JP2003065432A - ロックアップクラッチの制御装置 - Google Patents

ロックアップクラッチの制御装置

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JP2003065432A
JP2003065432A JP2001255730A JP2001255730A JP2003065432A JP 2003065432 A JP2003065432 A JP 2003065432A JP 2001255730 A JP2001255730 A JP 2001255730A JP 2001255730 A JP2001255730 A JP 2001255730A JP 2003065432 A JP2003065432 A JP 2003065432A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 締結状態にあるトルクコンバータのロックア
ップクラッチをゆっくりと減速スリップさせる場合に好
適な学習補正制御の提供を課題とする。 【解決手段】 コントロールユニット100は、減速時
にはデューティソレノイドバルブ84を介してロックア
ップクラッチをスリップ状態に制御すると共に、該減速
スリップ制御においてロックアップクラッチのスリップ
量が目標スリップ量に収束するようにロックアップクラ
ッチをフィードバック制御する。コントロールユニット
100は、フィードバック制御が開始してからロックア
ップクラッチがスリップし始めるまでの時間が所定の目
標時間となるようにフィードバック制御開始時の制御初
期値を学習補正する。フィードバック制御の開始時には
ロックアップクラッチはスリップ状態になく、フィード
バック制御によって初めてスリップすることを前提とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、変速歯車機構と共
に自動変速機を構成するトルクコンバータに備えられる
ロックアップクラッチの制御装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】一般に、車両に搭載される自動変速機
は、変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ
等の複数の摩擦締結要素の選択的作動により切り換えて
所定の変速段に自動的に変速するように構成されたもの
であるが、エンジンと変速歯車機構との間に介設される
トルクコンバータに、エンジン側の入力軸と自動変速機
側の出力軸とを連結・分断するロックアップクラッチが
備えられることがある。このロックアップクラッチは車
速やエンジン負荷(例えばスロットル開度で代表され
る)等の車両の運転状態に応じて予め設定された制御特
性に従ってその締結状態が制御される。
【0003】例えば、高負荷領域や低回転領域ではロッ
クアップクラッチは完全に解放され(コンバータ状
態)、トルク増大作用やショック・振動抑制作用等が発
揮される。また、低負荷領域や高回転領域ではロックア
ップクラッチは完全に締結され(ロックアップ状態)、
燃費の向上が図られる。一方、アクセルペダルの踏込み
が解除された車両の減速時(パワーオフ時)にはロック
アップクラッチはスリップ状態とされる(減速スリップ
制御)。これは、急制動によりタイヤがロックするよう
な場合にロックアップクラッチをすぐに解放してエンジ
ンストールを回避したり、エアコンのON・OFFの切
換え等によるエンジン側からの変動の伝達を抑制するた
めである。さらに、アクセルペダルが踏み込まれている
パワーオン時の比較的低負荷・低回転の領域においても
ロックアップクラッチをスリップ状態とし、燃費の向上
とショック・振動の抑制との両立を図ることもある。
【0004】一般に、減速スリップ制御においては、ロ
ックアップクラッチのスリップ量が所定の目標スリップ
量に収束するように該クラッチの締結力がフィードバッ
ク制御される。したがって、ロックアップ領域から減速
スリップ領域への移行時には、ロックアップクラッチの
締結力は、そのようなスリップ量のフィードバック制御
の開始時の初期値に低減される。この制御初期値はその
後のフィードバック制御の成り行きや成否を決定する重
要な因子の1つである。
【0005】日本国特許第2924624号は上記フィ
ードバック制御の初期値を学習補正することを教示す
る。それによれば、ロックアップクラッチの締結力を、
該クラッチ締結用油圧又は解放用油圧を生成するデュー
ティソレノイドバルブのデューティ率で制御するように
し、スリップ量フィードバック制御開始時の初期デュー
ティ率を該フィードバック制御中のデューティ率の変化
の挙動に基いて学習補正する。つまり、フィードバック
制御によってスリップ量が目標スリップ量に収束してい
く過程におけるデューティ率の変化をみて学習補正をす
るのである。
【0006】その際に、初期デューティ率は、フィード
バック制御中のデューティ率が大きくなる方向に変化す
るときは増大され、小さくなる方向に変化するときは減
少される。且つその変化の度合いが大きいときは大幅に
増大又は減少され、変化の度合いが小さいときは小幅に
増大又は減少される。その結果、初期デューティ率は、
学習補正により、スリップ量が最終的に目標スリップ量
に収束したときのデューティ率に近づけられる。
【0007】もっとも、この技術は、ロックアップ領域
から減速スリップ領域への移行時にはロックアップクラ
ッチをいったん解放状態として、エンジンのパワーオン
からパワーオフへの切換わりに伴うショックを吸収した
後、ロックアップクラッチを再び締結方向に制御して減
速スリップ制御に移行することを前提としている。つま
り、ロックアップ状態から減速スリップ状態への移行と
いっても、本質は、解放状態から減速スリップ状態への
移行なのである。それゆえ、この技術では、減速スリッ
プ制御において行われるフィードバック制御の開始以前
からトルクコンバータの入出力軸間に差回転が生じてお
り、したがって該フィードバック制御の開始時からロッ
クアップクラッチはスリップしている。
【0008】そして、デューティソレノイドバルブのデ
ューティ率は、フィードバック制御により、そのように
制御開始時から発生しているスリップ量を減らす(又は
増やす)方向に、すなわちロックアップクラッチの締結
力を高める(又は低める)方向に推移することになる。
よって、前述したように、学習補正の結果、フィードバ
ック制御開始時の初期デューティ率をスリップ量収束時
のデューティ率に近づけるということは、ロックアップ
クラッチが最初からスリップしているということを前提
に、そのスリップ量を、フィードバック制御開始時か
ら、最終的に収束すべき目標スリップ量に可及的に近づ
けようとすることである。つまり、フィードバック制御
開始時におけるロックアップクラッチのスリップ量が所
定の目標スリップ量となるように、フィードバック制御
中のデューティ率の変化に基いて、フィードバック制御
開始時の初期デューティ率を学習補正しているのであ
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】一方、このように、ロ
ックアップ領域から減速スリップ領域への移行時にロッ
クアップクラッチをいったん解放してしまうと、トルク
コンバータの入出力軸間の差回転が過大となるから、フ
ィードバック制御の開始時に初期デューティ率を出力し
たときにトルクコンバータの入出力軸間の差回転が大き
く変化してショックが発生したり、あるいはロックアッ
プクラッチのコントロールが不安定あるいは不能となっ
てフィードバック制御によりロックアップクラッチのス
リップ量を目標スリップ量へ収束させることが困難とな
る可能性がある。また、パワーオフの状態であるからエ
ンジン回転が大きく落ち込み、その結果燃料カットが中
断され又は実行できずに、燃費向上効果が損なわれるこ
とにもなる。
【0010】そこで、ロックアップ領域から減速スリッ
プ領域への移行時には、解放状態を経由させず、ロック
アップクラッチの締結力を完全締結状態からそのまま徐
々に低減させていって、ロックアップクラッチをスリッ
プさせないままフィードバック制御を開始し、そしてロ
ックアップクラッチをフィードバック制御によってなる
べくゆっくりと滑らせ始めるようにすることが考えられ
る。
【0011】しかし、その場合に、上記技術に係る学習
補正を適用すると、該技術が、フィードバック制御の開
始時からロックアップクラッチがスリップしていること
を前提とし、フィードバック制御の初期デューティ率
