JP2003113453A - 低履歴損失の方向性珪素鋼板 - Google Patents
低履歴損失の方向性珪素鋼板Info
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Abstract
結晶焼鈍中における純化不足等のおそれなしに、ヒステ
リシス損を効果的に低減し、ひいては従来に比べ鉄損特
性が一層改善された方向性珪素鋼板を提供する。 【解決手段】 Si:1.5 〜7.0 mass%を含有させると共
に、二次再結晶粒の{110}面の板面に対する角度を
面積加重平均で2〜8°に制御し、さらに地鉄表面をRa
で 0.4μm 以下の平滑面とし、しかも鋼中炭化物、硫化
物及びセレン化物の総量を(C+S+Se)重量で35 ppm
以下に規制し、かつヒステリシス損Wh1.7を 0.35 W/kg
以下とする。
Description
等の鉄心材料として好適な方向性珪素鋼板に関し、とく
に履歴損失(ヒステリシス損)を効果的に低減すること
によって鉄損特性の一層の改善を図ろうとするものであ
る。
01〕方位や(100)〔001〕方位に配向した方向
性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を有することから商用
周波数域での各種鉄心材料として広く利用されている。
かような電磁鋼板に要求される特性としては、鉄損(一
般に50Hzの周波数で 1.7Tに磁化させた時の損失である
W17/50 (W/kg)で表わされる)が低いことが重要であ
る。
低下させるのに有効な方法として、Siを含有させ電気抵
抗を高める方法、板厚を薄くする方法、結晶粒径を小さ
くする方法等が、一方ヒステリシス損(Wh )を低下さ
せるのに有効な方法として、圧延方向に<100>軸を
高度に揃える方法等が知られている。
含有させると飽和磁束密度の低下を招き、鉄心のサイズ
拡大の原因となるので限界があり、また板厚を薄くする
方法は大幅な製造コストの増加を招くためやはり限界が
あった。さらに、結晶方位を揃える方法も、磁束密度B
8 で1.96Tや1.97Tという高い値の製品がすでに得られ
ており、これ以上の改善の余地は少なくなっている。
ー光を照射して鋼板表面に局所的に歪を導入したり、溝
を形成することによって人工的に磁区幅を細分化し鉄損
を低減する技術が開発され、大幅な鉄損の低減が図られ
るようになった。しかしながら、この技術による鉄損低
減効果にも限界があった。
公報には、鋼板金属表面と非金属被膜との界面の粗度を
低減し、さらに張力処理を施すことによって、材料の鉄
損が大幅に低減することが報告されている。
時に用いる焼鈍分離剤については、通常用いられるMgO
を主とする焼鈍分離剤では、焼鈍後の鋼板表面にフォル
ステライトを主成分とする緻密な被膜が形成され、鋼板
金属表面の粗度が低減されないだけでなく、その後に鏡
面表面とするための鏡面化研磨やサーマルエッチングの
際にも不都合が生じる。このようなフォルステライトを
主成分とする被膜を形成させないために、例えば特開平
7-48674号公報では、1次再結晶焼鈍で生じたサブスケ
ールを除去したのち二次再結晶焼鈍を行う方法を提案し
ているが、この方法ではコストの上昇が避けられない。
製造する際には、Al2O3 を主成分とする焼鈍分離剤や塩
化物を含む焼鈍分離剤が用いられており、たとえば特開
昭64-62476号公報には、MgOにアルカリやアルカリ土類
金属の塩化物を2〜40重量部添加した焼鈍分離剤を使用
する方法が提案されている。しかしながら、この方法で
は、工業的実施時に全幅全長にわたって安定して鏡面化
を達成するのが難しいだけでなく、腐食性の大きな塩化
物を大量に使用するために炉体の腐食や製品板の発錆と
いう新たな問題が生じた。
板では、二次再結晶焼鈍中に被膜に吸収除去されるS,
Se等の純化に劣る問題や、分離剤中に少量ながら不可避
的に含まれる炭酸痕の問題および混入有機物などの分解
で生じる炭素の吸収による浸炭の問題等が課題として残
されていた。
状に鑑み開発されたもので、焼鈍分離剤の成分および二
次再結晶焼鈍工程に工夫を加えることによって、炉体の
腐食や製品板の発錆、さらには二次再結晶焼鈍中におけ
る純化不足等のおそれなしに、ヒステリシス損を効果的
に低減し、ひいては鉄損特性の一層の改善を達成した方
向性珪素鋼板を提案することを目的とする。
の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(1) 特定組
成の珪素鋼素材および特定組成の焼鈍分離剤を用いた上
で、二次再結晶焼鈍工程における昇温条件、さらには雰
囲気条件を制御してやれば、わずかな量の塩素化合物ま
たはふっ素化物で安定して鏡面化を達成できる、(2) か
かる鏡面材においては、二次再結晶粒の<100>方向
と圧延方向との角度だけでなく、<110>方向と板幅
方向との角度も鉄損値に影響を及ぼす、(3) 鏡面鋼板の
内部に残留する析出物のうち、特に炭化物、硫化物およ
びセレン化物が鉄損に及ぼす影響が大きいことの知見を
得た。この発明は、上記の知見に立脚するものである。
りである。 1.Si:1.5 〜7.0 mass%を含有し、二次再結晶によっ
て生じた結晶粒の{110}面が板面に対して面積加重
平均で2〜8°の範囲で傾き、地鉄表面が算術平均粗さ
Raで 0.4μm 以下の平滑面で、しかも鋼中炭化物、硫化
物およびセレン化物の総量が(C+S+Se)重量で35 p
pm以下で、かつヒステリシス損Wh1.7が 0.35 W/kg以下
を満足することを特徴とする実質的にフォルステライト
被膜を有しない低履歴損失の方向性珪素鋼板。
コーティングをそなえ、ヒステリシス損Wh1.7が0.30W/
kg以下であることを特徴とする低履歴損失の方向性珪素
鋼板。
に、磁区細分化のための線状または点状の歪付加領域ま
たは溝形成領域を導入したことを特徴とする低履歴損失
の方向性珪素鋼板。
る。まず、この発明を由来するに至った実験結果につい
て説明する。実験1 C:0.05mass%、Si:3.2 mass%、Mn:0.06mass%、
S:0.02mass%、Se:0.001 mass%、Al:0.02mass%、
N:80 ppmおよびCu:0.2 mass%を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物からなるスラブを、1400℃に加熱し
たのち、熱間圧延により 2.0mm厚の熱延板とし、ついで
温間圧延により0.21mmの板厚に仕上げたのち、脱炭を兼
ねた1次再結晶焼鈍を施した。
示す種々の塩化物またはふっ化物を添加した焼鈍分離剤
を、水スラリーで塗布し、焼き付け乾燥後、同じく表1
に示す条件で二次再結晶焼鈍を施した。なお、1000℃以
上の温度域については、10℃/hの速度で1200℃まで昇温
し、同温度で6時間の純化を兼ねた二次再結晶仕上げ焼
鈍を施した。かくして得られた製品板について、その表
面の結晶方位、鏡面化状態、炭化物、硫化物およびセレ
ン化物の析出量ならびに50Hzで 1.7Tに磁化させた時の
ヒステリシス損(Wh1.7)について調べた結果を、表2
に示す。
{110}面の板面に対する角度の平均である面積加重
平均で表すものとした。というのは、この表示によれ
ば、二次再結晶粒の<100>方向と圧延方向との角度
だけでなく、<110>方向と板幅方向との角度も同時
に表すことができるからである。ここに、面積加重平均
は、同一条件で処理した成品5枚について、それぞれの
成品上2cm間隔の5×8の格子状の40点に対し、各点の
方位をラウエ法で求め、{110}面と板面とのなす最
小角をそれぞれ算出し、得られた総計 200点の値を平均
することにより求めた。勿論、数十程度の二次粒を選
び、それらの面積と方位から面積加重平均を求めてもよ
い。
析出量〔(C+Se+S)の析出重量で表す〕は、鋼板の
純化程度を示すもので、この量が少ないほど鋼中におけ
る有害元素が少なく、鋼板の純化が進行しているといえ
