JP2003048853A - Grf作用の阻害による新規抗自己免疫疾患剤、及びそのスクリーニング方法 - Google Patents

Grf作用の阻害による新規抗自己免疫疾患剤、及びそのスクリーニング方法

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JP2003048853A
JP2003048853A JP2002143221A JP2002143221A JP2003048853A JP 2003048853 A JP2003048853 A JP 2003048853A JP 2002143221 A JP2002143221 A JP 2002143221A JP 2002143221 A JP2002143221 A JP 2002143221A JP 2003048853 A JP2003048853 A JP 2003048853A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】新規な抗自己免疫疾患剤、及び当該抗自己免疫
疾患剤の有効成分を探索するためのスクリーニング方法
を提供する。 【解決手段】抗自己免疫疾患剤の有効成分としてGRF
阻害作用を有する物質を用いる。また抗自己免疫疾患剤
の有効成分を取得するために、GRF受容体を介したG
RFの作用を阻害する作用を指標として被験物質の中か
ら上記阻害作用を有する物質をスクリーニングして取得
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗自己免疫疾患
剤、すなわち自己免疫疾患の予防剤または治療剤に関す
る。さらに本発明は、抗自己免疫疾患剤の新規有効成分
を探索し取得するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】慢性関節リウマチ、多発性硬化症、及び
全身性エリテマトーデスなどは一見異なった病態を示す
が、いずれも病変部位に炎症が認められる疾患である。
これらの疾患は、本来自己以外の外来異物を認識するは
ずの抗体が、自己の組織や細胞の抗原、すなわち自己抗
原と反応して生じる自己免疫現象が病因となって生じる
自己免疫疾患であると考えられている。
【0003】自己抗原に対する抗体や自己反応性T細胞
は通常健常人にも見られることが知られており、これら
が存在するだけでは自己免疫疾患に至らない。これは、
通常自己抗原に対する免疫反応には免疫学的寛容(トレ
ランス)の状態が成立しているからである。これに対し
て、自己免疫疾患患者では、自己抗原に対する上記トレ
ランスが何らかの原因で破綻していると考えられてい
る。その要因としては抗原に関与するもの、抗原提示に
関与するもの、及びトレランスの制御に関与するものな
どが考えられているが、不明な点が多く、未だそのメカ
ニズムは解明されていない。
【0004】ところで成長ホルモン放出因子(growth h
ormone-releasing factor;GRF)(成長ホルモン放出ホ
ルモン(growth hormone-releasing hormone, GHRH)とも
呼ばれる)(以下、単に「GRF」ともいう。)は、視
床下部より分泌される44個のアミノ酸よりなるペプチ
ドホルモンである。当該GRFは、その受容体(growth
hormone-releasing factor receptor;GRFR、以下「G
RF受容体」ともいう)に結合し、Gタンパクの活性化
を介して細胞内サイクリックAMP(以下、単に「cAM
P」ともいう)濃度を上昇させ、結果として下垂体から
成長ホルモン(GH)の放出を促進する作用を有してい
る。またGRFは、前記のような経路の他に、副経路と
して、細胞内cAMP濃度を上昇させることによりProt
ein Kinase A(PKA)を活性化し、細胞内へのカルシウ
ム流入を増加させることにより成長ホルモンの放出を促
進する作用も有している。
【0005】以上のようにGRFは、成長ホルモンの放
出(分泌)との関連性がよく知られているホルモンであ
り、従来より、成長ホルモンの分泌能を検査し、下垂体
性小人症や原発性甲状腺機能低下症を診断するための検
査薬として使用されている。しかしながら、当該GRF
と自己免疫疾患との関連は、全く知られていなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、新規
な作用機序に基づく抗自己免疫疾患剤を提供することで
ある。さらに本発明は、かかる抗自己免疫疾患剤の有効
成分となる候補物質を探索し取得するために有用なスク
リーニング方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、自己免疫疾
患の一つである多発性硬化症の動物モデルである実験的
自己免疫性脳脊髄炎(以下、単に「EAE」ともいう。)
の発症に対する成長ホルモン放出因子(GRF)の影響に
ついて検討していたところ、GRFの作用を阻害するこ
とによってEAEの発症が有意に抑制できるという新た
な知見を見いだした。具体的には、GRF受容体(GRF
R)遺伝子を人為的に欠損させたホモ欠損マウス(C57BL
/6J-Ghrhrlit/lit)(GRFRホモ欠損マウス)及びヘ
テロ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/+)(GRFRヘ
テロ欠損マウス)に対して実験的にEAE発症を誘導し
たところ、GRFRホモ欠損マウスは全観察期間を通し
て全くEAEを発症せず、またGRFRヘテロ欠損マウ
スについても野生型マウスと比較してEAEの発症が有
意に抑制されるという結果が得られた。また、GRF受
容体に対する公知のGRFアンタゴニストをEAEマウス
(EAE発症誘導マウス)に投与したところ、EAE発症
を実験的に誘導してもEAEを発症せず、GRF受容体
を介したGRFの作用を阻害することによりEAEの発
症が有意に抑制できることを確認した。
【0008】本発明者は、上記の知見、すなわちGRF
が自己免疫疾患の発症と関連していること、そして当該
GRFの作用を阻害することによって自己免疫疾患の発
症が抑制できるという知見から、GRF阻害作用を有す
る物質が自己免疫疾患の予防剤または治療剤として有効
に利用できるとの確信を得た。本発明はかかる知見に基
づき完成するに至ったものである。
【0009】すなわち本発明は、下記に掲げるものであ
る: 項1. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質を
有効成分とする抗自己免疫疾患剤。 項2. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、成長ホルモ
ン放出因子受容体(GRF受容体)を介した成長ホルモン
放出因子(GRF)の作用を阻害する作用である、請求項
1記載の抗自己免疫疾患剤。 項3. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、GRFとG
RF受容体との結合を阻害する作用である、項2記載の
抗自己免疫疾患剤。 項4. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質が
GRFのペプチドアナログである、項3記載の抗自己免
疫疾患剤。 項5. 成長ホルモン放出因子阻害作用が、GRFの発
現又は分泌を阻害する作用であるか、あるいはGRF受
容体の発現を阻害する作用である、項1に記載の抗自己
免疫疾患剤。 項6. 自己免疫疾患が多発性硬化症または慢性関節リ
ウマチ症である、項1乃至5のいずれかに記載の抗自己
免疫疾患剤。 項7. 被験物質の中から成長ホルモン放出因子阻害作
用を有する物質を探索する工程を有する、抗自己免疫疾
患剤の有効成分のスクリーニング方法。 項8. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質
を、GRF受容体を介したGRFの作用の阻害を指標と
して探索することを特徴とする項7に記載のスクリーニ
ング方法。 項9. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質
を、GRFとGRF受容体との結合阻害を指標として探
索することを特徴とする項8に記載のスクリーニング方
法。 項10. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項9
に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング
方法:(i) 被験物質の存在下で、GRF受容体若しく
はそのホモログ(以下、「GRF受容体等」という)と
GRF若しくはそのホモログ(以下、「GRF等」とい
う)とを接触させる工程、(ii) 上記GRF受容体等に
対するGRF等の結合量を測定し、当該結合量を、被験
物質非存在下でGRF受容体等とGRF等とを接触させ
ることによって得られるGRF受容体等に対するGRF
等の結合量(対照結合量)と比較する工程、及び(iii)
上記(ii)の結果に基づいて、対照結合量に比して結合
量を低下させる被験物質を選択する工程。 項11. 項10に記載の工程(i)、(ii)及び(iii)に更
に:(iv) 上記(iii)で選択された被験物質の中から、
更にGRFと同様の作用を生じない被験物質を選択する
工程を含む、項10に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成
分のスクリーニング方法。 項12. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質
を、GRF受容体の発現阻害を指標として探索すること
を特徴とする項7に記載のスクリーニング方法。 項13. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項12
に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング
方法:(i)被験物質をGRF受容体を発現可能な細胞
と接触させる工程、(ii)被験物質を接触させた細胞の
GRF受容体の発現量を測定し、該発現量を被験物質を
接触させない上記に対応するGRF受容体を発現可能な
細胞(対照細胞)のGRF受容体の発現量(対照発現
量)と比較する工程、(iii) 上記(ii)の比較結果に基
づいて、対照発現量に比してGRF受容体の発現量を低
下させる被験物質を選択する工程。 項14. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質
を、GRFの発現又は分泌の阻害を指標として探索する
ことを特徴とする項7に記載のスクリーニング方法。 項15. 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む項14
に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング
方法:(i)被験物質をGRFを発現可能な細胞と接触
させる工程、(ii)被験物質を接触させた上記細胞のG
RFの発現量または分泌量を測定し、該発現量または分
泌量を、被験物質を接触させない上記に対応する対照細
胞のGRFの発現量(対照発現量)又は分泌量(対照分
泌量)と比較する工程、(iii) 上記(ii)の比較結果に
基づいて、対照発現量または対照分泌量に比してGRF
の発現量または分泌量を低下させる被験物質を選択する
工程。 項16. 抗自己免疫疾患剤が多発性硬化症または慢性
関節リウマチの予防または治療薬である、項7乃至15
のいずれかに記載のスクリーニング方法。 項17. 項7乃至16いずれか記載のスクリーニング
方法により得られる成長ホルモン放出因子阻害作用を有
する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤。 項18. 有効量の成長ホルモン放出因子阻害作用を有
する物質と薬学的に許容される担体を含有する抗自己免
疫疾患剤。 項19. 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する物質
と薬学的に許容される担体を含有する抗自己免疫疾患剤
を有効量、自己免疫疾患に罹患した被験者に投与するこ
とからなる、自己免疫疾患の予防または治療方法。 項20. 自己免疫疾患が多発性硬化症または慢性関節
リウマチである、項19に記載の自己免疫疾患の予防ま
たは治療方法。
【0010】
【発明の実施の形態】本明細書において、アミノ酸、
(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号に
よる表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Co
mmunication onBiological Nomenclature, Eur. J. Bio
chem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列又はアミノ酸配列
を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国
特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0011】本明細書において「遺伝子」または「DN
A」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセ
ンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAを
包含する趣旨で用いられる。またその長さによって特に
制限されるものではない。従って、本明細書においてD
NAとは、特に言及しない限り、ヒトゲノムDNAを含
む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正
鎖)並びに該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA
(相補鎖)、およびこれらの断片のいずれもが含まれ
る。また、遺伝子またはDNAは、機能領域の別を問う
ものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキ
ソン、またはイントロンを含むことができる。
【0012】本明細書において「ポリヌクレオチド」と
は、RNAおよびDNAのいずれをも包含する趣旨で用
いられる。なお、上記DNAには、cDNA、ゲノムD
NA、及び合成DNAのいずれもが含まれる。また上記
RNAには、total RNA、mRNA、rRNA、及び合成のRNAの
いずれもが含まれる。
【0013】本明細書でいう「抗体」には、ポリクロー
ナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗
体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによ
って生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を
有する上記抗体の一部が包含される。
【0014】以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】I.抗自己免疫疾患剤 前述するように、本発明者は成長ホルモン放出因子(GR
F)の作用を阻害することによって自己免疫疾患の発症
を抑制乃至は遅延することができることを見いだした。
このことから、成長ホルモン放出因子(GRF)の作用を
阻害する物質は、自己免疫疾患の予防または治療に有効