を、スリップ量が最終的に収束したときのデューティ率
に近づけようとするものであることから、ロックアップ
クラッチは、学習補正の結果、フィードバック制御の開
始と共に一気に滑り始めることになり、解放状態を経由
させたときと同様、その後のロックアップクラッチのコ
ントロール及びスリップ量のフィードバック制御が困難
となったり、エンジン回転落込み防止のために燃料カッ
トができなくなってしまう。
【0012】そこで、本発明は、減速スリップ制御にお
いて、締結状態にあるロックアップクラッチをスリップ
させないままフィードバック制御を開始し、該フィード
バック制御によって初めて徐々にゆっくりとロックアッ
プクラッチを滑らせるようにした場合に好適な上記フィ
ードバック制御の開始時初期値の学習補正を提供するこ
とを課題とする。以下、その他の課題を含め、本発明を
詳しく説明する。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、本願の請求項
1に記載の発明は、エンジンと変速歯車機構との間に介
設されたトルクコンバータの入出力軸間に設けられたロ
ックアップクラッチの締結状態を車両の運転状態に応じ
て設定された制御特性に従って制御するロックアップク
ラッチの制御装置であって、車両の減速時にロックアッ
プクラッチをスリップ状態に制御する減速スリップ制御
手段と、該減速スリップ制御においてロックアップクラ
ッチのスリップ量が目標スリップ量に収束するようにロ
ックアップクラッチをフィードバック制御するフィード
バック制御手段と、該フィードバック制御が開始してか
らロックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間
が所定の目標時間となるようにフィードバック制御開始
時の制御初期値を学習補正する学習補正手段とが備えら
れていることを特徴とする。
【0014】この発明によれば、スリップ量のフィード
バック制御の開始から該フィードバック制御の結果とし
て生じるロックアップクラッチのスリップ開始までの時
間が所定の目標時間に近づくようにフィードバック制御
の開始時初期値が学習補正される。つまり、フィードバ
ック制御の開始時にはロックアップクラッチはまだスリ
ップ状態になく、フィードバック制御によって初めてス
リップすることが前提とされている。よって、この本発
明に係る学習補正は、締結状態にあるロックアップクラ
ッチをスリップさせないままフィードバック制御を開始
し、該フィードバック制御によって初めて徐々にゆっく
りと滑らせる場合に好ましく適用でき、学習補正の結
果、ロックアップクラッチがフィードバック制御の開始
と共に急に一気に滑り始めるというようなことが回避さ
れる。
【0015】しかも、ロックアップクラッチがスリップ
し始めるまでの時間が所定の目標時間になるように学習
補正するから、ロックアップクラッチは、学習補正の結
果、フィードバック制御の開始から適正なタイミングで
スリップを開始するようになる。したがって、ロックア
ップクラッチは、スリップし始める際においても、スリ
ップ開始が早すぎて急に大きく滑り始めるというような
ことが免れ、ロックアップクラッチのコントロールやフ
ィードバック制御が困難となることが回避でき、また、
エンジン回転を維持したまま燃料カットを支障なく行な
うことができる。
【0016】次に、請求項2に記載の発明は、上記請求
項1に記載の発明において、トルクコンバータの出力回
転が低いときは高いときに比べて目標時間を長くする目
標時間変更手段が備えられていることを特徴とする。
【0017】この発明によれば、目標時間、ひいてはロ
ックアップクラッチのスリップ開始タイミングが、トル
クコンバータの出力軸回転数に応じて適正化される。そ
の場合に、出力軸回転数が低いときは高いときに比べて
エンブレ力が大きくなり、ロックアップクラッチが滑り
やすくなるから、スリップ開始が早すぎるとそれだけロ
ックアップクラッチが急に大きく滑り始める可能性が高
い。そこで、出力軸回転数が低いときは目標時間を長く
してロックアップクラッチが急に大きく滑り始める可能
性を低減するようにしたのである。
【0018】次に、請求項3に記載の発明は、上記請求
項1に記載の発明において、車両の減速時にエンジンの
燃料カットを行なう燃料カット手段が備えられ、学習補
正手段は、フィードバック制御の開始前に燃料カットが
行なわれたときは、フィードバック制御が開始してから
ロックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間に
基いて学習補正をし、フィードバック制御の開始後に燃
料カットが行われたときには、燃料カットが開始してか
らロックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間
に基いて学習補正をすることを特徴とする。
【0019】この発明によれば、スリップ量のフィード
バック制御の開始後に燃料カットが行われた場合の対策
(学習補正方法)が提供される。一般に、エンジンの燃
料カットが行われるとエンブレ力が大きくなり、ロック
アップクラッチが滑りやすくなって、エンジンの燃料カ
ットが行われない場合に比べてロックアップクラッチの
スリップ開始タイミングが早くなる。そこで、フィード
バック制御が開始した後にそのような大きな変動がロッ
クアップクラッチに及んだときには、その影響を排除
し、学習精度を高めるために、フィードバック制御開始
からの時間に代えて、そのような変動が起きてからの時
間、つまり燃料カット開始からの時間に基いて学習補正
をするようにしたのである。
【0020】なお、この場合、燃料カットが開始するま
でにすでにフィードバック制御が開始してからの時間を
計測していたのであれば、それをキャンセルして燃料カ
ットが開始してからの時間を改めて計測し直すようにす
るとよい。あるいは、フィードバック制御の開始後に燃
料カットが行われるのが分かっていれば、フィードバッ
ク制御が開始しても時間計測をせず、燃料カットが行わ
れるのを待つようにしてもよい。
【0021】さらに、燃料カットの影響を排除するため
には、フィードバック制御を開始する前に必ず先に燃料
カットを開始しておくことも一法である。その場合は、
学習補正は、常にフィードバック制御開始からの時間に
基いて行なうことができる。
【0022】次に、請求項4に記載の発明は、上記請求
項3に記載の発明において、学習補正のためにロックア
ップクラッチがスリップし始めるまでの時間を計測中に
エンジンを駆動源とする構成部品の作動状態が変化した
ときは学習補正を禁止する学習補正禁止手段が備えられ
ていることを特徴とする。
【0023】この発明によれば、学習補正のための時間
計測中に生じたエンブレ力の大きな変動に起因する誤学
習が防止される。一般に、エアコンやオルタネータ等の
エンジン補機の作動(ON)時は非作動(OFF)時に
比べてエンブレ力が大きくなり、ロックアップクラッチ
が滑りやすくなってスリップ開始タイミングが早くな
る。このように、エンジン補機の作動・非作動によって
エンブレ力が大きく相違し、ロックアップクラッチに対
する環境条件が大きく変動するから、学習補正のための
時間計測中にそのような大きな変動が生じたときには、
その計時データは採用するに足りないから、誤学習を防
止するために、学習補正そのものを禁止するようにした
のである。
【0024】次に、請求項5に記載の発明は、上記請求
項1から4のいずれかに記載の発明において、学習補正
手段は、エンジンを駆動源とする構成部品の作動状態の
区分に従って学習補正をすることを特徴とする。
【0025】この発明によっても、学習精度の向上が図
られる。上記したように、エンジン補機の作動・非作動
によってエンブレ力が大きく相違し、ロックアップクラ
ッチに対する環境条件が大きく変動する。そこで、エン
ジン補機の作動・非作動に起因するそのような環境条件
の大きな違いを考慮し、学習補正値をより緻密に適正化
するために、エンジン補機の作動状態毎に区別して学習
補正をするようにしたのである。
【0026】次に、請求項6に記載の発明は、上記請求
項1から5のいずれかに記載の発明において、トルクコ
ンバータに供給される油量を判定する油量判定手段と、
該供給油量が所定量より少ないときは学習補正を禁止す
る第2の学習補正禁止手段とが備えられていることを特
徴とする。
【0027】この発明によっても、誤学習の防止が図ら
れる。一般に、トルクコンバータへの作動油の供給量が
少ないと、ロックアップクラッチに作用する締結用油圧
や解放用油圧等の制御油圧一般が総じて低くなり、ロッ
