JP2003015690A - 音響信号の符号化方法 - Google Patents

音響信号の符号化方法

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JP2003015690A JP2001198402A JP2001198402A JP2003015690A JP 2003015690 A JP2003015690 A JP 2003015690A JP 2001198402 A JP2001198402 A JP 2001198402A JP 2001198402 A JP2001198402 A JP 2001198402A JP 2003015690 A JP2003015690 A JP 2003015690A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 重要な音の一部を欠落させてしまうことな
く、かつ、同時刻に重複する音素を同時発音可能な数に
収めることが可能な音響信号の符号化方法を提供する。 【解決手段】音響信号に対して単位区間ごとに周波数解
析を行なって、単位音素データを算出した後、連結処理
を行うことにより得られる連結処理後の音素データ群
(a)について、時間的に重複する音素データを調べ、
重複する音素データの個数が所定値を超える場合に、い
ずれかの音素データに補正を加えることにより時間的に
重複する音素データの個数を所定値以下に抑える(b)
(c)(d)。これにより、重要な音の一部を欠落させ
てしまうことなく、かつ、同時刻に重複する音素を同時
発音可能な数以下に収めた音素データ群(e)を得るこ
とが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、音楽制作における採譜
と呼ばれる以下のような業務を支援するのに適用するこ
とができる。採譜業務としては、例えば、譜面が入手で
きない場合の素材としての既存楽曲の引用・既存楽曲の
カバー曲制作、ヒット曲のメロディ・和声進行・音色の
分析研究等の楽曲分析、カラオケにおけるMIDIデー
タ形式の演奏データ作成、ゲーム機のBGMデータの作
成、携帯電話の着メロデータ作成、自動ピアノ・演奏ガ
イド機能付き鍵盤楽器向け演奏データの作成、楽譜出版
・版下作成などがある。
【0002】
【従来の技術】音響信号に代表される時系列信号には、
その構成要素として複数の周期信号が含まれている。こ
のため、与えられた時系列信号にどのような周期信号が
含まれているかを解析する手法は、古くから知られてい
る。例えば、フーリエ解析は、与えられた時系列信号に
含まれる周波数成分を解析するための方法として広く利
用されている。
【0003】このような時系列信号の解析方法を利用す
れば、音響信号を符号化することも可能である。コンピ
ュータの普及により、原音となるアナログ音響信号を所
定のサンプリング周波数でサンプリングし、各サンプリ
ング時の信号強度を量子化してデジタルデータとして取
り込むことが容易にできるようになってきており、こう
して取り込んだデジタルデータに対してフーリエ解析な
どの手法を適用し、原音信号に含まれていた周波数成分
を抽出すれば、各周波数成分を示す符号によって原音信
号の符号化が可能になる。
【0004】一方、電子楽器による楽器音を符号化しよ
うという発想から生まれたMIDI(Musical Instrume
nt Digital Interface)規格も、パーソナルコンピュー
タの普及とともに盛んに利用されるようになってきてい
る。このMIDI規格による符号データ(以下、MID
Iデータという)は、基本的には、楽器のどの鍵盤キー
を、どの程度の強さで弾いたか、という楽器演奏の操作
を記述したデータであり、このMIDIデータ自身に
は、実際の音の波形は含まれていない。そのため、実際
の音を再生する場合には、楽器音の波形を記憶したMI
DI音源が別途必要になるが、その符号化効率の高さが
注目を集めており、MIDI規格による符号化および復
号化の技術は、現在、パーソナルコンピュータを用いて
楽器演奏、楽器練習、作曲などを行うソフトウェアに広
く採り入れられている。
【0005】そこで、音響信号に代表される時系列信号
に対して、所定の手法で解析を行うことにより、その構
成要素となる周期信号を抽出し、抽出した周期信号をM
IDIデータを用いて符号化しようとする提案がなされ
ている。例えば、特開平10−247099号公報、特
開平11−73199号公報、特開平11−73200
号公報、特開平11−95753号公報、特開2000
−99009号公報、特開2000−99092号公
報、特開2000−99093号公報、特開2000−
261322号公報、特開2001−5450号公報、
特開2001−148633号公報には、任意の時系列
信号について、構成要素となる周波数を解析し、その解
析結果からMIDIデータを作成することができる種々
の方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記各公報または明細
書において提案してきたMIDI符号化方式により、演
奏録音等から得られる音響信号の効率的な符号化が可能
になった。従来の符号化方式では、特開平11−957
53号公報において開示されているように、単位区間ご
とに周波数解析を行って得られる音素(本明細書では、
周波数とその周波数に対応する強度の組を音素と呼ぶこ
とにする)を所定数に選別する手法をとっている。これ
は、通常のMIDI音源では同時発音数が16〜64と
いう制約があるため、解析により得られる音素をこれに
合わせなければならないからである。そのため、各単位
区間ごとに、その強度値を基準にして16程度に選別を
行っている。
【0007】しかしながら、このように単位区間ごとに
選別を行うと、全体における音素の役割が考慮されてい
ないため、音の立ち上がり、あるいは終了部分などのよ
うに、ある単位区間においては強度値が小さいが、重要
な音の一部であるようなものでも削除されてしまうこと
になり、精度の良い符号化を行うことができない。
