JP2003170192A - 循環水系のスケール防止方法 - Google Patents

循環水系のスケール防止方法

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JP2003170192A JP2001377378A JP2001377378A JP2003170192A JP 2003170192 A JP2003170192 A JP 2003170192A JP 2001377378 A JP2001377378 A JP 2001377378A JP 2001377378 A JP2001377378 A JP 2001377378A JP 2003170192 A JP2003170192 A JP 2003170192A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ビル空調、一般工場、石油化学コンビナートな
どの熱交換器の冷却水系における炭酸カルシウム系のス
ケールを、薬剤を使用することなく効率的に防止するこ
とができる循環水系のスケール防止方法を提供する。 【解決手段】循環水中のシリカ濃度を110〜250mg
SiO2/Lの範囲で調整し、あるいは、循環水中のTOC
濃度を4〜20mgC/Lの範囲で調整し、かつ、スケー
ル成分析出手段によりランゲリア指数を0〜2に制御す
ることを特徴とする循環水系のスケール防止方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、循環水系のスケー
ル防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、ビル
空調、一般工場、石油化学コンビナートなどの熱交換器
の冷却水系における炭酸カルシウム系のスケールを、薬
剤を使用することなく効果的に防止することができる循
環水系のスケール防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】冷却水系、ボイラ水系などの水と接触す
る伝熱面や配管内では、スケール障害が発生する。特
に、省資源、省エネルギーの立場から、冷却水の系外へ
の排棄(ブロー)を少なくして高濃縮運転を行う場合、
溶解している塩類が濃縮されて、伝熱面が腐食しやすく
なるとともに、難溶性の塩となってスケール化する。生
成したスケールは、熱効率の低下、配管の閉塞など、ボ
イラーや熱交換器の運転に重大な障害を引き起こす。生
成するスケール種としては、炭酸カルシウム、硫酸カル
シウム、亜硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ケイ酸
カルシウム、ケイ酸マグネシウム、水酸化マグネシウ
ム、リン酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩基性炭酸亜鉛などがあ
る。これらの中でも、特に炭酸カルシウムは広く一般的
であるために、問題になっている。カルシウム系スケー
ルに対しては、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸な
どのカルボキシル基を有するポリマーが有効であり、必
要に応じて、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、2
−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など
のスルホン酸基を有するビニルモノマーや、アクリルア
ミドなどのノニオン性ビニルモノマーを対象水質に応じ
て組み合わせたコポリマーがスケール防止剤として使用
されている。また、ヘキサメタリン酸ソーダやトリポリ
リン酸ソーダなどの無機ポリリン酸類、ヒドロキシエチ
リデンジホスホン酸やホスホノブタントリカルボン酸な
どのホスホン酸類も一般的に使用されている。近年、節
水や省エネルギーを目的として、可能な限り水を有効利
用するという動きが顕著になってきており、熱交換器に
ついても、冷却水の高濃縮運転への期待が高まってきて
いる。これに対して、上述した現状のスケール防止剤
は、冷却水中に溶解するスケール種(イオン)をスケー
ルとして析出しないように水中に押さえ込む、すなわち
溶解させたままにしておく機能を有するものであり、さ
らなる高濃縮運転の場合には、スケールの析出を抑制す
るには限界がある。今後さらに冷却水の高濃縮運転が広
まる中で、現状のスケール防止剤に代わる高性能なスケ