に利用できると考えられる。本発明の抗自己免疫疾患剤
は、かかる知見に基づいて開発されたものであり、GR
F阻害作用を有する物質を有効成分とすることを特徴と
する。
【0016】一般に「自己免疫疾患」は、自己の組織を
構成する成分に反応する抗体あるいはリンパ球が、体内
で持続的に産生されることによって組織障害をきたす疾
患であり、大別すると下記に掲げる臓器特異的自己免疫
疾患と臓器非特異的自己免疫疾患の2つに分類すること
ができる。
【0017】(1) 臓器特異的自己免疫疾患:橋本甲状腺
炎、原発性粘液水腫、甲状腺中毒症、悪性貧血、Good-p
asture症候群、急性進行性糸球体腎炎、重傷筋無力症、
尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、インスリン抵抗性糖尿
病、若年性糖尿病、アジソン病、萎縮性胃炎、男性不妊
症、早発性更年期、水晶体原性ぶどう膜炎、交換性脈
炎、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬
変、慢性活動性肝炎、自己免疫性溶血性貧血、発作性血
色素尿症、突発性血小板減少性紫斑病、シェーグレン症
候群。
【0018】(2)臓器非特異的自己免疫疾患:慢性関節
リウマチ、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマト
ーデス、多発性筋炎、強皮症、混合結合組織病。
【0019】本発明はこれらの「自己免疫疾患」を任意
に対象とするものである。好ましくは「実験的自己免疫
性脳脊髄炎」と同一若しくは類似のメカニズムによって
発症する自己免疫疾患を対象とすることができる。かか
る自己免疫疾患として、多発性硬化症、慢性関節リウマ
チ、及び全身性エリテマトーデスを例示することができ
る。より好ましくは多発性硬化症及び慢性関節リウマチ
であり、特に好ましくは多発性硬化症である。
【0020】また本発明の「抗自己免疫疾患剤」とは、
上記各種の自己免疫疾患に対して、その発症を阻害若し
くは抑制する作用、その発症を遅延させる作用、発症後
その症状を軽減若しくは改善する作用、または疾患を治
癒する作用のいずれか少なくとも1つの作用を有するも
のである。その意味で、本発明の「抗自己免疫疾患剤」
は、自己免疫疾患予防剤、自己免疫疾患症状緩和剤、自
己免疫疾患改善剤、または自己免疫疾患治療剤と言い換
えることもできる。中でも本発明の「抗自己免疫疾患
剤」は、自己免疫疾患の発症を阻害若しくは抑制する作
用、または発症を遅延させる作用に優れており、自己免
疫疾患予防剤として特に有効に使用することができる。
【0021】ここで本発明が対象とする「成長ホルモン
放出因子(growth hormone-releasing factor:GR
F)」とは、「従来の技術」の欄に記載されるようにG
RF受容体に結合することによって下垂体からの成長ホ
ルモン(GH)放出を促進する作用を有する視床下部ホル
モンの一つである。その意味で成長ホルモン放出ホルモ
ン(growth hormone-releasing hormone、GHRH)とも呼
ばれる。
【0022】その塩基配列及びアミノ酸配列は公知であ
り、例えばGenBank アクセッション番号:NM 021081
(塩基配列:配列番号1), NP 066567(アミノ酸配
列:配列番号2),NM 031577, NM 010285, AF 242855,
U 10156, M 73486, M 31658, 及びM 31654などに記載
されている。
【0023】本発明において「GRF阻害作用」とは、
その作用機序の別を問うことなく、上記GRFの機能発
現を阻害する作用を広く意味するものである。なお、こ
こで「GRFの機能発現を阻害する作用」には、GRF
の蛋白質合成(GRFの遺伝子発現を含む)や分泌を阻
害する作用、及び発現したGRFのGRF受容体を介し
た作用(シグナル伝達)を阻害する作用が包含される。
本明細書では、このようなGRFの機能発現の阻害を単
にGRF作用阻害またはGRFの阻害ということもあ
る。
【0024】これらのGRF阻害作用は、具体的には
1) GRF受容体を介したGRFの作用(シグナル伝
達)を阻害する作用、2) GRF受容体の発現を阻害す
る作用、及び3) GRFの発現又は分泌を阻害する作用
に大別することができる。
【0025】なお、本発明の「GRF阻害作用を有する
物質」は、上記に掲げる阻害作用のいずれか少なくとも
1つの作用を有する物質であればよく、その形態や性状
の別を何ら問うものではない。また、本発明の「GRF
阻害作用を有する物質」は、少なくともヒトGRFに対
して阻害作用を有するものであればよく、ヒト以外の哺
乳類やその他の生物種に由来するGRFに対する阻害作
用の有無は、特に制限されない。
【0026】以下、GRF阻害作用を有する物質につい
て、具体的に説明する。
【0027】1)GRF受容体を介したGRFの作用を
阻害する物質 後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させる
ことによって自己免疫疾患の発症が抑制されること、及
びGRF受容体に対してGRFとGRFアンタゴニスト
を競合させることによって自己免疫疾患の発症が抑制さ
れることが判明した。この知見は、GRF受容体を介し
たGRFの作用を阻害する物質、言い換えればGRFの
GRF受容体を介したシグナル伝達を阻害する物質は自
己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己免疫疾患剤の
有効成分となりえることを裏付けるものである。
【0028】ここでGRF受容体を介したGRFの作用
を阻害する物質は、その作用部位に応じて下記の(1) G
RFとGRF受容体との結合を阻害する物質、及び(2)
GRF受容体の下流のシグナル伝達系に作用してGRF
の細胞内シグナル伝達を阻害する物質、に分類すること
ができる。
【0029】(1) GRFとGRF受容体との結合を阻害
する物質 GRFとGRF受容体との結合を阻害することにより、
GRF受容体に対するGRFの作用(シグナル伝達)を
阻害することができる。かかる結合阻害作用を有する物
質としては具体的には、 GRF受容体に結合するこ
とにより、GRFのGRF受容体への結合を阻害する物
質、または、 GRFに結合することにより、GRF
のGRF受容体への結合を阻害する物質を挙げることが
できる。なお、の物質は、いわゆるGRF受容体に対
してGRFのアンタゴニストとしての作用を有するもの
であり、自らGRF受容体に結合してもそれ自体がGR
Fと質的且つ量的に同じ作用(シグナル伝達)を発揮し
ないことが必要である。ここで、「GRFと同じ作用を
発揮しない」とは、GRFと質的に同じ作用を発揮しな
い場合(GRF機能の喪失)だけでなく、仮にGRFと
質的に同じ作用を発揮する場合であっても量的にGRF
の作用よりも低減された作用を発揮する場合も含まれ
る。
【0030】 GRF受容体に結合して、GRFのG
RF受容体への結合を阻害する物質かかる物質として
は、具体的にはGRF受容体に結合する結合ドメイン
(Science, Vol.218, 585(1982)、Biochem. Biophys. R
es. Commun., Vol. 123, 854(1984))を有しGRFの機
能を欠損したGRF改変体や、抗GRF受容体抗体等を
例示することができる。なお、当該GRF受容体に結合
する物質は、少なくともヒトGRF受容体に対して結合
性を有するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその
他の生物種に由来するGRF受容体に対する結合性の有
無は、特に制限されない。
【0031】ここで、上記GRF改変体としては、GR
F受容体への結合ドメインだけを有するGRFの改変蛋
白質〔または改変オリゴ(ポリ)ペプチド〕、またはG
RF受容体への結合ドメイン以外の領域のアミノ酸配列
を人為的に任意の数、欠失させるか、他のアミノ酸で置
換または挿入(付加)することによって、GRFの機能
を喪失してなるGRFの改変蛋白質〔または改変オリゴ
(ポリ)ペプチド〕を例示することができる。また、G
RF改変体は、前述するように少なくともヒトGRF受
容体と結合して該受容体へのヒトGRFの結合を阻害す
るものであって、且つそれ自体がGRFと同じ作用を発
揮しないものであれば、その由来は特に制限されるもの
ではない。
【0032】なお、例えばGRF受容体に対するヒトG
RFの結合ドメインのアミノ酸配列及びそれをコードす
る塩基配列は、上記文献に示されるように公知である。
よって、ヒトGRFの結合ドメインからなるGRF改変
体は、これらの情報並びに下記の改変方法から当業者で
あれば容易に取得することができる。
【0033】また、GRFのGRF受容体への結合ドメ
イン以外のアミノ酸領域を人為的に改変する方法も、当
業者に公知の手法であり、例えば Molecular Cloning 2
nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)
等の基本書を参考にして行うことができる。具体的に
は、サイトスペシフィック・ミュータゲネシス〔Method
s in Enzymology, 154, 350, 367-382 (1987) ;同 100,
468 (1983);Nucleic Acids Res., 12, 9441 (1984);
続生化学実験講座1「遺伝子研究法II」,日本製化学会
編, p.105 (1986)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸
トリエステル法やリン酸アミダイト法などの化学合成手
段〔J. Am. Chem. Soc., 89, 4801 (1967);同 91, 335
0 (1969);Science, 150, 178 (1968);Tetrahedron Le
tt., 22, 1859 (1981);同 24, 245 (1983) 〕、及びこ
れらの手法を任意に組み合わせることによって実施する
ことができる。
【0034】なお、改変したGRF蛋白質〔オリゴ(ポ
リ)ペプチド〕(GRF改変体)が、GRFと同じ作用
を発揮しないか否かは、該GRF改変体を動物に投与し
てGH分泌能を測定することによって評価することがで
きる。
【0035】また、の物質として例示される抗GRF
受容体抗体としては、具体的にはGRF受容体の細胞外
ドメイン(Nature,Vol.360,p765-768(1992))に対する
抗体を例示することができる。なお、当該抗GRF受容
体抗体は、少なくともヒトGRF受容体の細胞外ドメイ
ンを認識して結合するものであればよく、ヒト以外の哺
乳類やその他の生物種に由来するGRF受容体の細胞外
ドメインへの認識能や結合能の有無は、特に制限されな
い。
【0036】当該抗GRF受容体抗体は、ヒトGRF受
容体の細胞外ドメインを有する蛋白質を免疫抗原として
常法に従って調製することができ、モノクローナル抗体
であってもまたポリクローナル抗体であってもよい。具
体的には、これらの抗体は、例えば“Antibodies; A La
boratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ss(1989)”や“Current Protocols in Molecular Biolo
gy edit. Ausubel etal. (1987) Publish. John Wiley
and Sons. Section 11. 12-11.13”等の基本書を参考に
して容易に作製することができる。ここでヒトGRF受
容体の細胞外ドメインを有する蛋白質の取得は、上記文
献(Nature)に記載される当該蛋白質のアミノ酸配列及
びそれをコードする塩基配列の情報から当業者であれば
容易に取得することができる。
【0037】さらにの物質には、その他の蛋白質やペ
プチド、又は低分子化合物なども含まれる。
【0038】このうちペプチドとしては、具体的には、
ヒトGRF受容体に結合して当該受容体に対するヒトG
RFの結合を阻害する作用を有する、GRFのペプチド
アナログを例示することができる。当該GRFのペプチ
ドアナログは、それ自身はGRFと同じ作用を持たず、
ヒトGRF受容体と結合してヒトGRFに対する拮抗作
用を有する、いわゆるGRFのアンタゴニストである。
なお、かかるGRFのペプチドアナログは、少なくとも
ヒトGRF受容体に対して結合能を有するものであれば
よく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するG
RF受容体への結合能の有無、ならびにペプチドの由来
の別は、特に制限されない。
【0039】かかるGRFのペプチドアナログとして
は、具体的にはMZ-4-71 ([Ibu0,D-Arg 2,Phe(4-Cl)6,Abu
15,Nle27]hGHRH-(1-28)Agm)、MZ-4-169 ([Nac0,D-Arg2,
Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]hGHRH-(1-29)NH2)、あるいはM
Z-4-181 ([Nac0-His1,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu15,Nle27]
hGHRH-(1-29)NH2)(以上、Proc. Natl. Acad. Sci. US
A, Vol.91, p.12298-12302(1994))、MZ-5-156 ([PhA
c0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Abu1 5,Nle27]hGH-RH(1-28)Agm)
(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.96, p.226-231(199
9))、またはJV-1-36 ([PhAc0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Arg9,
Abu15,Nle27,D-Arg28,Har29]hGH-RH(1-29)NH2)、JV-1-3
8([PhAc0,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Har9,Tyr(Me)10,Abu15,Nl
e27,D-Arg28,Har29]hGH-RH(1-29)NH2)、JV-1-42 ([PhAc
0-His1,D-Arg2,Phe(4-Cl)6,Arg9,Abu15,Nle27,D-Arg28,
Har29]hGH-RH(1-29)NH2)(以上、Proc.Natl. Acad. Sc
i. USA, Vol.97, p.1218-1223(2000))などが例示され
る。また、国際公開公報 WO95/16707(特に請求項1〜2
0)、あるいはWO91/16923(特に請求項16)に記載のペ
プチドアナログを挙げることもできる。
【0040】また、GRF受容体に結合してGRFのG
RF受容体への結合を阻害する作用を有する低分子化合
物は、公知の低分子化合物ライブラリー(例えば、Chem
Bridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブ
ラリー等に対して後述する本発明のスクリーニング方法
を実施することによって、取得することができる。
【0041】 GRFに結合して、GRFのGRF受
容体への結合を阻害する物質 当該物質として抗GRF抗体を例示することができる。
ここで抗GRF抗体は、具体的にはGRFのGRF受容
体結合ドメイン(Science, Vol.218, 585 (1982)、Bioc
