JP2003185625A - ガス検知素子及びこれを用いたガス検出装置 - Google Patents

ガス検知素子及びこれを用いたガス検出装置

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JP2003185625A
JP2003185625A JP2002296651A JP2002296651A JP2003185625A JP 2003185625 A JP2003185625 A JP 2003185625A JP 2002296651 A JP2002296651 A JP 2002296651A JP 2002296651 A JP2002296651 A JP 2002296651A JP 2003185625 A JP2003185625 A JP 2003185625A
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Akira Kunimoto
晃 国元
Eitetsu Gen
永鉄 厳
Seiji Hasei
政治 長谷井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電極と固体電解質基板との界面の接合安定性
に優れ、さらに参照電極又は酸素検知電極の検知対象ガ
スに対する活性を抑え、安定した感度及び優れた応答性
能を有するガス検知素子及びガス検出装置を提供する。 【解決手段】 酸素イオン伝導性固体電解質基板1と、
固体電解質基板1に固定され、かつ検知対象ガス及び酸
素に対して活性を有する検知電極5と、固体電解質基板
1に固定され、かつ少なくとも酸素に対して活性を有す
る参照電極7とを有し、検知電極5と参照電極7との電
位差から検知対象ガスの濃度を検知する素子であって、
検知電極5及び/又は参照電極7は酸素イオン伝導性固
体電解質からなる電極被覆層11により被覆され、電極被
覆層11は固体電解質基板1に直接又は酸素イオン伝導性
固体電解質からなる電極下地層を介して接合する部位を
有するガス検知素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガス雰囲気中の検知
対象ガス濃度を測定するためのガス検知素子及びガス検
出装置に関し、特に自動車等の燃焼排気ガス中の窒素酸
化物濃度を直接測定するのに適するガス検知素子及びガ
ス検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】固体電解質基板を用いて電気化学的に特
定のガスのみを検出できるいわゆるガス選択性の高いガ
スセンサが最近活発に提案されるようになってきたが、
特に車の排気ガス中の総NOx濃度を他ガスの存在に影響
されずに測定できるガスセンサが強く望まれている。
【0003】そこで本発明者らは、先に特開平9-274011
号(特許文献1)において酸素イオン伝導性ジルコニア
固体電解質を用いた高温作動型の混成電位式NOxセンサ
を提案した。このNOxセンサは、ジルコニア固体電解質
基板上にNOx検知電極及び前記検知電極と反対面又は同
一面に参照電極を設けた基本構成を有する。このNOxセ
ンサでは検知電極は勿論被検ガスに曝されるが、参照電
極が酸素にのみ活性を有するため、参照電極も同時に被
検ガスに曝すことができる。NOx検知電極はNOx及び酸素
に対して活性を有し、参照電極は酸素にのみ活性を有す
るので、両電極間の化学ポテンシャルの差に起因した出
力(電位差)が得られる。よって両電極間の電位差を測
定することにより、被検ガス中のNOx濃度を検出するこ
とができる。なお参照電極がNOxに対しても活性を有す
る場合、被検ガスから隔離すれば同様なNOx感度が得ら
れる。
【0004】しかしながら、上記混成電位式NOxセンサ
の検知電極では、NOガス検知時に下記式(1)及び(2): O2 + 4e-→ 2O2-・・・(1) 2 NO + 2O2-→ 2 NO2 + 4e-・・・(2) で表される反応が起こり、またNO2ガス検知時には下記
式(3)及び(4): 2O2-→ O2 + 4e-・・・(3) 2 NO2 + 4e-→ 2 NO + 2O2-・・・(4) で表される反応が起こる。そのためNOガス検知時とNO2
ガス検知時とでは、センサ出力が互いに逆極性となる。
車の排気ガス中の総NOx濃度を検知する場合NOとNO2が混
在するため、このままでは相互干渉を起こし、総NOx濃
度が正確に検知できない。
【0005】そのため特開平9-274011号(特許文献1)
は積層型ガス検出装置を提案している。この積層型ガス
検出装置の原理は、電気化学的酸素ポンプを用いて大気
中から酸素をガス検知室に導入し、被検ガス中のHC(炭
化水素)やCO(一酸化炭素)等の還元性ガスを酸化して
無害化するとともにNOx中のNOを電気化学的にNO2化し、
NOxをNO2の単ガスに変換する点にある。この単ガス化処
理後のNO2濃度をNOx検知電極と参照電極との電位差測定
により求め、それから総NOx濃度を検知する。
【0006】このようなNOx検知素子又は積層型のNOxガ
ス検出装置において、その検知性能、すなわち感度及び
その安定性及び応答性は特に検知電極の性能に支配され
る。このような混成電位型NOxセンサの検知電極とし
て、従来からNiCr2O4(SAE Paper No. 961130)、Pt-Rh
合金、Pt-Rh合金にジルコニア固体電解質を添加したサ
ーメット電極(特開平11-72476号)等が報告されてい
る。これらの検知電極はいずれも優れた感度を有する。
しかしながら検知電極の感度の安定性に関してはさらな
る改善が必要である。そのためには電極材料自体の安定
性はもとより、固体電解質基板と検知電極との界面すな
わち電極界面の接合安定性を確保することが重要であ
る。従来、特に金属酸化物を電極に用いる場合に、この
電極界面の接合安定性を制御することが困難であった。
というのは、一般に金属酸化物と固体電解質基板との接
合は弱いため、両者の界面で剥離やクラックを生じ易い
からである。
【0007】またガス検知の応答性を改善するために
は、ガスセンサの電極の界面インピーダンスを小さくす
る必要がある。そのために、電極面積の増大や作動温度
の高温化が検討されている。しかしながら混成電位式セ
ンサでは高温になるほどガス感度が低下する。また電極
面積を増大するにはセンサ素子を大型化する必要がある
が、センサ素子を大型化するとセンサ素子の温度分布の
均一性が損われ、性能のばらつきや不安定性が生じる。
【0008】以上の通り、混成電位式NOxセンサ用に感
度が優れた材料はあるが、感度の安定性に関しては更な
る改善が求められている。特に検知電極として金属酸化
物電極を使用する場合、固体電解質基板との接合安定性
が悪く、検知性能のばらつきや歩留まりの低下を招く。
そのため検知電極と固体電解質基板との界面の安定性を
向上するだけでなく、製造時の何らかの要因に起因する
特性のばらつきを低減することも望まれている。さらに
センサ素子を大型化することなく、またガス感度の低下
を伴うことなく、ガス応答性を改善することが望まれて
いる。
【0009】以上、検知電極の安定性及び応答性の重要
性について述べたが、このような特性は検知電極のみに
要求されるものではない。例えばNOxセンサの場合、電
極電位の基準となる参照電極、及び酸素濃度補正のため
の酸素検知電極等の安定性及び応答性もNOxセンサの性
能に影響を及ぼすので、それらの特性を改善することも
望まれている。
【0010】車載型のNOxセンサの場合、被検ガス中の
酸素濃度が広範に変動するため、共存する酸素濃度の影
響は無視できない。本方式のNOxセンサでは、NOx検知電
極に近接する部位に酸素のみに対して活性を有する参照
電極を配置し、NOx検知電極と参照電極との間に発生す
る電位を計測することにより、被検ガス中のNOx濃度を
測定することができる。また酸素に対して活性を有し、
NOxに対し不活性な酸素検知電極を検知室内のNOx検知電
極近傍に設置し、大気ダクトに設置された参照電極と酸
素検知電極との電位差E2及び参照電極とNOx検知電極と
の電位差E1を測定し、これらの電位差(E1−E2)を演算
処理することにより、酸素濃度の変動を補正することも
できる。このような被検ガスに対して活性を有しない電
極を用いた測定により、車の排気ガス等、酸素濃度が変
動する被検ガスにおいても高精度の検知対象ガスの濃度
測定が可能となる。
【0011】しかし、これらの参照電極又は酸素検知電
極が少なからずNOxに対して活性を示す(混成電位を生
ずる)と、その影響によりNOx検出精度は低下する。NOx
センサの感度を向上させるには、参照電極、又は酸素検
知電極のNOxに対する活性を低下させることが望まし
い。参照電極又は酸素検知電極のNOx活性は、これらの
電極材のコンタミネーション、焼結段階で蒸発した他の
電極からの蒸着等によりを生じるとが考えられる。コン
タミネーションは製造工程の管理により防止できるが、
焼結段階での他電極からの蒸着は、基板の焼結条件、検
知電極特性等の制約から回避できないことがある。従っ
て、製造工程及び使用中においても、参照電極及び酸素
検知電極のNOx等の検知対象ガスに対する活性を最小限
に抑えることが重要である。
【0012】
【特許文献1】特開平9-274011号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、電極
と固体電解質基板との界面の接合安定性に優れ、さらに
参照電極又は酸素検知電極の検知対象ガスに対する活性
を抑え、安定した感度及び優れた応答性能を有するガス
検知素子及びガス検出装置を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明の第一のガス検知
素子は、酸素イオン伝導性固体電解質基板と、前記固体
電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス及び酸素に対
して活性を有する検知電極と、前記固体電解質基板に固
定され、かつ少なくとも酸素に対して活性を有する参照
電極とを有し、前記検知電極と前記参照電極との電位差
から前記検知対象ガスの濃度を検知する素子であって、
前記検知電極及び/又は前記参照電極は酸素イオン伝導
性固体電解質からなる電極被覆層により被覆され、前記
電極被覆層は前記固体電解質基板に直接又は酸素イオン
伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して接合する
部位を有することを特徴とする。
【0015】酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極
被覆層で検知電極を被覆することにより、固体電解質基
板と検知電極との熱膨張率の差に起因する熱応力から生
じる固体電解質基板/検知電極の界面の接合不安定性を
低減することができる。また従来のガス検知素子では電
極界面(三相界面)は検知電極と固体電解質基板との接
合面のみであったが、本発明のガス検知素子では検知電
極と電極被覆層との接合面も電極界面となるので、電極
界面の面積を大幅に増加する。従って、電極インピーダ
ンスを低減でき、ガス応答性が改善される。
【0016】酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極
被覆層により参照電極を被覆することによっても、検知
電極と同様に界面の安定性及びガス応答性が改善され
る。参照電極も被検ガスに曝される場合、被検ガス中の
検知対象ガスの濃度に比べ酸素濃度が十分に高ければ、
界面インピーダンスの低下により、酸素の反応点が増加
する。このとき、低濃度の検知対象ガス(例えば、NO
x)の反応点はほとんど影響を受けないため、参照電極
の検知対象ガスに対する活性は低下する。さらに電極被
覆層により製造工程及びセンサ使用時における参照電極
のコンタミネーションが防止され、参照電極の検知対象
ガスに対する感度を低い状態に維持できるため、センサ
の精度及び安定性が向上する。
【0017】本発明の第二のガス検知素子は、酸素イオ
ン伝導性固体電解質基板と、前記固体電解質基板に固定
され、かつ検知対象ガス及び酸素に対して活性を有する
検知電極と、前記固体電解質基板に固定され、かつ少な
くとも酸素に対して活性を有する酸素検知電極と、検知
対象雰囲気から隔離された雰囲気にあって酸素に対して
活性を有する参照電極とを有し、前記検知電極と前記参
照電極との電位差E1と前記酸素検知電極と前記参照電極
との電位差E2との差(E1−E2)から前記検知対象ガスの
濃度を検知する素子であって、前記検知電極及び/又は
前記酸素検知電極は酸素イオン伝導性固体電解質からな
る電極被覆層により被覆され、前記電極被覆層は前記固
体電解質基板に直接又は酸素イオン伝導性固体電解質か
らなる電極下地層を介して接合する部位を有することを
特徴とする。
【0018】検知電極及び/又は酸素検知電極を電極被
覆層で被覆することにより、検知電極及び/又は酸素検
知電極と固体電解質基板との界面の接合安定性及びガス
応答性が改善される。また被検ガスに曝される酸素検知
電極の検知対象ガスに対する活性が低下するとともに、
コンタミネーションにより検知対象ガスへの活性が生じ
ることを防止でき、検知素子の精度及び安定性が向上す
る。
【0019】本発明のガス検知素子の好ましい例とし
て、以下のものが挙げられる。 (1) 検知電極及び/又は参照電極を被覆する電極被覆層
は、固体電解質基板、電極下地層又は電極被覆層と各電
極との三相界面に被検ガスが到達可能な形態にある。 (2) 検知電極、参照電極及び酸素検知電極の少なくとも
1つが固体電解質基板に電気絶縁層を介して固定されて
いる。 (3) 検知電極、参照電極及び酸素検知電極の少なくとも
1つが固体電解質基板に設けられた凹部内に固定されて
いる。 (4) 検知電極を被覆する電極被覆層の多孔度が10〜50%
である。 (5) 検知電極を被覆する電極被覆層の平均厚さが3〜20
μmである。
【0020】(6) 参照電極又は酸素検知電極を被覆する
電極被覆層の多孔度が0〜50%である。 (7) 参照電極又は酸素検知電極を被覆する電極被覆層の
平均厚さが1〜20μmである。 (8) 検知電極、参照電極及び酸素検知電極の少なくとも
1つを被覆する電極被覆層の平均厚さは5〜100μmで
あり、電極被覆層にガス拡散孔が設けられており、ガス
拡散孔の総開口面積(Sh)と検知電極の面積(Se)との
比(Sh/Se)は0.05〜0.28である。 (9) 被検ガスに曝される参照電極及び酸素検知電極の少
なくとも1つの電極の上面は緻密な電極被覆層に被覆さ
れており、かつ電極の側面の一部が露出している。
【0021】(10) 検知電極を被覆する電極被覆層を介
して複数の検知電極が設けられている。 (11) 検知電極、参照電極及び酸素検知電極の少なくと
