JP2003136840A - 光情報記録媒体 - Google Patents
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Abstract
のオーバーライト特性が向上した、繰り返し記録信頼性
の良好な光情報記録媒体の提供。 【解決手段】1)基板上に少なくとも記録層と反射層を
有し、光を照射することにより情報を記録、再生又は消
去することができ、光照射(記録)パワーPwで記録し
たときの変調度をM(Pw)とするとき、M(Pw)が
Pwに対して連続であり、M(Pw)が光照射(記録)
パワーPwn(n=1,2,3…)で変曲点を持つこと
を特徴とする光情報記録媒体。 2)媒体の最適記録パワーをPwoとするとき、Pwn
とPwoが次の関係を満足することを特徴とする請求項
1記載の光情報記録媒体。 0.7≦Pwn/Pwo≦0.9
Description
材料とし、光学的に情報を記録再生する光情報記録媒
体、特にCD−RW、DVD−RAM、DVD−RW、
DVD+RW、PDに代表される相変化型光ディスクに
関する。
光ディスクでは、記録を単一ビーム照射の強度変調のみ
で行えるため、記録装置の単純化が可能であると同時
に、再生専用装置(記録層を持たず、基板上にピットを
作成した媒体を再生するために設計された装置)でも再
生可能であるという利点がある。これらの幅広い互換性
と記録装置の単純化が可能な点から広く普及し始めてい
る。しかし、記録が急冷と徐冷で行なわれるため、記録
速度(媒体上の記録装置・光ビームの走査速度)の影響
を受け易く、幅広い線速をカバーすることが困難であ
り、特に速い記録速度に対応するのが非常に困難であ
り、更に繰り返し記録特性(オーバーライト特性)の向
上が課題となっている。これは、速い記録速度では記録
層に徐冷のヒートモードを作ることが困難になるため、
結晶化によるマーク消去が困難になるためとされてい
る。
12.0m/s以上の記録速度でのオーバーライト特性
が向上した、繰り返し記録信頼性の良好な光情報記録媒
体の提供を目的とする。
7)の発明(以下、本発明1〜7という。)によって解
決される 1) 基板上に少なくとも記録層と反射層を有し、光を
照射することにより情報を記録、再生又は消去すること
ができ、光照射(記録)パワーPwで記録したときの変
調度をM(Pw)とするとき、M(Pw)がPwに対し
て連続であり、M(Pw)が光照射(記録)パワーPw
n(n=1,2,3…)で変曲点を持つことを特徴とす
る光情報記録媒体。 2) 媒体の最適記録パワーをPwoとするとき、Pw
nとPwoが次の関係を満足することを特徴とする1)
記載の光情報記録媒体。 0.7≦Pwn/Pwo≦0.9 3) 変曲点での変調度M(Pwn)が、次の式を満足
することを特徴とする1)又は2)記載の光情報記録媒
体。 0.4≦M(Pwn)≦0.55 4) 記録層材料が、MαGeβSbγTeδ(α,
β,γ,δは原子パーセント、MはAl、Ga、In、
Bi、Dy、Ag、Mgの何れか)を主成分とし、次の
組成比を満足する合金からなることを特徴とする1)〜
3)の何れかに記載の光情報記録媒体。 2≦α≦6 1≦β≦4 65≦γ≦80 15≦δ≦25 α+β+γ+δ≧95% 5) 反射層がAgを主成分とする材料からなることを
特徴とする1)〜4)の何れかに記載の光情報記録媒
体。 6) 反射層のAg含有率が97原子パーセント以上で
あることを特徴とする5)記載の光情報記録媒体。 7) 記録層と反射層の間に、膜厚が5〜100nmの
範囲にある少なくとも1層の上部保護層を有することを
特徴とする1)〜6)の何れかに記載の光情報記録媒
体。
る。本発明の光情報記録媒体は、基板上に少なくとも記
録層と反射層をそれぞれ一層以上有する。図1に、記録
及び再生を基板側から行い、記録層材料に相変化物質を
用いた媒体の層構成例を示す。図1は媒体の断面図であ
り、情報の記録及び再生は図1の下方の基板(1)側か
ら光を入射することにより行う。基板(1)上には少な
くとも記録層(3)と反射層(5)が形成されているこ
とが必要であり、更に記録層から反射層への熱拡散防止
と記録層にかかる照射光をエネルギーに変換する効率の
向上のために、上部保護層(4)を形成することが好ま
しく、記録時にかかる熱エネルギーによる損傷防止と干
渉による媒体反射率の確保のために下部保護層(2)を
形成することが好ましい。更にこれらの機能性薄膜を腐
食等の化学的損傷やキズ等の物理的損傷から保護するた
