JP2003147577A - クロムめっき部品およびその製造方法 - Google Patents

クロムめっき部品およびその製造方法

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JP2003147577A
JP2003147577A JP2001343005A JP2001343005A JP2003147577A JP 2003147577 A JP2003147577 A JP 2003147577A JP 2001343005 A JP2001343005 A JP 2001343005A JP 2001343005 A JP2001343005 A JP 2001343005A JP 2003147577 A JP2003147577 A JP 2003147577A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面の残留応力値が−100MPa以上であ
っても、耐食性を発揮するクロムめっき部品を提供し、
併せてこのクロムめっき部品を容易かつ安定して得るこ
とができる製造方法を提供する。 【解決手段】 パルスめっき処理を行ってクラックのな
いクロム層を形成した後、表面をバフ研磨により仕上加
工するクロムめっき部品の製造方法において、前記パル
スめっき処理によりクロム層に生じる電着応力値Aと、
前記仕上加工によりクロム層に付与される加工応力値B
と、温度上昇や時間の経過により生じるクロム層の応力
変化量Cとが、式[A+B+C<80MPa]を満足する
ように、前記パルスめっき処理におけるパルス波形、電
流密度、めっき浴温度、めっき浴組成等を調整し、かつ
仕上加工における使用バフの種類、加工条件等を調整す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に硬質のクロ
ム層を析出させたクロムめっき部品およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】ワーク表面に硬質のクロム層を析出させ
る汎用の硬質クロムめっき処理によれば、得られるクロ
ム層に金属素地に達するクラックが多数存在し、そのま
までは、腐食原因となる媒体が金属素地に到達して、耐
食性に劣るものとなる。そこで従来、腐食環境で使用さ
れる部品に対しては、一般に前処理としてニッケルめっ
きや銅めっきを施してクロムめっき層と同程度の膜厚の
下地を形成し、この下地の上に硬質クロムめっきを施す
ようにしていた。しかし、このような対策によれば、め
っき処理を工程を変えて2回行わなければならないた
め、工程増加による製造コストの上昇が避けられないよ
うになる。
【0003】一方、パルス電流を利用して、いわゆるパ
ルスめっき処理を行うことで、クラックのないクロム層
を形成できることが既に確認されており(例えば、特開
平3−207884号公報参照)、この方法によれば、
耐食性に優れたクロムめっき部品を1工程処理で得るこ
とができるようになる。しかし、このパルスめっき処理
によれば、熱履歴を受けるとクロム層に大きなクラック
(マクロクラック)が発生し易いという問題があり、熱
履歴を受ける部品への適用は断念せざるを得ないものと
なっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者等
は、上記マクロクラック発生について鋭意検討した結
果、クロム層に100MPa以上の圧縮残留応力(−1
00MPa以下)を付与することで、前記熱履歴に起因
するクラック発生を防止できることを見出し、既に特開
2000−199095号公報で明らかにしている。し
かしながら、この圧縮残留応力を付与したクロムめっき
部品について、その後さらに追加実験をしてみると、め
っき処理の直後に100MPaより小さい圧縮残留応力
(−100MPa超)を有しているにもかかわらず、条
