JP2003079270A - ミエリン発達障害モデル非ヒト動物 - Google Patents

ミエリン発達障害モデル非ヒト動物

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JP2003079270A
JP2003079270A JP2001274232A JP2001274232A JP2003079270A JP 2003079270 A JP2003079270 A JP 2003079270A JP 2001274232 A JP2001274232 A JP 2001274232A JP 2001274232 A JP2001274232 A JP 2001274232A JP 2003079270 A JP2003079270 A JP 2003079270A
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Toshiyuki Takai
俊行 高井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 中枢神経系(CNS)において、オリゴデン
ドログリア(乏突起膠細胞)におけるミエリン形成のプ
ロセスを解明し、その知見に基づいて、ミエリン発達障
害モデル非ヒト動物を作製し提供すること、及び該ミエ
リン発達障害モデル非ヒト動物を用いて、ミエリン発達
調節物質及び脱髄疾患の治療薬をスクリーニングする方
法を提供すること。 【解決手段】 本発明においては、免疫グロブリンFc
受容体のγサブユニット(FcRγ)、Fynチロキシ
ナーゼ(Fyn)、ミエリン塩基性タンパク質(MB
P)が、ミエリン形成シグナル分子として働くことを見
い出し、この知見に基づいて、該シグナル分子を欠損し
たミエリン発達障害モデル非ヒト動物を作製し、更に該
ミエリン発達障害モデル非ヒト動物を用いて、ミエリン
発達調節物質及び脱髄疾患の治療薬をスクリーニングす
る方法を構築した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はミエリン発達障害モ
デル非ヒト動物、特に、オリゴデンドログリアにおける
ミエリン形成シグナル分子の欠損により、ミエリン形成
が阻害され、脱髄疾患を発症したミエリン発達障害モデ
ル非ヒト動物、及び該非ヒト動物を用いたミエリン発達
調節物質、脱髄疾患の治療薬のスクリーニングに関す
る。
【0002】
【従来の技術】神経線維(nerve fiber)には、有髄線
維といわれ、神経細胞(ニューロン)の突起である軸索
(axon)が髄鞘によって包まれているものがある。この
髄鞘はミエリンと呼ばれる。個々の軸索を覆う多層膜性
鞘であるミエリンは、神経インパルスの高速伝導、並び
に軸索の機能及びその構造の構築(integrity)にとっ
て必要である(Science 280, 1610, 1998、J. Neurosc
i. 18, 1953, 1998)。ミエリンは中枢神経系(CN
S)においてオリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)に
より合成され、そのプロセスは誕生直後から開始され
る。ミエリンが崩壊すると、中枢神経系におけるミエリ
ンが決定的に失われることを特徴とする重大な疾患をヒ
トに引き起こす。
【0003】ミエリンは少数のミエリンタンパク質で構
成されている。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)
は、中枢神経系内における全ミエリンタンパク質の30
〜40%を構成している。MBPはミエリン形成に不可
欠であり、ミエリン鞘の緊密化(コンパクション)に重
要な役割を果たしている(J. Cell Biol. 95, 242, 198
2)。MBPはまた、ミエリン随伴性糖タンパク質(M
AG)等、他のミエリンタンパク質の発現も調節してお
り、MBPがミエリン形成に欠くことができない必須の
ものであることが示唆される(Neurosci. Lett. 298, 1
63, 2001)。
【0004】一方、脱髄疾患の一つである多発性硬化症
(MS)は、一世紀以上も前に報告されている疾患であ
るが、その病因及び治療法については未だに不明な点が
多く、研究も進んでいない(Nature 399, A40, 199
9)。近年になってオリゴデンドログリア前駆体細胞集
団が、初めてMS病巣において見い出されたことが報告
されている(J. Neurosci. 18, 601, 1998)。失われた
ミエリンの再生に関与するこれら内因性前駆体細胞の分
化及び/又は増強を可能にする機構は、効果的な治療上
のターゲットと考えられる。そこでミエリン形成を含む
機構を解明する包括的な研究を行うことは、脱髄疾患の
治療に非常に有益である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、中枢
神経系(CNS)において、オリゴデンドログリア(乏
突起膠細胞)におけるミエリン形成のプロセス、特に、
このミエリン形成のプロセスにおいてミエリン形成に関
与するシグナル分子とその関与の機構を解明し、その知
見に基づいて、ミエリン発達障害モデル非ヒト動物を作
製し提供すること、及び該ミエリン発達障害モデル非ヒ
ト動物を用いて、ミエリン発達調節物質及び脱髄疾患の
治療薬をスクリーニングする方法を提供することにあ
る。ここでミエリン発達調節物質とは、ミエリンの発達
を促進又は抑制する物質をいう。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究の結果、免疫グロブリンFc受容
体のγサブユニット(FcRγ)、Fynチロキシナー
ゼ(Fyn)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)
が、FcRγ−Fyn−MBPからなるシグナルカスケ
ードとしてミエリン形成に関与していることを見い出し
た。本発明においては、この知見に基づいて、該シグナ
ル分子を欠損したミエリン発達障害モデル非ヒト動物を
作製し、更に該ミエリン発達障害モデル非ヒト動物を用
いて、ミエリン発達調節物質及び脱髄疾患の治療薬をス
クリーニングする方法を構築した。
【0007】すなわち本発明は、オリゴデンドログリア
におけるミエリン形成シグナル分子の欠損により、ミエ
リン形成が阻害され、脱髄疾患を発症したことを特徴と
するミエリン発達障害モデル非ヒト動物(請求項1)
や、脱髄疾患が、多発性硬化症(MS)であることを特
徴とする請求項1記載のミエリン発達障害モデル非ヒト
動物(請求項2)や、ミエリン形成シグナル分子の欠損
が、免疫グロブリンFc受容体のγサブユニット(Fc
Rγ)及び/又はFynチロキシナーゼ(Fyn)のシ
グナル分子の欠損であることを特徴とする請求項1又は
2記載のミエリン発達障害モデル非ヒト動物(請求項
3)や、ミエリン形成シグナル分子の欠損が、ミエリン
形成を調節するシグナルカスケードの阻害であることを
特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のミエリン発達
障害モデル非ヒト動物(請求項4)や、ミエリン形成を
調節するシグナルカスケードの阻害が、免疫グロブリン
Fc受容体のγサブユニット(FcRγ)−Fynチロ
キシナーゼ(Fyn)−ミエリン塩基性タンパク質(M
BP)からなるシグナルカスケードの阻害であることを
特徴とする請求項4記載のミエリン発達障害モデル非ヒ
ト動物(請求項5)や、非ヒト動物がマウスであること
を特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のミエリン発
達障害モデル非ヒト動物(請求項6)からなる。
【0008】また本発明は、請求項1〜6のいずれか記
載のミエリン発達障害モデル非ヒト動物に被検物質を投
与すること又は該動物由来の組織、器官若しくは細胞を
被検物質と接触させることを特徴とするミエリン発達調
節物質のスクリーニング方法(請求項7)や、請求項1
〜6のいずれか記載のミエリン発達障害モデル非ヒト動
物に被検物質を投与すること又は該動物由来の組織、器
官若しくは細胞を被検物質と接触させ、ミエリン塩基性
タンパク質(MBP)の発現又はミエリンの形成を測定
又は評価することを特徴とする請求項7記載のミエリン
発達調節物質のスクリーニング方法(請求項8)や、ミ
エリン塩基性タンパク質(MBP)の発現又はミエリン
の形成の測定又は評価を、ミエリン発達障害モデル非ヒ
ト動物の場合と野生型非ヒト動物の場合を比較・評価す
ることにより行うことを特徴とする請求項8記載のミエ
リン発達調節物質のスクリーニング方法(請求項9)
や、非ヒト動物がマウスであることを特徴とする請求項
7〜9のいずれか記載のミエリン発達調節物質のスクリ
ーニング方法(請求項10)や、請求項7〜10のいず
れか記載のミエリン発達調節物質のスクリーニング方法
により得られるミエリン発達調節物質(請求項11)
や、請求項1〜6のいずれか記載のミエリン発達障害モ
デル非ヒト動物を、脱髄疾患の治療薬のスクリーニング
に使用することを特徴とする脱髄疾患治療薬のスクリー
ニング方法(請求項12)や、脱髄疾患治療薬が、多発
性硬化症(MS)の治療薬であることを特徴とする請求
項12記載の脱髄疾患治療薬のスクリーニング方法(請
求項13)や、請求項12又は13記載の脱髄疾患治療
薬のスクリーニング方法により得られる脱髄疾患治療薬
(請求項14)や、ミエリン形成シグナル分子を有効成
分とすることを特徴とする脱髄疾患治療薬(請求項1
5)や、ミエリン形成シグナル分子が、免疫グロブリン
Fc受容体のγサブユニット(FcRγ)及び/又はF
ynチロキシナーゼ(Fyn)のシグナル分子であるこ
とを特徴とする請求項15記載の脱髄疾患治療薬(請求
項16)や、免疫グロブリンIgGからなる静脈内免疫
グロブリン療法用脱髄疾患治療薬(請求項17)や、脱
髄疾患が、多発性硬化症(MS)であることを特徴とす
