JP2003102394A - 肉牛の食味向上方法および肉牛 - Google Patents

肉牛の食味向上方法および肉牛

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JP2003102394A
JP2003102394A JP2001338661A JP2001338661A JP2003102394A JP 2003102394 A JP2003102394 A JP 2003102394A JP 2001338661 A JP2001338661 A JP 2001338661A JP 2001338661 A JP2001338661 A JP 2001338661A JP 2003102394 A JP2003102394 A JP 2003102394A
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bagasse
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Masaaki Kondo
雅朗 近藤
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KONDO EIICHI SHOTEN KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生きた肉牛の食味を向上させる方法およびそ
れによる肉牛を提供する。 【解決手段】 一般的な低価格の肉牛の飼料に、リグニ
ンが分解された発酵バガスを配合して肉牛に給与し、肉
牛の脂肪中に芳香物質であるバニリンを蓄積させた。具
体的には、とうもろこし、ふすま、大豆油粕等を主体と
する飼料に、発酵バガスを1頭に1日当り1〜3kg配
合して給与した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】請求項の発明は、肉牛の食
味、特に、風味や旨味(甘味を含む)を向上させる方
法、ならびにそれによる肉牛に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、牛肉の食味はアミノ酸による旨
味、芳香物質による風味、甘味などと関係するとされ、
飼料や食品添加物で食味を向上させる努力がなされてい
る。
【0003】従来の肉質改善例としては、飼料に植物組
織崩壊活性を有する酵素と必須アミノ酸を添加するとい
う特開平5−192093号公報が挙げられる。通常の
飼料に植物組織崩壊活性を有する酵素と必須アミノ酸を
適当量添加することで、乳量増大、乳質改善、発育促
進、肉質改善および繁殖率改善に効果があるというもの
である。
【0004】また、タンパク質分解酵素の作用で遊離ア
ミノ酸が生成され、肉の旨味が増すことは周知であり、
この作用を利用した技術例に、特開平5−276899
号公報がある。この発明の肉質風味改良剤は、鳥獣肉の
中でも硬くてスジの多い腿や脛などの低品質部位の肉質
を改善することを目的としており、スジの主成分である
硬質タンパク質を特異的に軟化させる酵素や、旨味を増
やす酵素等が組み合わされたものである。これを調理前
に肉に注入すると、硬い低品質の肉が軟化し、食味も向
上するとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記2つの引用例のう
ち前者による効果として記載された肉質改善は、飼育動
物の体重増加を図りつつ脂肪分は低く抑えるという内容
であって、肉牛の食味を向上させるという意味での肉質
改善ではない。また、後者の発明は、鳥獣肉の食味を向
上し得るが、その発明による肉質風味改良剤を、屠殺後
の死肉に対し調理前に注入するという作業を必要とす
る。
【0006】飼料に含まれる繊維が肉牛の消化器官で分
解されると、得られる牛肉の風味と甘味が生じることは
既に知られている。風味や甘味は、旨味をもたらすアミ
ノ酸についで牛肉の食味を向上させる効果をもつ。特
に、そのもととなる芳香物質が肉牛の筋肉にではなく脂
肪に蓄積されている場合に、牛肉の食味がより向上する
ことがわかっているが、これまで、肉牛の脂肪中に芳香
物質を蓄積させる方法は確立されていなかった。
【0007】従って請求項の発明は、より効果的な生き
た肉牛の食味向上方法、ならびにそれによる肉牛を提供
することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、発明の肉牛の食味向上方法は請求項1のように、発
