画素の個数
が最大となり、かつ、該肌色候補画素群の平均色温度と
グレー候補画素群の平均色温度との差が最小となるよう
に、前記係数を最適化して得られる肌色候補画素群及び
グレー候補画素群のそれぞれの平均色温度から前記撮影
光源の色温度を推定し、前記最適化された係数が乗算さ
れた前記カラー画像信号を、前記推定された色温度と基
準白色の色温度との差分だけ補正するようにした第2の
ホワイトバランス補正信号、の二つのホワイトバランス
補正信号を用いて補正するようにしたことが好ましい。 【0020】また、前記入力されたカラー画像中の各画
素の画像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結
果、所定の目的関数が最小になるように前記係数を最適
化する際に、前記入力された画像の画像信号の最大値を
検出し、該最大値で前記入力された画像の各画像信号を
割り算することにより前記画像信号の最大値が1.0と
なるように規格化した画像信号を用いるようにしたこと
が好ましい。 【0021】また、前記肌色及びグレーの黒体軌跡曲線
を設定する際に、分光感度分布として、前記入力画像を
撮影した撮影装置の分光感度を用いるようにしたことが
好ましい。 【0022】また、前記肌色及びグレーの黒体軌跡曲線
を設定する際に、分光感度分布として、BT709の分
光感度を用いるようにしたことが好ましい。 【0023】また、同様に前記第1の課題を解決するた
めに、本発明の第2の態様は、入力されたカラー画像に
対して、デジタル画像処理を施しプリントを作成する際
の、ホワイトバランスを補正するホワイトバランス補正
装置であって、入力されたカラー画像中に含まれるグレ
ーおよび/または肌色の色情報を用いて、前記カラー画
像を撮影した際の撮影光源の色温度を推定する手段と、
前記推定された色温度により前記カラー画像の画像信号
を補正する手段と、を備えたことを特徴とするホワイト
バランス補正装置を提供する。 【0024】また、前記撮影光源の色温度を推定する手
段は、前記入力されたカラー画像の各画素の画像信号に
対して、所定の係数を乗算する手段と、前記乗算の結
果、肌色の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を検出する肌
色候補画素検出手段、及びグレーの黒体軌跡曲線の近傍
に入る画素を検出するグレー候補画素検出手段と、前記
肌色候補画素の個数および/または前記グレー候補画素
の個数が最大となり、かつ前記肌色候補画素群の平均色
温度とグレー候補画素群の平均色温度との差が最小とな
るように前記係数を最適化する手段と、前記肌色候補画
素群の平均色温度及びグレー候補画素群の平均色温度か
ら、撮影光源の色温度を算出する手段と、を有し、ま
た、前記カラー画像の画像信号を補正する手段は、前記
最適化された係数が乗算された前記カラー画像信号を、
前記推定された色温度と基準白色の色温度との差分だけ
補正する手段であることが好ましい。 【0025】また、同様に前記第2の課題を解決するた
めに、本発明は、入力されたカラー画像中の各画素の画
像信号に対して、所定の係数を乗算し、その結果、肌色
の黒体軌跡曲線の近傍に入る画素を肌色候補画素として
検出し、該検出された肌色候補画素の所定の色信号につ
いての平均を、該色信号のプリント上における所定濃度
に割り当てるようにしたことを特徴とする濃度補正方法
を提供する。 【0026】また、前記所定の色信号をG信号とし、前
記検出された肌色候補画素の平均G信号を、プリント上
の所定のG濃度に割り当てるようにしたことが好まし
い。また、このとき、前記所定のG濃度を、0.7〜
1.0としたことが好ましい。 【0027】さらに、前記第1及び第2の課題を解決す
るために、本発明は、上記ホワイトバランス補正方法、
及び、上記濃度補正方法のうち少なくとも一方を、コン
ピュータに実行させるためのプログラムとして、コンピ
ュータにより読み取り可能に記録したことを特徴とする
記録媒体を提供する。 【0028】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係るホワイトバラ
ンス補正方法について、添付の図面に示される好適実施
形態を基に、詳細に説明する。 【0029】図1は、本発明のホワイトバランス補正方
法を実行するホワイトバランス補正装置の一実施形態の
概略を示すブロック図である。図1に示すホワイトバラ
ンス補正装置は、入力画像信号に対して、デジタル画像
処理を施し、プリントを作成する際の、ホワイトバラン
