JP2003188429A - 圧電素子、インク吐出素子およびインクジエツト式記録装置 - Google Patents

圧電素子、インク吐出素子およびインクジエツト式記録装置

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JP2003188429A
JP2003188429A JP2001384316A JP2001384316A JP2003188429A JP 2003188429 A JP2003188429 A JP 2003188429A JP 2001384316 A JP2001384316 A JP 2001384316A JP 2001384316 A JP2001384316 A JP 2001384316A JP 2003188429 A JP2003188429 A JP 2003188429A
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JP2001384316A
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Hideo Torii
秀雄 鳥井
Akiyuki Fujii
映志 藤井
Atsushi Tomosawa
淳 友澤
Ryoichi Takayama
良一 高山
Akiko Kubo
晶子 久保
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Panasonic Holdings Corp
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薄膜型圧電素子は、圧電膜を非晶質膜を作製
後、結晶化の熱処理を行う方法で作られ、クラックの発
生や特性バラツキの原因となっていた。 【解決手段】 基板の上に密着層を設け、その上に第1
の電極層を設け、その上に第1の結晶配向制御層を設
け、その上に第2の結晶配向制御層を設け、その第2の
結晶配向制御層上に圧電体層を設け、その圧電体層上に
第2の電極層を設けた構成とすることによって、圧電薄
膜材料を成膜後に熱処理による結晶化工程なしに直接的
に、例えばスパッタ法等で、結晶構造と優先配向面を制
御した結晶性の圧電体層が製造できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気機械変換機能を
呈する圧電素子、その圧電素子を用いたインクジエツト
ヘツド用インク吐出素子及びそのインクジエツトヘツド
用インク吐出素子を複数個配置したインクジエツトヘツ
ドを印字手段として備えたインクジエツト式記録装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】圧電材料は、機械的エネルギーを電気的
エネルギーに変換し、あるいは電気的エネルギーを機械
的エネルギーに変換する材料である。圧電材料の代表的
なものとしては、ペロブスカイト型の結晶構造のチタン
酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3)(以下、
『PZT』と記す)がある。特にペロブスカイト型の正
方晶系結晶構造のPZTの場合には、<001>軸方向
(c軸方向)に最も大きな圧電変位が得られる。しか
し、多くの圧電材料は、結晶粒子の集合体からなる多結
晶体であり、各結晶粒子の結晶軸はでたらめな方向を向
いている。従って、自発分極Psもでたらめに配列して
いる。
【0003】ところで、近年の電子機器の小型化に伴な
って、圧電素子に対しても小型化が強く要求されるよう
になってきた。そして、その要求を満たすために、圧電
素子は従来から多く使用されてきた焼結体に比べて著し
く体積の小さい薄膜の形態で使用されるようになりつつ
あり、圧電素子に対する薄膜化の研究開発が盛んになっ
てきた。例えば、PZTの場合、自発分極Psは<00
1>軸方向を向いているので、薄膜化しても高い圧電特
性を実現するためには、PZT薄膜を構成する結晶の<
001>軸を基板表面に対して垂直方向に揃える必要が
ある。そして、これをほぼ100%配向させて実現する
ために、従来においては、結晶方位(100)面が表面
に出るように切り出した岩塩型結晶構造の酸化マグネシ
ウム(MgO)からなる単結晶の基板を用いることで、
PZT組成のターゲットを用いたスパッタ法をによっ
て、その表面に対して垂直方向に<001>軸配向した
結晶性良好なPZT薄膜を600〜700℃の温度で、
直接的に形成していた(例えば、J. Appl. Phys. vol.6
5, No.4 (15 Feb. 1989) pp.1666-1670)。この方法
は、MgO単結晶の基板を用いることが特徴であり、そ
れによってはじめて、高い圧電特性を有する結晶方向に
優先的に結晶配向した圧電薄膜が実現されたわけである
が、このMgO単結晶は非常に高価な材料であるため
に、この圧電薄膜を利用した圧電素子などの工業製品を
大量生産するには、コスト面でふさわしくない。
【0004】そこで、同様の圧電素子において、安価な
基板の上に圧電材料の結晶配向膜を作る方法として、い
ろいろな工夫がなされている。例えば、PZTなどの圧
電体層の結晶の優先配向面を制御する方法として基板の
表面に酸化ジルコニウムを主成分とする下地層を形成
し、さらにその下地層上にイリジウムを含有する下部電
極を形成し、その下部電極上に極薄のチタン層を積層
し、前記のチタン層上に、圧電特性を発現する強誘電体
を構成する金属元素および酸素元素を含む非晶質の圧電
体前駆体薄膜を形成し、その非晶質の薄膜を高温で熱処
理する方法で結晶化させて圧電性を発現する圧電体薄膜
に変化させる製造方法が考えられており、その際にチタ
ン層の膜厚を制御することで圧電体薄膜の結晶配向性を
コントロールできることが特開2001-88294号公報に開示
されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述の特開2001-88294
号公報に開示された方法は、高価なMgO単結晶基板を
用いない方法として優れた方法であるが、圧電薄膜は、
MgO単結晶基板上のように、膜作製時に直接に結晶配
向した結晶性良好な膜が得られず、そのために、一旦、
非晶質の圧電体前駆体薄膜を作製し、それを含む積層膜
を最後に基板ごと熱処理して結晶軸がふさわしい方向に
優先配向した結晶性の圧電薄膜を得ている。特開2001-8
8294号公報では、非晶質薄膜を一旦作製し、結晶化熱処
理なる後処理によって結晶性薄膜に変化させて合成する
方法であるゾル・ゲル法(MOD法も含む)以外の、結
晶化のための成膜後の熱処理工程を必要としない直接に
結晶質薄膜を作る成膜法、例えば、スパッタ法、レーザ
ーアブレーション法、CVD法で、強誘電体薄膜の代表
のPZT膜の配向制御を試みたが、ゾル・ゲル法以外に
配向制御ができなかったとしている。その理由は、ゾル
・ゲル法では下部電極側から上部電極側にかけて徐々に
PZT膜の結晶化が進行するのに対し、CVD法やスパ
ッタ法などでは、PZT膜の結晶化がランダムに進行
し、結晶化に規則性がないことが配向制御を困難にして
いるためとしている。
【0006】しかしながら、ゾル・ゲル法は、圧電素子
を工業的に量産すると、有機物を取り除く脱脂工程にお
いて非晶質の圧電体前駆体薄膜に体積変化によりクラッ
クが生じやすく、さらに、非晶質の圧電体前駆体薄膜を
高温で加熱して結晶化させる工程でも結晶変化によりク
ラックが生じやすく、さらに上記の成膜後の後熱処理工
程があるために、工程数が多く、ともすると歩留りが低
くなってしまうという課題があった。
【0007】本発明は、このような従来技術の課題を解
決するもので、高歩留りで、かつ高信頼性をもつ圧電素
子、その製造方法、それを用いたインクジエツトヘツド
及びインクジエツトヘツド式記録装置の提供を目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の圧電素子は、基板上に密着層を設け、その
密着層上に第1の電極層を設け、その第1の電極層上に
第1の結晶配向制御層を設け、その第1の結晶配向制御
層上に第2の結晶配向制御層を設け、その第2の結晶配
向制御層上に圧電体層を設け、その圧電体層上に第2の
電極層を設けた構成を特徴とする。
【0009】ここで、本発明の圧電素子の圧電体層は、
スパッタ法で形成され、後熱処置による結晶化工程なし
に作製される結晶性の圧電薄膜材料であり、かつ、(0
01)に結晶配向した薄膜材料であることが好適な特徴
であり、圧電薄膜材料を成膜後に熱処理による結晶化工
程なしに、直接的に、結晶構造と優先配向面を制御した
結晶性の圧電体層が製造できる。その結果、ゾルゲル法
のように、圧電体層を成膜後に熱処理して結晶化する工
程を無くすることができ、クラックの発生や特性ばらつ
きを少なくできて、工業的に量産しても圧電特性の再現
性、ばらつき及び信頼性の良好な圧電体素子が実現でき
る。
【0010】また、前記本発明の圧電素子は、第一の結
晶配向制御層が酸化マグネシウム、酸化ニツケル、酸化
コバルト、酸化チタン、酸化バナジウムの(100)配
向の岩塩型結晶構造をもつ酸化物の群から選ばれた1種
以上であることが好ましい。このように圧電薄膜の結晶
配向を制御できるのは、圧電薄膜材料がペロブスカイト