めにオーバーコート層(6)を形成することが好まし
い。
って任意に選択でき、例えばカード型やディスク型があ
るが、媒体の記録再生に際し、記録装置の光学系を固定
し、高速に媒体上を走査するためには、媒体を回転でき
る利点からディスク形状の方が好ましい。その直径は任
意であるが、φ50mm〜φ200mmの範囲が好まし
く、より好ましくはφ80mm〜φ140mmの範囲で
ある。基板の厚さは、媒体に要求される強度(機械的特
性)と光学特性から決定される。記録再生光が基板を透
過する場合には、基板が厚いと焦点距離の長い対物レン
ズが必要となり、高い開口数(NA)を採用した高密度
記録が困難になる。また薄い基板を用いると、特に樹脂
材料を用いた場合に強度不足となり、媒体の信頼性を著
しく低下させるので好ましくない。従って、基板の厚さ
としては0.2〜2.0mmの範囲が好ましく、特に好
ましいのは0.5〜1.3mmの範囲であり、具体例と
してはコンパクトディスク(CD)の1.2mm、デジ
タルヴァーサタイルディスク(DVD)の0.6mmな
どがある。
おいて略透明であることが必要であり、この条件を満足
する基板材料としては、ガラス、セラミック、樹脂等が
挙げられるが、加工のし易さとコスト、生産性を考慮す
ると樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ポリカ
ーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリス
チレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹
脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコー
ン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂な
どがあり、成型性、光学特性、コストの点で優れたポリ
カーボネート樹脂、アクリル樹脂が好ましい。また、基
板は射出成形で作成するのが好ましい。
制御用の案内溝を形成しても良く、案内溝は連続でも不
連続でもよい。更にアドレス情報や位置情報を付加して
も構わない。ディスク形状の媒体の場合、案内溝は同心
円状又は螺旋状に形成され、その溝の間隔は媒体に対応
する記録再生装置の光学系及び媒体の記録密度によって
決定される。また、溝の間隔は対物レンズのNA及び記
録波長などの光学系によって制限される。溝間隔の具体
例としては、NA0.65、記録波長655nmの光学
系を用いるDVDの場合の0.74μm、NA0.50
の対物レンズ及び記録波長780nmの光学系を用いる
CDの場合の1.6μm、NA0.55の対物レンズ及
び記録波長780nmの光学系を用いる倍密コンパクト
ディスク(DDCD)の場合の1.1μmなどが挙げら
れる。案内溝の幅は、溝間隔よりも小さくする必要があ
り、溝間隔の1/2〜1/5程度が好ましい。溝深さ
は、記録再生波長にπ程度の位相差を生じるようにする
ことが好ましく、例として屈折率1.5の基板の場合は
波長の1/6にする。
る。記録される情報は光学的に識別可能である記録マー
クであり、記録マークは記録装置から対物レンズで集光
された光ビームを照射し記録層及びその近傍にエネルギ
ーを加えることで形成する。記録層材料には、光照射に
よる加熱で状態変化を生じる材料が用いられるが、単一
ビームの強度変調のみで記録及び消去を可能とするため
には、相変化材料を用いる。このような相変化材料とし
ては、安定又は準安定な2つ以上の相の間で可逆的に変
化し得るものである必要があり、これらの異なる相にお
いては、再生波長領域で光学特性(屈折率、複屈折率)
が異なることが必要である。そして、光学特性が異なる
ためには微細構造を異にする必要があり、微細構造とし
ては、結晶構造、分子配向、原子配向(磁気配向)等が
例として挙げられる。
は、ヒートモードのみで記録が可能であり記録装置及び
媒体の双方の構成を単純化できることから、結晶−アモ
ルファス相転移をする合金が好ましい。特に、SbTe
系の合金に1種又は2種以上の元素を添加したものを用
いることにより、アモルファスマークの消去を容易にで
き、消去性能及び繰り返し記録性能の高い光情報記録媒
体を得ることが可能となる。上記添加元素としては、C
u、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、C、
Si、Ge、Sn、Pb、As、S、Se、Mg、C