件によっては250℃程度の高温までマクロクラックが
発生しないものがあることが分った。
【0005】本発明は、上記した技術的背景に鑑みてな
されたもので、その目的とするところは、広範な熱履歴
を経る場合にも優れた耐食性を発揮するクロムめっき部
品を提供すると共に、該クロムめっき部品を容易かつ安
定して得ることができる製造方法を提供することにあ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明に係るクロムめっき部品の製造方法は、クロム
めっき処理により、−100MPaより大きな初期電着
応力を有するクラックのないクロム層をワーク表面に形
成する工程と、前記クラックのないクロム層の表面を仕
上加工することにより、残留応力値を−100MPa以
下とする工程とからなることを特徴とする。上記目的を
達成するための本発明に係るクロムめっき部品は、クロ
ムめっき処理によりクラックのないクロム層をワーク表
面に形成したクロムめっき部品であって、使用状態にお
いて表面の残留応力値が、−100MPaより大きく8
0MPa以下であることを特徴とする。また、本発明に
係るクロムめっき部品は、クロムめっき処理により、−
100MPaより大きな初期電着応力を有するクラック
のないクロム層をワーク表面に形成したクロムめっき部
品であって、使用状態において表面の残留応力値が、8
0MPa以下であり、所望によりクロム層の表面を仕上
加工したことを特徴とする。さらに、本発明に係るクロ
ムめっき部品は、クロムめっき処理により、80MPa
より大きな初期電着応力を有するクラックのないクロム
層をワーク表面に形成し、このクラックのないクロム層
の表面を仕上加工することにより、残留応力値を80M
Pa以下とし、使用状態において表面の残留応力値が、
80MPa以下であることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0008】本実施の形態においては、先ず、パルスめ
っき処理を行ってワーク表面にクラックのないクロム層
を形成し、その後、ワーク表面をバフ研磨で仕上加工す
る。しかして、前記パルスめっき処理および研磨仕上加
工に際しては、クロム層に生じる電着応力値Aと、前記
研磨仕上加工によりクロム層に付与される加工応力値B
と、後に詳述するクロム層の微視的歪と相関する、温度
上昇および時間経過により生じるクロム層の応力変化量
Cとが、式(1)[A+B+C≦80MPa]を満足する
ように、換言すれば、ワークを製品化した使用状態にお
いて応力値が80MPa以下となるように前記パルスめ
っき処理並びに研磨仕上加工の条件を調整する。なお、
仕上加工としては、前記研磨仕上加工に限らず、例えば
ワーク表面を砥石で研削する研削仕上加工としてもよ
い。
【0009】上記パルスめっき処理に際しては、めっき
浴として、表1に示すような有機スルフォン酸を含むも
のを用いる。このめっき浴は、特公昭63−32874
号公報に記載されたものと同じ成分組成を有しており、
クロム酸と硫酸根とをベースとして有機スルフォン酸を
1〜18g/L 好適には1.5〜12g/L含んでいる。な
お、有機スルフォン酸を含まない、クロム酸−硫酸浴
(サージェント浴)や珪弗化物(SiF6)を含む混合
触媒浴を用いてもよい。
【0010】
【表1】
【0011】また、パルスめっき処理に際して印加する
パルス電流の波形としては、図1に示すように最大電流
密度IUと最小電流密度ILとの間を交番し、かつ最大電流
密度IUと最小電流密度ILとに所定時間T1、T2保持する形
態となっている。最小電流密度ILは、ここではゼロ(オ
フ)に設定しているが、最大電流密度IUとゼロとの間の
任意の値に設定してもよいことはもちろんである。ま
た、保持時間T1およびT2については、同一の値に設定し
ても異なる値に設定してもよい。
【0012】本実施の形態においては、上記最大電流密
度IU並びに最小電流密度ILおよび上記保持時間T1、T2を
