JP2003105684A - 退色性の改善された漂白パルプ - Google Patents

退色性の改善された漂白パルプ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 リグノセルロース物質を蒸解して得られる未
漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その後、元素
状塩素を使用しない多段漂白工程で処理してなる漂白パ
ルプにおいて、退色性が著しく改善された漂白パルプの
提供。 【解決手段】 リグノセルロース物質を蒸解して得られ
る未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その後、
反応初期pH=1.5〜4.5で過酸化水素処理し、次
いで、元素状塩素を使用しない多段漂白工程で処理して
なる漂白完成パルプのヘキセンウロン酸量を絶乾パルプ
当たり15mmol以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リグノセルロース
物質の漂白パルプに関する。更に詳しく述べれば、本発
明は、リグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白
パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その後、酸性領域
で過酸化水素処理を行い、次いで、塩素、次亜塩素酸塩
を用いない(ECF,TCF)多段漂白工程で処理して
なる退色性の改善された漂白パルプに関する。
【0002】
【従来の技術】リグノセルロース物質を製紙原料として
多くの用途に使用するためには、蒸解のような化学作用
によってパルプ化した後、あるいはリファイナー等を用
いて機械的作用によってパルプ化した後、得られるパル
プを漂白薬品で漂白して白色度を高める必要がある。例
えば、クラフトパルプは包装資材のように強度を必要と
する用途に使う場合を除いて、通常、アルカリ酸素脱リ
グニンした後、塩素、次亜塩素酸塩、二酸化塩素、酸
素、オゾン、過酸化水素、苛性ソーダ等の漂白剤及び漂
白助剤により漂白処理され、パルプに含まれる着色原因
物質であるリグニン等が除去された後に漂白クラフトパ
ルプとして使用されるのが一般的である。
【0003】未漂白パルプから漂白パルプを製造する場
合は、パルプ繊維自体の強度を或る程度維持することが
必要であり、そのためパルプ繊維を構成するセルロー
ス、ヘミセルロース等の炭水化物の分解を最小限にとど
めるように過激な1段での漂白を避け、漂白薬品と漂白
条件を様々に組み合わせて温和に漂白する3〜6段の多
段漂白法を採用するのが一般的である。
【0004】従来から多段漂白法においては、パルプを
最初に塩素で処理し、パルプ中に含有されるリグニンを
塩素化し、リグニンに可溶性を付与した後、アルカリで
塩素化リグニンを溶解抽出してパルプ中からリグニンを
分離除去し、更に次亜塩素酸塩、二酸化塩素等を使用し
て残留する少量のリグニンを分解除去し、白色度の高い
パルプを得る方法が採られてきた。
【0005】しかしながら、近年、パルプの塩素化段か
らの漂白排水に含まれる有機塩素化合物(以下、AOX
と略す)の環境への影響が懸念され、パルプ漂白に塩素
を用いない動きが高まってきている。また、次亜塩素酸
塩を用いた場合も、パルプの漂白時にクロロホルムが生
成し、環境に悪影響を及ぼす可能性があることから、次
亜塩素酸塩をパルプ漂白に使用しない漂白シーケンスが
求められてきている。
【0006】現在、塩素や次亜塩素酸塩の代替として、
オゾン、酸素、過酸化水素、及び過酢酸、過硫酸等の過
酸等の酸素系の漂白薬品が注目されている。しかしなが
ら、過酢酸、過硫酸は、脱リグニンに対する選択性が低
くパルプ強度を損なう危険性があること、薬品コストが
高いこと、あるいは爆発性を有しており取り扱いが困難
であること等の理由から一般に普及するまでには至って
いない。
【0007】以上のことから、現在のところ、塩素や次
亜塩素酸塩の代替としては、既に使用実績のある二酸化
塩素、アルカリ過酸化水素を主に用いるが一般的であ
る。特に、塩素漂白−アルカリ抽出の順序で始まる漂白
を二酸化塩素漂白及びアルカリ過酸化水素漂白に置き換
える実例が多くなってきている。しかしながら、二酸化
塩素やアルカリ過酸化水素は、反応漂白機構が塩素と異
なることから、特に広葉樹を原料として、酸性で抄紙し
た場合には、実際に近い条件下では漂白後のパルプの退
色性が極端に劣るという問題点があった。
【0008】また、塩素や次亜塩素酸塩を用いない一般
的な漂白シーケンス(例えば、D−E−D−P:D=二
酸化塩素段、E=アルカリ抽出段、P=アルカリ過酸化
水素段)で漂白したパルプのパルプ中のヘキセンウロン
酸量が、絶乾パルプ1kg当たり、15mmolより高
い場合は、パルプの退色性が著しく劣るという問題があ
った。
【0009】退色性を改善する方法としては、パルプの
酸素漂白前又は後にキシラナーゼ処理することは公知