ス補正を行うためのものであり、例えば、デジタルフォ
トプリンタ等の画像処理装置内に設置される。 【0030】図1において、ホワイトバランス補正装置
10は、主に、入力カラー画像を撮影した際の撮影光源
の色温度を推定する光源色温度推定手段12と、該光源
色温度推定手段12によって推定された撮影光源の色温
度を用いて、ホワイトバランス補正を行う画像信号補正
手段14とを有して構成される。また、光源色温度推定
手段12は、係数乗算手段16、肌色候補検出手段1
8、グレー候補検出手段20、係数最適化手段22およ
び光源色温度算出手段24によって構成される。 【0031】これらの各手段の働きについて説明する前
に、まず本発明の原理を説明することとする。従来のホ
ワイトバランス補正は、前述したように、色が偏ってい
た場合には、エバンスの原理に基づいて、画面全体の色
の平均がグレーになるように補正をしていたのである
が、これに対し、本発明は、画面の中からグレーの部分
を積極的に探してそのグレーの候補点がプリント上でグ
レーに仕上がるように露光されるように補正しようとい
うものである。 【0032】カラーネガフィルムの場合でも、デジタル
スチルカメラ(DSC)の場合でも、ホワイトバランス
補正の方法は同じであり、以下DSCにより、一般的な
条件でシーンを撮影した場合を例にとり説明することと
する。例えば、DSCにより、色温度4000Kの自然
昼光でグレー部分(グレーおよびその近似色)を含むシ
ーンを撮影した場合を考える。このとき、撮影したグレ
ー部分の画像信号(R,G,B)を次の式(1) r=R/(R+G+B) b=B/(R+G+B) ・・・・・・(1) により、色度座標(r,b)に変換して、色度図にプロ
ットする。 【0033】図2に色度図を示す。図2において、曲線
Gy はグレーの黒体軌跡である。黒体軌跡とは、良く知
られているように、色温度をT、色温度Tの黒体放射エ
ネルギ分布をP(λ)、被写体の分光反射率分布をρ
(λ)、CCDセンサの分光感度分布をSi (λ)(た
だし、i=B、G、R)としたとき、次の式(2) Ei = ∫ P(λ)ρ(λ)Si (λ)dλ ・・・・・・(2) で計算されるEi を上の式(1)により色度座標(r,
b)に変換して色度図にプロットしたとき、色温度Tを
動かしたときの軌跡である。黒体軌跡は、CCDセンサ
の分光分布および被写体の色ごとに存在し、グレーの黒
体軌跡は、被写体をグレーとしたときの被写体の分光反
射率ρ(λ)を1として得られる。典型的なCCDセン
サの分光感度分布を図3に示した。Si(λ)は、このよ
うなCCDセンサ固有のものを使うことが好ましいが、
図5に示すようなBT709の理想分光感度分布を用い
てもよい。 【0034】上に述べたグレー部分の画像信号を図2の
色度図にプロットすると、グレーの黒体軌跡Gy の40
00Kの近傍Gy0に散布すると考えられる。しかし、最
近のDSCは、ほとんどAWB(オートホワイトバラン
ス)機能を有しているため、この機能が上手く作動した
場合には、グレー部分は標準白色(例えば、5500
K)の近傍Gy1に散布するが、逆にこの機能が上手く作
動しなかった場合には、撮影温度4000Kから離れた
位置不明な場所(例えば、図2中符号Aで示す場所)に
散布してしまう。 【0035】そこで、DSC画像に含まれる、図2に符
号Aで示すような位置不明のグレー部分を基準白色(例
えば、5500K)の近傍Gy1に変換するために、プリ
ンタ側でホワイトバランス補正が行われる。この変換を
すべての画素に適用することにより、グレーバランスの
とれた美しいプリントが得られるものと期待される。図
2のAの部分の位置は不明であるので、Aを基準白色
(例えば、5500K)の近傍Gy1へ直接変換するのは
不可能である。そこで、本発明では、この変換を2段階
で行うこととした。 【0036】すなわち、図2に2つのベクトルαおよび
βによって表される変換である。ここで、ベクトルα
は、DSC側のAWB機能の不完全性により引き起こさ
れた黒体軌跡Gy からのずれ量を補正するベクトルであ
る。ベクトルαによる変換で図2のAの部分が黒体軌跡
Gy 上の部分Gy0に変換される。また、ベクトルβは、
黒体軌跡Gy 上のGy0の部分を基準白色(例えば、55
00K)の近傍Gy1に変換するベクトルである。従っ
て、この2つのベクトルαおよびβの合成により、図2
のAから基準白色(例えば、5500K)の近傍Gy1へ
の変換が実現される。 【0037】ここで図1の各手段の説明に戻ることとす
る。いま、説明した2つのベクトルαおよびβによる2
