JP2002201142A - レプチンを標的とした新規な自己免疫疾患治療剤 - Google Patents

レプチンを標的とした新規な自己免疫疾患治療剤

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JP2002201142A
JP2002201142A JP2001046046A JP2001046046A JP2002201142A JP 2002201142 A JP2002201142 A JP 2002201142A JP 2001046046 A JP2001046046 A JP 2001046046A JP 2001046046 A JP2001046046 A JP 2001046046A JP 2002201142 A JP2002201142 A JP 2002201142A
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leptin
receptor
eae
therapeutic
leptin receptor
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JP2001046046A
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Hideto Ikushima
秀人 生嶋
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Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自己免疫疾患の新規な治療及び/又は予防
剤、及び当該治療及び/又は予防剤の探索のための新規
なスクリーニング方法を提供すること。 【解決手段】 レプチン阻害剤を有効成分として含有す
る自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤、レプチン阻害
剤を探索することを指標とした自己免疫疾患の治療及び
/又は予防剤のスクリーニング方法、当該スクリーニン
グ方法により得られる自己免疫疾患の治療及び/又は予
防剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体内のレプチン
の作用を阻害することにより、自己免疫疾患の発症抑
制、発症遅延、あるいは症状の軽減等の効果の生じるこ
とを初めて見出したことに基づくものであり、具体的に
は、レプチン阻害剤を有効成分として含有する自己免疫
疾患の治療及び/又は予防剤、及びレプチン阻害剤を探
索することを指標とした自己免疫疾患の治療及び/又は
予防剤のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身
性エリテマトーデスなどは一見異なった病態を示す疾患
であるが、いずれも病変部位に炎症所見が認められる。
これらの疾患は、本来自己以外の外来異物を認識するは
ずの免疫反応が、自己の組織や細胞の抗原、すなわち自
己抗原と反応する自己免疫現象が病因を形成する、自己
免疫疾患であると考えられている。
【0003】自己抗原に対する抗体や自己反応性T細胞
は通常健常人にもみられることが知られており、これら
が存在するだけでは自己免疫疾患に至らない。通常自己
抗原に対する免疫反応には免疫学的寛容(トレランス)の
状態が成立しているため病的反応には至らないのに対
し、自己免疫疾患においては自己抗原に対するトレラン
スが何らかの原因で破綻しているものと考えられてい
る。その要因については抗原に関与するもの、抗原提示
機能に関与するもの、トレランスの制御に関与するもの
などが考えられているが、不明な点が多く、未だそのメ
カニズムは解明されていない。
【0004】ところで、栄養的な欠乏状態、すなわち飢
餓状態が免疫機能を抑制することが知られている(J.Cl
in.Nutr.53,1087-1101(1991)、Clin.Exp.Immunol.,64,3
70-375(1986)、J.Clin.Immunol.,13,445-451(1993))。
そして、obese遺伝子の発現産物であるレプチンの血中
濃度の減少が、前記免疫抑制に関与していると考えられ
ている(Nature,394,897-901(1998)、J.Clin.Invest.,1
04,1051-1059(1999))。
【0005】レプチンは、もともと体重、節食を負に制
御するホルモンとして単離・同定されたものである(Na
ture,372,425-432(1994)、Science,269,543-546(199
5)、Eur.J.Med.Res.,2,7-13(1997))。最近になって、
レプチンの血中濃度が絶食により速やかに減少すること
(J.Clin.Endocrinol.Metab.,81,3419-3423(1996)、Nat
ure,382,250-252(1996))、レプチンが Tリンパ球の増
殖や胸腺の細胞充実性(thymic cellularity)に関与し
ていること(Nature,394,897-901(1998)、J.Clin.Inves
t.,104,1051-1059(1999)、そして飢餓状態のマウスにレ
プチンを投与することにより免疫抑制状態から回復した
ことなどが報告され(Nature,394,897-901(1998)、J.Cl
in.Invest.,104,1051-1059(1999))、前述のように飢餓
による血中レプチンの減少が、免疫機能の抑制に関与し
ていると考えられるようになった。
【0006】このように、レプチンの減少と免疫抑制作
用との関連は示されているものの、レプチンと自己免疫
疾患との関連については何ら明らかにされていない。自
己免疫疾患は、自己抗原に対する免疫学的寛容(トレラ
ンス)の破綻によって起こる疾患であるため、免疫抑制
が自己抗原に対する免疫反応を抑制して自己免疫疾患の
発症抑制や症状の改善効果をもたらす可能性がある一
方、自己抗原に対する免疫学的寛容(トレランス)の誘
導が抑制されて自己免疫現象の発症促進や症状の悪化を
もたらす可能性もある。
【0007】例えばインターロイキン2(IL-2)はリン
パ球を活性化するサイトカインであるが、IL-2のノック
アウトマウスはT細胞のマイトジェン刺激に対する応答
の低下がみられる(Nature, 352,621(1991))一方、自
己免疫疾患であるヒト潰瘍性大腸炎に類似した腸炎を発
症し、9週齢までに50%が、10-25週齢までに殆どが死亡
することが示されている(Cell,75,253 (1993))。
【0008】このような背景から、レプチンの減少によ
る免疫抑制は報告されているものの、レプチンの減少や
阻害により、実際に自己免疫疾患の発症抑制や症状の改
善効果を示した報告は、現在まで何らなされておらず、
レプチンと自己免疫疾患の関連は明らかではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、レプチン阻
害剤を有効成分として含有する自己免疫疾患の治療及び
/又は予防剤、及びレプチン阻害剤の探索を指標とした
自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤のスクリーニング
方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、代謝の変化
が自己免疫疾患の発症に与える影響を検討するために、
自己免疫疾患の代表的なモデルである実験的自己免疫性
脳脊髄炎(EAE)の発症に対して、絶食が影響を与える
か否かを検討した。その結果、絶食によりEAEの発症が
遅延され、症状が軽減されることが明らかとなった。さ
らに、絶食中にレプチンを腹腔内投与すると前記絶食の
効果が打ち消されたことから、レプチンがEAEの発症に
関与していることが初めて明らかとなった。
【0011】次に本発明者は、レプチン欠損マウス(ob
マウス)及びレプチン受容体欠損マウス(dbマウス)に
対してEAEを誘導した結果、これらいずれのマウスにお
いてもEAEの発症は著しく軽度であった。以上の知見に
より、レプチンの作用を阻害することによって、自己免
疫疾患の発症抑制、発症遅延、あるいは症状の軽減等の
治療及び予防効果の得られることが、初めて明らかとな
った。さらに本発明者は、実際に抗レプチン抗体をEAE
マウスに投与してレプチンの作用を阻害した結果、まさ