クアップクラッチを制御するための力が確保できず不足
する。すると、ロックアップクラッチやトルクコンバー
タ等の固体差がロックアップクラッチの動作のバラツキ
に対して与える影響が顕著となる。そこで、トルクコン
バータに供給される油量・油圧が低いときは、その学習
補正データはバラツキが大きく信用するに足りないか
ら、誤学習を防止するために、学習補正そのものを禁止
するようにしたのである。
【0028】なお、トルクコンバータへの供給油量が少
ないときとは、例えば作動油の粘性が低下する高油温時
や、オイルポンプの作動油吐出量が低下する低回転時
(低タービン回転時)あるいは低車速時等である。以
下、実施の形態を通して、本発明をさらに詳しく説明す
る。
【0029】
【発明の実施の形態】[全体構成]図1に示すように、
本実施の形態に係る自動変速機10は、トルクコンバー
タ20と2つの遊星歯車機構30,40とを有する。ト
ルクコンバータ20はエンジン1の出力をエンジン出力
軸(トルクコンバータ20の入力軸)2を介して入力
し、タービン軸(トルクコンバータ20の出力軸)27
を介して遊星歯車機構30,40に出力する。トルクコ
ンバータ20の反エンジン側に配置されたオイルポンプ
12はコンバータケース21及びポンプ22を介してエ
ンジン出力軸2により駆動される。
【0030】タービン軸27と第1遊星歯車機構30の
サンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、ター
ビン軸27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との
間にリバースクラッチ52が、タービン軸27と第2遊
星歯車機構40のピニオンキャリヤ42との間に3−4
クラッチ53が備えられている。2−4ブレーキ54は
第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する。第1
遊星歯車機構30のリングギヤ33と第2遊星歯車機構
40のピニオンキャリヤ42とが連結され、これらと変
速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワ
ンウェイクラッチ56とが並列に配置されている。第1
遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ32と第2遊星歯
車機構40のリングギヤ43とが連結され、これらに出
力ギヤ13が接続されている。出力ギヤ13の回転は2
つのアイドルギヤ14,15及びデファレンシャル装置
60の入力ギヤ61を介して左右の駆動軸62,63に
伝達される。
【0031】上記各締結要素51〜56を選択的に作動
させることにより遊星歯車機構30,40の動力伝達経
路が切り換わり、Dレンジの1〜4速、Sレンジの1〜
3速、Lレンジの1〜2速、及びRレンジの後退速が達
成される。表1に締結要素51〜56の作動状態と変速
段との関係を示す。
【0032】
【表1】
【0033】[ロックアップクラッチ]図2に示すよう
に、トルクコンバータ20は、エンジン出力軸2に連結
されたコンバータケース21を有する。コンバータケー
ス21にポンプ22が固設され、該ポンプ22に対向し
てタービン23が配置されている。タービン23はポン
プ22により作動油を介して駆動される。ポンプ22と
タービン23との間にトルク増大機能を有するステータ
25が備えられている。ステータ25は変速機ケース1
1にワンウェイクラッチ24を介して支持されている。
タービン23の基部23aがタービン軸27にスプライ
ン結合され、タービン23の回転がタービン軸27を介
して遊星歯車機構30,40に出力される。
【0034】タービン23の基部23aにロックアップ
クラッチ26のピストン26pが組み付けられ、タービ
ン23及びタービン軸27と一体回転する。ピストン2
6pはコンバータケース21の内部空間をフロント室
(解放用油圧室)26aとリア室(締結用油圧室)26
bとに区画する。ピストン26pはリヤ室26bに供給
される締結用油圧によりコンバータケース21に押し付
けられ、入力軸2と出力軸27とを連結(直結)する。
一方、ピストン26pはフロント室26aに供給される
解放用油圧によりコンバータケース21から離間され、
入力軸2と出力軸27とを分断する。
【0035】[油圧制御回路]図2に示すように、この
自動変速機10の油圧制御回路80には、上記フロント
室26a及びリヤ室26bへの油圧の給排を制御するロ
ックアップコントロールバルブ81が備えられている。
このバルブ81には、一定圧に調整されたコンバータ圧
が供給されるコンバータ圧ライン82と、ロックアップ
クラッチ制御用デューティソレノイドバルブ(DSV)
84で生成された制御油圧が供給される制御油圧ライン
83と、フロント室26aに通じる解放用油圧ライン8
5と、リヤ室26bに通じる締結用油圧ライン86とが
接続されている。
【0036】パイロット圧ライン87にパイロット圧が
供給されていないときは、ロックアップコントロールバ
ルブ81のスプール81aがスプリング81bの付勢力
により図面において右側に位置し、コンバータ圧ライン
82と解放用油圧ライン85とが連通して、コンバータ
圧が解放用油圧となってフロント室26aに供給され
る。これによりロックアップクラッチ26が完全解放さ
れたコンバータ状態が実現する。
【0037】これに対し、パイロット圧ライン87にパ
イロット圧が供給されたときには、ロックアップコント
ロールバルブ81のスプール81aがスプリング81b
の付勢力に抗して図示したように左側に位置し、コンバ
ータ圧ライン82と締結用油圧ライン86とが連通し
て、コンバータ圧が締結用油圧となってリヤ室26bに
供給される。これによりロックアップクラッチ26が完
全締結されたロックアップ状態が実現する。
【0038】このとき同時に、制御油圧ライン83と解
放用油圧ライン85とが連通して、制御油圧が解放用油
圧Prとなってフロント室26aに供給される。これに
よりロックアップクラッチ26の締結力をDSV84に
対するデューティ率(1ON−OFF周期におけるON
時間の比率)に応じて制御することのできるスリップ状
態が実現する。
【0039】なお、この実施の形態では、デューティ率
が小さくなるほどDSV84が生成する制御油圧Prが
高くなってロックアップクラッチ26の締結力が減少す
る。また、デューティ率が大きくなるほどDSV84が
生成する制御油圧Prが低くなってロックアップクラッ
チ26の締結力が増大する。そこで、パイロット圧ライ
ン87にパイロット圧を供給したままとし、ロックアッ
プコントロールバルブ81のスプール81aを左側に位
置させた状態で、デューティ率を増減制御することによ
り、ロックアップクラッチ26をコンバータ状態(デュ
ーティ率小側:解放用油圧Pr高)、ロックアップ状態
(デューティ率大側:解放用油圧Pr低)、及びスリッ
プ状態に切り換える。なお、デューティ率と解放用油圧
Pr(ロックアップクラッチ26の締結力)との関係が
上記と逆であっても問題はない。
【0040】[制御システム]図3に示すように、この
自動変速機10のコントロールユニット100は、車速
を検出する車速センサ101からの信号、エンジンのス
ロットル開度を検出するスロットル開度センサ102か
らの信号、エンジン回転(トルクコンバータ20の入力
回転)を検出するエンジン回転センサ103からの信
号、タービン回転(トルクコンバータ20の出力回転)
を検出するタービン回転センサ104からの信号、作動
油の温度を検出する油温センサ105からの信号、運転
者により選択されているレンジを検出するレンジスイッ
チ106からの信号、アクセルペダルの踏込み解除を検
出するアイドルスイッチ107からの信号、及びブレー
キペダルの踏込みを検出するブレーキスイッチ108か
らの信号等を入力する。
【0041】コントロールユニット100は、図4に示
すように、車速とスロットル開度とに応じて予め設定さ
れた制御特性に従って目標変速段を設定し、その目標変
速段が達成されるように、油圧制御回路80に備えられ
た複数の変速制御用ソレノイドバルブ109…109
(図3参照)に制御信号を出力する。変速制御用ソレノ
イドバルブ109…109は該制御信号を受けて油圧制
御回路80の油路を切り換えたり各摩擦要素51〜55
に供給する制御油圧を生成する。
【0042】コントロールユニット100は、同じく図
4に示すように、車速とスロットル開度とに応じて予め
設定された制御特性に従ってロックアップクラッチ26