る請求項15〜17のいずれか記載の脱髄疾患治療薬
(請求項18)からなる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は、中枢神経系(CNS)
において、オリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)にお
けるミエリン形成のプロセス、特に、このミエリン形成
のプロセスにおいてミエリン形成に関与するシグナル分
子とその関与の機構を解明し、その知見に基づいて、ミ
エリン発達障害モデル非ヒト動物を作製することよりな
る。
【0010】本発明においては、ミエリン形成に関与す
るシグナル分子として、免疫グロブリンFc受容体のγ
サブユニット(FcRγ)、Fynチロキシナーゼ(F
yn)及びミエリン塩基性タンパク質(MBP)が免疫
グロブリンFc受容体のγサブユニット(FcRγ)−
Fynチロキシナーゼ(Fyn)−ミエリン塩基性タン
パク質(MBP)からなるシグナルカスケードとして関
与することを見い出した。したがって、これらのシグナ
ル分子を欠損させて、ミエリン発達障害モデル非ヒト動
物を作製し、該非ヒト動物を用いてミエリン発達調節物
質のスクリーニングを行う。又、本発明においては、シ
グナル分子を欠損させたミエリン発達障害モデル非ヒト
動物が、多発性硬化症(MS)のような脱髄疾患を発症
することを見い出した。したがって、該ミエリン発達障
害モデル非ヒト動物を用いて、脱髄疾患の治療薬のスク
リーニングを行うことを可能とする。
【0011】ミエリン発達障害モデル非ヒト動物を作製
するためには、ミエリン形成に関与するシグナル分子の
遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちこれ
らのシグナル分子のノックアウトマウスを作製する。こ
れらのノックアウトマウスは、文献(Cell 76, 519-52
9, 1994)に記載する方法等によって作製することがで
きる。具体的には、マウス遺伝子ライブラリーからPC
R等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、シグナ
ル分子の遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングさ
れた遺伝子を組換えDNA技術により、シグナル分子の
遺伝子の全部又は一部を、例えばネオマイシン耐性遺伝
子等のマーカー遺伝子で置換し、5′末端側にジフテリ
アトキシンAフラグメント(DT−A)遺伝子や単純ヘ
ルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺
伝子等の遺伝子を導入してターゲティングベクターを作
製し、この作製されたターゲティングベクターを線状化
し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によって
ES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組
換え体の中から、G418やガンシクロビア(GAN
C)等の抗生物質に抵抗性を示すES細胞を選択する。
この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうか
をサザンブロット法等により確認することが好ましい。
【0012】上記組換えES細胞をマウスの胚盤胞中に
マイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマ
ウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウ
スを野生型のマウスと交配させると、ヘテロ接合体マウ
スを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスを
交配させることによって、シグナル分子のノックアウト
マウスを得ることができる。そして、かかるシグナル分
子のノックアウトマウスにおけるシグナル分子の遺伝子
が染色体上で欠損していることを確認する方法として
は、例えば、上記の方法により得られたマウスの尾から
DNAを単離してサザンブロット法等により調べる方法
や、このマウスの骨髄マスト細胞等から抽出したタンパ
ク質をイムノブロット分析等により調べる方法等を挙げ
ることができる。
【0013】本発明における、ミエリン発達調節物質及
び脱髄疾患の治療薬のスクリーニング方法としては、本
発明のミエリン発達障害モデル非ヒト動物に被検物質を
投与する方法や、ミエリン発達障害モデル非ヒト動物由
来の組織、器官、若しくは細胞を被検物質と接触させる
方法を挙げることができる。ミエリン発達障害モデル非
ヒト動物由来の組織、器官、若しくは細胞を被検物質と
接触させる方法としては、ミエリン発達障害モデル非ヒ
ト動物、例えば、前記ミエリン形成に関与するシグナル
分子のノックアウトマウス由来の組織、器官、又は細胞
を被検物質と接触させ、該細胞におけるミエリン塩基性
タンパク質の発現を測定・評価する方法を具体的に例示
することができる。
【0014】また、ミエリン発達障害モデル非ヒト動物
に被検物質を投与する方法としては、例えば、ミエリン
形成に関与するシグナル分子のノックアウトマウスに被
検物質を投与し、該マウス由来の組織、器官、又は細胞
におけるミエリン塩基性タンパク質の発現等、ミエリン
の発達を測定・評価する方法や、前記ミエリン形成に関
与するシグナル分子のノックアウトマウスに被検物質を
投与し、該非ヒト動物におけるミエリン形成の発達又は
脱髄の程度を測定・評価する方法や、前記ミエリン形成
に関与するシグナル分子のノックアウトマウスに被検物
質を投与し、該マウスの多発性硬化症等の病徴を測定・
評価する方法などを具体的に挙げることができる。例え
ば、多発性硬化症においては、中枢神経系の白質に大小
さまざまの脱髄巣が散在し、組織学的には髄鞘が破壊さ
れる。脱髄巣は早期には炎症性細胞浸潤があるが、慢性
期になるとグリア線維でおきかえられて硬くなる。な
お、上記スクリーニングに際しては、シグナル分子のノ
ックアウトマウスと同腹の野生型マウスと比較評価する
ことが好ましい。
【0015】
【実施例】以下に、本発明における、中枢神経系(CN
S)のオリゴデンドログリア(乏突起膠細胞)における
ミエリン形成のプロセス、特に、このミエリン形成のプ
ロセスにおいてミエリン形成に関与するシグナル分子と
その関与の機構の解明について、及び該知見に基づく、
ミエリン発達障害モデル非ヒト動物の調製、更には該ミ
エリン発達障害モデル非ヒト動物を用いて、ミエリン発
達調節物質及び脱髄疾患の治療薬をスクリーニングする
方法について、実施例を挙げて具体的に説明するが、こ
の発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではな
い。
【0016】[中枢神経系(CNS)において、オリゴ
デンドログリア(乏突起膠細胞)におけるミエリン形成
のプロセスとそれに関与するシグナル分子、及びその機
構の解明]生来MBP遺伝子を欠損し、無意識に震える
マウス(Cell 42, 149, 1985)は、中枢神経系軸策にお
いて低有髄化(hypomyelination)を示し、生後3ヶ月
以内に死亡する。MBP遺伝子のエクソン2を有するM
BPの特異的アイソフォーム(イソ型)は、ミエリン形
成に調節機能を示すことから(J. Cell Biol. 113,393,
1991)、ミエリン形成の予備的事象としてMBPが必
須であることが示されている。ミエリン形成プロセスに
おいては、Fynチロシンキナーゼ(Fyn)が、オリ
ゴデンドログリアにおける最も重要なシグナル分子とし
て機能し(Nature 367, 572, 1994)、MBPの発現を
刺激する(J. Neurosci. 19, 1393, 1999)。Fyn欠
損マウスでは、MBP産生が著しく低下する(Nature 3
67, 572, 1994、J. Neurosci. 19, 1393, 1999、Neuros
ci. Res. 37, 21, 2000)。非受容体型チロシンキナー
ゼであるFynは、細胞外シグナルを仲介するためにア
ダプター分子と結合する必要がある。ミエリン随伴性糖
タンパク質(MAG)は、有髄化においてFynシグナ
ルの初期誘発に関わる物質の候補と考えられてきたが
(Nature 367, 572, 1994、J. Neurosci. 19, 1393, 19
99、Neurosci. Res. 37, 21, 2000、J. Comp. Neurol.
284, 451, 1989、J. Neurosci. Res. 25, 1, 1990)、
MAG欠損マウスで観察されたミエリンの異常は些細な
ものだった(Nature 2369, 747, 1994、Neuron 13, 22
9, 1994)。MAG欠損マウスではMBP発現に有意の
差は認められず(Nature 2369, 747, 1994、Neuron 13,
229, 1994、J. Neurosci. Res. 62, 772, 2000)、細
胞外シグナルをFynに結合する上流シグナル分子とし
てのMAGの有効性に疑問を投げかけている(Nature 3
67, 572, 1994、J. Neurosci. 19, 1393, 1999、Neuros
ci. Res. 37, 21, 2000)。MAG以外の分子がMAG
欠損マウスにおいてその代わりに機能すると考える研究
者もいるが、まだ確認されていない(Glia 29, 154, 20
00、J. Neurosci. 20, 7430, 2000)。
【0017】しかしMAGは、ミエリン形成を誘発する
ものではなく、かかる誘発に関与する未知の分子の存在
が考えられる(Neurosci. Lett. 298, 163, 2001)。ま
たインビトロでの実験により、オリゴデンドログリアが
形態分化するときのFyn活性が、MAGの初期発現に
先立って生じることが明らかになった(J. Cell Biol.