型の結晶構造の物質であり、金属元素と酸素の配列と結
晶格子の間隔が、上記の岩塩構造の酸化物とほぼ一致す
るからであり、スパッタ法のように、下の層の上に積も
りながら、膜成長するタイプの薄膜形成の工法には、結
晶配向制御が可能になる。
【0011】また、前記本発明の圧電素子は、第一の結
晶配向制御層がAxB3-xO4で示される(100)配向のス
ピネル型酸化物の群から選ばれた1種以上である酸化物
薄膜であって、A及びBは鉄、コバルト、マンガン、ニツ
ケル、亜鉛の群から選ばれた元素であり、xは0を超え3
未満の値であることが好ましい。このように圧電薄膜の
結晶配向を制御できるのは、圧電薄膜材料がペロブスカ
イト型の結晶構造の物質であり、金属元素と酸素の配列
と結晶格子の間隔が、上記のスピネル型結晶構造の酸化
物とほぼ一致するからである。
【0012】また、前記本発明の圧電素子は、第二の配
向制御層がチタン酸ランタン鉛もしくはチタン酸ランタ
ン鉛にマグネシウム又はマンガンの群から選ばれた1種
以上を添加した(001)配向の鉛を含むペロブスカイ
ト型酸化物でありことが好ましい。
【0013】なお、上記の(001)配向の鉛を含むペ
ロブスカイト型酸化物において、化学量論組成よりも鉛
元素が過剰であることが望ましい。
【0014】また、前記本発明の圧電素子は、密着層と
して、チタン、モリブデン、タングステン、タンタルの
群から選ばれた1種であることが好ましい。
【0015】基板と第1の電極層の間に上記の群から選
ばれる金属材料を入れることによって、強固に接合でき
ることになり、素子形状への機械加工の場合に、第1の
電極層から第2の電極層までの積層膜が基板からはがれ
ることがなくなり、加工での歩留まりがあがることにな
る。また、本発明の圧電素子を大きな電圧を印加して、
大きく変位振動して連続使用した場合に、疲労による基
板と積層膜のはがれを少なくできて、圧電素子の信頼性
があがることになる。
【0016】さらに、本発明のインク吐出素子は、基板
上に、本発明の圧電素子は構成の中の第1の電極層を設
け、その第1の電極層上に第1の結晶配向制御層を設
け、その第1の結晶配向制御層上に第2の結晶配向制御
層を設け、その第2の結晶配向制御層上に圧電体層を設
け、その圧電体層上に第2の電極層を設けて圧電素子を
形成し、その圧電素子の第2の電極層上に振動板層を設
け、その振動板層の第2の電極層が形成されていない表
面と圧力室を接合し、上記基板を除去してなるアクチュ
エータ部と、前記アクチュエータ部の変位によってイン
ク液に圧力を加える圧力室部品と、前記圧力室部品にイ
ンク液を供給するインク液流路部品と、インク液を押し
出すノズル板とが接着された構成であることを特徴とす
る。
【0017】また、本発明のインク吐出素子は、基板の
一方の面上に振動板層を設け、その振動板層上に第1の
電極層を設け、その第1の電極層上に第1の結晶配向制
御層を設け、その第1の結晶配向制御層上に第2の結晶
配向制御層を設け、その第2の結晶配向制御層上に圧電
体層を設け、その圧電体層上に第2の電極層を設けて圧
電素子を形成し、その圧電素子の基板の前記のそれぞれ
の層が形成されていない他方の面に隔壁で囲まれた圧力
室を形成し、前記圧力室にインク液を供給するインク液
流路部品と、インク液を押し出すノズル板とが接着され
た構成を特徴とする。
【0018】そのインク吐出素子の複数個と、前記イン
ク吐出素子を駆動する駆動電源素子とからインクジェッ
トヘッドが構成される。このインクジェットヘッドの構
成によれば、インク吐出素子のアクチュエータ部が大き
な圧電変位(変位量)を得ることが可能な(001)に
配向した圧電体層を用いて作製されているため、インク
液の吐出能力が高く、インク吐出素子間のばらつきも小
さい。また、このようにインク液の吐出能力が高いた
め、電源電圧の調整幅にマージンを大きくとることがで
きるので、インク液の吐出のばらつきを容易にコントロ
ールすることができる。
【0019】また、本発明に係るインクジェット式記録
装置の構成は、複数個の本発明のインク吐出素子から構
成されたジェットヘッドと、前記インクジェットヘッド
を記録媒体の幅方向に移送するインクジェットヘッド移
送手段と、前記インクジェットヘッドの移送方向に対し
て略垂直方向に記録媒体を移送する記録媒体移送手段と
を備えたことを特徴とする。このインクジェット式記録
装置の構成によれば、インク液の吐出のばらつきを容易
にコントロールすることのできるインクジェットヘッド
を用いて構成することにより、記録媒体に対する記録の
ばらつきを小さくすることができるので、信頼性の高い
インクジェット式記録装置を実現することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら説明する。
【0021】(第1の実施の形態)図1は本発明の第1
の実施の形態における圧電素子を示す斜視図である。図
1に示すように、本実施の形態の圧電素子20は、長さ
が15.0mm、厚さが0.30mm、幅が3.0mm
の短冊平板形状のシリコン基板1とその上に形成された
積層体11から成っている。圧電素子20の幅は3.0
mmである。圧電素子20は、その一端部の長さ3.0
mmがエポキシ系接着剤8によって厚み1.0mmのス
テンレス支持基板7(幅0.3mmで奥行1.0mm)
に固定され、これにより片持ち梁が構成されている。
【0022】圧電素子20は、シリコン基板1の片側表
面全面に、厚さ0.010μmのモリブデン薄膜からな
る密着層12を形成し、この密着層12の上に厚さ0.
12μmの白金薄膜からなる第1の電極層2が設けられ
ている。さらに、第1の電極層2の表面上に、シリコン
基板1において、ステンレス支持基板7に接着された側
の一端から第1の電極層2の幅3.0mmで長さ3.0
mmを残して、残り全面(つまり幅3.0mmで長さ1
2.0mmの部分)を(100)配向のNiO薄膜(厚
さ0.40μm)からなる第1の結晶配向制御層3と、
第1の結晶配向層3の上に設けられた(001)配向の
チタン酸ランタン鉛薄膜(厚さ0.018μm)からな
る第2の結晶配向層4と.その第2の結晶配向層4の上
に設けられた厚さ2.50μmのPZT薄膜からなる圧
電体層5と、その圧電体層5の上に設けられた白金薄膜
(0.25μm)からなる第2の電極層6とにより構成
されている。第1の電極層2と第2の電極層6には、そ
れぞれリード線9、10が接続されている。
【0023】そして、リード線9、10を介して圧電素
子20の第1の電極層2と第2の電極層6との間に電圧
を印加すると、圧電体層5は図1のx方向に伸びる。圧
電体層5の伸びの変化量ΔL(m)は、印加電圧をE
(V)、圧電体層5の厚さをt(m)、圧電体層の長さ
をL(m)、圧電体層の圧電定数をd31(pm/V)と
して、下記(数1)によって表記される。
【0024】
【数1】
【0025】ここで、膜厚の薄い第2の電極層6と接合
している圧電体層2の下側部分はx方向へ伸びるが、シ
リコン基板1と接合している第1の電極層2と、第1、
第2の結晶配向制御層3,4を介して接合している圧電
体層5の下部側部分は、厚いシリコン基板1によってそ
の伸び変位が抑制される。その結果、ステンレス支持基
板7に固定された端子側の一端部分と反対側の圧電素子
20の先端が図1のz軸のーZ方向(図1では下側)に
変位する。従って、電圧の印加と除去を一定周波数で繰
り返すと、圧電素子20の先端が所定の変位幅でz軸方
向に上下運動する。そして、印加電圧と圧電素子20の
先端の変位幅の大きさの関係を測定することにより、圧
電素子20の変位特性を評価することができる。
【0026】次に、圧電素子20の製造方法について、
図2を参照しながら説明する。図2は本発明の第1の実
施の形態における圧電素子の製造方法を示す工程図であ
る。
【0027】まず、図2(a)に示すように、20mm
角で厚み0.30mmの(100)面が研磨されたシリ
コン基板1の上にRFスパッタ法によってモリブデン
(Mo)からなる密着層12を形成し、さらにその上に
白金(Pt)からなる第1の電極層2を形成した(図2
(a))。次いで、幅5.0mmで長さ12.0mmの
長方形の開口部をもつステンレス製マスク(厚み0.2
mm)を用いて、第1の電極層2上にプラズマMOCV
D法によって(001)配向のNiO薄膜からなる第1
の結晶配向制御層3を形成し、さらに、同じ形状のステ
ンレス製マスクを用いて、第1の結晶配向制御層3の表
面に正確に、RFマグネトロンスパッタ法によってチタ
ン酸ランタン鉛薄膜からなる第2の結晶配向制御層4を
形成し、同様にして、さらに第2の結晶配向制御層4の
表面に正確に、同じRFマグネトロンスパッタ法によっ
てPZT薄膜からなる圧電体層5を形成した。ここで、
(001)配向のNiO薄膜の製造方法、チタン酸ラン
タン鉛薄膜の製造方法、PZT薄膜の圧電体層5の製造
方法については、後で詳細に説明する。圧電体層5の厚
みは2.50μmである。次いで、前述と同じ形状のス
テンレス製マスクを用いて、前述と同様にして圧電体層
5の表面上に正確にRFスパッタリング法によって白金
(Pt)からなる厚み0.25μmの第2の電極層6を
形成した。これにより、図2(b)に示すようなシリコ
ン基板1に圧電体層5を含む積層体11が設けられた構
造体21が得られた。
【0028】次いで、図2(c)に示すように、幅3.