【0008】そこで、本出願人は、特願2001−87
50号明細書において、単位区間ごとに強度値の高い音
素に16程度の優先マークを付与しておき、その後、連
続する区間の音素を連結して連結音素を得て、この連結
音素を基に符号データを作成する手法について提案し
た。
【0009】この手法では、連結前の段階で同時発音数
をある程度コントロールすることができ、上述のよう
に、重要な音の一部を構成する音素を削除してしまうよ
うなこともないが、連結後には、連結音素の同時刻にお
ける重複数が平均2倍程度に増加するため、指定した個
数範囲に同時発音数を制限することができないという問
題がある。
【0010】上記のような点に鑑み、本発明は、重要な
音の一部を欠落させてしまうことなく、かつ、同時刻に
重複する音素を同時発音可能な数に収めることが可能な
音響信号の符号化方法を提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明では、与えられた音響信号に対して、時間軸
上に複数の単位区間を設定し、設定された単位区間にお
ける音響信号と複数の周期関数との相関を求めることに
より、各周期関数に対応した強度値を算出し、各周期関
数が有する周波数と、前記各周期関数に対応した強度値
と、単位区間の始点に対応する区間開始時刻と、単位区
間の終点に対応する区間終了時刻で構成される単位音素
データを算出し、この単位音素データの算出処理を全単
位区間に対して行うことにより得られる全単位音素デー
タから、強度値が所定値に達していないものを削除し
て、残りの単位音素データを有効な強度値を有する有効
音素データとして抽出し、抽出された有効音素データに
対して、周波数が同一であって、区間が連続するものを
連結して連結音素データとし、連結音素データの属性と
して、強度値は構成する有効音素データの最大強度値を
与え、開始時刻は先頭の有効音素データの区間開始時刻
を与え、終了時刻は最後尾の有効音素データの区間終了
時刻を与え、連結処理後の全音素データに対して、時間
的に重複する音素データを探索し、重複する個数が所定
値を超える場合、時間的に重複する音素データのいずれ
かに対して補正を行うことにより、時間的に重複する音
素データの個数を所定値以下にし、調整後の音素データ
の集合により音響信号を表現するようにしたことを特徴
とする。本発明によれば、音響信号に対して単位区間ご
とに周波数解析を行なって、単位音素データを算出した
後、連結処理を行い、連結処理後の音素データについ
て、時間的に重複する音素データを調べ、重複する音素
データの個数が所定値を超える場合に、いずれかの音素
データに補正を加えることにより時間的に重複する音素
データの個数を所定値以下に抑えるようにしたので、重
要な音の一部を欠落させてしまうことなく、かつ、同時
刻に重複する音素を同時発音可能な数以下に収めること
が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図面を参照して詳細に説明する。
【0013】(音響信号符号化方法の基本原理)はじめ
に、本発明に係る音響信号の符号化方法の基本原理を述
べておく。この基本原理は、前掲の各公報あるいは明細
書に開示されているので、ここではその概要のみを簡単
に述べることにする。
【0014】図1(a)に示すように、時系列信号とし
てアナログ音響信号が与えられたものとする。図1の例
では、横軸に時間t、縦軸に振幅(強度)をとって、こ
の音響信号を示している。ここでは、まずこのアナログ
音響信号を、デジタルの音響データとして取り込む処理
を行う。これは、従来の一般的なPCMの手法を用い、
所定のサンプリング周波数でこのアナログ音響信号をサ
ンプリングし、振幅を所定の量子化ビット数を用いてデ
ジタルデータに変換する処理を行えば良い。ここでは、
説明の便宜上、PCMの手法でデジタル化した音響デー
タの波形も図1(a)のアナログ音響信号と同一の波形
で示すことにする。
【0015】続いて、この解析対象となる音響信号の時
間軸上に、複数の単位区間を設定する。図1(a)に示
す例では、時間軸t上に等間隔に6つの時刻t1〜t6
が定義され、これら各時刻を始点および終点とする5つ
の単位区間d1〜d5が設定されている。図1の例で
は、全て同一の区間長をもった単位区間が設定されてい
るが、個々の単位区間ごとに区間長を変えるようにして
もかまわない。あるいは、隣接する単位区間が時間軸上
で部分的に重なり合うような区間設定を行ってもかまわ
ない。
【0016】こうして単位区間が設定されたら、各単位
区間ごとの音響信号(以下、区間信号と呼ぶことにす
る)について、それぞれ代表周波数を選出する。各区間
信号には、通常、様々な周波数成分が含まれているが、
例えば、その中で成分の強度割合の大きな周波数成分を
代表周波数として選出すれば良い。ここで、代表周波数
とはいわゆる基本周波数が一般的であるが、音声のフォ
ルマント周波数などの倍音周波数や、ノイズ音源のピー
ク周波数も代表周波数として扱うことがある。代表周波
数は1つだけ選出しても良いが、音響信号によっては複
数の代表周波数を選出した方が、より精度の高い符号化
が可能になる。図1(b)には、個々の単位区間ごとに
それぞれ3つの代表周波数を選出し、1つの代表周波数
を1つの代表符号(図では便宜上、音符として示してあ
る)として符号化した例が示されている。ここでは、代
表符号(音符)を収容するために3つのトラックT1,
T2,T3が設けられているが、これは個々の単位区間
ごとに選出された3つずつの代表符号を、それぞれ異な
るトラックに収容するためである。
【0017】例えば、単位区間d1について選出された
代表符号n(d1,1),n(d1,2),n(d1,
3)は、それぞれトラックT1,T2,T3に収容され
ている。ここで、各符号n(d1,1),n(d1,
2),n(d1,3)は、MIDI符号におけるノート
ナンバーを示す符号である。MIDI符号におけるノー
トナンバーは、0〜127までの128通りの値をと
り、それぞれピアノの鍵盤の1つのキーを示すことにな