145, 1209, 1999)。つまりMBPがインビボでのMA
Gの発現を調節している(Neurosci. Lett. 298, 163,
2001)。本発明は、Fynに機能的に結合し、MBPの
初期発現を惹起する誘発因子(trigger)を同定するこ
とを目的とする。ミエリン形成における真の誘発因子で
あるこの分子は、MAGの出現に先立って発現される
(例:生後2週目の始め。Neurosci. Lett. 298, 163,
2001、J. Neurosci. 19, 4948, 1999)。かかるカスケ
ードを解明すると、ミエリン形成に関わる機構をより深
く理解できるようになる。
【0018】本発明者らは、免疫系の重要なシグナル分
子である免疫グロブリンFc受容体のγサブユニット
(FcRγ)(Immunol. Res. 22, 21, 2000)が、ミエ
リン形成に関与していることを明らかにした。Fynに
結合するFcRγ(Immunol. Res. 22, 21, 2000)は、
オリゴデンドログリアにおけるMBPの初期発現を支配
している。本発明者らは、かかるFcRγ−Fyn−M
BPカスケードがミエリン形成に重要であると考えた。
免疫グロブリンGに特異的なFc受容体をオリゴデンド
ログリアから検出したが、これにより抗体−Fc受容体
相互作用がミエリン形成を調節していることが示唆され
る。FynのレギュレーターであるCD45(Mol. Cel
l. Biol. 13, 1651, 1993)は、ミエリン形成の過程で
オリゴデンドログリアにおいてFcRγと共発現され
た。一部のMS患者にCD45の変異が認められたこと
から、ミエリン形成過程における上記シグナル分子の関
与が確認できる(Nat. Genet. 26, 495, 2000)。本発
明は、脳と免疫系との関連性に関し、ミエリン形成機構
を解明するものである。かかる関係を解明することによ
り、MS等の脱髄疾患の新たな治療法の開発が可能とな
る。
【0019】[インビトロでのオリゴデンドログリアに
おけるFcRγの発現]免疫系において、Srcファミ
リーのチロシンキナーゼシグナル活性の一部として、免
疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM:immunore
ceptor tyrosine-based activation motife)を含む
細胞質ドメインと分子との相互作用がある(Nature 33
8, 383, 1989、Cell 78, 553, 1994)。Srcファミリ
ーのチロシンキナーゼはITAMに存在するチロシン残
基をリン酸化し、細胞内シグナリングを誘発する(Scie
nce 263, 1136, 1994)。Srcファミリーのメンバー
であるFynは、有髄化の初期現象において重要である
(Nature 367, 572, 1994)。このことから、有髄化の
初期現象においてオリゴデンドログリアで発現されるI
TAMを有する分子が、ミエリン形成に関与しているこ
とが考えられる。Fynによってリン酸化されることが
わかっている上記細胞質ITAMを含むFcRγ(Bloo
d 15, 4246, 2000)を候補として調べたが、かかる免疫
分子がオリゴデンドログリア細胞内に存在するかどうか
については未だ解明されていない。
【0020】本発明は、オリゴデンドログリア系統にお
けるFcRγの存在について初めて詳らかにするもので
ある。マウス中枢神経系から単離したオリゴデンドログ
リア前駆体細胞(OPC;J. Neurosci. Res. 60, 579,
2000)を培養して抽出した全RNAを調べたところ、
この段階ではまだMAGが発現されていないことがわか
った(Keio J. Med. 44, 47, 1995)。しかし、FcR
γ mRNAがマスト細胞の発現レベルと同等に有意に
発現されることが、RT−PCRの結果明らかになった
(図1A−a)(RT−PCRの実験は、方法2参
照)。これ以外のITAM含有分子であるCD3ζ(Im
munol. Res. 22, 21, 2000)は、神経細胞の発達及びそ
の可塑性に関与しているが(Science 290, 2155, 200
0)、RT−PCRによるOPCでは検出されなかった
(図1A−b)。
【0021】本発明者らはまた、免疫細胞化学法によ
り、A2B5陽性オリゴデンドログリア幹細胞(progen
itors)(Nature 303, 390, 1983;図1B−b)、並び
にO4及びO1陽性幼若オリゴデンドログリア(Dev. B
iol. 83, 311, 1981;図1B−d、f)におけるFcR
γの発現を検出した(FcRγの発現の検出は、方法3
及び4参照)。その結果FcRγは、OPCにおけるm
RNA及びタンパク質レベルの双方で発現された。培養
O4陽性幼若オリゴデンドログリアを、ウエスタンブロ
ット分析にかけたが(方法5参照)、ここでもFcRγ
分子が検出された(図1C)。ITAMを介したFcR
γのFynへの結合(Blood 15, 4246, 2000)に関連
し、OPC及び幼若オリゴデンドログリアにおいてFc
Rγが発現されることからは、FcRγがオリゴデンド
ログリアにおけるミエリン形成に関与していることが示
唆される。
【0022】[インビボでのオリゴデンドログリアにお
けるFcRγの発現]中枢神経系におけるインビボでの
FcRγの発現を考察するために、種々の日齢での新生
児期マウスの脳に免疫組織化学法を実施した(方法4、
6及び7参照)。出生時(P0)には、脳室下帯内(脳
室に近接する生殖マトリックスエリア;SVZ)でFc
Rγ陽性細胞が検出された(図2−a)。生後4日目
(P4)では、その発現は白質にまでおよび、脳梁にお
いても検出された(図2−b)。免疫組織化学法によっ
てMBP及びMAGが検出可能となるP7までには、F
cRγの発現は主に白質に集中するようになる(図2−
c)。染色して観察した分布の拡大状況は、SVZにお
ける生後のグリア形成パターンと著しく類似しているの
は興味深いことである(Neuron 10, 201, 1993)。
【0023】P0で、側脳室のマウス−ムサシ−1(m
−Msi−1)陽性神経幹細胞層近傍においてもFcR
γ陽性細胞が観察されたことから(J. Neurosci. 17, 8
300,1997、図2−d,e)、FcRγ陽性細胞が神経幹
細胞由来であることが示唆される。成熟中枢神経系にお
ける(FcRγの)分布はP7で観察されたものと類似
していた(図2−f)。つまりFcRγは、MAGの発
現(生後2週目の始め;Neurosci. Lett. 298, 163, 20
01、J. Neurosci. 19, 4948, 1999)に先だって中枢神
経系において発現され、またかかるFcRγ陽性細胞集
団は成熟中枢神経系に留まる。成熟中枢神経系内におけ
るFcRγ陽性細胞集団は、白質の脳室上部エリア及び
側脳室近傍の成熟SVZにその分布が局在する限定集団
であったのは驚くべきことである(図2−f)。これら
の細胞の存在からは、FcRγ陽性細胞におけるグリア
形成が成熟期まで続き、一方、生後間もなく形成された
細胞は、この領域内で静止していることが想定される。
【0024】インビボで、上記FcRγ発現細胞がオリ
ゴデンドログリア系統由来であることを確認するため
に、数種の抗体でFcRγ発現細胞を標識して該細胞を
同定した(方法8参照)。P0においてFcRγ発現細
胞は、GFAP陽性細胞(アストログリア系統の細胞)
及びOx−42陽性細胞(Immunology 57, 239, 1986;
ミクログリア系統)のいずれからも区別された(図3
A)。少数のFcRγ発現細胞は、SVZ内においてG
FAPと若干共染色されたものの、大部分の細胞はGF
AP陰性だった。FcRγ発現細胞は、Ox−42とは
共標識化せず、P0におけるFcRγ発現細胞の大部分
は、アストログリア又はミクログリア系統のいずれから
も生じないことが考えられる。これらの細胞はオリゴデ
ンドログリア系統由来であると推定される。P7におい
て、Fyn(図3B−a)及びMAG(図3B−b、方
法9参照)と共標識化するFcRγ発現細胞を検出し
た。MAGは専らオリゴデンドログリアで発現されるこ
とから(J. Comp. Neurol. 284,451, 1989)、FcRγ
発現細胞はインビボでオリゴデンドログリア系統から発
達するといえる。
【0025】成熟中枢神経系では、FcRγ陽性細胞は
白質の限られた部分で観察された(図2−f)。本発明
者らは幼若オリゴデンドログリア形態を示す細胞を、F
cRγ及びMBPを調べるために染色して観察した結果
(図3C−a)、成熟中枢神経系におけるFcRγ陽性
オリゴデンドログリア細胞の存在が考えられた。生後間
もない脳と比し、GFAP陽性細胞の小サブ集団は、F
cRγにも陽性を示し、成熟SVZ内で優勢だった(図
3C−b)。大部分のGFAP陽性細胞は、FcRγに
対し陰性を示し、このようにGFAP及びFcRγのい
ずれにも陽性を示す限られた細胞集団は、成熟中枢神経
系固有のものである。これらの細胞が、神経幹細胞とし
て作用するSVZアストロサイトである可能性について
は、これから考察する必要がある。
【0026】FcRγは、オリゴデンドログリア系統に
おいてMAG発現に先立ち、インビトロ及びインビボの
いずれにおいても発現される。しかし顕微鏡で観察した
ところ、インビボでの前有髄化段階におけるMAG及び
FcRγの発現は、オリゴデンドログリアにおいて完全
に共局在するものではなかった。MAGは細胞突起の端
部を強く染色し、FcRγは細胞表面を染色する(図3
B−b)。Fynは、主として細胞表面で検出される
が、これは共染色によって確かめたFcRγの発現パタ
ーンに似ている(図3B−a)。前有髄化オリゴデンド
ログリアにおけるFynのインビボでの局在は、MAG
のでなくFcRγの局在と近似している。FcRγ陽性
細胞は、分析を行ったいずれの日齢においても、SVZ
及び脳室上部エリアを別として、灰白質又は白質のいず
れかで観察されることは稀だった(図2−f)。観察さ