段階の変換のうち、図2のAの部分を黒体軌跡Gy 上の
Gy0に移す変換を表すベクトルαを求めることは難し
い。このGy0が求められれば、これから撮影光源の色温
度Tを推定することができる。そして、黒体軌跡Gy 上
でこのGy0(色温度T)をGy1(色温度5500K)へ
移す変換を表すベクトルβを求めるのはたやすい。この
ベクトルαを求め、この変換を行うのが光源色温度推定
手段12であり、ベクトルβを求め、この変換を行うの
が画像信号補正手段14である。 【0038】DSCのAWB機能は、撮影直後の全画素
の画像信号R、G、Bを一様に定数倍するように作用す
る。定数倍という作用は、一次変換である。この作用に
より、画像信号が黒体軌跡からずれたとすれば、これと
丁度逆の操作をすれば、黒体軌跡上の撮影光源の色温度
(今の場合、4000K)近傍(図2のGy0)に、多く
のグレー部分が散布するようになるはずである。上記D
SCのAWB機能(一次変換)の逆変換も一次変換であ
るので、DSC画像信号R、G、Bに対して、所定の係
数を乗算する(図2では、画像信号R、G、Bを色度座
標に変換している。)。この乗算を行うのが係数乗算手
段16である。 【0039】係数乗算手段16では、DSC画像信号
R、G、BのうちR、Gに対し、それぞれ所定の係数α
1 、α2 を次の式(3)のように乗算し、R、Gを
R’、G’に変換する。 R’=α1 R G’=α2 G ・・・・・・(3) ここで、この変換は3信号を変化させる必要はなく、2
信号で充分である。本来グレーであるべき点が移動した
Aは、未知であるため、どれがグレーかはわからない。
そこで次に、グレー候補検出手段20では、一次変換を
施した信号をグレーの黒体軌跡と比較して、黒体軌跡の
近傍として検出される画素をグレーの可能性が高いとし
て、グレー候補画素とする。近傍であるかの判断は、色
度座標(r,b)上で距離0.01の範囲内であるかど
うかで行えばよい。 【0040】係数最適化手段22では、グレー候補検出
手段20の検出したグレー候補画素の個数を数えて、グ
レー候補画素の個数が最大となるように、所定の係数α
1 、α2 を変えながら係数乗算手段16およびグレー候
補検出手段20に上と同じ操作を行わせ、係数α1 、α
2 の最適化を行う。最適化の方法は、特に限定されるも
のではなく、例えば、数値計算における標準的手法であ
るシンプレックス法が好適に例示される。このようにし
て、最適化で求められた一次変換、式(3)の係数
α1 、α2 がDSCのAWB機能の逆操作に対応し、ベ
クトルαの成分となる。すなわち、α=(α1 ,α2 )
である。 【0041】また、最適化の精度をより高めるために、
グレーの他に色情報を追加することが考えられる。被写
体の中で、撮影頻度が高く、種類によって色味の変化が
少ない色として肌色が挙げられる。肌色は、人種(白
人、黄色人、黒人)によって色味がかなり異なるとも思
われるが、測定された分光スペクトルによれば、違うの
は主として明るさであり、スペクトルの形はあまり変わ
らず色味の変化は小さいことがわかる。従って、この肌
色の性質は、色の同定に利用できる。そこで、肌色候補
検出手段18において、グレーの場合と同様に肌色につ
いても黒体軌跡を設定し(図示省略)、係数乗算手段1
6で係数の乗算された画像信号に対して、肌色の黒体軌
跡の近傍色として肌色候補画素を検出する。 【0042】このとき、係数最適化手段22では、肌色
候補検出手段18で検出された肌色候補画素の個数をも
数え、前述したグレー候補画素の個数と合わせて、これ
らの個数が最大となるように前記係数α1 、α2 を最適
化する。これにより、係数α 1 、α2 の最適化の精度が
向上する。また、グレー部分と肌色部分を含むシーンを
均一光源で撮影した場合、黒体軌跡の近傍色として、検
出されるグレー候補画素群および肌色候補画素群の平均
色温度は一致すると期待される。そこで、係数最適化手
段22における最適化において、「グレー候補画素群と
肌色候補画素群の平均色温度の差を最小」とすることを
目的関数として前記係数の最適化を行うこともできる。 【0043】さらに、上記2つの手法を併用して「グレ
ー候補画素および肌色候補画素の個数最大」および「グ
レー候補画素群と肌色候補画素群の平均色温度の差最
小」を目的関数として、前記係数の最適化を行うように
してもよい。このように2つを併用する方法によれば、
より一層最適化の精度を上げることができる。 【0044】光源色温度算出手段24では、上で最適化