しくEAEの発症遅延が認められたことから、上記知見が
確かであることが確認された。本発明は、以上のような
知見に基づき完成するに至ったものである。
【0012】即ち本発明の要旨は以下のとおりである。 (1) レプチン阻害剤を有効成分として含有する、自
己免疫疾患の治療及び/又は予防剤、(2) 自己免疫
疾患が多発性硬化症である、前記(1)記載の治療及び
/又は予防剤、(3) レプチン阻害剤が、レプチン受
容体を介したレプチンの作用を阻害するものである、前
記(1)又は(2)記載の治療及び/又は予防剤、
(4) レプチン阻害剤が、レプチン−レプチン受容体
間の結合を阻害するものである、前記(3)記載の治療
及び/又は予防剤、(5) レプチン阻害剤が可溶性レ
プチン受容体である、前記(4)記載の治療及び/又は
予防剤、(6) レプチン阻害剤が抗レプチン抗体であ
る、前記(4)記載の治療及び/又は予防剤、(7)
レプチン阻害剤が、レプチンの発現又は分泌、あるいは
レプチン受容体の発現を阻害するものである、前記
(1)又は(2)記載の治療及び/又は予防剤、(8)
レプチン阻害剤を探索することを指標とした、自己免
疫疾患の治療及び/又は予防剤のスクリーニング方法、
(9) 自己免疫疾患が多発性硬化症である、前記
(8)記載のスクリーニング方法、(10) 被験物質
がレプチン受容体を介したレプチンの作用を阻害するか
否かを評価することを含む、前記(8)又は(9)記載
のスクリーニング方法、(11) 被験物質がレプチン
−レプチン受容体間の結合を阻害するか否かを評価する
ことを含む、前記(8)〜(10)いずれか記載のスク
リーニング方法、(12) (i)レプチン受容体にレ
プチンを接触させた場合と、(ii)レプチン受容体に
レプチン及び被験物質を接触させた場合とを比較・評価
することを含む、前記(8)〜(11)いずれか記載の
スクリーニング方法、(13) 被験物質がレプチンの
発現又は分泌、あるいはレプチン受容体の発現を阻害す
るか否かを評価することを含む、前記(8)又は(9)
記載のスクリーニング方法、(14) 被験物質の存在
下、レプチンを発現する細胞をインビトロで培養し、該
細胞におけるレプチンの発現量又は分泌量を測定・評価
することを含む、前記(13)記載のスクリーニング方
法、(15) 被験物質の存在下、レプチン受容体を発
現する細胞をインビトロで培養し、該細胞におけるレプ
チン受容体の発現量を測定・評価することを含む、前記
(13)記載のスクリーニング方法、(16) 前記
(8)〜(15)いずれか記載のスクリーニング方法に
より得られる自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明においては、生体内のレプ
チンの作用を阻害することにより、自己免疫疾患の発症
抑制、発症遅延、あるいは症状の軽減等の治療及び予防
効果の得られることを明らかにした。従って本発明は、
レプチン阻害剤を有効成分として含有する自己免疫疾患
の治療及び/又は予防剤を提供するものである。
【0014】ここで「レプチン」とは、obese遺伝子の
発現産物を指し、その塩基配列及びアミノ酸配列は、Na
ture, 372, 425-432(1994)に記載されている。本発明に
おいて「レプチン阻害剤」とは、レプチンの作用を阻害
する物質を指し、当該阻害作用を有する物質であれば、
如何なる形態・性状の物質であっても本発明のレプチン
阻害剤の範疇に含まれる。具体的には、1)レプチン受容
体を介したレプチンの作用を阻害する物質や、2)レプ
チンの発現又は分泌、あるいはレプチン受容体の発現を
阻害する物質などが、本発明のレプチン阻害剤として挙
げられる。以下、当該レプチン阻害剤について具体的に
説明する。
【0015】1)レプチン受容体を介したレプチンの作
用を阻害する物質 本発明により、生体内のレプチン又はレプチン受容体を
減少、又は欠損させた場合に、自己免疫疾患の発症の抑
制されることが示された。また、抗レプチン抗体を投与
してレプチンの作用を抑えることにより、自己免疫疾患
の発症遅延効果が認められた。これらの知見により、レ
プチン受容体を介したレプチンの作用、すなわちレプチ
ンのシグナル伝達経路を阻害する物質であれば、自己免
疫疾患の治療及び/又は予防剤となり得ることが明らか
となった。ここでレプチンのシグナル伝達経路を阻害す
る物質としては、具体的に以下の(1)及び(2)の物
質が例示される。
【0016】(1)レプチン−レプチン受容体間の結合
を阻害する物質 レプチンとレプチン受容体との結合を阻害することによ
り、レプチンの作用を阻害することができる。具体的に
は、レプチン受容体に結合することによりレプチン−
レプチン受容体間の結合を阻害し、その結果、レプチン
のシグナル伝達系を阻害する物質、及び、レプチンに
直接結合してレプチン−レプチン受容体間の結合を阻害
し、その結果、レプチンの作用を阻害する物質などが挙
げられる。
【0017】ここで前記の具体例としては、レプチン
受容体への結合ドメイン(J.Biol.Chem.,273,35245-352
49(1998))のみを有し、レプチンの機能を損なわせたレ
プチン改変体や、抗レプチン受容体抗体が挙げられる。
ここで抗レプチン受容体抗体としては、具体的にはレプ
チン受容体の細胞外ドメイン(Nature,395,763-770(199
8))に対する抗体などが挙げられる。これらの物質は、
当業者に知られた手法により作製することが可能であ
り、例えばタンパクの改変については Molecular Clon
ing 2nd Edt., Cold Spring Harbor Laboratory Press
(1989)等の基本書を参考にして、また抗体の作製につい
ては Antibodies; A Laboratory Manual,Cold Spring H
arbor Laboratory Press(1989)等の基本書を参考にして
当業者ならば容易に作製することができる。
【0018】さらに前記の具体例として、レプチン受
容体に結合することによりレプチンのシグナル伝達系を
阻害するタンパク性因子やペプチド、又は低分子化合物
などが挙げられる。このうち、レプチンのレプチン受容
体への結合ドメインをミミックしたペプチドや低分子化
合物については、文献(Science,249,400-406(1990)、S
cience,249,386-390(1990)、US 4,833,092号公報)等を
参考にして作製することができる。また、低分子化合物
ライブラリー等を後述の本発明のスクリーニング系に供
することによっても、前記阻害活性を有する物質を得る
ことができる。
【0019】また前記の具体例としては、レプチン受
容体の細胞外ドメインを有する可溶性レプチン受容体
や、抗レプチン抗体が挙げられる。ここで抗レプチン抗
体としては、具体的にはレプチンのレプチン受容体への
結合ドメイン(J.Biol.Chem.,273,35245-35249(1998))
に対する抗体が挙げられる。さらには、レプチンに結合
することでレプチンの受容体への結合を阻害するタンパ
ク性因子やペプチド、又は低分子化合物などが挙げられ
る。ここで可溶性受容体に関しては、TNFに対する可溶
性受容体(可溶性TNF受容体)の投与により、実際に生
体内でTNFの作用の阻害されたことが知られており(J.I
mmunol.,151,6602-6607(1993))、本発明においても可
溶性レプチン受容体が同様の阻害効果を有するものと考
えられる。可溶性レプチン受容体の一例としては、レプ
チン受容体の細胞外ドメイン(リガンド結合ドメイン)
のみを有するレプチン受容体アイソフォーム:Ob-Re (N
ature, 395,763-770(1998))などが具体的に挙げられ
る。なお、これらの各物質の作製及び入手方法につい
ては、前記を参照されたい。
【0020】(2)レプチンの下流のシグナル伝達系に
作用する物質 レプチンの下流のシグナル伝達に関与する幾つかの因子
が同定されている(Nat.Genetics,14,95-97(1996)、Mo
l.Cell,1,619-625(1998)、J.Biol.Chem.,274,30059-300
65(1999))。これらのシグナル伝達関連因子の発現や作
用を阻害又は促進することにより、結果的にレプチンの
作用を阻害する物質も、本発明のレプチン阻害剤の範疇
に含まれる。具体的には、例えばレプチン受容体のリン