(例えば、特開平2−264087号公報、特開平2−
293486号公報)であり、また、キシラナーゼ前処
理により退色性を改善する提案(例えば、特開平6−1
01185号公報)もあるが、処方するコストの割に退
色性の改善効果はそれほど大きくないという問題があっ
た。
【0010】また、酸前処理を行う方法(例えば、イギ
リス特許第1062734号明細書、特表平10−50
8346号公報)では、未漂白パルプを漂白段の前に、
酸性下で80℃以上の温度(イギリス特許第10627
34号明細書)あるいは85〜150℃(特表平10−
508346号公報)で処理し、その後多段で漂白する
ことによってパルプの退色性の改善ができることを報告
している。
【0011】しかしながら、本発明者らが、これらの条
件で処理し、漂白してみたところ、85℃を超える温度
では退色性は改善されるものの、強度が大きく低下する
ことが判明した。更にこのような高温で酸前処理を行な
う方法は、酸処理後の白色度低下が大きいため、カッパ
ー価の低下ほどには晒薬品の低減は少なく、パルプ収率
の低下また、排水CODの増加、高温・低pHに耐えう
る特殊な設備が必要なため、設備コストがかかるなどの
問題も有していた。
【0012】一方、特表平10−508346号公報で
は退色性の評価に乾式加熱法(105℃で24時間加
熱)を用いているが、実際に則した退色性をみるために
は、退色試験を熱・湿度条件(例えば、80℃、相対湿
度65%)下で行うことが必須であるにもかかわらず、
熱処理だけの退色評価であり、我が国の湿度の高い気候
条件を考慮すれば、この評価法で製品の退色性を評価す
ることは困難である。
【0013】退色の評価として通常用いられるPC価
(ポストカラーナンバー)は退色処理前後の白色度の差
から求めるが、PC価の少ないパルプを用いた写真用材
料(例えば、特開昭56−54436号公報)、酸素漂
白を含むシーケンスで漂白したパルプを用いた退色に優
れた写真用材料(例えば、特開昭63−303191号
公報)については報告されているが、いずれも塩素をベ
ースとした漂白であり、また、写真用材料という特性か
ら、白色度がISO90%以上と高いものであり、その
ような高白色度の漂白パルプの退色性が優れているのは
当然である。塩素及び次亜塩素酸塩を用いない漂白パル
プであって退色性が優れているものの報告はない。
【0014】一方、酸性領域での過酸化水素処理につい
ては、数件報告されている(1985,Wood and Pulping
Chemistry Symposium,Hans Ulrich Suss等、WO79/00
637,1979,FOSSUM等、特開昭63−20953号公報)
が、有機又は無機錯化物併用における過酸化水素の漂白
の効果を示しただけであり、パルプシートの退色性との
関係を調査したものではなく、その記述もない。また、
特公昭63―20953号公報記載の方法は、未晒パル
プを、酸性下で有機又は無機錯化物を併用にして過酸化
水素処理する方法であり、酸素晒後に同様な処理を行う
ものではなく、その示唆もない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、リグ
ノセルロース物質を蒸解してなる未漂白パルプの元素状
塩素を使用しない漂白に関し、パルプ中のヘキセンウロ
ン酸の量を、パルプ絶乾1kg当たり15mmol以下
とするような処方を施して製造した退色性の悪化しない
漂白パルプを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の現
状に鑑み、リグノセルロース物質を原料として、塩素及
び次亜塩素酸を用いずに所望の白色度まで漂白したパル
プの退色性が悪化しない方法について種々検討を重ねた
結果、酸素脱リグニン後のパルプに酸性領域の比較的低
い温度で過酸化水素処理を行い、漂白完成パルプ中のヘ
キセンウロン酸の量を、パルプ絶乾1kg当たり15m
mol以下とすることによって、製品が暴露される厳し
い環境に近い条件下でも、漂白パルプの退色性が著しく
改善されることを見出し、本発明を完成するに至ったも
のである。本発明は、以下の発明を包含する。
【0017】(1)リグノセルロース物質を蒸解して得ら
れる未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その
後、多段漂白工程で元素状塩素を使用せずに漂白処理し
てなる漂白パルプであって、該アルカリ酸素脱リグニン
後のパルプに過酸化水素処理を反応初期pH1.5〜
4.5で行うことによって、該漂白パルプ中のヘキセン
ウロン酸量が絶乾パルプ1kg当たり、15mmol以
下に調整されていることを特徴とする退色性の改善され
た漂白パルプ。
【0018】(2)前記過酸化水素処理の反応温度が5
0〜85℃であることを特徴とする(1)記載の退色性
の改善された漂白パルプ。
【0019】(3)前記漂白パルプを離解した後、パル
プシートを作製し、80℃、相対湿度65%の恒温度か
つ恒湿度条件で48時間処理した時のPC価が、10.