0mmで長さ15.0mmの短冊形状になるように、か
つ、その一端の幅3.0mm、長さ3.0mmの正方形
部分を第1の電極層がむき出しで出るように、この構造
体21をダイシングソーで正確に切断した。この結果、
のこりの幅3.0mmで長さ12.0mmの部分は第2
の電極層2がむき出しで出ることになった圧電素子構造
体部品22が得られた。続いて、図2(d)のように、
上記の圧電素子構造体部品22の第2の電極層2がむき
出し側のシリコン基板1の一端を、エポキシ系接着剤8
を用いて、ステンレス支持基板7と接合した。
【0029】次いで、図2(e)に示すように、圧電素
子構造体部品22のシリコン基板1上の第1の電極層2
のむき出しになっている部分に導電性接着剤(銀ペース
ト)を用いて0.1mmの金製のリード線9を接続し、
同じ一端方向の第2の電極層にワイヤボンディングで同
様なリード線10を接続して、圧電素子20を得た(図
2(f))。このようにして作製した圧電素子20を試
料1とした。
【0030】第1の結晶配向制御層2である(100)
配向のNiO薄膜は、図3に示すプラズマMOCVD成
膜装置を用いて、以下のようにして作製した。
【0031】図3に示すプラズマMOCVD成膜装置1
01は、真空チャンバー102内に平行に配置したアー
ス側電極103とマグネット105を配置したRF側電
極104の二つの電極間に高周波によってプラズマを発
生させ、その中で有機金属錯体の原料ガスを分解して基
板106上に化学蒸着(CVD)することで薄膜を形成
する装置である。ここで、この基板106はアース側電
極103に片側面が密着して保持され、基板加熱ヒータ
107によってあらかじめ、400℃に加熱された状態
にした。
【0032】ここで、基板106は、図2(a)に示し
たシリコン基板1の表面にモリブデン薄膜からなる密着
層と、白金薄膜からなる第1の電極層の二層を形成した
ものである。
【0033】上記のプラズマMOCVD装置101は、
原料ガス供給系として、2つの加熱機構付き原料気化容
器108,109を備えている。その一方の原料気化容
器108にニッケルアセチルアセトナートである第1の
有機金属錯体原料110を入れ、150℃に加熱した。
このように加熱することによって気化したニッケルアセ
チルアセトナートの蒸気(ガス)を、10ml/min
の流速のキャリアガス(窒素)を用いて、バルブ116
を開いて原料ガス吹出ノズル112を介して、真空チャ
ンバー102内に流し入れた。また、反応ガスとして酸
素ガスを12ml/minで流し、酸素ガス吹出ノズル
113を介して、真空チャンバー102内に流し入れ
た。この際に、バルブ117は閉じられており、第2の
有機金属錯体原料111は、真空チャンバー102内に
流入しないように成っている。真空チャンバー102内
は、その排気口114から真空排気されることで、8.
0Paの真空度を保持した。
【0034】以上の様な状態において、RF側電極10
4に13.56MHzで400Wの高周波を10分間印
加することによって、アース側電極103との間にプラ
ズマを発生させ、基板106の外側表面に(100)配
向のNiO薄膜(膜厚0.40μm)を形成した。この
成膜中、基板106をアース側電極103ごと、基板回
転モータ115によって120rpmの速度で回転させ
た。
【0035】以上のようにして、(100)配向のNi
O薄膜からなる第1の結晶配向制御層3を作製した。
【0036】第2の結晶配向制御層3と圧電体層4は以
下のようにして作製した。すなわち、まず、(100)
面が表面となっているNiO薄膜の第1結晶配向制御層
2が形成されたシリコン基板1を、2つの同じ構造の成
膜室を持ち、薄膜形成すべき基板を真空を破らずに移動
できるRFマグネトロンスパッタ装置を用い、ひとつの
成膜室には化学量論比のチタン酸ランタン鉛(モル比で
Pb:La:Ti=0.92:0.08:1.00)に
約20モル%PbOを過剰に加えて調合したのターゲッ
ト(組成モル比Pb:La:Ti=1.12:0.0
8:1.00)を取り付け、もう一方の成膜室にはチタ
ン酸ジルコン酸鉛(PbZr0.53Ti0.473)に酸化
鉛(PbO)をモル比で5モル%PbOを過剰に加えて
調合したターゲットを取り付けて膜形成した。まず、は
じめに、チタン酸ランタン鉛のターゲットを取り付けた
成膜室の中で、第1の結晶配向制御層2まで形成したシ
リコン基板を予め560℃の温度に加熱保持し、第1の
結晶配向制御層2上に、c軸(〈001〉軸)が表面に
対して垂直方向に成長したペロブスカイト型結晶構造で
過剰の鉛を含有するチタン酸ランタン鉛からなる膜厚0.
018μmの薄膜を形成した。この薄膜をターゲットと
比較しながら、X線光電子分光(XPS)装置で組成分
析の結果、この薄膜の組成は、ターゲット組成と同組成
のモル比Pb:La:Ti=1.12:0.08:1.
00であった。この場合、アルゴンと酸素の混合ガス
(ガス体積比Ar:O2=19:1)をスパッタリングガス
として用い、そのトータルガス圧力を0.3Paに保持
し、300Wの高周波電力を印加して10分間スパッタ
リングを行った。
【0037】次いで、第2の結晶配向制御層3を形成し
たシリコン基板を、真空を破らずに、チタン酸ジルコン
酸鉛のターゲットを取り付けた成膜室に搬送し、その中
で基板温度600℃まで加熱して、前記極薄の薄膜の上
に膜厚2.50μmのPb1. 00(Zr0.53Ti0.47)O
3.5で表記できる圧電体層5を形成した。この場合、ア
ルゴンと酸素の混合ガス(ガス体積比Ar:O2=19:
1)をスパッタリングガスとして用い、そのトータルガ
ス圧力を0.3Paに保持し、600Wの高周波電力を
印加して2時間スパッタリングを行った。
【0038】X線回折法によって解析した結果、圧電体
層5は、ペロブスカイト型の結晶構造を示し、かつ、
(001)の結晶配向率が98%に優先配向した薄膜
(<001>軸が表面に垂直な方向を向いた構造の薄
膜)であることが分かった。ここで、結晶配向率は、P
ZT薄膜のX線回折パターンの(001)、(10
0)、(010)、(110)、(011)、(10
1)、(111)のピーク強度の合計に対する(00
1)ピークの強度の割合の百分率である。
【0039】また、X線マイクロアナライザーによる組
成分析の結果、圧電薄膜2の陽イオンの組成比はPb:
Zr:Ti=1.00:0.53:0.47であり、P
b(Zr0.53Ti0.47)O3で表記できる化学組成にな
っていることが分かった。
【0040】上記のようにして作製した圧電素子20の
第1の電極層2と第2の電極層6との間にリード線9、
10を介して0Vからー30Vの三角波電圧を印加し、
圧電素子20の先端のz軸方向の上下運動の変位量を測
定した。図4に、周波数200Hzの電圧を印加した場
合の圧電素子20の先端のz軸方向の上下運動の変位量
を示す。 図4に示すように、0Vからー30Vの電圧
を印加した場合、この試料1の圧電素子20の先端は最
大10.5μm変位していた。
【0041】別の圧電素子として、密着層12として、
スパッタ法で厚さ0.015μmのチタン薄膜を形成
し、第1の結晶配向制御層3として、スパッタ法による
(001)配向のNiO薄膜(膜厚0.92μm)を作
製し、その他の各層は材料と膜厚が試料1と同形状の圧
電素子20である試料2を作製した。ここで、(00
1)配向のNiO薄膜は以下のようにして作製した。N
iOの粉体をプレスして固めたスパッタターゲットを用
いて、RFマグネトロンスパッタ装置を使って、アルゴ
ンと酸素の混合ガス(ガス体積比Ar:O2=19.