酵バガスを肉牛に給与することにより脂肪中にバニリン
を蓄積させることとする。なお、発酵バガスとは、成分
中の木質化した難消化性の繊維であるリグニンを、繊維
分解菌、硝安化成菌、澱粉糖化菌、蛋白分解菌およびリ
グニナーゼ生産性ペニシリウム属菌からなる混合菌を利
用して行う酵素処理により分解処理したさとうきびの搾
り粕をいい、ハイセルバガスやバイオバガスなどと称さ
れるものである。
【0009】バガスは粗繊維の含有率が40%以上と高
い(他の粗飼料では30%程度)牧草であるが、乾燥状
態でリグニンが22〜25%含まれているため、飼料に
は不向きであった。しかし発酵バガスではリグニンがあ
らかじめ分解されていて、未分解のリグニンは15%ま
で減少しており、繊維消化率が73%程度と高くなって
いる。従って発酵バガスを肉牛に給与すると、従来の粗
飼料に比べてより多くの芳香物質が生じ、食味のよい牛
肉が得られる。発酵バガス中の分解によって生じる芳香
物質は、バニリンというバニラの前駆物質で、リグニン
1kgから275gのバニリンが生成される。特に効果
的なことに、そのバニリンが肉牛の脂肪中(ケンネ脂肪
など)に蓄積することが経験的にわかった。すなわち、
肉牛に発酵バガスを給与するだけで、脂肪中に芳香物質
バニリンの蓄積した食味のよい肉牛が生産できる。
【0010】この方法では請求項2のように、とうもろ
こし、ふすま、大豆油粕等を主体とする飼料中に上記の
発酵バガスを含めて給与することが好ましい。発酵バガ
スは特別な飼料としてではなく、一般の粗飼料と同様に
扱うことができるので、稲ワラなどに代えて肉牛に給与
することができる。従って、この方法によれば、主体と
する飼料として特別なものを用意せずに、発酵バガスを
配合するだけでよく、簡単に食味の向上した肉牛を生産
できる。
【0011】その場合請求項3に記載の食味向上方法の
ように、肥育期間において導入月以降、1頭に1日あた
り1kg以上3kg以内の上記発酵バガスを給与するこ
とが望ましい。肉牛の場合、導入月は一般的に生後9月
令前後であるので、つまりは生後約9月令より出荷(す
なわち生後32月令前後の屠殺時期)までの期間に給与
する。
【0012】発酵バガスを稲ワラに代えて給与した期間
が出荷(屠殺)までの約2年間の肉牛と、75日間だけ
の肉牛とのそれぞれについて、ケンネ脂肪中のバニリン
の含有量を比較すると、約10倍、前者の肉牛のバニリ
ンの含有量の方が多かった。このことから、給与した発
酵バガスが肉牛の体内で分解されて生じるバニリンはケ
ンネ脂肪内などに蓄積されるものと考えられる。
【0013】従って、発酵バガスの給与期間が長いほど
よいともいえるが、導入前(すなわち肉牛では生後約9
月令に達する前の育成期)の肉牛では脂肪のつき方が不
十分であることから、このように成熟した時期に発酵バ
ガスを給与するのが効率面でもコスト面でも都合がよ
い。ただし、生育速度や屠殺月令は肉牛により異なるた
め、給与期間は、肉牛の種類等に応じて上記期間を基準
に適切に定める。すなわち、請求項3の発明は、導入前
の特定時期にも発酵バガスを比較的少量給与する場合
や、導入後の特定時期のみに上記飼料を給与する場合を
除外するものではない。
【0014】肥育期間内には、サシ(筋肉内の脂肪交
雑)入れの時期や出荷直前に肉を増やす仕上期などがあ
り、その時期に合わせて粗飼料と濃厚飼料との配合比率
を調整しているが、発酵バガスによる効果を得るために
は、どの時期においても最低でも1頭につき1日あたり
1kg給与することが望ましい。また、発酵バガスが多
すぎると他の飼料の摂取が妨げられて栄養バランスが悪
くなるので、上限を同3kg程度とするのが適当であ
る。
【0015】また、請求項4に記載の食味向上方法のよ
うに、パイナップルの芯と外皮との乾燥物であるパイナ
ップル粕を上記の発酵バガスとともに給与することも考
えられる。
【0016】パイナップルに含まれるブロメラインとい
うタンパク質分解酵素は、タンパク質に直接作用してペ
プチド結合を分解する働きをもつ。この酵素は、ペプチ
ドおよびアミド結合の加水分解やエステル加水分解など
を行うため、肉を軟化させるテンダライザーや、医薬品
としての消炎酵素剤、栄養補助食品等に広く利用されて
いる。また、とくにブロメラインは酵素活性に分子内の
SH基が関与するSHプロテアーゼと呼ばれるもので、
基質となるタンパク(本発明の場合、牛の腿肉等の筋肉
