JP2003193139A - フランジ付き外輪の製造方法 - Google Patents
フランジ付き外輪の製造方法Info
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Abstract
(57)【要約】
【課題】自動車用ハブユニット軸受の外輪の切削性を改
善しながら、転動疲労寿命と外輪に一体化されたフラン
ジの疲労強度の両方に優れた軸受を得る。 【解決手段】C:0.50〜0.95%、Si:0.5
0〜1.50%、Mn:0.05〜0.60%、S:
0.0035%以下、O:0.0015%以下である合
金鋼からなる素材を用いる。この素材に対して、黒鉛化
処理、成形工程、切削工程をこの順に行う。黒鉛化処理
は、切削工程時の黒鉛組織の含有率が面積比で0.5〜
3.0%となるように行う。切削工程の後に、外輪軌道
溝に対して高周波焼入れと焼戻しを施すことにより、外
輪軌道溝の表層部分を、硬さHRC60以上、残留オー
ステナイト量10体積%以上、存在する黒鉛の粒子径
1.0μm以下にする。
善しながら、転動疲労寿命と外輪に一体化されたフラン
ジの疲労強度の両方に優れた軸受を得る。 【解決手段】C:0.50〜0.95%、Si:0.5
0〜1.50%、Mn:0.05〜0.60%、S:
0.0035%以下、O:0.0015%以下である合
金鋼からなる素材を用いる。この素材に対して、黒鉛化
処理、成形工程、切削工程をこの順に行う。黒鉛化処理
は、切削工程時の黒鉛組織の含有率が面積比で0.5〜
3.0%となるように行う。切削工程の後に、外輪軌道
溝に対して高周波焼入れと焼戻しを施すことにより、外
輪軌道溝の表層部分を、硬さHRC60以上、残留オー
ステナイト量10体積%以上、存在する黒鉛の粒子径
1.0μm以下にする。
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用ハブユニ
ット軸受の外輪部材のような、フランジ付き外輪(取付
穴を有するフランジが外輪の外周に一体化されている部
材)を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】自動車用ハブユニット軸受の外輪部材
は、ホイール取付用のフランジが外輪に一体化されたも
のである。このフランジ(ハブ)には、ホイールを取り
付けるためのボルト穴等が切削加工により形成されてい
る。このようなハブユニット軸受の外輪部材について
は、従来、中炭素鋼(炭素含有率:0.40〜0.60
%、例えば「JIS S53C」)からなる素材を所定
形状に加工した後、高周波焼入れおよび焼戻しを行って
表面硬さを高くすることにより、静的曲げ強度、ねじり
強度、転がり接触強度を確保することが行われている。 【0003】近年、ハブユニット軸受にも小型軽量化、
高強度化の要求が高まっており、「JIS S53C」
からなる素材を用いた場合には、この要求に応えること
ができない。ハブユニット軸受には、また、軸受部の転
動寿命特性を向上しながら、フランジの疲労強度を向上
することが要求されている。しかし、一般に疲労強度の
高い材料は切削性に劣るため、このような材料を、取付
穴等を切削加工する必要がある前記外輪部材に用いる
と、切削加工に時間がかかって生産性が低下するという
問題点がある。 【0004】特開平6−57324号公報には、ハブユ
ニット軸受の外輪部材の製造方法に関し、熱間鍛造後の
焼鈍処理を省略しても穴開け加工の工具寿命が低下しな
いように、使用する高周波焼入れ鋼の組成を特定するこ
とが記載されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載の方法では、切削性は良好となるが、軸受部の
転動寿命を向上しながらフランジの疲労強度を向上する
という点で改善の余地がある。本発明は、取付穴を有す
るフランジが外輪の外周に一体化されているフランジ付
き外輪を備えた軸受として、軸受部の転動寿命とフラン
ジの疲労強度の両方に優れた軸受が得られ、しかも前記
取付穴の切削加工を短時間で行うことのできる方法を提
供することを課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、フランジ付き外輪(取付穴を有するフラ
ンジが外輪の外周に一体化されている部材)の製造方法
において、以下の〜を特徴とする方法を提供する。 質量比で、炭素(C)を0.50%以上0.95%以
下、硅素(Si)を0.50%以上1.50%以下、マ
ンガン(Mn)を0.05%以上0.60%以下の範囲
で含有し、且つ、硫黄(S)の含有率は0.0035%
以下、酸素(O)の含有率は0.0015%以下である
合金鋼からなる素材を用いる。 この素材に対して黒鉛化処理を施した後に、略円筒状
の本体の外周にフランジが一体化された形状に成形する
成形工程を行い、次いで、前記本体の内周面に外輪軌道
溝を前記フランジに取付穴をそれぞれ形成する切削工程
を行う。 前記黒鉛化処理を、前記素材の組織が主に黒鉛、セメ
ンタイト、およびフェライトからなり、且つ前記切削工