る。具体的には、例えば、代表周波数として440Hz
が選出された場合、この周波数はノートナンバーn=6
9(ピアノの鍵盤中央の「ラ音(A3音)」に対応)に
相当するので、代表符号としては、n=69が選出され
ることになる。もっとも、図1(b)は、上述の方法に
よって得られる代表符号を音符の形式で示した概念図で
あり、実際には、各音符にはそれぞれ強度に関するデー
タも付加されている。例えば、トラックT1には、ノー
トナンバーn(d1,1),n(d2,1)・・・なる
音高を示すデータとともに、e(d1,1),e(d
2,1)・・・なる強度を示すデータが収容されること
になる。この強度を示すデータは、各代表周波数の成分
が、元の区間信号にどの程度の度合いで含まれていたか
によって決定される。具体的には、各代表周波数をもっ
た周期関数の区間信号に対する相関値に基づいて強度を
示すデータが決定されることになる。また、図1(b)
に示す概念図では、音符の横方向の位置によって、個々
の単位区間の時間軸上での位置が示されているが、実際
には、この時間軸上での位置を正確に数値として示すデ
ータが各音符に付加されていることになる。
【0018】音響信号を符号化する形式としては、必ず
しもMIDI形式を採用する必要はないが、この種の符
号化形式としてはMIDI形式が最も普及しているた
め、実用上はMIDI形式の符号データを用いるのが好
ましい。MIDI形式では、「ノートオン」データもし
くは「ノートオフ」データが、「デルタタイム」データ
を介在させながら存在する。「ノートオン」データは、
特定のノートナンバーNとベロシティーVを指定して特
定の音の演奏開始を指示するデータであり、「ノートオ
フ」データは、特定のノートナンバーNとベロシティー
Vを指定して特定の音の演奏終了を指示するデータであ
る。また、「デルタタイム」データは、所定の時間間隔
を示すデータである。ベロシティーVは、例えば、ピア
ノの鍵盤などを押し下げる速度(ノートオン時のベロシ
ティー)および鍵盤から指を離す速度(ノートオフ時の
ベロシティー)を示すパラメータであり、特定の音の演
奏開始操作もしくは演奏終了操作の強さを示すことにな
る。
【0019】前述の方法では、第i番目の単位区間di
について、代表符号としてJ個のノートナンバーn(d
i,1),n(di,2),・・・,n(di,J)が
得られ、このそれぞれについて強度e(di,1),e
(di,2),・・・,e(di,J)が得られる。そ
こで、次のような手法により、MIDI形式の符号デー
タを作成することができる。まず、「ノートオン」デー
タもしくは「ノートオフ」データの中で記述するノート
ナンバーNとしては、得られたノートナンバーn(d
i,1),n(di,2),・・・,n(di,J)を
そのまま用いれば良い。一方、「ノートオン」データも
しくは「ノートオフ」データの中で記述するベロシティ
ーVとしては、得られた強度e(di,1),e(d
i,2),・・・,e(di,J)を所定の方法で規格
化した値を用いれば良い。また、「デルタタイム」デー
タは、各単位区間の長さに応じて設定すれば良い。
【0020】(周期関数との相関を求める具体的な方
法)上述した基本原理の基づく方法では、区間信号に対
して、1つまたは複数の代表周波数が選出され、この代
表周波数をもった周期信号によって、当該区間信号が表
現されることになる。ここで、選出される代表周波数
は、文字どおり、当該単位区間内の信号成分を代表する
周波数である。この代表周波数を選出する具体的な方法
には、後述するように、短時間フーリエ変換を利用する
方法と、一般化調和解析の手法を利用する方法とがあ
る。いずれの方法も、基本的な考え方は同じであり、あ
らかじめ周波数の異なる複数の周期関数を用意してお
き、これら複数の周期関数の中から、当該単位区間内の
区間信号に対する相関が高い周期関数を見つけ出し、こ
の相関の高い周期関数の周波数を代表周波数として選出
する、という手法を採ることになる。すなわち、代表周
波数を選出する際には、あらかじめ用意された複数の周
期関数と、単位区間内の区間信号との相関を求める演算
を行うことになる。そこで、ここでは、周期関数との相
関を求める具体的な方法を述べておく。
【0021】複数の周期関数として、図2に示すような
三角関数が用意されているものとする。これらの三角関
数は、同一周波数をもった正弦関数と余弦関数との対か
ら構成されており、128通りの標準周波数f(0)〜
f(127)のそれぞれについて、正弦関数および余弦
関数の対が定義されていることになる。ここでは、同一
の周波数をもった正弦関数および余弦関数からなる一対
の関数を、当該周波数についての周期関数として定義す
ることにする。すなわち、ある特定の周波数についての
周期関数は、一対の正弦関数および余弦関数によって構
成されることになる。このように、一対の正弦関数と余
弦関数とにより周期関数を定義するのは、信号に対する
周期関数の相関値を求める際に、相関値が位相の影響を
受ける事を考慮するためである。なお、図2に示す各三
角関数内の変数Fおよびkは、区間信号Xについてのサ
ンプリング周波数Fおよびサンプル番号kに相当する変
数である。例えば、周波数f(0)についての正弦波
は、sin(2πf(0)k/F)で示され、任意のサ
ンプル番号kを与えると、区間信号を構成する第k番目
のサンプルと同一時間位置における周期関数の振幅値が
得られる。
【0022】ここでは、128通りの標準周波数f
(0)〜f(127)を図3に示すような式で定義した
例を示すことにする。すなわち、第n番目(0≦n≦1
27)の標準周波数f(n)は、以下に示す〔数式1〕
で定義されることになる。
【0023】〔数式1〕 f(n)=440×2γ (n) γ(n)=(n−69)/12
【0024】このような式によって標準周波数を定義し
ておくと、最終的にMIDIデータを用いた符号化を行
う際に便利である。なぜなら、このような定義によって
設定される128通りの標準周波数f(0)〜f(12
7)は、等比級数をなす周波数値をとることになり、M
IDIデータで利用されるノートナンバーに対応した周