hem. Biophys. Res. Commun., Vol.123, 854 (1984))
に対する抗体が挙げられる。なお、かかる抗GRF抗体
は、少なくともヒトGRFの受容体結合ドメインを認識
し結合するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその
他の生物種に由来するGRFへの結合能の有無、ならび
に製造原料として用いる抗原(蛋白質、ポリペプチド)
の由来の別は、特に制限されない。
【0042】当該抗GRF抗体は、ヒトGRFの受容体
結合ドメインを有するポリペプチド又は蛋白質を免疫抗
原として常法に従って調製することができ、モノクロー
ナル抗体であってもまたポリクローナル抗体であっても
よい。具体的には、これらの抗体は、前述する各種の基
本書を参考にして容易に作製することができる。
【0043】ここでヒトGRFの受容体結合ドメインを
有する蛋白質の取得は、上記文献(Science, BBRC)に
記載される当該受容体結合ドメインのアミノ酸配列及び
それをコードする塩基配列の情報から当業者であれば容
易に取得することができる。さらにの物質には、蛋白
質やペプチド、又は低分子化合物などが含まれる。
【0044】GERに直接結合して、GRFのGRF受
容体への結合を阻害する作用を有する例えば低分子化合
物は、公知の低分子化合物ライブラリー(例えば、Chem
Bridge Research Laboratories社の低分子化合物ライブ
ラリー)等に対して後述する本発明のスクリーニング方
法を実施することによって、取得することができる。
【0045】(2)GRFの細胞内シグナル伝達を阻害す
る物質 「従来の技術」の欄に記述するように、GRFはその受
容体(GRF受容体)に結合すると、Gタンパクの活性
化を引き起こし、該活性化を介してcAMP濃度を上昇
させ、結果として下垂体からの成長ホルモン(GH)の放
出を促進する作用を有している。またGRFは、前記の
経路の他に、細胞内cAMP濃度を上昇させることによ
りProtein Kinase Aを活性化し、細胞内へのカルシウム
流入を増加させて成長ホルモンの放出を促進する作用も
有している。
【0046】従って、これらのGRFの受容体結合後の
細胞内におけるシグナル伝達(GRF受容体の下流での
シグナル伝達)を阻害することによって結果としてGR
Fの作用を阻害することのできる物質も、本発明のGR
F阻害作用を有する物質に含まれる。
【0047】当該物質としては、GRFの細胞内シグナ
ル伝達に係わる各種因子の発現や作用を誘導(亢進)又
は抑制することにより、結果的に上記GRFの作用を実
質上阻害して、終局的に成長ホルモン放出促進作用を阻
害することのできる物質を例示することができる。
【0048】具体的には、例えばGRF受容体に共役す
るGタンパクの発現や作用(活性化)を抑制するような
タンパク質やペプチド、低分子化合物などを挙げること
ができる。
【0049】2)GRF受容体の発現を阻害する物質 後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させる
ことによって自己免疫疾患の発症が抑制されることが判
明した。この知見は、GRF受容体の発現を阻害する物
質は、自己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己免疫
疾患剤の有効成分となりえることを裏付けるものであ
る。
【0050】GRF受容体の発現を阻害する物質として
は、作用機序の別を問わず、結果としてGRF受容体と
しての機能を有する蛋白質の産生を阻害する作用を有す
るものであればよい。例えば、GRF受容体遺伝子の複
製、転写または翻訳等の任意の過程を阻害することによ
って核酸レベルでのGRF受容体(蛋白質)の合成を阻
止する作用を有するアンチセンス分子を挙げることがで
きる。
【0051】なお、ここで対象とする阻害物質は、少な
くともヒトGRF受容体の発現を阻害する作用を有する
ものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生物種
に由来するGRF受容体に対する発現阻害作用の有無
は、特に制限されない。
【0052】具体的には、GRF受容体遺伝子(GenBan
k アクセッション番号:NM 000823[配列番号3], AY 00
8835, AY 008834, AF 184896, AB 022597, AB 022596,
L 07380, L 07379などを参照)に相補的なアンチセンス
ポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0053】なお、上記アンチセンス分子は、上記GR
F受容体遺伝子の塩基配列に対して100%相補的な配列
を有するポリヌクレオチドである必要はなく、ストリン
ジェントな条件で、ヒトGRF受容体遺伝子の塩基配列
とハイブリダイズするポリヌクレオチドまたはその改変
物〔例えば、修飾ポリ(オリゴ)ヌクレオチドやペプチ
ド核酸等、公知の手法によって設計されるアンチセンス
分子を含む〕であってもよい。かかるものとしては、具
体的には上記GRF受容体遺伝子の塩基配列の相補配列
と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、よ
り好ましくは少なくとも95%の相同性を有するものを
挙げることができる。
【0054】またGRF受容体の発現を阻害する物質に
は、蛋白質、ペプチド、及び低分子化合物等も含まれ
る。ヒトGER受容体の発現を阻害する作用を有する、
例えば低分子化合物は、公知の低分子化合物ライブラリ
ー(例えば、ChemBridge Research Laboratories社の低
分子化合物ライブラリー)等に対して後述する本発明の
スクリーニング方法を実施することによって、取得する
ことができる。
【0055】3)GRFの発現又は分泌を阻害する物質 後述の実施例に示すように、GRF受容体を欠損させる
ことによって自己免疫疾患の発症が抑制されること、及
びGRF受容体に対してGRFとGRFアンタゴニスト
とを競合させることによって自己免疫疾患の発症が抑制
されることが判明した。この知見は、GRFの生成を阻
害する物質、すなわちGRFの発現または分泌を阻害す
る物質は、自己免疫疾患に対して抑制的に働き、抗自己
免疫疾患剤の有効成分となりえることを裏付けるもので
ある。
【0056】GRFの発現を阻害する物質としては、作
用機序の別を問わず、結果としてGRFとしての機能を
有する蛋白質の産生を阻害する作用を有するものであれ
ばよい。例えば、GRF遺伝子の複製、転写または翻訳
等の任意の過程を阻害することによって核酸レベルでの
GRF(蛋白質)の合成を阻止する作用を有するアンチ
センス分子を挙げることができる。
【0057】なお、ここで対象とするGRF発現阻害物
質は、少なくともヒトGRFの発現を阻害する作用を有
するものであればよく、ヒト以外の哺乳類やその他の生
物種に由来するGRFに対する発現阻害作用の有無は、
特に制限されない。
【0058】具体的には、GRF遺伝子(GenBank アク
セッション番号:NM 021081[配列番号1],NM 03157
7, NM 010285, AF 242855, U 10156, M 73486, M 3165
8, 及びM 31654などを参照)に相補的なアンチセンスポ
リヌクレオチドを挙げることができる。
【0059】なお、上記アンチセンス分子は、上記GR
F遺伝子の塩基配列に対して100%相補的な配列を有す
るポリヌクレオチドである必要はなく、ストリンジェン
トな条件で、ヒトGRF遺伝子の塩基配列とハイブリダ
イズするポリヌクレオチドまたはその改変物であっても
よい。かかるものとしては、具体的には上記GRF遺伝
子の塩基配列の相補配列と少なくとも80%、好ましく
は少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%
の相同性を有するものを挙げることができる。
【0060】またGRFの発現または分泌を阻害する物
質には、蛋白質、ペプチド、及び低分子化合物等も含ま
れる。GERの発現または分泌を阻害する作用を有する
例えば低分子化合物は、低分子化合物ライブラリー(例
えば、ChemBridge ResearchLaboratories社の低分子化
合物ライブラリー)等に対して後述する本発明のスクリ
ーニング方法を実施することによって、取得することが
できる。
【0061】以上説明するGRF阻害作用を有する物質
は、抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用である。ま
た抗自己免疫疾患剤の有効成分は、上記に具体的に掲げ
る物質に特に限定されることなく、下記に記載する本発
明のスクリーング方法によって取得することも可能であ
る。
【0062】従って、本発明が対象とする抗自己免疫疾
患剤には、上記のGRF阻害作用を有する物質を有効量
含有する製剤、並びに下記に記載するスクリーング方法
によって取得されるGRF阻害作用を有する物質を有効
量含有する製剤がいずれも包含される。なお、ここでG
RF阻害作用を有する物質の有効量は、それを含有する
抗自己免疫疾患剤が結果としてGRF阻害効果を発揮す
るようなGRF阻害作用物質の配合量であればよく、特
に制限されるものではない。また抗自己免疫疾患剤は、
GRF阻害作用物質以外に薬学的に許容される担体や各
種の添加剤を含有していてもよい。
【0063】かかる担体や添加剤の種類、抗自己免疫疾
患剤の形態、並びに抗自己免疫疾患剤の用法(投与形
態、投与方法、投与量)については、後述の(III)の欄
で詳細に説明する。
【0064】II.抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリ
ーニング方法 本発明者は、後述する実施例に示すように、GRFの機
能発現を阻害することによって自己免疫疾患の発症を抑
制することができるという新たな知見を取得した。この
ことから、GRF阻害作用を有する物質は抗自己免疫疾
患剤の有効成分として有用と考えられる。本発明のスク
リーニング方法は、かかる知見に基づいて開発されたも
のであり、被験物質の中からGRF阻害作用を有する物
質を探索することによって、抗自己免疫疾患剤の有効成
分を取得しようとするものである。
【0065】本発明のスクリーニング方法が対象とする
「GRF阻害作用を有する物質」は、結果としてGRF
の機能発現(機能発揮、作用)を阻害し得る物質であれ
ばよく、その作用機序を特に限定するものではない。G
RF阻害作用として、具体的には、1)GRF受容体を
介したGRFの作用(シグナル伝達)を阻害する作用、
2)GRF受容体の発現を阻害する作用、及び3)GR
Fの発現又は分泌を阻害する作用を挙げることができ
る。また上記1)の阻害作用には、(1)GRFとGRF
受容体との結合を阻害する作用、及び(2)GRFの細胞
内シグナル伝達を阻害する作用が含まれる。GRF阻害
作用を有する物質は、かかるGRF阻害作用の少なくと
も1つを有するものであればよい。
【0066】抗自己免疫疾患剤の有効成分となり得る候
補物質としては、核酸、ペプチド、蛋白質、有機化合物
(低分子化合物を含む)、無機化合物などを挙げること
ができる。本発明のスクリーニング方法は、これらの候
補物質となりえる物質または該物質を含む試料(これら
を総称して「被験物質」という)を対象として実施する
ことができる。なお、候補物質を含む試料(被験物質)
には、細胞抽出液、遺伝子ライブラリーの発現産物、微
生物培養上清、及び菌体成分が含まれる。
【0067】本発明のスクリーニング方法は、かかる被
験物質の中から上記に掲げるGRF阻害作用を指標とし
て上記GRF阻害作用の少なくとも1つを有する物質を
探索することによって実施される。斯くして選別取得さ
れる被験物質は、抗自己免疫疾患剤の有効成分として有
用である。
【0068】以下、本発明のスクリーニング方法を、指
標とするGRF阻害作用毎に具体的に説明する。
【0069】1)GRF受容体を介したGRFの作用を
阻害する作用を指標としたスクリーニング方法 当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻
害作用を有する物質を、GRF受容体を介したGRFの
作用(シグナル伝達)に対する阻害を指標として探索
し、抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得する方法で
ある。
【0070】ここで探索の指標とする「GRF受容体を
介したGRFの作用に対する阻害」としては、(1)GR
FとGRF受容体との結合阻害、(2)GRFの細胞内シ
グナル伝達の阻害を挙げることができる。
【0071】(1)GRFとGRF受容体との結合阻害を
指標としたスクリーニング方法 当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻
害作用を有する物質を、GRFとGRF受容体との結合
阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分
として取得する方法である。
【0072】当該スクリーニング方法は、特に制限され
ず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能
であるが、一例として、GRF受容体にGRFを接触さ
せた場合と、GRF受容体にGRF及び被験物質を接触
させた場合とで、GRF受容体に対するGRFの結合性
を比較し評価することを含むスクリーニング方法を挙げ
ることができる。当該スクリーニング方法は、具体的に
は下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実
施することができる。被験物質の存在下で、GRF受容
体若しくはGRF受容体ホモログ(これらを纏めて「G
RF受容体等」ともいう)とGRF若しくはGRFホモ
ログ(これらを纏めて「GRF等」ともいう)とを接触
させる工程、上記GRF受容体等に対するGRF等の結
合量を測定し、当該結合量を、被験物質非存在下でGR
F受容体等とGRF等とを接触させることによって得ら
れるGRF受容体等に対するGRF等の結合量(対照結
合量)と比較する工程、及び上記(ii)の結果に基づい
て、対照結合量に比して結合量を低下させる被験物質を
選択する工程。
【0073】この場合、GRF受容体若しくはGRF受
容体ホモログ(GRF受容体等)とGRF若しくはGR
Fホモログ(GRF等)との結合阻害は、GRF受容
体等に結合することによって、GRF等のGRF受容体
等への結合を阻害する態様のものであってもよいし、
GRF等に結合することによって、GRF等のGRF受
容体等への結合を阻害する態様のものであってもよく、
その別を特に問うものではない。但し、この場合、とり
わけの態様の場合は、GRF受容体等に結合してもG
RFと同じ作用を発揮しない被験物質を選択することが
必要である。このため、上記のスクリーニング方法で選
別された被験物質は更に、下記:(iv)上記(iii)で選択
された被験物質の中から、更にGRFと同じ作用を発揮
しない被験物質を選択する工程に供することが好まし
い。
【0074】なお、ここで、「GRFと同じ作用を発揮
しない」とは、GRFと質的に同じ作用を発揮しない場
合(GRF機能の喪失)だけでなく、仮にGRFと質的
に同じ作用を発揮する場合であっても量的にGRFの作
用よりも低減された作用を発揮する場合も含まれる。
【0075】上記の選択方法は、特に制限されないが、
具体的な方法としては、例えばProc. Natl. Acad. Sci.