適当な値に設定し、さらに浴温度を50〜80℃として上記
めっき浴中でパルスめっき処理を行って、上記したクロ
ム層に生じる電着応力値Aおよび雰囲気の温度上昇によ
り生じるクロム層の応力変化量Cを制御する。一方、研
磨仕上加工に際しては、不織布を基材とするセンタレス
バフ(クレノートン社製ベアテックスGD)を用い、負
荷電流を調整して上記した研磨仕上加工によりクロム層
に付与される加工応力値Bを制御する。
【0013】ここで、温度上昇によるクロム層の応力変
化はクロム層の熱収縮に起因する現象であり、その応力
変化量Cは、図2に示すようにクロム層の微視的歪εお
よび雰囲気温度と相関する。前記微視的歪εは、X線回
折法による回折X線のプロファイルの広がりを半価幅と
して測定することで、下記のHallの式(2)から求める
ことができる。 β・cosθ/λ=1/D+ε・sinθ/λ …(2) この式において、βは半価幅、εは微視的歪、Dは結晶
子の大きさ、λはX線の波長であり、半価幅βの測定
は、同一方向の格子面である{110}と{220}で
行う。図2は、後述の実施例データに基いて求めたもの
で、微視的歪εが小さいほど加熱によるクロム層の応力
変化量Cは小さく、熱的に安定する。また、応力変化量
Cは、時間と共に変化するが、時間の経過により安定
し、変化が小さくなる。常温では、1ケ月程度で安定
し、150℃では1日程度で安定する。
【0014】このようにして製造されたクロムめっき部
品は、めっき処理によりクロム層に生じる電着応力値A
と、前記研磨仕上げによりクロム層に付与される加工応
力値Bと、温度上昇および時間の経過により生じるクロ
ム層の応力変化量Cとが、上記(1)式を満足するよう
に制御されているので、広範な熱履歴を経てもクロム層
にマクロクラックが発生せず、優れた耐食性を維持する
ものとなる。
【0015】
【実施例】実施例1 JIS S45Cからなる鋼棒(直径20mm)を供試材とし、
めっき浴としてクロム酸250 g/L 、硫酸根3.5 g/L 、有
機スルフォン酸4g/L の成分組成のものを用い、浴温59
℃、最大電流密度IU =200 A/dm2 、最小電流密度IL
=0 A/dm2(図1のパターン)、最大電流密度IU にお
ける保持時間(オンタイム)T1 =0.6、0.4、0.2m
s、最小電流密度IL における保持時間(オフタイム)
2 =0.2msの条件でパルスめっき処理を行い、ワー
ク表面に厚さ約20μmのクロム層を有しかつ初期電着応
力(残留応力)Aが3水準に異なる3種類の試料1,2,
3を得た。なお、初期電着応力の測定は、日本非破壊検
査協会編「非破壊検査」第37巻第8号636〜642頁に記載
される「X線応力測定法」を用いて行った。以下、クロ
ム層の残留応力の測定には本法を用いた。
【0016】次に、上記試料1〜3をバフ研磨に供し、
その表面を仕上加工した。バフ研磨は、前記不織布を基
材とするセンタレスバフを用い、加工速度を1400mm/min
に固定して、負荷電流を変えて表面クロム層に付与する
加工応力を調整した。バフ研磨条件(負荷電流、加工速
度)の指標としては、試料の仕上加工に要した単位表面
積あたりの消費エネルギー(仕事量)Wを以下の式
(3)から導いた。 W=E・I・n/v・π・d(単位は、V・A・min/mm2) …(3) ここで、E:モータの負荷電圧 I:モータの負荷電流(仕上加工時のモータ電流−無負
荷電流) n:加工回数 v:加工速度(試料送り速度) π:円周率 d:試料外径 上記(3)式より、消費エネルギー(仕事量)Wは、モ
ータ負荷電流が+1Aの場合、試料の外径を20mm、モー
タ負荷電圧を200V、加工速度を1400mm/min、加工回数を
1とすると、0.00227(V・A・min/mm2)となる。同様
に、モータ負荷電流が+2A、+3Aの場合は、それぞれ
W=0.00455(V・A・min/mm2)、W=0.00682(V・A・m
