JP2003121320A - イリジウム合金の分析方法 - Google Patents

イリジウム合金の分析方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属結合により化学的に安定で溶解が困難
なイリジウム合金の融解および化学分析を可能とする、
精度が良く簡便なイリジウム合金の分析方法を提供す
る。 【解決手段】 イリジウム合金の粉末試料に過酸化アル
カリを加えて加熱融解することによりイリジウム合金を
溶解し、このイリジウム合金の溶解物を王水で溶液化し
た溶液試料を用いて、このイリジウム合金に含まれる元
素を定量する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この出願の発明は、イリジウ
ム合金の分析方法に関するものである。さらに詳しく
は、この出願の発明は、金属結合により化学的に安定で
溶解が困難なイリジウム合金の融解および化学分析を可
能とする、精度が良く簡便なイリジウム合金の分析方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】金属材料の化学分析による組
成分析については、操作が簡単で、かつ周期表の約70
元素の定量を高い感度かつ高精度で行うことができるこ
と等から、溶液試料を使用する誘導結合プラズマ発光分
析(ICP−AES)や原子吸光分析(AAS)が一般
的に採用されている。
【0003】このような溶液試料による定量分析におい
て、試料溶液の調整方法としては、ほとんどの試料につ
いて最初から水、酸溶液またはアルカリ溶液で分解させ
る湿式法が適用されているが、酸やアルカリで分解でき
ない試料については適当な融剤を用いて融解し、その融
成物を水または酸で処理して溶液化する乾式法が適用さ
れている。たとえば、難溶性のクロム鉱石、スズ鉱石、
フェロクロム、フェロシリコン等の融解には、融剤とし
て過酸化ナトリウムを使用するようにしている。
【0004】そしてイリジウムの定量分析についても、
1981〜2001年までに324件報告されている。
しかしながら、これらの報告では、いずれも試料として
のイリジウムが塩化イリジウム、酸化イリジウムあるい
は錯体イリジウム等のようにイオン結合あるいは共有結
合により価数を持って存在しているものを対象としてお
り、同じイリジウムであっても金属イリジウムやイリジ
ウム合金のように強固な金属結合の状態にあるイリジウ
ムについての分析報告は皆無であった。というのは、金
属イリジウムあるいはイリジウム合金は強酸やアルカリ
では溶けないことが知られており、その分析について
は、イリジウムが含有量として10wt%以下であり細
粉状あるいは箔状の試料であれば一部が溶解すると報告
されている程度であって、その詳細や、金属イリジウム
あるいはイリジウム合金の試料の融解方法は全く知られ
ていないためである。
【0005】すなわち、金属イリジウムおよびイリジウ
ム合金については、その融解はもとより、定量分析方法
およびその可能性については全くの未知の状態であるの
が現状である。
【0006】一方で、この出願の発明者らは、これまで
の研究において、全く新しいイリジウム合金を開発して
きた。このイリジウム合金には、金属イリジウム(I
r)に対して、Nb,Zr,Ti,Hf,Ta等の遷移
元素を添加したもの、さらにはNi、Alを添加したも
の、またさらに多くの金属が添加されたものなどがあ
る。これら金属イリジウムおよびイリジウム合金は、融
点が高く、化学的にも安定な金属であることから、耐熱
材料としての利用が期待されるものである。
【0007】金属材料の分野では、材料の機械的特性を
支配する組織を制御するために状態図の利用が欠かせな
いことから、これらのイリジウム合金への知見を深め、
更なる改良を成し遂げるためにも状態図が必要な状態に
ある。そして、発明者らのように全く新しく合金を開発
した場合などには、標準試料がないために物理的な機器
分析は行えず、化学分析によるイリジウム合金系の組成
分析により状態図を作成しなければならない。
