JP2003068656A - プラズマ源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

プラズマ源、薄膜形成装置及び薄膜形成方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プラズマ中の生成イオンが基板上の成膜
物質に照射されないように構成された高周波プラズマ
源、このプラズマ源を備えた薄膜形成装置、及びこの装
置を用いる薄膜形成方法の提供。 【解決手段】 内部に導体が設置されたプラズマ容器か
らなり、この導体にマイナス電位を与えることによりプ
ラズマ中に生成されたイオンがプラズマ容器内に閉じ込
められるようにする。導体は、生成プラズマを真空室内
へ噴出するための噴出口近傍に設置されており、また、
金属からなるバイアス電極である。このプラズマ源を薄
膜形成装置に適用する。この装置を用いて、イオン照射
損傷のない成膜物質と反応ガスプラズマとの反応により
薄膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマ源、薄膜
形成装置及び薄膜形成方法に関し、特に、酸化物膜や窒
化物膜等の薄膜を形成する装置に適用される高周波プラ
ズマ源、このプラズマ源を備えた化合物薄膜形成装置及
びこの装置を用いる化合物薄膜形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、真空排気された真空室内に、固体
金属からなる成膜物質を加熱して真空室内へその蒸気を
供給するための蒸発源と、供給された成膜物質と反応せ
しめる酸素ガスや窒素ガスのような反応ガスを高周波等
で励起することによりプラズマ化して真空室内に噴出せ
しめるように構成されたプラズマ源と、反応ガスと成膜
物質との反応により化合物薄膜が形成される基板とを設
けた化合物薄膜形成装置が知られている。この装置は、
基板表面に向けて成膜物質の蒸気を供給し、基板上で成
膜物質と反応ガスのプラズマとを反応させることにより
酸化物や窒化物等の薄膜を形成するように構成されてい
る。
【0003】上記高周波プラズマ源の一例は、図1
(A)及び(B)に示すようなプラズマ容器からなり、
金属製のシールド板1で囲った絶縁体からなる放電用容
器2の下部に酸素ガスや窒素ガスの反応ガスを導入する
導入口3が設けられ、この導入口から放電用容器2内に
導入された反応ガスを、放電用容器2の周囲に設けた高
周波コイル4で励起してプラズマ化し、生成したプラズ
マを放電用容器2の蓋5に形成された噴出口6から真空
室内の基板に向けて噴出し、基板上で蒸発源から供給さ
れた成膜物質と反応させ成膜するように構成されてい
る。噴出口6の口径は0.1mm〜2.5mm程度の小
さなものであり、高品質の化合物薄膜を形成するため
に、真空室内を10−6Torr以下の高真空に保った
まま放電用容器2内の圧力を放電に必要な10−2〜1
−3Torrの低真空に維持できるようになってい
る。
【0004】通常、プラズマ中にはイオンが生成し、生
成したイオンが成膜物質に照射されると、成膜物質にイ
オン照射損傷が生じ、その結果、得られた化合物薄膜中
に結晶欠陥等の損傷が導入される。そのため、高品質の
酸化物膜又は窒化物膜を基板上に成膜するためには、プ
ラズマ中のイオンが成膜物質に照射されないようにする
ことが不可欠であった。そこで、図1(A)及び(B)
に示すように、プラズマ容器の先端部分でプラズマ噴出
口6の近傍に平行平板型の電極7を2枚設置し、この電
極によってプラズマ噴出口の近傍に電場を形成し、噴出
されたプラズマ中のイオンを偏向させて、イオンが基板
上の成膜物質に照射されるのを防いでいる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来
のプラズマ源では、プラズマ噴出口から噴出するプラズ
マの拡がり角が大きいため、平行平板型の電極を設置し
たとしても、基板上の成膜物質に照射されるイオンを完
全になくすというのは困難であった。本発明の課題は、
上記従来技術の問題点を解決することにあり、プラズマ