れた染色分布の拡張(図2−a,b,c)及びSVZで
のグリア形成に関する従来の研究(Neuron 10, 201, 19
93)と関連させて上記の観察結果をみると、FcRγ
は、成熟有髄化細胞においてではなくOPC及び前有髄
化オリゴデンドログリアにおいて発現されることが考え
られる。
【0027】FcRγがミエリン形成を最初に誘発する
という推論に基づき(例えばFyn−MBPカスケード
の誘発;Neurosci. Lett. 298, 163, 2001)、本発明者
らは、FcRγの発現が、Fyn及びMBPの発現に類
似していると考えた。連続した切片を調べ、P7の成長
しつつあるミエリン鞘に含まれるFcRγ、Fyn、及
びMBPの染色パターンが互いに似ていることを観察し
た(図3D)。Fynは、軸索においても発現された
(Nature 366, 742, 1994)。このように発現パターン
が類似しているとき、それらの分子間には何らかの関係
があると考えられる。この結果は、Fyn−MBPカス
ケードの誘発因子としてのFcRγの役割を明らかにす
るものである。
【0028】[交差結合FcRγのMBP発現の刺激]
抗FcRγラビットポリクローナル抗体(方法10参
照)と交差結合させ、OPC内にFcRγシグナリング
を人工的に産生し(J. Neurosci. Res. 60, 579,2000、
方法1参照)、MBP発現におけるFcRγ刺激の効果
を調べた。24時間交差結合させた結果、いくつかの突
起を有する培養OPCは、顕著な形態上の変化をみせ、
その突起はよく発達した(図4A−b)。抗体非存在下
では、このような発達はみられなかった(図4A−
a)。ウエスタンブロット分析を行ったところ、対照と
比べMBP発現は、交差結合による刺激をより強く受け
ていた(図4B;方法11参照)。Fynに対して行っ
た類似の実験からも、交差結合させたオリゴデンドログ
リアで発現が増加することがわかった(図4B)。オリ
ゴデンドログリア分化の過程においてFynは、2倍か
ら3倍に上方調節されるので(J. Cell Biol. 145, 120
9, 1999)、Fyn発現の増加及び劇的な形態上の変化
を明らかにした本発明の実験結果からFcRγシグナル
がOPC分化を誘発することが示唆される。つまりFc
Rγシグナルは、ミエリン形成に必要であり、ひいては
オリゴデンドログリアにおけるMBPの発現を刺激し、
さらにFyn発現を増加させる。
【0029】MBP発現を刺激することにより、エクソ
ン2含有アイソフォームが著しく上方調節される(図4
B)。14.0、17.0、18.5、及び21.5k
Dのタンパク質を産生するMBPの主要な4アイソフォ
ームは、MBP遺伝子内の7つのエクソンを代わりに用
いることにより作出し得る(Cell 43, 721, 1985)。各
アイソフォームの厳密な役割は、これから解明されなけ
ればならないが、これらのアイソフォームは、細胞内に
おける分布によって2グループに分類できる。17.0
及び21.5kDのタンパク質であるエクソン2含有ア
イソフォームは、細胞質全体にわたって分散・分布して
おり、通常これらのアイソフォームは核に蓄積してい
る。他方、残りの14.0及び18.5kDタンパク質
のアイソフォーム2種は、主に形質膜にみられ、ミエリ
ン緊密化に作用する(J. Cell Biol. 113, 393, 199
1)。エクソン2含有アイソフォームが核に活性的に輸
送されることからは、かかるアイソフォームが有髄化に
調節機能を示すことが示唆され(Neuron 18, 579, 199
7)、本発明の結果も、かかる可能性を裏付けるもので
ある。MBPにおけるエクソン2含有アイソフォームの
役割からも、FcRγがミエリン形成の誘発因子である
との本発明者らの推論が裏付けられる。
【0030】抗FcRγ抗体の代わりにマウス免疫グロ
ブリンGの2bアイソフォーム(IgG2b)を投与し
ても、エクソン2含有MBPの発現は同様の増加を示す
ことを見い出した(図4B)。使用したIgG2bモノ
クローナル抗体は、マウスに元来備わっていないエピト
ープを有していた。フローサイトメトリーにかけたとこ
ろ、この抗体は、いずれのオリゴデンドログリアタンパ
ク質とも反応しなかった(フローサイトメトリーは、方
法10参照)。従って、エクソン2含有MBPの発現を
刺激した結果からは、IgG2bがIgGのFc受容体
(FcγRs;図7A)と相互作用することが考えられ
る。IgG2bの投与によってFyn発現が刺激される
かどうかについては観察できなかったが、これは恐らく
刺激プロセスでの抗FcRγ抗体と比較した場合、Ig
G2bが間接的投与だったためだと考えられる(図4
B)。更に本発明者らはFcRγ欠損マウス(Cell 76,
519, 1994)から得られたOPCを刺激した。IgG2
bを用いて同じ操作をした場合、前記OPCと野生型O
PC間で観察された変化に差は認められなかった(図4
C)。FcRγがOPCの差に本質的に関わるシグナル
分子であり、IgG2bがFcγRを介しFcRγを活
発化の役割を明らかにするものである。
【0031】[FcRγ、Fyn及びMBP欠損マウス
の作製]Fyn欠損マウスは、文献(Nature 366, 742,
1994)記載の方法によりFyn遺伝子のエクソンをβ
ガラクトシダーゼ遺伝子に置換して作製した。また、M
BP欠損マウスは震顫を起すことで偶然に見つかった、
突然変異により欠損したマウスを用いた。なお、FcR
γ欠損マウスは、本発明者らが以前報告した文献(Cel
l, 76, 519-529, 1994)に準じて作製した。具体的に
は、マウス遺伝子ライブラリーからPCR法により得ら
れた遺伝子断片を用いて、FcRγ鎖遺伝子をスクリー
ニングし、スクリーニングされたFcRγ鎖遺伝子を組
換えDNA技術により、FcRγ鎖遺伝子をネオマイシ
ン耐性遺伝子で置換し、5′末端側にジフテリアトキシ
ンAフラグメント(DT−A)遺伝子を導入してターゲ
ティングベクターを作製し、この作製されたターゲティ
ングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電
気穿孔)法によってES細胞に導入し、相同的組換えを
行った。その相同的組換え体の中から、G418に抵抗
性を示すES細胞を選択し、マウスの胚盤胞中にマイク
ロインジェクションして、かかる胚盤胞を仮親のマウス
に戻し、キメラマウスを作製した。このキメラマウスを
野生型のマウスとインタークロスさせ、ヘテロ接合体マ
ウスを作製し、また、このヘテロ接合体マウスをインタ
ークロスさせてFcRγ鎖ノックアウトマウスを作製し
た。
【0032】[FcRγ、FynとMBP欠損マウスと
の比較]FcRγ及びFynはオリゴデンドログリア内
において共働してMBPの発現を刺激する。FcRγ
ITAMのリン酸化には、Srcファミリーチロシンキ
ナーゼ類との相互作用が必要である(Science 263, 113
6, 1994)。Srcファミリーメンバーの中でも、中枢
神経系内で発現されるのは5種類だけである(Annu. Re
v. Cell. Dev. Biol. 13, 513, 1997)。その5種類の
中で、Src、Fyn、及びLynがオリゴデンドログ
リア内で発現される(J. Neurosci. 21, 2039, 200
1)。しかしSrcファミリーの中でミエリン形成に必
要とされるのは、Fynだけである(J. Neurosci. 21,
2039, 2001)。Fynは、FcRγのITAMリン酸
化に深く関与することがわかっている(Blood 15, 424
6, 2000)。よって、オリゴデンドログリアにおけるF
cRγ活性によりMBP発現は増加するが(図4B)、
該活性がITAMをリン酸化するに際してはFyn依存
的である(Blood 15, 4246, 2000)。点変異によりFy
nチロシンキナーゼ活性を消失させると、Fyn非存在
下におけるのと同様な深刻なミエリン欠損が生じ、Fy
nキナーゼ活性がミエリン形成に必須であることが示唆
される(J. Neurosci.21, 2039, 2001)。MBP発現が
刺激されるか否かは、主にFynに依存し(J. Neurosc
i. 19, 1393, 1999)、これはインビトロでの本発明の
結果と合致する(図4B)。
【0033】FcRγ、Fyn、又はMBPのいずれか
を欠損する変異マウスを用いて、インビボでのFcRγ
−Fyn−MBPカスケードをさらに調べた(方法7参
照)。オリゴデンドログリアの増殖が最も盛んになるの
は、生後9日までであり(J.Neurosci. 20, 7698, 200
0)、この時期にオリゴデンドログリアはエクソン2含
有MBPを顕著に発現させた(J. Cell Biol. 113, 39
3, 1991)。インビトロでの刺激実験から、上記の日齢
(生後9日目まで)における有髄化プログラムを分析す
ることにより、ミエリン形成における欠損を明らかにで
きると考えられた。そこで生後10日のマウスの脳を分
析して、有髄化の初期段階を調べた。FcRγ、Fy
n、及びMBPを欠損するマウスの白質を免疫組織化学
法に従って分析することにより(方法4、6及び7参
照)、同日齢の野生型マウスとそれぞれ比較し、3種類
の変異マウスにおけるミエリン形成が同様に遅延するこ
とがわかった。3種類全ての変異マウスにおけるMBP
及び/又はMAGの発現が制限されることから(図5
A)、かかる3種の分子がミエリン形成に不可欠である
ことが示唆される。FcRγ及びFyn欠損マウスのウ
エスタンブロット分析結果からは、P10の新生児期マ
ウス及び成熟マウスにおけるMBP発現が低下すること
が明らかになった(図5B;方法11参照)。上記の観
察結果からFcRγ−Fyn−MBPカスケードが、イ
ンビボでのミエリン形成の初期段階において中心的役割
を果たしていることが考えられる。
【0034】ウエスタンブロット法により得られた結果
をKodak 1D Image Analysis Software, EDAS290 (Ver.