【0008】そこで、この出願の発明は、以上の通りの
事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を
解消し、金属結合により化学的に安定で溶解が困難なイ
リジウム合金の融解および化学分析を可能とし、かつ容
易に行うことのできるイリジウム合金の分析方法を提供
することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、この出願の発明
は、上記の課題を解決するものとして、以下の通りの発
明を提供する。
【0010】すなわち、まず第1には、この出願の発明
は、イリジウム合金の粉末試料に過酸化アルカリを加え
て加熱することによりイリジウム合金を融解し、このイ
リジウム合金の融解物を王水で溶液化して得た溶液試料
を用いて、このイリジウム合金に含まれる元素を定量す
ることを特徴とするイリジウム合金の分析方法を提供す
る。
【0011】そして、この出願の発明は、上記第1の発
明のイリジウム合金の分析方法において、第2には、試
料としてのイリジウム合金が、イリジウムの含有量10
重量%以上であることを特徴とする分析方法を、第3に
は、イリジウム合金がIr−Al系、Ir−Mg系ある
いはIr−Zn系である場合、粉末試料の粒径を149
μm以下とすることを特徴とする分析方法を、第4に
は、イリジウム合金に対する過酸化アルカリの混合比
を、1:10とすることを特徴とする分析方法を、第5
には、イリジウム合金がNb,Zr,Ti,Hf,T
a,Moのいずれか1種以上の元素を含有している場
合、粉末試料の粒径を74μm以下とすることを特徴と
する分析方法を、第6には、イリジウム合金に対する過
酸化アルカリの混合比を、1:25とすることを特徴と
する分析方法を、第7には、過酸化アルカリが過酸化ナ
トリウムであることを特徴とする分析方法を、第8に
は、加熱融解は、800℃で30分間保持することを特
徴とする分析方法を、第9には、イリジウム合金がN
b,Zr,Ti,Hf,Ta,W,Mo、Hoのいずれ
か1種以上の元素を含有している場合、王水での溶液化
のあと、この溶液にクエン酸を加えて加熱溶解し、さら
にフッ酸およびホウ酸を加えて加熱溶解して溶液試料と
することを特徴とする分析方法を、第10には、イリジ
ウム合金の融解には、Niるつぼまたは鉄るつぼを用い
ることを特徴とする分析方法を、第11には、イリジウ
ム合金に含まれる元素の定量には、誘導結合プラズマ発
光分析装置を用いることを特徴とする分析方法を、第1
2には、イリジウム合金の代わりに、イリジウムのイオ
ウ化合物、ホウ素化合物あるいはリン化合物を用い、こ
のイリジウムの化合物に含まれる元素を定量することを
特徴とする分析方法を提供する。
【0012】以上のこの出願の発明は、従来全く知られ
ていなかったイリジウム合金の融解方法を明示するだけ
でなく、定量を可能とする高精度な分析の方法を、明確
なものとして提示するものである。すなわち、この出願
の発明者らによる膨大な実験と詳細な検討の結果から、
分析対象とする試料、その粒径、融剤配合量、融解温
度、詳細な処理などを見出して最適なものとし、特殊な
装置および熟練した技術を必要とすることなく、全ての
イリジウム合金について、初心者でも簡便に分析できる
ような、分析の条件が初めて提示されることになる。
【0013】
【発明の実施の形態】この出願の発明は、上記の通りの
特徴を持つものであるが、以下にその実施の形態につい
て説明する。
【0014】まず、この出願の発明が提供するイリジウ
ム合金の分析方法は、イリジウム合金の粉末試料に過酸
化アルカリを加えて加熱することによりイリジウム合金
を融解し、このイリジウム合金の融解物を王水で溶液化
して得た溶液試料を用いて、イリジウム合金に含まれる
元素を定量することを特徴としている。
【0015】この出願の発明において、イリジウム合金
としては各種のものを分析の対象とすることができる。
たとえば、イリジウムの含有量は、分析誤差約±1%以
内としたとき、1〜100%とすることができる。すな
わちイリジウムの含有量が10%以上のものや、金属イ