波数になるからである。したがって、図2に示す128
通りの標準周波数f(0)〜f(127)は、対数尺度
で示した周波数軸上に等間隔(MIDIにおける半音単
位)に設定した周波数ということになる。
【0025】続いて、任意の区間の区間信号に対する各
周期関数の相関の求め方について、具体的な説明を行
う。例えば、図4に示すように、ある単位区間dについ
て区間信号Xが与えられていたとする。ここでは、区間
長Lをもった単位区間dについて、サンプリング周波数
Fでサンプリングが行なわれており、全部でw個のサン
プル値が得られているものとし、サンプル番号を図示の
ように、0,1,2,3,・・・,k,・・・,w−
2,w−1とする(白丸で示す第w番目のサンプルは、
右に隣接する次の単位区間の先頭に含まれるサンプルと
する)。この場合、任意のサンプル番号kについては、
X(k)なる振幅値がデジタルデータとして与えられて
いることになる。短時間フーリエ変換においては、X
(k)に対して各サンプルごとに中央の重みが1に近
く、両端の重みが0に近くなるような窓関数W(k)を
乗ずることが通常である。すなわち、X(k)×W
(k)をX(k)と扱って以下のような相関計算を行う
もので、窓関数の形状としては余弦波形状のハミング窓
が一般に用いられている。ここで、wは以下の記述にお
いても定数のような記載をしているが、一般にはnの値
に応じて変化させ、区間長Lを超えない範囲で最大とな
るF/f(n)の整数倍の値に設定することが望まし
い。
【0026】このような区間信号Xに対して、第n番目
の標準周波数f(n)をもった正弦関数Rnとの相関値
を求める原理を示す。両者の相関値A(n)は、図5の
第1の演算式によって定義することができる。ここで、
X(k)は、図4に示すように、区間信号Xにおけるサ
ンプル番号kの振幅値であり、sin(2πf(n)k
/F)は、時間軸上での同位置における正弦関数Rnの
振幅値である。この第1の演算式は、単位区間d内の全
サンプル番号k=0〜w−1の次元について、それぞれ
区間信号Xの振幅値と正弦関数Rnの振幅ベクトルの内
積を求める式ということができる。
【0027】同様に、図5の第2の演算式は、区間信号
Xと、第n番目の標準周波数f(n)をもった余弦関数
との相関値を求める式であり、両者の相関値はB(n)
で与えられる。なお、相関値A(n)を求めるための第
1の演算式も、相関値B(n)を求めるための第2の演
算式も、最終的に2/wが乗ぜられているが、これは相
関値を規格化するためのものでり、前述のとおりwはn
に依存して変化させるのが一般的であるため、この係数
もnに依存する変数である。
【0028】区間信号Xと標準周波数f(n)をもった
標準周期関数との相関実効値は、図5の第3の演算式に
示すように、正弦関数との相関値A(n)と余弦関数と
の相関値B(n)との二乗和平方根値E(n)によって
示すことができる。この相関実効値の大きな標準周期関
数の周波数を代表周波数として選出すれば、この代表周
波数を用いて区間信号Xを符号化することができる。
【0029】すなわち、この相関値E(n)が所定の基
準以上の大きさとなる1つまたは複数の標準周波数を代
表周波数として選出すれば良い。なお、ここで「相関値
E(n)が所定の基準以上の大きさとなる」という選出
条件は、例えば、何らかの閾値を設定しておき、相関値
E(n)がこの閾値を超えるような標準周波数f(n)
をすべて代表周波数として選出する、という絶対的な選
出条件を設定しても良いが、例えば、相関値E(n)の
大きさの順にQ番目までを選出する、というような相対
的な選出条件を設定しても良い。
【0030】(一般化調和解析の手法)ここでは、本発
明に係る音響信号の符号化を行う際に有用な一般化調和
解析の手法について説明する。既に説明したように、音
響信号を符号化する場合、個々の単位区間内の区間信号
について、相関値の高いいくつかの代表周波数を選出す
ることになる。一般化調和解析は、より高い精度で代表
周波数の選出を可能にする手法であり、その基本原理は
次の通りである。
【0031】図6(a)に示すような単位区間dについ
て、信号S(j)なるものが存在するとする。ここで、
jは後述するように、繰り返し処理のためのパラメータ
である(j=1〜J)。まず、この信号S(j)に対し
て、図2に示すような128通りの周期関数すべてにつ
いての相関値を求める。そして、最大の相関値が得られ
た1つの周期関数の周波数を代表周波数として選出し、
当該代表周波数をもった周期関数を要素関数として抽出
する。続いて、図6(b)に示すような含有信号G
(j)を定義する。この含有信号G(j)は、抽出され
た要素関数に、その振幅として、当該要素関数の信号S
(j)に対する相関値を乗じることにより得られる信号
である。例えば、周期関数として図2に示すように、一
対の正弦関数と余弦関数とを用い、周波数f(n)が代
表周波数として選出された場合、振幅A(n)をもった
正弦関数A(n)sin(2πf(n)k/F)と、振
幅B(n)をもった余弦関数B(n)cos(2πf
(n)k/F)との和からなる信号が含有信号G(j)
ということになる(図6(b)では、図示の便宜上、一
方の関数しか示していない)。ここで、A(n),B
(n)は、図5の式で得られる規格化された相関値であ
るから、結局、含有信号G(j)は、信号S(j)内に
含まれている周波数f(n)をもった信号成分というこ
とができる。
【0032】こうして、含有信号G(j)が求まった
ら、信号S(j)から含有信号G(j)を減じることに
より、差分信号S(j+1)を求める。図6(c)は、
このようにして求まった差分信号S(j+1)を示して
いる。この差分信号S(j+1)は、もとの信号S
(j)の中から、周波数f(n)をもった信号成分を取
り去った残りの信号成分からなる信号ということができ
る。そこで、パラメータjを1だけ増加させることによ
り、この差分信号S(j+1)を新たな信号S(j)と
して取り扱い、同様の処理を、パラメータjをj=1〜
Jまで1ずつ増やしながらJ回繰り返し実行すれば、J
個の代表周波数を選出することができる。