も1つを被覆する電極被覆層はイットリア、セリア、マ
グネシア及びスカンジアからなる群から選ばれた少なく
とも一種を安定化剤として含むジルコニア固体電解質か
らなる。 (12) 検知電極を被覆する電極被覆層は検知対象ガス及
び酸素に対して活性を有する貴金属を含む。 (13) 検知電極、参照電極及び酸素検知電極の少なくと
も1つを被覆する電極被覆層は検知対象ガスに対して不
活性であるが酸素に対して活性を有する貴金属を含む。
【0022】(14) 電極下地層はイットリア、セリア、
マグネシア及びスカンジアからなる群から選ばれた少な
くとも一種を安定化剤として含むジルコニア固体電解質
からなる。 (15) 検知電極は検知対象ガス及び酸素に対して活性を
有する金属酸化物及び/又は貴金属からなる。 (16) 検知対象ガスは窒素酸化物ガス、炭化水素ガス、
一酸化炭素ガス又はアンモニアガスのいずれかである。
【0023】本発明の第一のガス検出装置は、(a) 所定
の間隔で配置された第一及び第二の酸素イオン伝導性固
体電解質基板により形成されたガス測定室と、(b) 前記
ガス測定室に被検ガスが所定のガス拡散抵抗で流入する
ように設けられたガス導入口と、(c) 前記ガス測定室内
の雰囲気に曝されるように前記第一の固体電解質基板に
固定され、かつ検知対象ガス及び酸素に対して活性を有
する検知電極と、前記第一の固体電解質基板に固定さ
れ、かつ少なくとも酸素に対して活性を有する参照電極
とを備えたガス検知素子と、(d) 前記ガス測定室内の雰
囲気に曝されるように第二の固体電解質基板に固定さ
れ、かつ検知対象ガス及び酸素に対して活性を有する検
知対象ガス変換電極と、酸素及び/又は酸化物ガスが存
在する雰囲気に曝されるように前記第二の固体電解質基
板に固定され、かつ酸素に対して活性を有する検知対象
ガス変換対極とを備え、必要に応じて検知対象ガスの酸
化又は還元を選択できる検知対象ガス変換ポンプ素子
と、(e) 前記検知電極と前記参照電極との電位差を測定
する手段と、(f) 前記変換ポンプ素子を駆動するための
電圧印加手段とを具備し、前記検知電極は酸素イオン伝
導性固体電解質からなる電極被覆層により被覆され、前
記電極被覆層は前記第一の固体電解質基板に直接又は酸
素イオン伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して
接合する部位を有し、前記変換ポンプ素子に所定の電圧
を印加しながら前記検知電極と前記参照電極との電位差
を検出することにより被検ガス中の検知対象ガスの濃度
を検出することを特徴とする。
【0024】本発明の第二のガス検出装置は、(a) 所定
の間隔で配置された第一及び第二の酸素イオン伝導性固
体電解質基板により形成されたガス測定室と、(b) 前記
ガス測定室に被検ガスが所定のガス拡散抵抗で流入する
ように設けられたガス導入口と、(c) 前記ガス測定室内
の雰囲気に曝されるように前記第一の固体電解質基板に
固定され、かつ検知対象ガス及び酸素に対して活性を有
する検知電極と、前記第一の固体電解質基板に固定さ
れ、かつ少なくとも酸素に対して活性を有する参照電極
とを具備するガス検知素子と、(d) 前記ガス測定室内の
雰囲気に曝されるように第二の固体電解質基板に固定さ
れ、かつ前記検知対象ガス及び酸素に対して活性を有す
る検知対象ガス変換電極と、酸素及び/又は酸化物ガス
が存在する雰囲気に曝されるように前記第二の固体電解
質基板に固定され、かつ酸素に対して活性を有する検知
対象ガス変換対極とを具備し、必要に応じて検知対象ガ
スの酸化又は還元を選択できる検知対象ガス変換ポンプ
素子と、(e) 前記ガス測定室内の雰囲気に曝されるよう
に第二の固体電解質基板に固定され、かつ処理対象ガス
及び処理対象ガス及び酸素に対して活性を有するガス処
理電極と、酸素及び/又は酸化物ガスが存在する雰囲気
に曝されるように前記第二の固体電解質基板に固定さ
れ、かつ酸素に対して活性を有するガス処理対極とを具
備し、被検ガス中の還元性ガスを酸化できるガス処理ポ
ンプ素子と、(f) 前記検知電極と前記参照電極との間の
電位差を測定する手段と、(g) 前記変換ポンプ素子を駆
動するための電圧印加手段と、(h) 前記ガス処理ポンプ
素子を駆動するための電圧印加手段とを具備し、前記変
換ポンプ素子に所定の電圧を印加しながら前記検知電極
と前記参照電極との間の電位差を検出することにより被
検ガス中の前記検知対象ガス濃度を検出するガス検出装
置であって、前記検知電極は、検知対象酸素イオン伝導
性固体電解質からなる電極被覆層で被覆され、前記電極
被覆層は前記第一の固体電解質基板に直接又は酸素イオ
ン伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して接合す
る部位を有することを特徴とする。
【0025】上記ガス検出装置に好適な検知対象ガスは
NOxである。
【0026】
【発明の実施の形態】[1] ガス検知素子 (A) 検知電極被覆型ガス検知素子の一例 図1を参照して、検知電極に電極被覆層が被覆された本
発明のガス検知素子の基本構成を説明する。図1に示す
本発明のガス検知素子では、酸素イオン伝導性固体電解
質基板1の一方の面に、検知対象ガス及び酸素に対して
活性を有する検知電極5が形成されており、他方の面に
は参照電極7が形成されている。本発明において、検知
電極5及び/又は参照電極7は酸素イオン伝導性固体電
解質からなる電極被覆層により被覆されている。電極被
覆層は、固体電解質基板1、電極下地層又は電極被覆層
と各電極との三相界面に被検ガスが到達可能な形態にあ
る。本例では、検知電極5上に多孔質の酸素イオン伝導
性固体電解質からなる電極被覆層11が積層されており、
また本例では、電極被覆層11は固体電解質基板1と直接
接合する部分を有している。検知電極5は検知対象ガス
が含まれる被検ガス雰囲気に曝され、参照電極7は一定
の基準電位が得られるように基準ガス雰囲気、例えば大
気に曝される。
【0027】検知対象ガスがNOxの場合、検知電極5で
は上記式(1)と(2)、及び(3)と(4)により表される反応が
同時に起こり、電極の平衡電位(混成電位)が生ずる
が、かかる反応には酸素が関与するため、検知電極5が
曝される被検ガスは酸素を0.1体積%以上含む必要があ
る。速いガス応答性を得るためには、被検ガスは1体積
%以上の酸素を含むのが好ましい。
【0028】(1) 固体電解質基板 固体電解質基板1の材質は、酸素イオン伝導性を有する
限り特に限定されない。酸素イオン伝導性を有する材質
としては、化学的安定性及び機械的強度を向上するため
に安定化剤としてイットリア(Y2O3)等を添加したジル
コニア固体電解質が好適である。イットリアの添加量を
固体電解質の総量に対して3〜10 mol%とすることによ
り、高い機械的強度と酸素イオン伝導性が得られる。好
ましくはイットリアの添加量を5〜8mol%とする。
【0029】イットリアを添加したジルコニア固体電解
質に、更にAlを固体電解質の総量に対して0.01〜1質量
%添加することにより、ジルコニア固体電解質の焼結温
度を大幅に低下させ、センサ検知性能を改善することが
できる。Alの添加により電極界面の安定性が向上するの
で、界面インピーダンスを低減でき、電極の活性を増大
させることができる。Alの好ましい添加量は0.05〜0.5
質量%である。Alの添加量が1質量%より多いと、固体
電解質基板1と電極被覆層11との固相反応が生じてガス
検知素子の感度が低下し、またジルコニア固体電解質の
強度も低下する。一方、Alの添加量が0.01質量%より少
ないとAlの添加効果はほとんど得られない。固体電解質
基板1の厚さは100〜300μmであるのが好ましい。
【0030】(2) 検知電極 検知電極5は酸素及び検知対象ガスに対して活性を有す
る必要がある。本明細書で使用する用語「活性を有す
る」は、検知電極5が酸素及び検知対象ガスと接触する
ことにより所定の電極電位を生じることを意味する。こ
の活性は電極活性と呼ぶことができる。検知電極5の厚
さは2〜15μmであるのが好ましい。
【0031】検知電極5は、酸素及び検知対象ガスに対
して活性を有する金属酸化物及び/又は貴金属(以下第
一の貴金属という)により形成することができる。金属
酸化物及び第一の貴金属は単独で使用しても良いが、電
極の性能改善のために混合しても良い。
【0032】検知対象ガスが窒素酸化物(NOx)である
場合、金属酸化物としてCrの酸化物を用いることによ
り、高い活性を示す検知電極5が得られる。中でもNiCr
2O4、FeCr2O4、MgCr2O4及びCr2O3からなる群から選ばれ
た少なくとも一種を用いると、NOxに対して高い活性及
び安定性を有する検知電極5が得られる。元来これらの
金属酸化物は焼結性が悪く、また焼結収縮が小さいため
固体電解質基板1との間に歪みを生じ易い。後述するよ
うに図14〜19に示す積層型NOxセンサでは、固体電解質
基板1用に固体電解質のグリーンシートを使用するた
め、焼結収縮による歪みが非常に大きい。そのため、特
に検知電極5が金属酸化物のみからなる場合、電極被覆
層11を設けないと焼結時に電極にクラックや剥離が生じ
易い。本発明の第一の形態では、検知電極5の表面に、
固体電解質からなり、物理的な歪みを抑える役割を果た
す電極被覆層11を設置することにより、固体電解質基板
1と検知電極5との接合安定性を向上させ、もって検知
電極5の安定性を改善することができる。
【0033】検知対象ガスが窒素酸化物(NOx)である
場合、第一の貴金属を用いても、高い活性を示す検知電
極5が得られる。第一の貴金属は、Rh、Ir、Au及びこれ
らを含む貴金属合金からなる群から選ばれた少なくとも
一種である。上記貴金属合金のうちPt-Rh合金は、NOxに
不活性で酸素に対して活性を有する貴金属(以下第二の
貴金属という)であるPtと、NOx及び酸素に対して活性
を有する第一の貴金属であるRhとの合金であるが、NOx
に対して高い感度及び感度安定性を示す。
【0034】検知電極5には、さらに酸素イオン伝導性
固体電解質を添加するのが好ましい。これにより電極界
面が増加し、電極インピーダンスが低下するため、一層
安定したセンサ出力が得られる。検知電極5に添加する
固体電解質としては、固体電解質基板1、電極被覆層11
及び後述する電極下地層31に用いるのと同じジルコニア
固体電解質が好適である。ジルコニア固体電解質に安定
化剤としてマグネシア(MgO)、セリア(CeO2)、スカ
ンジア(Sc2O3)及びイットリア(Y2O3)からなる群か
ら選ばれた少なくとも一種を添加するのが好ましい。安
定化剤は、固体電解質基板1、電極被覆層11及び電極下
地層31のいずれかを構成するジルコニア固体電解質が含
む安定化剤と同じであるのが好ましく、電極被覆層11に
用いるジルコニア固体電解質に含まれる安定化剤と同じ
であるのがより好ましい。
【0035】固体電解質の添加量は、検知電極5の総量
に対して5〜25質量%であるのが好ましく、10〜20質量
%であるのがより好ましい。固体電解質の添加量が5質
量%より少ないと、固体電解質の添加効果が十分に得ら
れない。また固体電解質の添加量が25質量%より多い
と、ガス検知素子の感度が低下する。
【0036】(3) 電極被覆層 検知電極5を被覆する電極被覆層11は固体電解質基板1
と直接又は酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極下
地層を介して接合している必要がある。また電極被覆層
11は、少なくとも検知対象ガス(一般に被検ガス)が固
体電解質基板1、電極下地層又は電極被覆層11(いずれ
も酸素イオン伝導性固体電解質からなる)と検知電極5
との三相界面に到達可能である形態にある。検知対象ガ
スが三相界面に到達可能であるためには、電極被覆層11
が多孔質であるのが好ましいが、これ以外にも例えば、
検知電極5を被覆する電極被覆層11を緻密層にして、検
知電極5の側面の一部を露出させる形態としても良い。
【0037】電極被覆層11の多孔度(気孔率)は10〜50
%であるのが好ましい。多孔度が10%未満では検知対象
ガスが検知電極5に到達するのに時間がかかりすぎ、ガ
ス応答時間が長くなる。また多孔度が50%超では、電極
被覆層11の強度が低く、検知電極5と固体電解質基板1
との間に生じる歪みを機械的に抑え込むことができな
い。その結果、ガス検知時に検知電極5と固体電解質基
板1との熱膨張率の差に起因する熱応力により、両者の
界面が不安定になり、安定した検知出力が得られない恐
れがある。電極被覆層11のより好ましい多孔度は25〜50
%である。
【0038】電極被覆層11の膜厚は、固体電解質基板1
と検知電極5との接合安定性を向上させるために重要で
ある。電極被覆層11が多孔性固体電解質からなる場合、
その平均厚さは3〜20μmであるのが好ましい。電極被
覆層11の膜厚が3μm未満では、電極被覆層11自体の膜
強度が低すぎる。また電極被覆層11の膜厚を20μm超で
あると、検知対象ガスが検知電極5に拡散到達するため
に時間がかかり、ガス応答時間が長くなる。
【0039】安定性又は低コスト化の観点から、電極被
覆層11には酸素イオン伝導性ジルコニア固体電解質を用
いるのが好ましい。このジルコニア固体電解質は、イッ
トリア(Y2O3)、セリア(CeO2)、マグネシア(MgO)
及びスカンジア(Sc2O3)からなる群から選ばれた少な
くとも一種を安定化剤として添加したものがセンサの性
能上好ましい。
【0040】安定化剤の添加量は、固体電解質の総量に
対して3〜20 mol%であるのが好ましく、5〜20 mol%
であるのがより好ましく、5〜15 mol%であるのが特に
好ましい。安定化剤の添加量が3 mol%未満では、酸素
イオン伝導性が不十分でセンサ出力が低い。また安定化
剤の添加量が20 mol%を超えると、電極被覆層11の膜強
度が低下し、安定性の低下や出力のバラツキが増大す
る。添加された安定化剤はジルコニアに均一に分散し、
完全に固溶しているのが好ましいが、ミクロ的には粒界
等に微量の安定化剤が残在しても本発明の効果は左右さ
れない。
【0041】電極被覆層11には検知対象ガスと酸素に対
して活性を有する第一の貴金属を添加することができ
る。例えばNOxを検知対象とする場合、第一の貴金属と
してAu、Ir及びRhからなる群から選ばれた少なくとも一
種を電極被覆層11に添加するのが好ましい。これにより
検知電極5と固体電解質基板1との物理的及び化学的な
密着性を改善することができ、もって電極界面での抵抗
を低減できる。さらに電極界面の安定性が向上し、セン
サ出力のドリフトを大幅に低減できる。電極被覆層11に
第一の貴金属を添加する場合、安定した電極性能を得る
ために、第一の貴金属の添加量は電極被覆層11の総量に
対して0.1〜30質量%であるのが好ましく、1〜20質量
%であるのがより好ましい。第一の貴金属の添加量が0.