ール防止技術の開発が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ビル空調、
一般工場、石油化学コンビナートなどの熱交換器の冷却
水系における炭酸カルシウム系のスケールを、薬剤を使
用することなく効率的に防止することができる循環水系
のスケール防止方法を提供することを目的としてなされ
たものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、循環水中のシリ
カ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範囲又はTOC濃
度を4〜20mgC/Lの範囲に調整し、スケール成分析
出手段によりランゲリア指数を0〜2に制御することに
より、スケールの付着を効果的に防止し得ることを見い
だし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(1)循環水中のシリカ濃度を1
10〜250mgSiO2/Lの範囲で調整し、かつ、スケー
ル成分析出手段によりランゲリア指数を0〜2に制御す
ることを特徴とする循環水系のスケール防止方法、
(2)循環水中のTOC濃度を4〜20mgC/Lの範囲
で調整し、かつ、スケール成分析出手段によりランゲリ
ア指数を0〜2に制御することを特徴とする循環水系の
スケール防止方法、(3)スケール成分析出手段が、磁
気処理手段、金属溶出手段、セラミックボール接触手
段、スケール成分と同一又は類似化合物の粒子との接触
手段、電気分解手段及び超音波照射手段からなる群から
選ばれる少なくとも1つの手段である第1項又は第2項
記載の循環水系のスケール防止方法、(4)循環水系の
濃縮により、又は、循環水系へのシリカ成分の添加によ
り、シリカ濃度を調整する第1項又は第3項記載の循環
水系のスケール防止方法、及び、(5)循環水系の濃縮
により、TOC濃度を調整する第2項又は第3項記載の
循環水系のスケール防止方法、を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明方法の第一の態様において
は、循環水中のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/L
の範囲で調整し、かつ、スケール成分析出手段によりラ
ンゲリア指数を0〜2に制御する。本発明方法の第二の
態様においては、循環水中のTOC濃度を4〜20mgC
/Lの範囲で調整し、かつ、スケール成分析出手段によ
りランゲリア指数を0〜2に制御する。本発明方法によ
れば、ビル空調、一般工場、石油化学コンビナートなど
の熱交換器の循環水系などに適用し、熱交換器本体、循
環水のピット、冷却塔などの装置や、配管内などへの炭
酸カルシウム系のスケールの付着を効果的に防止するこ
とができる。シリカは自然由来の成分であるために、広
く上水、工業用水、河川水、地下水などに含まれてい
る。その含有濃度は地域によって様々であり、1mgSiO2
/L程度から多いところでは50mgSiO2/L以上含有さ
れていることもある。特に火山地帯ではシリカ濃度が高
いと言われており、九州地方では70mgSiO2/Lを超え
るような地域もある。シリカを含む水を循環水系の補給
水として用いると、濃縮に伴いシリカの濃度は増加する
が、一般的な循環水系のpHはおよそ中性〜9程度であ
り、シリカは250mgSiO2/L程度になるまで溶存体と
して存在し得ることが多い。したがって、濃縮管理を行
う場合、シリカがおよそ250mgSiO2/L以下の範囲で
は、塩化物イオンなどの濃度から求める理論的な濃縮倍
数とシリカの濃縮倍数が一致するために、濃縮倍数を管
理することによりシリカの濃度を制御することは容易で
ある。なお、ここで言うシリカとは、水中に存在するシ
リカを意味し、イオン状シリカ(イオン状ケイ酸)、溶
存シリカ及びコロイド状シリカを含む全シリカを指し、
JIS K 0101 44.3に規定される分析方法によ
り測定することができる。
【0006】TOCは、有機体炭素(Total Organic Ca
rbon)であり、循環水中に存在する有機物中の炭素を言
い、JIS K 0101 20.にしたがって、燃焼酸化
−赤外線式TOC分析法又は燃焼酸化−赤外線式TOC
自動計測法により測定することができる。TOCは自然
由来の成分に含まれ、落ち葉や泥から抽出されるフミン
酸などもTOCとして検出される。そのために、広く上