a、Sr、Gd、Tb、Dyなどが挙げられ、好ましい
合金系としては、AgInSbTe系、GeSbTe
系、GeInSbTe系、GeAgInSbTe系、G
eGaSbTe系、GeGaInSbTe系等が挙げら
れる。更に、これらの合金系に合金構成元素と重複しな
い上記添加元素を微量加えてもよい。
ては、MαGeβSbγTeδ(α,β,γ,δは原子
パーセント、MはAl、Ga、In、Bi、Dy、A
g、Mgの何れか)を主成分とし、次の組成比を満足す
る合金が挙げられる。 2≦α≦6 1≦β≦4 65≦γ≦80 15≦δ≦25 α+β+γ+δ≧95%
が好ましい。真空成膜法としては、真空蒸着法、CVD
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があ
り、合金の構成元素への依存性の低さ、生産性の高さか
らスパッタリング法が好ましく、特に、成膜速度の点で
DCマグネトロンスパッタリング法が好ましい。スパッ
タリング雰囲気には、通常希ガスを用いるが、この希ガ
スに微量の窒素又は酸素を混合して、これらを記録層中
に混入させても構わない。記録層の膜厚は、光学特性と
熱的特性から最適化され、十分な信号振幅と高い繰り返
し記録特性を得るために10〜30nm程度であること
が好ましく、更に好ましくは10〜20nmである。
時に媒体にかかる熱を逃がす放熱層としての機能も兼ね
る。反射層の材料としては、Cu、Ag、Au、Al、
Siの何れかを主成分とするものが用いられるが、反射
率、熱伝導率などの点でAgを主成分とするものが好ま
しく、特にAgを97原子%以上含有するものが好まし
い。反射層には、微量の添加物を加えても良く、このよ
うな添加物としては、例えばTi、Cr、C、Pd、T
aが挙げられる。また、Cu、Ag、Au、Al、Si
の何れかを微量の添加物として加えることも可能であ
る。反射層の形成は前述の記録層と同様の方法を用い
る。反射層の膜厚としては、十分な反射率と記録感度を
確保できるように設定する必要があり、50〜300n
mの範囲が好ましく、更に好ましくは100〜200n
mである。
護するために、記録層の上下に保護層を設けることもで
きる。保護層の材料としては記録再生波長で略透明な材
料であることが必要である。このような材料としては、
SiO、SiO2、ZnO、SnO2、Al2O3、T
iO2、In2O3、ZrO2などの金属酸化物;Si
3N4、AlN、TiN、BN、ZrN、GeN、Ga
Nなどの窒化物;ZnS、In2S3、TaS4などの
硫化物;SiC、TaC、B4C、WC、TiC、Zr
Cなどの炭化物;ダイヤモンド状カーボンなどが挙げら
れる。これらの材料は、単体でも2種類以上の混合物と
して用いても良く、必要に応じて添加物を加えてもよ
い。また、保護層材料の融点は、記録層材料の融点より
も高くすることが必要であり、好ましくは600℃以上
である。更に、下部保護層、上部保護層に異なる材料を
用いても良く、膜厚も独立に設定してよいし、複数の材
料を順次積層して多層保護層としてもよい。
を有する必要があり、50〜200nmとすることが好
ましく、更に好ましくは50〜100nmである。上部
保護層は、記録層材料の拡散を防止すると共に記録層に
かかる熱を反射層に効率良く逃がす機能を有する必要が
あるので、好ましい膜厚は5〜100nmであり、更に
好ましくは10〜30nmである。この範囲の膜厚に設
定することにより、媒体を急冷構造として記録層を急冷
できるので、容易にアモルファスマークを作ることがで
きる。保護層の成膜法としては、真空蒸着法、CVD
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等があ
るが、生産性の点からスパッタリング法が好ましい。ス
パッタリング法としては、酸素、窒素、硫黄化合物等の
ガスを用いた反応性スパッタリング法を用いても、化合
物や混合物ターゲットを用いた通常のスパッタリング法
を用いても良い。これらの場合、ターゲットが絶縁体、
電気伝導度の低い物質又は半導体の場合には、RFマグ
ネトロンスパッタリング法を用いるのが好ましい。
や腐食などの化学的損傷から保護するためにオーバーコ
ート層を設ける。オーバーコート層には任意の材料を使
用できるが、樹脂が好ましく、特に光硬化樹脂が好まし
い。オーバーコート層の膜厚は、損傷を防ぐために1〜
100μmの範囲とすることが好ましく、更に環境変動
による応力の低減を考慮すると3〜50μmとすること
がより好ましい。オーバーコート層の成膜には、スピン