1質量%より少ないと、その添加効果が十分に得られな
い。また第一の貴金属の添加量が30質量%より多いと、
電極被覆層11のイオン伝導性が低下する。
【0042】電極被覆層11には、検知対象ガスに対して
不活性で酸素に対して活性を有する第二の貴金属を添加
することもできる。例えばNOxを検知対象とする場合、
第二の貴金属はPt、Pd及びRuからなる群から選ばれた少
なくとも一種が好ましい。これにより安定した電極性能
が得られる。電極被覆層11に第二の貴金属を単独で添加
する場合、その添加量は0.05〜4質量%であるのが好ま
しく、0.1〜2質量%であるのがより好ましい。第二の
貴金属の添加量が0.05質量%より少ないと、その添加効
果が十分に得られない。また第二の貴金属の添加量が4
質量%を超えると、センサ出力が低下する。
【0043】第一の貴金属及び第二の貴金属をともに電
極被覆層11に添加することもできる。この場合、第一の
貴金属の添加量を好ましくは0.1〜20質量%とし、より
好ましくは1〜15質量%とし、また第二の貴金属の添加
量を好ましくは0.05〜4質量%、より好ましくは0.1〜
2質量%とする。
【0044】(4) 参照電極 参照電極7は固体電解質基板1を介して検知電極5と対
向しており、被検ガスから隔離された基準雰囲気(大
気)中にある。このような構成は、参照電極7が検知対
象ガス(例えばNOx)に対しても活性を有する場合に参
照電極7を被検ガス雰囲気から隔離するために必要であ
る。参照電極7が検知対象ガスに対して活性を有する場
合、固体電解質基板1は検知対象ガスが拡散できない材
料からなる必要がある。一方、参照電極7が検知対象ガ
スに対して活性でない材料により構成されていれば、参
照電極7は被検ガス雰囲気に曝されても良い。この場
合、図1に示す構成以外に、固体電解質基板1の同一面
に検知電極5と参照電極7とを設置しても構わない(図
6〜8参照)。参照電極7は少なくとも酸素に対して活
性を有する必要があり、検知電極5と同等の酸素活性を
有するのが好ましい。参照電極7が検知対象ガスに対し
て不活性である場合、固体電解質基板1は検知対象ガス
が拡散できる多孔質であっても良い。
【0045】検知対象ガスがNOxであり、参照電極7が
検知対象ガスに対しては不活性で酸素に対して活性を有
する場合、その構成材料としてはPtが好ましい。本明細
書に使用する用語「不活性」は、同じ検知対象ガス(例
えばNOx)濃度に対する電極電位が検知電極5に比べて
十分に低いことを意味する。参照電極7の厚さは3〜10
μmが好ましい。なお図1では、検知電極5上のみに電
極被覆層11を形成しているが、後述するように、参照電
極7上にも電極被覆層12を形成することができる。
【0046】(5) その他の構成 検知電極5と参照電極7は、電位差計25を備えたリード
導体を介して接続されており、これにより検知電極5と
参照電極7との間の電位差を計測することができる。電
位差計25としては通常の電圧計(回路)を用いることが
できる。電圧計25は電流を測定系に取り出すため、正確
なセンサ出力を得るために、電圧計25の入力インピーダ
ンスを電極インピーダンスに比べて十分に大きくするの
が好ましい。
【0047】検知電極5と参照電極7の間の電位差を測
定するのに、電圧計を用いない方法もある。例えば検知
素子と比較セル(電池)を並列に接続し、2つのセル間
に流れる電流がゼロとなる比較セルの電圧を測定する。
この方法では、検知素子から全く電流を取り出さなくて
もセンサ起電力を測定することが可能である。検知電極
5及び参照電極7はPt等の集電体(導体リード、図示せ
ず)を備えているのが好ましい。集電体は検知電極5及
び参照電極7の底面又は表面のどちらに形成してもよ
い。
【0048】少なくとも検知電極5及び固体電解質11
は、高いイオン伝導性を得るため所定の温度に加熱する
のが好ましい。具体的には、ジルコニア固体電解質の場
合、イオン伝導度が高まる300〜400℃又はそれ以上の温
度に保持するのが好ましい。検知電極5及び固体電解質
11を加熱する手段は、外部熱源でも、ガス検知素子に一
体化された自己加熱ヒータでも良い。
【0049】(B) 検知電極被覆型ガス検知素子の変更例 図2は本発明のガス検知素子の別の例を示す概略断面図
である。図2において、図1と実質的に同じ作動をする
部品には同一符号を付してある。図2に示す構成におい
て、検知電極5は固体電解質基板1に設けられた凹部1a
内に固定されており、検知電極5は検知対象ガスが検知
電極5に拡散できるようにガス拡散孔14を設けた電極被
覆層11'に覆われており、電極被覆層11'は検知電極5以
外の領域で固体電解質基板1と直接接合している。電極
被覆層11'の各ガス拡散孔14の直径は10〜1000μmである
のが好ましく、100〜500μmであるのがより好ましい。
またガス拡散孔の総開口面積(Sh)と検知電極5の面積
Seとの比(Sh/Se)は0.05〜0.28であるのが好ましく、
0.12〜0.28であるのがより好ましい。このようなガス拡
散孔14を設けた電極被覆層11'の厚さは5μm〜100μm
であるのが好ましく、30μm〜70μmであるのがより好
ましい。電極被覆層11'の厚さが5μm未満であると、
被覆効果が不十分である。また電極被覆層11'の厚さが1
00μmを超えると、検知対象ガスの検知電極5への拡散
時間が長くなり、検知応答が遅くなる。なおガス拡散孔
14を設けた電極被覆層11'は、十分なガス拡散性を有す
るので、多孔質でなくてもよい。勿論、図2のように検
知電極5を凹部1a内に固定する構成の検知素子において
も、電極被覆膜層11'を多孔質とすれば、ガス拡散孔14
を形成しなくてもよい。ガス拡散孔14を設けた電極被覆
層11'の材料は、図1に示す電極被覆層11について上記
したものと同じで良い。
【0050】図3はガス検知素子の別の例を示す概略断
面図である。図3において、図1と実質的に同じ作動を
する部品には同一符号を付してある。この実施態様で
は、検知電極5と固体電解質基板1との間に酸素イオン
伝導性固体電解質からなる電極下地層31が設けられてい
る。電極下地層31は、電極被覆層11と同じ酸素イオン伝
導性固体電解質からなるのが好ましく、またガス応答性
の観点から電極被覆層11と同様に多孔質であるのが好ま
しい。電極下地層31は、図3に示すように電極被覆層11
と固体電解質基板1との間に形成することができる。こ
の場合、電極被覆層11は固体電解質基板1に直接接合し
ていないが、固体電解質基板1と電気的に接続した固体
電解質からなる電極下地層31を介して接合しているの
で、固体電解質基板1に直接接合している場合と実質的
に同じ効果が得られる。このような構成では、たとえ検
知電極5の材料が固体電解質基板1と直接接合した場合
に歪みを生じ易いものであっても、安定した電極界面を
形成することができる。また電極被覆層11の歪み抑制作
用との相乗効果により、電極界面に一層優れた安定性を
付与することができる。電極下地層31は緻密層であって
も多孔層であってもよいが、緻密層であるのが好まし
く、その厚さは3〜10μm程度で良い。
【0051】図4はガス検知素子の別の例を示す概略断
面図である。図4において、図1と実質的に同じ作動を
する部品には同一符号を付してある。検知電極5と固体
電解質基板1との間に電気絶縁層32が設けられている。
検知電極5の表面上に積層されている電極被覆層11は固
体電解質基板1と直接接合する部位を有する。電気絶縁
層32を設けることにより、検知電極5における電極反応
は、電極被覆層11との接合界面で主に起こる。そのた
め、検知対象ガスは検知電極5の表面に到達した直後に
検知でき、ガス応答性が良い。
【0052】図5は、基本的には図1と同じ構成である
が、図1のように検知電極5の全面を電極被覆層11で被
覆せず、電極側面の一部に電極被覆層11で被覆されない
部分を設けたガス検知素子を示す。この構成では、被検
ガスが電極側面から検出部に拡散できるため、電極被覆
層11を多孔質にする必要がなく、緻密な層で良い。本明
細書において「緻密な層」とは、多孔度が0.5%以下の
膜をいう。このように検知電極5の表面を緻密な電極被
覆層11で被覆することにより、外来のコンタミネーショ
ン成分を遮断する効果が著しく向上する。上記効果を十
分に発揮するためには、緻密な電極被覆層11の平均厚さ
は1〜10μmであるのが好ましい。
【0053】図6〜8はガス検知素子の別の例を示す概
略断面図である。図6〜8において、図1と実質的に同
じ作動をする部品には同一符号を付してある。図6〜8
に示すガス検知素子は、検知電極5と参照電極7を固体
電解質基板1の同一面に配置した構造を有する。このよ
うな構造では、検知電極5と参照電極7が被検ガス雰囲
気に同時に曝されるため、参照電極7は少なくとも検知
対象ガスに不活性である必要がある。図7のガス検知素
子では、検知電極5と参照電極7にそれぞれ電極被覆層
11,12が形成されている。なお参照電極7上の電極被覆
層12の作用は、図11について後述するように電極被覆層
11と同じである。
【0054】検知電極5と参照電極7を固体電解質基板
1の同一面に配置する場合、図8に示すように、電気絶
縁性基板41上に膜状固体電解質基板層1'を形成し、そ
の上に検知電極5と参照電極7を設置することができ
る。
【0055】図9及び10はガス検知素子の別の例を示す
概略断面図である。図9及び10において、図1と実質的
に同じ作動をする部品には同一符号を付してある。図9
及び10は電極被覆層11を介して2つの検知電極5a,5b
(以下それぞれ第一の検知電極及び第二の検知電極とい
う)が併設された構造を示す。
【0056】図9に示す構成では、第一の検知電極5aは
固体電解質基板1に直接固定されて、電極被覆層11に被
覆されており、また第二の検知電極5bは電極被覆層11上
に固定されている。図10に示す構成では、第一の検知電
極5aは固体電解質基板11に直接固定されて、電極被覆層
11に被覆されており、また第二の検知電極5bは電極被覆
層11内で第一の検知電極5aより上方の位置に埋設されて
いる。図示の例では第一の検知電極5aと第二の検知電極
5bとは所定の間隔をあけて離隔しているが、両者は一部
で接触していても良い。このように検知電極5a及び5bか
らなる検知電極は一層広い電極界面面積を有し、その結
果電極インピーダンスを低減することができる。
【0057】図10に示す構造を有するガス検知素子は、
第一の検知電極5a及び第二の検知電極5bにおける電極反
応が電極被覆層11との接合界面で主に起こるため、優れ
たガス応答性を示す。勿論、図9及び10に示す構造以外
に、例えば3つ以上の検知電極を形成することも可能で
あり、これらの電極配置も電極被覆層11の内部又は上で
あれば特に限定されるものではない。なお第一の検知電
極5a及び第二の検知電極5bのいずれも上記検知電極5と
同じ材料により形成することができる。これは3つ以上
の検知電極を形成する場合も同じである。
【0058】(C) 参照電極被覆型ガス検知素子の一例 参照電極に電極被覆層が被覆された本発明の基本的なガ
ス検知素子の構成を説明する。図11は参照電極被覆型ガ
ス検知素子の一例を示す概略断面図である。このガス検
知素子の構成は、検知電極5の代わりに参照電極7が電
極被覆層12に被覆され、かつ参照電極7も被検ガス雰囲
気に曝されている他は、図1の構成と基本的に同じであ
る。酸素イオン伝導性固体電解質基板1の一方の面に、
検知対象ガス及び酸素に対して活性を有する検知電極5
が形成されており、他方の面には参照電極7が形成され
ている。
【0059】参照電極7上には酸素イオン伝導性多孔質
電極被覆層12が積層されており、電極被覆層12は固体電
解質基板1と直接接している。固体電解質基板1と直接
接することにより、電極被覆層12も参照電極7の固体電
解質基板1として作用し、もって参照電極7の電極界面
インピーダンスを低減できる。そのため、電極反応速度
が上昇し、安定性が向上する。
【0060】図11の例では、電極被覆層12は固体電解質
基板1と直接接合しているが、図3の電極被覆層11のよ
うに酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極下地層31
を介して接合しても同じ効果が得られる。図11の構成で
は、検知電極5は電極被覆層に被覆されていないが、勿
論検知電極5及び参照電極7の両方を電極被覆層で被覆
してもよい。検知電極5と参照電極7は、電位差計25を
備えたリード導体を介して接続されており、これにより
検知電極5と参照電極7との間の電位差を計測すること
ができる。
【0061】(D) 参照電極被覆型ガス検知素子の変更例 図12は、基本的には図11と同じ構成であるが、図11のよ
うに参照電極7の全面を電極被覆層12で被覆せず、電極
側面の一部に電極被覆層12で被覆されない部分を設けた
ガス検知素子を示す。この構成では、被検ガスが電極側
面から検出部に拡散できるため、電極被覆層12を多孔質
にする必要がなく、緻密な膜で良い。このように参照電
極7の表面を緻密な電極被覆層12で被覆することによ
り、外来のコンタミネーション成分を遮断する効果が著
しく向上する。その結果、検知対象ガスに対する活性を
生じさせずに酸素のみに対して活性を有する参照電極を
構成しやすい。
【0062】さらに電極被覆層12に固体電解質基板1と
直接接触する部位があるので、上述のようにインピーダ
ンス低減効果も得られる。図12では電極側面をガスの流
入口としたが、例えば図2に示す検知電極の被覆層11'
のように、電極上面にピンホール程度の拡散口を形成し
ても同じ効果が得られる。ただし、この場合コンタミネ
ーション防止効果及び応答性能を考慮して、ピンホール
の断面積、数等を設計する必要がある。
【0063】前述の通り、被検ガスに曝される参照電極
7を被覆する電極被覆層12は、参照電極7と固体電解質
基板1との三相界面に被検ガスが到達できる形態である
ことが必要となる。この場合、電極被覆層12に拡散孔14
を設けた構成、又は参照電極7の側面の一部を露出する
構成であれば、電極被覆層12を多孔性材料で構成する必
要はない。特に焼結中又は使用中におけるコンタミネー
ションを防止するためには、参照電極7上面を緻密な膜
で被覆し、電極側面の一部を露出させる構成とするのが
好ましい。また参照電極7と固体電解質基板1との界面
のインピーダンスを低下させるためには、少なくとも電
極被覆層12の一部が直接、又は酸素イオン伝導性固体電
解質からなる電極下地層31を介して固体電解質基板1と
接合する必要がある。
【0064】電極被覆層12の多孔度はその構成に応じて
変更可能であるが、一般に0〜50%であるのが好まし
い。また電極被覆層12が多孔質の場合、電極被覆層12の
平均厚さを1〜20μmとすると、良好な性能を有するガス
検知素子が得られる。また電極被覆層12が緻密膜である
場合、その平均厚さが1〜10μmであると十分な効果が得
られる。
【0065】参照電極7を被覆する電極被覆層12は、検
知電極5を被覆する電極被覆層11と同じ酸素イオン伝導
性ジルコニア固体電解質により形成するのが好ましい。
電極被覆層12には、検知対象ガスに活性でなく酸素に対
して活性を有する第二の貴金属を添加することができ
る。例えばNOxを検知対象とする場合、第二の貴金属はP
t、Pd及びRuからなる群から選ばれた少なくとも一種が
好ましい。これにより安定した電極性能が得られる。第二
の貴金属の添加量は電極被覆層12の総量に対して、0.05
〜4質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好まし