0以下であることを特徴とする(1)又は(2)記載の
退色性の改善された漂白パルプ。
【0020】(4)前記漂白パルプが広葉樹パルプであ
ることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記
載の退色性の改善された漂白パルプ。
【0021】(5)前記(1)〜(4)のいずれか1項
に記載の退色性の改善された漂白パルプを主成分とする
酸性紙。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるリグノセルロ
ース物質は、特に限定するものではない。本発明に使用
されるパルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸
解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサル
ファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができる
が、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラ
フト蒸解法及びポリサルファイド蒸解法が好適に用いら
れる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト
蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは15〜45
%、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30
質量%、好ましくは10〜25質量%、蒸解温度は13
0〜170℃で、蒸解方式は連続蒸解法あるいはバッチ
蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、
蒸解液を多点で添加する修正蒸解法でもよく、その方式
は特に問わない。
【0023】蒸解に際して、使用する蒸解液に蒸解助剤
として、公知の環状ケトン化合物、例えばベンゾキノ
ン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェ
ナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、ア
ミノ等の核置換体、前記キノン系化合物の還元型である
アントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、
さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合
成法の中間体として得られる安定な化合物である9,1
0−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1
種あるいは2種以上が添加されてもよく、その添加率は
木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%
である。
【0024】本発明では、公知の蒸解法により得られた
未漂白化学パルプは洗浄、粗選及び精選工程を経て、公
知のアルカリ酸素脱リグニン法により脱リグニンされ
る。本発明に使用されるアルカリ酸素脱リグニン法は、
公知の中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できる
が、現在汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15
質量%で行われる中濃度法が好ましい。
【0025】前記中濃度法によるアルカリ酸素脱リグニ
ン法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸
化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガス
としては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing
Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorpti
on)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカ
リは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに
添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、
酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔
へ送られ、脱リグニンされる。
【0026】酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当た
り0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量
%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜10
0分、パルプ濃度は8〜15質量%であり、この他の条
件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸
素脱リグニン工程において、上記アルカリ酸素脱リグニ
ンを連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進め
るのが好ましい実施形態である。アルカリ酸素脱リグニ
ンが施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られる。パル
プは洗浄後、酸性領域の過酸化水素処理工程へ送られ
る。
【0027】本発明における酸性領域の過酸化水素処理
は、反応温度は50〜85℃が好ましい。温度が50℃
未満の場合には退色性は十分に改善されず、一方、85
℃を超える温度では退色性は改善されるものの、漂白パ
ルプの強度が著しく低下する。反応初期pHは1.5〜
4.5が良い。反応初期pHが1.5未満であると、パ
ルプ強度への悪影響が大きく、また上記の温度下で1.
5未満のpHで耐久性のあるライニングを見出すことが
難しく、あっても非常に高価なものになり、実際的では
ない。pHが4.5より大きいと、ヘキセンウロン酸の
除去効果が少なくなると同時に、工程内の蓚酸カルシウ
ムのスケーリングが激しくなる。また、酸性領域での過
酸化水素処理は、反応初期pHと反応終了pHは、略同
等となるのが特徴的である。
【0028】一方、過酸化水素の添加率は、絶乾パルプ
当たり0.05〜5質量%が良く、効果やパルプ繊維へ
のダメージを考えると、好ましくは0.1〜2質量%で
ある。更に、過酸化水素処理のリテンションは、その効
果とパルプ繊維へのダメージを考えると30〜300分
が良く、処理濃度は、一般的な工程内濃度であれば、制
限は無いが、8〜15%の中濃度法、又は25〜40%
の高濃度法が好ましい。本発明で酸性にするために用い
られる酸は、酸処理時のpHを1.5〜4.5に調整で
きるものであれば無機酸、有機酸のいずれでも良いが、
具体的には、硫酸、硝酸、塩酸、亜硫酸、亜硝酸あるい
は二酸化塩素発生設備から排出されるセスキ芒硝等の無
機酸が使用でき、中でも硫酸が入手と取り扱いが容易で
あるため好適に用いられる。その他、酸処理について
は、一般的な処方が用いられる。
【0029】本発明の酸性領域の過酸化水素処理におい
ては、酸素含有ガスあるいは窒素含有ガスを用いて加圧
することもできる。処理時に加圧のために用いられる酸
素含有ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSAか
らの酸素、VSAからの酸素等のように工業規模での利
用が可能で、現在アルカリ酸素脱リグニンに使用されて
いる酸素純度が85容量%以上の酸素或いは酸素含有ガ
ス、前記モレキュラーシーブを用いた酸素製造設備を用
いて酸素の含有量を21容量%を超えて調整された酸素
含有ガス、前記酸素純度が85容量%以上の酸素含有ガ
スと空気を混合して製造される酸素富化ガス、酸素含有
量が20容量%以上の空気等を挙げることができ、これ
らの中から適宜選択して用いることができる。過酸化水
素処理時の酸素含有ガスあるいは窒素含有ガスによる酸
処理時の加圧圧力は0.05〜0.9MPa(ゲージ圧
力)であり、好ましくは0.15〜0.7MPaであ
る。
【0030】また、多段漂白処理工程においてオゾン漂
白段を有する場合には、酸素を含有するその排ガスも好
適に使用することができる。本発明の過酸化水素処理段
時に使用される窒素含有ガスとしては、窒素ガス含有率
が95%以上のガスであればいかなるガスでもよいが、
経済的見地から、アルカリ酸素脱リグニンに使用される
深冷分離法からの酸素、PSAからの酸素、VSAから
の酸素等の酸素ガスを製造する際に副生する窒素含有ガ
スが好適に用いられる。
【0031】本発明においては、酸性領域の過酸化水素
処理工程後に、酵素処理工程を設けることも可能であ
る。前記酵素処理工程で使用される酵素は、パルプと反
応させることにより、JIS P 8206で測定され
るパルプの過マンガン酸カリウム価が低下するものであ
れば、いかなる酵素でも良い。例えば、キシラナーゼ、
リグニンパーオキシダーゼ、マンガンパーオキシダー
ゼ、ラッカーゼ等が知られいるが、勿論これらの酵素で
も良く、未だ知られていない酵素でも該当する酵素であ
れば良いことは言うまでもない。また、これらの酵素は
単独で用いてもよく、あるいは複合、混合して、さらに
は複数回に分けて使用することもできる。これらの酵素
のうち、キシラナーゼと呼ばれるキシラン分解酵素は、
漂白促進効果も同時に有しており、好適に用いられる。
【0032】本発明においては、アルカリ酸素漂白工程
後に酸性領域での過酸化水素処理工程を設けるが、さら
にその後段で酸処理工程を設けることも可能である。本
発明の酸処理工程のpHは、好ましくは2.5〜3.