の締結状態を制御する。すなわち、相対的に低負荷・高
回転領域は4速ロックアップ(L/U)領域及び3速ロ
ックアップ領域に設定されている。車両の運転状態が、
このロックアップ領域にある間は、ロックアップクラッ
チ制御用DSV84に対するデューティ率を大きくして
ロックアップクラッチ26を完全締結状態とする。ま
た、相対的に高負荷・低回転領域はコンバータ領域に設
定されている。車両の運転状態が、このコンバータ領域
にある間は、ロックアップクラッチ制御用DSV84に
対するデューティ率を小さくしてロックアップクラッチ
26を完全解放状態とする。
【0043】一方、スロットル開度がゼロ(全閉)のパ
ワーオフ領域(減速領域)のうち相対的に高回転側は4
速減速スリップ領域に、中回転側は3速減速スリップ領
域に設定されている。車両の運転状態が、この減速スリ
ップ領域にある間は、ロックアップクラッチ制御用DS
V84に対するデューティ率を中庸の値に制御してロッ
クアップクラッチ26をスリップ状態とする(減速スリ
ップ制御)。この減速スリップ制御により、エンジン回
転の落ち込みを効果的に防止することができ、エンジン
回転を所定水準に維持したままエンジン1の燃料カット
を行なうことができる。また、急制動時のエンジンスト
ールを回避したり、エンジン1側からのショックや振動
の伝達を抑制することができる。なお、パワーオフ領域
のうち相対的に低回転側はコンバータ領域に設定されて
いる。
【0044】したがって、例えば符号アで示すように、
アクセルペダルの踏込みが解除されて車両の運転状態が
4速ロックアップ領域から4速減速スリップ領域に移行
すると、減速スリップ制御が開始されてロックアップク
ラッチ26はロックアップ状態からスリップ状態に切り
換えられる。そして符号イで示すように、そのパワーオ
フ状態のままで車速が低下していくと、変速段が3速に
シフトダウンされる少し手前でコンバータ状態に切り換
えられる(3速減速スリップ領域には入らない)。また
符号ウで示すように、その減速の途中でアクセルペダル
が踏み込まれると、4速ロックアップ領域に入る場合も
ある。ただし、3速ロックアップ領域が4−3シフトダ
ウンラインより高回転側に設定されているから、アクセ
ルペダルが踏み込まれても3速ロックアップ領域に入る
ことはない。
【0045】[減速スリップ制御]次に、本発明の特徴
部分を構成する上記の減速スリップ制御について詳しく
説明する。この制御は、本質的に、ロックアップクラッ
チ制御用DSV84に対するデューティ率の制御であ
り、該デューティ率制御を介してロックアップクラッチ
26の締結力を制御して該クラッチ26をロックアップ
状態からスリップ状態に移行させる。
【0046】図5に示すように、時刻t1にアクセルペ
ダルの踏込みが解除され、スロットル開度がゼロになる
と、減速スリップ制御指令が出力される。時刻t1まで
は、ロックアップクラッチ制御用DSV84に対するデ
ューティ率(DUTY)は100%であり、解放用油圧
Prが立っておらず、ロックアップクラッチ26は完全
締結状態である。
【0047】時刻t1からt4までの間は、デューティ
率はフィードフォワード制御され、時刻t4以降はフィ
ードバック制御される。フィードフォワード制御中は、
デューティ率は、いずれも100%より小さい第1、第
2、第3のデューティ率D1,D2,D3に順に制御さ
れる。ここで、第1デューティ率D1の値が最も小さ
く、第2デューティ率D2の値が最も大きく、第3デュ
ーティ率D3の値がこれらの間にある。しかし解放用油
圧Prはまだ一貫して低いから、ロックアップクラッチ
26は依然として締結状態のままである。それゆえエン
ジン回転Neとタービン回転Ntとは同一値であり、車
速の低下に従って一緒に下がっていく。
【0048】時刻t4にフィードバック制御が開始する
と、デューティ率D4は該フィードバック制御により徐
々に小さくされ、解放用油圧Prがゆっくりと上昇し
て、その結果、ロックアップクラッチ26は時刻t5に
ゆっくりとスリップし始める。その場合、パワーオフの
減速状態であるから、スリップすることによりエンジン
回転Neのほうがタービン回転Ntより低くなる。
【0049】この減速スリップ制御の特徴は、完全締結
状態にあるロックアップクラッチ26の締結力をフィー
ドフォワード制御で徐々に低減させ(解放用油圧Prを
徐々に上昇させ)、しかし該フィードフォワード制御中
はまだロックアップクラッチ26をスリップさせないよ
うにし、その状態でフィードバック制御を開始すること
である。そしてロックアップクラッチ26を該フィード
バック制御によってなるべくゆっくりと滑らせ始めるこ
と、つまりロックアップクラッチ26が急に大きく滑り
出さないようにすることである。これによりロックアッ
プクラッチ26を安定にコントロールすることができ、
スリップ量のフィードバック制御を大きな変動やショッ
クなく円滑に完遂することができる。またエンジン回転
Neの大きな落ち込みを回避でき、燃料カットが支障な
く実行できて、燃費向上効果を十分発揮することができ
る。以下フローチャートを参照して時間の経過順にさら
に詳しく説明する。
【0050】〈時刻t1からt2まで〉図6に示すよう
に、ステップS1で、減速スリップ制御指令の出力が判
定されると、ステップS2で、タイマTm1を油温に応
じた値にセットする。このタイマTm1は、フィードフ
ォワード制御で最初に出力する第1デューティ率D1の
出力時間を決定する。第1デューティ率D1はベースデ
ューティ率Dt1から作成される。次いで、ステップS
3で、そのベースデューティ率Dt1を油温に応じたマ
ップから読み取る。
【0051】ステップS4で、トルクコンバータ20の
入出力軸2,27間の差回転(Ne−Nt)が所定値α
(負の値)より小さいか否かを判定する。つまりロック
アップクラッチ26がこのフィードフォワード制御の段
階、特にその初期の時刻t1〜t2の段階でスリップし
ていないことを確認するのである。その結果、スリップ
していなければ、ステップS5で、ベースデューティ率
Dt1をそのまま第1デューティ率D1の値に採用して
(D1=Dt1)、該第1デューティ率D1を出力す
る。
【0052】一方、スリップしていれば、該スリップを
解消するために、ステップS6で、ベースデューティ率
Dt1に所定値βを加えて大きくした値を第1デューテ
ィ率D1の値に採用して(D1=Dt1+β)、該第1
デューティ率D1を出力する。そして、いずれもステッ
プS7で、タイマTm1をカウントダウンし、ステップ
S8で、タイマTm1がゼロになるまでステップS4〜
S7を繰り返す。
【0053】以上により、時刻t1まで100%であっ
たデューティ率は、時刻t1〜t2の間、第1デューテ
ィ率D1まで小さくされる。この第1デューティ率D1
は、他の第2デューティ率D2や第3デューティ率D3
よりも小さい値である。このようにフィードバック制御
を開始する前にロックアップクラッチ26解放側のデュ
ーティ率D1を所定時間Tm1だけ出力する理由はおよ
そ次の通りである。
【0054】時刻t1までのロックアップ状態において
は、図2に示した解放用油圧ライン85やトルクコンバ
ータ20のフロント室26a内の解放用油圧Prは抜け
ている。トルクコンバータ20は体積が大きいから、ロ
ックアップクラッチ26をスリップ状態とするためにフ
ロント室26a内の解放用油圧Prを上昇させるのには
長時間を要する。また一般に作動油中にはエアが存在
し、圧力をかけても最初はエアが縮むだけで油圧はなか
なか立ち上がらない。よって、減速スリップ制御に応答
遅れが出ないように、制御開始当初はなるべくデューテ
ィ率を小さくし、解放用油圧Prを図5に符号カで示す
ように短時間のうちに立ち上げるようにしたのである
(いわゆるプリチャージ)。その結果、解放用油圧Pr
は、時刻t2において、ロックアップクラッチ26がス
リップする直前の油圧まで速やかに立ち上がっている。
【0055】その意味において、図9に示すように、タ
イマTm1(第1デューティ率D1の出力時間)は油温
が低いほど長くされる。また図10に示すように、ベー
スデューティ率Dt1は油温が低いほど小さくされる
(なお、ベースデューティ率Dt1を0%としてもよ
い)。いずれも油温が低いときは作動油の流動性・応答
性が鈍く、油圧が立ち上り難く、油圧が立ち上るのに長
時間を要するから、その不具合を抑制するためである。
【0056】〈時刻t2からt3及びt3からt4ま
で〉図7に示すように、ステップS9で、第2、第3の
タイマTm2,Tm3をセットする。各タイマTm2,
Tm3はそれぞれ第2デューティ率D2、第3デューテ
