JP2003169847A - 基底膜標品又は人工組織 - Google Patents

基底膜標品又は人工組織

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 基底膜や人工組織の調製時にはプラスチック
表面に吸着・固定しているが、所望時にはプラスチック
表面から物理的に剥離させることができるように仮接着
しているタンパク性支持体上に形成されており、基底膜
の構造を保持したままで移植が可能なことから、その汎
用性が一層高い基底膜標品や人工組織を提供すること。 【解決手段】 メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸
との交互共重合体等の分子内に疎水性を有する直鎖状炭
素骨格とタンパク質と反応しうる官能基とを有する疎水
結合性吸着ポリマーを介して、プラスチック表面にタン
パク性支持体を仮接着し、その上に基底膜標品又は人工
組織を形成させ、所望時にプラスチック表面から基底膜
標品又は人工組織を担持したタンパク性支持体を物理的
に剥離させ、基底膜の構造を保持したままで移植可能な
基底膜標品又は人工組織を調製する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック表面
に仮接着しているタンパク性支持体上に形成されている
基底膜標品や人工組織、詳しくは、プラスチック表面に
吸着しているが、所望時にはプラスチック表面から物理
的に剥離させることができるように仮接着しているタン
パク性支持体上に形成されている、細胞の形態、分化、
増殖、運動、機能発現などを制御する機能を持った細胞
外マトリックスである基底膜の標品や、人工血管、人工
肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚、人工角膜等の人工組
織(組織モデル)及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】動物の体の内外の表面を覆っている細胞
層である表皮、角膜上皮、肺胞上皮、消化器系の粘膜上
皮、腎臓子球体上皮、肝実質細胞等の上皮組織は、外界
から異物(微生物、アレルゲン、化学物質等)が侵入す
るのを防いでいる。かかる上皮組織を構成する上皮細胞
の外界面は上端面(apical)、内側下面は基底面(basa
l)と呼ばれ、かかる基底面直下には、蛋白質やプロテ
オグリカン等の細胞外基質(ECM)から成る(細胞を
含まない)基底膜と呼ばれる50〜100nmの薄膜の
構造体が存在する。基底膜は、未成熟な上皮細胞が増殖
し、成熟した細胞に分化して、本来の形態や、機能を発
現するのに必須の構造体と考えられている。即ち、基底
膜なしでは上皮組織は自分自身の維持や本来のパフォー
マンスが達成できない。多層又は単層の上皮細胞層はバ
リアーとして外界からの異物の侵入を防いでいるが、基
底膜自体も物理的なバリアーとして作用する。このよう
に、上皮組織を構成する上皮細胞と基底膜が協働して、
強固なバリアーを形成し、体内の生命活動を保護してい
る。
【0003】上皮細胞の他、内皮細胞、筋細胞、脂肪細
胞、シュワン細胞などの実質細胞と結合組織との界面に
形成される細胞外基質の特異な膜状構造物である基底膜
は、生体の各組織・臓器に普遍的に見い出される一方
で、腎糸球体毛細血管ループや神経シナプス膜など高度
に特化したものもある。したがって、細胞を間質に接着
させるだけでなく、選択的な物質・細胞透過や細胞分化
の誘導等の機能が明らかにされている。腎糸球体では、
基底膜の陰性荷電が腎のろ過機能を担っているとみなさ
れ、その陰性荷電は現在パールカンとよばれるヘパラン
硫酸プロテオグリカン(HSPG)によることが古典的
に知られている。HSPGは腎糸球体基底膜だけでな
く、種々の基底膜に、IV型コラーゲン、ラミニン、エン
タクチン等と同様に、その基本的構成分子としてひろく
分布している。
【0004】細胞外マトリックス、特に基底膜は、上記
のように個体の発生や分化等の生理現象だけでなく、癌
の増殖転移や炎症などの病態形成にも深く関与している
ことが明らかとなりつつあり、その構成タンパク質の機
能の解明が重要な課題となってきている。例えば、基底
膜の主要糖タンパク質であるラミニンは、α、β、γの
3種類のサブユニットからなる複合体で、15種類のア
イソフォームが知られており、これらが組織特異的ある
いは発生時の各段階で特異的に発現している。ラミニン
は様々な生物活性を有し、20種類以上のラミニンレセ
プターが報告されている分子量90万の複雑な巨大分子
である。
【0005】細胞が接着可能な薄い細胞外マトリックス
層である基底膜の構成成分と上皮細胞との相互作用が、
移動、増殖及び分化等の細胞機能に影響を及ぼしている
(例えば、非特許文献1参照。)。基底膜の主要成分と
しては、前記のように、ラミニン、IV型コラーゲン、ヘ
パラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)及びエンタク
チンが知られており(例えば、非特許文献2参照。)、
ラミニン及びIV型コラーゲンのアイソフォームを含む基
底膜成分の合成には、間充織細胞が重要な役割を担って
いると考えられている(例えば、非特許文献3、4参
照。)が、上皮細胞の役割もまた、重要なものである。
HSPGは、上皮細胞由来と考えられているが、ラミニ
ン、IV型コラーゲン及びエンタクチンは、上皮細胞及び
間充織細胞の双方によって、インビボで合成される(例
えば、非特許文献5、6参照。)。連続した緻密層(la
mina densa)を示すインビトロでの上皮組織モデルを作
製する試みが、今まで数多く行われてきた。腸(例え
ば、非特許文献7参照。)及び皮膚(例えば、非特許文
献8、9、10参照。)等の組織モデルが研究されてお
り、いくつかの間充織細胞由来基底膜成分が、基底膜形
成に重要な役割を果たしていることも見い出されてい
る。
【0006】従来から、上皮細胞を培養することにより
基底膜を構築し、基底面直下に基底膜構造体が存する上
皮組織を構築する幾つかの方法が報告されている。例え
ば、本発明者は、肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との共培
養によりインビトロで基底膜が形成されることを報告し
た(例えば、非特許文献11参照。)。すなわち、肺線維
芽細胞をI型コラーゲンゲルに包埋した状態で順化培養
すると、肺線維芽細胞によってコラーゲンゲルは収縮し
堅さを増し、また分泌された細胞外基質が細胞周囲のコ
ラーゲン線維にまとわりついて沈着し、その形成物はイ
ンビボにおける間質と類似することから擬似間質と呼ば
れ、この擬似間質化したI型コラーゲン線維上で、II型
肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を14日間程度培養する(T
2-Fgel)と、肺線維芽細胞が分泌する細胞外基質中のIV
型コラーゲンやラミニン等の基底膜構成成分が培地中に
拡散して、上記II型肺胞上皮細胞株の基底面に到達し、
基底膜構築材料として使われる結果、基底膜構造体が形
成されることを報告した。
【0007】また、希薄な中性コラーゲン溶液を、5%
CO2中37℃でインキュベートし、コラーゲン線維を
形成させた後、無菌状態の中で風を当てて乾燥させた風
乾コラーゲン線維基質(fib)を、上記擬似間質の代
替物として用い、上記肺胞上皮細胞と肺線維芽細胞との
共培養の場合と同様にして、基底膜を形成することも報
告されている(例えば、非特許文献12、13参
照。)。この方法の場合、コラーゲン溶液の濃度が高い
と、形成されたコラーゲン線維に隙間が少なく、あるい
はなくなって、基底膜形成のため上皮細胞を長期間培養
(10日〜2週間)すると、細胞が剥がれて浮き上がる
ことから(例:Becton Dickinson, Fibrillarcollagen
coat culture insert)、コラーゲン溶液濃度は、0.
3〜0.5mg/mlが最適であるとされている(例え
ば、非特許文献12、13参照。)。
【0008】線維芽細胞を包埋したコラーゲンマトリッ
クスを使用する代わりに、マトリゲル(Matrigel;Bect
on Dickinson社の登録商標)を加えたコラーゲン線維基
質上で、II型肺胞上皮細胞株(SV40-T2)を培養した。
このときマトリゲルは、基底膜成分の外来性(exogenou
s)供給源として機能した。マトリゲルは、Engelbreth-
Holm-Swarm腫瘍マトリックスから抽出された基底膜調製
物であり(例えば、非特許文献14参照。)、ECM合
成に影響を及ぼす可能性のある種々のサイトカインの他
に、ラミニン−1、エンタクチン、IV型コラーゲン、パ
ールカンを含んでいる(例えば、非特許文献15参
照。)。基底膜に取り込まれたマトリゲルの成分を追跡
するために、マトリゲルをビオチンで標識し、基底膜成
分であるラミニン、エンタクチン、IV型コラーゲン、パ
ールカンの免疫蛍光染色と電子顕微鏡観察により、マト
リゲル量に依存して基底膜形成が促進し、点状に分泌さ
れた基底膜マトリックスがシート状に沈着して基底膜が
発達してゆく過程が観察された。その結果、肺胞上皮細
胞の下方にて、安定化した外来性ラミニン−1及びエン
タクチンが、インビトロでの上記上皮細胞による基底膜
の完全なる発達に大きく関与していることが明らかにな
っている(例えば、非特許文献13参照。)。
【0009】
【非特許文献1】Crouch et al., Basement membrane.