8:0.2)をスパッタリングガスとして用い、そのト
ータルガス圧力を0.3Paに保持し、100Wの高周
波電力を印加して240分間スパッタリングを行い、
シリコン基板1上に設けた第1の電極層2(白金薄膜
(Pt))の上に、膜厚0.92μmの(001)配向
のNiO薄膜を得た。
【0042】この試料2の圧電体層のPZT薄膜の(0
01)配向率は97%であった。また、試料1と同じ評
価をおこなった結果、0Vからー10Vの三角波電圧の
印加に対して、試料2の圧電素子の先端のz軸方向の上
下運動の変位量は最大で9.9μmであった。
【0043】別の圧電素子として、密着層12として、
スパッタ法で厚さ0.010μmのタンタル薄膜を形成
し、第1の結晶配向制御層3として、膜厚0.30μm
の(100)配向のCoO薄膜を用い、その表面に第2
の結晶配向制御層として、上記と同様にして(001)
配向のチタン酸ランタン鉛薄膜(膜厚0.015μm)
を形成し、その他は上記の試料1と同じ材料構成で圧電
素子を作製した。これを試料3とした。(100)配向
のCoO薄膜は以下の様にして作製した。前述した図3
のプラズマMOCVD成膜装置101を用いて、有機金
属錯体原料110として、Niアセチルアセトナートの
代わりに、Coアセチルアセトナートを用いて、(10
0)配向のNiO薄膜の場合と同様にして、10分間成
膜して、膜厚0.3μmの(100)配向のCoO薄膜
を作製した。
【0044】この試料3の圧電体層のPZT薄膜の(0
01)配向率は98%であった。試料1と同じ評価をお
こなった結果、試料3の圧電素子の先端のz軸方向の上
下運動の変位量は最大10.2μmであった。
【0045】別の圧電素子として、密着層12として、
スパッタ法により厚さ0.008μmのタングステン薄
膜を形成し、第1の結晶配向制御層として、(001)
配向のスピネル型結晶構造の鉄・亜鉛酸化物薄膜を用い
た試料を作製した。
【0046】前述のプラズマMOCVD成膜装置101
の加熱機構付き原料気化容器108に鉄アセチルアセト
ナートを、別の加熱機構付き原料気化容器109にZn
アセチルアセトナートを入れて、減圧にして、それぞれ
150℃、125℃に加熱して、それぞれをガス化し
て、それぞれにキャリアガスとして窒素ガス(ともに流
量10ml/min)を用いて、バルブ116、117
を開いて混合し、、原料ガス吹出ノズル112を介して
真空チャンバー102に導入し、同時に酸素ガス吹出ノ
ズル113を介して酸素ガス(流量15ml/min)
を同じ真空チャンバー102に導入した。第1の電極層
2を設けたシリコン基板1を基板106として、あらか
じめ400℃に加熱し、RF電力400W印加してプラ
ズマCVDを行って、第1の結晶配向制御層3として、
Zn0.8Fe2.24なる組成で、膜厚0.40μmの
(100)配向のスピネル型結晶構造酸化物薄膜を作製
した。なお、成膜時の真空チャンバーの真空度は9Pa
であり、成膜時間は8分間であった。
【0047】上記の第1の結晶配向制御層3の上に、第
2の結晶配向制御層4として、(001)配向のMg添
加のチタン酸ランタン鉛の薄膜(膜厚0.012μm)
を形成した。試料1の作製に用いたスパッタ装置で、タ
ーゲットとして、化学量論組成のMg添加チタン酸ラン
タン鉛(Pb:La:Mg:Ti=0.82:0.0
6:0.12:1.00)と約10モル%過剰のPbO
からなるターゲット(組成モル比Pb:Mg:La:T
i=0.92:0.06:0.12:1:00)を用
い、成膜条件として、アルゴンと酸素の混合ガス(ガス
体積比Ar:O2=19:1)をスパッタリングガスとして
用い、そのトータルガス圧力を0.3Paに保持し、2
40Wの高周波電力を印加して10分間スパッタリング
を行った。この薄膜を試料1と同様にして組成分析し
て、この薄膜の組成はターゲットろ同じ組成のモル比P
b:Mg:La:Ti=0.92:0.06:0.1
2:1:00であった。
【0048】その他の各層は材料と膜厚が試料1と同様
にして、圧電素子を作製した。これを試料4とした。
【0049】この試料3の圧電体層のPZT薄膜の(0
01)配向率は97%であった。試料1と同じ評価をお
こなった結果、試料4の圧電素子の先端のz軸方向の上
下運動の変位量は最大で9.9μmであった。
【0050】以上のように作られる圧電素子の各試料を
10個ずつ準備して、図4に示す三角波(200Hz)
の電圧を印加して200時間(約9日)連続駆動試験を
行い、振動の劣化状態を調べた。上記の試料とも、20
0時間後も安定して上下駆動しており、劣化は見られな
かった。
【0051】ここで、前記の図3のプラスマMOCVD
成膜装置101を用いるプラスマMOCVD法におい
て、ガス化する有機金属錯体の原料として、Mgアセチ
ルアセトナートを用いると(100)配向のMgO薄膜
が得られ、Mnアセチルアセトナートを用いると(10
0)配向のMnO薄膜が得られ、チタンイソプロポキシ
ドを用いると(100)配向のTiO薄膜が得られ、V
アセチルアセトナートを用いると(100)配向のVO
薄膜が得られ、このようにそれぞれ岩塩型結晶構造で
(100)配向の酸化物の薄膜が得られた。また、Fe
アセチルアセトナートを用いると(100)配向のスピ
ネル型結晶構造のFe34薄膜が得られ、Feアセチル
アセトナートとMnアセチルアセトナートを用いると
(100)配向のMnFe24薄膜などのMnを含むス
ピネル型の酸化鉄薄膜が得られた。同様にFeアセチル
アセトナートに、CoアセチルアセトナートあるいはN
iアセチルアセトナートを用いると、それぞれCo、N
iを含むスピネル型の(100)配向の酸化鉄薄膜が得
られた。。これらはすべて、第1の結晶配向制御層3と
して使用できた。
【0052】なお、(100)配向の酸化物薄膜を得る
ために、プラズマMOCVD法に使うガス化原料は、上
記の種類の有機金属錯化合物に限らず、Ni、Co、M
g、Mn、Fe、Ti、V、Zn、Alなどの金属元素
からなる有機金属錯化合物で数paの真空中で蒸気圧さ
えあれば、その分子構造に関わらず使用できる。これら
はすべて、第1の結晶配向制御層3として使用できる。
【0053】また、スパッタ法によっても、プラズマM
OCVDの場合に比べ、成膜条件範囲は狭く、成膜速度
が遅いが、Co、Mg、Mn、Fe、Ti、V、Zn、
Alなどの金属元素を含む酸化物のターゲットを用いる
と、(100)配向のNiO薄膜と同様に(100)配
向の酸化物薄膜が得られる。これらはすべて、第1の結
晶配向制御層3として使用できる。
【0054】試料1の作製に用いたスパッタ装置で、タ
ーゲットとして、Mn添加のチタン酸ランタン鉛のター
ゲットを用い、試料1の(001)配向のチタン酸ラン
タン鉛薄膜を作製する条件と同様な条件でスパッタ法で
成膜すると、(001)配向のMn添加のチタン酸ラン
タン鉛薄膜が得られた。この薄膜は、試料1の(00
1)配向のチタン酸ランタン鉛薄膜と同様に、第2の結
晶配向制御膜4として使用できることが試料作製の結果
からわかった。
【0055】なお、基板として、シリコン基板のかわり
に、700℃でも変形しない硼珪酸ガラスからなる基板
を用いて、上述と同じ方法で試料1と同形状の圧電素子
が作れて、基板材料の違いが原因で、電圧印加の際の変
位量が異なるが、同じように安定した特性を示すことが
わかった。以上の結果を下記(表1)にまとめて示し
た。
【0056】
【表1】
【0057】なお、圧電体層5としては、表1は一定組
成のPZT薄膜の結果を示したが、Ti/Zrモル比が
異なる組成のPZT膜でも同様の結果がえられた。さら
に、圧電体層5としては、Laを含むPZT膜(すなわ
ち、PLZT膜)でも、NbやMgなどのイオンを含む
PZT膜でもよくてペロブスカイト結晶構造の酸化物薄
膜であれば、すべて、(表1)と同じように(001)
配向膜が得られる。
【0058】次に、比較のために、比較例として、以下
の4つの圧電体素子の試料を作製した。
【0059】第1の従来型の比較例試料は、作製工程の
一部分を特開2001-88294号公報に従い以下の様にして圧
電薄膜をスパッタ法で作製した。まず、スパッタ装置を
用いて、試料1で用いたものと同様のシリコン基板を、
1100℃の電気炉に入れ、乾燥酸素を流して22時間
酸化処理し、表面層に約1μmの酸化珪素膜を形成し
た。その基板の表面に、ジルコニウムをターゲットにし
て、酸素を導入しながら反応スパッタ法で膜厚0.4μ
mの酸化ジルコニウムの薄膜を形成し(スパッタ条件:
スパッタ電力200W、真空度0.3Pa)、その表面
に、イリジウムをターゲットとするスパッタ装置を用い
て、膜厚1.0μmのイリジウム薄膜の第1の電極層を
形成し、さらにその表面に、前記の試料1と同じステン
レスマスクを用いて、チタンをターゲットとするDCマ
グネトロンスパッタ装置を使って、膜厚0.06μmの
チタン薄膜を形成した。さらに、そのチタン膜の表面
に、試料1と同様の方法で、試料1と同じ組成のPZT
膜を形成し、さらに、試料1と同様の膜厚0.25μm
の白金薄膜からなる第2の電極層を形成し、試料1と同
様に加工して、圧電素子を作製した。この素子上の圧電
体層のPZT膜はX線回折から(001)配向率は23
%であった。この素子に対して試料1と同様の三角波電
圧を印加して測定した印加電圧と変位量の測定結果を図
5に示した。素子先端のz軸方向の上下運動の変位量は
最大で7.9μmと小さい値であった。
【0060】各試料に対して行った試験と同様の200
時間の駆動試験の結果、劣化した素子はなかった。この
結果を(表1)の中で、試料15として示した。
【0061】このような構成の圧電素子は、圧電体層の
作製にスパッタ法を用いると、特開2001-88294号公報に
記載されているように、圧電薄膜の結晶配向性のコント
ロールが困難で、(001)配向性の高いPZT薄膜が
得られず、その結果、圧電素子の電圧印加による圧電変
位が高くないことがわかった。
【0062】第2の比較例試料として、試料1におい
て、第1の結晶配向制御層3が無い構成の圧電素子を作
製した。圧電素子は、第1の結晶配向層3である(10
0)配向NiO薄膜が無いことのみが異なるだけで、そ
の他は試料1と全く同じようにして作製した。作製の際
の第2の結晶配向制御層であるチタン酸ランタン鉛薄膜
は、X線回折から、試料1のように(001)配向の薄
膜にならず、(001)以外に(111)や(110)
の強度の高い回折ピークを含むX線回折パターンを示し
た。
【0063】この素子上の圧電体層のPZT膜はX線回
折から(001)配向率は20%であった。第2の結晶
配向制御層の(001)の結晶配向性が悪かったため
に、その影響でその上のPZT薄膜も(001)配向率
がわるいことがわかる。この素子に対して試料1と同様
の評価を行った結果、素子先端のz軸方向の上下運動の
変位量は最大で6.5μmであった。第1の結晶配向層
が、圧電体層の(001)配向性に大きな影響を及ぼし
ていることがわかる。実施例の各試料に対して行った試
験と同様の200時間の駆動試験の結果、50個中46
個に大幅な振幅の劣化がみられた。劣化かみられた素子
を顕微鏡で観察すると、シリコン基板と第1の電極のは
がれがおこっていることが観察された。素子先端の上下
振動によって、密着性の弱いシリコン基板と第1の電極
層(白金膜)が、剥離したと考えられる。この結果を
(表1)の中で、試料16として示した。
【0064】第3の比較例試料として、試料1におい
て、第2の結晶配向制御層4が無い構成の圧電素子を作
製した。圧電素子は、第2の結晶配向層である(00
1)配向チタン酸ランタン鉛薄膜が無いことのみが異な
るだけで、その他は試料1と全く同じようにして作製し
た。この素子上の圧電体層のPZT膜はX線回折から
(001)配向率は97%で良好であった。この素子に
対して試料1と同じ評価を行った結果、素子先端のz軸
方向の上下運動の変位量は最大で8.4μmであった。
第2の結晶配向層は、その上に形成するペロブスカイト
結晶構造酸化物薄膜の圧電体層の圧電特性を高く安定さ
せる効果があることがわかった。実施例の各試料に対し
て行った試験と同様の200時間の駆動試験の結果、5
0個中47個に大幅な振幅の劣化がみられた。劣化かみ
られた素子を顕微鏡で観察すると、前記の比較例の試料
16と同様に、シリコン基板と第1の電極のはがれがお
こっていることが観察された。素子先端の上下振動によ
って、密着性の弱いシリコン基板と第1の電極層(白金
膜)が、剥離したと考えられる。この結果を(表1)の
中で、試料17として示した。
【0065】第4の比較例試料として、試料1におい
て、密着層のみが無い構成のの圧電素子を作製した。圧
電素子は、密着層のモリブデン薄膜が無いことのみが異
なるだけで、その他は試料1と全く同じようにして作製
した。この素子上の圧電体層のPZT膜はX線回折から
(001)配向率は98%で良好であった。この素子に
対して試料1と同じ評価を行った結果、素子先端のz軸
方向の上下運動の変位量は最大で10.5μmであっ
た。
【0066】実施例の各試料に対して行った試験と同様
の200時間の駆動試験の結果、50個中44個に大幅
な振幅の劣化がみられた。劣化かみられた素子を顕微鏡
で観察すると、前記の比較例の試料16と同様に、シリ
コン基板と第1の電極のはがれがおこっていることが観
察された。素子先端の上下振動によって、密着性の弱い
シリコン基板と第1の電極層(白金膜)が剥離したと考
えられる。この結果を(表1)の中で、試料18として
示した。
【0067】PZT膜の(001)の結晶配向性は、第
1の結晶配向層、例えば(100)配向NiO薄膜が存
在すると(001)配向性の高いPZT薄膜が得られ、
更に、第2の結晶配向層が存在すると、圧電体層の(0
01)配向性が更に良くなると同時に圧電変位も向上さ
れることがわかった。チタン酸ランタン鉛などの第2の
結晶配向層は、スパッタ成膜においてPZT等の圧電薄
膜の膜成長を均質にして安定させる効果があることが知
られているが、その効果で(001)配向のPZT薄膜
の微細構造が膜成長初期層から均質に制御されるため
に、高い圧電変位量を示す圧電素子が得られたと考えら
れる。従って、圧電素子の圧電変位量を高めるには、少
なくとも圧電体層を構成する圧電薄膜の(001)配向
性を高めることが必要不可欠であり、さらに、その(0
01)配向の圧電薄膜の微細構造の均質性があがると、
圧電素子の変位量が大幅に改善されることがわかる。
【0068】しかしながら、圧電素子に大きな電圧を印
加して、大きな上下駆動を連続して行うと、基板と第1
の基板に大きなひずみが加わり、両者の密着性が悪い
と、そこから膜剥離がおこって、素子に劣化がおこるこ
とがわかる。
【0069】(第2の実施の形態)次に、本発明の圧電
素子の積層膜構成を用いたインクジェットヘッドのイン
ク吐出素子について説明する。
【0070】図5は本発明の第2の実施の形態における
インクジェットヘッドを示す概略構成図である。図5に
示すように、本実施の形態のインクジェットヘッド20
1は、10個が列になって並んで配置された同形状のイ
ンク吐出素子202と、それぞれのインク吐出素子20
2の電極と連結され、それらのインク吐出素子202を
駆動する駆動電源素子203とより構成されている。
【0071】図6は本発明の第2の実施の形態における
インク吐出素子を示す一部破断した分解斜視図である。
図6に示すインク吐出素子202において、Aは圧力室
部品であって、この圧力室部品Aには圧力室用開口部3
1が形成されている。Bは圧力室用開口部31の上端開
口面(大きさ:短軸が200μm、長軸が400μmの
楕円形状)を覆うように配置されたアクチュエータ部、
Cは圧力室用開口部31の下端開口面を覆うように配置
されたインク液流路部品である。すなわち、圧力室部品
Aの圧力室用開口部31は、その上下に位置するアクチ
ュエータ部Bとインク液流路部品Cとにより区画され、
これにより圧力室32(厚さ0.2mm)が形成されて
いる。尚、アクチュエータ部Bには、圧力室32の上方
に位置して個別電極33が配置されている。また、イン
ク液流路部品Cには、インク液供給方向に並ぶ、複数個
のインク吐出素子202の各圧力室32間で共用される
共通液室35と、この共通液室35を圧力室32に連通
する供給口36と、圧力室32内のインク液が流出する
インク流路37とが形成されている。Dはノズル板であ
って、このノズル板Dにはインク流路37に連通するノ
ズル孔38(直径30μm)が穿設されている。以上の
部品A〜Dが接着剤によって接着されて、インク吐出素
子202が得られる。尚、図6において、駆動電源素子
203は、ボンディングワイヤーを介して複数のインク
吐出素子202の各個別電極33に電圧を供給する。
【0072】次に、アクチュエータ部Bの構成につい
て、図7を参照しながら説明する。図7は本発明の第2
の実施の形態におけるインク吐出素子のアクチュエータ
部を示す図6のVII−VII線断面図である。図7に示すよ
うに、アクチュエータ部Bは、上方に位置する厚さ0.