中の生成イオンが基板上に供給される成膜物質に照射さ
れないようにして、イオン照射損傷のない成膜物質を得
ることができるように構成された高周波プラズマ源、こ
のプラズマ源を備えた化合物薄膜形成装置、及びこの装
置を用いる化合物薄膜形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の化合物薄膜形成
用高周波プラズマ源は、成膜物質と反応する反応ガスの
プラズマを生成する高周波プラズマ源であって、内部に
導体が設置されたプラズマ容器からなり、この導体にマ
イナス電位を与えることによりプラズマ中に生成された
イオンがプラズマ容器内に閉じ込められるように構成さ
れている。このプラズマ源は化合物薄膜形成装置に適用
される。導体は、プラズマ容器中であればどこに設けて
もよいが、電位の印加された導体の電界の影響を受けて
イオンの通過を阻止できる位置、例えば、生成プラズマ
を真空室内へ噴出するための噴出口近傍に設置され、ま
た、金属からなる導体(金属からなるバイアス電極)で
あることが望ましい。導体は、導電性の物質であれば特
に制限はなく、例えば、ドープされたパイロリティック
ボロンナイトライド(PBN)、Ta、Mo、W等のよ
うな導電性の物質からなるものであれば良い。
【0007】本発明の化合物薄膜形成装置は、真空室内
に、成膜物質の蒸発源と、該成膜物質と反応する反応ガ
スのプラズマを生成する高周波プラズマ源と、該反応ガ
スと成膜物質との反応により化合物薄膜が形成される基
板とを備えており、該高周波プラズマ源として上記した
ように構成されたプラズマ源を設け、そして、該基板上
に、該プラズマ源から噴出された反応ガスのプラズマと
蒸発源から供給された成膜物質との反応によりイオン照
射損傷のない化合物薄膜が形成されるように構成されて
いる。
【0008】本発明の化合物薄膜形成方法は、上記化合
物薄膜形成装置を用いて行われる。すなわち、真空中
で、基板上に、蒸発源から供給した成膜物質と高周波プ
ラズマ源から供給した反応ガスのプラズマとの反応によ
り化合物薄膜を形成する方法であって、該プラズマ源で
反応ガスのプラズマを生成する際、プラズマ容器内に設
置された導体にマイナス電位を与えて生成プラズマ中の
イオンを該プラズマ容器内に閉じ込め、イオンを含まな
い反応ガスのプラズマを該プラズマ源から基板の表面に
向かって噴出し、そして、基板上で、該プラズマ源から
噴出された反応ガスのプラズマと蒸発源から供給された
成膜物質との反応によりイオン照射損傷のない化合物薄
膜を形成することからなる。使用され得る成膜物質とし
ては、特に制限されないが、例えば、ZnO、GaN等
をあげることができ、また、反応ガスとしては、例え
ば、酸素ガス、窒素ガス等をあげることができる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明
する。図2に、本発明の高周波プラズマ源の一例である
プラズマ源を示す。図2中の参照符号は、図1の場合と
同じ構成要素については同じ符号を用いる。すなわち、
本実施例の高周波プラズマ源では、金属製シールド板
1、放電用容器2、ガス導入口3、高周波コイル4、放
電用容器の蓋5、蓋5に形成されたプラズマ噴出口6を
備えた高周波プラズマ源に、さらに、プラズマ噴出口6
の近傍、すなわち蓋5の上流側に金属(Ta)製のバイ
アス電極8及び下流側にアース電極9がそれぞれ蓋に接
して設けられている。バイアス電極及びアース電極には
スリットが設けられ、プラズマが通過できるようになっ
ている。
【0010】上記高周波プラズマ源に窒素ガスを3sc
cm流した状態で200Wで放電させたときの発光スペ
クトルを分光光度計で測定し、その結果を図3(A)及
び図3(B)に示す。図3(A)は、バイアス電極8を
電気的に浮かした状態、すなわち、従来の高周波プラズ
マ源の場合の発光スペクトルを示す。このスペクトルか
ら、生成プラズマ中には、励起N分子、Nイオン、
N原子が生成していることがわかる。これに対し、図3
(B)は、バイアス電極8に−100Vを印加した状態