い。第二の貴金属の添加量が0.05質量%より少ないとそ
の添加効果が十分に得られない。また第二の貴金属の添
加量を4質量%より多くしても、さらなる効果の向上は
ほとんど得られず、コスト高になるだけである。
【0066】参照電極7は酸素に対して活性を有する電
極材料であれば良い。特に参照電極7も被検ガス雰囲気
に設置される構成では、検知対象ガスに対しては不活性
で酸素に対してのみ活性を有する電極材料からなるのが
好ましい。検知対象ガスがNOxの場合、NOxに対する電極
電位が比較的低いことから、白金、イリジウム及び金か
らなる群から選ばれた少なくとも一種を含む材料が好ま
しい。特に白金とイリジウムからなる参照電極では、NO
xに対する電極電位が低く、電極自体のインピーダンス
を低くすることができる。
【0067】参照電極にも、酸素イオン伝導性固体電解
質を添加するのが好ましい。添加する固体電解質として
はジルコニア固体電解質が好ましく、この場合安定化剤
としてマグネシア、セリア、スカンジア及びイットリア
からなる群から選ばれた少なくとも一種を添加するのが
より好ましい。電極被覆層12用固体電解質に添加する安
定化剤と参照電極7用固体電解質に添加する安定化剤と
を同じにすると、より優れた効果が得られる。
【0068】以上参照電極7が検知電極5と同じ被検ガ
スに曝される構成について説明したが、参照電極7が大
気等の基準ガスに曝される構成においても、同様に電極
被覆層12で被覆することができる。この場合、コンタミ
ネーション防止を考慮する必要がなく、固体電解質基板
1と参照電極7との界面の接合安定性及びガス応答性の
改善を考慮して、電極被覆層12を構成すればよい。
【0069】(E) 酸素検知電極被覆型ガス検知素子 図13は、酸素検知電極が電極被覆層で被覆された本発明
のガス検知素子の構成を示す。このガス検知素子におい
て、固体電解質基板1の同一側の面に検知電極5と酸素
検知電極6とが設置され、参照電極7は固体電解質基板
1の反対側の面に、固体電解質基板1を介して検知電極
5及び酸素検知電極6と対向するように設置されてい
る。参照電極7は検知対象ガスから隔離された基準ガス
雰囲気中にある。酸素検知電極6は、酸素イオン伝導性
固体電解質からなる電極被覆層13で被覆されている。こ
のような構成は、酸素検知電極6が極微量の検知対象ガ
スに対しても活性を有する場合に有効である。このよう
な場合、参照電極7を被検ガス雰囲気から隔離すること
により、精度よく検知対象ガス濃度を検出できる。また
固体電解質基板1はガスが拡散できないものである必要
がある。酸素検知電極6は少なくとも酸素に対して活性
を有するのが好ましい。酸素検知電極6を被覆する電極
被覆層13の形状、サイズ、材質等は、参照電極7を被覆
する電極被覆層12と同じであるのが好ましい。
【0070】酸素検知電極6は酸素に対して活性を有す
る電極材料であれば良いが、検知対象ガスに対しては不
活性で酸素に対してのみ活性を有する電極材料であるの
が好ましい。検知対象ガスがNOxの場合、NOxに対する電
極電位が比較的低いことから、白金、イリジウム及び金
からなる群から選ばれた少なくとも一種を含む材料が好
ましい。特に白金−イリジウム合金からなる酸素検知電
極では、NOxに対する電極電位が低く、電極自体のイン
ピーダンスを低くすることができる。
【0071】[2] ガス検知素子の製造方法 ガス検知素子の製造方法には特に制限はないが、ここで
は例としてジルコニアグリーンシートを用いて作製する
場合について説明する。ジルコニアグリーンシートを用
いるとガス検知素子の生産性が高い。原料のジルコニア
粉末としては、所定量のY2O3を含有するジルコニア粉末
が好ましいが、ジルコニア粉末とイットリア粉末を所定
量混合してもよい。原料粉に所定量のバインダー及び溶
剤を配合し、ボールミル等を用いて混練し、ドクターブ
レード法や射出成形法等でシート成形する。
【0072】図1〜13に示すガス検知素子を作製する場
合、ジルコニアグリーンシート又は焼結済み固体電解質
基板上に電極用ペーストをスクリーン印刷等で塗布する
ことにより、検知電極5及び参照電極7、さらに必要に
応じて酸素検知電極6を形成する。必要に応じて乾燥・
印刷を繰り返した後、集電用リード導体及び電極被覆層
を同様にスクリーン印刷する。スクリーン印刷完了後、
グリーンシートの場合には約500℃で脱脂し、次いで通
常1400℃以上で焼結を行う。最後に集電体端子にPt等の
リード線を溶接する。
【0073】[3] ガス検出装置 図1〜13に示す基本構成を有するガス検知素子(検知セ
ル)は、窒素酸化物ガス、炭化水素ガス、一酸化炭素ガ
ス、アンモニアガス等の検知が可能であり、特に窒素酸
化物ガスの測定に優れた効果を発揮する。そこで本発明
のガス検知素子を組み込んだガス検出装置を窒素酸化物
測定に使用する場合について、以下詳細に説明する。勿
論本発明のガス検出装置は窒素酸化物以外の検知対象ガ
スに対しても有効である。
【0074】図14は窒素酸化物測定用ガス検出装置の一
例を示す概略断面図である。このガス検出装置は積層型
NOxセンサであり、(a) 所定の間隔で配置された第一及
び第二の酸素イオン伝導性固体電解質基板1及び2によ
り形成されたガス測定室4と、(b) ガス測定室4に被検
ガスが所定のガス拡散抵抗で流入するように設けられた
ガス導入口3と、(c) ガス測定室4内の雰囲気に曝され
るように第一の固体電解質基板1に固定され、かつNOx
及び酸素に対して活性を有する検知電極5(以下NOx検
知電極という)と、第一の固体電解質基板1に固定さ
れ、かつ酸素に対して活性を有する参照電極7とからな
るNOx検知セルと、(d) ガス測定室4内の雰囲気に曝さ
れるように第二の固体電解質基板2に固定され、かつNO
x及び酸素に対して活性を有するNOx変換電極8と、ダク
ト16内の酸素及び/又は酸化物ガスが存在する雰囲気に
曝されるように第二の固体電解質基板2に固定され、か
つ酸素に対して活性を有するNOx変換対極9とからな
り、もって被検ガス中のNOをNO2に、又はNO2をNOに変換
するNOx変換ポンプ素子とを有する。
【0075】このガス検出装置はさらに、(e) NOx検知
電極5と参照電極7との電位差を測定する手段25と、
(f) NOx変換ポンプ素子を駆動する電圧印加手段28とを
具備し、NOx変換ポンプ素子に所定の電圧を印加しなが
らNOx検知電極5と参照電極7との電位差を検出するこ
とにより被検ガス中のNOx濃度を検出できる。NOx検知セ
ルの少なくともNOx検知電極5は、被検ガスがNOx検知電
極5と第一の固体電解質基板1、電極下地層又は電極被
覆層との界面に到達可能な酸素イオン伝導性固体電解質
からなる電極被覆層11により覆われており、かつ電極被
覆層11は第一の固体電解質基板1と直接、又は酸素イオ
ン伝導性固体電解質からなる電極下地層(図示せず)を
介して接合する部位を有している。
【0076】ガス検出装置は、NOx検知セル(NOx検知電
極5、参照電極7及び電極被覆層11を有する)を所定温
度に加熱するヒータ18(例えば自己加熱ヒータ)を備え
ており、ヒータ18はヒータ基板19a及び19bに一体的に挟
持されている。
【0077】15a及び22はそれぞれ第一の固体電解質基
板1と第二の固体電解質基板2を所定の間隔に保つため
のスペーサを示し、スペーサ22はガス導入口3を有す
る。また15bはNOx変換対極9に通ずる大気ダクト16を設
けるためのスペーサを示し、15cは参照電極7に通ずる
大気ダクト17を設けるためのスペーサを示す。また23は
大気ダクト16を形成するための基板を示す。
【0078】図14に示すガス検出装置において、多孔質
電極被覆層11の代わりに図2に示すようにガス拡散孔を
設けた電極被覆層11'を用いてもよい。固体電解質基板
1及び2には、上記と同じジルコニア固体電解質を用い
るのが好ましく、またスペーサ15aも同じジルコニア固
体電解質からなるのが好ましい。ヒータ18を挟持するヒ
ータ基板19a及び19bにはジルコニア固体電解質を用い
るのが好ましい。この場合、ヒータ基板19a及び19bとヒ
ータ18との各界面に電気絶縁性の高いアルミナ層等を設
けるのが好ましい。
【0079】図14に示す積層型NOxセンサの構成は電気
化学的な酸素ポンプ(NOx変換電極8及び変換対極9か
らなるNOx変換ポンプ素子)を備えているので、必要に
応じて燃焼排ガス中のNOをNO2に変換して被検ガス中の
総NOxをNO2のみからなるガスに変換するか、燃焼排ガス
中のNO2をNOに変換して被検ガス中の総NOxをNOのみから
なるガスに変換することにより、被検ガス中の総NOx濃
度を検知することができる。
【0080】このようなNOx変換ポンプ素子を用いたガ
ス変換による単ガス化は、ガス測定室4内に外部から酸
素を導入してNOx変換電極8によりNOを酸化するか、ガ
ス測定室4内から酸素を排出してNOx変換電極8によりN
O2を還元することにより行う。図14の構成は、大気ダク
ト16内に変換対極9を設置し、大気中から酸素をポンピ
ングする例である。しかし変換対極9をガス測定室4に
設けて被検ガス雰囲気に曝し、被検ガス中の酸化物を電
気化学的に分解することにより酸素ポンピングを行うこ
とも可能である。被検ガス中の酸化物としては通常C
O2、CO、H2O等が挙げられる。
【0081】変換電極8を構成する材料としては、白
金、ロジウム、イリジウム、金及びこれらを含む合金か
らなる群から選ばれた少なくとも一種の貴金属が好まし
い。合金としては、Pt-Rh合金、Ir-Rh合金、Pt-Ru合金
等が挙げられる。特にPt-5.5 mol%Rh等の白金−ロジウ
ム合金からなる変換電極を使用すると、良好なNOx変換
を行うことができる。また白金、ロジウム、イリジウ
ム、金及びこれらを含む合金からなる群から選ばれた少
なくとも一種の貴金属と、Cr2O3、NiO、NiCr2O4、MgCr2
O4及びFeCr2O4からなる群から選ばれた少なくとも一種
の金属酸化物との混合物により変換電極8を形成する
と、安定性に優れた変換電極8とすることができる。な
お変換対極9を構成する材料は、酸素に対する活性を有
するものであれば特に制限はないが、Pt、Pd、Ir等が好
ましく、特にPtが好ましい。
【0082】NOx検知電極5に電極被覆層11を設けた構
成により、電極の熱歪み等に起因する電極界面の不安定
さや出力のドリフト等の問題を解消することができ、電
極界面の電気化学的な活性度を安定化することができ
る。また電極の界面インピーダンスを小さくできるた
め、ガス検知時の応答性能を改善することができる。ま
た本センサ構造においては、酸素に対して活性を有する
参照電極7は、大気ダクト17内に設置されているので、
完全に被検ガスから遮断されており、基準電極として作
用することができる。参照電極7の材料としては通常Pt
を用いるが、酸素活性を改善するために酸素イオン伝導
体、例えばジルコニア固体電解質を添加することもでき
る。
【0083】図14の例では、NOx検知電極5のみ電極被
覆層11で被覆されているが、勿論、大気ダクト17内に設
置された参照電極7も電極被覆層12で被覆して良い。こ
れにより、NOx検知電極5だけでなく参照電極7の電極界
面の安定性も向上し、界面インピーダンスが低下するた
め、ガス検出装置のドリフト変化率がさらに低減して、
ガス検知安定性が向上する。
【0084】図15はガス検出装置の別の例を示す概略断
面図であり、図16はその平面図である。図16はガス検出
装置中の各部の平面的配置を示す。なお他の例のガス検
出装置でも、各素子の平面配置は図16と実質的に同様で
ある。図15において、図14と実質的に同じ作動をする部
品には同一符号を付してある。図15に示すガス検出装置
では、参照電極7は検知電極5と同一面に設置され、被
検ガス雰囲気に曝される。参照電極7は酸素に対しては
活性を有するがNOxに対しては不活性である必要があ
る。このような参照電極7を構成する材料としてはPtが
好ましい。
【0085】このように混成電位型センサにおいて、酸
素に対しては活性を有するがNOxに対しては不活性な参
照電極7を用いると、NOx検知電極5と同じ被検ガス雰
囲気中に参照電極7を設置できる。参照電極7はNOx検
知電極5の近傍に設置するのが好ましい。図15ではNOx
検知電極5及び参照電極7ともに電極被覆層11,12で被覆
されているが、勿論、いずれか一方の被覆でも相当な効
果が得られる。電極被覆層11,12により、固体電解質基
板/電極間の界面の接合安定性とガス応答性を改善する
ことができる。
【0086】このように参照電極7がNOx変換電極8と対
向した構成では、参照電極7を電極被覆層12で被覆する
ことにより、コンタミネーション防止に著しい効果が得
られる。すなわち、ガス検出装置の焼結時又は使用時に
NOx変換電極8から発生するコンタミネーション成分によ
り参照電極がNOxに対する活性を付与されてしまうこと
を、電極被覆層12により効率的に防止することができ
る。
【0087】図17はガス検出装置の別の例を示す概略断
面図である。図17において、図14及び15と実質的に同じ
作動をする部品には同一符号を付してある。図17は、酸
素に対して活性を有するがNOxに対しては不活性である
酸素検知極6をガス測定室4内に設置し、NOx検知電極
5及び酸素検知極6の両方に対応する参照電極7を大気
ダクト17内に設けた構成を示す。酸素検知電極6を構成
する材料としてはPt,Pd,Ir、Pt-Ir合金が好ましい。
勿論、参照電極7はNOx検知電極5用と酸素検知電極6
用のものをそれぞれ個別に設置してもよい。演算処理手
段27により、参照電極7と酸素検知電極6との電位差VO
2(E2)及び参照電極7とNOx検知電極5との電位差VNOx
(E1)を用いて、酸素濃度変動に対して補正を施す。演
算処理手段27として、電子回路を用いたハードウェア、
及びマイクロコンピュータ等を用いたソフトウェア等を
用いることができる。これにより、被検ガス雰囲気の酸
素濃度の変動がガス測定室4内の酸素濃度に影響を及ぼ
す場合でも、精度良くNOx検知を行うことができる。
【0088】図17に示す実施例では、NOx検知電極5及
び酸素検知電極6はそれぞれ電極被覆層11,13で被覆さ
れているが、勿論参照電極7を電極被覆層12で被覆して
もよい。本構成においては、酸素検知電極6がNOx変換電
極8と対向しているため、図15における参照電極7と同
様、電極被覆層13がNOx変換電極8からのコンタミネーシ
ョンの防止に効果的であり、酸素検知電極6がNOx活性を
有してしまう現象を電極被覆層13により効率的に防止す
ることができる。電極被覆層13の好ましい例は、NOx変
換電極8に対向する参照電極7に被覆した上記電極被覆層
12と同じである。
【0089】図18はガス検出装置の別の例を示す概略断
面図である。図18において、図14〜17と実質的に同じ作
動をする部品には同一符号を付してある。図18に示す積
層型NOxセンサは、図17に示す構成に、被検ガス雰囲気
中の還元ガス、例えば燃焼排ガス中のCO、HC等をガス測
定室4の前段で酸化処理するためのガス処理電極10を設
けたものである。ガス処理電極10は、HCやCO等に対して
活性を有する。図18はガス処理電極10の変換対極9をNO
x変換電極8と共通化している例を示すが、変換対極9
をガス処理電極10用とNOx変換電極8用にそれぞれ個別
に設置してもよい。
【0090】図18に示すガス検出装置は、ガス処理電極
10とその対極9により構成されるガス処理ポンプ素子
と、ガス処理ポンプ素子に電圧を印加する手段としての