ィ率D3の出力時間を決定する。これらのタイマTm
2,Tm3は、第1タイマTm1のように、所定のパラ
メータに応じて可変としてもよいが、本実施の形態では
固定値としている。第2デューティ率D2及び第3デュ
ーティ率D3はそれぞれ2つのベースデューティ率Dt
2及びDt3と学習補正値Dadとから作成される。
【0057】次いで、ステップS10で、デューティ率
の学習補正値Dadをメモリ内の保存領域から読み取
る。学習補正値Dadは、後述するが、図18に示すよ
うに、エアコンのON(作動)時とOFF(非作動)時
とで区分して保存され、且つそれぞれ油温T[n]によ
り複数領域に(図例では4つの領域a〜dに)区分して
保存されている。
【0058】次いで、ステップS11で、エアコンがO
Nか否かを判定する。その結果、ONのときは、ステッ
プS12で、ベースデューティ率Dt2を油温に応じた
マップ2aから読み取り、また、ステップS13で、ベ
ースデューティ率Dt3をタービン回転Nt(又は車
速)に応じたマップ3aから読み取る。一方、OFFの
ときは、ステップS14で、ベースデューティ率Dt2
を油温に応じたマップ2bから読み取り、また、ステッ
プS15で、ベースデューティ率Dt3をタービン回転
Nt(又は車速)に応じたマップ3bから読み取る。
【0059】ここで、図11に示すように、エアコンが
ONのとき2aもOFFのとき2bも、ベースデューテ
ィ率Dt2は油温が高いほど大きくされる。油温が高く
なると摩擦係数μが下がり、ロックアップクラッチ26
が滑りやすくなるから、デューティ率を大きくして(締
結側)、その不具合を抑制するためである。また図12
に示すように、エアコンがONのとき3aもOFFのと
き3bも、ベースデューティ率Dt3はタービン回転N
t(車速)が低いほど大きくされる。タービン回転Nt
(車速)が低いほどエンブレ力が大きくなり、やはりロ
ックアップクラッチ26が滑りやすくなるから、同様に
デューティ率を大きくして、その不具合を抑制するので
ある。そして、いずれのデューティ率Dt2,Dt3
も、エアコンがONのとき2a,3aはOFFのとき2
b,3bよりも大きくされる。エアコンがONのときは
エンジン1に作用する外部負荷が大きくなり、その結果
エンブレ力が大きくなり、やはりロックアップクラッチ
26が滑りやすくなるから、同様にデューティ率を大き
くして、その不具合を抑制するのである。
【0060】次いで、ステップS16で、第2タイマT
m2がゼロと判定されるまでは、ステップS17で、第
2デューティ率D2を出力し、ステップS18で、第2
タイマTm2をカウントダウンした後、ステップS11
に戻る(時刻t2〜t3)。一方、ステップS16で、
第2タイマTm2がゼロと判定された後は、ステップS
19で、第3タイマTm3がゼロと判定されるまでは、
ステップS20で、第3デューティ率D3を出力し、ス
テップS21で、第3タイマTm3をカウントダウンし
た後、同じくステップS11に戻る(時刻t3〜t
4)。
【0061】ここで、第3デューティ率D3は、2つの
ベースデューティ率Dt2,Dt3の和に学習補正値D
adを加算した値である(D3=Dt2+Dt3+Da
d)。また、第2デューティ率D2は、さらにそれに所
定値γを加えて大きくした値である(D2=Dt2+D
t3+Dad+γ)。
【0062】以上により、時刻t2までD1であったデ
ューティ率は、時刻t2〜t3の間、第2デューティ率
D2まで大きくされる。この第2デューティ率D2は、
他の第1デューティ率D1や第3デューティ率D3より
も大きい値である。その結果、速やかに立ち上がった解
放用油圧Prは、時刻t2〜t3の間、図5に符号キで
示すようにほとんど停滞気味にその上昇率がいったん低
下する。
【0063】次いで、時刻t3までD2であったデュー
ティ率は、時刻t3〜t4の間、第3デューティ率D3
まで所定値γだけ小さくされる。その結果、解放用油圧
Prは、時刻t3〜t4の間、図5に符号クで示すよう
に再びその上昇率が少し上向き傾向となる。然る後、こ
の状態でフィードバック制御に突入する。つまり第3デ
ューティ率D3がフィードバック制御開始時の初期デュ
ーティ率である。このようにいったんロックアップクラ
ッチ26解放側のデューティ率D1を出力した後フィー
ドバック制御開始時の初期デューティ率D3を出力する
前にロックアップクラッチ26締結側のデューティ率D
2を出力する理由はおよそ次の通りである。
【0064】前述したように、この減速スリップ制御
は、デューティ率のフィードフォワード制御の段階では
ロックアップクラッチ26をスリップさせないままフィ
ードバック制御に突入することを狙いとしている。その
ためには、ロックアップ領域から減速スリップ領域への
移行時t1に、それまで100%であったデューティ率
を直ちに上記第3デューティ率D3にすることが考えら
れる。第3デューティ率D3は、前述したように、油
温、回転(車速)、エアコンの作動状態に応じて設定さ
れ、且つ学習補正されている。この第3デューティ率D
3を出力している限りは、解放用油圧Prは過度に大き
くならず、ロックアップクラッチ26はスリップしな
い。時刻t1に第3デューティ率D3を出力することに
よって、解放用油圧Prが立ち上がり、ロックアップク
ラッチ26の締結力が減少していく。この間ロックアッ
プクラッチ26はスリップせず、その状態でフィードバ
ック制御を開始することができる。
【0065】しかし、前述したように、体積の大きいト
ルクコンバータ20のフロント室26a内に解放用油圧
Prを立ち上がらせるには時間がかかるので、減速スリ
ップ制御の開始当初はフィードバック制御の初期デュー
ティ率D3よりも小さい第1デューティ率D1を出力し
て油路85やフロント室26a内のプリチャージを行な
い、良好な制御応答性の確保を図っている。その場合
に、第1デューティ率D1をタイマ時間Tm1だけ出力
すれば、時刻t2には、解放用油圧Prがちょうどロッ
クアップクラッチ26のスリップ直前の油圧にまで上昇
するから、理論上は、その時点t2でデューティ率を第
1デューティ率D1からフィードバック制御初期デュー
ティ率D3に切り換えればよい。
【0066】ところが、DSV84のデューティ率をそ
のように切り換えても、作動油は粘性や流動慣性等によ
りその供給量や油圧変化が急には変化しないから、上記
のようなD1からD3へのデューティ率の変化に良好に
呼応しない。その結果、プリチャージ時(時刻t1〜t
2)の解放用油圧Prの上昇(カ)が十分抑制できず、
例えば図5に符号サで示すように、時刻t2後も解放用
油圧Prがプリチャージ時の勢いをひきずって大きくな
り、デューティ率を初期値D3に制御しても、ロックア
ップクラッチ26がフィードバック制御の開始前に急に
一気に大きく滑り出してしまう可能性が払拭できない。
【0067】そこで、フィードバック制御開始時の初期
デューティ率D3を出力する前に、いったんそれより大
きなデューティ率D2(前述したように第2デューティ
率D2は第3デューティ率D3に所定値γを加算して作
成される。つまりデューティ率D3に基き作成される)
を出力してDSV84の絞りをきつくし、作動油の流れ
を強く規制・制止するようにしたのである。これによ
り、プリチャージ後(時刻t2以降)に解放用油圧Pr
の上昇を符号キのように十分抑制することができ、ロッ
クアップクラッチ26がフィードバック制御の開始前に
滑り出すことを確実に回避できるようになる。
【0068】ここでもし第2デューティ率D2が初期デ
ューティ率D3より大きな値であっても、その偏差γ
(=D2−D3)が不足したときには、時刻t2〜t3
中における解放用油圧Prの上昇抑制(キ)が足らなく
なるから、やはりロックアップクラッチ26が時刻t3
までにスリップしてしまうことになる。あるいは、ロッ
クアップクラッチ26が時刻t3までにスリップしなく
ても、時刻t3に初期デューティ率D3を出力したとき
には、時刻t3以降における油圧Prの上昇率が、符号
シで示すように、目標とする上昇率(ク)よりも大きく
なり過ぎて、ロックアップクラッチ26がフィードバッ
ク制御開始時t4までにスリップしてしまうことにな
る。
【0069】上記偏差γ、第2デューティ率D2の出力
時間Tm2,第3デューティ率D3の出力時間Tm3等
は、そのような不具合が発生しない適正値に予め実験的
に設定されている。また、第2、第3デューティ率D
2,D3の作成の基礎になる2つのベースデューティ率
Dt2,Dt3は、前述したように、油温や、タービン
回転Nt(車速)、あるいはエアコンのON・OFFに