程時の黒鉛組織の含有率が面積比で0.5%以上3.0
%以下となるように行う。 前記切削工程の後に、前記外輪軌道溝に対して高周波
焼入れと焼戻しを施すことにより、外輪軌道溝の表層部
分(表面から所定深さまでの部分:所謂「硬化層」)
を、硬さHRC60以上、残留オーステナイト量10体
積%以上、存在する黒鉛の粒子径(直径)1.0μm以
下にする。 【0007】この方法によれば、切削工程時に、素材の
組織が主に黒鉛、セメンタイト、およびフェライトから
なり、且つ黒鉛組織の含有率が面積比で0.5%以上
3.0%以下となっていることで、フランジの疲労強度
を確保しながら良好な切削性が得られる。また、切削加
工後に、外輪軌道溝に対して高周波焼入れと焼戻しを施
して、外輪軌道溝の表層部分を、硬さHRC(ロックウ
エルC硬度)60以上、残留オーステナイト量10体積
%以上、存在する黒鉛の粒子径1.0μm以下にするこ
とにより、この方法で得られたフランジ付き外輪を備え
た軸受の転動寿命が長くなる。 【0008】黒鉛は鋼の切削性を良好にする作用を有す
るため、本発明の方法においては、切削時には、黒鉛を
鋼中に十分に存在させて良好な切削性を得る。しかし、
熱処理後に外輪軌道溝をなす鋼中に粗大な黒鉛粒子が残
存していると、この黒鉛粒子に応力が集中して、剥離が
生じ易くなるため、熱処理後に黒鉛は残存しないことが
好ましく、残存していた場合でも粒子が小さい方が好ま
しい。そのため、本発明の方法では、熱処理後に黒鉛が
残存していた場合でも粒子径が1.0μm以下となるよ
うにした。また、熱処理後に残存する黒鉛の粒子径が
1.0μm以下となるように、本発明の方法では、切削
時(成形工程後)の鋼中の黒鉛含有率(面積率)の上限
を3.0%とした。 【0009】なお、成形工程を熱間鍛造等の熱間加工で
行う場合には、熱間加工によって黒鉛の固溶が生じて鋼
中の黒鉛含有量が減少するため、この減少分を考慮し
て、切削工程時の鋼中の黒鉛含有率(面積率)が0.5
%以上3.0%以下となるように、黒鉛化処理を行う必
要がある。すなわち、成形工程前(黒鉛化処理直後)の
鋼中黒鉛含有率は、前記範囲(0.5%以上3.0%以
下)に前記減少分を足した範囲内とする必要がある。 【0010】以下に、素材中の各元素の含有率について
説明する。 〔炭素(C):0.50〜0.95質量%〕Cは、素地
をマルテンサイト化して軸受として必要な硬さを得るた
めに、最も重要な元素である。また、素材の段階では、
Cのほとんどは黒鉛およびセメンタイトとして存在し、
特に黒鉛が素材の切削性を良好にする作用を有する。C
の含有率が0.50%未満であると、この作用が実質的
に得られない。また、Cの含有率が0.95%を超える
と、黒鉛の粗大化やセメンタイト量の増加が生じる。 【0011】また、高周波焼入れ、焼戻し後の硬さHR
C60以上を安定的に確保するために、素材の炭素含有
率を0.70%以上0.95%以下とすることが好まし
い。 〔硅素(Si):0.50〜1.50質量%〕Siは精
鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、焼入れ性を向上
させるとともに、鋼中のセメンタイトを不安定にして黒
鉛化を促進させる作用も有する。さらに、焼戻し軟化抵
抗性を高くし、機械的強度および転動疲労寿命を向上さ
せる作用も有する。 【0012】Siの含有率が0.50%未満であると、
これらの作用が実質的に得られない。また、Siの含有
率が1.50%を超えても前記作用は飽和するため、コ
ストを抑える点から、Si含有率の上限値を1.50%
とした。 〔マンガン(Mn):0.05〜0.60質量%〕Mn
はSiと同様に、精鋼時の脱酸剤として必要な元素であ
る。また、鋼中の硫黄(S)と結合して硫化物(Mn
S)となるため、融点の低いFeSの生成を防止するの
に有効な元素である。また、焼入れ性を向上させるとと
もに、残留オーステナイトの生成を促進する元素でもあ
る。これにより、熱処理後の機械的強度および転動疲労
寿命が向上する。 【0013】Mnの含有率が0.05%未満であると、
前記作用が実質的に得られない。また、Mnは硫黄
(S)の10倍以上含有することが好ましい。Mnの含
有率が0.60%を超えると、熱処理後の表層部の残留
オーステナイト量が過剰になって、必要な硬さが得られ
なくなる。 〔硫黄(S):0.0035質量%以下〕SはMnと結
合して硫化物(MnS)を形成する。MnSは鋼の切削
性を向上させる作用を有するが、過剰に存在したり粗大
であると疲労破壊の起点となる。本願では、Sの含有率
を低く抑えて、黒鉛の存在により素材の切削性を向上さ
せている。 〔酸素(O):0.0015質量%以下〕素材中に酸素
が含まれていると、熱処理によってアルミナ系の酸化物
が生成され、これが硬質の介在物として鋼中に存在する
ようになる。この介在物が凝集して粗大化すると、転動
疲労寿命を低下させる要因となるため、酸素の含有率は
可能な限り少なくする必要がある。 〔好ましい構成〕本発明においては必須成分ではない