3.5)(Kodak社製)を用いて定量したところ、成熟中枢
神経系中の総MBP量が、野生型のMBP量を100と
したとき、Fyn欠損マウスでは40.3%、またFc
Rγ欠損マウスでは60.8%までそれぞれ低下したこ
とがわかった。エクソン2含有MBPの発現量(正味量
21.5kD及び17.0kD)は残りのアイソフォー
ム2種(14.0及び18.5kD)よりさらに影響を
受け、野生型マウスの発現量との比較で、Fyn欠損マ
ウスでは31.9%、FcRγ欠損マウスでは40.0
%にそれぞれ低下した。FcRγ及びFyn欠損マウス
で同様のパターンが観察されたことで、上記分子類がミ
エリン形成を調節するシグナルカスケードに関与してい
るという本発明者らの理論が裏付けられた。上記両欠損
マウスにみられるエクソン2含有MBP量の顕著な低下
は、本発明者らのインビトロでの結果と同じであり、上
記プロセスにおける前述のアイソフォームの存在が示唆
される(図4)。
【0035】変異マウスを用いたP10でのMAG発現
を組織学的に比較したところ、MAG陽性幼若オリゴデ
ンドログリアの分布(Neurosci. Lett. 298, 163, 200
1)は、FcRγ欠損マウスよりMBP欠損マウスで、
より顕著に低下した(図5A−e,f,g)。Fyn欠
損マウスはその中間的な表現型を示した。上記の各種欠
損マウスにおいて、P10までに脳梁から大脳皮質に移
動したMAG陽性幼若オリゴデンドログリアは、野生型
のレベルを100としたとき、FcRγ欠損マウスで4
4%、Fyn欠損マウスで25%、またMBP欠損マウ
スで12%だった(図5C:MAG陽性幼若オリゴデン
ドログリアの定量は、方法12参照)。この結果はMB
P量に正比例しており、MBP、特にエクソン2含有ア
イソフォームがミエリン形成に重要であることを示唆し
ている。
【0036】[FcRγ非存在下での脱髄]種々の日齢
のFcRγ欠損マウスを分析して、FcRγ非存在下で
の有髄化を調べた。P10で観察された有髄化阻害現象
(図5)は、グリア形成がうまくいかなかったことに起
因すると考えられ、この可能性を探るためにオリゴデン
ドログリア系統の最も初期の幹細胞に対するマーカーで
あるPDGFαRの発現を調べた(Development 115, 5
35, 1992)。P10の白質におけるFcRγと共に染色
したPDGFαR陽性細胞の存在は(図6A−a)、F
cRγがオリゴデンドログリア系統の細胞で発現される
ことを示すものである(図3)。しかし、PDGFαR
陽性細胞の一画分だけが、FcRγと共染色していた
(図6A−a)。FcRγ陽性細胞は、PDGFαR陽
性でもあり(図6A−a)、PDGFαR陽性/FcR
γ陰性細胞が中枢神経系に存在する静止グリア前駆体細
胞であるとも考えられる。PDGFαRはまた、本発明
の実験においてグリア形成の状態を調べる際に役立つマ
ーカーとなり得る。有髄化欠損が観察されたP10で
(図5)、PDGFαR陽性細胞の数又は分布の変化は
観察されなかった(図6A−b,c)。従って、P10
で観察された有髄化欠損は(図5)、グリア形成ではな
くミエリン形成が阻害されることに主に起因している。
【0037】P10でみられた欠損(図5)をその後の
段階で補う系の能力を調べるため、その後の発達段階に
おけるMAG陽性幼若オリゴデンドログリアの数(Neur
osci. Lett. 298, 163, 2001)を数えたMAG陽性幼若
オリゴデンドログリアの定量は、方法12記載の方法に
より行った。変異マウス及び野生型マウスにおけるMA
G陽性幼若オリゴデンドログリアの数の相違は、その後
の発達段階では有意の差ではなくなった(図6B−
a)。しかしこの時点では、変異体における有髄化はま
だ欠損していた。P50に免疫組織化学法で検出したと
ころ、後の発達段階においても一般的に有髄化が欠損す
ることを反映し、MBPに加え、ミエリンの主要タンパ
ク質成分であるプロテオリピッドタンパク質(PLP)
の発現も野生型に比し変異マウスで大きく低下すること
がわかった(図6B−b,c)。P67の脳梁を電子顕
微鏡(方法57参照)で観察すると、甚だしく低有髄化
された軸策が後部領域でみられた(図6C−a,b)。
かかる脳梁の前部領域においても軸策が著しく腫張して
いたことは驚くべきことである(図6C−c,d)。ミ
エリン欠損は、特にPLP減少時においては、軸策腫脹
を引き起こした(Science 280, 1610, 1998)。上記の
電子顕微鏡による観察結果からは、FcRγ非存在下で
ミエリン欠損が極めて一般的に認められることが示唆さ
れる。変異体マウスにおける有髄化でみられた欠損に
は、単に有髄化の遅延だけではなく、その後の発達段階
を通して低有髄化が一般化されることも含まれる。
【0038】上記の観察結果により、FcRγがグリア
形成にではなくミエリン形成に必要であることが考えら
れ、FcRγがインビトロ及びインビボいずれにおいて
もミエリン形成を誘発するという本発明の理論が支持さ
れる。
【0039】[FcRγと共発現されるFcγRs]い
くつかの免疫受容体がFcRγを共有しており(Immuno
l. Res. 22, 21, 2000)、ミエリン形成の分子機構を理
解する上で、オリゴデンドログリアにおいてFcRγ活
性に関与している受容体を解明することが重要である。
FcRγ欠損マウスでは、細胞表面において、IgE
Fc受容体(FcεRI)及びIgGFc受容体(Fc
γRI/III)いずれのα鎖(例えばリガンド結合サブ
ユニット)も発現されない(Cell 76, 519, 1994)。変
異体においてミエリン形成が阻害される理由としては、
FcRγ及び上記α鎖の両方を欠失していることが考え
られる。野生型マウスの幼若オリゴデンドログリアをR
T−PCRにかけたところ(方法2参照)、FcεRI
のα鎖は検出されなかった。一方、FcγRI及びFc
γRIIIのα鎖は容易に検出された(図7A)。フロー
サイトメトリーにより、これらの発現パターンを確認し
た。従って、IgGには特異的だがIgEは認識しない
Fc受容体が、ミエリン形成に関与していることが考え
られる。
【0040】しかし、FcRγを共有するこれ以外のオ
リゴデンドログリア特異的受容体(1又は2以上)が関
与している可能性も排除できない。受容体型に関わら
ず、FcRγの交差結合がMBP発現を刺激することが
インビトロでの実験で明らかになった(図4)。ミエリ
ン形成過程におけるIgGとFcγRI/IIIとの共発
現が、MBP発現を刺激することを上記の事実は示唆し
ている。新生児FcR(FcRn;N. E. Simister, in
Immunoglobulin Receptors and Their Physiological
and Pathological Roles in Immunity, J. G. J. van d
e Winkel, P. M.Hogarth, Eds. (Kluwer Academic Publ
ishers. Netherland. 1998), PP. 63-71.)を介して転
移する新生児期マウスの母系IgGが存在すること、ま
た免疫系においてIgG分泌細胞が早くもP7で存在す
る(Proc. Natl. Acad. Sci. 89, 5185, 1992)ことか
ら上記の結論が支持される。IgG2bを用いてインビ
トロでの刺激実験を行ったところ、MBPレベルが増加
したことも(図4)、本発明の仮説との一致を示してい
る。
【0041】[ミエリン形成機構]上記実験例から、本
発明者らが想定したミエリン形成機構を説明するモデル
を図8に示した。FcRγは、オリゴデンドログリア系
統の細胞内においてインビトロ及びインビボいずれにお
いても発現された(図1〜3)。そこで本発明者らは、
FcRγがFynと機能的に共働して(Blood 15, 424
6, 2000)、形態分化を誘導し、またMBP発現、特に
エクソン2含有アイソフォーム発現の増加を誘導するこ
とにより、ミエリン形成を誘発していると考えた(図
4)。オリゴデンドログリアにおけるグリア形成が有意
の変化を示さないのに、FcRγ欠損マウスがミエリン
形成において重大な欠損を示すことから、この推論はイ
ンビボで確認された。
【0042】かかる変異マウスにおいてはまたMBP発
現も低下し、エクソン2含有アイソフォームの発現も著
しく損なわれた(図5)。IgG特異的でIgE非特異
的なFc受容体の発現(図7A)からは、オリゴデンド
ログリア上でFc受容体を活性化させる細胞外誘発分子
としてのIgGの役割が示唆される。インビトロにおい
てOPCをIgG2bで刺激すると、MBP発現が増加
した(図4)。またミエリン形成の初期段階のオリゴデ
ンドログリアにおいてCD45が、Fyn及びFcRγ
と共発現されることから(図7B)、ミエリン形成に必
須のFynの活性をCD45が調節している可能性が考
えられる。CD45における変化が、MS発症に関与し
ている事例が既に報告されている(Nat. Genet. 26, 49
5, 2000)。
【0043】IgG2bは、インビトロでMBPの発現
を刺激する(図4)。ミエリン形成を誘発するIgGの
生理学的機能を補うため、IgGはミエリン形成に先立
って存在していることが期待される。新生時期マウスの
母系由来IgG(N. E. Simister, in Immunoglobulin
Receptors and Their Physiological and Pathological
Roles in Immunity, J. G. J. van de Winkel, P. M.
Hogarth, Eds. (Kluwer Academic Publishers. Netherl
and. 1998), PP. 63-71.)の他に、IgG分泌細胞が、
P7の胸腺及び脾臓から検出された。これらの分泌細胞
は、この時期急速に増殖する(Proc. Natl. Acad. Sci.
89, 5185, 1992)。オリゴデンドログリアにおけるF
cを介したIgGシグナリングによりミエリン形成が開
始されることから、脱髄疾患に対する静脈内免疫グロブ
リン療法(IVIg)の有効性が考えられる。IVIg
の高量投与による治療は、脱髄疾患の患者に対する治療
法として非常に有効である(Arch. Neurol. 56, 661, 1
999)。IVIgをMSに用いると再発率が減少する(L
ancet 349, 589, 1997)。しかしこの療法の機構は、未
だ解明されていない。
【0044】動物モデルを使った実験では、Theilerウ
イルスに感染させて脱髄を惹起させた後、免疫グロブリ
ンが中枢神経系における再有髄化を促進した(Ann. Neu
rol.27, 12, 1990)。免疫グロブリンの再有髄化促進能
は、分子のFc部位によって仲介されるが、F(a
b’)2断片は、かかる効果を実験動物モデルで誘導し
得なかった(J. Neuroimmunol. 78, 127, 1997)。以上
の発見から、免疫グロブリンのFc部位を介し、IVI
gによる再有髄化が強化され、FcRγ−Fyn−MB
Pカスケードがオリゴデンドログリア内で活性化される
と考えられる。MSにより生じる障害は、FcγR類の
多型性に影響され、IgGに対し高度な親和性を示すF
cγRsを有するMS患者に対する治療は、より良好な
結果を生み出す(Neurology 52, 1771, 1999)。
【0045】IgGと相互作用する独特な阻害Fc受容
体であるIIB型FcγR(FcγRIIB)(Annu. Rev.