組織)の分解に伴なって遊離されるシステインにより活
性化するため、タンパクの分解が進むほど酵素活性が大
きくなる特徴がある。従って請求項の発明のようにパイ
ナップル粕を発酵バガスとともに肉牛に給与すると、酵
素の作用で筋肉組織に遊離アミノ酸が増えることと、発
酵バガスの分解によりバニリンが脂肪中に蓄積されるこ
ととにより、従来よりも旨味や風味、甘味の向上した牛
肉が得られる。しかも、パイナップルの芯と外皮との乾
燥物であるパイナップル粕は、低コストで飼料の生産が
可能であるという利点がある。
【0017】注目すべきであるのは、本来タンパク質分
解酵素は消化器官内でしか作用しないとされていたにも
かかわらず、パイナップル粕を肉牛に給与すると消化器
官外の、しかも生体の腿肉等のうちで遊離アミノ酸が増
えるという、前例のない、予想外の作用がもたらされる
点である。その理由については今の段階では解明されて
いないが、おそらく、分子量の小さいシステインは各臓
器への移行が早く、SHプロテアーゼとともに血液を介
して腿肉等の筋肉組織に吸収され、そこでタンパク質が
分解されて遊離アミノ酸が増えるものと推測される。
【0018】パイナップル粕は、請求項5の食味向上方
法のように、肥育期間において飼料(総量)の1〜20
重量%給与することが望ましい。なぜならば、1重量%
以下では酵素の作用が効果的に得られず、また20重量
%以上与えると、元来必要とされる飼料摂取量が減少す
る恐れがあるためである。
【0019】請求項6に記載の肉牛は、請求項5に記載
の食味向上方法によって肥育させたことを特徴とするも
のである。上記のような給与技術が実施された肉牛は
(したがって当然にその枝肉も)、脂肪中にバニリンを
多く蓄積する上、腿肉等においても遊離アミノ酸を多く
含むので、屠殺後に肉質改善を行わなくても、旨味、風
味、甘味にすぐれた食肉を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】肉牛として兵庫県内産(但馬牛)
の「黒毛和種」去勢牛を用いた、発明の一実施例を以下
に紹介する。
【0021】ここでは、稲ワラを含む従来の一般的な飼
料によって上記去勢牛を肥育する一方、稲ワラに代えて
ハイセルバガス(フィリピン産の発酵バガス)またはバ
イオバガス(タイ産の発酵バガス)を給与して同じ種の
肉牛を肥育し、それら2区分の肉牛についてケンネ脂肪
中のバニリンの量を調査した。具体的には、1)対照区
および試験区と称する各80頭(合計160頭)前後の
肉牛群を、区ごとに異なる飼料を給与することによって
肥育する、2)出荷時に各区より5頭(合計10頭)を
無作為に抽出する、3)区ごとの各5頭よりケンネ脂肪
を採取し、区ごとに混合したうえバニリン量の分析をす
る――という手順をとった。以下にその詳細を述べる。
【0022】まず、導入前の育成期と呼び得る期間(対
照区、試験区とも生後平均9月令まで)には、対照区・
試験区のすべての肉牛に、市販の配合飼料に稲ワラを加
えたものを給与した。配合飼料とは穀類を主な成分とす
る濃厚飼料で、その成分は、 粗たん白質 14.0%以上 粗脂肪 3.0%以上 粗繊維 10.0%以下 粗灰分 10.0%以下 カルシウム 0.50%以上 りん 0.40%以上 可消化養分総量 73.0%以上 可消化粗たん白質 11.5%以上 となっており、これに各種ビタミンやミネラルが添加さ
れている。
【0023】また、この配合飼料の原材料の配合割合
は、穀類(加熱処理とうもろこし)51%、そうこう類
(ふすま、コーングルテンフィード、大豆皮、ビール
粕)28%、植物性油粕類(大豆油粕、なたね油粕)9
%、その他(綿実、糖蜜、炭酸カルシウム、モルデナイ
ト系ゼオライト、食塩)12%である。
【0024】次に、屠殺(つまり出荷時。対照区、試験
区とも平均生後32月令)までの肥育期間、すなわち、
導入期(生後9月令〜12月令)、肥育中期(生後13
月令〜21月令)および肥育後期(仕上期とも呼ばれる
生後22月令〜32月令の期間)約2年間に給与した飼
料について説明する。まず、対照区の全肉牛には育成期
と同様の飼料、つまり上記の配合飼料に稲ワラを加えた
飼料を給与した。一方試験区の全肉牛には、上記配合飼
料にハイセルバガスまたはバイオバガスを加えた飼料を
給与した。
【0025】導入期である導入1月・2月・3月に給与
した配合飼料の量は、各月により異なり、対照区、試験
区とも、それぞれ1日当り平均5kg/頭、6kg/