るが、特に析出状態になるものが有害であるので、析出
物定量法(任意でよい)を用いて析出量を制御する必要
がある。
に、タリウムや鉛の塩化物またはふっ化物を少量添加す
ると共に、 800〜900 ℃の温度域を徐加熱とすることに
より、{110}面の板面に対する角度を2〜8°の適
正範囲に制御することができるだけでなく、安定した鏡
面化が達成されると共に、鋼板の純化が促進され、その
結果ヒステリシス損(Wh1.7)を効果的に低減すること
ができた。特に、1000℃以上における水素分圧を 0.9 a
tm以上にした場合には、鋼板の純化および鏡面化が一層
促進され、さらに、 600〜900 ℃における範囲をAr雰囲
気とした場合には、フォルステライト被膜の形成が格段
に抑制されると共に、一層の純化、ひいては低Wh1.7化
が達成されている。
0.1重量部よりも少ないとフォルステライト被膜の形成
が顕著になり、安定してRa≦0.4 μm という鏡面が得ら
れず、一方添加量が10重量部を超えたり、 800〜900 ℃
の温度域の昇温速度が8℃/hを上回った場合には、{1
10}面の板面に対する角度を安定して2〜8°の範囲
におさめることができず、その結果、この発明で所期し
たほど良好な低履歴損失を得ることができなかった。
0}面の板面に対する角度は、インヒビター形成元素で
あるS,Se量と強い相関があり、S量を 0.005mass%未
満に抑制すると共に、Se量を0.01〜0.03mass%の範囲に
制限することによって、二次再結晶後の{110}面の
角度を4〜6°の範囲に安定して制御できることが究明
された。
02mass%にすること以外、上記の実験1と同様にして実
質的にフォルステライト被膜を有しない方向性珪素鋼板
を製造した。なお、この時、焼鈍分離剤中に添加した添
加物および二次再結晶焼鈍条件は、表3に示したとおり
である。かくして得られた製品板について、実験1と同
様な調査を行った結果を表4に示す。
素として添加するS量を抑制すると共に、Seを適正量添
加することにより、二次再結晶後の{110}面の板面
に対する角度を4〜6°の最適範囲に的確に制御するこ
とができ、その結果、ヒステリシス損を安定して低減す
ることができた。なお、この場合でも、1000℃以上にお
ける水素分圧を 0.9 atm以上にし、さらには 600〜900
℃における範囲をAr雰囲気とすることが、鋼板の純化お
よび鏡面化ひいては低Wh1.7化の面でに有利であること
に変わりはなかった。
や鉛の塩化物またはふっ化物を少量添加すると共に、二
次再結晶昇温過程中、 800〜900 ℃の温度範囲を徐熱す
ることによって、{110}面の方位が的確に制御され
るだけでなく、鋼板表面が平滑化されて炭化物等の有害
成分が減少する機構については、まだ明確に解明された
わけではないが、タリウムまたは鉛と塩素またはふっ素
元素との相乗作用によって、{110}面の鋼板表面エ
ネルギーが変化するか、あるいは二次再結晶時の粒界移
動速度に影響を与えて、特定方位の二次再結晶粒の成長
を促す等の作用で二次再結晶粒の主方位が定まり、しか
もこのような粒界移動時に純化も促進されるためと考え
られる。
て、その構成要件を前記の範囲に限定した理由について
説明する。 Si:1.5 〜7.0 mass% Siは、鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効
な成分であるが、含有量が 7.0mass%を超えると硬くな
って加工が困難となり、一方 1.5mass%に満たないと二
次再結晶焼鈍中に変態を生じて安定した二次再結晶組織
が得られないので、Si含有量は 1.5〜7.0 mass%の範囲
に限定した。なお、製品板中におけるC,S,Seおよび
Nなどの元素はいずれも、磁気特性上有害な作用があ
り、特に鉄損を劣化させるので、製品板においてはそれ
ぞれ、C:0.003 mass%以下、S,Se:0.002 mass%以
下、N:0.002 mass%以下程度に低減することが望まし
いが、後述するように、この発明では、析出物量の総和
を所定量以下まで低減することが特に重要である。
° この規定は、この発明において特に重要であり、二次再
結晶後の結晶粒については、その{110}面を板面に
対して面積加重平均で2〜8°だけ傾けさせることが肝
要である。これは、従来知られている圧延方向と<10
0>軸との傾きの変化による磁区細分化効果だけではな
く、圧延方向と直角方向の<110>軸と板面とのなす
角度が履歴損に大きな影響を与えるからであり、この効
果は、フォルステライト被膜あるいはそのアンカーによ
る凹凸を持たない鏡面化鋼板で特に大きい。ここに、こ
の角度が2°に満たなかったり、8°を超えた場合に
は、この発明で所期したほどの低鉄損を得ることができ
ない。
化等の不利が生じるだけでなく、後述する炭化物等の有
害成分が増大して、鉄損の低減が達成できない。そこ
で、この発明では、鋼板の表面粗さRaにつき 0.4μm 以
下に限定した。
(C+S+Se)重量で35 ppm以下 炭化物、硫化物およびセレン化物等の析出物はいずれ
も、磁壁の移動を阻害してヒステリシス損ひいては鉄損
を劣化させる有害成分であるので、極力低減することが
好ましいが、35 ppm以下であれば許容できる。
対する角度を2〜8°の範囲に制御すると共に、表面粗
さRaを 0.4μm 以下、(C+S+Se)量を35 ppm以下と
することにより、低Wh1.7化を安定して達成することが
できるので、従来実現が難しかったWh1.7≦0.35 W/kg
を特徴事項として掲げた。
付与することにより、わずかな張力で効果的にWh1.7を
0.30 W/kg以下まで低減することができる。さらに、こ
の発明では、製造工程の途中または製造後に、線状また
は点状の歪付加領域または溝形成等による磁区細分化処
理が施すことによって、鉄損を一層低減することもでき
る。なお、鋼板の板厚は特に限定されることはないが、
渦電流損のうち古典的渦電流損は板厚の関数であるの
で、要求される鉄損に応じてコストとの勘案の上で定め
られ、通常0.10〜0.25mm程度とすることが好ましい。
法について説明する。まず、素材の成分組成範囲につい
て説明する。 Si:1.5 〜7.0 mass% 製品である方向性電磁鋼板について説明したとおり、含
有量が 1.5mass%に満たないと二次再結晶焼鈍中に変態
を生じて安定した二次再結晶組織が得られず、一方 7.0
mass%を超えると固くなって加工が困難となるので、Si
含有量は 1.5〜7.0 mass%の範囲に限定した。
成する。特に初期鋼中にAlを 0.006mass%以上含有させ
ることによって結晶配向性を一層向上させることができ
る。しかしながら、0.06mass%を超えて含有させると再
び結晶配向性の劣化が生じるので、Alは0.06mass%以下
に限定した。また、N含有量が 0.01 mass%を超えると
ふくれ欠陥の発生が懸念されるので、N量は0.01mass%
以下に限定した。なお、下限は特に規定しないけれど
も、20ppm以下まで低下させるのは経済的な不利が大き
い。
Mn:0.02〜0.2 mass% Se,SとMnは、互いに結合して、インヒビターMnSe,Mn
Sを形成する。ここに適正量のMnSe,MnSを確保するた
めには、初期鋼中に(Se+S)の和で0.01mass%以上、
0.06mass%以下と、Mn:0.02〜0.2 mass%を不可欠とす
る。というのは、これらの量がそれぞれ下限に満たない
と二次再結晶を好適に生じさせるためのインヒビター量
が不足し、一方上限を超えると熱間圧延前の固溶が困難
となるからである。なお、後述するように、最終冷延
後、2次再結晶焼鈍前の間に増窒素処理を行う場合に
は、Se,SおよびMnの添加は必ずしも必要とはしない
が、Mnについては鋼の延性改善等を目的として添加する
ことが好ましい。
S,Se量は、{110}面の板面に対する角度と強い相