【0033】このような相関計算の結果として出力され
るJ個の含有信号G(1)〜G(J)は、もとの区間信
号Xの構成要素となる信号であり、もとの区間信号Xを
符号化する場合には、これらJ個の含有信号の周波数を
示す情報および振幅(強度)を示す情報を符号データと
して用いるようにすれば良い。尚、Jは代表周波数の個
数であると説明してきたが、標準周波数f(n)の個数
と同一すなわちJ=128であってもよく、周波数スペ
クトルを求める目的においてはそのように行うのが通例
である。
【0034】こうして、各単位区間について、所定数の
周波数群が選出されたら、この周波数群の各周波数に対
応する「音の高さを示す情報」、選出された各周波数の
信号強度に対応する「音の強さを示す情報」、当該単位
区間の始点に対応する「音の発音開始時刻を示す情
報」、当該単位区間に後続する単位区間の始点に対応す
る「音の発音終了時刻を示す情報」、の4つの情報を含
む所定数の符号データを作成すれば、当該単位区間内の
区間信号Xを所定数の符号データにより符号化すること
ができる。符号データとして、MIDIデータを作成す
るのであれば、「音の高さを示す情報」としてノートナ
ンバーを用い、「音の強さを示す情報」としてベロシテ
ィーを用い、「音の発音開始時刻を示す情報」としてノ
ートオン時刻を用い、「音の発音終了時刻を示す情報」
としてノートオフ時刻を用いるようにすれば良い。
【0035】(本発明に係る音響信号の符号化方法)こ
こまでに説明した従来技術とも共通する本発明の基本原
理を要約すると、原音響信号に単位区間を設定し、単位
区間ごとに複数の周波数に対応する信号強度を算出し、
得られた信号強度を基に用意された周期関数を利用して
1つまたは複数の代表周波数を選出し、選出された代表
周波数に対応する音の高さ情報と、選出された代表周波
数の強度に対応する音の強さ情報と、単位区間の始点に
対応する発音開始時刻と、単位区間の終点に対応する発
音終了時刻で構成される符号データを作成することによ
り、音響信号の符号化が行われていることになる。
【0036】本発明の音響信号符号化方法は、上記基本
原理において、得られた信号強度を基に、用意された周
期関数に対応する周波数を全て利用し、これら各周波数
と、各周波数の強度と、単位区間の始点に対応する区間
開始時刻と、単位区間の終点に対応する区間終了時刻で
構成されるデータを「音素データ」と定義し、この音素
データをさらに加工することにより最終的な符号化デー
タを得るようにしたものである。
【0037】ここからは、本発明の音響信号符号化方法
について、図7に示すフローチャートを用いて説明す
る。まず、音響信号の時間軸上の全区間に渡って単位区
間を設定する(ステップS1)。このステップS1にお
ける手法は、上記基本原理において、図1(a)を用い
て説明した通りである。
【0038】続いて、各単位区間ごとの音響信号、すな
わち区間信号について、周波数解析を行って各周波数に
対応する強度値を算出し、周波数、強度値、単位区間の
始点、終点の4つの情報からなる単位音素データを算出
する(ステップS2)。具体的には、図2に示したよう
な128種の周期関数に対して区間信号の相関強度を求
め、その周期関数の周波数、求めた相関強度、単位区間
の始点、終点の4つの情報を「単位音素データ」と定義
する。この単位音素データとは、音素データのうち、特
に最初の単位区間において作成されたものとする。本実
施形態では、上記基本原理で説明した場合のように、代
表周波数を選出するのではなく、用意した周期関数全て
に対応する単位音素データを取得する。このステップS
2の処理を全単位区間に対して行うことにより、単位音
素データ[m,n](0≦m≦M−1,0≦n≦N−1)
群が得られる。ここで、Nは周期関数の総数(上述の例
ではN=128)、Mは音響信号において設定された単
位区間の総数である。つまり、M×N個の単位音素デー
タからなる単位音素データ群が得られることになる。
【0039】単位音素データ群が得られたら、この単位
音素データ群のうち、その強度値が所定値に達していな
い音素データを削除し、残った音素データを有効な強度
値を有する有効音素データとして抽出する(ステップS
3)。このステップS3において、強度値が所定値に達
しない音素データを削除するのは、信号レベルがほとん
ど0であって、実際には音が存在していないと判断され
る音素を削除するためである。そのため、この所定値と
しては、音が実際に存在しないレベルとみなされる値が
設定される。
【0040】このようにして有効音素データの集合であ
る有効音素データ群が得られたら、同一周波数で時系列
方向に連続する複数の有効音素データを1つの連結音素
データとして連結する(ステップS4)。図8は有効音
素データの連結を説明するための概念図である。図8
(a)は連結前の音素データ群の様子を示す図である。
図8(a)において、格子状に仕切られた各矩形は音素
データを示しており、網掛けがされている矩形は、上記
ステップS3において強度値が所定値に達しないために
削除された音素データであり、その他の矩形は有効音素
データを示す。ステップS4においては、同一周波数
(同一ノートナンバー)で時間t方向に連続する有効音
素データを連結するため、図8(a)に示す有効音素デ
ータ群に対して連結処理を実行すると、図8(b)に示
すような複数の連結音素データ、複数の有効音素データ
からなる音素データ群が得られる。例えば、図8(a)
に示した有効音素データA1、A2、A3は連結され
て、図8(b)に示すような連結音素データAが得られ
ることになる。このとき、新たに得られる連結音素デー
タAの周波数としては、有効音素データA1、A2、A
3に共通の周波数が与えられ、強度値としては、有効音
素データA1、A2、A3の強度値のうち最大のものが
与えられ、開始時刻としては、先頭の有効音素データA
1の区間開始時刻t1が与えられ、終了時刻としては、
最後尾の有効音素データA3の区間終了時刻t4が与え
られる。有効音素データ、連結音素データ共に、周波数
(ノートナンバー)、強度値、開始時刻、終了時刻の4