水、工業用水、河川水、地下水などに含まれている。上
水に関しては、水質基準でCODの上限値が決められて
いるために被酸化性物質が少なく、TOCも1mgC/L
以下の微量である場合が多いが、工業用水や、河川水、
地下水などでは5mgC/L以上のTOCが検出される場
合もある。これらの水においては、TOCを構成する成
分は消費されにくい物質であることが多いために、TO
Cを含む水を循環水系の補給水として用いると、濃縮に
伴ってTOCの濃度は増加する。したがって、濃縮管理
を行う場合、塩化物イオンなどの濃度から求める理論的
な濃縮倍数と、TOCの濃縮倍数が一致するために、濃
縮倍数を管理することによりTOCの濃度を制御するこ
とは容易である。
【0007】ランゲリア指数は、炭酸カルシウムの飽和
度を示す指標としてW.F.Langelierにより
示された指数である(J.American Water Works、第2
8巻、1500頁、1936年)。炭酸カルシウムの飽
和溶液については、式[1]で示される関係がある。 [Ca2+][CO3 2-]= Ks …[1] ただし、Ksは溶解度積である。炭酸水素イオンの解離
平衡は、次式のとおりである。 HCO3 - = H+ + CO3 2- …[2] [H+][CO3 2-]/[HCO3 -]= K2 …[3] ただし、K2は炭酸の第2解離定数である。式[1]と
式[2]より、炭酸カルシウムの溶解度積は、式[4]
により表される。 K2[Ca2+][HCO3 -]/[H+]= Ks …[4] HCO3 -の濃度は、Mアルカリ度(MA)にほぼ等しい
ので、式[4]は次式のように表すことができる。 log[Ca2+]+ log[MA]+ pHs = log(Ks/K2) …[5] 式[5]は、炭酸カルシウムの飽和条件であり、この関
係を満足するpHsは、飽和pHと呼ばれる。ランゲリ
ア指数は、循環水のpHから炭酸カルシウムの飽和pH
(pHs)を減じた差pH−pHsであり、 ランゲリア指数 = pH−pHs > 0 の場合は炭酸カルシウムが過飽和の状態にあり、 ランゲリア指数 = pH−pHs < 0 の場合は炭酸カルシウムが未飽和の状態にある。本発明
方法にしたがって、循環水中のシリカ濃度を110〜2
50mgSiO2/Lの範囲で調整し、あるいは、TOC濃度
を4〜20mgC/Lの範囲で調整し、かつ、スケール成
分析出手段によりランゲリア指数を0〜2に制御するこ
とにより、循環水系におけるスケールの付着を効果的に
防止することができる。
【0008】本発明方法において、スケール成分析出手
段に特に制限はないが、磁気処理手段、金属溶出手段、
セラミックボール接触手段、スケール成分と同一又は類
似化合物の粒子との接触手段、電気分解手段及び超音波
照射手段からなる群から選ばれる少なくとも1つの手段
であることが好ましい。本発明方法に用いる磁気処理手
段に特に制限はなく、例えば、永久磁石、ソレノイドコ
イル磁石などを挙げることができる。永久磁石として
は、例えば、アルニコ、バリウム−フェライト、鉄−ネ
オジム−ホウ素、サマリウム−コバルトなどを挙げるこ
とができる。永久磁石は、循環水が磁場を直角に横切っ
て流れるように、配管内に設置する。循環水の流速は、
1.5m/秒以上になるように、永久磁石設置部分の配
管径を適宜選択することが好ましい。永久磁石によって
水中に磁場を形成し、循環水の流れによって磁束を切断
すると、数mA程度のイオン電流が発生し、水のクラス
ターが微細化して、水中のスケール成分を析出すること
ができる。ソレノイドコイル型磁石は、循環水系の配管
の外側にコイルを巻いて使用するので、既存の循環水系
に改造工事を行うことなく設置することができる。配管
の材質に特に制限はなく、例えば、銅、ステンレス鋼、
青銅、プラスチックの配管などを挙げることができる。
ソレノイドコイルには、交流を印加し、コンピューター
制御により、周波数を2,000〜7,000Hzの範囲で
変調するとともに、振幅も変調することが好ましい。ソ
レノイドコイル型磁石によって水中に磁場が形成される
ことにより、循環水中に存在するスケール成分の微粒子
の表面の電荷が高められ、互いに反発しあうので、凝集
して大きい粒子になることがなく析出する。微粒子を帯
電させる磁場の条件は、微粒子の大きさによって異なる
が、ソレノイドコイルに印加する電流の周波数と振幅を
変調することにより、すべての微粒子の表面電荷を高め
ることができる。
【0009】本発明方法に用いる金属溶出手段に特に制