コーティング法、ディッピング法などの公知の方法を用
いることができる。
は、記録層の初期化が必要である。記録層の形成直後は
通常急冷状態にあるため、準安定状態であるアモルファ
ス相となっている。通常アモルファス状態では媒体の反
射率が低く十分な再生信号強度が得られないので、より
反射率の高い結晶状態にする必要があり、そのための処
理を初期化と呼ぶ。初期化は、高出力レーザー光を適切
な対物レンズで記録層近傍に照射し走査させて結晶化す
ることにより行う。この方法は、記録層近傍のみを加熱
でき、媒体が樹脂を含む構成であっても、樹脂の融解、
熱的損傷を防止することが可能であるため好ましい。レ
ーザー光源としては高出力の半導体レーザーを用いる。
集光されたビーム径は、好ましくは1〜300μmと
し、ビーム形状は、走査方向に短く走査方向と垂直な方
向に長くして媒体全面の初期化時間を短縮することが好
ましい。走査速度とレーザーの出力は、媒体の結晶化状
態で最適化される必要があり、出力は0.1〜4Wの範
囲が好ましく、走査速度は2.0〜8.0m/sの範囲
が好ましい。
対物レンズで集光された光を記録層近傍に照射及び走査
することにより行うが、記録される情報は2値化するた
めに変調されなくてはならない。2値化の変調方式とし
てはマーク位置変調、マーク長変調などがあるが、情報
の高密度化、高速記録再生に適しているマーク長変調が
好ましい。マーク長変調方式の例としては、CDで採用
されるEFM(Eight−to−Fourteen
Modulation)、DVDで採用されるEFM+
等が例示できる。情報の記録は、記録層中にアモルファ
スのマークを形成することにより行う。記録マークの形
成は、照射する光の強度(パワー)を変調することによ
り行うが、その記録方法の例を図2に示す。
調したものである。横軸は時間を示し、縦軸は2値化さ
れた情報のHigh(高い)レベルとLow(低い)レ
ベルに相当する。高いレベル1がピットを形成する個所
であり、低いレベル0がマークを記録しないか又はマー
クを消去する個所である。Tはマークの長さの基本的な
長さ(周期)であり、基本クロックである。図2(a)
は、11Tマーク、5Tブランク(マークがない状
態)、4Tマークを連続して記録する場合に相当する。
記録方法の強度(パワー)変調は、図2(b)、図2
(c)で示されるように、複数のパルスを光照射パワー
Pwで発光することにより行う。またブランク部分は光
照射パワーPeでCW(Continuous Wav
e)発光、即ち強度変調がない定常発光をする。このよ
うな強度変調による相変化型光情報記録媒体への記録方
法は特開平9−138946号公報に開示されている。
光照射パワーPw、Peのレベルは、媒体毎に任意に設
定可能であり、最適値を使用する。最適な記録(光照
射)パワーPwの設定方法の例としては、特開平9−2
19021号公報に開示されているような、変調度の微
分係数を用いたパラメータで決定する方法を挙げること
ができる。
録長さnT(nは自然数)に対して一定の規則で変調す
ることが好ましい。図2(b)の例はCD−R、CD−
RW、DDCD−RWで採用されている変調方式であ
り、nTの記録にn−1個のパルスを用いる。パルスの
幅に関するパラメータとしては、1パルス目の長さであ
るTtop、マルチパルス部のパルス長さであるTm
p、最終パルス後の冷却時間であるToffの3種が例
として挙げられる。図3に各パラメータを示す。各パル
ス幅は記録する媒体の種類や、記録速度(記録装置の光
ピックアップが媒体を走査する速度)によって変化させ
ることができる。例として、CD−RWの標準規格書で
あるオレンジブックパート3 vol2に記載された方
法がある。この方法では、CDの基準速度の4倍速相当
で記録する場合はTmp=0.2Tとし、8倍速ではT
mp=0.4T、10倍速ではTmp=0.5Tとな
る。このように記録速度に対してパルス幅を変更するこ
とで、記録速度による記録パワーの変動を小さくするこ
とができるため、各速度一定記録CAVに対応すること
ができる。
る場合である。この記録方法を用いると、1パルス当り
の光照射パワーPwの発光時間を長くすることができる
ので、低感度の媒体に記録する場合や高速記録(短いT
での記録)の場合に採用する。但し、この記録方法によ
りnTのマークを形成する場合には、nが偶数のときn
T/2個のパルスで記録し、nが奇数のとき(n−1)
/2個のパルスで記録する。しかし、この記録方法では
各パルス幅及び各パルスの立ち上がり位置を独立に最適