応じて、同じくそのような不具合が発生しない適正値に
設定される。さらに、第2、第3デューティ率D2,D
3は補正値Dadで学習補正され、トルクコンバータ2
0及びロックアップクラッチ26の固体差や経年変化等
が吸収される。
【0070】〈時刻t4以降〉図8に示すように、ステ
ップS22で、トルクコンバータ20の入出力軸2,2
7間の差回転(Ne−Nt:ロックアップクラッチ26
のスリップ量)の目標値と実測値との偏差を演算する。
ステップS23で、実スリップが所定値以下であるとき
は、ロックアップクラッチ26が急に一気に大きく滑り
過ぎていると判定する。前述したように、この減速スリ
ップ制御は、ロックアップクラッチ26をフィードバッ
ク制御によってなるべくゆっくりと滑らせ始めることを
狙いとしている。よって、ステップS23でYESのと
きは、ロックアップクラッチ26のスリップを緊急抑制
するために、ステップS24に進んで、フィードバック
制御中のデューティ率D4を所定値Θだけ一気に大きく
する。
【0071】一方、ステップS23でNOのときは、ス
テップS25で、フィードバック値Dtfを演算する。
フィードバック値Dtfは、例えば実スリップ量の履歴
及びそれ自身の値Dtfの履歴等を用いて求められる。
次いで、ステップS26で、フィードバック制御初期デ
ューティ率D3にフィードバック値Dtfを加算した値
をフィードバック制御中のデューティ率D4とする。
【0072】次いで、ステップS27〜S28で、エア
コンの作動状態が変化したか否かを判定する。すなわ
ち、ステップS27ではエアコンがOFFからONに変
わったか否か、ステップS28ではエアコンがONから
OFFに変わったか否かを判定する。その結果、いずれ
もNOの場合は、エアコンの作動状態が変化していない
のであるから、そのままステップS31に進む。すなわ
ち、初期値D3にフィードバック値Dtfのみを加算し
た値をフィードバック制御中のデューティ率D4として
維持する。
【0073】これに対し、エアコンがONになったとき
は、ステップS29で、初期値D3にフィードバック値
Dtfと所定値δとを加算した相対的に大きい値のデュ
ーティ率D4をフィードバック制御中のデューティ率D
4とする。逆にエアコンがOFFになったときは、ステ
ップS30で、初期値D3にフィードバック値Dtfを
加算し所定値δを減算した相対的に小さい値のデューテ
ィ率D4をフィードバック制御中のデューティ率D4と
する。これは、前述したように、エアコンがONのとき
はOFFのときに比べてエンジン1に作用する外部負荷
が大きくなり、その結果エンブレ力が大きくなり、ロッ
クアップクラッチ26が滑りやすくなるから、その影響
を考慮し排除したものである。
【0074】そして、いずれの場合も、ステップS31
で、この第4デューティ率、つまりフィードバック制御
中のデューティ率D4を出力する。なお、この減速スリ
ップ制御ないしフィードバック制御は、ステップS32
で、減速スリップ制御の終了条件の成立が判定されたと
きに終了する。その終了条件としては、例えば前述の符
号イのように車速が低下していって運転状態が減速スリ
ップ領域からコンバータ領域へ移行したときや、符号ウ
のようにアクセルペダルが踏み込まれて運転状態が減速
スリップ領域からロックアップ領域あるいはコンバータ
状態へ移行したとき等に成立する。
【0075】以上により、時刻t4までD3であったデ
ューティ率は、フィードバック制御により、ロックアッ
プクラッチ26の実スリップ量が目標スリップ量に収束
するように、フィードバック制御開始当初は徐々に小さ
くされ、その結果、解放用油圧Prが符号ケで示すよう
にゆっくりと上昇していって、ロックアップクラッチ2
6は時刻t5にゆっくりとスリップし始める。これによ
りスリップ後におけるロックアップクラッチ26のコン
トロールやスリップ量のフィードバック制御を困難なく
円滑に完遂することができる。
【0076】しかも、その場合に、フィードバック制御
の開始前は、時刻t2〜t3の間、第2デューティ率D
2を出力することにより解放用油圧Prの上昇をいった
ん確実に低下させてから(キ)、時刻t3〜t4の間、
初期デューティ率D3を出力することにより解放用油圧
Prを改めて徐々に上昇させていく(ク)ので、前述し
たように、解放用油圧Prがプリチャージ時(時刻t1
〜t2)の勢いのまま急上昇を続けること(サ、シ)が
回避でき、これにより、フィードバック制御の開始時t
4にロックアップクラッチ26がスリップすることを回
避できると共に、該フィードバック制御の開始後も、解
放用油圧Prがプリチャージ時の勢いをひきずって急上
昇を続けることが抑制でき、解放用油圧Prが符号ケの
ようにゆっくりと上昇していって、ロックアップクラッ
チ26が時刻t5にゆっくりとスリップし始めることを
確保することができる。
【0077】[フィードバック制御の学習補正制御]次
に、上記スリップ量のフィードバック制御の学習補正、
詳しくは、フィードバック制御開始時における初期デュ
ーティ率D3の学習補正、つまり、図7のステップS1
0で読み取る学習補正値Dadの更新について説明す
る。この学習補正制御の特徴は、フィードバック制御の
開始時刻t4からロックアップクラッチ26がスリップ
し始める時刻t5までの時間Tsが所定の目標時間Tt
gに近づくように学習補正値Dadを増減調整すること
である。つまり、この学習補正制御は、フィードバック
制御の開始時t4にはロックアップクラッチ26はまだ
スリップ状態になく、フィードバック制御によって初め
てスリップすることを前提とするから、ロックアップク
ラッチ26をスリップさせないままフィードバック制御
を開始し、該フィードバック制御によってロックアップ
クラッチ26を初めてゆっくりとスリップさせることを
狙いとする、この実施の形態に係る減速スリップ制御に
好ましく適用可能である。
【0078】そして、この学習補正制御を適用する結
果、ロックアップクラッチ26がフィードバック制御の
開始(t4)と共に急に一気に大きく滑り始めるという
ようなことが回避される。のみならず、ロックアップク
ラッチ26がフィードバック制御の開始(t4)から適
正なタイミング(t5)でスリップを開始するようにな
り、そのスリップ開始時t5においても、ロックアップ
クラッチ26が急に大きく滑り始めるというようなこと
が免れる。よって、ロックアップクラッチ26のコント
ロールやフィードバック制御の実行が困難となることが
回避でき、また、エンジン回転Neを低下させず所定以
上に維持したまま燃料カットを支障なく行なうことがで
きる。
【0079】〈学習補正禁止制御〉先に、図13を参照
して学習補正の禁止制御を説明する。ステップS41
で、減速スリップ制御指令の出力が判定されると、ステ
ップS42で、学習補正禁止フラグF1をリセットした
後、ステップS49で、減速スリップ制御の終了が判定
されるまでの間、ステップS43〜S47のいずれか1
つでもYESのときは、ステップS48で、学習補正禁
止フラグF1をセットする。このフラグF1がセットさ
れているときは、誤学習を防止するために、学習補正は
禁止される。
【0080】先ず、ステップS43で油温が所定値以下
と判定されたときは学習補正は禁止される。前述したよ
うに、油温が低いときは作動油の流動性・応答性が鈍
く、ロックアップクラッチ26が通常時通りの挙動を示
さない。また、後述するように、学習補正は、フィード
バック制御又は燃料カットが開始してからロックアップ
クラッチ26がスリップし始めるまでの時間に基いて行
われる。よって、学習補正のため、フィードバック制御
開始からの時間又は燃料カット開始からの時間が計測さ
れる。したがって、油温が低く、ロックアップクラッチ
26が通常通りの挙動を示さないような場合は、上記の
時間の計測データ自体が信用するに足りず、誤学習を防
止するために、学習補正そのものを禁止するようにした
のである。
【0081】一方、ステップS44で油温が所定値以上
と判定されたときにも学習補正は禁止される。一般に油
温が高いと作動油の粘性が低下して作動油がよく流れる
ようになる。加えてこのようなパワーオフ時の減速状態
ではトルクコンバータ20への作動油の供給量が少なく
なる。その結果、ロックアップクラッチ26に作用する
締結用油圧や解放用油圧Pr等の制御油圧が総じて不足
し、ロックアップクラッチ26を制御するための力が確
保できなくなる。すると、ロックアップクラッチ26や
トルクコンバータ20等の固体差が顕著に現れ、学習補
正データが大きくバラついて信用するに足りないものに