された係数α1 、α2 を用いて画像信号を変換し、グレ
ーの黒体軌跡上のグレー候補画素群の平均色温度Tg お
よび肌色の黒体軌跡上の肌色候補画素群の平均色温度T
f を算出し、 これから、 撮影光源の色温度Tを算出す
る。これは、例えば、これらの平均をとってT=(Tg
+Tf )/2としてもよいし、グレーの色を重視する場
合には、T=Tg としてもよい。このようにして撮影光
源の色温度Tが推定される。 【0045】最後に、画像信号補正手段14では、黒体
軌跡上で色温度Tから基準白色(例えば、5500K)
へ変換する変換を求める。この変換は、R、B信号の一
次変換 R”=β1 R’ B”=β2 B ・・・・・・(4) で表記でき、この係数β1 、β2 がベクトルβの成分と
なる。画像信号補正手段14では、このベクトルβによ
る変換を各画素に対して施し、以上により、各画素に対
するホワイトバランス補正が完了する。 【0046】以上の変換をまとめると、図2の点Aから
基準白色(例えば、5500K)Gy1への変換は、ベク
トルαおよびベクトルβによる変換の合成により実現さ
れ、これを式で表すと、次の式(5)となる。 R”=α1 β1 R G”=α2 G B”=β2 B ・・・・・・(5) なお、上記式(5)では、カラーバランスだけでなく、
明るさの変化を含むので、G信号は不変として表現すれ
ば、次の式(6)のようになる。 R”=(α1 β1 /α2 )R G”=G B”=(β2 /α2 )B ・・・・・・(6) 【0047】以下、本実施形態の作用を図4のフローチ
ャートに沿って説明する。まず、ステップ100におい
て、デジタルスチルカメラ(DSC)により、あるシー
ンをある光源の下において撮影する。次にステップ11
0において、このDSCによって撮影された画像の画像
信号R、G、Bを入力する。 【0048】ステップ120では、光源色温度推定手段
12の係数乗算手段16、肌色候補検出手段18、グレ
ー候補検出手段20および係数最適化手段22により、
画像信号最適化処理が行われる。これは、DSCのAW
B機能によって黒体軌跡からずれた画像信号をずれのな
い黒体軌跡近傍の信号(ローデータ)に戻すものであ
る。係数乗算手段16では、すべての画像信号に所定の
係数を乗算する。肌色候補検出手段18では、このデー
タを肌色の黒体軌跡と比較して黒体軌跡の肌色近傍にあ
ると思われるデータ(肌色候補画素)を検出し、グレー
候補検出手段20では、このデータをグレーの黒体軌跡
と比較して黒体軌跡のグレー近傍にあると思われるデー
タ(グレー候補画素)を検出する。 【0049】係数最適化手段22は、検出された肌色候
補画素およびグレー候補画素の個数を数えこの個数が最
大となるように、または、肌色候補画素群の平均色温度
とグレー候補画素群の平均色温度の差が最小となるよう
に、あるいはこの両方の条件が成立するように前記乗算
の係数を設定しなおしてこの操作を繰り返して、係数を
最適化する。 【0050】ステップ130では、光源色温度算出手段
24において、最適化された係数を乗算して得られる肌
色候補画素群の平均色温度Tf と、グレー候補画素群の
平均色温度Tg とから光源の色温度の推定値Tが算出さ
れる。次に、ステップ140では、画像信号補正手段に
おいて、上で推定された光源色温度Tから基準白色(例
えば、5500K)への補正量が決定される。そして、
この補正量によりすべての画素に対しホワイトバランス
補正が行われる。最後に、ステップ150において、そ
の他各種の画像処理等が施され、プリンタから仕上がり
プリントとして出力される。 【0051】以下、より具体的な実施例について説明す
る。 (実施例1)富士写真フイルム社製の代表的なDSC2
機種で撮影した309コマのDSC画像からプリントを
作成する際に、上で説明したホワイトバランス補正方法
の性能のテストを行った。比較対象は、原画(DSCの
AWBのみでそれに対し何の修正もせずそのまま出力し
たプリント)、及びDSCの撮影画像に対し従来技術に
よるホワイトバランス補正を行ったプリントである。プ
リントは、三段階の評価○△×で評価し、最も良い評価
である○のみを合格とした。 【0052】まず、8ビットのDSC画像信号R、G、
Bを被写体リニアなR0 、G0 、B 0 に変換した。これ
は以下のようにして行った。DSCで撮影して得られる
8ビットのDSC画像信号R、G、Bについて考えて見
ると、これは、まずCCDセンサで発生する被写体リニ
アなR0 、G0 、B 0 信号を次の式(7)のようにガン