つの情報で構成されるため、3つの有効音素データが1
つの連結音素データに統合されることにより、データ量
は3分の1に削減される。このことは、最終的にMID
I符号化される場合には、短い音符3つではなく、長い
音符1つとして表現されることを意味している。また、
図8(a)に示した有効音素データBのように、同一周
波数で時系列方向に連続する有効音素データがない場合
には、図8(b)に示すように、連結されずにそのまま
残ることになるが、以降の処理においては、連結音素デ
ータも、連結されなかった単位区間長の有効音素データ
もまとめて「音素データ」として扱う。
【0041】続いて、各時刻ごとに重複している音素デ
ータの数を調べ、重複数が同時発音可能数より多い場合
に調整処理を行う(ステップS5)。具体的な処理とし
ては、まず、重複管理テーブルを用意し、この重複管理
テーブルに、発音開始時刻順に音素データを登録してい
く。ここで、重複管理テーブルを用いた重複している音
素データの調整処理を図9を用いて説明する。図9
(a)は、音素データ群における音素データを開始時刻
順に並べたものを示している。
【0042】図9(a)においては、各音素データにつ
いて、その開始時刻および終了時刻のみを示している。
例えば、音素Aは、時刻「0」に発音を開始して時刻
「3」まで発音が持続することを示している。このよう
な音素データ群に対して、時刻単位で重複管理テーブル
に音素を登録していく。なお、以下の説明において、同
時発音数は「4」に設定されているものとする。まず、
発音開始時刻順に音素を重複管理テーブルに登録してい
く。同時発音数が「4」に設定されているため、図9
(b)に示すように、音素Dまでは、単純に重複管理テ
ーブルに音素が登録されることになる。
【0043】音素Eが重複管理テーブルに登録される
と、図9(c)に示すように重複管理テーブルには5つ
の音素が並べられることになる。この場合、設定されて
いる同時発音数「4」になるように、音素を1つ減らす
処理を行う。具体的には、重複管理テーブルに登録され
ている5つの音素の中から優先度の低い音素を1つ選定
し、選定された音素に対して変更を行うことになる。図
9(c)の例では、終了時刻が最も早い音素Aと音素B
が候補となる。音素Aと音素Bは終了時刻が「3」で同
時であるため、その音素データの強度値が低い方に対し
て変更を行う。例えば、音素Bの強度値の方が低いとす
ると、図9(c)に示すように音素Bの終了時刻を、新
たに重複管理テーブルに登録された音素Eの開始時刻と
同一の時刻「2」に変更する。重複管理テーブルにおい
て、変更する音素データが決まったら、実際の音素デー
タ群における音素データについても変更が行われる。ま
た、変更により重複管理テーブル上の他の4つの音素と
時間的に重複しなくなった音素Bは、重複管理テーブル
より削除される。
【0044】次の音素データである音素Fが重複管理テ
ーブルに登録されると、図9(d)に示すように重複管
理テーブルには、また5つの音素が登録されることにな
る。終了時刻が最も早い音素Aが特定できるので、音素
Aの終了時刻を、新たに重複管理テーブルに登録された
音素Fの開始時刻と同一の時刻「2」に変更する。同時
に、音素データ群における音素データも変更される。こ
の時点で、音素データ群における音素データの様子は、
図9(e)に示すようになる。図9(a)の重複調整処
理を行う前と、図9(e)の重複調整処理を行った後を
比較するとわかるように、音素Aと音素Bの終了時刻が
変更されている。また、重複管理テーブルにおいては、
音素Aが削除され、次の音素が重複管理テーブルに登録
されて、上述のような処理が繰り返されることになる。
上記のような重複音素の調整処理を、音素データ群内の
全ての音素データに対して行うことにより、全ての時刻
において、設定された同時発音数を超えない音素データ
群が得られることになる。
【0045】ここで、上記ステップS5における重複音
素の調整処理について、図10に示すフローチャートを
用いて整理して説明する。まず、音素データ群の音素デ
ータを開始時刻順に重複管理テーブルに1つ登録する
(ステップS11)。続いて、新たに登録した音素デー
タの開始時刻までに終了する音素データを重複管理テー
ブルから削除する(ステップS12)。ここで、重複管
理テーブル上に並べられた音素データの数が制限値nを
超えたかどうかを判断する(ステップS13)。この制
限数nとしては、通常は、MIDI規格の同時発音可能
数である16程度が設定される。重複管理テーブル上に
登録された音素数がn以下の場合には、ステップS11
に戻って処理を繰り返す。図9を用いて説明した例は、
n=4の場合であり、図9(c)に示すように重複管理
テーブル上の音素数が5になるまで、ステップS11か
らステップS13の処理が繰り返されたことになる。
【0046】ステップS13において、重複管理テーブ
ル上に登録された音素数がnを超えたと判断された場合
には、重複管理テーブル上に登録されているn+1個の
音素の中から優先度の低い音素を選定する(ステップS
14)。図9を用いて説明した例では、図9(c)に示
したように音素数が5となった場合に、音素Bが最も優
先度が低いものとして選定される。優先度は、図9の例
では、その強度値を基に決定されている。
【0047】優先度が最も低い音素が選定されたら、選
定された音素の終了時刻を変更するか、もしくは選定さ
れた音素自体を削除する(ステップS15)。基本的に
は、音素の終了時刻の変更が優先される。具体的には、
選定された音素の終了時刻を、新たに重複管理テーブル
に登録された音素の開始時刻と同一になるように変更す
ることになる。これにより、選定された音素と新たに登
録された音素との時間的な重複がなくなり、設定された
制限数を超えないことになる。図9を用いて説明した例
では、図9(c)に示すように音素Bの終了時刻が、新
たに重複管理テーブルに登録された音素Eの開始時刻
「2」と同一になるように変更され、図9(d)に示す
ように音素Aの終了時刻が、新たに重複管理テーブルに