が、素材をなす合金鋼にモリブデン(Mo)が含まれて
いることが好ましい。Moは焼き入れ性を良好にする作
用を有する元素であるため、熱処理後の機械的強度を高
くし、転動疲労寿命を長くすることができる。また、焼
戻し軟化抵抗性を良好にする作用も有する。これらの作
用を得る目的で、素材をなす合金鋼に0.15質量%以
上0.30質量%以下の範囲で含有することが好まし
い。0.30質量%を超えて含有すると、黒鉛化および
切削性に悪影響が及ぶ恐れがあるとともに、コストが高
くなる。 〔その他〕合金鋼の不可避的不純物元素のうち、ホウ素
(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオ
ブ(Nb)、およびジルコニウム(Zr)は、窒素
(N)と結合して窒化物となり、これが黒鉛を析出させ
る核として作用する。また、希土類元素およびその酸化
物も黒鉛を析出させる核として作用する。 【0014】したがって、黒鉛化処理により、黒鉛が微
細に分散析出された鋼を得るためには、これらの元素を
含有している合金鋼を素材として用いることが好ましい
が、これらの元素が過剰に含まれていると黒鉛が粗大化
する。なお、窒化ホウ素(BN)は黒鉛の析出核として
特に良好に作用する。また、不可避的不純物元素を極端
に減少させるとコストがかかるばかりでなく、黒鉛の析
出核を減少させることになる。 【0015】そのため、使用する合金鋼の窒素(N)お
よびホウ素(B)の含有率は、質量比で0.001%以
上0.015%以下であることが好ましく、アルミニウ
ム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、ジルコ
ニウム(Zr)、および希土類元素の含有率は、それぞ
れ0.050%以下であることが好ましい。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。図1は、自動車用ハブユニット軸受を示す断
面図である。この自動車用ハブユニット軸受は、外輪部
材1と、内輪2と、玉3と、保持器4とからなる。外輪
部材1は、略円筒状の外輪11の外周にフランジ12が
一体化されたものである。フランジ12には、外輪部材
1にブレーキディスク5とホイール6を取り付けるため
のボルト穴(取付穴)12aが形成されている。 【0017】この取付は、フランジ12のボルト穴12
aに圧入されたボルト7を、ブレーキディスク5および
ホイール6の取付穴に入れて、ホイール6側でナット8
により締結することで行われる。この外輪部材(フラン
ジ付き外輪)1を以下の方法で作製した。先ず、表1に
示す各組成の合金鋼からなる素材を用意した。なお、N
o. 24の素材をなす鋼は「JIS S53C」であ
る。各素材に対して黒鉛化処理を行った。黒鉛化処理
は、温度を680〜710℃の範囲に保持し、処理時間
を変化させて行った。これにより、各素材の黒鉛組織の
含有率を変化させた。 【0018】次に、黒鉛化処理された各素材を、熱間鍛
造法で成形することにより、所定厚さの円筒体の外周に
所定寸法のフランジが一体化された形状の成形品を得
た。得られた各成形品から電子顕微鏡観察用の試験片を
切り出した。各試験片を走査型電子顕微鏡で1000倍
に拡大し、この拡大像の30視野について反射電子像を
観察した。この反射電子像から、各成形品をなす鋼の組
織が分かるため、各視野の反射電子像を画像処理して、
各視野毎に黒鉛組織の面積比を測定し、その平均値を算
出した。この値を「切削時の黒鉛面積率」として表1に
示す。 【0019】次に、黒鉛化処理された各素材の切削性を
以下の方法で調べた。「JIS B4011」のバイト
切削試験法に基づき、下記の条件で各素材を切削し、工
具寿命を調べた。その結果を表1に相対値で示した。こ
の相対値はNo. 24の工具寿命を「1」とした比であ
る。 <切削性試験条件> 切削機械:高速旋盤 工具:「JIS B 4053」のP10 切り込み速度:200〜250m/分 送り量:0.2〜0.3mm/rev 切り込み深さ:1.0〜1.5mm 切削箇所:前記成形品の円筒体内周面への軌道溝形成 工具寿命の定義:バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmに
達するまでの時間 次に、各素材からなる前記成形品(円筒体の外径34m
m、フランジの外径60mm)を用い、下記の条件で切
削加工を行うことにより、成形品の円筒体内周面に2個
の外輪軌道溝(図2の符号11a)を、フランジ(図2
の符号12)に取付穴(図2の符号12a)をそれぞれ
形成した。 <切削加工条件> 切削機械:高速旋盤 工具:「JIS B 4053」のP10 切り込み速度:200〜250m/分 送り量:0.2〜0.3mm/rev 取付穴の寸法:直径15mm 次に、前記切削加工後の各成形品に対して、下記の条件
で高周波焼入れを行った後、焼戻し(焼戻し温度150
〜180℃)を行った。これにより、図2に示す形状の