in/mm2)となる。
【0017】上記の要領でバフ研磨(仕上加工)を行っ
て、各試料1〜3について残留応力値が3水準に異なる
3種類の試料1A,1B,1C、2A,2B,2C、3A,
3B,3Cを得た。この場合、各試料のバフ研磨後の残
留応力値から上記初期電着応力値Aを減算した値が、バ
フ研磨によりクロム層に付与された加工応力Bとなる。
次に、上記試料1A〜C、2A〜C、3A〜Cを熱処理
に供し、20℃(常温)に23064時間、150℃に2時間、20
0℃に2時間保持する熱履歴をそれぞれ与えて、それぞ
れ9種類の試料を得た。この9種類の試料については、
以下、前記試料1A〜C、2A〜C、3A〜Cに前記温
度を付して、試料1A20,1A150,1A200… …3C
20,3C150,3C200のように表記することとする。そ
して、このようにして得た試料について残留応力を測定
すると共に、クロム層内におけるクラック(マクロクラ
ック)の有無を観察した。この場合、加熱後残留応力値
から上記バフ研磨後残留応力値を減算した値が、温度上
昇により生じるクロム層の応力変化量Cとなる。
【0018】表2は、上記した各試料についてのパルス
めっき条件、熱履歴条件、残留応力の測定結果、残留応
力の測定結果から求めた加工応力値Bおよび応力変化量
C、クラックの観察結果等を一括して示したものであ
る。また、図3〜5は、パルスめっき処理後、仕上加工
後、熱処理後における残留応力変化並びにクラック発生
状況を各試料1,2,3ごとに整理して示したものであ
る。
【0019】
【表2】
【0020】表2および図1〜3に示す結果より、クラ
ックのないクロム層の残留応力は、初期電着応力(残留
応力)が引張残留応力であるか圧縮残留応力であるかに
かかわらず、バフ研磨(仕上加工)により一旦圧縮側へ
変化した後、加熱処理により引張側へ変化している。ま
た、クラック発生の有無との関係でみれば、全体として
は、初期電着応力値が小さくかつバフ研磨後の圧縮残留
応力値が大きいほどクラックが発生し難くなっている。
しかし、初期電着応力値が同じでかつバフ研磨後の残留
応力値が同じであっても、クラックを発生しないものと
発生するものとがあり(1C150と1C200、2B150と
2B200、2C150と2C200、3A150と3A200)、ク
ラック発生に対して加熱による応力変化量も大きく影響
していることが明らかである。さらに、初期電着応力値
Aと、加工応力値Bと加熱による応力変化量Cとの合計
量(A+B+C)とクラック発生の有無との間には密接
な相関が認められ、この合計量が83MPa(1B20)
以上ではクラックが発生しているのに対し、この合計量
が64MPa(1C150)以下ではクラック発生が皆無
となっている。
【0021】実施例2 JIS S45Cからなる鋼棒(直径20mm)を供試材とし、
めっき浴としてクロム酸250 g/L 、硫酸根3.5 g/L 、有
機スルフォン酸4g/L の成分組成のものを用い、浴温59
℃、最大電流密度IU =120 A/dm2 、最小電流密度IL
=0 A/dm2(図1のパターン)、オンタイムT1 =0.
6、0.4、0.2 ms、オフタイムT2 =0.2msの条件で
パルスめっき処理を行い、表面に厚さ約20μmのクロム
層を有しかつ初期電着応力(残留応力)Aが3水準に異
なる3種類の試料4,5,6を得た。
【0022】次に、上記試料4〜6をバフ研磨に供し、
実施例1と同様に、不織布を基材とするセンタレスバフ
を用いて、加工速度固定(1400mm/min)のもと、負荷電
流を変えて表面クロム層に付与する加工応力を調整し、
各試料4〜6について残留応力値が3水準に異なる3種
類の試料4A,4B,4C、5A,5B,5C、6A,6B,
6Cを得た。この場合、各試料のバフ研磨後の残留応力
値から上記初期電着応力値Aを減算した値が、バフ研磨
によりクロム層に付与された加工応力Bとなることは、