頭、7kg/頭である。試験区の肉牛に給与したハイセ
ルバガスまたはバイオバガスの量は、各月を通じて1日
平均2kg/頭である。またこの時期には、もう1つの
粗飼料として、ヘイキューブ(アルファルファをキュー
ブにしたもの)を、各月それぞれ1日平均3kg/頭、
2kg/頭、1kg/頭給与した。対照区の肉牛の配合
飼料に加えた稲ワラの量は、上記ハイセルバガスまたは
バイオバガスとヘイキューブとの合計量と同等である。
【0026】肥育中期に給与した配合飼料の量は、対照
区、試験区とも、1日当り平均9kg/頭、また、試験
区の肉牛に給与したハイセルバガスまたはバイオバガス
の量は、配合飼料に対し平均25重量%(約2.3k
g)であった。
【0027】肥育後期に給与した配合飼料の量は、対照
区、試験区とも、1日当り平均10kg/頭、また、試
験区の肉牛に給与したハイセルバガスまたはバイオバガ
スの量は、配合飼料に対し平均15重量%(約1.5k
g)であった。対照区の肉牛の配合飼料に加えた稲ワラ
の量は、上記ハイセルバガスまたはバイオバガスの量と
同等である。
【0028】従って、導入期の配合飼料総摂取量は、対
照区、試験区ともに平均約1080kg/頭で、対照区
の導入期の稲ワラ総摂取量は平均約720kg/頭、試
験区の導入期のハイセルバガスまたはバイオバガスとヘ
イキューブの各総摂取量はともに、平均約360kg/
頭である。
【0029】肥育中期の配合飼料総摂取量は、対照区、
試験区ともに平均約2430kg/頭で、対照区の肥育
中期の稲ワラ総摂取量、試験区の肥育中期のハイセルバ
ガスまたはバイオバガス総摂取量はともに、平均約62
0kg/頭である。
【0030】肥育後期の配合飼料総摂取量は、対照区、
試験区ともに平均約3300kg/頭で、対照区の肥育
後期の稲ワラ総摂取量、試験区の肥育後期のハイセルバ
ガスまたはバイオバガスの総摂取量はともに、平均約4
95kg/頭である。
【0031】このような飼料で肥育された対照区の肉牛
と試験区の肉牛とからケンネ脂肪をそれぞれ採取し、対
照区と試験区とに分けて各ケンネ脂肪を混ぜ合わせ、混
ぜたケンネ脂肪についてバニリンの含有量をそれぞれ分
析した。分析は社団法人東京都食品衛生協会・東京食品
技術研究所に依頼した。その結果はつぎのとおりであ
る。
【0032】ケンネ脂肪(1kg)中のバニリン含有量
(検出限界1mg/kg) ・ ハイセルバガスまたはバイオバガスの給与牛(試験
区)……4200mg/kg ・ 稲ワラ給与牛(対照区)……検出しない
【0033】この結果から分かるように、肉牛の肥育中
期・後期の飼料にハイセルバガスまたはバイオバガスを
配合することで、従来の飼料(配合飼料+稲ワラ)のみ
で肥育した場合より、風味や甘味のもととなるバニリン
が生きた肉牛のケンネ脂肪に大量に生じ、食味の向上し
た食肉を生産することができたのである。
【0034】なお、上の例では、試験区の肉牛に対し約
2年間にわたって発酵バガスを給与したことになるが、
給与期間を出荷前の75日間に限定することによっても
調査を行った。当該期間中、肉牛6頭のうち4頭にバイ
オバガスを給与し、他の2頭にはバイオバガスに代えて
稲ワラを給与し、それら肉牛の枝肉を高速液体クロマト
グラフ法によって検査したのである。分析は、やはり社
団法人東京都食品衛生協会・東京食品技術研究所に依頼
した。その結果、バイオバガスを給与した4頭について
は、ケンネ脂肪(1kg)中のバニリンとしてそれぞれ
120mg/kg、480mg/kg、380mg/k
g、720mg/kg(4頭の平均は425mg/k
g)の含有が確認された。その一方、バイオバガスを給
与しなかった残りの2頭については、ケンネ脂肪中にバ
ニリンは検出されなかった(検出限界1mg/kg)。
【0035】続いて、第二の実施例としてパイナップル
粕を飼料に配合した食味向上方法について以下に紹介す
る。
【0036】肉牛として兵庫県内産(但馬牛)の「黒毛
和種」去勢牛を用いた。ここでは、従来の一般的な飼料
によって上記去勢牛を肥育する一方、発明に係る飼料を
給与して同じ種の肉牛を肥育し、それら2区分の肉牛に
ついて腿肉中の遊離アミノ酸の量を調査した。具体的に
は、1)対照区および試験区と称する各80頭(合計1
60頭)前後の肉牛群を、区ごとに異なる飼料を給与す
ることによって肥育する、2)出荷時に各区より5頭
(合計10頭)を無作為に抽出する、3)区ごとの各5
頭より腿肉を採取し、区ごとに混合したうえ遊離アミノ
酸量の分析をする――という手順をとった。以下にその