USA, Vol.91, p12298-12302 (1994) に記載される in
vitro系 あるいは in vivo系の方法を挙げることができ
る。
【0076】上記本発明のスクリーニング方法で用いら
れるGRF受容体は、天然物であっても、合成品であっ
てもまた組換え体であっても良い。また当該GRF受容
体はヒト由来のものであることが好ましいが、マウスな
どヒト以外の哺乳類やその他の生物種に由来するGRF
受容体も同様に使用できる。
【0077】また、上記スクリーニング方法において、
GRF受容体に代えてGRFとの結合能を保有する蛋白
質またはポリ(オリゴ)ペプチド(例えば、GRFとの
結合能を有するGRF受容体の変異体や誘導体)を用い
ることもできる。なお、本発明において、これらを「G
RF受容体ホモログ」と称する。例えばかかるGRF受
容体の変異体としては、上記公知のGRF受容体(GenB
ankアクセッション番号:NM 000823[塩基配列:配列番
号3], NP 000814[アミノ酸配列:配列番号4], AY
008835, AY 008834, AF 184896, AB 022597, AB 02259
6, L 07380, L 07379)に関して天然に存在するアレル変
異体、天然に存在しない変異体及び人為的にGRF受容
体のアミノ酸配列の一部が欠失、置換、付加または挿入
されることによって改変されたアミノ酸配列を有する変
異体が包含される。
【0078】また本発明のスクリーニング方法に使用さ
れるGRF受容体は、必ずしもその全アミノ酸配列を保
持する必要はなく、少なくともGRFとの結合部位、例
えばGRF受容体の細胞外ドメイン(Nature, vol. 360,
p.765-768, (1992))を有していれば良い。すなわち、
本発明のスクリーニング方法では、前記のGRF受容体
に代えて、少なくともGRFとの結合領域(例えばGR
F受容体の細胞外ドメイン)を有する蛋白質またはポリ
(オリゴ)ペプチドを用いることもできる。本発明でい
う「GRF受容体ホモログ」には、このような蛋白質ま
たは(ポリ)ペプチドもまた包含される。更に、上記G
RF受容体の細胞外ドメインは、GRFとの結合能が維
持されている限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失する
か、他のアミノ酸残基によって置換、付加または挿入等
されていてもよく、かかる改変されたGRF受容体の細
胞外ドメインを有する蛋白質または(ポリ)ペプチドも
本発明でいう「GRF受容体ホモログ」に包含される。
【0079】GRF受容体の取得方法としては、以下の
方法を例示することができる。まず、ヒトまたは各種生
物種に由来するGRF受容体のアミノ酸配列情報及びそ
れをコードする塩基配列情報(GenBankアクセッション
番号:NM 000823[塩基配列:配列番号3], NP 000814
[アミノ酸配列:配列番号4], AY 008835, AY 00883
4, AF 184896, AB 022597, AB 022596, L 07380, L 073
79)をもとに、常法に従ってプローブ又はPCR用のプ
ライマーを作成し、ヒト又は各種生物の脳下垂体前葉細
胞由来のcDNAライブラリー等をクローニングするこ
とによってGRF受容体をコードするcDNAを取得す
る。これらのクローニングは、例えばMolecular Clonin
g 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press(19
89)などの基本書に従い、当業者ならば容易に行うこと
ができる。
【0080】次いで調製したGRF受容体のcDNA
を、pCAGGS(Gene 108,193-199(1991))、または
pcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(いずれもインビ
トロジェン社)などの公知の発現ベクターに挿入する。
その後、得られた組換えベクターを適当な宿主に導入し
培養することにより、導入したGRF受容体のcDNA
によってコードされるGRF受容体蛋白質を細胞表面に
発現させた形質転換細胞を作製することができる。
【0081】なお、ここで宿主としては、一般的に宿主
細胞として広く普及している哺乳動物細胞株であるL細
胞、CHO細胞、C127細胞、BHK21細胞、BA
LB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミ
ジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)や、COS
細胞などが好ましいが、これに限定されることなく、昆
虫細胞、酵母細胞、細菌細胞などを用いることも可能で
ある。また、前記GRF受容体発現ベクターの宿主細胞
への導入方法としては、公知の導入方法であればどのよ
うな方法でもよく、例えばリン酸カルシウム法(J.Viro
l.,52, 456-467(1973))、LT-1(Panvera社製)を用
いる方法、遺伝子導入用リピッド(Lipofectamine、Lip
ofectin; Gibco-BRL社製)を用いる方法などが挙げられ
る。次いで得られた形質転換細胞からGRF受容体を常
法に従って単離する。具体的には、例えば R. G. Shorr
ら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 2778-2782 (198
2)、J. Biol. Chem. 257, 12341-12350(1982))の方法に
従って、上記形質転換細胞を適当な可溶化剤(β-D-オ
クチルグルコシドなど)で可溶化することによりGRF
受容体を含む粗抽出液を調製することができる。さらに
該粗抽出液からGRF受容体を精製するには、例えばJ.
L. Benovicら (Biochem., 23, 4510-4518 (1984))の方
法などの当該技術分野における常法(例えば、抗GRF
受容体抗体を付けたアフィニティーカラムの使用など)
を用いることができる。
【0082】またGRF受容体の変異体(GRF受容体
の改変されたアミノ酸配列を有する変異体)(GRF受
容体ホモログ)は、GRF受容体のアミノ酸配列やそれ
をコードする塩基配列の情報に基づいて、サイトスペシ
フィック・ミュータゲネシス〔Methods in Enzymology,
154, 350, 367-382 (1987) ;同 100, 468 (1983);Nuc
leic Acids Res., 12, 9441 (1984);続生化学実験講座
1「遺伝子研究法II」,日本製化学会編, p.105 (198
6)〕などの遺伝子工学的手法、リン酸トリエステル法や
リン酸アミダイト法などの化学合成手段〔J. Am. Chem.
Soc., 89, 4801(1967);同 91, 3350 (1969);Scienc
e, 150, 178 (1968);Tetrahedron Lett.,22, 1859 (19
81);同 24, 245 (1983) 〕、及びこれらの手法を任意
に組み合わせることによって調製することができる。
【0083】さらにGRF受容体の細胞外ドメインのみ
を有するGRF受容体ホモログは、前述するGRF受容
体の調製方法において、GRF受容体のcDNAに代え
てGRF受容体の細胞外ドメインをコードするcDNA
を用いて上記と同様にして形質転換細胞を作製すること
によって調製することができる。この場合は、形質転換
細胞の培養上清中に当該GRF受容体ホモログを分泌さ
せることができる。この場合、例えば、抗GRF受容体
抗体またはGRF受容体の細胞外ドメインに対する抗体
を付けたアフィニティーカラムを使用することによっ
て、培養上清から当該GRF受容体ホモログを単離精製
することができる。また、ペプチドタグを付加した状態
で細胞外ドメインが発現生成されるように発現系を構築
することによって、該タグに親和性のある物質を付けた
カラムを用いて、形質転換細胞の培養上清から当該GR
F受容体ホモログを単離精製することができる。
【0084】なお、ここでGRF受容体の「細胞外ドメ
イン」をコードするcDNAの塩基配列は 前述するよ
うにNature,Vol.360,765-768(1992) に記載されてお
り、その取得も当業者であれば容易に行うことができ
る。さらに、当該「細胞外ドメイン」のアミノ酸配列の
改変も前述する当業界における公知の方法に従って容易
に行うことができる。また、このようにして改変された
GRF受容体(GRF受容体ホモログ)について、GR
Fとの結合能の有無は、標識したGRFと前記改変され
たGRF受容体との結合量を、標識したGRFと天然型
GRF受容体との結合量と比較することによって評価す
ることができる。
【0085】なお、本発明のスクリーニング方法で用い
られるGRF受容体またはGRF受容体ホモログ(GR
F受容体等)は、単離もしくは更に精製されたGRF受
容体等であってもよいが、それらに限定されない。例え
ば、単離されたGRF受容体等に代えて、GRF受容体
等を発現した細胞を用いても良いし、またGRF受容体
等を有する細胞膜を用いてもよい。
【0086】GRF受容体等を発現した細胞としては、
前述するGRF受容体等のcDNAを有するベクターを
適当な宿主に導入し、培養することによって調製される
形質転換細胞を挙げることができる。当該培養形質転換
細胞はGRF受容体等を細胞表面に発現しているため、
そのまま本発明のスクリーニング方法に用いることがで
きる。
【0087】またGRF受容体等を有する細胞膜は、上
記の形質転換細胞から調製することができる。調製方法
の一例として下記の方法を挙げることができる。まず、
上記の培養形質転換細胞に低張ホモジネートバッファー
(10mM トリス−塩酸緩衝液、1mM EDTA、0.5mM PMSF
(phenylmethanesulfonyl fluoride)若しくは1mM AEBS
F、5μg/ml アプロチニン、5μg/ml ロイペプチン;pH
7.4)を添加し、4℃で30分間程度静置して細胞を低
張破壊した後、ピペッティングでホモジナイズし、4℃
で50,000×g、30分間遠心分離することにより、細胞
膜画分の沈殿物を得る。そして、この沈殿物をトリス−
塩酸緩衝生理食塩水(トリス−塩酸緩衝液、154mMの塩
化ナトリウム;pH7.4)に懸濁することにより、細胞膜
画分を得ることができる。
【0088】その他、例えば F. Pietri-Rouxelらの方
法(Eur. J. Biochem., 247, 1174-1179(1997))などに
より、培養形質転換細胞から細胞膜画分を得ることもで
きる。
【0089】本発明のスクリーニング方法で用いられる
GRFは、天然物、合成品及び組換え体の別を問わな
い。また当該GRFはヒト由来のものであることが好ま
しいが、マウスなどのヒト以外の哺乳類や他の生物種由
来のGRFも同様に使用できる。また、GRFに代えて
GRF受容体との結合能を保有する蛋白質またはポリ
(オリゴ)ペプチド(例えば、GRF受容体との結合能
を有するGRFの変異体や誘導体)を用いることもでき
る。なお、本発明においてこれらを「GRFホモログ」
と称する。例えばかかるGRFの変異体としては、GR
Fの天然に存在するアレル変異体や天然に存在しない変
異体、及び人為的にGRFのアミノ酸配列の一部が欠
失、置換、付加または挿入されることによって改変され
たアミノ酸配列を有する変異体が包含される。
【0090】また本発明のスクリーニング方法に使用さ
れるGRFは、必ずしもその全アミノ酸配列を保持する
必要はなく、少なくともGRFのGRF受容体に対する
結合部位を有していれば良い。すなわち、本発明のスク
リーニング方法では、GRFに代えて、少なくともGR
FのGRF受容体結合ドメイン(Science,Vol.218,585
(1982); Biochem. Biophys. Res. Commun., Vol.123,
854 (1984))を有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプ
チドを用いることもできる。本発明でいう「GRFホモ
ログ」には、このような蛋白質またはポリ(オリゴ)ペ
プチドも包含される。また、上記GRFのGRF受容体
結合ドメインは、GRF受容体との結合能が維持されて
いる限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失するか、他の
アミノ酸によって置換、付加または挿入等されていても
よく、かかる改変されたGRFのGRF受容体結合ドメ
インを有する蛋白質またはポリ(オリゴ)ペプチドも本
発明でいう「GRFホモログ」に包含される。
【0091】GRFは、基本的に44アミノ酸からなる蛋
白質である。よって、ヒトまたは各種生物に由来するG
RFのアミノ酸配列情報(GenBankアクセッション番
号:NP 066567[配列番号2], NM 031577, NM 010285,
AF 242855, U 10156, M 73486,M 31658, M 31654)に基
づいて、通常のペプチド合成法に準じて合成することが
できる。例えば、ペプチドの合成は文献〔ペプタイド・
シンセシス(PeptideSynthesis),Interscience,New
York,1966;ザ・プロテインズ(The Proteins),Vol
2,Academic Press Inc.,New York,1976;ペプチド合
成,丸善(株),1975;ペプチド合成の基礎と実験、丸
善(株),1985;医薬品の開発 続第14巻・ペプチド合
成,広川書店,1991〕などに記載されている方法を参考
にして実施することができる。また、ペプチド合成法に
よれば前述するGRFホモログも容易に調製することが
できる。
【0092】また、GRFまたはGRFホモログは、G
RFの遺伝子情報(GenBankアクセッション番号:NM 02
1081[配列番号1], NM 031577, NM 010285, AF 24285
5,U 10156, M 73486, M 31658, M 31654)に基づいて、
前述するGRF受容体またはGRF受容体ホモログの調
製方法に準じて、遺伝子工学的に作製することもでき
る。なおこの場合、GRFのcDNAのクローニング
は、ヒト又はヒト以外の哺乳類のGRF産生腫瘍細胞由
来のcDNAライブラリーを対象として実施することが
できる。
【0093】さらにGRFは商業的に入手できるものを
利用してもよい。GRFは例えば住友製薬株式会社(日
本)から入手することができる。
【0094】GFRまたはGRFホモログは、そのまま
で用いてもよいし、任意の標識物質で標識されたものを
用いることもできる。ここで標識物質としては、放射性
同位体(例えば、125I等)、蛍光物質、化学発光物
質、ビオチン、マーカータンパク質、またはペプチドタ
グなどを例示することができる。マーカータンパク質と
しては、例えばアルカリフォスファターゼ(Cell 63,18
5-194 (1990))、抗体のFc領域(Genbank accession
number M87789)、またはHRP(Horse radish peroxid
ase)などの従来公知のマーカータンパク質を挙げること
ができる。またペプチドタグとしては、例えばMycタ
グ(Glu-Gln-Lys-Lue-Ile-Ser-Glu-Glu-Asp-Ile:配列
番号5)、Hisタグ(His-His-His-His-His-His:配
列番号6)、FLAGタグ(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-
Asp:配列番号7)などの従来公知のペプチドタグを挙
げることができる。
【0095】上記本発明のスクリーニング方法(1)の工
程(i)において、被験物質の存在下でGRF受容体等
とGRF等とを接触させる条件は、被験物質の非存在下
でGRF受容体等とGRF等とが結合する条件であれば
特に制限されない。また、単離されたGRF受容体等に
代えて、GRF受容体等を発現した細胞またはGRF受
容体等を有する細胞膜を用いる場合も、当該細胞または
細胞膜上に存在するGRF受容体等がGRF等と接触し