リジウムまでをも分析の対象とすることができるのであ
る。また、このイリジウム合金に添加される元素として
は、たとえば、具体的には、Ti,Zr,Hf,V,N
b,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,
Ru,Os,Co,Rh,Ni,Pd,Pt,Cu,A
g,Au,Si,Sc,Yおよびランタノイド系元素等
の合金元素などを考慮することができる。これらの金属
元素は、単体、弱い結合あるいは比較的弱い金属結合で
結ばれている場合には強力な混酸かアルカリ溶液で溶解
するものであるが、イリジウムと合金化したものはその
強い金属結合によって、従来の融解法では溶解しないと
されていたものである。しかしながら、この出願の発明
の方法においては、このような強固な金属結合を有する
イリジウム合金をも分析の対象として考慮することがで
きるのである。そして、たとえば、この出願の発明者ら
が開発したイリジウム合金などのように、イリジウムの
含有量が10wt%よりもはるかに多く、Nb,Zr,
Ti,Hf,Ta等の遷移金属やNi,Al等の金属が
添加された、高融点で、化学的にも安定な、耐熱材料と
しての利用が期待されるイリジウム合金もその対象とす
ることができるのである。さらに、この発明の分析方法
においては、後で説明する試料の融解を800℃で行う
ようにしているが、イオウ化合物、ホウ素化合物、リン
化合物等の揮発性を有するイリジウム化合物をも融解温
度を下げることにより分析の対象とすることなども可能
とされている。以下では、分析の対象をイリジウム合金
と称してこの出願の発明を説明するが、もちろんこれに
限定されるものではない。
【0016】このようなイリジウム合金は、微細化した
粉末状のものを分析試料とするようにしている。粉末試
料の粒径は、融剤としての過酸化アルカリとの反応表面
積を大きくし、融解に要する時間を短縮するために、で
きるだけ細かいものであることが好ましい。その粒径に
ついては、対象とするイリジウム合金の組成によっても
異なるため一概には言えないが、目安としては、Ir−
Al系、Ir−Mg系あるいはIr−Zn系イリジウム
合金等のように、比較的延性を有していて、含有される
元素が比較的低融点である場合には、一般的には、約1
49μm以下(100メッシュアンダー)にすることが
適切な例として示される。より好適には、約74μm以
下(200メッシュアンダー)であり、たとえば、N
b,Zr,Ti,Hf,Ta,Mo等のイリジウムとよ
り強い金属結合を形成し、高融点の元素が含まれる場合
等には、約74μm以下にすることが望ましい。より具
体的には、たとえば、Ir−29Nb系、Ir−Nb-
Ni−Al系、Ir−25Zn系、Ir−25Ta系、
Ir−25Hf系、Ir−Nb−W系、Ir−25Ti
系、85Ir−10Nb−5Ta系、87Ir−10N
b−3Mo系等の場合には、約74μm以下にするよう
にする。
【0017】次いで、このイリジウム合金の粉末試料を
精秤する。たとえば、融解に50ccのるつぼを使用す
る場合には、粉末試料量を約0.2g程度とするのが適
当である。このとき、より高精度な分析を行うために
は、従来の化学分析の手法のとおり、105〜110℃
の乾燥機で乾燥させて恒量とした粉末試料について、は
かりの目はたとえば下4桁まで読むようにすることなど
が考慮される。秤量した粉末試料は、たとえば50cc
のるつぼに入れ、その表面を覆うようにして、過酸化ア
ルカリを加える。
【0018】この出願の発明においては、融剤として過
酸化アルカリを用いるようにしている。この過酸化アル
カリとしては、反応性や酸化力の点からは過酸化ナトリ
ウム(Na22)あるいは過酸化カリウム(K22)を
用いることが好ましい。これらの過酸化アルカリについ
ても、イリジウム合金の粉末試料との反応性を高めるた
めに、できるだけ微細なものであることが好ましい。よ
り実際的には、市販されているため入手が容易な過酸化
ナトリウム(Na22)を用いることが簡便である。
【0019】イリジウム合金に加える過酸化アルカリの