酸化を阻害するタンパク性因子やペプチド、低分子化合
物や、レプチンの下流のシグナル伝達に関与することが
知られているSTAT-3(Nat.Genetics,14,95-97(1996))
の発現や作用を抑制するようなタンパク性因子やペプチ
ド、低分子化合物、さらにはレプチンの下流のシグナル
伝達を抑制することが知られているSOCS-3(Mol.Cell,
1,619-625(1998)、J.Biol.Chem.,274,30059-30065(199
9))の発現や作用を促進するタンパク性因子やペプチ
ド、又は低分子化合物などが挙げられる。これらの物質
の作製及び入手法については、前記(1)のを参照さ
れたい。
【0021】2)レプチンの発現又は分泌、あるいはレ
プチン受容体の発現を阻害する物質 本発明において、レプチンやレプチン受容体の欠損に伴
い、自己免疫疾患の発症の抑制効果が認められた。また
レプチンの血中濃度の減少に伴い、自己免疫疾患の発症
の遅延や症状の軽減等の効果が認められた。当該知見
は、レプチンの発現や分泌、あるいはレプチン受容体の
発現を阻害する物質であれば、自己免疫疾患の治療及び
/又は予防剤となることを充分に裏付けるものである。
レプチン又はレプチン受容体の発現等を阻害する物質と
しては、具体的に以下の(1)及び(2)の物質が例示
される。
【0022】(1)レプチンの発現又は分泌を阻害する
物質 レプチン遺伝子又はタンパクの発現、あるいはレプチン
の分泌を阻害することにより、レプチンの作用を阻害す
ることができる。具体的には、レプチン遺伝子(Natur
e,372,425-432(1994))に相補的なアンチセンスポリヌ
クレオチドが挙げられる。さらに、レプチン遺伝子やタ
ンパクの発現、あるいはレプチンの分泌を阻害するタン
パク性因子やペプチド、低分子化合物等が挙げられる。
これらの物質の製造及び入手法については、前記1)の
(1)を参照されたい。
【0023】(2)レプチン受容体の発現を阻害する物
質 レプチン受容体の遺伝子又はタンパクの発現を阻害する
ことにより、レプチンの作用を阻害することができる。
具体的には、レプチン受容体遺伝子(Cell,83,1263-127
1(1995))に相補的なアンチセンスポリヌクレオチドが
挙げられる。さらに、レプチン受容体遺伝子やタンパク
の発現を阻害するタンパク性因子やペプチド、低分子化
合物等が挙げられる。これらの物質の製造及び入手法に
ついては、前記1)の(1)を参照されたい。
【0024】以上のようなレプチン阻害剤を有効成分と
して含有するものが、本発明の自己免疫疾患の治療及び
/又は予防剤である。ここで「自己免疫疾患」とは、自
己の組織や細胞の抗原、すなわち自己抗原と反応する自
己免疫現象が病因を形成する疾患であり、具体的には、
慢性関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトー
デスなどの疾患が挙げられる。本発明のレプチン阻害剤
はこれら自己免疫疾患に適用可能であるが、好ましくは
多発性硬化症に適用される。
【0025】本発明のレプチン阻害剤は、自己免疫疾患
の発症遅延、発症抑制、及び症状軽減等の効果を有する
ものであるため、自己免疫疾患の治療及び予防のいずれ
においても用いることが可能である。
【0026】以下、本発明のレプチン阻害剤を有効成分
とする自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤の投与方
法、投与形態及び投与量等につき記述する。
【0027】1)レプチン阻害剤が低分子化合物、ペプチ
ド又はタンパク性因子の形態である場合 レプチン阻害剤が低分子化合物やタンパク質、抗体、又
はペプチドである場合は、通常知られている一般的な医
薬組成物の形態とし、経口または非経口的に投与され
る。一般的には以下のような投与形態、投与方法が挙げ
られる。
【0028】すなわち、経口的に投与する場合、通常当
分野で用いられる投与形態で投与することができる。非
経口的に投与する場合には、局所投与剤(経皮剤等)、
直腸投与剤、注射剤、経鼻剤等の投与形態で投与するこ
とができる。経口剤又は直腸投与剤としては、例えばカ
プセル、錠剤、ピル、散剤、ドロップ、座剤、液剤等が
挙げられる。注射剤としては、例えば無菌の溶液又は懸
濁液、乳剤等が挙げられ、具体的には水、水−プロピレ
ングリコール溶液、緩衝化液、0.4%の生理食塩水等が挙
げられる。さらに液状製剤とした場合は凍結保存、又は
凍結乾燥等により水分を除去して保存することができ
る。凍結乾燥製剤は、用時に注射用蒸留水などを加え、
再溶解して使用される。局所投与剤としては、例えばク
リーム、軟膏、ローション、経皮剤等が挙げられる。
【0029】以上の剤形は通常当分野で行われている手
法により、薬学的に許容される賦形剤、添加剤と共に製
剤化される。薬学的に許容される賦形剤、添加剤として
は、担体、結合剤、香料、緩衝剤、増粘剤、着色剤、安
定剤、乳化剤、分散剤、懸濁化剤、防腐剤、pH調節剤、
張度調節剤、浸潤剤等が挙げられる。また、薬学的に許
容される担体としては、例えば炭酸マグネシウム、ラク
トース、ぺクチン、澱粉、メチルセルロース等が挙げら
れる。
【0030】このような医薬組成物は、治療目的の疾
患、標的臓器等に応じた適当な投与経路により投与され
得る。例えば、静脈、動脈、皮下、皮内、筋肉内などに
投与するか、又は病変の認められる組織そのものに直接
局所投与することができる。また経口投与や坐薬として
の投与も可能である。
【0031】投与量、投与回数は症状、年齢、体重、投
与形態等によって異なるが、通常は成人に対し1日あた
り約0.0001〜約500mgの範囲、好ましくは約
0.001〜約100mgの範囲を1回または数回に分
けて投与することができる。
【0032】2)レプチン阻害剤がポリヌクレオチドの形
態である場合 レプチン阻害剤が、レプチンやレプチン受容体に相補的
なアンチセンスポリヌクレオチド等のポリヌクレオチド
である場合は、遺伝子治療剤の形態をとる必要がある。
近年、種々の遺伝子を用いた遺伝子治療の報告がなされ
ており、また当該遺伝子治療は技術的にも確立された技
術となっている。当該遺伝子治療剤を患者に投与する場
合、その投与形態としては非ウイルスベクターを用いた
場合と、ウイルスベクターを用いた場合の二つに大別さ
れ、実験手引書などにその調製法、投与法が詳しく解説
されている(別冊実験医学,遺伝子治療の基礎技術,羊土
社,1996、別冊実験医学,遺伝子導入&発現解析実験法,
羊土社,1997、日本遺伝子治療学会編遺伝子治療開発研
究ハンドブック、エヌ・ティー・エス、1999)。以下、
具体的に説明する。
【0033】A.非ウイルスベクターを用いる場合 慣用の遺伝子発現ベクターに目的とする遺伝子が組み込
まれた組換え発現ベクターを用いて、以下のような手法
により目的遺伝子を細胞や組織に導入することができ
る。細胞への遺伝子導入法としては、リン酸−カルシウ
ム共沈法や、微小ガラス管を用いたDNAの直接注入法
などが挙げられる。
【0034】また、組織への遺伝子導入法としては、内
包型リポソーム(internal type liposome)による遺伝
子導入法、静電気型リポソーム(electrostatic type l
iposome)による遺伝子導入法、HVJ−リポソーム
法、改良型HVJ−リポソーム法(HVJ-AVEリポソーム
法)、レセプター介在性遺伝子導入法、パーティクル銃
で担体(金属粒子)とともにDNA分子を細胞に移入す
る方法、naked−DNAの直接導入法、正電荷ポリ
マーによる導入法等の何れかの方法に供することによ
り、組換え発現ベクターを細胞内に取り込ませることが
可能である。
【0035】ここで用いられる発現ベクターとしては、
生体内で目的遺伝子を発現させることのできるベクター
であれば如何なる発現ベクターであっても良いが、例え
ばpCAGGS(Gene 108,193-200(1991))や、pBK
−CMV、pcDNA3.1、pZeoSV(インビト
ロゲン社、ストラタジーン社)などが挙げられる。
【0036】B.ウイルスベクターを用いる場合 ウイルスベクターとしては、組換えアデノウイルス、レ
トロウイルス等が挙げられる。より具体的には、例え
ば、無毒化したレトロウイルス、アデノウイルス、アデ
ノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイル
ス、ポックスウイルス、ポリオウイルス、シンビスウイ
ルス、センダイウイルス、SV40、免疫不全症ウイル
ス(HIV)等のDNAウイルス又はRNAウイルスに
目的とする遺伝子を導入し、細胞に組換えウイルスを感
染させることによって、細胞内に遺伝子を導入すること
が可能である。前記ウイルスベクターのうち、アデノウ
イルスの感染効率が他のウイルスベクターを用いた場合
よりもはるかに高いことが知られており、この観点から
は、アデノウイルスベクター系を用いることが好まし
い。
【0037】本発明の遺伝子治療剤の患者への導入法と
しては、遺伝子治療剤を直接体内に導入するin vi
vo法、及び、ヒトからある種の細胞を取り出して体外
で遺伝子治療剤を該細胞に導入し、その細胞を体内に戻
すex vivo法がある(日経サイエンス,1994年4月
号,20-45頁、月刊薬事,36(1),23-48,1994、実験医学増
刊,12(15),1994、日本遺伝子治療学会編 遺伝子治療開
発研究ハンドブック,エヌ・ティー・エス,1999)。本発
明では、全身性自己免疫疾患の場合は特に、in vi
vo法が好ましい。in vivo法により投与する場
合は、治療目的の疾患、標的臓器等に応じた適当な投与
経路により投与され得る。例えば、静脈、動脈、皮下、
皮内、筋肉内などに投与するか、又は病変の認められる
組織そのものに直接局所投与することができる。
【0038】製剤形態としては、上記の各投与形態に合
った種々の製剤形態(例えば液剤など)をとり得る。例
えば有効成分である遺伝子を含有する注射剤とされた場
合、当該注射剤は常法により調製することができ、例え
ば適切な溶剤(PBS等の緩衝液、生理食塩水、滅菌水
等)に溶解した後、必要に応じてフィルター等で濾過滅
菌し、次いで無菌的な容器に充填することにより調製す
ることができる。当該注射剤には必要に応じて慣用の担
体等を加えても良い。また、HVJ−リポソーム等のリ
ポソームにおいては、懸濁剤、凍結剤、遠心分離濃縮凍
結剤などのリポソーム製剤の形態とすることができる。
また、疾患部位の周囲に遺伝子を存在し易くするため
に、徐放性の製剤(ミニペレット製剤等)を調製し患部
近くに埋め込むことも可能であり、あるいはオスモチッ
クポンプなどを用いて患部に連続的に徐々に投与するこ
とも可能である。
【0039】製剤中の遺伝子の含量は、治療目的の疾
患、患者の年齢、体重等により適宜調節することができ
るが、通常、各々の遺伝子として0.0001−100
mg、好ましくは0.001−10mgであり、これを
数日ないし数ヶ月に1回投与するのが好ましい。
【0040】前記したように本発明においては、生体内
のレプチンの作用を阻害することにより、自己免疫疾患
の治療及び予防効果の得られることを初めて見出した。
すなわち、レプチン阻害作用と自己免疫疾患との関連に
ついて初めて知見を得た。従って本発明は、当該新たな
知見に基づき、レプチン阻害剤を探索することを指標と
した、自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤のスクリー
ニング方法をも提供するものである。
【0041】本発明において「レプチン阻害剤の探索」
とは、レプチン阻害作用を指標とした探索のみならず、
レプチン−レプチン受容体間の結合阻害活性を指標とし
た探索なども含めて、レプチン阻害剤の候補物質の絞り
込みを目的とするものである。また「自己免疫疾患の治
療及び/又は予防剤のスクリーニング方法」とは、自己
免疫疾患の治療及び/又は予防剤の選別を目的とするス
クリーニング方法を指すものであり、自己免疫疾患の治
療及び/又は予防剤となり得る候補物質のスクリーニン
グをも含むものである。当該スクリーニングにより、前
述のレプチン阻害作用に基づく自己免疫疾患の治療及び
/又は予防剤を選択することができる。以下、本発明の
スクリーニング方法につき具体的に記述する。
【0042】本発明の自己免疫疾患の治療及び/又は予
防剤のスクリーニング方法の1つの態様として、被験物
質がレプチン受容体を介したレプチンの作用を阻害する
か否かを評価することを含むスクリーニング方法が挙げ
られる。当該スクリーニングにより、レプチンのシグナ
ル伝達系を阻害する物質、すなわちレプチン及び/又は
レプチン受容体に結合して、あるいは下流のシグナル伝
達分子に作用して、レプチンの作用を阻害する物質を選
択することができる。当該スクリーニング方法は当業者
の常識の範囲で適宜構築することができる。以下、当該
スクリーニングに用いられるスクリーニングツールにつ
いて記述する。
【0043】当該スクリーニングに用いられる「レプチ
ン受容体」は、天然物であっても組換え体であっても良
い。また当該レプチン受容体はヒト型であることが好ま
しいが、マウス型など他の種由来のレプチン受容体も同
様の目的に使用できる。レプチン受容体の塩基配列及び
アミノ酸配列は、文献(Cell,83,1263-1271(1995))に
おいて公開されている。従って当該配列情報をもとに、
適当なDNA部分をハイブリダイゼーションのプローブ又
はPCRのプライマーとし、例えばヒト又は動物の視床下
部由来のcDNAライブラリー等を用いることによりクロー
ニングすることができる。これらのクローニングは、例
えば Molecular Cloning 2nd Edt., Cold Spring Harbo
r Laboratory Press(1989)などの基本書に従い、当業者
ならば容易に行うことができる。また、そのアミノ酸配
列の一部が置換、欠失及び/又は付加されているもので
あっても、レプチンとの結合性が保たれている限り、本
発明のレプチン受容体の範疇に含まれる。当該置換等の
改変も、前記Molecular Cloning等に基づき容易に行う
ことができる。
【0044】前記スクリーニングに使用されるレプチン
受容体は、必ずしもその全アミノ酸配列を保持する必要
はなく、当該レプチン受容体の細胞外ドメインを少なく
とも有していれば良い。本発明においては、このような
レプチン受容体の細胞外ドメインを少なくとも有するも
のを含めて「レプチン受容体」と称することとする。こ
こでレプチン受容体の「細胞外ドメイン」とは、レプチ
ン受容体のアミノ酸配列の第1位〜第840位までの部分(C
ell,83,1263-1271(1995))、又はこの部分を含み前後10
アミノ酸残基以内のアミノ酸配列よりなる部分を指す
が、レプチンとの結合能が維持されている限り、置換・
欠失・付加等の改変を含むものも、本発明でいうところ
の「レプチン受容体の細胞外ドメイン」に含まれる。
【0045】以上のようにして得られたレプチン受容体
のDNAからタンパクを発現させる手法としては、以下の
ような方法が挙げられる。すなわちまず、先に調製した
レプチン受容体のcDNAを、pCAGGS(Gene 108,193-199(1
991))やpcDNA1.1、pcDNA3.1誘導体(インビトロジェン
社)などの公知の発現ベクターに挿入する。その後適当
な宿主に導入し培養することにより、導入したレプチン
受容体のDNAに対応するレプチン受容体のタンパク質
を細胞表面に発現させた形質転換細胞を作製することが
できる。また用いたレプチン受容体のDNAの種類によっ
ては(例えば細胞外ドメインのみをコードするDNAを用
いた場合)、培養上清中に当該レプチン受容体タンパク
を分泌させることができる。宿主としては、一般的に広
く普及している哺乳動物細胞株であるL細胞、CHO細胞、
C127細胞、BHK21細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レ
ダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を
含む)や、COS細胞などが好ましいが、これに限定され
ることなく、昆虫細胞、酵母、細菌などを用いることも
可能である。
【0046】前記レプチン受容体発現ベクターの宿主細
胞への導入方法としては、公知の発現ベクターの宿主細
胞への導入方法であればどのような導入方法でもよく、
例えばリン酸カルシウム法(J.Virol.,52, 456-467 (19
73))、LT-1(Panvera社製)を用いる方法、遺伝子導入
用リピッド(Lipofectamine、Lipofectin; Gibco-BRL社
製)を用いる方法などが挙げられる。