関があり、この角度を4〜6°の好適範囲に制御するた
めには、S量を 0.005mass%未満に抑制すると共に、Se
量を0.01〜0.03mass%の範囲に制限することが好適であ
る。
b,Ni,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInのうちから選んだ
少なくとも1種:0.0005〜2.0 mass% これらの元素はいずれも、表面や粒界への偏析、析出物
形成等によって、二次再結晶方位を制御する目的で添加
されるものであるが、含有量が0.0005mass%に満たない
とその添加効果に乏しく、一方 2.0mass%を超えると磁
東密度の低下を招くので、単独使用または併用いずれの
場合においても0.0005〜2.0 mass%の範囲で含有させる
ものとした。
圧延中での再結晶を促進して磁気特性を向上させる目的
で、Cを0.0050〜0.08mass%程度の範囲で含有させるこ
ともできる。
る。所定の成分に調整された鋼塊やスラブを、公知の方
法により、熱間圧延および冷間・温間圧延して最終板厚
とする。鋼素材としては、連続熱延法やシートバーキャ
スト法、コイルキャスト法等で得たものを適用すること
もできる。
鈍を施すが、この発明では、最終冷延後、2次再結晶焼
鈍前の間に増窒素処理を施すこともできる。この処理
は、鋼板表面の窒素濃度を上昇させて、2次再結晶時に
AlNによるインヒビター機能を強化させるために行うも
のである。従って、この処理を行う場合には、スラブ段
階においてAlNを固溶させるための高温加熱処理が必ず
しも必要ではないので、スラブ加熱温度を1280℃以下程
度まで低減できる利点がある。
れに先立ち、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布するが、こ
の発明では、この焼鈍分離剤中にタリウムまたは鉛の塩
素化合物またはふっ素化合物を含有させることが重要で
ある。というのは、これらタリウムまたは鉛の塩素化合
物またはふっ素化合物は、前記実験1で述べたとおり、
少量の添加で{110}面の板面に対する角度を適正範
囲に制御できるだけでなく、安定した鏡面化および純化
が達成され、その結果ヒステリシス損(Wh1.7)を効果
的に低減することができるからである。
たはふっ素化合物の添加量は、通常の焼鈍分離剤:100
重量部に対し 0.1〜10重量部の範囲とする必要がある。
というのは、0.1 重量部に満たないとその添加効果に乏
しく、一方10重量部を超えると従来より少量とはいえ塩
化物に起因した炉体の腐食や製品板における発錆が懸念
されるからである。なお、焼鈍分離剤の主成分として
は、MgOやA12O3 など従来公知のものいずれもが使用で
きる。また、塗布方法としては、静電塗布や水スラリー
塗布など公知の手法を用いることができる。塗布量につ
いては3〜30 g/m2 程度が好適である。さらに、金属塩
化物、水酸化物、ほう酸塩、硝酸塩、燐酸塩、炭酸塩、
硫酸塩および硫化物を適宜加えて上記の分離剤を補足す
ることも可能である。
塩素化合物またはふっ素化合物を適量添加した焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布したのち、2次再結晶焼鈍を施すわ
けであるが、この2次再結晶焼鈍工程中、特にその昇温
過程において 800℃から 900℃までの昇温速度を8℃/h
以下の徐加熱とすることが重要である。というのは、 8
00〜900 ℃における昇温速度が8℃/hを上回ると、二次
再結晶の方位安定性が低下するからである。
の形成がない鏡面化状態で、炭化物等の析出も少なく、
また{110}面の方位が的確に制御された方向性珪素
鋼板が得られるのである。
鏡面化および純化を一層促進するためには、1000℃以上
における水素分圧を 0.9 atm以上にすることが望まし
い。というのは、1000℃以上における水素分圧を 0.9 a
tm以上にすれば、表面酸化物の形成が抑制されると共
に、H2SやH2Seが効果的に気化されることにより、鋼板
表面の鏡面化および純化が一層促進されるからである。
気としてやれば、フォルステライト被膜の形成が格段に
抑制され、一層の鏡面化および純化が達成される。この
点、広く行われている窒素雰囲気では、フォルステライ
ト等の被膜の前駆体酸化物の形成が促進される。従っ
て、この場合には、焼鈍分離剤に添加する塩化物量が少
量でも所望の目的を達成することができる利点がある。
ここに、上記したAr雰囲気は、必ずしも 600℃から 900
℃までの全温度範囲にわたって実施する必要はなく、こ
の温度範囲の一部の温度域でも良い。
再結晶焼鈍による鏡面化後、さらにNaC1電解等で一層の
表面平滑化を行うなど、公知の手法との組み合わせも可
能である。また、この発明では、上記のようにして得た
鏡面化方向性珪素鋼板の表面に、張力被膜を被成した一
層の鉄損低減を図ることもできる。ここに、張力被膜と
しては、りん酸塩系の被膜およびPVD等によるセラミ
ック被膜など、従来公知のものいずれもが適合する。さ
らに、この発明は、従来の磁区細分化技術との併用が可
能で、併用により加算的以上の相乗効果が得られる。こ
こでいう磁区細分化技術とは、例えば製品の鋼板表面に
レーザーやプラズマジェットを照射して局所的に歪領域
を設ける方法、鋼板表面に溝を設ける方法、鋼板表面の
組織もしくは組成を被膜も含めて局所的に変更する方法
などが挙げられ、実際の処理に際しても突起ロールやエ
ッチング法など従来公知のものが適用できる。
S:0.03mass%、A1:0.02mass%、N:80 ppm,Sn:0.
3 mass%およびCu:0.2 mass%を含有し、残部はFeおよ
び不可避的不純物からなるスラブを、1370℃に加熱した
のち、熱間圧延により 2.0mm厚の熱延板とし、ついで温
間圧延により板厚:0.21mmの最終板厚に仕上げたのち、
脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍を施した。この鋼板を2分
割し、一方には A1203:100 重量部に対してふっ化鉛を
0.15重量部添加した焼鈍分離剤を(発明例)、他方には
A1203単独の焼鈍分離剤(比較例)をそれぞれ静電塗布
により 18 g/m2塗布し、 800℃までN2雰囲気中で平均50
℃/hの速度で昇温し、 800℃から 900℃まで(25%N2+75
%H2)の混合雰囲気中にて平均 4.5℃/hの速度で昇温し、
その後、水素+窒素混合雰囲気中(水素分圧:0.8 atm)
で1200℃まで平均14℃/hの速度で昇温し、引き続き1200
℃で6時間の純化を兼ねた二次再結晶仕上げ焼鈍を施し
たのち、放冷して、フォルステライト被膜のない方向性
珪素鋼板を得た。
0}面の板面となす角度の平均値(面積加重平均)は、
発明例は 4.6°であったのに対し、比較例は 9.9°であ
った。また、鋼板表面の粗度は、発明例はRa:0.32μm
、比較例はRa:0.45μm であった。さらに、発明例で
は、残留炭化物量は8 ppm、硫化物は主にCu2Sが22 pp
m,Se化物は主にMnSeが3 ppmで、(C+S+Se)合計
で33 ppmであり、またWh1.7=0.33 W/kg であったのに
対し、比較例はそれぞれ15 ppm,35 ppm,5 ppmで、
(C+S+Se)合計で55 ppmであり、Wh1.7=0.51 W/k
g であった。
中、1000℃以上の温度域における水素分圧を 1.0 atmま
で上げた場合には、{110}面の板面と成す角度の平
均値は3.8 °、鋼板の表面粗度はRa:0.29μm 、(C+
S+Se)合計:26 ppmで、Wh1 .7=0.30 W/kg という良
好なヒステリシス損が得られた。
昇温雰囲気をAr雰囲気としたところ、{110}面の板
面と成す角度の平均値は4.5 °、鋼板の表面粗度はRa:
0.26μm 、(C+S+Se)合計:23 ppmで、Wh1.7=0.