量は、たとえば過酸化ナトリウムあるいは過酸化カリウ
ムを用いる場合、イリジウム合金:過酸化アルカリとし
て、重量比で、およそ1:10〜1:30程度の範囲で
調整することができる。過酸化アルカリの量が多いほど
イリジウム合金との反応量が多くなり、イリジウム合金
を融解しやすくなるため好適であるが、多すぎる場合に
はイリジウム合金中の含有量が少ない元素についての分
析誤差が大きくなってしまうために好ましくない。また
何よりも、過酸化ナトリウムはイリジウム合金の融解に
際して非常に激しく反応するため、これ以上の添加は融
解に用いるるつぼの腐食を顕著なものとしてしまう。し
たがって、イリジウム合金中にNb,Zr,Ti,H
f,Ta,Mo等の比較的高融点で、イリジウムとより
強い金属結合を形成する元素が含まれる場合には過酸化
アルカリの量を1:25程度とし、上記の元素が含まれ
ない場合には1:10程度とすることが適当な例として
示される。
【0020】なお、この出願の発明において、イリジウ
ム合金の融解に用いるるつぼの選択は極めて重要な要素
である。このイリジウムの分析では、イリジウム合金の
融解のための温度および時間と過酸化アルカリによる腐
食等の化学的性質とを考慮して、Niるつぼかあるいは
鉄るつぼを用いるようにしている。
【0021】このるつぼにイリジウム合金の粉末試料お
よび過酸化アルカリを入れ、次いでるつぼのふたをし、
電気炉等の加熱手段を利用してイリジウム合金を融解す
る。加熱融解中にはガスが発生するため、るつぼのふた
は完全に密閉せずに、斜めにずらせて乗せるようにす
る。
【0022】このようなイリジウム合金の粉末試料の完
全な加熱融解には、800〜900℃程度の高温が必要
であることが見出されたが、高温で長時間の融解はるつ
ぼを激しく腐食する。したがって、あらゆる条件を勘案
した結果、800℃で30分間以上の加熱を施すことが
効率の良い融解の条件として例示される。なお、用いる
るつぼの厚みによって融解温度をより高くすることや融
解時間を長くすることは試料の完全な融解のために有効
となるが、たとえば、るつぼとして一般適な厚みのNi
るつぼを、融剤として過酸化アルカリを用いた場合に
は、900℃で1時間の加熱はるつぼの腐食により不可
能となるので注意する必要がある。
【0023】また、このイリジウム合金と過酸化アルカ
リの反応は、加熱により爆発的に進行するため、加熱融
解は、たとえば、まず300〜400℃程度にまで昇温
して予備加熱したのち、500℃、600℃、700℃
と100℃毎にそれぞれの温度で10分間ずつ保持して
800℃程度まで昇温し、800℃で30分間保持する
など、温度を徐々に上げながら溶融するようにすること
が好ましい。800℃で10分間程度融解した後は、る
つぼ挟み等でイリジウム合金と過酸化アルカリをよく攪
拌し、反応を促すことが効果的である。ここで、完全な
イリジウム合金粉末試料の融解は、元の灰色が赤紫色に
変化し、イリジウム(Ir)が3〜4価で安定している
ことで確認することができる。完全な融解を確認してか
ら、放冷するようにする。
【0024】この出願の発明では、以上のようなイリジ
ウムの融解後、このイリジウム合金の融解物を王水で溶
液化するようにしている。すなわち、イリジウム合金を
過酸化アルカリ、たとえば過酸化ナトリウム(Na
22)で融解し、次いでこの融解物に王水を加えること
で、王水による塩化ニトロシル(NOCl)の溶解力を
利用し、イリジウムを塩化第二イリジウムナトリウム
(Na2IrCl6)として溶液化するようにしている。
【0025】ここで、実際的な操作としては、PTFE
(ポリテトラフルオロエチレン)製ビーカーに王水を用
意しておき、Niるつぼ内の融解物を蒸留水で溶解させ
てからこのPTFE製ビーカー内に加えて溶液化するこ
とができる。もちろん、一般的な化学分析と同様に、る
つぼに付着した融解物およびるつぼのふたに飛散した溶
融物は、PTFE製の攪拌棒等で擦りながら蒸留水およ
び塩酸で洗浄し、溶液に加えることができる。また、こ
の溶液をサンドバスやヒーター等を利用して沸騰前の2