化する必要がある。それぞれのパルス幅は0.5T〜
2.0Tの範囲で設定するのが好ましく、更には0.8
T〜1.5Tの範囲で設定することが好ましい。図2
(d)に、上記の方法で記録されたマークを記録再生装
置で再生したときの反射光の信号(RF信号とよぶ)を
示す。マークが形成された部分はアモルファス領域とな
るため反射率が低くI=Ibotとなり、マークが無い
か又はマークが消去された部分は反射率が高くI=It
opとなる。再生されるRF信号は光学系(NA、波
長、ビーム径)などの制約とマーク形状の歪み等によっ
て変調されるため、矩形にはならない。
信号を重ね合わせると図4に示すようなパターンとな
る。最も長いマークのIbotが最も低く、最も長いラ
ンドのItopが最も高くなる。ここで、変調度Mは次
の式で定義される。 M=(Itop−Ibot)/Itop 最長マーク・ランドは2値化の変調方式に依存する。図
4に示した例はCDの場合であるため、最も長いマー
ク、ランドは11Tになり、11TでのIbot=I1
1botとなる。DVDではEFM+(8−16変調)
のため、最長マーク・ランドは14Tになる。変調度M
は記録(光照射)パワーPwに大きく依存する。高いP
wをかけることにより、記録マークの幅を広くすること
ができるため、Ibotが低くなり、変調度Mは高くな
る。変調度Mと記録パワーPwの関係(M−P曲線と呼
ぶ)は通常図5に示すような関係にある。低い記録パワ
ーPwでは変調度Mのパワー依存性は高いが高い記録パ
ワーPwでは依存性は低くなり、やがて収束する傾向に
ある。従来の光情報記録媒体においては、通常M−P曲
線は連続であり、滑らかな曲線となる。
返し記録後(オーバーライト後)の記録信号特性、特に
マークエッジのジッタに大きく影響する。光照射パワー
Peとしては、マークを最も効率よく消去できるパワー
を選択する必要があり、高い光照射(記録)パワーPw
で記録された幅の広いマークを消去するためには、高い
光照射パワーPeを設定する必要がある。従って光照射
(記録)パワーPwとPeの比であるPe/Pwを固定
することが好ましい。Pe/Pwの範囲としては、0.
1〜0.7であればマーク消去を行うことができるが、
好ましくは0.2〜0.5の範囲とすることにより、多
数回の繰り返し記録による記録層とその近傍への熱的ダ
メージを低減することができ、かつ、マークを効率よく
消去することが可能となる。本発明の光情報記録媒体に
おける変調度Mの記録パワーPw依存性は、図6に示す
ように、M−P曲線がPw=Pwnで変曲点を持つこと
を特徴とする。但し、記録時はPe/Pwを一定に保っ
た状態で記録を行う。この変曲点を生じる現象は記録層
材料の特性に依存する。
ける温度履歴と記録層の状態の関係を示す。記録装置か
ら対物レンズで集光された光を照射すると、記録層とそ
の近傍が加熱され温度上昇が起こる。前述の図2
(b)、図2(c)に示されるようなパルス発光を行っ
た場合、マーク形成の部分では短い時間に高いエネルギ
ー(光照射パワーPw)がかかるため、記録層の温度は
図7(a)のAのような履歴をとる。一方、マーク消去
部分では低いエネルギー(光照射パワーPe)が連続的
に照射されるため温度上昇が小さくCに示す履歴をと
る。Aの履歴の場合、記録層が融点T′mより高い状態
から急冷されるので照射部分は準安定相であるアモルフ
ァス相となり、Cの履歴の場合、徐冷状態ではあるが結
晶化温度T′cより高い温度まで加熱されるので結晶相
となる。
度履歴と記録層状態の関係は図7(b)に示すようにな
る。アモルファス相となる履歴Aは同様であるが、温度
履歴により異なる2種類の結晶状態となる。つまり異な
る結晶化温度T′c1とT′c2が存在する。到達温度
がT′c1〜T′c2の時は温度履歴C1を経た結晶状
態C′1となり、到達温度がT′c2〜T′mの場合は
温度履歴C1を経た結晶状態C′2となる。結晶状態
C′1とC′2では、結晶構造又は組織(結晶粒界)が
異なっており、その結果として反射率が異なる。結晶状
態C′1の場合の反射率をRc1、結晶状態C′2の場
合の反射率をRc2とすると、Rc1>Rc2の関係が
成立する。この現象は再生信号のItopの上昇として
観察される。従って、図6におけるPw<Pwnの領域
での結晶状態はC′2であり、Pw>Pwnの領域での
結晶状態はC′1である。Pw<Pwnの領域からPw
を増加させていくと変調度M(Pw)が増加していく
が、Pw=PwnでItopが上昇するモードに切り替