.In The Lung(ed .R. G. Crystal and J.B. West), pp
53.1-53.23. Philadephia : Lippincott-Raven. 1996
【非特許文献2】Curr. Opin. Cell Biol. 6, 674-681,
1994
【非特許文献3】Matrix Biol. 14, 209-211, 1994
【非特許文献4】J. Biol. Chem. 268, 26033-26036, 1
993
【非特許文献5】Development 120, 2003-2014, 1994
【非特許文献6】Gastroenterology 102, 1835-1845, 1
992
【非特許文献7】J. Cell Biol. 133, 417-430, 1996
【非特許文献8】J. Invest. Dermatol. 105, 597-601,
1995
【非特許文献9】J. Invest. Dermatol. 109, 527-533,
1997
【非特許文献10】Dev. Dynam. 197, 255-267, 1993
【非特許文献11】Cell Struc.Func., 22: 603-614, 1
997
【非特許文献12】Eur. J. Cell Biol., 78: 867-875,
1999
【非特許文献13】J. Cell Sci., 113: 859-868, 2000
【非特許文献14】J. Exp. Med. 145, 204-220, 1977
【非特許文献15】Exp. Cell Res. 202, 1-8, 1992
【非特許文献16】Clement et al.,Exp.Cell Res., 19
6: 198-205, 1991
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、基底
膜や人工組織の調製時にはプラスチック表面に吸着・固
定しているが、所望時にはプラスチック表面から物理的
に剥離させることができるように仮接着しているタンパ
ク性支持体上に形成されており、基底膜の構造を保持し
たままで移植が可能なことから、その汎用性が一層高
い、細胞の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制
御する機能を持った細胞外マトリックスである基底膜の
標品、例えば、コラーゲン線維上に形成された基底膜標
品や、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮
膚、人工角膜等の人工組織や人工臓器、例えば、細胞直
下の基質に基底膜構造体を形成させたコラーゲン線維上
の人工組織を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、線維性コラ
ーゲン基質上に肺胞上皮細胞を培養する際に、線維芽細
胞の順化培地、TGF−β又はマトリゲルの存在下で培
養することにより、上皮細胞直下の基質に基底膜構造体
を形成させる方法等について研究を進め、II型肺胞上皮
細胞の場合、図1に示されるように、II型肺胞上皮細胞
を、カルチャーインサートの上部ウェルの肺線維芽細胞
マトリックス基層(線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲ
ル)上で培養した場合(T2-Fgel)、下部ウェルに肺線
維芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェルの線維性コ
ラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib-Fcm)、下部ウ
ェルにコーティングされたマトリゲルの共存下、上部ウ
ェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(T2-fib
-MG)、上部ウェル及び下部ウェルの成長因子TGF−
βの共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培
養した場合(T2-fib-TGFβ)に基底膜が形成されること
を確認した。
【0012】また、内皮細胞の基底面直下に存在する基
底膜も、内皮細胞の機能発現と維持に寄与しており、炎
症性細胞が血管から組織に侵入する際、あるいはガン細
胞が転移する際の障壁の役割を果たしていることから、
内皮細胞(EC)による基底膜の構築についても検討し
たところ、II型肺胞上皮細胞の場合と異なり、図2に示
されるように、上部ウェルの線維芽細胞マトリックス基
層上で培養した場合(EC-Fgel)、下部ウェルに肺線維
芽細胞マトリックスの共存下、上部ウェルの線維性コラ
ーゲン基層上で培養した場合(EC -fib-Fcm)、下部ウ
ェルにコーティングされたマトリゲルの共存下、上部ウ
ェルの線維性コラーゲン基層上で培養した場合(EC-fib
-MG)、上部ウェルの線維性コラーゲン基質上で培養し
た場合(EC -fib)には、(EC-Fgel)の場合を除き基底
膜が形成されなかった。
【0013】さらに、本発明者は、前記基底膜を形成し
た肺胞上皮細胞を、0.18Mの過酸化水素水で10分
間処理し、1日間培養を継続すると、自動的に上皮細胞
を基底膜から剥離させることができることを報告してい
る(例えば、非特許文献11参照。)。しかし、かかる
方法では、基底膜からの細胞の剥離が不充分であった
り、基底膜の一部が損傷を受けたりする場合があり、か
かる基底膜上に所定の基底膜形成能を有する同種又は異
種の細胞を播種・培養しても、該細胞の機能発現と維持
等充分に生理活性を有する人工ヒト組織を調製すること
ができない場合があることがわかった。そこで、本発明
者は、界面活性剤、例えば0.1%トリトン(Triton)
X−100(Calbiochem-Novabiochem Corporation)を
用いると、その界面活性作用により細胞の脂質成分が溶
解し、アルカリ性溶液、例えば、20〜50mMのNH
3を用いると、細胞の基底膜表面に残存する蛋白質が溶
解し、蛋白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、protease
inhibitors cocktail)を用いると、細胞が溶解する際
に遊離してくるリソゾーム中の蛋白分解酵素等の内因性
プロテアーゼ活性による基底膜の分解が抑制され、細胞
の形態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機
能を有する基底膜の標品を短期間に得ることができた。
かかる基底膜の標品に基底膜形成能を有する同種又は異
種の所望の細胞を播種・培養したところ、生体本来のバ
リアー機能を備えた人工組織を構築しうることも確認し
た。
【0014】以上のようにして調製された人工組織は、
生体本来のバリアー機能を備えた細胞層と基底膜構造を
有していることから、生体本来のバリアー機能を備えて
おり、組織モデルとして化学物質等の薬理試験、毒性試
験等へ有利に応用することができるが、人工組織や基底
膜標品を担持した支持体がプラスチック表面に接着した
状態で形成されており、接着した状態のままでは再生医
療材料として移植することができず、プラスチック表面
から機械的に剥がすと基底膜の構造が崩れてしまい、生
体本来のバリアー機能等の生理活性を有する組織として
使用することはできないが、メチルビニルエ−テルと無
水マレイン酸との交互共重合体等の分子内に疎水性を有
する直鎖状炭素骨格とタンパク質と反応しうる官能基と
を有する疎水結合性吸着ポリマーを介して、プラスチッ
ク表面にタンパク性支持体を仮接着し、その上に人工組
織や基底膜標品を形成させると、所望時にプラスチック
表面から人工組織や基底膜標品を担持したタンパク性支
持体を物理的に剥離させることができ、剥離された人工
組織や基底膜標品を担持したタンパク性支持体は、基底
膜の構造を保持したままで移植が可能なことを見い出
し、本発明を完成するに至った。
【0015】すなわち本発明は、分子内に、疎水性を有
する直鎖状炭素骨格と、タンパク質と反応しうる官能基
とを有する疎水結合性吸着ポリマーを介して、プラスチ
ック表面に仮接着しているタンパク性支持体上に形成さ
れていることを特徴とする基底膜標品又は人工組織(請
求項1)や、疎水結合性吸着ポリマーが、以下の一般式
[I]で表される疎水結合性吸着ポリマーであることを
特徴とする請求項1記載の基底膜標品又は人工組織
【化3】 (式中、XはCH又はNHCHCOを示し、YはCH又
はNHCR2COを示し、R1はH、C1〜C3のアルキ
ル基、C1〜C3のアルコキシ基又はC6〜C8のアリ
ール基を示し、R2はH又はC1〜C3のアルキル基を
示し、Zは官能基(反応基)を示し相互に結合してもよ
く、spacerは(−CH2−)p又は(−NHCHR3HCO
−)qを示し、R3はH又はC1〜C3のアルキル基を示
し、mは1以上の整数を、nは100〜20000の整
数を、p及びqは独立して0又は1〜8の整数を、rは
1以上の整数を示す。)(請求項2)や、一般式[I]
で表される疎水結合性吸着ポリマーが、メチルビニルエ
−テルと無水マレイン酸との交互共重合体であることを
特徴とする請求項2記載の基底膜標品又は人工組織(請
求項3)や、基底膜標品が、基底膜を介してタンパク性
支持体上に接着している基底膜形成能を有する細胞を、
該細胞の脂質溶解能を有する溶媒とアルカリ溶液を用い
て除去することにより作製された基底膜標品であること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の基底膜標品
又は人工組織(請求項4)や、人工組織が、タンパク性
支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養すること
により調製された基底膜であることを特徴とする請求項
1〜4のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織(請求