外輪部材1を得た。 <高周波焼入れ条件> 周波数:30kHz 電流値:10A 冷却水の流速:35リットル/分 電圧値:10kV このようにして得られた各外輪部材1の軌道溝11aの
表層部分について、ロックウエルC硬度(HRC)、残
留オーステナイト量(γR )、存在する黒鉛の粒子径を
測定した。ロックウエルC硬度は、各外輪をなす素材を
試験片の形状とした以外は各外輪と同じ方法で、硬さ試
験用の試験片を作製し、「JIS Z2245」に準拠
して測定した。 【0020】残留オーステナイト量(γR )はX線回折
法により測定した。軌道溝11aの表層部分に存在する
黒鉛の粒子径は、電子顕微鏡により1000倍に拡大し
て測定した。これらの測定値も表1に示す。次に、この
ようにして得られた各素材からなる外輪部材1を用い
て、以下の方法で、静止状態での曲げ疲労寿命試験を行
った。 【0021】図3に示すように、外輪部材1をベース9
1に固定し、外輪11の位置に、球面座を有する部材9
2を配置した。この部材92を用い、応力振幅:980
0N、周波数:30Hzの条件で、外輪11の外周面に
荷重Pを付加した。外輪部材1のベース91への固定
は、ベース91に雌ねじ91aを設け、この雌ねじ91
aと、外輪部材1のフランジ12に設けてあるボルト穴
12aと、ボルト93とを用いて行った。 【0022】外輪部材1のフランジ12と外輪11との
境界位置に破断が生じた時点で、試験を止め、その時点
までの応力繰り返し数を調べた。その結果を表1に相対
値で示した。この相対値はNo.24の値を「1」とした
比である。次に、図1に示す形状の内輪2を以下の方法
で形成した。すなわち、素材としてSUJ2を用い、焼
入れ(焼入れ温度830〜850℃)、焼戻し(焼戻し
温度150〜180℃)を行ったものを用意した。次
に、玉3として、SUJ2からなる素材を用い、焼入れ
(焼入れ温度830〜850℃)、焼戻し(焼戻し温度
150〜180℃)を行ったものを用意した。また、保
持器4として、ガラス繊維入りナイロン66製の保持器
を用意した。 【0023】このようにして得られた外輪部材1と内輪
2と玉3と保持器4を用いて、図1に示すハブユニット
軸受を組み立て、下記の条件で転動疲労寿命を調べる試
験を行った。すなわち、外輪部材1の構成のみが異なる
No. 1〜24の各ハブユニット軸受を下記の条件で回転
し、外輪軌道溝11aに剥離が生じるまでの回転時間を
測定した。この回転試験は、No. 1〜24のハブユニッ
ト軸受を各10個用意して行い、各10個の測定結果か
らL10寿命(累積破損率10%での寿命)を調べた。 【0024】その結果を表1に相対値で示した。この相
対値はNo. 24の寿命を「1」とした比である。 <転動疲労寿命試験の条件> 回転輪:外輪 面圧:3.0GPa 回転速度:1000rpm 温度:60℃ 潤滑:潤滑油「68番タービン油」に、異物として、硬
さHv870、粒径74〜147μmの鉄粉を300p
pm混入させて使用。 【0025】 【表1】 【0026】この表に示すように、外輪部材が本発明の
方法で作製されているNo. 1〜16のハブユニット軸受
は、外輪部材の工具寿命と回転曲げ寿命、および軸受の
転動疲労寿命のいずれの点についても、外輪部材が従来
の方法で作製されたNo. 24のハブユニット軸受よりも
優れていた。また、外輪部材が本発明の方法で作製され
ていないNo. 17〜24のハブユニット軸受は、外輪部
材の工具寿命と回転曲げ寿命、および軸受の転動疲労寿
命の少なくともいずれかの点で、外輪部材が本発明の方
法で作製されているNo. 1〜16のハブユニット軸受よ
りも劣っていた。 【0027】したがって、この実施形態のNo. 1〜16
の外輪部材(フランジ付き外輪)1の作製方法によれ
ば、軸受部の転動疲労寿命とフランジ12の疲労強度の
両方に優れたハブユニット軸受が得られ、しかもボルト
穴(取付穴)12aの切削加工を短時間で行うことがで
きる。なお、この実施形態では、自動車用ハブユニット
軸受の外輪部材について記載されているが、本発明の方
法は、フランジ付き外輪(取付穴を有するフランジが外
輪の外周に一体化されている部材)であれば、いずれの
ものであってもその製造方法として適用できる。 【0028】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、取付穴を有するフランジが外輪の外周に一体化さ
れているフランジ付き外輪を備えた軸受として、軸受部
の転動寿命とフランジの疲労強度の両方に優れた軸受が
得られ、しかも前記取付穴の切削加工を短時間で行うこ
とができる。
ット軸受の外輪部材のような、フランジ付き外輪(取付
穴を有するフランジが外輪の外周に一体化されている部
材)を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】自動車用ハブユニット軸受の外輪部材
は、ホイール取付用のフランジが外輪に一体化されたも
のである。このフランジ(ハブ)には、ホイールを取り
付けるためのボルト穴等が切削加工により形成されてい