マ0.45の非線形変換を施し、 R1 =1.099×R0 0.45 −0.099 G1 =1.099×G0 0.45 −0.099 B1 =1.099×B0 0.45 −0.099 ・・・(7) その後、次の式(8)により、色差信号Y1 、Cr1、C
b1を導き、 Y1 =0.30R1 +0.59G1 +0.11B1 Cr1=0.70R1 −0.59G1 −0.11B1 Cb1=−0.30R1 −0.59G1 +0.89B1 ・・・(8) 色彩度を高めるための色差マトリクス演算をし、次の式
(9)のように色差信号Y2 、Cr2、Cb2に変換され
る。 Y2 =Y1 Cr2=1.625Cr1+0.2734Cb1 Cb2=−0.08203Cr1+1.6094Cb1 ・・・(9) 【0053】そして、最後に、次の式(10)により
R、G、B信号に戻し、8ビット化しすることにより8
ビットのDSC画像信号R、G、Bが得られる。 R=Y2 +Cr2 G=Y2 −0.51Cr2−0.18Cb2 B=Y2 +Cb2 ・・・(10) 従って、8ビットのDSC画像信号R、G、Bを被写体
リニアなR0 、G0 、B0 信号に変換するには、R、
G、B信号からスタートして式(10)、式(9)、式
(8)、式(7)と逆算しながら辿ればよいので、この
逆算を行い被写体リニアなR0 、G0 、B0 を得た。 【0054】次に、被写体リニアな信号R0 、G0 、B
0 の最適化によるホワイトバランス補正量を算出した。
そのため、撮影したDSCの分光感度を用いて、予めグ
レーの黒体軌跡と、肌色の黒体軌跡を作成した。そし
て、これを用いて、R0 、G0 、B0 信号の最適化計算
を実施し、ベクトルαとベクトルβを求め、次の式(1
1)により、ホワイトバランス補正信号R”、G”、
B”を得た。ここでの最適化計算においては、グレー候
補画素および肌色候補画素の個数が最大となり、肌色候
補画素群の平均色温度とグレー候補画素群の平均色温度
の差が最小になるように係数を最適化して行った。 R”=(α1 β1 /α2 )R0 G”=G0 B”=(β2 /α2 )B0 ・・・・・・(11) このホワイトバランス補正信号R”、G”、B”を8ビ
ットの画像信号にするには、式(7)、式(8)、式
(9)、式(10)と順にたどればよい。この画像信号
をプリンタから出力することで、ホワイトバランス補正
されたプリントが得られた。 【0055】このようにして得られた本発明のホワイト
バランス補正によるプリントと原画及び従来技術による
ものとを比較した結果を表1に示す。 表1に示すように、本特許は、従来技術より12ポイン
トほど合格率が高く、充分なホワイトバランス補正能力
が示された。 【0056】(実施例2)前記実施例1では、DSCの
機種名が既知であり、分光感度および色処理アルゴリズ
ムも既知の場合であったが、本発明のホワイトバランス
補正方法をプリント用ソフトとして利用するのであれ
ば、機種が不明のDSC画像に対しても対応できること
(ロバスト性を有すること)が望ましい。そこで、本実
施例2では、前記実施例1と同じ××××××××社製
の代表的なDSC2機種で撮影した309コマのDSC
画像、および各社製の15機種で同一シーン(16コ
マ)を撮影した240コマの画像に対し、機種不明とし
た場合のホワイトバランス補正テストを実施した。 【0057】本実施例においては、たとえ機種がわから
なくても、どの機種においても、分光感度と色処理アル
ゴリズムとの組み合わせにより、図5に示すような理想
分光感度BT709の性能に近づけるようにしているは
ずであるから、すべての機種を理想分光感度を有するD
SCと見なして本発明のホワイトバランス補正を行っ
た。すなわち、本実施例では、黒体軌跡を求める際の式
(2)におけるCCDセンサの分光感度分布Siとし
て、図5に示すBT709の分光感度分布を用いた。ま
た、理想分光感度を有するDSCでは、色彩度を高める
色処理アルゴリズムは不要であるため、8ビットのDS
C画像信号R、G、Bを被写体リニアなR0、G0 、B0
に変換する場合に、実施例1のように式(10)〜
(7)と逆算しながら辿る必要はなく、直接、式(7)
の逆算を行うことができる。 【0058】理想分光感度BT709を用い、予めグレ
ーの黒体軌跡および肌色の黒体軌跡を作成しておき、こ
れを用いて、実施例1と同様にR0 、G0 、B0 信号の
最適化計算を実施し、ベクトルαおよびベクトルβを求
めることにより、前記式(11)で表されるホワイトバ
ランス補正信号R”、G”、B”を得た。この信号に対
し、式(7)のガンマ0.45の非線形変換を行った