28 W/kg という一層良好なヒステリシス損が得られた。
N:80 ppm,Sb:0.1 mass%およびBi:0.0005mass%を
含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブ
を、1150℃に加熱したのち、熱間圧延により 2.0mmの熱
延板とし、ついで熱延板焼鈍後、冷間圧延により板厚:
0.29mmに仕上げたのち、1次再結晶焼鈍を施した。つい
で、H2+N2+アンモニア混合雰囲気中で、 800℃,1 m
inの増窒素処理を施したのち、MgO:100 重量部に対し
て塩化タリウム:6重量部を添加した焼鈍分離剤を水ス
ラリーで 14 g/m2塗布し、乾燥後、 800℃までをN2雰囲
気中で平均50℃/hの速度で昇温し、 800℃から 900℃ま
でを(25%N2+75%H2)の混合雰囲気中にて平均 4.5℃/hの
速度で昇温し、 900℃から1150℃までを水素+窒素混合
雰囲気中(水素分圧:0.8 atm)で平均20℃/hの速度で昇
温し、その後水素中で1150℃, 6時間の純化焼鈍を兼ね
た二次再結晶仕上げ焼鈍を施したのち、放冷して、フォ
ルステライト被膜のない方向性珪素鋼板を得た。
0}面の板面と成す角度の平均値は3.2 °であり、鋼板
の表面粗度はRa:0.25μm 、残留炭化物量は16 ppm、硫
化物は主にMnSで8 ppm,Se化物は主に Cu2Seで4 ppm
で、(C+S+Se)合計で28ppmであり、またWh1.7=
0.33 W/kg であった。
における水素分圧を 1.02 atm まで上げた場合には、
{110}面の板面と成す角度の平均値は 4.1°、鋼板
の表面粗度はRa:0.22μm 、(C+S+Se)合計:22 p
pmで、Wh1.7=0.25 W/kg という良好なヒステリシス損
値が得られた。
雰囲気をAr雰囲気としたところ、{110}面の板面と
成す角度の平均値は 4.4°、鋼板の表面粗度はRa:0.20
μm、(C+S+Se)合計:18 ppmで、Wh1.7=0.23 W/
kg という一層良好なヒステリシス損が得られた。
S:0.002 mass%、Se:0.02mass%、Al:0.03mass%、
N:90 ppm,Sb:0.07mass%、Cu:0.2 mass%およびN
i:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物からなるスラブを、1410℃に誘導加熱したのち、熱間
圧延により 2.0mmの熱延板とし、ついで熱延板焼鈍後、
冷間圧延と中間焼鈍に引き続く温間圧延により板厚:0.
19mmに仕上げたのち、NaCl電解槽中で線状の磁区細分化
溝(溝幅:0.2 mm、溝深さ:15μm 、溝間隔:3mm)を
形成した。その後、脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍を施し
たのち、MgO:100 重量部に対して塩化鉛を0.15重量部
添加した焼鈍分離剤を、水スラリーで塗布し、焼き付け
乾燥後、 800℃までをAr雰囲気中で平均30℃/hの速度で
昇温し、 800℃から900 ℃までをAr雰囲気中で平均 6.5
℃/hの速度で昇温し、その後、1.02 atmの水素雰囲気中
で1200℃まで10℃/hの速度で昇温し、この温度で4時間
の純化を兼ねた二次再結晶焼鈍を施したのち、放冷し
て、フォルステライト被膜のない方向性珪素鋼板を得
た。
0}面の板面と成す角度の平均値は5.2 °であり、鋼板
表面の粗度はRa:0.19μm 、残留炭化物は5 ppm、硫化
物は分析下限(1 ppm)未満、Se化物は主にMnSeで2 p
pmで、(C+S+Se)合計で約7 ppmであり、またWh
1.7=0.21 W/kg 、W17/50 =0.58 W/kg であった。
m のNaCl水溶液中での電解研磨を施したところ、Wh1.7
は 0.18 W/kgまで低減し、さらにCrめっきによる張力コ
ーティングを施したところ、Wh1.7=0.17 W/kg 、W
17/50 =0.49 W/kg という良好な鉄損値が得られた。
S:0.001 mass%、Se:0.03mass%、Sb:0.07mass%お
よびMo:0.02mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物からなるスラブを、1410℃に誘導加熱したのち、
熱間圧延により2.0mm の熱延板とし、ついで熱延板焼鈍
後、冷間圧延と中間焼鈍に引き続く温間圧延により板
厚:0.19mmに仕上げたのち、NaCl電解槽中で線状の磁区
細分化溝(溝幅:0.2 mm、溝深さ:15μm 、溝間隔:3
mm)を形成した。その後、脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍
を施したのち、MgO:100 重量部に対して塩化鉛を0.15
重量部添加した焼鈍分離剤を、水スラリーで塗布し、焼
き付け乾燥後、 800℃までをAr雰囲気中で平均30℃/hの
速度で昇温し、 800℃から 900℃を(25%N2+75%H2)の混
合雰囲気中で平均 6.5℃/hの速度で昇温し、引き続き10
00℃までを平均15℃/hの速度で昇温し、雰囲気を水素雰
囲気(水素分圧:1.0 atm)に切り替えて平均15℃/hの速
度で1200℃まで昇温し、その後1.02気圧の水素中で1200
℃, 4時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を施した
のち、放冷して、フォルステライト被膜のない方向性珪
素鋼板を得た。
0}面の板面と成す角度の平均値は5.8 °であり、鋼板
表面の粗度はRa=0.29μm 、残留炭化物は5 ppm、硫化
物は1 ppm、Se化物は主にMnSeで3 ppmで、(C+S+
Se)合計で約9 ppmであり、またWh1.7=0.28 W/kg 、
W17/50 =0.62 W/kg であった。
食や製品板の発錆、さらには二次再結晶焼鈍中における
純化不足等のおそれなしに、ヒステリシス損を効果的に
低減することができ、ひいては従来に比べ鉄損特性が一
層改善された方向性珪素鋼板を安定して得ることができ
る。
4)
等の鉄心材料として好適な方向性珪素鋼板に関し、とく
に履歴損失(ヒステリシス損)を効果的に低減すること
によって鉄損特性の一層の改善を図ろうとするものであ
る。
01〕方位や(100)〔001〕方位に配向した方向
性電磁鋼板は、優れた軟磁気特性を有することから商用
周波数域での各種鉄心材料として広く利用されている。
かような電磁鋼板に要求される特性としては、鉄損(一
般に50Hzの周波数で 1.7Tに磁化させた時の損失である
W17/50 (W/kg)で表わされる)が低いことが重要であ
る。
低下させるのに有効な方法として、Siを含有させ電気抵
抗を高める方法、板厚を薄くする方法、結晶粒径を小さ
くする方法等が、一方ヒステリシス損(Wh )を低下さ
せるのに有効な方法として、圧延方向に<100>軸を
高度に揃える方法等が知られている。
含有させると飽和磁束密度の低下を招き、鉄心のサイズ
拡大の原因となるので限界があり、また板厚を薄くする
方法は大幅な製造コストの増加を招くためやはり限界が
あった。さらに、結晶方位を揃える方法も、磁束密度B
8 で1.96Tや1.97Tという高い値の製品がすでに得られ
ており、これ以上の改善の余地は少なくなっている。
ー光を照射して鋼板表面に局所的に歪を導入したり、溝
を形成することによって人工的に磁区幅を細分化し鉄損
を低減する技術が開発され、大幅な鉄損の低減が図られ
るようになった。しかしながら、この技術による鉄損低
減効果にも限界があった。
公報には、鋼板金属表面と非金属被膜との界面の粗度を
低減し、さらに張力処理を施すことによって、材料の鉄
損が大幅に低減することが報告されている。
時に用いる焼鈍分離剤については、通常用いられるMgO