Immunol. 15, 203-234, 1997)は、FcRγ−Fyn
−MBPカスケードをネガティブに調節し、ポリクロー
ナルIVIgがもつミエリン形成に対する刺激能を消失
させる。RT−PCR及びフローサイトメトリーのいず
れからも培養オリゴデンドログリアからFcγRIIBが
検出された。しかしFcγRsの想定されるリガンドが
免疫グロブリンではない可能性は排除できない。一方、
ミエリン形成におけるFcRγ自体の刺激機能は、抗体
交差結合により明らかになり(図4)、再有髄化を直接
強化する上記の機構が、今後実用に供される可能性を示
唆している。
【0046】エクソン2含有MBPの発現が、再有髄化
がある程度進行したMS病巣から検出された(Annu. Ne
urol. 41, 797, 1997)。FcRγの交差結合の結果、
エクソン2含有MBP発現量が増加し、また劇的な多型
性分化が生じる(図4)。上述したように、慢性MS病
巣においてみられる豊富ではあるが静止状態にある幼若
オリゴデンドログリア集団に関連して(J. Neurosci. 1
8, 601, 1998)、ミエリン形成開始機構に関する研究を
本発明者らが大きく進展させたことにより、今後、MS
及び他の脱髄疾患の治療及び予防に関する治療上のスト
ラテジーが大いに進化することが期待される。
【0047】[本発明の実施例で用いた実験方法] (方法1)17日目の胚から誘導された、マウスオリゴ
デンドログリア前駆体細胞に対して、ラットオリゴデン
ドログリア前駆体細胞に対する培養条件を詳細にしたI
tohの方法(J. Neurosci. Res. 60, 579, 2000)を
適用した。培養細胞の約90%は、決まってOPC系統
特異的マーカー、A2B5(J. Neurosci. Res. 62, 52
1, 2000)に対して陽性であった。 (方法2)培養したOPCから、Trizol試薬(GI
BCO BRL)を用いて、全RNAを抽出した。RNAを、
20μlのTEに再懸濁した。各々の試料について、一
本鎖cDNA合成キット(Boehringer Mannheim)を用
いて、1μlのRNAを逆転写し、最終容量20μlを
得た。標準化のために、平行して、マウスβ−アクチン
を増幅した。マウスFcRγ、CD3ζ、FcεRI
α、FcγRIα及びβ−アクチンの増幅のためのアニ
ーリングは52℃で行った。FcγRIIIα及びFcγ
RIIBの増幅のためにのアニーリングは53℃で行っ
た。cDNA試料は、35サイクル行って増幅した(9
4℃で30秒間熱変性、30秒間アニーリング、72℃
で30秒間伸長反応=1サイクル)。なお、PCRの際
に用いたプライマーを以下に示す。FcRγのプライマ
ーとしては、センスプライマー5'-ctcaagatccaggtccga-
3'(配列番号1)とアンチセンスプライマー5'-ctactgg
ggtggtttttcat-3'(配列番号2)を、CD3ζのプライ
マーとしては、センスプライマー5'-aggcacagagctttggt
ct-3'(配列番号3)とアンチセンスプライマー5'-ctgg
taaaggccatcgtgc-3'(配列番号4)を、FcεRIαの
プライマーとしては、センスプライマー5'-aaatgaactct
actactaaa-3'(配列番号5)とアンチセンスプライマー
5'-cttttactacagcaattctgaa-3'(配列番号6)を、Fc
γRIαのプライマーとしては、センスプライマー5'-g
aacagccgttcagatct-3'(配列番号7)とアンチセンスプ
ライマー5'-ttcgtctcacagttcagg-3'(配列番号8)を、
FcγRIIIαのプライマーとしては、センスプライマ
ー5'-ctaaggtgccatagctgcagg-3'(配列番号9)とアン
チセンスプライマー5'-ctgattgacagggacttcctc-3'(配
列番号10)を、FcγRIIBのプライマーとしては、
センスプライマー5'-gtgaggtatcatcactacagt-3'(配列
番号11)とアンチセンスプライマー5'-ggttctggtaatc
atgctctg-3'(配列番号12)を、β−アクチンのプラ
イマーとしては、センスプライマー5'-tggtcgtcgacaacg
gct-3'(配列番号13)とアンチセンスプライマー5'-t
ttacggatgtcaacgtcac-3'(配列番号14)を、それぞれ
用いた。PCR生成物の適量を、アガロースゲル電気泳
動分析にかけ、β−アクチンバンドの強さにより標準化
した。 (方法3)培養したOPC及び幼若オリゴデンドログリ
アを、室温で15分間、PLPで固定した後、第一の抗
体でインキュベーションした(4℃で一夜)。続いて第
二の抗体で染色した後(室温で、1.5時間)、細胞を
共染色に用いられる他のセットの抗体で染色し、同じプ
ロトコルを継続した。
【0048】(方法4)この研究に次に記述する抗体を
用いた。マウスモノクロナール抗体O1及びO4(Dev.
Biol. 83, 311, 1981)、マウスモノクロナール抗体A
2B5(Nature303, 390, 1983)、ウサギポリクロナー
ル抗体 抗−FcRγ(Cell 76, 519,1994)、ウサギ
ポリクロナール抗体 抗−MBP(Nichirei)、ウサギ
ポリクロナール抗体 抗−MAG(Dr.Y.Matsud
a、(National Center for Neurology and Psychi
atry、Japan)の好意による)、ウサギポリクロナール
抗体 抗−GFAP(DAKO)、マウスモノクロナール抗
体 Ox−42(Immunology 57, 239, 1986)、ウサギ
ポリクロナール抗体 PLP(Sigma)、ウサギポリク
ロナール抗体 抗−PDGFαR(UBI)、ラットモ
ノクロナール抗体抗−m−Msi−1(Prof.H.Okano、
(Dept.of Physiology、Keio UniversitySchool of Med
icine、Japan)の好意による)、及びラットモノクロナ
ール抗体抗−CD45(クローン:30−F11)。免
疫組織化学に対して,HRP−複合抗−ウサギ−IgG
抗体(MBL)、HRP−複合抗−マウス−IgG抗体
(MBL)、及びビオチン−複合抗−ラット−IgG抗
体(DAKO)を、第二の抗体HRP−複合ストレプト
アビジン(streputoavidin)(Nichirei)と一緒に用い
た。免疫細胞化学に対して、ローダミン−複合抗−マウ
スIgM抗体(EY Labo.Inc.)、及びフルオレセイン
−複合抗―ウサギIgG抗体を用いた。 (方法5)O4−陽性幼若オリゴデンドログリアを培養
するために、新生マウスの脳を切開し、分離培地を準備
した(J. Cell Biol. 85, 890, 1980)。10日間培養
した後、アストロサイト単層に付着したオリゴデンドロ
グリアを、軌道震盪により物理的に分離し、回収した。
回収した細胞の内、95%以上がO4に対し陽性だっ
た。アストロサイトに富んだ残存細胞層を、トリプシン
/EDTAを用い分離した。回収した細胞のイムノブロ
ット分析を行った。オリゴデンドログリアに富んだ画分
を、磁気ソーティング(Miltenyi社製)、及びO4抗体
によりさらに精製し、フローサイトメトリーにかけた。
【0049】(方法6)酸−アルコール溶液(95%エ
タノール、5%酢酸;vol%)中で、脳を一晩固定化し
た。標準的なプロトコール(100%エタノール、メチ
ルベンゾアート、キシレン、キシレン−パラフィン、及
びパラフィン溶液にそれぞれ1〜2時間)に従い、固定
化した脳をパラフィン化(paraffination)した。次
に、この試料をパラフィンに包埋した。包埋した脳を、
ミクロトームで10μm厚さの切片に切り分けた。標準
的なプロトコールに従い、これらの切片を脱パラフィン
化した(キシレン、100%エタノール、90%エタノ
ール、70%エタノール、及びPBS)。細胞内におけ
るペルオキシダーゼ活性を、3%H22により室温で1
0分間消失(quenched)させた。PBSでもう一回洗浄
した後、上記切片を一次抗体共存下で、使用する抗体に
より4℃で一晩或いは37℃で2時間インキュベートし
た。インキュベーション後、切片をPBSで数回洗浄
し、適正な二次抗体共存下で37℃で1時間インキュベ
ートした。ビオチン結合二次抗体を用いた試料について
は、その切片をHRP結合ストレプトアビジン共存下に
おいても37℃で30分間インキュベートした。PBS
で完全に洗浄した後、DAB(Wako社製)を含む溶液で
試料を染色した。拮抗染色(counter−stain)としてMe
thylgreen(Wako社製)を用いた。
【0050】(方法7)野生型(C57BL/6)、FcRγ
−欠損(Cell 76, 519, 1994)、Fyn−欠損(Nature
366, 742, 1994)、及びMBP―欠損(震えるマウス
として知らている;Jackson Lab.)マウスを、適当な
麻酔の下,試験に供する全ての週齢のマウスに関して、
適当な麻酔の下、犠牲にした。変異体を含めて、全マウ
スの遺伝的背景は、C57BL/6である。 (方法8)予備的な染色の後、切片をPBSで数回洗浄
した。0.1Mグリシン−HClバッファー(pH2.2)
中において、室温で一時間培養して、第一の抗体を除去
した。これらの染色条件は、第二の抗体の染色にも都合
良く用いた。最終染色に続いて、4−クロロ−1−ナフ
トール(Wako)を含む溶液を、第二の抗体を発色させる
ために用いた。
【0051】(方法9)使用した抗MAG血清の特異性
は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)に罹患させた
脳の切片を染色して確かめ、抗体と中枢神経系内のFc
Rγ陽性免疫細胞集団との交差反応性の可能性を排除し
た。この抗体は、EAEに罹患した脳における侵入性免
疫細胞とは反応せず(図1の補足)、免疫細胞と交差反
応しないことを明らかにした。 (方法10)一皿あたり、1×106のオリゴデンドロ
グリア前駆体細胞を播種した35mm皿を、(100μ
g/ml;Sigma社製)、抗FcRγウサギポリクロー
ナル抗体を含むポリ−L−リジン(70μg/ml)単
独、又はポリ−L−リジンと抗ヒトFcεRIαマウス
モノクローナル抗体(クローンCRA−1、サブタイプ
IgG2b;20μg/ml;Kyokuto社製)のいずれ
かで処理した。24時間後に細胞を回収した(図5
A)。溶解緩衝液(50mMのTris−HCl(pH7.
4)、1%NP40、0.25%デオキシコレートナト
リウム、150mMのNaCl、1mMのEDTA−2
Na、1mMのNa3VO4、1mMのNaF、1mMの
PMSF、1μg/mlのアプロチニン、1μg/ml
のロイペプチン、及び1μg/mlのペプスタチン)を
用いて細胞を溶解させた後、該細胞溶解物にSDS−P
AGE法を実施した。標準的プロトコールに従い、ゲル
をウエスタンブロッティング分析にかけた。フローサイ
トメトリーの結果、CRA−1抗体によりオリゴデンド
ログリア表面上のタンパク質は検出されなかった。
【0052】(方法11)ミエリンフラクションを調製
する厳密な方法、SDS−PAGE、及びブロテイング
法については、既に述べた(Neurosci. Res. 37, 21, 2
000)。図5Bにおいて、同量の試料を、野性型及び変
異動物からのミエリン含有脳フラクションから得、各々
のレーンにかけた。 (方法12)抗MAG抗体で染色した後、変異マウス及
び野生型マウス双方の脳からの切片を3枚ずつ用い、大
脳皮質内のMAG陽性幼若オリゴデンドログリア(Neur
osci. Lett. 298, 163, 2001)の数を定量した。脳の使
用した部位は、実験した全てのマウスで解剖学的に同一
であることを確認して用いた。平均値及び標準偏差を算
出して表にした。 (方法13)電子顕微鏡分析のための固定は、文献(An
nu. Rev. Cell. Dev. Biol. 13, 513, 1997)記載の方
法によって実施した。2%酢酸ウラニル及び鉛溶液で染
色超薄切片(Ultra−thin−section)を、JEOL 1
00C電子顕微鏡(Nippon Kohden)を80kVで操作
して、観察した。
【0053】[図面の説明]図1(参考写真1参照).