5、温度は、好ましくは85〜110℃、保持時間は、
好ましくは20〜90分の条件下で行われる。本発明の
酸処理に用いられる酸は、酸処理時のpHを所定値に調
整できるものであれば無機酸、有機酸のいずれでも良い
が、具体的には、硫酸、硝酸、塩酸、亜硫酸、あるいは
二酸化塩素発生設備から排出されるセスキ芒硝等の無機
酸が使用でき、中でも硫酸が入手と取り扱いが容易であ
るため好適に用いられる。その他、酸処理については、
一般的な処方が用いられる。
【0033】本発明の多段漂白処理工程では、初段は二
酸化塩素漂白段(D)、あるいは、オゾン漂白段
(Z)、あるいは、オゾン漂白と二酸化塩素漂白を連続
して組み合わせた漂白段(Z/D)等が好適に用いら
れ、二段目にはアルカリ抽出段(E)が用いられ、三段
目以降には、二酸化塩素、アルカリ過酸化水素等の組み
合わせが好適に用いられる。本発明の初段の二酸化塩素
漂白段に用いられる二酸化塩素は、当業者にとって公知
の多くの二酸化塩素発生法より得られる二酸化塩素から
選ぶことができるが、好適には、塩素を副生しない発生
法から得られる二酸化塩素が用いられる。本発明の初段
の二酸化塩素段でのpHは2〜6、好ましくは2.5〜
4であり、pHを調整するために任意の酸又はアルカリ
を補助的に添加することも可能である。また、二酸化塩
素処理時間、処理温度、パルプ濃度等のその他の二酸化
塩素漂白条件は、全て公知の条件を使用することができ
る。
【0034】本発明の二酸化塩素漂白段に続くアルカリ
抽出段では、当業者にとって公知の多くのアルカリ化合
物から選ぶことができるが、苛性ソーダが最も使用しや
すく、好適に使用される。本発明のアルカリ抽出段で
は、酸素及び/又は過酸化水素を併用することもでき
る。その他、本発明のアルカリ抽出段は、公知の条件で
行うことができる。
【0035】本発明の多段漂白工程で用いられる、二酸
化塩素漂白段、アルカリ抽出段に続く三段目以降の漂白
段では、塩素及び次亜塩素酸塩以外の漂白薬品であれば
如何なる漂白薬品を用いても良いが、二酸化塩素、アル
カリ過酸化水素、オゾン、過酸、等の一般的な漂白薬品
が好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定され
るわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮す
ると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適であ
る。
【0036】本発明に用いられる薬品としては、塩素及
び次亜塩素酸塩を除く、酸性領域での過酸化水素(A/
P)、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素
(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、酵素(E
z)、有機過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を挙げるこ
とができる。漂白シーケンスとしては、酸素脱リグニン
後に、例えば酸性領域での過酸化水素段(A/P)から
始まるシーケンスとしては、A/P−D−E/O−D、
A/P−D−E/O−P−D、 A/P−D−E/O−
D−D、A/P−D−E/O−D−P、A/P−D−E
/OP−D、A/P−D−E/O−Z−D、A/P−Z
−E/O−D、A/P−Z−E/OP−D、A/P−Z
−E/OP−D−P、A/P−Z−E/OP−P−D、
A/P−Z−D−E/O−D、A/P−Z−D−E/O
P−D、A/P−Z/D−E/O−D、A/P−Z/D
−E/OP−D等、及び酵素を含むA/P−Ez−D−
E/O−D、A/P−Ez−D−E/O−P−D、 A
/P−Ez−D−E/O−D−D、A/P−Ez−D−
E/O−D−P、A/P−Ez−D−E/OP−D、A
/P−Ez−D−E/O−Z−D、A/P−Ez−Z−
E/O−D、A/P−Ez−Z−E/OP−D、A/P
−Ez−Z−E/OP−D−P、A/P−Ez−Z−E
/OP−P−D、A/P−Ez−Z−D−E/O−D、
A/P−Ez−Z−D−E/OP−D、A/P−Ez−
Z/D−E/O−D、A/P−Ez−Z/D−E/OP
−Dなども挙げることができる。
【0037】また、本発明におけるA/P段は、アルカ
リ酸素脱リグニン後であれば、多段漂白処理工程中の何
処で行ってもいいが、アルカリ酸素脱リグニン直後の方
が効果的である。酸性領域での過酸化水素段(A/P)
が多段漂白工程中にあるシーケンスとしては、例えば、
D−A/P−E/O−D、D−E/O−A/P−D、D
−A/P−E/OP−D、D−E/OP−A/P−D、
D−E/O−D−A/P、Z−A/P−E/O−D、Z
−E/O−A/P−D、Z−E/OP−A/P−D、Z
−D−A/P−E/O−D、Z−D−E/O−A/P−
D、Z/D−A/P−E/O−D、Z/D−E/O−A
/P−D等を挙げることができる。また、多段漂白工程
中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチ
レントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等による錯化剤
処理段を挿入してもよい。
【0038】本発明において、未漂白パルプをアルカリ
酸素漂白し、その後酸性領域での過酸化水素処理をし、
次いで多段漂白してなる漂白完成パルプのヘキセンウロ
ン酸量を絶乾パルプ1kg当たり、15mmol以下に