00℃前後に加熱することが、塩化ニトロシルやNO2
の発生および反応状態に有効に作用する。
【0026】なお、PTFE製器具の使用は、融解物が
呈する強アルカリ性に依るものである。したがって、溶
融物が王水により酸性に変化されたあとや、王水による
融解の手順を変えればガラス器具を用いることができ
る。ここで用いる王水は、塩酸と硝酸を体積比で3:1
の割合で混合した一般的な王水であってよく、たとえ
ば、上述のとおりイリジウム合金粉末試料を約0.2g
と融剤(Na22)5gを使用する場合には、王水を1
20mlとすることが適当な例として示される。また、
塩酸については、50ml程度とすることが例示され
る。
【0027】この溶液を定溶化することで、分析に供す
ることができる。たとえば、含有量が少ない元素の測定
については500mlのメスフラスコでメスアップする
ことや、比較的含有量が多い元素の測定については10
00mlのメスフラスコでメスアップすること等が例示
される。
【0028】しかしながら、一方で、試料のイリジウム
合金がNb,Zr,Ti,Hf,Ta,W,Mo、Ho
等の元素(以下沈殿発生元素という)を含有している場
合には、王水での溶液化により加水分解が生じ、溶液内
にこれら元素による微細な沈殿が発生する。たとえばN
bが含有されている場合には微細な白色の沈殿が発生す
る。そこで、この出願の発明においては、イリジウム合
金が沈殿発生元素を含有する場合には、これらの沈殿発
生元素の分析にあたり、王水での溶液化のあと溶液にク
エン酸を加えて加熱溶解し、さらにフッ酸およびホウ酸
を加えて加熱溶解して溶液試料とするようにしている。
【0029】この発明において、クエン酸はニオブの加
水分解を抑制する働きを担うものである。フッ酸は微細
な沈殿を溶解する働きを担うものである。そして、ホウ
酸は、過剰なフッ酸のマスキングする役目を担うもので
あり、分析機器たとえばプラズマトーチの腐食を防ぐこ
とができる。これらのクエン酸、フッ酸、ホウ酸の添加
量としては、たとえば上述のとおりのイリジウム合金粉
末試料を約0.2gと融剤(Na22)5gを使用する
場合には、それぞれ、10g、20ml、10g程度と
するのが適当な例として示される。また、これらの試薬
を添加した際の加熱溶解は、試薬が溶液中に均一に溶解
すればよく、たとえば、サンドバスやヒーター等を利用
して200℃前後とすることが簡便な例として示され
る。
【0030】このように沈殿物を溶解させた溶液につい
ては、沈殿が生じない場合と同様に定溶化することで分
析に供することができる。
【0031】この出願の発明のイリジウム合金の分析方
法においては、以上の手順で得られた溶液試料を、各種
の分析手法あるいは分析機器に供することができる。た
とえば、フレームおよびフレームレスの原子吸光分析
(AAS)、誘導結合プラズマ発光分析(ICP−AE
S)、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)等に
よる分析を採用することができる。これらの分析法は汎
用法であり、多元素測定が可能でもある。また、分析に
際して特殊な器具を取り付ける必要もない。もちろん、
溶液試料についてのバックグラウンドの調整や濃度の調
整などの詳細は、各分析手段や使用する分析装置などに
応じて適宜調整することができる。
【0032】これによって、イリジウム合金に含まれる
元素を、他の材料の分析と同様に、簡便に定量すること
ができる。また、分析の操作も簡便で不純物の混入も少
なく、低融点〜高融点のあらゆるイリジウム合金を、初
心者でも定量分析することができる。
【0033】以下に実施例を示し、この発明の実施の形
態についてさらに詳しく説明する。
【0034】
【実施例】(実施例1)図1のフローチャートに沿っ
て、以下の手順でイリジウム合金の組成分析を行った。 <試料作製>試料1および2として、下記の組成および
組織を有するイリジウム合金粉末を作製した。組成は重
量%で示した。
【0035】試料1:Ir−2.6Al (fcc+B2)試料2:Ir−15.24Nb−1.