実施例1の場合と同様である。次に、上記試料4A〜
C、5A〜C、6A〜Cを熱処理に供し、20℃(常温)
に23064時間、150℃に2時間、200℃に2時間保持する
熱履歴をそれぞれ与えて、それぞれ9種類の試料を得
た。この9種類の試料については、以下、前記試料4A
〜C、5A〜C、6A〜Cに前記温度を付して、試料4
A20,4A150,4A200… …6C20,6C150,6C2
00のように表記することとする。そして、このようにし
て得た試料について残留応力を測定すると共に、クロム
層内におけるクラック(マクロクラック)の有無を観察
した。この場合、加熱後残留応力値から上記バフ研磨後
残留応力値を減算した値が、温度上昇により生じるクロ
ム層の応力変化量Cとなることは、実施例1の場合と同
様である。表3は、上記した各試料についてのパルスめ
っき条件、熱履歴条件、残留応力の測定結果、残留応力
の測定結果から求めた加工応力値Bおよび応力変化量
C、クラックの観察結果等を一括して示したものであ
る。また、図6〜8は、パルスめっき処理後、仕上加工
後、熱処理後における残留応力変化並びにクラック発生
状況を各試料4,5,6ごとに整理して示したものであ
る。
【0023】
【表3】
【0024】表3および図6〜8に示す結果より、クラ
ックのないクロム層の残留応力は、実施例1と同様にバ
フ研磨(仕上加工)により一旦圧縮側へ変化した後、加
熱処理により引張側へ変化している。また、クラック発
生との相関でみれば、全体としては、初期電着応力値が
小さくかつバフ研磨後の圧縮残留応力値が大きいほどク
ラックが発生し難くなっている。しかし、初期電着応力
値が同じでかつバフ研磨後の残留応力値が同じであって
も、クラックを発生しないものと発生するものとがあり
(4B20と4B150、4C150と4C200、5A20と5A1
50、5B150と5B200、6A150と6A200)、実施例1
と同様にクラック発生に対して加熱による応力変化量も
大きく影響していることが明らかである。さらに、初期
電着応力値Aと、加工応力値Bと加熱による応力変化量
Cとの合計量(A+B+C)とクラック発生の有無との
間には密接な相関が認められ、この合計量が83MPa
(6A200)以上ではクラックが発生しているのに対
し、この合計量が74MPa(4B20)以下ではクラッ
ク発生が皆無となっている。すなわち、初期電着応力値
Aと、加工応力値Bと加熱による応力変化量Cとの合計
量(A+B+C)の80MPa付近に、クラック発生の
有無の分岐点が存在することは明らかで、したがって、
広範な熱履歴を経る場合にも優れた耐食性を発揮するク
ロムめっき部品を得るには、前記合計量(A+B+C)
を80MPa未満に抑える必要がある。なお、応力値は
80MPa以下(負の値を含む)であればよく、その下
限はないが、実験上では−500MPa以下のものは製
造不能である。
【0025】また、実施例1との相違は、パルスめっき
処理時における最大電流密度IU として、実施例1(20
0 A/dm2)より小さい120 A/dm2を選択した点にある。そ
して、このめっき条件の変更により、めっき層に生じる
初期電着応力値Aは、実施例1よりも平均的に30MP
aほど引張側へ増大しているが、これと相対に、加熱に
よる応力変化量Cは、実施例1よりも40〜75MPa
ほど小さくなっている。すなわち、本実施例2によれ
ば、初期電着応力値Aの増大分を相殺する量よりも大き
な、加熱による応力変化量Cの低減を得ており、この結
果、全体としてクラックを発生する試料の数が少なくな
っている。
【0026】実施例3 JIS S45Cからなる鋼棒(直径20mm)を供試材とし、
めっき浴としてクロム酸250 g/L 、硫酸根3.5 g/L 、有
機スルフォン酸4g/L の成分組成のものを用い、浴温65
℃、最大電流密度IU =120 A/dm2 、最小電流密度IL
=0 A/dm2(図1のパターン)、オンタイムT1 =0.