登録された音素Fの開始時刻「2」と同一になるように
変更されている。音素自体を削除する場合とは、音素の
終了時刻を変更することにより、音素自体がなくなって
しまうような場合である。例えば、開始時刻が「1」で
終了時刻が「2」の音素について、終了時刻を変更する
と、終了時刻も「1」となり、音の発音時間は「0」と
なる。このような場合は、データが存在していても意味
がないので、その音素自体を削除するのである。上記ス
テップS11〜ステップS15の処理を全音素、すなわ
ち音素データ群に存在する全ての音素データについて行
ったら、処理を終了する(ステップS16)。
【0048】図10のフローチャートに示した手順によ
り、ステップS5の処理が終了したら、そのままMID
I形式の符号データに符号化しても良いが、本実施形態
では、データ量の削減のため、音素データの総数の調整
を行う(ステップS6)。具体的には、音素データ群に
おける音素データの総数が、設定された数を超えている
場合、重要度の低い音素を削除することにより、音素デ
ータの総数を所定内に収める。本実施形態では、優先度
として、各音素データの(終了時刻−開始時刻)×強度
値、により算出される値を採用する。すなわち、この値
が低いものを順次削除していくことになる。音素データ
の総数の調整が行われたら、MIDI形式に符号化を行
う(ステップS7)。
【0049】(倍音成分の除去処理)上記のような本発
明に係る符号化方法により、重要な音の一部を欠落させ
ることなく、また、同時刻に重複する音素を同時発音可
能な数に収めることが可能となるが、本発明において
は、その手法の特徴から、倍音成分の除去処理を行うこ
とも可能である。倍音とは、本来の音である基本音の周
波数の整数倍の周波数を有する音であり、この倍音成分
をそのまま符号化してしまうと、本来の音を正確に再現
できないことになる。倍音成分は、上記〔数式1〕に示
した関係からMIDIノートナンバーでいえば、基本音
の+12、+19、+24、+28、+31、・・・とい
った値をとるものとなる。
【0050】次に、倍音成分の除去処理を行う場合につ
いて説明する。具体的には、上記ステップS5において
重複音素の処理を行う際に、重複管理テーブルに登録さ
れた複数の音素の中で、一方の音素の周波数が、他の音
素の周波数の整数倍となっているような関係があるかど
うかを調べる。そのような関係が発見されたら、周波数
が高い方の音素の強度値の、周波数が低い方の音素(基
本音と考えられる)の強度値に対する比率を算出する。
この比率が所定の値以下である場合、周波数が高い方の
音素を、倍音であると判断して削除する。強度値の比率
が所定値以下でない場合は、その音素は倍音成分でな
く、基本音である可能性が高いので、削除は行わない。
【0051】以上、本発明の好適な実施形態について説
明したが、上記符号化方法は、コンピュータ等で実行さ
れることは当然である。具体的には、図7および図10
のフローチャートに示したようなステップを上記手順で
実行するためのプログラムをコンピュータに搭載してお
く。そして、音響信号をPCM方式等でデジタル化した
後、コンピュータに取り込み、ステップS1〜ステップ
S6、およびステップS11〜ステップS16の処理を
行った後、MIDI形式等の符号データをコンピュータ
より出力する。出力された符号データは、例えば、MI
DIデータの場合、MIDIシーケンサ、MIDI音源
を用いて音声として再生される。また、上記重複管理テ
ーブルは、コンピュータ内のRAM等の所定の記憶領域
を割り当てることにより実現される。
【0052】
【発明の効果】以上、説明したように本発明によれば、
与えられた音響信号に対して、時間軸上に複数の単位区
間を設定し、設定された単位区間における音響信号と複
数の周期関数との相関を求めることにより、各周期関数
に対応した強度値を算出し、各周期関数が有する周波数
と、前記各周期関数に対応した強度値と、単位区間の始
点に対応する区間開始時刻と、単位区間の終点に対応す
る区間終了時刻で構成される単位音素データを算出し、
この単位音素データの算出処理を全単位区間に対して行
うことにより得られる全単位音素データから、強度値が
所定値に達していないものを削除して、残りの単位音素
データを有効な強度値を有する有効音素データとして抽
出し、抽出された有効音素データに対して、周波数が同
一であって、区間が連続するものを連結して連結音素デ
ータとし、連結音素データの属性として、強度値は構成
する有効音素データの最大強度値を与え、開始時刻は先
頭の有効音素データの区間開始時刻を与え、終了時刻は
最後尾の有効音素データの区間終了時刻を与え、連結処
理後の全音素データに対して、時間的に重複する音素デ
ータを探索し、重複する個数が所定値を超える場合、時
間的に重複する音素データのいずれかに対して補正を行
うことにより、時間的に重複する音素データの個数を所
定値以下にし、調整後の音素データの集合により音響信
号を表現するようにしたので、重要な音の一部を欠落さ
せてしまうことなく、かつ、同時刻に重複する音素を同
時発音可能な数以下に収めることが可能となるという効
果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の音響信号の符号化方法の基本原理を示
す図である。
【図2】本発明で利用される周期関数の一例を示す図で
ある。
【図3】図2に示す各周期関数の周波数とMIDIノー
トナンバーnとの関係式を示す図である。
【図4】解析対象となる信号と周期信号との相関計算の
手法を示す図である。
【図5】図4に示す相関計算を行うための計算式を示す
図である。
【図6】一般化調和解析の基本的な手法を示す図であ
る。
【図7】本発明の音響信号符号化方法のフローチャート
である。
【図8】有効音素データの連結を説明するための概念図
である。
【図9】音素データ群および重複管理テーブルの様子を
示す図である。
【図10】図7のステップS5の詳細を示すフローチャ
ートである。
【符号の説明】