外部電源29とを具備する。ガス処理電極10とNOx変換電
極8との間にガス通気孔30を有するガス抵抗体24を設置
し、ガス測定室4をガス変換室4a(前室)とガス測定室
4b(後室)の2室構造にしてもよい。ガス変換室4aで酸
化物濃度を高めることにより、ガス測定室4bの酸素濃度
変動が抑制されるため、センサ特性が向上し、精度良く
NOx検知を行うことができる。ガス処理電極10を構成す
る材料としては、Pt、Pd、Ir、Au、Rh等が好ましい。
【0091】図14〜18に示すセンサでは、スペーサ22に
ガス測定室4に連通する1つのガス導入孔3が形成され
ているが、勿論複数のガス導入孔3を形成しても良い。
更にガス導入孔3を多孔質体で形成することもできる。
またガス導入孔3のガス通気路中に酸化触媒多孔体を装
填して、HC(炭化水素)やCOを酸化することにより、ガ
ス処理効果を高める構造としてもよい。なおガス応答性
の観点から、ガス導入孔3はガス拡散律速となる程の通
気抵抗を有しない方が好ましい。
【0092】図19はガス検出装置の別の例を示す概略断
面図である。図19において、図14〜18と実質的に同じ作
動をする部品には同一符号を付してある。図19に示す積
層型NOxセンサでは、NOx検知電極5を具備する固体電解
質基板1及びその上に設けられた固体電解質基板1bを貫
通するように複数のガス通気孔21が形成されている。ガ
ス通気孔21が開口する固体電解質基板1の領域は、大気
ダクト17用のスペーサとして作用する多孔質体20により
覆われている。多孔質体20はガス導入孔3を構成する細
孔を有し、細孔内に酸化触媒が担持されている。
【0093】被検ガスは多孔質体20の細孔に入り、酸化
触媒によりHC(炭化水素)やCOが酸化されて酸化物濃度
が高められる。被検ガスはガス通気孔21を通った後、固
体電解質基板1b及び2bで挟持された多孔質膜からなるガ
ス処理電極10中を拡散し、さらに酸化物濃度が高められ
る。このような構成によりガス処理効果を高めることが
できる。酸化触媒を担持した多孔質体20やガス処理電極
10の多孔度は、ガス通気抵抗がガス拡散律速とならない
ように設定するのが好ましい。ガス処理電極10の変換対
極9bはNOx変換電極8の変換対極9aとは別個に設置されて
いる。センサ素子の加熱温度の均一性を向上するため、
一対のヒータ18a及び18bがガス検知素子領域の両側の基
板内に設置されている。
【0094】[4] ガス検出装置の製造方法 図14〜19に示す積層型NOxセンサを作製する場合にも、
ガス検知素子の場合と同様にグリーンシートを用いるの
が好ましい。例えば図18の積層型NOxセンサを製造する
場合、図20に示すように、グリーンシートIの一面にNOx
検知電極5及び酸素検知電極6と電極被覆層11,13とを
スクリーン印刷し、他面に参照電極7をスクリーン印刷
し、さらに必要な集電用リード導体をスクリーン印刷し
て、検知セル部を作製する。またグリーンシートIIの一
面にNOx変換電極8及びガス処理電極10をスクリーン印
刷し、他面にNOx変換対極9をスクリーン印刷し、さら
に必要な集電用リード導体をスクリーン印刷して、変換
ポンプ素子部を作製する。さらにヒータ18及びそのリー
ド導体を固体電解質基板19a,19b用の2枚のグリーンシ
ートで挟持することにより、ヒータ部用シートIIIを作
製する。
【0095】グリーンシートIとグリーンシートIIと間
にスペーサ15a,22及びガス抵抗体24用のグリーンシー
トを挟み、またグリーンシートIとグリーンシートIIIと
の間にスペーサ15c用のグリーンシートを挟み、最後に
グリーンシートIIの上にスペーサ15b用のグリーンシー
トを介して大気ダクト形成用基板23用のグリーンシート
を積層する。この際、素子の内部空所を形成する部位に
は、あらかじめ脱脂温度で昇華するテオブロミン等の加
熱消失材を埋め込むか、印刷しておく。このようにして
得られた積層体を加熱圧着した後、約500℃で脱脂し、
次いで例えば1400℃以上で焼結する。得られた焼結体の
集電体端子にPt等のリード線を溶接等により設ける。
【0096】以上本発明のガス検知素子及びガス検出装
置の構造及びその構成部分の組成等を実施例毎に詳細に
説明したが、これらの説明は特に断りがなければいずれ
の実施例のガス検知素子及びガス検出装置にも適用可能
である。
【0097】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではな
い。
【0098】参考例1 電極被覆層を有しないNOxガス検知素子(NOxセンサ)を
作製した。表1に示すように、NOx検知電極をそれぞれN
Ox及び酸素に対して活性を有する金属酸化物、NOx及び
酸素に対して活性を有する貴金属、及びNOxに不活性で
酸素に対して活性を有する貴金属により作製した。ジル
コニア固体電解質基板を作製するために、6mol%のイ
ットリアを添加したジルコニア粉末のグリーンシートを
ドクターブレード法により作製した。グリーンシートの
サイズは0.25 mm×5mm×50 mmとした。なお焼結基板を
用いる場合、基板の厚さは約200μmとする。
【0099】グリーンシートを矩形に切断し、Ptリード
導体をスクリーン印刷した後、表1に示す各検知電極材
料をスクリーン印刷して、NOx検知電極を形成した。参
照電極用Ptペーストを、NOx検知電極と対向するグリー
ンシートの表面にスクリーン印刷した。得られた各ガス
検知素子(センサ素子)用グリーンシートを大気中で約
500℃で脱脂した後、約1400℃の大気中で焼結した。焼
結基板を用いる場合、脱脂工程は不要となり、1100〜13
00℃で焼結を行う。焼結後の各NOxセンサにリード線を
接合してセンササンプルとした。
【0100】各センササンプルを石英管中にセットして
電気炉内に保持し、100 ppmのNOxガス(NO2又はNO)及
び5体積%の酸素を含有し、残部が窒素からなる被検ガ
スに曝して、NOxに対する活性を比較した。電気炉を600
℃の雰囲気温度に制御した。各センササンプルのNOxに
対する出力は、高入力インピーダンスの電圧計を用いて
測定した。結果を表1に示す。なお本参考例においては
Pt電極がNO及びNO2のいずれに対しても感度を有しない
ことを予め確認してある。
【0101】
【表1】
【0102】表1に示すように、A群の貴金属材料はNOx
に対して感度を示さず、NOx活性がほとんどなかった。
一方、B群の貴金属材料はNOxに高い活性を示した。C群
の金属酸化物材料は優れたNOx感度を示したが、なかで
もCrを構成元素とする酸化物は高い感度及び感度安定性
を示すことが分かった。特にNiCr2O4、FeCr2O4、MgCr 2O
4及びCr2O3は高い感度及び感度安定性を有することが分
かった。従って本発明において、第一の貴金属としてB
群の貴金属材料を用い、第二の貴金属としてA群の貴金
属材料を用いることができる。またB'群のPt-Rh(3質
量%)は、A群のPtとB群のRhとの合金であるが、NOxに
対して高い感度及び感度安定性を有することが認められ
た。
【0103】実施例1〜8 Ir-Rh(5質量%)合金、Pt-Rh(3質量%)合金、Cr2O3
又はNiCr2O4を用いてNOx検知電極5を固体電解質グリー
ンシート上に形成した後、その上に表2に示す材料をス
クリーン印刷して、電極被覆層11(平均厚さ:15μm、
多孔度:30%)を形成した以外参考例1と同様にして、
図1に示す構造を有するNOxガス検知素子(NOxセンサ)
のサンプルを作製した。参照電極7には電極被覆層を被
覆しなかった。得られた各センササンプルを石英管の中
にセットして電気炉内に保持し、電気炉を600℃の雰囲
気温度に制御した。100 ppmのNO2ガス及び5体積%の酸
素を含有し、残部が窒素からなる被検ガスに曝す加速劣
化試験をおこない、各センササンプルの検知性能を調べ
た。NO2に対する出力は高入力インピーダンスの電圧計
を用いて測定した。結果を表2に示す。
【0104】比較例1〜4 電極被覆層11を設けなかった以外は実施例1〜8と同様
にしてセンササンプルを作製し、実施例1〜8と同様に
検知性能を調べた。結果を表2に示す。
【0105】
【表2】 注:* 単位は質量%。 (1) 5体積%の酸素を含有するN2ベースガスの場合のセ
ンサ出力と、ベースガスに100 ppmのNO2を添加したガス
の場合のセンサ出力との差により表わす。 (2) 相対評価 ◎:優れている。 ○:並である。 △:劣っている。 (3) NO2(100 ppm)に対する初期感度と、加速劣化試験
後におけるNO2(100 ppm)に対する感度との差(変化
分)により示す。+は感度の増大を意味し、−は感度の
低下を意味する。
【0106】実施例1〜8と比較例1〜4との比較か
ら、電極被覆層11を設けた実施例1〜8のセンササンプ
ルはいずれもドリフト変化率が大幅に小さく、応答性も
改善されていることが分かる。特にNOx検知電極5に金
属酸化物を使用した場合にドリフト変化の改善効果が著
しく、耐久性が改善されたことが分かる。
【0107】実施例9〜16 図2に示す通り、固体電解質基板1に設けた凹部1a内に
NOx検知電極5を固定し、そのNOx検知電極5の上面にガ
ス拡散孔14を有する固体電解質からなる電極被覆層11'
を形成した構造を有するNOxセンサを、下記の手順で作
製した。固体電解質基板1に予め設けた凹部1aにスクリ
ーン印刷によりNOx検知電極5を形成した。所定の厚さ
を有するジルコニアグリーンシートに複数のガス拡散孔
14を設けることにより、電極被覆層11'用グリーンシー
トを作製した。ガス拡散孔14がNOx検知電極5の上に位
置するように、電極被覆層11'用グリーンシートを固体
電解質基板1上に載置し、リード線を挿入した状態で圧
着した。これら以外の手順は参考例1と同じであった。
参照電極7には電極被覆層を被覆しなかった。ガス拡散
孔14の総開口面積(Sh)と検知電極の面積(Se)との比
(Sh/Se)は0.15に設定した。得られた各積層体を参考
例1と同じ条件で脱脂及び焼結した。得られた焼結体の
厚さはいずれもほぼ30μmであった。このようにして得
られた各センササンプルの検知性能を実施例1と同様に
評価した。結果を表3に示す。
【0108】比較例5〜8 電極被覆層を設けなかった以外は実施例9〜16と同様に
して各センササンプルを作製し、実施例9〜16と同様に
検知性能を調べた。結果を表3に示す。
【0109】
【表3】 注:* 単位は質量%。 (1)〜(3)表2と同じ。
【0110】実施例9〜16と比較例5〜8との比較か
ら、ガス拡散孔14を有する電極被覆層11'を設けた実施
例9〜16のセンササンプルはいずれも電極被覆層を有さ
ない比較例5〜8のセンササンプルより、感度のドリフ
ト変化率が大幅に低下していることが分かった。また実
施例9〜16のセンササンプルはいずれも多孔質電極被覆
層11を設けた実施例1〜8のセンササンプルよりもドリ
フト変化率が小さかった。一方、100 ppmのNO2に対する
感度については、実施例9〜16のセンササンプルは実施
例1〜8のセンササンプルより若干低いものの、それほ
ど低下していなかった。また応答性に関しては、実施例
9〜16のセンササンプルは全体的に比較例5〜8より改
善されていることが認められた。
【0111】実施例17〜28 図3,4,6,8〜10に示す構造を有するNOxセンサの
サンプルを作製した。検知電極にはCr2O3又はNiCr2O4
用い、電極被覆層には12 mol%のCeO2を添加したジルコ
ニア固体電解質を用いた。
【0112】図3に示す構造を有するセンササンプル
は、固体電解質基板用グリーンシートに予め14 mol%の
CeO2を添加したジルコニア固体電解質をスクリーン印刷
して電極下地層31(多孔度:10%、膜厚:3μm)を形
成し、次いでNOx検知電極5を形成した後、スクリーン
印刷により電極被覆層11(多孔度:30%、平均厚さ:15
μm)を形成した以外は参考例1と同様にして作製し
た。
【0113】図4に示す構造を有するセンササンプル
は、固体電解質基板1用グリーンシートに予めアルミナ
印刷層を設けて電気絶縁層32を形成し、次いでNOx検知
電極5及び参照電極7を形成し、電極被覆層11をスクリ
ーン印刷により形成した以外は参考例1と同様にして作
製した。
【0114】図6に示す構造を有するセンササンプル
は、グリーンシートの同一面にNOx検知電極5と参照電
極7を設け、NOx検知電極5にのみ電極被覆層11をスク
リーン印刷により設けた以外は参考例1と同様にして作
製した。
【0115】図8に示す構造を有するセンササンプル
は、電気絶縁性基板41として300μm厚の高純度アルミ
ナ基板を用い、その上に6mol%のイットリアを添加し
たジルコニア印刷層(固体電解質基板層)1'を設け、次
いでグリーンシートの同一面にNOx検知電極5と参照電
極7を設け、NOx検知電極5にのみ電極被覆層11をスク
リーン印刷により設けた以外は参考例1と同様にして作
製した。
【0116】図9に示す構造を有するセンササンプル
は、ジルコニア固体電解質基板1上に第一のNOx検知電極
5aを形成した後、電極被覆層11及び第二のNOx検知電極5
bを順次印刷した以外は参考例1と同様にして作製し
た。第一のNOx検知電極5aと第二のNOx検知電極5bは同じ
電極材料により形成した。
【0117】図10に示す構造を有するセンササンプル
は、ジルコニア固体電解質基板1上に第一のNOx検知電極
5aを形成した後、電極被覆層11及び第二のNOx検知電極5
bを順次印刷し、さらに電極被覆層11をスクリーン印刷
により設けた以外は参考例1と同様にして作製した。第
一のNOx検知電極5aと第二のNOx検知電極5bは同じ電極材
料により形成した。
【0118】得られた各センササンプルについて、実施
例1と同様に感度評価を行った。結果を表4に示す。な
お性能比較のために、図1に示す構造を有するセンササ
ンプル(実施例6,8)の感度評価も表4に示す。
【0119】
【表4】 注:(1)及び(3) 表2と同じ。 (2) 相対評価 ◎◎:非常に優れている。 ◎:優れている。 ○:並である。 △:劣っている。
【0120】図1に示す構造を有するセンササンプルに
比較して、図3に示す構造を有するセンササンプル(実
施例17及び18)はドリフト変化率が低下しており、電極
下地層31を設置した効果が確認された。図4に示す構造
を有するセンササンプル(実施例19及び20)は感度が若
干低下しているものの、ガス応答性に優れていた。これ
は電気絶縁層32を有することにより、ガス検知反応が起
こる電極界面が検知電極5の上面にあるためと考えられ
る。
【0121】図6に示す構造を有するセンササンプル
(実施例21及び22)は図1に示す構造を有するセンササ
ンプルとほぼ同等の性能を示した。これから、固体電解
質基板1の片面に検知電極5と参照電極7を形成しても
両面に形成した時と同程度の効果が得られることが確認
できた。
【0122】図8に示す構造を有するセンササンプル
(実施例23及び24)は、図6に示す構造を有するセンサ
サンプルとほぼ同等の性能を示した。これから、電気絶
縁性基板41上に膜状の固体電解質基板層1'を形成した場
合、固体電解質基板1を用いた場合と同程度の性能が得
られることが確認された。
【0123】図9及び図10に示す構造を有するセンササ
ンプル(実施例25〜28)は、図1に示す構造を有するセ
ンササンプルに比較して、ガス応答性に優れていること
が分かった。これは、2つの検知電極を設けることによ
り電極界面の面積が増大したためと考えられる。また図