詳細を述べる。
【0037】まず、育成期から平均月令25.5ヶ月ま
では、対照区・試験区のすべての肉牛に、市販の配合飼
料に稲ワラを加えたものを給与した。配合飼料とは穀類
を主な成分とする濃厚飼料で、その成分は、 粗たん白質 14.0%以上 粗脂肪 3.0%以上 粗繊維 10.0%以下 粗灰分 10.0%以下 カルシウム 0.50%以上 りん 0.40%以上 可消化養分総量 73.0%以上 可消化粗たん白質 11.5%以上 となっており、これに各種ビタミンやミネラルが添加さ
れている。
【0038】また、この配合飼料の原材料の配合割合
は、穀類(加熱処理とうもろこし)51%、そうこう類
(ふすま、コーングルテンフィード、大豆皮、ビール
粕)28%、植物性油粕類(大豆油粕、なたね油粕)9
%、その他(綿実、糖蜜、炭酸カルシウム、モルデナイ
ト系ゼオライト、食塩)12%である。
【0039】次に、肥育期間のうち屠殺(平均月令は3
1.5ヶ月)までの約180日間に給与した飼料につい
て説明する。まず、対照区の全肉牛にはそれまでと同様
の飼料、つまり上記の配合飼料に稲ワラを加えた飼料を
給与した。一方試験区の全肉牛には、上記配合飼料に、
パイナップルの芯および外皮とを水分が10%以下にな
るまで乾燥させたパイナップル粕を加えた飼料を給与し
た。
【0040】屠殺前のこの期間に給与した配合飼料の量
は、対照区、試験区とも、1日当り平均8.5kg/
頭、また、試験区の肉牛に給与したパイナップル粕の量
は、配合飼料に対し平均12重量%(約1kg/日)で
あった。対照区の肉牛の配合飼料に加えた稲ワラの量
は、上記パイナップル粕の量と同等である。
【0041】従って、上記期間(180日間)の配合飼
料総摂取量は、対照区、試験区ともに平均約1500k
g/頭で、同じ期間の対照区の稲ワラ総摂取量、試験区
の肥育後期のパイナップル粕総摂取量はともに、平均約
180kg/頭である。このような飼料で生産された枝
肉の重量は、対照区で平均396.6kg、試験区で平
均373.8kgであった。
【0042】その枝肉から、1頭当たり200gの腿肉
を採取し、対照区と試験区とに分けて各腿肉を混ぜ合わ
せ、混ぜた腿肉について遊離アミノ酸をそれぞれ分析し
た。分析は社団法人東京都食品衛生協会・東京食品技術
研究所に依頼した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】 表1において、対照区および試験区の遊離アミノ酸値を
比較すると、試験区の腿肉中のアラニンは対照区の1
1.6倍、グルタミン酸は150倍となっていることが
わかる。アラニンは、あらゆる畜種の食肉熟成過程で最
初に分離される、甘味のもととなるアミノ酸で、この値
が大きいということは、試験区の肉牛の腿肉の熟成が、
対照区の肉牛より促進されていたことを示す。また、グ
ルタミン酸は世界共通の旨味成分として認知されている
アミノ酸である。
【0044】以上のことから分かるように、肉牛の肥育
後期の飼料にパイナップル粕を配合することで、従来の
飼料(配合飼料+稲ワラ)のみで生産した場合より、甘
味や旨味のもととなるアラニンとグルタミン酸が生きた
肉牛の体内で大量に生じ、食味の向上した腿肉を生産す
ることができたのである。
【0045】そして、本来消化器官内のみで作用すると
考えられていたタンパク質分解酵素が、生きた動物の筋
肉組織内(ここでは牛腿肉中)でも作用して甘味や旨味
のもとになる遊離アミノ酸を増やしたという、予想外の
結果も得られた。なぜそのような結果が得られたかにつ
いては、今後の解明が待たれるところであるが、おそら
くパイナップル粕中のブロメラインと呼ばれるSHプロ
テアーゼの特性によるものと思われる。ブロメライン
は、酵素活性に分子内のSH基が関与するSHプロテア
ーゼと呼ばれるものの1つで、基質となるタンパク質の
分解に伴なって遊離されるシステインにより活性化する
酵素である。このことをふまえて上記の結果を考察する
と、まず、試験区の肉牛の消化器官内で、配合飼料中の
タンパク質が分解されてシステインが遊離し、次に、分
子量の小さいシステインは各臓器への移行が早く、吸収
が速やかに行われるため、パイナップル粕中のブロメラ
インとともに血液を介して腿肉に到達し、システインに
より活性化したブロメラインが腿肉中のタンパク質を分
解して遊離アミノ酸が増えたものと推測される。
【0046】上記2つの実施例より、濃厚飼料に発酵バ