後、8ビットの量子化を行って8ビットの画像信号を得
た。この画像信号をプリンタに印可することによりホワ
イトバランス補正されたプリントを得た。 【0059】プリントの評価方法は、実施例1と同様で
あり、プリントは、三段階の評価○△×で評価し、最も
良い評価である○のみを合格とした。結果を次の表2に
示す。 【0060】表2に示すように、××××××××社製
の代表的2機種(309コマ)については、本発明の合
格率は若干下がるものの実施例1の場合とほぼ同じ合格
率(88%)を維持しており、各社製15機種(240
コマ)については、本発明の合格率の絶対値は低い(7
6%)ものの、従来技術に比べ6ポイントほど合格率が
高かった。合格率が低い理由は、原画の合格率がかなり
低い(47%)ことからも窺えるように、評価シーンが
少ない(16シーン)上に絵柄に偏りがあったためであ
り、実在のDSCを理想分光感度を有するDSCと見な
したためではないと思われる。このように、実施例2に
よれば、本発明のホワイトバランス補正方法は、同一ソ
フトで全機種に対応することができ、分光感度および色
処理アルゴリズムの未知の機種であっても、充分にホワ
イトバランス補正を行うことが可能である。 【0061】尚、以上の実施例では、最適化計算におい
て、グレーの候補画素Ng および肌色の候補画素Nf が
最大となり、グレーの候補画素群の平均色温度Tg と肌
色の候補画素群の平均色温度Tf の差が最小になるよう
に係数を最適化してホワイトバランス補正信号を求めて
いた。この場合、最適化の目的関数Fは一つでありこれ
を式で表わせば、 F=abs(Tg −Tf )−(Ng +Nf ) となる。ここでabs は絶対値を示す。シンプレックス法
では設定した目的関数が最小化するように働くので、候
補画素の個数を最大化したい場合には−(Ng +Nf )
のように−をつければよい。目的関数が一つでも、前述
したように全体としては好結果を得たわけであるが、細
かく見てみるとうまくいかないプリント(×プリント)
も散見された。自動プリント作業では、×プリントをで
きだけ少なくすることは重要であるので、目的関数の数
を増やした場合の効果を調べてみた。目的関数の数を二
つとし、二番目の目的関数として F* =abs(Tg −Tf )−Ng を用いた。第一の目的関数を用いて係数を最適化して得
られる第1のホワイトバランス補正信号と、第二の目的
関数を用いて係数を最適化して得られる第2のホワイト
バランス補正信号を平均して新たなホワイトバランス補
正信号としてプリントを作成したところ、従来、×プリ
ントであったものの内、約半分が△プリントに変化し
た。○プリントの数に殆ど変化はなく、全体として△プ
リントが増え×プリントが減って安定したプリントが得
られるようになった。更に、目的関数の二つの組み合わ
せはこれに限るものではなく、他の組み合わせについて
も調べたところ、 F =abs(Tg −Tf )−Ng F* =abs(Tg −Tf )−Nf の二つの目的関数の組み合わせが最もプリント安定性に
効果があった。この場合のホワイトバランス補正方法の
実施形態を図6で説明する。まず、ホワイバランス補正
装置10より出力される、第一の目的関数に対応する第
1のホワイバランス補正後画像信号はメモリ30に保存
され、次いで、第二の目的関数に対応する第2のホワイ
バランス補正後画像信号はメモリ31に保存された後
に、第1および第2のホワイバランス補正後画像信号よ
り新たなホワイバランス補正後画像信号が生成されプリ
ント作成用の信号として用いられる。 【0062】更に、プリント出力を安定化させる方法と
して、最適化計算で得られるグレーバランス補正後画像
信号をそのまま使わず補正を弱めてプリントすると効果
のあることを見出した。弱める程度は6割から8割が好
ましい。また、DSC画像のExifファイルに書き込
まれているBV値(画像の明るさを示す指数)に応じて
補正を6割から8割に弱めてもよい。また、以上説明し
た最適化計算では、従来、信号値の小さな(暗い)画素
には有効な情報が少ないと考えられ、演算時間の節約の
ためにも、信号値が下限値(0.08)以下の画素は計
算に利用しないことにしていた。しかしながら、アンダ
ー露光の画像では、多くの画素の信号値が下限値0.0
8を下回ってしまうために最適化計算に利用できる画素
がかなり少なくなり、計算精度が低下する。逆に、オー
バー露光画像では、例えば、白壁をタングステン照明
し、適正露光の場合、R=1.0、G=0.7、B=
0.5である信号がR=1.0、G=1.0、B=1.