8、0.6、0.4、0.2 ms、オフタイムT2=0.2 msの条
件でパルスめっき処理を行い、表面に厚さ約20μmのク
ロム層を有しかつ初期電着応力(残留応力)Aが4水準
に異なる4種類の試料7,8,9,10を得た。
【0027】次に、上記試料7〜10をバフ研磨に供
し、その表面を、前記不織布を基材とするセンタレスバ
フを用いて、加工速度固定(1400mm/min)のもと、負荷
電流を変えて表面クロム層に付与する加工応力を調整
し、各試料7〜10について残留応力値が3水準に異な
る3種類の試料7A,7B,7C、8A,8B,8C、9
A,9B,9C、10A,10B,10Cを得た。この場
合、各試料のバフ研磨後の残留応力値から上記初期電着
応力値Aを減算した値が、バフ研磨によりクロム層に付
与された加工応力Bとなることは、実施例1、2の場合
と同様である。次に、上記試料7A〜C、8A〜C、9
A〜C、10A〜10Cを熱処理に供し、20℃(常温)
に23064時間、150℃に2時間、200℃に2時間保持する
熱履歴をそれぞれ与えて、それぞれ12種類の試料を得
た。この12種類の試料については、以下、前記試料7
A〜C、8A〜C、9A〜C、10A〜10Cに前記温
度を付して、試料7A20,7A150,7A200… …10
C20,10C150,10C200のように表記することとす
る。そして、このようにして得た試料について残留応力
を測定すると共に、クロム層内におけるクラック(マク
ロクラック)の有無を観察した。この場合、加熱後残留
応力値から上記バフ研磨後残留応力値を減算した値が、
温度上昇により生じるクロム層の応力変化量Cとなるこ
とは実施例1、2の場合と同様である。表4および表5
は、上記した各試料についてのパルスめっき条件、熱履
歴条件、残留応力の測定結果、残留応力の測定結果から
求めた加工応力値Bおよび応力変化量C、クラックの観
察結果等を一括して示したものである。また、図9〜1
2は、パルスめっき処理後、仕上加工後、熱処理後にお
ける残留応力変化並びにクラック発生状況を各試料7,
8,9,10ごとに整理して示したものである。
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】表4、表5および図9〜12に示す結果よ
り、クラックのないクロム層の残留応力は、実施例1、
2と同様にバフ研磨(仕上加工)により一旦圧縮側へ変
化した後、加熱処理により引張側へ変化している。ま
た、クラック発生との相関でみれば、全体としては、初
期電着応力値が小さくかつバフ研磨後の圧縮残留応力値
が大きいほどクラックが発生し難くなっている。しか
し、初期電着応力値が同じでかつバフ研磨後の残留応力
値が同じであっても、クラックを発生しないものと発生
するものとがあり(8A20と8A150、8B150と8B20
0、9A150と9A200)、実施例1、2と同様にクラッ
ク発生に対して加熱による応力変化量も大きく影響して
いることが明らかである。さらに、初期電着応力値A
と、加工応力値Bと加熱による応力変化量Cとの合計量
(A+B+C)とクラック発生の有無との間には密接な
相関が認められ、この合計量が119MPa(8B20
0)以上ではクラックが発生しているのに対し、この合
計量が75MPa(8A20)以下ではクラック発生が皆
無となっている。さらに、試料7においては初期電着応
力が123MPaと大きいにもかかわらず、研磨後に5
0MPa以下として、使用時に合計量が67MPa以下
であればクラックは発生していない。
【0031】また、実施例2との相違は、パルスめっき
処理時における浴温度として、実施例2(59℃)より6
℃ほど高い65℃に設定した点にある。そして、このめっ
き条件の変更により、めっき層に生じる初期電着応力値
Aは、実施例2とほとんど差がないものの、加熱による
応力変化量Cは、実施例2よりも40〜100MPaほ
ど小さくなっている。すなわち、本実施例3によれば、
実施例2よりもさらに、加熱による応力変化量Cの大き
な低減を得ており、この結果、全体としてクラックを発
生する試料の数は著しく少なくなっている。
【0032】上記した実施例1乃至3より以下のような
条件により残留圧縮応力が100MPa以上(−100
MPa以下)であっても、クラックの発生しないクロム
めっき部品を得ることができることが分った。 表面仕上を行った後の応力値が、−100MPa以下
であれば、使用雰囲気温度が150℃程度まではクラッ
クが発生しない。 クロムめっきを施したクラックのない部品が、使用状
態において応力値が80MPa以下を保つことができれ
ばクラックは発生しない。この応力値の増加を防ぐこと
は、表面処理完了時の微視的歪を小さくすることにより
達成できる。初期電着応力値が80MPa以上であっ
ても、表面の仕上加工により80MPa以下とし、使用
状態においても応力値が80MPa以下に保つことがで