【0047】以上のようにして得られた細胞表面にレプ
チン受容体を発現させた形質転換細胞は、後述のように
そのまま本発明のスクリーニング系に用いることができ
るが、当該形質転換細胞の細胞膜をスクリーニングに用
いる場合は、例えば以下のようにして細胞膜を調製する
ことができる。すなわちまず、細胞に低張ホモジネート
バッファー(10mMのトリス−塩酸緩衝液、1mMの
EDTA、0.5mMのPMSF若しくは1mMのAE
BSF、5μg/mlのアプロチニン、5μg/mlの
ロイペプチン;pH7.4)を添加し、4℃で30分間
程度静置して細胞を低張破壊した後、ピペッティングで
ホモジナイズし、4℃で50,000×g、30分間遠
心分離することにより、細胞膜画分の沈殿物を得る。そ
して、この沈殿物をトリス−塩酸緩衝生理食塩水(トリ
ス−塩酸緩衝液、154mMの塩化ナトリウム;pH
7.4)に懸濁することにより、本発明の細胞膜画分を
得ることができる。その他、例えば F. Pietri-Rouxel
(Eur. J. Biochem., 247, 1174-1179(1997))らの方法
などにより、本発明の細胞膜画分を得ることができる。
【0048】さらに、後述するように単離したレプチン
受容体そのものをスクリーニングに使用する場合もあ
り、その場合は、上記で得られた形質転換細胞又はその
細胞膜画分から単離されたレプチン受容体を使用するこ
とができる。具体的には、例えば R. G. Shorrら(Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 79, 2778-2782 (1982)、J. Bi
ol. Chem. 257, 12341-12350(1982))などに記載の方法
により、レプチン受容体を含む粗抽出液を得ることがで
き、また、該粗抽出液からレプチン受容体を精製する方
法としては、例えばJ. L. Benovicら (Biochem., 23, 4
510-4518 (1984))の方法などが挙げられる。
【0049】さらに、前記したようにレプチン受容体
(例えばレプチン受容体の細胞外ドメイン)を形質転換
細胞から分泌させた場合は、培養上清から、例えば抗レ
プチン受容体抗体を結合させたカラムを用いて、あるい
はレプチン受容体の細胞外ドメインに通常のペプチドタ
グを付加した場合はこのタグに親和性のある物質を結合
したカラムを用いて、常法によりレプチン受容体を精製
することができる。
【0050】本発明のスクリーニングに用いられる「レ
プチン」は、レプチン受容体と同様に天然物であっても
組換え体であっても良い。また当該レプチンはヒト型で
あることが好ましいが、マウス型など他の種由来のレプ
チンも同様の目的に使用できる。レプチンの塩基配列及
びアミノ酸配列は、文献(Nature,372,425-432(1994))
において公開されている。従って当該配列情報をもと
に、適当なDNA部分をハイブリダイゼーションのプロー
ブ又はPCRのプライマーとし、例えばヒト又は動物の脂
肪細胞由来のcDNAライブラリー等を用いることにより、
常法によりクローニングすることができる。また、その
アミノ酸配列の一部が置換、欠失及び/又は付加されて
いるものであっても、レプチン受容体との結合性が保た
れている限り、本発明のレプチンの範疇に含まれる。こ
れら遺伝子のクローニング及び改変等は、前述のMolecu
lar Cloning等に基づき容易に行うことができる。
【0051】スクリーニングに使用されるレプチンは、
必ずしもその全アミノ酸配列を保持する必要はなく、レ
プチン受容体への結合活性を少なくとも有していれば良
い。本発明においては、このようなレプチン受容体への
結合活性を少なくとも有するものを含めて「レプチン」
と称することとする。
【0052】以上のようにして得られたレプチンのDNA
からタンパクを発現させる手法としては、前記のレプチ
ン受容体と同様の手法が用いられる。なおレプチンはテ
クネ社(ジェンザイム・テクネ)等から市販されている
ため、これらを直接スクリーニングに用いることもでき
る。
【0053】このようなスクリーニングツールを用い
て、被験物質がレプチン受容体を介したレプチンの作用
を阻害するか否かを評価するスクリーニング方法として
は、当業者の常識の範囲より適宜選択されるが、一例と
しては、(i)レプチン受容体にレプチンを接触させた
場合と、(ii)レプチン受容体にレプチン及び被験物
質を接触させた場合とを比較・評価することを含むスク
リーニング方法が挙げられる。そして、その具体的な態
様として、以下の1)〜3)の方法を例示することがで
きる。
【0054】1)レプチン受容体を発現させた細胞を用
いる方法 レプチン受容体を細胞表面に発現させた細胞を用いて、
本発明のスクリーニングを行うことができる。ここでレ
プチン受容体を細胞表面に発現させた細胞は、天然の細
胞であっても、前記の記載に従いレプチン受容体のcDNA
を導入し発現させた形質転換細胞であっても良い。当該
細胞を用いて本発明のスクリーニングを行う手法として
は、具体的には以下に例示される方法を挙げることがで
きる。
【0055】まず、レプチン(テクネ社)を何らかの方
法により標識する。標識としては、ビオチンによる標
識、ラジオアイソトープ(125I)による標識、マーカー
タンパク質による標識、またはペプチドタグによる標識
などが挙げられる。ここで「マーカータンパク質」と
は、例えばアルカリフォスファターゼ(Cell 63,185-19
4(1990))、抗体のFc領域(Genbank accession numbe
r M87789)、HRPなどの従来よく知られたマーカータ
ンパク質が挙げられる。また「ペプチドタグ」として
は、例えばMycタグ(Glu-Gln-Lys-Lue-Ile-Ser-Glu-
Glu-Asp-Ile)、Hisタグ(His-His-His-His-His-Hi
s)、FLAGタグ(Asp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp)な
どの従来よく知られたペプチドタグが挙げられる。
【0056】他方、前記の記載に従いレプチン受容体タ
ンパク質を細胞表面に発現した細胞を調製する。次にこ
の細胞に対して、(i)標識レプチンを添加した場合、
及び(ii)標識レプチン及び被験物質を添加した場合の
当該レプチンの細胞への結合性を、比較・検出する。
(i)の場合と比して(ii)の場合の方が結合活性が低
い、若しくは無い場合は、その被験物質がレプチン阻害
剤の候補物質であることが示される。詳しくは実施例を
参照されたい。
【0057】なお、このようなレプチン−レプチン受容
体間の結合性を指標としたスクリーニング(すなわち被
験物質がレプチン−レプチン受容体間の結合を阻害する
か否かを評価するスクリーニング)は非常に簡便なスク
リーニングであるが、当該スクリーニングによっては、
レプチン阻害剤のみならず、レプチン受容体に結合して
レプチンと同様の作用を示す物質等も選択されるため、
当該スクリーニングによりレプチン阻害剤候補物質の選
別を行った後、さらに別のレプチン阻害剤のスクリーニ
ングを実施することが望ましい。
【0058】さらに、前記レプチンのレプチン受容体発
現細胞への結合性を検出する代わりに、レプチン受容体
の下流に位置するシグナル伝達物質の発現や作用に対す
る阻害又は促進活性を指標にすることや、レプチン受容
体のリン酸化阻害活性を指標にすることも可能である。
ここでレプチン受容体の下流に位置するシグナル伝達物
質とは、例えばSTAT-3(Nat.Genetics,14,95-97(199
6))やSOCS-3(Mol.Cell,1,619-625(1998)、J.Biol.Che
m.,274,30059-30065(1999))が例示される。しかしこれ
らに限定されるものではなく、レプチンとレプチン受容
体との相互作用から生じるシグナルの有無を検出できる
方法であれば特に制限されない。
【0059】2)レプチン受容体を発現させた細胞膜を
用いる方法 前記のレプチン受容体を細胞表面に発現する細胞の代わ
りにその細胞より調製された細胞膜を用いても、前記
1)と同様の手法により、本発明のスクリーニングを行
うことができる。この場合は、レプチンのレプチン受容
体への結合性が測定される。
【0060】3)単離精製されたレプチン受容体を用い
る方法 単離精製されたレプチン受容体を用いても、本発明のス