る。このようなハブユニット軸受の外輪部材について
は、従来、中炭素鋼(炭素含有率:0.40〜0.60
%、例えば「JIS S53C」)からなる素材を所定
形状に加工した後、高周波焼入れおよび焼戻しを行って
表面硬さを高くすることにより、静的曲げ強度、ねじり
強度、転がり接触強度を確保することが行われている。 【0003】近年、ハブユニット軸受にも小型軽量化、
高強度化の要求が高まっており、「JIS S53C」
からなる素材を用いた場合には、この要求に応えること
ができない。ハブユニット軸受には、また、軸受部の転
動寿命特性を向上しながら、フランジの疲労強度を向上
することが要求されている。しかし、一般に疲労強度の
高い材料は切削性に劣るため、このような材料を、取付
穴等を切削加工する必要がある前記外輪部材に用いる
と、切削加工に時間がかかって生産性が低下するという
問題点がある。 【0004】特開平6−57324号公報には、ハブユ
ニット軸受の外輪部材の製造方法に関し、熱間鍛造後の
焼鈍処理を省略しても穴開け加工の工具寿命が低下しな
いように、使用する高周波焼入れ鋼の組成を特定するこ
とが記載されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載の方法では、切削性は良好となるが、軸受部の
転動寿命を向上しながらフランジの疲労強度を向上する
という点で改善の余地がある。本発明は、取付穴を有す
るフランジが外輪の外周に一体化されているフランジ付
き外輪を備えた軸受として、軸受部の転動寿命とフラン
ジの疲労強度の両方に優れた軸受が得られ、しかも前記
取付穴の切削加工を短時間で行うことのできる方法を提
供することを課題とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、フランジ付き外輪(取付穴を有するフラ
ンジが外輪の外周に一体化されている部材)の製造方法
において、以下の〜を特徴とする方法を提供する。 質量比で、炭素(C)を0.50%以上0.95%以
下、硅素(Si)を0.50%以上1.50%以下、マ
ンガン(Mn)を0.05%以上0.60%以下の範囲
で含有し、且つ、硫黄(S)の含有率は0.0035%
以下、酸素(O)の含有率は0.0015%以下である
合金鋼からなる素材を用いる。 この素材に対して黒鉛化処理を施した後に、略円筒状
の本体の外周にフランジが一体化された形状に成形する
成形工程を行い、次いで、前記本体の内周面に外輪軌道
溝を前記フランジに取付穴をそれぞれ形成する切削工程
を行う。 前記黒鉛化処理を、前記素材の組織が主に黒鉛、セメ
ンタイト、およびフェライトからなり、且つ前記切削工
程時の黒鉛組織の含有率が面積比で0.5%以上3.0
%以下となるように行う。 前記切削工程の後に、前記外輪軌道溝に対して高周波
焼入れと焼戻しを施すことにより、外輪軌道溝の表層部
分(表面から所定深さまでの部分:所謂「硬化層」)
を、硬さHRC60以上、残留オーステナイト量10体
積%以上、存在する黒鉛の粒子径(直径)1.0μm以
下にする。 【0007】この方法によれば、切削工程時に、素材の
組織が主に黒鉛、セメンタイト、およびフェライトから
なり、且つ黒鉛組織の含有率が面積比で0.5%以上
3.0%以下となっていることで、フランジの疲労強度
を確保しながら良好な切削性が得られる。また、切削加
工後に、外輪軌道溝に対して高周波焼入れと焼戻しを施
して、外輪軌道溝の表層部分を、硬さHRC(ロックウ
エルC硬度)60以上、残留オーステナイト量10体積
%以上、存在する黒鉛の粒子径1.0μm以下にするこ
とにより、この方法で得られたフランジ付き外輪を備え
た軸受の転動寿命が長くなる。 【0008】黒鉛は鋼の切削性を良好にする作用を有す
るため、本発明の方法においては、切削時には、黒鉛を
鋼中に十分に存在させて良好な切削性を得る。しかし、
熱処理後に外輪軌道溝をなす鋼中に粗大な黒鉛粒子が残
存していると、この黒鉛粒子に応力が集中して、剥離が
生じ易くなるため、熱処理後に黒鉛は残存しないことが
好ましく、残存していた場合でも粒子が小さい方が好ま
しい。そのため、本発明の方法では、熱処理後に黒鉛が
残存していた場合でも粒子径が1.0μm以下となるよ
うにした。また、熱処理後に残存する黒鉛の粒子径が
1.0μm以下となるように、本発明の方法では、切削
時(成形工程後)の鋼中の黒鉛含有率(面積率)の上限
を3.0%とした。 【0009】なお、成形工程を熱間鍛造等の熱間加工で
行う場合には、熱間加工によって黒鉛の固溶が生じて鋼
中の黒鉛含有量が減少するため、この減少分を考慮し
て、切削工程時の鋼中の黒鉛含有率(面積率)が0.5
%以上3.0%以下となるように、黒鉛化処理を行う必
要がある。すなわち、成形工程前(黒鉛化処理直後)の
鋼中黒鉛含有率は、前記範囲(0.5%以上3.0%以
下)に前記減少分を足した範囲内とする必要がある。 【0010】以下に、素材中の各元素の含有率について
説明する。 〔炭素(C):0.50〜0.95質量%〕Cは、素地
をマルテンサイト化して軸受として必要な硬さを得るた