10μmの白金(Pt)薄膜からなる個別電極である第
1の電極層33と、この電極層33の直下に位置する
(001)配向のCoO薄膜(膜厚0.30μm)から
なる第1の結晶配向制御層41と、この第1の結晶配向
制御層41の直下に位置するチタン酸ランタン鉛薄膜
(膜厚0.018μm)からなる第2の結晶配向制御層
42と、この第2の結晶配向制御層42の直下に位置す
る厚さ3.0μmのPb(Zr0.53Ti0.47)O3で表
記できるPZT膜からなる圧電体層43と、この圧電体
層43の直下に位置す白金薄膜(膜厚0.10μm)か
らなる第2の電極層44と、上記の圧電体層43の圧電
効果によって変位し振動するクロム(Cr)薄膜(膜厚
3.5μm)からなる振動体層45とを有している。こ
れらの第2の電極層44と振動体層45は、各インク吐
出素子202のそれぞれの圧力室32間で共用されてい
る。個別電極形状に加工された第1の電極膜の個別電極
33から圧電体層43までの積層膜の周囲には、第1の
電極膜からなる個別電極33の高さまでと同じ膜厚のポ
リイミド樹脂からなる電気絶縁有機膜46によって覆わ
れており、個別電極33からリード線形状の金薄膜(膜
厚0.10μm)の引き出し電極膜47が、この電気絶
縁有機膜46の上部に形成されている。
【0073】以下に上記で説明したアクチュエータ部B
の製法について述べる。
【0074】図8はアクチュエータ部の製造方法を示し
たものである。縦20mm、横20mm、厚み0.3m
mのシリコン基板51を用いて、第1の実施の形態に記
述した試料3と同様にして、シリコン基板上に、密着層
501、第1の電極層52、第1の結晶配向制御層5
3,第2の結晶配向制御層54,圧電体層55、第2の
電極層44まで積層し、図8(a)に示す構造体56を
得た。
【0075】この構造体56に、RFスパッタ法で室温
でクロム(Cr)薄膜(厚さ3.5μm)からなる振動
体層45を形成した(図8(b))。
【0076】次に、図8(c)に示すように、振動板層
45を形成した構造体56を、接着剤(アクリル樹脂)
57を用いてガラス製の圧力室部品58に貼り合わせ
た。ここで、ガラス製の圧力室部品62は振動板層45
と対向配置されており、また、圧力室部品58と振動板
層45との間にも接着剤57が介在した状態となってい
る。
【0077】次いで、プラズマ反応エッチング装置を用
いて、シリコン基板51とタンタル薄膜の密着層501
を、SF6ガスとアルゴンの混合ガスを用いたドライエ
ッチングにより除去した(図8(d))。
【0078】その後、図8(e)に示すように、第1の
電極層から圧電体層までの積層膜を、フォトレジスト樹
脂膜59を用いて、楕円形状パターン(大きさ:短軸が
180μm、長軸が380μmの楕円形状)に正確に非
エッチング部分をパターンニングした。次に、弱フッ酸
を用いて、エッチング処理を行うことで、フォトレジス
トパターンに加工して個別化された第1の電極層からな
る個別電極33から圧電体層43までの積層膜をもつア
クチュエータ構造体を得た(図8(f))。その後、レ
ジスト剥離液で処理して、フォトレジスト樹脂膜69を
除去した(図8(g))。
【0079】次に、図8(h)のように、電気絶縁有機
膜46を印刷法によって形成し、さらに個別電極化され
た第1の電極層からなる個別電極33からDCスパッタ
法で金薄膜からなるリード線形状の引き出し電極膜47
をこの電気絶縁有機膜42の上部に形成した(図8
(i))。このようにして、図8に示したアクチュエー
タ部Bを得た。
【0080】なお、上記のアクチュエータ部を構成する
シリコン基板上の各積層膜は、第1の実施の形態でのべ
た材料であれば、どれを用いても、高特性のアクチュエ
ータ部が作製できる。
【0081】以上の製法によって、膜厚などを正確に、
同形状の250個のインク吐出素子202を作製した。
圧電体層をはさむ2つの電極に、0V〜―10Vのサイ
ン波形電圧(200Hz)を印加した。膜の上下振動の
振幅のバラツキのσ%は1.5%であった。
【0082】これらのインク吐出素子202を10個用
いて、図6に示すインクジェットヘッド201を作製し
た。
【0083】図6のように構成されたインクジェットヘ
ッド201においては、駆動電源素子203からボンデ
ィングワイヤーを介して複数のインク吐出素子202の
各個別電極33に電圧が供給され、圧電薄膜41の圧電
効果によって共通電極44が変位し振動することによ
り、共通液室35内のインク液が供給口36、圧力室3
2、インク流路37を経由してノズル孔38から吐出さ
れる。この場合、インクジェットヘッド201は、イン
ク吐出素子のアクチュエータ部を構成する圧電体層が、
結晶配向性が膜面が(001)面に揃っているおり、か
つ、圧電変位特性も大きな値で揃っていることから、大
きな圧電変位(変位量)を得ることが可能で、かつ、複
数のインク吐出素子の圧電変位特性のばらつきが小さ
い。圧電変位が大きいことからインク液の吐出能力が高
いので、さらに電源電圧の調整幅にマージンを大きくと
ることができ、複数個のインク吐出素子202間のイン
ク液の吐出のばらつきが小さくなるように、容易にコン
トロールすることができる。
【0084】(第3の実施の形態)次に、本発明の圧電
素子の積層膜構成を用いたインクジェットヘッドのもう
一つ別の構成のインク吐出素子について説明する。この
構成のインク吐出素子は、第2の実施の形態の図6で示
すインク吐出素子において、シリコン基板を用いて作製
した積層膜の構造体におけるシリコン基板をエッチング
して圧力室を作ることによって、圧力室部品Aとアクチ
ュエータ部Bが一体化された部品を提供することが第2
の実施の形態と異なる。
【0085】上記の圧力室部品とアクチュエータ部が一
体化された部品は、インク液流路部品Cとノズル板Dと
を接着することで、図6と類似の形状のインク吐出素子
が作られる。
【0086】図9に、圧力室が一体化したアクチュエー
タ部の断面構造図を示す。すなわち、圧力室形状に加工
されたシリコン基板70の上に非晶質の酸化アルミニウ
ムから成る膜厚2.50μmの振動板層65が設けら
れ、その上に膜厚0.015μmのチタン薄膜からなる
密着層601が設けられ、その上に白金薄膜(膜厚0.