わり、変調度M(Pw)の光照射(記録)パワーPw依
存性が変わる。そのためPw=PwnでM−P曲線が変
曲点を持つことになる。
の最適記録パワーをPwoとして、Pwo>Pwnで記
録する必要がある(図10参照)。ここで、Pwoとし
ては、十分高い変調度が得られ、かつ繰り返し記録後の
ジッタを十分に低くできる値を選択する必要がある。変
調度M(Pw)は、0.5以上とすれば十分なS/N比
を得ることができ、再生信号の信頼性を上げることがで
きるが、好ましくは0.55以上である。例えばオレン
ジブックパートIIIでは11T変調度>0.55となっ
ている。また、前記Pwn<Pwoという条件から、M
(Pwn)<M(Pwo)の関係が成立する。前述の通
り変調度M(Pw)が0.5以上、好ましくは0.55
以上である領域が特性を良好にする領域である。この変
調度M(Pw)が0.5以上の領域に変調度Mの不連続
点が存在すると、光照射パワーPwの僅かな変動に対し
て変調度Mが不安定になってしまう。従って不連続点を
与えるM(Pwn)は0.55以下、更に好ましくは
0.50以下である。繰り返し記録特性については、1
回目の書換え〔2回書き込み:DOW1(Direct
Over Write 1)〕後のジッタと1000
回書き換え(DOW1000)後のジッタのバランスか
ら最適記録パワーPwoを設定しなくてはならない。図
8にジッタと最適記録パワーPwoの関係を示す。本発
明の光情報記録媒体では、Pw=Pwnで結晶化のモー
ドが変わるので、ジッタにもその影響が出る。特にDO
W1後のジッタをPw>Pwnの領域で下げることがで
きる。最適記録パワーPwoは、DOW1、DOW10
00後のジッタが上限値以内となる領域内で選択する必
要がある。
報の変調方式、誤り訂正能力に依存するが、好ましくは
基本クロック周期の10%以下,又は最短パルス幅の1
/2の10%以下であり、例としてはDVDのデータト
ゥクロックジッタで8%以下、DDCDのデータトゥク
ロックジッタで10%以下、CD基準再生速度の3T〜
11Tの実測値ジッタで35ns以下(3Tの5%程
度)である。また、M(Pw)のPw=Pwnでの変曲
点は、記録装置における最適記録パワーPwoの決定動
作であるOPC(Optimum Power Con
trol)に、特開平9−219021号公報に開示さ
れたガンマ法を利用している場合、Pwoの決定精度に
大きく影響する。ガンマ法では変調度M(Pw)の微分
係数を規格化した関数 γ(Pw)=(dM/dPw)×(Pw/M) で定義されたγ(Pw)を用いて行う。ガンマは、変調
度及びパワーのそれぞれで規格化された関数であるた
め、γを指定すれば、記録装置でのPw及びMの絶対値
に依存せずにPwoを決定することができる。つまり、
記録装置毎の個体差の影響を受けずに最適な記録パワー
を設定することが可能となる。
合,γは図9に示すような関数となる。つまり、Pwが
低い領域でγのPwに対する依存性(関数の傾き)が大
きくなる。従って、低いPwの領域でガンマを決定すれ
ば、より高い精度でPwoを決定することが可能とな
る。図6に示す通り、Pw=Pwnで変曲点がある場
合、γは図9に示す通り不連続点を発する。即ちPw=
PwnではΔγの幅を取ってしまう。OPCの動作でP
wn近傍を使用すると、ガンマの測定誤差がΔγとなっ
てしまう。従って、OPCでのPwo決定での精度がΔ
γだけ低下してしまう。上記の点を考慮すると、Pwo
とPwnの比が次の関係を満足することが好ましい。 0.7≦Pwn/Pwo≦0.9
的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定さ
れるものではない。
mのポリカーボネート製CD−RW基板を用意し、下部
保護層、記録層、上部保護層、反射層、オーバーコート
層を順次積層してCD−RWディスクを作成した。基板
に転写されたグルーブは、間隔が1.6μm、溝幅が
0.6μm、深さが30nmであった。この基板にZn
SとSiO2の混合物を積層し下部保護層とした。次
に、GaαGeβSbγTeδを主成分とする合金を用
いて、スパッタリング法で膜厚20nmの記録層を成膜
した。合金の組成比は以下の範囲であった。 2≦α≦4 2≦β≦4 70≦γ≦75 18≦δ≦23 α+β+γ+δ≧95% 次に、記録層上にZnSとSiO2からなる混合物をR
Fスパッタリング法で25nm成膜して上部保護層とし
た。次に、純度99.9%のAgを用いて、記録層と同
じスパッタリング法により膜厚200nmの反射層を成