すれば、退色性が改善される理由については今後の研究
を待たなければならないが、ヘキセンウロン酸が酸性紙
の完成パルプ中に多く残留していると、湿度が高く、か
つ温度も高い条件下では、これが色素団に変化し、白色
度が低下すると考えている。したがって、針葉樹に比
べ、ヘキセンウロン酸の含有量の多い広葉樹のほうが退
色しやすい。
【0039】また、本発明において、酸性領域で過酸化
水素がヘキセンウロン酸を分解する反応機構について
も、今後の研究を待たなければならないが、過酸化水素
が酸性領域で、一部リグニン等と反応し、ヘキセンウロ
ン酸を分解しやすいラジカル種を生成しているか、酸性
領域で過酸化水素から生成すると予想されるハイドロオ
キソニウムイオン(OH+)がヘキセンウロン酸の分解
に関与していると考えられる。
【0040】本発明の漂白パルプを用いて、酸性紙を調
製する方法は、漂白パルプをビーターでCSF(カナダ
標準ろ水度、カナディアンスタンダードフリーネス)3
50ml〜550ml程度に叩解し、その後、硫酸バン
ド約2.5%、ロジンサイズ剤(例えば、サイズパイン
E、荒川化学製)約0.5%、タルク(例えば、イライ
ト、日本タルク社製)約20%、歩留向上剤(例えば、
パーコール182、協和産業)約0.02%の順に配合
して常法にて坪量64g/m2程度の酸性紙を抄造する
方法がある。酸性紙の抄紙に際しては,本発明の漂白パ
ルプによる酸性紙が有する優れた特性を損なわない範囲
で他の漂白パルプを混合使用することはもちろん可能で
ある。
【0041】また、本発明の漂白パルプを用いて中性紙
を調製する方法は、漂白パルプをビーターでCSF35
0ml〜550ml程度に叩解し、その後、カチオン化
澱粉(例えば、エースK100、王子コーンスターチ
製)約0.5%、硫酸バンド約0.5%、AKD(例え
ば、SPK902、荒川化学製)約0.05%、軽質炭
酸カルシウム(例えば、TP121、奥多摩工業製)約
20%、歩留向上剤(例えば、パーコール182、協和
産業)約0.02%の順に配合して常法にて坪量64g
/m2程度の中性紙を抄造する方法がある。本発明の退
色性改善効果は、酸性紙の場合に大きいが、本発明で処
理したパルプを中性紙に用いて何ら問題はない。
【0042】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例等
によって限定されるものではない。以下に示す実施例
1、2、3、4、5、6及び比較例2、3は、工場製ア
ルカリ酸素漂白後の広葉樹クラフトパルプをA/P−D
−E−Dシーケンスで漂白を行ったものであり、比較例
1は、D−E−Dシーケンスで漂白を行なったものであ
り、比較例4は、P−D−E−Dシーケンスで漂白を行
ったものであり、比較例5はアルカリ下で過酸化水素処
理を行った後、D−E−Dシーケンスで漂白を行ったも
のである。また、特に示さない限り、カッパー価の測
定、パルプ中のヘキセンウロン酸量の測定、パルプ白色
度の測定、パルプの退色性の評価はそれぞれ以下の方法
で行った。なお、実施例及び比較例における薬品の添加
率は絶乾パルプ質量当たりの質量%示す。
【0043】1.パルプのカッパー価の測定 カッパー価の測定は、JIS P 8211に準じて行
った。
【0044】2.パルプ中のヘキセンウロン酸量の定量 500mlのSUS製容器に十分にイオン交換水で洗浄
したパルプを絶乾パルプ5g量り取って入れ、蟻酸−蟻
酸ナトリウムバッファー10mmol/l溶液を用いて
トータル300mlとした。その後、SUS製容器内を
窒素ガスで置換し、油恒温槽内で、110℃、5時間処
理した。SUS容器を流水冷却後、処理後のパルプ懸濁
液を洗浄液を含めて500mlにメスアップした後、ろ
過して、液をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)
にて分析し、2−furoicacidと5―carb
oxy−2−furaldehydeを定量した。定量
に際し、算出式、参考文献は、以下のものを使用した。
【0045】算出式:(各サンプル20μlの濃度)=
a、b(ng/μl)とした。 1)2−furoic acid量(mmol/kg)
=a×(500/1000)/(10×10-3)/11
2.08 2)5―carboxy−2−furaidehyde
量(mmol/kg)=b×(500/1000)/
(10×10-3)/140.1 3)ヘキセンウロン酸量(mmol/l)=2−fur
oic acid量+5―carboxy−2−fur
aldehyde量
【0046】参考文献:著者 Vuorinen,T. Selective hydrolysis of hexenuronic acid grou
ps and its application in ECF and TCF blea
ching of kraft pulpsInternational Pulp Bleach
ing Conference,April 14-18,1996,P43-51
【0047】3.漂白パルプの白色度の測定 漂白パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対
パルプ3.0%加え、Tappi試験法T205os−
71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m
2のシートを作製した。その後JIS P 8123に従
ってパルプの白色度を測定した。
【0048】4.パルプの退色性評価 白色度測定用パルプシートを80℃、相対湿度65%の