項5)や、人工組織が、基底膜形成能を有する細胞の基
底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプター
を局在化させることができる糖鎖を備えたタンパク性支
持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することに
より調製された人工組織であることを特徴とする請求項
1〜4のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織(請求
項6)や、人工組織が、基底膜標品上に所定の基底膜形
成能を有する細胞を播種し、培養することにより調製さ
れた再構築人工組織であることを特徴とする請求項1〜
4のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織(請求項
7)や、基底膜形成能を有する細胞が、上皮細胞又は内
皮細胞であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか
記載の基底膜標品又は人工組織(請求項8)や、タンパ
ク性支持体が、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルで
あることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の基
底膜標品又は人工組織(請求項9)や、人工組織が、人
工表皮組織、人工角膜上皮組織、人工肺胞上皮組織、人
工気道上皮組織、人工腎糸球体組織、人工肝実質組織若
しくは人工肺動脈血管内皮組織、又は人工血管、人工
肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚若しくは人工角膜であ
ることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の基底
膜標品又は人工組織(請求項10)に関する。
【0016】また本発明は、分子内に、疎水性を有する
直鎖状炭素骨格と、タンパク質と反応しうる官能基とを
有する疎水結合性吸着ポリマーを介して、プラスチック
表面にタンパク性支持体を仮接着し、その上に基底膜標
品又は人工組織を形成させ、所望時にプラスチック表面
から基底膜標品又は人工組織を担持したタンパク性支持
体を物理的に剥離させることを特徴とする基底膜の構造
を保持したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の
製造方法(請求項11)や、疎水結合性吸着ポリマー
が、以下の一般式[I]で表される疎水結合性吸着ポリ
マーであることを特徴とする請求項11記載の基底膜の
構造を保持したままで移植可能な基底膜標品又は人工組
織の製造方法
【化4】 (式中、XはCH又はNHCHCOを示し、YはCH又
はNHCR2COを示し、R1はH、C1〜C3のアルキ
ル基、C1〜C3のアルコキシ基又はC6〜C8のアリ
ール基を示し、R2はH又はC1〜C3のアルキル基を
示し、Zは官能基(反応基)を示し相互に結合してもよ
く、spacerは(−CH2−)p又は(−NHCHR3HCO
−)qを示し、R3はH又はC1〜C3のアルキル基を示
し、mは1以上の整数を、nは100〜20000の整
数を、p及びqは独立して0又は1〜8の整数を、rは
1以上の整数を示す。)(請求項12)や、一般式
[I]で表される疎水結合性吸着ポリマーが、メチルビ
ニルエ−テルと無水マレイン酸との交互共重合体である
ことを特徴とする請求項12記載の基底膜の構造を保持
したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方
法(請求項13)や、基底膜標品が、基底膜を介してタ
ンパク性支持体上に接着している基底膜形成能を有する
細胞を、該細胞の脂質溶解能を有する溶媒とアルカリ溶
液を用いて除去することにより作製された基底膜標品で
あることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載
の基底膜の構造を保持したままで移植可能な基底膜標品
又は人工組織の製造方法(請求項14)や、人工組織
が、タンパク性支持体上で、基底膜形成能を有する細胞
を培養することにより調製された基底膜であることを特
徴とする請求項11〜14のいずれか記載の基底膜の構
造を保持したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織
の製造方法(請求項15)や、人工組織が、基底膜形成
能を有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用
を有するレセプターを局在化させることができる糖鎖を
備えたタンパク性支持体上で、基底膜形成能を有する細
胞を培養することにより調製された人工組織であること
を特徴とする請求項11〜14のいずれか記載の基底膜
の構造を保持したままで移植可能な基底膜標品又は人工
組織の製造方法(請求項16)や、人工組織が、基底膜
標品上に所定の基底膜形成能を有する細胞を播種し、培
養することにより調製された再構築人工組織であること
を特徴とする請求項11〜14のいずれか記載の基底膜
の構造を保持したままで移植可能な基底膜標品又は人工
組織の製造方法(請求項17)や、基底膜形成能を有す
る細胞が、上皮細胞又は内皮細胞であることを特徴とす
る請求項11〜17のいずれか記載の基底膜の構造を保
持したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造
方法(請求項18)や、タンパク性支持体が、線維芽細
胞を包埋したコラーゲンゲルであることを特徴とする請
求項11〜18のいずれか記載の基底膜の構造を保持し
たままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法
(請求項19)や、人工組織が、人工表皮組織、人工角
膜上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人
工腎糸球体組織、人工肝実質組織若しくは人工肺動脈血
管内皮組織、又は人工血管、人工肺、人工肝、人工腎
臓、人工皮膚若しくは人工角膜であることを特徴とする
請求項11〜19のいずれか記載の基底膜の構造を保持
したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方
法(請求項20)に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の基底膜標品又は人工組織
としては、分子内に、疎水性を有する直鎖状炭素骨格
と、タンパク質と反応しうる官能基とを有する疎水結合
性吸着ポリマーを介して、プラスチック表面に仮接着し
ているタンパク性支持体上に形成されている基底膜標品
や人工組織であればどのようなものでもよく、また、本
発明の基底膜の構造を保持したままで移植可能な基底膜
標品又は人工組織の製造方法としては、分子内に疎水性
を有する直鎖状炭素骨格とタンパク質と反応しうる官能
基とを有する疎水結合性吸着ポリマーを介して、プラス
チック表面にタンパク性支持体を仮接着し、その上に基
底膜標品又は人工組織を形成させ、所望時にプラスチッ
ク表面から基底膜標品又は人工組織を担持したタンパク
性支持体を物理的に剥離させる方法であれば特に制限さ
れるものではない。上記疎水結合性吸着ポリマーとして
は、上記一般式[I](式中、XはCH又はNHCHC
Oを示し、YはCH又はNHCR2COを示し、R1
H、C1〜C3のアルキル基、C1〜C3のアルコキシ
基又はC6〜C8のアリール基を示し、R2はH又はC
1〜C3のアルキル基を示し、Zは官能基(反応基)を
示し相互に結合してもよく、spacerは(−CH2−)p又は
(−NHCHR3HCO−)qを示し、R3はH又はC1〜
C3のアルキル基を示し、mは1以上の整数を、nは1
00〜20000の整数を、p及びqは独立して0又は
1〜8の整数を、rは1以上の整数を示す。)で表さ
れ、かかる一般式[I]中R1としてC1〜C3のアル
キル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル
基、イソプロピル基等や、C1〜C3のアルコキシ基と
しては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソ
プロポキシ基等や、C6〜C8のアリール基としては、
フェニル基、ベンジル基、フェネチル基や、フェノキシ
基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等を挙げる
ことができる。かかる疎水結合性吸着ポリマーとしては
プラスチック表面に吸着することができる疎水結合性吸
着ポリマー等の、分子内にポリビニール鎖、直鎖状アミ
ノ酸ポリマー(ポリグリシン、ポリアラニン、ポリフェ
ニルアラニン、チロシン等)やその誘導体などの疎水性
の直鎖状骨格をもつ疎水結合性吸着ポリマーで、該疎水
性の直鎖状骨格に直接、あるいは、スペーサーを介して
タンパク性支持体と反応できる反応性の官能基(反応
基)とを有する疎水結合性吸着ポリマーを好適に用いる
ことができる。かかる一般式[I]におけるnの範囲と
しては100〜20000であり、一般式[I]で表さ
れる疎水結合性吸着ポリマーの分子量は15,000〜
3,200,000程度のものが好ましい。
【0018】上記反応基としては、タンパク性支持体の
官能基と反応して、結合しうるものであれば特に制限さ
れるものではなく、無水カルボン酸型の反応基、アミノ
基、SH基等を例示することができる。上記無水カルボ
ン酸型の反応基としては、無水マレイン酸基を好適に例
示することができ、タンパク質のN末端アミノ基、リジ
ンε−アミノ基、SH基等の官能基と結合する。上記ア
ミノ基はタンパク質のカルボキシル基と反応するが、化
学結合とするためペプチド縮合剤を添加することが好ま
しい。上記SH基はタンパク質のSH基と主として反応