て両者が結合する条件であればよい。具体的には、細胞
の場合は、通常の生存可能な培養条件下、または細胞膜
の場合はトリス-塩酸緩衝生理食塩水などの生理的条件
下を例示することができる。
【0096】抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の
選別は、例えば上記条件でGRF受容体等(GRF受容
体等を発現した細胞またはその細胞膜の上に存在するG
RF受容体等を含む)とGRF等とを接触させて両者の
結合を阻害する物質を探索することによって実施でき
る。具体的には、被験物質の存在下でGRF受容体等と
GRF等とを接触させた場合のGRF受容体等に対する
GRF等の結合量が、被験物質の非存在下で上記と同様
に接触させた場合に得られるGRF受容体等に対するG
RF等の結合量(対照結合量)よりも低下することを指
標として、当該被験物質を候補物質として選別すること
ができる。なお、ここでいう低下には、対照結合量と対
比するまでもなく、GRF等のGRF受容体等に対する
結合が完全に阻害されて両者が結合しない場合、すなわ
ちGRF受容体等に対するGRF等の結合量が実質的に
ゼロの場合も包含される。
【0097】GRF受容体等に対するGRF等の結合量
は、例えばGRF等に対する抗体を用いたウエスタンブ
ロット法などの公知の方法により定量することができ
る。また、GRF等として前述の標識GRF等を用いる
場合は、使用した標識物質に応じた測定方法(例えば、
放射線測定法、蛍光検出法など)により、GRF受容体
等に結合したGRF等の量を定量することもできる。
【0098】(2)GRFの細胞内シグナル伝達の阻害を
指標としたスクリーニング方法 当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻
害作用を有する物質を、GRFの細胞内シグナル伝達の
阻害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分
として取得する方法である。
【0099】当該方法は、具体的には下記の工程(i)、
(ii)及び(iii)を行うことによって実施することができ
る:(i) 被験物質の存在下で、GRF受容体またはその
ホモログ(GRF受容体等)を発現した細胞とGRFまた
はそのホモログ(GRF等と)を接触させる工程、(ii)
上記細胞のGRFに起因する細胞内シグナル伝達物質
の発現量または活性を測定し、当該発現量または活性
を、被験物質非存在下でGRF受容体等を発現した細胞
とGRF等とを接触させることによって得られる上記に
対応する発現量または活性(対照発現量または対照活
性)と比較する工程、及び(iii) 上記(ii)の結果に基づ
いて、対照発現量または対照活性に比して発現量または
活性を変動させる被験物質を選択する工程。
【0100】2)GRF受容体の発現を阻害する作用を
指標としたスクリーニング方法 当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻
害作用を有する物質を、GRF受容体の発現に対する阻
害を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有効成分と
して取得する方法である。
【0101】当該スクリーニング方法は、特に制限され
ず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能
であるが、一例として、GRF受容体を発現可能な細胞
に被験物質を接触させた場合と被験物質を接触させない
場合とで、当該細胞のGRF受容体の発現量を比較し評
価することを含むスクリーニング方法を挙げることがで
きる。当該スクリーニング方法は、具体的には下記の工
程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施すること
ができる。 (i) 被験物質をGRF受容体を発現可能な細胞と接触さ
せる工程、(ii) 被験物質を接触させた細胞のGRF受
容体の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させ
ない上記に対応する対照細胞のGRF受容体の発現量
(対照発現量)と比較する工程、及び(iii) 上記(ii)の
比較結果に基づいて、対照発現量に比してGRF受容体
の発現量を低下させる被験物質を選択する工程。
【0102】かかるスクリーニングに用いられる細胞と
しては、天然または組換え体の別を問わず、GRF受容
体を発現し得る細胞であればよい。またGRF受容体の
由来も特に制限されず、ヒト由来のものであっても、ま
たヒト以外のマウスなどの哺乳類や他の生物種に由来す
るものであってもよい。かかる細胞として、具体的には
GRF受容体をコードする遺伝子(DNA)を有する脳下
垂体前葉細胞(ヒト及びその他の生物種由来のものを含
む)、単離調製された初代脳下垂体前葉培養細胞を挙げ
ることができる。また、前述する方法等によりGRF受
容体のcDNAを有する発現ベクターを導入して調製さ
れる形質転換細胞を用いることもできる。また、スクリ
ーニングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体で
ある組織も含まれる。
【0103】上記本発明のスクリーニング方法2)の工
程(i)において、被験物質とGRF受容体発現可能細
胞とを接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞
が死滅せず且つGRF受容体の遺伝子が発現し得る培養
条件(温度、pH、培地組成など)を選択するのが好ま
しい。
【0104】抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の
選別は、例えば上記条件で被験物質とGRF受容体発現
可能細胞とを接触させて、GRF受容体の発現量を抑制
する物質を探索することによって実施できる。具体的に
は、被験物質存在下でGRF受容体発現可能細胞を培養
した場合のGRF受容体の発現量が、被験物質非存在下
で上記に対応するGRF受容体発現可能細胞を培養した
場合に得られるGRF受容体の発現量(対照発現量)よ
りも低下することを指標として、当該被験物質を候補物
質として選別することができる。なお、ここでいう低下
には、対照発現量と対比するまでもなく、GRF受容体
が全く発現しない場合(GRF受容体遺伝子(mRN
A)が全く発現しない場合、GRF受容体タンパクが全
く生成しない場合)、すなわちGRF受容体の発現量が
実質的にゼロの場合も包含される。
【0105】上記のスクリーニング方法2)の工程(ii)
において、GRF受容体の発現量は、GRF受容体遺伝
子(mRNA)の発現量を測定するか、またはGRF受
容体タンパクの生成量を測定することによって評価する
ことができる。また、GRF受容体の発現量を測定する
方法は、直接これらの遺伝子(mRNA)発現量や蛋白
質生成量を測定する方法でなくても、これらを反映する
方法であればよい。すなわち、工程(ii)においてGRF
受容体の発現量を測定するとは、直接的または間接的な
方法の別を問わず、GRF受容体遺伝子の発現量やGR
F受容体蛋白質の生成量が評価できる方法の実施を広く
包含するものである。
【0106】具体的には、GRF受容体の発現量の測定
(検出および定量)は、GRF受容体発現可能細胞のG
RF受容体mRNAの発現量を当該GRF受容体mRN
Aの塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチ
ド等を利用してノーザンブロット法、RT-PCR法な
どの公知の方法やDNAアレイを利用して測定したり、
またGRF受容体発現可能細胞の細胞表面に発現したG
RF受容体のタンパク量を抗GRF受容体抗体を利用し
てウエスタンブロット法等の公知の方法を行うことによ
って実施することができる。また、GRF受容体の発現
量の測定(検出及び定量)は、GRF受容体遺伝子制御
領域〔例えば、GRF受容体のプロモーター(Genbank
Accession number:AF267729, AF121969, AF127135な
ど)の下流領域〕に、例えばルシフェラーゼ遺伝子、ク
ロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ遺伝
子、βグルクロニダーゼ遺伝子、βガラクトシダーゼ遺
伝子、エクオリン遺伝子などのレポーター遺伝子等のマ
ーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を導入した細胞株を
用いて、当該マーカー遺伝子由来の蛋白質の活性を測定
することによっても実施することができる。本発明のG
RF受容体の発現量を指標とした抗自己免疫疾患剤の有
効成分(標的物質)のスクリーニング方法には、かかる
マーカー遺伝子の発現量を指標として標的物質を探索す
る方法も包含される。なお、融合遺伝子の作成及びマー
カー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で行うことが
できる。
【0107】3)GRFの発現又は分泌を阻害する作用
を指標としたスクリーニング方法 当該スクリーニング方法は、被験物質の中からGRF阻
害作用を有する物質を、GRFの発現または分泌に対す
る阻害作用を指標として探索し、抗自己免疫疾患剤の有
効成分として取得する方法である。
【0108】当該スクリーニング方法は、特に制限され
ず当業者の技術常識に基づいて適宜設計することが可能
であるが、一例として、GRFを発現可能な細胞に被験
物質を接触させた場合と被験物質を接触させない場合と
で、当該細胞のGRFの発現量または分泌量を比較し評
価することを含むスクリーニング方法を挙げることがで
きる。当該スクリーニング方法は、具体的には下記の工
程(i)、(ii)及び(iii)を行うことによって実施すること
ができる。 (i) 被験物質をGRFを発現可能な細胞を接触させる工
程、(ii) 被験物質を接触させたGRF発現可能細胞の
GRFの発現量または分泌量を測定し、該発現量または
分泌量を被験物質を接触させない上記に対応するGRF
発現可能細胞(対照細胞)のGRFの発現量または分泌
量(対照発現量または対照分泌量)と比較する工程、及
び(iii) 上記(ii)の比較結果に基づいて、対照発現量ま
たは対照分泌量に比してGRFの発現量または分泌量を
低下させる被験物質を選択する工程。
【0109】かかるスクリーニングに用いられる細胞と
しては、天然または組換え体の別を問わず、GRFを発
現し得る細胞であればよい。またGRFの由来も特に制
限されず、ヒト由来のものであっても、マウスなどヒト
以外の哺乳類や他の生物種に由来するものであってもよ
い。かかる細胞として、具体的にはGRFをコードする
遺伝子を有する腫瘍細胞(ヒト及びその他の生物種由来
のものを含む)、単離調製された初代腫瘍培養細胞を挙
げることができる。また、前述する方法等によりGRF
のcDNAを有する発現ベクターを導入して調製される
形質転換細胞を用いることもできる。また、スクリーニ
ングに用いられる細胞の範疇には、細胞の集合体である
組織も含まれる。
【0110】上記本発明のスクリーニング方法3)の工
程(i)において、被験物質とGRF発現可能細胞とを
接触させる条件は、特に制限されないが、該細胞が死滅
せず且つGRF遺伝子(mRNA)が発現し得培養条件
(温度、pH、培地組成など)、または生成したGRF
タンパクが分泌し得る培養条件(温度、pH、培地組成
など)を選択するのが好ましい。
【0111】抗自己免疫疾患剤の有効成分の候補物質の
選別は、例えば上記条件で被験物質とGRF発現可能細
胞とを接触させて、GRFの発現量または分泌量を抑制
する物質を探索することによって実施できる。具体的に
は、被験物質存在下でGRF発現可能細胞を培養した場
合のGRFの発現量または分泌量が、被験物質非存在下
で上記に対応するGRF発現可能細胞を培養した場合に
得られるGRFの発現量または分泌量(対照発現量また
は対照分泌量)よりも低下することを指標として、当該
被験物質を候補物質として選別することができる。な
お、ここでいう低下には、対照発現量または対照分泌量
と対比するまでもなく、GRFが全く発現しない場合
(GRF遺伝子(mRNA)が全く発現しない場合、G
RFタンパクが全く生成しない場合)やGRFタンパク
が全く分泌されない場合、すなわちGRFの発現量また
は分泌量が実質的にゼロの場合も包含される。
【0112】上記のスクリーニング方法3)の工程(ii)
において、GRFの発現量は、GRF遺伝子(mRN
A)の発現量を測定するか、またはGRF蛋白質の生成
量を測定することによって評価することができる。また
GRFの分泌量は、GRF発現可能細胞を培養して得ら
れる培養液(培養上清)中に含まれるGRF蛋白質量を
測定することによって評価することができる。また、G
RFの発現量またはGRFの分泌量を測定する方法は、
直接これらの遺伝子(mRNA)発現量や蛋白質生成量
を測定したり、また培養上清中のGRF蛋白質量を測定
する方法でなくても、これらを反映する方法であればよ
い。すなわち、工程(ii)においてGRFの発現量または
分泌量を測定するとは、直接的または間接的な方法の別
を問わず、GRF遺伝子の発現量やGRF蛋白質の生成
量または培養上清中に放出されるGRF蛋白質量が評価
できる方法の実施を広く包含するものである。
【0113】GRFの発現量の測定(検出および定量)
は、GRF発現可能細胞のGRFmRNAの発現量を、
当該GRFmRNAの塩基配列と相補的な配列を有する
オリゴヌクレオチド等を利用してノーザンブロット法、
RT-PCR法などの公知の方法やDNAアレイを利用
して測定したり、またGRF発現可能細胞の細胞表面に
発現したGRF生成量を抗GRF抗体を利用してウエス
タンブロット法等の公知の方法で測定することによって
実施することができる。また、GRFの発現量の測定
(検出及び定量)は、GRF遺伝子制御領域〔例えば、
GRFのプロモーター(Genbank Accession number:U10
153など)の下流領域〕に、例えば前述する各種レポー
ター遺伝子等のマーカー遺伝子をつないだ融合遺伝子を
導入した細胞株を用いて、マーカー遺伝子由来の蛋白質
の活性を測定することによっても実施することができ
る。本発明のGRFの発現量を指標とした抗自己免疫疾
患剤の有効成分(標的物質)のスクリーニング方法に
は、かかるマーカー遺伝子の発現量を指標として標的物
質を探索する方法も包含される。なお、融合遺伝子の作
成及びマーカー遺伝子由来の活性測定は、公知の方法で
行うことができる。
【0114】またGRFの分泌量の測定(検出および定
量)は、GRF発現可能細胞を培養し、得られる培養上
清中に含まれるGRF蛋白質量を、例えば抗GRF抗体
を利用してウエスタンブロット法等の公知の方法で測定
することによって実施することができる。
【0115】以上説明した、1)の(1)及び(2)、2)
並びに3)のスクリーニング方法によって被験物質の中
から選別された候補物質は、更に、例えばヒトの各種の
自己免疫疾患を模倣した病態モデル動物を用いた薬効試
験や安全性試験に供することにより、より一層実用的な
抗自己免疫疾患剤の有効成分として取得することができ
る。
【0116】より具体的には、得られた候補物質につい
て、多発性硬化症の病態モデル動物(例えばEAE発症誘
導マウス)を用いた薬効試験を行うことにより、当該候
補物質について多発性硬化症に対する抑制効果(予防効
果、治療効果)を評価することができる。また、得られ
た候補物質について、慢性関節リウマチの病態モデル動
物(例えばコラーゲン誘導性関節炎 [Trentham DE,Town
es AS,Kang AH:Autoimunity to typeII collagens:An e
xperimental model of arthritis J Exp Med 146:857-8
68,1977]、抗原誘導性関節炎、またはアジュバント誘導
性関節炎[Pearson CM:Development of arthritis,pe
riarthritis and periotitis in rats given adjuvant.