9及び図10に示す構造を有するセンササンプルは、図4
に示す構造を有するセンササンプルと同様に、優れた感
度及び安定性を実質的に維持したまま、応答性が改善さ
れていることが分かった。
【0124】以上の結果から、本発明の構造を有するセ
ンササンプルは、感度のドリフト変化が小さく、感度の
安定性に優れているだけでなく、応答性も改善されてい
ることが分かる。
【0125】実施例29〜35 NOx検知電極5にNiCr2O4を用い、電極被覆層11に表5に
示す各種安定化剤を10mol%添加したジルコニア固体電
解質膜を用いた以外は参考例1と同様にして、図1に示
す構造を有するNOxセンサのサンプルを作製した。得ら
れたNOxセンサの電極被覆層11は30%の多孔度及び15μm
の平均厚さを有していた。得られた各センササンプルの
性能を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
比較のために、比較例4のデータも併せて示す。
【0126】
【表5】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0127】表5に示す通り、電極被覆層11の材料に関
わらず、実施例29〜35では比較例9に比べてドリフト変
化率の低減効果が顕著に見られる。中でも安定化剤とし
てY2O3、MgO、CeO2又はSc2O3を添加したジルコニア固体
電解質膜を使用した場合にその効果は顕著であった。
【0128】実施例36〜42 NOx検知電極5にNiCr2O4を用い、電極被覆層11に12 mol
%のCeO2を添加したジルコニア固体電解質を用い、電極
下地層31(多孔度:10%、膜厚:3μm)に表6に示す
各種安定化剤を10 mol%添加したジルコニア固体電解質
を用い、固体電解質基板1上に電極下地層31、NOx検知電
極5及び電極被覆層11(多孔度:30%、平均厚さ:15μ
m)をそれぞれスクリーン印刷により形成した以外は参
考例1と同様にして、図3に示す構造を有する本発明の
NOxセンサのサンプルを作製した。得られた各センササ
ンプルの検知性能を実施例1と同様に評価した。結果を
表6に示す。
【0129】
【表6】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0130】表6に示す通り、実施例36〜42のセンササ
ンプルは電極下地層31の材料に関係なく、ガス応答性の
改善やドリフト変化の抑制に顕著な効果を示した。特に
電極被覆層11と同じCeO2添加ジルコニア固体電解質を電
極下地層31に用いた場合、その効果が大きいことが分か
る。
【0131】実施例43〜54 NOx検知電極5に表7に示す金属酸化物を用い、電極被
覆層11に12 mol%のCeO 2を添加したジルコニア固体電解
質膜(多孔度:30%、平均厚さ15μm)を用いた以外は
参考例1と同様にして、図1に示す構造を有するNOxセ
ンサのサンプルを作製した。得られた各センササンプル
の性能を実施例1と同様に評価した。結果を表7に示
す。
【0132】
【表7】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0133】表7に示す通り、検知電極材料のうち、Cr
を構成元素として含む金属酸化物を使用すると、ドリフ
ト変化率が小さいNOxセンサが得られた。中でもCr2O3
NiCr 2O4、FeCr2O4又はMgCr2O4をNOx検知電極5とする場
合に、特にドリフト変化率の低減効果が大きかった。
【0134】実施例55〜66 NOx検知電極5にNiCr2O4を用い、電極被覆層11に12 mol
%のCeO2を添加したジルコニア固体電解質(多孔度:30
%、平均厚さ15μm)を用いた以外は参考例1と同様に
して、図1に示す構造を有するNOxセンサのサンプルを
作製した。表8に示すように、電極被覆層11には、NOx
と酸素に活性な第一の貴金属(B群)、酸素のみに活性
な第二の貴金属(A群)、又は第一と第二貴金属との合
金(B'群)であるPt-Rh(3質量%)を1.0質量%添加し
た。得られた各センササンプルの検知性能を実施例1と
同様に評価した。結果を表8に示す。
【0135】
【表8】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0136】表8に示すように、電極被覆層11に貴金属
を添加しないサンプル(実施例55)に比べて、第二の貴
金属(A群)を添加したサンプルでは感度は若干低下し
たが、ドリフト変化を抑制したままガス応答性を大きく
改善することができた。また第一の貴金属(B群)を添
加したサンプルでは、ガス応答性に改善は見られなかっ
たが、ドリフト変化を抑制したままガス感度を維持又は
改善することができた。また第一の貴金属と第二の貴金
属との合金であるPt-Rhを添加したサンプルでは、ドリ
フト変化を抑制しつつ、感度及びその応答性を改善する
ことができた。
【0137】実施例67及び68 NOx検知電極5にNiCr2O4を用い、電極被覆層11,11'に1
2 mol%のCeO2を添加したジルコニア固体電解質膜(平
均厚さ:20μm)を用いた以外実施例1と同様にして、
図1及び図2に示す構造を有するNOxセンサのサンプル
を作製した。電極被覆層11は多孔度が40%の多孔質であ
り、電極被覆層11'は多孔度が0.5%の緻密質であった。
図1に示す構造を有するセンササンプルは、固体電解質
基板1用グリーンシートにNOx検知電極5を形成した
後、スクリーン印刷により電極被覆層11を形成した以外
は参考例1と同様にして作製した。また図2に示す構造
を有するセンササンプルは、固体電解質基板1用グリー
ンシートにNOx検知電極5を形成した後、6 mol%のY2O3
を添加したジルコニア固体電解質シートにパンチングし
てSh/Seが約0.2のガス拡散孔14を有する電極被覆層11'
を形成し、電極被覆層11'を検知電極5を覆うように固
体電解質基板1上に積層し、圧着した以外は参考例1と
同じ方法により作製した。電極被覆層11,11'の厚さは
表9に示すように種々変更した。得られた各センササン
プルの検知性能を実施例1と同様に評価した。結果を表
9に示す。
【0138】
【表9】 注:(1)〜(3)表2と同じ。 (4) 実施例67及び比較例4の電極被覆層は多孔質であり
(図1)、実施例68の電極被覆層は拡散孔付きであった
(図2)。 (5) 評価後にサンプルを分解して実測した値。
【0139】実施例67と比較例10との比較及び実施例68
と比較例11との比較から明らかなように、多孔質電極被
覆層11及びガス拡散孔を有する電極被覆層11'のいずれ
においても、適切な厚さで形成すると、初期感度、ガス
応答性及びドリフト変化率のいずれも向上することが分
かる。また多孔質電極被覆層11では2.8〜20.5μmの膜
厚が好ましく、ガス拡散孔を有する電極被覆層11'では
5〜105μmの厚さが好ましいことが分かる。
【0140】実施例69及び70 電極被覆層11の膜厚を約5μmで一定とし、その多孔度
を表10に示すように変化させた以外は実施例67と同様に
して、図1に示す構造を有するNOxセンサのサンプルを
作製した。また50個のガス拡散孔14を有する緻密質電極
被覆層11'(多孔度:0.5%)の厚さを約50μmで一定と
し、ガス拡散孔14の総開口面積(Sh)と検知電極5の面
積(Se)との比(Sh/Se)を表10に示すように変化させ
た以外は実施例68と同様にして、図2に示す構造を有す
るNOxセンサのサンプルを作製した。これらのセンササ
ンプルの検知性能を実施例1と同様に評価することによ
り、多孔質電極被覆層11の多孔度がセンサ特性に及ぼす
影響(実施例69)、及び拡散孔付き電極被覆層11'のSh/
Seがセンサ特性に及ぼす影響(実施例70)をそれぞれ調
べた。実施例69の評価結果を表10に示し、実施例70の評
価結果を表11に示す。
【0141】比較例9及び10 多孔質電極被覆層11の多孔度をそれぞれ4%及び59%と
した以外は実施例69と同様にして、NOxセンサ(ガス検
知素子)のサンプルを作製し、検知性能を評価した。結
果を表10に示す。
【0142】比較例11及び12 ガス拡散孔14を有する電極被覆層11'のSh/Seをそれぞれ
3%及び33%とした以外は実施例70と同様にして、NOx
センサのサンプルを作製し、検知性能を評価した。結果
を11に示す。
【0143】
【表10】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0144】
【表11】 注:(1)〜(3)表2と同じ。
【0145】表10及び11に示す通り、多孔質電極被覆層
11の多孔度及び拡散孔付き電極被覆層11'のSh/Seにはい
ずれもセンサ特性に対する最適範囲が存在することが分
かる。多孔質電極被覆層11の場合、多孔度が10〜51%の
範囲内であると良好な感度と安定性を示し、さらに多孔
度が22〜51%になると応答性も向上することが分かる。
一方、拡散孔を有する電極被覆層11'の場合、Sh/Seが5
〜28%の範囲内であると感度及び安定性に優れ、さらに
12〜28%の範囲内になると応答性も向上することが分か
る。
【0146】実施例71〜83、比較例13,14 図11及び図12に示すNOxガス検知素子(NOxセンサ)のサ
ンプルを作製した。6mol%のイットリアを添加したジ
ルコニア粉末を用いてドクターブレード法で5mm×5mm
×0.25 mmのジルコニア固体電解質グリーンシートを作
製した。得られたグリーンシートにPtリード導体、NOx
検知電極5、参照電極7及び電極被覆層12をそれぞれス
クリーン印刷した。NOx検知電極5はNiCr2O4からなり、
そのサイズは2 mm×2 mm×0.003 mmであった。参照電極
7はPt又はPtに1質量%のRhを添加した合金からなり、N
Ox検知電極5と対向するジルコニア固体電解質基板1の
面にスクリーン印刷した。参照電極7を被覆する電極被
覆層12の材料、形状及び多孔度は表12に示す通りであ
る。
【0147】Ptは単独ではNOxに対する活性がほとんど
ないが、Pt+1質量%Rhの合金はNOxに対する活性を有す
ることが知られている。従って、電極被覆層12を形成す
ると参照電極7がNOxに対して不活性になるか否かを調
べる目的で、敢えてPt-Rh合金を参照電極7に用いた。
【0148】比較例16,17では、Pt又はPt+1質量%Rh
で参照電極7を形成し、電極被覆層を形成しないガス検
知素子のサンプルを作製した。参照電極7のサイズは2
mm×2 mm×0.003 mmであった。
【0149】各ガス検知素子用グリーンシート積層体を
大気中で500℃で2時間脱脂した後、1400℃の大気中で3
時間焼結した。得られた各焼結体にリード線を接合し
て、NOxセンサのサンプルとした。
【0150】このように作製したセンササンプルを石英
管の中にセットして電気炉内に保持し、100 ppmのNO2
ス及び5体積%の酸素を含有し、残部が窒素からなる被
検ガスにNOx検知電極5と参照電極7を曝し、各サンプ
ルのNOxに対する活性を比較した。電気炉は600℃の雰囲
気温度に制御した。各サンプルの出力は高入力インピー
ダンスの電圧計を用いて測定し、ベースガス(5体積%
の酸素を含有し、残部が窒素)に対する被検ガス(さら
に100 ppmのNO2を含有)の出力差により、各サンプルの
感度を評価した。またインピーダンスアナライザーを用
いて、参照電極7と固体電解質基板1との界面のインピ
ーダンスを測定した。結果を表13に示す。
【0151】
【表12】 注:(1) 図11のガス検知素子(参照電極は多孔質電極被
覆層により完全に被覆されている)。 (2) 図12のガス検知素子(参照電極は一側面を残して緻
密質電極被覆層により被覆されている)。
【0152】
【表13】 注:(1),(2) は表12と同じ。
【0153】Ptを参照電極7とした比較例16のサンプル
の100 ppmのNO2に対する感度は103 mVであり、界面イン
ピーダンスは20 kΩであった。NOxに対して活性を有す
るPt-1質量%Rh合金を参照電極7とした比較例17のサン
プルでは、界面インピーダンスは50 kΩと大きく、その
感度は75 mVと小さかった。これは、Pt-1質量%Rh合金
からなる電極の電位はNOx検知電極5の電位と同じ向き
で約30 mVであるため、感度(両電極の電位差)はその分
だけ小さくなったためと考えられる。
【0154】実施例71では、Pt参照電極7上に多孔質の
セリア安定化ジルコニアからなる電極被覆層12を形成し
たガス検知素子サンプルの特性を調べた。実施例71のサ
ンプルの界面インピーダンスは10kΩと電極被覆層12を
有さない比較例1の半分程度であり、また感度は110 mV
と大きかった。純粋なPtのNOxに対する感度はほぼ零で
あるが、電極被覆層12を有さない比較例1では、ガス検
知素子の製造過程でのコンタミネーション等によりPt電
極にNOxに対する活性が生じたため、感度が低下したと
推測される。これに対して、実施例71の感度が比較例1
に比べて大きいのは、Pt電極上に形成した被覆層12によ
り製造過程でのコンタミネーションが抑制され、NOxに
対する活性が零の状態が維持されたためであると考えら
れる。
【0155】実施例72〜75では、ジルコニア固体電解質
からなる電極被覆層12に添加する安定化剤の影響につい
て調べた。いずれの実施例でも、参照電極7はPt-1質量
%Rh合金からなり、また多孔質電極被覆層12は3 mm×3
mm×0.01 mmのサイズ及び30体積%の多孔度を有し、参
照電極7を完全に被覆した。安定化剤の違いにより、界
面インピーダンス及び感度は幾分異なるが、実施例72〜
75のいずれも比較例14に比べて界面インピーダンスは小
さく、感度は20 mV程度大きかった。これは、本実施例
の被検ガスでは、検知対象ガスであるNOxの濃度に比べ
酸素濃度が十分に高いため、界面インピーダンスの低下
により、酸素の反応点のみが増加し、NOxの反応点はほ
とんど変化せず、参照電極のNOxに対する活性が低下し
たためと考えられる。
【0156】実施例72及び76〜78では、電極被覆層12の
多孔度の影響について調べた。いずれの実施例において
も、電極被覆層12のサイズは3 mm×3 mm×0.01 mmであ
り、参照電極7を完全に被覆した。電極被覆層12が10〜
50%の範囲の多孔度を有すれば、ほぼ同程度の界面イン
ピーダンスを示し、感度も比較例2に比べて約20 mV以
上大きく、参照電極7のNOxに対する活性が低下してい
ることが確認された。
【0157】実施例72及び79〜81では、多孔性電極被覆
層12の膜厚の影響について調べた。これらの実施例の膜
厚範囲内であれば、ほぼ同程度の界面インピーダンスを
示し、感度も比較例17に比べて20 mV以上大きく、参照
電極7のNOxに対する活性が低いことが確認された。
【0158】実施例82及び83は、図12に示す構成を有す
るセンサ素子において、緻密な電極被覆層12を参照電極
7上に積層した場合の感度について調べた。電極被覆層
12用に、実施例82では12 mol%セリア安定化ジルコニア
を使用し、実施例83では3 mol%イットリア安定化ジル
コニアを用いた。いずれの実施例でも、電極被覆層12の
サイズは2.5 mm×3 mm×0.005 mmであり、参照電極の4
側面のうち1側面には電極被覆層12を形成しなかった。
界面インピーダンスは、実施例82では21 kΩであり、実
施例83では20 kΩであり、いずれも比較例17より著しく
小さかった。100 ppmのNO2に対する感度は、実施例82で