の発光スペクトルを示す。このスペクトルは、図3
(A)に示したバイアス電極8を電気的に浮かした状態
の場合と全く同じであり、バイアス電極に電位を与えて
も、生成するプラズマの状態には全く影響しないことが
わかる。すなわち、プラズマ容器内に生成したプラズマ
の状態はマイナス電位を与えても与えなくとも同じであ
った。
【0011】上記した各放電状態において、プラズマ噴
出口6から20cm離した位置にファラデーカップを置
き、噴出されたプラズマ中のイオン電流密度を測定した
ところ、バイアス電極8を電気的に浮かした状態では5
X10−8A/cmであったのに対し、バイアス電極
8に−100Vを印加した状態では電流密度は測定限界
(1X10−10A/cm)以下であった。また、バ
イアス電極8に−500Vを印加した場合も結果は同様
であった。
【0012】さらに、900℃に加熱したサファイア
(0001)基板上に、上に述べた各条件で放電させて
生成した窒素プラズマを照射し、噴出口6から噴出せし
めたプラズマ中にイオンが含まれているかどうかを調べ
た。この結果を図4(A)及び(B)に示す。図4
(A)はバイアス電極8を電気的に浮かした状態で放電
させ(200W、3sccm)、噴出したプラズマを9
00℃に加熱されたサファイア基板上に30分照射した
後の反射高速電子回折(RHEED)パターンを示す。
この図から明らかなように、サファイア基板のパターン
と共にAlNのパターンも観察された。一般に、窒素イ
オンを900℃に加熱されたサファイア基板に照射する
と、AlNが形成されることは良く知られている。この
ことから、従来の高周波プラズマ源から噴出するプラズ
マ中にはイオンも含まれていることがわかる。これに対
し、図4(B)に、バイアス電極8に−100Vを印加
した状態で放電させ(200W、3sccm)、噴出し
たプラズマを900℃に加熱されたサファイア基板に3
0分照射した後の反射高速電子回折パターンを示す。こ
の場合、図4(A)と異なり、AlNのパターンは観察
されず、サファイア基板のパターンのみが観察された。
このことから、バイアス電極8に−100Vを印加した
状態で放電させた場合には、噴出したプラズマ中にイオ
ンは含まれていないことがわかる。また、バイアス電極
8に−500Vを印加した場合も結果は同様であった。
【0013】上記したように構成されたプラズマ源を設
けた公知の化合物薄膜形成装置を用いて、成膜物質とし
てGa、反応ガスとして窒素ガスを供給し、通常の条件
でGaN薄膜を形成した。得られた薄膜には結晶欠陥等
の損傷は導入されていなかった。
【0014】以上説明したように、プラズマ容器内でプ
ラズマ噴出口近傍にバイアス電極を設置し、この電極に
マイナス電位を与えることにより、噴出するプラズマ中
に含まれるイオンが抑制されるので、イオンが噴出口を
通過するのを阻止し得たことが確認できた。印加電圧と
しては、−100V〜−500Vであれば良い。電圧が
低くなると電子のエネルギーが大きくなり、試料に損傷
を与える可能性があり、また、電圧が高くなるとイオン
が照射される可能性がある。−200V程度が望ましい
電圧である。また、バイアス電極としてTaからなる金
属板を用いたが、ドープされたパイロリティックボロン
ナイトライド(PBN)等のような導電性物質の場合に
も同様な傾向が得られる。
【0015】
【発明の効果】本発明の高周波プラズマ源によれば、プ
ラズマ容器内に導体(例えば、金属からなるバイアス電
極)を設置し、この導体にマイナス電位を与えることに
より、プラズマ中に含まれるイオンをプラズマ容器内に
完全に閉じ込めることができるため、従来の偏向板を用
いたプラズマ源の場合と異なり、成膜物質に対するイオ
ン照射損傷を完全に抑えることができる。そのため、こ
のプラズマ源を備えた化合物薄膜形成装置を用いれば、
結晶欠陥等の損傷がない高品質の化合物薄膜を形成する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)従来の高周波プラズマ源の概略の構成を