Proc Soc Expe Biolo Med 91:95-101,1956]のいずれか
のマウス)を用いた薬効試験を行うことにより、当該候
補物質について慢性関節リウマチに対する抑制効果(予
防効果、治療効果)を評価することができる。このよう
にして選別、取得された物質は、さらにその構造解析結
果に基づいて、化学的合成、生物学的合成(発酵)また
は遺伝子学的操作によって、工業的に製造することがで
きる。
【0117】以上のような本発明のスクリーニング方法
を用いて選択されるGRF阻害作用を有する物質は、前
述の如き抗自己免疫疾患剤の有効成分として有用であ
る。ここで自己免疫疾患としては、具体的には本明細書
の第I章に記載する各種の疾病を任意に挙げることがで
きるが、特に本発明が対象とするGRF阻害作用物質
は、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、及び全身性エリ
テマトーデス、好ましくは多発性硬化症、及び慢性関節
リウマチに対して有効に使用することができる。
【0118】本発明の「抗自己免疫疾患剤」は、各種の
自己免疫疾患に対して、その発症を阻害若しくは抑制す
る作用、その発症を遅延させる作用、発症後その症状を
軽減若しくは改善する作用、または疾患を治癒する作用
のいずれか少なくとも1つの作用を有するものである。
その意味で、上記の「抗自己免疫疾患剤」は、自己免疫
疾患予防剤、自己免疫疾患症状緩和剤、自己免疫疾患改
善剤、または自己免疫疾患治療剤と言うこともでき、よ
って本発明のスクリーニング方法は、これらの有効成分
の探索方法でありえる。
【0119】本発明は、上記のスクリーニング方法によ
り得られるGRF阻害作用を有する物質を有効成分とす
る抗自己免疫疾患剤を提供するものである。
【0120】III.抗自己免疫疾患剤の用法について
下、本発明のGRF阻害作用を有する物質を有効成分と
する抗自己免疫疾患剤の投与形態、投与方法及び投与量
等につき説明する。
【0121】1) GRF阻害作用を有する物質が低分子
化合物、ペプチド又は蛋白質の形態である場合 GRF阻害作用を有する物質が低分子化合物、ペプチド
または抗体などの蛋白質である場合は、これらの物質に
ついて通常用いられる一般的な医薬組成物(医薬製剤)
の形態に調製することができ、その形態に応じて経口ま
たは非経口的に投与することができる。一般的には以下
のような投与形態、及び投与方法が挙げられる。
【0122】投与形態としては、その代表的なものとし
て錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤及びカプセル剤等
の固形製剤や、溶液、懸濁液、乳液、シロップ及びエリ
キシルなどの液剤などの形態を挙げることができる。こ
れらの各種形態は、投与経路に応じて経口投与剤の他、
経鼻剤、経皮剤、直腸投与剤(坐剤)、舌下剤、経膣
剤、注射剤(経静脈、経動脈、経筋肉、皮下、皮内)や
点滴剤等の非経口投与剤に分類することができる。例え
ば、経口投与剤としては、例えば錠剤、丸剤、散剤、粉
末剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液、懸濁液、乳液、及び
シロップ等が、又は直腸投与剤や経膣剤としては、例え
ば錠剤、丸剤、カプセル剤などの形態を採ることができ
る。経皮剤としては、例えばローション等の液剤の他、
クリームや軟膏等の半固形剤の形態を採ることもでき
る。
【0123】注射剤としては、例えば溶液、懸濁液また
は乳剤等の形態を採ることができ、具体的には無菌処理
した水、水−プロピレングリコール溶液、緩衝化液、
0.4重量%濃度の生理食塩水等を例示することができ
る。さらに注射剤は、液剤に調製した後、凍結処理又は
凍結乾燥処理されていてもよく、これにより保存するこ
とができる。後者の凍結乾燥処理で調製される凍結乾燥
製剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、再溶解して使
用される。
【0124】上記の医薬組成物(医薬製剤)の形態に
は、当該分野で行われている通常の手法により、GRF
阻害作用を有する物質と薬学的に許容される担体を配合
することによって調製される。薬学的に許容される担体
としては、賦形剤、希釈剤、充填剤、増量剤、結合剤、
崩壊剤、湿潤剤、滑沢剤及び分散剤などを例示すること
ができる。また、さらに当該分野において通常用いられ
る添加剤を配合することもできる。かかる添加剤は、調
製する医薬組成物の形態に応じて、例えば安定化剤、殺
菌剤、緩衝剤、増粘剤、pH調整剤、乳化剤、懸濁化
剤、防腐剤、香料、着色料、張度調節剤、キレート剤、
界面活性剤などの中から適宜選択して用いることができ
る。
【0125】このような形態を有する医薬組成物は、目
的とする疾患、標的臓器等に応じた適当な投与経路によ
り投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内また
は筋肉内に投与するか、又は病変の認められる組織その
ものに直接局所投与してもよいし、また経口投与や直腸
投与も可能である。
【0126】これらの医薬組成物の投与量や投与回数
は、投与形態、患者の疾患やその症状、患者の年齢や体
重等によって異なり、一概に規定することができない
が、通常は成人に対し1日あたり有効成分の量として約
0.0001〜約500mgの範囲、好ましくは約0.
001〜約100mgの範囲を1回または数回に分けて
投与することができる。
【0127】2) GRF阻害作用を有する物質がポリ
ヌクレオチドの形態である場合 GRF阻害作用を有する物質が、GRF遺伝子やGRF
受容体遺伝子の塩基配列と相補的な塩基配列を有するア
ンチセンスポリヌクレオチド等のようにポリヌクレオチ
ドの形態を有するものである場合は、遺伝子治療剤また
は予防剤の形態を採ることができる。近年、種々の遺伝
子を用いた遺伝子治療の報告がなされており、遺伝子治
療は技術的にも確立された技術となっている。
【0128】遺伝子治療剤は、ベクターに目的のポリヌ
クレオチドを導入して調製したり、また当該ベクターで
適当な細胞を形質転換することによっても調製できる。
ここで、患者への投与形態は、上記目的のポリヌクレオ
チドを導入するベクターとして(1)非ウイルスベクター
を用いた場合と、(2)ウイルスベクターを用いた場合の
二つに大別される。ベクターとしてウイルスベクターを
用いる場合と非ウイルスベクターを用いる場合につい
て、遺伝子治療剤の調製法及び投与法は実験手引書に詳
しく解説されている(例えば、「別冊実験医学、遺伝子
治療の基礎技術」,羊土社,1996、別冊実験医学:「遺伝
子導入&発現解析実験法」, 羊土社, 1997、「日本遺伝
子治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック」、エ
ヌ・ティー・エス、1999など)。以下、用いるベクター
毎に遺伝子治療剤の調製法及び投与法を具体的に説明す
る。
【0129】(1)ベクターとして非ウイルスベクター
を用いる場合 非ウイルスベクターとしては、生体内、好ましくはヒト
生体内で目的のポリペプチドや蛋白質をコードする遺伝
子(ポリヌクレオチド)を発現させることのできる任意
の発現ベクターを用いることができる。特に制限されな
いが、例えばpCAGGS(Gene 108,193-200(1991))
や、pBK−CMV、pcDNA3、pZeoSV(以
上、インビトロゲン社、ストラタジーン社)などが挙げ
られる。
【0130】患者へのポリヌクレオチドの導入は、これ
らの非ウイルスベクター(発現ベクター)に常法に従っ
て目的とするポリヌクレオチドを導入し、得られた組換
え発現ベクターを投与することによって行うことができ
る。これにより、目的とするポリヌクレオチドを被験者
の細胞や組織に導入することができる。
【0131】より具体的には、細胞へのポリヌクレオチ
ド導入法としては、リン酸−カルシウム共沈法や、微小
ガラス管を用いたDNA(ポリヌクレオチド)の直接注
入法などが挙げられる。
【0132】また、組織へのポリヌクレオチド導入法と
しては、内包型リポソーム(internal type liposome)
または静電気型リポソーム(electrostatic type lipos
ome)によるポリヌクレオチド導入法、HVJ−リポソ
ーム法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ-AVEリポソ
ーム法)、レセプター介在性ポリヌクレオチド導入法、
パーティクル銃で担体(金属粒子)とともにポリヌクレ
オチドを細胞に移入する方法、naked−DNAの直
接導入法、正電荷ポリマーによる導入法等の方法を例示
することができる。
【0133】(2)ベクターとしてウイルスベクターを
用いる場合 ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルスやレ
トロウイルスに由来するベクター等が挙げられる。より
具体的には、例えば、無毒化したレトロウイルス、アデ
ノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、
ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、ポリオウイル
ス、シンビスウイルス、センダイウイルス、SV40、
免疫不全症ウイルス(HIV)等のDNAウイルス又は
RNAウイルスのベクターを挙げることができる。中で
もアデノウイルスベクターは、他のウイルスベクターよ
りも感染効率がはるかに高いことが知られており、この
観点からは、アデノウイルスベクターを用いることが好
ましい。
【0134】患者へのポリヌクレオチドの導入は、これ
らのウイルスベクターに常法に従って目的とするポリヌ
クレオチドを導入し、得られた組換えウイルスを所望の
細胞に感染させることによって行うことができる。これ
により、細胞内に目的とするポリヌクレオチドを導入す
ることが可能である。
【0135】このようにして調製される遺伝子治療剤の
患者への投与方法としては、遺伝子治療剤を直接体内に
導入するin vivo法、及び、ヒトからある種の細胞を取
り出して体外で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細
胞をヒト体内に戻すex vivo法がある(「日経サイエン
ス」,1994年4月号,20-45頁;「月刊薬事」,36(1),23-4
8,1994;「実験医学増刊」,12(15),1994;「日本遺伝子
治療学会編 遺伝子治療開発研究ハンドブック」,エヌ・
ティー・エス,1999)。本発明が対象とする自己免疫疾
患のうち、全身性自己免疫疾患の予防または治療のため
に用いる場合は、in vivo法により体内に導入すること
が好ましい。
【0136】In vivo法による投与は、目的の疾患、標
的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され得る。
例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内などに投与す
るか、又は病変の認められる組織そのものに直接局所投
与することができる。
【0137】遺伝子治療剤の形態としては、上記の各投
与形態に応じて種々の製剤形態を採用することができ
る。例えば注射剤の形態を有する場合、当該注射剤は常
法により調製することができ、例えばPBS等の緩衝
液、生理食塩水、滅菌水等の溶剤に有効成分となるポリ
ヌクレオチドを溶解した後、必要に応じてフィルター等
で濾過滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによ
り調製することができる。当該注射剤には必要に応じて
慣用の担体等を加えても良い。また、HVJ−リポソー
ム等のリポソームにおいては、懸濁剤、凍結剤及び遠心
分離濃縮凍結剤などの各種のリポソーム製剤の形態とす
ることができる。
【0138】また、疾患部位の周囲に遺伝子を存在し易
くするために、徐放性の製剤(ミニペレット製剤等)を
調製し患部近くに埋め込むことも可能であり、あるいは
オスモチックポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に
投与することも可能である。
【0139】遺伝子治療剤中のポリヌクオチドの含量
は、治療対象とする疾患、患者の年齢、体重等により適
宜調節することができるが、通常、各々のポリヌクレオ
チドとして約0.0001〜約100mg、好ましくは
約0.001〜約10mgであり、これを数日ないし数
ヶ月に1回投与するのが好ましい。
【0140】また、前述する本発明は抗自己免疫疾患剤
を用いる自己免疫疾患の予防方法または治療方法であ
る。当該方法は、自己免疫疾患に罹患した被験者(自己
免疫疾患患者)に本発明の抗自己免疫疾患剤を有効量投
与することによって実施することができる。ここで自己
免疫疾患としては、第I章に記載する各種の自己免疫疾
患を挙げることができる。好ましくは多発性硬化症、慢
性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスであり、より
好ましくは多発性硬化症、慢性関節リウマチである。
【0141】また、自己免疫疾患に罹患した被験者に
は、自己免疫疾患の具体的な病態を発症している被験者
だけでなく、発症していない場合であっても潜在的に自
己免疫疾患の発症の可能性を有している被験者も含まれ
る。従って、本発明でいう自己免疫疾患の予防には、自
己免疫疾患に罹患した被験者について自己免疫疾患の発
症を予防すること、発症程度を抑制することが包含され
る。また、本発明でいう自己免疫疾患の治療には、自己
免疫疾患に罹患した被験者について発症した自己免疫疾
患の病態(症状)を緩和ないしは改善することが包含さ
れる。
【0142】抗自己免疫疾患剤の投与形態、投与方法、
及び投与量については、前述の通りである。
【0143】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される
ものではない。
【0144】実施例1 成長ホルモン放出因子受容体
(GRFR)遺伝子の欠損が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EA
E)の発症に与える影響の検討 自己免疫疾患の発症に対する成長ホルモン放出因子(GR
F)の関与を調べるため、GRF受容体遺伝子を欠損し
たマウスについて、ヒトの多発性硬化症のモデルである
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発症の有無を検討
した。実験方法と結果を以下に示す。
【0145】<実験方法>実験には、GRFR遺伝子ホ
モ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/lit)、GRFR遺
伝子ヘテロ欠損マウス(C57BL/6J-Ghrhrlit/+)および
対照として野生型マウス(C57BL/6J)(全てメス、いず
れもThe Jackson Laboratoryより購入)を用いた。マウ
スはいずれも5週齢のものを購入し、毎日午前8時から
午後8時まで照明を点灯し、水および固形飼料(CE-2;
日本クレア)を自由に摂取できるようにして飼育した。
【0146】これらのマウス(各群5匹づつ、合計15
匹)に人為的に実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の発
症を誘導させた。具体的には、これらの各マウスに、生
理食塩水(大塚製薬(株)製)に溶解した2mg/mlのミエ
リンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MOG)35-
55合成ペプチド(アミノ酸配列:Met-Glu-Val-Gly-Trp-
Tyr-Arg-Ser-Pro-Phe-Ser-Arg-Val-Val-His-Leu-Tyr-Ar
g-Asn-Gly-Lys:配列番号8)(アコード社製)の溶液
と完全フロイントアジュバント(CFA)(ディフコ社製)