A(n),B(n)・・・相関値 d,d1〜d5・・・単位区間 E(n)・・・相関値 G(j)・・・含有信号 n,n1〜n6・・・ノートナンバー S(j),S(j+1)・・・差分信号 X,X(k)・・・区間信号

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】与えられた音響信号に対して、時間軸上に
    複数の単位区間を設定する区間設定段階と、 前記単位区間における音響信号と複数の周期関数との相
    関を求めることにより、各周期関数に対応した強度値を
    算出し、各周期関数が有する周波数と、前記各周期関数
    に対応した強度値と、単位区間の始点に対応する区間開
    始時刻と、単位区間の終点に対応する区間終了時刻で構
    成される単位音素データを算出する単位音素データ算出
    段階と、 前記単位音素データ算出段階の処理を全単位区間に対し
    て行うことにより得られる全単位音素データから、強度
    値が所定値に達していないものを削除して、残りの単位
    音素データを有効な強度値を有する有効音素データとし
    て抽出する有効音素データ抽出段階と、 前記有効音素データ抽出段階により抽出された有効音素
    データに対して、周波数が同一であって、区間が連続す
    るものを連結して連結音素データとし、連結音素データ
    の属性として、強度値は構成する有効音素データの最大
    強度値を与え、開始時刻は先頭の有効音素データの区間
    開始時刻を与え、終了時刻は最後尾の有効音素データの
    区間終了時刻を与える音素データ連結段階と、 前記連結処理後の全音素データに対して、時間的に重複
    する音素データを探索し、重複する個数が所定値を超え
    る場合、前記時間的に重複する音素データのいずれかに
    対して補正を行うことにより、時間的に重複する音素デ
    ータの個数を所定値以下にする重複音素数調整段階と、 前記調整後の音素データの集合により音響信号を表現す
    る符号化段階と、 を有することを特徴とする音響信号の符号化方法。
  2. 【請求項2】前記重複音素数調整段階は、前記時間的に
    重複する音素データ間において、その属性である周波数
    が他の音素データの周波数の整数倍になる音素データを
    削除するものであることを特徴とする請求項1に記載の
    音響信号の符号化方法。
  3. 【請求項3】前記重複音素数調整段階の後に、音素デー
    タの発音時間と強度値との積に基づいて、重要度の低い
    音素データを削除することにより音素データの総数を削
    減する総音素数調整段階を有することを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の音響信号の符号化方法。
  4. 【請求項4】前記重複音素数調整段階は、前記時間的に
    重複する音素データの中でその強度値が最小の音素デー
    タの終了時刻を開始時刻側に移動させることにより、時
    間的に重複する音素データの個数を所定値以下になるよ
    うに調整するものであることを特徴とする請求項1から
    請求項3のいずれかに記載の音響信号の符号化方法。
  5. 【請求項5】前記重複音素数調整段階は、前記音素デー
    タの属性である開始時刻の順序に基づいて重複管理テー
    ブルに前記音素データを順次登録すると共に、前記重複
    管理テーブルに既に登録されている音素データの中で、
    新規に登録しようとする音素データの開始時刻以前に区
    間終了時刻が設定されている音素データを前記重複管理
    テーブルから削除し、前記重複管理テーブルに登録され
    ている音素データが所定数を超えた場合に、前記重複管
    理テーブルに登録されている音素データのうちの1つを
    選定し、音素データ群内の選定された音素データ自体に
    補正を行うと共に、選定された音素データを前記重複管
    理テーブルより削除することにより、時間的に重複する
    音素データの個数を所定値以下になるように調整するも
    のであることを特徴とする請求項1から請求項4のいず
    れかに記載の音響信号の符号化方法。
  6. 【請求項6】コンピュータに、与えられた音響信号に対
    して、時間軸上に複数の単位区間を設定する区間設定段
    階、前記単位区間における音響信号と複数の周期関数と
    の相関を求めることにより、各周期関数に対応した強度
    値を算出し、各周期関数が有する周波数と、前記各周期
    関数に対応した強度値と、単位区間の始点に対応する区
    間開始時刻と、単位区間の終点に対応する区間終了時刻
    で構成される単位音素データを算出する単位音素データ
    算出段階、前記単位音素データ算出段階の処理を全単位
    区間に対して行うことにより得られる全単位音素データ
    から、強度値が所定値に達していないものを削除して、
    残りの単位音素データを有効な強度値を有する有効音素
    データとして抽出する有効音素データ抽出段階、前記有
    効音素データ抽出段階により抽出された有効音素データ
    に対して、周波数が同一であって、区間が連続するもの
    を連結して連結音素データとし、連結音素データの属性
    として、強度値は構成する有効音素データの最大強度値
    を与え、開始時刻は先頭の有効音素データの区間開始時
    刻を与え、終了時刻は最後尾の有効音素データの区間終
    了時刻を与える音素データ連結段階、前記連結処理後の
    全音素データに対して、時間的に重複する音素データを
    調べ、重複する個数が所定値を超える場合、前記時間的
    に重複する音素データのいずれかに対して補正を加える
    ことにより、時間的に重複する音素データの個数を所定
    値以下にする重複音素数調整段階、前記調整後の音素デ
    ータの集合により音響信号を表現する符号化段階、を実
    行させるためのプログラム。
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