示す側面図。 (B)図1(A)に示す高周波プラズマ源の上面図。
【図2】(A)本発明の高周波プラズマ源の概略の構成
を示す側面図。 (B)図2(A)に示す高周波プラズマ源の上面図。
【図3】(A)従来の高周波プラズマ源を用いた場合の
発光スペクトル図。 (B)本発明の高周波プラズマ源を用いた場合の発光ス
ペクトル図。
【図4】(A)従来の高周波プラズマ源を用いた場合の
基板表面における反射高速電子回折(RHEED)パタ
ーンを示す図。 (B)本発明の高周波プラズマ源を用いた場合の基板表
面における反射高速電子回折パターンを示す図。
【符号の説明】
1 シールド板 2 放電用容器 3 ガス導入口 4 高周波コイ
ル 5 蓋 6 プラズマ噴
出口 7 平行平板型電極 8 バイアス電
極 9 アース電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K029 BA49 BA58 CA04 DD02 DE02 5F045 AA08 AB14 AC15 AD13 AF09 DP03 EH06 EH13 EH18 EH20 EK02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化合物薄膜形成装置に適用される、成膜
    物質と反応する反応ガスのプラズマを生成する高周波プ
    ラズマ源であって、内部に導体が設置されたプラズマ容
    器からなり、この導体にマイナス電位を与えることによ
    りプラズマ中に生成されたイオンがプラズマ容器内に閉
    じ込められるように構成されていることを特徴とする化
    合物薄膜形成用高周波プラズマ源。
  2. 【請求項2】 前記導体は生成プラズマを真空室内へ噴
    出するための噴出口近傍に設置されていることを特徴と
    する請求項1記載の化合物薄膜形成用高周波プラズマ
    源。
  3. 【請求項3】 前記導体は金属からなるバイアス電極で
    あることを特徴とする請求項1又は2記載の化合物薄膜
    形成用高周波プラズマ源。
  4. 【請求項4】 真空室内に、成膜物質の蒸発源と、該成
    膜物質と反応する反応ガスのプラズマを生成する高周波
    プラズマ源と、該反応ガスと成膜物質との反応により化
    合物薄膜が形成される基板とを備えた化合物薄膜形成装
    置であって、該高周波プラズマ源として、内部に導体が
    設置されたプラズマ容器からなり、この導体にマイナス
    電位を与えることによりプラズマ中に生成されたイオン
    がプラズマ容器内に閉じ込められるように構成されたプ
    ラズマ源を用い、そして、該基板上に、該プラズマ源か
    ら噴出された反応ガスのプラズマと蒸発源から供給され
    た成膜物質との反応によりイオン照射損傷のない化合物
    薄膜が形成されるように構成されていることを特徴とす
    る化合物薄膜形成装置。
  5. 【請求項5】 前記導体は生成プラズマを真空室内へ噴
    出するための噴出口近傍に設置され、かつ、該導体が金
    属からなるバイアス電極であることを特徴とする請求項
    4記載の化合物薄膜形成装置。
  6. 【請求項6】 真空中で、基板上に、蒸発源から供給し
    た成膜物質と高周波プラズマ源から供給した反応ガスの
    プラズマとの反応により化合物薄膜を形成する化合物薄
    膜形成方法であって、該プラズマ源で反応ガスのプラズ
    マを生成する際、プラズマ容器内に設置された導体にマ
    イナス電位を与えて生成プラズマ中のイオンを該プラズ
    マ容器内に閉じ込め、イオンを含まない反応ガスのプラ
    ズマを該プラズマ源から基板の表面に向かって噴出し、
    そして、該基板上で、該プラズマ源から噴出された反応
    ガスのプラズマと蒸発源から供給された成膜物質との反
    応によりイオン照射損傷のない化合物薄膜を形成するこ
    とを特徴とする化合物薄膜形成方法。
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