10μm)からなる第1の電極層61が設けられ、その
第1の電極層61の上に(100)配向NiO薄膜(膜
厚0.40μm)からなる第1の結晶配向制御層62が
設けられ、その第1の結晶配向層62の上に、チタン酸
ランタン鉛薄膜(膜厚0.015μm)からなる第2の
結晶配向制御層71が設けられ、さらにその上にPZT
薄膜(膜厚2.50μm)からなる圧電体層72が設け
られ、その圧電体層の上に白金薄膜(膜厚0.10μ
m)からなる第2の電極層が設けられた構造になってい
る。ここで、第2の結晶配向制御層71と圧電体層72
と第2の電極層73の積層体は、シリコン基板の圧力室
において、シリコンが取り除かれた空間の振動板層65
を介した上部にのみ存在するように、個別化されてお
り、その周辺は、第2の実施例の図8(i)と同様に、
ポリイミド樹脂膜74で被覆されている。個別化された
第2の電極層には、金(膜厚0.1)の引き出し電極膜
75が設けられている。
【0087】図10に、その製造方法を示す。厚さ0.
3mmのシリコン基板60の表面に、図3で示したプラ
ズマMOCVD成膜装置を用いて、基板温度400℃、
有機金属錯体原料にAlアセチルアセトナートを用い
て、第1の実施の形態で示した試料1と同様の条件で、
プラスマMOCVD成膜して、非晶質の酸化アルミニウ
ム薄膜(膜厚2.50μm)の振動板層65を形成し
た。その上に、第1の実施の形態の試料2での密着層の
形成と同様な方法で、膜厚0.015μmのチタン薄膜
の密着層601を作製し、さらにその上に、試料1の各
層と同様にして、(111)配向の白金薄膜(膜厚0.
10μm)からなる第1の電極層61を作製し、その上
に、(100)配向のNiO薄膜(膜厚0.40μm)
からなる第1の結晶配向制御層62を作製し、その上
に、(001)配向のチタン酸ランタン鉛薄膜からなる
第2の結晶配向制御層63を作製し、その上に、PZT
薄膜からなる圧電体層64を作製し、(111)配向の
白金薄膜(真厚0.10μm)からなる第1の電極層6
6を作製した(図10(a))。
【0088】次に、上記の各層からなる積層膜の形成面
と反対側のシリコン基板60の表面に、圧力室開口部分
の面積(大きさ:短軸が200μm、長軸が400μm
の楕円形状)以外を覆うようにフォトレジスト樹脂膜6
7でパターン塗布した(図10(b))。さらに、SF
6ガスを用いて、プラズマ反応エッチング装置を使っ
て、ドライエッチングを行い、シリコン基板に圧力室開
口部分を形成した(図10(c))。続いて、上記のフ
ォトレジスト樹脂膜を除去し(図10(d))、圧力室
開口部分の形成面と反対側の第2の電極層66の表面
(圧力室開口部の真上)に、楕円形状パターン(大き
さ:短軸が180μm、長軸が380μmの楕円形状)
にフォトレジスト樹脂膜68を形成した(図10
(e))。次に、アルゴンガスとCF4ガスの混合ガス
を用いて、平行平板型プラズマ反応エッチング装置と使
い、ドライエッチングして、図10(f)に示すような
上記の楕円パターンの個別化された積層膜を作製した。
【0089】このドライエッチングの際に、第1の結晶
配向層62のNiO薄膜は、エッチング速度が遅く、他
の層と異なるにで、エッチングの終点としてわかりやす
かった。続いて、楕円形状のフォトレジスト樹脂膜68
を取り除き、個別化された積層膜の周囲に印刷法でポリ
イミド樹脂の塗膜69を作り、180℃で硬化させて、
ポリイミド膜を形成した(図10(g))。
【0090】続いて、楕円形状に個別化された第2の電
極層からなる個別電極73の一部分の重なるように、ス
パッタ法で金薄膜(膜厚0.1μm)からなる引き出し
電極75を形成して、圧力室が一体化したアクチュエー
タ部を完成した(図10(h))。
【0091】この圧力室が一体化したアクチュエータ部
に、前述の第2の実施の形態と同様にして、インク液流
路部品Cとノズル板Dを接着して、第2の実施の形態と
同形状のインク吐出素子を得た。
【0092】このように作製した150個のインク吐出
素子を、前述の第2の実施の形態と同様にして評価し
た。その結果、このインク吐出素子は、前述の第2の実
施の形態のインク吐出素子と同様に、振動の振幅のσ%
が2.0%とバラツキが少ないことがわかった。
【0093】なお、上記のアクチュエータ部を構成する
シリコン基板上の各積層膜は、第1の実施の形態でのべ
た材料であれば、どれを用いても、高特性のアクチュエ
ータ部が作製できる。このようにして作製されたインク
吐出素子は、第2の実施の形態で説明した本発明のイン
ク吐出素子と同様に、複数個を並べて構成するインクジ
ェットヘッドにおいて、バラツキの少ない高特性のヘッ
ドが提供できる。
【0094】(第4の実施の形態)次に、本発明のイン
クジェットヘッドを備えたインクジェット式記録装置に
ついて説明する。図11は本発明の第4の実施の形態に
おけるインクジェット式記録装置の全体を示す概略斜視
図である。図11に示すように、本実施の形態のインク
ジェット式記録装置81は、圧電薄膜の圧電効果を利用
して記録を行う本実施の形態のインクジェットヘッド2
01を備えており、インクジェットヘッド201から吐
出したインク滴を紙等の記録媒体82に着弾させること
により、記録媒体52に記録を行うことができる。イン
クジェットヘッド201は、主走査方向(図11のX方
向)に沿って配置されたキャリッジ軸83に摺動可能に
取り付けられたキャリッジ84に搭載されている。そし
て、キャリッジ54がキャリッジ軸83に沿って往復動
することにより、インクジェットヘッド201は主走査
方向Xに往復動する。さらに、インクジェット式記録装
置81は、記録媒体82をインクジェットヘッド201
の幅方向(すなわち、主走査方向X)と略垂直方向の副
走査方向Yに移動させる複数個のローラ(記録媒体移送
手段)85を備えている。
【0095】以上のように、複数個のインク吐出素子間
のインク液の吐出のばらつきを容易にコントロールする
ことのできる上記第2の実施の形態あるいは第3の実施
の形態のインクジェットヘッド201を用いてインクジ
ェット式記録装置を構成することにより、紙等の記録媒
体82に対する記録のばらつきを小さくすることができ
るので、信頼性の高いインクジェット式記録装置を実現
することができる。
【0096】
【発明の効果】本発明によれば、基板の上に密着層を設
け、その上に第1の電極層を設け、その上に第1の結晶
配向制御層を設け、その上に第2の結晶配向制御層を設
け、その第2の結晶配向制御層上に圧電体層を設け、そ
の圧電体層上に第2の電極層を設けた構成とすることに
よって、圧電薄膜材料を成膜後に熱処理による結晶化工
程なしに直接的に、例えばスパッタ法等で、結晶構造と
優先配向面を制御した結晶性の圧電体層が製造できるの
で、ゾルゲル法のように、クラックの発生や特性バラツ
キの原因となる圧電体層を成膜後に熱処理して結晶化す
る工程を無くすることができ、その結果、工業的に量産
しても圧電特性の再現性、ばらつき及び信頼性の良好な
圧電体素子とそれを有するインクジエツトヘツド用のイ
ンク吐出素子を提供することができる。
【0097】さらに、吐出能のばらつきが少なく且つ高
い信頼性を有するインクジエツト式記録装置を提供する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第1の実施の形態における圧電
素子を示す斜視図
【図2】図2は本発明の第1の実施の形態における圧電
素子の製造方法を示す工程図
【図3】図3は本発明の第1の実施の形態における圧電
素子の第1の結晶配向制御層の作製に用いたプラズマM
OCVD成膜装置の概略図
【図4】図4は本発明の第1の実施の形態における圧電
素子の特性図
【図5】図5は本発明の第2の実施の形態におけるイン
クジェットヘッドを示す概略構成図
【図6】図6は本発明の第2の実施の形態におけるイン
クジェットヘッドに用いられるインク吐出素子を示す一
部破断した分解斜視図
【図7】図7は本発明の第2の実施の形態におけるイン
クジェットヘッドに用いられるインク吐出素子のアクチ
ュエータ部を示す図7のVII−VII線断面図
【図8】図8は本発明の第2の実施の形態におけるイン
ク吐出素子のアクチュエータ部と圧力室部品の接合体の
製造方法を示す工程図
【図9】図9は本発明の第3の実施の形態におけるイン
ク吐出素子のアクチュエータ部と圧力室部品の接合体の
断面図