めに、最も重要な元素である。また、素材の段階では、
Cのほとんどは黒鉛およびセメンタイトとして存在し、
特に黒鉛が素材の切削性を良好にする作用を有する。C
の含有率が0.50%未満であると、この作用が実質的
に得られない。また、Cの含有率が0.95%を超える
と、黒鉛の粗大化やセメンタイト量の増加が生じる。 【0011】また、高周波焼入れ、焼戻し後の硬さHR
C60以上を安定的に確保するために、素材の炭素含有
率を0.70%以上0.95%以下とすることが好まし
い。 〔硅素(Si):0.50〜1.50質量%〕Siは精
鋼時の脱酸剤として必要な元素であり、焼入れ性を向上
させるとともに、鋼中のセメンタイトを不安定にして黒
鉛化を促進させる作用も有する。さらに、焼戻し軟化抵
抗性を高くし、機械的強度および転動疲労寿命を向上さ
せる作用も有する。 【0012】Siの含有率が0.50%未満であると、
これらの作用が実質的に得られない。また、Siの含有
率が1.50%を超えても前記作用は飽和するため、コ
ストを抑える点から、Si含有率の上限値を1.50%
とした。 〔マンガン(Mn):0.05〜0.60質量%〕Mn
はSiと同様に、精鋼時の脱酸剤として必要な元素であ
る。また、鋼中の硫黄(S)と結合して硫化物(Mn
S)となるため、融点の低いFeSの生成を防止するの
に有効な元素である。また、焼入れ性を向上させるとと
もに、残留オーステナイトの生成を促進する元素でもあ
る。これにより、熱処理後の機械的強度および転動疲労
寿命が向上する。 【0013】Mnの含有率が0.05%未満であると、
前記作用が実質的に得られない。また、Mnは硫黄
(S)の10倍以上含有することが好ましい。Mnの含
有率が0.60%を超えると、熱処理後の表層部の残留
オーステナイト量が過剰になって、必要な硬さが得られ
なくなる。 〔硫黄(S):0.0035質量%以下〕SはMnと結
合して硫化物(MnS)を形成する。MnSは鋼の切削
性を向上させる作用を有するが、過剰に存在したり粗大
であると疲労破壊の起点となる。本願では、Sの含有率
を低く抑えて、黒鉛の存在により素材の切削性を向上さ
せている。 〔酸素(O):0.0015質量%以下〕素材中に酸素
が含まれていると、熱処理によってアルミナ系の酸化物
が生成され、これが硬質の介在物として鋼中に存在する
ようになる。この介在物が凝集して粗大化すると、転動
疲労寿命を低下させる要因となるため、酸素の含有率は
可能な限り少なくする必要がある。 〔好ましい構成〕本発明においては必須成分ではない
が、素材をなす合金鋼にモリブデン(Mo)が含まれて
いることが好ましい。Moは焼き入れ性を良好にする作
用を有する元素であるため、熱処理後の機械的強度を高
くし、転動疲労寿命を長くすることができる。また、焼
戻し軟化抵抗性を良好にする作用も有する。これらの作
用を得る目的で、素材をなす合金鋼に0.15質量%以
上0.30質量%以下の範囲で含有することが好まし
い。0.30質量%を超えて含有すると、黒鉛化および
切削性に悪影響が及ぶ恐れがあるとともに、コストが高
くなる。 〔その他〕合金鋼の不可避的不純物元素のうち、ホウ素
(B)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ニオ
ブ(Nb)、およびジルコニウム(Zr)は、窒素
(N)と結合して窒化物となり、これが黒鉛を析出させ
る核として作用する。また、希土類元素およびその酸化
物も黒鉛を析出させる核として作用する。 【0014】したがって、黒鉛化処理により、黒鉛が微
細に分散析出された鋼を得るためには、これらの元素を
含有している合金鋼を素材として用いることが好ましい
が、これらの元素が過剰に含まれていると黒鉛が粗大化
する。なお、窒化ホウ素(BN)は黒鉛の析出核として
特に良好に作用する。また、不可避的不純物元素を極端
に減少させるとコストがかかるばかりでなく、黒鉛の析
出核を減少させることになる。 【0015】そのため、使用する合金鋼の窒素(N)お
よびホウ素(B)の含有率は、質量比で0.001%以
上0.015%以下であることが好ましく、アルミニウ
ム(Al)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、ジルコ
ニウム(Zr)、および希土類元素の含有率は、それぞ
れ0.050%以下であることが好ましい。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
説明する。図1は、自動車用ハブユニット軸受を示す断
面図である。この自動車用ハブユニット軸受は、外輪部
材1と、内輪2と、玉3と、保持器4とからなる。外輪
部材1は、略円筒状の外輪11の外周にフランジ12が
一体化されたものである。フランジ12には、外輪部材
1にブレーキディスク5とホイール6を取り付けるため
のボルト穴(取付穴)12aが形成されている。 【0017】この取付は、フランジ12のボルト穴12
aに圧入されたボルト7を、ブレーキディスク5および