限はなく、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛などの金属
電極を循環水中で外部電源により電解することによって
金属イオンを溶出させる手段や、金属電極の対極に炭素
電極を配置して、それらを可変抵抗を介して短絡させて
金属イオンを溶出させる手段などを挙げることができ
る。本発明方法に用いるセラミックボール接触手段とし
ては、例えば、正磁性化合物と反磁性化合物を含むセラ
ミックを焼結し磁気化した複合多孔質セラミックボール
などに接触させる手段を挙げることができる。セラミッ
クボールの設置位置に特に制限はなく、例えば、冷却塔
のピットに浸漬することができる。セラミックボール
は、電磁波動機能を有するために、酸素イオンや負の金
属イオンを発生するとともに、水のクラスターを微細化
し、カルシウム、マグネシウムなどのスケール成分を析
出させる。本発明方法において、スケール成分と同一又
は類似化合物の粒子との接触手段としては、例えば、炭
酸カルシウムの粒子や、シリカゲルの粒子を充填した充
填塔に通水する手段を挙げることができる。スケール成
分が炭酸カルシウムである場合、スケール成分と同一又
は類似化合物の粒子として、例えば、六方晶系のカルサ
イト、六方晶系のバテライト、斜方晶系のアラゴナイト
などを用いることができる。スケール成分がシリカであ
る場合、スケール成分と同一又は類似化合物の粒子とし
て、例えば、シリカゲル、フォルステライト、メタケイ
酸マグネシウム、タルク、三ケイ酸マグネシウム、クリ
ソタイル、セピオライトなどを用いることができる。炭
酸カルシウムの粒子やシリカゲルの粒子を充填した充填
塔に通水することにより、炭酸カルシウムの粒子やシリ
カゲルの粒子が種晶となって、それらの表面にスケール
成分が析出する。
【0010】本発明方法に用いる電気分解手段に特に制
限はなく、例えば、陽極と陰極を備えた水電解槽を設け
ることができ、循環水の配管中に陽極と陰極を設けるこ
ともでき、あるいは、陽イオン交換膜の片面に多孔性陽
極、他の面に多孔性陰極を備えた固体高分子電解質膜セ
ルを用いることもできる。電極の材料に特に制限はな
く、陽極としては、例えば、ニッケル又はその合金、鉄
又はその合金、黒鉛、炭素、酸化ルテニウム、マグネタ
イト、鉛又はその合金、白金、白金をめっきしたチタン
などを挙げることができる。陰極としては、例えば、ニ
ッケル、鉄又はその合金、ステンレス鋼、鉛、亜鉛など
を挙げることができる。これらの電極材料は、10-6mo
l・dm-3の金属イオンと平衡する電位以下で用いることが
好ましい。これらの中で、黒鉛、炭素、白金及び白金を
めっきしたチタンは、通電により電極材料が水中に溶出
するおそれがないので、好適に用いることができる。電
気分解における電圧は、1V以上であることが好まし
く、2〜25Vであることがより好ましい。本発明方法
に用いる超音波照射手段に特に制限はなく、例えば、水
晶などの圧電形振動子、チタン酸バリウム、チタン酸ジ
ルコン酸鉛などの電歪形振動子、フェライト、ニッケル
などの磁歪形振動子などに高周波電圧を加えて超音波を
発生する装置などを用いることができる。超音波発生器
の形状に特に制限はなく、例えば、板状、棒状などの超
音波発生器などを挙げることができる。本発明方法に用
いる超音波発生装置の周波数に特に制限はないが、10
kHz〜10MHzであることが好ましく、15kHz〜3MHzで
あることがより好ましい。周波数が10kHz未満であっ
ても、10MHzを超えても、スケール成分の析出促進効
果が弱くなるおそれがある。本発明方法に用いる超音波
発生装置の出力に特に制限はないが、1.5kW以下であ
ることが好ましく、50〜200Wであることがより好
ましい。循環水への超音波の照射方式に特に制限はな
く、例えば、連続して冷却水に超音波を照射することが
でき、あるいは、1時間に10〜20分程度を目安にし
て断続的に照射することもできる。
【0011】本発明方法においては、循環水系の濃縮に
より、又は、循環水系へのシリカ成分の添加によりシリ
カ濃度を110〜250mgSiO2/L調整することができ
る。例えば、補給水のシリカ濃度が11〜25mgSiO2
Lであれば、濃縮倍数10倍で運転することにより、循
環水中のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範囲
に調整することができる。補給水のシリカ濃度が低い場
合には、循環水系へシリカ成分を添加することにより、