を主とする焼鈍分離剤では、焼鈍後の鋼板表面にフォル
ステライトを主成分とする緻密な被膜が形成され、鋼板
金属表面の粗度が低減されないだけでなく、その後に鏡
面表面とするための鏡面化研磨やサーマルエッチングの
際にも不都合が生じる。このようなフォルステライトを
主成分とする被膜を形成させないために、例えば特開平
7-48674号公報では、1次再結晶焼鈍で生じたサブスケ
ールを除去したのち二次再結晶焼鈍を行う方法を提案し
ているが、この方法ではコストの上昇が避けられない。
製造する際には、Al2O3 を主成分とする焼鈍分離剤や塩
化物を含む焼鈍分離剤が用いられており、たとえば特開
昭64-62476号公報には、MgOにアルカリやアルカリ土類
金属の塩化物を2〜40重量部添加した焼鈍分離剤を使用
する方法が提案されている。
さない鋼板では、二次再結晶焼鈍中に被膜に吸収除去さ
れるS,Se等の純化に劣る問題や、分離剤中に少量なが
ら不可避的に含まれる炭酸痕の問題および混入有機物な
どの分解で生じる炭素の吸収による浸炭の問題等が課題
として残されていた。
状に鑑み開発されたもので、2次再結晶焼鈍時にフォル
ステライト被膜を形成させないプロセスにおいて、ヒス
テリシス損を効果的に低減し、ひいては鉄損特性の一層
の改善を達成した方向性珪素鋼板を提案することを目的
とする。
の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、(1) 特定組
成の珪素鋼素材および特定組成の焼鈍分離剤を用いた上
で、二次再結晶焼鈍工程における昇温条件、さらには雰
囲気条件を制御してやれば、わずかな量の塩素化合物ま
たはふっ素化物で安定して鏡面化を達成できる、(2) か
かる鏡面材においては、二次再結晶粒の<100>方向
と圧延方向との角度だけでなく、<110>方向と板幅
方向との角度も鉄損値に影響を及ぼす、(3) 鏡面鋼板の
内部に残留する析出物のうち、特に炭化物、硫化物およ
びセレン化物が鉄損に及ぼす影響が大きいことの知見を
得た。この発明は、上記の知見に立脚するものである。
りである。 1.Si:1.5 〜7.0 mass%を含有し、二次再結晶によっ
て生じた結晶粒の{110}面が板面に対して面積加重
平均で2〜8°の範囲で傾き、地鉄表面が算術平均粗さ
Raで 0.4μm 以下の平滑面で、しかも鋼中炭化物、硫化
物およびセレン化物の総量が(C+S+Se)重量で35 p
pm以下で、かつヒステリシス損Wh 17/50 が0.35 W/kg以
下を満足し、2次再結晶焼鈍においてフォルステライト
被膜を形成させないことにより実質的にフォルステライ
ト被膜を有しないことを特徴とする低履歴損失の方向性
珪素鋼板。
コーティングをそなえ、ヒステリシス損Wh 17/50 が0.30
W/kg以下であることを特徴とする低履歴損失の方向性珪
素鋼板。
に、磁区細分化のための線状または点状の歪付加領域ま
たは溝形成領域を導入したことを特徴とする低履歴損失
の方向性珪素鋼板。
る。まず、この発明を由来するに至った実験結果につい
て説明する。実験1 C:0.05mass%、Si:3.2 mass%、Mn:0.06mass%、
S:0.02mass%、Se:0.001 mass%、Al:0.02mass%、
N:80 ppmおよびCu:0.2 mass%を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物からなるスラブを、1400℃に加熱し
たのち、熱間圧延により 2.0mm厚の熱延板とし、ついで
温間圧延により0.21mmの板厚に仕上げたのち、脱炭を兼
ねた1次再結晶焼鈍を施した。
示す種々の塩化物またはふっ化物を添加した焼鈍分離剤
を、水スラリーで塗布し、焼き付け乾燥後、同じく表1
に示す条件で二次再結晶焼鈍を施した。なお、1000℃以
上の温度域については、10℃/hの速度で1200℃まで昇温
し、同温度で6時間の純化を兼ねた二次再結晶仕上げ焼
鈍を施した。かくして得られた製品板について、その表
面の結晶方位、鏡面化状態、炭化物、硫化物およびセレ
ン化物の析出量ならびに50Hzで 1.7Tに磁化させた時の
ヒステリシス損(Wh 17/50 )について調べた結果を、表
2に示す。
{110}面の板面に対する角度の平均である面積加重
平均で表すものとした。というのは、この表示によれ
ば、二次再結晶粒の<100>方向と圧延方向との角度
だけでなく、<110>方向と板幅方向との角度も同時
に表すことができるからである。ここに、面積加重平均
は、同一条件で処理した成品5枚について、それぞれの
成品上2cm間隔の5×8の格子状の40点に対し、各点の
方位をラウエ法で求め、{110}面と板面とのなす最
小角をそれぞれ算出し、得られた総計 200点の値を平均
することにより求めた。勿論、数十程度の二次粒を選
び、それらの面積と方位から面積加重平均を求めてもよ
い。
析出量〔(C+Se+S)の析出重量で表す〕は、鋼板の
純化程度を示すもので、この量が少ないほど鋼中におけ
る有害元素が少なく、鋼板の純化が進行しているといえ
るが、フォルステライト被膜を形成させないプロセスに
よる鋼板においては析出が生じ易く、鉄損にとっては特
に析出状態になるものが有害であるので、析出物定量法
(任意でよい)を用いて析出量を制御する必要がある。
に、タリウムや鉛の塩化物またはふっ化物を少量添加す
ると共に、 800〜900 ℃の温度域を徐加熱とすることに
より、{110}面の板面に対する角度を2〜8°の適
正範囲に制御することができるだけでなく、安定した鏡
面化が達成されると共に、鋼板の純化が促進され、その
結果ヒステリシス損(Wh 17/50 )を効果的に低減するこ
とができた。特に、1000℃以上における水素分圧を 0.9
atm以上にした場合には、鋼板の純化および鏡面化が一
層促進され、さらに、 600〜900 ℃における範囲をAr雰
囲気とした場合には、フォルステライト被膜の形成が格
段に抑制されると共に、一層の純化、ひいては低Wh
17/50 化が達成されている。
0.1重量部よりも少ないとフォルステライト被膜の形成
が顕著になり、安定してRa≦0.4 μm という鏡面が得ら
れず、一方添加量が10重量部を超えたり、 800〜900 ℃
の温度域の昇温速度が8℃/hを上回った場合には、{1
10}面の板面に対する角度を安定して2〜8°の範囲
におさめることができず、その結果、この発明で所期し
たほど良好な低履歴損失を得ることができなかった。
0}面の板面に対する角度は、インヒビター形成元素で
あるS,Se量と強い相関があり、S量を 0.005mass%未
満に抑制すると共に、Se量を0.01〜0.03mass%の範囲に
制限することが好ましい。
02mass%にすること以外、上記の実験1と同様にして実
質的にフォルステライト被膜を有しない方向性珪素鋼板
を製造した。なお、この時、焼鈍分離剤中に添加した添
加物および二次再結晶焼鈍条件は、表3に示したとおり
である。かくして得られた製品板について、実験1と同
様な調査を行った結果を表4に示す。
素として添加するS量を抑制すると共に、Seを適正量添
加することにより、二次再結晶後の{110}面の板面
に対する角度を4〜6°の最適範囲に的確に制御するこ
とができ、その結果、ヒステリシス損を安定して低減す
ることができた。なお、この場合でも、1000℃以上にお
ける水素分圧を 0.9 atm以上にし、さらには 600〜900
℃における範囲をAr雰囲気とすることが、鋼板の純化お
よび鏡面化ひいては低Wh 17/50 化の面でに有利であるこ
とに変わりはなかった。
や鉛の塩化物またはふっ化物を少量添加すると共に、二
次再結晶昇温過程中、 800〜900 ℃の温度範囲を徐熱す
ることによって、{110}面の方位が的確に制御され
るだけでなく、鋼板表面が平滑化されて炭化物等の有害