し、時には、S−S結合とSS交換反応で結合すること
もある。そして、かかるSH基に、前記疎水性の直鎖状
骨格とコポリマーを形成することができる範囲内で、簡
単に外れる可逆的な保護基をつけることもできる。
【0019】かかる反応基を有する疎水結合性吸着ポリ
マーとして、エチレンや、メチルビニルエーテル、エチ
ルビニルエーテル、エチル−1−プロペニルエーテル等
の不飽和エーテルや、アラニン、グリシン、バリン、ロ
イシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン等
のαアミノ酸等などから選択できる1種又は2種以上
と、無水マレイン酸、マレインイミド等のジカルボン酸
や酸イミドや、リシン、システン等のイオウを含むアミ
ノ酸や、アスパラギン酸、グルタミン酸等のモノアミノ
ジカルボン酸や、リシン等のジアミノモノカルボン酸な
どから選択できる1種又は2種以上との共重合体を挙げ
ることができる。これらの共重合体はそれぞれ二量体、
三量体等が相互に重合した共重合体であってもよいが、
交互共重合体であることが好ましい。また、イオウを含
むアミノ酸、モノアミノジカルボン酸、ジアミノモノカ
ルボン酸等の場合はこれらの単縮重合体は、縮合により
形成される疎水性の直鎖状骨格に官能基を有する構造と
なるため、本発明の反応基を有する疎水結合性吸着ポリ
マーとして適用することができる。これらのうちで本発
明の反応基を有する疎水結合性吸着ポリマーとして、無
水マレイン酸と、メチルビニルエーテル、エチルビニル
エーテル、エチル−1−プロペニルエーテル等の不飽和
エーテルとの交互共重合体であるMMAC(methyl vin
yl ether / maleic anhydride copolymer)等を具体例
として挙げることができ、MMAC等の場合、メチレン
基を骨格とする直鎖ポリマーが、プラスチック表面に疎
水性結合で吸着することを可能にしているが、−CH2
−CH2−骨格だけだとあまりにも疎水性で、水との親
和性が低くなり、微視的には水をはじいて、反応性に支
障がでる可能性があり、そこで、メチレン基のH原子の
一部を上述のようにC1〜C3のアルコキシ基やC6〜
C8のアリール基で置換したもの、例えば、メトキシ
基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等の
アルコキシ基や、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、フ
ェネチルオキシ基等で置換したものは、O原子の存在に
より反応効率が高まると考えられる。なお、アルコキシ
基に代えてOH基で置換すると、分子間で無水カルボン
酸とエステル結合を作ることから好ましくない。またM
MACは、エタノールに可溶のため、アセトン等を必要
とするポリマーよりも使い易い上に、塗布後にかに風乾
できる。また、エタノール溶液等としてプラスチック表
面のコーティング処理に用いる場合のMMAC濃度とし
ては、2μg/ml〜1mg/ml、特に10〜50μ
g/mlが好適であり、かかるコーティング処理を所望
する仮接着の程度に応じて1〜3回繰り返すこともでき
る。そして、MMACにおける反応基である無水マレイ
ン酸は、コラーゲン等のタンパク質のアミノ基と結合す
ることになるが、この無水マレイン酸がたとえ水と反応
してカルボン酸になったとしても、タンパク質の+の電
荷とイオン結合することができる。
【0020】そして、上記疎水結合性吸着ポリマーは、
疎水性の直鎖状骨格により、化学結合でなく疎水性結合
でプラスチック表面に吸着されることから、プラスチッ
クの種類や材質に関係なく吸着することができ、かかる
疎水結合性吸着ポリマーを介して、プラスチック表面に
タンパク性支持体を仮接着し、その上に人工組織や基底
膜標品を形成させると、所望時にプラスチック表面から
人工組織や基底膜標品を担持したタンパク性支持体を物
理的に剥離させることができ、剥離された人工組織や基
底膜標品を担持したタンパク性支持体は、基底膜の構造
を保持したままで移植が可能なことから、その汎用性が
一層高く、その適用例として、内径3mm以下の微細人
工血管や、体内埋込み型のヒト人工組織等を例示するこ
とができ、特に、人工子球体、人工肝臓、人工肺胞など
上皮組織と内皮組織が近接する組織や臓器を好適に例示
することができる。
【0021】また、上記タンパク性支持体としては、線
維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル(線維性コラーゲン
マトリックス)等のコラーゲン線維の他、(合成)エラ
スチンポリマー、コラーゲン線維と(合成)エラスチン
ポリマーとの混合物等を挙げることができるが、栄養
塩、老廃物の拡散を確保する点で線維性コラーゲンマト
リックスが好ましく、かかる線維性コラーゲンマトリッ
クスとしては、線維芽細胞によって収縮されるコラーゲ
ンゲルの高密度マトリックスを用いることもできる。こ
の場合、コラーゲンの生合成を高めるため、ascorbic a
cid-2-phosphate(Asc−P)を添加することもでき
る。中性I型コラーゲン溶液をCO2インキュベーター
内で静置してインキュベートし、ポリマー化したゲル
を、室温下に風乾した線維性コラーゲンマトリックスを
用いることもできる。
【0022】タンパク性支持体上に形成される基底膜標
品としては、その上に、基底膜形成能を有する同種又は
異種の所望の細胞を播種・培養した場合に、細胞の形
態、分化、増殖、運動、機能発現などを制御する機能を
有する基底膜の標品であればどのようなものでもよく、
上記基底膜形成能を有する細胞としては上皮細胞、内皮
細胞、間充織細胞などを挙げることができ、上記上皮細
胞としては表皮細胞、角膜上皮細胞、肺胞上皮細胞、消
化器系の粘膜上皮細胞、腎臓子球体上皮細胞、肝実質細
胞等を、上記内皮細胞としては腎臓子球体毛細血管内皮
細胞、肺動脈血管内皮細胞、胎盤静脈血管内皮細胞、大
動脈血管内皮細胞等を、間充織細胞としては筋細胞、脂
肪細胞、グリア細胞、シュワン細胞等をより具体的に例
示することができる。また、タンパク性支持体上に形成
されるヒト等の人工組織(人工臓器も含む)としては、
細胞層とその直下の基底膜を含む組織であればどのよう
なものでもよいが、例えば、人工表皮組織、人工角膜上
皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工腎
糸球体組織、人工肝実質組織、人工肺動脈血管内皮組織
等の人工組織や、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎
臓、人工皮膚、人工角膜等の人工臓器を具体的に挙げる
ことができる。
【0023】基底膜標品の作製方法としては、過酸化水
素水で処理する等の前記従来公知の方法をも含め特に制
限されないが、本発明者により新たに開発された基底膜
標品の作製方法、すなわち、基底膜を介して支持体上に
接着している基底膜形成能を有する細胞を、該細胞の脂
質溶解能を有する溶媒とアルカリ溶液を用いて除去する
基底膜標品の作製方法、好ましくは脂質溶解能を有する
溶媒を用いて脱脂処理をした後、又は脱脂処理と同時に
アルカリ溶液を用いて除タンパク・除核処理をする基底
膜標品の作製方法を特に好適に挙げることができる。
【0024】上記細胞の脂質溶解能を有する溶媒として
は、界面活性剤や有機溶媒等の上皮細胞や内皮細胞の脂
質を溶解しうる溶媒であれば制限されるものはないが、
トリトンX−100、Lubrol PX、デオキシコール酸、
コール酸、Tween、エマルゲン等の界面活性剤が好
ましく、中でもトリトンX−100が特に好ましい。界
面活性剤等の脂質溶解能を有する溶媒の使用濃度として
は、適用する細胞の種類や処理時間にもよるが、例えば
トリトンX−100の場合、0.01〜1.0%、特に
0.1%前後が好ましい。また、上記アルカリ溶液とし
ては、細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解し、基
底膜の蛋白までは溶解しないアルカリ溶液であればどの
ようなものでもよいが、pH8〜14、中でもpH9〜
10のアルカリ溶液が好ましく、例えば、20〜50m
MのNH3や1mMのNaOH等のアルカリ性溶液を具
体的に挙げることができる。
【0025】さらに、細胞が溶解する際に遊離してくる
リソゾーム中のDNaseI等の蛋白分解酵素などの内
因性プロテアーゼ活性による基底膜の分解を抑制するた
め、プロテアーゼ阻害剤、好ましくは蛋白分解酵素阻害
剤の混合液(PIC、protease inhibitors cocktail)
を添加したリン酸緩衝液中で行う方法が好ましい。さら
に、基底膜標品の作製方法おいては、人工ヒト組織等の
基底膜を介して支持体上に接着している基底膜形成能を
有する細胞にあらかじめ2mMのNa3VO4等のバナジ
ウム塩を用いて前処理することもできる。バナジウム塩
を用いて前処理すると、基底膜から細胞の剥離がよくな
るが、バナジウム塩の洗浄が必要となる。
【0026】また、タンパク性支持体上に形成されるヒ
ト等の人工組織の調製方法としては、公知の人工組織の
調製方法の他、本発明者により開発された新たな調製方
法を挙げることができる。上記公知の人工組織の調製方
法としては、図1に示されるように、上皮細胞を、カル
チャーインサートの上部ウェルの肺線維芽細胞マトリッ
クス基層上で培養した人工組織(T2-Fgel)の調製方
法、下部ウェルに肺線維芽細胞マトリックスの共存下、
上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養した人工組
織(T2-fib-Fcm)の調製方法、下部ウェルにコーティン
グされたマトリゲルの共存下、上部ウェルの線維性コラ
ーゲン基層上で培養した人工組織(T2-fib-MG)の調製
方法、上部ウェル及び下部ウェルの成長因子TGF−β
の共存下、上部ウェルの線維性コラーゲン基層上で培養
した人工組織(T2-fib-TGFβ)の調製方法を好適に挙げ