循環水中のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lに調
整することができる。循環水系へ添加するシリカ成分と
しては、例えば、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カ
リウムなどを挙げることができる。本発明方法において
は、循環水系の濃縮により、循環水中のTOC濃度を4
〜20mgC/Lに調整することができる。例えば、補給
水のTOC濃度が0.4〜2mgC/Lであれば、濃縮倍数
10倍で運転することにより、循環水中のTOC濃度を
4〜20mgC/Lの範囲に調整することができる。本発
明の循環水系のスケール防止方法によれば、循環水中の
シリカ濃度又はTOC濃度を調整し、スケール成分析出
手段によりランゲリア指数を0〜2に制御することによ
り、薬剤を使用することなく、スケールの付着を効果的
に防止することができる。
【0012】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限
定されるものではない。なお、実施例及び比較例におい
ては、伝熱面積が0.25m2の熱交換器を有する保有水
量0.45m3の開放楯環冷却水系を用いた。熱交換器チ
ューブの材質は銅で、外径は19mmである。加熱側の温
水温度は80℃、冷却水入口温度は30℃、出口温度は
40℃、冷却水の流速は1.0m/sで、30日間運転
した。また、水中の塩素イオン濃度を測定することによ
り、濃縮倍数を制御した。30日間の運転終了後に、熱
交換器チューブに付着したスケールを採取し、付着量を
測定するとともに、比較例においては、スケールの成分
分析を行った。成分分析では、採取したスケールを60
0℃で焼成し、焼成残渣の酸溶液についてフレーム原子
吸光法によりカルシウム濃度を測定し、スケール中のカ
ルシウムをCaO量として求めた。 実施例1 循環水中のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範
囲で調整し、スケール成分析出手段によりランゲリア指
数を0〜2に制御して運転を行った。図1に示す炭酸カ
ルシウム充填カラム1に、冷却塔ピット2の循環水を通
水した。カラムは、内径40mm、高さ1,500mmのア
クリル樹脂製であり、平均粒径270μmの重質炭酸カ
ルシウム200gを充填した。ポンプにより通水量0.
02m3/hで通水し、カラムより流出する水を冷却塔
ピットに返送した。通水により、カラム中の重質炭酸カ
ルシウムは、展開率約200%に展開した。補給水とし
て使用した厚木市水の水質は、pH7.75、電気伝導率
175μS/cm、カルシウム硬度46mgCaCO3/L、M
アルカリ度51mgCaCO3/L、塩化物イオン12mgCl-
L、シリカ24mgSiO2/Lであった。濃縮倍数を10倍
に保つことにより、循環水中のシリカ濃度を110〜2
50mgSiO2/Lの範囲に保った。運転開始2日後、4日
後、6日後、8日後、10日後、20日後及び30日後
に循環水をサンプリングし、pH計によりpHを測定した。
また、JIS K 0101に従って、カルシウム硬度、
Mアルカリ度、シリカ濃度を測定し、ランゲリア指数を
求めた。30日後、濃縮倍数は10.1倍、シリカ濃度
229mgSiO2/L、ランゲリア指数1.6であった。ス
ケール付着速度は、0.1mg/cm2/30日であった。 実施例2 循環水中のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範
囲で調整し、スケール成分析出手段によりランゲリア指
数を0〜2に制御して運転を行った。図2に示す超音波
発振装置3に、冷却塔ピット2の循環水を通水した。超
音波端装置は、内径100mm、長さ500mmのアクリル
樹脂製パイプの2か所に先端直径3mmの超音波発振チ
ップ4を取り付け、投入電力50Wで周波数20kHzの
超音波を発振した。この装置にポンプにより通水速度
0.01m3/hで通水し、装置より流出する水を冷却塔
ピットに返送した。また、実施例1と同じ水質の補給水
を用い、濃縮倍数を10倍に保つことにより、循環水中
のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範囲に保っ
た。実施例1と同様にして循環水をサンプリングし、ラ
ンゲリア指数を求めた。30日後、濃縮倍数は9.9
倍、シリカ濃度243mgSiO2/L、ランゲリア指数1.