条件下で、48時間の退色させ、退色前後のパルプ白色
度から下式に従いPC価を算出し、評価した。PC価算
出式 PC価 = 100×[{(1−退色後白色度)2
(2×退色後白色度)}−{(1−退色前白色度)2
(2×退色前白色度)}] この時の白色度は白色度85%なら0.85、90%な
ら0.90で計算する。
【0049】5.漂白パルプの粘度の測定 パルプ粘度の測定は、J.TAPPI 44に準じて行
った。
【0050】6.漂白パルプの比引裂き強度の測定 パルプを離解した後、Tappi試験法T205os−
71(JIS P 8209)に従って坪量60g/m
2のシートを作製し、JIS P 8116に従ってパルプ
の比引裂き強度を測定した。
【0051】実施例1(A/P段処理の反応初期pH
3.0、温度55℃) 工場製広葉樹の蒸解−アルカリ酸素脱リグニン後のクラ
フトパルプ(白色度52.2%、カッパー価11.0)
の絶乾質量80.0gをプラスチック袋に入れ、イオン
交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した後、絶乾
パルプ質量当たり硫酸を0.8%、過酸化水素を0.4
%添加し、温度が55℃の恒温槽に120分間浸漬し
て、酸性領域での過酸化水素処理を行った(以下、A/
P段と略す)。A/P段の反応初期pHは、3.0であ
った。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した
後、ブフナーロートを用いて脱水・洗浄し、A/P段後
パルプを得た。次いで、A/P後のパルプをプラスチッ
ク袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%
に調整し、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.6%
添加し、温度が70℃の恒温水槽に40分間浸漬して初
段の二酸化塩素段(以下、D段と略す)の漂白を行っ
た。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した
後、ブフナーロートで脱水、洗浄した。
【0052】D段後のパルプをプラスチック袋に入れ、
イオン交換水を用いてパルプ濃度を10%に調整した
後、苛性ソーダを絶乾パルプ質量当たり1.2%加え、D
段と同様にして温度70℃で110分間処理し、アルカ
リ抽出段(以下、E段と略す)を行った。得られたパル
プをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3%に調整し
た後、ブフナーロートを用いて脱水・洗浄し、E段後パ
ルプを得た。続いて、E段後パルプをプラスチック袋に
入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10%に調整し
た後、絶乾パルプ質量当たり二酸化塩素を0.2%添加
し、D段と同様にして温度70℃で240分間処理し、
二段目のD段の漂白を行った。得られたパルプをイオン
交換水で3%に希釈し、ブフナーロートを用いて洗浄、
脱水し、白色度は82.4%の漂白パルプを得た。得ら
れた漂白パルプのヘキセンウロン酸量、48時間後の漂
白パルプシートのPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂
き強度を測定し、表1に示した。
【0053】実施例2(A/P段処理の反応初期pH
2.2、温度70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を1.2%とし、温度を
70℃に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。
A/P段の反応初期pHは、2.2であり、多段漂白後
のパルプ白色度は82.9%であった。得られた漂白パ
ルプのヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシ
ートのPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測
定し、表1に示した。
【0054】実施例3(A/P段処理の反応初期pH
4.4、70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.35%、温度70
℃に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。A/
P段の反応初期pHは、4.4であり、多段漂白後のパ
ルプ白色度は82.5%であった。得られた漂白パルプ
のヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシート
のPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定
し、表1に示した。
【0055】実施例4(A/P段処理の反応初期pH
3.0、温度85℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.8%、温度85℃
に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。A/P
段の反応初期pHは、3.0であり、多段漂白後のパル
プ白色度は82.7%であった。得られた漂白パルプの
ヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシートの
PC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定し、
表1に示した。
【0056】実施例5(A/P段処理の反応初期pH
3.7、温度70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.5%、温度70℃
に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。A/P
段の反応初期pHは、3.7であり、多段漂白後のパル
プ白色度は82.5%であった。得られた漂白パルプの
ヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシートの
PC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定し、
表1に示した。
【0057】実施例6(A/P段処理の反応初期pH
1.8、温度70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を2.0%、温度70℃
に変えた以外は実施例1と同様の操作を行った。A/P
段の反応初期pHは、1.8であり、多段漂白後のパル
プ白色度は82.5%であった。得られた漂白パルプの
ヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシートの
PC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定し、
表1に示した。
【0058】実施例7(A/P段処理の反応初期pH
3.0、温度95℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.8%、温度95℃
に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。A/
P段の反応初期pHは、3.0であり、多段漂白後のパ
ルプ白色度は82.0%であった。得られた漂白パルプ
のヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシート
のPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定
し、表1に示した。
【0059】比較例1(A/P処理なし) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理を行わない以外は、実施例1と同様の操
作を行った。多段漂白後のパルプ白色度は82.7%で
あった。得られた漂白パルプのヘキセンウロン酸量、4
8時間後の漂白パルプシートのPC価、漂白パルプの粘
度及び比引裂き強度を測定し、表1に示した。
【0060】比較例2(A/P段処理の反応初期pH
3.0、温度45℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.8%、温度45℃
に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。A/
P段の反応初期pHは、3.0であり、多段漂白後のパ
ルプ白色度は82.2%であった。得られた漂白パルプ
のヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシート
のPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定
し、表1に示した。
【0061】比較例3(A/P段処理の反応初期pH
4.8、温度70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの酸性領域の
過酸化水素処理での硫酸添加率を0.3%、温度70℃
に変えた以外は、実施例1と同様の操作を行った。A/
P段の反応初期pHは、4.8であり、多段漂白後のパ
ルプ白色度は82.4%であった。得られた漂白パルプ
のヘキセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシート
のPC価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定
し、表1に示した。
【0062】比較例4(P段処理後の反応初期pH1
0.9、温度70℃) アルカリ酸素脱リグニン後クラフトパルプの過酸化水素
処理でのアルカリ添加率を1.0%、温度70℃に変え
た以外は実施例1と同様の操作を行った。A/P段後の
反応初期pHは、10.9であり、多段漂白後のパルプ
白色度は84.8%であった。得られた漂白パルプのヘ
キセンウロン酸量、48時間後の漂白パルプシートのP
C価、漂白パルプの粘度及び比引裂き強度を測定し、表
1に示した。
【0063】
【表1】
【0064】表1の実施例1〜6と比較例1を比較する
と明らかなように、過酸化水素処理を反応初期pH4.
5以下の酸性領域で行うことで、ヘキセンウロン酸量が
少なくなり、PC価が低く、退色性に優れたパルプが得
られる。また、実施例1、4と比較例2を比較すると明
らかなように、最適な温度は、50〜85℃にあり、5
0℃より温度が低いと効果がない。なお、実施例7の結
果から、温度が85℃を越えると退色性改善効果は向上
するが、粘度及び比引裂き強度の低下を招くのでパルプ
の用途が制限される。また、実施例2、3、5、6と比
較例4を比較すると明らかなように反応初期pHが4.