なるから、油温が高いときも、誤学習を防止するため
に、学習補正を禁止するようにしたのである。
【0082】また、ステップS45でタービン回転Nt
(又は車速)が所定値以下と判定されたときも学習補正
は禁止される。その理由はステップS44の場合とほぼ
同様である。すなわち、タービン回転Nt(又は車速)
が低いとオイルポンプ12による作動油の吐出量が低下
し、その結果、高油温時と同じく、トルクコンバータ2
0への作動油の供給量が少なくなるからである。
【0083】次に、ステップS46でエアコンがONか
らOFF又はOFFからONに切り換わったと判定され
たときも学習補正は禁止される。つまり、前述したよう
に、学習補正のために、フィードバック制御の開始又は
燃料カットの開始からロックアップクラッチ26がスリ
ップし始めるまでの時間を計測中に、エンジン1を駆動
源とする構成部品の作動状態が変化したときも学習補正
を禁止するのである。
【0084】前述したように、エンジン補記の作動・非
作動によってエンブレ力が大きく相違し、ロックアップ
クラッチ26に対する環境条件が大きく変動する。そこ
で、学習補正のための時間の計測中にそのような大きな
変動が生じたときには、その計時データは採用するに足
りないから、誤学習を防止するために、学習補正を禁止
するようにしたのである。
【0085】そして、ステップS47でブレーキペダル
の踏込みが判定されたときも学習補正は禁止される。ブ
レーキスイッチ108がONとなって制動状態になれ
ば、減速度が高くなり過ぎ、フィードバック制御自体が
不安定化する。またロックアップクラッチ26の滑り始
めが異常に早くなる。よって、このような非通常時の特
段の状況下でサンプリングされた学習補正のためのデー
タは採用するに足りず、誤学習を防止するために、学習
補正そのものを禁止するようにしたのである。
【0086】〈学習補正制御〉この実施の形態において
は、学習補正は、フィードバック制御が開始してからロ
ックアップクラッチ26がスリップし始めるまでの時間
に基いて行なうのが原則である。しかし、フィードバッ
ク制御の開始後にエンジン1の燃料カットが行われたと
きには、学習補正は、燃料カットが開始してからロック
アップクラッチ26がスリップし始めるまでの時間に基
いて行なう。
【0087】一般に、燃料カットの実行時は、非実行時
に比べて、エンブレ力が大きくなり、その結果、ロック
アップクラッチ26が滑りやすくなって、ロックアップ
クラッチ26のスリップ開始タイミングが早くなる。よ
って、フィードバック制御の開始後にロックアップクラ
ッチ26にそのような大きな変動が及んだときは、その
影響を排除し、学習精度を高めるために、フィードバッ
ク制御開始からの時間に代えて、そのような変動が起き
てからの時間、つまり燃料カット開始からの時間に基い
て学習補正をするようにしたのである。
【0088】なお、図5には、燃料カットの影響を確実
に排除するために、フィードバック制御の開始より先に
燃料カットを必ず開始しておく場合(時刻t2とt3と
の間)を例示している。よって、学習補正を、常に、フ
ィードバック制御開始時t4からロックアップクラッチ
26のスリップ開始時t5までの経過時間に基いて行な
うことができる。
【0089】また、この実施の形態においては、学習補
正、詳しくは、学習補正値Dadの更新は、燃料カット
の非実行状態では、ロックアップクラッチ26が早期に
スリップしたとき、つまり、ロックアップクラッチ26
が滑りやすい状態でないにも拘わらず、フィードバック
制御開始からスリップ開始までの時間が短過ぎる場合に
実行する。ただし、同じく燃料カットの非実行状態で、
ロックアップクラッチ26が所定時間ζを超えてからス
リップしたときは、学習補正値Dadは更新しない。ロ
ックアップクラッチ26が遅くゆっくり滑り始めている
限りは、スリップ量のフィードバック制御がコントロー
ル不能となる不具合が少ないからである。
【0090】これらに対し、燃料カットの実行状態で、
ロックアップクラッチ26が所定時間λを超えてもスリ
ップしないとき、つまり、ロックアップクラッチ26が
滑りやすい状態であるにも拘わらず、ロックアップクラ
ッチ26のスリップ開始までの時間が長過ぎる場合は、
学習補正値Dadを更新する。また、同じく燃料カット
の実行状態でロックアップクラッチ26がいつでもスリ
ップしたときは、学習補正値Dadを更新する。以下フ
ローチャートを参照してさらに詳しく説明する。
【0091】図14に示すように、ステップS51で、
減速スリップ制御指令の出力が判定されると、ステップ
S52〜S53で初期化を行なう。すなわち、ステップ
S52で、2つのタイマTm4,Tm5を共にゼロにセ
ットする。第4タイマTm4はフィードバック制御が開
始してからの時間を計時する。第5タイマTm5はさら
にその上に燃料カットが開始してからの時間を計時す
る。また、ステップS53で、フラグF2をリセットす
る。フラグF2は、燃料カットの実行状態でロックアッ
プクラッチ26がスリップしたときにセットされる。ま
た、ステップS54で、時間Tsをゼロにする。時間T
sは、フィードバック制御の開始からロックアップクラ
ッチ26がスリップし始めるまでの時間である。
【0092】次いで、ステップS55で、フィードバッ
ク制御が開始したか否かを判定する。フィードバック制
御が開始すれば、ステップS56で第4タイマTm4を
カウントアップする。さらに、ステップS57で、燃料
カットをしているか否かを判定する。燃料カットをして
いれば、ステップS58で第5タイマTm5をカウント
アップする。
【0093】フィードバック制御も燃料カットも行われ
ているときは、ステップS59で、ロックアップクラッ
チ26のスリップ量(Ne−Nt)が所定値ε(負の
値)より小さいか否かを判定する。その結果、YESの
ときは、ステップS60で、第5タイマTm5の値をロ
ックアップクラッチ26がスリップし始めるまでの計測
時間Tsとする。そして、ステップS61で、フラグF
2をセットする。
【0094】次いで、図15に示すように、ステップS
62で、学習補正禁止フラグF1が1にセットされてい
ないことを確認した上で、ステップS63で、燃料カッ
トをしていると判定されたときは、ステップS64に進
んで、上記フラグF2が1にセットされているか否かを
判定し、YESのときは、ステップS65に進む。一
方、ステップS64でNOのときは、ステップS71
で、第5タイマTm5が所定時間λより大きいか否かを
判定する。その結果、YESのときは、ステップS72
で、第5タイマTm5の値をロックアップクラッチ26
がスリップし始めるまでの計測時間Tsとした上で、ス
テップS65に進む。一方、ステップS71でNOのと
きは、ステップS55に戻る。
【0095】これに対し、ステップS63で、燃料カッ
トをしていないと判定されたときは、ステップS73に
進んで、ロックアップクラッチ26のスリップ量(Ne
−Nt)が所定値χ(負の値)より小さく、且つ第5タ
イマTm5が所定時間ζより小さいか否かを判定する。
その結果、YESのときは、ステップS74で、第5タ
イマTm5の値をロックアップクラッチ26がスリップ
し始めるまでの計測時間Tsとした上で、ステップS6
5に進む。一方、ステップS73でNOのときは、ステ
ップS55に戻る。
【0096】ステップS65では、タービン回転Nt
(車速)に応じた目標時間(Ttg)をマップから読み
取る。その場合に、図16に示すように、タービン回転
Ntが低いときは高いときに比べて目標時間Ttgを長
くする。タービン回転Ntが低いときは高いときに比べ
てエンブレ力が大きくなり、ロックアップクラッチ26
が滑りやすくなるから、スリップ開始が早すぎるとそれ
だけロックアップクラッチ26が急に大きく滑り始める
可能性が高くなる。そこで、タービン回転Ntが低いと
きは目標時間Ttgを長くしてロックアップクラッチ2
6が時間的に遅くゆっくりと滑り始めるようにしたので
ある。これにより、目標時間Ttg、ひいてはロックア
ップクラッチ26のスリップ開始タイミングが、トルク
コンバータ20の出力軸回転Ntに応じて適正化され
る。
【0097】次いで、ステップS66で、フィードバッ
ク制御が開始してからロックアップクラッチ26がスリ
ップし始めるまでの実時間Tsと上記目標時間Ttgと
の偏差Te(=Ts−Ttg)を求める。次いで、ステ
ップS67で、該偏差Teに応じた学習補正量Dad0
をマップから求める。その場合に、図17に示すよう
に、偏差Teがプラスのとき(実時間Teが目標Ttg
より長いとき)は学習補正量Dad0をマイナスの値と