7であった。スケール付着速度は、0.1mg/cm2/30
日であった。 比較例1 炭酸カルシウム析出手段を用いることなく、循環水中の
ヒドロキシエチリデンジホスホン酸の濃度が20mg/L
になるようにヒドロキシエチリデンジホスホン酸を添加
し、実施例1と同じ水質の補給水を用いて、濃縮倍数1
0倍で運転を行い、実施例1と同様にして循環水をサン
プリングし、ランゲリア指数を求めた。 30日後、濃縮倍数は9.9倍、ランゲリア指数は3.5
であった。スケール付着速度は73mg/cm2/30日で
あり、スケール成分は、CaO51.6重量%、CaC
392.1重量%であった。 比較例2 炭酸カルシウム析出手段を用いることなく、循環水中の
ポリアクリル酸ソーダの濃度が20mg/Lになるように
ポリアクリル酸ソーダを添加し、実施例1と同じ水質の
補給水を用いて、濃縮倍数10倍で運転を行い、実施例
1と同様にして循環水をサンプリングし、ランゲリア指
数を求めた。30日後、濃縮倍数は10.0倍、ランゲ
リア指数は2.6であった。スケール付着速度は108m
g/cm2/30日であり、スケール成分は、CaO54.
0重量%、CaCO396.4重量%であった。実施例1
〜2の結果を第1表に、比較例1〜2の結果を第2表に
示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】第1表に見られるように、循環水中のシリ
カ濃度を110〜250mgSiO2/Lの範囲に調整し、ス
ケール成分析出手段としての炭酸カルシウム充填カラム
又は超音波発振装置によりランゲリア指数を0〜2に制
御した実施例1〜2では、スケール付着速度が小さく、
スケールがほとんど付着していない。これに対して、第
2表に見られるように、従来のスケール防止剤であるヒ
ドロキシエチリデンジホスホン酸又はポリアクリル酸ソ
ーダを添加した比較例1〜2では、30日間で70〜1
00mg/cm2のスケールが付着し、スケール成分の90
重量%以上は炭酸カルシウムである。 実施例3 循環水中のTOC濃度を4〜20mgC/Lの範囲で調整
し、スケール成分析出手段によりランゲリア指数を0〜
2に制御して運転を行った。実施例1と同じ炭酸カルシ
ウム充填カラムを用い、実施例1と同じ条件で通水し
た。補給水として使用した厚木市水の水質は、pH7.8
7、電気伝導率184μS/cm、カルシウム硬度42mg
CaCO3/L、Mアルカリ度54mgCaCO3/L、塩化物イオ
ン10mgCl-/L、シリカ26mgSiO2/L、TOC1.1
mgC/Lであった。濃縮倍数を18倍に保つことによ
り、循環水中のTOC濃度を4〜20mgC/Lの範囲に
保った。運転開始2日後、4日後、6日後、8日後、1
0日後、20日後及び30日後に冷却水をサンプリング
し、pH計によりpHを測定した。また、JIS K 010
1に従って、カルシウム硬度、Mアルカリ度、TOC濃
度を測定し、ランゲリア指数を求めた。30日後、濃縮
倍数は18倍、TOC濃度は20mgC/L、ランゲリア
指数は1.7であった。スケール付着速度は、0.1mg/
cm2/30日であった。 実施例4 循環水中のTOC濃度を4〜20mgC/Lの範囲で調整
し、スケール成分析出手段によりランゲリア指数を0〜
2に制御して運転を行った。実施例2と同じ超音波発振
装置を用い、実施例2と同じ条件で通水した。また、実
施例3と同じ水質の補給水を用い、濃縮倍数を18倍に
保つことにより、循環水中のTOC濃度を4〜20mgC
/Lの範囲に保った。実施例3と同様にして循環水をサ
ンプリングし、ランゲリア指数を求めた。30日後、濃
縮倍数は18倍、TOC濃度は18mgC/L、ランゲリ
ア指数は1.8であった。スケール付着速度は、0.1mg
/cm2/30日であった。 比較例3 炭酸カルシウム析出手段を用いることなく、循環水中の
ヒドロキシエチリデンジホスホン酸の濃度が20mg/L
になるようにヒドロキシエチリデンジホスホン酸を添加
し、実施例3と同じ水質の補給水を用いて、濃縮倍数1
8倍で運転を行い、実施例3と同様にして循環水をサン
プリングし、ランゲリア指数を求めた。30日後、濃縮