膜した。次に、市販の光ディスク用コート樹脂材料を用
いて、膜厚5〜10μmのオーバーコート層を設けた。
成膜方法としては、樹脂材料をスピンコート法で塗布
し、振り切った後に紫外線を照射し硬化する方法を採用
した。得られたディスクを初期化した。初期化は高出力
レーザーを媒体上に照射及び走査させることで行った。
照射したレーザーの出力は1000mW、照射ビームの
形状は長方形であり、走査方向に1μm、走査方向と垂
直な方向に100μmとした。また走査速度を5.0m
/sとした。初期化後のディスクは、未記録状態で市販
品と同程度の特性を有するCD−RWディスクであっ
た。
評価した。記録再生装置はCD用スピンドルテスターを
用いた。光ピックアップの仕様は以下のとおりとした。 λ=789nm NA=0.49 Pw=最大40mW 記録方法は前述の図2(b)に示した(n−1)個のパ
ルスで記録する方法を採用した。記録のパラメータは以
下の通りとした。 Pw=18〜32mW Pe/Pw=0.36 Ttop=1.0T Tmp=0.48T Toff=0.40T T=14.46ns(CDの1/16相当) 走査速度=19.2m/s(CDの16倍相当) 繰り返し記録回数:1〜1000回 Pwを変化させて、11T変調度、3Tランドジッタを
測定した結果を図11、図12に示す。図11の変調度
のグラフからPwn=22mWに変曲点があることが分
る。また、図12のジッタのグラフから、DOW1ジッ
タとDOW1000ジッタの両方に、標準規格の35n
s以下を満たす領域が存在することが分る。なお、この
ときの最適記録パワーは28mWであり、M(Pwn)
=0.43、M(Pwo)=0.64、Pwn/Pwo
=0.78であった。変曲点の位置から、変曲点の影響
により高いパワー側でDOW1でのジッタが低下してい
ることが分る。以上の結果から、本実施例のディスク
は、CD規格であるジッタ35ns以下を満足し、CD
の16倍相当の速度で記録可能であることが確認され
た。
条件で記録を行った。ここでは、図2(c)で示される
2T周期のストラテジを用いた。 Pw=18〜32mW Pe/Pw=0.42 Ttop=1.5T(n=奇数) Ttop=1.0T(n=偶数) Tmp=0.85T Toff=1.0T T=9.64ns(CDの1/24相当) 走査速度=28.8m/s(CDの24倍相当) 繰り返し記録回数:1〜1000回 実施例1と同様にPwを変化させて、11T変調度、3
Tランドジッタを測定した結果を図13、図14に示
す。図13の変調度のグラフから、実施例1と同様に変
曲点があることが分る。測定の結果、Pwn=23m
W、Pwo=29mWであった。また、図14のジッタ
のグラフから、DOW1ジッタとDOW1000ジッタ
の両方に、標準規格の35ns以下を満たす領域が存在
することが分る。更に、図14から、実施例1と同様に
変曲点の効果でDOW1のジッタがPw>Pwnの領域
で低下しているのが分る。以上の結果から、本実施例の
ディスクも、CD規格であるジッタ35ns以下を満足
し、CDの24倍相当の速度で記録可能であることが確
認された。
する合金の組成比を下記の通りとした点以外は、実施例
1と全く同様にしてCD−RWディスクを作成した(各
層の膜厚、初期化条件も同一)。 7≦α≦8 0.2≦β≦0.5 68≦γ≦73 18≦δ≦20 α+β+γ+δ≧95% このディスクに、実施例1と同じ記録条件で記録を行
い、実施例1と同様にして11T変調度、3Tランドジ
ッタを測定した結果を図15、図16に示す。図15、
図16から分るように、実施例1及び2と異なり、変調
度に変曲点が存在しない。その結果としてDOW1ジッ
タが下がらず、CD規格である35nsを達成できない
ことが確認された。
ーPwnで記録層の結晶化モードが変わり、マークの消
去が容易になるので、1回目の書換え(オーバーライ
ト)での記録信号を良好にすることができる。本発明2
によれば、最適記録パワーPwoと変曲点での記録パワ
ーPwnの関係が最適化されているので、多数回のオー
バーライト特性を良好にすることができる。本発明3に
よれば、変曲点での記録パワーPwnにおける変調度が
最適化されているので、記録装置が最適記録パワーPw
oを決定する際の試書き(OPC)時に変曲点の影響を
取り除くことができる。本発明4によれば、記録層材料
としてGeSbTe系合金を用いると同時に、組成及び
添加元素が最適化されているので、容易に2種の異なる
結晶状態を作ることができ、変調度に変曲点を作ること