を1:1に混合したエマルジョンを、100μlずつ大腿
部皮下に感作し、感作直後および2日後に生理食塩水
(大塚製薬(株)製)に溶解した200ngの百日咳毒素(リス
ト・バイオロジカル・ラボラトリーズ社製)を腹腔内投
与して、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を惹起させ
た。なお、すべてのマウスは上記実験期間中も含めて全
飼育期間を通じて飼料と水を自由に摂取出来るようにし
た。
【0147】27日間にわたり、毎日体重を測定し、E
AE症状を観察して、以下の基準に基づいてEAE症状
のスコアを記録した。
【0148】[EAE症状のスコア]0:無症状、1:尾
の麻痺、2:弱い後ろ足の麻痺、3:中程度から強度の
後ろ足の麻痺あるいは弱い前足の麻痺、またはその両
方、4:完全な後ろ足の麻痺あるいは中程度から強度の
前足の麻痺、またはその両方、5:四肢の麻痺あるいは
死戦期にある、6:死亡。
【0149】<結果>得られたEAE症状のスコアの平
均値の推移を図1(A)示す。その結果、GRFRホモ欠
損マウスでは、全観察期間(27日間)を通じて実験的自己
免疫性脳脊髄炎の発症(スコア1)が認められなかっ
た。またGRFRヘテロ欠損マウスについても、野生型
マウスに比較してEAEスコアの有意な低下が認められ
た。
【0150】またEAEの発症率の推移を図1(B)に
示す。その結果、GRFRホモ欠損マウスの発症率は全
観察期間(27日間)を通じて0であった。またGRFR
ヘテロ欠損マウスも野生型マウスに比較して発症率が低
く抑えられた。これらの結果から、GRFR遺伝子の欠
損によりEAEの発症が強く抑制されることが明らかと
なった。
【0151】実施例2 成長ホルモン放出因子(GR
F)アンタゴニストの投与が実験的自己免疫性脳脊髄炎
(EAE)の発症に与える影響の検討 GRFアンタゴニストの投与が自己免疫疾患の発症に与
える影響を調べるため、ヒトの多発性硬化症の動物モデ
ルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて検
討を行った。実験方法と結果を以下に示す。
【0152】<実験方法>実験には野生型マウス(PLSJ
LF1/J)(雌、The Jackson Laboratoryより購入)を用
いた。マウスは5週齢で購入し、毎日午前8時から午後
8時まで照明を点灯し、水および固形飼料(CE-2;日本
クレア)を自由に摂取できるようにして飼育した。まず
これらのマウス(合計10匹)に、生理食塩水(大塚製
薬(株)製)に溶解した2mg/mlのウサギミエリン塩基性
タンパク質(MBP)(シグマ社製)と完全フロイントアジュ
バント(CFA)(ディフコ社)を1:1に混合したエマル
ジョンを、100μlずつ大腿部皮下に感作し、感作の直
後および2日後に生理食塩水に溶解した200ngの百日咳毒
素(リスト・バイオロジカル・ラボラトリーズ社製)を腹
腔内投与して、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を惹
起させた。次いで、GRFアンタゴニストの投与は以下の
手順に従って行った。MBP感作と百日咳毒素の投与を
行ったマウス(計10匹)を2群に分け、1群(5匹)
には、マウス1匹あたり30μgのGRFアンタゴニスト
(MZ-4-71:米国カルビオケムノバビオケム社製)をM
BP感作後8日目から15日目まで毎日1回、頚背部皮
下部に投与した(GRFアンタゴニスト(MZ-4-71)投与
群)。もう1群(5匹)には、対照として同量の生理食
塩水を同様にMBP感作後8日目から15日目まで毎日
1回、頚背部皮下部に投与した(生理食塩水投与群)。
なお、すべてのマウスは上記実験時間を含む全飼育期間
を通じて飼料と水を自由に摂取出来るようにした。毎日
体重を測定し、EAE症状を観察して、下記の基準に基
づいてEAE症状のスコアを記録した。
【0153】<EAE症状のスコア>0:無症状、1:
尾の麻痺、2:弱い後ろ足の麻痺、3:中程度から強度
の後ろ足の麻痺あるいは弱い前足の麻痺、またはその両
方、4:完全な後ろ足の麻痺あるいは中程度から強度の
前足の麻痺、またはその両方、5:四肢の麻痺あるいは
死戦期にある、6:死亡。
【0154】<結果>結果を図2に示す。図2(A)には
EAEスコアの平均値の推移を示す。GRFアンタゴニ
スト(MZ-4-71)投与群では、生理食塩水投与群と比較
してEAEスコアの低下が認められた。 図2(B)に
はEAEの発症率の推移を示した。GRFアンタゴニス
ト(MZ-4-71)投与群は、生理食塩水投与群に比較して
EAE発症の開始に遅延が認められた。これらの結果か
ら、GRFアンタゴニストの投与によりEAEの発症が
抑制されることが明らかとなった。
【0155】実施例3 GRF受容体(GRFR)発現細
胞を用いた抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニン
グ GRF受容体のcDNAを含有する発現ベクターを用い
て、常法によりCHO細胞やCOS細胞を形質転換し、
GRF受容体を細胞表面に安定に発現する形質転換細胞
を取得する。または常法(Proc. Natl. Acad. Sci. US
A, Vol.91, p12298-12302 (1994)を参照)によりラット
脳下垂体前葉細胞を単離・調製する。他方、GRF(住
友製薬(株)製)を常法によりビオチンまたはラジオア
イソトープ(125I)などで標識する。
【0156】次に、前記GRF受容体発現細胞(形質転
換細胞、またはラット脳下垂体前葉細胞)に対して、
(i)標識GRF、又は(ii)標識GRF及び被験物質を添
加し、所定時間後、これら(i)の反応系及び(ii)の反応
系における標識GRFのGRF受容体発現細胞への結合
性を測定し、両者を比較する。(ii)の反応系において、
結合性が認められないか、または(i)の反応系における
結合性と比較して結合性が低くなる被験物質を、抗自己
免疫疾患剤の有効成分の候補物質として選択する。
【0157】また得られた候補物質は、さらにGRF阻
害作用を検出する別のスクリーニング系、およびEAE
モデル動物に対する投与実験などに供される。これによ
り、前記候補物質について抗自己免疫疾患剤の有効成分
となり得ることを確認することができる。
【0158】実施例4 GRF発現可能細胞を用いた
抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング GRF産生腫瘍細胞に対し(i)被験物質を添加しない
群と、(ii)被験物質を添加した群を準備する。各群に
ついて一定期間培養し、次いで細胞を回収して常法によ
り溶解し、ノーザンブロット解析によりGRFのmRN
Aの発現量を比較する。あるいは、細胞培養上清を回収
し、ウエスタンブロット解析により、培養液中に分泌さ
れたGRFのタンパク量を比較する。これらのスクリー
ニングにより、(ii)の群についてGRF発現またはGR
F分泌が認められない場合、または(ii)の群のGRF発
現量またはGRF分泌量が、(i)の群で得られる結果よ
りも少ない場合、(ii)に用いた被験物質を抗自己免疫疾
患剤の有効成分の候補物質として選択する。
【0159】また得られた候補物質は、さらにGRF阻
害作用を検出する別のスクリーニング系、およびEAE
モデル動物に対する投与実験などに供される。これによ
り、前記候補物質について抗自己免疫疾患剤の有効成分
となり得ることを確認することができる。
【0160】
【発明の効果】本発明により、GRF阻害作用という新
たな作用メカニズムに基づく新規な抗自己免疫疾患剤を
提供することができる。さらに本発明により、GRF阻
害作用という新たな作用メカニズムに基づいて効果を発
揮する抗自己免疫疾患剤の有効成分を取得するためのス
クリーニング方法が提供される。本発明のGRF阻害作
用を指標としたスクリーニング方法によれば、新たな作
用メカニズムに基づいて自己免疫疾患の発症を予防した
り治療することのできる有効成分を取得することが可能
である。よって、本発明のスクリーニング方法は、自己
免疫疾患の予防または治療に有効な新規薬剤の開発に好
適に利用することができる。
【0161】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Sumitomo Pharmaceuticals Company, Limited <120> Novel anti-autoimmune composition by inhibition of GRF action <130> 20102JP <150> JP2001-148607 <151> 2001-5-18 <160> 8 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 327 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 1 atgccactct gggtgttctt ctttgtgatc ctcaccctca gcaacagctc ccactgctcc 60 ccacctcccc ctttgaccct caggatgcgg cggtatgcag atgccatctt caccaacagc 120 taccggaagg tgctgggcca gctgtccgcc cgcaagctgc tccaggacat catgagcagg 180 cagcagggag agagcaacca agagcgagga gcaagggcac ggcttggtcg tcaggtagac 240 agcatgtggg cagaacaaaa gcaaatggaa ttggagagca tcctggtggc cctgctgcag 300 aagcacagca ggaactccca gggatga 327 <210> 2 <211> 108 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 2 Met Pro Leu Trp Val Phe Phe Phe Val Ile Leu Thr Leu Ser Asn Ser 1 5 10 15 Ser His Cys Ser Pro Pro Pro Pro Leu Thr Leu Arg Met Arg Arg Tyr 20 25 30 Ala Asp Ala Ile Phe Thr Asn Ser Tyr Arg Lys Val Leu Gly Gln Leu 35 40 45 Ser Ala Arg Lys Leu Leu Gln Asp Ile Met Ser Arg Gln Gln Gly Glu 50 55 60 Ser Asn Gln Glu Arg Gly Ala Arg Ala Arg Leu Gly Arg Gln Val Asp 65 70 75 80 Ser Met Trp Ala Glu Gln Lys Gln Met Glu Leu Glu Ser Ile Leu Val 85 90 95 Ala Leu Leu Gln Lys His Ser Arg Asn Ser Gln Gly 100 105 <210> 3 <211> 1617 <212> DNA <213> Homo sapiens <400> 3 agcagccaag gcttactgag gctggtggag ggagccactg ctgggctcac catggaccgc 60 cggatgtggg gggcccacgt cttctgcgtg ttgagcccgt taccgaccgt attgggccac 120 atgcacccag aatgtgactt catcacccag ctgagagagg atgagagtgc ctgtctacaa 180 gcagcagagg agatgcccaa caccaccctg ggctgccctg cgacctggga tgggctgctg 240 tgctggccaa cggcaggctc tggcgagtgg gtcaccctcc cctgcccgga tttcttctct 300 cacttcagct cagagtcagg ggctgtgaaa cgggattgta ctatcactgg ctggtctgag 360 ccctttccac cttaccctgt ggcctgccct gtgcctctgg agctgctggc tgaggaggaa 420 tcttacttct ccacagtgaa gattatctac accgtgggcc atagcatctc tattgtagcc 480 ctcttcgtgg ccatcaccat cctggttgct ctcaggaggc tccactgccc ccggaactac 540 gtccacaccc agctgttcac cacttttatc ctcaaggcgg gacgtgtgtt cctgaaggat 600 gctgcccttt tccacagcga cgacactgac cactgcagct tctccactgt tctatgcaag 660 gtctctgtgg ccgcctccca tttcgccacc atgaccaact tcagctggct gttggcagaa 720 gccgtctacc tgaactgcct cctggcctcc acctccccca gctcaaggag agccttctgg 780 tggctggttc tcgctggctg ggggctgccc gtgctcttca ctggcacgtg ggtgagctgc 840 aaactggcct tcgaggacat cgcgtgctgg gacctggacg acacctcccc ctactggtgg 900 atcatcaaag ggcccattgt cctctcggtc ggggtgaact ttgggctttt tctcaatatt 960 atccgcatcc tggtgaggaa actggagcca gctcagggca gcctccatac ccagtctcag 1020 tattggcgtc tctccaagtc gacacttttc ctgatcccac tctttggaat tcactacatc 1080 atcttcaact tcctgccaga caatgctggc ctgggcatcc gcctccccct ggagctggga 1140 ctgggttcct tccagggctt cattgttgcc atcctctact gcttcctcaa ccaagaggtg 1200 aggactgaga tctcacggaa gtggcatggc catgaccctg agcttctgcc agcctggagg 1260 acccgtgcta agtggaccac gccttcccgc tcggcggcaa aggtgctgac atctatgtgc 1320 taggctgcct catcacgcca ctggagtcca cacttgaatt tgggcagcta ccacgggtct 1380 gccatgctct ggaggagcaa gggggccaca tccccacccc agctgttacc cagcccgggg 1440 caggtgcagc ccttcctccc tgtctctgca tctgactctc ttttgaggtc cctgtatgtc 1500 tacctctgac ttctgtggtc cctctgtgtc tgctctcatc cattcctctt actggggcct 1560 ggggctctag cccaaggctc agaggagcca ataaacctgt aaatgaaaaa aaaaaaa 1617 <210> 4 <211> 423 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 4 Met Asp Arg Arg Met Trp Gly Ala His Val Phe Cys Val Leu Ser Pro 1 5 10 15 Leu Pro Thr Val Leu Gly His Met His Pro Glu Cys Asp Phe Ile Thr 20 25 30 Gln Leu Arg Glu Asp Glu Ser Ala Cys Leu Gln Ala Ala