ることができる。また、図2に示されるように、内皮細
胞をカルチャーインサートの上部ウェルの肺線維芽細胞
マトリックス基層上で培養した新規人工組織(EC-Fge
l)の調製方法を好適に挙げることができる。
【0027】ところで、基底膜の調製には、ラミニン、
IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HS
PG)、エンタクチン等の基底膜構成成分が必要とさ
れ、また個々の基底膜形成能を有する細胞は基底膜構成
成分を分泌するが、かかる細胞から分泌される基底膜構
成成分は、細胞の基底面(下面)から線維性コラーゲン
マトリックスが形成する細胞外基質の内部に向かって分
泌される。したがって、分泌された基底膜成分の大部分
は基底面表面から離れてしまい反対側から培地中に拡散
したり、途中で蛋白質分解酵素に分解されたりして、通
常有効利用されない。しかし、基底膜形成能を有する細
胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセ
プターを局在化させることができる糖鎖を備えた支持体
上で、基底膜形成能を有する細胞を培養することによ
り、上記上皮細胞や内皮細胞などの基底膜形成能を有す
る細胞から分泌される内生の基底膜構成成分を好適に活
用することができる。すなわち、本発明者により開発さ
れた新たな人工組織の調製方法として、基底膜形成能を
有する細胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有
するレセプターを局在化させることができる糖鎖を備え
た支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養するこ
とにより人工組織を調製する方法を挙げることができ
る。
【0028】そして、上記新たな人工組織の調製方法に
おいては、基底膜形成能を有する細胞から分泌される内
生の基底膜構成成分に加えて、外生の基底膜構成成分等
をも利用して短期間で人工組織を調製することができる
ように、基底膜構成成分及びTGF−βを分泌する線維
芽細胞、好ましくは線維芽細胞の順化培地や、基底膜構
成成分を豊富に含有するマトリゲルなどの線維芽細胞代
替物と共培養することもできる。また、同様に短期間で
人工組織を調製することができるように、基底膜形成能
を有する細胞を、別途調製されたラミニン、IV型コラー
ゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)、エ
ンタクチン等の基底膜構成成分の1種又は2種以上の存
在下で培養したり、TGF−βの存在下で培養すること
もできる。上記ラミニンやHSPGは市販品が用いるこ
とができ、IV型コラーゲンとしては、牛レンズカプセル
から酢酸抽出したものを有利に用いることができる。上
記ラミニン、IV型コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグ
リカン(HSPG)、エンタクチン等の基底膜構成成分
やTGF−βを用いる方法は、コスト高になることか
ら、基底膜形成能を有する細胞や線維芽細胞として、基
底膜構成成分の1種又は2種以上の遺伝子が導入された
基底膜構成成分高発現細胞や、TGF−βの遺伝子が導
入された成長因子高発現細胞を選抜・使用することがで
きる。
【0029】上記基底膜形成能を有する細胞の基底面
に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプターを局
在化させることができる糖鎖としては、糖鎖又は該糖鎖
の一部が上記レセプターと結合することにより、基底膜
形成能を有する細胞を支持体上に接着しうる糖鎖、中で
も、レセプターと結合する糖鎖又は該糖鎖の一部が前記
基底膜構成成分と置換しうる糖鎖を用いることが好まし
い。また、糖鎖を備えた支持体としては、かかる糖鎖を
有する一体成形体、あるいは、糖鎖を有するポリマーを
コーティングした支持体であることが好ましく、該糖鎖
を有するポリマーとしては、β−D−グルコピラノース
(β-D-glucopyranosyl)非還元末端又は2−アセトア
ミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノース(2-ac
etoamide-2-deoxy-β-D-glucopyranosyl)非還元末端を
有する糖鎖を有するポリマーを例示することができる。
また、かかるβ−D−グルコピラノース非還元末端を有
する糖鎖を有するポリマーとしてはPV-CAやPV-Lam等、
2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラ
ノース非還元末端を有する糖鎖を有するポリマーとして
はPV-GlcNAc等のビニル系モノマーにオリゴ糖を導入し
た高分子ポリマー(PV-sugar)をより具体的に例示する
ことができる。そして、これらPV-sugarは1種単独の
他、2種以上の混合物を用いてもよく、これらPV-sugar
は市販のものを用いることができる。
【0030】また、本発明者により開発された新たな方
法による人工組織の他の態様としては、支持体の相対す
る2つの基層面上で、基底膜形成能を有する細胞を培養
する方法を挙げることができ、例えば、多孔性メンブレ
ン膜の両側に線維性コラーゲンを作製し、その両側に上
皮細胞と血管内皮細胞の組み合わせなど、2種類の基底
膜形成能を有する細胞を播種・培養すると、基底膜形成
能を有する細胞から分泌される内生の基底膜構成成分の
拡散が防止され、基底膜成分の有効利用率を高めること
ができる。すなわち、一方の細胞が分泌する基底膜構成
成分が、線維性コラーゲンの反対側に位置する他方の細
胞に辿り着き、かかる細胞が形成する細胞−細胞間結合
(密着結合)で隙間の無い障壁により阻まれて、培地中
に拡散することがなく、その結果、基底膜成分の有効利
用率を高めることができる。図3の上段には、コラーゲ
ンゲル包埋線維芽細胞存在下、コラーゲン線維を介して
の上皮細胞と血管内皮細胞の共培養による基底膜の形成
(左)、糖鎖を備えた支持体であるコラーゲン線維の薄
膜を介しての上皮細胞と血管内皮細胞の共培養による基
底膜の形成(中)、コラーゲン線維を介しての上皮細胞
と線維芽細胞の共培養による基底膜の形成(右)が模式
的に示されており、また、図3の下段には、所望の細胞
組織ではない方の細胞組織、すなわち、血管内皮組織
(左)、上皮組織(中)、線維芽細胞(右)を機械的に
剥がして取り除いた状態が示されている。これら細胞の
組合せとしては、上皮細胞と血管内皮細胞、上皮細胞と
上皮細胞、内皮細胞と内皮細胞、上皮細胞又は内皮細胞
と一部の間充織細胞等が考えられる。
【0031】さらに、タンパク性支持体上に形成される
ヒト等の人工組織の他の態様として再構築人工組織を挙
げることができ、かかる再構築人工組織の製造方法とし
ては、前記基底膜標品上に所定の基底膜形成能を有する
細胞を播種し、培養する方法であれば特に制限されるも
のではなく、基底膜標品と由来を異にする基底膜形成能
を有する細胞も、基底膜標品と由来を同じくする基底膜
形成能を有する細胞と同様に用いることができる。具体
的には、上皮細胞や内皮細胞等が剥離され、基底膜が露
出した基底膜標品、例えば、上皮細胞や内皮細胞等が形
成した基底膜構造体とコラーゲン線維等の支持材からな
る上記基底膜標品は、他の細胞の培養に利用することが
できる(図4参照)。
【0032】上皮の基底膜と内皮の基底膜とは同じもの
とはいえないものの構成成分の多くが共通し、上皮細胞
が形成した基底膜を内皮組織の構築に転用することがで
き、例えば、基底膜標品上に目的とするヒト上皮細胞や
ヒト内皮細胞を播種し、培養するだけでヒト上皮組織や
ヒト内皮組織を再構築することができる。実際、肺胞II
型上皮細胞が形成した基底膜上に肺動脈内皮細胞を播種
・培養し、肺動脈内皮組織を構築できることを確認して
いる。基底膜構造体上に上皮細胞ないし血管内皮細胞を
播種し、新たな組織を形成させる際、目的とする組織や
臓器の間質細胞(線維芽細胞)を共存させると、基底膜
の新陳代謝が円滑になることから好ましい。また、基底
膜は、細胞が接着した状態では保存出来ないが、細胞が
除去され非細胞成分のみで構成される基底膜標品は、保
存が容易であり、必要時に、何時でも、何処でも使用で
きるという利点を有する。そして、基底膜標品の保存
は、冷蔵でも冷凍でも全く問題がなく行うことができ
る。
【0033】上記のように、基底膜標品を利用した上皮
組織や内皮組織などの再構築方法は汎用性が高く、例え
ば、ラットの肺胞上皮細胞を用いて作製した基底膜はヒ
ト組織の再構築にも使用することが可能であり、また、
かかるラット肺胞上皮細胞由来の基底膜から再構築され
る臓器や組織も肺胞に限定されるものではない。これに
対し、個々の臓器の上皮細胞や内皮細胞を培養して基底
膜を形成させ、上皮組織や内皮組織などを構築する場合
には、個々の細胞に応じた培養系を開発するのに、多く
の時間と労力が必要であり、また、それぞれの組織用に
基底膜を個別に用意するのでは無駄が多いが、上記のよ
うに、基底膜標品を組織再構築用共通ベース資材として
使うことによって、効率よく本発明の再構築人工組織を
作製することができる。そして、基底膜標品を利用して
上皮組織や内皮組織などを再構築する場合の培養容器と
しては特に制限されず、カルチャーインサート方式の
他、ホロファーバー方式にも応用することができ、例え
ば、人工血管に適用する場合は、人工血管における問題
点である血栓の発生を防止することができ、また、人工
透析に適用する場合は、患者への負担が軽減できる。
【0034】このように、基底膜標品から再構築された
本発明の組織モデルや臓器モデルも、従前の組織モデル
と同様に、生体本来のバリアー機能を備えた細胞層と基
底膜構造を有していることから、生体本来のバリアー機
能を備えており、化学物質等の薬理試験、毒性試験等へ
有利に応用することができる。例えば、被検物質を上皮
組織モデルの細胞層上に存在せしめ、上皮細胞の上面と
基底面間の電気抵抗を測定することにより、上皮組織に