92Ni−0.28Al (L12) 試料1および試料2は下記の純金属を原料とし、アーク
溶解にて溶製したインゴット10gをas−castの
まま鉄製容器に入れて細粉末に粉砕し、ふるいにより、
A:100メッシュアンダー(149μm以下)とB:
200メッシュアンダー(74μm以下)の2種類に選
別したものをそれぞれ用いた。
【0036】純イリジウム :(株)フルヤ金属 純ニオブ :フルウチ化学(株) 純ニッケル :ヤマト化学 純アルミニウム:(株)フルヤ金属 <試料の融解および試料溶液の調整>それぞれの試料を
105〜110℃の乾燥機で2時間乾燥させて恒量と
し、約0.2gを正確に秤量してNiるつぼ(50c
c)に移した。融剤としては過酸化ナトリウムを用い、
試料を覆うようにNiるつぼ内に投入し、ふたを斜めに
したのち、電気炉にて試料を加熱融解した。各試料とも
n=2とした。
【0037】なお、融剤の量を2gとしたところ、試料
1についてはA:100メッシュアンダーおよびB:2
00メッシュアンダー共に完全に融解することができ
た。一方のNbを含む試料2については、融剤の量が2
gでは融解できず、B:200メッシュアンダーの試料
に対して融剤を5g加えることで均一に完全融解するこ
とができた。
【0038】また、加熱融解は、試料の爆発的な反応を
避けるため、まずNiるつぼを400℃の炉内に入れて
予備加熱を行い、その後100℃ごと10分間づつ保持
しながら800℃まで昇温し、800℃で30分間保持
して均一に融解させた。このとき、溶融物は元の灰色か
ら赤紫色へと変化しており、イリジウムが3〜4価に変
化したことを確認した。
【0039】融解物を放冷後にPTFE製ビーカーに移
し、王水(塩酸3:硝酸1)120mlを加えて酸性溶
液とした。また、Niるつぼおよびふたは蒸留水および
塩酸50mlにて洗浄して、融解物を溶解してPTFE
製ビーカーに加えた。
【0040】PTFE製ビーカーの溶解液を全てコニカ
ルビーカーに移したところ、試料1については沈殿も不
溶解物も認められなかったため、メスフラスコにて定容
した。試料2については、微細な白色沈殿が発生してい
た。この沈殿は、ニオブが加水分解したときに生ずる白
色沈殿であったため、溶解液を全てPTFE製ビーカー
に移してクエン酸10gおよびフッ酸20mlを加え、
サンドバス上で200℃で加熱することにより溶解して
透明な溶液とした。過剰なフッ酸については、ホウ酸を
加えることでホウフッ化物とし、分析時のプラズマトー
チの腐食を防止するようにした。このように処理した溶
解液をメスフラスコにて定容した。
【0041】以上の手順で得られた試料溶液を、誘導結
合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)装置を用い
て、検量線法により分析した。 <標準溶液>ICP-AES分析に際し、イリジウム、
ニオブ、アルミニウム、ニッケルの各標準溶液には、原
子吸光分析用標準液(1000μg/ml、和光純薬工
業(株)社製)を、適宜検量線濃度に調整して用いた。
イリジウム、アルミニウム、ニッケルについては王水お
よび塩酸で希釈し、ニオブについては、硫酸およびフッ
酸溶液で希釈して用いた。 <試薬および装置>以上の試料溶液および標準液の調整
には以下の試薬を使用した。
【0042】過酸化ナトリウム :メルク・ジャ
パン(株)製 塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸:和光純薬工業(株)製 またICP−AES装置には、セイコーインスツルメン
ツ(株)製、SPS−1500VRを使用した。 <分析結果>試料1および2の定量分析の結果を表1お
よび表2にそれぞれ示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】試料1および試料2のいずれの合金につい
ても、公称組成と近い値を得ることができ、この出願の
発明の分析方法が有効であることが確認された。 (実施例2)実施例1に記載した純イリジウム金属(純
度99.9%)粉末を粉砕し、実施例1と同様に分析を
行った。149μm以下の試料について、融剤としての
過酸化ナトリウムを1:10の割合で添加したところ、
完全に融解できることが確認された。調整された溶液試
料についてICP−AES分析を行った結果を表3に示
した。
【0046】
【表3】
【0047】純イリジウム金属についても、この出願の