ホイール6の取付穴に入れて、ホイール6側でナット8
により締結することで行われる。この外輪部材(フラン
ジ付き外輪)1を以下の方法で作製した。先ず、表1に
示す各組成の合金鋼からなる素材を用意した。なお、N
o. 24の素材をなす鋼は「JIS S53C」であ
る。各素材に対して黒鉛化処理を行った。黒鉛化処理
は、温度を680〜710℃の範囲に保持し、処理時間
を変化させて行った。これにより、各素材の黒鉛組織の
含有率を変化させた。 【0018】次に、黒鉛化処理された各素材を、熱間鍛
造法で成形することにより、所定厚さの円筒体の外周に
所定寸法のフランジが一体化された形状の成形品を得
た。得られた各成形品から電子顕微鏡観察用の試験片を
切り出した。各試験片を走査型電子顕微鏡で1000倍
に拡大し、この拡大像の30視野について反射電子像を
観察した。この反射電子像から、各成形品をなす鋼の組
織が分かるため、各視野の反射電子像を画像処理して、
各視野毎に黒鉛組織の面積比を測定し、その平均値を算
出した。この値を「切削時の黒鉛面積率」として表1に
示す。 【0019】次に、黒鉛化処理された各素材の切削性を
以下の方法で調べた。「JIS B4011」のバイト
切削試験法に基づき、下記の条件で各素材を切削し、工
具寿命を調べた。その結果を表1に相対値で示した。こ
の相対値はNo. 24の工具寿命を「1」とした比であ
る。 <切削性試験条件> 切削機械:高速旋盤 工具:「JIS B 4053」のP10 切り込み速度:200〜250m/分 送り量:0.2〜0.3mm/rev 切り込み深さ:1.0〜1.5mm 切削箇所:前記成形品の円筒体内周面への軌道溝形成 工具寿命の定義:バイトの逃げ面摩耗量が0.2mmに
達するまでの時間 次に、各素材からなる前記成形品(円筒体の外径34m
m、フランジの外径60mm)を用い、下記の条件で切
削加工を行うことにより、成形品の円筒体内周面に2個
の外輪軌道溝(図2の符号11a)を、フランジ(図2
の符号12)に取付穴(図2の符号12a)をそれぞれ
形成した。 <切削加工条件> 切削機械:高速旋盤 工具:「JIS B 4053」のP10 切り込み速度:200〜250m/分 送り量:0.2〜0.3mm/rev 取付穴の寸法:直径15mm 次に、前記切削加工後の各成形品に対して、下記の条件
で高周波焼入れを行った後、焼戻し(焼戻し温度150
〜180℃)を行った。これにより、図2に示す形状の
外輪部材1を得た。 <高周波焼入れ条件> 周波数:30kHz 電流値:10A 冷却水の流速:35リットル/分 電圧値:10kV このようにして得られた各外輪部材1の軌道溝11aの
表層部分について、ロックウエルC硬度(HRC)、残
留オーステナイト量(γR )、存在する黒鉛の粒子径を
測定した。ロックウエルC硬度は、各外輪をなす素材を
試験片の形状とした以外は各外輪と同じ方法で、硬さ試
験用の試験片を作製し、「JIS Z2245」に準拠
して測定した。 【0020】残留オーステナイト量(γR )はX線回折
法により測定した。軌道溝11aの表層部分に存在する
黒鉛の粒子径は、電子顕微鏡により1000倍に拡大し
て測定した。これらの測定値も表1に示す。次に、この
ようにして得られた各素材からなる外輪部材1を用い
て、以下の方法で、静止状態での曲げ疲労寿命試験を行
った。 【0021】図3に示すように、外輪部材1をベース9
1に固定し、外輪11の位置に、球面座を有する部材9
2を配置した。この部材92を用い、応力振幅:980
0N、周波数:30Hzの条件で、外輪11の外周面に
荷重Pを付加した。外輪部材1のベース91への固定
は、ベース91に雌ねじ91aを設け、この雌ねじ91
aと、外輪部材1のフランジ12に設けてあるボルト穴
12aと、ボルト93とを用いて行った。 【0022】外輪部材1のフランジ12と外輪11との
境界位置に破断が生じた時点で、試験を止め、その時点
までの応力繰り返し数を調べた。その結果を表1に相対
値で示した。この相対値はNo.24の値を「1」とした
比である。次に、図1に示す形状の内輪2を以下の方法
で形成した。すなわち、素材としてSUJ2を用い、焼
入れ(焼入れ温度830〜850℃)、焼戻し(焼戻し
温度150〜180℃)を行ったものを用意した。次
に、玉3として、SUJ2からなる素材を用い、焼入れ
(焼入れ温度830〜850℃)、焼戻し(焼戻し温度
150〜180℃)を行ったものを用意した。また、保
持器4として、ガラス繊維入りナイロン66製の保持器
を用意した。 【0023】このようにして得られた外輪部材1と内輪
2と玉3と保持器4を用いて、図1に示すハブユニット
軸受を組み立て、下記の条件で転動疲労寿命を調べる試
験を行った。すなわち、外輪部材1の構成のみが異なる
No. 1〜24の各ハブユニット軸受を下記の条件で回転
し、外輪軌道溝11aに剥離が生じるまでの回転時間を
測定した。この回転試験は、No. 1〜24のハブユニッ
ト軸受を各10個用意して行い、各10個の測定結果か
らL10寿命(累積破損率10%での寿命)を調べた。 【0024】その結果を表1に相対値で示した。この相