ガスとパイナップル粕とを加えた飼料を肉牛に給与する
と、バニリンとアミノ酸が生きた肉牛の体内で大量に生
じ、旨味、風味、甘味にすぐれた食味のよい牛肉を生産
することが可能であると考えられる。
【0047】なお、以上には、実施の形態として、肉牛
に飼料を給与してそのケンネ脂肪と腿肉の食味を改善す
る例を示したが、給与方法等によっては、同様の飼料に
てそれら以外の脂肪や筋肉組織の食味を向上させること
も可能である。
【0048】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明に
よる肉牛の食味向上方法は、粗繊維含有率と繊維消化率
がともに高い発酵バガスを飼料に加えているため、繊維
の分解により多くのバニリンが脂肪内に蓄積し、従って
その脂肪等の食味を向上させるという効果を有する。従
来行っていた、死肉(食肉)に対し調理前に肉質改善の
処理を行う手間が省けて時間的にも効率が良い。
【0049】また、請求項2の発明による肉牛の食味向
上方法は、ごく一般的な低価格の飼料に発酵バガスを配
合しているため、特に複雑な手段を講じなくとも飼料の
給与が可能である。
【0050】請求項3の発明によれば、発酵バガスを配
合した飼料を給与する期間はいわゆる肥育期間中だけで
よい。そのため、脂肪等が十分に発達した時期に効率的
に分解したリグニンを摂取させて芳香物質であるバニリ
ンを蓄積させることができ、手間やコストの面で効率が
良い。
【0051】さらに請求項4の発明によれば、パイナッ
プルの芯と外皮とを乾燥させたパイナップル粕を発酵バ
ガスとともに給与しているため、前述の効果に加えて、
脂肪の少ない部位(腿など)の食味も改善された肉牛が
生産できる。パイナップル粕は従来廃棄されるものであ
るため飼料のコスト増加を抑えつつ食味の良い牛肉等を
供給できる利点がある。その上、パイナップル粕という
廃棄物の有効利用にもなり、環境面にも貢献する。
【0052】請求項5の発明では 発酵バガスとパイナ
ップル粕とを配合した飼料を給与する期間はいわゆる肥
育期間中だけでよいため、脂肪や腿肉等が十分に発達し
た時期に効率的に分解したリグニンや酵素を摂取・作用
させてバニリンや遊離アミノ酸を蓄積・増加させること
ができ、手間やコストの面で効率が良い。
【0053】また請求項6に記載の肉牛なら、旨味、風
味、甘味にすぐれた食肉を効率的に提供できる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発酵バガスを肉牛に給与することにより
    脂肪中にバニリンを蓄積させることを特徴とする肉牛の
    食味向上方法。
  2. 【請求項2】 とうもろこし、ふすま、大豆油粕等を主
    体とする飼料中に上記の発酵バガスを含めて給与するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の肉牛の食味向上方法。
  3. 【請求項3】 肥育期間において導入月以降、1頭に1
    日あたり1kg以上3kg以内の上記発酵バガスを給与
    することを特徴とする請求項1または2に記載の肉牛の
    食味向上方法。
  4. 【請求項4】 パイナップルの芯と外皮との乾燥物であ
    るパイナップル粕を上記の発酵バガスとともに給与する
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の肉牛
    の食味向上方法。
  5. 【請求項5】 パイナップル粕を、肥育期間において飼
    料の1〜20重量%給与することを特徴とする請求項4
    に記載の肉牛の食味向上方法。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の食味向
    上方法によって肥育させたことを特徴とする肉牛。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP5860987B1 (ja) * 2015-04-30 2016-02-16 千秋 櫛田 パインアップル葉茎破砕体飼料あるいはペットフードの原料の形成方法、およびパインアップル葉茎破砕体飼料あるいはペットフードの原料
JP2016202127A (ja) * 2015-04-27 2016-12-08 株式会社近藤榮一商店 反芻動物の肥育方法および肥育用飼料

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