発明の方法で分析できることが示された。
【0048】もちろん、この発明は以上の例に限定され
るものではなく、細部については様々な態様が可能であ
ることは言うまでもない。
【0049】
【発明の効果】以上詳しく説明した通り、この発明によ
って、金属結合により化学的に安定で溶解が困難なイリ
ジウム合金の融解および化学分析を可能とする、精度が
良く簡便なイリジウム合金の分析方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明のイリジウム合金の分析のフロ
ーチャートを例示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 原田 広史 茨城県つくば市千現1丁目2番1号 独立 行政法人物質・材料研究機構内 Fターム(参考) 2G052 AA11 AD12 AD32 AD46 FD09 JA09

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イリジウム合金の粉末試料に過酸化アル
    カリを加えて加熱することによりイリジウム合金を融解
    し、このイリジウム合金の融解物を王水で溶液化して得
    た溶液試料を用いて、このイリジウム合金に含まれる元
    素を定量することを特徴とするイリジウム合金の分析方
    法。
  2. 【請求項2】 試料としてのイリジウム合金が、イリジ
    ウムの含有量10重量%以上であることを特徴とする請
    求項1または2記載のイリジウム合金の分析方法。
  3. 【請求項3】 イリジウム合金がIr−Al系、Ir−
    Mg系あるいはIr−Zn系である場合、粉末試料の粒
    径を149μm以下とすることを特徴とする請求項1記
    載のイリジウム合金の分析方法。
  4. 【請求項4】 イリジウム合金に対する過酸化アルカリ
    の混合比を、1:10とすることを特徴とする請求項1
    ないし3いずれかに記載のイリジウム合金の分析方法。
  5. 【請求項5】 イリジウム合金がNb,Zr,Ti,H
    f,Ta,Moのいずれか1種以上の元素を含有してい
    る場合、粉末試料の粒径を74μm以下とすることを特
    徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のイリジウム
    合金の分析方法。
  6. 【請求項6】 イリジウム合金に対する過酸化アルカリ
    の混合比を、1:25とすることを特徴とする請求項5
    記載のイリジウム合金の分析方法。
  7. 【請求項7】 過酸化アルカリが過酸化ナトリウムであ
    ることを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の
    イリジウム合金の分析方法。
  8. 【請求項8】 加熱融解は、800℃で30分間保持す
    ることを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の
    イリジウム合金の分析方法。
  9. 【請求項9】 イリジウム合金がNb,Zr,Ti,H
    f,Ta,W,Mo、Hoのいずれか1種以上の元素を
    含有している場合、王水での溶液化のあと、この溶液に
    クエン酸を加えて加熱溶解し、さらにフッ酸およびホウ
    酸を加えて加熱溶解して溶液試料とすることを特徴とす
    る請求項1ないし8いずれかに記載のイリジウム合金の
    分析方法。
  10. 【請求項10】 イリジウム合金の融解には、Niるつ
    ぼまたは鉄るつぼを用いることを特徴とする請求項1な
    いし9いずれかに記載のイリジウム合金の分析方法。
  11. 【請求項11】 イリジウム合金に含まれる元素の定量
    には、誘導結合プラズマ発光分析装置を用いることを特
    徴とする請求項1ないし10いずれかに記載のイリジウ
    ム合金の分析方法。
  12. 【請求項12】 イリジウム合金の代わりに、イリジウ
    ムのイオウ化合物、ホウ素化合物あるいはリン化合物を
    用い、このイリジウムの化合物に含まれる元素を定量す
    ることを特徴とする請求項1ないし11いずれかに記載
    の分析方法。
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