し(初期デューティ率D3を解放側にする)、逆に偏差
Teがマイナスのとき(実時間Teが目標Ttgより短
いとき)は学習補正量Dad0をプラスの値とする(初
期デューティ率D3を締結側にする)。
【0098】次いで、ステップS68で、図18に示し
たように、油温T[n]及びエアコンの作動状態に応じ
た学習補正値Dadをメモリから読み取る。ステップS
69で、その読み取った学習補正値Dadに上記の学習
補正量Dad0を加算した値をDad1とし、ステップ
S70で、このDad1を、再び、図18に示したよう
に、油温T[n]及びエアコンの作動状態により区切ら
れた学習補正値保存領域a〜dに格納する。つまり、デ
ューティ率の学習補正値Dadを更新する。
【0099】前述したように、エアコンやオルタネータ
等のエンジン補機の作動・非作動によってエンブレ力が
大きく相違し、ロックアップクラッチ26の環境条件が
大きく変動するから、エンジン補機の作動・非作動に起
因するそのような環境条件の大きな違いを考慮して、学
習補正値Dadをより緻密に適正化するために、エンジ
ン補機の作動状態毎、及び油温T[n]毎に区別して学
習補正をするようにしたのである。これによりなお一層
の学習精度の向上が図られる。
【0100】以上により、前述したように、燃料カット
の実行時に、ロックアップクラッチ26がスリップした
ときは(ステップS59からステップS60〜S6
1)、学習補正値Dadはいつでも更新される(ステッ
プS64からステップS65〜S70)。また、同じく
燃料カットの実行時に、ロックアップクラッチ26が所
定時間λを超えてもスリップしないときも(ステップS
64からステップS71〜S72)、学習補正値Dad
は更新される(ステップS65〜S70)。
【0101】一方、燃料カットの非実行時に、ロックア
ップクラッチ26が所定時間ζ以内にスリップしたとき
は(ステップS63からステップS73〜S74)、学
習補正値Dadは更新される(ステップS65〜S7
0)。しかし、同じく燃料カットの非実行時に、ロック
アップクラッチ26が所定時間ζを超えてからスリップ
したときは(ステップS63からステップS73でNO
のとき)、学習補正値Dadは更新されない(ステップ
S73からステップS55に戻る)。
【0102】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、ロック
アップクラッチが減速スリップ制御において急に大きく
滑り始めることが回避されるから、ロックアップクラッ
チのコントロールやフィードバック制御が困難になるこ
とがない。また、エンジン回転の落ち込みを防止できる
から、燃料カットを支障なく行なうことができ、燃費向
上効果を損なうことがない。本発明は、ロックアップク
ラッチ付きのトルクコンバータを搭載した自動変速機一
般への幅広い利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係る自動変速機の骨子
図である。
【図2】 ロックアップクラッチと油圧制御回路との関
係図である。
【図3】 上記自動変速機の制御システム図である。
【図4】 同自動変速機の変速特性及びロックアップク
ラッチの制御特性である。
【図5】 減速スリップ制御の具体的動作の一例を示す
タイムチャートである。
【図6】 同制御の具体的動作の一例を示すフローチャ
ートであって時刻t1〜t2に係る部分である。
【図7】 同じく時刻t2〜t3及び時刻t3〜t4に
係る部分である。
【図8】 同じく時刻t4〜減速スリップ制御終了に係
る部分である。
【図9】 減速スリップ制御で用いる特性図である。
【図10】 同じく特性図である。
【図11】 同じく特性図である。
【図12】 同じく特性図である。
【図13】 学習補正禁止制御の具体的動作の一例を示
すフローチャートである。
【図14】 学習補正制御の具体的動作の一例を示すフ
ローチャートであって前半部分である。
【図15】 同じく後半部分である。
【図16】 学習補正制御で用いる特性図である。
【図17】 同じく特性図である。
【図18】 学習補正値をエアコンの作動状態毎及び油
温毎に区分して保存する領域の概念図である。
【符号の説明】
1 エンジン 2 エンジン出力軸(トルクコンバータの入力
軸) 10 自動変速機 20 トルクコンバータ 26 ロックアップクラッチ 27 タービン軸(トルクコンバータの出力軸) 30,40 遊星歯車機構(変速歯車機構) 84 ロックアップクラッチ制御用デューティソレ
ノイドバルブ 100 コントロールユニット(減速スリップ制御手
段、フィードバック制御手段、学習補正手段)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 上野 隆司 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 佐々木 和夫 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 澤 研司 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 Fターム(参考) 3J053 CA03 CB15 CB26 DA04 DA06 DA24 EA02 EA20 FA02

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンと変速歯車機構との間に介設さ
    れたトルクコンバータの入出力軸間に設けられたロック
    アップクラッチの締結状態を車両の運転状態に応じて設
    定された制御特性に従って制御するロックアップクラッ
    チの制御装置であって、車両の減速時にロックアップク
    ラッチをスリップ状態に制御する減速スリップ制御手段
    と、該減速スリップ制御においてロックアップクラッチ
    のスリップ量が目標スリップ量に収束するようにロック
    アップクラッチをフィードバック制御するフィードバッ
    ク制御手段と、該フィードバック制御が開始してからロ
    ックアップクラッチがスリップし始めるまでの時間が所
    定の目標時間となるようにフィードバック制御開始時の
    制御初期値を学習補正する学習補正手段とが備えられて
    いることを特徴とするロックアップクラッチの制御装
    置。
  2. 【請求項2】 トルクコンバータの出力回転が低いとき
    は高いときに比べて目標時間を長くする目標時間変更手
    段が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の
    ロックアップクラッチの制御装置。
  3. 【請求項3】 車両の減速時にエンジンの燃料カットを
    行なう燃料カット手段が備えられ、学習補正手段は、フ
    ィードバック制御の開始前に燃料カットが行なわれたと
    きは、フィードバック制御が開始してからロックアップ
    クラッチがスリップし始めるまでの時間に基いて学習補
    正をし、フィードバック制御の開始後に燃料カットが行
    われたときには、燃料カットが開始してからロックアッ
    プクラッチがスリップし始めるまでの時間に基いて学習
    補正をすることを特徴とする請求項1に記載のロックア
    ップクラッチの制御装置。
  4. 【請求項4】 学習補正のためにロックアップクラッチ
    がスリップし始めるまでの時間を計測中にエンジンを駆
    動源とする構成部品の作動状態が変化したときは学習補
    正を禁止する学習補正禁止手段が備えられていることを
    特徴とする請求項3に記載のロックアップクラッチの制
    御装置。
  5. 【請求項5】 学習補正手段は、エンジンを駆動源とす
    る構成部品の作動状態の区分に従って学習補正をするこ
    とを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロッ
    クアップクラッチの制御装置。
  6. 【請求項6】 トルクコンバータに供給される油量を判
    定する油量判定手段と、該供給油量が所定量より少ない
    ときは学習補正を禁止する第2の学習補正禁止手段とが
    備えられていることを特徴とする請求項1から5のいず
    れかに記載のロックアップクラッチの制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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