Glu Glu Met 35 40 45 Pro Asn Thr Thr Leu Gly Cys Pro Ala Thr Trp Asp Gly Leu Leu Cys 50 55 60 Trp Pro Thr Ala Gly Ser Gly Glu Trp Val Thr Leu Pro Cys Pro Asp 65 70 75 80 Phe Phe Ser His Phe Ser Ser Glu Ser Gly Ala Val Lys Arg Asp Cys 85 90 95 Thr Ile Thr Gly Trp Ser Glu Pro Phe Pro Pro Tyr Pro Val Ala Cys 100 105 110 Pro Val Pro Leu Glu Leu Leu Ala Glu Glu Glu Ser Tyr Phe Ser Thr 115 120 125 Val Lys Ile Ile Tyr Thr Val Gly His Ser Ile Ser Ile Val Ala Leu 130 135 140 Phe Val Ala Ile Thr Ile Leu Val Ala Leu Arg Arg Leu His Cys Pro 145 150 155 160 Arg Asn Tyr Val His Thr Gln Leu Phe Thr Thr Phe Ile Leu Lys Ala 165 170 175 Gly Arg Val Phe Leu Lys Asp Ala Ala Leu Phe His Ser Asp Asp Thr 180 185 190 Asp His Cys Ser Phe Ser Thr Val Leu Cys Lys Val Ser Val Ala Ala 195 200 205 Ser His Phe Ala Thr Met Thr Asn Phe Ser Trp Leu Leu Ala Glu Ala 210 215 220 Val Tyr Leu Asn Cys Leu Leu Ala Ser Thr Ser Pro Ser Ser Arg Arg 225 230 235 240 Ala Phe Trp Trp Leu Val Leu Ala Gly Trp Gly Leu Pro Val Leu Phe 245 250 255 Thr Gly Thr Trp Val Ser Cys Lys Leu Ala Phe Glu Asp Ile Ala Cys 260 265 270 Trp Asp Leu Asp Asp Thr Ser Pro Tyr Trp Trp Ile Ile Lys Gly Pro 275 280 285 Ile Val Leu Ser Val Gly Val Asn Phe Gly Leu Phe Leu Asn Ile Ile 290 295 300 Arg Ile Leu Val Arg Lys Leu Glu Pro Ala Gln Gly Ser Leu His Thr 305 310 315 320 Gln Ser Gln Tyr Trp Arg Leu Ser Lys Ser Thr Leu Phe Leu Ile Pro 325 330 335 Leu Phe Gly Ile His Tyr Ile Ile Phe Asn Phe Leu Pro Asp Asn Ala 340 345 350 Gly Leu Gly Ile Arg Leu Pro Leu Glu Leu Gly Leu Gly Ser Phe Gln 355 360 365 Gly Phe Ile Val Ala Ile Leu Tyr Cys Phe Leu Asn Gln Glu Val Arg 370 375 380 Thr Glu Ile Ser Arg Lys Trp His Gly His Asp Pro Glu Leu Leu Pro 385 390 395 400 Ala Trp Arg Thr Arg Ala Lys Trp Thr Thr Pro Ser Arg Ser Ala Ala 405 410 415 Lys Val Leu Thr Ser Met Cys 420 <210> 5 <211> 10 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 5 Glu Gln Lys Lue Ile Ser Glu Glu Asp Ile 510 <210> 6 <211> 6 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 6 His His His His His His 5 <210> 7 <211> 7 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 7 Asp Tyr Lys Asp Asp Asp Asp 5 <210> 8 <211> 21 <212> PRT <213> Artificial Sequence <400> 8 Met Glu Val Gly Trp Tyr Arg Ser Pro Phe Ser Arg Val Val His Leu 5 10 15 Tyr Arg Asn Gly Lys 20
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1における実験結果を示す図で
ある。具体的には、EAE発症に対するGRFの関与に
ついて検討するため、GRFR遺伝子ホモ欠損マウス
(―□―)、GRFRヘテロ欠損マウス(―△―)、お
よび対照として用いた野生型マウス(―●―)のそれぞ
れについて、人為的に誘導したEAE発症の有無を示し
たグラフである。図中(A)にはEAEスコアの平均値の
推移を示す。野生型マウスでは感作後16日目からEAE
の発症(スコア1)が見られ始め、感作後25日目にはス
コアが1.2に達した。一方GRFRホモ欠損マウスに
おいては全観察期間(27日間)を通じて全く発症が認め
られなかった。またGRFRヘテロ欠損マウスではEA
Eは発症したものの、その平均スコア値は野生型マウス
の平均スコア値に比較して著しく低かった。図中(B)
にはEAE発症率の推移を示す。GRFRホモ欠損マウ
スは全観察期間を通じて発症率が0であった。またGR
FRヘテロ欠損マウスは野生型マウスと比較してEAE
の発症率は著しく低かった。
【図2】 図2は、PLSJLF1マウスにMBPの感作と百日咳
毒素の投与によりEAE発症を誘導し、GRFアンタゴニスト
であるMZ-4-71投与のEAE発症に対する影響を検討した結
果を示したグラフである。図中(A)にはEAEスコアの
平均の推移を示した。図中、黒い太線で示した期間はMZ
-4-71または対照として生理食塩水を投与した期間を示
す。生理食塩水投与群では感作後12日目から発症が見ら
れ、感作後16日目にはスコアの平均値は4.2に達した。
一方、MZ-4-71投与群では感作後11日目から発症が認め
られたが、感作後13日目に平均スコアが0.3に達した後
に一旦寛解が導入され、感作後17日目にはすべてのマウ
スが寛解となり、平均スコアは0になった。感作後20日
目から再発が見られたが、その後の観察期間中を通じて
平均スコアの最大値は2.2(感作後23日目)にとどまっ
た。これらの結果から、GRFアンタゴニストの投与によ
ってEAE発症が抑制されることが示された。図中(B)
には発症率の推移を示した。図中、黒い太線で示した期
間はMZ-4-71または対照として生理食塩水を投与した期
間を示す。生理食塩水投与群では、感作後12日目から13
日目に急速な発症が見られ、感作後13日目には発症率が
80%に達した。一方、MZ-4-71投与群では発症は緩慢に開
始し、感作後26日目の時点でも発症率は60%にとどまっ
た。これらの結果から、発症率の点からもGRFアンタゴ
ニストの投与によってEAE発症が抑制されることが示さ
れた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 25/00 A61P 29/00 101 4C087 29/00 101 37/02 37/02 43/00 111 43/00 111 C12Q 1/02 C12Q 1/02 G01N 33/15 Z G01N 33/15 33/50 Z 33/50 33/566 33/566 A61K 37/02 // C12N 15/09 C12N 15/00 A Fターム(参考) 2G045 AA40 4B024 AA01 AA11 BA80 CA04 DA02 GA11 4B063 QA01 QA05 QA18 QQ79 QR77 QX01 QX07 4C084 AA02 AA03 AA13 AA17 BA35 BA44 CA01 CA53 MA17 MA23 MA24 MA44 MA65 MA66 MA67 NA14 ZA022 ZB072 ZB152 ZC422 4C086 AA01 AA02 EA16 MA01 MA04 MA17 MA23 MA24 MA44 MA65 MA66 MA67 NA14 ZA02 ZB07 ZB15 ZC41 ZC42 4C087 AA01 AA02 BC83 CA09 CA12 MA17 MA23 MA24 MA44 MA65 MA66 MA67 NA14 ZA02 ZB07 ZB15 ZC41 ZC42

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する
    物質を有効成分とする抗自己免疫疾患剤。
  2. 【請求項2】 成長ホルモン放出因子阻害作用が、成長
    ホルモン放出因子受容体を介した成長ホルモン放出因子
    の作用を阻害する作用である、請求項1記載の抗自己免
    疫疾患剤。
  3. 【請求項3】 成長ホルモン放出因子阻害作用が、成長
    ホルモン放出因子と成長ホルモン放出因子受容体との結
    合を阻害する作用である、請求項2記載の抗自己免疫疾
    患剤。
  4. 【請求項4】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する
    物質が成長ホルモン放出因子のペプチドアナログであ
    る、請求項3記載の抗自己免疫疾患剤。
  5. 【請求項5】 成長ホルモン放出因子阻害作用が、成長
    ホルモン放出因子の発現又は分泌を阻害する作用である
    か、あるいは成長ホルモン放出因子受容体の発現を阻害
    する作用である、請求項1に記載の抗自己免疫疾患剤。
  6. 【請求項6】 自己免疫疾患が多発性硬化症または慢性
    関節リウマチ症である、請求項1乃至5のいずれかに記
    載の抗自己免疫疾患剤。
  7. 【請求項7】 被験物質の中から成長ホルモン放出因子
    阻害作用を有する物質を探索する工程を有する、抗自己
    免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方法。
  8. 【請求項8】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する
    物質を、成長ホルモン放出因子受容体を介した成長ホル
    モン放出因子の作用の阻害を指標として探索することを
    特徴とする請求項7に記載のスクリーニング方法。
  9. 【請求項9】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有する
    物質を、成長ホルモン放出因子と成長ホルモン放出因子
    受容体との結合阻害を指標として探索することを特徴と
    する請求項8に記載のスクリーニング方法。
  10. 【請求項10】 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含
    む請求項9に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスク
    リーニング方法:(i) 被験物質の存在下で、成長ホル
    モン放出因子受容体若しくはそのホモログ(成長ホルモ
    ン放出因子受容体等)と成長ホルモン放出因子若しくは
    そのホモログ(成長ホルモン放出因子等)とを接触させ
    る工程、(ii) 上記成長ホルモン放出因子受容体等に対
    する成長ホルモン放出因子等の結合量を測定し、当該結
    合量を、被験物質非存在下で成長ホルモン放出因子受容
    体等と成長ホルモン放出因子等とを接触させることによ
    って得られる成長ホルモン放出因子受容体等に対する成
    長ホルモン放出因子等の結合量(対照結合量)と比較す
    る工程、及び(iii) 上記(ii)の結果に基づいて、対照結
    合量に比して結合量を低下させる被験物質を選択する工
    程。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の工程(i)、(ii)及
    び(iii)に更に:(iv) 上記(iii)で選択された被験物質
    の中から、更に成長ホルモン放出因子と同じ作用を発揮
    しない被験物質を選択する工程を含む、請求項10に記
    載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスクリーニング方
    法。
  12. 【請求項12】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有す
    る物質を、成長ホルモン放出因子受容体の発現阻害を指
    標として探索することを特徴とする請求項7に記載のス
    クリーニング方法。
  13. 【請求項13】 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む
    請求項12に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスク
    リーニング方法:(i)被験物質を成長ホルモン放出因
    子受容体を発現可能な細胞と接触させる工程、(ii)被
    験物質を接触させた細胞の成長ホルモン放出因子受容体
    の発現量を測定し、該発現量を被験物質を接触させない
    上記に対応する成長ホルモン放出因子受容体を発現可能
    な細胞(対照細胞)の成長ホルモン放出因子受容体の発
    現量(対照発現量)と比較する工程、(iii) 上記(ii)
    の比較結果に基づいて、対照発現量に比して成長ホルモ
    ン放出因子受容体の発現量を低下させる被験物質を選択
    する工程。
  14. 【請求項14】 成長ホルモン放出因子阻害作用を有す
    る物質を、成長ホルモン放出因子の発現又は分泌の阻害
    を指標として探索することを特徴とする請求項7に記載
    のスクリーニング方法。
  15. 【請求項15】 下記の工程(i)、(ii)及び(iii)を含む
    請求項14に記載の抗自己免疫疾患剤の有効成分のスク
    リーニング方法:(i)被験物質を成長ホルモン放出因
    子を発現可能な細胞と接触させる工程、(ii)被験物質
    を接触させた上記細胞の成長ホルモン放出因子の発現量
    または分泌量を測定し、該発現量または分泌量を、被験
    物質を接触させない上記に対応する対照細胞の成長ホル
    モン放出因子の発現量(対照発現量)又は分泌量(対照
    分泌量)と比較する工程、(iii) 上記(ii)の比較結果
    に基づいて、対照発現量または対照分泌量に比して成長
    ホルモン放出因子の発現量または分泌量を低下させる被
    験物質を選択する工程。
  16. 【請求項16】 抗自己免疫疾患剤が多発性硬化症また
    は慢性関節リウマチの予防または治療薬である、請求項
    7乃至15のいずれかに記載のスクリーニング方法。
  17. 【請求項17】 請求項7乃至16いずれか記載のスク
    リーニング方法により得られる成長ホルモン放出因子阻
    害作用を有する物質を有効成分とする抗自己免疫疾患
    剤。
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