成分が減少する機構については、まだ明確に解明された
わけではないが、タリウムまたは鉛と塩素またはふっ素
元素との相乗作用によって、{110}面の鋼板表面エ
ネルギーが変化するか、あるいは二次再結晶時の粒界移
動速度に影響を与えて、特定方位の二次再結晶粒の成長
を促す等の作用で二次再結晶粒の主方位が定まり、しか
もこのような粒界移動時に純化も促進されるためと考え
られる。
て、その構成要件を前記の範囲に限定した理由について
説明する。 Si:1.5 〜7.0 mass% Siは、鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効
な成分であるが、含有量が 7.0mass%を超えると硬くな
って加工が困難となり、一方 1.5mass%に満たないと二
次再結晶焼鈍中に変態を生じて安定した二次再結晶組織
が得られないので、Si含有量は 1.5〜7.0 mass%の範囲
に限定した。なお、製品板中におけるC,S,Seおよび
Nなどの元素はいずれも、磁気特性上有害な作用があ
り、特に鉄損を劣化させるので、製品板においてはそれ
ぞれ、C:0.003 mass%以下、S,Se:0.002 mass%以
下、N:0.002 mass%以下程度に低減することが望まし
いが、後述するように、この発明では、析出物量の総和
を所定量以下まで低減することが特に重要である。
° この規定は、この発明において特に重要であり、二次再
結晶後の結晶粒については、その{110}面を板面に
対して面積加重平均で2〜8°だけ傾けさせることが肝
要である。これは、従来知られている圧延方向と<10
0>軸との傾きの変化による磁区細分化効果だけではな
く、圧延方向と直角方向の<110>軸と板面とのなす
角度が履歴損に大きな影響を与えるからであり、この効
果は、フォルステライト被膜あるいはそのアンカーによ
る凹凸を持たない鏡面化鋼板で特に大きい。ここに、こ
の角度が2°に満たなかったり、8°を超えた場合に
は、この発明で所期したほどの低鉄損を得ることができ
ない。
化等の不利が生じるだけでなく、後述する炭化物等の有
害成分が増大して、鉄損の低減が達成できない。そこ
で、この発明では、鋼板の表面粗さRaにつき 0.4μm 以
下に限定した。
(C+S+Se)重量で35 ppm以下 炭化物、硫化物およびセレン化物等の析出物はいずれ
も、磁壁の移動を阻害してヒステリシス損ひいては鉄損
を劣化させる有害成分であるので、極力低減することが
好ましいが、35 ppm以下であれば許容できる。
対する角度を2〜8°の範囲に制御すると共に、表面粗
さRaを 0.4μm 以下、(C+S+Se)量を35 ppm以下と
することにより、低Wh 17/50 化を安定して達成すること
ができるので、従来実現が難しかったWh 17/50 ≦0.35 W
/kg を特徴事項として掲げた。
付与することにより、わずかな張力で効果的にWh 17/50
を 0.30 W/kg以下まで低減することができる。さらに、
この発明では、製造工程の途中または製造後に、線状ま
たは点状の歪付加領域または溝形成等による磁区細分化
処理が施すことによって、鉄損を一層低減することもで
きる。なお、鋼板の板厚は特に限定されることはない
が、渦電流損のうち古典的渦電流損は板厚の関数である
ので、要求される鉄損に応じてコストとの勘案の上で定
められ、通常0.10〜0.25mm程度とすることが好ましい。
法について説明する。まず、素材の成分組成範囲につい
て説明する。 Si:1.5 〜7.0 mass% 製品である方向性電磁鋼板について説明したとおり、含
有量が 1.5mass%に満たないと二次再結晶焼鈍中に変態
を生じて安定した二次再結晶組織が得られず、一方 7.0
mass%を超えると固くなって加工が困難となるので、Si
含有量は 1.5〜7.0 mass%の範囲に限定した。
成する。特に初期鋼中にAlを 0.006mass%以上含有させ
ることによって結晶配向性を一層向上させることができ
る。しかしながら、0.06mass%を超えて含有させると再
び結晶配向性の劣化が生じるので、Alは0.06mass%以下
に限定した。また、N含有量が 0.01 mass%を超えると
ふくれ欠陥の発生が懸念されるので、N量は0.01mass%
以下に限定した。なお、下限は特に規定しないけれど
も、20ppm以下まで低下させるのは経済的な不利が大き
い。
Mn:0.02〜0.2 mass% Se,SとMnは、互いに結合して、インヒビターMnSe,Mn
Sを形成する。ここに適正量のMnSe,MnSを確保するた
めには、初期鋼中に(Se+S)の和で0.01mass%以上、
0.06mass%以下と、Mn:0.02〜0.2 mass%を不可欠とす
る。というのは、これらの量がそれぞれ下限に満たない
と二次再結晶を好適に生じさせるためのインヒビター量
が不足し、一方上限を超えると熱間圧延前の固溶が困難
となるからである。なお、後述するように、最終冷延
後、2次再結晶焼鈍前の間に増窒素処理を行う場合に
は、Se,SおよびMnの添加は必ずしも必要とはしない
が、Mnについては鋼の延性改善等を目的として添加する
ことが好ましい。
S,Se量は、{110}面の板面に対する角度と強い相
関があり、この角度を4〜6°の好適範囲に制御するた
めには、S量を 0.005mass%未満に抑制すると共に、Se
量を0.01〜0.03mass%の範囲に制限することが好適であ
る。
b,Ni,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInのうちから選んだ
少なくとも1種:0.0005〜2.0 mass% これらの元素はいずれも、表面や粒界への偏析、析出物
形成等によって、二次再結晶方位を制御する目的で添加
されるものであるが、含有量が0.0005mass%に満たない
とその添加効果に乏しく、一方 2.0mass%を超えると磁
東密度の低下を招くので、単独使用または併用いずれの
場合においても0.0005〜2.0 mass%の範囲で含有させる
ものとした。
圧延中での再結晶を促進して磁気特性を向上させる目的
で、Cを0.0050〜0.08mass%程度の範囲で含有させるこ
ともできる。
る。所定の成分に調整された鋼塊やスラブを、公知の方
法により、熱間圧延および冷間・温間圧延して最終板厚
とする。鋼素材としては、連続熱延法やシートバーキャ
スト法、ストリップキャスト法等で得たものを適用する
こともできる。
鈍を施すが、この発明では、最終冷延後、2次再結晶焼
鈍前の間に増窒素処理を施すこともできる。この処理
は、鋼板表面の窒素濃度を上昇させて、2次再結晶時に
AlNによるインヒビター機能を強化させるために行うも
のである。従って、この処理を行う場合には、スラブ段
階においてAlNを固溶させるための高温加熱処理が必ず
しも必要ではないので、スラブ加熱温度を1280℃以下程
度まで低減できる利点がある。
れに先立ち、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布するが、こ
の発明では、この焼鈍分離剤中にタリウムまたは鉛の塩
素化合物またはふっ素化合物を含有させることが好適で
ある。というのは、これらタリウムまたは鉛の塩素化合
物またはふっ素化合物は、前記実験1で述べたとおり、
少量の添加で{110}面の板面に対する角度を適正範
囲に制御できるだけでなく、安定した鏡面化および純化
が達成され、その結果ヒステリシス損(Wh 17/50 )を効
果的に低減することができるからである。
たはふっ素化合物の添加量は、通常の焼鈍分離剤:100
重量部に対し 0.1〜10重量部の範囲とすることが好まし
い。というのは、0.1 重量部に満たないとその添加効果
に乏しく、一方10重量部を超えると従来より少量とはい
え塩化物に起因した炉体の腐食や製品板における発錆が
懸念されるからである。なお、焼鈍分離剤の主成分とし