ができる。本発明5〜6によれば、反射層の主成分がA
gであるため、媒体の反射率を高くすることができると
同時に、高い熱伝導率により急冷構造を取り易く、感度
を上げることができる。本発明7によれば、上部保護層
の膜厚が最適化されているので、媒体を急冷構造にし易
く、同時に高い熱伝導率により多数回の繰り返し記録特
性を良好にすることが可能である。
相変化物質を用いた媒体の層構成例を示す断面図。
す。 (b) CD−R、CD−RW、DDCD−RWで採用
されている変調方式を示す。 (c) (b)よりも少ないパルスで記録する場合を示
す。 (d) 記録されたマークを記録再生装置で再生したと
きの反射光の信号(RF信号とよぶ)を示す。
目の長さであるTtop、マルチパルス部のパルス長さ
であるTmp、最終パルス後の冷却時間であるTof
f)を示す図。
生した信号を重ね合わせたパターンを示す図。
す図。
w)の記録パワーPw依存性を示す図。
の関係を示す図。 (a) 従来の光情報記録媒体の場合 (b) 本発明の光情報記録媒体の場合
oの関係を示す図(DOW1:1回目の書換え後のジッ
タ、DOW1000:1000回書き換え後のジッ
タ)。
=(dM/dPw)×(Pw/M)との関係を示す図。
変調度M(Pw)との関係を示す図。
て11T変調度を測定した結果を示す図。
て3Tランドジッタを測定した結果示す図。
て11T変調度を測定した結果を示す図。
て3Tランドジッタを測定した結果示す図。
て11T変調度を測定した結果を示す図。
て3Tランドジッタを測定した結果示す図。
光の最大パワー) Pe 光照射パワー Pb 光照射パワー I 反射率 Itop 高い反射率 Ibot 低い反射率 I11 11Tでの反射率 I11bot 11Tでの低い反射率 GND 接地状態の電圧レベル(Ground) Ttop 1パルス目の長さ Tmp マルチパルス部のパルス長さ Toff 最終パルス後の冷却時間 T′ 温度 T′m 融点 T′c1 第一の結晶化温度 T′c2 第二の結晶化温度 Pwn 光照射パワー(n=1,2,3…) Pwo 媒体の最適記録パワー M(Pw) 光照射(記録)パワーPwで記録したとき
の変調度 M(Pwn) 変曲点での変調度 M(Pwo) 媒体の最適記録パワーでの変調度 A アモルファス相となる履歴 C1 結晶状態C1となる履歴 C2 結晶状態C2となる履歴 t 時間 DOW1 1回目の書換え後のジッタ DOW1000 1000回書換え後のジッタ γ ガンマ法の不連続点
Claims (7)
- 【請求項1】 基板上に少なくとも記録層と反射層を有
し、光を照射することにより情報を記録、再生又は消去
することができ、光照射(記録)パワーPwで記録した
ときの変調度をM(Pw)とするとき、M(Pw)がP
wに対して連続であり、M(Pw)が光照射(記録)パ
ワーPwn(n=1,2,3…)で変曲点を持つことを
特徴とする光情報記録媒体。 - 【請求項2】 媒体の最適記録パワーをPwoとすると
き、PwnとPwoが次の関係を満足することを特徴と
する請求項1記載の光情報記録媒体。 0.7≦Pwn/Pwo≦0.9 - 【請求項3】 変曲点での変調度M(Pwn)が、次の
式を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の光
情報記録媒体。 0.4≦M(Pwn)≦0.55 - 【請求項4】 記録層材料が、MαGeβSbγTeδ
(α,β,γ,δは原子パーセント、MはAl、Ga、
In、Bi、Dy、Ag、Mgの何れか)を主成分と
し、次の組成比を満足する合金からなることを特徴とす
る請求項1〜3の何れかに記載の光情報記録媒体。 2≦α≦6 1≦β≦4 65≦γ≦80 15≦δ≦25 α+β+γ+δ≧95% - 【請求項5】 反射層がAgを主成分とする材料からな
ることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の光情
報記録媒体。 - 【請求項6】 反射層のAg含有率が97原子パーセン
ト以上であることを特徴とする請求項5記載の光情報記
録媒体。 - 【請求項7】 記録層と反射層の間に、膜厚が5〜10
0nmの範囲にある少なくとも1層の上部保護層を有す
ることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の光情
報記録媒体。
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