0のように、すべて1.0にクリップされて、あたかも
標準光源照明の信号のようになってしまうが、信号値が
1.0の場合、それが真の値であるかまたはクリップで
生じたのかの区別は難しい。このように、露光のアンダ
ー/オーバーによって、最適化計算に利用する画素の吟
味が必要である。例えば、下限値を下げて画素数を増や
すことも考えられるが画像毎に設定値を変更するのは煩
わしい。そこで、前記画素の吟味を自動的に行うため
に、以下のように、画像信号の最大値が1.0になるよ
うに画像信号の規格化を行い、露光のアンダー/オーバ
ーに関係なく、最適化計算に利用できる画素数をほぼ一
定に維持できるようにした。すなわち、RGB信号の一
つでも1.0である画素は除き、残りの全画素について
RGB信号毎に最大値(Rmax ,Gmax ,Bmax )を求
め、最大値の中の最大値をTmax 、最小値をTmin と
し、画像のRGB信号をTmax で規格化することによ
り、あたかも適正露光で撮影されたが如き画像が得られ
る。信号利用範囲を1.0〜0.25×(Tmin /T
max )と明るい範囲に限定することにより、最適化計算
に利用する画素数をあまり多く用いることなく、アンダ
ー適正/オーバー露光のいずれの画像に対しても、適切
なホワイトバランス補正が実現できることになる。オー
バー露光の雪のシーンでは規格化処理の効果により、雪
の白をうまく検出し、美しいプリントに仕上げることが
できた。 【0063】以上詳細に説明したように、本実施形態に
よれば、DSC画像中のグレーおよび/または肌色情報
のみを用いたアルゴリズムを構築し、プリント作成時の
ホワイトバランス補正を行うようにしたため、上記各実
施例にも示すように、従来技術に比して格段の補正能力
を有している。また、従来技術で問題であった画像全体
が色味づいている場合に、それが撮影光源によるもの
か、または被写体によるものかの識別力が極めて高く、
特に日陰、曇りの高色温度シーン(7000〜1000
0K)では、ほぼ完璧な補正能力を示し、従来では、全
体に青みがかり顔色も沈んだプリントであったものが、
生き返ったように白色、肌色も自然なプリントを得るこ
とができた。また、上述したように、画像中の一番明る
い画素の信号値が1になるように画像の信号全体を規格
化することで、アンダー/オーバーに無関係に最適化計
算を行い、処理することが可能となり、適正露光で撮影
されたのと同様の画像を得ることができる。なお、上記
実施形態では、DSC画像について説明したが、DSC
に限定されず、カラーネガフィルムに撮影された画像に
ついても、本発明のホワイトバランス補正方法を適用す
ることができる。 【0064】次に、本発明の第2実施形態として、光源
が未知の場合に、上記実施形態で説明した肌色候補画素
検出方法を利用して、画像中から肌色(特に顔には限定
されない)を検出し、その情報を基にプリント濃度を決
定して適正なプリントを得る濃度補正方法について図7
のフローチャートに沿って説明する。なお、本第2実施
形態を実行する装置としては、前記実施形態で説明した
ホワイトバランス補正装置10中の、係数乗算手段1
6、肌色候補検出手段18及び係数最適化手段22等
(その他濃度補正手段)を有する画像処理装置を含むデ
ジタルフォトプリンタが例示される。 【0065】まず、ステップ200において、デジタル
スチルカメラ(DSC)により、あるシーンをある光源
下で撮影し、ステップ210において、撮影画像の画像
信号R、G、Bを入力する。次にステップ220におい
て、この入力信号に対して、前記実施形態で説明した肌
色候補検出処理を行い、肌色候補画素を検出する。すな
わち、すべての入力画像信号に所定の係数を乗算し、こ
のデータを肌色の黒体軌跡と比較して黒体軌跡の肌色近
傍にあると思われるデータを肌色候補画素として検出す
る。このときさらに、検出された肌色候補画素の個数を
数え、この個数が最大となるように、あるいは、肌色候
補画素群の平均色温度と、同様にして求めたグレー候補
画素群の平均色温度の差が最小となるようにして、ある
いは、これら両方の条件が成立するように前記乗算の係
数を最適化して、最適化された係数を乗算して肌色候補
画素を求めるようにしてもよい。 【0066】次に、ステップ230において、濃度補正
を行う。すなわち、まず上記のようにして検出された肌
色候補画素の色信号(R、G、B)の平均値を求める。
このとき、R、G、Bの平均値((R+G+B)/3)
を用いてもよいし、特定の色、例えばG信号を用いるよ