対する被検物質の安全性や毒性を試験することができ
る。被検物質により肺胞上皮組織に軽微だが傷害が生ず
れば、電気抵抗が低下することから、被検物質の安全性
や毒性を評価することができる。また、被検物質を上皮
組織モデルの細胞層上に存在せしめ、上皮細胞や基底膜
の状態を走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で観察す
ることにより、上皮組織に対する被検物質の安全性や毒
性を試験することができる。
【0035】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に
説明するが、この発明の技術的範囲はこれら実施例に限
定されるものではない。 実施例1(基底膜を形成する上皮細胞・内皮細胞等) 上皮細胞として、Dr. A. Clement, Hopital Armand Tro
usseau, Paris(例えば、非特許文献16参照。)から
供与された肺胞II型上皮細胞(SV40−ラージT抗原
遺伝子をトランスフェクトしたラットから採取;T2細
胞)を、10mMの2−[4−(2−ヒドロキシエチ
ル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPE
S)(pH7.2)、10%ウシ胎児血清(FBS;Hy
clone Laboratories Inc., Logan, Utah)、ペニシリン
及びストレプトマイシンを添加したDMEM(Dulbecc
o's modified Eagle medium)において、空気95%/
CO25%の大気条件下で培養して用いた。また、内皮
細胞として、クローンテックス(Clonetics)社から購
入したヒト肺動脈血管内皮細胞(HPAE細胞)を、1
0mMのHEPES(pH7.2)、2%FBS、成長
因子、ペニシリン及びストレプトマイシンを添加したM
CDB131単独又はMCDB131とDMEMの等量
混合培地において、空気95%/CO25%の大気条件
下で培養して用いた。線維芽細胞は、雄ラットJcl:Fisc
her 344由来の肺線維芽細胞を文献(例えば、非特許文
献11参照。)記載の方法に準じて調製したもの、及
び、クローンテックス社から購入したヒト肺線維芽細胞
を用いた。
【0036】実施例2(線維性コラーゲンゲルの調製) コラーゲンゲル線維を、通常線維芽細胞によって構築さ
れるコラーゲンゲルの密度マトリックスを模して調製し
た。DMEM(pH7.2)における中性I型コラーゲ
ン溶液(0.42mlのウシ真皮から酸抽出で採った
0.3〜0.5mg/mlのI型コラーゲン;Koken C
o., Tokyo)を、6ウエル培養プレート(Becton Dickin
son Labware, Franklin Lakes, NJ)のポリエチレンテ
レフタル酸エステル膜と共に、4.3cm2の培養線維
芽細胞層に投入し、CO2インキュベーターで、数時間
〜24時間インキュベートし、ゲル化した。このゲル
を、室温下24〜48時間風乾して圧縮し、高密度コラ
ーゲン線維(fib)として使用した。上記線維芽細胞
としては、雄ラットJcl:Fischer 344由来の肺線維芽細
胞を文献(例えば、非特許文献11参照。)記載の方法
に準じて調製した。
【0037】実施例3(組織モデルの構築1) 肺胞II型上皮細胞及び血管内皮細胞層の直下に基底膜を
有する上皮組織及び内皮組織の形成法を、それぞれ図1
及び図2に示した。最も基本的な組織モデルの構築する
ために、線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲル上に直接
上記上皮細胞(T2)又は内皮細胞(HPAEC)を播
種し2週間培養した(図1のT2-Fgel,図2のEC-Fge
l)。また、上記fibを培養基質に用いて基底膜を有
する上皮組織及び内皮組織を形成するために、fib上
に直接上皮細胞(T2)又は内皮細胞(HPAEC)を
播種し2週間培養した(図1のT2-fib-Fcm、T2-fib-MG
とT2-fib-TGFβ)。図1において、Fcmは、線維芽細胞
を包埋したコラーゲンゲル(Fgel)との共培養、MGは、
マトリゲル200μl(ベクトンディッキンソン社製)
を培養皿底にコーティングした培養、TGFβは、1n
g/mlのTGFβ添加した培養を示す。
【0038】実施例4(組織モデルの構築2) 4−1(上皮細胞・内皮細胞におけるレセプターの存在
の確認) 10μg/ml濃度の各種PV-Sugar(生化学工業社製)
を、製造者のプロトコールに従い、96穴ポリスチレン
製プレート(ベクトンディッキンソン社製)にコーティ
ングし、その上にラット肺胞II型上皮細胞を1×104
個まき、10mM HEPES(pH7.2)と1%F
BSを添加したDMEM中、CO2インキュベーターで
37℃、24〜48時間インキュベートした。インキュ
ベート後、クリスタルバイオレットで細胞を染色し、5
95nmの吸光度を測定して細胞数とすることにより、
各種PV-Sugarとの接着性について調べた。また、細胞接
着因子のファイブロネクチン(FN)及びビトロネクチ
ン(VN)コートに対する細胞接着も同時に行い、対照
実験とした。結果を図5に示す。図5の横軸には、種々
の非還元末端糖鎖のPV-sugar(GlcNAc;2-acetoamide-2
-deoxy-β-D-glucopyranosyl、Lam;β-D-glucopyranos
yl-(1→3)、CA;β-D-glucopyranosyl-(1→4)、LA;β-
D-galactopyranosyl、MA;α-D-glucopyranosyl、Man;
β-D-mannopyranosyl、MEA;α-D-galactopyranosyl)
が示されている。図5から、肺胞II型上皮細胞は、2−
アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノー
ス非還元末端を有する糖鎖をもつPV-GlcNAc、β−D−
グルコピラノース非還元末端を有する糖鎖をもつPV-CA
やPV-Lam、β−D−ガラクトピラノース非還元末端を有
する糖鎖をもつPV-LAに対し強い接着を示すことがわか
った。これらの結果から、肺胞II型上皮細胞は、その基
底面にこれら糖鎖に対するレセプターを発現することが
示された。
【0039】4−2(肺胞II型上皮細胞による基底膜の
調製) 基底膜の調製には、下部ウェルと、該下部ウェルに同心
円上に収納され、底部にPET膜を有する上部ウェルか
らなるカルチャーインサートを用いた(図1を参照)。
上部ウェルの底部PET膜上に、実施例3で示した方法
で作製した高密度コラーゲン線維(fib)にDMEM
に溶解した10μg/ml濃度のPV-GlcNAc、PV-CA又は
PV-Lamをコーティングした支持体(fib*)上で、肺
胞II型上皮細胞を37℃、5%CO2存在下で2週間培
養した。この培養では、線維芽細胞を包埋したコラーゲ
ンゲル(Fgel)、マトリゲル(MG)又はTGFβを培養
系に添加せず、培養液には10mMのHEPES(pH
7.2)、1%FBSと0.2mM ascorbic acid-2-p
hosphate(Asc−P)を添加したDMEMを用いた。
形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図6
に、形成された肺胞上皮組織の表面の肺胞II型上皮細胞
層を実施例5(後述)に示す方法で除去し、露出した肺
胞上皮組織直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を
図7に示す。
【0040】図6中、太矢印は基底膜緻密板(lamina d
ensa)を、細矢印は培養初期に形成され、一部は分解さ
れつつある旧基底膜を、鏃は基底膜が形成されていない
領域をそれぞれ示す(スケールの長さは1μm)。また
図7のPV-sugar未処理(Cont)では、既存のfib(コ
ラーゲン線維,白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集
積している個所(*)が認められるにすぎないが、PV-G
lcNAc,PV-Lam,PV-CA処理では、基底膜が平面状(図6
の太矢印に対応)に形成されており、PV-Lam処理では、
肺胞II型上皮細胞層を除去する際に、一部失われた基底
膜の欠損窓から、下部のコラーゲン線維(白抜き太矢
印)が垣間見える(スケールの長さは1μm)。これら
の結果から、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D
−グルコピラノース非還元末端を有するPV-GlcNAcやβ
−D−グルコピラノース非還元末端を有するPV-CAやPV-
Lamでコーティングした高密度コラーゲン線維支持体(G
lcNAc-fib*, CA-fib*, Lam-fib*)上で培養すると、肺
胞II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮
組織が構築されることを確認した。また、β−D−ガラ
クトピラノース非還元末端を有するPV-LAに対して、肺
胞II型細胞は接着するが(図5)、基底膜は形成されな
かった(図6及び図7)。このことは、糖鎖に対する細
胞接着は、基底膜形成の必要条件ではあっても、十分条
件ではないことを示している。
【0041】4−3(マトリゲルによる基底膜形成を促
進する効果) 図1のT2-fib-MGに示した様に、下部ウェルにマトリゲ
ル200μlをコーティングし、高密度コラーゲン線維
(fib)上で肺胞上皮細胞を2週間培養すると上皮細
胞直下に基底膜が形成される。しかし、マトリゲルの量
が50μlに満たないと基底膜は形成されない(例え
ば、非特許文献13参照。)。この場合にあっても、実
施例3に示した方法で高密度コラーゲン線維(fib)
を作製し、実施例4に示した方法でPV-GlcNAc, PV-CA又
はPV-Lamでコーティングした培養基質(fib*)を用