対値はNo. 24の寿命を「1」とした比である。 <転動疲労寿命試験の条件> 回転輪:外輪 面圧:3.0GPa 回転速度:1000rpm 温度:60℃ 潤滑:潤滑油「68番タービン油」に、異物として、硬
さHv870、粒径74〜147μmの鉄粉を300p
pm混入させて使用。 【0025】 【表1】 【0026】この表に示すように、外輪部材が本発明の
方法で作製されているNo. 1〜16のハブユニット軸受
は、外輪部材の工具寿命と回転曲げ寿命、および軸受の
転動疲労寿命のいずれの点についても、外輪部材が従来
の方法で作製されたNo. 24のハブユニット軸受よりも
優れていた。また、外輪部材が本発明の方法で作製され
ていないNo. 17〜24のハブユニット軸受は、外輪部
材の工具寿命と回転曲げ寿命、および軸受の転動疲労寿
命の少なくともいずれかの点で、外輪部材が本発明の方
法で作製されているNo. 1〜16のハブユニット軸受よ
りも劣っていた。 【0027】したがって、この実施形態のNo. 1〜16
の外輪部材(フランジ付き外輪)1の作製方法によれ
ば、軸受部の転動疲労寿命とフランジ12の疲労強度の
両方に優れたハブユニット軸受が得られ、しかもボルト
穴(取付穴)12aの切削加工を短時間で行うことがで
きる。なお、この実施形態では、自動車用ハブユニット
軸受の外輪部材について記載されているが、本発明の方
法は、フランジ付き外輪(取付穴を有するフランジが外
輪の外周に一体化されている部材)であれば、いずれの
ものであってもその製造方法として適用できる。 【0028】 【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、取付穴を有するフランジが外輪の外周に一体化さ
れているフランジ付き外輪を備えた軸受として、軸受部
の転動寿命とフランジの疲労強度の両方に優れた軸受が
得られ、しかも前記取付穴の切削加工を短時間で行うこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車用ハブユニット軸受の一例を示す断面図
である。 【図2】図1のハブユニット軸受の外輪部材を示す断面
図である。 【図3】実施形態で行った曲げ疲労寿命試験を説明する
図である。 【符号の説明】 1 外輪部材(フランジ付き外輪) 11 外輪 11a 軌道溝 12 フランジ 12a ボルト穴(取付穴) 2 内輪 3 玉 4 保持器 5 ブレーキディスク 6 ホイール 7 ボルト 8 ナット
である。 【図2】図1のハブユニット軸受の外輪部材を示す断面
図である。 【図3】実施形態で行った曲げ疲労寿命試験を説明する
図である。 【符号の説明】 1 外輪部材(フランジ付き外輪) 11 外輪 11a 軌道溝 12 フランジ 12a ボルト穴(取付穴) 2 内輪 3 玉 4 保持器 5 ブレーキディスク 6 ホイール 7 ボルト 8 ナット
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
Fターム(参考) 3J101 AA02 AA32 AA43 AA54 AA62
BA54 BA57 DA03 DA09 EA02
FA31 FA44 GA02 GA03
4K042 AA22 BA04 BA05 DA01 DA02
DA06 DB01
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 【請求項1】 取付穴を有するフランジが外輪の外周に
一体化されているフランジ付き外輪の製造方法におい
て、 質量比で、炭素(C)を0.50%以上0.95%以
下、硅素(Si)を0.50%以上1.50%以下、マ
ンガン(Mn)を0.05%以上0.60%以下の範囲
で含有し、且つ、硫黄(S)の含有率は0.0035%
以下、酸素(O)の含有率は0.0015%以下である
合金鋼からなる素材を用い、 この素材に対して黒鉛化処理を施した後に、略円筒状の
本体の外周にフランジが一体化された形状に成形する成
形工程を行い、次いで、前記本体の内周面に外輪軌道溝
を前記フランジに取付穴をそれぞれ形成する切削工程を
行い、 前記黒鉛化処理を、前記素材の組織が主に黒鉛、セメン
タイト、およびフェライトからなり、且つ前記切削工程
時の黒鉛組織の含有率が面積比で0.5%以上3.0%
以下となるように行い、 前記切削工程の後に、前記外輪軌道溝に対して高周波焼
入れと焼戻しを施すことにより、外輪軌道溝の表層部分
を、硬さHRC60以上、残留オーステナイト量10体
積%以上、存在する黒鉛の粒子径1.0μm以下にする
ことを特徴とするフランジ付き外輪の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2001401092A JP2003193139A (ja) | 2001-12-28 | 2001-12-28 | フランジ付き外輪の製造方法 |
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