うにしてもよい。どのような信号を用いるかは特に限定
はされないが、G信号を用いるのが好ましい。G信号を
用いた場合、G信号の平均値をプリント上で、所定のG
濃度D(例えば、D=0.7)に割り付けるようにし
て、濃度補正を行う。このとき、G濃度Dについては、
0.7≦D≦1.0であることが好ましい。そして、ス
テップ240において、濃度補正後のデータをプリンタ
より出力する。 【0067】このように、撮影光源が未知の場合であっ
ても、肌色を検出し、その情報に基づいて、濃度補正を
行うことにより、主要被写体である顔の濃度を適正な濃
度にすることにより、適正なプリントに仕上げることが
可能となる。例えば、LATD方式において失敗例の多
い逆光シーン(真中に人物がおり、太陽を背にしたシー
ン)のDSCによる撮影画像について、濃度補正を行っ
たところ以下のような結果を得た。 【0068】LATD方式によるプリントは、画面全体
の濃度は程よいが、顔は真っ暗となってしまい、明らか
に不適切なプリントであった。これに対し、光源を未知
として、本実施形態の肌色検出を利用した濃度補正を行
ったプリントは、背景は少し飛び気味であったが、顔の
濃度は適切であり、ほぼ満足できるプリントであった。
これは、肌色検出に成功し、それに基づいて濃度補正を
してプリントした効果であり、その他のシーンについて
も適切なプリント濃度を得ることができた。 【0069】また、上で説明したホワイトバランス補正
方法及び濃度補正方法のうち少なくとも一つを、コンピ
ュータで実行可能なプログラムとして、コンピュータで
読み取り可能な記録媒体に記録しておけば、この記録媒
体からプログラムを入力することにより任意の画像処理
装置等で本発明のホワイトバランス補正方法あるいは濃
度補正方法を実行することができる。 【0070】以上、本発明のホワイトバランス補正方法
について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限
定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各
種の改良や変更を行ってもよいのはもちろんである。 【0071】 【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、入
力されたカラー画像中に含まれるグレーおよび/または
肌色の色情報のみを用いて、前記カラー画像を撮影した
際の撮影光源の色温度を推定し、これによりホワイトバ
ランスを補正するアルゴリズムを構築するようにしたた
め、どのような入力画像に対しても、また、撮影に用い
られたDSCの機種にかかわらず、ホワイトバランス補
正を適正に、かつ高い得率で実現することが可能とな
る。特に、画像中の一番明るい画素を用いて画像全体を
規格化するようにした場合には、アンダー/オーバーに
関係無く最適化計算を行い処理することができ、適正露
光の画像を得ることができる。また、画像中の肌色を検
出し、その情報に基づいて濃度補正を行うようにした場
合には、従来技術では難しいシーンについても、プリン
ト濃度を適切に仕上げることが可能となる。
実施形態の概略を示すブロック図である。 【図2】 本実施形態においてホワイトバランス補正の
原理を示すための色度図である。 【図3】 典型的なCCDセンサの分光感度分布を示す
線図である。 【図4】 本実施形態の処理の流れを示すフローチャー
トである。 【図5】 BT709の分光感度分布を示す線図であ
る。 【図6】 本発明に係るホワイトバランス補正装置の一
実施形態の他の例の概略を示すブロック図である。 【図7】 本発明の第2実施形態の処理の流れを示すフ
ローチャートである。 【符号の説明】 10 ホワイトバランス補正装置 12 光源色温度推定手段 14 画像信号補正手段 16 係数乗算手段 18 肌色候補検出手段 20 グレー候補検出手段 22 係数最適化手段 24 光源色温度算出手段 30、31 メモリ
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】入力されたカラー画像中に含まれるグレー
および/または肌色の色情報を用いて、前記カラー画像
を撮影した際の撮影光源の色温度を推定し、 該推定された色温度により、前記カラー画像の画像信号
を補正することを特徴とするホワイトバランス補正方
法。
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