倍数は18倍、ランゲリア指数は3.4であった。スケ
ール付着速度は89mg/cm2/30日であり、スケール
成分は、CaO52.1重量%、CaCO393.0重量
%であった。 比較例4 炭酸カルシウム析出手段を用いることなく、循環水中の
ポリアクリル酸ソーダの濃度が20mg/Lになるように
ポリアクリル酸ソーダを添加し、実施例3と同じ水質の
補給水を用いて、濃縮倍数18倍で運転を行い、実施例
3と同様にして循環水をサンプリングし、ランゲリア指
数を求めた。30日後、濃縮倍数は18倍、ランゲリア
指数は2.5であった。スケール付着速度は124mg/c
m2/30日であり、スケール成分は、CaO50.8重
量%、CaCO390.7重量%であった。実施例3〜4
の結果を第3表に、比較例3〜4の結果を第4表に示
す。
【0016】
【表3】
【0017】
【表4】
【0018】第3表に見られるように、循環水中のTO
C濃度を4〜20mgC/Lの範囲に調整し、スケール成
分析出手段としての炭酸カルシウム充填カラム又は超音
波発振装置によりランゲリア指数を0〜2に制御した実
施例3〜4では、スケール付着速度が小さく、スケール
がほとんど付着していない。これに対して、第4表に見
られるように、従来のスケール防止剤であるヒドロキシ
エチリデンジホスホン酸又はポリアクリル酸ソーダを添
加した比較例3〜4では、30日間で90〜120mg/
cm2のスケールが付着し、スケール成分の90重量%以
上は炭酸カルシウムである。 実施例5 循環水系へシリカ成分を添加して循環水中のシリカ濃度
を110〜250mgSiO2/Lに調整し、スケール成分析
出手段によりランゲリア指数を0〜2に調整して運転を
行った。実施例1と同じ炭酸カルシウム充填カラムを用
い、実施例1と同じ条件で通水した。メタケイ酸ナトリ
ウム1級をSiO2として5重量%になるように超純水
に溶解した溶液を、冷却塔ピットに添加して、循環水中
のシリカ濃度を110〜250mgSiO2/Lに調整した。
使用した補給水は、純水に塩化カルシウムと炭酸水素ナ
トリウムを溶解して調製した合成水であり、その水質
は、pH7.72、電気伝導率178μS/cm、カルシウ
ム硬度45mgCaCO3/L、Mアルカリ度52mgCaCO3
L、塩化物イオン30mgCl-/Lであった。また、水中
の塩化物イオン濃度を測定することにより、濃縮倍数を
12倍に制御して運転した。運転開始2日後、4日後、
6日後、8日後、10日後、20日後及び30日後に循
環水をサンプリングし、pH計によりpHを測定した。ま
た、JIS K 0101に従って、カルシウム硬度、M
アルカリ度、シリカ濃度を測定し、ランゲリア指数を求
めた。30日後、濃度倍数は12.2倍、シリカ濃度は
239mgSiO2/L、ランゲリア指数は1.7であった。
スケール付着速度は、0.1mg/cm2/30日であった。 実施例6 循環水系へシリカ成分を添加して循環水中のシリカ濃度
を110〜250mgSiO2/Lに調整し、スケール成分析
出手段によりランゲリア指数を0〜2に調整して運転を
行った。実施例2と同じ超音波発振装置を用い、実施例
2と同じ条件で通水した。また、実施例5と同様にし
て、冷却塔ピットにメタケイ酸ソーダ水溶液を添加し、
実施例5と同じ水質の補給水を用い、濃縮倍数を12倍
に保って運転した。実施例5と同様にして循環水をサン
プリングし、ランゲリア指数を求めた。30日後、濃縮
倍数は11.9倍、シリカ濃度は229mgSiO2/L、ラ
ンゲリア指数は2.0であった。スケール付着速度は、
0.1mg/cm2/30日であった。 比較例5 シリカ濃度を調整することなく、炭酸カルシウム析出手
段を用いることなく、循環水中のヒドロキシエチリデン
ジホスホン酸の濃度が20mg/Lになるようにヒドロキ
シエチリデンジホスホン酸を添加し、実施例5と同じ水
質の補給水を用いて、濃縮倍数12倍で運転を行い、実
施例5と同様に、循環水をサンプリングし、ランゲリア
指数を求めた。30日後、濃縮倍数は12.1倍、ラン
ゲリア指数は3.4であった。スケール付着速度は92m
g/cm2/30日であり、スケール成分は、CaO52.