ては、MgOやA12O3 など従来公知のものいずれもが使用
できる。また、塗布方法としては、静電塗布や水スラリ
ー塗布など公知の手法を用いることができる。塗布量に
ついては3〜30 g/m2 程度が好適である。さらに、金属
塩化物、水酸化物、ほう酸塩、硝酸塩、燐酸塩、炭酸
塩、硫酸塩および硫化物を適宜加えて上記の分離剤を補
足することも可能である。
塩素化合物またはふっ素化合物を適量添加した焼鈍分離
剤を鋼板表面に塗布したのち、2次再結晶焼鈍を施すわ
けであるが、この2次再結晶焼鈍工程中、特にその昇温
過程において 800℃から 900℃までの昇温速度を8℃/h
以下の徐加熱とすることが好ましい。というのは、 800
〜900 ℃における昇温速度が8℃/hを上回ると、二次再
結晶の方位安定性が低下するからである。
の形成がない鏡面化状態で、炭化物等の析出も少なく、
また{110}面の方位が的確に制御された方向性珪素
鋼板が得られるのである。
鏡面化および純化を一層促進するためには、1000℃以上
における水素分圧を 0.9 atm以上にすることが望まし
い。というのは、1000℃以上における水素分圧を 0.9 a
tm以上にすれば、表面酸化物の形成が抑制されると共
に、H2SやH2Seが効果的に気化されることにより、鋼板
表面の鏡面化および純化が一層促進されるからである。
気としてやれば、フォルステライト被膜の形成が格段に
抑制され、一層の鏡面化および純化が達成される。この
点、広く行われている窒素雰囲気では、フォルステライ
ト等の被膜の前駆体酸化物の形成が促進される。従っ
て、この場合には、焼鈍分離剤に添加する塩化物量が少
量でも所望の目的を達成することができる利点がある。
ここに、上記したAr雰囲気は、必ずしも 600℃から 900
℃までの全温度範囲にわたって実施する必要はなく、こ
の温度範囲の一部の温度域でも良い。
再結晶焼鈍による鏡面化後、さらにNaC1電解等で一層の
表面平滑化を行うなど、公知の手法との組み合わせも可
能である。また、この発明では、上記のようにして得た
鏡面化方向性珪素鋼板の表面に、張力被膜を被成した一
層の鉄損低減を図ることもできる。ここに、張力被膜と
しては、りん酸塩系の被膜およびPVD等によるセラミ
ック被膜など、従来公知のものいずれもが適合する。さ
らに、この発明は、従来の磁区細分化技術との併用が可
能で、併用により加算的以上の相乗効果が得られる。こ
こでいう磁区細分化技術とは、例えば製品の鋼板表面に
レーザーやプラズマジェットを照射して局所的に歪領域
を設ける方法、鋼板表面に溝を設ける方法、鋼板表面の
組織もしくは組成を被膜も含めて局所的に変更する方法
などが挙げられ、実際の処理に際しても突起ロールやエ
ッチング法など従来公知のものが適用できる。
S:0.03mass%、A1:0.02mass%、N:80 ppm,Sn:0.
3 mass%およびCu:0.2 mass%を含有し、残部はFeおよ
び不可避的不純物からなるスラブを、1370℃に加熱した
のち、熱間圧延により 2.0mm厚の熱延板とし、ついで温
間圧延により板厚:0.21mmの最終板厚に仕上げたのち、
脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍を施した。この鋼板を2分
割し、一方には A1203:100 重量部に対してふっ化鉛を
0.15重量部添加した焼鈍分離剤を(発明例)、他方には
A1203単独の焼鈍分離剤(比較例)をそれぞれ静電塗布
により 18 g/m2塗布し、 800℃までN2雰囲気中で平均50
℃/hの速度で昇温し、 800℃から 900℃まで(25%N2+75
%H2)の混合雰囲気中にて平均 4.5℃/hの速度で昇温し、
その後、水素+窒素混合雰囲気中(水素分圧:0.8 atm)
で1200℃まで平均14℃/hの速度で昇温し、引き続き1200
℃で6時間の純化を兼ねた二次再結晶仕上げ焼鈍を施し
たのち、放冷して、フォルステライト被膜のない方向性
珪素鋼板を得た。
0}面の板面となす角度の平均値(面積加重平均)は、
発明例は 4.6°であったのに対し、比較例は 9.9°であ
った。また、鋼板表面の粗度は、発明例はRa:0.32μm
、比較例はRa:0.45μm であった。さらに、発明例で
は、残留炭化物量は8 ppm、硫化物は主にCu2Sが22 pp
m,Se化物は主にMnSeが3 ppmで、(C+S+Se)合計
で33 ppmであり、またWh 17/50 =0.33 W/kg であったの
に対し、比較例はそれぞれ15 ppm,35 ppm,5 ppmで、
(C+S+Se)合計で55 ppmであり、Wh 17/50 =0.51 W
/kg であった。
中、1000℃以上の温度域における水素分圧を 1.0 atmま
で上げた場合には、{110}面の板面と成す角度の平
均値は3.8 °、鋼板の表面粗度はRa:0.29μm 、(C+
S+Se)合計:26 ppmで、Wh 1 7/50 =0.30 W/kg という
良好なヒステリシス損が得られた。
昇温雰囲気をAr雰囲気としたところ、{110}面の板
面と成す角度の平均値は4.5 °、鋼板の表面粗度はRa:
0.26μm 、(C+S+Se)合計:23 ppmで、Wh 17/50 =
0.28 W/kg という一層良好なヒステリシス損が得られ
た。
N:80 ppm,Sb:0.1 mass%およびBi:0.0005mass%を
含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなるスラブ
を、1150℃に加熱したのち、熱間圧延により 2.0mmの熱
延板とし、ついで熱延板焼鈍後、冷間圧延により板厚:
0.29mmに仕上げたのち、1次再結晶焼鈍を施した。つい
で、H2+N2+アンモニア混合雰囲気中で、 800℃,1 m
inの増窒素処理を施したのち、MgO:100 重量部に対し
て塩化タリウム:6重量部を添加した焼鈍分離剤を水ス
ラリーで 14 g/m2塗布し、乾燥後、 800℃までをN2雰囲
気中で平均50℃/hの速度で昇温し、 800℃から 900℃ま
でを(25%N2+75%H2)の混合雰囲気中にて平均 4.5℃/hの
速度で昇温し、 900℃から1150℃までを水素+窒素混合
雰囲気中(水素分圧:0.8 atm)で平均20℃/hの速度で昇
温し、その後水素中で1150℃, 6時間の純化焼鈍を兼ね
た二次再結晶仕上げ焼鈍を施したのち、放冷して、フォ
ルステライト被膜のない方向性珪素鋼板を得た。
0}面の板面と成す角度の平均値は3.2 °であり、鋼板
の表面粗度はRa:0.25μm 、残留炭化物量は16 ppm、硫
化物は主にMnSで8 ppm,Se化物は主に Cu2Seで4 ppm
で、(C+S+Se)合計で28ppmであり、またWh 17/50
=0.33 W/kg であった。
における水素分圧を 1.02 atm まで上げた場合には、
{110}面の板面と成す角度の平均値は 4.1°、鋼板
の表面粗度はRa:0.22μm 、(C+S+Se)合計:22 p
pmで、Wh 17/50 =0.25 W/kg という良好なヒステリシス
損値が得られた。
雰囲気をAr雰囲気としたところ、{110}面の板面と
成す角度の平均値は 4.4°、鋼板の表面粗度はRa:0.20
μm、(C+S+Se)合計:18 ppmで、Wh 17/50 =0.23
W/kg という一層良好なヒステリシス損が得られた。
S:0.002 mass%、Se:0.02mass%、Al:0.03mass%、
N:90 ppm,Sb:0.07mass%、Cu:0.2 mass%およびN
i:0.1 mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純
物からなるスラブを、1410℃に誘導加熱したのち、熱間
圧延により 2.0mmの熱延板とし、ついで熱延板焼鈍後、
冷間圧延と中間焼鈍に引き続く温間圧延により板厚:0.