インビトロでのOPC(オリゴデンドログリア前駆体細
胞)及び幼若オリゴデンドログリアにおけるFcRγ発
現の様子を示す図である。 A:FcRγ発現をRT−PCR法により分析した。O
PCは、FcRγを発現したが(a)、CD3ζの発現
は認められなかった(b)。骨髄由来のマスト細胞をポ
ジティブコントロールとして用いた。半定量RT−PC
R分析の結果、幼若オリゴデンドログリアにおけるFc
Rγ mRNAの発現レベルは、マスト細胞とほぼ同程
度だった。 B:FcRγ発現を免疫細胞化学法により調べた結果を
示す図である。FcRγは、A2B5陽性オリゴデンド
ログリア幹細胞(a、b)、O4−(c、d)、及びO
1陽性幼若オリゴデンドログリア(e、f)で発現され
る。バー(図中に大きさの物さしとしてバーで示す):
15μm。 C:FcRγのウエスタンブロッティング分析を行った
ところ、野生型由来幼若オリゴデンドログリアではFc
Rγ発現が認められたが(方法5参照)、FcRγ欠損
マウスでは発現されなかった(Cell 76, 519, 1994)こ
とがわかった。
【0054】図2(参考写真2参照).インビボでのF
cRγ発現細胞の分布の様子を示す図である。脳の冠状
切片を示す。P0では、FcRγ発現細胞の分布は主に
SVZに集中しており(a)、P4でその分布は白質ま
でおよび(b)、P7で主に白質に局在する(c)。F
cRγ陽性細胞は、脳室帯のマウス−ムサシ−1(m−
Msi−1)陽性細胞層に直に隣接する脳室下帯内で観
察されたことから(J. Neurosci. 17, 8300, 1997)、
かかるFcRγ陽性細胞は神経幹細胞由来であると考え
られる(d、e)。FcRγ陽性細胞は成熟中枢神経系
においても保持され、その分布はP7のときと類似して
いる(P7における分布:FcRγ陽性細胞集団は白質
の脳室上部エリアに集中しており灰白質では殆ど認めら
れない(f))。LV:側脳室。cc:脳梁。vz:脳
室帯。svz:脳室下帯。CTX:大脳皮質。CG:帯
状束(cingulum)。CPu:尾状被殻。バー:50μm
(c)、25μm(e)、50μm(f)。
【0055】図3(参考写真3参照).インビボでのオ
リゴデンドログリア系統におけるFcRγ陽性細胞の検
出を示す図である。 A:P0脳の冠状切片を二重標識化する様子を示す。F
cRγ陽性細胞は主にSVZに分布していた(a)。殆
どのFcRγ陽性細胞は、アストログリア系統のGFA
P陽性細胞の分布と重複しないように分布していた
(b)。ミクログリア系統のOx−42陽性細胞の分布
は、FcRγ陽性細胞の分布とは異なっていた(c)。
このことから、かかる日齢(P0)のFcRγ陽性細胞
は、オリゴデンドログリア系統由来のものが優勢である
ことがわかる。b図は、a図(枠内)を拡大したもので
ある。o:オリゴデンドログリア細胞。a:アストログ
リア細胞。m:ミクログリア細胞。バー:50μm
(a、c)、25μm(b)。 B:P7脳の冠状切片の二重標識化を示す図である。写
真は前有髄化段階の脳梁を撮ったものである。FcRγ
及びFynは、細胞表面において共在していた(矢頭;
a)。MAGは、FcRγ陽性オリゴデンドログリアに
おいて共標識された(矢頭)が、その発現は端部突起に
強く現れる傾向がみられた(b)。バー:25μm。
【0056】C:成熟中枢神経系に存在するFcRγ陽
性細胞を同定する様子を示した図である。FcRγ及び
MBP双方に対し陽性なオリゴデンドログリア細胞が、
白質内にて観察されたが、これは新生期中枢神経系での
観察結果と一致している(a)。一方、成熟SVZ内に
て優勢なGFAP陽性細胞の小サブ集団もまたFcRγ
陽性を示した(b)。バー:25μm。 D:一続きの切片を用いて分析したところ、FcRγ
(a)、Fyn(b)、及びMBP(c)のいずれとも
同様の発現パターンを示した(矢印及び矢頭)。P7の
脳梁、及び脳弓の一部の写真を示した。FcRγやMB
Pは発現されなかったにも関わらず、Fynは軸索でも
発現されたことは特筆に値する(Nature 366, 742, 199
4)。バー:50μm。
【0057】図4(参考写真4参照).インビトロでの
FcRγシグナルの活性化の様子を示す図である。 A:抗FcRγ抗体と24時間交差結合させた結果、O
PCには、よく発達した突起があらわれ、劇的な形態上
の変化をみせた(b)が、FcRγシグナルの活性化な
しには、かかる変化は認められなかった(a)。バー:
35μm。 B:MBP及びFynの発現を調べるウエスタンブロッ
ティング分析の結果を示す図である。A図に示した細胞
を溶解させて分析した。MBP、中でも特にエクソン2
含有アイソフォーム(17.0kD及び21.5kD)
及びFynは、抗FcRγ抗体による活性化がない場合
(対照(ctrl);1列目)に比し、かかる抗体により活
性化されたときにOPC内で増加した(FcRγ;2列
目)。IgG Fc受容体を介したIgG2b(IgG
2b;3列目)による刺激によってもMBP発現は増加
したが、間接的な刺激プロセスを反映してFynは刺激
を受けなかった。OPC及び既分化オリゴデンドログリ
アの双方に対してのマーカーであるCNPaseを負荷
対照として用いた。 C:FcRγ欠損マウスから得られたOPCは、IgG
2bによる刺激を受けなかった(58;a、bを比
較)。このことから刺激(A)によりもたらされたOP
Cにおける変化は、細胞内においてFcRγの発現に依
存することを示唆する。バー:35μm。
【0058】図5(参考写真5参照).FcRγ欠損マ
ウス、Fyn欠損マウス、及びMBP欠損マウスを比較
対照した結果を示す図である。 A:P10脳の冠状切片の様子を示す図である。ミエリ
ン形態及び有髄化オリゴデンドログリアが認識できる帯
状束の白質を示した。a−d、b−e、及びc−fは、
互いに隣接する切片である。MBP分布は、FcRγ欠
損マウス(b)及びFyn欠損マウス(c)において制
限され、FcRγ欠損マウス(b)より、Fyn欠損マ
ウス(c)においてさらに厳しく制限されていた。MA
G陽性幼若オリゴデンドログリア(矢頭)は、三種類の
変異マウス全てにおいて制限され、中でもMBP欠損マ
ウスで最も強く制限され(g)、またFcRγ欠損マウ
ス(e)よりFyn欠損マウス(f)において、より強
く制限されていた。以上の観察結果を総合すると、有髄
化オリゴデンドログリア内におけるFcRγ−Fyn−
MBPカスケードの存在が考えられる。バー:100μ
m。
【0059】B:ミエリン画分のMBPをウエスタンブ
ロッティング分析にかけた結果を示す図である。成熟マ
ウス(b)と同様に、P10(a)のFyn欠損マウス
及びFcRγ欠損マウスでもMBP発現が減少してい
た。成熟中枢神経系では、Fyn欠損マウス及びFcR
γ欠損マウスにおける全MBP量がそれぞれ40.3%
及び60.8%まで減少していた。エクソン2含有MB
Pアイソフォーム(17.0kD及び21.5kD)
は、他のアイソフォーム類に比し、より一層減少してお
り、Fyn欠損成熟マウスでは31.9%、またFcR
γ欠損成熟マウスでは40.0%まで減少していた。か
かる欠損状況は、インビトロでの結果と合致していた
(図4)。 C:P10の変異マウス及び野生型マウスにおける幼若
オリゴデンドログリアの移動を統計的に分析した結果を
示す図である(方法12参照)。各冠状切片において、
P10までに脳梁から大脳皮質に移動したMAG陽性幼
若オリゴデンドログリアを計数し、統計分析を行った。
その数(各切片毎の細胞数)は、FcRγ欠損マウスで
は野生型の約44%、Fyn欠損マウスでは野生型の約
25%、またMBP欠損マウスでは野生型の約12%だ
った。この統計結果は、MBP発現レベルと正比例して
おり、エクソン2含有MBPアイソフォームがミエリン
形成に重要であることを示唆している。
【0060】図6(参考写真6参照).FcRγ非存在
下における脱髄の様子を示す図である。 A:視神経においてFcRγを、OPCのマーカーであ
るPDGF−αRと共染色した様子を示す(Developmen
t 115, 535, 1992)(矢頭;a)。P10のFcRγ欠
損マウス(c、FcRγ―/―)と野生型マウス(b、W
ild)の間に、PDGF−αR陽性細胞分布に関する有
意の差はみられなかった。SVZと白質の境界を示す。
かかる観察結果からP10での初期ミエリン形成におけ
る欠損(図5)が、グリア細胞形成不全によるものでは
なく、主にミエリン形成不全によるものであることが考
えられる。バー:40μm。 B:発達後期におけるMAG陽性幼若オリゴデンドログ
リアの統計分析(Neurosci. Lett. 298, 163, 2001、方
法12参照)からは、P50とP90の細胞数に有意の
差は認められなかった(a)。しかしこの時点におい
て、MBPだけでなくミエリン異常が明白になっている
(図5)。P50の脳梁におけるPLPを免疫組織化学
法により検出したところ、野生型(b)に比し、FcR
γ欠損マウス(c)で顕著に減少していた。バー:40
μm。 C:P67FcRγ欠損マウス(b)の脳梁後部領域で
は、野生型(a)に比べ、低髄化が甚大に生じているこ
とが電子顕微鏡による観察で明らかになった。FcRγ
欠損マウスの脳梁前部領域では、野生型(c)に比べ低
髄化軸策内で軸策が大幅に腫脹(アステリスク)してい
ることが認められた(d)。バー:2μm(b)。50
0nm(d)。
【0061】図7(参考写真7参照).オリゴデンドロ
グリア内で、FcRγと、FcγRI/III及びCD4
5との共発現の様子を示す図である。 A:幼若オリゴデンドログリアのRT−PCR分析結果
を示す図である(方法5参照)。FcεRIのα鎖は検
出されなかったが、FcγRI/IIIのα鎖は検出され
たことから、IgG Fc受容体が、FcRγのパート
ナーの一つと考えられる。幼若オリゴデンドログリアに
おけるmRNA発現量が、骨髄由来マスト細胞のおよそ
1.8倍(FcγRI)及び0.8倍(FcγRIII)
であることが、半定量RT−PCRの結果からわかっ
た。 B:オリゴデンドログリアにおけるCD45発現の様子
を示す図である。MAG陽性細胞内におけるその発現で
示されるように、CD45はオリゴデンドログリアにて
発現される(c)(矢頭)。P10のオリゴデンドログ
リアにおける有髄化の初期プロセスにおいてCD45
は、Fynと共発現される(矢頭;b)。またCD45
は、成長過程の髄鞘(矢頭;d)及び成熟中枢神経系
(矢頭;a)においてもFcRγと共発現される。写真
は全て中枢神経系の白質で撮ったものである(aは白質
と成熟SVZの境界、bとdは脳梁、cは前側横連神
経)。バー:25μm。 C:CD45は、培養幼若オリゴデンドログリアからも
検出されたが(方法5参照)、アストロサイトからは検
出されなかったことがフローサイトメトリーからわかっ
た。これらの結果は、前述のカスケードの調節にCD4
5が関与していることを示唆している。
【0062】図8.前述のミエリン形成機構を説明する
図である。IgG等の細胞外シグナルが、IgG Fc
受容体(FcγRI/RIII)との会合を介してFcR