きれば、クラックは発生しない(試料7参照)。
【0033】
【発明の効果】上記したように、本発明に係るクロムめ
っき部品およびその製造方法によれば、常温付近におい
てはもちろん、広範な熱履歴を経る場合にも優れた耐食
性を発揮するクロムめっき部品を安定して得ることがで
きる。また、めっき条件のわずかの変更と研磨仕上げの
加工条件のわずかの変更で対処できるので、生産性はも
とより製造コストが犠牲になることもなく、総じて本発
明の利用価値は大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で実施するクロムめっき処理におけるパ
ルス波形の一例を示すグラフである。
【図2】加熱による応力変化量に及ぼすクロム層の微視
的歪および加熱温度の影響を示すグラフである。
【図3】実施例1の1つのグループにおける残留応力の
各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフで
ある。
【図4】実施例1の他のグループにおける残留応力の各
処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフであ
る。
【図5】実施例1のさらに他のグループにおける残留応
力の各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラ
フである。
【図6】実施例2の1つのグループにおける残留応力の
各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフで
ある。
【図7】実施例2の他のグループにおける残留応力の各
処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフであ
る。
【図8】実施例2のさらに他のグループにおける残留応
力の各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラ
フである。
【図9】実施例3の1つのグループにおける残留応力の
各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフで
ある。
【図10】実施例3の他のグループにおける残留応力の
各処理による変化とクラック発生状況とを示すグラフで
ある。
【図11】実施例3のさらに他のグループにおける残留
応力の各処理による変化とクラック発生状況とを示すグ
ラフである。
【図12】実施例3のさらに他のグループにおける残留
応力の各処理による変化とクラック発生状況とを示すグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大澤 聡 神奈川県川崎市川崎区富士見1丁目6番3 号 トキコ株式会社内 (72)発明者 渡辺 和夫 神奈川県横浜市緑区白山1丁目18番2号 アトテックジャパン株式会社内 Fターム(参考) 4K024 AA02 AB01 BA02 CA01 CA04 CA06 CA07 DB01 DB07 GA04 GA16

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クロムめっき処理により、−100MP
    aより大きな初期電着応力を有するクラックのないクロ
    ム層をワーク表面に形成する工程と、前記クラックのな
    いクロム層の表面を仕上加工することにより、残留応力
    値を−100MPa以下とする工程とからなることを特
    徴とするクロムめっき部品の製造方法。
  2. 【請求項2】 クロムめっき処理によりクラックのない
    クロム層をワーク表面に形成したクロムめっき部品であ
    って、使用状態において表面の残留応力値が、−100
    MPaより大きく80MPa以下であることを特徴とす
    るクロムめっき部品。
  3. 【請求項3】 クロムめっき処理により、−100MP
    aより大きな初期電着応力を有するクラックのないクロ
    ム層をワーク表面に形成したクロムめっき部品であっ
    て、使用状態において表面の残留応力値が、80MPa
    以下であることを特徴とするクロムめっき部品。
  4. 【請求項4】 クロム層の表面を仕上加工したことを特
    徴とする請求項2または3に記載のクロムめっき部品。
  5. 【請求項5】 クロムめっき処理により、80MPaよ
    り大きな初期電着応力を有するクラックのないクロム層
    をワーク表面に形成し、このクラックのないクロム層の
    表面を仕上加工することにより、残留応力値を80MP
    a以下とし、使用状態において表面の残留応力値が80
    MPa以下であることを特徴とするクロムめっき部品。
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