いると、10日間培養で肺胞II型上皮細胞層直下に基底膜
が形成される。図8には、種々のPV-sugarをコーティン
グした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培養皿
底面にコーティングした25μlマトリゲルと10日間
共培養し、形成した上皮組織の透過型電子顕微鏡写真
(左側:未処理、及びPV-GlcNAc,PV-CAコーティン
グ)、及び実施例5(後述)に示す方法で肺胞上皮細胞
層を除去し、直下の基底膜構造体を表面に露出させ走査
型電子顕微鏡で撮影した(右側:未処理、及びPV-GlcNA
c,PV-CAコーティング)結果が示されている(記号の意
味及びスケールは実施例4−2と同じ。)。これらの結
果から、マトリゲルの量が不十分の場合でも、PV-GlcNA
c又はPV-CAでコーティングした高密度コラーゲン線維支
持体(GlcNAc-fib*, CA-fib*)を用いることにより、肺
胞II型上皮細胞層の直下に基底膜が形成された肺胞上皮
組織が構築されることを確認した。
【0042】4−4(ヒト肺動脈血管内皮細胞による基
底膜の調製) ヒト肺動脈血管内皮(HPAE)細胞を、図2に示した
方法で培養した。すなわちヒト線維芽細胞を包埋したコ
ラーゲンゲル(Fgel)上に直接培養(EC-Fgel)、Fgel
共存下で高密度コラーゲン線維(fib)上に培養(EC
-fib-Fcm)、200μlのマトリゲルと共にfib上で共
培養(EC-fib-MG)、及びfib上で培養(EC-fib)し
た。培養後、表面のHPAE細胞層を実施例5(後述)
の方法で除去し、細胞直下の細胞外基質構造を走査型電
子顕微鏡で観察した(図9)。EC-Fgelの場合は基底膜
が形成されたが、EC-fib-Fcm,EC-fib-MG,EC-fibの場
合には既存のコラーゲン線維が露出し、T2細胞の場合
(T2-fib-Fcm, T2-fib-MG)の様に基底膜は形成されな
かった(白抜き太矢印はコラーゲン線維。*はコラーゲ
ン線維間に沈着した分泌物。スケールの長さは1μ
m。)。そこで、EC-fib-Fcmの培養系を用いて、実施例
5の肺胞II型上皮細胞の場合と同様に、PV-sugarをコー
ティングした高密度コラーゲン線維支持体(fib*)
上で培養した。培養後、表面のHPAE細胞層を実施例
5の方法で除去し、露出した細胞直下の細胞外基質構造
を、走査型電子顕微鏡で観察した(図10)。PV-GlcNA
c,PV-CAコーティングの場合に、基底膜の形成が認めら
れた。PV-Lamコーティングの場合には、基底膜の形成が
不完全だった。PV-sugar未処理(Cont)及びPV-LA, PV-
MA, PV-Man, PV-MEA処理では、既存のコラーゲン線維
(白抜き太矢印)に上皮細胞の分泌物が集積(*)して
いるが、基底膜は形成していない。これらの結果から、
PV-GlcNAc, PV-CAコーティングしたfib*(GlcNAc-f
ib*,CA-fib*)を用いると、ヒト肺動脈血管内皮細胞層
の直下に基底膜が形成されたヒト肺動脈内皮組織が構築
されることを確認した。
【0043】実施例5(肺胞上皮細胞層が除去され、基
底膜が露出した基底膜標品の作製) 組織モデル(T2-fib-MG)から、図4に模式的に示され
ているように、II型肺胞上皮細胞層を剥離し、基底膜が
露出した基底膜標品を作製し、作製した基底膜構造体上
に、ラット気道上皮細胞又はヒト肺動脈血管内皮細胞を
播種し、気道上皮組織や血管上皮組織を作製した。ま
ず、カルチャーインサートの上部ウェルのII型肺胞上皮
組織に、蛋白分解酵素阻害剤の混合液(PIC、ペプチ
ド研究所社製、大阪)を添加した等張のリン酸緩衝液
(pH7.2;PBS(−))中で、0.1%のトリト
ンX−100(界面活性剤)2mlを用いて、上皮細胞
の脂質成分を溶解・溶出すると同時に、共存する50m
M NH3で、細胞の基底膜表面に残存する蛋白質を溶解
する操作を2回(基底膜の蛋白までは溶かしてはならな
い)繰り返した後、再度PICを含むPBC(−)溶液
で基底膜から界面活性剤とアルカリ洗浄をすることによ
って、肺胞上皮細胞層を剥離して基底膜が露出した基底
膜標品を作製した。
【0044】実施例6(基底膜構造体上でのラット気道
上皮組織の再構築) 実施例5で構築した基底膜構造体上に、ラット気道上皮
細胞株(SPOC1、米国NIESより供与)を5×1
5個播種し、37℃、5%CO2存在下、10mMのH
EPES(pH7.2)と1%FBSを添加した、Ha
m's F12:DMEM=1:1の混合培地中で1週間
培養して、気道上皮組織を構築した。基底膜構造体上に
構築された気道上皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図1
1として示す。図11Aは基底膜構造体上の気道上皮細
胞を示し、図11Bは気道上皮細胞が肺胞上皮細胞由来
の基底膜を認識してアンカリングフィラメントで繋がっ
ている、気道上皮細胞の基底面と基底膜構造体との強拡
大の境界面を示し、図11Cは細胞−細胞間結合で気道
上皮細胞同士が結合して上皮組織を形成していることを
示している。
【0045】実施例7(基底膜構造体上でのヒト血管上
皮組織の再構築) 実施例5で構築した基底膜構造体上に、ヒト肺動脈血管
内皮細胞(クローンテック社製)を5×105個播種
し、37℃、5%CO2存在下、10mMのHEPES
(pH7.2)と2%FBSを添加した、MCDB13
1:DMEM=1:1の混合培地中で2週間培養して、
ヒト血管上皮組織を構築した。基底膜構造体上に構築さ
れたヒト血管内皮組織の透過型電子顕微鏡写真を図12
として示す。図12Aには線維芽細胞との共培養により
構築したヒト血管上皮組織を、図12Bにはマトリゲル
共存下で構築したヒト血管上皮組織を示している。
【0046】実施例8(プラスチック表面から剥離し
た、基底膜の構造が保持された人工組織の構築) 反応基を有する疎水結合性吸着ポリマーとして、メチル
ビニルエ−テルと無水マレイン酸との交互共重合体MM
ACを用いた。MMACは99.5%エタノールに溶解
し、濃度10μg/mlのMMAC溶液を得た。このM
MAC溶液を、6穴培養皿用カルチャーインサート(ベ
クトンディッキンソン社製)に0.5ml注ぎ、余分な
溶液を取り除いた後風乾した。この操作を所望する仮接
着の程度に応じて1〜3回繰り返し、カルチャーインサ
ート底面のPET膜表面をMMACでコーティングし
た。次いで、上記表面コーティングPET膜に、実施例
2で調製した肺線維芽細胞を含むコラーゲン溶液または
コラーゲンのみの溶液0.72mlを載置し、CO2
ンキュベータで1時間または数時間〜24時間インキュ
ベートし、PET膜表面に肺線維芽細胞マトリックス基
層(Fgel)または高密度コラーゲン線維(fib)
を仮接着した。この線維性コラーゲン基層上で実施例3
と同様にして、肺胞II型上皮細胞(T2)を播種し2週
間培養して(T2-Fgel、またはT2-fib-FcmやT2-fib-M
G)、人工肺胞上皮組織を構築した。この人工肺胞上皮
組織をスパチェラを用いてPET膜から機械的に剥離し
たところ、基底膜の構造が保持された人工肺胞上皮組織
が得られた。
【0047】
【発明の効果】本発明によると、基底膜や人工組織作製
時にはプラスチック表面に接着しているが、所望時にプ
ラスチック表面から人工組織や基底膜標品を担持したタ
ンパク性支持体を物理的に剥離させることができ、剥離
された人工組織や基底膜標品を担持したタンパク性支持
体は、基底膜の構造を保持したままで移植が可能とな
り、人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、人工皮膚、
人工角膜等としての再生医療材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】肺胞上皮細胞による基底膜形成を示す模式図で
ある。
【図2】肺動脈内皮細胞による基底膜形成を示す模式図
である。
【図3】上皮細胞と内皮細胞の共培養による基底膜の形
成を示す模式図である。
【図4】再構成基底膜標品を用いた内皮組織や上皮組織
の構築を示す模式図である。
【図5】肺胞II型細胞の糖鎖接着の特異性を示す図であ
る。
【図6】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間
培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子顕微
鏡写真を示す図である。
【図7】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で2週間
培養した結果形成された肺胞上皮組織直下の細胞外基質
の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8】肺胞II型上皮細胞を種々のPV-sugarをコーティ
ングした高密度コラーゲン線維(fib*)上で、培養
皿底面にコーティングした25μlマトリゲルと10日
間共培養した結果形成された肺胞上皮組織の透過型電子
顕微鏡写真(左)と肺胞上皮組織直下の細胞外基質の走
査型電子顕微鏡写真(右)を示す図である。
【図9】図2の培養方法によるヒト肺動脈血管内皮細胞
の基底膜形成の結果を示す細胞外基質の走査型電子顕微
鏡写真を示す図である。
【図10】種々のPV-sugarをコーティングした高密度コ
ラーゲン線維(fib*)上にヒト肺動脈血管内皮細胞
を播種し、肺線維芽細胞を包埋したコラーゲンゲルと2
週間共培養した(EC-fib*-Fcm)結果形成された血管内
皮細胞層直下の細胞外基質の走査型電子顕微鏡写真を示
す図である。
【図11】基底膜構造体上に構築された気道上皮組織の
透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図12】基底膜構造体上に構築されたヒト血管内皮組