γを誘発する。CD45がFynを活性化し、次にFy
nをチロシンキナーゼとして、FcRγのITAMリン
酸化が進行し、その結果MBP、特にエクソン2含有ア
イソフォームの発現が刺激される。本発明者らが報告
(Neurosci. Lett. 298, 163, 2001)しているように、
MBPは、MAG発現の調節に関わっている。FcγR
sの多型性(Neurology 52, 1771, 1999)及びCD45
の変異(Nat. Genet. 26, 495, 2000)が、MS患者の
一部に関係していることが報告されている。脱髄疾患に
対するIVIg療法の有効性を、このモデルを用い説明
することができる(Arch. Neurol. 56, 661, 1999)。
FcRγを直接刺激(図4)した結果からは、再有髄化
を増強し得る可能性が考えられる。
【0063】
【発明の効果】本発明により、シグナル分子がミエリン
形成に関与する機構を解明することにより、すなわち、
免疫グロブリンFc受容体のγサブユニット(FcR
γ)、Fynチロキシナーゼ(Fyn)、ミエリン塩基
性タンパク質(MBP)が、ミエリン形成シグナル分子
として働くこと、及びこれらのシグナル分子が、FcR
γ−Fyn−MBPからなるシグナルカスケードとして
ミエリン形成に関与していることを解明したことによっ
て、該シグナル分子を欠損させ、ミエリン発達障害を起
した非ヒト動物を作製することを可能とした。また、該
シグナル分子を欠失したミエリン発達障害モデル非ヒト
動物が、多発性硬化症(MS)等の脱髄疾患を発症する
ことから、このミエリン発達障害モデル非ヒト動物を用
いて、ミエリン発達調節物質及び脱髄疾患の治療薬をス
クリーニングすることを可能とする。
【0064】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> JAPAN SCIENCE AND TECHNOLOGY CORPORATION <120> Model non-human animals with development disorder of myelin <130> A031P83 <140> <141> <160> 14 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 1 ctcaagatcc aggtccga 18 <210> 2 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 2 ctactggggt ggtttttcat 20 <210> 3 <211> 19 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 3 aggcacagag ctttggtct 19 <210> 4 <211> 19 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 4 ctggtaaagg ccatcgtgc 19 <210> 5 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 5 aaatgaactc tactactaaa 20 <210> 6 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 6 cttttactac agcaattctg aa 22 <210> 7 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 7 gaacagccgt tcagatct 18 <210> 8 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 8 ttcgtctcac agttcagg 18 <210> 9 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 9 ctaaggtgcc atagctgcag g 21 <210> 10 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 10 ctgattgaca gggacttcct c 21 <210> 11 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 11 gtgaggtatc atcactacag t 21 <210> 12 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 12 ggttctggta atcatgctct g 21 <210> 13 <211> 18 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Sense primer <400> 13 tggtcgtcga caacggct 18 <210> 14 <211> 20 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:Antisense primer <400> 14 tttacggatg tcaacgtcac 20
【図面の簡単な説明】
【図1】インビトロでのOPC(オリゴデンドログリア
前駆体細胞)及び幼若オリゴデンドログリアにおけるF
cRγ発現の様子を示す図である。
【図2】インビボでのFcRγ発現細胞の分布の様子を
示す図である。脳の冠状切片を示す。
【図3】インビボでのオリゴデンドログリア系統におけ
るFcRγ陽性細胞の検出を示す図である。
【図4】インビトロでのFcRγシグナルの活性化の様
子を示す図である。
【図5】FcRγ欠損マウス、Fyn欠損マウス、及び
MBP欠損マウスを比較対照した結果を示す図である。
【図6】FcRγ非存在下における脱髄の様子を示す図
である。
【図7】オリゴデンドログリア内で、FcRγと、Fc
γRI/III及びCD45との共発現の様子を示す図で
ある。
【図8】シグナル分子の関与とミエリン形成機構を説明
する図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/02 ZNA G01N 33/15 Z G01N 33/15 33/50 Z 33/50 A61K 37/48

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オリゴデンドログリアにおけるミエリン
    形成シグナル分子の欠損により、ミエリン形成が阻害さ
    れ、脱髄疾患を発症したことを特徴とするミエリン発達
    障害モデル非ヒト動物。
  2. 【請求項2】 脱髄疾患が、多発性硬化症(MS)であ
    ることを特徴とする請求項1記載のミエリン発達障害モ
    デル非ヒト動物。
  3. 【請求項3】 ミエリン形成シグナル分子の欠損が、免
    疫グロブリンFc受容体のγサブユニット(FcRγ)
    及び/又はFynチロキシナーゼ(Fyn)のシグナル
    分子の欠損であることを特徴とする請求項1又は2記載
    のミエリン発達障害モデル非ヒト動物。
  4. 【請求項4】 ミエリン形成シグナル分子の欠損が、ミ
    エリン形成を調節するシグナルカスケードの阻害である
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のミエリ
    ン発達障害モデル非ヒト動物。
  5. 【請求項5】 ミエリン形成を調節するシグナルカスケ
    ードの阻害が、免疫グロブリンFc受容体のγサブユニ
    ット(FcRγ)−Fynチロキシナーゼ(Fyn)−
    ミエリン塩基性タンパク質(MBP)からなるシグナル
    カスケードの阻害であることを特徴とする請求項4記載
    のミエリン発達障害モデル非ヒト動物。
  6. 【請求項6】 非ヒト動物がマウスであることを特徴と
    する請求項1〜5のいずれか記載のミエリン発達障害モ
    デル非ヒト動物。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか記載のミエリン
    発達障害モデル非ヒト動物に被検物質を投与すること又
    は該動物由来の組織、器官若しくは細胞を被検物質と接
    触させることを特徴とするミエリン発達調節物質のスク
    リーニング方法。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか記載のミエリン
    発達障害モデル非ヒト動物に被検物質を投与すること又
    は該動物由来の組織、器官若しくは細胞を被検物質と接
    触させ、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の発現又
    はミエリンの形成を測定又は評価することを特徴とする
    請求項7記載のミエリン発達調節物質のスクリーニング
    方法。
  9. 【請求項9】 ミエリン塩基性タンパク質(MBP)の
    発現又はミエリンの形成の測定又は評価を、ミエリン発
    達障害モデル非ヒト動物の場合と野生型非ヒト動物の場
    合を比較・評価することにより行うことを特徴とする請
    求項8記載のミエリン発達調節物質のスクリーニング方
    法。
  10. 【請求項10】 非ヒト動物がマウスであることを特徴
    とする請求項7〜9のいずれか記載のミエリン発達調節
    物質のスクリーニング方法。
  11. 【請求項11】 請求項7〜10のいずれか記載のミエ
    リン発達調節物質のスクリーニング方法により得られる
    ミエリン発達調節物質。
  12. 【請求項12】 請求項1〜6のいずれか記載のミエリ
    ン発達障害モデル非ヒト動物を、脱髄疾患の治療薬のス
    クリーニングに使用することを特徴とする脱髄疾患治療
    薬のスクリーニング方法。
  13. 【請求項13】 脱髄疾患治療薬が、多発性硬化症(M
    S)の治療薬であることを特徴とする請求項12記載の
    脱髄疾患治療薬のスクリーニング方法。
  14. 【請求項14】 請求項12又は13記載の脱髄疾患治
    療薬のスクリーニング方法により得られる脱髄疾患治療
    薬。
  15. 【請求項15】 ミエリン形成シグナル分子を有効成分
    とすることを特徴とする脱髄疾患治療薬。
  16. 【請求項16】 ミエリン形成シグナル分子が、免疫グ
    ロブリンFc受容体のγサブユニット(FcRγ)及び
    /又はFynチロキシナーゼ(Fyn)のシグナル分子
    であることを特徴とする請求項15記載の脱髄疾患治療
    薬。
  17. 【請求項17】 免疫グロブリンIgGからなる静脈内
    免疫グロブリン療法用脱髄疾患治療薬。
  18. 【請求項18】 脱髄疾患が、多発性硬化症(MS)で
    あることを特徴とする請求項15〜17のいずれか記載
    の脱髄疾患治療薬。
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