5以下でなければ、ヘキセンウロン酸量が低下せず、退
色性も悪い。一方、実施例1〜4と比較例5の比較から
明らかなようにアルカリ酸素脱リグニン後にアルカリ過
酸化水素処理を行うことで白色度は上昇したが、ヘキセ
ンウロン酸含有量は低減せず、その結果PC価も高く、
パルプの退色性が悪い。
【0065】
【発明の効果】リグノセルロース物質を蒸解して得られ
る未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その後、
酸性領域で過酸化水素処理を行い、塩素、次亜塩素酸塩
を共に用いない多段漂白工程で処理してなる漂白完成パ
ルプにおいて、漂白完成パルプのヘキセンウロン酸量が
絶乾パルプ当たり、15mmol以下とすることで、前
記漂白パルプを離解した後、パルプシートを作製し、80
℃、相対湿度65%の恒温度かつ恒湿度条件で48時間
処理したPC価は、10.0以下となり、漂白パルプの
退色性を著しく改善することが可能となった。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年1月25日(2002.1.2
5)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正内容】
【0042】
【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をよ
り具体的に説明するが、勿論本発明はこれらの実施例等
によって限定されるものではない。以下に示す実施例
1、2、3、4、5、6、7及び比較例2、3は、工場
製アルカリ酸素漂白後の広葉樹クラフトパルプをA/P
−D−E−Dシーケンスで漂白を行ったものであり、比
較例1は、D−E−Dシーケンスで漂白を行なったもの
であり、比較例は、P−D−E−Dシーケンスで漂白
を行ったものであり、比較例はアルカリ下で過酸化水
素処理を行った後、D−E−Dシーケンスで漂白を行っ
たものである。また、特に示さない限り、カッパー価の
測定、パルプ中のヘキセンウロン酸量の測定、パルプ白
色度の測定、パルプの退色性の評価はそれぞれ以下の方
法で行った。なお、実施例及び比較例における薬品の添
加率は絶乾パルプ質量当たりの質量%示す。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正内容】
【0048】4.パルプの退色性評価 白色度測定用パルプシートを80℃、相対湿度65%の
条件下で、48時間の退色させ、退色前後のパルプ白色
度から下式に従いPC価を算出し、評価した。PC価算
出式 PC価 = 100×[{(1−退色後白色度)2
(2×退色後白色度)}−{(1−退色前白色度)2
(2×退色前白色度)}]
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正内容】
【0064】表1の実施例1〜と比較例1を比較する
と明らかなように、過酸化水素処理を反応初期pH4.
5以下の酸性領域で行うことで、ヘキセンウロン酸量が
少なくなり、PC価が低く、退色性に優れたパルプが得
られる。また、実施例1、4と比較例2を比較すると明
らかなように、最適な温度は、50〜85℃にあり、5
0℃より温度が低いと効果がない。なお、実施例7の結
果から、温度が85℃を越えると退色性改善効果は向上
するが、粘度及び比引裂き強度の低下を招くのでパルプ
の用途が制限される。また、実施例2、3、5、6と比
較例を比較すると明らかなように反応初期pHが4.
5以下でなければ、ヘキセンウロン酸量が低下せず、退
色性も悪い。一方、実施例1〜4と比較例の比較から
明らかなようにアルカリ酸素脱リグニン後にアルカリ過
酸化水素処理を行うことで白色度は上昇したが、ヘキセ
ンウロン酸含有量は低減せず、その結果PC価も高く、
パルプの退色性が悪い。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岩崎 誠 東京都江東区東雲一丁目10番6号 王子製 紙株式会社東雲研究センター内 (72)発明者 五十嵐 英夫 東京都江東区東雲一丁目10番6号 王子製 紙株式会社東雲研究センター内 (72)発明者 石井 行敏 愛知県春日井市王子町1番地 王子製紙株 式会社春日井工場内 (72)発明者 太田 喜裕 愛知県春日井市王子町1番地 王子製紙株 式会社春日井工場内 (72)発明者 高木 綾美 愛知県春日井市王子町1番地 王子製紙株 式会社春日井工場内 (72)発明者 三浦 高弘 愛知県春日井市王子町1番地 王子製紙株 式会社春日井工場内 Fターム(参考) 4L055 AD10 AD20 BB20 BB22 BB30 EA01 EA02 EA20 EA31 FA04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リグノセルロース物質を蒸解して得られ
    る未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その後、
    多段漂白工程で元素状塩素を使用せずに漂白処理してな
    る漂白パルプであって、該アルカリ酸素脱リグニン後の
    パルプに過酸化水素処理を反応初期pH1.5〜4.5
    で行うことによって、該漂白パルプ中のヘキセンウロン
    酸量が絶乾パルプ1kg当たり15mmol以下に調整
    されていることを特徴とする退色性の改善された漂白パ
    ルプ。
  2. 【請求項2】 前記過酸化水素処理の反応温度が50〜
    85℃であることを特徴とする請求項1記載の退色性の
    改善された漂白パルプ。
  3. 【請求項3】 前記漂白パルプを離解した後、パルプシ
    ートを作製し、80℃、相対湿度65%の恒温度かつ恒
    湿度条件で48時間処理した時のPC価が、10.0以
    下であることを特徴とする請求項1又は2記載の退色性
    の改善された漂白パルプ。
  4. 【請求項4】 前記漂白パルプが広葉樹パルプであるこ
    とを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の退
    色性の改善された漂白パルプ。
  5. 【請求項5】 前記請求項1〜4のいずれか1項に記載
    の退色性の改善された漂白パルプを主成分とする酸性
    紙。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007169831A (ja) * 2005-12-22 2007-07-05 Mitsubishi Gas Chem Co Inc 化学パルプの製造方法
JP2008106388A (ja) * 2006-10-25 2008-05-08 Mitsubishi Gas Chem Co Inc 製紙用化学パルプの漂白方法
JP2016513760A (ja) * 2013-03-14 2016-05-16 ゲーペー ツェルローゼ ゲーエムベーハー 酸性漂白シーケンスを使用する、高機能、低粘度クラフト繊維の作製方法およびそのプロセスによって作製される繊維

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