織の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B033 NA02 NA16 NA42 NA45 NB02 NB57 NB58 NB63 NC10 NC12 NC13 NC15 ND12 NF06 NF07 NG05 NH10 4B065 AA91X AA93X AC20 BC31 BC41 BC46 CA26 CA44 CA60 4C081 AB13 AB19 AB21 AB35 BB09 CA05 CA07 CD11 CD34 DA02 DC03 EA01

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子内に、疎水性を有する直鎖状炭素骨
    格と、タンパク質と反応しうる官能基とを有する疎水結
    合性吸着ポリマーを介して、プラスチック表面に仮接着
    しているタンパク性支持体上に形成されていることを特
    徴とする基底膜標品又は人工組織。
  2. 【請求項2】 疎水結合性吸着ポリマーが、以下の一般
    式[I]で表される疎水結合性吸着ポリマーであること
    を特徴とする請求項1記載の基底膜標品又は人工組織。 【化1】 (式中、XはCH又はNHCHCOを示し、YはCH又
    はNHCR2COを示し、R1はH、C1〜C3のアルキ
    ル基、C1〜C3のアルコキシ基又はC6〜C8のアリ
    ール基を示し、R2はH又はC1〜C3のアルキル基を
    示し、Zは官能基(反応基)を示し相互に結合してもよ
    く、spacerは(−CH2−)p又は(−NHCHR3HCO
    −)qを示し、R3はH又はC1〜C3のアルキル基を示
    し、mは1以上の整数を、nは100〜20000の整
    数を、p及びqは独立して0又は1〜8の整数を、rは
    1以上の整数を示す。)
  3. 【請求項3】 一般式[I]で表される疎水結合性吸着
    ポリマーが、メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸と
    の交互共重合体であることを特徴とする請求項2記載の
    基底膜標品又は人工組織。
  4. 【請求項4】 基底膜標品が、基底膜を介してタンパク
    性支持体上に接着している基底膜形成能を有する細胞
    を、該細胞の脂質溶解能を有する溶媒とアルカリ溶液を
    用いて除去することにより作製された基底膜標品である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の基底膜
    標品又は人工組織。
  5. 【請求項5】 人工組織が、タンパク性支持体上で、基
    底膜形成能を有する細胞を培養することにより調製され
    た基底膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
    か記載の基底膜標品又は人工組織。
  6. 【請求項6】 人工組織が、基底膜形成能を有する細胞
    の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセプ
    ターを局在化させることができる糖鎖を備えたタンパク
    性支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養するこ
    とにより調製された人工組織であることを特徴とする請
    求項1〜4のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織。
  7. 【請求項7】 人工組織が、基底膜標品上に所定の基底
    膜形成能を有する細胞を播種し、培養することにより調
    製された再構築人工組織であることを特徴とする請求項
    1〜4のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織。
  8. 【請求項8】 基底膜形成能を有する細胞が、上皮細胞
    又は内皮細胞であることを特徴とする請求項1〜7のい
    ずれか記載の基底膜標品又は人工組織。
  9. 【請求項9】 タンパク性支持体が、線維芽細胞を包埋
    したコラーゲンゲルであることを特徴とする請求項1〜
    8のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織。
  10. 【請求項10】 人工組織が、人工表皮組織、人工角膜
    上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工
    腎糸球体組織、人工肝実質組織若しくは人工肺動脈血管
    内皮組織、又は人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、
    人工皮膚若しくは人工角膜であることを特徴とする請求
    項1〜9のいずれか記載の基底膜標品又は人工組織。
  11. 【請求項11】 分子内に、疎水性を有する直鎖状炭素
    骨格と、タンパク質と反応しうる官能基とを有する疎水
    結合性吸着ポリマーを介して、プラスチック表面にタン
    パク性支持体を仮接着し、その上に基底膜標品又は人工
    組織を形成させ、所望時にプラスチック表面から基底膜
    標品又は人工組織を担持したタンパク性支持体を物理的
    に剥離させることを特徴とする基底膜の構造を保持した
    ままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
  12. 【請求項12】 疎水結合性吸着ポリマーが、以下の一
    般式[I]で表される疎水結合性吸着ポリマーであるこ
    とを特徴とする請求項11記載の基底膜の構造を保持し
    たままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方
    法。 【化2】 (式中、XはCH又はNHCHCOを示し、YはCH又
    はNHCR2COを示し、R1はH、C1〜C3のアルキ
    ル基、C1〜C3のアルコキシ基又はC6〜C8のアリ
    ール基を示し、R2はH又はC1〜C3のアルキル基を
    示し、Zは官能基(反応基)を示し相互に結合してもよ
    く、spacerは(−CH2−)p又は(−NHCHR3HCO
    −)qを示し、R3はH又はC1〜C3のアルキル基を示
    し、mは1以上の整数を、nは100〜20000の整
    数を、p及びqは独立して0又は1〜8の整数を、rは
    1以上の整数を示す。)
  13. 【請求項13】 一般式[I]で表される疎水結合性吸
    着ポリマーが、メチルビニルエ−テルと無水マレイン酸
    との交互共重合体であることを特徴とする請求項12記
    載の基底膜の構造を保持したままで移植可能な基底膜標
    品又は人工組織の製造方法。
  14. 【請求項14】 基底膜標品が、基底膜を介してタンパ
    ク性支持体上に接着している基底膜形成能を有する細胞
    を、該細胞の脂質溶解能を有する溶媒とアルカリ溶液を
    用いて除去することにより作製された基底膜標品である
    ことを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載の基
    底膜の構造を保持したままで移植可能な基底膜標品又は
    人工組織の製造方法。
  15. 【請求項15】 人工組織が、タンパク性支持体上で、
    基底膜形成能を有する細胞を培養することにより調製さ
    れた基底膜であることを特徴とする請求項11〜14の
    いずれか記載の基底膜の構造を保持したままで移植可能
    な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
  16. 【請求項16】 人工組織が、基底膜形成能を有する細
    胞の基底面に、基底膜構成成分の集積作用を有するレセ
    プターを局在化させることができる糖鎖を備えたタンパ
    ク性支持体上で、基底膜形成能を有する細胞を培養する
    ことにより調製された人工組織であることを特徴とする
    請求項11〜14のいずれか記載の基底膜の構造を保持
    したままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方
    法。
  17. 【請求項17】 人工組織が、基底膜標品上に所定の基
    底膜形成能を有する細胞を播種し、培養することにより
    調製された再構築人工組織であることを特徴とする請求
    項11〜14のいずれか記載の基底膜の構造を保持した
    ままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
  18. 【請求項18】 基底膜形成能を有する細胞が、上皮細
    胞又は内皮細胞であることを特徴とする請求項11〜1
    7のいずれか記載の基底膜の構造を保持したままで移植
    可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
  19. 【請求項19】 タンパク性支持体が、線維芽細胞を包
    埋したコラーゲンゲルであることを特徴とする請求項1
    1〜18のいずれか記載の基底膜の構造を保持したまま
    で移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
  20. 【請求項20】 人工組織が、人工表皮組織、人工角膜
    上皮組織、人工肺胞上皮組織、人工気道上皮組織、人工
    腎糸球体組織、人工肝実質組織若しくは人工肺動脈血管
    内皮組織、又は人工血管、人工肺、人工肝、人工腎臓、
    人工皮膚若しくは人工角膜であることを特徴とする請求
    項11〜19のいずれか記載の基底膜の構造を保持した
    ままで移植可能な基底膜標品又は人工組織の製造方法。
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