は101 mVと比較例17より26 mV増加しており、実施例83
では102 mVと比較例17より27 mV増加していた。これか
ら、緻密な電極被覆層12によっても参照電極7のNOxに
対する活性が低下したことがわかった。また緻密な被覆
層12による応答性の劣化はほとんど認められなかった。
【0159】実施例84,85、比較例15,16 NOx検知電極5にCr2O3又はNiCr2O4を用い、参照電極7
にPtを用い、電極被覆層11,12に12 mol%のCeO2を添加
したジルコニア固体電解質を用い、かつNOx検知電極5
及び参照電極7上に電極被覆層11,12(多孔度:30%、
平均厚さ:15μm)をスクリーン印刷した以外は参考例
1と同様にして、図7に示す構造を有するNOxセンサの
サンプルを作製した。得られたサンプルの性能を実施例
17〜28と同様にして測定した。またNOx検知電極及び参
照電極のいずれにも電極被覆層を形成しない以外実施例
84,85と同じ比較例15,16のセンササンプルについて
も、性能を実施例17〜28と同様にして測定した。結果を
表14に示す。比較のため、NOx検知電極にのみ電極被覆
層11を形成した図6に示すセンササンプル(実施例21,
22)の測定結果も併せて表14に示す。
【0160】
【表14】 注:(1)〜(3) 表2と同じ。
【0161】図7に示す構造を有するセンササンプル
(実施例84及び85)では、図6に示す構造を有するサン
プルよりドリフト変化率が低減していることが分かる。
これは、センサ出力のドリフト変化の低減に参照電極7
の安定性が寄与しているためであると考えられる。
【0162】実施例86〜94 図14及び図15に示す構造を有する積層型NOxガス検出装
置のサンプルを作製した。NOx検知電極5にCr2O3又はNi
Cr2O4を用い、電極被覆層11,12に12 mol%のCeO2を添加
したジルコニア固体電解質膜(多孔度:30%、平均厚さ
15μm)又は8 mol%のY2O3を添加したジルコニア固体電
解質膜(多孔度:30%、平均厚さ15μm)を用いた。電
極被覆層11にRh(第一の貴金属)及び/又はPt(第二の
貴金属)を0.5質量%(電極被覆層の重量基準)を添加
したサンプルも作製した。固体電解質基板1用グリーン
シートは、6 mol%のイットリアを添加したジルコニア
粉末を用いてドクターブレード法で作製した。
【0163】固体電解質基板1用グリーンシートIにNOx
検知電極5、Pt参照電極7、電極被覆層11,12及び集電
用Ptリード導体をスクリーン印刷して、NOx検知セル部
を形成した。また同じ組成のグリーンシートIIにPt-Rh
製NOx変換電極8及びPt変換対極9をスクリーン印刷し
て、NOx変換ポンプ素子部を形成した。さらにヒータを
同じ組成の2枚のグリーンシートIIIで圧着することに
より、ヒータ部を作製した。これらのグリーンシートI
〜IIIと、大気ダクトを形成するためのグリーンシート
と、それぞれ大気ダクト、スペーサ及びガス導入孔を形
成するためのグリーンシートとを積層した。
【0164】内部空間(ガス測定室、大気ダクト、大気
ダクト等)を形成する部位に脱脂工程で昇華するテオブ
ロミンを充填し、各積層体を加熱圧着した。各積層体を
脱脂した後、1400℃で焼結した。得られた各積層焼結体
にリード線を接合し、積層型NOxセンサとした。
【0165】各積層型NOxセンササンプルを制御ユニッ
トに接続し、石英管の中にセットして電気炉内に保持
し、50 ppmのNO、50 ppmのNO2及び5体積%の酸素を含
有し、残部が窒素からなる被検ガスを流した。電気炉内
の雰囲気温度を600℃に制御し、変換ポンプ素子に所定
の電位を印加しながら、各センササンプルのNOxの検知
性能を実施例1と同様に評価した。電極組成を表15に示
し、測定結果を表16に示す。
【0166】比較例17,18 電極被覆層を設けなかった以外は実施例86〜94と同様に
して積層型センササンプルを作製し、検知性能を評価し
た。電極組成を表15に示し、測定結果を表16に示す。
【0167】
【表15】
【0168】
【表16】 注:(1) 5体積%の酸素を含有するN2ベースガスの場合
のセンサ出力と、ベースガスにさらに50 ppmのNO及び50
ppmのNO2を添加したガスの場合のセンサ出力との差に
より表わす。 (2) 初期感度と、加速劣化試験後における50 ppmのNO及
び50 ppmのNO2に対する感度との差(変化分)により示
す。+は感度の増大を意味し、−は感度の低下を意味す
る。
【0169】表16に示す通り、いずれの積層型センサ構
造においても、実施例1等に示す単層センサ(図1の素
子構造等)と同様に、電極被覆層を設けることによりド
リフト変化率が大幅に小さくなることが分かる。
【0170】実施例95〜110,比較例19 図15〜18に示す構成を有するガス検出装置(積層型NOx
センサ)を作製した。6mm×70 mmの固体電解質基板用
グリーンシートは、6mol%のイットリアを添加したジ
ルコニア粉末からドクターブレード法で作製した。グリ
ーンシートの厚さは部位により異なり、0.1〜0.3 mmと
した。グリーンシートにPtリード導体、NOx検知電極、
参照電極、酸素検知電極及びその電極被覆層、NOx変換
電極、NOx変換対極、ガス処理電極、及びヒータをスク
リーン印刷した。これらのグリーンシートを積層し、50
0℃で2時間脱脂した後、大気中で1400℃で3時間焼結し
てサンプルを得た。
【0171】NOx検知電極5はNiCr2O4からなり、そのサ
イズは0.7 mm×1.3 mm×0.003 mmであった。図15の参照
電極7及び図17と図18の酸素検知電極6はそれぞれPt、
Pt-50質量%Ir合金又はPt-1質量%Au合金製であり、そ
れらのサイズは0.7 mm×1.8 mm×0.005 mmであった。ま
た図17と図18の参照電極7はPt製で、そのサイズは0.7m
m×1.3 mm×0.003 mmであった。
【0172】NOx変換電極8はPt-3質量%Rh合金製であ
り、NOx変換対極9はPt製であり、ガス処理電極10はPt
製であった。各電極には10質量%のイットリア(8 mol
%)安定化ジルコニアを添加して、ガス電極とした。図
15の参照電極7を被覆する電極被覆層12の材料、サイ
ズ、多孔度及び形態、及び図17及び図18の酸素検知電極
6を被覆する電極被覆層13の材料、サイズ、多孔度及び
形態は表17に示す通りである。
【0173】得られたセンササンプルをアルミナ管に入
れて測定治具にセットし、ガス感度評価装置に取り付け
た。各センササンプルを100 ppmのNOガス及び5体積%
の酸素を含有し、残部が窒素からなる被検ガスに曝し
た。NOx変換ポンプにガス測定室内に酸素を汲み込む方
向に電圧0.8 Vを印加して、NOをNO2に変換した。また図
18のガス検出装置では、ガス処理ポンプにもガス測定室
内に酸素を汲み込む方向に0.8 Vの一定電圧を印加し
た。埋設された熱電対の信号により自己加熱ヒータを制
御し、検知部温度を600℃とした。
【0174】各サンプルの出力は高入力インピーダンス
の電圧計を用いて測定し、5体積%の酸素を含有し、残
部が窒素からなるベースガスに対する出力と、ベースガ
ス組成にさらに100 ppmのNOを含有する被検ガスに対す
る出力との差により感度を評価した。またインピーダン
スアナライザーを用いて、電極被覆層を形成した参照電
極又は酸素検知電極と固体電解質基板との界面のインピ
ーダンスを測定した。結果を表18に示す。
【0175】
【表17】 注:(1) 図11のガス検知素子(参照電極は多孔質電極被
覆層により完全に被覆されている)。 (2) 図12のガス検知素子(参照電極は一側面を残して緻
密質電極被覆層により被覆されている)。
【0176】
【表18】 注:(1),(2) 表17と同じ。 (3) 参照電極又は酸素検知電極。
【0177】検知電極5及び参照電極7のいずれにも電
極被覆層を設けない以外図15と同じ構造を有する比較例
19のセンサでは、100 ppmのNOに対する感度は30 mVであ
り、界面インピーダンスは40 kΩであった。これに対し
て、電極被覆層を参照電極に積層した実施例センサで
は、界面インピーダンスは20 kΩ程度まで低減し、その
感度は約40 mV以上と大きくかった。
【0178】この理由として、以下のことが考えられ
る。 (1) 電極被覆層12を積層することにより、参照電極7の
界面インピーダンスが低下し、NOxに対する活性が小さ
くなった。 (2) 積層時にガス測定室4にあたる部位に装入したテオ
ブロミンが、脱脂工程で急激な体積膨張を伴いながら昇
華するため、センサ構造上対向する位置に配置されたNO
x変換電極8から参照電極7へRhがコンタミネーション
成分として付着することはなく、参照電極7がNOxに対
する活性を生じることはなかった。 (3) 電極被覆層12を積層することで、このようなコンタ
ミネーション成分が参照電極7の三相界面に到達するの
を防止し、参照電極7がNOxに対する活性を生じなかっ
たため、感度は上昇した。
【0179】このように、参照電極7に酸素イオン伝導
性固定電解質からなる電極被覆層12を積層することによ
り、参照電極7は被検ガス中のNOx濃度の影響を受けが
たく、精度よくNOx濃度を検出できるセンサを構成する
ことができる。
【0180】実施例95〜98では、図15に示すセンサにお
ける電極被覆層12の材料、特にジルコニア安定化剤の影
響について調べた。電極被覆層12のサイズは1 mm×1.8
mm×0.01 mmであり、多孔度は30体積%であり、参照電
極7は電極被覆層12により完全に被覆した。いずれの安
定化剤を添加した場合でも、界面インピーダンスは低下
し、比較例19に比べて約10 mV感度が上昇した。これに
より、参照電極7のNOxに対する活性が低下したことが
確認された。
【0181】実施例95及び99〜101では、図15に示すセ
ンサにおける電極被覆層12の多孔度の影響について調べ
た。いずれの電極被覆層12も1 mm×1.8 mm×0.01 mmの
サイズを有し、参照電極7は完全に被覆した。この範囲
の多孔度であれば、比較例1に比べて小さい界面インピ
ーダンスとなり、感度も比較例19に比べて約10 mV大き
くなった。これにより、参照電極7のNOxに対する活性
が低下したことが確認された。
【0182】実施例95及び102〜104では、図15に示すセ
ンサにおける多孔性電極被覆層の膜厚の影響について調
べた。いずれの電極被覆層12も1 mm×1.8 mmの面積を有
し、参照電極7は完全に被覆した。この範囲の膜厚であ
れば、比較例19に比べて小さい界面インピーダンスとな
り、感度も比較例19に比べて約10 mV大きくなった。こ
れにより、参照電極7のNOxに対する活性が低下したこ
とが確認された。
【0183】実施例105は、図15に示すセンサの参照電
極7に緻密なセリア安定化ジルコニアからなる電極被覆
層12を積層し、参照電極7の縦側面のみ電極被覆層12で
覆わないようにした場合の特性について調べた。界面イ
ンピーダンスは比較例19に比べて著しく小さくなり、10
0 ppmのNOに対する感度は46 mVであり、比較例19に比べ
て16 mVの感度上昇があった。これにより、参照電極7
のNOxに対する活性が低下したことが確認された。ここ
で、被覆層12が緻密なために応答速度が遅くなることが
懸念されたが、多孔質電極被覆層を使用した場合と比較
して応答性に大差はなかった。
【0184】実施例106及び107では、それぞれ図17及び
図18に示すセンサの酸素検知電極6に対する被覆層13の
効果を調べた。実施例106及び107は実施例105と同程度
の感度及び界面インピーダンスを示した。これにより、
参照電極7のNOxに対する活性の低下が確認された。
【0185】実施例108は、図18に示すセンサの酸素検
知電極6に緻密な3 mol%イットリア安定化ジルコニア
の電極被覆層13を積層し、酸素検知電極6の縦側面を電
極被覆層13で覆わないようにした場合の特性について調
べた。酸素検知電極6以外の電極には電極被覆層を積層
しなかった。実施例108は実施例105と同程度の感度及び
界面インピーダンスを示した。これにより、酸素検知電
極6のNOxに対する活性の低下が確認された。
【0186】実施例109及び110では、図18に示すセンサ
の酸素検知電極6に緻密な3 mol%イットリア安定化ジ
ルコニアの電極被覆層13を積層した場合の酸素検知電極
6の材料の影響について調べた。電極被覆層13は酸素検
知電極6の縦側面を覆わないようにした。酸素検知電極
13以外の電極は電極被覆層で被覆しなかった。Pt-50質
量%Ir合金からなる電極及びPt-1質量%Au合金からなる
酸素検知電極13は、実施例105と同程度の感度及び界面
インピーダンスを示した。これにより、これらの合金は
酸素検知電極13に使用可能であることが確認された。
【0187】比較例19では使用時間の経過とともに感度
が徐々に低下するが、参照電極7又は酸素検知電極6に
酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極被覆層を被覆
したいずれの実施例でも、感度の経時変化が著しく抑制
されることがわかった。これは、電極被覆層により使用
時のコンタミネーションが抑えられ、参照電極7又は酸
素検知電極6でNOx活性が低い状態に維持されたためと
考えられる。
【0188】実施例111〜116 検知電極5に表19に示す材料(10質量%のジルコニア固
体電解質を含有)を用い、電極被覆層11に10 mol%のCe
O2を添加したジルコニア(多孔度:30%、平均厚さ:15
μm)又は12 mol%のSc2O3を添加したジルコニア(多孔
度:30%、平均厚さ:15μm)を用い、参照電極7にPt
を用いた以外は参考例1と同様にして、図1に示す構造
を有するセンサ素子のサンプルを作製した。得られた各
センササンプルを電気炉中にセットし、C3H6 (30 pp
m)、CO (20 ppm)又はNH3 (50 ppm)を含有する各被検ガ
スに対して検知性能を実施例1と同様に評価した。結果
を表19に示す。
【0189】比較例20〜23 電極被覆層を設けなかった以外は実施例111〜116と同様
にセンササンプルを作製し、実施例111〜116と同様に検
知性能を評価した。結果を表19に示す。
【0190】
【表19】 注:(1) 10質量%のジルコニア固体電解質を含有。 (2) 5体積%の酸素を含有するN2ベースガスの場合のセ
ンサ出力と、ベースガスに30 ppmのC3H6を添加したガス
の場合のセンサ出力との差により示す。 (3) 5体積%の酸素を含有するN2ベースガスの場合のセ
ンサ出力と、ベースガスに20 ppmのCOを添加したガスの
場合のセンサ出力との差により示す。 (4) 5体積%の酸素を含有するN2ベースガスの場合のセ
ンサ出力と、ベースガスに50 ppmのNH3を添加したガス
の場合のセンサ出力との差により示す。 (5) 初期感度と、加速劣化試験後における100 ppmのNO2
に対する感度との差(変化分)により示す。+は感度増
大を意味し、−は感度低下を意味する。
【0191】表19に示すように、実施例111〜116は比較
例22〜25に比べてドリフト変化量が小さかった。これか
ら、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)及びNH3(アン
モニア)のいずれのガスに対しても、本発明のガス検知
素子を用いるとドリフト変化量が大きく抑制されること
が分かる。
【0192】以上の通り図面を参照して本発明のガス検