クリーニングを行うことができる。この場合も、レプチ
ンのレプチン受容体への結合性が測定される。
【0061】以上のようなスクリーニング方法により選
別された被験物質を、さらに別のレプチン阻害剤のスク
リーニング系に供することにより、あるいは自己免疫疾
患の動物モデルを用た in vivo評価系に供することによ
り、最終的に、レプチン阻害作用を有する自己免疫疾患
の治療及び/又は予防剤を選択することができる。
【0062】本発明の自己免疫疾患の治療及び/又は予
防剤のスクリーニング方法の別の態様として、被験物質
がレプチンの発現又は分泌、あるいはレプチン受容体の
発現を阻害するか否かを評価することを含むスクリーニ
ング方法が挙げられる。具体的に、被験物質がレプチン
の発現又は分泌を阻害するか否かを評価する方法として
は、被験物質の存在下、レプチンを発現する細胞をイン
ビトロで培養し、該細胞におけるレプチンの発現量又は
分泌量を測定・評価する手法が挙げられる。またレプチ
ン受容体の発現を阻害するか否かを評価する方法として
は、被験物質の存在下、レプチン受容体を発現する細胞
をインビトロで培養し、該細胞におけるレプチン受容体
の発現量を測定・評価する手法が挙げられる。ここで、
レプチン及びレプチン受容体の発現量の測定とは、その
遺伝子又はタンパクの発現量の測定を意味する。
【0063】前記においてレプチンの分泌量を測定・評
価するスクリーニング方法としては、レプチン発現細胞
(例えば脂肪細胞や、レプチンのcDNA発現ベクターを導
入した形質転換細胞など)に対して被験物質を添加して
一定期間培養した後、培養上清中に分泌されるレプチン
のタンパク量を、被験物質無添加群と比較する方法が挙
げられる。ここでレプチンのタンパク量は、抗レプチン
抗体を用いて免疫化学的に検出することができる。
【0064】また、前記においてレプチン受容体の発現
量を測定・評価するスクリーニング方法としては、レプ
チン受容体発現細胞を被験物質の存在下で培養し、一定
時間培養後、細胞膜表面に発現されたレプチン受容体が
減少したことを免疫化学的に検出して、あるいはmRN
Aの発現が減少したことを指標として評価することがで
きる。このときのmRNAの検出法は、DNAチップ、
ノーザンハイブリダイゼーション等の方法で行うことが
できる。その他、レプチン受容体のプロモーターの下流
にルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子をつないだ遺
伝子を導入した細胞を用いることにより、被験物質によ
るレプチン受容体遺伝子の発現抑制を当該レポーター遺
伝子の活性を指標に検出することができる。なお、レプ
チンの発現量の測定・評価も、同様の手法により行うこ
とができる。
【0065】以上のような本発明のスクリーニング方法
を用いて選択されたレプチン阻害剤は、前述の如き自己
免疫疾患の治療及び/又は予防剤として使用され得る。
特に、多発性硬化症の治療及び/又は予防剤として有効
に使用され得る。
【0066】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定される
ものではない。
【0067】実施例1絶食およびレプチンの投与が実験的自己免疫性脳脊髄炎
(EAE)発症に与える影響の検討 絶食およびレプチンの投与が自己免疫疾患の発症に与え
る影響を検討するため、ヒトの多発性硬化症の動物モデ
ルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて検
討を行なった。実験方法と結果を以下に示す。
【0068】実験に用いたPLSJLF1/JマウスはThe Jacks
on Laboratoryより購入した。マウスは5週齢で購入し、
毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、絶食期間中
以外は水および固形飼料(CE-2)(日本クレア)を自由に
摂取できるようにして飼育した。EAEの惹起は、このマ
ウスにPBSに溶解した2mg/mlのウサギミエリン塩基性タ
ンパク質(MBP)(シグマ社)と完全フロイントアジュバン
ト(CFA)(ディフコ社)を1:1に混合したエマルジョ
ンを、100μlずつ大腿部皮下に感作し、感作の直後お
よび2日後に生理食塩水(大塚生食注)(大塚製薬)に溶解
した200ngの百日咳毒素(リスト・バイオロジカル・ラボ
ラトリーズ社)を腹腔内投与することによって行なっ
た。
【0069】絶食および絶食中のレプチンの投与は以下
の手順に従って行なった。EAEを惹起するためにMBPの感
作と百日咳毒素の投与を行なったマウスを3群に分け、
1群は対照群として飼料を自由に節取出来るようにし
た。残り2群のマウスは感作後8日目の午前8時から感
作後10日目の午前8時までの48時間固形飼料を摂取で
きなくし、その期間中に1群は絶食前の体重1gあたり1
μgの組換えマウスレプチン(テクネ社)を生理食塩水
(大塚生食注)(大塚製薬)に溶解したもの(200μg/m
l)を午前10時と午後7時の1日2回、腹腔内投与した。こ
こで用いた組み換えレプチンはエンドトキシンのレベル
が1μgあたり0.1ng以下であることが確認されたもので
ある。もう1群は対照として0.2mlの生理食塩水(大塚
生食注)(大塚製薬)を同様に腹腔内投与した。すべて
のマウスは水を自由に節取できるようにした。
【0070】免疫後毎日体重の測定およびEAE症状の観
察を行ない、以下に基づいてEAEの症状のスコアを記録
した。0,無症状;1,尾の麻痺;2,弱い後ろ足の麻
痺;3,中程度から強度の後ろ足の麻痺あるいは弱い前
足の麻痺、またはその両方;4,完全な後ろ足の麻痺あ
るいは中程度から強度の前足の麻痺、またはその両方;
5,四肢の麻痺あるいは死戦期にある;6,死亡。結果を
図1に示す。
【0071】絶食を行なったマウスでは、絶食を行なわ
なかったマウスと比較して、EAEスコアの平均の推移お
よび発症率の推移の両方に関して絶食によってEAE発症
の遅延効果がみられた。またEAE発症に伴って体重の減
少がみられることが知られているが、EAE発症の遅延は
体重の減少の遅延によっても確認された。絶食中のレプ
チンの投与の効果を検討したところ、絶食中のレプチン
の投与によって絶食によるEAEの発症の遅延効果はみら
れなくなった。また体重の平均値の推移によっても絶食
によるEAE発症の遅延、および絶食中のレプチン投与に
より絶食によるEAE発症の遅延効果が見られなくなるこ
とが確認された。
【0072】実施例2レプチン欠損マウスのEAE発症の検討 レプチンがEAE発症に及ぼす影響を検討するため、レプ
チンが欠損している変異マウスであるB6.V-Lepobマウス
(以前の名称はC57BL/6J-Lepob)(以後obマウス)、お
よび遺伝的背景が同一であるC57BL/6Jマウス(以後野性
型マウス)のEAE発症を比較した。実験方法と結果を以下
に示す。
【0073】実験に用いた野性型マウス、obマウスはTh
e Jackson Laboratoryより購入した。マウスは5週齢で
購入し、毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、水
および固形飼料(CE-2)(日本クレア)を自由に摂取でき
るようにして飼育した。野性型マウス、obマウスのEAE
の誘導は生理食塩水(大塚生食注)(大塚製薬)に溶解した
ミエリンオリゴデンドロサイトグリコプロテイン(MO
G)35-55合成ペプチド(アミノ酸配列はアミノ末端からM
et-Glu-Val-Gly-Trp-Tyr-Arg-Ser-Pro-Phe-Ser-Arg-Val
-Val-His-Leu-Tyr-Arg-Asn-Gly-Lys)(アコード社)の溶
液(4mg/ml)とフロイントの完全アジュバント(ディフ
コ社)を1:1で混和してエマルジョンを作製し、100μ
lのエマルジョンをマウス大腿部皮下に感作し、感作の
直後と2日後に200ngの百日咳毒素(リスト・バイオロジ
カル・ラボラトリーズ社)を腹腔内投与することによっ
て行なった。感作したマウスは以後毎日、体重の測定と
EAE症状の観察を行なった。EAE症状のスコア化はPLSJLF
1/Jマウスと同じ方法によった。結果を図2に示す。
【0074】野性型マウスの発症率は感作後17日目の時
点で100%となった(10匹のマウスを用いた実験の結
果)。一方、obマウスは感作後30日を経過した時点での