19mmに仕上げたのち、NaCl電解槽中で線状の磁区細分化
溝(溝幅:0.2 mm、溝深さ:15μm 、溝間隔:3mm)を
形成した。その後、脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍を施し
たのち、MgO:100 重量部に対して塩化鉛を0.15重量部
添加した焼鈍分離剤を、水スラリーで塗布し、焼き付け
乾燥後、 800℃までをAr雰囲気中で平均30℃/hの速度で
昇温し、 800℃から900 ℃までをAr雰囲気中で平均 6.5
℃/hの速度で昇温し、その後、1.02 atmの水素雰囲気中
で1200℃まで10℃/hの速度で昇温し、この温度で4時間
の純化を兼ねた二次再結晶焼鈍を施したのち、放冷し
て、フォルステライト被膜のない方向性珪素鋼板を得
た。
0}面の板面と成す角度の平均値は5.2 °であり、鋼板
表面の粗度はRa:0.19μm 、残留炭化物は5 ppm、硫化
物は分析下限(1 ppm)未満、Se化物は主にMnSeで2 p
pmで、(C+S+Se)合計で約7 ppmであり、またWh
17/50 =0.21 W/kg 、W17/50 =0.58 W/kg であった。
m のNaCl水溶液中での電解研磨を施したところ、Wh
17/50 は 0.18 W/kgまで低減し、さらにCrめっきによる
張力コーティングを施したところ、Wh 17/50 =0.17 W/k
g 、W17/50 =0.49 W/kg という良好な鉄損値が得られ
た。
S:0.001 mass%、Se:0.03mass%、Sb:0.07mass%お
よびMo:0.02mass%を含有し、残部はFeおよび不可避的
不純物からなるスラブを、1410℃に誘導加熱したのち、
熱間圧延により2.0mm の熱延板とし、ついで熱延板焼鈍
後、冷間圧延と中間焼鈍に引き続く温間圧延により板
厚:0.19mmに仕上げたのち、NaCl電解槽中で線状の磁区
細分化溝(溝幅:0.2 mm、溝深さ:15μm 、溝間隔:3
mm)を形成した。その後、脱炭を兼ねた1次再結晶焼鈍
を施したのち、MgO:100 重量部に対して塩化鉛を0.15
重量部添加した焼鈍分離剤を、水スラリーで塗布し、焼
き付け乾燥後、 800℃までをAr雰囲気中で平均30℃/hの
速度で昇温し、 800℃から 900℃を(25%N2+75%H2)の混
合雰囲気中で平均 6.5℃/hの速度で昇温し、引き続き10
00℃までを平均15℃/hの速度で昇温し、雰囲気を水素雰
囲気(水素分圧:1.0 atm)に切り替えて平均15℃/hの速
度で1200℃まで昇温し、その後1.02気圧の水素中で1200
℃, 4時間の純化焼鈍を兼ねた二次再結晶焼鈍を施した
のち、放冷して、フォルステライト被膜のない方向性珪
素鋼板を得た。
0}面の板面と成す角度の平均値は5.8 °であり、鋼板
表面の粗度はRa=0.29μm 、残留炭化物は5 ppm、硫化
物は1 ppm、Se化物は主にMnSeで3 ppmで、(C+S+
Se)合計で約9 ppmであり、またWh 17/50 =0.28 W/kg
、W17/50 =0.62 W/kg であった。
シス損を効果的に低減することができ、ひいては従来に
比べ鉄損特性が一層改善された方向性珪素鋼板を安定し
て得ることができる。
Claims (3)
- 【請求項1】 Si:1.5 〜7.0 mass%を含有し、二次再
結晶によって生じた結晶粒の{110}面が板面に対し
て面積加重平均で2〜8°の範囲で傾き、地鉄表面が算
術平均粗さRaで 0.4μm 以下の平滑面で、しかも鋼中炭
化物、硫化物およびセレン化物の総量が(C+S+Se)
重量で35 ppm以下で、かつヒステリシス損Wh1.7が 0.3
5 W/kg以下を満足することを特徴とする実質的にフォル
ステライト被膜を有しない低履歴損失の方向性珪素鋼
板。 - 【請求項2】 請求項1において、鋼板表面に張力絶縁
コーティングをそなえ、ヒステリシス損Wh1.7が 0.30
W/kg以下であることを特徴とする低履歴損失の方向性珪
素鋼板。 - 【請求項3】 請求項1または2において、鋼板表面
に、磁区細分化のための線状または点状の歪付加領域ま
たは溝形成領域を導入したことを特徴とする低履歴損失
の方向性珪素鋼板。
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JP2002200069A JP4123847B2 (ja) | 2002-07-09 | 2002-07-09 | 方向性珪素鋼板 |
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JP2002200069A JP4123847B2 (ja) | 2002-07-09 | 2002-07-09 | 方向性珪素鋼板 |
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JP14423198A Division JP3386717B2 (ja) | 1998-05-26 | 1998-05-26 | 低履歴損失の方向性珪素鋼板の製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20130233450A1 (en) * | 2010-09-30 | 2013-09-12 | Qi Xu | Method for manufacturing oriented silicon steel product with high magnetic-flux density |
EP2602345A4 (en) * | 2010-08-06 | 2017-08-02 | JFE Steel Corporation | Grain-oriented magnetic steel sheet and process for producing same |
EP3351649A4 (en) * | 2015-09-17 | 2018-07-25 | JFE Steel Corporation | High silicon steel sheet and manufacturing method therefor |
-
2002
- 2002-07-09 JP JP2002200069A patent/JP4123847B2/ja not_active Expired - Fee Related
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US10760143B2 (en) | 2015-09-17 | 2020-09-01 | Jfe Steel Corporation | High-silicon steel sheet and method of manufacturing the same |
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