知素子及びガス検出装置を説明したが、本発明はそれら
に限定されず、その趣旨を変更しない限り種々の変更を
加えることができる。
【0193】
【発明の効果】酸素イオン伝導性固体電解質基板上に固
定された電極を電極被覆層で被覆することにより、電極
界面の電気化学的な活性度を安定化することができ、ま
た電極の界面インピーダンスを小さくできる。そのた
め、本発明のガス検知素子及びガス検出装置は、ガス検
知時の応答性能を改善されており、安定して精度よく検
知対象ガスの濃度を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一形態によるガス検知素子を示す概
略断面図である。
【図2】 本発明の別の形態によるガス検知素子を示す
概略断面図である。
【図3】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図4】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図5】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図6】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図7】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図8】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図9】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図10】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図11】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図12】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図13】 本発明のさらに別の形態によるガス検知素子
を示す概略断面図である。
【図14】 本発明の一形態によるガス検出装置を示す概
略断面図である。
【図15】 本発明の別の形態によるガス検出装置を示す
概略断面図である。
【図16】 図15のガス検出装置を示す平面図である。
【図17】 本発明のさらに別の形態によるガス検出装置
を示す概略断面図である。
【図18】 本発明のさらに別の形態によるガス検出装置
を示す概略断面図である。
【図19】 本発明のさらに別の形態によるガス検出装置
を示す概略断面図である。
【図20】 図18のガス検出装置の分解図である。
【符号の説明】
1,2・・・固体電解質基板 3・・・ガス導入口 4、4a、4b・・・ガス測定室 5・・・検知電極 6・・・酸素検知電極 7・・・参照電極 8・・・変換電極 9・・・変換対極 10・・・ガス処理電極 11,11',12,13・・・電極被覆層 14,・・・ガス拡散孔 15,・・・スペーサ 16,17・・・大気ダクト 18・・・ヒータ 19a、19b・・・ヒータ形成基板 24・・・ガス抵抗体 25,26・・・電位差計 27・・・NOx出力補正手段 28,29・・・外部電源 30・・・ガス通気孔 31・・・電極下地層 32・・・電気絶縁層 41・・・電気絶縁性基板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長谷井 政治 埼玉県熊谷市末広四丁目14番1号 株式会 社リケン熊谷事業所内 Fターム(参考) 2G004 BB04 BC02 BD15 BE27 BJ02 BL11 BM04 BM07 BM09

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 酸素イオン伝導性固体電解質基板と、前
    記固体電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス及び酸
    素に対して活性を有する検知電極と、前記固体電解質基
    板に固定され、かつ少なくとも酸素に対して活性を有す
    る参照電極とを有し、前記検知電極と前記参照電極との
    電位差から前記検知対象ガスの濃度を検知する素子であ
    って、前記検知電極及び/又は前記参照電極は酸素イオ
    ン伝導性固体電解質からなる電極被覆層により被覆さ
    れ、前記電極被覆層は前記固体電解質基板に直接又は酸
    素イオン伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して
    接合する部位を有することを特徴とするガス検知素子。
  2. 【請求項2】 酸素イオン伝導性固体電解質基板と、前
    記固体電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス及び酸
    素に対して活性を有する検知電極と、前記固体電解質基
    板に固定され、かつ少なくとも酸素に対して活性を有す
    る酸素検知電極と、検知対象雰囲気から隔離された雰囲
    気にあって酸素に対して活性を有する参照電極とを有
    し、前記検知電極と前記参照電極との電位差E1と前記酸
    素検知電極と前記参照電極との電位差E2との差(E1−E
    2)から前記検知対象ガスの濃度を検知する素子であっ
    て、前記検知電極及び/又は前記酸素検知電極は酸素イ
    オン伝導性固体電解質からなる電極被覆層により被覆さ
    れ、前記電極被覆層は前記固体電解質基板に直接又は酸
    素イオン伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して
    接合する部位を有することを特徴とするガス検知素子。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載のガス検知素子におい
    て、前記参照電極は酸素イオン伝導性固体電解質からな
    る電極被覆層により被覆され、前記電極被覆層は前記固
    体電解質基板に直接又は酸素イオン伝導性固体電解質か
    らなる電極下地層を介して接合する部位を有することを
    特徴とするガス検知素子。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極、前記参照電極及び前記
    酸素検知電極の少なくとも1つが前記固体電解質基板に
    電気絶縁層を介して固定されていることを特徴とするガ
    ス検知素子。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極、前記参照電極及び前記
    酸素検知電極の少なくとも1つが前記固体電解質基板に
    設けられた凹部内に固定されていることを特徴とするガ
    ス検知素子。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極を被覆する前記電極被覆
    層の多孔度が10〜50%であることを特徴とするガス検知
    素子。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極を被覆する前記電極被覆
    層の平均厚さが3〜20μmであることを特徴とするガス
    検知素子。
  8. 【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記参照電極又は前記酸素検知電極を
    被覆する前記電極被覆層の多孔度が0〜50%であること
    を特徴とするガス検知素子。
  9. 【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記参照電極又は前記酸素検知電極を
    被覆する前記電極被覆層の平均厚さが1〜20μmである
    ことを特徴とするガス検知素子。
  10. 【請求項10】 請求項1〜5のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極、前記参照電極及び前記
    酸素検知電極の少なくとも1つを被覆する前記電極被覆
    層の平均厚さが5〜100μmであり、前記電極被覆層に
    ガス拡散孔が設けられており、前記ガス拡散孔の総開口
    面積(Sh)と前記検知電極の面積(Se)との比(Sh/S
    e)が0.05〜0.28であることを特徴とするガス検知素
    子。
  11. 【請求項11】 請求項1〜7のいずれかに記載のガス検知
    素子において、被検ガスに曝される前記参照電極及び前
    記酸素検知電極の少なくとも1つの電極の上面は緻密な
    電極被覆層に被覆されており、かつ前記電極の側面の一
    部が露出していることを特徴とするガス検知素子。
  12. 【請求項12】 請求項1〜9及び11のいずれかに記載の
    ガス検知素子において、電極被覆層を介して複数の検知
    電極が設けられていることを特徴とするガス検知素子。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極、前記参照電極及び前記
    酸素検知電極の少なくとも1つを被覆する電極被覆層は
    イットリア、セリア、マグネシア及びスカンジアからな
    る群から選ばれた少なくとも一種を安定化剤として含む
    ジルコニア固体電解質からなることを特徴とするガス検
    知素子。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極を被覆する電極被覆層は
    前記検知対象ガス及び酸素に対して活性を有する貴金属
    を含むことを特徴とするガス検知素子。
  15. 【請求項15】 請求項1〜14のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記検知電極、前記参照電極及び前記
    酸素検知電極の少なくとも1つを被覆する電極被覆層は
    前記検知対象ガスに対して不活性であるが酸素に対して
    活性を有する貴金属を含むことを特徴とするガス検知素
    子。
  16. 【請求項16】 請求項1〜15のいずれかに記載のガス検
    知素子において、前記電極下地層はイットリア、セリ
    ア、マグネシア及びスカンジアからなる群から選ばれた
    少なくとも一種を安定化剤として含むジルコニア固体電
    解質からなることを特徴とするガス検知素子。
  17. 【請求項17】 (a) 所定の間隔で配置された第一及び第
    二の酸素イオン伝導性固体電解質基板により形成された
    ガス測定室と、(b) 前記ガス測定室に被検ガスが所定の
    ガス拡散抵抗で流入するように設けられたガス導入口
    と、(c) 前記ガス測定室内の雰囲気に曝されるように前
    記第一の固体電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス
    及び酸素に対して活性を有する検知電極と、前記第一の
    固体電解質基板に固定され、かつ少なくとも酸素に対し
    て活性を有する参照電極とを備えたガス検知素子と、
    (d) 前記ガス測定室内の雰囲気に曝されるように第二の
    固体電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス及び酸素
    に対して活性を有する検知対象ガス変換電極と、酸素及
    び/又は酸化物ガスが存在する雰囲気に曝されるように
    前記第二の固体電解質基板に固定され、かつ酸素に対し
    て活性を有する検知対象ガス変換対極とを備え、必要に
    応じて検知対象ガスの酸化又は還元を選択できる検知対
    象ガス変換ポンプ素子と、(e) 前記検知電極と前記参照
    電極との電位差を測定する手段と、(f) 前記変換ポンプ
    素子を駆動するための電圧印加手段とを具備し、前記変
    換ポンプ素子に所定の電圧を印加しながら前記検知電極
    と前記参照電極との電位差を検出することにより被検ガ
    ス中の検知対象ガスの濃度を検出するガス検出装置であ
    って、前記検知電極及び/又は前記参照電極は、酸素イ
    オン伝導性固体電解質からなる電極被覆層により被覆さ
    れ、かつ前記電極被覆層が前記第一の固体電解質基板に
    直接又は酸素イオン伝導性固体電解質からなる電極下地
    層を介して接合する部位を有することを特徴とするガス
    検出装置。
  18. 【請求項18】 (a) 所定の間隔で配置された第一及び第
    二の酸素イオン伝導性固体電解質基板により形成された
    ガス測定室と、(b) 前記ガス測定室に被検ガスが所定の
    ガス拡散抵抗で流入するように設けられたガス導入口
    と、(c) 前記ガス測定室内の雰囲気に曝されるように前
    記第一の固体電解質基板に固定され、かつ検知対象ガス
    及び酸素に対して活性を有する検知電極と、前記第一の
    固体電解質基板に固定され、かつ少なくとも酸素に対し
    て活性を有する参照電極とを具備するガス検知素子と、
    (d) 前記ガス測定室内の雰囲気に曝されるように第二の
    固体電解質基板に固定され、かつ前記検知対象ガス及び
    酸素に対して活性を有する検知対象ガス変換電極と、酸
    素及び/又は酸化物ガスが存在する雰囲気に曝されるよ
    うに前記第二の固体電解質基板に固定され、かつ酸素に
    対して活性を有する検知対象ガス変換対極とを具備し、
    必要に応じて検知対象ガスの酸化又は還元を選択できる
    検知対象ガス変換ポンプ素子と、(e) 前記ガス測定室内
    の雰囲気に曝されるように第二の固体電解質基板に固定
    され、かつ処理対象ガス及び酸素に対して活性を有する
    ガス処理電極と、酸素及び/又は酸化物ガスが存在する
    雰囲気に曝されるように前記第二の固体電解質基板に固
    定され、かつ酸素に対して活性を有するガス処理対極と
    を具備し、被検ガス中の還元性ガスを酸化できるガス処
    理ポンプ素子と、(f) 前記検知電極と前記参照電極との
    間の電位差を測定する手段と、(g) 前記変換ポンプ素子
    を駆動するための電圧印加手段と、(h) 前記ガス処理ポ
    ンプ素子を駆動するための電圧印加手段とを具備し、前
    記変換ポンプ素子に所定の電圧を印加しながら前記検知
    電極と前記参照電極との間の電位差を検出することによ
    り被検ガス中の前記検知対象ガス濃度を検出するガス検
    出装置であって、前記検知電極は、検知対象酸素イオン
    伝導性固体電解質からなる電極被覆層で被覆され、前記
    電極被覆層は前記第一の固体電解質基板に直接又は酸素
    イオン伝導性固体電解質からなる電極下地層を介して接
    合する部位を有することを特徴とするガス検出装置。
  19. 【請求項19】 請求項17又は18に記載のガス検出装置に
    おいて、前記ガス検知素子が請求項1〜16のいずれかに
    記載のガス検知素子であることを特徴とするガス検出装
    置。
  20. 【請求項20】 請求項17〜19のいずれかに記載のガス検
    出装置において、前記検知対象ガスがNOxであることを
    特徴とするガス検出装置。
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