【図10】図10は本発明の第3の実施の形態における
インク吐出素子のアクチュエータ部と圧力室部品の接合
体の製造方法を示す工程図
【図11】図11は本発明の第3の実施の形態における
インクジェットヘッドを備えたインクジェット式記録装
置の全体を示す概略斜視図
【符号の説明】
1,51,60 シリコン基板 12,501,601 密着層 2,52,61 第1の電極層 3,41,53,62 第1の結晶配向制御層 4,42,54,63,71 第2の結晶配向制御層 5,43,55,64,72 圧電体層 6,44,66,73 第2の電極層 7 ステンレス支持基板 8 エポキシ系接着剤 9,10 リード線 20 圧電素子 21 構造体 22 圧電素子構造体部品 201 インクジエツトヘツド 202 インク吐出素子 203 駆動電源素子 31 圧力室開口部 32 圧力室 33 個別電極 35 共通液室 36 供給口 37 インク流路 38 ノズル孔 A 圧力室部品 B アクチュエータ部 C インク液流路部品 D ノズル板 45,65 振動板層 46,74 電気絶縁有機膜 47,75 引き出し電極膜 57 接着剤 58 圧力室部品 59,67,68 フォトレジスト樹脂膜 81 インクジエツト式記録装置 82 記録媒体 83 キャリッジ軸 84 キャリッジ 85 ロ−ラ 101 プラズマMOCVD成膜装置 102 真空チャンバー 103 アース側電極 104 RF側電極 105 マグネット 106 基板 107 基板加熱ヒータ 108,109 基板加熱付き原料気化容器 110 第1の有機金属錯体原料 111 第2の有機金属錯体原料 112 原料ガス吹出ノズル 113 酸素ガス吹出ノズル 114 排気口 115 基板回転ヒータ 116,117 バルブ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01L 41/18 H01L 41/08 C (72)発明者 友澤 淳 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 高山 良一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 久保 晶子 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 2C057 AF93 AG42 AG44 AG47 AP14 AP52 BA03 BA14

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基板上に密着層を設け、その密着層上に
    第1の電極層を設け、その第1の電極層上に第1の結晶
    配向制御層を設け、その第1の結晶配向制御層上に第2
    の結晶配向制御層を設け、その第2の結晶配向制御層上
    に圧電体層を設け、その圧電体層上に第2の電極層を設
    けた圧電素子。
  2. 【請求項2】 基板上に密着層を設け、その密着層上に
    第1の電極層を設け、その第1の電極層上に第1の結晶
    配向制御層を設け、その第1の結晶配向制御層上に第2
    の結晶配向制御層を設け、その第2の結晶配向制御層上
    に圧電体層を設け、その圧電体層上に第2の電極層を設
    けて圧電素子を形成し、その圧電素子の第2の電極層上
    に振動板層を設け、その振動板層の第2の電極層が形成
    されていない表面と圧力室を接合し、上記基板を除去し
    てなるアクチュエータ部と、前記アクチュエータ部の変
    位によってインク液に圧力を加える圧力室部品と、前記
    圧力室部品にインク液を供給するインク液流路部品と、
    インク液を押し出すノズル板とが接着されたインク吐出
    素子。
  3. 【請求項3】 基板の一方の面上に振動板層を設け、そ
    の振動板層上に密着層を設け、その密着層上に第1の電
    極層を設け、その第1の電極層上に第1の結晶配向制御
    層を設け、その第1の結晶配向制御層上に第2の結晶配
    向制御層を設け、その第2の結晶配向制御層上に圧電体
    層を設け、その圧電体層上に第2の電極層を設けて圧電
    素子を形成し、その圧電素子の基板の前記のそれぞれの
    層が形成されていない他方の面に隔壁で囲まれた圧力室
    を形成し、前記圧力室にインク液を供給するインク液流
    路部品と、インク液を押し出すノズル板とが接着された
    インク吐出素子。
  4. 【請求項4】 請求項2又は請求項3に記載のインク吐出
    素子を複数個並べて配置したインクジェットヘッドと、
    前記のインクジェットヘッドを記録媒体の幅方向に移送
    するインクジェットヘッド移送手段と、前記インクヘッ
    ドの移送方向に対して略垂直方向に記録媒体を移送する
    記録媒体移送手段とを備えたことを特徴とするインクジ
    ェット式記録装置。
  5. 【請求項5】 密着層がチタン、モリブデン、タングス
    テン、タンタルの群から選ばれた1種である請求項1に記
    載の圧電素子。
  6. 【請求項6】 密着層がチタン、モリブデン、タングス
    テン、タンタルの群から選ばれた1種あることを特徴と
    する請求項2または請求項3に記載のインクジエツトヘツ
    ド用インク吐出素子。
  7. 【請求項7】 圧電体層がスパッタ法で形成され、後熱
    処置による結晶化工程なしに作製される結晶性の圧電薄
    膜材料であり、かつ、(001)に結晶配向した薄膜で
    あることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  8. 【請求項8】 圧電体層がスパッタ法で形成され、後熱
    処置による結晶化工程なしに作製される結晶性の圧電薄
    膜材料であり、かつ、(001)に結晶配向した薄膜で
    あることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のイ
    ンクジエツトヘツド用インク吐出素子。
  9. 【請求項9】 第一の結晶配向制御層が酸化マグネシウ
    ム、酸化ニツケル、酸化コバルト、酸化チタン、酸化バ
    ナジウムからなる(100)配向の岩塩型結晶構造をも
    つ酸化物の群から選ばれた1種以上である請求項1に記載
    の圧電素子。
  10. 【請求項10】 第一の結晶配向制御層が酸化マグネシ
    ウム、酸化ニツケル、酸化コバルト、酸化チタン、酸化
    バナジウムからなる(100)配向の岩塩型結晶構造を
    もつ酸化物の群群から選ばれた1種以上である請求項2ま
    たは請求項3に記載のインクジエツトヘツド用インク吐
    出素子。
  11. 【請求項11】 第一の結晶配向制御層がAxB3-xO4で示
    される(100)配向のスピネル型酸化物の群から選ば
    れた1種以上である請求項1に記載の圧電素子であって、
    A及びBは鉄、コバルト、マンガン、ニツケル、亜鉛の群
    から選ばれた元素であり、xは0を超え3未満の値である
    圧電素子。
  12. 【請求項12】 第一の結晶配向制御層がAxB3-xO4で示
    される(100)配向のスピネル型酸化物の群から選ば
    れた1種以上である請求項2または請求項3に記載のイン
    クジエツトヘツド用インク吐出素子であって、A及びBは
    鉄、コバルト、マンガン、ニツケル、亜鉛の群から選ば
    れた元素であり、xは0を超え3未満の値であるインクジ
    エツトヘツド用インク吐出素子。
  13. 【請求項13】 第二の配向制御層がチタン酸ランタン
    鉛もしくはチタン酸ランタン鉛にマグネシウム又はマン
    ガンの群から選ばれた1種以上を添加した(001)配
    向の鉛を含むペロブスカイト型酸化物である請求項1記
    載の圧電素子。
  14. 【請求項14】 第二の配向制御層がチタン酸ランタン
    鉛もしくはチタン酸ランタン鉛にマグネシウム又はマン
    ガンの群から選ばれた1種以上を添加した(001)配
    向の鉛を含むペロブスカイト型酸化物である請求項2ま
    たは請求項3に記載のインクジエツトヘツド用インク吐
    出素子。
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