発症率が33%(9匹のマウスを用いた実験の結果)にとど
まった。また発症の見られたマウスに関しても発症に要
した日数は野性型マウスに比べて長く、またそれぞれの
マウスのEAEスコアの最大値の平均に関してもobマウス
で低かった。この結果からレプチンを欠損したobマウス
がEAEの発症に対して抵抗性であることが示された。
【0075】実施例3レプチンレセプター欠損マウスのEAE発症の検討 レプチンがEAE発症に及ぼす影響が、これまでに知られ
ているレプチンレセプターを介した作用であるかを検討
するため、レプチンレセプターを欠損している変異マウ
スであるB6.Cg-m +/+ Leprdbマウス(以前の名称はC57B
L/6J-m +/+ Leprdb)(以後dbマウス)、および遺伝的背
景が同一である野性型マウス(C57BL/6Jマウス、以後野
性型マウス)のEAE発症を比較した。実験方法と結果を
以下に示す。
【0076】実験に用いた野性型マウス、dbマウスはTh
e Jackson Laboratoryより購入した。マウスは5週齢で
購入し、毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、水
および固形飼料(CE-2)(日本クレア)を自由に摂取でき
るようにして飼育した。野性型マウス、dbマウスのEAE
の誘導はobマウスと同じ方法によって行なった。感作し
たマウスは以後毎日、体重の測定とEAE症状の観察を行
なった。EAE症状のスコア化はPLSJLF1/Jマウスと同じ方
法によった。結果を図3に示す。
【0077】野性型マウスの発症率は感作後25日目の時
点で100%となった(8匹のマウスを用いた実験の結果)。
一方、dbマウスは感作後30日を経過した時点で全く発症
が見られなかった(発症率0%)(8匹のマウスを用いた実
験の結果)。この結果からレプチンレセプターを欠損し
ているdbマウスがEAEの発症に対して抵抗性であること
が示された。
【0078】実施例4抗レプチン抗体の投与が実験的自己免疫性脳脊髄炎(EA
E)の発症に与える影響の検討 抗レプチン抗体の投与が自己免疫疾患の発症に与える影
響を検討するため、ヒトの多発性硬化症の動物モデルで
ある実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を用いて検討を
行なった。実験方法と結果を以下に示す。
【0079】実験に用いたPLSJLF1/JマウスはThe Jacks
on Laboratoryより購入した。マウスは5週齢で購入し、
毎日午前8時から午後8時まで照明を点灯し、水および固
形飼料(CE-2)(日本クレア)を自由に摂取できるように
して飼育した。EAEの惹起は、このマウスに生理食塩水
(大塚生食注)(大塚製薬)に溶解した2mg/mlのウサギミエ
リン塩基性タンパク質(MBP)(シグマ社)と完全フロイン
トアジュバント(CFA)(ディフコ社)を1:1に混合し
たエマルジョンを、100μlずつ大腿部皮下に感作し、
感作の直後および2日後に生理食塩水に溶解した200ngの
百日咳毒素(リスト・バイオロジカル・ラボラトリーズ
社)を腹腔内投与することによって行なった。
【0080】抗レプチン抗体の投与は以下の手順に従っ
て行なった。EAEを惹起するためにMBPの感作と百日咳毒
素の投与を行なったマウスを3群に分け(各々の群はそれ
ぞれ5匹のマウスより成る)、1群はマウス1匹あたり30
μgのヤギ抗レプチン抗体(米国ジェンザイム・テク
ネ)を生理食塩水に溶解したものを感作後8日目、10日
目の2回、腹腔内に投与した(300μg/mlの溶液をマウス
1匹あたり100μl投与した)。もう一群は対照として同
量のヤギ抗体(米国ジェンザイム・テクネ)を同様に腹腔
内に投与した。さらにもう一群は同量の生理食塩水(大
塚製薬)を同様に腹腔内に投与した。すべてのマウスは
全飼育期間を通じて飼料と水を自由に節取出来るように
した。
【0081】免疫後毎日体重の測定およびEAE症状の観
察を行ない、以下に基づいてEAEの症状のスコアを記録
した。0,無症状;1,尾の麻痺;2,弱い後ろ足の麻
痺;3,中程度から強度の後ろ足の麻痺あるいは弱い前
足の麻痺、またはその両方;4,完全な後ろ足の麻痺あ
るいは中程度から強度の前足の麻痺、またはその両方;
5,四肢の麻痺あるいは死戦期にある;6,死亡。結果を
図4に示す。図中にはEAEスコアの平均値の推移を示し
た。抗レプチン抗体投与群では、コントロール抗体投与
群、生理食塩水投与群に比較してEAEの発症の遅延が認
められた。以上の結果より、レプチンの作用を阻害する
ことによって、EAEの治療/予防効果の得られることが
確認された。
【0082】実施例5レプチン受容体発現細胞を用いた自己免疫疾患治療剤の
スクリーニング レプチン受容体のcDNA(Cell,83,1263-1271(1995))を
含有する発現ベクターを用いて、常法によりCHO細胞やC
OS細胞を形質転換し、レプチン受容体を細胞表面に安定
に発現する形質転換細胞を取得する。他方、レプチン
(テクネ社)を常法によりビオチンやラジオアイソトー
プ(125I)などで標識する。次に、前記レプチン受容
体発現細胞に対して、(i)標識レプチン、又は(i
i)標識レプチン及び被験物質を添加し、これら(i)
及び(ii)の場合における標識レプチンのレプチン受容
体発現細胞への結合性を比較する。(i)の場合と比較
して(ii)の場合のほうが結合性が低い、あるいは結
合性が無い被験物質を、自己免疫疾患治療剤の候補物質
として選択する。当該候補物質を、さらにレプチン阻害
作用を検出する別のスクリーニング系や、EAEモデルに
対する投与実験などに供することにより、前記候補物質
が自己免疫疾患治療剤となり得ることが示される。
【0083】実施例6レプチン発現細胞を用いた自己免疫疾患治療剤のスクリ
ーニング レプチンを天然に発現している脂肪細胞に対し、(i)
被験物質を添加した群と、(ii)被験物質を添加しな
い群を準備する。一定期間培養後、細胞を回収して常法
により溶解し、ノーザンブロット解析によりレプチンm
RNAの発現量を比較する。あるいは、細胞培養液を回
収し、ウエスタンブロット解析により、分泌されたレプ
チンのタンパク量を比較する。これらのスクリーニング
により、(ii)の場合と比較して(i)の場合のほう
がシグナルが弱い、あるいはシグナルが検出されない被
験物質を、自己免疫疾患治療剤の候補物質として選択す
る。
【0084】
【発明の効果】本発明により、レプチン阻害作用という
従来にない性質を有する、新規な自己免疫疾患治療剤及
び予防剤が提供される。さらに本発明により、レプチン
阻害作用に着目した新規な自己免疫疾患治療剤及び予防
剤のスクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、PLSJLF1マウスにMBPの感作と百日咳毒
素の投与によりEAE発症を誘導し、絶食、および絶食中
のレプチン投与のEAE発症に対する影響を検討した結果
を示したグラフである。図中(A)の図ではEAEスコアの平
均値の推移を示した。自由節食・生理食塩水投与群では
感作後13日目にEAEスコアはピークに達した。一方絶食
・生理食塩水投与群ではEAEスコアがピークに達したの
は感作後15日目であり、絶食によりEAEの発症が遅延す
る傾向が見られた。絶食時に血中のレプチンのレベルが
低下することが知られているため、絶食によるEAE発症
に対するレプチンの関与を検討するため、絶食中にレプ
チンを投与し、EAEの発症に与える影響を検討した。絶
食・レプチン投与群ではEAEスコアがピークに達したの
は自由節食・生理食塩水投与群と同じく感作後13日目で
あり、絶食によるEAE発症の遅延がレプチン投与により
絶食を行なわない場合と同様の発症を示し、レプチンが
EAEの発症に関与することが示された。図中(B)の図では
発症率の推移を示した。スコアの平均値の推移と同様
に、絶食によってEAEの発症が遅延すること、絶食中の
レプチンの投与によりEAEの発症は絶食を行なわない場
合と同様になることが確認され、レプチンがEAEの発症
に関与することが示された。図中(C)の図では体重の
平均値の推移を示した。EAEの発症に伴って体重の減少
が見られることが知られているが、EAEスコアの平均値
の推移、発症率の推移を示した図と同様に、絶食によっ
てEAEの発症が遅延すること、絶食中のレプチンの投与
によりEAEの発症は絶食を行なわない場合と同様になる