3重量%、CaCO393.4重量%であった。 比較例6 シリカ濃度を調整することなく、炭酸カルシウム析出手
段を用いることなく、循環水中のポリアクリル酸ソーダ
の濃度が20mg/Lになるようにポリアクリル酸ソーダ
を添加し、実施例5と同じ水質の補給水を用いて、濃縮
倍数12倍で運転を行い、実施例5と同様にして循環水
をサンプリングし、ランゲリア指数を求めた。30日
後、濃縮倍数は12.2倍、ランゲリア指数は2.5であ
った。スケール付着速度は122mg/cm2/30日であ
り、スケール成分は、CaO50.7重量%、CaCO3
90.5重量%であった。実施例5〜6の結果を第5表
に、比較例5〜6の結果を第6表に示す。
【0019】
【表5】
【0020】
【表6】
【0021】第5表に見られるように、冷却塔ピットに
メタケイ酸ソーダ水溶液を添加して、循環水中のシリカ
濃度を110〜250mgSiO2/Lの範囲に調整し、スケ
ール成分析出手段としての炭酸カルシウム充填カラム又
は超音波発振装置によりランゲリア指数を0〜2に制御
した実施例5〜6では、スケール付着速度が小さく、ス
ケールがほとんど付着していない。これに対して、第6
表に見られるように、従来のスケール防止剤であるヒド
ロキシエチリデンジホスホン酸又はポリアクリル酸ソー
ダを添加した比較例5〜6では、30日間で90〜12
0mg/cm2のスケールが付着し、スケール成分の90重
量%以上は炭酸カルシウムである。
【0022】
【発明の効果】本発明の循環水系のスケール防止方法に
よれば、循環水中のシリカ濃度又はTOC濃度を調整
し、スケール成分析出手段によりランゲリア指数を0〜
2に制御することにより、薬剤を使用することなく、炭
酸カルシウムのスケールの付着を効果的に防止すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例で用いた装置の系統図である。
【図2】図2は、実施例で用いた装置の系統図である。
【符号の説明】
1 炭酸カルシウム充填カラム 2 冷却塔ピット 3 超音波発振装置 4 超音波発振チップ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C02F 1/36 C02F 1/36 1/48 1/48 A B 5/08 5/08 B G F28F 19/01 F28G 13/00 A F28G 13/00 F28F 19/00 501Z (72)発明者 西田 育子 東京都新宿区西新宿三丁目4番7号 栗田 工業株式会社内 Fターム(参考) 4D037 AA08 AB07 BA26 BB01 BB09 CA04 CA05 4D061 DA05 DB05 DC19 EA05 EA18 EB19 EB28 EB29 EB30 EC05 EC11 EC18 FA07

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】循環水中のシリカ濃度を110〜250mg
    SiO2/Lの範囲で調整し、かつ、スケール成分析出手段
    によりランゲリア指数を0〜2に制御することを特徴と
    する循環水系のスケール防止方法。
  2. 【請求項2】循環水中のTOC濃度を4〜20mgC/L
    の範囲で調整し、かつ、スケール成分析出手段によりラ
    ンゲリア指数を0〜2に制御することを特徴とする循環
    水系のスケール防止方法。
  3. 【請求項3】スケール成分析出手段が、磁気処理手段、
    金属溶出手段、セラミックボール接触手段、スケール成
    分と同一又は類似化合物の粒子との接触手段、電気分解
    手段及び超音波照射手段からなる群から選ばれる少なく
    とも1つの手段である請求項1又は請求項2記載の循環
    水系のスケール防止方法。
  4. 【請求項4】循環水系の濃縮により、又は、循環水系へ
    のシリカ成分の添加により、シリカ濃度を調整する請求
    項1又は請求項3記載の循環水系のスケール防止方法。
  5. 【請求項5】循環水系の濃縮により、TOC濃度を調整
    する請求項2又は請求項3記載の循環水系のスケール防
    止方法。
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