ことが確認され、レプチンがEAEの発症に関与すること
が示された。
【図2】図2は、obマウスおよび対照の野性型マウスに
MOGペプチドの感作と百日咳毒素の投与によりEAE発症を
誘導し、経過を観察した結果を示したグラフである。図
中(A)の図ではEAEスコアの平均値の推移を示した。野性
型マウスでは感作後9日目からEAE発症がみられ始め、17
-18日目に平均スコアが最大の3.2になった。その後寛解
期となって平均スコアは低下し、感作後22日目以後は平
均スコアは約2.3前後でほぼ一定となった。一方obマウ
スではEAEの発症は感作後20日目までは全く見られず、
平均スコアは観察期間中最大でも0.3(感作後24日目)で
あり、野生型マウスと比較して活性型レプチンを産生で
きないobマウスのEAE発症は著しく弱いことが示され
た。図中(B)の図では発症率の推移を示した。野性型マ
ウスでは感作後8日目からEAE発症がみられ始め、17日目
に感作したすべてのマウスがEAEを発症した(発症率100
%)。一方obマウスでは感作後18日目まではEAEの発症は
全く見られず、観察を終了した感作後30日目でも発症率
は33%であり、野性型マウスに比較してobマウスではEAE
の発症率が低く、さらにEAEを発症したマウスに関して
も発症は遅延することが示された。図中(C)の図ではE
AEを誘導した野性型マウスの体重の平均値の推移を示し
た。EAEの発症にともなって体重が減少することが知ら
れているが、感作後10日目以後のEAEの発症が体重の減
少によっても確認された。図中(D)の図ではEAEを誘導
したobマウスの体重の平均値の推移を示した。観察期間
中を通じて体重の平均値の大きな減少はみられず、obマ
ウスのEAE発症が野性型マウスに比較して著しく弱いこ
とが、体重の推移によっても確認された。
【図3】図3は、dbマウスおよび対照の野性型マウスに
MOGペプチドの感作と百日咳毒素の投与によりEAE発症を
誘導し、経過を観察した結果を示したグラフである。図
中(A)の図ではEAEスコアの平均値の推移を示した。野性
型マウスでは感作後8日目からEAE発症がみられ始め、15
日目に平均スコアが最大の3.0になった。その後寛解期
となって平均スコアは低下し、感作後20日目以後は平均
スコアは約2前後でほぼ一定となった。一方dbマウスで
はEAEの発症は観察した期間(30日間)中全く見られず、
野生型マウスと比較して活性型レプチンレセプターを産
生できないdbマウスのEAE発症は著しく弱いことが示さ
れた。図中(B)の図では発症率の推移を示した。野性型
マウスでは感作後7日目からEAE発症がみられ始め、感作
後13日目には88%のマウスがEAEを発症した。感作後25日
目には感作したすべてのマウスがEAEを発症した(発症率
100%)。一方dbマウスでは感作を続けた30日の間にEAEの
発症は全く見られず、野性型マウスに比較してdbマウス
ではEAEの発症率が低く、さらにEAEを発症したマウスに
関しても発症は遅延することが示された。図中(C)の
図ではEAEを誘導した野性型マウスの体重の平均値の推
移を示した。EAEの発症にともなって体重が減少するこ
とが知られているが、感作後10日目以後のEAEの発症が
体重の減少によっても確認された。図中(D)の図ではE
AEを誘導したdbマウスの体重の平均値の推移を示した。
観察期間中を通じて体重の平均値の大きな減少はみられ
ず、dbマウスのEAE発症が野性型マウスに比較して著し
く弱いことが、体重の推移によっても確認された。
【図4】図4は、PLSJLF1マウスにMBPの感作と百日咳毒
素の投与によりEAE発症を誘導し、抗レプチン抗体投与
のEAE発症に対する影響を検討した結果を示したグラフ
である。抗レプチン抗体、コントロール抗体または生理
食塩水を投与した日を矢印で示した。図中にはEAEスコ
アの平均の推移を示した。コントロール抗体を投与した
群、および生理食塩水を投与した群ではそれぞれ感作後
12日目、13日目にEAEの発症が始まり、それぞれ感作後1
4日目、16日目には平均スコアが1.8に達した。一方抗レ
プチン抗体投与群では感作後15日目まで発症が認められ
なかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/02 G01N 33/15 Z G01N 33/15 33/50 Z 33/50 33/53 F 33/53 33/566 33/566 C12Q 1/68 A // C12N 15/09 ZNA G01N 33/564 Z C12Q 1/68 A61K 37/02 G01N 33/564 C12N 15/00 ZNAA Fターム(参考) 2G045 AA40 FB02 FB03 4B024 AA01 AA11 BA63 BA80 CA04 DA02 EA04 GA11 HA14 HA15 4B063 QA01 QA20 QQ08 QQ13 QQ53 QR08 QR33 QR35 QR42 QR56 QS25 QS34 QX02 QX07 4C084 AA02 AA17 DB63 ZA022 ZB072 4C085 AA13 BB07 DD88

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 レプチン阻害剤を有効成分として含有す
    る、自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤。
  2. 【請求項2】 自己免疫疾患が多発性硬化症である、請
    求項1記載の治療及び/又は予防剤。
  3. 【請求項3】 レプチン阻害剤が、レプチン受容体を介
    したレプチンの作用を阻害するものである、請求項1又
    は2記載の治療及び/又は予防剤。
  4. 【請求項4】 レプチン阻害剤が、レプチン−レプチン
    受容体間の結合を阻害するものである、請求項3記載の
    治療及び/又は予防剤。
  5. 【請求項5】 レプチン阻害剤が可溶性レプチン受容体
    である、請求項4記載の治療及び/又は予防剤。
  6. 【請求項6】 レプチン阻害剤が抗レプチン抗体であ
    る、請求項4記載の治療及び/又は予防剤。
  7. 【請求項7】 レプチン阻害剤が、レプチンの発現又は
    分泌、あるいはレプチン受容体の発現を阻害するもので
    ある、請求項1又は2記載の治療及び/又は予防剤。
  8. 【請求項8】 レプチン阻害剤を探索することを指標と
    した、自己免疫疾患の治療及び/又は予防剤のスクリー
    ニング方法。
  9. 【請求項9】 自己免疫疾患が多発性硬化症である、請
    求項8記載のスクリーニング方法。
  10. 【請求項10】 被験物質がレプチン受容体を介したレ
    プチンの作用を阻害するか否かを評価することを含む、
    請求項8又は9記載のスクリーニング方法。
  11. 【請求項11】 被験物質がレプチン−レプチン受容体
    間の結合を阻害するか否かを評価することを含む、請求
    項8〜10いずれか記載のスクリーニング方法。
  12. 【請求項12】 (i)レプチン受容体にレプチンを接
    触させた場合と、(ii)レプチン受容体にレプチン及
    び被験物質を接触させた場合とを比較・評価することを
    含む、請求項8〜11いずれか記載のスクリーニング方
    法。
  13. 【請求項13】 被験物質がレプチンの発現又は分泌、
    あるいはレプチン受容体の発現を阻害するか否かを評価
    することを含む、請求項8又は9記載のスクリーニング
    方法。
  14. 【請求項14】 被験物質の存在下、レプチンを発現す
    る細胞をインビトロで培養し、該細胞におけるレプチン
    の発現量又は分泌量を測定・評価することを含む、請求
    項13記載のスクリーニング方法。
  15. 【請求項15】 被験物質の存在下、レプチン受容体を
    発現する細胞をインビトロで培養し、該細胞におけるレ
    プチン受容体の発現量を測定・評価することを含む、請
    求項13記載のスクリーニング方法。
  16. 【請求項16】 請求項8〜15いずれか記載のスクリ
    ーニング方法により得られる自己免疫疾患の治療及び/
    又は予防剤。
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